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未発表句集 伊呂波

未発表句集 伊呂波
「ところで」と三井寺ごみ虫寄つて来ぬ
「よう」「おう」とお馴染みさんの焼鳥屋
「右はどつち」「お箸もつ方」とて曲る*母子の会話
「色づくは何故(なぜ)よ」「理由は光合成」*NHK
「不用意」と「破格」恃みにホ句の秋
アイスキャンディー小豆の粒を舐(ねぶ)りつゝ
あじさゐはぼんやり空はどんよりす
あちちゝと宙に手を置く蒸し藷
アバウトな球ばかりくる草野球
あめんぼに夕空ビーフジヤーキー色
あらいやだ降らぬと云ふに秋の雨*洗濯物
あらよつと藤の緞帳潜りけり
ありきたり又佳し賀状の文言も
あれれゝと虫喰ひ茹で栗抛り出す
イヴ愉し小物なれどもラッピング
いちどきに種採れざればちょくちょく採る
いつの間に桜が咲いて散る間際
いっぽんは七夕竹として残す
いろは骨牌(かるた)切りよきところで餅焼けたよ
うーんと一つ唸つて決めぬ昼餉は蕎麦*鶯谷
うからやから膝小僧入れて春炬燵
うたた寝も養生の裡生身魂
うだる日の蝉の営み我の営み
うっすら焦げ目つけ焼くふぐの一夜干し
おお寒とぼやいてゐても明けぬ年
おだてには乗れとさやかに泉下の師*大野林火
おぶ紐を結はえ直せる花の下
おほまかな秤地魚ふつこ買ふ*小柴漁港
お化け屋敷汗し客寄せろくろく首*蛇女も又結構
お悔みをぐるり取り巻く菊の中*西林寺
お月様妻の捏ねたる団子召せ
お手本に波多野爽波のチューリップ
お先にと淑気立つこゑ湯を上がる
お逮夜の路地に灯を投げパチンコ店
お年玉鯛の踊れるぽち袋
お万灯迎ふ宗旨は別にして
カーデイガンのポケツト探れば去年のもの*御神籤
かう云へばああ云ふ妻と衣被
かう巻けと朝顔の蔓承知さす
ががんぼの物腰よろしく古書店主*紙魚の会
かちやかちやと夏は大味浅蜊汁
かちゃかちゃと採れし浅蜊を揉み洗ひ
がちやがちやや明日の組閣を前にして
かと云うてこんな形(なり)では着膨れ過ぎ
かなかなは一オクターブ上のこゑ
かなぶんは悪(わる)ぞ証拠を押さえたぞ
かりがねや人は末路を医者に投げ*僧帽弁閉鎖不全症
ぎうぎうに締める蛇口や寒戻り
キキと鳥木斛の実の色づくに
きさらぎの素甘食べ後しんねりと
きちかうは白を切なり空のもと*金龍禅院 吾常於此切(われ常にここにおいて切なり)
きのふけふ花は一時とて出かけ
ぎやまんの猪口になみなみ新走り
ぎよつとしてい行く秋蛇見守れり*教育植物園
キンカン塗り手慣れたもんよ生身魂
ぎんなんの当り年てふ囲み記事*神奈川版
ぎんなんをああああたうたう踏んじやつた*鎌倉宮
ぎんなんを剥く手を休めうんざり顔*茶碗蒸し
ぐい呑に月や兎や月見酒
グラウンドを秋蝶小躍りして飛び来*国体
ぐりぐりの丸薬寒水もて嚥めり
ケバだちて神在月の栞紐
けふの月酔余のわれは捨て置かれ*観月
けふよりは灯を取らせぬといふ網戸
けふ出して呉れたるチクチク毛布かな*グツトタイミング
けふ大寒日のある内から湯に入る
けろけろは外様でぐわぐわは普代
ここいらで一服つけてと梅のまへ
ここからは鈍行二月の地底ゆく
ここに又蚯蚓の頓死朝の道
ここ両年花見どころの定まりぬ
コスモスに押寄す風の無辺大
こそばゆき脛の辺りを見れば蟻
ごたごたを抱へしまんま年了る*二度三度
この夏も妻が代参墓参
この通りペチユニア雨に弱き花
この道に適ふ道なし山桜
この範囲と云はるる藷を掘り起す
こびりつく栗渋包丁閉口す
ゴミ出しの済みて戻れば朝の月*プラの日
これからは女も愉しむ世と餅焼き
これといふことのもう無く夕端居
これは虹これはお舟でこれは美雨(みう)*孫の云へる
これよりの月日布団を愛しまん*八十一歳
こゑ転がすこおろぎ厨の此処でなし*長夜
サーフアーの銀髪波より貰ひしと
サイダー のあとは麦湯で口直し
さざんかの早呑込みが花をつけ*初冬
ザツと来て尋常ならざる大夕立
サフランの笑まふごとくにわが主治医*慈恵医大病院
ざりがにに何故かするめの眼に入らぬ
ザリガニを捕る子は花に目もくれで
サンダル履き素足快適由比ヶ浜
しきたりの如くにぶだう洗ふなり
じくじくと体を成さざる雨後の蝉
しづしづの静の風夜のお万灯
しづる雪ずるるずどんと家の裏
じゃがいもを頬張り戦時下咄かな
しゃぼん玉どなたが吹くや雨の窓
じゃりじゃりと馬鹿貝波に呉れてやる
ジュラルミン製のオブジェに秋晴れて
シユワワと撒水ホース地を穿つ
ジョッキ持つ手触り正にこれこれこれ*ビールシーズン到来
ジリ貧の商店街の盆休
じろじろと見上げられをりみんみん蝉
すずき揚げ小坪は逗子の台所*石蕗日和
ずず玉の青天井を鳶ながれ
すっぽんぽん暑さ知らずの夏なりき
すててこで怖れるものも無き生活(たつき)
すらりとした容姿が全ての細魚買ふ
セーターの中身抜きとる脱衣場*地蔵湯
せり出せる桜川幅狭め合ひ
そこそこにミッションスクール卒業す*関東学院六浦 中学 高校
その気配なけれどさりとて暴れ川
その字づら虎の威をかる蠅虎
その先は模糊と島やら霞やら
その中に雛を型どる箸置も
その筈の道が消えをり秋の暮*宇津ノ谷峠
それならと妻やり返す秋暑し
ぞんざいな作りの猟場女郎蜘蛛
ぞんざいな造りの提灯あんかうに
たいさうな浅蜊ごっそり掻く道具*鋤簾
だいたいの事情は聞いた酒にしやう
タイルの目地一箇所剥がれ落ち啓蟄
たかがごきぶりそんなに声を荒げずとも
たはいなき鍵の隠し処神の留守
たまさかに妻相伴す新走り
たわたわと秋刀魚のくねるポリ袋
たをたをと棹持ち上げて鯛釣草
タンポポの点在五月のスキー場
ちまちまと箸使ふなり胡瓜揉み
チヨイ役の関敬六の逝ける夏*『男はつらいよ』
ちょっかいを出す奴をりてあめんばう
ちよろちよろ滝殷々大滝舟下り
つくづくしレール継ぎ目の音送り
つつかけで今夜二度目の月を見に
つばくらめ遠く働き詰めの日々
つるつると徹頭徹尾すべた貝
デカければだうしてくれやうこの西瓜
ドアぴしゃと閉じて藪っ蚊振り切りぬ
とある日のパントマイムや上野山
とある日の石榴の慨嘆見て過ぎぬ
とうを攀づ傘の段々あじさゐ寺
どことなく太りし妻とけんちん汁
どちらかが言い出し夜桜行となる
どちらかと云へば秋刀魚の尾の部分
どら猫の土足厳禁干蒲団
とりとめなき雨音を聞き端居かな
トレリスにバラ高台に構ふ家
とんかつで腹ごしらえや日蓮忌
どんぐりのお化けを育て核軍備*核ゴミ問題
どんど焼重々しきは松のこゑ
なかんづく俳句も虫も語呂のよさ*金太郎飴
なほねだる口の菱形燕の子
ニス匂ふ中を飛びくる秋の蜂*空澄む
ぬばたまの蝌蚪連なれる天の川
ねぼすけの雨戸繰る音柿日和*安息日
ハーモニカ夏痩せの腹凹ませて*小沢昭一
はくれむの思へばあっけなかりけり
バタと来る雨に撲たるゝ秋海棠
バタ屋てふ生業ありぬキリン草*嗚呼昭和
はみ出しもの夏草舗道の割れ目より
ハモニカのリードてふ部位ちちろ鳴く*小沢昭一
はや秋を装ふ路傍のぺんぺん草
ハンカチを裏返し拭く丸の内
パンジーの花欠けゐるは嘴の跡
パンジーの泥を被ればベソかいて
ピアノ下手でヨウシユゴボウののたうつ家*町内散歩
ピカドンの日を玉子かけご飯
ヒクヒクと鳴く虫のゐて通夜の席*テント張
ひたぶるにうらぶれ鶏頭種抱く
ひとり夏旅せよてふ話どうもねぇ*介護中の妻云ひければ
ひとり孤心貫く馬刀でありにけり
ひょいと来る目白と目が遇ひ目の遣り場
ひよんな事で妻とぶつかる夜の長し*泣いた烏がもう笑う
フーテンの寅の忌日やシネマ見る*柴又
フーテンの寅鞄提げ帝釈天
ふくよかでおっぱいもある雪だるま
フジヤマのトビウオならぬ鰡素つとぶ
ぶだうには巨峰もあれば甲斐路もあり*中山道
ぶだう郷空気が旨し水旨し
ふらここの板切れ園児の尻余す
ふらここの立乗り父にやつて見せ
ぶらんこに童女ちょこんと浅坐り
ふるびるといふことふうせんかづらにも
ぶるるんと寿命来てゐる冷蔵庫
へこたれず鶏頭倒れても横這ひ
ぺつぺつぺ今どき種のあるぶだう
ポアンカレー溺れてをりぬ天の川
ポケツトに捻じ込む師走の領収書*浅草寺 年の市
ぼそぼそと小火の顚末板塀越し
ほつたらかし序でに野分の散り青葉
ぽろり落つ病葉昼の日の闌けぬ*独言
ほろ苦き林檎の味す青森海鞘
ホ句の道蜷ならずとも模索かな
まあまあの粧ひにして藤袴
まだ懲りず目高金魚と飼ひて尚
まるまって芙蓉は朝を迎えけり
むかご飯大きなやつを乗せ呉れぬ
むかご飯中にはごりごりするやつも
むくむくと白蓮の珠肥らす雨
ムシカリにたうたう来たか那須の雨
むつつりと雑木もみぢを見て下山
むねを張るごとく誰しも梅に佇つ
むらさきの大輪朝顔びろつと咲く* 東洲斎 写楽 大首絵
めうが・茄子月見の供物はありあはせ
めうが汁昼餉はけさの残りもの
メリハリの付き来る花火の後半部
メロン蔓伸びて大地をはいはいす*三浦半島 大根台地
もう一晩網戸外すの止めとくか
もう居ない筈の秋蚊が押入より*冬物点検
もう寝べき頃と団扇をバタと置く
もどかしく春が漂ひ初む四辺
もみぢにも事情色づき悪しき訳
もやもやと蓮の巻き葉は飴いろに
モリジアーニの女の気分ジヤケツ着て*美術の秋
やがて朽つもののあはれは鶏頭にも
やたら成る庭のくわりんの天然呆け
やや寒の作務衣の手首締りよき*円覚寺
やるせなき暑の所為(せい)にして痴呆の気(け)
ゆつたりと構へる萩を手本とし*吟行
よく鳥が来るやうになり春隣
よべ良夜の玄関燈の消し忘れ
よろけ履く股引春寒湯屋板間
ラーメンの脂弾ける年の瀬へ
ラヴェンダーわけても綺麗この一角
リロリロとこゑに張りある朝の虫
わからなくていいじゃないかと熱燗注ぐ
わが痩躯知つてをるなり夏ぶとん*蚊遣豚
わが齢鶏頭程に傾けり*定年
わずらはしき小銭は持たず一の午
をみなへし蜂(すがる)は勁き足腰持ち
阿亀桜もう散る雨にベソかいて
阿字ケ池あめんぼぐらいはをるだろう
阿字ケ池代々受け継ぐ水すまし*金澤文庫
悪企発覚毛虫一掃す
暗がりに息吹き返す金亀子
闇夜汁平たく云へば何でもあり
伊勢海老の具足煮良夜にふさはしく
伊豆一の早咲き桜にバス連ね
委任状細部埋めて昼の虫
威し銃過ぎて威しが効かぬやう*井川鐵道
威銃見た目以上に深き空
萎れるは葉つぱの言葉水ちようだい
衣更着をぶつかり歩く勤め人
郁子は実に臨済建長寺派一院*金龍禅院
磯料理鱚のミックスフライを先づ
一つ大きくうなづく陛下初相撲
一つ木に巡る春秋今もみぢ*高尾山
一艦影距離縮めつゝ横須賀沖*秋の海
一気に暑引ける一夜や何為さむ
一掬の涼乾す九谷のぐい呑みに
一月より二月へしんねりむつつりと*方言 俗語これら全てが句材だ
一向に肥らぬ体質胡瓜揉み
一硬貨にて足る祭寄付なりし
一振りで決まる野球や秋うらら*ベイスターズ
一漕ぎにスカル突つ込む花筏
一帯が其処より展け青き踏む
一段と冷ゆる夜蝦のやうに寝て
一度だけ虫の翅音のして炎昼
一物も朧めく夜と覚えたり
一望に艦影二、三春の海
芋つゝき食の好みもほぼ同じ
芋の葉を訪ふてをるなり露法師
芋虫と見咎められて即御手討
鰯にも鯖にも似ざるけふの雲
飲めばまた貧乏自慢肉豆腐
烏瓜窺ひ咲のうすら闇
烏瓜減るは天狗の仕業とも
烏賊も駄目蛸ぶつも駄目はんぺんなら
雨ほんの木瓜の莟をゆるめる程
雨を吸ひ裸木どこかほの暖か
雨暗のそこ立ち去らず藪めうが
雨催紅(くれなゐ)牡丹の深情け
雨垂れも神楽に乗りて午まつり*佐助稲荷
雨水輪一つ一つの春めくや
雨樋の音のトコトン祭月*祭月
卯の花腐し東京の地下深きをゆく
鰻の日これ見よがしに流す煙
運動会加齢足弱何のその*団塊世代
運動会固き體に喝入れて*団塊世代
運動会午後の部蜈蚣競走より*俵藤太
運動会放送圏内にて我が家
雲の峰豪打で制す開幕戦
雲の峰本腰入れる気のありや
雲わたり盡せしそらに望の月
雲脂飛ばしひとり遅日を持て余す
雲水に植田明りの続く道*永平寺
雲抜ける月の速さよ桂浜
永平寺河鹿の囃す駐車場
永平寺蕎麦や河鹿を聞きながら
永平寺社務所にて買ふ経扇子
永平寺川の河鹿のヒツヒツと
永平寺末寺一萬五千とよ
永平寺門前の川後方(しりえ)の山
泳がなくなりて幾年六浦(むつら)の海
鋭敏な蝉の頭上に迫る網(タモ)
炎天へ出てゆく前の独り言
炎天ををたをたと来て受付へ
炎天を来るといふより躱(かは)し来て
燕飛ぶサービスエリアいつぱいに
縁側の縦長日向君子蘭
遠き雷山の機嫌を取り損ね
遠稲妻海の涯(はたて)を照らしけり
遠望のボート後部の白日傘
鉛筆の稜(かど)の手触り秋隣
塩盛つたやうな富士山山間に
往き交へるもの一つなき寒林に
押し相撲一気に突き立て電車道
押し売りのやうな大夕立に遇ふ
押切の西瓜うんともすんともや
押入へ首突つ込んで冬着出す*サザエさん
横濱の蔦の館のビヤホール*関内
襖越し寝息うかがふ看取りかな
黄落や天窓のある其の平屋*平山郁夫邸
沖合の夕焼け片雲鮭トバ色
牡丹のその座誰にも譲らざる
温むなら脂の奔る鴨なんばん
温泉の愉しみ序で熱海の梅
音を上げては男が廃(すた)る紅葉狩
下りて来し山に残雪合掌建
下駄鳴らし郡上踊りはソレンセー
下着脱ぐホックの音も春めきぬ
何でもよし引つぱり出してカーディガン*稍寒
何とかせんだうにかなるの年逝きぬ*例年
何に付けものに段取りあり薄暑
何着やうすっかり春といふ訳には
佳い本を少しづゝ読む夏の宵
夏に入る路地の雀の茶色帽
夏の果鰤の血合に箸つけて
夏は魚(さかな)魚(さかな)地物の雑魚をこそ*地元 小柴漁港
夏安居の雲水二百永平寺
夏掛の一端腹に懸けねむる
夏掛の軽き不安も寝入りばな
夏掛の隙より覗くふくらはぎ
夏掛を払ひ退けてはたぐり寄せ
夏魚の骨外す術祖父譲り
夏暁の一杯の水胃に落とす
夏暁の玄関燈をカチと消す
夏向の家奥家人こちら見て
夏讃え頭韻踏める一行詩
夏惜しむなり廃刊もその一つ
夏痩せて生利(なまり)の血合い突つきをり
夏草にボテボテ打球来て止まる
夏暖簾捻り鉢巻して出づとつつあん
夏呆けの頭ほぐすに位相幾何(トポロジー)*新学期
夏了る全てが了るごとくなり
家人みな出払つてをり箒草
家苞の潤目鰯(うるめ)二連に火を通す
歌舞伎座の造花もみぢに華やぐ街
河鹿笛十方三世一切仏(じーほーさんしーいーしーふー)*永平寺
火恋しさの球場真つ赤つかのフアン*レツドソツクス球場 フェンエイパーク
花デイゴ砂打つ雨に散る許り
花に雨上野の山は一波乱
花の間翼の休め処かな
花の山妻よ生活(たつき)の翅伸ばせ
花の昼小さき急須を傾けて
花の旅路面電車でお城まで
花火観る人人人人クレヨン画*敬老の日母校よりお便り 小学校 5年生
花火見に出掛ける下駄の緒のきつめ
花火師の鳴かず飛ばずの五十年*二本松
花過ぎのご当地ラーメン食べにゆく
花擬宝珠起きて半畳寝て一畳*永平寺
花屑やぺんぺん草の足許にも
花見客「あ」とつんのめる木の根つこ
花見客ぞろぞろ一段上の道
花札をこき混ぜるかに緋鯉達
花啄むうぐひす色の胴捻り
花堤中程開花標準木
花曇返信よくよく考へて
花筏危ふし濠の鯉直進
花疲れ抜けてゆくよな道明寺
花芙蓉あれツとおもふ人逝きぬ*町内会
花了る鉢を重ねて冬隣
花冷や何をするにも手のつめた
花筵ブーツの中へ散り込む飛花
蚊が出没雨の厨の梁山泊
蚊のこゑとへたばり溜まり易きもの
蚊を払ふ仕種おもしろ立話
蚊遣豚もくもくやれば蚊の退散
蚊遣豚煙床這うて燻(ふす)ぼれる
蚊遣焚き寝所より蚊を閉め出せり
蚊帳吊りて大惑星に棲む思ひ
蚊帳裡に座して暫く魚ごころ
蚊燻しにいぶされ否応なく老台
蚊燻に鼻の馴れ来る真暗闇
我が家より抛り出したきこの暑さ
我武者羅や火蛾もピストン堀口も*嗚呼昭和
芽が動き出したらあげよ油かす
芽吹くこと明らか数式解くよりも
賀状読む汝との縁に遡り
快晴を紫羅欄花(あらせいとう)と喜べり
海の家畳むとんびの輪を描く中
海の方向きてわが家の月見の座
海の方片雲も無き素秋かな
海べりに七十年住み海雲和
海峡に沿ひ飛ぶ燕ではないか
海鞘啜りながら横から口はさむ*アンテナシヨツプ
海人(うみんちゆ)の情の懸け方ハイビスカス
海面をうろちょろ納涼屋形舟
開帳に頭よくなる煙ぱっぱ
階の数のほとほと花の寺
貝掘に上げてくる潮まっしぐら
貝掘のすたすたとゆく大干潟
貝掘の波除け損ねおっとっと
貝焼いて生醤油たらす二、三滴
咳き込めるやうな仕種を夏鴉*恐山
街角にて出合ひがしらの青あらし
街筋をのそりゆらりと立侫武多
骸の蝉還りし土の色なりけり
垣朝顔種採るまでをほったらかし
柿の花守一の画にあったっけ*「画壇の仙人」熊谷 守一 山崎努 樹木 希林
柿は据え梨は座らせおく十夜*光明寺
各々が各々の息梅を前
格のある水仙の句と推しにけり
格好な標的となり曼珠沙華
割箸もて毛虫つまめば脚ぱたぱた*おつかなびつくり
割箸を付けときますか年越蕎麦
葛の葉を糞暑ければひっちぎり
葛餅の売れに売れたり御命講
兜虫のその骨格に惚れ惚れす
兜虫不器用同士の角突き合ひ
蒲の絮挙げ句の果といふ様に
鎌倉石穿つ雨垂れ午まつり*佐助稲荷
茅の輪作り刈処は千葉の辺りとぞ*東京港区 愛宕神社
刈田に降り先づは句作り手帳出す*鬼無里
瓦版花見のわし鼻毛唐の図*横濱絵
乾拭きの机上に愛づる玄圃梨
寒天(てん)作り天の利地の利生かしけり
寒木の森に一鳥声殺し
寒木の背後にあるもの唯青空
寒木を唯映すのみ水溜まり
寒林のいつも何処かに擦過音
干潤目鰯(ほしうるめ)腸あたりの乾びやう
干大根雲影すすつと過りけり
換気扇待つてましたと秋刀魚焼く*不漁高値
竿伸ばす蝉捕の子の脇腹見せ
缶切りの逸れてばかりや涅槃の日
肝心なところでいつぽん出ぬナイター
肝心なところで馬刀に逃げられし
観月会えらい別嬪さんも来て*三渓園
観月会べか舟も月待てる池
観月会楼の障子を取つ払ひ
貫入の尻まで及ぶ石榴の実
還らんか土いろの蝉土くれに
間の取り方いろいろありて昼の虫
間違ひなく忘られてゐる万年青の実
関節を鳴らして河津桜見る
眼から煙二条くゆらせ蚊遣豚
眼の上るはつなつの本閉じにけり*葉山ハートセンター
岩つつじ殺生石の間間に
岩伝ふ走り根余寒の白蛇様*銭洗弁天
雁ゆくと東北訛り悪びれず
喜雨聴きつ牛蒡をこそげおとす音
喜雨浴びて南瓜の自適崎の畑*三浦半島 岬口
器量人三渓偲べと園の月
旗日の空青からんこと徹底す
棄てられてぽちゃんと波間に消ゆ潮吹
気のついた時には初老いぼむしり
気の遠くなる営みを漆搔
気色ばむ蟷螂の首クと曲げて
気泡湯の泡の行方も年の果
汽水湖の彼方に白鷺逍遙す
起き上り小法師も雛の仲間入り
軌を一の生活(たつき)の上の夏の月*サラリーマン
鬼灯にホウズキカメムシ付き始め
鬼灯の虚無僧姿晒しをり
鬼灯の累々社頭に参ずれば*東京港区 愛宕神社
鬼零余子媚びず同ぜずへつらはず*沽券
亀に鯉それに鴨来てにぎはふ池*金澤文庫 阿字ケ池
蟻の曳く真つ赤な種に長屈み
菊見しあとこれでしようがと飲む手つき*悪友
詰(つま)らなき日を面白く樟脳舟
杵と臼問答交はすずんだ餅
吸い物の渡り蟹椀手重りす
宮川のよく鳴るところ青棗*高山
漁始めさねさし相模の水覗漁(みづきりょう)
漁師町月見の芒とる先は
境内のそこらを踏むな福寿草
境内をとととと歩く寒雀
胸に手を畳む隙なし死蝉は*即死
胸板の切り傷熱る夏うぐいす*葉山ハートセンター
暁斎の解き放つものうそ寒し*百鬼夜行図
暁蜩酸素の管は未だとれず*葉山ハートセンター 川崎展宏に次句あれば 人間は管より成れる日短
暁蜩打つて変つて鳴き渋り
玉すだれこつちの道を行つてみやう*町内散歩
近場にて萩を見るなら宝戒寺
金も無くすっぽんぽんで通す夏
金海鼠(きんこ)など提げ来て妻の手煩はす
金亀子ドンキホーテの気構え持ち
金亀虫灯を取り損ねまた落下
金細工蝶の容を叩き出す
金箔を置くごと伊豆の春の海
金木犀だうにもならぬわが癖字*遅筆
金木犀腐(くた)しの雨と云ふべかり
金蠅のたかるいちぢく鳩舎の横*少年時代
銀杏採そのぼつぼつが始まれり
句も生活(たつき)もあくせくしてはつまらなし
句会後をああだこうだの濁り酒*石川町
苦瓜の疣々雨滴零しけり
駆け廻る子の跫音も枯れ兆す*ズツク靴
喰へざればあんぽんたんの烏瓜
空つぽになれと云はれて秋暁禅
空みるほか術なき秋の浜辺ゆく
空缶は空缶にして鯊釣れず
空蝉にその後の月日ありにけり*八幡宮
空風に並木はどれも木偶の坊
靴ベラを借りて辞す家日の永し
靴箱の中のごたごた十二月
栗とナイフ挿絵のごとく卓上に
栗の皮剥くといふよりひっぺがす
栗剥く妻「あらもう六時」とそこを起つ*尻軽
栗飯の栗のころんと飯の丘
薫風に躍るイルカのトピアリー
軍國や青どんぐりの空ら威張り
郡上踊明けの甚句に残る星
兄サには間に合はないと漆搔*間に合はないは及ばないの意
掲げたるビールジョッキに結ぶ露
敬老の字づら紙面におもはゆし
敬老の日と云ふ旗日旗を垂れ
敬老日みんな仲良く只のひと
敬老日近所歩きて足慣らし
軽くやる酒(ささ)や月にもけふのいろ
軽石の軽さに泛けり年の湯に
穴を出づ蟻見て眉毛痒くなる
穴子割く漁師に海猫(ごめ)の物見高
穴子漁その他海苔もやつとるぞ
穴惑見たことにする草の揺れ
月が出たそこから見るのはちよいと無理
月見団子われ留守なればと設えゆく
堅守せるガツツポーズや雲の峰
建て増しの勉強部屋の隙間風
建長寺素秋は槇の高みより
献燈に三越の名も御命講
肩の凝る書は後回し秋灯下
肩の辺り寒くていつもの寝相の向き
見(まみ)えたり大根台地の果ての富士
見交はしてカチンと目の逢ふ猫の夫
見上げては首痛くなる大桜
軒燕間口五間の大商家
原っぱに挙がる快音草の春
原液は唐紅にかき氷
原子から蠅まで論ず虫の秋
玄関にどの鉢置かう年迎
玄圃梨落ちし処に只管打坐
言い訳の要らぬ朝寝を定年以後
言葉より躰は正直大昼寝
言葉尻つかまえくだくだおでん酒*石川町
古書店出で出合ひがしらの秋の風*神保町
古草や羽目を外した旅したし
古本の整理春までほつたらかし
呼気大気薫風四辺に充ちゐたり*葉山ハートセンター
己が息熱く布団に顎埋め
枯草に火を乞はるるは困るなり*草千里
股引脱ぐ爺さん達の浮世風呂
胡瓜植え年金暮らし先細り
胡座かき携帯電話夏の浜
午まつり宮司の前置き稲のこと*佐助稲荷
午まつり祝詞天地闢く件(くだり)*佐助稲荷
午まつり白足袋すすと神楽舞*佐助稲荷
午祭たまへたまへと雨の中*佐助稲荷
御本山だだっぴろきに梅乏し
御命講元祖の葛餅山積みに
御命講無料茶屋にていただく茶
誤字当て字かすむ視力も夏の果
厚着にもいろいろ銭湯入浴図
向ひ家の屋根を離れてけふの月
向日葵やもう手に負えぬ炉心溶融(メルトダウン)
喉が知るエビスビールといふ銘柄
垢じみしものを拾へば蚊の骸
巧拙は二の次寸評忝し
幸せの容ステレオタイプの虹
広前に何を見つけし蟻わんさと
江ノ電は右に左に芙蓉に寄る
甲子園意地とプライド汗に懸け
甲虫の兜の下のメカニズム
紅玉に酸味を加ふ風吹けり
考への内外を出入り晝の蟲*推考
香の物とりわけ胡瓜のポリポリ感
高野槇寺格に適ふ茂りにて
高齢化すすむ結社と亀鳴けり
国会も稔りの秋もさあこれから
酷暑溽暑その上は何と称すべき
黒煙を天の預けて花火了ゆ
黒鯥の煮つけ大枚はたいては
腰に手をやりて秋暑の炒めもの
腰曲げて揚がる天麩羅春近し
腰丈の雄日芝いやはや手強かり
今日の魚果問へばチョイ投げキス釣と
根つからの会津つぽにて水漬け飯
左様かとぶんぶん逃がして遣りにけり
砂山に花火の棒が挿してある
砂吐ける大き浅蜊が上になり
座を起つに足がポキンと鳴る秋夜*月見
妻のいふこおろぎ確かに家のなか*中秋
妻は火廻り吾は始末方苧殻焚
妻は洗濯吾は種採り午前中*日課
妻共々夏痩せならぬ看取痩せ
歳月がとぐろ巻くごと栄螺の腸(わた)
歳時記の春の部に無し如何にせん
歳旦吟灯し書き取る紙の音
細工師の置物めける蝉拾ふ
細切りの海苔を散らして浅蜊飯
咲いたらパア閉じたらグウの花芙蓉
崎陽軒のシユーマイ肉の締まる冬*横濱駅東口
昨今の藷は身綺麗目移りす
桜の芽動かぬうちに植え替へよ
桜の芽風に煽られごっつんこ
桜もみぢ近々粗(あら)の見ゆる距離
桜見にゆかん一切放り出し
桜狩言い出しっぺの妻先立て
桜草ヘアーサロンの入口に
雑草(あらくさ)の錯綜台風一過の鄙
雑踏に空ら風吹き込む頃となり*新橋
雑木林ゆけば引っつくやうな凍て
鯖雲のうろこ拙なるクレヨン画
錆釘の浮き出す秋の飛行音*戸袋
錆釘を横たへしごと塩辛蜻蛉(しおから)は
三渓の財力月を購ひ洩らす
三渓園春の木に鳥水に鳥
三秋の初つ端(しよつぱな)の梨甘くなし
三秋へ堰切るやうに梨・ぶだう
三尊石寒雀らを侍らせて
三椏の花哲学を想はする
三椏見に中でもいちばん冷えこむ日
傘窄(すぼ)め闇に逃げ込む揚花火*大曲
参籠の人も仰げるお万灯
山かーんと晴るる日柴栗蹴つ飛ばす*札所寺
山葵田は小石もて堰き水の音
山妻と向き合ふ昼餉半裸にて
山手線若葉曇りの窓景色
山中に三黙道場ほととぎす*永平寺 僧堂・東司・浴室
山彦が落してゆきし煙管草
山椒魚水底踏まえてガサツな手
山茱萸の混み入つてゐる渡る世も
散らかし置く一ト間四辺に秋盈つる  
散財をさせし中元ビールの味
蚕豆は乳母日傘の莢を被て
残る柿一つだうしやうもなく高し
残雪の汚れ放題茶臼岳
残雪の五月のバークチップの道
仕舞ふこと考えてゐる扇風機
刺身に佳しとりわけ夏の近海もの*地元 小柴漁港
四つに組むもの欲し秋を前にして
四日はや車窓に移り変はる景
四辺掃く老いのものぐさ豆箒
四方の枯れ脱衣篭まで及びをり
四方圧すけふの暑さや髪洗ふ
四方圧す暑さの中を水飲みに
指さして彼奴(あやつ)が踊り助平と*郡上
指で押す腿のくびれや夏深き
止まらんとする蝉の様艦載機
紙ならぬ草の風船かづら哉
紙魚跡に目を丸くする初版本*書淫
紫蘇の実漬箸ちまちまと使ひけり*笠智衆
寺の名が町の名明易浄妙寺
自ら剥く栗に和んで飯おかわり*肥ゆる秋
自家栽培胡瓜天候不順に苦慮
自転車にも倒れ方あり春一番
鹿児島といふ梅火の性(しょう)忘れずに
七種の真似事をしてきのふけふ
七夕色紙術前のひと術後のひと*葉山ハートセンター
室内干し股引其処にある目覚め
漆搔木をへめぐるも四日置き
実向日葵鏃の如き日に撲たれ
篠突く雨芙蓉を渡り萩渡り
煮てくれろと林檎紅玉ごろりと出す
車前の何なら毟ってみろと云ふ
灼くる空大上段に振り被り
若竹の永平寺まで小一時間
若葉には未だほど遠く柿ちょろ葉
弱々し水田に映る雲の峰
守宮の子動ぜず何としたものか
守宮棲む家の硝子戸鍵が莫迦
手ざはりの確信となる大浅蜊
手に重るシベリヤ秋の長雨に
手に拭ふ汗を眺めて暑さ倍
手に椿歌劇といふはみたことなし
手を抜けば覿面ひようげたオクラ出来*市民農園
手渡さる河津桜の番付表
手渡さる速達秋の日の温み*野分晴れ
種抱いてどこか淫らな鶏頭花*万霊塔
首無しの曼珠沙華とは何たる景*糞ガキ
宗右衛門町ブルース月の覗く路地*浪花演歌も大好き
秋にはか口あたりよき八海山*初物
秋の昼麵麭は餡もの挟みもの
秋の蝶黄にしてパタパタ遣つてをり
秋の暮呼ばふ母など屁の河童*駆逐水雷遊び
秋の雷一つきりにて張り合ひなし
秋の雷天の岩戸を引くやうに
秋やこの頃鈍(なま)るは躰のみならず
秋海棠肘鉄喰らはすやうな節
秋海棠無粋な節々無くもがな
秋気充つ海を端から端まで見き
秋暁の座禅果たせば羽のやう
秋暁の風貌模糊と参禅者
秋暁の老師の座禅牢として
秋暁禅「蘭渓道隆曰(じやく)す」で了ゆ*泥牛庵
秋晴れと云ひし矢先の日の陰り*間が悪し
秋晴れの昨日何した筋肉痛
秋扇大病昨日の如く在り
秋草がすらすら描けてちび4B
秋草のほつそりいつまで降る雨か
秋草や何を於いても田村草
秋蝶の他来ぬ道をちんたらと*鎮守の森
秋天の返せるキヤツチボール音*ベイスターズ
秋刀魚の腸いつか壮年過ぎてをり
秋灯下妻は新聞おつぴろげ*番組欄
秋曇りどこかで消毒せる匂ひ*安息日
秋日差す縁より鸚鵡の下卑たこゑ*袋小路
秋風に押さるるまヽに唯歩く*観音崎
秋風に吹かれて歩む手を交差
秋風のひらひら土手ゆく足のうら*信玄堤
秋風の曲る通りに曲りけり*市電
秋風の試し吹とて国旗吹く*文化の日
秋夕焼燈台みたいな税関に*生糸検査場
秋闌けておばさん料理メンチカツ
終止符は何時(いつ)だう打たる紫木蓮
終戦日挟み夜毎のドキュメンタリー
終電の膝に優しき秋ともし*山手線
繍線菊や民宿にして大藁屋
舟虫這ひ船着場兼釣場
集め汁話題はいつかボケ防止
十月の月はだうだいまだまだよ
十月の桜の幹を日の滑り
十月の蝉啼き了る日と記せり*カレンダー
十二月御足(おあし)崩るること早し*ドンドン商店街
十二神将雪気つつめる堂暗に
十薬の類は見つけ次第抜く
柔らかく舗道打つ雨猫じやらし
重なりて鳴くは御免とちんちろりん
宿木を預り物のごと欅
祝ぎの座へ汝も加はれ春かもめ*祝婚
熟れ過ぎの柿にて腑分けめく手許*子規忌
熟れ柿剥く途中で包丁立往生
出目金を隅に追ひ詰め夜宮の子
術後三日蜻蜓交尾(つる)んで見せにけり*葉山ハートセンター
春の海箔うち延べしごと皺む
春の山懐に死は馴れ馴れし
春の虹介護は気持ち大きく持ち
春は小粋に三越の包装紙
春一番逆ひあるくことが好き
春寒のどっちつかずが面白し
春寒の寝床蹴破る勇気なし
春寒の水を鳴らせる水仕事
春泥の乾びて零る堂敷居
春雷に大きく反れる削り節
春濤はグリーンを基調走水*三浦半島 観音崎
春炬燵どこまで火力強める気
初吟行珈琲のんでボーとす
初刷を先づ読む家人に先んじて
初場所見にきれいどころの高島田
初飛脚通路も埋まる映画館*嗚呼昭和
初氷いとをしむなり指の腹
初風に浜かたづける人二、三
初放送とてブータンの砂曼荼羅
暑かつた東京の夏了りけり
暑ければどつちつかずの返答す
暑にめげずこなす課題があればなり
暑に欠席体調といふ便利なもの
暑に耐ふは覚悟ときつぱり云ふお方
書き置きのつくづく妻の字露のなか*筆圧
薯摺るにだうにか用足す下し金
諸葛菜術後の経過まづまづで
女(め)の節句をみな一途の情のいろ*雛あられ
女郎蜘蛛なれども今はこのサイズ
除草剤の効き目覿面この有様
勝因を聞かれエヘヘと勝力士
勝手元蛇口ちよろつと水零す*永平寺
勝手知る一膳飯屋のミニ蠅帳*駅前通り食堂
嘗て無き暑さ迎ふに胸はだけ
小雨あり音色かすかに変ふる虫*てるてる坊主
小晦日午後はとろ火に鍋かけて
小漁港路地勝ちに天草(てん)干し場
小漁村天草ぽっちり石垣に
小刻みに花を揺らして起てる風
小春日にうっかりうかの道違へ
小声にて大寒小寒と誦し起床
小鳥撃つ蛮行嘗ての空気銃
小鳥来て東京色分け地下鉄網*三越前
小田原城桜観るなら日おもてより
小判草雨にふやけて腐るとは
少年に戻れば浅蜊よく採れて
少年老い易く無花果まみれの手*後期高齢者
昇曲付八重芯変化菊てふ*花火花火玉の名称
松とれて川の流れのやうな日々
松手入せし人舞台を降るやうに
松手入せんとて梯子出してあり*兼六園
松茸に手を出す妻の太つ腹
樟の木の甚だ高く秋のそら
消しゴムの滓指先に丸め秋
消防士行つたり来たり小火検証
湘南の風味といへば生しらす
焼魚鰺の干物の強き反り*小坪
礁穿つ春の濤音百万遍
醤油壜底ついてゐる夏の果
上(うへ)下と鍵を当てがひ神の留守
上がるとき目鼻が無くて蓮根掘
上出来も上出来栗の渋皮煮
乗り来るは羽田辺りの鯊釣か*蒲田
常の日の常怠らず鉢へ水
畳なはる雲名月を出し入れす*良夜
畳搔く音のはつかに金亀子
蒸し藷駄句を量産して止まず*自嘲
職退きし秋やどうでもよき曜日
色鳥来器量如何なと覗きみる
食の秋目方表示のハンバーグ
尻の先青き蜻蛉の漁色家*赤線青線
伸びし手に蟷螂あれツといふ目付き*迷惑千万
寝るつもりなき昼寝してもう夕方
寝るときは平たくなりて夏布団
寝苦しき夏を畳んで仕舞ひたき
寝落つまでガタの来てゐる古団扇
心地よき風が言はせぬ清明と
心腹といふ語は老いて臥す梅に*三渓園 臥龍梅
振り仰ぐ不動の滝に不断の水
新橋も場末の柳芽吹く頃
新酒乾すじやあまあとにかく口癖に
新藷の羽織るむらさき薄衣
新年が漫然と来るそんな齢
新聞に今朝でかでかと開花記事
新聞を畳に拡げ読む立夏
新米を返すに先立ち篦濡らす
新涼のキャラメル臘の包み紙
新涼の全集二本の栞紐
新緑の硬貨冷たし牛乳買ふ
深夜放送団扇片手にだらだら聞く
真っ盛りの白梅消沈の紅梅
真つ直ぐをまっつぐと云ふ老花火師*大曲
真清水にどぼんくるりと瓜反る
神楽場に米撒き何やら浄めごと
神楽舞でんでんしやんしやんひやらひやらと
親族のどこの誰兵衛捧ぐ菊*唐沢山
診察が終れば炎天待つてをり
身じろいで病葉落とす紅葉葉楓(モミジバフウ)
進学子補助線を引き幾何を解く
人は皆征伐好きよ曼珠沙華
人畜に害なき蚊遣にして添寝
尋め当てぬ苔の小林秀雄の墓
甚平で応対「どなたさんでしょう」
迅雷にみしと言ひしはどの柱
迅雷の勝手放題息凝らす
図に乗つて叩き落とさる金亀子
吹き下ろす大風秋潮吹き凹め
吹き込める雨はしたなし秋簾
水に木に秋の降りたつ気配かな*森羅万象
水温み川音いつぽん通す村
水温む川面へこへこして流る
水温む流れのまゝに歩を遣りぬ
水均すこと止め秋の水すまし*ボンヤリ
水遣りに一日の長姉の美雨(みう)*孫俳句
水遣りの省ける豪雨歓迎す
水好きの犀の水浴び花吹雪
水田にも海溝ありて蝌蚪の紐
水萩に初七日の経流れけり
水遊びあと一回の何時果てる
睡くなる機(とき)は熟して大昼寝
酔ひにけり畳鰯の目を探す*へべれけ
酔芙蓉まだまだ赤くなる途中
雛の位置あれこれいじりまはす姉*美雨(みう)妹は珠海(しゅう)
雛壇のこの下の辺りコンセント
世知辛し鉄気水にも蝌蚪が棲む
世之介の浮世は何処蚊遣豚*好色一代男 西鶴
成り行きのさうは行かない鰯雲
整然とせぬがよき庭小鳥来る
正に脛刺す蚊が見えてその痒み
正月来て薬罐コトコト障子はしんと
正面の滴る山を眼の薬
清貧は斯くのごときと葱の白*詩仙堂
生きてゆく手続づくめ露の世は*金沢区役所
生返事しながら聞くや月の位置
逝きて十年ハロウィン近きターシャの森*NHK
青柿の小さけれども数こなす
青柿をつつめる雨の水の膜*出勤
青空に山巓の芽の様式美
青光り権現さまの桜の実
青畳そこに膳据え若筍煮
青畳なれば馬追虫置いて見ん
青天に縮み咲して百日白(ひゃくじつはく)
青天井仰ぎ落蝉「吽」と死す*狛犬
青田の香むんむん仏御前の墓
青嵐募る一方窓を拭く
石階に燃え移らんと炎のつつじ
石階の角つこ好きな蜻蛉なる
赤い羽根アナウンサーの胸正す
赤とんぼ何処か汚れて親しかり
赤紫蘇に俄信心新たにす
拙宅に転がり込んで鳴くこおろぎ*雨夜
節電は美徳と寒さ云ひくるめ
雪が降り積もる麩菓子の川越に*小江戸
雪だるまもうこさえたか葉っぱの目
雪の朝カツンコツンと出勤す
雪をゆくキハ40系五能線
蝉の音の遠き日夕刊ダダッと来
蝉の穴そこへ蝉殻突つ込む子
蝉止めて電信柱が濡れてゐる
蝉茸の字面眺めて詩(うた)ごころ
蝉逃す仏ごころを持つ子かな
蝉捕つて死なす愚かを我が孫も
蝉鳴くと押つ取り刀で飛び出す子
仙崖畫月のまるさの布袋腹
先生が後に控え蛍狩
先生には先生がゐて衣被
先生の回診 白セキレイ一団*葉山ハートセンター
先導役替はるがはるに稲雀
千日詣階覆ふ木暗がり*東京港区 愛宕神社
川音を糧とし長ける青すすき
川面とぶ虫の煌々たるはつなつ
川面見て川端辿る秋ぐもり*最上川
扇風機風量調節リズム風
扇風機唯々廻つてゐる一ト間
扇面の瓢箪図見て診察待ち
浅草の菊見しあとの旨かもん*桜鍋
洗ふ皿水に浸けあり八月盡
洗濯で股引の丈詰りしか
銭すすぐ水も春めく大岩屋*銭洗弁天
銭湯で新聞を読むちゃんちゃんこ
銭湯に浮かび冬至の日の湯加減
銭湯のあと寝るだけといふ厚着
銭湯の三保の松原より淑気
銭湯の煤にふすぼる師走富士
銭湯は激減月は細るのみ
素直になるほうれん草のおひたしに
爽やかに云へる一つといふ数詞
早咲きが売りの河津の桜苗
痩せ気味の吾には冬着軽めのもの*簡単着
草の花そのうち何処かに出るだろう
草引けば不届きな蚊が顔刺しに
草月流ヨウシユゴボウを組み伏せて*帝国ホテル
草叢中蟷螂の子の見えて来る
草萩の倒れ込むまで雨滴抱き
草虱指をまるめて弾く女(ひと)
増上寺御忌の太文字掲げたる
蔵のある隣は質屋後の月*自転車
息災や花は散るとき曖昧や
足柄の山が放てる夏つばめ
足柄の肌を刺す霧鬼薊
卒業し道いつぱいに巣立てる児
其の上(かみ)は蓮田ばかりの泥亀町*現住所 横浜市 金沢区 寺前
孫ふたりお手手を洗ふ蒸し藷
村芝居どんでん返しの大太鼓
太鼓判江戸よりつづく川越いも*小江戸
太刀魚の味はともかくその長駆*小柴港
太陽に向かつて歩く正に春
太陽のむかうを張つて女郎蜘蛛*雲助
打水の真水を強(こは)き葉に当てぬ
台風が毀せるものを見て廻る
台風の嫌な抜け方して水禍*狩野川
台風の進路の続報続々報
大いなる涅槃図大いなる堂に*芝 増上寺
大の字になり観るもみぢの透過色*NHK
大寒の日なり蛇口の哭くことも
大寒気富士を見るにはもつてこい
大歓声花火は意表衝いてこそ*同じくホ句も
大将のヘイお待ちとは河童巻*寿司屋
大鐘を取り巻ける花鎮まれり
大破して青芭蕉とは云へぬもの
大風に大きくゑぐれ萩の白
大本山攀づる万灯下る万灯
大木の影踏みわたる涅槃の日
大夕立轟(ゴー)の一字に包まるる*今はゲリラ豪雨と云うんだっけ
大理石澄む美術館エントランス*秋高し
大椨の瘤に張り付く秋の蝉
茸奨め相方「どや」と味問へる
誰が寄贈の油絵病棟梅雨最中*南共済会病院 追浜
誰が仕業穴ぽこだらけの芙蓉の葉
単純と云へば単純蜘蛛の意図
短夜を拙に徹してホ句作り
端居して爪切り了るあとは扨て
団扇太鼓殷々本山突き揺るがし*池上本願寺
団扇風ねんねんころりと云ひ聞かせ
団扇風顔へ半分胸へ半分
団扇風人より薄き胸板に
団地の窓窓窓桜の花の隙(ひま)
団地の灯市松模様に花火の夜
断念のとどの詰りはこの暑さ
暖冬の巡り巡りて葱値崩れ
男にも合着てふもの秋の風
男振り上げむとシャワー浴び来たる
値の張るもえいっ買っちゃおうだだちゃ豆
地下街に紅葉まつりのとんかつ屋*新橋
地下街のそのとば口の焼栗屋
地下鉄の出口へ向かふ秋風も
池上に万灯百基降つて湧き
池上は鳴り物入りの御命講
池上をひつくり返す鉦・太鼓
蜘蛛の囲に喰ひ物滓のやうなもの
蜘蛛の囲の邪魔でなければ大目に見る
蜘蛛の囲を一つ破りて十(とを)破る
蜘蛛の糸ここが端つこぶち切らん
築山に石納まれる牡丹園
竹の根の飴色に日の永くなる
竹節虫(ななふし)と気付きのけ反る下駄の音
茶の間消え浴室点る良夜かな
中華クラゲ舌にヒリヒリ八月盡
中華風咲き方にしてまんじゆさげ*地蔵王廟
中風に効く二番茶の摘み時と
仲間には犬歯使はぬ猿社会*痛ましい青少年の事故多ければ
昼何処に燻りてをる秋の風
昼蛙何と申すか空模様
昼顔や所帯持ちしは運河べり*金澤八景 平潟湾を臨む橋たもとの二階屋
虫の音に隙間のあらず漆闇
虫時雨テレヴィにテストパターン出て*嗚呼昭和
虫潰せばみどりの体液油照
虫偏で牽いても出ぬ字夜の長し
猪口涼し加賀に求めし青九谷
苧殻火の燃えさしを掻き集め焚く
苧殻焚く手許微風のあるにはある
朝からの小雨芙蓉にふさはしく
朝よりのシャワーまた佳し濡れねずみ
朝顔にもいろいろ昼尚元気な花
朝顔のそっちじゃないと蔓直す
朝顔の咲き継ぐ日々や些事こなす
朝顔の種ぺらぺらの封筒に
朝顔の二鉢寄せ過ぎては厄介
朝顔の苗分けやるに講釈付
朝顔の予感に反しこんな色
朝顔種子あるだけ蒔いて貧乏性
朝起きて羽織るどてらに類するもの
朝採りの濡れ手を見するめうが採
朝桜気合いを入れて坂登る
朝寝すや砂にはらばふ鯊のごと
潮汁鯛の鱗にへどもどす
町を練る団扇太鼓のでんでんぼこ
町雀功成り名を遂げ蛤に
聴く耳を持たぬまくなぎ取つ払へ*中国共産党
跳ねっ返りてふ語ぶんぶんまた転けぬ
跳ねに跳ね春駒春駒盆踊り
長き世とおもふはこれから水引草*団塊世代
長き夜を仕分けて要る本要らぬ本*断捨離
長っ尻春がすみめく銭湯に
長閑なる先生の出は奈良師範*国語担当 原先生
長梅雨が過ぎたかどうか念を押す
長夜の本始末するとは積み上ぐこと*御尤も
鳥雲に映画はいつも完結す
鳥曇り小さき意地を張りづめに
沈丁花珈琲店は元置屋*下田
追羽子や青天井の返す音
追剝のやうにアネモネ散らす風
通院の青梅雨払ひ濡れねずみ
通学に問題はなしりんご病*孫美雨風邪をひく
通学路沿ひに往時の玉すだれ
蔦鎧ひ老いて屈背の山桜
潰えたる時間の容蚊遣灰
坪庭にいやはや何とも虫繁し
吊し雛飾り伝へて蜑部落
釣れしもの太平洋より鯊一尾*弁天丸
定位置に艦影晩夏の浦賀沖
庭の藪蚊曰くどちらが闖入者
庭を訪ふけふの客人(まろうど)栗明月
庭生りのデコポン二つでかしたり*丹精
泥亀新田跡地この辺蜻蛉湧き
鉄骨を組み立て始む海の家
天が下万灯の界月の界
天高くあらんその意に雲背き*無月
天草(てん)干せる路地巡らせて小漁港
天日干し天降(あも)れる素麵三千丈
天辺を掠め吹きとぶ一枯葉
貼り紙して槽の「メダカは選べません」
伝りし団十郎のいなせな色*朝顔にも団十郎色
伝法な客寄せ口上べつたら市*小伝馬町
渡御了へし御輿解体して酒盛り
都鳥止めて桟橋巨大ヴイ
度忘れは何処か咲ききるさくらに似て
土いじり日脚がうんと伸びにけり
土といふ土応えけり夕立に
土砂降りの雨に泳げる金魚草
冬瓜が好きな御仁をだうおもふ*蓼喰ふ虫
冬百日駱駝の股引盾として*夏百日の向こうを張って。冬より夏に意味がある。夏には安居がある。
冬麗の澄むだけ澄んで水溜まり
冬欅寄る年波の立姿
島椿落つ気配して又うしろ
東京に一度出たきり睦月盡く
東京に出たなら出たで桜鍋*浅草
東京に出て品川の春の海
東京は階段の街つちふる街
東京へ傘を支への梅雨車中
東西になるときんときべにあづま*藷の王
東西の空裂き足らぬはたた神
桃を圧す指をおよびと云ひもして
桃蕾みぱいぽぱいぽのしゅうりんがん*早口言葉 寿限無 方言 俗語これら全てが句材だ
湯の煮える音にも倦みて生あくび
湯屋の跡まだ手をつけず昼の虫
湯屋への路枯木にメルヘンチツクな月*杉田湯
湯屋出でて頭寒きはへえっちゃら*方言 俗語これら全てが句材だ
湯気立てゝ湯気こもる部屋満艦飾
湯上がりの前はばからず扇風機
湯上りは柿の若葉のやうに新(さら)
湯立神楽湯気のへのへの文字上げて
湯立神楽禰宜の持ちもの囃しもの
灯火親し諸橋漢和の栞紐
燈火親し絵本の山羊の鼻眼鏡*読書の秋
当面の用足す扇はばらけても*端居
踏み潰され飛び散る毛虫所詮は水
踏み付けしものはと見れば扇の柄
陶狐千体御前に午まつり*佐助稲荷
頭をよぎるものぼんやりと水中り
堂縁の其処にも座布団午まつり*佐助稲荷
堂央に造花の会式桜据ゑ
童心に帰るべく夕焚火して
胴山の禅語掲げて木槿寺*金龍禅院 吾常於此切
道に出てちよこまかちよこまかしじみ蝶*植木等の「お呼びでない」
道の端の雄日芝うらぶれざるは無く
道元の寺山色をほしいまゝ*永平寺
徳利を摑んだまゝの押相撲
栃の実を拾はず食(を)す術知らざれば
突然の雨に引き攣(つ)る虫音とも
屯して宙に静止のかきつばた
縄跳びのおさげが揺れてかげろへる
難点は人が佳きこと花大根
二三日ぽかぽかその後ぐうんと冷え
二車線は此処で了りぬ秋の暮*足柄インターチェンジ
日に乾く稲と稲子のごそつく音*晩秋
日の本の国の松茸根を張れり
日はかんかん自家製胡瓜ひん曲り
日は永くやぶらこうじのぶらこうじ*早口言葉 寿限無 方言 俗語これら全てが句材だ
日めくりの痩せも秋風たつ所以*初秋
日永さの小銭集めて遣ふ妻
日光のみな糧となる大南瓜
日盛りのデツキの手摺塗り剥げて
日盛りの国道を見て腰ひけぬ
日盛りをトテカントテカン櫓組む
日展へ似非バーバリのシヤツ引つ掛け*上野山
日蓮像眉跳ね上げて花の中*三ツ沢 豊顕寺
乳首の辺腫れぼったくて浮輪の子
如何な面(つら)むかご最初に食べた奴
熱帯夜など糞食らへ寝てしまへ
熱帯夜みなクンのつくタイ料理
年寄の日なり奮発して酢豚
年寄りの夏着だぶだぶ好み哉
年寄れば秋刀魚を妻と二等分
念佛の凝りしものとも空蝉は
燃え尽きしどんどの樫の腰砕け
能天気な句評を奴(やっこ)蕃南瓜(たうなす)めが
能筆の人でありしか夏見舞
覗かせて貰ふ鯊居る魚籠の底*突堤
波乗りに黝々と起つ波一線
波乗りの波乗り損ねては消失
破格値の怪しき光放つ栗*栗虫
馬穴覗き込めばごうなの首すくめ
俳人は霞を啖ひ大昼寝
俳諧の正體見たり箒草
敗荷と云へば三渓園の彼処(あそこ)
敗荷の絶景月下に称ふなり
敗荷を自暴の果と見るもよし*不忍池
敗荷破局の様を絵にすれば
背もたれに百日倶にせしタオル
背を押され男一匹御輿舁く
背後にてどすんと閉まる冷蔵庫
背丈越す芒の眞中まですすむ
梅よりも神慮あらたか樟二月
梅雨最中カラオケ悪声何のその
梅雨中(つゆうち)の挨拶「いやなお天気で」
売り物の九谷の骨壼より涼気
白樺はマッチの軸ほど新樹山
白骨のカラスザンショウ白日に
白日下干潟淋しく現れにけり
白梅を塗り込めし闇夜気鮮し
白萩にしめりをくれに一ト雨来
薄闇に馴れゆく面輪秋の暮*点燈
箱眼鏡展く世界の嘸(さぞ)や嘸(さぞ)
箱根へとさくらさくらの小田急線
箱根路の蕎麦屋「八里」の花馬酔木
肌寒し足もて布団の隙閉じぬ*横着者
肌脱のまゝ出てあられもなき応対
肌脱の肉叢(ししむら)抓み老ひけると
八月も末の樺を労る雨
八幡宮氏子総出の落葉搔
鳩のごと躰を丸め日向ぼこ
隼人瓜しこたま冷ゆと貌顰め
隼人瓜変な処に力入れ
判使ふことも減りしよちやんちやんこ*後期高齢者
半島の尖の三つ石春濤挙げ*真鶴
半島へいの一番の桜見に
晩酌すそれなりに秋深む中*鰍唐揚げ
晩酌の海鞘の下ごしらへ最中
晩酌を四時から遣つてなまり節
番にて来る鳥未だかとちゃんちゃんこ
緋寒桜釣鐘状に花気張る
鼻先のハネ痒からん蓮根掘
筆運びササツと案山子の絵付かな
百合の花粉付けくれば妻あゝあゝと
百歳に垂んとして辣韭好き
氷る沼冬青空を鑑(かがみ)とし
漂ひゆく梅日向より梅日向
瓢詠む句に臍があり筋があり
表具師の鈴木とふ家木瓜咲かせ
病葉のかほり鼻腔を出入りす*退院
病葉のくらりと落つるほか無韻
品定め一芽何ぼの福寿草
付箋紙の此処よ此処よと囀るごと
布団打ち競べとなりぬ遠(をち)と近(こち)*台風一過
怖れなす石段愛宕のほゝづき市*東京港区 愛宕神社
普段のこと普段通りに出来夏暁*葉山ハートセンター 起床排泄
浮かれ出て琵琶が扇が物の怪図*百鬼夜行図
浮かれ足団扇太鼓のどんどこどん
芙蓉に風納まるときの時にあり
芙蓉の辺眉を曇らせ雨といふ
芙蓉越し登校誘ふこゑのして
芙蓉咲き出せるは一昨日(おとつい)あたりより
部屋隅にもう出番無き扇風機
風の日の樟にひっつき啼ける蝉
風割れて割れて中稲を吹きにゆく
風向きを計りて置ける蚊遣豚
腹しくしく回虫退治の生蒜*疎開と云へば 静岡 島田
物を云ふものに年嵩年廻り
物干し竿渉り切らんとしたる蟻
物干竿落としお調子ずく春一
物捨つる世に存えしリンゴ箱
粉と散りて門に鉄扉に百日白(ひゃくじつはく)
柄ものや浅蜊は地味に装いて
閉じこもり勝ちなる我に天高し
変調をきたす腸熱帯夜
片言の日本語挟み梅見客
片手間に苗木を植ゑて漆搔
舗道打つ喜雨のことごと返点
舗道打つ緑雨映画の日替日
穂すすきのはらりと解けぬ山間部
暮るるまで八つ手の白に浸りをり*虎落笛
母校あり梧桐の木のある限り*金沢小学校
峯を成す雲に失策なかりけり
峯雲聳つ開幕戦の初球打
法窟にもみぢしてをり岩たばこ
法師蝉めそめそ雨の降る許り
泡盛にドンキホーテを持ち出して
泡立草錆噴くものを潜ませて
芳年の鯉図の真水澄めるなり*版画
蜂の巣はもつての他と眼に力
蜂の巣は底光りせる泥の生地
蜂の巣をだうしたもんかと云ふ電話
蜂の巣を炬燵のうへに惑星論
豊年の朝の二ユースをもう一つ*NHK
房州団扇握り易くて女竹の柄*館山 道の駅
房州団扇好みの絵柄あれば買ふ*館山 道の駅
房総の春の始めの鯛せんべい*誕生寺
暴力に近き席巻泡立草*休耕田
棒切れも欠伸してをりざりがに釣*阿字ケ池
頬焼阿弥陀縁起絵巻を捲く仲秋*鎌倉 光触寺
本の背に金文字躍る駿河台*古本祭
本題になかなか入らず秋扇
本日の目玉の笊盛り玉蜀黍
本牧に造りもレトロけとばし屋
又しても一人合點を羽抜鳥*自嘲
万作の万綻ぶといふまでには
万作や古典を持たぬ文藝なし
万灯の花に溜息重ねけり
万灯の白妙往時の日のまゝに
万灯も喘ぐ素振りを百余段
万緑や歩いただけのことはある
味噌漬の人参妻とポリポリ遣り
未だ未だがもう八十の木の葉髪
蜜柑の皮主は何処へ行つたやら*雪隠
眠られぬ手足に送る団扇風
眠るとき耐ゆときありて芽吹くとき
無花果の見てくれ許りを売る店頭
無花果はみだりに枝を拡げる木
無精髭剃りてつんつる茄子面(つら)
名に惚れて熱海桜といふさくら
名は体を顕す虎尾草(とらのお)狗尾草(えのころ)と
名園の雑木も歴と望の月
名月に箱入り饅頭祭られき*商魂
名月の何処をのぼる三渓園
木を替へて山又替へて漆搔
木暗がりあれば水引藪めうが
木犀のあつちこつちの匂ひかな*通学路
木犀のもうそろそろと云へば「確かに」
木犀の香のカーテンに突き当る
木々芽吹く頃が素敵で山歩き
木槿咲く静寂(しじま)彼の世と眺めたり
木槿散る時間の先が見えてをり
目に障る蜘蛛の囲あれば毀すまで*庭掃除
目をこすり欠伸を一つ垂穂のまへ
目借時板の間泥棒(どろ)の注意書*亀遊館(銭湯)六浦
目付もて促す紫苑の群れなす家*山妻
門涼み話し牛耳(ぎうじ)る婆がゐて
夜の秋序跋外して読む一書*先入観の善し悪し
夜を更に深めて皿の黒ぶだう
夜気にハモる「月がとっても青いから」*御贔屓の「エレジー(悲歌)の女王」菅原 都々子
夜長宿ズボンに寝押しする御仁
野紺菊なんぞ見にゆく羽目になりぬ
野次馬のごとく見てゐる障子貼*風呂場
野末吹く風に隋笑せる芒
野毛にくる客筋変り霾ぐもり
野遊へこんな私にケリつけて*歌謡曲の歌詞同じようなのが・・・
薬莢のかたちの団栗閲しけり
油虫それが討てぬか不甲斐なし
唯事派意味深派ありホ句の秋
唯茂る許りに陰気くさき杜
勇魚取もう幻の大船団*女川港 金華山 ここで赤褌の勇魚取り図を見たがあれは未だ健在か?
有難くなき雲は去ね観月会
柚子の値は相場値柚子の里なれど
遊具の河馬新樹の雨に打たれづめ
遊船は黒船仕立て下田港
郵便函空つぽ秋のそらを見る*足長蜂
夕顔と別な白さの月上がり
夕顔に月の痘痕のいと近し*仙崖
夕顔のそろそろ咲くか飯時分
夕顔の面輪を残す朝のそら*源氏物語
夕顔の莟鉛筆サツクに似て
夕端居使ひ古しの片膝立て
夕立と夕刊いづれが先に来る
夕立に痣を作りて取り込みもの
夕立の鳴りを潜めて今木雫
夕立を見越す出で立ち半ズボン
夕立来と二階へ一段とばしの妻
夕蜩申し送りをするやうに
夕餉あと手持ち無沙汰よさすれば月
予備校のビルの横手の夏の月
揚げたしや蛤大の大浅蜊
揚花火旗艦三笠に谺せり*横須賀
揚花火空を痛ぶり始めけり
洋モクの味を愉しむ探梅行
葉芽花芽葉芽花芽の桜かな
踊り場に歓楽街の蛾の骸
裸にて応対せんと指栞
裸木に雑念の余地なかるべし
雷鳴の十(とを)より先は数えざる
落椿載せるその掌をつめたくし
落葉降るここら一帯皆平屋*鎌倉 二階堂
乱れずに上手に枯れる術もつ木
卵塔の辺りの虫音昼を澄み
嵐電の響き落花を誘ひけり
履き物を揃へるこころ花擬宝珠*永平寺
立ちんぼは何処の講中池上駅
立春と言葉ばかりが先走り
立読みは他にも秋の酣に*駿河台下
留守ですと云はんばかりに干し布団*職務質問
粒選りの大き浅蜊は銭になる
龍太逝き鉄槌は誰が下すべき*俳壇は温といサロン?
龍淵に潜む侯とは能く云へり
龍淵に潜む歳時記革貼りに*図書館
両隣男の子授かり鯉幟
猟銃に震撼せし空緩み出す
良夜なることをたのしむ寝所かな
良夜明け国道をゆく勤め人
良夜明け身ほとりのもの皆愛し
良夜明け木々に差し込む日鮮らし
林檎選る林檎のうへに林檎置き
冷やし酒いろいろあつていま独り
冷やし酒とことん溺れきれぬ質(たち)
冷やし酒決着つかぬもの抱へ
冷酒すともかく貴方明るいねぇ
冷酒に蟹蒲といふもどきもの
冷蔵庫そこに無ければ下の段
烈日を焦がれ澄む紅さるすべり
裂帛のこゑが懸かりて百合開け
恋猫のずっこける音濡れ縁より
蓮擦り鯉の老台近寄れり*源平池
連れ歩く手のあたたかき祭稚児
炉の隙よりハンコさし出す手に秋日*書留
路地を出し其処大通り秋の風
露の世に生まれ誰にも看取りごと
露天湯にはたき落とせる夏の蟲
狼藉のホウズキカメムシとは汝(なれ)歟(か)
老菊師菊に仕上げの言葉掛け*二本松
老菊師手はたき仕上げの眼を配る
老残の蓮と云ふかその通り*弁天池
老人の日とや一献先づビール
老斑を蚊と間違へて打つはをかし
老鶯のこゑのまたまた方丈抜け
六月の鴉すとんと落とす空  
論客の君との論戦春の午後
脇毛吹くものはと見れば秋の風
剽軽(ひょうきん)で嗤ふ小春の漫画本
曼珠沙華ぶすぶす畦の土手つ腹
埒外の顔してゐたりいぼむしり*左卜全
毀されて均され九月の砂場の砂*ふらここ
杳として出口が見えぬ蜷の道
梟の己を遠望するごとし
梛の木の廻りを秋の蝉ぱたぱた
椨の瘤じりじり蝉が歩きをり
榧の実の嗅がれてぷいと投げ捨てられ
毬栗にすすきを配すとんかつ屋*麻布
沁み出せる漆は己癒すため
洒落ていふマラコイデスとは桜草
涅槃の日草木丈を争はず
涅槃講鏡びかりの堂板間
涅槃図に一際大きく哭ける象
涅槃図に一人一匹一羽哭く
涅槃図の中に入つてしまひけり
涅槃図は一も二もなく仰ぐもの
潦覗けば宿木ありありと
爛漫の落花受けたる斜面畑
甌穴に雨の垂れ込む秋黴雨
筍梅雨近む仮通夜本通夜と
筍飯老ゆれば小振りな茶碗にて
罅の入るお鏡来たる年見据へ
罎詰めに涼しや雪岳山(ソラクサン)の水
芒原突つ切り出でしは日の磧
茫々の萍人間(じんかん)にも似たり
萍の手のこんでゐる包囲網
萍も屯し始む白川郷
蕣に現ぬかすは文政より*江戸 大名の趣向
蕣に老人のもう起きて居る
藪つ蚊の襲撃に合ひそれはもう
薇色に輝き五秒後の寒雲薔
蜀黍(もろこし)に健啖たりし日の遙か
蜻蛉の元の木阿弥交はれず*柿田川
蜻蛉の切なきことを繰り返す
蜻蜓くる術後覚束なき視野に*葉山ハートセンター
蜩に横槍入れぬ法師蝉
蜩は山から山へ鳴き移り
蠅のちゅと居るごと先師の御(おん)文字は*大野林火
蠅生まる波止場食堂にて昼餉
蠅叩きの要領でやれイージス艦*中国問題
蟇が先づ目覚めて葦が目覚む沼
蟲に雨かるく目隠しするやうに*宝戒寺
蟲時雨応(いら)へなければもう寝たか
蟠桃の初見の面付きへちゃむくれ*松崎鉄之介先生御贔屓でした
蟠桃の味は確かや千疋屋*松崎鉄之介先生御贔屓でした
蟾蜍玄関燈のその圏に
蟷螂のその負けん気の死ぬるまで
蟷螂の振り返りざま末期の眼
蟷螂の早持ちあるく末期の眼
蟷螂の誰ぞに呼ばれしやうな貌*思案
蟷螂も種採日和の日に浴し
賤ヶ岳掠めつばくら横つ跳び
跫音のいま角曲る十三夜*寝入りばな
跫音の消ゆる炎天唯ゆけり
躓ける石畳より秋のこゑ
躰ごとぶつけて萩の径ひらく
躰より最後の管抜けシャワー浴ぶ*葉山ハートセンター
靫草クラインの壺サキソフオン
颱風の道草してゐる鳥島沖
颱風来て素っ飛ぶ木曜時代劇
餡パンの芥子粒三千世界秘む*金沢文庫
饐え飯に怪しみ見たる膳のもの
饐え飯に麦湯ぶつかけ香の物
鯊を釣る竿先そこを舟行き来
鯊釣竿肩に岩場の磯上がる*東京湾
鰡一ぴき跳ねてそれきり日暮川*大岡川
鱚・鯛と寿司の握りの美学かな
鶲来と水仕の水を止めて聞く*軽井沢
嚙み当てゝごりと芯あるむかご飯
搔きとれる漆一滴桶の音
鯥の眼は達磨の白眼煮浸しに
以上

by 575fudemakase | 2021-01-04 07:04 | 句集評など


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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