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戦争関連句

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●戦争
いずこにか戦争があり聖夜かな 坂詰國子
いちにちぢう春いちにちぢう戦争 竹村悦子
いづこにか戦争があり聖夜かな 坂詰國子
かちわりや戦争中の自転車で 辻桃子(童子)
たちまちさけがたい顔となり戦争が過重な家計を持つものばかりだつた 橋本夢道 無礼なる妻
ながい戦争がすんだすだれをかけた 栗林一石路
はげしい感情を戦争へゆく君に笑つている 栗林一石路
はつ夏の戦争ごっこだったとは 横須賀洋子
はるかなるものに戦争・蝿叩 赤尾恵以
ジヨン・レノン戦争が始まったよ 本田ひとみ
バルカン戦争カランコロンと小さき石 攝津幸彦 未刊句集
中越戦争誰もとどめず地虫出づ 平井さち子 紅き栞
九条改悪戦争反対木守柿 福成ツヤ子
傀儡師消え戦争が始まつた 吉田汀史
元日よ貧乏には飽きぬが戦争よまたと来るな 橋本夢道 無礼なる妻
冷まじや戦争の碑に鴉鳴く 中村真由美
十五年戦争十五の十六夜 攝津幸彦 鹿々集
十薬を抜く戦争を知らぬ子と 川崎俊子
厭な戦争に生きのびて来た妻とは二度の梅見 橋本夢道 無禮なる妻抄
夏の雲ゆく戦争花嫁といふことば 鈴木しづ子
寒餅に罅戦争が始まりぬ 嶋田麻紀
寒鴉戦争の向うがわ透いて 鈴木六林男 国境
少年は戦争知らず冬帽子 加地美栄子
愚かなる瞳は戦争の抜けし孔 片山桃史 北方兵團
我が母をいぢめて兄は戦争へ 柿本多映
戦争かテロか芋掘る空の上 八村 廣
戦争がいつも何処かに青いか地球 池田澄子 たましいの話
戦争がうすく目をあけ曼珠沙華 野崎憲子
戦争がはじまる亡兄の『罪と罰』 橋口 等
戦争がはじまる野菊たちの前 矢島渚男 延年
戦争がはっきり見える潦 森田智子
戦争がもぐらのやうに春の国 矢島渚男 百済野
戦争が何も変へない晝寝とは 筑紫磐井 花鳥諷詠
戦争が廊下の奥に立ってゐた 渡辺白泉
戦争が戻つてきたのか夜の雪 鈴木六林男 桜島
戦争が桜の下に寝そべりぬ 高野ムツオ 雲雀の血
戦争が終つてみれば罌粟坊主 小泉八重子
戦争が通つたあとの牡丹雪 鈴木六林男(1919-)
戦争が過ぎ凩が過ぎにけり 藤田湘子(1926-)
戦争が隠れている猛々しい夏草 渡野辺朴愁
戦争ってとにかく穴を掘っていた 北川邦陽
戦争という活字の上に 西瓜置く 本郷和子
戦争といかなご漁の便りかな 小川真理子
戦争とかの狼を連れ逝けり 小島健 木の実
戦争とをんなはべつでありたくなし 藤木清子
戦争と並んでいたり露の玉 鈴木六林男 後座
戦争と女はべつでありたくなし 藤木清子
戦争と平和と暮の餅すこし 原子公平
戦争と疊の上の団扇かな 三橋敏雄「疊の上」
戦争と空、わたしは八つ手の花をみてゐる 海藤抱壺(かいどう・ほうこ)(1902-40)
戦争と薔薇海峡の日の渦に 鈴木慶子
戦争にたかる無数の蠅しづか 三橋敏雄 畳の上
戦争に値上げに不感年つまる 相馬遷子 雪嶺
戦争に前・中・後あり秋の風 小檜山繁子
戦争に腸ありて草萌ゆる 花森こま
戦争のあとかたもなき簾かな 角川春樹
戦争のこと言い出すと驟雨来 宇多喜代子 象
戦争のはじまる前の雛の顔 黒田杏子 花下草上
戦争のやうな暑さの小学校 古山のぼる(小熊座)
戦争の世紀でありし歯朶を刈る 七田谷まりうす
戦争の世紀よさらば除夜の鐘 紙野康美
戦争の人馬征くごと蟻の列 保坂加津夫(いろり)
戦争の句を忘るるな年忘 黒田杏子 花下草上
戦争の号外が出て梅の花 成田順子
戦争の夜に連なる花火の夜 岩元繁生
戦争の大地たゞたゞ掘られし(戦争四句) 石橋辰之助
戦争の後の余生を籠枕 長谷川櫂 蓬莱
戦争の旗や男の抽斗に 八木三日女 紅 茸
戦争の活字に包む茄子の苗 進藤芙蓉
戦争の砂漠が写り蜆汁 沢木欣一
戦争の終いは滴る石塊だった 細井啓司
戦争の被害者にして加害者の責をになひて二十五年経ぬ 松本千代二
戦争の褪麦刈るを急かれけり 萩原麦草 麦嵐
戦争の記憶の端に草いきれ 奥名春江「潮の香」
戦争はいや梅白くほつほつひらく 栗林一石路
戦争はかなし簾を垂れて書く 三橋鷹女
戦争はこんな微温の海から来る 鈴木里隹
戦争は人を柱と数へたり 助田素水
戦争は斯くして起こる秋の風 高澤良一 随笑
戦争は蝙蝠に月上れども 片山桃史 北方兵團
戦争は鶏冠を秋風に裂く 片山桃史 北方兵團
戦争も田螺の味も知りゐたり 岸本真智子
戦争も見て来た沖縄最北端 岸本マチ子
戦争やそろりそろりといぼむしり 山崎 聰
戦争や地球の裏に西瓜食ふ 脇本星浪
戦争や西瓜の縞もそのひとつ 齊藤美規
戦争よあるな路地さみだれて鯖食う家 橋本夢道 無禮なる妻抄
戦争をする気のサフランが育つ 宇多喜代子 象
戦争をよけてとほりし玉葱よ 八田木枯
戦争を始めし鬼に豆を撒く 九鬼梨園
戦争を揺れず見ていて深む寒 古沢太穂
戦争を知らざる如く鯊を釣る 大場白水郎 散木集
戦争を知らぬ子ばかり豆の飯 木田千女(NHK俳壇)
戦争を知らぬ子多きお正月 湊孤舟
戦争を知らぬ生徒と黙祷す八月十五日正午に立ちて 市村八州彦
戦争を知るや知らずや葉鶏頭 会津八一
戦争を知る樹も芽吹き初めにけり 湊キミ
戦争を背負つて逝きけり冬鳴る海(三橋敏雄さんを悼む) 藤田湘子 てんてん
戦争を語りし夫の亡き夜長 岡田佐久子
戦争ニュース担当者勤務交代す 五十嵐研三
戦争中はと話し出す草の餅 岡本眸
戦争身近に拳闘を叱咤する 三谷昭 獣身
暖冬異変戦争異変穴に人 矢島渚男 百済野
本当は戦争好きや菊人形 和田悟朗
梅干して戦争に生き地震に生き 赤尾恵以
渦も秋の黒龍江を想う私らの生活へ生還のない戦争が胸をしめつける 橋本夢道
火の恋しとて戦争を始めけり 高澤良一 随笑
煙突の林立静かに煙をあげて戦争の起りそうな朝です 橋本夢道 無禮なる妻抄
父の後姿に残る戦争泉の辺 鈴木六林男 桜島
牡丹戦争露営のなあすすていしよん 仁平勝 花盗人
独楽澄めり戦争知らぬ少年に 菅原さだを
男らは戦争に行き昭和雲 高澤晶子
男らは皆戦争に死ねよとて陣痛のきはみわれは憎みゐき 辰巳泰子
秋風が当りて上野戦争碑 高澤良一 随笑
絶望や戦争にわがゆく日妻表裏なく打泣きし 橋本夢道 無禮なる妻抄
舟棹たぐる五指戦争を知っている 石塚真樹
花篝戦争の闇よみがえり 鈴木六林男(1919-)
莫迦戦争藷が主食の座につきて 高澤良一 随笑
藜繁茂ただ戦争はもうこりごり 吉川茘枝
蝉しぐれずつと奥まで戦争展 漆畑利男
蝌蚪の国戦争もせず失せにけり 藤田湘子 てんてん
蟷螂と戦争一つ日の下に 高澤良一 随笑
諸葛菜要らぬ戦争引き起こし 高澤良一 素抱
赤ん坊の眠りあるひは戦争か 島一木
足許は戦争ちかき土筆かな 大屋達治 絢鸞
遠い国は戦争となつてゐるきびの穂 浪本蕉一
野菜工場から帰り戦争映画観る 清水冬視
閉つたドアで消えた戦争や夕日 鈴木六林男 国境
障子張る戦争未亡人老いて 山本芳江
雛の夜や戦争にほふコカコーラ 工藤克巳
雛の間より戦争の闇はじまるか 齋藤愼爾
雛飾る明日戦争にならうとも 斎藤寛子
青芒戦争の記憶は海からくる 栗林一石路
青蜜柑学帽のまま戦争へ 工藤博司
飴売りの戦争の絵の五月かな 月舟俳句集 原月舟
鬼赤く戦争はまだつづくなり 三橋敏雄 眞神
鮨食べて柿の葉残る戦争や 徳弘純 麦のほとり 以後
黍よ黍殻 人を過ぎたる戦争があり 折笠美秋 虎嘯記
鼬罠あり戦争の靴の音 白石多重子
●戦い
みほとけに燕に戦いつ止まむ 加藤楸邨
ファミコンに戦い挑む三銃士 野原 薫
戦いの唄しか知らぬ手毬唄 雨宮町子
戦いの昭和を生きてちやんちやんこ 寺西安子
新巻と戦い疲れ日暮れ来る 島あじさい
枯原をわがふみ戦いまだ歇まず 片山桃史 北方兵團
死人の白い足裏ふたつ今後の戦い 上月章
疲れ且つ戦い仏桑花を愛す 金子兜太 少年/生長
*いもりよく浮く日戦に破れしよ 杉 良介
*まくなぎよく浮く日戦に破れしよ 杉良介
あかちゃけし記憶のガダルカナル戦 高澤良一 寒暑
あれもこれも戦よりまし落葉焚 前野雅生
うち水やすこし戦のにおいして 菊川悦子
おでん汁たつぷりと戦年を更ふ 久米正雄 返り花
おのが身にをはらぬ戦曳き泳ぐ 山本つぼみ
かの戦さに彼我ともふれず夜の雷 平井さち子 完流
きりぎりす戦の浜の標石 渡辺笑子
ことごとく悲壮戦跡仏桑華 河野静雲
すつきりと水仙に佇つ戦傷兵 萩原麦草 麦嵐
つかのまの日の冬木立戦やむ 小池文子 巴里蕭条
なほ沖へ潮切る双手戦なし 原裕 投影
ひし~と戦身ぢかく去年今年 河野静雲
みぞれきて戦の国の雛若し 渡邊水巴 富士
サーフボード横抱き戦知らざりし 白石多重子
シャワー浴ぶ日焼けて戦知らぬ肩 櫛原希伊子
ブーゲンビレアポインセチアと戦なし 松山足羽
ラグビー戦まづ太陽を蹴り上ぐる 那須 淳男
一本の鶏頭燃えて戦終る 加藤楸邨
一露のみ戦慄戦趾観光者 香西照雄 素心
事始め「風林火山」の図上戦 阿部王峰
今もなほ戦の歌を年忘れ 森田峠 避暑散歩
今年また夫戦跡へ帰省めく 黒坂綾子 『黙契の虹』
仏桑花戦の傷み深き島 重田青都
仮面はがれ月に盲となる戦 大屋達治 繍鸞
先づ出方窺ふ戦(いくさ)も蟷螂も 高澤良一 随笑
切支丹戦趾や覇王樹花ひらく 山本古瓢
初蝉や見えねど深き戦傷痕 藤田湘子
卒業の答辞ベトナム戦にも触れ 福田蓼汀 秋風挽歌
友の夫遠き戦野に海ひかる 藤木清子
古戦跡雲冷え姉川妹川 北野民夫
向日葵や散戦以後の学究たり 鍵和田[ゆう]子 未来図
咳ひびく戦傷ならぬ傷を持ち 三谷昭 獣身
団栗が掌を打つ遠き日の戦さ 対馬康子 吾亦紅
夏菊や戦さに痩せし身をいとふ 渡邊水巴
大根蒔く戦に負けし貧しさに 山口青邨
太平記戦サ永引く昼寝かな 野村喜舟 小石川
夾竹桃炎えて戦の日は遠し 中山みよ
女人にも戦の哀史天の川 石井道子
嫁が君戦知るひと減りにけり 根岸善雄
宵待草ぱつちり闇に戦見つむ 香西照雄 対話
寒潮の岩踏めば戦さ近くなりし 渡邊水巴 富士
寒鴉戦飽きて唖々と鳴く 村上鬼城
島の灯をかぞえてする戦歌 相原左義長
干草や戦なき世を馬と祝ぐ 肥田埜勝美
往くのみの戦のありし時鳥 伊藤通明
後の月今宵風なき戦野かな 相馬遷子 山国
御戦に敗けし話を数珠つなぎ 高澤良一 寒暑
戦さあり寒夜無人のエレベーター 対馬康子 純情
戦さなか母を死なせき瓜にがし 籏こと
戦さより帰りて遊ぶ暮の春 荻原井泉水
戦さ知らぬ人が初老の終戦日 今村映水
戦さ経し僧と語れり朝涼に 杉本寛
戦しごき残る友どち水引草 香西照雄 対話
戦しらぬ青年が*もぐ太き氷柱 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
戦するないづこも春の橋壊すな 清水径子
戦するふんどしかたし今年麦 前田普羅 春寒浅間山
戦どこかに深夜水のむ嬰児立つ 赤尾兜子
戦なきアルカデイアなり花ミモザ 佐田昭子
戦なき切山椒の香なりけり 石川桂郎 含羞
戦なき国ありがたし大旦 井手 直
戦なき国かたまつて通草熟れ 菊地千恵子
戦なき旗旒信号いまは涼し 平井さち子 紅き栞
戦なき空が大好き鳥渡る 大倉淑子
戦なき空を選びて鳥帰る 吉川まさ子
戦にゆく馬と人貨車に眠る 細谷源二 鐵
戦に敗れ豚草のみおごる 上村占魚
戦に死なず病に死なず裸かな 肥田埜勝美
戦のあと空が拡がる野の水仙 森田智子
戦のある方遠き枯野かな 東洋城千句
戦のふかきになれて犬を愛す 藤木清子
戦やみ被爆の跡の風は秋 小松崎爽青
戦やめよ睡蓮まひるまの万灯 熊谷愛子
戦や子に手ほどきの毛糸編 加藤知世子
戦ゆえ二夫にまみえぬ木の葉髪 斎藤阿津子
戦事隊入り雲の峰汚れけり 殿村莵絲子 遠い橋
戦亡の友いまあがりくるよ夏の浜 三橋敏雄
戦傷の記念教会風薫る 関森勝夫
戦傷の足を踏んまへ放下踊 中戸川朝人 星辰
戦傷兵うつる卓鈴夏逝けり 宮武寒々 朱卓
戦傷兵外套の腕垂らしたり 加藤楸邨
戦傷兵征けり薄暑の映画街 宮武寒々 朱卓
戦報や忽ちせはし毛糸編 加藤知世子
戦塵によごれた蝶がここにもいる 三谷昭 獣身
戦捨てし山河晴れたりさくらんぼ 加藤風信旗
戦昨日終る白レース服裾かろし 文挟夫佐恵 黄 瀬
戦止むか野火あと黒き雨の土手 相馬遷子 雪嶺
戦止む月下の郁子のよこむきに 柚木 紀子
戦歿の友のみ若し霜柱 三橋敏雄 眞神
戦病死せるを葬るや風ふく日 片山桃史 北方兵團
戦盲に雪降りかかる黒眼鏡 榎本冬一郎 眼光
戦盲のかぐろき眼鏡ものを言う 三谷昭 獣身
戦盲の友芭蕉忌の句を詠めり 萩原麦草 麦嵐
戦盲の吹けばかなしき祭笛 吉屋信子
戦知らぬ水兵ばかり原爆忌 川口巌渓
戦知らぬ父とその子と源五郎 鈴木利紗
戦終へて命目覚めし記念日なる 相馬遷子 雪嶺
戦終る児等よ机下より這い出でよ 渡辺桐花
戦経し大島紬石蕗の花 川崎展宏
戦経て傷みし身なり啄木忌 村山古郷
戦経て生きる達人敬老日 佐藤正一
戦絵の源氏平氏やきせる草 瀧澤和治
戦聾の雨だれをきかんとはするか 富澤赤黄男
戦船の如き鱸を庖丁す 川崎展宏
戦華のあと金木犀銀木犀 永末恵子
戦袍裕かなり秋雲は野を泳ぐ 久米正雄 返り花
戦跡に日傘の我を点じけり 広田祝世
戦跡の壕に揺れ合ひ仏桑花 岸本俊彦
戦跡の海は引潮油照り 井桁汀風子(風花)
戦跡の鉄砲百合は海へ向く 高橋悦男
戦跡を吹き来て砂糖黍嵐 山口超心鬼
戦遠し妻見し凶の流星も 香西照雄 対話
戦遠し小家搦めて蔦紅葉 鍵和田[ゆう]子 未来図
戦遠し被爆ドームの蝉しぐれ 野地一枝
戦野ならねど冬松傾ぎ農夫傾ぎ 香西照雄 対話
戦陣の記憶は遠く霞みけり 仲田山泉
搦手をふせぐ戦や残る花 白水郎句集 大場白水郎
数珠玉の風にしやりしやり戦知らず 大木あまり 山の夢
斯にかくに祭りも戦さも赫かった 平吹史子
日射病戦跡巡りまだ半ば 広田祝世
春の雪掻けば重たし戦止まず 相馬遷子 雪嶺
春寒や還らぬ人に戦止む 若宮八恵
昼の虫父母の世の戦蹟に 京極杞陽 くくたち下巻
時効なき戦の傷や草いきれ 藤井つな子
晝の蟲父母の世の戦蹟に 京極杞陽
暖房に居て戦話聴く勿体なし 日野草城
書を曝す中に紅惨戦絵図 橋本多佳子
月寒し戦装の兵等との別れ 石塚友二 方寸虚実
朝顔や戦の時世も移りゆく 滝井孝作 浮寝鳥
木斛の実重く信玄戦陣訓 高澤良一 寒暑
松過ぎの心へづかと戦歿碑 鍵和田[ゆう]子 浮標
柳散るや人の知らざる戦跡に 大場白水郎 散木集
案山子立て戦の続く国のこと 上原喜進
椙炎える戦傷の足岩山に 徳弘純 非望
樽舟の源平戦や川開き 中島通子
水戦玻璃の破片の如く飛び 上野泰 佐介
永遠に褪せず戦の島の大西日 加藤耕子
漬菜踏む小さき母と戦経て 宮坂静生 青胡桃
父の日や父は戦に征つたきり 高柳淳「林苑選集」
物陰の無き戦跡にスコール来 広田祝世「かつらぎ選集」
狂う夕焼戦盲冬の地下道に 田川飛旅子 花文字
白燈台統ぶ夏洋に戦絶えよ 香西照雄 対話
皿割りて戦さの秋夜しらけたり 萩原麦草 麦嵐
神々の戦稲妻二打三打 柴田奈美
秋しろき戦傷兵と窓にわかれ 細谷源二 鐵
秋草や駅ごとにある戦跡記 楠目橙黄子 橙圃
秋風に箏をよこたふ戦経て 橋本多佳子
秋風も戦(いくさ)もひょいと起こるもの 高澤良一 随笑
篝火は戦のにほひ夜の桜 橋本榮治 麦生
紅蓮上野の山の負け戦 高澤良一 素抱
紡ぐことありき戦の秋の夜に 萩原麦草 麦嵐
紫荊嘘で固めた戦して 高澤良一 素抱
終止符を打たれぬ戦年明くる 赤尾恵以
老い得ざる君と老い得しわが顔と並べ得ず四十年ずれし戦帽 榛名貢
若芝に座し待つ敗者復活戦 荒井千佐代
草市のもの流れゆく戦川 加藤常子
草蚊追ふうまごに語る戦の日 土田桃花
葎のみ茂り戦跡崖残す 北野民夫
藁囲う戦の外の冬牡丹 森田智子
蘚苔ふかく戦傷の顔置かれ 石橋辰之助
蛇よぎる戦にあれしわがまなこ 富澤赤黄男
蛾と蜂の一戦二戦夕永き 堀口星眠
蟷螂も戦(いくさ)もキッと身構へて 高澤良一 随笑
西日中大戦の夢焔なす 石原八束 『秋風琴』
読初は夫の戦塵支へし書 脇本千鶴子 『てんと花』
賑やかな花の戦さと思ひけり 平井照敏 天上大風
走馬灯止る戦さを経たる闇 小林康治 『叢林』
身のうちの戦古びず秋入日 赤尾恵以
身勝手な戦の行方つちふれり 高澤良一 素抱
遠き日の戦陣よりの黄砂降る 佐々木帯山
邯鄲や戦遠のきつつ近く 小檜山繁子
酒戦今を酣に誰か花を見ん 尾崎紅葉
野毛山の桜昭和の戦見し 高澤良一 随笑
野火を愛せよ天界にある戦さ人 磯貝碧蹄館 握手
野焼あとの水泊梁山戦跡めく 上原瑞子 『燈台草』
鉄橋に戦まぎれず鮠光る 大井雅人 龍岡村
銀合歓に戦跡かくし月を上ぐ 中戸川朝人 星辰
銀漢や齢の中に戦の日 岡本 眸
雨蛙芭蕉に乗りて戦(そよ)ぎけり 其角
露涼し戦信敷居の上に来る 加倉井秋を
霾や今も諳んず戦陣訓 濱口秀村
青空や戦で死んだ鬼あざみ 駿河静男
飯匙倩棲むといふ戦跡の壕暗し 大谷友
馬あまた湖に洗ひて戦めく 殿村菟絲子 『路傍』
鮭の骸戦の跡のごとくあり 長谷川櫂 虚空
鳥雲に性懲りもなく戦すか 高澤良一 素抱
鵲のみが知る戦跡の枯野かな 大場白水郎 散木集
麦湯呑み午から体力消耗戦 高澤良一 寒暑
麦畑歩いて愛と戦のこと 鈴木六林男 桜島
黙深く戦の島の熱砂踏む 土田桃花
*えりの湖のいくさは遠し萱を刈る 古舘曹人 砂の音
いくさあらすな花菜風わたる日のにおい 栗林一石路
いくさありて関所厳しき残暑哉 会津八一
いくさありと鎌切急ぐ嵐かな 蟷螂 正岡子規
いくさあれど羽子板市につれだてる 森光子
いくさいくたび 突堤はざまの酒くらい 星永文夫
いくさいつすむべき茅の絮がとぶ 福島小蕾
いくさかな我もいでたつ花に剣 正岡子規
いくさから便とゞきし巨燵かな 炬燵 正岡子規
いくさとて数ズの亡き人燈籠かな 尾崎迷堂 孤輪
いくさとは赤錆霞む坐礁船 千代田葛彦
いくさとを流れ流され濁り鮒 岡本松浜 白菊
いくさなお熄まず再び夏が街を蔽う 橋本夢道
いくさなきことを諾ひ熊谷草 加藤高秋
いくさなきをねがひつかへす夜の餅 大野林火
いくさなき世こそ花吹雪花吹雪 菖蒲あや
いくさなき人生がきて夏祭 橋本夢道 無禮なる妻抄
いくさなし荒地野菊の咲きそむる 牧野芙美子
いくさに引き裂かれてはならぬ この妻の体温 赤堀碧露
いくさに得し恋息ながし星祭る 中村明子
いくさの夜繭玉しかと数へらる 萩原麦草 麦嵐
いくさの臭ひ乗せて寄せ来る寒気団 杉山とし
いくさぶねやまとのみたま鳥雲に 川崎展宏
いくさややひまに氷を割りて釣る 長谷川素逝 砲車
いくさやんで人無き村や冬木立 冬木立 正岡子規
いくさゆゑうゑたるものら枯野ゆく 長谷川素逝 砲車
いくさよあるな麦生に金貨天降るとも 草田男
いくさ一つ元号二つ古雛 吉本和子
いくさ傷らいの傷秘め菖蒲湯に 村越化石「蛍袋」
いくさ初む寒夜顔なきマネキン佇ち 玉城一香
いくさ息む一葦かなたの雲の峰 石塚友二
いくさ敗れなほしみじみと実朝忌 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
いくさ日日青梅だまる葉かげかな 栗林一石路
いくさ星北窓固くとざしけり 成田千空
いくさ来むことを思ひて毛絲編む 山口青邨
いくさ果つ秋の燈はてもなくともり 木下夕爾
いくさ深しすめらみくには薺粥 渡邊水巴 富士
いくさ深し春いろにでゝ小豆粥 渡邊水巴 富士
いくさ無しむらさきすべく青葡萄 中村草田男「来し方行方」
いくさ知らぬ子らへよぢれてどんどの火 熊谷愛子
いくさ知らぬ裸が海を輝かす 赤井淳子
いくさ知る人いくばくぞ蝉の殻 岡田透子 『珊瑚樹』
いくさ祝す牡丹花咲きて雪ゆたか 渡邊水巴 富士
いくさ終ふ雲間の機影あきのかぜ 飯田蛇笏 春蘭
いくさ経し罅硝子戸の冬日かな 徳永山冬子
いくさ経し野路に露おく白桔梗 河野南畦 『花と流氷』
いくさ経て残りしものに端居ぐせ 三浦紀水 『湖その後』
いくさ絵に細く描かれし春の川 榎本 好宏
いくさ負けて人なき城の胡蝶哉 胡蝶 正岡子規
いくさ遠し男も羽織短く着る 草村素子
いくさ遠し遠しと思へ単衣縫ふ 山田みづえ
いもうとよいちごつぶせばいくさみゆ 八木三日女
おほいくさ勝ちつゝ咲かぬ寒牡丹 渡邊水巴 富士
おぼろ夜のいくさのあとのしかばねよ 長谷川素逝 砲車
かつて夫のいくさの跡や仏桑花 石川文子
かぶと虫を手にこの少年の父いくさして還らず 橋本夢道 無礼なる妻
こしかたに恋やいくさや青き踏む 山本歩禅
ことふりしいくさ咄や桃の花 桃の花 正岡子規
すかんぽやいくさに遠き箱根やま 及川貞 榧の實
すべりひゆ 蹠がいくさ忘れない 保尾胖子
たんぽぽやいま江南にいくさやむ 長谷川素逝 砲車
たんぽゝやいま江南にいくさやむ 長谷川素逝
ねむり草いくさ忘れしことわすれ 八木三日女
ひとの子のいくさ勝ちし子爐に迎へ 及川貞 夕焼
みいくさのオリオン星座霜ふらす 萩原麦草 麦嵐
みいくさはすすみ漁師らかなぎ干す 小原菁々子
みいくさは酷寒の野をおほひ征く 長谷川素逝 砲車
みいくさや雛の眉もあがりたれ 五十嵐播水 埠頭
もだし居やいくさ敗れし国の冬 松根東洋城
ゆたかなる棉の原野にいまいくさ 長谷川素逝 砲車
をのこわれいくさのにはの明治節 長谷川素逝 砲車
シヤボン玉いくさあるなとわれも吹く 須田佐多夫
マスク白くいくさに夫をとられきぬ 加藤楸邨
下萌や金の幣立ていくさ神 脇坂啓子
世の中のいくさに逃げて桃の花 桃の花 正岡子規
乱れ矢のあとや夕立ついくさ船 夕立 正岡子規
二上山(ふたかみ)をみてをりいくさ果てしなり 日野草城(1901-56)
今宵しも山川酒の色いくさ 加藤郁乎
体臭なきいくさの遺品冷ゆる汗 玉城一香
先づ出方窺ふ戦(いくさ)も蟷螂も 高澤良一 随笑
入学のカラーの白きいくさの世 加倉井秋を 『胡桃』
八月やいくさばなしに木太るな 松澤昭 面白
八朔や遠き記憶のいくさの日 成瀬櫻桃子
六月すみずみ拭いていくさ消す 小橋啓生
六波羅に蟇鳴く遠のいくさかな 筑紫磐井 婆伽梵
冬を待ついくさの後の舎營哉 冬近し 正岡子規
冬花火誰かいくさのまなざしす 齋藤玄 『玄』
初詣いくさなき世のいくさ神 小林呼渓
初鏡いくさの傷のまた縮み 増田三果樹
千曲川秋声しろきいくさ跡 角田双柿
古城やいくさのあとの朧月 朧月 正岡子規
向日葵やいくさ終りし山の原 井上雪
囮籠いくさの中にゆれどうし 萩原麦草 麦嵐
国境はいくさかりがね渡るなり 田村了咲
城門やいくさもなくて草の花 草の花 正岡子規
夏も冴え~女身に刻すいくさの爪 赤城さかえ句集
夏来るといくさに荒れし髪を梳く 栗林一石路
夏草やいくさやみたる竈の火 栗林一石路
夕顔に平壤のいくさ物語れ 夕顔 正岡子規
夕顔の闇あをあをといくさなし 黒田杏子 花下草上
夕顔や平壤のいくさ物語れ 夕顔 正岡子規
夜の濠に響くや冬の勝いくさ 長谷川かな女 雨 月
大袈裟にいくさ話の囲炉裏端 吉田もりよし
姉川のいくさも古りぬ鳥帰る 大峯あきら 宇宙塵
実南天一村一寺いくさ経ぬ 斉藤夏風
実盛のいくさおもへり洗ひ髪 猪俣千代子 秘 色
実盛忌機音のしていくさ跡 山口鈴代
寒夜くらし暁けのいくさの時を待つ 長谷川素逝 砲車
寒雲の夕焼けはしいくさ勝つ 渡邊水巴 富士
寺もまたいくさにほろぶ百日紅 石田勝彦「雙杵」
山桜いくさのあとと思はれず 正岡子規
山河古りていくさの跡の月凄し 月 正岡子規
山茶花やいくさに敗れたる国の 日野草城(1901-56)
川開き遠きいくさよ耳鳴りよ 宮川としを
巡礼のごと人かすむいくさあと 玉城一香
年立つや江上の船いくさ猶 尾崎迷堂 孤輪
弾初やいくさの場に目遺れて 石塚友二
思ひあまたいくさする身のおぼろ夜は 長谷川素逝 砲車
悪食の蟹の赤さよいくさの日 宇多喜代子
捩花またぎていくさ無かりけり 行方克己 知音
掛稲の黒きにいくさ思へりき 森川暁水 淀
故郷の菊はいくさに踏まれけん 菊 正岡子規
明け易き夜頃をいくさ物語 正岡子規
明寺やいくさのあとの朧月 朧月 正岡子規
春愁や遠きいくさの埴輪武士(高知城) 河野南畦 『湖の森』
春日傘心にいくさあることも 金田初子
春潮や解き剖かるゝいくさふね 佐野まもる 海郷
春潮を眼下に源平いくさ跡 籔田 郁子
春聯やいくさは遠く山に去り 長谷川素逝 砲車
春草菲々馬肥えていくさを思ふ哉 春の草 正岡子規
月は空より修羅のいくさをひるのごと 長谷川素逝 砲車
月渡る稜線いくさを共に経し 成田千空 地霊
朝顔やいくさの夢のなかの父 桜井博道 海上
束の間をいくさやぶれて残る蟲 斎藤玄
松とれし一つ地球にいくさあり 都筑智子
松伐りしいくさを嗤ひ日傘おく 原コウ子
林檎手に握力なき朝いくさの記事 川口重美
枯蓮のからから鳴れり遠くにいくさ 江 ほむら
柏餅いくさ最中に匂ひいづ 萩原麦草 麦嵐
栗の花母の晩年にいくさなし 成瀬桜桃子 風色
桐の実やいくさが距てしひと多し 山田みづえ
桜咲く空のつづきにいくさかな 荒川優子
梅林にいくさを勝ち来妻を具し来 竹下しづの女句文集 昭和十四年
梅漬けていくさなき世も老いがたし 中台春嶺
梨咲くやいくさのあとの崩れ家 正岡子規
棗の実どろどろ過ぎるいくさ歌 鍵和田[ゆう]子 浮標
歳晩の人らに遠くいくさあり 岸風三楼 往来
母独りいくさの秋の水を汲む 萩原麦草 麦嵐
母葬るいくささなかの梅日和 松村蒼石 寒鶯抄
毛糸たぐり消えゆくジャケッツいくさ謗り 川口重美
毛虫焼くいくさの暇の夕凪に 殿村莵絲子 花 季
水攻めのいくさの址ぞ枯蓮田 大和田知恵子
沖に置くいくさの船や寒念佛 吉田汀史
沢瀉やいくさに死にしみなわかし 森澄雄
河童忌や武漢に迫るいくさぶね 滝井孝作 浮寝鳥
流燈のゆらげばいくさ怖れけり 林翔 和紙
海峡は昔いくさば桜鯛 富川芳緒
海星散開いくさ世経し夏の海 山田みづえ
海贏仇の彼もいくさで死にしとか 成瀬櫻桃子 風色
淋しさやいくさの留守の竹婦人 竹婦人 正岡子規
源平のいくさの浜の汐まねき 三木杜雨
濁り酒木蘭いくさより歸る 濁酒 正岡子規
炉開やいくさなかりし日のごとく 加藤知世子
無花果の中はいくさの火種かな 瀧 春樹
焼鳥や友とし古りぬいくさより 森澄雄
爽涼の君はいくさを如何に生きし 赤城さかえ
王城やいくさのあとの枯柳 枯柳 正岡子規
生きてゐる限りいくさは梅雨に来る 玉城一香
白粥に梅干埋めいくさなし 赤尾恵以
白鳳仏にいくさ経て逢ふ風光る 久保田月鈴子
百姓はいくさに敗けてキヤベツ剪り 萩原麦草 麦嵐
皇軍(みいくさ)や砕けし玉をねぶる馬 攝津幸彦
秋風も戦(いくさ)もひょいと起こるもの 高澤良一 随笑
秋風やいくさのはての手風琴 磯貝碧蹄館 握手
秋風やいくさの夢も二十年 秋風 正岡子規
穂芒の乱れ火牛のいくさ跡 吉澤卯一
空しろくくもりていくさ冬は来ぬ 長谷川素逝 砲車
窓から覗く飛べない鳥の勝いくさ 宇多喜代子
終の雪いくさの日々は夢の夢 川崎展宏
老梅はいくさの光り空へ返す 萩原麦草 麦嵐
聖夜更く地はいくさ無き灯にあふれ 松本幹雄
脚気患者雨季のいくさを敢てゆく 長谷川素逝 砲車
船虫やいくさの如き身拵へ 今泉貞鳳
芋嵐いくさ知らぬ子脛長く 林 乃婦子
花いくさ実の無き恋の匍匐前進 仁平勝 花盗人
芽吹きけりいくさ知る木と知らぬ木と 千田百里
草笛や流れ急なるいくさ跡 脇坂啓子
菊活けて白しみいくさの寒さおもふ 渡邊水巴 富士
菖蒲湯や病夫の腕のいくさ傷 斉藤富美
落雷やいくさに捨てし身なれども 赤尾恵以
虫眼鏡澄み切る皇軍(すめらいくさ)にて 攝津幸彦
蛇走りいくさの地鳴りふつと消ゆ 熊谷愛子
螳螂や蟹のいくさにも參りあはず 蟷螂 正岡子規
蟷螂も戦(いくさ)もキッと身構へて 高澤良一 随笑
血に染むやいくさのあとのこけ案山子 案山子 正岡子規
行く春や女載せたるいくさ船 行く春 正岡子規
躑躅真赤にいくさごころの消え残る 小出秋光
車前草の花茎でいくさはじめたり 山井東夫
遠いいくさの火薬のにほひ焼芋は 田島たつほ
野火熾ん鬨興すいくさ亡き後も(小机城址) 河野南畦 『焼灼後』
金州にいくさせし人よ畠打つ 畑打 正岡子規
鉄を截るいくさに行けずひたむきに截る 三谷昭 獣身
鉄骨やいくさの後の夏の天 榎本冬一郎 眼光
防風を探して海のいくさ聞ゆ 萩原麦草 麦嵐
降る雪やいくさのとほき松の幹 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
除夜の鐘撞かずいくさは進みをり 小原菁々子
陽炎の奥に水澄むいくさの野 玉城一香
雁発つやいくさ神には列正し 鳥居美智子
雨さぶく落穂ひろひのいくさ思ふ 金尾梅の門 古志の歌
雪眼して津軽じよつぱりいくさ歌 山之内政夫
雪虫や夫生涯のいくさ傷 石川淑子
風あつくいくさのにはの夜を吹く 長谷川素逝 砲車
馬酔木野の斑雪いくさを想はざる(義弟に) 『定本石橋秀野句文集』
駒繋ぐいくさのあとの柳かな 柳 正岡子規
魂棚やいくさを語る人二人 魂棚 正岡子規
魂棚やいくさを語る後家二人 魂棚 正岡子規
黄砂降る華北のいくさ夢にみる 筒木真一
黍畑のざわわざわわといくさ唄 山田みづえ
●戦火
あらたまの玉の中なる戦火かな 高野ムツオ
こちら日本戦火に弱し春の月 三橋敏雄
ちやんちやんこ戦火潜りし母のもの 扇原よし子
ふるさとや柿は戦火のいろに熟れ 楠本憲吉
ビールあげよ市民に燃える遠い戦火 三谷昭 獣身
冬雲に機音何処かしのび寄る戦火 山岡敬典
初夢をわすれ戦火をわすれざる 仙田洋子 雲は王冠
名ばかりの戦火の佛彼岸来る 猿山木魂
夕焼のはての戦火湯槽に砂たまり 友岡子郷 遠方
少女の脚へ銅線からまり遠い戦火 安井浩司
年のネオン遠目夜空は戦火に似る 岩田昌寿 地の塩
幾戦火越えて冬帝二本杉 菊本昌子
戦火つづく海面張力の亀甲墓 野ざらし延男
戦火なき世のとはにあれ初詣 上田正久日
戦火に燃えし川面や雛流る 田口君枝
戦火ふりかぶりし男蓮を剪る 大頭美代子
戦火ボスニアいつそ海市の都なれ 仙田洋子 雲は王冠
排気の火涼し戦火を忘れねど 殿村莵絲子 牡 丹
教会に戦火の跡やリラにほふ 梅田文子
早梅の白光色の戦火あり 対馬康子 吾亦紅
毛糸編む妻に戦火の遠けれど 岸風三楼
潮騒や戦火の色の花デイゴ 十時千恵子(青嶺)
白息の闇のつづきに戦火あり 宮田カイ子
箱庭に戦火逃れし山河あり 河口仁志「沖歳時記」
花柘榴戦火経て来し古井かな 玉城一香「地蟲」
螢火に亡きは老いずよ戦火杳し 文挟夫佐恵 雨 月
街をゆくとほい戦火に手をあげて 三谷昭
街を行く遠い戦火に手をあげて 三谷昭 獣身
街灯とイヴの灯競ひ遠い戦火 大高弘達
表札を洗ふみどりの戦火かな 攝津幸彦
身の内に戦火の記憶寒昴 植村 文
遠野火や戦火たえざる水の星 関 一草
長身の戦火を知りて焼藷屋 依光陽子
雪沁むや戦火にもろき墓ばかり 中島斌雄
青さ残るバナナ手にせり戦火近し 村沢夏風
●兵
いちれつの鹿いちれつの兵に会う 阿部完市 にもつは絵馬
いまぞタラップを踏む兵の何の風呂敷包ぞ 栗林一石路
おぼろめく月よ兵らに妻子あり 長谷川素逝(1907-46)
お国の忌兵たりしもの減りにけり 攝津幸彦 未刊句集
かげろふや丘に群がる兵の霊 石原八束(1919-98)
かなかなや二文字のみの兵の遺書 佐藤 博重
かなかなや陰画となりし兵の刻 倉橋羊村
かの日より敗兵たりき夏蓬 木山白洋
かまつかや油塗れの整備兵 皆川白陀
きてもみよ甚兵(じんべ)が羽織花衣 松尾芭蕉
きてもみよ甚兵が羽織花衣 芭蕉
きらめく星は兵の相手にされぬ 藤後左右
ここで泣く背中の子を汗ばんであやしている兵 橋本夢道 無禮なる妻抄
すつきりと水仙に佇つ戦傷兵 萩原麦草 麦嵐
ただ寒い川が傷兵の眼に奔る 三谷昭 獣身
つち風のあらしもくもくと兵らゆく 長谷川素逝 砲車
つばくらや浪には若き空の兵 林原耒井 蜩
てんと虫一兵われの死なざりし 安住敦「古暦」
どう見ても雑兵ばかり蝌蚪の群 江田君子
どくだみの花咲き傷兵日々還る 岸風三樓
なつかしや雪の電車の近衛兵 飯田蛇笏 山廬集
ひゝらぎが咲いても兵は帰り来ず 福島小蕾
へらおおばこ兵は墓標も整列し 榮水朝夫
まぼろしの兵馬か山の霞飛ぶ 高井北杜
むかし兵たりし身を伏せ野に遊ぶ 辻田克巳
もどらざる蟻の一兵ありしかな 手塚七木
もみづれる楓のいろは兵火のいろ 高澤良一 宿好
よき兵はよく殺す兵言はねども 筑紫磐井 花鳥諷詠
わが馬を埋むと兵ら枯野掘る 素逝
アメリカの一兵のどか基地の雲雀 阿部完市 無帽
カンナ立ち廃兵いまだ巷にあり 長谷川かな女 花寂び
ゲリラ兵この万緑にひそむとか 春田ひろ史
コスモスの咲きて旧露の兵舎あり 五十嵐播水 埠頭
コスモスや旧兵舎より女学生 井上雪
ゴム青く兵は庭の柿を夢む 藤後左右
タンポポに転がっていた少年兵 山崎春海
バナナむく吾れ台湾に兵たりし 鈴木栄一
ペン描きの冬木のなかの狙撃兵 滝口佳代
マスクせる兵の感涙きらびやか 飯田蛇笏 春蘭
マラリヤの兵の遺言聞きもして 江本如山
リングの血群衆の中の兵喚く 三谷昭 獣身
一位の実真赤ぞ義仲挙兵の地 江崎成則
一兵にそゝぐまなざし雪の鵙 齋藤玄 飛雪
一兵の師が見してんと虫なり愛す 鈴木 榮子
一兵の遺影は二十歳十三夜 鈴木信行
一兵もなき極月の城の奥 西村逸朗
一管の笛を携へ除隊兵 松村蒼石 寒鶯抄
万才師しはぶき傷兵を笑はする 岸風三楼 往来
三千の兵たてこもる若葉哉 若葉 正岡子規
三角兵舎出でしそびらに秋の声 古賀まり子
事変映画兵の子父を見しと言へり 細谷源二 鐵
二月うらゝ傷兵鴎より白し 渡邊水巴 富士
亡き兵の妻の名負ふも雁の頃 馬場移公子
人ちらほら練兵場の初日かな 会津八一
人を恋ひ屯田兵は行進す 攝津幸彦 未刊句集
人灼けて行けど兵舎の趾地響かず 宮坂静生 青胡桃
仏桑花兵の骨いま星の砂 白鳥峻(寒雷)
信濃柿赫し敗兵の日を思ふ 角川源義 『口ダンの首』
俺に似た少年兵が熱砂ゆく 五島高資
傷兵と子に噴泉の水は涸れ 岸風三楼 往来
傷兵と母たり枯れし木の根もと 岸風三楼 往来
傷兵と犬居てしろし落葉昏る 細谷源二 鐵
傷兵にヒマラヤ杉の天さむざむ 白虹
傷兵に今日のはじまる東風が吹く 竹下しづの女句文集 昭和十四年
傷兵に喜捨す二月の戎橋 宮武寒々 朱卓
傷兵に機関銃の音の夜は鳴る 横山白虹
傷兵に蠅つきまとう銃を叉(く)め 鈴木六林男 悪霊
傷兵の冬日を犬がかきみだす 横山白虹
傷兵の妻らし子負ひ秋の雨 高濱年尾 年尾句集
傷兵の残った片手とならぶ平和 石川日出子
傷兵の生きて目に見る青蜜柑 加藤秋邨 寒雷
傷兵の白ければ梅いや白く 竹下しづの女句文集 昭和十四年
傷兵の義肢が跼める荒莚 三谷昭 獣身
傷兵の食膳にふれ温室の花 横山白虹
傷兵は象に笑はず冬陽に去る 文挟夫佐恵 黄 瀬
傷兵や北風吹く門に母を送る 岸風三楼 往来
僧籍の征兵泊めぬ菊の秋 宮武寒々 朱卓
克明に撃たるる兵ら麦の秋 磯貝碧蹄館
入営や古兵笑ひつ雪掻けり 中島月笠 月笠句集
八月は日干しの兵のよくならぶ 筑紫磐井 婆伽梵
兵(つわもの)の幾人かくす萱一本 宇多喜代子
兵たりし夫の一世や鳥雲に 本郷和子
兵たりし父外套を残しけり 榎本好宏
兵として死なず喜寿越ゆ終戦日 松本夜詩夫
兵として生きし日々あり敬老日 小川儀一
兵ともに大將瓜をわかたれし 蕪村遺稿 夏
兵と馬ゆきし記憶のさるすべり見ている 赤堀碧露
兵なりし脚は老いずと富士詣 柏木久枝
兵のひかへてふたり子の日哉 榎本其角
兵の児を炉にだく霜夜いかにせん 飯田蛇笏 春蘭
兵の列車西日の方に既に消ゆ 文挟夫佐恵 黄 瀬
兵の墓までの道なる踊子草 宮田富昭
兵の墓将軍の墓つつじ咲く 大久保 明
兵の墓新道拒む茅花冷え 中戸川朝人 星辰
兵の墓標幾万芥子にうごく蜘蛛 小池文子 巴里蕭条
兵の墓死後も隊伍を組み寒し 山崎ひさを
兵の声こもりてずつと梅雨の壕 玉城一香
兵の妻たくたく歩みみごもりたり 細谷源二 鐵
兵の子の凧天にあり日落つるに 細谷源二 鐵
兵の子の凧蒼天へ糸張れり 細谷源二 鐵
兵の日の汗の革帯また臭し 榎本冬一郎 眼光
兵の死に砂一握を奉る 宇多喜代子
兵の矢先に似たり唐がらし 松岡青蘿
兵の赤黄枯野遠別糞し行く 齋藤玄 飛雪
兵の遺影鰯に黒き七つ星 村山安子
兵の遺書簡潔に松色変へず 工藤義夫
兵の遺言簡潔に松色変へず 工藤義夫
兵の頃偲ぶ外泊春の風 仲安俊雄 『冬耕』
兵の顔あはれ稚し汗拭くなど 加藤楸邨
兵の馬たりし顔上げ花野行 殿村莵絲子 遠い橋
兵も来て一樹の蝉を見上げをり 遠藤梧逸
兵をして盲の馬をひかしむる 細谷源二 鐵
兵を送る松明あらはるゝ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
兵五千夏野を通る旦かな 野田別天楼
兵俑となりても序列雲の峰 鈴木やす江
兵俑よ少し休めと月のこゑ 和田知子
兵児歌の雨雲呼ぶや傘篝 米谷静二
兵出征づたづた鉄を担ひゐたり 細谷源二 鐵
兵出征機械断層の辺に汗す 細谷源二 鐵
兵列を見送る浴衣斜めにし 高橋馬相 秋山越
兵征けりしろき峰雲ゆるぎなく 藤木清子
兵散つてたうもろこしの花浄土 金箱戈止夫
兵服も綿入れ北緯四十度 品川鈴子
兵歴の抜けぬ敬礼泰山木 増田とみゑ
兵泊めて大演習は明日となる 松藤夏山 夏山句集
兵泊めて海荘の浴室霧罩むる 宮武寒々 朱卓
兵溢れて日除の店の二軒かな 楠目橙黄子 橙圃
兵火以後は衰へし寺月見草 大峯あきら
兵火八度かうむる寺にして紅葉 高澤良一 宿好
兵燹に杉は残りて山桜 山桜 正岡子規
兵燹の煙をかぶる牡丹かな 比叡 野村泊月
兵燹の礎石露けし国分寺 深見けん二 日月
兵燹を逃れて山の月の庵 高浜虚子
兵用ふへき新涼の茶漬かな 尾崎紅葉
兵白き歯を持ち愛し栗を割る 文挟夫佐恵 黄 瀬
兵稚く苺つぶせり霧霽れよ 沢木欣一
兵舎のあと枯草圧して雪残る 桜井博道 海上
兵舎の黒人バナナ争う春の午後 島津 亮
兵舎跡太梁低く蜈蚣棲む 宮坂静生 青胡桃
兵舎長屋夏草に燈ともし出航真際の船の如し 橋本夢道 無礼なる妻
兵船の笛吹きやみぬ朧月 朧月 正岡子規
兵送り月しんしんと草に冷ゆ 河合凱夫 藤の実
兵送る旗に茎上ぐ花蓮 長谷川かな女 雨 月
兵送る楽器寒潮にうちたゝかれ 岸風三楼 往来
兵通るとひきずり寄せぬ籾莚 西山泊雲 泊雲句集
兵馬俑しずしず梨のしずくかな 中北綾子
兵馬俑に取り囲まるる秋思かな 塩田博久
兵馬俑並びて寒き叫びあり(西安にて二句) 石原八束 『幻生花』
兵馬俑八千のこゑ蝉山河 鍵和田[ゆう]子「光陰」
兵馬俑八千起たす寒の雷 久保千鶴子
兵馬俑六千の黙冷じや 三宅美樹
兵馬俑帰燕の空のうらがへり 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
兵馬俑棋峙(きぢ)して寒き地を走る 石原八束 『幻生花』
兵馬俑眼に追ふ真夏の夢に生き 河野南畦 『元禄の夢』
兵馬俑軍団動き出す良夜 文挟夫佐恵
兵馬俑軍団無言春寒し 磯 直道
冬木みな屯田兵の型で立つ 源鬼彦
冬枯るる目は南軍の兵の母 対馬康子 吾亦紅
冬薔薇異国に散りし兵の墓 和田貞子
冬鳩の物見の兵のごとく翔つ 平井照敏 天上大風
冴え返る長子を抱ける兵の遺影 島村久枝
凍る夜のらふそくを土間に兵ねまる 長谷川素逝 砲車
凩やいとまたまはる近衛兵 凩 正岡子規
凩や練兵場の砂けむり 寺田寅彦
分宿の兵ら征く寒気晴れやかなり 渡邊水巴 富士
初冬の門広し兵の執る箒 楠目橙黄子 橙圃
初夢や兵たりし日は遠く近し 古市狗之
初夢や故国を恋ひし兵のころ 三浦誠子
初能や帰還兵大五郎笛の座に 佐野青陽人 天の川
北支出兵あわたゞし松葉牡丹咲く 内藤吐天
南溟に兵たりし日や棕梠の花 飯田よしお
占領兵に奪はれざりし萩紅し 殿村莵絲子 花寂び 以後
友兵となれり友の子と映画見に 細谷源二 鐵
口ごもりつつしんがりの少年兵 桑原三郎 花表
向日葵や還りきたりし兵の影 福島壺春
君が代やまだ泳ぎつかない兵がいる 暉峻康瑞
哨兵と傷兵が醒め野分の夜 鈴木六林男 荒天
哨兵に誰何せられぬ稲光 寺田寅彦
哨兵の後姿を稲光 寺田寅彦
唐黍や兵を伏せたる気合あり 夏目漱石 明治三十一年
喇叭水仙黄なり少年兵の墓 山崎ひさを
団栗や階級彫られ兵の墓 竹下流彩
国境は涼し兵舎の置ランプ 田村了咲
国府跡蝗に兵の貌みたり 櫻井菜緒 『帰雁』
地下鉄を兵と出づれば片かげり 高橋馬相 秋山越
埼玉の畑打つ昔近衛兵 川崎展宏
墓も発汗杖つききたる兵の母 磯貝碧蹄館
墓群立つ兵も尼前も雲の峯 古舘曹人 能登の蛙
夏の海水兵ひとり紛失す 渡辺白泉(1913-69)
夏祭戊辰の役の兵揃ふ 荒井英子
夏草や兵どもが夢のあと 芭蕉 (奥州高館にて)
夏草や兵舎の跡は空堀に 大宮良夫
夏草や寮歌をもちて兵送る 岸風三楼 往来
夏草や駄菓子を欲しと兵若き 松村蒼石 露
夏蓬河原へ続く兵舎跡 宮坂静生 青胡桃
夏赤き凧あげ召集兵の子なり 細谷源二 鐵
夕焼けの兵舎へのへのもへ字残る 宮坂静生 青胡桃
夕焼は羅刹の兵を天におく 石原八束 藍微塵
夕雉子すずし兵らの飯も了へぬ 下村槐太 光背
外套やバッキンガムの兵不動 野村通恵
多毛の廃兵遠くで激しくつまづく驢馬 赤尾兜子
大兵(たいひよう)の廿(はた)チあまりや更衣 與謝蕪村
大兵のかり寝あはれむ蒲団哉 與謝蕪村
大兵の廿チあまりや更衣 蕪村 夏之部
大兵の野山に満つる霞かな 霞 正岡子規
大兵を送り来し貨車灼けてならぶ 長谷川素逝 砲車
大夏木斎き永禄兵燹碑 西本一都 景色
大学に兵舎残れり冬の鵙 丹羽登代
大砲をみがきて午を兵ふたりスイトピーかそかにゆれてけるかな 加藤克巳
大蝙蝠さかり兵らに恋なき夜々 藤後左右
天仰ぐ撃たれし兵も冬の木も 野中亮介
天冥く傷兵草を見ず歩く 三谷昭 獣身
女優来て唄へり傷兵雲を見る 岸風三楼 往来
女兵(にゅいぴん)居り空が野菜の匂いして 阿部完市 絵本の空
女生徒の花傷兵の辺に赤き 細谷源二 鐵
如何なる日白衣傷兵枯野を来る 相馬遷子 山国
如月の白日兵を征かしむる 萩原麦草 麦嵐
妻つれて兵曹長や花ぐもり 高野素十
子にとほく寒服の兵焼かれたり 細谷源二 鐵
学徒兵入り来て汗の匂ふなり 文挟夫佐恵 黄 瀬
守り札も肌身にひとりの兵が真白の銃と何を思う 橋本夢道 無禮なる妻抄
宝石鋪出づ駐兵に雪雫 宮武寒々 朱卓
家づとの若布はあらず兵と伍す 林原耒井 蜩
寄鍋や兵の話に尽くる齢 杉本寛
寒夜二時重傷兵の目あいてをる 長谷川素逝
寒林のゆらぐと見しや兵の列 岩田昌寿 地の塩
寒灯下手術にゆきし兵の床 横山白虹
寒風や隊伍みじかき帰還兵 渡邊水巴 富士
封切って兵のにほひを知る時雨 福島小蕾
小春富士ひと日かがやく兵と父に 松村蒼石 寒鶯抄
小豆粥迫撃砲兵たりし夫 児玉悦子
少年兵いちじく一本偽りぬ 兼近久子
少年兵を氷江に追ひ刺し落す 細谷源二 鐵
少年兵追ひつめられてパンツ脱ぐ 山田耕司
屯田兵絵巻冷ゆ手をさすりつつ 高澤良一 ぱらりとせ
工場野球外野手兵となりて戻らず 細谷源二 鐵
布袋草氾濫国境兵歩く 松山足羽
帰還兵なり雪嶺の下に逢ふ 文挾夫佐恵
帰還兵忘れられ夜汽車の煙におう 古沢太穂 古沢太穂句集
帰還兵病めり熟れゐる山の麦 臼田亞浪 定本亜浪句集
帰還兵被る雨や百合長けぬ 齋藤玄 飛雪
帽とるや眉目涼しき飛行兵 皆川白陀
帽とれば頭青き兵と汗の馬 京極杞陽 くくたち下巻
干草に寝て一兵のよみがえる 鈴木渓子
座右の書兵火免れ読始 山口青邨
座敷まで正月の陽差兵の写真 川崎展宏
廃兵と聖樹棄てられ街光る 田川飛旅子 『山法師』
弟の臨終のあはれ伝へ得る一人の兵もつひに還らず 窪田章一郎
応召兵夏の朝日に粛然と 長谷川かな女 雨 月
応召兵稲穂たわめて行きにけり 萩原麦草 麦嵐
情事話頭に兵塵想ふこの柳 河東碧梧桐
戦傷兵うつる卓鈴夏逝けり 宮武寒々 朱卓
戦傷兵外套の腕垂らしたり 加藤楸邨
戦傷兵征けり薄暑の映画街 宮武寒々 朱卓
折り目正し 花婿はスコットランド兵 伊丹公子 アーギライト
抜くは長井兵助の太刀春の風 夏目漱石 明治三十年
挙兵あり遁走ありぬ時鳥 大峯あきら「牡丹」
捕虫網一兵雲を踏み外す 磯貝碧蹄館
捨案山子雑兵倒れ伏すに似て 水原秋櫻子
援兵の沙汰も聞えず雲の峯 寺田寅彦
敗兵となりたる汗を掌で拭ふ 塩田丸男
敦盛塚より雑兵の蟻の列 前山松花
数の子や歯の兵の生残り 川崎展宏
整列兵のように 黄ばんで 開拓史書 伊丹公子 パースの秋
新兵の欠礼街に獅子舞へり 萩原麦草 麦嵐
新兵の靴引するや春の塵 尾崎紅葉
日に向かふ喇叭水仙兵の墓 大野津弥
日曜の巷の兵に日脚伸ぶ 岡崎莉花女
日焼兵の敬礼の肘ドンと我へ 香西照雄 素心
日盛の笑顔つぎ~兵征きぬ 佐野青陽人 天の川
旧兵舎の酒保の辺りやカンナ燃え 二神節子 『砥部』
早苗の上農兵節の富士現るる 高澤良一 さざなみやつこ
星さゆる遠き夜空を染む兵火 長谷川素逝 砲車
星今宵わかき博士は兵に召され 久保田万太郎 草の丈
春の夢草むらにまだ狙撃兵 皆吉司
春の雲睨めつけて白衣短き兵 渡邊水巴 富士
春塵にまみれて兵馬俑五千 鈴木詮子
春昼の第一病棟兵舎めく 大沢玲子
晴天を喪くすベトナム兵として 対馬康子
月かけて砦築くや兵(つはもの)等 黒柳召波 春泥句集
月寒し戦装の兵等との別れ 石塚友二 方寸虚実
月涼し兵火山門に迫りしと 大峯あきら 鳥道
月落ちぬ傷兵いのち終りしとき 長谷川素逝 砲車
朝寒の市電兵馬と別れたり 石田波郷
朝焼へ朝焼へ兵の貨車退る 中島斌雄
朝霧や兵船に太鼓鳴る 蘇山人俳句集 羅蘇山人
木枯や葡萄の丘の兵たりき 中村圭作
末黒野の起伏に兵の影走る 蛇嶋知誠
村は新緑戸籍に死にし兵帰る 橋本夢道 無礼なる妻
松籟や三角兵舎に我が暗し 久保純夫 熊野集
松葉杖傷兵銃のごとく擬す 横山白虹
枯蟷螂老兵のごと立ち上がる 岡部六弥太
柚子を提げ傷兵とほき北へ去る 中島斌男
柿の花一兵たりし父の遺書 今田清乃
桃尖る毛むくじやらなる兵の手に 田川飛旅子 花文字
桜前線追手の兵の皆若き 仁平勝 花盗人
桜貝あまたの兵の帰らざる 岸原清行
梅林や兵来る径を犬も来る 金子せん女
棒稲架の兵めきし平泉 高野朝
楡の花こぼるる門を兵掃けり 田村了咲
榛咲くや平民と刻む兵の墓 水原春郎
歯の痛む帰還兵 木いちごが熟れたから 星永文夫
死に場所に士官と兵の差がありて掘り分けられし暗き地下濠 古屋正作
水からくり兵住みし街昼さびれ 宮坂静生 青胡桃
氷鳴る逃亡兵のごとく鳴る 山地春眠子
汁粉すゝる新兵に花過ぎにけり 渡辺水巴 白日
汐干狩少年兵は還らざり 甚上澤美
汗は目に傷兵の銃と二つ負ひ 長谷川素逝 砲車
沓穿きて大兵ぞろひ修二会僧 森田峠 避暑散歩
沼の道むかし枯野の兵舎おもふ 瀧春一 菜園
泥濘に児を負ひ除隊兵その妻 伊丹三樹彦
浜木綿を兵発つ駅に見たりけり 沢木欣一 雪白
海が逃げてゆくと兵はつぶやく 藤後左右
海蒼くしぐれ敗戦兵還る 石原舟月
海辺行く傷兵ら士官椿持ちぬ 渡邊水巴 富士
火の彩の落葉よ夫は兵のまま 静間まさ恵
無名なり胡桃を割って兵となる 対馬康子 愛国
父にけいれいするは桃山時代の兵 阿部完市 春日朝歌
片蔭に銃持つ兵のゐてロシヤ 慶伊那子(風花)
特務兵バケツを提げて戦死せり 日野草城
狙撃兵のふところふかく百日紅 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
生きしなの地球に衛生兵たりき 攝津幸彦 鹿々集
生き延びし学徒兵われ敗戦忌 木暮剛平
生栗ひとつ昔日の兵眼をひらき 桜井博道 海上
生誕に空しき砲を撃つ兵よ春泥に膝つきてつつまし 安永蕗子
田村草兵火に耐へし堂ひとつ 大島民郎
畑打つや屯田兵の裔いまも 東 天紅
白き衣の兵ら若水担ひ来し 萩原麦草 麦嵐
皇国(すめぐに)のをみなの秋や兵倦まず 攝津幸彦
皇居拝して去る帰還兵日短き 渡邊水巴 富士
盲導犬湖畔の秋を兵に添ふ 宮武寒々 朱卓
短夜の奇兵は谿をわたりけり 会津八一
短夜を酔ひて初老の兵の唄 佐藤正治 『山川草木』
砲積める列車の兵の夫なりき 文挟夫佐恵 黄 瀬
碑に兵の名ばかり葱坊主 西本一都
祭供櫃に兵も列び来冬の芝 長谷川かな女 雨 月
福寿草掘るとて兵ら野をさがす 長谷川素逝 砲車
秋しろき戦傷兵と窓にわかれ 細谷源二 鐵
秋の夜に江帥兵を談じけり 黒柳召波 春泥句集
秋の蝿方向音痴の逃亡兵 小山英四郎
秋日透明廃兵の衣は誰が洗ふ 磯貝碧蹄館 握手
秋晴や黍の葉わけて帰郷兵 大橋櫻坡子 雨月
秋立つと視線はるかな兵馬俑 矢野緑詩
秋蚕飼ふものやはらぎを兵還る 細見綾子 花寂び
秋風や皆子を負へる兵の妻 長谷川かな女
秋風や追撃兵は疲れたり 片山桃史
種芋や兵火のあとの古都の畠 飯田蛇笏
空澄めり兵舎の桜あおむまで 三谷昭 獣身
竜胆におぼるる兵のをさな顔 飯田蛇笏 春蘭
簪屋に球磨の兵をり戎講 宮武寒々 朱卓
紀元節神孫兵をみそなはす 雪人
紅葉し月下に踊る姉と兵 志波響太郎
緑蔭にまどろむ兵の皆仏 鈴鹿野風呂 浜木綿
練兵のあとかたもなく麦畑 中川宋淵 命篇
繃帯を巻かれ巨大な兵となる 渡辺白泉(1913-69)
繭玉や傷兵慰問の人派手に 岸風三楼 往来
羊煮て兵を労ふ霜夜かな 黒柳召波 春泥句集
老人のうしろに霧の少年兵 則行範子
臓腑まで兵の声満つ紅葉塚 小出治重
花の夜や異国の兵と指睦び 鈴木しづ子
花吹雪 兵歴俳歴無位無勲 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
花多き雨期の館並び兵着きぬ 藤後左右
花換の祭の中の渡満兵 本田一杉
若布干して空の防人兵舎かな 小原菁々子
若芝や墓に兵の名祖国の名 山崎ひさを
茫茫と何処へ部隊の中に眼をしばたたいたひとりの兵 橋本夢道 無禮なる妻抄
草の花練兵場は荒れにけり 草の花 正岡子規
草餅や大兵君が搗きし沢 亀井糸游
菊一つ摘みし子兵に送るといふ 渡邊水巴 富士
華客おほ方兵等壮んに心天 石塚友二 方寸虚実
落梅の打身の痣や露兵墓地 平井さち子 鷹日和
蔦若葉そびらに洋兵開祖の碑 海老原真琴
薄物の肩透きゐるが帰還兵 加藤知世子
薊挿し兵たくましく午睡せり 横山白虹
薫風や歩み出すかに兵馬俑 鎌田八重子
蘆の芽に兵船渦をのこし去る 佐野良太 樫
虻が来て老兵が来て墓笑ふ 熊谷愛子
蚊遣草陸兵と刈りわかちけり 皆川白陀
蝗炒るむかし兵馬を征かしめて 糸 大八
蝿も飛ばで屯田兵舎の厨跡 北野民夫
蝿打つて熱出す兵となりしはや 石田波郷
蟋蟀や兵四五人を泊めしこと 石原京子
蟻の兵まじりて蟻の輜重兵 京極杞陽
蟻地獄たしかに兵のこゑ聞けり 中沢匡司
行く春をひそかに兵や集むらんー京に流行る小唄おかしき 会津八一
行く秋や遠き目をして兵馬俑 樋口比佐夫
観兵の御儀の予行秋草原 石塚友二 方寸虚実
語りゐし望に照らされ兵ねむる 相馬遷子 山国
豆を撒く声兵に似て兵の父 萩原麦草 麦嵐
赤げら追う兵歴のなき父ふうわり 角田重明
足利の兵が新田に降參し 正岡子規
踏めば鳴く屯田兵の雪の道 鈴木一明
軍港の兵の愁ひに深雪晴れ 飯田蛇笏 霊芝
軍艦の迷路 鏡に兵の背後がある 伊丹公子 陶器の天使
農兵のこと奏しけり県召 安斎桜[カイ]子
農兵の演習の地に籾殻飛ぶ 小林道子 『下萌』
迂回兵の出没柿の暮色かな 久米正雄 返り花
近衛兵の帽子ぐらつと虻払ふ 須川洋子
追撃兵向日葵の影を越え斃れ 鈴木六林男
連絡兵雉下げて来る分哨地 椎橋清翠
進みけり白柄の切貝風呂吹の兵 上島鬼貫
運ぶはベツドか黒人兵の舌暑し 岩田昌寿 地の塩
遠こぶし傷兵の白さもう絶えて 平井さち子 完流
遠浅に兵船や夏の月 蕪村
還り来し兵にその夜は秋祭 本多草明
野遊びの皆伏し彼等兵たりき 西東三鬼(1900-62)
金魚糶る兵顔(つはものがほ)の男どち 高澤良一 寒暑
鈴蘭の卓を外人兵が占む 殿村莵絲子
銃剣の州兵屯す出水町 保田白帆子
鋼より昏れ一兵の鯣かな 攝津幸彦
鎮臺に兵と櫻の満つる翳 筑紫磐井 婆伽梵
長屋夏大砲をうつ兵出たり 細谷源二 鐵
長短の兵の痩身秋風裡 鈴木六林男 荒天
閉づるなき眼冷まじ兵馬俑 山田弘子 こぶし坂
闇ふかく兵どどと著きどどとつく 片山桃史
除虫菊ひたすらに咲き兵の墓 工藤厚子「暖鳥句集」
除隊兵となりしばかりが通りゐる 右城暮石 声と声
除隊兵一夜明けた家の畑を見 梅林句屑 喜谷六花
除隊兵両手の提げた角な包み 梅林句屑 喜谷六花
陸兵の立ち去るに蚊遣踏まれけり 皆川白陀
陽の枯野仮睡の中に傷兵佇つ 大井雅人 龍岡村
陽の翳るたびに蜩兵の墓 川崎展宏
陽影の兵は女にでも會つてる様だ 藤後左右
陽炎もゆる練兵場をよぎりけり 寺田寅彦
隊伍の兵ふりむきざまの記録映画 三橋敏雄 まぼろしの鱶
雑兵のいろに蓑虫関が原 北見さとる
雑兵のごとく藁塚立つ関ケ原 池田秀水
雑兵のごとく駆け出すわらじ虫 高澤良一 寒暑
雑兵のごとし吉野のさくらん坊 徳岡蓼花
雑兵の如く飯食ふ冬泉 皆川白陀
雑兵はみんな蓬になっている 水島純一邯
雑草は城の雑兵雷に 古舘曹人 砂の音
雑踏に風見失う狙撃兵 岸本マチ子
雨マントばさと兵ゆき夏落葉 平井さち子 紅き栞
雪上やわづかにねむる兵の褐 齋藤玄 飛雪
雪原に屯田兵舎と碑が一本 瀬野美和子 『毛馬堤』
雪尖るレイテに果てし兵の墓 品川鈴子
雪山を背に立つ国境歩哨兵 深田久彌 九山句集
雪風や砲担く兵ぞ砲担けり 齋藤玄 飛雪
雲雲を逐ふ枯すすき兵征かしむ 太田鴻村 穂国
霜枯の練兵場や町はづれ 寺田寅彦
霧の灯の街底にして兵酔へり 中島斌雄
霧間よりあらおびたゞしの兵船や 霧 正岡子規
霾や立ちあがりくる兵馬俑 上阪幸恵
霾るや兵馬の想ひ遠くなりぬ 小林康治 『虚實』
青天を喪くすベトナム兵として 対馬康子 愛国
青田子の健やかなりし兵と育つ 筑紫磐井 婆伽梵
青田径送られ稚き兵たりける 岸風三楼 往来
青葉木莵兵らのねむり浅からぬ 下村槐太 光背
青蔦や騎馬かつかつと警邏兵 大津希水
靴磨く兵が空見たり空が曇りゐたり シヤツと雑草 栗林一石路
風涼し細格子より農兵節 長田良輔
風鈴の短兵急に鳴ることよ 行方克己 昆虫記
馬の腹あたたかかりし兵の記憶 保坂伸秋
馬ひいて兵たりし街冬ざるる(沢木欣一と金沢へ) 角川源義 『冬の虹』
馬上の兵銃口を寒き民に向け 田村俊夫
馬兵に終戦の日は暑かりし 角川源義 『西行の日』
馬立てし練兵場の雪間かな 小栗風葉
駐兵と瓶の蝮と交歓す 宮武寒々 朱卓
髯のある雑兵どもや冬の陣 子規句集 虚子・碧梧桐選
鳥曇とはの乾きに兵馬俑 菅田静歩 『大花野』
鳥雲になべて西向く兵馬俑 石野冬青
鳥雲に兵舎は門を残すのみ 岩崎照子
鶏頭を植えしところが兵の墓 宇多喜代子 象
麥の穂が兵と生まるる八路軍 筑紫磐井 婆伽梵
黄の土に黄の兵にぢむ雨がふる 片山桃史
黄沙降る国へゆく日は兵として 赤尾兜子
鼻さきにたんぽぽ むかし 匍匐の兵 伊丹三樹彦 樹冠
●兵隊
いが栗踏みつぶす兵隊靴の空が青い 人間を彫る 大橋裸木
この島に薺の花が咲いている 兵隊の墓標と同じ高さで 中野嘉一
とうもろこし焼くと兵隊がどんどん出てくる 鈴木里佳
スズメノテツパウ担ぐ兵隊見たこと無し 有澤[かりん]
五円着いたと兵隊の弟から寒いたよりが来た 橋本夢道 無禮なる妻抄
兵隊のさゝやきの空に星は光る 藤後左右
兵隊の時この顔でこいつはずるい奴だと軍曹にいわれた 橋本夢道 無礼なる妻
兵隊の行列白し木下闇 木下闇 正岡子規
兵隊の街に雪ふり手紙くる 片山桃史 北方兵團
兵隊の街に風ふき兵酔へり 片山桃史 北方兵團
兵隊の誰もが持つ遥かなるまなざし 藤後左右(1908-91)
兵隊は國の花なりけふの春 初春 正岡子規
兵隊も海月の様な傘が慾しい 藤後左右
刈田の足あともひえびえと兵隊にとられてゆく年 栗林一石路
妻よたつた十日余りの兵隊にきた烈げしい俺の性慾が銃口を磨いている 橋本夢道 無禮なる妻抄
島からも兵隊送る月夜の島の村長さん 内島北朗
島の虫泣くな兵隊は泣かないぞ 藤後左右
島の虫鳴けば兵隊も泣きたいよ 藤後左右
手拭を腰に兵隊となる村の青年 シヤツと雑草 栗林一石路
本堂に兵隊泊る紅葉かな 滝井孝作 浮寝鳥
桜蕊ふる奇兵隊小者の墓 松林 慧
梅雨に来るブリキの兵隊足が無い 末吉 發
炎天の芋畑の母に兵隊の子が逢ひに来てゐる 人間を彫る 大橋裸木
目刺のような兵隊が生きていたラッパが鳴りだした 栗林一石路
筒組んで兵隊休む棕櫚の花 棕櫚の花 正岡子規
耳重き兵隊溜まる月見草 大屋達治 繍鸞
●兵馬
まぼろしの兵馬か山の霞飛ぶ 高井北杜
朝寒の市電兵馬と別れたり 石田波郷
蝗炒るむかし兵馬を征かしめて 糸 大八
霾るや兵馬の想ひ遠くなりぬ 小林康治 『虚實』
兵馬俑しずしず梨のしずくかな 中北綾子
兵馬俑に取り囲まるる秋思かな 塩田博久
兵馬俑並びて寒き叫びあり(西安にて二句) 石原八束 『幻生花』
兵馬俑八千のこゑ蝉山河 鍵和田[ゆう]子「光陰」
兵馬俑八千起たす寒の雷 久保千鶴子
兵馬俑六千の黙冷じや 三宅美樹
兵馬俑帰燕の空のうらがへり 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
兵馬俑棋峙(きぢ)して寒き地を走る 石原八束 『幻生花』
兵馬俑眼に追ふ真夏の夢に生き 河野南畦 『元禄の夢』
兵馬俑軍団動き出す良夜 文挟夫佐恵
兵馬俑軍団無言春寒し 磯 直道
春塵にまみれて兵馬俑五千 鈴木詮子
秋立つと視線はるかな兵馬俑 矢野緑詩
薫風や歩み出すかに兵馬俑 鎌田八重子
行く秋や遠き目をして兵馬俑 樋口比佐夫
閉づるなき眼冷まじ兵馬俑 山田弘子 こぶし坂
霾や立ちあがりくる兵馬俑 上阪幸恵
鳥曇とはの乾きに兵馬俑 菅田静歩 『大花野』
鳥雲になべて西向く兵馬俑 石野冬青
●軍隊
ツンドラの軍隊毛布を抜け霊魂 高澤良一 燕音
凍てぬため足ふみ足ふむ朕の軍隊 大井恒行
影の軍隊茫々と往く鰯雲 齋藤愼爾
目刺の口一列に軍隊の右むけ右 宮坂静生 青胡桃
軍隊が近づき春は来たりけり 高柳重信(1923-83)
軍隊なき夏富士を見てありがたし 橋本夢道 無類の妻
軍隊の短き言葉東風に飛ぶ 竹下しづの女句文集 昭和十四年
軍隊の近づく音や秋風裡 中村草田男
馬肉屋を諳める軍隊将棋かな 仁平勝 東京物語
●大戦
大戦のかの日日を坐し白き祖母 三橋敏雄 巡禮
大戦の年に子規忌を営みぬ 佐藤澱橋
大戦果わたる海かな桃の花 渡邊水巴 富士
大戦果出づれば四方の月の秋 渡邊水巴 富士
大戦果絶えて枯野の日は烈し 渡邊水巴 富士
大戦起るこの日のために獄をたまわる 橋本夢道 無禮なる妻抄
●内戦
●休戦
夕日惨休戦めきて案山子満つ 草田男
休戦をよろこぶ神父クリスマス 森田峠 避暑散歩
●武器
このフォーク何時にても武器冬苺 山中蛍火
たしかに四個霧夜武器売る会議の灯 五十嵐研三
冬茨農民なれば武器もたず 栗林一石路
初日記書きゆくペンはわが武器よ 岩崎照子
夏雲やレジスタンスに武器降りし 小池文子 巴里蕭条
夜の航武器のごとくにバナナを持ち 金子兜太
大元帥法にて武器を鎮めけり 松浦敬親
平成も武器の音する脱穀機 浜田きみ子
押し合うて武器にはならず袋角 松浦幸子
核も武器もない山田の蝌蚪群れ 切目とき
梅固し武器の如くに電話切る 赤松[けい]子 白毫
武器をもつ農民に似て燃える生木 上月章
武器捨てし十九の夏を彼は持つ 藤田湘子 てんてん
武器捨てし頽廃あをく黴咲けり 小松崎爽青
武器捨てよ武器取り立てといふ声すわづか五年の月日と思ふに 太田青丘
玉砕碑に添え置くバナナ武器めけり 梅田弘祠
米粒を研ぎつゝ武器といふ言葉 攝津幸彦 鹿々集
蝮捕棒一本を武器として 植田のぼる
針魚食らう口角武器とならざりし 長谷川みさを
階段の他人が武器の音たてる 林田紀音夫
雪しまき大地を伝ふ武器商人 水野真由美
●兵器
ひと死ねり兵器手入れの兵裸体 片山桃史 北方兵團
兵器廠門前の坂巷へ墜つ 細谷源二 鐵
大旱兵器のごとき日がのぼる 安藤風子(梟)
娶剪りゐる鋏のひえは兵器の冷え 熊谷愛子
水際に兵器性器の夥し 久保純夫 熊野集
火器兵器措き種籾のこと計れ 石塚友二 光塵
蝌蚪の水黝し兵器の造らるる 岡本差知子
鉄の兵器や動く蝌蚪の水 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
●爆撃機
●戦闘機
さみだれにまぎれ発進戦闘機 北 さとり
哀愁の中まで揚羽戦闘機 攝津幸彦
射撃手のふとうなだれて戦闘機 仁智栄坊
戦闘機ばらのある野に逆立ちぬ 仁智栄坊
戦闘機ゆく白牡丹紅牡丹 山口青邨
眠る女隠れて待つは戦闘機 徳弘純 麦のほとり 以後
秋天に音軽々と戦闘機 稲畑廣太郎
葡萄狩る指のさびしさ戦闘機 杉本雷造
蝌蚪の上キューン~と戦闘機 西東三鬼
赤土に夏草戦闘機の迷彩 沢木欣一
●ミサイル
あまたミサイル空の階段見失う 穴井太 原郷樹林
ミサイルの実験砂漠白く炎ゆ 仙田洋子 雲は王冠
ミサイルの射程の裡の髪洗う 出口善子
ミサイルの灼くる砲座に蟻のぼる 伊藤いと子
今日一日ミサイル飛ばず冬ごもり 三橋敏雄
●爆死
あくせく生きて八月われら爆死せり 高島茂
ゴム飛びの胸まで飛んだあと爆死 たむらちせい
坂ゆく音楽爆死者ねむるどの丘にも 八木原祐計
日照草爆死わらべの碑のほとり 下村ひろし 西陲集
爆死せし友ふと思ふ秋の暮 安野良子 『篝火草』
爆死せる人を羨しみ薔薇を愛す 川島彷徨子 榛の木
爆死子の墓斑猫の行きどまり 下村ひろし 西陲集
爆死者のふかまなざしを栞とす 高岡 修
●廃墟
あはれこの廃墟にはやも天道虫 有働亨 汐路
とり返せぬ廃墟の廣さ鱗雲 津田清子
みどりの時計の慰藉あり静かな廃墟 阪口涯子
アマリゝス廃墟明るく穢なし 殿村菟絲子 『繪硝子』
バツタとび廃墟は海へ緑地なす 太田鴻村 穂国
一望の廃墟に似たり蓮の骨 渋谷のぼる
人のけはひ怖れ廃墟の月見草 鍵和田[ゆう]子 未来図
人声をまね夏鴉廃墟守る 鍵和田[ゆう]子 浮標
冬館訪ふ近道や廃墟の中 中村草田男
凧揚ぐる廃墟の子等のなかをゆく 八木原祐計
古ローマの廃墟の千草野猫棲み 小原菁々子
声呑むや廃墟夕焼剰すなし 小林康治 玄霜
夕焼寒む廃墟灯るとび~に 岸風三楼 往来
外套重し廃墟の占める夜の位置 石原八束 秋風琴
天崩れ人は廃墟に時雨れたる 金箱戈止夫
夾竹桃の盛り廃墟が人集む 鍵和田[ゆう]子 未来図
山静か廃墟に芥子の花二つ 今泉貞鳳
廃墟という空き地に出ればみな和らぐ 金子兜太 旅次抄録
廃墟なりささやき降りて春の雨 有働亨 汐路
廃墟にて赤き眸のある寒卵 石原八束 仮幻の花
廃墟に梅雨首なき使徒の掌が祷る 津田清子 礼 拝
廃墟の石段のぼる 朝日が眉間で濡れ 伊丹公子 メキシコ貝
廃墟中瓦礫の抱く秋日影 深見けん二
廃墟浦上火の子の如く凧飛べり 野見山朱鳥
東京空襲アフガン廃墟ニューヨーク 大井恒行
浦上へ高まる廃墟夏炎ゆる 石原八束
涅槃風廃墟にできし砂の類 中村草田男
湯ざめして廃墟の中に立つごとし 藺草慶子
炎天は蒼し廃墟に貌よごれ(敗戦) 石原八束 『秋風琴』
炎昼や廃墟に文字のいのちあり 桂樟蹊子
炭焼きし石組もまた廃墟たり 山口誓子
絮飛んで廃墟周辺秋ふかし 神尾久美子 掌
罌粟真赤廃墟の壁に咲くときも 稲垣きくの 黄 瀬
聖蹟はすなはち廃墟雲の峰 久保田万太郎 流寓抄
胸には恋の廃墟ばかりで蚊喰鳥 楠本憲吉
草の絮流離の果にある廃墟 井沢正江 湖の伝説以後
草萌になほ廃墟なる電車待つ 原田種茅 径
菜種梅雨わたくしはひとつの廃墟 山本掌
蟻の列ドーム廃墟の裾にかな 静 良夜
醜草も春草として萌ゆ廃墟 有働亨 汐路
銀座銀河銀河銀座東京廃墟 三橋敏雄 畳の上
銀行に廃墟のにほひ春の雪 鍵和田[ゆう]子
雀の巣廃墟の天使享け給ふ 不破 博
雲のかげ廃墟をかけり秋日刺す 中勘助
音がして生まれる廃墟梅雨の虹 高野ムツオ 蟲の王
馬の宿廃墟となりし蝉しぐれ 石川保子
麦秋の中なるが悲し聖廃墟 秋櫻子 (浦上天主堂)
黒揚羽廃墟の城の水汲み場 細見綾子
●大量殺戮
●難民
レモン吸う難民家族聖家族 対馬康子 吾亦紅
初刷の難民の子の笑顔かな 長島和子
城滅び難民めきて蜷の数 松岡里江 『桜坂』
手花火す難民のごと艀に揺れ 友岡子郷 遠方
春嵐心難民めく夜かな 石田波郷
猫埋める土凍る日も難民来る 鈴木八駛郎
着ぶくれて見る難民の写真展 仲島 四郎
蓮の花難民のまた還りくる 滝井孝作 浮寝鳥
赤潮の帯難民船蛇行 岡崎道徳
難民に似て競輪に柿噛る 百合山羽公 故園
難民のひとりは立ちて星月夜 高井北杜
難民のユーゴの川を蛇泳ぐ 夏石番矢
難民の子の目に耐へず懐手 神郡 貢
難民の駱駝秋風より高し 片山桃史 北方兵團
難民はムンクの叫び冬が来る 山上樹実雄
難民やトマトあふれるほどに売り 対馬康子 純情
難民百人歩く画面をはみださずに 五十嵐研三
雪の牛難民の眼をしてゐたり 大木あまり 雲の塔
震災の難民めきぬ冬帽子 千原草之
飢餓難民多き地球に餅を搗く 四宮遇子
●ホロコースト
●対戦
●野戦
名月や野戦の丘に見しことも 松村黄菅
野戦重砲、歩、騎、工、輜重を越して撃てり 細谷源二 鐵
野戦重砲撃てりぬかるみへびびと鳴る 細谷源二 鐵
野戦重砲野に杭をうち厩とす 細谷源二 鐵
野戦重砲馬百頭を赤き日に 細谷源二 鐵
野戦重砲馬輓き出づるどどと輓く 細谷源二 鐵
野戦重砲馭者日の下に馬臭き 細谷源二 鐵
●海戦
水餅を掬はむか遠き日の海戦よ 三橋敏雄 畳の上
海戦はればれ大きな明星みえる 阿部完市 春日朝歌
海戦は跡無かりけり日懸れり 三橋敏雄 *シャコ
海戦碑卯波平らに伸びにけり 藤井美智子「歓声」
●聖戦
天つ日は聖戦のひかり足袋をつぐ 渡邊水巴 富士
狐罠聖戦の血も地に滲み 矢島渚男 百済野
病人も医師もしづかに聖戦下 藤木清子
聖戦とは人殺すこと星涼しきに 小佐田哲男
●合戦
かしこさに合戦なしに飛ぶ蛍 許六 五 月 月別句集「韻塞」
ほたる合戦美濃と近江の国境 小林雪雄 『海明け』
亀鳴くや折り目うすれし合戦図 山本洋子
公達武将あはれや黴の合戦圖 下村ひろし 西陲集
凧合戦中止となりし凧巨き 山田みづえ 草譜
凧合戦凧に気付の神酒を吹き 児玉 寛幸
合戦の前の白鳥勢ぞろひ 今瀬剛一
合戦の名どころにして鮎の竿 石田勝彦 秋興
合戦の父子相討つ凧日和 上野泰子
合戦の碑ありて田植唄 飛岡光枝(古志)
合戦の紙鳶にらみゐる眼かな 上村占魚 鮎
合戦の絵詞となる春嵐 原裕 葦牙
合戦の跡を寺とし春田かな 長谷川櫂 虚空
合戦圈はなれて澄める凧一つ 下村ひろし 西陲集
土筆野の石合戦に加勢せむ 桑原三郎 春亂
永き日を蟻の合戦の始りぬ 日永 正岡子規
決闘の島逆しまに凧合戦 堀青研子
珊瑚樹垣茶屋に屋島の合戦図 岡田透子 『珊瑚樹』
睨め廻す「風流蛙合戦圖」 高澤良一 ぱらりとせ
石蕗日和長條の合戦鳥瞰図 谷中隆子
草の上に凧合戦の控凧 山崎ひさを
草の実をしごいてゐたる合戦址 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
蛍合戦ピカソ描けば如何な絵ぞ 橘川まもる
蛍合戦丘の一樹を火の樹とす 星野明世
蛙合戦見守る此処が上席ぞ 高澤良一 燕音
蛙合戦追つ手は川の音なりし 上田日差子
蜘蛛合戦桜島よりはたた神 東 妙子
蜻蛉や勢田の合戦古に 尾崎迷堂 孤輪
遠足や海の合戦絵にのこり 大島民郎
雪玉を両手に合戦合図待つ 瀬上雅和
養花天選挙合戦空ラ響き 高澤良一 素抱
鹿垣や里にのこりし合戦記 古館曹人
●作戦
梅雨毛虫掃討作戦開始せり 高澤良一 寒暑
よれ~の汗の作戦地図を焼く 樋口南盆
つばな土手サッカー少年作戦中 岡崎万寿
●会戦

by 575fudemakase | 2022-05-14 10:12 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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