拙句 月別俳句抄 7月新
拙句 月別俳句抄 7月新
俳句 時候・天文・地理・生活・行事・動物・植物
■時候
七月 /水無月 /梅雨明 /冷夏 /夏の朝 /夏の宵 /涼し /夏の夕 /夏の夜 /盛夏 /炎昼 /灼く /熱帯夜 /大暑 /三伏 /極暑 /土用 /秋近し /夜の秋 /晩夏 /夏の果 /
■ 天文
夏の雲 /夏の日 /夏の月 /夏の星 /雲の峰 /雷 /夕立 /スコール /虹 /夏霧 /雲海 /御来迎 /露涼し /朝曇 /日盛 /炎天 /油照 /片蔭 /西日 /朝焼 /夕焼 /朝凪 /夕凪 / 風死す /土用凪 /旱 /喜雨 /夏の雨 /
■ 地理
青田 /夏の山 /山滴る /青岬 /お花畑 /雪溪 /赤富士 /滝 /泉 /清水 /滴り /噴井 /田水沸く /土用浪 /
■ 生活
山開 /海開 /海の家 /夏館 /夏座敷 /川床 /夏炉 /扇 /団扇 /花茣蓙 /寝茣蓙 /ハンモック /日除 /日傘 /サングラス /登山 /ケルン /夏スキー /キャンプ /バンガロー /羅 /浴衣 /白絣 /パリ祭 /甚平 /汗 /ハンカチーフ /白靴 /簟 /籠枕 /竹牀几 /造り滝 /噴水 /納涼 /端居 /打水 /撒水車 /行水 /髪洗ふ /牛冷す /馬冷す /夜店 /夏芝居 /夜濯 /胡瓜もみ /瓜漬 /冷索麺 /冷麦 /アイスコーヒー /アイスティ /麦茶 /砂糖水 /氷水 /アイスクリーム /氷菓 /ゼリー /ラムネ /ソーダ水 /サイダー /ビール /甘酒 /焼酎 /冷酒 /水羊羹 /心太 /葛餅 /葛饅頭 /白玉 /蜜豆 /麨 /冷奴 /鮨 /洗膾 /夏料理 /船料理 /水貝 /沖膾 /泥鰌鍋 /扇風機 /冷房 /風鈴 /釣忍 /走馬燈 /金魚売 /金魚玉 /水盤 /箱庭 /水遊び /水鉄砲 /浮人形 /水中花 /花氷 /冷蔵庫 /晒井 /昼寝 /日向水 /雨乞 /捕虫網 /跣足 /裸 /肌脱 /日焼 /船遊び /ボート /ヨット /波乗り /プール /泳ぎ /箱眼鏡 /海水浴 /海水着 /海月 /夜光虫 /船虫 /海女 /天草取 /昆布刈る /避暑 /夏休み /帰省 /夏期講習会 /林間学校 /暑中見舞 /虫干 /梅干 /土用鰻 /土用蜆 /土用灸 /暑気払ひ /梅酒 /香水 /天瓜粉 /汗疹 /水虫 /暑気中り /水中り /夏痩 /寝冷 /夏風邪 /日射病 /線香花火 /花火 /川開 /木の枝払ふ /虫送り /原爆忌 /
■ 行事
朝顔市 /鬼灯市 /祇園祭 /茅舎忌 /秋桜子忌 /河童忌 /野馬追祭 /
■ 動物
夏の虫 /道をしへ /天道虫 /玉虫 /金亀子 /髪切虫 /兜虫 /毛虫 /岩魚 /雷鳥 /緋鯉 /鱧 /金魚 /蝉 /空蝉 /紙魚 /落し文 /
■ 植物
半夏生 /夏菊 /蝦夷菊 /百合 /月見草 /含羞草 /合歓の花 /海桐の花 /夾竹桃 /青山椒 /青葡萄 /青唐辛子 /青鬼灯 /一ツ葉 /早桃 /パイナップル /バナナ /マンゴー /メロン /瓜 /冷し瓜 /胡瓜 /金魚藻 /絹糸草 /風知草 /石菖 /松葉牡丹 /松葉菊 /草いきれ /荒布 /浜木綿 /土用芽 /青柿 /青林檎 /青胡桃 /胡麻の花 /棉の花 /苧 /滑莧 /瓢の花 /夕顔 /糸瓜の花 /韮の花 /烏瓜の花 /葎 /蒲 /蒲の穂 /布袋草 /睡蓮 /蓮 /茗荷の子 /新藷 /干瓢干す /キャベツ /トマト /茄子 /鴫焼 /茄子漬 /蘇鉄の花 /仙人掌 /月下美人 /ユッカ /ダリヤ /向日葵 /紅蜀葵 /黄蜀葵 /胡蝶蘭 /風蘭 /石斛の花 /縷紅草 /凌霄花 /ラベンダー /日日草 /百日草 /千日草 /はまなす /破れ傘 /野牡丹 /竹煮草 /麒麟草 /虎杖の花 /宝鐸草の花 /花魁草 /鷺草 /靫草 /浦島草 /えぞにう /岩煙草 /岩鏡 /駒草 /瓜 /梅鉢草 /独活の花 /灸花 /射于 /芭蕉の花 /玉蜀黍の花 /麻 /帚木 /夏萩 /駒繋 /槐の花 /沙羅の花 /百日紅 /海紅豆 /デイゴの花 /茉莉花 /ハイビスカス /ブーゲンビリア /日光黄菅 /夏落葉 /病葉 /
■ 季語「七月」
以下、季語に例句の無いものがあるが、それは小生が作句しなかった為である。
拙句 月別俳句抄で年間を通じて紹介される季語の数は七月が最も多い。
◆時候
七月 /
七月の黄昏てんぷら揚げる音
トネリコの青葉に七月初日の雨
七月の真鶴半島海に入る
地下鉄来る七月の風押して来る
七月の蜘蛛の巣張れり水の上
七月のどんじりの日のお洗濯
七月の末日に来る集金夫
水無月 /
水無月の木洩れ日厠の窓に差し
水無月の膝に小振りな写生帖
水無月の蔓は虚空に関ヶ原
水無月の蓮にひびく雨の音
水無月の銀座カフエーの女給服
水無月の蓮やはらかく雨受けぬ
青水無月水上バスが行き来して
水無月にぬっと房州法螺貝(ぼうしゅうぼら)の脚
水無月の清涼飲料びわの味
水無月の音籠らせて朝の雨
水無月の渡明雪舟壮行誌
水無月の眼を皿にして等揚図
梅雨明 /
梅雨明けず雨夜の煙草ふかしても 素抱
梅雨明けが間違ひなしの風なりき 素抱
予報官えいと梅雨明宣言す 寒暑
目次に目あそばせ梅雨の日の机上 随笑
(末尾は句集名)
冷夏 /
冷夏てふ巡り合はせに痩せふくべ 素抱
稲不作うったふ婆の冷夏の眼 素抱
腕さすり百姓ならねど冷夏嫌(いや) 素抱
冷夏と猛暑どちらをとるかと云へば「さあ」 素抱
炎帝にも面目のあり灼けつく日々(ことし冷夏なれば)
炎帝の面目かけて暑気もたらす(ことし冷夏なれば)
たたなはる青田に朝靄冷夏なり
映像はひえひえ冷夏の稲映す
冷夏のうへ糠雨蝉の出番なし
(末尾は句集名)
夏の朝 /
夏曉(なつあけ)をぼんやりしてゐる頭と手足 暮津
夏曉の関節鳴らす徒手体操 素抱
夏曉の散歩の顔の血色よき 素抱
夏曉の湯浴びに湯治の床もぬけ 石鏡
牛乳の泡泡を押す夏の朝 ぱらりとせ
床擦れに手こずり居れば夏曉の日 鳩信
硫気に顔撫でられ夏曉の露天風呂 石鏡
夏曉の顔に懸かれる紫煙の輪
夏曉の廚に匙の水浸し
夏曉の一杯の水胃に落とす
船影の朝からかすむ夏の海
今日咲く花数え夏曉の庭一巡
夏曉の灯を点しゐて新聞読む
百薬の水をのむなり夏の朝
リハビリの夏暁の妻に夫添へり
夏の朝戸外に洩るる膳の音
夏暁の露結びたる一流木
生けるごと金魚死にゐし夏の朝
手がけるは蔓性植物夏の朝
ナースコール夏曉をしどろもどろなる
お通じの回数問はれゐる夏曉
夏暁の秩父神社に鳥も起き
夏暁の柞の森に鳥も起き
夏暁の靄立ち籠めて山毛欅の森
水音の何處か夏暁の山毛欅林
夏暁の体操おいち・に・さんと手が回らず
夏の朝蒲田で降りて羽田組
珈琲を呷り夏暁の顔覚ます
夏暁の仏ケ浦の白砂踏む
夏暁の海猫飛ぶ彼方竜飛岬
海峡に夏暁の海猫飛び交ひて
するめいか干し場に夏の朝の月
夏暁の宿の洗面井水なり
見るつもりなき夏曉の地質学
赤泊夏暁浮藻の数知れず
夏の朝長藻の睡り覚めやらず
(末尾は句集名)
夏の宵 /
佳い本を少しづゝ読む夏の宵
夏の宵置屋の三味の音いまは無く(地元の老人の云へる)
聞き覚えあるこゑ洩れて夏の宵
涼し /
うなづいて答へるときの瞳の涼し 暮津
お岩木の涼風徹る忠魂碑 寒暑
ぐいと反る湾岸道路夜涼の灯 随笑
この涼しさ訝り肌着に手を通す 暮津
トラ鱚の薄茶の縞の涼しさう 鳩信
バンドネオン晩涼刻むダリエンソ 素抱
ほぐれ初む麻酔の糸や脳涼し 鳩信
まんぼうの涼しげな胴スポーティー ぱらりとせ
ミズ涼し辛子のからみ具合かな 素抱
ゆふがたは涼しきものと期待して 暮津
一切を天に預くる涼しさよ 素抱
雲風に行方任する涼しさよ 素抱
何といふ涼味ホルンのまあるい音 ぱらりとせ
開化劇夜涼の舞踏シーンかな 素抱
巻き舌に夜涼呼び込むエルチョクロ 暮津
亀の手といふ貝が出て涼しき餉 ねずみのこまくら
胸板に夜風涼しみゐる患者 鳩信
極楽や湯屋の窓から涼風が 暮津
玉澤のずんだ餅目に涼しきよ 寒暑
銀砂子撒ける蓮池(れんち)のいと涼し 随笑
降って湧く涼しき風を待ちゐたり 寒暑
祭寄付受付すずかぜ来るところ 寒暑
市涼し買い手のつかぬおおかみうお 燕音
糸からくり大きな所作の音涼し ぱらりとせ
時代の眼涼しく使ふ雄之介 鳩信
床屋涼し脛を冷やして順番待つ 暮津
松蔭に笛吹いて海涼しゅうす 素抱
症状の因(もと)の知れたる涼しさよ 素抱
笑み涼し何を夢見て赤ん坊 素抱
上野山すずしく扇子使はざり 素抱
丈六佛涼しみ拝む御居処かな 素抱
振りかざすだんびら涼し怪猫圖 燕音
雪渓の風の抜け口おお涼し 宿好
銭湯のタイル流るゝ泡涼し 暮津
走鳥類エミュー目を伏せすずかぜに さざなみやつこ
大疑堂覗く俗頭涼しけれ さざなみやつこ
大型絵本覗き込む子の瞳の涼し 燕音
大桟橋波をデフォルメして涼し 寒暑
地区図書館朝涼の顔集はしめ 石鏡
長生きして涼しく使ふ象牙箸(岳父) 暮津
低音部利かせ夜涼のダリエンソ 鳩信
天然の涼風窓より浅草線 鳩信
藤の実の如く垂れなば涼しからむ ぱらりとせ
日々のこと天に任する涼しさよ 素抱
萩叢の裾まくられてその涼味 暮津
晩涼の橋の向うの寄せ太鼓 素抱
晩涼の胸に砂寄せ砂ゆっこ 素抱
晩涼の黒の勝ちたる斑(ぶち)の猫 燕音
晩涼の水鳴る腹を訝しげ 素抱
晩涼の津軽じょんがら哭き三味線 寒暑
晩涼の頭を延べ軒の三手先龍 素抱
美食家の歯音涼しうモモスズメ 燕音
彦三頭巾白鉢巻が夜涼呼ぶ 素抱
風吹いて来て家中涼しゅう 寒暑
風太郎涼しむ上野の山のかぜ 素抱
変調は杞憂で済みし涼しさよ 素抱
宝石函ぶちまけしごと夜涼の灯 燕音
鱒ゆらとその向き変へるとき涼し 宿好
無関心装う顔のいと涼し 随笑
木偶の抜く段平涼し文弥節 ももすずめ
目元涼しく「私カタクチイワシです」 燕音
涼しさは染めつけ鯰向付 鳩信
涼しさもその名からしてユカタハタ 燕音
涼しさをみずみずしさをオカヒジキ 燕音
涼しとも蒙古撃退成就の鐘 石鏡
涼奏でオルゴール函シンフォニオン 宿好
涼味満点天上大風てふ地酒 寒暑
曉齋の百鬼夜行図おお涼し 寒暑
歩く涼しさ憩ふ涼しさ上野山
院すずしく見渡さずとも老患者
院涼しく見渡さずとも老患者
すずしく云ふ男の足で十五分
猪口涼し加賀にて求め来し九谷
百万遍扇いで夜涼呼び寄する
湯上りの八畳敷に涼風入れ
涼風は土間板の間を経て座敷
罎詰めに涼しゅう雪岳山(ソラクサン)の水
すずしげに古漬噛むも齢なり
肺活量大きく涼しハーモニカ
素焼鉢たっぷり水を吸ひ夕涼
銭湯の柾目涼しき下足札
銭湯の洗ひ場涼し水の音
雨あとの風に涼しむ一夜かな
斑の入る広葉朝顔涼しけれ
床屋涼し脛を冷やして番を待つ
シネマ涼し買物袋を横に置き
一物を涼しめ湯屋の扇風機
うなづいて答へるときの瞳の涼し
家ぬちより涼しき風の通る路次
湯治人涼しむ手持ちの烏龍茶
「イマジン」涼しくテキサス生れの大道芸
歩く涼しさ吾も一日風太郎
ダンボール敷きて涼しむ風太郎
噴水に涼しむ上野の風太郎
冷房車冷えきりし顔涼しむ顔
指圧教室懸けて涼しき人体図
赤ければ火星と断ずこゑ夜涼
夜涼呼び彦三頭巾の白鉢巻
レントゲン写真涼しや胸に鋲
快川の教えを守り蝉啼ける(心頭滅却すれば火もまた涼し)
海見つめダルメシアンの涼しき斑
一切の通弊を断つ涼しさよ
夜涼呼び窓の市松模様の灯(団地)
赤ん坊の気配探りに涼しき目
苦瓜は蒼くすずしき汗かけり
山車待てば涼風のぼりくる坂上
サキソホン涼しその音をさらふ風
眉涼し胴太頭大こけしかな(蔵王高湯系)
島人(しまんちゅ)ぬ宝涼しくフィナーレに(BEGIN)
教授回診掛くる言葉も涼しげに
お通じてふ言葉涼しく懸けられぬ
声涼しく採血上手若先生
極楽の涼風来るよ楓樹下
小泉の夜雨も棒状筆涼し
飯店涼しく注文を取る日本語
知り合ひの看護婦に逢ふ朝涼し
涼しめと織部蟹絵の魯山人
涼しかり大人(うし)のそめつけ椿鉢
ほんにこれ涼しさうなる魚耳水指
七種の富士はすずしろ色をして
柱巻金龍蝉を涼しく聞く
高原の蛾の舞ひ発てる朝涼し
甌穴(おうけつ)に川の朝涼躍りけり
涼しげに天狗の行脚入浴圖
おお涼しやほおかぶり怪猫圖
夜涼の灯すずめのおいらん遊郭圖
夜涼の川引き据え昌幸初陣圖
花魁の団扇絵あふげばさぞ涼し
鰐鮫のゾクと涼しや摺師の妙
髷涼しゅう芳年描く国芳圖
白樺の走り根も亦いと涼し
機内涼し頁繰る風及びけり
エゾオオヤマハコベみひらく瞳の涼し
(末尾は句集名)
夏の夕 /
焦げつける物のにほひや夏の暮 暮津
妻一寸居らねば何處ぞと夏の暮 素抱
すれ違ふ妻は歯医者へ夏の暮 素抱
夏の夕虫の語らふ繁々夜話 素抱
白樺の一幹に倚る夏ゆふべ ももすずめ
手酌して夏夕雲の蒜いろ
手が空いて一寸退屈夏の暮
東京より疲れて戻る夏の暮
(末尾は句集名)
夏の夜 /
おろしたてパジャマに夏の夜の更くる 鳩信
シンコペーション真夏夜刻むジャズののり 随笑
夏の夜のうしろに廻る灯影かな 素抱
夏の夜の宴昭和のタップかな 暮津
夏の夜の採尿採っても採ってもや 鳩信
夏の夜の市民キャストの開化劇 素抱
夏の夜の力道山にこゑ嗄らし さざなみやつこ
飼犬の鳴き交ふ夏の夜となりぬ 寒暑
真夏夜の弦切り刻むカナロ・エン・パリ 暮津
真夏夜の黒鍵叩きつける指 燕音
真夏夜の知らぬが仏不整脈 燕音
真夏夜をチャンバラ好きの映画好き 石鏡
西瓜種ほじくる夏の夜の浅し 暮津
湯治人ボソボソ話しゐる夏夜 石鏡
夏の夜の枕均して床に就く
夏の夜といへば義雄のボクシング
夏の夜の宴ゲストに宍戸ジョー
夏の夜を大蜘蛛の出る借り厠
西瓜種ほじくる夏の夜の浅し
夏の夜のうしろに廻る灯影かな
夏の夜の痰取りしごともううんざり
夏の夜を鳴きゐし犬の声も絶え
夏の夜のこゑに覚えのあるニュース
(末尾は句集名)
盛夏 /
シンコペーション真夏夜刻むジャズののり 随笑
とんカツの旨き盛夏となりにけり 暮津
バスの旅盛夏の下北くんだりまで 随笑
旺んなり朝の峯雲も食欲も 随笑
旺んなる夏に生まれて嬰の名美雨 素抱
夏いよいよ旺んなる日の烏龍茶 寒暑
夏旺ん紅茶はベルガモット入り 暮津
汲み立ての真夏の朝の薬水 暮津
恐山盛夏団体割引あり 随笑
熊笹に盛夏の雨の音確か 鳩信
真夏の夢どうせみるなら酒池肉林 暮津
真夏夜の弦切り刻むカナロ・エン・パリ 暮津
真夏夜の黒鍵叩きつける指 燕音
真夏夜の知らぬが仏不整脈 燕音
真夏夜をチャンバラ好きの映画好き 石鏡
厨房へ徹る真夏の広東語 鳩信
盛る夏妻は地力をつけつつあり 素抱
大リーグ真夏勝利の方程式 寒暑
佃煮の他は要らざる真夏の餉 暮津
日を追うて旺んなる夏如何にせん 随笑
飯店の盛夏の器器かな 寒暑
飛来せる蝉は真夏の代名詞 暮津
鼻つまみ鳴き継ぐ蝉の盛夏過ぐ 暮津
夏旺ん食い気も旺んカツカレー
真夏夜の寝相を云ふは憚かられ
養老之瀧や真夏の赤ネオン
屋外へ出して真夏の仏桑花
トネリコの葉の深みどり盛夏くる
花屋の水盛夏の街に走り出で
薬害もちょっぴり真夏のくすり水
声掛けて入り来真夏の検針夫
生身魂盛夏の皿に手を伸ばし
通ぶりて真夏の紅茶奨めるも
豚かつの旨き盛夏となりにけり
森閑と真夏のコンソメスープ皿
バター一塊ぽとんと落とし盛夏のパン
母と違ふ真夏の妻のカレーライス
尺を越す鯉の徘徊盛夏かな
海月殖ゆ海に人出て夏旺ん
真昼間の蜂の巣作り夏旺ん
厨房にて真夏の中華鍋鳴れり
盛夏なる雨光り降る陽明門
虚子直々指南盛夏のあほだら経
旧軽井沢を振り出し真夏の旅
胡桃の木沢を覆ひて夏旺ん
りんご村りんご真夏の顔を持つ
目に滲みて真夏安曇野青穂波
夏旺ん山毛欅受けとむる雨の嵩
団体割引ありて盛夏の恐山
俳句行脚真夏の下北くんだりまで
隣家のラジオ手にとるやうや真夏の夜
幽霊が出さうな真夏の夜の受像機
蒸しに蒸すこんな真夏夜もういやだ
雀らが歩く広場の夏旺ん
真夏の日日本列島照射せり
夏旺ん旅の髯伸ぶ男鹿巡り
染み・黒子伴れて盛夏の六十路坂
(末尾は句集名)
炎昼 /
炎ゆる昼胃の腑に水を注ぎ足せり 暮津
炎ゆる昼人に二つの呼吸法 暮津
炎昼の胃袋といふ水たまり 暮津
炎昼の干鱈の茶漬かっ込めり 寒暑
炎昼の玩具転がしある一間 素抱
炎昼の古漬噛めば澄みし音を 暮津
炎昼の時間の檻に入るごとし ぱらりとせ
炎昼の頭に負担なき戦記物 寒暑
炎昼の紐の要ること庭仕事 暮津
炎昼をふうふう言うてコップ拭き 暮津
炎昼をへたばりをると誰が云ひし 鳩信
家中に玩具踏み場もなき炎昼 素抱
水飲みに起つ炎昼のただ無聊 暮津
炎昼の閑古鳥啼く散髪屋
炎昼の冴えない頭散髪す
炎昼の数字パズルに時をかけ
一度だけ虫の翅音のして炎昼
炎昼の空箱一つ畳み了へ
炎昼や両の鎖骨をさはりゐて
炎昼の四、五軒先で何か割れ
炎昼をヴォリューム大きく水戸黄門
炎昼の芯まで冷えて黒煮豆
炎昼の物捨て過ぎて探し物
炎昼の短編読むにも根気失せ
炎昼の太鼓橋下亀交差
炎昼の仏下ろしは畳の上
炎昼のイタコと向き合ふ膝頭
炎昼に適ふ灰皿南部鉄
炎昼の焼きにぎり噛む音はつか
炎昼の病院通ひご苦労な
炎昼の濡れ縁を塗る四つん這ひ
炎昼の遅れ勝ちなる時計見て
炎昼の彼には見えて赤き糸
(末尾は句集名)
灼く /
「当人渡世勝手次第」の島に灼け ねずみのこまくら
こんなにも灼けゐる墓石西林寺 素抱
へくそかづら攀ずる金網灼けてをり 暮津
ペンキ塗る青空がまだ灼けぬうち 随笑
まかがよふ白さるすべり地に灼けて 素抱
やせっぽち灼ける海見て怯みけり 暮津
ラバウルに灼けし零戦見て船旅 石鏡
わたつみに楫取り損ね灼け汐木 寒暑
影ぐるみ灼かれ突立つ義民の碑 ねずみのこまくら
黄は艶なり長けては灼くる女郎花 素抱
海照りて鬼の手作り岩を灼く 随笑
蟹さんの型押し遊び灼け砂に 素抱
街道はこれから灼けむ露葎 宿好
葛灼けて菅江真澄のゆきし道 寒暑
桔梗にはよそ事のごと灼ける空 寒暑
向日葵は灼けて土偶のおほらかさ 素抱
三時草鋪道は灼けてほてりをり 素抱
山車に蹤く子につき添ひて俄灼け 暮津
自転車のサドル灼けゐて腰浮かす 寒暑
灼くる道ほじくり返しその上に 素抱
灼けてをりお岩木行きのバスダイヤ 寒暑
灼けほてる土にどすんとランディング 燕音
灼ける景眼鏡の球を拭くばかり 暮津
灼け紅旗へんぽん関羽生誕祭 鳩信
灼け砂の真白目を突く恐山 随笑
灼け蔓のその先獲物のあるごとし 素抱
灼け木道一人歩めば一人の音 暮津
照りつける鉄砲鼻に葛灼けて ももすずめ
青空がまるごと灼けて玉砕日 随笑
石灼けて粉塵に帰す恐山 随笑
禅林の青空灼けて槇大樹 暮津
大佐渡の竹灼き尽す日なりけり ももすずめ
蜘蛛の囲の糸灼けをらん晝つ方 素抱
馳せる帆も灼けつく海も点描画 暮津
天が下灼けゐる墓誌に余白あり 素抱
天灼けて白さるすべり地に灼けて 素抱
白象のごとくけだかく雲灼けて ぱらりとせ
彼の日のごと権兵衛坂は灼けをらむ 寒暑
鈴懸の刈り込んである灼け舗道 寒暑
灼け灼けて少し艶なり紫薇の幹
灼けるだけ灼けし空あり青くわりん
黄泉平坂(よもつひらさか)むらさきみそ萩灼け灼けて
灼け灼けて鋼光りに椿の実
天灼けて白さるすべり地に灼けて
千曲川灼けに灼けたる青くるみ
灼け灼けて白砂目を突く恐山
灼け灼けてむらさき澄める花は何
灼かれ佇つ押ボタン式横断路
熱砂にうち臥して乙女の姿焼
信号の「青」とて灼ける街の涼
灼けゐたり蚊遣の灰を捨つる土
一切を灼き尽くす日やをみなへし
灼けつく日々自家製胡瓜ひん曲り
灼ける海艦首にはためく旭日旗
灼くる空大上段にふりかぶり
灼ける景眼鏡の球を拭くばかり
蝉死す日熱風木々を襲ひけり
百日紅熱風すさぶ日なりけり
灼かれても青葉がきれいいたちはぜ
馳せる帆も灼けつく海も点描画
熱風吹く高層ビル街抜けて来し
灼け澄みて終に一句も成らぬ海
頂きの一切経堂灼けにほふ
草叢に灼け鎮まれるをみなへし
やせっぽち灼ける海見て怯みけり
もう齢か灼ける海見て怯むのみ
灼け砂の向かう海見て怯みけり
灼け澄める墓石累々塀越しに
風死すより熱風がまし丸裸
ただ灼くる海のみ漁業(すなどり)成り立たず
灼け木道一人歩めば一人の音
灼け湯元八大地獄のその一つ(小坊主地獄)
大蚯蚓の骸舗道の灼けてをり
父と喪へ参ずあの日も灼けをりし
はらからと喪服を灼かる炎天下
天が下灼けゐる墓誌に余白あり
炎帝にも面目のあり灼けつく日々(ことし冷夏なれば)
蝉一つ鳴かず川原毛地獄灼け
太鼓橋欄干灼けて火傷せり
水灼けて三途の川と名づけらる
奪衣婆の空耳葛の灼ける中
ガクと垂れ灼け向日葵の大頭
根釣人島の岩場は灼け白らみ
朝比奈道蔓といふ蔓灼けてをり
灼熱に打たれ強かり女郎花
基督のゐる教会の灼け十字架
渚まで熱砂跳ねゆく跣かな
青空は灼けてそれゆけアンパンマン
道なき道い行き灼け蔓夥し
池古りて亀の甲羅は灼くるのみ
蝶交る灼けし鋪道の上空に
家毀つ灼け土打って鈍き音
炎天の灼けつく蓮想ふべし
女貞青実灼けつく日々は了り
木更津上空灼け煌めける機体あり
灼け青む稲田を渡る風のあり
今灼けて三畳半の縁側は
灼け蔓のぐんと伸びたる浅間山
街鴉にどのビルも灼けほてりをり
灼け青む蓮の葉叢の胎蔵界
青天に百日紅の灼け莟
原宿族灼けほてる路往き来せり
原宿は灼けほてる街夾竹桃
巡礼者腕はもとより目鼻灼け
お祭りの秩父盆地に灼けに来し
札所巡り秩父盆地の日に灼かる
ゑのころの灼け鎮まれる浅みどり
六地蔵武甲山の大き頭灼け
蔓灼けて困民党員弔ふ碑
灼け石の磧に真鴨ヘタリ混む
耕耘機えっちら灼熱農道来
岩原の灼け鎮まれり松虫草
灼蔓を巻き上げ走る中央道
サイパンの灼けし白砂に目を射られ
青天の下お稲荷の森灼かる
灼くる日がこれから始まる常緑樹
いちめんの灼くる青田の縁に村
青々と百日紅の空灼かれ
炎帝の手をゆるめずに雀灼く
灼け出してもういけないといふ時刻
灼け石ころ山と積み上げ恐山
恐山灼けゐて抹香くさき道
辻辻に日灼け小佛恐山
講衆の白衣灼かれて恐山
灼け地蔵嗤ひ出しさう恐山
皆灼けて一塵に帰す恐山
灼け土に吾が影縮む恐山
灼かる身の心棒狂ふ恐山
恐山吾が曳く影も灼かれづめ
灼ける道賭博地獄に縁は無し
箸塚の灼かれ突っ立つ恐山
恐山灼け箸塚を一つ置く
灼け白む岩の一つに如来の首
舟灼けて鬼の手作り岩巡る
サーロインステーキ灼ける海を見て
鈴懸の刈り込んである灼け舗道
灼け澄める昼の茶漬けの茶のみどり
彼の日のごと権兵衛坂は灼けをらむ
灼けテトラポット積み上げ一漁村
道端に何啄める灼け雀
常夜灯しろしろ灼けて本祭
(末尾は句集名)
熱帯夜 /
はだけても腹は冷やさず熱帯夜 暮津
妻は鰤わたしは平目熱帯夜 暮津
二夜連続戦争ドラマ熱帯夜 暮津
熱帯夜はと覚め夢のもうこりごり 石鏡
熱帯夜一服つけんと起き出しぬ 寒暑
うは言をだうしてくれやう熱帯夜
熱帯夜明けしと裏の森鴉
その上に熱帯夜てふ名の付く夜
熱帯夜明けて頭のもやもや抜け
熱帯夜明けて頭の鮮しき
変調をきたす腸熱帯夜
熱帯夜など糞食らへ寝てしまへ
空地また一つ潰され熱帯夜
熱帯夜網戸をせせる羽音して
うなされてママの名を呼ぶ熱帯夜
熱帯夜手話にて告ぐる開幕戦
熱帯夜の東京ジャングル走りぬけ
寝相即降参のさま熱帯夜
遠吠えの消防サイレン熱帯夜
定刻に次男が戻る熱帯夜
小用に起つこと二回熱帯夜
尿のいろちょっと濃過ぎる熱帯夜
あられなき寝相も昨(きぞ)の熱帯夜
真夏日やら熱帯夜やら予報憂し
(末尾は句集名)
大暑 /
あらためて大暑と聞きて太吐息 石鏡
グラスの輪机にのこる大暑かな 素抱
この大暑逃れんための一ねむり 随笑
なまくらな鋏を使ふ大暑かな 素抱
ものさしの目盛薄るゝ大暑かな 暮津
塩壺に醤油が隣る大暑かな 素抱
気圧されてぐうの音も出ぬ大暑かな 随笑
牛よりも鈍し大暑の身のこなし 暮津
月末の忘れし頃に大暑かな 素抱
月餅の油湿りの大暑かな 寒暑
考へて大暑を味方につける策 暮津
指の間に残る大暑の薬粒 暮津
石獣のひたすら座せる大暑とも ねずみのこまくら
選句稿大暑の脳天澄まし選る 暮津
大暑には頭使はぬコップ拭き 暮津
大暑の頭巡らすよいやさよいやさのさ 鳩信
大象の大暑の牙の薄光り 暮津
塗箸の貝の浮き顕つ大暑かな 暮津
難題を突きつけらるるごと大暑 寒暑
肉じゃがの先づは漁る大暑の肉 暮津
買物のなかなか決まらぬ子や大暑 暮津
鉢枯らす大暑うらめし手にシャベル 暮津
返信の筆も鈍れる大暑かな 寒暑
余分なことばかり考えゐて大暑 寒暑
瘡蓋の黒くかさばる大暑かな 暮津
頷いてばかり大暑の電話口 寒暑
身動きのとれぬ大椨大暑くる
椨大樹大暑のがれる術も無く
朝の雨大暑ととても思へぬ日の
大暑来てさらに脾肉を削ぎ落とす
大暑かな醤油やたらにかける癖
髯剃って大暑の無聊かこちけり
茂みより大暑の雀頭覗かせ
数えみて五指にも足らぬ大暑の日
地の者に聞いて大暑の札所道
甲府大暑快川和尚の遺偈称え
ファックスの文字も掠るる大暑かな
ただ眠るばかり大暑にねじ伏せられ
赤松の幹傾けてけふ大暑
痩身のガタつく大暑の日でありし
死ぬ死ぬと云ふを大暑の口癖に
くきやかに枕の凹み大暑かな
溜息をおのれのためにつく大暑
大暑とはひとりよがりの句を読むこと
しみ・そばかすしみじみとある大暑かな
一筋の酢の香の徹る大暑かな
ともかくも一歩も出でぬ大暑かな
大暑の頭働かす為水を呑む
(末尾は句集名)
三伏 /
三伏の我が身一つを持て余す 鳩信
三伏の激痛に腰掴まれし ももすずめ
三伏の肩を叩きて肩の音 ぱらりとせ
三伏の閻魔あたりを払ひけり 寒暑
三伏の口油こき胡桃菓子
三伏の睡魔に顎を預け鰐
三伏の鳩胸冷やす杜の土
三伏のバター厚塗り今朝のパン
(末尾は句集名)
極暑 /
うだる日を背を押すやうに送りけり 暮津
音を上ぐるもののこゑ聞く暑の極み 暮津
詐欺に遭うごとく猛暑に出合ひたる 寒暑
泥のやうな睡り極暑を遁走し 随笑
頭のうへ酷暑の通り過ぎるを待つ 寒暑
膝鳴らし起ちて酷暑の水をのむ 暮津
棒のごと痩躯横たえ暑の極み 暮津
冷夏と猛暑どちらをとるかと云へば「さあ」 素抱
酷暑溽暑その上は何と称すべき
(末尾は句集名)
土用 /
いつはり無く土用の空のあをかりき 寒暑
ただ魂消土用の地震のなすままに 暮津
ほれほれと土用雀を翔たせゆく 随笑
まるめろの土用芽一枝手で欠きし 素抱
よい匂ひして来ぬ土用の焼にぎり 随笑
海めくれ出して生まるる土用浪 燕音
渓流に土用鰻を活かしをり 随笑
古漬に顔を顰める土用かな 素抱
荒凡夫土用太郎の波起こす ぱらりとせ
散髪の頭ぽっかり土用空 素抱
上背ある次男と土用鰻食ぶ さざなみやつこ
土用芽のそら白雲の溜り易し 素抱
土用芽の手折りたくなる薄みどり 素抱
土用雀虫でもとるか葉叢なか 暮津
土用波根付若布をうち揚ぐる 素抱
土用波波の裏より手が挙り 鳩信
土用浪うねりそこねるものあらず 燕音
土用浪一つ大きく勇魚(いさな)いろ 燕音
土用浪暫し泡沫漂はせ 寒暑
木鋏に木渋かたまる土用かな 素抱
夜に入りて一息つける土用東風 寒暑
夜陰馳せ土用太郎の救急車 随笑
祭りごといつも後手踏み土用時化
虫つく樹と土用雀は知り居れり
磨り減りし厠の敷居土用なる
土用三郎地震の爪跡速報す
筆頭に当地の震度土用地震
夕餉の膳土用の地震が話の種
土用の地震開き直りてやり過ごす
土用の地震積木のごとく揺るる家
土用秋芽先日缺いてけふまた缺く
土用浪船首のやうに岬伸び
土用芽のあれこれ目立つを刈らねばと
土用芽の庭木透かねば月半ば
土用波どすんとうちあぐ物は何
古簾かさとも云はぬ土用かな
ドアのノブ日に温もれる土用かな
楊梅の埃をかぶる土用かな
老眼にも効き目のありや土用蜆
江ノ電の材木座経て土用波
暗緑に七里ヶ浜の土用浪
江ノ電にみるみる寄せぬ土用浪
だんびらをかざせるごとく土用浪
きささげの葉陰伝ひに土用東風
相模灘一望土用浪の反り
土用鰻年寄然として食うぶ
土用芽に切てぬ鋏を持ち出して
塵つつく土用鴉の業つくばり
小吉と土用鴉のご託宣
地に叩きつけて打球は土用浪
土用波前に男の仁王立
曇日の鹿島灘より土用波
土用浪頭(かしら)を天に振り上げて
吟行の背にし前にし土用浪
水戸っぽもたじたじけふの土用波
土用浪岩岩没す一刹那
暮るるまで土用雀の遊び好き
まだ火照る土用雀の石ころ路
健啖な土用雀のゐる路上
散策の湯町に土用鰻の香
谿流に土用鰻を活かしをり
寝転べば腹の水鳴る土用入り
深まる空吹かれ仰げる土用入り
土用の入り寝床に夜風通はせて
砂交ふ風が吹くなり土用入り
竹に風引っ掛かり鳴る土用入
草木の翳深々と土用入
席より見ゆ土用太郎の鳶の海
土用次郎入道雲の聳ち損ね
寝そべって土用鰻のごとく居り
黒々と松の枝が暮れ寒土用
先づ翳が水面を奔り土用浪
土用浪冥き翳曳き倒れけり
頭をむくといま立ち上がる土用浪
黒き頭をやおら擡げて土用浪
流木片それにつけても土用浪
土用浪もり上がりては谷が出来
土用浪泡沫漂ひゐたりけり
土用浪くるりと波頭巻きにけり
腰越より七里ヶ浜かけ土用浪
海坊主頭上ぐるところ土用浪
市営バス土用ダイヤといふがあり
家跨ぐやうに土用の明烏
土用東風起つや短編繰るごとく
明烏土用太郎の耳掠め
心臓の薬絶やさず土用入り
竹林を乾びて出づる寒土用
竹林を洩る日そこそこ寒土用
(末尾は句集名)
【参考】
土用浪
海めくれ出して生まるる土用浪 燕音
土用波根付若布をうち揚ぐる 素抱
土用波波の裏より手が挙り 鳩信
土用浪うねりそこねるものあらず 燕音
土用浪一つ大きく勇魚(いさな)いろ 燕音
土用浪暫し泡沫漂はせ 寒暑
(末尾は句集名)
秋近し /
もう了る花と秋待ちゐたる花 暮津
賀茂なすの素の味秋はもうそこまで 石鏡
室内の調度に目のゆく秋隣 寒暑
手にとる本手にとらぬ本秋隣 寒暑
図書館の中庭に秋待てる樹々 石鏡
切手など買ひ足しおかねば秋隣 寒暑
花了る鉢を重ねて秋隣
海上にうち光るもの秋近し
大凡の間取りが判る秋隣
秋近き灯の艶蕎麦の実かりんとう
まろまろと何の青実か秋近し
句ごころのやうやく定まる秋隣
読み直す古本一冊秋隣
採血の顔の横向き秋隣
(末尾は句集名)
夜の秋 /
エッセイのとば口に佇つ夜の秋 鳩信
カーテンをふくらます風夜の秋 寒暑
トランプのジャック振向く夜の秋 ぱらりとせ
ぺらぺらの着慣れしパジャマ夜の秋 暮津
佳き風の四通八達夜の秋 素抱
火星また一歩近づく夜の秋 素抱
月琴の音締めきりきり夜の秋 ぱらりとせ
元素記号子の諳んずる夜の秋 ねずみのこまくら
後かたづけやうやくおはり夜の秋 寒暑
歳時記の表紙藍鉄夜の秋 素抱
紙屑をひねりて捨つる夜の秋 暮津
勝手よりすげなき返事夜の秋 暮津
寝そべるに畳いちばん夜の秋 暮津
寝酒などもともとやらぬ夜の秋 素抱
寝返れば傷口ひくと夜の秋 鳩信
草稿に手を置くことも夜の秋 ねずみのこまくら
犯人を妻見破れり夜の秋 石鏡
風通る所に身を置く夜の秋 素抱
返信の出だし書き出す夜の秋 暮津
桝酒に口とがらする夜の秋 ねずみのこまくら
夜の秋赤鉛筆が見当たらず 素抱
夜の秋湯屋の板間の節くろぐろ 暮津
路地をゆく跫音つぶさに夜の秋 素抱
腹足ればそのまま横に夜の秋
天麩羅の油切りをり夜の秋
夜の秋序跋外して読む一書
切り絵然たる巷夜の秋
紙屑をひねりて捨つる夜の秋
宗右衛門町ブルースに酔ふ夜の秋
銀幕と呟いてみぬ夜の秋
夜の秋妻の読むもの何ならむ
抜読の文庫本閉づ夜の秋
夜の秋の百物語読み季と
軒を打つ風出でにけり夜の秋
火星見て湯ぼてり覚ます夜の秋
皿洗ふうしろ姿や夜の秋
鉛筆をまとめて削る夜の秋
おのづから点る街燈夜の秋
ビリヤード息吹き返す夜の秋
枕辺に鉛筆置ける夜の秋
本意(ほい)少し外して詠めり夜の秋
痰取りがやっと終りて夜の秋
バンドネオン這うて呻いて夜の秋
湯舟よりとちちりちんと夜の秋
口走る我に驚く夜の秋
旅宿の予約がとれて夜の秋
さてと云ひ机に向ふ夜の秋
めいめいの部屋に灯の入る夜の秋
きりのよきところで書閉づ夜の秋
(末尾は句集名)
晩夏 /
ぞりぞりと晩夏の魚の鱗剥ぐ 暮津
遠くを見るゴリラに園の晩夏かな 素抱
回覧板届けに晩夏の腰痛持 暮津
山間を雲ゆく晩夏の孫六湯 素抱
篠懸の大人(たいじん)然として晩夏 素抱
紹興酒晩夏の酔ひのよるべなく 石鏡
象牙の箸浸しあるなり晩夏の水 暮津
人はローン蝸牛は殻を負ひ晩夏 素抱
船体のごとく傾き始む夏 暮津
喪服より黒き晩夏の鋪道かな 素抱
怠けゐる晩夏の肩に指圧効く 素抱
亭々と晩夏を送るホルトの木 素抱
晩夏(おそなつ)をたとへて云へば座礁船 暮津
晩夏なる机にやたらもの積まれ 暮津
晩夏の地震あたかもデッキにゐるやうな 暮津
晩夏の地震母は二階の揺れを言ふ 暮津
晩夏はや煮詰め過ぎたる豆腐汁 素抱
復元石器鈍く光れる晩夏かな 素抱
模糊として口の開け閉て晩夏の鯉 暮津
遊泳の人の黒点晩夏の海 暮津
牢名主めく患者ゐて部屋晩夏 鳩信
辣韮を齧るや晩夏確かなり 寒暑
夏深し深夜放送ボソボソと
トネリコの微光放てる夏深し
(末尾は句集名)
夏の果 /
あさがおに夏も了りの尿の音 随笑
アルミ銭つまみ退けおく夏の果 素抱
さてこれで幾鉢枯らす夏の果 暮津
ぼろぼろの夏果ての鳶岩鼻に 暮津
宇崎竜童ブギウギナイト夏惜しむ 素抱
夏果ての隠れ煙草を患者らは 暮津
夏果のがらんと広き上野駅 素抱
夏果の机は物の積み易し 暮津
夏果の髭また生えて来たりしよ 寒暑
夏惜しむ豆腐に絡め豆板醤(とうばんじゃん) 素抱
夏惜しむ厠窓より遠(をち)眺め 暮津
夏送るこころにアディオス・パンパ・ミア さざなみやつこ
夏送る一樹一樹は蝉音挙げ 暮津
思ひ切り捨てて悔いなし夏の果 素抱
車前草の穂も逞しく夏送る 素抱
樟脳の気落ちして夏逝けるなり さざなみやつこ
寝ころびてけふといふなく夏逝かす 素抱
孫膝にスナップショット夏の果 素抱
豚汁のちぎり蒟蒻夏の果 暮津
八幡平夏の名残の梅鉢草 寒暑
夜陰打ち夏果ての雨落ち来る 暮津
牢乎として欅一夏逝かせけり 寒暑
福神漬ポリポリやりて夏惜しむ
手抜きして枯らす鉢数夏の果
夏果のカレーライスの皿沈め
夏果と新秋の念混じり合ふ
百草の老い様々や夏の果
夏惜しむ踊り助平と祭バカ
夏の果鰤の血合に箸つけて
ハーモニカ夏果ての腹凹ませて
夏惜しむ雨の水輪の川景色
氷片をコップに鳴らし夏惜しむ
煙草止めねばとおもひつ夏惜しむ
カラオケに思ひの丈を夏惜しむ
夏惜しむ唄は「でっかい海はヨー」(カラオケ演歌 おやじの海)
夏果の眼鏡の球(たま)の疵微か
夏果ての昭和の深夜放送談
夏惜しむ一口カツの胡麻だれに
あっさりと躰抜けゆく夏の水
くさぐさの夏の果(このみ)を庄内路
夏果の厠彩どる庭の花
扇風機横向いて夏去りにけり
指圧にて軽くなる肩夏の果
夏果の洗ひざらしの身に指圧
夏果のよい子に火星大接近
夏惜しむこころくすぐるダリエンソ
夏惜しむ心を当てに便りせり
べんべんと夏惜しむべく農歌舞伎
夏惜しむバックホームの残像も
禁煙のいつしか破れ夏の果
夏果の運河を洗ひ雨上る
鴨三羽夏果の川遡る
夏果のすと立つ波はかみそり刃
夏果ての旅人拾ひ五能線
風船かづら風と面壁夏の果
飲み忘れ薬溜りて夏の果
臍を見て腰廻り見て夏の果
(末尾は句集名)
◆天文
夏の雲 /
【参考】
拙句 雲の浦【出雲崎 古称】 (高澤良一)
紙風船土産に雲の浦を発つ 寒暑
亀の頭のごとくに朱夏の雲の浦 寒暑
雲の浦昼夜を舎(や)めず卯浪寄せ 寒暑
夏雲は半島に沿ひ東京湾
夏雲をながす風向き空に見き
翌檜は理想家夏雲湧く尾根に
夏雲の濃ねず薄ねず奥会津
海峡にひやひやと聳つ夏の雲
綿帽子めくお岩木の夏の雲
パントマイム天使の頭上夏の雲
(末尾は句集名)
夏の日 /
夏の日の思い出づくり休暇村
高窓より夏日のそそぐ昼の湯屋
夏の日の漲る空の下に海
夏の日に葉っぱもりもりこばいけ草
からかねの大屋根夏の日を返す
夏の日をさへぎる欅にして偉なり さざなみやっこ
エゾニュウの吹き折れ夏の日が注ぐ
馬車道のポプラに夏の三時の日
夏の日のかっと射し込む蛇骨川
雲裂きて佐渡の頭上へ夏夕日
(末尾は句集名)
夏の月 /
このところ忘れてをりし夏の月 暮津
この匂ひ鮃の煮付け夏の月 暮津
雨禍風禍なき町照らす夏の月 素抱
夏満月近々とあり顔ほとり 暮津
夏満月妻のうながす処に佇ち 素抱
街覆ふ燈火の余熱夏の月 暮津
幕開けは夏満月の田圃みち 暮津
夕餉に腹足りて出づれば夏の月 暮津
夏の月隣の厨灯が点いて
理(ことはり)を振り切る試練夏の月(俳句とは)
予備校のビルの横手の夏の月
飽食の腹さすり出づ夏の月
介護また持ちつ持たれつ夏の月
厨水外(と)に流れ出づ夏の月
澄みまさるあらしのあとの夏の月
雨禍風禍なき町照らす夏の月
蔵壁の質屋の上の夏の月
倭をおもふ阿倍仲麻呂夏の月
薬局の商へる灯や夏の月
夏の月近く二階の子供部屋
雨禍風禍なき町照らす夏の月 素抱
家建てるまで空があり夏の月 素抱
夏の月近く二階の子供部屋 素抱
仰ぎゆく通夜の寺まで夏の月 寒暑
投函に出でて蹤き来る夏の月 随笑
するめいか干し場に夏の朝の月
夏の月青森ヒバの森の上
陸奥湾にひやひやのぼる夏の月
ゆび指す方赤みがかりて夏の月
老経済戦士あほげる夏の月
いくとせを忘れゐたりし夏の月
夏の月まんまるに出て夕餉腹
夏の月赤く術後の尿のいろ
夏の月寝苦しき夜の家並の上
通夜へゆく一歩出づれば夏の月
(末尾は句集名)
夏の星 /
夏の星挙げて葉を閉づ合歓若木
海峡の夏星の下烏賊釣り火
六郎の街灯点り夏の星
夏の星遠ちにかたまる小さき家
(末尾は句集名)
雲の峰 /
ぐつぐつと煮ゆる泥湯や雲の峯 石鏡
ぐわらぐわらと峰雲崩る筈もなし ぱらりとせ
けふ孫に嫌はれてをり雲の峯 素抱
ピッチング入道雲の高さより 随笑
モノレール入道雲の足下ゆく 暮津
ラバウルへ夏の密雲生る中 寒暑
一方に峰雲一方よりタンカー 暮津
雲の峰あらあら崩れ始めけり 暮津
雲の峰早やへこたれてをりにけり 寒暑
雲の峰崩るることを厭はずに 暮津
雲の峰肋バタバタ叩きみる 暮津
旺んなり朝の峯雲も食欲も 随笑
怪鳥を出して見せうぞ雲の峰 鳩信
求道的たること今も雲の峰 暮津
強振の三振にして雲の峯 素抱
決勝の壁と峯雲峙てり 燕音
十歩出て左方に海や雲の峯 さざなみやつこ
諸肌を脱ぎいなせなる雲の峰 寒暑
松商の打線の厚み雲の峰 随笑
直ぐ崩れては形なしの入道雲 素抱
痛恨の峯雲をそこに置かれたる 素抱
定年後峯雲つくづく見ることも 随笑
天を突く気なき峯雲は斥けむ さざなみやつこ
土偶見し眼にたたなはる雲の峯 素抱
碧天へいきなり到達雲の峯 素抱
峰雲の力づくにて作りし塔 石鏡
峰雲の聳つ方が海鳶挙げて 暮津
峯雲に亀裂入ることなかりけり ももすずめ
峯雲に見下ろされゐる鮫州駅 ももすずめ
峯雲のよく聳つ日なり鵬を見ず ももすずめ
峯雲の最たるを見ずもう月中 素抱
峯雲の漲れる日を産見舞 素抱
峯雲より滑走ジェットコースター 素抱
陸軍参謀本部発表雲の峰(ピカドンにあらず) 暮津
鯱に入道雲の聳ち損ね ぱらりとせ
ベイブリッジ潜り峯雲を目指す船
雲の峰ひとたび立ちてたじろがぬ
堅守せるガッツポーズや雲の峰
峯雲聳つ進行方向右前方
峯雲聳つ開幕戦の初球打ち
雲の峯本腰入れる気のありや
雲の峯剛打で制す開幕戦
秋に入りとっくり眺む雲の峰
忘じゐし入道雲といふ言葉
雲の峰けふ何處に聳つ空の涯
その勢ひ途中で放棄雲の峰
はらからに四十九日の雲の峰
見返れば峯雲の立つ八幡平
峯雲が聳ちてむくむく畚岳
雲の峯立つに間のある羽黒山
神業の峯雲を沖に聳たせけり
射るこれが正真正銘雲の峰
蔓のバネ峯雲もくもく地に聳つよ
峯雲に力入る日や産見舞
風蘭の脇の峯雲へ眼を移す
パーキングエリア安積を背に峯雲
天上に峯雲地上に薄雪草
峯雲も一喜一憂甲子園
峰雲の白も格別薄雪草
ししうどに浅間山の峯雲隆々と
揺るぎなく会心の出来雲の峰
峰雲の会心の出来藷畑
立ち姿立派ならざる峰雲も
峰雲を掻き分け常念岳のデカ頭
雲の峯程に商魂逞しき
大石田の岸に臨みて雲の峯
翁寄る渡しに秋の峰雲見る
洋上にもこと双子の雲の峰
シャリアピン号にはだかる雲の峰
湾の向う安房峰雲の立ち連ね
土用次郎入道雲の聳ち損ね
旺盛に朝の峯雲も食欲も
市営バス埠頭へ廻り雲の峰
お岩木の素描峰雲も描き添えて
お岩木の背よりむくむく入道雲
墨の香に峰雲の雄朝机
(末尾は句集名)
雷 /
あさっての方から聞え軽き雷 寒暑
くわばらと云ひて遠のく雷ならず 寒暑
さっきから目くじら立てゝはたた神 素抱
はたた神ダイダラ坊を起すなよ 随笑
はたた神空を鳴らして空開き さざなみやつこ
はたた神終りの方を口ごもる 寒暑
はたた神大だんびらを振りかざし ぱらりとせ
ぱりぱりと寝しなに聞ける秋の雷 暮津
やたら落ち手のつけられぬ雷となり 寒暑
わたつみに鳴神墜ちてどっぴんしゃん 鳩信
一遠雷即迅雷に豹変す 暮津
雨のうへ雷もあり寅彦忌 寒暑
押入に片さるゝごと雷了る 寒暑
海原を雷火一刀両断す 暮津
柿盗れば雷親爺首出す家 随笑
眼鏡置き眼休ます雷の中 寒暑
京劇の殺陣(たて)稽古めく雷最中 寒暑
軽雷に始まり奥鬼怒ぶりの雨 素抱
軽雷のとりとめもなくポップコーン 寒暑
軽雷の飛び入りもあり雨名月 随笑
軽雷の豹変ぶりにあきれ顔 随笑
軽雷をものともせざり峡燕 素抱
言葉尻濁せるごとく雷了る 寒暑
質されて子の口ごもる春の雷 ねずみのこまくら
秋の雷どすんと荷物おろすごと 素抱
秋雷のさあらぬ体(てい)に鳴り出せる 素抱
秋雷の一つ転がる山向う 随笑
秋雷の果てはザとくる雨の快 素抱
秋雷の呼び込む風か座敷抜け 寒暑
秋雷の豆を煎るごと空ら響き 寒暑
春の雷先づは太皷の小手しらべ 随笑
迅雷の三連発や雨呼べる 寒暑
雪のあと雷とはとんだ大つごもり 暮津
蛸壺に一喝くれて海の雷 暮津
虫出しの試みの雷半島に 燕音
二タ三言寝床で交はす雷のこと 寒暑
日雷水大将の家震ひ ももすずめ
日雷孫のご機嫌斜めなり 素抱
日雷母が正気に戻るとき 暮津
日雷雷電関の碑(いしぶみ)に 宿好
念を押すごとくに春の雷鳴れり 燕音
病床に妻もたらしぬ雷除 鳩信
腹に据えかねるところをはたた神 石鏡
北信濃青きくわりんに雷籠る 宿好
本題に入りて雷遠のけり 暮津
鳴神がドタバタ罷り出づる景 寒暑
鳴神の逢瀬天上往き来して ぱらりとせ
鳴神の気っぷ見せたる青海原 寒暑
鳴神の電気浴ぶごと造影剤 鳩信
鳴神の幕引とんと目途たたぬ 石鏡
雷(いかづち)に出し抜かれたる急ぎ道 素抱
雷(いかづち)は会津の方よそれっきり 素抱
雷が西瓜に入れし縞模様 素抱
雷にい行くうしろを断たれけり 暮津
雷に切り刻まれをり鋸山 寒暑
雷のあと氷室のなかにゐる如し 随笑
雷の一太刀浴びぬ相模灘 寒暑
雷の尻すぼまりに海の方 寒暑
雷の楔を入るゝ相模灘 暮津
雷果てて現にかへる顔と顔 随笑
雷光に木像ガルーダ眼を剥いて 寒暑
雷公のもぐら叩きに遭ふごとし 寒暑
雷公の所持品太鼓古ぼけて 鳩信
雷獣の千里を駈くる光ゲ見たり 暮津
雷神の太刀先杉をばらりずん ぱらりとせ
雷蔵の墓を袈裟切り鵙のこゑ 随笑
雷又雷尾根の新樹を震はせて 素抱
雷門潜り四温の中国語 宿好
雷門脇の日向の師走猫 燕音
雷夕立関東大気不安定 素抱
露伴忌のいやにしづかな日雷 素抱
狎れ合ひの雷退屈極まりなし 寒暑
八溝雷聞きて那須雷腰上げぬ
軽雷のあと迅雷の耳直し
なりゆきで落ちるつもりもなき雷も
天透ける青き血脈落雷す
はたた神空裂き落つる一文字
雷をりをり関東上空不安定
意表衝く雷ありホ句もさうありたし
いつまでも空駈け始末に悪き雷
落ち癖の付きし浜辺の小雷
脇腹舐む雷光心胆寒からしめ
側に落つまさかの雷に目をぱちくり
迅雷に馴れて机上に目を戻す
迅雷の勝手放題息凝らす
迅雷にみしと言ひしはどの柱
過ごしやすき朝夕云へば遠き雷
夜の驟雨なんと雷さへ伴へり
遠雷の転がる崎の西瓜畑
武州金澤八景落雷なくはなし
蛸壺に一喝くれて海の雷
雷にい行くうしろを断たれけり
本題に入りて雷遠のけり
遠雷は響かず雨が蓋をして
遠雷に足ぶらぶらと掘炬燵
日雷時に飛行機音真似て
一遠雷即迅雷に豹変す
遠雷の果の雨音地を覆ふ
雷の楔を入るゝ相模灘
雷獣の千里を駈くる光ゲ見たり
雷雨あと息吹き返す草と樹と
相模灘沖に雷火の切り込める
海原を雷火一刀両断す
日雷母が正気に戻るとき
はたた神患ひごとに付込めり
腹に据えかねるところをはたた神
入れ替はり立替はりして雨と雷
風鈴も鳴りを潜めて迅雷下
迅雷の合間合間を雨の音
雨予報箱根辺りに強き雷
森閑たる青葉の森に雷とよもす
遠雷のいつしか失せて海の照
青柿やかみなり親爺の齢になり
落雷の箇所はバッテン気象地図
日雷孫のご機嫌斜めなり
雷が西瓜に入れし縞模様
さっきから目くじら立てゝはたた神
我が身透くまでに迅雷詰め寄れり
太鼓打ち閃光放ち雷様
雷ごろごろ水墨の山靄襲ふ
気短なことありありと山の雷
山峡の宿雷に終始して
軽雷をものともせざり峡燕
取り戻す峡の鳥ごゑ雷やむ間
軽雷に始まり奥鬼怒ぶりの雨
雷(いかづち)は会津の方よそれっきり
落雷の頻々とよもす方会津
雷(いかづち)に出し抜かれたる急ぎ道
病床に妻もたらしぬ雷除
虫出しの雷と知りたる最中なり
虫出しの試みの雷半島に
はたた神篠突く雨に尻端折り
堕ち方も心胆寒からしめる雷
アルプスの膝元尋常ならぬ雷
八方尾根迅雷気合ひ入れにけり
はたた神やゝと声挙げ落っこちぬ
鼻白む白馬岳の雷の遠間近
遠雷が一つ鳴りゐて下山道
一雷にびりりと摶たる鳶の翅
日雷諏訪の雷電関の碑に
日雷合はせ四本の御柱
北信濃青きくわりんに雷籠る
遠雷の子守唄めく安曇野に
二泊目も雷に憑かれて八方尾根
雷おこし花桃いろも打ち交え
軽雷の飛び入りもあり雨名月
はたた神ダイダラ坊を起すなよ
はたた神貝塚覗きゆかれけり
那珂川の水量のこと遠雷に
雷のあと氷室のなかにゐる如し
軽雷のひょうへんぶりにあきれ顔
雷果てて現にかへる顔と顔
雷に雨おっとり刀で駈けつけぬ
雷に蝉網戸へ緊急避難せり
お隣さん軒より覗き雷小止み
遠雷は陰口に似て崎つ方
押入に片さるゝごと雷了る
落雷の合図よ空が瞬くは
やたら落ち手のつけられぬ雷となり
落雷を逃るゝための唱えごと
異様な空果して軽雷あらしめぬ
くわばらと云ひて遠のく雷ならず
眼鏡置き眼休ます雷の中
雷の一太刀浴びぬ相模灘
小手調べ梅雨の走りの雷として
力み過ぎ雷公空を踏み抜きぬ
墜ちざまの下山に似たる雷の音
あさっての方から聞え軽き雷
幕下の軽雷にして肩すかし
自慢げに太皷鳴すや子雷
言葉尻濁せるごとく雷了る
はたた神終りの方を口ごもる
雷光に木像ガルーダ眼を剥いて
尻すぼめ雷立ち直り海の方
二タ三言寝床で交はす雷のこと
雷鳴って鍛錬会は出羽の方
朝方を寝ぼけ眼で墜つ雷も
軽雷のとりとめもなくポップコーン
雷のあと馳せ来る雨の整然と
遠雷の余韻愉しむ烏龍茶
京劇の殺陣(たて)稽古めく雷最中
雷に切り刻まれをり鋸山
軽雷の鳴り遅れたる一つかな
迅雷の三連発や雨呼べる
迅雷の墜つる響きに臍固む
杉を割る雷公正気の沙汰ならず
遠き雷茱萸咲く頃の大井川
雨のうへ雷もあり寅彦忌
(末尾は句集名)
夕立 /
かりかりと生もの噛めば大夕立 暮津
そら来たと白雨に掌を差し伸べぬ 鳩信
てのひらを返すごとくに夕立来 暮津
ところどころ言葉が消えて大夕立 暮津
なぐり描き劇画のやうな驟雨くる 寒暑
また夕立こどもだましのやうな空 石鏡
一降りに闇を正せる夜の驟雨 暮津
一線を越えてどどどど大夕立 暮津
一二枚青葉飛ばして大夕立 寒暑
一驟雨家族会議を要約す 暮津
一驟雨高層ビルを壮とせり ねずみのこまくら
一驟雨青森椴松濡らし去る 石鏡
一驟雨頭のもやもやを拉し去る 暮津
黄味帯びておどろおどろし夕立空 素抱
屋根抜かんばかりの夕立檜枝岐 鳩信
近づきて遠ざかりては夜の驟雨 暮津
空蝉は白雨飛沫を浴びてをり 石鏡
軍配の返りたるごと驟雨来 寒暑
遣り過ごす韋駄天驟雨バーガー店 石鏡
五能線田母木に夕立うちつけて 寒暑
甲子園グランドを馳す大夕立 燕音
枝々の明るさ増せり白雨中 燕音
車内放送男鹿のどしゃぶり雨を告ぐ 寒暑
春驟雨船端叩く川蝦漁 寒暑
真暗がり打ちてやにはに夜の驟雨 暮津
切返すごとくに白雨上りけり 石鏡
蝉時雨だまらっしゃいと夕立来 鳩信
打ちつけて傍若無人夜の驟雨 暮津
大夕立こんなのあるかい濡れ鼠 素抱
大夕立などなにくその一油蝉(ユセン) 暮津
大夕立煙草ふかしてやり過ごす 素抱
大夕立日本海を馳せ来たる 寒暑
大翼たたむごとくに夕立熄む 寒暑
端然として聞く夜半の一驟雨 暮津
端的と云うは夕立の上がり際 寒暑
地を抜かんばかりの釈迦力大夕立 暮津
虫の音の弱くてまばら夕立あと 素抱
町雀けふは夕立まぬがれて 石鏡
兎平駅にて夕立遣り過ごす 宿好
登ってさんざん下りてさんざん岳夕立 宿好
踏めばそこ雨の滲めり白雨あと 暮津
二階より母の見てゐる大夕立 暮津
納まると思へば俄然大夕立 暮津
白雨が打つなりこんどは遠くの葉 石鏡
白雨に舗道応へてをりにけり さざなみやつこ
白雨のごとログコテッジのバーベキュー 燕音
白雨の仕上げに風を送りくる 石鏡
白雨を潜り潜りて街雀 随笑
白雨を浴びをりペリカン修道士 ぱらりとせ
白雨抜け泊りは星の白馬村 宿好
夜の驟雨納まりかけて来りけり 暮津
有無云はさず蝉音を断てる大夕立 暮津
夕立あと傘提げチャプリンめく家路 暮津
夕立あと町空響き易きかな 素抱
夕立が上り辺りのなまぐさし 鳩信
夕立といふ一快挙ありにけり 暮津
夕立といふ快音を広げたる 暮津
夕立となりて万象雨隠れ 暮津
夕立にこりゃたまらんと馳せる蝉 寒暑
夕立にちからづけられ食すすむ 暮津
夕立に屋をはなれて蝉の翔ぶ 寒暑
夕立に何處か伸び伸びして晩酌 暮津
夕立に降られて肌着総取り替え 暮津
夕立に赤蟻川止め喰らひけり 随笑
夕立に足止喰いぬバーガー店 素抱
夕立に叩かれめちゃくちゃ日本海 寒暑
夕立に容あるものみな打たれ 暮津
夕立に立往生の五能線 寒暑
夕立のあとのむむっとする中に 鳩信
夕立のあと何處となく大胆に 暮津
夕立のいま本降りとおもひけり 暮津
夕立のざっとありたる雄物川 寒暑
夕立のそのたまさかに苗倒る 素抱
夕立のみるみる上がりとっぴんしゃん 暮津
夕立の一気呵成のそれが来た 暮津
夕立の音の間合ひを詰め来たる 寒暑
夕立の音立てゝ街呑み込めり 石鏡
夕立の黒雲韋駄天走りかな 素抱
夕立の先鋒橋にさしかかる 暮津
夕立の対処のほどを出しな云ひ 寒暑
夕立の叩き甲斐あるダチュラの葉 暮津
夕立の涼気杉より檜より 暮津
夕立後のごとくすかっとしてゐたし 寒暑
夕立後の磯風を入れ五能線 寒暑
夕立性一雨新宿駈け抜けり 暮津
夕立中健気なる灯の点り初む 寒暑
夕立来て東京湾をぶったたく 寒暑
夕立来と妻はクイズを抛り出し 暮津
夕立来地に喚くもの疾駆して 寒暑
夕立熄む雨音の輪を狭めくる 素抱
雷夕立関東大気不安定 素抱
連れ立ちて物の流るゝ夕立川 素抱
檜枝岐村の夕立幕間めき 鳩信
驟雨あり大根台地の地味肥やす ももすずめ
驟雨来て朝の大正池壊す 宿好
驟雨来ぬマグドナルドに雨宿り 素抱
驟雨来空ゴンドラを送りけり 宿好
驟雨来白馬の美田輝かせ 宿好
大夕立煙草ふかしてやり過ごす
夕立雲雨と別個に急ぎ足
夕立の雨風一過禽たけく
虫の音の弱くてまばら夕立あと
飛石の乾けるところ夕立あと
夕立の空の明暗移ろへり
草木の息吹き返す夕立あと
夕立に足止め喰いてバーガー店
一鳥に二鳥応ふる夕立あと
黄味帯びておどろおどろし夕立空
夕立の風の吹き込む野外カフェ
夕立の角度違へて雨斜め
白雨に人の小走りマイカーも
手際よく暗幕垂らす夕立空
大夕立こんなのあるかい濡れ鼠
連れ立ちてものの流るゝ夕立川
夕立空悪夢のごとく掻き曇り
降り止むも油断のならぬ夕立空
たちまちに驟雨けぶれり海の家
白雨過ぎ南国情緒たっぷり椰子
夕立のあとのむむっとする中に
蝉時雨だまらっしゃいと夕立来
夕立の運河叩きて港町
そら来たと白雨に掌を差し伸べて
一驟雨日光街道駆け抜けて
檜枝岐村の夕立幕間めく
屋根抜かんばかりの夕立檜枝岐
甲子園グランドを馳す大夕立
夕立に肝透くおもひ椨大樹
枝々の明るさ増せり白雨中
白雨避けログコテッジの珈琲店
おおぞらの一方展け白雨来
白雨来て水晶光りの枝雫
白雨のごとログコテッジのバーベキュー
大甲板やんぬるかなの白雨来て
炎帝の語気も白雨の雨脚も
八畳敷掲げて狸夕立避く
夕立あと砂地の砂の呟ける
瓦礫摶ちオオバセンキュウ摶ち白雨
白雨のえいと上れる道祖神
一驟雨一位の下枝濡れてをり
赤松の天然美林夕立す
夕立をざっと一ト浴び獅子独活は
夕立来て空ラのゴンドラ山下る
一驟雨一岳麓を急襲す
はすかひに墨絵の山へ一驟雨
一驟雨遣り過ごし山墨す
兎平駅にて夕立遣り過ごす
白雨来写真教室開かれぬ
驟雨来空ラゴンドラを送りけり
登ってさんざん下りてさんざん夕立山
トリアシショウマ山の白雨上りけり
常念岳の裏方明し一驟雨
夕立の臀を端折りて村通る
墨画的一驟雨野を馳せにけり
上高地天変地異の白雨あり
あぢさゐのぼろんと零す白雨滴
擬宝珠にするりするりと白雨滴
葛を打つ白雨のそなたこなたかな
夕立あと蟻等川止め喰らひけり
白雨の油のごとき跳ね脚よ
なまぐさき物のにほひを絶ち夕立
夕立の両耳聾す圏の内
夕立の木雫止まぬ夜陰かな
なまなまと草木打ちて大夕立
夕立に驚破(すわ)と葉叢の揺れごころ
大翼たたむごとくに夕立熄む
夕立に対す身一つ煽りかぜ
夕立の夜叉駈けりして天聾す
夕立に屋をはなれて蝉の翔ぶ
夕立の雨雫切る芭蕉かげ
夕立の端の碧空に眄して
夕立雲もくもくと出てざっとくる
蒼然と木立冥めて夕立くる
夕立にこりゃたまらんと馳せる蝉
あまつちを降り冥(くら)まして一驟雨
洞然と白雨の彼方見つめをり
夕立空物足らなしと仰ぎけり
一二枚青葉飛ばして大夕立
夕立あと雨滴を零す山毛欅樹頭
夕立に洗はれ磯の無人駅
五能線立往生の大夕立
夕立に電車足踏み五能線
五能線田母木に夕立うちつけて
夕立に叩かれめちゃくちゃ日本海
日本海無人駅打つ大夕立
日本海潮豹変大夕立
端的の見本夕立の上がり際
核心に一気に迫る夕立中
手触りもザザと夕立のごとき髯
なぐり描き劇画のやうな驟雨くる
夕立が上りて息吹き返すもの
夕立に山川草木一息入れ
一切のもの掻き消して白雨くる
極楽の風伴ひて夕立来
夕立に遭ひたる次男の濡れ鼠
一驟雨過ぎしばかりの溝鳴れり
夕立に濡っぷりよき一電柱
八丈島で夕立のことを斯く云う
一驟雨つんぼ桟敷にテレビの座
練り直す想ひの矢先驟雨来る
後追ひの雲に追はるゝ夕立雲
白雨の置きのこしたる荒雫
夕立の手当り次第打ち止まず
驟雨来空らの酒壜突っ立てて
夕立と夕刊いづれが先に来る
夕立にうち烟る島遂に消え
夕立の大學病院灯点せり
白波を掻き消し掻き消し夕立来
夕立にぶん殴られし石榴の実
夕立に痣をつくりて取り込みもの
押し売りのやうな大夕立に遇ふ
夕立来て点検出窓と干物と
大夕立ゴーの一字につつまるる
起こされて尋常ならざる夕立中
夕立のなりをひそめて今木雫
夕立の今か今かと落とすもの
夕立に打たれ睦めり竹諸葉
天気図の雨といふのは夕立性
夕立来軒にまばたきしてをりぬ
バタバタと戸を閉める音夕立来
夕刊の字面流るゝごと夕立
もう了る夕立狐につままれ貌
夕立来と二階へ一段とばしの妻
嵩張れるもの抱き夕立雨宿り
生前の逸話を夕立絡みかな
天井のそのまた上の春驟雨
夕立に妻はクイズを抛り出し
コンビニに大夕立の雨宿り
ぽつと来て一粒万倍夜の驟雨
先づ一滴やがて万滴夜の驟雨
夜の驟雨なんと雷さへ伴へり
夜の驟雨納まりかけて来りけり
打ちつけて傍若無人夜の驟雨
葉叢うつ音のそちこち夜の驟雨
夜の驟雨雨風家に吹き込めり
端然として聞く夜半の一驟雨
真暗がり打ちてやにはに夜の驟雨
近づきて遠ざかりては夜の驟雨
一降りに闇を正せる夜の驟雨
一驟雨頭のもやもやを拉し去る
夕立にちからづけられ食すすむ
われも亦傍から見てゐる大夕立
かりかりと生もの噛めば大夕立
夕立のつつむ音こそかなひけり
地を抜かんばかりに釈迦力大夕立
夕立といふ快音を広げたる
駈けりくる大夕立に組み伏せられ
夕立の端に蕣小さく咲き
夕立といふ一快挙ありにけり
降り直す夕立推敲せるごとし
てのひらを返すごとくに夕立来
夕立となりて万象雨隠れ
夕立に容あるものみな打たれ
台風詠夕立の句にすり替はり
大夕立などなにくその一油蝉(ユセン)
夕立にするりと下着総取り替え
一線を越えてどどどど大夕立
一驟雨家族会議を要約す
生身魂白雨来るぞと言ひ退けぬ
ところどころ言葉が消えて大夕立
夕立に何處か伸び伸びして晩酌
角封筒手にして白雨上がる街
救助ヘリ発着訓練白雨中
ひたひたと菊の零せる白雨滴
白雨が水路作れり日照雨
また夕立こどもだましのやうな空
白雨の中来て新聞配達夫
切返すごとくに白雨上りけり
白雨の飛沫のなかに街かすむ
空蝉は白雨飛沫を浴びてをり
町雀けふは夕立まぬがれて
遣り過ごす韋駄天驟雨バーガー店
夕立が人を走らすバーガー店
合歓の花昨日の驟雨忘れをり
一驟雨青森椴松濡らし去る
夕立に降られ並木を牛蒡抜
夕立雲下ゆく雨に檄飛ばし
夕立のすぐ止む白亜の病院に
夕立あと道颯爽と行くごとし
驟雨過の碧眼雲の隙間より
白雨あと夕風出でて磴の巾
病棟の喫煙一族夕立見て
(末尾は句集名)
スコール /
スコールは洋上はるか固め降り 暮津
羽抜鶏もんどりうつてスコール来 ねずみのこまくら
波のりのこゑスコールのあがる海 ねずみのこまくら
スコールと指さす右舷左舷かな
スコールを潜り潜りて船南下
(末尾は句集名)
虹 /
この家で命全うしたき虹 暮津
のれん出す野毛飲屋街虹立ちて 素抱
はっきりせぬ虹の七彩折衷案 暮津
みなとみらい二丁目で見る冬の虹 随笑
むしゃくしゃとする日虹でも立たぬかや 寒暑
雨止んで虹立ちさうな空なのに 暮津
横濱のハイカラ橋に冬の虹(ベイブリッジ) 石鏡
解決にまだ道遠し秋の虹 寒暑
海へ虹一帆もなく立消えに ももすずめ
君虹に気付いてゐしや吾知れり 素抱
詩は言語道断冬の虹立つも さざなみやつこ
消えかかり虹の片脚宙ぶらりん 寒暑
色合ひをつべこべ云ふな虹は虹 ぱらりとせ
絶滅の目高は虹に紅遺し 素抱
鯛・鮃昇れや虹の太鼓橋 ぱらりとせ
誰も言ふ嶺に立つ虹の完成度 暮津
朝から立つ虹が発端立話 暮津
頭を巡らせ探すや虹のもう片脚 寒暑
虹探す古事類苑の天文部 寒暑
虹立ちて鯉飼ふ村の空闢(ひら)き 寒暑
虹立てり荒き雫は樅の直 ねずみのこまくら
母の記憶虹より淡くなる勿れ 素抱
立つ虹に見合った言葉ぽんと出で 寒暑
艫作(へなし)過ぎ深浦辺りで虹をみる 寒暑
幸せのかたちステレオタイプの虹
満足の大きさ懸かる虹を見て
真意なほ判らぬまゝに夕虹立つ
虹はどうでも天麩羅揚の下準備
港みらい虹を立たしめ娶る君(横浜ランドマークタワーにて)
虹の下車スリップ横転す
もの忘れすすめる母に虹は濃く
虹は黄の昭和駆け抜けひばりの唄
野毛山の虹を背に佇つマイム像
海上に懸かりし虹の持ち時間
白馬村青田中より虹立てり
虹の緑青田の緑に伍し顕てり
虹を詠む言葉のびのびひろびろと
これ程の彩もつ虹を立たせたし
独り気付いて空木雪崩るる上の虹
片脚を海に虹立つ雲の浦
虹しかと錦鯉飼う村の上
気が付いて虹の片脚棚田の上
立つ虹の内側の色君知るや
(末尾は句集名)
夏霧 /
ときに鹿現るる林道海霧塞ぎ 燕音
ぼんやりと夏霧のこる山間部 随笑
黄菅色フォッグランプに海霧抜けて 燕音
夏霧のじはっと鳴れる日本海 ぱらりとせ
夏霧のとどまるごとく峡泊り 随笑
岳樺呑み込む海霧の迅さかな 素抱
国後島あとかたもなく海霧の中 燕音
燈台がぽつんと海霧の帯のさき 随笑
魔がさしたやうに海霧湧きまだ引かず 燕音
羅臼沖背黒鴎に海霧去来 燕音
鬱金空木海霧を抜け出てひよこ色 燕音
海霧止んで海霧又出でて沿岸部
海霧破り今出漁のコンブ舟
硫気・夏霧笹を枯らして流れけり
鳥海山の長き山脚海霧に入れ
夏霧に溶け込む漁船酒田沖(酒田港)
夏霧の中月山は鳥海山は
夏霧のゆっくり動く杉の間
夏霧を今もかほらす南谷
修験道夏の霧吸ふ苔の道
這松に海霧脚迅き礼文島
夏霧に勘介入道討死圖
熊出没海霧の峠のあの辺り
海霧育ち羅臼育ちの大虎杖
海霧籠めの灯を点しけり羅臼町
湧く海霧に前後塞がれ峠茶屋
つつつつと羅臼岳の肩に海霧流れ
たちまちにハイマツ帯に海霧至る
しろしろと海霧に目覚めぬ鋸草
やみくもに海霧出て羅臼岳巻けり
やにはに海霧国後島を呑み込めり
海霧最中背黒鴎の行方見て
羅臼町海霧の岩山背に負ふて
海霧籠めの国後島に目を凝らし
夏霧の帽をすっぽり岩手山
海霧来ると鴎の嘴敏感に
遊び舟手摺りに海霧の冷え及び
海上に夏霧の帯舟逸る
谿々においてけぼりの夏の霧
帯なして陸中海岸夏の霧
たちまちに陸中海岸海霧の中
やみくもに遊船はしる海霧の中
遊覧船咽せんばかりに海霧湧きて
手始めに海霧の仏ケ浦に寄る
海峡の海霧の合間の松前町
夏霧の覆面をして青蔵王
おけさ丸右舷左舷に夏の霧
(末尾は句集名)
雲海 /
雲海に出でて大方耳つんぼ 素抱
雲海をとよもし航けるエンジン音 素抱
雲海は雲の表や機影航く
雲海に出づる昂奮二三分
雲海にワインの贅や機内食
雲海に目蓋(まなぶた)閉づる機内窓
雲海の端を踏み国見ヶ丘に佇つ
雲海や国見の須佐之男命顔
雲海や右翼を染むる大落輝
(末尾は句集名)
御来迎 /
露涼し /
ゴミ出しも生活(たつき)の一部朝曇 暮津
生水のなまあたたかき朝曇 暮津
朝曇さきほど薬飲んだっけ 寒暑
朝曇黄のうちかすむ女郎花 素抱
朝曇妻の指さす食べこぼし 暮津
納豆のやっかいな糸朝ぐもり 暮津
卑近なる記憶還らず朝曇 素抱
飲み水の色を見てゐる朝ぐもり
手の甲で眼を擦っても朝ぐもり
朝ぐもり曇るコップを透かしみる
庭草の一葉一葉の夏の露
車前草の広葉にしとど夏の露
砂浜はやや固締り夏の露
赤詰草夏の露降る松林に
草っ原渚に沿ひて夏の露
夏の露避け寝袋とオートバイ
夏の露まみれに砂州のオカヒジキ
青稲穂ずっぽり浴びぬ夏の露
宮前の栃の実に凝る夏の露
夏の露払ひ諏訪社の五兵衛杉
夏の露ころりと白馬岳快晴
笹原の笹彩深く夏の露
青栗に結びて八ヶ岳の夏の露
夏の露仏ケ浦の仏具岩
海峡のいわをいわをに夏の露
烏賊釣り舟電球に凝る夏の露
繋がれて夏の露置く烏賊釣り舟
夏の露大間港の家並の上
夏の露昆布干し場の留石に
夏の露青森ヒバに木天蓼に
(末尾は句集名)
日盛 /
くるぶしに透く静脈や日の盛 暮津
だだこねて日盛りの海上がらぬ子 暮津
たまさかに聞く鳥の音も日の盛り 寒暑
もう一軒寄ってゆかねば日の盛 暮津
京劇に呑み込まれをり日の盛り 燕音
検針のこんどは瓦斯や日の盛り 素抱
脱ぎ捨てしものを跨ぎて日の盛り 暮津
日の盛りカレー粉の素炒る香のす 暮津
日の盛引っ張り出して片付けもの ぱらりとせ
日の盛鎹打たる仁王の脛 さざなみやつこ
日盛の神奈川大会投手戦 暮津
日盛りの音たて壊す菓子袋 暮津
日盛りの径あり山毛欅の森切れて 寒暑
日盛りの元湯六花の六角堂 宿好
日盛りの出湯に血行よくなれり 寒暑
日盛りの中軸打線火を噴きぬ 燕音
日盛りの町の湯に入り私(わたくし)なし 暮津
日盛りの波倒れんとする際の照り 素抱
日盛りの老人割引利く映画 随笑
日盛りをあれもこれもと欲張らず 寒暑
日盛りを朱の薄れゆく太鼓橋 素抱
日盛りを煌めき渡る風のあり 寒暑
目覚むれば日盛り峠越してをり 随笑
日盛りのデッキの手摺り塗り剥げて
あへぎつゝ翅の開閉日の盛
櫓組むとてかんとてかん日の盛
降り立ちし鳩の目と遇ふ日の盛り
日盛りの国道を見て腰ひるむ
日の盛り振り向く猫の目と遇へる
日盛りをなほゆく道の放射熱
日盛りの社の雀咄々と
日盛りの坂の勾配下りて知る
日盛りの仁王の臍の薄ほこり
日盛りの閑中の閑あめんぼう
日盛りを隙つくごとく風の出て
日盛りの樹下のひっそり画架を組む
日盛りの仁王見上ぐる老夫婦
日盛りの樹下にて写生談義かな
日盛りをガバと水音立つる鯉
力投に強打力走日の盛
日盛りの虚子庵囲む柾垣
日盛りにフェラガモの靴おろしたて
釣人の一服つけぬ日の盛
処方箋持ち薬局へ日の盛り
年金の手続きあれこれ日の盛
日盛りの赤松幾つ兼六園
日盛りの秩父盆地の底歩く
日盛りのぶだうに甘み加はらむ
日盛りの磧に出れば蝶ケ岳
日盛りのりんご樹木のよろけ立ち
日盛りに造るワインはジャルドネ種
ワイン種はロザリオ.ビアンコ日の盛
日盛りの路話しゆく婆と婆
日盛りの腹をなだむにわんこ蕎麦
日盛りの遠野を過ぎて一路西
水飲んで一息つきぬ日の盛り
日盛りの枕外して寝惚けごゑ
日盛りの反橋の上にひとり佇つ
日盛りの三門連ね長勝寺
犬ふぐり欠伸するかや日の盛り
(末尾は句集名)
炎天 /
アイシャドウ濃く炎天の一帆追ふ ねずみのこまくら
アッパーカット啖らひしごとき炎暑かな 素抱
ギブス嵌めそれでも煙草炎天下 暮津
ここに来て炎暑一掃通り雨 随笑
とりあへずこちちの方へ炎天下 素抱
にんげんに祭り雀に真炎天 随笑
はらからと喪服を灼かる炎天下 素抱
ポケットの小銭ちゃらちゃら炎天へ 暮津
炎暑に貯金下ろすは砂取りゲームに似 寒暑
炎暑来てやっつけ仕事一頓挫 暮津
炎天くる配り損ねし郵便夫 暮津
炎天にもってゆかれし大飛球 随笑
炎天に気の触る雀など居らず 随笑
炎天に思ひ浮かばぬもの名前 暮津
炎天に誰も見てゐぬ雀影 寒暑
炎天に定かなるもの我が靴音 暮津
炎天の熱気持ち込む市営バス 寒暑
炎天へ妻着て出づるジャワ更紗 ぱらりとせ
炎天ゆき山下清めく歩調 暮津
炎天をのこのこ訪ね来る御仁 暮津
炎天をマリオネットのごと歩し来 随笑
炎天を三半規管に従ひて 素抱
炎天を天道虫の活動家 暮津
炎天を味方につけぬ勝投手 燕音
炎天を愉しみゐるは雀のみ 随笑
炎天下へたに歩かぬ方がよい 暮津
炎天見る武人埴輪の面持ちに さざなみやつこ
炎天来し笑顔が家に上がり込む(孫) 暮津
軽装がベスト炎天あるく旅 随笑
作務衣の紐三つ目結うて炎天へ 随笑
心棒に狂ひを生ず真炎天 随笑
真炎天ピシと音して割けるもの 暮津
真炎天雀憶せず足許へ 素抱
診察は束の間炎天また戻る 随笑
選る道の裏目に出でて炎天下 暮津
草取はせず炎天を唯眺め 寒暑
打って出るおもひ強かり炎天に 寒暑
虫瘤の意気壮んなり真炎天 宿好
通院の炎天の道ゆく他なし 随笑
罷り出ておろおろするな真炎天 素抱
帽子などなくてもへっちゃら炎天ゆく 暮津
目をぎゅっとつむって開いて炎天へ 随笑
診察が終れば炎天待ってをり
炎天の八丁堀へ教はる路
炎天を本屋へ判りやすき路
炎天来て理髪はカットこっくりす
炎天へ出る前あれこれ指図ごと(妻)
目の窪むまで炎天を歩き来て
炎天を錘のごとく歩み出す
炎日に強き種もあり朝顔に
炎熱の煽り喰らひて国道ゆく
炎日の埃被りし足の甲
横たはる炎熱地獄の道無韻
蜘蛛渉る糸の見えざる真炎天
炎熱の渦のごときに入りゆけり
炎日に紅の秀を研ぐ槍鶏頭
真炎天うらめしさうに来し道見て
炎熱の弱まる刻が来て水遣り
炎天にたんこぶ負ふ木ガジュマルは
炎天に晒され百の素焼き鉢
顔出して引っ込む炎暑の回覧板
樹皮剥がれ落ちて炎暑の大欅
メール来て炎暑の京に遊ぶといふ(片山由美子さん)
炎暑来て老いの頭のがらんどう
炎天を君来か溶けてしまはぬやう
炎暑の水濁りながらも鯉肥る
炎天を弥次郎兵衛めく両手に荷
坑内出て眼鏡の曇る真炎天
何用といふなく出でて真炎天
何用といふ当てもなく真炎天
佛足石かげろふて見え真炎天
炎熱のこの段(きだ)ゆけば閻魔庁
炎熱に打たれすごすご戻る道
冷やし茶に炎天眩しみゐたるかな
罷り出ておろおろするな真炎天
一つだに風鈴鳴らぬ真炎天
炎天に白さるすべり忽と消え
炎熱を直方体のビル放射
炎天の灼けつく蓮想ふべし
炎天下左腕と右腕対決す
古書街の炎天をゆく胡乱な目
炎天の雀の一挙手一投足
足許の不如意こぼしつ真炎天
炎熱に打たれて蓮見どころでなし
炎天下地蜂の右往左往して
炎天来てビュッフェのエイに魅入りけり
真炎天峡田均して何植うる
ゴンドラの舞ひ上りゆく真炎天
三本立て映画観て出づ真炎天
炎天下出歩く妻の帽子好き
家内より炎天を見て目が据はる
恰幅よきイタコ炎暑の口開く
くさぐさの炎熱地獄恐山
奪衣婆に盗み見らるゝ真炎天
炎天の三途の川を渡らんか
炎天を跳ね継ぐ雀誕生日
家奥より炎天を見て目が据はる
炎熱のけふ一日を乗り切りし
炎天を漂ひゆけり白日傘
炎天の老人拾ひゆけりバス
炎天の切に恋しき雀がほ
炎天に影を縮めて弱(よろ)雀
(末尾は句集名)
油照 /
かんかん照り蟻も眩暈をおぼえけむ 素抱
かんかん照り雀翔つさへ億劫な 宿好
ぎすぎすした物言ひになる油照 暮津
ざくろ咲き通院かんかん照りの道 素抱
また外れ真っ赤な嘘の油照 寒暑
油照起死回生の一手欲し 暮津
屁理屈の罷り通らぬ油照 寒暑
油照漢和辞典に無き字牽き
虫潰せばみどりの体液油照
油照介護は底なし沼に似て
油照り始祖鳥の世のヒザラガイ
アンパイヤー掠れこゑ挙ぐ油照り
油照り三者凡退とは何だ
時計草油照りにも狂はずに
(末尾は句集名)
片蔭 /
ガヴァジューストラック島の片陰選り 随笑
国府津駅莨ふかすに片陰無し 石鏡
男っぷり上げて戻れり片陰道 随笑
片陰の一旦ここで途切れをり 素抱
片陰ゆくハローワークの呼び出し日 宿好
片陰をゆく片陰の尽きるまで
夾竹桃片陰恃みそこ出でず
墓地垣の片陰の中歩みけり
この辺にたしか魚屋片陰みち
片陰を暫くゆけば落ちつきて
片陰の続きに入るに十歩ほど
片陰を選りて図書館返りの道
中華街楼門を抜け片陰ゆく
さしあたり定期預金に片陰道
札所寺片陰見つけ一服す
有難き片陰貰ひ札所寺
旅立の足軽やかに片陰道
片陰を拾ひつゝゆく通院日
片陰道市電馳せゐしあの頃も
(末尾は句集名)
西日 /
カナディアン・ロッキーの西日赤シャツに ぱらりとせ
つらさうな顔して通る西日中 素抱
一切を放置してをり西日中 素抱
家々の壁てふ断面西日受く 素抱
鬼婆の岩屋に西日濃くなれり 石鏡
急停止西日の電車軋みけり 暮津
呼び出され西日の中へ出でゆけり 暮津
手庇に西日当れる鶴ケ城 石鏡
終盤へ蝉さまようや西日中 寒暑
植木には毒なる西日殺到す 暮津
真横より西日険しき戻り道 暮津
西日受け掏摸がゐさうな車中かな 素抱
西日中バックホームの残像も 燕音
西日中空振り三振シャットアウト 暮津
西日中葬るに人馴れやすく 素抱
先急ぎ西日をさまる当てもなし 素抱
銭湯の西日の当る脱衣籠 暮津
葬りて西日切り裂く中にあり 素抱
莫迦となる錠や西日の硝子窓 暮津
葉煙草に羽後の西日の透りけり 素抱
ぎしぎしに西日弱りてゐたりけり
西日の街顰めっ面をして歩く
シューマイが売りの肉屋の大西日
素焼鉢西日を吸ひて秋彼岸
熱線に痛み走れり大西日
大西日蝉の今際(いまは)に立ち会へる
大西日遮るもの無き舗道ゆく
人影の紛る余地なし大西日
自堕落な居ずまゐ質す大西日
西日中宇内に徹る蝉のこゑ
西日に素肌晒され人體標本めく
銭湯にあびせ倒せる大西日
御不浄の真横より射す大西日
庭草に西日は毒と聞きゐたり
城塁あゆむ一歩一歩に西日透く
ボート漕ぎ一方的に射す西日
西日の日々つつしむものに無駄費(つか)ひ
西日差し秋田大学ロッジの壁
古畳西日の所在ありありと
大西日覚悟のほどは出来てゐる
大西日家中何處か傷みをり
西日中裸たたきて喝入るゝ
大西日宝篋印塔段(きだ)を成し
水撒きのホース持つ手の西日焼
横須賀の西日ひりひり腕螫す
街をゆく脚を払ひて大西日
背に受けて三りんぼうの日の西日
大西日巡礼衆の横顔に
赤松に西日滲み入る峠越え
カウンタに西日差し込むカレー店
照りつける西日と照りつけらるゝ黍
蜻蛉の翅焦さんと西日かな
西日中行列をしてコロッケ買ふ
づかづかと居間に入り込む大西日
射的屋の景品に射す大西日
(末尾は句集名)
朝焼 /
東京の朝焼け入院一日目 鳩信
朝焼けの沖雲の腹荘厳す
(末尾は句集名)
夕焼 /
いちにちの区切りをつけに大夕焼 暮津
クルーズ船バンクーバーの夕焼け追ひ ぱらりとせ
海上に夕焼屈み込むやうに ぱらりとせ
海夕焼け未だ償い足らぬかに 暮津
釜茹での蝦蛄に夕映始まれり 随笑
誇張して夕焼空を彩れる さざなみやつこ
口癖の「生きていりゃこそ」夕焼見て 暮津
妻の云ふ冬夕焼けをどれどれと 石鏡
斜里町はサーモン色の夕焼けに 燕音
神々の乗り込む船が夕焼けて ぱらりとせ
長政のこゑぞ全天夕焼けて ねずみのこまくら
福島の桃の夕焼けどき長き 随笑
夕焼けて年増女のやうな舟 ぱらりとせ
夕焼けといふ一瞬に妻立ち会ふ 暮津
夕焼けに顔を燃やして発句修羅 随笑
夕焼けに挙句の果ての寅次郎 ぱらりとせ
夕焼けの海染め了る西津軽 寒暑
夕焼けの佐渡を良寛ならずとも 寒暑
夕焼けの終の光の水平線 燕音
夕焼空アラー讃ふるこゑのぼる ねずみのこまくら
逆さ蜘蛛絵本にあるよな夕焼け空
蜘蛛垂れて絵本にあるよな夕焼け空
夕焼を見ぬラーメン屋の寡婦と
ほとぼりを覚ますごとゐて夕焼雲
鳥海山(ちょいかい)のけふの夕焼納まれり
半島の西側夕焼けウオッチング
夕焼けに人生纏め上げる詩(うた)
夕焼雲負けぇーてくやしいはないちもんめ
夕焼けなほ光の帯の水平線
一ト輝きありて夕焼けの水平線
梅雨夕焼け腸に似て雲の筋
夕餉あと味噌汁いろの梅雨夕焼け
夕焼けも手伝ひ蝉の愁嘆場
夕焼雲やうやくくすみ初めにけり
夕焼雲金ン一変し灰白に
梅雨夕焼け山の青木の葉を染めて
犬枇杷に山の夕焼け時かけて
夕焼けてずんと近づく佐渡ケ島
(末尾は句集名)
朝凪 /夕凪 /
風死す /
べンガル虎風死す檻を往き来せり さざなみやつこ
風と云ふ風が死にゐる大蓮田 ももすずめ
風死すなか脛毛の薄きところかな 暮津
風死す中あらぬ方見て採血す 暮津
法難絵図風死す灘を正面に ねずみのこまくら
風死んでうんともすんともクリニック
風死す中キッと身起こし厠に立つ
風死すより熱風がまし丸裸
牡丹の獅子奮迅に風絶えず
風絶えて花の納まる容かな
大葭切湖の方より風絶えず
葉ざくらの下闇匂ふ風絶えて
風絶えてにはかに殖ゆるに油蝉
出土器のうす紅風死す考古館
風絶えて螢の宿は藪臭き
風死す森ヴビンガの木の面構え
風絶えて団扇大いに働く日
欅若葉そよ風絶えぬその高み
風死す中バントこつんと決まりけり
風死すなか巡礼衆のなみあみだ
映画館出ても風死す街の中
一休止入れぬ風死す反射炉に
風死す中地蔵の持てる風車
風死す中賽の河原の順路かな
風死す中うろちょろしても仕方なし
風絶えることなく吹けり合歓の花
秋蝉の壁成すごとし風絶えき
蝉の音が絶え絶え風が動きけり
風死す景白黒映画をみるごとく
風死す中軒を並べて屋台店
その最中はたと風絶え螢火も
風絶えしこと確かなる糸柳
(末尾は句集名)
土用凪 /
旱 /
引とり手なき古本の旱山 寒暑
床擦れの我が身離れぬ旱かな 暮津
旱星創は乾かすこと大事 暮津
泥亀の首筋赤き秋旱
旱鯉往き交ふ影を累ねけり
竹割って旱の天の空ら響
梔子にことしの旱間違ひなし
目の届くところに鉢もの大旱
大旱介護に振り回されどうし
また一鉢枯らしてしまふ旱かな
ちりちりとか黒に巻きて旱草
旱年木綿の肌着売って居ず
枯れし鉢一所に集む旱かな
サルビアの赤ぶり返す旱雨
亀だけが元氣な池の旱かな
野放図に岩に寝そべる旱亀
旱雲松喰い虫の男鹿の松
(末尾は句集名)
喜雨 /
喜雨雫カナリー椰子の刺にかな
喜雨聴きつ牛蒡をこそげおとす音
舗道打つ喜雨のことごと返点
雨滴百玻璃に残して喜雨あがる
喜雨雫八紘一宇の碑を摶ちて
上高地喜雨に逃げ込む橡の樹下
誰に告ぐ嬌声喜雨に先んじて
シャリアピン勇魚の如く喜雨を浴び
明日葉を嬉しがらせる所降
八丈の旅で遭ひたし所降
喜雨雫カナリー椰子の刺にかな・・・八丈島 ねずみのこまくら
(末尾は句集名)
夏の雨 /
シマガラスヨトウ嘉せる夏の雨 ももすずめ
はだけゐる肋に韻く夏の雨 暮津
夏の雨白黒映画の画面ぶれ 素抱
広重の人馬ふためく夏の雨 さざなみやつこ
札所寺二番で降られ夏の雨 宿好
上高地降られに入ったやうなもの 宿好
走り根を洗ひて夏の雨あがる 石鏡
存分に泰山木の雫切る 随笑
鳥海山の夏場の雨の桁外れ 石鏡
佳き夏の雨とこゑあり二階より
半夏雨湯屋の外燈明るかり
半夏雨階洗ひ上がりけり
舗道摶つ緑雨映画の日替日
禅林の刈らずの葉欄夏の雨
鳥海山の裾野馳せくる夏の雨
鳥海山より音立ててくる夏の雨
鳥海山よりバラと馳せ来る夏の雨
九十九水田烟らせ夏の雨馳せぬ
葉叢打ち夜をしんみりと夏の雨
蝸牛殻透くまでに半夏雨
ウォーキングそらみたことか半夏雨
東北道南下半夏の雨断続
虫の音の加はり夏雨繁くなり
しろがねに川駆け抜ける夏の雨
鎖樋伝ひて緑雨地に優し
イヌシデの花序に緑雨の降り続く
夏の雨土中はしれり山毛欅の山
レタス打ち八ヶ岳より夏の雨
生垣の葉を掠りくる夏の雨
夏の雨今序・破・急のどの辺り
側溝を高鳴り走る夏の雨
庭先に出す棕梠竹に夏の雨
(末尾は句集名)
◆地理
青田 /
ねぷた果て青田のあをさ一入よ 寒暑
一人来て陸奥の青田の田草取 随笑
一枚の巨きな青田みちのくは 随笑
月山は霧籠め朝の青田の香 素抱
鷺を見て青田曇りの庄内路 石鏡
清浄と男鹿の青田に注ぐ雨 寒暑
青りんご青田青風岩木山 寒暑
青田風吹き込む三番札所寺 宿好
匂ひ合ふ青田と青田の中の鷺 随笑
日本海前に青田のしんと澄み 寒暑
磐梯の水や光や青田風 素抱
陸中の青田青田に眼の展け 随笑
蚶満寺裏の青田の目に沁めり 石鏡
青田あり青田の中に藁屋あり
陸中の青田青田に眼を見張り
葺き替えしばかりの藁屋青田水
大藁屋風も動かぬ青田の辺
青田中合掌造り五十九
生保内(おぼない)の青田しんしん鎮守の森(田沢湖)
四方青田ここは庄内柿の里
青田中掛け値なく美し大鳥居
山麓は青田曇りの庄内路
山峡の青田漠々山背風吹く
たたなはる青田に朝靄冷夏なり
田見回り羽後の横手の青田辺り
青田風角館発一輌車
東北道青田照ったり曇ったり
近道の青田の向うに吾が母校
しんしんと水むつつりと青田村
青田中道ついてゐる無人駅
信州の日差し青田と枝豆に
青田中八方温泉給湯棟
白馬村青田中より虹立てり
虹の緑青田の緑に伍し顕てり
白馬山麓青田蛙の羯諦(ギャーテイ)啼
安曇野の青田のパチンコ一軒家
いちめんの灼くる青田の縁に村
馳せに馳せ来れる青嶺青田押す
山中に一ト処展け青田村
帰るさの陸奥の青田が眼に滲みて
青田の上日本一の津軽富士
外灯がぽつんと点いて青田の辺
ぽと点きて青田の向かう人家の灯
みちのくは青田一枚にてつながる
みちのくの青田が暮れるまで走る
青鷺が青田に降りて何漁る
黒塚の辺りの青田暮れてくる
安達太良の青田夕日を蓄ふる
みちのくの青田眼に滲む頃の旅
どこまでも仙台平野の青田づら
鶴泊青田囲いの駅舎なり
枝豆の向うに青田八郎潟
あをあをと青田を吹ける男鹿磯風
日本海側に抜け出て青田晴れ
(末尾は句集名)
夏の山 /
エンジンブレーキ響かせ下りる夏蔵王 素抱
ドライブイン四方の青嶺に見下ろされ 随笑
羽後牛のステーキ青嶺滴るに 素抱
押し迫る青嶺や羆棲息地 燕音
夏鳥海山(ちょうかい)はるばる来たる者にこそ 素抱
花火野郎青嶺の肝を抜き来しと ねずみのこまくら
蝦夷青嶺肩寄せて守る湖の艶 ねずみのこまくら
骨壺に葛生の青嶺見せ戻る 素抱
諸鳥のこゑを青嶺を閉ざす霧 暮津
杉皮の赤むきだしに夏の山 素抱
青嶺攀ずよろよろ岩手県北バス 石鏡
切り出してここら青嶺の水利権 ぱらりとせ
川ぐいと曲る青嶺を巻き込みて 随笑
釣竿を青嶺に向けて川漁師 随笑
天候は出たとこ勝負夏山行(後生掛温泉) 石鏡
田沢湖は青嶺の間に手窪ほど 素抱
悠々と暮れて青嶺のいま黒嶺 随笑
旅自慢などしてバスは青嶺越え 随笑
夏の雨土中はしれり山毛欅の山
夏山の広ぐる裾野の先に町
乗車して青嶺の裾野育ちの子
青嶺下りバスの向ふは盛岡
北上行ワンマンカーは青嶺縫ひ
夏山の小枝の浮ける孫六湯
椀伏せしやうな夏山仙山線
花白く暮れて漂ふ夏の山
いつ来ても白き花咲く夏の山
たらんぼのすっくと長けて四方青嶺
すいと来て青嶺に懸かる雲の影
札所寺とんで青嶺の麓寺
湯を浴びて秩父青嶺のいよいよや
青嶺見て首まで浸る鉱泉湯
夏山は巨き水瓶山毛欅の森
馳せに馳せ来れる青嶺青田押す
中食は青嶺を臨む山彦亭
釣人の青嶺に向ひ一服す
青嶺あり谿あり一人鮎を釣る
バスツアー陸奥の青嶺は肩を組み
海峡と青嶺の間の下北路
肥後守持ち夏山へガキ大将
夏山へ繰出すリュックサック族
蔓ものの花から咲けり夏の山
三戸の辺りの青嶺高からず
夏山に面と向ひて写生の子
夏山を写生する子の姿勢よき
夏山のお岩木しぼる御神水
楢の磊落椎の生真面目夏の山
みどり立つ国上(くがみ)青嶺の彩に酔ふ
大佐渡の青嶺団雲一つづゝ
えっさ丸佐渡の青嶺を引き寄せて
青嶺に起つ靄のもんもん魚野川
(末尾は句集名)
山滴る /
山滴る箱根に手づくり豆腐屋あり 暮津
墓洗ふ向う滴る唐沢山 素抱
羽後牛のステーキ青嶺滴るに 素抱
滴る山手に取るやうに烏龍茶 随笑
山滴る島を離れておけさ丸 寒暑
弥彦山滴るを指呼稚鮎釣る 寒暑
海統べて弥彦山(やひこ)と国上山(くがみ)滴れり 寒暑
かつを船滴る陸に戻りけり ねずみのこまくら
山滴る磧いっぱい石敷きつめ
山滴る弥彦山は雲を引き留めて
山滴る谷間の池に鯉育て
(末尾は句集名)
青岬 /
エゾニュウの茎の吹き折れ青岬
郵便の一日一便夏岬
山はぼこんと波はぺこんと夏岬
(末尾は句集名)
お花畑 /
お花畑眼下に小諸の町が見え
お花畑天文台へとつづく道
お花畑こゑはすれども人見えず
お花畑霧の中くる足音あり
お花畑石頭にも蜻蛉来て
お花畑三つ巡る旅決めにけり
お花畑巡るツアーに参加せり
お花畑リフト二つを乗り継いで 素抱
お花畑雲の空中散歩かな 宿好
お花畑雨も疾走虻も疾走 宿好
(末尾は句集名)
雪溪 /
アマニュウとアマニュウの間雪渓見ゆ 宿好
サングラス断てり氷河の乱反射 ぱらりとせ
シップして氷河期迎ふぎっくり腰 寒暑
雲に日の入れば氷河の憮然たり ぱらりとせ
音も無く氷河の上を水はしり ぱらりとせ
見晴らしは兎も角雪渓よぎるとせん 宿好
光度増し氷河息づきゐるごとし ぱらりとせ
酒水は万年雪水男山 素抱
真輝く氷河を前に道消ゆる ぱらりとせ
吹かれゐて雪渓いろのナナカマド(八幡沼) 石鏡
水餅のやうに氷河の横たはる ぱらりとせ
雪渓の一つがさつに風の谷 素抱
雪渓の舌の先なるチングルマ 宿好
雪渓の端まで二三歩ふきのたう さざなみやつこ
雪渓の半ば風向き変りしか 石鏡
雪渓の風がつらさうヒナザクラ 石鏡
雪渓の風にウインドブレーカー鳴る 石鏡
雪渓の風に画用紙めくれけり ぱらりとせ
雪渓の風に椴松頭を削がれ 石鏡
雪渓の風の抜け口おお涼し 宿好
雪渓の風を受けつつスケッチす 石鏡
草の花氷河すさりし跡に充つ ぱらりとせ
足下より煌きわたる大氷河 ぱらりとせ
動悸打つごとく氷河の雫かな ぱらりとせ
氷河つるつる尻餅ついたら百年目 素抱
氷河湖を見つむこころもエメラルド ぱらりとせ
氷河焼けしたるガイドのジョーク好き ぱらりとせ
氷壁を煽りて発てるブルージェイ ぱらりとせ
万年雪きれいきれいと日本語 ぱらりとせ
目くるめく光体となり氷河馳す ぱらりとせ
雪渓の風横殴りミツガシワ
雪渓を見下ろす柵に蟻を見つ
高嶺草雪渓痩せて来たる辺に
雪渓のなだるる横に八甲田山
雪渓の横のシラビソ林描く
雪渓に迫力山小屋眼下にす
雪渓の風パと絶えて浮塵子殖ゆ(八幡沼)
鳥海山雪渓の筋あらはな日
雪渓の年寄る面に塵泛かべ
雪渓の水音足下の下の方
雪渓といふにはあまりに汚れ過ぎ
雪渓と別の白さのななかまど
雪渓のここに遺りし岩鏡
夏鴬雪渓をなほ遙かにす
雪渓の他何もなく刈田岳
ななかまど咲くや雪渓やや汚れ
雪渓の塵波打てり金鈴花
捕虫網携え雪渓渡るかな
雪渓の風にハクサンフウロ揺れ
雪渓と別の涼しさアマニュウは
楔形雪渓五つ見えにけり
雪渓を眼下にハッポウウスユキソウ
雪渓をぐいと抉りて尾根の風
ぽっちりと雪渓白馬岳正面
雪渓を臨む此処にて小昼とす
雪渓の溶く音ハッポウツガザクラ
雪渓を下る人数目減りして
雪渓を一望白馬の湯に和む
(末尾は句集名)
赤富士 /
滝 /
インディアン滝を称えてタカカウと ぱらりとせ
ががんぼのぶらさがりをり滝不動 素抱
かへり見るときには滝の威厳失せ 素抱
くりかへしくりかへし瀧澄める音を 燕音
こなごなに砕くるこころ瀧柱 燕音
ざうざうと山の枯蔓滝なせり 宿好
まとまりのつかぬ滝水とはなれり 素抱
やぶめうが滝道はこの奥の奥 素抱
釜形(なり)の滝の音色の扇面に 寒暑
岩伝ひしゃらんしゃらんと女滝落つ 随笑
胸中に小さき滝懸け三尺寝 寒暑
熊本より来たばい真名井の滝はよか 鳩信
鼓動して太古のこころ深山瀧 燕音
山漆紅葉急なり滝の前 寒暑
真向へる男滝じりじり詰め寄れる さざなみやつこ
水玉は華厳の螺髪瀧頭 燕音
水垂で降りて七滝巡りかな ぱらりとせ
太鼓材ヴビンガの木は滝の直 素抱
大滝を見つつ頬張るにぎり飯 随笑
滝しぶき女はキャーと云ったきり 素抱
滝っ瀬の刹那刹那の音繋ぎ 鳩信
滝なす蔓たった一つの烏瓜 随笑
滝に皺入りて雪村観瀑圖 鳩信
滝音に驚き黄葉したりけり 寒暑
滝音のはつかに聞ゆ蔓あぢさゐ 燕音
滝音の呪縛振り切り来たりけり 燕音
滝巾の風の通路に佇めり 素抱
滝見茶屋ざっくばらんな紅葉かな 石鏡
滝水のぐるりと迂回せるもあり ももすずめ
滝水のとどろに大徳出づる寺 素抱
滝水の下に滝水割込めり ぱらりとせ
滝水の巖過ぐとき巖いろ ぱらりとせ
滝飛沫あびてアリアを聴くごとし ぱらりとせ
滝飛沫ダグラス樅を育めり ぱらりとせ
滝不動苔むすなまくら剣かな 素抱
滝落ちてアオダモの木に轟けり 鳩信
滝落下点へゆつくり向ふ水 さざなみやつこ
滝壺の韻きに和して木の葉散る 随笑
滝壺へ瀬を替え道の続きをり 素抱
瀧けむり双竜の翳帯びにけり(双竜の滝) 石鏡
瀧となり落ちたる水の大循環 燕音
瀧の水弥陀の御衣をなせりけり 燕音
瀧壺の轟音に我投げ込まれ 暮津
男滝へは女の足で十四、五分 暮津
凍滝の天地結んで一柱 石鏡
飛瀑音筋といふ筋伸ばしけり 素抱
不動滝名前負けして落ちにけり 素抱
別名を鳥肌立の滝となん 鳩信
奔放は滝の放てる音にこそ 随笑
落ち際はそもそも無音法の滝 素抱
落つ瀧の国歌斉唱せるごとし 燕音
竜田姫瀧の柱は粧はずに 石鏡
旅人に盛岡駅の作り滝 石鏡
一の瀧受けて二の瀧三の瀧
滝頭より鳩の翔つ作り滝
懸崖に滝行の滝とよもせり
雄滝とは別にゆっくり下る滝
滝水で淹るる珈琲水自慢
ふりあふぐ不動の滝に不断の水
ちょろちょろ滝いんいん大滝舟下り
甌穴に入りて激する滝の水
滝丸ごと入れて撮らんと四苦八苦
養老之瀧や真夏の赤ネオン
句姿に腐心昇天する滝に
哲人のごときおももち滝の相
瀑布音壺の形をなせりけり
瀧水は迦陵頻伽のこゑ放ち
雄心を据え千丈の滝仰ぐ
殷々と滝秋色を深めけり
滝を見る朽ち鉄柵も秋寂びて
殷々と滝秋冷を募らしむ
作り滝雑木紅葉の枝を添えて
作り滝栄えあるものに菊設え
目からして剽軽な竜滝の間に(大徳寺別院)
如何やうにも風に曲れる滝飛沫
亭々と沢ぐるみ滝見下ろせり
藤蔓が岩盤這へり滝不動
滝しぶきしとどに浴びて青どんぐり
杉の間に一閃滝の白ならむ
塗り橋の上が恰好滝見物
渓流のいよいよ激し滝間近
滝見ての戻りの道の文旦畑
堪能の時間まちまち滝見衆
このツアー滝見にたっぷり時間とる
滝道に零余子並べて小商ひ
手すりの上七節蟲浴びる滝しぶき
滝壺の喧噪のうへ滝懸かる
寄り道の多き滝水女々しかり
女滝とは柵を見ずとも判りけり
水涸れに空威張りして不動滝
それなりの音して水涸れ不動滝
勢ひを岩に阻まれ男滝落つ
ひたすらに水恋しくて滝へ降る
滝音の遠ざかる森なほ奥へ
夕ざれば段々の滝白襖
滝音は斜めに朴は真っ直ぐに
山の水抜いて滝とし落しけり
瀧壺の底はとんでもなく深し
さうさうと小滝を落とす落葉谷
滝水の勢ひをかわす岩の形(なり)
この谿の落葉づくしの径滝へ
ここらまで飛び来初冬の滝しぶき
はじめての雪山々の滝々に
まなぞこに止む初冬の滝のいろ
滝桜幹に食い込む杭も枯れ
滝に皺入りて雪村観瀑圖
高千穂の日当たりながら落つる滝
滝つ瀬の音に繋ぎ目なかりけり
滝頭薄き日差しを浴みにけり
滝音の止まるときつゆ無かりけり
滝壺へ朴の青葉を踏みしめて
滝落下して水視界より去れり
滝風に吹き上げられて赤とんぼ
正面の滝を見据へて顔ややと
瀧音のいつしか五体通り抜け
蒼天へ一本立ちの瀧柱
瀧の水弥陀の御衣をなせりけり
ピッコロの音のごと瀧水跳ね回り
瀧水に応へてをりぬ磐頭
山の水弾みごころの瀧頭
瀧曰く等身大のうた詠めと
おどろなる瀧水畳み畳みては
いっときは瀧となる水大循環
瀧水に打たれし音を岩は秘め
谿間にいっぽん通す瀧柱
鼓動して太古のこころ那智の瀧
太郎坊はた次郎坊滝不動
文覚の頭(かしら)を打てる那智の滝
大願成就有ケ滝縞嬶着こなし
なほ耳に残る滝音を旅土産
大滝の水量を云ふ在の人
大蕗に轟くオシンコシンの滝
滝つ瀬に声張りにけり漢ども
滝音に太肉体躯打たせをり
横からも顔を突き出し滝見かな
滝水の段なしオホーツクに入る
またたびの脇を滝水引き落つる
すいと現れ滝見の尾白鷲ならず
とろとろと芽吹きの色と春の滝
滝つ瀬の水の上に水跳ねまはり
落つるより他なき滝の水割けて
錦繍の秋のホテルの作り瀧
大滝村桑が長じてしまひけり
急流に仕掛け花火の瀧現れて
紫木蓮滝ノ口にも腰越にも
竹秋の風鳴り出づる滝ノ口
ざうざうと何の枯蔓滝なせり
鋤焼の白滝翁煮えしといふ
小春の茶の間大滝秀治の話術冴え
囀りのごときもの聴き滝の前
滝に相対す気合いのごときもの
滝の前平常心といふ言葉
滝谺一山は早や化粧ふべく
滝音に我が身裂かれてまつぷたつ
一文字滝に跨る女郎蜘蛛
褒めことば呑み込んで滝落つるなり
胸元の釦外して滝をみる
振り返り振り返り見る滝なりき
貧相な顔して滝の辺を離る
後頭部その上に滝起ち上がる
気をつけをして見る滝にあらねども
正面の男滝を容れて眼鏡澄む
頭の裡のもやもや払ふ滝つ風
滝の前一団去って又一団
滝水に穿たる磐減りもせず
この奥に滝あり零余子零る径
蔓ものの通草もひさぐ滝見茶屋
滝見茶屋紅葉とっくにおはりゐし
秋寂びの神韻震ふ那智滝図
湯滝鳴る雑木もみぢの色深め
朝霧や四十八瀧下り舩 子規
川に出て滝音に顔あらはるゝ
滝水の勢ひ受けとむ岩一つ
岩を噛む滝つ瀬の水蛇骨川
滝裾が青葉の間より覗きをり
滝の風浴衣の裾を煽りけり
滝水の白瀬をなせる蛇骨川
滝音のいんいん葉叢深めけり
日光沢滝風に栃黄葉せり
滝水の白投げうって紅葉谿
二坪の湯壺や滝を横に見て
滝を見て帰りの五人紅葉茶屋
秋雨を加え女滝の婉然と
巌伝ふ滝水の条いとやさし
岩盤を伝ふ滝水雨の条
滑り落つ音のいちめん滝広ら
花巻の釜伏す形(なり)の滝やさし
釜渕の滝の岩場の草もみぢ
滝の上の落葉樹林に小鳥くる
作り瀧ここで涼めと木椅子あり
鎮田ノ滝描き切りたる水に腰
滝をなす身延桜に仰天す
お松明衆に滝なす粗火の粉
(末尾は句集名)
泉 /
泉下の露伴会式太鼓に耳を藉し(池上 本門寺 お会式)
海蔵寺林泉三椏に白日差
黄葉どき皮膚完爾と硫黄泉
泉質を云々朧の共同湯
はんざきとなりのし歩く泉の底
待春の泉湧くなりほこほこと
露けしや引湯泉質二系統
神霊泉日光沢の湯に青葉
泉のごと笑みを浮かべて孫昼寝
土佐の春酌みて地酒は亀泉
(末尾は句集名)
清水 /
お岩木の手水の真清水手に痛し 寒暑
お岩木の真清水引きて御神水 寒暑
お岩木の真清水大き柄杓に受け 寒暑
混浴の肌叩き出て清水のむ 素抱
山清水鳴れり朽葉を潜り出て 鳩信
真清水に蕨の塩抜き湯治宿 素抱
朝顔の大輪清水湛ふごと 燕音
冬の清水音色もろとも掌に汲めり 鳩信
湯治宿つと山清水引き込んで 素抱
湯治場のとば口に湧く山清水 素抱
湯治場の天下一品山清水 寒暑
板蕎麦を頂き羽黒の清水乾す 石鏡
真清水にどぼんくるりと瓜冷やす
清水に漬けそれも昔の青トマト
がまずみの実に山清水とよもして
自炊場に打ひびかせて山清水(玉川温泉)
麦切に羽黒の清水使ひけり
歯朶の邊に湧き出て冬の窟清水
竹幹に真清水韻く満願寺
山清水鯉は晩夏の光沢得て
杉の直竹幹の直鳴る清水
山菜の塩抜きしをり山清水
日帰り湯清水鳴る辺で待ち合はす
やっと着く湯治場に山清水あり
一粁の道のりを来て清水の宿
清水鳴り昼はがらんとして湯宿
真昼間の清水響ける湯治宿
清水もて湯宿の冷やし西瓜かな
清水湧く乳頭山の登り口
禽ごゑの一つそれきり冬清水
冬清水鳴るに一刻日当りて
裏白も耳を傾け冬清水
冬清水奏づ音色に葉の朽ちて
朽葉濾す清水水音のいよいよや
清水の一ト谷楓もみぢかな
心ここにあらず清水春舞台
清水の舞台に佇てば枯れ一望
清水の舞台もろとも枯れ一切
一山の枯れ清水の舞台圧(お)す
清水の小雪おっとり店構え
清水の秘佛に見ゆ秋の暮
磐ケ根の清水を絞る窟佛
喉をさす清水手結び汲みにけり
お岩木の真清水境内迂回して
山毛欅囲む池の真清水透きに透き
清水の舞台飛び降りさくらんぼ
山水図巻清水流るるやうに見て
(末尾は句集名)
滴り /
枇杷滴るこんな筈ではなき母に 暮津
認知症病みて熟れ枇杷滴らす 暮津
洗面の水が滴る鼻があり 素抱
滴れり三葉虫の昔より 素抱
シャワー浴ぶといふより滴らす 随笑
滴れり三葉虫の潜む岩 寒暑
滴れりみみずのやうな鹿尾菜の茎 さざなみやつこ
したたりを許さぬ蛇口終戦日
地底採石天井高く滴れり
石筍の尻を伝ひて滴れり
露地栽培枇杷に夕日が滴れり
寒鯉の賢人の髭滴りて
海統べて弥彦山(やひこ)と国上山(くがみ)滴れり
(末尾は句集名)
噴井 /田水沸く /
土用浪 /
海めくれ出して生まるる土用浪 燕音
土用波根付若布をうち揚ぐる 素抱
土用波波の裏より手が挙り 鳩信
土用浪うねりそこねるものあらず 燕音
土用浪一つ大きく勇魚(いさな)いろ 燕音
土用浪暫し泡沫漂はせ 寒暑
土用浪船首のやうに岬伸び
土用波どすんとうちあぐ物は何
江ノ電の材木座経て土用波
暗緑に七里ヶ浜の土用浪
海めくれ出して生まるる土用浪
江ノ電にみるみる寄せぬ土用浪
だんびらをかざせるごとく土用浪
相模灘一望土用浪の反り
地に叩きつけて打球は土用浪
土用波前に男の仁王立
曇日の鹿島灘より土用波
吟行の背にし前にし土用浪
土用浪頭(かしら)を天に振り上げて
水戸っぽもたじたじけふの土用波
土用浪岩岩没す一刹那
先づ翳が水面を奔り土用浪
土用浪冥き翳曳き倒れけり
頭をむくといま立ち上がる土用浪
黒き頭をやおら擡げて土用浪
土用浪泡沫漂ひゐたりけり
流木片それにつけても土用浪
土用浪もり上がりては谷が出来
土用浪くるりと波頭巻きにけり
腰越より七里ヶ浜かけ土用浪
海坊主頭上ぐるところ土用浪
(末尾は句集名)
◆生活
山開 /
海開 /
あやかしを畏み畏み海開き 素抱
遠くから見て事足りぬ海開 暮津
土左衛門欲しがる海の海開 素抱
濤音に犬の追はるる海開き 素抱
海開き「鴎の飛んだ日」口ずさみ
懐かしき麺麭のシベリア海開
(末尾は句集名)
海の家 /
くろんぼと云ふ名もよけれ海の家 ももすずめ
海の家ぽつりぽつりと建ち始む 暮津
海の家二つこっきり日本海 ぱらりとせ
高浪に茶をひいてをり海の家 ももすずめ
氷水伊豆見屋と云ふ海の家 ねずみのこまくら
たちまちに驟雨けぶれり海の家
昔とは形違へて海の家
潮濡れのもろもろ干して海の家
(末尾は句集名)
夏館 /
かい撫でる革の風合い夏館
夏館岩崎邸の撞球室
白熱灯蛍光灯の夏の家
夏の露大間港の家並の上
夏の月寝苦しき夜の家並の上
夏館夏水仙がよく似合ふ
風入れて風吹きぬける夏の家
話し外れ戻りて朋の夏館 素抱
(末尾は句集名)
夏座敷 /
ごたごたと物を置かぬが夏座敷 素抱
遺品よく片づきをりし夏座敷 暮津
佳きかぜをふるまはれけり夏座敷 随笑
夏座敷茶のうまければおかはりす 随笑
夏座敷豆麩浮かせて会津椀 素抱
夏座敷楓の風を取り込みて 随笑
懐かしくサクがゐるなり夏座敷 素抱
骨壺の一つ置きある夏座敷 暮津
取皿の文様眺め夏座敷 随笑
新佛馴染み給ふや夏座敷 暮津
嵌め物の類ひあれこれ夏座敷 随笑
仏壇のまだ新しき夏座敷
傷みし供華整えをりぬ夏座敷
皮切りに会津の酒を夏座敷
間仕切りの数の程よき夏座敷
それなりに古き畳の夏座敷
夏座敷話半々蕎麦半々
かうもり図の円卓据えて夏座敷
せせらぎも馳走の一つ夏座敷
めいっぱい風の吹き込む夏座敷
関節の音畳まるる夏座敷
柱まで目の突き進む夏座敷
座布団の位置を直しぬ夏座敷
(末尾は句集名)
川床 /
川床の石の冷え冷え上高地
川床の湯の花に射す秋日差し
湯の川の川床雑木黄葉いろ
うつらうつら川床の鳴る夜長宿
川床のうす水色に紅葉どき
夜に入りて川床の鳴る紅葉宿
鳴る水に尻こそばゆき川床料理 寒暑
湯の町の明けて三日の川床鳴る 寒暑
川床に湯花川原にすすき咲く 随笑
川床の藻のたゆたひも三日経て ぱらりとせ
(末尾は句集名)
夏炉 /
扇 /
けふ差して腰に馴染まぬ扇子かな ももすずめ
しやうぶ見る腰ポケツトに扇子かな ねずみのこまくら
なによりと妻をねぎらふ秋扇 寒暑
パチパチとけふより扇子の持ち始め 随笑
一患者ふうふう云ふて扇子風 素抱
一本の扇子を恃む出羽の旅 寒暑
海を見て扇子パチパチやってをり 暮津
釜形(なり)の滝の音色の扇面に 寒暑
古扇子開閉大道将棋かな 暮津
五大堂風あり扇子納めけり 素抱
腰折れの扇子使ひてふむふむと 鳩信
骨傷みしても現役古扇子 素抱
三人が三人扇子取り出せり 随笑
女もの扇子借り受けあふぎけり 寒暑
上野山すずしく扇子使はざり 素抱
蒸す車中扇子ひらひらやってをり 暮津
扇子もつひとは扇子を遣り木蔭 随笑
扇子より扇ぐ仕種の気忙しや 暮津
扇子一本腰に収めて飯店へ 寒暑
扇燈籠(おぎどろ)の紅蓮見送り立ちん棒 寒暑
扇燈籠(おぎどろ)の熱気にゆらぐ立見客 寒暑
扇面のをんな艶たる秋扇 寒暑
中老の扇ひらひら屋台曳 石鏡
通院日またぞろ扇子持ち出して 燕音
定年後扇子が家に遊びをり 素抱
店も狭に緋扇舞はせちやつきらこ ももすずめ
南谷ここがさうかと扇子出す 石鏡
白扇に茶化しきれざる病景色 鳩信
噺家の扇のごとく器用なり 随笑
飯店の卓に扇子を置き待てる 寒暑
風蘭の在り処教ふに扇子もて 素抱
隣席の扇の風にあやかりぬ 鳩信
話かいつまんで云へばと古扇 鳩信
蝉しぐれ顔扇いでも扇いでも
扇いでも扇いでもけふ汗だくに
百万遍扇いで夜涼呼び寄する
扇面のひょうたん図見て診察待ち
扇ぎ止すままに団扇の置かれあり
扇面の漫画のやうな魚の貌
扇面に濤立ち上がる京団扇
扇手に渋い出で立ち中老連
余所者として空稲架をあふぎをり
楠の花あふぎてゐたる初老の眼
鬱勃と来てあふぎゐる桐の花
日脚伸ぶといふこと鴎の胴あふぎ
ホーム見て扇子あふいで上野駅
岩崎邸扇ぐ扇子もたをやかに
上野すずしく終に扇子を使はざり
扇面に富嶽凛々聳ちにけり
来客や白さるすべりをうちあふぎ
扇骨の諸処あらはなる残暑かな
孫吾を扇ぐ団扇のへなへな風
顔あふぎ山寺土産の渋団扇
白扇子あふぎどうしのお山道
たはむれに女の扇子扇ぎみぬ
気休めの団扇扇ぎとなりゐたり
扇子より団扇年金暮しなる
語りつゝ扇ぐ団扇の裏白し
気短かと知れる団扇の扇ぎ方
あふぎみる房州団扇の軽きこと
若楓扇面撓め吹く風ぞ
浴衣の胸ちょとかき合はせ扇蝦
宗達の扇絵鳴神置く構図
この辺がいつも傷みて古扇子
夏みかん扇開きにさし込む日
色変えぬ松をあふぎて尼の旅
扇面の縁にて起こし風送る
縦あふぎはた横あふぎ団扇風
古団扇扇ぎて去年の手術譚
外来の患者ぱたぱた古扇子
わが名呼ばるるまでを扇子の使ひ初め
百合の香を扇ぎて払ひのけにけり
泌尿器科患者見渡し白扇子
あぢさゐに雨の降り込む扇カ谷
通勤のホームに扇子あふぎ族
正札付現金男を指す扇子
大船に乗ったつもりで白扇子
先導は扇あふりつ虫送り
ゴンドラを待ちつつ使ふ白扇子
頂上で扇子を使ふ都会人
亀ケ谷扇ケ谷の木五倍子咲く
筆立に扇子冬立つ日の机上
扇ぎつつバスに持ち込む朴落葉
扇子パタパタ遣りつゝ俳句推敲す
くそ暑し扇子縦にも横にもす
訪問客あれば団扇をあふぎ出づ
扇子はたはた嘗ての経済戦士ぶり
まだ使ふ扇子の寿命尽きゐたり
ふうふう扇子つかふ外来患者かな
扇子開き閉ぢては外来患者待つ
ハンカチで扇子で扇ぎ待つ患者
扇面の花火の絵柄畳みけり
持ち古りし駱駝の扇子ガタが来ぬ
朝から扇ぎどうしの破れ団扇
扇子いっぽん腰に落として蛍狩
扇子いっぽん挿して句会へ出向きけり
この暑さ胸元何ンべん扇いでも
舞扇ひらひら芸者ワルツかな
扇面に女武者絵の艶なこと
町々の扇ねぶたの艶くらべ
めらめらと紅蓮の扇ねぶた来る
ほのぼのと扇ねぶたの牡丹柄
古団扇扇ぎ損ねて肋打つ
両手もて孫の扇げる団扇風
(末尾は句集名)
団扇 /
あと幾たび団扇を使ふ日のありや 石鏡
うち過ぎぬ団扇太鼓の二波三波 随笑
おのづと知る団扇の善し悪しその風筋 暮津
お会式の団扇太鼓に浮足立つ 燕音
お気に入り房州団扇使ひ初め 石鏡
くさぐさの団扇の中のお気に入り 素抱
せっかちと思はるもよし団扇風 随笑
その後のことはどうでも団扇風 素抱
ばさと落ち天狗の団扇めく落葉 燕音
ビニール製団扇の朝顔色褪せず 素抱
ビニール製団扇手首の疲れるよ 寒暑
わが持論一歩譲りて団扇風 鳩信
一、二掻き躰に送る団扇風 素抱
一本の団扇がおまけ朝顔市 素抱
何云うてもみんな言訳団扇風 寒暑
暇あればすぐ横になり古団扇 素抱
絵団扇のあらかた竹の性抜けて ねずみのこまくら
顔あふぐ山寺土産の渋団扇 素抱
気休めの団扇あふぎとなりゐたり 素抱
現八の麻張り房州団扇かな 素抱
古団扇きゅっきゅと骨が鳴るやうに 素抱
古団扇やれやれけふも了りけり 暮津
古団扇骨傷みして風へなへな 素抱
古団扇使ひ易きが取り柄なり 素抱
古団扇扇ぎて去年の手術譚 鳩信
古団扇扇ぎ損ねて肋打つ 寒暑
御旅所に団扇と扇子語らひつ さざなみやつこ
考えてもしょうがないこと古団扇 暮津
骨折のそれでも使ふ莫迦団扇 暮津
雑魚寝して団扇片手に湯治人 石鏡
山寺で商ふ真っ赤な渋団扇 素抱
手にとりし団扇ことしもこの図柄 鳩信
手に届くところに団扇のある生活(たつき) 素抱
秋団扇転がり込みし三連休 暮津
縦あふぎはた横あふぎ団扇風 鳩信
重ねある中より軽めの団扇選り 寒暑
傷み方あれこれありて古団扇 素抱
少しくは肋が冷えて団扇置く 寒暑
掌の中に団扇ありけり昼寝覚 ももすずめ
畳み込むリズム団扇にダリエンソ 素抱
寝ね易く団扇要らずの夜もありき 暮津
身ほとりに好みの団扇取り揃え 暮津
身ほとりに置ける団扇とへぼ俳諧 暮津
身空てふ言葉も死語に団扇風 鳩信
扇子より団扇年金暮しなる 素抱
相方の寝相や団扇持ちしまゝ 随笑
孫吾をあふぐ団扇のへなへな風 素抱
大リーグ観戦団扇持ち替えて 素抱
大玉の花火に見惚る団扇かな 素抱
団扇と蟻何の関はり合ひもなく 暮津
団扇と辞書放っぽらかしてある机辺 素抱
団扇など置きてもてなす札所寺 宿好
団扇の辺通りすがりの蟻一匹 暮津
団扇絵に街道あるく馬子と松 寒暑
団扇絵の逆巻く濤の風受けて 暮津
団扇絵は漢(をとこ)を転(こ)かす女武者 暮津
団扇持ってあっちの部屋からこっちの部屋 寒暑
団扇手にとりてぬるめの風起こす 随笑
団扇畳にほいと投げだし昼寝せり 暮津
団扇太鼓紺の腹掛けして摶てる 随笑
団扇置き昼餉に呼ばれゆきにけり 随笑
団扇風いただき一番札所寺 宿好
団扇風お岩木臨む座敷かな 寒暑
団扇風とろけさうなる腕揺りて ももすずめ
団扇風みぞおち辺り汗に冷ゆ さざなみやつこ
団扇風妻より貰ひ風の盆 宿好
団扇風眠気しりぞけしりぞけて 寒暑
団扇風齢が教えて呉れしもの 暮津
投げ出しある団扇を掴みざまあふぐ 寒暑
湯上りの団扇はどこだここに無し 素抱
独酌の胸乳へ送る団扇風 石鏡
彼の夏のねぷた絵団扇眺めつゝ 暮津
浮かれ足団扇太鼓を打ちに打つ 随笑
腹の上団扇はたはたさせをりぬ 鳩信
腹の底割りて二つの団扇かな ももすずめ
変はり映えしない団扇をことしも亦 素抱
放置さる団扇と本と扇風機 暮津
枕辺に団扇やりきれなき夜明け 寒暑
両手もて孫の扇げる団扇風 寒暑
螢火を団扇に受けて粋な女(ひと) 寒暑
なまぬるし団扇まがひの団扇風
団扇太鼓とよもす大本山の森
練り始む団扇太鼓に火がついて
団扇太鼓腰にも一つをんな衆
掲げ打つ団扇太鼓も月の形(なり)
お題目団扇太鼓にうち消され
祖師堂に団扇太鼓の罷り入る
古団扇引っ張り出してパズル解く
団扇一本持ちて寝所へ下りけり
体質の話しにおちつく渋団扇
銭湯のほてり覚ますに古団扇
古団扇やれやれけふも了りけり
俳諧と団扇無聊の身ほとりに
身ほとりに団扇と俳諧欠かさぬ日々
扇ぎ止すままに団扇の置かれあり
ゆるゆると団扇の風を起こしけり
吾はせはしく岳父はゆったり団扇風
したたかで柔きがよけれ団扇の腰
おのづと知る団扇の善し悪しこの一本
おのづから団扇納まり末期談
なほ使ふ骨の砕けし古団扇
蟻渡り始む団扇の山河かな
骨の折れしは孫の仕業か莫迦団扇
手にへなと百円ショップの京団扇
扇面に濤立ち上がる京団扇
一昨年の去年の絵団扇重ねあり
除夜篝団扇太鼓にさ揺らぎて
あと幾たび団扇を使ふ日のありや
指先に団扇の当る昼寝覚
もう構へず胸乳に送る団扇風
古団扇カタカタ鳴らす夜なりけり
雑魚寝して団扇片手に湯治人
お気に入り房州団扇使ひ初め
鰻焼く団扇捌きも年季もの
一、二掻き躰に送る団扇風
鼻先をかすめる風や古団扇
骨傷みしても現役古団扇
団扇手に薄き胸板煽りけり
孫の手と団扇傍へに夏百日
古団扇きゅっきゅと骨が鳴るやうに
くさぐさの団扇の中のお気に入り
団扇風かう暑くては物足らず
朝顔の絵団扇骨組みくたびれし
雀斑殖ゆ初老の肌へ団扇風
梅雨明けず団扇積まれてあるばかり
山寺を黒抜き団扇の真っ赤な地(ぢ)
山寺で商ふ真っ赤な渋団扇
孫吾を扇ぐ団扇のへなへな風
相撲見てビール団扇は左手に
顔あふぎ山寺土産の渋団扇
一本の団扇がおまけ朝顔市
ビニール製団扇の風の重きこと
湯上りの躰に呉れる団扇風
風炎えてねぷた祭の団扇風
荒武者を手玉にとる美女団扇絵に
湯上りに武者絵の踊る団扇かな
古団扇使ひ易きが取り柄なり
ビニール製団扇の朝顔色褪せず
真昼間の団扇とる手も力なく
気休めの団扇扇ぎとなりゐたり
昼ひとり団扇四辺に散らばして
団扇寝かせ入りくる風に目をつぶり
吹きまくり団扇のいらぬ日なりけり
団扇せはし余り風などなかりけり
五、六本出しおく団扇馴染みの絵
湯上りに大きく起こす団扇風
古団扇骨傷みして風へなへな
傷み方あれこれ調べ古団扇
父の日の背中を掻くに団扇の柄
風絶えて団扇大いに働く日
語りつゝ扇ぐ団扇の裏白し
湯上りに団扇そろそろ欲しき頃
やはらかき房州団扇の風の味
気短かと知れる団扇の扇ぎ方
その後のことはどうでも団扇風
生命保険会社名入りの団扇なり
身ほとりに団扇四、五枚加はれり
団扇出すそんな時分となりゐたり
団扇もて起こせる風のここちよき
手に届くところに団扇のある生活(たつき)
道の駅房州団扇商へり
土地柄の犬士描かる団扇売る(八犬伝)
実演の団扇作りに人だかり
顔に風呉れて房州団扇選る
現八の麻張り房州団扇かな(犬飼現八)
房州団扇布絵の肌理の細かさよ
あふぎみる房州団扇の軽きこと
房州産団扇絵柄の八犬士
房州団扇割竹作業はかどれり
手際よく房州団扇の窓作り
吾が寝相知る由もなし団扇風
暇あればすぐ横になり古団扇
八重桜団扇太鼓に紅葉せる
わが持論一歩譲りて団扇風
縦あふぎはた横あふぎ団扇風
古団扇持って宿六引っ込みぬ
古団扇扇ぎて去年の手術譚
古畳団扇片手に寝入る妻
手にとりし団扇ことしもこの絵柄
ばさと落ち天狗の団扇めく落葉
お会式の団扇太鼓に浮足立つ
どろどろと団扇太鼓の日蓮忌
団扇太鼓鼓膜を震ふ御命講
「女」(とりあげ)が孕み「阿亀」(おかめ)に団扇風
花魁の団扇絵あふげばさぞ涼し
団扇よりよき風の来る一間かな
六畳間団扇手にしてごろ寝せり
団扇風胸に送れり風の盆
団扇一本投げ出しおわら流すとせり
ばさと落ち天狗の団扇めく落葉
うち過ぎぬ団扇太鼓の二波三波
婆の打つ団扇太鼓の腰捌き
団扇太鼓ドンドコ打てばコリャコリャと
本門寺団扇太鼓に湧きかへる
まだ使ふ団扇を傍に置いて寝る
盆踊り腰の団扇を傾けて
灯を消して寝入れる迄の団扇風
寝苦しさ我慢比べの団扇風
取り落とす団扇拾ふも億劫な
使はれし団扇そのまゝ畳の上
取り散らす団扇や朝の畳の上
せはしなや躰に当たる団扇の音
うたたねの団扇だんだん重くなる
効き目なきおんぼろ団扇ひっきりなし
部屋部屋に使ひぱなしの団扇あり
隣室に置き来し団扇取りにゆく
訪問客あれば団扇をあふぎ出づ
せっかちと思はるもよし団扇風
顔頸へはたはた送る団扇風
旅土産おわら流しの団扇搖り
絵団扇の流しに偲ぶ風の盆
思ひ出すやうに遣へる団扇かな
擦り切れの団扇片手に家居かな
ぬるき風あほひでばかり古団扇
相棒の寝相や団扇持ちしまゝ
胸元へあらいそがしや団扇風
団扇もて踊り合間の鹿(しし)あふぐ
ひっ掴み団扇を持って横になる
古団扇中でも気に入りこのうちは
飛び入りの団扇片手に盆踊
ねぷた絵の土産の団扇ゆるゆると
団扇の手暫し忘れてねぷたみる
見飽きたる団扇の図柄茄子ならん
ぞんざいにあふぐ骨折団扇かな
くびれたる腹に団扇の風送る
気ぜはしく顔胸腹へ団扇風
少しくは肋が冷えて団扇置く
手の届くところに団扇熟睡覚め
何云ふてもみんな言訳団扇風
団扇して思い出しをる昼の夢
重ねある中より軽めの団扇選り
骨傷み風を掬へぬ古団扇
団扇の絵芙蓉は芙蓉褪せ芙蓉
幾たびも眺め廻して団扇の絵
ビニール製団扇手首の疲れるよ
古団扇使ひて竹の骨鳴るも
古団扇扇ぎ損ねて肋打つ
鳴神の団扇太皷の試し打ち
阿波踊見物団扇はたはたと
たをやかに団扇捌きの阿波踊
(末尾は句集名)
花茣蓙 /
寝茣蓙 /
風太郎寝茣蓙拡ぐる緑陰に
広ぐとき風の音する寝茣蓙かな
ハンモック /
ひとねむり椰子の高みのハンモック ねずみのこまくら
(末尾は句集名)
日除 /
苦瓜の棚を日除とせるくらし
がらがらと半巻きにして花舗日除
日傘 /
ハイカラな日傘と出合ふ軽井沢 燕音
恐山日傘抹香臭くなり 随笑
銀行に強き妻なり日傘さし 素抱
週末の浜にぱらりと砂日傘 暮津
振り返り日傘に余る女かな 寒暑
日傘して次に浮き来る亀を待つ 宿好
白日傘行き交ふ新装大桟橋 寒暑
白日傘水母の海を覚ましゆく ねずみのこまくら
蚕豆は乳母日傘の莢を被て
運動会混みゐて日傘用なさず(妻)
色褪せし絵日傘吹かれ救難所
日傘して噴湯と心音一つにす(同行女人)
やっかいな紫外線避け白日傘
バス降りて直ぐ日傘さす女連れ
強烈な日に砂日傘出兼ねたり
浜日傘少年の日のごとく見る
白日傘いかにも今日の日差しかな
恰好つけにあらざる今日の日傘かな
沖を見て釣りの伴がら日傘さす
絵日傘を開いて浜昼顔の浜
持して出づきのふ雨傘けふ日傘
日傘さしながら眄花舗のはな
日傘さし虚子庵までの坂上る
磯釣の夫に並びて白日傘
鎌倉散策日傘携ふ妻連れて
家内を覗いてゆける白日傘
砂日傘より金切りごゑ飛びぬ
日傘さし次男の世話を焼きにゆく
日傘して立ちんぼ仮装行列みる
おめかしの乳母日傘の紅ぼたん
炎天を漂ひゆけり白日傘
ハイキング妻は日傘を手放さず
日傘要る上野の山でありにけり
(末尾は句集名)
サングラス /
岬行き電車の中のサングラス 寒暑
サングラス断てり氷河の乱反射 ぱらりとせ
サングラス・タオルなど入れ紙バック
パレードを見る浜っ子のサングラス
(末尾は句集名)
登山 /
ガレ場あり奈落より現る高山蝶 宿好
ガレ場にて嗄れしこゑの昼の虫 宿好
遠雷が一つ鳴りゐて下山道 宿好
金屎(かなくそ)の如き零余子を掌に下山 石鏡
後ろより兀と迫れる登山靴 宿好
山形へ下山途中の夏薊 素抱
乗鞍の黄葉にスリップして下山 素抱
登ってさんざん下りてさんざん岳夕立 宿好
登り来てモウセンゴケに顎出しぬ 宿好
登山帳前黒帽子岳(まえくろぼうし)をピストンと 石鏡
登山届ポストぽとぽと霧雫 石鏡
覗き込む下山路霧を背にしたり 随笑
八方尾根下山がたがた蝶番 宿好
男郎花籠ノ登山(かごのと)水ノ登山(みずのと)肩並べ
木を叩き登山途中の石叩き
山小屋の廻り水草紅葉して
要点のみ記しあるなり登山帳
登山帳最終記入日一週まへ
登山帳記す末尾に「無事下山」
飛龍橋尽きしところが登山口
又一人客を拾ひて登山バス
盛岡駅まで揺られゆく登山帽
足首の屈伸運動登山バス
雪渓に迫力山小屋眼下にす
登山電車灯蛾の舞い込む向ひ窓
濃あぢさゐ登山電車はぎくしゃくし
山形へ下りる登山路朴残花
山小屋はヴォイラー焚いて昨日まで
花すすきすいすい阿蘇の登山道
重ねあるリュックサックや登山口
山小屋の窓辺に蝿の一頓死
登山者に道あるやうで無いやうで
登山帽に通勤ならぬ通勤車
登山リフト蝶にエールを送りけり
登山電車右に左に岩たばこ
三浦富士登山地獄の釜の蓋
登山宿先代薪を割る日向
やがて閉づ登山口宿朴黄葉
栃一本早紅葉して登山宿
登山者のタテヤマリンドウ色の帽
しばらくの停車白神岳(しらかみ)登山口
(末尾は句集名)
ケルン /
ケルン経て風届くなり車百合 宿好
時かけて風の第三ケルンまで 宿好
足垂らし涼みゐるなりケルンの端 宿好
(末尾は句集名)
夏スキー /
キャンプ /
野外映画鞍馬天狗のをぢさん出づ 素抱
象亀のやうなテントもキャンプ場 随笑
テント張る磯の釣鐘岩のかげ 寒暑
キャンプ場その奥にある山澄めり
令法咲きこの山奥にキャンプ村
缶切りの貸し借りありてキャンプ場
雑草(あらくさ)の放蕩キャンプ場裏手
寒風山後にしたるキャンプ村
(末尾は句集名)
バンガロー /
バンガロー山毛欅の雨滴を浴びにけり 寒暑
バンガロー叩ける雨と白樺と
(末尾は句集名)
羅 /
おおかみうお黒の羅(うすもの)はおりけり 燕音
羅に患者付き添ひ過ぎにけり 素抱
羅の二人はよけれ納涼図 素抱
羅の仏下ろしに畏まる 随笑
羅を着こなし上手水海月 随笑
羅も乗り来て箱根登山バス
湯本にて羅バスを降りゆけり
妙齢の羅終に振向かず
木を替えて飛ぶ羅の蝉見たり
羅の御婦人採血手を伸べて
羅はこの宮の人大祓
羅の二人の女人大祓
羅に護符を売る僧立石寺
羅に八芳園のみどり射す
脂肪のる躰羅もて包む
羅の人の近寄る麗子像
羅の被りものして破れ傘
(末尾は句集名)
浴衣 /
くすくす笑いして過ぐ祭浴衣の娘(こ) 素抱
よその子が気になる祭浴衣かな 素抱
金魚掬ひ浴衣の帯を地に擦りて 素抱
今町のおわら流しの浴衣柄 宿好
縞鯛のごとき浴衣と浜に遇ふ ももすずめ
宿浴衣もみづる山に向ひ干す 寒暑
術後の日の為の浴衣を着慣らしぬ 鳩信
初浴衣姉と妹は対の柄 暮津
嬢(じょ)っこ等の踊り浴衣を見てたんせ 素抱
土産屋をひやかし霧冷え宿浴衣 素抱
湯治棟浴衣など吊り仕切りけり 石鏡
浴衣干す針金ハンガー湯治棟 石鏡
浴衣着て妻も飛び入り湯揉みショウ 随笑
浴衣着に一皮むけていい女 鳩信
皺よりも老斑浴衣に着替へるとき
枕カバー・シーツ・浴衣を枕もと
浴衣の子はしゃぎ了りて帰りけり
竹棹に踊り浴衣の風通し
藍染めの踊り浴衣も又見もの
宿浴衣サイズ大中小とあり
カラオケはカスバの女宿浴衣
浴衣着て糖尿予備軍酒談義
もうろくの足マッサージして浴衣
浴衣の胸ちょとかき合はせ扇蝦
浴衣着の患者パジャマの新患者
笠智衆然たる患者ゆかた着て
優男髑髏模様の浴衣着に
浴衣着の似合ふチョウチョウウオユウゼン
男衆のおわら流しの浴衣柄
浴衣着に黒帯八尾の娘っこ
足湯して湯畑眺む宿浴衣
上気して湯畑巡る宿浴衣
浴衣来て宿の畳にくつろげり
花火待つその連れ合ひの浴衣柄
ほたるぶくろ宿の浴衣の裾ほとり
滝の風浴衣の裾を煽りけり
うそ寒の奴姿の宿浴衣
浴衣着てチャイナドレスに見とるる娘
縞馬の縞柄にも似て対浴衣
浴衣着て皿鉢料理の座につけり
浴衣帯するすると解き道後の湯
浴衣着て道後の夜桜見物す
浴衣着に開幕を待つ初芝居
(末尾は句集名)
白絣 /
多羅葉の一幹見上げ白絣
パリ祭 /
管ぶらさげ鳴り物入りの巴里祭 鳩信
救命の管(くだ)のいろいろ巴里祭 鳩信
巴里祭定番鳩の手品かな 随笑
(末尾は句集名)
甚平 /
あっさりと白旗掲ぐ甚平着 寒暑
お化け小屋呼び込み男の甚平着 寒暑
くるぶしをぶっつけおお痛甚平着 石鏡
サンダルを履き違へ来し甚平着 素抱
たまらぬと甚平すらもかなぐり捨て 素抱
甚平が術後の吾を待ってをり 鳩信
甚平には草履不慣れな歩き方 素抱
甚平に捌けて口調も応対も 寒暑
甚平のふところ紐を先づしかと 寒暑
甚平の好さがわかってくる齢 素抱
甚平の腰泳がせて地震最中 暮津
甚平の食い込む紐をゆるめをり 素抱
甚平の着替えといふはなかりけり 寒暑
甚平の紐結ふ手つき馴れてきし 素抱
甚平や身軽になり過ぎても困る 素抱
甚平着こころもとなき脛たたき 素抱
甚平着て間なし草履の鼻緒擦れ 寒暑
甚平着て世の大勢に疎きひと 暮津
甚平着見て振り返る甚平着 素抱
着始めは他人のやうに甚平着 素抱
朝顔苗近所に配る甚平着 暮津
仏桑花柄の甚平奢りとす 素抱
傍からの視線固より甚平着 素抱
目と目遇ふ甚平同志軽会釈 素抱
立読みも堂に入りたる甚平着 石鏡
皺む腹甚平におし包みけり 寒暑
甚平で応対「どなたさんでしゃう」
甚平の紐結ひ出づる応対に
甚平と作務衣の間の冷え込みよ
図書館に甚平で来て本待つ間
関節を鳴らし甚平やおら起つ
甚平にて調髪のみの散髪屋
甚平の石屋の息子も停年か
甚平着て初老の脚の踏みごこち
とりつくろふ術など持たず甚平着
仏桑花柄の甚平奢りとす
甚平や草履素足に馴らしをり
甚平の上着の紐の二た所
コンビニに震えあがりぬ甚平着
祭見に洗ひざらしの甚平着
何處へ行く時にも色脱(ぬ)け甚平着
甚平の着始め案山子の心地せり
子供用甚平寝巻替りにも
更衣甚平に二本の腕通し
銭湯へ夏の先取り甚平着て
さっこんは若者共も甚平着て
甚平の内紐外紐結ひついで
甚平の内紐結ひ了へ外紐を
甚平も案山子も痩脛頼みにて
甚平の着たての手足ふわっとす
甚平の似合いの齢と云はれても
甚兵衛の畑の花摘み金魚草
(末尾は句集名)
汗 /
ガーデニィングなんて洒落ても汗仕事 暮津
かかずらふものありじとと首に汗 寒暑
かにかくに玉の汗かく千余段 素抱
サイクリスト緑蔭に汗拭へるも さざなみやつこ
すすき見て露天湯に汗流されよ 寒暑
なまはげの汗だく学生アルバイト 寒暑
ほっとけばころころ落つる汗の玉 寒暑
ボテロ描きしモナリザでぶで汗ばめり ぱらりとせ
ラ・パロマ汗し手動のオルゴール 宿好
羽黒山のぼれる汗も有難や 石鏡
永久に拭く汗の貌ともおもへりき 寒暑
沿道に汗を振りまき阿呆連 寒暑
額に汗お山詣での首手拭い 素抱
額に汗尻に火がつき砂ゆっこ 素抱
汗かかぬ魚を羨しと見てゐたり 寒暑
汗かくだけかいて魂すっぽぬけ 寒暑
汗くさき肌着ステテコシャツの山 鳩信
汗だくのおでこ拭はれ砂ゆっこ 素抱
汗たじたじ羽黒権現三の坂 石鏡
汗っかき前置きにして言訳云ふ 暮津
汗っかき太っちょ監督サイン出す 燕音
汗っかき大漢にして大ジョッキ 鳩信
汗のものともかくここに置き申す 素抱
汗は汗私は私誤字探す 寒暑
汗は先づ顔から噴くもの探し物 寒暑
汗をかき日々を勇んでああ昭和 随笑
汗止まぬ上り弱音はあきらめに 素抱
汗拭いて七百八十五段の労 寒暑
汗拭いて縦に走れる手術痕 寒暑
汗拭い了へて須臾の間仏がほ 寒暑
汗地獄それもよかろう徒食の身 寒暑
汗流るむずむず虫の這ふやうに 暮津
眼鏡とり目蓋の汗ぬぐひけり 寒暑
玉の汗五大堂にて一休止 素抱
高からぬ鼻も汗かく日なりけり 寒暑
今日やること薬のむこと汗かくこと 寒暑
札所寺百日紅に汗退けり 宿好
山妻に云はれて脱げる汗のもの 暮津
山妻のこまめに出せと汗のもの 暮津
出色の百日紅に汗退けり ももすずめ
身を離るときの快感汗の玉 寒暑
仁王門汗し過ぎれば膝笑ふ 素抱
赤紫蘇にお山詣での汗拭ふ 素抱
戦う汗涙となりぬ夕栄に 燕音
扇いでも扇いでもけふ汗だくに 寒暑
痩せぎすの身なれど汗がなんぼでも 寒暑
豚饅に汗し行列中華街 寒暑
毛髪の間にほろっと汗生まる 随笑
弥坂湯に箱根巡りの汗ながす 石鏡
よく使ふ薄手の手拭汗拭に
顔の汗拭き拭き歩く鼓笛隊
街中をちんたら歩き汗まみれ
一日着し汗の肌着の黄ばみて見ゆ
汗の玉飛ばしてバイクの郵便夫
ハンカチは汗吸ひ冷えて重るもの
背の窪み噴く汗それに倣ひけり
意地と意地ぶつかる汗の甲子園
お化け屋敷汗し客寄せろくろく首
手に拭う汗をながめて暑さ倍
退く汗の快適快速特急車
甲子園意地とプライド汗に懸け
汗ばみつ食める朝餉はエネルギー
旗日なる朝飯食べて汗ばめり
汗みどろ千屈菜なんぞ剪り出して
銭湯で売って居るなり汗疹取
銭湯を汗納まるを待ちて出づ
気のつけばずるずるべったり汗地獄
玉の汗脾腹を走り飛び散れる
汗拭腰に挟める梧雨大人
噴き出せる汗押えんと額へ掌
汗ながす大衆浴場弥坂湯に
先生の指圧見倣ひ一汗かく
汗の指圧要は余分な力抜き
指圧教室汗かき妻を稽古台
日帰り湯汗の身ぽちゃんと沈めけり
砂ゆっこ砂掛け男も玉の汗
ながながと汗の噴くまで砂ゆっこ
汗のものともかくここへ置き申す
振り放(さ)けみる人のおでこの汗の玉
汗を拭く手拭い一枚けふの分
汗臭しきのふの酢豚うまかりき
苦瓜は蒼くすずしき汗かけり
臍の緒を持ちて退院汗かきママ
顔の汗べたべたてらてら神輿舁
茶漬けして顔に汗噴く日の昼餉
磴攀じてよき汗をかく立石寺
なかんづく汗かくところ立石寺
額伝ふ汗にかまけて御休石
丈六佛おん前にして汗を乾す
汗ばむ杖力こんにゃく恃みとす
一休み崖の仏にながす汗
汗止まぬのぼり弱音はあきらめに
五大堂にて一休止玉の汗
その上に何があるかと玉の汗
参詣の汗の一滴磴穿つ
汗拭きつお山案内に同道す
鼻先の汗ばむ昼やピザを焼く
汗の走者本塁塁前タッチアウト
ちゃっかりと汗干す冷凍コーナーに
笑み給ふ大日如来(だいにち)さんに汗退けり
汗みずく広瀬神社の磴百段
玉の汗球児激突甲子園
目覚めたる顔に手やれば玉の汗
汗粒のごとき万蕾女貞
ふつふつと汗の香沸ける松林
地下足袋の木落とし衆の汗っかき
えいえいと山出し梃子衆汗飛ばす
梶取り衆追掛綱に玉の汗
元綱のふてぶてしきを汗し曳く
火祭りの汗と怒号の鞍馬山
龍舞の汗だくとなり尻尾役
だらだらと汗ほとばしる市なりけり
生姜市汗ぬぐえどもぬぐえども
力投の汗のエースに勝気憑く
レフトへ犠打詰まったしまった汗引く顔
広額の汗晶々と古参海女
富士講衆汗して高輪大木戸圖
国芳の血糊手形圖汗ばめる
鉱泉に汗を流せる旅役者
見晴らし台汗退く程の標高差
ごまの花止まれば汗の噴き出せる
手拭に汗を拭き拭き札所道
汗を拭き次の札所を教はりぬ
巡礼衆汗を拭ひつ会釈せり
ごまの花汗噴き出して止めどなし
鉱泉に一病持ちの汗ながす
ラ.パロマ汗し手動のオルゴール
唐松岳行汗のハンカチ乾きけり
汗飛ばせライトのバックホームかな
昔のこと通勤地獄汗地獄
首に巻く白手拭に汗ぬぐう
入りこめる陸中海岸汗して旅
恐山真ん前にして汗引けり
背に噴ける汗の一粒づゝ感ず
藪っ蚊に筒抜けならん汗の音
汗だくだくざぶんと一ト浴びやらんかな
汗ばむ身すっぽんぽんになりてすずむ
消防隊ブラス厳めし汗の顔
マーチングバンド皐月の汗飛ばし
眺めゐる麗子微笑図汗ばめり
仁王門汗を拭ひつスケッチす
デッサンの筆走らせる玉の汗
もう一汗かけと炎帝申されき
なまはげのモデル汗かき大学生
顔拭ふ汗ふきタオル手放せず
汗かきが生れ替らば千手佛
家に居る河童の皿も汗まみれ
塩振ってつまみのチーズに汗かかす
喋っても黙ってゐても汗流る
むづがゆく髪の中から玉の汗
校正の手から腕から汗だらけ
汗臭き孫とアンパンマンを観て
汗し聞くもう百段に顔見合はせ
金比羅参り背に汗覚ゆ百段目
金比羅参り汗を拭き拭き音をあげぬ
汗拭きつつこんぴらさんへもう百段
金比羅参りちょつぴり春の汗かいて
(末尾は句集名)
ハンカチーフ /
いつも使ふハンカチおのづと定まりて 暮津
ハンカチがなければないで服で拭く 暮津
ハンカチは薄手がよけれ三回忌 寒暑
ハンカチは嗜みのうち忍ばせぬ 素抱
ハンカチをすこし余分に旅支度 素抱
ハンカチをベルトに挾む齢でなし 随笑
夏旅のハンカチ数え鞄に足す 寒暑
ハンカチの木の今ハンカチぶらさげて
よく使ふ薄手の手拭汗拭に
顔の汗拭き拭き歩く鼓笛隊
外来は皆老患者ハンカチ手に
ハンカチを裏返し拭く丸の内
ハンカチは汗吸ひ冷えて重るもの
ハンカチの裏もて拭う丸の内
ハンカチがもう必要や内科B
いつも使ふハンカチおのづと定まりて
汗拭腰に挟める梧雨大人
ハンカチでは足らず手拭いもて拭ふ
赤紫蘇にお山詣での汗拭ふ
汗拭きつお山案内に同道す
旅鞄ハンカチの数増やしけり
ハンカチの替りに手拭い作務衣召す
唐松岳行汗のハンカチ乾きけり
ハンカチをベルトに挾む齢でなし
鞄置き朝のハンカチ使ひ初め
二枚目のハンカチ使ふ恐山
ハンカチで扇子で扇ぎ待つ患者
ハンカチにて顔に風遣る祭かな
ハンカチでおでこを拭ふ高架駅
顔拭ふ汗ふきタオル手放せず
汗拭い了へて須臾の間仏がほ
ハンカチよりタオル好ましこの熱気
汗拭いて縦に走れる手術痕
汗拭いて七百八十五段の労
汗拭きつつこんぴらさんへもう百段
ハンカチ買ひ絣模様の包装紙
(末尾は句集名)
白靴 /
虚子庵の沓脱ぎ石に白靴を 燕音
恐山巡りの白靴戞々と 随笑
白靴の一団お釜を覗き見に 素抱
白靴の降りくる客船ターミナル 素抱
白靴の足許見られゆくごとし
白靴のその先地獄の釜の蓋
白靴に青すすき原分け入らん
サンダルを履き違へ来し甚平着
横須賀のサンダル履きの開国祭
白靴にほこほこ応ふ谷地の道
白靴に乗船始まるえっさ丸
白靴に旅立ちの足早めけり
(末尾は句集名)
簟 /
籠枕 /
をりをりの風が救ひや籠枕 随笑
硬くなる頭年々籠枕 素抱
早起きが徒の寝不足籠枕 素抱
物忘れ多き頭をのせ籠枕 寒暑
篭枕年金暮らし快適ぞ 石鏡
籠枕ことしの頭慣らしをり 素抱
籠枕に物相頭(もっそうあたま)定年後 随笑
籠枕湿る頭を乗せにけり
籠枕眼をぱちぱちとさせゐしが
籠枕畳に据えてさあ昼寝
父の日の貰ひものなり籠枕
籠枕風入る部屋に試し当て
籠枕雨音庭にひろがれり
傘たたむ音の聞こゆる籠枕
定年の物相頭籠枕
籠枕風よく通る座敷なり
籠枕天竺國の夢欲りて
(末尾は句集名)
竹牀几 /
造り滝 /
滝頭より鳩の翔つ作り滝
作り滝雑木紅葉の枝を添えて
作り滝栄えあるものに菊設え
旅人に盛岡駅の作り滝
噴水 /
コリント式噴水の水柱かな さざなみやつこ
わらわらと風に噴水くずおれぬ 暮津
突風に噴水のすぐへこたれて さざなみやつこ
噴水に抽象画展の疲れとる 随笑
噴水に飽きしその眼を森に遣る 寒暑
噴水のつつつつつつと鶴の臑 素抱
噴水の整ひ過ぎてよそよそし 随笑
噴水の背骨をしゃんと立てにけり 寒暑
噴水遠ク望メバ鯨魚ノ潮吹クカト 鳩信
枯園の噴水しょぼんとなるときあり
噴水の頽れ破調は俳句にも
水踏みしめタップダンサーめく噴水
噴水のしぶける街のカーニバル
噴水のもうへこたれてしまひけり
噴水に涼しむ上野の風太郎
館出で上野の噴水展観す
噴水の豁達木椅子に恋雀
噴水のあの手この手の水柱
噴水の始めおづおづやがてずい
噴水の季節となりぬ上野山
(末尾は句集名)
納涼 /
カルピスを喫し涼める上高地 宿好
ギブス組涼みがてらの莫迦話 鳩信
ちびっ子とポケモンの乗る納涼船 寒暑
のこのこと出て来し蟇と門涼み 寒暑
ビル風に涼んでゐたり病院裏 暮津
ほっとせる貌を納涼夕雀 暮津
云ふならば初老夫婦の夕涼み 素抱
胸板に夜風涼しみゐる患者 鳩信
隅田川涼みがてらに渡る橋 随笑
国芳の肉筆美人門涼み 燕音
初老とは木陰に涼むやうなもの 随笑
丈六佛涼しみ拝む御居処かな 素抱
棲みつける蟇ものそりと門涼み 素抱
仙厓の布袋図さながら夕涼み 素抱
足垂らし涼みゐるなりケルンの端 宿好
大欅戦ぐ神社に涼みに来て 随笑
鏑木清方風も描きて納涼図 燕音
八尾びと路地先に据ふ涼み台 宿好
板の間にヘタリて銭湯納涼図 暮津
夕雲を見つゝ涼とる妻共々 暮津
羅の二人はよけれ納涼図 素抱
両神山を指呼に頂上涼み台 宿好
老人のでれっと涼む湯屋板間 暮津
肋に手やりて涼める門ほとり 暮津
船降りるごと庭へ出て夕涼み
電線に雀も納涼貌をして
銭湯出で禿頭爺と夕涼み
腹に創胸板に創湯屋涼み
よき風の吹くよと蟇も門涼み
なすことのなんにもなければ夕涼み
さしのぼる月と葉騒と夕涼み
患者らの喫煙兼ねて夕涼み
夕涼み共同湯出て一服す
夕涼みして冬瓜のごとき腹
納涼船案内車中に流れゐる
小諸城趾川風のくる涼み台
涼みをれば千曲川風もう一つ
納涼歌舞伎怪談物に足運ぶ
納涼船百の提灯ぶるさげて
納涼船東京湾に灯を掲げ
路地に降り涼みごころの夕雀
納涼船デッキ賑はふビアテラス
お社の杉の下風涼み風
三段腹叩き親爺の夕涼み
風徹る家はさながら涼み舟
(末尾は句集名)
端居 /
あそこからかう来るかぜと端居せり 随笑
きのふけふ仏がそこに居る端居 素抱
つくづく見て老いの手と知る夕端居 暮津
なるやうになれとはだけて端居かな 寒暑
関節を鳴らしてみせぬ端居人 寒暑
手術痕古ぶばかりや夕端居 暮津
衰ふるもの目に見えず夕端居 暮津
端居していちばん風の来る処 暮津
端居しておもひ巡らす眼となれり 随笑
端居してしみ・しわ・ほくろなど数ふ 暮津
端居してまじまじと見る爪の土 暮津
端居してみな遠のけるものばかり 素抱
端居して吹き込む風の通り道 素抱
端居して孫の手をもう借りる齢 随笑
端居して退職挨拶読み返す 暮津
端居する柱替りに嵐山 素抱
端居人臍の掃除をして居れり 暮津
薄光る切傷撫でて夕端居 暮津
片膝立て地震に身構ふ端居びと 暮津
夜色楼台雪万家圖を見て端居 ねずみのこまくら
脛の創これは彼の時夕端居 暮津
夕端居使い古しの片膝立て
端居して定年挨拶読み返す
術後痕古ぶばかりや夕端居
端居人叩きて鳴らす膝の皿
唯一人端居を兼ねて昼の酒
通り雨端居ごころを掠め過ぐ
手を入れし植木眺めて夕端居
目に見えぬ仏がそこに居る端居
端居人木槿に視線投げかけて
鉛筆を取りに腰上ぐ夕端居
夕端居風もやうやく腰上げぬ
遠くをみる目つきして妻夕端居
家通る風筋に寄り夕端居
庭さきに葉叢搖れゐる夕端居
端居して模糊とした眼を庭に向け
すこし濃き臑毛つまんで端居かな
かう吹いてかう来るかぜと端居せり
孫の手借る齢となりぬ夕端居
もう一人の別の己れと夕端居
立膝して眺む本の背夕端居
(末尾は句集名)
打水 /
お隣に倣ひこちらも水打てり 暮津
お隣りは元銀行員水を打つ 暮津
そこそこに暑さそこ退け水打たん 随笑
ばしゃばしゃとばしゃりと水を打ち了る ぱらりとせ
一日のけぢめの水を打つつもり 寒暑
菊花展城の階(きざはし)水打って 石鏡
境内に水打ち夜店立ち始む 素抱
撒水を打つに疎ならず密ならず 素抱
散水の葉蘭打つにやぼたぼたと 随笑
水を撒く母がもっともすずしさう 宿好
水撒いてやろうかほとぼり覚めぬ路地 寒暑
水打つて収まるものを収まらす 寒暑
水打って木に葉に石に當たる音 寒暑
水打つや砂玉となり水まろぶ 素抱
水打てば庭木喜ぶことしきり 暮津
打ち水に真顔もて蚊が刺しにくる 暮津
打水のぽかぽか木の音草の音 暮津
打水の垣越ゆ水の一塊り 素抱
打水の生垣越えて土けむり 随笑
店先に水打つ鰥の洋服屋 随笑
土けむりぱっぱっと打水ぼたぼたと 暮津
二年坂初商の水打てり 燕音
末つ子の水撒き上手水打てり ねずみのこまくら
水打てる店の奥行先斗町
塵匂ふまで打ち水をしてをりぬ
水打てば庭を塒の蚊に追はる
水打てば蚊のこゑ痒み走りけり
蚊の塒襲へる水を打てるなり
蝉の殻打ち水浴びて眼の濡るゝ
暑さより心鎮めの水打てり
朝妻が夕べは我が水を打つ
水打てば朝顔の根の現はるる
水打って狭庭十坪の草木の涼
己に活(カツ)入るるごと水打ちにけり
水撒こかそれとも降りそな雨待とか
往き戻り水打足せる下駄の音
打水のぽかぽか木の音草の音
打水の舗道を馳せて蹄の音
水打つてひさぐ鰻屋隅田川
打水やあつさ葉月にずれ込みて
水打ちは母の愉しみ任せきり
撒水の土摶つ音も新たなる
水撒きのホース持つ手の西日焼
蜘蛛の囲の破れたるまゝ水を打つ
打水の今度は遠く土打つ音
どどどどと路地揺るがせて水撒けり
打水の土を打つ音草打つ音
打水を今済ませ来し顔に合ふ
水打って路地の夕暮れ早めけり
せいせいと水打ち来たる顔なりけり
打水の音しみじみと聞く日なり
水打ってすっきりさせたき時ありぬ
水じゃあじゃあ手当り次第水撒く子
野菜もの苗植えて水撒くばかり
水が水打って高鳴る紅葉谿
打水の頃合ひ計りをりにけり
水打って息吹き返す老婆かな
水屋よりホースを伸ばし水打てり
水打って屋台の親爺活気づけ
水打って向かう三軒両隣
水打てば土けむり上げ土応ふ
打水の音の漣枕辺に
打水のしとど葉欄に当る音
打水外れ路地くる人を釘付けに
なりふりを構はぬ齢ひ水を打つ
水打って炎帝なだめなだめけり
風の起つ頃まで待ちて水打てり
草々に気力戻して水を打つ
気ぜはしく水撒く人でありしかな
土の香を掻き立て水を打てるなり
打水の葉音の遠く近くして
水撒いてやっと一息つけさうな
(末尾は句集名)
撒水車 /
行水 /
缶ビール烏の行水にも一徳
菖蒲風呂烏の行水にも手順
初湯浴ぶからすの行水始めなり 随笑
行水所コヒガンザクラ明りして 鳩信
初湯浴ぶからすの行水始めなり
(末尾は句集名)
髪洗ふ /
髪洗ふボトル二つやさてどちら 素抱
銭湯に独り初老の髪洗ふ
七難を隠す初老の髪洗ふ
髪洗ふ音が厨の方でする
(末尾は句集名)
牛冷す /馬冷す /
夜店 /
お願いを連発する子夜店の前 素抱
かなぶんをぶんと呼び寄せ夜店の灯 素抱
でっぷりした夜店のおばちゃん焼蕎麦焼く 暮津
とびとびに埋まる社の夜店かな 暮津
境内に水打ち夜店立ち始む 素抱
水舎から水借り夜店支度かな 素抱
水舎の水貰ひて夜店支度かな 寒暑
走り根を除けて夜店を組み始む 寒暑
大木の欅に隣る夜店かな 暮津
夜店の材鉄パイプなど持ち込まれ 素抱
夜店の灯杜を焦がして狂ふ蝉 素抱
夜店より孫を剥がすににくまれ口 暮津
夜店建ちけふの稼ぎを待つばかり 寒暑
夜店建ち始む配線むき出しに 寒暑
夜店立ち蛸の踊れる屋台幕 随笑
首の上首がにょっきり伸び夜店
くさぐさの匂ひ夜店の混める杜
境内にいの一番の夜店組む
大欅邪魔して夜店その脇に
金魚より射的に移る夜店の子
一、二三夜店の主顔見知り
ながらへし夜店の金魚一揺らぎ
夜店にて求めし金魚翌朝死す
蛍光塗料ちゃかぴか夜店の光りもの
樹を避けて八幡様の夜店かな
夕風に夜店の骨格組み上がる
水舎から水借り夜店支度かな
欅樹下射的屋夜店出しにけり
諸々の匂ひの中の夜店の灯
腹巻にお札数ふる夜店蔭
夜店の間電気コードの宙ぶらりん
尻尾めく夜店の電気コードかな
夜店の親爺水屋の水に重宝す
建て込める夜店の足許走り根伸ぶ
ごたごたと夜店が建ちぬ社内
夜店にて一鉢求む千日紅
(末尾は句集名)
夏芝居 /
夏芝居なんて一度も見たことなし
夏芝居長谷川一夫めく河童
夜濯 /
惣領に生まれて夜濯ぎなど不得手
こんな夜の夜濯ぎ一茶・山頭火
こんな夜の夜濯ぎ一茶も惟然もや 寒暑
胡瓜もみ /
もう少し肥りたけれど胡瓜揉
移る世をはすかひに見て胡瓜揉
もぐもぐと朝食弾み胡瓜揉
胡瓜もみ晩夏の口を尖らせて
瓜漬 /
胡瓜漬ぽりぽりやりて昼餉了ふ
冷索麺 /
けふの昼餉冷索麺に一致して さざなみやつこ
たとふれば男の美学冷索麺 燕音
冷索麺見た目も味の内也と 随笑
(末尾は句集名)
冷麦 /
夏秋を通して飲めり冷麦茶
自堕落を正せる薬冷麦茶
老人に無理は禁物冷麦茶
冷麦の氷の味も勘定うち 素抱
冷麦茶ありて重宝しておりぬ 随笑
冷麦茶薬の如く頂ける 随笑
なまる身をしゃんと正せる冷麦茶 随笑
(末尾は句集名)
アイスコーヒー /
アイスティ /
アイスティーぐびぐび飲んでまた寝る子 素抱
アイスティーストロー吸うとき顔細め 寒暑
アイスティー茉莉春亳(モーリーチュンハオ)試し飲み 寒暑
とんとんと砂糖スティックアイスティー 随笑
夜更しの徒然壜詰アイスティ
砂糖水の親戚にしてアイスティ
(末尾は句集名)
麦茶 /
のみ余す麦湯のコップぽつねんと 寒暑
やるせなし麦湯に氷片二つ入れ 寒暑
ゆかしさの波多野爽波は麦湯の味 寒暑
一日了ふ壜の麦湯も底尽きて 寒暑
快適とて糞暑きとて麦湯のむ 暮津
眼を虚ろ麦茶の氷鳴らし飲む 素抱
起きだして朝から麦湯沸かす妻 寒暑
妻沸す麦湯ちからに夏百日 寒暑
煮立つたる麦湯さましてゐる背中 寒暑
暑にめげぬための麦湯を沸かしおく 随笑
職引きて麦湯の湯気のやうな日々 宿好
森閑と麦湯の薬鑵さめてをり 寒暑
体に佳き麦湯毎朝沸かせをり 寒暑
年金の出る齢となり鳩麦茶 宿好
麦茶などのんで末っ子宵っぱり 暮津
麦湯して暑さ負けせぬ夫婦なり 宿好
麦湯なまぬるくひとりでとる昼餉 寒暑
麦湯の滋味吾らが元氣の源よ 寒暑
麦湯の壜放りっぱなしにせしは誰ぞ 暮津
麦湯煮ることに精出す妻なりき 宿好
麦湯呑み午から体力消耗戦 寒暑
麦湯呑む妻との呼吸合うて来ぬ 寒暑
鳩麦を加ふ麦湯の香なりけり 宿好
文庫本伏せて麦湯を飲みにゆく さざなみやつこ
一夏を麦茶で通す老夫婦
べとつくとて糞暑きとて麦湯のむ
ややこしき句は皆御免鳩麦茶
氷解け薄まる麦茶なまぬるし
なまぬるき麦茶の飲みかけコップ乾す
麦茶いま沸騰減る湯に水を足す
麦湯ぬるく延長戦に入りけり
呑み薬麦湯をもって口直し
麦茶沸かす刻が巡って来たりけり
朝から沸かす麦湯のための水
根ン詰める仕事の合間麦茶かな
朝入れるポットに麦湯春隣
孫の来る部屋片づけて鳩麦茶
定年後麦湯に湯気のやうな日々
一夏に飲みし麦湯の如何許
妻沸かす麦湯に暑さ凌ぐなり
生ぬるき麦湯を飲める誕生日
たっぷりと麦湯を沸かす朝かな
飲食のいつもの顔ぶれ麦湯汲む
一ぱいの麦湯呑み寝る覚悟せり
強気に出る妻に閉口鳩麦茶
朝昼晩のんで麦茶の薬いろ
麦湯煮る背の見ゆどこか淋しげに
公園に麦湯持参の乳母車
一日かけ壜の麦湯をのみ干せり
冷蔵庫の麦湯ちょくちょくのみに起つ
あらかた飲む壜の麦湯をさらひけり
飲みては減る壜の麦湯の一日かな
(末尾は句集名)
砂糖水 /
砂糖水の親戚にしてアイスティ
氷水 /
かうなれば開き直りて氷水 暮津
がりがりと妻が自家製氷水 燕音
しなしなの氷掬へり岐阜城下 ぱらりとせ
なまる身にしっかりせよと氷水 素抱
わたしには氷いちごの真っ赤なやつ ぱらりとせ
旗の立つ家に飛び込み氷水 暮津
兼六園松が根を見て氷水 ぱらりとせ
五匙に持て余しゐる氷水 暮津
口染めてきんとと色の氷水 寒暑
新宿の地価折り込みの氷水 随笑
舌先が莫迦になるまで氷水 寒暑
掻き鳴らし我が家自家製氷水 鳩信
大仏をまづ先に見て氷水 さざなみやつこ
童心に一時還り氷水 暮津
年寄りの部類に入るか氷水 随笑
氷水メロン振りかく目分量 素抱
氷水伊豆見屋と云ふ海の家 ねずみのこまくら
氷水匙突き刺して小休止 暮津
氷水真っ赤なやつに歯が浮いて 暮津
氷水舌の形が判りけり 暮津
氷水掻き止め遠きもの見つめ 暮津
氷水落ち着くところに落ち着きぬ 鳩信
片町に朝の氷を挽ける音 ぱらりとせ
旅先の風の津軽の氷水 寒暑
飛び込んでみたり路傍の氷旗
氷旗立つ角店に飛び込めり
溜飲が下がるとは是氷水
旗の立つ家に飛び込み氷水
体調と相談しつゝ氷水
老人の持て余しゐる氷水
匙縦に使ひ掘削氷水
風落ちて色の褪せたる氷旗
いまもってご贔屓があり氷店
寺前の大銀杏脇氷店
名園の松は美し氷水
氷水旗の向かうの岩手山
恐山一巡りして氷水
冷え過ぎは毒を承知の氷水
(末尾は句集名)
アイスクリーム /
アイスクリームこんもり小岩井農場製 随笑
蔵王見てアイスクリームてんこ盛り 素抱
馬車道を歩きがてらのアイスクリン ぱらりとせ
明治屋のアイスクリームなら食べる 暮津
チーズ入りアイスクリームに芯から冷え
珍しと枇杷味アイスクリームかな
アイスクリーム発祥の地の開港祭
アイスクリームとうもろこしの味したり
(末尾は句集名)
氷菓 /
水脈を見てフェリー船尾に氷菓舐む 寒暑
其の上(かみ)の病院船は氷菓いろ 寒暑
氷菓買えと孫の奥の手泣威し 素抱
踊る子に氷菓を配り小休止 暮津
老人には無理といふものシャーベット
(末尾は句集名)
ゼリー /
【参考】
ガラス器にゼリーの揺れて恋育つ 福川悠子
すき透るゼリーの中のさくらんぼ 小竹由岐子
ゼリーたべ硝子の皿と匙残る 田村了咲
ゼリーやや歯応えありし旧軍港 水島洋一
ゼリーゆれつつ運ばれ来涼しさう 成瀬正とし 星月夜
ゼリー食ぶ銀の小匙を遊ばせて 広田恵美子
ゼリー置く虎杖の葉のとびし風 富安風生
ゼリー揺れ自分を許さうかと思ふ 峯尾文世 銀化
どつと甘える母がかなしきゼリーかな 黒崎かずこ(春野)
はりと歯に風のかをりのゼリーかな 上田五千石 琥珀
ふるふるとゆれるゼリーに入れる匙 川崎展宏
ふるへつつゼリーが皿に濃紫陽花 福田蓼汀 山火
一匙に皿のゼリーの大揺れす 中村祐子
雨の夜のこゝろさぶしきゼリーかな 日野草城
嬰の口へ運ぶゼリーの漫画匙 坂本たけ乃
掛香や懐紙に透けるゼリー菓子 中村多可子(玄鳥)
旧交や頒けてゼリーの青と赤 岡本眸
見合席二人のゼリー残るまま 小野寺信一郎
匙ふれてゼリーの慄へ伝はりぬ 松本たかし
尺蠖すすむゼリー固まりゆく時間 須川洋子
水色のゼリー三つに鼎談す 上田五千石『風景』補遺
青春の苦き珈琲ゼリー食む 成田郁子
碧きゼリー刻々変る湖の色 水口楠子 『泉汲む』
木苺のゼリーよ遠き日の詩集 大倉恵子(青海波)
余震のあとのイケダスミコとゼリーかな 池田澄子
溜息が青いゼリーになつてゐる 丸山嵐人
鬱の日のゼリーを崩す銀の匙 末永雅子「春嶺同人句集」
薔薇の夜のロイヤル・ゼリー状の夢 鷹羽狩行
ラムネ /
こんぴらの百段堂にてラムネのむ 寒暑
ひよつこりとラムネのおくび出で来たる さざなみやつこ
ラムネのごと Finの三文字昇り来る 暮津
ラムネ玉ころりと仙石原晴れて 石鏡
旧季題ラムネに明治の活気あり 鳩信
頭の裡のもやもや抜けりラムネ玉 随笑
売店へ空のラムネの壜戻す さざなみやつこ
春の昼とろんと消えしラムネ菓子
氷柱をどすんと据へてラムネ売る
ラムネ菓子胃の腑へ落とす梅雨の昼
ラムネなど飲み人間も斯く古りぬ
百段目の百段堂にてラムネのむ
(末尾は句集名)
ソーダ水 /
モガ・モボ展一渡り見てソーダ水 鳩信
グラス越し孫の泡追ふソーダ水
(末尾は句集名)
サイダー /
あやふやなサイダーの味雨籠り 素抱
サイダーに腹のたぷたぷ鳴り寂寞 素抱
サイダーの大きなげっぷ蟇めける 素抱
サイダー呑み孫は鳩の目したりけり 寒暑
三ッ矢サイダー大正生まれの老人と 暮津
炭酸水ハヤシライスの木村屋にて 石鏡
サイダーのごとく気抜けし日暮際
サイダーに想ひ出す景葉山沖
サイダーの泡たてつづけ鼻に爆づ
サイダーの季節となりぬ泡追ふ目
サイダーの飲み方いつか上達す
サイダーの泡の音して花火消ゆ
昔からサイダーが好き誕生日
サイダーに噎せびつドムドムハンバーガー
(末尾は句集名)
ビール /
うたかたのビールの泡と了ふ一日 寒暑
オーダーのビールさうだなハイネッケン 寒暑
こんな日はビールが佳けれ酢のものに 素抱
ジョッキ挙げわれらウルトラマン世代 暮津
ビールにほろ酔麒麟となりて空馳せむ 暮津
ビールの泡口髯汚す飲みっぷり 素抱
ビールの泡鼻の辺りでぷつぷつと 寒暑
ビールますますうましアンデスポテトかな 寒暑
ビール乾し辺りの風がぬるくなる 素抱
ビール酌むことに心の横すべり 寒暑
ビール酌むすててこ季となりにけり 寒暑
ビール酌む少々荒き風も佳き 寒暑
ビール酌む腹のくびれに眼を落とし 素抱
ビール酌む礼文カスベエむしりつゝ 素抱
ひとり酌むビールを余す夕べかな 素抱
ビヤガーデン雨の匂ひの木椅子引く 素抱
ブリューゲルのビア樽男ビール酌む 燕音
ミズコブの突きだしビールうまかりき 素抱
もうそんな頃かや屋上ビアガーデン 素抱
もう齢かビールのピッチあがらずよ 暮津
一日が了る麦酒の泡見つめ 寒暑
黄昏れてくるまでビール我慢しぬ 寒暑
屋上の風を肴にビール酌む 素抱
何は扨置き一杯目のビール ももすずめ
汗っかき大漢にして大ジョッキ 鳩信
交し飲むビールの琥珀胃の琥珀 燕音
妻居らねば手軽なビール選びけり 暮津
手術して一年経つかビール注ぐ 鳩信
生ビール内地の人よと云はれ酌む 燕音
操舵輪壁に懸けあるビアホール 寒暑
地ビールにステーキ木目の顕てる卓 燕音
長かりし一日ビールの黄昏色 さざなみやつこ
追憶を肴に老いの麦酒乾す 暮津
東尋坊美(は)しやビールの泡透けて 宿好
湯上りのかけつけ一杯麦酒の泡 暮津
熱燗党麦酒党相半ばして さざなみやつこ
覇気のなき今となってはビール乾す 寒暑
麦酒か酒かけふの肴を確かめて 暮津
半生を振り返るごと麦酒乾す 石鏡
歩きつつ地ビール「独歩」喇叭飲み 寒暑
傍らにビールの空き缶かはたれどき 石鏡
揚げものにビールしんどき日でありし 暮津
横濱の蔦の館のビヤホール
湯上りのビールに鳴れり喉仏
今日送るビールや妻もお相伴
鼻薬効かせなめくじ蒐めたる(飲みさしビール)
直会の麦酒林立すも淋し
ビール剩すそんな己を蔑めり
突きだしに鯨の珍宝(こうがん)生麦酒
はつあきの麦酒一口余す妻
ビール酌む遠蜩の一つ欲し
ビール注ぐ先に喉元鳴るごとし
ビール酌む初老の味はほろ苦し
コップより腹へ移せり生ビール
相撲見てビール団扇は左手に
ビール乾す酒場のこけしのコレクション
天を駆く麒麟を見るまでビール酌む
ビールの泡なほ立ちのぼる夕べかな
長芋の千切りビールすすみけり
蚕豆に麦酒おもへば風が吹く
大手術して一年やビール注ぐ
交し飲むビールの琥珀胃の琥珀
こだはりの職人気質のビール酌む
地ビールもうまくステーキ平らげり
ビヤガーデンそら豆色の空の下
暑気払ひ馬女々(マーマー)餃子にビール酌む
屋上にビール呷れば目鼻に風
ビール乾し溜飲下がる思ひかな
ビール酌み夕栄程のほてりかな
忘れゐしことがひょっこりビール酌む
蝉よりも遠き瞳をしてビール酌む
ビールの風味泡もて封ずバーテンダー
ビールにも注ぎ方ありて一講釈
ビヤホール七夕乙女甲斐甲斐し
ビヤガーデン円卓毎に点せる灯
居心地よくビール一気に飲める日や
二タ三口妻もビールに口つけて
ビール酌む湖畔つまみに金北山
(末尾は句集名)
甘酒 /
甘酒はわたしは嫌ひ妻は好き
洪鐘(おおがね)に甘酒年を迎えけり
人ごこち一寸冷え込む日の甘酒
甘酒に腹を温めて義士祭り
甘酒の匂ひが風に午まつり
甘酒に氏子ら温む午まつり
甘酒の振舞い観梅期間中
甘酒にぎっくり腰の腰温め
甘酒に六腑の在り処滅燈会・・・清浄光寺一ツ火 ねずみのこまくら
(末尾は句集名)
焼酎 /
くわりん酒の焼酎二升程と踏む 宿好
街ぼこりさらりとながし烏龍ハイ 素抱
捨て積みの焼酎瓶に冬の蠅 鳩信
焼酎は薩摩で飲んであれ以来 素抱
麦焼酎あほりあほりてカチャーシー 素抱
泡盛に時間稼ぎをしてゐたる 素抱
泡盛や風なまぐさく空怪し 暮津
泡盛に酔漢「昭和万歳」と
焼酎のお湯割り試して年忘れ
焼酎のオンザロックに年の果
焼酎は好きでなけれど森伊蔵
野毛しのぶ焼酎・闇市・進駐軍
泡盛が好きで根っ子の強きひと
横須賀の暑を逃れむと泡盛に
難題は脇へ退けおき藷焼酎
段積みの常滑焼酎瓶に冬日
捨て積みの焼酎瓶に冬の蠅
狐いろそば焼酎の広告ビラ
焼酎づけくわりん多くて散財す
(末尾は句集名)
冷酒 /
けふも又我を相手の冷し酒 暮津
会津出の汝を弔ふに会津の冷酒(ひや) 暮津
吃逆のやうに冷酒注ぐなかれ ぱらりとせ
酌み初めはきのふのごとし冷酒の旬 ぱらりとせ
先達のひとりをおもふ冷し酒 暮津
疎遠なることはともあれ冷し酒 ぱらりとせ
豆腐一丁あれば御の字冷やし酒 素抱
同慶の至りの冷酒注ぎ合へり 素抱
冷し酒お先走りもいいところ 暮津
冷し酒世迷い言など申すなよ 随笑
冷酒(ひや)にして口当りよき岩手川 寒暑
晩成といふことにして冷酒(ひや)を注ぐ
冷酒すともかく貴方明るいねぇ
冷し酒とことん溺れきれぬ質(たち)
冷酒に蟹蒲といふもどきもの(蟹蒲鉾)
貝焼いて召せば深まる冷酒のコク
冷酒にほろ酔ひ箸の上げ下ろし
蔵元の八十翁の冷酒享く
蔵元の冷酒召せとや太っ腹
曲げられぬそこを何とか冷し酒
人体にて顔合成圖冷酒(ひや)を酌む
云ひ方の何處かが違ふ冷し酒
湯上りの胸をはだけて冷酒酌む
人間は現金なもの冷酒乾す
云ひにくいことを云ふ奴冷し酒
世迷い言申す御仁と冷し酒
結論は動かし難く冷し酒
(末尾は句集名)
水羊羹 /
水羊羹匙ひやひやと使ひけり 素抱
午睡より覚めしところへ水羊羹 寒暑
沈黙に水羊羹のかぐろしや
水羊羹平らげる間に決心す
水羊羹時に悪心首擡げ
水羊羹けふは一日歩きづめ
水羊羹心残りの匙置くも
水羊羹切って二つの直方体
(末尾は句集名)
心太 /
すっとした顔になりたる心太 随笑
やつと手の空きし妻来て心太 さざなみやつこ
一様に寿命は伸びて心太 暮津
家ぬちに風通る日や心太 ぱらりとせ
寺二つばかり見てきて心太 寒暑
心太買うていただく濡れ釣銭 暮津
心太冷水もって口直し 素抱
老け方を気にする山妻心太 暮津
ところてん食うても憤慨納まらず
ギヤマンの鉢を愛でつゝ心太
蒟蒻屋今も商ふ心太
濡れ釣銭心太屋の親爺より
突き呉れる心太待ち夫婦もの
ところてん喰いたいと唯云っただけ
お三時に思ひ当りし心太
大道芸見ながら路地店心太
叱られてそのあとけろり心太
湯上りの胸をはだけて心太
こんな日は割箸割いて心太
もやもやを吹っ切るための心太
心太食うてうたたねでもするか
校正の気をやすむるや心太
心太風情かっこむ如くなり
三嶋大社詣で帰りの心太
ところてん製造元の大竿灯
円覚寺見晴らし茶屋の心太
心太風のごとくに日が過ぎて
昼の風窓より入る心太
ところてん物足らなくも昼の風
ところてん水亦うまき頃となり
(末尾は句集名)
葛餅 /
家包の葛餅膝に池上線 随笑
葛餅に頁の耳を折りて立つ ももすずめ
葛練や山の肩より山覗き ぱらりとせ
土産には無難なところ葛餅を 暮津
お会式の戻り葛餅ぶる提げて
御命講元祖の葛餅山積みに
葛餅の売れに売れたり御命講
葛切の一縷口中滑らせて
ギヤマンの器に葛切あるにはある
葛餅に色めき立ちぬ艶咄
葛切の噛みきれざるに齢と知る
葛餅と木鷽の包み提げて帰途
葛餅をよすがに蒸す昼凌ぐべく
雨暗の葛餅の端を掬ひけり
黒蜜をとろり雨暗葛餅に
(末尾は句集名)
葛饅頭 /
きりのよきところで止めて葛ざくら 随笑
家ぬちに風を通して葛ざくら 随笑
葛饅頭お産に一人目二人目あり 素抱
葛饅頭何が喰いたきかと問はれ 暮津
了見は聞いておくもの葛桜 暮津
風通るところでお茶など葛ざくら
息災と云へば息災葛ざくら
一荒れは何の剣幕葛ざくら
けふの出来事妻から話せ葛ざくら
(末尾は句集名)
白玉 /
簡単に人をくくりて白玉好き 素抱
白玉にこゑ生き返り「お勘定」 暮津
白玉の甘味処を素通りす 暮津
白玉や奥羽の旅はここに果て 寒暑
(末尾は句集名)
蜜豆 /
日光山一巡りして蜜豆 鳩信
蜜豆や寒天ばかりが残りけり
餡蜜に遠出疲れの腰癒す
(末尾は句集名)
麨 /
出来過ぎる話に注意麦こがし
麦こがし老いと片づけきれぬこと
麦こがし生きた証と云ふけれど(俳諧せることは・・・)
恰好がわるき句作らう麦こがし
その声価大いに疑問麦こがし
冷奴 /
だいそれたことを言ひ出す冷奴 ぱらりとせ
ともかくも生きていりゃこそ冷奴 暮津
云ふに窮してそこまで云ふか冷奴 暮津
花かつを懸ければ奴豆腐(やっこ)笑ひけり 素抱
隔たるものどんどん隔たり冷奴 暮津
水切って醤油をかけて冷奴 暮津
節約は美徳と習ふ冷奴 寒暑
大山の水が命の冷奴 素抱
奴豆腐(ヤッコ)の上音頭とるのは花かつを 寒暑
半丁のこれで充分冷奴 寒暑
晩酌の今日もごきげん冷奴 寒暑
冷奴の他に肴はもう一品 暮津
冷奴へたに動かぬほうがよい 暮津
冷奴貴方も齢と云はれをり 寒暑
冷奴魚醤明るく広がりぬ 素抱
冷奴堅牢箸をつけむとす 石鏡
冷奴紫蘇の風味をいかしけり 寒暑
冷奴地震の起こるメカニズム 素抱
冷奴箸おもむろに何処欠かん 寒暑
冷奴氷截り出すやうにきる 素抱
冷奴本心さらりと云ひ退けし 暮津
四つ切りの一片で足る冷奴
ちょっとした誤算続きぬ冷奴
晩酌や二日続きの冷奴
冷奴お先走りもいいところ
黙々と箸のおもむく冷奴
けふも明日も晩酌愉し冷奴
冷奴青紫蘇ぷんとにほひけり
晩酌に手っとりばやき冷奴
冷奴納まりし腹撫でにけり
冷奴崩しては又考える
冷奴ひょんなことより病ひ持ち
晩酌のすすんで二合冷奴
心臓に如何(どう)手の入りて冷奴
冷奴年金暮らし足が出る
冷奴一丁肴にひとり酒
冷奴水のごとくに風通り
齢のこと妻に茶化され冷奴
冷奴貴方も齢と云はれをり
冷奴箸おもむろに何処欠かん
(末尾は句集名)
鮨 /
寿司喰いねぇ江戸っ子好みの穴子寿司 暮津
鱚・鮑・甘海老地物お任せ寿司 暮津
出来過ぎの鰆てふ文字鮨を待つ 宿好
柿の葉鮓ほおばれば雨響くなり ぱらりとせ
鱚・鯛と寿司の握りの美学かな
手巻き寿司紫蘇もて鰹の匂ひ抜
熊手売れ手締め鮨屋の大将に
寿司種の鱚の泳げる大洗
鰹季寿司食ひに寄る那珂湊
(末尾は句集名)
洗膾 /
風通り鯉の洗膾を待つ座敷 燕音
照りつける佐久に立寄り洗鯉
(末尾は句集名)
夏料理 /
鉢・皿と見た目が大事夏料理
夏料理水ふんだんに使ふなり
茄子がまた手を変えて出て夏料理
三つ葉などちょっと散らして夏料理
飯店の品書き真っ赤夏料理
三品選り広東家庭夏料理
船料理 /水貝 /沖膾 /
泥鰌鍋 /
店構先づは諾ひ泥鰌鍋
聞くとなき話の顛末どぜう鍋
扇風機 /
あらぬ方吹きて元湯の扇風機 宿好
がら空きの電車をひやす扇風機 寒暑
ピザ店の大扇風機頭上より 随笑
首振の一芸をもつ扇風機 素抱
扇風機あまり肋を冷やしては 素抱
扇風機つけたり切ったり今日一日 暮津
扇風機に似てくる骨だらけの裸身 燕音
扇風機の風が洩れなく来るやうに 寒暑
扇風機はたと止まりしまゝ晩鐘 暮津
扇風機横向いて夏去りにけり 素抱
扇風機嫌ひな妻との四十年 素抱
扇風機出す話など飛び出して 素抱
扇風機悼みの風を送るなり 素抱
扇風機湯屋閑散としてゐたり 暮津
扇風機万遍なくといふことを 寒暑
扇風機夜はぽつねんと座せるのみ 暮津
足許に侍らせ首振り扇風機 寒暑
昼深くひとり対する扇風機 暮津
道後の湯古りて天井扇風機 寒暑
放置さる団扇と本と扇風機 暮津
翅休め昭和の遺物扇風機 暮津
扇風機くくる紐丈案じをり
仕舞ふこと考えてゐる扇風機
かたす迄放って置かる扇風機
つくづくと扇風機にも貌ありて
扇風機最後に使ひしはいつか
扇風機向きはそのまゝ一浴び来
性に合ふ古扇風機座右にす
動きだし呂律廻らぬ扇風機
扇風機唯唯廻ってゐる八畳
扇風機風量調節リズム風
腹にくる風が問題扇風機
ビニールにつつまれ湯屋の扇風機
まだ出番ある銭湯の扇風機
各々に等分の風扇風機
小器用に強弱つけて扇風機
一つ家の外(と)に鳴く虫と扇風機
外に向日葵内に漆黒扇風機
艶消しの利休鼠の扇風機
扇風機笑ひ始めてピタと止まる
小回りがきいて当世の扇風機
扇風機頭押さえて向き直す
一物を涼しめ湯屋の扇風機
扇風機足方に置き妻昼寝
芸達者なること新式扇風機
雨暗の部屋の片隅扇風機
店頭に押し出ださるる扇風機
吾に向く扇風機あり昼寝覚
寂寞と昼の扇風機と裸身
扇風機手持ちぶさたに札所寺
扇風機座敷の隅に控えをり
用済みの扇風機とはなりにけり
どの客にも愛想よくて扇風機
客の方向いて挨拶扇風機
客に風送り律儀な扇風機
ピザ屋の窓海と鴎と扇風機
ピザ店の大扇風機顔煽る
扇風機けふの勤めを待ちゐたり
扇風機かけて辿れる夢路かな
首を振る芸も見せけり扇風機
銭湯に年の瀬迎ふ扇風機
ぶるぶると出湯の宿の扇風機
扇風機の向きああやってこうやって
扇風機身体に毒と云はれても
リモコンであやつる下僕の扇風機
(末尾は句集名)
冷房 /
かかりつけ心臓外科の冷房利く 鳩信
クーラーのああ埃臭さ試運転 随笑
クーラーを入れずへの字に口曲げて 寒暑
シネマ冷房空席冷えに冷えゐたり 暮津
シャツ通す冷気朝霧湧き止まず 素抱
見舞客勝手に変へて冷房「強」 鳩信
入れては切りいたちごっこの冷房裡 寒暑
白馬山麓星夜天然冷房裡 宿好
病棟の深夜冷房音どすん 鳩信
冷気にも気迷ひのありさざんか垣 素抱
冷房のどすんと入る音の又 寒暑
冷房の密室にゐて考えごと 随笑
冷房を使はぬ妻に今や馴れ 素抱
冷房を入れず自然の風待ち派 随笑
冷房裡オペ顛末記筆談に 鳩信
髑髏圖も弱冷房裡国芳展 燕音
冷房を入れし日数の数ふるほど
冷房を入れて隠遁めく一ト日
冷房車分別臭き漢の横
冷房が効いて平積み本の山
銭湯の風筋粗き冷房機
どっすんと冷房の入る脱衣場
銭湯の時代物めく冷房機
むっと下車弱冷房に慣れゐし身
冷房車シネマその間冷房なし
外来のみな冷房に浸りづめ
手をこすりみな耐えてをる冷房車
冷房車冷えきりし顔涼しむ顔
診療待兎も角長し冷房音
冷房裡青菜に塩の新患者
手術前注意こもごも冷房裡
冷房のあまりに強くへたばりぬ
辿り着いて冷房完備「会社の函」
今日も亦「函の会社」に冷房漬け
冷房の函を連ねて出勤車
冷房車快適朝刊ひろぐ御仁
冷房裡会議堂々巡りして
地下鉄の構内冷房斑があり
心臓のポンプ健在冷房裡
妻ともども冷房入れぬことに慣れ
冷房のすうすう海岸廻りのバス
冷房を利かし過ぎてはしゅんとせり
一ト夏を冷房嫌ひの汝に合はせ
冷房のどすんと入りどすんと落つ
席譲る老人同士冷房車
(末尾は句集名)
風鈴 /
グラビアの風鈴に耳すましけり 素抱
めぐりあふ書に似てハッと風鈴は 寒暑
メリハリつく家居風鈴吊りてより 石鏡
一ト夏を越す風鈴の音と聞けり 素抱
何しても中途半端に軒風鈴 随笑
軒風鈴ついついこんなことまで書く ぱらりとせ
軒風鈴風のいふこときかぬなり 素抱
仕事人間止めて風鈴吊る家に 宿好
煮えきらぬ風鈴の音とつぶやけり 随笑
焼け石に水の風鈴鳴りにけり 寒暑
節電や掠れて鳴れる軒風鈴 素抱
台風のその規模風鈴きりきり舞 暮津
鉄風鈴鳴りてたまにはよきことも 暮津
南部鉄風鈴その名に羞じぬ音を 素抱
風鈴に余りある風面食らふ 素抱
風鈴のただ働きの労おもふ 寒暑
風鈴の引き込む風の裡にをり 素抱
風鈴の音色を真似て骨休め 寒暑
風鈴の音色乱打に変りけり 寒暑
風鈴の空打ときに見せにけり 素抱
風鈴の広長舌を聞き遣るべし 宿好
風鈴の手持ち無沙汰といふ風情 寒暑
風鈴の少し慌てて鳴りにけり 随笑
風鈴の舌とて臨時のボール紙 暮津
風鈴の黙ったまんま救はれず 暮津
風鈴を鉦と聞く日のありにけり 素抱
予後よきを聞きし日よりの鉄風鈴 ねずみのこまくら
風鈴の音色の起こす風見たり
風鈴の喃語寝覚の耳にかな
風鈴のあることさへも気づかぬ日
風の切れ目はっきりせぬ日の鉄風鈴
風鈴の音の拡がりて拡がりて
莫迦に鳴る風鈴呼んでも出て来ぬ家
風鈴のちりんと澄みて鉄の音
訳が分らず風鈴嫌ひの五十妻
戒名を諳んじをれば鉄風鈴
風鈴も鳴りを潜めて迅雷下
湯本駅川風任せ夜の風鈴
鳴り過ぎる風鈴外し遅れけり
頷いて鉄風鈴の仕舞ひどき
野分して風鈴舌を抜かれけり
音を放ちつゝ風鈴のさゆれかな
風鈴の連打湯上り長椅子に
忙殺てふこと今は無し軒風鈴
風鈴のときに悄然はた凛然
風鈴の音のひるがへりひるがへり
けふつつがなし風鈴の音に馴れて
軒風鈴まだ覚めやらぬ面持ちに
風鈴に祭のほてり醒ましをり
風鈴の朝(あした)小出しに音を立つる
孫去って風鈴の音の徹る家
風鈴の吊り初め軒の風を待つ
孫去って風鈴鳴るよ風吹くよ
一つだに風鈴鳴らぬ真炎天
真昼間を風鈴ならぬ鉦のおと
風鈴の見えゐて時折擦るる音
お隣に風鈴遅れて吊りにけり
今日のことみんな句に為せ軒風鈴
風鈴に似てゐて自転車の呼び鈴
軒風鈴四半世紀を働き来て
風鈴のチリとも鳴らぬ一番湯
鳴りすぎて困る風鈴調節す
風鈴を聞きつゝ予後の身なりけり
蝉と風鈴蝉の旗色悪きかな
南部鉄器黒風鈴を土産とす
売物の鉄風鈴に川の風
真っ直ぐに向き合ふ時間鉄風鈴
風鈴の音に昼餉の顔見合はす
風鈴のそこここの風集め鳴る
風鈴の全く鳴らぬ午前午後
退屈といはんばかりに風鈴鳴り
風鈴の誘ひを受けて風出でぬ
職人のこころ根こもる鉄風鈴
誕生日朝風呼べる鉄風鈴
風鈴の鳴る日鳴らぬ日けふ鳴る日
風鈴の南部南部とよく鳴れり
風鈴の饒舌いささか閉口す
風鈴の間に間に祭りの遠囃子
西瓜状風鈴の鳴り出しにけり
風鈴の鳴り過ぎ妻がたしなめる
風鈴の盛岡過ぎて霧・小雨
風鈴を風に任せて寝ることに
風鈴にすいと目覚めて風峠
風鈴の夕風捉え小手馴らし
(末尾は句集名)
釣忍 /
力作と云ふには拈し吊忍
嘗て湯屋に鏡広告吊忍(当浴場の鏡広告なら(有)三宝社へ tel...。係員参上)
吊忍下げて廊下に徹る風
東京で働きしこと吊忍
吊忍下世話に過ぎるよた噺
恪勤の日のかずかずや吊忍
吊忍早々つりて履物屋
横なぐりの一雨欲しや吊忍
ややこしきは棚上げにして吊忍 素抱
亀型へ舟型吹かる釣忍 ぱらりとせ
(末尾は句集名)
走馬燈 /
寅さんのフーテン人生走馬燈
走馬燈よりもゆっくり金魚玉
金魚玉とは趣旨別に走馬燈
走馬燈僕の時代が遠くなる
水取は廻り燈籠今年もや
走馬燈僕の時代が遠くなる 随笑
(末尾は句集名)
金魚売 /
金魚屋のまだ水張らぬ槽(ふね)二つ
金魚屋の寄進百余尾錦鯉
一つきり金魚屋に咲く布袋草
祭の子ねだる金魚屋通過せり
場所割りの此処は金魚屋例の親爺
金魚屋がウツボ売るとはヘンテコな
金魚屋の藻を見て暫し雨宿り
いつとなく金魚屋に寄る雨の昼
これは大き金魚屋の布袋草
金魚屋に売らる薄暑の珊瑚岩
金魚屋にかじか蛙も売られけり
甕にわいわい金魚屋の布袋草
金魚屋の親爺かたへに蚊遣香 素抱
金魚屋の親爺と金魚の共喰談 素抱
金魚屋の布袋草よく肥えてをり 素抱
金魚屋のグッピーの眼が忘られず 素抱
金魚屋のアズマニシキは四股名にて 素抱
金魚屋の二軒張合ふ祭かな 寒暑
金魚屋の親爺の顔も一とせぶり 寒暑
手を膝に金魚屋親爺目を配る 鳩信
(末尾は句集名)
金魚玉 /
雨の日の今日の句材は金魚鉢 素抱
金魚玉如何に台風荒れやうと 素抱
金魚玉留守を任されゐたりけり 素抱
新入りの金魚鉢越し吾を見る 素抱
水を張る手も逸りけり金魚鉢 宿好
台風を生める地球と金魚玉 素抱
金魚玉ゆらゆら揺れて扨ては地震
その中の山紫水明金魚鉢
無何有(むかゆう)郷ここにも在るぞ金魚鉢
金魚鉢如何に台風荒れやうと
雨の午後孫と覗ける金魚鉢
金魚鉢の水替えといふ大仕事
金魚鉢一つ加はり吾が生活(たつき)
降られてはをりをり覗く金魚鉢
雨の庭景色映して金魚玉
走馬燈よりもゆっくり金魚玉
金魚玉とは趣旨別に走馬燈
玄関の静かさに置く金魚鉢
水替えて一日経ちし金魚鉢
十二月廁にミニチュア金魚鉢
金魚玉風抜け易き家が佳し
お見限りしてをる冬の金魚鉢
来し方の佳き事思へ金魚玉
(末尾は句集名)
水盤 /
旅先で拾ひ来し石水盤に
箱庭 /
皿に萍厨に妻の箱庭あり 素抱
水遊び /
ありたけの器並べて水遊び 素抱
ありとあらゆる容器並べて水遊び 素抱
べべ濡らす如雨露遊びもたけなはに 素抱
よその子とすぐうちとけて水遊び 石鏡
もっとも好き遊びの中の水遊び(孫 美雨)
水遊び広場に黄葉集めの子
水遊びもうお仕舞いやのうぜん花
水遊びする子の跣足鳩も亦
玄関の飛石濡らし水遊び
チューリップだぶだぶ水浴ぶ水遊び
だだこねて如雨露手にする水遊び
山吹のさきセキレイの水遊び
水遊びの映像真夏日けふ記録
(末尾は句集名)
水鉄砲 /
水鉄砲広場の鳩をねらい撃ち
水鉄砲浅蜊に砂を吐かせをり
浮人形 /
時間とは溶けるものなり樟脳舟
樟脳舟めきしヨットが眼下馳せ
水脈を曳く鴨は樟脳舟に似て
ゆくゆくは樟脳舟の船長に 寒暑
頭の裡に樟脳舟を走らしめ 寒暑
樟脳舟すぐに元気をなくしけり ももすずめ
(末尾は句集名)
水中花 /
【参考】
拙句 家居 (高澤良一)
メリハリつく家居風鈴吊りてより 石鏡
一人(いちにん)の家居ぼんやり皐月どき 素抱
家居して身につくものは唯ものぐさ 石鏡
家居して大いに退屈水中花 暮津
寒がりは内弁慶に似て家居 宿好
断ってばかりの家居秋ぐもり 石鏡
梅雨家居あれもこれもと妻頼み 寒暑
梅雨家居飲食(おんじき)の手間かけ申す 寒暑
蝿生る家居ばかりになまる身に 随笑
水中花埃も花と咲かせゐる
水中花水の古さを云ふたとて
水中花薬は処方箋に基づき
水中花そんな下手物置かぬ卓
水中花活けて愉しむ気などなし
内科医の小声の洩るゝ水中花
徒然のものの試しに水中花
(末尾は句集名)
花氷 /
駅長の粋な計らひ花氷 素抱
(末尾は句集名)
冷蔵庫 /
スペースをづらして作る冷蔵庫 素抱
ペットボトルごちゃごちゃ詰め込む冷蔵庫 暮津
往生すぎうぎう詰の冷蔵庫 暮津
患者等のわれらが宝庫冷蔵庫 鳩信
男手の何でも突っ込む冷蔵庫 暮津
物匂ふ世が嘗てあり冷蔵庫 暮津
冷蔵庫サランラップがあれば足る 暮津
冷蔵庫に西瓜入れあるぞと出掛け 素抱
冷蔵庫内部は蛙の胎に似て 暮津
背後にてどすんと閉まる冷蔵庫
冷蔵庫に入れあるぶだうは洗ってある
冷蔵庫乾びし梨も死蔵して
冷蔵庫ここで有の実果てるとは
梨その他冷やし殺しの冷蔵庫
てこずれり昔の木造冷蔵庫
冷蔵庫の中も九月となりにけり
男手の何でもくるむ冷蔵庫
冷蔵庫どすんと許り夏来る
冷蔵庫とよもす後の夏の虫
冷蔵庫古りて大きな音立つる
採石の洞にて巨きな冷蔵庫
冷蔵庫開けて西瓜に目のなき子
雨の日の西瓜寝かせて冷蔵庫
冷蔵庫の麦湯ちょくちょくのみに起つ
(末尾は句集名)
晒井 /
昼寝 /
「豆腐ノ辯」読み漁りゐて昼寝かな 随笑
お昼寝の済みしばかりの目の坐る 寒暑
お昼寝の面付き直せ山の神 鳩信
お白州に詰めゐるところで昼寝覚 寒暑
クラインの壺忽然と昼寝覚 暮津
ごにょごにょと愚図りてゐしが嬰昼寝 素抱
じだらくな昼寝を惟然坊然と 寒暑
その先は覚えて居らず昼寝覚 暮津
どったんと寝転び昼寝でもせんか 寒暑
なさけなき顔のオオカミウオ昼寝 ぱらりとせ
わが声がわれを欺く昼寝覚 寒暑
園児ら今昼寝の時間実ひまわり 暮津
蚊帳潜り出でしところで覚む昼寝 随笑
海鞘食べて午睡六腑の匂ふらむ ねずみのこまくら
巨き葉の翳振りかぶり昼寝覚 素抱
胸中に小さき滝懸け三尺寝 寒暑
遣りつけぬ仕事たたりて三尺寝 素抱
古ぼけし畳の目あり昼寝覚 ぱらりとせ
午は昼寝に徹すと決めてやせっぽち 暮津
午睡して妻の背ひろびろとありぬ さざなみやつこ
午睡より覚めしところへ水羊羹 寒暑
三尺寝いまさら恰好つけたとて 寒暑
三尺寝枕にもなる広辞林 暮津
仕方なし暑さのがれの昼寝せり 暮津
自堕落とそしられやうがまた昼寝 随笑
書き止めし句のたわい無し昼寝あと 素抱
掌の中に団扇ありけり昼寝覚 ももすずめ
畳の目見遣り昼寝の漂流感 寒暑
世之介の昼寝の涎ぬぐひやれ 鳩信
声の主一体誰や昼寝覚 鳩信
赤ん坊の欠伸おしゃぶりママ昼寝 素抱
雪村の鯉にまたがりゐし夢か ぱらりとせ
詮無しと知る詮無しをして昼寝 素抱
藻を離る気泡のごとく昼寝覚 ぱらりとせ
足のつぼ崑崙揉みてより昼寝 鳩信
大昼寝して沙悟浄の国にかな 随笑
大昼寝濁世に用はなかりけり 鳩信
滝に皺入りて雪村観瀑圖 鳩信
団扇畳にほいと投げだし昼寝せり 暮津
着膨れて解説雪村贔屓かな 鳩信
昼寝してカタクチイワシの群るる中 暮津
昼寝してなほ余りあるけふの昼 寒暑
昼寝して雲散霧消時の枷 寒暑
昼寝して何がなんきん唐茄子かぼちゃ 暮津
昼寝して我は当家の山頭火 寒暑
昼寝して恐竜の角よぎる夢 寒暑
昼寝して手足遠のく心地せり 寒暑
昼寝して飛脚行き交ふ東海道 寒暑
昼寝して腕むっちり如来肌 燕音
昼寝する姿さながら一汐木 随笑
昼寝せるゼブラ縞柄パジャマかな 鳩信
昼寝とはよきもの心身すっきりす 暮津
昼寝より覚めてうまづらはぎの顔 ぱらりとせ
昼寝より覚めてどこぞの馬の骨 寒暑
昼寝より覚めてはてさて妻いづこ 暮津
昼寝覚てのひらの斯くやはらかし 寒暑
昼寝覚とろんと庭木ありにけり ねずみのこまくら
昼寝覚やっと合点のゆく風情 寒暑
昼寝覚一陣の風つまさきに ぱらりとせ
昼寝覚何か探せる目付して 寒暑
昼寝覚我翩翻とひるがへり 素抱
昼寝覚五臓の位置が不確かで 石鏡
昼寝覚出づる言葉のあぶくめく 寒暑
昼寝覚瞬きしてもひとりぼち 寒暑
昼寝覚素通る猫が足袋履いて 寒暑
昼寝覚潰れしこゑを立て直す 寒暑
昼寝覚頭のもやもやとれるまで 寒暑
昼寝覚辺り白みてそっけなし 暮津
昼寝覚六牙の白象降り佇ちて 随笑
昼寝覚椰子五六本突立てり ねずみのこまくら
昼寝覚襤褸が起き出す如くなり 暮津
昼寝子の浅蜊の如きこゑ洩らす 素抱
昼寝人かさと寝返りうちにけり ももすずめ
昼寝癖板についてはあとめんだう 素抱
注射針ぬうっと太き昼寝覚 鳩信
腸の水の山彦昼寝覚 随笑
読みかけの本のほとりに三尺寝 寒暑
読むことはここまでにしてあと昼寝 寒暑
父の日の昼寝セットのプレゼント 随笑
武具馬具と昼寝覚めたる人の云ふ 随笑
暮雪の軸雪村八十二歳筆 鳩信
泡沫のなほ立ち昇る昼寝覚 随笑
麻酔覚昼寝覚ではなかりけり 鳩信
掠れごゑ中途半端に昼寝して 寒暑
流れ藻の漂ふごとく昼寝して 寒暑
浪々の身をいまさらに昼寝覚 石鏡
梟の置物模糊と昼寝覚 寒暑
麻酔覚昼寝覚ではなかりけり
しきりに説くあれは何やら昼寝覚
俳人は霞を啖ひ大昼寝
昼寝には至らぬ浅き睡りとる
睡くなる機(とき)は熟して大昼寝
昼寝の句成さんとしたるまゝ寝落つ
昼寝覚躰廻してはらばひに
色褪せし玩具のやうに昼寝覚
腑に落ちぬ点をかかへて昼寝覚
言葉より躰は正直大昼寝
寝るつもりなき昼寝してもう夕方
昼寝覚しょせんはひとりだと云へど
昼寝覚何處へ消えしか妻は留守
字余りの句ばかり作り昼寝覚
眠きもの中途半端に昼寝すは
昼寝せむ胸板の創上にして
昼寝とはよきもの心身すっきりす
打過ぎる昼をうつゝに三尺寝
早起きが過ぎて岳父の三尺寝
蝉二つ頭の片隅に大昼寝
鳴き足らぬ蝉を尻目に昼寝せり
昼寝して何がなんきん唐茄子かぼちゃ
昼寝覚より起ちまはりの物掴む
昼寝覚網戸に蝉の張り付きゐて
真裸の腹に布きれ当て昼寝
ヘルパーさん送り戻りてまた昼寝
昼寝覚襤褸が起き出す如くなり
ぶれる画面鯰は昼寝より覚めて
昼寝より覚めてはてさて妻いづこ
昼寝などして時過ごす家は船
昼寝覚辺り白みてそっけなし
昼寝覚浦島太郎然として
昼寝してカタクチイワシの群るる中
昼寝には躰の馴染みゐる畳
畳目のつきし片腕昼寝覚
座睡よりそのまゝ横に三尺寝
四十九日事なく済みて義父昼寝
昼寝はた座睡齢は百近く(義父)
早寝早起昼寝も少し義父の夏
団扇畳にほいと投げだし昼寝せり
昼寝覚五臓の位置が不確かで
指先に団扇の当る昼寝覚
埃だつ畳の感触昼寝覚
浪々の身をいまさらに昼寝覚
昼寝覚岩手県北バス後部
扇風機足方に置き妻昼寝
せんなしと知るせんなしをして昼寝
じだらくや朝のうちから昼寝して
昼寝覚我翩翻とひるがへり
昼寝癖板についてはあとめんだう
大昼寝などと小莫迦にしてゐしが
昼寝覚まじまじ見ゆる畳の目
鉛筆が敷布より落つ昼寝覚
涎出づこのていたらく昼寝覚
部屋に五人昼寝の淺き患者かな
子の昼寝バイキンマンにうなされて
眉唾の壺購へば昼寝覚
昼寝する私はわたし妻は妻
昼寝子の浅蜊の如きこゑ洩らす
家中に玩具踏み場もなき昼寝
籠枕畳に据えてさあ昼寝
昼寝せるゼブラ縞柄パジャマかな
鼻より入る酸素すうすう昼寝覚
注射針ぬうっと太き昼寝覚
ワニガメの僕等は皆昼寝好き
正路より岐路に踏入る昼寝覚
停年を目の前にして三尺寝
お昼寝の面付き直せ古女房
いろは坂バスに揺られて昼寝どき
炎ゆる昼やり過ごさんと三尺寝
昼寝して炭酸抜けしやうな顔
昼寝中巨大な束子状の顔
電話鳴り放しにして昼寝
床ずれのある身と知れる昼寝覚
胸剪りし傷口がつる昼寝覚
妻が出かけ母がでかけしあとを昼寝
床ずれのしこりとなりし昼寝覚
昼寝覚まだ去りやらぬ如来肌
横顔に湿原の風昼寝せり
吾に向く扇風機あり昼寝覚
尾も曲げて昼寝三昧おおかみうお
年金の沙汰あり昼寝ほしいまま
三尺寝俄雨来て起されぬ
夢に現る秩父原人三尺寝
グロスの街.キリコのマネキン昼寝覚
摩訶不思議顔してバクの昼寝覚
昼寝覚六牙の白象降り佇ちて
自堕落な昼寝肋が泛いて見え
留守居また言ひつけられて昼寝する
やまももの樹下に二人の大昼寝
魚信(あたり)なく沼に鰻の大昼寝
大昼寝に似たやうなもの定年後
昼寝覚本の積まるゝ六畳間
とうぐわんを前にして覚む大昼寝
地下足袋の蹠を見せて大昼寝
雲中に昼寝決め込む岩手山
厚雲に昼寝かこてる岩手山
昼寝して一汐木めく吾が痩躯
腹にタオル一枚掛けて大昼寝
腸の水の山彦昼寝覚
昼寝より目覚めて妻よ今何時
昼寝より目覚め一ト言今何時
昼寝より目覚めて浦島太郎めく
昼寝して素肌に知れる風の向き
定年の昼寝三昧風に覚む
寝そべってそのまま昼寝水底のごと
焼きおにぎり二つほおばりあと昼寝
藺枕とタオルを抱え昼寝どき
ぶつかって物音生まる昼寝どき
泡沫のなほ立ち昇る昼寝覚
昼寝どき彼の世此の世を往き来して
昼寝覚痩せぎすの身の残りけり
二階に母階下にわれら昼寝どき
昼寝覚む身起し浦島太郎めく
昼寝してすっぽんぽんの腹ひやす
昼寝してまた舞ひ戻る恐山
腹に掛くタオル一枚大昼寝
うだる日は昼寝に如かず鰻の日
定年の身過ぎ悠々大昼寝
体調を保たんが為大昼寝
麻酔利くやうにころりと大昼寝
つれあいの寝息背らに三尺寝
豪遊のあとは皆目昼寝覚
父の日の昼寝セットのプレゼント
太刀魚のごとく身を折り昼寝せり
昼寝覚む身ほとりなにがなし寂し
昼寝とは暑気やり過ごす為の智慧
大昼寝腹這ひ伏してマンタのごと
斯く蒸せばひらきなほりて大昼寝
ところどころ昼寝などして日をかせぐ
いざりうをのげに恐るべき昼寝貌
「豆腐ノ辯」読みてさらりと昼寝かな
武具馬具と昼寝覚めたる人云うか
掠れごゑ中途半端に昼寝して
昼寝より覚めてどこぞの馬の骨
昼寝して手足遠のく心地せり
昼寝して恐竜の角よぎる夢
昼寝覚出づる言葉のあぶくめく
昼寝して我は当家の山頭火
発端に記憶を戻す昼寝覚
回想の筋がちぐはぐ昼寝覚
蜀山人こんな顔して昼寝すや
梟の置物模糊と昼寝覚
老人の早起き疲れ大昼寝
乱読の書を抛り投げ大昼寝
昼寝覚てのひらの斯くやはらかし
昼寝覚頭のもやもやとれるまで
昼寝覚瞬きしてもひとりぼち
昼寝してなほ余りある今日の昼
泉のごと笑みを浮かべて孫昼寝
大昼寝エイのごとくに打臥して
昼寝覚何か探せる目付して
昼寝覚記憶の断片(かけら)繋ぎゐて
奥羽より手ぶらで戻る昼寝覚
浦島は太郎といふ名大昼寝
昼寝覚潰れしこゑを立て直す
浦島の翁よろしく昼寝覚
口つけて昼寝のあとの烏龍茶
昼寝覚やっと合点のゆく風情
何もかも忘れ昼寝の真っ最中
昼寝して飛脚行き交ふ東海道
昼寝覚素通る猫が足袋履いて
昼寝する姿は八つ目鰻のやう
読むことはここまでにしてあと昼寝
読みかけの本のほとりに三尺寝
昼寝して力の脱け方佳き寝相
昼寝して雲散霧消時の枷
昼寝より覚めて暫しの現(うつつ)闇
流れ藻の漂ふごとく昼寝して
お昼寝の往復鼾船室に
(末尾は句集名)
日向水 /
水替えの金魚のための日向水
日向水加賀ノ千代女をそこに置き
雨乞
雨乞踊法螺貝ぶおぅと吹ける中
雨乞に獺(おそ)の真似事したりけり 素抱
(末尾は句集名)
捕虫網 /
垣内にずんと伸びくる捕虫網 寒暑
草原の端っこ押え捕虫網 素抱
捕虫網かなぐり捨てて鳩追ふ子 暮津
捕虫網ぬうっと蝉の背後より 暮津
捕虫網押えたままで大きな声 素抱
捕虫網空振りの棹一閃す 素抱
捕虫網継ぎ足す棒が見あたらず 素抱
捕虫網産土の森一漁り 素抱
捕虫網持ってほっつき歩きけり 鳩信
捕虫網出会ひ頭の蝶逃がす 石鏡
捕虫網蝉を大地に押さえ付け 素抱
捕虫網二つ母子の並みゆける 暮津
捕虫網破れかぶれに振る始末 素抱
捕虫網戻りはママがうち担ぎ 素抱
捕虫網脇に横たえ砂遊び 素抱
捕虫網ひらひら池の蜻蛉捕り
捕虫網行進曲のごと進む
捕虫網持つ子恐し庭の百合
山宿の子の捕虫網玄関に
棒ぎれに棒ぎれ足して捕虫網
捕虫網大き風来てぱたと倒る
捕虫網ひっそり置かれ孫は来ず
一匹も捕れぬと投げ出す捕虫網
ちびっ子に幟のごとき捕虫網
捕虫網空振り多し池ほとり
捕虫網門に立て掛けある昼どき
バッタ得て子の胸張れり捕虫網
梅雨明けの何捕るつもり捕虫網
捕虫網持ちて大根台地に佇つ
捕虫網携え雪渓渡るかな
捕虫網持つ子の四肢のやはらかし
捕虫網ふはふはさせゆく女の子
生垣の向うを通る捕虫網
(末尾は句集名)
跣足 /
シロヨモギ素足になれといふごとし 燕音
ぷくぷくの素足むんずと赤子立つ 宿好
ロシア船員跣足であるくタロ芋島 寒暑
干潟踏む素足の白くさみしけれ 燕音
混浴の女岩踏む跣の音 素抱
山荘の板敷素足よろこべり さざなみやつこ
渚まで熱砂跳ねゆく跣かな 素抱
真砂踏むよさを知りたる跣の子 素抱
素手素足ずいぶんすっきりした色に 鳩信
素足となり踏んづけてみぬオカヒジキ 燕音
素足吹く風あり本を読み継げり ぱらりとせ
父の日の素足すうすうしてゐたり 素抱
ちょっとした砂丘をあるく素足の秋
素裸の肋に響く秋の蝉
いつ見ても痩せの自信のなき裸
金魚透く裸電球にてありぬ
駆け回る砂蟹素足むずむずす
段をなす裸燈目を射る酉の市
これ地震か咄嗟に裸にはおるもの
手拭いを絞りてぬぐう裸かな
はらと落ち抜け毛のあたる裸かな
無防備な裸の八月十五日
赤裸々に生きていりゃこそ百日紅
けふいちにち裸でとほす巴旦杏
ごろ寝して裸の王様すだれ裡
裸形(はだか)にて湯浴び孔子も権助も
銭湯の徳を数えて赤裸
人の前御免なさいと素っ裸
賢愚邪正貧福貴賎(けんぐじゃしょうひんふくきせん)皆裸(浮世風呂)
真裸の腹に布きれ当て昼寝
素裸にて地震の最中におもふこと
裸仕事疾うに脂の切れし吾
虫刺され酸の如きを裸身に
湯殿の蚊裸の吾に対しけり
小屋組の裸灯連ねて一の酉
机下に置く素足を含め秋風裡
押相撲裸叩いて観戦す
急雨来る韻き裸にはおるもの
裸癖つきし家居を改む秋
放映の龍陵会戦裸でみる
作務衣より素足抽んで庭仕事
玉すだれ裸叩いてゐる男
半裸にて炎ゆる火星を探り当つ
湯治棟覗き半裸の日帰り湯
混浴のひょうと上がれる赤裸
露天湯の裸の一人豆粒ほど
混浴の磐に立てる真っ裸
西日中裸たたきて喝入るゝ
台風にひらきなほりて真っ裸
タオル一枚はおる裸やバツ悪し
裸にて客と応対するはめに
裸に何か引っかけて出る玄関さき
孫痒がる素足可成の虫螫され
半裸にてけふも暑さと奮闘す
夏休家駆け巡る跣の音
子の三人跣足でちょこちょこ砂遊び
暑さにもこれから馴れゆく半裸身
保育児の跣足で踏める朝の土
裸電球杜に巡らせ祭り待つ
金亀虫ぶんぶと裸燈せゝりをり
水遊びする子の跣足鳩も亦
裸にてごろ寝する日の始まりぬ
甚平や草履素足に馴らしをり
半裸にてピザ生地を熨(の)す三枚目
宅配の人にあはてる裸かな
水虫に好かれずに来しこの素足
六月の作務衣に通す素手素足
波を見て干潟踏みしむ白素足
素手素足真白に透けて汐干狩
真裸の並木囀り初めにけり
手術着に所詮独りとなる裸
朝風がいちばんうまし素裸に
真っ裸辿り着きたる正念場
草履ばき素足隆々安来節
小田原産干物売店梅雨裸燈
心地よき素足干潟を蟹の這ふ
真昼間裸灯連ねてべったら市
べったら市裸灯に透ける麹粒
扇風機に似てくる骨だらけの裸身
寂寞と昼の扇風機と裸身
素足で踏む砂の感触弘法麦
素足になる浜弁慶草のほとり
砂地には素足がよろしシロヨモギ
素足もたのし浜弁慶草のほとり
大椨の裸一貫凩に
久に出て裸木目立ちそむ東京
素通しの風来る部屋に裸寝す
湯中りをせぬやう一服とり裸
巖窟に裸辯天舟蟲這ふ
神妙に裸辯天見て暮春
先生の裸清拭目に浮ぶ
朔日の朝の裸に喝入るゝ
恐山巡りの素足投げ出せり
けふも裸朝から野球観戦す
もり上がる傷跡裸愉しめる
診察のそばかす裸裏返す
素裸を朝からたのしむ誕生日
素足佳しクロイソカイメン踏んずけて
湯上りの素足さらっと拭きにけり
裸に電極五箇所取り付け心電図
函抱ふ裸可笑しやレントゲン
孫が来て裸のうへに羽織るもの
素っ裸初めての蚊を呼び寄せて
老体に近づく裸にも産毛
烏賊釣船百の裸灯のきんきらきん
パレードに立ちんぼ素足疲れかな
パントマイム己れを支ふ素足かな
江ノ島の裸弁天東風吹けり
(末尾は句集名)
裸 /
グラビア版カレンダーあり薔薇と裸婦 宿好
けふいちにち裸でとほす巴旦杏 暮津
これ地震か咄嗟に裸にはおるもの 暮津
ごろ寝して裸の王様すだれ裡 暮津
セザンヌの裸体習作深む秋 燕音
タオル一枚はおる裸やバツ悪し 素抱
はらと落つ抜け毛のあたる裸かな 暮津
烏賊釣船百の裸灯のきんきらきん 寒暑
丸裸怪童丸は鯉抱く 燕音
急雨来る韻き裸にはおるもの 石鏡
居間塞ぐ裸寝妻に咎められ 素抱
玉すだれ裸叩いてゐる男 素抱
金亀虫ぶんぶと裸燈せゝりをり 素抱
賢愚邪正貧福貴賎(けんぐじゃしょうひんふくきせん)皆裸(浮世風呂) 暮津
江ノ島の裸弁天東風吹けり 寒暑
混浴の飄(ひょう)と上がれる赤裸 素抱
手術着に所詮孤りとなる裸 鳩信
真裸にて辿り着きたる正念場 鳩信
診察のそばかす裸裏返す 随笑
赤裸々に生きていりゃこそ百日紅 暮津
扇風機に似てくる骨だらけの裸身 燕音
銭湯の徳を数えて赤裸 暮津
素裸に電極五箇所心電図 寒暑
素裸を朝からたのしむ誕生日 随笑
台風にひらきなほりて真っ裸 素抱
宅配の人にあはてる裸かな 素抱
虫刺され酸の如きを裸身に 暮津
朝刊をさてと開くや丸裸 随笑
湯殿の蚊裸の吾に対しけり 暮津
函抱ふ裸可笑しやレントゲン 寒暑
無防備な裸の八月十五日 暮津
裸形(はだか)にて湯浴び孔子も権助も 暮津
裸仕事疾うに脂の切れし吾 暮津
裸体(はだかみ)の前を押さえて「御免なさい」 暮津
裸電球杜に巡らせ夏祭 素抱
老体に近づく裸にも産毛 寒暑
素裸の肋に響く秋の蝉
いつ見ても痩せの自信のなき裸
金魚透く裸電球にてありぬ
段をなす裸燈目を射る酉の市
手拭いを絞りてぬぐう裸かな
人の前御免なさいと素っ裸
真裸の腹に布きれ当て昼寝
素裸にて地震の最中におもふこと
小屋組の裸灯連ねて一の酉
押相撲裸叩いて観戦す
裸癖つきし家居を改む秋
放映の龍陵会戦裸でみる
半裸にて炎ゆる火星を探り当つ
湯治棟覗き半裸の日帰り湯
露天湯の裸の一人豆粒ほど
混浴の磐に立てる真っ裸
西日中裸たたきて喝入るゝ
裸にて客と応対するはめに
裸に何か引っかけて出る玄関さき
半裸にてけふも暑さと奮闘す
暑さにもこれから馴れゆく半裸身
裸にてごろ寝する日の始まりぬ
半裸にてピザ生地を熨(の)す三枚目
真裸の並木囀り初めにけり
朝風がいちばんうまし素裸に
小田原産干物売店梅雨裸燈
真昼間裸灯連ねてべったら市
べったら市裸灯に透ける麹粒
寂寞と昼の扇風機と裸身
大椨の裸一貫凩に
久に出て裸木目立ちそむ東京
素通しの風来る部屋に裸寝す
湯中りをせぬやう一服とり裸
巖窟に裸辯天舟蟲這ふ
神妙に裸辯天見て暮春
先生の裸清拭目に浮ぶ
朔日の朝の裸に喝入るゝ
けふも裸朝から野球観戦す
もり上がる傷跡裸愉しめる
孫が来て裸のうへに羽織るもの
素っ裸初めての蚊を呼び寄せて
(末尾は句集名)
肌脱 /
日焼 /
ビーチバレーの日焼けピチピチガールかな 随笑
山百合や腕うっすら日焼して 鳩信
実家にて油売りくる日焼妻 寒暑
先生に日焼顔見す診察日 随笑
着てみせて旅装のきまる日焼妻 寒暑
日焼けして二等船室雑魚寝組 寒暑
日焼せし腕ものいふホームラン 燕音
鼻っ柱少し日焼けて水を遣る 暮津
虫螫され腫れこんなにと日焼け妻
自転車にサッカーボール積み日焼け子
湯に漬けて痛み覿面日焼け首
日焼け爺指折り後生掛俳句会
鼻の辺り少し日焼けて大道芸(野毛大道祭)
蒲の穂に日焼けし腕の黒づめる
日に焼けて投手地肩の強さうな
日焼顔イチロー何とホームラン
日焼け子と砂城築き釣り合間
長袖に妻は日焼を危ぶみて
いっぱしに日焼けし心臓外科患者
甲子園返り日焼けの極付
女たち日焼け止めして尾瀬沼行
花見とて山の日焼けをおそれけり
木落としの始終見る顔日焼けして
雀斑の日焼せる顔大写し
素振りにも見ゆる片鱗打者日焼
河骨を日焼けいとはず見ていたり
日焼顔熊除けの鈴借りゆけり
日焼せし腕のひりひりウトロの湯
崎人の南瓜もどきの日焼け顔
鎌倉行妻は入念日焼け止
岩鼻に舟虫共々日焼けして
日焼け肌ヒリリと掛湯浴びせけり
湯壺にあり白馬岳で日焼けせし面々
膚白に白馬岳の日焼け滲みにけり
日焼けして下山して入る白馬の湯
両腕元湯に日焼け労れり
日焼けして蟹の爪色両腕
首.腕ヒリリと日焼け尾根歩き
色白の日焼けて繍線菊草の色
八方尾根下山首筋日焼けして
ピカソ描く「顔」に日焼け子あっぷっぷ
日焼け子にピカソの描く貌ぎくしゃく
日焼け顔団体客のわんこ蕎麦
日焼して地図見ながら三陸路
恐山まだまだいける日焼顔
恐山地獄巡りの日焼かな
日焼顔揃えて本州最北端
年寄の日焼け気にする祭かな
同窓の日焼け漁師のじゃん言葉
日焼子の鬼ごっこするおけさ丸
(末尾は句集名)
船遊び /
遊船の波切り進む白詰草 素抱
三陸の濃霧に追はれ遊び舟 随笑
堤より花の散り込む遊び舟 宿好
岩牡蠣の岩場の向う遊び舟 寒暑
遊船に夏の灯の入る酒田港
遊船待つ片手に箱根周遊券
江ノ島の岩屋より出て遊び舟
遊船といふも激浪奥石廊
船遊び黒潮洗ふとっぱづれ
遊船に傍若無人の雨と浪
遊び舟北上夜曲流しつつ
遊船を降る身例はば搖れ昆布
はためかせゆく遊船の日章旗
空中より海猫の糞浴び遊び舟
遊び舟手摺りに海霧の冷え及び
遊船の空中に海猫いつまでも
やみくもに遊船はしる海霧の中
遊船の勇みて海猫をごぼう抜き
遊び舟スワン行列湖ほとり
(末尾は句集名)
ボート /
沖ばかり見てボート屋のアルバイト
ボート愉しむカップル模して菊人形
毘沙門沼ぺたぺた足漕ぎボートかな
ボート漕ぎ一方的に射す西日
ヨット /
お披露目のごとくヨットの快走す 寒暑
ペデュキュアの女ヨットの沖をみる 素抱
ヨット操る男サルビア色のシャツ 素抱
ヨット馳せグレープフルーツ色の海 ぱらりとせ
大南風途絶えてへなへなヨットの帆 素抱
鐙摺(あぶずり)のヨット馳すなり薔薇の窓 素抱
美学にして幾何学ヨットの帆走は 暮津
檳榔樹ヨットスクール開校中 素抱
帆走はヨットの美学いや幾何学
遠眼鏡校名入りのヨット馳す
学習院・明治・法政ヨット馳す
けふヨット出すには海が暗すぎる
篠の沖数ふる程のヨットかな
ヨット見る男半袖日和かな
艇庫よりスワンを運ぶごとヨット
風納まる大根台地にヨット殖ゆ
樟脳舟めきしヨットが眼下馳せ
はたはたとヨット接近危うしや
泡沫と同じ淡さのヨットの帆
羽蟻のごとヨット俄に殖ゆる海
いっせいにヨット吹き曲げ大南風
花きぶしヨット奔らす風が吹き
(末尾は句集名)
波乗り /
サーファーに勝手の違ふ風が吹き 暮津
サーファーの臀部凛々しく南風吹く中 宿好
波のりのこゑスコールのあがる海 ねずみのこまくら
サーファーのボデイスーツの滴る黒
サーファーの足掬はるる大卯浪
海坊主繰り出す波にサーフィンす
木の葉のごとサーファー転落波の谷
波の背に今馬乗りの一サーファー
サーファーら小雨の浜に火を焚きて
転落のサーファー波の谷隠り
サーファーを呑まんと迫る波は鱶
(末尾は句集名)
プール /
プールサイド雨の落葉のわっさわっさ 鳩信
船の旅プールではしゃぎ夜はダンス 随笑
プール張り箱根町立小学校
プールに水たっぷりと張り小学校
プールの面葉ざくら季の波立てり
市営プール閑散として盆の入り
根岸線市営プールが見えにけり
ただならぬ椎の匂ひのプール際
(末尾は句集名)
泳ぎ /
コスモスを泳がす風の弧を描き 素抱
シンクロナイズドスィミング咲かす四肢の花 宿好
ずいぶんと泳いだつもり本人は 寒暑
ダイビング黄膚台頭アジア勢 宿好
チョウチョウウヲ吻吻云うて泳ぐなり さざなみやつこ
のうのうと髯のオジサン泳ぎけり 燕音
ひょうきん者ねずみ泳ぎのネズミフグ 燕音
まんぼうはまんぼう泳ぎ春隣 燕音
みずくらげ波に反発して泳げり 素抱
むらさきに松魚泳がし宵の酒 素抱
よき浪が来て海牛を泳がしむ ももすずめ
われ泳ぐ下にテーブルサンゴ礁 ねずみのこまくら
泳ぎ出す亀の子鼻を反らしけり ぱらりとせ
泳ぎ来る亀を亀見て日の永し 宿好
泳げるは日本古来の草亀とよ 素抱
乙なもの大海馬の立ち泳ぎ ぱらりとせ
海牛の泳ぎ歩きといふものす ももすずめ
絵看板潮噴く鯨が泳いじょる 寒暑
寒泳者浪子の海を前にせり ぱらりとせ
竿灯は大きく宙を一泳ぎ 寒暑
漁られ馬穴にイソメ泳ぎをり 素抱
鯉に伍し亀の泳げる仏生会 暮津
女川(おながわ)の優しき波に泳ぎけり 寒暑
甚平の腰泳がせて地震最中 暮津
水泳の足の切り傷オキシフル 鳩信
青芝を蜥蜴は泳ぐやうにして 石鏡
停年の一年前の立泳ぎ 燕音
皮下脂肪揺りてセイウチ泳ぐなり ぱらりとせ
来客にすててこの腰泳がせて 石鏡
力泳のその名もウケグチイットウダイ 燕音
空中を泳ぐほかなき朝顔蔓
駄目駄目と云ひつ泳ぎ子海より抜く
どしゃぶりの雨に泳げる金魚草
月中過ぎ泳げる人の頭数
泳ぐより海中歩行愉しめり
苗箱の苗薫風に泳ぎけり
亀泳ぐ水も緑に太鼓橋(小石川 後楽園)
鼻立てて亀の泳げり薫風裡
石鯛を槽(ふね)に泳がせ年の果
畳の上泳ぎ渡れる守宮の子
南谷いもり泳げる池ほとり
あめんぼう関節利かし泳ぎをり
青芝を蜥蜴は泳ぐやうにして
腰泳がせ亡者踊の二タ三足
江ノ島をうしろに廻し泳ぎけり
何故かお腹上にし泳ぐ金魚あり
泳ぐ蛇見遣る戦慄抑えつゝ
曇日の腹裏返し蝌蚪泳ぐ
晩酌の肴に欲しき鰺泳ぐ
海苔採の腰が泳いで採り疲れ
鴨泳ぐなどと体裁よき言葉
でで虫の泳げる風のなまぬるき
草の蔓木の蔓泳ぐ五月空
河童らに呼び掛く水泳予備体操
きょときょととアミメウマヅラハギ泳ぐ
停年の一年前の立泳ぎ
泳ぎっぷりさぞやのサヨリ大安値
立泳ぎ人間様より数等まし
若衆の風に泳ぐ手総流し
もくもくと泥巻き上げて亀泳ぐ
花ミモザ風泳がしてゐたりけり
シャガールの空中泳ぐ魚に手
万灯を泳がせゆくや風の中
大風が来て葉鶏頭泳がする
寿司種の鱚の泳げる大洗
一ト泳ぎせんか石蓴を踏みしめて
一とほり海月泳いで見せ呉れぬ
肥満児のおたまじゃくしも泳ぎをり
おたまじゃくしへなへな泳ぎしたりけり
亀の子の足掻き泳ぎといふものす
亀の子の泳ぐ手拍子足拍子
暮市のバケツに泳ぐ活どぜう
風呂敷を煽るが如くエイ泳ぐ
まんばうの蝉の味ある泳ぎ方
竿灯は大きく宙を一泳ぎ
腰泳がせ金魚掬ひの女の子
ちびっ子の水泳教室鏡空
泳いじょる潮噴く鯨の絵看板
花摘みのポピー泳げる磯畑
まんばうの泳ぐ上総の國に来し
星天に手先泳がせ阿波踊
(末尾は句集名)
箱眼鏡 /
水覗見漁(みずきりょう)木地新しき箱眼鏡 石鏡
ふなばたに箱眼鏡のみ新しや 石鏡
海峡の海胆を探せる箱眼鏡 随笑
少年の尻のぷかぷか箱眼鏡
(末尾は句集名)
海水浴 /
バーベキュー海水浴と欲張りぬ 素抱
はしゃぐこと尻をぷりぷり浮輪の子 素抱
ポカやってもう追ひつけぬ浮輪かな 寒暑
海を見て浮輪ふうふう膨らます 素抱
絵本のやう赤燈台と浮輪の子 寒暑
五能線浜に手を振る浮輪の子 寒暑
砂の城築きし王子潮浴びに 素抱
潮浴びのでぶちゃん波を跨ぎゆく 暮津
潮浴びの手の萎びをり焼むすび 素抱
浮袋二箇膨らます役はパパ 暮津
浮袋並べ干しある夜の庭 随笑
浮輪の子おどおど臍の深さまで 暮津
浮輪の子くらげの拾いごっこして 素抱
浮輪の子嬉々と寄る波跨ぎゆく 暮津
赤浮輪黄浮輪一つ波に乗り
小柴の子ぴちぴちぱしゃぱしゃ海水浴
浮輪の子嬉々とし波を跨ぎゆく
水しぶきばかり挙げをる浮輪の子
砂の城壊して築き浮輪の子
浮袋鳴らす魚とよ篤と見る
浮輪抱え江ノ電に乗り込む子ら
浮袋抱きかかふ子に海時化て
潮浴みの子の海上がる新松子
花柄のパンツ脱げさう浮輪の子
裕次郎の葉山子犬も汐浴びす
(末尾は句集名)
海水着 /
スタイルは細魚に優る水着かな 随笑
ちびっ子の印ばかりの水着かな 素抱
ぴっちりと水着着込めばいるかの胴 暮津
海水着はちきれさうよ如来肌 宿好
海水着より大胆に海紅豆 鳩信
海水着踏みつけて浴ぶシャワーかな さざなみやつこ
彩どりを抑えし水着長女なる 暮津
次男より借り原色の海水着 寒暑
水着より潮したたらせバーベキュー 素抱
大は小兼ねるといふが海水着 暮津
大胆な女(ひと)と水着を見て想ふ 暮津
胴廻りちょっと足りない海水着 寒暑
水着濡れ後は野となれ山となれ
餅肌のはちきれさうな縞水着
昔でいふタンクトップの水着かな
水着着し吾をおもふも鎖夏法
(末尾は句集名)
海月 /
うなばらに遊ぶ水母とプランクトン 素抱
くらげ文様六文銭に相似たり 燕音
その華麗なること水を蹴るくらげ 素抱
とりあへず海月のやうに浮いてみな 暮津
ミズクラゲほうと魅入れば又昇る ぱらりとせ
みずくらげワルツのステップ踏むごとし 素抱
みずくらげ波に反発して泳げり 素抱
ゆたのたゆた海月に波の子守唄 素抱
越前海月来襲弓形列島に 暮津
花火の傘爛れかつをのえぼしかな 燕音
海に水母陸(くが)にあぢさゐ漂へる 素抱
海を出て水母の一つ昼月に ぱらりとせ
海彦の泪渚に透く海月 素抱
器用に世渡りて海月の優柔を 暮津
月の夜の海月が考へさうなこと ぱらりとせ
水を掻く分だけすすむ海月かな 素抱
早春の海月石蓴を褥とす 素抱
大濤に手玉にとられみずくらげ 素抱
昼月をあふぎ海月の波枕 宿好
昼月を母としくらげ生れけり 素抱
日の本を襲ふ海月と元寇と 暮津
如何なこと海月だらけの日本海 暮津
波に乗り後世(ごせ)は海月の風来坊 素抱
白日傘水母の海を覚ましゆく ねずみのこまくら
普段着の水母の単衣よかりけり 燕音
浮ついた海月の部類に吾(わ)も入るか 暮津
風邪の身の海月さながら厠まで 宿好
返されし磯の海月に昼の月 素抱
麻酔利き水母漂ふごとくなり 鳩信
葉山沖わたるアンドンクラゲかな 素抱
羅を着こなし上手水海月 随笑
霊場巡り水母のやうな出で立ちに 随笑
黒砂にあへなく水母打ち揚げられ
人間に飽きしと水母水族館
臥寝して磯の水母と海牛と
浅春の稚き水母寄る浜辺
浅春の海に生れそめ透き水母
来襲は海月元寇以来なり
如何なこと海月だらけの日本海
真っ先に水母がのぼる潮入川
わが孫の美雨(みう)が海月に触った夏
天帝の放てる水母海渡り
図案として如何海月の紋所
反転し波蹴る磯の海月かな
海月の笠向き変ふ自力はた他力
花火の煙海月となりてさすらひぬ
月替れば海月の軸など宜しかり
淋しさを託ち海月の群れなせる
浮かれもの海月渚にとどまらず
波に乗り後世(ごせ)は海月の風来坊
海月寄る渚をひとりとぼとぼゆく
海月殖ゆ海に人出て夏旺ん
運河べり海月の殖ゆる祭まへ
海彦の泪渚に透く海月
梅雨どきの水母はかたまり易きかな
海に水母陸にあぢさゐ漂へる
風変り海月の向きは波の向き
岸壁に揉まる海月の硝子玉
波に乗り水母はワルツ踊るごとし
水母押す波一うねり二うねり
黒船の久里浜港に海月寄る
水を掻く分だけすすむ海月かな
水塊を抛りてすすむ海月かな
水に生れ水の軽さの浮き水母
昼月に海月末路の身を晒し
早春の海月小ぶりよ波の間に
早春の海月あをさを褥とす
早春の海月渚にもう一つ
病み臥す身昼は海月に夜は海鼠
麻酔科の水母先生注射せり
普段着の海月の単衣よかりけり
砂まみれ水母渚に張り付けり
お岩さん海月のごとく手を垂れて
大きく息継げる海月を見倣へり
こちら向き海月の四つ目小僧かな
海月見る時間たっぷりありにけり
追風に乗りて海月の波枕
上げ潮の水母運河をどんぶらこ
玄冬の海月打ち揚げられ濁る
冬の潮漂着海月に韻きけり
水の色月の色して冬海月
冬渚裏返しみぬ海月の襤褸
礁波冬の海月のどんぶらこ
冬麗の浜に海月の乾びそむ
乾びそむ海月を戻す冬の海
海峡の冷やっこければ海月見ず
木橋より浮世離れの海月見て
一とほり海月泳いで見せ呉れぬ
昼月に向きて海月の四つ目かな
汐入の池に海月の闖入す
潮北に北に海月の風来坊
晩夏の波くらり海月を突き上げて
ごろ寝して海月の心地夏の航
糸海月真珠嬲るは先のこと
海月のごと厠に起てるぎっくり腰
(末尾は句集名)
夜光虫 /
船虫 /
海峡の舟虫にして黒光り 随笑
時化るぞと牢名主めく舟虫が 随笑
舟虫がちょろちょろ足の踏み場なし 随笑
舟虫に危害加えることなんぞ 燕音
舟虫のしよぼしよぼ歩き雨に釣る ももすずめ
舟虫のどちらへ進む髯ある方 随笑
舟虫の俗気俗気を呼ぶごとし 鳩信
舟虫の梁山泊を覗きけり 燕音
舟虫の鬚をそよろの翁ぶり ぱらりとせ
舟虫や怪傑ゾロを彷彿と ぱらりとせ
舟蟲の吾に続けと云ふごとし ぱらりとせ
舟蟲の這ひ廻る岩減りもせず ぱらりとせ
船虫散る活路開けるごとくなり さざなみやつこ
突堤に舟虫しゃしゃり出て祭 素抱
日曜日舟虫奔る焼津港 燕音
老舟虫時化占ひの髭を立て ぱらりとせ
船蟲に持ち場持ち場のあるごとし
水槽の蔭より舟虫ちょろと出づ
舟虫も懼れをなせるけふの波
舟蟲に負けず劣らず浅蜊堀
老舟虫剣崎沖の黄昏に
舟虫の梁山泊を覗きけり
舟虫幼な岩盤の色貰ひけり
舟虫のおびえ心に岩を抱く
舟虫のほの朱き脚とどまれり
舟虫の千の眼潜む岩陰に
舟蟲に回り込まれて退路なし
東尋坊舟虫に降る潮しぶき
岩鼻に舟虫共々日焼けして
巖窟に裸辯天舟蟲這ふ
巖窟に萬の舟蟲勢揃ひ
舟虫の髭一斉のぞめきかな
海峡の潮滔々舟虫に
舟虫の潮じめりに海時化る
舟蟲をびゅうと吹いて南風逸れし
舟虫の髭覗かせて岩庇
舟虫の一族潜む岩庇
おそるおそる舟虫の上に影落とす
舟虫這ふ岩をひょいひょいツブ貝採
舟虫に跼めば尻尾見えて来て
舟虫のどちらへ進む髯ある方
舟虫の古老は髯を動かすのみ
舟虫追ひ蛸壺色の村に入る
(末尾は句集名)
海女 /
【参考】
拙句 鮑 (高澤良一)
腕っこき海女の揚げたる大あわび ぱらりとせ
解禁の海女の磯入り礁蔭
海女小屋は楽屋のやうな佇まひ
広額の汗晶々と古参海女
あわび取り海女図何より涼しさう
(末尾は句集名)
天草取 /
天が下村道を借り天草干し
天草干し吾を余所者扱ひす
磯の土産からから天草一にぎり
天草屑掴み浜辺に佇ちあがる
掌にとりてどこか天草らしきもの
脱色のからから藻屑天草か
天草(てぐさ)採済みし息子に風呂焚く婆
富浦の天草路端にちらし干し
ていねいに天草干され長方形
天草干す婆の応(いら)えの突っ慳貪 素抱
天草採(てぐさとり)序でに引ききし鶏冠のり 素抱
風一夜天草浮いて生口島 寒暑
揚げられて鹿尾菜天草一緒くた さざなみやっこ
(末尾は句集名)
昆布刈る /
昆布採漁の合間の蓴菜採
昆布干場がらくた石に春日かな
大間崎石を重しの干し昆布
夏の露昆布干し場の留石に 随笑
(末尾は句集名)
避暑 /
カンバスに避暑地の風も描き込めり 燕音
その上(かみ)は華族の避暑地お宮の松 寒暑
ナツメロに夫婦してのる銷夏法 寒暑
伊豆へ避暑今は山中今は浜 鳩信
吾が避暑とは浜辺一巡して来ること 素抱
避暑客で賑はふ三ッ星レストラン 燕音
避暑客に掲ぐ看板「神戸牛」 燕音
避暑客のたてこんでくる小海線 さざなみやつこ
避暑地風ブライダルコスチューム店のあり 燕音
避暑便りペイネのポストカードかな 燕音
風通るテラスにてピザ避暑家族 燕音
をみなへし小庭に植えて避暑気分
人ごとのやうに歩いて避暑地かな
消印はマッターホルン避暑便り
避暑散歩浜昼顔を摘んで来し
杖ならぬ気丈を頼み避暑散歩
風の吹く浜辺がよろし避暑散歩
万人はこぞりてこぞり過ぎて避暑
道しるべなど打ち避暑地の雨気まま
部屋の名に鳥の名並べ避暑山荘
庭草に避暑地の夕風起りけり
避暑季の軽井沢銀座歩きけり
レトロ調避暑宿選び泊りけり
ジープなど勢揃いせり避暑の宿
避暑の宿壁紙は茶とアイボリー
避暑山荘テラスに設ふバーベキュー
避暑の留守二十日鼠をあづかりぬ
避暑といふ乙なものをばいたしたく
猿が出て避暑地の自然散策路
東京に先づ出てそれより避暑の旅
避暑宿の白樺目覚めよき朝
避暑に来て仏ケ浦といふところ
(末尾は句集名)
夏休み /
ラジオ体操寝惚けまなこで夏休 素抱
ラジオ體操老人にこそ夏休 寒暑
夏休ゴジラ映画に夜を更かす 随笑
夏休ジグゾーパズル壊しては 素抱
夏休テレビひねればドキンちゃん 素抱
夏休了るをごねる隣の子 随笑
家族ごと家空け隣家夏休 素抱
主なき机の海の夏休み 鳩信
人ごとのやうに吾に来る夏休 素抱
人様のとる夏休傍(はた)よりみる 素抱
洗濯機朝から奮闘夏休 寒暑
入れ替り十日程とる夏休み 鳩信
武甲山どんと構えて夏休 宿好
夏休みこどものこゑの戻る路地
掃除草取夏休み最初の日
夏休み孫来て我が家に我が座無き
赤錆のぎしぎし始まる夏休み
お隣りに子供のお客夏休み
夏休みの子等と横濱開港圖
勤務先未だある裡の夏休み
立て混める週を外して夏休み
心臓の薬欠かさず夏休み
夏休み映画早朝割り引きにて
りんご園りんご吊して夏休み
はや背丈子に追ひ越され夏休み
反射炉と燈台巡る夏休み
網棚に父子のリュック夏休み
夏休みやや空いてゐる山手線
隣の子鉢に水遣る夏休み
東京に映画観に出て夏休み
すててこが離せなくなる夏休み
夏休み今年もごろ寐通しけり
夏休みの宿題お絵描き岩木山
夏休みお岩木を背の小学校
(末尾は句集名)
帰省 /
帰省せり蝿取リボン吊る家に ねずみのこまくら
帰省子の弥次郎兵衛めく手土産に ねずみのこまくら
帰省便り玄海灘に友釣ると ねずみのこまくら
自転車で駅まで運ぶ帰省の荷 素抱
おのづから話題は其処へ帰省のこと
正月の帰省空港大写し
カーフェリーにての帰省もあらむ暮
東京湾渡る帰省もありぬべし
連休の帰省ラッシュを大写し
若者と四方山話帰省バス
帰省バスどこをどう来て横手に着く
帰省して亡者踊りに更く一夜
又来よと帰省うながす鉦音色
帰省子の手を押し当てて花氷
帰省する人に持たせて鳩サブレ
一喬木帰省の蝉の見当たらず
帰省了ゆ前の家から物音す
(末尾は句集名)
夏期講習会 /
夏期講座先生三角定規もち
午からは頭も霞む夏期講座 燕音
(末尾は句集名)
林間学校 /
暑中見舞 /
ヤップより届き主治医の夏見舞 随笑
飲み仲間直腸断てりと夏見舞 随笑
絵葉書に貝のイラスト夏見舞 暮津
退職の挨拶兼ねて夏見舞 暮津
老いてなほ俳句は達者夏見舞
能筆の人でありしか夏見舞
差し障りなき返事して夏見舞
旅先を括弧でくくる夏見舞
鬼灯と見えねば横に句を添えよ(夏見舞)
アンパンマンは卒業とある夏見舞
気さくなるメールで済ます夏見舞
夏見舞発地は蔵王のお膝元
酒が徒の直腸断てりと夏見舞
妻こまめに合間を見つけ夏見舞
夏見舞ちらほら交じる郵便物
このところ蒸す日続きて夏見舞
享年を確かめおいて夏見舞
(末尾は句集名)
虫干 /
経行のごとく巡れる曝書の辺 さざなみやつこ
虫干しの開山語録と韓櫃と 燕音
背の崩る温知叢書を曝しけり ももすずめ
曝されて龍の取り巻く秋津島 ももすずめ
曝書などせんとて一念発起の日 宿好
曝涼の応挙の虎に真向へる さざなみやつこ
曝書して先鞭をなす野球の句
梅雨晴れの風入れ三面記事を読む
籠枕風入る部屋に試し当て
風入や脇幅として拾得圖
祥啓の耳毛の達磨お風入れ
風入れの厨子佛の金ン石蕗の金ン
文化財飛石風入れならねども
風入れや拝観靴の向き揃え
山百合や胸に風入れ一休止
有徳の王者の治世に出現。建長寺では風入れ
ぐぐぐいと引ける墨跡お風入れ
沢庵の寄進牡丹圖お風入れ
白描の三つ目の白沢(はくたく)お風入れ
開山の袈裟環.鶏口お風入れ
お風入れ慧可のぎょろ目に立ちすくむ
お風入れ道隆さまの洗面具
風入れの朱衣達磨百舌聴けり
風入れの瑞鹿山をうち過ぎて
時頼像方丈に在すお風入れ
曝書などせんとて一念発起の日
守り僧の火桶抱えるお風入れ
お風入れご坊控える堂の隅
鎌倉の流行(はやり)厨子佛お風入れ
風入れの絵図の地獄の責め道具
お風入れ縮れ胸毛の阿羅漢図
額草の籠字真っ黒お風入れ
お風入れ明日は我が身の地獄絵図
お風入れ一間四面の十王図
堂畳一段高くお風入れ
お風入れ丸山応挙は虎が得手
お風入れ柿渋いろの阿羅漢図
お風入れ一間一間に守居僧
方丈を大きく使ひお風入れ
お風入れ富士見西行手かざす図
閻王のお裁きの景お風入れ
伝開山着用法衣お風入れ
お風入れ時宗寄進の荘園図 円覚寺 お風入れ
お風入れ細胞に似て日本絵図
風入れて風吹きぬける夏の家
懐によき風入れて大桜
冬瓜のやうな雲出てお風入れ
(末尾は句集名)
【参考】
拙句 風入れ (高澤良一)
お風入れ丸山応挙は虎が得手 随笑
お風入れ慧可のぎょろ目に立ちすくむ 燕音
お風入れ道隆さまの洗面具 燕音
お風入れ涅槃図ごわと畳まるる さざなみやつこ
ぐぐぐいと引ける渇筆お風入れ (無準師範筆「菩提」) 燕音
一祖二祖六祖祖師像お風入れ ぱらりとせ
経行(きんひん)のごとく巡れる曝書の辺 さざなみやつこ
経櫃の参之内参お風入れ さざなみやつこ
時頼公強(こわ)装束のお風入れ ぱらりとせ
祥啓の耳毛の達磨お風入れ 鳩信
大温室全開バナナに風入れて ぱらりとせ
地獄絵の飯の炎となるお風入れ さざなみやつこ
伝牧渓伝何くれとお風入れ さざなみやつこ
背合せに吊らる軸物お風入れ さざなみやつこ
白描の三つ目の白沢(はくたく)お風入れ (*白沢は中国で想像上の神獣。よく人語を解し有徳の王者の治世に出現。建長寺では風入れの守護神とする) 燕音
曝書などせんとて一念発起の日 宿好
曝涼の応挙の虎に真向へる さざなみやつこ
風入や軸物入れの箱いろいろ さざなみやつこ
風入れの案内当山方丈にて さざなみやつこ
風入れの絵図の地獄の責め道具 随笑
風入れの役僧舟を漕いでをり さざなみやつこ
方丈を大きく使ひお風入れ 随笑
(末尾は句集名)
梅干 /
梅干に食のすすみて一膳半 暮津
気づかひの梅干茶漬忝なし 素抱
ひとごこち梅干茶漬かっこみて 素抱
門柱に婆の上げたる梅干笊
生身魂梅干半切れにて一膳
梅干茶漬うだる暑さを乗り切るには
塩馴れの梅干と云ふどれ一つ
干梅にけふの日当り二十粒
夜干梅もしやの雨を気遣へる
夜干梅匂へる中に寝つきけり
梅干しを干して女の苦労性
母なりに嫁なりに梅漬ける家
干梅に孫の酸き顔しかめ見せ
夜干梅曉闇の沖にかな
枕上ミ雨戸を隔て夜干梅
梅干して三日目になる身の翳り
(末尾は句集名)
土用鰻 /
鰻喰うて間延びした顔店を出づ 随笑
鰻喰ふ客を横目に鰻喰ふ 暮津
渓流に土用鰻を活かしをり 随笑
照り返し強し鰻の日の舗道 ねずみのこまくら
上背ある次男と土用鰻食ぶ さざなみやつこ
飯の量注文つけて鰻の日 暮津
(末尾は句集名)
土用蜆 /
老眼にも効き目のありや土用蜆
土用灸 /
暑気払ひ /
水たっぷり飲みて眠気と暑気払はむ 暮津
暑気払けふもやるかと山の神 暮津
割り勘の暑気払なら吾も乗れる 素抱
一丁の豆腐がありて暑気払 素抱
暑気払とは重宝なものなるよ
山珍の中華料理に暑気払ひ
暑気払ひ馬女々(マーマー)餃子にビール酌む
暑気払河豚のたたきに舌づつみ
肝吸ひに夕闇募る暑気払ひ
(末尾は句集名)
梅酒 /
飲み頃と持ち出してくる梅酒瓶 素抱
あれこれと梅酒造りの空壜出す ももすずめ
梅酒漬頓と忘れてゐしと妻
(末尾は句集名)
香水 /
順番が巡り来りて五香水
香水と毛皮に挟まれ初電車
早立の香水ほのと曳ける女(ひと)
天瓜粉 /
湯上りに天瓜粉など欲しきもの
髪刈って戻るにほひも天瓜粉
汗疹 /
銭湯で売って居るなり汗疹取
水虫 /
水虫に好かれずに来しこの素足
湯の花は水虫に効く宿夜長
暑気中り /
ジャカルタの夜の真んの闇暑気中り
麦湯して暑さ負けせぬ夫婦なり 宿好
(末尾は句集名)
水中り /
その嘔吐鮮烈にして水中り 素抱
バリに入る一つの儀式水中り 素抱
水中りコーラン聞いて遙かな目(追憶ジャカルタ) 暮津
水中りの洗禮を受くジョクジャカルタ 素抱
悄気るさま漫画のやうに水中り 素抱
ジャカルタの夜の椰子黒し水中り
本人の言ひ分だうだか水中り
郷に入りては郷に従ふ水中り
(末尾は句集名)
夏痩 /
こほろぎの腿に引け目や夏痩せて 暮津
ぶりかえす暑に打負けて易きにつく 寒暑
夏バテなし漫画を糧の青年は 寒暑
夏バテに百合根などよき煮てお呉れ 暮津
夏バテの我が身思へば酢豚など 寒暑
夏痩せてハダカイワシのご面相 燕音
夏痩せてブラキオサウルス仰ぎけり ねずみのこまくら
夏痩せて吾は肋の似非イエス 寒暑
夏痩せて妻の指圧の稽古台 素抱
夏痩せて拝み太郎の湯浴みなり 素抱
夏痩て花王石鹸また逃す 随笑
夏痩の肋凹ませハーモニカ 暮津
夏痩の腕ただ組みて無為無策 寒暑
夏痩は風体のみに非らざるよ 素抱
夏痩を映して湯屋の大鏡 暮津
夏痩を挽回せよとそぼふる雨 暮津
夏負けもせず来て蝦のチリソース 寒暑
夏負けをせぬやう齧る生野菜 寒暑
快眠を心がけ夏へこたれず 随笑
指圧教室夏バテの筋掴まれて 素抱
生来の痩せ夏痩せとは別に 素抱
昼餉共にして夏痩の弟よ 燕音
羊羹が何故か効きさう夏バテに 素抱
夏痩の痩の一語が韻くなり
のほほんと夏痩どころか手術痩
脇腹の白く夏痩したりけり
夏負けをせずあり地物の雑魚も佳し
夏負けて菜っぱ一束魚一切
体重計予期した通り夏痩せて
公園の夏痩雀親しげに
日めくりも夏痩せ月も半ば過ぐ
夏痩せて銭湯に浮く亀ごこち
夏痩と云ふて心の弱る日も
夏痩てふ顔を車中に探しけり
夏痩てふ顔を同車の向ひの者
昼餉倶にして夏痩の弟よ
夏痩せて大海馬に向ひ合ふ
夏痩て魅入る吾も亦ビュッフェ.ファン
夏痩て三度の食事軽くとり
夏痩の肋鳴らして床を起つ
夏痩といふは都合のよき言葉
夏痩せて薬害受くる左腎臓
(末尾は句集名)
寝冷 /
寝冷腹抱へて槽(ふね)の狼魚(おおかみうお) 燕音
(末尾は句集名)
夏風邪 /
キリストの鼻かむやうに夏の風邪 ぱらりとせ
夏風邪にうだうだ咳きてお恥ずかし 暮津
夏風邪に関節ゆるび流人めく 暮津
夏風邪に昇れる月のうすぼんやり 暮津
夏風邪の眼を茫々の海へ投ぐ 暮津
夏風邪の神経さはる後頭部 素抱
夏風邪の鼻紙使ふ一二枚 素抱
夏風邪引く面目なしと云ふ他なく 暮津
抜け気味の夏風邪妻よ無理するな 暮津
腰にくる痛みは夏の風邪ならん
筋肉に痛み走れり夏風邪か
夏風邪の因をさんざん探れども
うっかりとはこのこと夏風邪ひかうとは
夏風邪をひき痩せ気味の誕生日
抜け気味の夏風邪ここらが曲り角
夏風邪の咳くつくつと嗤ふごとし
夏風邪を軽く見なせし故の罰
軽さうにみえて夏風邪軽からずy
夏風邪てふ飛んだ苦労を背負い込みぬ
またかかり一度は懲りし夏の風邪
夏風邪の鼻紙使ふ一二枚
夏の風邪貧乏籤を引くごとし
夏風邪をひくなと先生おっしゃらる
(末尾は句集名)
日射病 /
日射病倒れし其処はジャカルタで(若き日の出張) 素抱
(末尾は句集名)
線香花火 /
砂の上に醒めて線香花火屑 素抱
手花火に興じゐしこゑ引っ込みぬ ぱらりとせ
手花火の煙くる部屋にシーツ敷く ももすずめ
手花火の音の奇天烈奇天烈と 鳩信
手花火の玉より大き焼夷弾 寒暑
線香花火じゅじゅじゅじゅじゅじゅと牡丹より 素抱
線香花火一本頒けてもらひけり 素抱
線香花火終の柳は公家のひげ 素抱
線香花火踊る小松葉大松葉 素抱
子ら興ず手花火といふ煙あそび
線香花火沓脱石を焦がしけり
紙縒げに露けく線香花火屑
露しとど帯びて線香花火屑
人魂のいろの手花火風に消え
(末尾は句集名)
花火 /
あがりたる初手の花火の高さかな ぱらりとせ
うしろより声あり花火の出来を云ふ 暮津
おとぼけの花火も交じる前半部 寒暑
クレヨン画原色花火描きなぐり 寒暑
しけた音残して揚がる昼花火 暮津
シンシナティキッド連発花火かな 随笑
ストトンとさきがけ花火揚がりけり ぱらりとせ
どかどんと犬へこまする大花火 随笑
どぶ板通りねずみ花火が駈け抜けて ねずみのこまくら
どんじりに控えて音も凄花火 寒暑
どんぷすと岬辺りの遠花火 暮津
ナトリューム色の花火に顔染めて ももすずめ
にっぽんの芯円菊形花火かな 寒暑
パリパリと揚がりズドンと花火了ふ ももすずめ
ポカポカと追打かけて昼花火 ぱらりとせ
ぽんぽんとけふの花火の予告あり 素抱
みちのくの空攀ず花火鼠鳴き 寒暑
愛敬を振りまき上る花火あり 暮津
意気込みも新たに花火揚がりけり さざなみやつこ
一工夫ありそな花火揚がりけり ももすずめ
横須賀の空鈍く打ち昼花火 暮津
音に凝る花火もありてどよもせる さざなみやつこ
花火セット取り合ふ喧嘩に負けし汝(妹) 暮津
花火にも音の味付ありにけり 素抱
花火にも前座・真打ちありにけり 宿好
花火の煙ゆらゆらかつおのゑぼしめく 随笑
花火の下潮淙々と流れをり 素抱
花火の傘ぐらりと天のシャンデリア 寒暑
花火の傘爛れかつをのえぼしかな 燕音
花火音立て込む家に谺して 宿好
花火果つその大空のみみず腫れ 暮津
花火果つ五體叩きて砂払ふ 暮津
花火果て闇抱え込む雄物川 燕音
花火見る旅も山下清めく 宿好
花火尺玉東京湾を凹まする 随笑
花火野郎青嶺の肝を抜き来しと ねずみのこまくら
花火揚ぐ入江巡れりモノレール 素抱
帰るさの横手の花火蔵の間 素抱
逆さまのぺこちゃん花火失笑買ふ 素抱
協賛の某花火あがりけり ぱらりとせ
筋ばって花火のあとの白煙 素抱
空昇りつめてよろめく花火玉 ももすずめ
蛍光の腕輪して子の花火待つ 素抱
軽きどよめき麦藁帽の花火なり 随笑
今一つ高さの欲しき花火とも 素抱
耳たぶを押さえて花火怖がる子 素抱
手の内をあかすが如く花火爆ぜ さざなみやつこ
手花火に興じゐしこゑ引っ込みぬ ぱらりとせ
手花火の煙くる部屋にシーツ敷く ももすずめ
手花火の音の奇天烈奇天烈と 鳩信
手花火の玉より大き焼夷弾 寒暑
首根っこ打てる花火の大谺 素抱
終の花火らしき高さにあがりけり ももすずめ
昇りつむ花火の青息吐息かな 宿好
消ゆ花火開く花火に照らされて さざなみやつこ
新世界求めてあがる花火とも 暮津
世直しのつもりの花火揚がりけり 寒暑
川幅のそれと知らるる花火舟 ぱらりとせ
打止めの花火はこれかこの後か ももすずめ
大曲平日の日の昼花火 素抱
大玉となりて間合をとる花火 ももすずめ
大玉の花火に見惚る団扇かな 素抱
炭酸のはじけるやうに閉ず花火 燕音
中華風彩色花火あがりけり ぱらりとせ
長たらしき呼び名の花火揚がりけり 石鏡
長岡の花火帰りの道真直 ぱらりとせ
転調の花火どどどと揚がりけり 素抱
筒積まれ花火船めく穴子船 石鏡
同床異夢冬の花火を倶に見て 素抱
匂ふ海これより花火一萬発 暮津
泊船のデッキの人も花火見る 随笑
漂ふて花火の煙の大海月 鳩信
浜明けて真砂驚く花火殻 素抱
不景気を一蹴せんと揚花火 鳩信
腹に滲むいけいけどんどん花火かな 随笑
目と鼻とおまけに口もある花火 暮津
夜間飛行たかだか花火の合間ゆく 暮津
揚花火うち抜きし空締まりけり 暮津
揚花火その名隅田の恋ごころ 素抱
揚花火どんと武甲山の肩を突き 宿好
揚花火ポンポン景気悪しき世に 寒暑
揚花火粋やシャンパングラス風 寒暑
揚花火探り当てたる空の芯 暮津
揚花火表六玉もあがりけり ぱらりとせ
揚花火連打ドンプスドンプスと 随笑
打ち揚げる花火百様百谺
傘すぼめ闇に逃げ込む揚花火
音のみの打止め花火揚りけり
真っ直ぐをまっつぐと云ふ老花火師
花火野郎五秒にかける心意気
花火師は自然の中の色使ふ
花火師の鳴かず飛ばずの二十年
ママとパパそれに美雨ゐて花火の絵
二階での花火見物手に取るやう
おだてては孫に画かする揚花火
子ら興ず手花火といふ煙あそび
花火見に出掛ける下駄の緒のきつめ
めりはりのつき来る花火の後半部
黒煙を天にあづけて花火了ゆ
おさなごゑ昇る花火に力貸す
揚花火空をいたぶり始めけり
来た来たと花火フィナーレ間違いなし
団地の灯市松模様に花火の夜
花火見る濃闇の肌の汐湿り
揚花火煌々打ち上げ舟の位置
とどこほる花火の煙や海無風
揚花火旗艦三笠に谺せり
揚花火巾着湾に谺せり
ひげのある花火は猫とこどもごゑ
大歓声花火は意表衝いてこそ
滴れる花火はみどりの地球とも
昼花火揚がれり横須賀方面に
花火果て萬の一人となり戻る
渦巻いて蚊取線香めく花火
天心へ向ふ花火の擦過音
戸を開けしまゝ寝る夜の遠花火
砂浜に朝露まみれの花火屑
家に居て崎の花火の音を聞く
どんぷすと海風運ぶ花火音
重なるを厭ひ花火の上に爆づ
次の玉上がれば過去の花火とも
全うし果てたる花火の煙の笠
手の砂を払ふ花火の合間かな
例うれば花火は上塗りパステル画
顔顔顔染めて花火の彩尽し
どよめきが洩れて花火の一惑星
花火帰りの客焼鳥の名を羅列
若きらにカウントダウンの冬花火
クリスマスイヴならではの大花火
筒積まれ花火船めく穴子船
長たらしき呼び名の花火揚がりけり
花火了へ戻れる人の誼み顔
わが町の花火の載れる神奈川版
手の砂を払ひつ花火仰ぎけり
砂に敷く花火筵といふがあり
砂に挿す煙草の吸殻揚花火
湧き起こる拍手のほどの花火なる
ケイタイに花火撮る腕林立す
河原より戻りがてらの揚花火
堤揺り横手の河原花火かな j
半島の花火とよもす遠谺
雨落ち来花火中止や然らずや
揚花火栞り替はりに紀行文
花火会場仮設厠を多々設け
島圧す大音響の大花火
花火の煙海月となりてさすらひぬ
手花火を一本頒けてもらひけり
餅花のやうな花火の輪の中に
硝煙の間垣間見ゆ花火舟
打上げて島浮彫りに花火かな
海原の真っ赤に染まる花火かな
海原の闇を展きて花火かな
赤き目の大き魚の花火かな
豆を煎るやうな花火もあり余興
大花火硝煙海をただよへる
どんみりと海黒ずみて花火待つ
島影の黒いや増して花火待つ
釣舟の灯の瞬きも花火の夜
揚花火どすんと島を揺すりけり
猿島の向う側にも花火舟
花火待つ東京湾の灯の鎖
揚花火その名隅田の恋ごころ
散らばり落つ白粉花火のあとのごと
砂はたきはたき落として花火了ゆ said
駐車場上の街空花火揚ぐ
採血跡痣の花火を咲かせけり
現そ身の採血跡の痣花火
揚花火願ひましてはご破算と
空焦がす音のちりちり花火了ふ
おん母の命を伸ばす花火音
児雷也のでれつくでんの花火玉
遠花火ポッと上がるは安房上総
花火果て吾らぽかんと中高年
花火割れねずみ走りの火玉かな
揚花火ソ連崩壊せしことも
夜間飛行機花火の傘の中を航(ゆ)く
つむる眼に現るる花火のあれとこれ
銀幕の上がるがごとく揚花火
運河あり橋あり花火大会あり
瞬きをするさへ惜しや揚花火
花火待つたいくつ時間星数え
雄日芝の旺んなる穂の花火咲き
百日草彩の花火が上りけり
花火にも前座.真打ちありにけり
すっと上って百日草のいろ花火
傘ひらく広さ計りて花火揚ぐ
揚花火隙間見つけて傘ひらく
花火消え芯の辺りに残る煙
花火師の気合いの入りし花火なり
ランタンを十あまり出せる揚花火
揚花火此処に住み古り五十年
揚花火終は爛れて大海星
揚花火日和の風は南南東
村自慢田舎花火と云ふなかれ
焼夷弾落下の如く花火音
風が来て花火の煙を払ひけり
揚花火真上に南下空路あり
犬も瞳を真ん丸くして花火見る
花火揚ぐ川原に待機消防車
花火見る旅も山下清めく
何事ぞ真上に花火揚ぐるとは
旭日の花火の煙も敗戦日
目くるめくレーザー仕掛けの揚花火
くらやみの瀞を浮彫り揚花火
朝日銀行皆野支店の揚げ花火
花火殻落ちてそこらの川原闇
昼花火まいまいつぶろの肝を抜く
サイダーの泡の音して花火消ゆ
川風に花火帰りのほてり抜く
傘開ききりてシュワッと消ゆ花火
花火卍札所の里の空にかな
ぺこちゃんの顔のかたちの花火揚ぐ
長瀞の蕎麦屋の尺玉花火揚ぐ
赤壁に谺三段打花火
岩畳仕掛け花火に浮き上る
花火殻落ち来る川原の桟敷席
急流に仕掛け花火の瀧現れて
長瀞に懸りて花火のナイアガラ
川風や川原花火に打ち抜かれ
垣間見し花火の空のみみづ腫れ
花火見る若き夫婦と乳母車
もう一丁肝っ玉ひやす花火欲し
振り仰ぐかほに花火の三原色
不景気の底をうち抜く揚花火
物ごとに終りがありて花火にも
黄の鍔の麦藁帽の花火なり
花火果て息吹き返す東京湾
マグマ噴く如し花火のエピローグ
小気味よく肝打つてこそ揚花火
花火見て山下清めく男
うなばらに花火の垂らす金鎖
男一人膝立て直し花火みる
くろぐろと人の頭暮れて花火待つ
点る灯の船形どりて花火の夜
花火果つコンテナヤードに灯の一つ
花火待つその連れ合ひの浴衣柄
海風来てさっと花火の煙さらふ
現し身の肝で受けとむ大花火
絵日記の大玉花火揚りけり
人顔の花火近々揚りけり
音もなく翼下にひらく揚花火
膝立てて男見上ぐる大花火
恙無し花火六腑に響かせて
おばさんはますます饒舌花火の間
夜間飛行花火の間を一文字
溜息が溜息を生む揚花火
頬杖に尺玉花火とよもせる
船腹に尺玉花火とよもせる
泊船の窓に人影花火見る
飛び交へる父子の会話花火の間
花火見るあぎと撫づれば髭強(こわ)し
扇面の花火の絵柄畳みけり
しんがりはさてどんなもの花火待つ
鳴り物入り地元花火もかくて過ぐ
人の頭を圧して花火の炸裂音
天心を震ふ花火に皮膚応え
奥深き闇を照らして花火かな
色抑ふ菊形花火上りけり
雄物川川辺花火の煙待ち
みちのくの淋しい空に咲く花火
花火了ふ躰はたいて砂払ふ
人魂のいろの手花火風に消え
逝く夏に花束贈るごと花火
みちのくに淋しい空があり花火
似顔絵のおどけ花火に髭のある
はい来たと揚がる花火にこゑ合はせ
煙たげに花火がひらく煙の隙
凩の声音使へる花火かな
一趣向とんぼとめがねの花火かな
一ト夏の弾けて了る花火かな
花火消え巨きかつをのゑぼしかな
一ト夏のこれでお仕舞ひ花火かな
間を置いて地味な花火が上りけり
声援もて昇る花火を後押しす
叉焼(チャーシュウ)いろ花火揚ぐるは崎陽軒
花火大会要所要所を三尺玉
岬の辺の遠き花火もいつか果て
遠花火岬は先へ先へと伸び
大玉の後の花火にして割損
アスファルトの余熱ぽかぽか花火みる
子が描き根気の塊り花火の絵
花火果て群衆蜘蛛の子散らすごと
傾きて蚊とりせんこう形花火
上向かぬ景気直しの花火とも
頭の中が空っぽとなる花火音
ポンポンと音の並んで揚花火
海の日の花火あること後で知る
花火譚助け舟出す妻がゐて
(末尾は句集名)
川開 /
木の枝払ふ /
選ばれて残さる杉の枝下ろし
青葉の枝払ふ一雨来るまへに
五月晴れもこもこの枝払はねば
枝払ひどうせやるなら朝のうち
法務局支所の朝の枝払ひ
虫送り /
あきあかね先導つとむ虫送り 宿好
むずむずと田虫送りの火のすすむ ぱらりとせ
ゆく雲に「はやりの虫も送るヨイ」 宿好
山風に「ようづの虫も送るヨイ」 宿好
松明の高きいっぽん虫送り ぱらりとせ
村の衆手拭い首に虫送り 宿好
虫送り五色のノロセ持ち寄りて 宿好
虫送り撮りにケーブルテレビ局 宿好
虫送り竹竿に鉦ぶるさげて 宿好
虫送り飛び交ふ蜻蛉火の粉めく 宿好
虫送り嶺に張りつく二集落 宿好
盆がらにあらざる秋津里に殖え 宿好
盆がらを追ひやる掛け声山里に 宿好
虫送り修士論文まとめむと (門平、立沢の虫送り)
火の粉めく蜻蛉飛び交ふ虫送り
梵天に佳き風の出て虫送り
虫送り太鼓引き出し試し打ち
大太鼓小太鼓連ね虫送り
虫送り学究の徒も加はりて
手締めしてさて虫送り始めむか
虫送り先づは長々式次第
虫送り束ぬノロセは新聞紙
三耕地巡る梵天虫送り
肝煎りの挨拶済みて虫送り
腰に鉈立沢衆の虫送り
虫送り梵天作りの鉈振ひ
虫送りしかと墨書の幟旗
梵天を龍に見立てて虫送り
虫送り道中幟押立てて
虫送り幟の笹の浅みどり
虫送り道中古老の音頭取り
こんにゃくの煮付けに直会虫送り
虫送りバス運ちゃんと見送りて
虫送り幟ゆらゆら村はずれ
虫送り九十九折坂旗昇り
虫送り昔はもっと高き竿
どんじゃんと田虫送りの鉦.太鼓
虫送り上り下りして二集落
虫送り坂をよろよろ施餓鬼旗
虫送り幟作りの笹伐りて
梵天に腰のふらつく虫送り
先導は扇あふりつ虫送り
(末尾は句集名)
原爆忌 /
程々に薬信じて広島忌
誰知ろうリトルボーイの下りくるそら(原爆忌)
原爆忌考えながら句を作る
広島忌風化の戦後六十年
これといふ記事見当たらず広島忌
◆行事
朝顔市 /
【参考】
拙句 朝顔 (高澤良一)
くたくたよ三時の蕣ならずとも 暮津
ここに来てペース落とせり軒朝顔 暮津
これと決む朝顔苗のポリポット 暮津
しゃんとして蕣朝を迎えけり 暮津
ビニール製団扇の朝顔色褪せず 素抱
一彩づゝ朝顔の苗求めけり 暮津
一本の団扇がおまけ朝顔市 素抱
垣朝顔大ぶりにして破綻なし 寒暑
月替はりても朝顔の三ツや四ツ 暮津
月半(なか)を過ぎて朝顔咲き止めぬ 素抱
月半(なか)を過ぎて蕣先細り 暮津
原稿の枡目と庭の朝顔棚 素抱
黒人に珍(うづ)なる朝顔市が立つ 素抱
彩と云ひけふの朝顔奥床し 素抱
煮立てゐる味噌汁の香が朝顔へ 石鏡
種採の朝顔として日々愛づる 素抱
種零すばかりに婆の朝顔棚 燕音
出格子に飛弾の朝顔蔓這はせ 素抱
勝手に目覚める齢となり蕣 寒暑
少子化の世に朝顔の種子つけて 暮津
双葉もて百の朝顔翔びさうな 暮津
袖垣の朝顔大破一夜風 寒暑
棚咲きの朝顔に風縦横に 石鏡
朝が来て蕣姿正しけり 暮津
朝顔にあいにくの雨上がらざり 暮津
朝顔につく亀虫を払ひをり 暮津
朝顔に水やる朝の内がよし 石鏡
朝顔に風新しき朝朗 素抱
朝顔に物干し竿を奪られけり 暮津
朝顔のうなだるる葉に水遣れり さざなみやつこ
朝顔のきのふの彩もあやふやに 素抱
朝顔のキミガワヨウワを聞いてゐる 素抱
朝顔のくたんと十時廻る日に 石鏡
朝顔のけふ咲き惜しみ一つだけ 素抱
朝顔の一時に咲き勿体なし 素抱
朝顔の花に従ひ葉もくたり 素抱
朝顔の花能く見たく中跼み 素抱
朝顔の観賞二輪露乾ぬ間 素抱
朝顔の最期の仕事種子つくる 素抱
朝顔の残りの花期を尽してや 石鏡
朝顔の紫紺葬りをきのふとす 素抱
朝顔の種こじ開けて下調べ 暮津
朝顔の種の抜け殻まさぐれる 石鏡
朝顔の種も採らずに嵯峨野道 宿好
朝顔の種採らぬ訳ありぬべし 燕音
朝顔の種仕分けして甲乙丙 暮津
朝顔の種蒔く臍を下にして ももすずめ
朝顔の勝手許さぬ鉢仕立 暮津
朝顔の小っさうなって咲きつづけ さざなみやつこ
朝顔の色はと見れば在り来たり ぱらりとせ
朝顔の双葉本葉と喪の日過ぐ 暮津
朝顔の大輪清水湛ふごと 燕音
朝顔の遅まき咲といふがぽと 宿好
朝顔の掴まる処用意せり 暮津
朝顔の鉢上げ午前費やせり 暮津
朝顔の忘れられゐる種零す 燕音
朝顔の蔓といふ蔓ご苦労さん 石鏡
朝顔の蔓に誤算のあり漂ふ 暮津
朝顔の蔓の一つも蟻の道 暮津
朝顔の蔓の朝から徘徊す 暮津
朝顔の蔓の欲しがる棒与ふ 素抱
朝顔の蔓ばかりなる雨の鉢 素抱
朝顔の蔓を邪慳に払ひけり 暮津
朝顔の蔓先何を当てにして 暮津
朝顔の明日期す蕾五つほど 素抱
朝顔は花より種子に精出して 素抱
朝顔を垣に這はする駐車場 暮津
朝顔蒔く穴ぽこに種子一つづゝ 石鏡
朝顔種子浸すに休眠するやつも 石鏡
朝顔種封筒に入れお裾分け 暮津
朝顔苗近所に配る甚平着 暮津
朝顔蔓おいおいそこは物干竿 暮津
朝顔蔓選り取りみどり棚の網 暮津
朝鮮朝顔首長くして咲くを待つ 寒暑
朝鮮朝顔朝から上気してゐたり 寒暑
投票日朝顔の早種子つけて 暮津
日の温み背に朝顔の種を採る 石鏡
日課となる朝顔の世話水の世話 暮津
鉢咲きの朝顔の数けふ三つ 素抱
鉢植えにして朝顔の鼎咲 素抱
鉢朝顔これはだうだと目の高さ 素抱
鉢朝顔ご丹精とぞ褒められし 暮津
鉢朝顔喪中の義父に仕立てけり 暮津
微風湧くなり朝顔の瑠璃の淵 寒暑
百日はあつという間に種子朝顔 素抱
風の盆朝顔の葉に灯の洩れて 宿好
腹這ひの西洋朝顔蔓逞し 暮津
養子のごと貰はれてゆく朝顔苗 暮津
落胆のこゑ蕣のほとりより 暮津
蕣に見者俳句に読み手あり 寒暑
蕣の一斉咲きといふに遭ふ 暮津
蕣の耳を疑ふ怪事件(昨今の新聞紙上を見れば) 暮津
蕣の淵を覗きし思ひかな 随笑
蕣の蔓朔日の風抱ふ 宿好
蕣の明日の愉しみ七莟 暮津
蕣を見て来て朝刊読み始む 暮津
朝顔に朝顔の紺理屈抜き
朝顔植う千代朝顔もありぬべし
朝顔市変化朝顔売る店も
朝顔の花乏しらに種結ぶ
咲き揃ひ皆こちら向く朝顔棚
朝顔の残党咲といふべかり
宿根性朝顔十月跨り咲く
朝顔は屋根の上が好き猫とおんなじ
その中に若年寄も朝顔種
垣朝顔種採るまでをほったらかし
魁の朝顔一つ新橋色
朝顔の種ぺらぺらの封筒に
朝顔の残花健気や妻呼びて
朝顔の仕上げの種をまろまろと
棚朝顔愉しむ家人通行人
朝顔の咲かなくなりしは昨日のこと
昼過ぎの朝顔最後はうつむいて
苗贈り朝顔外交展開す
蕣に現ぬかすは文政より
印してこの朝顔の種採らむ
朝顔にもいろいろ昼なほ元氣な花
蝉囃す中に朝顔本舞台
朝顔の花は日差しに敢えなかり
けふの出来朝顔棚の前に佇つ
小さく咲き朝顔棚の隅の花
朝顔の変わり種花初々し
夕風の起こりて朝顔立ち直る
空中を泳ぐほかなき朝顔蔓
棚の上に出でて朝顔困り果て
好事家の庶民の日本朝顔どき
朝顔の予想に反しこんな彩
玉子で食ふ朝餉それから蕣見に
朝顔の諸葉うなだれゐる日中
炎日に強き種もあり朝顔に
朝顔大輪風に紫紺を漾はせ
むらさきの大輪朝顔びろっと咲く
朝顔の蔓絡み合ふナルシズム
朝顔のけふ三つとは物足らなし
平明に容も彩も蕣は
朝顔の濡れ色朝を齎らしぬ
朝顔蔓変な這ひ方許さずよ
有り合はせの棒に朝顔昇らしむ
朝顔蔓樋あれば樋のぼるまで
朝顔に水遣る日課夫婦して
蕣の機嫌朝から曇りづめ
羊羹を朝顔苗のお礼にと
朝顔の咲き継ぐ日々や些事こなす
「朝顔の種子より苗を」おそれゐる
ゴミ出しの折に朝顔苗の礼
トロ箱に朝顔杉田商店街
もう掴まる処がなくて朝顔蔓
頼り頼られ朝顔の蔓同士
朝顔蔓しがみつくもの探しをり
棚登り出す朝顔の蔓一途
朝顔棚それより風船葛棚
朝顔の蔓遊びをり棚の上
棚這はす風船葛と朝顔と
朝顔の苗分けやるに講釈付
朝顔種子あるだけ蒔いて貧乏性
かう巻けと朝顔の蔓承知さす
朝顔の種子蒔床を先づ作り
朝顔の種子頒け仕舞ふ薄封筒
朝顔の種を分け合ふ間柄
朝顔の種採妻の実家にて
地に近く朝顔咲いてもう十月
朝顔の種青ければ棚解かず
しんがりの朝顔にして深き紺
朝顔の七八朝のおくりもの
朝顔の残んの花も見尽して
朝顔の残花それでも四つ七つ
朝顔の残花皆無の日もありぬ
二階まで秋の朝顔上り詰め
十月の朝顔淡き彩ばかり
朝顔の種こじ開けて下調べ
呆と一つ朝顔が咲き始めたり
八十の朝顔咲くと誇らしげ
秋口に入り咲く西洋朝顔も
這ひ這ひする朝顔藷との掛け合はせ
朝顔の蔓を邪慳に払ひけり
朝顔につく亀虫を払ひをり
朝顔の種仕分けして甲乙丙
朝顔の種に送られ出征す
朝顔の種落ちてゐる殻抓む
朝顔種封筒に入れお裾分け
朝顔の種つけながら終の花
朝顔と鉛筆書きの種袋
朝顔に物干し竿を奪られけり
ここに来てペース落とせり軒朝顔
投票日朝顔の早種子つけて
少子化の世に朝顔の種子つけて
朝顔を垣に這はする駐車場
朝顔の残り少なき花に佇ち
月替はりても朝顔の三ツや四ツ
けふ咲いてうれしき数の牽牛花
日課となる朝顔の世話水の世話
蔓ばかり伸びて朝顔花少な
蕣に青天霹靂地震ありぬ
蕣の耳を疑ふ怪事件(昨今の新聞紙上を見れば)
樋掴む朝顔の蔓節操無し
妻毎朝蕣の数かぞえ廻り
落胆のこゑ蕣のほとりより
月半(なか)を過ぎて蕣先細り
朔日の風朝顔を吹き割れり
五つ六つ木にのぼり咲く紺朝顔
朝顔ののぼり詰めたる空の央
網棚の蕣乏し勝手口
いつの間に蕣減りて今朝の秋
蕣や大事な思案朝のうち
朝顔の蔓先樋に届きをり
朝顔にはいと応えて起きる日々
朝顔の相継ぎ凋み埒もなし
いつものこと起床は蕣開くまへ
くたくたよ三時の蕣ならずとも
朝が来て蕣姿正しけり
夫婦して朝顔棚の花数ふ
水打てば朝顔の根の現はるる
蕣の花数記す日記かな
煮付けの香朝顔棚の隙間より
肋叩き朝顔の花殻摘み
蕣を見て来て新聞読み始む
朝顔の蔓に誤算のあり漂ふ
午頃まで軒の朝顔ながらへぬ
蕣の一斉咲きといふに遭ふ
花小さきは去年の種蒔き朝顔よ
台風に足止め喰ひし蕣咲く
朝顔の蔓伸び過ぎて梢越えぬ
朝顔が咲いたと一声厨より
夕立の端に蕣小さく咲き
蕣の葉叢の中に凋む花
朝顔に霧雨ありて凝る微粒
朝顔のけふは五つと朝餉の膳
人の目に留まるところに朝顔植う
厨窓朝顔の蔓昇りくる
分け遣れる朝顔 仕立て方は斯う
蕣の明日の愉しみ七莟
朝顔は棚を伝へる軽業師
蕣に天気予報の筒抜けに
変化朝顔桔梗咲きてふ一異色
鉢植えの朝顔にゐる子蟷螂
朝顔の蔓の一つも蟻の道
朝顔の曇日なれば長持ちす
斑の入る広葉朝顔涼しけれ
鉢朝顔ご丹精とぞ褒められし
朝顔の蔓やっかいや世間もまた
曲者の朝顔蔓の鉢仕立
朝顔の勝手許さぬ鉢仕立
腹這ひの西洋朝顔蔓逞し
独りごちつゝ朝顔の蔓の処置
紐伝い朝顔の蔓導けり
しゃんとして蕣朝を迎えけり
朝顔蔓おいおいそこは物干竿
見本見て変化朝顔育て見ん
長雨がたたり朝顔ひょろひょろ立
朝顔にあいにくの雨上がらざり
朝顔の莟数えて十日分
朝顔の絞りに寝惚け眼覚め
朝顔の蔓の朝から徘徊す
朝顔苗近所に配る甚平着
朝顔の苗が発端立話
朝顔の蔓を剥がしにかかりけり
朝顔の手当り次第絡む癖
きりきりとこれは厄介朝顔蔓
鉢朝顔喪中の義父に仕立てけり
時の日に開く朝顔第一花
一彩づゝ朝顔の苗求めけり
朝顔の種子水吸うて水膨れ
ことし亦出て朝顔の新品種
朝顔蔓選り取りみどり棚の網
箱植の朝顔同士絡み合ひ
朝顔の掴まる処用意せり
朝顔の巻蔓棚の網待てり
抱かれて貰はれてゆく朝顔苗
朝顔の鉢上げ午前費やせり
朝顔のお禮の一花嬉びぬ
朝顔の蔓先何を当てにして
朝顔の花の絞りのごとサンバ
朝顔の苗蔓欲しきもの棒切れ
響きよくブルーヘヴンといふ朝顔
垣あれば西洋朝顔そこに植う
西洋朝顔丈夫と聞けば二つ買ひ
葉が八つ朝顔苗の鉢上げどき
早起きす朝顔苗が待ってゐる
土ゆがむ朝顔苗のポリポット
朝顔を種子より育て萎ふ苗も
土均し朝顔あんどん作りの鉢
朝顔の定植土器(かわらけ)いろの鉢
双葉もて朝顔苗は翔びさうな
朝顔苗ヘルパーさんへお裾分け
巨輪朝顔汝に見せばやの苗植うる
朝顔の双葉本葉と喪の日過ぐ
朝顔の本葉八つが芯止めどき
朝顔のはなが了ってしまったあさ
朝顔の蔓といふ蔓ご苦労さん
一花咲く朝顔棚を外しけり
朝顔の種の抜け殻まさぐれる
日の温み背に朝顔の種を採る
蔵壁に残んの朝顔咲き登り(蔵屋敷)
朝顔の種採ってゐて遅昼餉
煮立てゐる味噌汁の香が朝顔へ
廚より朝顔棚へ灯の洩れて
朝顔の咲き継ぐ花の締めくくり
日毎見て朝顔種採りまだかいな
朝顔の了りといふに伸びる蔓
しぶとく咲く朝顔藷との掛け合はせ
朝顔のぶり返し咲く今日の数
朝顔に水やる朝の内がよし
朝顔の種採る愉しみこれからよ
朝顔の数の引算晦日へ
祝ぎごとあり蕣の紺溢る晨
我起居棚朝顔の数恃み
棚咲きの朝顔に風縦横に
朝顔のくたんと十時廻る日に
俄仕立の朝顔棚を設えぬ
土退けて種子朝顔の縮みし葉
朝顔苗本葉が出たら植替どき
朝顔種子浸すに休眠するやつも
箱蒔のけさ朝顔の芽が三つ
朝顔蒔く穴ぽこに種子一つづゝ
朝顔の変種や藷との掛け合はせ
出格子に飛弾の朝顔蔓這はせ
朝顔の種零しをり鍼灸院
朝顔の紫紺葬りをきのふとす
朝顔の最期の仕事種子つくる
百日はあつという間に種子朝顔
種採の朝顔として日々愛づる
朝顔は花より種子に精出して
雨二三日朝顔の萎れ花
月半(なか)を過ぎて朝顔咲き止めぬ
朝顔は種子に降る日も交ふ日々
朝鮮朝顔花を弔旗のごと垂れて
朝顔の鉢外に出す野分晴れ
先ず咲けば大小問はず鉢朝顔
水差して朝顔のいろ溶きにけり
一日少なく一日ここだく鉢朝顔
朝顔のキミガワヨウワを聞いてゐる
朝顔の絵団扇骨組みくたびれし
朝顔のけふどんな色毎朝見る
朝顔に風新しき朝朗
朝顔の葉裏葉裏に隠れ花
朝顔の葉叢隠れに大き花
朝顔に大きな顔を傾けて
朝顔のほどよき数の四五六花
原稿の枡目形なり朝顔棚
朝顔に孫もう一人殖ゆる家
朝顔に市の青空展けつゝ
鉢植えにして朝顔の鼎咲
朝顔の蔓ばかりなる雨の鉢
朝顔のけふ咲き惜しみ一つだけ
朝顔の花能く見たく中跼み
梅雨寒の朝顔雨気を誘ふ彩
朝顔の蔓伸びきりて宙掴む
朝顔棚母の丹精実を結び
朝顔の明日期す蕾五つほど
朝顔の花数問へば紺一つ
朝が来て又咲き直す鉢朝顔
あと幾つ咲く朝顔の莟数ふ
鉢朝顔咲き直す又朝が来て
朝顔のきのふの彩もあやふやに
朝顔の一時に咲き勿体なし
朝顔市小雨ながらの人出かな
鉢咲きの朝顔の数けふ三つ
彩と云ひけふの朝顔奥床し
揚羽蝶朝顔棚を横目にみて
朝顔の花に従ひ葉もくたり
朝顔の蔓葉と風にうち靡き
蔓どんどん伸びる朝顔朝から晴れ
朝顔の途方にくるる遊び蔓
朝顔の観賞二輪露乾ぬ間
朝顔の蔓の欲しがる棒与ふ
酒場に寄り鉢朝顔の置きどころ
雨に濡れ鉢朝顔の皺む花
鉢朝顔一つ目の花咲きにけり
朝顔市風の如くに人流れ
鉢朝顔これはだうだと目の高さ
これから咲く色と云うても朝顔市
黒人に珍(うづ)なる朝顔市が立つ
一本の団扇がおまけ朝顔市
朝顔市これもってけと女伊達
朝鮮朝顔など見て梅雨の中休み
ビニール製団扇の朝顔色褪せず
冬牡丹園の厠の朝顔よ
朝顔の種子まだ垣に横着者
吾を見舞ふその足をもて朝顔市
三四日前から朝顔咲き出しぬ
朝顔の鉢店に入れ雨に当てず
朝顔の忘れられゐる種零す
朝顔の種採らぬ訳ありぬべし
種零すばかりに婆の朝顔棚
朝顔の大輪清水湛ふごと
朝顔の種も採らずに嵯峨野道
蕣の蔓朔日の風抱ふ
風の盆朝顔の葉に灯の洩れて
干竿と萎れ朝顔家裏に
居酒屋の親爺水遣る朝顔棚
垣朝顔八方美人といふべかり
選挙結果いやはやいやはや垣朝顔
尿に起つ折に垣間見牽牛花
添え棒を朝顔の蔓捲き始め
蕣の内輪話をせるごとし
蕣をゆがめて風の吹けるなり
蕣の淵を覗きし思ひかな
朝顔のよれよれ咲きは許されじ
微風湧くなり朝顔の瑠璃の淵
種蒔きの朝顔そのまた種を採る
べたべたと朝鮮朝顔落花せり
朝顔のさんざんな態見て過ぎぬ
朝顔棚日陰に設ふ心ばえ
日をまとも垣朝顔のしょげ具合
蕣に見者俳句に読み手あり
高階の端っこの部屋の鉢朝顔
勝手に目覚める齢となり蕣
朝鮮朝顔朝から上気してゐたり
袖垣の朝顔大破一夜風
垣朝顔大ぶりにして破綻なし
ひたぶるにうらぶれ朝鮮朝顔了ふ
朝鮮朝顔首長くして咲くを待つ
朝鮮朝顔鉢花として日々愛づる
(末尾は句集名)
鬼灯市 /
ほおづき縁日近し愛宕の杜冥く 石鏡
ほほづきの鉢提げ愛宕大権現 鳩信
ほほづきを提げて縁日気分かな 鳩信
ほほづき縁日笛ひゃらひゃらとひゃらひゃらと 鳩信
軍艦に四万六千日の波 素抱
前後して人の逝くなり蟲ほほづき 寒暑
鬼灯の虚無僧姿晒しをり
送るもの送り了へたる破れ鬼灯
盆近みさても鬼灯赤くなる
鬼灯に付く虫にしてやられけり
鬼灯を剪りてあげれば喜ばれ
葉といふ葉喰はれ鬼灯丸坊主
鬼灯の須臾の間にして虫喰い葉
酸漿の花のいつしか実となれり
鬼灯にホウズキカメムシ付き始め
東都にていの一番の鬼灯市
鬼灯の累々社頭に参ずれば
浅草に先んじ愛宕の鬼灯市
東都では此処が皮切り鬼灯市
両日で鬼灯千鉢売るといふ(六月二十三日、二十四日 愛宕神社千日詣り)
行き交へる鬼灯市の籠の中
篤き手が足らぬ鬼灯ひとつきり
遅植えの故の鬼灯乏しかり
庭土が痩せゐて鬼灯ひとつきり
盆花の鬼灯朱さ比べ買ふ
鬼灯を植うもお盆に間に合はず
鬼灯を鉢に三本鼎咲き
鬼灯の袋を持たずまだ幼
鬼灯の窶れて野辺の魂棚跡
鬼灯と見えねば横に句を添えよ(夏見舞)
鬼灯の咲く露地雨の三田界隈
鬼の子の玩具の鬼灯生りにけり
首都圏ニュースけふからと告ぐ鬼灯市
鬼灯の地に近き程赤き梅雨
なま白き鬼灯の花雨を呼ぶ
鬼灯の花これ下のそれ袋
鬼灯の鈴生り袋のグラデーション
鬼灯の幼く宙ぶらりんないろ
じくじくと虫喰い酸漿雫せり
鉢ほほづき提げて人波分けゆけり
ほほづき縁日婆の足腰鍛え坂
ほほづきの鉢をかざして求めけり
坂を危なげ鉢ほほづきを抱えくる
鉢ほほづき雨具抱えて選りゐたり
運選るごと鉢ほほづきを選りゐたり
ほほづきの鉢選り愛宕大権現
ほほづき提げ愛宕千日詣りかな
千鉢のほほづき縁日立ちにけり
ほほづきの花も実も皆うつむけり
一鳥も一船も見ずうみほおづき
蟲ほほづき花屋の彼も去年逝きて
宵宮の鬼灯いろさす吊提灯
鬼灯に前後し届く風夕べ
(末尾は句集名)
祇園祭 /茅舎忌 /秋桜子忌 /野馬追祭 /
河童忌 /
河童忌の肋撫でれば風の来る 素抱
河童忌の横須賀海軍カレー食ぶ 宿好
(末尾は句集名)
◆動物
夏の虫 /
しゃかしゃかと仙石原の夏の虫 暮津
もうそんな時分かと聞き夏の蟲 寒暑
やうやうに夜泣き納まり夏の虫 素抱
夏の蟲など鳴きざっくばらんな夜 寒暑
四人(よったり)で聞いて確かに夏の虫 随笑
生垣の下で確かに夏の蟲 寒暑
夕かぜに息浅くつく夏の蟲 寒暑
夏の虫夜と晨のあはひかな
夜々聞きてその数殖ゆる夏の虫
冷蔵庫とよもす後の夏の虫
木道のその先切れて夏の虫
八千草の仙石原の夏の虫
晩酌の頭上を飛べる夏の虫
夏の虫けふときのふの継目の闇
夏虫のそれと聞きゐるさはりかな
山麓の草原深く夏の虫
酔ひは未だ少し残りて夏の虫
もう鳴くと或る日気づいて夏の虫
夕餉あと薬並べり夏の虫
服薬は夕べに三錠夏の虫
降り止みし雨をきっかけ夏の虫
里山に早や鳴き出せり夏の虫
根仕事夏の虫啼く朝のうち
おお臭さの賽の河原に夏の虫
満腹の耳で拾うて夏の虫
夏の虫賽の河原に見届けし
朔日の耳傾けて夏の虫
耳揃え聞いて確かに夏の虫
朔日のおやもう鳴くか夏の虫
夕餉あとおやもう鳴くか夏の虫
(末尾は句集名)
道をしへ /
つと寄りて轉法論寺道をしへ 宿好
はんめうのふつと消えたる岩の色 ももすずめ
はんめうの背後にそっと息詰めて ぱらりとせ
斑猫は肉食の彩泛べけり 随笑
石仏に面と向ひて道をしへ
道をしへ跳躍すでにしてあやふや
(末尾は句集名)
天道虫 /
てのひらに這はせて愛づる紅娘 さざなみやつこ
よそゆきの水玉模様天道虫 素抱
炎天を天道虫の活動家 暮津
教団の使者とし来たる天道虫 ぱらりとせ
古草を渡り歩きの天道虫 燕音
十勝晴れ天道虫が肩に来て ぱらりとせ
天道虫ハイカラな星七つかな ももすずめ
冬ざれの天道虫は能く歩く 素抱
屯して天道虫のローティーン ぱらりとせ
天道虫浜風待って翔びにけり
天道虫サンバ踊ればカーニバル
サーカスの一員七星天道虫
枯葉には枯葉のぬくみ天道虫
末枯れ草渡り歩きの天道虫
枯草を上りては下り天道虫
よそゆきの水玉模様天道虫
道化師の天道虫の飛行なり
(末尾は句集名)
玉虫 /
ペンネームは玉虫葉裏目借時
金亀子 /
おぞましき翅音ぶんぶん葉を食みに 暮津
かなぶんに飛ばれ驚く夜の寝所 素抱
かなぶんに玻璃戸を引きて助け船 ぱらりとせ
かなぶんのその実(じつ)よからぬ虫と聞く 暮津
かなぶんの往き来うるさきものの内 素抱
かなぶんの現行犯を投げ撲ちぬ 暮津
かなぶんの支離滅裂となり当る 随笑
かなぶんの打身の音をひたと聞く 素抱
かなぶんの鉄砲玉に斜面畑 ももすずめ
かなぶんの堂々巡りむさき家 寒暑
かなぶんぶん先生口調といふがあり 素抱
かなぶんをぶんと呼び寄せ夜店の灯 素抱
かなぶんを音として聞くよからぬ音 暮津
かなぶんを色として見る至福のいろ 暮津
かなぶんを捕って抛りて戸をぴしゃり 素抱
ぱたと落つところを見れば豆かなぶん 随笑
ふんばりてドウガネブイブイ露吸へり ももすずめ
ぶんぶんと泣虫拠り出さんかな ねずみのこまくら
ぶんぶんに灯を取らせおき早寝せん 寒暑
ぶんぶんの遊び半分灯を取りに 暮津
ぶんぶんは緑の鎧着し騎士(ナイト) 暮津
ぶんぶんやぶんと飛び来し艦載機(空襲警報下、母幼稚園に迎えに来ること再三と聞けば) 暮津
もう我慢出来ぬぶんぶん締出せり さざなみやつこ
鉛筆はH金亀虫の固さ 暮津
黄金虫吾が掌(たなごころ)蹴りあるく 暮津
黄金蟲手っ取り早く翅畳む ぱらりとせ
金亀虫さうかさやうか灯を遣ろふ 随笑
金亀虫ぶんぶと裸燈せゝりをり 素抱
金亀虫飛んで来ぬかと灯を点す 随笑
茶天鵞絨(ちゃびろうど)かなぶんひっくり返りけり 燕音
板の間に落つかなぶんの硬き尻 素抱
分銅の飛び来るごとく黄金虫 素抱
悪食の悪(わる)のかなぶん追放せよ
かなぶんは悪(わる)ぞ証拠を押さえたぞ
図に乗ってはたき落とさる金亀子
灯を取りに隣近所の金亀子
左様かとぶんぶん逃がし遣りにけり
木のかなぶん揺する力が余りけり
悪食の庭のかなぶん根こそぎに
木より落とすぶんぶん暫し死んだふり
かなぶんに本を読み止し妻一ト言
かなぶんの点検芙蓉は大丈夫
鏡台の辺りでかなぶんバタと落つ
かなぶんの仕業よ植木の丸坊主
金亀子灯の無き部屋を盲飛び
かなぶんを殺めることにこの夏より
かなぶんを殺すべくして地に落とす
ぶんぶんの裏の一面垣間見て
ぶんぶんの緑塊翔んで生きづく夜半
文机へかなぶん落ちて紙の音
瑠璃かなぶん青きかりんに跨りて
かりん喰ふかなぶん現場を押さえられ
蜘蛛の囲に最後のあがきを黄金虫
かなぶんのぱたと何處かに秋の居間
畳這ふ秋のかなぶん背のみどり
かなぶんの喰ひ破る葉の穴数多
かなぶんは網戸の不意打ち啖ひけり
かなぶんを追ふて踏み込む八畳間
かなぶんの突き当たる音生々し
舞はせおく俳句の種の黄金虫
二階に赤子階下にかなぶん喚く家
潜みゐし昨夜のかなぶん灯を取りに
一夜経て夜宮のかなぶん椨の木に
孵る灯に来てもよさそな金亀子
椎にほふ山から飛来金亀子
かなぶんはもう豆粒や海の方
かなぶんをぶんと飛ばせる夜更けの灯
じれったきかなぶんぶんの勘違ひ
いつもならかなぶん翔んで来べき頃
かなぶんの五月蠅かる日もかくて暮る
(末尾は句集名)
髪切虫 /
かみきりにいちじく甘露用意せる ももすずめ
天牛のつままれ鳴きのいと女女し ぱらりとせ
天牛の朝飯前の力かな 鳩信
天牛の背を一息に押え込む 随笑
天牛の髯立てて哭く虫籠の隙 暮津
登校の途中で捕ふ天牛虫 素抱
精悍な面の若武者天牛は
孫に与ふ或る日捕らへし髪切虫
天牛を捕らへて餌にそこらの草
天牛が網戸を這へる宿の朝
天牛のぎうぎう朝が来しと云ふ
天牛を押さふ感触掌に残り
天牛の掴まえ方を披露せり
(末尾は句集名)
兜虫 /
闇を翔け来たる強肩兜虫 ぱらりとせ
偽八ヶ岳へ兜虫(かぶと)飛んだりまっしぐら 宿好
鍛えたる角いつ使ふ甲虫 素抱
灯を取りに箱根の山の兜虫 随笑
甲虫の兜の下のメカニズム
兜虫不器用同士の角突き合ひ
兜虫その骨格に惚れ惚れす
甲虫捕りに靄湧く朝の山
兜虫相模湖町の空飛んで
兜虫ぶんと湯宿の灯を取りに
来客に宿の子みする兜虫
刺股は何を突く為兜虫
(末尾は句集名)
毛虫 /
あたりの葉平らげまる見え青毛虫 石鏡
おっとっと森の小径の垂れ毛虫 暮津
くにゃくにゃと毛虫踊れり糸の先 暮津
ここで我に会うたが毛虫の百年目 暮津
さざんくわの毛虫の下見的中す 寒暑
つままれることをいやいやする毛虫 暮津
ひた急ぐ毛虫の背ナの山津浪 寒暑
むくむくと大善坊の毛虫かな 燕音
格子縞羽織り毛虫の三太夫 寒暑
割箸で挟みて芙蓉の毛虫捕る 暮津
気がつけばくわりん毛虫の梁山泊 暮津
巾広の毛虫薄の葉に余り 寒暑
黒毛虫妻譏ること譏ること 随笑
山茶花に毛虫一騒動ありぬ 燕音
山道に毛虫の落ちて忙しき 随笑
小肥りの毛虫良寛墓石馳す 寒暑
青山椒隈どり深く毛虫の貌 暮津
青毛虫程の山麓木五倍子かな 鳩信
内々に処置す桜につく毛虫 暮津
梅雨毛虫掃討作戦開始せり 寒暑
発覚即リンチと毛虫心得よ 暮津
柾垣毛虫に先を越されたる ぱらりとせ
満腹や毛虫の下見でもせんか 寒暑
毛虫つく頃の柾と見てとほる 随笑
毛虫のごと空攀づジェットコースター 寒暑
毛虫ひそかに事運びしが発覚す 暮津
毛虫居るだけで全てを物語る 素抱
毛虫焼く一部始終を見て足れり ねずみのこまくら
毛虫垂る糸の辺りを横払ひ 随笑
毛虫付き驚き桃の木山椒の木 暮津
毛虫捕るもうそのあとは盲打 石鏡
木より落つ毛虫地べたを一目散 随笑
葉桜の毛虫垂るるによき暗さ 素抱
良寛墓所毛虫も托鉢姿して 寒暑
連休の中日の毛虫退治かな 随笑
悪企発覚毛虫一掃す
毛虫焼くその理を長々と
粋も粋ことし初見の黒毛虫
芙蓉につく毛虫捕っても捕ってもや
芙蓉に湧き継げる毛虫と根くらべ
花よりも葉を喰ふ毛虫酔芙蓉
毛虫跋扈もう手遅れの木と知れり
毛虫ごと一葉ちぎりて踏みにじる
へんな毛虫青山椒は曲ある木
青山椒隈どり深く毛虫の貌
去年毛虫山茶花垣を喰へば先づ
毛虫出づこと触れ回る遇ふ人毎
毛虫つくこと筒抜けに生け垣越し
毛虫ひそかに事運びしが発覚す
秋霖に首をすくめて青毛虫
よく肥えて秋芽が好きな青毛虫
秋は秋で芙蓉の葉につく青毛虫
毛虫這ふ山暗がりの木下道
大穴を開けし毛虫が其処にをり
柾垣毛虫退治を思ひ起つ
あをあをと毛虫の如く芽吹く木も
むくむくと毛虫のやうなヤツ芽吹く
毛虫焼くは天恐れざる所業なり
毛虫焼く準備万端整ひし
悉く柾の毛虫焼かるべき
毛虫をば焼けとのたまふ天のこゑ
毛虫の悪事妻譏ること譏ること
隣る葉に毛虫の移る忙しき
火炙りに算を乱せる黒毛虫
見つけたる毛虫辻つま合ひにけり
どの木より落ちし毛虫と頭上みる
山道に毛虫を落とす青嵐
毛虫這ふ山道ここにもあそこにも
遠足の列の子毛虫跨ぎゆく
しかじかと毛虫付く木を指していふ
青葉ごと振り落とさるゝ毛虫これ
柾にもう毛虫大変なことになる
東慶寺山門毛虫駆け込めり
毛虫つく頃の庭木が目に入る
火炙りの刑もて毛虫殲滅す
(末尾は句集名)
岩魚 /
だんだんと水の高鳴る岩魚釣 ぱらりとせ
岩魚の瀬すこし上ミ手に山女の瀬 素抱
水底についと向き変ふ岩魚の斑 暮津
岩魚飼う駅の水槽山女魚も居
(末尾は句集名)
雷鳥 /
瞬く間雷鳥岩に紛れけり
雷鳥を鵜の目鷹の目すれど見ず
緋鯉 /
よう放し山古志村の雨最中 寒暑
よう放し支度盥に緋鯉入れ 寒暑
金閣の金を破りて錦鯉 宿好
金閣を呑まんばかりに鯉の口 宿好
金襴の綾なす鯉と金閣と 宿好
丈山の髯を倣ひて錦鯉 宿好
放たれし緋鯉のくるりくるりかな 寒暑
養鯉池雨に緋鯉のうすぼんやり 寒暑
養鯉池混沌緋鯉おっ放す
語り合ふ緋鯉と緋鯉根本寺
養鯉池緋鯉北進南進す
金魚屋の寄進百余尾錦鯉
錦鯉真昼の谺鎮まりぬ
水底に緋鯉の滲む秋暑かな
緋鯉放つ池ごしらへや山古志村
山峡の雨に驚く錦鯉
虹しかと錦鯉飼う村の上
ほのぼのと赤丸一つ錦鯉
目もあやに丹頂と云ふ錦鯉
初春の錦鯉売る百貨店
(末尾は句集名)
鱧 /
薄味と駄目出しが出る鱧料理
鱧などに浮かれぬ東夷なり
金魚 /
「金魚さんご飯ですょ」と餌やる孫 素抱
こんな日はどうして過ごす鉢金魚 素抱
しばらくは貰はれ金魚の品定め 素抱
すぐ掬へさうな金魚をしくじれり ぱらりとせ
ちびっ子の手に手に金魚ねぶた提げ 寒暑
ともかくも鉢に放して屑金魚 暮津
なるほど頭赤く丹頂てふ金魚 暮津
ニュースキャスター金魚の如きおめめして 暮津
ペット屋の金魚いろいろ見て買はず 暮津
また一尾金魚死なしてしまひけり 素抱
まだ鉢に馴れぬ金魚を寝しな見て 素抱
雨の日のペット屋金魚ぷかぷか浮く 暮津
雨一日金魚が浮いて死にさうに 素抱
餌付きの金魚貰へり義弟より 随笑
家居とは金魚うろちょろする構図 寒暑
簡単に生きる金魚を見本とす 素抱
頑是無き金魚が鉢に放たれて 素抱
掬はるゝ金魚は隅にかたまりて 素抱
掬ひたる出目金の黒抽んでぬ 素抱
金魚など飼うて年金暮らしの身 素抱
金魚の死はらからの死に続きけり 素抱
金魚の死因松笠病とや突き止めて 寒暑
金魚の死母には伏して言はずおく 素抱
金魚の糞掬ひて待てる店開き 素抱
金魚また死なせてしまふ金魚運 素抱
金魚餌を貰ひ一礼後ずさり 素抱
金魚屋のアズマニシキは四股名にて 素抱
金魚屋のグッピーの眼が忘られず 素抱
金魚屋のまだ水張らぬ槽(ふね)二つ 暮津
金魚屋の親爺かたへに蚊遣香 素抱
金魚屋の親爺と金魚の共喰談 素抱
金魚屋の親爺の顔も一とせぶり 寒暑
金魚屋の二軒張合ふ祭かな 寒暑
金魚屋の布袋草よく肥えてをり 素抱
金魚掬ひおたまじゃくしも入り交り 素抱
金魚掬ひまだ諦めぬ姉の意地 暮津
金魚掬ひ一回だけと念を押し 暮津
金魚掬ひ未だ幼くて見てゐる子 寒暑
金魚掬ひ浴衣の帯を地に擦りて 素抱
金魚玉如何に台風荒れやうと 素抱
金魚玉留守を任されゐたりけり 素抱
金魚飼うこと面白きそんな齢 寒暑
金魚糶る兵顔(つはものがほ)の男どち 寒暑
枯木攀ずあの猫金魚盗った猫 石鏡
江戸川区金魚ガイドを取り寄せて 素抱
撒く餌に金魚なついて来たりけり 素抱
斯く肥えて押しも押されぬ金魚かな 素抱
手を膝に金魚屋親爺目を配る 鳩信
十匹で何んぼの和金売れゆきよし 石鏡
殖え過ぎし金魚貰ふに金盥 随笑
新参の金魚が鉢を一巡り 素抱
水ばかり掬ひて金魚何時掬ふ 鳩信
水も入れ替へて金魚の新居の秋 随笑
水替えて金魚のこころ取り戻す 素抱
水替えの金魚を洗面器に揺らし 寒暑
台風を生める地球と金魚玉 素抱
大写し金魚が水に屈折して 素抱
彫り露けく金魚奉納三百尾 石鏡
灯して鉢の金魚を散らしけり 素抱
灯より濃き金魚を掬ふ夜宮かな ねずみのこまくら
二夏を経たる金魚を死なしめき 鳩信
日曜日なり蘭鋳を見てリラックス 寒暑
年を越す鉢の金魚に被せ物 さざなみやつこ
梅雨どきの何處を見据えて金魚の目 素抱
鉢の金魚一つ一つの無分別 素抱
鉢まるくまるく金魚の平常心 素抱
鉢底に貰はれて来し金魚の眼 素抱
斑(ぶち)なるは猫のみならず金魚にも 素抱
布袋草金魚に買うて雨の街 寒暑
浮かぬ顔姉の金魚と見比べて 随笑
閉じてまた開く金魚の口可愛(めぐ)し 石鏡
忘られがちそれでも金魚生きてゐる 暮津
貰ひ来し金魚のその後鉢覗く 随笑
蘭鋳を揺りて昼の地震ありぬ ねずみのこまくら
萍が残り金魚は死に絶えし 暮津
金魚草金魚を殖やすごとく剪る
金魚藻を食める金魚はど奴かな
加はりて金魚見知りをする金魚
金魚掬い掬い損ねしへっぴり腰
ペット屋の金魚買はねど立ち見して
罷り出て金魚の貌に似たシンガー
どしゃぶりの雨に泳げる金魚草
金魚透く裸電球にてありぬ
剪ればまたすぐ花つける金魚草
目鼻鰭付きの金魚の紙風船
なるほど頭赤く丹頂てふ金魚
秋雨のペット屋金魚ぷかぷか浮く
金魚掬ひ一回だけとつっぱねぬ
金魚玉ゆらゆら揺れて扨ては地震
地震ありて金魚の水の揺れ返し
地震に揺れ金魚と年金暮しのわれ
萍が残り金魚は死に絶えし
大鉢に残る金魚と一人住まひ
金魚より射的に移る夜店の子
赤黒の黒の金魚を追ひ回す
頭でっかち金魚の何處かぶっきらぼう
方向を変へる金魚の大頭
金魚掬ひ愉しきものにして回顧
金魚居ぬ大鉢皐月の雨水溜め
金魚居ぬ鉢とは知りつ覗きみる
携帯電話(けいたい)かけ金魚のやうに避けゆく者
正月を祝ぐ金魚草うひうひし
ながらへし夜店の金魚一揺らぎ
ひねもすの金魚問答玻璃越しに
鉢飼ひの秋の金魚にけふ寄らず
只一尾金魚の泛ける朝の鉢
帰宅せる顔を金魚に見上げられ
広すぎる鉢に金魚の遺さるる
はや十月動きの鈍き金魚かな
誕生日金魚だらりの帯ゆらと
金魚一匹命に定めありにけり
盆過ぎの金魚の水を取り替えぬ
金魚の水さみどり帯びて来たりけり
金魚の水掻き混ぜてゐる劫暑かな
浮いて又沈む金魚に眼を上げ下げ
何故か来て一日一度金魚のまへ
からり晴れ金魚の水替え日和かな
厠にも蹤きくる金魚のうんこの子
金魚掬い扱い難き出目金にて
蚊遣して金魚掬いの後の闇
掬ひたる出目金の黒抽んでぬ
生けるごと金魚死にゐし夏の朝
夜店にて求めし金魚翌朝死す
金魚掬ひ親爺かたへに蚊遣香
うだる日は金魚も浮沈繰り返す
塔頭の金魚覗ける詣で人
雨の日の金魚餌撒き手なづける
簡単に生きる金魚を見本とす
猫の盗る金魚に懲りて目高飼ふ
ぐうるりと景を廻して金魚の尾
いつの間に金魚田失せし車窓かな
金魚の水取り替えるとき慎重に
死にさうな金魚を別の鉢に頒け
金魚藻に隠るるごとく雨籠り
金魚に餌遣ると云ひてはまつわりつく
一匹の金魚重態また覗く
雨の庭景色映して金魚玉
鉢に入る金魚驚き易きかな
もの貰ひ金魚ぼやけて見えにけり
藻を入れて金魚の塒設えぬ
手の届くところに金魚の別世界
羨しとも金魚はいつも憧れ持つ
積み上げて団地の如き金魚槽
金魚など飼って年金暮らしの身
走馬燈よりもゆっくり金魚玉
金魚玉とは趣旨別に走馬燈
金魚藻一つ購う客でありにけり
金魚藻とカナダ藻並べ売られをり
金魚藻とカナダ藻どちらがよろしいか
何故かお腹上にし泳ぐ金魚あり
灯して鉢の金魚を散らしけり
金魚飼う水に注意を払はねば
驚き散る金魚己が糞巻き上げて
祭月金魚貰うて藻を買ひに
長命は神のみぞ知る金魚運
金魚の子育つかそれもこれも運
これまではちょっと悪くて金魚運
金魚貰ふ容器いろいろ用意して
鉢底に貰はれて来し金魚の眼
移されて居心地違ふ鉢金魚
金魚放つアルミの鍋が新天地
金魚孵る義弟もて来てお裾分け
うっすらと彩載る金魚の稚魚貰ふ
金魚藻の捻れを直し戻しけり
金魚藻にあぶくを遣りて育てをり
梅雨どきの何處を見据えて金魚の目
四方簾鉢の金魚に他ならず
金魚草溺るゝやうに日を浴めり
駄金魚のふらふらせしが今日死にし
金魚の糶なんぞ目当てに出掛けけり
江戸川の金魚巡りとなりにけり
金魚攫ひし現場を通る斑(ぶち)の猫
猫に金魚獲られてよりの浮かぬ日々
さらはれし金魚の鉢の布袋草
何處か猫に似るところあり斑金魚(ぶちきんぎょ)
屑金魚なりしが日を経て斯く太る
金魚田の写真入り記事月替る
三毛猫に金魚奪られてつまらぬ日
鉢飼の金魚くすねし猫通る
慕ひ寄る金魚の動き春は来ぬ
紙のたも大破それでも金魚追ふ
初孫の来るたび覗く鉢金魚
日が陰り金魚のための取り替え水
四温来りて金魚の水替え日和かな
在宅といふ身金魚に何處か似て
覗かれて目と目が遭ひぬ凍み金魚
越年の金魚数えて五匹ほど
氷点下鉢の金魚が気になりて
金魚の朱ぼおっといわさきちひろの絵 Junior
筒花のはらほろひれと金魚草
金魚玉風抜け易き家が佳し
オランダてふ金魚はドレスアップして
落ち込んで冬の金魚のごとくゐる
鉢飼の冬の金魚の数かぞふ
暇つぶし冬の金魚の鉢覗く
午前中金魚に日向ぼこさせて
けふ金魚に餌やったかと懐手
冬に入る金魚を覗くもう一度
殖え過ぎし金魚貰ふに金盥
唄ふごと金魚の口付きよぎりゆく
金魚つり皆に囃され二十匹
先ず水を張って金魚を流し込む
一ト年ぶり金魚すくいの禿親爺
いつもの場所いつもの金魚すくいの店
小地谷産金魚と親爺受け答え
金魚柄蚊遣置きゆき呉れにけり
来し方の佳き事思へ金魚玉
甕の金魚覗きに出でて梅雨晴間
甕の金魚いつか失せれば買ひ足して
つれ衆の替って釣れる金魚つり
金魚見て極楽の夢授かりぬ
数へてみて金魚五匹の夏畢る
水替えの金魚のための日向水
愛嬌を振りまき金魚ねぶたの子
剽軽もの金魚ねぶたがうろちょろす
金魚ねぶた揺らしくる子の赤法被
お囃子の前ゆく金魚ねぶたかな
腰泳がせ金魚掬ひの女の子
金魚の死因突き止めて来て松笠病
金魚など佳しカーテンの裾模様
生け舟に札投げ込まれ金魚糶
共食いの金魚話題にして食後
布袋草金魚に買うて雨の街
水替えの金魚にあめの降るならめ
金魚の餌吾らに三度の米の飯
カルキ抜き金魚の水替え縁に桶
金魚の水替え二昼夜かけてカルキ抜き
甚兵衛の畑の花摘み金魚草
ぬくとげに砂地畑の金魚草
紅顔の未だ蕾なる金魚草
金魚草花摘み日和となりにけり
金魚草など摘みをれば午報鳴る
おとなしき冬の金魚の水を替ふ
冬の金魚覗き込まれてぎょっとせ
(末尾は句集名)
蝉 /
あすなろに鎬を削り始む蝉 寒暑
あっさりとけふを送れり秋の蝉 石鏡
あらぬこと考えて蝉、音の鈍る 寒暑
いいかげんにしておけ嵩にかかる蝉 寒暑
いたづらに力んでみせる蝉は野暮 寒暑
いつも母連れて蝉捕り内弁慶 素抱
いとたやすく手捕らる蝉となり果てしか 暮津
いと白き落蝉の腹風立ちぬ 暮津
いま正に蝉の天下といふべかり 素抱
うだうだと頭でっかち蝉啼けり 鳩信
えらきこと顧み啼ける夕の蝉 随笑
おし黙りころり転倒せる蝉も 暮津
おぼつかなくなりし日差しに愚図る蝉 さざなみやつこ
オルゴールの円盤の穴蝉時雨 宿好
お迎えはまだまだまだよと蝉啼けり 暮津
お粗末を悪声ながら勤む蝉(森の石松三十石道中) 暮津
お騒がせしましたと蝉木を離れ 寒暑
かうなれば蝉の殲滅計りたし 素抱
かぶされる南大門に残る蝉 素抱
けなげにも蝉が欅に取り付く図 随笑
けふの無事告げ合ふごとく蝉啼けり 寒暑
けふも又蝉の頭陀行樫の木に 随笑
ここに来て蝉鳴くほんの二三日(にさんち)前 素抱
こともなく蝉また鳴けり野分あと 素抱
ごにょごにょと云ひて夜蝉の紋切型 随笑
この通り蝉は素手もて掴むもの 寒暑
この木さしづめ蝉の井戸端会議の木 寒暑
こゑも褪せ茶の出がらしのやうな蝉 随笑
コンビニに蝉と蝉がら持ち込む子 暮津
ご近所を騒がす蝉も一頓挫 寒暑
ご当地の赤蝦夷蝉といふを聴く 燕音
ご法話に蝉随喜して霊鷲山 随笑
ざら紙に蝉の一句を書留めん 素抱
しどろもどろに鳴く蝉ありて雨の中 素抱
じり貧といふ鳴き方をせる蝉も 燕音
じり貧と云ふ鳴き方をせる蝉も 宿好
じり貧の蝉音湯舟に浮かびゐて 暮津
すんでのとこ蝉に逃げられ大きなこゑ 寒暑
ずんどうの欅に蝉の取縋る ももすずめ
そこにある本を開いて蝉の昼 暮津
そこらぢゅうとり散らかして蝉音の中 随笑
その羽音てっきり蝉と思ひけり 素抱
だう飛んでもこんな恰好になる蝉か 暮津
たどたどしきにいにい蝉の節廻し 寒暑
つじつまの合ふ句は陳腐蝉しぐれ 暮津
なほ翔びて縋るものなき秋の蝉 寒暑
にいにい蝉生ぬるく夜の明けにけり ぱらりとせ
にいにい蝉鳴き出す雨を振り切って 素抱
バタバタと唖蝉あたり昏れしめき 暮津
はっきりと蝉鳴きそむは今日のこと 暮津
ばらばらに鳴いてけつかる処暑の蝉 素抱
ハリギリの樹が大好きな森の蝉 寒暑
ひっひっと聞こえて遠(をち)の秋の蝉 宿好
ひらひらと蝉の逃げゆく空の丈 暮津
ヒリヒリと蝉音あたりが暮れてくる 暮津
ぶりかへす暑さも森の蝉の音も 寒暑
ぶるぶると鳴かぬ朝蝉木を替えて 暮津
また元の木に舞ひ戻る蝉なる歟 寒暑
まだ鳴かぬ蝉のどうしていることやら 随笑
また鳴きて蝉は古きに泥むごと さざなみやつこ
まんじりとせざる夜の明けにいにい蝉 寒暑
みんみんにとってかはられ杜の蝉 暮津
もう一つ鳴く蝉殖えてまったくもう 素抱
もう既にこゑの森なす朝の蝉 暮津
もう先が無いぞ無いぞと蝉しぐれ 素抱
やすやすと蝉の背後に廻りけり 暮津
よく聞けば夜蝉時折手を抜けり 寒暑
リズムよく蝉の唄入り観音経 寒暑
わめき散らす蝉あり我に鼓膜あり 随笑
わめく蝉塚原問答聴くごとし ももすずめ
唖蝉の羽音ばかりが大きかり 寒暑
意気上がらぬ世嘆き蝉もこんな調子 寒暑
一重づゝ解かれ蝉音は三重なりき 暮津
引継もいと簡単に楠の蝉 寒暑
羽化の蝉地涌(じゆ)の菩薩の化身にて 随笑
雨に鳴くにいにい蝉のみそっかす 宿好
雨上り耳に染みつく蝉一つ 素抱
遠き蝉さらに遠くを風吹けり 寒暑
往生の手形に写経法師蝉 随笑
横着は蝉鳴き初めしその日より 素抱
何をどう勘違いして玻璃へ蝉 寒暑
夏送る一樹一樹は蝉音挙げ 暮津
回り込み蝉捕り坊主樹のうしろ 素抱
海へ蝉片道切符めく飛行 暮津
界隈の木々に目配り蝉捕る子 暮津
皆指を入れてみたがる蝉の穴 暮津
割れ鐘のごときも居りて三井の蝉 素抱
割れ鐘の蝉の独壇場に入る 随笑
喚く蝉二百億劫(こう)経て成佛 随笑
幹添ひに目遣れば蝉のシルエット 宿好
幾つもや月夜を蝉の魂(たま)昇天 暮津
急雨にもいけしゃあしゃあの法師蝉 鳩信
居心地のたじたじ蝉に近寄られ 寒暑
虚空会(え)の説法蝉のこゑ借りて 随笑
強靱な蝉の肋を仰ぎ見て 暮津
驚き逃ぐ蝉の麁相に「まあいいか」 寒暑
近づけば郵便受より蝉発てり 暮津
熊蝉が朝から納豆粘り出す 素抱
熊蝉の熊坂長範啼き出すよ 寒暑
熊蝉の大捕物となりにけり 素抱
結局は一日蝉を聞く羽目に 鳩信
月端(はな)の蝉ごゑ何処か衰へし 宿好
剣客シラノさながら夜蝉の呟くは 随笑
建前の柱に蝉も招ばれけり 素抱
見て呉れと眸が云ふ僕の捕りし蝉 素抱
見当をつけずに飛ぶは正に蝉 素抱
見馴れたる木から晩蝉転げ落つ 素抱
軒へ蝉早速鳴いてみせにけり 寒暑
減る蝉音聞いて山妻厨に立つ 暮津
吾が宗旨曹洞宗と蝉啼けり 素抱
吾知らぬところで蝉のぽっくり死(じ)に 素抱
公園の広場を蝉のまっしぐら 寒暑
口はさむ余地なき蝉の天下なり 素抱
行きあたりばつたりの蝉吾を掴む ももすずめ
行きずりの松から転倒したる蝉 寒暑
行き遇ひて蝉も驚く吾も驚く 暮津
行く方に朝蝉の杜わつとあり ももすずめ
高低を選ばず止まる蝉となんぬ 素抱
今日乗り切る気概を籠めて朝の蝉 暮津
昏れて来て蝉音半減又半減 暮津
昏倒の蝉を箒に懸けにけり 随笑
昨日より暑くなるぞと朝の蝉 燕音
山林に蝉の蛮声おとろえず 素抱
産土の夜蝉を零す木もあらむ 燕音
残る蝉非力非力と鳴けるなり 暮津
始めて鳴く蝉と思へず達者なもん 寒暑
思うともけふを限りの蝉ごゑと 随笑
死してなほ蝉の目鼻の剛健に 暮津
死してなほ肉付きのよき蝉の肩 ぱらりとせ
死す蝉のそのままドンキホーテ面 ぱらりとせ
時国家湯殿にとほる蝉のこゑ ぱらりとせ
自宅にて養生始まる朝の蝉 鳩信
自転車の荷台に蝉の落ちゐたり 暮津
煮え切らぬ鳴き方あれはにいにい蝉 素抱
寂として死蝉の他消ゆる景 寒暑
手短に鳴ける夜蝉の空元氣 暮津
首筋に蝉の羽月の風受けて ぱらりとせ
樹が鳴ってゐるやう十あまり連なる蝉 暮津
就中意味あるやうに蝉の啼く 寒暑
拾ひあげ蝉の茶羽根を広げみる さざなみやつこ
秋秋と尾鰭を付けて啼く蝉も 鳩信
秋蝉として一日を長びかす 随笑
秋蝉のおのが鳴く番譲らざる 暮津
秋蝉のひりりと榧を離れざる ぱらりとせ
秋蝉の遠く蔵書を死蔵して 鳩信
秋蝉の壁成すごとし風絶えき 寒暑
終盤へ蝉さまようや西日中 寒暑
粛と蝉発たする天下一の鐘 素抱
出し殻のやうな蝉の音絞りをり 寒暑
処暑処暑と今朝方の蝉さう鳴くも 随笑
暑さうに啼く蝉ペンキ塗り重ね 随笑
小ごゑなる蝉にもめ事あるごとし 寒暑
上ずって蝉音何とも幼かり 暮津
上枝より手離し或る日蝉頓死 暮津
上野山精養軒の蝉しぐれ 素抱
寝過ごせぬ性分にして蝉に起つ 素抱
寝返りを打ちつゝ蝉のかすれごゑ さざなみやつこ
心経の皮切りに似て朝の蝉 さざなみやつこ
森深く蝉八百の眼(げん)瞠きて 随笑
真夜の蝉啼くといふより洩らすこゑ 寒暑
身は空に放ちて蝉の糞掃衣(ふんぞうえ) 随笑
水のみに起つ昼蝉のしまり無き 暮津
成仏を明日に蝉の富楼那(ふるな)の弁 随笑
正調といふべき蝉に耳を藉し 寒暑
生ぬるき木椅子ににいにい蝉聴けり ももすずめ
青空がずり落ちて蝉転落死 寒暑
青天の霹靂とはこれ蝉の尿(しと) 寒暑
赤恥をさらす訳には蝉しぐれ 暮津
蝉ごゑのあの啼き方は手捕られし 随笑
蝉ごゑのヒリつく中を投函に 随笑
蝉ごゑのまだ幼かり防潮林 暮津
蝉ごゑの果てはよれよれ日は斜め 暮津
蝉ごゑを薄め薄めて夕風吹く 素抱
蝉しぐれあたり暮れ来て先細り 寒暑
蝉しぐれてふ特大の坩堝かな 寒暑
蝉しぐれブナすらすらと生ふる森 素抱
蝉しぐれぼちぼち四時と教へられ 随笑
蝉しぐれ寄進杉苗拾萬本 素抱
蝉しぐれ胸の創口ありありと 素抱
蝉しぐれ舌鋒鋭き芭蕉さん 暮津
蝉しぐれ痴呆の母と禅問答 暮津
蝉しぐれ漫然と聞き横坐り 暮津
蝉に尿(しと)など掛けられてたまるかと 素抱
蝉に網被せてよりの一仕事 素抱
蝉の音の納まるを待ち門火焚 素抱
蝉の胸時計の内部覗くごと 寒暑
蝉の穴ここらに集中する訳は 暮津
蝉の穴ホーチンミンも斯く潜み 宿好
蝉の穴暇を潰すに少し馴れ 素抱
蝉の穴随所に杜の鎮まれり 暮津
蝉の穴数ふることをまだ止めず 暮津
蝉の穴探しきりなしもう止めた 暮津
蝉の穴程の寂しさなどといふ 燕音
蝉の穴同士近くて愛しけれ 暮津
蝉の穴優に一千越えをらむ 暮津
蝉の昼ペットボトルの裡曇る 暮津
蝉の昼辞書を牽き牽き確かめごと 暮津
蝉の尿ならぬお山の通り雨 素抱
蝉の尿無味無臭にして蒼天 寒暑
蝉の瑠璃ちらっと脳裏掠めけり 随笑
蝉はみな残暑残暑と鳴きゐたり 素抱
蝉は今普賢の行説く大団円 随笑
蝉は木に登る六根清浄と 随笑
蝉わっと鳴き出す前にしておくこと 随笑
蝉を捕る極意暫く鳴かせてから 素抱
蝉を捕る子のためにあり八幡さま 素抱
蝉音いま空中楼閣なせりけり 暮津
蝉音はやいぢらしき機(とき)過ぎゐたり 素抱
蝉音絶ゆ木が悄然と佇ってをり 寒暑
蝉音断ち靫彦の釈迦説法図 随笑
蝉音聞き我も端くれアバ世代 素抱
蝉音沁む洗濯ものを取り込めり 素抱
蝉何かに突き当たる音露けしや 暮津
蝉殻のそこで時間が止まりをり 暮津
蝉殻の弄ばれて置き去りに 暮津
蝉殻を終には壊し始めし子 暮津
蝉殻を蒐めゐし子の気が変る 暮津
蝉殻を剥がし欄干歩まする 暮津
蝉喚く真言亡国禅天魔! 随笑
蝉気儘に啼いて迎える転落死 素抱
蝉穴の瞑さに辺り暮れて来ぬ ぱらりとせ
蝉止まる所に拘る太郎杉 素抱
蝉止まれりゃ何處でもよいといふ風情 暮津
蝉時雨だまらっしゃいと夕立来 鳩信
蝉時雨ときにはうねることのあり 暮津
蝉時雨やぼ用一つ出来にけり 暮津
蝉時雨人は勤まることをして 暮津
蝉時雨晩年押しつけられてをり 暮津
蝉手づまりそんな感じのする啼きごゑ 素抱
蝉声のおっと止まった誰か来た 暮津
蝉逃ぐるぶうんと熱き風起たせ 寒暑
蝉発たす気などさらさらなかりしよ 寒暑
蝉発たせて仕舞ひこちらも大慌て 寒暑
蝉非力一陣の風起てば墜つ 素抱
蝉飛ぶは粋な小政の旅姿 暮津
蝉飛んでなんだ近くにまた止まる 暮津
蝉聞いてあちらこちらの湯壺かな 素抱
蝉捕の蝉を鳴かせて通りけり 暮津
蝉捕の油を売れり遊園地 暮津
蝉捕りの極意は逃げ来る蝉捕ると 暮津
蝉捕りの子を指図して通行人 寒暑
蝉捕りの声に特徴近所の子 暮津
蝉捕りの朝の巡回始まれり 寒暑
蝉捕りを中断塾に出かける子 素抱
蝉捕る子新参者を睨みつけ 暮津
蝉捕上手この近所では肉屋の子 暮津
蝉鳴き出す空襲警報発令と 暮津
蝉来ると声うわずって手を引く子 素抱
蝉啼かぬ分だけ凌ぎ易きけふ 寒暑
先客にとまどひながら止まる蝉 寒暑
早や一つ落ちゐて蝉のあっけなし 寒暑
早起きを励ます蝉も減りにけり 暮津
台風の巻き添え喰って鳴く蝉か 素抱
台風の眼の中の蝉憶せずに 素抱
台風の来る日を蝉の知らん顔 素抱
大西日蝉の今際(いまは)に立ち会へる 暮津
大木にとりつき鳴ける蝉反り身 暮津
脱藩者めく蝉街道外れゆけり 寒暑
地震に発つ蝉のおろおろ飛ぶばかり 暮津
蜘蛛の囲に蝉の片翅夏畢る 暮津
秩父事件蜂起の鐘を蝉抱き 宿好
抽んづる赤松蝉を集めをり ももすずめ
虫籠に蝉の御報謝ありにけり 素抱
虫籠の中はと見れば蝉の殻 暮津
虫籠提げ蝉など捕ってちょうだいと 素抱
朝から翅バタつかせゐて残る蝉 暮津
朝の蝉うんざりする日が始まりぬ 随笑
朝の蝉潮のごとく退くときあり 暮津
朝の蝉聞き流しをり床の中 暮津
朝蝉が一つ遠くへ鳴き移る 素抱
朝蝉が風に埋もれて誰が忌日 素抱
朝蝉が啼かぬとある日来たりけり 鳩信
朝蝉に鼓舞され我流体操す 暮津
朝蝉のいつとはなしに一潮流 暮津
朝蝉のいやに啼くとき啼かぬとき 鳩信
朝蝉のきのふともなく音を絶てり 素抱
朝蝉のしゃんしゃん手拍子足拍子 寒暑
朝蝉のじゆげむじゆげむに起き出して ももすずめ
朝蝉のもうこゑ絞る中起床 暮津
朝蝉の寝言まがひのこゑ一つ 素抱
朝蝉の勢ひたてるが元氣の素 暮津
朝蝉の頭越しなる喧し屋 ぱらりとせ
朝蝉の日毎に薄れ儚(はかな)言(ごと) 素抱
朝蝉の鳴き出すまでの樹のしじま 暮津
朝蝉の誦経のしりきれとんぼかな 随笑
町中の肉屋の裏の蝉の墓地 暮津
長たらしく鳴いて鎮守に残る蝉 暮津
長っ尻の蝉に口説かれゐるごとし 寒暑
長雨にことし少き蝉の穴 素抱
長啼きのこれにて退散法師蝉 暮津
通り雨長らふ蝉に落蝉に 随笑
佃煮のやうに詰め込み蝉の籠 素抱
辻褄合ふ一落蝉と樹の位置と 暮津
定年だあ定年だあと蝉啼ける 宿好
定年は如何にと蝉の頭陀行者 随笑
哲人の風貌しかと蝉の面(つら) 寒暑
転げ墜つところが墳や秋の蝉 寒暑
顛倒せる蝉の太っちょ一凡夫 随笑
電線揺れ地震の間飛ぶ蝉見たり 暮津
杜の蝉勝手に幕を引きにけり 暮津
土壇場の蝉の声音と思ひけり 随笑
唐突に簾の蝉の鳴き出せり ももすずめ
投げやりな子につき合ひて蝉の昼 素抱
湯上りの身に夕蝉を引き寄せて 寒暑
灯を取りにきたぞと網戸の外の蝉 随笑
灯を取りに蝉の来てゐる盆踊 素抱
頭を寄す子ら一人が蝉を押さえ付け 素抱
堂縁に一つ載せあり蝉骸 宿好
馴れ馴れしく何處でも止まる蝉がいや 暮津
楠に蝉少年上目使ひせり 暮津
楠亭々蝉捕り坊主まだ来ぬ森 素抱
二、三日前まで秋蝉鳴きゐし樹 暮津
忍辱(にんにく)の鎧に蝉の啼き通す 随笑
忍辱の心の裡を法師蝉 随笑
濡縁で聞きて夜蝉の腹話術 素抱
念力をキリキリ蝉の大神通(だいじんずう) 随笑
捻子(ビス)埋ずむ胸の手ざはり遠き蝉 寒暑
莫迦げたる蝉の一徹通しけり 素抱
莫迦鳴きをはばかりもなく軒の蝉 暮津
八月盡おいてきぼりの蝉が鳴く 素抱
八幡の杜に君臨熊蝉は 素抱
晩酌や蝉音遠のくばかりなり 寒暑
晩節や蝉同色の樹を選りて 素抱
晩蝉に滅却心頭大自涼 寒暑
晩蝉のこゑ押っ被せ押っ被せ 随笑
晩蝉のときどき手抜きしたりけり 素抱
晩蝉の明けても暮れてもこの一手 随笑
晩蝉の離れ大椨暮れしめぬ 素抱
飛び方を蝉に手ほどきして遣りたし 暮津
飛ぶさまは愚直そのもの残る蝉 暮津
飛ぶ蝉のいづれも路頭に迷ふさま 暮津
飛行法伝授させたき蝉のあり 寒暑
飛来せる蝉は真夏の代名詞 暮津
鼻つまみ鳴き継ぐ蝉の盛夏過ぐ 暮津
鼻声に何か言ひたげ朝の蝉 鳩信
百蝉(せん)の中の一蝉たち優る 暮津
百蝉の息ひそめけり朝の杜 随笑
不受不施と日蓮坊を慕ふ蝉 随笑
父見舞ふ当番の日や朝から蝉(妻) 暮津
武士(もののふ)の風貌に似ず蝉非力 素抱
風の中直なる幹をあゆむ蝉 宿好
風よりも蝉ひるがへる翌檜 素抱
風立って蝉の乱痴気騒ぎ了ゆ 寒暑
腹見せて暑苦しいぞ軒の蝉 暮津
捕虫網ぬうっと蝉の背後より 暮津
捕虫網蝉を大地に押さえ付け 素抱
歩くなら坂本あたり法師蝉 素抱
放浪の木を替え蝉の山頭火 素抱
方向がちがふと羽根を返す蝉 暮津
方寸の景見て死ぬる蝉ならむ 素抱
方便の一つに蝉の小便も 随笑
法師蝉ぐうんと高き杜欅 素抱
法師蝉出だしもたもたして居りぬ 寒暑
法師蝉走り込み鳴きしたりけり ぱらりとせ
法師蝉多宝如来のこゑ以て 随笑
法師蝉薄荷のやうに頭に沁み来 寒暑
法師蝉腹を凹ませ鳴きをらむ 暮津
法師品(ほっしほん)称えて蝉の生まる也 随笑
凡百の蝉に占められ官幣社 暮津
盆近み蝉音そろそろ空いて来し 素抱
毎日の蝉に聾を決め込むや 素抱
万歳をして落つ蝉の手をそのまゝ 寒暑
夢にまで出てくる蝉のくだくだし 暮津
名にし負ふ石の大谷の蝉しぐれ 素抱
明神のうしろ日当る竹に蝉 ねずみのこまくら
鳴きざまの朝からなげやり秋の蝉 暮津
鳴き競ふ蝉の肋の熱からむ 暮津
鳴き通すことが全てや蝉非力 素抱
鳴き納む蝉ヂリヂリとヂリとヂと ぱらりとせ
鳴くしきゃない蝉のいちにち了りけり 暮津
鳴くまでの手順を踏みて法師蝉 素抱
鳴く程に蝉の非力を思はする 随笑
鳴く番がなき唖蝉と発ちて知る 寒暑
盲蝉ぶつかる音にまどろまず 鳩信
木に縋る蝉のまたもやドジを踏む 素抱
木斛に晩蝉こゑをたてずにゐる 暮津
目が覚めて此処如何な國蝉しぐれ 随笑
目減りせし蝉は高きにホルトの木 寒暑
夜が来て蝉に引導渡しけり 暮津
夜が来る蝉は木立に収まりて 寒暑
夜の蝉も十七文字も紋切り型 素抱
夜更け訪ふまさかの蝉でありにけり 寒暑
夜蝉ヂと寝落ち難きを託てるか 寒暑
夜蝉鳴く丑満ほんのちょっぴりだけ 素抱
夜蝉啼くは後悔に似て忸怩たり 暮津
夜店の灯杜を焦がして狂ふ蝉 素抱
夜風出づ短か鳴きして盆の蝉 寒暑
野次馬のやうに馳せゆく蝉見たり 素抱
野分あと斯く減る蝉音拍子抜け 素抱
野分雲それより迅く蝉飛べり 素抱
有無云はさず蝉音を断てる大夕立 暮津
夕栄えも手伝ひ蝉の愁嘆場 寒暑
夕蝉にやうやう見ゆる鳴き疲れ 燕音
夕蝉のいちだんらくや飯にせん 素抱
夕蝉のすとんとこゑを落しけり 素抱
夕蝉のやかましからぬ音と聞けり 素抱
夕蝉の鳴きゐし一つ鳴き止みぬ 素抱
夕飯の支度そろそろ蝉音減る 随笑
夕方にもう一度出て蝉捕す 暮津
夕方の風が出てきて減る蝉音 暮津
夕立にこりゃたまらんと馳せる蝉 寒暑
夕立に屋をはなれて蝉の翔ぶ 寒暑
頼むからもそっと抑え啼けよ蝉 寒暑
落ちてゐる蝉の骸と商店街 暮津
落蝉にいつもの空があり真青 寒暑
落蝉のごとく仰向きぐうたら寝 随笑
落蝉のころりと参る姿かな 随笑
落蝉のほとり過ぎゆく勤め人 暮津
落蝉のまたここにもの思ひかな 素抱
落蝉の一つは玄関灯真下 素抱
落蝉の足蹴にされて一、二転 素抱
落蝉の天空を風吹き抜けり 素抱
落蝉の落ち方むろん頭から 寒暑
落蝉の翅ヒクヒクとさきほどまで 暮津
落蝉は有為の奥山けふ越えて 素抱
落蝉をヘッドライトのよぎり消ゆ 素抱
立秋とがなれる蝉に聞かせばや 素抱
竜口寺蝉音の念彼(ねんぴ)観音力 随笑
連れ鳴きの末はだらけて法師蝉 鳩信
狼狽へる蝉に幹貸すあすなろう 鳩信
啼き納め方にも作法法師蝉 随笑
啼き方もまた死に方も蝉愚直 素抱
啼き了へし蝉のころりと仏国土 随笑
啼く蝉のただならぬ時過ぎゐたり 素抱
啼く蝉の後先もなく一緒くた 素抱
戰艦の一部のごとき蝉の胸 寒暑
檜枝岐蝉の出番は疾うに過ぎ 鳩信
椨大樹果たして蝉はここに居る 寒暑
椨抱えこゑふりしぼる秋の蝉 随笑
玻璃の蝉腹部まじまじ見られをり 寒暑
茫洋と床起ち蝉に狎れし耳 寒暑
襤褸のごと寝ねて夜蝉の短鳴き 暮津
賽銭箱のぼり詰めたる蝉殻あり 暮津
颱風の合間蛮勇ふるふ蝉 随笑
(末尾は句集名)
空蝉 /
コンビニに蝉と蝉がら持ち込む子 暮津
ずぶ濡れの空蝉一つ見つけけり 燕音
ドロの木より空蝉剥がしやりにけり 燕音
一つ葉に空蝉二つ生垣に 素抱
机上に風起ちて空蝉吹き転がす 素抱
空蝉とHOPE机上に昼闌けぬ 素抱
空蝉に問ひかけてゐる別の我 素抱
空蝉のかけらも入るらむ長寿薬 素抱
空蝉のしがらみほどき遣りにけり 素抱
空蝉のやがて忘らる机の上 素抱
空蝉の一つひっつく常夜燈 暮津
空蝉の貫き通す初一念 鳩信
空蝉の興はや失せて掌に残る 素抱
空蝉の鋼の脚のとこしなへ 素抱
空蝉の爪の切っ先岩に立て 暮津
空蝉の爪先少し焦げてをり 素抱
空蝉の背に刻めるは梵字とも 素抱
空蝉の風雨に目鼻古びざる 暮津
空蝉の宝庫と巡る興半ば 素抱
空蝉の縋る一ト葉ももみづれり 暮津
空蝉は白雨飛沫を浴びてをり 石鏡
空蝉も世を観るときは斜に構え 暮津
空蝉も蝉も入れられ一つ籠 素抱
空蝉をおっかなびっくり抓む指 石鏡
空蝉を机上に置いて散歩果つ 素抱
空蝉を入れる器に空き菓子折 素抱
月日過ぎ易く空蝉の爪に泥 素抱
虫籠の中はと見れば蝉の殻 暮津
目に見えぬ程の雨ふる空蝉に 素抱
腑分け図のごとく詳しく空蝉描く 素抱
空蝉に空蝉足して四つほど
空蝉に落ちてくるもの冬の雨
空蝉も死にゆく蝉も皆途中
蝉の殻水舎の柱・注連縄に
だうしても蝉が捕れねば蝉の殻
蝉の穴そこへ空蝉突っ込む子
てのひらに空蝉の貌並べけり
空蝉を這はせば机辺に零る泥
念仏の如きを洩らす蝉の殻
念佛の凝りしものとも空蝉は
朝刊を腋に空蝉てのひらに
気の済むまで空蝉のとる容
空蝉の縋る一ト葉ももみづれり
蝉の殻打ち水浴びて眼の濡るゝ
空蝉の背の創術後の胸の創
すぐ飽きてしまひ捨てらる蝉の殻
返る葉に空蝉ついてゐたりけり
空蝉の写生句庭の草に佇ち
葉裏より空蝉の爪覗きゐる
蝉の殻紫蘇の葉裏にもう一つ
空蝉の抱へゐるもの竹細葉
小庵の空蝉耳門の簷のうら
空蝉のそもそも語り遣る孫に
空蝉に昨日の雨水遺りけり
抽斗の空蝉久に日の目見し
空蝉を蒐めておいてとむらはむ
空蝉を蒐めこころの隙満たす
空蝉の虚々実々の泥肢体
空蝉を手に止まらせて散歩みち
空蝉を上り框に忘れ来し
置き忘られ上ち框に蝉の殻
机上に空蝉台風は今北上中
木鋏と空蝉縁に置かれあり
つちくれが爪に乾びて空蝉は
空蝉のぶら下がりをる葉っぱかな
雑兵のごと空蝉の地より湧く
空蝉の眼暾が差しなまめきぬ
逞しき空蝉の脚剥がしけり
空蝉になほ漲れる糞力
火があらば空蝉くべて手向けけむ
空蝉を砕かむとする出来心
誰が置きし空蝉一つ電話の辺
傾きて空蝉灯影曳きゐたり
空蝉を孫歩まする卓の上
空蝉も蝉も入れられ一つ籠
空蝉二つ並べて置いて消灯す
空蝉を湯呑の側に置いてみぬ
空蝉の前脚の泥乾びゐし
空蝉をあまた蒐めて手に余る
孫帰る空蝉一つおいてきぼり
空蝉を当てなく蒐め深き昼
また一つ空蝉加ふ机の上
空蝉のこれさきがけの一つならむ
空蝉の確執に似て縋りざま
庭先にけふ空蝉を見る朝
空蝉の泥に残せし糞力
空蝉にセンニュウの声徹りけり
空蝉の容に妻の昼寐して
空蝉をくしゃと潰せば昼の音
産土の祖霊を宿し蝉の殻
空蝉の眼が雨音聴いてゐる
つと離れ一人空蝉探すひと
空蝉の一つや二つほれここに
背を撫でて空蝉の労ねぎらへり
さぞかしと空蝉の背に手をやれり
空蝉の眼手中に炯々と
(末尾は句集名)
紙魚 /
拡大して紙魚の歯なんぞ見てみたし 素抱
月明の紙魚と遊びて師の忌くる ねずみのこまくら
古書即賣案内元は紙魚之會 石鏡
公理より定理導く雲母虫 さざなみやつこ
死者の書は畏多きと紙魚云うも 燕音
紙魚を詠むこころ世過ぎの足しにせん 随笑
同一の紙魚の仕業でありにけり ぱらりとせ
木乃伊の亜麻布紙魚の類がつかぬかと 燕音
曼荼羅圖喰うとは紙魚のふてえ奴 ぱらりとせ
宸筆もものかは紙魚の確信犯 随笑
拡大して紙魚の歯見たし厚ルーペ
古辞類苑紙魚に走らる大誤算
霜解けの木雫きららまたぎ村
読めるうち読んでおくべし雲母虫
霜解けの木雫きららまたぎ村
紙魚寄せず是雪舟の達磨絵図
(末尾は句集名)
落し文 /
落し文早出の旅の足先に(散策路)
転がれる向きを気にせず落し文
◆植物
半夏生 /
半夏生朝が来てゐる自炊棟
雲脂落とし紙面に顕たす半夏生
ピザ生地のでこぼこ均す半夏生
半夏生ピザの具手を替え品を替え
半夏生ピザの具手を替え品を替え 素抱
少女らのジーパンの毳(ケバ)半夏生 寒暑
半夏生虚ろな光放ちをり
半夏生とりつくしまも無き風情
半夏生東の方より晴れてくる
少女らのジーパンの毳(ケバ)半夏生
半夏生ルーペ片手に観察会
(末尾は句集名)
夏菊 /
虫喰いの夏菊ひょろと長けにけり
殺虫剤目をつけられし夏菊に
夏菊に庭の蟻くる羽虫くる
五風十雨夏菊は丈伸ばすとき
殺虫剤目をつけられし夏菊に 素抱
(末尾は句集名)
蝦夷菊 /
百合 /
カサブランカとかや云う百合咲き出せり 素抱
かのこ百合やうやう暑さ納まるか ぱらりとせ
ケルン経て風届くなり車百合 宿好
この奥に津軽家霊屋姥百合咲く 寒暑
すかし百合ちらほら見ゆる御殿場線 鳩信
すがれても姥百合背筋ぴんしゃんと ぱらりとせ
ダダダッと山百合咲いてなだれけり 鳩信
ニス塗りし如くに百合の莟かな 鳩信
羽黒権現姥百合に霧ながれけり 石鏡
雨の日の玄関百合の匂ひ漬け 暮津
姥百合に朝の一雨ありにけり 燕音
夏バテに百合根などよき煮てお呉れ 暮津
崖の百合揺れゐて波浪注意報 ももすずめ
岩崎邸百合も進取の香り立ち 素抱
口つぐむ百合に魂胆あるごとし 鳩信
告別の膝折る寒の百合の前 ねずみのこまくら
山の蟻百合の莟を上り下り 暮津
山百合がすすき叢より覗きをり 鳩信
山百合のうへに出でたる狸掘 ももすずめ
山百合の香を掻き立てて雨至り 鳩信
山百合の匂ひを削ぎにザッと雨 暮津
山百合は般若心経唱ふさま 鳩信
山百合や腕うっすら日焼して 鳩信
車百合かたへに間引六地蔵 鳩信
車百合蝶をくるりと返しけり さざなみやつこ
神奈川の縣花尋ねて崎山に 石鏡
人一倍長けて気位高き百合 暮津
聖域を犯すごと百合剪りにけり 暮津
切り刻むビュッフェの描線卓と百合 宿好
庭の百合仏壇の百合納骨日 暮津
透し百合今朝咲く色と教はりぬ 燕音
透し百合日差し閉ざしてしまひけり 素抱
百合大輪じはっと気温昇りけり 随笑
百合覗く貌が入ってしまひさう 暮津
熔岩積みの熔岩の間よりすいと百合 さざなみやつこ
立て続け百合に咲かれて壺足らず 暮津
林道の百合の唇濡れてゐる 寒暑
霊界の入口に百合佇つごとし 暮津
蕾む百合あうむ返しをせる如し 鳩信
蕾む百合こづいて籠ノ登(かごのと)山の風 燕音
車百合あらはずかしの霧隠れ
霧込めの風にふるふる車百合
後方に山百合飛んで陸中路
山百合の吸い込まれゆく夜気の中
雨滴にはあらず莟のなるこ百合
山百合に幾たび替る風の向き
霧の戸の開け閉め百合が司どる
山百合の一念発起根本寺
北面に百合の点在寒風山
寒風山屯す百合の茎短か
ハンググライダー滑空百合の花のうへ
百合の香のほのと真山神社かな
百合を嗅ぎ気性激しき人ではある
難しき貌して仁王百合の昼
山百合の国上山攀じ息切らす
山百合を煽りに煽る堰の風
篠山に匂ひのすぎて百合の径
百合の香の満つるロビーや土佐泊り
庭の百合仏壇の百合納骨日
百合つぼむほんのぽっちり百合つぼむ
百合の花粉つけ来れば妻ああああと
人間に嗅覚ありぬ真夜の百合
百合花を了へて籠れる半日陰
山百合の頭重くて前のめり
雨の日の玄関百合の匂ひ漬け
捕虫網持つ子恐し庭の百合
百合の葉のハの字ハの字に岨薄暑
山の蟻百合の莟を上り下り
焼香の感極まりて百合のまへ
上段の百合の供華より傷み初む
かほる百合墓地の話に移りけり
庭の贅鉄砲百合を瑠璃鉢に
深植えと百合の植付注意書
姨百合の横より登り藩主の墓
笹百合の低き丈吹き風余る
里山の百合したたかに莟みけり
訪ふ風に計られ百合の安定度
透し百合赤ほしひまま墓地の供華
百合の筒母が覗きしあと覗く
小火さわぎ事なきを得て鹿子百合
雨の日の蕎麦屋にほのと百合の鉢
百合咲く辺雨透きとほり透きとほり
百合蕾む中空に嘴突き出して
ハローワーク県花の百合の咲き始め
透かし百合海へ乗り出す岬大地
莟いよいよ重く山百合つんのめる
ひょろひょろの山百合莟つけ路肩
山百合のいやに重たきそのつぼみ
山百合の葉の薄光り梅雨くるか
山中の百合の莟を摶ちてあめ
歪性の百合は真上の天向いて
あじさゐの無頼派百合の清純派
段丘に縣花山百合咲き出せり
山百合の香の中に顔突っ込みぬ
毒婦の香然と山百合立ち匂ふ
称名を唱ふるごとく百合咲けり
持山の山百合年々減るといふ
山百合の毒婦の如く香をふふみ
つぼむ百合謡曲なんぞ嗜まむ
山百合がすすき叢より覗きをり
百合の香を扇ぎて払ひのけにけり
咲ききって縣花山百合傾けり
匂ひ立ち萬の毛穴を開く百合
山百合に息整へり男坂
山百合の香を掻き立てて雨至り
はすかひに透明な雨山百合に
山百合や胸に風入れ一休止
山百合に一時日照雨上りけり
持ち山の百合満開に一農家
お遍路の立ち止まるごと百合を見る
山百合や雨におもてを打たれけり
山百合の山ふうふうと下りて来ぬ
巨き蕾の百合は哲学持つ如し
山百合の五六花茎のぐらつけり
身に余る花付け百合のぐらつけり
吾も亦物申さんと百合の花
山道のここいら百合の匂ひ壺
山百合の斑のむんむんと蒸し暑き
変わり者山百合の独り咲き
山百合の喉の辺りに手をやりて
そこここに百合の莟の見え隠れ
鬼百合の莟深反り山冷ゆる
透し百合日は中天を回りけり
北辺の夕日に首のべ車百合
一段と入日見事や透し百合
咲きに咲く蝦夷透し百合去年の倍
透し百合今朝咲く色と教はりぬ
あきらかに昨日咲く色透し百合
山百合の莟幼く三つ程
山百合の莟に朝の出舟の音
描線の鬼才ビュッフェの百合を見よ
くるくると揚羽の舌と百合の舌
谷戸棲みの生活の音す山百合に
雨音の裡に籠れり百合の筒
俳諧も百合も重くれてはならじ
立ちませる長谷觀音に百合活けて
斑の著く霧潜るたび小鬼百合
(末尾は句集名)
月見草 /
海峡のこちらは内地宵待草 随笑
月見草水平線の上に吹かれ ねずみのこまくら
待宵草鳥海丸は繋がれて 寒暑
待宵草林立石油備蓄基地 寒暑
鉞半島突端の大待宵草 随笑
やがてこの空き地に家建つ月見草
ハケ削られ赤土見する月見草
草むらのこんなところに月見草
草の間の雨水澄めるや月見草
月見草夢二は女なよと描く
流木に浜は寂れて月見草
月見草雨に溺るる木曾深谷
ここ仮に木曾谷とせん月見草
会津高原大待宵草の丈にょっと
穂芒と大待宵草の村はずれ
大待宵草如何なる宵を迎えけむ
塩尻峠指して待宵草のぼる
待宵草間遠に横浜未来都市
待宵草靄に漂ふ須走口
海峡の朝露帯びて待宵草
待宵草覚まし大間の礒鴉
海峡のうすうす明けて待宵草
待宵草ちらほら本州最北端
待宵草咲かせ本州最北端
(末尾は句集名)
含羞草 /
ひやひやと夜の手が触れて眠草 暮津
外出の度に手を遣り含羞草 暮津
眠草なんなら君も触れてみな 暮津
眠草突つく処がなくなりぬ 暮津
覿面にその葉畳める含羞草 さざなみやつこ
おじぎ草辞書繰りみれば一年草
含羞草九月過ぎれば忘れられ
家出づる度に手を遣り含羞草
姉妹交互に手出しねむり草
神妙な顔して求むおじぎ草
痴呆病む母が手に触れ含羞草
含羞草咲きゐし家は何處だっけ
行く人の触れては通る含羞草
(末尾は句集名)
合歓の花 /
いっぽんの合歓咲く彼方古戦場 随笑
そよ風の何ほのめかす合歓の花 随笑
雨に合歓落花続いて木雫も 素抱
雨の日も夢見る合歓の下田港 暮津
花合歓に曇天覆ひ被さりぬ 素抱
花合歓のおぼつかなさも朝まだき 鳩信
岩牡蠣と云へば象潟合歓咲くころ 暮津
古木にて惰眠むさぼる合歓の花 ぱらりとせ
合歓の花旭ぽっぽと当りけり 素抱
合歓の花一雨あるやらあらぬやら 寒暑
合歓の花咲いてベティの長睫毛 暮津
合歓の花風にさんざん雨にさんざん 素抱
合歓の上を舞ひて揚羽はうはの空 暮津
合歓若木叩ける雨も象潟ぶり 石鏡
枝先に合歓の枯れ莢ひいふうみい 宿好
禿めくうひうひしさも合歓の花 随笑
曇日を待ちゐしごとく合歓咲ける ももすずめ
病院を抜け来し患者合歓あふぐ 石鏡
纏はりつく雨はやっかい合歓の花
花合歓の坂うなばらを敷き詰めて
銀鈴の雨滴を止め合歓の花
合歓の花昨日の驟雨忘れをり
合歓の花天使の階段登れかし
散るからにそれおぎなうて合歓咲けり
咲き継げり雨の晴れ間の合歓の花
こつこつと石を彫る音合歓咲けり
真昼間の石屋の前の合歓咲けり
雨の日の憂さ晴らしては合歓咲けり
合歓の花雲近ければ朋として
花合歓の思ひめぐらす夢半ば
合歓の花写経いそしみゐたりけり
花合歓の朱ケもうろうとせる部分
合歓の花もやっと朝がやってくる
東北道なほ北へ伸び合歓の花
合歓の花白く呆けて夢の跡
吹かれては正気にかへる合歓の花
訪へる風もてなせり合歓の花
用足しの寄り道にして合歓の花
昼からは青空覗き合歓の花
風絶えることなく吹けり合歓の花
合歓の花夢見心地に朝々暮々
両親の未だ健在合歓の花
ねぶの花その瞬きのおぼつかな
六十余年濛々合歓の花の下
(末尾は句集名)
海桐の花 /
花とべら海匂はする風が吹き さざなみやっこ
花海桐にほふ坩堝に景勝碑
(末尾は句集名)
夾竹桃 /
早咲きのいくらなんでも夾竹桃 素抱
夾竹桃ブッダガヤなる聖地あり 鳩信
夾竹桃一難去ってまた一難 素抱
夾竹桃車通れば人凹む
六十路にしてよもやの介護夾竹桃
朝はまだ頭しっかり夾竹桃
図書館に読む本探す夾竹桃
連なれる夾竹桃のうへの海
夾竹桃片陰恃みそこ出でず
夾竹桃一兵卒の戦記読む
夾竹桃路傍に長けて壁なせり
保健所跡立ち寄りてみぬ夾竹桃
夾竹桃埃まみれの世に慣るゝ
夾竹桃寝ぼけ眼にピンク咲き
夾竹桃嘗て市電の馳せし街
原宿は灼けほてる街夾竹桃
蘗が夾竹桃の茂み成す
夾竹桃舗道に風の絶えゐたり
夾竹桃運動場に子供ごゑ
(末尾は句集名)
青山椒 /
青山椒隈どり深く毛虫の貌 暮津
へんな毛虫青山椒は曲ある木
(末尾は句集名)
青葡萄 /
青葡萄一つ摘みて指覚ます
青唐辛子 /
新米に葉唐辛子を目分量 さざなみやっこ
(末尾は句集名)
青鬼灯 /
市が立ち青鬼灯の葉暗がり
青鬼灯キャッチボールの弾む路地
市立ちて一鉢なんぼの青鬼灯
人々手に手に一鉢なんぼの青鬼灯
越して来し子のおどおどと青鬼灯
青鬼灯飛ぶやうに売れ夏神楽
一ツ葉 /早桃 /
パイナップル /
石垣のパイナップルとはえぐきもの
パイナップルえぐ味の針が舌を刺す
パイナップルのえぐ味甘味を追ひかけて
パイナップル熟れきってゐるお仏壇
宅配の箱毎匂ふパイナップル
生まもののパイナップルの匂ひなり
パイナップル紛れもあらずこの酸味
パイナップル匂ひを嗅いでまだこれは
箱詰の熟るるを待てるパイナップル
バナナ /
じはじはと梅雨に入りけりバナナに斑 暮津
バナナすんなり剥けて観戦大リーグ 素抱
バナナの斑彼の病床が浮かび初む 暮津
ゆつたりと泊船を入れバナナの葉 ねずみのこまくら
吾が一つ覚えの臺灣バナナ買ふ 暮津
世は移り二束三文バナナかな 暮津
大温室全開バナナに風入れて ぱらりとせ
朝市の涼一とくるみバナナの葉 ねずみのこまくら
南米産バナナは台湾バナナの横 ぱらりとせ
病室の湯呑みの脇にバナナの斑 素抱
棕櫚の花一寸バナナを思ひ出し 石鏡
バナナの花続きに小バナナ大バナナ
認知症バナナを腹の埋め合はせ
バナナの花ミニチュアバナナのその先に
温室の玻璃に頬寄せ房バナナ
病院の売店台湾バナナ置く
黒々とバナナの打ち身更くる灯に
台湾バナナ船に揺られてどんぶらこ
(末尾は句集名)
マンゴー /
マンゴーの見ゆる席にてグァバジュース ぱらりとせ
マンゴーのむんむん熟るる星月夜
(末尾は句集名)
メロン /
氷水メロン振りかく目分量 素抱
鳶の糞メロンの蔓を汚しけり 寒暑
海上につよき一星メロン冷ゆ ねずみのこまくら
メロン作りしんどくなりて今は南瓜(岬人の云へる)
術後の舌何處ぞにメロンの味がする
メロン蔓西瓜の蔓に崎の風
この蔓は南瓜メロンの兄貴分
砂地畑メロンの花に薄日差す
西瓜とメロンの摘果いづれが儲かるや
フレームを解かれメロンの蔓走る
安売りのそれなりの味網メロン
網かぶるメロンは高くつきにけり
巻蔓に岬の日遍し花メロン
フレームに透きぽちぽちとメロンの花
(末尾は句集名)
瓜 /
当節の瓜と似て非の甜瓜
真清水にどぼんくるりと瓜冷やす
瓜の種そこと云はれて顔撫づる
いつまでもこどもはこども瓜の花
瓜もみにどこか侘びしき厨の灯
瓜冷やす水が応えて呉れにけり
井戸水と云へば即ち真桑瓜
変なこと覚えてゐるよ瓜の種
その話これで何度目瓜の種
手前味噌匂はぬやうに瓜の花
正夢を夢みつからす瓜の花
初孫の智慧のつき方瓜の種
叩きみてその熟れ具合瓜に聞く
口の辺に探りあてたる瓜の種
ふむふむと公案喝破瓜の種
朝市の甜瓜(まくわ)を朝餉代りかな
ほんたうの甜瓜(まくは)を知れるそのひとり
瓜冷やす肝心な井の無くなれり
砂糖が味よく引き出して昔の瓜
瓜食うなら砂糖が巾を利かす世の
なつかしき限りのまくわ瓜など喰ひたし
冷し瓜 /
真清水にどぼんくるりと瓜冷やす
瓜冷やす水が応えて呉れにけり
瓜冷やす肝心な井の無くなれり
胡瓜 /
ヘェと云ひ葉下の胡瓜覗きゐる 暮津
へぼ胡瓜ヘルパーさんにお裾分け 暮津
もう少し肥りたけれど胡瓜揉 暮津
移る世をはすかひに見て胡瓜揉 暮津
一物のごとく胡瓜のぶるさがり 暮津
曲がることついつい忘れ優胡瓜 ぱらりとせ
古漬けの胡瓜つまめる残暑かな 暮津
古漬の胡瓜好みて食細し 素抱
古漬胡瓜茶漬けの候となりにけり 暮津
胡瓜皆すんなり基準値合格品 素抱
胡瓜揉みぽりぽりやりて昼餉了ふ 随笑
早生りの胡瓜に気づく朝のこと 暮津
朝もぎの「つ」の字「く」の字のへぼ胡瓜 暮津
朝昼晩餉に出る古漬胡瓜かな 暮津
朝毎にもげる胡瓜の十たらず
香の物とりわけ胡瓜のポリポリ感
灼けつく日々自家製胡瓜ひん曲り
胡瓜植え年金暮らし先長し
自家栽培胡瓜天候不順に苦慮
歯がよろこぶ馬込半白(はんじろ)胡瓜かな
古漬けの胡瓜つまめる残暑かな
お隣のひょろひょろ胡瓜分たれし
もぐもぐと朝食弾み胡瓜揉
疣々の胡瓜蝦夷(えみし)の勾玉めく
次々生る自家製胡瓜持て余す
日々肥る自家製胡瓜露しとど
胡瓜くるむラップ余分とおもひけり
莫迦胡瓜冬瓜風に料理して
莫迦生りの自家製胡瓜孫呼ばん
でで虫がけふは胡瓜にとりつける
茄子・胡瓜苗植え了へて手がかさかさ
自転車の荷台に胡瓜の培養土
胡瓜苗育むための培養土
胡瓜苗けふ雨なれば明日植ゑん
胡瓜もみ晩夏の口を尖らせて
うすみどり厨の前の胡瓜棚
地場野菜胡瓜が太し牛蒡痩せ
生真面目で退屈胡瓜であるぞな申(も)し
生真面目で面白からぬ胡瓜買ふ
一塔頭自家製胡瓜の蔓這はせ
酒のめる内が華なり胡瓜揉み
お隣の胡瓜の蔓の逞しき
井戸水と云へば即ち真桑瓜
早生りのソックス形の胡瓜なり
釣宿の桟橋鉢もの胡瓜苗
胡瓜揉み患者となりて一日目
大胡瓜冬瓜風に味付けす
胡瓜小さく南瓜大きく花点す
胡瓜もみなべて薄味妻の味
昭和に生れ胡瓜の古漬鹹め好き
青くさき書生っぽ胡瓜生りにけり
坪畑の胡瓜の棚を三段に
老人の朝餉シャキッと胡瓜かな
茄子胡瓜顔突き合はせ盆の物
茘枝かな胡瓜にしては花濃過ぎ
(末尾は句集名)
金魚藻 /
金魚藻とカナダ藻どちらがよろしいか
金魚藻とカナダ藻並べ売られをり
金魚藻を食める金魚はど奴かな
金魚藻に隠るるごとく雨籠り
金魚藻一つ購う客でありにけり
金魚藻の捻れを直し戻しけり
金魚藻にあぶくを遣りて育てをり
絹糸草 /
風知草 /
古めかしきものにも一目風知草
玄関で立話して風知草
風知草正午過ぎれば風非らず
そよりともせいで日中の風知草
垣越えて庭に入るかぜ風知草
風知草風呼んでをり庭の隅
いちにちの足早に過ぐ風知草
風知草ほっと一息つけばかぜ
庭亘る風を捉えて風知草
石菖 /
汐の香のうすうす流れ庭石菖
松葉牡丹 /
松葉牡丹よく咲き未だ咲き猶咲かむ 暮津
松葉牡丹咲かす家などとんと失せ 随笑
汝が植えし松葉牡丹も喪に服す 暮津
曇日の松葉牡丹はぼんやりす
松葉牡丹丈夫が取り柄と応へつゝ
汝が植えし松葉牡丹も服喪の日々
松葉牡丹咲くらん四十九日頃
建て替へる前の我が家の松葉牡丹
あの頃の松葉牡丹の咲ける家
貝殻敷き松葉牡丹の昔顔
この二タ夏松葉牡丹を見ざるなり
(末尾は句集名)
松葉菊 /
草いきれ /
川に浮く島田のどぜう草いきれ
荒布 /
打ち上げられ荒布の根やら搗布の根
オホーツク渚を滑りをる荒布 燕音
雁引くや荒布色なる島の子ら ねずみのこまくら
オホーツク渚を滑りをる荒布
タツノオトシゴ荒布の森を散策す
荒布の森散策リーフィシードラゴン
海底に荒布ゆらゆら三ケ日
(末尾は句集名)
浜木綿 /
一湾に雨を呼び込む浜おもと 鳩信
浜木綿はタカラジェンヌの長まつげ 素抱
浜木綿のざんばら髪は幡随院 素抱
浜木綿の管に合はせて蝶の舌 素抱
舗装路を渚と見立て浜おもと 素抱
浜木綿の先に見えくる登校児 素抱
脱兎のごと雨駆け抜けぬ浜おもと 寒暑
浜おもと踏みしむる砂ほこほこと ももすずめ
浜木綿の巨大なる葉や雨弾き
浜木綿に風荒れて来ぬ剣崎
雨まみれ茎太浜木綿校門脇
舟小屋裏枯れ浜木綿を濡らし雨
浜木綿に校庭の雨夏近む
海はよき空気が流れ浜おもと
自転車は礫と消ゆる浜おもと
浜木綿をあほる浦風祭り来る
浜木綿に押し照る秋の海一日
浜木綿の縺るべくして縺る蘂
浜木綿に浦賀水道日を湛え
梅雨の果浜木綿の葉のだらしなく
その容姿見て述ぶるなら浜おもと
葉のうねり波の優しさ浜おもと
浜木綿の葉の鈍色に釣日和
突っ走る白帆浜木綿並めるうへ
海好きの画家が殖やして浜おもと
一湾に雨を呼び込む浜おもと
はまゆふの真白く咲ける崎の雨
燈台へ道なお遠し浜万年青
浜木綿や吾らは太陽族の裔
浜木綿の花を意外な處でみる
浜木綿の髭の翁と海をみる
蟻んこ等浜木綿の茎上り下り
渚へは歩いてゆける浜おもと
汐風の吹き込む校庭浜おもと
浜木綿の甘き香つづく遊歩道
女学生ゆっくり過ぎぬ浜おもと
(末尾は句集名)
土用芽 /
土用芽のあれこれ目立つを刈らねばと
まるめろの土用芽一枝手で欠きし
土用芽のそら白雲の溜り易し
土用芽の手折りたくなる薄みどり
土用芽の庭木透かねば月半ば
土用芽の手折りたくなる薄みどり 素抱
まるめろの土用芽一枝手で欠きし 素抱
土用芽のそら白雲の溜り易し 素抱
土用芽に切てぬ鋏を持ち出して
(末尾は句集名)
青柿 /
ちっぽけな青柿にしてお恥ずかし 素抱
四角ばる青柿の面(つら)蟹に似て 随笑
青柿の雨滴ぴしゃりと浴びにけり 寒暑
青柿の尻辺に廻る雨滴かな 燕音
青柿やかみなり親爺の齢になり 素抱
青柿や党首張り上ぐ第一声 暮津
青柿の小さけれども数こなす
屯して青柿のまだみそっかす
青柿の容整えゐる葉陰げ
青柿の転がる路地を抜け散歩
青柿に葬りの寺の灯の漏るる
青柿の転がる札所一番寺
青柿や雷親爺首出す家(懐旧)
(末尾は句集名)
青林檎 /
お岩木に雲又かかる青りんご 寒暑
お岩木の日照雨を弾く青りんご 寒暑
青りんご青田青風岩木山 寒暑
青りんご薄光りせるおでこかな 寒暑
青りんご葉隠れお岩木雲隠れ 寒暑
佐久平その端っこの青りんご
青りんご姿正しき岩木山
(末尾は句集名)
青胡桃 /
青胡桃この木とことん優しき木 燕音
千曲川灼けに灼けたる青くるみ
青胡桃腕拱いて見ていたり
青胡桃渓谷渡る一両車
(末尾は句集名)
胡麻の花 /
湧く雲も胡麻の花いろ奥秩父 宿好
青胡桃この木とことん優しき木 燕音
千曲川灼けに灼けたる青くるみ
青胡桃腕拱いて見ていたり
青胡桃この木とことん優しき木
青胡桃渓谷渡る一両車
(末尾は句集名)
棉の花 /
苧 /
苧麻(ちょま)知らず東海道の一筋も 随笑
(末尾は句集名)
滑莧 /
すべりひゆ繁茂なにぶん古き庭 石鏡
虚子庵に足掛け四年すべりひゆ
東京の三田に出て来てすべりひゆ
(末尾は句集名)
瓢の花 /
夕顔 /
ぐりぐりの夕顔の種蒔きにけり ももすずめ
一つづつ咲く夕顔の禁破り 暮津
雨の日は夕顔の花押さえつゝ 暮津
雨後の蟻のぼり下りして夕顔苗 素抱
家に入る前に夕顔垣間見て ももすずめ
火星大接近妙なる夕顔に 素抱
豪華版けふ夕顔の三つ咲く 暮津
坐をすこしずらせば見ゆる夕顔棚 ねずみのこまくら
咲き登る夕顔脇の月を見て 暮津
少し手に余る花なり夜顔は 暮津
夜顔の実のたんと生り何と野暮 暮津
夜顔や老人ばかり殖ゆる世に 鳩信
夕顔が毎日咲いてけふ七ツ 暮津
夕顔とおわら流しの宵迎ふ 宿好
夕顔と夕月闇を同じうす 暮津
夕顔に胡弓漂ひ初めにけり 宿好
夕顔の一つは月に対しけり 暮津
夕顔の一つ咲くのみ後続かず 素抱
夕顔の雨にでれっと五つ程 暮津
夕顔の根の逞しくなりゐたり 暮津
夕顔の咲きゐる闇にいざなはれ 暮津
夕顔の大首役者揃ひ咲き 素抱
夕顔の蔓の漂流始まれり 暮津
夕顔の妙なる闇を蛾の羽打ち 暮津
夕顔の莟のこれは明後日 暮津
夕顔の莟のどれも横向きに 暮津
夕顔を天蛾ぶると発ちにけり ももすずめ
夕餉のあと夕顔を見て星を見て 暮津
夕顔の種子くろぐろと雨湿り
夕顔を見に出づ序でに月も見て
夜気押して夕顔の花開きけり
夕顔は片手の大きさ迫る闇
ぶら下がり咲く夕顔も今日の果
庭の花夕顔取りをとるごとし
木にのぼり夕顔月を招きけり
夕顔の潜める闇にすだく虫
夕顔と別の白さの月上がり
夕顔の莟鉛筆サックに似て
花しまふ夕顔近隣まだ起きず
夕顔のそろそろ咲くか飯時分
夕顔の莟み具合は明後日よ
慣性の法則月下の夕顔見て
夕顔のその上に宵の大気圏
夕顔の花につきあひをる夜更
早十時夕顔咲くを見てあれば
夕顔の蔓攀ず庭木選ばずよ
夕顔蔓幹あれば幹よじ登る
夕顔に白雲流れ止まざる夜
昨夜見損ないし夕顔朝方に
夕顔の花に掌被せ同サイズ
夕顔の花を拾ふは筒拾ふ
夕顔の実のたんと生り何と野暮
開くまで夕顔の筒間延びして
夕顔の花数減って来しと妻
夕顔の筒落ち昨日の音がする
昏れてくる夕顔の白萩の白
十六夜の夕顔漂ひ初めにけり
夕顔の凡そ五十も咲きたる歟
夕顔と月と村雲いと白し
月明に夕顔の数幾つなる
雲高く澄みて夕顔月夜かな
夕顔の二、三咲きゐる今日の月
全開の夕顔前にし「こんばんは」
昨夜の夢畳み込みたり夕顔は
夕顔やぴしゃんと雨戸閉められぬ
夕顔はあぎと突き出すごと咲ける
門火焚く闇に夕顔咲きゐたり
よべ見損ず夕顔大き花垂れて
夕顔は空を大きく使ひ咲く
夕顔の蔓の先っぽ今朝見れば
夕顔の蔓にも好みありて巻く
夕顔の蔓の漂流始まれり
夕顔を這はす処を先づ決めて
夕顔の蔓巻き昇り棒の尖
大首の役者顔なり夕顔は
買うて来しきのふのけふの夕顔苗
添え棒を夕顔の蔓巻き始む
雨あとの風起ち易き夕顔苗
一変し俄黒雲夕顔に
夕顔に流れて越中おわら節
夕顔の花の零せる露見たり
(末尾は句集名)
糸瓜の花 /
糸瓜咲く横ちょに子規のおしまい顔
韮の花 /
興が湧き敢えて韮咲く道を採る
韮の花とまどひがちに雨降れる さざなみやっこ
辛辣のラツの辣韮咲きにけり
(末尾は句集名)
烏瓜の花 /
音曲に合はせて咲くや烏瓜 石鏡
烏瓜窺ひ咲ける夜の怪し 石鏡
烏瓜不思議や不思議霞み咲き 鳩信
烏瓜咲く辺の興味津々と 鳩信
烏瓜の花の縮みて昨日あり 鳩信
からす瓜真白き花の怯え咲き 鳩信
烏瓜咲かせ占ふ陰陽師 素抱
煙る花畳み込みけり烏瓜 随笑
烏瓜の花煙幕を張りにけり 寒暑
(末尾は句集名)
葎 /
夏葎これがことごと朽ち果つ景
一山の裾野からして夏葎
山寺に来て夏葎見渡せり
夏葎掃出窓の高さほど
夏葎人を葬ることに馴れ
和賀川のせせらぎ徹る夏葎
郊外や雨の襲へる夏葎
公園に遊ぶ子居ぬ日夏葎
夏葎掃出窓の高さほど 素抱
夏葎人を葬ることに馴れ 素抱
夏葎寒風山の見える駅 寒暑
夏葎埃立たせて雨の来る 鳩信
一斉に雀発たせて夏葎
夏葎雀翔たせて止まらせて
夏葎鉄路に埃くさき雨
夏葎寒風山の見える駅
(末尾は句集名)
蒲の穂 /
蒲の穂の一本挫折し浸かる水
蒲の穂の邊を過ぎやがて黒塚へ
蒲の穂や一山の景正しけり
蒲の穂に日焼けし腕の黒づめる
晩涼の風に蒲の穂立ちゆらぎ
ぼろぼろに蒲の穂絮の飛び損ね
夕映えの蒲の穂ホットドック状
蒲の穂や白鷺宙に脚を曳き
蒲の穂のお岩木かけて横靡き
蒲の穂に黒雲走る日本海
布袋草 /
金魚屋の布袋草よく肥えてをり 素抱
札所寺大鉢に生ふ布袋草 宿好
尻腐れ座りづめなる布袋草 素抱
布袋草きゅっとくびれるところかな 燕音
布袋草雨水鉢を溢れ落ち 素抱
布袋草金魚に買うて雨の街 寒暑
布袋草程の明るき世を欲れり 随笑
布袋草表紙に掲ぐ一雑誌 暮津
布袋草面白おかしく殖しけり 寒暑
み仏の如く坐すなり布袋草
一つきり金魚屋に咲く布袋草
ほてい草うすむらさきに昼の過ぐ
布袋草尻見せ今年雨無し年
これは大き金魚屋の布袋草
さらはれし金魚の鉢の布袋草
布袋草気さくな日々を過ごしをり
ほてい草昼の雨打つ四辺かな
布袋草見てゐる妻のふくらはぎ
定年の後の浮世の布袋草
ほてい草自慢顔なる腕かな
布袋草自慢の腕の力瘤
昼の雨明るく降るや布袋草
明るさも略々同じ布袋草
布袋草浮世にも似ぬ世に棲みて
布袋草こころ晴ればれする日なり
布袋草浮世の塵を身に留めて
甕にわいわい金魚屋の布袋草
布袋草水輪ぱちぱちしたりけり
妻の性元來明るき布袋草
十楽の浮世ここぞと布袋草
ほてい草やたら叩いて昼の雨
(末尾は句集名)
睡蓮 /
雨降ればもうめちゃめちゃに未草 暮津
後楽園池に蓋する未草 暮津
睡蓮の四方の水面ぴらぴらす 鳩信
睡蓮は大方むらさきアマゾン棟 寒暑
生かされて生くる御教え未草 暮津
濁りにも馴れ親しみて未草 暮津
未草そこ離れむとして眩暈 暮津
未草目白押しとはこんなさま 寒暑
照る水に顔をそむけぬ未草
睡蓮の繰り出す茎の放射状
睡蓮のいろ脱けてをり昼只中
膝鳴らし起てる老人未草
未草水とひかりのカピラ城
睡蓮に昼咲きあれば夜咲きも
人ごゑを二十重に睡蓮黄葉して
睡蓮を打ち出す雨の矢数かな
鉢植えの睡蓮に雨余りたる
曇る空まるまる映り未草
水は天そのまま映し未草
水中に睡蓮巻葉待機せり
睡蓮の花に葉に雨降り抜きし
睡蓮のミセスXミセスY
睡蓮の丸葉次々波打つて
亀型に睡蓮群れて咲き出しぬ
屯して睡蓮の葉のごちゃごちゃと
睡蓮の合間に蛙飛び込めり
日のもとに睡蓮秋の日差しいろ
下馬橋より睡蓮の谷見下ろせり
濠埋む睡蓮本丸暮れて来ぬ
睡蓮に昨夜の雨量の知られたる
睡蓮の雨滴まろばせ何か発つ
睡蓮に糸を懸けしは蜘蛛ならん
未草残す隙間は雲の為
(末尾は句集名)
蓮 /
うっくっと蓮の奥より誰がこゑ 鳩信
くいくいと鴨鳴く蓮の池之端 暮津
こなたよりあなたへ渡る蓮の風 素抱
鴨がやがや云うて蓮葉枯らすなり 随笑
金輪際動かぬ蓮の間の水 ぱらりとせ
屈服の仕方まちまち破蓮 さざなみやつこ
検校碑ふぐ供養塚蓮の香に 素抱
紅蓮上野の山の負け戦 素抱
秋の雨みしりみしりと蓮葉打ち 暮津
図に乗りて蓮に乗り上ぐあめんぼう 暮津
水破る音のみしりと蓮の奥 素抱
世間体そんなものはと敗蓮 石鏡
青蓮の器量の程も斯くなりて 素抱
煽られて蓮の棒茎ごっつんこ 随笑
息つけり蓮華数顆のかほる中 随笑
丁寧に生きて蓮のこちら側 暮津
定年や遠目の蓮の吹かれざま 随笑
薄念仏誦す僧蓮華座布団に 燕音
莫迦でかきオオオニハスの葉の置き処 さざなみやつこ
風上ミに顔向けてああ蓮の香 随笑
物音をたてたくなりぬ敗蓮 暮津
旅先の加賀の地酒に蓮の実 宿好
蓮に雨素通りといふ通り方 さざなみやつこ
蓮の実に空席ありぬ傾く日 素抱
蓮の実の食べ方蓮を前にして 寒暑
蓮の実の青き実弾抜きて見す 素抱
蓮の実の飛ぶに間のある上野山 素抱
蓮の台(うてな)に蛙極楽疑はず 暮津
蓮の葉のさっと開いて風通す さざなみやつこ
蓮の葉の瑕つけ合うて風の中 ぱらりとせ
蓮の葉はまっさをに雨降りさうな 寒暑
蓮開きジャポニズム展開催中 ぱらりとせ
蓮巻葉風にほぐれてジャンクめく さざなみやつこ
蓮丸葉ついと流るる風起ちて 宿好
蓮掘のここぞと力入るゝ顔 ももすずめ
蓮咲くとイスパニア語にて言ふならむ ぱらりとせ
蓮風に当りうたた寝風太郎 素抱
蓮弁のグラデーションを愉しめり 鳩信
蓮葉に水晶の玉ぶちまけて 随笑
蓮葉のゆっくり搖るる疾く搖るる 随笑
蓮葉の一つ激しく吹かれゐる 随笑
蓮葉の吹かれ裏見す定年や 随笑
蓮葉の大きなやつがはたと昏れ 鳩信
蓮葉の大きな葉には大き風 随笑
蓮葉の大破小破の田んぼみち 寒暑
蓮葉をめくりにかかる池の風 随笑
定年や黄ばむ蓮葉と鉄気水
蓮の葉をめくりにかかる風のさき
銀砂子撒ける蓮池(れんち)のいと涼し
息つけり蓮華数顆のかほる中
息吸へばふっと身を抜け蓮の香
蓮咲いて天地開闢以来の紅
かまつかの紅蓮を見栄とおもふ日も
白蓮見栄にこだはること止めぬ
蓮の香のただよふ中を蜻蛉釣り
五つ六つほぐれそめたる蓮巻葉
虻ゐるはゐるは蓮華の葉叢なか
のどけさの蓮池観音細おもて
風を背に個展を出づる蓮葉どき
曼珠沙華紅蓮に倦めばざっと見て
扇燈籠(おぎどろ)の紅蓮見守り立ちん棒
めらめらと紅蓮の扇ねぶた来る
たてがみ吹く風も紅蓮の武者侫武多
竿灯に間のあり蓮に佇める
娑婆といふ紅蓮を堰きて網戸あり
蓮葉の大破小破の田んぼみち
「はちすの露」切に思ほゆ苔の花
風来れば打ち合ひ蓮の骨鳴らす
こづくとは蓮の葉末の摶ち合ふこと
ある時は蓮に化身のくわんぜおん
もやもやと蓮の巻き葉は飴いろに
放映の蓮掘りの景お茶の間に
沼尻に或る日くぢけて蓮の茎
古代蓮好きの住職鉢並べ
人足の賃料六倍並蓮台
かまつかのこれが限度といふ紅蓮
蓮の骨影へらへらと笑ひけり
水破る音のみしりと蓮の奥
破れ蓮の一切合切はっきりす
青蓮の器量の程も斯くなりて
穴稲荷詣で序での蓮見かな
蓮風に背押され巡る池之端
蓮池に泥けむりあげガバと鯉
東天紅蓮葉の白ぴらぴらす
蓮葉の擦れ合ふ音も晩夏かな
軽き疲れ覚ゆ蓮池経巡りて
蓮写す会話もずんと弾みゐて
蓮の香に本を読みをり池之端
蓮写す鉛筆書きも愉しげに
黒髪のをとめ並んで蓮写す
蓮描く使ひ込みたるパステルに
蓮池の上に白亜の精養軒
日差し避け蓮を写すパステル画
風太郎蓮をほとりの寝法楽
上野に出てそのまゝ直行蓮の池
上野山かにかく下りて蓮の池
動物園出口出づれば蓮の風
稲荷坂そこを下りれば蓮池
蓮見たくなりて上野の池之端
三渓の蓮見ずゐて蓮どき
静観の一人を得たる蓮かな
蓮の実に空席ありぬ傾く日
三渓の蓮の一花に朝が来る
蓮に鷺型を極めて吉祥圖
蓮の葉はくねる生き物小禽圖
蓮の茎エイとへし折る棒っ切れ
亀の鼻蓮の間をぐいぐいと
物音のかい潜りきし蓮の風
何物かハリと音して蓮の奥
お天道様蓮の葉脈透きにけり
蓮を吹き払ふ大風目で追ふて
蓮を見る目許のいろも淡々と
蓮葉の葉裏白々風渡る
蓮の葉の下闇幽界なせりけり
蓮咲くと聞けば出かけてゆきにけり
蓮の香かすかにふふむ風立ちて
この蓮開き始めて何日目
蓮咲いてくたびれ具合も三四日
白蓮仏の花と決めつけて
炎天の灼けつく蓮想ふべし
蓮の葉の端持ち雨滴転がしぬ
雨玉をなす蓮の葉のど真ん中
蓮の葉に雨砕け散る祭月
水無月の蓮にひびく雨の音
水無月の蓮やはらかく雨受けぬ
蓮池の底まさぐりて濁す奴
産土の落葉総嘗め紅蓮の炎
薄念仏誦す僧蓮華座布団に
蓮葉は陳淳の青湛えたり
風起ちて蓮の葉ひっくり返しゆく
灼け青む蓮の葉叢の胎蔵界
炎熱に打たれて蓮見どころでなし
金沢の下ろす切る煮る蓮料理
朽葉どき蓮台野より化野へ
蓮明り差して大作四百号
白蓮真昼の風のはたと絶え
白蓮たゆたふ風の出で来たり
白蓮清方の絵の展示替へ
日の光深空へ返す白蓮
嘴を大空に入れ白蓮
言付かる蓮.葱.牛蒡忘れまじ
蓮より鴨へ目移りして困る
秋日和蓮の葉脈日に透けて
風上ミに顔向けてああ蓮の香
相摶てる蓮の遊びごころかな
(末尾は句集名)
茗荷の子 /
しのぎ易くなりてやれやれ茗荷汁
葬一つきのふに済ませ茗荷汁 素抱
めうが掘る数の目当ては特になく 素抱
順ぐりにお迎えが来てめうが汁 寒暑
(末尾は句集名)
新藷 /
新藷を水に濯げば紅はしる 随笑
新藷のはおるむらさき薄衣
新藷を食(お)しつつ疎開先のこと
(末尾は句集名)
干瓢干す /
キャベツ /
かんらんの苗に寄せやる土ふんだん
夏キャベツ盛り沢山に勝烈庵
キャベツ巻く葉壁に沿ひ蝶昇り
トンカツのつまのキャベツの深みどり
畝ごとに遅蒔き早撒き春かんらん
トマト /
それなりに数つけにけりミニトマト 暮津
トマトに振る塩目分量ちょと過ぎし 素抱
トマト好き故にピザ好き紅茶好き 素抱
ピザ・パスタ何にでも合ふミニトマト 寒暑
プチトマト朝夕の膳賑はせり 暮津
炎ゆる日のはじめのトマトもぎにけり ねずみのこまくら
釜利谷のをばさんの売る地のトマト 素抱
手を変へてトマトの料理朝昼晩 暮津
小さきが故に色濃しミニトマト 暮津
食卓にちょくちょく上るミニトマト 暮津
生り方も見てのとほりのミニトマト 暮津
昼はパスタトマトの湯剥き手伝いて 暮津
朝な朝なうち眺めゐて青トマト 暮津
蕃茄に塩たっぷり昭和生まれなる 石鏡
蕃茄に塩振りすぎとこゑありにけり 素抱
棒切れに8の字結びトマト苗 暮津
蛞蝓が舐めゐしトマト敬遠す
割り引いても硬き自家製トマトなり
自家製のトマトに酸味ありにけり
トマト切るその時ふっと桃太郎
トマト好き塩気躰に染みつきゐて
吾が自家製トマト採っても採ってもや
清水に漬けそれも昔の青トマト
会葬過ぎ三日見ぬ間の青トマト
腋芽掻きトマト臭さが移りけり
振り塩の手馴れたるものトマトの上
完熟のトマトと日増しに盛る蝉
トマトに振る塩見て山妻「ああそんなに」
むっとくる素通り畑の青トマト
玉蜀黍トマトに戻せ昔の味
(末尾は句集名)
茄子 /
ほんとうに軽く一膳漬茄子 ぱらりとせ
茄子こすり洗ふ音せり盆厨 暮津
茄子の他仏は水を糧とせり 素抱
茄子を焼く熱気厨に籠りたる 素抱
茄子汁にすこし早めの夕餉とる 素抱
茄子汁の味噌の香残暑の香なりけり 素抱
茄子汁や妻のきりもり四十年 素抱
茄子漬時が薬と養生す 随笑
茄子苗植う穴掘りかけて逝かれけり 暮津
賀茂なすの素の味秋はもうそこまで 石鏡
鎌持ってそれぞと指せる悪なすび 寒暑
丸茄子朝露弾く梵天丸 素抱
気紛れに落ちくる雨や種なすび さざなみやつこ
混濁の一日なりしなすび汁 素抱
自家製の初生り茄子の器量佳し 暮津
煮冷ましの茄子汁底なし沼めける 石鏡
種茄子に晴れてまた降る雨のあり ももすずめ
焼茄子にまづまづ食のすすむなり 素抱
焼茄子の直火強めて盆厨 寒暑
新調の仏壇にあぐ自家製茄子 暮津
水茄子の笊売り朝市たて込めり 素抱
茶屋の婆勧む民田(みんでん)茄子抓む 石鏡
漬茄子と佐渡米に食すすむなり ももすずめ
銅鏡もて粧ふは昔茄子の花 暮津
夜は明けて茄子炯々と納骨日 暮津
茄子生れば茄子を供へて生身魂
ふてくされ茄子は尻から腐り出す
振り売りの茄子そっちのけ立話
まんまるき水食い茄子は京育ち
茄子作り俳句作りの筋もへぼ
焼茄子に生醤油ぶっかけ食へといふ
悪茄子チャッカリ花壇の仲間入り
虫喰いの葉裏に隠れ茄子あり
昼寝して何がなんきん唐茄子かぼちゃ
餉を問へば茄子の何とか料理とか
義母逝くと思へぬ手塩の茄子が咲き
定年後の一家の経済茄子も植え
介護支援見やう見まねで茄子汁など
茄子につく虫は一体図鑑牽く
ぷりぷりと音して茄子の挟み揚
戒名の話に及び茄子の紺
地に足をつけて実結ぶ紺茄子
茄子・胡瓜苗植え了へて手がかさかさ
ありあはせの茄子・藷盛りて観月会
羽黒山茶屋の突きだし民田茄子
茄子汁ぐらぐら味噌の香ふうとして
人の目を盗んで咲けり悪なすび
愛想よきほうの茄子買ふ朝市に
茄子の飯召し上がられしや盆仏
いきさつを経緯と書いてぼんくら茄子
茄子がまた手を変えて出て夏料理
似非者は何處にも居るもの悪なすび
梅雨の頃決まって此処に悪茄子
隣人の茄子植うる見ゆ垣越しに
枯茄子孤獨絶景好奇心
折り合いのいつしかつきし茄子の花
ごろた石集めて茄子の垣とせり
茄子漬けて古色蒼然古女房
茄子紺の九谷白露の小盃
しんかんと山の畑の紺茄子
茄子漬の塩加減よき誕生日
四人(よったり)の昼餉焼茄子ほおばりて
白隠一富士二鷹三茄子
茄子胡瓜顔突き合はせ盆の物
見飽きたる団扇の図柄茄子ならん
図書館の休館憎む悪なすび
(末尾は句集名)
鴫焼 /
焼茄子に生醤油ぶっかけ食へといふ
鴫焼のわが家の味は極甘め 素抱
焼茄子にまづまづ食のすすむなり 素抱
焼茄子の直火強めて盆厨 寒暑
四人(よったり)の昼餉焼茄子ほおばりて
(末尾は句集名)
茄子漬 /
ほんとうに軽く一膳漬茄子 ぱらりとせ
茄子漬時が薬と養生す 随笑
漬茄子と佐渡米に食すすむなり ももすずめ
茄子漬の塩加減よき誕生日
(末尾は句集名)
蘇鉄の花 /
雨風に動ぜぬ花蘇鉄とはなれり
仙人掌 /
手のこんだ咲き方をする蟹さぼてん 随笑
蟹さぼてん今年も花をつけぬ鉢 随笑
仙人掌の花むくむくと整体院
大寒のサボテン咲けるサンルーム
仙人掌の棘残寒の空を刺す
仙人掌の遮る安房の海岸線
仙人掌の花勲章のごとく咲く
仙人掌に侏儒の咲かせる黄の小花 さざなみやっこ
野暮天を絵に描いたやう花仙人掌
蝦蛄仙人掌ほったらかしにいじけ咲き
蝦蛄葉仙人掌あちこち傷みそめし家
(末尾は句集名)
月下美人 /
月下美人てふは句にせず句にならず
言葉倒れの月下美人は句にならず
ユッカ /
沖波のときに牙だち花ユッカ 高澤良一 ももすずめ
(末尾は句集名)
ダリヤ /
その頃の花ではポンポンダリアかな ぱらりとせ
ダリヤ咲く今もこの路地ぬかるみて 素抱
ぽんぽんだりあ昔は良かった風に咲く 素抱
ポンポンと咲いてポンポンダリヤとぞ 暮津
雨執ねくダリヤの花を打つ浜辺 素抱
男鹿温泉ポンポンダリアの花盛り 寒暑
風采のあがらぬ花よポンポンダリア ぱらりとせ
なんだこれ皇帝ダリアの札提げて
曇天に首入れ皇帝ダリアかな
九州は梅雨入と聞く花ダリア
ダリア咲かす家の真前泥んこ道
ひまわりの遠縁にして梅雨ダリア
夕日いま秋咲きダリヤのかなたかな
昔花ダリヤに逢うも久しぶり
ダリヤに雨上り蒸し蒸しする日なり
ダリヤ咲く今もこの路地ぬかるみて 素抱
雨執ねくダリヤの花を打つ浜辺 素抱
(末尾は句集名)
向日葵 /
その目つき何暗示せる実ひまわり 暮津
ひまわりの威風堂々たる開花 暮津
ひまわりの一つ目小僧月下に聳つ 暮津
ひまわりの一哲人にゆき遇へる 暮津
ひまわりの火の性(しょう)天より頒たれて 暮津
ひまわりの今は落ち着き土の性 暮津
ひまわりの根を見ておもふ保水力 暮津
ひまわりの発芽土くれ撥ね退けて 暮津
ひまわりの彼方夕栄え未帰還機 暮津
ひょろりと長け一寸猫背のひまわり苗 暮津
ひらひらと向日葵を過ぐ官軍旗 暮津
園児ら今昼寝の時間実ひまわり 暮津
訓示垂る大向日葵と思ひけり 随笑
憲兵のごとき眼をして実向日葵 暮津
向日葵に劣らぬ笑顔のヘルパーさん 暮津
向日葵のあぎと突き出し海をみる 暮津
向日葵のぐでんと水を欲しがるさま 暮津
向日葵の意気軒昂に接す朝 暮津
向日葵の育ち盛りの大きな葉 暮津
向日葵の王道ずんと地平線 随笑
向日葵の王道青すすきの覇道 随笑
向日葵の花より茎のヴァイタリティ 寒暑
向日葵の海を見据えて巨匠の瞳 随笑
向日葵の謹厳実直背を正し 素抱
向日葵の茎は棍棒火山灰大地 さざなみやつこ
向日葵の見通せぬもの無きごとし 暮津
向日葵の司どる海荒れむとす 暮津
向日葵の種皆窮屈さうにして 暮津
向日葵の双葉と云へど聳えたり 石鏡
向日葵の孫花八つもありにけり 暮津
向日葵の百の素顔と阿蘇連山 鳩信
向日葵は灼けて土偶のおほらかさ 素抱
向日葵や還らぬものを猶おもひ 暮津
向日葵や真にひとりとおもへるとき 暮津
向日葵を一呑みにして険しき雨 暮津
向日葵肥え西郷さんの佇つごとし 暮津
三年生花壇に向日葵君臨す 暮津
実ひまわりそっくり返ってしまはぬか 暮津
実ひまわり典座(てんぞ)のごとく佇つ夕べ 暮津
実向日葵ブラックホール引き込みて 暮津
実向日葵故人の笑ひかけるごと 暮津
実向日葵叙勲賜るごときなり 寒暑
実向日葵暮れゆく貌ののっぺらぼう 暮津
焦身のひまわり戦後六十年 暮津
植うるにも都合のありて向日葵苗 暮津
昔日の海向日葵の瞳の中に 寒暑
痩せ向日葵勤王志士にさも似たり 暮津
大向日葵竜顔を拝すごと ももすずめ
長雨がたたり向日葵ひょろひょろ立 暮津
底なしの向日葵の瞳に映るもの 素抱
同時刻向日葵見て過ぐ勤め人(にん) 暮津
汝が家の芯のひまわり忘れまじ(新城家) 暮津
別人のごとく佇つなり夜のひまわり 暮津
防諜と殺戮向日葵知っている 暮津
路地咲きの向日葵勤めは今日もあり 暮津
脇侍ありご本尊ありひまわりに 暮津
大方は無視向日葵の黒瞳
向日葵の眸をよぎる蚊喰鳥
向日葵やもう手に負えぬ核技術
ひまわりに朝の村内放送あり
一茎にひまわり三花朝がくる
ひまわりの傀儡のごとく枯れてけり
向日葵の横顔垣間見ゆ出窓
向日葵の雨垂れ白し一雨過ぎ
ひまわりにうっすら見える昼の星
向日葵に勤王志士のこころざし
好顔のひまわり笑みを湛えつゝ
百万偏朝日巡り来ひまわりに
ひまわりや党派林立するごとし
ひまわりの一つ目小僧月下に聳つ
ひまわりの達観青海原を見て
ひまわりの火の性(しょう)天より頒たれて
ひまわりに風は東西南北より
向日葵を植えて起き伏しその只中
向日葵を前にし姿勢正さるごと
向日葵を支ふこの頸あらばこそ
向日葵の国の真下に蟻の国
あれ父母と向日葵家族になぞらえて
ひまわりに届き居るなり踊りの灯
子の為に植え込む向日葵玄関先
向日葵も虚ろな瞳して怠惰な日
秩父鐵道向日葵煌とうち過ぎぬ
向日葵を船遠ざかり遠ざかり
低学年花壇に向日葵君臨す
向日葵の遠を見据へる賢者の瞳
向日葵や昼も煮炊きの音立てゝ
向日葵や昼来れば人昼餉とる
向日葵や秒針刻む他音無し
ひまわりを道端に植え路地暮し
ひまわり入れ動かぬ景となりにけり
向日葵の明るさよぎり一雨あり
向日葵に花卉の営み果てんとす
向日葵の乾ぶ葉大き広葉に伍し
入荷せし新手の向日葵福助めく
雨不足即向日葵の萎れやう
過保護とも云ふべき添え棒向日葵に
しっかりと降る雨嬉しひまわり苗
向日葵の茎撥ね浴びて雨烈し
外に向日葵内に漆黒扇風機
向日葵の育つを待ちて家に籠る
向日葵のこのぎりぎりの萎れやう
伸び盛り向日葵にくる一来信
向日葵の一日一日の育ちやう
ひまわり苗身丈に余る支え棒
とくと見て向日葵の伸び盛り
向日葵苗ことしひょろひょろ雨不足
向日葵のその明眸に大志あり
向日葵の根を張るまでの支え棒
ひまわり苗倒れ癖つき一寸猫背
五風十雨倒れ癖つくひまわり苗
ひとまはり心大きく向日葵に
ひまわりの遠縁にして梅雨ダリア
遺されし義父を守らんとひまわり植う
向日葵の一列縦隊駐屯めく
箱蒔の向日葵の種蒸れをらん
向日葵の双葉乍らも聳えたり
休校の開港記念日向日葵蒔く
向日葵蒔くその掌叩きて土煙り
大向日葵トランペットは背後より
向日葵をあふげる如く師を憶ひ
向日葵の林立賢治の理想郷
ガクと垂れ灼け向日葵の大頭
天を衝く向日葵も入れ一家族
向日葵の父情を篤く佇ち尽す
向日葵の長けしを容れて空の丈
向日葵の棍棒めく茎土堅し
向日葵の顔よぎる雨いと太し
向日葵の伸ばせば伸びるこの高さ
向日葵にサンフラワー号接岸す
高原の向日葵畑露浴びて
向日葵やここの神主丈高し
久々の晴れ間向日葵ずんと伸び
向日葵の蜂の巣顔に海昏れて
向日葵もうなだれ佇てる札所道
向日葵の朝露零れ畑の土
向日葵の等身大の顔其処に
向日葵植う既に一列縦隊なす
大向日葵天気一旦持ち直し
訓示垂る大向日葵と思ひけり
歪性の向日葵教団居着く村
校庭の夜の向日葵に踊唄
大向日葵やませに視界奪はれて
向日葵の一寸背伸び青森湾
向日葵の枯れてくろぐろ巨匠の瞳
向日葵は雨の晴れ間の日を荷ふ
別格の大向日葵と仰ぎけり
採りあげて大向日葵の句を賛す
新築の家の向日葵胸張りて
向日葵の巨顔支ふるこの項(うなじ)
太陽と向日葵歓談腹割って
向日葵の炯眼海は紺深め
(末尾は句集名)
紅蜀葵 /
中日にごたごたありて紅蜀葵
紅蜀葵倒れ易きを立たせ咲かす
葉の浄らまだ花つけぬ紅蜀葵
外に洩るゝ嬰(やや)の泣ごゑ紅蜀葵
花を待つ姿すっくと紅蜀葵
紅蜀葵連休半ば過ぎてをり
黄蜀葵 /
胡蝶蘭 /
鉢持ち込む居間が温室胡蝶蘭
風蘭 /
長生きをしさう風蘭見て曰く 素抱
風蘭に風の訪れありにけり 素抱
風蘭の在り処教ふに扇子もて 素抱
風蘭の宿る此の樹と聞きて来し 素抱
風蘭の二大樹しんと深む昼 素抱
風蘭の物見を雨に先送り 素抱
風蘭の領域拡がる眼の馴れて 素抱
風蘭はそらそらあそこ木瘤の下 素抱
風蘭は風通しよき樹の高み 素抱
風蘭を見て来し夕べ雲呑(わんたん)食ぶ 素抱
風蘭を見上ぐる人のうしろに佇つ 素抱
風蘭を風より淡く訪へる 素抱
風蘭のとりつく枯木の梢あふぐ
風蘭と云ふもバイオの世のすさび
風蘭を梢に描く遊仙図
風蘭を咲かせて銀杏おとろえず
風蘭も花了ゆ古刹の立木空
なかんづく老樹の証し風蘭生ゆ
いつの間に風蘭銀杏の高み占め
けふ見て来し風蘭のこと寝語りに
風蘭の脇の峯雲へ眼を移す
風蘭を見し背ナ風に吹かれゆく
風蘭に枝を借す銀杏大樹かな
風蘭を指さす人についと寄り
風蘭に風の再来戦ぎ見ゆ
風蘭を見にゆく話朝餉あと
風蘭の噂はほんと振りあふぐ
風蘭の見物些事に取り紛れ
雨の日の樹木図鑑に風蘭見て
(末尾は句集名)
石斛の花 /
縷紅草 /
夏祭なれば散財縷紅草
凌霄花 /
あられなくのうぜん散れり曲り角 素抱
のうぜんになまぐさき風起ちにけり 暮津
のうぜんのあたりかまはず散りにけり ももすずめ
のうぜんの花も我が身もくたくたに 鳩信
のうぜんの繰出し吹ける青き空 さざなみやつこ
のうぜんの散らかつてゐる伝心寺 ねずみのこまくら
のうぜんの散りやうさしづめ振袖火事 素抱
のうぜんの散乱あたり昏れしめず 暮津
のうぜんの枝垂るる辻にさしかかり 素抱
のうぜんの似たり寄ったり花なだれ 鳩信
のうぜんの盛りや防火講座聴く ねずみのこまくら
のうぜんの宙ぶらりんや糞暑し 宿好
のうぜんの焚き付けられてゐるごとし 随笑
のうぜんの方へ顔向け母眠る ねずみのこまくら
のうぜんの妄想を詩の糧とせよ ももすずめ
のうぜんの落花を蟻の離れざる さざなみやつこ
のうぜんは脳破る花そを嗅ぐな 鳩信
のうぜんは塀の内外に散らかって 素抱
のうぜんや味噌汁の香のにほふ道 素抱
のうぜん花どうやらかうやら風が出て 寒暑
のうぜん花塾退けし子の通り道 素抱
のうぜん花掃きしばかりの地を汚し 寒暑
のうぜん地に燃え移らむとしてゐたり 暮津
のうぜん燃え長々続く墓地の塀 素抱
ふしだらな部類に入る凌霄花 暮津
雨の日もお祭りさわぎ凌霄花 暮津
漢名の音(おん)も締りのよくて紫微 鳩信
漢名は目赫爛れし夕空に 鳩信
行きずりの人になだるゝのうぜん花 素抱
挫折にもいろいろありてのうぜん花 鳩信
若死とおもふのうぜん散るにつけ さざなみやつこ
焼香の列遅々としてのうぜん花 ねずみのこまくら
大難の降り懸かるごとのうぜん花 ぱらりとせ
長雨に火照りて果てし凌霄花 暮津
風起ちて一息つきぬ凌霄も 暮津
目に見えぬ雨にのうぜん昂れり ももすずめ
凌霄花テレツクテンと咲き昇り 暮津
凌霄花散るに興じてはめ外す 暮津
料亭ののうぜん下火となりにけり 素抱
妄想の広がり止まぬのうぜん花
のうぜんの辻を汚して恥ずるなし
垂れ下がることにも一芸のうぜん花
外出の当てなく凌霄宙ぶらりん
茫としてのうぜんかづら花了る
野分あと仕切り直してのうぜん咲く
凌霄は途方に暮れるまでもなく
磔刑のごとく凌霄首を垂れ
凌霄花こともあろうに火急の用
宙ぶらりん愉しむ凌霄暢気な花
戒名の所以訥々凌霄花
お囃子のごとき雨音凌霄に
のうぜんは空にほてりてうはのそら
あられなくひっ散らかってのうぜん花
水遊びもうお仕舞いやのうぜん花
のうぜんも提灯花下げ祭前
お隣りへ垣はみ出してのうぜん花
三笠丸さびれのうぜん散るばかり
のうぜんの一枝吹かれて風来坊
のうぜんに絡みつかれて音を上ぐ木
のうぜんの一、二花風に清き道
のうぜんのべたべた何のこんな坂
のうぜんの行末思はる散りっぷり
のうぜんの乱れぬ裡の登り花
のうぜんの奈落へ一気下り花
辻に咲くのうぜん思ひ當る道
のうぜんの落花始まる書道塾
のうぜん花咲いてゐし家毀たれぬ
のうぜんの散りざま見るも疲るるよ
凌霄に母屋とられし木が一つ
のうぜんの盛り空前絶後かな
のうぜんの置いてきぼりの花日暮れ
のうぜんの空不異色色即是(くうふういいしきしきそくぜ)
湯ぼてりの後からぽっとのうぜん花
のうぜんのむっと一雨ありさうな
早起きに寝惚けまなこののうぜん花
凌霄花よく見し月と振り返る
のうぜん花まだ咲き土牢までの道
のうぜんの花のゆらゆら風ゆきき
のうぜんの後追ふごとくちる真昼
(末尾は句集名)
ラベンダー /
富良野産ラベンダー入り線香とよ 素抱
(末尾は句集名)
日日草 /
百日草 /
これからが思ひやられる百日草 暮津
醜態をさらす百日草とはなりぬ 暮津
色褪せる日の来て週末百日草 暮津
百日草今どきこんな花咲かせ 素抱
百日草咲いて質屋の定休日 素抱
色褪せぬ花も交へて百日草
百日草小振りなれども彩は佳し
小さい分花数多く百日草
百日を経てこの彩や百日草
盆花に窶れの見ゆる百日草
百日草彩よきを選り盆花に
だらしなき色となりたる百日草
百日草雨来て花期を長引かす
一花づゝ咲いて百日草の朝
百日草小さき顔の愛くるし
開眼のごとし百日草一花
百日草主変はらぬ家二軒
一日が始まる百日草の前
朝は先づ此処にしゃがみて百日草
百日草植えてことしの暑を想ふ
つきあひにも距離といふもの百日草
植え替えし百日草の一日目
かんかんと日は照るばかり百日草
漁師町百日草をまだ咲かせ
百日草好きな主の顔見たし
なけなしの雨降り注ぐ百日草
百日草百日咲いて村荒ぶ
校庭に百日を経し百日草
百日草彩の花火が上りけり
すっと上って百日草のいろ花火
仏華とし婆の殖やせる百日草
百日草こんな彩とて咲き見せぬ
百日草五彩咲かすはこの家の婆
この家の主懐古派百日草
百日草まだまだ町内路地裏に
百日草ここだく咲かせ麓の湯
(末尾は句集名)
千日草 /
千日紅触るもの皆ほてるなり 素抱
暑いのはこれから先よ千日紅 寒暑
千日紅咲かせ園芸一年生
長雨が長雨を呼び千日紅
夜店にて一鉢求む千日紅
(末尾は句集名)
はまなす /
テラスのさき露のジャパニーズ・ローズかな 燕音
はまなすに空気小流れつくりけり 燕音
はまなすの花と実の数実が勝ちて 素抱
はまなすの花と実半々五能線 寒暑
はまなすの実の生る頃の密航者 寒暑
はまなすも目つむる砂州の砂っかぜ 燕音
はまなすを吹いてテラスに及ぶ風 燕音
光降る中はまなすの花と棘 燕音
北辺の日を余すなくハマナスに 燕音
ハマナスの芽のぼつぼつと暑寒別岳(しょかんべつ)
はまなす枯れ利尻水道潮照り
はまなすの砂丘にのぼり風受けぬ
はまなすの一花一花に褒め言葉
ようこそとハマナス園の客迎ふ
はまなすの実を染めオホーツクの風
青鷺のふうわりはまなす吹かる方
はまなすの風やり過ごす咲き方も
はまなすの波寄る方にはびこりぬ
はまなすのここがよかろと腰据えぬ
はまなすに浄土ケ浜の朝の風
(末尾は句集名)
破れ傘 /
この葉形たしかに破れ傘の花 ももすずめ
やっとこさ地べたを出でて破れ傘 随笑
やぶれ傘傘さしきればつまらなき 宿好
やぶれ傘油じむ日を浴びゐたり ぱらりとせ
やぶれ傘薹が立つとはこんなもの 宿好
含羞の一つの容破れ傘 寒暑
孫ほどの破れ傘容れ破れ傘 ももすずめ
端山より我が家へ移すやぶれ傘 暮津
破れ傘ここら辺りとおもふ辺に 寒暑
破れ傘ことし見損じなかりけり 寒暑
破れ傘の命名主はどなたぞ若し 寒暑
破れ傘控え目といふ装(なり)したり 寒暑
破れ傘生ふ裏山の道愛す 随笑
破れ傘大分しっかりしてきたる さざなみやつこ
物の怪の何時離れたる破れ傘 寒暑
曰くありげな名を貰ひたる破れ傘 寒暑
番傘をそろそろひらく破れ傘
あおあおと傘をおっ立て破れ傘
やぶれ傘罪もないのにお婆傘
破れ傘花かかぐ茎間延びして
破れ傘あをあを長けて走り梅雨
破れ傘坊主山より移植せり
破れ傘鉢植えにして事なき日々
破れ傘陽気佳ければ浮かれ出て
やぶれ傘よろぼひ立つに間に合わず
興ざめの破れ傘とはなりにけり
羅の被りものして破れ傘
躍り出て浮世を覗くやぶれ傘
道案内嬉しがらせん破れ傘
破れ傘坂急なれば躓ける
鈍色の襲羽織りて破れ傘
山中に出逢ひ屈背の破れ傘
お披露目のしなをつくりて破れ傘
風の日も天気の日にも破れ傘
強(こは)き葉に埃浮べて破れ傘
助六の見栄きるごとく破れ傘
雑木の上の空が鳴るなり破れ傘
幽霊のパントマイムを破れ傘
破れ傘生ふるも神の思し召し
破れ傘は未だ落葉の嵩む中
(末尾は句集名)
野牡丹 /
野牡丹に透明な風通りけり
野牡丹や定年族に仲間入り
とっときの讃辞をゆきずり野牡丹に
竹煮草 /
竹煮草雨あたふたと駆け抜けて 鳩信
むんむんと赤土蒸すや竹煮草 素抱
箱根路の何だ坂こんな坂竹煮草 随笑
竹煮草こんなところに信号機
竹煮草生ふて傾く沢の砂州
竹煮草曲る度見てうんざり顔
峠路の片雲奔る竹煮草
竹煮草箱根朝から薄曇り
空模様怪し強羅の竹煮草
(末尾は句集名)
麒麟草 /虎杖の花 /
宝鐸草の花 /
宝鐸草森の冥さに眼の馴れて 寒暑
木洩れ日に群れを恃める宝鐸草 随笑
人のあと宝鐸草の花こづく さざなみやっこ
山道の一層冥く宝鐸草
コップに挿す宝鐸草に根が生えて
ぱったりと足音途絶え宝鐸草
(末尾は句集名)
花魁草 /靫草 /
鷺草 /
鉢鷺草返事は庭の方よりせり
鷺草が飛ぶとは決して詠はじよ
浦島草 /
糠雨に凄味を増しぬ浦島草 寒暑
浦島草蕭白好みの画材にて 鳩信
浦島草釣糸垂れてむかう向き さざなみやつこ
浦島草昔も今も語り草
むづむづと浦島草の芽を出せる
一人ゆく山路浦島草は実に
孤り入る端山浦島草の青實
風流のつり糸垂れて浦島草
山道のここにどっこい浦島草
たもとほる人に背を向け浦島草
親分の貫禄もちて浦島草
海風に舌を当てるや浦島草
山深み浦島草の葉の蒼み
山道に引っこ抜かれし浦島草
浦島草すっくすっくと遠汐騒
一曲も二曲もある浦島草
汐騒にくるり背を向け浦島草
浦島草引きちぎられて道の端
背合はせ釣糸垂れぬ浦島草
狷介とは爰を云ふらん浦島草
殺生なことをするなと浦島草
ぶらり来て浦島草の生ふる山
舌並みの耳欲げなり浦島草
浦島草舌やはらかくものを云ふ
浦島草鎧ひごころも凛とし
浦島草落石音に耳を藉す
浦島草けふの寒さに襟合はす
山陰の道に襟立て浦島草
(末尾は句集名)
えぞにう /
アマニュウとアマニュウの間雪渓見ゆ 宿好
アマニュウと断ずるこゑの自信なげ 燕音
アマニュウにピカッとザザッと降るわいな 宿好
エゾニュウアマニュウみんな似ていてどれがどれ 燕音
エゾニュウのポンポン咲ける岬なり 燕音
エゾニュウの咲く頃よかろと来て常呂 燕音
入日急大傘持の太茎に 燕音
棒立ちの大傘持に沖時化て 燕音
能取岬エゾニュウの白づくし
エゾニュウに似てアマニュウといふがあり
エゾニュウの先廃船と流木と
エゾニュウの花房撫でて岬巡り
エゾニュウに次々立ちぬ兎波
エゾニュウの高きも低きも吹かれづめ
エゾニュウの高低を吹く風のあり
エゾニュウの吹き折れ夏の日が注ぐ
岬鼻に日がなエゾニュウ吹かれづめ
エゾニュウのつんつん咲ける岬巡り
エゾニュウの茎の吹き折れ強日差し
エゾニュウの花移ろへる房のいろ
エゾニュウの茎の吹き折れ青岬
エゾニュウのここぞと咲ける白さかな
海面はもう冷えきりて群れエゾニュウ
エゾニュウの太茎隆と水平線
エゾニュウの段々オホーツクの平ら
エゾニュウの茎に始まる夏百日
雪渓と別の涼しさアマニュウは
アマニュウの其処左折せよ唐松岳
えぞにうや能取岬のどん詰り
(末尾は句集名)
岩煙草 /
蕎麦待つ間蕎麦屋の鉢植え岩煙草 暮津
岩たばこ宿創業は明治なり 随笑
岩たばこ雨の匂ひのするばかり 寒暑
雨の日の葉影うっすら岩たばこ 寒暑
岩煙草大谷石窟雨傷み
岩煙草いささか黄葉したりけり
(末尾は句集名)
岩鏡 /
話声ぴたりと止まり岩鏡 石鏡
トレッキングシューズの先の岩鏡 宿好
岩鏡霧に佇み心細
雪渓のここに遺りし岩鏡
(末尾は句集名)
駒草 /
駒草はお釜の脇にちょっと程 素抱
駒草や岩場岩場の岩の彩 暮津
駒草を囲ふ鎖の霧雫 素抱
霧濡れの小石を拠り処駒草は ぱらりとせ
駒草を育む霧の子守唄
駒草に急傾斜して大雪渓
霧雫しとど駒草囲ふ柵
馬面の駒草切りぬ霧雫
駒草の鼻先掠め霧湧けり
駒草を嘶かす霧出でにけり
駒草や小石を濡らし霧湧けり
白咲きの天下一品駒草ぞ
(末尾は句集名)
瓜 /
いつまでもこどもはこども瓜の花 暮津
からす瓜咲く暗闇に風太郎 素抱
からす瓜真白き花の怯え咲き 鳩信
この谷戸の日照時間烏瓜 随笑
この蔓の先の何処かに鳥瓜 さざなみやつこ
しゃれてをり縦縞入りの烏瓜 ぱらりとせ
なつかしき限りのまくわ瓜など喰ひたし 寒暑
へたり込む糸瓜野郎の跳人かな 寒暑
もちまへの力出しきる隼人瓜 ぱらりとせ
ゆく末を風に任せぬ烏瓜 寒暑
一段と今朝は冷え込む隼人瓜 ももすずめ
烏瓜からす天狗が好物の 燕音
烏瓜どうせ採るなら器量好し 鳩信
烏瓜の花の縮みて昨日あり 鳩信
烏瓜の花煙幕を張りにけり 寒暑
烏瓜の枯蔓引いて手に揉めり 燕音
烏瓜ぴりっと肌を刺す大気 ぱらりとせ
烏瓜ほどに頭の冴えきたる 寒暑
烏瓜窺ひ咲ける夜の怪し 石鏡
烏瓜絵になるやうなその所在 燕音
烏瓜開花頗る珍にして 鳩信
烏瓜咲かせ占ふ陰陽師 素抱
烏瓜咲く辺の興味津々と 鳩信
烏瓜残る一つも飛び去んぬ ぱらりとせ
烏瓜失せたる色を思ひつゝ 鳩信
烏瓜縞を装う数寄心 寒暑
烏瓜粋な青縞装いて 寒暑
烏瓜点々として洒落た景 石鏡
烏瓜配して備前小物売 寒暑
烏瓜不思議や不思議霞み咲き 鳩信
瓜の種そこと云はれて顔撫づる 暮津
瓜食うなら砂糖が巾を利かす世の 寒暑
煙る花畳み込みけり烏瓜 随笑
音曲に合はせて咲くや烏瓜 石鏡
何故のあをべうたんのからす瓜 さざなみやつこ
快気焔あげてゐるなり烏瓜 さざなみやつこ
垣に苦瓜(ゴーヤ)蔓もの好きの主とも 素抱
苦瓜の花咲く朝むっとして 素抱
苦瓜の渋面雨に叩かれて 石鏡
苦瓜をどうするでもなく机の上 寒暑
苦瓜料理出され箸つけみしものの 素抱
見栄坊の烏瓜照る村はづれ 燕音
子規庵の糸瓜こづきて立去るか 随笑
糸瓜みな附句のごとく垂れ下り 寒暑
糸瓜忌に出来て俗だが気に入る句 鳩信
糸瓜忌の一犬吠えれば三犬吠ゆ 暮津
糸瓜忌の傘立に傘十四五本 随笑
糸瓜忌の朝刊隅々まで読める 暮津
糸瓜忌の癇癪玉が破裂せり 随笑
糸瓜忌の鶯谷で落ち合ひぬ 随笑
糸瓜吊る茎の付け根のもつこりと さざなみやつこ
車窓よりラジオ流して瓜摘花 寒暑
手の届く所には無し烏瓜 石鏡
十五夜の空へこぞれる糸瓜加持 ねずみのこまくら
静物画縞のオブジェの烏瓜 宿好
揃へ脱ぐ中に長靴糸瓜加持 ももすずめ
台風に脚攫はれて糸瓜棚 石鏡
第六感働かせ買ふ大西瓜 暮津
滝なす蔓たった一つの烏瓜 随笑
朝市の甜瓜(まくわ)を朝餉代りかな 寒暑
冬に入る顔決め込んで隼人瓜 燕音
湯上りに天瓜粉など欲しきもの 暮津
当節の瓜と似て非の甜瓜 寒暑
隼人瓜ポパイに敵ふものはなし 石鏡
隼人瓜ポパイのつくる力瘤 石鏡
隼人瓜午から気色とりなおす 燕音
隼人瓜姿無類の冬に入る 燕音
隼人瓜弾けば陶の音したり 宿好
隼人瓜当世風を通しけり 石鏡
隼人瓜畑の先を通り雨 鳩信
隼人瓜晩年だんだん面白く 寒暑
物音のよく通る空烏瓜 宿好
変なこと覚えてゐるよ瓜の種 素抱
蔓置いて何處へ失せたる烏瓜 燕音
爺(じい)さまの口許に似て隼人瓜 燕音
来宅の途次の糸瓜の棚のこと ぱらりとせ
(末尾は句集名)
梅鉢草 /
ウメバチソウ我等向き合ひ昼餉とる 宿好
八幡平夏の名残の梅鉢草 寒暑
楚々として梅鉢草の咲く高地
(末尾は句集名)
独活の花 /
ししうどの花のほとりに捨て蒸気 石鏡
ししうどの花を霧今閉ざすところ 随笑
ししうどの花横なぐり霧暗転 随笑
曳売のぶつきらぼうに独活を見せ ねずみのこまくら
山出しのししうどの花盛りなり 鳩信
山独活に東京者の舌づつみ 燕音
獅子独活の藪から棒に恐山 随笑
独活あれば独活摘むやっぱり女かな 寒暑
独活の花無駄と思へば全て無駄 燕音
湯疲れの足を運べる独活の花
ゆく雲の明るさ持てり独活の花
稜線に白雲支へ独活の花
(末尾は句集名)
灸花 /
へくそかづら駄花のみかは実もあるぞ 石鏡
へくそかづら凡打ばかりの草野球 素抱
へくそかづら攀ずる金網灼けてをり 暮津
ゆきずりのへくそかづらに捉はるる 素抱
過ぐるこゑへくそかづらと言ひ捨てに 石鏡
灸花いつまで続くこんなこと 燕音
灸花けふの暑さの如何ばかり ぱらりとせ
灸花やたらむしゃくしゃする日なり ぱらりとせ
灸花今はかうして日を送る 随笑
灸花七番寺へ喘ぎ坂 宿好
灸花首を傾げて見る人も 寒暑
灸花頭隠して尻隠さず 暮津
密封のへくそかづらの莟割る 素抱
民宿の裏手のへくそかづらかな 随笑
灸花一つの花に目を止めて
廃自転車取り込みへくそかづら蔓
アパートの庭は茫々灸花
灸花廃る山河を目前に
おや此処に一寸目のゆく灸花
校庭のバックネットに灸花
灸花まじまじと見て過ぐるのみ
灸花妻の速歩に追ひつけず
灸花そこ通るたび覗き込み
体操にゆく子ぞろぞろ灸花
鉄橋に昔の俤灸花
嗅がされて閉口ものの灸花
くそ暑き日ばかり続く灸花
東尋坊巡る岩場に灸花
日に三度通るこの径灸花
灸花焦げつくやうな強日差し
押し詰まる月の抜け道灸花
うとまるゝことに馴れっこ灸花
(末尾は句集名)
射于 /
芭蕉の花 /
味うて珍(うづ)の芭蕉の花の蜜 燕音
義仲寺の芭蕉の花の蜜に蜂
(末尾は句集名)
玉蜀黍の花 /
もろこしの花暮れがたき檜枝岐
麻 /
着おろしの秋分の日の麻下着
妻が来て剥ぎとりゆける麻すててこ
釦かけ麻のしちめんどくさい肌着
現八の麻張り房州団扇かな (犬飼現八) 素抱
父の日の贈物とて麻パジャマ 寒暑
苧麻(ちょま)知らず東海道の一筋も 随笑
(末尾は句集名)
帚木 /
旅人の足下帚木もみぢせり
夏萩 /
夏萩のすんなり風を受け入れて さざなみやつこ
夏萩のはらほろひれと葉の靡き 素抱
夏萩や地べたを伝ひ風起てり 素抱
夏萩のあちらこちらの葉打ち雨
夏萩の雨を零してさ揺るる葉
夏萩のお先走りを愛でにけり
夏萩や道端でする長話
湯田高原夏萩交え薄原
夏萩のかすかかほるとこゑありぬ
夏萩の一葉一葉に宿る露
夏萩や岩木山麓駈くる風
(末尾は句集名)
駒繋 /
槐の花 /
槐散り鮮しき路十歩ほど
舗装路の木影の上に槐散る
槐散る都心に降れる雨の嵩
槐散る路たんたんと通院日 随笑
槐散る樹下いちめんのうすみどり
槐散り大道芸の似合ふ街
(末尾は句集名)
沙羅の花 /
夏椿杳と石門明けにけり
沙羅の花滅して雨の降るばかり
短命の家系とは知る沙羅の花
たわいなく雨に散る散る夏椿
独り言聞いて呉れそな沙羅の花
夏椿落花こんなに雨止まず 素抱
蕾みては百の小坊主夏椿 宿好
小雨の中花全うす夏椿
一日経て色振り変はる沙羅の花
夏椿一日にして花古び
ここな家こんなに早き夏椿
夏椿咲かせ淡々雨の花
と或る朝夏椿花了へてをり
夏椿そこはかと咲く其処へ朝日
(末尾は句集名)
百日紅 /
お寺さま咲かする百日紅が見え 暮津
さほどにはあかくはならぬ百日紅 さざなみやつこ
さるすべりもみぢ見ながら渡り廊 宿好
さるすべり咲きつゝ散れる空まさを 随笑
さるすべり白を尽くして咲き勤む 素抱
つきあたり百日紅の極め付け さざなみやつこ
まかがよふ白さるすべり地に灼けて 素抱
漢名の音(おん)も締りのよくて紫微 鳩信
境内のこれは別格百日紅 ぱらりとせ
極楽寺百日紅の夢見時 さざなみやつこ
紅にもう一盛り百日紅 暮津
此処天界白さるすべり散るところ 暮津
採血の血止する間の百日紅 素抱
札所寺百日紅に汗退けり 宿好
散りそめて白さるすべり水の上 ねずみのこまくら
出色の百日紅に汗退けり ももすずめ
畳廊百日紅に突きあたる ももすずめ
数へ日の日にまどろめるさるすべり ねずみのこまくら
赤花にして焦心の百日紅 暮津
赤裸々に生きていりゃこそ百日紅 暮津
太幹にしてなかなかの百日紅 石鏡
天灼けて白さるすべり地に灼けて 素抱
冬の裡ちから溜め込むさるすべり 石鏡
曇日の彩に安んじ百日紅 随笑
年々に澄み勝る白百日紅 燕音
百日紅うち籠るべく家があり 寒暑
百日紅どうれと山門潜りけり 宿好
百日紅ほとぼりさますけふの雨 素抱
百日紅愛染明王然として 暮津
百日紅花より幹の至福相 暮津
百日紅覚えてゐしが忘る路 素抱
百日紅再燃雨の日曜日 石鏡
百日紅詩は独断と心得て 寒暑
百日紅真正面に腰据えぬ 燕音
百日紅晴天続きに干反る皮 素抱
百日紅盛りなりいざ極楽寺 燕音
百日紅天に葬りのある如く 寒暑
百日紅日に日に散るを看取るごと 素抱
百日紅皮の剥落続きをり 素抱
百日紅烈々無口通しけり 暮津
来客や白さるすべりをうちあふぎ 素抱
閻魔庁正門脇の百日紅 素抱
遅れ咲く花に華あり百日紅
花房は頭脳のかたち百日紅
古百日紅おのづから体為しにけり
悪天に色を押さへし百日紅
寺町の坂に残んの百日紅
咲き満ちて白さるすべり青みけり
石の上に細かく散りてさるすべり
百日紅熱風すさぶ日なりけり
百日紅中間色はよかりけり
順繰りに送るつもりが百日紅
百日紅花より幹の至福相
さるすべりの風流傘といひ合へる
枝先へ走り咲くなりさるすべり
百日紅嘘を築地の御門跡
勝ち負けをうんぬんしても百日紅
百日紅尋め来て花は半ばなる
水の上に白さるすべり至福に満ち
一向に衰え見せぬ百日紅
蝸牛すらすら登るさるすべり
大寒にびくともせざりさるすべり
さるすべり大樹五日の陽を返す
寒気憑く枝くねらせてさるすべり
力むもの寒の仁王とさるすべり
さるすべり雪気払ひて払ひても
力み癖抜けぬ真冬のさるすべり
龍谷山雨に残んの百日紅(横須賀良長院下田稔の墓)
寺町の細路残んの百日紅
隆々と瘤大寺の百日紅
紅極む百日紅は寺に置け
百日紅嫩葉揉まれること喜び
遅れ咲き月をまたがる百日紅
百日紅幹若くして好々爺
某日の寺町に遇ふ百日紅
わが家居いま散りどきのさるすべり
なかなかに尼が住持の百日紅
阿佛尼の逗留せし地の百日紅
花ことし乏しく残念百日紅
青天に白さるすべりを置く美学
昼餉また茶漬にしやうか百日紅
咲き悪き花と見上げて百日紅
百日紅老残の幹したたかに
百日紅散り継ぐ心のこりかな
百日紅嬰児泣ごゑ滾らせて
天青く白さるすべり鎮まりぬ
からからに乾く閼伽桶百日紅
炎天に白さるすべり忽と消え
百日紅源氏の白を掲げけり
百日紅今を盛りの平家の赤
リハビリの男のあふぐ百日紅
百日紅尾羽打ち枯らしゐる月下
めでたやの齢の老木さるすべり
一入に夜目の白さのさるすべり
心臓病外来患者に百日紅
書く覚悟随所に見えて百日紅
百日紅手術病ひを引きつけて
百日紅かんかん照りの中詣づ
なかんづく清濁の清百日紅
廃れたる律の教学百日紅
心身を抜け通るいろ百日紅
差し込める光の見ゆる百日紅
灰燼に帰すものばかり百日紅
百日紅萬の蕾の数珠光り
青天に百日紅の灼け莟
百日紅通り抜けゆく風のあり
義仲寺のしろがねいろのさるすべり
百日紅散り継ぐ寺の瓦塀
玄関の灯よりも明きさるすべり
灯の洩れてゐるそこ白きさるすべり
四萬部寺(しまぶじ)の百日紅に身の透けり
掃かずおく庭に火屑の百日紅
ご朱印を貰ひに百日紅の昼
札所寺百日紅に汗退けり
閼伽桶に百日紅の散り込めり
葉を落とし了へて骨ばるさるすべり
さるすべりはつかに残す葉数かな
曇日の心地好げなる百日紅
青々と百日紅の空灼かれ
百日紅やうやうあつさ峠越す
滅すれば火もまた涼し百日紅
百日紅芙蓉の月に入りにけり
雨の日は雨の明さの百日紅
天界に万燈ぶりのさるすべり
さるすべりは天展く花しろたへに
炸裂の白の眩しきさるすべり
さるすべり風に動きの出て来たり
女の子何とかのぼる百日紅
花は白若年寄のさるすべり
かがよへる白さるすべり青天に
白極む百日紅の長丁場
残寒の日差しを返すさるすべり
(末尾は句集名)
海紅豆 /
この道はチャイナタウンへ海紅豆 寒暑
ジョギングの幾人(たり)通る海紅豆 素抱
タックルに走者潰さる海紅豆 ももすずめ
海はもう手ぐすね引いて海紅豆 随笑
海紅豆浜閑散として来たり 暮津
海水着より大胆に海紅豆 鳩信
海浜公園人出これより海紅豆 暮津
綱繕ふ手許けだるく海紅豆 ももすずめ
手放しに海が招くよ海紅豆 随笑
浜に出づ道と聞き来て海紅豆 暮津
海紅豆過ぎジョギングとウォーキング
海紅豆海老チリを待つレストラン
海水着はちきれさうよ海紅豆
海紅豆ずぶ濡れの子が脇通る
ペンキ塗る画家は二代目海紅豆
海紅豆セザンヌの絵に入るごとし
ヨットハーバー白光放つ海紅豆
海紅豆木影を深め昼の海
海辺まで歩いてゆける海紅豆
(末尾は句集名)
デイゴの花 /
梯梧の里あゆたやさんた高らかに
茉莉花 /
ジャスミンの芬々馬鹿に蒸す日かな 石鏡
つきあひにも距離といふものジャスミン茶 暮津
茉莉花に皆鼻持ってゆきにけり 石鏡
ジャスミンの無断越境叱正す
だみごゑに誰だジャスミン植えたのは
(末尾は句集名)
ハイビスカス /
すぐあがる雨と知りをりハイビスカス ねずみのこまくら
ハイビスカス花の真中の突起物 鳩信
バンザイのこゑこびりつく仏桑花(サイパン) 暮津
仏桑花花殻葉巻のごと巻けり 暮津
仏桑花葉巻めく花落しけり 暮津
丹精に花畳み了へ仏桑花
海人(うみんちゅ)の情の懸け方ハイビスカス
屋外へ出して真夏の仏桑花
ハイビスカス長持ちさせて咲かすには
植え込んで多少の不安ハイビスカス
この土地に合ふしろものかハイビスカス
海の方明るき窓辺仏桑花
置き肥料五粒ほどを仏桑花
部屋咲きのハイビスカスもあと一花
沖縄戦吾は知らねど仏桑花
(末尾は句集名)
ブーゲンビリア /
ブーゲンビリア夜気にびっくり花零す(鉢植)
部屋は一転ブーゲンビリアの楽園に(鉢を飾りて)
ブーゲンビリア空港ロビーに彩させり
養生の我が身をブーゲンビリア透き
ブーゲンビリア花はこれにてそれは苞
ブーゲンビリア花は胡蝶の舞ふごとく
日光黄菅 /
お弁当ニッコウキスゲに向き合ひて 石鏡
だまなして霧の走れりゼンテイカ 燕音
取縋る蝶もニッコウキスゲ色 さざなみやつこ
先生が引率ニッコウキスゲの径 随笑
鉄路伸ぶ限り群落ゼンテイカ 燕音
日光黄菅霧の向うの霧を見て さざなみやつこ
霧湧かす花別名をゼンテイカ 石鏡
狐めくニッコウキスゲの細面
ニッコウキスゲここら萎れて面目無し
ふいに霧雨ニッコウキスゲの横顔に
霧の随(まにま)に日光キスゲの幽明界
日光キスゲ霧におぼるる呱々のこゑ
ニッコウキスゲ風いちめんに吹きのぼる
ニッコウキスゲ丘の涼風順送り
ニッコウキスゲ風吹き上ぐる斜面沿ひ
ニッコウキスゲ丘々巡り風の道
暮れなんとニッコウキスゲの終の花
(末尾は句集名)
夏落葉 /
お岩木の山よりひらと夏落葉 寒暑
夏落葉祭のあともよく散るよ 素抱
夏落葉祭の済みし杜に降る 素抱
夏落葉増上寺門たもとほり 素抱
高齢のもう起きて掃く夏落葉 暮津
寺男朝な手古摺る夏落葉 さざなみやつこ
石畳かつんと打ちて夏落葉 暮津
石燈籠打ちて常磐木夏落葉 素抱
楊梅の赤夏落葉方円に 素抱
夏落葉閑散として空きベンチ
夏落葉硬き音立て転びけり
夏落葉唐橘もその一つ
水に浮く形も彩も夏落葉
寺町の一本坂道夏落葉
段(きだ)擦りて愛宕の杜の夏落葉(愛宕神社)
夏落葉ラジオ体操ひろばかな
夏落葉掻いて夜宮の店支度
姥堂をうっかり過ぎて夏落葉
図書館へ通ず小径の夏落葉
夏落葉泰山木を筆頭に
夏落葉回転扉にはねられて
泛く亀の鼻先におつ夏落葉
五合庵とんと音して夏落葉
(末尾は句集名)
病葉 /
うたた寝覚むあなた病葉降れるなり 素抱
飴色の病葉落ちて骨の音 鳩信
雨あとの磴打ち泰山木病葉 ももすずめ
蜘蛛の囲に病葉二、三ちらし掛け 素抱
土牢へ病葉にほふのぼり道 寒暑
病葉の何處かに落ち度あるならむ 素抱
病葉の朽つ香萬年上人塚 寒暑
病葉の降る混浴の隅占めぬ 素抱
病葉の散るがきっかけ降り出せり 暮津
病葉の水にしづめる一つかな 素抱
病葉をひたと水面(みおもて)受け止めて 素抱
病葉落つ鋼(はがね)の音を立てゝ落つ 素抱
未明降る病葉広き水の上 素抱
病葉一つ手にとりて見つ昼の月
大壇口散りし勇士の碑に病葉
病葉の香のして戦場たりし丘
五軒丁濠に病葉また降れり
病葉の谷戸に振り込む秋彼岸
病葉の行方追ひをり湯治湯に
病葉は月を誘いて落ちにけり
仏閣に病葉といふ落し物
病葉となり散り果つる日のいつか
病葉を泛かべて濁る阿字ケ池
小雨にも耐ええで病葉降れるなり
祭果つ杜に病葉降るばかり
病葉を踏みて山中抜ける道
病葉の折々降れる山路ゆく
病葉のニス刷くやうなつるつる感
病葉のほろろと零る称名寺
病葉の匂ひ濃くなる五輪塔
病葉のにほひそこはか養生所
病葉の香を雨籠めの開山忌
病葉降る乙子草庵その四辺
(末尾は句集名)
◆季語「七月」
七月の黄昏てんぷら揚げる音
トネリコの青葉に七月初日の雨
七月の真鶴半島海に入る
地下鉄来る七月の風押して来る
七月の蜘蛛の巣張れり水の上
七月のどんじりの日のお洗濯
七月の末日に来る集金夫
以上
by 575fudemakase
| 2021-03-22 20:58
| 自作

俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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