拙句 月別俳句抄 6月
拙句 月別俳句抄 6月
俳句 時候・天文・地理・生活・行事・動物・植物
■時候
六月 /皐月 /短夜 /入梅 /梅雨 /白夜 /夏至 /暑さ /
■ 天文
五月雨 /空梅雨 /五月闇 /黒南風 /南風 /茅花流し /筍流し /青嵐 /風薫る /雹 /五月晴 /虎ケ雨 /
■ 地理
出水 /代田 /夏の川 /夏野 /雪解富士 /五月富士 /
■ 生活
溝浚へ /蒼朮を焼く /魚簗 /時の記念日 /田植 /早乙女 /植田 /早苗饗 /誘蛾燈 /父の日 /螢狩 /螢籠 /藻刈 /田草取 /草取 /鵜飼 /川狩 /夜振 /夜釣 /夜焚 /釣堀 /草矢 /草刈 /干草 /夏衣 /単衣 /夏服 /夏羽織 /夏帽子 /夏襟 /レース /夏帯 /夏手袋 /夏足袋 /夏座布団 /夏布団 /陶枕 /青簾 /葭簾 /葭戸 /網戸 /籐椅子 /夏暖簾 /
■ 行事
競馬 /桜桃忌 /鞍馬の竹伐 /業平忌 /形代 /茅の輪 /
■ 動物
螻蛄 /優曇華 /鰻 /鯰 /鮴 /濁り鮒 /亀の子 /山椒魚 /蠑螈 /蟹 /蝸牛 /蛞蝓 /蚯蚓 /蟇 /雨蛙 /河鹿 /燕の子 /烏の子 /火取虫 /螢 /浮巣 /鳰の子 /通し鴨 /夏鴨 /軽鳧の子 /田亀 /蛭 /蜊蛄 /源五郎 /まひまひ /水馬 /目高 /手長蝦 /鮎 /鯵 /黒鯛 /鰹 /赤鱏 /葭切 /翡翠 /雪加 /白鷺 /糸蜻蛉 /川蜻蛉 /蜻蛉生る /蟷螂生る /蠅 /蜘蛛 /蜘蛛の囲 /蚰蜒 /油虫 /守宮 /夜盗虫 /蟻 /蚜虫 /羽蟻 /蟻地獄 /蠛蠓 /蚋 /蛆 /孑孒 /蚊 /蚊帳 /蚊遣火 /ががんぼ /蝙蝠 /夏燕 /鮎鷹 /鵜 /海猫 /岩燕 /老鶯 /時鳥 /郭公 /仏法僧 /筒鳥 /駒鳥 /三光鳥 /瑠璃 /青葉木莵 /夜鷹 /鹿の子 /夏蚕 /尺蠖 /夏の蝶 /蛇 /蛇の衣 /蝮蛇 /蜥蜴 /百足虫 /羽抜鳥 /水鶏 /鷭 /青鷺 /熱帯魚 /
■ 植物
杜鵑花 /花菖蒲 /アイリス /グラジオラス /渓蓀 /時計草 /杜若 /著莪 /一八 /花橘 /蜜柑の花 /朱欒の花 /橙の花 /オリーブの花 /柚の花 /柿の花 /石榴の花 /栗の花 /椎の花 /菩提樹の花 /楝の花 /えごの花 /水木の花 /山梔子の花 / 南天の花 /繍線菊 /榊の花 /未央柳 /紫陽花 /額の花 /葵 /ゼラニューム /岩菲 /鋸草 /矢車草 /紅の花 /十薬 /鬼灯の花 /萱草の花 /紫蘭 /鈴蘭 /蚊帳吊草 /瓜の花 /南瓜の花 /西瓜の花 /胡瓜の花 /梅雨茸 /木耳 /黴 /苔の花 /桑の実 /桜の実 /さくらんぼ /ゆすらうめ /李 /杏子 /実梅 /紫蘇 /辣韮 /パセリ /玉葱 /夏大根 /枇杷 /楊梅 /夏茱萸 /木天蓼の花 /黐の花 /錦木の花 /早苗 /除虫菊 /金魚草 /アマリリス /ジギタリス /ベゴニア /立浪草 /半夏生草 /蓮の浮葉 /萍 /蓴 /水草の花 /河骨 /沢瀉 /水芭蕉 /菱の花 /藻の花 /藺 /太藺 /藺の花 /青芦 /青芒 /真菰 /青桐 /葉柳 /夏木 /夏木立 /茂 /万緑 /緑蔭 /木下闇 /青葉 /夏桑 /夏草 /草茂る /夏蓬 /夏薊 /昼顔 /浜昼顔 /酢漿草 /小判草 /山牛蒡の花 /藷の花 /人参の花 /唐辛子の花 /茄子の花 /馬鈴薯の花 /蒟蒻の花 /木苺 /苺 /蛇苺 /朝顔苗 /青芝 /青蔦 /木斛の花 /ガーベラ /サルビア /虎尾草 /孔雀草 /螢袋 /石竹 /常夏 /雪の下 /蓼 /莧 /若竹 /竹の皮脱ぐ /竹落葉 /
■ 季語「六月」
以下、季語に例句の無いものがあるが、それは小生が作句しなかった為である。
◆時候
六月 /
樹脂に透く六月の雨浄らなり 素抱
六月のピザ生地寝かす雨の昼 素抱
六月の何處にでもゐる町雀 暮津
六月の自炊棟廊冥く長し 石鏡
六月の植木鋏をぱちぱちん 暮津
六月の食器洗はれ置かる音 暮津
六月の鴉どすんと樹頭に降り 鳩信
(末尾は句集名)
皐月 /
シンプルがベスト皐月の装身具 暮津
はがき書く皐月の水性ボールペン 石鏡
パレード率て皐月のハーレイダビィドソン 随笑
メモ書きの押さえに皐月の醤油壜 石鏡
一人(いちにん)の家居ぼんやり皐月どき 素抱
越後まで足を伸ばして田草月 (長岡 悠久公園) 寒暑
空模様あやふやにして皐月咲く 素抱
雑草としての勢ひを五月山 ぱらりとせ
磁石の針大きくふれる五月山 燕音
人怖じせぬ雀皐月の鳩に伍し 石鏡
赤鼻のピエロ一礼五月空 石鏡
早苗月非登利(ひとり)あ處非(そび)の旅をして 寒暑
草野球少年皐月のこゑ絞る 石鏡
谷川の水飛沫して五月空 燕音
盃の猪苗代湖にして皐月 石鏡
良寛の指文字真似て五月空 寒暑
(末尾は句集名)
短夜 /
雨音の奥に雨音明易し ぱらりとせ
気安さの千代さん無き家明易し 暮津
自炊棟短夜明けて煮炊きの火 石鏡
寝言云ふ孫預かって明易し 素抱
新聞売おばさんのこゑ明易し (大部屋) 鳩信
人語なし明易の鳥ひた啼くに 寒暑
水は尿にゆっくり変はり明易し 素抱
雀啼く平屋の家の明易し 暮津
生保内節短夜の湯に響かせて 石鏡
前立腺そこを痛めて明易し 暮津
喪の家の明易ければ鳥のこゑ 暮津
短夜の體内に水ゆき渡らす 素抱
短夜を寝ねんとすなり肋に手 素抱
並べ手す手拭三連明易し ももすずめ
明易のポットに熱湯注ぐ音 随笑
明易の顔をぷるんと洗ひけり (城ヶ島 鍛錬会) ももすずめ
明易の起居の物音二階より 暮津
明易の言葉は韻きやすきかな 寒暑
明易の己に見えぬそそけ髪 寒暑
明易の誰か蛇口をひねる音 素抱
明易の流れさうなる眉を上げ 寒暑
明易の佛に供ふ飯の湯気 暮津
明易をけむりのごとく立ちて尿 素抱
薬くさき尿して厠明易き 素抱
(末尾は句集名)
入梅 /
いないいないバァを決め込む梅雨入富士 素抱
くろぐろと梅雨入の八ケ岳の大つむり ももすずめ
じはじはと梅雨に入りけりバナナに斑 暮津
にゅうべぇと蛸漁の沖見渡して 素抱
何を読む梅雨入の妻の生返事 寒暑
九州は梅雨入と聞くアマリリス 暮津
菜喰ひが梅雨入畑に現はれて (在の百姓、菜を啄む鳥を菜食いと呼べば) ももすずめ
使ひ古る座右の辞書と梅雨に入る 寒暑
首筋にヒリと梅雨入の酸性湯(玉川温泉) 石鏡
水垢の亀にも年季梅雨に入る 素抱
栴檀の葉のこまごまと梅雨に入る 鳩信
入梅が先か湧きくる蚊が先か 素抱
梅雨に入る机上に硝子の舟細工 素抱
梅雨に入る欅昂然椨憮然 ももすずめ
梅雨入の大学病院軍艦めく 寒暑
梅雨入の湯舟にでんでんむしの唄 随笑
梅雨入の八百屋そこそこ品揃え 寒暑
梅雨入の鰐逃げしが御用となるニュース 寒暑
(末尾は句集名)
梅雨 /
いないいないバァを決め込む梅雨入富士 素抱
くろぐろと梅雨入の八ケ岳の大つむり ももすずめ
これもこれもこれも土産よ梅雨畳 (長子、修学旅行より戻りて) ねずみのこまくら
こんにちわ上がりましたネ梅雨のあめ (通行人) 素抱
じはじはと梅雨に入りけりバナナに斑 暮津
しょぼくれし灯に床延べる梅雨疊 石鏡
だんご虫愛づる姫君梅雨の庭(孫美雨) 暮津
とある日の梅雨の合間のコップ拭き 素抱
ドライフラワー束ごと挿して梅雨の壺 素抱
ドンガバチョの声優梅雨に隠れけり (悼 名古屋章) 素抱
はおるもの一枚足せと梅雨予報 石鏡
ぴしゃぴしゃと梅雨の五反田アスファルト 随笑
ぶるぶると行手をよぎる梅雨雀 ももすずめ
ふんばれる両脚の指梅雨厠 暮津
ペチュニアの長咲き梅雨はまだ明けず 素抱
ポッチャンと跳ねしは梅雨の稚魚でした 暮津
ほつりんと剃り残されし梅雨の髯 随笑
マンションの物干竿の梅雨布団 素抱
まんばうのやうな梅雨雲沖にあり ももすずめ
もぎ立ての梅を漬けませ梅雨晴間 随笑
悪たれる鴉を相手梅雨晴間 ぱらりとせ
移動せり梅雨の黒雲バッファロー ぱらりとせ
一通り聞きて入院梅雨海鼠 鳩信
引っぱれば飛び出すティッシュ走り梅雨 素抱
映画館出て馬車路の蒸し蒸し梅雨 寒暑
横浜駅西口梅雨のアンブレラ 素抱
横濱の梅雨が降るなり崎陽軒 素抱
何もかも錆つく梅雨の蜑部落 素抱
何を読む梅雨入の妻の生返事 寒暑
鎌倉石げっそり減りて梅雨近む 鳩信
気まぐれ梅雨降ってきたかと取り込みもの 素抱
亀虫の匂ひ持ち込む梅雨の家 随笑
居直ってじだらくな梅雨迎えんか 素抱
教会の三人掛の梅雨木椅子 さざなみやつこ
蕎麦ボーロおやおやこれは梅雨湿り 素抱
九州は梅雨入と聞くアマリリス 暮津
九州を襲へる梅雨の総雨量 素抱
空缶に梅雨ねずっぽの顎の張り 素抱
熊シデの花序のもっさり梅雨社 寒暑
見つめゐる梅雨のシグナルレツドかな ももすずめ
原色のボディスーツに梅雨ダイバー 素抱
五合庵老走り根に迫る梅雨 寒暑
午後からの梅雨のやっつけ仕事かな 素抱
鯉跳ねてどうんと梅雨の水面打つ ももすずめ
江ノ電はごとごとと来る梅雨枕木 宿好
荒雫梅雨ならではの泰山木 随笑
荒梅雨にぶっくさ云ひても始まらぬ 暮津
降りざまの模糊として梅雨疑ひなし 素抱
高枝より喧嘩売るごと梅雨鴉 ももすずめ
高槇垣亭々と梅雨降り込めり 素抱
菜喰ひが梅雨入畑に現はれて ももすずめ
傘の柄の?(クエッションマーク)梅雨車中 宿好
山寺の磴に遊んで梅雨雀 寒暑
使ひ古る座右の辞書と梅雨に入る 寒暑
紙を切る音のそりそり梅雨一間 随笑
自動点滅街灯梅雨の灯を点す 暮津
首筋にヒリと梅雨入の酸性湯(玉川温泉) 石鏡
商品のお出かけメイトは梅雨の杖 (病院売店にて) 素抱
礁のうへ梅雨まみれなる鵜ノ足貝 素抱
醤油壜押さえに梅雨の置手紙 素抱
植込みを打ち始めたる男梅雨 さざなみやつこ
伸びをする雀の居りて梅雨晴間 随笑
寝そべりてクイズを解ける梅雨畳 素抱
振り塩の穴の目詰り梅雨長引く 素抱
新橋の飲屋路地裏走り梅雨 寒暑
診察室二十番出て梅雨の街 素抱
身の内の退屈の蟲鳴き出す梅雨 寒暑
水垢の亀にも年季梅雨に入る 素抱
睡りて着く駅ここは何處梅雨都心 素抱
生りものの容歪みて梅雨の果 素抱
青梅雨に集へる信徒魚族めく さざなみやつこ
青梅雨のくどきチラシにくどき彩 石鏡
赤蟻に上がり込まれて梅雨の家 素抱
川幅をゆったりと持し梅雨大河 素抱
栓抜の在りかは何處だ梅雨留守居 素抱
栴檀の葉のこまごまと梅雨に入る 鳩信
掃除機に追はれて梅雨の部屋を退く 素抱
草河豚のころんと転がる梅雨渚 素抱
大正菓子ゼリービインズ抓み梅雨 素抱
男梅雨おろかに肥ゆる椨大樹 素抱
男梅雨吉良の仁吉の一節を 寒暑
通院日梅雨のむしむし始まりぬ 寒暑
通行人臆せぬ貌の梅雨雀 寒暑
佃煮の蝗の貌もつくづく梅雨 素抱
釣人に野暮な問い掛け梅雨を云ひ (房州 富浦) 素抱
釣人のにべ無き応(いら)えボソと梅雨 素抱
徒然に十薬引けば梅雨近む 暮津
徒然に梅雨の抽斗開けてみぬ 素抱
土石流家を根こそぎ梅雨末期 素抱
濡るゝ枝掴み直して梅雨鴉 ももすずめ
梅の幹くろぐろと梅雨待ちゐたり ねずみのこまくら
梅雨といふ辟易月に入りにけり 鳩信
梅雨どきの何處を見据えて金魚の目 素抱
梅雨どきの眼ごろごろ使ひ過ぎ 鳩信
梅雨どきの鰐が御用となるニュース 寒暑
梅雨どきの湾岸道路灯の連鎖 素抱
梅雨なんぞ吹き飛ばす唄皆の衆 (村田英雄逝く) 寒暑
梅雨に入る机上に硝子の舟細工 素抱
梅雨に入る欅昂然椨憮然 ももすずめ
梅雨のとある日とんだ薬の副作用 素抱
梅雨のラジオ早口にしてくだくだし 素抱
梅雨の月上つてをりぬ家間近 ももすずめ
梅雨の検診今度は何と身構えぬ 鳩信
梅雨の航救命ヴイの赤きこと 素抱
梅雨の航連れ添う鴎宜候(ようそろ)と 素抱
梅雨の渋滞テールランプの赤赤赤 素抱
梅雨の蝶重き腰上げ発ちゆけり 暮津
梅雨の蝶埃のごとく樹々に群れ 素抱
梅雨の都心光芒放つ川向う 素抱
梅雨の湯舟に銀座カンカン娘の唄 暮津
梅雨の本ブックエンドに挟まれて 素抱
梅雨の遊覧バスゆく東京ど真ん中 素抱
梅雨の浪へこと凹みてたゆたへり ぱらりとせ
梅雨の玻璃阿弥陀籤めく雨滴かな 素抱
梅雨を来て匂ひに匂ふ塵芥車 暮津
梅雨家居あれもこれもと妻頼み 寒暑
梅雨家居飲食(おんじき)の手間かけ申す (妻へ) 寒暑
梅雨寒の傘ふるふると畳みけり 素抱
梅雨寒の触る手ひゃっと心電図 素抱
梅雨空の突っかえ棒の外れ月 鳩信
梅雨嫌ふ食卓塩の赤き蓋 素抱
梅雨最中二三日かけ根ン仕事 寒暑
梅雨湿りゴヤの巨人の黒髪も ももすずめ
梅雨湿り芋銭の河童百図かな 素抱
梅雨礁濡れて優しきヨメガサガイ 素抱
梅雨深む湿生花園に草蓮玉(クサレダマ) 暮津
梅雨水輪クサガメ鼻を没しけり 暮津
梅雨雀フェンスを上り下りしをり 素抱
梅雨雀何か追い詰めたる羽音 鳩信
梅雨雀乗りて屋外瓦斯ボンベ 寒暑
梅雨晴れの或る日選んで靴を干す 素抱
梅雨晴間うどん粉病をやむ植木 暮津
梅雨晴間ぷらんぷらんと母散歩 寒暑
梅雨晴間憩ふ社にだんご虫 寒暑
梅雨晴間小包ぽんと届きけり ももすずめ
梅雨晴間壁に凭るるぬひぐるみ さざなみやつこ
梅雨大扉入るや洞なす大仏殿 ぱらりとせ
梅雨到来告げて編集後記かな ももすずめ
梅雨入の大学病院軍艦めく 寒暑
梅雨入の湯舟にでんでんむしの唄 随笑
梅雨入の八百屋そこそこ品揃え 寒暑
梅雨払ふ笠置しづ子のよいわんわ 素抱
梅雨明けが間違ひなしの風なりき 素抱
梅雨明けず雨夜の煙草ふかしても 素抱
梅雨毛虫掃討作戦開始せり 寒暑
梅雨籠りあうむにこゑを奪はるる ねずみのこまくら
梅雨籠りあうむの与太を飛ばしをり ぱらりとせ
梅雨蜩湯治話が長くなり 石鏡
梅雨鴉けふは出ばって近所の樹 鳩信
白き制服東海道線梅雨車中 暮津
函強く振つてとり出す梅雨の本 ももすずめ
表札の町名古きまゝ梅雨へ 素抱
病むわれに声撒きちらし梅雨鴉 ねずみのこまくら
病廊に外来患者あふれ梅雨 素抱
封じ手の白石梅雨の本因坊 素抱
物音をはばかり起きれば梅雨雀 素抱
柄の大きかうもり傘より梅雨雫 宿好
目の粗きフェンスを潜り梅雨雀 石鏡
目次に目あそばせ梅雨の日の机上 随笑
予報官えいと梅雨明宣言す 寒暑
旅支度少しづゝ梅雨深む中 素抱
老眼と乱視ごちゃまぜ梅雨をみる 素抱
俤梅雨「人生劇場」高らかに 寒暑
捩花の翩翻梅雨の中休み 随笑
椨雫砂地をうがつ男梅雨 素抱
黴させぬ仕掛けくさぐさ梅雨食品 寒暑
(末尾は句集名)
空梅雨の吊皮揺るゝ一斉に 素抱
空梅雨の下駄箱の戸をがらがらり 燕音
(末尾は句集名)
引っぱれば飛び出すティッシュ走り梅雨 素抱
新橋の飲屋路地裏走り梅雨 寒暑
(末尾は句集名)
梅雨明けず雨夜の煙草ふかしても 素抱
梅雨明けが間違ひなしの風なりき 素抱
予報官えいと梅雨明宣言す 寒暑
(末尾は句集名)
白夜 /
夏至 /
隠れ蓑夏至の雨だれ伝ひけり 寒暑
海猫の糞透明に夏至明けにけり 石鏡
今日も降るこの雨夏至に続くらん 寒暑
傷跡のこんもり夏至の胸板に 暮津
神妙な顔して夏至のネパール茶 素抱
八幡宮夏至の欅が亭々と 寒暑
菩提樹の夏至の樹肌に手を添えて 寒暑
(末尾は句集名)
暑さ /
颱風のあとのなんだいこのあつさ 随笑
臍切れてよりの暑さと書き添へて さざなみやつこ
瘡蓋の黒くかさばる大暑かな 暮津
滾る暑の底の方より油蝉 暮津
喘ぐのみグゥの音も出ぬ暑さかな 素抱
玲瓏と雪頂いて暑寒別岳(しょかんべつ) 素抱
冷夏と猛暑どちらをとるかと云へば「さあ」 素抱
緑亀はびこる池の暑さかな 素抱
夜をうとうと暑さに馴るゝまでのこと 随笑
棒のごと痩躯横たえ暑の極み 暮津
腹見せて暑苦しいぞ軒の蝉 暮津
風通るテラスにてピザ避暑家族 燕音
膝鳴らし起ちて酷暑の水をのむ 暮津
避暑便りペイネのポストカードかな 燕音
避暑客のたてこんでくる小海線 さざなみやつこ
避暑客に掲ぐ看板「神戸牛」 燕音
避暑客で賑はふ三ッ星レストラン 燕音
鉢植の棕櫚竹ともども暑に耐へむ さざなみやつこ
鉢枯らす大暑うらめし手にシャベル 暮津
麦湯して暑さ負けせぬ夫婦なり 宿好
莫迦げたる暑さに馴るる他なかり 随笑
薄暑来て始末の悪きチョコレート 暮津
薄暑の野毛髯のチャップリン笑ひ集(と)る 石鏡
白木槿とびきり暑き日とならむ ぱらりとせ
買物のなかなか決まらぬ子や大暑 暮津
熱泥のカレー煮立てて暑に対す 素抱
如何にして一ト日一ト日の暑を払はん 素抱
肉じゃがの先づは漁る大暑の肉 暮津
読む記事のみな些事ばかり秋暑なる 素抱
頭(かぶり)振りけふの暑さを諾へる 随笑
塗箸の貝の浮き顕つ大暑かな 暮津
纏はりつく暑さは開き直りても 素抱
泥のやうな睡り極暑を遁走し 随笑
大道芸ネタを小出しに野毛薄暑 石鏡
大象の大暑の牙の薄光り 暮津
大暑の頭巡らすよいやさよいやさのさ 鳩信
大暑には頭使はぬコップ拭き 暮津
大き地震暑気に呆ける身を揺りて 暮津
台風の置きみやげなる蒸し暑さ 暮津
其の上の生姜畑の芝秋暑 燕音
足許に照り返すなり秋暑の陽 暮津
前山に残暑色濃くのこりけり 素抱
選句稿大暑の脳天澄まし選る 暮津
洗濯物家に暑さを取り込めり 随笑
先生は暑き日選び逝きなすった 暮津
蝉はみな残暑残暑と鳴きゐたり 素抱
舌垂らし秋暑にダァと寝そべる犬 暮津
赤松に対す秩父の暑に対す ぱらりとせ
石獣のひたすら座せる大暑とも ねずみのこまくら
青き幹じりじり暑くなりさうな さざなみやつこ
雀の他みんな暑さにやられけり 随笑
水たっぷり飲みて眠気と暑気払はむ 暮津
人ごとのやうに云ひ退けけふ秋暑 暮津
辛抱の度を超す暑さ如何にせむ 暮津
寝物語などして暑さ一頓挫 随笑
蒸し暑き花掲げたり泰山木 ももすずめ
浄玻璃の鏡も曇らむこの暑気に ももすずめ
硝子器の汚れ目につく暑さかな 暮津
焼いわし食うぶ朝餉も暑さ馴れ 素抱
暑気払やるかと妻の探り入れ 暮津
暑気払けふもやるかと山の神 暮津
暑はいまだ序の口ご自愛なされよと 暮津
暑のやはらぐ風に乗じて家を出づ 素抱
暑に擲たれ強くして長(た)く女郎花 素抱
暑に徹るこゑてきぱきとヘルパーさん 暮津
暑にめげぬための麦湯を沸かしおく 随笑
暑にかすむ新宿が見え烏龍茶 ももすずめ
暑にああと四、五軒先の赤ん坊 暮津
暑さめと己に言葉ぶつけけり 随笑
暑さには熱き茶それにせんべいも 暮津
暑さうに啼く蝉ペンキ塗り重ね 随笑
暑き日々俳句詠むにも糞ぢから 暮津
暑き日の飯粒何處ぞ三分粥 鳩信
暑き日がやっと収まり町雀 暮津
処暑処暑と今朝方の蝉さう鳴くも 随笑
処暑処暑と口火切りたるつくつくし 暮津
処暑のそら土器(かわらけ)いろの火星現る 素抱
秋暑避け投票は朝のうち 暮津
秋暑のこと家鴨に言ってもはじまらぬ 石鏡
秋暑し古称は胡桃が下稲荷 随笑
手すさびに処暑のコップを拭き並べ 素抱
死ぬ程の暑さ人能く生かしけり 随笑
指の間に残る大暑の薬粒 暮津
仕方なし暑さのがれの昼寝せり 暮津
散髪してサッパリすれば暑のやはらぐ 暮津
昨日見し火星を寝物語の処暑 素抱
昨日より暑くなるぞと朝の蝉 燕音
採血の跡黄味がかる小暑かな 鳩信
降りて来て二階の暑さ嘆きけり 随笑
考へて大暑を味方につける策 暮津
吾が避暑とは浜辺一巡して来ること 素抱
糊の効きわろき秋暑の古切手 石鏡
古漬けの胡瓜つまめる残暑かな 暮津
月末の忘れし頃に大暑かな 素抱
共に暑を乗り切りし妻仰ぐそら 暮津
牛頭馬頭の徘徊暑し恐山 随笑
牛よりも鈍し大暑の身のこなし 暮津
灸花けふの暑さの如何ばかり ぱらりとせ
気圧されてぐうの音も出ぬ大暑かな 随笑
関取に前歩かるる薄暑かな ねずみのこまくら
観念し秋暑の路を辿るのみ 暮津
割り勘の暑気払なら吾も乗れる 素抱
拡声器がなり秋暑の声割れぬ 暮津
快適とて糞暑きとて麦湯のむ 暮津
菓子袋くしゃくしゃにして暑を譏る 暮津
茄子汁の味噌の香残暑の香なりけり 素抱
家暑し駄菓子にろくなもの無くて 暮津
家を出づ先ず一歩から暑からむ 素抱
家の中一巡りして暑がれる さざなみやつこ
家にごろごろ暑さの持って行き場なし 随笑
音を上ぐるもののこゑ聞く暑の極み 暮津
黄表紙に凌ぐ暑さも峠越す ももすずめ
塩壺に醤油が隣る大暑かな 素抱
炎暑来てやっつけ仕事一頓挫 暮津
鰻の肝横目に見て過ぐ街薄暑 暮津
丑の日の暑さに閉口口「へ」の字 暮津
一丁の豆腐がありて暑気払 素抱
伊豆へ避暑今は山中今は浜 鳩信
阿武隈川ぶくと秋暑の泡生める さざなみやつこ
ライターの炎に煽らるる貌秋暑 暮津
よく探さないで物云ふ暑さかな 暮津
やみくもにティッシュ渡さる街薄暑 暮津
ものさしの目盛薄るゝ大暑かな 暮津
ポーチュラカ暑さにいちばん強い花 暮津
ふて寝して暑さの通り過ぐを待つ 随笑
ピザ食うて残暑なんぞにへこたれじ 素抱
ヒザラガイ見るさえ薄暑覚えけり 素抱
ばらばらに鳴いてけつかる処暑の蝉 素抱
ハイル・ヒトラー!鵞ペンで描く髭薄暑 宿好
のうぜんの宙ぶらりんや糞暑し 宿好
なまくらな鋏を使ふ大暑かな 素抱
なほ猛威ふるふ暑さにはだけ寝る 随笑
とりとめなきパズルなどして暑を凌ぐ 暮津
だんご虫節々返す薄暑光 素抱
たたみ込む暑や死神に手を貸して 素抱
そこそこに暑さそこ退け水打たん 随笑
この大暑逃れんための一ねむり 随笑
この暑さ躰がついてゆけぬといふ 素抱
この暑さ身体を馴らす他なけれ 素抱
この暑さどうかしているペンキ塗り 随笑
この暑さお手あげ水をのむばかり 暮津
ことさらにことしの残暑手強(ごわ)かり 素抱
ここに来て炎暑一掃通り雨 随笑
けふ暑くなること確か斑(まだら)鯉 素抱
けふの暑さ鰻のぼりと聞き凹む 暮津
グラスの輪机にのこる大暑かな 素抱
かのこ百合やうやう暑さ納まるか ぱらりとせ
あらためて大暑と聞きて太吐息 石鏡
アッパーカット啖らひしごとき炎暑かな 素抱
「糞暑いねぇ」と自転車行き交へり 暮津
「花霞」蔵店秋暑の樽積み上げ 石鏡
(末尾は句集名)
◆天文
五月雨 /
さみだるる尿道造影剤検査 鳩信
五月雨の降り込む椎と槇の間 さざなみやつこ
道灌の墓五月雨を聴くばかり さざなみやつこ
保(も)つまいとおもふ空から五月雨 素抱
(末尾は句集名)
空梅雨 /
空梅雨の吊皮揺るゝ一斉に 素抱
空梅雨の下駄箱の戸をがらがらり 燕音
(末尾は句集名)
五月闇 /黒南風 /
南風 /
くろもじの宿す雨滴を払ふ南風 暮津
サーファーの臀部凛々しく南風吹く中 宿好
タカノハ鯛大きく息す南風の中 燕音
たはむれにモンローウォーク南風のなか 素抱
チューリップツリー並木を南風馳せ さざなみやつこ
ぴらぴらと蟹の口許南風吹く ももすずめ
ややこしくなる前の蔓白南風に ぱらりとせ
海を揺り山を揺り立て大南風 随笑
海王丸南風孕む帆を披露せり 素抱
大南風釣人に囁けるもの 素抱
大南風途絶えてへなへなヨットの帆 素抱
大南風勇魚の息をつくやうに ぱらりとせ
大南風孵りしひよこより柔らか ぱらりとせ
南風に載せジャズ風ちんどんミュージック 石鏡
南風に奏づは弁天様にまします歟 随笑
南風に龍馬舶来ものの靴を履き 寒暑
南風の中パントマイムのはじまりはじまりー 石鏡
南風吹き抜け野毛の縁台将棋かな 石鏡
白南風埠頭帆船フアンで賑はへり 素抱
夜叉五倍子の青実南風にごっつんこ 燕音
(末尾は句集名)
茅花流し /筍流し /
青嵐 /
つっかける雨に処置なし青あらし 石鏡
蟹奔らせ青嵐到る巾着湾 寒暑
街往けば正面からくる青あらし 石鏡
国上山青嵐湧きくるめく葉 寒暑
吹き起こる青嵐長渕剛の唄 素抱
正受老人の宗風然り青嵐 燕音
青あらし鯉の英気を養へる ぱらりとせ
青あらし通るところが判りけり 石鏡
青嵐まだ吹き足らぬまゝ通夜へ 暮津
青嵐煽られし身を立て直す 石鏡
読み切るとひとり気負へば青嵐 随笑
鳩も目をくりくりさせぬ青あらし 素抱
(末尾は句集名)
風薫る /
薫風に逆らひ歩む一年生 石鏡
薫風に首洗はるる池の亀 宿好
薫風に仁王の視線やはらげり 寒暑
薫風を捌き疲れて夕欅 ももすずめ
風薫じ作務衣で通す日なりけり 寒暑
(末尾は句集名)
雹 /
半島の椎椨打ちて春の雹 ぱらりとせ
(末尾は句集名)
五月晴 /
愚図ついていつになったら五月晴れ 随笑
(末尾は句集名)
虎ケ雨 /
【参考】
拙句 虎 (高澤良一)
蝿虎雨戸に日和がよささうと 高澤良一 暮津
前門の虎のうねりを暴れ川 高澤良一 暮津
後生掛の湯治棟見ゆ虎杖越し 高澤良一 石鏡
蝿虎稚くも貌老成す 高澤良一 石鏡
酒もまた会津贔屓や虎ケ雨 高澤良一 石鏡
お年寄り許りの結社虎落笛 高澤良一 石鏡
トラ鱚の薄茶の縞の涼しさう 高澤良一 鳩信
アムール虎右往左往の黄落期 高澤良一 鳩信
蝿虎即暁斎のかみつき貌 高澤良一 素抱
虎杖の山深ければ人の丈 高澤良一 素抱
梅咲きて虎屋の羊羹旨き昼 高澤良一 素抱
お風入れ丸山応挙は虎が得手 高澤良一 随笑
硫黄の香虎杖黄葉したりけり 高澤良一 随笑
子規庵の戸袋の反り蝿虎 高澤良一 随笑
虎魚産み落とせし親もこんな貌 高澤良一 随笑
板塀に蝿虎の岡っ引 高澤良一 随笑
日永なる仙崖の猫いや虎圖 高澤良一 随笑
湯けむり立つ錆び虎杖のその向う 高澤良一 寒暑
虎杖の汐傷みして五能線 高澤良一 寒暑
俳諧の手ほどき蝿虎より受く 高澤良一 寒暑
蝿虎部屋間違えて入り来し 高澤良一 寒暑
虎の子の預金はたいて夏の旅 高澤良一 寒暑
豆虎の怪力見せん牛角力 高澤良一 寒暑
徘徊す虎は四温の毛皮被て 高澤良一 寒暑
虎杖をへし折りゆけり鬼無里の子 高澤良一 燕音
一茶堂蝿虎が戸袋に 高澤良一 燕音
虎河豚に三段腹はなかりけり 高澤良一 燕音
曝涼の応挙の虎に真向へる 高澤良一 さざなみやつこ
べンガル虎風死す檻を往き来せり 高澤良一 さざなみやつこ
虎尾草の風に払子を振るごとし 高澤良一 さざなみやつこ
雨虎花魁道中歩きせり 高澤良一 さざなみやつこ
山麓の溶岩隠り虎杖摘 高澤良一 さざなみやつこ
針深く呑みし虎魚の横つ面 高澤良一 ももすずめ
虎耳草石垣沿ひに風の起つ 高澤良一 ももすずめ
◆地理
出水 /
出水して常水二尺五寸の川 石鏡
一昼夜流れて目減り出水川 寒暑
秋出水あらがふ岩を組み伏せて 寒暑
秋出水なかなか暮れぬ白磧
岩壁にぶち当り折れ秋出水
秋出水ヘヤピンカーブして山峡
隧道を浸して山の秋出水
秋出水林道よぎり落ち谿へ
吊橋は吊橋秋の出水のうへ
吊り橋は秋の出水に係はらず
大曲り秋の出水に添ふバスも(寸又峡)
目の前で反転秋の出水川
とんでもなき所に流木秋出水
秋出水くびれ広がり大井川
急ぐありゆっくりゆくあり秋出水
秋出水体当りして洲を削り
立柳秋の出水に根を浸し
皚々と砂州の削られ秋出水
砂州削いで真白き牙の秋出水(大井川鐵道)
出水して常水二尺五寸の川
大井川秋出水して川会所
川越しの賃料こまごま秋出水
秋出水うち揚ぐ流木足蹴にす
轟々と秋の出水も鉄橋も
水平に且つ脚早に秋出水
阿武隈川出水瀬に寄り瀬を離れ
宝の山磐梯山より秋出水
やられしは九州一円出水の景
秋出水東夷(あずまえびす)の國々に
秋出水一夜に削げる川原石
一昼夜流れて目減り出水川
秋出水その上を蜻蛉すいすいと
出水川何やら光り渡るは虫
秋出水ぶち当たりたる岩襖
秋出水あらがふ岩を組み伏せて
一つづゝ岩の掻き暮れ出水川
木片の揉まれ下れり出水川
一昼夜流れて目減り出水川 寒暑
秋出水あらがふ岩を組み伏せて 寒暑
(末尾は句集名)
代田 /
一夜荒れ濁りのとれぬ代田水 宿好
代掻かれ雀の鉄砲水浸し ねずみのこまくら
代田に引く水の咳き込むごとくなり ぱらりとせ
代田水いまにも雨が降りさうに 素抱
代田水息せききって駆け込めり 燕音
張る水はどぶろくに似て代田なる ぱらりとせ
道祖神巡り代田を迂回して ぱらりとせ
(末尾は句集名)
夏の川 /
夏川に手を突っ込んで上高地 宿好
夏川のここらが熊の通り道 (ほつと湯田 湯本温泉) 素抱
夏川の上ミに一村下モに一村 随笑
夏川の瀬に廻り込む水迅し さざなみやつこ
夏川も語れり遠野物語 随笑
玉堂の昔の川の夏の音 燕音
孫六湯前夏川の展けたり 素抱
旅疲れ夏川に眼を落としゐて 随笑
(末尾は句集名)
夏野 /
お岩木は雲のスカート履き夏野 寒暑
思い立つままに旅して来て夏野 随笑
人の手のかからぬものはなし夏野 寒暑
(末尾は句集名)
雪解富士 /
【参考】
利尻富士眼鏡の球の雪解冷え 素抱
利尻富士顱頂を覆ふ雪解靄 素抱
雪解の最中の利尻富士眩し
椴松へ利尻富士より雪解風
利尻富士高みうろつく雪解靄
利尻富士顱頂を覆ふ雪解靄
雪解靄お顔隠るゝ利尻富士
利尻富士眼鏡の球の雪解冷え
五月富士 /
◆生活
溝浚へ /
溝浚ひ蚊の一、二匹何のその
蒼朮を焼く /魚簗 /
時の記念日 /
格別の思慮なく時の日過ごしけり
時の日の雨予報雨違ひなく
時の日に係はりもなく吾が生活(たつき)
時の日に開く朝顔第一花
時の日の腹時計鳴り昼近し
時の日の遅るゝ時計そのまゝに
時の日を曜日に疎き生活(たつき)ぶり 素抱
(末尾は句集名)
田植 /
どつと灯の点る親しさ田植あと ねずみのこまくら
牛合はせ済めば田植が待ちゐたり 寒暑
強水(こわみず)に佐渡の田植の始まれり (*強水は岩間より流れ出す冷水) 寒暑
国上山(くがみやま)源八新田田が植り 寒暑
酒米の田植も済むや和島村 寒暑
谷々に空木巡らせ田を植うる 寒暑
田を植えて里俗の伝へ平家の裔
強水に田植佐渡産コシヒカリ
大佐渡のだんだん田圃の田植かな
酒米の田植も済むや越の國
田植笠ぽつんと谷の谷の底
田植人雨の棚田を折り返し
棚田縁早苗吹かれて田植待つ
(末尾は句集名)
植田 /
どむみりと大山入れて植田水 鳩信
畦蛙とんで植田の水乱す 寒暑
参道に吹き込む真野の植田風 (大膳神社) 寒暑
植田村帰化亀駆除に一騒動 素抱
仁丹の看板健在植田中 燕音
田を亘る風に微笑む植田水 寒暑
墓のうら植田のみどり湛えけり 石鏡
良寛墓所尋めゆく頬に植田風 (隆泉寺) 寒暑
植田水九十九島影宿しけり
植田水揺すりて過ぐる車輌音
むっつりと植田見て去る旅先の
一隅に白鷺を置く植田水
植田村うすぼんやりと靄かかり
植田水上州の空透けるなり
足跡のここで反転植田中
植え方のあそこおかしき植田かな
植田のみどり畦のあぢさゐさみどりに
あぢさゐのさみどり映ゆる植田べり
丹沢の今金色に植田水
どんみりと大山入れて植田水
ワキごゑの植田の鴉能の里
サイクリング自転車止むる植田べり
国上山植田見下ろし息つける
山古志の代田植田に日照雨して
見回りの一人小雨の植田の端
棚田村代田植田を半々に
養鯉池隣り合はせに植田かな
(末尾は句集名)
早苗饗 /誘蛾燈 /早乙女 /
父の日 /
はんぺんを肴に父の日の晩酌 暮津
我が事よ父の日賜ふかさばり物 寒暑
父の日のあらためて見る脛なりけり 素抱
父の日の加賀鳶の封切りにけり (大吟醸) 素抱
父の日の酔ひて子よりも早く寝る ぱらりとせ
父の日の素足すうすうしてゐたり 素抱
父の日の贈物とて麻パジャマ 寒暑
父の日の昼をふんぱつ勝烈庵 素抱
父の日の昼寝セットのプレゼント 随笑
父の日の鬚づら似顔絵ファックスより(孫美雨) 暮津
(末尾は句集名)
螢狩 /
さてさてと螢見の腰上げにけり 寒暑
蛍狩知り合ひのゐて声かはす ぱらりとせ
上っぱりいつか湿りて蛍狩 素抱
螢見に行かんと軽く腹拵え 随笑
螢狩戻りがてらの街明り 寒暑
螢出づ時分そろそろ足下暮れ 随笑
螢出る迄の四方山話かな 随笑
(末尾は句集名)
螢籠 /
草々のつと匂ひ立つ蛍籠
田草取 /
田草取月山臨む裾野田に
一人来て陸奥の青田の田草取 随笑
(末尾は句集名)
草取 /
蚊を打てる合間合間に草を引く 暮津
武装して長靴履の庭草取 暮津
草引いては蚊を打つ手順繰り返す 暮津
蚊がむんむんたかが草取りとはゆかず 暮津
露草を引く掌に残る露臭さ 暮津
露草のたやすく引けてなんまいだ 暮津
引く草がみんな露草なららくちん 暮津
墓地の草しみじみ引きてをりひとり 素抱
草むしりして来て茗荷の出来云へり 素抱
秋草といひて一草引いて来ぬ 随笑
一人来て陸奥の青田の田草取 随笑
草取はせず炎天を唯眺め 寒暑
(末尾は句集名)
鵜飼 /
篝火が画面をよぎる鵜飼かな
ふなばたの湿り鵜舟の出を待てり ぱらりとせ
(末尾は句集名)
藻刈 /川狩 /草矢 /夜振 /
夜釣 /
夜釣して祭囃子の音のはるか
夜焚 /
夜焚火となりて炎のいま丈余 ねずみのこまくら
(末尾は句集名)
釣堀 /
釣堀が賑はってをり松の内 素抱
三ケ日村の釣堀大繁盛
(末尾は句集名)
草刈 /
快音を谷に響かせ草刈機 寒暑
鎌跡の残る草長け吹かれをり ももすずめ
刈草の色を離るる青蛙 燕音
刈草を抱へて投ず最上川 随笑
石齧る音も混じれり草刈機 素抱
草刈って海峡に向く一祠 随笑
草刈って斜里町の夏始まれり 燕音
草刈って蔵王縦断道路脇 素抱
草刈らむと踏み込む藪蚊の梁山泊 暮津
草刈られ追はるゝ蟇のその大股 暮津
草刈鎌はうり出しては蚊と対峙 暮津
草刈機辺りの草が震え立ち 素抱
草刈女お岩木仰ぎ腰伸ばす 寒暑
能舞台脇正面の草刈れり 寒暑
養生所井戸の廻りの草刈れり 寒暑
刈草に白つめ草も交りけり
刈草の日ざらし道はなほ続く
道端に放り出しあり草刈鎌
刈草の岸壁に寄る酒田港
刈草の湾を漂ふ終のいろ
港に浮き河下り来し刈草にや
刈草のながれゆくなり最上川
刈草の幾日経つらん早苗いろ
刈草の乾く香の中道祖神
草刈機湯宿の親爺ぶん廻し
草刈機一気呵成とぶん回し
刈草の葉裏しろしろ蔵王下る
草刈って蔵王横断道路沿ひ
青蔵王山形県側草刈って
東北道須賀川辺り草刈れり
烟る雨畦草刈って日の浅き
刈草を跳ねて豆粒青蛙
青蛙刈草むらを潜りけり
草刈って最上川べりさっぱりす
作務衣著てこころ広らに朝草刈り
草刈ってボーイスカウトテント村
首塚の草刈るここらで一区切り
養生所井戸の廻りの草刈れり
草刈女木陰に憩ふ養生所
岩木山神社境内草刈って
休まんと振り向くときの草刈女
棚田の辺形ばかりに草刈れり
(末尾は句集名)
干草 /
干草にひばりの声の冷えきりて
夏衣 /
ころり往生阿弥陀を拝す夏衣 素抱
愛着の情ある夏着となき夏着 寒暑
一度は着て愛着それほどなき夏着 寒暑
夏着数枚年金暮しはシンプルに 暮津
夏物のパジャマ引っ掛けギブスの上 鳩信
(末尾は句集名)
単衣 /
伊勢佐木町ブルース単衣のソックリさん 暮津
普段着の水母の単衣よかりけり 燕音
(末尾は句集名)
夏服 /
アロハシャツ色地味にして柄派手や 素抱
アロハ着てはしゃぎたくなる気の未だあり 鳩信
お気入アロハ押し込む旅鞄 ぱらりとせ
こんなにもベルト重たき夏ズボン 素抱
ピンボケの柄のアロハをことしも着て 寒暑
横須賀は気安き街よアロハにて 素抱
夏服に永年勤続祝がれをり ぱらりとせ
手を通す忘れられゐしアロハにも 寒暑
退院の挨拶だぶつく夏ズボン 鳩信
谷地渡る風に白シャツはためかせ 燕音
白服にねむり成層圈を航く ねずみのこまくら
白服に浜の豆ッ子鼓笛隊 随笑
半ズボン地震来て咄嗟に入るる足
白服の取り出し易き内ポケット
アロハ着て沖縄帰り梅雨の便
湯治棟半ズボンもて仕切りけり
翻る青薄原ゆく白シャツ
脛白くあな恥ずかしの半ズボン
試しみて快適今日より半ズボン
膝小僧うらはずかしき半ズボン
けふ以て蟹漁開襟日本海
アロハ着てトニー谷のさいざんす
アロハ着て島を一周レンタカー
わが好みのアロハ色褪す駱駝柄
半ズボンにて夏の男鹿巡るべく
颯爽と新宿あるく半ズボン
職退いていつもカジュアル半ズボン
来島海峡単車で飛ばす半ズボン
(末尾は句集名)
夏羽織 /
夏帽子 /
カウアイ島巡りの夏帽買うて来ぬ さざなみやつこ
パンの実の何処にとあふぐ夏帽子 さざなみやつこ
夏帽のあふぐ山寺案内図 素抱
夏帽の似合ふが鳥の名をすらすら 素抱
夏帽子被れというに首を振る 随笑
夏帽子壁炉の上に誰のもの さざなみやつこ
通園の母子夏帽欠かせぬ日 素抱
被るのがめんだうなだけ夏帽子 随笑
一生涯被らぬつもり夏帽子
木道をダッコバンド負ひ夏帽子
紫外線予防徹底夏帽子
夏帽のゲストをなじる大道芸
投げ銭を促す夏帽大道芸
老人の齢相応の夏帽子
老若の顔納まりて夏帽子
夏帽子湖畔に散ってゆきにけり
鍔の下旧知の顔や夏帽子
夏帽子似合はぬと決め半世紀
夏帽子白黒二つ白遅れ
田沢湖で大方降りぬ夏帽子
何拾うてあるく浜辺の夏帽子
ここからは視界が展け夏帽子
夏帽子植物園の広きに出づ
夏帽子被り始めの鎌倉行
地図拡げ夏帽集ふ車中かな
夏帽子かぶり直せばきりぎりす
夏帽子など気休めの強日差
夏帽子葉山廻りのバスに乗り
夏帽子ばかり映りて八方池
顔見えぬ夏帽同志話しをり
二等船室夏帽枕にごろ寝して
良寛の墓で一服夏帽子
良寛堂前にて下車す夏帽子
チューリップツリーの木陰夏帽子
(末尾は句集名)
夏襟 /レース /夏帯 /
夏手袋 /
コンビニに行くにも帽子・夏手套 素抱
(末尾は句集名)
夏足袋 /
祭足袋ばたばた御朱印船を曳く 燕音
春眠のゴリラの地下足袋めく蹠 寒暑
船頭の地下足袋さやに舟下り 随笑
昼寝覚素通る猫が足袋履いて 寒暑
湯屋へ老人うそ寒ければ足袋履き来 暮津
万灯引く衆の白足袋白法被 随笑
(末尾は句集名)
夏座布団 /
藺座布団きちんと坐り直しけり ぱらりとせ
藺座布団十あまり一番札所寺
五六枚夏座布団の縞模様
(末尾は句集名)
夏布団 /
たぐり寄す夏掛その内夜も明けん 寒暑
夏掛して妻と思ひ出話など 鳩信
夏掛のひやっとせるをあてがひぬ 鳩信
夏掛の引っ張りすぎを押し戻す 寒暑
夏掛の上に掌を置き想ひごと 寒暑
夏掛の薄手が頼りなき夜明 素抱
夏掛の柄古ぼけてごろ寝かな 暮津
夏掛は目覚めし指に懐しく 素抱
夏掛をゆうに余れる足二本 寒暑
夏掛を一枚抱え漂流中 寒暑
夏掛を挙げ句の果てにぐるぐる巻 素抱
夏掛を手繰りつ妻と二タ三言 寒暑
手探りでさがす夏掛あらぬ方 素抱
夏掛の一端腹にかけねむる
夏掛を払ひ退けてはたぐり寄せ
跳ね退けし夏掛なほす晨かな
夏掛の隙より覗くふくらはぎ
夏掛に朝方冷え込む四肢藏ふ
一つ間に笑まふ遺影と夏布団
夏掛や肋押さえしまゝ寐落つ
夏布団足探りして近寄せぬ
その向きを足もて直す夏布団
夏掛をはみ出して臑ありにけり
夏掛のいつしか腹を滑り落ち
夏掛の頼りがたきをことし又
夏掛のこの感触と抱きしめぬ
するすると逃ぐる夏掛手探りに
夏掛を胸に戻して又寐かな
夏掛や床づれといふ尻こぶた
あられもなく夏掛ひっちらかってをる
夏掛の吹けば飛ぶよな蜻蛉柄
逃げやすき夏掛胸に当てがひぬ
夏掛の身体を外れて引っ張り過ぎ
夏布団畳の海に漂ふて
寝返りの骨ポキとなる夏布団
夏掛に手を置き遠き音を聞く
夏掛や深川鼠(ねず)の魚模様
(末尾は句集名)
陶枕 /
陶枕売る華僑の片言日本語 寒暑
明烏陶枕外れゐたりけり
(末尾は句集名)
青簾 /
ごろ寝して裸の王様すだれ裡 暮津
ザッと雨ササササと風軒簾 暮津
屈原のごとき起居を簾内 素抱
古簾一枚吊りて籠城す 素抱
古簾取り替えやうかこの辺で 素抱
残照を恨める軒の簾越し 素抱
世を容れぬ簾の内の詩(うた)ごころ 寒暑
青簾一つ大きな音を聞く 素抱
青簾吊るや寝てよし覚めてよし 随笑
青簾風に色目を使ひけり 素抱
唐突に簾の蝉の鳴き出せり ももすずめ
鉢仕舞ひ簾は外し颱風下 暮津
風ぱたと落ちてうとまし軒簾 素抱
簾して虫籠めく家外(と)を見をり 寒暑
葭簾あられなき夜のすいと明け 素抱
葭簾雨まっすぐにまっすぐに 素抱
良夜の灯洩れゐる家の簾越し
簾して棺の中より見るごとし
蜻蛉がまんまと止まる古簾
劃然と内外(うちと)を仕切る青すだれ
古簾かさとも云はぬ土用かな
二三年使ひ古して軒簾
音のして簾の向うそれっきり
簾してごろ寐はばかること無き家
古簾ごろ寐とろんとして来たり
小気味よく雨降る出せる軒簾
ごろ寐して目に入るもの軒簾
あぢさゐの青葉見えゐる軒簾
古簾恃みごころのごろ寐かな
四方簾鉢の金魚に他ならず
降り出して葉音の通る古簾
青簾吊れば浮世が透けて見ゆ
浮世の塵封じ日送る青簾
世の風に当たる簾を打出でて
古簾掠める風を聞くばかり
簾吊り準備万端整ふ家
簾して肋をさすりつゝうたたね
軒簾ぱたんと打ちて風ありぬ
葭簾辺り何やら浮世めく
葭簾越しに起居の常の景
浮世めく簾を家の四辺かな
簾吊り覗く辺りが浮世めく
朝風に遊ぶ葉見えて軒簾
大胆に肌着を脱げる簾内
月はなや夏場の簾吊りにけり
かさと蝉音枕上ミなる簾の辺
(末尾は句集名)
葭簀 /
露天湯の葭簀を洩るる若葉雨
七本立だるま控えぬ葭簀張り 宿好
菊花展葭簀巡らしお膳立 燕音
葭簀張り先づ出来上り菊花展
(末尾は句集名)
葭戸 /
起き支度せる音ならむ葭障子
飯店の予約席堰き葭屏風
網戸 /
けふよりは灯をとらせぬといふ網戸
網戸より窺ふ隣家よいっぱり
網戸より灯が洩れ闇に赤い花
蚊が多し網戸が開いておりゃせぬか
網戸に隙道理であちこち喰はるるよ
蚊を入れぬ網戸の開け閉め慣れたもの
昼寝覚網戸に蝉の張り付きゐて
地震あまりに激しく網戸に手掛けしまゝ
網戸より汐の香ふふむ夜の冷気
せせる蝿そこは網戸よ出でられず
えらい日の続く庭木を網戸越し
湯治場の網戸に虫の灯を取りに
網戸より夏枯れの庭見渡す日々
かなぶんは網戸の不意打ち啖ひけり
網戸打つ音も大物火取虫
熱帯夜網戸をせせる羽音して
黒揚羽吾と見合へる網戸越し
黒揚羽網戸がありて引き返す
海風のとほる浜辺にして網戸
新しき網戸が風を迎えけり
横顔に網戸の風が当りをり
新品の網戸擦り抜け来たるかぜ
風だけを通す網戸に夜の更けぬ
と或る夜の網戸の外に金亀虫
娑婆といふ紅蓮を堰きて網戸あり 寒暑
灯を取りにきたぞと網戸の外の蝉 随笑
天牛が網戸を這へる宿の朝
教会の網戸の窓を風抜け来
網戸あり即ち通る風があり
蟷螂のけふは網戸に来てゐしか
網戸打つ火取虫にや今の音
雷に蝉網戸へ緊急避難せり
灯も取れずに網戸にゐたか金亀虫
火取蛾に網戸の関門ありにけり
風の他虫音網戸を抜けてくる
網戸より入り家抜けて去ぬ夜風
網戸より吹き込む風は海辺より
(末尾は句集名)
籐椅子 /
籐椅子に腰を浮かせてまた余震 暮津
籐椅子に深々沈むペイネ館 燕音
籐椅子のありし昔の家懐かし
くつろげと籐椅子ありぬペイネ館
(末尾は句集名)
夏暖簾 /
夏のれん捻り鉢巻きして出づとっつあん
うなぎ屋の鰻の「う」の字夏のれん
◆行事
競馬 /
競馬あり大道芸あり野毛五月 暮津
天皇賞走破の馬体湯気揚げて 随笑
(末尾は句集名)
【参考】
大道芸の拙句
大道芸背伸びしてみる五月晴れ
競馬あり大道芸あり野毛五月
大道芸見ながら路地店心太
葉ざくらの野毛を経巡る大道芸
大道芸立見薄暑の仏具屋まへ
大道芸立見燕が頭を掠め
風船より軽き身ごなし大道芸
「イマジン」涼しくテキサス生れの大道芸
大道芸ネタを小出しに野毛薄暑
髯・マント全て手作り大道芸
かば焼の煙の流れて大道芸
客巻き込み薄暑の野毛の大道芸
大道芸遂に火のつくジャグリング
大道芸川端柳吹かる辺に
鼻の辺り少し日焼けて大道芸(野毛大道祭)
カタコトの日本語あやつり大道芸
投げ銭を促す夏帽大道芸
大道芸祭囃すやオッペケペー 素抱
大道芸蒸す日を火噴き男かな 寒暑
永日の掏摸も輪中に大道芸 寒暑
大道芸なべて陽炎ふ自由席 寒暑
野毛山下春ともなれば大道芸 寒暑
春荒れに大道芸の危ふかり
槐散り大道芸の似合ふ街
五月晴れ大道芸に人出たり
永日の大道芸でも見にゆかん
(末尾は句集名)
桜桃忌 /
同じ本購ひゐしか桜桃忌 素抱
書棚の本入れ替えてみる桜桃忌 素抱
(末尾は句集名)
鞍馬の竹伐 /業平忌 /%
形代 /
形代の袋の朱文字蟻這へる
形代の書きものこそと包みけり
茅の輪 /
拙句 茅の輪
ちと乱る茅の輪をくぐり抜けにけり 素抱
海風の吹き抜け茅の輪潜りけり(瀬戸神社) 暮津
茅の輪の香いやが上にも募らせ雨 素抱
勤め人茅の輪せかせか潜りけり 暮津
行きずりの人も茅の輪の列に入り 素抱
大茅の輪雨具携え潜りけり 鳩信
大茅の輪乾ける処と濡るる処 暮津
大茅の輪仕上り風が先づくぐる ももすずめ
大茅の輪大蛇を跨ぐ心地せり ねずみのこまくら
夏祓済みて茅の輪と常夜灯
ゆすり蚊と名越の祓受けにけり
真っ向に海や茅の輪の雨湿り
常夜灯点く中茅の輪潜りけり
樟の根の雨湿りして夏祓かな
蜘蛛の囲を作る夏越の只中も
夏祓済む境内にゆすり蚊と
菅抜の一見公務員風の男
樟の木の頭の刈り込まれ夏祓
引き続き茅の輪潜りとなりにけり
腕組んで茅の輪くぐりの列にをり
この吾もその数に入る御祓かな
狩衣に夏越の風が渡りけり
狩衣は風より柔き大祓(瀬戸神社 夏越の祓)
夏越なる楠煽られて祓ひ待つ
鰐口を鳴らしゐる子や夏越なる
夏祓石段下りしさきに海
神官は子息の代や夏祓
今成りし茅の輪ゆっくり潜りみぬ
茅の輪潜り鼠のごとくする子あり
大茅の輪弁天島を入れにけり
孫美雨に大いに余る茅の輪かな
鼻先に広がる茅の輪の匂ひかな
大茅の輪多少四角くなりにけり
跨がるゝ茅の輪どでっと横たはり
鯉の上に鯉乗り上げて夏祓
匂ひたつ茅の輪をずいとくぐりけり
病院を抜け来て茅の輪くぐりけり
(末尾は句集名)
◆動物
螻蛄 /
いとどと螻蛄こもごも露けくなると云ふ
螻蛄鳴くや疎遠となりし朋(とも)らの貌
螻蛄鳴かす俳句は興の持ち処
螻蛄鳴くやかへすがへすも生きあせり
おけら火の八坂へ遅れ参りせり
優曇華 /
優曇華の善玉悪玉吹かるまま
鰻 /
けふの暑さ鰻のぼりと聞き凹む 暮津
ご無沙汰の鰻に箸をつけにけり 暮津
雨の中漁して鰻の地獄どめ 寒暑
鰻の肝横目に見て過ぐ街薄暑 暮津
鰻の香ながす鰻松あな憎し 素抱
鰻をり光湛えて桶の底 石鏡
鰻屋の主好みの歌麿絵 石鏡
鰻喰うて間延びした顔店を出づ 随笑
鰻喰ふ客を横目に鰻喰ふ 暮津
鰻召せ長寿の因(もと)の鰻召せ 宿好
鰻松に入れば鰻のやうな客 素抱
鰻松も賑はひみせぬ宵祭 素抱
鰻繁の黄のおしぼりの囀りさう 随笑
鰻描く腹を真白にたらし込み 石鏡
割かれそむ鰻を淋しく見下ろせり 暮津
蒲焼きなど母に奢ろうかとおもふ 宿好
蒲焼に呪文のごとく山椒かけ 石鏡
桐咲いて鰻の寝床のやうな町 (出雲崎(雲の浦)) 寒暑
渓流に土用鰻を活かしをり 随笑
胡座かき古本整理鰻の日 寒暑
秋霖をついて朝より八目鰻(やつめ)漁 随笑
照り返し強し鰻の日の舗道 ねずみのこまくら
上背ある次男と土用鰻食ぶ さざなみやつこ
待つ客の鰻の目して鰻の日 暮津
昼餉のあとごろり鰻にでもなるか 随笑
東海道三嶋の宿(しゅく)のうなぎ喰ふ 随笑
八目鰻(やつめ)捕る川の向かうの頑固爺 随笑
飯の量注文つけて鰻の日 暮津
晩酌に鰻のモツを奮発す 暮津
風少しありて助かる鰻の日 随笑
蜆は朝鰻は午後と漁仕分け 随笑
鷽替の戻りがてらをうなぎ屋に 暮津
待つ客の鰻の目して鰻の日
草の上鰻震はす鰻のド
清流に鰻一荷を浸けてあり
鰻の日これみよがしに煙流す
鰻あはれ白身晒して一文字
三度の飯うなぎを忘れをりにけり
うなぎ屋の鰻の「う」の字夏のれん
うなぎ屋の座敷にあがる皮ブーツ
鰻焼く団扇捌きも年季もの
鰻這ひ光の波動生みにけり
大鰻動けば光たゆたへり
副作用何が何だか鰻の日
うなぎの香鋪道に洩るる宵祭
ろくすっぽ捕れぬ鰻に舌鼓
頭の中のもやもやとるに鰻食ぶ
蒲焼きの鰻は品薄ジャポニカ種
秋口の鰻のミイラとご対面
土用鰻年寄然として食うぶ
鰻の日中食のあと寝そべりて
戻り道のらりくらりと鰻の日
ほうほうの体にて戻る鰻の日
ありていに云へば鰻は江戸の味
食さんと母を伴ひ鰻の日
鰻重のおん母少し箸を付け
丑の日の鰻長寿にあやかれと
朝靄の止どまり流れ鰻漁
魚信(あたり)なく沼に鰻の大昼寝
大きドの底にのた打つ沼鰻
鰻漁潮水に舟洗ひ立て
散策の湯町に土用鰻の香
長身を横たへ鰻寝転ぶ図
寝そべって土用鰻のごとく居り
長身の鰻よろしく寝転ぶ図
寝返りを打ちて鰻の日の寝相
うち延べて鰻の寝床どれ一ト寝
うだる日は昼寝に如かず鰻の日
溜息をついて鰻の日を送る
全身であらがふ鰻に止どめさす
大南風入れて三嶋のうなぎ屋は
鰻喰うて柳の風に吹かれゆく
花過の昼のうなぎ屋立て込みぬ
ふとん剥ぎゐたる寝相は落鰻
野分あと鰻昇りに温度計
昼寝する姿は八つ目鰻のやう
四万十川の天然鰻潜む淵
四万十川に合羽光らせ鰻漁
花どきの鰻の出前頼むべし
(末尾は句集名)
拙句 土用鰻
鰻喰うて間延びした顔店を出づ 随笑
鰻喰ふ客を横目に鰻喰ふ 暮津
渓流に土用鰻を活かしをり 随笑
照り返し強し鰻の日の舗道 ねずみのこまくら
上背ある次男と土用鰻食ぶ さざなみやつこ
飯の量注文つけて鰻の日 暮津
土用鰻年寄然として食うぶ
散策の湯町に土用鰻の香
谿流に土用鰻を活かしをり
寝そべって土用鰻のごとく居り
(末尾は句集名)
鯰 /
川狩の鯰を宙に抛り上げ(少年時代回顧) 暮津
涼しさは染めつけ鯰向付 鳩信
鯰の髯弁士一世風靡せり 寒暑
料峭の動きの鈍き鯰漁 寒暑
遁走の鯰一匹瓢鯰図
鯰愛づ親王殿下であらせられむ(親王誕生)
鯰こづく国に生まれて防災日
ぶれる画面鯰は昼寝より覚めて
大鯰に跨るここち地震の背は
大鯰暴れし村の新嘗祭(中越地震小千谷)
父の日を鯰の如く酔ふことなし
悪食(あきじき)は呆れるほどの梅雨鯰
疎開地と云へば島田の梅雨鯰
鯰とは島田の川で別れたきり
鯰に逢ふ旅なんぞ又してみたし
喰はせもの鯰のかかる莫迦竹瓮
長き夜に首擡げたる大鯰
古文書の鯰男が着物着て
(末尾は句集名)
鮴 /
雨合羽光らせ鮴のがらびき漁 寒暑
(末尾は句集名)
濁り鮒 /
亀の子 /
ごり押しの一手亀の子岩に乗る 随笑
泳ぎ出す亀の子鼻を反らしけり ぱらりとせ
亀の子は首から泛かむこと覚え 宿好
亀孵る白砂と御坊指さしぬ 宿好
甲羅干しなどして亀の子亀之助 宿好
銭亀のいづれ遜色無かりけり さざなみやつこ
蓮田べり亀の子ぷかぷかやってをり 鳩信
(末尾は句集名)
山椒魚 /
山椒魚の手足を置ける水温む さざなみやつこ
何はともあれ覇気こそ大事山椒魚 寒暑
山椒魚掻く手ぶらんと沼の秋
出逢はぬ筈山椒魚は夜行性
かさつける黄葉退ければ山椒魚
一睡後山椒魚のごとく居る
うすのろの山椒魚(はんざき)に似て風邪寝の身
高曇り山椒魚の潜む池
春陰の山椒魚の大卵
ためらひつやらないでゐる山椒魚
のそとゐて山椒魚(はんざき)のごと家居かな
はんざきとなりのし歩く泉の底
山椒魚(はんざき)を覗けば覗き返さるる
(末尾は句集名)
蠑螈 /
井守の腹それから戦後五十年
ゐもり殺め掻い堀りといふ子の儀式
蟹 /
お昼のニュース越前に蟹あがるとよ 寒暑
こうばく蟹波陸削る夜なりけり さざなみやつこ
コメツキ蟹健啖にして砂団子 石鏡
ずわい蟹両腕組んで豪のもの ぱらりとせ
せいこ蟹蟹丼にして唐錦 寒暑
たらば蟹ずばと包丁入れにけり さざなみやつこ
チゴガニに潮が上げ来る芦襖 寒暑
チゴガニのダンス伴奏芦の風 寒暑
チゴガニのラジオ體操散開し 寒暑
チゴガニの遠目利く中闖入す 寒暑
チゴガニの応援団の白手套 寒暑
チゴガニの歓迎振りに唖然とす 寒暑
チゴガニの見方はしゃがんで頭を低く 寒暑
チゴガニの上げ潮招く踊かな 寒暑
チゴガニの百千萬と我対す 寒暑
チゴガニの踊を真似て去なんとす 寒暑
チゴガニの鋏上げ下げバッタンコ 寒暑
チゴ蟹の小心者に芦の風 石鏡
チゴ蟹の万歳小旗持たせたし 石鏡
つままれて脚硬ばらす磯屑蟹 さざなみやつこ
ぴらぴらと蟹の口許南風吹く ももすずめ
ぶつかつてここは譲れぬ蟹同志 ももすずめ
もくもくと藻屑蟹漁濁り川 随笑
ロンパリの蟹の目干潟観察会 石鏡
わらわらと乾きて蟹の砂だんご 素抱
芦騒の煽りくらひてコメツキガニ 寒暑
磯屑蟹打ちて雨脚強くなる さざなみやつこ
蟹さんの型押し遊び灼け砂に 素抱
蟹に眼を凝らして蟹のやうな顔 (下田 稔氏) ももすずめ
蟹のいふ事情とやらを聞きやらむ 燕音
蟹の眼を濡らして挙がる潮けむり 素抱
蟹の肉せせる腕をあやつりて 暮津
蟹は目を縦に上げくる潮を見て 素抱
蟹横に横に夕日を引摺れる ももすずめ
蟹蟹と岩を起こして蟹捕る子 (金澤八景 野島海岸) 鳩信
蟹漁の雨脚白し最上川 随笑
蟹奔らせ青嵐到る巾着湾 寒暑
柿芽吹き蟹の鋏のやうな芽を ぱらりとせ
韓信の股潜りかやまんじゅう蟹 (少年時代、マメコブシ蟹をまんじゆう蟹と呼び親しめば) 素抱
岩に手を掛けて退ければきょとと蟹 随笑
岩畳蟹追いかけて追いかけて 宿好
気散じの虫首擡げチゴガニ見に 寒暑
駆け廻り蟹は干潟のプロデューサー ぱらりとせ
穴に脚かけて警戒チゴガニは 寒暑
穴より目我チゴガニの視野にあり 寒暑
穴を出て小蟹疾(と)っ疾(と)と駆け出せり さざなみやつこ
穴掘れり森の隠者の赤手蟹 石鏡
口もとにぶだう運ぶは蟹めくも さざなみやつこ
降り出して干潟を蟹のわらわらと ももすずめ
砂蟹の穴に押し入る無理無体 さざなみやつこ
四角ばる青柿の面(つら)蟹に似て 随笑
酒やれば風が募りて松葉蟹 鳩信
小網代の森の育てし赤手蟹 石鏡
小網代湾蟹の棲み分け聞く干潟 石鏡
浄土ケ浜蟹の称ふるお念仏 随笑
藻畳の中にて蟹の目覚むらん 寒暑
待宵の濡れ岩隠り蟹の爪 ねずみのこまくら
大仰に吾見上げては蟹あるく 随笑
沢蟹のカタンと転けて宇津谷道 随笑
沢蟹のとことこ宇津谷地蔵盆 燕音
沢蟹の桔梗いろの肯を押ふ さざなみやつこ
沢蟹の脚すりぬけて奔る水 さざなみやつこ
沢蟹の歩むその先靴で堰き (宇津谷) 燕音
沢蟹も雨にもみづる凹凸竄(おうとつか) 宿好
椿落つ小坪の蟹の横這い径 暮津
泥を食ふ蟹を見つめて腹空けり ももすずめ
渡り蟹いろの夕映え額染めて ぱらりとせ
渡り蟹の食べ殻を捨つ十二月 暮津
渡り蟹甘藻の林はすかひに 素抱
冬の虹のこのこ蟹が這ひ出して 石鏡
冬灯蟹の甲羅はキチン質 さざなみやつこ
盗み歩きする蟹そこそこに面白し 随笑
道一本引き込みアカテガニの森 (三浦半島 小網代湾) 寒暑
馬穴見せ蟹捕り兄弟鼻高々 石鏡
弁慶蟹葭の葉騒に目を上げぬ ももすずめ
泡の中蟹の何やら策しをり ぱらりとせ
牧谿猿蟹捕へんと身を乗り出す (室町水墨画展) 鳩信
目の遇ひし蟹が脳裡にちらつくも さざなみやつこ
夜なべの肩凝りゐて蟹の甲羅ほど 寒暑
踊るならタンゴに如かず高脚蟹 ぱらりとせ
来る波に蟹のたじろぐ岩っ角 ぱらりとせ
旅先の藻屑蟹めく目覚めとも (草薙温泉) 随笑
纜を岩に渡して蟹捕舟 随笑
鋏抱き磯蟹波をかぶりけり ももすずめ
蟹蟹と岩を起こして蟹捕る子
冷酒に蟹蒲といふもどきもの(蟹蒲鉾)
蟹の目線及ぶあたりを蟹装ふ
巾着湾蟹がさ走る蟹干潟
せいこ蟹蟹丼にして唐錦
少年時代、マメコブシ蟹をまんじゅう蟹と呼び親しめば
駆け回る砂蟹素足むずむずす
吸物の渡り蟹椀手重りす
渡り蟹の食べ殻を捨つ十二月
椿落つ小坪の蟹の横這い径
たらば蟹能取の宿で酌むごとし
たらば蟹年酒大いに進みけり
蟹の肉せせる腕をあやつりて
くれなゐに顔染まるまで蟹で酒
冬の虹のこのこ蟹が這い出して
馬穴見せ蟹捕り兄弟鼻高々
ロンパリの蟹の目干潟観察会
チゴ蟹の小心者に芦の風
チゴ蟹の万歳小旗持たせたし
小網代の岩の下好き平磯蟹
鳶いるわいるわ干潟の蟹狙ふ
蟹四十餘種棲む崎の集水域
小網代の鳶が天敵豆拳蟹(まめこぶし)
鳶狙ふ蟹の文様なれば地味
小網代湾干潟観察蟹講座
赤手蟹森の木暗に鰓呼吸
小干潟に毛房磯蟹長らへし
穴掘れり森の隠者の赤手蟹
芦原蟹評すに一寸凶暴と
赤手蟹森との共生計らねば
踊るチゴ蟹近頃運動不足にて
小網代の森の育てし赤手蟹
赤手蟹見んと携ふ万歩計
三崎の森蟹を生かして蜷生かして
チゴ蟹のだんだん見えてくる干潟
チゴ蟹の右に左にさゆらげり
コメツキ蟹健啖にして砂団子
チゴ蟹の雄とよみづいろ覆面して
赤手蟹見来し翌日暗に雨
倒木を潜りひょっこり赤手蟹
海浜のレストランにも赤手蟹
赤手蟹ハケ道伝ひ来ることも
脛にも毛碁盤模様の弁慶蟹
芦原蟹ぴんと遠目が利く目立て
チゴ蟹の挨拶応へ遣らねばと
小網代の蟹の棲み分け聞く干潟
桟橋に蟹弁天屋荒川屋
秋潮の文目押す浜虚蟹
赤手蟹の産卵報ず神奈川版
蟹さんの型押し遊び灼け砂に
わらわらと乾きて蟹の砂だんご
釣具屋のごたごたしてゐる蟹の昼
蟹の眼を濡らして挙がる潮けむり
渡り蟹母校より見ゆ甘藻の海
渡り蟹甘藻の林はすかひに
蟹漁に向うエンジン音高らか
お昼のニュース越前に蟹あがるとよ
けふ以て蟹漁開襟日本海
蟹漁の裏日本に冬立てり
夜なべの肩凝りゐて蟹の甲羅ほど
蟹の目は縦に上げくる潮を見る
干潟の穴かはるがはるに蟹の貌
韓信の股潜りかやまんじゅう蟹
肘張りてマメコブシ蟹股潜る
卓上に春節のいろ上海蟹
上海蟹がんじがらめに中華街
柿芽吹き蟹の鋏のやうな芽を
酒やれば風が募りて松葉蟹
牧谿猿蟹捕へんと身を乗り出す
涼しめと織部蟹絵の魯山人
心地よき素足干潟を蟹の這ふ
砂被り磯蟹白を切るつもり
乾ききる干潟とことこ蟹の這ふ
隠れゐし岩を持ち上げられ磯蟹
きいきいごゑ蟹の赤ちゃん捕まえて
追いつめられ蟹突堤に脚を掛け
蟹を捕る兄とバケツを持つ妹
蟹雑炊風邪引く妻と差し向ひ
風邪引きの力つけんと蟹雑炊
沢蟹の面テを起こす山毛欅黄葉
沢蟹のとことこ宇津ノ谷地蔵盆
宇津ノ谷の雨の山路を蟹よぎる
沢蟹の小雨まみれの一二匹
宇津ノ谷の沢蟹に遭ふ登り道
現れて小雨まみれの沢の蟹
沢蟹の子の雨水に手足透け
いっぱしに鋏振り上げ蟹の子ら
沢蟹の鋏いの字に怒るらし
沢蟹のつぶらなる目に朝が来ぬ
沢蟹の子の歩む先靴で堰き
蟹のいふ事情とやらを聞きやらむ
蟹を食ふ素手いそがしやいそがしや
側近は側近で蟹突つき合ふ
沢蟹に雨降り止まぬ詩仙堂
沢蟹も雨にもみづる凹凸竄(おうとつか)
日焼けして蟹の爪色両腕
雨摶って蟹の目いろの額の花
セルロイドバケツの底を鳴らす蟹
岩畳蟹追いかけて追いかけて
行き合ひて横柄な蟹其処退かず
椀の中おやおや浅蜊の隠れ蟹
下り道蟹の行者と往き合へる
鋏挙げ沢蟹威嚇するつもり
するすると朝の一舟蟹捕りに
旅先のもくず蟹めく目覚めとも
もくもくと藻屑蟹漁濁り川
蟹捕りのドをうち沈め最上川
蟹漁の雨脚白し最上川
藻屑蟹屯すあたり笹舟寄す
纜は岩に括られ蟹捕舟
早朝の藻屑蟹漁最上川
ラバウルへ上陸蟹と目が遭ひぬ
浄土ケ浜蟹の称ふるお念仏
潮透く仏ケ浦の朝の蟹
四角ばる青柿の面(つら)蟹に似て
箱根山中沢蟹踏まな下り路
箱根路の沢蟹奔る下り道
沢蟹を踏みさうになる箱根みち
岩に手を掛けて退ければきょとと蟹
芽木の間海見え蟹の横這ひ道
けふの昼餉蟹雑炊に異論なし
大仰に天見上げては蟹あるく
目と目合ひ蟹と暫く睨めっこ
盗み歩きする蟹そこそこ面白し
沢蟹カタンと転けて宇津ノ谷峠口
もみづる中蟹の如くに加仁湯出て
独り言つ蟹の半信半疑かな
缶の蟹逃がして了る磯あそび
突き出せる崎のかたちに渡り蟹
チゴガニは「勝って来るぞ」の万歳蟹
己(し)が穴にもぐり損ねし蟹五六
蟹奔らせ青嵐到る巾着湾
蟹穴を出づるを怯ます影法師
蟹の棲む谷翔ぶ珍品蜻蛉かな
朱の蟹の奔る残像犬枇杷に
藻畳の中にて蟹の目覚むらん
柿嫩葉蟹の鋏の形して
虚蟹年立つ沢の水底に
(末尾は句集名)
蝸牛 /
ここに亦漫ろ歩きの蝸牛 暮津
その殻も薄手に秋のかたつむり 石鏡
でで虫に深淵なせる油壷 ももすずめ
でで虫のでん公雨を呼びにけり ぱらりとせ
でで虫の引っかかる殻さてどうする 素抱
でで虫の雨音聞いて大きくなる 暮津
でで虫の角さえさはれぬ女(め)の子にて 素抱
でで虫の角のほとりへ寝ぼけ貌 随笑
でで虫の止まる広葉に朝が来て ももすずめ
でで虫の縮むところと伸ぶところ 随笑
でで虫の大いなる伸び朝朗(あさぼらけ) 随笑
でで虫の当推量が外れけり ももすずめ
でで虫も其角の墓も傘の内 さざなみやつこ
でんでん虫雨が当りて角曲げぬ 素抱
なほ容とどむ朽木に蝸牛 素抱
もう其処を動かぬ冬のかたつむり 随笑
安穏のいつまで秋のかたつむり 石鏡
宇宙(コスモス)の誕生の謎蝸牛 暮津
殻負へる蝸牛より倖せに 素抱
角振りてでんでんむしは唄ふ虫 素抱
竿の上滑り易くて蝸牛 素抱
疑ひの目をもて眺むかたつむり(害虫?) 暮津
樹脂透きてなほ降る雨や蝸牛 素抱
巡礼の遠のくやうに蝸牛 ぱらりとせ
人はローン蝸牛は殻を負ひ晩夏 素抱
禅林に降り残さるゝ蝸牛 寒暑
総領の甚六にして蝸牛 暮津
竹木石何でも登る蝸牛 暮津
長雨に振り籠められしかたつむり 暮津
通園の黄色のブーツでんでんむし 素抱
庭中のでで虫蒐め一つ木に 素抱
冬眠を決めかねてをりかたつむり 随笑
梅雨入の湯舟にでんでんむしの唄 随笑
白塗のバルコン滑る蝸牛 暮津
毎日を気楽に気楽にかたつむり 素抱
蝸牛さうださうだと頷けり 暮津
蝸牛そこで迷うて何とする 素抱
蝸牛の渦より宇宙膨張説 素抱
蝸牛渦のぐるぐる颱風裡 燕音
蝸牛化シテ蛞蝓(カツユ)トナラン今日カラハ 宿好
蝸牛課題は生活習慣病 石鏡
蝸牛乾ききるにも限度あり 素抱
蝸牛寄り易き木ぞ月桂樹 素抱
蝸牛手にして宇宙膨張説 暮津
蝸牛遅々と幼なの眼の高さ 素抱
蝸牛程の私の運動量 素抱
蝸牛妙な明るさ遺しけり 素抱
蝸牛無口は美徳の一つなり 暮津
蝸牛連休出歩く当てもなく 石鏡
蝸牛喃語庭より聞こえけり 素抱
でで虫に芋の葉脈縦走路
蝸牛庭木にスローライフかな
よく見れば猿の腰掛蝸牛に似て
蝸牛はゆらゆら動くコロッセオ
その昔(かみ)は水底歩みし蝸牛
長雨に振り籠められしかたつむり
寺社方のどの樹ともなくかたつむり
蝸牛無口は美徳の一つなり
白塗のバルコン滑る蝸牛
蝸牛手にして宇宙膨張説
そのかみの海恋ふ月の潟巻貝(かたつぶり)
宇宙(コスモス)の誕生の謎蝸牛
蝸牛さうださうだと頷けり
蝸牛苦手なる樹のありやなし
竹木石何でも登る蝸牛
疑ひの目をもて眺むかたつむり(害虫?)
でで虫の雨音聞いて大きくなる
蝸牛すらすら登るさるすべり
ここに亦漫ろ歩きの蝸牛
園芸の真似事でで虫捕りて捨つ
でで虫がけふは胡瓜にとりつける
総領の甚六にして蝸牛
甦る汝でで虫の背をこづく
蝸牛四十九日を待つ許り
大胆に舗道わたれり蝸牛
長雨を喜び秋のかたつむり
安穏のいつまで秋のかたつむり
かたつむりぱたぱた落ちて秋の庭
その殻も薄手に秋のかたつむり
参道の笹に大きなかたつむり
過ぎる日も来る日も雨の蝸牛
蝸牛課題は生活習慣病
蝸牛連休出歩く当てもなく
角立てて何と交信蝸牛
蝸牛塀に沿ひゆく午の風
蝸牛行動半径同じうす
なほ容とどむ朽木に蝸牛
蝸牛蝉と並んで雨後の樹に
殻負へる蝸牛より倖せに
蝸牛日陰求めて退散す
人はローン蝸牛は殻を負ひて夏
蝸牛そこで迷ふて何とする
運命とは命を運ぶとせん蝸牛
蝸牛角の曲芸披露せり
蝸牛の渦より宇宙膨張説
尋常な大きさならぬ蝸牛
のめり込むことは固より蝸牛
蝸牛目指せるさきに峠あり
蝸牛向き替ふ角を立て直し
竿の上滑り易くて蝸牛
蝸牛濡れ竹棹のうらおもて
でで虫の引っかかる殻さてどうする
蝸牛明るさ残し去りにけり
蝸牛立ち去りし跡明るくて
蝸牛妙な明るさ遺しけり
蝸牛小雨の幹を急ぎけり
蝸牛遅々と幼なの眼の高さ
庭中のでで虫蒐め一つ木に
蝸牛来信の無き郵便受
でで虫の角さえさはれぬ女(め)の子にて(孫)
蝸牛喃語庭より聞こえけり
蝸牛寄り易き木ぞ月桂樹
しゃがみ込む孫の鼻先蝸牛
蝸牛殻透くまでに半夏雨
樹脂透きてなほ降る雨や蝸牛
かたつむり葉裏に廻り雨宿り
蝸牛程の私の運動量
蝸牛いやいやをして向きを替ゆ
蝸牛老ゆると思へば老ゆるなり
蝸牛ゆめゆめ大きくなる勿れ
角の長短書にあるとほりかたつむり
家もまた齢重ねるかたつむり
毎日を気楽に気楽にかたつむり
蝸牛乾ききるにも限度あり
でで虫に葉山一円青しぐれ
かたつむりどうしてゐるか豪雨のあと
蝸牛雨は上がれど風残る
でで虫の探り直せる空の奥
風呂場にてでんでんむしの唄低く
角振りてでんでんむしは唄ふ虫
通園の黄色のブーツでんでんむし
蝸牛雨に肥りてぼったりと
かたつむり殖やす青葉の雨が降り
刈り株の間亡骸の蝸牛
まいまいのなむからかんのとらやぁやぁ
まいまいの円相風にゆがみけり
まいまいの連れ舞田蛙囃しけり
まいまいの気合ひの入りし一円相
まいまいの各々堂々巡りかな
でで虫の泳げる風のなまぬるき
やるまいぞやるまいぞとて蝸牛
藪の中人程もある蝸牛
囃し物に乗りて蝸牛をなぶりづめ
ヤットナ葉移りをせる蝸牛
演目は老を忘るる蝸牛
蝸牛渦のぐるぐる颱風裡
蝦夷育ちこのまいまいを見よといふ
小振りなる蝦夷のまいまい蕗の葉に
芋の葉に一ト夏過す蝸牛
昼花火まいまいつぶろの肝を抜く
木雫を吹き落とす風蝸牛
蝸牛化シテ蛞蝓(カツユ)トナラン今日カラハ
もう其処を動かぬ冬のかたつむり
あぢさゐに未だ居て冬のかたつむり
冬眠を決めかねてをりかたつむり
あぢさゐの葉を這ふ秋のかたつむり
秋も末どうするつもりかたつむり
露の大石蝸牛庵大人の墓
無為の身の起居悠々蝸牛
梅雨入りの湯舟にでんでんむしの唄
でで虫の大いなる伸び朝朗(あさぼらけ)
かたつむりでんでん太皷鳴る中を
でで虫の角のほとりへ寝ぼけ貌
あぢさゐの葉裏好めるかたつむり
別の葉に体重移し蝸牛
でで虫の縮むところと伸ぶところ
庭先の石にねむれり蝸牛
朝の内まいまいつぶろの呼ぶ雨か
禅林に降り残さるゝ蝸牛
まいまいの描く弧毎日倖か
まいまいの円描き損ずこともあり
舞ふまいまい雨の水輪に紛れけり
まいまいの直進そのあともたもたす
まいまいの一差し舞ふて呉れにけり
でで虫に楓下枝の岐路ありぬ
一ト冬を越え来し沙羅の蝸牛
(末尾は句集名)
蛞蝓 /
なめくじの絶滅計画たてにけり 暮津
なめくじり昨夜歩きしか銀の道 暮津
なめくぢの所業リンチに値せむ 暮津
なめくぢの請願届き雨三日 随笑
なめくぢは極刑草鞋虫は放免 暮津
なめくぢら砥石溶かしにかかりけり ももすずめ
一言に気分害しぬなめくじり 暮津
家裏の鉢底漁るなめくじら 素抱
小肥りな躰を伸ばしなめくじり 暮津
植木鉢退けなめくじり狩りにけり 暮津
唇のごとくなめくじ歪みけり 暮津
団子虫蛞蝓同居鉢の底 暮津
鉢退けられあらはづかしのなめくじり 暮津
蛞蝓に好かれて良寛さんの墓 寒暑
蛞蝓の光を溜めて薄笑ひ 暮津
蝸牛化シテ蛞蝓(カツユ)トナラン今日カラハ 宿好
とりつくろふ笑ひ泛かべてなめくじり
なめくじり世辞とは判ってゐるものの
蛞蝓が舐めゐしトマト敬遠す
なめくじの絶滅計画たてにけり
葉陰よりわれを窺ふなめくじり
唇のごとくなめくじ歪みけり
鼻薬効かせなめくじ蒐めたる(飲みさしビール)
蛞蝓と蛭とは正しく異母兄弟
蛞蝓の光を溜めて薄笑ひ
蛞蝓の顔すら溶けてしまひをり
一言に気分害しぬなめくじり
なめくじにコスモスの苗丸坊主
光沢が何より証拠なめくぢり
植木鉢退けなめくじり狩りにけり
ベゴニアの花殻なめくぢ捕るごとく
なめくぢは極刑草鞋虫は放免
償いは石もて撲たるなめくぢら
ガーデナー朝から蛞蝓退治かな
なめくぢの所業リンチに値せん
鉢退けられあらはづかしのなめくじり
団子虫蛞蝓同居鉢の底
小肥りな躰を伸ばしなめくじり
なめくじり昨夜歩きしか銀の道
蛞蝓に喰はれ鉢花丸坊主
家裏の鉢花漁るなめくじら
なめくじらゐてもよさそな鉢返す
蝸牛化シテ蛞蝓(カツユ)トナラン今日カラハ
なめくぢの言上届き雨三日
なめくじの上目遣ひをせるごとし
蛞蝓に好かれて良寛さんの墓
(末尾は句集名)
蚯蚓 /
ぺちゃんこに蚯蚓国道一号線 暮津
みみず棲むことが上出来腐葉土と 暮津
花火果つその大空のみみず腫れ 暮津
蟻達がどうのかうのと蚯蚓曳く 石鏡
球根の植え付け蚯蚓庭追はれ 石鏡
掘り返して団子虫やら蚯蚓やら さざなみやつこ
杭打ちて二月の蚯蚓驚かす 宿好
祭くる門川に殖ゆ糸みみず ねずみのこまくら
手を抜けばかうなる見本蚯蚓の死 暮津
洗ひ場の底にうごめく大蚯蚓 燕音
大蚯蚓仏となりて蟻の変 寒暑
恥部を見る顔付きをして蚯蚓見る 暮津
紋章のごとく大蚯蚓の轢死 暮津
卍為し蚯蚓が死んでゐたりけり 暮津
まつはれる翳に浮彫り蚯蚓の死
太蚯蚓踊り出でたる祭月
大蚯蚓の骸舗道の灼けてをり
夏木空き了へて腕の蚯蚓腫れ
野びる掘すっぽ抜けたる根に蚯蚓
地中より春もたらせる蚯蚓のいろ
土中まで蒸す日や蚯蚓踊り出づ
ぬるみ初む水に蚯蚓の伸び縮み
あきらかに蚯蚓の機嫌そこねけり
傍目にはみみずに見える賀状あり
涅槃図の号泣蚯蚓に至るまで
蚯蚓眉むずと吊り上げ初閻魔
昆陽の甘藷畑跡みみず這ふ
蚯蚓よりましな啼き方する蝉も
参詣の足にかけるな這ひ蚯蚓
(末尾は句集名)
蟇 /
この家の主貌して蟇 暮津
サイダーの大きなげっぷ蟇めける 素抱
のこのこと出て来し蟇と門涼み 寒暑
へどもどと蟇に遇ひたること申す 暮津
隠棲の仕方を蟇に教はりぬ 暮津
遠方より朋来るごとく蟇 暮津
言の葉のでっくわすとは蟇にこそ 暮津
後退る方は当方蟇でなし 暮津
出っくわす蟇の話につけ足して 寒暑
振り上げた拳を何處へ降ろそか蟇 素抱
棲みつける蟇ものそりと門涼み 素抱
草刈られ追はるゝ蟇のその大股 暮津
断るに蟇の威厳を借りたきもの 暮津
踏み外すことが愉快でひきがへる 素抱
葉隠りに世の礎のごとき蟇 暮津
蟇が家にわれらが間借りしてゐるよな 暮津
蟇とことん措辞にこだはりて 暮津
蟇詠もうとすれば擦り抜けて 暮津
蟇我にそっぽを向いたまゝ 暮津
蟇我を見上げあなたが主かと 暮津
蟇去れり熱き視線を背に浴びて 暮津
蟇見とがめられてはもぐり込む 素抱
蟇荒唐無稽の世に生れて 暮津
蟇夜を上手に使ひけり 暮津
蟾蜍玄関燈のその圏に
この家の主貌して蟇
遠方より朋来るごとく蟇
常闇の葉陰に安んじ蟇
蟇うしろを振り向くこと無かり
蟇勝手知ったる蕗のみち
蟇我にそっぽを向いたまゝ
蟇我を見上げあなたが主かと
年とりて世事うち忘る蟇
蟇去れり熱き視線を背に浴びて
蟇動かざること山のごとしとも
蟇が家にわれらが間借りしてゐるよな
蟇とことん措辞にこだはりて
蟇詠もふとすれば擦り抜けて
葉隠りに世の礎のごとき蟇
断るに蟇の威厳を借りたきもの
へどもどと蟇に遇ひたること申す
隠棲の仕方を蟇に教はりぬ
噂の蟇出づとよ「さあさ、お立ちあい」
蟇荒唐無稽の世に生れて
言の葉のでっくわすとは蟇にこそ
言の葉の力蟇より教はりぬ
蟇に何と言葉をかけたらよきものやら
感服のひと言蟇の面魂
後退る方は当方蟇でなし
蟇夜を上手ぬ使ひけり
草刈って追はるゝ蟇のその大股
蟇物蔭なければ草蔭に
よき風の吹くよと蟇も門涼み
棲みつける蟇ものそりと門涼み
蟇見とがめられてはもぐり込む
蟇出づる宅地開発すすむ世に
年々に出づ蟇こたびは門にをり
今戻る家人の曰く「門に蟇」
振り上げた拳を何處へ降ろそか蟇
サイダーの大きなげっぷ蟇めける
若葉影湯口を守る石の蟇
謡六浦終演間近蟇のこゑ
蝦蟇・一つ目舌切雀圖葛籠(つづら)より
教導ふう面授なるもの蟇を前
久々の雨なれば蟇出で逢へや
罷り出て蟇夜の雨に貌濡らす
夜の蟇の鼻面に降る小糠雨
定年の或る日の蟇とご対面
蟇のごと見据え恰幅よきイタコ
蟾蜍鎮座まばたき一つだに
我が家の蟇雨まみれにて目の前に
定年の蟇の棲みつく家となり
蟇歩む己励ますごとくなり
のこのこと出て来て蟇も夕涼み
目つきより蟇の考え推し量る
出っくわす蟇の話につけ足して
俳諧の怪しげな毒振りまく蝦蟇
(末尾は句集名)
雨蛙 /
天象に通じゐるなり雨蛙
森青蛙産卵楓を選びけり
森青蛙けくと神意を告げにけり(鏡池)
森青蛙孵りて鳴けり南谷
葉っぱの上そら豆いろの雨蛙
草の葉に尻をすぼませ青蛙
刈草の色を離るる青蛙
青蛙刈草むらを潜りけり
刈草を跳ねて豆粒青蛙
天気雨小馬鹿にしたる青蛙
朝草より発たす豆粒青蛙
青蛙昨の雨量の信濃川 寒暑
青蛙(あおびっき)遠野に雨をもたらせり 宿好
刈草の色を離るる青蛙 燕音
(末尾は句集名)
河鹿 /
河鹿鳴く川の半ばは暮れてをり 暮津
河鹿鳴く川原が見えて一軒宿 素抱
河鹿ごゑ楚々とこたびは川下モより 素抱
山の湯が利いて快眠かじか宿 素抱
鬼無里村河鹿謡へり鬼女紅葉 燕音
(末尾は句集名)
燕の子 /
子燕の巣より覗けるあたま数
烏の子 /
くわくわと啼き損ねしは鴉の子
鴉の子あ音続けて練習す
子鴉の発声練習にも似たり
子鴉のそれと知らるゝ間延びこゑ
鴉の子空の端を占め常の景
馴れもしてかしましからぬ鴉の子
子鴉を揺すり直すや青嵐
界隈に子鴉が来て常の景
神木を遊び場にして鴉の子
子鴉の電柱伝ひ特訓中
鴉の子見上ぐる人を小莫迦にす
悪態をつく子鴉に生れけり
子鴉の姿もやがて樟樹頭
子鴉の電柱伝ひ特訓中 寒暑
悪態をつく子鴉に生れけり 寒暑
子鴉の姿もやがて樟樹頭 寒暑
神木を遊び場にして鴉の子 随笑
子鴉の分際にして威嚇すか さざなみやっこ
(末尾は句集名)
火取虫 /
一人舞台ひとり演ずる火取虫 暮津
遠方より朋有り森の火取虫 素抱
火取虫こんど飛んだら百年目 素抱
火取虫どきとはなれり辞書を引く 寒暑
火取虫何故こんなことをする 寒暑
火取虫火を取る夏も終りけり 素抱
火取虫火取始めの音のおどろ 暮津
火取虫光輪放ちつつ飛べり 素抱
火取虫障害物に当り落つ 暮津
火取虫掴み損ねし灯の貧し 素抱
火取虫飛び廻る輪を拡げつゝ 素抱
灯を取りに箱根の山の兜虫 随笑
部屋に舞ふ灯虫庭にはすだく虫
がむしゃらや火蛾もピストン堀口も
火取虫何かを擦り落つる音
火取虫障害物に当り落つ
一人舞台ひとり演ずる火取虫(俳句芸能説)
火取虫火取始めの音のおどろ
上踊り雨の五郎に火蛾飛んで
登山電車灯蛾の舞い込む向ひ窓
火取虫火を取る夏も終りけり
山の神お手討の火蛾捨てにゆく
火取虫旺んなる時過ぎゐたり
火蛾飛んでワヤンクリットめく晴夜(インドネシア影絵劇)
網戸打つ音も大物火取虫
遠方より朋有り森の火取虫
火取虫こんど飛んだら百年目
灯取虫黙らせんため灯を消しに
粉っぽき雨夜の灯虫低く飛ぶ
火取虫ぱたと音して何處かへ落つ
光輪に翅透かせ飛ぶ火取虫
火取虫光輪放ちつつ飛べり
火取虫一つ巡れる胸の上
火取虫掴み損ねし灯の貧し
火取虫飛び廻る輪を拡げつゝ
薩摩琵琶巴御前に火蛾の舞ふ
灯取虫おわら流しの路地よぎり
もう一つ火蛾浮き朝の露天湯に
網戸打つ火取虫にや今の音
紐引いて火取虫うち鎮めけり
火取虫何故こんなことをする
火取虫ぶうんと廻りてパタと落つ
火取虫呼び込み電球祝福す
火取虫どきとはなれり辞書を引く
(末尾は句集名)
螢 /
この谷に月と私と草螢 寒暑
さてさてと螢見の腰上げにけり 寒暑
ずぶ濡れの螢袋の一輪挿し 素抱
ときに雄渾ときに可憐に風ほたる 寒暑
トパーズいろサファイアいろの蛍とぶ ぱらりとせ
トンボ切るやうに螢の軽業師 寒暑
なまなまと葉を透き歩く草螢 随笑
ほうたると同行二人そんな日も 寒暑
ほうたるに殴りかからんばかりの風 素抱
ほうたるのサマリヤ人といふところ 随笑
ほうたるのモールス信号打つごとし 随笑
ほうたるの今日の興行終りけり 随笑
ほうたるの自家発電の灯の明し 宿好
ほうたるの独りごころの灯を提げて さざなみやつこ
ほうたるの風に浮き名を流すごと 素抱
ほうたるを吹き消す風と点す風 素抱
ほうたるを吹き落とす風やには也 素抱
ほたるにも気に喰わぬ風あると見え 寒暑
ほたるにも戀の鞘当てありぬべし 宿好
ホタルの句書き取る暗さ如何せん 随笑
ほたるぶくろ悼みは時を経て薄らぐ 暮津
ほたる火に一幹ぬつと現れにけり ねずみのこまくら
ほたる火の真直ぐ昇る茎ならん 寒暑
ほたる火の人に當たるもおかまいなく 寒暑
ほたる待つ谷戸にわくわくしてゐたり 寒暑
まろまろと螢の糧のサカマキガイ 寒暑
よろよろと平家蛍の草隠り ぱらりとせ
をじさんと云はれ螢の出を問はる 寒暑
暗がりに蛍の一つ目小僧かな 素抱
一匹は上ずるやうに飛ぶ螢 随笑
隠り沼に遅まきながらと出づ螢 寒暑
往き交へる螢大きな方を追ふ 素抱
魁の螢が先か雨先か 素抱
去り状を見て来てほたるぶくろの辺 寒暑
蛍たつ粋な噂のたつごとく 素抱
蛍との交信何を以てせん 素抱
蛍一つ訳の分からぬ飛び方す 素抱
蛍光の腕輪して子の花火待つ 素抱
蛍狩知り合ひのゐて声かはす ぱらりとせ
蛍臭き掌をおし広げ見せにけり 随笑
源氏疾うに平家これから螢谷 (横浜自然観察の森) 寒暑
更けぬればこのまま螢の宿借らん 寒暑
今日は居ずホタルガイドのボランティア 寒暑
柵の中蛍袋の変電所 鳩信
山峡を一つほたるの急行便 ぱらりとせ
手探りの径をほうたる点し呉れ 素抱
小走りに螢袋に駆け寄る子 素抱
上っぱりいつか湿りて蛍狩 素抱
人指し指蛍袋に闖入す 随笑
迅きこと飛脚のごとき蛍なり 素抱
棲み分けてここは源氏の蛍谷 素抱
川の音ほたるさっぱり出なくなり さざなみやつこ
草蛍そこそこそこと指さすさき 素抱
大風に蛍あはてゝ落っこちぬ 素抱
大螢降下わくわくする子らへ 随笑
竹林に発し螢と一川と ももすずめ
竹林蛍の宿はこの奥に 随笑
突如吹く風に蛍の灯を落とす 素抱
鼻先へすうつと螢臭き風 ももすずめ
風の綾捉えて螢上昇中 素抱
風出でて蛍の宿の早仕舞ひ 素抱
風絶えて螢の宿は藪臭き 素抱
風前の灯しび螢点りけり 素抱
平家螢薄きひかりを曳きにけり 寒暑
稔ほたる灯京ほたる連れ立ちて (下田稔 田中灯京 泉下にて) 随笑
木道をあるく螢の速さかな 寒暑
目の前をずんと明るき蛍過ぐ さざなみやつこ
林なす太藺の下が螢かな 素抱
露零す螢袋に道草す 素抱
老人ホームほたるぶくろの道のさき ねずみのこまくら
螢の出(で)問ひ合はせれば昨夜五頭 暮津
螢の数問い合はせれば昨夜三頭 素抱
螢火を団扇に受けて粋な女(ひと) 寒暑
螢見に行かんと軽く腹拵え 随笑
螢狩戻りがてらの街明り 寒暑
螢出づ時分そろそろ足下暮れ 随笑
螢出る迄の四方山話かな 随笑
螢袋山土蒸れし香を放ち 石鏡
螢袋夢二の面長乙女めき 素抱
浅黄色蛍袋は未だ袋
断崖にほたるぶくろの塔ノ沢
ほたるぶくろ悼みは時を経てうすらぐ
野仏をそこに佇たせて釣鐘草
蛍袋上りづくめの塔ノ沢
螢袋山土蒸れし香を放ち
ほたるぶくろ好きな主か垣咲きに
揺れづめのほたるぶくろに何かゐる
挿しながら螢袋の岬おもふ
霧らふ径螢袋の豆ランプ
螢袋夢二の面長乙女めき
ずぶ濡れの螢袋の一輪挿し
摘み草の螢袋の丈長く
露零す螢袋に道草す
小走りに螢袋に駆け寄る子
螢袋少年自然の家見え来
螢袋いちめん浜へ抜ける道
螢袋見たくてどんどん歩く道
丹沢へ蛍袋の道いっぽん
今朝方の雨を宿せる釣鐘草
柵の中蛍袋の変電所
蛍袋今朝方ありし雨まみれ
草むらの草透き蛍袋の白
ログコテッジほたるぶくろに迎えられ
螢袋よべはぐっすり眠りけり
ほたるぶくろ宿の浴衣の裾ほとり
宿の下駄蛍袋に響かせて
蛍袋渓谷奥へ奥へ伸び
螢袋けふの雲より明るくて
ほたるぶくろ翅音共々暮れかかり
螢袋足音鎮め通りけり
螢袋この谷戸十戸小じんまり
人の指蛍袋に闖入す
ほたるぶくろガウディの塔群るゝごと
禅窟の岩場のほたるぶくろかな
大虻がほたるぶくろの鐘撞きに
去り状を見て来てほたるぶくろの辺
ほたるぶくろ去り状蔵す寺明るく
(末尾は句集名)
浮巣 /
鳰の子 /
鳰の子の従順なるとならざると
鳰の子のおいてきぼりが後を追ふ
鳰の子の一羽後塵拝しけり
鳰の子の入るを待つなりファインダー
親鳰の子に与ふもの水底草 素抱
(末尾は句集名)
通し鴨 /
己が浮力持て余しをり通し鴨 石鏡
水上は一日曇り通し鴨 随笑
(末尾は句集名)
夏鴨 /
庄内の夕日小川の軽鴨に
軽鴨の子ら太藺の林出入りす
軽鴨のお尻を立てて漁りをり
軽鴨の雨やりすごす図とも見え
軽鳧の子 /
軽鴨の子ら太藺の林出入りす
慣性のなすまま滑る真鴨の子
軽鳧の子も一人前に水脈を曳き
軽鳧の子のぷるんぷるんと水浴びて
軽鳧の子の見よう見真似の毛づくろひ
かるの子の見倣ふ行儀作法かな
軽鳧の子のおいてきぼりが後を追ふ 素抱
軽鳧の子の従順なるとならざると 素抱
軽鳧の子の入り来るを待つファインダー 素抱
軽鳧の子の一羽後塵拝しけり 素抱
軽鳧の子のぷるんぷるんと水浴びて 随笑
(末尾は句集名)
田亀 /
水垢の剥がれて現るゝ田亀なり 素抱
水中に田亀もさっと昏れにけり ぱらりとせ
(末尾は句集名)
蛭 /
縞蛭のラジオ體操第二番 寒暑
蛞蝓と蛭とは正しく異母兄弟
沼巡り薄紅葉して蛭蓆
取り敢えず右から廻る蛭蓆
一雨に沼の嵩増す蛭蓆
深梅雨の蛭なんのその安来節
空きありて集り足らぬ蛭蓆
蛭蓆午から変る山日差
蛭に似しひとの又云ふさかしら言
蛭蓆叩きくる雨迅きかな
山蛭の身体器用に使ひけり
縞蛭のラジオ體操第二番
真昼の田蛭のあくびが移りさう
(末尾は句集名)
蜊蛄 /
ざりがにのそっくり返るはこけおどし 鳩信
ざりがにの万歳往時の突撃も 素抱
川向うざりがに捕りの金谷かな(懐古) 石鏡
大井川渡りざりがに採りにゆく (少年時代 回顧) 暮津
少年時代と云へばざりがに捕の島田 随笑
ざりがにを捕る子は花に目もくれで
敗戦期ざりがに捕の大井川
大井川渡りざりがに採りにゆく(少年時代 回顧)
川向うざりがに捕りの金谷かな(懐古)
ペット屋にざりがに入荷五連休
ざりがにの万歳往時の突撃も
大井川渡りざりがに捕り帰る
ざりがにが爛れて畦の穴っぽこ
ざりがに捕餓鬼大将は世に絶えず
ざりがに捕と云へば昔の疎開先
ざりがにのそっくり返るはこけおどし
川澄めりざりがに捕りの少年に
少年時代と云へばざりがに捕の島田
ざりがにの骸踏みゆくざりがにも
何といふことなくざりがに釣り上げられ
棒切れの先にするめやざりがに捕
ざりがに捕り餌はもちろんするめいか
子供らの餌は裂きイカざりがに採り
(末尾は句集名)
源五郎 /
源五郎へへと闇より現はるる ぱらりとせ
源五郎ちょっと遊びに来ませんか
源五郎吟行会など催したし
温き湯に入りし気分は源五郎
(末尾は句集名)
まひまひ /
まひまひの気合ひの入りし一円相 ぱらりとせ
まひまひの独り遊べり白日輪 寒暑
南無南無と円光負ふてかいもちかき ぱらりとせ
木杭に呪文かけられかいもちかき ぱらりとせ
ぽこぺこと水窪ませて水すまし 随笑
まひまひは夜気を好める有肺類
浮く塵をすいと離れて水すまし
婆が負ひまひまひつぶりめくリュック
ぽこぺこと水窪ませて水すまし
(末尾は句集名)
水馬 /
あめんばうぽかんと佇つてみてゐたり 寒暑
あめんばう一つがぷいと横向いて 石鏡
あめんばう跳び越しゆけるあめんばう ももすずめ
あめんばう方程式のXなす ねずみのこまくら
あめんばう木屑のごときがやたら跳ね 寒暑
あめんぼうくんずほぐれつ日の暮るる ぱらりとせ
あめんぼうそこらの塵と違ふ莫し 素抱
あめんぼうちょっかい出され遣り返す 石鏡
あめんぼう脚のさうじにかかりけり さざなみやつこ
あめんぼう曲れる鯉の余波喰らひ 素抱
あめんぼう足投げ出して中休み さざなみやつこ
あめんぼう覗きゐるのみ他意あらず 寒暑
あめんぼう飛ばし過ぎなり乗り上げぬ 燕音
あめんぼう勇み正面衝突す 寒暑
あめんぼのおとなしくなる跳び疲れ 寒暑
あめんぼのタップダンサー水叩き 暮津
あめんぼのドンファンぶりも板につき ぱらりとせ
あめんぼの気紛れ歩きぶつかれり さざなみやつこ
あめんぼの脚のかしやかしや小競合 ぱらりとせ
あめんぼの準備体操始まれり 鳩信
あめんぼの親玉カヌー江をすべる 素抱
あめんぼの水を踏まえしトゥシューズ 暮津
あめんぼの鍔迫合の何時果てる 石鏡
お岩木に向きて小池の水馬 寒暑
かがよへる水の回廊あめんぼう 鳩信
だしぬけの雨に臆しぬ水馬 さざなみやつこ
ぽつねんと時流に乗らぬ水馬 寒暑
みるからに元気のかたまり水馬 鳩信
極端なこと申すなら水馬 寒暑
空元気出して晦日の水馬 さざなみやつこ
蒐まって軍団めける水馬 素抱
図に乗りて蓮に乗り上ぐあめんぼう 暮津
推力の一桁違ふあめんぼう ぱらりとせ
水馬つと奔流に打って出ぬ 寒暑
水馬一つ所にかたまらず 素抱
水馬雨に追ひ立てられにけり 鳩信
水馬試し走りの朝の池 宿好
水馬総出で水を澄ましをり ねずみのこまくら
水馬二つ光輪ぶつけ合ひ ねずみのこまくら
水馬日陰好みと知られけり 燕音
水馬反動分子然として 鳩信
水馬未だ埃の大きさに 素抱
直情の典型疾駆の水馬 寒暑
方寸の水あれば足る水馬 寒暑
明けわたる水に水馬の鉄脚 ねずみのこまくら
あめんぼの上をのうのう蜻蛉ゆく
あめんぼの水を踏まえしトゥシューズ
水馬(あめんぼ)のタップダンサー水叩き
天帝が水面に置けるあめんぼう
水馬水をなだめてゐるごとし
水馬ちりぢりになり遂に一匹
図に乗りて蓮に乗り上ぐあめんぼう
人の和を宗とす教え水馬
つつつつと水輪連ねてあめんぼう
あめんぼの団子となる迄遣り合へり
あめんぼうちょっかい出され遣り返す
あめんぼの鍔迫合の何時果てる
浮く塵をすいと離れて水すまし
あめんぼう関節利かし泳ぎをり
あめんぼうそこらの塵と違ふ莫し
水馬一つ所にかたまらず
水馬一日掻いて水澄めり
あめんぼう鯉の曲れる余波喰らひ
あめんぼの親玉カヌー江をすべる
日盛りの閑中の閑あめんぼう
あめんぼう息を切らして一と休
危うげなく水乗りこなすあめんぼう
古池の水みどり帯びあめんぼう
あめんぼの敢て流れに逆らえる
蒐まって軍団めけり水馬
漂ふは川面の塵か水馬
水馬未だ埃の大きさに
水馬二、三水撫で廻しけり
水を掻く仕草も秋のあめんぼう
雨降ると水馬跳ねて八日堂
ぴっくんと水を凹ませ水馬
すいと身をかはす要領水馬
推力は抜群大型水馬
頭の内にまだ遊びゐるあめんぼう
推力の一桁違ふあめんぼう
かがよへる水の回廊あめんぼう
秋雨にひるむどころかあめんぼう
反動の分子然たり水馬
淡彩の単細胞のあめんぼう
水馬雨に追ひ立てられにけり
水馬降り出す雨にあはてけり
みるからに元気のかたまり水馬
あめんぼのスクランブルを組み遡行
あめんぼの準備体操始まれり
あめんぼの飛ばし過ぎなり乗り上げぬ
水馬日陰好みと知られけり
あめんぼに雨がぱらつき大はしゃぎ
あめんぼの波を越えゆく脚達者
あめんぼの足腰鍛え抜かれしよ
あめんぼの挙動めりはり効かすごと
秋も終のこのあめんぼの歩きやう
水馬試し走りの朝の池
たそがれの光帯びつつあめんぼう
曇天を蹴って田圃のあめんぼう
あめんぼう金釘流に文字を書き
其の数の如何ほど秋のあめんぼう
達者なる足腰秋のあめんぼう
雨来ると知らせをるなり水馬
素破雨と奔り回れり水馬
初孫は家駆けめぐる水馬
水馬走り慣れたる今朝の水
ぽこぺこと水窪ませて水すまし
あめんぼのおとなしくなる跳び疲れ
お岩木に向きて小池の水馬
ぽつねんと時流に乗らぬ水馬
水馬つと奔流に打って出ぬ
直情の典型疾駆の水馬
極端なこと申すなら水馬
あめんぼう孤り激しく瀬に抗す
方寸の水あれば足る水馬
若武者の勇み足もてあめんぼう
あめんぼの東離西散腕白らに
あめんぼう勇み正面衝突す
あめんぼの行方追ひ止め沼離る
通り雨来てもひるまぬあめんぼう
あめんぼう覗きゐるのみ他意あらず
あめんぼう交む水辺に寄らんとす
仕方なくあめんぼ覗いてゐたりけり
軽快になほ軽快にあめんぼう
ぎこちなきところ未だあるあめんぼう
(末尾は句集名)
目高 /
猫の盗る金魚に懲りて目高飼ふ
絶滅の目高は虹に紅遺し 素抱
子に父が取って代れり目高捕 寒暑
(末尾は句集名)
手長蝦 /
鮎 /
ずかずかと川に突っ込み鮎を釣る 随笑
鮎どきの佳き風のくる酒匂川 素抱
鮎釣の雨暗に竿納めざり ぱらりとせ
鮎釣の出足そがるゝ空のいろ 素抱
鮎釣の小細工鮎に通じざり 暮津
鮎並でありし覗かせ貰ふ魚籠 素抱
侠客の鮎にしらじら谿明くる 鳩信
県北の道志川(どうし)鮎釣始まれり 素抱
山峡の風戸(ふっと)で降りて鮎を釣る 宿好
出足いま一つ鮎漁始まれり 素抱
菅笠の仰向くは鮎釣れるとき ぱらりとせ
当り来た来た来たさくら鮎ならむ ぱらりとせ
風物詩鮎解禁の報載れり 素抱
和賀川の鮎痩せ瀬につく頃ならむ 素抱
囮鮎漁期も了り近くなり 燕音
谿底に鮎釣人か豆粒大 随笑
鮎釣の小細工鮎に通じざり
鮎釣の無心いつしか川となり
鮎あげて女釣弟子悪びれず
名張川鮎釣映像川下モより
鮎落ちゆく奥羽山系藍を増し
鮎釣ると暗き水面に影落とし
釣り上げし鮎に形の善し悪しあり
釣り上げし鮎に大物小物あり
早川に釣竿連ね鮎解禁
鮎釣の出足そがるゝ空のいろ
解禁図仔細に渡る鮎の川
鮎を釣る尊徳堤の松を背に
囮鮎赤旗掲げひさぐ店
囮鮎上ミの店にて購へり
美味中の美味の鮎焼き向き変えよ
鮎釣の谿底にして豆粒大
青嶺あり谿あり一人鮎を釣る
鮎釣の魚信(あたり)なければちちんぷい
俳諧の淵にはまりて寂鮎は
(末尾は句集名)
鯵 /
わらしべに鯵の吊られて御祭神 ねずみのこまくら
小柴産地鰺の干物血筋透く 素抱
庭の紫蘇摘み来て鯵のたたきかな ももすずめ
(末尾は句集名)
黒鯛 /
積み込める釣具一式黒鯛釣
鰹 /
かつを船滴る陸に戻りけり ねずみのこまくら
ぶん投げられ糶らる鰹のメタリック 暮津
むらさきに松魚泳がし宵の酒 素抱
花かつを懸ければ奴豆腐(やっこ)笑ひけり 素抱
花火の傘爛れかつをのえぼしかな 燕音
酒は会津肴は三浦初かつを 石鏡
宿の膳何はさておき姫かつを 寒暑
天日干し鰹を吹けり時津風 鳩信
奴豆腐(ヤッコ)の上音頭とるのは花かつを 寒暑
湯上がりの手首の赤し鰹時 石鏡
半島に足を伸ばせる鰹季 さざなみやつこ
晩酌の松魚にちょんと擦りしょうが 素抱
手巻き寿司紫蘇もて鰹の匂ひ抜
鰹時酔ひがだんだん醒めてくる
晩酌によかろと地場の初鰹
鰹時年金暮らし忘れ酌む
湯上がりがこれ亦よくて初鰹
おひたしに青菜のうまき鰹季
この沖で釣り来し俺(わし)の鰹じゃき
鰹季寿司食ひに寄る那珂湊
燈台をくるくる登る鰹どき
直進の鰹佳き貌皆持ちて
(末尾は句集名)
赤鱏 /
葭切 /
もう一声葭切あらぬところより 石鏡
靴の泥こそぎ落せば行々子 さざなみやつこ
行々子もぐり込んだる葭っ原 暮津
行々子田夫野人の唄うたふ 燕音
葭切に念を押されてゐるごとし 寒暑
葭切の長寿長寿と朝朗 さざなみやつこ
葭切の直談判が続きをり 宿好
葭切の伝法口調に大分慣れ 燕音
葭切の黙ればはたと照りつけぬ さざなみやつこ
葭切は詭弁を弄す如くなり 石鏡
葭の間をちらちら雨の行々子
葭騒に昂ぶり啼ける大葭切
大葭切湖の方より風絶えず
大凡の見当つきゐる大葭切
余所者に一泡吹かす大葭切
枯茎に翔つ構え見せ葭雀
葭雀なまなま其処を翔てる音
余所者の吾等が行くと行々子
若菜野へ近江八幡葭雀
茎掴みそのまましなふ葭雀
人里と水を隔てて葭雀
よう放しもうよき頃と行々子
(末尾は句集名)
翡翠 /
何と雪ワライカワセミ渋い貌 さざなみやつこ
見よと云ふ翡翠望遠鏡の中 寒暑
拙宗と名乗りし頃のかわせみ図 寒暑
翡翠の眼力疑ひなかりけり 燕音
かはせみの眼力疑ひなかりけり
口ぼそを狙ふかはせみ冬の暮
かはせみの瑠璃忽然と枯枝に
かはせみに格好な枝氷上に
(末尾は句集名)
雪加 /
白鷺 /
白鷺の朝餉は何や春田道 随笑
白鷺の一考つづく春の水 寒暑
枯芦に一句捻るか白鷺は 燕音
白鷺の壺の如きを置く秋天
一隅に白鷺を置く植田水
枯芦に耳傾けて白鷺は
蒲の穂や白鷺宙に脚を曳き
青葭の辺に白鷺の水鏡
げんげ田に置物のごと白鷺は
白鷺の首を吹かれて春田べり
白鷺ゐてあっちこっちの田を眺め
白鷺の白光釣瓶落とし日
白鷺の二羽春水に脚浸けて
白鷺に鈍き光を返す川
(末尾は句集名)
糸蜻蛉 /
よぎるもの風にはあらず糸とんぼ 素抱
意を変へて土橋に止まる糸蜻蛉 暮津
一茎を両手で押へ糸とんぼ さざなみやつこ
止まらんと瑠璃糸とんぼ間合詰め 燕音
糸とんぼ茎に取り付くその角度 素抱
糸とんぼ止まる所が判りけり 燕音
糸蜻蛉進むリズムはピチカート 素抱
尻のさき待ち針いろの糸蜻蛉 暮津
灯心蜻蛉の尻尾ずんずん目の前を ぱらりとせ
燈心蜻蛉(とうすみ)は瑠璃一色の針とんぼ 素抱
草亀の鼻先掠め糸蜻蛉
とうすみの交む細身のくねりざま
糸蜻蛉三途の川は名ばかりにて
ここに来て視力大切糸とんぼ
ぞんざいにして来し視力糸とんぼ
糸蜻蛉たることしるき尻の瑠璃
糸蜻蛉先づ止まらせてそれから寄る
接吻のごときを一つ糸とんぼ
糸とんぼ声を掛く間に見失ひ
気に入りし草がありけり糸とんぼ
糸とんぼ停止お次は何処へゆく
葉先へと瑠璃糸とんぼ距離を詰め
化野の佛の肩に糸とんぼ
糸とんぼ翔たせぬやうに間合とり
糸とんぼ尻尾を東西南北に
目の前でまた向き替えぬ糸とんぼ
糸とんぼ終に止まるはどの岩か
山水は唯下るのみ糸とんぼ
(末尾は句集名)
川蜻蛉 /
うしろにも居さうなおはぐろとんぼかな さざなみやつこ
おはぐろにおはぐろの影ありやなし 燕音
つと廻り込んで止まれる川蜻蛉 ぱらりとせ
考えの閃く如くおはぐろ現る 燕音
川蜻蛉飛んで翅色薄めけり 石鏡
鉄漿蜻蛉(おはぐろ)に羽摶ち疲れといふはなし 鳩信
鉄漿蜻蛉(おはぐろ)の影おはぐろを追ひゆきぬ 燕音
鉄漿蜻蛉(おはぐろ)の姿勢正して止まりけり 暮津
鉄漿蜻蛉(おはぐろ)はタンゴのステップ踏むごとし
雨上る川面おはぐろとんぼ飛ぶ
川音の著きところに鉄漿蜻蛉(おはぐろ)来る
ゆふいんのおはぐろとんぼ雨を除け
鉄漿蜻蛉(おはぐろ)は幽冥界の冥纏ひ
おはぐろの影を何処に忘れ来し
川蜻蛉独創ひらめくごと出でて
鉄漿蜻蛉(おはぐろ)に倒木の関森の径
(末尾は句集名)
蜻蛉生る /蟷螂生る /
蠅 /
【参考】
アラヨッと蠅の一心太助かな 寒暑
おっとりと大柄にして冬の蠅 宿好
じたばたと蝿取紙の蝿の脚 ぱらりとせ
すぐ思いあたる仕種を春の蝿 ぱらりとせ
その翅では小さかろうが冬の蠅 燕音
その翅音虻かと思へば五月蝿(さばえ)なり 暮津
たまらむと牛も首振る秋の蝿 石鏡
どぜう屋の隣りの坐より夏の蝿 随笑
なうなうと止まるこの蠅不埒なり 鳩信
バスの旅倶にし岩手県の蠅 随笑
ひさびさに腕が鳴るなり蠅叩 さざなみやつこ
ぼうたんに疎んぜられて発つ蝿か 随笑
みな清潔に蝿帳の失くなりぬ 素抱
めちゃくちゃな翅音愉しむ冬の蠅 宿好
易々と蠅にたかられ一患者 鳩信
一茶堂蝿虎が戸袋に 燕音
一日は永きもの哉蠅生まる 素抱
芋煮会蠅も仲間に入りたがる 随笑
何處からか蝿の入りくる家なりし 素抱
火山弾上にぬくもる秋の蠅 随笑
花八つ手その上に蝿の静止せる 石鏡
顔洗ふ仕草幾たび冬の蠅 燕音
帰省せり蝿取リボン吊る家に ねずみのこまくら
曲がる術知らぬ五月蝿(さばえ)の飛び来たり 暮津
行き過ぎの一つや二つ蠅打てる 随笑
再犯の金蠅なれば許さざり ぱらりとせ
妻うっかり五月蝿(さばえ)を入れて仕舞ひけり 暮津
妻用意の昼餉小さな蝿張に 素抱
歳時記の蠅の例句も古りにけり 暮津
山小屋の窓辺に蝿の一頓死 宿好
子規庵の戸袋の反り蝿虎 随笑
止まらせてなまあたたかき春の蠅 素抱
湿原に飛びて大きな蠅の音 随笑
捨て積みの焼酎瓶に冬の蠅 鳩信
秋の蠅集(たか)る牧牛見せ呉れし(吉田牧場) 石鏡
春の蝿四辺にはかに活気づく 寒暑
春の蝿番屋の客に蹤いて来ぬ 素抱
春の蠅ちちんぷいとぞ消えにける 素抱
春の蠅一挙手一投足の妙 燕音
春の蠅何をするかと見てをりぬ 燕音
春の蠅元へ戻ってをりにけり 素抱
春の蠅探せばをりぬ俳諧寺 燕音
春の蠅庭石はまだ冷たかろ 素抱
小刻みに蠅の向き変ふ秋日中 ぱらりとせ
人間も木石の類春の蠅 素抱
青空へ飛び去る冬の蠅の音 宿好
石を替ゆ蠅と退屈同士かな 素抱
掻き回すことが好きなる蠅生まる 素抱
打ちもらす蠅の行方を追へる顔 さざなみやつこ
大き蝿牡丹臭さを帯びて発つ 随笑
大人しくしてゐる春の蝿でなし 石鏡
追ひやれど膝にまたくる島の蠅 宿好
追憶の熟れ無花果は蝿呼ぶ木 石鏡
定食屋蠅帳があり勝手にとる 暮津
冬の蠅どっちつかずの翔び方す 宿好
冬の蠅球(たま)の躰をぶん廻し 宿好
冬の蠅見直す素早き翅使ひ 暮津
冬の蠅小さき翅を畳み込み 燕音
冬の蠅頭がだんだん澄んで来ぬ 宿好
冬の蠅発着ふとんの飛行場 宿好
二等船室隣より来る夏の蠅 寒暑
脳しんとう間違ひなしの蠅叩 寒暑
俳諧の手ほどき蝿虎より受く 寒暑
蝿たかる所をそれとなく見居り 暮津
蝿の子の飛距離まだまだ知れたもの 随笑
蝿を退け遣るに止どめぬ老いの箸 暮津
蝿虎雨戸に日和がよささうと 暮津
蝿虎即暁斎のかみつき貌 素抱
蝿虎稚くも貌老成す 石鏡
蝿虎部屋間違えて入り来し 寒暑
蝿生る家にぶらぶらしてゐては 石鏡
蝿生る家居ばかりになまる身に 随笑
蝿叩遺品のごとく扱へる 随笑
蝿叩持ちつゝ談話湯治人 寒暑
蝿叩湯呑巻き添え喰ひにけり 燕音
蝿帳の見当たらぬ世も亦佳きか 素抱
箸取りていちいち蝿を追へるひと ぱらりとせ
板蕎麦を待つ間頭上の蠅を追ふ(羽黒山門前) 石鏡
板塀に蝿虎の岡っ引 随笑
膝小僧へ海辺育ちの冬の蠅 鳩信
必殺を目論む妻の蝿叩 燕音
飽食の日々を共にす冬蠅と 宿好
飽食は冬の蠅にもヤッと発つ 随笑
葉蘭の蠅居場所を二転三転す 燕音
立葵広葉より蝿発着す 暮津
皺くちゃ婆貝を剥くやら蝿追ふやら 素抱
蠅が脚長く使へり花八っ手 さざなみやつこ
蠅が来て蠅追ひ払ふ花八つ手 ぱらりとせ
蠅の子の止まりつぷりも物馴れて さざなみやつこ
蠅の子の触りたくなるもの数多 素抱
蠅の子の追はれて次に止まる処 さざなみやつこ
蠅の子の攫はれまじと大風に 宿好
蠅の死のあっけなかりし脚挙げて 寒暑
蠅取紙詠める世代を同じうし 寒暑
蠅生る磯長の國の磯歩き ねずみのこまくら
蠅憎き世の懐かしや畳撫す 寒暑
蠅叩き難ければ肘折り曲げて さざなみやつこ
蠅叩く術練達にまだ遠し 寒暑
(末尾は句集名)
蜘蛛 /
「さうはどっこい」身ひねりかわす蜘蛛の糸 暮津
あはて者かかり蜘蛛の囲大だるみ 寒暑
おっとっと女郎蜘蛛の囲眼の前に 寒暑
じたばたをぐるぐる捲きに女郎蜘蛛 宿好
ぞんざいに網張る奴も女郎蜘蛛 暮津
ほんち捕る子に目つぶしの柾桓 ねずみのこまくら
囲の央に押し出しのよき女郎蜘蛛 素抱
一夜にして自転車捉ふ蜘蛛の糸 素抱
鉛筆で叩いて蜘蛛の糸の端 石鏡
乙子祠に稚(わか)き蜘蛛囲を張りにけり 寒暑
家の間高さ違へて女郎蜘蛛 石鏡
獲物へと押っ取り刀の女郎蜘蛛 宿好
幾何学を篤と学びし蜘蛛ならむ 素抱
月下の蜘蛛昔京都に天誅組 暮津
厚物の菊の顱頂に蜘蛛の子来 宿好
江ノ電の踏切女郎蜘蛛見上げ 石鏡
腰据えて料理に懸かる女郎蜘蛛 宿好
刺網にかかるがらくた蜘蛛人手 燕音
糸揺すりやればどう出る女郎蜘蛛 燕音
手のこんだ囲の張りやうや女郎蜘蛛 寒暑
手も脚も腹も化粧ふて女郎蜘蛛 随笑
樹上には明恵 樹下には女郎蜘蛛 宿好
所在無き雨日を汝も女郎蜘蛛 素抱
女郎蜘蛛あはてふためく様見んと 宿好
女郎蜘蛛屋敷と云ふに躊躇せず 石鏡
女郎蜘蛛金龍院の空を降り 鳩信
女郎蜘蛛見てより深む日色とも 素抱
女郎蜘蛛糸張る計算通りかな 随笑
女郎蜘蛛縦の糸張る手順見て 宿好
女郎蜘蛛楕円函数論知るや 宿好
女郎蜘蛛大き囲を張る留守の家 寒暑
女郎蜘蛛朝は黄金に張れる糸 素抱
女郎蜘蛛網繕ひを怠らず 暮津
女郎蜘蛛木の葉外しにかかりけり ぱらりとせ
真昼間の山雪のうへ蜘蛛あるく 燕音
足掻くほど陥る蜘蛛の術中に 暮津
蜘蛛の囲が顔に迷惑千万な 宿好
蜘蛛の囲にさうさう獲物なかりけり 石鏡
蜘蛛の囲にまんまと懸かる粗忽者 宿好
蜘蛛の囲に一つの攻防見たりけり 石鏡
蜘蛛の囲に蝉の片翅夏畢る 暮津
蜘蛛の囲に朝霧の粒あからさま 素抱
蜘蛛の囲に病葉二、三ちらし掛け 素抱
蜘蛛の囲に捕られし顔の後始末 素抱
蜘蛛の囲の獲物にこれといふもの無く 石鏡
蜘蛛の囲の顔に懸かるをエイヤッと 宿好
蜘蛛の囲の幾つもあれば破り甲斐 素抱
蜘蛛の囲の糸灼けをらん晝つ方 素抱
蜘蛛の囲の糸端探る目を皿に 宿好
蜘蛛の囲の修繕念には念を入れ 暮津
蜘蛛の囲の風雨に負けぬ粗作り 素抱
蜘蛛の囲もあさみどり帯ぶ芦の間に 素抱
蜘蛛の囲を掛けたきところに掛け待機 暮津
蜘蛛の囲を作る御祓の最中も 暮津
蜘蛛の囲を払ふことなく庭掃除 鳩信
蜘蛛の糸ここら辺りとたたっ切る 暮津
蜘蛛の糸この道行きし人有りや 随笑
蜘蛛の糸すすっと見えてすっと消ゆ ぱらりとせ
蜘蛛の糸端を宝篋印塔に 随笑
蜘蛛料る羽根を一枚残せしのみ 暮津
土蜘蛛の撫でやる腹の珍無類 ねずみのこまくら
湯の町の飽かなき月に女郎蜘蛛 寒暑
踏み込んで後の祭りや蜘蛛の囲に 素抱
突っかけてしまふ蜘蛛の囲又ここに 暮津
突っ込んでいやはや蜘蛛のねばる糸 素抱
日の当りながら物食ふ女郎蜘蛛 ぱらりとせ
忍び寄る巨大台風蜘蛛知るや 暮津
望月のいろを貰へり女郎蜘蛛 燕音
妖怪の親玉何故か女郎蜘蛛 暮津
曉斎の蜘蛛出づ月の怪しき夜(河鍋曉斎) 暮津
(末尾は句集名)
蜘蛛の囲 /
蜘蛛の囲をえいやっとばかり二度破る
もう一つ蜘蛛の囲懸かる至近距離
起き立ての貌奪らるるは蜘蛛の囲か
蜘蛛の巣に突き当りたる白頭
蜘蛛の巣につかまることを又もして
門前に蜘蛛の巣張るとはとんでもない
蜘蛛の巣はえてしてこんな日に張るぞ
分からんが蜘蛛の巣張るはこんな日ぞ
突っかけてしまふ蜘蛛の囲ここに又
先立たる人に蜘蛛の囲幾つもや
蜘蛛の囲を掛けたきところに掛け待機
蜘蛛の囲をよけしつもりが別の囲に
自動点滅門灯蜘蛛の囲大写し
蜘蛛の囲を作る夏越の只中も
踏み込んで後の祭りの蜘蛛の囲や
レントゲン図蜘蛛の巣よりも薄暗く
蜘蛛の囲を払ひ損ねし手の空ら振り
七月の蜘蛛の巣張れり水の上
札所巡り廃れて秩父の蜘蛛の巣道
蜘蛛の巣に顔をとられて札所道
蜘蛛の囲を次々破る昼の興
またぎ村朝日蜘蛛の囲金ンに染め
おっとっと女郎蜘蛛の囲眼の前に 寒暑
あはて者かかり蜘蛛の囲大だるみ 寒暑
同意なく此処に蜘蛛の巣張るべからず 宿好
蜘蛛の囲が顔に迷惑千万な 宿好
蜘蛛の囲を払ふことなく庭掃除 鳩信
(末尾は句集名)
蚰蜒 /
蚰蜒眉むずと吊り上げ初閻魔 随笑
(末尾は句集名)
油虫 /
ごきかぶりゲストのやうに現はるる ぱらりとせ
ごきかぶり初太刀二の太刀かいくぐり ぱらりとせ
ごきかぶり団子喰らひて御用となる 暮津
ごきぶりをどうしてくれやう丑満刻 随笑
ごきぶりを見とがめし妻さあ大変 随笑
ごきぶりを前にわくわくする一打 随笑
ごきぶりを打馴れてゐて打洩らす 素抱
ごきぶりを追ひ遣る妻は総身もて 暮津
ゴキブリ駆除家の隙間といふ隙間 素抱
ゴキブリ駆除硼酸だんごをヘェとみる 素抱
ごきぶり打つ力余りてこの始末 暮津
パソコンの画面を舐めに油虫 石鏡
雨の日の台所(だいどこ)暗くゴキブリ駆除 素抱
御器噛追ひ詰めおいて助け呼ぶ さざなみやつこ
台所の羽目板渡りごきかぶり 暮津
髭振りつ次はどうでる油虫 ももすずめ
油虫下見の現場灯さるる 石鏡
油虫手を施すも出るには出る 素抱
油虫触り犯せるものの数 石鏡
油虫厨をちょろちょろ醤油いろ 暮津
方舟に洩れずに乗せしごきぶりも
たかがごきぶりそんなに声を荒らげずとも
気がつけば形無きまでごきぶり打ち
頼まれてごきぶり二匹討ち取り来
ほんたうにごきぶり死すかとつつきゐる
ごきぶりのちらとこちらを見て隠れ
汝が領分廚より現る油虫
ごきぶりの疾走厨の闇伝ひ
ごきぶり見き即ち手だてが不充分
ゴキブリに用意す無臭の毒だんご
ゴキブリに硼酸団子用意せり
毛嫌ひしてごきぶりを打ち止まぬ妻
ごきぶりのどうでもよきが髭を振る
ごきぶりをどうしてくれやう睨みづめ
ご対面ごきぶりよりも妻慌て
ごきぶり打つ年金暮らし板に付き
(末尾は句集名)
守宮 /
お出ましの守宮と暫しにらめっこ 鳩信
へばりつく守宮の吸盤護謨仕立て 石鏡
やあ守宮お主ところで何代目 随笑
階段の壁が遊び場守宮の子 随笑
守宮など出る頃階段脇の壁 素抱
守宮出る家となりしか急階段 随笑
守宮出る頃の階段脇の壁 素抱
目の合へば少しまごまごして守宮 石鏡
畳這ふ守宮に立ちはだかりもして
守宮の子畳とことこ走りけり
生身魂万年床より守宮見る
仏壇へ守宮逃げ込みおほせけり
守宮棲む家の硝子戸鍵が馬鹿
ひとところ壁が動けり守宮なり
守宮も出ネダも緩みてわが栖
へばりつく守宮の吸盤護謨仕立て
目の合へば少しまごまごして守宮
守宮の子あたり見渡し這ひ出せる
灯に透きて指の疣疣守宮の子
守宮の子指のいぼいぼ持て余し
夜歩きのそそろそろそろ守宮の子
小さうして守宮の畳歩きかな
畳の上泳ぎ渡れる守宮の子
守宮など出る頃階段脇の壁
守宮出る頃の階段脇の壁
お出ましの守宮と暫しにらめっこ
ホテルの壁びっくり仰天守宮出で
やあ守宮お主ところで何代目
階段の壁が遊び場守宮の子
守宮出る家となりしか急階段
陰口を誰かたたけば守宮出で
(末尾は句集名)
夜盗虫 /
悪食のヨトウガ奴の仕業なり 高澤良一 ぱらりとせ
シマガラスヨトウ嘉せる夏の雨 高澤良一 ももすずめ
(末尾は句集名)
蟻 /
向日葵の国の真下に蟻の国
朝顔の蔓の一つも蟻の道
芋畑の土の匂ひに蟻の憑く
冬麗の蟻の腰部の深くびれ
蟻蟻と見遣るその先亦も蟻 宿好
桃の核(さね)囲める蟻の真っ黒け
菓子零す家の中まで蟻の道
登る蟻地を歩む蟻建長寺
蟻殺めばそこに駆け寄る蟻一つ 随笑
杏の核真っ赤に蟻の総掛かり
宿探す強羅の蟻の後に蹤き
運び屋の蟻の取越苦労かな
蟻の曳く真っ赤な種に長跼み
その下に蟻の潜りて大蛾曳く
ゲラ刷這ふ蟻の大きさ9ポほど
溺れゐし蟻のその後を見届けぬ
文机を蟻の彷徨ふ台風下
能舞台進みて蟻の太郎冠者
暴(あば)かれし蟻の寝殿造かな
黒蟻の這ひゐるばかり南谷
山攀づる蟻に交通渋滞なし
赤土は掘り易くして蟻の穴
蟻の他動くものなき晨の山
偉丈夫な鉄之介句碑蟻攀ずる
孫美雨(みう)のひとりあそびや蟻の昼
声つくりままごとあそび蟻さんと
蟻栃を黙々のぼり黙々下る
混浴の女またげる岩の蟻
夏来ると蝉の方代蟻の守一
羽蟻の夜性分ゆゑに口いさかい
斯く照れば蟻も眩暈をおぼえけむ
討ち取って紙に挟みて羽蟻捨つ
羽蟻また紙に包んで捨てにゆく
畳ある限り羽蟻はそこへ落つ
足許を怪力の蟻たもとほり
蟻肩に担げるもののなほ足掻く
難題を負ふごと蟻の歩の遅し
蟻のごと携帯メールの文字綴り
明日神輿揉む参道と蟻知らず
ふくらはぎ蟻に登られこそばゆき
段(きだ)歩く蟻の素早さ仁王門
リハビリに妻の手助け蟻の段(きだ)
雨後の蟻のぼり下りして夕顔苗
屑籠に蟻を掬ひてはたき落とす
こんもりと土積み蟻の分譲地
蟻は机の矩形なること確かめをり
文机の地平線より蟻現るゝ
机(き)の端を昨日の蟻か折り返す
忘れゐし頃に現はれ机の蟻
机の角蟻世の果といふ顔す
机上の蟻貌掻くさまもあからさま
蟻のゐる朝の机に向ひけり
縁ばかり好み歩ける机上の蟻
家内は静かなるかな湯呑みと蟻
晩酌の肴を蟻の嗅ぎつけて
蟻登るときに見上ぐる魔法瓶
洗濯物畳まれてはと蟻逃ぐる
形代の袋の朱文字蟻這へる
祝詞の間蟻を見つむる大祓
磴攀ずる蟻の一歩を重ねつゝ
夏菊に庭の蟻くる羽虫くる
蟻が来て牡丹の蘂をさし覗く
夜の蟻携帯電話を跨ぎ越ゆ
ごろ寝して畳の蟻に親しめり
大風に吹き飛ばさるる蟻のこゑ
石垣より吹き飛ばさるる蟻見たり
蟻潰すこの板の間が修羅場なり
落雁のこぼれ屑蟻呼べるなり
庭に出て蟻を見ぬ日は物足らず
掃討戦ありし翌朝蟻を見ず
殺戮を免れし蟻徘徊す
雨夜の蟻寝ねても脳裡走りをり
蟻打たれ骸は垢のごとくなり
家に入る蟻の根絶やし寝巻来て
蟻打てば体かわされて滅多打
居間の蟻雑誌丸めて打ちにけり
蟻向かふ先に屑籠中に何
雨の手すさび蟻を打つたり打たなんだり
蟻潰す手すさび雨夜長ければ
よぎり消ゆ蟻の残像机の辺
夜の蟻に籐編み屑籠ねらわれをり
菓子屑を嗅ぎつけ来たる蟻ならん
吾が家に蟻の潜伏発覚す
蟻引き込む真因は何先づそこから
蟻跨ぐ雨夜のテレビの走査線
一匹が二匹三匹蟻みつかる
板の間に蟻打ち据えてぺったんこ
蟻討ち取る音のばたばた板間なる
蟻のぼりかけて止めたる辞書の壁
かう派手に這ひ回られては蟻退治
赤蟻に上がり込まれて梅雨の家
文机をとことこあるく夜の蟻
蟻のゆく机の上の幾山河
五家宝にゐるゐる蟻の偵察隊
蟻んこの遊び場となる仏足石
曇日の山を登れる蟻も亦
探し物蟻が厨に来てゐたる
廻り道する赤蟻に事情あり
偉丈夫な鉄之介句碑蟻攀ずる 素抱
声つくりままごとあそび蟻さんと 素抱
蟻栃を黙々のぼり黙々下る 素抱
かんかん照り蟻も眩暈をおぼえけむ 素抱
畳ある限り羽蟻はそこへ落つ 素抱
羽蟻また紙に包んで捨てにゆく 素抱
難題を負ふごと蟻の歩の遅し 素抱
明日神輿揉む参道と蟻知らず 素抱
ふくらはぎ蟻に登られこそばゆき 素抱
雨後の蟻のぼり下りして夕顔苗 素抱
机(き)の端を昨日の蟻か折り返す 素抱
縁ばかり好み歩ける机上の蟻 素抱
蟻は机の矩形なること確かめをり 素抱
文机の地平線より蟻現るゝ 素抱
家内は静かなるかな湯呑と蟻 素抱
蟻のゐる朝の机に向ひけり 素抱
蟻登るときに見上ぐる魔法瓶 素抱
机の角蟻世の果といふ顔す 素抱
忘れゐし頃に現はれ机の蟻 素抱
洗濯物畳まれてはと蟻逃ぐる 素抱
祝詞の間蟻を見つむる大祓 素抱
磴攀ずる蟻の一歩を重ねつゝ 素抱
夜の蟻携帯電話を跨ぎ越ゆ 素抱
ごろ寝して畳の蟻に親しめり 素抱
石垣より吹き飛ばさるる蟻見たり 素抱
大風に吹き飛ばさるる蟻のこゑ 素抱
蟻打たれ骸は垢のごとくなり 素抱
蟻打てば体かはされて滅多打 素抱
家に入る蟻の根絶やし寝巻被て 素抱
雨夜の蟻寝ねても脳裡走りをり 素抱
蟻引き込む真因は何先づそこから 素抱
菓子屑を嗅ぎつけ来たる蟻ならん 素抱
板の間に蟻打ち据えてぺったんこ 素抱
かう派手に這ひ回られては蟻退治 素抱
よぎり消ゆ蟻の残像机の辺 素抱
赤蟻に上がり込まれて梅雨の家 素抱
屑籠に蟻の潜伏発覚す 素抱
五家宝に居る居る蟻の偵察隊 素抱
蟻んこの遊び場となる仏足石 素抱
廻り道する赤蟻に事情あり 素抱
とある日の徘徊蟻とだんご虫 素抱
穴出づる蟻を石もて塞ぐ孫 素抱
蘂わたる一匹の蟻まんじゅさげ 寒暑
お岩木の日照雨に馴れっこ山の蟻 寒暑
集(たか)り屋の蟻を不埒といふ勿れ 寒暑
石橋を叩いて渡る蟻もあり 寒暑
急雨来て蟻の荷運び支離滅裂 寒暑
夜の卓蟻でも歩いて居らぬかや 寒暑
孫なんと蟻に極刑加えをり 寒暑
蟻対策ほどこしてある砂糖壺 寒暑
孫蟻に呼び掛く「どこへゆくんだよぅ」 寒暑
蟻んこに泰山木の影さしぬ 寒暑
足許へみるみる寄り来山の蟻 寒暑
大蚯蚓仏となりて蟻の変 寒暑
穴出でし蟻目をこする沓脱ぎ石 寒暑
蟻喰いのそはそは春の土を嗅ぎ 寒暑
くわりんの実蟻の門渡りなかりけり 随笑
押っ圧(ぺ)せとわが連れ合いは蟻嫌ひ 随笑
そこら這えば潰さるがおち夜の羽蟻 随笑
原稿に降りし羽蟻に迫る指 随笑
机に稿に羽蟻の落下傘部隊 随笑
ペン皿の谷の辺りを羽蟻這ふ 随笑
颱風接近羽蟻もぞもぞ出る夜かな 随笑
何處へでも首を突っ込む蟻の性 随笑
鼻の利く蟻ゐて干菓子探り当つ 随笑
蟻たちの固持して原始共産制 随笑
杏の核真っ赤に蟻の総掛かり 随笑
濃く淡く蟻の影曳く百度石 随笑
夕立に赤蟻川止め喰らひけり 随笑
つつかけで出て庭先の蟻を見ん 随笑
蟻穴を出でては居ぬか垣の内 随笑
本伏せて蟻のゐさうな庭に出づ 随笑
てのひらに移して冬の蟻這はす 宿好
真昼間の石庭あるく蟻を見ず 宿好
羽蟻墜つ奇妙な夜となりにけり 宿好
栗の樹下髪を叩いて蟻落す 宿好
おむすび喰ふ肱を廻りて山の蟻 宿好
誕生日庭に集まる蟻を見て 宿好
大風に吹き曲げらるる蟻の道 宿好
階(きざはし)の壁を見上げて蟻の居り 宿好
山門の蟻に見限りつけ小昼 宿好
あな蟻の門(と)渡り風船葛にも 鳩信
蟻迅くだんご虫又のそのそと
穴出づる蟻を石もて塞ぐ孫
飛石の山坂越えて蟻の道
赤黴の自治領蟻が通りけり ぱらりとせ
石畳朝儀に参ず蟻ならむ ぱらりとせ
折合のつきし如くに蟻別る ぱらりとせ
炬燵して絵本の蟻の穴倉図 さざなみやっこ
蟻喰ひの悲願適ひてよく伸ぶ鼻 さざなみやっこ
のうぜんの落花を蟻の離れざる さざなみやっこ
蟻の頭を振り振りのぼる獨鈷山
木落とし坂下にこぞるや蟻のごと
地蔵堂基石を登り蟻の道
大風に吹き曲げらるる蟻の道
くわりんの実蟻の門渡りなかりけり
忽然と羽蟻の現るる台風下
机に稿に羽蟻の落下傘部隊
何處へでも首を突っ込む蟻の性
濃く淡く蟻の影曳く百度石
花過の蟻のすさびをとくと見て
本伏せて蟻のゐさうな庭に出づ
こんな夜もあるもの羽蟻の大発生
ベイブリッジ豆自動車は蟻のごと
軽はずみの己れに腹立て羽蟻の夜
急雨来て蟻の荷運び支離滅裂
蟻の糧貯蓄は美徳と習ひ来て
大蚯蚓仏となりて蟻の変
羽蟻のごとヨット俄に殖ゆる海
穴を出づ蟻の皆目見あたらず
(末尾は句集名)
蚜虫 /
羽蟻 /
そこら這えば潰さるがおち夜の羽蟻 随笑
はかどらず羽蟻出づ日の一夜漬け 暮津
ペン皿の谷の辺りを羽蟻這ふ 随笑
羽蟻また紙に包んで捨てにゆく 素抱
羽蟻退け遣れば又来て小奴めが 暮津
羽蟻墜つ奇妙な夜となりにけり 宿好
机に稿に羽蟻の落下傘部隊 随笑
原稿に降りし羽蟻に迫る指 随笑
畳ある限り羽蟻はそこへ落つ 素抱
颱風接近羽蟻もぞもぞ出る夜かな 随笑
羽蟻落ち紙面にぎこちなき歩み
羽蟻退け遣れば又来て小奴めが
はかどらず羽蟻出づ日の一夜漬け
羽蟻の夜性分ゆゑに口いさかい
討ち取って紙に挟みて羽蟻捨つ
羽蟻また紙に包んで捨てにゆく
畳ある限り羽蟻はそこへ落つ
便箋に羽をきらきら羽蟻這ふ
羽蟻墜つ奇妙な夜となりにけり
おおいやだ本の上這ふ夜の羽蟻
忽然と羽蟻の現るる台風下
原稿に降りし羽蟻に迫る指
そこら這えば潰さるがおち夜の羽蟻
ペン皿の谷の辺りを羽蟻這ふ
一つ見て千の羽蟻が脳髄に
颱風一過羽蟻もぞもぞ出る夜かな
机に稿に羽蟻の落下傘部隊
羽蟻翔ぶ為の最小限の羽
こんな夜もあるもの羽蟻の大発生
軽はずみの己れに腹立て羽蟻の夜
羽蟻のごとヨット俄に殖ゆる海
(末尾は句集名)
蟻地獄 /
一興の掘り返されてあとずさり ももすずめ
羽黒山祠々の蟻地獄 暮津
蟻地獄石ころ一つ振舞はん 随笑
蟻地獄扨も根気の要ることよ さざなみやつこ
掘り出されまじまじ見らるあとずさり ももすずめ
此処ここと指す指の先蟻地獄 暮津
橋掛りをワキのバタバタ蟻地獄
此処ここと指す指の先蟻地獄
羽黒山社社の蟻地獄
霧のこゑじはっとしたり蟻地獄
垂直にこゑを落としぬ蟻地獄
蟻地獄息を凝らして魔が潜む
蟻地獄に蟻遣り世相占へる
蟻地獄さうか左様か餌をやろふ
おめでたき今誹諧や蟻地獄
蟻地獄石ころ一つふるまはん
(末尾は句集名)
蠛蠓 /
たいがひにせよとまくなぎ打ち払ふ 随笑
まくなぎのこんちくしょうめ躓ける ぱらりとせ
まくなぎのしつちゃかめつちゃか払ひけり さざなみやつこ
まくなぎの何こじれたる内輪揉め ぱらりとせ
まくなぎに顔突っ込んで分けゆけり
まくなぎの聞く耳持たぬわからず屋
まくなぎの喧嘩両成敗にせん
まくなぎにこの世の狂気移りけり
まくなぎの手のつけられぬ莫迦騒ぎ
(末尾は句集名)
蚋 /
吸血鬼蚋登場の鈴が森
利かん気な飛び方をせる蚋一つ さざなみやつこ
(末尾は句集名)
蛆 /孑孒 /
蚊 /
あどけさに心なごめる蚊遣豚 素抱
ぎんなん臭さ帯びて戻れば蚊に好かれ 暮津
くるぶしの上より刺せる秩父の蚊 ももすずめ
この吾に向ひて藪蚊何の仕草 寒暑
だいぶ夜の更けし厨を蚊のうろうろ 暮津
だうしてかよく蚊に喰はると生身魂 暮津
ひっぱたかれぺしゃんこの蚊の垢じみて 寒暑
ぷーんと来る春の蚊にしてあな近き 寒暑
ぶつかるは糠蚊のたぐひ払ひけり 随笑
ぺしゃんことなりし秋の蚊塵と捨つ 寒暑
ぺっちゃんこことし始めて摶たれし蚊 素抱
ユスリ蚊と正体知れてはしやぐもの さざなみやつこ
ゆすり蚊と名越の祓受けにけり 暮津
ユスリ蚊に伴奏添えてやらまほし 宿好
ユスリ蚊のお祭り騒ぎ始まれり 随笑
ユスリ蚊のかいぐり遊びはじまりぬ さざなみやつこ
ゆすり蚊の気炎挙げをり祭まへ 素抱
ゆすり蚊の中を抜け来し顔痒し 暮津
ユスリ蚊の柳を好む別派かな ぱらりとせ
一日の疲れ蚊遣に巻かれゐて 暮津
雨の夜をいやに元気な蚊が出でて 素抱
蚊いぶし吸ひ脚をじたばたじたばたす 暮津
蚊がむんむんたかが草取りとはゆかず 暮津
蚊が何處かにゐさうでこの部屋落ち着かず 暮津
蚊が刺しにその手は桑名の焼蛤 暮津
蚊が多し網戸が開いておりゃせぬか 暮津
蚊とんぼのぶらさがりをる谷地柳 暮津
蚊とんぼのやうな神主大祓 素抱
蚊に喰はるところ見せ合ひ妻と我 暮津
蚊に喰はる妻が夜中にむずと起き 随笑
蚊に喰はる処をさうかさうかと揉み(孫、美雨) 暮津
蚊に喰はる脛掻きこはす野っ原道 素抱
蚊に喰はれじ絶えず躰を動かしゐて 暮津
蚊に刺さる箇所の真っ赤に掻き壊す 暮津
蚊のこゑし痒くてならぬそこかしこ 暮津
蚊のこゑの潜む寝床の足の方 素抱
蚊の姥に消灯時間湯治棟 石鏡
蚊の刺せる辺りぷっくり掻き壊す 素抱
蚊の刺せる處膨らむ天の川 暮津
蚊の止まる耳摶ち据えて耳が莫迦 素抱
蚊の声す急いで何か羽織らねば 暮津
蚊の敵機来襲されば返り討ち 寒暑
蚊の奴めまだまだまだよそれと撲つ 素抱
蚊ばしらの柱を何處へ持ってゆく 随笑
蚊をのがすそこいらぢゆうがかゆくなり 暮津
蚊を酔はすのみに止むる線香にて 随笑
蚊を前に渦巻き線香発明譚 随笑
蚊を打てる合間合間に草を引く 暮津
蚊を叩く骨も折れよとおもひ切 寒暑
蚊を入れぬ蚊帳の出入り慣れたもの 暮津
蚊を撲つに眼を宙に漂よはせ 素抱
蚊を摶てる阿吽の呼吸づれてをり 暮津
蚊遣香効を奏しぬ六畳間 寒暑
蚊遣香背中の方が手薄なり 素抱
蚊遣豚おもしろおかしく過ごし来て 素抱
蚊除けスプレーたっぷりかけて子を放つ 石鏡
蚊柱がいっぽん立ちぬ党派心 ぱらりとせ
蚊柱の柱のづれを立て直す 素抱
快音と共に昇天手打ちの蚊 暮津
恰好の脛あり秋蚊むさぼれり 暮津
眼鏡の度上げねば初蚊見失ふ 素抱
顔面の蚊打てば眼ちぐはぐに 暮津
脚つまみ白紙の上へ蚊の骸 素抱
近頃の蚊いぶし随分いい香り 素抱
金魚屋の親爺かたへに蚊遣香 素抱
空ら響きして脛の蚊をうち洩らす 暮津
血を吸うてあからさまなる藪蚊の腹 暮津
吾が前をゆく走り蚊に手を出さず 素抱
溝浚ひ蚊の一、二匹何のその 暮津
荒脛に潰されし蚊を払ひ退け 素抱
再来の秋の蚊遂に仕留められ 石鏡
妻の指す腿の一箇所蚊の圧死 暮津
昨夜雨の籠り蚊放つ木曽格子 ねずみのこまくら
刺すことの今旺盛な秋蚊とも 暮津
紙一重藪っ蚊窮地脱しけり 素抱
縞柄のコオーディネーション蚊の手足 素抱
手に当るものはと見れば藪蚊なり 素抱
手の翳を察すに秋蚊抜かりなし 暮津
秋の蚊にはぐらかされてゐるごとし 寒暑
秋の蚊の拠ん所なく隅にをる 暮津
秋の蚊の幽霊じみて足の方 暮津
秋の蚊を振り切りしかと辺りみる 暮津
秋の蚊を打ちて血しぶき浴ぶ膚(はだえ) 石鏡
終戦日深くしゃがんで厠の蚊 寒暑
充分に引きつけ置いて蚊を叩く 素抱
食らひつく秋の蚊打つにまだまだよ 寒暑
人の吐く炭酸ガスを求めて蚊 素抱
人気なき湯宿の蚊遣灰白し 素抱
酔ふたればチャンスとばかり蚊の寄り来 寒暑
草引いては蚊を打つ手順繰り返す 暮津
草刈らむと踏み込む藪蚊の梁山泊 暮津
草刈鎌はうり出しては蚊と対峙 暮津
足をもて足掻く藪蚊の居さうな闇 暮津
足揃え摶たれし秋の蚊なりけり 石鏡
卒塔婆に高脚を懸け蚊の姥は ぱらりとせ
打たずゐていつかいつしか蚊の館 素抱
打ち水に真顔もて蚊が刺しにくる 暮津
打つ前のまだら縞蚊の凄味かな 素抱
大雨の夜を蚊と一つ屋根の下 素抱
大人げなく蚊の刺す処掻き壊す 暮津
断り無く入り来し蚊なれば平手打 素抱
暖房を焚けばあぶれ蚊のこのこと 石鏡
長靴を履き種採るは蚊の用心 暮津
湯殿の蚊裸の吾に対しけり 暮津
討ち取らる蚊のぺっちゃんこ膝がしら 暮津
逃げし後また来てわれを弄する蚊 暮津
入梅が先か湧きくる蚊が先か 素抱
背の辺りに止まる藪蚊を打ってください 暮津
疲れ眼に蚊の粉っぽく灯に浮ける 素抱
鼻の利く蚊なり酒の香嗅ぎつけて 随笑
物陰に隠るまで追ひ蚊の名残り 石鏡
弁慶の泣きどころにて蚊の打たる ねずみのこまくら
問題にしをり藪蚊の侵入路 ぱらりとせ
立冬の雨にユスリ蚊てんてこ舞 宿好
力んでは秋の蚊をまた打ち損ず 暮津
腕っぷし強き矢倉の蚊に螫さる 燕音
摶たるゝ蚊正しくこれは己の血 暮津
摶てる音頼りなければ蚊を逃がす 暮津
藪っ蚊か脛に感じる圧少し 暮津
藪っ蚊の金属音の急降下 鳩信
藪っ蚊の敵機来襲眼を凝らす 素抱
藪っ蚊めそこは固いぞそれは肘 暮津
藪っ蚊をまたぞろ誰が引き込みし 暮津
藪蚊打つ自とこゑも添ひにけり 随笑
蚊遣豚夜中に焚いて蚊に対す
蚊遣豚もくもくやれば蚊の退散
夕闇を蚊燻の蚊のふぬけ飛び
蚊遣り焚く八畳間より逃げ来し蚊
蚊遣して寝所より蚊を閉め出せり
蚊いぶし吸ひ脚をじたばたじたばた蚊
蚊柱の柱のづれを立て直す
蚊柱の柱うち捨て立て直し
長袖着て庭掃けば蚊の顔に来る
蚊に喰はる踵もっとも鈍感な
蚊の名残座を起つ風に煽られて
蚊を払ふ仕種おもしろ立話
雨の夜の徒然に蚊を追ひ回す
よりにより鼻のてっぺん蚊に喰はる
蚊燻しの煙を啖はばまっさかさま
蚊遣り臭き吾が身押したて起床かな
人畜に害無き蚊遣りに添寝して
蚊燻に鼻の馴れくる真暗闇
物蔭に尖声追ひやる蚊遣豚
蚊遣豚と一夜寝室共にして(岳父宅)
暮れ易き墓地の空飛ぶ蚊喰鳥
向日葵の眸をよぎる蚊喰鳥
蚊遣豚辺に侍らせて男の子たり
蚊燻の渦見て目まひ起こしさう
灼けゐたり蚊遣の灰を捨つる土
風向を計りて置ける蚊遣豚
正に脛螫す蚊が見えてその痒み
蚊に螫さる痛みと痒み相俟って
庭先のあっちを向いて蚊遣豚
蚊遣焚き岳父九十六の夏
ある筈のそれが見つかり蚊遣豚
押入のここには無いぞ蚊遣豚
世之介の浮世はいづこ蚊遣豚
蚊遣豚煙床這ふてふすぼれる
庭の藪蚊曰くどちらが闖入者
蚊燻の煙の澱める一トところ
蚊燻の匂ひ澱める闇よぎり
寝に就くや髪膚に染みる蚊遣香
起つ風に蚊遣りの煙の後もどり
老臭もいぶす蚊遣でありにけり
蚊遣火のつけ際つんとなまぐさき
垢じみしものを拾へば蚊の骸
蚊遣の香残る枕辺目覚めけり
凝視して蚊遣りの煙のなびく方
藪蚊打つごとく響けり古俳諧
部屋隅に残れり昨夜の蚊遣の香
蚊遣豚敢えて求むる昔者
水遣るにも携帯蚊遣くゆらせて
蚊遣の煙波風立たぬ家の中
潰えたる時間の容蚊遣灰
蚊遣して風の来る方抜ける方
擦り潰す敷居の横の蚊遣豚
ぎんなん臭さ帯びて戻れば蚊に好かれ
長靴を履き種採るは蚊の用心
蚊に喰はる処をさうかさうかと揉み(孫、美雨)
ゴム入りの作務衣の手首蚊を封ず
蚊に喰はれじ絶えず躰を動かしゐて
球根を植え了へるまで蚊に苦戦
だうしてかよく蚊に喰はると生身魂
のうのうと藪蚊が飛んで岳父の家
蚊を追へることも家居の手すさびに
打たれし蚊塵のごとくに払はるる
蚊といへる塵に翅あり脛にゝ(ちゆ)と
討ち取らる蚊のぺっちゃんこ膝がしら
だいぶ夜の更けし厨を蚊のうろうろ
蚊の声す急いで何かはおらねば
水打てば庭を塒の蚊に追はる
蚊の刺せしところしろしろ夕明り
蚊の塒襲へる水を打てるなり
水打てば蚊のこゑ痒み走りけり
真顔もて蚊が刺しにくる打水は
蚊に喰はるところ見せ合ひ妻と我
大人げなく蚊の刺す処掻き壊す
紛れ込む蚊の一匹はゐる平屋
蚊をのがすそこいらぢゆうがかゆくなり
顔面の蚊打てば眼ちぐはぐに
刺しまくる蚊ほど討ち取り易きもの
これ以上痩せられず蚊を目の敵
蚊が多し網戸が開いておりゃせぬか
蚊が何處かにゐさうでこの部屋落ち着かず
打たんとすこの蚊は誰が入れしもの
蚊に刺さるあたり真っ赤に掻き壊す
蚊の刺せる處膨らむ天の川
蚊のこゑす痒くてならぬそこかしこ
ぽりぽりと足掻く藪蚊の居さうな闇
一日の疲れ蚊遣に巻かれゐて
蚊を入れぬ網戸の開け閉め慣れたもの
草取りをはうり出しては蚊と対峙
蚊がむんむんたかが草取りとはゆかず
アフォリズムすれすれに翔ぶ蚊喰鳥(さる俳人に)
蚊が刺しにその手は桑名の焼蛤
空ら響きして脛の蚊をうち洩らす
朝の蚊の動き鈍しよ打たずおく
草刈らんと踏み込む藪蚊の梁山泊
藪っ蚊か脛に感じる圧少し
背の辺りに止まる藪蚊を打ってください
庭に降り立つのみなるに蚊に憑かる
逃げし後また来てわれを弄する蚊
藪っ蚊めそこは固いぞそれは肘
戸の開けたて五月蠅く家に蚊を入れず
蚊の塒一掃したる庭草取
わーんと来る蚊を払ひ退け庭仕事
快音と共に昇天腕の蚊
血を吸うてあからさまなる藪蚊の腹
群るゝ蚊の真只中に入ると知る
ちょっと蚊に刺された感じ仲違ひ
蚊とは別蝿はそんなに気にならず
蝿より蚊憎しとおもひ追ひ詰める
藪っ蚊の一つは摶ちて一つ逃す
藪っ蚊の骨身に沁みるまで逆襲
藪っ蚊につきまとはれて庭草取
湯殿の蚊裸の吾に対しけり
溝浚ひ蚊の一、二匹何のその
摶たるゝ蚊正しくこれは他人の血
ゆすり蚊の中を抜け来し顔痒し
なかんづく黙って刺す蚊にご用心
藪っ蚊をまたぞろ誰が引き込みし
蚊を摶てる阿吽の呼吸づれてをり
摶てる音頼りなければ蚊を逃がす
草引いては蚊を打つ手順繰り返し
藪っ蚊のすっ飛び来たる茗荷叢
蚊を打てる合間合間に草を引く
ゆすり蚊と名越の祓受けにけり
夏祓済む境内にゆすり蚊と
蚊とんぼのぶらさがりをる谷地柳
この部屋のぬくくて溢れ蚊来しならん
暖房を焚けばあぶれ蚊のこのこと
蚊除けスプレーたっぷりかけて子を放つ
母子して蚊除けスプレーかけ遊戯
道つけて蚊遣りを腰に山仕事
物陰に隠るまで追ひ蚊の名残り
蚊の姨に消灯時間湯治棟
蚊の蝿の一茶七番日記かな
人気なき湯宿の蚊遣灰白し
蚊の一句忘れぬうちよ鉛筆書き
あどけさに心なごめる蚊遣豚
緊張は藪蚊の見えてくる迄よ
打つ前のまだら縞蚊の凄味かな
蚊の刺せる辺りぷっくり掻き壊す
人の血を吸ひ取るときの蚊の貌は
蚊遣豚おもしろおかしく過ごし来て
蚊遣香背中の方が手薄なり
蚊にくわる腿を女房見せにけり
手を擦り抜け九死に一生得し藪蚊
荒脛に潰されし蚊を払ひ退け
身を投げて孫の眠れる蚊遣豚
蚊の止まる耳摶ち据えて耳が莫迦
寝不足の顔の廻りの蚊を叩く
唸りては蚊のよく飛ぶ日ピカドン落つ
蚊を打ちし手を洗ひをり何もて拭く
蚊のこゑの何處と探れる耳の向き
そこにゐる藪っ蚊打てと目敏き子
蚊を打てる妻の物腰決まりけり
蚊を撲つと眼を宙に漂よはせ
人の吐く炭酸ガスを求めて蚊
紙一重藪っ蚊窮地脱しけり
大雨の夜を蚊と一つ屋根の下
近頃の蚊いぶし随分いい香り
蚊遣して金魚掬いの後の闇
蚊遣豚造形の美を極むなり
家に入る小雨に追い立てられ藪蚊
断り無く入り来し蚊なれば平手打
寄り来し蚊問答無用と打ちにけり
脚つまみ白紙の上へ蚊の骸
蚊の骸しみじみと見て捨てにけり
産毛生ふ腕にもそっと藪蚊乗る
蚊の奴めまだまだまだよそれと撲つ
充分に引きつけ置いて蚊を叩く
パソコンの画面をせせる藪蚊影
金魚掬ひ親爺かたへに蚊遣香
ゆすり蚊の気炎挙げをり祭まへ
ゆすり蚊のしっちゃかめっちゃか祭前
墓空に兎も角忙し蚊喰鳥
ぺっちゃんこことし始めて摶たるる蚊
力籠めこれが藪蚊の摶ち始め
放任しをるにはあらねど蚊の館
打たずゐていつかいつしか蚊の館
疲れ眼に蚊の粉っぽく灯に浮ける
灯明りに点線を引き飛べるは蚊
蚊に喰はる脛掻きこはす野っ原道
藪っ蚊の敵機来襲眼を凝らす
蚊とんぼのやうな神主大祓
大祓吾は執ねき蚊を払ひ
藪っ蚊の横行許せし覚えなし
一しきり夕餉のあとの蚊の話
堂々と家に入りくる蚊の奴め
蚊のいつか屯す夕べとなりにけり
そこここに蚊をみる夕べとなりにけり
縞柄のコオーディネーション蚊の手足
討ち取っておけばよかった蚊でありぬ
必殺の一打に藪蚊四散せり
じんと骨痺れ藪蚊は打ち損じ
蚊を打ちて街頭テレビ世代なる
雨の夜をいやに元気な蚊が出でて
手にあたるものはと見れば藪蚊なり
眼鏡の度上げねば初蚊見失ふ
むしゃくしゃするところへ来合はす縞藪蚊
蚊のやうにただよひゐたる梅雨家居
目の前を藪蚊よぎれり血の騒ぐ
しづしづとシテの如くに初蚊出づ
蚊を打てる女は夜叉や血を浴ぶ掌
走り蚊を打ち損ずとはどうしたこと
ナイターのテレビの前を蚊のよぎる
吾が前をゆく走り蚊に手を出さず
くらがりに宵の走り蚊放し飼ひ
入梅の擲つまでもなき蚊でありぬ
一人居の長雨の日は蚊を朋に
蚊のこゑの潜む寝床の足の方
走り蚊の出づこと話題にして夕餉
走り蚊がせせりて何處か貧しき灯
入梅に紛れて出づる初蚊とも
入梅が先か湧きくる蚊が先か
すれ違ふもの走り蚊でありしかな
入梅のこゑ聞けば出づ初蚊とも
藪っ蚊の馴れ馴れしきが蹤いてくる
雨の日のはしり蚊一つかまひに来る
玻璃せせる蚊の姥車軸を流す雨
宿の蚊を閉じ籠めゐしか玻璃の内
ユスリ蚊の柱ぐらぐらたわいなし
六月のやすやす打たる蚊を見せぬ
卒塔婆に高脚を懸け蚊の姥は
しつこき蚊御用とばかり平手打ち
丹頂の上のユスリ蚊ゆらぎけり
藪っ蚊の金属音の急降下
褒貶に浮き身窶してさまよう蚊
二の丸の藪蚊しつこく追ひ来たり
ユスリ蚊の椎の匂ひにだまなせり
腕っぷし強き矢倉の蚊にささる
ご法話のその先急ぐ蚊遣香
ロッヂ泊り婆ちゃんと蚊と妹と
立冬の雨にユスリ蚊てんてこ舞
ユスリ蚊に伴奏添えてやらまほし
蚊遣香お堂の端に札所寺
蚊に刺さるとか云ひキンカン塗ってをり
蚊に喰はる妻が夜中にむずと起き
蚊遣豚最後の焚きし何時のこと
颱風の気配に庭の蚊も避難
蚊を酔はすのみに止むる線香にて
蚊遣り焚く明治の香りそこはかと
蚊を前に渦巻き線香発明譚
鼻の利く蚊なり酒の香嗅ぎつけて
八十翁肱の藪蚊を討ち取れり
老人を刺すとはふとどき蚊の小奴
藪蚊打つ自ずとこゑも添ひにけり
ふくらはぎかほど膨るは蚊の仕業
蚊のこゑの警戒警報圏に入る
うたたねの片手うつつに蚊を払ふ
藪っ蚊に筒抜けならん汗の音
初蚊打ち損ねし音の残りけり
この方か初蚊の逃げてゆきし方
耳許に初蚊の名乗り上げにけり
おやおやと腕に止まれる初蚊見る
初蚊打ち損ねし音の大きかり
金魚柄蚊遣置きゆき呉れにけり
藪蚊打つその業衰えてはおらず
遺されし風情そこそこ蚊の居る世
蚊の憎き世のもう遥か彼方かな
寝返りを打ちて蚊のこゑ遠退けぬ
蚊ばしらの柱を何處へ持ってゆく
ぶつかれる糠蚊のたぐひ払ひけり
おもしろうなふて蚊の姨翔たせもす
ユスリ蚊のお祭り騒ぎ始まれり
ユスリ蚊のくんずほぐれつ既に梅雨
参道にゆすり蚊揉める甘茶寺
蚊遣香効を奏しぬ六畳間
ひっぱたかれぺしゃんこの蚊の垢じみて
身を交はす術(すべ)抜群の蚊と対峙
終戦日深くしゃがんで厠の蚊
二匹目の蚊を討つところ終戦日
てのひらに討ち取られたる蚊の痩身
蚊の敵機来襲されば返り討ち
打据えるまでの藪っ蚊睨めつけて
憎っくき蚊打たんと片手隆と上げ
蚊に喰はる返す刀がもしあれば
蚊を叩く骨も折れよとおもひ切
この吾に向ひて藪蚊何の仕草
傾きて蚊とりせんこう形花火
酔ふたればチャンスとばかり蚊の寄り来
素っ裸初めての蚊を呼び寄せて
襟首の辺りへ藪蚊の高音部
(末尾は句集名)
蚊帳 /
ひょいと思ひ出したる蚊帳の入り方 素抱
蚊を入れぬ蚊帳の出入り慣れたもの 暮津
蚊帳潜り出でしところで覚む昼寝 随笑
鴨居見て蚊帳の吊り手の懸け方など 素抱
蚊帳裡に座して暫く魚ごころ
蚊帳吊草玄燈のいつ始まるか
草叢より飛び発つ羽音蚊帳吊草
鴨居見て蚊帳の吊り手の懸け方など
ひょいと思ひ出したる蚊帳の入り方
蚊帳吊草茎の香深め往還路
蚊帳を吊る仄暗き闇覚えをり
蚊帳吊りし宵闇いまもそこにあり
皆昔しほうたるの香も蚊帳の香も
蚊帳潜り出でしところで覚む昼寝
蚊帳吊草嗅ぎて湯の香を移しけり
(末尾は句集名)
蚊遣火 /
あどけさに心なごめる蚊遣豚 素抱
一日の疲れ蚊遣に巻かれゐて 暮津
蚊いぶし吸ひ脚をじたばたじたばたす 暮津
蚊遣香効を奏しぬ六畳間 寒暑
蚊遣香背中の方が手薄なり 素抱
蚊遣豚おもしろおかしく過ごし来て 素抱
近頃の蚊いぶし随分いい香り 素抱
金魚屋の親爺かたへに蚊遣香 素抱
人気なき湯宿の蚊遣灰白し 素抱
蚊遣火のつけ際つんとなまぐさき
(末尾は句集名)
ががんぼ /
うしみつのががんぼ離る脱衣籠 石鏡
かがんぼに跨がるゝ葉の露こぼす 寒暑
かがんぼのずりおちさうな後ろ脚 ぱらりとせ
ががんぼのせうことなしに玻璃せせる さざなみやつこ
ががんぼのぶらさがりをり滝不動 素抱
ががんぼの雨に追はれて玻璃にくる 素抱
かがんぼの雨やり過ごす葉裏かな 鳩信
ががんぼの猿猴よろしくぶるさがり 寒暑
ががんぼの脚の長きを取柄とす 寒暑
かがんぼの脚踏み外す髢草 ぱらりとせ
ががんぼの空中飛行見下ろせる さざなみやつこ
ががんぼの五體満足暁(あけ)の桟 素抱
かがんぼの交みては翔ぶ複葉機 寒暑
かがんぼの礎石を発てり国分寺 ぱらりとせ
かがんぼの暢気な父さん歩きせり 寒暑
かがんぼの閉じこめられし湯治棟 石鏡
かがんぼはかやうに物に掴まるか 随笑
かがんぼ来夜間急患窓口に 鳩信
一人留守おおせつかればががんぼ来 素抱
蚊とんぼのぶらさがりをる谷地柳 暮津
蚊とんぼのやうな神主大祓 素抱
蚊の姥に消灯時間湯治棟 石鏡
幾そ度かがんぼ吾の採血よ 鳩信
胸の内痩せかがんぼにあかしけり 寒暑
古き湯宿ががんぼの発つ脱衣籠 ぱらりとせ
草の葉を揺らしゆくものががんぼなり 素抱
卒塔婆に高脚を懸け蚊の姥は ぱらりとせ
堂縁にかがんぼ縋る五合庵 寒暑
片脚のかがんぼ悪びれてはならぬ 寒暑
縋り来るかがんぼに胸貸しにけり 燕音
ががんぼの身を透きて飛ぶ黄落に
高欄にががんぼ板東十七番
ががんぼのペン皿に来ておちつかず
ががんぼの其処に居ぬかと玻璃をみる
孤り留守おおせつかればががんぼ来
かがんぼが玻璃に前山靄霽れず
ががんぼの揺れおさまりて本の上
ががんぼの静止してやや前屈み
ががんぼの深窓につと立ち寄れる
かがんぼ過ぐやぐらを覗く顔の前
かがんぼのやうな足どり石湯出て
かがんぼの脚を余せり朝の草
本陣の昼の灯しにががんぼ来ぬ
木道の下よりかがんぼ現れて
かがんぼの農道をゆく危かり
かがんぼのつかまる胸を貸しにけり
かがんぼを追い立てるにはあらねども
庭石にかがんぼ縋り正受庵
悪路王生まれ変りのかがんぼか
旅立ちの朝の目覚めはががんぼと
かがんぼのとり縋りゐる脱衣籠
日本に棲むががんぼの種は七百余
湯疲れをせしやと宿のかがんぼ来
かがんぼにも晴耕雨読勧めたく
超然と彳つかがんぼを身内とす
かがんぼの珍客机辺外れゆきぬ
かがんぼの片外れして前の脚
かがんぼや旅行案内机にひろげ
かがんぼの水平飛行国分寺
朝のががんぼ杉菜の森の上を飛ぶ
(末尾は句集名)
蝙蝠 /
かうもりの翼電動仕掛かな さざなみやつこ
かはほりに問答無用と昏るる空 ぱらりとせ
かはほりに油ッ紙のやうな空 さざなみやつこ
かはほりの妙な飛び方卍飛び 素抱
かはほりやなかなか暮れぬ墓地のそら 素抱
掩体(えんたい)に蝙蝠巣くふ終戦日 素抱
津軽公菩提寺裏手かうもり飛ぶ 寒暑
通り魔の如くかはほり頭を越せり ぱらりとせ
踊りに飽きかはほりのごと闇馳す子 暮津
蝙蝠が飛んで来さうなと或る晩 暮津
蝙蝠のやうに下りて枯るゝ葉あり 燕音
蝙蝠の躰鈍れば飛びにけり さざなみやつこ
かはほりの旋回寺を古くせる
踊りに倦みかはほりのごと闇馳す子
蝙蝠が飛んで来さうなと或る晩
掩体(えんたい)に蝙蝠巣くふ終戦日
かうもり飛ぶ金沢ノ柵素通りに
かうもりの盲飛びして夜の蝉も
かはほりやなかなか暮れぬ墓地のそら
かはほりの妙な飛び方卍飛び
蝙蝠共々僕らの進化系統図
天神の藤にかうもり傘畳む
かうもりのやうに枯るる葉ありにけり
かはほりに「耳なし芳一」弾き語り
十六夜のかうもり飛んで薩摩琵琶
薩摩琵琶弾じかはほりめくら飛び
「耳無し芳一」琵琶弾ずればかはほり来
かうもり傘浜に突き刺し梅雨の海
柄の大きかうもり傘に男梅雨
かうもりのやうに枯るる葉ありにけり
かうもり図の円卓据えて夏座敷
深梅雨のかうもり畳めば骨の音
蝙蝠傘(かうもり)の品定めして梅雨車中
梅雨の貌かうもり傘の翳帯びぬ
津軽公菩提寺裏手かうもり飛ぶ
かうもりの冬眠の禁破るやつ
(末尾は句集名)
夏燕 /
遠刈田こけし橋越え夏燕
坂がかる小諸の町の夏燕
夏燕朝から元湯やってゐる
湯上りの顔を覗きに夏燕
鮎鷹 /
鯵刺の一撃をもてテロありぬ 随笑
鯵刺の翼九月の雨弾く
鯵刺の一撃をもてテロありぬ
(末尾は句集名)
鵜 /
ひしひしと水の暮れ来て鵜に鵜影 石鏡
ふなばたの湿り鵜舟の出を待てり ぱらりとせ
住み着きしは天保年間とぞ凍み鵜 鳩信
礁のうへ梅雨まみれなる鵜ノ足貝 素抱
利尻暮れ海鵜一羽の黒礁 素抱
(末尾は句集名)
海猫 /
きうきうと海猫鳴く岬カスベエ干す 素抱
海中に落ちて広がる海猫の糞 随笑
海猫・鴉ごちゃまぜ礼文の風に乗り 素抱
海猫のくわいくわい佐渡へ発つフェリー 寒暑
海猫の糞間宮林蔵どんの背に 素抱
海猫の糞透明に夏至明けにけり 石鏡
海猫の糞皚々宗谷暮れんとす 素抱
海猫退けて埠頭を占むる島鴉 素抱
岩窪に見え隠れして海猫子っ子(こっこ) 燕音
甲板のウッドチェアーに海猫の糞(酒田港) 石鏡
混沌を愉しむごとく海猫舞へり 随笑
羅臼町海猫は女(め)ごゑを曳き曳きて 燕音
掠めゆく海猫の羽ばたき紙の音 随笑
浪漫あり海猫舞ふフェリーターミナル 石鏡
いつの間に梅雨立ち去れる海猫の海
誕生日横浜に出て海猫の海
乗船客海猫のごと屯して
海猫アジュールライン ニューとびしま
出船所ウッドチェアーに海猫の糞
釣船の退け刻海猫の舞ふ中を
大空へ海猫を吹き上げ利尻富士
トレッキング旺んなる島海猫舞はせ
海猫高く高く礼文に入港す
礼文島近み旺んに海猫の舞ふ
靄を来て礼文間近し海猫乱舞
曇天のサハリンの方海猫よぎる
海猫止めてくろぐろ宗谷の日暮岩
海猫呑みていまオホーツク暮れるべく
双眼鏡に拾へりウトロの海猫子っ子
巣作りや大岩棚に華と海猫
海猫のわいわい云うて巣立ちけり
巣離れとおぼしき海猫の声を曳き
国後島しりへにだんまり海猫の翔ぶ
這杜松(ハイネズ)に海猫の声行き交へり
這杜松(ハイネズ)を越えて海猫海へ出ぬ
冬麗の浜ゆくうしろ海猫の嘴
海猫の本領発揮島の北風
海猫のこゑ美声に遠しワルナスビ
海猫群るる処が終点山田線
パン屑を海猫ナイスキャッチせり
甲高く客引きに似て海猫のこゑ
空中より海猫の糞浴び遊び舟
海猫の空中散歩愉しめり
遊船の空中に海猫いつまでも
頭上過ぐ海猫の美形に見惚れをり
遊船の勇みて海猫をごぼう抜き
夏暁の海猫飛ぶ彼方竜飛岬
海峡に夏暁の海猫飛び交ひて
海猫がすとんと降りてマストの上
津軽海峡ひやひや明けて海猫の糞
海峡に朝日差し込む海猫の腹
海猫の二タこゑ三こゑ海峡明け
浮塵子のごと日の出をよぎり海猫の群れ
海猫連れて蝦蛄獲船の帰投どき
人恋ひて海猫は運河を遡る
海猫の散開散開羅臼港
秋霖のテトラポットにだんまり海猫
一礁又一礁海猫の占む
誰もゐぬ浦の礁に海猫屯ろ
岩々の一つ一つに海猫一つ
海猫の祀らるゝごと弁天岩
佐渡航路半ば真白き海猫に逢ふ
束の間の夕日フェリーに沿ふ海猫に
(末尾は句集名)
岩燕 /
翠巒の風岩燕吹き落とす
自炊棟その間を飛ぶ岩燕
岩燕の巣穴にやっと目がゆきぬ
岩燕北海の空高めけり
風の日はことさら高く岩つばめ
岩つばめ巣穴の見ゆる空を翔ぶ
岩燕壮ん羅臼の町暮るる
老鶯 /
山巓に立ち老鴬の気分なり 随笑
対岸より老鴬出湯はこんもり湧く 素抱
老鴬のこゑもやませに包まるゝ 随笑
老鴬のさうともさうとも珠のこゑ 随笑
老鴬の間髪入れず玉のこゑ 随笑
老鴬も下北訛恐山 随笑
老鶯や起きて欠伸をもうひとつ さざなみやつこ
夏鴬鳴いて蔵王の奥座敷 素抱
湿原の横から一声夏鶯 鳩信
老鴬にばうと朝の煮炊きの火
老鴬に暫く浸り茶屋の椅子
老鴬の朝のお勤め森向う
夏鴬雪渓をなほ遙かにす
人ごゑの向うにお釜夏鴬
夏鴬鳴いて蔵王の奥座敷
夏鴬岬の径は入り組んで
老鴬のこゑの筒抜け共同湯
老鴬と野鳥に頓と疎きひと
湿原の横から一声夏鶯
古巣箱老鶯を目で追ひやれば
霧襖老鴬のこゑ珠とせり
老鴬の経読む涼味恐山
夏鴬賽の河原に経読みに
夏鴬賽の河原にひょっこりと
朝霧に夏鴬の気張りかな
山歩きここは急坂夏鶯
老鴬に早苗すくすく伸びてをり
老鴬の笛方つとむ能舞台
老鴬の中葺替の能舞台
(末尾は句集名)
時鳥 /
杜鵑草のあの点々はフレスコ画
水引と微光を頒つ杜鵑草
紅毛もすなる俳諧杜鵑草
別荘地いきなり頭上でほととぎす
天井に階(きざはし)懸けて杜鵑花好き
時鳥渡りソラビソ林の上
時鳥囃せば郭公啼きそびれ
木道ゆく吾を打越して時鳥
探勝路半ばに聞けり時鳥
二の坂で音(ね)を上げ聞けり時鳥
首傾げてしまふ草の名杜鵑草
鳥ごゑの横一文字杜鵑草
杜鵑草手にし座興に啼いてみせ
ほととぎす山を台座のまがい佛
郭公 /
くわくこうの声出すオルガン奏者かな さざなみやつこ
ともかくも郭公を詠みおほせたり ももすずめ
遠郭公うたたねの耳開きけり 燕音
郭公にぼちぼち起き出す湯治人 石鏡
郭公に顔を泛かせて対しけり 石鏡
郭公に自炊煮炊きの火を強く 石鏡
郭公に湯疲れの身を漂よはせ 石鏡
郭公に得したやうな顔をせり 石鏡
郭公の峰三方よ信濃へ下車 ねずみのこまくら
郭公の連呼絶えざる八ケ岳は好し ももすずめ
郭公や莨くゆらすその間も 暮津
郭公聞くネイビーブルーのペンションに 燕音
山頭火の本の中から遠くわっこう 寒暑
足どりのどんどん軽くなる郭公 石鏡
旅に出て蕎麦を喰ひたし郭公に 暮津
炎昼の閑古鳥啼く散髪屋
葭切のギャアギャア郭公啼きそびれ
郭公の待たるる宿の朝ぼらけ
いくつもの沼渡りくる遠郭公
郭公にあやからん旅明日にして
烟る箱根郭公聞こえず富士見えず
ほんものの遠郭公でありにけり
郭公を聞きつけ薄の仙石原
たてつづけ金時山の遠郭公
時鳥囃せば郭公啼きそびれ
木道の先へ先へと遠郭公
郭公に歩めば腸の整ふか
椴松に渡る風見ゆ遠郭公
郭公にとろんとろんと睡りかけ
碁盤目の別荘路地ゆき遠郭公
郭公の長啼その後無かりけり
郭公をのびのびと聞くのびのびと
郭公の連呼昂ぶり流る川
郭公の余韻心に谺せり
郭公を箱根巡りの余録とす
郭公のこゑ湖の方よりす
郭公を聞き留めし顔皆したり
郭公とおもはず妻の指さす方
郭公のあなたと知らる風の向き
バス停まで歩いてゆくや遠郭公
弁当の折を開けば遠郭公
ベランダの木椅子に聞ける閑古鳥
コテッジに目覚めて森の遠郭公
洗面の水ほとばしり遠郭公
遠郭公朝の散歩はここらまで
大野林火句碑 直立に南部赤松遠郭公
ロッジ明け郭公西す東す
(末尾は句集名)
仏法僧 /
生きて来た時代が違ふと木の葉木莵
筒鳥 /三光鳥 /
駒鳥 /
駒鳥聞く利尻森林公園に
駒鳥の雨に啼き過ぐ上高地
瑠璃 /
大瑠璃の間近も間近何處で啼く
菱形となりて大瑠璃駆くるそら さざなみやっこ
(末尾は句集名)
青葉木莵 /
ほれ君も耳傾けよ青葉木菟 寒暑
三羽目の青葉木菟の子洞を出で さざなみやつこ
寺に古る欅心耳に青葉木菟 寒暑
宿主の言ふには杜の青葉木菟 寒暑
青葉木菟いつしか寺に来ずなりぬ 寒暑
青葉木莵ほらほら啼くよたてつづけ 寒暑
相槌を打つごと別の青葉木菟 寒暑
この大樹青葉木莵など来ぬものか
称名寺いく夜な夜なの青葉木菟
青葉木菟去年までは居し梢仰ぐ
青葉木菟だんまりほうと云ふたきり
相槌を打つごとも一つ青葉木菟
村長の民宿にて聞く青葉木莵
(末尾は句集名)
夜鷹 /鹿の子 /夏蚕 /
尺蠖 /
尺蠖や擬態は怪しき商ひにも(詐欺頻発) 暮津
尺蠖のしゃっちょこ立ちをしてみせぬ 石鏡
尺蠖の探り直せる空の奥 素抱
(末尾は句集名)
夏の蝶 /
夏蝶の眩しき野合見てゐたる 素抱
揚羽蝶雨後の路地より発ちゆけり 素抱
草々の容をなぞり夏の蝶 素抱
夏の蝶聞けば南洋諸島より
揚羽蝶猫の見てゐる鼻先を
地に止まる大揚羽蝶何の意ぞ
揚羽蝶急転直下繰り返し
夏蝶の8の字翔びに興じけり
波の上を夏蝶八艘飛びめけり
揚羽蝶何考へて横っ飛び
夏蝶に蹤くリハビリの優等生
なかぞらに夏蝶交るは野合めく
夏蝶を放てと云ふ子ごもっとも
揚羽蝶朝顔棚を横目にみて
夏蝶のひらめくごとく一案得る
夏蝶飛び辺り白黒映画の景
椎に夏蝶はたきをかけてゐるごとし
夏蝶を風吹き消しし後の景
(末尾は句集名)
蛇 /
うす膩泛く春の蛇正視して 素抱
うち捨てらる蛇の亡骸側溝に 素抱
この池を目当てに現るる青大将 随笑
すすむ胴水に密着させ蛇(くちなわ) 素抱
そそくさと蛇穴に入る海蔵寺 ももすずめ
それ以上蛇を深追ひせぬぞよき 寒暑
官軍の錦蛇とはもつともな さざなみやつこ
極月の蛇屋の壜の蛇覗く さざなみやつこ
錦蛇暫し見てゐてのぼせけり 鳩信
溝細々路地に遺りて蛇の髯咲く 素抱
山道のここにどっこい蝮蛇草 宿好
蛇(くちなわ)が太藺の中へ消えゆけり 素抱
蛇(くちなわ)を滑り込ませて沼無風 素抱
蛇(ながむし)の唯々通り過ぐを待つ 素抱
蛇の衣懸けあり蛇の遊び木に さざなみやつこ
蛇の消ゆ草のあたりの薄びかり 暮津
蛇の舌まざと脳裡に刻まれぬ 素抱
蛇の髯の花気がつけば雨小止み 暮津
蛇の髯咲く我家の前を通園児 石鏡
蛇よぎる水脈須臾にして跡かたなし 素抱
蛇を見し胸の早鐘鎮めをり 寒暑
蛇去りて沼の表情取り戻す 素抱
水上を突き進む蛇不敵なり 素抱
蛇を見て暫く話蛇のこと
蛇の消ゆ草のそこだけ薄びかり
蛇穴に入る隠沼の裏磐梯
うち捨てられ蛇の亡骸側溝に
蛇(くちなわ)が太藺の中へ消えゆけり
蛇の舌まざと脳裡の刻まれぬ
すすむ胴水に密着させ蛇
蛇よぎる水脈須臾にして跡かたなし
沼渡る蛇全長を見せにけり
蛇(くちなわ)を滑り込ませて沼無風
水上に蛇乗り出してかへりみず
蛇の首立て続けにて疲れぬか
蛇(ながむし)の唯々通り過ぐを待つ
泳ぐ蛇見遣る戦慄抑えつゝ
蛇去りて沼の表情取り戻す
蛇穴を出でて水辺に遊べるか
穴出づる蛇に山径輝けり
雪鎧ふ山の木は皆蛇の性
蛇の衣水に浸かりて水脹れ
錦蛇暫し見てゐてのぼせけり
蛇のあと今度は何が湖畔みち
画狂老人北斎描きし白き蛇
のた摶って蛇体のみどり楠若葉
草叢に蛇の尾隠れきるまで居る
蛇穴を出づる珍事に行き會はせ
木漏れ日に蛇の舌先ちろちろと
白き蛇殺める咄まめかり時
棒切れで追ひ回されて蛇必死
くちなはの出立ちすがた鏡池
蛇踊りのさすが祭の空高く
涅槃図に蛇(くちなは)ながす空ら泪
この池を目当てに現るる青大将
蛇(くちなは)も白く化粧ふて年始状
円空の蛇体の龍神年を祝ぐ
堰落つはくちなはならずやまんじゆさげ
男鹿に蛇多しと聞くやバス車中
それ以上蛇を深追ひせぬぞよき
蛇を見し胸の早鐘鎮めをり
(末尾は句集名)
蛇の衣 /
蛇の衣懸けあり蛇の遊び木に さざなみやつこ
(末尾は句集名)
蝮蛇 /
【参考】
拙句 蝮蛇草
山道のここにどっこい蝮蛇草 宿好
蝮蛇草凄味を増して迷ひ道 寒暑
(末尾は句集名)
蜥蜴 /
蜥蜴現る徒ら心頭を擡げ 寒暑
蜥蜴の腹なんぞ見をればもう昼どき 素抱
蜥蜴の尾ちょっくらとれた位では(道路公団人事) 暮津
蜥蜴そろそろ蟻はせかせか庭の昼 暮津
葉が動き目を付けられぬ小蜥蜴 素抱
目を宙に標本擬ひの大蜥蜴 さざなみやつこ
腹這ひに蜥蜴ぬくもる子産石 ねずみのこまくら
軟体の蜥蜴は水のごと流る 暮津
駐在所前を駈けぬけ青蜥蜴 ねずみのこまくら
虫籠を覗けば何と瑠璃蜥蜴 素抱
虫籠に蜥蜴を入れて兄貴分 素抱
足柄古道よぎる蜥蜴の貌に冬日 ももすずめ
青芝を蜥蜴は泳ぐやうにして 石鏡
身の危険察知蜥蜴のダッシュせり 寒暑
取り外しきく蜥蜴の尾置いてゆく 随笑
混浴の洗ひ場奔る青蜥蜴 素抱
胡座かき蜥蜴はこうもり安のさま 寒暑
雨音に追いかけらるる蜥蜴かな 素抱
ふふふふと地に息かけて蜥蜴出づ ぱらりとせ
うたた寝すつつじの上の瑠璃蜥蜴 寒暑
庭先に飼うにはあらず殖ゆ蜥蜴
断絶の父と子蜥蜴は尻尾巻く
秋の蜥蜴壁温ければ壁伝ひ
蜥蜴の腹ヒクと交みに来てゐたる
一呼吸二呼吸して蜥蜴見る
うち霽れて皐をわたる蜥蜴かな
蜥蜴消ゆ刹那磐も飛ぶごとし
奇禍に遭ふ蜥蜴に鈍く日の差せり
蹲る蜥蜴地熱と同温に
連休の庭石に伏す昼とかげ
石ころの彩の蜥蜴を発たせしか
青芝を蜥蜴は泳ぐやうにして
蜥蜴をば恐竜と見る陽炎ふ中
ともかくも蜥蜴ちょろちょろして湯宿
造物主たはむれに成す蜥蜴の尾
猫見る間はたして蜥蜴雲隠れ
蜥蜴の腹ひくひく時を計りをり
まなかひに出でて蜥蜴の間の悪し
大緑陰人.鳩.とかげ憩はしめ
湯送管腹も温げに瑠璃蜥蜴
青蜥蜴見んと寄れるも間に合はず
蜥蜴吾れを見上げて半信半疑の体(てい)
(末尾は句集名)
百足虫 /
羽抜鳥 /
おっとりと過ごしてゐては羽抜鳥 素抱
羽抜鶏もんどりうつてスコール来 ねずみのこまくら
羽抜鳥どころか鏡のわが痩躯 暮津
羽抜鳥みてくれよりは達者なり 寒暑
羽抜鳥沽券も意地も疾うに無し 石鏡
外見は一見丈夫羽抜鳥 暮津
気骨あるその歩きぶり羽抜鳥 鳩信
男気の廃れたる世の羽抜鳥 燕音
脇見して自分が見えぬ羽抜鳥 暮津
一人合點又して羽抜鳥歩く
羽抜鳥孤高守りて阿らず
淡々と歩んでゐては羽抜鳥
かさつける風を潜りて羽抜鳥
自画像は切羽詰まりし羽抜鳥
皆右へ私は左へ羽抜鳥
羽抜鳥十を失ひ一を得ぬ
(末尾は句集名)
水鶏 /鷭 /
青鷺 /
青鷺がここにもオホーツク晴天 燕音
青鷺の子っ子(こっこ)に翔べと湖の風 燕音
青鷺の探り歩きの一歩づゝ 宿好
青鷺の八頭身を水鏡 宿好
青鷺の嘴を預けし砂州の天 燕音
置物のごとく青鷺置く干潟 燕音
青鷺の直立陶ではあるまいに
青鷺にオホーツク海冷たかろ
青鷺の向く方オホーツクの夏
青鷺のあほむく朝の空があり
青鷺の羽を開きて朝迎ふ
青鷺の振る首白く光りけり
青鷺の向き向きに明けわたる朝
青鷺のゆっくり越へぬ楡若葉
青鷺のふうわりはまなす吹かる方
青鷺は置物のごと舟下り
最上川青鷺の佇つ向う岸
青鷺が青田に降りて何漁る
一ト煽り青鷺薄鼠深めけり
(末尾は句集名)
熱帯魚 /
チョウチョウウヲ吻吻云うて泳ぐなり さざなみやっこ
この辺の何処かにサザナミヤッコの本 さざなみやっこ
拗ねる癖吻にありありフエヤッコ ぱらりとせ
いそいそと竜宮城へルリスズメ ぱらりとせ
いっせいに顔の向き替えデバスズメ ぱらりとせ
淡水水槽
ペレズテトラ・コンゴーテトラ・エトセトラ ぱらりとせ
熱帯魚所帯臭さを捨てゝ見る 素抱
金魚屋のグッピーの眼が忘られず 素抱
熱帯魚人を尻目の別世界
熱帯魚蛍光灯の青を帯ぶ
口許は馬づらはぎ風熱帯魚
機敏なり電子画像の熱帯魚
(末尾は句集名)
◆植物
杜鵑花 /
花菖蒲 /
ごったがへす菖蒲田の径譲り合ひ 寒暑
ノハナショウブ一町先の風が見ゆ 暮津
めんどくささうに吹かれて花しやうぶ さざなみやつこ
花しゃうぶ見つめて風の見えるまで 素抱
山妻にノハナショウブの季(とき)ありし 石鏡
山妻にノハナショウブの面影も 石鏡
素っぴんのノハナショウブに逢ふ水辺(箱根湿生花園) 石鏡
草っ原ノハナショウブの一本立 暮津
白菖蒲蕾きりきり鏃めく 鳩信
風上にノハナショウブを愛づるこゑ 暮津
(末尾は句集名)
アイリス /渓蓀 /
グラジオラス /
さて蝶はどの花序選ぶグラジオラス 暮津
根っからの音痴に生まれグラジオラス 暮津
彩どりを考え春植えグラジオラス 暮津
(末尾は句集名)
時計草 /
時計草垣に目覚めし目を覗く 鳩信
時計草百咲き泥棒市めくも 素抱
金網を這ひずりまはる時計草 さざなみやつこ
(末尾は句集名)
杜若 /
かきつばた水路に殖ゆる雨小紋 寒暑
かきつばた風に折り目のあるごとし 寒暑
かきつばた莟きりりと江戸紫 寒暑
その中に杭もすつくとかきつばた ねずみのこまくら
デフォルメし水を描けるかきつばた 暮津
牡丹圖を杜若圖に掛け替へよ ももすずめ
杜若空には雲の覆ひ物 随笑
屯して宙に静止のかきつばた
おおかたは水の構図よかきつばた
死も風も予告なく来て燕子花
杜若橋を渡れば橋が見え
曇日の一彩深きかきつばた
かきつばた巡り三々五々の風
目を移すかきつばたよりかきつばた
写生位置ここと決めたる杜若
かきつばた蕾むしょうぶの露払ひ
かきつばた風曇天をえぐりけり
かきつばた一花一花の白飛燕
業平を遠祖とせるかきつばた
まっさきに倚るかきつばた濃紫
雨のあとからっと晴れて杜若
かきつばたその振袖に風孕まし
(末尾は句集名)
著莪 /
しやがしやがと著莪にふる雨聴きゐたり ももすずめ
しろがねに著莪は睦月の日を返し(妙本寺) 暮津
雨癖のこれからつくよ著莪の空 暮津
御不浄と云ふ語遺れり著莪の花 随笑
最明寺殿の眼光著莪明り 寒暑
十薬を著莪を濡らせる雨真青 暮津
水捌けの悪きを著莪に好まれて さざなみやつこ
著莪に降る雨や雨水のはけ所 寒暑
著莪の雨たうたう来たねとご住職 宿好
著莪叢の凄みを増せる不動脇 随笑
島の著莪活けて茶店の富士見亭 宿好
拝観の人を禁じぬ著莪畳 暮津
野あやめの妹分の著莪咲けり さざなみやつこ
雨水の音色を奏で著莪の谿
著莪の花静寂を鳥と頒ちけり
十薬に著莪に雨音身ぢかなる
九十九折石段にさす著莪明り
著莪畳白光樹下をなだれけり
著莪畳草木生ふに任す寺
著莪の雨馬穴をひっくり返したやう
ざざ降りに根を洗はるる岨の著莪
著莪の花よいしょと佇てばめくらめり
このところ雀見ぬ日や著莪咲いて
風雪に朽ちし堂縁著莪のあめ
著莪の花殖ゆるに任す在所寺
著莪の花寺の衰退免れず
振り仰ぐ百段の磴著莪の花
梅雨晴間著莪を植ゑんと寺男
一抹の淋しさ帯びぬ著莪の花
下闇の著莪に通る日燦爛と
著莪咲いて北條高時自刃の地
著莪叢の凄みを増せる木下闇
著莪咲いてつるつる辷る古径
著莪の葉の薄びかりせる水子佛
この辺り厠のありし著莪の花
汲取の世も遠くなり著莪の花
佐助町著莪の咲く路地猶辿り
白浪の絶えず沖より著莪の花
その辺り著莪咲くばかり五輪塔
著莪咲いて蒙古退く僧の墓
哲人の墓の背ラに著莪雪崩れ
(末尾は句集名)
一八 /
しろしろと物日の一八咲きにけり 暮津
一八のひょいと咲いてるまひるかな さざなみやつこ
一八の旺んなる中葬りけり ぱらりとせ
一八の白きに雨の家居かな
一八に花が了つて仕舞ひけり
風吹けと促してをり白一八
ぴんしゃんと一八咲かせ染物屋
一八に見ゆ良寛の筆運び
(末尾は句集名)
花橘 /
橘月良寛剃髪せし寺に
雲の浦橘月の雲うごく
橘のかをるが如く上木す さざなみやっこ
橘寺垣を低めに手毬唄 ねずみのこまくら
(末尾は句集名)
蜜柑の花 /
朱欒の花 /
【参考】
拙句 朱欒
文旦は親分柚子はその子分 素抱
(末尾は句集名)
橙の花 /オリーブの花 /柚の花 /
柿の花 /
つくねんと柿の木いっぽん枯月夜 宿好
柿の花ひとり男が遺されし 暮津
柿の花妻の実家に近く棲み(懐古) 暮津
柿の木のへうへうと彳つ枯れて彳つ 随笑
柿の木の雨にからきし弱き花 さざなみやつこ
柿の木を発ちて鵯柿の木へ 燕音
吾が棲みし借家健在柿の花 暮津
柿の花守一の画にあったっけ
四十九日須臾の間に来て柿の花
今も在る嘗ての借家柿の花
構はれぬ日々続きをり柿の花
一病も運と云おうか柿の花
柿の花夜を日を継いで散る盛り
結構な商家の構え柿の花
自堕落になる柿の花日和風
通院を始めて十年(ととせ)柿の花
柿の花不治の病ひは絶えずして
柿の花不意に来るもの死と病ひ
柿の花肺病みの世は遠くなり
柿の花或る日病ひに見込まれて
(末尾は句集名)
石榴の花 /
ざくろ咲き通院かんかん照りの道 素抱
ざくろ散る凶事相次ぐ世となりて 随笑
石榴散り振袖火事の火の粉めく 鳩信
口々に何を歎ける花ざくろ
アスファルト摶って砕くる花ざくろ
砕け散る昔の色の花ざくろ
花ざくろ「雨に唄へば」口衝いて
(末尾は句集名)
栗の花 /
この村の津波避難路栗の花 随笑
栗の花しどろもどろとなる天気 素抱
栗の咲くここまで三陸大津波 随笑
栗の花廃屋傾ぐ村はずれ
栗の花白雲洩れて日が射せり
栗の花蔵王旺んに雲湧かせ
にほふことチーズ工場・栗の花(蔵王山麓・酪農センター)
山峡の朝をもりもり栗の花
靄好きの陸中野田の栗の花
やおら吹くやませに烟る栗の花
(末尾は句集名)
椎の花 /
「附子」を観て椎のにほへる戻り道 ももすずめ
お万灯心に点る戻り道 燕音
バサと氷る濡れ髪湯屋の戻り道 暮津
花椎か薬師の壷か夜を匂ふ ねずみのこまくら
月あるも寒さしぶとき戻り道 宿好
真横より西日険しき戻り道 暮津
椎の香と云ひかけて顔見合せり ねずみのこまくら
椎の香のこれぞてふ香に立ち止る 鳩信
椎の香も今となりては嘘のやう 暮津
椎咲いてむっとするなか狸穴坂(まみあなざか) 素抱
椎匂ふ日中友好会館裏 暮津
椎匂ふ日吉坂上通りけり
椎匂ふ高輪協会白亜のひる
小学校裏門椎の花匂ふ
大椨の隣の椎の花了る
境内に素の香を通す椎の花
(末尾は句集名)
菩提樹の花 /
楝の花 /
花樗雨にむらさき花薄れ
栴檀の葉のこまごまと梅雨に入る 鳩信
(末尾は句集名)
えごの花 /
えごの花虻のお尻の大きこと 寒暑
(末尾は句集名)
水木の花 /
水木咲く青山にして温泉(ゆ)の湧ける(箱根宮城野温泉会館) 石鏡
瑞々しき水木花挙ぐ塔ノ沢 石鏡
素性よき樹木といはむ花水木 鳩信
(末尾は句集名)
山梔子の花 /
梔子にことしの旱間違ひなし
梔子の少し黄ばみて雨まみれ
梔子を愉しむそんな齢来て
山梔子や後悔といふ後手踏んで
裏木戸がまだあり傍に山梔子も
山梔子を喰ひ散らかせる鵙となり
始めてや山梔子啄む鵙なんて
山梔子の錆花雨が上がりをり
くちなしの花広げ降る雨しとど
山梔子のにほひ爛れてをりにけり 寒暑
(末尾は句集名)
南天の花 /
南天の花支ふ茎間延びして
繍線菊 /
うるうると繍線菊草は朝の彩 宿好
オニシモツケじんはりけふは蒸す日なり 暮津
雨烟り繍線菊ぼんやり咲くところ 暮津
繍線菊にぼんやり道の続きをり 暮津
繍線菊にもやっと朝の来りけり 暮津
繍線菊の愛くるしさに接しけり 暮津
繍線菊の盛り過ぎしはピンぼけに 石鏡
繍線菊見る目元もやもやしてきたる 石鏡
繍線菊や端切れを使ふ裁ち仕事
激賞のこゑの挙がれり繍線菊に
繍線菊に掛けて女の褒め言葉
繍線花うすぼんやりと咲けるなり
繍線菊の淡さ尽して咲きにけり
淡きこと繍線菊に及ぶまじ
繍線菊の小諸市街地見下ろせり
繍線菊草咲く前の色後の色
色白の日焼けて繍線菊草の色
繍線菊のからくれなゐに一歩寄り
繍線菊に溜息つきて立ち止まる
繍線菊のまだ弾けざる花の端
繍線菊の高々咲きに頬ずりせん
(末尾は句集名)
榊の花 /
みるからに榊はとっつき難き花 寒暑
(末尾は句集名)
未央柳 /
紫陽花 /
あじさゐと学生諸君に溢る寺 (明月院) 寒暑
あじさゐにすととんすととん横須賀線 寒暑
あじさゐの彩目に宿し谷戸の径 寒暑
あじさゐの毬に見事に乗りし色 鳩信
あぢさゐがのさばり出して家の裏 暮津
あぢさゐが咲いて清潔無比の園 鳩信
あぢさゐが飛ぶ飛ぶ回転木馬(メリーゴーランド) (孫と) 随笑
あぢさゐにはやりすたりの色ありし 鳩信
あぢさゐに降りて募れる色風情 鳩信
あぢさゐのスケッチブック絵葉書大 素抱
あぢさゐののっぺらばうに雨ざんざ 随笑
あぢさゐののっぺらぼうが庭木かげ さざなみやつこ
あぢさゐののっぺらぼうのうすぼんやり 素抱
あぢさゐのほとりより発つ雨の音 素抱
あぢさゐのぼろんと零す雨滴かな 宿好
あぢさゐの雨の葉っぱのにほひかな 鳩信
あぢさゐの花のあはひの水の膜 素抱
あぢさゐの花剪りをればぽつと雨 随笑
あぢさゐの極まる色も見ず逝くか (同期生) さざなみやつこ
あぢさゐの彩の違ひを見てゆかん 随笑
あぢさゐの咲きためらへる花のいろ さざなみやつこ
あぢさゐの雫を浴びぬやうに抜け 素抱
あぢさゐの色ならぬ色みえくる日 ぱらりとせ
あぢさゐの色脱けて雨締り無し 素抱
あぢさゐの新種いろいろ世につれて 暮津
あぢさゐの精気そろそろ欠けてくる 素抱
あぢさゐの待たれゐるかに彩させり 随笑
あぢさゐの地味に応じて醸す彩 暮津
あぢさゐの藤御納戸に定りし 随笑
あぢさゐの秘色(ひそく)天より貰ひけり 素抱
あぢさゐは坊主めくりの坊主めく 素抱
あぢさゐもて市民公園飾り立て 寒暑
あぢさゐをびいどろ色の雨つつむ ねずみのこまくら
お台場のあぢさゐ色の観覧車 素抱
雨の日のあぢさゐ何處から暮れてくる 素抱
雨打って山あぢさゐの葉が踊る 素抱
海に水母陸(くが)にあぢさゐ漂へる 素抱
海よりも濃きあぢさゐを操舵室 ねずみのこまくら
携帯電話るると四葩の辺に受けぬ 素抱
傘行き交ふ紫陽花のだらだら坂 宿好
山に山あぢさゐ雨の降り足せる 素抱
紫陽花のうすぼんやりと末路のはな 寒暑
寺巡りあじさゐ彩のレエンコート 寒暑
写真術開祖の咲かす濃あぢさゐ (下田、下岡蓮杖の碑)ももすずめ
厨より見るあぢさゐの乾燥花 素抱
青勝ったあぢさゐがいい老頭児(ろーとる)には (新種の紫陽花出回れば) 寒暑
滝音のはつかに聞ゆ蔓あぢさゐ 燕音
燈臺の下のあぢさゐ色を増し 随笑
濃紫陽花雨の塊り落しけり 素抱
百段をのぼりつめれば七変化 ねずみのこまくら
友の忌の白あぢさゐを胸の丈 ねずみのこまくら
良寛の里あぢさゐの万理都関(まりつかん) 寒暑
毬あぢさゐお隣さんへなだれけり 素抱
毬あぢさゐ例はば写楽の役者顔 素抱
籠もる身の枯あぢさゐに等しきか 素抱
青葉の中紫陽花孤り褪せるのみ
鉢植の紫陽花花舗の半ば占め
紫陽花を包み込みたる一空間
紫陽花寺女の足で五、六分
紫陽花や死に支度にも手本あり(新城千代)
雑俳を反面教師として紫陽花
羽黒山某院某坊四葩咲く
あじさゐの挿し木狭庭の痩せ土に
厨より紫陽花渡る風が見ゆ
紫陽花の装飾花とはこれ初耳
年々に殖ゆる四葩に家埋もる
紫陽花公園海はあいにく曇りゐて
歌姫のリボン紫陽花イメージして
乳母車と車椅子逢ふ四葩の辺
紫陽花公園沖に帆船現れて
雨の日の葉山紫陽花初々し
紫陽花の陰口たたく家の裏
べうべうと雨にみづいろ四葩咲く
黄を少し加へあじさゐらしくなる
あじさゐの無頼派百合の清純派
紫陽花活けモガ6モボ展の喫茶室
西洋紫陽花などと云ひて赤み帯ぶあぢさゐ流行れば
足柄の山麓の雨紫陽花に
傘上下して紫陽花のだらだら坂
御本家のあじさゐ凌ぐあじさゐや
世の中の成り行き任せ七変化
紫陽花の葉っぱずぶ濡れ雨臭し
あぢさゐの七変化見て若からず
海見んと一段のぼる濃紫陽花
天保の好みの彩を濃紫陽花
粋な名を貰ひあじさゐ新品種
紫陽花の錆るに任せ習ひ笛
すれ違ひざま紫陽花の毬揺らす
紫陽花の段々坂下り由比ヶ浜
北鎌倉あじさゐ季の傘の彩
傘すぼむ音のぱたりとあじさゐ寺
あじさゐの蔭縫へる径紛らはし
紫陽花の浅黄を雨の摶ち始む
降る雨に四葩角ばる下田港
(末尾は句集名)
額の花 /
朝風は平らに吹いて額の花 鳩信
額の花吾妻鏡にみえる寺 寒暑
(末尾は句集名)
葵 /
こちら向く葵とあちら向く葵 暮津
ともかくも昔はよかった銭葵 素抱
葵喰ふ青虫作法知らざりき 暮津
雨上り地明りのして立葵 素抱
雲中へやみくもに伸ぶ立葵 暮津
旧街道角っこの銭葵かな 鳩信
糊状の葵の花殻捨つ晴れ間 暮津
降る雨の真直葵に倣ふべく 暮津
上り易き雨と覚えて立葵 寒暑
銭葵元警官の家にして 暮津
銭葵長けしを残し引越せる ももすずめ
屯して昔話を銭葵 鳩信
聞き来し道わからなくなり立葵 鳩信
放射熱放つ舗装路立葵 暮津
立あふひ東海林太郎をおもふべし さざなみやつこ
立葵てふてふ道草くってをり 鳩信
立葵何處向いて咲く何處向いて 鳩信
立葵広葉より蝿発着す 暮津
立葵前にしすっくと背を正す 暮津
立葵歩いて直す病あり 素抱
立葵明日咲く莟はこれとこれ 暮津
団地の端忘れられゐし立葵
はりはりと葵の葉にくる通り雨
筒抜けに道端咄立葵
銭湯の値上げもっとも立葵
ハマキムシつきし葵の葉をちょんぎる
立葵花はもとより丈くらべ
そそくさと葵を蝶の発ちゆけり
糊状の葵の花殻捨て晴天
立葵次々咲いて次は是
雨後明りそれも亦よし立葵
立葵田舎銀座の賑ひめく
上州の茎逞しき立葵
中日にごたごたありて紅蜀葵
行きずりの人にも午報立葵
階に階重ね団地の立葵
日の照りて雨後の葵の土蒸るゝ
銭葵旧知あらかた居なくなり
思ひ出を肥やしに咲かす銭葵
紅蜀葵倒れ易きを立たせ咲かす
踏切を何か急かれて立葵
葉の浄らまだ花つけぬ紅蜀葵
外に洩るゝ嬰(やや)の泣ごゑ紅蜀葵
坪庭に歪性向日葵ぽと咲かせ
黒揚羽端の葵の花端折り
立葵みんな忙しくその辺過ぐ
花を待つ姿すっくと紅蜀葵
立葵姿勢を保ちゐたりけり
立葵群れて賑やか雨も賑やか
吾が丈をそこに立たせぬ立葵
立葵歩幅緩めてそこを過ぐ
正面に人を立たせる立葵
この葉叢銭葵ちは知って居り
松に葵図 等伯一門総掛かり
歯科医院逃れ出づれば立葵
銭葵質屋の主路地を掃く
紅蜀葵連休半ば過ぎてをり
早立の朝やって来て立葵
葵の辺湯町の老人体操す
アラブ風装ひをもて立葵
唐(から)を経て日本へ来たる立葵
青空に来し方おもふ立葵
銭葵昔気質の立姿
細う吹く風引込んで葵路地
立葵爪先立ちして八郎潟
葵咲く家毀たれてあとかた無し
立葵衛星放送受信して
立葵外(と)に見えてゐる昼ごこち
(末尾は句集名)
ゼラニューム /
ゼラニュームだらだら雨に打たれをり ももすずめ
ゼラニュームに金盥めく太陽が ぱらりとせ
ゼラニューム赤き愛車を洗ひをり さざなみやつこ
ゼラニューム包み降るあめ途切れなし 素抱
ゼラニューム野放しにしてこの洋館 暮津
虫共の鼻も曲らむゼラニューム 暮津
日に摶たれ強き花にてゼラニューム 暮津
その手入れ簡単なればゼラニューム
ゼラニューム一鉢部屋に持ち込み冬
通りすがりのいつもこの家ゼラニューム
(末尾は句集名)
岩菲 /
鋸草 /
手に当てゝ鋸草の試し切り 素抱
手に当てて切れ味試す鋸草 素抱
鋸草植ゑし年寄見ずなりぬ
しろしろと海霧に目覚めぬ鋸草
(末尾は句集名)
矢車草 /
花殖やす和尚の心根矢車草 素抱
矢車草風出て潮色三変す 寒暑
矢車草ぽつりぽつりと寺訪ふ人
矢車草直ぐなる風がすっと来て
うみそらに矢車草の彩とびぬ
岬の空鳴りて淋しき矢車草
あいにくと海は時化気味矢車草
矢車草のうへの岬の空が鳴る
常ならぬ色に海変ふ矢車草
(末尾は句集名)
紅の花 /
十薬 /
うつむいて庭の十薬引一途 さざなみやつこ
これなんとかしなくちゃ十薬はびこる庭 素抱
どくだみや皆何處か病み薬漬け 暮津
とばつちりうけて十薬むしらるる ももすずめ
十薬にも植物園の標示札 素抱
十薬に朝の一刻日差しけり ももすずめ
十薬のにほふ日猟奇事件あり 素抱
十薬のむっと一雨ありさうよ ぱらりとせ
十薬の見目うるはしき立石寺 素抱
十薬の手にする迄もなき匂ひ 鳩信
十薬の森の何処より手をつけむ さざなみやつこ
十薬の天に向ひて十字切る 寒暑
十薬の筒芽棒立ち選佛場 ぱらりとせ
十薬を引き来しと云ふ言無けれど 素抱
十薬を著莪を濡らせる雨真青 暮津
十薬を抜き来てさつぱりしたる顔 ももすずめ
徒然に十薬引けば梅雨近む 暮津
繁茂せる十薬へたに引かぬがよし 素抱
磴厳し十薬の辺に弱音吐く 素抱
薬花血止草(ちどめ)十薬など咲けり
十薬も持薬も殖ゆる梅雨はじめ
十薬の類は見つけ次第抜く
十薬に染む掌饅頭ほおばる時
十薬を引きて染む香の手を脱けず
十薬にも名札自然教育園
胡散臭きものに鴉も十薬も
十薬に著莪に雨音身ぢかなる
十薬生ふ旧箱根道一里塚
十薬咲く団地の昼はひっそりと
毒づくといふにあらねど十薬叢
十薬の暗緑謳歌聞けとこそ
八幡さま裏の十薬・消防倉
十薬を逆さに干せる訳あらん
十薬の森の下草痩せてをり
十薬のにほひぐらいで手は洗はず
十薬は美しものは取り様で
十薬の香が強く乗る風が来ぬ
草むしり十薬ぷんぷん臭はせて
むしりては十薬の香をのぼらしむ
繁茂せる十薬へたに刈らぬがよし
十薬の全て刈られて逃げ場なし
刈られたる十薬の香を抜きにあめ
十薬は場所を選ばず駐車場
一輪挿し十薬活けるに事欠いて
十薬のここまで伸びて駐車場
十薬の無風なるとき戦ぐとき
十薬の梅雨鶴首して長ける丈
十薬を中途半端に引く勿れ
重宝な作務衣に十薬引きゐたり
十薬引きここで打切り扨て昼餉
十薬は雑草に伍し六月へ
十薬の潔く咲く雨の中
十薬の葉の清浄と雲松院
十薬の百も承知の匂ひこれ
十薬も花の裡とぞ描きける
十薬の打たれひまなし雨の昼
打たれ搖る雨の十薬目の限り
十薬の庭に目を遣り夕間暮
十薬打つ雨ここかしこおもしろや
風下モに十薬の香の流れけり
十薬の葉のあをあをと雨意俄か
十薬の葉は銹色に卯月果つ
螢出づ辺り十薬潜む闇
十薬の晴れても降っても曇っても
十薬もいっちょうまいの梅雨の花
十薬の呪い咲きも閻魔堂
病ひ持十薬の葉を裏返す
(末尾は句集名)
鬼灯の花 /
【参考】
拙句 鬼灯
じくじくと虫喰い酸漿雫せり 素抱
なま白き鬼灯の花雨を呼ぶ 素抱
ほゝづき揉む女の手許よく描けて (鏑木清方)寒暑
鬼の子の玩具の鬼灯鳴らしけり 素抱
鬼灯の窶れて野辺の魂棚に 素抱
鬼灯を雨に打たせて船世帯 ねずみのこまくら
亀虫の一団鬼灯荒らしに来 暮津
市立ちて一鉢なんぼの鬼灯売る 暮津
清方のほゝづきの絵のほゝづき鳴る 宿好
前後して人の逝くなり蟲ほほづき 寒暑
庭土が痩せゐて鬼灯ひとつきり 暮津
良寛の桑門の道鬼灯より (光照寺) 寒暑
酸漿の花のいつしか実となれり
鬼灯の花これ下のそれ袋
ほほづきの花も実も皆うつむけり
(末尾は句集名)
萱草の花 /
紫蘭 /
雨の日は雨の紫蘭を玻璃越しに 宿好
虚子にして詠める紫蘭の句を知るや 宿好
接骨院紫蘭わんさと植え込みて 暮津
風の中紫蘭の内緒話かな 寒暑
紫蘭吹く風もむらさきじみてをり
横須賀に連なる浦の紫蘭咲く
接骨院私道に紫蘭植え込みて
紫蘭咲く要は気持の持ちやうと
陸続と丘吹ける風紫蘭分け
紫蘭咲く風の日歩きとほしけり
追浜(おつぱま)の航空基地跡紫蘭咲く
この家の庭隅紫蘭よく似合ふ
朝まだき紫蘭は伏目がち
紫蘭咲く浜の細路地浦賀町
(末尾は句集名)
鈴蘭 /
鈴蘭に横より突き出すむさき顔 随笑
鈴蘭植え団地暮らしの母子なる
鈴蘭の香を雨立たす旅の朝
鈴蘭の香を攫ひけり朝の風
鈴蘭を一つ瞬きして見遣る
鈴蘭を侍らせ良寛出家の碑
(末尾は句集名)
蚊帳吊草 /
かやつり草翁も泊てし川港 (本合海) 随笑
かやつり草背高きは摘み取られけり 宿好
蚊帳吊草玄燈のいつ始まるか 素抱
蚊帳吊草古風な風を送りけり ねずみのこまくら
手折りみむかやつり草の彼のにほひ 宿好
抜きとりて雨のにほひのかやつり草 ももすずめ
草叢より飛び発つ羽音蚊帳吊草
手折りみむかやつり草の彼のにほひ
蚊帳吊草茎の香深め往還路
揚舟の合間合間のかやつり草
蚊帳吊草嗅ぎて湯の香を移しけり
丈高く折りて挿花かやつり草
(末尾は句集名)
瓜の花 /
いつまでもこどもはこども瓜の花 暮津
手前味噌匂はぬやうに瓜の花
(末尾は句集名)
南瓜の花 /
いい加減降って止む雨花南瓜 鳩信
畏くも玉音放送花かぼちゃ 随笑
花かぼちゃあさって向いて咲く一花 宿好
花南瓜尻窄まりの通り雨 ぱらりとせ
頑張りのきくうちが華花かぼちゃ ぱらりとせ
君の磊落南瓜の花に相通じ 暮津
元気出てかぼちゃいろなる尿の色 鳩信
昼寝して何がなんきん唐茄子かぼちゃ 暮津
半島のかぼちゃの花のパッパラパ 燕音
かぼちゃ出て大いに朝の食すすむ
花南瓜 半島の道よく曲り
曉の雲日当たり冬至かぼちゃ色
(末尾は句集名)
西瓜の花 /
よく聴ゆ汽笛西瓜は一番花 ねずみのこまくら
(末尾は句集名)
胡瓜の花 /梅雨茸 /木耳 /
黴 /
あらあら黴下駄箱の靴掻い出して 素抱
赤黴の自治領蟻が通りけり ぱらりとせ
洗濯物家にごたごた秋黴雨 暮津
黴させぬ仕掛けくさぐさ梅雨食品 寒暑
黴どきのバイキンマンをやっつけろ 素抱
黴どきの無精が無精産む寝床 鳩信
黴まじくパイプオルガントッカータ さざなみやつこ
黴まじく仁王どんぐり眼かな ねずみのこまくら
ドーナツ盤拾ふノイズは黴雨(ついり)程
ふっ切らん老いのしょぼくれ黴退治
黴どきの湯殿の壁を見渡せり
胸中に展ける餅の黴の花
黴の世に心臓逆流せることも
持ちぐされの最たるものに黴の本
鏡開餅黴一つ生えぬ世の
(末尾は句集名)
苔の花 /
苔の花まろみの増せる五輪塔
「はちすの露」切に思ほゆ苔の花
桑の実 /
桑の実を喰らひ戦時下当時のこと
木下闇桑の実の落ち紛れけり
桑の実のべたべた落ちてなおざりに
桜の実 /
【参考】
拙句 さくらんぼ (高澤良一)
「あ、雨」桜桃口へ運びつゝ 暮津
アメリカンチェリー一粒底光り 鳩信
アメリカンチェリー酸っぱさもちょっぴり 素抱
けふも又雨かやれやれさくらんぼ 暮津
さくらんぼつまみて食へば雨の味 暮津
さくらんぼナポレオンとは豪奢也 素抱
さくらんぼ下ろす遺影に断りて 暮津
さくらんぼ茎を抛るが面白き 暮津
さくらんぼ甲乙丙の丙の味 随笑
さくらんぼ狩のツアーのごいっとうさん 素抱
さくらんぼ狩の観光バス横付け 素抱
さくらんぼ狩をある日の天童晴れ 素抱
さくらんぼ熟れし証しの一光点 素抱
さくらんぼ天近きほど甘きとぞ 素抱
さくらんぼ片目つぶりてまだ酸しよ 暮津
さくらんぼ撥音便のん韻(ひび)く 鳩信
のどちんこ程の赤さのさくらんぼ 暮津
めんこさもこけし程なるさくらんぼ 素抱
よく食べる子にはさくらんぼが出るぞ ねずみのこまくら
見つけらることをうれしく桜の実 宿好
桜の実沼のほとりの木卓に 素抱
桜の実朝霧の味したりけり 素抱
試食してピンからキリのさくらんぼ 素抱
手仕事にふんぎりつけてさくらんぼ 寒暑
退け時の一年生過ぐ桜の実 石鏡
団欒の灯のゆきわたりさくらんぼ ねずみのこまくら
丁度よきおかずの数やさくらんぼ 暮津
日曜は晴れてつやつや桜の実 石鏡
さくらんぼ男女の間はみっともなし
口許へ運ぶ途中のさくらんぼ
さくらんぼ家族の集ふ灯の真下
さくらんぼ皿に残りし茎と種
さくらんぼ片目つぶりてまだまだょ
桜桃を図案の国旗無きものか
唄言葉口衝き黄色いさくらんぼ
味見して採るさくらんぼ高砂種
八方より手が伸び試食さくらんぼ
さくらんぼたわわに生る木と了りし木
うんうんと頷き食うぶさくらんぼ
果樹園の観賞用のさくらんぼ
さくらんぼ狩の時間と睨めっこ
天童の日を勁く撥ねさくらんぼ
光沢のよきさくらんぼ選りて摘む
天駆ける日の申し子のさくらんぼ
さくらんぼ苗木も売られ小一万
さくらんぼ狩の脚立に女衆
さくらんぼ狩の前置き一くさり
さくらんぼ狩の脚立の位置替えて
さくらんぼ採りの終りはナポレオン
さくらんぼ渋し脚立を替えみても
ひょうたんから駒の天童桜桃狩
木を選りて見事当りのさくらんぼ
面白うして日和見のさくらんぼ
太陽の色乗らずともさくらんぼ
旗連ねさくらんぼ売る街道筋
脚立より火の見のみゆる桜桃狩
ひやかしにこけしと桜桃手にとりて
さくらんぼ渋のごときがのこりけり
にこにことこけし色なるさくらんぼ
さくらんぼ売れ上々の立ち上り
さくらんぼ狩へ大型バス連ね
バスツアー食べ放題のさくらんぼ
同じ本購ひゐしか桜桃忌
書棚の本入れ替えてみる桜桃忌
頃合いの値段と買へるさくらんぼ
百寿翁顔を和ませさくらんぼ
さくらんぼ狩の誘ひは大分前
さくらんぼ抓めり言葉の器より
さくらんぼ出羽が出回るごとくなり
さくらんぼ娘チエミの両えくぼ
さくらの実下枝伝ひに風吹けり
さくらんぼ受粉の出羽の春を告ぐ
さくらんぼの種子と茎数相等し
清水の舞台飛び降りさくらんぼ
(末尾は句集名)
さくらんぼ /
さくらんぼ熟れし証しの一光点 素抱
さくらんぼ天近きほど甘きとぞ 素抱
試食してピンからキリのさくらんぼ 素抱
さくらんぼ狩をある日の天童晴れ 素抱
めんこさもこけし程なるさくらんぼ 素抱
さくらんぼ狩の観光バス横付け 素抱
さくらんぼ狩のツアーのごいっとうさん 素抱
さくらんぼナポレオンとは豪奢也 素抱
手仕事にふんぎりつけてさくらんぼ 寒暑
さくらんぼ甲乙丙の丙の味 随笑
さくらんぼ撥音便のん韻(ひび)く 鳩信
団欒の灯のゆきわたりさくらんぼ ねずみのこまくら
よく食べる子にはさくらんぼが出るぞ ねずみのこまくら
さくらんぼ男女の間はみっともなし
さくらんぼつまみて食へば雨の味
口許へ運ぶ途中のさくらんぼ
のどちんこ程の赤さのさくらんぼ
さくらんぼ茎を抛るが面白き
さくらんぼ家族の集ふ灯の真下
けふも又雨かやれやれさくらんぼ
さくらんぼ皿に残りし茎と種
さくらんぼ片目つぶりてまだまだょ
さくらんぼ下ろす遺影に断りて
唄言葉口衝き黄色いさくらんぼ
味見して採るさくらんぼ高砂種
八方より手が伸び試食さくらんぼ
めんこさもこけし程なるさくらんぼ
さくらんぼたわわに生る木と了りし木
うんうんと頷き食うぶさくらんぼ
果樹園の観賞用のさくらんぼ
さくらんぼ狩の時間と睨めっこ
天童の日を勁く撥ねさくらんぼ
光沢のよきさくらんぼ選りて摘む
天駆ける日の申し子のさくらんぼ
さくらんぼ苗木も売られ小一万
さくらんぼ熟れし証しの一光点
試食してピンからキリのさくらんぼ
さくらんぼ狩の脚立に女衆
さくらんぼ狩の前置き一くさり
さくらんぼ狩の脚立の位置替えて
さくらんぼ天近きほど甘しとぞ
さくらんぼ狩をある日の天童晴れ
さくらんぼ採りの終りはナポレオン
さくらんぼナポレオンとは豪奢也
さくらんぼ渋し脚立を替えみても
木を選りて見事当りのさくらんぼ
面白うして日和見のさくらんぼ
太陽の色乗らずともさくらんぼ
さくらんぼ狩の観光バス横付け
さくらんぼ狩のツアーのごいっとうさん
旗連ねさくらんぼ売る街道筋
さくらんぼ渋のごときがのこりけり
にこにことこけし色なるさくらんぼ
さくらんぼ売れ上々の立ち上り
さくらんぼ狩へ大型バス連ね
バスツアー食べ放題のさくらんぼ
頃合いの値段と買へるさくらんぼ
百寿翁顔を和ませさくらんぼ
さくらんぼ狩の誘ひは大分前
さくらんぼ抓めり言葉の器より
さくらんぼ出羽が出回るごとくなり
さくらんぼ撥音便のん韻(ひび)く
さくらんぼ甲乙丙の丙の味
さくらんぼ娘チエミの両えくぼ
さくらんぼ受粉の出羽の春を告ぐ
手仕事にふんぎりつけてさくらんぼ
さくらんぼの種子と茎数相等し
清水の舞台飛び降りさくらんぼ
(末尾は句集名)
ゆすらうめ /
ヘルパーの挨拶はっきりゆすらうめ 暮津
ゆすらうめこんなに熟れてと庭よりこゑ 寒暑
ゆすらうめ丈高からず低からず 寒暑
愛らしき莟からしてゆすらうめ 素抱
日和よく山桜桃の花の二三日 ももすずめ
ご近所の三婆話すゆすらうめ
ゆすら咲き万葉仮名の菓子処
浅浅と明けけりゆすらうめの空
ゆすらうめ鈴の青実に目を細め
(末尾は句集名)
李 /
けふいちにち裸でとほす巴旦杏 暮津
すもも咲くしなのしらとりたもとほる 燕音
べんべんと昼のすももの花散るも さざなみやつこ
桃は桃で李は李で留守居顔
けふいちにち裸でとほす巴旦杏
だんだんに桃に李に遅朝日
その花期を全うしたるすもも哉
桃・杏・李一本づつ庭に
桃・李首長くして待つ節句
一隅の桃と李の固め植え
木の表情わけても二月の李の枝
李の枝赤く細かく二月ぞら
長身の昔の種類花すもも
雪舟に李在大観には天心
雨あとのすもももやもやして藁屋
すもも包む空気のうすももいろ帯びて
桃の下女李の淑女日表に
(末尾は句集名)
杏子 /
おお何と酸っぱ杏に瞞されし 寒暑
まだまだと杏頑張る側から散る 宿好
杏の核真っ赤に蟻の総掛かり 随笑
杏は桃に一足先にと云うて散る 宿好
杏咲く情に溺るるごとくなり 宿好
梅は了り杏咲きそめ桃半ば さざなみやつこ
(末尾は句集名)
実梅 /
最明寺殿の毒殺実梅に斑 寒暑
実梅採る母が長棹えっさっさ 寒暑
裾頒けの実梅の山を三つに盛る ねずみのこまくら
生りものを包める産毛実梅にも ぱらりとせ
青梅のひよわきは落ち転がれる ももすずめ
青梅の真夜の土打つ音ならむ さざなみやつこ
青梅雨に集へる信徒魚族めく さざなみやつこ
青梅雨のくどきチラシにくどき彩 石鏡
濡縁に落梅三つ四つ寄せてあり 宿好
梅もぎの擦り傷此処とこことここ さざなみやつこ
来信は梅の青梅(おうめ)の病院より 素抱
落梅を一つ處に庭そうじ 鳩信
(末尾は句集名)
紫蘇 /
元氣づけ赤紫蘇巻のにぎり飯 暮津
紫蘇の実を好物として食細し 寒暑
紫蘇漬の紫蘇の粒噛む一人酒 素抱
紫蘇漬の粒噛み当てて秋のこゑ 素抱
赤紫蘇にお山詣での汗拭ふ 素抱
赤紫蘇のおむすび一個昼餉とす 暮津
赤紫蘇の色の秘密を秘す如し 鳩信
赤紫蘇畑縄文人の棲みし丘 (星野遺跡) 素抱
虫喰ひの紫蘇も一緒に吹かれをり ももすずめ
庭の紫蘇摘み来て鯵のたたきかな ももすずめ
晩酌の豆腐を助く紫蘇風味 寒暑
冷奴紫蘇の風味をいかしけり 寒暑
(末尾は句集名)
辣韮 /
辣韮を齧るや晩夏確かなり 寒暑
生身魂だうした訳からっきょ好き 暮津
(末尾は句集名)
パセリ /
朝は麺麭パセリに添えしマヨネーズ 暮津
とんカツのツマのパセリのやうな日々 石鏡
(末尾は句集名)
玉葱 /
喪の家の厨の玉葱発芽して 暮津
(末尾は句集名)
夏大根 /
脳にくる辛さこれこれ夏大根
(末尾は句集名)
枇杷 /
ぎょうさんな実をつけ貧乏症の枇杷 寒暑
この家には犬が居る筈枇杷の花 随笑
さっきから鴉が鳴いて枇杷日暮 素抱
デザートに枇杷の出で夜を本降りに ねずみのこまくら
ぽろぽろと青き枇杷落ち朋逝きぬ(悼 勝亦年男) 暮津
ほんのりと枇杷に自祝のおもひあり さざなみやつこ
雨上りわけても枇杷の雨雫 素抱
浦曇り枇杷は袋にひっそりと 素抱
家裏にひっそり干し物枇杷の花 石鏡
海明り早生り枇杷は四国一 寒暑
皆忘れて仕舞ふこの頃枇杷の花 素抱
管理人室の横手の枇杷たわわ 素抱
吟行のわれら老いたり枇杷の花 さざなみやつこ
犬枇杷に沖より旭駈けつけし ももすずめ
見舞はんと路地裏抜けて枇杷の頃 鳩信
喉佛大のころころ枇杷の種 暮津
熟れ枇杷にだらだら雨となりにけり 寒暑
熟れ枇杷の雫ほたほた地をうてり ももすずめ
熟れ枇杷や敢へて云ふなら人缺月 (悼 勝亦年男) 暮津
出来悪き坊主のやうな路地の枇杷 素抱
初ものの枇杷のつんつるりんと剥け 寒暑
新薬の効き目追ひ追ひ枇杷の花 さざなみやつこ
親指がまざまざありて枇杷すする 暮津
昼からの余りある日や枇杷の花 ぱらりとせ
定かなり得難き人と枇杷の花 寒暑
徒然に雨を見乍ら枇杷食うぶ 暮津
度忘れは人ごとでなし枇杷の花 石鏡
土佐湾に面して枇杷の袋掛 寒暑
認知症病みて熟れ枇杷滴らす 暮津
白濤の絶えず起つなり枇杷の沖 石鏡
枇杷にのる色の散漫また降れり さざなみやつこ
枇杷に降り枇杷に上がれる浦の雨 素抱
枇杷の花そこはかとして癒ゆる傷 鳩信
枇杷の花われらかうしてまた会へて ぱらりとせ
枇杷の花海に陰謀あるごとし さざなみやつこ
枇杷の種落とせば木の音したりけり 暮津
枇杷の木にだらだら雨の始まれり 鳩信
枇杷むさき花が実となる季来たり 随笑
枇杷黄ばむほの明るさに百日忌 燕音
枇杷食うぶくるりと剥けて皮一枚 暮津
枇杷滴るこんな筈ではなき母に 暮津
枇杷入りの土産あれこれ手を尽し 素抱
枇杷描き枇杷羊羹の包み紙 素抱
病人の出す枇杷の種大きかり 寒暑
富浦の一足はやきハウス枇杷 素抱
仏壇に声掛け枇杷を下ろしけり 暮津
本郷の学生寮の枇杷咲けり 鳩信
野暮ったき枇杷の咲き出す頃もよき 宿好
有難味薄るゝ旗日枇杷の咲く 石鏡
養生してひととせ経つか枇杷色づく 鳩信
養生のその後は如何に枇杷の花 燕音
落とさぬやう心し枇杷を啜りけり 素抱
(末尾は句集名)
【参考】
拙句 犬枇杷
犬枇杷に沖より旭駈けつけし ももすずめ
(末尾は句集名)
楊梅 /
やまももの巨木なるほど温暖な さざなみやつこ
楊梅のだうしたことか赤落葉 素抱
楊梅の街路樹中華街近し 素抱
楊梅の赤夏落葉方円に 素抱
(末尾は句集名)
夏茱萸 /
木天蓼の花 /
またたびの花の彼方の海凪げる
黐の花 /
【参考】
たしか冬これなる冬青(そよご)植え込みしは
ぶるといふ音して黐に鵯の来る
街路樹のくろがね黐に雨の鵙 素抱
黐の木の太くて立派十夜寺 随笑
目白捕る黐をコッコッ叩きをり さざなみやっこ
初東風や黐木(おたなぎさま)の潮垢離に
夕鵙の頭がちょこまかと黐の梢
黐の木でさんざん啼いて鵙去れり
黐に来て土壇場の蝉啼くばかり
黐の木の上に望月顔見せぬ
黐の木へ駆け込むやうに雨の鵙
黐の木の太くて立派十夜寺
(末尾は句集名)
錦木の花 /
【参考】
錦木の錦を蔵ふ季来たり
錦木の錦見しょうぞ芳春院
豁然と錦木展く雨の景
錦木のくれなゐ深めゆく雨か
錦木の若葉つくづく眺めたり
心臓のとっくん錦木紅葉かな 随笑
遠くより見て錦木とぽつり云ふ
錦木の紅葉名残りの夕まぐれ
泊り客先づは一瞥錦木を
(末尾は句集名)
早苗 /
ぬくぬくと水の鬼無里の早苗束 燕音
山峡の風に黄ばみて余り苗 鳩信
常念岳の膝下早苗の丈も伸び ぱらりとせ
植え立ての早苗は雨の水輪中 寒暑
早苗の上農兵節の富士現るる さざなみやつこ
早苗月非登利(ひとり)あ處非(そび)の旅をして 寒暑
苗はこぶ南安曇野曇りかな さざなみやつこ
苗箱の早苗ぴくぴく雨を受け 寒暑
(末尾は句集名)
除虫菊 /
除虫菊そもそも蚊取り線香は 随笑
(末尾は句集名)
金魚草 /
金魚草など摘みをれば午報鳴る 寒暑
(末尾は句集名)
アマリリス /
返事よき妻頼もしきアマリリス 暮津
室咲きにして赤巨大アマリリス 鳩信
九州は梅雨入と聞くアマリリス 暮津
アマリリスラジオのヴォリューム一杯に 素抱
大は小兼ねるといふかアマリリス
アマリリスへたに動かぬほうがよい
五十過ぐ妻頼もしきアマリリス
ベランダの聳ゆる家のアマリリス
音量を絞ることなしアマリリス
アマリリス音量絞ることもなく
アマリリス程の大きな花が好き
(末尾は句集名)
ジギタリス /
物騒な世に何時なりしジキタリス 暮津
盗人もギョッとするらむジキタリス 暮津
裏路地を好み歩けばジキタリス 素抱
ジキタリス花筒の中にもがくもの さざなみやつこ
(末尾は句集名)
ベゴニア /
ベゴニアの花殻なめくぢ捕るごとく
ベコニアに雨がとろとろ降りにけり
立浪草 /半夏生草 /
蓮の浮葉 /
デッサンの浮葉浮葉の間合ひかな
背鰭にて浮葉撥ね上げ池の主
経巡りて浮葉の間を亀の鼻
浮葉次々ひっくり返しゆく朝風
ぴらぴらと浮葉を潜る稚魚の群
浮葉の間をりをり鯉の背を見する
デッサンの浮葉浮葉の間合ひかな 随笑
背鰭にて浮葉撥ね上げ池の主 燕音
(末尾は句集名)
拙句 浮葉
デッサンの浮葉浮葉の間合ひかな 随笑
背鰭にて浮葉撥ね上げ池の主 燕音
(末尾は句集名)
萍 /
萍の転覆計る通り雨
萍が残り金魚は死に絶えし
萍に吾が空けし穴何時塞がる
萍は一つから殖ゆその一つ
ひっそりと花と萍裏山に
皿に萍厨に妻の箱庭あり
萍の水栽培を厨にて
萍の仕掛成程斯うなのか
萍をひっくり返す大雨欲し
萍の聖域犯す蛙あり
萍の賑わいぶりも田を打つ雨
萍は破れし穴を繕へる
棒の雨萍一瞬葉裏みせ
萍の収拾つかぬざんざ降り
萍をめちゃめちゃにせる棒の雨
鳥雲に浮草暮し永かりき
萍の支離滅裂か整然か
萍に徘徊の余地ありにけり
萍をひっくり返しゆく大雨
萍の隠蔽工作始まれり
萍のしんとみどりの一帝国
萍のみどりの落下傘部隊
養鯉池浮草覆ひ始めけり
寄りつくものあればと吹かれ浮草は
ずずずいと展け萍畳かな
浮草に数では負けぬ早稲垂穂
蛙合戦前の浮草跋扈せり
干上がって仕舞ひ萍おだぶつに
萍のとっつき方といふがあり
刈株の廻り萍干上りぬ
萍のおどろに雨の到りけり
水面摶つ雨に萍ぱちくりす
萍に鎌倉の昼深きかな
浮草を震はせ鳴けり山蛙
浮草のただよふごとく朝寝して
萍の風に身じろぐ余地なかり
萍の悪意を其処に見るごとし
萍のあはひあはひの漆闇
萍の雑兵芹を取り巻ける
棒の雨萍散りて集まりて
萍に鷺の長脛君臨す
萍の雨に踊れるカーニバル
破れ穴を塞ぎて萍平然と
萍殖えアマゾンの森なせりけり
萍の先づ手始めに田縁より
俄雨萍右往左往せり
皿に萍厨に妻の箱庭あり 素抱
萍の水栽培を厨にて 素抱
萍の仕掛成程斯うなのか 素抱
萍は破れし穴を繕へる 素抱
萍の収拾つかぬざんざ降り 素抱
萍の支離滅裂か整然か 素抱
萍をひっくり返しゆく大雨 素抱
萍のしんとみどりの一帝国 素抱
萍の隠蔽工作始まれり 素抱
萍に鷺の長脛君臨す 寒暑
萍のあはひあはひの漆闇 随笑
萍に鎌倉の昼深きかな 宿好
萍のとっつき方といふがあり 燕音
(末尾は句集名)
蓴 /
昆布採漁の合間の蓴菜採
割り勘の計算蓴菜横目にして
池があり浮かべるものに蓴舟
蓴菜池ちらほら車窓の林間に
蓴菜もうまかろ白神山地の水
水草の花 /
【参考】
沼渡り風は水草に直進す
水草生ふ沼におのれの影恃み
水草の黄ばめる沼の雨水輪
があがあと家鴨が鳴いて水草生ふ 素抱
よく徹るこども等のこゑ水草生ふ
極楽を擬ふ池に水草生ふ
ほうたるの深く息して水草かげ
湧いてくる富士の真水に水草生ふ
水草生ふ柿田川べり腰下ろす
水草のそこそこ暮れて螢どき
河骨 /
河骨に金時山から雨が来る 暮津
河骨に水位足らざる隠れ沼 寒暑
河骨のきんきらきんに鳴く蛙 石鏡
河骨の一花切り取る写生の眼 寒暑
河骨を掠め流水間断なし 寒暑
水面に一寸顔出し河骨黄
河骨の己抛れる影法師
河骨の照りに照るなり貌蒸す日
河骨のきんきらきんに山蛙
河骨の静まりかへる南谷
河骨の茎ひょろひょろと水中に
河骨は竜眼に似て葉叢の中
河骨に皇居御苑の風秀で(皇居東御苑)
河骨の明りを落とす水痩せぬ
河骨は葉と葉の合間沼の昼
河骨の明り稚魚にも見えをらむ
河骨の葉陰陰翳強めけり
河骨の葉上に出でて咲くもあり
河骨の真上に羅臼岳画架を据う
河骨を日焼けいとはず見ていたり
河骨のくりくり蕾水を出て
河骨にもっとも近づく夫婦もの
河骨の黄をかいくぐり尺の鯉
河骨に鯉はうねりて近づけり
雨上り谷戸の河骨影整す
(末尾は句集名)
沢瀉 /
水芭蕉 /
がしと雪踏みしめ見入る水芭蕉 燕音
もう一つ顔乗り出しぬ水芭蕉 燕音
遠巻きに道遠巻きに水芭蕉 燕音
科の木の根方に屯ろ水芭蕉 燕音
山水に凱歌を挙ぐる水芭蕉 燕音
人拒む色をとほせり水芭蕉 ぱらりとせ
水底に倒木透けり水芭蕉 燕音
水芭蕉そこはゆっくり水流れ 燕音
水芭蕉の宝庫囲めり山毛欅林 燕音
水芭蕉一目見んとて足ごしらへ 燕音
水芭蕉乾きし泥を揉み落とす 燕音
水芭蕉見る向きがあり其へ向けり 燕音
水芭蕉山水くびれ流れけり 燕音
水芭蕉讃歌唄うて湧水過ぐ 宿好
水芭蕉水に萎ゆ花横たへて 宿好
水芭蕉掠め流水間断なし 寒暑
水芭蕉林中に水響きけり 燕音
山風の荒くて小柄水芭蕉
木道を伝ひくる音水芭蕉
水豊かなるそのあかし水芭蕉
水芭蕉疎林を抜けてながる川
斑雪山遠くに置きて水芭蕉
沢奏で聞き耳立てゝ水芭蕉
水芭蕉まなざし上げれば礼文岳
水芭蕉先づ咲きナチュラル・アイランド
水芭蕉過ぎゐし沼は雨の中
水芭蕉だんびろの葉に通り雨
水芭蕉早く咲くぞと五十雀
水芭蕉水掬ひして親しめり
水芭蕉ブナ原生林の申し子の
水芭蕉水面の光る処あり
水芭蕉掠め山水蛇行して
この奥に水芭蕉咲くサワグルミ
水楢の古木隠りに水芭蕉
林中の風も育む水芭蕉
小流れに入り咲くもあり水芭蕉
水芭蕉息整へて清流に
そもさんと水芭蕉咲く正受庵
玲瓏と山毛欅の根方の水芭蕉
山毛欅林の秘蔵っ子なるよ水芭蕉
せせらぎにもう目覚めゐる水芭蕉
水皺の其処此処顕てる水芭蕉
一ト屯又一ト屯水芭蕉
(末尾は句集名)
藻の花 /
藻の花の懈く光れり阿字ケ池
藺 /
雨水輪出で入りつして細藺 石鏡
繕ひの藺草はヤロウ菊人形(ヤロウは藺草の中でもっとも強靱なもので畳などに使うもの) 石鏡
藺座布団きちんと坐り直しけり ぱらりとせ
藺枕に首転がしているうちに 石鏡
藺枕の置き処を決めぬ吾なりに 寒暑
藺枕をひょいとつまみて頭(かしら)に当て 寒暑
藺枕を投げ出すそこが仮寝所 寒暑
藺枕を頭に馴らす身を揺すり 寒暑
(末尾は句集名)
太藺 /
くろぐろと太藺の水に落とす翳 暮津
蛇(くちなわ)が太藺の中へ消えゆけり 素抱
沼の雨太藺を打ってやゝ荒き 素抱
須く太藺青天目指すべし 寒暑
太藺見て吾もゆらゆら揺れゐたり 暮津
林なす太藺の下が螢かな 素抱
藺にあらずこれは太藺のがらっぱち 素抱
(末尾は句集名)
藺の花 /
青芦 /
青芦の芦の終りのここ河口
行く野路のぽっかり展け青葦原
一雨に木道の濡れ青葦原
青葦の根もとながれて澄める水
葭切に青葦の葉の擦れて鳴る
吹きつける風に綾なす青葦原
青葭の切磋これより湖ほとり
青葭の辺に白鷺の水鏡
青芦に吹き込む巾着湾の風
青芦の一葉に凝る霧の粒 素抱
(末尾は句集名)
青芒 /
そよりともせいで巨刹の青すすき ももすずめ
鋭さを内に押さえつ青すすき 燕音
古戦場ここら一帯青すすき 随笑
向日葵の王道青すすきの覇道 随笑
青すすきからめ取らんと蔓のさき 寒暑
青すすき仙石原は風に富み 石鏡
青すすき道をいっぽん通しけり 石鏡
湯けむりの翳の這ひゆく青すすき 石鏡
良寛のかな文字の書を青すすき 寒暑
川音を糧とし長ける青すすき
雨払ひ雨を纏ひて青薄
青すすき露を止どめぬ露天風呂
せせらぎに未だ丈を得ぬ青すすき
青すすき掻い撫で仙石原の風
青すすき煽る大風吹き抜けに
青すすき靡く葉叢のみえる茶屋
翻る青薄原ゆく白シャツ
白靴に青すすき原分け入らん
くさぐさの虫の塒も青すすき
青すすき振り返るとき蒼ざめて
右に左に青薄騒一本道
青すすき次々摶つて馳せゆく風
青すすき伝ひのぼれる風一目
湖の風摶ってうごめく青すすき
風筋のあからさまなり青すすき
青すすき奔らす風の仙石原
さはさはと風渡り見ゆ青すすき
仙石原ゆらゆら遠目の青すすき
釣人はこの径ゆかず青すすき
青すすき仙石原に通るかぜ
節々の隆と蛇笏の青すすき
青すすき光投げつゝ岩木山
雨上りしばかりの男鹿の青すすき
(末尾は句集名)
真菰 /
真菰叢一吹きごとに近む盆
青桐 /
【参考】
青桐の落葉を蹴りて大き音 石鏡
コスモスや奥羽に廻る碧梧桐 鳩信
梧桐の実を透く日差し芸大見ゆ 随笑
青桐の幹の葉混みに自若かな ぱらりとせ
美丈夫の梧桐の幹打ち捩ゑぬ さざなみやつこ
碧梧桐忌法外な寒ンもたらせり ももすずめ
作品を一切とせり梧桐の忌
青桐の落葉を蹴りて大き音
校庭の青桐の幹身に入みて
青桐の幹の葉混みに自若かな
コスモスや奥羽に廻る碧梧桐
梧桐に風起つ街の並木道
ずいぶんと低い鉄棒青桐に
梧桐の実を透く日差し芸大見ゆ
からりと晴れ梧桐の実の鳴るごとし
(末尾は句集名)
葉柳 /
夏木 /
こころもち幹を捩りて夏欅 さざなみやつこ
鉛筆で寸法計る夏木立 素抱
夏けやきいつ見ても美(よ)き汝が樹相 寒暑
夏けやき戦ぎて耳に盈つ葉音 寒暑
夏木伐りし筋肉痛にサロンパス 暮津
夏木伐る使はぬ筋肉使ひもし 暮津
夏欅大樹にほへるおほらかさ 素抱
幹赤く守一夏の木を画ける ももすずめ
昂然と急雨に佇てる夏欅 寒暑
混浴に夏木を愛づる夫婦もの 素抱
吹かれゐる夏の欅の鉄火肌 随笑
早雲寺夏木の下の剣道場 石鏡
八方に夏の欅の根張りかな 暮津
(末尾は句集名)
夏木立 /
鉛筆で寸法計る夏木立 素抱
火葬場のすっぽり埋もれ夏木立
夏木立間に轟く祓川
みるからに根っこが丈夫夏木立
夏木立いっぽん省略スケッチす
取り敢えず雨を避けゐる夏木立
枝空いてやり庭隅の夏木立
夏木立締め上ぐ大蛇侠客圖
夏木立風を呼び込むカフェテラス
夕雀ほてり覚ませる夏木立
夏木立突いてはなまる身をほぐす
(末尾は句集名)
茂 /
がさつかせ茂みの虫を捕る雀 暮津
しげしげと鏡の眉の茂りかな 随笑
ソロモン産ポトス茂みをつくりけり ぱらりとせ
軍神は茂みに佇てり忠魂碑 寒暑
混浴の真上の大き茂みかな 素抱
石畳ゆくや神社の夜の茂り 暮津
庭茂り放題虫も鳴き放題 暮津
柏槇の茂み宿りの雨の鵙 素抱
茂みより一羽飛び出す葉っぱいろ さざなみやつこ
大茂み小茂みほたる育めり
唯茂るばかりに陰気くさき杜
茂みより明けくる朝の蝉翅音
四十九日早過ぎ庭の茂りかな
がさつかせ茂みの虫を捕る雀
茂みより大暑の雀頭覗かせ
祭寄附社の茂りの前面に
溝萩の茂り抉りて水の音
鵯の去る椿の茂み森閑と
茂る山杉の板東十七番寺(出流観音満願寺)
草茂る郷に葬り葬られ
生ひ茂るなかに雀の稗の道
子の仰ぐ茂る大樹に何が居る
蝉泊めて八幡様の夜の茂み
大欅茂る合間に神輿倉
鎌倉へ歯朶生ひ茂る切通し
鎌倉のうしとら鬼門歯朶茂る
楠茂る境内手斧始かな
だらだらと雨ふりこぼす枇杷茂み
藪椿の茂みの奥の常夜燈
海神に茂り大きな樟いっぽん
よく茂る杜の向うに村ありて
茂る木にほてり覚ませる夕雀
祭果て神社の茂り深まれり
眉茂り人品いやしからざるひと
手をやりて六十路の眉の茂りかな
久に見る鏡の眉の茂りかな
蘗が夾竹桃の茂み成す
(末尾は句集名)
万緑 /
納骨の日どり決まれり万緑に 暮津
万緑に磐を配す立石寺 素抱
万緑に抑へ込まるゝ一堂宇 ももすずめ
万緑の中の一川ルアー釣 石鏡
万緑の入口に佇つ肩の冷 暮津
万緑に目を剥く木造大黒天(小田原 板橋 宗福院地蔵堂)
万緑や四十九日はすぐに来て
磐梯を覆ふ萬緑ひやし酒
高張りに万緑染みて野外能
万緑を面に帯びて玉妃舞ふ
万緑の中にシテ出づ野外能
演目は楊貴妃万緑栄ゆる中
(末尾は句集名)
緑蔭 /
サイクリスト緑蔭に汗拭へるも さざなみやつこ
公園の緑陰街騒音縦横 鳩信
大緑陰人・鳩・とかげ憩はしめ 鳩信
大緑陰雀らしきが遠く跳ね 素抱
八幡様の緑陰貰ひ屋台建つ 寒暑
鳩の発つ風の及べる緑陰は 素抱
病院は緑陰ナースは白き風 随笑
緑蔭のベンチあそこが空いてをり さざなみやつこ
緑蔭を彼方の人も立つところ ももすずめ
緑陰の雀とんとん走り根越ゆ 素抱
人憩ふ楠の緑陰樫の緑陰
その奥に楠の緑陰椨の緑陰
緑陰へ一段高き石畳
緑陰の神社の入口三方より
緑陰の真中とおもふ大欅
緑陰を振り向き振り向き通り抜け
緑陰の何處か黒ずみくる社
風太郎緑陰ベンチ一人占め
篠懸の緑陰好きで風太郎
風太郎緑陰頒ち上野山
一と休これ本来の緑陰なり
水のんで緑陰の風吹ける中
緑陰の風がうましとででっぽう
緑陰を潜りて山を出づる川
大緑陰蔽ふ参道雨幽し
緑陰のくぐもり鳴きの中に入る
欅の洞暫し覗いて緑陰去る
緑陰のくぐもり鳴きにわだかまり
緑陰の風よく抜ける木の間合
緑陰の狛犬二頭に深む昼
緑陰の大樹に隠れ遠ちゆく人
ふらり来て緑陰を占む定位置に
緑陰をいつもの道順雀みて
緑陰の懐にして枝雀
緑陰の椅子の冷え帯び長居せり
緑陰を黙々と翔け黒揚羽
銅葺きの一宇緑陰取り込めり
雀らと緑陰の風愉しめり
法華寺大椨緑陰成せりけり
公園の大緑陰の風太郎
公園の緑陰を鳥はすかいひに
見上げたる目を緑陰の枝伝ひ
緑陰の近郊の森歩くべく
緑陰の風高々と梢とほる
白樺の緑陰てふはよかりけり
オニシモツケ緑陰の風昏めけり
緑陰のまだらに息す生々と
緑陰の風に開ける文庫本
緑陰の深みより風湧き継げり
緑陰の石畳沿ひ風通る
杜に入る緑陰のかぜ一文字
緑陰の深みにはまる思ひあり
緑陰の奥処に鎮座神輿倉
緑陰の下風に背を吹かれゆく
緑陰の枝見上ぐれば白き鳩
大桟橋口の緑陰レストラン
パスポート貰ひに緑陰なせる道
沢沿ひの胡桃緑陰なせりけり
緑陰を描くに遠近法をもて
(末尾は句集名)
木下闇 /
千日詣階覆ふ木暗がり
蝉の啼く雨の桜の木暗がり
うどん粉病患う一枝木下闇
合歓は葉をしっかり閉じて青葉闇
梅花卯木木暗に模糊と目を開く
木下闇曼荼羅図為す額の花
鬼下野木下闇より窺ひをり
木下闇桑の実の落ち紛れけり
赤手蟹森の木暗に鰓呼吸
葉ざくらの下闇匂ふ風絶えて
梅雨雀見詰められをり木下闇
蓮の葉の下闇幽界なせりけり
下闇の六浦の里に差しかかり
木下闇草木おのれの時を得て
大姥百合木下闇より窺へり
下闇の著莪に通る日燦爛と
著莪叢の凄みを増せる木下闇
青葉 /
くさぐさの病ひ秘し入る青葉の湯 石鏡
トネリコの微光放てるその青葉 暮津
ピアノソロロビーに流る青葉宿 素抱
ブナ青葉して鳥海山の保水力 石鏡
ほれ君も耳傾けよ青葉木菟 寒暑
一二枚青葉飛ばして大夕立 寒暑
温泉(ゆ)に浮かむ羽ある虫と一青葉 寒暑
家康公御廟きささげ青葉して 鳩信
花殻のベタと張りつく青葉のうへ 暮津
起際も寐しなも欅青葉の宿 暮津
吉野ぶり青葉時雨に目覚めけり ぱらりとせ
国上山青葉の葉騒鳶挙げて 寒暑
三羽目の青葉木菟の子洞を出で さざなみやつこ
山女魚らの口肥えて来ぬ青葉どき 鳩信
山青葉もって客人饗す寺 素抱
寺に古る欅心耳に青葉木菟 寒暑
灼かれても青葉が綺麗いたちはぜ 暮津
若葉して青葉す杜に神在ます 石鏡
宿主の言ふには杜の青葉木菟 寒暑
青き葉も意気のあがらぬ落葉焚 ぱらりとせ
青葉の翳ますます深く看護の日 寒暑
青葉吹き散らしさしもの颱風も さざなみやつこ
青葉青臭しまさかの脳出血 暮津
青葉木菟いつしか寺に来ずなりぬ 寒暑
青葉木莵ほらほら啼くよたてつづけ 寒暑
青葉冷え作務衣の襟を掻き合はせ 石鏡
相槌を打つごと別の青葉木菟 寒暑
大往生と云ひて云はれて青葉の夜 暮津
大寒の底光りせる樫青葉 宿好
沢べりの胡桃青葉を鳴らす風 寒暑
釣人をぱらりと撒けり青葉谿 随笑
杜覆ふ青葉の諧調宜しけれ 素抱
舞い込める青葉いちまい自刃の間 石鏡
木菟居付く森の日に日に深青葉 素抱
謡はなむ青葉楓の面目を 鳩信
しだれ桜青葉に青葉累ねけり
祭待つ社の杜の夜の青葉
庭覆ふ青葉濃淡愉しめり
光増す青葉古刹の雨混沌
倒木の朽つ香そこはか青葉谷
青葉の中紫陽花孤り褪せるのみ
御忌済んでいよよ募れる杜青葉
池尻に青葉の楓なる一木(金澤文庫)
あらし去りちぎれ青葉の石畳
トネリコの青葉に七月初日の雨
杉塀の匂ひ湯舟に青葉宿
合歓は葉をしっかり閉じて青葉闇
雨走り易き芭蕉の青葉かな
千屈菜の青葉植え込みつん抜けて
青龍の鱗めくなり蔦青葉
青葉の夜義父連れ合ひに先立たれ
遺されし義父(ちち)に青葉の夜のながし
雀呼ぶ汝が声紛る青葉風
青葉青臭しまさかの脳出血(五月十七日 義母 新城千代逝去)
八幡様欅青葉の擦過音
湯上りの廊渡る風青葉宿
青葉風一日鳴りて宗祇の墓
皇居の森青葉楊梅立ち交じる
杜青葉堂屋根緑青尽くしけり
心臓の営み如何に青葉の夜
青葉の枝払ふ一雨来るまへに
青葉空く鋏の音降る頭上より
一樹又一樹青葉を空き整え
森閑たる青葉の森に雷とよもす
寝ねんのは薄着がよけれ青葉の夜
山青葉青年の釣るブラックバス
あぢさゐの青葉見えゐる軒簾
釣人の岩場にひとり青葉潮
青葉谿まるまる納め写生帖
栃青葉街道筋を往くひと無し
朔日の堂へ吹き込む青葉風
この大樹青葉木莵など来ぬものか
欅青葉八幡の杜深うせり
常夜灯欅青葉の翳帯びて
青葉影石の鳥居へ石垣へ
かたつむり殖やす青葉の雨が降り
滝壺へ朴の青葉を踏みしめて
機知閃く如くに青葉ひらめけり
称名寺いく夜な夜なの青葉木菟
篝火爆ぜ青葉濃闇の芯打てり
青葉楓詠はむ面目なやの歌
一陣の夜風に青葉波打ちて
青葉冷面テ伝ひに橋懸り
枯れたれば青葉の楓植ゑにけり
青葉吹き絞り好漢夏けやき
桐生ふは人棲む証青葉谿
ででっぽう青葉曇りの森震ふ
大楠の青葉漲る冬の雨
滝裾が青葉の間より覗きをり
青葉照昆廬遮那佛の御胸まで
木に水に橋に子亀に青葉風
横柄な鴉が啼くや青葉どき
いちはやき桜の青葉曇りかな
青葉木菟去年までは居し梢仰ぐ
神霊泉日光沢の湯に青葉
一片の青葉泛く湯に浸かりをり
紅葉の中青葉一枚交じる湯に
秋冷の青葉一片山の湯に
青葉ごと振り落とさるゝ毛虫これ
青葉木菟だんまりほうと云ふたきり
相槌を打つごとも一つ青葉木菟
村長の民宿にて聞く青葉木莵
欅青葉雨降りて杜深くなる
ひとり人より遠ざかりゐて青葉の日々
(末尾は句集名)
夏桑 /
夏草 /
シロヨモギ素足になれといふごとし 燕音
一輪の影の揺れづめ浜苦菜 燕音
黄花のそれコウゾリナとか云ふ草か 素抱
屋根草も夏草のうち復原棟 寒暑
夏草にかにつりぐさといふがあり 素抱
夏草に雨横なぐり五能線 石鏡
夏草のウナギツカミといふを引く 燕音
夏草のまた生えくれば同じこと 暮津
夏草の丈なす皇居内ポスト 石鏡
夏草の穂先くるくる回す風 素抱
夏草や俳壇に撒く除草剤 燕音
夏草を引きちぎっては歩むのみ 鳩信
夏草を手折り夏草摶ちゆけり さざなみやつこ
覚えたてのくさばなにして草の王 随笑
庭草もはや夏草の勢いを 暮津
浜苦菜ほろりと風に動く砂 燕音
北辺の日の未だ高く浜苦菜 燕音
野天湯より見ゆ夏草の穂のすがれ 素抱
流木と別の白さのシロヨモギ 燕音
打ち放しコンクリートに夏の草
不審顔しつゝ夏草引き抜けり
階に苔と半夏の草いっぽん
夏草の衰えながら揺れゐたり
返事怪し夏草の名を問はるゝに
夏草にろんろんと鳴る蒸気孔
小坊主地獄夏草泥に照り負けず
青草を摘むとき露が手に当り
露天湯より見る夏草の穂のすがれ
夏草に埋もるる道と略分り
夏草のそこばくの花遊園地
夏草は熔岩の間埋め刈田岳
さんざんに打ちて夏草伸ばす雨
旺んなる夏草の名はカキドオシ
山火じょりじょり青草むらの根を焦がす
湿原に短き夏の草の花
歌舞伎舞台屋根の夏草つんつんと
たてがみの如く夏草靡く牧
夏草に自転車ほったらかして釣
夏草の穂先錆ゐる岩場道
夏草のいっぽんすらも恐山
出歩くに夏草ほどの血気欲し
夏草のみるからに意気壮んなり
一株の夏草漁港のアスファルト
公園の夏草交じる小花壇
夏草の精鋭勢ふ野に彳てり
牧場の端青草覗くほかは雪
(末尾は句集名)
草茂る /
草茂る郷に葬り葬られ
夏蓬 /
【参考】
拙句 蓬 (高澤良一)
あかがねの雨樋秋の蓬春邸 素抱
一人酌む酒は蓬莱宿夜長 素抱
山火果つ白きは蓬の灰ならむ ぱらりとせ
数え日の蓬莱島に亀眠り 随笑
寸足らず東尋坊の夏蓬 宿好
蓬萌え太鼓の胴のやうな道 ぱらりとせ
(末尾は句集名)
夏薊 /
山形へ下山途中の夏薊 素抱
声色の乙女に還る夏薊 随笑
薊に棘あるぞ用心してかかれ 寒暑
湖に日の一刻射し込む夏薊
夏薊裾野の雨は上がり易し
下山道心に点る夏薊
(末尾は句集名)
昼顔 /
ひるがほは時間を湛えゐるごとし 石鏡
手放しに海が招くよ花ひるがほ 随笑
昼顔に尽きざるガードレールの白 暮津
昼顔の径来て免許更新日 随笑
昼顔は小出しに咲いて雨の日々 素抱
呆と一つ昼顔が咲き始めたり 暮津
昼顔や所帯持ちしは運河べり
昼顔や疎遠の人の訃を聞いて
昼月の生み落したる昼顔か
昼顔の空には何もなかりけり
昼顔や赤きテントの救難所
昼顔といへば突き出し湾の口
昼顔や自転車でくる郵便夫
昼顔を見て過ごす日もあと幾日
昼顔が金網攀ずる変電所
昼顔を風が素通りしてゆく許り
昼顔にピエロの面白重ねゐて
昼顔と萱取り合はせ一輪挿し
昼顔の残りの花期を尽してや
昼顔も小振りに花の了り方
昼顔の花閉づる刻来たりけり
昼顔閉づしっかり花の稜(かど)立てゝ
昼顔にあっけらかんと空晴れて
昼顔に無聊の息を凝らしつゝ
街中の昼顔の咲く小公園
昼顔をひっそり過ぎぬ影法師
昼顔の花了ふ容雨の中
昼顔の白はのっぺらばうの白
昼顔はいつまで咲く花まだ咲いて
昼顔の一輪挿しの朝朗
昼顔やサイクロードの一直線
丈低く一つ昼顔真上向き
昼顔の萎む花みてひらく花
雨明りして昼顔のしぼみ皺
昼顔やひっきりなしに車輌音
半島の風に昼顔震えづめ
昼顔の花の望みし薄曇り
昼顔の遅まき咲といふを摘む
移ろへる世に昼顔と蓄音機
昼顔の昼の深さや虫すだく
昼顔のぷるっと雨滴零しけり
昼顔に降り出す雨のすぐ上る
昼顔にべそかきさうなけふの空
昼顔の昼来て免許更新日
昼顔を見しことぽつり云ひ出せる
(末尾は句集名)
浜昼顔 /
浦一円浜昼顔の眺めかな 素抱
飛んで来て砂粒の入る浜昼顔 素抱
老頭児(ろーとる)に浜昼顔がぽっと咲き 寒暑
半島の風に昼顔震えづめ
昼顔や所帯持ちしは運河べり
(末尾は句集名)
酢漿草 /
かたばみの花の淋しきかぎりかな 素抱
かたばみの花見るものの無ければ瞰る 素抱
かたばみを捨てて電話に出でにけり 随笑
接吻といふ語思へりかたばみに 鳩信
良寛の桑門の道酢漿草より 寒暑
かたばみは秋の花つけ敬老日
酢漿草や母の世色褪せつゝも古り
老い先はやがて二人に花かたばみ
直(ぢか)咲きの酢漿草コンクリートの上
酢漿草とこむづかしき名汝負ふか
食卓に一輪活ける黄かたばみ
首長の草の一つやかたばみも
かたばみのくちびる色のはなのひる
明け方のかたばみの葉に雨滴跳ね
かたばみ咲くここらにありし引揚寮
かたばみの花傾けて石佛
かたばみも花をすぼめて雨宿り
くるぶしのうすむらさきにかたばみ咲く
かたばみに赤錆いろの夕日差す
どこまでも酢漿草の葉の土塀いろ
かたばみの花愛らしく取り澄まし
かたばみの花嬉ばす朝日かな
かたばみは意気消沈よ入日際
かたばみを咲かせ良寛遷化の家
七曜の始めかたばみ花ひらく
(末尾は句集名)
小判草 /
からっきし雨に弱くてたはら麦 素抱
たはら麦程の軽みの一句欲し 素抱
佐渡島至る処に小判草 寒暑
小判草雨にふやけて腐るとは
ペン皿にドライフラワー小判草
たまに吹く風を朋とし俵麦
ながながと降るあめ俵麦屈し
野っ原のある処にはある小判草
長雨に割られて倒る小判草
小判草賭博地獄の傍らに
(末尾は句集名)
山牛蒡の花 /藷の花 /
人参の花 /
【参考】
拙句 人参 (高澤良一)
さういった訳で胡蘿葡喰はぬ訳 随笑
やわき人参年寄り扱いされてをり 素抱
吾がかぶり振る人参を妻買へり 素抱
松前漬先づ人参の歯当りよ 随笑
人参に三度三度のご飯哉 素抱
人参の葉っぱのやうなやつはアネモネ ぱらりとせ
人参は三月のいろ煮て和えて 素抱
人参も余さず食ふぞ新患者 鳩信
人参を摂(と)らねば生活習慣病 素抱
吊鐘人参羽虫においでおいでせり 随笑
吊鐘人参聞きをり霧の私語(ささめごと) 燕音
馴らされて人参が出るあゝまたか 素抱
(末尾は句集名)
唐辛子の花 /
馬鈴薯の花 /
よろよろとじやがたらいもの花へ蝶 ももすずめ
馬鈴薯の花曇日を好みけり 燕音
馬鈴薯の花半島は曇り出す 燕音
(末尾は句集名)
蒟蒻の花 /
木苺 /
参道を少し外れ摘む木苺を 石鏡
乙子祠(おとごし)の木苺の実を頂戴す 寒暑
煽られて木いちごの花上下せり 寒暑
参道を少し外れ摘む木苺を
花木苺島巡る道狭め咲く
乙子祠(おとごし)の木苺の実を頂戴す 寒暑
木苺が咲けば信州佐久のこと
花木苺雨はしとしと降るものぞ
剣崎の岩場に手かけ木苺採
木苺の黄を透きゐたり海の風
木苺を一つどうぞと奨められ
木苺の実点る平家螢谷
乙子祠(おとごし)の木苺の実を頂戴す
木苺の実抓み径は乙子祠へ
(末尾は句集名)
苺 /
苺潰す乳白色の皿のうへ 暮津
苺食べ了へし匙置き硝子の音 暮津
苺食べつゝ考え事は別にあり 暮津
匙よりもずんと大きな苺であり 暮津
芯の無き生活(たつき)送りて苺酸し 暮津
母叱る後悔再三苺酸し(認知症) 暮津
匙をもち苺をつぶすこと一途 石鏡
デザートに年々大き苺かな 素抱
時かけて苺をつぶす腰痛持 寒暑
芯の無き生活(たつき)送りて苺酸し
母叱る後悔苺の酸味ほど(認知症)
匙よりもずんと大きな苺であり
苺食べ了へし匙置き硝子の音
苺食うべ考え事は別にあり
苺潰す硝子の皿は乳白色
苺食べ後引く味や今少し
当節の人驚かす大苺
はからずも苺買ひ来し母と妻
一粒づつ苺をつぶす時間かな
人の句が皆うまく見え春苺
トチオトメなんて名のつく苺食む
匙もって苺をつぶすこと一途
薔薇苺口に運んで旅の者
デザートに年々大き苺かな
雛の日のいちごが雛のケーキかな
磯畑に婆ゐて朝の苺採
苺つぶすへっぴり腰の腰痛持
(末尾は句集名)
蛇苺 /
人気なき昼を窺ふ蛇苺 素抱
蛇苺採など真似てせぬものぞ 寒暑
嘗て此処に脇道ありし蛇いちご
ごみ箱の在りし辺りに蛇いちご
屯して垣のあたりの蛇苺
飽食の世も永くなり蛇苺
蛇苺道がなくなり折り返す
山道を曲りばったり蛇苺
飛び込んで来たる最初の蛇苺
蛇苺薄気味悪く谷戸暮れて
棚田刈刈り洩らされて蛇苺
蛇苺乙子草庵もう間近
蛇苺この径ここで行き止り
(末尾は句集名)
朝顔苗 /
朝顔苗近所に配る甚平着 暮津
これと決む朝顔苗のポリポット 暮津
養子のごと貰はれてゆく朝顔苗 暮津
(末尾は句集名)
青芝 /
青芝がぐんぐんボール落下点 石鏡
青芝を蜥蜴は泳ぐやうにして 石鏡
岩崎邸青芝目を射るサンルーム 素抱
青芝に血脈のごと立木影
青芝の家を羨しとみて過ぐる
芝刈って鞍馬の松明作りかな
(末尾は句集名)
青蔦 /
青蔦や叙事詩展開せるごとく 暮津
青蔦に雨森々と降る日なり
坂下より風のぼりくる青蔦沿ひ
(末尾は句集名)
木斛の花 /
【参考】
拙句 木斛 (高澤良一)
木斛に晩蝉こゑをたてずにゐる 暮津
岩崎邸木斛の実のあかがね色 素抱
木斛に秋風の立つ大覚寺 宿好
木斛の実重く信玄戦陣訓 寒暑
木斛咲きじわじわむしむしする日なり ぱらりとせ
木斛の実の赤らめる書院窓 さざなみやつこ
木斛の葉っぱぴかりと秋がくる さざなみやつこ
(末尾は句集名)
ガーベラ /
見る者を見返す自画像花ガーベラ 暮津
南仏料理卓に一輪挿しガーベラ 随笑
ガーベラにプラチナ線のやうな雨 ぱらりとせ
(末尾は句集名)
サルビア /
アフガンにテロ前庭にサルビア咲く 随笑
サルビアにおもふダンテの煉獄編 素抱
サルビアやその場しのぎの日を重ね 暮津
サルビヤに真っ赤な風が起ちにけり 寒暑
サルビヤは機銃掃射の火噴くいろ 暮津
サルビヤやいつになったら雨あがる 素抱
ヨット操る男サルビア色のシャツ 素抱
花サルビヤ旺んに空気澄みゐたり 石鏡
サルビヤの照り返す赤サルビヤへ
サルビヤや万事はテロに結びつく
サルビアと云へば鎌倉光触寺
サルビヤの公園さびれ始めけり
サルビヤに疲れの見えて来たりけり
残照にサルビヤ溺れゐたりけり
遊女墓没日にサルビヤむせびさう
サルビヤに颱風一過とはゆかず
サルビヤの彩の落ち着く半日影
サルビアの赤ぶり返す旱雨
瀟洒にてレンガ花壇の花サルビヤ
サルビヤのながなが咲いてさびれ雨
号令は天に向ひて花サルビヤ
サルビヤの衰ふる火と滾つ火と
サルビヤと言ひ退ける人目敏かり
公園の昼餉やサルビア遠目にし
サルビア咲く植物園のど真ん中
サルビアに停年昨日のごと過ぎし
サルビヤをぼんやり眺め雨のひる
色もよくこれら実生のサルビアぞ
サルビアに阿蘇の夕日に面晒し
かまつかとサルビアの赤競ふ季
サルビヤに風も染まらんばかりなり
秋はサルビヤ一彩のみの庭が佳し
サルビヤや一人守る家閑散と
月末のサルビヤに降る雨白し
(末尾は句集名)
虎尾草 /
虎尾草の風に払子を振るごとし さざなみやつこ
名は体をあらはす虎尾草狗尾草
その呼び名付けに付けたり虎尾草と
虎尾草の淡々咲けばはや朔日
虎尾草にそろそろ風の起つ木道
虎尾草や雨上りたる山の景
虎尾草の尾となりきれぬ穂先かな
(末尾は句集名)
孔雀草 /
二代目に主かはれり孔雀草
螢袋 /
ずぶ濡れの螢袋の一輪挿し 素抱
ほたるぶくろ悼みは時を経て薄らぐ 暮津
去り状を見て来てほたるぶくろの辺 寒暑
柵の中蛍袋の変電所 鳩信
小走りに螢袋に駆け寄る子 素抱
人指し指蛍袋に闖入す 随笑
露零す螢袋に道草す 素抱
老人ホームほたるぶくろの道のさき ねずみのこまくら
螢袋山土蒸れし香を放ち 石鏡
螢袋夢二の面長乙女めき 素抱
浅黄色蛍袋は未だ袋
断崖にほたるぶくろの塔ノ沢
野仏をそこに佇たせて釣鐘草
蛍袋上りづくめの塔ノ沢
ほたるぶくろ好きな主か垣咲きに
揺れづめのほたるぶくろに何かゐる
挿しながら螢袋の岬おもふ
霧らふ径螢袋の豆ランプ
摘み草の螢袋の丈長く
螢袋少年自然の家見え来
螢袋いちめん浜へ抜ける道
螢袋見たくてどんどん歩く道
丹沢へ蛍袋の道いっぽん
今朝方の雨を宿せる釣鐘草
蛍袋今朝方ありし雨まみれ
草むらの草透き蛍袋の白
ログコテッジほたるぶくろに迎えられ
螢袋よべはぐっすり眠りけり
ほたるぶくろ宿の浴衣の裾ほとり
宿の下駄蛍袋に響かせて
蛍袋渓谷奥へ奥へ伸び
螢袋けふの雲より明るくて
ほたるぶくろ翅音共々暮れかかり
螢袋足音鎮め通りけり
螢袋この谷戸十戸小じんまり
ほたるぶくろガウディの塔群るゝごと
禅窟の岩場のほたるぶくろかな
大虻がほたるぶくろの鐘撞きに
ほたるぶくろ去り状蔵す寺明るく
(末尾は句集名)
石竹 /
石竹やいつか知恵つく女の子
(末尾は句集名)
常夏 /
【参考】
常夏のマウイ島より紅葉見に 随笑
常夏の島で鍛えしサウスポー 燕音
常夏のウツボカズラのサキソホン 鳩信
常夏のウツボカズラのサキソホン
常夏の島で鍛えしサウスポー
常夏のハワイ航路を岡っぱれ
(末尾は句集名)
雪の下 /
たあいなく風につまづく鴨足草 ねずみのこまくら
もめごとの外に洩れをり鴨足草 さざなみやつこ
虎耳草石垣沿ひに風の起つ ももすずめ
哲学を此処に深めぬ雪の下 宿好
転勤を小耳に挾むゆきのした さざなみやつこ
父試歩より吹かれて戻る鴨足草 ねずみのこまくら
鴨足草慶事は千に三つほど
風よどむ生け垣沿ひに鴨足草
一生をこの平屋にて雪の下
山に雨上りしばかり鴨足草
鴨足草和讃の鉦の音が流れ
ありありと其処風通る鴨足草
鴨足草足許照らす稲荷みち
雪の下黒土あらん牡丹の木(ボク)
鴨足草せめて咲くとき丈高く
いっときの日差し貰へり鴨足草
箱根路を怪しみ通る鴨足草
のらくらして運動不足鴨足草
鴨足草茎も細るや昼の雨
鴨足草坊への径の上すべり
たまゆらの湿り風起ち鴨足草
(末尾は句集名)
蓼 /
この方が面白さうな蓼咲く路 随笑
湯疲れがこんなところで蓼の道 寒暑
略図又出して確かむ蓼の道 暮津
蓼の咲く家並み外れに口取宿 石鏡
風に蓼靡けるこっちの径行かむ
犬蓼に纏はりゐしは細き蔓
犬蓼見てぷらんぷらんと戻りけり
散歩の途次一輪挿しにせんと蓼
山田より婆が降り来る穂蓼の径
長靴でのしのし歩く蓼の径
犬蓼の彼方に牧の馬と牛
片へに犬蓼片へに寺の築地塀
これ蓼と妻にお株を奪はれぬ
湯治場の蓼の間にも湯が湧いて
犬蓼の魁見出づ草っ原
阿蘇連山よりも犬蓼丈高く
高原の大犬蓼の霧雫
桜蓼神武天皇舟出の地
犬蓼のだんだら下り村の辻
化野の犬蓼の辺に欠け佛
犬蓼にけふの散歩はここ迄と
犬蓼の穂の跳ね継げる峡の空
大犬蓼垂れて山里深うする
蓼の穂の跳ねまわる空祭めき
洗濯物干され大犬蓼の脇
駅員が朝刊を繰る蓼の窓
犬蓼の風に溺るる舟着場
蓼の道ここら硬くてつんのめる
通院の幾年になる蓼の路
湯疲れの足ふはふはと蓼の道
あれこれと足鍛ふ術蓼の道
蓼の道自転車で来て金精様
(末尾は句集名)
莧 /
拙句 滑莧 (高澤良一)
すべりひゆ繁茂なにぶん古き庭 石鏡
(末尾は句集名)
若竹 /
若竹のそっちは剪りて是残す 暮津
筋通すことが第一今年竹 石鏡
ずんぐりとやがてすらりと今年竹 鳩信
今年竹雨は烟りて奔るなり 鳩信
降られてはその後晴れては今年竹 随笑
延々と竹垣が伸び今年竹
今年竹大磯は山迫る里
刈らんには若竹あまりにも見事
筍を貰ひさっそく若竹煮
日蓮にゆかりの寺の今年竹
一山に雨降り足せり今年竹
アトリエにみどり射し込む今年竹
豆腐に張る水のなみなみ今年竹
(末尾は句集名)
竹の皮脱ぐ /
妙音を発し竹皮脱ぎにけり
竹皮の黒より黒き黒揚羽
漆黒の竹皮を脱ぐ無音界
竹皮を脱ぐ山道の近かりき
竹皮を脱ぐ竹林は音を生み
竹皮を脱ぐ傍の黄泉路ゆく
雪隠裡竹皮を脱ぐ音のして
竹落葉 /
ぎぼうしの聖域犯し竹の葉散る 暮津
鞘走る音して竹の葉の降れり 素抱
竹が散るまた散る諭されゐるごとし ねずみのこまくら
竹の葉のそそのかさるるごと散りぬ ももすずめ
竹の葉の降るになかなか昏れぬなり ねずみのこまくら
竹の葉散る奥へ奥へと魅せられて 素抱
竹の葉散る名利の塵を払ふかに 寒暑
竹の葉散る良寛の世を語り草 寒暑
竹落葉拾へり痴呆軽度の母 暮津
竹落葉突つ込むままに氷りけり ぱらりとせ
竹落葉変らず昔どうりの道 素抱
竹落葉四十九日を目前に
竹落葉変らず昔どうりの道
衣づれの虚空をよぎり竹落葉
かさこそと乾ける耳に竹落葉
竹落葉埃っぽきを踏み来たり
(末尾は句集名)
◆季語「六月」
樹脂に透く六月の雨浄らなり 素抱
六月のピザ生地寝かす雨の昼 素抱
暦剥ぐ些事にかまけて過ぐ六月
六月のけふの晩酌貝づくし
六月の食器洗はれ置かる音
六月の何處にでもゐる雀の貌
六月の植木鋏をぱちぱちん
湯治人煮炊きの火使ふ六月尽
六月の自炊棟廊冥く長し
旅支度などして六月了りけり
六月も半ば夜毎の習ひ笛
六月一日空はと見ればうす曇り
引き抜けばティッシュ空っぽ六月尽
六月の作務衣に通す素手素足
六月の鴉どすんと樹頭に降り 鳩信
六月のやすやす打たる蚊を見せぬ
十薬は雑草に伍し六月へ
六月の雨を見ながら烏龍茶
六月の始めの雨の音を聞く
六月の蜘蛛を走らす厠壁
(末尾は句集名)
以上
by 575fudemakase
| 2021-03-05 07:48
| 自作

俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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