拙句 零余子

拙句　零余子

ほくと零余子噛めば中年過ぎてをり 　随笑 

むかご落つ人目届かぬ所かな 　随笑 

コンビニで零余子なんぞを買おうとは 　寒暑 

三回に分けて味はふ苞零余子 　随笑 

日表に痘痕の零余子法師かな 　ぱらりとせ

晩年の既に始まる揚げ零余子 　随笑 

紐あるごと零余子芋蔓式に落つ 　燕音 

腎臓の形(なり)せる零余子予後の身に 　寒暑 

零余子の味ほかほか感がいのちにて 　寒暑 

零余子も売る草津のスーパーマーケット 　随笑 

まあなんて言おうかこの味むかご飯  寒暑

鉛筆でむかご落として一つとや  素抱

金屎（かなくそ）の如き零余子を掌に下山  石鏡

そこそこ採れ零余子御飯に一寸足らず  暮津

零余子黄葉始まってをり覚圓寺  暮津

むかご飯大き一粒分け呉れぬ

噛み当ててごりと芯あるむかご飯 

むかご飯君に足りないものは野趣 

凡々たる日の過ぎやすくむかご飯 

むかご飯一箸つけて言ありぬ 

零るゝはむかごか露か八重葎 

破れ垣にむかご一蔓ながらへて 

零余子飯むかしむかしが口癖に 

追ひつきて手にす零余子を話題にす 

掃除してゐる間もむかご零れさう 

鎌倉の有為の奥山むかご採

山に摘みこれも双子の零余子なり

零余子採小粒ばかりで止めにけり 

零余子蔓引っ張ってなほ辿る径

家苞のそれが発端むかご飯 

高台に日当る村やむかご採

滝道に零余子並べて小商ひ 

触感のざらっとしたる零余子買ふ

むかご落つ彼方にマレーバク眠る 

枯れ藪にむかご零るる音の行方 

むかご採りに来て遅かりし由良之助 

むかご皆落ちて仕舞へり昼の月 

零余子あらかた落ちて仕舞ひぬぽっくり寺 

又求む零余子よくよく縁があり 

この奥に滝あり零余子零る径 

油揚げ零余子抓みて旅気分 

零余子ほくと噛めば中年茲にあり 

零余子散る東海道は丸子の宿

留守中の一事持ち出す零余子飯 

六合村の零余子ずっしり袋売り 

つき出しに草津の苞の茹で零余子 

宿裏に竹瓮捨てあるむかご径 

むかご飯一度食べたら止められない 

（末尾は句集名）