寒ン という言葉を使った俳句

寒ン　という言葉を使った俳句

人里に水の音する寒ンの入り　細見綾子

病みぬるや口中赤き寒ンの鵯 右城暮石 句集外 昭和二十二年

寒ンの病舎頬ほてらし病むと言ふ 右城暮石 句集外 昭和十九年

寒ン日や身につけてもの見直さん 右城暮石 句集外 昭和十八年

寒ン休日愚庵も植ゑし椿植う 右城暮石 句集外 昭和十六年

人里に水の音する寒ンの入り 桃は八重　細見綾子

母の忌やぬくき雨降る寒ン一ト日 鈴木真砂女 生簀籠

葉牡丹のうづまく紫紺寒ン充ちぬ 渡邊水巴 富士

寒ン河原その道づれは童女がよし　飯島晴子

びつしりつぼんでいてりんりんと寒ン　荻原井泉水

新春と言い寒ンと言い雲焼けて火の如し　荻原井泉水

蕗の薹寒ンのむらさき切りきざむ　橋本多佳子

寒ン空シヤツポがほしいな 小豆島時代　尾崎放哉

くるりと剃つてしまつた寒ン空 小豆島時代　尾崎放哉

お金ほしさうな顔して寒ン空 小豆島時代　尾崎放哉

母の忌やぬくき雨降る寒ン一ト日　鈴木真砂女

佗助は寒ンいたみしてやや盛り　阿波野青畝

父母の代の青九谷壺撫でて寒ン 大野林火　雪華 昭和三十六年

寒ンだけも見よせて軽し雁の羽　朱拙

寒ンにくふ牛のあぶらや春の雨　許六

夜あるきや寒ンの雪踏のひろひ足　其角

蕗の薹寒ンのむらさき切りきざむ 橋本多佳子

何の碑ぞ寒ンさやさやと翌檜 加賀

みどり児のこぶしに寒ンの極まりぬ 梅の門

寒ン山脈ほおいほおいと栃木のひぐれ 古川克巳

蛤桶に立つるはがねも寒ンの入り 高橋睦郎 荒童鈔

何の碑ぞ寒ンさやさやと翌檜 細川加賀

ぱちぱちと胡麻炒つてゐる寒ンの入 村越化石

母の忌やぬくき雨降る寒ン一ト日 鈴木真砂女 生簀籠

みどり児のこぶしに寒ンの極まりぬ 金尾梅の門 古志の歌

榛の花夜目にも垂れて寒ンぬくき 金尾梅の門 古志の歌

訪へる寺の松籟寒ンをうべなひぬ 尾崎迷堂 孤輪

寒ンの雨よせ焚くものに降りいでぬ 岸風三楼 往来

寒ン山に風やむ音ののこるかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく

まなうらに寒ンの障子の青みかな 阿部みどり女 月下美人

寒ン近し地上に二人の妹あり 阿部みどり女 月下美人

ぶしようひげを 寒ンの日にあてゝ 一日の終りだ 吉岡禅寺洞

一日の終り 寒ンの入日を たしかめに出る 吉岡禅寺洞

有り～と寒ンの煤つく椿かな 松瀬青々

人里に水の音する寒ンの入り 細見綾子 花寂び

まなうらに寒ンの障子の青みかな 阿部みどり女

寒ン近し地上に二人の妹あり 阿部みどり女

暈かむる寒ンの前なる八日月 阿部みどり女

杣去れる林中漠と寒ンに向ふ 阿部みどり女

岩海苔を掻く音寒ンの高しぶき 阿部みどり女

出しづか寒ンをひそめて月いづる 阿部みどり女

葉牡丹のうづまく紫紺寒ン充ちぬ 渡邊水巴 富士

寒ンがゆるむ傘さして子供たち来る シヤツと雑草 栗林一石路

ぱちぱちと胡麻炒つてゐる寒ンの入 村越化石 山國抄

蕗の薹寒ンのむらさき切りきざむ 橋本多佳子

寒ンの少しゆるんだ星が、うちに赤ん坊がいて戻る 渡辺砂吐流

寒ンの一ト日いま暮るゝ空はるかなり 久保田万太郎 流寓抄以後

梅咲けりしかも紅梅寒ンに入る 久保田万太郎 流寓抄以後

しんせつのあふれし寒ンのたよりかな 久保田万太郎 流寓抄以後

寒雀とある日寒ンのゆるびけり 久保田万太郎 流寓抄以後

嚢駝来て寒ンの鋏を鳴らしけり 久保田万太郎 流寓抄以後　

鶯の来鳴きて寒ンに入りにけり 久保田万太郎 流寓抄以後

寒ンに耐ふ魚のごとくに身をひそめ 久保田万太郎 流寓抄以後

勝名乗寒ンのこだまを返しけり 久保田万太郎 流寓抄

星哀し寒ンあたゝかき日なりしが 久保田万太郎 流寓抄

若き死や寒ンの脂の鮨つまむ 中島斌雄

寒ン空シヤツポがほしいな 尾崎放哉

くるりと剃つてしまつた寒ン空 尾崎放哉

学ぶ眼がつばさのごとし寒ンさなか 河野多希女

寒ン月を浴びて言問ふ橋となる 河野多希女

人里に水の音する寒ンの入り 細見 綾子

鼻莫迦になるまで寒ンの通勤路 高澤良一 宿好

山鳩のごとく身を揉み寒ン払ふ 高澤良一 宿好

寒ンの採尿咄嗟に出たりするもんか 高澤良一 宿好

掌を打てるところへ寒ンの御所の鯉 高澤良一 燕音

叡山の寒ンを背に阿耨多羅(あのくたら) 高澤良一 燕音

でかしたる丈艸の墓つつむ寒ン 高澤良一 燕音

供花絶えず絶やさず寒ンの巴塚 高澤良一 燕音

碧梧桐忌法外な寒ンもたらせり 高澤良一 ももすずめ

風生の相手取りたる寒ン迎ふ 高澤良一 ももすずめ

武蔵野の星みて寒ンを耐へんとす 渡辺桂子

以上