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山3  の俳句

山3  の俳句
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●山家
あかげらを飼ひて山家の冬構 田中冬二 冬霞
あたふた用足して落葉の山家へ戻る 人間を彫る 大橋裸木
あはれさや時雨るる頃の山家集 山口素堂 (1642-1716)
あるだけの夜具干す山家花の昼 高井北杜
うぐひすのはまり過ぎたる山家かな 立花北枝
かるさんの子に秋深き山家かな 麦人
さゞめきて秋水落つる山家かな 前田普羅 新訂普羅句集
しだ売りて夜るあたま剃る山家かな 上島鬼貫
たづね来てさつきに早き山家かな 宮嶋千転子
つゝじ咲て飴売る木曽の山家哉 つつじ 正岡子規
なほ深き山家へもどるかんじきぞ 岩城 史郎
びしよ濡れの雪解山家に飯噴く音 鷲谷七菜子 花寂び
ぶら下がる糸瓜山家の粧ひに 堤信彦
ほとゝぎす山家も薔薇の垣を結ふ 川端茅舎
まづ入るや山家の秋をわせの花 広瀬惟然
みそさざい屋根に杉の葉干す山家 鵜飼登美子
ものすごくなつて夕立つ山家哉 夕立 正岡子規
ゆききせで年くるる雪の山家かな 通助 五車反古
ゆくとしのこそりともせぬ山家かな 士朗
ゆづり葉に暁雪うすき山家かな 飯田蛇笏 春蘭
ゆり直せ山家を動す雄子の声 西和 選集「板東太郎」
わたり猪の竹の子につく山家かな 浪化
一と雨のありて山家の夜の秋 佐藤梧林
一むらの竹の春ある山家かな 高浜虚子
七ツ星光る山家や黐匂ふ 岡田日郎
三光鳥鳴く鳴け山家まだ暮れず 市村究一郎
五六軒づつの山家やお茶の花 竹中一藍
住み捨てし山家なりけり懸り藤 今井つる女
先づ入るや山家の秋をわせの花 惟然 俳諧撰集「有磯海」
先ゆくは山家のひとか日傘せる 水原秋櫻子
八方に白百合咲いて山家めき 久米正雄 返り花
冬ざれの山家の欠け茶碗に酒なみなみつがれる 人間を彫る 大橋裸木
冬ざれの山家醤油の香を洩らす 鷲谷七菜子 花寂び
冬枯て手持ぶさたの山家哉 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
凍つ山と背中合せに山家の灯 村越化石 山國抄
切干の屋根に凍てたる山家かな 九保田九品太
初鴉一声山家泊りかな 石川風女
十一や山家の早き夕餉の灯 五味すず
十月もあと二三日木曽山家 松沢 みさ女
午過きて山家の干烏賊唯白し 尾崎紅葉
呱々の声聞ゆる山家鯉のぼり 薮脇 晴美
啄木鳥の穴あちこちの山家かな 若木一朗
塩鮭を吊し山家の奥座敷 宮田富昭
声高にくらす山家や鵙日和 嶋田摩耶子
夏桜石を火に焚く山家哉 夏桜 正岡子規
夜廻りに星曼陀羅の山家かな 河村たまの
夥しく唐黍つるす山家かな 寺田寅彦
大簗のとどろきに住む山家かな 鶏二
大風のあとを蚊の出る山家哉 蚊 正岡子規
天国に近き山家ぞ星月夜 園部鷹雄
天高し山家は庭に栗干せる 田中冬二 俳句拾遺
女礼者山家の華と迎へけり 古川禮子
姨捨の山家の搗ける月見餅 荒川あつし
客僧に柚味噌振舞ふ山家哉 寺田寅彦
寒明の雪どつと来し山家かな 高浜虚子
寒灸師山家に来り泊りけり 前田普羅
寒餅や手力こめし山家搗 水原秋櫻子
屋根替の煤たちのぼる山家かな 西島麥南 金剛纂
山家 とかくして一把に折ぬ女郎花 蕪村遺稿 秋
山家いま二タ火煮炊きと迎火と 大岳水一路
山家にて魚喰ふ上に早稲の飯 向井去来
山家に灯紅葉ぐん~暮れて来し 嶋田一歩
山家の婆さまの焦がした餅をよばれてゐる 人間を彫る 大橋裸木
山家の法会の鉦の音が青空を刺して冬 人間を彫る 大橋裸木
山家への負ひ荷新鮭反りうたせ 中島斌男
山家みな秋日の縁に何か干し 三村純也
山家より鶏鳴起こり旧端午 彦根伊波穂(狩)
山家宿二階つき出て鼻悴かむ 平井さち子 完流
山家集の破本かしこき西行忌 河西河柳
山家集夜長の塵をはたきけり 野村喜舟 小石川
山家集読むことが忌を修すこと 佐藤鬼房
山家鳥虫歌の情砧かな 龍岡晋
山椒の実生家婚家も山家にて 中貝貞子
干大根山家いずこも恙なし 武田光子
干柿やまた一とせの山家住 楠目橙黄子 橙圃
干蕨山家の春は尽きにけり 楠目橙黄子 橙圃
座敷にて椎茸干して山家かな 柿原一如
庭を来る山家料理のよき炭火 桂樟蹊子
引窓に蔦の手を出す山家かな 蔦 正岡子規
往診と云へば山家や炉火燃ゆる 酒井黙禅
思はぬや茶一服とも山家の雪 調鶴 選集「板東太郎」
我が夢を蝶の出ぬける山家哉 幸田露伴
我ために椎を器にもる山家かな 蘭更
斑雪照り山家一戸に来るはがき 鷲谷七菜子 花寂び
日と風に睦み山家の破れ障子 鍵和田[ゆう]子 浮標
日の力ぬけたる山家障子かな 上田五千石 森林
日雀来る山家は縁に栗など干し 宮下翠舟
日雀鳴く山家それぞれ小橋架け 中野一窓
早蕨の庭に手を出す山家哉 蕨 正岡子規
春の星かくて山家の匂ひそむ 中島月笠
春浅き山家集より花こぼれ 原裕 『出雲』
春燈を山に飛ばして山家あり 上野泰 佐介
春雨や猶袖ぬらす山家集 中村史邦
昼砧槌出てをりし山家かな 阿波野青畝
晒井の夜の賑へる山家かな 茨木和生「往馬」
暖も山家ははやし足袋の土 其文
月に鳴く山家のかけろ別れ霜 飯田蛇笏 雪峡
月明に九十九谷の山家の灯 八牧美喜子
朝顔の石に這ひつく山家哉 朝顔 正岡子規
木がくれて梅雨の山家となりにけり 石橋辰之助 山暦
木瓜咲いて天日近き山家あり 大峯あきら 鳥道
李咲き山家は船着き場のような 伊藤和
李咲く山家のまひるはねつるべ 高橋睦郎 舊句帖
松とれて俄かに雪の山家かな 松根東洋城
松とれて俄に雪の山家かな 東洋城
松風に醤油つくる山家かな 高濱虚子
柿の皮干すも山家の冬用意 小峰恭子
柿若葉山家の棟のやゝ秀づ 水原秋桜子
栗の花庭木に眺め山家めく 水内鬼灯
栞して山家集あり西行忌 高濱虚子
桑干すに借りる御堂や山家妻 原 石鼎
梅雨の霧とぶ峠越え来て山家 高濱年尾 年尾句集
檜笠着て頬の若さや山家妻 原石鼎
武具飾り松籟乱れなき山家 大峯あきら 鳥道
毒だみを軒いっぱいに干す山家 尾岸美代子
水鼻にわひて山家のもみち哉 水洟 正岡子規
汚れたる雪の山家に日脚のぶ 高浜虚子
江戸衆や心は山家ほととぎす 調鶴 選集「板東太郎」
泉湧く山家を捨てて町に住む 神谷美枝子
泳ぎ子に雲影走る山家かな 原 石鼎
涼しさの星の仲間の山家の灯 加藤亮
深閑と大き山家や寒の入り 田中冬二 俳句拾遺
渋鮎を炙り過ぎたる山家かな 几董
溝浚へ山家の水が走り出す 上西啓三
火桶とは山家の夜にふさはしく 藤崎美枝子
灯を消して団扇のしろき山家かな 宇佐美魚目 秋収冬蔵
炭焼の住める山家や緋鯉飼ふ 根岸善雄
点在の山家溺るる桃の花 白澤よし子
燕来て山家に鳴けば春祭 水原秋桜子
牡丹咲く山家にひさぐ吉野紙 白澤よし子
狐火よ鹿火よと山家がたりかな 向田貴子
独楽まはしひとりとなりし山家かな 赤尾兜子
猪罠を仕掛けて山家暮しかな 中野一窓
王子守る山家一軒黍干して 松本圭二
田楽や山家に揃ふ織部皿 水原秋櫻子
男ひとり秋蚕飼へる山家かな 藤田あけ烏 赤松
病葉の散るとてかへる山家かな 前田普羅
皀角子を軒端に干せる山家かな 小川 真砂二
皿洗ふ音の涼しき山家かな 桑島啓司
碧空へつづく山家の白障子 角田宗実子
稲架よりも低き山家の四五戸かな 那須サエ子
笹鳴や世をしづめたる山家集 野村喜舟 小石川
箒もて氷柱落すも飛騨山家 鈴鹿野風呂
箸とって鴬ひびく山家蕎麦 百合山羽公 寒雁
絵の中に居ルや山家の雪げしき 向井去来
縁の日に当てて山家の福寿草 石 昌子
美しき忘れ団扇の山家かな 大峯あきら
色鳥や山家につかふ水の音 鈴木康久
花さびた山家は簷に*どを吊し つじ加代子
花勝に撫し子咲きし山家哉 撫子 正岡子規
花山椒煮るや山家の奥の奥 松瀬青々
若草や八瀬の山家は小雨降る 高濱虚子
荒壁に煙草干したる山家かな 水落露石
荒梅雨や山家の煙這ひまわる 前田普羅 新訂普羅句集
菊の香になくや山家の古上戸 立花北枝
菜切庖丁添へて山家の大きな柿 人間を彫る 大橋裸木
葭粽すすきで結ひて山家かな 吉田みち子
蓮如忌や山家の餉(かれひ)さまざまに 増田龍雨
蕣の蔦にとりつく山家哉 朝顔 正岡子規
薪には富みし山家や庭かまど 菊路
薪わりしあとを山家の涼み哉 納涼 正岡子規
虫干しの山家の牛に鳴かれけり 臼田亜浪
蚤焼て日和占ふ山家哉 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)
蝶ひとつわれに添寐の山家かな 幸田露伴
蝶蜂に牡丹まばゆき山家かな 原石鼎
行く春の月もなくなる山家哉 行く春 正岡子規
誰が見てや木の葉挟みし山家集 尾崎紅葉
谷底まで晴れし雪見下ろし山家の法会 人間を彫る 大橋裸木
買初に雪の山家の絵本かな 鏡花
貸し失せし山家集なり西行忌 松尾いはほ
賀客なく雪ふりつもる山家めき 青邨
赤子泣く柿の山家のただ中に 赤松[ケイ]子
踏込み炉ありて山家や根深汁 加藤浮氷子
邯鄲や山家は昼の星見えて 内山亜川
野分して隣に遠き山家かな 会津八一
野蒜野萱草大荷物山家に入る 金子皆子
鍋敷に山家集あり冬ごもり 與謝蕪村
門なみにさくや山家の梅椿 松岡青蘿
障子閉め山家の夜を深くせり 加藤宵村
雁来紅に山家は白き壁をもつ 馬場移公子
雉鳴くや那須の裾山家もなし 雉 正岡子規
雨の若葉梁にや映る山家かな 河東碧梧桐
雨一日二日山家の暮遅し 日永 正岡子規
雨折々あつさをなぶる山家哉 暑 正岡子規
雪山家それぞれ裏に墓を負ふ 井上哲王
雪掻きし山家の庭に野猿坐す 中島美也
雪沓を軒に干したる山家かな 吉野左衛門
雪解雫山家の戸口釘多し 宮坂静生 青胡桃
雷去らぬ山家よ酒徒の忌を修す 高井北杜
霜枯れの山家へ戻つて来た娘の長い首巻 人間を彫る 大橋裸木
露けしや星より暗き山家の灯 川田長邦
露山家一竿嬰の白づくし 白鳥一子
露涼し山家に小さき魚籠吊られ 大串章「百鳥」
風の日は雪の山家も住み憂くて 高浜虚子
餅花に髪ゆひはえぬ山家妻 飯田蛇笏 霊芝
餅花を飾れば書屋山家めき 山口青邨
鯉幟山家を根ごとゆすぶるよ 辻田克巳
鶏鳴や山家育ちの太つらら 佐川広治
鶯に山家の人の紺絣 鈴木鷹夫 風の祭
鷹鳩と化して山家に微笑仏 嶋津亜希
麻につるゝ山家の雨の脚直し 麻 正岡子規
黍の穂と掛けて山家のかざりかな 大谷句佛 我は我
鼠を視るに歯があり毛がある山家かな 金子兜太 詩經國風
●山垣
ひねもすの山垣曇り稲の花 芝不器男
ふるさとの幾山垣やけさの秋 芝不器男
元旦のひかり 山垣も 萬葉のままではない 吉岡禅寺洞
冷し瓜美濃の山垣霧込めに 清水青風(白露)
寒鯉の常陸山垣低くして 軽部烏頭子
山垣にとほやまのそひ散るもみぢ 木津柳芽 白鷺抄
山垣にとゞろきて消ゆ春の雷 及川貞 榧の實
山垣に雁添ひおちしその深さ 桂樟蹊子
山垣のかなた雲垣星まつり 福永耕二(1938-80)
山垣のほかは大虚の空の秋 井沢正江 以後
山垣の上の金星風の盆 上村占魚
山垣の闇みづみづし草泊 倉垣和子
山垣の雲ひらきつつ辛夷かな 飴山 實
山垣の高ければ梅雨降り止まじ(伊勢美杉村魚九旅館客中) 上村占魚 『石の犬』
山垣はみな檜山なり天の川 秋櫻子
山垣は天竜美林盆の笛 百合山羽公 寒雁
山垣へ葡萄瑠璃光蕩揺す 木村蕪城 寒泉
山垣も棚の葡萄も青き伊豆 大島民郎
山垣やひとり雪置く遠浅間 松本たかし
山垣二重に一重は優し七五三 池上樵人
栗くぬぎ芽立ち霞めり背山垣 及川貞 榧の實
河鹿鳴き山垣四方に暮れゆけり 木津柳芽 白鷺抄
牡丹咲きめぐる山垣日に澄める 梅原黄鶴子
羽子の児に熔岩の山垣おし迫り 皆吉爽雨
背山垣青葉木菟鳴く夜もあり 及川貞 榧の實
花冷えの山垣高く町ともる 太田嗟
要咲く山垣尽きて波の音 藤田れい子「新山暦俳句歳時記」
●山陰
しづかさや山蔭にして通し鴨 松瀬青々
冬空や山陰道の君が家 小澤碧童
冬耕の山陰迫り来りけり 稲畑汀子
小春日や道山蔭を出でしより 尾崎迷堂 孤輪
山川に山蔭深き出初かな 柄沢ひさを
山蔭に村の手作りスケート場 高澤良一 随笑
山蔭に渡り鳥聞く戻らうよ 原田種茅 径
山蔭に耕す音を立てにけり 野村喜舟 小石川
山蔭に野猫躍るよみな笑うよ 金子兜太
山蔭のえごの実海を見て嘆く 松村蒼石 雪
山蔭の家や日永を鶏うたふ 至青
山蔭やこゝもとの日は紅の花 千代女「千代尼句集」
山蔭やしぐれの道の函ポスト 石塚友二 光塵
山蔭を来て水引の花の庵 後藤夜半 底紅
山陰に多少の家の薺かな 青々
山陰に小家ありて蚊遣煙る也 蚊遣 正岡子規
山陰に日のさゝぬ池の氷哉 氷 正岡子規
山陰に稻干す晝の日脚哉 干稲 正岡子規
山陰に虎杖森の如くなり 虎杖 正岡子規
山陰に雨とねているねむたしや 阿部完市 軽のやまめ
山陰に魚籠をしづめし末黒かな 古舘曹人 樹下石上
山陰のじやじやじやじや雨や秋の雨 京極杞陽
山陰の小家ありて蚊遣煙る也 蚊遣 正岡子規
山陰の小笹の中の清水かな 清水 正岡子規
山陰の旅の始まるえごの花 伊谷詢子
山陰の暗き杣路や瑠璃鶲 長谷川草洲
山陰の木の間の畑やひとり打 畑打 正岡子規
山陰の楓林や閑古鳥 会津八一
山陰の橋朽ちんとす晝の露 露 正岡子規
山陰の田植見まふや藻刈舟 立花北枝
山陰の白鱚に割る檜箸 揚石八重子
山陰の秋冷恐れ来たりしも 稲畑汀子
山陰の終りの句会後の月 高木晴子 晴居
山陰の野に暮急ぐ芒かな 乙二
山陰も畠となりてなく雉子 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
山陰やいつから長き蕗の薹 凡兆
山陰やわすれしころのすみれ草 千代女
山陰や一村暮るゝ麻畠 古白遺稿 藤野古白
山陰や寺吹き暮るゝ秋の風 秋風 正岡子規
山陰や敷物とても今年藁 乙由 (茂秋法師の十方庵)
山陰や日あしもさゝず秋の水 秋の水 正岡子規
山陰や春の露おく柴桜 石井露月
山陰や暗きになれて冬籠 冬籠 正岡子規
山陰や月さす水の底暗し 月 正岡子規
山陰や朝霧かゝる庭の竹 霧 正岡子規
山陰や村の境の冬木立 冬木立 正岡子規
山陰や檐より上につゝじ咲く つつじ 正岡子規
山陰や烏入来る星むかえ 向井去来
山陰や胸に雲おく夏の夢 水田正秀
山陰や草穂まじりに稲の出来 飯田蛇笏 山廬集
山陰や葉広き蕗に雨の音 闌更
山陰や薄は薄月は月 薄 正岡子規
山陰や誰呼子鳥引板の音 蕪村 秋之部 ■ 武者繪賛
山陰や身を養はん瓜畠 松尾芭蕉
山陰や霧に濡れたる村一つ 霧 正岡子規
山陰や霧吹きつけて石佛 霧 正岡子規
山陰や青東風に散る蜆蝶 佐野良太 樫
山陰や魚氷に上る風のいろ 原 裕
山陰を斜にのぼる雲雀哉 雲雀 正岡子規
年を経て君し帰らば山陰のわがおくつきに草むしをらん 正岡子規
有馬山陰白い蛾杖をついて飛ぶ 阿部完市 春日朝歌
汗氷る山陰行けば風もなし 汗 正岡子規
池氷る山陰白し冬の月 古白遺稿 藤野古白
溝は日にささやき山蔭の冬の堆 古沢太穂 古沢太穂句集
秋立つや山陰ふかき伊賀の畠 大橋櫻坡子 雨月
耕すや鳥さへ啼かぬ山蔭に 蕪村
耕や鳥さへ啼ぬ山陰に 蕪村
自然薯掘る山蔭のこゑ風の間 中拓夫 愛鷹
色薄し夕山陰の花菫 菫 正岡子規
野生馬に山陰を恋ふ妻子あり 藤後左右
雲かくす山陰も無し冬木立 冬木立 正岡子規
雲白し山蔭の田の紅蓮華 泉鏡花
霜枯るるこの山陰や松の蔦 広瀬惟然
驢に乗りて山陰急ぐ秋の暮 秋の暮 正岡子規
驢に騎りて山陰いそぐ秋の暮 秋の暮 正岡子規
鯉青き山陰の沼雷の峯 大井雅人 龍岡村
●山影
との窓を見てもすゞしや山の影 涼し 正岡子規
どの山の影ともならず蜜柑山 辻田克巳
はこべらや親につめたき山の影 長谷川双魚 『ひとつとや』
ひえびえとなすこと溜る山の影 飯田龍太
ひやひやと百姓帰る山の影 鷲谷七菜子 花寂び
もう山の影がとゞいて大根引 飴山 實
三輪山の影なる中に種おろす 福田千栄子
三輪山の影置く池も涸れはじむ 森田峠 避暑散歩
仏壇へ十一月の山の影 鈴木厚子
初鴨や男体山の影に浮き 小川斉東語
半身に口山の影耕せる 中戸川朝人 尋声
墓山の影となりゆく雁の空 齋藤愼爾
夕空や紫苑にかゝる山の影 閑斎
山にゐて二月の山の影をみる 小澤實
山に山の影濃く遠し神渡 池田如水
山の影かぶさり冷ゆる崩れ簗 今井時子
山の影とろりとろりと牡蠣植うる 林原耒井 蜩
山の影に押さるる日向蒟蒻掘る 奈良文夫
山の影洗ひし墓におよびけり 堤高嶺
山の影湖心にしづめ黄釣舟 加藤耕子
山の影落穂拾ひに稲苅に 相馬遷子 山国
山の影駅にのびつくし汽車がつきけり シヤツと雑草 栗林一石路
山干しの蒟蒻に来る山の影 野崎ゆり香
岩手路や田植済みたる山の影 瀬知和子
岩魚籠どさと置かれて山の影 下田稔
川半ばまで立秋の山の影 桂信子 遠い橋
数へ日の町に伸びゐる山の影 伊藤通明
晩涼や湖舟がよぎる山の影 水原秋桜子
末枯やはや落ちかゝる山の影 相馬遷子 山国
枯山の影の来てゐる晩稲刈 草間時彦
枯芝に夕日の山の影のびる 伊藤淳子
柴の戸に入るや秋たつ山の影 樗堂
歳晩の橋の半ばに山の影 中戸川朝人 星辰
残雪や日ねもす山の影去らず 柑子句集 籾山柑子
水芭蕉水面に山の影重ね 宮崎要子
氷り田解けはやも山の影さす 安斎櫻[カイ]子
爆竹や瀬々を流るる山の影 原石鼎
牧草の山の影なき日の盛り 阿部みどり女
田じまひの煙の捉ふ山の影 中戸川朝人 星辰
畑打にけふの終ひの山の影 野中亮介
秋まつり大きな山の影の中 黛 執
蒟蒻掘る人を覆ひし山の影 浅見さよ
蕎麦刈るやいちにち山の影の中 太田光子
送行や湖水の底の山の影 大峯あきら 鳥道
達磨市山の影濃き秩父かな 伊藤伊那男
麻刈りて屏風に淋し山の影 麻 正岡子規
黄葉の一樹に山の影及ぶ 嶋田麻紀
ごんぼねずみ山影淡くなるばかり 豊山千蔭
のしかかる巨き山影馬冷やす 伊藤虚舟
ふたたびは山影を出ず遠花火 片山由美子 天弓
冬銀河山影かむる和紙の里 柴田白葉女 花寂び 以後
冬銀河山影かむる陶の町 柴田白葉女 花寂び 以後
初寅や信貴の山影寒きかな 石井桐陰
午後もまた山影あはし幟の日 田中裕明 花間一壺
園にでて山影谿し榾の酔 飯田蛇笏 山廬集
大寺に山影どつと鳥総松 斎藤夏風
大根を蒔けば山影すぐに来る 大峯あきら
天城路の五時は山影花わさび 秋元不死男
寺影を出て山影の林檎みち 鳥居おさむ
山よりも山影の鋭き二月かな 川中由美子
山影が目と鼻のさき晩稲刈 宮田藤仔
山影となりゆく稲を刈りにけり 小黒葭浪子
山影に山沈みゐる梅の花 須ケ原樗子
山影に終ひ支度の大根売 神原栄二
山影のけふ深き川雛流す 鷲谷七菜子 游影
山影のさす停車場や木槿垣 滝井孝作 浮寝鳥
山影のずんずん迫る薬喰 内田美紗 魚眼石
山影のひた押す藁塚のおびただし 木村蕪城 寒泉
山影の中を這ひゆく早苗取 澤村昭代
山影の冷えてきたりし川床料理 小島健 木の実
山影の切込んでくる竹煮草 矢島渚男 梟
山影の夕冷え犇と二期田刈る 千代田葛彦 旅人木
山影の彩があるかに冬の水 古舘曹人 砂の音
山影の早き楮を抱き刈る 松林朝蒼
山影の瀞にゆがみし猟名残 斎藤夏風
山影の移りゆくなか胡麻叩く 棚田良子
山影の迫りてゐたる干蒲団 池田秀水
山影は人を濡らさず牡丹の芽 鈴木太郎
山影は暮色のはじめ雪婆 山田弥寿子
山影も夕日も入るる植田かな 水井千鶴子
山影や魚氷に上る風のいろ 鷹羽狩行
山影をかぶりて川面花の冷 西山泊雲 泊雲句集
山影をひとつ移りし蕨狩 斉藤夏風
山影をわけあう村人花山桜桃 児玉悦子
山影を大きくしたる花野かな 永田呂邨
山影を抜けしとき瑠璃黒揚羽 高橋笛美
山影を日暮とおもひ浮寝鳥 鷹羽狩行
山影を沈めて峡の代田掻 藤澤美代
山影を砕きて鴨の着水す 松下朱実
春蘭に山影せまる音もなし 青木重行
朝の間の親山影や山始 大橋櫻坡子 雨月
水打つや山影きたる街の中 大橋櫻坡子 雨月
浦唄涼しそれとおぼしき夜山影 林原耒井 蜩
畦豆を引く山影の外に出て 山崎羅春
睡る童に山影うつる簟 永野好枝「寧楽」
舳を並めて山影乱す鵜舟かな 雑草 長谷川零餘子
茶を摘むやまだ山影の母の里 中拓夫 愛鷹
葛餅や山影たたむ茶屋の前 吉田冬葉
街道に山影せまるとろろ汁 鷲谷七菜子
親鸞忌近き山影大いなる 飯島晴子
逆しまの山影蝌蚪のよりどころ 横山椒子
野施行の山影寒きところまで 福永耕二
釣舟を漕ぐ山影となり漕ぐや 安斎櫻[カイ]子
青みどろ山影鰡をとばしめず 林原耒井 蜩
青柿に山影移る天武陵 角川春樹 夢殿
風吹いて消し山影や寒雀 宮武寒々 朱卓
高流れしても山影夕蜻蛉 鷲谷七菜子 雨 月
高稲架に冷えし山影倒れ来し 中島真沙
鴨引きて湖に山影返しけり 菊井稔子
鹿ながら山影門に入日哉 蕪村 秋之部 ■ 殘照亭晩望
●山火事
二階から山火事見るや宿はづれ 寺田寅彦
南国の山火事ひたにひろがれり 原 裕
夜に入りし山火事の火を天にまかす 右城暮石 上下
大迂回して山火事へ消防車 右城暮石 上下
山火事に漕ぐ舟もなし浮寝鳥 安斎櫻[カイ]子
山火事に肥き男の駈け出しぬ 鈴木鷹夫 春の門
山火事に蔵戸ほのかや鶏謡ふ 飯田蛇笏
山火事に追はれし目白拾ひけり 原田清正
山火事のあと太陽も窶れけり 百合山羽公
山火事のあと漆黒の瀧こだま 飯田龍太
山火事のありたる地肌夏蕨 茨木和生
山火事のごとくに描いては捨てる絵よ 佐藤三保子
山火事ののち戻らざる僧ひとり 黒田杏子 花下草上
山火事のむどくなりしよ夏木立 夏木立 正岡子規
山火事の匂ひの雲やテレビ塔 茨木和生 遠つ川
山火事の北へ~と廣がりぬ 寺田寅彦
山火事の北国の大空 尾崎放哉
山火事の半鐘鳴つて花の昼 大峯あきら 宇宙塵
山火事の如き日落とし御命講 林 昌華
山火事の灰降って来る渡舟 澤草蝶
山火事の立ち木業火となりて燃ゆ 右城暮石 上下
山火事の起きさうな日の鴉かな 大木あまり 雲の塔
山火事の音と黒煙火は見えず 右城暮石 上下
山火事の音の上ゆく風船あり 田川飛旅子 『外套』
山火事の騒ぎ静まり暮の春 大峯あきら 宇宙塵
山火事ははるかなるかもよ鶏ゐつ 川島彷徨子 榛の木
山火事も凍てはてにける大裾野 百合山羽公 寒雁
山火事やぶら下りたる雲一朶 会津八一
山火事や乾の空の雪曇り 寺田寅彦
山火事を消しに登るや蜜柑畑 前田普羅
山火事を知る人もなし冬の月 雉子郎句集 石島雉子郎
山火事泊芙藍を経ておこる獣姦 加藤郁乎
日が落ちてゆく山火事の山の裏 坂戸淳夫
昼山火事へ一本の羽毛が走る 三橋鷹女
汽車が走る山火事 尾崎放哉(1885-1926)
湖に山火事うつる夜寒かな 内藤鳴雪
眦に山火事懼れ旅をゆく 佐藤惣之助 春羽織
短日や山火事消してもどる衆 冬葉第一句集 吉田冬葉
艸木瓜や山火事ちかく富士とほし 三好達治 路上百句
覚めがちに山火事つづく一夜なる 八牧美喜子
都市の灯に山火事の呪詛濃く加わる 林田紀音夫
●山風
かなかなを誘ふ山風なりしかな 河野美奇
なぐり吹く山風ぐらし蜂の縞 成田千空 地霊
みちのくの郁子山風をむらさきに 平沢陽子
一鷹を生む山風や蕨のぶ 飯田蛇笏
先生はふるさとの山風薫る 日野草城
冷房を山風に変へ旅のバス 佐山けさ子
刈るほどに山風のたつ晩稲かな 飯田蛇笏 山廬集
刈る程に山風のたつ晩稲かな 飯田蛇笏
唐黍売外道山風に焦がし過ぎ 林翔
夜の道を山風が過ぐ芒の村 中拓夫 愛鷹
小降りして山風のたつ麦の秋 飯田蛇笏 春蘭
尻上げて山風読むか鴉の子 藤田湘子 てんてん
山風があかく過ぎゆくぼたん鍋 奥山甲子男
山風が残してゆきし夜の秋 星野椿
山風が誘い出したる今朝の秋 伊藤 翠
山風に「ようづの虫も送るヨイ」 高澤良一 宿好
山風におほきうねりの樟若葉 狹川 青史
山風にすぐ人消えて春の墓 宇佐美魚目 天地存問
山風にながれて遠き雲雀かな 飯田蛇笏 霊芝
山風にふかれて田植はじまれり 萩原麦草 麦嵐
山風にふかれて田植をはりけり 萩原麦草 麦嵐
山風にほうと立つたる寒さ哉 寒さ 正岡子規
山風にまだ咲く茄子や秋祭 大峯あきら 鳥道
山風にもまるゝ影や鳥おどし 西島麦南 人音
山風にゆられゆらるゝ晩稲かな 飯田蛇笏 霊芝
山風に一尺伸びしあやめ草 萩原麦草 麦嵐
山風に乗つて遠くへ花吹雪 草間時彦 櫻山
山風に剽軽てあるく藜杖 宇佐美魚目 天地存問
山風に匂ひ持たざり男郎花 渡辺桂子
山風に北窓閉すやところせく 飯田蛇笏
山風に又一と鳴りす蚊帳の鐶 佐久間慧子「文字盤」
山風に口ひきむすび吉野雛 関戸靖子
山風に小揺れ大ゆれ初桜 高木晴子 花 季
山風に幣ひるがへり簗の秋 楠目橙黄子 橙圃
山風に押されて暮るる寒施行 福田甲子雄
山風に斧の刃こぼれ山はじめ 萩原麦草 麦嵐
山風に春をしむこころおどろく 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
山風に晒して算木牛蒡かな 井上康明
山風に暁のなぐれや木菟のこゑ 飯田蛇笏 山廬集
山風に月光添ひて走るかな 中島月笠 月笠句集
山風に朝はやさしき吾亦紅 松村蒼石 雪
山風に木遣り起こりて木落とし坂 高澤良一 鳩信
山風に棉ふき出でてましろけれ 太田鴻村 穂国
山風に焔あらがふ磯どんど 上田五千石
山風に燭の危ふき施餓鬼棚 山田弘子 懐
山風に痩せゆくばかり枯芒 大橋敦子 手 鞠
山風に研がれてをりし冬木の芽 小川幸子
山風に立てかけてあり胡麻の束 水上孤城
山風に笛ひょろひょろと夏神楽 木村蕪城 寒泉
山風に耳を洗ひぬ蛇笏の忌 上田五千石
山風に芒浪うつ麓かな 蘇山人俳句集 羅蘇山人
山風に落ち来る蝶や夏座敷 中島月笠 月笠句集
山風に落葉頻りや永平寺 還暦前後 浅井意外
山風に藪鳴りたわむ一の午 有泉七種
山風に蝶うろたへて雪にとまる 渡邊水巴 富士
山風に買ふ矢真白き恵方かな 渡辺水巴
山風に跼みて鮎の落ちしかな 大岳水一路
山風に鈴の空鳴り神の旅 芝田教子
山風に鋸屑薫る氷室かな 大須賀乙字
山風に闇な奪られそ灯取虫 原石鼎
山風に雨沿うて来ぬ蕨餅 芝不器男
山風に鶴が啼いたる寒さかな 飯田蛇笏 山廬集
山風のいま青嵐瓦切る 宮坂静生 樹下
山風のおさまれば百合草に起ち 阿部みどり女 笹鳴
山風のこゑ聞き分けてやまめ釣 黛執
山風のつのる手毬をかはりつく 木村蕪城 寒泉
山風のときに呻吟朴芽立つ 鈴木鷹夫 千年
山風ののこす日向に桑括る 橋本鶏二
山風のひく音深し梅咲かず 渡辺水巴 白日
山風のふき煽つ合歓の鴉かな 飯田蛇笏 山廬集
山風のふたたびみたび薄氷 廣瀬直人
山風のまた亡骸に集まり来る 森下草城子
山風の中のひとすぢ耳菜草 秋山 夢
山風の吹きおとろふる梅月夜 飯田蛇笏 春蘭
山風の吹き煽つ合歓の鴉かな 飯田蛇笏 霊芝
山風の塔にあつまる若葉かな 内田百間
山風の山に還りて牡丹焚 松村多美
山風の忘れてゆきし烏瓜 廣瀬町子
山風の旅信ひらりと寒満月 野澤節子 黄 炎
山風の更けて更けざる風の盆 山田弘子 こぶし坂
山風の涼しさ過ぎぬ満つる月 臼田亞浪 定本亜浪句集
山風の温微にゆるる鉄線花 飯田蛇笏「椿花集」
山風の荒き暮春や河原鵯 宮坂静生 樹下
山風の蚊帳吹きあぐるあはれさよ 原石鼎
山風の軒を離るる粥柱 宮島冨司子
山風の音を溜め込む桜かな 高澤良一 燕音
山風は山にかへりぬ夜長酒 上田五千石 琥珀
山風は氷柱を曲げてしまひけり 小杉余子
山風は荒御魂飛ぶ梅白し 渡辺水巴 白日
山風やしっぺ返しの村時雨 内藤丈草
山風やしづかにおごる櫨紅葉 五味洒蝶
山風やずんぐりむつくり春の藁塚 嶋田麻紀
山風やそれぬぎすてよ単もの 単衣 正岡子規
山風や世を鮭小家の影ぼうし 加舎白雄
山風や人の背丈の夏蓬 勝又水仙
山風や夜落ちしところ湖氷る 松根東洋城
山風や桶浅く心太動く 心太 正岡子規
山風や棚田のやんま見えて消ゆ 飯田蛇笏 山廬集
山風や河鹿の聲の水放れ 安斎櫻[カイ]子
山風や瑠璃深めゆく式部の実 太田 蓁樹
山風や霰ふき込む馬の耳 大魯
山風を怖るゝ鶏や葛の秋 原 石鼎
山風を懐に入れ心太 増田萌子
山風を濤と聞きつつ朝寝せり 米谷静二
山風を盆地へとほす葭障子 藤田直子
山風吉野うるしや初桜 立独 選集「板東太郎」
川を呼び山風を呼び青葡萄 広瀬直人
掃苔の山風にまた火となりて 宇佐美魚目 天地存問
暗い山風の下ろし来て浪立ちて船に酒を酌む 梅林句屑 喜谷六花
月の戸に山風めぐる雪解かな 飯田蛇笏 山廬集
月虧けて山風つよし落し水 飯田蛇笏 霊芝
朝顔の紺に山風疾走す 萩原麦草 麦嵐
汁に煮立つる色保つ薊山風に 河東碧梧桐
湖風の山風となる夏薊 長岡幸子(花暦)
源氏山風に恋猫の声すなり 篠田悌二郎
漆黒の梁に山風蛇笏の忌 廣瀬悦哉
火塚累累枯山風をとほくしぬ 太田鴻村 穂国
炎天に山風の香や吉野口 桂信子 遠い橋
炎天を来て山風に癒さるる 釜江喜代子
焚口に山風あそぶ干菜風呂 黛執
煤はきや山風うけて吹通し 内藤丈草
申祭むべ山風の冷えに冷え 村上麓人
白萩に禅の山風荒々し 大岳水一路
籠枕そを山風の吹き抜けて 飴山實 『花浴び』以後
花の山風の秩父となりにけり 浅野享祐
花ふぶく夕山風に立ちつくしいく春かけし夢をつづれり 五島美代子
花人に信濃山風突き刺さり 草間時彦 櫻山
菜取虫山風立てば居ずなりぬ 大峯あきら 宇宙塵
萱鳴らす山風霧を晴らしけり 金尾梅の門 古志の歌
葛百貫晒す山風荒びけり 山下喜代子
語らねば山風ひびく田植笠 松村蒼石 寒鶯抄
足許に山風のたつ斧始 牧 辰夫
身ほとりに夜風山風涼し過ぎ 高木晴子 花 季
鉄線を活けて山風畳摶つ 林翔 和紙
鉄風鈴山風ばかりうけて鳴る 村越化石
鏡餅荒山風に任せあり 石田波郷
門松や山風ここにきては吹く 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪を削ぐ山風いたし野蒜摘み 能村登四郎
雲雀なく越の山風ふきはるゝ 上村占魚 鮎
青稲穂夕山風に息もつかず 松村蒼石
かたくりの花には強し山の風 堀 文子
からはな草雲つれて来る山の風 古賀まり子 緑の野以後
かりんの実越えきし山の風のいろ 原裕 青垣
くろもじの花虔しき山の風 山田みづえ
さなぶりの明るき夜空胸の上 福田甲子雄「山の風」
なんばんが真つ赤山の日山の風 冨舛哲郎
ひあふぎの咲くとここより山の風 伊藤三十四
みちのくに八月終る山の風 高木晴子 花 季
みほとけも邪鬼も素足や山の風 木塚眞人
もらひ湯の螢つめたき山の風 中勘助
ビールには山の風より海の風 片山幸美
二階にも山の風入れ盆用意 若山すみ江
僧の機嫌雑茸山の風に吹かれ 橋石 和栲
冷房のなき教室に山の風 稲畑汀子
初釜に侍すや故山の風の音 大串 章
半鐘に雪はたきつけ山の風 大串章
地梨の実ころころ青し山の風 石川和雄
夕さりぬ勿忘草へ山の風 伊藤敬子
天蚕を振りて故山の風を聞く 平賀扶人
姫女苑雪崩れて山の風青し 阿部みどり女(駒草)
姫女雪崩れて山の風青し 阿部みどり女
山の風いきいきひそむ枯葎 飯田龍太
山の風うまし八十八夜過ぐ 皆川白陀
山の風寒餅に紅滲まする 村上しゆら
山の風松虫草を吹き白め 深見けん二
山の風海の風凪ぎ種おろす 揚石八重子
山の風田の風なじむ古浴衣 渡辺ミ∃子
山の風田の風村に盆過ぎし 相馬遷子 雪嶺
山中に空家の並ぶ竹の花 福田甲子雄「山の風」
干大根鼻削ぎにくる山の風 太田土男
早池峰山の風のあふれる門火かな 阿久津渓音子
晩涼の句碑へ七面山の風 星野椿
木の芽垣砂山の風とゞめけり 増田龍雨 龍雨句集
木の葉ひゅうと飛ばして山の風走(わし)る 高澤良一 宿好
木苺の花に田の風山の風 前田和子
松の幹濡れてきさらぎの山の風 安斎櫻[カイ]子
桜から人にうつるや山の風 桜 正岡子規
楢山の風紅いろに春立ちぬ 岸田稚魚 筍流し
海山の風をつなぎし福寿草 関 千恵子
火の山の風の荒さよ干大根 風間啓二
火をかけし鮎飴いろや山の風 阿波野青畝
火祭りや大杉揺らす山の風 宮下邦夫
猪鍋やまだをさまらぬ山の風 落合典子
田起しに一と声かけて山の風 成田千空 地霊
白芙蓉衣笠山の風渡る 水野加代
白雨や蕗の葉かへす山の風 中勘助
祭場に水打つて待つ山の風 福田甲子雄
秋めくとすぐ咲く花に山の風 飯田龍太 山の木
秋草のいろ湧き立たす山の風 朝倉和江
秋草やシャツの中まで山の風 藤井愛子
種茄子の割れて種吐く山の風 牛山麗子
空蝉の背の割れに鳴る山の風 井野時子
笛吹いて山の風よぶ秋祭 豊長和風
肺透けてさわらび山の風明り 橋石 和栲
胸にしまふ黄葉の山の風の音 仙田洋子 雲は王冠
芝焼の立つ焔辷る焔山の風 丸島純平
花山葵摘む手に冷ゆる山の風 山下廣
花茣蓙に山の風呼ぶ土産茶屋 飯田弘子
苗代にきて押しあへる山の風 宮岡計次
茶の花や居士の耳目の山の風 碧雲居句集 大谷碧雲居
萩の蝶黄色ばかりや山の風 星野椿
蕾む百合こづいて籠ノ登(かごのと)山の風 高澤良一 燕音
藍甕の底吹いて止む山の風 萩原麦草 麦嵐
裏返す葛山の風追ふごとし 萩原麦草 麦嵐
読経はじまりふときこゆ遠い山の風 シヤツと雑草 栗林一石路
豆稲架に山の風鳴る奥石見 荒田千恵子
軽暖の歩に海の風山の風 川西達雄
雪山の風樹孤島の濤と聴き 福田蓼汀 秋風挽歌
風三楼忌来る真開山の風涼し 池田秀水
香具山の風にほぐるる白菖蒲 古川京子
駒草や砂塵逆巻く山の風 田村恵子
高槙に山の風くる鼬罠 廣橋いたる
鯉のぼり雷神山の風はらむ 屋代ひろ子
鶏頭は茎まで赤し山の風 大串章
黒穂ぬく老いをな吹きそ山の風 中勘助
●山霧
かたまりとなる山霧の芯に居り 稲村茂樹
ふみ迷ひしやみよし野の山霧に 稲畑汀子
ふらふらと草食べている父は山霧 西川徹郎 町は白緑
一散の山霧を漕ぐ登山杖 上田日差子
三日居りて山霧のみの葛の花 水原秋桜子
五月雨の山霧暗し枯つゝじ 中島月笠 月笠句集
初蝶を見し夜山霧水に浮く 松村蒼石 雁
大破璃に山霧迫る午後のお茶 小川晴子
山霧か硫気か地獄枯るる中 水原春郎
山霧が國鎖したる薩摩みち 筑紫磐井 婆伽梵
山霧が瞬時に隠すお花畑 本田八重子(圓)
山霧となり霧山となり明けし 滝青佳
山霧にあせたる欄に蚊帳を干す 水原秋桜子
山霧にうたれ亡びし種族かな 長谷川かな女 雨 月
山霧にしめりて明き燈籠かな 西島麦南 人音
山霧にときをり隠し湯の匂ひ 伊藤トキノ
山霧に幹の如くに我は濡れ 上野泰(1918-73)
山霧に掻き消えし子は霧の子か 大串章 百鳥 以後
山霧に線香曲り阿闍梨墓 佐藤夫雨子
山霧に蛍きりきり吹かれたり 臼田亞浪 定本亜浪句集
山霧に蜻蛉いつさりし干飯かな 飯田蛇笏 山廬集
山霧に遭ふ魂を持つゆゑに 手塚美佐
山霧に釣船草の航くごとし 米山千代子
山霧のかんがり晴れし枯木かな 飯田蛇笏 山廬集
山霧のしげきしづくや真柴垣 飯田蛇笏 山廬集
山霧のつひに障子を濡らしけり 今井杏太郎
山霧のわきくるとんぼ群るゝかな 久保田万太郎 草の丈
山霧の奥も知られず鳥の聲 霧 正岡子規
山霧の引きゆく迅さ小鬼百合 星野恒彦
山霧の梢に透ける朝日かな 召波
山霧の流れ施行のもの濡らす 江口竹亭
山霧の深しと思へば眠りたり 太田鴻村 穂国
山霧の裾の重さよ栃の花 橋本榮治「越在」
山霧の霽るるを待てり箒星 宮坂静生 樹下
山霧の霽れ天界に千枚田 大原良江
山霧の音となりけり強羅駅 鈴木しげを
山霧は夜も峡浸すほたる籠 有働亨 汐路
山霧は晴をいざなふ秋祭 茨木和生 三輪崎
山霧は雲に紛れぬ蕎麦の花 田部谷紫
山霧へ烟を入れて田の終ひ 矢島渚男 船のやうに
山霧や妊る牛に合羽着せ 坂本のり子
山霧や宮を守護なす法螺の音 炭 太祇 太祇句選
山霧や虫にまじりて雨蛙 飯田蛇笏 山廬集
山霧や駕篭にうき寐の腹いたし 野澤凡兆
山霧や黄土(はに)と匂ひて花あやめ 不器男
山霧をかすかにダムの花の渦 桂樟蹊子
山霧を払ふ扇の寒かりき 尾崎紅葉
山霧を抜けしは脱皮せるごとし 中村芙路子
山霧を抜け来し白き蛾なりけり 山田弘子 螢川
山霧を行かせ蒼白なり氷河 有働亨 汐路
山霧走るほか気配なし 土葬の上 伊丹公子 時間紀行
待宵の四山霧ふかき外厠 西島麦南
月見草別れてのちの山霧は 臼田亞浪 定本亜浪句集
木の芽山霧右往して左往して 行方克巳
朴や白恋の山霧しげきかな(湯殿山) 河野南畦 『広場』
杉の秀に山霧の湧く送り梅雨 島田芳恵
枳殻踏む臭さ山霧さつと来し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
梅雨さむし山霧軒にささと降り 長谷川素逝
梅雨入りや山霧あほつ杣の顔 前田普羅 飛騨紬
森林浴山霧に耳洗はれぬ 市村究一郎
棺にひそかに山霧を詰め運ぶ数人 西川徹郎 家族の肖像
湖霧も山霧も罩むはたごかな 飯田蛇笏 山廬集
白塊の山霧(ガス)が押し寄す山母子 高澤良一 随笑
翌檜に絶えざる山霧分校よ 鍵和田[ゆう]子 浮標
舟解いて山霧にこぐや河下へ 飯田蛇笏 山廬集
茜掘山霧ささとにほひ来る 小亀双二
起き出でて山霧濃きをたれか言ふ 西村和子 かりそめならず
身体は山霧であり金剛であり 佃 悦夫
黍畑の山霧粒をなせりけり 山口草堂
あしびきの山の霧降る湖施餓鬼 加倉井秋を
この山の霧深くして一位の実 綾部仁喜 寒木
もみずるに一役買って山の霧 高澤良一 素抱
三峰山の霧をふるはせ法螺の音 小宮久美
仆れ木やかくて朽ちゆく山の霧 林原耒井 蜩
厨房のナイフ曇らす山の霧 桂信子 黄 瀬
向う嶺の霧よりさびし山の粟 古沢太穂 古沢太穂句集
山の日の霧に捲かるる朝寒き 臼田亜浪 旅人
山の童の霧がくれする秋の滝 飯田蛇笏 霊芝
山の霧下り来て包む港町 飯田京畔
山の霧村に来てをり診察日 小池龍渓子
山の霧枯草道の先きを断つ 佐野良太 樫
山の霧池の霧降るゴルフ場 永川絢子
山の霧罩めたる柿の雫かな 飯田蛇笏 山廬集
山の霧降り来て濡らす袋角 岸田稚魚
山動くごとし金剛山の霧 小林たけし
引窓や温泉(いでゆ)の山の霧の洞 黄吻 選集「板東太郎」
志賀山の霧降る夜道兎跳ぶ 堀口星眠
早発ちの炉辺に吹き入る山の霧 木村蕪城 一位
湧きしときのかたちのままに山の霧 加倉井秋を 午後の窓
湧きつづく霊山の霧無尽蔵 山口超心鬼
火の山の霧に噎びて岩桔梗 伊東宏晃
火の山の霧に月明みだれそむ 倉橋羊村
火の山の霧ふりかぶり登りゆく 上村占魚 球磨
火の山の霧や音たて皿ふれあふ 鍵和田[ゆう]子 浮標
環山の霧ひしひしと薄紅葉 鈴木しげを
秬しごく音のあらくて山の霧 西村公鳳
穂黍まだ青きに早も山の霧 原石鼎
筒鳥やみるみる晴るゝ山の霧 秋山万里
茸の旬をはりし山の霧の粒 宇佐美魚目 秋収冬蔵
蒜山の霧ふりやまぬをどりの輪 谷口古杏
虎尾草に黒姫山の霧匂ふ 亀田英子
電線の二本はさみし山の霧 佐野良太 樫
●山際
山際すこしと朝々や明易き 松根東洋城
山際にたまる端午の柑の闇 福田甲子雄
山際に淡き日のこり田鶴渡る 示日止三
山際のあさぎ空より北風は来る 篠原梵 雨
山際の凍空まぶし婆の髪も 金子兜太
山際の大きな家の垣繕ふ 黒田杏子 花下草上
山際の涼しさに寄せ墓箒 下田稔
母の声す山際の月冷やけし 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
走り穂や山際へ退く朝の霧 森重 昭
雲行くは山際ばかり干大根 廣瀬直人
●山国
すぐ途切れ山国に会ふ夏祭 加藤瑠璃子
そばの花咲いて山国らしくなる 小竹由岐子
つばめ来て山国の雲定まりぬ 正木不如丘 句歴不如丘
つわの連弾山国の平和なくらし 山岡敬典
なきがらに山国の水くだるばかり 佃悦夫
もう桔梗咲く山国の田植かな 及川貞
わが名掻消す山国の風速み 竹本健司
五月雨の山国川の瀬鳴りの夜 河野扶美
交る蜥蜴山国の城端正に 藤岡筑邨
八十八夜過ぎ山国の白豆腐 児玉南草
冬に入る山国の紺女学生 森澄雄
冬凪ぎの山国目覚め黒き猫 五十嵐春草
冴え返る山国に星押し出さる 雨宮抱星
卯の花腐し山国は墓所多し 飯田龍太
厄日過ぎし山国にゐて風の音 岸田稚魚
厩に音月の山国けぶるかな 鷲谷七菜子 花寂び
夏の山国母いてわれを与太と言う 金子兜太「皆之」
夜の白き菊に山国寂しけれ 石昌子
夜空うつくしくなりし山国蚊帳かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
威し銃山国の空新しく 細見綾子
威し銃山国を出ぬ雀らに 竹鼻瑠璃男
宿の下ゆく山国の夜廻りよ 鈴木穀雨
寒鮒を焼けば山国夕焼色 青邨
山国と野の国接し種を蒔く 和田悟朗
山国にがらんと住みて年用意 廣瀬直人
山国にきて牡蠣の口かたしかたし 矢島渚男 天衣
山国に一川ありて鮎落つる 中村明子
山国に光いくまい田植すむ 鷲谷七菜子 花寂び
山国に冬が乗つかり動かざる 村越化石
山国に墓ひとつ増え天の川 鷲谷七菜子 雨 月
山国に夏痩せて歯の痩せていく 鈴木六林男 王国
山国に妻子住ましめ小六月 遷子
山国に嫁げば杉を植うことも 西尾 苑
山国に寝て遠雷を遊ばする 村越化石
山国に日の暈賜ふ西行忌 廣瀬直人
山国に来て二日目に秋立ちし 細見綾子 黄 瀬
山国に来て感傷の水充たす 佃悦夫
山国に来て牡蠣の口かたしかたし 矢島渚男
山国に火色の赤さ富有柿 森澄雄
山国に省略の秋はじまりぬ 岡本 眸
山国に秋さだまりて師の忌あり 松村蒼石 雁
山国に積み重なりし肉の草 佃悦夫
山国に行く苗売のバスに立つ 茨木和生 遠つ川
山国に逢ふや幟の月遅れ 杉山岳陽
山国に邃き青空年新た 矢島渚男 延年
山国に重い垂氷の月夜かな 池田澄子 たましいの話
山国に雪の彼岸の一会かな 金田あさ子
山国に頻繁に鳴る木器かな 佃悦夫
山国に鯨の化石天の川 近藤昌平
山国のおさなき光種案山子 永野佐和
山国のおそき朝日の花すもも 草間時彦 櫻山
山国のけぢめの色の青葡萄 藤田湘子「前夜」
山国のたそがれはやき新豆腐 館岡沙緻
山国のつばめ見てきし更衣 千代田葛彦
山国のどん底にかけ上り簗 檜 紀代
山国のひかり散らして桷の花 水原京子
山国のひかり頒け合ひ軒氷柱 清水白郎
山国のぶつかり合つて蝌蚪生きる 中村明子
山国のまことうす日や翁の忌 長谷川素逝 暦日
山国のわづかにひらく霜の薔薇 福田甲子雄
山国のゑのころぐさは大きかり 十川たかし
山国の一村一寺桃の花 木附沢麦青
山国の代田ひかりを深く呑み 雨宮抱星
山国の伊賀に霾る一日かな 藤井充子
山国の光あつめて畦を塗る 青柳志解樹
山国の光を斬つて夏つばめ 南村マサ子
山国の冬は来にけり牛乳を飲む 高浜虚子
山国の刈田ざんざん降りに逢ふ 広瀬直人
山国の到るところに喉仏 佃悦夫
山国の土鈴氷柱をくぐり買ふ 大串章
山国の地震地すべり秋飼屋 百合山羽公 寒雁
山国の夏炉に落居ず檐の雨 原田種茅 径
山国の夜は更け易し踊唄 北川草魚
山国の夜番の上に星時計 鷹羽狩行
山国の夜霧に劇場出て眠し 渡辺水巴 白日
山国の大きな星の飛びにけり 三村純也
山国の大橋日脚伸びにけり 中島克巳
山国の天へ供華なす大花火 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
山国の太きうどんを湯涼みに 下田稔
山国の媼ひとりも着ぶくれず 茨木和生 倭
山国の小さき山も雪積る 辻田克巳
山国の小さき駅やほたる草 鈴木 正子
山国の小学校にがうな売 福沢義男
山国の小石捨て~耕せり 沢木欣一 塩田
山国の山より高き幟かな 中川和宥
山国の山包む雲や今朝の冬 柑子句集 籾山柑子
山国の山消して雪さかんなり 澁谷澪
山国の川美しや人麿忌 西本一都 景色
山国の年端月なる竃火かな 飯田蛇笏 霊芝
山国の日のつめたさのずゐき干す 長谷川素逝 暦日
山国の日和は梨の返り花 碧雲居
山国の日暮れ狂へるつばくらめ 中拓夫 愛鷹
山国の星の刺さりし凍大根 太田土男
山国の星の大粒春祭 石田勝彦
山国の星をうつして水ぬるむ 吉野義子
山国の星をまぢかに大どんど 池谷市江
山国の星座は低しクリスマス 野口八重子
山国の星美しき盆の唄 高鴨アヤ子
山国の春の寒さのガラス市 星野石雀
山国の春や他郷へ急ぐ川 渡辺啓二郎
山国の春何もかも花ぱっと 川口咲子
山国の春日を噛みて鶏の冠 飯田蛇笏 山廬集
山国の暗さを底に葡萄煮る 対馬康子 吾亦紅
山国の暗すさまじや猫の恋 原石鼎
山国の暮れ切るまでや杏花村 草間時彦 櫻山
山国の暮春と仰ぐ梅桜 酒井土子
山国の暮春の家の土間暗し 京極杞陽 くくたち下巻
山国の月しろながく美しく 西本一都 景色
山国の月の枝より棗摘む 大岳水一路
山国の朝日は颯と青胡桃 藤田湘子 てんてん
山国の木の実落つおと振りむけば 加藤耕子
山国の枕木きしむ秋の声 伊藤 翠
山国の桃の紅らむ力かな 櫛原希伊子
山国の桜のかげの男ごゑ 鷲谷七菜子 花寂び 以後
山国の橡の木大なり人影だよ 金子兜太 遊牧集
山国の残菊日和惜みつつ 福田蓼汀 山火
山国の毛虫ふさふさ生きるとは 宮坂奈々
山国の水あらあらと洗鯉 黒木 胖
山国の流れのはやき天の川 八染藍子
山国の瀬音は高し初月夜 江口竹亭
山国の煙草明りと秋の土 松村蒼石 雁
山国の照り空高き田植かな 金尾梅の門 古志の歌
山国の祖母竹輪一本食べました 松本勇二
山国の秋迷ひなく木に空に 福田甲子雄
山国の稲穂の冷えにラジオ流す 桜井博道 海上
山国の空に山ある山桜 三橋敏雄 畳の上
山国の空に游べる落花かな 草間時彦 櫻山
山国の空は底なし袋掛 林 徹
山国の空をあまさず星月夜 檜 紀代
山国の竹箸太し新豆腐 茨木晶子
山国の縦につらなる寒の星 中拓夫 愛鷹
山国の耳振る牛よ雪起し 高橋正人
山国の聞けば淋しき踊唄 稲畑汀子 汀子第二句集
山国の花火も水を恋ひて散る 大串章
山国の茅葺き厚き冬構へ 滝戸蓮
山国の茎の太くて女郎花 檜 紀代
山国の藁塚木菟に似て脚もてる 松本たかし
山国の虚空日わたる冬至かな 飯田蛇笏(1885-1962)
山国の蛇を投げあう遊びかな 小西 昭夫
山国の蝶を荒しと思はずや 高濱虚子
山国の街早じまひして仲秋 柴田白葉女 花寂び 以後
山国の辛夷一向宗の花 茨木和生 三輪崎
山国の酒もて拭ふ神楽面 船越淑子
山国の銀座小暗き盆踊 宮坂静生 青胡桃
山国の長き停車の初景色 木内彰志
山国の闇うごき出す除夜の鐘 鷹羽狩行
山国の闇おそろしき追儺かな 原石鼎
山国の闇がふちどる門火かな 有働木母寺
山国の闇ごつごつと青胡桃 酒井 弘司
山国の闇を濃くして草蚊遣 長田等
山国の闇冬服につきまとふ 茨木和生 木の國
山国の闇恐しき追儺かな 原石鼎
山国の闇降りてきし種案山子 宮田正和
山国の雨けはしさよ田植笠 芝不器男
山国の雨したたかに夏燕 瀧春一
山国の雪が泣くなり姫はじめ 岸田稚魚
山国の雪の大年降り暮れぬ 椎橋清翠
山国の雪解しづくは星からも 鷹羽狩行 六花
山国の雪解荒々しかりける 今井杏太郎
山国の雪降る中へ初燕 矢島渚男 延年
山国の雲の阿修羅に梅雨の月 西本一都 景色
山国の雷雨にはてし祭かな 松崎鉄之介
山国の風の満月のすばかり 飯田蛇笏 雪峡
山国の風鮮らしき鯉幟 川邊房子
山国の魚の血黒き四月尽 宮坂静生 青胡桃
山国の魚を釣りゐる睦月かな 橋本榮治 逆旅
山国はむら立つ雲に稲架静か 久米正雄 返り花
山国は仰向けに寝て春惜しむ 宗村堯
山国は山を砦に冬を待つ 鷹羽狩行 六花
山国は星座傾け冬に入る 渡部抱朴子
山国は炭焼く焔鉄路まで 辰巳秋冬
山国は鼻にもつけよ灸花 岡本政雄
山国へ秋雲も歩を早むかな 冨田みのる
山国へ退りし山や十二月 伊藤通明
山国へ送る乾鮭歳暮かな 小澤碧童
山国やとろとろあをき透き蚕ども 石 寒太
山国やひとりに余る冷し酒 舘岡沙緻
山国や一方海に雲の峯 雲の峯 正岡子規
山国や冬ざれてゐる畑の土 渡辺水巴 白日
山国や夕日くもらす草蚊遣 近藤一鴻
山国や寒き魚介の小商人 飯田蛇笏 山廬集
山国や屋根に来るさへ春の鳥 三津人
山国や手触れて消えむ春の虹 文挟夫佐恵 雨 月
山国や新蕎麦を切る音迅し 井上雪
山国や星のなかなる吊し柿 木内翔志
山国や昨日流せし雛が浮く 大西静城
山国や空にただよう花火殻 金子兜太「遊牧集」
山国や蟻の地獄の育ちつつ 辻桃子(童子)
山国や誕生石の石蕗咲けり 安西 篤
山国や追はれて杉の実が生りし 竹本健司
山国や陸稲畑に父の糞 金子兜太
山国や雪の縁取りめぐらして 矢島渚男 延年
山国や霧蹴つて舞ふささら獅子 宮田富昭
山国や黒きリボンの夏帽子 岸本尚毅 舜
山国や鼬振り向き人は笑い 森下草城子
山国をいちにち出でず春の雲 小島健 木の実
山国を出て山国へ神渡 山田弘子 こぶし坂以後
山国を空から見れば螢かな 和田悟朗
山茱萸や山国のものみな素顔 黒川憲三
岩魚焼く山国の星瞭かに 西村公鳳
帰去来(かえりなんいざ)山国へ雪国へ 橋本榮治 越在
引売や山国人へ*さより提げ 西山 睦
打ち強くして山国の鉦叩 山仲英子
旅嚢より足袋いだし履き山国ヘ 古沢太穂 古沢太穂句集
早稲の香や山国の雲みな走り 富沢みどり
星とんでのち山国の闇厚し 柴田白葉女
春北風山国棲みをはかなみて 飯田蛇笏 椿花集
春竜胆山国育ちは山が好き 青柳照葉
時雨忌の山国に入り夜を更す 平井さち子 鷹日和
枯山国を眠りつづけて時失ふ 森澄雄 花眼
柚子落とし山国の空覚ましけり 布川武男
栗咲いて山国の夜々沈むなり 村越化石
桐まだ咲かぬ山国山人と酔うて 金子兜太 詩經國風
水温む山国川や通院す 笈木志津女
水音にも山国の張り*たら芽あヘ 鍵和田[ゆう]子 浮標
洛南は山国どこも大旱 妹尾健
淋しめば天井落ちてくる山国 佃 悦夫
火柱の明き山国あれは小雀 下山光子
炉あるかに坐し山国は夜の秋 村越化石 山國抄
照りつけて盆に入るなり山国は 宮津昭彦
猪食つて山国はすぐ深夜なり 高星吐
畦塗りの水がすぐ澄む山国は 中根唯生
白桃を吸い山国の空濡らす 酒井弘司
磯開き山国の児も祓はれる 滝田英子
糊加減濃く山国の障子貼る 北見さとる
芥川龍之介忌を山国に 今井杏太郎
花芒光る山国仏見に 木村敏男
荼毘に似る山国伊賀の菜穀火は 右城暮石
蕨干す山国の日のうつくしや 大場白水郎 散木集
蛍火に谷毛むくじゃら山国は 金子兜太
蜜をわずかに山国の返り花 池田澄子
行くほどに京は山国青嵐 山内山彦
踊り果て山国の闇かむさり来 菅原鬨也
鈴虫よ振り向けばしんかんと山国 児玉悦子
雨霧のとぶ山国の糸ざくら 高濱年尾 年尾句集
雪中梅うるむ山国乙女の香 原裕 青垣
電柱とかまきり痩せて山国は 井桁白陶
青空は山国にのみ曼珠沙華 鷹羽狩行
馬の瞳も山国の澄み蕎麦刈れる 岡野風痕子
馬刺しを喰ふ山国の朝曇り 吉田鴻司
騒然と山国くるる葛の花 小松崎爽青
高々と山国に来し燕かな 大峯あきら
鳥渡る山国の空ひきしめて 小林康治 『虚實』
●山暮る
いつもの星が出でたれば暮れてゆく山 シヤツと雑草 栗林一石路
かへり見る雪山既に暮れゐたり 清崎敏郎(1922-99)
けふ秋や朝浴暮浴山浅葱 松根東洋城
すでに晩夏草ぬきんでて昏れる山 桂信子 黄 瀬
たたなはる紅葉の山の暮れてなし 上村占魚 球磨
ひぐらしに谷より暮るる山の宿 太田美奈子
ひとつづつ山暮れてゆく白露かな 黛執
ふるさとは山より暮るる蕎麦の花 日下部宵三
五竜山昏れ鵲の巣も昏れにけり 原田青児
人の下り来る暮るる山のまつたく暗くなる 梅林句屑 喜谷六花
人棲まぬ山から昏れて三月は 茨木和生 野迫川
仏たち暮れてひかりの芒山 鷲谷七菜子 花寂び
住みわびぬ暮山の雲とならばやな 中勘助
便追に山は襞より暮れそむる 松木弥栄子
俳優と俳人暮るゝ蜜柑山 攝津幸彦
元日の暮れて窓辺に山据わる 小畑きよ子
去りがてに山ふところの梅暮るゝ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
城昏れて山の灯となる晦日蕎麦 古舘曹人 樹下石上
大佐渡は山より暮れて稲雀 藤田弥生
大夫格子せめては暮を花の山 調鶴 選集「板東太郎」
大文字の点かざる山もみな暮れし 岸風三樓
大柑引く男か女か山の暮 森澄雄 浮鴎
大根焚き日暮を山と思いけり 大坪重治
天つばめ昏れ色ひそむ山の襞 稲垣きくの 牡 丹
天昏れず風雲光る山襖 飯田蛇笏 雪峡
完熟の昏さが覆ふ葡萄山 正木ゆう子 悠
容鳥の鳴きて暮れゆく曳馬山 関戸高敬
小瑠璃鳴き止めばからまつ山暮るる 青柳志解樹
山がちに足寄は昏るる女郎花 古舘曹人 樹下石上
山が山呼んで暮れゆく空つ風 千代田葛彦
山ざくら暮れ道くさの夫と猫 大木あまり 火のいろに
山の国大きく暮れて笊に栗 村越化石
山の子の遊び暮れたり花たばこ 小田切輝雄
山の日のぐらつと昏れる白障子 山中栄子
山の湯や吾が春愁の花昏れず 宇田零雨
山は暮て野は黄昏の芒かな 蕪村
山ひとつふたつ昏れゆく虫送り 豊田八重子
山よりも稲刈暮れてしまいけり 鈴木六林男 後座
山を見てちらつく暮色あたたかし 松澤昭 神立
山一つ二つ暮れゆく寒稽古 石田三省
山中昏れ 昏睡の鵙 美山杉 伊丹公子 山珊瑚
山国の暮れ切るまでや杏花村 草間時彦 櫻山
山坊の障子一枚づつ暮れる 椎橋清翠
山女釣りにはかに暮るる厚別 古舘曹人 砂の音
山昏れてぬぎすてし汗のもの重し 松村蒼石 雪
山昏れてよりの親しき誘蛾燈 鶴原暮春
山昏れて車窓菜殻火迫り来し 松本みつを
山暮るるほどには暮れず遠郭公 大庭星樹
山暮るるまで白樺に小瑠璃鳴く 石原栄子
山暮るる零余子こぼさぬやうに暮れ 蓬田紀枝子
山暮るゝ麦を蒔く田に火を放ち 張田裕恵
山暮れて水暮れてくる鳴子かな 福島壺春
山暮れて水暮れて花まだ暮れず 細川子生
山暮れて湖暮れてより鹿の声 長谷川富佐子
山暮れんか蜜柑の色の遠くにて 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
山村の暮を鶏なく余寒かな 蘇山人俳句集 羅蘇山人
山桑の枯葉を噛めば日暮見ゆ 佐藤鬼房
山法師標高千の湖昏るる 田村恵子
山深くゐて父の日の暮れにけり 柴崎七重
山火事の騒ぎ静まり暮の春 大峯あきら 宇宙塵
山焼や旅に暮れける西の京 和田祥子
山空のとろりと青き暮春かな 岡田日郎
山雨に暮れゆく庭の楓かな 流木
山雰の足にからまる日暮哉 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
山風の荒き暮春や河原鵯 宮坂静生 樹下
山鴉啼いて元日暮れにけり 白水郎句集 大場白水郎
岩手山はや暮れかかる風炉名残 齋藤夏風
峰雲の暮れつつくづれ山つつむ 篠原梵
左右の山暮れて相似る橋涼み 富安風生
師へ父へ歳暮まゐらす山の暮 松本たかし
年木伐るひびきに暮るる山ひとつ 黛執
待宵や山の端暮れて星一つ 高浜虚子
怖ろしき山を背負うて芹の暮 和田悟朗
懸大根ことりと山が昏くなる 石井一舟
戸隠山の日暮がおそふ焚火かな 鷲谷七菜子 游影
捨水をこほろぎの嗅ぐ山の暮 進藤一考
教会へ山鳥が行く雪の暮 和知喜八 同齢
散る花もなくて暮れ来し源氏山 深見けん二 日月
旅愁の顔に暮れいろ寒き山が傾く 人間を彫る 大橋裸木
日の出花四つ猿楽よ暮明樽 山夕 選集「板東太郎」
日の暮の背戸に風立ち松納 棚山波朗
日の暮は雲をゆたかに山桔梗 角川春樹
日の暮れも離れぬ風や干し鰈 梶山千鶴子
日は暮れて芒の山を越えにけり 薄 正岡子規
日暮には白露の山の坐りゐる 八木林之介 青霞集
日暮まで山かげの田の薄氷 長谷川櫂 古志
日暮来る山焼きの火のまだ残り 石川薫
明け暮れを山見てすごす白絣 菊地一雄
昏々と夜は雪山をおほひくる 石橋辰之助 山暦
昏うして綺羅星ならぶ山の沼 中川宋淵 遍界録 古雲抄
昏れいろの山の隠り沼春の鴨 柴田白葉女 花寂び 以後
昏れかかる山をいくへに*かりんの実 矢島渚男
昏れぎはの紅をひきゆく山蜻蛉 原裕
昏れ雲のうす墨垂りて山ざくら 石原舟月
昏睡の父よ霧中に山鳩鳴く 大井雅人 龍岡村
春の山一つになりて暮れにけり 正岡子規
春の山屡屡雲に暮れむとす 会津八一
春惜しむ姿や佐保山昏れてなほ 河原枇杷男
春暮るる会津に白き山いくつ 岡田日郎
春田打菩薩の山の暮るるまで 池田まつ子
暮の山遠きを鹿のすがた哉 其角
暮るる海枯山かけて大雨あり 舟月
暮るゝまで山の夏蝶飛んでゐし 小林たか子
暮れさむく紅葉に啼くや山がらす 白雄
暮れてなお山空青し勝つた牡牛 金子兜太
暮れてゆく山を見てをり秋扇 村上喜代子
暮れて越す草山一つ春の月 志田素琴
暮れどきの山も息して鮎膾 中拓夫
暮れ際のさくらむらさき斑雪山 堀口星眠 営巣期
暮れ際を山あかりして初紅葉 遠藤正年
暮んとす春をゝしほの山ざくら 蕪村 春之部 ■ 曉臺が伏水嵯峩に遊べるに伴ひて
暮春かな山黒々と川を抱き 中村苑子
暮春ふりむくは妻か山鳥か 橋石 和栲
暮雲おき雪嶺たゞの山に伍す 篠田悌二郎
松茸の丸焼き食らふ山の暮れ 山本寛太
桐一葉やがていつもの山で暮れ 小菅久芳
樟大樹山の寒暮が海に移り 長谷川双魚 風形
権現の杜に雉鳴き山湖暮れ 阪井 節子
樹々暮れて大き山の蛾髪ほどく 柴田白葉女 花寂び 以後
母の日の山が暮れゆく納戸色 中村明子(萬緑)
水平に来る死期山茶花の日暮 赤松[けい]子 白毫
水現れて檜山の暮天曳き落つる(那智山) 野澤節子 『飛泉』
河鹿鳴き山垣四方に暮れゆけり 木津柳芽 白鷺抄
波のりに淡路島山暮れにけり 岸風三楼 往来
涙ぐむ山の日暮の木守柿 鈴木鷹夫 渚通り
湖昏れて山女焼く焔の美しく 菅正子
満天星の花や山よく見えて暮れ 大井雅人
火の山の暮れ映ゆる菜花一望に 乙字俳句集 大須賀乙字
無患子や大き山より暮るるなり 福島勲
焼山の煙かゝりぬ暮の月 朝竹
煮凝や暮れて故山のみなまろし 大石悦子 群萌
牛小屋は暮れつゝ山火いろめきぬ 五十崎古郷句集
独活摘みて山の娘山の唱に暮れ 河野南畦 『花と流氷』
猪鍋や暮れて背高くなりし山 石田勝彦
男唱に山の蜜柑の熟し昏れ 八木三日女 赤い地図
畠打の顔から暮るゝつくば山 一茶 ■文化六年己巳(四十七歳)
白妙もいつしか暮れて花の山 千代女
白飯やいづこの山も日暮にて 桑原三郎 龍集
百本のひとつに暮るる花の山 瓜生和子
睡蓮の純白のこす山の暮 桂信子 黄 瀬
神留守の畝傍山より昏れにけり 佐川広治
秋の山暮るゝに近く晴るゝなり 長谷川かな女 雨 月
秋山に昏れてゐる子の父がわれ 石橋辰之助 山暦
秋水の縮まつて山昏るるかな 金田咲子 全身 以後
秋風に馳せ下りけり暮るゝ山 露月句集 石井露月
空海の山暮れ切つて天高し 小島千架子
窓掛に暮山のあかね春寒し 飯田蛇笏 霊芝
端居すや三笠の山の昏るるまで 島村茂雄
筒鳥の声暮れのこる山の坊 高城玲子(ホトトギス)
箸と膳ひぐらしの山暮れてゆく 原田喬
紅葉日が暮れた山をうごかしたいと思ふ見てゐる 中塚一碧樓
肩まるき山暮れ果てし炭火かな 村沢夏風
芋を掘る山より先に顔昏るる 対馬康子 吾亦紅
花くえて山雨あやなし暮の春 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
花卯木水湧く山は暮れ早し 中拓夫
花昏れて夜空の青き吉野山 桑田青虎
花昏れて宇治山星をあげにけり 岸風三楼 往来
英彦山の日暮うながす閑古鳥 荒巻信子
茄子紺に恵那山昏るる涼しさよ 西本一都
草刈一日のうしろより山が暮れかかる 栗林一石路
菜の花や火の山沖に昏れのこる 松浦喜代子
蓑虫や昏れなむとして山やさし 山田みづえ
蕎麦の花火山灰の山畑暮れ残る 羽田岳水
蕗の葉に太き雨脚山暮るる 田中冬二 麦ほこり
蚊遣火や山に対へば暮れてゐし 田宮房子
蜜柑畑出て寝釈迦山昏れにけり 萩原麦草 麦嵐
蜩や山ひとつづつ昏れゆかむ 木塚眞人
蟇二度鳴いて山二度暮れぬ 原田喬
西行の日やたわたわと山暮れて 黛 執
見てゐたる山も暮れたり西行忌 鈴木鷹夫 千年
見返れば山暮れてをり秋の声 八幡城太郎
見送りし仕事の山や年の暮 高浜虚子
身つくらふ鵜に山暮れて来りけり 龍胆 長谷川かな女
迢空忌裾より昏るる二上山 浅場芳子
追ふ鳥も山に帰るか年の暮 丈草
逆光に山笑ひつつ暮れなづむ 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
避暑の宿山暮るゝ見て灯しけり 雑草 長谷川零餘子
鈴虫に山居暮れたる窓閉ざす 尾亀清四郎
鐘一つ洛外の弥生山暮るる 大野洒竹
雁瘡の父よ暮れゆく島山よ 八木林之助
雁鳴や浅黄に暮るちゝぶ山 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
集卵や寒暮の山がよく見えて 長谷川双魚 風形
雛の日や遅く暮れたる山の鐘 飯田蛇笏 霊芝
雪山の昏るるゆとりに鳴る瀬かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山暮るゝや天青きまゝ月ほの~ 楠目橙黄子 橙圃
雪来ると山のぞろぞろ暮れだしぬ 松澤昭
青ぶだう山一重づつ暮れかかり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
青葉木菟鳴いて山ノ手暮色かな 深川正一郎
青饅や暮色重なりゆく故山 加藤燕雨
韮の花墓山はやく昏れそめし 木下青嶂
音羽山暮るゝ焚火のはなやかに 草城
風の梅地に垂れつ四山暮れにけり 中島月笠 月笠句集
餅花や暮れてゆく山ひとつづつ 廣瀬町子
馬追や山の暮色を日がはこぶ 雨宮抱星
鳶ないて雪山空に暮れかぬる 梅の門
鴨啼いて山の日暮をさそひけり 福永みち子
鵜の尾岬澪之助なき山暮春 阿部みどり女
鹿おどし背山昏れゆく詩仙堂 柳田聖子
●山険し

●山越
*かんじきのあと山を越えいづくへか 福田蓼汀 秋風挽歌
いく山を越えきし雲や金鳳華 村沢夏風
かぎろへばあはれや人は山を越ゆ 篠田悌二郎
かりんの実越えきし山の風のいろ 原裕 青垣
きのふ見し山を越えをり初しぐれ 豊長みのる
くわりんの実越えきし山の風のいろ 原裕 青垣
この軍旗かの枯山を幾度越えし 深見けん二
どの山も花房越しや胡桃に倚り 宮津昭彦
やぶ入の暁山を越えにけり 星野麦人
ボタ山を越える電柱雪狐 穴井太 ゆうひ領
丘幾つ越え来て此處に山の秋 星野立子
人を恋ひ阿蘇越えゆかば山火燃ゆ 本郷昭雄
伊賀越の時雨がとんで山の神 茨木和生 往馬
兀山を越えて吹きけり秋の風 秋風 正岡子規
冬木越し霊山に拠る町点る 宮津昭彦
冬近し人の背越しに山を見て 黛執
切れ凧や道灌山を越えて行く 凧 正岡子規
初蛙妻を娶らむと越えし山 岩田昌寿 地の塩
去年今年ひとつの山の闇を越え 岩谷滴水
夕顔や山を越え来て髪の老ゆ 岸田稚魚
夜を越えし山や覚えの花臭木 森澄雄
天狗党越えたる山も眠りをり 梅原昭男
寒禽もさびしと群れて山を越す 福田蓼汀 秋風挽歌
山の月独り越ゆらん君が面 露月句集 石井露月
山の背を越えがたく滝凍てており 駒 志津子
山一つ越えし筑後の揚雲雀 野村 佑
山一つ越えし谷間の太蕨 吉田久子
山一つ越えて見にゆく冬ざくら 林原和枝
山一つ越えんど春の湖を過ぐ 甲斐禮子
山一つ越せばわが里春の雨 伊藤文代
山並の雪越えて来て旅の僧 高濱年尾 年尾句集
山二つ谷一つ越え蕎麦湯かな 柳澤和子
山刀伐を越ゆ水引の銀を手に 安藤五百枝
山幾重越え来し音か虎落笛 城戸花江
山茱萸越しに露天湯の見ゆる部屋 能村登四郎
山見れば越せしを思ふ芒かな 廣江八重櫻
山雀が垣根を越えて渓に去る 小沢晴堂
幾山も山火を見つつ越えて来ぬ 下村梅子
幾山を越えて夜となる雪起し 福田甲子雄
志賀越えの名残仏に山の蟻 大東晶子
新年の雲山刀伐を越えてくる 中島松濤
日は暮れて芒の山を越えにけり 薄 正岡子規
早起山を越え炎天を茶屋に休む人 炎天 正岡子規
明日越ゆる山うかがへば時雨星 福田蓼汀
星月夜山一つ越え電話線 川崎展宏
春しぐれ山を越す道また造る 福田甲子雄
春の山いくつとも無く越えにけり 春の山 正岡子規
春の旅小き山を越えにけり 春 正岡子規
暁の山を越え来てうきね鳥 暁台
暮れて越す草山一つ春の月 志田素琴
枯山を越えて海鳴り早う寝む 八木澤清子
枯山を越え来し風に独語乗す 河野南畦 『黒い夏』
枯山を越え枯山に入りゆく 篠原梵 雨
残月や馬上で越ゆる薩陲山 伊藤松宇
水仙を見に丹生山の雪を越え 細見綾子 黄 炎
波打つ桜風大股に山を越え 金子潤
渡り鳥高し山盧を越えし後も 新津有一
火の山の火を運ぶ鳥 湖を越ゆ 鷲巣繁男
灯を消して網戸越しなる山の精 渡辺 和子
烏瓜咲いて風越山の闇 伊原正江
父の凧越えて子の凧山晴るる 恒松英子
狼にも逢はで越えけり冬の山 冬山 正岡子規
玉あられ百人前ぞお取越 山店 芭蕉庵小文庫
玻璃越しの雨山茶花に鳥の来る 金尾梅の門 古志の歌
白牡丹わが越えて来し山の数 今瀬剛一
白露や茶腹で越るうつの山 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
百合の句案明日又越えん山の事 露月句集 石井露月
磐梯山猛鷲蛇をさげて越す 前田普羅
祖先のやうに寒い砂山いくつも越し 栗林千津
祖父越えて来しかの山も炭焼くか 高濱年尾 年尾句集
秋燕むれ越す雨の鈴鹿山 鈴鹿野風呂 浜木綿
秋風の山を越えゆく蝶一つ 三好達治(1900-64)
空蝉や山の日照雨の毛越寺 皆川盤水
紅葉せる錦木を折り山を越す 前田普羅
肩越しに山の音くる零余子かな 藤木倶子
花追へば一揆の越えし山の道 関塚康夫
茸山を越え来る人に遭ひにけり 雑草 長谷川零餘子
草刈の昨日刈りたる山を越ゆ 木附沢麦青「南部牛追唄」
草山を又一人越す日傘かな 渡辺水巴
草鞋巡査とつれだち越えぬ秋の山 冬葉第一句集 吉田冬葉
落鮎のころの神楽に山を越え 神尾久美子 桐の木以後
葛城山を越へし羽音に初鴉 佐野美智
葭簀越し売る山の物川の物 嶋田義久
蒸し鮑提げて足柄山を越ゆ 宮岡計次
越えてきし山に灯のつく秋薊 大木あまり 火球
越えて来し山すぐ軒に蕨餅 田中冬二 麦ほこり
越えて来し山のいくつや花杏 羽生敏子
越えて来し山の紅葉の話など 高濱年尾 年尾句集
越て来た山の木がらし聞夜哉 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
逢阪の山を越え行く燕哉 燕 正岡子規
連雀の越ゆるや花の吉野山 堀口星眠
道見えていづこへ越ゆる春の山 綾部仁喜
雪の山義仲の目に憑かれ越す 大串章
雪山を越えて彼方へ空むなし 相馬遷子 雪嶺
鞍馬参り山二つ越す夜寒かな 名和三幹竹
飛騨の山冬日とわれが今日は越ゆ 岡田日郎
黄梅や息きらさずに越えし山 鷲谷七菜子
●山小屋
はやばやと仕舞ふ山小屋男郎花 伊藤霜楓
ルカ伝を読む山小屋の雪解かな 仙田洋子 雲は王冠
万緑へ山小屋の鍵ひびかせり 渡辺桂子
夜霧入り来る山小屋の戸の隙間 内山芳子
夜鷹鳴く山小屋蒲団配り終へ 西村梛子
富山の置き薬があった 山小屋の灯が青い 松井尚子
山小屋に「知足」の額や麦茶のむ 小俣幸子
山小屋に寝る足と足突き合はせ 石井いさお「雪の輪」
山小屋に正座し年酒くみにけり 岡田日郎
山小屋に膝を揃へて月待てり 伊藤敬子
山小屋に遠き水場も朝焼けぬ 岡田日郎
山小屋に門火を焚きて魂迎ふ 余田厚子
山小屋に雨が狂はす米の量 黒木野雨
山小屋のオンザロックの氷柱かな 成澤 零
山小屋の一と夜雪解の渓の音 小松愛子
山小屋の一燈のこり虎鶫 新海りつ子
山小屋の七夕の字も鎮魂歌 福田蓼汀 秋風挽歌
山小屋の他に灯のなし虫時雨 深見けん二 日月
山小屋の半日仕事薪の山 窪田英治
山小屋の夕べ頻りに岩つばめ 大村文夫
山小屋の夕餉早しや目細鳴く 大野今朝子
山小屋の少年霧夜犬抱き寝 岡田日郎
山小屋の屋根に敷詰め夏布団 秋田裕弘
山小屋の庇かたむき霧とべり 上村占魚 球磨
山小屋の押入れ泊り夜鷹鳴く 堀口星眠 樹の雫
山小屋の椅子の曝れしが涼しかり 西本一都 景色
山小屋の灯にきし虫をつぶせば水 宮坂静生
山小屋の灯に星よりの金亀虫 西村梛子
山小屋の犬雷鳥を追ひ翔たす 福田蓼汀
山小屋の真昼さだかに霧雫 岡田日郎
山小屋の窓辺に蝿の一頓死 高澤良一 宿好
山小屋の荒粒銀河閉めて寝る 堀内薫
山小屋の道に鍋干す蕎麦の花 阿部寿雄
山小屋の階を抜け行く夏の蝶 朝日子
山小屋の骨正月を湯気ごもり 上田五千石
山小屋はヴォイラー焚いて昨日まで 高澤良一 素抱
山小屋は岩を楯とし夕焼けぬ 岡田日郎
山小屋も天日熱し孑孑棲み 滝 春一
山小屋を声が出てゆき明易し 竹村幸四郎
朝来ると山小屋叩く星鵜 伊藤いと子
梁も山小屋造り蘭吊りて 遠藤はつ
注連飾る山小屋鈴の鳴る扉 道場信子
芒寄せて山小屋の扉を見出したり 長谷川かな女 花寂び
螢袋咲く山小屋の裏梯子 柴田白葉女 『月の笛』
赤富士の褪め山小屋の灯も消えて 河野美奇
雪踏みて来し山小屋にランプ燃ゆ 岡田日郎
霧の山小屋夕日いくたびさして暮れず 岡田日郎
青林檎の青さ孤絶の山小屋に 橋本多佳子
●山里
ちんまりと山里成りぬ冬隣 寥松
チチチチと鳧山里の田を走る 木村容子
五月鯉上り山里明るくて 後藤緒峰
壇の浦とほからなくに落人の裔いまに住む浅き山里 窪田章一郎
多摩越えて入る山里や初蛙 大場白水郎 散木集
小塀風に山里涼し腹の上 内藤丈草
山里にすゝけて咲くや蓼の花 蓼の花 正岡子規
山里にひとりゆれたる鳴子哉 鳴子 正岡子規
山里にむかしのままの成木責 清水美京
山里に夏蚕飼ふらん桑畠 夏蚕 正岡子規
山里に大鳥飛ぶや秋の風 秋風 正岡子規
山里に家々に足る蒲団かな 尾崎迷堂 孤輪
山里に尚遠山の四月かな 尾崎迷堂 孤輪
山里に恋をはなれし桜哉 桜 正岡子規
山里に月もなき夜の長さかな 夜長 正岡子規
山里に残る歌舞伎や梅二月 富田潮児
山里に花咲く八十八夜かな 八十八夜 正岡子規
山里に雲打払ふ幟哉 幟 正岡子規
山里に餅つく音の谺かな 浜田波静
山里に首出す富士や葱坊主 村山古郷
山里に魚あり其名紅葉鮒 紅葉鮒 正岡子規
山里のかかる所にくづれ簗 岡田佐久子
山里のかくれ耶蘇とて雪降れり 牧野桂一
山里のバスを待つ間のかき氷 竹内光江
山里のモノクロの景花鶏鳴く 野村ぎはく
山里の人美しや遅ざくら 維駒 五車反古
山里の卯の花月夜鳥啼く 卯の花 正岡子規
山里の夕べの煙春惜しむ 杉本美寿津
山里の夕べひひ鳴くいずこより 迫田健路
山里の夜すがら揚ぐる花火かな 徳田秋声
山里の学童八人弓始 奥村梅村
山里の幟見て来よ京男 幟 正岡子規
山里の星にいるなりあの遊女 阿部完市
山里の春は淋しき茗荷かな 茗荷 正岡子規
山里の春や迅かりし鹿尾菜売 吉武月二郎句集
山里の朝のかがやき花南瓜 村田 脩
山里の桑に昼顔あはれなり 昼顔 正岡子規
山里の橋は短し鳥の恋 三橋敏雄 畳の上
山里の深き朝霧より出勤 中西冬紅
山里の畦の五行にあまねき日 百瀬美津
山里の盆の月夜の明るさよ 高浜虚子
山里の砧の音も宵のほど 松藤夏山 夏山句集
山里の空や師走の凧一つ 師走 正岡子規
山里の芒一本づつ光る 後藤比奈夫
山里の蕣藍も紺もなし 正岡子規
山里の蚊は昼中にくらひけり 去来「続虚栗
山里の遅き田植や合歓の花 岡本松浜 白菊
山里の道細りゆく女郎花 安部靖代
山里の雨の一日や鳴雪忌 帖地津木
山里の餅に菊敷く亥子かな 妻木 松瀬青々
山里はまづ露霜の初けぶり 青々
山里は万歳遅し梅の花 芭蕉
山里は喰ふ物にせぬ白魚かな 会津八一
山里は土筆摘む子が覗く雛 林原耒井 蜩
山里は巌を祀りて相撲かな 矢島渚男
山里は早寝早起き盆の月 五十嵐哲也
山里は月もなき夜の長さかな 夜長 正岡子規
山里は李さく頃の寒さ哉 李の花 正岡子規
山里は桃の花籠め夕とほし 上田日差子
山里は梅さく頃の燕哉 燕 正岡子規
山里は水車の音に合歓の花 清水青瓢
山里は汁の中迄名月ぞ 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
山里は留守かと見えて冬構へ 諷竹
山里は磐を祀りて相撲かな 矢島渚男 木蘭
山里は蚕飼ふなり花盛 蚕飼 正岡子規
山里は豆もつくらず蕎麦の花 悟空
山里へはる~ありし賀客かな 高橋淡路女 梶の葉
山里やちりめんじゃこを飴いろに 穴井 太
山里やみやこ見て來て秋のくれ 秋の暮 正岡子規
山里や一斗の粟に貧ならず 夏目漱石 明治三十年
山里や井戸の端なる梅の花 鬼貫
山里や人もなき夜の花ふゝき 花吹雪 正岡子規
山里や初日を拜む十時頃 初日 正岡子規
山里や夜は団欒の春炬燵 石川薫
山里や大時鳥大月夜 時鳥 正岡子規
山里や大根干す木に梅の花 梅 正岡子規
山里や嫁入しぐるゝ馬の上 時雨 正岡子規
山里や尺に満ちたる鮎のたけ 鮎 正岡子規
山里や旅にしあれば令法飯 塘雨
山里や日傘さしたる町戻 髭家
山里や月もなき夜の花吹雪 花吹雪 正岡子規
山里や月を名残りの藁鉄砲 金尾梅の門 古志の歌
山里や木小屋の中を蕗の川 飯田蛇笏 山廬集
山里や木立を負ふて葱畠 葱 正岡子規
山里や杉の葉釣りてにごり酒 一茶
山里や枯木の枝の初烏 初鴉 正岡子規
山里や母を養ふ夏氷 暁台「この時雨」
山里や水に引かせておく鳴子 一茶
山里や水暖き冬近う 野村喜舟 小石川
山里や水鶏啼き罷んで犬遠し 水鶏 正岡子規
山里や清水うれしき理髪床 尾崎紅葉
山里や火の見の足を百合の中 野村喜舟
山里や烟り斜めにうすもみぢ 闌更
山里や男も遊ぶ針供養 村上鬼城
山里や秋を隣に麦をこぐ 秋近し 正岡子規
山里や端山の松に藤懸けて 尾崎迷堂 孤輪
山里や筍に飽く麦の飯 筍 正岡子規
山里や箕に干す粟の二三升 粟 正岡子規
山里や簀の子の下のかぎ蕨 蕨 正岡子規
山里や米つく音の霧の中 霧 正岡子規
山里や花の盛りの轆轤ひき 野村喜舟 小石川
山里や若水くみの遠あるき 井月の句集 井上井月
山里や草を刈らずて萱を刈る 佐藤紅緑
山里や蚊遣の上を時鳥 時鳥 正岡子規
山里や軒の菖蒲に雲ゆきゝ 高浜虚子
山里や雪の中より蕗のとう 蕗の薹 正岡子規
山里や雪積む下の水の音 雪 正岡子規
山里や雪間を急ぐ菜の青み 井上井月
山里や頭巾とるべき人もなし 観水 選集古今句集
山里や馬槽にきじの歩みよる 加舎白雄
山里ゆく生ある自転車もつれて 阿部完市 春日朝歌
山里を出ぬやまじめな郭公 宮川(由)-政田妹 俳諧撰集玉藻集
山里を行きつゝ菊の香に触れぬ 石橋辰之助 山暦
山里を雪のうかがふ翁の忌 矢島渚男 延年
年くるゝ山里寒し塩肴 成美
手習本春雨けむる山里と 田中冬二 俳句拾遺
星合や山里持ちし霧のひま 其角
残る火燵まだ山里はこころかな 上島鬼貫
水音も鮎さびけりな山里は 服部嵐雪
氷室山里葱の葉白し日かげ草 榎本其角
熊穴を出る山里に万の影 小林みさ
獅子舞つて山里の花綻ばす 小松原みや子
盆がらを追ひやる掛け声山里に 高澤良一 宿好
真田砦ありし山里秋蚕飼ふ 伊東宏晃
花なれやこの山里も訪はれぬる 尾崎紅葉
蝶の来て此山里を春辺かな 跨仙
重陽の山里にして不二立てり 水原秋櫻子
風吹て山里春をしらぬ哉 初春 正岡子規
鳴神の鳴る山里や鯉幟 秀斎
●山騒ぐ
密造酒かくされ芒山騒ぐ 萩原麦草 麦嵐
山に冬来ると騒げる寺烏 高木晴子 花 季
春暁を騒ぐ山の鳥海の鳥 福田蓼汀 秋風挽歌
朴落葉山を騒がせはじめたる 山口啓介
楢山の騒ぎさながら寒鴉 杉 良介
立冬の山の樹騒ぐ音眼にす 臼田亞浪 定本亜浪句集
花の山騒がしにくる目白かな 高澤良一 素抱
●山仕事
外湯出てすぐに師走の山仕事 大島民郎
山仕事山吹がくれして居りぬ 高浜虚子
山仕事明の方より始めけり 望月武司
数へ日の白雲とゐて山仕事 友岡子郷 春隣
梅雨に入るより途絶えたる山仕事 小南精一郎
蜩や今日もをはらぬ山仕事 石鼎
雷鴫足を取られる山仕事 篠田悦子
鮎の瀬を教へて戻る山仕事 小早川恒
鳥渡り去るや蜜柑の山仕事 癖三酔句集 岡本癖三酔
●山静か
あけぼのや山静かなる鷽の琴 高田蝶衣
くたびれし静かな面テ夏の山 阿部みどり女
二人静 仏の山のふところの 西浦和子
何時来ても静寂の山芳次郎忌 甲斐羊子
全山の枯木となりし静かかな 高濱年尾 年尾句集
十月が来てしばらくは山静か 石井 浩
厳冬の静寂父のような山 楠本義雄
咳止めば山のやうなる静寂かな 江崎紀和子
囮すでに掛けての樹々や山静か 松根東洋城
夏木立映して山湖静止せり 直原玉青
太陽の静かな力山葡萄 金子秀子
山しづか涸滝も亦静なる 西岡つい女
山の子が提げて静かな寒の鯉 稲垣晩童
山は覚めて寝てゐる貨車を静かに看る 藤後左右
山ひだ日かげりの移るばかり湖も峰も静に 梅林句屑 喜谷六花
山よりも静か母の死に顔 橋本夢道 無類の妻
山山の静止する日や赤ん坊 津沢マサ子 楕円の昼
山笑ふ静けさに人働けり 玉木春夫
山静か廃墟に芥子の花二つ 今泉貞鳳
山鳴に馴れし静けさ蟻地獄 隈元いさむ
山鴉鳴く静けさを機始 水原秋桜子
干草の山が静まるかくれんぼ 高浜虚子「虚子全集」
愛欲に斑雪の山の遠静か 三谷昭 獣身
懸巣来て山は静寂保たれず 桔梗きちかう
戎壇院辺りは静かお山焼 橋本道子
数へ日の静かな山へ入りけり 小島健 木の実
日を吸へる吾亦紅あり山静か 清原枴童(かいどう)(1882-1948)
朝寒や山と静けきわが心 東洋城千句
朴の葉の落ちて重なる山静か 松本たかし
楢山時雨藪鳥なほも静まらで 臼田亞浪 定本亜浪句集
汽車過ぎて山静かなり夏木立 夏木立 正岡子規
火の山の静かなる日の田植かな 青木重行
火を噴きしあと静かなり山の秋 橋本鶏二
白百合や蛇逃げて山静かなり 百合 正岡子規
禁猟区静かに山の眠りおり 田辺たか
秋の山静かに雲の通りけり 夏目漱石 明治二十八年
秋晴の山横たはり静かなり 上村占魚 球磨
耳鳴りのするほど静か枯木山 鈴木みよ
花の山蔵王権現静まりぬ 花 正岡子規
草の尖きに蝶居て山の静かな日 合浦句集満潮 原田合浦
蛇逃げて山静かなり百合の花 百合 正岡子規
霧こむる四山や湖舟静かなり 西島麥南 金剛纂
静かさやをしの来てゐる山の池 正岡子規
静かなる山の御堂の花まつり 高木晴子 晴居
静さやゆふ山まつの若みどり 闌更
静寂音あおいあおい揚羽や山や 金子皆子
鳥一声山静にして椿落つ 尾崎紅葉
鳥礫また飛び枯木山静か 加古宗也
鳥鳴いて山静かなり夏蕨 子規句集 虚子・碧梧桐選
●山下風
●山下水
山女魚釣る朴の下水雲こめぬ 佐野青陽人 天の川
●山清水
かち栗に喉の乾きや山清水 清水 正岡子規
くちすすぎ月光残す山清水 柴田白葉女 花寂び 以後
ことによると心中たのし春の山 清水浩
しろがねの指の間を洩れ山清水 檜紀代
とんねるや笠にしたゝる山清水 清水 正岡子規
ねらはれし魚の命や山清水 清水 正岡子規
のむよりもこぼるが早し山清水 辻桃子(童子)
ウェストン碑礎石をめぐる山清水 岡部義男
一つまみほどの青山と見つつ来てかげ深くなる天の香具山 清水房雄
住かねて道まで出る歟山清水 服部嵐雪
円空(えんく)さんにどすんどすんと山清水 中戸川朝人 星辰
十本の指しみじみと山清水 原石鼎
山清水かき濁らせて旅人われ 相馬 黄枝
山清水ごくごく飲めば杉の青 二串康雄
山清水ささやくまゝに聞入りぬ 松本たかし
山清水さびしき指の揃ひをり 鎌倉佐弓 潤
山清水掌にあふれつつふくみけり 上野泰 佐介
山清水汚せしことのすぐに澄む 橋本多佳子
山清水汲みに木花咲耶姫 上野澄江
山清水注ぎて吹けり習ひ笛 宮田富昭
山清水石鹸もて寺僮何洗ふ 楠目橙黄子 橙圃
山清水翁の杖を拝しけり 佐藤美恵子
山清水豆腐の角を削りけり 林原耒井 蜩
山清水靭左りへまはりけり 雁宕
山清水願かけの水二掬ひ 藤井光(青樹)
山清水魂冷ゆるまで掬びけり 臼田亜浪
山清水鳴れり朽葉を潜り出て 高澤良一 鳩信
戸を閉めて人すぐ座る山清水 田中裕明 山信
手をかりて腰をあげたる花の山 清水基吉
放牧の牛の喉鳴る山清水 大山ク二子
法の山清水を鳥と頒ちあふ 小川かん紅
湯治場のとば口に湧く山清水 高澤良一 素抱
湯治場の天下一品山清水 高澤良一 寒暑
湯治宿つと山清水引き込んで 高澤良一 素抱
無住小屋に道標あり山清水 大谷恵教
焼鏝の煙があまし冬の山 清水刀谷
目ではかる水の冷たさ山清水 尾崎和子
筒鳥や桶より溢れ山清水 早川とも子
老鴬や歯朶に湧き澄む山清水 碧雲居句集 大谷碧雲居
蕗の葉に汲む白神の山清水 小林洋子
裏口に迫りて盆の月の山 清水盛一
貧しき死診し手をひたす山清水 相馬遷子 雪嶺
銭亀や青砥もしらぬ山清水 蕪村
開発の狼藉すすむ紅葉山 清水晴子
青竹の樋の山清水寒も鳴る 及川貞 榧の實
顔ふつて水のうまさの山清水 河野南畦 『空の貌』
馬と蚕を飼ふ厨暗くて山清水 森 澄雄
鶺鴒の黄の滴れり山清水 堀口星眠
●山澄む
どんぐりの山に声澄む小家族 福永耕二
ボタ山が坑夫の墓標一灯澄む 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
七面山聳ゆ一夜に澄める水 加賀美子麓
三光鳥谷戸の山山鳴き澄ます 高橋芳夫
人の世の海山澄めと青葉木菟 多田裕計
人入りて人の耳澄む冬木山 広瀬直人
凧澄むや天の香具山低くあり 柊 愁生
塔やけふ秋澄みたりし羽黒山 鷲谷七菜子
大年の山の日ぐれとなりにけり寒雷一つ澄みて霽れたり 穂積忠
大木の裏に山澄み閑古鳥 飯田龍太
子の目澄む背後の山が刃となりて 大井雅人 龍岡村
山の空夕澄む晩稲刈り急ぐ 金子伊昔紅
山の端を揺れ出でし月澄みにけり 野村喜舟 小石川
山の色空の色澄む暮石の忌 茨木和生 往馬
山は流れの澄みの迅しも霽り星 林原耒井 蜩
山めぐらし秋の日輪しかと澄む 柴田白葉女 花寂び 以後
山城の山あきらかに秋澄めり 上野青逸
山気澄みただよひそめし茸の香 松下信子
山法師人の呼ぶ声澄みてをり 高橋良子
山清水汚せしことのすぐに澄む 橋本多佳子
山湖澄み石投ぐことに怖れあり 大橋敦子
山湖澄み空と檀の実と映る 岡田日郎
山澄みて巨峰に色の来るころか 日原傳
山澄みて神見そなはす広田かな 阿部みどり女 月下美人
山火曇り我が居る檜原澄み徹る 林原耒井 蜩
山畑に麻の花澄む颱風季 有働亨 汐路
山眠る若き木地師の眼澄み 館岡沙緻
山空をひとすぢに行く大鷲の翼の張りの澄みも澄みたる 川田順
山茶花の散れば散るとて澄むばかり 林原耒井 蜩
山蜂の脚垂れ澄めり滝ひゞき 米沢吾亦紅 童顔
山雀のこゑ澄み透る女人みち 中村みづ穂
山鳩のかしこき眼秋家澄む 河野多希女
年の瀬や行くこともなき山の澄み 矢島渚男 天衣
梅鉢草點々山の池澄めり 及川貞 夕焼
清澄山の日向日陰に百千鳥 加藤とみを
澄む水に数ほど鳴かず山の鳥 斎藤玄 無畔
牡丹咲きめぐる山垣日に澄める 梅原黄鶴子
独楽澄むや山空たゞにうすみどり 村田翠雨
玻璃戸みな火の山据ゑて秋澄めり 野上水穂
男らに山の星澄み酒匂う 鈴木六林男
短日やこころ澄まねば山澄まず 龍太
秋天の端に置く山双耳澄む 百瀬美津
秋澄みて一連なりの山のいろ 高澤良一 寒暑
秋澄むや傾きざまに山の空 角川春樹
秋澄むや山を見回す人の眼も 大串 章
老鴬や歯朶に湧き澄む山清水 碧雲居句集 大谷碧雲居
葛の花淵のいろより山が澄み 佃藤尾
蕎麦刈や丈それぞれに山澄める 瀧澤宏司
足もとに梅雨の山湖のなぎさ澄む 皆吉爽雨 泉声
身のうちに山を澄ませて枯野ゆく 福田甲子雄
雪山に野鯉群れいて蜜の澄み 阿保恭子
風澄むや小松片照る山のかげ 龍之介
風花の山湖夕日の翼澄む 岡田日郎
高*はごやしののめ澄ます山かつら 味方蕪吟
鮎くだる山幾重にも澄みゐたる 龍太
●山田
ある夜月にげんげん見たる山田かな 原石鼎
かなかなと山田の水の冷たさと 香西照雄 対話
からうじて山田実りぬ落し水 几董
くたびれた音や山田の落水 落し水 正岡子規
たばこ干す山田の畔の夕日かな 其角
ぬり疇の光る山田や夕づく日 芦水
ねこ鳥の山田にうつるあられかな 水田正秀
ひとりゆく山田ざざめく蝗かな 中勘助
ほとゝぎす山田の土管尻さがり 廣江八重櫻
みちのくの山田の田螺日にまぶし 山口青邨
一枚も山田荒さずほととぎす 茨木和生 倭
一滴も水無き山田耕さる 右城暮石 上下
中々に刈らぬ山田や櫨紅葉 野村喜舟
丹の袖の山田僧都に逢ひにけり 芝不器男
二人して山田淋しう植ゑにけり 近藤浩一路 柿腸
二人植う山田二人のいま昼餉 皆吉爽雨 泉声
五六間に鳴子盡きたる山田哉 鳴子 正岡子規
五月雨や夜の山田の人の声 一茶 ■寛政年間
人まねの猿や落せし山田かな 西山泊雲 泊雲句集
仏舞果てて山田の遠蛙 小坂栄子
休耕の山田も僧都外しゐず 茨木和生 往馬
刈株や山田の鳴子倒れ伏す 寺田寅彦
土筆生ひ山田は畦の短かさよ 水原秋桜子
天竜川へ奔る山田の落し水 芋川幸子
女出て山田の稲を刈りゐたり 綾子
寒天を干して人影なき山田 大橋櫻坡子 雨月
小瑠璃鳴く山田の苗は水に立ち 岩村牙童
山刀伐の山田ひそかに蝌蚪育つ 鈴木精一郎
山田とて稲を刈り干す岩多し 秋櫻子
山田なる一つ家の子の囮かな 飯田蛇笏 霊芝
山田守る案山子も兵児(へこ)の隼人かな 虚子(薩摩の国に入る)
山田守猿手の粟の鳴子かな しげ 俳諧撰集玉藻集
山田鋤く馬のましろし蝉の声 金尾梅の門 古志の歌
引く人もなくて山田の鳴子かな 高浜虚子
或夜月にげん~見たる山田かな 原石鼎
日ぐらしや山田を落る水の音 諷竹
早乙女の葛葉ふみこむ山田かな 加舎白雄
春のてふ山田へ水の行とゞく 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
春の蝶山田へ水の行きとどく 一茶
春遅し山田につゞく萸ばやし 井原西鶴
月下にて山田の案山子隙だらけ 高澤良一 寒暑
朝日さす山田は引板も霧じめり 高橋淡路女 梶の葉
末黒野に鴉の遊ぶ山田寺 吉原田鶴子
松風に蝌蚪生れたる山田かな 芝不器男
核も武器もない山田の蝌蚪群れ 切目とき
植ゑかけて捨てある山田あはれなり 高浜虚子
樵りにはあらざる山田植ゑにかな 尾崎迷堂 孤輪
段々の山田を下だる落し水 寺田寅彦
水張つて山田のにほふ姫蛍 渡辺立男
汽車行きて氷る山田を煙らしむ 山口波津女 良人
浮草やしかも山田の落し水 水田正秀
牛歸るあとの山田や鹿の聲 鹿 正岡子規
猪の守つらき山田と代を掻く 茨木和生 三輪崎
田螺鳴いて日高くなりし山田かな 前田正治
痩蛭の杭に吸ひつき山田哉 田口酔月
眉太に丹波山田の案山子かな 大石悦子 群萌
看護婦の父でありたり山田守 瀧澤伊代次
睡り足り梅雨の山田に戸をひらく 石橋辰之助 山暦
穂に出て山田に交る薄かな 二貞
空稲架に日の遊びゐる山田かな 大石悦子 群萌
笹鳴や山田いつより捨てられし 岡本まち子
紫苑高し山田につづく製材所 渡邊千枝子
缺徳利字山田の案山子哉 案山子 正岡子規
群鶴の影舞ひ移る山田かな 杉田久女
腰籠のゆるるにぎはひ山田植う 皆吉爽雨
臨終へ急かす山田の夕蛙 和田伴義
葭切や山田植ゑをる雲の中 金尾梅の門 古志の歌
虫のつきて目もあてられぬ山田哉 寺田寅彦
蛇多き山田の稲や刈らである 虚子
裏西の丹後山田の駅に着く 武田霞亭
雨足りて山田息づく花辛夷 相馬遷子 山河
雪汁に浸かる山田も校庭も 矢野典子
鹿小屋や花は山田の鵺(ぬえ)の声 水田正秀
鼓笛隊山田をすぎつ稲の出来 飯田蛇笏 椿花集
●山祇(やまつみ)
山祇の出入りの扉あり雪囲 前田普羅
山祇の土になれゆく小楢の実 佐藤鬼房
山祇の金剛童子照紅葉 西崎白星
山祇の雪に踏ん張る紅鳥居 成田千空 地霊
山祇は稲穂を愛でて帰りけり 宮川三保子
山祇へ田みちづたひや弓はじめ 飯田蛇笏 春蘭
山祇も一人静も雨の中 木村蕪城
幣をただ替えて山祇初詣 皆吉爽雨
大山祇(やまつみ)の放つ金の蛾薪能 野沢節子 八朶集以後
やまつみの紅葉尽しにゑひにけり 矢島渚男 木蘭
●山並
かくれなき四囲の山並虫送り 杉本幸子
下北の山並ひくし鳥雲に 畑中とほる
北窓を塞ぎし山並遠くせり 星野 椿
屋根替や比良の山並跨ぎつつ 吉村玲子
山並にそふ朝茜鳥渡る 坂井多嘉
山並のその頃となり下り簗 浅賀渡洋
山並の押し寄せてくる扇かな 上田操
山並の雪越えて来て旅の僧 高濱年尾 年尾句集
山並ぶことに武尊の青霞 岡田日郎
山並めし伊豆や七草七ツ瀧 矢島渚男 延年
山並を引き寄せて梅雨明けにけり 三村純也「蜃気楼」
師弟句碑佐久の山並み眠りけり 中西永年
帰雁見えなくなりまた青空また山並 安斎櫻[カイ]子
新緑の山並鏡なせりけり 原裕 『王城句帖』
春駒やぽこんぽこんと山並び 中村清子
檐燕眠り山並みさだかなり 林原耒井 蜩
残雪の山並映す大正池 松橋昭夫
涅槃なり狐色して山並び 村越化石 山國抄
秋の暮力のかぎり山並ぶ 岡田日郎
色さめし針山並ぶ供養かな 高浜虚子
蓮枯れて山並北をふさぎけり 石原義輝
見なれたる山並にして鳥渡る 高濱年尾
近々と山並びぬ梅雨はじまりぬ 及川貞 夕焼
銅鐸の出でし山並紅葉映ゆ 坪内寂山
青春なかば雪山並ぶ暗さ知りぬ 岡田日郎
●山鳴り
すこし日が照り元日の山鳴りとなれり 栗林一石路
万緑や火の山鳴りが押しわたる 中條明
三光鳥谷戸の山山鳴き澄ます 高橋芳夫
元日や一系の天子不二の山 鳴雪俳句鈔 内藤鳴雪
山鳴と噴煙とある神の留守 西村数
山鳴に馴れし静けさ蟻地獄 隈元いさむ
山鳴りが烏貝ほど雫せり 栗林千津
山鳴りに追はれて下る芒かな 吉武月二郎句集
山鳴りのあとゆつくりと山ねむる 立原修志
山鳴りのゆゆしき裾の代田掻 小西 藤満
山鳴りの他は聞えぬ干菜汁 小林輝子
山鳴りの山をはなれず春の霜 菅原師竹句集
山鳴りの柞の中に癪の神 古舘曹人 樹下石上
山鳴りの浅間のもとの花野かな 阿部みどり女
山鳴りの草鞋にひゞく枯野かな 柑子句集 籾山柑子
山鳴りも二日を経たり初不動 飯野燦雨
山鳴りを常とす村の松飾 大岳水一路
山鳴るとうちみる妻や橇暗し 飯田蛇笏 山廬集
栂風も添ふ山鳴りや霧の中 臼田亞浪 定本亜浪句集
海鳴につぐ山鳴や夜半の秋 米谷静二
滅罪に来しか山鳴り青青と 和田悟朗
火吹竹吹きをれば鳴く雀の子 柑子句集 籾山柑子
葛城の山鳴り夏の明け易く 横山白虹
葛城の山鳴り月も扉にさゝず 横山白虹
車蔵ふ一夜山鳴り聞きしより 桃谷良一郎
鉦叩山鳴熄めばまた叩く 米谷静二
○山眠る
●山の色
山色を尽しきるとき冬ざるる 稲畑汀子
蝉稚し山色翅にみなぎらせ 金子 潮
四山色枯れてはやなき燕かな 雑草 長谷川零餘子
こころしづかに秋冷の山の色 石嶌岳
この山の彩見えますか墓洗ふ 前岡茂子
ちぎり絵や粧ふ山の色貼りて 近藤伸子
ふり向きて狐まぎるる山の色 堤 京子
凩の一夜に山の色奪ふ 宇川紫鳥
初釜の炭火をわたる山の色 森句城子
初鮒や昨日の雨の山の色 視山
密教の山の彩とし柿熟るる 横山節子
山の色けふむらさきや日向ぼこ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
山の色澄みきつてまつすぐな煙 山頭火
山の色空の色澄む暮石の忌 茨木和生 往馬
山の色釣り上げし鮎に動くかな 原石鼎「花影」
日当りてきし枯山の色ゆるぶ 清崎敏郎
水のんでのんどをとほる山の色 岡井省二
熊笹に一雨ありし山の色 高澤良一 素抱
草餅の故山の色にふくれけり 平賀芙人
蕨見つけ初む山の色眼に馴れて 津田清子
路に買ふ秋果や山の色異にし 長谷川かな女 花寂び
鐘を鋳しあと粧ひぬ山の色 尾崎紅葉
露涼し幾重離りて山の色 松村蒼石 露
●山の湖
きつつきや新秋白き山の湖 千代田葛彦 旅人木
さみだるゝ鵜に伴ありぬ山の湖 渡辺水巴 白日
五月雨や蕗浸しある山の湖 渡邊水巴
初秋の雲を宿せる山の湖 加藤耕子
名月や産湯のごとき山の湖 田中清之
寒風に日の遠ざかる山の湖 石井 保
山の湖かたくりも花濃かりけり 星野麥丘人
山の湖に浮びそめたるヨットかな 高浜虚子
山の湖のかた昃りしてかいつぶり 吉野北斗星
山の湖の花火に更けてゆくばかり 高浜年尾
山の湖へほたるぶくろの露ぐむ径 古沢太穂 古沢太穂句集
山の湖や秋冷のつきまとひゐし 新田充穂
山の湖を灯のふちどりて夜の秋 柏翠
山の湖仮装の魚のやさしさよ 宇多喜代子
山の湖満月箔を伸ばしけり 大串章(1937-)
慈悲心鳥霧吹きかはる山の湖 築城京
木枯やつひにぞ動く山の湖 尾崎迷堂 孤輪
流灯のざわめきゐたり山の湖 田川江道
深雪晴小鴨花なす山の湖 笠井きよ
火の山の湖に泳ぎて波たてず 緒方敬
焚火して山の湖夜の秋 下村梅子
百千鳥照り昃りして山の湖 桑原晴子
秋晴るる山の湖縁暗く 上村占魚 球磨
稲妻の四方に頻りや山の湖 松本たかし
稲妻の突き刺りては山の湖 大橋櫻坡子
立秋の眼鏡ひたすや山の湖 佐野青陽人 天の川
籠にあふれ公魚山の湖より来 山口青邨
老鶯や夕靄上る山の湖 菅原師竹句集
花サビタ小雨にけぶる山の湖 青木起美子
藍色に溺れ秋意の山の湖 河野南畦 湖の森
車前草の花のふるへる山の湖 大坪景章
長閑すぎて虚雷きくなり山の湖 大須賀乙字
あさあけや鴛鴦のみ渡り来し山湖 松村蒼石 雁
そぞろ寒山湖すれすれ雲覆ふ 岡田日郎
まひまひに山湖の広さかぎりなし 西田浩洋
スノードロップ山湖の空気透明にて 有働亨 汐路
一本のバナナ分け喰ふ山湖かな 尾崎木星
冬木風山湖の蒼さ極まりぬ 金尾梅の門 古志の歌
冷やかな程なつかしき山湖かな 須藤常央
凍て蝶のきらめき渡る山湖かな 中川宋淵
古雛とほき山湖の濃むらさき 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
噴煙の延び来る山湖鳥渡る 阿部 幽水
夏木立映して山湖静止せり 直原玉青
夫婦山湖をへだてて閑古鳥 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
山湖ただ月天心の閑けさに 村田脩
山湖ひたす星影見ても秋来たり 乙字俳句集 大須賀乙字
山湖今篠突く雨や未草 松尾白汀
山湖対岸秋冷の灯の一つのみ 村田脩
山湖澄み石投ぐことに怖れあり 大橋敦子
山湖澄み空と檀の実と映る 岡田日郎
岩燕明日なきごとく翔ぶ山湖 谷口和子
敦盛草山湖の霧の来てつつむ 平賀扶人「風知草」
新月の山湖に育ちつつありし 田村おさむ
新涼や山湖の色の靄離れ 乙字俳句集 大須賀乙字
星飛んで山湖の芯を波立たす 松村多美
権現の杜に雉鳴き山湖暮れ 阪井 節子
父と子へ紫紺の山湖ラムネ抜く 佐川広治「光体」
白地着て山湖の魚にならばやと 野澤節子 花 季
竜天に昇るに宜し山湖霽る 林翔
紅葉かつ散る 山湖の就眠儀式 いま 伊丹三樹彦 樹冠
胸に曳く山湖の暗さ通し鴨 加藤耕子
舟底型の道は山湖へみすぢ蝶 平井さち子 完流
花かんばさらさら漣立つ山湖 角田双柿
草の丈つくして山湖避暑期果つ 山本 雅子
草原も山湖も梅雨のふところに 藤浦昭代
草蜉蝣真昼の山湖呟ける 望月紫晃
蘆枯れてひと夜風鳴る山湖かな 紅林みのる
訛が沈む山湖萍泣きぼくろ 小林まさる
足もとに梅雨の山湖のなぎさ澄む 皆吉爽雨 泉声
遠吠えの山湖を渡る薬喰 関森勝夫
雁渡し山湖は水をあふれしめ 奥井須美江
雉子笛に山湖の波は盲縞 北野民夫
雪解水注ぎ山湖の色となる 山田弘子 こぶし坂
雲は貴婦人山湖の冬は終りけり 有働亨 汐路
風花の山湖夕日の翼澄む 岡田日郎
鰯雲ひろげて無垢の山湖照る つじ加代子
鳥渡る山湖の張りは珠をなし 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
鴨引いて山湖は藍をふかめけり 福原ふじこ
●山の音
あちこちに山の音せり耳冷ゆる 仙田洋子 雲は王冠
うすらひや絹織るやうな山の音 渡辺恭子
うたせ湯に紅葉且つ散る山の音 松岡也寸志
えご散るや咲くやしづかに山の音 渡辺桂子
かたかごの斜面を満たす山の音 黒田杏子 水の扉
きしきしと雪踏み山の音起す 高橋沢子
きつつきや海よりさびし山の音 宇咲冬男
ささ鳴の後遥かより山の音 篠田悌二郎
ふたところより山の音今朝の秋 岡井省二
めつぶりて山の音きく屠蘇の酔 大東二三枝
をりふしの山の音なり青簾 神尾久美子 桐の木
ケルン積む手にひびきくる山の音 石原八束 『風信帖』
一枚の木の葉拾へば山の音 稲畑汀子
一椀に鎮まる茗荷山の音 鈴木鷹夫 渚通り
丹前の袂が重し山の音 北見さとる
五月雨や山に籠れる山の音 福田和子
人日やうしろにばかり山の音 細川加賀 『傷痕』
冬うらら川音となる山の音 中里武子
冬も湧く泉を山の音としぬ 鷹羽狩行
冬兆す何か必死に山の音 加藤楸邨
冬眠の寝息こぞるか山の音 石川恵美子
初夢に扉あく音山の音 永島靖子
初蝶に子を攫はれし山の音 石寒太 あるき神
初霜にとぢこめられし山の音 吉年虹二
初音売来てより山の音すなり 中村菊一郎
地虫出づ日の山の音海の音 大峯あきら 鳥道
夏花摘あるけばうごく山の音 宇佐美魚目「秋収冬蔵」
夕市に山の音する歯朶を購ふ 平野冴子
外套の肩尖るとき山の音 草間時彦 櫻山
夜々冷えて柿甘くなる山の音 野沢節子
寂鮎やどつと日暮るる山の音 草間時彦 櫻山
寒蘚や餓鬼が水くむ山の音 古舘曹人 樹下石上
寝正月川音そして山の音 戸塚時不知
屋根裏で飼う結氷の山の音 対馬康子 愛国
山の音うしろに聞きし寒さかな 百瀬美津
山の音すひこまれたる夜の新樹 高木晴子 花 季
山の音ともなまはげの叫びとも 井上宮子
山の音一つづつ消え雪となる 古賀まり子 緑の野
山の音人等にかよひ里神楽 田室澄江
山の音封じ込めたる大氷柱 浅倉寒月
山の音山の香春の来つつあり 黒木野雨
山の音山へかへりて冬に入る 石嶌岳
山の音明るくなりぬ櫨紅葉 古賀まり子 緑の野以後
山の音時雨わたると思ひをり 森 澄雄
山の音来てゐる秋の簾かな 小林康治 『華髪』
山の音海の音来る落葉かな 徳永山冬子
山の音深雪にしづむ永平寺 石原八束 『操守』
山の音聞きたくて来し山毛欅若葉 多田薙石
山の音聴けよと桑のくくらるる 相葉有流
山の音聴こゆる胡桃割りにけり 老川敏彦
山女魚飼ふ水に沈みて山の音 山口草堂
山帰来の花の終んぬる山の音 岸田稚魚
山繭を振ればたてたる山の音 山崎みのる
山裏に山の音せり鳥兜 成沢たけし
待宵や芒ばかりの山の音 岡田貞峰
息しづかに山の音きく干菜風呂 日美井雪
星飛びしあと山の音川の音 松村多美
春一番山を過ぎゆく山の音 藤原滋章
春寒し山の音聴く鯉と居て 渡辺恭子
春蘭や山の音とは風の音 八染藍子
木枯しのあと裏声の山の音 倉橋羊村
木枯のはじまる山の音といふ 松本陽平
木苺やまたもどり来る山の音 丹治道子
枯山の音のすべてを吾がつくる 島野国夫
橡餅や山を出でゆく山の音 古賀まり子
比良八荒波濤にまさる山の音 松本可南
海の音山の音みな春しぐれ 中川宋淵
海山の音ふうりんを高く吊る 大串章 百鳥
滝の音瀬の音いつか山の音 北村 寛
父祖の地の遅日に絡む山の音 水治悦子
田楽や疾風がゆする山の音 森澄雄
石鼎忌修す水音山の音 原和子
碧落の牡丹の中に山の音 古舘曹人 砂の音
秋たつときけばきかるる山の音 飯田蛇笏 椿花集
紅梅を氷結びに山の音 中戸川朝人 尋声
肩越しに山の音くる零余子かな 藤木倶子
舞茸のすさびやすきに山の音 内田美紗 魚眼石
花の世の花散る山の音すなり(三月十一日中川宋渕禅師遷化四月十一日本葬に参列) 石原八束 『雁の目隠し』
若葉ばれ山の音野にのびてくる 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
菊なます眉を逃げゆく山の音 角川源義 『神々の宴』
蜂死して地震過ぎゆく山の音 対馬康子 吾亦紅
蜂鳥の翼のうなり山の音 富重かずま
螢火や曼陀羅闇の山の音 石原八束 『風霜記』
西行忌林中に聴く山の音 吉野義子
踏む草に山の音ある鰯雲 赤石明子
輪飾に山の音ため酒造る 瓜生和子
邯鄲の絶えし夜より山の音 澤田 緑生
障子洗ふみちのく人に山の音 村山古郷
飲食を節して寒の山の音 細川加賀 生身魂
黒羊羹照葉を敷けり山の音 中戸川朝人 尋声
足萎に山音ばかり菌生え 萩原麦草 麦嵐
山音の吹き通りては冬の梅 斎藤玄 雁道
筍山音といふ音耳に入る 脇本星浪
●山の気
山の気や秋蚕もわれも健康に 阿部みどり女
寝言いかに花待山の気草臥(きくたびれ) 宗也 選集「板東太郎」
あけがたの山気すなはち冬の霧 長沼三津夫
うかと穴出でたる蟇の山気かな 小島健 木の実
ぞく~と山気背襲ふうるし掻 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
てのひらに滲み入る山気一位の実 井沢正江 湖の伝説
むらさきの山気そのまま沢桔梗 渡辺恭子
一の鳥居くぐれば山気登高す 穂坂日出子
反閇にゆらぐ山気や花神楽 白井爽風
夏深く山気歯にしむ小径かな 室生犀星 犀星發句集
夕風の山気かなかなおのづから 大久保橙青
定家かづら山気少しく動きけり 永方裕子
山気やや渓ほとばしるやま桜 長谷川櫂 古志
山気凝りさゆらぎもなき花の夜 稲岡長
山気凝りほたる袋のうなだれし 稲岡長
山気十分吸ひし鶯ききにけり 角光雄
山気吸ふ室生の深き木下闇 稲畑汀子
山気夢を醒せば蟆の座を這へる 乙字俳句集 大須賀乙字
山気当つひろげ通しに鵜の濡れ羽 加藤耕子
山気澄みただよひそめし茸の香 松下信子
山気降り通草に色を紡ぎ足す 加藤耕子
新たなる山気吸ひ入れ謡初 阿部月山子
暁の山気身に沁む夏書かな 佐藤紅緑
梨汁のねばりや山気ただならず 栗生純夫 科野路
椿の朱は 観音の唇 山気満つ 伊丹公子 山珊瑚
水引の紅の一点づつ山気 山田弘子 こぶし坂
汚れなき緑の山気摩耶詣 桑田永子
泥湯温泉山気令法を引き締むる 高澤良一 素抱
湯ざめしてにはかの山気かむりけり 上田五千石
滴りのひとつ一つの山気かな 山口草堂
熊穴に入りたる山気顔洗ふ 加藤彦次郎
白扇を用ひて山気そこなはず 上田五千石 琥珀
神南備のにはかに山気玉霰 斎藤梅子
立ちのぼる春の山気や一位谷 能村登四郎
薄紅葉いま安達太良の山気かな 雨宮きぬよ
蛇笏忌の山気つらぬく鵙の声 小倉英男
走馬燈軒の深きに山気満ち 小林紀代子
達磨忌の山気せまりし結跏趺坐 市堀玉宗
●山の子
あけびの木花咲く山の子愛馬進軍歌 安斎櫻[カイ]子
うら山の子狐鳴ける干菜風呂 内田 雅子
この秋も行くと山の子に積むケルン 福田蓼汀
すこやかに山の子酔へる榾火かな 飯田蛇笏 霊芝
めはじきや山の子花となり嫁ぐ 市村究一郎
夏深しバット素振りの山の子に 飯島晴子「儚々」
山の子が両手に握る初蕨 横尾孝子
山の子が啖べてにほはす柚の実かな 飯田蛇笏 春蘭
山の子が提げて静かな寒の鯉 稲垣晩童
山の子が独楽をつくるよ冬が来る 橋本多佳子
山の子が盆過ぎし空眺めゐる 林原耒井 蜩
山の子が荷台にあふれ初笑 田島和生
山の子が荷物持ち呉れ萩がくれ 阿部みどり女 笹鳴
山の子が見せてくれたる花うぐひ 小島健 木の実
山の子が雪に筋つけ遊びゐし 長谷川双魚 『ひとつとや』
山の子とひとつ灯にある夜は長し 木村蕪城 一位
山の子と繭玉吊りて教師なり 和田和子
山の子と馬の仔遊ぶ手鞠花 花村愛子
山の子に初花といふ山葵かな 萩原麦草 麦嵐
山の子に夜学教へて住みつきぬ 木村蕪城 一位
山の子に待たれて橡の実の落つる 水田のぶほ
山の子に星もキャベツも蹴れとばかり 篠田悦子
山の子に樗の花の小学校 細川加賀 生身魂
山の子に獅子の遠笛やるせなや 長谷川素逝
山の子に筍堀りと言う授業 三浦恒子
山の子に翅きしきしと夏の蝶 秋元不死男
山の子のいつもひとりで雨蛙 中村汀女
山の子のひとり遊びや甲虫 原勲
山の子のままごと椎の実を並べ 松井貴子
山の子のヴアヰオリン蛇眠りけり 萩原麦草 麦嵐
山の子の一里鳩吹く下校かな 佐佐木としまさ
山の子の丁寧に掘る汐干狩 小林 武
山の子の乗りて洗へる障子かな 河野静雲 閻魔
山の子の井筒にあそぶ雪解かな 佐々木有風
山の子の制服の紺冬苺 黒川礼子
山の子の声みどりなる夏隣 小坂優美子
山の子の夏沸瘡白粉はたきたる 滝沢伊代次「鉄砲蟲」
山の子の大き長靴稲運ぶ 井上久枝
山の子の径に出てゐる幟かな 米沢吾亦紅 童顔
山の子の応へすげなし初蕨 三田きえ子
山の子の持てる燈りや月の道 阿部みどり女 笹鳴
山の子の湯気の子となり雪遊び 鈴木酔子
山の子の猿にも似て通草とる 大橋敦子 手 鞠
山の子の目鼻涼しき踊かな 橋本榮治 麦生
山の子の羽子をつきゐる独りかな 由水しげる
山の子の脱兎のごとし雑木の芽 永方裕子
山の子の遊び暮れたり花たばこ 小田切輝雄
山の子の遊んでゐたり朴の花 大石悦子 群萌
山の子の風切る遊び馬酔木咲く 橋本 榮治
山の子の風聴き分けぬ黄連雀 中西夕紀
山の子は山の入日に懐手 福田蓼汀 山火
山の子は桃にほはせて食ひけり 高橋馬相 秋山越
山の子は棒持ち歩き馬の市 中島畦雨
山の子は藪騒親し通草採り 米澤吾亦紅
山の子や羽子ついて空すぐ近し 大串章
山の子ら霧のプールに声をあぐ 石橋辰之助 山暦
山の子を従へ来たる漆掻き 萩原麦草 麦嵐
帰らざる山の子呼べば流れ星 福田蓼汀
正座して山の子が葺く花御堂 中村陽子
残雪を噛んで草つむ山の子よ 飯田蛇笏 山廬集
汽笛知らぬ山の子の村煙草干す 清水清山
炭山の子の別れにもらふ甲虫 小原良枝
玄圃梨くれて山の子もうゐない 山田弘子
瓜坊も来よ山の子の祭笛 永島靖子
町の子に山の子が取る通草かな 川口利夫
綿入や山祗祀る山の子ら 金尾梅の門 古志の歌
聡き耳持つ山の子の雪うさぎ 首藤基澄
草擦つてゆく山の子に祭来る 山上樹実雄
葉桜や山の子の髪揺れて止む 蓬田紀枝子
蔓梅擬山彦つれて山の子ら 古賀まり子 緑の野以後
騒乱に山の子混じる生きる山桜 阿部完市 春日朝歌
●山の端
きりぎりすわが庭の端は山の端 村越化石 山國抄
余花といふ消えゆくものを山の端に 大串章
名月や僅かの闇を山の端に 上島鬼貫
寒立や日輪山の端に赤し 三尾知水
山の端といふ短日のあるところ 稲畑汀子
山の端にかかる昼月猫目草 野口光江
山の端にころがる冬日忌を修す 岸田稚魚 筍流し
山の端にちがふ闇ある牡丹雪 平木智恵子
山の端にのこりしひかり瓜の馬 藺草慶子
山の端に乙鳥をかへす入日かな 其角
山の端に冬三日月の金沈む 阿部みどり女
山の端に大粒の星稲の花 石田郷子
山の端に宝珠のまるき彼岸かな 青畝
山の端に庵せりけり薄紅葉 松本たかし
山の端に春月ひらく車井戸 柴田白葉女 花寂び 以後
山の端に朝日きらりと山葵沢 鈴木鷹夫 渚通り
山の端に椋鳥のあらしや二日月 兀子
山の端に残る暑さや大文字 宋屋
山の端に残照とどめ十三夜 岡田日郎
山の端に火星河原にきりぎりす 滝野美恵子
山の端に火種のごとき寒没り日 久保田愛子
山の端に見えざる海の夕焼雲 水原秋櫻子
山の端に遊び雲あり雛飾る 三井寛子
山の端に雪とどこほる実千両 澤村昭代
山の端のありしあたりも春の闇 八木林之介 青霞集
山の端のいちにち逃げるリラの花 齋藤愼爾
山の端のうす明りして菜種梅雨 山根貞子
山の端のかしこの花も見て行かん 比叡 野村泊月
山の端の吃音鴬懸命に 石塚友二
山の端の日の嬉しさや木綿とり 浪化
山の端の星の大粒狩の宿 戸口千枝子
山の端の月や鵜舟の片明り 井上井月
山の端の月より来たる兜虫 小野寺左右志良
山の端の薄紅二十六夜待 広瀬直人
山の端の逃げて春月ただよへる 川崎展宏
山の端の雪あはれなり大文字 服部嵐雪
山の端の雲の端のつくつく法師 佐土井智津子
山の端の雲入れ替り鳥帰る 浦山輝代
山の端の雲浮彫りに稲光 岩原玖々
山の端や二十六夜の月仏 野村喜舟
山の端や入日をつゝむ渡り鳥 浦四三子
山の端や廿六夜の月仏 野村喜舟
山の端や春遠からぬ細い月 尾崎迷堂 孤輪
山の端や海を離るゝ月も今 蕪村 秋之部 ■ 探題雨月
山の端をつたひて花を送りけり 綾部仁喜 寒木
山の端を揺れ出でし月澄みにけり 野村喜舟 小石川
山の端を没日が焦がす牡丹の芽 布施キヨ子
山の端を離れ満月すぐ凍る 吉野トシ子
年々やあの山の端の初紅葉 村野蓼水
待宵や山の端暮れて星一つ 高浜虚子
早春の凍て雲にして山の端に 高濱年尾
春霞いつからお前は山の端 大野三恵子
桐咲いて山の端を日の退りゆく 永方裕子
永き日の山の端にある笑ひかな 柿本多映
灯涼しく粋に山の端にはまだ日 京極杞陽 くくたち上巻
約すごと山の端に現れ初つばめ 村越化石 山國抄
素通りの山の端より芒抜く 対馬康子 愛国
花換祭山の端に日の射して 石村与志
花栗や少し明るむ山の端 小倉寿子
郭公や野へ岬なす山の端 三橋敏雄
酌つよし山の端にげて下戸の月 西望 選集「板東太郎」
酔ふ人に山の端逃ぐる餘寒かな 田中裕明 櫻姫譚
鍵盤に山の端が映え卒業歌 今瀬剛一
雨雲の山の端に巻く青林檎 古舘曹人 砂の音
雪山の端が輝き奴凧 阿部みどり女
雪解不二林道山の端をゆけば 大島民郎
雲ぎれの山の端うすく寒えくらし 養浩 芭蕉庵小文庫
きくとなく山端の風の春の蝉 飯田蛇笏 椿花集
山端は寒し素逝を顧みし 高浜虚子
山端や一もと櫻おそ櫻 泉鏡花
山端や桜の上の雪の峯 野村泊月
杜氏帰る山端に桑のかがやく日 福田甲子雄
武蔵野の月の山端や時鳥 大淀三千風(みちかぜ)(1639-1707)
●山の湯
かつこうや山の湯の薬師さんの白い障子 荻原井泉水
がまづみの色づく頃の山の湯に 高澤良一 素抱
けふ生きて山の湯にあり朝の蝉 畠山譲二
一身の凍をひつさげ山の湯へ 皆吉爽雨
今日生きて山の湯にあり朝の蝉 畠山譲二「朝の蝉」
優曇華や生涯山の湯の木地師 鈴木貞二
同齢か上か秋夜の山の湯に 大井雅人
天の川山の湯にして塩の味 中戸川朝人 尋声
山の湯が利いて快眠かじか宿 高澤良一 素抱
山の湯にあそびしあとの洗鯉 関戸靖子
山の湯にたまたま秋の螢かな 加藤三七子
山の湯に創洗ひしが鷹と化す 星野石雀
山の湯に吾と入替り大き灯蛾 八木林之介 青霞集
山の湯に早苗饗の衆朝より来 谷渡末枝
山の湯に母いざなえば合歓さかり 渕向正四郎
山の湯に浮くは農夫の盆の顔 瀧春一
山の湯に男が白し末枯れて 久保田博
山の湯に秋七草の咲き揃ふ 野原春醪
山の湯に精進落ちの秋遍路 福瀬伯彩
山の湯に膝抱き八十八夜かな 木内彰志
山の湯に蕗の雨降り母とゐる 松本澄江
山の湯に野点遊びの桃青忌 中山純子
山の湯に雪積む頭並べたる 矢島渚男
山の湯に青き蛾泛ぶ五月来ぬ 小林黒石礁
山の湯に首だし勤労感謝の日 鈴木一恵
山の湯に首立てひとり十二月 岡田日郎
山の湯に骨正月の老夫婦 長谷川浪々子
山の湯のあつきをかぶり風の盆 小島千架子
山の湯のなみなみとある寝釈迦かな 桂信子 樹影
山の湯のほがらほがらと啼く青鵐 臼田亜浪 旅人
山の湯のランプの燈火親しみぬ 富安風生
山の湯の一人声高あきざくら 西村良子
山の湯の二日眺めし青葉かな 永井静枝
山の湯の借り衣薄し十三夜 小林寂無
山の湯の大屋根の照り岩燕 三原清暁
山の湯の宿のロビーに絵蓬 酒井 武
山の湯の尾花しぐれに別るるか 西本一都 景色
山の湯の山菜づくし栃の花 村上克哉(笹)
山の湯の松葉しづりや春の雷 臼田亜浪
山の湯の枯木の宿に客ひとり 村山 郁
山の湯の田植終へたる顔ばかり 国安一帆
山の湯の花に来るなり人形座 穐好樹菟男
山の湯の蝌蚪日輪へ頭を揃ヘ 沢木欣一
山の湯やすぐ売切れし寒卵 首藤勝二
山の湯やだぶりだぶりと日の長き 一茶
山の湯やふと囁ける雪女郎 磯 直道
山の湯やまだ散る花のありにける 及川貞 榧の實
山の湯や吾が春愁の花昏れず 宇田零雨
山の湯や紅葉を払う脱衣籠 太田小夜子
山の湯や霧に蒸されて木々の苔 寺田寅彦
山の湯を出でて化粧ひてより秋思 斎藤杏子
山の湯を初湯にひとつ年とれり 宮津昭彦
山の湯泉や裸の上の天の川 子規句集 虚子・碧梧桐選
時雨来て山の湯宿の早や灯る 新井セツ
桐の花爆音山の湯にも飛び 石田波郷
相客もなき山の湯に走り蕎麦 金森柑子
紅すすきほどにあからみ山の湯に 高澤良一 素抱
紅葉狩り序でに山の湯も浴びて 高澤良一 寒暑
蒼朮を焚く山の湯の一夜かな 伊藤冨美子
行く春の山の湯糖尿病に効くと 岡田日郎
道道の稲の出来見て山の湯ヘ 上村占魚 球磨
郭公や山の湯壺に山の神 福田和子(梛)
銀河の夜雨の夜山の湯に二泊 岡田日郎
霧ふかし山の湯に親も子も裸 栗林一石路
鰯雲山の湯のやや熱かりし 大峯あきら 鳥道
せい出して山湯のけぶる野分哉 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
入道がふぐりをつかむ山湯かな 中勘助
眠る山湯の脈ここにみちびかれ 上田五千石 田園
隠れ棲むごとく山湯のきりぎりす 成澤たけし
風あらぶ臥待月の山湯かな 飯田蛇笏 春蘭
●山畑
ぬかばえに焦ぐ山畑の痛々し 松本成章
まだ打たぬ山畑つづき雉子歩む 伊藤京子
三人子はときのま黙し山畑に地蔵となりて並びゐるかも 前登志夫
人ひとり櫻ひともと山畑に 相馬遷子 雪嶺
冬搆ふや庭より道し山畑 尾崎迷堂 孤輪
凍てゆるぶ山畑の土うごくかも 飯田蛇笏 雪峡
小梨咲く山畑雉子の子が一列 矢島渚男 梟
山畑にこゑ撒きちらし盆の昼 宇佐美魚目 秋収冬蔵
山畑にひとり鍬振る西行忌 長谷川史郊
山畑にむれたつ鶸を見て登る 水原秋櫻子
山畑に仲間顔するわらびかな 水上郁子
山畑に吉野人帰し花終る 亀井糸游
山畑に屈みて胸を暗うせり 竹本健司
山畑に庵結ぶや棕梠の花 大須賀乙字
山畑に引き傾けし鳴子かな 東國 泉天郎、岡田葵雨城(平安堂)編
山畑に打ちし蜥蜴に立つ男 原コウ子
山畑に月すさまじくなりにけり 石鼎
山畑に杉菜波打つ御師部落 菅原文子
山畑に火を放ちをる七日かな 大峯あきら 鳥道
山畑に縄張つてゐる残暑かな 大峯あきら
山畑に触れて雲ゆく韮の花 中戸川朝人 尋声
山畑に豆引くをとこゐて久し 稲垣きくの 牡 丹
山畑に豚猪の如くあさりけり 楠目橙黄子 橙圃
山畑に青み残して冬がまへ 向井去来
山畑に頬朱くして雉子走る 飯村周子
山畑に麻の花澄む颱風季 有働亨 汐路
山畑のいよいよ荒れて桑の花 青柳志解樹
山畑のすみれや背負う肥一桶 西東三鬼
山畑のでこぼこ径や杉の花 福川悠子
山畑のなぞへ暖かに打ちにけり 青峰集 島田青峰
山畑のひとつ家もする墓まゐり 飯田蛇笏 春蘭
山畑の冬菜の色も雨のなか 田沼文雄
山畑の境も失せて葛の花 平地美紗子
山畑の大根引やすぐ済みし 今井杏太郎
山畑の日ぐれを閉じるハーモニカ 穴井太 穴井太句集
山畑の濡れくたれたる雪解かな 尾崎迷堂 孤輪
山畑の畝は短し雉子鳴けり 結柴 蕗山
山畑の粟の稔りの早きかな 高浜虚子
山畑の耕し浅き桜かな 小川軽舟
山畑の芋ほるあとに伏す猪かな 其角
山畑の落葉をひろひ寒見舞 宇佐美魚目 天地存問
山畑の鋤かるる前の花なづな 石渡旬
山畑の高みに励み文化の日 馬場移公子
山畑は垣など結はず胡麻の花 辻田克巳
山畑は父の生甲斐瓜の花 古川幸市
山畑は笠に雲おく案山子哉 正岡子規
山畑へ行くだけの道蜥蜴出づ 大串章 百鳥
山畑へ麦刈りに行く日和哉 麦 正岡子規
山畑も三成陣址小豆干す 神蔵器
山畑やくれなゐの薔薇ひとつ咲く 岸本尚毅 鶏頭
山畑ややゝ淋しらに芋の葉を 尾崎迷堂 孤輪
山畑や岸這ひ下る芋の蔓 会津八一
山畑や引かで腐りし春大根 斎藤俳小星
山畑や掘られし芋のすぐ乾く 長谷部彩児
山畑や明日を信じて鍬始 中川康子
山畑や昼ほとゝぎす柿の花 癖三酔句集 岡本癖三酔
山畑や月夜々に満ちて芋肥ゆる 青峰集 島田青峰
山畑や椶櫚の根もとの曼珠沙華 河野静雲 閻魔
山畑や煙りのうへのそばの花 蕪村
山畑や物種栽る五月晴 五月晴 正岡子規
山畑や猪の足跡を打ち返す 畑打 正岡子規
山畑や白髪太郎が電線に 水木なまこ(童子)
山畑や真昼のころの郭公 時鳥 正岡子規
山畑や笊もむしろもをどろかし 加舎白雄
山畑や笠の紐より汗しづく 宇佐美魚目 天地存問
山畑や老婆ひとりの鍬の音 寺内吉六
山畑や茄子笑み割るゝ秋の風 村上鬼城
山畑や蒜植うる微雨の中 斎藤雨意
山畑や雪に打ち込む鍬始 高橋淡路女 梶の葉
山畑や雲より落つる舞雲雀 雲雀 正岡子規
山畑や雲より落る桐一葉 妻木 松瀬青々
山畑や青みのこして冬構へ 去来
山畑や麦蒔く人の小わきざし 大魯
山畑をうちくらしたる鍬かたげ 清原枴童 枴童句集
山畑を劃れる径や秋彼岸 八木林之介 青霞集
山畑を打つやをりをり母と話し 大峯あきら 鳥道
山畑を来て燈籠を流しけり 西田栄子
山畑を煙の出でずかいつむり 宮坂静生 樹下
山畑を耕す木ぐつ修道女 佐藤一村
山畑秋の育ちよく新ら簑まとふて来る 人間を彫る 大橋裸木
山畑麦が青くなる一本松 尾崎放哉
打ち返しある山畑の落葉かな 渡辺水巴 白日
掘り返す山畑かたし蕨長け 水上 勇
数へ日や山畑に人ゐることも 児玉輝代
日に酔うて藷挿しをるや山畑 藤田あけ烏 赤松
日照雨ぐせつきし山畑大根蒔く 三村純也
旧正の歩危の山畑人を見ず 野中木立
明け易き山畑道の水車小屋 石原舟月
春あさき人の会釈や山畑 飯田蛇笏 山廬集
暖き山畑にゐて老いにけり 大峯あきら 宇宙塵
照る雲に葡萄山畑五月来ぬ 飯田蛇笏 雪峡
秋の日や萱に道ある山畑 尾崎迷堂 孤輪
秋晴の山畑今日は人の居り 斎藤空華 空華句集
秋立てり山畑の葱一畝も 小澤實
稲妻や刻み上げたる山畑 会津八一
繭玉や赤子見てまた山畑へ 岸野曜二
花煙草ここらも法の山畑 柴原保佳
茎立や髪のふくらむ山畑 伊藤二瀬
蕎麦の花火山灰の山畑暮れ残る 羽田岳水
薯伏せて山畑守る隠れ耶蘇 下村ひろし 西陲集
豆柿や石ばかりなる山畑 福田蓼汀 山火
雨雲や山畑は暗き蜜柑花 内田百間
雪の山畑白真ッ平らしかし斜め 金子兜太 遊牧集
雪を待つのみ山畑の無一物 津田清子 礼 拝
青桃の落つる山畑風かたし 沖田佐久子
顔裂けた地蔵もろとも山畑売られ 西川徹郎 天女と修羅
鳥の巣が木にも土にも山畑 松瀬青々
鶯や山畑拓く朝仕事 石井露月
かつこうの声を目で追ふ山の畑 加藤武夫
山の畑独りで守りて目白飼ふ 高橋利雄
山の畑雲も耕されて白し 大串章
芋虫や空あをあをと山の畑 長谷川綾子
花煙草摘むにやゝ酔ひ山の畑 西村数
雁鳴くや落花生掘る山の畑 桜木俊晃
雉子鳴くや小石を拾ふ山の畑 杉山 えい
鶉鳴くばかり淋しき山の畑 紅緑
●山肌 山膚
つぼすみれ山肌染めてゐたりけり 加藤三七子
一休宗純五百年忌の山肌よ 小澤實
世々嗣ぎて山肌荒き茶を摘めり 白鳥 峻
八ケ岳山肌近し小梨散る 及川貞 夕焼
六甲の山肌さらに出水跡 鈴鹿野風呂 浜木綿
十津川の山膚畑や黍嵐 米沢吾亦紅
大寒の日は山膚にふるるなし 清崎敏郎
山肌に付き合ひほどの雪残す 雨宮抱星
山肌に日柱移る鷹柱 中戸川朝人 尋声
山肌のひとところ濡れ寒日和 阿部みどり女
山肌の昼より照れり血止草 大木あまり 火のいろに
山肌の極彩に叛き木の実降る 沓掛喜久男
山肌の濃紫なる冬日かな 『定本石橋秀野句文集』
山肌の熱さめてゆく芒かな 中田剛 珠樹
山肌をかけおりてくるななかまど 斎藤順
山肌をはなれし蔓や明易き 岸本尚毅 鶏頭
山肌を嗅ぎし竜胆日和かな 小池 都
山肌を夕日が照らすみちひとすぢ 柴田白葉女 『月の笛』
山肌を流る雲影野路の秋 増山至風
復活祭山肌赫く海青し 大野林火
日ののぼり来る山肌や鶲鳴く 村田脩
日盛りの山肌に捺す「大」一字 平井さち子 鷹日和
明るい山肌残すため散るオートバイ 赤尾兜子
明暗に山肌分けし冬の雲 杉田竹軒
木の葉掻き山肌の香が母に沁む 松村蒼石 雪
杜氏帰る斑雪山肌海へ垂れ 安達峰雪
残雪に目覚む山肌かく近く 林原耒井 蜩
畑を鋤き山肌の荒れ負いいたる 宇咲冬男
秋夕焼「大」の字残る山肌に 小川晴子
紫香楽や芽吹く山肌須恵の肌 加倉井秋を
花火こだまする深い山肌 シヤツと雑草 栗林一石路
赤子立つ夏の山肌割れるかな 和田悟朗
雁渡し山肌高きまで濡るる 中戸川朝人 星辰
雪殺ぎし山肌戦後も永くなりぬ 赤城さかえ句集
雷雲は四海より急山肌錆び 古舘曹人 能登の蛙
鳶の巣に枯山膚を近づけて 成澤たけし
八方に山の肌の淑気かな 堀米秋良
山の膚艶ますばかり梅雨旱 相馬遷子 山国
晴るるとし雲うごく中の山の肌 シヤツと雑草 栗林一石路
父祖の地や植田にせまる山の肌 金尾梅の門
短日や鏡のなかの山の膚 久保田万太郎 草の丈
筒鳥に火の山の肌新しき 下山芳子
粧ひもせずに削られ山の肌 滝佳杖
芒種はや人の肌さす山の草 鷹羽狩行「七草」
雪山の肌より顕るる岳かんば 関本テル
●山遙か
斑雪山はるかに鹿が耳立てる 藤森都史子
小倉山はるかに桜しだれけり 植田露路
土佐みづき土佐の砂山遥かなる 磯貝碧蹄館
●山番
山番と山を見廻り春惜しむ 影島智子
山番の塞がぬ炉辺の救護箱 上田五千石
山番の戸の籠に飼ふ梟かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
山番の道細々と冬木立 寺野守水老
松茸がとれて山番やめられず 中村稲雲
●山火
あかあかと山火の裾の阿修羅像 中田剛 珠樹以後
おとろへしとき妻をだく山火かな 萩原麦草 麦嵐
くるくると飛んで山火や水の上 岸本尚毅 選集「氷」
さかんなる山火に弟を呼ぶ子あり 石橋辰之助 山暦
ちろちろと舗道はしるよ山火の灰 軽部烏帽子 [しどみ]の花
ときめきてかの嶺も起てる山火かな 井沢正江 晩蝉
なまくらの山火道端焦がしをり 高澤良一 ぱらりとせ
ひとの世の在りしはむかし山火燃ゆ 野見山朱鳥
ふるさとに稀れにある日の山火かな 深川正一郎
わがゆめにありしがごとき山火とも 青畝
をのゝきて人にとまりぬ山火の灰 軽部烏帽子 [しどみ]の花
カルストの死色にかげる山火かな 石原八束 空の渚
一つ夜をたがひに燃ゆる山火かな 萩原麦草 麦嵐
一臂もて山火にひかるさるすべり 古舘曹人 砂の音
世の隅にいのち預けて山火の夜 村越化石 山國抄
人が焼く天の山火を奪ふもの 水原秋櫻子
人を恋ひ阿蘇越えゆかば山火燃ゆ 本郷昭雄
人並に蛙もはやす山火哉 一茶
伊豆の夜はほつ~燃ゆる山火かな 萩原麦草 麦嵐
冬の山火伏の行者渉りけり 冬葉第一句集 吉田冬葉
勢子のいま心ゆるしてゐる山火 稲畑汀子
勢子の意に添はぬ山火は叩かれし 八尋浄子
十輪院山火に遠く雪降れり 河北斜陽
千木屋根に月照り山火いまは消ゆ 木村蕪城 一位
南の山火の闇のありにけり 小菅佳子
夕月や山火曇りに阿蘇五岳 工藤義夫
夢深く山火の音を曳き寄せて 黒田杏子 花下草上
大阪の妓がひとり見る山火かな 角川春樹
寒の山火伏の神に酒供ふ 山本多七
山火あり大胆不敵なるごとし 加藤かけい
山火いま刻々寝釈迦焙らるる 豊長みのる
山火いま月のしたびを尾根に出づ 栗生純夫 科野路
山火いま風をとらへて咆哮す 介弘浩司
山火今追慕の火色燃え立たす 稲畑汀子 春光
山火曇り我が居る檜原澄み徹る 林原耒井 蜩
山火果つ白きは蓬の灰ならむ 高澤良一 ぱらりとせ
山火果て万葉の闇深くなる 下里美恵子
山火点けて人馳けにけり闇の中 成瀬桜桃子 風色
山火点けて人駆けにけり真の闇 成瀬櫻桃子 風色
山火燃ゆ乾坤の闇ゆるぎなく 竹下しづ女
山火爆ぜ爆ぜては山を呑む勢ひ 高澤良一 ぱらりとせ
山火眼に花火を口に受けましよう 八木三日女 赤い地図
山火立つ標高農の極限地 久保 武
山火見てゐたりし舟の流されて 岸本尚毅 選集「氷」
山火見てをれば寝ねよと母の声 今井つる女
山火見て二つのこころたたかはす 原裕 『新治』
山火見て立つ嫂を淋しとも 清原枴童 枴童句集
山火見ゆ母に正気の刹那あり 市川葉
山火見るために据ゑられ一つ巌 原裕 『新治』
山火見るや醜女からだを起しては 萩原麦草 麦嵐
川に垂る足のさみしき山火かな 中戸川朝人 星辰
幾山も山火を見つつ越えて来ぬ 下村梅子
悪食の鯉よく撓ひ山火かな 鳥居美智子
悲しみの色とはこれか山火見る 深川正一郎
散乱の机上を照らす山火かな 原裕 『王城句帖』
旅の夜を起きて山火のなほ見ゆる 臼田亜浪 旅人
日を歪め山火の灰がしんしんと 軽部烏帽子 [しどみ]の花
暗き夜や伊豆の山火と漁火と 鈴木花蓑
暗き夜や伊豆の山火を漁火と 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
歯朶裏の底焼けくゞり山火かな 西山泊雲 泊雲句集
歯朶裏の底燃えくぐり山火かな 西山泊雲 泊雲
母の頬にはるけく動く山火かな 汀女
気紛れな山火すすっと山の肩 高澤良一 ぱらりとせ
溶岩原に向かふ山火の急先鋒 高澤良一 ぱらりとせ
火の鳥が翔ちて山火の鎮まりぬ 手塚美佐 昔の香 以後
火の鳥となりて羽摶く山火かな 豊長みのる
焼山にどつと隣の山火煤 中戸川朝人 星辰
熊穴を出づ山火注意の旗なびき 坂尻惺
燃えさしに山火の火力そこそこや 高澤良一 ぱらりとせ
父もゐて焼くなる山火指す子あり 石橋辰之助 山暦
牛小屋は暮れつゝ山火いろめきぬ 五十崎古郷句集
白面の月のただよふ山火かな 白岩 三郎
真日を降る山火の灰ぞ眉をかすめ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
神へ焔の山火大胆不敵なり 豊長みのる
窓とほく更けし山火にちさくねる 辰之助
網代守る夜々の山火の江に映る 臼田亜浪
網代守る夜々を山火の江に映ゆる 臼田亜浪
逆らへる山火は二人して叩く 岩岡中正
遠き世の山火ぞ映ゆる埴輪の眼 蓼汀
野に野火が山に山火が走るかな 下村梅子
野火山火いちにち狂ふ神の国 豊長みのる
野火山火柩に古きものはなし 神尾久美子 桐の木
阿蘇五岳覚ます山火のあがりけり 増田 富子
阿蘇谷へ逆落しくる山火かな 江口竹亭
頂の山火かくさず鹿の杜 古舘曹人 砂の音
馬籠とは方違ひなる山火かな 森田峠 避暑散歩
●山彦
いくたびも山彦かへす夕焼かな 吉武月二郎句集
おーいおーいと永久にあなたを呼ぶ山彦 池田澄子
おーいおーい命惜しめといふ山彦 高柳重信
からうじて山彦もどる吾亦紅 下田稔
ざんばら髪の山彦あるく油照り 長谷川双魚
しぐるるや山彦は樹を親と思ひ 長谷川久々子
しぐれきて山彦絶ちし下りかな 原田種茅 径
ためしたき山彦青嶺ま近なり 朝倉和江
ひよどりの山彦の澄む初詣 田村木国
ぼんでんの法螺山彦のごと吹きあふ 上村占魚
亀鳴くや山彦淡く消えかかる 赤尾兜子
二人行けど秋の山彦淋しけれ 佐藤紅緑 紅緑句集
全山の芽や山彦がもの言へり 米沢吾亦紅 童顔
凧高うなりて山彦もう答へず 内藤吐天 鳴海抄
前山に山彦棲む日松飾る 渡辺柳風
吠え牛に山彦高し霧の中 西山泊雲 泊雲句集
夕凍みの山彦山に残りけり 秋山ユキ子
夕焼る山彦山に帰るとき 三田きえ子
天彦呼びに山彦駈くる斧始 大野せいあ
子遍路に山彦のゐる札所かな 山崎一角
寒卵割り山彦の国を出る 市原光子
山彦が聞えてあやめ祭来ぬ 萩原麦草 麦嵐
山彦とならぬわがこゑ落胡桃 白岩 三郎
山彦とゐるわらんべや秋の山 百合山羽公
山彦と啼く郭公夢を切る斧 山口素堂
山彦と晴れて学校始めかな 松下鶴生
山彦にいつか鳴き勝て羽抜鶏 秋山朔太郎
山彦にさからひやまず霧の鵙 西島麦南 人音
山彦にも毀れるひかり二月の樹 速水直子
山彦に妻の遊べる山毛欅若葉 菅原多つを
山彦に山葵の花や散りかゝり 萩原麦草 麦嵐
山彦に散果たしたるさくらかな 米密 三 月 月別句集「韻塞」
山彦のあと一斉に杉花粉 岡本まち子
山彦のうしろ姿を漉き上げる 小澤杏林
山彦のしばしとだへし紅葉かな 杉本寛
山彦のしばらくありて草刈男 西山泊雲 泊雲
山彦のはきはきとして青吉野 大石悦子 聞香
山彦のはじめつばらにねこじやらし 藤田湘子
山彦のはなればなれよ妓王の忌 神尾久美子
山彦のゆつくりとほる弥生かな 中村契子
山彦のよくかへる日よえびかづら 遠藤露節
山彦のわれを呼ぶなり夕紅葉 臼田亞浪 定本亜浪句集
山彦のゐてさびしさやハンモツク 水原秋桜子(1892-1981)
山彦の一歩も退かず閑古鳥 檜紀代
山彦の南はいづち春のくれ 蕪村遺稿 春
山彦の口まね寒きからすかな 千代尼
山彦の尻尾だすまで黄落す 西野理郎
山彦の山みな遠し花うつぎ いのうえかつこ
山彦の己の声に呼ばれ夏 白岩三郎
山彦の待ちかまへゐし山開き 木内怜子「繭」
山彦の打つ小鼓や山葵咲く 田方建子「土鈴」
山彦の打てもどしに砧かな 紫貞女
山彦の棲む山めざし旱道 徳永山冬子
山彦の棲む谷々の薄紅葉 三村純也
山彦の気配を棟に冬仕度 岡本まち子
山彦の触れず落ちたる一位の実 浅井一志
山彦の語尾のすとんと山眠る 山本秋穂
山彦の通り抜けたる涼気かな 神尾久美子
山彦の駆けて椎の実こぼしけり 井本芦水
山彦はみな男ごゑ冬の山 大谷てるみ
山彦は他所(よそ)の事なりわかな摘 千代尼
山彦は呼べぬ齢や栗の花 赤塚五行
山彦は宵に一戻るやのちの月 千代尼
山彦は山に捨て置く夜の桃 鈴木湖愁
山彦は山へかへりて枯一途 鹿野佳子
山彦は杜甫か李白か登高す 白澤良子
山彦は湖に出てゆく朴の花 長田等
山彦は男なりけり青芒 山田みづえ 木語
山彦は青年のこゑ山笑ふ 二藤 覚
山彦も山を出ることなき二日 鷹羽狩行
山彦も島出づるなし青芒 朝倉和江
山彦も魂ぎる多摩や血止め草 高柳重信
山彦やむらさきふかき春の嶺 池田秀水
山彦や湯殿を拝む人の声 桃隣「陸奥鵆」
山彦や知らなくてよいけもの道 池田澄子
山彦や花の梢にひびき行く 水田正秀
山彦をかへし雪渓夜もしるく 福田蓼汀 山火
山彦をすぐに戻せぬ樹氷林 北見弟花
山彦をつけてありくや鉢たたき 千代女
山彦をぬすむすすきのすだま見つ 栗生純夫 科野路
山彦を伴ふ窓に夏経かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
山彦を呼び出してゐる山開き 小野伶(南風)
山彦を呼び戻せしが雪となる 相原左義長
山彦を山に帰して修二の忌 関野八千代
山彦を山へかへして卒業す 遠藤若狭男
山彦を引き寄せてゐる春田打 小泉八重子
山彦を探す夕暮れ頬濡らし 久野千絵
山彦を連れて半鐘防火の夜 野澤節子 遠い橋
山眠るや山彦凍てし巌一つ 松根東洋城
岬現れ海彦山彦すでに春 河野南畦 湖の森
引鶴のこゑ海彦へ山彦へ 福島笠寺
拍手が山彦となる四方拝 石津不及
旅人の中を山彦ときに野火 三枝桂子
早春の山彦かへる垣根かな 萩原麦草 麦嵐
明けまたぬ小野の山彦土竜うち 吉武月二郎句集
春愁やひとの山彦われに来る 米沢吾亦紅 童顔
月明や山彦湖をかへし来る 秋櫻子
木耳を踏み山彦の老いゆくよ 長谷川双魚 風形
朴の青枝下されて飛騨の山彦 金子皆子
梅雨雲がすぐ山彦を追ひかへす 米沢吾亦紅 童顔
極月の山彦とゐる子供かな 細川加賀 『傷痕』
海彦と山彦あそぶ初茜 樫村安津女
海彦と山彦そろふ入学期 原裕 新治
海彦と山彦とゐる霧笛かな 鈴木洋々子
海彦も山彦も来て綱を引く 荒井籠聲
海彦も山彦も来よ太刀飾る 野木桃花
澱みなく山彦とんで神無月 斎藤佳代子
火祭の山彦ゆゆし秩父人 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
牛飼の山彦わかし冬隣 岩田昌寿 地の塩
町の子の山彦遊び秋の山 安藤登美子
白根葵咲けりといふよ山彦も 水原秋櫻子(馬酔木)
窓の外にゐる山彦や夜学校 芝不器男
老鴬に山彦もなき浮葉かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
腸の水の山彦昼寝覚 高澤良一 随笑
花菜いちめん孤児に山彦野彦する 磯貝碧蹄館 握手
蔓梅擬山彦つれて山の子ら 古賀まり子 緑の野以後
近づいてくる山彦の暑さかな 松澤昭 山處
近頃は山彦となる不如帰 橋本鉄也
返盃や会うこともなき山彦に 仁平勝 東京物語
雪嶺のいづかたよりの山彦ぞ 猪俣千代子 秘 色
鞦韆や春の山彦ほしいまゝ 秋櫻子
鶏のこゑ山彦すなり日南ぼこ 吉武月二郎句集
●山襞
いくたびも山襞めぐり初市へ 巌寺堅隆
ふるさとの山襞深くほととぎす 桑原たかよし
唐辛子干し山襞を深くする 浮洲久子
啓蟄の山襞淡き忌なりけり 原裕 青垣
夏深し山襞緑濃き夜明 福田蓼汀 秋風挽歌
夕明りの山襞のどこ神楽笛 加倉井秋を 『欸乃』
奥塩原山襞にまだ雪残る 浦野慶子
寒禽のこゑ山襞に深まりぬ 大谷 茂
山ひだ日かげりの移るばかり湖も峰も静に 梅林句屑 喜谷六花
山襞にあり巡礼の鈴恐し 金子皆子
山襞にたつ夕靄やすだれ捲く 西山泊雲 泊雲句集
山襞に入る往還や手鞠唄 綾部仁喜 寒木
山襞に見しぬくもりや良寛忌 菅沼勝男
山襞に貼りつく四五戸ほとゝぎす 工藤吾亦紅
山襞に魔法のランプ霧を噴く 佐藤たみ子
山襞のあらたに生まれ桜満つ 原裕 正午
山襞のどの闇からの仏法僧 竹中碧水史
山襞のひかり残せり冬の蝿 川田由美子
山襞の奥まで紅葉いろは坂 小林すま
山襞の小さき祠も一の午 東野悠象
山襞の折目の二百十日かな 木内彰志
山襞の折目正しく秋の湖 金箱戈止夫
山襞の梅蒼きまで翳りけり 田島朱一
山襞の残雪を見て飛騨の面 萩原麦草 麦嵐
山襞の深くなりたる落し水 井浪千明
山襞の深みて釣瓶落しかな 水原春郎
山襞の裾濃に映えて遠ざくら 松島利夫
山襞や脳の襞よりなほ冥く 多田智満子
山襞を出でくる涅槃詣かな 矢島渚男 梟
新年の山襞に哀れ烟立ち 室生犀星 十返花
新年の山襞に立つ烟かな 室生犀星 犀星発句集
日脚のびる山襞ぐいと厩戸へ 木村蕪城 寒泉
春埃山襞までも隠したり 中嶌水声
月山の山ひだ深き春彼岸 有馬朗人
木の国の山襞ふかき花吹雪 藤井冨美子
残雪の山ひだ考へのごと深し 細見綾子 花 季
芦野路や山襞馳せる梅雨の霧 屋代孤月
雪残る山襞深し風不死岳 野村幸子
鳥帰る山襞ゆるび始めけり 大内清香
冬神の鞭かと思ふ山の襞 河野南畦 湖の森
天つばめ昏れ色ひそむ山の襞 稲垣きくの 牡 丹
山の襞がふかい月光の黒い黙想 荻原井泉水
書楼出て日さむし山の襞を見る 飯田蛇笏 霊芝
書樓出て日寒し山の襞を見る 飯田蛇笏
木枯や鋭く切れて山の襞 浅見まき子
橇に葱夕日が深む山の襞 宇佐美魚目 秋収冬蔵
湯の山の襞に落ち込む鹿の声 瀬川ふく子
白露に火の山の襞荒びつゝ 杉山岳陽 晩婚
秋深しすぐ目のまへの山の襞 久保田万太郎 流寓抄
色鳥の諸音熱くす山の襞 原裕 青垣
荒々し霞の中の山の襞 芥川龍之介 蕩々帖〔その一〕
雪山の襞ぎつしりと青年期 木村敏男
●山人
なつかしや山人の目に鯨売 原石鼎
ななかまど赤し山人やすを手に 田村木国
むささびの闇うつくしく山人早寝 篠田悦子
もぐらもちの円さよ山人の背の荷は 金子皆子
不知火や山人に海恐ろしく 岩田美蜻
城あるを山人誇る耕しつつ 大野林火
塩負うて山人遠く行く秋ぞ 暁台
夏雲や山人崖にとりすがる 飯田蛇笏 山廬集
山くだる山人の葬曼珠沙華 岡部六弥太
山くらし山人くらし烏頭 斎藤玄
山人が水に束ぬる山葵かな 渡辺水巴 白日
山人に春蘭を掘る向きかえて 長谷川かな女 花 季
山人に逢ふよろこびを残鶯が 金尾梅の門 古志の歌
山人のくしやみやとゞく秋の雲 前田普羅
山人のみやび言葉や秋の雷 原和子
山人のよき顔に初雪来 宇多喜代子 象
山人の傷ひかりおり冬木立 森下草城子
山人の十指の掬す岩清水 加古宗也「八ッ面山」
山人の垣根づたひや桜狩 高浜虚子
山人の水こぼし行くすみれかな 松瀬青々
山人の独活丸齧り別れかな 金子兜太
山人の直ぐなる情や水仙花 宮坂静生 春の鹿
山人の真顔が揃う霧の中 横地かをる
山人の眼に月明のかるもかな 原石鼎
山人の腰のかゞみやつるいちご 苺 正岡子規
山人の蓬莱の間にある炉かな 癖三酔
山人の衣裳持なり土用干し 河野静雲
山人の雪沓はいて杖ついて 高浜虚子
山人はすさめぬ山のいちご哉 苺 正岡子規
山人は客をよろこぶ夏炉かな 松本たかし
山人は斧浸しゆく滝水に 萩原麦草 麦嵐
山人や薪にすとて木の実植うる 道彦
木の実拾ふて山人去りぬ山深く 西山泊雲 泊雲句集
松風や年の山人の帰る後 内藤丈草
桐まだ咲かぬ山国山人と酔うて 金子兜太 詩經國風
水明の日を建つ小春山人と 長谷川かな女 雨 月
繩打つや山人越後縮着て 長谷川かな女 雨 月
萱高し山人何に大笑ひ 久米正雄 返り花
霧藻採る山人腹を病みにけり 石島雉子郎
鮎占い白装束の山人ら 奥山甲子男
●山日和
ふくべけふひさごとなりぬ山日和 岡井省二
ふは~と朴の落葉や山日和 松本たかし
まんさくの一枝余さず山日和 宇佐美ふき子
一人出て稲刈つてをり山日和 立山花恵
冬耕の人出てをりぬ山日和 藤松遊子
吾亦紅紅の焦げたる山日和 森澄雄
四十雀銀の笛吹く山日和 大塚宏江
大綿のとび交ふそれも山日和 塩見武弘
寝坊に小鳥来てゐる山日和 岩城久美
山日和夕ベは崩れ秋の蛇 宇佐美魚目 秋収冬蔵
山日和綿虫舞へば崩れくる 田中なつゑ
山日和鳥を威すに鳥の声 松井志津子
山葡萄むらさきこぼれ山日和 水原秋桜子
愛鷹にまづ山日和梅鉢草 山田みづえ
手の餌に近づく小雀山日和 中川 忠治
新雪の消えてしばらく山日和 福田蓼汀 秋風挽歌
柚子*もいで山日和このゆたかなもの 有働 亨
柞散るかそけき音や山日和 岡安迷子
栗虫の頭出てゐる山日和 矢島渚男 船のやうに
桐の実の晒せしごとし山日和 神尾久美子 桐の木以後
漉く水に暗しのび込む山日和 山上樹実雄
熊穴に入るをためらひ山日和 西村浩風
猟人を招じ入れたる山日和 猪俣千代子 秘 色
秋の山日和つゞきとなりにけり 佐藤紅緑
秋声の近くて遠し山日和 福井圭児
稲刈の急ぐことなき山日和 安原葉
稲架を解く音の谺の山日和 山田弘子 初期作品
竜胆の筒のふくらみ山日和 岡田日郎
臘梅のいろの溶けゆく山日和 板谷芳浄
茸やく松葉くゆらせ山日和 杉田久女
萱刈るやきのふにまさる山日和 植地芳煌
落葉踏む軽き音踏む山日和 小原正子
蒟蒻を掘るや甘楽の山日和 佐々木有風
蒟蒻を蚕棚に寝かす山日和 馬場移公子
襞襞に寒さかくまり山日和 上村占魚 『自門』
講宿に頬白来鳴く山日和 岡田 日郎
豆飯がふつくり炊けし山日和 柴田白葉女 花寂び 以後
赤蜻蛉翅うつ音さへ山日和 福田蓼汀 山火
鳴き混じる日雀小雀や山日和 鈴木久美子
鶯や摘茶いきれる山日和 菅原師竹句集
五倍子干して山の日和を頼みけり 山口峰生
干菌山の日和に反りかへる 水原秋櫻子
朝からの山の日和に朴咲いて 中島よし絵
稲の花道灌山の日和かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
穏やかな山の日和や針祭 宮本素月
簡明なさわらび山の日和かな 坂本ひろし
●山水
あつめたる山水鳴らし冬菜洗ふ 楸邨
ありありと童子山水初暦 斉藤夏風
さくら湯に山水またもにぎやかに 宇佐美魚目 天地存問
ひそみゐし冬が見えたり枯山水 鳥越すみこ
ふるゝものを切る隈笹や冬の山 水巴
ほとばしりいづ山水や厚氷 松村蒼石 露
みちのくの朱夏の山水掬ひけり 佐川広治
もつれ行く黄蝶や枯山水の秋 川崎展宏 冬
ゆく年を惜しむ長巻山水図 森澄雄 空艪
亀虫のはりついてゐる山水図 藺草慶子
亡き母の陶枕に濃き山水図 肥田埜恵子
体内も枯山水の微光かな 橋間石
元日や野の石として妙義山 水上孤城
八十八夜過ぎ山水の腰強し 櫛原希伊子
切口にすぐ山水や菖蒲引 飴山實 『次の花』
初明り三島大社の枯山水 柴山つぐ子
古町の簷の山水秋の蝶 松村蒼石 寒鶯抄
夕だつやぬけてうしろはあたご山 水田正秀
大比叡の山水賜ひ作り滝 牧野春駒
天ぐさを洗ふ山水葭打てる 田中冬二 俳句拾遺
寒禽に山水音を断ちにけり 渡辺大年
寒葵枯山水の片隅に 小宮山政子
対峙して枯山水の寒暮なり 鈴木鷹夫 大津絵
小鳥来て枯山水のお庭なる 谷口忠男
屋根替や山水軒に迸り 富安風生
山水、一面の巌を立琴とする 荻原井泉水
山水でとぐ米白し林檎の花 細見綾子 雉子
山水にさす傘や秋の雨 長谷川かな女 雨 月
山水に凱歌を挙ぐる水芭蕉 高澤良一 燕音
山水に夏めく蕗の広葉かげ 飯田蛇笏
山水に夜を浸しある障子かな 松村蒼石 寒鶯抄
山水に射られ五月の郵便夫 宮坂静生 春の鹿
山水に竜胆涵り風雨やむ 飯田蛇笏 春蘭
山水に米を搗かせて昼寝哉 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
山水に蝌蚪流さるる千枚田 山口千代子
山水のいよいよ清し花曇り 飯田蛇笏 山廬集
山水のここにも光り山毛欅黄葉 内藤吐天 鳴海抄
山水のこぼれる葡萄の房置けば 吉田 晃
山水のこぽこぽと鳴る菜を洗ふ 木村蕪城 寒泉
山水のたたまれてゆく秋扇 西宮陽子
山水のつまづく音や秋隣 石田勝彦
山水のとどろきを身に巣立鳥 鷲谷七菜子
山水のはや力抜き初紅葉 内山せつ子
山水のひゞかふ町は辛夷どき(戊辰の桃月、伊豫松野町の芝不器男記念館開扉に招かれて) 飴山實 『次の花』
山水のひゞく紫白のあやめかな 日野草城
山水のゆたかにそそぐ雪の池 飯田蛇笏 春蘭
山水の一気に暮るる新松子 大澤ひろし
山水の乗りこえ乗りこえサイダー冷ゆ 窪田鱒多路
山水の切れず凍らず紙漉ける 百合山羽公 寒雁
山水の城へひとすぢ青木の実 和田ゑい子
山水の寺を貫き富貴草 大木あまり 火のいろに
山水の尽くることなき添水かな 山崎一之助
山水の新鋭そそぐ冷し瓜 上田五千石 風景
山水の涸れ~ながら玉走る 王城
山水の減るほど減りて氷かな 蕪村 冬之部 ■ 貧居八詠
山水の湧いて自然薯掘りにくし 田中烏鷺多
山水の澄めるを温泉に引きこみて 上村占魚 球磨
山水の町をつらぬくあきつかな 大嶽青児
山水の色染みやすく雉子の聲 古舘曹人 砂の音
山水の落ちくる池に菖蒲の芽 鈴鹿野風呂 浜木綿
山水の蕭条としてみそさゞい 田中寒楼
山水の迅きに洗ふ硯かな 大橋越央子
山水の迅きに負けず菜を洗ふ 大串章 百鳥
山水の音に四五人夏椿 岡井省二
山水は歯朶の下ゆき年立ちぬ 中島月笠
山水は澄み残心の梅の白 櫛原希伊子
山水やまだ初秋の香*(こうじゅ)散 句空 俳諧撰集「有磯海」
山水や鴨の羽いろにながれこむ 乙二
山水をかけし漆の祭笛 平畑静塔
山水を引きしわが家の新茶召せ 安原葉
山水を引きて五六戸糸蜻蛉 長谷川かな女 牡 丹
山水を引くこころあり冬籠 斉藤夏風
山水を裏から眺め扇風機 永末恵子 発色
山水激突し激突し青年のごと何も失わず 橋本夢道 良妻愚母
山水繚乱たり新芋生れけり 雑草 長谷川零餘子
年の夜や山水と星ひびきあひ 佐野美智
打水や端から乾く枯山水 酒向香代子
昼寝覚め枯山水をのぼる猫 川崎展宏
朗々と山水迅し谷の梅 吉武月二郎句集
朝寒の山水満つる木賊かな 中島月笠 月笠句集
村なかを山水奔る花すもも 荒井正隆
枯山水の石に紛るる秋の蝶 関森勝夫
枯山水ふとん打つ音の遠くより 木下ひでを
枯山水卯月あかりの木々やさし 河野南畦 湖の森
枯山水巌顱頂に露を置き 高澤良一 宿好
枯山水見て白息を肥しけり 百合山羽公 寒雁
枯山水風化すすむる鵙のこゑ 高澤良一 宿好
梨剥くや山水白砂を滲み出て 香西照雄 対話
水芭蕉山水くびれ流れけり 高澤良一 燕音
沙羅黄葉枯山水を明るくす 高見孝子
源流は共有の山水温む 右城順一
滝へ行く山水迅き通草かな 山口冬男
火祭や山水闇にほとばしり 富安風生
父亡き夜山水凍てて音絶えし 成瀬櫻桃子 風色
片陰や枯山水の半分に マブソン・青眼
田の跡を残す山水桃咲けり 内田芳子
田楽や山水走る妻の里 肥田埜勝美
白扇に山水くらしほととぎす 飯田蛇笏 山廬集
硯洗ふやりんりんと鳴る山水に 新田 豊
神の山水にうつらず水草生ふ 池田菟沙
空梅雨日々ひだりうちはの山水圖 塚本邦雄 甘露
突つぱつて走る山水五月来ぬ 鈴木真砂女
糸蜻蛉山水影をとどめざる 根岸善雄
紅葉山水先立てて人帰る 廣瀬直人
絨毯の山水渉る冬至の日 原田青児
耳の裏枯山水の奔り去る 角川源義
花寂びて日月山水屏風かな 長谷川櫂 古志
花楓枯山水に風抜けて 兜木總一
苔のぬくみは男のぬくみ枯山水 桂信子 黄 瀬
茶室までひびく山水 秋海棠 土田桂子
茸山水分神を祀りけり 中戸川朝人 星辰
草夕焼山水邑を落ちゆけり 千代田葛彦 旅人木
草虱暮れてゆく山水になる 松澤 昭
落合ひて山水澄みをたがへざる 上田五千石 琥珀
葱洗ふ山水濁りなかりけり 山口草堂
虫たべて蟇の山水呆けにけり 宇佐美魚目 秋収冬蔵
蜩や山水を引く山の坊 加古宗也
蝉銜へ枯山水を猫通る 関森勝夫
襖絵の山水を吹き盆の風 館岡沙緻
走り穂や山水畦にあふれつゝ 岸風三楼 往来
阿彌陀経山水鳥語蓬餅 黒田杏子 花下草上
雉鳴くや山水引きて菜を洗ふ 深海利代子
雪舟の山水のなか落葉焚く 長谷川櫂 蓬莱
鯉に引く山水ゆたか木の芽風 宗像夕野火
鱒飼へる山水澄みて木の芽雨 内藤吐天
●山焼
あかあかと山焼のさま金屏に 武藤紀子
あちら側の山を焼くらん雲明り 山焼 正岡子規
お山焼いたゞきの火となりにけり 森田峠
お山焼きしばし待つ間の焚火かな 森田敬之介
お山焼く僧六人の白頭巾 田村愛子
お山焼すみし麓に鹿遊ぶ 山下輝畝
お山焼ただじめじめとしてゐたり 佐々木元嗣
お山焼はるばる煙くさきかな 岸本尚毅 舜
お山焼下りて来し街にも匂ふ 西村正子
お山焼大仏殿もただならね 長谷川櫂 虚空
お山焼山の裏にも消防夫 奥野敏子
お山焼待つ人となく古都混める 桑田永子
お山焼日のべとなりし春疾風 高岡智照尼
お山焼果てしばかりの闇匂ふ 稲畑汀子 春光
お山焼果てたる寧楽は暗き街 杉山木川
お山焼火の奢りいて咎まれず 磯野充伯
お山焼火は頂を皆目指す 磯野充伯
お山焼築地塀割る松が照り 藤田三郎
お山焼見し目に繊き月ありぬ 稲畑汀子 春光
お山焼見し窓闇に置き変ふる 稲畑汀子 春光
お山焼贄のごとくに鹿が跳ね 行方克巳
ごうごうと山焼く末の世を焼くか 野澤節子
たっぷりと日を浴み山焼き前の萱 高澤良一 ぱらりとせ
のぼりゆく火に径のありお山焼 三輪満子
まづあがる飾焚く火やお山焼 森田峠 避暑散歩
みちのくの町暗くして山焼くる 遠藤梧逸
一社二寺司る火やお山焼 大橋敦子 匂 玉
三日三夜草山一つ焼にけり 山焼 正岡子規
三笠山焼けつつ月の上りけり 小城古鐘
中天の月の昏さよお山焼 船木朴堂
人を忘れさする一瞬よ山焼くる火に 細見綾子
伊豆の山焼くるを見つゝ船に寝る 内藤吐天
出て見れば南の山を焼きにけり 山焼 正岡子規
北上の岸辺に立てば山焼くる 遠藤梧逸
双塔を嵌めて遠見のお山焼 石黒まさを
反物は畳をころげお山焼き 大野朱香
吾もはためきて山焼く台上に 上野さち子
夕づゝの焦げんとすなるお山焼 由井艶子
夕餉の座おしだまり山焼けてゐる 金尾梅の門 古志の歌
大佛殿山焼の雲を負ひにけり 服部鹿頭矢
大由布の山焼く匂ひ水辺まで 栗田やすし
天平の火色となりぬお山焼 原 好郎
天界に焦すものなきお山焼 高石敏子
奈良山焼雨にひるみしまま終る 宮岡計次
奈良離る山焼の火の消えぬ間に 右城暮石 上下
奥人や山焼いて待つ上り鱒 廣江八重櫻
如月 ひとつ皓歯山焼くことを始めるか 宇多喜代子
宵々の窓ほのあかし山焼く火 夏目漱石 明治二十九年
山やくやどこから人の通ふらん 山焼 正岡子規
山を焼く火に近く我夜越ゆる 山焼 正岡子規
山焼いてきし眼にて吾を見る 出口 善子
山焼いて夜空つやもつ肥後の国 河野照子
山焼いて大和に真の闇の冷え 吉田靖子
山焼いて来し同窓生と酌める 中拓夫
山焼いて来し眼もて吾を見る 出口善子
山焼いて雨欲すれば雨のあり 喜谷六花
山焼かれなむ銃床に降る花粉 仁平勝 東京物語
山焼かれ行きどころなき天邪鬼 丸山嵐人
山焼きし匂ひがぬつと奈良の町 高畑浩平
山焼きし夜は玄界のとどろけり 三谷 和子
山焼きし火の匂ひせり頭陀袋 瀧澤伊代次
山焼きし者東京にいでにけり 萩原麦草 麦嵐
山焼きてより一片の雲もなし 中戸川朝人 星辰
山焼きて下りくる顔のゆるびけり 白岩 三郎
山焼きて仏けぶらす大和かな 西川織子
山焼きて雲のかゝらぬあした哉 山焼 正岡子規
山焼きのすみたる村に雪の降る 河原比佐於
山焼きの付け火ちょんちょん小走りに 高澤良一 ぱらりとせ
山焼きの火の躓ける岩場あり 石川薫
山焼きの火勢は闇を深くせり 小室ていこ
山焼きの灰のわらわら頬を打つ 高澤良一 ぱらりとせ
山焼きの炎の結び目に風生れ 鈴木とおる
山焼きの烟むらさきに捲きのぼる 石原八束 空の渚
山焼きの焔をさかおとす迅風かな(阿蘇にて三句) 石原八束 『空の渚』
山焼きの煤溜めて畝石まじり 中戸川朝人
山焼きの爺を鬼爺と思ひけり 山焼 正岡子規
山焼きの赤き火を見るこけしの目 加納染人
山焼きや無線合図に火を放つ 前橋春菜
山焼きや賽の河原へ火のびたり 山口誓子
山焼き了へ滅法暗し奈良の夜は 山下幸子
山焼くとばかりに空のほの赤き 正岡子規
山焼くと仏の庭の人ゆきゝ 中村三山
山焼くと裾の祠に禰宜まをす 大島牛後
山焼くに似て一冬の塵焼かる 村越化石 山國抄
山焼くやたむろ移りに鹿の影 内田 雅子
山焼くやひそめきいでし傍の山 芝不器男(1903-30)
山焼くや今宵爛たる飼鷲の眼 久米正雄 返り花
山焼くや夜はうつくしきしなの川 一茶
山焼くや秩父山の子鼻たれ子 月笠
山焼くや窓でながめて庭へ出て 古白遺稿 藤野古白
山焼くや胡蝶の羽のくすぶるか 山焼 正岡子規
山焼くや遠まなざしの埴輪の眼 角田双柿
山焼くよと門に彳む独言 山焼 正岡子規
山焼くる明りにまろき池塘かな 河野静雲 閻魔
山焼くる木の間明りに鹿と居る 土生静児
山焼く火うつりてはやき雲のあり 片岡 青苑
山焼く火かなしきまでに乙女の瞳 星野麦丘人
山焼く火すすみしあとに火のさざなみ 宮津昭彦
山焼く火夕ぐれ急ぐマントの子 角川源義
山焼く火将軍塚を囲みけり 宮下邦夫
山焼く火左に見えて路曲る 正岡子規
山焼く火桑の真闇に衰へぬ 水原秋桜子
山焼く火檜原に来ればまのあたり 秋櫻子
山焼く火熊襲の穴を燻しけり 徳留末雄
山焼く火見れば母焼く煙とも 福田蓼汀
山焼けに焼けのこりしを摘む茶かな 飯田蛇笏 山廬集
山焼けば狐のすなる飛火かな 河東碧梧桐
山焼けば鬼形の雲の天に在り 水原秋櫻子
山焼にゆきたる父を待つ子あり 石橋辰之助 山暦
山焼に始まる阿蘇の牧仕事 武藤和子
山焼に来よと賀状の隅にあり 柏 禎
山焼に煤けごころを払ひけり 高澤良一 ぱらりとせ
山焼に雑木林にたかぶりぬ 阿部みどり女
山焼のかの世を現じやまぬ火よ 井沢正江
山焼のけむり千丈富士立てり 堀口星眠
山焼のしだいにかげる空の沖 石原八束 空の渚
山焼のすみたる月のまどかなる 岸風三楼 往来
山焼のたんねんに刈る火切り道 朝妻 力
山焼のなぐれ煙や塔の尖 内田百間
山焼のはじまる闇をよぎる鹿 津川たけを
山焼のはじまる鹿を呼びにけり 岸風三樓
山焼のはじめの焔注連囲ひ 渋谷 澪
山焼のはじめは雲を見てゐたり 小泉八重子
山焼のはや衰へしところかな 岸風三楼 往来
山焼の一夜の紅蓮奈良に雪 野澤節子 『駿河蘭』
山焼の人出を前に土産店 久保五峰
山焼の匂ふ装束脱ぐ三和土 森本大樹
山焼の夜叉の火影のはしるかな 大橋敦子 匂 玉
山焼の明りに下る夜舟哉 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
山焼の果て夜を雪となりにけり 松尾緑富
山焼の柱に映つる庵かな 青々
山焼の火が山形りにとゞこほる 右城暮石 上下
山焼の火が我が顔も照らし出す 右城暮石 上下
山焼の火の連れ来たる恋心 藤田弥生
山焼の火勢鎮めの雨にほふ 山本照子
山焼の火種に下ろす藁の束 千須和蟻昼
山焼の火種引きずり走りけり 梶尾黙魚
山焼の灰かぶり来し仔馬かな 内藤吐天
山焼の灰の降り来る小駅かな 田中冬二 俳句拾遺
山焼の灰散りこめり一碧湖 伊藤芳子
山焼の炎に叫び翔ちゆくもの 黒谷忠
山焼の炎の降る旅程身は一つ 原裕 葦牙
山焼の焔は嶺を匐へり日輪も 石原八束 空の渚
山焼の煙の上の根なし雲 高浜虚子
山焼の煙は雲と逢ひにけり 小澤實
山焼の煤溜めて畝石まじり 中戸川朝人 星辰
山焼の燧袋も古りにけり 石井露月
山焼の眼の玉ふたつ燃え残り 徳弘純 麦のほとり 以後
山焼の茶屋に書きたる手紙かな 長谷川零余子
山焼の間際までゐる鹿を追ふ 山口超心鬼
山焼の闇を押しゆく炎かな 湯浅千加江
山焼の雄心たもつ幾日あり 沼尻巳津子
山焼の雨に終れば鯛蕪 角川春樹 夢殿
山焼の音谺せり大阿蘇に 高木あけみ
山焼の香に買ふ寧楽のみやげ墨 松島 利夫
山焼の麓に暗き伽藍かな 多田桜朶
山焼やかへり見すれば月すでに 岸風三楼 往来
山焼やほのかにたてる一ツ鹿 白雄
山焼や夜はうつくしきしなの川 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
山焼や岩の悲鳴がひた走る 笹本カホル
山焼や旅に暮れける西の京 和田祥子
山焼や火の刈萱を撒き散らし 長谷川櫂 天球
山焼や火焔太鼓の響きせり 武井与始子
山焼や礫のごとく鳥翔り 林八重子
山焼や賽の河原へ火のびたり 誓子
山焼イテ十日ノ市ヤ初蕨 蕨 正岡子規
峰の松に迫る火の瀬やお山焼 山田弘子 初期作品
弥勒寺の棟の左の山焼くる 河野静雲 閻魔
戎壇院辺りは静かお山焼 橋本道子
手をゆるくつなぎのぼれり山焼く火 高澤良一 ぱらりとせ
文藝は遠し山焼く火に育ち 寺山修司 花粉航海
旅は阿蘇山焼く頃とさそはるる 汀子
日暮来る山焼きの火のまだ残り 石川薫
星空のひろがる明日の山焼かん 宮中千秋
春の山やくやそこらに人もなし 山焼 正岡子規
春の山焼いたあとから笑ひけり 山焼 正岡子規
月の面へ飛びつく火の粉お山焼 山田弘子 懐
東大寺方より火の手お山焼 岩崎三栄
松に倚り山焼見るや人も来ず 西山泊雲 泊雲句集
残り火の星になりたるお山焼 吉村久子
残る雪煮ゆや山焼く火のひびき 高橋睦郎
水仙の群落に山焼くが見ゆ 松村蒼石 雪
湯の山も田上も焼くや雨近み 山焼 正岡子規
満月のうかと出でたるお山焼 今井妙子
火が鬩ぐ鶯御陵お山焼 河合佳代子
火の上に火の上に火のお山焼 蔦三郎
火の変化風に従ふお山焼 稲畑汀子 春光
火の帯が火をつつみゆくお山焼 朝妻力
火を追うてのぼる高張お山焼 下村非文
焔焔を呑んで大きく山焼く火 高澤良一 ぱらりとせ
焼山の大石ころりころりかな 山焼 正岡子規
燃えしぶる山焼の火を叱咤して 塩川雄三
瘤爺の山焼く火をぞ放ちけり 野村喜舟
神の火に万葉の山焼けるかな 田原憲治
竃の火燃えてをり山焼けてをり 楠目橙黄子 橙圃
花なき山焼木にせぬも郭公 井原西鶴
薄曇り隣の山を焼きにけり 山焼 正岡子規
薄月の山焼きに行く小路かな 山焼 正岡子規
薄月の山焼きに行く路遠み 山焼 正岡子規
襟立てて遠くに奈良のお山焼 倉田 健一
賀茂郡河津の庄に山焼く火 石塚友二
足もとに鹿の来てゐしお山焼 岸風三樓
遠くより美しかりしお山焼 山田一女
遠つ世の火色ひろげしお山焼 山田弘子 こぶし坂
遠山の焼くる火見えて夕淋し 山焼 正岡子規
闇よりも濃し山焼を了へし山 橋本美代子
雨ならん山を焼く火の広がりぬ 山焼 正岡子規
雨空にほつかりと山焼くるなり 臼田亞浪 定本亜浪句集
青丹よし奈良は影絵のお山焼 貞吉直子
頂上へ火の筋走るお山焼 滝沢伊代次
鴟尾光るうちは山焼始らず 吉村宵雨
鹿の目に地異天変のお山焼 三嶋隆英
鹿の眼に映る焔やお山焼 角田勝代
鹿の瞳に地異天変のお山焼 三嶋隆英
○山笑う
●雪山
あかつきの雪山の上星黄なり 長谷川かな女 雨 月
いつ見ても婆に雪山雪降りをり 中山純子 沙羅
いぬふぐり雪山は雲湧き立たせ 斎木直治
おほひなる雪山いま全盲 かがやくそらのもとにめしひたり 葛原妙子
おもおもと雪山の方餅搗く音 村越化石 山國抄
かへり見る雪山既に暮れゐたり 清崎敏郎(1922-99)
こたへなき雪山宙に労働歌 飯田蛇笏 雪峡
すれちがふ汽車の窓透き雪山あり 篠原梵
その墓に佇てば雪山鷽の舞ふ 黒田杏子 花下草上
たはやすく弾丸に撃たれて雪山をまろび落つる熊は映画に撮られぬ 半田良平
つく~と雪山近く歩きけり 星野立子
なお雪が降り雪山の羽毛みゆ 和知喜八 同齢
ふところに一枚の櫛雪山へ 岡本眸
ふるさとは雪山まろし父母在らず 成瀬櫻桃子 素心
わが一生(ひとよ)雪山つなぐ橋に揺れ 野沢節子 花季
わが生や夜も雪山に囲繞され 相馬遷子 雪嶺
一つ知る雪山の名を言ひにけり 綾部仁喜 樸簡
一歩前へ出て雪山をまのあたり 齋藤美規
人の許へ雪山たゝむ敦賀湾 細見綾子 花 季
人日の雪山ちかき父母の墓 石原舟月 山鵲
初蝶や雪山恍と雲の上 松村蒼石 露
北の星ばかり雪山背に迫り 中戸川朝人 残心
北へ走す雪山島に二タ並び 中戸川朝人 残心
吹き晴るる雪山の威の自ら 阿部みどり女 『微風』
吾子泣くか雪山かぎる杉一樹 角川源義
壁に身をする馬や雪山眼のあたり 金子兜太
夕日落つ雪山の裏は明るからん 岡田日郎
夜が来て雪山けもののごと横たふ 吉野義子
夜の明けてをらぬ雪山見えてをり 青葉三角草
天へ入りゆふべ雪山結晶す 岡田日郎
奥武蔵雪山ならぶ除夜の鐘 水原秋櫻子
小さき母雪山にながくながくあれよ 石橋辰之助 山暦
山開雪山讃歌もて了る 渡辺立男「蘆刈」
嶺の奥に雪山ありぬ薺摘み 飯田龍太
川の淵寂寥は雪山よりくるか 川島彷徨子 榛の木
川激ち雪山うつるところなし 早崎明
恋捨てに雪山に来しが笑ひ凍る 小林康治 玄霜
手あぶりや雪山くらき線となりぬ 林火
日象と雪山ふかく水かがみ 飯田蛇笏 雪峡
昏々と夜は雪山をおほひくる 石橋辰之助 山暦
月いでゝ雪山遠きすがたかな 飯田蛇笏 霊芝
月明りありて雪山くるゝかな 比叡 野村泊月
月稚し雪山照らす力なし 岡田日郎
朝焼けの雪山負へる町を過ぐ 篠原梵 雨
村人や雪山の威に恃み栖む 深川正一郎
桃の村雪山が見え鶏が鳴く 柴田白葉女 花寂び 以後
桑括ることぶれの雪山に見て 秋山幹生
梟に雪山星を加へけり 山下竹揺
極月や雪山星をいただきて 飯田蛇笏 山廬集
母の死や南風の雪山きほひたつ 金尾梅の門(古志)
水晶の数珠雪山にかげなき日 柴田白葉女 花寂び 以後
汽車来る雪山に音刻みつつ 相馬遷子 雪嶺
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
灯を消され雪山近み眠られず 村越化石 山國抄
産院を繞る雪山四温光 飯田蛇笏 椿花集
男山酒造雪山正面に 高澤良一 素抱
画家たらんおもひ雪山前にして 高澤良一 素抱
盆地黄に乾く雪山の中にして 相馬遷子 雪嶺
窯出しの雪山写シいかばかり(萩焼休雪白は水指にきはまり、口縁の景色まさに遠山の風趣なり) 飴山實 『次の花』
策無きに怒る雪山の中の妻 石橋辰之助
糧を喰ふ手もて雪山の闇はらふ 辰之助
練習機雪山にそひまはりくる 川島彷徨子 榛の木
美しき雪山の名のシンデレラ 京極杞陽
群りてゐる雪山を去りにけり 八木林之介 青霞集
翁舞国栖の雪山塀をなす 津田清子 二人称
英霊を雪山ふかく秘めし家 石橋辰之助 山暦
豆撒くや雪山ふかきかり住居 鎌野秀々
車輪すでに雪山がかる響かな 野澤節子 花 季
逃げ来しにあらず雪山あたゝかし 石橋辰之助
逢ひたさつのる夕ベの陽雪山に泌みる 人間を彫る 大橋裸木
遠天に雪山ほのと秋の暮 相馬遷子 山國
銀婚の旅雪山の虹に入り 影島智子
銃声の谺雪山無一物 長嶺千晶
闇とほく雪山おそふ風ゆける 石橋辰之助 山暦
降りて止む降りて止む雪山真白 岡田日郎
雁の声雪山は月に見えてか 佐野良太 樫
雛買うて杣雪山へ帰りけり 原石鼎
雪山こごりげんげ田の果に海光る 栗林一石路
雪山と寝起共にし疲れけり 阿部みどり女
雪山と立ち向ひたる身一つ 伊藤柏翠
雪山と降る白雪と消し合ひぬ 松本たかし
雪山と雪の日輪白きかな 阿部みどり女
雪山に 日のあたりたる 馬のいななき 富澤赤黄男
雪山になほ降る雲か垂れて来ぬ 篠原梵 雨
雪山にひとりの眠り沈みゆく 林翔 和紙
雪山にゆふべの月のまだ白く 上村占魚 球磨
雪山に一切埋めし心のはづ 相澤静思
雪山に一家はたらく日の英霊 石橋辰之助 山暦
雪山に会いたる痩木とその影と 寺田京子 日の鷹
雪山に何も求めず夕日消ゆ 飯田龍太 麓の人
雪山に噴く湯ゆたかに登別 清水寥人
雪山に大汗はばむしまき哉 中勘助
雪山に成層圏の蒼さ墜つ 松本詩葉子
雪山に日は入り行けり風吹けり 相馬遷子 山河
雪山に春が来てをり美しや 高木晴子 晴居
雪山に春のはじめの滝こだま 大野林火
雪山に春の夕焼滝をなす 飯田龍太 百戸の谿
雪山に春の川ある街住ひ 高木晴子 晴居
雪山に時計は遅々とすゝまざる 相馬遷子 山国
雪山に林相白を以て描き 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山に水ほとばしる寒の入り 飯田蛇笏 椿花集
雪山に汝を思へば海蒼し 相馬遷子 山国
雪山に沿ふてりんごの花街道 高澤良一 燕音
雪山に灯なき電気に雪が降る 金子兜太
雪山に照る日はなれて往きにけり 飯田蛇笏
雪山に父の樅の木鳥見えて 大井雅人 龍岡村
雪山に白樺の白やや汚れ 福田蓼汀 山火
雪山に籠り牛百の他は見ず 太田土男
雪山に英霊の供華あたらしき 石橋辰之助 山暦
雪山に路あり路を人行かず 相馬遷子 山國
雪山に還り英霊しづかなるや 石橋辰之助 山暦
雪山に野を界(かぎ)られて西行忌 橋本多佳子
雪山に野尻湖の碧沈めけり 橋本夢道
雪山に野鯉群れいて蜜の澄み 阿保恭子
雪山に雪の降り居る夕かな 前田普羅(1884-1954)
雪山に雪降り夜の力充つ 日下部宵三
雪山に雪降り重ね粥柱 陣内イサ子
雪山に雲のかゝりしことありぬ 今井杏太郎
雪山に頬ずりもして老いんかな 橋間石
雪山に頬削り来し男なり 野澤節子 黄 炎
雪山のあなた雪山麻を績む 文挟夫佐恵 雨 月
雪山のある日老髯のさるをがせ 古舘曹人 能登の蛙
雪山のいま樹々の闇青かりし 石橋辰之助 山暦
雪山のうしろにまはり遅日光 松村蒼石 寒鶯抄
雪山のおもてをはしる機影かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山のかがやき近き山になし 阿部みどり女
雪山のかへす光に鳥けもの 木村蕪城 寒泉
雪山のきららの雪の夜を透す 石原八束 空の渚
雪山のけさ鳴きたるは橿鳥か 長谷川櫂 天球
雪山のけぶらひひとりふたり帰化 松澤昭 山處
雪山のそびえ幽らみて夜の天 飯田蛇笏 雪峡
雪山のたそがれにこそあこがるる 松澤昭 面白
雪山のどこも動かず花にほふ 飯田龍太(1920-)
雪山のどのみちをくる雪女郎 森澄雄
雪山のどの墓もどの墓も村へ向く 相馬遷子 雪嶺
雪山ののぞける街の羽子日和 上村占魚 球磨
雪山のひかりのこれりかの夜空 石橋辰之助 山暦
雪山のひと日のうるみ青烏 野澤節子 黄 炎
雪山のふもとの伏家初かまど 飯田蛇笏 春蘭
雪山のまなざしのなか白鳥湖 細見綾子
雪山のみな木かげして音絶えき 飯田蛇笏 雪峡
雪山のむらさきに出す凍豆腐 平沢洲石
雪山のむらたつ故園日のはじめ 飯田蛇笏 春蘭
雪山のゑぐれし襞に霧たてばただよふ如し愛といふこと 五島茂
雪山のラッセル深し膝でこぐ 矢我崎和子
雪山の今日の輝き明日ありや 阿部みどり女
雪山の冠りみだるる風の星 飯田蛇笏 雪峡
雪山の初明りして狐罠 小坂順子
雪山の名を言ふ春の渚かな 山本洋子
雪山の向うの夜火事母なき妻 金子兜太(1919-)
雪山の堂断食の僧一人 伊藤柏翠
雪山の夕かげふみて猟の幸 飯田蛇笏 春蘭
雪山の夕しづかさのせまりけり 橋本鶏二 年輪
雪山の夕べかげりて噴く煙 石原八束 空の渚
雪山の夕日に溶けて鳩の道 阿部みどり女
雪山の夜ぞねがふべきいのち忘れ 石橋辰之助 山暦
雪山の夜も聳えをり近松忌 森澄雄
雪山の大白妙に初烏 田村木国
雪山の奥に雪山白子汁 長田喜代子
雪山の岩肌をかく爪掻きし 八木林之介 青霞集
雪山の左右に揺るる歩みかな 上野泰 佐介
雪山の底なる利根の細りけり 草間時彦
雪山の後ろにまはり遅日光 松村蒼石 寒鶯抄
雪山の斑や友情にひゞ生ず 上田五千石 田園
雪山の斑や近き者愛す 岸貞男
雪山の旭にひとざとの鶫かな 松村蒼石 寒鶯抄
雪山の昏るるゆとりに鳴る瀬かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山の星座を数ふ指で衝き 橋本美代子
雪山の星見いでたし猿啼く 松村蒼石 雪
雪山の昼も夜も寝て杉丸太 吉田紫乃
雪山の朝日に顔のちから抜く 飯田龍太
雪山の朝日英霊にわかれ浴びぬ 石橋辰之助 山暦
雪山の照り楪も橙も 森澄雄
雪山の眺めに桑のあをみけり 松村蒼石 露
雪山の端が輝き奴凧 阿部みどり女
雪山の繊翳もなく日のはじめ 飯田蛇笏 椿花集
雪山の羞らひの白村が見え 齊藤美規
雪山の聞きたる儘に現れし 京極杞陽 くくたち下巻
雪山の肌より顕るる岳かんば 関本テル
雪山の荒膚仰ぐ針供養 堀口星眠
雪山の虚ろに炎立つランプ小屋 原裕 青垣
雪山の襞ぎつしりと青年期 木村敏男
雪山の遠さ発止ととどめたる 松澤昭
雪山の重なる奥の白さかな 五十嵐春男
雪山の闇たゞ闇にすがりゆく 石橋辰之助 山暦
雪山の闇夜をおもふ白か黒か 正木ゆう子
雪山の障子をひらきたるかたち 齊藤美規
雪山の雪の歇み間の一つ星(土合) 殿村菟絲子 『繪硝子』
雪山の雪の立錐皆檜 橋本鶏二
雪山の雲に入りてよりながし 阿部みどり女 『雪嶺』
雪山の風来るまでにちかづきぬ 篠原梵 雨
雪山の風樹孤島の濤と聴き 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山の鳥の音は目をさそふなり 大串章
雪山の鷽が来てをり春祭 加藤岳雄
雪山の麓の山毛欅の疎林かな 京極杞陽 くくたち上巻
雪山はうしろに聳ゆ花御堂 露月句集 石井露月
雪山はゆつくり霞むかいつむり 岡井省二
雪山は人の棲まざる淋しさあり 岡田日郎
雪山は晴れて港の船往来 高濱年尾 年尾句集
雪山は月よりくらし貌さびし 前田普羅 飛騨紬
雪山は雲にかくれて梅匂ふ 大熊輝一 土の香
雪山へ共に快癒を祈るかな 阿部みどり女
雪山へ向ふ人数恃まるる 山田弘子 螢川
雪山へ狐の駈けし跡いきいき 大野林火
雪山へ眼遊ばす絵付工 羽部洞然
雪山へ鉄路消えゆく建国日 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
雪山へ顔上げつづけ一人旅 細見綾子 黄 炎
雪山みゆるこの坂いつも埃まく 川島彷徨子 榛の木
雪山も雪なき山も似し高さ 稲畑汀子 汀子句集
雪山や頻りに動く竹数竿 島村元句集
雪山や駅には駅の煙立ち 京極杞陽 くくたち下巻
雪山をのしのし匍へる鯰雲 宮坂静生 春の鹿
雪山をはなれてたまる寒の闇 飯田龍太 山の木
雪山をはひまはりゐるこだまかな 飯田蛇笏
雪山をはるけく来つる炭売女 飯田蛇笏 雪峡
雪山をへだてて見ゆる炭山疲れ 齋藤玄 『無畔』
雪山をまぢかに見つゝ通勤す 上村占魚 鮎
雪山をみせて月出ぬ古かかし 飯田蛇笏 山廬集
雪山をゆく日とどまるすべもなし 飯田蛇笏 椿花集
雪山を匍ひまはりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪山を匐ひまはりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪山を夜目にポールをまはすなり 中村汀女
雪山を奔りきし水口漱ぐ 長谷川櫂 虚空
雪山を宙にひくめて年新た 飯田蛇笏 雪峡
雪山を容れて伽藍の大庇 伊藤柏翠
雪山を寒きところと仰ぐばかり 高柳重信
雪山を流れて水の炎となれる 原裕 葦牙
雪山を灼く月光に馬睡る 飯田龍太 童眸
雪山を畏みてをり源義忌 吉田鴻司
雪山を背にし枯れ山貧窮す 吉田嘉彦
雪山を背に立つ国境歩哨兵 深田久彌 九山句集
雪山を見てきし故に山見つゝ 京極杞陽
雪山を越えて彼方へ空むなし 相馬遷子 雪嶺
雪山を近く林檎の咲き潤ふ 長谷川かな女 雨 月
雪山幾重まさしく北にポーラリス 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山想う心音は軽い音楽 一ノ瀬タカ子
雪山暮るゝや天青きまゝ月ほの~ 楠目橙黄子 橙圃
雪山滑り降り人住むドア汚る 中山純子 茜
雪山真向ひもり上がりをる膝の継 川口重美
雪山背にバレーのごとき白孔雀 加藤知世子 黄 炎
雪沓でゆく雪山の発電所 和知喜八
電線のたるみが大事雪山へ 林 庄一
霜日輪雪山の秀をつつむなり 松村蒼石 春霰
青春なかば雪山並ぶ暗さ知りぬ 岡田日郎
頂ならぶ越の雪山きのこ取り 川崎展宏
風が棲む雪山の裾初荷行く 相馬遷子 雪嶺
鳶ないて雪山空に暮れかぬる 梅の門
●霊山
冬を力耕霊山のほとりにて 上田五千石
冬木越し霊山に拠る町点る 宮津昭彦
湧きつづく霊山の霧無尽蔵 山口超心鬼
爾霊山のひまわり種のこげ臭し 千葉幸江
種浸しあり霊山の雪解水 松井利彦
霊山に鴨が来てをり木魚鳴る 山口超心鬼
霊山の威儀を庇に大根干す 遠藤梧逸
霊山の峡の常山木に正午の日 飯田蛇笏 椿花集
霊山の巌打ちて霊山の滝 岬雪夫
霊山の胸突く磴に山法師 角田太一
霊山の隣の山も風光る 亀田俊美
霊山の風吹きおろすホップ摘む 太田嗟
霊山へ木深く逃げし鶉かな 西山泊雲 泊雲句集
霊山や昼寐の鼾雲起る 子規句集 虚子・碧梧桐選
霊山や昼寝の鼾雲起る 昼寝 正岡子規
霊山を仰ぐ夜の果て雪の降る 飯田蛇笏 椿花集
霧剥がれゆく霊山の鳥兜 太田嗟
●霊峰
春嵐去りて霊峰煌めけり 吉井竹志
法螺の音の絶えぬ霊峰山開き 高橋美智子(蘇鉄)
火口湖を発ち霊峰へ鷹消ゆる 脇本澄子
血曼荼羅蔵し霊峰もみいづる 澤井洋子
連山のいづれ霊峰冬の霧 松本糸生
雉子笛に霊峰谺かへしけり 小森都之雨
霊峰に足踏み入れし秋の風 栗田希代子
霊峰の明け放たれし初御空 藤田つとむ
霊峰の風を五色に秋立てり 吉原文音
霊峰をのせ動かざる秋の雲 久保善男
鷹柱霊峰富士をみはるかす 三枝青雲
●連山
くろもじの花連山を忘れ咲く 友岡子郷 未草
とんぼうの空の弾力その連山 阿保恭子
どどーんと轟く連山猟期入る 藤田真寛
はるかには日高連山馬肥ゆる 辛順子
まんさくや暁の連山刃めき 柴田紫水
冬近き連山屋上の水を飲む 桜井博道 海上
初富士や連山抜けて宙に浮く 井手切子
合歓の花箱根連山けむりをり 森永 奈美
名残雪九重連山明け渡る 藤田岳人
向日葵の百の素顔と阿蘇連山 高澤良一 鳩信
地ビールや阿蘇の連山昏れかかる 中村温子
大寒の穂高連山総立ちす 近藤英江
山笑ひ出して連山総笑ひ 塩川雄三
日は一輪雪の連山耀かす 伊東宏晃
日蓮忌甲斐連山の晴れ渡り 大村峰子
暮れのこる連山雛の間を灯す 田辺博充
朝凪や鶴見連山雲を被て 河野恭二
柿盗む枝に連山晴れすぎて 長谷川かな女
棕櫚剥ぐや連山風をふところに 小倉緑村
河骨を連山かこむ国に来し 大峯あきら 鳥道
炉によつて連山あかし橇の酔 飯田蛇笏 霊芝
瑠璃鳥澄める連山の夜をはがしつつ 宇咲冬男
白菜を抱いて連山呼び捨てに 隈元拓夫
白鳥の引きて連山動きそむ 小松原みや子
知床の連山望み砕氷船 渡辺酔美
稲刈るや連山四顧の秋濶し 金剛纂(麥南小句) 西島麥南、飯田蛇笏選
紅葉連山赤蕪掘りが働ける 和知喜八 同齢
紫に箱根連山暮の春 河野美奇
縒りかけて一気に綯へり牛蒡注連 山本とく江
芋の露連山影を正うす 飯田蛇笏 霊芝
茶の花や秩父連山雲深し 青峰集 島田青峰
葱の剣秩父連山低くして 矢作 至
蝌蚪の紐連山雲を放ちけり 川崎陽子
連山に雪の鞍おく青き夜 吉川昌子
連山のいづれ霊峰冬の霧 松本糸生
連山のかすみ青しや空を反射 八牧美喜子
連山の一気に近し野分あと 秋吉かずみ
連山の夜気の冷せし桃を食ぶ 関森勝夫
連山の肩組み合うて笑ふなる 本井英
連山の輪にとざされて日雀かな 柚木紀子
連山を北へ曳きつつ残る花 飯野榮儒
連山を引きよせている蛇笏の忌 槙 宗久
連山を蛇笏とおもふ袋掛 梅田津(銀化)
連山を踏みにふむなり稲扱機 山口誓子
雁のあと連山岩をそばだてゝ 相馬遷子 山国
雪の連山見つつチョークの粉払ふ 森田公司
雪を被て連山統べる伊吹山 藤田真木子
雪止みて墨絵の屏風伊賀連山 田中義明
雪虫や連山藍を重ね合ふ 菅原多つを
●連峰
アルプスの連峰指呼にりんご狩 長谷部八重子
八岳連峯展け冬晴れの詣で道(諏訪神社) 内藤吐天
初茜阿蘇連峰をそめにけり 松永如峰
残雪の吾妻連峰桑ほどく 鈴鹿野風呂 浜木綿
残雪の連峰しずかに沖さがす 対馬康子 愛国
白馬連峰雲をとどめず天高し 柴田茫洋
秋桜連峯よべに雪着たり 金尾梅の門 古志の歌
立山連峰極月の月の下 野中亮介
籠枕編むや連峰雲の中 大島民郎
蓮根掘る鈴鹿連峰靄の中 佐竹幸子
連峯に月抛りあげ芋煮会 高井北杜
連峯のしのゝめ鷹を見失ふ 及川貞
連峯や匂ふ日の出のうろこ雲 及川貞
連峯や松蟲草は夕風に 及川貞 夕焼
連峰に雪来しを知る目の痛み 西浦一滴
連峰の雪日ごと見て濃山吹 松村蒼石 雁
連峰の高嶺々々に夏の雲 高浜虚子
連峰へ辛夷ほつほつ塩の道 栗原澄子
連峰を屏風びらきに桜かな 鷹羽狩行
連峰残雪いまだほどかぬしつけ糸 対馬康子 吾亦紅
雪連峰摩周湖の蒼引立てて 加藤純子

以上

by 575fudemakase | 2022-05-22 15:14 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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