拙句 冬枯 枯るる

拙句　冬枯　枯るる　

お天道さま種採近き垣枯らす 　　 暮津

ぎしぎしの枯れざま海は荒れ模様 　　 随笑

ジョーカーの裏でくすりと夜の笑ふ 　　 燕音

つくねんと柿の木いっぽん枯月夜 　　 宿好

バイオリンずいこずいこと颱風ひく 　　 燕音

ひょこひょこと枯るる中来て露天湯に 　　 鳩信

ボウボウと枯れ木国産マッチの碑(国産マッチ創始者清水誠の碑) 　　 暮津

ゆっくり枯れ草風船の風流は 　　 暮津

一山の枯れ清水の舞台圧(お)す 　　 燕音

一芝居摶ってやろうか枯月夜 　　 石鏡

映るもの枯れ一色や鴛鴦の水 　　 素抱

横十間川(よこじゅっけんがわ)に日が射し芦枯らす 　　 暮津

街の木は枯れてタンゴの鼻濁音 　　 燕音

柿の木のへうへうと彳つ枯れて彳つ 　　 随笑

鴨がやがや云うて蓮葉枯らすなり 　　 随笑

魚潜む川あり山も枯れ深む 　　 燕音

供華枯れて八月の墓茫とあり 　　 素抱

狗尾草(えのころ)の魂(たま)のぬけがら枯月夜 　　 鳩信

熊四手の冬芽の側に枯るる果穂 　　 燕音

犬の尿ぺんぺん草の枯れし穂に 　　 石鏡

見当がついてこの枯れ尽きし蔓 　　 鳩信

枯るる身に探りを入るる聴診器 　　 宿好

枯るゝ身に熱湯をこそ湯西川 　　 燕音

枯るる頭を潜望鏡のやうにリス 　　 ぱらりとせ

枯るる夜をジーラジーラと唄い出す 　　 燕音

枯るゝ夜をダイナマイトの綾戸智絵 　　 石鏡

枯るゝ夜を飛行機野郎の本を読む（サン=テグジュベリ） 　　 宿好

枯れてをりウツボカズラの壺半分 　　 宿好

枯れに入るここら岩塩採れし山 　　 鳩信

枯れに入るものの一つに床擦れも 　　 鳩信

枯れを統べ則天去私のメタセコイヤ 　　 暮津

枯れを来て柚子のぷかぷか浮ける湯に 　　 暮津

枯れ三昧一人愉しみ居る芭蕉 　　 燕音

枯れ木っ葉臭き湯町の子が乗り来 　　 鳩信

枯月夜燭入りて堂膨らむよ 　　 ねずみのこまくら

枯山を渡り歩けば眼も枯れて 　　 燕音

枯篠にひねもす東京湾の照り 　　 燕音

吾亦紅枯れてしまへば風のもの 　　 暮津

口許が割れて洩れだす夜のタンゴ 　　 燕音

捌けたる人のごとくに芒枯れ 　　 随笑

山を焼く煙くすりと上りけり 　　 ぱらりとせ

枝先に合歓の枯れ莢ひいふうみい 　　 宿好

実ざくろの木乃伊めく枯れ祖父の忌よ 　　 ねずみのこまくら

種採の種枯れざまの手本見す 　　 暮津

種子揉みて音にして見す枯れ具合 　　 暮津

寸又峡谿の草木を枯らすあめ 　　 石鏡

青空のまま昏れ柿の蔕月夜 　　 宿好

素浪人風に立ち枯れ棒葎 　　 石鏡

田畑(でんぱた)の廃れ枯篠迫る村 　　 素抱

冬枯れに長寿の象のハマ子さん（野毛山動物園） 　　 燕音

島の鳶こゑ逆落とし篠枯らす 　　 随笑

藤棚の今は枯れどき船橋屋 　　 暮津

鳶の影枯篠伝ひに遠ざかる 　　 素抱

楢山の楢枯れ木(ボク)に還るころ 　　 燕音

楢山は尾羽うち枯らす山となり 　　 燕音

鉢枯らす大暑うらめし手にシャベル 　　 暮津

鼻毛まで枯れてゐるとは鏡のまへ 　　 石鏡

不細工よ牡丹の木(ボク)の枯れざまは 　　 素抱

不整脈薬で押へ枯るゝ中 　　 さざなみやつこ

舗装路の狗尾草(ゑのころ)も枯れ通院日 　　 宿好

末枯れの百草を刺す野路の雨 　　 暮津

鈴懸の意地といふ他なき枯れ瘤 　　 宿好

鈴懸の尾羽うち枯らすまで落葉 　　 鳩信

山宿の背山枯れよと夜の疾風 

日当たる山枯木を花と咲かせゐて 

舞上がるここち山枯れどきの温泉(ゆ)に 

一枚ベラ味噌ベラ造り山枯れどき 

寄生木にぐるり楢山枯れ始む 

天辺はもう枯れ初めぬ紅葉山 

紅葉山一つ隣の山枯れて 

冬枯のこの道ゆけば二階堂 

舞上がるここち山枯れどきの温泉(ゆ)に 

一枚ベラ味噌ベラ造り山枯れどき 

寄生木にぐるり楢山枯れ始む 

天辺はもう枯れ初めぬ紅葉山 

紅葉山一つ隣の山枯れて 

(末尾は句集名)