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正月 /

千両の正月期して極まる実

蜑の墓正月花に松が枝も

太夫と骸骨美醜の応酬新春展

骸骨の相撲に興じ新春展

正月の鳶丹沢と肩竝べ

正月寺方代さんに遭えさうな

新春の蹴球(サッカー)魂激突す

高校の新春サッカー観戦す

正月晴れ正面に不二見える筈

正月に立てては崩す旅プラン

正月の諷詠先づは空ゆく雲

女正月過ぎの或る昼ピザ焼いて

妻起って正月花に水を遣る

正月の絶えて人無き路の果

山妻に何もて報ゆ小正月

正月や前へ前へと進むのみ

正月を祝ぐ金魚草うひうひし

正月花笑ひさざめく珈琲店

雀らも群れをつくりて正月す

お正月様の神慮を鳩も持つ

曉斎の拳骨啖ふ新春展

曉斎の信徒屯す新春展

曉斎の諷刺棘持つ新春展

きな臭き新春早々曉斎展

曉斎が呼ぶから来たぞ新春展

庭石に丶(ちゅ)と正月の蝿居るよ

日を遍く正月の松優れたり

正月の家鴨に鴨に餌をやる子

正月の鴨より猛きこどもごゑ

正月の人を怖れぬまだら鯉

正月の鴨の見る方大き音

正月の墓地青草を眼にしたり

お正月迎ふ太箸前にして

正月の帰省空港大写し

七福神正月迎ふ玄関に

水仙のこもり香正月迎ふ家

馥郁たる正月花を安房土産

新築の家正月に間に合はす

クリスマスセール正月ものも売る

正月を薫れと飾る仏手柑

正月の縁起担ぎに仏手柑

正月花千両まことにいい値して

露西亜より正月目当てにサーカス来

暮れに見る正月映画二本立

正月の光まみれに鴨浮きて

目の前に来てゐる正月さて何を

正月の古墓にわが翳も添え

机に蜜柑もう正月といふ風情

正月を置くごとみかんを横に置く

正月の藁刺し小物飾りかな

正月の甘露煮に佳き鯊を釣る

割烹の殖ゆる道筋迎春花

散髪屋正月休とってをり

初春の出湯のラドン含有量 素抱

正月のもう散らかせる居間跨ぎ 素抱

正月からとんだ目に遭ふぎっくり腰 寒暑

湯の里に遊ぶ正月湯三昧 寒暑

正月は黄泉にてと又一人逝く 寒暑

正月花抱え女の声掛けゆく 随笑

裏紙に妻のメモ書き小正月 随笑

もてなしに正月舞ひの擦りささら 随笑

正月の風に当りに出で三歩 随笑

初春の真珠選別御木本嬢 燕音

水槽に正月顔のマンボウも 燕音

正月の潮の香しばし渚べり 鳩信

正月顔せる皮剥を賞味せり 鳩信

頬被正月ものの覗突漁(みづきりょう) 鳩信

脇路地で豚饅頭商ふ旧正月

正月来横濱華僑總會所

晦日正月コンビニで買ふ団子など

引き算の美学うるはし正月花

横綱の巾広の顔正月場所

正月の川央みどりがかる岩

やっかいな正月の富士詠み初めに ぱらりとせ

鮮やかな正月物に目を止めて さざなみやっこ

校長.駐在正月祭の附き人に

正月ものさざゑにお膳賑はへり

正月の魚食べ放題の宿

正月の祭の寄付に宿の名も

揚げられて正月物の大金海鼠(おおきんこ)

昌平坂正月富士の晴れ姿

大津絵の鬼らも正月都絵に

東都名所かすみが関の正月圖

掛け蕎麦に正月花のはや萎えぬ

正月の波切の磯に河豚を釣る

正月の坂のぼらねば高台寺

正月の地蛸たじたじ歯の無くて

小正月過ぎて入江の葦刈ると

水仙の莟正月支度して

番台に活けあり湯屋の正月花

奮発し上(じょう)の正月花を買ふ

店頭に正月花が出揃ひぬ

七福神嘉す鼠の正月圖

正月の雀啄む一位の実

山妻と相合酒のお正月

あだに大き正月過ぎの夏みかん

迷ひ道ぱったり出会ふ迎春花

正月のめでたき蜜柑配り了へ

初春の錦鯉売る百貨店

正月の雪まみれなる盆栽棚

正月の鴨寄り合へる箒川

川鵜二羽正月の川遡る

正月の残りものにて晩酌す

年毎に黄泉の正月旺んなり

正月の寝床へ妻のこゑ懸り

拙句 伊勢海老

伊勢海老の伊勢を向うに島泊り 高澤良一 鳩信

（末尾は句集名）

百合根

年越蕎麦

拙句　年越蕎麦　晦日蕎麦　

年越蕎麦鰊の小骨もてあます 　 暮津

年越蕎麦終の数なるこの三人(みたり)(母・妻・吾) 　 暮津

年越蕎麦鰊臭さが顔にくる 　 暮津

ひと先づが次回もとなり年越蕎麦

(末尾は句集名)

初雀

拙句 初雀

参道に見るべきものは初雀 高澤良一 暮津

走り根と一問一答初雀 高澤良一 随笑

枝移りやがて木移り初雀 高澤良一 随笑

初雀羽音を残し消えてをり 高澤良一 随笑

初雀かさこそ使ふ厠紙 高澤良一 宿好

初雀トコトコトッと石畳 高澤良一 宿好

初雀波切の路地をひゅんと抜け 高澤良一 燕音

（末尾は句集名）

初茜

初茜

例句を挙げる。

いくたりか亡き句屏風の初茜 西村公鳳
みくじ凶結びて仰ぐ初茜 鈴木美代子
もの音のまだ生まれずに初茜 中丸涼
アルプスは雲より燃ゆる初茜 西本一都 景色
ゴッホ在らば画くべき橋の初茜 林翔 和紙
万葉の雲拡がれる初茜 美濃部古渓
初茜してふるさとのやすけさよ 木下夕爾
初茜して楢林櫟山 長谷川浪々子
初茜その名や飛んで都鳥 森澄雄
初茜とぢし瞼も薄あかり 加倉井秋を 午後の窓
初茜入江入江の動きそむ 帰山綾子
初茜啄木の川賢治の川 田村了咲
初茜地靄のしづく竹つたふ 宮岡計次
初茜夕茜さす海の国 原コウ子
初茜夜のしづみゐる海の色 永田耕一郎 雪明
初茜大藁庇浮かび出づ 富安風生
初茜天地ひびきあふごとし 今春朱村
初茜展望閣の灯の消され 小路紫峡
初茜庭木の影をまづ踏めり 飯山正雄
初茜復興の街照らし初む 稲畑廣太郎
初茜杉の千本ふちどりぬ 清水基吉
初茜母の竃火地に展く 竹中宏
初茜水の匂へる鞍馬道 板谷芳浄
初茜波より波の生れけり 小島花枝
初茜海士の墓域は渚まで 山口都茂女
初茜海底火山かも知れず 落合水尾
初茜海鳥の声空を駆く 杉戸道子
初茜海鵜は海面離れずに 千田一路
初茜神話童話と降るごとし 河野多希女
初茜羊の流れとどまらず 白澤良子
初茜鶏鳴松をのぼりけり 櫛原希伊子
利根川に引火するごと初茜 黒沢 清
北海の天かたむけて初あかね 伊藤凍魚
地球儀のペルーは小さし初茜 小野元夫
山相も林相もよし初茜 塩田月史
持ち時間ありと思へり初茜 森悠子
横たはる三河の山や初茜 岡島礁雨
海彦と山彦あそぶ初茜 樫村安津女
潮先のちら～見ゆる初茜 和田鳥峰
生ひたちの町に城あり初茜 岡本差知子
窓ありて水美しき初茜 原コウ子
鉄骨に血の気さし来て初茜 神谷九品
馬小屋に馬目ざめゐて初茜 有働 亨
鳰の子の行手ゆくてに初茜 佐野鬼人

以上