拙句 枯木 裸木

拙句　枯木　裸木　

いま暮れて今年が終る枯木星 　　 随笑

けんちん汁伝はる寺の総枯木 　　 暮津

こんがらかる枯木の中や八幡さま 　　 素抱

サンザシに巣と見えしもの枯枝なる 　　 さざなみやつこ

シャガールの月にビュッフェの一枯木 　　 さざなみやつこ

ジュラルミン光りに枯枝枯枝かな 　　 宿好

すずかけの裸木季（どき）と申すべき 　　 ももすずめ

そそけだち自暴自棄めく一枯木 　　 ももすずめ

ばうばうの枯木連なり猫背の町 　　 随笑

バンドネオンに翼枯木の宙を舞ふ 　　 燕音

ブエノスアイレス負け犬に吹く枯木風 　　 燕音

ボウボウと枯れ木国産マッチの碑(国産マッチ創始者清水誠の碑) 　　 暮津

また一つ家毀たれて枯木星 　　 鳩信

一渉り池のほとりの枯木見て 　　 さざなみやつこ

一匹だに魚影の見えぬ枯木谿 　　 燕音

雲抜けて日差し枯木にぱっと射す 　　 暮津

閲覧室そそけ枯木の見ゆる席 　　 ももすずめ

花林糖齧る眼枯枝に遊ばせて 　　 宿好

怪人二十面相枯木の合間より 　　 暮津

海光の遍照枯枝枯幹に 　　 暮津

街の木は枯れてタンゴの鼻濁音（ダリエンソ賛歌） 　　 燕音

街路樹の枯木のパントマイムかな 　　 宿好

柿の木のへうへうと彳つ枯れて彳つ 　　 随笑

丸腰の裸木なれば寄り易し 　　 宿好

橋一つ向ふがけふの枯木宿 　　 鳩信

鏡なす空に枯木の物狂ひ 　　 随笑

枯れ木っ葉臭き湯町の子が乗り来 　　 鳩信

枯幹に抱きつきざまに鵯止まる 　　 さざなみやつこ

枯枝折り隣家葬りの仕度かな 　　 さざなみやつこ

枯木の遠ち枯木が見えてクリスマス 　　 随笑

枯木影障子ぴしゃりと閉せる家 　　 素抱

枯木越し円空さんの寺が見え 　　 ぱらりとせ

枯木見つつ湯壺へ骨皮筋右衛門 　　 鳩信

枯木打ち晦日の雨の至りけり 　　 ぱらりとせ

枯木道脇挾む本ぬくとかり 　　 ももすずめ

枯木風日に三便のバス待てり 　　 燕音

枯木攀ずあの猫金魚盗った猫 　　 石鏡

行き来して句作り算段枯木中 　　 宿好

残る葉を数へて枯木のプ・ラ・タ・ナ・ス 　　 鳩信

四囲一切枯木真直ぐ歩みゆく 　　 暮津

手すさびに手造り鉛筆枯木製 　　 寒暑

雪片をすいと引き寄せ一枯枝 　　 鳩信

栓の木の盆におかわり枯木宿 　　 燕音

痩せぽっちのキリストを吹く枯木風 　　 燕音

大枯木仰ぐ心もささくれて 　　 宿好

滝桜見るに枯木に手をつきて 　　 さざなみやつこ

脱帽といふ他はなき枯木瘤 　　 随笑

町内に枯木と月と銭湯と 　　 燕音

灯が点り枯木の間のお酉さま 　　 燕音

頭上なる枯木の何かこそつける 　　 さざなみやつこ

楢山の楢枯れ木(ボク)に還るころ 　　 燕音

二の酉の灯を掻き立てり枯木風 　　 燕音

入り組めるいてふの枯枝枯枝に日 　　 ももすずめ

北鎌倉勝手知ったる枯木道 　　 宿好

木訥の木(ボク)の心をもて枯木 　　 燕音

裸木となりてさくらはそこらの木 　　 ねずみのこまくら

裸木となりて歴然瘤欅 　　 石鏡

裸木となりて欅の矍鑠たり 　　 ねずみのこまくら

裸木と紅葉半々山手線 　　 宿好

裸木のこよなき艶がすべてなり 　　 素抱

裸木の一本づつに朝日影 　　 宿好

裸木の光と蔭の部分かな 　　 燕音

裸木の今は日を欲る許りの枝 　　 素抱

裸木の枝先の葉の震ひづめ 　　 燕音

裸木の蕊の白さをおもひけり 　　 ももすずめ

裸木の走り根の先ここまでよ 　　 随笑

裸木の無心が心憎き日や 　　 随笑

裸木の欅の如菩薩仏菩薩 　　 宿好

蹲る鳩を裸木見下ろせり 　　 宿好

(末尾は句集名)