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鰈 蝶

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蒸鰈 の俳句

蒸鰈

例句を挙げる。

さみどりの藁しべ咥へ蒸鰈 鳴瀬芳子
ていねいに骨をのこして蒸鰈 豊田八重子
はららごの朱く透けゐる蒸鰈 長谷川櫂 蓬莱
何に眼を寄せて若狭の蒸鰈 川崎展宏
土曜日は吾もさざなみ蒸鰈 高野ムツオ
抱卵の紅を点じて蒸鰈 槫沼清子
明神岳に雪淡かりし蒸鰈 丸山しげる
晩年のほのかに見ゆる蒸鰈 池田秀水
暮れ切つてよりの集ひや蒸鰈 小林貴子
添へ文の能筆にして蒸鰈 都筑智子
火の色のほのと透きてや蒸鰈 岡田飛鳥子
町騒のうらの潮さゐ蒸鰈 久保千鶴子
病後とて子にむしりやる蒸鰈 藤田知子
箸とれば梅が香もして蒸鰈 岡野知十
若狭には仏多くて蒸鰈 森澄雄 鯉素
蒸鰈ほぐす若狭の潮の香 森戸千代子
蒸鰈ギリシャ神話に船の星 榎本好宏
蒸鰈水車の先に海みゆる 火村卓造
蒸鰈海よりも陸さきに昏れ 児玉輝代
蒸鰈焼くまでの骨透きにけり 草間時彦
裏表きちんとほぐす蒸鰈 宇多喜代子 象
貴人(あてびと)のごとく箸付け蒸鰈 高澤良一 随笑
頸筋に風の立ちたる蒸鰈 宮坂静生 樹下
骨離れよき蒸鰈むしりをり 佐々木久代

蒸鰈 補遺

一盞や下京の夜の蒸鰈 亭午 星野麥丘人
若狭には佛多くて蒸鰈 森澄雄
蒸し鰈子にむしる花過ぎにけり 渡邊水巴 富士
蒸鰈にもそれなりの腹子あり 能村登四郎
蒸鰈ほぐしほぐして病後かな 鷹羽狩行
蒸鰈妻もすこしはいける口 寒食 星野麥丘人
蒸鰈若狭日和もさだめなき 上田五千石 風景
蒸鰈修二会鰈と言ふ日なり 百合山羽公 樂土以後
席隔て男独りの蒸鰈 林翔
祖父の手の淡々とあり蒸鰈 飯島晴子
淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈 臼田亜郎 定本亜浪句集
桃の日や下部酒もる蒸鰈 加舎白雄
二つの目仲よくならび蒸鰈 阿波野青畝
裏山の窓に迫れり蒸鰈 桂信子 花影
旅鞄にも容れんとす蒸鰈 阿波野青畝

以上
蝶 の俳句

蝶1

蝶2

蝶3


蝶 補遺

あさがほの大紫や神楽坂 雨滴集 星野麥丘人
あてどなく急げる蝶に似たらずや 藤田湘子 途上
あてもなく雪形の蝶探しに行く 佐藤鬼房
あともどる寒さに蝶の生れけり 百合山羽公 故園
あやふくて十一月の熔岩の蝶 星野麥丘人
あら海や風より下を飛ぶ胡蝶 正岡子規 胡蝶
ありふれし梅雨蝶ばかり来る日かな 安住敦
ある人の顔のあたりに蝶とびて 高野素十
いくさ負けて人なき城の胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
ヴエスビオは雪を新たに春の蝶 山口青邨
うたゝねの窓に胡蝶やもゝの花 正岡子規 桃の花
うつくしき胡蝶のはての浮世哉 正岡子規 胡蝶
うつくしき胡蝶を網す嬉しさよ 正岡子規 胡蝶
うつしみを蝶よ花よと籠枕 橋閒石俳句選集 『和栲』以後(Ⅱ)
うつ杖のはづれて嬉しとぶ胡蝶 正岡子規 胡蝶
うらうら蝶は死んでゐる 種田山頭火 草木塔
うら枯や芥のやうな蜆蝶 細見綾子
おはようといつもの白い蝶がきた 荻原井泉水
おもかげ海を見るさまの蝶々夫人蝶々 荻原井泉水
オレンヂの花にたま~たま~蝶 高野素十
かたばみに同じ色なる蝶々かな 村上鬼城
かにかくに高原大根太つ腹 佐藤鬼房
かの遠き棄民が見える蝶の昼 佐藤鬼房
かの蝶かかの蝶か日の盛りなり 高野素十
かへす田や何を尋ねて蝶一つ 正岡子規 蝶
ガラス戸の外を飛び行く胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
カルストを遂に出られず蜆蝶 後藤比奈夫
かんざしの蝶ちらつくや藤の花 正岡子規 藤
きこきこと乳母車野を行けば蝶 福田蓼汀 山火
くみあふて一つに見ゆる胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
けしの花大きな蝶のとまりけり 正岡子規 芥子の花
げに緑平なる石、白き蝶きて去らざるなり 荻原井泉水
けふ咲きし牡丹にふるゝ蝶々かな 原石鼎 花影
こてふこてふさあこい我も花狂ひ 正岡子規 胡蝶
こてふこてふ合宿たのむ草枕 正岡子規 胡蝶
この坂やかつても白き蝶に逢ひし 橋閒石 朱明
この度も末枯を見る蝶を見る 高野素十
こほろぎに宿かる蝶の夫婦哉 正岡子規 蟋蟀こほろぎ<虫+車>
こほろぎに宿かる旅の胡蝶哉 正岡子規 蟋蟀こほろぎ<虫+車>
こんこんと蝶昇り行く氷河光 有馬朗人 耳順
さかしまに蝶は交めりえごの花 星野麥丘人
さきをゆく人との間に蝶絶えず 篠原梵 年々去来の花 雨
ささめきに蝶も加われ信夫摺 橋閒石 卯
さまざまの谷の蝶くる顔の肉 飯島晴子
さみだれや一蝶とんで旅人に 山口青邨
しじみ殻踏みくだきゆき海の蝶 細見綾子 雉子
しじみ蝶ふたつ先ゆく子の霊か 能村登四郎
しじみ蝶風の止み間の土手にゐし(小堤西池) 細見綾子
シベリヤで死にたる青い月下蝶 佐藤鬼房
じやがたらの咲けばもつるる山の蝶 星野麥丘人
しろ~と蝶の舞ひ出し杉生かな 日野草城
すさましく蝶の出て来る弥生哉 正岡子規 弥生
せせり蝶二つの浄土せせり飛ぶ 右城暮石 句集外 昭和六十二年
せせり蝶濡れ雑巾もせせり行く 右城暮石 天水
そのかみの海底なりし風の蝶 橋閒石 朱明
その時の蝶々一つ墓にとぶ 高野素十
そよそよと胡蝶の鬚のたわみ哉 正岡子規 胡蝶
たしかに枯れ色の蝶の、木の葉ではなく 荻原井泉水
ただ一つ黄蝶は濃ゆし神嘗祭 山口青邨
たましひは蝶に取られてもぬけ姫 正岡子規 蝶
たまたまに蝶見てうれし枯野道 正岡子規 枯野
ちよとうせた笠の上飛ふこてふ哉 正岡子規 胡蝶
ちよとふせた笠の上飛ぶこてふ哉 正岡子規 胡蝶
ちよとふせて笠の上とぶ胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
ちる花と胡蝶とつひに別れけり 正岡子規 胡蝶
つながつて石に蝶ゐる霜日和 飴山實 句集外
つるでまり咲きのぼり蝶舞ひのぼり 山口青邨
てふてふやあひ宿たのむ草まくら 正岡子規 蝶
てふやてふや汝とならはどこまでも 正岡子規 蝶
どこかで鳴る海よ白透く崖の蝶 鷲谷七菜子 銃身
となりより白き蝶きて小暑かな 雨滴集 星野麥丘人
どの蝶々どの蝶々も行き交し 高野素十
とぶことのうれしととべる紋白蝶 山口青邨
とぶ蝶にさそはれてちる桜哉 正岡子規 散桜
なかんづく美男羅漢や蝶したふ 能村登四郎
なか空に蝶舞ひあがる彼岸かな 村山故郷
なでしこに蝶ぶらさがるたわみ哉 正岡子規 撫子
なみだたれ蝶のひとみは蝶もとめぬ 渡邊白泉
なみのうへ蝶のかげゆき蝶にふれぬ 渡邊白泉
のとかさや亀の背中に寝る胡蝶 正岡子規 胡蝶
バケツの絵蝶よ蜻蛉よ磯遊 後藤比奈夫
はざくらや翔ける雷蝶真一文字 飯田蛇笏 山廬集
パンジーの花は紫蝶はまだ 高野素十
ひた~と肺より蒼き蝶の翅 富澤赤黄男
ひとみなくて飛ぶ蝶白し省亭忌 渡邊水巴 白日
ひとりの日翩々たる蝶を窓に見し 村山故郷
ひら~と蝶とべる外何もなし 右城暮石 句集外 昭和十六年
ひら~と蝶孵り踏むべかりける 前田普羅 春寒浅間山
ひらひらと蝶々黄なり水の上 正岡子規 蝶
ひらひらと風に流れて蝶一つ 正岡子規 蝶
ひらひら蝶はうたへない 種田山頭火 草木塔
ピラミッド蝶翔つ太陽へ近づくため 有馬朗人 母国
ひろしまの忌日や高く飛べる蝶 原裕 青垣
ぶだう園針金に蝶からみ遊ぶ(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
ふぶく夜や蝶の図鑑を枕もと 橋閒石 和栲
ペン擱いて蝶は遊べり正午牡丹 山口青邨
まだ花に心のこすか蝶の夢 正岡子規 蝶
みどり子に光あつまる蝶の昼 上田五千石 田園
みな去んでもとの一つの蝶々かな 渡邊水巴 白日
むきだしの神経白き嵐の蝶 橋閒石 無刻
むせかへる花栗の香を蝶くゞる 前田普羅 飛騨紬
めちやくちやに手をふり蝶にふれんとす 山口青邨
もの書かず蝶の白さの蝶の昼 鷹羽狩行
ゆくところ崖のある旅ながるる蝶 鷲谷七菜子 銃身
よるべなし梅雨の笹原紋白蝶 山口青邨
ろばの荷のキャベツや蝶があと先きに 細見綾子 存問
わが家の胡瓜の花も蝶多し 高野素十
わが句碑に昇神の儀や蝶翔けり 山口青邨
わが方へ来るにたがはじ白蝶待つ 野澤節子 未明音
わが遊戯(ゆげ)の見ゆるごとくに朝の蝶 佐藤鬼房
わらじの緒結ぶや笠にとぶ胡蝶 正岡子規 胡蝶
われここに端座美醜の深山蝶 山口青邨
われ蝶を追ふ蝶われを追ふごとし 高浜年尾
逢はむ日の鏡まぶしき蝶の昼 鷲谷七菜子 黄炎
虻の居る花に過ぎ行く胡蝶かな 正岡子規 胡蝶
虻よりも小き蝶の飛んで居る 正岡子規 蝶
袷著て行けばひらひら胡蝶飛ぶ 正岡子規 袷
郁李に春光あはき蝶のかげ 西島麦南 人音
磯波の砕くる光に蝶生れし 橋閒石 雪
一つ蝶真澄水面と双つ蝶 中村草田男
一つ木に集る蝶の紋同じ 三橋敏雄
一つ来て蝶のとまるや鮓の圧 正岡子規 鮓
一樹よく百蝶集め花令法 安住敦
一昼夜居て土佐の蝶土佐の蛙 右城暮石 虻峠
一蝶の雨の晴間を紅粉の花 山口青邨
一蝶の風の低しや梅雨葎 古舘曹人 樹下石上
一蝶は紫苑をえらぶ律の墓 古舘曹人 樹下石上
一文字蝶と教はる爽やかに 百合山羽公 樂土
一枚の蝶の死を堰うち砕く 有馬朗人 母国
茨にかけし胡蝶の羽の破れたる 正岡子規 胡蝶
宇陀郡室生村蝶生れけり 安住敦
烏瓜提げたり蝶も付き来れ 相生垣瓜人 明治草
羽繕ふ間も黒蝶の華麗な生 上田五千石 田園
羽繕ふ間も惜し蝶の華麗な生 上田五千石『田園』補遺
雨に日が照ると蝶がひらひらと白くて又ふる 荻原井泉水
雨の蝶よろぼひとまり竹煮草 清崎敏郎
雨後の地に吻けの蝶おびただし 山田みづえ 手甲
厩留守藁敷き代へて蝶忙しげ 香西照雄 対話
噂とびすぐ消え梅雨のひとつ蝶 能村登四郎
雲降りて野は傾きぬ孔雀蝶 古舘曹人 砂の音
曳舟の綱にまつはる胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
炎天に黒き喪章の蝶とべり 日野草城
炎天に雷蝶の羽摶つ音 日野草城
炎天の暗さ負目の蝶かがよふ 原裕 葦牙
炎天の蝶黄塵に吹かれけり 臼田亜郎 定本亜浪句集
炎天の蝶鄭重に靴のさき 飯田蛇笏 家郷の霧
炎天や砂利道行けば蝶の殻 正岡子規 炎天
炎日の蝶越えゆけり有刺柵 能村登四郎
遠からぬ瀧とどろきに蝶凍つる 上田五千石 天路
遠き帆の片羽蝶めく小春凪 能村登四郎
遠ければ蝶のごとくに鷺とべる 山口青邨
遠雷の一枝に来し蝶々かな 原石鼎 花影
奥祖谷や一蝶の影谷に消え 鷲谷七菜子 天鼓
横にくみ竪にほくれて蝶二つ 正岡子規 蝶
黄の蝶は韓より渡り来し蝶か 山口誓子
黄の蝶々干しぜんまいにまた来たる(佐渡) 細見綾子
黄色の壁ひろく一蝶かき消しぬ 山口青邨
黄蝶舞ふ縄文の址と聞くからに 山口青邨
屋根一つ越えし余力に蝶沈む 野澤節子 雪しろ
牡丹と知りて紋白蝶とまる(わが家の牡丹五句) 細見綾子
牡丹に黒子がとばす刺繍の蝶 山口青邨
牡丹の衰へしこと蝶ぞ知る 後藤夜半 底紅
牡丹の崩れんとするに蝶来り 山口青邨
音楽を降らしめよ夥しき蝶に 藤田湘子 途上
何色に染めても若き胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
家を出てゆふべは蝶とかはほりと 三橋敏雄
火の硝子吹きふくらます蝶の昼 野見山朱鳥 幻日
火口湖に純白の蝶舞ひ降りる 有馬朗人 母国
火傷の村濛濛々と蝶湧きたたせ 佐藤鬼房
花ではない、蝶は蝶をさがしている 荻原井泉水
花の上にあがりし蝶や蝶多し 高野素十
花ひとつ蝶二羽来る牡丹かな 正岡子規 牡丹
花を見し其の夜の夢は胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
花温室がはじく海光粉なす蝶 林翔 和紙
花魁草ゆさゆさいつも蝶とんで 山口青邨
花屑とまぎるゝ蝶の潦 飴山實 句集外
花菜かげ蝶こぼれては地にはねぬ 飯田蛇笏 山響集
花信をば齎したりし蝶児あり 相生垣瓜人 負暄
花多き隣へ去りし胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
花売と蝶と別るゝ夕かな 正岡子規 蝶
華麗なる楽章終り蝶も喪服 有馬朗人 母国
蝦夷富士は春しぐれする蝶の冷え 飯田蛇笏 雪峡
過ぎしもの蝶かあらぬかおそろしゝ 原石鼎 花影
蚊帳干しし昔話や蜆蝶 細見綾子
我が歩み蝶をたたしめとまらしめ 上野泰 春潮
我儘をいはさぬ風の胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
海があるらしき月下へゆきし蝶 佐藤鬼房
海に出て黒蝶戻る風のなし 平井照敏 猫町
海に埋れ老い止まんとす春の蝶 永田耕衣
海流の前や気流の高き蝶 中村草田男
海棠をつゝいてまはる胡蝶哉 正岡子規 海棠
海茫々風より下をこてふとぶ 正岡子規 胡蝶
絵ガラスの蝶も阿蘭陀渡りかな 有馬朗人 立志
開山忌辛夷の白の蝶結び 石田勝彦 百千
垣こえて又低く飛ぶ胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
柿老樹蝶の形に葉を開く 右城暮石 散歩圏
隔を来て双蝶となれりけり 飯島晴子
学園に自動の遊蝶他動のデモ 香西照雄 素心
学卒へし小さきことと蝶のこと 古舘曹人 能登の蛙
楽園を死に場所として深山蝶(奥志賀二句) 細見綾子
葛城の神を憐れむ蝶千羽 橋閒石 和栲
寒葵咲けり岐阜蝶も舞ひ出づや 山口青邨
寒巌や長居の蝶は翅しびれ 上田五千石『田園』補遺
干梅に大きく落す蝶の影 山口青邨
甘藍の玉むすばるや蝶くるひ 飯田蛇笏 春蘭
監視きびしき中少年囚蝶手掴む 津田清子 礼拝
関守石ここにありけり蝶とんで 山口青邨
眼前に蝶群れ光り臥しつづく 野澤節子 未明音
岩伝ふ渓流蝶は花伝ひ 香西照雄 素心
雁の渡りしあとの蝶あはれ 斎藤玄 雁道
汽車遅く山の蝶など飛びつれて 山口青邨
稀に蝶貨車の連結音午報音 石川桂郎 含羞
蟻の列しづかに蝶をうかべたる 篠原梵 年々去来の花 雨
菊の芽に蝶も近づくことなかれ 正岡子規 菊の芽
丘に蝶生れ沖まで蝶の昼 鷹羽狩行
吸蜜の蝶撮る 蝶より震えつつ 伊丹三樹彦
朽色蝶羽を開けば炯眼紋 香西照雄 対話
牛市の牛の股間に生れた蝶 飴山實 おりいぶ
牛寝るや一かたまりに飛ぶ胡蝶 正岡子規 胡蝶
牛糞にとまらんとせし胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
牛蒡の葉の荒れて行く蜆蝶 細見綾子
教会の薔薇窓蝶のひらひらす 山口青邨
橋があるので蝶々、橋を行く 荻原井泉水
胸灯る野分の蝶の明るさに 小林康治 玄霜
蕎麦の花に飛んでまぎるゝ蝶々かな 村上鬼城
鏡花忌の大紫に逢へざるか 相生垣瓜人 明治草
芹の花ばかりを飛んで沼の蝶 細見綾子
近道をこえ行く山の胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
金雀枝の花より生れし黄の蝶か 中村苑子
句碑をまはり吾をまはりて蝶白し 山口青邨
空つゆの芹咲く渓に蝶下る 松村蒼石 寒鶯抄
空をとぶ蝶々壁に映りけり 原石鼎 花影
空家より蝶光り翔つ溺死あらん 橋閒石 無刻
空溝に黄金の蝶写り行く 永田耕衣
窟よりあの世の蝶のひかりかな 鷲谷七菜子 花寂び
傾城も居らず蝶飛ぶ仲の町 正岡子規 蝶
啓蟄の蟇緋縅蝶に眼をつむる 山口青邨
形骸となるまで蝶の凍てにけり 上田五千石『田園』補遺
軽きものさはにはあれと胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
隙だらけにて皆ゐるに白蝶々 細見綾子
月夜影抱く白蝶の粉降りいしや 赤尾兜子 蛇
健康とは、病気のあとの蝶がとんでいる 荻原井泉水
見残した胡蝶の夢や遅桜 正岡子規 胡蝶
元日の一蝶飛んでたんぽぽに 山口青邨
絃はりかえる軟風は蝶にまかせ 橋閒石 風景
故里の青歯朶白き蝶あそぶ 細見綾子
枯園にぎやかパントマイムの蝶と蜂 山口青邨
枯園の日なたに蝶を見失ふ 村山故郷
枯菊の上とぶ蝶のあでやかに 山口青邨
枯色の品よき蝶は蛇の目蝶 杉田久女
湖へ出づる小門にいつも蝶 高野素十
胡蝶つれ神昇りまし式終る 山口青邨
胡蝶花石黒々と水飲み場 右城暮石 句集外 平成五年
胡蝶三つ二つ一つに分れけり 正岡子規 胡蝶
胡蝶々として二つ飛び又一つ来る 正岡子規 胡蝶
胡蝶飛び風吹き胡蝶又来る 正岡子規 胡蝶
胡蝶飛ぶ簾のうちの人もなし 正岡子規 胡蝶
胡蝶蘭の花食し二十三夜月 岡井省二 鯛の鯛
胡蝶蘭花みな蝶やわれに舞ふ 山口青邨
胡蝶蘭白くすつくと身のほとり 細見綾子
胡蝶蘭舞ひ薔薇にほひ誕生日 山口青邨
胡葱に出そめて白き蝶ばかり 下村槐太 光背
鼓子花は蝶のあそばぬさかり哉 正岡子規 昼顔
五ツ六ツかたまつてとぶ胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
五月雨の*(白+)生ゆらんか蝶の羽 正岡子規 五月雨
吾妻の人と別れて蝶を追ふ 前田普羅 春寒浅間山
吾子の紅き楽譜鞄にあげは蝶 能村登四郎
吾等の祖の村土黒し蝶鮮らし 飴山實 おりいぶ
御獵場やひよ鳥驕る蝶々と 正岡子規 鵯
光と影ともつれて蝶々死んでをり 種田山頭火 自画像 層雲集
光みな浅瀬にこもり蝶さすらふ 鷲谷七菜子 銃身
光り出て蝶となりたる飛花いくつ 上田五千石『琥珀』補遺
口曲げしそれがあくびや蝶の昼 清崎敏郎
広島忌騒がしきまで蝶の群れ 原裕 葦牙
荒草に遊びて飽かぬ蝶児あり 相生垣瓜人 負暄
行く春の山吹散つて蝶白し 正岡子規 行く春
高*はごの日空を蝶もこえゆける 百合山羽公 春園
高ゆかず日盛の蝶白く憂ふ 野澤節子 未明音
高原広きにいつまで双蝶星祭 香西照雄 素心
高々と蝶こゆる谷の深さかな 原石鼎 花影
高飛ンで着地失ふ野分蝶 上田五千石『田園』補遺
合歓の葉の眠りて蝶も眠るなり 細見綾子
合歓咲いて蝶々のまだ現れず 細見綾子
黒い蝶結びのデルタ消息(たより)絶つ 佐藤鬼房
黒き蝶あれは化身よ晴子の忌 桂信子「草影」以後
黒き蝶滑空過ぎぬ原爆忌 山口青邨
黒き蝶来て白薔薇を白うしぬ 日野草城
黒牡丹ひそかに蝶を舞はしむる 山口青邨
黒蝶のいきづくほとり沼くもり 桂信子 月光抄
黒蝶は平家の魂か小歩危みち 鷹羽狩行
黒蝶やうしろ姿の影ぞわれ 赤尾兜子 蛇
黒蝶や香水つよきひととゐて 桂信子 月光抄
黒蝶や薬をのみし舌にがく 桂信子 月光抄
黒林に日矢が割り込み蝶生る 上田五千石『田園』補遺
獄の面会双蝶別れて他人顔 香西照雄 素心
昏きより声あり蝶の生れけり 橋閒石 卯
魂祭「蝶よ花よ」は受恩の譜 中村草田男
佐久山やらつきよの花に蝶がつく(那須佐久山) 細見綾子
沙流れ潮あり蝶わたるなり 岡井省二 鯛の鯛
砂で遊ばせて蝶は飛ぶ浪の上にも 荻原井泉水
砂を舞う蝶炎日の海へは出ず 古沢太穂 火雲
妻あはれ蝶類なべて魔とはいふ 石塚友二 曠日
妻病みし曇日の子に蜆蝶 飴山實 おりいぶ
菜には蝶、麦に雲雀や春の風 正岡子規 春風
菜の花に居あまる蝶の石地蔵 正岡子規 菜の花
菜の花のたましい遊ふ胡蝶かな 正岡子規 胡蝶
菜の花や余念もなしに蝶の舞 正岡子規 菜の花
菜の花を出でゝ飛び行く蝶黄なり 正岡子規 蝶
菜は莢に蝶をとどむる名残り花 飯田蛇笏 山響集
菜園の蝶をたたしむ白エプロン 右城暮石 散歩圏
菜畠に見失ひたる胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
菜畠を出でゝ飛び行く胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
鮭小屋の松にまつはる風・黄蝶 佐藤鬼房
三つとんで風に巴の蝶々かな 原石鼎 花影
山の蝶けふけはひして句碑に舞ふ 山口青邨
山の蝶とびつれ網走行の汽車 山口青邨
山越えて蝶見そむるや家少し 正岡子規 蝶
山焼くや胡蝶の羽のくすぶるか 正岡子規 山焼
山深く蝶をかくまふ扉あり 桂信子 草影
山吹に蝶吹き飛ばす嵐哉 正岡子規 山吹
山吹の蝶を見てゐて得度かな 飯田蛇笏
山吹を三たびめぐつて蝶去りぬ 正岡子規 山吹
山内を飛ぶは黒蝶のみゆゆし 山口青邨
山風に蝶うろたへて雪にとまる 渡邊水巴 富士
山羊の乳搾る手もとに蝶下り来 上村占魚 球磨
子の賢愚知らず遥かに蝶光る 林翔 和紙
子を断ちし誰彼地這ふしじみ蝶 能村登四郎
止まるとき紋を大きく深山蝶 鷹羽狩行
紫の羽根をたたみてしじみ蝶 細見綾子
紫蘇ほして蝶よりつかぬ暑さ哉 正岡子規 紫蘇
紫陽花にあやしき蝶のはなだ哉 正岡子規 紫陽花
七草の緋縅蝶を書庫の裏 山口青邨
写生廾日堂成りて今や蝶を着く 正岡子規 蝶
手招きし子が来る蝶がついて来る 上野泰 佐介
首を出す機関手に蝶高くあがり 橋閒石 朱明
終焉の宴や蝶と酔蝶花 山口青邨
祝婚の電報のあと白き蝶 細見綾子
祝婚やこの庭すでに遊蝶花 及川貞 夕焼
熟睡し覚めては蝶の青虫飼ひ 細見綾子
熟麦に真白なる蝶ゐて遊ぶ 日野草城
出水の蝶影もたず且つ相倚らず 右城暮石 句集外 昭和二十二年
春あらしというこれやことしの蝶なるか 荻原井泉水
春の間に雄蝶雌蝶の銚子かな 正岡子規 蝶
春の夜や何の夢見て蝶一つ 正岡子規 春の夜
春の野やしはし預る蝶の留守 正岡子規 春野
春は音もなく羽ばたいてくる蝶か 荻原井泉水
春陰の花の湿りに蝶寄らず 橋閒石 雪
春昼や書庫の中より蝶を見て 山口青邨
春平安海のみどりへ蝶墜ちゆく 鷲谷七菜子 黄炎
暑い日の空白、白い蝶一つ通る 荻原井泉水
書庫の裏蟷螂蝶を殺めをり 山口青邨
女の蝶を思ひて恍と凍てつくや 上田五千石『琥珀』補遺
女童欲し紅蜆蝶にも裾模様 香西照雄 対話
小廻りに蒟蒻の蝶棉の蝶 石田波郷
小灰蝶かやつり草をないがしろ 藤田湘子 てんてん
小学帽目までかぶりて蝶つまむ(太郎一年生) 細見綾子
小比丘尼の抓みかねたる胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
松に蝶きて円位忌を三日過ぐ 岡井省二 五劫集
松虫草ゆるる蝶々山をうしろ 山口青邨
沼秘むる冠着深し日陰蝶 松崎鉄之介
硝子戸の家や蝶飛び晩秋ヘ 細見綾子
硝子戸を鴉蝶にぞ叩かれし 相生垣瓜人 負暄
城門に蝶の飛び交ふ日和かな 内藤鳴雪
色悪しき蝶の来し方行方かな 三橋敏雄
心労や蝶呼ぶ大地束の間に 原裕 葦牙
新春の蝶々来たり雪の上 渡邊水巴 富士
新涼の切紙細工蝶また蝶 山口青邨
新涼や蝶の羽また新しく 山口青邨
新緑の空わたりゆく蝶々かな 山口青邨
深山蝶この楽園の外知らず(奥志賀二句) 細見綾子
深山蝶めかしてとぶやただの蝶 山口青邨
深庇蝶ぶらさがる暑さかな 下村槐太 光背
真黒な蝶の狂ひけり雲の峯 正岡子規 雲の峯
真黒な蝶の狂ひや雲の峯 正岡子規 雲の峯
神鏡に映る牡丹に蝶流れ 野見山朱鳥 天馬
針もて刺す韃靼の海知らぬ蝶 藤田湘子 てんてん
針歇むや塀こゆるまで小灰蝶 石川桂郎 含羞
人の家に存らふ鏡蝶の来て 岡井省二 山色
人の背に蝶蝶なぶる小猿哉 正岡子規 蝶
人もなし閼迦桶の花に舞ふ胡蝶 正岡子規 胡蝶
人愛しめ花菜は蝶を肯へる 石塚友二 光塵
陣営を進めし跡に蝶々かな 河東碧梧桐
吹かれとびあとはひら~蝶のゆく 右城暮石 句集外 昭和十二年
吹く風や花野も蝶も吹かれゐる 及川貞 夕焼
水わたる蝶あり気温定まらず 右城暮石 句集外 昭和十六年
水草の花蝶々に似たりけり 正岡子規 水草の花
水天の照るばかりなる胡蝶かな 日野草城
水鉢の水のみに来る胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
水無月の薄青く蝶黄なりけり 正岡子規 青薄
水路干て今白蝶の遊び場に 松崎鉄之介
数人の君子即ち蝶を見る 高野素十
雛菓子や蝶よ花よと象りて 相生垣瓜人 負暄
世の中の夢は夢見る胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
生きてゐし蟇より蝶のたちゆけり 相生垣瓜人 明治草
青い犀転げゆく蝶や石ころ 金子兜太
青天の蔓にわかれし蝶々かな 原石鼎 花影
石に寝る蝶薄命の我を夢むらん 正岡子規 蝶
石階や蝶蜂出でてわれら去る 藤田湘子 途上
石切りら帰れば石に蝶流れ 橋閒石 朱明
石蕗の花を離れて蝶黄なり 清崎敏郎
石蕗咲きて改めて蝶来りけり 相生垣瓜人 明治草
切りもなく相追ふ蝶を見つつ飽く 相生垣瓜人 明治草
折々に蝶々のとぶ折々に 高野素十
折々は馬の尾近し寝る胡蝶 正岡子規 胡蝶
雪形を蝶に燕に青嶺組む 上田五千石『琥珀』補遺
雪渓を吹き上げられし蝶緋なり 橋閒石 雪
絶壁、蝶がのぼる 荻原井泉水
蝉しぐれより黄縅の蝶々かな 野見山朱鳥 曼珠沙華
先の蝶追うて行く蝶我も行く 高浜年尾
川泳ぎ蝶もただよふ真似をして 香西照雄 素心
浅草に朝蝶とべる彼岸かな 村山故郷
船橋のふわふわ動く胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
祖母の忌やきらきら裾に蜆蝶 赤尾兜子 蛇
素焼鉢洗へば蝶のもつれ寄る 橋閒石 雪
阻まれて駅に一文字せせり蝶 右城暮石 句集外 昭和五十三年
僧兵の石仏蝶の供養飛び 右城暮石 句集外 昭和五十五年
双蝶となるまでの三巴蝶 後藤比奈夫
双蝶のもつれかがやくを見て涙 山口青邨
双蝶の一つこぼれてわが膝に 野澤節子 八朶集
双蝶を祝福しつつ見送れり 相生垣瓜人 明治草抄
喪服の黒に白い紋の紋白蝶のおくさん 荻原井泉水
相ふれてひそやかにあり暁の蝶 桂信子 月光抄
窓の影やとまりて動く蝶の羽 正岡子規 蝶
草いきれそのまま蝶のいきれかな(浦和の見沼通船堀) 細見綾子
草にはあらしのあとの日のさして蝶々 荻原井泉水
草の葉に児の這ひよる胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
草を出し雷蝶の恐ろしゝ 原石鼎 花影
草を焼く蝶の骸の一片も 山口青邨
草化して胡蝶になるか豆の花 正岡子規 豆の花
草荒れて人なき城の胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
草低く見しが失ふ山の蝶 及川貞 夕焼
蒼白な火事跡の靴下蝶発てり 赤尾兜子 虚像
束の間の蝶黄なりけり交差点 岡本眸
待つは愉し肩のほとりゆ蝶生れて 藤田湘子 途上
大きな蝶を殺したり真夜中 種田山頭火 自画像 層雲集
大一滴凝りし松脂日蔭蝶 中村草田男
大橋の裏に蝶飛ぶ日和哉 正岡子規 蝶
大梁にいつの世の煤蝶生るゝ 飴山實 次の花
第二蝶第三蝶も見終れり 相生垣瓜人 明治草
滝のぼる蝶を見かけし富士道者 飯田蛇笏
滝頭一蝶わたり~ゆき 清崎敏郎
濁流へ木の葉と見しは蝶なりし 細見綾子
谷深く烏の如き蝶見たり 原石鼎 花影
誰の忌か無数の蝶のうち横切り 能村登四郎
探すもの探し得たるや蝶止まる 右城暮石 散歩圏
地に置きし影を重しと蝶翔たず 野澤節子 未明音
地の底に土管埋めきし肩に蝶 飴山實 おりいぶ
地を這へる鴉蝶あり何せるや 相生垣瓜人 負暄
地獄絵を抜け出し故の蝶の黒 桂信子 花影
稚牛のわかき股間を蝶抜ける 能村登四郎
稚子の列蝶がみちびき蝶が追ふ 水原秋櫻子 緑雲
蜘の巣に胡蝶のからのあはれ也 正岡子規 胡蝶
蜘蛛の囲に月の出刻の蝶潔し 飴山實 おりいぶ
蜘蛛の囲に残る全き蝶の翅 右城暮石 句集外 昭和五十一年
蜘蛛の囲の蝶がもがくに蝶が寄る 橋本多佳子
茶刈機は横刈り蝶も横飛びに 百合山羽公 樂土
中空を蝶落ちて来し牡丹かな 原石鼎 花影
宙飛ぶ紙のごと蝶めくれゆき艀の主婦 赤尾兜子 蛇
昼顔に茶色の蝶の狂ひ哉 正岡子規 昼顔
昼寝する目つむる隅を蝶よぎる 篠原梵 年々去来の花 中空
虫干の小袖に蝶のとまりけり 正岡子規 土用干
朝凪ぎし熔岩の滝津瀬蝶わたる 前田普羅 春寒浅間山
蝶、にげもせず蝶に追われている 荻原井泉水
蝶あまたまとひて土佐の山中に 桂信子 草影
蝶あらはれて佛足の歩幅かな 岡井省二 五劫集
蝶いでゝあそぶ高嶺の二日かな 渡邊水巴 富士
蝶おどる子に忘れられし泣顔に 岸田稚魚 雁渡し
蝶かけて水瀬はげしくながれけり 飯田蛇笏 雪峡
蝶が消えたので風がある 荻原井泉水
蝶が蝶の影もつてとんでいるきよう 荻原井泉水
蝶が通る、さくら前線お通りです 荻原井泉水
蝶が飛び干物蝶の如く舞ひ 上野泰 佐介
蝶くるや長押にかけし槍の先 正岡子規 蝶
蝶しばし舞ふや翁の夢の上 正岡子規 蝶
蝶たつや菓子箱の底浅きより 佐藤鬼房
蝶つまむやはらかき胸つぶすまし 山口青邨
蝶つるめ鬱金の花の日の中に 燕雀 星野麥丘人
蝶として生れたことを舞いに舞う 荻原井泉水
蝶とぶや道々かはる子守歌 正岡子規 蝶
蝶とぶ風心の岸を洗ひけり 飯田蛇笏 家郷の霧
蝶ともならずあら孑孑の業因や 正岡子規 孑孑
蝶と化す菜の花ばかり峠村 上田五千石 森林
蝶と居り三鬼の墓の瞿麦紋 松崎鉄之介
蝶と言ふ声に姿のはやあらず 鷹羽狩行
蝶ながるる風にはねあそぶ蜥蜴かな 飯田蛇笏 山廬集
蝶ながるゝ風にはねあそぶ蜥蜴かな 飯田蛇笏 霊芝
蝶になほ蝶の黄昏ありにけり 相生垣瓜人 負暄
蝶になる途中九億九光年 橋閒石 卯
蝶に蝶巌に波飛ぶ白日夢 林翔 和紙
蝶に蹤きいつもよりとほく子とあるく 篠原梵 年々去来の花 雨
蝶ぬるや波にぬれたる石の上 正岡子規 蝶
蝶のあとから参る 荻原井泉水
蝶のあとから蛇惑う墓地五番街 橋閒石 風景
蝶のとぶいまはひたすらなるさまに 山口青邨
蝶のとぶ妻の架けたる掛稲に 高野素十
蝶ノ羽ニ霜置ク夜半ヤ冴エ返ル 正岡子規 冴返る
蝶の羽の雪の光にあわたゞし 渡邊水巴 富士
蝶の羽飛ぶべく開く童話開く 香西照雄 対話
蝶の渦眠うなりたる静臥時 野見山朱鳥 曼珠沙華
蝶の影二つとなりし土筆かな 原石鼎 花影
蝶の屍に光鎮めし湖の澄み 鷲谷七菜子 銃身
蝶の屍に覆われてわが妹なる島 橋閒石 荒栲
蝶の昼艶深くなる砧盤 原裕 青垣
蝶の昼天使のごとく見舞はれぬ 村山故郷
蝶の昼韃靼蕎麦といふものを 星野麥丘人 2004年
蝶の白睡蓮の白にうちかたず 山口青邨
蝶の白蝶の黄心迷ふ日に 稲畑汀子
蝶の飛ぶあたりに賤の摘菜哉 正岡子規 蝶
蝶の恋まぶしきまでに昇りつめ 野見山朱鳥 曼珠沙華
蝶の晝隣も麺麭をこがしける 藤田湘子 途上
蝶の翅たためば模様かさなりぬ 藤田湘子 神楽
蝶は身の濡るるまで梅雨の花に沈み 橋閒石 朱明
蝶ひたすらとまる廃屋の菜の花に 赤尾兜子 歳華集
蝶ひとつ吐きて薄暑の杉林 石塚友二 玉縄抄
蝶ひとつ飛べども飛べども石原なり 種田山頭火 自画像 層雲集
蝶ひらひら御橋の裏に朝日さす 正岡子規 蝶
蝶ふせた五器は欠けたり面白や 正岡子規 蝶
蝶ふたつ風にもつれて水の上 正岡子規 蝶
蝶まつすぐ線路の果は砂利の中 飴山實 おりいぶ
蝶まへりなみの白よりしろき蝶 渡邊白泉
蝶めしひ理化学辞書に燈がともる 佐藤鬼房
蝶も寄らぬ枯山水のむつかしや 橋閒石 卯
蝶も飛ぶ菜の花漬の京の昼 山口青邨
蝶をどる子に忘れられし泣き顔に 岸田稚魚 負け犬
蝶を飼ふ人胸もとを見つめられ 飯島晴子
蝶を追ふ虻の力や瓜の花 正岡子規 瓜の花
蝶を捕る網がきらめき蝶きらめく 篠原梵 年々去来の花 中空
蝶一つひらひらひらと又一つ 正岡子規 蝶
蝶一つ撫子の花を去り得ざる 正岡子規 撫子
蝶一つ仏の花に狂ひけり 正岡子規 蝶
蝶一ツ迷ひこんだり大書院 正岡子規 蝶
蝶一ツ優しう出たり長堤 正岡子規 蝶
蝶遠く流れて今日を加速せり 上田五千石『琥珀』補遺
蝶貝によべの雨ため著莪の花 山口青邨
蝶甘藍通勤日焼はじまりぬ 山田みづえ 忘
蝶共と梅雨の憂ひを共にせり 相生垣瓜人 負暄
蝶憩ひただの一片傾ぎやすく 香西照雄 対話
蝶高く落ち来て草に分れけり 原石鼎 花影
蝶在れといへば蝶在る杖の先 西東三鬼
蝶擦過成人の吾子かなた過ぎ 香西照雄 素心
蝶出でてすぐ蝶に遇ふよろこびよ 津田清子
蝶出でて舞ふもかなしや熱の中 山口青邨
蝶吹かれ来て吹かれ去り芝青む 橋閒石 朱明
蝶吹雪紫なりや白なりや 高野素十
蝶生まれどこかに呱呱の声すなり 林翔
蝶生まれ翅をひらきぬ西東 鷹羽狩行
蝶生るゝことに木挽の身のほとり 飴山實 辛酉小雪
蝶生る高嶺の壁のきららかに 藤田湘子 てんてん
蝶生る女人高野の森の奥 有馬朗人 耳順
蝶生れてたちまち負ひし広翅なる 野澤節子 未明音
蝶生れぬ白と緑の餅も搗く 百合山羽公 寒雁
蝶羨し蝶には鍬はもてぬけれど 細谷源二 砂金帯
蝶多し一斉に葱花を上げ 高野素十
蝶待つと端居し居れば虻の声 正岡子規 虻
蝶々、一の鳥居からは渚になる 荻原井泉水
蝶々、光があつて影がある光の中 荻原井泉水
蝶々、日がさして梅雨のあがつたのでもなく 荻原井泉水
蝶々、風が春のリズムをかく 荻原井泉水
蝶々が如何な息して草の中 細見綾子 桃は八重
蝶々が飛ぶポケットの喪章より 有馬朗人 母国
蝶々とんぼ青いばつたも式次第昼になる 荻原井泉水
蝶々に手鞠あやつる唐子かな 正岡子規 蝶
蝶々に食ふものありや友ら飢え 赤尾兜子 稚年記
蝶々のあはれ小さし芭蕉林 野見山朱鳥 曼珠沙華
蝶々のいくつもとびて一夫人 高野素十
蝶々のおどろき発つや野菊の香 前田普羅 春寒浅間山
蝶々のとぶ厨子奥といふところ 高野素十
蝶々のとんでをりたる一事かな 高野素十
蝶々の一つとびたる暮春かな 高野素十
蝶々の高く飛ぶ五階かな 正岡子規 蝶
蝶々の黒きは男姿かな 正岡子規 蝶
蝶々の中つきわけて揚雲雀 正岡子規 揚雲雀
蝶々の沈みし芝を踏みゆかん 石橋秀野
蝶々の二つとびたる人の行く 高野素十
蝶々の慕ふ花輪や棺の上 内藤鳴雪
蝶々の来べき庭なり桜草 正岡子規 桜草
蝶々もつれつゝ青葉の奥へしづめり 種田山頭火 自画像 層雲集
蝶々もてんたう虫も飛ばざりし 高野素十
蝶々も加速減速して遊ぶ 百合山羽公 樂土以後
蝶蝶やをさな子つまむ馬の沓 正岡子規 蝶
蝶々や一かたまりになって飛ぶ 正岡子規 蝶
蝶々ヤ駅々ノ子守歌 正岡子規 蝶
蝶々や下山の若衆たゞ一人 正岡子規 蝶
蝶々や牛皆眠る八ツ下り 正岡子規 蝶
蝶蝶や順礼の子のおくれがち 正岡子規 蝶
蝶々や真午来て飛ぶ裏戸口 原石鼎 花影
蝶々や人なき茶屋の十団子 正岡子規 蝶
蝶々や唐子行列して遊ぶ 正岡子規 蝶
蝶々や旅人になつて見たく思ふ 正岡子規 蝶
蝶々をたましひと呼ぶ希臘人 有馬朗人 立志
蝶々手離せば低う舞うて葉桜の奥へ 種田山頭火 自画像 層雲集
蝶鳥に八重褪せそめし椿かな 原石鼎 花影
蝶鳥の翅和らげて川流る 右城暮石 句集外 昭和三十七年
蝶追ふや旅人餅を喰ひながら 正岡子規 蝶
蝶追ふや涸沼(ひぬま)につゞく蝶の原 高屋窓秋
蝶凍てており巻尺を巻き返す 橋閒石 微光以後
蝶二つ一度に麦に沈むとき 上野泰 佐介
蝶二つ同じ形にとまりをる 上野泰 佐介
蝶二枚もつれ導くピラミッド 有馬朗人 母国
蝶白く蕊に羽ばたく牡丹かな 原石鼎 花影
蝶飛て琴ひく局々かな 正岡子規 蝶
蝶飛ばすべく煽ぐなる麦生かな 石塚友二 光塵
蝶飛ブヤアダムモイブモ裸也 正岡子規 蝶
蝶飛ぶや山は霞に遠くなる 正岡子規 蝶
蝶飛ぶや人なき城に日のあたる 正岡子規 蝶
蝶飛ぶや双鞭将の鞭の尖 正岡子規 蝶
蝶飛ぶや二子の山の山はづれ 正岡子規 蝶
蝶飛ぶや白昼の影の花時計 村山故郷
蝶飛や蘇山人の魂遊ぶらん 正岡子規 蝶
蝶飛んでうだつの家並越えにけり 稲畑汀子
蝶飛んでゆすらの花のこぼれけり 正岡子規 蝶
蝶飛んで正夢となる日向婆 原裕 青垣
蝶飛んで石蕗のそれより黄なりけり 石塚友二 玉縄抄
蝶飛んで風の奈落の吉野杉 原裕 青垣
蝶舞ふやドックヤードの昼休 松崎鉄之介
蝶舞ふや太刀ふりかざす居合抜 正岡子規 蝶
蝶蜂に牡丹まばゆき山家かな 原石鼎 花影
蝶蜂の高さの上を谷こだま 藤田湘子 てんてん
蝶蜂の翅落ちつけず葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十九年
蝶蜂も死にて花野の終る時(奥志賀六句) 細見綾子
蝶眠し蜜柑の花の白ければ 安住敦
蝶揚る*かりんの花を高しとせず 安住敦
蝶来りさびしからずや白菊のみ 山口青邨
蝶来るや梅雨の晴間の五葉松 前田普羅 普羅句集
蝶落ちて砂の摺鉢千尋なす 岸田稚魚 筍流し
蝶乱舞黄を白が白を黄が追へり 上野泰 佐介
蝶掠めしのみの光陰算ふべし 小林康治 四季貧窮
蝶孵りの大前よぎりけり 前田普羅 春寒浅間山
蝶籠の長き夜に入る影ふたつ 古舘曹人 樹下石上
蝶颯つと展墓の花を摶ちにけり 飯田蛇笏 山廬集
追ひかけた蝶や桜の河むかひ 正岡子規 蝶
追ひ追はれする蝶に第三の蝶 鷹羽狩行
爪ながき老婆絶入る蝶の渦 橋閒石 風景
爪紅蝶岬を海へかけてとぶ(沢木欣一句碑、沖縄辺戸岬に建つ) 細見綾子
底紅の花や一と日のせせり蝶 後藤夜半 底紅
庭あれば花々あれば胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
庭に来る胡蝶うれしき病後哉 正岡子規 胡蝶
鉄塔があやつる蝶のかずしれず 下村槐太 天涯
鉄塔があやつる蝶の数知れず 下村槐太 光背
鉄路一線蝶のもつるるいくところ 山口青邨
天高し飛ばねば見えぬ蝶の瑠璃 香西照雄 素心
天高し老蜂に又痩蝶に 相生垣瓜人 明治草
天日の照りのくらくて蝶とべり 右城暮石 句集外 昭和十三年
天日は道をたがへず蝶生るる 鷹羽狩行
展墓蝶既に花筒細し細し 永田耕衣
田の色や黄蝶一つ浮かべつつ 相生垣瓜人 負暄
電信をはなれた道や飛ふこてふ 正岡子規 胡蝶
土管渉り蝶追ひて吾子入園す 能村登四郎
土工等の昼寝の刻を蝶雀 右城暮石 声と声
怒る屋根極彩をもて蝶に対く 佐藤鬼房
倒れてはウインドサーフィン水漬く蝶 百合山羽公 樂土以後
凍てずしてさやかに蝶の飜る 相生垣瓜人 明治草
凍て蝶にしくしくの声ありにけり 能村登四郎
凍土に磔せられしかとべぬ蝶 上田五千石『田園』補遺
島かなし銭葵には蝶多く 高野素十
島蝶よべの凶夢とかすめ去る 福田蓼汀 山火
桃は実に目へ来る蝶を打ちはらひ 石川桂郎 高蘆
盗掘の話もんしろ蝶現れぬ 雨滴集 星野麥丘人
頭涼し麦生ひたすら蝶々行き 細見綾子
同行ハ胡蝶たのんて二人哉 正岡子規 胡蝶
童女にほふ岬の蝶を眸に捉へ 安住敦
道づれは胡蝶たのむやひとり旅 正岡子規 胡蝶
道づれは胡蝶をたのむ旅路哉 正岡子規 胡蝶
道のべやふたりしづかに山の蝶 石川桂郎 含羞
道拓く土盛ればゐて蝶飛べる 右城暮石 句集外 昭和十六年
奈落めく万緑の谷蝶ただよふ 鷲谷七菜子 銃身
奈良の蝶わかくさ山を上下して 百合山羽公 樂土
二三町出舟追はへる胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
尼寺の蝶花石蕗の光輪に 野澤節子 花季
虹消えしそら漆黒の蝶ゆらめき 鷲谷七菜子 銃身
日の中に某寺院あり蝶黄なる 飯島晴子
日盛の蝶飛んでゐる森の中 山口青邨
入学をして四五日目蝶の昼 後藤夜半 底紅
葱の花尽きて蝶々舞ひ上る 山口青邨
葱坊主あるいは蝶のあがりけり 安住敦
猫の夢上に胡蝶の狂ひ哉 正岡子規 胡蝶
濃山吹蝶蜂よぎるものは消ゆ 山口青邨
波暑し男女蛾と湧き蝶と群れ 飯田龍太
破れ蝶が砂利訪ふ栄華の跡無くて 香西照雄 素心
馬鈴薯畑蝶いまだ望楼そちこちに 山口青邨
梅雨あがるすぐに揃ひしごとき蝶 及川貞 夕焼
梅雨近く婉なる蝶の殖えにけり 相生垣瓜人 明治草
梅雨晴のせめては蝶のにぎやかに 高野素十
梅雨蝶の柱の陰に昨日より 桂信子 草影
梅雨入前蝶が別れに来りけり 相生垣瓜人 負暄
梅雨明けや影脱ぎ捨てて蝶昇る 林翔 和紙
梅雨来る紋白蝶に導かれ 相生垣瓜人 負暄
梅雨冷の蝶や頸より痛みつつ 赤尾兜子 玄玄
売れのこる緑の羽根は蝶になれ 百合山羽公 樂土
萩によらで蝶の過行く恨哉 正岡子規 萩
萩の蝶とび立ち己レ知らしむる 右城暮石 句集外 昭和十六年
萩刈りてあたりにふゆる蜆蝶 細見綾子
萩咲きてより小きざみの蝶の羽 後藤夜半 底紅
白き蝶牡丹の花をかいくぐる 細見綾子
白き蝶昨日と同じ蝶なるや 細見綾子
白き蝶青田を翔けて翅汚る 相馬遷子 雪嶺
白シャツの背にとまりたりしじみ蝶 細見綾子
白も黄もなく蝶まぎれ雲の峰 山口青邨
白扇を蝶の如くに使ひをり 上野泰 佐介
白蝶は川柳にも眠るらし 細見綾子
白蝶も紫蝶もこの日より 高野素十
白蝶々いつもつがひのあと先に 細見綾子
白蝶々しだれざくらをぬひ倦まず 細見綾子
白蝶々すすきを出でて帰り来ず 細見綾子
白蝶々飛び去り何か失ひし 細見綾子
白日に蝶の交りしうつつかな 藤田湘子 てんてん
白日は蝶の背 蝶の尿に降る 赤尾兜子 蛇
白露にぬれて重たし萩の蝶 正岡子規 萩
薄荷畑緑黒きまで蝶とばす 山口青邨
爆音下水かがやいて蝶溺る 佐藤鬼房
麦刈つて島の畑は蝶多し 高野素十
麦刈りし跡も蝶とぶ常のごと 下村槐太 天涯
麦束が花圃の蝶々散らし通る 香西照雄 対話
箱の画や子供に蝶の羽生えたる 正岡子規 蝶
八月の蝶飛ぶ木曾の木立哉 正岡子規 八月
晩春の小蝶もよらず絣織る 橋閒石 朱明
緋縅蝶羽やぶれたるやすらひに 山口青邨
飛ぶ蝶に花の天井続きをり 上野泰 佐介
鼻紙すてると野の蝶になる春というもの 荻原井泉水
筆立は黄なり紋白蝶庭に 山口青邨
紐結ぶごと双蝶の飛び別れ 上野泰 春潮
百合化してダム行く蝶となりゆけり 上田五千石 琥珀
百合化して蝶となる日を坊ノ津に 雨滴集 星野麥丘人
漂ひて野分の蝶の腋暗し 小林康治 玄霜
病む手にて愛撫する妻蝶と化す 岸田稚魚 負け犬
苗床や内灘砂丘蝶稀に 高野素十
苗代に蝶蜻蛉の幼なさよ 右城暮石 句集外 昭和五年
浜風になぐれて高き蝶々かな 原石鼎 花影
夫の菊虻来蝶来て猫跳んで 及川貞 夕焼
富士の見える坐禅石、蝶が坐つている 荻原井泉水
布団干す妻の辺に蝶生れけり 草間時彦 中年
斧の上蝶きらめきて園を出ず 原裕 葦牙
撫子に蝶々白し誰の魂 正岡子規 撫子
風が海より土手草の蝶々おちつかず 種田山頭火 自画像 層雲集
風に来て石臼たのむ胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
風の蝶日の蝶舞と踊の差 鷹羽狩行
風細き島木の葉蝶夕まぎる 佐藤鬼房
風吹いて蝶杣山を迅くすぎぬ 飯田蛇笏 山響集
風吹て山吹蝶をはね返し 正岡子規 山吹
風蝶花ひやりと風の濤がきて 平井照敏 天上大風
粉蝶の苛立たしきは梅雨近し 相生垣瓜人 明治草
平板な石の念力蝶をとどむ 橋閒石 風景
平明の蝶ねむり居り青薄 原石鼎 花影以後
並松に人もなし胡蝶ひらりひらり 正岡子規 胡蝶
閉ぢし翅しづかにひらき蝶死にき 篠原梵 年々去来の花 雨
別れ蚊帳干す頃しじみ蝶多し 細見綾子
遍路いまは通らぬみちの草に蝶 鷲谷七菜子 天鼓
弁に触れし蝶高空へ牡丹かな 原石鼎 花影
捕蟲器に伏せたる蝶は蛇の目蝶 杉田久女
墓山に蝶くるふさまいく世経し 松村蒼石 雁
墓地にても蝶を荒しと思ひけり 相生垣瓜人 負暄
母の尿とるにも馴れて稚な蝶 能村登四郎
蓬生や蝶吹き返す夕嵐 正岡子規 蝶
訪ね来る蝶の少なき恨みあり 相生垣瓜人 明治草
亡び行く家の紋章蝶凍てる 有馬朗人 母国
冒頭は菊蝶のむらがりて 飯島晴子
北国の菊日和蝶よそ~し 高野素十
北国の日和たのめず蝶さむし 上田五千石『天路』補遺
牧晴れて五月雨蝶の名を負はず 上田五千石『琥珀』補遺
摩天崖蝶になりたる己れ飛ぶ 松崎鉄之介
枕辺に寒の三日を生きし蝶 中村苑子
又しても黄昏に見し蝶なりし 能村登四郎
妙義山そばだつ村の蝶の昼 上村占魚 球磨
霧だちて金色しづむ樺の蝶 飯田蛇笏
霧を来て葉脈あらき飛騨の蝶 能村登四郎
霧幽き笹原を出ず深山蝶 藤田湘子 神楽
名園をめぐれり蝶は蝶の道 右城暮石 虻峠
明日香路の今日限りなく蝶生れむ 能村登四郎
迷ひ行く胡蝶哀れや小松原 正岡子規 胡蝶
綿白の蝶が群がる時計の裏 有馬朗人 母国
網に入る蝶に真黒きはあらず 平井照敏 猫町
木隠れ飛ぶ畝傍の蝶の小ささよ 有馬朗人 母国
木影明りを蝶飛ぶ見ゆれ夕長し 村山故郷
木下闇しゞみの蝶をひそめけり 石橋秀野
黙視せり蝶が蜥蜴に食はるるを 相生垣瓜人 明治草
目薬壜散る白く蝶くさい柱廊 赤尾兜子 虚像
紋白蝶かかはりもなく菖蒲の芽 山口青邨
紋白蝶は上蜆蝶は下紅粉の花 山口青邨
紋白蝶羽根ぼろ~に春ゆけり 細見綾子
門はさして蝶々、郵便はポストにくる 荻原井泉水
夜の蝶人ををかさず水に落つ 飯田蛇笏
野の涯まで白蝶の浮き沈み 桂信子 草影
野の起伏小春の蝶の起伏かな 稲畑汀子
野の道や書生美しき蝶を網す 正岡子規 蝶
野分あと茶色の蝶をつけ戻る 細見綾子
野分やんで蝶飛ぶ岡の日和哉 正岡子規 野分
野分晴れて手負の蝶の低く飛ぶ 正岡子規 野分
野遊びのシャツに胸あり蝶とまる 岡井省二 明野
薬瓶どこまで蝶のつき来たる 橋閒石 雪
愉しさの夫人と蝶と坂に逢ふ 藤田湘子 途上
油照り油塗れの鴉蝶 相生垣瓜人 負暄
優しかる蝶もきびきび振舞へり 相生垣瓜人 明治草
遊蝶花などと明治の文人よ 山口青邨
遊蝶花蝶を残して舞ひ出でし 相生垣瓜人 明治草
遊蝶花買はれ遊歩の供をせり 百合山羽公 樂土
遊蝶花売れぬ数鉢あたたかし 百合山羽公 樂土
遊蝶花房の鏡に香ばしりぬ 飯田蛇笏 旅ゆく諷詠
夕月に七月の蝶のぼりけり 原石鼎 花影以後
夕潮や蝶を収めし豆の花 藤田湘子 途上
夕野分翼ぞゆるき蝶過ぎぬ 藤田湘子 途上
余花の蝶しばらく波にあそびけり 西島麦南 人音
葉洩れ日の遊ぶ羽化せる蝶の上 野澤節子 未明音
陽炎の中に舞ひこむ胡蝶哉 正岡子規 胡蝶
羅のお蝶夫人の望遠鏡 山口青邨
利根べりに寝ころび足で蝶を追ひ 上野泰 佐介
立葵咲きのぼりつつ蝶あつめ 山口青邨
流雲の穂に高山の蝶生れ 上田五千石『天路』補遺
旅五日鉄路のさびにつく蝶々(真砂子結婚のため上京、秩父へ行く、原子公平氏、金子兜太氏同行) 細見綾子
両眼の蝶や片眼に見うしなふ 石川桂郎 含羞
涼夜なり蝶細密画絢爛と。 藤田湘子 神楽
緑蔭をぬけ出し蝶に吉備の空 上田五千石『天路』補遺
瑠璃蜆蝶紅蜆蝶ここより美(よ)き村か 香西照雄
礼者女人群れてにはかの蝶花園 上田五千石『天路』補遺
恋失せて蝶のもつれを見てをりぬ 鈴木真砂女 紫木蓮
露けさの中の馬糞に黄蝶つく 細見綾子
露滋き喬樹に沿ひて蝶上る 飯田蛇笏
露涼し蝶と目覚めを同じうす 野見山朱鳥 幻日
藁屋より蝶出て広き塩害地 飴山實 おりいぶ
湾口に蝶の点滴ザボン売 原裕 葦牙
雙蝶の相追ふ様も荒けなし 相生垣瓜人 明治草
雙蝶を祝福しつつ見送れり 相生垣瓜人 明治草
曼珠沙華の炎へ蝶が死にに来る 林翔
曼珠沙華漆黒の蝶つゆ吸へり 松村蒼石 寒鶯抄
寐るやうつゝ小春の蝶の影許り 正岡子規 小春
晨起窓を開くれば蝶や明治人 中村草田男
椽へ出てたまたま蝶を見る日哉 正岡子規 蝶
樅の木をめぐりて蝶の荒荒し 佐藤鬼房
櫟の蝶我が洋服も嚊ぎに来し 右城暮石 上下
櫟枯葉蝶(クヌギカレハ)擬態いつまで壷の碑に 佐藤鬼房
鬱々と落日の蝶父み終ふ 佐藤鬼房
涅槃図の蝶のみ翅のたたまれず 右城暮石 句集外 昭和三十一年
涅槃像胡蝶の夢もなかりけり 正岡子規 涅槃像
濛々と数万の蝶見つつ斃る 佐藤鬼房
翔け翔くる蝶の頭は鈴ならむ 三橋敏雄
薔薇窓に遠く紋白蝶とべる 山口青邨
蜆蝶とべり唐傘茸よりひくく 山口青邨
蜆蝶には荒々し磧石 後藤比奈夫
蜆蝶もつとも低し雨の中 山口青邨
蜆蝶一つ紺菊一輪末枯るる 山口青邨
蜆蝶羽の奥所の深き瑠璃 山口青邨
蜆蝶羽根の内側蜆色 細見綾子
蜆蝶蚊帳干しし頃思ひ出す 細見綾子
蜆蝶湧くがごとくに飛ぶ日あり 細見綾子
蜆蝶来て親しめり褪せし蚊帳 細見綾子
蜻蛉来て蝶来て役者そろひたる 後藤比奈夫
蹌踉と十一月の黄蝶舞ふ 山口青邨
颱風の眼の晴明に蝶あそぶ 日野草城
颱風来飛ぶを好まぬ蝶とんで 山口青邨
鶺鴒と蝶のもつ黄のうつくしく 山口青邨

蝶 続補遺

あたふたに蝶の出る日や金の番 小林一茶
あめつちの親をこそとへ蝶ひとつ 其角
いざや蝶おもき身すらも舞の袖 琴風
いざ障子あけたら蝶もはいろうか 惟然
いそがしい心を寐てや花の蝶 浪化
いまはまた畑のぬしか飛胡蝶 舎羅
うきくさや蝶のちからの押へても 千代尼
うつゝに蝶となりて此盃に身を投げむ 吉分大魯
うのはなに老つくりけり蝶の眉 寥松
うめ散や蛤貝の蝶つがひ 建部巣兆
おさへての指に粉のつく小蝶哉 琴風
およずけの物やは思ふ蝶ふたつ 東皐
かたぶきて蝶のかゞみや菊の輪 野坡
かた岡や雪垣とれて蝶が舞ふ 寥松
かれ芝や若葉たづねて行胡蝶 百歳
かれ飯の蝶と化してや燕子花 中川乙由
きさがたやまだ覚きらぬ蝶の夢 魯九
きのふなら蝶にはまけじ衣がへ 桃妖
くりかへし麦のうねぬふ小蝶哉 曽良
くろい蝶あれでも花にめづるかな 小西来山
こゝろ能蝶もあそびに此座敷 芙雀
さはるやうさはらぬやうに菊の蝶 土芳
さむしろや蝶も巻込俄あめ 高井几董
しらむ夜や山がみゆれば蝶が飛 寥松
しら芥子にはかなや蝶の鼠いろ 嵐蘭
しら藤や吹落されて蝶の雲 野坡
すみれとる跡や日暮て蝶斗 土芳
それはさもし三文花にとまる蝶 寥松
たはれ来よ袂に入ん飛胡蝶 三浦樗良
たんぽゝや折~さます蝶の夢 千代尼
つまゝうとすれば蝶ゆき蝶とまる 井上士朗
つまみ来て女蝶男蝶の僉儀哉 三宅嘯山
つれ~と白日蝶の羽風かな 千那
でゝ虫のあら腹だちや花に蝶 寥松
とびたちてもろきは蝶のこゝろかな 夏目成美
とぶ蝶は何の花候暗まぎれ 土芳
とまらんとして流るらむ水に蝶 寥松
ともし火にこがるゝ蝶を夢路かな 加藤曉台
ともなふて我も行たし蝶の道 りん女
なの花や蝶と虻とがうちむかひ 釣壺
ぬるゝ日をそこねもやらず蝶の羽 高桑闌更
ぬる蝶の影早き瀬に流れけり 桜井梅室
ねこの子のくんづほぐれつ胡蝶哉 其角
はかなしや蝶の羽染る鳥の糞 黒柳召波
はつ蝶のちいさくも物にまぎれざる 加舎白雄
はつ蝶や骨なき身にも梅の花 半残
はつ蝶をわするゝ頃や飛小蝶 田川鳳朗
はり物の相手にならぬ柳かな 一蝶 一丁墨
はれりつと実蝶なども鳥なども 惟然
ひら~と墓原までもはるの蝶 夏目成美
ふり袖に蝶がもつるゝほれたやら 壺中
ほろ~とこぼれかゝるや草の蝶 鈴木道彦
まだ痩ぬ蝶や芙蓉の暖まり 中川乙由
まだ蝶の羽のこはばりや風のせい 釣壺
みじか夜や三味せん草に蝶のかげ 建部巣兆
みも汐に蝶のうごかぬ曇かな 袁丁 続深川集
むすばれて蝶も昼寐や糸ざくら 千代尼
むつれどしの胡蝶鏡にうつろへり 東皐
もぬけ行胡蝶のからや窓の雨 丈草
ゆふがほに足さはりけりすゞみ床 蝶夢
ゆふがほや白露ながめて蝶の羽 野紅
わが風で我吹おとす胡蝶かな 千代尼
をしなべて声なき蝶も法の場 千代尼
愛敬のこぼれや蝶のはねづかひ 土芳
衣更着のかさねや寒き蝶の羽 惟然
一筋は蝶も道あり和田の原 野坡
一度には寐もせで蝶の眠りけり 乙訓
一日の妻とみえけり蝶ふたつ 蓼太 蓼太句集二編
一柄杓蝶にあびせるさらし顔 如行
稲干せば藪から出る小蝶かな 風国
宇治橋の網にもれたる胡蝶哉 早野巴人
羽氷る蝶もかなしき其日かな 浪化
雨乞の太鼓よわりし夕日哉 蝶夢
永き日や蝶とつれ立勢田の橋 朱廸
鴬のなき集めたる胡蝶かな 土芳
鴬の鳴あつめたる胡蝶かな 土芳
黄になりて落る木の葉や蝶のはね 野明
沖の蝶汐さすまでをねぶりかな 椎本才麿
音なせそ蝶の眠りを折取ん 三宅嘯山
下葉~をやしなひにせん雨の蝶 挙白
何虫の蝶かわづらふ木下やみ 道彦 蔦本集
花に狂ひ月におどろく胡蝶哉 三浦樗良
花に寐てつかまるゝ迄蝶の夢 諷竹
花の蝶蜜作る気もなかりけり 三宅嘯山
花の夢胡蝶に似たり辰之助 其角
花の蘂にこそぐり合歟蝶の髭 三宅嘯山
花を出て一羽あそぶ胡蝶哉 桃妖
花蝶に川ども礫の親なしや 一笑(金沢)
花有て蝶も往て来る柴の門 卓袋
華いろ~蝶なぐさめて立せけり 露川
会津屋は胡蝶に似たりけふの月 調吟 坂東太郎
絵の菊に今朝も餓たる胡蝶哉 嵐雪
葛飾の橋の下ゆく胡蝶かな 飛鯨 靫随筆
蒲公英や菜に行蝶の道次手 鈴木道彦
眼のまへに蝶死でなく鶉かな 夏目成美
岩山や苔のしづくに蝶のつく 寥松
掬はれて行風情ありかぜの蝶 加藤曉台
菊さけり蝶来て遊べ絵の具皿 嵐雪
菊苗に蝶もつばさをしぼりけり 中川乙由
渠が夢に蝶とみえてやかやの*紐 馬場存義
京中へ地主のさくらや飛胡蝶 其角
蕎麦畑に入てや蝶のまぎれ死 岱水
近よりて蝶肝潰す野風呂哉 三宅嘯山
句を洗ふ酒はむかしや夢の蝶 園女
空か身か寐てか覚てか蝶の夢 尚白
鶏頭や色深ければ蝶も来ず 完来
血の出ぬ蝶々の腹や茨かき 三宅嘯山
月の夜の桜に蝶の朝寐哉 千代尼
古文よむ人も一日花に蝶 浪化
五月雨や折~出る竹の蝶 三浦樗良
乞食も蝶も日長し下河原 桜井梅室
行春や飛かふ蝶の心はしらず 松岡青蘿
行人を蝶の追ぬく花野哉 李東
此比やあとさきしらず花に蝶 猿雖
菜の花のいろをぬすみし胡蝶かな 為有
菜の花の色にも染ず蝶の夢 中川乙由
菜の花の莟をせつく胡蝶哉 為有
菜の花や行当りたる桂川 蝶夢
菜の蝶は菜に居る御所の桜かな 椎本才麿
傘に蝶蓮の立葉に蛙かな 其角
傘張の睡り胡蝶のやどり哉 重五
山吹をいさむる蝶のその羽哉 濁子
山茶花や蝶のをらぬも静也 李東
散る花に軽さ争ふ胡蝶かな 春海 発句題叢
散花にねてゐて蝶のわかれ哉 小西来山
散花をよい相手也蝶の舞 小西来山
四国路に蝶も渡るや花曇り 紫道
市中の棟から落す胡蝶かな 素丸 素丸発句集
侍に何がなるやら飛ぶ胡蝶 其角
取つきて蝶も散なり花の風 桃妖
酒くさき人に蝶舞すだれかな 加舎白雄
酒臭き人にからまる胡蝶かな 嵐雪 其袋
宗因の蝶々とまれ売れや年 寥松
舟につむ植木に蝶のわかれ哉 高井几董
十徳やはなにはたらく蝶の羽子 左次
春かぜや蝶のうかるゝ長廊下 林紅
春の草むしらで門に蝶またん 長翠
暑き日や蝶鳥落て石黄ミ 高桑闌更
小春とて蝶はくれどもしぐれかな 風国
焼豆麩弁当なしや花に蝶 許六
照れても欝金しろまぬ胡蝶哉 木因
称名に蝶花ちりて声ゆかし 土芳
菖蒲ふく間を待兼る胡蝶哉 桃後
障りてや馬の鼻ひる蝶の舞 三宅嘯山
寝ル所ありて行らめたつ小蝶 北枝
寝れば蝶さむれば今宵蛍かな 支考
寝心や風ふかぬ日の蝶の羽 釣壺
真黒な蝶も飛けり白牡丹 木導
神垣や菜畠は又蝶の舞 中川乙由
身軽さや蜂の一躰蝶の袖 〔ブン〕村
針有と蝶に知らせん花薔薇 中川乙由
塵塚やさくらの中の蝶のから 句空
吹たびに蝶の居なをる柳哉 一笑(金沢)
吹れ来て草にも軽し蝶の宿 凉菟
水仙をまつ命なし霜の蝶 文鳥
水落ちて田の面をはしる鼠かな 蝶夢
睡ル蝶夜ル~何をする事ぞ 其角
是よりは牡丹に移れ蝶の夢 魯九
聖堂に拱く蝶のたもとかな 其角
声なふて思ふ方より小蝶哉 望月宋屋
声立て居代る蜂や花の蝶 炭太祇
青とんぼ花の蓮の胡蝶かな 素堂
青空に見うしなひけり飛胡蝶 寥松
青空やはる~蝶のふたつづれ 北枝
石に蝶もぬけもやらで凍しかな 加舎白雄
石竹のはやしに入や蝶の影 洒堂
石竹の甘露も今や蝶の夢 正秀
折~や蝶に手を出す馬の上 我峰
川舟の先にたつたる胡蝶哉 夕道
川波やあやふく越る蝶も有 高桑闌更
禅とはん子が手の花に舞ふ胡蝶 鈴木道彦
禅門にをくれては飛胡蝶かな 建部巣兆
草の戸や薬を嘗に蝶の留主 高井几董
草臥や身をたふれたる蝶の中 夏目成美
袖に来て袂にきへつみちの蝶 加舎白雄
大はらや蝶のでゝ舞ふ朧月 丈草
大原や蝶の出でまふ朧月 内藤丈草
大津へも京へもいらず舞小蝶 田川鳳朗
大道や蝶の屯す根なし水 東皐
狸にも蝶にもならぬひるねかな 諷竹
誰が形蝶のちなみし案山子哉 野径
地車に起行草の胡蝶哉 黒柳召波
蜘の囲に粉して遁るゝ蝶々哉 三宅嘯山
竹帰る胡蝶の折リし覆哉 一笑(金沢)
茶の花や哀胡蝶の行だふれ 舟泉
猪牙舟や春のゆくへを追ふごとし 蝶夢
朝がほの二葉や蝶の羽にも似し 鈴木道彦
蝶~と算て果はまぎれけり 長翠
蝶~にこぼす物ある小雨哉 助然
蝶~のかるみ覚へよ更衣 野坡
蝶~のつまだてゝ居るしほ干かな 千代尼
蝶~の花にはこぶや化粧水 土芳
蝶~の身の上しらぬ花野哉 千代尼
蝶~の夫婦寐あまるぼたん哉 千代尼
蝶~も御供申やはなの旅 沙明
蝶~も人交りしてあとや先 土芳
蝶~も余波おしむや三月菜 芙雀
蝶~やをなごの道の跡や先 千代尼
蝶~や何を夢見て羽づかひ 千代尼
蝶~や鬼の顔とて憚からず 小春
蝶~や雫にすがる干大根 東皐
蝶~や裾から戻る位山 千代尼
蝶~や風の吹日のたをやかさ 紫道
蝶が身の人よりかなし春のくれ 三浦樗良
蝶くいざ花のしだれにはいろふよ 土芳
蝶さめて又や憂世に狂ひ出る 凉菟
蝶しばしうちわに散て夢の形 土芳
蝶しるや獅子はけものゝ君也と 其角
蝶となる虫かひ得たり草の庵 松岡青蘿
蝶とぶやあらひあげたる流しもと 加舎白雄
蝶とぶや猿を呼ビ込ム原屋敷 其角
蝶とりの新狂言やきくの宿 馬場存義
蝶とんで風なき日ともみえざりき 加藤曉台
蝶に羽のあるも不思義や五月雨 桜井梅室
蝶に雨うき空豆も花ざかり 田川鳳朗
蝶に問ん金数へ見る其現ツ 越人
蝶ねぶれ薄衣きせん日の最中 松岡青蘿
蝶のぞく宿なら覗け道のほど 松窓乙二
蝶の羽に浪ふりたゝけ二見がた 三浦樗良
蝶の羽ね重ておもし女良花 紫道
蝶の羽のさはれば切るる紙衣哉 桜井吏登
蝶の羽も吹すかさるゝ野菊かな 牧童
蝶の羽も染に通ふや紅畠 中川乙由
蝶の気に入た顔なりしやがの花 旦藁
蝶の雪牡丹にきゆる匂ひかな 嵐雪
蝶の舞上羽も声はなかりけり 三宅嘯山
蝶の舞面箱持のかはづかな 木導
蝶の野に夢をあはする菜飯かな 馬場存義
蝶の来て一夜寝にけり葱のぎぼ 半残
蝶は寐て藤は残れり春いづこ 路健
蝶ひとつとばぬ日かげや石蕗の花 其角
蝶ひとつ竹に移るや衣がへ 松岡青蘿
蝶まふや薪一把も門ふさげ 夏目成美
蝶よてふ似たもの見せう水のあわ 寥松
蝶を噛で子猫を舐る心哉 其角
蝶折~扇いで出たる霞かな 千代尼
蝶々と藤は残れり春忘れ 路健
蝶々にちるや烏の大けなし 土芳
蝶々の姉か妹かしのぶ草 土芳
蝶々の寝起にすつと舞て行 りん女
蝶々の草拾ひ行野面かな 三宅嘯山
蝶々は掃ぬ埃や雛あそび 中川乙由
蝶々も袖ぬぎかけて彼岸哉 支考
蝶々やなすびの花をさはり出す 土芳
蝶々や今に達者で蕎麦の花 三宅嘯山
蝶々や秘蔵のはなと口を吸ひ 梢風尼
蝶鳥に出て這まはる蛙かな 朱拙
蝶鳥のあだにや石に立ほむら 紫道
蝶鳥のたねうる人か肘ぶくろ 井上士朗
蝶鳥のまゝ母らしや梅を煮て 松窓乙二
蝶鳥の廻るこゝろや大ざくら 土芳
蝶鳥の手前もあるにちる桜 凉菟
蝶鳥もみなやすげなり花のかげ 井上士朗
蝶鳥や死ぬ日が先きになる仏 松窓乙二
蝶鳥や梢に宿し草に伏し 露川
蝶鳥を待るけしきやものゝ枝 荷兮
蝶飛で馬上の人をさゝへけり 五明
蝶飛ぶや腹に子ありてねむる猫 炭太祇
蝶飛や小狐狂ふ岡のはら 高桑闌更
蝶飛や狙をよび込原屋敷 其角
蝶蜂の春をかゝゆる藤の華 浪化
蝶鳴てくるしやみのゝむらかはき 加舎白雄
灯もとらぬ蝶迄舞や小くらがり 田川鳳朗
討た夜は蝶と千鳥の乳の闇 角上
道くさに蝶も寐させぬ花見哉 千代尼
道のべや馬糞の胡蝶花の蝶 高桑闌更
得わすれじ花の上なる蝶の夢 土芳
二羽になりて蝶かへすなる野中哉 加舎白雄
日の影や眠れる蝶に透き通り 高桑闌更
日をたゝむ蝶の翅やくれの鐘 望月宋屋
馬の糞に身をはめて来る胡蝶哉 紫道
馬士の綱に打るゝ胡蝶かな 亀洞
背戸口や芥を潜る春の水 蝶夢
白昼の夢見にかゝる胡蝶かな 露川
白壁にまよふてたゝぬ胡蝶哉 昌房
白罌粟や散かと見れば白き蝶 木導
麦の中おかしき蝶の二疋哉 寂芝
麦の穂におはるゝ蝶のみだれ哉 可南女
麦の穂を蝶もまくらや磯の軒 野坡
麦菜種見分て蝶の行衛かな 望月宋屋
麦秋の関はゆるさじ勧化蝶 露川
飛んで見て蝶とくらべむ更衣 浪化
飛胡蝶まぎれて失し白牡丹 杉風
飛蝶のとつてかへすや大井川 桃隣
飛蝶もこゝろあるべきさくらかな 梢風尼
飛蝶やまぐれあたりに白牡丹 桃隣
飛蝶を手にふり当ル山路哉 露川
百出てもみな中間也麦の蝶 去来
舞ふ蝶を門にたてこむ上野かな 桜井梅室
風に乗ル身は朝はやき胡蝶かな 林紅
風の蝶きえては麦にあらはるゝ 松岡青蘿
風止て蝶の出て来る野原哉 高桑闌更
物の葉にもつれたがりて胡蝶哉 りん女
蜂の子をのがれて蝶のそだち哉 丈草
蜂はさし蝶は眠るや菊の花 嵐雪
堀川の畠からたつ胡蝶かな 炭太祇
万歳に蝶~とまれたびら雪 左次
眠る蝶それともに散る牡丹かな 小西来山
夢ながら蝶も手折や花戻り 千代尼
夢人はまだ小蝶にて春くれぬ 許六
無き影をゆすり起すや墓の蝶 荊口
綿ぬきや蝶はもとより軽~し 千代尼
木々小草いろ~の中に黒き蝶 高桑闌更
木薬のにほひにあそぶ胡蝶哉 支考
夜見れば菜の葉の裏の胡蝶哉 一笑(金沢)
柳には只居ぬ羽の胡蝶かな 一笑(金沢)
夕顔のえくぼ吸へ~飛胡蝶 風麦
夕顔やしろき物喰て蝶の羽 野紅
夕風や野川を蝶の越しより 加舎白雄
葉うらもる日に驚歟あきの蝶 完来
落花枝にかへると見れば胡蝶哉 荒木田守武
梨花さらに柿のはに蝶すだくらん 嵐蘭
旅駕に如何なる夢を胡蝶かな 馬場存義
旅人の葬の供にや行胡蝶 乙訓
齢延枕上廬生夢蝶舞机辺荘子魂 加藤曉台
浪の花に止りかねたる小蝶かな 文晃 発句題叢
孑孑よ蝶になるさへにくきむし 松窓乙二
寐ころんで蝶泊らせる外湯哉 小林一茶
寐て牡丹さむればもとの胡蝶哉 小西来山
簑虫に蝶~とまる柳哉 鼠弾
蟷螂の夢見て迯る胡蝶哉 如行

以上

by 575fudemakase | 2022-05-17 16:57 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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