拙句 冬木

拙句　冬木　

B棟の患者見下ろす一冬木 　　 さざなみやつこ

そそり立つ一冬木見て職引く身 　　 宿好

とんがって風切る冬木の芽の容 　　 素抱

一団の鳥に襲はれゐる冬木 　　 石鏡

一冬木仰ぐ心もささくれて 　　 宿好

刈り込んでたん瘤だらけこの冬木 　　 素抱

青空に筋通すごと一冬木 　　 石鏡

冬木の芽篤くと見て其処離れけり 　　 宿好

日暮れむとする街冬木に鳥置きて 　　 石鏡

陽気まだどっちつかずの冬木の芽 　　 石鏡

瘤隆と立寄り易き一冬木 　　 宿好

石畳むくと擡げて冬木の根 

冬木容れ切なきまでに青む穹 

たたずまひ冬木の如き汝如何に

素っ気なき冬木の桜過ぎ通院 

市庁舎の冬木の配置全しや 

手を遣りてこんな硬さか冬木の芽 

立ち停まる冬木がありてその空を 

老人の首傾げゐる冬木の芽 

うすずみに辺り暮れゆく冬木の芽 

今は日を取り込む仕事冬木の芽 

冬木の芽鋭さ増しぬ地鳴の中

これよりは日々溌剌と冬木の芽

代書屋が在ったあたりに冬木立 

薄情に大冬木伐り倒されてあり 

赤門より冬木の桜みて往かむ

大冬木昏れ黒凍みの鳥点ず 

校庭にぼつんと冬木の桜の芽

雀入れ冬木の切り絵景色かな

装いをめいめい凝らす冬木の芽 

雪中に赤らむ冬木の楓の芽 

北面の枝のびやかに冬木鳴る 

湯煙の上がる辺りに冬木の芽 

山宿の玻璃戸越しなる冬木の芽 

真っ直ぐに吹いて来るなり冬木道 

福祉大会冬木たっぷり日を浴みて

冬木の芽隆々観音力もて 

冬木の芽舞台支へる丸柱 

洞も瘤もなべて素通し皆冬木 

このいっぽん散るを待ちゐる他の冬木 

頭角を徐々に顕はす一冬木 

過ぐるとき頭を掠む一冬木

一目も二目も置ける冬木あり 

心中に動かし難き一冬木

啼声も鋭さ増せり大冬木 

赤き芽と赤き小枝の一冬木

しろがねの冬木の枝に目を凝らす 

大冬木定型といふ詩のかたち 

一切は苞につつまれ冬木の芽 

一つづゝ堅固に銀の冬木の芽 

朝っぱらから霽れて銀鼠冬木の芽 

冬木の芽のとんがり具合見て家居 

白日に彼の大冬木まどろまむ 

風ゆるく吹く日の冬木桜の芽 

宿木に雀睦める大冬木 

ケバのあるこれ何だろう冬木の芽

(末尾は句集名)