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石橋秀野

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       (大阪の俳人たち 5 和泉書院 1998年6月10日より)

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石橋秀野のこと

石橋秀野

 ふるさと
山ごもる大和は遠し目刺食す(句文集『桜濃く』昭和14年作)
母と子に影冷えて来し風車(句文集『桜濃く』昭和21年作)
 流離
はるけくも蘆まの雪に照る日かな(句文集『桜濃く』昭和21年作)
 家人に
短夜の看とり給ふも縁かな(句文集『桜濃く』昭和22年作)
 七月廿一日入院
蝉時雨児は搬送車に追ひつけず(句文集『桜濃く』昭和22年作)

句文集『桜濃く』は
木犀にとほき潮のみちにけり
秋出水草の茎みな赤きまゝ
石垣につる草青き小春かな
にはじまる。

句文集の題名は〈桜濃くジンタかするゝ夜空あり〉による。

 「やとな」てふなりあひありて
あつき夜をのゝしりいそぐ女かな (随筆山ぎはゝ時雨)
うとましき貌みられけり花づかれ(随筆ほのぼのとした言葉)
小夜時雨枢おとして格子うち(随筆春寒)

風花に紺のまひとぶ染場かな
凍鶴に忽然と日の流れけり
 ふるさと
山ごもる大和は遠し目刺食す
寒鳥の柔毛しろきがとびさりぬ
不動明王女われゐて秋まひる

 淀橋病院にて
乳しぼり捨てゝ吹雪となりゐたり
父母の杞憂はてなく吹雪鳴る

つゝじ燃ゆ吾子に與へん腕かな
 安見子生まれて十ヶ月餘となる
その子いま蜜柑投ぐるよ何を言はん
 安見子満一年となる
寒に堪へ飢に生きし命あり

古漬や大和国中別霜
草ひけばお指に風や夏ちかし
 波郷氏出征
征く君に熱き新酒とおぼえけり
汗ばみて指美しや野蒜籠

青葡萄香水消ゆる扉のほとり

 安見子肺浸潤を病む二句
牛乳買ふと山坂こえぬ虹の橋
甚平のよその児にゆく眼かな
 疎開者として
八朔の温泉にはよそものゝ母子かな

師走某日、この日判決の下りたる島根県廳焼打事件の被告達の家族、徒歩にて刑務所に帰る被告を目送のため裁判所横の電柱の陰にたたずめるに行きあひて 三句
編笠に須臾の冬日の燃えにけり
冷さの手錠にとざす腕かな
凍雪や甲斐なき言をうしろ影

 船上山麓にて
風花やかなしびふるき山の形

火桶抱けば隠岐へ通ひの夜船かな
烏賊噛めば隠岐や吹雪と暮るゝらん
風花や傘に渋刷く小手のさき
起きてゐる咳や深雪となりにけり
 流離
はるけくも蘆まの雪に照る日かな
立春の雪のふかさよ手鞠唄
一汁や春菜盛りて淡々し
冴えかへる伯耆にあれば春寒し
彌生盡烏賊が墨吐くはしりもと
ああ五粒ほど購ひて
柿若葉くちはた濡れて稚児よろし
母と子に影冷えて来し風車

放吟や高校生に春の泥
白魚にすゞしさの眼のありにけり
春蝉に昼三日月のたしかさよ
啓蟄の蜥蜴毛虫に木影かな
 山陰にて
旅なれや花に寒しと書くばかり
子を守るや雨のあなたのメーデー歌
一椀の珈琲のぬくみ春くるゝ
 句評を乞はるるに
ちび筆に俳諧うとし春の風邪
あそびの輪ぬけし一人に陽炎へる

 戸障子さへとゝのはぬに
ひとの家のぞきこみゆく墓参
 一年ぶりにともかく我家と名づくものを持ちて
三尺の窓に釘さすひるねかな
曼珠沙華獣骨舎利を置く磧

 鳴滝といふに一時の宿りを得て
斑猫や松美しく京の終(はて)
平安の后妃の墓に朝の虹
京わらべ三尺帯に扇子かな
みなそこに珠めいて石蛇わたる
曼珠沙華消えてしまひし野面かな
 大和路に入る
陵は早稲の香りの故郷かな
 東大寺
鐘鳴れば秋はなやかに傘のうち
白芙蓉しだいに灯戀はれけり
 橋本多佳子夫人とありて
別れ蚊帳老うつくしきあしたかな
 奈良公園にて古屋ひでを氏を探し得たり
樹下半跏即ち句なり秋の蝶
 南都三月堂
ひやゝかや日月古りし菩薩たち
 九月廿日陽明文庫に折口信夫先生を迎へて
かなかなや緋の毛氈に茶をたまふ
 僧顕正氏の心づくしに
栗ぎんなんまろべばたのし京にゐて

 木屋町
鳥渡るをみなあるじの露地ばかり
破れ足袋やはたと夜の階のぼりゆく
人の家にまゝごとじみて莖の石
小夜時雨枢おとして格子うち

 自嘲
あかゞりや飯欲り哭けば猿の貌
納豆に飯ふき啖ふ松の内
春炬燵あすのもの食ふ夫婦かな

 からたち邸
林泉や冬に入る蚊の縞さやに
冬めくやこゝろ素直に朝梳毛
子や待たん初買物の飴幾顆
寒念佛廓へかゝる橋ふたつ
京も終(はて)霜やけ薬貝に盛る

卯の花腐し寝嵩うすれてゆくばかり
緑なす松や金欲し命欲し
裸子をひとり得しのみ禮拝す
子を離す話や土用せまりけり
西日照り命無惨にありにけり
大夕焼消えなば夫の帰るべし
火のような月の出花火打ち終る
 家人に
短夜の看とり給ふも縁かな
とびからす病者に啼いて梅雨寒し
春暁の我が吐くものゝ光澄む
夏近し髯膚の寝汗拭(のご)ひ得ず
 病中子を省みず自嘲
衣更鼻たれ餓鬼のよく育つ
 病みて百日近し
男手に瓜揉親子三人かな
大夕焼悪寒に鳴らす歯二十枚
夏の月肺壊えつゝも眠るなる
 七月廿一日入院
蝉時雨児は擔送車に追ひつけず

石橋秀野 京都宇多野療養所で死す(三十八歳)

鳥が鳴く吾妻秋草戀ひ泣きし 健吉
柿若葉雨懐かしき京なまり 逢吉
在りし日のなほあるごとし彼岸花 清水崑
くれなゐの座布団一つ余りけり 友二

以上
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by 575fudemakase | 2022-05-30 15:48 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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