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温泉 の俳句

温泉 の俳句

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●上り湯
たつぷりと上り湯使ひ去年今年 土屋秀穂
●朝湯
いつよりや朝湯を好み惜春忌 本井 英
ちんぽ皆ぶらさげ正月の朝湯も去年の顔触れ 橋本夢道 無礼なる妻
やや寒の朝湯文人気分かな 高澤良一 随笑
よべの火蛾浮ぶ朝湯に身を浸す 浅野右橘
ラベンダーの香りの朝湯蒿雀来る 毛塚静枝
七草の朝湯あとから利いてくる 高澤良一 寒暑
五月尽ものぐさ癖のぬる朝湯 永井龍男
冬休み終る朝湯を沸かしけり 福永みち子
囀や旅にも朝湯かかされず 稲畑汀子 春光
坊ちやんの朝湯に浸かる秋遍路 若山智子
夏朝湯にゐるはのッそり男伊豫のてのーるの音 涓滴不喚洞 宇佐美不喚洞
宇奈月の朝湯の香る建国日 竪ヤエ子
慈悲心鳥をんな二人の朝湯なる 田部谷紫「揺籃」
新涼や朝湯帰りの下駄の音 清水和子
朝湯こんこんあふれるまんなかのわたくし 種田山頭火(1882-1940)
朝湯して夫が鯛焼く初厨 久米谷和子
朝湯して湯花は霧の淡さなる 高澤良一 素抱
朝湯より戻る足取り湯中り呆け 高澤良一 随笑
松葉牡丹ぱつぱつと咲き朝湯湧く 柴田白葉女 花寂び 以後
枷解かる朝湯の奢り女正月 坪井のぶ子
熟睡翁敬ふ朝湯沸きにけり 水原秋櫻子
由布院の朝湯に聞けり時鳥 永田由子
美しう菖蒲浮きたる朝湯かな 浜田波静
膝ふたつ蓬莱として朝湯かな 五島高資
衰ふる朝湯を裹む虫声と 石川桂郎 四温
霜の日の朝湯うめてもうめてもや 高澤良一 随笑
飛込んてぬるき朝湯も秋なれや 尾崎紅葉
●硫黄泉
大瑠璃や渓に鉄泉硫黄泉 鈴木麻璃子
硫黄泉高窓の秋にはかなり 手塚美佐 昔の香
黄葉どき髪膚完爾と硫黄泉 高澤良一 素抱
●磯湯
磯湯よりあがりしままにぬかご採る 中戸川朝人 星辰
●出湯
ふるさとの出湯に年越し蕎麦すすり 臼田亜浪
みちのくの出湯溢るる雨氷かな 深尾正夫
むらぎもに出湯のほてりや星月夜 山本歩禅
わっと紅葉出湯に齢透くことも 諸角せつ子
上諏訪や出湯で洗ふ曽良の墓 江崎成則
出湯の壷底なめらかに日永かな 芥川龍之介
出湯の山のぼるにつれて蜜柑山 上村占魚 球磨
出湯出づ脛のすうすう新樹冷え 高澤良一 素抱
出湯古き野沢の里の夕しぐれ 神力しのぶ
出湯浴み刻夜々おくらせて月待つも 吉野義子
出湯涼しいつ傷つきしたなごころ 福田蓼汀 秋風挽歌
初春の出湯のラドン含有量 高澤良一 素抱
勿忘草たちまち迷ふ出湯の径 児玉 小秋
噴き出づる出湯に難渋川普請 丸山 遥
土用太郎ぬるき湯にゐる越後出湯 杉本寛
大木の桂黄葉に湧く出湯 高澤良一 素抱
対岸より老鴬出湯はこんもり湧く 高澤良一 素抱
川の名の桂折り焚く出湯かな 尾崎紅葉
掬ひたる出湯の重き稲光り 北見さとる
新秋の出湯あみつづけ酒毒抜く(上州草津高原自門洞滞在二句) 上村占魚 『かのえさる』
日盛りの出湯に血行よくなれり 高澤良一 寒暑
春曙出湯に入らんと目覚めたる 高澤良一 随笑
氷室会の星座下りきて出湯に組む 中里麦外
盆提灯桑の木に吊る出湯の宿 松井子
短日の出湯の上を白蛾飛ぶ 矢島渚男 延年
磯近き出湯に浸れば鳥帰る 大網信行
福茶して出湯泊りの膝ならぶ 岡本まち子
窓外の秋空のごと出湯澄めり 上村占魚 球磨
老鶯や出湯のあまりが谷に落つ 秋元不死男
般若心経掲げ人肌の出湯の秋 福田蓼汀 秋風挽歌
苔の花出湯にみちびく石畳 照山とし子
落葉松の沢に出湯ありほととぎす 上村占魚 球磨
蝗来て游ぐ野中の出湯の槽 石塚友二 光塵
行春のはげしき雨に出湯熱し 宇佐美魚目 天地存問
赤腹や未明の出湯に顎沈め 石川桂郎 高蘆
返り花石工ひとりが出湯の中 飯田龍太 遅速
那須の野の清水か出湯かとぞ寄る 皆吉爽雨 泉声
野趣溢る出湯はしおからとんぼ色 高澤良一 寒暑
金色に湯花かがやく出湯の秋(草津温泉大阪屋旅館泊) 上村占魚 『球磨』
闇紅葉出湯の温みの身に滲まず 林原耒井 蜩
雪しんしん出湯こんこんと尽くるなし 松本たかし
雪吊をよくは見ざりし出湯の旅 森田峠 避暑散歩
雪沁みの初刷とどく山の出湯 千代田葛彦
青葉蔭薬師瑠璃光の出湯とぞ 高橋睦郎 金澤百句
●岩風呂
下呂温泉岩風呂に垂る凌霄花 郷 照雄
大旱岩風呂に蝉はりつきて 瀧澤伊代次
岩風呂にはんざきとなりひそみをり 末永雅子
岩風呂に男洗濯秋の雨 原田青児
岩風呂に癒えし躬沈め夜の長き 伊東宏晃
岩風呂に魚の匂ひして短日 小林美夜子
岩風呂に鳴かぬ河鹿をとらへけり 中島斌雄
岩風呂の一枚岩に初日差し 岬雪夫
岩風呂の岩恐ろしや十三夜 富田潮児
岩風呂の秋燈暗し瀬を照らす 福田蓼汀 秋風挽歌
岩風呂へ下りゆく道の葛の花 比叡 野村泊月
岩風呂や木賊にかかる夕陽見て 桂信子
橙を飾り岩風呂清らなり 河西五十鈴
猿の来る志賀の岩風呂ななかまど 鎌田隆靖
雪明りして岩風呂の岩の相 高澤良一 寒暑
●岩湯
一切がもみづる中や岩湯浴ぶ 高澤良一 寒暑
初もみぢ明かりの及ぶ岩湯かな 鷹羽狩行
初湯浴ぶ天の岩湯のここちかな 長谷川櫂 虚空
夜は秋のくらき岩湯に通ひけり 金尾梅の門 古志の歌
女体透く岩湯に楡のあおければ 三谷昭 獣身
岩湯滾くけぶりも立てず日の盛り 内藤吐天
月光の穿つ岩湯に下リんとす 山口草堂
灯り居る岩湯に夏の出水して 長谷川かな女 雨 月
照葉して五體あられもなき岩湯 高澤良一 寒暑
紅葉して岩湯に老の貌ひとつ 山口草堂
蜩に笠着て通ふ岩湯かな 金尾梅の門 古志の歌
邯鄲の森の岩湯に吾嬬あり 岡部六弥太
霧の岩湯を胸にそそぎて何温む 山口草堂
●内湯
●奥湯
獅子舞も奥湯へいそぐ夕あられ 山岸 治子
奥湯への郵袋橇にかへて発つ 中村 翠湖
湯河原や山蟻走る奥湯径 赤松惠子
●温泉郷
晴雪の富士聳え寒に入る温泉郷 内藤吐天
桐咲いて温泉郷ま昼の日の濁り 柴田白葉女 遠い橋
風花の温泉郷の校舎半旗垂る 宮武寒々 朱卓
●温泉町
スキーかつぎ雪なき温泉町歩きゐる 堤 俳一佳
下駄はいて温泉町の宵の遍路衆 草雲雀 柳原極堂
土用芽や温泉町つづきに垣低く 木村蕪城
夏蚕飼ふ温泉町の中の百姓家 大島鋸山
夜の橋渡る旅の温泉町は祭にて 宮武寒々 朱卓
水草の流れ汲み打つ温泉町 飯田蛇笏 山廬集
温泉町出てそこに湖畔のキヤンプ村 高濱年尾 年尾句集
細工師消えた路地は真闇の 温泉町 伊丹公子 メキシコ貝
●温泉旅館
●隠し湯
卯の花に隠し湯の名も古りにけり 渡辺 立男
奥鬼怒の奥の隠し湯地虫出づ 萩原季葉
山霧にときをり隠し湯の匂ひ 伊藤トキノ
隠し湯に郵便車来て日脚伸ぶ 相河美智子
隠し湯はなほこの奥や牡丹鍋 小路紫峡
隠し湯へ一人静の灯る径 木村幸枝
●かけ湯
今正にもみづる加仁湯の掛け湯浴ぶ 高澤良一 寒暑
●釜風呂
釜風呂の焦げくさかりし青木の実 細川加賀 『玉虫』
釜風呂の声つつぬけや峡の月 北見さとる
●間欠泉 間歇泉
万緑をしぼりて噴けり間歇泉 三関浩舟
春疾風間欠泉の湯気飛ばす 村井信子
間欠泉のごときわが詩粉雪降る 仙田洋子 雲は王冠
間歇泉春一番をつらぬけり 穐好樹菟男
●共同湯
いただいて落葉の泛ける共同湯 高澤良一 燕音
ガタの来し下駄箱霧の共同湯 高澤良一 素抱
他所者の厚着もこもこ共同湯 高澤良一 燕音
伊予簾賑はひ見する共同湯 松崎鉄之介
共同湯屋根の落葉の分厚かり 高澤良一 燕音
共同湯昼をみたして初晦日 松崎鉄之介
共同湯木戸開け着膨れ婆ぬっと 高澤良一 燕音
共同湯木目がうれし宵の雪 高澤良一 素抱
共同湯霜にこはばる身をほぐす 高澤良一 燕音
冬菜桶戸口におきて共同湯 佐野美智
前山のぽかぽか黄葉共同湯 高澤良一 燕音
投函の小銭ひやつく共同湯 高澤良一 燕音
湯をうすめうすめ夜霧の共同湯 高澤良一 素抱
濃霧の夜壁越しにこゑ共同湯 高澤良一 素抱
箒・塵取露けく下がり共同湯 高澤良一 随笑
霧に湯気逃がす高窓共同湯 高澤良一 随笑
●薬湯
善峰の薬湯に春惜しみけり 辻本雨声
思ひ出て薬湯たてる余寒かな 召波
薬湯に浸る冬夜の二点鐘 橋本美代子
薬湯に骨漬けてをり土用丑 西野幸三郎
薬湯や竹四五本に北風つのり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
薬湯を出て雨の宵街の灯にぬれる 人間を彫る 大橋裸木
薬湯を吹き窪ませて寒の入 兼田光子
●鉱泉
ゆきつけの鉱泉宿の牡丹鍋 大橋一郎
初扇安鉱泉に遊びけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
噴き出して鉱泉赫し夏燕 毛塚静枝
客あれば鉱泉沸かし山女焼き 石川星水女
山の鉱泉に父の晩年きりぎりす 高島茂
岩茸を鉱泉宿の土間に売る 皆川盤水
蟷螂生る鉱泉宿が茶殻干す 皆川盤水
避暑宿や鉱泉沸かす夕煙 楠目橙黄子 橙圃
鉱泉の宿も飯場も胡桃飯 西本一都 景色
鉱泉へゆく道のあり冬田中 田中冬二 行人
鉱泉沸かす煙り夏の雨やまぬなり 杉本寛
髪切虫鉱泉宿の長廊下 皆川盤水
●腰湯
しくるゝや腰湯ぬるみて雁の声 時雨 正岡子規
晩秋や先生腰湯しておはす 小澤碧童 碧童句集
腰湯して気遠くなりぬ梅雨の底 林火
●混浴
あと一人来ず混浴の紅葉谷 鷹羽狩行 月歩抄
匂ひ艶よき柚子姫と混浴す 能村登四郎(1911-2002)
小春日の混浴となる足湯かな 松村悦子
山の蜂見て混浴の二青年 高澤良一 素抱
年寄れば混浴ゆるす薄紅葉 青木重行
朝寒の混浴女(をみな)向うむき 高澤良一 寒暑
混浴に夏木を愛づる夫婦もの 高澤良一 素抱
混浴に馴れし湯治や胡麻の花 山田孝子
混浴のずばり入る湯に秋津来る 高澤良一 素抱
混浴のアダムがイヴに蜂指さし 高澤良一 素抱
混浴の五人に秋日あけすけに 高澤良一 素抱
混浴の刻ゆるやかに夏木立 山崎秋穂
混浴の女岩踏む跣の音 高澤良一 素抱
混浴の小屋廃れあり梅雨のあめ 石川桂郎 高蘆
混浴の慈母観音に目の遣り場 高澤良一 素抱
混浴の洗ひ場奔る青蜥蜴 高澤良一 素抱
混浴の真上の大き茂みかな 高澤良一 素抱
混浴の肌叩き出て清水のむ 高澤良一 素抱
混浴の脱衣場秋津の入り来たる 高澤良一 素抱
混浴の蜂の来る湯に今一度 高澤良一 素抱
混浴の農婦泳げりみどりの夜 下田稔
混浴の隅に不作の男たち 三本渓泉
混浴の飄(ひょう)と上がれる赤裸 高澤良一 素抱
混浴は熱め折々秋津くる 高澤良一 素抱
混浴や漁樵声出す茂より 青畝
混浴や玻璃に山百合触れんばかり 川村紫陽
病葉の降る混浴の隅占めぬ 高澤良一 素抱
秋風の百姓の顔混浴す 殿村菟絲子 『路傍』
野に昼月傷負う人ら混浴す 鈴木八駛郎
●新湯
あやめ湯の菖蒲さげ行く新湯かな 泉鏡花
●終い湯
ゆつたりと終ひ湯に聞く除夜の鐘 田島早苗
終い湯落とした時間の 父でなく 夫でなく 伊丹三樹彦 樹冠
終ひ湯にひと焚き欲しき霜夜かな 北川千鶴子
終ひ湯に欠伸して母の日の妻よ 相馬遷子 雪嶺
終ひ湯に泣きたく鳴くは蟇 猪俣千代子 堆 朱
終ひ湯に踵をみがく一葉忌 佐藤喜代子
終ひ湯のひとりに山の時雨れたる 春樹(大聖寺川しぐ)
終ひ湯の夜寒の桶がころがりぬ 今井杏太郎
終ひ湯の小さき石鹸ちちろ鳴く 松丸とわ子
終ひ湯の柚子の温もり胸に触る 鈴木壽子
終ひ湯の窓に欠け月狐啼く 古道紀美子
終ひ湯をつかふ音して羽蟻の夜 清崎敏郎
●出浴
●菖蒲湯 菖蒲風呂
ある露地に菖蒲湯あふれ来たりけり 石橋秀野
いくさ傷らいの傷秘め菖蒲湯に 村越化石「蛍袋」
はやばやと入りて菖蒲湯匂はすか 高澤良一 ねずみのこまくら
ひき汐へ遠くなる菖蒲湯の我 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
世に隠れ菖蒲湯をひた溢れしめ 小林康治
児の臀のまろきを洗ひ菖蒲湯に 小松崎爽青
子に勇気教へて熱き菖蒲湯に 住谷不未夫
子のをらぬ日の菖蒲湯をたてにけり ふけとしこ 鎌の刃
子らばかりゐて菖蒲湯をぬるくしぬ 田村了咲
幸さながら青年の尻菖蒲湯に 秋元不死男「瘤」
御湯殿に菖蒲投げこむ雑仕哉 菖蒲湯 正岡子規
息ふかく菖蒲湯に肩しづめたり 渡辺 立男
我入れば暫し菖蒲湯あふれやまず 高浜虚子
昼過や菖蒲湯濁る糠の汁 菖蒲湯 正岡子規
晩学の身を菖蒲湯に洗ひをり 鈴木あさ子
暁の菖蒲湯に入る一人かな 菖蒲湯 正岡子規
木復のただちに菖蒲湯を得たり 皆吉爽雨 泉声
永浸る子が焚きくれし菖蒲湯に 石田あき子 見舞籠
湯に入るや湯満ちて菖蒲あふれこす 菖蒲湯 正岡子規
湯を抜くや菖蒲ひつゝく風呂の底 菖蒲湯 正岡子規
罪深き女よな菖蒲湯や出でし 芥川龍之介
胸乳にも触る菖蒲湯の葉刀は 品川鈴子
菖蒲湯ありがたくじつと肩を沈める 山根秋歩
菖蒲湯にあをきさざ波健吉忌 佐川広冶
菖蒲湯にうめる水白く落ちにけり 阿部みどり女 笹鳴
菖蒲湯にかろき恙を入りにけり 大橋櫻坡子 雨月
菖蒲湯にけふ染めし彩の掌をひろぐ 中戸川朝人 残心
菖蒲湯にざっと浸りて若返る 高澤良一 素抱
菖蒲湯にしたしく老躯しづめあふ 石原舟月
菖蒲湯にとつぷり月のものあがり 品川鈴子
菖蒲湯にひらきし五指の裏おもて 長田等
菖蒲湯に乳房冷えゆく死の報せ 加藤知世子 黄 炎
菖蒲湯に今日はじめての灯が浮ける 宮津昭彦
菖蒲湯に兄弟父を流し合ふ 高橋悦男
菖蒲湯に共につかりて母癒えよ 岡本庚子
菖蒲湯に四肢をいたはる呟きよ 河野南畦 湖の森
菖蒲湯に妻より先の死を願ひ 冨田みのる
菖蒲湯に子のなき乳房沈めけり 高橋秀夫
菖蒲湯に桶の少き風呂屋かな 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲湯に永浸る妻何足るや 石田波郷「石田波郷全集」
菖蒲湯に浮くや五尺のあやめ草 籾山梓月「冬扇」
菖蒲湯に浸つてゐたる健吉忌 佐川広治
菖蒲湯に端然と胸乳ふくまする 細見綾子「桃は八重」
菖蒲湯に菖蒲かぶりし子供哉 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲湯に裸一貫の男見よ 尾崎紅葉
菖蒲湯に逢ひて世相を歎きけり 成瀬桜桃子 風色
菖蒲湯に雨ききながら浸りゐる 田中冬二 麦ほこり
菖蒲湯に鰐の眼をして沈みゐる 春田千歳
菖蒲湯のすこし長湯となりしかな 小熊ときを(ホトトギス)
菖蒲湯の一夜経たるは禍々し 大石悦子 百花
菖蒲湯の吾を待ちゐる白肌着 鈴木鷹夫 春の門
菖蒲湯の天井高き真昼かな 金子いづみ(若葉)
菖蒲湯の嬰はこぶしの力抜く 大石泰子
菖蒲湯の子の体積をあふれさす 黒坂紫陽子
菖蒲湯の子の肩へ吾が掌より波 大岳水一路
菖蒲湯の底まで夕陽子と沈む 飴山實 『おりいぶ』
菖蒲湯の形ばかりの葉を浮かべ 高浜年尾
菖蒲湯の昼の窓から顔を出す 菅原鬨也
菖蒲湯の熱きに後頭まで漬る 川崎展宏
菖蒲湯の窓開けてをり灯さずに 横井博行
菖蒲湯の菖蒲に寄せぬ術後の身 高澤良一 鳩信
菖蒲湯の菖蒲に触れて役立たず 円城寺龍(岳)
菖蒲湯の菖蒲に遊ぶ童哉 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲湯の菖蒲片寄り沸き居たり 篠原温亭
菖蒲湯の雀斑に匂ひなかりけり 高澤良一 寒暑
菖蒲湯の香に染みし手の廚ごと 及川貞
菖蒲湯の香の染みし手の厨ごと 及川貞 夕焼
菖蒲湯は頑固親父の心意気 藤堂くにを
菖蒲湯へうちつけの言措きていづ 『定本石橋秀野句文集』
菖蒲湯へ妻子がゆきぬ眉月が 古沢太穂 古沢太穂句集
菖蒲湯へ旦の下駄のあとしるく 大橋櫻坡子 雨月
菖蒲湯へ月のからかさ傾きて 『定本石橋秀野句文集』
菖蒲湯へ来る少年の女下駄 小野冬虹子
菖蒲湯へ罷りし留守のかどの錠 『定本石橋秀野句文集』
菖蒲湯も小さ盥ですましけり 一茶
菖蒲湯や中に交りし菖蒲刈 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲湯や乳房ありけり童女のような 長谷川かな女 花寂び
菖蒲湯や何時か女も天下取る 湯浅真理子
菖蒲湯や命めでたき老の者 若尾潤水
菖蒲湯や男の子つれたる女親 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲湯や男の子はつひに生まざりし 飯田希々
菖蒲湯や男の子ばかりを育てたる 野一広美
菖蒲湯や病おこたるかんの君 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲湯や病夫の腕のいくさ傷 斉藤富美
菖蒲湯や眉落したく思ひもす 高橋淡路女 梶の葉
菖蒲湯や立身のことおろそかに 鈴木しげを
菖蒲湯をうめる水白く落ちにけり 高浜虚子「虚子全集」
菖蒲湯をかけ合ふ吾子にまじり浴ぶ 近藤一鴻
菖蒲湯をざんぶりと出づ赤仁王 高澤良一 寒暑
菖蒲湯をたのしみ行きぬ町住ひ 高橋淡路女 梶の葉
菖蒲湯を出てかんばしき女かな 日野草城
菖蒲湯を出てより守宮ぬられけり 松瀬青々
菖蒲湯を出て公達の目鼻だち 小澤克己
菖蒲湯を出て来て父も子も胡座 稲田眸子
菖蒲湯を纏いて眠れ眠れかな 二村典子
頭からかぶり菖蒲湯香りけり 深見けん二 日月
風呂の隅に菖蒲かたよせる女哉 菖蒲湯 正岡子規
颯々と菖蒲湯こぼす女多し 萩原麦草 麦嵐
わが肌に老斑いまだ菖蒲風呂 亀井糸游
少年のとび込む音す菖蒲風呂 中山純子
廊下まで匂ふ楽屋の菖蒲風呂 片岡我当
旅の日の二日おくれの菖蒲風呂 平山愛子
泣きながら子は育つもの菖蒲風呂 小浦登利子
浸りつつたゆたふ齢菖蒲風呂 皆吉爽雨 泉声
湯を揉みて母を招きし菖蒲風呂 田村武雄
父ありし日の熱すぎし菖蒲風呂 廣瀬直人
研修を終へて来し子や菖蒲風呂 八巻絹子
蘇生してよりの長寿や菖蒲風呂 富田潮児
●据風呂
たまさかに据風呂焚くや冬の雨 夏目漱石 明治三十二年
据風呂に行春の月緑なり 会津八一
据風呂の中はしたなや柿の花 夏目漱石 明治二十九年
据風呂を載みゆく船や春の川 会津八一
据ゑ風呂に犀星のゐる夜寒かな 芥川龍之介
据ゑ風呂に頸骨さする夜寒かな 芥川龍之介
●砂風呂
砂風呂に名月高くのぼりけり 磯野充伯
砂風呂の湯女の浴衣の袖みじか 刈谷 千代
●銭湯
すててこや銭湯のある町に住み 葛籠堅助
そとは日ざかりの銭湯のとしよりたち シヤツと雑草 栗林一石路
つつかけに銭湯を出づ芽出し雨 高澤良一 ねずみのこまくら
伊賀に来て銭湯に入る秋の霜 満田光生
住み移り銭湯への道青葉木菟 波多野爽波 鋪道の花
午後早く銭湯が開く秋祭 菖蒲あや 路 地
友の死がとどく銭湯真裸に 寺田京子
口開けの銭湯広しいとど跳ぶ 平山嘉子
夏祭昼の銭湯桶ひびかせ 鈴木栄子
寒き夜の錢湯遠き場末哉 寒し 正岡子規
惜しまれて消ゆる銭湯一葉忌 吉田京子
新しき錢湯出來つ冬の町 冬 正岡子規
春の星ひとつふたつと銭湯へ 染谷はる子
朧夜の銭湯匂ふ小村哉 朧夜 正岡子規
桜小路のさらし鯨と銭湯消ゆ 攝津幸彦 未刊句集
浦安の銭湯開く雁渡し 大坪貞子
混み合う銭湯に嬰児と職工の俺は若い 橋本夢道
町内に枯木と月と銭湯と 高澤良一 燕音
町内に銭湯のあるおぼろかな 茂里正治
結納近し銭湯の柚子肌に寄る 中戸川朝人 残心
肩で烈しく笑い合うここでくらしの息ついている春の銭湯 橋本夢道 無礼なる妻
花の昼大銭湯の秩序かな 中村孝史
菜種の果ての銭湯で ヒリヒリした赤子 伊丹公子 メキシコ貝
鉄臭いそれでいて筋肉が柔らかで遅い銭湯のいつも君たち少年工 橋本夢道 無禮なる妻抄
銀座にも銭湯のあり菊の露 滝沢伊代次
銭湯が未だあり大つごもり月夜 高澤良一 燕音
銭湯で上野の花の噂かな 花 正岡子規
銭湯で余所者ぼくの白い垢 伊丹三樹彦 人中
銭湯で嬰児よまた資本主義社会に育ちゆけ 橋本夢道 無礼なる妻
銭湯にて左肩より水流す 仲上隆夫
銭湯に切手も買ふや雁の秋 宮武寒々 朱卓
銭湯に嬰児を抱え俺の手がでかすぎる 橋本夢道
銭湯に我が身を置きぬ日の盛り 小澤碧童 碧童句集
銭湯に洗ひ上げたる祭の子 加治幸福(花鳥来)
銭湯に端唄のはやる夜寒哉 正岡子規
銭湯に連れ立つ父子星月夜 細井新三郎
銭湯のさら湯ひとりに年の暮 木津柳芽
銭湯のたたむ噂や蕪村の忌 小野誠一
銭湯ののれんを出れば良夜かな 吉屋信子
銭湯のふるき煙突月涼し 森 敬司
銭湯の壁画の富士に西日差す 池田和夫
銭湯の富士の淑気を浴ぶ男女(なんにょ) 高澤良一 燕音
銭湯の廃業届け菜種梅雨 高杉杜詩花
銭湯の戸口をせばむ草の市 今井与志子
銭湯の春めく暖簾くぐりけり 佐々木 咲
銭湯の朝かげきよき師走かな 広瀬惟然
銭湯の朝影きよき師走かな 惟然 俳諧撰集「有磯海」
銭湯の焚き口に鳴る江戸風鈴 藤原千代子
銭湯の煙まっすぐ小正月 小野寺美智子
銭湯の煙り出でそめ散るさくら 永井龍男
銭湯の熱くて痒し桜どき 高澤良一 随笑
銭湯の番臺高き子供の日 佐々木六戈 百韻反故 初學
銭湯の菖蒲の束の太かりし 伊藤二ン坊
銭湯の西日の籠をひとつとる 田村了咲
銭湯の跡地射干咲いてをり 高澤良一 素抱
銭湯の鏡の前に咳込めり 田川飛旅子 花文字
銭湯の霞む富士見て頭に手拭 高澤良一 寒暑
銭湯へ使走らす雨月かな 宮武寒々 朱卓
銭湯へ子と手をつなぐ傘雨の忌 橋本榮治「逆旅」
銭湯へ沙弥の連れ立つ出開帳 静 良夜
銭湯へ父子がつれだち日脚のぶ 石橋秀野
銭湯へ行きし間借夫婦や秋の雨 月舟俳句集 原月舟
銭湯や大嘘もつけず無職の首を湯の上に 橋本夢道 無禮なる妻抄
銭湯や少女の胸に水着あと 土屋和子
銭湯や煤湯といふを忘れをり 石川桂郎 高蘆
銭湯を出て焼藷を買うてゆく 上崎暮潮
銭湯出てまた汗かきぬ海の駅 桜井博道 海上
錢湯で下駄換へらるゝ夜寒かな 夜寒 正岡子規
錢湯に善き衣著たり松の内 松の内 正岡子規
錢湯に端唄のはやる夜寒哉 夜寒 正岡子規
錢湯を出づる美人や松の内 松の内 正岡子規
錢湯を早くしまふや松の内 松の内 正岡子規
鐵臭いそれでいて筋肉が柔らかで遅い銭湯のいつも君たち少年工 橋本夢道
露の世の銭湯の入口に立つ 皆吉司
餅花の街銭湯の残りをり 中村佐一
●外風呂
外風呂へ小さき階ある雁渡し 野見山ひふみ
外風呂や汲めばちり込む柿の花 巌谷小波
外風呂を焚く火はなやげ黍あらし 馬場移公子
蕗の雨外風呂沸いて人あらず 雉子郎句集 石島雉子郎
●外湯
三朝月燕とびかふ外湯かな 中村泰子
冬うらら外湯七つを川沿ひに 吉野義子
城崎の外湯巡りや星月夜 長瀬多美子
外湯まで渡り廊下や火蛾の宿 吉田ひろし
外湯まで雨傘さして半夏寒む 清水基吉
外湯出てすぐに師走の山仕事 大島民郎
寝ころんで蝶泊らせる外湯哉 一茶 ■寛政七年乙卯(三十三歳)
星月夜外湯へ借りる男下駄 西原真佐子
秋の蛾が来てをり宿の外湯の灯 広田静子
秋風や外湯に浮きし鳥の羽 加古宗也
邯鄲の闇をへだてて外湯の灯 井沢正江
●脱衣籠
ねんねこに肌着乗っけぬ脱衣籠 高澤良一 鳩信
ぽつねんと置かれ月夜の脱衣籠 小泉八重子
古き湯宿ががんぼの発つ脱衣籠 高澤良一 ぱらりとせ
夫の身に一絲なき初夏の脱衣籠 中山純子
山の湯や紅葉を払う脱衣籠 太田小夜子
春ゆくよ脱衣籠より袖垂れて 工藤克巳
目の粗き脱衣籠年詰りたり 高澤良一 随笑
脱衣籠えんまこおろぎ宿しけり 高澤良一 寒暑
脱衣籠欅落葉の一二片 高澤良一 鳩信
脱衣籠誰かが草の実を遺し 河野南畦 『広場』
●展望風呂
●湯治
*はったいも湯治の旅に携へぬ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
こほろぎや峡に無人の湯治小屋 木村芳雄
さくらもち長き湯治となりにけり 大橋櫻坡子 雨月
つまらなき湯治の髪を洗ひけり 綾部仁喜 樸簡
とぶ鳥を見て湯治せよ夏明り 宇佐美魚目 秋収冬蔵
まむし酒ありて湯治の寝正月 穐好樹菟男
わざをぎの盆の湯治や鳳仙花 水原秋櫻子
三伏の湯治場痩せし人ばかり 森田峠
動きゐる湯治みやげの栄螺かな 平山愛子
厠より川霧見るも湯治かな 鈴木鷹夫 風の祭
囲ひ者めきて自炊す丑湯治 森田峠 避暑散歩
孤独かと問はる湯治の甲斐の春 及川貞 夕焼
寝ころびて太き枝ぶり秋湯治 宇佐美魚目 天地存問
山宿の令法の先の湯治棟 高澤良一 素抱
巻眠や湯治七日の遅桜 岡本松浜 白菊
常磐に馬の湯治場鮟鱇鍋 鶴岡しげを
引汐に纜伸びし湯治舟 和泉一翠園
斑猫や童女にゆるき湯治下駄 川崎 俊子
春りんどう掘って戻りし湯治かな 笹原耕春
春山や三日湯治も利きにけり 菅原師竹句集
栗落ちて龕の如しや湯治の火 宇佐美魚目 天地存問
桑の葉のたちまち隠す湯治みち 宇佐美魚目 天地存問
桔梗に身をいとほしむ湯治かな 森川暁水 黴
楊貴妃の湯治跡てふ合歓の花 池谷美智子
浴衣著て遠くに遊ぶ湯治哉 浴衣 正岡子規
混浴に馴れし湯治や胡麻の花 山田孝子
湯治二十日山を出づれば稲の花 正岡子規
湯治場に母を送りて松の内 中山純子
湯治場のすすき群がる頃となり 高澤良一 寒暑
湯治場のとば口に湧く山清水 高澤良一 素抱
湯治場のまだ茎あをき陸稲刈 中拓夫 愛鷹
湯治場のやつと来るバス立葵 山川よしみ
湯治場の二階三階喜雨の中 金田眸花
湯治場の天下一品山清水 高澤良一 寒暑
湯治場の山深ければ葛の花 高澤良一 素抱
湯治場の朝餉の干菜汁熱し 吉田ひろし
湯治場の粗茶ぞ甘しほととぎす 石川桂郎 高蘆
湯治場の錆び木杭に秋あかね 高澤良一 寒暑
湯治場の露地の浅さよ吾亦紅 高井北杜
湯治場へ草の實多き山を下る 草の実 正岡子規
湯治場や冬籠りたる人の聲 冬籠 正岡子規
湯治場や夕露早き山の道 露 正岡子規
湯治場や床几を移す新樹陰 新樹 正岡子規
湯治場や黄なる萱草得て帰る 萱草の花 正岡子規
湯治婆腰紐一つ花南瓜 遠藤梧逸
湯治小屋嘗て十六芒原 高澤良一 寒暑
湯治廿日山を出づれば稲の花 子規句集 虚子・碧梧桐選
湯治湯に木の葉のやうに浮きゐたり 高澤良一 素抱
湯治舟らしきを眺めなつかしむ 菊池輝行
湯治茣蓙抱へて出づる朝曇 白井爽風
湯治部屋煮炊きのなすびその他かな 石川桂郎 高蘆
湯滝代りて土用湯治に婆多し 石川桂郎 高蘆
湯疲れに生姜酒して湯治かな 溝口直
熊撃ちも湯治の客も夜の炉端 石井とし夫
田草取了へ泥落してふ湯治 渡部笳声
留守なるは歩板外して湯治舟 橋本対楠
白百合を活けて久しき湯治かな 赤木格堂
白雲のあと何も来ぬ秋湯治 山本洋子
百合活けて百合の歌詠む湯治哉 百合 正岡子規
秋口の湯治の客の宵寝かな 宇佐美魚目 秋収冬蔵
秋湯治長き廊下がありにけり 綾部仁喜 樸簡
秋簾湯治暮しを隔てたる 谷口忠男
秤炭買うて湯治の老夫婦 岡安迷子
紅すすきさ揺れ湯治湯熱めなり 高澤良一 素抱
紫陽花の花に日を経る湯治かな 高浜虚子
縁よごす湯治の自炊余花の雨 亀井糸游
聴診器あてゝ揺れ居り湯治舟 岡嶋田比良
肌脱ぎに露天湯通ひ湯治婆 清水寥人
背蒲團負ふて互に湯治婆 村中美代
脊の婆とんとおろされ湯治舟 岩田柊青
舟べりに肱つく老や湯治舟 広石東猿
舟ゆれて人現るる湯治舟 三宮美津子
荒天の屋根に綱かけ湯治舟 鈴木樹葉子
蔵王より夕霧ごめの湯治の湯 澤喜久江
虎杖を浸す判官湯治の湯 三輪正子
蝮には心ゆるすな丑湯治 阿波野青畝
鍵の字に湯治棟あり初すすき 高澤良一 素抱
鏡台の野花八専や湯治舟 宮武寒々 朱卓
長閑さの日帰り湯治したりけり 雉子郎句集 石島雉子郎
雪代や湯治暮しの夜をこめて 桑田青虎
麦畑雨しとしとと湯治の馬車傾いて走る 人間を彫る 大橋裸木
黒文字の花ざかりなる湯治かな 大岳水一路
●湯治客
亀鳴くや神楽に集ふ湯治客 古舘曹人 樹下石上
夏場所のテレビを囲み湯治客 新島艶女
手づくりの芹鮓開き湯治客 坪根里杏
春山の上に顔出す湯治客 前田普羅 春寒浅間山
桑畑に炭挽いてゐる湯治客 皆川盤水
水甕の蓋に桃おく湯治びと つじ加代子
湯治人山門に立つ帰燕かな 山本洋子
湯治人枸杞摘みに出る小春かな 乙字俳句集 大須賀乙字
湯治客あるにはありて干蒲団 清崎敏郎
湯治客少なくなりし炉を開く 滝沢鶯衣
湯治客深山櫻をたづねあて 後藤夜半
湯治客炉辺に加はり兎汁 松尾緑富
竈猫湯治客にもよくなつき 三浦恵子
茶摘唄木枕に聞く湯治客 穐好樹菟男
草餅や襟巻かたき湯治人 青峰集 島田青峰
葉桜や蓑きて通ふ湯治客 前田普羅 飛騨紬
蝿叩持ちつゝ談話湯治人 高澤良一 寒暑
風邪引かぬことが取り柄と湯治人 高澤良一 寒暑
馬子唄や二十三夜の湯治客 薗部庚申
魚やくや若葉の雨に湯治客 妻木 松瀬青々
●湯治宿
たらの芽を摘みて夕餉の湯治宿 遠藤文江
夏桑に渡り廊ある湯治宿 波多野爽波
夜は貂の来るとふ雪の湯治宿 今井妙子
大いなる雪沓混じる湯治宿 下元きみ子
山独活の野趣に浸りぬ湯治宿 石田冲秋
干菜吊り部屋内かくす湯治宿 原 柯城
旅芝居見せて夜長の湯治宿 大江 朱雲
春蝉や鍋釜干して湯治宿 成瀬櫻桃子
木耳の蓆に乾き湯治宿 新島艶女
湯治宿花圃の明りに包まるる 盤水
真清水に蕨の塩抜き湯治宿 高澤良一 素抱
眠る足見え秋風の湯治宿 鈴木鷹夫 渚通り
笹濡れて山女魚とどきぬ湯治宿 桂樟蹊子(霜林)
花鶏来る下部の古りし湯治宿 倉林美保
茯苓や番台空の湯治宿 黄川田美千穂
葛咲きて飯場に似たる湯治宿 森田 峠
蛇口にも氷柱の垂るる湯治宿 田島和子
雨乞の獅子が立寄る湯治宿 臼井軍太
風花や明治を誇る湯治宿 木内はるえ
●長湯治
障子貼り手伝ひもして長湯治 曾我部笑子
川狩に加はりもして長湯治 竹内余花
田植終へ泥洗ひてふ長湯治 関根照子
●長湯 長風呂
いちはつや岩に眼鏡を置く長湯 中戸川朝人
うそ寒や長湯このまぬ脱衣室 前野利秋
ぬるき湯に長湯してをり冬紅葉 有働亨
一陽来復長湯を妻にのぞかるる 山口いさを
三寒の妻の長湯を訝しむ 西村浩風
二の腕を浮べて長湯彼岸過 肥田埜勝美
山蛙聞き駘蕩として長湯 高澤良一 宿好
桃の日のひとりの長湯たのしめり 中山純子
百ほどの柚子と遊べり長湯せり 清水里美
肌に触れ柚子が遊べり長湯する 相馬遷子 山河
菖蒲湯のすこし長湯となりしかな 小熊ときを(ホトトギス)
虚子の忌の浴仏の日を長湯かな 秋元不死男
蜜柑摘み終りし夜の長湯かな 檜田 慧星
長湯してまなこの曇る春田かな 秋元不死男
長湯して仙人とをり狐啼く 太田土男
長湯して別所の宿の牡丹鍋 萩原十三枝
長湯せりシロシモツケと薄れおり 諸角せつ子
長湯の子柚子もろともに掬はんか 高澤良一 ねずみのこまくら
雨乞の祭見て来て長湯せり 矢島渚男
長風呂で目眩の童児麦を踏む 猪原丸申
鵙漸く止みぬ月光を長風呂に 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
●ぬる湯
河鹿聴きぬる湯湯ぶちに木の枕 岡田日郎
除夜の鐘ぬる湯の壁に響きけり 会津八一
●野天風呂
凌霄花やうやく昏れぬ野天風呂 石田あき子 見舞籠
初冬や少し熱しと野天風呂 高橋淡路女 梶の葉
湯けむりに夜桜没す野天風呂 大熊輝一 土の香
稲妻や女の子寄り来ぬ野天風呂 田中冬二 俳句拾遺
野天風呂晨(あさ)の雪気も何のその 高澤良一 寒暑
野天風呂楢の枯葉の月夜なり 太田鴻村 穂国
雪渓の風下りて来る野天風呂 保持幸子
顔擦って川原の雪気野天風呂 高澤良一 寒暑
●初湯 初風呂
いちどきに孫三人が初湯かな 静 良夜
うたまくら玉と抱きゐる初湯かな 石原八束
からからと初湯の桶をならしつゝ 高浜虚子
これやこの初湯の蓋をまだとらず 久保田万太郎 流寓抄
たのめなきふぐりを拭きし初湯かな 角川春樹
たまきはる命いとしむ初湯かな 中川久子
てのひらの艶をたのめる初湯かな 能村登四郎(1911-2002)
にぎやかな妻子の初湯覗きけり 小島健(1946-)
はるかなる旅のここちの初湯かな 長谷川櫂 虚空
ひとの陰(ほと)玉とぞしづむ初湯かな 阿波野青畝(1899-1992)
べつ甲の耳掻使ふ初湯あと 下村ひろし 西陲集
まぎれなく青年となり初湯かな 長谷川櫂 蓬莱
みかん山映る初湯に入りけり 田中冬二 俳句拾遺
みくまのゝ波音聞きて初湯かな 桑田青虎
みどり児の喃語に応ふ初湯かな 山崎千枝子
めでたさは初湯まづわきすぎしかな 久保田万太郎 流寓抄
ゆくりなく夜ふかむ旅の初湯かな 石原舟月
わらんべの溺るゝばかり初湯かな 飯田蛇笏 霊芝
イラクふと思ふ初湯のやや熱き 石田よし宏
ピラミッドを真向ひにして初湯かな 椎名康之
ヴィーナスの立ち上がりたる初湯かな 磯貝碧蹄館
一人にも湯気たちのぼる初湯かな 鈴木真砂女
一病のかげりある身の初湯かな 登四郎
一硯を伴ひたりし初湯かな 相生垣瓜人
不知火の沖に虹立つ初湯かな 東 妙子
丸一の小仙にあひし初湯かな 龍岡晋
予後の母いたはり入るる初湯かな 館岡沙緻
介添の娘の溢れしむ初湯かな 平尾みさお
介添もいらぬ初湯の母八十路 民郎
任のまゝ生きて帰りし初湯かな 小林康治 四季貧窮
何事もなくて初湯をかがやかす 江原 襄
其のかげん産湯の後よ初湯殿 元夢
初湯かな湯の花すくふたなごころ 加吉宗也
初湯してうすぼんやりとおもふこと 高澤良一 素抱
初湯してともかくもけふからと思ふ 金田咲子 全身 以後
初湯して古里は水やはらかき 大石暁座
初湯して大きなことを思ひをり 藤原絹子
初湯して宥すべきことありにけり 石田孝子
初湯して江戸の鴉もオノマトペ 筑紫磐井 花鳥諷詠
初湯して瞑れば遠き山河あり 鷲谷七菜子
初湯して考えごとは何だっけ 高澤良一 随笑
初湯して身のあからむもたのもしき 能村登四郎 菊塵
初湯して非対称なる身体拭く 鈴木幸江
初湯せる赤子もつべきものを持ち 本宮鼎三
初湯にて初湯ぼこりをしたりけり 相生垣瓜人 明治草抄
初湯の児足裏赤くやはらかし 阿部左多子
初湯よし林檎のかおりそこはかと 増田手古奈
初湯より呼ぶ父の声今も聞ゆ 田川飛旅子 『山法師』
初湯より子を抱き上げてぽつかり穴 今瀬剛一
初湯中黛ジユンの歌謡曲 京極杞陽
初湯出しししむら湯気をはなちけり 飯田蛇笏
初湯出しふぐりの湯気が身を昇る 鈴木鷹夫 風の祭
初湯出し肉湯気をはなちけり 飯田蛇笏 霊芝
初湯出し胸板赤き妻の父 辻田克巳
初湯出し裸に遠い河口の照り 松根久雄
初湯出し鉄工あかし鉄の間に 波郷
初湯出てうすくれなゐのふくらはぎ 相沢有理子
初湯出ておのれ身体髪膚照る 佐々木有風
初湯出てかるたの客を待つばかり 五十嵐播水 播水句集
初湯出てこゝろ忙しく戻りけり 高橋淡路女 梶の葉
初湯出てしばらく神と近くゐる ほんだゆき
初湯出てまた小説の世にもどる 大島民郎
初湯出てももいろ童女走りくる 白岩 三郎
初湯出て初湯を道に撒ける海女 鷹羽狩行
初湯出て少しよろけて衣を着けし 小出秋光
初湯出て山の茜と向きあひぬ 福田甲子雄
初湯出て窮巷ながら空青し 碧童
初湯出て臍もまたたくことをせし 野中 亮介
初湯出て赤子の拳ほどけけり 藤田郁子
初湯出て鏡台まぶしく吾に向く 菖蒲あや 路 地
初湯出て青年母の鏡台に 鷹女
初湯出でて青年母の鏡台に 三橋鷹女
初湯出で青きを保つ百合の芯 野沢節子
初湯子の冠れるタオル身に余り 福永耕二
初湯揺れ小痣浮くかに悔一つ 香西照雄 対話
初湯殿ふぐりすうすうしたりけり 高澤良一 寒暑
初湯殿卒寿のふぐり伸ばしけり 阿波野青畝(1899-1992)
初湯殿師父の腕を支へけり 小路紫峡
初湯殿母をまるまる洗ひけり 大石悦子 百花
初湯殿骨を奇麗にしておかむ 北 四季
初湯浴ぶからすの行水始めなり 高澤良一 随笑
初湯浴ぶ天の岩湯のここちかな 長谷川櫂 虚空
初湯浴ぶ熱きは痒きことと知る 高澤良一 随笑
初湯浴ぶ爪清らかに透けてをり 北林令子
刺墨の竜の背と合ふ初湯かな 西村 旅翠
北国の湯の華匂ふ初湯殿 菱野美月
厨まで湯気溢れ来る子の初湯 太田原綾子
去年よりの雪小止みなき初湯かな 久保田万太郎 流寓抄以後
受け取りし初湯の嬰のさくら色 景山 薫
古稀にして初湯ゆたかに溢れしむ 澤野純子
命長き人に逢ひたる初湯哉 尾崎紅葉
四十過ぐ底浅き湯を初湯とし 桂信子 花寂び 以後
坑夫等の声大いなる初湯かな 牛島清治
夕星のひとつが高き初湯かな 大嶽青児
夫初湯何やら唄も聞え来る 松本喜美
夫在りしごとく初湯の加減見て 堀恭子
妓一妓二かくて初湯の化粧かな 渥美渓月
妻や子や初湯貰ひし薄化粧 月二郎
嬰の尻を十指でつつむ初湯かな 小林波留
子の臀の肥ゆるばかりの初湯かな 杉山 岳陽
宥すべく決めて初湯を溢れしむ 今井澄子
山の湯を初湯にひとつ年とれり 宮津昭彦
底浅き湯槽に浸りゐて初湯 内田安茂
庭の松焚きかぐはしき初湯かな 青邨
庵の井の水やはらかき初湯かな 風生
我年に母吾を産みぬ初湯浴み(三十二歳となる) 『定本石橋秀野句文集』
新しき鏡に見られ初湯かな 西山輝子
旅ころもすなはちぬいで初湯かな 爽雨
日のさしてあふれこぼるゝ初湯かな 高橋淡路女 梶の葉
朝の日を溶かしてをりし初湯かな 弓木和子
柔かき児を抱き初湯あふれさす 服部くらら
柔肌と石と触れたる初湯かな 阿波野青畝(1899-1992)
棕櫚の木に風のでてゐる初湯かな 藤田あけ烏
泡影の身をうらがへす初湯かな 鈴木康久
浜づたひ杓さげてゆく初湯かな 泊月
海うつる鏡あふいで初湯かな 皆吉爽雨
深々と初湯の髪膚毀傷なき 水原春郎
減塩も減量も無理初湯かな 草間時彦
湯の花をたつぷり入れて初湯とす 後藤澄子
湯気籠りなりし初湯の昼明り 物種鴻兩
潮灼けの海士の顔浮く初湯かな 古畑丁津緒
火の山の懐ふかき初湯かな 飴山實
煩悩と脂肪落とせず初湯かな 福永直子
父と子の心ほぐるる初湯かな 太田 研二
物欲らぬ母に初湯の白肌着 山上カヨ子
玉のごとき稚を浮かせて初湯殿 茨木和生
玉の緒を珠とあたためゐる初湯 大橋敦子
生えてきた翼 初湯の湯気の中 中島砂穂
男湯の初湯に白し女の子 為王
町ははや初湯の太き煙上げ 中村汀女
痩躯笑ひあへば初湯の溢るるも 肥田埜勝美
眉剃りて妻の嬉々たる初湯かな 飯田蛇笏 山廬集
竹の榾一節はぜし初湯かな 三宮美津子
老身の融けも了らむ初湯かな 相生垣瓜人 明治草抄
肥りしよ肩より初湯あふれしめ 沖田佐久子
胎水に浮くやすけさの初湯かな 吉野義子
脱ぎかへて去年を今年や初湯殿 百中
臍掻いて入る熱好きの初湯かな 能村登四郎 菊塵
花柄のタオルを胸に初湯かな 館岡沙緻
茜さす鎌倉殿の湯に初湯 茂里正治
蓋取れば初湯なるかな沸き足りて 裸馬
谷中路地初湯出て来し嬰に会ふ 奈良文夫
赤松に風の出てゐる初湯かな 藤田あけ烏
赤煮えの蜑が初湯を出て歩く 静塔
起きぬけを出て磧湯に初湯かな 高濱年尾
足のしわ手のしわ連れて初湯かな 谷上百合子
足入れて二揺一揺初湯かな 安東次男 昨
身の箍のほどよく緩む初湯かな 中桐葉子
身ひとつに初湯溢るることもなし 木本英実
身をはなれふぐりの遊ぶ初湯かな 原田喬
透明度百パーセントの初湯かな 彦坂寿子
遠方より来たり初湯を溢れしむ 澤井益市郎
酒少し足して初湯を浴びにけり 角川春樹
隣家の庭もとぼしくて初湯せり 金田咲子 全身 以後
雪嶺に礼し初湯に入りにけり 柳澤和子
雫して夫から妻へ初湯の子 長田群青
雲水の初湯当番玉襷 静雲
青年が湯壺へどんと初湯波 高澤良一 寒暑
青空へ湯気にげてゆく初湯かな 本井英
顎浸けて初湯の沖をみはるかす 上田五千石
駿河湾波の寄せ来る初湯かな 築城百々平
黒髪のわつと広がる初湯かな ますぶち椿子
わが焚きてわが初風呂としたりけり 中村春逸
初風呂にたゆたつている思想以前 鈴木啓造
初風呂にひろげて花のタオルかな 千手 和子
初風呂に富士の岩石沈めゐる 赤尾恵以
初風呂に我が行く末を思ひつゝ 酒井澄子
初風呂に我もこみ合ふ一人哉 初子
初風呂に浸りてをりて寿 忽那文泉
初風呂に胎児うごきてあふるる湯 古堅蒼江
初風呂の十六貫はまだ老いず 原 赤松子
初風呂の子に割込みてなに話さむ 太田土男
初風呂の檜匂へり嬰を抱く 佐藤淑子
初風呂の煙ゆたかにあげにけり 蓬矢
初風呂の病夫はイエスよりも痩せ 品川鈴子
初風呂は修善寺温泉数寄屋棟 磯野充伯
初風呂へ産子をつつむましろにぞ 下村槐太 天涯
初風呂やこの痩身のよくもつよ 奈良文夫
初風呂やつきせぬながれ清元の 泉鏡花
初風呂やシャボンに森の匂ひして 本庄登志彦
初風呂や吾子の小さき力瘤 井出真理子
初風呂や寶の如く嬰を抱く 菅野岑子
初風呂や常は見ぬ掌の裏表 会田弘子
初風呂や父の次には男の子 立子
初風呂や肌いとおしむ年女 岡本 眸
初風呂や背を流し合う母ありて 北さとり
初風呂や胸沈め得ぬ病もち 石川桂郎 四温
初風呂や臍のくぼみのはるかなり 玉城一香
初風呂や花束のごと吾子を抱き 稲田眸子
初風呂をすこし賢くなりて出る 能村登四郎
初風呂を少し熱しと思ひつつ 菅井たみよ
生涯や初風呂にいま目をつむり 森澄雄
立ちて受くる青年の礼初風呂に 岸風三樓
脱ぎ捨てし儘初風呂の匂ひかな 淺賀穀象虫
●檜風呂
猪鍋の宿に自慢の檜風呂 福原紫朗
雪の声聴こゆ妻籠の檜風呂 小川原嘘帥
●昼湯
仙人掌の花上向きに昼湯熱し 柴田白葉女 花寂び 以後
加賀女昼湯に通ふ秋日傘 山本敦子
大き柚子一つ浮かべし昼湯かな 館岡沙緻
少年と二人昼湯や年の暮 小澤碧童 碧童句集
成木責昼湯に浸り見てをりぬ 古川芋蔓
早梅し眠りて赤子昼湯浴ぶ 秋元不死男
昼湯より戻りて遊ぶ針供養 高橋淡路女 梶の葉
昼湯出て地酒甘しや蕗の薹 田中水桜
桃に来て昼湯は母と乳児ばかり 小池文子
母に焚く八十八夜の昼湯かな 館岡沙緻
玉の井に昼湯が湧いてさくら時 松本篤子
生身魂昼湯のあとの酒五勺 板谷芳浄
盆が来ぬ昼湯澄み身のまる見えに 大熊輝一 土の香
花街の昼湯が開いて生姜市 菖蒲あや あ や
苔くさき坊の昼湯や蝉の声 冬葉第一句集 吉田冬葉
逝く春の蓋をことりと昼湯の妻 河合凱夫 飛礫
●風呂
*こうろぎやまだ冷めきらぬ風呂の下 梅室
あそび女の柚子風呂に音立てずゐる 鷲谷七菜子
あひどしに野風呂大人ホ句の春 河野静雲 閻魔
あひみての句縁ひとすぢ野風呂の忌 鈴鹿百合子
あれこれと風呂にも入れて薬の日 高橋悦男
うすものや日髪日風呂に身のほそり 松浜
うら山の子狐鳴ける干菜風呂 内田 雅子
おもてから見ゆや夜寒の最合風呂 夜寒 正岡子規
お十夜にまゐるつもりの風呂はやく 河野静雲 閻魔
お盆の昼おだやかに風呂焚いておのれがはいる 人間を彫る 大橋裸木
お螻蛄う一升にじょなめき雁風呂う 加藤郁乎
かなかなや露天の風呂を傾けて 瀧澤伊代次
かな~の鳴きつぐ風呂も沸きにけり 今井つる女
かはほりの群れて月夜の熱き風呂 福田甲子雄
かんばしく薪を焚く風呂天の川 中澤 悠
きさらぎの骨ぬくめをる風呂の中 飴山實 辛酉小雪
くちなしや夜に訪へば風呂上りなり 山田六甲
ごうごうと風呂沸く降誕祭前夜 石川桂郎 含羞
さなぶりや跣足のまゝの風呂支度 斎藤九万三
しまひ風呂焚きそへて居り春の雪 『定本石橋秀野句文集』
ちら~と色鳥のくる伊豆の風呂 飴山實 辛酉小雪
とくとくと血は巡るかな冬至風呂 中村苑子
はる雨や風呂いそがする旅の暮 炭 太祇 太祇句選後篇
ひぐらしや沸しすぎたる薪の風呂 貞吉 直子
ひりひりと海水浴の後の風呂 野末たく二
へちま風呂の糸瓜の浴衣着たりけり 長谷川かな女 雨 月
まつくらな干菜風呂より出て寝たり 吉岡句城
まひるまの柚子風呂たててくれにけり ふけとしこ 鎌の刃
まらうどに早風呂焚くや松の花 五十嵐播水 播水句集
みんなでたべたみかんのかわの風呂にしてにおう 荻原井泉水
よく燃ゆる拾ひ薪や干菜風呂 鈴木鈴蘭
わが肌に老斑いまだ菖蒲風呂 亀井糸游
われに沸く風呂の浮蓋五月雨 松村蒼石 春霰
をんなわれを風呂に沈めて恋の猫 加藤直子
ジヨコンダが蟹妊めりと風呂でおもふ 竹中宏 句集未収録
一つ家の風呂の中より舞雲雀 雲雀 正岡子規
一人居の四日の風呂を溢れさす 佐怒賀直美
一升星硝子戸越しに冬至風呂 田中冬二 若葉雨
一心に啼くこほろぎと一つ風呂 真下喜太郎
一束の菖蒲がほどけ終ひ風呂 葉上啓子
一笊の胡桃がら焼べ終ひ風呂 西村節子
一筋の風の通へる風呂手前 田中子(円虹)
七草や風呂の煙の木の匂ひ 兒玉南草
三厘の風呂で風邪引く夜寒かな 夜寒 正岡子規
両神山の日翳り早し干菜風呂 井水貞子
二人には煮つまりすぎし冬至風呂 武田和郎
五右衛風呂の蓋はたつぷり赤のまま 大木あまり 火のいろに
今日も亦よいの雁風呂焚つけし 月舟俳句集 原月舟
今日も亦風呂焚く頃の一葉かな 有山三千三
今更に母の手細し冬至風呂 古賀まり子 緑の野以後
仕舞風呂葛原深く入る心地 宇多喜代子 象
仲秋や風呂の扉に沁む脂粉の香 宮武寒々 朱卓
傘もちてささで戻りぬ冬至風呂 宮武寒々 朱卓
冬至風呂せめてゆつくり入りけり 小川竜雄
冬至風呂上面うめたぐらいでは 高澤良一 随笑
冬至風呂瑕瑾なき身をちちははに 佐藤里秋
初蝉や久に風呂わくこのゆふべ 水原秋櫻子
剃刃の傷あとうづく冬至風呂 河野南畦 湖の森
剪定夫野風呂をたてて小屋泊り 西本一都 景色
北国の冬三日水の干菜風呂 土岐錬太郎
十年の宿痾の癒えし冬至風呂 池田博子
去来する母の俤長柚風呂 村野離翔
古傘で風呂焚く暮や煤払 高浜虚子
古里の風呂は外風路つくつくし 日高邦子
吹き止みし桜たわわに風呂燃せる 金尾梅の門 古志の歌
呆け土筆癩者浴せし空風呂に 宮坂静生 雹
啓蟄の雨に昼風呂沸かしけり 白岩 三郎
堅田てふ寒暮の郷の風呂熱し 鈴木鷹夫 大津絵
墨匠に沸き続く風呂かまど猫 田中英子
夏の月風呂溢れ落ち勿体なや 松藤夏山 夏山句集
夏安居の手桶で運ぶ風呂の水 升本行洋
夏油川野風呂童女に岩つばめ 金子兜太
夏虫や一と風呂の間の酒肴 飯田蛇笏 山廬集
夕ざくら檜の香して風呂沸きぬ 大野林火
夕暮の蝉じゅんと鳴き工場風呂 細谷源二 鐵
夕露や風呂の火見する谷ッの口 飴山實 辛酉小雪
夕顔の咲いて子供の風呂終る 今泉貞鳳
夕風呂のだぶり~とかすみ哉 一茶 ■文化六年己巳(四十七歳)
夜学子の短き風呂を浴びにけり 安立公彦
夜鷹鳴き風呂の火窓を染めにけり 米沢吾亦紅 童顔
夢に浮く身風呂にしずむ身四月尽 江里昭彦(1950-)
大年の隣人風呂をたばひけり 安住 敦
大年の風呂に鼻までつかりけり 龍岡 晋
大年の風呂轟々と沸かしけり 田川江道
大年の鼻まで風呂につかりけり 龍岡晋
大晦日森の香りの風呂たてて ふけとしこ 鎌の刃
大綿や風呂上る肩とがらせて 松村蒼石
子の重さほど柚子貰ひ風呂を焚く 中戸川朝人 残心
孫と入る一番風呂や梅雨に入る 上村シマ
宿とりて風呂に入間も山ざくら 松岡青蘿
寒牡丹あまた見し夜の風呂熱く 館岡沙緻
寝ねしより風呂のこほしくさみだるゝ 金尾梅の門 古志の歌
少年のとび込む音す菖蒲風呂 中山純子
居(すえ)風呂や屏風すわらぬ庭の隅 巴流 俳諧撰集「藤の実」
居風呂に二人入りこむ夜寒かな 河東碧梧桐
居風呂に入時寒し雁の声 太無
居風呂に後夜きく花のもどりかな 蕪村 春之部 ■ なには人の木や町にやどりゐしを訪ひて
居風呂に棒の師匠や春の暮 蕪村遺稿 春
居風呂に殘暑の垢のたまりけり 残暑 正岡子規
居風呂に紅葉はねこむ筧哉 紅葉 正岡子規
居風呂に肱うかしてはるの雨 鳳朗
居風呂の底ふみぬくや年の暮 炭 太祇 太祇句選後篇
居風呂の煙のさきや青蜜柑 青蜜柑 正岡子規
居風呂へ念仏で*しづむ十夜かな 蓼太
居風呂を焚くや古下駄枯芒 枯薄 正岡子規
島住みの柚子湯に変るレモン風呂 秋光道女
巌風呂に濤音こもる神無月 坂本山秀朗
川狩の相談成るや風呂の中 五十嵐播水 播水句集
工場風呂煤煙の樹は秀をそろへ 細谷源二 鐵
帷子や袖に野風呂の走り炭 会津八一
干菜袋抱へてじつと風呂の中 藤波銀影
干菜風呂に祖母のこゑして山眠る 伊東美也子
干菜風呂夜更けて雪のなほ止まず 鳥越憲三郎
干菜風呂手擦れの艶の火吹竹 乾佐知子
干菜風呂日々欠かさずに自愛かな 芝原無菴
干菜風呂火の粉は闇を好みけり ながさく清江
年の夜や君が八千代を風呂の曲 中村史邦
庭へ出て風呂焚く家や夏の月 井月の句集 井上井月
庭掃除すませ今宵は柚子風呂に 大原雅尾
廊下まで匂ふ楽屋の菖蒲風呂 片岡我当
念願のセンサーにして冬至風呂 白鳥順子
恩愛は母系に厚し干菜風呂 平沢陽子
息しづかに山の音きく干菜風呂 日美井雪
手拭ひに匂ひが残り干菜風呂 斎藤花辰
手術痕改め入る冬至風呂 高澤良一 随笑
挿木して清明の日の風呂焚けり 皆川白陀
故里や六年ぶりの風呂の秋 寺田寅彦
敗戦忌砂のざらつく風呂の底 木田千女
敷いて垢かく水風呂の蓋 山店 芭蕉庵小文庫
新しき檜の風呂や山桜 長谷川櫂 虚空
新田に水風呂ふるるあられかな 昌房 俳諧撰集「有磯海」
旅の日の二日おくれの菖蒲風呂 平山愛子
旅疲れ首までつかる柚子の風呂 後藤澄子
旅籠屋の居風呂ぬるき夜寒哉 夜寒 正岡子規
日曜の風呂へ蛙田を越えぬ 原田種茅 径
日盛に著く客に風呂沸いてをり 西野郁子
早苗饗や朝から沸かす薬風呂 森脇恵香(雲の峰)
明智風呂愛宕の連歌口すさむ 伊藤松宇
春の夜や小暗き風呂に沈み居る(九年) 芥川龍之介 我鬼句抄
春の蚊だ竹林に風呂立ててゐる 北原白秋
春の蚊よ竹林に風呂焚きつけて 北原白秋
春の雁風呂のけぶりにむせびけり 大江丸
春昼の風呂ぞ父子の肌触れしめ 石川桂郎 含羞
春泥を来て早風呂を焚きにけり 佐川広治
春浅き海へおとすや風呂の水 飴山實 少長集
昼の風呂新芽の苞の散らばり来 川崎展宏
昼を過ぎると風呂の暖簾が出て秋風の蝶々 池原魚眠洞
昼風呂に小野子の片頬夕焼けて 前田普羅 春寒浅間山
昼風呂の水溢るゝに蝶々かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
昼風呂の燠どつさりと一の午 大峯あきら
昼風呂や千貫めざす薯の主 前田普羅 春寒浅間山
昼風呂を出て藁塚を遠望す 間石
時の日の齢いとしむ二番風呂 板垣 紫洋
暮るる田を背にして焚ける秋の風呂 柴田白葉女 遠い橋
木の宿の木の風呂鶉鳴きにけり 野中亮介
杉風呂にいやす高野の花の冷 荒井正隆
松虫に吾家の風呂は小さくも 阿部みどり女 笹鳴
松虫や風呂暗らくして松の月 松虫 正岡子規
林間に風呂たく迄の落葉哉 横井也有 蘿葉集
林間学校日だかき風呂を焚きにけり 高野素十
柚子風呂にひたす五体の蝶番 川崎展宏(1927-)
柚子風呂に一生を経しごとくあり 蒔田光耕
柚子風呂に九々の調子のよかりけり 多田みちよ
柚子風呂に吾が胸いだく愛すごと 菖蒲あや 路 地
柚子風呂に妻をりて音小止みなし 飴山實 少長集
柚子風呂に己れねぎらふ誕生日 大塚とめ子
柚子風呂に浸す五体の蝶番 川崎展宏
柚子風呂に聖痕のなき胸ひたす 有馬朗人(1930-)
柚子風呂に離れ住む子を思ひけり 藤原照子
柚子風呂のあとみごもりの深睡り 仙田洋子 雲は王冠
柚子風呂の柚子が赤子に蹴られけり 神原栄二
柚子風呂の柚子の浮力を楽しめり 馬場菊子
柚子風呂の重たき柚子となり泛ぶ 田中一荷水
柚子風呂や主婦業五十年とはをかし 吾妻ふみ
柚子風呂や寄り来る柚子を突き返し 岩田由美 夏安
柚子風呂を母在りし日のごと沸す 栗原米作
桃の葉を入れてあさけに風呂を焚く 岸白路
梅雨寒の昼風呂ながき夫人かな 日野草城
梅雨闇の野風呂や狐顔ひとり 加藤房子
梟の声のつまづく仕舞風呂 江尻真沙子
梟の次の声待つ終ひ風呂 菊池草庵
梟や追焚をする仕舞風呂 谷口紫頭火
楽屋風呂出て来し人の菖蒲髪 今井つる女
歳月を浮かべ沈めて冬至風呂 佐々木早月
残業の友へ言伝て風呂の香させ 田川飛旅子 花文字
水温む風呂焚き釜も早く沸き 湯山淳三
水足して田の神に良き風呂加減 千田一路
水鉄砲風呂戦場となりにけり 稲畑廣太郎
水風呂につかりわれ親鹿である 阿部完市 鶏論
水風呂に垢の落ちたる霜夜かな 許六 霜 月 月別句集「韻塞」
水風呂に夢見る朧月夜かな 支考
水風呂に筧しかけて谷の柴 内藤丈草
水風呂に芹の香のせしが春暮るゝ 乙字俳句集 大須賀乙字
水風呂に茶をはこばせて春の雨 曲翠 俳諧撰集「有磯海」
水風呂の下や案山子の身の終り 丈草
水風呂の置き所なしはるのくれ 嵐竹 芭蕉庵小文庫
水風呂へ流し込だる清水哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
水風呂やこのように馬を冷やしていた 松本勇二
水風呂をふるまはれたる十夜かな 史邦 芭蕉庵小文庫
汗し病み母よ黄天に風呂溢る 片山桃史 北方兵團
沸き早きひとりの風呂や三ケ日 鈴木真砂女 夕螢
泣きながら子は育つもの菖蒲風呂 小浦登利子
泣くために早くねる妹干菜風呂 増田達治
浴衣着て裏から寺へもらひ風呂 高岡智照尼
海士が唄雁風呂に居て悲しくす 村田渓水
海荒れてこの浜に雁風呂ありそうな 永野孫柳
海鳴りてすぐ雁風呂の冷めにけり 八牧美喜子
浸りつつたゆたふ齢菖蒲風呂 皆吉爽雨 泉声
湯を抜くや菖蒲ひつゝく風呂の底 菖蒲湯 正岡子規
湯を揉みて母を招きし菖蒲風呂 田村武雄
火の番に滝と落ち居るどこの風呂 久米正雄 返り花
炉ばなしの風呂をもらひに来てわすれ 長谷川素逝 村
炉ばなしや風呂をもらひに来て人ら 長谷川素逝 村
烏賊漁の灯がまた霧の霧天風呂 平田 薫
焚きつける風呂の蓋にぞ雨蛙 月舟俳句集 原月舟
煤掃を風呂焚く僕の老にけり 尾崎紅葉
熱き湯に痒み覚えぬ冬至風呂 高澤良一 随笑
熱き風呂を出れば日愁ふ芒かな 宮武寒々 朱卓
熱き風呂忽ち落とす木枯へ 殿村莵絲子
燈下親し天平風呂に浴し合ふ 竹中碧水史
爐塞で南阮の風呂に入身哉 蕪村 春之部 ■ 春夜廬會
父ありし日の熱すぎし菖蒲風呂 廣瀬直人
狐鳴き風呂の一つ火そそのかす 坂巻純子
猫の恋風呂まつくろに沸きにけり 原田喬
珍らしや風呂も我家の朧月 寺田寅彦
生きるゆゑみな尻持てり干菜風呂 和田耕三郎
田を植えし女体を風呂の火が染める 大井雅人 龍岡村
田を植えし村八方に風呂火燃え 大井雅人 龍岡村
留守居して風呂の水張る宵戎 岡本差知子
留守居して風呂の湯を張る宵戎 岡本差知子
病人に昼風呂立てぬ麦じまひ 木村蕪城 一位
白藤や火の粉はげしき杣の風呂 大峯あきら 鳥道
百姓にたまの風呂沸き蚕の眼り 福田蓼汀 山火
盆の雨やむときしづか風呂熱き 田中裕明 山信
盆踊も雨や里人風呂へ行く 草田男
短夜や気がねも無うて貰ひ風呂 木歩句集 富田木歩
石楠花を風呂にも活けて山の宿 本井英
石風呂を祠の如く覗き秋 志村貴美
研修を終へて来し子や菖蒲風呂 八巻絹子
神の留守手術の前の風呂に入る 石井敏夫
神山や風呂たく煙に遅ざくら 飯田蛇笏 霊芝
秋近や落葉松うかぶ風呂の中 室生犀星 魚眠洞發句集
秋風の歯朶うちさやげ山香風呂 石田波郷
稚児達に晝風呂わきぬ花の寺 原石鼎
空の光の湯の面にありぬ二月風呂 芝不器男
空ら風呂に露の荒園日を徹す 西村公鳳
立冬や疲れをふやす夜の風呂 高木喬一
竹くべし音すさまじき冬至風呂 前田普羅
竹くべし風呂鉄砲も余寒かな 菅原師竹句集
竹の秋禅寺は風呂を焚く時刻 細見綾子 花寂び
竹林を来る田植女に風呂火洩る 福田甲子雄
笹鳴くや旅のつかれを昼の風呂 上村占魚 鮎
紙を漉く手風呂は湯気を立てゝをり 高橋春灯
紙漉女さつと手風呂をしてゆきぬ 石田郷子
終戦日妻子入れむと風呂洗ふ 秋元不死男(1901-77)
終戦日孤独の風呂を溢れさす 雨宮抱星
縁つづきはうらめしや縁の下の風呂井戸 加藤郁乎
老女守る天平風呂と秋の夜と 萩原麦草 麦嵐
背戸をうつ風の荒息干菜風呂 森 ひろ
胎児のごと老いてまるまり冬至風呂 清水基吉
胡麻殻をくべて冬至の終ひ風呂 田中冬二 若葉雨
胡麻殻を風呂に焚きそへ十三夜 瀧春一 菜園
膝ぎりの仕舞の風呂や虫の声 冬葉第一句集 吉田冬葉
船底に男風呂ありクリスマス 中尾杏子
芒の穂まだ赫うして風呂がわく 辻桃子
花もどり隣に風呂のある夜哉 春洲
花人の心細さの坊の風呂 羽深美佐子
若き日の火筒暮しや冬至風呂 柴田保人
若草や風呂湯流るるはたけ縁 素丸
茅花あかり貰ひ風呂から二人つれ 四明句集 中川四明
菖蒲浮く昔ながらの楽屋風呂 市川団右衛門「ホ誌雑詠選集」
菜の花に風呂焚く壬生の踊衆 吉武月二郎句集
落ち傷の柚子と語らふ冬至風呂 川島千枝
葛水や風呂の中なる思ひ草 野村喜舟 小石川
蓬ひに来たその顔が風呂を焚いてゐた 尾崎放哉
蓬風呂あびてぬくとし今日の月 金尾梅の門 古志の歌
薄月にこみあふ風呂や鮎の宿 宮武寒々 朱卓
薪を焚く風呂あり海鼠食はす宿 河野頼人
藤の花風呂の熱きをかき混ぜて 岸本尚毅 選集「氷」
藪開墾きし根で風呂焚くや秋の暮 西山泊雲 泊雲句集
蘇生してよりの長寿や菖蒲風呂 富田潮児
虫の夜の風呂は吾が身にかへる場所 中島よし絵
虫の夜の風呂より上りひと仕事 森田公司
虫の闇おしまひ風呂はゆつたりと 森下きぬゑ
蚊の姥に水かけてゐる昼の風呂 榎本好宏
蛙なく夜の浅みや貰ひ風呂 井月の句集 井上井月
蜩や山の水引く坊の風呂 加古宗也
蜩や石工を熱き風呂が待つ 中里行雄
蜩や風呂わき来れば人にすすむ 横光利一
衣うつ音や風呂たく火の明り 蝶夢
覗かるる風呂窓かくし茗荷の葉 長谷川かな女 花寂び
詫手紙かいてさうして風呂へゆく 山頭火
語らうも知らぬ同志冬至風呂 佐藤かつ子
谷川にほとりす風呂や竹の秋 飯田蛇笏 霊芝
豆殻が風呂を焚きたる夜長かな 野村喜舟 小石川
跡とめて残る暑さや仕廻(しまひ)風呂 西勝 選集「板東太郎」
踊唄遠くにききて仕舞風呂 大野芳子
軒風呂も寒からず雪の下咲いて 木歩句集 富田木歩
逆の峰早風呂沸かす講の宿 山田春生
遠き世の旅に在るごと干菜風呂 都筑智子
郭公につぎつぎ風呂を出て坐る 長谷川かな女 牡 丹
野風呂忌や条里の遺畦萌え遅々と 山本雄二
釜茹でを承知の上の冬至風呂 高澤良一 寒暑
鈴虫や風呂の灯消えて松の月 鈴虫 正岡子規
銀漢にぬれてもどれば熱き風呂 栗生純夫 科野路
長々と雁風呂のこと話しけり 岡田史乃
長風呂で目眩の童児麦を踏む 猪原丸申
門口に風呂たく春のとまり哉 高井几董
開拓の風呂沸いてをり喜雨の中 永原亜閃
雁風呂にけふの浜波なかりけり 関 利治
雁風呂にこさ吹く暮や浦の風 菅原師竹
雁風呂にぬくもりゐるや念仏者 松瀬青々
雁風呂にもう一焚べのほしきかな 辻 桃子
雁風呂にカンテラ灯す廂かな 吉野左衛門
雁風呂に一夜の宿を借りにけり 会田仁子
雁風呂に客も哀れと和しにけり 高田蝶衣
雁風呂に島人呼ぶや磯馴声 菅原師竹句集
雁風呂に松の薪を運びけり 妻木 松瀬青々
雁風呂に母の乳房の貧しさよ 鷹匠子朗
雁風呂に流木の火のやはらかく 岩渕玉枝
雁風呂に海のつづきの波がたつ 澁谷道
雁風呂に潮鳴り遠き日となりぬ 赤沼山舟生
雁風呂に火を入れて人低唱す 藤木倶子
雁風呂に追ひ焚きの木のありにけり 今瀬剛一
雁風呂に雨や降る山近く見ゆ 佐藤紅緑
雁風呂のことに紙幅を費やして 黒田杏子
雁風呂のしばしば高き跨ぎ口 川出まり子
雁風呂のもえぬ木をふく涙かな 高田蝶衣
雁風呂の底ざらつける十三の宿 市野川隆
雁風呂の昔々の村通る 村上三良
雁風呂の村のほつほつ灯りたる 村上三良
雁風呂の焚口に来る男波かな 柑子句集 籾山柑子
雁風呂の煙とどかぬ北の天 金子野生
雁風呂の薪はきえてしまひけり 中勘助
雁風呂やくべ足すものが縮みゆく 岩淵喜代子
雁風呂やしづくしさうな人のこゑ 石田郷子
雁風呂やひねもすさわぐ波の白 新谷ひろし
雁風呂や旅の餉にある魚の目 小鳥幸男
雁風呂や日の暮れ方を浪さわぐ 豊長みのる
雁風呂や月を泛べて汐到る 田中田士英
雁風呂や海荒るる日は焚かぬなり 高濱虚子
雁風呂や海鳴り近く聞く夕べ 河野石嶺
雁風呂や湖一枚の寂とあり 水庭進
雁風呂や煙にむせぶ鳥の影 中勘助
雁風呂や笠に衣ぬぐ旅の僧 飯田蛇笏 山廬集
雁風呂や蜑がつたへて古き鉦 庄司瓦全
雁風呂や袖もてぬぐふ火吹竹 塩崎緑
雁風呂や雨こぼれ来て潮平ら 吉武月二郎句集
雁風呂を想ひたたづむ旅の浜 平瀬 元
雁風呂を焚きたる煙のくすぶれる 松本澄江
雁風呂を焚きたる燠のくすぶれる 松本澄江
雁風呂を焚きて傘寿を喜べり 吉年虹二
雁風呂を焚くことのなき木を拾ふ 戸塚時不知
雁風呂を焚くころといふ誘ひかな 伊藤伊那男
雁風呂を片手拝みにもらひけり 木村敏子
雛の夜の風呂あふるるをあふれしむ 石川桂郎 含羞
雨の夜の風呂やはらかし雁の声 古賀まり子
雪しろの飛沫とび来る磧風呂 上村占魚
雪光の中に風呂焚く豪華な音 飯田龍太
雪匂ふ御嶽の闇や干菜風呂 市村究一郎
雪掃いて節分の風呂沸しけり 華月
露さむし山の旅籠の終ひ風呂 田中冬二 行人
青葉西風一番風呂に男の子 八牧美喜子
青葉風一番風呂の日曜日 渡辺君子
音たてて穀雨の風呂の溢れをり 西村牽牛
風呂あつくもてなす庵の野梅かな 飯田蛇笏 霊芝
風呂からの髪の絡まる鴨足草 中拓夫
風呂が沸き筍飯も炊けしとよ 池田秀水
風呂けむり火の粉まじれる猫の恋 宮武寒々 朱卓
風呂ためる音のしてをり十日夜 岡田史乃
風呂にうかんでむこうの方で藤になる 阿部完市 純白諸事
風呂にゐて胸のときめく暮雪かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
風呂に入る夜のくつろぎや鳴く水鶏 井月の句集 井上井月
風呂に入れば小窓に秋の海寒し 寺田寅彦
風呂に沈めば稲抜きし首かゆくなる 大熊輝一 土の香
風呂に浮くもののひとつに生見玉 佐々木六戈 百韻反故 初學
風呂に浮く青き草の実追ひにけり 彷徨子
風呂に焚く胡麻殻束を重ねけり 芳野仏旅
風呂に見る早き泊りやももの花 召波
風呂の中山へ弱東風わたるみゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
風呂の戸にせまりて谷の朧かな 原石鼎(1886-1951)
風呂の戸をあけて鴈見る名残哉 高井几董
風呂の戸を開けてとたんの水鉄砲 赤澤新子
風呂の柚子二つ浮かぶを見比べて 綾部仁喜 樸簡
風呂の水湯に沸きはじめ桃の花 中山純子 沙 羅以後
風呂の水落す末寺の犬ふぐり 長谷川双魚
風呂の湯にあす蒔く麦を浸けて寝る 長谷川素逝 村
風呂の湯をたつぷり勤労感謝の日 羽吹利夫
風呂の湯をぬけば蚯蚓の鳴き止みぬ 寺田寅彦
風呂の湯を落せしあとの遠蛙 星野立子
風呂の火のもゆるに見れば栗の毬 松瀬青々
風呂の火を焚きつけてあり菊日和 大峯あきら 鳥道
風呂の灰髷にかかりぬ大晦日 阿部みどり女
風呂の蓋取るやほつほつ春の雨 春の雨 正岡子規
風呂の蓋柚子の匂ひを封じ得ず 洲崎美佐穂
風呂の隅に菖蒲かたよせる女哉 菖蒲湯 正岡子規
風呂ふけや蚋にさされし所をば 上島鬼貫
風呂もせば花菜の雨となりにけり 金尾梅の門 古志の歌
風呂もらひ針の供養に加はりぬ 大宮広子
風呂をたく姉さんかむり濃山吹 河野静雲 閻魔
風呂を出て裸のままに鮎を焼く 橋本鶏二 年輪
風呂を出て西瓜を切れと命じけり 西瓜 正岡子規
風呂を焚くうしろの闇にほととぎす 加藤武夫
風呂を焚く梅の寒さや早泊り 松瀬青々
風呂を焚く螢袋も日暮れたり 猪俣千代子 堆 朱
風呂冷めやたのまれ手紙書いて寝る 森川暁水 黴
風呂出でし裸は神や風薫る 松根東洋城「渋柿句集」
風呂嫌ひ幾つも持ちて浮人形 斉藤たま江
風呂布のつゝむに余る団かな 炭 太祇 太祇句選
風呂手前はちきれさうな膝揃へ 上村梨花
風呂桶に風呂の温度の種浸し 深見けん二 日月
風呂水を汲むが仕事の昼寝ざめ 石塚友二 光塵
風呂沸いて夕顔の闇さだまりぬ 中村汀女
風呂沸くやしんと日あたる松の花 清原枴童 枴童句集
風呂洗ふ作務を無心に安居寺 斉藤道廣
風呂浅き肩のさむさよ鳥渡る 金尾梅の門 古志の歌
風呂焚きの落葉の中に蛇の衣 藤米田薫
風呂焚くもたのしきものよ避暑の荘 星野立子
風呂焚くや芙蓉の影も移りゐて 小杉余子 余子句選
風呂煙はたと濃くなる切子かな 岸本尚毅 鶏頭
風呂熱くたしなむ妻や夕霰 西島麦南 人音
風呂燃して潮たれ浴衣松ヶ枝に 長谷川かな女 雨 月
風呂燃せば囀り畑へ移りけり 金尾梅の門 古志の歌
風呂燃ゆる音の暮めく麦こなし 金尾梅の門 古志の歌
風呂落とす音のきらめく初昔 福田甲子雄
風呂蓋めきし焼藷の蓋子客集ひ 中村草田男
風呂跡のモザイクタイル冬青草 都筑智子
風呂鏡凍てて相似の父子余さず 河野南畦 『焼灼後』
風強き夜なり柚子風呂熱くして 菅間幸子
鮎の宿新月に上ぐ風呂煙り 宮武寒々 朱卓
鵙漸く止みぬ月光を長風呂に 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鵜飼果て傘して風呂へ導かる 宮武寒々 朱卓
鵯に覗かれてゐる昼の風呂 南 冨美子
鶯や軽石さげて風呂戻り 鶯 正岡子規
鹿聴いて戻れば風呂の沸いてゐし 奥田智久
麦打や風呂たきつけてマ一ト息 西山泊雲 泊雲句集
麦扱いで一家桶風呂荒使ふ 千田一路「能登荒磯」
麦秋や頬を地につけて風呂火吹く 西山泊雲 泊雲句集
●蒸し湯
数へ日の首を出しゐる砂蒸し湯 小室風詩
山の蒸湯へ筵小腋の裸ども 石川桂郎 高蘆
冬蝿の顔にくるなり砂蒸し湯 広田祝世
●名湯
名湯の濁りに憩ふ初晦日 鞍 悦子
●元湯
あらぬ方吹きて元湯の扇風機 高澤良一 宿好
さはやかや元湯の噴くを目のあたり 毛塚静枝
七月の輪飾をして元湯かな 八木林之介 青霞集
元湯とて一軒のみの茂りかな 実花
四五人に花残りゐる元湯かな 大峯あきら 宇宙塵
息白く元湯へ夜のをみなたち 五十嵐播水
日盛りの元湯六花の六角堂 高澤良一 宿好
雪卍おんおんと元湯海に入る(下北半島、下風呂付近二句) 河野南畦 『硝子の船』
●貰い風呂
子の重さほど柚子貰ひ風呂を焚く 中戸川朝人 残心
短夜や気がねも無うて貰ひ風呂 木歩句集 富田木歩
茅花あかり貰ひ風呂から二人つれ 四明句集 中川四明
蛙なく夜の浅みや貰ひ風呂 井月の句集 井上井月
●貰い湯
貰ひ湯や黄ばらに腸は見せられぬ 栗林千津
貰ひ湯の昔がありし星月夜 斎田鳳子
●山の湯
かつこうや山の湯の薬師さんの白い障子 荻原井泉水
がまづみの色づく頃の山の湯に 高澤良一 素抱
けふ生きて山の湯にあり朝の蝉 畠山譲二
一身の凍をひつさげ山の湯へ 皆吉爽雨
今日生きて山の湯にあり朝の蝉 畠山譲二「朝の蝉」
優曇華や生涯山の湯の木地師 鈴木貞二
同齢か上か秋夜の山の湯に 大井雅人
天の川山の湯にして塩の味 中戸川朝人 尋声
山の湯が利いて快眠かじか宿 高澤良一 素抱
山の湯にあそびしあとの洗鯉 関戸靖子
山の湯にたまたま秋の螢かな 加藤三七子
山の湯に創洗ひしが鷹と化す 星野石雀
山の湯に吾と入替り大き灯蛾 八木林之介 青霞集
山の湯に早苗饗の衆朝より来 谷渡末枝
山の湯に母いざなえば合歓さかり 渕向正四郎
山の湯に浮くは農夫の盆の顔 瀧春一
山の湯に男が白し末枯れて 久保田博
山の湯に秋七草の咲き揃ふ 野原春醪
山の湯に精進落ちの秋遍路 福瀬伯彩
山の湯に膝抱き八十八夜かな 木内彰志
山の湯に蕗の雨降り母とゐる 松本澄江
山の湯に野点遊びの桃青忌 中山純子
山の湯に雪積む頭並べたる 矢島渚男
山の湯に青き蛾泛ぶ五月来ぬ 小林黒石礁
山の湯に首だし勤労感謝の日 鈴木一恵
山の湯に首立てひとり十二月 岡田日郎
山の湯に骨正月の老夫婦 長谷川浪々子
山の湯のあつきをかぶり風の盆 小島千架子
山の湯のなみなみとある寝釈迦かな 桂信子 樹影
山の湯のほがらほがらと啼く青鵐 臼田亜浪 旅人
山の湯のランプの燈火親しみぬ 富安風生
山の湯の一人声高あきざくら 西村良子
山の湯の二日眺めし青葉かな 永井静枝
山の湯の借り衣薄し十三夜 小林寂無
山の湯の大屋根の照り岩燕 三原清暁
山の湯の宿のロビーに絵蓬 酒井 武
山の湯の尾花しぐれに別るるか 西本一都 景色
山の湯の山菜づくし栃の花 村上克哉(笹)
山の湯の松葉しづりや春の雷 臼田亜浪
山の湯の枯木の宿に客ひとり 村山 郁
山の湯の田植終へたる顔ばかり 国安一帆
山の湯の花に来るなり人形座 穐好樹菟男
山の湯の蝌蚪日輪へ頭を揃ヘ 沢木欣一
山の湯やすぐ売切れし寒卵 首藤勝二
山の湯やだぶりだぶりと日の長き 一茶
山の湯やふと囁ける雪女郎 磯 直道
山の湯やまだ散る花のありにける 及川貞 榧の實
山の湯や吾が春愁の花昏れず 宇田零雨
山の湯や紅葉を払う脱衣籠 太田小夜子
山の湯や霧に蒸されて木々の苔 寺田寅彦
山の湯を出でて化粧ひてより秋思 斎藤杏子
山の湯を初湯にひとつ年とれり 宮津昭彦
山の湯泉や裸の上の天の川 子規句集 虚子・碧梧桐選
時雨来て山の湯宿の早や灯る 新井セツ
桐の花爆音山の湯にも飛び 石田波郷
相客もなき山の湯に走り蕎麦 金森柑子
紅すすきほどにあからみ山の湯に 高澤良一 素抱
紅葉狩り序でに山の湯も浴びて 高澤良一 寒暑
蒼朮を焚く山の湯の一夜かな 伊藤冨美子
行く春の山の湯糖尿病に効くと 岡田日郎
道道の稲の出来見て山の湯ヘ 上村占魚 球磨
郭公や山の湯壺に山の神 福田和子(梛)
銀河の夜雨の夜山の湯に二泊 岡田日郎
霧ふかし山の湯に親も子も裸 栗林一石路
鰯雲山の湯のやや熱かりし 大峯あきら 鳥道
せい出して山湯のけぶる野分哉 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
入道がふぐりをつかむ山湯かな 中勘助
隠れ棲むごとく山湯のきりぎりす 成澤たけし
風あらぶ臥待月の山湯かな 飯田蛇笏
●湯垢
草青む道後の湯垢流れ来て 右城暮石
●湯上り
冬の雁湯上り童女まるはだか 伊藤通明
子よ湯上りのタオル着れば王様になる 伊藤みどり
柚の香して湯上りのはや縫へりけり 森澄雄
桐の花湯上りの子は栗のように 古沢太穂 古沢太穂句集
湯上りといふ素手素足地虫生づ 手塚美佐
湯上りに夕立を見る裸かな 夕立 正岡子規
湯上りに耳湿りゐて時鳥 中島双風
湯上りのうたゝ寐さめて夜寒哉 夜寒 正岡子規
湯上りのかろき動悸や蜜柑むく 粟津松彩子
湯上りのすぐに蚕飼の女かな 草野駝王
湯上りのつまさきに浴ぶ芝の露 高澤良一 素抱
湯上りのふぐり軽しや秋の風 今井杏太郎
湯上りのシャボン匂はせ端居に来 中野浩村
湯上りの七草爪をとりて昼 下田実花
湯上りの乳房かくまふ柚の香かな 山上樹実雄
湯上りの二本の酒や春の雨 京極杞陽
湯上りの匂ひのこども地蔵盆 中戸川朝人 残心
湯上りの団扇はどこだここに無し 高澤良一 素抱
湯上りの女が寄りて熟柿剥く 永井龍男
湯上りの嬰を真ン中に冬座敷 本宮哲郎
湯上りの子のまくれなゐクリスマス 赤松子
湯上りの子をうらがへし天瓜粉 中村秋晴
湯上りの尻にべつたり菖蒲哉 小林一茶 (1763-1827)
湯上りの庭下駄軽し夏の月 芥川龍之介
湯上りの心は白紙夕端居 上野泰 佐介
湯上りの指やはらかし足袋のなか 桂信子 黄 炎
湯上りの月それてすむ木槿かな 金尾梅の門 古志の歌
湯上りの水櫛つかふ母の日や 平井さち子 紅き栞
湯上りの汗疹の子ども裏返す 田畑美穂女
湯上りの浴衣を着つゝ夫に答ふ 星野立子
湯上りの渋茶すゝれば初嵐 寺田寅彦
湯上りの熟柿や母とゐるごとし 金久美智子
湯上りの爪立ててむく蜜柑かな 西村和子 夏帽子
湯上りの牛乳昼の雪見つゝ 高澤良一 素抱
湯上りの着替への硬さ花薄荷 児玉輝代
湯上りの肌にとまりし花の肌 きくちつねこ
湯上りの肌の匂へり夕ざくら 桂信子
湯上りの肌へたちまち藪蚊くる 大越晶
湯上りの胸の黒子や夏めきぬ 森澄雄
湯上りの赤子の上を大やんま 大串章 山童記
湯上りの身に夕蝉を引き寄せて 高澤良一 寒暑
湯上りの身を載せ雪の夜の秤 桂信子 黄 炎
湯上りの軽き立膝業平忌 藤田郁子
湯上りの項匂ふよ地蔵盆 三村 純也
湯上りの頬に晦日の闇ふかき 金尾梅の門 古志の歌
湯上りの顔の平らやちちろ虫 佐々木 咲
湯上りの香とすれ違ふ蛍の夜 渋川優子
湯上りやいやがる孫にちゃんちゃんこ 堀口艶子
湯上りやつい涼風に寝せらるゝ 涼風 正岡子規
湯上りや乳房吹かるゝ端涼み 納涼 正岡子規
湯上りや涼風吹て眠うなる 涼風 正岡子規
湯上りをなほ灯点さず青簾 増田八千代
背も豊かの湯上り浴衣や才女時代 保坂春苺
蛙に和す湯上りの子が腹叩き 大熊輝一 土の香
雛の間を通る湯上りの身を包み 朝倉和江
青梅雨の湯あがりをまだ灯さず 岡本 眸
●湯中り
ふらふらと湯中りに似て舞ふ雪も 高澤良一 素抱
朝湯より戻る足取り湯中り呆け 高澤良一 随笑
湯中りのみな杖となる藜かな 宇佐美魚目 天地存問
湯中りの一間も飛ぶ露見しと 宇佐美魚目 天地存問
湯中りの身の八方に花芒 柿本多映
●湯浴み
にぎやかに湯浴む白鳥睡るときを 野澤節子 花 季
一切がもみづる中や岩湯浴ぶ 高澤良一 寒暑
今正にもみづる加仁湯の掛け湯浴ぶ 高澤良一 寒暑
八朔やわが真乙女の湯浴ごゑ 藤田湘子
出湯浴み刻夜々おくらせて月待つも 吉野義子
函嶺の湯あみを冬の雷のもと 皆吉爽雨
初湯浴ぶからすの行水始めなり 高澤良一 随笑
初湯浴ぶ天の岩湯のここちかな 長谷川櫂 虚空
初湯浴ぶ熱きは痒きことと知る 高澤良一 随笑
初湯浴ぶ爪清らかに透けてをり 北林令子
初花や拳をかたく湯浴みの嬰 佐々木雅翔
合歓咲くや湯浴の赤子掌をひらき 羽部洞然
唐黍に背中うたるる湯あみ哉 正岡子規
声高き童女の湯浴みどりさす 金子 潮
夏痩せて拝み太郎の湯浴みなり 高澤良一 素抱
夕焼の女松湯浴みのごとくあり 工藤ミネ子
大でまりの含む神の燈旅の湯浴 加藤知世子 花寂び
天上の湯浴みをここに柚子湯かな 渡辺恭子
妻いつも湯浴しんがり蟲時雨 高田風人子
妻湯浴む闇の刈田のあをあをと 中拓夫 愛鷹
妻癒えて湯浴みしてをり月涼し 藤原宇城
娵星に見られながらの湯あみ哉 七夕 正岡子規
復活祭妻が湯浴みの音も更く 村沢夏風
我年に母吾を産みぬ初湯浴み(三十二歳となる) 『定本石橋秀野句文集』
日向ぼこ湯浴のごとく人加ヘ 岡本眸
早梅し眠りて赤子昼湯浴ぶ 秋元不死男
春暁を来て荒湯浴ぶ在所者 下村ひろし 西陲集
昼の湯浴みの皆子志満子に芒の朱 北原志満子
柚子どもと衝突しつつ湯浴みせり 相生垣瓜人
根雪やさしひざまづきては湯浴みなす 寺田京子
楽しげの柚子と湯浴みを共にせり 相生垣瓜人 明治草抄
母子の湯浴み春の銀河に音ひびく 大串章
沈丁の闇へ湯浴みの音洩るる 横山美代子
流氷期湯浴児くるむ白タオル 大平照子
湯殿嶺の湯浴みの神を詣でけり 阿部月山子(俳句)
湯浴する嬰児のこぶし室の花 渡辺白峰
湯浴みして 血の蘇る 大旦 伊丹三樹彦
湯浴みして望の月まつ赤子かな 長谷川櫂 虚空
湯浴みして柚味噌の匂ふ旅の宿 野田 武
湯浴みして蜩の声遠ざけり 佐々木悦子
湯浴みして顔あたらしき春夕べ 森澄雄 所生
湯浴みする猿どちと逢ふ雪解谷 太田 嗟
湯浴みする病躯一片春あらし 伊東宏晃
湯浴みたる身のしづけさに今年竹 野澤節子 黄 炎
湯浴みつゝ黄塵なほもにほふなり 相馬遷子 山国
湯浴み後の下駄冷たしや夕河鹿 手島 靖一
湯浴み後の女乾かぬ蛍の夜 鈴木鷹夫 千年
湯浴み後の眼鏡がくもる桜草 鈴木鷹夫 渚通り
湯浴み後の眼鏡をかけず春の月 池田秀水
湯浴み来し身を花冷えの窓に倚す 上村占魚 球磨
湯浴み馬夏毛の肌の滑らかに 瀧 春一
湯浴後のおくれ毛の濡れ餅を切る 猪俣千代子 堆 朱
灯を花と散らして除夜を湯浴むなり 岡本眸
物思ふよすがの湯浴み夜の秋 手塚美佐 昔の香
耳打ちをしては寄りくる湯浴柚子 堀口星眠 樹の雫
花に会ひいのちの厚む湯浴せり 村越化石 山國抄
草津うそ寒とんだ熱さの掛湯浴ぶ 高澤良一 随笑
萩暮れぬ湯浴み疲れにい溶けゐぬ 石塚友二 光塵
蝙蝠に空明りさす湯浴かな 木歩句集 富田木歩
蝶の國に往かむと湯浴みする母や 河原枇杷男 蝶座
蟋蟀やかつて湯浴みは暗かりし 小西和子
輪くぐりの用意に急ぐ湯浴みかな 内田百間
追焚きのぬるき湯浴みや霜のこゑ 太田 蓁樹
退院の夫の湯浴める柚子湯かな 角 裕子
降誕祭少女の湯浴ひそと長し 石田あき子 見舞籠
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり 森澄雄(1919-)
雪解富士夜も影なすに湯浴みをり 野澤節子
露けしや馬の湯浴みに刻かけて 西村和子 窓
鹿撃の雪焼さらし湯浴みをり 沼澤 石次
●湯籠
●湯口
きりぎりす四つの湯口は口あけて 有働亨 汐路
初湯舟湯口近くに身を沈め 高澤良一 寒暑
湯口に踊る白繭小春の糸を繰る 古沢太穂 古沢太穂句集
酒桝の置かるる湯口閑古鳥 中戸川朝人 尋声
露天湯の湯口の硫黄霧呼べり 高澤良一 素抱
●湯下駄
●湯桁
春の雪ちりこむ伊豫の湯桁哉 松瀬青々
●湯煙
しらたまの肌の湯けむり羽子日和 龍太
一山の湯けむり凍てし日に向ふ 爽雨
平家の世よりぞ紅葉も湯煙も 岩崎健一
強霜に湯煙山の生活(たつき)あり 高澤良一 燕音
湯けむりをあけぼの色に楓の芽 青柳志解樹
湯けむり上げ和賀流の里のたうもろこし 高澤良一 素抱
湯けむり立つ錆び虎杖のその向う 高澤良一 寒暑
湯煙か万座の霧か朝の風 磯野充伯
湯煙に人現るる時萱草も 高濱虚子
湯煙の朧へだてゝ語りけり 青峰集 島田青峰
湯煙の消えてほのかや合歓の花 高浜虚子
湯煙の立つ山にして明易し 茨木和生 往馬
湯煙の紅葉になびき消えてゆく 上村占魚 球磨
湯煙の雑木紅葉を貫きし 林 糺苑
湯煙は軒より鶺鴒屋根に来る 福田蓼汀 秋風挽歌
湯煙も芒もなびくばかりなり 比叡 野村泊月
湯煙や根雪となりし山襖 石塚友二 光塵
湯煙や軋みて止る日覆馬車 栗原政子
湯煙りの流るる方に冬の梅 今泉貞鳳
湯煙りの白粉臭き朧哉 寺田寅彦
湯煙を吸ひ雪片を散らす空 成瀬正とし 星月夜
湯畑の湯煙何処へ冬帽子 板倉由美子
源泉の湯けむり散らす芋嵐 山田節子
立ち昇る湯けむりを巻き若葉風 高澤良一 素抱
葛咲くや湯けむり競ふ渓二つ 手島靖一
螻蛄を煮る湯けむり貧を蔽ひぬる 下村槐太 天涯
貝寄風に湯煙なびく別府かな 林徹
間欠の湯煙噴きて山笑う 深村素水
霧よりも湯けむり白し十三夜 西村公鳳
青梅雨に染まり湯けむり地を這へり 川崎俊子
●湯小屋
寒満月湯小屋の棟に鹿の角 福田蓼汀 秋風挽歌
湯けむりに湯小屋包まれ秋小寒 高澤良一 寒暑
●湯冷め
おぼろげな馬の形を湯冷めかも 永末恵子 留守
ざうざうと湯ざめしてをり路次咄 久米三汀
すぐ湯ざめしさうなひとり暮しかな 藤崎久を
そこまで天の川、湯ざめすまじき羽織を借り(黒部) 荻原井泉水
つぎつぎに星座のそろふ湯ざめかな 福田甲子雄
ともし火に寄す顔うとき湯ざめかな 飯田蛇笏 春蘭
なほ生きん闇の湯ざめは締めつくる 香西照雄 対話
ぬかるみをひしよ~かへる湯冷めかな 森川暁水 黴
ぬる燗を湯ざめの上に重ねけり 草間時彦 櫻山
ふと湯ざめ右の肩より生れけり 塙告冬
ゆずの香の湯ざめごこちになほのこる 田中冬二 麦ほこり
わが部屋に湯ざめせし身の灯を点もす 中村汀女
テレビ見る子を湯ざめると叱りけり 吉田守一
パソコンの将棋に負けて湯冷めせり 堀田政弘
ビデオに吾湯ざめのごとく登場す 能村研三 鷹の木
モナリザも我も眉なき湯ざめかな 伊澤のりこ
不和の灯のしづみて湯ざめ顔ひとつ 石原舟月
乾坤の光うしなふ湯ざめかな 木村蕪城
亡き母に叱られさうな湯ざめかな 八木林之助
人の閑奪ひ一閑湯ざめ来て 香西照雄 対話
信子逝く湯ざめのおもひして淡し 八田木枯
剥製を女見てゐる湯ざめして 田村恵子
化粧(けは)ふれば女は湯ざめ知らぬなり 竹下しづの女(1887-1951)
商談の折合いつかぬ湯ざめさな 佐藤佐世
壁の絵の写楽に湯ざめうつりけり 細川加賀 生身魂
姿見に全身うつる湯ざめかな 菖蒲あや 路 地
子等寝せて俄かに湯ざめ心地かな 西村和子 夏帽子
小説の虜となりて湯ざめかな 綿谷吉男
川千鳥湯ざめおぼゆる昼さがり 上村占魚 鮎
引鶴の首を思えり湯冷めぎみ 池田澄子 たましいの話
後より掴まるるごと湯ざめせり 古賀まり子
恋めきて絨毯をふむ湯ざめかな 飯田蛇笏 雪峡
投句者に怨まれつづけ湯ざめせり 宮坂静生
掌のみかん冷たき湯ざめかな 滝田琴江
探しもの始めて湯冷め忘れをり 神鳥倫子
旅の夜の湯ざめ早しと思ひつゝ 上村占魚 鮎
昔をとこありけり湯ざめしたりけり 細川加賀 『玉虫』以後
星空のうつくしかりし湯ざめかな 松村蒼石 寒鶯抄
晩年は湯ざめに似るか春の星 永井東門居
木の家のどこか軋める湯ざめかな 加瀬美代子
湖見つめゐての湯ざめや春の鴨 中拓夫
湯ざめしておのれに聞かす二た三言 鷲谷七菜子
湯ざめしてかつぱえびせん止まらない 内田美紗 魚眼石
湯ざめしてしまひしことを引金に 今橋真理子
湯ざめしてそれも楽しき長電話 熊田淳子
湯ざめしてどうでもよいと思ふこと 片山由美子 水精
湯ざめしてなほ書きつづけゐる手紙 岩崎照子
湯ざめしてにはかの山気かむりけり 上田五千石
湯ざめしてのちのちのさもあらばあれ 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
湯ざめしてもの食む音の身に返る 岡本眸
湯ざめしてよりちかぢかと汽車の音 細川加賀 生身魂
湯ざめしてより美しき海の紺 今井杏太郎
湯ざめしてゐる手がつづけ髪手入 波多野爽波 鋪道の花
湯ざめして一日の遠くなるおもひ 片山由美子 天弓
湯ざめして一終戦史よみふける 岩崎照子
湯ざめして二十世紀に遺されき 大屋達治 絢鸞
湯ざめして何かと儚ごとばかり 能村登四郎
湯ざめして何か離れていく予感 片桐基城
湯ざめして古き映画を見たりけり 小宮山政子
湯ざめして君のくさめや十三夜 日野草城
湯ざめして夜の上陸諦めし 柴田道人
湯ざめして大きくなりぬ泣ぼくろ 櫨木優子
湯ざめして大きな月でありにけり 古舘曹人 樹下石上
湯ざめして大正の顔客観す 原子公平
湯ざめして夫婦老後を計りをり 高橋悦男
湯ざめして庭より闇を負ひもどる 井沢正江
湯ざめして廃墟の中に立つごとし 藺草慶子
湯ざめして心もとなし旅の宿 波多野爽波 鋪道の花
湯ざめして急に何かを思ひつく 加倉井秋を 午後の窓
湯ざめして恋の焉りにゐるごとし 大石悦子 百花
湯ざめして或夜の妻の美しく 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
湯ざめして旅愁に似たる生家かな 保住敬子
湯ざめして晩年是非もなかりけり 長谷川双魚 『ひとつとや』
湯ざめして現の闇をひろげたり 長谷川双魚 『ひとつとや』
湯ざめして眉のあたりのうつろなる 片山由美子 水精
湯ざめして竹人形のうすみどり 御旅屋長一
湯ざめして純文学を好みけり 深見けん二
湯ざめして蕪村忌の夜の更けにけり 所 山花
湯ざめして遥かなるものはるかなり 藤田湘子
湯ざめして酒を垂らせる李白かな 小島 健
湯ざめして鏡が水のやうに見ゆ 八牧美喜子
湯ざめして鏡に他人めき映る 大熊輝一 土の香
湯ざめして鏡に命こめてをり 波多野爽波 鋪道の花
湯ざめして鏡の奥の狐顔 仙田洋子 橋のあなたに
湯ざめして陶淵明の書を閉づる 森田公司
湯ざめして電線がみな丸見えに 三沢容一
湯ざめして頭の上にありし灯よ 波多野爽波 鋪道の花
湯ざめして顔の小さくなりにけり 雨宮きぬよ
湯ざめして髪の細りし鏡かな 澤村昭代
湯ざめする気配の帯を締めにけり 小坂順子
湯ざめせしこと足先の知つてをり 稲畑汀子 汀子第二句集
湯ざめせし背に大いなる月かかる 中村汀女
湯ざめせし貌寒灯の下過ぐる 桂信子 黄 炎
湯ざめせり残雪は土より凹む 千代田葛彦 旅人木
湯ざめとは耳の浮き立つ思ひかな 今瀬剛一
湯ざめの顔薄倖にしてうつくしき 石原舟月
湯に入れば湯ざめをかこつ女かな 高浜虚子
湯冷めかな折鶴の滞空かな 矢野千代子
湯冷めしてしらけし肌やくつわむし 日野草城
湯冷めしてコントラバスに抱かれをり 朝吹英和
湯冷めして古き歌など思ひ出す 片山由美子 風待月
湯呑みの湯冷めてをりしか冬隣 高澤良一 随笑
片々たるもの煎餅よ湯冷めせり 中村草田男
狐火を見るべく湯ざめこゝちかな 高森清子
白光の湯冷めをそそる秋蛍 殿村菟絲子
白湯のんでさらさら湯ざめなどもなく 新井光子
眉を消す鏡のなかで湯ざめせり 室谷光子
眉画くや湯ざめこゝちのほのかにも 清原枴童 枴童句集
真白なる半衿つけし湯ざめかな 田原重子
粗きこといひて悔いゐる湯冷めかな 森川暁水 黴
綺羅星を仰ぎてゐたる湯ざめかな 田中春江
耕二の死以後を湯ざめのごとくをり 能村登四郎
花あけびうち仰ぎゐて湯ざめかな 宮野小提灯
花かるた湯ざめの羽織うち重ね 清原枴童 枴童句集
藤の穂絮の兎となれり湯ざめして 中村苑子
身にふかき鬼に及びし湯ざめかな 佐怒賀正美
身の芯に川音たまる湯ざめかな 黛執
遠くまで海にごりゐる湯ざめかな 吉田紫乃
遠火事や湯ざめ故なく恐れをり 斉藤夏風
酢にむせしことより湯ざめ覚えけり 大熊輝一 土の香
鏡中に違ふ我ゐる湯ざめかな 小泉八重子
髪結ふに手間とりすぎて湯ざめかな 宇佐美輝子
●柚子湯 柚湯 柚子風呂
あたたまり浮ぶほかなき柚子湯の柚子 井上郁夫
いつさいを柚子湯に沈め生家なり 辻美奈子
うちふして柚子湯の匂ひひろがりぬ 仙田洋子 雲は王冠
うつうつと柚子湯に眉の溶けにけり 殿村莵絲子 花寂び 以後
くるぶしの二寸や柚子湯とて計り 田辺 花
ししむらの淋しくなりし柚子湯かな 井上土筆
たどりつく思ひのありて柚子湯かな 北村仁子
ちちははの慰めあひし柚子湯かな 廣瀬直人
ちよんとつく柚子湯の柚子をちよんとつき 川崎展宏 冬
とっぷりと柚子湯につかる風の音 林 民子
なつかしや柚子湯は熱く青文身 石川桂郎 含羞
ひと年のつかれとおもふ柚子湯かな 成瀬桜桃子 風色
ふぞろひの柚子のたのしき柚子湯かな 仙田洋子 雲は王冠
ほのぼのと母の首ある柚子湯かな 保坂春苺
むつかしい一日が暮れ柚子湯の柚子 桂信子 黄 瀬
もう少しこころ美人の柚子湯かな 白石菊代
よき眠り給へ柚子湯の香を夜具に 杉本寛
をみなごのひとりあそべる柚子湯かな 川崎展宏
タイルを目盛ひとりの柚子湯溢れしめず 鈴木栄子
一人あがり柚子湯のにごり熱さ増す 中戸川朝人 残心
一年の短さをいひ柚子湯かな 岩井善子
一族郎党が沈んでゐる柚子湯かな 八木忠栄
三従の身を深々と柚子湯かな 加藤安希子
三更の月天心に柚子湯かな 太田光子
五六日半鐘きかぬ柚子湯かな 増田龍雨 龍雨句集
何もなき家にて柚子湯ありにけり 山本憲治
創痕の臍にて止まる柚子湯かな 萩野をさむ
勉強のわが少年に柚子湯の香 細川加賀
古びゆくいのち柚子湯に沈めをり 杉山 岳陽
吾子はみな柚子湯の柚子を胸に抱き 山口青邨
吾子はをみな柚子湯の柚子を胸に抱き 山口青邨
四十の肉やはらかき柚子湯かな 黒田杏子 一木一草
天上の湯浴みをここに柚子湯かな 渡辺恭子
夫の恩人の恩柚子湯勿体なし 殿村菟絲子 『旅雁』
夫焚いてくれし柚子湯を惜しみなく 仙田洋子 雲は王冠
女工たち声あげ入りて柚子湯たり 菖蒲あや
妙案の浮かべるごとく柚子湯の柚 高澤良一 宿好
妻の入る柚子湯さめしやと章や焚く 清水基吉 寒蕭々
子が蹠膝にふわりと柚子湯の香 林原耒井 蜩
子の夫婦泊らす柚子湯繰り上げて 篠田悌二郎
子の忘れし乳房漂ふ柚子湯かな 丹間美智子
子育てし乳房柚子湯にいとしむも 吉野義子
存念やこの身大事と柚子湯して 宇多喜代子 象
寛ぎをたつぷり貰ふ柚子湯かな 芝 あきを
島住みの柚子湯に変るレモン風呂 秋光道女
息災を無上に柚子湯溢れしむ 遠藤甫人
手離さむ我が家柚子湯を溢れしめ 楡井 秀孝
旅どまり柚子湯に入れて貰ひけり 小澤碧童 碧童句集
旅はもう叶はぬ母に柚子湯立て 樹生和子
旅ひとつきまりてはずむ柚子湯かな 石田あき子 見舞籠
星辰のことふと思ふ柚子湯かな 仙田洋子 雲は王冠
昼月や柚子湯に母を浮かべたる 山本京子
果て近き旅を柚子湯にひたりけり 金尾梅の門 古志の歌
柚子の里いづこも真昼柚子湯わき 古賀まり子 緑の野以後
柚子湯あふれしめもう父と入らぬ子 増賀美恵子
柚子湯かな沈めば頤に柚子の玉 石塚友二
柚子湯して「石版東京図絵」と決む 永井龍男
柚子湯してあしたのあしたおもふかな 黒田杏子 木の椅子
柚子湯してぬくもる嬰を皿秤 佐藤美恵子
柚子湯してよき転職の一日目 都筑智子
柚子湯して五欲も淡くなりしかな 小林康治
柚子湯して厨に残す柚子ひとつ 明比ゆき子
柚子湯して命の末の見ゆるかな 小林康治
柚子湯して妻とあそべるおもひかな 石川桂郎(1909-75)
柚子湯して柚子とあそべる独りかな 及川貞
柚子湯して柚子より軽く浮ける身の 高澤良一 宿好
柚子湯して髪ゆたかなる山乙女 有泉七種
柚子湯です出て来る客に這入る客 川崎展宏
柚子湯の煙あがるや家の内 前田普羅
柚子湯ほのぼのと牛啼く声聞ゆ 松村多美
柚子湯もう握り潰してありし柚子 岩田由美
柚子湯より出すずつしりと子の重さ 今瀬剛一
柚子湯より御機嫌節の湧き起こる 泉田秋硯
柚子湯出し子は母までの水脈ひいて 今瀬剛一
柚子湯出し素顔のままに長電話 西村和子 夏帽子
柚子湯出てこの世ほのぼの妻子あり 新明紫明
柚子湯出てまた人の世のひとりなり 梅澤よ志子
柚子湯出て夫の遺影の前通る 岡本眸
柚子湯出て妻のクリーム少し塗る 雨宮昌吉
柚子湯出て家居のあかり減らしゆく 岩淵喜代子 朝の椅子
柚子湯出て家族の中に戻りけり 藺草慶子
柚子湯出て山姥のごと横坐り 大木あまり
柚子湯出て慈母観音のごとく立つ 上田五千石(1933-97)
柚子湯出て枯山の日に歩きけり 石原舟月
柚子湯出て櫛目の深き妻の髪 岡田 貞峰
柚子湯出て男の顔をとり戻す 石井 稔
柚子湯出て蹠に荒き畳の目 菖蒲あや
柚子湯出ですぐに眠しやネルを着て 岸風三樓
柚子湯沁む無数の傷のあるごとく 岡本眸(1928-)
柚子湯流せば日本に星いつぱい 今瀬剛一
柚子湯淡しまた後れたるひとりにて 小林康治
楽天と悲観の玉の柚子湯かな 篠原和義
武蔵野や柚子湯を貰ふ宵ながら 石川桂郎 含羞
残る日の柚子湯がわけばすぐ失せぬ 水原秋櫻子
母にちかづくことの柚子湯をわかしをり 野澤節子 『駿河蘭』
母在す母と柚子湯をあふれさす 土谷良子
毛穴より疲れ抜けゆく柚子湯かな 森山暁湖
沈めたり浮せたりして柚子湯かな 今橋浩一
父母よ柚子湯の上の燈が暗し 鈴木鷹夫 春の門
独り身の客に柚子湯をすすめけり 白岩 三郎
生き延びて柚子湯を華と溢れしむ 菱田好穂
生まれ出るごとくに柚子湯上がりけり 高橋悦男
生涯の女書生や柚子湯して 黒田杏子 一木一草
痩せこけて肩の骨立つ柚子湯哉 瀧井孝作
白々と女沈める柚子湯かな 日野草城
窓すこし開けて柚子湯の湯気逃がす 片山由美子 天弓
胸の灯を点す柚子湯となりしかな 小林康治 『存念』
足るを知る身のしあはせの柚子湯かな 石井紅洋
躬ひとつを入れて柚子湯を溢れしむ 平間真木子
追はれゐるいのちたゆたふ柚子湯かな 文挟夫佐恵
退院の夫の湯浴める柚子湯かな 角 裕子
遅き子に柚子湯の柚子を一つ足す 船坂ちか子
金星と月を左右に柚子湯かな 橋本薫
金溜まることに縁なき柚子湯かな 鈴木真砂女 夕螢
雨やがて霧となりたる柚子湯かな 鈴木しげを
雨音やひとりの柚子湯愉しめば 安田 晃子
頑丈に生んでくれたる柚子湯かな 仁尾正文
香の深き柚子湯や年のけぢめとす 加藤知世子 花 季
魚のごとく啼きぬ柚子湯の柚子押せば 岡崎光魚
さめかゝる肌に柚湯の匂ひけり 龍胆 長谷川かな女
ゆげあげて尼の出てきし柚湯かな 橋本鶏二 年輪
今日はしも柚湯なりける旅の宿 高浜虚子
傘さして杣帰りゆく柚湯かな 宮武寒々 朱卓
吾子ひしと抱きて柚湯にひたりけり 高橋淡路女 梶の葉
客僧の柚湯こよなくよろこばれ 青野洸女
柚湯たて家族すくなくなりにけり 上井みどり
柚湯とて母がもどれば妻がゆく 田村了咲
柚湯出て心やわらぐ女かな 上田千穂子
柚湯出て枯山の日に歩きけり 石原舟月 山鵲
柚湯出て童女ねむれる頬赤し 水原秋桜子
柚湯出て髪やはらかく爪堅し 相馬遷子 山河
燠赤し柚湯に仕へ終るまで 百合山羽公 寒雁
痩身の骨ひりひりと柚湯かな 岩垣子鹿
長病みの母抱き浸る柚湯かな 羽生敏子
去来する母の俤長柚風呂 村野離翔
あそび女の柚子風呂に音立てずゐる 鷲谷七菜子
まひるまの柚子風呂たててくれにけり ふけとしこ 鎌の刃
庭掃除すませ今宵は柚子風呂に 大原雅尾
柚子風呂にひたす五体の蝶番 川崎展宏(1927-)
柚子風呂に一生を経しごとくあり 蒔田光耕
柚子風呂に九々の調子のよかりけり 多田みちよ
柚子風呂に吾が胸いだく愛すごと 菖蒲あや 路 地
柚子風呂に妻をりて音小止みなし 飴山實 少長集
柚子風呂に己れねぎらふ誕生日 大塚とめ子
柚子風呂に浸す五体の蝶番 川崎展宏
柚子風呂に聖痕のなき胸ひたす 有馬朗人(1930-)
柚子風呂に離れ住む子を思ひけり 藤原照子
柚子風呂のあとみごもりの深睡り 仙田洋子 雲は王冠
柚子風呂の柚子が赤子に蹴られけり 神原栄二
柚子風呂の柚子の浮力を楽しめり 馬場菊子
柚子風呂の重たき柚子となり泛ぶ 田中一荷水
柚子風呂や主婦業五十年とはをかし 吾妻ふみ
柚子風呂や寄り来る柚子を突き返し 岩田由美 夏安
柚子風呂を母在りし日のごと沸す 栗原米作
風強き夜なり柚子風呂熱くして 菅間幸子
●湯滝
ステテコや湯滝に通ふ爺仲間 遠藤梧逸
夜鷹鳴き湯滝湯舟に溢れけり 石原栄子
寒椿湯滝真滝の相しぶき 西本一都 景色
新蕎麦を待ちて湯瀧にうたれをり 水原秋櫻子
湯滝代りて土用湯治に婆多し 石川桂郎 高蘆
瞑れとわが前を湯滝なだれ落つ 林翔 和紙
肩をうつ湯滝のしぶき合歓の花 坪根里杏
花しらたま湯滝のあとのけだるさに 石川桂郎 高蘆
見はるかす花野の果ての湯滝かな 比叡 野村泊月
豁然と湯滝の空も四月かな 石田あき子
鬼灯を鳴らせば湯滝迫り来る 田中水桜
●湯疲れ
ななかまど燃えて湯疲れ何のその 高澤良一 寒暑
湯田中に湯疲れしたり旧端午 伊藤敬子
湯疲れうどん涼む売笑の柳腰よ 香西照雄 素心
湯疲れがこんなところで蓼の道 高澤良一 寒暑
湯疲れに生姜酒して湯治かな 溝口直
湯疲れのごと花満つる中にをり 橋本榮治 逆旅
湯疲れのそこはか溜る新樹雨 高澤良一 素抱
湯疲れの睡き耳うつ岩燕 松村蒼石 雪
湯疲れや長き夜に倦み生あくび 高澤良一 寒暑
湯疲れを湯で宥めゐて残る月 鳥居美智子
湯豆腐の湯疲れをして残りけり 西川文子
花疲れ湯疲れの身を船室に 高頭芳櫻子
●湯壺
ひぐらしや高嶺落ちこむ青湯壺 秋元不死男
ふつふつと地獄の湯壺注連飾る 渡辺流萍
ほとゝぎす湯壷へ誘ふ置ランプ 東連翹
人去て鹿鳴く山の湯壺哉 鹿 正岡子規
墨師らに小湯壺三つ露の土間 飴山實 少長集
小夜しぐれ湯壺の人の眼ひらかぬ 林原耒井 蜩
屏風岩刳りたる湯壺雪囲ふ 中戸川朝人 星辰
山中に師と花冷の湯壺かな 近藤一鴻
引き潮に現るる湯壷や花さびた 渡会昌広(鯱)
引潮に現るる湯壺や花さびた 渡会 昌広
月の湯壺ひざまづき脱ぐ杣の地下足袋 中島斌男
枯木見つつ湯壺へ骨皮筋右衛門 高澤良一 鳩信
樺の芽の赤らみはじむ湯壺の上 高澤良一 宿好
櫨紅葉十(とを)を数えて湯壺出づ 高澤良一 寒暑
泳ぎつつ湯壺を更ふる葛の花 岡田 貞峰
湯壷から首だけ出せば野菊哉 夏目漱石 大正元年
湯壷より高く春水躍りつゝ 山口青邨
湯壷出て山の銀河にまみれたり 中島斌雄
湯壺からは二階三階四階の此の部屋のほととぎす(那須温泉) 荻原井泉水
湯壺から首丈出せば野菊かな 夏目漱石
湯壺へ颯と紅葉颪といふべかり 高澤良一 寒暑
湯壺出て山の銀河にまみれたり 中島斌男
熊笹や湯壷に落つる斑れ雪 桂 信子
熊野びと古りし湯壷に菜を洗ふ 田守としを
由布岳の初かな~を湯壷まで 飴山實 『次の花』
痛快に黄葉降れるや湯壺の上 高澤良一 寒暑
秋ふかむ岩の節理の湯壺まで 中戸川朝人 星辰
秋興の湯壺に適ふ人の数 高澤良一 素抱
蝉聞いてあちらこちらの湯壺かな 高澤良一 素抱
裏白を切りて湯壺にしづもりぬ 野中 亮介
郭公や山の湯壺に山の神 福田和子(梛)
雪代や川原の湯壷越え奔る 和田祥子
青年が湯壺へどんと初湯波 高澤良一 寒暑
●湯湯治
●湯殿
いづくにも水音のあり湯殿行 下鉢清子「みちのく」
ばつた跳ぶ一乗谷の湯殿跡 根生 静
三鬼亡し湯殿寒くて湯は煮えて 鈴木六林男 桜島
丑年の湯殿の山を恵方とす 工藤竹治
中庭に湯殿つくるや冬籠 会津八一
人声に山もゆするや湯殿行 武純「桜川」
六月や湯殿に木賊活けて木曾 山田千秋「髪の音」
其のかげん産湯の後よ初湯殿 元夢
冬帝は先づ暗がりの湯殿に来 加藤鼓堂
初湯殿ふぐりすうすうしたりけり 高澤良一 寒暑
初湯殿卒寿のふぐり伸ばしけり 阿波野青畝(1899-1992)
初湯殿師父の腕を支へけり 小路紫峡
初湯殿母をまるまる洗ひけり 大石悦子 百花
初湯殿骨を奇麗にしておかむ 北 四季
北国の湯の華匂ふ初湯殿 菱野美月
十五夜のさやけさのわが湯殿まで 田阪千恵子
夏鰊裂かれて湯殿賑ひぬ 攝津幸彦 未刊句集
大窓に雪のあかるき湯殿かな 浪化
寒の水あぶる湯殿の行者かな 季吟
山彦や湯殿を拝む人の声 桃隣「陸奥鵆」
帰省子の湯殿にて足洗ふ音 辻田克巳
干柿や湯殿のうしろ納屋の前 正岡子規
御湯殿に菖蒲投げこむ雑仕哉 菖蒲湯 正岡子規
御湯殿の窓から覗く葵哉 花葵 正岡子規
春の雷湯殿に帯を解きをれば 鈴木真砂女 生簀籠
時国家湯殿にとほる蝉のこゑ 高澤良一 ぱらりとせ
朧夜や湯殿の窓の磨硝子 寺田寅彦
梅雨晴の髯剃る湯殿鏡かな 河野静雲 閻魔
湯をすてゝ湯殿淋しや鳴く蚯蚓 青谷
湯殿には椎茸づくり冬ごもり 爽雨
湯殿にも春夜の仏寺泊り 皆吉爽雨
湯殿まで階下りつづけ木の芽宿 平井さち子 紅き栞
湯殿より人死にながら山を見る 吉岡實
湯殿出る若葉の上の月夜かな 李千 古句を観る(柴田宵曲)
湯殿垢離やさながら夏をわすれ水 保弼「桜川」
湯殿垢離猩々袴まだ短か 鳥越すみこ
湯殿始めまことに日々にあらまほし 季吟
湯殿崇しいのちの種のごと噴湯 小松崎爽青
湯遊の湯殿にこもる春の音 森田真臣
滴りや湯殿の山の茂吉歌碑 皆川盤水「高幡」
炭出すや寒うち焚かぬ湯殿より 阿部みどり女 笹鳴
玉のごとき稚を浮かせて初湯殿 茨木和生
短日の足袋を湯殿に脱ぎにけり 汀女せん 吉屋信子
祓はれて下る湯殿路蛇現るる 阿部悦子
稲刈つてをり義朝の湯殿跡 森 靖子
節分会湯殿へ走る僧と鬼 中條今日子
脱ぎかへて去年を今年や初湯殿 百中
若竹や湯殿に水をそゝぐ音 上村占魚 鮎
蜘の子の昼をさがれる湯殿かな 上村占魚 鮎
蜘蛛の囲の湯殿や小栗判官の 佐々木六戈 百韻反故 初學
蜩や湯殿の外は杉木立 松下紫人
行く春の空に煙吐く湯殿哉 会津八一
語られぬ湯殿にぬらす袂かな 芭蕉「奥の細道」
雉子の尾に狭ばき師走の湯殿かな 塵生 俳諧撰集「有磯海」
鬼やらひ湯殿の鬼が揺れ動く 久保田月鈴子
鶯の湯殿のぞくや春の雨 正岡子規
鷦鷯つつく湯殿の垂氷かな 梧朝 俳諧撰集「藤の実」
●湯殿神
●湯の香
たゞ一戸湯やど湯の香に枯れいそぐ 及川貞 榧の實
どこゆくも湯の香にほへり秋の風 上村占魚 球磨
よき眠り給へ柚子湯の香を夜具に 杉本寛
りんどうや湯の香こもれる瀬をわたる 及川貞 夕焼
初夢に髪膚の湯の香つづかしむ 正江
勉強のわが少年に柚子湯の香 細川加賀
吾子が香の湯の香かすめぬ秋風裡 石川桂郎 含羞
子が蹠膝にふわりと柚子湯の香 林原耒井 蜩
捨て湯の香明日晴れ寒さ極まらむ 登四郎
擦れ違ふ少女に湯の香蛍狩 小林勇二
望高しふと谷よりの湯の香なる 及川貞 榧の實
桜湯の香を放ちつつほどけゆく 河本遊子
母許の思ひ湯の香も紅梅も 桑田青虎
湯の赤子出すごと温室の花抱く 大熊輝一 土の香
湯の香濃しや散いそぐ霧のななかまど 及川貞 夕焼
焼芋と白湯の香に立つ波郷亡し 原裕 葦牙
熊笹月夜湯の香よぎりて渓の湯ヘ 岡田日郎
生きて此処に湯の香いたゞく夜寒かな 中川宋淵 詩龕
白湯の香や冬の弱日を力とし 大石悦子 百花
菖蒲湯の香に染みし手の廚ごと 及川貞
菖蒲湯の香の染みし手の厨ごと 及川貞 夕焼
霧を来て湯の香に寝ねて夜半も霧 及川貞 夕焼
鶏頭は素枯れそめたる湯の香かな 八木林之介 青霞集
●湯の神
ほとりあふ湯の神湯元冬もみぢ 皆吉爽雨 泉声
湯の神に足裏をひたし夏の旅 原裕 新治
湯の神の崖に日当る烏瓜 三木照恵
湯の神の顔さがしをる大紅葉 宇佐美魚目
湯の神をまつる高嶺の花辛夷 塩田龍瑛
●湯の町
声高に湯の町をゆく褞袍かな 渋沢渋亭
大綿や湯の町に建つ芝居小屋 矢崎てる女
妻と行きて毛野の湯の町雪ぞ降る 石塚友二 光塵
寒柝や地蔵の多き湯の町に 鍵和田[ゆう]子 浮標
新涼の湯の町坂の句碑訪ね 三澤菊恵
早乙女が通り湯の町まだ覚めず 進藤芽風
水の町湯の町湯沢夏の霧 横田昌子
湯の町にお多福多し蜜柑咲く 富川三枝子
湯の町にもう早梅の匂ひあり 星野椿
湯の町にゆくりなかりし千鳥かな 軽部烏帽子 [しどみ]の花
湯の町に春呼ぶ雨の降る日かな 大隈草生
湯の町のあんまの小庭糸瓜苗 石田踏青
湯の町のけだるさ残り朝紅葉 今田述
湯の町のこの朝にきて菖蒲売 澄雄
湯の町のだらだら坂の柿落葉 高木晴子 晴居
湯の町のにぎはひと別御開帳 加藤三七子
湯の町のはづれ湯が落つ葛の雨 岡田日郎
湯の町の坂落ち合へり夜の秋 冨田みのる
湯の町の夜空にしるく雪の由布 兼田雅文
湯の町の小学校や冬休 高田風人子
湯の町の明けて三日の川床鳴る 高澤良一 寒暑
湯の町の春の宵とは殊の外 星野椿
湯の町の橋ばかりなる蜻蛉かな(銀山温泉) 細川加賀 『玉虫』
湯の町の番傘にきく霙かな 鈴木興治
湯の町の裏山に会ふ年木樵 茂里正治
湯の町の裏川大根洗ひをり 森田公司
湯の町の辻に猫ゐる良夜かな 山本洋子
湯の町の飽かなき月に女郎蜘蛛 高澤良一 寒暑
湯の町は人待ち顔の寒暮なる 大高芭瑠子
湯の町は端より暮るる鳳仙花 川崎展宏
湯の町へ練り出す菖蒲神輿かな 前田時余
湯の町や冬雨あがる宵の靄 西島麦南 人音
湯の町を同じ丹前かたまり来 中林勉
百日紅散る湯の町の薬師堂 増田善昭
笹鳴や熱海湯の町坂の町 高瀬竟二
●湯華 湯花
いたましく日焼けし貌の湯華掻 瀧春一 菜園
三伏や湯花太りに湯場の樋 中島畦雨
元日の湯花透く日のあら尊(たふと) 高澤良一 寒暑
冬麗の影重ね合ふ湯華小屋 古賀まり子
噴煙のなぐれを浴びつ湯華掻 瀧春一 菜園
川床に湯花川原にすすき咲く 高澤良一 随笑
斑猫やほとり蔭なく湯華掻 山野邊としを
朝湯して湯花は霧の淡さなる 高澤良一 素抱
橇立てて月の出おそき湯華小屋 渡辺 立男
湯畑は湯花掻きごろ吹雪止む 古賀まり子
湯花小舎重なる上の春の山 小池森閑
湯華小屋かしぐ廂も菖蒲葺く 山野邊としを
湯華掻く執心岩の鳴りやまず 瀧春一 菜園
由布岳に秋の虹たつ湯花掻 木村敏子
目くるめく熔岩のひかりに湯華掻 瀧春一 菜園
秋風や土間も地熱の湯華小屋 斎藤朗笛
老に添ひ童も倦まず湯華掻 瀧春一 菜園
金色に湯花かがやく出湯の秋(草津温泉大阪屋旅館泊) 上村占魚 『球磨』
雪中や湯華ひらひら湯が湧けり 野澤節子 黄 炎
霧ながれ湯花の池に湯のひびき 瀧春一 菜園
●湯華小屋
冬麗の影重ね合ふ湯華小屋 古賀まり子
橇立てて月の出おそき湯華小屋 渡辺 立男
湯華小屋かしぐ廂も菖蒲葺く 山野邊としを
秋風や土間も地熱の湯華小屋 斎藤朗笛
●湯番
●湯舟 湯槽
くり抜いて石の湯舟や花楓 長谷川櫂 虚空
ひとの香のたゆたふ湯船雪もよひ 谷口桂子
ほうと息大きくついて初湯舟 高澤良一 寒暑
乾反葉の洗ひあげたる湯舟にも 川崎展宏
初湯舟五體の透けて桧いろ 高澤良一 寒暑
初湯舟湯口近くに身を沈め 高澤良一 寒暑
夜の秋湯舟にのこるひとりかな 桂信子 樹影
夜鷹鳴き湯滝湯舟に溢れけり 石原栄子
夢夢(ぼうぼう)と湯舟も北へ行く舟か 折笠美秋 虎嘯記
川口や湯舟を出れば夏の月 子規句集 虚子・碧梧桐選
広東語らしや湯舟に望の月 田中櫻子
柚子一つ遺し淋しくなる湯舟 松浦敬親
柿若葉湯舟のかわく朝のうち 長谷川櫂 古志
梅雨入の湯舟にでんでんむしの唄 高澤良一 随笑
檜玉湯船に浮かし暑気払ひ 佐藤良子
湯舟にて溺れし泪はるのくれ 中尾寿美子
湯舟まで付いて来たるや草虱 前田八重子
湯船にも落葉吹き込み山の国 草間時彦 櫻山
湯船黄に淀むよ蛇ののろい湧く 八木三日女 赤い地図
濃紅葉や湯舟に女身透きとほる 板谷芳浄
火取虫湯舟の底の青きこと 如月真菜
灯のさして菖蒲かたよる湯舟かな 内藤鳴雪
狸罠仕掛けし山を湯船より 大野朱香
玻璃に緑陽がしたたらし湯舟干す 宮坂静生 青胡桃
生きたまゝ湯舟に浸る熊野かな 攝津幸彦 鹿々集
短夜の浴衣みじかく湯舟まで 永井龍男
石棺は湯舟のふかさ夕桜 鍵和田釉子
稲妻や湯船に人は玉の如 寺田寅彦
稲妻や谷の深きに湯船の灯 寺田寅彦
立冬の湯船にまるき膝小僧 江川博子
竜田姫湯船溢れてしまひけり きたかさね
結願の遍路と共の湯舟かな 早川典江
能無しよ寒夜の湯舟溢れしめ 鍵和田[ゆう]子 未来図
良寛忌湯舟で歌ふわらべ唄 宮島糸子
華清池の貴妃の湯舟に枯葉舞ふ 大澤聞多
霧の夜の湯舟に神と二人きり 今瀬剛一
かまど馬ひとりに広き湯槽かな 村山砂田男
たゞよへる菖蒲にひろき湯槽かな 比叡 野村泊月
ばんどりの鳴きさうな夜の湯槽かな 石田郷子
ダム鳴る冬湯槽が深く友の家に 寺田京子 日の鷹
冬の夜の湯槽の底を踏まへゐる 日野草城
夕焼のはての戦火湯槽に砂たまり 友岡子郷 遠方
夜の湯槽に裾野を恋ふる霧時雨 宮武寒々 朱卓
寒村の湯槽大の男も泳ぐべく 幸田露伴 竹芝集
底浅き湯槽に浸りゐて初湯 内田安茂
後の月湯槽に倚れる人形師 宮武寒々 朱卓
攝待の湯槽を覗く若葉かな 幸田露伴 拾遺
早稲の風病馬の湯槽いとあさし 有働亨 汐路
汗の身を湯槽にナイル王のごとし 手塚七木
湯槽から四方を見るや稲の花 夏目漱石 明治三十二年
潅仏や三ケ月なりの御湯槽 河野静雲 閻魔
痩身を湯槽に沈め草城忌 冨田みのる
秋昼の轣轆を聴く古湯槽 宮武寒々 朱卓
藤と藤のうつる水は湯槽のまえ(岳温泉) 荻原井泉水
賀状完配ふぐりある者湯槽に耀りあふ 磯貝碧蹄館 握手
踊り子の肉塊を待つ湯槽かな 宮武寒々 朱卓
風花や湯槽あまたに人ひとり 水原秋桜子
●湯元
きつつきや湯元の幣の鬼門神 桂樟蹊子
この谷に古りし湯元の遅桜 大峯あきら 宇宙塵
ほとりあふ湯の神湯元冬もみぢ 皆吉爽雨 泉声
七栗の湯元を訪へば初音かな 高村俊子
柳青む湯元へ近き土産茶屋 桝田国市
湯元の辺穂の真っ黒な猫じゃらし 高澤良一 素抱
熊ノ湯の湯元ここなり蕗の中 高澤良一 燕音
草花の一筋道や湯元迄 草の花 正岡子規
●湯揉み
うそ寒の湯揉み赤帯赤湯文字 高澤良一 随笑
時鳥鳴くや湯揉みのかしがまし 野村喜舟 小石川
浴衣着て妻も飛び入り湯揉みショウ 高澤良一 随笑
霜解けの坂を湯揉みに老下る 上村占魚 球磨
●湯揉み板
冷まじや男踏まへに湯揉み板 西本一都 景色
おぼろ夜の立てて眠らす湯揉み板 黄川田美千穂
●湯揉み唄
四日より山にひゞけや湯揉唄 石田波郷
水無月や絣乙女の湯揉唄 関まさを(酸 漿)
湯揉み唄夜寒のこゑのそろひたる 瀧春一 菜園
●湯屋
この足を湯屋までのさん月も雪 辰下 俳諧撰集玉藻集
ゆきずりの湯屋の秋裸婦の背筋見ゆ 下村槐太 天涯
七五三の晴着の値段湯屋で聞く 館岡沙緻
七夕や昼あをあをと湯屋の澄み 秋元不死男
三鬼忌の湯屋はいつより閉ざされし 伊丹裕子
下履きをバタンと冬至の湯屋を出づ 高澤良一 随笑
亀戸の湯屋のけむりや初天神 加藤松薫
修二月会生身の僧の湯屋にあり 諸角せつ子
元日の湯屋にあかるき首浮かぶ 高橋静葩
冬の浪飛びつ湯屋まだ開かぬ正午 宮津昭彦
別霜湯屋のこぼれ灯坂下に 『定本石橋秀野句文集』
剽盗に逢ひて湯屋出づ秋の暮 石塚友二 方寸虚実
四ツ木立石葭切が鳴き湯屋があり 宮津昭彦
夕月に湯屋開くなり近松忌 石田波郷
夜間飛行機子と七月の湯屋を出て 磯貝碧蹄館 握手
大釜を雪に舁ききぬ湯屋童子 有森 一雄
孕鹿きてをる湯屋のほとりかな 岩崎照子
川霧わく湯屋そこばかり鴉立つ 赤尾兜子
帰る雁湯屋あくころの路地の空 矢島房利
底冷の浅間の裾の湯屋ひらく 矢島渚男 船のやうに
撥釣瓶修二会気負へる湯屋童子 桂 樟蹊子
新涼や湯屋の天窓みな開く 杉林明子
春場所の呼び出し聞こゆ湯屋を出る 緒方 敬
東大寺湯屋の空ゆく落花かな 魚目
桃の日の藍に替りし湯屋のれん 加古宗也
桜満開湯屋の鏡に骨透く胸 大井雅人 龍岡村
渓流や湯屋の庇に岩燕 西村和江
湯屋いづるとき傘のみぞれかな 飯田蛇笏 山廬集
湯屋のある入江の町の残暑かな 高橋睦郎 荒童鈔
湯屋の前月濃くて冬去りにけり 大野林火
湯屋の湯にまだ一月とおもいけり 宇多喜代子 象
湯屋の燈の細りて狐啼く夜かな 田川江道
湯屋まではぬれて行きけり春の雪 来山
湯屋出づるとき傘のみぞれかな 飯田蛇笏 霊芝
湯屋暖簾分け出て真夜は雪女郎 倉田俊三
湯屋暮春眼玉を洗ふ盲かな 宮武寒々 朱卓
湯屋消えし松の湯通り春の月 佐藤允子
煙太し冬も湯屋番若からむ 磯貝碧蹄館 握手
町内に湯屋が健在冬の月 高澤良一 寒暑
石蕗卑し湯屋の煙の一すぢに 沢木欣一
硫黄噴く湯屋へ飛び立つ岩燕 飯田久子
羽抜鳥逐ふとなく湯屋へ行きにけり 中島月笠 月笠句集
萩芒活けて湯屋の隠し部屋 吉岡鳴石
薔薇並ぶうしろの湯屋の暖簾哉 増田龍雨 龍雨句集
青月夜むかし父との湯屋帰り 斎藤由美
鶏の寝際湯屋の煙より新月出づ 磯貝碧蹄館 握手
麦稈帽湯屋まで遠き谷下る 清水基吉 寒蕭々
●湯痩せ
●湯宿
たゞ一戸湯宿湯の香に枯れいそぐ 及川貞 夕焼
はらからと久の湯宿の麦とろろ 市村千代美
ほととぎす湯宿は朝の火を配り 村田脩
ピアノの音湯宿の萩も刈られたり 桜井博道 海上
三ケ日伊豆の湯宿に干物噛み 今泉貞鳳
人気なき湯宿の蚊遣灰白し 高澤良一 素抱
古き湯宿ががんぼの発つ脱衣籠 高澤良一 ぱらりとせ
夜を籠めて湯宿の前山もみづらん 高澤良一 寒暑
大内雛湯宿の棚の暗がりに 横山房子
旅師走湯宿は峡のどんづまり 原 松子
時雨来て山の湯宿の早や灯る 新井セツ
水仙を活けて湯宿の木の厠 辻田克巳
湯宿の子客に祝はれ七五三 斎藤朗笛
湯宿ひま仏法僧の鳴く頃は 荒川あつし
湯宿みな夕影ひきぬ河鹿鳴く 高浜虚子
湯宿皆夕影ひきぬ河鹿鳴く 高浜虚子
燕の糞掃きて湯宿の番頭さん 高澤良一 随笑
狸の親仔が来て湯宿の一夜 本橋歌子
秋もやゝ深き湯宿の吊りランプ 林原耒井 蜩
秋涼し橋おのおのに湯宿持ち 河野南畦
箒川べりの湯宿の初灯 高澤良一 寒暑
菜の花に霜くすべ焚く湯宿かな 萩原麦草 麦嵐
蜜樹山つづきし湯宿伊豆の果 和田暖泡
蟷螂の膳に罷りし湯宿かな 伊藤うらら
谷底の湯宿灯しぬほととぎす 田中冬二 行人
霧に明けて軽うも軌る湯宿の戸 久米正雄 返り花
鴨啼くや湯宿の縁の夕じめり 井本農一
●浴室
七堂の浴室暗し杉の月 野村喜舟 小石川
兵泊めて海荘の浴室霧罩むる 宮武寒々 朱卓
崖の浴室夜はあらはに雪解川 宮武寒々 朱卓
梅雨の湖航く船中の浴室ともる 宮武寒々 朱卓
浴室にゴシック体の蜘蛛走る 山内嵩弘
浴室にレモンの輪切り春隣 宮坂静生 雹
浴室に人の影さすシクラメン 横山白虹
浴室に種火むらさき春霙 山下知津子
浴室の粗塩女臭渦巻く 神山姫余
浴室の西日さしこむ明り窓 中屋敷久米吉
浴室を国宝とせる寺の冬 富安風生
浴室を密室にして牡丹雪 野澤節子 『駿河蘭』
浴室を朝明け放ち今年竹 野澤節子 遠い橋
鏡のなかも梅雨の大雨浴室にいまだ産むべく身体ともれり 米川千嘉子
●霊泉
千両を供へ霊泉祀らるる 清崎敏郎
霊泉に散る風花のうすみどり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
霊泉の味の濃かりし照紅葉 安藤 節
霊泉の道しるべあり秋の旅 八木三日女 紅 茸
霊泉を知る人もなし棕梠の花 雉子郎句集 石島雉子郎
●露天風呂
どんぐりの落ちて来さうな露天風呂 滝 佳枚
ヴィーナスに蜻蛉止まる露天風呂 村井信子
久女忌の雪胸もとに露天風呂 後藤杜見子
五月富士眺めつつ入る露天風呂 梅田男
信濃路の秋の湯田中露天風呂 木槫栄子
冴返る名も白骨の露天風呂 大立しづ
初冬の袖垣青き露天風呂 越智協子
初雪や傷をかばひし露天風呂 脇坂啓子
名月の供へ物置く露天風呂 長崎小夜子
団栗の一つ落ちくる露天風呂 中条久三夫
団栗の酔つぱらつてる露天風呂 乾 周子
大瑠璃の声ひとりじめ露天風呂 山田一恵
打擲しあう星ら二月の露天風呂 河合凱夫 飛礫
早春の雑木林の露天風呂 山口梅太郎
櫟の実足裏に触れて露天風呂 宮田俊子
特等席は春暁仰ぐ露天風呂 山田をがたま
狐鳴きとろりと眠し露天風呂 今泉浩一
紫陽花のこぼるるほどに露天風呂 幡野千恵子
紫陽花の少し横向く露天風呂 長尾則夫
老鶯も来て鳴く朝の露天風呂 山王堂正峰
肩を打つ作り滝あり露天風呂 前田桃邨
色鳥や女ばかりの露天風呂 小俣由とり
葭簀屋根して日をこぼす露天風呂 松沢佐多子
赤蜻蛉翔び交ふ山の露天風呂 土屋保夫
露天風呂しづかに湛へ草穂に出づ 林原耒井 蜩
露天風呂にて童等の平泳ぎ 品川鈴子
露天風呂に男の目鼻青あらし 桂信子 花寂び 以後
露天風呂首の高さに野紺菊 毛塚静枝
鮎釣りの人声近く露天風呂 伊阪美祢子
●露天湯
きりぎりす灯を取り損ね露天湯に 高澤良一 素抱
すすき見て露天湯に汗流されよ 高澤良一 寒暑
ひょこひょこと枯るる中来て露天湯に 高澤良一 鳩信
むささびや露天湯更けて湯気もなし 井沢正江
勇鼓して風花舞へる露天湯に 玉井喜三郎
大磐が目隠し露天湯ヤチダモ散る 高澤良一 素抱
寒昴こぼるゝ阿蘇の露天湯に 久恒大輔
山茱萸越しに露天湯の見ゆる部屋 能村登四郎
年の瀬は露天湯なんぞ願はくば 高澤良一 随笑
朝すでに露天湯にこゑ稲熟るる 井沢正江
湯気もなく谷の露天湯秋晴るる 亀井糸游
秋気澄む露天湯五体浮きたがる 三井静女
肌脱ぎに露天湯通ひ湯治婆 清水寥人
部屋で聞き露天湯で聞く河鹿かな 大久保白村
露天湯にくらき灯の入る青葉木菟 大和田知恵子
露天湯に星の近づく河鹿笛 岩谷天津子
露天湯に浸りて仰ぐ赤蜻蛉 菊池栄子
露天湯に花を映して岩煙草 浜田坡牛
露天湯に赤子の鼓動雲の峰 飯田龍太 遅速
露天湯に雪踏の径つづきけり 天野和風
露天湯に霊芝(れいし)のごとき老いの尻 高澤良一 随笑
露天湯のひとりに灯す誘蛾燈 つじ加代子
露天湯の上をくる蜻蛉にでっくわす 高澤良一 寒暑
露天湯の余り湯水草もみずりて 高澤良一 随笑
露天湯の夜雨も梅雨の走りかな 石川桂郎 高蘆
露天湯の女は昼の海女なりし 上木彙葉
露天湯の岩の向ふの大嚏 笠原祐子
露天湯の桶に花びら掬ひけり 村井みち子
露天湯の湯口の硫黄霧呼べり 高澤良一 素抱
露天湯の紅葉に染まり更年期 鈴木照子
露天湯の脱衣所に置く春火桶 本井 英
露天湯は乙女らが占め朧なり 堀口星眠
露天湯へどぼんと入らねばこごえちまふ 高澤良一 寒暑
露天湯へ山よりの使者青鵐来る 新田いく子
露天湯へ篁撓む女正月 徳永野歩女


以上

by 575fudemakase | 2022-05-22 14:59 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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