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山2  の俳句

山2  の俳句
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●山上
まいりては実や山上の物がたり 井原西鶴
万愚節山上に在り航を待つ 中島斌雄
初暦山上のイエス天を指す 秋山育子
初栗に山上の香もすこしほど 飯田蛇笏
千振採山上に小雨降つてきし 藤波銀影
姨捨山上台風を見送りぬ 原田喬
山に死し山上の墓地十三夜 杉山榮一
山上げにかかりいよいよ荒梵天 太田土男
山上にけむりを立てて焚火かな 太田鴻村 穂国
山上に人の灯を生む十二月 原裕 青垣
山上に人現れつ春の蝉 臼田亞浪 定本亜浪句集
山上に強き燈洩らす夏館 桂信子
山上に御師の町あり月照らす 岡田日郎
山上に拡げし地図に小鳥来る 中川忠治
山上に杉生は重し星祭 斎藤玄 雁道
山上に水を惜しまず墓洗ふ 鷹羽狩行
山上に淡海ふたつ更衣 宮坂静生 春の鹿
山上に臥れば巨人になった様 仁平勝 東京物語
山上に言葉四・五人は揚羽なり 稲山佳子
山上に鍵使ひをり春の寺 綾部仁喜 寒木
山上に雲をさまりぬ閑古鳥 龍胆 長谷川かな女
山上に雲突き上げてケルン立つ 寺岡捷子
山上のあたらしき町白魚売 中拓夫
山上のいっぽんの木に朝日さし夕照りいつもいっぽんの木 松本千代二
山上のことに晴れたる濃竜胆 池上浩山人
山上のパイプオルガン花あしび 八木蘭
山上の仮の弓場も義士祭 吉武月二郎句集
山上の坊に憩へば避暑心地 山田弘子 初期作品
山上の垂訓よむや秋の山 松瀬青々
山上の城真向ひに種選 村岡 悠
山上の妻白泡の貨物船 金子兜太 金子兜太句集
山上の月に憧れ初ぼたる 関森勝夫
山上の湖に馬冷やしたる 小林洸人
山上の祠のあたり火串かな 安藤橡面坊
山上の秋は俄かと思ひけり 千原草之
山上の秋草に身や天は男 文挟夫佐恵 黄 瀬
山上の空気に冷えしビール飲む 右城暮石
山上の茶屋に鮓ありそれを喰ひぬ 鮓 正岡子規
山上の雪をまぶしむ蕉蒸 原裕 『新治』
山上の霧に夜明けて黄なる糞 右城暮石 声と声
山上は無垢の青空斧仕舞 古賀まり子
山上は真冬の小鳥うららに人に鳴き寄る 人間を彫る 大橋裸木
山上へせり上がりたる桜かな 棚山波朗
山上へ闇を縫ひくる白切子 つじ加代子
山上や胡椒少々と高橋君 中北綾子
山上憶良ぞ棲みし蓬萠ゆ 竹下しづの女句文集 昭和十二年
山上憶良の知らぬオクラ咲く 矢島渚男 延年
山上憶良を鹿の顔に見き 後藤夜半
心臓面白うて止まらぬ山上の痩蛙 永田耕衣 悪霊
松明の山上り行くもみち哉 紅葉 正岡子規
氷掻く音し山上澄めるかな 茨木和生 木の國
泣きべたや山上に行くかたつむり 増田まさみ
海に原潜山上によきおみなえし 阪口涯子
父を焼く山上焼酎ほど澄んで 西川徹郎 瞳孔祭
登り来し山上どれが最高峰 右城暮石 上下
目つむりて邯鄲の聲引きよせし(武州御嶽山上) 上村占魚 『萩山』
秋風や三田山上に春夫詩像 宮脇白夜
竜胆を山上に売り駅にも売る 横山白虹
紅葉山上りの道にある下り 須川洋子
給仕人 ときどき 山上館の全き冬 伊丹公子 陶器の天使
花の山上と下とで見染めけり 野村喜舟 小石川
萬歳や袖広げ山上げて空 八木林之介 青霞集
裏門は山上にあり花林檎 阿部みどり女
雪照りて山上の日はゆらぎをり 渡邊水巴 富士
頼瑜忌や根来山上樟の秋 門屋大樹
飛行船山上にあり竹の子のせる 阿部完市 春日朝歌
●山上湖
初郭公水位の満ちし山上湖 葉良一彦
四方の深雪に山上湖温みそむ 松村蒼石 雁
夜鷹啼きたそがれ永き山上湖 太田嗟「夜庭」
山上湖とゞろ波立ち日の寒き 石塚友二 方寸虚実
山上湖へ道ひと筋や霾れり 脇坂啓子
山上湖一枝映し紅葉かな 東洋城千句
山上湖氷らんとして波さわぐ 篠田悌二郎
擬宝珠咲きのぼる晴夜の山上湖 福田甲子雄
暮れぎはの紅葉を讃へ山上湖 青柳志解樹
秋冷や瑠璃色尽す山上湖 宮田俊子
秋天へ紺を投げたる山上湖 伊代次
秋天を絞り溜めたり山上湖 関成美
菊暮れて月の染めゆく山上湖 橋本榮治 麦生
●山地
いく霜の山地日和に咲く茶かな 飯田蛇笏 山廬集
五千尺の山地三尺の柳蘭 瀧井孝作
山地図を展きしままの春炬燵 本郷をさむ
弔砲の谺は冬の山地駆せ 安田北湖
花ひとすじ白神山地越えゆけり 武藤鉦二
蕗の芽や海に墜ち込む紀伊山地 つじ加代子
風吹いて山地のかすむ雲雀かな 飯田蛇笏 霊芝
●山脈
あきかぜの山脈おのが影いだく 楠本憲吉
いく壁の翳りを刻む高空のかの山脈に日照るらむか 若山喜志子
うねうねと山脈低し青嵐 青嵐 正岡子規
もう春の山脈として濡れてゐる 柿本多映
ゆく年の雲山脈と同じ色に 川崎展宏
コスモスに山脈影の世のごとし 齋藤愼爾
スリッパで春の山脈見てゐたる 鈴木鷹夫 春の門
トマト熟れ伊賀の山脈明らかに 大田たけを
仏壇を負う男炎天の山脈見えぬ 和田悟朗
冬柏阿武隈山脈ねむりけり 加藤楸邨
冬波に背けば炎き常陸山脈 富澤赤黄男
凍踏むや旭をまつ山脈のたゝずまひ 金尾梅の門 古志の歌
切(きれ)に包めば山脈となる妹よ 攝津幸彦
切れぬ山脈柿色の柿地に触れて 西東三鬼
初雪や奥羽山脈深々と 吉田狂草
動きてはならぬものすこしうごきたり天山山脈初雪を受く 川野里子
嘶きや日高山脈星走る 一ノ瀬タカ子
夏断ちして山脈闇へ帰りゆく 鈴木慶子(小熊座)
夜の帳り包む山脈蛍とぶ 福本天心
実朝忌伊豆の山脈あらけなく 原裕 青垣
寒ン山脈ほおいほおいと栃木のひぐれ 古川克巳
寒卵割る山脈を近づけて 中村明子
寒波来るや山脈玻璃の如く澄む 内藤吐天
寒満月山脈低み宙に浮く 相馬遷子 雪嶺
尾張野は山脈遠し稲の花 滝 峻石
山脈が尽きて乱れし冬の雁 対馬康子 愛国
山脈に似て遠雲や雛しまふ 籏こと
山脈に何か光りし稲を刈る 百合山羽公 寒雁
山脈に富士のかくるる暮春かな 飯田蛇笏 椿花集
山脈に本気に生きて二輪草 桃木光子
山脈に沿ふ空淡し冬の雁 相馬遷子 雪嶺
山脈に漂着したる哺乳壜 遠藤進夫
山脈に猫入りくるやがて夏服 阿部完市 軽のやまめ
山脈に窪あり秋日包まんと 佐藤鬼房
山脈に耳あり夜の石つぶて 夏石番矢 神々のフーガ
山脈に藍さして夏立ちにけり 相馬遷子 雪嶺
山脈に闇なじみたる薺打 長崎玲子
山脈に雪来し芒ほそりけり 有働亨 汐路
山脈のすそが崩れて金屏風 南村健治
山脈のひと隅あかし蚕のねむり 金子兜太 少年/生長
山脈の一か所蹴つて夏の川 正木ゆう子「静かな水」
山脈の動くのが好きすすき揺れ 瀬戸葉子
山脈の夜影漆黒きりぎりす 内田典子
山脈の奥に富士あり日脚伸ぶ 上田正久日
山脈の果の岬にちちろ鳴く 山口誓子 雪嶽
山脈の濃くさだまりてそばの花 長谷川双魚
山脈の空みどりなす春の月 相馬遷子 山國
山脈の脈より生まれ黒揚羽 高野ムツオ「蟲の王」
山脈の荒々しくも天瓜粉 飯島晴子「朱田」
山脈の襞に聴き澄み埋もれる耳ら 高柳重信
山脈の遠むらさきや葱囲ふ 三橋迪子
山脈は竜の背をなし草刈女 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
山脈へ肩張る軍鶏や七五三 池元道雄
山脈へ野をおらび行く雪解風 相馬遷子 山国
山脈やほたる袋に母と棲む 杉田桂
山脈を手籠めにしたる祖父の日よ 仁平勝 東京物語
師をへだつ山脈かけて銀河濃し 羽部洞然
帰白鳥背な低き山脈負ひて 新谷ひろし
干草をひろげ山脈高くせり 毛塚静枝
平安に山脈麦の穂に隠る 百合山羽公 故園
影ばかり脊梁山脈の獅子舞 金子兜太
抱き果ての/血を/吹きさらす/風山脈 折笠美秋 火傅書
抽出しに少年迷う山脈荒れ 阿部完市 絵本の空
数の子や奥羽山脈光もつ 井上昌文
新松子山脈に雲遼かなり 星野麥丘人
日が/落ちて/山脈といふ/言葉かな 高柳重信
日が落ちて山脈といふ言葉かな 高柳重信
早春の山脈は陽の像して 原裕 青垣
春の夢山脈を曳きずるは雉子 金子皆子
時の日のベルトが むらさきの山脈の 向うへながれる 吉岡禅寺洞
月夜鴉落つる山脈けぶりけり 月笠
木枯や山脈北へ走るのみ 石嶌岳
果無山脈大きねむりを日に曝す 宮津昭彦
柊挿し山脈ひくくなりにけり 山田諒子
梅雨さびの山脈越えて僧の臑 中島斌雄
檀の実割れて山脈光り出す 福田甲子雄
死して/無二の/谺が/のぼる/寝釈迦山脈 高原耕治
毛皮敷くはなれに阿武隈山脈を 阿部みどり女
泥酔われら山脈に似る山脈となれず 高野ムツオ
海へ没する夜の山脈の枯れ烈し 齊藤美規
海底山脈山頂は島冬耕す 吉野義子
源は日高山脈馬冷す 荒舩青嶺(藍)
濃く淡く山脈昏るる栃の花 原 裕
燕去り山脈襞をふかめたる 堀口星眠 火山灰の道
白鳥来佐渡の山脈聳ちて 中嶋秀子
盆地は灯の海山脈は寒茜 福田甲子雄
県境の低き山脈花うつぎ 浦辻美笑
眩暈して吾が山脈のあたらしく 松岡貞子
硯洗ふ天山山脈見ゆるまで 九鬼あきゑ
秋かぜの山脈おのが影いだく 楠本憲吉
秋の暮山脈いづこへか帰る 山口誓子(1901-94)
秋の風夜の山脈のかはりけり 中島月笠 月笠句集
秋冷の八溝山脈茜さす 柴田白葉女 花寂び 以後
秋天とわが山脈を基地が占む 赤城さかえ句集
秋晴るる町角にきて山脈を見し 原田種茅 径
稲光/顔の山脈/瞳の海よ 高原耕治
紙干しに出るたび雪の飛騨山脈 細見綾子 黄 炎
緑噴きあげし山脈妻になれず 寺田京子 日の鷹
縄飛びの宙に山脈吹き晴るる 宮本径考
繭干すや赤石山脈の上の日に 中沢康人
芋茎干す陽の山脈へ群れとぶ鳥 福田甲子雄
葦枯れて山脈キシキシとあとずさる 富澤赤黄男
蛇笏亡き甲斐の山脈寒に入る 澤井我来
蟋蟀や陰山山脈夜目に立つ 加藤秋邨 沙漠の鶴
行き果ての夢山脈よ行き果てず 折笠美秋 君なら蝶に
襞消えて山脈やさし春の暮 相馬遷子 山河
誘蛾燈山脈近くなりにけり 小林康治 四季貧窮
赤石山脈最南端に小豆干す 原田喬
野の吹雪山脈かくしたる抒情 秋澤猛
鉄の門の錆びたれば山脈青かりき 富澤赤黄男
闇抜けて立つ山脈の淑気かな 井上 康明
隼ヨリ額ニ卍ヲ受ケテ褶曲山脈ヲ総ベム 夏石番矢 真空律
雁の列山脈切れし彼方より 永田耕一郎 雪明
雁渡し山脈力集め合ふ 村越化石 山國抄
雁渡る山脈は紺を引き締めて 磯田とし子
雉子の声沁みて山脈あはれなり 龍太
雪の山脈怒濤のごとし寒夕焼 相馬遷子 雪嶺
雪渓の楔アンデス山脈に 品川鈴子
雲山脈帰る鴨また夕あをし 堀口星眠 営巣期
雷雲下国境山脈惨と伏す 相馬遷子
雷雲下國境山脈惨と伏す 相馬遷子 雪嶺
靄かかる奥羽山脈蕨狩 阿部みどり女
青澄みて山脈残る冬の雁 相馬遷子 雪嶺
風はろばろと山脈の光にうたれ シヤツと雑草 栗林一石路
風哭かせ山脈哭かせ冬ざくら 吉田未灰
風葬の山脈遠く秋耕す 目貫るり子
饅頭を焼けよ中国山脈の灯 稲岡已一郎
麦踏みの山脈揃ふ日なりけり 大曽根育代
黒鶫朝の山脈走り出す 小田利恵子
●山容
ゆつくりと台風の来る山容ち 藤田あけ烏 赤松
一国の山容あらた鷹渡る 斎藤梅子
元日や山容無類不老富士 橋本夢道 無類の妻
冬日が照る山容に応ふべし 中塚一碧樓
十月の父ら頷く山容ち 原裕 青垣
山容ち木の芽の中に隠れ得ず 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
山容もあらたまるらし虹のあと 村越化石
山容も刈田ひかりも小諸に来 宮坂静生 春の鹿
山容チ変らず梅雨の町古び 高田風人子
日の讃歌富士はつ秋の山容ち 柴田白葉女 『夕浪』
朝の山容仰ぎ身を愛で蠅まで愛で 磯貝碧蹄館 握手
梅雨晴の武庫の山容思惟半伽 長谷川かな女 花 季
珍しき山容ち旅秋の雲 上野泰 春潮
知床の山容奪ふしまきかな 戸川幸夫
筒鳥や廃坑あとの山容ち 高浜年尾
筒鳥や癈坑あとの山容ち 高浜年尾
精霊火浮びあがりし山容 広瀬町子
背戸の菊に山容早く荒びけり 青峰集 島田青峰
落鮎や山容かくす雨となり 三谷いちろ
薄薄と吹雪小止みに山容 上村占魚 球磨
青北風の岩手山容啄木歌碑 柴田白葉女 花寂び 以後
顔昏れるまで蜩の山容 鈴木蚊都夫
鵙鳴いて山容嶮を加へけり 青峰集 島田青峰
●山雷
山雷のすずろに秋の深みたる 藤田あけ烏
山雷や毛野の青野に人も見えず 臼田亞浪 定本亜浪句集
金剛山雷ぐせのつきゐたり 大島雄作
大年の山の日ぐれとなりにけり寒雷一つ澄みて霽れたり 穂積忠
山の旅雷の高さで湯を使ふ 鍵和田[ゆう]子 浮標
山の湯の松葉しづりや春の雷 臼田亜浪
山の背をころげ廻りぬ春の雷 高浜虚子
山の雷夕べの渓を照しけり 長谷川かな女 雨 月
山びらき神は雷もて迎へけり 三谷和子
山を出て山にかへしぬ春の雷 菅原師竹句集
山人のみやび言葉や秋の雷 原和子
山垣にとゞろきて消ゆ春の雷 及川貞 榧の實
山百合をいくたび照す夜の雷火 土方秋湖
山鳩のくぐもる唄に雷迫る 西東三鬼
戸隠に雷一つ山開 串上青蓑
日雷土葬の山に近づかず 森田智子
春の雷まひるの山を邃うせり 飯田蛇笏 春蘭
春もまた雪雷やしなの山 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
杉の秀に雷火走れり箱根山 鈴木大林子
棕梠山の父の匂ひや冬の雷 石寒太 翔
清盛祭弥山を春の雷はしり 塩田佐喜子
灌仏に軽雷山を下りてくる 西村公鳳
火の山にいどみ駆けづる日雷 上村占魚 『自門』
男女でいて何ごともなく雷の山 和知喜八 同齢
秋雷のあとの山照り鳩鳴けり 阿部みどり女
秋雷の一つ転がる山向う 高澤良一 随笑
秋雷や旧会津領山ばかり 高野素十
秋雷や踏めば崩るる悪の山 宮武寒々 朱卓
草山を比叡の内チや春の雷 尾崎迷堂 孤輪
針山に針いきいきと春の雷 橋本榮治 麦生
鎌倉五山虫出しの雷走りけり 谷田部栄
長閑すぎて虚雷きくなり山の湖 大須賀乙字
雷に切り刻まれをり鋸山 高澤良一 寒暑
雷の殷殷として夏の山 会津八一
雷光に妙義走らす嶺と(いは)(妙義山二句) 河野南畦 『硝子の船』
雷裂けて全山震ふ吉野杉 桂信子 遠い橋
雷鴫足を取られる山仕事 篠田悦子
露座仏の背山を走る春の雷 黒田智彦
飛騨山を雷轟きに指させる 鈴鹿野風呂 浜木綿
●山籟
冬籠山籟聞いて起きしぶる 高田蝶衣
冬葉忌真間の山籟底冷えす 吉田巨蕪
引く鈴に山籟つのる初不動 北 光丘
綱曳の声山籟となりにけり 吉本伊智朗
●山霊
お花畑山霊嶺々に棲み給ふ 福田蓼汀 山火
山霊に一拍二礼きのこ狩 関位安代
山霊に励まされつつ紅葉散る 雨宮抱星
山霊に殺められたし星月夜 長山順子
山霊の語りたき日か滝ゆたか 鍵和田[ゆう]子 浮標
山霊をうとんずる月や霧晴るる 飯田蛇笏 山廬集
山霊を鎮めむと雪つのるなり 岡本まち子
山霊を集め一気に滝落つる 柿沼昭治(麻苧)
山霊雲を餞る鷹の別かな 尾崎紅葉
火祭に山霊あまた蛾を放つ 橋本榮治 麦生
筍を山霊地霊かこみゐる ほんだゆき
●島山
はたはたや志賀の島山低くして 山田みづえ
パンをさく島山青き朝焼に 岸風三楼 往来
六月の雪島山はソ連領(岬頭より国後島を望む) 角川源義 『西行の日』
冬めくや離ればなれに島と島 山本林雨
冬日消えとほき島山に紺還る 篠原梵 雨
冬枯や絵の島山の貝屏風 子規句集 虚子・碧梧桐選
口の隈の島山据り鷹ゆけり 成田千空 地霊
国来よと引きし島山初明り 山本喜朗
墓所一つなき島山の冬紅葉 野澤節子
天草の島山高し夏の海 高浜虚子
婚の旅すずし島山帆がくりに 岸風三樓
島山にしぐれかへしぬ福良港 石原八束
島山にひとり登れり日のひとつ 徳弘純 非望
島山に四囲の島恋ひ登高す 赤松[けい]子 白毫
島山の如青蚊帳に襞のあり 上野泰 佐介
島山の笑ふをながめ磯づたひ 上村占魚 球磨
島山の鈴なす枇杷の皆熟るゝ 鈴鹿野風呂 浜木綿
島山の霞の奥の深み哉 瀧井孝作
島山の露けき径海を離れず 内藤吐天 鳴海抄
島山の高さのつばめ翔けかはす 佐野まもる 海郷
島山はもとより隠岐の秋霞 岸田稚魚
島山は紺あたらしや百千鳥 綾部仁喜 寒木
島山やいたゞきまでも昆布干場 青木茶話一
島山や鳴きつくさんと法師蝉 清崎敏郎
島山を焼く二すぢの煙かな 五十嵐播水 播水句集
島山を鳴きつくさんと法師蝉 清崎敏郎
島山貧し雲の峯にも見離され 津田清子 礼 拝
暁け初めて記紀の島山青葉潮 田中水桜
暗澹と島山つらね冬座敷 飯田龍太
水仙の径はとんびの島山へ 高澤良一 随笑
水無月の島山茫とある別れ 石塚友二 光塵
泳ぎ子に紺島山のよこたはる 加藤三七子
浪の声島山の麦熟れにけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
湖中まで霞むうつつの竹生島 山口草堂
湾をなす島山ひきし盆の月 鈴鹿野風呂 浜木綿
漁りて耕して且つ祈る島 山澄陽子
炎天に神の土鈴の乾く島 山田弘子 初期作品
烏賊釣火隠岐の島山焦がしけり 増本春蘭(城)
白色に包む島山夏の昼 沖手一恋
秋燕のまだ居続ける仁右衛門島 山田春生
背の窓に島山の月みかんむく 及川貞 榧の實
舟がゝりなき島山や夕霙 雉子郎句集 石島雉子郎
船すすむ島山桜すれすれに 上村占魚 球磨
船ゆけり夏の島山を率てゆけり 山口誓子
色足袋で来て拝みけり竹生島 山本洋子
茣蓙半帖*ささげを干して盆の島 山本つぼみ
蒼海へ鷹を放ちし神の島 山田弘子
足はよき物ぞ春辺よ島山よ 永田耕衣 冷位
車窓より瀬戸の島山春隣 星野立子
除虫菊島山ちかみ艀来る 石川桂郎 含羞
雁瘡の父よ暮れゆく島山よ 八木林之助
鵯に安芸の島山濃かりけり 長谷川かな女 雨 月
黒南風や島山かけてうち暗み 高浜虚子「句日記」
●城山
お城山やうやくそれと初明り 高浜年尾
かなかなや邑は城山より明ける 永井博文
仏生会城山の鳶海に啼き 宮津昭彦
代田掻き城山影に人りにけり 山本洋子
初山へ翁城山へ旅われら 亀井糸游
卒業の城山へ笛携へし 山本洋子
句碑動くかに城山の滝の音 杉山青風
喪の家に城山の花散ることよ 田村了咲
城山が見えて小部屋の薩摩汁 川村哲夫
城山が透く法師蝉の声の網 西東三鬼
城山でありしは昔蜜柑狩 舘野翔鶴
城山というものは登つて見ても蝉の鳴くばかり 荻原井泉水
城山にあり弾の穴蝉の穴 品川鈴子
城山にいつものけふの目借時 岡井省二
城山にのぼりてつきし草虱 銀漢 吉岡禅寺洞
城山に多き抜けみちゐのこづち 中山梟月
城山に心置くとき笹鳴ける 中嶋田鶴子
城山に明治の匂ふ樟若葉 原田 昭
城山に残る大樹や天の川 山之内赫子
城山に海の日とどく藪柑子 棚山波朗
城山に蝉の居て鳴く学府かな 藤後左右
城山に間道のあり冬すみれ 佐藤八百子
城山に間道のあり花五倍子 山下明山
城山に雉子出でけり小六月 山店 芭蕉庵小文庫
城山に風のくぐもる藤の花 吉田 二葉
城山のぶつかるごとき蝉しぐれ 中村明子
城山のまた颪しをり猫の恋 大峯あきら
城山の七谷晴れて小鳥来る 深見けん二
城山の八幡祭風強し 皆川盤水
城山の初日あまねく隼人墓地 岡部寿香
城山の北にとゞろく花火かな 花火 正岡子規
城山の崖掃きおとす夏落葉 松村蒼石 春霰
城山の桑の道照る墓参かな 杉田久女
城山の浮み上るや青嵐 青嵐 正岡子規
城山の真下の闇を鵜舟過ぐ 松井利彦
城山の竹むらに啼く雉子かな 飯田蛇笏 山廬集
城山の葛のはづれの我が家かな 京極杞陽
城山の裾の秋水日暮れけり 山田弘子 螢川
城山の錦を今に十二月 深見けん二 日月
城山の霧の奥よりほととぎす 小島千架子
城山の鴬老いぬ鮎食ひに 雑草 長谷川零餘子
城山は桜点々辛夷点々 京極杞陽
城山は猩々袴ばかりかな 野沢節子 存身
城山へ千の目くばせ小かまくら 白井 爽風
城山や少年の凧糸太し 藤岡筑邨
城山や椎の實落ちて兒もなし 椎の実 正岡子規
城山や篠ふみ分けて苺採り 篠原鳳作
城山を一つ残して秋暮るる 相原左義長
城山を烟らせ茅花流しかな 林 かよ
城山を雪ふりかくす歌がるた 大橋櫻坡子 雨月
大試験済み城山に登りけり 後藤秋邑
寅彦忌城山の禽庭に来て 竹林美和子
木々の影踏み十六夜の城山に 川崎 克
枯洲より見る南面の福山城 山口誓子
棟神にお城山から夜の飛花 田中英子
母と来てこの城山の羽子日和 山本洋子
海風の落とす無患子平戸城 山田弘子 螢川
湖かくす城山秋の誕生日 松村蒼石 雪
町中の闇は城山盆の月 上暮潮
秋の城山は赤松ばかりかな 秋の山 正岡子規
臥待や城山低く北に負ひ 丸山しげる
自然薯黄葉城山の径明るうす 高澤良一 素抱
花芒雨意の雲垂る新府城 山本紅童
蝉時雨城山の風連れてくる 八木ケイ
●翠黛
小春日のかげり早さや翠黛山 西山泊雲 泊雲句集
翠黛(すゐたい)の時雨いよいよはなやかに 高野素十(1893-1976)
翠黛と日もすがらある桜狩 後藤夜半
翠黛に聖燭節の雨げしき 飯田蛇笏 霊芝
翠黛に雲もあらせず遅ざくら 飯田蛇笏
翠黛のもと蒟蒻の花咲きぬ 松瀬青々
翠黛の明暗雨の時鳥 稲畑汀子
翠黛の時雨いよいよはなやかに 高野素十
翠黛も王昭君も菖蒲の芽 行方克己 知音
●翠巒
六月の翠巒を照る日が胸に 柴田白葉女 『夕浪』
打水す娘に翠巒の雲ゆけり 飯田蛇笏 春蘭
河床涸れ翠巒痩せつ秋燕 林翔 和紙
翠巒にかかる暮靄や田を植ゑし 吉武月二郎句集
翠巒に杣家のあぐる施火の煙 飯田蛇笏 霊芝
翠巒のいつ鷹放つ大暑かな 飴山實 『次の花』
翠巒の幾重の波に鯉のぼり 山内遊糸「蘇鉄」
翠巒の落ち込む流れ瓜冷やす 平松荻雨
翠巒や風を漉き込む吉野紙 倉田勝栄(けごん)
翠巒や鵜川しぶきてしづかなり 伊藤敬子
翠巒を降り消す夕立襲ひ来し 杉田久女「杉田久女句集」
●杉山
くらがりの杉山を去る冬帽子 柴田白葉女 花寂び 以後
こぶし天蓋杉山へ墓延びてをり 河野南畦 湖の森
たかし忌の杉山に鳴る能鼓 森 重夫
みよし野の杉山深し華鬘草 稲畑汀子
一郎死んで杉山に憑く県境 穴井太 土語
三光鳥檜山杉山淋しくす 瀧澤宏司
冬に入る杉山こぞり真空待つ 松村蒼石 雁
冬三ケ月かかげ杉山ねむりゆく 柴田白葉女 花寂び 以後
堂凍てて杉山に日の来迎図 鷲谷七菜子 花寂び
夏休みなかば杉山檜山寂び 友岡子郷 日の径
夕杉山こめかみへ来る蜘蛛はらう 赤尾兜子
威し銃杉山の上を長わたり 岸田稚魚 筍流し
尺蠖や杉山中に睡り足る 進藤一考
帰省子に杉山にほふ胡瓜もみ 野澤節子
庭さきの杉山残され穴まどひ 阿部みどり女 月下美人
新豆腐杉山裾に日のあたり 桂信子
春月や檜山杉山隣り合ひ 藤本輝紫
朝凍みて夕暮ぬくむ杉山中 野澤節子 遠い橋
杉山にただよふ雲や花見唄 草間時彦 櫻山
杉山にたつ雪げむり枝打か 亀井糸游
杉山につゞく檜原や斧始 若林北窗
杉山にとりかこまれて雛かな 大峯あきら
杉山に墓の五、六基とりかぶと 斎藤玲子
杉山に山雀帰り空のこる 戸塚三生
杉山に日の沈みたる鵜飼かな 梶原健伯
杉山に月のぼるなり凍豆腐 岡井省二
杉山に杉の雨降る夏休み 伊藤通明
杉山に杉の風彦河鹿鳴く 鈴木蚊都夫
杉山に波郷忌の雲あそびをり 原裕 青垣
杉山に煙ふうはり小正月 猪俣千代子 秘 色
杉山に燭をかかげて海老根咲く 青柳志解樹
杉山に父かと思ふ瀧こだま 原 裕
杉山に相交はらず山ざくら 山田みづえ 草譜
杉山に花の散りこむ仏生会 大佐 優
杉山に隠れてかかる雪解滝 遠藤梧逸
杉山に飛んで檜山の螢かな 大石悦子 聞香
杉山に飛白をなして朝桜 大石悦子 百花
杉山に鱗重ねし鱗雲 原裕 青垣
杉山のあひの桜のさくらまじ 岡井省二
杉山のあをき滴り吉野葛 佐川広治
杉山のときに青炎走り梅雨 井沢正江
杉山のどこか火を焚き上り鮎 神尾久美子 桐の木
杉山のどの木に吊す春の魂 寺井谷子
杉山のふもと竹山盆迎 八木林之介 青霞集
杉山の切り株濡るるお中日 大木あまり 火のいろに
杉山の千の切っ先鰯雲 橋本みず枝
杉山の周りにばかり春が来ぬ 蓬田紀枝子
杉山の墨絵ぼかしに牡丹鍋 木内彰志
杉山の底に野分の音を聞く 大古殿風亭
杉山の影の来やすき小豆干す 大峯あきら
杉山の日昏れよく澄む水のこゑ 石井一舟
杉山の春の曙杜氏らに 加倉井秋を
杉山の暗さを迷ふ落花あり 山田弘子 懐
杉山の木洩れ日淡し著莪の花 村上和子
杉山の杉それぞれに雪降らす 町田しげき
杉山の杉の寒さの能舞台 河合凱夫 飛礫
杉山の杉の波濤や冬に入る 宮坂静生 春の鹿
杉山の杉の直なる寒さかな 片山由美子 天弓
杉山の杉擲つ風や比良八講 梶山千鶴子
杉山の杉濤裂きて滝とどろく 古賀まり子 緑の野以後
杉山の杉籬づくり花ぐもり 芝不器男
杉山の水に視られて炭を負ふ 六角文夫
杉山の滴り蒼き熊野かな 田村幸江(草苑)
杉山の濃くなってくる宵の年 穴井太 原郷樹林
杉山の矢絣に雪新しや 成田千空
杉山の育ち盛りの草いきれ 西村和子 かりそめならず
杉山の芯は濡れをり囮籠 蓬田紀枝子
杉山の若木ばかりや夏火鉢 大木あまり 火球
杉山の荒れを痛めり石鼎忌 茨木和生 往馬
杉山の虫に喰はれて蝮蛇草 山本順子
杉山の陰の田も植ゑ終りけり 岸田稚魚 筍流し
杉山の靄に滲めり遅桜 半田順子
杉山の香を水の香に鮎育つ 野澤節子 遠い橋
杉山はどこより暮るる法師蝉 森 澄雄
杉山は息を殺して雪催 土屋秀穂
杉山は杉の言葉のしづり雪 文挟夫佐恵 遠い橋
杉山は湖にのめりて初詣 廣瀬直人
杉山へ朝露払ふ槍鶏頭 伊藤純子
杉山へ猟夫のごとく深入りし 野澤節子 遠い橋
杉山へ登る背負子に団扇挿し 肥田埜勝美
杉山へ空片寄れる早苗束 綾部仁喜 樸簡
杉山や雪なだれたる一と平 癖三酔句集 岡本癖三酔
杉山をゆくじんじんとゆく暗澹 瀬川泰之
杉山を出てゆく蝶や白一筋 青柳志解樹
杉山を育てし人と雪見酒 太田土男
杉山を負ひ戸々富めり冬の水 露月句集 石井露月
杉山を越えて落花の空つづく 山田弘子 懐
杉山を餅配る子が越えてゆく 大峯あきら 鳥道
杉山中何も映さず泉湧く 野澤節子 遠い橋
枝打ちて寒の杉山匂ひけり 田中浩子
檜山杉山落ち合ふところ夜の朧 町田しげき
河鹿湧く夕杉山のほとぼりに 岸田稚魚 筍流し
河鹿鳴けり杉山に杉哭くごとく 高柳重信「山川蝉夫句集」
注連太く張る杉山の出入口 田中禾青
洛北の杉山に雨新豆腐 角川春樹
流灯会杉山に月にじみ出て 皆川美恵子
涅槃西風杉山赤く動き出す 越前春生
濃淡の霧にしづみぬ羽黒杉 山上樹実雄
火祭を待ち杉山の闇にをり 小宮山政子
炉火赤し檜山杉山淋しかろ 平畑静塔
猫埋む杉山は春竹は秋 大木あまり 山の夢
田水張つて杉山の冷えあつめたる 鷲谷七菜子 花寂び
白シャツに入れば杉山にほふなり 太田土男
皆伐をせし杉山に冬の鹿 茨木和生 往馬
眠らんと杉山の襞深めたる 西村和子 かりそめならず
短日の深空杉山檜山据ゑ 舟月
短日や杉山透る竹の笛 青柳志解樹
秋冷の檜山杉山匂ひけり 山田みづえ
終戦忌杉山に夜のざんざ降り 森澄雄 浮鴎
舎利仏に月蝕甚の杉山中 野澤節子 黄 炎
赤蜻蛉檜山杉山ながめ倦きぬ 瀧春一 菜園
雪霏々と檜山杉山隣り合ふ 矢野緑詩
風禍とは稲のみならず杉山も 吉持鶴城
飛騨杉といふ杉山の炎暑かな 藤田あけ烏 赤松
魂棚に杉山の風通ひけり 茂里正治
鮎掛や吉野杉山迫る瀬に 山田弘子 こぶし坂
鮎落ちて吉野杉山高うせり 小島健 木の実
鯉のぼり杉山の杉立ちならび 小田部杏邨
鰤起し杉山檜山色褪せぬ 阿波野青畝
鳴き交はす檜山杉山四十雀 根岸善雄
●背山 兄山
うす~と背山も染まり紅葉寺 楠目橙黄子 橙圃
まろ~と背山がありて紅葉寺 楠目橙黄子 橙圃
りんご咲き背山前山力抜く 久慈月山
南帝の拠りし背山を鳥渡る 三村純也
唐寺の背山仰げば小鳥かな 八木林之介 青霞集
囚はれの鶏に背山の秋の風 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
墓参あと吾ら背山に青き踏む 下村ひろし 西陲集
夜を鳴く海猫の背山に星の出て 山口あつ子
大仏の背山もつともしたたれり 三田きえ子
大仏の背山密々手鞠唄 大石香代子
大寒の宿の背山は火噴く山 村松紅花
大阿蘇の背山妹山滴れり 牛島登美(同人)
大雪や背山は知らず峡の里 尾崎迷堂 孤輪
妹山の花は背山へ吹雪くべし 稲畑汀子
妹山へやがて背山へ蛍の火 山口素基
揚雲雀妹山背山相凭りて 永方裕子
暖炉焚くけむり背山を寂しくす 堀口星眠 火山灰の道
松籟を背山に雪の月影堂 洲浜ゆき
栗くぬぎ芽立ち霞めり背山垣 及川貞 榧の實
梅満ちて背山くらみぬ万霊塔 鍵和田[ゆう]子 浮標
海よりも背山親しき冬至粥 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
涅槃寺背山で鴉打ち啼く 赤壁ゆき江
淵へだて妹山背山芽吹き合ふ 中村富子
湯地獄の叫喚背山紅葉濃く 下村ひろし 西陲集
潮騒を背山に蔵し甘茶寺 辻桃子
火鎮めの神の背山を焼きにけり 行方克己 昆虫記
灯の入りて切子の背山杉匂ふ 田中英子
矢のごとき背山の滝や妙雲寺 皆川盤水
竹春の背山明るし英治の忌 生江通子
紙を漉く背山の墓に日の当り 中戸川朝人 残心
綿採るやことし背山の雪はやし 佐野まもる
美しき背山妹山初御空 柴沼忠三
老鶯や甘酒茶屋の背山より 長島久江
背山かけて降り込む雪に館閉づ 木村蕪城 寒泉
背山にて伐りし樅なり聖夜待つ 堀口星眠
背山まだ眠れぬさまに彩れる 稲畑汀子
背山よりしぐれ尾を曳く神事能 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
背山よりもどる寺鳩春の雨 亀井糸游
背山より今かも飛雪寒牡丹 皆吉爽雨(1902-1983)
背山より前山に鵙高音かな 高木晴子 花 季
背山より屋根に猿や札納め 水谷洋子
背山より日照雨また来る夏炉かな 有働 亨
背山より海へひびかふ斧始 甲斐すず江
背山より雨走りくる青林檎 小林紀代子
背山より露の下り来るしんこ餅 山田弘子 懐
背山囀り止み白波は寄せどほし 及川貞 夕焼
背山垣青葉木菟鳴く夜もあり 及川貞 榧の實
花筏鯉の背山に乗りあげし 中原道夫
虫篝果てて背山の星のかず 木下郁子
蹴轆轤や背山に露の下りるころ 文挟夫佐恵 遠い橋
蹴鞠白し背山の降らす雪よりも 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
遠き雪崩背山の雪崩夜も鳴れり 殿村菟絲子 『繪硝子』
露座仏の背山を走る春の雷 黒田智彦
馬洗ふ水は霞める背山より 小堀紀子
鳥渡る妹山曇り背山晴れ 小川斉東語
鴛鴦流れ妹山背山深みどり 大峯あきら 宇宙塵
鹿おどし背山昏れゆく詩仙堂 柳田聖子
●全山
いちはつや母の心音全山に 三森鉄治
こつつんと全山紅葉磧 松澤昭 宅居
さくと縄切る全山の蝉時雨 菅原鬨也
ときに発破掛け全山を眠らせず 上田五千石 田園
ひとひらのあと全山の花吹雪 野中亮介
サイダー瓶全山の青透き通る 三好潤子
サイダー飲むや全山の緑傾けて 藪宕山
ススメススメ全山枯れて初明り 穴井太 原郷樹林
仏名会果て全山に日が射せり 森 靖子
信濃全山十一月の月照らす 桂信子 花寂び 以後
全山が鳴り末枯の一葉が鳴る 加藤秋邨 野哭
全山にこゑ掛け瀧の凍て始む 小澤克己
全山に一ッの椿探しをり 渡部伸一郎
全山に芭蕉の破れ打つてでる 松澤昭 面白
全山に花の面影とどめけり 黒川悦子
全山に蜜柑花つけ通過駅 斎藤おさむ
全山のかなかなしぐれ自刃跡 近藤一鴻
全山のひとつとなりし蝉時雨 原田青児
全山のほむらを曳きて色鳥は 橋本榮治 麦生
全山のみかんに色の来つゝあり 深川正一郎
全山のもみぢ促す滝の音 山内遊糸
全山の一樹一石送り梅雨 深見けん二
全山の晴をあやぶむ紅葉かな 安東次男
全山の枯木となりし静かかな 高濱年尾 年尾句集
全山の生毛ひかりに桜咲く 角川照子
全山の紅葉に対す一戸なり 永島靖子
全山の紅葉に耐へし薄まぶた 能村登四郎
全山の紅葉照るとき男透く 森田智子
全山の紅葉里まで続きをり 山岸盛栄
全山の索道の荷の皆蜜柑 宇根畝雪
全山の結びつつある花の露 坂井建
全山の花の鼓動を秘む真闇 安原葉
全山の芽のせまり来て船繋る 米沢吾亦紅 童顔
全山の芽や山彦がもの言へり 米沢吾亦紅 童顔
全山の芽吹きうながし辛夷咲く 伊東宏晃
全山の芽立ちの中に坑出づる 戸沢寒子房
全山の萩やすすきや刈萱や 立松けい
全山の落葉を運ぶ埋立地 対馬康子 純情
全山の葛のしじまの破れざる 松本たかし
全山の葛の衰へ見ゆるかな 高浜虚子
全山の蝉の鳴き止む消火栓 長田等
全山の雪解水富士下りゆく 山口誓子 不動
全山の露一粒の草の露 岡田順子
全山へ紅葉導火の蔦一縷 能村研三 海神
全山や一宗興るごと芽吹き 村松紅花
全山を占めしは花の降る音か 橋本榮治 逆旅
全山を夏鶯が鎮めいる 桜木登代子
囀す全山逆さ吊りの貌 松澤昭 安曇
地虫出づ寺に全山案内図 梶山千鶴子
少林山全山灯し星黙す 田中英雄
山豪雨全山滝となりにけり 福田蓼汀
憂鬱なゴリラ全山紅葉し 穴井太 天籟雑唱
我を容れ全山すでに汗をかく 和田悟朗
椎の花箱根全山雨ふり出す 村山古郷
濃き霧に全山白き闇となる 林 保子
照る全山虫ごわごわと水ふやす 坪内稔典
秋立つや全山墓におおわれて 対馬康子 純情
空海の全山雪解雫光 黒田杏子 花下草上
空海大遠忌全山さくらかな 成瀬櫻桃子
粧ひし全山光りはじめたり 仙田洋子 雲は王冠
緋縅の如全山の粧ひぬ 山本歩禅
身に貯へん全山の蝉の声 西東三鬼「今日」
雪霏々と全山白き幻に 鈴木りう三
雲はまだ覚めず全山青牧草 中戸川朝人 残心
雷裂けて全山震ふ吉野杉 桂信子 遠い橋
高天神城跡全山紅葉して 鈴木里隹
鬼女跳べり全山枯るる閑けさに 河合凱夫
鳴子引けば全山の露さかだちに 池上浩山人
鶯や筑波全山雨の中 長谷川草州
鷹匠の佇ち全山の景しまる 内田晴子
鷹渡り全山の木々何急ぐ 米澤吾亦紅
●雑木山
うす雪に小鳥笛澄む雑木山 塚原麦生
この世なる枯追ひゆけば雑木山 栗林千津
ざくざくと歩く二日の雑木山 飯田晴
まほろばのいろ動き出す雑木山 福井ちゑ子
まんさくに風めざめけり雑木山 行方寅次郎
みそさざい絵島の墓は雑木山 中澤康人
やがては来る歓喜の人声即芽吹く雑木山 橋本夢道 良妻愚母
ゆく秋の天蓋ひらく雑木山 穴井太 原郷樹林
バード・デー風音のみの雑木山 永井敦子
一本の余花の明りや雑木山 村上三良(ホトトギス)
万歳や真赤な月の雑木山 辻桃子 桃
三月の光渦巻く雑木山 三島玉絵
三椏のいろにはじまる雑木山 伊藤三十四
二月の日入れて明るき雑木山 長谷川二三
人日や夕日の彫りし雑木山 加藤三七子
何の芽と知れず赤らむ雑木山 金箱戈止夫
光太郎忌の日が透ける雑木山 高木良多
入梅の静けさに倦み雑木山 瀧澤宏司
全貌を見せて虚子忌の雑木山 九鬼あきゑ
冬凪や煙のごとき雑木山 高須茂
冬天のどこまで碧し雑木山 清藤徳子
冬枯れの枯れひびき合ふ雑木山 山田和子
冬鴉こもりて雑木山うごく 黒坂光博
凩の抜けて明るき雑木山 安藤まこと
初声の天へ筒抜け雑木山 村井郁子
初雪に日のゆきわたる雑木山 行方寅次郎
初音せりほのむらさきの雑木山 田中季子
吹はじめ雑木山より僧衣出づ 加藤正子
吾も衆愚雑木山芽吹く炎に心革る 橋本夢道 良妻愚母
啓蟄や衣干したる雑木山 角川春樹 夢殿
囀りのふりこぼれゐる雑木山 瀧澤伊代次
囀りの念珠入れたる雑木山 澄雄
囀りの雨粒となる雑木山 柿本多映
囀りを海へこぼして雑木山 西浦一滴
塩鯖がかっと目をあけ雑木山 坪内稔典
夕月が春したたらす雑木山 細谷友汀
夕月や雪あかりして雑木山 藤田湘子(1926-)
女正月口のおだやかな雑木山 藤本安騎生
如月のひかりもみあふ雑木山 朝倉和江
寒の汽車すばやくとほる雑木山 飯田龍太 忘音
寒夕焼どつかり収め雑木山 武藤ほとり
小包を出し冬麗の雑木山 栗林千津
少年のあと秋風の雑木山 原裕 『新治』
山茱萸の黄が流れ出す雑木山 山本富枝
年の瀬の日の移りゆく雑木山 鈴木六林男
弔電や影の雪ふる雑木山 大木あまり 火のいろに
引鴨の昼夜を風の雑木山 斎藤梅子
悴みて秀野恋ひゆく雑木山 関戸靖子
手の冷えは手にて暖たむ雑木山 大木あまり 火のいろに
斧の音して早春の雑木山 水上 康
日蓮忌すみても低し雑木山 大峯あきら 鳥道
早春の見えぬもの降る雑木山 山田みづえ 手甲
春の蛾に彩出で初めし雑木山 柳沢君子
春浅し髪染めてゆく雑木山 柿本多映
春蘭の幾株か減り雑木山 阿部みどり女 『陽炎』
曲*ろくに澄みて二月の雑木山 向井 秀
東風吹くや真竹まじへし雑木山 尾崎迷堂 孤輪
枯れつくしたる明るさに雑木山 青柳志解樹
枯山の低山にして雑木山 今井杏太郎
梅の香のあとに水の香雑木山 畠山譲二
極寒の出口をさがす雑木山 福田甲子雄
母の日のいちにち風の雑木山 正部家一夫
氷る日の杣がもの言ふ雑木山 大峯あきら 鳥道
汝ら裁かれてのち死すべし雑木山 齋藤愼爾
浅春や小鳥こぼるる雑木山 渡辺立男
海照ると芽ふきたらずや雑木山 悌二郎
海照ると芽吹きたらずや雑木山 篠田悌二郎(1899-1986)
海見えて寒さほどけぬ雑木山(大磯湘南平) 河野南畦 『焼灼後』
火の始末してゐる春の雑木山 福田甲子雄
炎昼を睡りて勁し雑木山 永島千代
白雲の触れては芽吹く雑木山 山田弘子 こぶし坂
眼が澄んで雪来る前の雑木山 関口謙太
眼白捕入れてしづもる雑木山 白井 爽風
空晴れて落葉くらべの雑木山 鈴木しげを
立春の星すみずみに雑木山 藺草慶子
耳さとくゐて人日の雑木山 菅原鬨也
芽吹かむと息つめてをり雑木山 澤村昭代
芽吹きつつ削られてをり雑木山 篠田鶴之助
落葉より人語さびしき雑木山 穴井太 原郷樹林
藪柑子空の展けし雑木山 古堀 豊
足湯して春の息吹きの雑木山 難波きくえ
足跡の氷つてゐたり雑木山 長谷川櫂 天球
速度計微動 三月 雑木山 沙羅冬笛
郭公の去りてまた来し雑木山 宮地美保子「雉俳句集」
陽炎の誘ひに乗りぬ雑木山 ふけとしこ 鎌の刃
雉子鳴ける方や日当る雑木山 重利帆南
雑木山 雪とめどなく鳥啼かす 穴井太 土語
雑木山かぐはしきまで枯れゐたり 中村やす子
雑木山さつそくとおくなりにけり 阿部完市 軽のやまめ
雑木山どんより鯰の一種だな 井手都子
雑木山にこぶし点々子の初旅 細見綾子 花 季
雑木山にこぶし点在尾根を越す 杉山郁夫
雑木山にこぶし點々子の初旅 細見綾子
雑木山に向ひ住みけり芽木の雨 池川蜩谷
雑木山ひとつてのひらの天邪鬼 金子皆子
雑木山ふくらむほどに囀れり 高橋朋子
雑木山中に一樹の山ざくら 小林美千代
雑木山丸く見え来て春近し 宮崎かつ代
雑木山入れて半円冬の虹 加藤ふみえ
雑木山小鳥きて年重ねけり 村上しゆら
雑木山延命水の水涸れて 苗代 碧
雑木山朴ひともとの浅き春 松村蒼石 寒鶯抄
雑木山消して雪降る槇の山 金箱戈止夫
雑木山白きは天へ南風の道 羽部洞然
雑木山経巡る風に辛夷咲く 高澤良一 随笑
雑木山花は四五本の桜かな 石塚友二 光塵
雑木山鳥の影散る雪間かな 棚山波朗
雛の家雑木山より朝日出て 齊藤美規
雨晴れて春意噴き上ぐ雑木山 日比野美風
雪がふる音のきこえる雑木山 齊藤美規
雪国のわつと芽吹ける雑木山 坂本山秀朗
雪晴のひとり照りゐる雑木山 森澄雄
雪止んで雪の花咲く雑木山 漁 俊久
雲を踏む如く落葉の雑木山 菊川末廣
青啄木のこゑこだまして雑木山 加藤功
青鷺が母よ乳母よと雑木山 鈴木鴻夫
頭高日があをみ降る雑木山 藤井瞳
風摶つや辛夷もろとも雑木山 石田波郷
風邪妻にいちにち風の雑木山 関口謙太
鳥交る夢のつづきの雑木山 瀬戸美代子
鳶が餌を落す二月の雑木山 児玉輝代
鴬や茜さしたる雑木山 芥川龍之介
鷹狩の借景となり雑木山 穂積カネ子
●峙つ
(塩原)寒林の端シの早瀬や巌峙ち 尾崎迷堂 孤輪
オリオンや闇に峙つ聖岳 山下智子
万緑の中残雪の主峰峙つ 伊東宏晃
仮小屋に秋山欠けて峙ちぬ 高濱年尾 年尾句集
兵馬俑棋峙(きぢ)して寒き地を走る 石原八束 『幻生花』
冬濤の裂ける白さに巌峙つ 稲岡長
南壁に雷火一瞬峙ちし 桑田青虎
夜学淋し運河の破船玻璃に峙つ 橋本鶏二
夜焚火に金色の崖峙てり 秋櫻子
大寒を擁して富士の峙てり 百合山羽公 故園
天壇は四方の夏雲率て峙てる 原田青児
山々は峙ち神は還りけり 大峯あきら 宇宙塵
峙ちて立山近き日除かな 渡辺池汀
峙つや枯葉の中の鷹の鳥 斎藤玄 雁道
峙つ巌に拍子抜けたる冬の濤 小原菁々子
峙てる宝剣岳が霧を堰く 和泉信子
峙てる高炉の下の秋日和 深見けん二
常念も爺も峙つ雪の果 澄雄
手焙に五指峙てて牡丹見る 高澤良一 さざなみやつこ
明日の山月に峙つ狩の宿 米沢吾亦紅 童顔
春潮を引きよせ山は峙てり 池内友次郎 結婚まで
棟竜の反り峙てる夜寒かな 千代田葛彦 旅人木
決勝の壁と峯雲峙てり 高澤良一 燕音
海冥く断崖峙てり祭笛 内藤吐天 鳴海抄
湖よりも山に峙ち吾亦紅 百合山羽公 故園
滝ちりぢり峙ちて寒来りけり 鷲谷七菜子 花寂び
火の山の峙つ磯や鹿尾菜干す 大網信行
火口丘笹竜胆に峙てる 吉村ひさ志
灯台は低く霧笛は峙てり 高浜虚子
燈台に低く霧笛は峙てり 高浜虚子
犬吠の冬濤に目を峙てし 高浜年尾
町空に峙ちたりし雪の山 田村了咲
白鷺城掌中にして青嶺峙つ 伊東宏晃
石楠花の巌そそり峙つ雲あをく 小原菁々子
石蓴濃き礁に峙つ耶蘇落し 下村ひろし 西陲集
磯の香に峙つ山も枇杷のころ 水原秋櫻子
竜飛岬鷹を放つて峙てり 大久保橙青
紅葉山峙てる気配にしんの闇 轡田進
葛水に我脊峙ちて柱の如し 雑草 長谷川零餘子
行く春の白く峙つ比丘尼巌 京極杞陽 くくたち下巻
遠青嶺師の墓山に対ひ峙つ 伊東宏晃
闇中に山ぞ峙つ鵜川かな 河東碧梧桐
雲仙は初夏の潮路に峙てり 高濱年尾
馬市や町に峙つ南部富士 田村了咲
鵜舟去り空に峙つ金華山 神山テル
龍飛崎鷹を放つて峙てり 大久保橙青
●聳ゆ
*えり簀編む大風除の聳えたり 高濱年尾 年尾句集
いさぎよく枯れいさぎよく聳えをり 山口甲村
かんかんと白樺聳ちて荒ごころ 臼倉真沙尾
この暑さ山も憮然として聳ゆ 和田耕三郎
さらし布かすみの足に聳へけり 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
その上に滝の聳ゆる天の川 角川春樹 夢殿
はこべらやD5l鋼の影聳え 紺野佐智子
もろこしの伸びて聳ゆるさま想ふ 高澤良一 鳩信
よき程に聳ゆる山や茸狩 露月句集 石井露月
わがものとして裏山の青嶺聳つ 斎藤玄 雁道
スキーヤのその右肩の聳ゆるや 竹下しづの女 [はやて]
テレビ塔聳ゆるのみの枯野かな 左右木圭子
ハルジオン富士も薄紅帯びて聳つ 高澤良一 随笑
プラハの街に戦車聳ゆる秋の風 相馬遷子 雪嶺
七面山聳ゆ一夜に澄める水 加賀美子麓
三山の青嶺の奥に青嶺聳つ 大石壮吾
仏法僧こだまかへして杉聳てり 大野林火
伊吹聳つ豊かに雪の胸はだけ 茨木和生 木の國
偶然のごと大冬木聳てりけり 澤井我来
入日寒卒然として白亜聳てり 中尾白雨 中尾白雨句集
八ケ嶽聳てり斑雪近膚吾に見せ 橋本多佳子
六月の甲斐駒聳てり雲の隙 鈴木しげを
冬の夜や槌音返す壁聳ゆ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
冬木立五重の塔の聳えけり 冬木立 正岡子規
冬枯の樫の木りんと聳えけり 冬枯 正岡子規
函嶺を率て雪の不二聳えけり 石井桐陰
初座敷己が座高を聳えしめ 肥田埜勝美
初明り神います山聳てりけり 河合未光
初比叡聳えてきたる舳先かな 三関浩舟
北斎に無き冨士聳てりつちぐもり 小林 葭竹
十六夜の月に一位を聳えしめ 高澤良一 素抱
南部富士地吹雪寄する中に聳つ 高橋青湖
口閉づるとき聳えけり羽抜鶏 加藤秋邨 吹越
古城は北に聳えて天の川 内藤鳴雪
右肩を聳かしつつ浮いて来る 高浜虚子
向日葵にビルは裏側もて聳ゆ 古舘曹人 能登の蛙
向日葵に長城聳えつつ走り 桂樟蹊子
咳き臥すや女の膝の聳えをり 石田波郷
嘯きて蔵王は聳てり括り桑 皆川白陀
城聳え街中にある林檎園 福田蓼汀 山火
塔聳てり青葡萄みなさかしまに 宮津昭彦
塔聳ゆ老いたる鹿の目の奥に 池田琴線女
夕佳亭紅葉の上に聳えけり 比叡 野村泊月
夕凍みの聳ゆる暗さ甲斐の国 直人
夕焼けて夏山己が場に聳ゆ 飯田龍太 麓の人
夜桜や海の底にも峰聳え 三森鉄治
大木の雲に聳ゆる枯野哉 枯野 正岡子規
大雪山若葉の上に聳えけり 比叡 野村泊月
天に穴背骨のごとく滝聳ゆ 角川春樹 夢殿
天壇の聳ゆるに虹さそふ雨 千代田葛彦
天守聳つ秋空この人を妻に 友岡子郷 遠方
天日に農婦聳えて螻蛄泳ぐ 石田波郷
妙義峨々と聳えて三日の月細し 三日月 正岡子規
学び舎に聳ゆる黄葉銀杏かな 永沼直行
家々と冬菜畠に比叡聳え 波多野爽波 鋪道の花
宸殿に夕立聳ゆるかと思ふ 古舘曹人 能登の蛙
富十山頂天へ聳ゆる雲の峯 山口誓子 大洋
富士聳え 干菜の匂ひたかかりき 吉岡禅寺洞
富士聳ゆ師は卯の花に立ちつくし 佐野青陽人 天の川
寒晒富嶽大きく裏に聳つ 西村公鳳
寝聳(ねそべつ)てふんぞりかへつて星迎 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
屋根失せた列柱聳え 螺髪尖り 伊丹三樹彦 写俳集
屯せる春著に聳ゆ二万噸 高澤良一 さざなみやつこ
山光や寒天に聳つ木一本 臼田亞浪 定本亜浪句集
山笑ふうしろに富士の聳えつつ 島谷征良
山聳え川流れたり秋の風 蓼太
山聳つや日覆ふかく写真館 桂 信子
山開き太郎次郎の杉聳ゆ 矢部治子「未来図合同句集」
岩木山菊畑より聳えけり 増田手古奈
岳峨々と夢に聳えて明易き 村上 光子
峯雲のよく聳つ日なり鵬を見ず 高澤良一 ももすずめ
島の麦聳ゆる嶺に熟れはじむ 佐野まもる 海郷
嶺聳ちて秋分の闇に入る 飯田龍太
徒らに古塔ぞ聳ゆ秋の雲 臼田亜浪 旅人
手毬唄なほ焼工場聳えたり 波郷
教會の塔聳えたる茂り哉 寺田寅彦
新数の子山陶然と聳えたり 井上康明
新緑の中より白鳳城聳ゆ 中森美年子
新豆腐皿に聳えてをりにけり 小井川和子
新雪の蔵王瑠璃光浴びて聳つ 小倉英男
明方の夢が尾をひき青嶺聳つ 本村蠻
星空に聳えわけても鳳凰台 高澤良一 素抱
春の山円く聳えて重なれり 青峰集 島田青峰
春寒し楼門聳ゆ藪の奥 西山泊雲 泊雲句集
春寒の襞をひき緊め浅間聳つ 西本一都
春風や犬の寝聳(ねそべ)るわたし舟 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
晩年の月日聳える青簾 桂信子 遠い橋
晴雪の富士聳え寒に入る温泉郷 内藤吐天
月の土手ポプラ四五本聳えけり 比叡 野村泊月
月光に聳りたちたる新樹かな 五十嵐播水 播水句集
望郷の山振り向けば青嶺聳つ 豊長みのる
木の芽風神木高く聳り立つ 安黒義郎
松聳ゆまさしくも秋五十年 中村汀女
松蝉や葬家が聳ゆ崖の上 吉田鴻司
枯草とおもひしがはたと牛聳ゆ 栗生純夫 科野路
枯葉つけて椢聳えぬ雪の土手 西山泊雲 泊雲句集
校門の聳えてゐたり試験場 藤井美智子
根にはまだ炎暑至らず杉聳てり 大熊輝一 土の香
梅の上に聳ゆ富嶽も相模ぶり 高澤良一 素抱
梅桜あるは聳えて火の子来つ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
正面に風三樓忌の青嶺聳つ 池田秀水
残る壁赭し夏蝶の野に聳え 殿村莵絲子 花 季
母病めり雲の峰聳つ葛西沖 館岡沙緻
水が水呼ばはり瀧の聳ゆかな 伊藤敬子
水晶岳望の夜雲を脱ぎ聳ゆ 岡田日郎
水晶岳雲脱ぎ望の夜を聳ゆ 岡田日郎
油照り樹のごと聳え頭頂花 永瀬千枝子
法師蝉いつもの山のいくつ聳つ 斎藤玄 雁道
泥まみれなる飲食に青嶺聳つ 飯田龍太
洗場の前に聳ゆる蓮かな 比叡 野村泊月
海に聳つ雪嶺はこの陸つゞき 右城暮石 上下
海の雪吹きよせて聳つ利尻岳 深谷雄大
海の雪吹き上げて聳つ利尻岳 深谷雄大
海原に聳える青嶺神島は 塚腰杜尚(天狼)
海道の切れつ聳えつ冬の雁 百合山羽公 故園
満ち潮の一湾に聳つ雲の蜂 田中英子
満目の枯れて浅間を聳えしめ 深見けん二 日月
炎天に聳えて寒き巌哉 炎天 正岡子規
炎天に聳て高き巌哉 炎天 正岡子規
無情なるまで雪嶺の天聳る 榎本冬一郎 眼光
爪先に富士の聳ゆる籐寝椅子 竹本素六(ホトトギス)
父に肖るはさびしからねど青嶺聳つ 友岡子郷 日の径
片蔭の街の往来に恵那聳ゆ 木村蕪城 一位
狐雨白々と聳つ秋の槍ケ岳 羽部洞然
畠打や寝聳て見る加賀の守 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
白鳥に雪の大山聳えけり 長谷川明子
白鳥来佐渡の山脈聳ちて 中嶋秀子
百舌鳥高く啼きて平山聳えたつ 百合山羽公 故園
眉間に聳ち雪の冥さの孤峯なり 鷲谷七菜子 雨 月
真中に富士聳えけり国の春 伊藤松宇
真葛より鳥海聳てる城址かな 西本一都 景色
磯菜摘む越前岬の聳つもとに 宮津昭彦
秋天に聳ゆる峰の近さかな 原 石鼎
秋山聳ゆ愁を消して川手水 清原枴童 枴童句集
秋嶺の聳つまぶしさの鍬づかひ 鷲谷七菜子 花寂び
秋風やアイヌ墓標の聳り切り(旭川アイヌ墓地) 石原八束 『黒凍みの道』
秩父丸鯊のうしほに聳えたり 日野草城
空さむく野山のにしき神聳ゆ 飯田蛇笏 霊芝
筒鳥の声を放てば山が聳つ 野澤節子 『駿河蘭』
箱根姫しやら聳ゆ冬霧なき夜なり 及川貞 榧の實
箱根路に残雪の富士白く聳つ 佐野萬里子
籐椅子に青山聳てり並びかく 岸風三楼 往来
老桜の花ともしらに聳えたり 柴田白葉女 遠い橋
耳の日や人々耳を聳やかし 相生垣瓜人 明治草抄
聳えたつ山の巌に秋祭 百合山羽公 故園
聳えたる枯木の中や星一つ 枯木 正岡子規
聳えて充ちて風穴一つ去年今年 中村草田男
聳えゐて氷壁に翳まぎれなし 鷲谷七菜子 雨 月
聳え立つ山が閊えて梅の軒 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
聳え立つ恋の峠や業平忌 京極杞陽
聳え立つ春木吾家もかく富めよ 細谷源二 砂金帯
聳え立つ燈台冬の雨寄せず 金子麒麟草
聳つ穂高アンドロメダの渦瞭か 伊藤敬子
舞ふ雪の中に飛ぶ雪欅聳つ 野沢節子 存身
花ふぶく真只中に城の聳つ 伊藤敬子
花散る夜崖は聳えて育ちをり 小檜山繁子
花祭みづ山の塔聳えたり 飯田蛇笏
芽落葉松雪の戸隠尖り聳ち 河野静雲
落慶の大塔聳ゆ新樹晴 田伏幸一
落花霏々雪嶺いまも陸に聳つ 佐野まもる 海郷
虎杖の自縛悪城の壁聳ゆ 河野多希女 納め髪
虹の中雨飛び水晶岳聳ゆ 岡田日郎「赤日」
蜂死して十月の峰天聳(そそ)る 山口誓子
蟇あるく四方八方みな聳え 加藤楸邨
行水の簷に聳ゆれ伊吹山 村上霽月
裏返る蟇の屍に青嶺聳つ 飯田龍太
補陀落や滝の聳ゆる波の上 春樹 (海上より那智の滝を望む)
裸木となりて初めて聳えけり 原田喬
讃岐富士聳え晴天高うする 柴田奈美
赤子哭くたび雪嶺聳え立つ 徳岡蓼花
起し絵のけはしき富士の聳えけり 相生垣瓜人 微茫集
身を捨てて聳つ極寒の駒ケ岳 福田甲子雄
道ばたの家に初富士聳えけり 百合山羽公
遠いプールの飛沫父子の尖塔聳ち 川崎三郎
遠景に城聳ち落花いさぎよし 伊藤京子
遠雷や咲き聳えたる蓮の花 五十嵐播水 播水句集
野馬追の武者に野展け山聳え 島田紅帆
鉾聳ゆ夜が衆人衆人に 古舘曹人 能登の蛙
長城のために聳えて夏の嶺 鷹羽狩行 長城長江抄
雨雲に比良聳ちあがり上り簗 鷲谷七菜子 花寂び 以後
雪の富士大き空間占めて聳つ 山口誓子 大洋
雪の嶺走らずにみな聳え立つ 山口誓子 激浪
雪の朝汽罐車が肩聳やかす 田川飛旅子 花文字
雪山の夜も聳えをり近松忌 森澄雄
雪山はうしろに聳ゆ花御堂 露月句集 石井露月
雪後なり息つめて聳つ夜の穂高 阿部誠文
雪渓の風抗ふは火山聳つ 宮津昭彦「積雲」
雪解や山は聳えて道乾きし 長谷川零余子
雪解山聳ち祭典の鉾つづく 松村蒼石 寒鶯抄
雪雲をかざして岳と岳聳ゆ 岡田日郎
雲なくて聳ゆうすいろ春の山 飯田蛇笏 春蘭
雲の峰一峰暗く聳てりけり 石塚友二
雲の峰前山として富士聳ゆ 大竹君代
雲の峰左右に従へ烏城聳つ 渡辺恭子
雲の峰聳つ古里の文宝川 谷口荒太
雲の峰雷を封じて聳えけり 夏目漱石 明治三十六年
雲海に溺れじと聳つ蝶ヶ嶽 西本一都
雲聳ちて蟹は甲羅の干きゆく 富澤赤黄男
霜ためて菊科の蕚聳えたる 前田普羅 飛騨紬
霞むこともなくて夏木の聳えけり 中島月笠 月笠句集
露の玉より朝富士の聳えけり 粟津松彩子
青りんご今日のひと日が聳えたり 金田初子
青天や植ゑし苗木を聳えしむ 徳永山冬子
青嵐ホルスタインの腰聳え 岡本まち子
青嶺聳(た)つふるさとの川背で泳ぐ 大野林火(1904-84)
青嶺聳つに白鳳石の句碑坐る 影島智子
青嶺聳つふるさとの川背で泳ぐ 大野林火
青嶺聳つ三つの國の寄合ひに 山口誓子 雪嶽
青嶺聳つ川沿ひに町続きけり 関森勝夫
韋駄天の日雷ゐて妙義聳つ 中戸川朝人「星辰」
風花に富士骨相を荒く聳つ 加々美鏡水
首に弁当秋の蜂など山が聳え 金子兜太 少年/生長
駿河富士白し四温の晴れに聳つ 岡田文泉
魂まつり一本みちに岳が聳つ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
鮮烈の紅葉を裾に岩場聳つ 中戸川朝人 残心
鯱に入道雲の聳ち損ね 高澤良一 ぱらりとせ
鳥渡る着のみの肩や聳えしめ 石塚友二 方寸虚実
鶯や聳えて茫と天祖山 岡田 日郎
鷹舞うて音なき後山ただ聳ゆ 飯田蛇笏 椿花集
麦刈て大寺一つ聳えけり 麦 正岡子規
龍舌蘭のすくすく聳てば島の夏 篠原鳳作
●杣
いでたちは杣にもあらず葛根掘 津川芸無子
いま釣れし鱒が焼かれて杣昼餉 岸本隆雄
えり巻につつみ余れる杣の顔 前田普羅
かち渡る杣のしぶきや菊日和 大峯あきら 鳥道
かなかなや杣木追ひつつ瀬をかへる 木津柳芽 白鷺抄
かまきりや日傭(ひよう)も同じ蓬が杣 露章 選集「板東太郎」
かんじきを柩に入れて杣の葬 成瀬櫻桃子
くれゆく芒杣負ふ婆のみ日当りて 桂信子 花寂び 以後
ころ~ところがる杣や茸の毒 飯田蛇笏 霊芝
こゝに湧く清水が頼み杣夫婦 岡本秋雨路
しはぶきの霧にひびかひ杣居たる 木村蕪城 一位
すこやかに杣の娘として日焼け 成瀬正とし 星月夜
そこばくの馬鈴薯に花杣の住む 及川貞 夕焼
つまらなく独り遊ぶ子鳳杣花 月舟俳句集 原月舟
どぶろくがあると耳打ち杣の宿 伊藤伊邦男
どぶろくや語尾かん高き杣ことば 高橋悦男
どぶろくを旅の者にも祭杣 藤田湘子
はつあきの言葉紡ぎ一歌杣 山田みづえ
はらはらと茶の花咲けり杣の家 加藤 春子
ほととぎすさくらは杣に伐られけり 言水「五子稿」
まくなぎに追われて杣の下り坂 阿部こまじ
みさゝぎへ杣の道あり草いちご 藤井乃婦
もの憂きは五月半ばの杣の顔 飯田龍太
やわらかき杣の子の足春の炉に 前田普羅 飛騨紬
七夕の街に蓑着て杣酔へり 本多静江
万緑の天地有情や杣男(鍵谷芳春を詠む) 原裕 『葦牙』
万緑や杣の葬りの吹流し 西本一都 景色
倒したる大樹をわたる霜の杣 飯田蛇笏
倒れ木やのぼるになれて露の杣 飯田蛇笏 山廬集
傘さして杣帰りゆく柚湯かな 宮武寒々 朱卓
元日の恋文持ちて杣小屋に 萩原麦草 麦嵐
兎追ふ勢子に雇はれ杣の子等 有本銘仙
冬の杣渡り初めたり島荒るる 伊藤凍魚
冬杣に片根の雪のあらはなり 田中勝次郎
冬杣の谺杉枝の雪散らす 町田しげき
冬杣や猿は再び出でざりき 宵信二
冬杣を見てゐし鴉立ちにけり 小笠原燈鳥
切岸を曲れば路地や鳳杣花 茨木和生 遠つ川
初山の杣は神話をいまも持つ 木村蕪城 寒泉
初花や杣の手業の水仕掛 飴山實 『次の花』
千振を引く杣童犬を連れ 小玉芋露
千振を日陰干して杣の家 大久保重信
午睡して待て僧戻らんと杣が云ふ 比叡 野村泊月
右手を吊り街へ煙草の東風の杣 宮武寒々 朱卓
向日葵の丈に埋るる杣の家 中条久三夫
囀や杣衆が物の置所 原石鼎
団子花杣住む三戸天近し 山田省吾
夕山の焚火を蔽ふ杣二人 飯田蛇笏 椿花集
夕焼寒う杣小屋の大きな鋸 人間を彫る 大橋裸木
大き手の杣のもてなす茸汁 岡田六華子
大岩魚炙りて杣の山泊 五十嵐春男
大工と杣夫茂みに来て樹を言い争う 赤城さかえ
天水を集め杣住む山桜 成瀬正とし 星月夜
太鼓鳴り継ぐ杣道も黄落す 田中裕明 山信
女杣野良着でひらく草の市 矢野愛乃
子連れ杣わが鳩吹きにふり返る 下村ひろし 西陲集
寒ゆるむ杣の感情焚火もゆ 飯田蛇笏 春蘭
寒卵一気に杣の喉ぼとけ 平子公一
小鳥来て通草のうつろ杣の眼に 安斎櫻[カイ]子
屠蘇の酔あらはに杣の王子守る 田守としを
山の池ま青な雨降り杣人蓑つけて来る 人間を彫る 大橋裸木
山ン神祀りて杣の新酒酌む 青柳照葉
山凍り杣が家天理祀りけり 岡田日郎
山墾いて杣も農たり芋の秋 西島麥南 金剛纂
山寺に杣雇ふ日や納豆汁 岡本癖三酔
山旦那杣の焚火に打交る 雉子郎句集 石島雉子郎
山替の糧負ふ杣に遠雪崩 太田蓁樹
山柴に木瓜咲く杣の厠かな 石原舟月 山鵲
山蛭や栂林に入る杣のみち 牧野まこと
山陰の暗き杣路や瑠璃鶲 長谷川草洲
山雀や杣の頬張る握り飯 古藤みづ絵
山霞杣のいこひによる小鳥 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
年木負ひ杖しかと手に杣女房 上村占魚 球磨
年輪と冬日を杣が会はせけり 都筑智子
広縁に杣腹這へる夏書かな 西山泊雲 泊雲句集
弁当縁に杣深く入りぬ夏書寺 比叡 野村泊月
待宵の雨粒つけて杣もどる 山本洋子
忌詞杣には生きて寒夕焼 茨木和生 木の國
恋ひ来しは恵那なる新樹杣と語る 及川貞 夕焼
手作りの椎茸干して杣の家 武田光子
手拭に鋸をつつみて雪の杣 木村里風子
投げ置きて杣の歳暮の雉一羽 細谷鳩舎
抱卵の山鳥杣をおどろかす 米本小風
探梅や途すがらなる杣の梅 羽公
斧担ぎ行く杣の脊に初日かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
斧置いて框に杣や今年酒 野村泊月
日あたりに斧研ぐ杣や水涸るゝ 銀漢 吉岡禅寺洞
日暮待つのみ杣が戸のつららごめ 千代田葛彦
旧正や杣は渋紙色に老ゆ 赤座閑山
星天に干しつるる衣や杣が夏 原石鼎
星空に干しつるる衣や杣が夏 原 石鼎
春の炉に足裏あぶるや杣が妻 前田普羅 飛騨紬
春蘭や杣とは違ふ足の音 和田祥子
春隣る嵐ひそめり杣の炉火 飯田蛇笏 霊芝
春雪や色濃き杣の雪眼鏡 前田普羅 飛騨紬
昼寝の子抱きて憩へり女杣 成瀬正とし 星月夜
昼過ぎて杣の馬ゆく鳥屋のみち 木村蕪城 一位
晩秋や杣のあめ牛薔薇甜ぶる 飯田蛇笏 霊芝
月の杣高き齢でありにけり 大峯あきら 鳥道
月の湯壺ひざまづき脱ぐ杣の地下足袋 中島斌男
月祀る杣家かたまり千早口 太田穂酔
朝寒の杣が届けし端書かな 比叡 野村泊月
朝寒の言葉つまづく杣同士 下村ひろし
朝霧や狩人に逢ひ杣に逢ひ 由井蝴蝶
木と草と寂かにせめぎ昼寝杣 小松崎爽青
木兎鳴かぬ夜は淋しと杣の云ふ 広沢米城
木流しや堰に立ちたる裸杣 樋渡清石
木耳や杣の夜の火の濡れ色に 木附沢麦青
杉の実を採る杣天によぢのぼる 山口峰玉
杣が*かやの紐にな恋ひそ物の蔓 原石鼎
杣がくゞり熊が通れる頽雪どめ 前田普羅 飛騨紬
杣がさす鋭鎌の先のしめぢかな 皿井旭川
杣が妻にしづくしやまぬ狭霧かな 前田普羅 飛騨紬
杣が妻四温の濡手かざすなる 木村蕪城 寒泉
杣が妻戸口に打てり葛砧 橋本鶏二 年輪
杣が子に日中さみしき清水かな 原石鼎
杣が子の摘みあつめゐる曼珠沙華 原石鼎
杣が家の一畑五菜冬に入る 白井爽風
杣が家の百合根あんかけ小正月 阿部月山子
杣が家は障子一重の根雪かな 山口草堂
杣が家へ清水引く竹真青なり 野原春醪
杣が家も油灯すや松の内 莚志
杣が往来映りし池も氷りけり 原石鼎
杣が燭ともす山神青葉木菟 青木 路春
杣が羽織着し日の心鳥渡る 中塚一碧樓
杣が菊壺の膾になりにけり 野村喜舟 小石川
杣が蒔きし種な損ねそ月の風 原石鼎
杣が路頬弾く草のいきれかな 楠目橙黄子 橙圃
杣に聞き図鑑に照らし薬狩 久永雁水荘
杣のみち靄がゝりして猟期畢ふ 飯田蛇笏 霊芝
杣の娘は斧を納めて姫の如し 萩原麦草 麦嵐
杣の子が雉子笛ならす暮春かな 飯田蛇笏 春蘭
杣の子にうさぎの耳の冬帽子 菅原多つを
杣の子に縁談のあり山笑ふ 長田穂峰
杣の子に遅れ躑躅と夏ひばり 飯田蛇笏 霊芝
杣の子の二つ持ちたる手毬かな 村上鬼城
杣の子の侮り覗く茸籠 有本銘仙
杣の子の初夢に樅太りけり 黛 執
杣の子の掌中の珠兜虫 末氷てる
杣の子の焚いてくるゝと花の風 飴山實 『花浴び』
杣の子の鬼呼ぶ遊び菫咲く 橋本榮治 麦生
杣の家の夜夜星粗し貝割菜 本多静江
杣の家の湯文字高干し杉の花 岸風三樓
杣の家の濃すぎて惜しき新茶かな 及川貞 夕焼
杣の戸をしめきる霧の去来かな 飯田蛇笏 山廬集
杣の手に明てゆく夜や水下やみ 横井也有 蘿葉集
杣の死に斧を祀るやほととぎす 飯田蛇笏 山廬集
杣の火にゆく雲絶えて秋の空 飯田蛇笏 霊芝
杣の言ひし怖ろしき霧となりにけり 雉子郎句集 石島雉子郎
杣の負ふものの雫や霧時雨 忍月
杣は谿へ双手をひらき鬼やらひ 藤原 如水
杣みちの目で渡る川花胡桃 伊藤白潮
杣みちや剣抜き落葉暮れ残す 石川桂郎 高蘆
杣も来つ穂高里宮春まつり 渡辺立男
杣を籠め霜焼け深き杉の山 小島千架子
杣一人猿のごとく山始 居附稲声
杣人と共に十六夜静かな 川崎展宏
杣人のけふは雉子打ち犬連れて 秋月城峰
杣人の祈りの長し夕河鹿 影島智子
杣人の長身たわむ露の月 田中裕明 花間一壺
杣人の雪消しといふ木の芽雨 岡村紀洋
杣人の頬ひげあらし残暑どき 飯田蛇笏 山廬集
杣人はなべて旧暦彼岸西風 道川虹洋
杣人番傘さして秋雨の森の家出る 人間を彫る 大橋裸木
杣仕事休みわづかの秋蚕飼ふ 原孚水
杣出の渓春蘭のふるへをり 石原八束
杣去れる林中漠と寒ンに向ふ 阿部みどり女
杣小屋におとろへ動く牡丹かな 萩原麦草 麦嵐
杣小屋に椿の落花杣老ゆる 熊谷哲太郎
杣小屋に煙ひとすぢ斧始め 鈴木初男
杣小屋に隠し醸せる濁酒 目黒一栄
杣小屋の噴き立つ釜や雪の果 野村喜舟
杣小屋の掟三行そぞろ寒 檜 紀代
杣小屋の昼をぐつぐつ牡丹鍋 近澤杉車
杣小屋の灯とも狐火とも見ゆる 小川界禾
杣小屋は山の窪地に蚊吸鳥 人見幾生
杣小屋へ山吹草の雪崩咲 辻田克巳
杣小屋をゆすぶりに来る狸かな 平松竃馬
杣山に電動音や零余子蔓 竹石一夫
杣山やたかみの栗に雲かかる 飯田蛇笏 山廬集
杣山や高みの栗に雲かゝる 飯田蛇笏 霊芝
杣山や鶲に煙のながれたる 飯田蛇笏 霊芝
杣師らに木天蓼酒といへるもの 村元子潮
杣径の大昼月や仏生会 大峯あきら 鳥道
杣患者受診に郁子をさげて来し 夏秋仰星子
杣暮し語る蝮の傷みせて 宮中千秋
杣父子山に火を焚く小昼時 飯田蛇笏 椿花集
杣男髪に百足を這はしをり 安部範子
杣病めり*かんじきを炉に吊りしまま 東 天紅
杣芦や曲りて川の果テみえず 木下夕爾
杣路断ち雪解の水は滝をなし 福田蓼汀 山火
杣道に踏み入り峡の春惜む 大久保白村
杣道の登りとなりて鶉鳴く 永由頼寿
杣達の家宝持ち寄る文化祭 野原春醪
松立てゝ杣人代々の火を守れる 水内 鬼灯
松蝉の群唱に入り杣を診る 金子千侍
枯れをゆく杣の脚絆の飛ぶごとし 野澤節子 遠い橋
案内杣つと径それて通草もぐ 村野蓼水
梅雨入りや山霧あほつ杣の顔 前田普羅 飛騨紬
榧の実や杣のほとけを担ぎだす 角川春樹 夢殿
榾たくや沈の杣人梺庵 昌夏 選集「板東太郎」
檀橋や杣木の運び雪の四方 調管子 選集「板東太郎」
正月や杣の遊びのふところ手 前田普羅 飛騨紬
此杣や秋を定めて一千年 秋 正岡子規
毛衣を尻まで垂らし杣通る 高濱年尾 年尾句集
水上を横ぎる杣の厚着かな 前田普羅 飛騨紬
氷る日の杣がもの言ふ雑木山 大峯あきら 鳥道
治聾酒といふもの信じ杣ぐらし 藤丸東雲子
深山蝉杣夫抜け来し杉の城 原裕 青垣
渓橋に見いでし杣も二月かな 飯田蛇笏 霊芝
濁酒杣にはなくてならぬもの 高濱年尾
火を焚いて杣のもてなし梅雨の入り 河村静香
炉の炎杣の白髪も数へらる 前田普羅 飛騨紬
炉明りに杣等朝出の身ごしらへ 植地芳煌
炭がまへ杣も昼餉に下り来る 東原蘆風
焚火跡ありて三日の杣の道 中森皎月
焼葱をかじりて杣の茶碗酒 土屋かたし
熊が出て仕事にならぬ杣飯場 田島緑繁
熊出ると言ふ杣道を独活掘りに 小西須麻
熱いかと問へども杣のこたへなし 暑 正岡子規
父を待つ杣の子に椎の冬日消ゆ 石島雉子郎
狐火を見て来しといふ若き杣 萩原麦草 麦嵐
白藤や火の粉はげしき杣の風呂 大峯あきら 鳥道
白衣きて禰宜にもなるや夏至の杣 飯田蛇笏 山廬集
白露や杣ら一礼肢鹿野山 成瀬正とし 星月夜
皺手擦る杣よ雪解の声はあまし 香西照雄 対話
盆礼や織子の親の女杣 有木銘仙
盆花を替へて杣去る義景忌 南部白夜
目つむりて杣の聴かせる踊唄 田中英子
破れ夜着板の如しや杣の宿 松浦真青
神山を涼しき杣の抜けてゆく 大峯あきら 鳥道
福達磨ふろしきに負ふ杣二人 芳賀昭子
秋の田の畦より杣の道となり 城戸 杉生
秋の陽をどつかと背負ひ杣夫ゆく 川村亜輝子
秋の雲杣木の棚のみづみづし 瀧春一 菜園
秋日失せ易きを教ふ杣人は 西村和子 かりそめならず
秋立つや社に隣る杣の宿 大峯あきら 宇宙塵
秋風や倒れ木わたる杣と犬 大橋櫻坡子 雨月
秋風や森に出合ひし杣が顔 原石鼎
立秋の廂みせたる杣家かな 飯田蛇笏 山廬集
笹鳴や杣の忘れし鉈袋 原 天明
粥すする杣が胃の腑や夜の秋 原石鼎
糸を張る杣に寒の日強まれり 飯田蛇笏 椿花集
紋服や年神が来し杣の家 森澄雄
絶壁にもたれて杣の今朝の春 川端茅舎
緑陰に炭焼く杣の仮眠小屋 谷法幸
縄とびの杣の子風の子となりて 福田和子
翠巒に杣家のあぐる施火の煙 飯田蛇笏 霊芝
老杣のあぐらにくらき蚊遣かな 原石鼎
老杣の目鼻ひとつに雪山路 鷲谷七菜子 花寂び
老杣の肩ずれしたるちやん~こ 川島奇北
老鴬に杣は木魂をつくりけり 石橋辰之助 山暦
老鴬や杣人とほる勅願寺 大峯あきら 鳥道
腰もとに斧照る杣の午睡かな 原石鼎
花ぐもり一径杣の戸口より 大峯あきら 鳥道
苔の香や午睡むさぼる杣が眉 原石鼎
著流しの杣四五人や山祭 比叡 野村泊月
著莪の雨杣の石垣瀧なして 金子 潮
蓬が杣和泉が軒の人形なり 幽山 選集「板東太郎」
薬鑵もつ裸の杣について行く 比叡 野村泊月
蘗に杣が薪棚荒れにけり 芝不器男
虫出しや炭切る杣のほとけ貌 つじ加代子
蚊帳つりてさみしき杣が竈かな 原石鼎
蜩をつぎつぎに消し杣下る 福田甲子雄
蝮酒飲んで仮寝や雨の杣 荻田小風
蟻いでて風薄暑なる杣の路 飯田蛇笏 山廬集
行き逢ふは杣よ吉野の花も奥 高濱年尾 年尾句集
行水や我立杣の苔の水 尾崎迷堂 孤輪
裏白を売る杣の子が銭こぼす 中村石秋
襟巻につつみ余れる杣の顔 前田普羅
諸道具や冬めく杣が土間の壁 原石鼎
謡曲きゝに杣人来り夜半の秋 西山泊雲 泊雲句集
谷底の杣の午睡の見えて居り 比叡 野村泊月
谷暮れて友をや杣の呼千鳥 尾崎紅葉
貝寄や遠きにおはす杣の神 飯田蛇笏 山廬集
貰ひたり杣の遺せし玉忍 諸田宏陽子「新山暦俳句歳時記」
賜りし杣の千振苦しとせず 鈴木栄子
赤き帯して杣の子や山の講 金子夏雪
身綺麗な杣下りてくる冬の山 橋石 和栲
軒しのぶ杣が一戸に伊勢市果つ 桂樟蹊子
通草手に杣の子山の名を知らず 南部憲吉
逝く年の雪に灯を寄せ杣部落 望月たかし
遠まきに杣のぞきをり兎罠 美柑みつはる
遠雪崩杣はランプの火屋磨く 山本 雅子
酔へば泣く杣のありけり山始め 藤原 如水
重陽やこだまし吠ゆる杣の犬 大峯あきら 鳥道
金縷梅や杣炭焼は祭顔 前田普羅 飛騨紬
鎌やせて杣の夫婦の冬仕度 渥美文窓
集ひくる神の一人か杣が来る 宮津昭彦
雛買うて杣雪山へ帰りけり 原石鼎
雨かくも細くて杣の貝割菜 鈴木鷹夫 大津絵
雪しろや昼をしづかに杣の酒 児玉輝代
雪嶺ををろがみ杣の一日終ゆ 木村蕪城 寒泉
雪明りより炉あかりに杣戻る 細谷鳩舎
雪渓や長くは啼かぬ杣の犬 岡田青虹
雪眼なる下りの杣に逢ふばかり 中村若沙
雲まとふ雪渓杣の名を負へる 望月たかし
雷雨やむ月に杣家のかけろ鳴く 飯田蛇笏 霊芝
霧寒し樹にある杣が頬冠り 吉武月二郎句集
霧深くなりゆくばかり杣と逢ふ 藤松遊子
霰うつ杣が板屋のそぎはなし 北原白秋
青竹に蝮はさみて杣下山 手島つね一
頬皺の深き杣なり冬帽子 松藤夏山 夏山句集
額の花ゆれて杣来る隠し径 原 柯城
風花といふ花降ると杣の言ふ 石川文子
飯食ふて淋しき杣や山桜 月舟俳句集 原月舟
骨どこか鳴らし杣ゆく冬の山 鷲谷七菜子 花寂び
鬚剃りて秋あかるさよ杣が顔 原石鼎
鮠串を焙りて杣の年用意 太田蓁樹
鳥の巣の淋しや杣も来ぬところ 大峯あきら 宇宙塵
鴬の声降る杣の昼餉どき 高畠畝子
●杣山
杣山に電動音や零余子蔓 竹石一夫
杣山やたかみの栗に雲かかる 飯田蛇笏 山廬集
杣山や高みの栗に雲かゝる 飯田蛇笏 霊芝
杣山や鶲に煙のながれたる 飯田蛇笏 霊芝
●高嶺晴
せんぶりの花も紫高嶺晴 木村蕪城 一位
椅子向けてれんげつつじや高嶺晴 伊藤敬子
水仙に住むべく着きぬ高嶺晴 雑草 長谷川零餘子
秋晴や由布にゐ向ふ高嶺茶屋 久女
簗見廻つて口笛吹くや高嶺晴 高濱虚子
簗見廻りて口笛吹くや高嶺晴 高浜虚子「虚子全集」
●岳 嶽
*いさざ小鮒けふ売初の賤ケ嶽 斎藤夏風
あやめ咲く野のかたむきに八ケ嶽 木村蕪城 一位
いさざ小鮒けふ売初の賤ケ嶽 斉藤夏風
うぐひすや翌立秋の嶽の雲 渡邊水巴 富士
うす靄の日ざす疎林に秋の嶽 飯田蛇笏 椿花集
おどろおどろ浅間ケ嶽の夜ぎりかな 日夏耿之介 婆羅門俳諧
おのれ吐く雲と灼けをり駒ヶ嶽 加藤楸邨
きちかうや明星ヶ嶽と山の名を 尾崎迷堂 孤輪
こくげんをわきまふ寒の嶽颪 飯田蛇笏 椿花集
さむざむと雲ぬく嶽に月あそぶ 飯田蛇笏 春蘭
しぐれ日々如意ケ嶽より比叡より 岸風三樓
しらくもに鷹まふ嶽の年をしむ 飯田蛇笏
しらつゆやお花畠に嶽の尖 飯田蛇笏 春蘭
しら雲に鷹まふ嶽の年惜しむ 飯田蛇笏 霊芝
じやんがらの鉦の谺す閼伽井嶽 平山節子
たとうれば普羅は剣の雪の嶽 福永嘴風
つらなりて雪嶽宙をゆめみしむ 飯田蛇笏 雪峡
どの家からも春暁の駒ヶ嶽 飯田龍太
にぎやかに盆花濡るる嶽のもと 飯田蛇笏 雪峡
にほどりの凍てよ凍てよと嶽の星 栗生純夫 科野路
ひよりよく奥嶽そびえ秋彼岸 飯田蛇笏 春蘭
やまなみに宿雪かびろく白根嶽 飯田蛇笏 雪峡
わが時空嶽が雪肌とどめたり 河野南畦 『元禄の夢』
キスゲ群落裾に展けて神の嶽 河野南畦 湖の森
三伏の月の小さゝや焼ケ嶽 飯田蛇笏 霊芝
三國嶽三つの國の雪嶺なり 山口誓子 紅日
中嶽の雪を踏む間も霧せまる 松村蒼石 雁
乗鞍は凡そ七嶽霧月夜 松本たかし
五月空真白くのぞき木曽の駒嶽 橋本多佳子
伊吹嶽残雪天に離れ去る 山口誓子 激浪
信心の足音が好き蟻地嶽 後藤比奈夫 花びら柚子
兆忌の秋雪嶽に月明り 飯田蛇笏 春蘭
八ケ嶽ここに全し野菊折る 木村蕪城 一位
八ケ嶽どの秋嶺を愛すべき 中村草田男
八ケ嶽聳てり斑雪近膚吾に見せ 橋本多佳子
八方に秋嶽そびえ神祭 飯田蛇笏 春蘭
八方の嶽しづまりて薺打 飯田蛇笏
八月のうぐひす幽し嶽の雲 渡邊水巴 富士
六月の木曾駒ケ嶽箱庭に 長谷川かな女 雨 月
六月の青嶺仏相嶽鬼相 西本一都 景色
冬の日の照りゐる嶽のうらおもて 栗生純夫 科野路
冬の雨嶽寂光に雪降れり 沢木欣一 雪白
冬帝先ず日をなげかけて駒ケ嶽 高浜虚子
冬帝先づ日をなげかけて駒ヶ嶽 高浜虚子
初がすみきその嶽々たのもしき 白雄
初雪や四五里へだてゝひらの嶽 向井去来
古里の時雨を颪す嶽おそろし 竹下しづの女句文集 昭和十五年
名月や三年ぶりに如意が嶽 向井去来
土用の日浅間ケ嶽に落ちこんだり 村上鬼城
地嶽草紙の炎の舌の言の葉よ 八木三日女 落葉期
夏嶽のかげ負ふダムの小住宅 河野南畦 湖の森
夏嶽や雲も奢りの空の貌(箱根樹木園) 河野南畦 『空の貌』
夕霞して剥落の嶽こだま 新井海豹子
夜の嶽を燈が登りゆく根雪原(立山連峰) 河野南畦 『湖の森』
夜の雲のあそぶ嶽あり稲架を結う 石橋辰之助
夜は夜のしらくもひきて秋の嶽 飯田蛇笏
大寒の嶽負ふ戸々の鎮まれる 飯田蛇笏 椿花集
天嶽の葉月それきり口結ぶ 萩原麦草 麦嵐
天界へ跳んで白隠雪嶽描く 高澤良一 随笑
寒きたり相いましめて嶽そびゆ 飯田蛇笏 春蘭
寒月や比叡より高き如意ケ嶽 五十嵐播水 播水句集
寒流の奥嶽を去る水けむり 飯田蛇笏 椿花集
寒茜象牙を立てしごとき嶽 西本一都 景色
小綬鶏鳴き万嶽に朝の日あふれ 村山古郷
崢の嶽負へりけり城雪解 西本一都 景色
嶽々と角ふる鹿の影法師 飯田蛇笏 山廬集
嶽々や鳰とりまはす雪けぶり 史邦 芭蕉庵小文庫
嶽かけて牧堤の環や樺紅葉 西本一都 景色
嶽が生む劫初の雲の淑気かな 西本一都 景色
嶽と呼ぶ名におぢにけり冬の山 尾崎迷堂 孤輪
嶽に雪母なる大地揺れにけり 西本一都 景色
嶽ねむらんと澄む水にうかびけり 福田甲子雄
嶽の上にのぞける嶺も盛夏かな 村山古郷
嶽の子に朴の花びら開きけり 萩原麦草 麦嵐
嶽の容鷹舞ひ居ればなほ高く(鳳凰山麓) 河野南畦 『黒い夏』
嶽の秀に風が雲捲く三月菜 川合尋
嶽の耳雲のくすぐる睦月かな 西本一都 景色
嶽は午の渓をへだつる雪の面ン 飯田蛇笏 雪峡
嶽を撃ち砲音を谿に奔らする 三橋敏雄 まぼろしの鱶
嶽を見て田植辛夷や散りかゝり 萩原麦草 麦嵐
嶽下りる雲秋燕の揉み出でし 西本一都 景色
嶽兎貂にはらわたぬかれけり 西本一都
嶽大に花野を広く藉き延べぬ 徳永山冬子
嶽嶽の立ち向ふ嶽を撃ちまくる 三橋敏雄 まぼろしの鱶
嶽澄めり死んでゆく日の念珠購ふ つじ加代子
嶽祭馬の代参てふ行事 西本一都 景色
嶽秋光駅長駅夫服正しく 石橋辰之助 山暦
嶽腹を雲うつりゐる清水かな 飯田蛇笏 春蘭
嶽蔓に触れて目覚めよ凍女瀧 小野元夫
嶽越えし秋雷なつかしきゆふべ 石橋辰之助 山暦
嶽鬼相雪被きても眠りても 西本一都 景色
巣立鳥明眸すでに嶽を得つ 藤田湘子(1926-)
巴旦杏*もぐ庭にある八ケ嶽 木村蕪城「一位」
年たつや駒嶽にはるけき釈迦の嶮 飯田蛇笏 雪峡
年たつ嶽開闢の日にいまもなほ 飯田蛇笏 雪峡
年暮るる振り向きざまに駒ヶ嶽 福田甲子雄
強霜や朝あかねして駒嶽の嶮 飯田蛇笏 春蘭
把旦杏?ぐ庭にある八ケ嶽 木村蕪城
新雪の嶽を眩しむ無一物 鈴木正代
日あたたか「春嶽高圓」は窓の景 猿橋統流子
日ある野や秋雷嶽にぶつかれる 石橋辰之助 山暦
日出の凍雲もなく釈迦ケ嶽 飯田蛇笏 雪峡
日溜りの柿のまぶしき閼伽井嶽 川澄祐勝
旱天の冷えにのけぞる駒ケ嶽 飯田龍太
明るくて嶽の骨組極月ヘ 斎藤玄
明日の月雨占なはん比那が嶽 松尾芭蕉
春北風白嶽の陽を吹きゆがむ 飯田蛇笏
春睡や明星嶽をめぐらせて 八木林之介 青霞集
晴るる日も嶽鬱々と厚朴咲けり 飯田蛇笏「山響集」
晴るゝ日も嶽鬱々と厚朴咲けり 飯田蛇笏
朝日には青麦あらし八ケ嶽 加藤楸邨
林帯をかける橿鳥秋の嶽 飯田蛇笏 雪峡
枯蘆や浅間ヶ嶽の雪ぐもり 村上鬼城
栗咲ける嶽みちの雲梅雨入かな 飯田蛇笏 霊芝
根雪原影の嶽おく月明り 河野南畦 湖の森
梅雨の雲幾嶽々のうらおもて 飯田蛇笏 雪峡
梨棚をつゆにゆだねて嶽の星 栗生純夫 科野路
樹々すでに木の葉をはらひ神の嶽 鷲谷七菜子 花寂び 以後
水の面に秋白日の穂高嶽 石原八束
水月の望の光りに嶽おろし 飯田蛇笏 雪峡
洗はれて朝の嶽濃し沙羅の花 矢島渚男 木蘭
浅間八ケ嶽左右に高く秋の立つ 高浜虚子
涅槃嶽のもつとも裾の大瀑布 橋本鶏二
渓べまで夕雲下りる嶽の秋 飯田蛇笏 春蘭
渓べまで夕雲下りる秋の嶽 飯田蛇笏
溺るるはあはれをんなの蟻地嶽 稲垣きくの 黄 瀬
濃紅葉や竜胆いろの嶽の肌 西本一都
火を噴きし嶽とは見えず若葉光 富田潮児
火燵覚めして大書すや望嶽と 廣江八重櫻
焼芋や月の叡山如意ヶ嶽 日野草城
焼藷や月の叡山如意ケ嶽 日野草城
父の日や父なる嶽の雲籠り 荒井正隆
爺ケ嶽己れをかくす雪げむり 西本一都
牛嶽の雲吐きやまぬ月夜哉 前田普羅
猿あそぶ嶽の秋雲きえゆけり 飯田蛇笏 春蘭
生みし嶽に早やまつはれる雲の秋 西本一都 景色
生涯に尊き一と日嶽若葉 阿部みどり女
甲斐駒ケ嶽ふかぶかと青田入れ 広瀬直人
畦塗りの一日かわく嶽の風 六角文夫
畦焼く火夜に入る嶽のちらちらと 福田甲子雄
病起杖に倚れば千山萬嶽の秋 秋 正岡子規
登嶽を阻みて巨巌硫気噴く 羽部洞然
百合ひらき甲斐駒ケ嶽目をさます 福田甲子雄
百蟲の聲暮れ天に八ケ嶽の屏 中島斌男
真額に由布嶽青し苔を掃く 竹下しづの女 [はやて]
眠る田に三日つづきの嶽颪 福田甲子雄
短夜の水ひびきゐる駒ヶ嶽 飯田龍太
秋の嶽そびえ刻々雲うごく 鈴木白祇
秋の嶽咫尺す啄木にそばえせり 飯田蛇笏 春蘭
秋の嶽国土安泰のすがたかな 飯田蛇笏 霊芝
秋の嶽天に黙れといふ如し 赤松[ケイ]子
秋口の星みどりなる嶽の上 飯田蛇笏
秋嶽に応えなきもの女の肩 萩原麦草 麦嵐
秋嶽ののび極まりてとゞまれり 飯田龍太
秋嶽の底に師は逝くただひとり 柴田白葉女 『夕浪』
秋晴の嶺が彼方の嶽を呼ぶ 福田甲子雄
秋晴や一点の蝶嶽を出づ 前田普羅 春寒浅間山
秋晴や比叡より亘る如意ヶ嶽 五十嵐播水
秋蚕飼ふ村のうしろに嶽あつめ 米山源雄
秋雪をえて巓ひろき国師嶽 飯田蛇笏 雪峡
秋風に嶽の日は金ン水鏡 石原舟月 山鵲
秋風やそびえていぶる嶽の尖き 飯田蛇笏
科落葉舞ひ閉牧の嶽に雪 西本一都 景色
稲は穂に嶽真つ黒に星を生み 雨宮抱星
穂芒や弓月ケ嶽の裾に生ふ 羽部洞然
立春の甲斐駒ケ嶽畦の上 飯田龍太
立春の篁の穂の南駒ケ嶽 木村蕪城 寒泉
笠嶽に笠雲翳し寒日和 西本一都 景色
笹山に那須嶽仰ぎ日向ぼこ 渡邊水巴 富士
筍の穂先にかすむ甲武信嶽 飯田龍太
筍の雨にうすうす賤ケ嶽 木村蕪城
草もなく嶽のむら立つ狭霧かな 飯田蛇笏 霊芝
荵つり簷のうちなる如意ヶ嶽 岸風三楼
落葉嶽児は日溜に遊ばせて 西山泊雲 泊雲句集
蕨萌え弓月ヶ嶽に道ひとすぢ 松岡 英士
薪橇のとどまるひまも嶽おろし 飯田蛇笏 春蘭
藍染めし手を秋嶽にかざすなり 萩原麦草 麦嵐
藪巻や雲にかさなる嶽晴れて 三輪不撓
虹きえて諸嶺にとほき釈迦ケ嶽 飯田蛇笏 雪峡
蜂追ひのひと出て来たる茅ケ嶽 飯田龍太 今昔
蟻地嶽探りし指にぶらさがる 加藤知世子 花 季
蟻地嶽飢ゑてゐずやと砂こぼす 鷹羽狩行 五行
行く春の亭に子女よる嶽一つ 飯田蛇笏 霊芝
谿ひろくこだまもなくて嶽の秋 飯田蛇笏 雪峡
豁然と桔梗咲きけり八ケ嶽 雑草 長谷川零餘子
豆蒔くや噴煙小さく駒ケ嶽 岡村浩村
賤ケ嶽裾の寒柝田に廻る 斉藤夏風
遠めきて尖々の澄む八ッ嶽の冬 飯田蛇笏 雪峡
選句地嶽のただなかに懐手 鷹羽狩行 七草
那須嶽をとぢし雲よりほととぎす 上村占魚 『方眼』
野をこぞり菊挿す八ケ嶽の大斜面 木村蕪城 寒泉
野望 畠打の目にはなれずよ魔爺が嶽 蕪村遺稿 春
野菊咲き肩うちほそる茅ケ嶽 堀口星眠 営巣期
門前にそびゆる嶽や秋霞 飯田蛇笏
閼伽井嶽夜風ゆたかな盆踊 皆川盤水
雁くると秋嶽ばかり殖えて見ゆ 萩原麦草 麦嵐
雪あらた嶽ちかぢかと年むかふ 飯田蛇笏 春蘭
雪みえて雲ぬく嶽の日和かな 飯田蛇笏 山廬集
雪中の葱を折る雪賤ケ嶽 宇佐美魚目 秋収冬蔵
雪兎作つて溶けて如意ヶ嶽 波多野爽波 『湯呑』
雲きれて春料峭と嶽のいろ 飯田蛇笏 雪峡
雲海に嶽(たけ)のかげおく月夜かな 河野南畦 『花と流氷』
雲海に溺れじと聳つ蝶ヶ嶽 西本一都
雲間もえ笹一色に秋の嶽 飯田蛇笏 春蘭
雲霧や嶽の古道柿熟す 飯田蛇笏 霊芝
霜つよし蓮華と開く八ケ嶽 前田普羅
霜晴の那須野那須嶽故郷去る 深見けん二
霧がくれ男嶽がくれに女嶽かな 小川ひろ女
霧脱げば雲被てありし根子ケ嶽 西本一都 景色
青葉して浅間ケ嶽のくもりかな 村上鬼城
餅替の祭に五嶽かがやける 西本一都
駒ケ嶽凍てゝ巌を落としけり 前田普羅
駒ケ嶽右し左し花野追ふ 阿部みどり女
駒ヶ嶽を謎とし去りぬ秋の風 佐野良太 樫
駒ヶ嶽凍てて巌を落しけり 前田普羅
駒鳥やむと雨吹き上げぬ嶽樺 小松崎爽青
駒鳥啼くや嶽は日和の雪霞 小松崎爽青
鬱々とまた爽やかに嶽の白昼 飯田蛇笏
鬼やらひ果てて鳥来る閼伽井嶽 吉田初江
鬼やんまとび賤ケ嶽古戦場 大橋敦子
鮎汲みや喜撰ケ嶽に雲かゝる 几董
鰯雲はなやかに出て嶽日和 西本一都 景色
鳶啼くや日ほてりに嶽の雪を噛む 渡邊水巴 富士
鵲の巣に白嶽の嶮かすむなし 飯田蛇笏 春蘭
鷹とんで冬日あまぬし竜ケ嶽 前田普羅 新訂普羅句集
鷹ゆけり秋霞みして嶽の雪 飯田蛇笏 霊芝
鷹澄みて雪いただかぬ嶽もなし 西本一都 景色
鷹現れていまぞさやけし八ケ嶽 石田波郷
*のろが来て鳴く岳麓の夕べかな 大野雑草子
*はまなすに仔馬かくれて湖の斜里岳 石原八束 空の渚
あかしやの花や由布岳に歩み寄る 殿村莵絲子 花 季
あたゝかき昼岳上に雪残る 山口誓子
あやめ咲く野のかたむきに八ケ岳 木村蕪城
うつぼ草豊かに八ケ岳の雲霽らす 雨宮抱星
おとろへし吹雪の天に岳は燃ゆ 石橋辰之助 山暦
おのれ吐く雲と灼けをり駒ヶ岳 加藤楸邨
かもしかの睫毛冰れり空木岳 小川軽舟
かりがねの初陣来たり賤ケ岳 山下喜子
きしませて白菜漬くる岳颪 池田悦子
くろぐろと梅雨入の八ケ岳の大つむり 高澤良一 ももすずめ
ここ過ぎて霜陣営の賤ヶ岳山柿の実は棘より黒し 山崎方代
こぞり立つ屋久の八重岳青嵐 岡田日郎
ことごとく八ケ岳の峰見す建国日 江 ほむら
この夏岳心に刻む雲は散れど 福田蓼汀 秋風挽歌
こゝに見る由布の雄岳や蕨狩 高浜年尾
さびた咲き摩周岳けふ雲絶えつ 大島民郎
さむく~岳陽障子貼らで居り 萩原麦草 麦嵐
しづかなる駒岳の煙に北風ありや 京極杞陽
ぜんまいにどつと風吹く賤ヶ岳 すだ左千子
ちりぢりに春りんだうや甑岳 古舘曹人 樹下石上
つちふるや雄々しき常念岳見えがくれ 森 都
つらなりて雪岳宙をゆめみしむ 飯田蛇笏
てつぺんに瘤ある地蔵岳粧ふ 山田春生
との曇る泉ヶ岳や遅桜 畑中次郎
どこからも見ゆる鞍岳栗拾ふ 古賀 雁来紅
どれが甲斐駒ヶ岳やら桃咲けり 須永かず子
のこぎりの歯を秋天に剱岳 沢木欣一
はまなすや大き雲居る羅臼岳 飯塚 秀城
ひと雨に色濃き岳や虚抜き菜 長崎玲子
ふらふらと頭の上にくる岳蜻蛉 高澤良一 宿好
めぐり立つ北信五岳の淑気かな 柳沢二葉
よびかけてくる八ケ岳秋立つよ 及川貞 夕焼
わが岳の姿よきゆゑ暮遅し 藤原美峰
をだまきや鬱と暮れゆく燧岳 堀口星眠
をやみなき雪を剣岳の夕明り 金尾梅の門 古志の歌
アポイ岳砂利より立ちし壺すみれ 榎 美幸
オリオンや闇に峙つ聖岳 山下智子
キャンプの火あがれる空の穂高岳 加藤楸邨「寒雷」
キャンプ・ファイヤ消ゆると岳友輪を縮め 福田蓼汀 秋風挽歌
コスモスや甲斐駒ヶ岳晴れ渡る 小坂しづ
チングルマ一岳霧に現れず 友岡子郷 風日
メーデー歌雪形の出る岳の街 北沢 昇
一列の露の灯暁闇の岳に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
一岳に一路見えつつ秋の中 友岡子郷 未草
七月のてのひらにおく八ケ岳 神蔵 器
万二郎岳より万三郎岳へ威銃 原田青児
三光鳥鳴く賤が岳昏るる方 今村泗水
三日月の鍵かけ閉す真夜の岳 福田蓼汀
中腹に雲湧き上る岳紅葉 村田橙重
乗鞍は凡そ七岳霧月夜 松本たかし
乗鞍岳の春雪喬眠らせる 中澤康人
乗鞍岳へ唐子が跳んで春祭 黒田杏子
乗鞍岳烟り全天霰降る 仙田洋子 雲は王冠
乗鞍岳雪積みそむる夜なりけり 沙羅夕子
二上山の雄岳か星の流るるは 冨田みのる
五月来る伊豆に万次郎岳万三郎岳 原田青児
五竜岳巌頭しろしスキー挿す 望月たかし
今朝の秋岳の朝日は岳へさし 岡田日郎
今白岳双峰赤天狗青天狗 福田蓼汀 秋風挽歌
代掻くや雪かがやける十勝岳 伊藤凍魚
会津嶺も猫魔ヶ岳も紅葉晴 柏原眠雨
何菩薩春愁華岳ゑがきける 水原秋櫻子
元朝や八ツ岳の稜線金色に 五十川敏枝
光る風白樺から岳樺 矢島渚男 延年
八つ岳の襞の初雪峯をわかつ 和田暖泡
八グ岳仰ぐやわらび手にあまり 及川 貞
八ケ岳くもれば灯しペチカ焚く 大島民郎
八ケ岳の前どんと置かるる稲架襖 太田すま子
八ケ岳まづ一峰の初明り 宇都木水晶花
八ケ岳まなかひにあり月見草 町春草
八ケ岳むらさき頒けし葡萄かな 久米正雄 返り花
八ケ岳よりも偽八ケ岳親し秋の雲 甲斐遊糸
八ケ岳一望にして種を蒔く 青柳志解樹
八ケ岳仰ぐやわらび手にあまり 貞
八ケ岳山肌近し小梨散る 及川貞 夕焼
八ケ岳嶺々寄せ凛と眠り初む 割田あき子
八ケ岳見えて嬉しき焚火哉 前田普羅
八ケ岳雨吹きおとす田草取 相馬遷子 雪嶺
八ケ岳雲にうかべる野の桔梗 秋櫻子
八ケ岳霧の一日ダリヤ咲く 皆川盤水
八ケ岳颪を恃み寒天干す 古戸ふき子
八方の岳しづまりて薺打つ 飯田蛇笏
冠雪の羅臼岳ゆさぶる春の雷 鈴木夢亭
冬の雨岳寂光に雪降れり 沢木欣一
冬天を絞り上げたる那須五岳 福田道子
冬岳に向き一つ家の時計鳴る 村山古郷
冬帝先ず日をなげかけて駒ケ岳 高浜虚子
冬晴の岳日かげりてより澄みぬ 呉龍
冬晴の御在所岳の岩仏 友石示子
冬晴や立ちて八つ岳を見浅間を見 高浜虚子
冬麗の嶺へ立ち尽す岳樺 松村蒼石
凍傷の手もて岳友に花捧ぐ 福田蓼汀
凍雲を剱岳はらへり句碑びらき 水原 春郎
凩や妙義が岳にうすづく日 村上鬼城
初冠雪男剣岳の仁王立ち 平譯敏子
初夏の雲騰れり乗鞍岳とおもふ 石橋辰之助 山暦
初日の出剱岳は雲をぬぐところ 島木悦子
初空に樹氷うかべて甲武信岳 小野宏文
初虹や岳陽楼に登る人 尾崎紅葉
初雪の雌阿寒岳は噴きて恋ふ 野見山ひふみ
利酒や北信五岳背にし 北見さとる
剣岳水場で蝮捕へけり 山本洋子
南に火岳燃え聞こえたる卑弥弓呼は在り 高柳重信
厩出しやからりと晴れて阿蘇五岳 加藤いろは
又の旅夏と定めて富良野岳 高澤良一 素抱
双肘に岳の日躍る峡田打 木下ふみ子
句碑生るる春雪を被て木曾駒ケ岳は 原田青児
可愛岳に梟鳴けり星月夜 佐納冬芽
右左前後の岳の秋ひしひし 石川桂郎 含羞
合歓の実や畳の上の岳男 宮坂静生 樹下
吉良殿の花岳寺筍よく肥ゆる 富田潮児
名月や峰の退く八ケ岳 佐藤ます子
吾子あらばかくや岳友みな日焼 福田蓼汀 秋風挽歌
咲かぬひまはり岳に眠りし子に逢ひに 鍵和田[ゆう]子 未来図
唐黍を鳴かせてもぐや岳日和 日野口晃
四日はや霞むに似たる岳の雲 米谷静二
土用の日浅間ケ岳に落ちこんだり 村上鬼城「定本鬼城句集」
地の震ひ岳の木霊す御神渡 増澤正冬
地鳴きして岳去り難き日雀をり 澤田緑生
墓碑銘の岳魂とあり身にぞ入む 平田青雲
夏の雲背負ひて立てり八ケ岳 原田 稔
夏山を統べて槍ヶ岳真蒼なり 水原秋櫻子
夏帽を岳陽今年きつと買はむ 石川桂郎 含羞
夏深し万岳すでに蒼を帯び 福田蓼汀「暁光」
夏空の冷え透明ぞ岳鴉 有働亨 汐路
夏草や湖に声なき賤ケ岳 井口ひろ(獅子吼)
夏蚕眠る明神岳の一番星 中拓夫 愛鷹
夏霧へ発つ岳人の群しづか 堤高嶺「五嵐十雨」
夕べ岳のよく見えるなり花満つる 杉本寛
夕張岳霧とんでをり籐椅子に 山口青邨
夕日さす韓国岳の花芒 富田 要
夕日の岳冬帽おのず脱ぎ仰ぐ 川村紫陽
夕映えの木曽駒ケ岳春の雁 伊藤敬子
夕月や山火曇りに阿蘇五岳 工藤義夫
夕涼や編笠岳は雲解きて 古賀まり子 緑の野以後
夕澄みて秋冷の岳そろひけり 有働亨 汐路
夕焼けむと激つ雲脱ぐ八ケ岳 千代田葛彦 旅人木
夕虹の全き中に岳あをし 吉澤卯一
夕霞乗鞍岳に銀の鞍 伊藤敬子
夕露ののぼる稲穂に八ケ岳 橋本鶏二
夕顔や浅間が岳を棚の下 芥川龍之介
多良岳の雪を遥かに若菜摘む 岸川沙枝子
夜が長く鶏に風吹く八ツ岳 飯田龍太
夜の秋やこぼるるほどに岳の星 山本さだ
夜は夜の白雲靆(たなび)きて秋の岳 飯田蛇笏
大いなる冬芽飛雪が岳を消す 及川貞 夕焼
大寒や松と根を組む岳樺 清水道子
大根吊る荒縄ゆるび岳おろし 加古宗也
大沼の紅葉す天に駒ヶ岳の牙 野見山朱鳥
大滝の岳おもくおき鰯雲 松村蒼石 雁
大瑠璃や岳見る頬を霧が打つ 野中亮介
大花野雲のかがやく燧岳 伊澤福也
大露の有珠岳湖に裾ひけり 石原舟月 山鵲
大鵠の羽博つ暁の岳のいろ 宮坂静生 春の鹿
大鷹を吹き降ろしけり賤ケ岳 山本良明
天の川わが臥す岳がせきとめつ 澤田 緑生
天子ヶ岳眼鏡冷え立つとき茜 古沢太穂
天子岳に牛牽いてゆく雪男 萩原麦草 麦嵐
天狗岳攀る一列灼け灼けて 日野あや子
天馬棲む幻岳月に浮びけり 福田蓼汀 秋風挽歌
天騒ぎ摩利支天岳に雷おこる 水原秋櫻子
女神岳晴れ夫神岳に雲や信濃柿 藤江 昭
如窓ケ岳を去らぬ雲影稲を刈る 日野草城
妙見岳雲きそひ騰り時鳥 水原秋桜子
孤高なる岳は空より春が来る 小島左京
宝剣岳(ほうけん)の剣もどきの残雪光 高澤良一 鳩信
宝剣岳哮りて泛ぶ夜の雷火 小林碧郎
実山椒を手揉みに朝の燧岳 榎本好宏
宵に寝て目覚めぬ真夜の月岳に 福田蓼汀 山火
寒天終ひ近し八ケ岳より*はやて来る 宮坂静生 樹下
寒風の洗ひし鎧兜岳 右城暮石
小白鳥ひかり常念岳越ゆる 山下智子
小豆挽く噴煙太き十勝岳 富田 要
山廬まだ存す岳麓枯木中 高浜虚子
岩を攀ぢ立つ涼風の天狗岳 岡田日郎
岳あふぐわが惜春のチロル帽 澤田緑生
岳あふぐ胸もとに露かぎりなし 堀口星眠 火山灰の道
岳おぼろにて雪深きけものらよ 千代田葛彦 旅人木
岳からの風に反りをり凍豆腐 佐々木茂子
岳に雲荒く被さる靫草 石川玲子
岳のもと虎杖を食ひ水を飲み 青柳志解樹
岳の上にのぞける嶺も盛夏かな 村山古郷
岳の下野菊の川原ひろからず 大島民郎
岳の名を忘れて春の畦をゆく 友岡子郷 春隣
岳の幟下り来て湯町彩れる 村上一葉子
岳の幟発つにいろめく夏の露 宮津昭彦
岳の影ヨット卸せし波にあり 岡田貞峰
岳の日は伊吹風露の花に澄む 早崎明
岳の星今宵全し降誕祭 古賀まり子 降誕歌
岳の星家々氷柱そだつなり 及川貞 夕焼
岳の空暮れをはるまで蟆子はらふ 堀口星眠
岳の雨二日にあまり畳冷ゆ 石橋辰之助 山暦
岳はなほ白き彫刻鴨かへる 大島民郎
岳はみな雲の中なる牧びらき 岡本まち子
岳は秋風雲われをめぐるなり 岡田日郎
岳は秋黒部本流なほ澄まず 福田蓼汀 秋風挽歌
岳ばかり見て立つスキー怠けては 堀口星眠 営巣期
岳も田も暁闇にあり燕とぶ 高野途上
岳を捧げチーヌの村は紫苑冷ゆ 有働亨 汐路
岳下り来て安曇野に新酒酌む 岡田 貞峰
岳五つ据ゑて鎮守の秋祭 藤澤果抱
岳人のふるさと奥又白は秋 福田蓼汀 秋風挽歌
岳人のゆめはじまりぬ岩煙草 本沢恵子
岳人の大靴太脛卓の下 平畑静塔
岳人の寝息さだまる炉火太し 岡田 貞峰
岳人の朝ひとゝきの岩魚釣り 望月たかし
岳人の睡れる胸に烏頭 堀口星眠 営巣期
岳人は秋風を聴き雲を見る 岡田日郎
岳人らみな小屋を出て虹を見る 田上悦子
岳人ら喪の家に合掌して行きぬ 奈良喜代子(裸子)
岳兎貂にはらわたぬかれけり 西本一都
岳峨々と夢に聳えて明易き 村上 光子
岳暮れて岩魚づくしや浅間の湯 北尾国代
岳暮れて馬鈴薯の花うすうすと 芝 哲雄
岳更けて銀河激流となりにけり 福田蓼汀
岳枯るる人より高き樹のなくて 黒坂紫陽子
岳樺の芽のつつましきほととぎす 西本一都 景色
岳樺呑み込む海霧の迅さかな 高澤良一 素抱
岳樺大黄落の予感あり 松井光子
岳樺幹の阿修羅に秋烈日 高澤良一 ぱらりとせ
岳樺枝のたわみの若葉かな 瀧井孝作
岳烏さわがしき夜のスキー小屋 石橋辰之助 山暦
岳燻る蝦夷いそつつじ咲く涯に 石原八束 空の渚
岳父を埋めて帰路の梅園素通りに 奈良文夫
岳王の墓裏冷ゆる衆の中 石寒太 翔
岳蔽ふ雲を寒しと木賊刈る 三輪不撓
岳蜻蛉日差しの強さ知ってをり 高澤良一 宿好
岳越えて若葉のダムヘ送油管 大島民郎
岳迫る薪ストーブにチビチビ飲む 林 充孝
岳阻み銀河逆流せんばかり 福田蓼汀 秋風挽歌
岳雪のあざやかなるに麦を踏む 冬葉第一句集 吉田冬葉
岳雪解霧鐘巡礼なほ尽きず 菅原達也
岳颪まともに梢のさるをがせ 小鷹奇龍子
岳鴉霧の木曽川べりをとぶ 西村公鳳
岳麓の名残りの猟の野兎二匹 山本二三男
岳麓の思出尽きず夜の秋 松尾緑富
岳麓の旅や三日の雪に逢ふ 伊藤いと子
岳麓の旅コスモスにコスモスに 山田弘子 こぶし坂
岳麓の朝日きびきび山吹に 高澤良一 ももすずめ
岳麓の枯れのつづきの畳に母 友岡子郷 日の径
岳麓の石田やよべはどんど焚 百合山羽公 寒雁
岳麓の達谷山房蝉涼し 伊東宏晃
岳麓の闇より闇へほととぎす 山田弘子 こぶし坂
岳麓も浪うつ畦や田掻馬 百合山羽公 寒雁
岳麓や正月菓子の色ぞ濃き 北野民夫
岳麓冬物音はなればなれにす 宮津昭彦
峙てる宝剣岳が霧を堰く 和泉信子
師を辞して春雲かげる八ケ岳 柴田白葉女 『夕浪』
常念岳の夜の深さや鳥兜 長沢常良
常念岳の晴げんげ蜜ゑんじゆ蜜 中戸川朝人 星辰
常念岳の秀に明け残る寒昴 太田蛇秋
常念岳の秀を研ぎ澄ます空つ凍み 太田蛇秋
常念岳の膝下早苗の丈も伸び 高澤良一 ぱらりとせ
常念岳の風の尖りや若菜摘み 大久保里美
常念岳はまだ雪を置く花桜桃 森 澄雄
常念岳は雲中にあり天道虫 朝倉水木
常念岳へ雪の落葉松総立ちに 伊東宏晃
常念岳へ雲ひかり飛ぶ花林檎 伊東宏晃
常念岳も安曇野富士も雁渡し 加古宗也
常念岳をみてゐし人が雛を見る 斉藤夏風
常念岳を正面に桑解きにけり 古木俊子
常念岳を雲に閉ぢこめ鼬罠 唐沢南海子
幟立つ八ケ岳の古雪朝焼けて 相馬遷子 山國
年の市朝熊の岳の真柴かな 乙由
年送る岳友と聴く山の悲歌 福田蓼汀 秋風挽歌
年酒して阿蘇中岳の見ゆるかな 飴山實 『花浴び』
幻のごと雪照らふ天塩岳 古賀まり子 緑の野以後
幻影か岳か夕霧みだれそめ 大島民郎
引鴨や岳のすがたに星残り 岡田貞峰
御柱祭八ケ岳に木遣の届きをり 渡邊那津
徳沢に岳昏るるまで地蜂焼 大野今朝子
悪沢岳に悪き雲湧き風は秋 福田蓼汀 秋風挽歌
憑代の油日岳に鷹舞へり 田辺富子
挽馬嘶き八ッ岳の宿雪に幟立つ 宮武寒々 朱卓
文字焼の明星岳雲もなし 石塚友二
斜里岳に夕映のこるホップ摘 大網信行
斜里岳のけふはうっすら花はしどい 高澤良一 燕音
斜里岳や計り売りする薯焼酎 高野京子
斜里岳を海霧たちまちに隠しけり 橋本弘子
斜里岳暮れて白鳥路標失へり 平井さち子 紅き栞
新雪の那須岳見ゆる窯場訪ふ 伊東宏晃
於茂登岳裏も表も甘蔗刈る 山城久良光
日は凜と青垣なせる春の岳 柴田白葉女
日を吸ふて雲吐きて夏駒ヶ岳 稲垣晩童
日雷水晶岳を通りをり 山田春生
早苗田にきのふと違ふ八ツ岳 勝又木風雨
早蕨や岳双翼を張る日和 坂本山秀朗
明易や雲が渦巻く駒ケ岳 前田普羅「普羅句集」
明神岳に雪淡かりし蒸鰈 丸山しげる
明神岳浄めの霧を吹きおろす 水原秋桜子
星曼陀羅かけてぞ悼む岳は雪 福田蓼汀 秋風挽歌
春の月雌岳の肩に出て円し 茂里正治
春北風やまだ覚めやらぬ羅臼岳 岡田英子
春寒し地蔵の見えぬ地蔵岳 大木あまり 山の夢
春雷のかくれてゐたり甲武信岳 高畑浩平
時雨来る不風死岳の名をよしと 矢島渚男 延年
晩祷や編笠岳へ道凍り 堀口星眠
晩稲刈雲の動かぬ那須五岳 萩原まさこ
暁紅に外れて夏逝く槍ケ岳 水原秋櫻子
暁紅の岳へ巣立ちし鷹翔ける 研斎史
暁紅を外れて夏逝く槍ケ岳 水原秋桜子
暈を着て満月淡し岳の上 岩崎静子
曇りても那須岳まぶし牧開き 斎藤 道子
月さすや代田にもどる岳の影 大島民郎
月明や乗鞍岳に雪けむり 石橋辰之助 山暦
望岳窓今日は菖蒲の真つ盛り 富田潮児
朝焼や窓にあまれる穂高岳 小室善弘
朝焼雲貫き立てり鎌ヶ岳 岡田日郎
朝霧を脱ぎかけてゐる蝶ケ岳 川崎展宏
木曽駒岳のふところ深く年木樵 芋川幸子
松虫草雄々しき八ケ岳を庭に借り 関森勝夫
林檎*もぐ北信五岳真近にし 岸野不三夫
林檎もぐ夕映えの八ケ岳真向に 柳 清子
林檎咲きなべて雲脱ぐ八ケ岳 小澤満佐子
果しなく秋燕とぶや八ケ岳 及川貞 榧の實
枯れきわみたる骨相に八ケ岳 宮津昭彦
枯木立ありその上に八ケ岳 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
架線夫の天や雪岳うち乱れ 相馬遷子 雪嶺
根子岳がそこに見えゐて野に遊ぶ 大塚華恵
根子岳に魔神集へば年暮るる 保坂春苺
根子岳の雨の落ちくる秋薊 玉井玲子
桃咲くや裾うちけむる間の岳 小澤満佐子
桜桃の熟れゆく空に白根岳 福田甲子雄
梅雨雲を頂にして八ケ岳 高木晴子 花 季
棉咲いて天の焼ヶ岳爛れをり 石原八束 秋風琴
植田寒岳が平たく写りたる 野村仙水
極寒や顔の真上の白根岳 飯田龍太
槍ケ岳槍研ぎ澄まし寒明くる 小島左京
槍ヶ岳林檎の花にとほくあり 井上久枝
槍蓮華岳々見ゆる田植ゑてをり 及川貞 夕焼
樅の芽は煌き岳の肌は荒れぬ 有働亨 汐路
権現岳夜は雲閉ざし稲光 岡田日郎
権現岳弦をゆるめず春遠し 堀口星眠 営巣期
横岳は入日に燃えて雪崩れたり 小林碧郎
横岳ヘリフトの伸びて秋にはか 斉藤小夜
樹肌細めて冬に入らむと岳樺 松村蒼石 雁
橇ゆきて寂しき岳を野にのこす 堀口星眠 火山灰の道
橋に出て涼む前後に夜の岳 川村紫陽
橿鳥や浄らにゆがむ鈴ケ岳 堀口星眠 営巣期
残花飛ぶ風俄かなり賤ヶ岳 小澤満佐子
残菊の軍伝ふる賤ケ岳 宮木忠夫
残雪の岳のどこより夜の川 堀口星眠 樹の雫
残雪の引っ掻き傷めく羅臼岳 高澤良一 燕音
水ぎはの寒き日還る蓮華岳 藤田湘子
水晶岳更けて月下に雲払ふ 岡田日郎
水晶岳望の夜雲を脱ぎ聳ゆ 岡田日郎
水晶岳秋風湧けば雲まとふ 岡田日郎
水晶岳越えて飛び去る月の雲 岡田日郎
水晶岳雲脱ぎ望の夜を聳ゆ 岡田日郎
水漬く樺霧氷の岳と夜明けたり 白澤よし子
氷岳の見える病院 コップの無色 伊丹公子 アーギライト
氷岳は桂冠 インディアン一家の旅 伊丹公子 アーギライト
氷岳薔薇いろ しばしとどまれ 神の刻 伊丹公子 機内楽
河蘇五岳まなかひにして馬肥ゆる 中村青径
波うつて八ケ岳立つ霜くすべ 澤田緑生
洗はれて朝の岳濃し沙羅の花 矢島渚男
流氷やはるかに尖る羅臼岳 小森行々子
海の雪吹きよせて聳つ利尻岳 深谷雄大
海の雪吹き上げて聳つ利尻岳 深谷雄大
淡雪の明星ケ岳夜空占む 矢島房利
渡渉幾度ずぶ濡れ岳友キャンプ張る 福田蓼汀 秋風挽歌
湖のまつり岳樺の葉はハート形 北野民夫
湖の面に賤ケ岳より春時雨 八木林之助
漆黒の水晶岳へ星飛べり 山下智子
濁流は澄むまじ岳に雪来るとも 福田蓼汀 秋風挽歌
火を起す音の笹鳴き燧岳 堀口星眠 営巣期
灯をとりに那須ヶ岳より大蛾来る 富安風生
灼けそゝぐ日の岩にゐて岳しづか 石橋辰之助 山暦
炉にもどり岳の饗宴胸を占む 大島民郎
炎天へ守門ヶ岳のひびきつつ 佐野良太
炎天やおもて起して甑岳(こしきだけ) 細川加賀 『玉虫』
炭竃の上に真白に那須ケ岳 岡安迷子
無言で対す無言の雪の八ケ岳 小林草山
焼け岳にけむりのたてり麻を刈る 田中冬二 俳句拾遺
焼芋や月の叡山如意ケ岳 日野草城
燕岳の日が落ちてきてあたたかし 曹人
燕岳蕎麦咲く丘に浮かぶかも 水原秋桜子
燕来て八ケ岳北壁も斑雪なす 相馬遷子 山国
父の日の消印岳の峨々と立つ 杉田久美子
父子草生ふ賤が岳古戦場 河府雪於
爺々岳の噴煙ま直ぐ昆布干す 石渡穂子「石渡穂子句集」
爺ケ岳真上に冬の虹立てり 大原雪山
爺ケ岳雪かがやくに種おろす 鳥羽とほる
爺ヶ岳また雪つもる社日かな 滝沢伊代次
爺ヶ岳八十八夜の月くもる 服部鹿頭矢
爽籟に肌みがかれし岳樺 大川輝子
牧に咲く嫁菜よさらば岳に雪 有働亨 汐路
牧閉ぢし日の八ケ岳輝かず 皆川盤水
牧閉づ日手触れむばかり八ケ岳 篠田悌二郎
狐雨白々と聳つ秋の槍ケ岳 羽部洞然
猪鍋や背にしんしんと夜の岳 川村紫陽
獅子独活の群落白き岳月夜 福田蓼汀
玲瓏と雪頂いて暑寒別岳(しょかんべつ) 高澤良一 素抱
瑠璃鳴くや頂きけむる越後駒ヶ岳 佐藤草豊
由布岳に秋の虹たつ湯花掻 木村敏子
由布岳の初かな~を湯壷まで 飴山實 『次の花』
由布岳の放つ雲より落雲雀 加藤安希子
由布岳の空遠ざかる冬の雁 杉田江美子
由布岳の裾に芋茎のすだれ干し 深海利代子
由布岳へ打つ九面太鼓や苗代田 平子 公一
由布岳を庭の景とし干菜宿 千代田景石
甲斐駒ケ岳ふかぶかと青田入れ 広瀬直人
甲斐駒ヶ岳ぎりぎりに田水張る 原田喬
甲斐駒ヶ岳の輝く朝や花辛夷 三原清暁
甲斐駒岳を前にのけぞる乙鳥 高澤良一 さざなみやつこ
甲斐駒岳を斜めに仰ぐハンモック 宮武章之
甲武信岳うかぶ月夜を鹿鳴けり 根岸善雄
畚岳遠望りんだう咲く峠 高澤良一 寒暑
登ってさんざん下りてさんざん岳夕立 高澤良一 宿好
白岳の白根の端山焼ける見ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
白日や一岳韻く代田水 宇咲冬男「乾坤」
白樺の咲くとは知らず岳を見る 水原秋櫻子
白樺の花岳人に独語なし 小川軽舟
白樺の霧しづくして岳晴れぬ 水原秋桜子
白樺枯れ陽筋頒け合ふ八ケ岳 北野民夫
百合ひらき甲斐駒ヶ岳目をさます 福田甲子雄
百舌鳥鳴くや雲みだれ寄る槍ヶ岳 水原秋櫻子
盆明けの月の明るき蓮華岳 山田春生
目細鳴き雲間かがやく間の岳 中村信一
真夜の岳銀河流るる音を聴け 福田蓼汀
真夜起きて方位疑ふ岳の月 福田蓼汀 秋風挽歌
真赭なる尾花のそよぐ賤ヶ岳 吉田紫乃
眠る蚕に雲の尽きたる駒ケ岳 飯野燦雨
眼細鳴き岳は眼深に雲の笠 大島民郎
短夜の水ひびきゐる駒ヶ岳 飯田龍太
神の座の白岳照らす日一輪 福田蓼汀 秋風挽歌
神代ざくら八ッ岳と甲斐駒岳ふりわけて 多田裕計
神送る雲より立ちて甲武信岳 中村 翠湖
禽獣と寝起をともに岳の秋 福田蓼汀 秋風挽歌
秋つばめ餓鬼岳寂と色を変ふ 藤田湘子 てんてん
秋の山四明岳の猿沸くごとし 斉藤夏風
秋の岳師の瞳師の所作生きてくる 柴田白葉女 花寂び 以後
秋の湖岳友人界のもの探す 福田蓼汀 秋風挽歌
秋の雲焼ケ岳噴煙にすはれゆく 鈴鹿野風呂 浜木綿
秋天の岳のひとつに火山あり 大森三保子
秋山の穂高の岳を母と思ふ 松村巨湫
秋岳ののび極まりてとどまれり 飯田龍太
秋岳の底に師は逝くただひとり 柴田白葉女 花寂び 以後
秋晴の四明ケ岳のベンチかな 比叡 野村泊月
秋水秋風声あり呼べど岳応へず 福田蓼汀 秋風挽歌
秋湖抱く嶺々豁然と賤ヶ岳 伊東宏晃
秋澄むやまのあたりなる八ケ岳 五百木飄亭
秋燕群れ岳友集ふもわが子なし 福田蓼汀 秋風挽歌
秋虹の円に鎮もる名久井岳 小西暎子
秋風やいただき割れし燧岳 福田蓼汀
秋風やポプラの上の駒ヶ岳 高浜虚子
秋風や永久に怒れる有珠二岳 遠藤梧逸
種おろし少し早くて爺ヶ岳 大橋敦子
稲光蝙蝠岳は闇に没し 福田蓼汀 秋風挽歌
稲妻の斬りさいなめる真夜の岳 福田蓼汀(りょうてい)(1905-88)
稲妻の闇大いなる燧ヶ岳 針ヶ谷里三
穂高岳真つ向うにして岩魚釣 石橋辰之助 山暦
穂高岳秋立つ空の紺青に 及川貞 夕焼
穂高岳霧さへ嶺を越えなやむ 水原秋櫻子
穴釣の小人並びに岳さびし 岡本まち子
立子忌や岳の風神まだ眠る 市川弥栄乃
竜胆や夕映きそふ岳いくつ 中村信一
竜胆や巌頭のぞく剣岳 水原秋櫻子
竜門の岳吹き晴るる根深汁 森尾仁子
笠が岳の駆け出しさうに大西日 都倉義孝
笠岳が笠を脱いだる柳蘭 斉藤美規
笠岳に夕立雲たつ鱒を釣る 田中冬二 俳句拾遺
筒鳥の筒打ちかへす羅臼岳 上村占魚
筒鳥の遠音か夕雲岳とざす 福田 蓼汀
筒鳥の遠鳴き女岳雲の中 水野博子
節分や八ケ岳の裾回を燈の電車 宮坂静生 春の鹿
粟の穂や百貝岳にはたた神 宇佐美魚目 天地存問
粟岳を仰ぐ菜の花畑かな 樋口フミ子
紅梅や聖ケ岳に雲ほぐれ 有働亨 汐路
紅葉していろはを綴る岳の沼 古賀まり子
綿虫が傘のがれゆく甲武信岳 堀口星眠 火山灰の道
編笠岳肩あはく立つ稲びかり 古賀まり子
繭干すや農鳥岳にとはの雪 辰之助
羚羊の噛傷寒し岳樺 大立しづ
羚羊の子五十鈴ちやんとぞ岳の町 工藤智子
羽拡ぐ雪形残り蝶ケ岳 川口崇子
老鶯や南郷谷の阿蘇五岳 青木秀水
胸さらす冷たき岳の夕焼に 澤田緑生
至仏岳直登の径霧に消ゆ 市村究一郎
艶やかに鴉たたかふ岳雲解 千代田葛彦 旅人木
芋子汁振り向くたびに地蔵岳 草間時彦
芒野の鳶より低し賤ケ岳 水原秋櫻子
芙美子忌や浮雲ならぶ八ケ岳 川越昭子
花からたち岳父に夢二の切抜帳 小池文子
花時計すみれの刻に火噴く岳 本宮鼎三
花梓襞に雪おく地蔵岳 山田春生
花野より巌そびえたり八ケ岳 相馬遷子 山國
芳しき雪渓の岳おそれけり 伊藤敬子
芽吹きつつ一夜に雪の賤ヶ岳 渡会昌広
若鮎の川はうねうね白神岳ヘ 佐々木とみ子
若鮎の遡上うながす岳の雨 野原春醪
茅ケ岳霜どけ径を糸のごと 前田普羅
茱萸酒やもたれ心も岳の松 沙羅
茶臼岳かたまりて死す黄金虫 青柳志解樹
茶臼岳熔岩に浅茅の色づけり 三好かほる
荒岳に滾つ湯地獄霧氷咲く 石原八束
菊花晴れ群岳に起つ日章旗 長谷川かな女 雨 月
菜の花に北信五岳月夜かな 高澤良一 燕音
萱くべし焚火にゆがむ甲斐の岳 阿部ひろし
萱刈つて岳麓の冬見えはじむ 岡本 眸
落穂拾ひ去るや夕澄む穂高岳 水原秋櫻子
葛はつと散るむらさきの爺ヶ岳 石寒太 あるき神
蕎麦を碾く灯をにじませり岳の霧 浅沼艸月
蕗咲くや雲よりしろき塩見岳 渡辺立男
蕨干しあまれる簷に雪の岳 石川桂郎 含羞
藁塚の離ればなれに岳颪 太田土男
虫出しの雷を小出しに駒ケ岳 沢 正夫
虫干しや人の下り来る賤ケ岳 大峯あきら
虫干や人の下り来る賤ヶ岳 大峯あきら「紺碧の鐘」
虹の中雨飛び水晶岳聳ゆ 岡田日郎「赤日」
虹まとふ月岳を越え傾きぬ 福田蓼汀 秋風挽歌
虹映り綺羅星映る岳の池 福田蓼汀 秋風挽歌
蚊火消ゆや乗鞍岳に星ひとつ 水原秋櫻子
蛙田や残雪うつす笠ヶ岳 水原秋桜子
蜂飼ひのひと出て来たる茅ヶ岳 飯田龍太
蜘蛛ふとる観音岳の酷暑かな 保坂敏子
蝶ケ岳見失ひては鳩を吹く 松村多美
蝶ヶ岳泛べたる野の雪解靄 岡田貞峰
蟇鳴いて黒雲かくす燧岳 福田蓼汀 秋風挽歌
蟇鳴くや夜空に跼む至仏岳 小林碧郎
行く秋や願ひ鐘打つ長岳寺 渡辺政子
裏八ケ岳の晩夏うぐひす叢に 宮坂静生 雹
裏駒ヶ岳の天辺までも揚雲雀 森山暁湖
襞おほふ雲影さむし天子岳 小野宏文
賎ヶ岳暮れて煮えだす牡丹鍋 榊原順子
賤が岳見ゆる湖畔の畦を塗る 伊東宏晃
賤ケ岳へ鳶吹き上げて余呉は雪 猿橋統流子
賤ケ岳より風つよき門火かな 対中いずみ
賤ケ岳裾の寒柝田に廻る 斎藤夏風
賤ケ岳越えたる雁の乱れかな 小島健 木の実
賤ヶ岳まではとどかぬ草矢打つ 久田美智子
賤ヶ岳まで早稲の香の吹き上る 水野征男
賤ヶ岳よりの引き水繭を煮る 鈴木みや子
賤ヶ岳より降る雪や*いさざ汲む 井桁蒼水
賤ヶ岳越え来し夜を水鶏鳴く 中川芳子
賤ヶ岳青葉若葉に鎧はるる 野原春醪
赤岳に夕日秋蝉鳴きはげむ 伊藤一枝
赤岳の影尖り来て牧を閑づ 小林碧郎
赤岳の烈風なぎて聖夜なり 古賀まり子 降誕歌
赤岳の裾なだらかに蕎麦の花 山本絢子
赤岳の雹のたばしる牧草地 山岸治子
赤岳の霧流れ来るレタス畑 長江克江
赤岳の面起しのほととぎす 石田勝彦 秋興
赤岳へ道荒れつくす穴まどひ 堀口星眠 営巣期
赤岳を鋭き風つつむけらつつき 橋本榮治 越在
赤牛岳に火星水晶岳に月 岡田日郎
赤牛岳を墓標と見ればほととぎす 福田蓼汀 秋風挽歌
赭き岳野に遺されつ秋の暮 相馬遷子 山國
越中の虹が呼び出す剣岳 名倉春月
越前岳すうつと一本曼珠沙華 市村穎子
身をすてて聳つ極寒の駒ケ岳 福田甲子雄
身を捨てて立つ極寒の駒ケ岳 福田甲子雄
農鳥岳や春雷の日矢太かりき いさ桜子
農鳥岳霧荒れ農鳥小屋灯る 岡田日郎
逃水や斜里岳とろけ出しにけり 高澤良一 燕音
通し鴨あるとき賤ヶ岳へとぶ 杉浦東雲
連翹や雲の居座る烏帽子岳 竹内和歌枝
遊船や阿寒二岳を左右の窓 高濱年尾 年尾句集
道返す背に雪岳の光満ち 相馬遷子 雪嶺
遠野火の煙の上に茅ケ岳 河野友人
遠雲の夏おとろへぬ阿寒岳 水原秋櫻子
遠雷や裾うつくしき八ケ岳 及川貞 夕焼
遠青嶺煽りて岳の大幟 町田しげき
那須五岳霧の二岳を余情とす 樽谷青濤
那須岳の霧の下りくる田植かな 尾花トシ
那須岳を吹きくる風に稲架を解く 小野三子
郭公に全容青き茅ケ岳 小野宏文
郭公の谺に晴るる阿蘇五岳 甘田正翠「紫木蓮」
郭公の連呼絶えざる八ケ岳は好し 高澤良一 ももすずめ
郭公や天凄惨の岳かげり 有働亨 汐路
郭公や沼も燧岳も茜色 石川英子
釈迦岳の襞かげ濃かり鯉幟 高島筍雄
野分して餓鬼岳襞をあらはにす 玉木春夫
野分めく風を面に景岳忌 松崎 豊
野菊咲き肩うちほそる茅ケ岳 堀口星眠 営巣期
針ノ木岳見し乗越の鳥兜 奥村喜代子
鈴生りの林檎讃へて岳に雪 三嶋隆英
銀河曼陀羅かけ荘厳す聖岳 福田蓼汀
銀漢のさざなみ寄する杓子岳 星野恒彦
鋤き残る花菜に剣岳そびえたり 金尾梅の門 古志の歌
鋸草の花にはじまる岳の嶮 木内翠園
鍬始浅間ヶ岳に雲かゝる 村上鬼城
鎌ケ岳先づ立ちおこり露の天 橋本鶏二
闇の沼いくつ抱ける月の岳 八牧美喜子
阿弥陀岳畦火の上にゆらぎをり 小口理市
阿蘇五岳一岳冬も眠られず 鈴木真砂女 夕螢
阿蘇五岳乗せて波打つ芒原 穐好樹菟男
阿蘇五岳噴煙吐きて秋日和 有光和子
阿蘇五岳方位を変へてゐし花野 中村田人
阿蘇五岳枯野に起ちて雲に遊ぶ 高井北杜
阿蘇五岳花野を行けば浮き沈み 篠原樹風
阿蘇五岳覚ます山火のあがりけり 増田 富子
阿蘇五岳雨に煙りて桐の花 井田満津子
除雪夫に曉の日輪岳を出づ 伊東宏晃
陽炎や落石ひびく前の岳 篠田悌二郎
雀交る残雪の岳その上に 野澤節子 黄 炎
雁帰る地平の小さき羅臼岳 伊藤ゆめ
雌岳いま雄岳がくれに野路の秋 山田弘子 こぶし坂
雨かなし晴るるもかなし岳粧ふ 福田蓼汀 秋風挽歌
雨燕翔けてはしぬぐ間の岳 水原秋桜子
雪の岳天飛ぶ雲の触るゝなし 水原秋櫻子
雪はやき赤岳農婦菊を焚く 及川貞 夕焼
雪下し剣岳はひとり夕焼くる 金尾梅の門 古志の歌
雪中に赤芽たたえて岳樺 松村蒼石 雁
雪壁の風身を刺すや岳開き 熊田鹿石
雪山の肌より顕るる岳かんば 関本テル
雪岳が並びおり実のななかまど 和知喜八 同齢
雪岳の上眼が暗く鬼がいて 和知喜八 同齢
雪岳の胸のももいろ海が見る 和知喜八 同齢
雪崩かなし羚羊の死岳人の死 福田蓼汀 秋風挽歌
雪崩るるや雲垂れて岳響きあふ 小林 碧郎
雪形の駒かけのぼる駒ケ岳 井口幸朗
雪椿青空のぞく粟ヶ岳 関口青稲
雪残る山襞深し風不死岳 野村幸子
雪渓の一岳ごとに蒼ざめぬ 伊藤敬子
雪渓の真下に駒ヶ岳神社 後藤比奈夫
雪渓の翅垂るるごと岳暮るる 岡村千恵子
雪煙岳に孤高のこゝろあり 岡田貞峰
雪田に跳び下りみえる白根岳 和知喜八 同齢
雪眼鏡紫紺の岳と相まみゆ 谷野予志
雪解や蝶あらはれし蝶ヶ岳 福田蓼汀 秋風挽歌
雪載せて岳あらはるる端午かな 橋本榮治 越在
雪間なく来るべし馬柵に岳鴉 福田蓼汀 山火
雪雲をかざして岳と岳聳ゆ 岡田日郎
雲と吾と韓国岳越える夏逝くぞ 金子兜太
雲の中赤岳崩ゆる菌狩 相生垣瓜人 微茫集
雲を吐く大江ケ岳の紅葉かな 会津八一
雲形や獅子駆け鹿島槍ヶ岳 加古宗也
雲海に刃を研ぎ澄ます槍ヶ岳 平野芳子
雲海に溺れ喘げり八ケ岳 水原秋桜子
雲海の日の出にゆらぐ岳ひとつ 岡本まち子
雲海やゆるがぬ巌の穂高岳 水原秋桜子
雲脱ぎて岳さやかなる牡丹かな 徳永山冬子
雷火立つ肩の怒れる駒ヶ岳 原 柯城
雷鳥や岳の荘巌一身に 加藤かけい
雷鳥を見しより岳の昏れにけり 毛笠静風
霜きびしなどて名づけし継子岳 福田蓼汀
霜つよし蓮華とひらく八ケ岳 前田普羅
霜の日や岳がしづかに語りいづ 手島 靖一
霜強し蓮華と開く八ケ岳 前田普羅
霜晴や富士に応ふる八ケ岳 井上ゆかり
霜枯や従容として至仏岳 堀口星眠 営巣期
霧に沈む笠岳岩魚焼かれゐて 及川貞 夕焼
霧の田を女耕し八ケ岳の裾 西村公鳳
霧好きは一位に如かず摩利支天岳(まりしてん) 高澤良一 素抱
霧晴れて肩あらはるる鎧岳 藤本安騎生
霧来れば阿修羅見す木ぞ岳樺 高澤良一 鳩信
霧浄土てふも岳人泣かせかな 平田青雲
霧過ぎて照る餓鬼岳は岩ばかり 小野宏文
霧黒くなり来て岳も鬼相帯ぶ 太田嗟
露けしや蝶の小粒の賤ケ岳 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
青嵐岳王廟を吹きまくる 川崎展宏
青梅雨のガレ場あらはに蛭ケ岳 小野宏文
青空の常念岳や畳替 小澤實 砧
青鵐鳴き雲より出づる八ツ岳 宮口喜代子
頬白の声に明け暮る岳住ひ 藤原よしえ
頬白や裾濃の靄に岳光る 千代田葛彦 旅人木
頭禿げはるかなるもの冬の岳 和知喜八 同齢
風の木の氷塵きそふ岳の前 阿部ひろし
飛雪中暁紅燦と八ケ岳 伊東宏晃
餓鬼岳は紅葉緋縅岩鎧ふ 福田蓼汀 秋風挽歌
餓鬼岳は雷神の座や見えずとも 小澤實「瞬間」
馬の鼻なでて雪嶺のアポイ岳 笠川弘子
駒ケ岳乗鞍除隊入営の道乾きし 雑草 長谷川零餘子
駒ケ岳凍てて巌を落としけり 前田普羅
駒ケ岳残雪里人とゐて祓はるる 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
駒ケ岳裾曳き秋の湖に消ゆ 星野立子
駒ケ岳遠山となる花野かな 高木晴子
駒ヶ岳凍てて巌を落しけり 前田普羅
駒ヶ岳太刀傷のごと雪残る 山田春生
駒ヶ岳裾曳き秋の湖に消ゆ 星野立子
駒ヶ岳雪解ごよみに田植する 角川源義
駒ヶ岳雲居に蒼くいくひきの蜂をあつむる百合の一花は 中川昭
駒岳澄めば仙丈岳が降る草雲雀 鈴木鵬于
駒岳鳴つて花野の奥の放牧場 石原八束
駒鳥の啼くたび岳の昏さ増す 岡田日郎
駒鳥の来鳴きて岳の雪ゆるぶ 倉橋羊村
高空に照り合ふ岳や青林檎 長沼冨久子
鬼の子を鳴かせ望岳亭の軒 加古宗也
魂まつり一本みちに岳が聳つ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
魚が氷に上りて闇に八ケ岳 宮坂静生 春の鹿
鮎汲みや喜撰ケ岳に雲かゝる 几董
鮒寿司やうしろの闇は賤ヶ岳 小林未明(恵那)
鯉幟岳麓の田植始まれり 渡邊水巴 富士
鴛鴦帰り雲烟岳をのぼりつぐ 堀口星眠 営巣期
鴛鴦涼し明神岳の影曳きて 原 柯城
鹿垣の尽き斜里岳の登山口 藤瀬正美
黄落のからまつ襖八ケ岳の風 高野幸江
黄葉の「宝の木」岳人誰も目当 福田蓼汀 秋風挽歌
黒百合や風のゆくへに塩見岳 岡田貞峰
龍胆や巌頭のぞく剣岳 水原秋櫻子
●銅山
別子銅山のぼれば桔梗また桔梗 津村芳水
枯れきつて崩崖のなだれの銅山の墓地 石原八束 空の渚
男盛りが育てるしめじ閉銅山 花谷和子
草笛に吹くよ別子の銅山節 品川鈴子
製錬のにほひかそかに夏山路(下野足尾銅山) 上村占魚 『霧積』
足尾銅山枯葉に重さありにけり 渡辺恭子
銅山のいたどりの花咲きにけり 石川登柿
銅山へくまなく朝日茄子の馬 磯貝碧蹄館
霜晴れのうす煙らひて銅山の墓地 石原八束 空の渚
●遠山
きりぎりす夜の遠山となりゆくや 臼田亞浪 定本亜浪句集
とんぼ飛ぶ遠山色に翅すかし 山口青邨
ねんねこに遠山脈の澄む日かな 石田いづみ
ひとつ家の遠山火事に寝しづめる 西島麦南 人音
ひねもすや遠山かくす干蒲団 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
ふらここを下りて遠山眼にうごく 竹坡
ぽんぽんと山桜置き遠山並み 高澤良一 燕音
みちのくの闇ふかみかも遠山火 山口青邨
むらさきに暮るる遠山田鳧鳴く 今井さだ子
わが胸の乳は遠山ふところ手 赤松[ケイ]子
ペーチカに寄りしあのころ遠山河 田口三千代子
何も変らず遠山に去りし年 耕一郎
元日や遠山一つあたゝかき 中島月笠 月笠句集
冬銀河遠山脈に降るごとし 田村コト
吹雪くなか遠山襞の雪白し 鈴木貞雄
土間ぬけて遠山へ去る青田風 桂信子 黄 瀬
夏蕨遠山見ゆるころ夕餉 大野林火
夕焼けて遠山雲の意にそへり 龍太
寒波来て遠山白し秋彼岸 相馬遷子 雪嶺
尾長とぶ雪の遠山さみどりに 椎橋清翠
山里に尚遠山の四月かな 尾崎迷堂 孤輪
干蒲団打てば遠山縷のごとし 飯田龍太
平地行てことに遠山ざくらかな 蕪村遺稿 春
懸仏かけてありけり遠山火 福谷俊子
手をついて見る遠山の秋の暮 小林康治 『叢林』
旅人に遠山見せて蕎麦の花 毛塚静枝
早々と百姓寝ねし夕月夜 遠山 楠翁子
春の雪ゆきの遠山見えて降る 鶴田卓池(たくち)(1768-1845)
晴れし香のコーヒー遠山ほど霞み 野澤節子 黄 炎
月の出のまず遠山の立ち上がり 徳弘純 麦のほとり
月代にある遠山や時鳥 尾崎迷堂 孤輪
月明の遠山となる壁鏡 桂信子 遠い橋
来ぬ客に遠山吹の雨ばかり 永井龍男
柿のれん遠山脈は背振山 仲 真一
桜さくと遠山見こせ眉の八 上島鬼貫
橙や遠山はまだ雪降らず 角川春樹
湖暮れてゆく遠山の羽ばたきに 広重知子
満紅の柿や遠山にもすがる 百合山羽公 寒雁
炎天へ遠山をおく竹の幹 桂信子 黄 瀬
熱出づる予感にをりぬ遠山火 森藤 千鶴
牡丹剪る遠山脈に残り雪 田中冬二 麦ほこり
牧を閉ぢ遠山神となりにけり 吉舘曹人
町はづれ秋遠山の色なつかし 山田みづえ
秋山の上の遠山移るなり 中村草田男
秋燕をくらき戸が吸ふ遠山家 能村登四郎 合掌部落
稲の月遠山見えて昼のまゝ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
稲妻や遠山低き湖向ふ 鈴鹿野風呂 浜木綿
竿のもの取りこむ母に遠山火 清原枴童 枴童句集
絵も斯や遠山低し鳳巾の糸 支考
聖週や月星濡るる遠山脈 山本よ志朗
舟出して遠山桜見つけたり 呑獅
花茨遠山消して空気熟れ 宮津昭彦
菜の花や遠山どりの尾上まで 蕪村遺稿 春
藤咲くや遠山うつす池の水 井上井月
藪入りの朝遠山のあらたなる 伊東達夫
蟹赤し遠山あをし母睡し間 石田波郷「春嵐」
赤光をつらねてくらし遠山火 竹下しづの女 [はやて]
遅き日を遠山鳥の鳴音かな 星野麦人
遠天へ遠山をおく竹の幹 桂信子
遠山がおいしそうなり間石忌 永末恵子
遠山が目玉にうつるとんぼ哉 小林一茶
遠山にいかづち籠る稲の花 佐々木 咲
遠山にうごかぬ雲や氷魚取 松婦
遠山にきれぎれの虹つなぎつつわが父の座に雪は降りつむ 辺見じゅん
遠山にして人恋し薄霞 涼袋
遠山にまた来し雪に鮎を汲む 松下芳子
遠山にもう雪の来ぬ青さかな 蓬田紀枝子
遠山に一瀑かゝる安居かな 安養寺義明
遠山に八十八夜の雲生る 新井勝美
遠山に冬の気配の二三日 桂 信子
遠山に及ぶ思ひを秋の暮 斎藤玄 無畔
遠山に日の當りたる枯野かな 高浜虚子
遠山に星もたらしぬ神渡 吉田巨蕪
遠山に暖き里見えにけり 村上鬼城
遠山に残る雪あり牡丹園 佐藤亜矢子
遠山に滝かかりゐる紅葉かな 谷向竹桃
遠山に雪きてをりぬ赤かぶら 村上易子
遠山に雪のふたたび小鮎波 鷲谷七菜子 花寂び 以後
遠山に雪のまだありチューリップ 高田風人子
遠山に雪もたらしぬ神渡 吉田巨蕪
遠山に雪来てゆるぶ干菜綱 渡辺文雄
遠山に雲ゆくばかり麦を蒔く 桂信子 黄 瀬
遠山のうすうすとあり梅ひらく 茂里正治
遠山のかがやき寒に入りにけり 澤村昭代
遠山のかくも晴れたり菜の花忌 大森理恵
遠山のかたちのこりぬ螢籠 細川加賀 『傷痕』
遠山のくつがへるさま郭公鳴く 山口青邨
遠山のくれおそしともながめつゝ 清原枴童 枴童句集
遠山のさきの雨雲葱づくり 大木あまり 雲の塔
遠山のすさまじきまで晴れ渡り 向井千代子
遠山のそのまま秋や浅紫 阿部みどり女
遠山のはだれ際やか九山忌 太平栄子
遠山のまだ昏れきらぬ端居かな 鈴木愛子
遠山のまだ見えてゐる寒暮かな 片山由美子 水精
遠山の低く引かれて眠りそむ 阿部みどり女
遠山の奥の山見ゆ蕎麦の花 水原秋櫻子
遠山の奥遠山の雪白し 斉藤忠男
遠山の尾根をましろに草城忌 田中麗子
遠山の峯曇り居る菫哉 内田百間
遠山の折り目正しき淑気かな 伊藤敬子
遠山の日の半眼に蕗の薹 前田照世
遠山の明るきところ今年竹 三島牧子
遠山の昏れかかる川面やまべ跳ぶ 篠田悦子
遠山の晴れつづく夜の中稲かな 塩谷半僊
遠山の晴れ退きぬ寒晒 勝又一透
遠山の晴間みじかし吾亦紅 上田五千石 森林
遠山の朝日てんてん雪しづく 桜井博道 海上
遠山の本降りとなる桜鯛 斎藤梅子
遠山の枯生光れる二日かな 本郷迂象
遠山の焼くる火見えて夕淋し 山焼 正岡子規
遠山の照る雪はかの坂ならむ 篠原梵 雨
遠山の色を濃うして春田かな 月舟俳句集 原月舟
遠山の花に明るしうしろ窓 一茶
遠山の落窪にも星ひとつ凍む 篠原梵 雨
遠山の薄花桜身うけせん 桜 正岡子規
遠山の虹美しき日照雨かな 町 春草
遠山の襞引き寄せて春の雪 小林康治
遠山の見えて近くの山霞む 船坂ちか子
遠山の雨をふくみて焼けにけり 清原枴童 枴童句集
遠山の雪に遅麦まきにけり 村上鬼城
遠山の雪に飛びけり烏二羽 村上鬼城
遠山の雪ひかるどこまで行く 山頭火
遠山の雪を花とも西行忌 上田五千石
遠山の雪見る市の蜜柑かな 石井露月
遠山の雲ほどけゆく花林檎 田村コト
遠山の雲を脱ぎたる花林檎 石川皓子
遠山の雲起つてくる祭かな 木村敏男
遠山の霧よりとどく風の音 椎橋清翠
遠山は利休色して鳥曇 岩田洋子
遠山は蕨の茎の下にあり 鈴木花蓑句集
遠山は雨か飲み干す新走 服部一彦
遠山は雲を払ひて土用太郎 檜山京子
遠山へ喪服を垂らす花の昼 桂信子 黄 瀬
遠山へ水滴連ね蜘蛛の糸 樟豊(秋)
遠山もさだかに春よ仏舎利塔 阿部みどり女 月下美人
遠山もなき麦畑の菫かな 野村喜舟 小石川
遠山も風の案山子も伊賀のうち 桂信子 遠い橋
遠山やしづかに見ゆる秋の空 闌更
遠山や充ち充ちてゐる芹の水 舗土
遠山や木の芽たたけばよく匂う 東 英幸
遠山や池も遥かの鵙日和(修學院離宮) 石川桂郎
遠山や霞にうかぶ投げ盃 丸石 選集「板東太郎」
遠山や馬も日傘も橋の塵 尾崎紅葉
遠山をせつに畏み竹酔日 後藤綾子
遠山を二つに分けて日と時雨 時雨 正岡子規
遠山を引くごと繰りて凧を揚ぐ 榊原真寿美
遠山を柳の奥と思ふかな 尾崎迷堂 孤輪
遠山を移すばかりに春嵐 平井照敏 天上大風
遠山を見てゐて不意に春田打つ 牧 辰夫
遠山を連翹の黄の立ちふさぐ 波多野爽波 鋪道の花
遠山を霧のとびゆく草ひばり 深見和子
遠山河その一枚の稲架を組む 古舘曹人 能登の蛙
遠山河よりも遠くに獅子舞へり 文挟夫佐恵
遠山火寝息生絹のごとくゆれ 龍太
遠山火数珠手放さず見てゐたり 飯田龍太
遠山火汽車に寝てゆく旅に馴れ 成瀬櫻桃子 風色
遠山火闇の馬の瞳しづかなり 中拓夫 愛鷹
野老祝ふ胸中深く遠山河 清水芳子
陽炎へば遠山低くなりにけり 星野椿
障子貼る日の遠山の照りくもり 猿橋統流子
雹晴れし遠山襞の紫紺かな 楠目橙黄子 橙圃
霜柱千々に砕けむ遠山河 殿村莵絲子 雨 月
青山に遠山かさね梅雨晴るゝ 前田普羅 飛騨紬
駒ケ岳遠山となる花野かな 高木晴子
鮎釣りに遠山の風樹々の風 桂信子 黄 瀬
鴨たちて比良の遠山ひかるなり 岸風三楼 往来
麦刈が立ちて遠山恋ひにけり 橋本多佳子
麦刈て遠山見せよ窓の前 蕪村
○登山
○夏の山
●禿山
兀(禿)山に秋のとりつく山もなし 斯波園女
夏立つや禿山すかす不浄門 飯田蛇笏 山廬集
禿山に秋のとりつく山もなし 園女 俳諧撰集玉藻集
蝉鳴くや小松まばらに山禿たり 寺田寅彦
蝉鳴くや山の禿げたる處々 寺田寅彦
●端山
あかくなる端山みてたつ朝寒き 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
いたゞきも端山も焚火あげにけり 軽部烏帽子 [しどみ]の花
うしろから白む端山の雉の声 雉 正岡子規
はつ猟や暑さおどろく不猟端山 飯田蛇笏 山廬集
ぽつと桜ぽつと桜の端山かな 川崎展宏 冬
やや寒や朝から日さす端山寺 吉武月二郎句集
一ト日の疲れ合歓の花見ゆ端山かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
一人とは端山ゆ風の薫るとも 千原叡子
一木に戻る端山の桜の木 高澤良一 素抱
一行の鴈や端山に月を印す 蕪村 秋之部 ■ 探題雁字
五月鳶啼くや端山の友くもり 野坡
元旦の端山離るる椋鳥の群 梶井枯骨
六甲の端山に上り十六夜へる 浅井青陽子
六甲の端山に遊び春隣 高濱年尾 年尾句集
冬安居佐久の端山の鴾色に 土屋未知
千鳥飛んで枯色見ゆる端山かな 清原枴童 枴童句集
同じ路とりて菫の咲く端山 高澤良一 宿好
団栗は小春に落つる端山かな 言水
土手に来て端山の雪におどろきぬ 五十崎古郷句集
坂鳥や六甲端山の端まで晴 早渕道子
夏草や端山の裾の野雪隠 古白遺稿 藤野古白
夜を焼くや坊のうしろの端山なる 雑草 長谷川零餘子
大なる松蕈に逢著す端山哉 松茸 正岡子規
大恵那の尾根や端山や鳥渡る 松本たかし
家郷なり端山に白ナプキンの富士 奈良文夫
山里や端山の松に藤懸けて 尾崎迷堂 孤輪
年神も雪に端山の見えかくれ 斎藤玄 雁道
廻礼や多摩の端山に風出でて 本宮銑太郎
彼の端山地獄にまがふ焚火あぐ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
日の下に端山群山落葉せり 瀧春一 菜園
春一番端山吹きをり死者の飯 堀口星眠 営巣期
春暁や端山めぐりて家櫛比 清原枴童 枴童句集
春浅き端山に入りて深山見ゆ 谷野予志
晴れんとす皐月の端山塔一つ 皐月 正岡子規
晴雪の薄雲かよふ端山かな 松村蒼石 寒鶯抄
月遅き青田外れの端山かな 柑子句集 籾山柑子
朝野焼くけむり端山をへだてけり 五十崎古郷句集
札所抱く端山は雪の消えゐたり 宮津昭彦
枯すすき端山の月の昼のぼる 太田鴻村 穂国
桑の実や端山に白雨きらめきて 柴田白葉女 『月の笛』
渡り鳥四方に生るゝ端山かな 水原秋桜子
田鶴舞ふや眩し冬日を端山にし 森川暁水 淀
甲斐端山円太郎馬車夏へ駛す 安田 勇
白岳の白根の端山焼ける見ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
眠れぬは端山のみにはあらざらむ 相生垣瓜人
短夜の満月かかる端山かな 乙二「乙二発句集」
秋の風つねにひびける端山かな 雨宮北里
空也忌の十三夜月端山より 飯田龍太
端山こそ軽々しくも笑ふなれ 相生垣瓜人 明治草抄
端山紅葉霧を脱ぎつゝ近づき来 相馬遷子 山河
端山越す兎見ゆるや蕎麦の花 三輪未央
端山越秋の七草思ひ出せず 飯島晴子
端山路や曇りて聞ゆ機初 飯田蛇笏 霊芝
篠の子や一雨端山を包み来る 金箱戈止夫(俳句研究)
粧ひし端山来て立つ朝の庭 相馬遷子 雪嶺
紅うつぎ由布に端山の重なるとき 殿村莵絲子 花 季
美しく並ぶ端山に鳥屋二つ 松本たかし
花まつり四五羽の鵯が端山より 本郷熊胆
苗代や端山の躑躅復た赤く 尾崎迷堂 孤輪
葛かけて黒部の端山そゝり立つ 前田普羅 新訂普羅句集
親し名の志賀や端山の初もみぢ 及川貞 夕焼
鎌倉の海見ゆ花の端山より 高濱年尾
降つて来る端山の空や畑打 柑子句集 籾山柑子
陰雪がゾクッと端山に近き畑 高澤良一 素抱
雉子飛んで端山雪なき冬至かな 菅原師竹句集
雑木芽だち端山日の照り 北原白秋
雪舞ふや雪の端山が見ゆる街 五十崎古郷句集
露草に落木あまた端山かな 飯田蛇笏 山廬集
韮臭き僧と端山の月を見たり 橋石 和栲
鴨山の端山の茸を狩りにけり 田中静龍
麦青し端山もぬるるよべの雨 飯田蛇笏 雪峡
○春の山
●檜山
はやばやと檜山のもとに鵜飼待つ 京極杞陽 くくたち下巻
ひやひやと檜山に坐る水の音 田中裕明 櫻姫譚
七夕や檜山かぶさる名栗村 秋櫻子
三光鳥檜山杉山淋しくす 瀧澤宏司
冬麗らことに檜山の上の雲 大岳水一路
吉野なる檜山の裾は茶摘時 岡本差知子
夏休みなかば杉山檜山寂び 友岡子郷 日の径
夜語りや檜山の露の膨らまむ 宮坂静生 山開
夜鷹啼き檜山の雲を月泳ぐ 角川源義
夜鷹啼く檜山の径に月こぼれ 那須 乙郎
天限る檜山が放つ蝉の声 林翔 和紙
山垣はみな檜山なり天の川 秋櫻子
山笑ふ中の檜山は口重し 白岩てい子
恐しき檜山の星や寒曝 大峯あきら 鳥道
新藁や檜山あるきのひるの月 宇佐美魚目 秋収冬蔵
日照雨して檜山の蝉の声ごもる 飯田蛇笏 椿花集
明暗の暗の檜山に山桜 太田土男
春待つと檜山は月を育てけり 安立公彦
春月や檜山杉山隣り合ひ 藤本輝紫
朧々と檜山の中の山ざくら きくちつねこ
杉山に飛んで檜山の螢かな 大石悦子 聞香
杉谷に檜山かぶさる寒暮かな 宮坂静生
柩のような雲浮く午后の檜山 穴井太 原郷樹林
梅白し檜山の凍てをふみ来り 瀧春一 菜園
檜山かげむらさき深し縄出荷 宇佐美魚目 秋収冬蔵
檜山なる冬の橇道囀れり 瀧春一 菜園
檜山には白き雨降り秋蚕飼ふ 有働亨
檜山よりかなかな瀬音ともなへり 荒井正隆
檜山より檜山をつなぐ峡青田 加藤耕子
檜山より雪片馬の強咀嚼 宇佐美魚目 秋収冬蔵
檜山出る屈強の月西行忌 大峯あきら 鳥道
檜山吹雪き天馬羽ばたくばかりなり 大串章
檜山夕立檜は埋火のごとく照る 橋本鶏二
檜山杉山落ち合ふところ夜の朧 町田しげき
檜山松山秋風こぞる身のめぐり(足利浄因寺) 角川源義 『秋燕』
檜山滝ひびかせて人そぞろ 太田鴻村 穂国
檜山透く夏の朝日は僧の辺に 杉本寛
水現れて檜山の暮天曳き落つる(那智山) 野澤節子 『飛泉』
水音の檜山夜に入る網戸かな 木村蕪城
炉火赤し檜山杉山淋しかろ 平畑静塔
狐啼く檜山の月の痩せゆくに 七里はる江
百八松明檜山は稜に星並べ 佐野梧朗
眠りゐる檜山は余木あらしめず 松本たかし
秋冷の檜山杉山匂ひけり 山田みづえ
縄を綯ふ檜山に雪の降る限り 小原渉
臼を刳るうしろ檜山の垂り雪 ももすずめ 昭和拾遺
虹消えて檜山に色のもどりけり 鈴木貞雄
螢火の急いでゐたり檜山 大石悦子 聞香
譲られて譲る檜山の青泉 影島智子
赤蜻蛉檜山杉山ながめ倦きぬ 瀧春一 菜園
輪尺ひたとあてて檜山の露に濡る 宮坂静生 青胡桃
迎火に檜山仄めく峡十戸 藤谷紫映
通し土間月の檜山につながれり 町田しげき
連れだちて檜山づたひに盆の客 宇佐美魚目 秋収冬蔵
雪代や檜山のみどり流しつつ 大石悦子 聞香
雪雲に檜山のかたちさだまらず 篠原梵 雨
雪霏々と檜山杉山隣り合ふ 矢野緑詩
雲の峰育つ檜山を子に譲る 影島智子
霧のぼる檜山くらみを啼く蛙 臼田亜浪 旅人
鰤起し杉山檜山色褪せぬ 阿波野青畝
鳴き交はす檜山杉山四十雀 根岸善雄
○冬の山
●瑞山
元日の瑞山にたてる姻かな 久保田万太郎
初富士や瑞山は未だ明けきらず 松浦其国
春霞三輪の瑞山神の山 石井桐陰
茅の輪立ち瑞山がきを左右にせり 本多静江
●深山
うすらひは深山へかへる花の如 藤田湘子
うつしみの終のあぶらを捨てにゆく越の深山は水の音する 山田あき
けりけりと深山ひぐらし原爆忌 秋元不死男
さしこすや深山しぐれのぬれ筏 暁台 選集古今句集
さるをがせ深山の霧の捲き来たり 矢島無月「無月句集」
たちよれば深山ぐもりに桷の花 飯田蛇笏「春蘭」
はせを忌をこころに修す深山住 飯田蛇笏 春蘭
はなびらの盡きたる深山朝櫻 黒田杏子 花下草上
ひとごゑのかへる深山の初紅葉 菊地一雄
ふろふきの火の弱まりて深山星 福田甲子雄
ほぞ落ちの柿の音聞く深山かな 山口素堂
ほど遠く深山風きく雪解かな 飯田蛇笏 霊芝
むさゝびを狩りとる樅の深山雲 飯田蛇笏 霊芝
ゆきどけや深山曇を啼烏 暁台
ゆく秋の深山に抱く子の重み 飯田龍太
一歩ずつ深山明るき*しどみの実 松田ひろむ
一里行二里行深山桜かな 三四坊
七月の花を梢に深山朴 西本一都 景色
三宝をはみ出す根深山河かな 永田耕衣 人生
世の人のしらぬ花あり深山椎 園女 俳諧撰集玉藻集
冬といふもの流れつぐ深山川 飯田蛇笏
凄まじき深山の月の十三夜 石塚友二
勅なるぞ深山鶯はや来鳴け 正岡子規
去年今年闇にかなづる深山川 飯田蛇笏
吊り歯朶に深山育ちの小夕焼 橋本渡舟
吾にねらひ定めて離れぬ深山の蚊 小野若沙
坐せば花臥して深山の塔の空 橋本榮治 逆旅
埋火に猿来るとぞ深山寺 尾崎迷堂 孤輪
壷にして深山の朴の花ひらく 水原秋櫻子
夏帽を歯朶にぬぎ置ける深山かな 尾崎迷堂 孤輪
夏木立佩くや深山の腰ふさげ 松尾芭蕉
夏果てむ雨の深山の櫟の木 小澤實
夏雲のからみてふかし深山槇 飯田蛇笏 山廬集
夜は夜のみみづくを聞き深山杉 青柳志解樹
夜鷹鳴く暈を大きく深山月 椎橋清翠
大柄の木洩日すずし深山朴 岡野風痕子
大王の耳は深山や椿落つ 大屋達治 繍鸞
大鳥の眼が凝視めおり深山霧 対馬康子 愛国
妻は恋人一人静の深山口 原子公平
姥捨の子に鳴け深山ほととぎす 広瀬町子
婆が煮てぜんまい甘し深山鳩 佐野美智
寒明けの風吹きわたる深山空 飯田蛇笏 椿花集
小屋に寝て深山の月を瞼にす 相馬遷子 山國
小鳥さへ渡らぬほとの深山かな 千子
山号に鷲棲む深山沙参かな 中戸川朝人 星辰
巌に倚れる樹の鳥の巣や深山なる 尾崎迷堂 孤輪
市なかに深山はあり吊忍 長谷川櫂 蓬莱
底なし沼忽と瑠璃なす深山霧 鷲谷七菜子
庵ちさし深山みづきの花陰に 伊藤柏翠
御影供が花が人呼び深山寺 荻野信子
手をつなぎ深山をだまき崖に折る 河府雪於
散花に音きくほどの深山かな 心敬
春暑くうす雲まとう深山かな 飯田蛇笏 霊芝
春浅き端山に入りて深山見ゆ 谷野予志
春浅く深山がかりに飛行音 飯田蛇笏 椿花集
春浅し洟紙すてる深山草 飯田蛇笏 山廬集
春風に松毬飛ぶや深山径 前田普羅 春寒浅間山
月みせてはとぶ白雲や深山槇 飯田蛇笏 山廬集
木枯や深山秀虚空鷲一羽 松根東洋城
東風吹くや松の深山の松の針 東洋城千句
松に蔦深山の奥の其の奥の 尾崎紅葉
枯くさのながるるもあり深山川 飯田蛇笏 山廬集
栗拾ふ深山の中の林かな 尾崎迷堂 孤輪
栗笑んで不動の怒る深山かな 言水
栗鼠跳ねて深山落葉の音覚ます 鷲谷七菜子 花寂び
樅に出て深山ぐもりの月の秋 飯田蛇笏 霊芝
樫落葉はらり~と深山めき 杉浦真青
水引に滝のしぶきと深山露 大野林火
淙々と水音珊々と深山蝉 福田蓼汀 山火
深山この夢のいづこも紅茸 齋藤愼爾
深山つつじ朝々霧のおろしけむ 臼田亜浪
深山にわが影ふみて秋日和 飯田蛇笏 椿花集
深山に吹かれて誰の秋風ぞ 斎藤玄 雁道
深山に炭焼き暮るるひとりかな 飯田蛇笏 椿花集
深山に蕨とりつつ亡びるか 鈴木六林男 荒天
深山の日のたはむるる秋の空 飯田蛇笏
深山の書院に住みてやもめ僧 飯田蛇笏 椿花集
深山の月夜にあへる蝉しぐれ 飯田蛇笏 春蘭
深山の風にうつろふ既望かな 飯田蛇笏
深山みち風たつ花の名残りかな 飯田蛇笏 山廬集
深山も鱒も赤子のように抱く 対馬康子 吾亦紅
深山ゆゑか齢のゆゑか暮はやし 村越化石 山國抄
深山より水引きしてふ洗ひ鯉 木内怜子
深山寺の飼猿酒をかもしけり 青峰集 島田青峰
深山寺雲井の月に雷過ぎぬ 飯田蛇笏 霊芝
深山川氷りて目白歩きをり 大峯あきら 鳥道
深山木に狩られであそぶ鶲かな 飯田蛇笏 山廬集
深山木に雲行く蝉のしらべかな 飯田蛇笏 霊芝
深山木のこずゑの禽や冬の霧 飯田蛇笏 霊芝
深山木の底に水澄む五月かな 鳳朗「鳳朗発句集」
深山木や斧に湿ふ秋の雲 尾崎紅葉
深山榛の木青葉こそこそ雪ぎらい 和知喜八 同齢
深山橡咲くはんざきの子に脚が 松村蒼石 雁
深山田に雲なつかしや早苗時 石鼎
深山石楠花この世かの世の遠い空 岸秋溪子
深山石楠花やはるかにまさしく蔵王なり 荻原井泉水
深山空寒日輪のゆるるさま 飯田蛇笏 椿花集
深山空寒明けし陽のわたりけり 飯田蛇笏 霊芝
深山空満月いでてやはらかき 飯田蛇笏 椿花集
深山空片雲もなく初雲雀 飯田蛇笏 椿花集
深山竜胆少女期を過ぎしいろ 佐野幸子
深山花つむ梅雨人のおもてかな 飯田蛇笏 霊芝
深山草挿してありけり床涼み 藤田湘子
深山菫慟哭しつつ笑いけり 安井浩司 氾人
深山薊は黙して居れば色濃くなる 加藤知世子 花寂び
深山藤蔓うちかへし花盛り 前田普羅 春寒浅間山
深山藤風雨の夜明け遅々として 前田普羅 飛騨紬
深山蚋しふねかりけり社務所去る 植地芳煌
深山蝉どこへもゆかぬ母を掴み 友岡子郷 遠方
深山蝉杣夫抜け来し杉の城 原裕 青垣
深山路に雲ふむ尼僧孟蘭盆会 飯田蛇笏 椿花集
深山路を出抜てあかし麦の秋 炭 太祇 太祇句選
深山辺のこゝろの風を年取木 井原西鶴
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 飯田蛇笏 山廬集
深山霧厠にたまる無月かな 栗生純夫 科野路
深山霧声あるものは木に執す 栗生純夫 科野路
深山鳥雨の木の芽の寒さかな 碧雲居句集 大谷碧雲居
深山鴬今掌に宝珠のにぎりめし 加藤知世子 花寂び
湯どころや行く秋青き深山歯朶 石塚友二 光塵
湯治客深山櫻をたづねあて 後藤夜半
激つ瀬に囲を張りわたし深山蜘蛛 木村蕪城「一位」
猿酒をおもへば深山時雨けり 大串章
獣の糞緑に和む深山中 村越化石
玲羊は深山の尊者月は神 福田蓼汀 秋風挽歌
畳這ふ深山の霧に地図案ず 鈴鹿野風呂 浜木綿
白足袋のいちにん深山朝櫻 黒田杏子 花下草上
真榊の花散り深山路の如く 川田傘帆
眼に力戻りぬ深山清水飲み 菰田晶(狩)
短夜や一輪生けて深山蓮 五十嵐播水 播水句集
石楠花の深山の谷や氷解 松根東洋城
石楠花や深山の怖れこのものに 尾崎迷堂 孤輪
秋芽摘む唄も聞かざり深山の茶 林原耒井 蜩
秋風やこだま返して深山川 飯田蛇笏 山廬集
空蝉を集めて深山暮らしかな 林桂 ことのはひらひら 抄
笹埋む深山の雪となりにけり 尾崎迷堂 孤輪
笹鳴や深山たびたび日をかくす 長谷川双魚 風形
筒鳥に深山は霧を深めけり 伊勢由美子
箱庭の景深山と幽谷と 後藤夜半 底紅
粽結ふ一束の笹深山より 前田普羅 能登蒼し
紅梅の雨にも燃ゆる深山かな 中島月笠 月笠句集
紅葉山あたまこわれる深山 阿部完市 春日朝歌
肌いたきまで秋冷の深山空 原裕 『出雲』
芽をふいて藪は深山のつめたさに 佐野良太 樫
苔をうつ雨や深山の秋の声 宗祇
葛の花引くは深山の母を引く 金箱戈止夫
蔕(ほぞ)おちの柿のおときく深山哉 素堂 (翌日(身延より)甲斐の府へ帰路の吟)
蕈に深山のおどろおどろしきを思ふ 尾崎紅葉
藍ふかぶか雪庇にふるる深山空 大野林火
藤の芽に雨強く来し深山かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
蛇笏忌の目鼻と近む深山星 飯田龍太
蝸牛いつか深山の夢のなか 金子青銅
誰が斧に崇りて深山夕立かな 露月句集 石井露月
踏つけし雪解にけり深山寺 炭 太祇 太祇句選後篇
這松にひた鳴く秋の深山蝉 福田蓼汀
郭公のはるかに帰る深山かな 樗良 選集古今句集
酔ふままに深山に入りぬ蕨狩 田中裕明 花間一壺
開帳の破れ鐘つくや深山寺 飯田蛇笏 山廬集
閑古啼くや深山薊の花の色 石井露月
降りたけて深山の雨いさぎよし 飯田蛇笏 椿花集
隠し田のほとりの深山蓮華かな 沢村昭代
雉鳴いて深山めくなる松露かき 五十崎古郷句集
雨になほ鷽啼く深山櫻かな 黒田杏子 花下草上
雪来るとどれも反り身の深山杉 橋本榮治 麦生
雪解や深山曇りを啼く烏 加藤暁台 (きょうたい)(1732-1792)
雲のぼる六月宙の深山蝉 飯田龍太 春の道
霜とけて陽炎あぐる深山歯朶 前田普羅 飛騨紬
霜月の瀬をひるがへす深山風 有泉七種
額の花深山の秋に化けつゞく 鈴鹿野風呂 浜木綿
顔の辺を深山泉の声とほる 飯田龍太
風澄むや落花にほそる深山ふぢ 前田普羅 飛騨紬
餅つきやものゝ答へる深山寺 炭 太祇 太祇句選後篇
鰊群来深山鴉も鰊場へ 野西幸来
鳥ひとつ深山に叫ぶ梅雨嵐 相馬遷子 雪嶺
鼓動して太古のこころ深山瀧 燕音 八月
●深山晴
四十雀のつむりの紺や深山晴 加藤青圃
深山晴虻蜂を岩すがらしむ 中戸川朝人 残心
磐に干す菜の貼りついて深山晴 中戸川朝人 残心
蓑虫の貌だしてゐる深山晴 下地慧子
郭公啼く青一色の深山晴れ 飯田蛇笏 椿花集
●名山
ちかぢかと雪の名山年古りぬ 飯田蛇笏 春蘭
名山に対す厠や三ヶ日 宮武寒々 朱卓
名山に正面ありぬ干蒲団 小川 軽舟
名山に近く冬川の豊かさよ 青峰集 島田青峰
名山の余りに遠き霞かな 尾崎紅葉
名山の水を供へて子規忌なる 小檜山繁子
秋夕映その名も赤城山棲名山かな 川崎展宏 冬
行脚こゝに名山にあひぬ冬安居 松瀬青々
●雌岳 女嶽
雌岳いま雄岳がくれに野路の秋 山田弘子 こぶし坂
霧がくれ男嶽がくれに女嶽かな 小川ひろ女
●芽吹山
みちのくの星を殖やして芽吹山 片山由美子 水精
付け足しにそこらの小木も芽吹山 ぱらりとせ 春
明るさに径うすれゆく芽吹山 能村登四郎 幻山水
浮雲をしばしとどめて芽吹山 宮武章之
火渡りを待つ芽吹き山昼の月 福島壺春
疾風めく羽音一陣芽吹き山 鷲谷七菜子 花寂び 以後
芽吹き山二重にこだま返しけり 二村典子
風が噂ひろげしほどの芽吹山 小澤克己
●物見山
●紅葉山
いつよりの男盛りや紅葉山 波戸岡旭
うちうちに陰陽師よぶ紅葉山 伊藤敬子
ぎつしりと星紅葉山まっくろに 藤本草四郎
この年は何捨てる年紅葉山 鈴木太郎
すさまじき真闇となりぬ紅葉山 鷲谷七菜子(1923-)
ときをりの日矢をよろこぶ紅葉山 仙田洋子 雲は王冠
ひとひらの雲が頭上に紅葉山 稲田眸子
もしもしと呼ばれてをりぬ紅葉山 岩淵喜代子 硝子の仲間
もつともな醜聞絶えぬ紅葉山 宇多喜代子
キャンパスの裏手が火の手紅葉山 伊藤敬子
一瀑のかがやき落つる紅葉山 有泉七種
万華鏡中紅葉山紅葉谷 後藤比奈夫 めんない千鳥
五、六歩は友から離れ紅葉山 坪内稔典
伏す鹿の耳怠らず紅葉山 小島健
先着にあな幣尊と紅葉山 飯田蛇笏
大勢にまぎれて入る紅葉山 宇多喜代子
大津絵の鬼が手を拍つ紅葉山 桂信子 遠い橋
天誅の義士の碑訪ふや紅葉山 石川風女
妻と見るまるいまあるい紅葉山 岸田稚魚 『紅葉山』
家裏に空瓶透いて紅葉山 桂信子 黄 瀬
干すとなく乾く髪膚を紅葉山 池田澄子 たましいの話
彩の奥行見せて紅葉山 竹腰朋子
最澄はつねに意中に紅葉山 玉城一香
果無しの山の一つは紅葉山 加藤三七子
満月をかかげ昼見し紅葉山 秋山幹生
目薬を注し紅葉山覚ましけり 佐川広治
立ちどまるなほ吸ひよせんと紅葉山 池内友次郎 結婚まで
紅葉山あたまこわれる深山 阿部完市 春日朝歌
紅葉山いろんな色に落着かず 岸田稚魚 『紅葉山』
紅葉山だんだん足が長くなる あざ蓉子
紅葉山の上這ひ亙り赭き山 河野静雲 閻魔
紅葉山の忽然生みし童女かな 芝不器男
紅葉山の文庫保ちし人は誰 子規句集 虚子・碧梧桐選
紅葉山もの言はずして目が綺麗 岸本尚毅 鶏頭
紅葉山や分つゝゆけば西の丸 丸石 選集「板東太郎」
紅葉山一夜泊りて痩せにけり 鈴木六林男 王国
紅葉山人語鳥語に匹敵す 鳩信 白帝
紅葉山夜はとほき世の風の音 高橋謙次郎
紅葉山夢のとおりに道迷い 渋谷道
紅葉山女に逢ふは怖ろしき 品川鈴子
紅葉山峙てる気配にしんの闇 轡田進
紅葉山月ぞら既に濃くなんぬ 下村槐太 光背
紅葉山洞窟覗き引き返す 栗原満
紅葉山火元のごとく燃ゆるところ 松村蒼石 雪
紅葉山狂う一葉となり狂う 八木三日女 落葉期
紅葉山生ある限り好機あり 大関靖博
紅葉山白髪ふやして帰りけり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
紅葉山禰宜をろがむは伊勢のかた 木村蕪城 一位
紅葉山秘中の色をまだ見せず 木内彰志
紅葉山空へぽつぽつ目高水 和知喜八 同齢
紅葉山糸ひくやうに日暮れけり 辺見じゅん
紅葉山耳ほてるまで深入りす 加藤憲曠
紅葉山茶屋の跡地の若木かな 大崎康代
紅葉山踏んで平和といふ重み 志摩知子
紅葉山靄より水の流れ出づ 西岡正保
紅葉山鬼も天狗もをりにけり 高橋将夫
紅葉山鳥のこぼしし血も淋し 太田鴻村 穂国
紅葉山鷹舞ひ出でてさらに濃し 斎藤 道子
終着は紅葉山ですフルムーン 益田清
茅原や行きつくしたる紅葉山 軽部烏帽子 [しどみ]の花
茹で卵ころがしに行く紅葉山 鴻巣又四郎
蘆の湖やさながら映る紅葉山 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
行く先の見えて日の落つ紅葉山 福田甲子雄
赤ん坊ひよいとかかへて紅葉山 夏井いつき
酒のあと寝ること残る紅葉山 鈴木六林男
霧の中むら消えのして紅葉山 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
●焼山
うかれ猫焼山にゆき孕みけり 萩原麦草 麦嵐
汽車着くや焼山晴れてまのあたり 芝不器男
焼け山の春や天より人語くる 長谷川草々
焼山にどつと隣の山火煤 中戸川朝人 星辰
焼山に月の出かかる母郷かな ねずみのこまくら 昭和五十六年
焼山の夕暮淋し知らぬ鳥 高浜虚子
焼山の段だら縞に日の新た ぱらりとせ 春
焼山の灰のほろりと道よぎる ぱらりとせ 春
焼山の焦げ目曼陀羅日表に ぱらりとせ 春
焼山の白き道ゆく萱負女 丸山海道
焼山の茶店で書きし手紙かな 雑草 長谷川零餘子
焼山の闇濡らす雨駅を籠め 宮津昭彦
焼山は心腹の友さながらに ぱらりとせ 春
焼山や嵩其まゝに歯朶の容 西山泊雲 泊雲句集
焼山を嗅ぐ父祖のごと獣のごと 大串章
焼山を来る人見えて庵かな 雑草 長谷川零餘子
焼山を襲ふごと過ぐ雲の影 青野爽
球戯場出て松過ぎの焼山硬く 宮武寒々 朱卓
通り魔に遇ひし面持ち焼山は ぱらりとせ 春
●山男
かんじきや市に物買ふ山男 高浜虚子
きりさめや歯朶ふみいづる山男 飯田蛇笏 春蘭
切株にたちて暮春の山男 飯田蛇笏 春蘭
夏霧の山男にも乳首あり 大屋達治 繍鸞
大学を出て山男ちやんちやんこ 福田蓼汀
尾根雪と幕舎にもどる山男 福田蓼汀 秋風挽歌
山男くる捩花の小鉢提げ 高井北杜
山男泥の大根ひつさげて 澤村昭代
山男老いては集ふ泉あり 有働 亨
春蘭やことばやさしき山男 飯田弘子
瞳が涼し蓬髪無言の山男 福田蓼汀 秋風挽歌
秋の蚊を掴み損ねし山男 辻田克巳
虫の闇獣の眼もち山男 福田蓼汀 秋風挽歌
送行と申せどただの山男 市堀玉宗
風邪引きや髯蓬々の山男 楠目橙黄子 橙圃
●山颪
お山颪裸詣りの幣鳴らす 高橋青湖
せきれいのまひよどむ瀬や山颪 飯田蛇笏 霊芝
刈干しの晩稲吹立つ山颪 大熊輝一 土の香
初寅や山颪呼ぶ僧の法螺 宮川蔦江
初汐や夜な夜なつのる山颪 立花北枝
初潮や夜る~募る山颪 北枝
十夜寺をいゆるがすなり山颪 芝不器男
堂鳩をふくや泊瀬の山颪 鉄丸 選集「板東太郎」
山颪早苗を撫て行衛かな 蕪村遺稿 夏
新発意(ぼち)が花折る跡や山颪 服部嵐雪
桑の芽に火の山颪荒るる日ぞ 上村占魚 球磨
水鳥やかたまりかぬる山颪 大坂-瓠界 元禄百人一句
無患子の弥山颪に吹きさわぐ 阿波野青畝
石坂を菓飛ぶなり山颪 太祇
邯鄲や日のかたぶきに山颪 飯田蛇笏 山廬集
金屏に吹き衰へぬ山颪 大峯あきら
雪時雨釜臥山颪し照り翳り 小林康治 玄霜
馬追に硬山颪し夜更けたり 小林康治 玄霜

以上 

by 575fudemakase | 2022-05-22 15:13 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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