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地  の俳句

地  の俳句
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●地形 
青麦に山も見えさる地形かな 青麦 正岡子規
地形の記号見ていて水虫痒くなる 古川克巳
●大地 
あしたより大地乾ける牡丹かな 石鼎
あらしよせくる樹の根にはしかと大地あり シヤツと雑草 栗林一石路
いくたびも震ふ大地や寒昴 桂信子 花影
うなり落つ蜂や大地を怒り這ふ 高浜虚子
おのづから膨るる大地百千鳥 村越化石
この空や鳥も渡らず大地獄 川端龍子
すはすはと大地のわれる暑哉 暑 正岡子規
つと止る蜥蜴大地にま一文字 星野立子
どぶろくにゑうて身を投ぐ大地あり 森川暁水
ぬばたまの大地溝帯を飛ぶ螢 櫂未知子 蒙古斑
はからずも大地ゆるがし草萌ゆる 稲川久見子
ふきまろぶ落葉にしかと大地あり 長谷川素逝 暦日
ふとく射て落つ夕立に大地肌あらは シヤツと雑草 栗林一石路
ほてりまだ大地放れず*きりぎりす 山内弘子
ぼろぼろの秋蝶埋める大地なし 対馬康子 吾亦紅
ものの芽や雨後の大地は声発す 椎橋清翠
もろこしの大地カヌーの目の高さ 新宮 譲
やすらぎの大地なりけり竹落葉 細木芒角星
わが一泊の島の大地よ蟇の恋 久保田ナホ
わが杖の大地の秋を突き歩く 粟津松彩子
アカシアの大地やそこに花の幽 石寒太 あるき神
アメリカの若き大地に鍬始 本田楓月
アリゾナのあかき大地を蜥蜴駆く 仙田洋子 雲は王冠
アルプスの果てなき大地牛馬肥ゆ 畠中じゆん
クレーンの下の大地や草萌ゆる 岩田昌寿 地の塩
サングラス置いて大地をさみしくす 対馬康子 純情
ジプシーの大地に拡げ土用干 東中式子
スタートの手をつく大地草萌ゆる 森田ゆり
ソフトクリーム溶けて流れて大地あり 池田澄子 たましいの話
ツンドラの大地より湧く虎落笛 森田みさ
ラグビーのボール大地に立てて蹴る 粟津松彩子
一月や弓の筈もて突く大地 遠山 陽子
一本杉や大地の四隅に犬が居る 安井浩司
下萌のすでに影ある大地かな 斉藤小夜
下萌や大地の鼓動色となる 脇収子
主は天に昇られ蛇は大地匐ふ 景山筍吉
乙女星春の大地が背に冷ゆる 片山桃史 北方兵團
人あゆむ大地の冷えやはなぐもり 飯田蛇笏 山廬集
人住むを大地といへり石蕗の花 神尾久美子
人寄せの大地に描く暖き 高浜虚子
何も彼も眩しき大地地虫出づ 井口雪嶺
億年の大地の亀裂風光る 川村暮秋
再びは踏めぬ大地よ青き罌粟 宮本文江
冬ざるる大地の続きとして犀 須川洋子
冬ざれて焚く火に凹む大地かな 長谷川かな女 雨 月
冬の霧ある夜の大地親しけれ 原石鼎 花影以後
冬ふかく風吹く大地霑へり 飯田蛇笏 椿花集
冬支度犀が大地を掘るように 矢野千代子
冬草が美味しそうなの嗚呼大地 池田澄子 たましいの話
凍ゆるむ大地に富士の重さあり 須藤常央
凍鶴に大地従ひゆく静寂 稲畑汀子
切岸へ出ねば紫雲英の大地かな 中村草田男
初不動大地に笊を重ね売り 吉田ひろし
初声の軍鶏や大地に爪を立て 田上さき子
初日待つ大地の鼓動聞きながら 松本つね
初漁の舟着く大地揺れうごく 旭昭平
初能の稚児神妙に大地踏み 太田権六
初花の確かな影をおく大地 山田弘子 こぶし坂
初蝶の大地たしかめたしかめ行く 右城暮石
初蝶の大地五重の塔をのせ 野見山朱鳥
力ある大地の恵み冬苺 高浜虚子
北風の爪のあとある大地かな 上野泰 春潮
反逆の唄を凍った大地に投げる 神代藤平
同じ大地に地雷は眠り麦は芽に 原子公平
向日葵の茎は棍棒火山灰大地 高澤良一 さざなみやつこ
向日葵を倒し大地を明け渡す 中居梨津子
向日葵を生かす大地のひび割れて 津田清子 礼 拝
吹き晴れてくらき大地と寒の星 篠原梵 雨
啄木鳥やSTARAYSHEEPと大地ゆ声 川口重美
啓蟄の大地土龍の道動く 福田蓼汀 山火
啓蟄の大地月下となりしかな 大野林火
啓蟄の大地踏み来し足洗ふ 町田しげき
啓蟄を秘めて掃かれし大地かな 泰
喜雨去つて大地のほてり走りけり 佐藤母杖 『一管の笛』
地震て大地のさける暑かな 暑 正岡子規
堅い大地となり這ふ虫もなし 尾崎放哉
夏いまや去るびしよ濡れの大地より 飯田龍太
夏の月大地に軒を並べけり 阿部みどり女
夏大地うねるや鱒のソース煮に 安井浩司 風餐
夏蝶の影や大地は水のごとし 河内静魚
夕立や大地の匂ひ立ちのぼる 小島阿具里
夕端居大地沈んで行きにけり 上野泰 春潮
夕菅の果てより昏るる大地かな 松崎靖弘(玉藻)
夕蝉の揃ひ大地を冷ましけり 阿部みどり女
夜もすがら大地に露の生れたる 広瀬志都子
夜行列車涼しき露の大地かな 長谷川櫂 天球
大人だって大きくなりたい春大地 星野早苗
大地いましづかに揺れよ油蝉 赤黄男
大地ごと揺れゐる家に昼寝かな 長谷川櫂 虚空
大地さへ崩る秋水山削り 福田蓼汀 秋風挽歌
大地さむければ人あらわれて労働者 栗林一石路
大地てふ半球体へ威し銃 細川洋子
大地に捧げる血はなし草を毟る指 八木三日女 石柱の賦
大地に書く地図北方に秋篠や 和田悟朗 法隆寺伝承
大地に湧きし魚は河に棄てられん 安井浩司 氾人
大地に載す蠅もよしみの浮浪の碗 平井さち子 完流
大地のことすこし考え菜を間引く 佐田昭子
大地の苔の人間が帽子をかぶる 尾崎放哉
大地ふと揺れてはゐずや下萌ゆる 前田野生子
大地へおのれをたたきつけたる夜のふかさだ 種田山頭火
大地まづ送り出したる蕗の薹 鷲巣ふじ子
大地より一本一本大根引く 木曽一阿
大地より噴きてむらさきヒヤシンス 斎藤 道子
大地より大空広し霞網 池田澄子
大地より温泉(ゆ)の湧く鼓動はこべ草 高澤良一 寒暑
大地より湧くゆふぐれよ手鞠唄 熊谷愛子
大地より起きあがらんと残る菊 小路紫峡
大地より金を放てる福寿草 山田閏子
大地冷ゆ星には春が来てをりぬ 高木晴子 花 季
大地凍つる為に傾く障子とか 橋本鶏二
大地凍つ地図と眼鏡と油顔 古川塔子
大地凍て凍てし河載せ傾きぬ 片山桃史 北方兵團
大地割れ彩の出でしはクロッカス 小路智壽子
大地怖れて這へぬ子猫を嘲る子等 河野静雲 閻魔
大地断ち瀑布の飛沫空へ噴き 新井悠二(風花)
大地踏んでいのち嬉しや樫若葉 久保より江
大地這ふ西日に赤し畑苺 原石鼎 花影以後
大地飢え空の雲雀がまた燃える 坪内稔典
大根引く大地の重さ感じつつ 岡崎六鈴
大空と大地一つにして立夏 粟津松彩子
大陸に針ひとつ落ちて澄む秋やアジアとは誰が名付けし大地 川野里子
大隅のしらす大地の大枯野 西村 数
天はかなしむ大地より根のはみ出しを 細谷源二
奴隷小屋ありし大地に冬の雨 仙田洋子 雲は王冠
妻へ帰る大地真赤や秋の暮 榎本冬一郎 眼光
子鴉に牛の背不思議な青大地 篠田悦子
宇宙服大地に転ぶ七五三 石川多歌司
富士颪まともに寒し大地獄 乙字俳句集 大須賀乙字
寒がらす大地乏しくひかるかな 窓秋
小鳥ら喜びて接吻くる大地雪解かな シヤツと雑草 栗林一石路
小鳥来る大地の恵み疑はず 川本房子
小鼠がちよろと出て消ゆ枯れ大地 北野民夫
尺蠖の頂礼大地しづかなり 嶋田麻紀
尽大地燃ゆるがごとき散紅葉 赤星水竹居
尾根といふ大地の背骨春の雷 薬師寺彦介
嶽に雪母なる大地揺れにけり 西本一都 景色
引き潮の大地かげろふ九十九里 三枝青雲
心労や蝶呼ぶ大地束の間に 原裕 葦牙
戦争の大地たゞたゞ掘られし(戦争四句) 石橋辰之助
手毬真つ赤堅き大地に跳ね返り 河内静魚
捕虫網蝉を大地に押さえ付け 高澤良一 素抱
新じゃがは大地のかけら雲のかけら 岳本風彦
日脚伸びつゝ酷寒の大地あり 高木晴子 花 季
春の雷大地ゆつくり起こしけり 津田久子
春休み子等の大地の賑はひに 川畑火川
春筍の重さ大地の重さなり 百合山羽公 寒雁
昨宵の雨吸ひし大地の落花哉 西山泊雲 泊雲句集
晩夏掃く大地に立てて竹箒 対馬康子 愛国
暮早し闇にかしづく大地かな 岡野さち子
曼珠沙華消えて大地に骨ささる 三谷昭
朝の日のはしるまで梅大地のもの 上野さち子
朝やけに不意に胸はる大地かな 杉浦ふさ子
朝顔を蒔けば大地の孕みけり 上野泰 佐介
木の実落ちてしかと打ちたる大地かな 東洋城千句
木の実落ち大地些か応へあり 大橋敦子 匂 玉
木蓮や大地で祝う誕生日 対馬康子 愛国
朴落葉大地に花鳥諷詠詩 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
板の間の即ち大地初稽古 深見けん二 日月
果しなき大地いとしと秋耕す 稲畑汀子 汀子第三句集
根木打大地あばたとなしにけり 阿波野青畝
梅一輪踏まれて大地の紋草たり 中村草田男
椿落ち大地俄かにかげりけり 上野泰 春潮
横に寝て大地に遠し年の暮 田中裕明
次々にめり込む大地生コン車 津田ノブ子
死なばこの重き大地よ曼珠沙華 石寒太 あるき神
死なば入る大地に罌粟を蒔きにけり 野見山朱鳥(1917-70)
水仙の芽のもちあぐる大地かな 宮坂静生 春の鹿
水吸つて大地ふくるる朧月 高島つよし
汝おとこ冬の大地のうたを聴け 鎌倉佐弓 天窓から
汲み上げし大地のぬくみ寒の水 成嶋いはほ
沙羅落花大地に梵字こぼすかな 大橋敦子
泉のむ父祖の大地にひざまづき 大串章
流刑の一団 北から翳る大地 江里昭彦 ラディカル・マザー・コンプレックス
流氷に靡きて雪の大地あり 斎藤玄
海のもの大地に干して二月かな 大串章 百鳥 以後
涅槃図の若草色の大地かな 村中[トウ]子
渦潮を見て来し大地踏みにけり 山崎ひさを
測量や春の大地に尺伸ばし 上田和子
湖氷り川躍りゆく大地かな 岡本眸 午後の椅子
灯をもらし端の一戸や枯大地 村越化石 山國抄
炎天や病臥の下をただ大地 斎藤玄 雁道
炎皆大地に沈む焚火かな 鶏二
燈籠に大地ゆつくりとまるかな 松澤昭
爽かな大地に咲きぬ花ほつほつ 零余子
牛鳴いて霜の大地の広がれり 金子青銅
牡蠣船より凍てし大地へ渡りけり 島村元句集
犬ふぐり大地は春を急ぐなり 阿部みどり女
犬ふぐり大地漸く乾きそむ 波多野爽波 鋪道の花
玉葱の白く積まるる大地かな 坂井建
生涯の影ある秋の大地かな 長谷川かな女(1887-1969)
田を截つて大地真冬の鮮らしさ 飯田蛇笏
田遊の太鼓大地に打込めり 関森勝夫
男より菜種こぼるる大地かな 柿本多映
疾走馬枯るる大地の風を焔に 伊藤京子
病葉や大地に何の病ある 高浜虚子
癒えて踏む大地やはらか草萌ゆる 柴田 清
白鳥に大地は塩を強うせよ 正木ゆう子 悠
直立せよ一行の詩 陽炎に揺れつつまさに大地さわげる 佐佐木幸綱
眼ひらきて秋風の大地かな 桜井京子
短日の大地にあけて鶏冠の朱 原石鼎
石狩の果てなき大地閑古鳥 稲畑廣太郎
礎石たち大地の春の音を聴く 狹川青史
神前の堅き大地や蝉落つる 比叡 野村泊月
秋の日の大地ひっそりふくれをる 冬の土 宮林菫哉
秋冷の壁の北海道大地図 成瀬正とし 星月夜
秋耕の大地母なる大地かな 柴崎左田男
秋耕の大地温か知命越ゆ 柴崎左田男
稚児舞の大地踏み鳴る六花かな 野沢節子 八朶集
種子まけばしづかにゆれる大地かな 富澤赤黄男
種蒔くや大地に曲る妻の胴 澤木欣一
積乱雲巨船大地より現はるる 富澤赤黄男
空の色大地にうつり冬館 園山香澄
立春の大地をもたげもぐらもち 長谷川素逝 暦日
筍を発止と立てし大地かな 轡田進
米洗う明日は大地に冬来るらし 対馬康子 愛国
粉々と蝶むらがりぬ尽大地 川端茅舎
綿つみを終へし大地に人を見ず 赤松子
綿の花大地太陽噴上ぐる 上野さち子
緑蔭の大地波打ち幹立てり 池内友次郎
縄飛びや大地ヘノックする子供 古閑純子
老犬の処暑の大地にはらばひて 細谷喨々
耐えがたく大地はありぬ天の川 津沢マサ子 華蝕の海
耕人に日照雨の大地傾斜なす 岩田昌寿 地の塩
耕牛の動き大地の動きけり 奥田麦穂
耕牛の尻に脈うつ大地かな 内藤吐天 鳴海抄
臍ふとく大地はいまだ動かぬなり 赤尾兜子
自然薯掘大地圧へてたしかめて 平井さち子 鷹日和
舞ひ獅子の大地に顎をのせしところ 上野泰
花散らす雨にうるほふ大地あり 稲畑汀子 春光
芽ぐむ木々北の大地は力溜め 松村和喜
芽吹かんと北の大地に犇めく樹々 大郷石秋
苜蓿にまろぶや大地摶動す 軽部烏頭子
若楓の幹岐れたり大地より 青峰集 島田青峰
草は実を結びて大地豊穣に 敷波澄衣
草萌や大地総じてもの~し 高浜虚子
荒布舟見すぎて大地揺れにけり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
菜の花は大地の生絹雨上る 都筑智子
菩提樹や灼けて大地のかぐはしき 長谷川櫂
落椿してをる大地起伏あり 上野泰 佐介
落花いま大地平らにありにけり 桂信子 花影
落葉のせ大仏をのせ大地かな 上野泰 春潮
落葉敷いて大地の思念はじまりぬ 長谷川素逝 暦日
葉むら日に葡萄うつらぬ大地かな 長谷川かな女 牡 丹
葡萄園北の大地に暮れ残る 塩田みどり
葱掘るや大地は昼も深く凍つ 三輪浅茅
蒔く種の嬉々と大地にまぎれこむ 檜紀代
蒲公英は大地の花よ返り咲き 永倉しな
蓬生ふ卑弥呼の触れし大地より 椿文恵
蓮根掘大地にさゝりをりにけり 石井とし夫
蛇ひそむ大地太陽娶る冬 原裕 葦牙
蛇投げて大地を測る縄となれ 安井浩司 汝と我
蜻蛉の曳かるる大地曇りけり 阿部みどり女
蝉の穴乾ききつたる大地かな 山内繭彦
蟇出でて大地の暗さ引きずりぬ 中村菊一郎
蟻塚は同型神の大地かな 九鬼あきゑ
親に添ふ仔馬大地を楽しめり 尾崎和子
記念館起工の大地小鳥来る 稲畑廣太郎
貼りつきて大地をかばふ仏の座 檜紀代
赤き大地の父子の時間天の川 九鬼あきゑ
踊る足応へて阿波の大地かな 谷野黄沙
踏み込んで大地が固しげんげ畑 橋本多佳子
踏む大地駆くる大地のある子馬 水見寿男
逃げても坑夫大地に暗い穴増やし 穴井太 穴井太集
逆立ちをして下萌の大地挙ぐ 廣瀬凡石
造成の大地をけずる神の留守 藤田郁子
運河温み大地に薊復活す 神尾久美子 掌
道をしへとべば大地のぐらぐらす 波多野爽波 鋪道の花
遺跡てふ風立つ大地もの芽出づ 山崎千枝子
野火けむり大地と切れて立つてをり 石井とし夫
野火走る大地の襤褸ひつぺがし 折原ゆふな
金盞花大地起伏の果てに海 坂根白風子 『彩雲』
銀杏散るかならず大地ひろやかに 後藤夜半 底紅
鍬光る黒き大地を耕して 本郷けさみ
阪神忌大地に今朝も生きており 岡村喜美子
雨乞の大地につけし額かな 橋本鶏二 年輪
雨乞祭竜が大地を踏んで舞ふ 下里美恵子
雪しまき大地を伝ふ武器商人 水野真由美
雹ころがりて烈日の大地かな 清原枴童 枴童句集
霙るるや鶴と大地を共にして 藤田直子
霜いぶし火の目咥えて大地這う 中村舟路
霰降る大地に鈴の音満つごとく 柴田白葉女 花寂び 以後
露の大地子の手わが手のなかに小さし 古沢太穂 古沢太穂句集
靄あげて種蒔くを待つ大地かな 福田甲子雄
青き踏む大地に弾みある如く 千原草之
青梅の落つる大地や雨上り 星野立子
青麦のたしかな大地子の背丈 佐藤鬼房
風吹いて大地の乾く伊勢参り 福田甲子雄
風花を舞はせる仕掛大地にも 比奈夫
飯蛸の大地をつかむで死る哉 飯蛸 正岡子規
馬の仔は跳ねて大地をたしかむる 石山雅之
馬鈴薯の花の大地へ伸びし雲 小林一行
馭者の鞭灼くる大地を打てりけり 森田峠
鶴渡る大地の阿呆 日の阿呆 富澤赤黄男
鶴跳べり大地にばねのある如く 大串章 百鳥
麗らかや大地も空も吾のもの 川崎俊子
麦うれて大地膨満の季なりけり 浅原六朗
麦秋の大地共生の灯色かな 柴崎左田男
麦秋の果なき大地父思う 柴原淳子
黒富士を稲妻が刺す大地かな 黒川憲三
●土地 
この土地が丸ごと好きで焼林檎 齊藤千恵子
すかんぽやふるさとといふ死後の土地 高橋悦男
だだつぴろい芝生を、土地が泣くぞと云う母だ 橋本夢道 無禮なる妻抄
づかづかと土地買の踏む曼珠沙華 佐野美智
ゆきのした分布する土地の馬かな 阿部完市 軽のやまめ
キャンプ張る土地者が来て何くれと 高濱年尾 年尾句集
コスモスを咲かせ他人に譲る土地 原田花穂
サングラス見知らぬ土地を大胆に 猪子青芽
何の花火か知らぬをんなの土地訛り 林原耒井 蜩
冬暖を城にあそびてみな土地人 宮津昭彦
冷奴所詮この土地捨て切れず 影島智子
十薬や何を植ゑても出来ぬ土地 十薬 正岡子規
団栗と子がもたらせし土地言葉 金子 潮
土地つ子の犬にかまけて避暑家族 行方克己 昆虫記
土地の値や春星一つこぼれぬか 藤田湘子 雲の流域
土地の名に思ひ出しけり友の顔 正岡子規
土地の翳ふかき朝を空豆蒔く 一之瀬王路
土地びとにはづかしきほど重ね着て 中戸川朝人 尋声
土地を売つた うつろのなかに とんでいる雀 吉岡禅寺洞
土地人に教はり花菜の間の径 高澤良一 寒暑
土地人もまよふ袋路金木犀 今村青魚
土地人も迷ふ道あり花茨 稲畑汀子
土地売つて十夜の粥も廃れたり 宮田正和
土地変り入学の子に朝桜 宮津昭彦
土地愛し子孫を愛し芋植うる 斎藤俳小星
土地慾を区切り一面の麦の遅速 藤後左右
土地言葉やゝ耳馴れし年賀かな 矢津典子
墓残し土地売り尽す四月馬鹿 大熊輝一 土の香
売った土地の杭打つひびき 佐久間義雄
始めての土地に夏足袋黒く来ぬ 山口誓子
家が建つ土地秋茄子の畑へつゞく 文挟夫佐恵
春ショール頤でおさへて未知の土地 平井さち子 完流
時雨来て駅にさざめく土地訛 大沼雅敬
杉の実や魔羅重さうに土地の馬 小澤實 砧
枯れし土地にはじめて吾子を立たしぬ 篠原梵
機音に震ふ庭土地虫出づ 小島梅雨
此の土地の言葉にも馴れ柿うまし 椎橋清翠
温泉の多き土地なり夏芝居 中村吉右衛門
物納の土地まだ売れず草の花 山縣輝夫
物納の土地森閑と百日紅 大山草樹
秋うららガイドの私語の土地訛り 篠田悦子
秋っこと土地人の云ふそのみどり 高澤良一 素抱
蓮如輿いまどの土地をお渡りか 阿波野青畝
血と麦とわれに亡命する土地あれ 寺山修司 花粉航海
見知らぬ土地低きところを寒の水 鈴木六林男 谷間の旗
譲り受く友の土地なり雛の夜 芦沢一醒 『花枇杷』
遠まきに山が居並ぶ土地芝居 今瀬剛一
雪虫を払う眼前父母の土地 村田治男
霰ふるこの土地人よ父よ祖父よ 京極杞陽
露舐めて犬が犬捕り知らざる土地 右城暮石 上下
●土塊 
いづれは土くれのやすけさ土に寝る 山頭火
いよゝ凍てし土くれに日の流れ来し 雑草 長谷川零餘子
しだかれし蜂土塊をかなしめり 原石鼎
ぬかご落つ土塊は夢破られて 河野多希女 月沙漠
ひと冬を鳴く鶸ありきたましひは崖にこぼるる土くれの量 前登志夫
三日月の研がる青北風土塊積む 新谷ひろし
中共勝つ荒鋤の田にみつる土塊 古沢太穂 古沢太穂句集
切崖を落ちる土くれ春惜む 辻桃子
初蝶が土塊訪ひ続ぐねぎらふや 香西照雄 素心
啓蟄の土くれを掃く昨日けふ 松尾 静子
土くれといはずあめつち梅雨に入る 長谷川素逝 暦日
土くれと思ひしが翔ち初雲雀 嶋田麻紀
土くれと濡れ朝の日の柿落葉 長谷川素逝 暦日
土くれにはえて露おく小草かな 村上鬼城
土くれにまじる蚰蜒痩花壇 松本可南
土くれに二葉ながらの紅葉かな 村上鬼城
土くれに逆毛吹かるる毛虫かな 村上鬼城「定本鬼城句集」
土くれに鍬の峰打ち山ざくら 上田五千石 風景
土くれに風もぐりこむ冬耡ひ 大熊輝一 土の香
土くれのもともろもろや花まつり 池田澄子 たましいの話
土くれのやうに雀居り青草もなし 尾崎放哉
土くれの乱礁の間螻蛄泳ぐ 石田波郷
土くれはどんな味する燕の子 正木ゆう子 悠
土くれや木の芽林へこけし音 飯田蛇笏 山廬集
土くれや芋の芽しかと玉巻ける 西山泊雲 泊雲句集
土くれをむちうてばみな蛙かな 会津八一
土くれを刻み刻みぞ春の暮 会津八一
土くれを啄む軍鶏に秋の来る 大石 悦子
土くれを抱く空蝉のくらさかな 原裕 『王城句帖』
土塊が動きて蟇が動き出す 森松美智子
土塊どもへ目力をくれ薯植うる 村越化石
土塊にかくれてしまひ春の虫 阿部みどり女 月下美人
土塊にくつついてゐる子藷かな 松藤夏山 夏山句集
土塊に二葉ながらの紅葉かな 鬼城句集 村上鬼城
土塊に匂ひありけり西行忌 望月百代
土塊に新甘藷赤く躍りけり 高濱年尾 年尾句集
土塊に語りかけつつ苗木植う 福永みち子
土塊のしやべりだしたる穀雨かな 小島とよ子
土塊の日當るみつつ風邪ごこち 石川桂郎
土塊の翳ふかき朝を空豆蒔く 一之瀬王路
土塊も昼の孔雀も全裸なり 攝津幸彦 鹿々集
土塊をちんとひねりし雛のかほ 高田正子
土塊をはさみて末黒野の芒 浦野哲嗣
土塊をはたく香具山半夏生 宮坂静生 山開
土塊を一つ動かし物芽出づ 高浜虚子(1874-1959)
土塊を鉢に植ゑをる佛生会 清水径子
地震あとの土塊ぬらす夜露かな 渡辺水巴 白日
夏の鴨動き出したる土塊は 高野ムツオ「蟲の王」
夜へ沈む土くれの貌雪着くまま 村越化石 山國抄
寒明けぬ緬羊につく土くれも 矢島渚男 百済野
山蟻の土くれなどは軽く越ゆ 細見綾子 花 季
師を埋むどの土塊も秋日もつ(阿部先生三周忌、仙台北山墓地に納骨) 角川源義 『秋燕』
引き抜けば土塊躍る野蒜かな 阿部みどり女
引抜けば土塊躍る野蒜かな 阿部みどり女 笹鳴
日本の蛙荒鋤きの土くれに土くれに 金子兜太
日盛や土塊の影蝶の影 島村元句集
春となる雨土くれの上に降る 長谷川素逝 暦日
春めくと指をよごしぬ土塊に 吉武月二郎句集
植木鉢のみに土塊スキー宿 山田弘子 螢川
死免がれず限前に土塊寒し 村上鬼城
涼しさや木の虚にある土くれも 正木ゆう子 静かな水
漆掻き子が土くれを投げて呼ぶ 加藤知世子 花寂び
玉虫交る土塊どちは愚かさよ 中村草田男「火の島」
球根植ゑ土塊も雨の糸をひく 成田千空 地霊
畑を打つ土くれ足になだれよる 雁来紅 野田別天樓
花にひまなし土くれと見る芙蓉の芽 雑草 長谷川零餘子
花種を蒔く幼年の土くれに 対馬康子 吾亦紅
苗床の土くれあらし春の霜 西山泊雲 泊雲句集
若くて俗物こおろぎの土塊草の中 金子兜太
被きゐし土塊抱きて百合芽伸ぶ 米沢徳子
貞操や春田土くれくつがえり 西東三鬼
雲黒し土くれつかみ鳴く雲雀 西東三鬼
青北風や土塊荒き馬場の朝 上野草魚子
●赤土 
うねうねと赤土山の寒さ哉 寒さ 正岡子規
はうはう秋の風吹いて赤土山 中塚一碧樓
むんむんと赤土蒸すや竹煮草 高澤良一 素抱
やみぎはの雪柔かく赤土ヘ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夕映の赤土すみれも濃くなりしよ 香西照雄 素心
寒菊や赤土壁の鷹の糞 史邦 俳諧撰集「藤の実」
尾根の赤土せんぶり摘みが蟻めくよ 佐野まもる
探梅の赤土ぬれて窪みけり 中田剛 珠樹
春の子等赤土山に集ひ初む 中村草田男
木枯や赤土山の火伏神 大谷ひろし
梅さくや赤土壁の小雪隠 広瀬惟然
梅雨晴の船赤土を満載し 林徹
瓦焼く赤土の山初霞 杉町直路
甘蔗刈つて赤土の丘現はるる 田上さき子
紫雲英田に赤土トラック一車分 茨木和生 木の國
虎杖や赤土山の松の中 浜田波静
蛇笏忌の赤土踏まれ踏まれ昏る 廣瀬直人
赤土(はに)の陽に跼みせんぶり摘み憩ふ 藤井青咲
赤土に夏草戦闘機の迷彩 沢木欣一
赤土に海風渡る甘蔗の花 山崎ひらら
赤土に雨乞の火を祝女が焚く 新城太石
赤土のなゐの国またゆらぐなり 三橋敏雄
赤土の崩れて暑し山の原 京-竹翁 選集古今句集
赤土や坂新らしきむらつゝじ 寺田寅彦
赤土入れて寒養生の竹林 大石悦子 群萌
赤土山に竹のぞろりと日の永き 細見綾子
躑躅くづるる赤土の谷 史邦 芭蕉庵小文庫
野を焼いて赤土をまた掘りおこす 日原傳
●粘土 
花びらを呑みこみ太る粘土の蛇 対馬康子 純情
涼しさや粘土布目のまま乾き 伊藤京子
小さき初夜着粘土細工は布帛の中 中村草田男
粘土のビルによこたわり居り白い時間 阿部完市 絵本の空
●泥 
*むつ顔を出しくる泥の膨れけり 森文桜
あげ泥にまみれて這へる*いもりかな 高嶋辰夫
あたたかや鴨の上げたる泥けむり 小島健 木の実
いつの間に水菜の泥が頬つぺたに 岸本尚毅 舜
いつ来てもある泥舟や通し鴨 原 天明
うつむいて紫陽花泥によこれけり 紫陽花 正岡子規
お泥槃や大風鳴りつ素湯の味 渡辺水巴 白日
かいなでに牡丹描くや泥絵の具 牡丹 正岡子規
かきつばた剪らんと人の泥の中 杜若 正岡子規
かげろふや泥脚かはくくわい堀 高井几董
かわくことたましひにあり葱の泥 角谷昌子
さくら紅葉相模の泥に下駄穿つ 『定本 石橋秀野句文集』
さればいの泥によごれつひく大根 水田正秀
さをとめの泥をおとせば足軽し 正岡子規
さをとめや泥から生えし足の色 早乙女 正岡子規
しぐれの跡泥の靴あと吾子病むや 古沢太穂 古沢太穂句集
しのび音も泥の中なる田螺哉 永井荷風
たしかな凸凹泥刷きて冬の馬鈴薯なり 能村登四郎 枯野の沖
たれすぎて紫陽花泥によこれけり 紫陽花 正岡子規
たんぽぽに代掻く泥の容赦なき 松倉ゆずる
ちゆつと吸ふ泥鱒がをりて春の水 矢島渚男 船のやうに
つくねいも叡山の泥つけて売る 篠原悠子
つと泥の力ゆるみて蓮根抜け 西井悳子
つばくらめ望楼の泥落ちつづけ 加藤秋邨 死の塔
つばめつばめ泥が好きなる燕かな 細見綾子
つまづきて泥あたゝかし蘆の花 山田みづえ
どぶ泥に手を入れて冷たしや春の宵 内田百間
なまなまと泥のつらなりうごく春 成田千空 地霊
ぬくき泥つめたき泥と蓮根掘 福田蓼汀
ぬめぬめのひかりの泥や池普請 矢野景一
ねむごろに水底もみぢ泥となりぬ 松村蒼石 雁
のどかさは泥の中行く清水かな 古白遺稿 藤野古白
はつ霜の泥によごれつ草の蛇 内藤丈草
はまぐりにはつかに泥の香り立つ 渡辺純枝
ひよどりの谷に堕ちてゆく声きこえ泥のごとくに身は眠りゆく 岡野弘彦
ぶらんこの泥が乾きて鳥曇 小島千架子
へちゃぽこと泥湯噴出薄の間 高澤良一 寒暑
みずうみの泥ほつほつと唄うらし 鎌倉佐弓
みんなきようの泥靴でだまりこくつている 栗林一石路
みんな今日の泥靴でだまりこくつてゐる シヤツと雑草 栗林一石路
やはらかき泥にくすぐりあうて蝌蚪 高田正子
をみなをのこ集まる泥のやつがしら 清水径子
アカシア落花泥なる大河何泛ぶ 兼近久子
ラガー等の泥の顔よしノーサイド 藪田 郁子
ラグビーの泥んこ地獄断てり笛 あかぎ倦鳥
ローザ今日殺されき雪泥の中の欅 古沢太穂 古沢太穂句集
一日を泥に挑みて蓮根掘る 大橋敦子 手 鞠
七月の手足光れり泥染師 能勢真砂子
三寒の鯉が身じろぐ泥けむり 能村登四郎
上つ面なるか人参泥だらけ 伊東達夫
下駄の歯に刈田の泥を吸ひ上げし 室積波那女
不忍の泥に蓮咲く旱かな 旱 正岡子規
乳を隠す泥手わりなき田植かな 梅室「梅室家集」
乳房より泥のしたたる花田牛 横山悦生(廻廊)
乾し泥にはきと渦目や杜若 西山泊雲 泊雲句集
亀もいざ錦はいやと泥の花 浜田酒堂
五月雨の泥を流して海黄なり 五月雨 正岡子規
五月雨や泥より起きて豆の蔓 八十島稔 筑紫歳時記
京よりの初筍の泥黄なり 皆吉爽雨
仆れたる案山子につよき泥の耀り 桂信子 花影
今つけし泥濡れてをり燕の巣 棚山波朗
今は寧し冬の泥鰌の泥けむり 友岡子郷 翌
今蒔きし籾そのまゝや泥光る 西山泊雲 泊雲句集
仏生会靴にもぐらの泥つけて 加藤和子
代掻きの泥の乾きしふくらはぎ 遠入たつみ
代掻の合羽の泥を雨流す 大熊輝一 土の香
代掻の泥電柱の裾よごす 高濱年尾 年尾句集
代田出て泥の手袋草で脱ぐ 西東三鬼
代田打つ泥足太陽はばからず 影島智子
代馬(しろうま)の泥の鞭あと一二本 高野素十(1893-1976)
代馬の泥の鞭あと一二本 高野素十
会議のこえごえ梅雨の泥靴わけ入る時 赤城さかえ句集
低き日輪灯りて泛かぶ泥田の墓 山口聖二
何あさる人ぞ冬田の泥浅く 五城
俎の泥庵色や山桜 小川軽舟
倒されしラガーの泥と共に立つ 田中矢須彦
傘傾け妻死なせじと梅雨泥撥ね 小林康治 玄霜
傷口を泥に塞がれ田を植うる 津田清子 礼 拝
光る泥足が青ぐさを踏みしだく 松村蒼石 雪
全身にとぶ泥盆の蓮を剪る 花谷和子
公照の泥佛あり花祭 塩川雄三
冠水の泥に炎え立つ雁来紅 近藤一鴻
冬枯や泥によごれし馬が来る 佐藤紅緑
冷まじや死者塗りごめに泥の墓 つじ加代子
凍泥やけふを着飾る逢はむため 岩田昌寿 地の塩
出てゆくや万歳の靴泥あげて 臼田亜浪 旅人
出水退きし泥草に秋の蝶白き 金尾梅の門 古志の歌
刈稲の泥(ひぢ)にまみれし脛幼し 竹下しづの女句文集 昭和十三年
初伊勢や泥長靴の遠国人 奥野曼荼羅
初燕渡良瀬川の泥咥ふ 曽根 満
初猟や深泥ヶ池に道をとり 山口誓子
動く手の限りなく憂し泥遊び 辻脇系一
勾玉の慈姑泥より掘り出せり 林徹
匍ふほどにみな瑕もちて泥田螺 友永佳津朗
北風防ぐ垣はもあらず泥染は 米谷静二
半分は泥の重みや若菜籠 菊の苗 正岡子規
印泥に油泛きたる大暑かな 石嶌岳
印泥へ差し込む箆や夜の秋 ふけとしこ 鎌の刃
印泥をこねる力や遠くに火事 内田美紗 誕生日
印泥を練り上げてをり竹の春 野中亮介
口の泥吐いては吐いては*むつ五郎 D.J.リンズイ
古沢や泥にひゝつく芹なずな 芹 正岡子規
古沢や泥にまみるゝ芹薺 芹 正岡子規
古沼や泥の中より春の水 春の水 正岡子規
叱るまじ泥遊びより水遊 坂口英子
咆えてもみよ往きては復る泥田の牛 西東三鬼
啓蟄や鯉の立てたる泥煙 大野公子
囮鴨泥に座つてゐたりけり 茨木和生 往馬
土師邑の泥ゆたかなり初つばめ 山田みづえ 草譜
塩引や蝦夷の泥迄祝はるゝ 一茶
壁ぬりの泥鏝の動きや雲の峰 其角「きれぐ」
夏うぐひす谷湯底泥やはに踏み 蒼石
夏大根葉と泥をつけ無人店 柳瀬重子
夏川の泥に嘴入るゝ家鴨哉 夏川 正岡子規
夏痩の君に勧む泥亀の血一杯 夏痩 正岡子規
夕方は泥の匂ひや桃の花 岸本尚毅 選集「氷」
夕立や泥によごれし葛の蔓 比叡 野村泊月
外套の泥はね一つ灯に戻る 細見綾子 花 季
夜や水銀泥に霊ただよふも 柚木紀子
大方は泥をかぶりて蘆の角 高濱虚子
大旱や泥泉地獄ふつふつと 誓子
天に黄道泥田には蜷の道 田島明志
天川の泥掻き寄せて畦を塗る 浦野芳南
太陽に泥手あげ稲刈り進む 落合水尾
夫のない子を産み子を負い泥手泥足で立つ妹 橋本夢道 無禮なる妻抄
如泥臼クロー・バーの環をかけしあり 西本一都 景色
如泥臼花藻かづきて夕焼くる 西本一都 景色
妹婚期を知らぬごとくに泥田刈る 大熊輝一 土の香
妻亡きあといつまでも保つ泥の葱 宮津昭彦
姨捨や道向き障子にバスの跳泥 北野民夫
婆々ら笑へり岩燕泥はこぶに 松村蒼石
子の残す泥の手型や鳳仙花 原田 早苗
子持ち鯊泥にと走り込みにけり 茨木和生 往馬
孑孑の泥にかくれし旱かな 孑孑 正岡子規
定かなる*いもりの姿泥動く 楠目橙黄子 橙圃
定刻の泥の中より葱坊主 久保純夫
室咲きの花太陽は泥の花 磯貝碧蹄館
寒き歌ぐら泥に倒れて息絶えしと 友岡子郷 遠方
寒暖の蝌蚪ふくぶくと泥澄めり 松村蒼石 露
寒泥を掘り骸を落しつぐ 細谷源二 鐵
寒蜆ひと夜の水に吐けぬ泥 小畑啓子
寒鮒の泥をはかせて客を待つ 前津 栄子
寒鯉の生くる証しの泥けむり 遠藤若狭男
寒鯉の蹴たてし泥のまだひろがる 森田峠 避暑散歩
寒鯉や泥のごとくにしづもれる 長谷川櫂 虚空
小葭切泥の目玉に泥の声 高野ムツオ 雲雀の血
小鳥来る築泥のそとにある俗語 長谷川かな女 花 季
少年に泥のパレット*むつ五郎 守谷茂泰
履いたまま洗ふ泥靴春田打ち 永田貞子
山吹やこぼれて泥のうはがはき 立花北枝
山椒魚の子の泥ぼこり水底に 平井さち子 紅き栞
山男泥の大根ひつさげて 澤村昭代
岩つばめ赭泥縦横に干割れたり 水原秋桜子
嵯峨念仏楽屋にとどく泥の葱 椹木啓子
巣作りのつばめ駅舎に泥落す 堀川草芳
巨き冬陽地下足袋の泥重くなる 岩田昌寿 地の塩
市に竝ぶ泥葱三把雪の上 羽部洞然
市の泥うちあげてゐる糸瓜苗 浜田正恵
帰省子にどぢやうへうきん泥隠れ 工藤 義夫
幼子の泥は笑みたりいのこずち 加藤うめ
底泥に水縦横や杜若 西山泊雲 泊雲句集
庭好も泥鏝(こて)を捨てけり今朝の秋 調古 選集「板東太郎」
庭木々の泥洗ひけり冴え返る 乙字俳句集 大須賀乙字
弔うに燕一羽の口の泥 和田悟朗
引き残る水をふみ行くずずだまの泥 梅林句屑 喜谷六花
彌陀の春吸ひつく鏝で泥なでて 竹中 宏
彼岸過大洲の泥がまのあたり 松村蒼石 雪
御灯のうへした暗し泥槃像 芝不器男
御鎌取て菖蒲刈らうよ泥干潟 菖蒲 正岡子規
復活祭泥紅緑に耕耘機 百合山羽公 寒雁
怒りての一打もあらむ泥田打 持田石映 『まぼろし』
恋仇川泥暑き路上たり 三谷昭 獣身
恋猫の夜毎泥置く小縁かな 本田あふひ
慈姑掘るや鍬で切られし泥の艶 西山泊雲 泊雲句集
慈姑掘手を泥にして冬至かな 小澤碧童 碧童句集
憩ふとは泥に立つこと蓮根掘 早坂萩居
手の泥の滴りいしが青蜥蜴 高野ムツオ 雲雀の血
手の泥をはたき挿木の腰上ぐる 小林雑艸
手応へは泥亀なりし溝浚へ 岩瀬良子
抄ひ上げる溝泥に竹や蝶来る 内田百間
投石にくぼめる泥や杜若 西山泊雲 泊雲句集
拱手してをれば蓬の泥乾く 加倉井秋を 午後の窓
振売の間引菜今朝の泥つけて 宮田茂夫
授業しづか泥滲み出す雪だるま 中原鈴代
掘られたる泥に泥鰌の動きあり 岡安仁義
掘り了へし泥腕二本蓮に似る 羽部洞然
掘り出せる泥の塊なる慈姑 山地国夫
掘返す泥にさゝりし泥鰌かな 平松草山
掛乞に長靴の泥こそげつつ 安部元気
揚げ泥に白梅散るや塀の外 寺田寅彦
揚げ泥の香もふるさとよ行々子 木下夕爾
揚泥にすぽ~穿つ木の実かな 西山泊雲 泊雲句集
揚泥に栴檀の実のこぼれたる 寺田寅彦
揚泥の乾く匂も薄暑かな 日野草城
放生会泥鱒の笊を渡されて 川瀬清子
敗けたりと思ふや代田泥深く 成田千空 地霊
散々に春踏付けし泥田かな 尾崎紅葉
新しき泥を継ぎ足し燕の巣 長廻檣風
新しき泥を継ぎ足す古巣かな 畑中ツヤ子
新じやがの泥の親しさてのひらに 源 鬼彦
新れんこん泥の匂ひも旧知かな 細見綾子 天然の風
新駅に巣づくりの泥つけはじむ 嶋崎専城
日が射せば底泥浮び池の冬 高濱年尾
日出づると干潟に泥の眼かな 正木ゆう子 悠
早乙女が足もてさぐる泥の臍 高橋睦郎 稽古
早乙女の体温泥の田にて蒸る 津田清子 礼 拝
早乙女の昼餉の足の泥乾く 伍賀稚子
早乙女の泥田に挿せる足ほそし 鈴木厚子
早乙女や泥手にはさむ額髪 村上鬼城
早春の森にあつまり泥の径 鈴木六林男
早苗饗や泥洗ひとて温泉にあそぶ 宮本唯人
早起の児ら苗菜にも露と泥 香西照雄 素心
春の川泥ぬるぬると辷りけり 春の川 正岡子規
春の雁みぎはの泥を曳きて翔つ 松村蒼石 雪
春の鴨みぎはの泥を曳きて翔つ 松村蒼石 雪
春の鵙泥亀這ふを見下せり 萩原麦草 麦嵐
春昼の泥の匂ひに慣れて釣る 青葉三角草
春昼の泥湯にひたる女かな 宮本のぶえ
春来つつ北京印泥匂ひ立つ 宮坂静生 樹下
春興や黒板塀のすその泥 岩永佐保
春近し廻国どもが下駄の泥 飯田蛇笏 霊芝
春近し雪にて拭ふ靴の泥 沢木欣一 雪白
春鮒とぶ土管運びの泥の脛 友岡子郷 遠方
昨日は死にき明日は出水の泥昼顔 高柳重信
時ぞ早苗庄屋の息子泥をふむ 露言 選集「板東太郎」
曳きずつてきては泥稲掛けにけり 宮岡計次
最上川流れて泥の力照り 小檜山繁子
月日過ぎ易く空蝉の爪に泥 高澤良一 素抱
朝寒や泥をつめ込む壁の穴 寺田寅彦
朝露によごれて涼し瓜の泥 芭蕉「笈日記」
村人や雨を乞ひ得て泥に酔ふ 竹冷句鈔 角田竹冷
板屋根の泥になるまで楢落葉 前田普羅 飛騨紬
枝豆の葉は穴だらけ泥だらけ 梶山千鶴子
枯蓮や地獄の如く泥の中 市川和孝
枯蓮や泥の深さの烏貝 野村喜舟 小石川
桶底の泥のごときが梅雨鯰 由山滋子「かつらぎ選集」
梅さくや泥田の中の下駄の跡 梅 正岡子規
植物の毛根千の舌そよぎ泥を舐むるは音無かりけり 高橋睦郎 飲食
椿ちりて泥にふみこむ上り阪 散椿 正岡子規
椿咲く鯉泥中に腹を埋め 星野昌彦
機町の泥に汗ばむ冬帽子 宮武寒々 朱卓
正月も身は泥(ひぢりこ)のうなぎかな 服部嵐雪
此頃や泥龜居らず秋の水 秋の水 正岡子規
歳晩や泥ひび割れてあたたかし 細見綾子
歳末商戦泥つき長葱もってゆけ 高澤良一 宿好
母の乳を泥手で撫でる田植哉 田植 正岡子規
水なくて泥に蓮咲く旱かな 蓮の花 正岡子規
水口の泥が走りて夏祭 綾部仁喜 寒木
水底に泥のかぶさる月の村 桂信子 遠い橋
水底泥を喫む鴉の群にさす初日 大場白水郎 散木集
水温む泥に茜や菖蒲の根 西山泊雲 泊雲句集
水澄んで泥をかむれる底藻かな 比叡 野村泊月
水芭蕉乾きし泥を揉み落とす 高澤良一 燕音
水草の泥に花咲く旱かな 水草の花 正岡子規
水草生ふ深泥ほどけてむらさきに 八木林之介 青霞集
水鳥の泥をせせりて汚れなし 岩田由美
水鳥は泥をせせりて汚れなし 岩田由美 夏安
氷らんとしては泥泥泥の沼 三橋鷹女
汐引いて泥に日の照る熱さかな 暑 正岡子規
汗と泥にまみれ敵意の目を伏せず 長谷川素逝 砲車
汗ばむや泥人形の楊貴妃も 大島民郎
汝が泥の尻を打擲して春野 三橋敏雄
泥かわくらかんの脛の落花哉 会津八一
泥くさき子供の髪や雲の峰 井月の句集 井上井月
泥くさき男女に帰雁水くさし 橋石 和栲
泥ぐるみ萌ゆる流域太宰故地 成田千空 地霊
泥けむり恋の田螺の蠢きて 辻田克巳
泥こねるうなゐ遊びも梅若忌 富安風生
泥すみて影の動かぬ蛙かな 蛙 正岡子規
泥っぷな純金の咽喉彦をコブラ返す 加藤郁乎
泥つくねても人の生まるゝ野菊かな 冬の土宮林菫哉
泥つけしまま天界の凧となる 八染藍子
泥つけて鶏歩きゐる桜かな 岸本尚毅 選集「氷」
泥といふもののかがやき蓮根堀 青葉三角草
泥ともに堀出されたる蓮根かな 蓮根掘る 正岡子規
泥ともに河骨かわく川辺哉 河骨 正岡子規
泥と血で結ばる晩稲田の兄弟 齋藤愼爾
泥におく鷺の足跡芹の花 木村蕪城
泥にさしオールたわめる舟遊 辻桃子
泥になる寸前で醒めひきがえる 森村文子
泥に生れ高野聖の名をもらふ 服部一放「春嶺同人句集」
泥に置く鷺の足跡芹の花 木村蕪城 寒泉
泥に腕突きさし倒れ蓮根掘 牧野春駒
泥に酔ふて赤子のまねを鳴く蛙 蛙 正岡子規
泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
泥のかんじき鎌でさげてき別の田刈る 古沢太穂 古沢太穂句集
泥のごとき日のくれほそき国ありて 津沢マサ子 楕円の昼
泥のごとき目覚めに空の青いこと 小野寺司朗
泥のまま筍かざる端午かな 龍岡晋
泥のやうな睡り極暑を遁走し 高澤良一 随笑
泥の上に泥のひろごる蓮根掘 千葉皓史
泥の上に田草かきけん指のあと 東皐
泥の上の寸澄む水や枯蓮 徳永山冬子
泥の上を全身振つて蝌蚪進む 卯滝文雄
泥の中高野聖は裏返り 廣瀬盆城
泥の干る池あたらしや杜若 炭 太祇 太祇句選後篇
泥の手に血が一筋や花の雨 日原傳
泥の手を青田に洗ひ甜瓜頒つ 津田清子
泥の浅蜊よいま叫ばねば鬱血す 佐藤鬼房 海溝
泥の湯は泥のにごりに深む秋 上村占魚
泥の照り眩しみてゐる蓮根堀 古市枯声
泥の田へ転び不覚の蛍狩 藤谷紫映
泥の目を天へあげたる*むつ五郎 別所信子
泥の稲泥の豆木と見分くのみ 西本一都 景色
泥の荷の上に教科書秋出水 加藤義明
泥の蜷切株に風ひびくなり 成田千空 地霊
泥の頬肩で拭きもし蓮根掘 入村玲子
泥の香に顔埋めては田草取る 木幡花人
泥はねし納屋の障子や下萌ゆる 冬葉第一句集 吉田冬葉
泥ひかる水牛を曳き手に穂草 中戸川朝人
泥やなぎ枯るる中洲の夕月夜 三好達治 俳句拾遺
泥をつけて冬暖かく歩きけり 龍胆 長谷川かな女
泥を吐く蜆が桶に青々忌 藤本安騎生
泥を食ふ蟹を見つめて腹空けり 高澤良一 ももすずめ
泥んこの子に余白なし蝸牛 中田ゑみこ
泥んこを潜り来し螻蛄泥つかず 松宮洞石(圓)
泥中に生まれるものに詩と燕 高野ムツオ
泥中を読むといふこと蓮根掘 山田弘子 こぶし坂以後
泥亀に人だかりする柳かな 可長 芭蕉庵小文庫
泥亀の隠れて動く花藻哉 藻の花 正岡子規
泥亀の鴫に這ひよる夕かな 其角
泥亀の鼻もたげゆく秋風裡 高澤良一 ももすずめ
泥亀も首をすぼめて盆休 高澤良一 鳩信
泥亀や苗代水の畦づたひ 史邦
泥亀をまたぎて人に近づきぬ 宇多喜代子
泥亀町吾が前をゆく鬼やんま 高澤良一 さざなみやつこ
泥付きて床し烏芋は何の玉 乙二
泥出でし慈姑にほのと海のいろ 高橋 梓
泥勝に足跡勝に春の川 春の川 正岡子規
泥吐いて胸の痩せたる蚯蚓鳴く 佐原トシ
泥吐かす蜆の水のむらさきに 岡本セツ
泥吐かせ手応へのなき竹瓮かな 小野寺洋子
泥吐くと泥呑む土管大夕立 土井初子
泥地獄時雨を得つつ沸沸と 中村汀女
泥地獄虚ろに紫雲英咲きにけり 軽部烏帽子 [しどみ]の花
泥垂(ぬったり)の水縦横に蓮みのる 伊東月草
泥密に蓮まばらなる小池かな 尾崎紅葉
泥寒し市電終点より先は 宮津昭彦
泥川に古足袋沈む小春哉 寺田寅彦
泥川の月夜に泛きぬ大鯰 青木月斗
泥川の海にそゝぐや五月あめ 五月雨 正岡子規
泥川や卯の花垣根結ひつゞく 卯の花 正岡子規
泥川をいそぎ引きゆく春の潮 谷野予志
泥川を芹生ひ隠すうれしさよ 芹 正岡子規
泥底につもる歳月たひら貝 山田尚良
泥手泥足なほ植ゑ残る田がありて 津田清子
泥染の泥の炎天はじまれり 隈元いさむ
泥染の泥田の小畦蜆蝶 木村蕪城
泥染の生きて遅日の黄八丈 石野冬青
泥染の糸つややかに機始 岩切貞子
泥染の顔振つて汗落しけり 隈元いさむ
泥槃像鼠なるもの侍らする 中田剛 珠樹以後
泥槃図を畳にのべて皆立てり 吉本伊智朗
泥汗に眦ただれ田草取 大熊輝一 土の香
泥池に一条の滝横蔵寺 長村雄作
泥海に秋の入日の落ちんとす 上村占魚 鮎
泥深き小田や田螺の冬籠 正岡子規
泥深く蛤ひそむ余寒哉 余寒 正岡子規
泥湯にて浮く泥首に梅雨湧ける 磯貝碧蹄館
泥湯噴く原始の韻き天高し 高澤良一 寒暑
泥湯温泉山気令法を引き締むる 高澤良一 素抱
泥煙むくむくあげて五月鯉 高澤良一 随笑
泥煙上げて田螺の動き出す 秋山青潮
泥牛を洗ふ神社の水貰ひ 藤谷知子
泥生きて椋の実を今押え込む 木村正光
泥田にも浮かぶ白雲苗育つ 松倉ゆずる
泥田の夫婦寄れば玉なす汗見合う 細谷源二
泥田十重八十重耕牛尾で遊ぶ 野沢節子
泥田鋤きかくれの掟守り継ぐ 下村ひろし 西陲集
泥眼に雪のしぐるる櫟山 斎藤梅子
泥眼の女心のかなしび薪能 市橋千翔
泥眼や瞋恚の炎薪能 川崎展宏 冬
泥眼を初秋の風通りけり 桂信子 草影
泥稲の刈ッ干し急ぐ貰ひ照り 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
泥稲をかかへ田下駄をひきずれり 大野林火
泥筵掛け洗はるる寒の雨 村山たか女
泥籠を押しすゝみつゝ慈姑掘る 兎月
泥膾肥え根芹こはゞる彼岸かな 彼岸 正岡子規
泥舟でいいではないか星祭 大木孝子
泥舟に富士の筆太飾米 向山隆峰
泥舟に常山の花のこぼれけり 寺田寅彦
泥舟の二つ竝んで川寒し 寒し 正岡子規
泥舟の水棹たてたる花藻かな 飯田蛇笏 山廬集
泥舟の泥に散りたる桜かな 古白遺稿 藤野古白
泥舟の荷重をふっと三尺寝 鈴木 明
泥舟の遅々と行くなり行々子 寒江
泥舟や三艘ならぶ春の雨 春の雨 正岡子規
泥芋やかるがる主宰誌を持つな 茨木和生 倭
泥落し牛にも神酒を舐めさせて 柴田美雪(運河)
泥落す渦のしづかに青田べり 水原秋桜子
泥落ちてとけつつ沈む芹の水 高浜虚子
泥葱にゆさぶりかけてみたりけり 栗林千津
泥葱に古妻雨を怖れけり 龍胆 長谷川かな女
泥葱に痒い部分があるらしい 乾鉄片子
泥葱のひげや涅槃の日と思ふ 鈴木鷹夫 春の門
泥葱の大束供ふ初庚申 古川京子
泥葱の束つんのめる厨口 秋山美智子
泥葱の泥が廊下に日暮れをり 鈴木鷹夫 春の門
泥葱の泥は武蔵野提げて出づ 山口琢野
泥葱は考へぶかく貧しかり 栗林千津
泥葱を抱へ真昼の日本橋 松原三枝子
泥葱を重荷重荷と投げ出せし 辻桃子
泥葱買ひ重心低く戻りけり 平井さち子 鷹日和
泥藍に着痩せて後の更衣 千賀静子 『種壷』
泥蜂の一つづつ穴出ては飛ぶ 市原あつし
泥足やほたるぶくろの水明り 林比佐生
泥足を洗ひたればうらら鈴が鳴る 冬の土宮林菫哉
泥蹴つて泥の居ごこち*むつ五郎 長谷英夫
泥連れの水おそろしや秋ついり 三橋敏雄
泥運ぶ燕律儀に栢山村 高澤良一 鳩信
泥障しけ爰ぞひばりの聞所 蕪村
泥飛びし帽子阿弥陀に蓮植うる 吉村よし比古
泥髪の川狩童子吾子もをり 根岸善雄
泥鰌掘泥そのままに立ち去れり 棚山波朗
泥鰌掘泥のぬくみにしばし立つ 遠藤蕉魚
洪水あとの泥にしたゝか木の実かな 増田龍雨 龍雨句集
洪水や泥に突っ立つ蝙蝠傘 尾崎椰子雨
浚へたる泥より溝へもどる水 小松生長(幡)
浚渫船泥吐きつづく菜種梅雨 道川虹洋
涸れ沼の泥にみぞるゝ夕かな 霙 正岡子規
淨らかの餉(け)を数ふれば飛ぶものが土に下りたち啄(つつ)く塵泥(ちりひぢ) 高橋睦郎 飲食
温突の泥の煙出し秋ざくら 遠藤梧逸
湖底の泥知りつくし*えりを挿す 今村窓外
溝浚ひし泥に棒さす意味もなく 加倉井秋を 午後の窓
溝浚へして泥くさき夜となりし 浦山柳亭
溝浚へ泥に人間臭さあり 國定義明
滝前の泥温むほど人の来て 鳥居おさむ
潦に泥干たまれる木の実かな 西山泊雲 泊雲句集
濁り井の氷に泥はなかりけり 氷 正岡子規
濃夕焼泥田をいでず泥夫婦 橋本多佳子
炎熱とならむ泥田は泥田のまま 冨田みのる
烏貝泥におぼれて歩みゆく 火村卓造
熱泥のべっぷべっぷと秋の雨 高澤良一 鳩信
熱泥のカレー煮立てて暑に対す 高澤良一 素抱
熱泥の上昇気流飛花に見ゆ 中戸川朝人 星辰
燕の足より太し泥のあと 燕 正岡子規
燕や泥をべたりと紙の上 森鴎外
燕来て新しき泥落としけり 佐藤くにを
燧灘銀泥延べし良夜かな 渡部抱朴子
父を呼ぶついに泥田となっていて 奥山甲子男
父を憶へば耕馬から泥がとぶ 友岡子郷 日の径
牛市や赤い椿が泥の上 蘭草 慶子
牧水忌泥を拭へば素の足ぞ 友岡子郷 風日
独活掘の忽ち泥にまみれたる 金箱戈止夫
猪糶らる泥の乾きし爪揃へ 小田三亥
玄鳥の泥見てありく田面かな 尾崎紅葉
甘酒の銀泥怖るのんどかな 磯貝碧蹄館「馬頭琴」
田の泥に雁の足跡凍りけり 雁 正岡子規
田の泥の額に乾く行々子 矢島渚男 木蘭
田の泥をかけ合つてゐる水祝 古市文子
田の泥を運ぶつばくろ笑み仏 羽部洞然
田の神の幣に泥跳ね畦を塗る 半崎墨縄子
田より上ぐ泥点々ときんぽうげ ふけとしこ 鎌の刃
田打女について来る子も腰に泥 高野素十
田掻せる泥の姿や五島牛 阿波野青畝
田植上りの泥足は他人のものか 松村蒼石 雁
田植女の泥手洗ふて小櫛かな 松下紫人
田植機の泥ぽたぽたと飛鳥道 横井博行
田植機の田の泥を曳く墓の道 小林輝子(樹氷)
田植終へ泥洗ひてふ長湯治 関根照子
田水張る泥の匂いは父の匂い 宮田頼行
田草取了へ泥落してふ湯治 渡部笳声
田草取腰で笑うて泥手振る 縄田屋朗々 『きりたんぽ』
田螺取る妹が泥手の若さかな 松瀬青々
男鹿島や石に泥塗つて雨乞い 武藤鉦二
畦を塗る己が泥の手眩しみつ 大熊輝一 土の香
畦豆の泥やぶりたる貝割芽 西山泊雲 泊雲句集
病むは不幸田螺泥田にロ開けて 石塚友二
病む牛のゐて雪泥の香を強く 中戸川朝人 残心
白日に出水の泥の亀裂かな 沢木欣一
白桃を自転車泥と思ひ込む 攝津幸彦 未刊句集
白梅や泥あげし子ととぼけ合ふ 石橋秀野
白泥の壺にさしたる冬すみれ 伊藤敬子
白蓮の一茎高し泥の上 田村梛子
白靴に明月院の泥すこし 大屋達治 龍宮
白鳥の首惜し気なく泥に挿す 狩野趣巳子
白鷺の泥にふみこむもみち哉 紅葉 正岡子規
皹の手より受けたる泥の葱 白岩てい子
盃に泥な落しそむら燕 芭蕉
盃に泥な落しそ群燕 松尾芭蕉
盆梅と朱泥の茶器と座右に愛づ 草間時光
眉の根に泥乾きゐるラガーかな 三村鈍也
真黒な泥積みあげて池普請 岸本隆雄
睡蓮を植う学僧の泥手足 木内彰志
石蕗咲けりいつも泥靴と並びたる 加藤楸邨
祀られて音絶つ泥の神楽鈴 三橋鷹女
神の留守沼に真鯉の泥けむり 野中亮介
秋あつし亀甲泥をのせて這ふ 白虹
秋の水泥しづまつて魚もなし 秋の水 正岡子規
秋出水散歩の芝も泥の中 国久黄実
秋暑し号外の端泥より見え 桂信子 「草影」以後
秋暑し泥の乾きし築地塀 桂信子 「草影」以後
秋祭過ぎしは昨日塀の泥 桂信子 草影
秋風の泥汲みて洲を埋むるや 松村蒼石 雪
秋風や朱泥の仔馬耳を立て 大橋利雄
種まきや狩出したる泥鼠 種蒔 正岡子規
種芋になりそこねしが泥の上 楠川あや
稲を干す人泥足や塔荒るゝ 雉子郎句集 石島雉子郎
積年の泥吐き田螺鳴きにけり 藤木倶子
空蝉の眼に泥や乾きたる 小澤實
章魚下げて泥の一生蓑のうち 古舘曹人 能登の蛙
籾伏せが叩く苗田の泥日輪 羽部洞然
紅泥の亭子を繞る若葉かな 尾崎紅葉
紫陽花の雨の鎌倉溝泥と化す 古舘曹人 能登の蛙
紬染む泥池にして飯匙倩泳ぐ 川端節代
紺紙金銀泥経残花冷 黒田杏子 花下草上
終電車ことばの泥をゆやゆよん 夏石番矢 楽浪
練り返す印泥木の芽起しかな 神蔵 器
羊蹄花や出水の泥にまみれ咲く 佐々赤竹
翼立て苗代の泥を取る初燕 橋本夢道 『無類の妻』以後
耕牛の背負ふ陽踏む陽泥の泥 松本鷹根
耕衣の忌泥を抜け出し魚哭く 茨木和生
背戸川に泥船繋ぐ柳かな 寺田寅彦
脊戸の雨大根の泥に悩める風情 柳川春葉 ひこはえ
自然薯の奇しき生立ち泥噛んで 殿村菟絲子 『菟絲』
芋掘りし泥足脛は美しく 静塔
芍薬にはねたる泥のかはきゐる 富安風生
芦原を埋め立てし泥田鳧飛ぶ 茨木和生 遠つ川
花一つ泥に折れこむ燕子花 杜若 正岡子規
花満ちてしづかに泥のかはく音 岸本尚毅 舜
花祭り鬼が草鞋の泥ぬぐふ 片山浮葉
芹生えし泥溝の流れや菖蒲の芽 芹 正岡子規
芽の白きほか泥だらけ種芋は 大熊輝一 土の香
苗代の泥足はこぶ絵踏哉 踏絵 正岡子規
苗代泥膝頭まで女かな 菅原師竹
若草や小亀引ずる泥の足 若草 正岡子規
茎石や泥にもならで泥まみれ 村上鬼城
茎立や泥靴乾く薪の上 石塚友二 光塵
茸泥の付くを拭ひて柚が匂ふ 松瀬青々
草ちよぼ~泥に澄みけり春の水 古白遺稿 藤野古白
草の芽に坊主地獄の泥飛べり 川口崇子
草ひきし泥手のままの四月尽 細見綾子
草取るや蚊打ちて胸に泥手形 市村究一郎
荒鋤きの泥あをあをと寒明くる 下村和子
菊供養泥線香のすぐ炎ゆる 皆川盤水
菖蒲の芽鋭く泥を切り立ちし 河野美奇
菜の花に泥が粘りて近江かな 綾部仁喜 樸簡
菜種散る泥の小道の轍哉 菜の花 正岡子規
菱採るや老若もなき泥景色 成田千空 地霊
落ち木の実或は泥をかぶりをり 楠目橙黄子 橙圃
落潮の泥這ふ貝や日覆下 比叡 野村泊月
落花生泥の魂ひろいきし 下田幼和
葦の間の泥ながるるよ汐干潟 飯田蛇笏 山廬集
蒜をかけつらねたる泥家かな 長谷川巌
蓮の実の泥鷺をうつ何ごころ 素堂
蓮掘のその夜の妻の泥臭し 鈴木貞雄
蓮掘の泥舟曳くも伴侶かな 岡田透子 『珊瑚樹』
蓮掘りの屈みて柔らかき泥田 小松道子
蓮掘るまで泥一枚の無傷の田 西村公鳳
蓮枯れて泥に散りこむ紅葉かな 正岡子規
蓮根の泥をつかめばくびれゐし 長谷川櫂 天球
蓮根を掴み上げたる泥菩薩 太田土男
蓮根掘り泥人間のまなこ澄む 森田透石
蓮根掘る周りの泥の乾きをり 岩本多賀史
蓮根掘る泥百姓に珠なす日 有働亨 汐路
蓮根掘泥から声を出す如く 村上古城
蓮根掘泥の手ぬぐひ披講せり 栗生純夫 科野路
蓮植うる泥を田舟で運びけり 遠藤三鈴
蓮落花泥にささりて純白に 中戸川朝人 残心
蕗かげにひそむ泥眼猫の恋 平井さち子 鷹日和
薯植うる泥の手太き生命線 亀井龍子
薺泥に咲て蛙なく田の薄月夜 蛙 正岡子規
藍壺に泥落したる燕かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
藤棚やうつけて数ふ泥亀を 『定本石橋秀野句文集』
藻の花や水棹は泥にとられ勝ち 堺井浮堂
蛙らの泥んこの恋はじまれり 大木あまり 雲の塔
蛙浮くやつれ浮ぶ泥葉やがて沈む 大橋櫻坡子 雨月
蛭痩せの見ゆ泥稲の分蘗に 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蜂の窖に泥塗りつめて冬木かな 比叡 野村泊月
蜷の道うすうす泥をかぶりけり 大串 章
蝉の屍の泥眼外すこともなし 嶋野國夫(玄火)
蝌蚪の引くかくも短き泥の水尾 岩田由美 夏安
蝌蚪の水ふめば崩るゝ泥の色 石橋秀野
蝌蚪の紐突かれて泥を吐きにけり 綾部仁喜 寒木
蟇跳びかへりたる泥煙 鈴木貞雄
袴の裾に銀座の泥や新年会 富安風生
裏町の泥かがやけりクリスマス 桂信子 黄 瀬
観念し海鼠の吐ける泥の量 高澤良一 素抱
記憶も初夏どぶ泥なする道のはた 金子兜太
賀状書く先づ印泥を練りあげて 岩坂満寿枝
踏み滑る泥や春こそめでたけれ 三橋敏雄
身振ひのたびに泥飛び*むつ五郎 水野晴嵐
軍扇の裏の白泥蟻地獄 吉田紫乃
軍靴地下足袋ホームへたたく冬の泥 古沢太穂 古沢太穂句集
追儺会のすみたる夕日泥に射す 宮岡計次
遍路宿泥しぶきたる行燈かな 芝不器男
道頓に泥川見せよ道頓忌 青木月斗「時雨」
遠足の弾む列来て泥田照る 柴田白葉女 牡 丹
里人や深泥ケ池に蕪洗ひ 尾崎迷堂 孤輪
銀世界すんでそろそろ泥世界 雪 正岡子規
銀泥に撫子薄き扇かな 野村喜舟
銀行に泥を運んでいる燕 小林雪枝
鍬で泥右へ左へくわゐ掘る 西山泊雲 泊雲句集
長靴のたけに余るや梅雨の泥 梅雨 正岡子規
門前に泥舟つなぐ柳哉 寺田寅彦
門川に慈姑の泥を落しゐる 児玉輝代
開墾の泥海に浮く根深かな 内田百間
閼伽桶に泥鮑を飼うていたりけり 本多豊明
闘う男に泥からのびる蔓一本 四ッ谷龍(1958-)
降る雪を泥にこねたる時雨かな 水田正秀
陶房の電話機に泥暑をきざす 片山由美子 天弓
隅田川の泥中に棲んでいる夢中 阿部完市 証
階段に泥足乾く涅槃かな 角田竹冷
雑魚捉へ泥煙あげし田亀かな 高見岳子
雛の日や泥を流がして隅田川 月舟俳句集 原月舟
雨の中泥手を洗ふ 尾崎放哉
雨の日や泥に突きさす栗のいが 栗 正岡子規
雨垂の泥にさびたり金盞花 松菊
雪に挿す泥線香や彼岸入り 御子柴光子
雪泥に捨つ恋一つ曳きあるく 小林康治 玄霜
雪泥に落縄まぎれ而立とか 飴山實 『おりいぶ』
雪泥の港明るし荷馬の咳 西村公鳳
雪泥の足袋すててまた出づる子よ 古沢太穂 古沢太穂句集
雪泥へ妻を走らせ酌まむとす 小林康治 玄霜
雪泥やかゝるところに年つまり 石田波郷
雪泥やわが上にのみ陽つよし 津田清子
雪泥や輜重馬匹のうるほへる 齋藤玄 飛雪
雪泥渡る跛いま洋奴ならぬなり 小林康治 玄霜
雪解のはねとぶ泥や松並木 西山泊雲 泊雲句集
雲は夏池の底なる泥けむり 三橋敏雄 畳の上
雲堕ちて泥靜まりぬ冬の水 冬の水 正岡子規
霜芝や日影をあびて沓の泥 飯田蛇笏 山廬集
露座仏の田植の泥を流す雨 青邨
青柳の泥にしだるゝ汐干かな 芭蕉
青葉木菟爪もて除く爪の泥 影島智子
非情の手 泥つかみ出し つかみ出す 富澤赤黄男
靴の泥こそぎ落せば行々子 高澤良一 さざなみやつこ
靴の泥すつきり流す文化の日 小村水枝
靴の泥枯草つけて富士を見る 横光利一
頬の泥ぬぐふ手あらず蓮掘女 片山由美子
頬の蚊をぴしやりと打ちし泥手かな 武井三重
顔に泥塗る美容あり敗戦日 宮脇白夜
風光り泥のひかりの大きな手 成田千空
颱風や泥しづみたる金魚玉 松村蒼石 寒鶯抄
飛びこんで泥にかくるゝ蛙哉 蛙 正岡子規
飽くるなき子の泥遊び蝌蚪生る 星 芳子
馬と人泥田に挿さり労働祭 西東三鬼
馬酔木咲く泥の付かざる農業士 静間まさ恵
高畦を泥惜みなく塗りにけり 松藤夏山 夏山句集
高砂の町や燕の泥が散る 松瀬青々
高靴の泥付け戻り蛍狩 高崎紀美枝
鬼を囃す背に冬耕の泥のはね 友岡子郷 遠方
鬼灯の泥をかむりて色づけり 斉藤葉子
鮟鱇がふぐに恋する小泥海 中勘助
鯉の息泥噴き上げし池普請 北川キヨ子
鯉幟牛の分厚き泥乾く 殿村莵絲子 遠い橋
鯉揚げて枯草に泥したたれり 南 うみを
鯊がゐし一斗缶の泥出せば 茨木和生 三輪崎
鴨の泥くさきを鴨の雑煮かな 野村喜舟 小石川
鴨の脚泥のよごれも無りけり 松瀬青々
鴨去りし深泥ヶ池に杜若 土井道子
鵯の影はしる泥染干しにけり 能勢真砂子
鶏交り太陽泥をしたたらし 富澤赤黄男
黄泥の坂を越えゆく頭巾かな 比叡 野村泊月
黄金掘る口崩れをり秋の泥 横光利一
鼻汁溝泥(はなどぶ)のごとくかなしや夏の風邪 山口青邨

しぐれ寒金泥欅さくら咲き 猿橋統流子 『丹波太郎』
倒れ菊金泥の如土砂を塗り 上野泰 春潮
凶事に金泥尽す屏風かな 大石悦子 百花
初鴉金泥の声あびせけり 岩下四十雀
古屏風の金泥淑気はた寒飢 鈴木鷹夫 春の門
囀や天地金泥に塗りつぶし 野村喜舟 小石川
夏蝶も紺紙金泥の経ならむ 水原秋櫻子
大御堂金泥はげしかすみかな 岡本松浜 白菊
定紋の金泥の艶光悦忌 足立幸信
寒鯉の金泥のごと沈みゐる 鈴木貞雄
小硯に金泥かわく夏書哉 夏書 正岡子規
慈悲心鳥紺紙金泥一切経 三谷道子
描初の金泥を溶き銀を溶き 奥野素径
春燈や金泥にほふ塩草子 加古宗也
杉の花金泥経を封じ込む 早乙女文子
枯桜幹は金泥帯びにけり 高澤良一 鳩信
梅花渓夜々金泥の月上げぬ 内藤吐天
泥眼の金泥を溶くつくつくし 山口都茂女
浅草は地の金泥に寒夜かな 飯田蛇笏 春蘭
涅槃像金泥は目にあたたかし 加古宗也
玉虫に紺紙金泥の経を思ふ 高浜虚子「虚子全集]
白梅や紺地金泥一切経 長谷川櫂 天球
盆過の紺紙金泥日課経 斉藤夏風
砂糖水金泥で経写し来て 茨木和生 三輪崎
紺紙なる金泥の蘭秋扇 高浜虚子
経蔵や黴臭し紺紙金泥一切経 橋本夢道 無類の妻
舞そめや金泥ひかる京扇 舞初 正岡子規
花楓紺紙金泥経くらきかも 水原秋櫻子
蜘蛛の罠金泥の都会暮れなづむ 三好 城
蜻蛉生る多摩の金泥銀砂子 久米正雄 返り花
襖絵の金泥寂びぬ春愁 金原登志子
金泥で書く波羅蜜の涼しさよ 筑紫磐井「筑紫磐井集」
金泥に塗り込めし死や大櫻 火村卓造
金泥に塗り込めたりし余寒かな 行方克己 昆虫記
金泥に帯び描くことも冬安居 京極杜藻
金泥に朱を落したる淑気かな 鈴木鷹夫 千年
金泥の一巻を展べ春の海 八染藍子
金泥の仁王の乳首あをあらし 川崎展宏
金泥の全身ねむる冬の鯉 正木ゆう子 静かな水
金泥の屠蘇や朱塗の屠蘇の盃 漱石
金泥の月のぼりをり春怒濤 木村風師
金泥の水の落日鳰くぐる 桂信子 遠い橋
金泥の淡きもしるき夏書かな 加藤三七子
金泥の無地の衝立春寒し 松藤夏山 夏山句集
金泥の筆先乾く夏書かな 大谷句佛 我は我
金泥の荒渦や人面を痺れしむ 橋本夢道 良妻愚母
金泥の菩薩刺さんと春の蚊が 古川水魚
金泥の額の古びや冬籠 会津八一
金泥の鶴や朱塗の屠蘇の盃 夏目漱石 明治三十二年
金泥をもて描くべし豊の秋 県多須良
金泥を塗られしごとき春の風邪 大木あまり 火球
金泥を引きてゑがける青蕨 後藤夜半 底紅
金泥を海に流せり盆の月 澤木欣一
金泥を溶く夜桜の冷えのなか はりまだいすけ
金泥を練る箆や冴え返るなり 内田百間
金泥経を出て凍蝶の吹かれけり 各務麗至
金泥経蔵して山の眠りゐる 菊地一雄
除夜守る火紺地金泥なせりけり 加倉井秋を
雲のうら金泥ならむ初鴉 小枝秀穂女
鹿啼くや紺地金泥の経の文字 松根東洋城

あと戻り出来ぬ道なり春の泥 市川昌子
あどけなきこゑ春泥のむかうより 井上 康明
いもがりの春泥をまへうしろかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
かけながす衣桁の衣の春の泥 松尾 静子
かの旗を靴もて春泥にふみにじらんか 長谷川素逝 砲車
かはのべに犬と来て踏む春の泥 深谷雄大
こもりくの泊瀬の春泥東京まで 志城柏
しつとりと春泥の干し小諸城 西本一都 景色
しんがりはわが乳母車春の泥 玉木 愛子
みごもりて裾につきゐる春の泥 細見綾子
ゆく先に日輪うつり春の泥 西山泊雲
ゆるゆると児の手を引いて春の泥 杉田久女
ゴム毬がはづみてつけし春の泥 細見綾子 花 季
ゴールキーパー春泥にまみれたる 吉原文音
ダックス犬腹一面に春の泥 中橋史子
チンドン屋春泥に音乱れけり 山田節子
バス降りて春泥の道あるばかり 安藤紫開
ルーズソックスためらはず跳ぶ春の泥 川村紫陽
三人がばらばらに跳ぶ春の泥 岡本差知子
丸善を出て暮れにけり春の泥 日野草城
乗り入れて馬場の春泥匂ふかな 西村和子 窓
乳母車の車輪がつけて行く春泥 細見綾子
争ひは生きてる証春の泥 橘 弘子
五稜郭の一稜を踏む春の泥 小林康治 『虚實』
人姦すごと春泥を徒歩渡る 小林康治 玄霜
人悼むため春泥をひた歩む 斉藤東風人
仏頂面して春泥の乾きけり 市原光子
傘雨忌や「春泥」よりの一読者 小林旭草子(春燈)
僧のあとから春泥のをんなたち 長谷川双魚 『ひとつとや』
光あり家を出てまず春の泥 池田澄子 たましいの話
入院す春泥を踰えそを見遣り 斎藤玄
八つ手葉に春泥のとび散つてあり 岸本尚毅 鶏頭
六道のどの道をいま春の泥 上田五千石(1933-97)
劫火消え春泥のなか小鳥来る 柴田白葉女 遠い橋
勝馬のもろに被れる春の泥 川田愛子
勤めあるごとく家出て春の泥 鷹羽狩行(1930-)
北の町の果てなく長し春の泥 中村汀女
北の街果てなく長し春の泥 中村汀女
午前より午後をかがやく春の泥 宇多喜代子 象
古葎美しかりし春の泥 石田波郷
古葦の春泥炎ゆる没日かな 松村蒼石 雁
塔の前金堂の前春の泥 高濱虚子
売られゆく牛春泥をつけしまま 阿部寿雄
外はすぐ銀座裏街春の泥 成瀬正とし 星月夜
大劇場横町へ出口春の泥 大橋櫻坡子 雨月
妻の杖となりて抱ふる春の泥 松山足羽
娶る日の春泥に藁惜しみなく 竹本白飛
子の血吸ふ舌いつぱいに春の泥 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
孟宗竹に目守りてくらき春の泥 齋藤玄 飛雪
家建ちて門いまだなる春の泥 松村てるや
寺子屋に傘多し春の泥 松瀬青々
山の辺の道の隅ごと春の泥 沢木欣一 二上挽歌
山坂の荒れし春泥如何に行かむ 下村槐太 天涯
幻影の春泥に投げ出されし靴 星野立子
広島の人春泥にうつりけり 萩原麦草 麦嵐
建長寺様の御僧春泥に 岩田由美 夏安
弔ひのピストルを撃つ春泥に 攝津幸彦 鹿々集
慶弔に服同じなる春の泥 松倉ゆずる
戦ひしごとき靴跡春の泥 秋元不死男
戦果たゞ寺の春泥ふむばかり 中川宋淵 命篇
手をつなぐきつかけとなり春の泥 日比野睦子
担ぎ来し花輪の脚を春泥に 摂津よしこ
捨てがたき子の我楽多よ春の泥 大場ひろみ
放吟や高校生に春の泥 石橋秀野
春の泥乾きて藁の上にあり 田中裕明 山信
春の泥御用詩人が世なりけり 加藤郁乎(1929-)
春の泥椿の幹にしたゝかに 西山泊雲 泊雲句集
春の泥毛皮に触れてゐて歩く 右城暮石 声と声
春の泥荒蕪拓きしはるかな日 関口ふさの
春の泥誰かわからぬ幌俥 真下喜太郎
春の泥踏みたくて訪ふ母校かな 本庄登志彦
春泥が板戸にとんで吾妻郡 鈴木鷹夫 春の門
春泥てふ箔付け戻りたりけるを 櫂未知子 蒙古斑
春泥となる葭小屋のまはりかな 山本洋子
春泥にうすき月さしゐたりけり 久保田万太郎
春泥にかるき荷物を下げて来ぬ 上村占魚 鮎
春泥にここぞと甘えすがる児よ 千原 叡子
春泥にこぼれてかたし花レモン 保田白帆子
春泥にこぼれ小鰈魚市場 高濱年尾 年尾句集
春泥にさりとて急ぐこともなし 草野駝王
春泥にたまりて水が澄みゐるよ 長谷川双魚 風形
春泥につかみて炭を頒ちけり 清水基吉 寒蕭々
春泥にとられし靴を草で拭く 稲畑汀子 汀子第二句集
春泥になほ降る雨のつばくらめ 西島麦南
春泥になほ降る雨のなかを来し 西島麥南
春泥になやめるさまも女らし 今井つる女
春泥にほとびし海野格子かな 西本一都
春泥にみなゆつくりと歩かされ 吉屋信子
春泥にゆだねて君を忘れめや 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
春泥にわたせる板を掃いてをる 京極杞陽 くくたち下巻
春泥にテレホンカード落しけり 神谷博子
春泥にハーレーダヴィツドソン傾ぐ 如月真菜
春泥に一歩をとられ立ちどまり 高浜年尾
春泥に二つ落ちくる鳶の笛 川崎展宏
春泥に低まりゆくや稚児の塚 長谷川かな女 雨 月
春泥に傘突き立てて何産まむ 柴田奈美
春泥に傾く芝居幟かな 富安風生
春泥に光り沈みし簪かな 龍胆 長谷川かな女
春泥に処刑のやうな転びかた 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春泥に子等のちんぽこならびけり 川端茅舎
春泥に子等の足あと喋りをり 角田敬恵 『花しづめ』
春泥に小虫舂く二タところ 西山泊雲 泊雲句集
春泥に屋台たつきの火を熾す 山野邊としを
春泥に山紫水明おしとほる 松澤昭 麓入
春泥に影くづれゐむ振りむかず 毛塚静枝
春泥に影坊二つあとやさき 飯田蛇笏 霊芝
春泥に影濡れ濡れて深夜の水 西東三鬼
春泥に径塞がれて回りみち 多田納君城
春泥に愛の秘薬を混ぜにけり 梅原公子
春泥に手押車の鳩かた~ 横山房子
春泥に押し合ひながらくる娘 高野素十
春泥に新しき靴たじろがず 戸川 晟
春泥に映りてくるや町娘 松本たかし
春泥に映り歪める女かな 松本たかし
春泥に映る花屋と床屋かな 京極杞陽 くくたち上巻
春泥に月の金片きらきらす 福田蓼汀
春泥に木履の丹さ高々と 楠目橙黄子 橙圃
春泥に松明うつる水送り 小林愛子
春泥に板を渡して通学路 羽吹利夫
春泥に歩きなやめる遠会釈 立子
春泥に歩みあぐねし面あげぬ 星野立子
春泥に紙飛行機のゆるび行く 佐竹美保子
春泥に耕耘機あり横とほる 小澤實
春泥に舟にかも似て木履かな 楠目橙黄子 橙圃
春泥に船長の靴新しき 岡田 耕治
春泥に茣蓙かぶせあり堂の前 岩田由美 夏安
春泥に行きくれてゐて暖かし 中村汀女
春泥に裾軽くとる修道女 山口季玉
春泥に足とられ行く虚子の墓 山王堂正峰
春泥に足を取られもして忌日 稲畑廣太郎
春泥に踏み出て護摩火渡りきる 吉田未灰
春泥に轅をおろし一輪車 原田青児
春泥に遺族のみせはし柩車発つ 平井さち子 完流
春泥のあいまいをゆく安堵かな 武藤鉦二
春泥のあたりが暗く藪の径 高濱年尾 年尾句集
春泥のいづこの赤を映しゐる 中戸川朝人 尋声
春泥のいろわかれたる摘菜籠 斉藤夏風
春泥のすこしつきゐる卵採る 石原舟月
春泥のそこにも瓦斯の水泡かな 大場白水郎 散木集
春泥のそのごちやごちやを恋と呼ぶ 櫂未知子 貴族
春泥のところかまはず子の笑顔 小宮山青衣
春泥のなか御柱落しけり 関口祥子
春泥のふかき轍となり暮るる 金子麒麟草
春泥のふるさといでぬ者ばかり 萩原麦草 麦嵐
春泥のむかし芋坂いま陸橋 富岡掬池路
春泥のもつとも窪むところ照り 山西雅子
春泥の一歩やあへて杖汚し 木村風師
春泥の一歩身のうち紅絹の鳴る 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春泥の中に石あり踏み応へ 高濱年尾 年尾句集
春泥の乾いてをりし懐古園 清崎敏郎
春泥の乾きて鶏のくぐみ声 川崎展宏
春泥の人美しく跳びにけり 石居康幸
春泥の凍りつゝある別れかな 金谷信夫
春泥の坂盤門へ人続く 川崎展宏
春泥の坂長々とありにけり 井口ふみ緒
春泥の子の血より哀しき色あるや 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春泥の子の血吾が唇もて覆ふ 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春泥の子供洗へば吾子となる 北野ふみ
春泥の孔雀汚れしこと知らず 小島千架子
春泥の恋文横町今いずこ 戸板康二
春泥の手押し車や朝の市 大村康二
春泥の敷藁にほふ清白寺 土屋なつ
春泥の昨日はここに馬の市 本多邁
春泥の果の山坂うつくしき 萩原麦草 麦嵐
春泥の桂馬跳びせし日遠くなる 倍 憲一
春泥の母牛を押す仔牛かな 綾部仁喜 寒木
春泥の水の乾きしひとところ 今井杏太郎
春泥の猫叱りつつ洗ひやる 吉田きよ子
春泥の眠り深くて月昇らず 内藤吐天 鳴海抄
春泥の窪みは妻の病むごとし 長谷川双魚 風形
春泥の繁華生死にかかはりなく 福田蓼汀 山火
春泥の自転車あふれ湖へ 石寒太 翔
春泥の芯まだ固し女坂 幸治燕居
春泥の葛西にたゝむ見舞傘 石塚友二 光塵
春泥の街のはてなる東山 五十嵐播水 播水句集
春泥の記憶にいつも負け喧嘩 角野良生
春泥の足をのばして長命寺 木下ひでを
春泥の足下堂々出合滝 石川邦照
春泥の足寄せ合ひて神の鹿 石松昌子
春泥の足袋をはきかへ神の前 山本まさ子
春泥の軍手を踏んでしまひけり 北見さとる
春泥の道が一筋夜を貫く 右城暮石 上下
春泥の道を悪夢のつづきかと 上田五千石 田園
春泥の道途切るるや海のそば 岩田由美 夏安
春泥の金泥となり夕日落つ 福田蓼汀 秋風挽歌
春泥の鎖を鳴らし象立てり 武子都史郎
春泥の雀矢となり毬となり 仁科文男
春泥の靴ぬぎ拝む延暦寺 関 多美
春泥の靴憚らず来りけり 坊城中子
春泥の靴揃へあり牧の弥撒 太田昌子
春泥の靴溢れをり珠算塾 塩田晴江
春泥の靴脱ぐひまもほとけ恋ふ 伊丹三樹彦
春泥の飛びつきにけり乗馬靴 西村和子 窓
春泥の高野を往たり来たりかな 小形さとる
春泥の鹿の足跡乾きけり 湯田文子
春泥は王の墓域の白砂にも 河野頼人
春泥やいつまでつゞく道普請 忽那文泉
春泥やお伽草紙の碑にまみゆ 高岡すみ子
春泥やこの先工事迂回せよ 岡村ふみ
春泥やつなぎたる手を又はなし 岡田耿陽
春泥やどこへゆくにもこの帽子 岩田由美 夏安
春泥やなまなか板を敷きしより 小杉余子 余子句選
春泥やのれんに染まる妓の名(鴨東宮川町) 『定本石橋秀野句文集』
春泥やひかりつゝ来てたゞの貌 清水基吉 寒蕭々
春泥やまさかの人が向うから 池田澄子 たましいの話
春泥や一学童の松葉杖 河野静雲
春泥や二戸の戸口の向ひ合ひ 小杉余子 余子句選
春泥や人の歩みのある櫓山 下田水心子
春泥や低く垂れ行く小提灯 赤星水竹居
春泥や光りて売らる鑿鉋 駒敏郎 遠天
春泥や和子の抱ける壺仏 吉武月二郎句集
春泥や嘴を浄めて枝に鳥 石井露月
春泥や垂れて文字合ふ大暖簾 大橋櫻坡子 雨月
春泥や夕刊飛んで地に落ちず 前田普羅
春泥や夕暮すこし冴え返り 小杉余子 余子句選
春泥や多摩にしまひのだるま市 柳原佳世子
春泥や大きくなりし吾子の靴 木暮陶句郎
春泥や孔雀がかつと羽根ひらく 九鬼あきゑ
春泥や屏風かついで高足駄 飯田蛇笏 山廬集
春泥や岬に立てば流離めき 武田芳枝
春泥や峡の一戸へ行く介護 岩波竹渓
春泥や師の家を出て渋谷川 清水基吉 寒蕭々
春泥や帽子あみだに来るは中也 山内かぐや
春泥や干されて巨き靴の裏 大塚代子
春泥や庭に来てゐるよその犬 室積波那女
春泥や忌日の寺の坂がかり 石塚友二 光塵
春泥や愚に職を捨てかねつ 小林康治 四季貧窮
春泥や教師ひそかに倦む日なる 鍵和田[ゆう]子 浮標
春泥や月ほそぼそとそだちつつ 藤岡筑邨
春泥や村の家々ほど遠き 上村占魚 鮎
春泥や根をつよくして野の木橋 能村研三 鷹の木
春泥や横並び行くサラリーマン 山本佑子
春泥や母を背負へばいと軽く 津田政彦
春泥や泥という字の笑い死に 増田まさみ
春泥や爪先で訪ふ母校跡 小原良枝
春泥や父として通る面映ゆし 清水基吉 寒蕭々
春泥や猫背教師の大鞄 久保木信也
春泥や石と思ひし雀とび 佐野良太 樫
春泥や絵は豊国に陥りて 尾崎迷堂 孤輪
春泥や肩に登りし吾子の尻 鈴木五鈴
春泥や裸祭の揉みし跡 櫛田と志子 『繭玉』
春泥や貯金おろしてしまひたる 文挾夫佐恵
春泥や車ひしめく畳市 下村ひろし
春泥や転校にまだ慣れぬ道 佐保美千子
春泥や遠く来て買ふ花の種 水原秋櫻子
春泥や酒屋床屋と相対ひ 西山泊雲 泊雲
春泥や闘ふための牛を飼ふ 林原和枝
春泥や靴音重く子の帰る 高橋淡路女 梶の葉
春泥や預金おろしてしまひたる 文挟夫佐恵 黄 瀬
春泥や馬場に少女と少年と 山崎悦子
春泥や馬頭観音つんのめり 山田みづえ
春泥や魚屋の荷の鯛鰆 野村喜舟 小石川
春泥や鴉に飽きし邸の婢 雑草 長谷川零餘子
春泥をいゆきて人を訪はざりき 三橋鷹女
春泥をおそれぬ靴の先頭に 小比賀陽子
春泥をすれすれに来て象の鼻 岡田耕治
春泥をところ~に描く灯よ 長谷川ふみ子
春泥をとんで財布の鈴が鳴る 角光雄
春泥をぬぐいてからの銀座線 中田のぶ子
春泥をぬぐひて詣づぼたもち寺 高澤良一 ねずみのこまくら
春泥をぶつぶつ云ひつ脱しけり 高澤良一 ぱらりとせ
春泥をゆくさみどりの風いくつ 小川軽舟
春泥をゆくやこのままゆくほかなし 辻桃子 ねむ 以後
春泥をゆく声のして茜さす 臼田亞浪 定本亜浪句集
春泥をブーツの先に逢いに行く 川副民子
春泥を体くねらせ女来る 上村占魚 球磨
春泥を少女*喜々たり追ひ越せず 原田種茅 径
春泥を心覚えや闇を行く 西山泊雲 泊雲
春泥を拭く間もじつとせぬ手足 五十嵐みい
春泥を拭ひ捨て行く女の紙 右城暮石 声と声
春泥を来ていつぽんの直ぐなる木 熊田信子
春泥を来てかがむほど小さき墓 渡辺桂子
春泥を来てこの安く豊かなめし 平畑静塔
春泥を来て大いなる靴となり 上野泰 佐介
春泥を来て早風呂を焚きにけり 佐川広治
春泥を歩く地声のにわとりと 柴田和江
春泥を歩く汽笛の鳴る方ヘ 細見綾子
春泥を歩みてこころ遠くある 角川春樹
春泥を残しサーカス発ちにけり 菅原鬨也
春泥を残し朝市果てにけり 田中幸一
春泥を浴びよろこべる道の神 伊藤トキノ
春泥を砂利でまぎらし病院建つ 津田清子
春泥を背にまで跳ねて下校の子 桜井照子
春泥を視線は既に飛びこえて 千原草之
春泥を跳びそこねたる素顔かな 都竹禎子
春泥を跳び腹の虫鳴かせけり 水口楠子 『泉汲む』
春泥を跳び酔ひ痴れてみたきかな 奈良文夫
春泥を跳んで長髪おくれ撥ね 中戸川朝人 尋声
春泥を跳んで齢のゆきどまり 北見さとる
春泥を踏みゆく若き人ばかり 内藤吐天 鳴海抄
春泥を踏み老人を見にゆけり 長谷川双魚 風形
春泥を踏む雲はれし山路かな 西島麦南 人音
春泥を踏んで齢のゆきどまり 北見さとる
春泥を蹴込み責め馬嘶けり 大熊輝一 土の香
春泥を返しもならずなほ遠き 岡本差知子
春泥を避け行く月の雲白し 右城暮石 声と声
春泥を鍵屋への字の眉で来る 浅野津耶子
春泥を零し材木積まれける 永原富枝
春泥を飛びこえとびこえ南禅寺 草間時彦
春泥を體くねらせ女来る 上村占魚 『球磨』
春泥蒼し一天萬乗の大君とか 塚本邦雄 甘露
最寄駅今日は遠くて春の泥 森 裕子
月読の春泥やなど主を避くる 中村草田男
東天紅春泥に尾羽触るるなし 島崎秀風
栗鼠はしりゐる春泥の葡萄園 仙田洋子 雲は王冠
植木屋の仕事の跡や春の泥 有本たけし
横町の春泥地獄燈をつらね 青畝
武蔵野の春泥重く歩きけり 上林暁
母葬る春泥に砂打ち敷きて 宮田正和
池めぐる径春泥のなつかしき 沢 聰
海を見に行く春泥を跳びながら 尾崎和子
漁師町烏賊墨にじむ春の泥 松藤夏山 夏山句集
灯の下を過ぎ春泥の道続く 茨木和生 遠つ川
物思ふほどの春泥虚子の墓 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
玄室へ靴の運びし春の泥 八染藍子
王子への十歩ばかりの春の泥 射場秀太郎
生誕に空しき砲を撃つ兵よ春泥に膝つきてつつまし 安永蕗子
発光独楽購ふ春泥を後戻り 宮武寒々 朱卓
真鶴も岩も漁場なり春の泥 長谷川かな女 牡 丹
窓の灯の消えて綾なし春の泥 高浜虚子
笞受く牛目使ひや春の泥 野村喜舟
脱ぎすてし幼の靴に春の泥 小泉豊流
芹川に春泥つたひ降りしかな 長谷川かな女 花寂び
薪割れる木屑とび来し春の泥 西山泊雲 泊雲句集
行きさきに日輪うつり春の泥 西山泊雲 泊雲
近道をしてゐるつもり春泥に 稲畑汀子
逢引の春泥靴先に少し 角光雄
遊ぶことばかりかんがへ春の泥 田中裕明 櫻姫譚
酒場の灯しみて春泥更けにけり 清原枴童 枴童句集
酒蔵は近し春泥跳びにけり 小島健 木の実
重箱の風呂敷につく春の泥 松瀬青々
鍛冶ケ音や無三に飛びし春の泥 齋藤玄 飛雪
陋巷や障子のすその春の泥 大橋櫻坡子 雨月
隕石の行方たどれば春泥や 小長井和子
風吹いて春泥乾きそめてをり 榊原知之
駱駝坐す春泥の峰二つ乗せ 渡辺恭子
鴨の嘴(はし)よりたらたらと春の泥 高浜虚子(1874-1959)
●土砂 
しがらみを潰え出し土砂や青芒 西山泊雲 泊雲句集
また押流された土砂の量だけあきらめる 林田紀音夫
倒れ菊金泥の如土砂を塗り 上野泰 春潮
土砂降に祭つぶれし蚊帳かな 増田龍雨 龍雨句集
土砂降の夜の梁の燕かな 清原枴童 枴童句集
土砂降の芋名月とこそはなりぬ 石塚友二
土砂除きをり半裂の生簀より 茨木和生 往馬
胸も頬も金色の土砂土用過ぐ 岩田昌寿 地の塩
農冬至男水禍の土砂を踏み嘆かふ 西本一都 景色
辺土砂土柴垣区々に油照り 成田千空 地霊
霜枯るるものなき土砂に墓標立つ 依田由基人
●土石 
土石流埋めたる谷や花うつぎ 安原葉
土石流家を根こそぎ梅雨末期 高澤良一 素抱
●凍土 
そそくさと踏む蛇塚の凍土かな 大木孝子
なべて凍土かすかに笑ふ精神科 栗林千津
サーカスの去りし凍土獣臭す 加藤征子
万愚節すぐや凍土の零番地(網走) 角川源義 『神々の宴』
凍て土にはね返さるゝさぐり杖 片山すみれ
凍て土にほろほろと日のあたりそむ 長谷川素逝 砲車
凍て土に射ちし薬筒抛られ抛られ 長谷川素逝 砲車
凍て土に斧外れ形正しき痕 右城暮石
凍て土に解けたる水や浮びけり 高濱年尾 年尾句集
凍て土ゆ凍て白菜を捩ぎ取りぬ 林原耒井 蜩
凍て土をすこし歩きてもどりけり 五十崎古郷句集
凍て土を漕げばきしきし車椅子 山田百穂
凍土から留学生を掘りおこす 櫂未知子 貴族
凍土にこの好日のけふとなり 長谷川素逝 村
凍土にころげ育ちて性荒し 木村蕪城 寒泉
凍土につまづきがちの老の冬 高浜虚子
凍土に一枚たばこを巻く紙なり 篠原梵 雨
凍土に子を置けばすぐ走り出す 今瀬剛一
凍土に捨てゝ仏華の鮮かに 柴田白葉女
凍土に溺れる家の骨と肉 増田まさみ
凍土に起ち上がりをり葱の屑 北村保
凍土に酒匂ひけり鍬初 渡部杜羊子
凍土に鼻うちつけて転けし子よ 木村蕪城 寒泉
凍土のおのが日なたの日もすがら 長谷川素逝 暦日
凍土の上に建ちつゝありしもの 池内たけし
凍土の上を風塵吹くばかり 長谷川素逝 村
凍土の蓆の上の神楽の荷 阿部千鶴
凍土の裏庭避けて鳥の声 豊田勝巳
凍土もて間牒土偶の鼻こねり 石塚友二 光塵
凍土や俵を漏れし炭の屑 石橋忍月
凍土ゆれ射ちし砲身あとへすざる 長谷川素逝
凍土より日出で雲を 中塚一碧樓
凍土をすこし歩きてもどりけり 五十崎古郷
凍土をなつかしみ踏む心ある 星野立子
凍土をなほ縛(いま)しむる木の根かな 風生
凍土を踏みて淋しき人訪はむ 小坂順子
凍土厚きに人煙しかと上ぐるなり 阿部完市 無帽
凍土掘り父情の温み身をのぼる 北 光星
凍土揺れ射ちし砲身あとへすざる 長谷川素逝 砲車
凍土揺れ砲口敵を獲つつ急 長谷川素逝 砲車
凍土行く生きものの耳我れも立て 村越化石
凍土踏む音して階下シベリア展 鈴木 映
売られる畑の凍て土が牛蒡についてきた 栗林一石路
大使館庭の凍土掘つてをり 辻桃子
托鉢の凍土つきし草鞋吊り 後藤夜半 底紅
捕虜われを拒否する凍土掘る手なし 小田 保
星を呼ぶ凍土よまるくみな眠る 橋口 等
朝日かつと凍て土やがて光り出でぬ 高濱年尾 年尾句集
水仙のたれ葉一片凍土に 西山泊雲 泊雲句集
火渡りの素足凍土にこすりたり 日野圭子
燭尽きて凍土焦がす皇子の墓 谿昭哉 『航跡』
父の忌の凍土木よりほろほろ落つ 加藤楸邨
百歳杉倒せば凍土泣き崩る 長野深青
真空にして踏みこむ凍土生きている 藤嶋花俊
立ち上がり馬鳴きかわしゆく凍土 対馬康子 吾亦紅
葱引くや凍土に足駄ふみ入れて 岡崎莉花女
雨や来む夜の凍土の踏めば崩ゆ 原田種茅 径
●黒土 
ひかりつよし此処黒土の雪解とて 川島彷徨子 榛の木
むさし野の露の黒土菊咲けり 瀧春一 菜園
サルビアの小花散りしく黒土のうるほふごとき夕べとなりぬ 尾崎左永子
下野の黒土匂ふ春の雷 中嶋キミ
五千年まへの黒土薯を掘る 鈴木恵美子
五月来ぬ水田黒土光噴き 相馬遷子 山国
作州の黒土つけて芋届く 久永小千世
千町歩の黒土みたす霜柱 菅沼義忠 『早苗饗』
古藁塚の裾黒土に同化せり 柴田奈美
新馬鈴藷や黒土の窪器めく 香西照雄 素心
梁強し黒土春雨吸ひつくし 沢木欣一 地聲
比良八講黒土に藁つきささり 赤尾冨美子
濡れてより待春の黒土となる 岩岡中正
父の忌の黒土匂ふ貝割菜 皆川盤水
牛蒡掘る黒土鍬にへばりつく 高浜虚子
種芋の呼気立ちあがる黒土帯 武田哲子
種蒔いて黒土にいのち弾む日よ 三谷昭 獣身
細耕で隆め黒土七五三 香西照雄 対話
葦芽や黒土轢かれ道なさず 成田千空 地霊
靴音の消ゆる黒土初大師 鍵和田[ゆう]子 浮標
飴袋黒土擦つて七五三 沢木欣一
鶏頭枯れ墓地の黒土匂ひけり 西村公鳳
黒土にまぎるるばかり菫濃し 誓子
黒土にまぎるゝばかり菫濃し 山口誓子 激浪
黒土によき句かかばや葱の筆 中勘助
黒土に三ツ葉とびとび分教場 佐野美智
黒土に鉄骨植ゑぬ復活祭 香西照雄 素心
黒土の匂ふ筍もらひけり 中里泰子
黒土の坂の垂れたり十三夜 中戸川朝人 残心
黒土の庚申塚や朧月 許六 正 月 月別句集「韻塞」
黒土の春に式後の女学生 草田男
黒土の踏石に染みて油照る 内田百間
黒土や芋の下総丘まるし 秋元不死男
黒土や草履のうらも梅花 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
黒土をもらひて帰るみどりの日 永野 祥子
黒土帯右腕関節が血をたらす 鈴木六林男 荒天
黒土色の下闇悔に立脚せよ 香西照雄 対話
●黄土 
どこまでの黄土か鳥の渡りけり 有馬朗人
山霧や黄土(はに)と匂ひて花あやめ 不器男
春の蝶黄土の谷に生れけり 日原傳
桐一葉落ちて黄土に還りけり 稲畑廣太郎
海知らぬ太陽落す 黄土の国 伊丹三樹彦 写俳集
蝶とんで黄土の色にまぎれざる 依田明倫
邯鄲や目瞑れば四囲はや黄土 金箱戈止夫
黄土いやしむ心にも春湧ける 大場白水郎 散木集
黄土ゆく夢よりさめし日射病 井上子
黄土剥いて土屋となせり亜麻の花 加藤楸邨「沙漠の鶴」
黄土層天が一滴の血を垂らす 西東三鬼
黄土灼け巨大な影法師と歩く 小檜山繁子
黄砂来る黄旗滅びし黄土より 的野 雄
●泥土 
三椏や泥土より立つ神の鹿 田川飛旅子
冬曇る泥土が気泡生みつづけ 有働亨 汐路
北風吹いて泥土の干割れ底知れず 有働亨 汐路
忍従の兵這ひ泥土馬を喰ふ 片山桃史 北方兵團
曼珠沙華泥土のながれ干たるまま 瀧春一 菜園
棉摘むや黄河が吐きしこの泥土 加藤秋邨 沙漠の鶴
母逝けり川洲の泥土暖かく 三谷昭 獣身

以上

by 575fudemakase | 2022-05-22 14:53 | ブログ


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by 575fudemakase

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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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