人気ブログランキング | 話題のタグを見る

子供 類語関連語(例句)

子供 類語関連語(例句)

●愛児●愛嬢●愛息●吾子●遺児●愛し子●園児●幼子●鬼子●女子●男子●御曹司●隠し子●愚息●孤児●子供●里子●子女●私生児●子息●捨て子●倅●双生児●惣領●稚児●嫡子●長子●寵児●連れ子●父無し子●童子●豚児●二世●箱入り娘●初子●末子●秘蔵っ子●一粒種●独り子●一人っ子●双子●愛娘●継子●水子●息子●娘御●申し子●貰い子●嬰●養子●落胤●令嬢●忘れ形見●童●幼年期●学童●童女●児童●幼児●小児●わらべ●わらし●をさな


●愛児 
ひかりと鳥ガチガチぶつかり愛児泣く 谷 佳紀
霧に立ち敢へて愛児を抱かざりし 瀧春一 菜園
●愛嬢
●愛息
●吾子 
あたたかや二人の吾子を分け通る 中村草田男
あはれ吾子母病む蚊帳の外に泣き 五十嵐八重子
ある冬の隕石吾子の前歯抜け 山内崇弘
いつも藷あり手足大きく吾子育つ 大熊輝一 土の香
いぬふぐりかゞやく言葉吾子はもつ 望月たかし
かなしくも成人の吾子ひるがへり 岸田稚魚 筍流し
かびるもの黴び吾子の瞳の澄みにけり 深見けん二
かまつかはも少し燃えよ吾子かへる 及川貞 夕焼
がちやがちややこはさぬように吾子の夢 満田春日
きのふ見しかりがね吾子の綴方に 瀧春一 菜園
きようだいの吾子の写真をおき十等飯食う 橋本夢道 無礼なる妻
けろり寝落つ蛙にはしやぎゐし吾子は 大熊輝一 土の香
こがね虫みじろがざれば吾子もまた 加倉井秋を 『胡桃』
ここにまた吾子の鉛筆日脚のぶ 中村汀女
こでまりの花咲き吾子が駈け戻る 大町糺
さくらさくら爪の先まで生きて吾子 中村明子
さそり座を憶えし吾子に星流れ 稲畑汀子 汀子句集
しぐれの跡泥の靴あと吾子病むや 古沢太穂 古沢太穂句集
すぐ吾子とわかる夏帽降りて来し 稲畑汀子
せがまれしさかだち吾子と裸なり 目迫秩父
その中に羽子つく吾子の声澄めり 杉田久女
その頃の吾子によく似し日焼子よ 西村和子 かりそめならず
そよぐ髪吾子も少女や芥子の花 稲岡長
たけくらぶ吾子はあらずよ今年竹 角川源義 『冬の虹』
たのもしき発句の医(くすし)や吾子種痘(片山郷邨氏に) 『定本石橋秀野句文集』
つなぐ手を吾子からほどく花野中 井上真実
つばくらめ父を忘れて吾子伸びよ 石田波郷
つひに冷え冷えかたまりし吾子の顔 川島彷徨子 榛の木
つゝじ燃ゆ吾子に与へん腕かな 『定本石橋秀野句文集』
なぜ死にしと吾子叱りゐる霜夜かな 岡部六弥太
な泣きそと拭へば胼や吾子の頬 杉田久女
ねずみ花火逃足早き吾子を追ふ 神山幸子
のけぞれば吾が見えたる吾子に南風 草田男
ひまはりの陽にもゆ吾子に生れけり 玉城一香
ひよろ長き吾子の下校や雷伴れて 鳥居おさむ
ぶんぶんが怖かりし日を吾子に見つ 林原耒井 蜩
またい征く吾子よ爐辺に夜を惜しむ 及川貞 夕焼
まづ部屋に灯を入れ吾子の魂迎ふ 角川源義 『冬の虹』
まろび寝の瞳は蜂を追ひ吾子を追ひ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
みちのくの旅信を吾子に子供の日 向野楠葉
みん~の鳴きかわりあゝ吾子の声 杉山岳陽 晩婚
むしろ爽やか麻酔効きくる吾子の眉 鈴木鷹夫 渚通り
ものの芽や吾子の胎動ひしと抱く 田尻史朗
やがて吾子睡りし後を茶立虫 杉山岳陽 晩婚
やはらかき吾子の匂ひや春の風 山崎貴子
やゝ叱りすぎたる吾子の蒲団敷く 大谷展生
ゆらゆらと吾子歩きをり新入生 下田 昭
よろこびて吾子のまつはる風邪休み 金子 潮
われを囚ふ葉柳と吾子の妙齢と 下村槐太 天涯
ゐのこづち溺るゝごとく吾子転ぶ 西村弥生
アカンサス穂に出づ吾子よ職に慣れよ 藤浦道代
アルミ貨大切吾子と掻きたる雪より出づ 磯貝碧蹄館 握手
オーバーに出際に抱きし吾子の毳 篠原梵
カーテンの隙の春暁吾子と覚む 上野さち子
クリスマス二人の吾子のサンタなり 小林好美
コスモスにのりいれ吾子の乳母車 加藤三七子
コスモスの再び咲けり吾子癒えず 阿部みどり女
サイパンに生き残れりと思はねば今宵は繁に吾子ししぬばゆ 半田良平
シクラメン翻り咲き吾子歩む 岡田貞峰
シャボン玉吾子も吹き裂くまで吹く性 川口重美
ジギタリス吾子の背丈に咲きのぼる 稲畑広太郎
スケートの群に吾子をり常に見ゆ 手島 靖一
スケートリンク中央にして吾子の咲く 毛塚静枝
タ焼や吾子の笑顔のよごれたる 日野草城
デモの列に吾子はあらずや旱梅雨 角川源義
ドイツより写真の吾子のサングラス 奈良文夫
ナイターの凱歌の渦に吾子も居む 千手 和子
ネクタイは自分で選び吾子の春 高橋笛美
ハンモックの吾子冬の日が桐の木に 中山純子 沙羅
ボート漕ぐ少年吾子の櫂かるし 清水基吉
マフラーの尾を曳き寄せて吾子を抱く 上田日差子
ムクリ・コクリ来るぞ夜涼を吾子寝しや 太田土男
メーデーの旗風のなか吾子癒えよ 赤城さかえ句集
ラベンダー咲かせりかの地に吾子在れば 平井さち子 鷹日和
ランドセル咳込む吾子の背に重く 稲畑汀子 汀子句集
リラの夜のほと~吾子の長電話 金田あさ子
レコードかけ雪焼吾子の喉ぼとけ 河野南畦 『風の岬』
一室を吾子と等分小鳥来る 上田日差子
一樹なき小学校に吾子入れぬ 石田波郷
一落花追ひくる吾子は死にし筈 香西照雄 素心
七十の吾子と鮎釣る酒断ちて 野原春醪(海坂)
七夕の色紙と吾子とちらばれる 軽部烏帽子 [しどみ]の花
七文半の吾子の白い足袋にあした正月がくる 橋本夢道 無禮なる妻抄
万緑の中や吾子の歯生え初むる 草田男
三越で吾子の名前で姪へ雛 京極杞陽 くくたち上巻
三輪車土筆踏む吾子誕生日 倉橋羊村
不器用に願の糸を結ぶ吾子 稲畑廣太郎
並べある木の実に吾子の心思ふ 高濱虚子
並みて行く吾子の若者ころもがヘ 及川貞 夕焼
主よ主よと言へるのが吾子聖夜劇 今瀬剛一
乳さがす吾子の口もと水仙花 神山妙子
乳房張り吾子の昼寝のまだ覚めず 山崎貴子
二日もう吾子を叱つてしまひけり 白根純子
五六歩を歩く自信の吾子に夏 稲畑汀子 汀子句集
五月来ぬ肩組むことを吾子もする 加倉井秋を 午後の窓
五月雨や疳高ち寝らぬ汝は吾子か 石塚友二 光塵
亡き吾子に今年の虫のしげく鳴く 高木晴子 晴居
亡き吾子のまぼろしのこゑ耳をうつ蜻蛉を追ひて幼ならゆけば 木俣修
亡き吾子の墓のどんぐり拾ひけり 遠藤千賀子
亡き吾子の飾るすべなき雛かな 高木晴子 晴居
亡き吾子を背に負ふごときおもひして涅槃の像の前にかがみぬ 木俣修
亡き夫に似て来し吾子と年酒酌む 小川順子
人死なせ来し医師寒し吾子を診(み)る 竹下しづの女句文集 昭和十五年
人波に吾子さしあげ初詣 為成菖蒲園
今年より吾子の硯のありて洗ふ 能村登四郎
今見る銀河吾子生るゝ夜も掲ぐるか 杉山岳陽 晩婚
介護して菖蒲を結びくれし吾子 市川春蘭
仔雀と吾子とかなしき声張るや 太田鴻村 穂国
仮名のみの手紙吾子より鵙の晴 高橋馬相 秋山越
保育器の吾子にあてがふ菊枕 小橋里水
信ねど秋嶺どこかに吾子居るかと 福田蓼汀 秋風挽歌
健かな吾子と相見る登山駅 杉田久女
傘さして吾子を身籠る雪の果 長谷川櫂 古志
入学の吾子の頭青く後前す 石川桂郎 含羞
入学の吾子の髪なり父が刈る 石川桂郎 含羞
入学の吾子人前に押し出だす 石川桂郎(1909-75)
入学の長身の吾子ふとまぶし 畠中じゆん
入學の吾子の頭青く後前す 石川桂郎
八月の山中なれば吾子とゐる 松尾隆信
公園の砂場に吾子と赤とんぼ 米倉ミチル
冬すみれ吾子に聖句を口うつし 長田等
冬の日の眩しと吾子や病めるなり 石塚友二 光塵
冬の日や血潮の温し吾子の肌 寺澤 始
冬呆と指を噛みゐる子が吾子か 石橋辰之助
冬哀し吾子のセーター着ることも 中村祐子
冬座敷吾子寝てばかり寒むげなき 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
冬枯や笹にまぎれて吾子が墓 太田鴻村
冬灯蹴つ飛ばし吾子生れけり 上野泰 佐介
冬芽満つ涙ふかざる吾子の意志 平子 公一
冬薔薇咲くや海越え来し吾子に 羽部洞然
冬靄にぬくもり戻る吾子ほめられ 能村登四郎 枯野の沖
凍返る星ほろ~と吾子生る 佐藤賢一
出迎への吾子光り風光りけり 小川竜雄
切貼りの妻のうしろに吾子を抱く 杉山岳陽 晩婚
初夢もなく寝揃ひの吾子ふたり 岳陽
初盆のふたりの吾子に黄のトマト 田村了咲
初詣吾子とかぞえる石だたみ 北見亮市
初郭公吾子住むゆゑに故郷といふ 平井さち子 鷹日和
初霜やガラス隔てて吾子と会ふ 高橋悦男
初風呂や吾子の小さき力瘤 井出真理子
初風呂や花束のごと吾子を抱き 稲田眸子
制叱迦は吾子の年ごろ野菊濃し 大岳水一路
勿忘草蒔けり女子寮に吾子を入れ 堀口星眠 営巣期
包むものばかりの玉菜吾子は亡し 香西照雄 素心
北上の冬の野ばらを吾子とせむ 栗林千津
匙見れば口あく吾子や麦の秋 村井正子
十五夜の吾が影とゞく吾子の床 杉山岳陽 晩婚
卒業の吾子の矢絣飛ぶごとく 藤田湘子
卒業の素顔の吾子をよしと見き 鈴木しげを
卒業の花抱く吾子と並みゆけり 村上 光子
卒業歌青き吾子の頭見当りぬ 石川桂郎 含羞
南天の真紅撒きしは鵯か吾子か 堀口星眠 営巣期
南瓜汚れの顔のまま吾子人前に 大熊輝一 土の香
口に指立てて邯鄲吾子と聞く 石川桂郎 高蘆
叱りたる吾子の宵寝に焚く蚊遣 永野由美子
合格の吾子迎へて灯は田々に 久米正雄 返り花
合歓もまづ稚葉が眠る吾子よ眠れ 香西照雄 対話
同じ汗掻いて吾子にはなき疲れ 浅利恵子
向日葵大輪仰ぎ尻餅つく吾子よ 太田土男
吸入の吾子ほめられてゐて必死 槫沼清子
吹きたまる落葉の墓や吾子いかに 角川源義 『西行の日』
吾が性と同じ吾子見て端居して 高木晴子 晴居
吾をよぶ吾子は鶲をもろの手に 軽部烏帽子 [しどみ]の花
吾妻かの三日月ほどの吾子胎すか 中村草田男
吾子あらず妻が春夜の冷えをいふ 川島彷徨子 榛の木
吾子あらばかくや岳友みな日焼 福田蓼汀 秋風挽歌
吾子あらば白鳥となり高翔けよ(倭健命の魂白鳥となりしに) 角川源義 『西行の日』
吾子あらば金の鯉幟を立てん 後藤綾子
吾子いつか買つてくれるといふ毛皮 谷口まち子
吾子か頬にしたゝかつけぬ小豆粥 尾崎紅葉
吾子がその子と日氷を来る祖母とよび 柴田白葉女 花寂び 以後
吾子が嫁く宇陀は月夜の蛙かな 大峯あきら(1929-)
吾子が座を確かめ灯す冬の家 角川源義
吾子が手に寝ねし夜寒の小鈴鳴る 千代田葛彦 旅人木
吾子が手に花野の花はあふれ咲く 軽部烏頭子
吾子が抱く一壺となりし夫に北風 野見山ひふみ
吾子が持てこし木の実机上の灯に更けつ 林原耒井 蜩
吾子が書く学生の字の帳祝ひ 池上浩山人
吾子が頬にしたたかつけぬ小豆粥 尾崎紅葉
吾子が香の湯の香かすめぬ秋風裡 石川桂郎 含羞
吾子が駈け我が心駆け運動会 秋沢稔
吾子が髪雪の懸れば乙女さび 林原耒井 蜩
吾子させば傘が歩いて走り梅雨 鶴岡しげを
吾子たのし涼風をけり母をけり 篠原鳳作 海の旅
吾子だけが知る山羊の顔初暦 斉藤夏風
吾子ちさき尻餅つきぬつく~し 伊丹 丈蘭
吾子つれて人はたのしむ春の野にわれはもひとり草つみて居ぬ 九条武子
吾子という朝虹の緒よ金雀枝よ 川田由美子
吾子といふ確かな荷ある芋嵐 上田日差子
吾子とその選びし人と花火待つ 都筑智子
吾子とならんで風邪に臥すこそたのしけれ 佐野良太 樫
吾子とわれ故山に立つる鯉幟 相馬遷子 山國
吾子とゐて吾子をわするゝ日向ぼこ 五十崎古郷句集
吾子とゐて父なきまどゐ壁炉もえ 橋本多佳子
吾子と姪同じにかはい藤は実に 星野立子
吾子と指す北斗七星夏果つる 二口 毅
吾子と菊壁を病院のものたらしめず 篠原梵
吾子なくて空蝉いつまで机上なる 松本千恵女
吾子なしや花見酒とて夜半にくむ 角川源義 『冬の虹』
吾子ならん遠き枯木に影しけり 佐野良太 樫
吾子にはや丹田白息やはらかく 下田稔
吾子に似て泣くは誰が子ぞ夜半の秋 杉田久女
吾子に似て非なる子の声明け易き 平井さち子 完流
吾子に名を与へて帰る銀河濃し 橋本榮治 麦生
吾子に客七夕の夜の一少女 山田弘子 こぶし坂
吾子に来し週番日誌糸瓜咲く 中根美保
吾子に賜ふ天は日月地は薔薇を 岡田日郎
吾子に購ふ鉢鬼灯のゆれあへり 飯田蛇笏
吾子のおなら鬼は外ともきこえける 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
吾子のため蚊とたたかひておかしけれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
吾子のもの干す軒下に湖は凍て 木村蕪城 寒泉
吾子のロ菠薐草のみどり染め 深見けん二
吾子の下痢止まり六畳の間に朝が来る 橋本夢道
吾子の作文妻の胼の手かなしめり 伊東宏晃
吾子の冬蝋石いつもポケットに 加倉井秋を 午後の窓
吾子の凧漸く天にとゞまりし 石井とし夫
吾子の前風が忘れし青林檎 中嶋秀子
吾子の口菠薐草のみどり染め 深見けん二
吾子の吸ふ乳房よ雲の峰より張れ 野見山朱鳥
吾子の四肢しかと外套のわれにからむ 沢木欣一
吾子の墓守り三十年芒種かな 伊東テル子
吾子の声今年野太し蚊帳の中 久米正雄 返り花
吾子の忌のその日のごとく桜散る 黒田長子
吾子の忌のぽろぽろぽろと寒雀 秋澤猛
吾子の忌の袂が重き青嵐 加藤知世子 黄 炎
吾子の忌やビニール袋に金魚吊り 石川桂郎 含羞
吾子の忌や梅雨の一ト月永かりし 石川桂郎 含羞
吾子の手にカナリヤの籠旅うらら 山田弘子 螢川
吾子の押す気の向くまゝの芝刈機 稲畑汀子
吾子の掌をつつみ冬日を掌につつむ 古館曹人
吾子の描く追儺鬼とはぱつちり目 山本雅子
吾子の本皆片づけて夜寒かな 阿部みどり女 笹鳴
吾子の死へ朝が来てゐる蛍籠 時田光子
吾子の母乳房もやすき懐手 中村草田男
吾子の眼のすなはち楽しお白酒 中村汀女
吾子の着るネルの寝巻は祖母のもの 稲畑広太郎
吾子の瞳に緋躑躅宿るむらさきに 草田男
吾子の窓灯る春月と同じ色に 茂里正治
吾子の絵の家より大きチューリップ 佐藤半三
吾子の耳花菜の風にやはらかし 太田鴻村 穂国
吾子の背の高さにかける初暦 高橋悦男
吾子の背伸び窗に届かず淡雪ふる 田川飛旅子 花文字
吾子の自負たしなむる夜や冬の雷 原 俊子
吾子の衣掲ぐ虹へ妻の顔旗手の顔 磯貝碧蹄館 握手
吾子の重さ知らず西瓜をかかへ抱く 谷口桂子
吾子の電話へ愛猫涼しく鳴き込める 奈良文夫
吾子の面影しかと掴めず露の星 平井さち子 完流
吾子の顔剃るや秋雷家を響す 石橋辰之助 山暦
吾子の髪少し切らばや洗ひやる 星野立子
吾子の魂来しや門火のゆらぎたる 米田双葉子
吾子の鼻大き麦湯のコップ透き 志城 柏
吾子はみな柚子湯の柚子を胸に抱き 山口青邨
吾子はをみな柚子湯の柚子を胸に抱き 山口青邨
吾子は今鍵開けをらむ寒夕焼 広渡詩乃
吾子は早やわれを恃まず春の虹 八木芳
吾子ひしと抱きて柚湯にひたりけり 高橋淡路女 梶の葉
吾子ふたり桃の無傷の二三日 橋本榮治 逆旅
吾子ほどに息の続かず草の笛 山田弘子 螢川
吾子ほどは遠くへ行かず毛糸玉 今瀬剛一
吾子もまた汗にはじまる男の香 川島千枝
吾子もゐるはずのスケート場混めり 佐藤宣子
吾子も知るそのかまつかの苗を植う 林原耒井 蜩
吾子や今少年時代夏帽子 青葉三角草
吾子ゆきて目高追ふ子にまぎれけり 瀧春一
吾子よ宙のつばめの胴を掴めるか 友岡子郷 日の径
吾子よ汝がつぶらの瞳さへ夕焼くる 草堂(父となりて)
吾子ら来て朝寝の我に挙手の禮 京極杞陽
吾子われの顔わかりそめ春の雪 下村槐太 天涯
吾子ををしスキーを肩に我が門出づ 竹下しづの女 [はやて]
吾子を得てくづほるゝげに秋の雲 杉山岳陽 晩婚
吾子を抱く外套のまま手套のまま 鷹羽狩行 誕生
吾子を異国に離して浴する「福は内」 平井さち子 完流
吾子を追ふカメラの駈ける運動会 加藤一智
吾子二人桃の無傷の二三日 橋本 榮治
吾子初写し介添妻の太き指 小島青樹
吾子危篤夏蜜柑すでに町になし 川島彷徨子 榛の木
吾子叫べ今日からは春村ぐらし 國井泉車
吾子召さるあたかも望の隈なきに 竹下しづの女
吾子同士母おもひおらん月の嶺々 平井さち子 完流
吾子呼べば吾子は木魂す夜の山瀬風 角川源義「角川源義全集」
吾子在りし日は吾もたてし幟かな 及川貞 榧の實
吾子娶り良夜かすかに老い重り 能村登四郎 有為の山
吾子嫁きてよりの小春のいとほしき 後藤比奈夫 金泥
吾子就学糸切歯にて糸を切る 伊藤敬子
吾子尿る庭の落花の浮むまで 香西照雄 対話
吾子居らぬ一日穂草に雨凝りぬ 下村槐太 天涯
吾子居らぬ運動会を覗きけり 本橋美和
吾子幼なけれどいづれは大試験 森田峠 避暑散歩
吾子征きしままの冬海深藍 飯田蛇笏 雪峡
吾子得たり街の氷柱が眩しくて 有働亨 汐路
吾子抱いて夜学の果つる刻を待つ 石井とし夫
吾子抱けば大つごもりの二つの瞳 蓬田紀枝子
吾子抱けば繭のかるさに春の雪 小室善弘
吾子抱けば蜩耳にさわさわと 三谷昭 獣身
吾子握り締めたる木の実見えてをり 木暮陶句郎
吾子日々に浮浪児めくや八重桜 中台春嶺
吾子昼寝なかば握りし指敏く 篠原梵
吾子昼寝ミシンの脚をつかまへて 加倉井秋を 『胡桃』
吾子晝寝足が小さき叉をつくり 篠原梵
吾子未だかなぶんぶんとは言へず 加倉井秋を
吾子歩み馬鈴薯の花喝采す 磯貝碧蹄館 握手
吾子死なす窓雪降れり雪降れり 三谷昭 獣身
吾子死にし青嶺ゆ光雲ひよこ色 香西照雄「素志」
吾子死後の虹の七色胸の上 中村祐子
吾子泣くか雪山かぎる杉一樹 角川源義
吾子泣けり秋雲よする辺に泣けり 高橋馬相 秋山越
吾子泳ぐ赤き踵をかいま見せ 嘴朋子
吾子生まる冬日幽かの妻を覗く 石川桂郎 含羞
吾子生る月三更の遠蛙 福田蓼汀 山火
吾子生れぬ光かがやく泉たち 細谷源二 砂金帯
吾子生れぬ鷹點となり大となる 細谷源二
吾子病みて母衣蚊帳の絵を鯉と知れり 川島彷徨子 榛の木
吾子病めりこれやこゝなる独楽童子 石塚友二 光塵
吾子病めり風音家の隈に消ゆ 太田鴻村 穂国
吾子癒えて水に放てる独活の張り 中村明子
吾子癒えゆく夜は銀河の下に寝て 長田等
吾子発ちて庭に残りし花明り 黒川悦子
吾子目覚め松葉牡丹もめざめけり 轡田進
吾子眠るゆすら花咲く窓しめん 長谷川毬藻
吾子着て憎し捨てて美しアロハシャツ 加藤知世子 花寂び
吾子睡る雪解雫のきそふ中 金子潮
吾子睡る霧のにほひのあしたかな 岩上明美
吾子立てり夕顔ひらくときのごと揺れ 篠原 梵
吾子等はやくはしきかなや絵双六 中村汀女
吾子育つ島の霰に打たれもし 村松紅花
吾子褒めて人にきかれぬ青簾 榎本虎山
吾子見るやねがひ累なる野分の夜 杉山岳陽 晩婚
吾子見送り錐揉み寒気もどりけり 平井さち子 完流
吾子踏みし路父踏みて悼む秋 福田蓼汀 秋風挽歌
吾子逝きしその日の寒さおぼえなし 上村占魚 球磨
吾子遠し樹にすがり鳴く蝉見えて 有働亨 汐路
命あれば蚋さへ親し吾子還らず 福田蓼汀 秋風挽歌
咽喉仏見せたる吾子の初笑ひ 上野泰 春潮
啓蟄の貌して吾子の起きて来し 岩岡中正
団栗の二つであふれ吾子の手は 今瀬剛一
地虫出づわれになじまぬ吾子ひとり 堀口星眠 営巣期
堀辰雄吾子はよみ初め緑立つ 能村登四郎
壁炉照り吾子亡き父の椅子にゐる 橋本多佳子
夏の闇吾子の忌となり川の音 加藤知世子
夏めきて吾子の体臭強まりぬ 横田義男
夏めきて阿修羅おもざし吾子に肖る 下村槐太 天涯
夏草やひとりぼつちに吾子の墓 田子鴨汀
夏近し短めに切る吾子の髪 村中千穂子
夕霧や吾と吾子と佇つ濡れそぼち 小林康治 四季貧窮
夕顔やひだるき吾子と手を繋ぎ 山西雅子(俳句研究年鑑)
外つ国の南風よ聞かせて吾子の声 張 美佐
外套を吾子の赤きに並べて掛く 相馬遷子 山国
外遊び嫌ひな吾子や水鉄砲 宮脇乃里子
夜の吹雪吾子のわが家に近づきし 佐野良太 樫
夜の雪や受験の吾子が居睡りて 相馬遷子 山国
夜の霜吾子の振る灯へ還りけり 関戸靖子
夜汽車明け稲の穂近し吾子近し 大串章
夜風くる風鈴吾子のつくろひもの 中山純子 沙羅
夢浸す葉月汐吾子生れけり 堀口星眠 営巣期
大けやき芽吹きさかんや吾子壮年 柴田白葉女 『月の笛』
大試験さ中の吾子を胸におき 山田弘子 螢川
天の川泣寝の吾子と旅いそぐ 加藤秋邨 穂高
天瓜粉しんじつ吾子は無一物 鷹羽狩行「誕生」
天瓜粉吾子の睫毛が蘂となり 鷹羽狩行 誕生
太箸や頬燃えて侍す吾子二人 石田波郷
夾竹桃下校の吾子の日の臭ひ 中村先行
妻見るや吾子見る妻に秋の蝉 杉山岳陽 晩婚
姿見にひつそりと吾子ゆすらうめ 友岡子郷 翌
学級閉鎖喜ぶ吾子も春の風邪 稲畑廣太郎
宵寒の背中を吾子のつたひあるく 篠原梵
家持の之子乎の海に吾子泳ぐ 茶木喜代一
寒がつてみせて吾子まだ甘えたく 浅利恵子
寒さ頂点たのむ一人の吾子も無く 菖蒲あや 路 地
寒星の身に降るごとし吾子誕生 橋本春燈花
寒椿弱音吹き消す吾子の声 牧 ひろ子
寒灯のひとつは吾子に点しおく 大友渓水
寒風に乗るうたごゑに吾子もゐる 工藤茶亭
寒風に顔ちぢまりて吾子戻る 中嶋秀子
寝ほてりの吾子の頬なる微塵皹 篠原梵
寝入りたる吾子の重たき墓参り 菅原 素子
小さく膝とぢ試験場に吾子もゐる 今瀬剛一
小春日に吾子の睫毛の影頬に 梵
尾花光る野に来て吾子に菓子のなき 林原耒井 蜩
屠蘇の眼に吾子の凧もやと見あげたり 耒井
山のみどり吾子に指さるゝ街歩りき 林原耒井 蜩
帰り来し吾子に灯を向け時雨をり 加藤楸邨
幌蚊帳の花の中吾子の顔うかぶ 篠原梵
年の夜の吾子に逢はむと鉦を打つ 角川源義 『冬の虹』
年来ても吾子寝て居れば音もなや 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
往診や吾子ゐるはずのプール見て 堀口星眠 青葉木菟
征く吾子に月明の茄子*もぎ炊ぐ 竹下しづの女
待たれたる卒業なりし吾子よ嬉し 高濱年尾 年尾句集
復活祭木椅子に吾子の掴まり立ち 加畑吉男
思春期へ吾子ましぐらや秋桜 大石悦子 群萌
息白き吾子に別れの手を挙ぐる 日野草城
悴みてあやふみ擁く新珠吾子 能村登四郎 咀嚼音
愛鷹の斑雪は消つつ吾子生れぬ 渡辺白泉
懸命な吾子の一歩よ今朝の冬 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
我したることを吾子もする竜の玉 上野章子
我踏みし路吾子踏まず秋の暮 福田蓼汀 秋風挽歌
戦車帽と學帽と吾子むきあいぬ 栗林一石路
戻るぬかるみ二の午なれば吾子思ふ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
手伝ひの吾子が邪魔なり障子貼る 白根純子
打始やことに吾子の初舞台 林吉太郎
抱きあげて吾子の春装やはらかく 能村研三
抱きをるや吾子ぬくもりてくるごとし 川島彷徨子 榛の木
抱き寝る吾子欲し虫も鳴き細り 菖蒲あや あ や
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや 龍太
抱けば吾子眠る早さの春の宵 深見けん二
拗ること覚えし吾子に木の実独楽 小井出美沙
掌の中に吾子の手雀の子のごとし 篠原梵
携へるものに吾子の手青き踏む 上田日差子
撫子や吾子にちいさい友達出来 加倉井秋を
故里の深雪に吾子を旅発たす 山田弘子 螢川
教室の悴む吾子を目で励ます 山田弘子 螢川
数へ日や寝顔の吾子に逢ふばかり 橋本榮治 麦生
新しき七曜吾子のふらここ押す 伊藤敬子
新春の小さき岩よ吾子と来ぬ 石橋辰之助 山暦
新涼の一番星は吾子ならむ 佐伯節子
新郎吾子つひに母視ず白手袋 柴田白葉女 『冬泉』
新雪の下りホームに吾子ひとり 輪島淳子
旅終へて来て吾子生れてゐて月夜 加倉井秋を 『胡桃』
旅離る長けし子吾子の幟立つ 及川貞 夕焼
日向たのし吾子の稚き十あまりの語彙 篠原梵
日曜になれば吾子来る苺熟る 池内鎖錨
日焼してこの頃の吾子反抗期 山田弘子 螢川
日盛の最短距離を吾子戻る 長友梓(松の花)
日記買ふまだ見ぬ吾子へ思ひ寄せ 中村純代
早梅やひらがなの名の吾子ふたり 藤田湘子
星に魅せられし吾子またバルコニー 青島麗子
星涼し吾子賜はぬも神の意か 水田むつみ
星飛びて幼きままの吾子とゐる 岡本ひろ子
春の土兎も吾子も跳ね上手 市ヶ谷洋子
春の雪吾子に子生るゝ日の近し 林原耒井 蜩
春の雪吾子の恋人餉に加へ 田中純子
春の雷吾子ありし日をはるけくす 川島彷徨子 榛の木
春夕べ長身の吾子を棺に斂む 内藤吐天 鳴海抄
春山の道見えて吾子癒えしかな 子郷
春日に透く翅生えて吾子入園す 能村登四郎
春暁の金三日月や吾子生まる 岸原清行
春月の大なり吾子をかざし過ぐ 永田耕一郎 氷紋
春泥の子供洗へば吾子となる 北野ふみ
春泥や大きくなりし吾子の靴 木暮陶句郎
春泥や肩に登りし吾子の尻 鈴木五鈴
春炬燵眠き吾子の目吾に似る 相馬遷子 山国
春隣吾子の微笑の日日あたらし 篠原梵
春雷に吾子の風車は青くまはる 川島彷徨子 榛の木
春霖の傘刺す力かへらぬ吾子 柴崎左田男
昨日どほり鵙来て鳴くに吾子の亡し 川村紫陽
暁つばめ棺の吾子はさめゐるか 角川源義
暮れてなほ坂に聲して橇の吾子 依田明倫
月うつるこの眼を吾子が見るならめ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
月の靄数歩に吾子の顔浮かぶ 三谷昭 獣身
月夜の腕妻に貸せしを吾子に貨す 磯貝碧蹄館 握手
月見草は身の丈の花吾子嗅ぐよ 林 桂
月覗き吾子も混りて厨忙し 香西照雄 対話
朝の霧吾子みづみづと生の中 平井さち子 完流
朝桜匂はば吾子の制服も 西岡正保
朝桜吾子の駆足地を叩く 奈良文夫
朝餉待つ胡坐に吾子とぬくみ育てつ 篠原梵
朧三日月吾子の夜髪ぞ潤へる 草田男
木枯を吾子は単車で帰るはず 木暮つとむ
末枯に吾子眼をとめて何思ふ 阿部みどり女
枯れし土地にはじめて吾子を立たしぬ 篠原梵
枯萱に飛ぶ雪吾子を泣かせをり 森澄雄
柚の花の薫るよ吾子は逝くと言ふに 日高弘子
柚子の香の吾子の掌こぼる恋せしか 小林康治 玄霜
柚子の香やすでに昨日の吾子ならず 岸風三樓
柿の芽とはずめる吾子を諸手にす 太田鴻村 穂国
栗の飯ほとけに吾子に新月なり 中山純子 沙 羅以後
桜の実紅経てむらさき吾子生る 中村草田男「火の島」
桜桃のまろし吾子無く事もなし 中村明子
梅雨ごもる吾子ら叱られつづけなり 川島彷徨子 榛の木
梅雨さやぐ灯の床吾子と転げ遊ぶ 草田男
梅雨晴れや吾子三人の発光体 都筑智子
梅雨空と吾子の泣声かぶり病む 吉野義子
梳初の吾子の黒髪手にあふれ 鹿島あけみ
楸邨の付けし吾子の名呼びて涼し 石寒太 炎環
歯を噛める吾子目守りつつ蚊帳たたむ 川島彷徨子 榛の木
歯ブラシを吾子にも与へ初手水 高田風人子
殿りに吾子を発たしむ魂送り 山口恵子
母のこし寒の仏となりし吾子 柴田白葉女 花寂び 以後
母の眼に青年吾子の大き手袋 柴田白葉女 花寂び 以後
母踊る賽の河原の吾子の為 楠節子
毛布なる吾子にふたりの顔を索む 篠原梵
毛糸玉頬に押しあて吾子欲しや 岡本眸
毛虫焼く吾子も三十路の愁眉もつ 渡部 良子
水仙や吾子を眠らす昼の月 市川千晶
水打つて雲水の吾子迎へけり 辻美弥子
水洟をすすれば吾子もすすりけり 須藤常央
水洟をも傍観受験の吾子死なせし 香西照雄 素心
水温むほとりへ吾子を抱き出づる 椎橋清翠
水着きる吾子の背中の大人びし 田島富子
汗の吾子ひたすらにわが眼を追へり 飯田蛇笏
沈丁の前に立ちゐる吾子小さし 京極杞陽 くくたち上巻
河口に浪しろじろと寄り吾子も夏へ 金子兜太 少年/生長
泣きつつぞ鉛筆削る吾子夜寒 加藤秋邨 穂高
泣く吾子に雪の眩しさ限りなし 田川飛旅子 花文字
泣く吾子を鶏頭の中に泣かせ置く 耕二
泥髪の川狩童子吾子もをり 根岸善雄
洗はれて月明を得む吾子の墓 能村登四郎(1911-2002)
海が又吾子誘惑す夏の来し 堀恭子
涯まろき満天の星吾子生るる 三谷昭 獣身
涼風や毀つ家吾子が撮りまくる 奈良文夫
淋しさ似る朝顔咲かぬ日吾子ゐぬ日 茂里正治
温み澄む吾子が蹠型見ほれ立つ 林原耒井 蜩
湯たんぽより吾子著しく堆くねむる 篠原梵
湯ほてりの吾子を毛布につつみ渡す 田島 秩父
湯ぼてりの吾子を毛布につつみわたし 目迫秩父
濃紫陽花吾子への言葉溜めてをり 関戸靖子
火に載せて寒鮒飛べり吾子押ふ 沢木欣一
火鉢より吾子みてあれば妻もみつむ 川島彷徨子 榛の木
灯の下の吾子踏むまじや冬ごもり 楠目橙黄子 橙圃
炬燵より跳ぶ吾子全身にて受ける 沢木欣一
炭の香や嬌やぎそむる吾子の指 日野草城
燈の障子吾子の影無しどこにも無し 香西照雄 素心
燕反転吾子の生歯のまぎれなし 椎橋清翠
父の声もちし吾子なり卒業歌 小川廣男
父葬りその夜の雨を吾子と聞く 古家榧夫
爽かに振舞ふ吾子をふと見たり 立子
片陰をひとり来る吾子駆けもせず 金箱戈止夫
犬が従き吾子従く水田つくづくし 石川 桂郎
独りゆきて吾子蝦夷菊を買ふほどに 星野立子
獄は悲し想念の中に吾子いて走りまわる 橋本夢道 無禮なる妻抄
玄海灘の玄は吾子の名冬怒濤 石寒太 翔
生れて吾子ときに伸びして爽やかか 宮津昭彦
生れむ子を女なれと吾子は雛まつる 林翔 和紙
産児室泣けば吾子かや夜半の夏 野田きみ代
用頼むときに吾子居り夏休 依田秋葭
畦火見る吾子の諸手を手につつみ 千代田葛彦 旅人木
異国の虫吾子居ぬ家へ家路とて 平井さち子 完流
疑はじ山芍薬は吾子の精 大間知山子
病む吾子に秋の蛍の飼はれあり 中島畦雨
癒えゆく妻汗疹の吾子と指切りなど 藤瀬小城彦
白梅を来て紅梅に吾子おもふ 大串章
白粉花吾子は淋しい子かも知れず 波多野爽波 『湯呑』
白蚊帳と波音と吾子をいねしめず 林原耒井 蜩
百千鳥赤子のころの吾子わすれ 仙田洋子
百合固し百合ひらき了へ吾子生るゝか 杉山岳陽 晩婚
盆梅のふくらみとけて吾子二つ 福田蓼汀 山火
眠れ眠れ吾子もしまふくろふの子も 夏井いつき
眼のなかまで日焼けし吾子を駅に迎ヘ 宮坂静生 青胡桃
着ぶくれてペンギン歩きして吾子は 轡田進
睦月月夜並びゆくひと吾子は得て 田中英子
瞳を据ゑて風せん虫を見入る吾子 水谷夢円人
矢車草空へ伸びざま吾子逝けり 柴崎左田男(氷海)
石鹸玉吾子にも恋の敵ゐる 田中裕明 先生から手紙
秋の雨もどれば吾子の泣くを籠めをり 篠原梵
秋天よ高かれ吾子のものを干す 長谷川ふみ子
秋嶺行く光る白点あれが吾子 田所節子
秋晴のつゞきつゞきて吾子生る 森田峠 避暑散歩
秋晴の天より来しか吾子の文 林翔
秋暑し吾子得し泪おろかにも 杉山岳陽 晩婚
秋桜信濃の山に吾子逝きし 福田蓼汀 秋風挽歌
秋虹のかなたに睦べ吾子ふたり 能村登四郎 咀嚼音
秋雲の吾子生れて咽喉鳴らすなり 杉山岳陽 晩婚
秋風の石ひとつ積む吾子のため(蔵王山頂) 角川源義 『冬の虹』
秋風や吾子のクレオン皆短か 深川正一郎
稲妻やいつしか吾子に喉ぼとけ 森岡けいじ
稲妻や吾子が花火は湿りかち 尾崎紅葉
稲妻や吾子の墓辺の眼に浮ぶ 耒井
稲架も嬉し家に癒えたる吾子あれば 大串章
立子忌や近くて遠き吾子の夢 木下星城
竝べある木の実に吾子の心思ふ 高浜虚子
竹の子の小さければ吾子かがみこむ 大串章
竹馬のいつも遅れて吾子の来る 藤野 力
竹馬の吾子のつめたき眼にあへる 田中裕明 先生から手紙
笹舟を吾子と競ひて夏暮るる 加藤松行
笹鳴や吾子の描く絵に赤多く 加倉井秋を
紫陽花や冷えゆく吾子の髪撫づる 石川桂郎 含羞
紫雲英田の畦来る犬・吾子・妻の順 川村紫陽
羊歯の芽や吾子の足踏み我が手の中 田川飛旅子 花文字
耳低く吾子の声待つ枯野中 古館曹人
聖堂の秋陽に契り吾子繭色 平井さち子 完流
聖夜ただ吾子あまた子にみとりの母 古沢太穂 古沢太穂句集
聖夜劇九人天使に吾子混る 長田等
聖果切る吾子に婚約指輪光る 奈良文夫
聖歌隊吾子を交へて息白し 冨田みのる
腕さし上げ吾子の爪切る月も切る 川口重美
腕の中にのけぞり吾子の風鈴もとむ 篠原梵
腕もて汗拭く吾子も少年期 黒坂紫陽子
腹当の月の兎や吾子育ち 宇佐美輝子
舌は帆柱のけぞる吾子と夕陽をゆく 金子兜太
色淡き夏木描ける吾子いとし 中村汀女
芋掘られ去り吾子笑ひ初めしかな 杉山岳陽 晩婚
花は葉にまためぐり来る吾子の忌よ 角川源義 『冬の虹』
花ふぶきぬけて吾子の校舎あり やまなかみゆき
花李小さき姉妹に吾子育つ 上野さち子
花茣蓙に吾子抱かす母髪白く 有働亨 汐路
芽柳の花のごとしや吾子あらず 角川源義
苗木植うこころ決めたる吾子の手で 永野由美子
若き父吾子なほざりの競ひ凧 及川 貞
草萌えぬ地もなし吾子懐はぬ日も 石井露月
草虱吾子に不思議のもの多く 佐藤うた子
菊の香や吾子の瞳に菊うつり 杉山岳陽 晩婚
菊千輪妻に寄り添えば吾子分け距つ 橋本夢道
菖蒲湯をかけ合ふ吾子にまじり浴ぶ 近藤一鴻
菜種畑吾子駈入りて煙るなり 石川桂郎 含羞
萩しきてまろばんこゝろ吾子を追ふ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
萬緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男(1901-83)
落日に鵙絶叫す吾子還せ 福田蓼汀 秋風挽歌
落穂見て吾子を抱き替へんとす 杉山岳陽 晩婚
葉ざくらや光鱗に吾子まみれゆく 橘川まもる
葛垂れて吾子がをらねば我が引く 加藤楸邨
葱坊主にわづか足らざる吾子の丈 中野美保
蘆間よリ紅き日傘の吾子その健 深川正一郎
虫しぐれ吾子亡き家にめざめたり 予志
虫しげく吾子の骨いまだ家に在り 瀧春一 菜園
虫浄土ふたりの吾子はねまりけり 能美丹詠
虻の下靴履く吾子の髪かがやき 石田波郷
蚊帳あつし吾子が忘れし蜻蛉とび 加藤秋邨 寒雷
蚊帳ひろし胸の上に吾子立たせ遊ぶ 篠原梵
蜜柑一つ吸はせやりしに吾子ねむる 川島彷徨子 榛の木
蝶擦過成人の吾子かなた過ぎ 香西照雄 素心
螢三夜息づき光りぬ吾子の部屋 奈良文夫
蟇吾子も夕暮地に跼む 森澄雄
蟲時雨吾子泣いて解く肱枕 高田風人子
蟻地獄見つけし吾子の知恵走り 稲畑汀子 春光
表札に加う吾子の名みどりの日 野村かおり
裏窓を飾る青柿吾子生れし 深見けん二
西瓜食ぶ顔面口となりし吾子 稲畑廣太郎
要るときに又見当らず吾子のこま 稲畑汀子
豆撒いてわが家鬼ゐず吾子もゐず 橋本美代子
貧しき父を馬にして勇めるぞ吾子は 七戸黙徒
賀状一片吾子よ確かに嫁ぎけり 細谷鳩舎
赤城嶺に掃きあぐ雲や吾子生るる 宇川啓子
迎へ火の吾子連れ那智の祭かな 角川源義 『西行の日』
近山含み濃き霧棺には砕けし吾子 香西照雄 素心
送り火のはじめを吾子が点しけり 大石悦子 聞香
逝く吾子に万葉の露みなはしれ 能村登四郎 咀嚼音
遊学の了りし吾子の大朝寝 山田ゆう子
運動会今鳴る拍手吾子のもの 毛塚静枝
道に出て吾子もともどもかげろへり 太田鴻村 穂国
遠き田の春著の吾子ら駈けちがふ 石川桂郎 含羞
郭公の声のあけくれ吾子育つ 木村蕪城「一位」
野遊びや声のつぶてを吾子に投げ 上田日差子
金雀枝の日に生毛立つ吾子の頬 能村登四郎
金魚葬る吾子に薔薇も枝伸べて 林翔 和紙
金魚赤し吾子が笛吹くこと覚え 松倉ゆずる
開きては吾子が遺せし秋扇 中村祐子
閑古鳥吾子を顎まで湯にひたす 森澄雄
降る雪やこけしの如く吾子馳け来 小林康治 四季貧窮
隔離舎さむし熱の頬もてほほえむ吾子 古沢太穂 古沢太穂句集
隙間風ちゝはゝの夢吾子の夢 相馬遷子 山國
隣から吾子呼んでをり沈丁花 臼田亞浪 定本亜浪句集
雁仰ぐまぶしき吾子となりにけり 小林康治 玄霜
雛に触れ吾子唄ひだす雛祭 鈴木多芳樓
雛飾る吾子より妻の愉しくて 根岸善雄
離れて遠き吾子の形に毛糸編む 石田波郷
雨冷えて吾子を寝棺にうつしがたし 川島彷徨子 榛の木
雪つぶて樹に当り爆ず吾子恋し 田川飛旅子 花文字
雪の午後保母の匂ひの吾子戻る 中嶋秀子
雪原の藍の彼方の吾子七夜 堀口星眠 営巣期
雪渓に還らぬ吾子を捜す札 木暮勉(ホトトギス)
雪白へ泣きじやくる吾子シヤツ干す妻 飴山實 『おりいぶ』
雪礫われに投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪礫吾に投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪降り降る山の男で逝きし吾子 栗林千津
雲海のひとつ灯のかた吾子寝ねむ 角川源義「秋燕」
霏々と雪童話の中を吾子歩む 長田等
霜の地に三ツ星の楔吾子生る 中戸川朝人 残心
霧の夜を身細うあれば寄る吾子よ 林原耒井 蜩
露の鳩鳴き出す吾子覚めにけり 杉山岳陽 晩婚
露寒き海峡の灯に吾子ねむる 春代
露月夜厠へ吾子の夢歩き 荒井正隆
青嵐わが乳房いま吾子のもの 市川千晶
青芝に吾子の小さきかげ走り 稲畑汀子
面皰多き吾子冬鵙に似しと思ふ 石田あき子 見舞籠
音立てて飛ぶ一蝶や吾子入園 中村明子
頬白高音鳥となり吾子還りしか 福田蓼汀 秋風挽歌
顔波の中に吾子あり入学す 上野泰 春潮
風の金雀枝あやふし吾子の歩み初め 中嶋秀子
風邪声の妻よ異国へ吾子帰し 羽部洞然
風邪衾かすかに重し吾子が踏む 能村登四郎 咀嚼音
餅に手をふれたき吾子の粉にまみる 大熊輝一 土の香
餅花や吾子が連れ来し乙女の香 細川加賀 生身魂
馬多き渋谷の師走吾子と佇つ 中村草田男
高らかに吾子名を呼ばれ卒業す 国分衣麻
高原を馬馳け吾子馳け青炎天 伊藤敬子
鬼灯の朱らむと吾子ささやきぬ 加倉井秋を
魚売の河豚もて来たり吾子よ見よ 秋櫻子
鰯雲吾子に継ぐべきものは何 林火
鰯雲読みいて吾子の気遠の日 古沢太穂 古沢太穂句集
鳩羽摶つ春光あまねし吾子賜る 大石悦子 群萌
鶲獲てたかぶる吾子が面はも 軽部烏帽子 [しどみ]の花
鹿の子呼ぶ関西弁の吾子ふたり 小川軽舟(鷹)
麦の芽出づ吾子三輪車きこきこと 大熊輝一 土の香
黄落を歩めば吾子の唄とどく 原裕 葦牙
黍あらしそろばん鳴りて吾子もどる 能村登四郎
黍の風よその子の如吾子立てる 平松措大
龍の玉吾子が嫁く日は深みどり 大峯あきら
●遺児 
ほとゝぎすすでに遺児めく二人子よ 石田 波郷
二の腕細き遺児よ万緑左右に迫り 香西照雄 素心
人中に遺児うつくしく鰯雲 石原舟月 山鵲
北風ふく夜ラジオは遺児に唄はする 岸風三楼 往来
友の遺児としたたりやまぬ夜の梨 友岡子郷 遠方
夏帽を手に被せてゐる小さき遺児 田川飛旅子
座礁船ことに遺児たちが見ている 金子兜太 皆之
御巣鷹山の遺児ら涙の流灯会 鳥居忠一
抱いて柔は柔は友の遺児なり裸子なり 奈良文夫
春しぐれ戦友会に遺児ひとり 松崎豊
洩れ日潤む金魚の小池遺児二人 成田千空 地霊
蝌蚪に足くちづけの音は遺児と母 田川飛旅子 花文字
踊り髪結ひて原爆遺児なりき 下村ひろし 西陲集
遺児けふは葉桜の影満身に 石田波郷
遺児として逞しく生ひ年礼に 柏原絢
遺児と寝て一と間森ンたる冬座敷 飯田蛇笏 雪峡
遺児の手のかくもやはらか秋の風 飯田蛇笏 雪峡
遺児二人壺いつぱいのらつきようで 鮫島康子
遺児幼なし葬りの西日まぶしがる 右城暮石 声と声
遺児愛す情おのづから花ぐもり 飯田蛇笏 雪峡
遺児育ち記念樹育ち平和祭 五十嵐秀一
陳さんの遺児上元の燭ふやす 中尾杏子
魚夫の死に並ぶ造花を遺児が欲しがる 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
●愛し子 
青空と荒野を愛し子を抱かず 津沢マサ子 楕円の昼
●園児 
こぼしつつ園児嬉しき甘茶番 都筑智子
つくづくし園児の列の長く伸び 黒木照子
チューリップ園児そろそろ通る頃 高澤良一 素抱
一坪の園児の稲田案山子立つ 内久根眞也
一斉に園児飛び出す望潮 坂部新蔵
初蝶や初めて田舎見る園児 香西照雄 対話
動物園園児の点呼うさぎの前 高澤良一 寒暑
十月の兎を園児抱っこして 高澤良一 寒暑
団栗を拾ふ園児のどんぐり瞳 本田しげる
園児らにお泊り保育てふキャンプ 壹岐たつや(春郊)
園児らに元気を貰ふクリスマス 榛葉茶山
園児らに近目遠目の寒雀 龍太
園児らの数だけ濡れて甘茶仏 大東晶子
園児らの眉ひらけゆく蓬道 原裕 葦牙
園児らの組分け帽子遊蝶花 清水真紀子
園児らの輪には入れぬ毛たんぽぽ 須藤大硯
園児らの音階となり冬苺 水嶋啓子
園児らの風になる順すべり台 かわにし雄策
園児らも善男善女仏生会 高田文吾
園児去る微光の中のかたつむり 橋本榮治 麦生
園児等に野外の時間金鳳華 黒田充女
園児等に鼻振り上手日永象 高澤良一 ねずみのこまくら
園児等の声秋天に風となる 関口美子
園児等の手毬遊びや良寛忌 青柳薫也
園児等は流動木に青田風 新 純子
園児等も火消法被の出初式 渡辺美幸
土筆手に園児の列の動き出す 谷口志げ女
声上げて園児羽化せり更衣 菅原 祥
大人びて昨日の園児の入学す 石塚友二 光塵
大霜の湿林をゆく園児たち 長谷川双魚 風形
寒木瓜の上を園児の笑ひ過ぐ 中村梶子
悴める子を拾ひゆく園児バス 高橋栄子
斜めにも走る園児の運動会 高橋只一
日向より園児消えれば寒き町 飯田龍太
春睡や瀬音のごとく園児過ぐ 黒坂紫陽子
木の実降る園児募集の園児の絵 細野琉美
水遊び水をこはがる園児ゐて 松村多代子
涅槃会の猫も園児も跳ぶ姿勢 足立 淳
犬ふぐり園児道無きみち好む 高井北杜
百日紅園児ねむりの刻来る 飯田龍太「百戸の谿」
百日草園児の描く絵さまざまに 行廣すみ女
空風に園児吹き飛ばされしとか 川井梅峰
窓に溶け園児昼寝の雪だるま 杉本弥生
縄電車降りて落葉になる園児 石井紀美子
聖保姆に園児に冬の天使百合 下村ひろし 西陲集
聖書抱き戻り園児に巣立の日 石塚友二 光塵
門に立て園児待つ母やおそ桜 遅桜 正岡子規
雪嶺の朝な影濃き園児服 原裕 葦牙
青葉に泣く園児よ母も独りなる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
風呂敷が園児の衣装聖夜劇 西村和江
餅搗や掛声そろふ園児の輪 土井朝子
鬼やらひ園児自作の面つけて 山口恵子
●幼子 
うらゝかの幼子ころび泣きにけり 高橋淡路女 梶の葉
ほのと幼子ひぐらしの東大寺 原田喬
よく喋る幼子がゐて初電車 藤岡筑邨
よく見える幼子に見せ稲の花 矢島渚男 延年
われ蝌蚪となり幼子の手の中に 松村蒼石 雪
イースター幼子の手に卵置く 高橋句美子
初蝉や幼子の髪丸刈りに 佐野和子
大花野幼子の背に陽の翼 吉原文音
子芋孫芋幼子の箸使ひ 長谷川久々子
幼子が嬰児を見てゐる夜の秋 水浜青大
幼子と話す亥の子の赤火鉢 長谷川かな女
幼子に叱られ詫びて冬ぬくし 岡本眸
幼子に悪戯教え紫蘭かな 栗本照子
幼子に抽斗一つ貸して梅雨 市村究一郎
幼子に菫のいろを言はせをり 高澤良一 宿好
幼子に言葉の殖えて小鳥来る 高野 教子
幼子のいつか手を曳き夜の秋 飯田龍太「遅速」
幼子のかたことばなし十三夜 今井千鶴子
幼子のひとりの消えし蝌蚪のくに 坂井三輪
幼子のひとりは背負ひ秋の浜 飯田龍太
幼子のまづ手足よりの昼寝かな 谷口桂子
幼子の一揆の墓や草いちご 千葉禮子(薫風)
幼子の一礼深き初詣 吉井秀風
幼子の和毛をつつむ春日かな 長田群青
幼子の墓の水濃き夏蚕村 飯島晴子
幼子の声の大きくばつた飛ぶ 町田一雄
幼子の子犬とまろぶ春の土 藤井寿江子
幼子の寝顔隠しぬ夏帽子 神野千舟
幼子の小さきねぎごと絵灯篭 斉藤平伍
幼子の少女となれる花の鬱 百瀬美津
幼子の手の腥き春の空 飯島晴子
幼子の指より漏れし蛍の火 松本喜久子
幼子の死に雲ふかし落葉降る 飯田蛇笏 椿花集
幼子の泥は笑みたりいのこずち 加藤うめ
幼子の泪すぐ消ゆ春の虹 大串章
幼子の満面つばめ帰りけり 原田喬
幼子の煦煦と遊べるお年玉 馬郡民子
幼子の素足アジアの秋の風 高澤晶子
幼子の絵文をのぞく雪女郎 飯田龍太
幼子の背伸びしてゐるゆすらうめ 東口博美
幼子の袂をぬらし初手水 三宅敬子
幼子の触れて驚く含羞草 山根きぬえ
幼子の遠くは飛ばぬ雪礫 仲佐方二
幼子の金魚に化けたる夢見たり 谷活東
幼子の隠れ遊びや蛇苺 川崎展宏
幼子の靴を増やして三が日 篠原ノリ子
幼子の高さで見つむ蜻蛉かな 谷口桂子
幼子はいつも小走り夏座敷 谷口桂子
幼子も字背負ひたる村祭 久堀博美
幼子も雨を見てをり寒桜 原田喬
幼子や汐浴ぶとなく腹太き 島村元句集
幼子や花火戻りを背に寐たる 高橋淡路女 梶の葉
幼子や青きを踏みし足の裏 青き踏む 正岡子規
幼子よ地に水氷るこれが冬 肥田埜勝美
幼子を受け止め春の土柔く 稲畑廣太郎
幼子を春の日だまりごと抱く 市川よしか
幼子を預る一ト日冬霞 関口栄子
息白く幼子の智恵まとひつく 松村蒼石 春霰
春の霜幼子黙す別れかな 相馬遷子 山国
木の葉はらはら幼子に逢ふ小阪かな 落葉 正岡子規
枯野ゆく幼子絶えず言葉欲り 馬場移公子
櫛さして寝し幼子や星祭 佐野青陽人 天の川
毛帽子の幼子の瞳に青空あり 有働亨 汐路
沖縄忌幼子に海しかと見せ 宮坂静生
白桃を睨み幼子ひとり立つ 原田喬
笹鳴や幼子がわが門にゐて 原田喬
筆始幼子にして大書せり 渡邉秋男
聖夜眠る幼子いとし父サンタ 今泉貞鳳
葉牡丹や幼子はまた膝の上 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
鬼やんま見しこと幼子に話す 原田喬
鳥追のもうひと囃し幼子に 塩原 傅
うららかや幼な子の髪切り揃へ 柴田奈美
人見知りする幼な子よ雨蛙 伊藤淳子
夢にあればわれも幼な子冬三日月 山田諒子
幼な子が鼻よせて嗅ぐ蘭の花 細見綾子 雉子
幼な子に刻を問はるる落葉かな 千葉皓史
幼な子に背を低くしてしやぼん玉 高畠テル子
幼な子に腰低うしぬ慈善鍋 兼安昭子
幼な子に腹当締めて引揚げし 佐竹たか
幼な子のあくびを一つ蜜柑狩 八木林之介 青霞集
幼な子のかじかみし爪藷に刺さる 田川飛旅子 花文字
幼な子の両手で受ける花吹雪 片岡信代
幼な子の手のあたたかし干潟ゆく 山口波津女 良人
幼な子の拝みて焚ける紅葉かな 綾部仁喜 樸簡
幼な子の指より目覚む冬日向 桑山撫子
幼な子の指より眠る花の雨 林 民子
幼な子の教へてくれぬ盆の月 矢島渚男
幼な子の死目にひらく寒椿 宇多喜代子
幼な子の纒振りをり御命講 中ノあさ子
幼な子の見て見て見ての草もみぢ 高澤良一 鳩信
枯野ゆく幼な子絶えず言葉欲り 馬場移公子
目が先に笑ふ幼な子風薫る 田下芳恵(獅子吼)
紅薄立つ幼な子が立つやうに 石田勝彦 秋興
聖夜眠れり頸やはらかき幼な子は 森澄雄 雪櫟
丸裸にて幼な児の海を享く 右城暮石 声と声
噴水の飛沫幼な児泣かず受く 右城暮石 上下
幼な児に胸嗅がれをり日脚のぶ 高橋良子
幼な児の小さき謀反や猫じゃらし 山口清子
幼な児を連れ来て蝌蚪に何与へむ 右城暮石 声と声
春暁を起きし幼な児独り遊ぶ 右城暮石 上下
暖房にゐる幼な児の冷たき手 右城暮石 上下
母の手を逃れ幼な児青き踏む 八谷 きく
花夜々に幼な児さらひ食らふかな 平井照敏 天上大風
●鬼子 
毛だらけの鬼子でありし枯芙蓉 川崎展宏
毛だらけの鬼子なれども枯芙蓉 川崎展宏
流星の尾をつかみしは鬼子かな 丸山海道
破芭蕉鬼子のごとき実を曝し 尾池葉子
霜の声この夜鬼子や捨てられし 冬の土宮林菫哉
●女子 
*まくなぎに面打たせん女子生る 齋藤玄 飛雪
もてなしの女子舌長き暑さ哉 森鴎外
スタートは水菜でありぬ女子マラソン たまきみのる
ダリア頒けゆく歩を軽やかに女子患者 赤城さかえ
向日葵の頸太し女子農学校 川村紫陽
夏蜜柑女子クラス乗せ帰る汽車 秋元不死男
夕顔や女子の肌の見ゆる時 千代尼
女子どし押てのぼるや山ざくら 千代尼
女子夜学生鮮白靴下期せず競ふ 中村草田男
女子走高跳覗くからたち垣 三橋敏雄 まぼろしの鱶
時ぞ医師女子の琴引く郭公 材種 選集「板東太郎」
晴着にて女子事務官の事務始 相馬蓬村
月見にも陰ほしがるや女子達 千代尼
朝風の女子レガッタやらいてふ忌 大野よし子
梅雨暑し女子プロレスの阿鼻叫喚 吉屋信子 吉屋信子句集
海の家混み合ふ女子の更衣室 山田節子
男の子一人女子一人や更衣 阿部みどり女 笹鳴
男郎花あらをとこへしと女子衆 川崎展宏 冬
白瓜を提げて越路の女子衆 川崎展宏
秋風や女子生れし草の宿 月舟俳句集 原月舟
鳥総松女子理髪師に顔ゆだね 石川桂郎
●男子 
かげ口は男子に多し秋の暮 加藤郁乎(1929-)
初孫に男子授かる梅白し 伊東宏晃
和歌に痩せ俳句に痩せぬ夏男 子規句集 虚子・碧梧桐選
平成男子眉ととのへて伊勢まゐり 細谷喨々
年男飲めば痛快男子かな 相島虚吼
曲げられぬ男子の一言けんぽなし 高澤良一 燕音
有の実がりがりと変生男子たりしか 加藤郁乎
男子の胎ると思へ西日中 齋藤玄 飛雪
男子われ老なほあさき年迎ふ 麦南
男子厨房に入る父の日の独り酒 水原春郎
男子生る平和論者を父として 出井哲朗
男子等に母の春著の美しや 高木晴子 晴居
破魔弓や男子四方の志 黙仏
苺ジャム男子はこれを食ふ可らず 竹下しづの女句文集 昭和十三年
●御曹司 
蚊遣して盗人待つや御曹司 子規句集 虚子・碧梧桐選
梅が香に更ゆく笛や御曹司 椎本才麿
罷り出て精霊ばったの御曹司 高澤良一 鳩信
近所まで出張り鴉の御曹司 高澤良一 寒暑
●隠し子 
隠し子の年員へゐる火燵かな 柳女
●愚息 
夏はじまる愚息の愚の字とれぬまま 小野元夫
●孤児 
つばめ帰る残留孤児は孤児のまま 相田勝子
ボスポラス海峡孤児のやうに未明 田中亜美
七夕竹孤児ら願ぎ事余白多し 平井さち子 完流
何がここにこの孤児を置く秋の風 加藤秋邨 野哭
冬日宙見る見る孤児が煙草吸う 石橋辰之助
冬薔薇孤児賛美歌の他知らず 宮坂静生 青胡桃
冬鵙に天あり孤児の提げしもの 加藤楸邨
凍蝶か指紋いちにち孤児と呼ばれ 川本洋栄
友がトマト配して孤児の餉さみしからず 平井さち子 完流
夜雪よごれ孤児ほおたいを巻きかえす 古沢太穂 古沢太穂句集
孤児たちに映画くる日や燕の天 古沢太穂 古沢太穂句集
孤児たちに晩涼の鐘動き鳴る 友岡子郷 遠方
孤児たちに清潔な夜の鰯雲 佐藤鬼房
孤児たりき今は夕焼二児の父 中島斌雄
孤児どもが群れて威をなす冬の園 小寺正三
孤児にはや異人のにほひ花サフラン 鍵和田[ゆう]子 未来図
孤児ねむる良夜の夢を握りしめ 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
孤児の枕並べて夢凍る 寺田寅彦
孤児の歯を抜いてついばむ青葡萄 沢木欣一
孤児の癒え近しどんぐり踏みつぶし 西東三鬼
孤児の瞳に吸殻せまる地は極寒 原田種茅 径
孤児の高さに洗面の鏡くもる 津田清子 礼 拝
孤児ら同じパン食ぶ墓域濃紫陽花 鍵和田[ゆう]子 未来図
孤児ら遊び土手の枯草擦り切れし 津田清子
孤児わらうわらう冬河あるばかり 石橋辰之助
孤児園は長き隧道冴え返る 鍵和田[ゆう]子 未来図
孤児睡る月光の地靴にて過ぐ 中島斌男
孤児達に真向よりの秋夕日 石橋辰之助
孤児院に芒山ありあそぶ見ゆ 皆吉爽雨
孤児院のどこぞで鳩なく日本の雨季 平井さち子 完流
孤児院の一人にひとつ寒卵 本庄登志彦
孤児院の便所の庭や三十三才 内田百間
孤児院の皿にはみ出るコッペパン 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
孤児院跡に 消えた歌追う ピンクガラー 伊丹公子 パースの秋
家遠しみそ萩つむは孤児か 幸田露伴 谷中集
小春日の石に本読む孤児の午後 加藤知世子 黄 炎
息白し残留孤児といふ老も 三嶋隆英
春来るか孤児ら踊りの足つきなど 古沢太穂 古沢太穂句集
満面に夜火事を見るや孤児二人 榎本冬一郎 眼光
牧師の手套まぶしく孤児のなでられる 川口重美
真っ黒い太陽を描く孤児である 九堂夜想
窓あけても翔ばぬ冬鳩孤児の園 鍵和田[ゆう]子 未来図
聖夜にて給水塔鳴る孤児の家 沢木欣一
脚冷えて立ちて観ていし孤児の野球 鈴木六林男 谷間の旗
花菜いちめん孤児に山彦野彦する 磯貝碧蹄館 握手
草城の死の以後は孤児 山茶花見る 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
薔薇枸橘棘持ち孤児の成長期 八木三日女 紅 茸
蚊ぶくれに爪立て孤児ふてくされ 川口重美
蝌蚪見れば孤児院思ふ性を棄てよ 中村草田男
被爆忌へその日の孤児が母として 下村ひろし 西陲集
見しりの孤児が殊に丈伸び帚草 平井さち子 完流
親子電球涼やか孤児らすぐかたまる 平井さち子 完流
足長き孤児に蛙がのどでなく 川口重美
隅だけが鳴るハモニカの孤児嚏 中村草田男
雲は冬残留孤児の富士額 大木あまり 火のいろに
飛行雲水渡る孤児まだ見えて 林田紀音夫
鰯雲も孤児のシャッポも夕焼けて 川口重美
鸚鵡孤児寒夕焼に舌染めて 渋谷道
麻薬街の内部撫で了る鼠の孤児 赤尾兜子
●子供 
*はったいや子供を負うて子供来る 佐々木六戈 百韻反故 初學
「永遠の子供」と呼ばれ年越すか 成瀬櫻桃子 風色
あさくさに子供が減りぬ樟脳舟 肥田埜勝美
いざ子供昼顔咲きぬ瓜剥かん/いざ子供昼顔咲かば瓜剥かん 松尾芭蕉
いざ子供走りありかん玉霰 芭蕉
いちじくは子供に還り食うぶもの 高澤良一 随笑
うたいながら子供のプール畳まれる 相田勝子
うつとりと躑躅明りに子供かな 岸本尚毅 舜
うり一つだひて泣きやむ子供哉 瓜 正岡子規
おしろいが咲いて子供が育つ露路 菖蒲あや
おしろいのにほふ子供や宵ゑんま 橋本鶏二 年輪
かくれんぼの子供が溶ける草がない 穴井太 穴井太集
かまはずとあそべ鴎の子供づれ 広瀬惟然
きさらぎや子供がむいてうで玉子 小澤碧童 碧童句集
くらい夜を戻り子供に笑ひかける 人間を彫る 大橋裸木
けさは茄子の花咲きそろい子供煮る 坪内稔典
ここまでは子供の時間盆踊 高澤良一 素抱
この子供臭さへ 聖夜劇開幕 伊丹三樹彦 樹冠
この町の子供ばかりの佞武多かな 増田手古奈
こぼしつつむかご飯くふ子供かな 岡安迷子
さへづりや子供が道に倒れゐて 長谷川櫂 天球
ざぶざぶと子供が歩く川の中 高柳重信
しあはせの姉の子供の智恵詣 松浦桂村
しほまねき子供ばかりに見えにけり 遠藤正子
じやがいもの咲いて子供を叱る声 山本洋子
すさまじく雨降りき子供膝に来る 人間を彫る 大橋裸木
そこらぢゆう子供遊びて初雀 石橋秀野
たそがれは路次の子供の眸から来る 北垣一柿
だまされて子供のなくや一夜酒 一夜酒 正岡子規
ちゞこまる子供ささ鳴き 北原白秋
つかまへて子供を洗ふ夏木立 長谷川櫂 天球
つかみ合ふ子供のたけや麦畠 去来
つかみ合子供のたけや麦畠 垂葉堂游刀
とほくから子供が風邪をつれてきぬ 鴇田智哉
とりめのぶうめらんこりい子供屋のコリドン 加藤郁乎(1929-)
どう見ても子供なりけり懐手 岸本尚毅(1961-)
どぜうやよ子供芝居よ雁の秋 久保田万太郎
どの家も子供は二人祭笛 高橋悦男
どんぐりを拾ふ子供に加はりぬ 小梶晴好
ねむる手に苺の匂ふ子供かな 森賀まり「ねむる手」
はきはきと物言ふ子供春立ちぬ 山田みづえ 草譜以後
はさまりて寒念仏の子供かな 石橋令邑
はつなつの川を子供と渉りけり 小島健 木の実
はつゆきや子供の持ちて歩行ほど 千代尼
ひぐらしの日暮れて温き子供かな 攝津幸彦
ひめ百合や姿見をする子供から 千代尼
ふえて来し子供の声や宵閻魔 深見けん二
ふらと来る深川しぐれ子供かな 加藤郁乎 江戸桜
ぼうたんにかこまれて泣く子供かな 仙田洋子 雲は王冠
ぼうたんに触れて子供のはにかみぬ 夏井いつき
みめかたち確かに避暑の子供かな 今井千鶴子
もの淋しく子供の遊ぶ祭哉 小澤碧童 碧童句集
ゆく秋や子供の声の油売 小沢碧童
ゆすらうめ首に巻きつく子供の手 名取里美
キャンプ村子供が醤油借りにくる 木田千女
コスモスや豚小屋へ又子供達 西山泊雲 泊雲句集
サイダーのシュワッと子供なくていい 松田ひろむ
チエロケースより十六夜の子供出づ 皆吉司
ネオン見て柿よ柿よと子供かな 岸本尚毅 舜
マハシ著ケテ子供角力ノ竝ビケリ 相撲 正岡子規
一本に子供あつまる榎の實かな 榎の実 正岡子規
七夕や子供相手の小商ひ 吉武月二郎句集
七草の雨夜生まれてゐる子供 遅沢いづみ
万燈の花に縋りし子供かな 山口青邨
下萌や本の子供に伴走さる 攝津幸彦 鹿々集
下駄の音子供がかけるしぐれ哉 小澤碧童 碧童句集
二つのつむじの会話いつも子供の匂いがある 瀬戸青天城
五六人子供が居りて花まつり 白石峰子
人形を叱る子供や花の雨 岡田史乃
人足の子だからかまわねえのか子供と子供とどこが違んだえ、え、え 橋本夢道 無禮なる妻抄
人間となるべき子供天高し 岡田史乃
何か食ひ居らねば子供寒がりて 右城暮石 声と声
信じつつ楽しく子供クリスマス 京極杞陽 くくたち上巻
倒れては起きて花野の子供達 村野鶴諒子
傀儡師に慰められて泣く子供 飯田はるみ
元日のどこからか来る子供かな 矢島渚男 延年
元旦や子供三人鶏三羽 福田蓼汀
元旦や子供等は皆人となり 寺田寅彦
先駆けの子供が出たり春の山 日原傳
八人の子供むつましクリスマス 子規句集 虚子・碧梧桐選
其のあとの子供の声や鬼やらひ 小林一茶
其迹は子供の声や鬼やらひ 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
冬ざれの子供が跳んで来るひかり 細川加賀 生身魂
冬木照らさる階上の子供部屋に 横山白虹
冬構より出て来たる子供かな 岸本尚毅 舜
凧あげて子供もいつしよに風になる 岩崎邦彦
出征ぞ子供ら犬は歓べり 三橋敏雄 まぼろしの鱶
分け入りて炉話を聞く子供かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
分校の子供の数の雪兎 武田孝子
切干を干すや子供を追ひ払ひ 岸本尚毅 舜
初景色子供招ばれてはにかみをり 田中裕明 櫻姫譚
初雀子供のゐない家の屋根 黒田杏子 花下草上
勝独楽は派手なジャケツの子供かな 上野 泰
十六の子供がしらや無木打 銀漢 吉岡禅寺洞
南風や子供ひとりもをらぬ島 上崎暮潮
原爆忌子供が肌を摶ち合ふ音 岸田稚魚 筍流し
叱りたる子供の一人炬燵に来 京極杞陽
啓蟄の日をふり仰ぐ子供かな 大峯あきら
啓蟄や分別されてゆく子供 浦田京子
噴水に手をあててゐる子供かな 鳥居三朗
囃子方に父居て子供杁かな 加藤憲曠
土ほつて喜ぶ子供雪とけぬ 高木晴子 晴居
土人形に似ている子供夏祭 奥中晩暉
地に子供春の夕映母のごとし 三谷昭 獣身
地に子供春の夕焼母のごとし 三谷昭
地蔵盆こんなに子供ゐたかしら 石原清美
地蔵盆子供の声の夜更けまで 桶口 満
地蔵盆子供の陣地暮れ残り 西村和子 かりそめならず
塩買ひに子供走らせ秋の暮 百合山羽公 故園
墓の露草子供らは濡れざりき 長谷川双魚 風形
壬生念仏子供ら柱のぼるあり 岸風三楼 往来
売る声の一人は子供鬼灯市 八巻絹子
夏の月近く二階の子供部屋 高澤良一 素抱
夏暁の子供よ土に馬を描き 西東三鬼
夏祭りいつもひとりでゆく子供 対馬康子 吾亦紅
夏蜜柑を買ひ子供の手に触れ 小澤碧童 碧童句集
夏靄の島をこぼるる子供かな 永末恵子
夕べまだ子供のあそぶ麦の秋 脇村禎徳「刈生」
夕涼み子供花火音すなり 納涼 正岡子規
夕焼けだ夕焼けだ電線をゆする子供 内田南草
夕顔の咲いて子供の風呂終る 今泉貞鳳
外套の大人と歩む子供かな 千葉皓史(1947-)
夜店の灯明るきところ子供群れ 成瀬正とし 星月夜
大人より子供の淋し竹の秋 田中裕明 先生から手紙
大勢の子供連れたる初詣 松藤夏山 夏山句集
大川に子供流るゝ後の月 攝津幸彦 鹿々集
大根で団十郎する子供かな 一茶
大根焚子供の靴をポケツトに 田中裕明
天瓜粉子供の頃の夕方よ 杉本零
太箸を持ちあましたる子供哉 太箸 正岡子規
嬉々と柿もいで憶良の子供たち 大串章 山童記
子供がちにクリスマスの人集ひけり クリスマス 正岡子規
子供が鋭く画く鶏頭枯れどきを 寺田京子 日の鷹
子供たち眠れる狩の宿を出づ 松藤夏山 夏山句集
子供ちよこちよこする影の落葉を掃いてる 人間を彫る 大橋裸木
子供とも遊ばずなりぬ烏瓜 相生垣瓜人 微茫集
子供と鳥の声こもごもよ茨の実 大熊輝一 土の香
子供には子供の夢のハンモック 吉田一兆
子供にもすぐ釣れ鯊はおろかもの 吉田書房
子供にも昔がありて椎の花 山西雅子
子供に火燵してやれさういふな 河東碧梧桐
子供に赤マント着せて医者へ連れる 人間を彫る 大橋裸木
子供ねぶたヤーヤドウのこゑ絞る 高澤良一 寒暑
子供ねぶた真つ暗がりを押し通す 橘川まもる
子供のとき母は卵を肺病の兄にのみ食わした 橋本夢道 無礼なる妻
子供の前夏みかんに汁充満す 古沢太穂 古沢太穂句集
子供の名忘れし母の手毬唄 西浦一滴
子供の如く眠るも獄、思い疲れて百にあまる 橋本夢道 無禮なる妻抄
子供の歯堕ちゆく先の温暖化 田中信克
子供の溜飲には草根木皮が効く 村井和一
子供の目にも黒門涼し蜂須賀邸 石川桂郎 四温
子供の記憶は正しい憲法記念の日 鈴木 明
子供の財産ぽけっとにさす鳩の羽根 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
子供ふたりいま脱ぎしもの夜の秋 中山純子 沙羅
子供まづ走り込み来て年賀客 深見けん二
子供までゆかた姿や山王祭 日野ふさ子
子供よくきてからすのゑんどうある草地 川島彷徨子 榛の木
子供より大きな鯉や花の雲 岸本尚毅 舜
子供より母美しき金魚玉 大谷おさむ
子供より毛虫怖がる母の居て 三上千栄女
子供らが近寄れば木の実も元気 瀬在有年
子供らと鴉と浜の祭来る 西村公鳳
子供らにいつまで鶴の凍つるかな 石田波郷
子供らにねむき呪文や牛祭 岸風三楼 往来
子供らによめぬ字のあり青写真 石井双刀
子供らに七夕すぎぬ天草採 石田波郷
子供らに地震のありたる春田かな 大峯あきら
子供らに夏は来にけり豊島園 柏崎夢香
子供らに真白き未来日記買ふ 橋田憲明
子供らに藁担がせて墓囲ふ 中谷 謙
子供らに蜥蜴の卵かがやけり 小島健 木の実
子供らに袂つかまれ花疲 馬場五倍子
子供らに雪ふれ妻に春来たれ 京極杞陽 くくたち下巻
子供らのおつとりゐたり*まるめろに 小池文子 巴里蕭条
子供らのおはようおはよう柿若葉 園部白雨
子供らの叱られてゐる蓼の花 辻田克巳
子供らの夕べの顔や穂麦中 正一郎
子供らの春眠はつぎ~に覚め 池内友次郎
子供らの混み合ふ耳鼻科夏果つる 荒巷 樹
子供らの縄打ち遊ぶ松納め 西村和子
子供らの降り込められて苺かな 岸本尚毅 舜
子供らの魚籠の鮴みな生きてゐる 室生犀星 魚眠洞發句集
子供らは叫びて育つ藁ぼつち 綾部仁喜 樸簡
子供らは影のごと跳び春の霜 小松崎爽青
子供らは棒きれが好き水温む 稲田眸子
子供らは馳け地蔵盆町々に 加倉井秋を 午後の窓
子供らも弓矢持たされ熊祭 山岸巨狼
子供らや墨の手あらふ梅の花 室生犀星 犀星發句集
子供らよ秋空に放たうものなく シヤツと雑草 栗林一石路
子供ら遊び去ぬ草ほつほつと生ひ初めし 梅林句屑 喜谷六花
子供ゐて人形寺の冬日かな 細川加賀 生身魂
子供スキー履き捨ててあり庫裡の口 鈴木貞雄
子供三人の智恵の輪に春日照りこぼるる 冬の土宮林菫哉
子供下駄吊して売るや春の風 鈴木真砂女 生簀籠
子供会寺に巣箱を掛けに来し 茨木和生 遠つ川
子供去り夕焼雀そこら跳ね 福田蓼汀 山火
子供地をしかと指しをり蚯蚓這ひ 高濱虚子
子供少し見てゐる雨の里神楽 本田あふひ
子供居りしばらく行けば懸巣鳥居り 中村草田男
子供来て冬木の枝にぶらさがる 橋本鶏二 年輪
子供椅子捨ててありけり草の秋 佐久間慧子
子供橇立掛けてある朧かな 太田土男
子供歌舞伎佐渡南端の柿熟るる 中村智子
子供神輿とつとと行けり父母の前 奈良文夫
子供等が翌なき秋をさわぐなり 一茶
子供等が露を叩いてやつて来し 中村汀女
子供等といたゞく菓子や墓詣 楠目橙黄子 橙圃
子供等にいざ京見せう祇園会(かみそのえ) 紫塵母 俳諧撰集玉藻集
子供等にいつまで鶴の凍つるかな 石田波郷
子供等にまだかまくらの空昏れず 川上玉秀
子供等にアラーの神の初燕 有馬朗人 天為
子供等に双六まけて老の春 高浜虚子
子供等に取りまかれゐる花疲 高木晴子 晴居
子供等に夜が来れり遠蛙 山口青邨
子供等に木の高からずゆすらうめ 高橋淡路女 梶の葉
子供等に歳聞かれけりクリスマス 寺田寅彦
子供等に水鉄砲とよき水辺 高濱年尾 年尾句集
子供等に腰やゝかゞめ木偶廻し 高橋淡路女 梶の葉
子供等のよく通る道黍畑 高木 桐舎
子供等のゐるばかりなり花御堂 印牧萍花
子供等の声も赤らむ曼珠沙華 右城暮石 上下
子供等の寝癖の跡や秋近し 小西正海
子供等の曲芸に似る昼寝かな 江原弘泰
子供等の梅嗅きまはる垣穂哉 尾崎紅葉
子供等の歌うて来るや杉の月 比叡 野村泊月
子供等の毛虫葬る遊び哉 毛虫 正岡子規
子供等の水鉄砲とよき水辺 高浜年尾
子供等の空地とられて懸莨 山口青邨
子供等の籠にも和布磯開 黒川六郎
子供等は羽子ついてゐる師走かな 高橋淡路女 梶の葉
子供等は野を焼く卿等何を焼く 山口青邨
子供等も重荷を負ふて秋の雨 高浜虚子
子供等よ戻りにくれん千団子 成美
子供等よ昼顔咲きぬ瓜剥かん 芭蕉
子供育てて豊かに乳房萎んだ 高垣吉江
子供達お墓参りに来て元気 今井千鶴子
子供郵便局表彰式後柏餅 西本一都
子供鍬老に適ひて草削る 富安風生
子供靴片方冬の海へ出る 小泉八重子
子供靴買ふ銭芋に化けちやつた 石川桂郎 含羞
子守唄尽きることなき子供かな 攝津幸彦 鹿々集
寄附とりに来るも子供等地蔵盆 榊水里
寒ンがゆるむ傘さして子供たち来る シヤツと雑草 栗林一石路
寒凪の子供またがる旧砲弾 桶脇康治
寒声や名乗をしつゝたが子供 風虎
寒施行子供の声も聞えけり 阪之上典子
寒灯に母と子供のうなじかな 中村汀女
寝正月子供の話聞くとなく 丸山綱女
小鳥来ぬジヤケツの赤き子供らに 岸風三楼 往来
尼の守る鑑貞地蔵子供盆 西本一都 景色
山眠り子供の服のあざやかな 岸本尚毅 舜
山笑ふ子供千人隠れゐて 平井照敏 天上大風
山茶花や子供遊ばす芝の上 山茶花 正岡子規
川狩の子供ばかりに人だかり 中村汀女
川狩の子供も魚も泥まみれ 愛澤豊嗣
帰雁のあとの空へふわふわ子供の声 磯貝碧蹄館 握手
干葉つるところ子供にふざけながら友来る 梅林句屑 喜谷六花
幸福肌にあり炎天の子供達 飯田龍太 童眸
庭から雨がせまり降る蚊帳を子供が出る 人間を彫る 大橋裸木
廃校の子供らの木霊している天井 青木久生
形代になでられてゐる子供かな 山西雅子
待春や子供の声の川渡る 小林雷魚洞
思ひつき子供つぽくて木の葉髪 西本一都 景色
息を吹きかけて子供の氷の手 長谷川櫂 天球
手を破りまだしどみ掘る子供かな 阿波野青畝
手花火や路地に子供の声弾む 平尾直子(あすなろ)
抱いてゐる犬か子供か花夕べ 岩田由美 夏安
抱かれゐる子供の顔も秋の暮 爽波
抱き上げて冬日のにほふ子供かな 中島斌雄(たけお)(1908-88)
持て余す子供神輿の大団扇 佐藤信子
摺り溜る籾掻くことや子供の手 芝不器男
放送は子供神輿の来る知らせ 斉藤友栄
教会に子供の声や草の花 大石悦子 群萌
日のくれと子供が言ひて秋の暮 高浜虚子(1874-1959)
日傘から子供育てし腕あまる 大石雄鬼
日短き道にひらひぬ子供本 室生犀星 犀星発句集
旧道は子供神輿の通る道 林 夾山
春の夜や泣きながら寝る子供達 村上鬼城
春泥の子供洗へば吾子となる 北野ふみ
春炬燵子供のやうに眠りけり 伊藤立桂
春蘭を摘むは子供のころの顔 瀧澤和治
春風となる焼あとの子供たち 中川宋淵 命篇
昭和の子供と生れて老いぬ更衣 鈴木鷹夫 風の祭
書初めや□一文字子供達 林 知恵
月さがす舟の子供が若葉見つ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
朝市の子供ばかりの苧殻売 古市文子
朝顔の花より子供ぐつたりと 日原傳
木の上に蛇のをりたる子供たち 石田郷子
木曽谷の今日あたたかき子供かな 大峯あきら 宇宙塵
木枯や背広を脱げば子供来て 藺草慶子
木犀や子供ごころに嫌な道 行方克巳
末枯に下ろされ立てる子供かな 中村草田男
末枯に子供を置けば走りけり 岸本尚毅(1961-)
松過ぎやお菓子買ひをる子供達 小澤碧童 碧童句集
松風や羽田の子供海苔を乾す 細谷源二 鐵
松魚船子供上りの漁夫もゐる 高濱虚子
枯芝に俳諧の国子供の国 福田蓼汀 山火
柏餅さげて子供を見せにくる 三木智子(未央)
栗飯や子供ばかりのくんち客 下村ひろし 西陲集
根木打と云へる子供の遊びありし 高浜虚子
桃吹くやお面をつけて子供来る 佐々木六戈 百韻反故 初學
桐咲けりどの家もどこかに子供居る 加倉井秋を 午後の窓
桜蕊子供の髪に付き易し 渡辺純枝
梅雨晴れの枝に早や子供来てからだ振つてる 人間を彫る 大橋裸木
梟は子供らが寝てしまつて啼く 加倉井秋を 『胡桃』
梨狩の抱いてもらひし子供かな 細川加賀
棒飴や上野の余波(なごり)子供の花 立独 選集「板東太郎」
椿をつづる子供ながら愛嬌のない 梅林句屑 喜谷六花
楠若葉子供歌舞伎の見栄決まる 坂本 巴
極月の山彦とゐる子供かな 細川加賀 『傷痕』
榾を割るそばを子供がちよこちよこす 成瀬正とし 星月夜
模様消えし寝まきに着かえ梅雨の子供 古沢太穂 古沢太穂句集
樹の上の子供に呼ばれ仏生会 田部谷紫
樹頭の多果金柑のみが子供の丈 香西照雄 素心
樽神輿路地を圧して子供ごゑ 高澤良一 素抱
正月の凧や子供の手より借り 百合山羽公 寒雁
正月の子供に成て見たき哉 一茶 ■寛政九年丁巳(三十五歳)
正月の子供等が黄色い芝踏みに来てゐる 人間を彫る 大橋裸木
死の塔にドレスを吊るす子供たち 中烏健二
残雪に足跡はみな子供のもの 川崎展宏
母の日の子供の劇の善意信ず 猿橋統流子
母追うて走る子供の手に通草 橋本鶏二 年輪
毛帽子のとりどり子供らもとりどり 依田明倫
水仙を赤く塗りたる子供哉 寺田寅彦
水盤や子供もなくてとも白髪 百合山羽公 寒雁
汐浴びて他国を知らぬ子供等よ 星野立子
池普請土手に並びし子供かな 松藤夏山 夏山句集
河骨にざぶざぶ歩く子供かな 岸本尚毅 鶏頭
泣いてゐるやうな子供の秋の絵に 田中裕明 櫻姫譚
泣いて居ずやと夕日に子供見に出づる 芹田鳳車
泣きぞめの子供の数もめでたけれ 楠目橙黄子 橙圃
泣きやまぬ子供がひとり冷房車 片山由美子 天弓
泣な子供赤いかすみがなくなるぞ 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
泣顔は子供のままに女郎花 水上郁子
泥くさき子供の髪や雲の峰 井月の句集 井上井月
注連貫ひ見知らぬ子供ばかりかな よしこ
泳ぐかなやさしき子供産むために 攝津幸彦「與野情話」
浅間の煙ではない白い雲の花野、子供と歩く(六里が原) 荻原井泉水
浜五月子供に海と教へをり 高田風人子「明易し」
浦安や子供が洗ふ夜の墓 細川加賀 生身魂
海市見に子供病院看護婦長 折井眞琴
海棠や寺に子供の得度式 小澤和彦
海鳴を聴く父栗を食む子供 相生垣瓜人 微茫集
浸障子あたり子供が列なして 田中裕明 櫻姫譚
涅槃会の子供はもはら食べにけり 細川加賀 生身魂
涅槃会や何見て帰る子供達 涅槃会 正岡子規
湯たんぽについて寝にくる子供かな 笹原耕春
満月が好きで子供のやうなりし 後藤比奈夫 めんない千鳥
漁港古り縄と菫と子供かな 永島靖子
潮が満ちくるかはいた舟の子供 シヤツと雑草 栗林一石路
潮浴びて他国を知らぬ子供等よ 星野立子
炉話の子供が座り直しけり 高尾方子
炎日の蹠子供のように汚す 北原志満子
焚火して子供が遊ぶ柚子の里 殿村菟絲子 『晩緑』
煙草の花改札口に子供の瞳 桜井博道 海上
燈籠の戒名習ふ子供かな 燈籠 正岡子規
父の手に子供ねむたし椎の花 齋藤玄 飛雪
片陰を行く母日向行く子供 粟津福子
牛飼の子供の素足草紅葉 山本洋子
牡丹や母の使ひの子供くる 山本洋子
犬 子供 鶏カティツーラ明易き 津田清子
犬の子を負ふた子供や桃の花 桃の花 正岡子規
猫柳子供が挿して咲きにけり 富安風生
獅子舞来るカチカチカチと子供食う 澤柳たか子
玄関に子供神輿の祝儀置き 高澤良一 寒暑
琉金にやうやく飽きし子供かな 深見けん二
瓜持て片手にまねく子供哉 瓜 正岡子規
田遊びや馬の子供のよく笑ふ 岡田史乃
町はつれ桜桜と子供哉 桜 正岡子規
畦の上は子供となりぬ星迎へ 外川飼虎
白壁や子供がすさみ筆始 黄口
白木蓮や鳥より子供少なくて 依光陽子
白玉や京の子供の京言葉 河野美保子
白粉花や子供の髪を切つて捨て 岩田由美
白靴の平均点の子供達 横山香代子(街)
百日草子供の干衣竿に高く 富安風生
盆踊ここでお仕舞い子供の部 高澤良一 寒暑
目貼すや内地知らざる子供たち 池内たけし
眠たうてかなしき子供花曇 岩田由美 夏安
眼下の怒濤女・子供に日向の岩 鈴木六林男 第三突堤
着飾りて薄をもちて子供かな 岸本尚毅 舜
睡蓮と遊ぶ子供とひらひらす 京極杞陽 くくたち下巻
砂浜に子供逆立ち海女沈み 上野泰 春潮
神の留守子供の習ふ神あそび 染谷多賀子
神まつり大和子供や立田歌 上島鬼貫
秋の雲子供のふっとゐなくなる 奥坂まや
秋祭すみたる浦の子供かな 大峯あきら 宇宙塵
秋草をつかみて泳ぐ子供かな 山本洋子
秋雨や大人子供の話し聲 秋雨 正岡子規
秋風の耳を抑へてゐし子供 相生垣瓜人 微茫集
秋風や海辺の町に子供たち 今井杏太郎
科学する子供と観たる春の星 源 一朝
稻つんで子供載せたる車哉 稲車 正岡子規
穂薄や子供心に憂ひある 岩田由美
空が美しくて子供地べたに描いている 大内伸子
端午の日子供の夢を魚の喰む 松下千代
筍の出てゐる子供たちの径 加倉井秋を 『胡桃』
箱の画や子供に蝶の羽生えたる 蝶 正岡子規
節分の子供を分けて通りけり 石田勝彦 秋興
紅葉且つ散る生まれなかつた子供達 寺井谷子
緑蔭で空にゆきたい子供たち 湊楊一郎
縄飛びや大地ヘノックする子供 古閑純子
羅を着ても子供にまつはられ 波多野爽波 鋪道の花
老人と子供と多し秋祭 高濱虚子
老鶯や少し建て増す子供部屋 石丸泰子
聖樹にも誤爆写真の子供の眼 松浦敬親
肩から覗く子供の眼の寒い日暮を来る 人間を彫る 大橋裸木
育ちゆく子供にかまけ草もとらず 福田蓼汀
臘梅や鐘つきたがる子供たち 山西雅子
自転車に子供を乗せて鹿の中 岸本尚毅 舜
船頭は瀬田の子供ぞ水の月 浜田酒堂
色鳥やベランダに置く子供椅子 鈴木貞雄
芭蕉の葉折つた子供を捕へてゐたり 河東碧梧桐
花あしび手首に子供の頃の傷 鳴海清美
花の山絶えず子供のこゑがして 高澤良一 寒暑
花火揚に子供花火も揚るなり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
花火見る子供の中に坐りけり 温亭句集 篠原温亭
花茣蓙に子供の膝の二つづつ 大嶽青児「塔六集」
花菫牛を恐れる子供あり 菫 正岡子規
花街に子供少なき地蔵盆 竹野梢星
苗障子子供のこゑのはねかへり 細川加賀 生身魂
若竹や子供遊べる潦 松藤夏山 夏山句集
若草に雲雀と遊ぶ子供哉 若草 正岡子規
若草や子供はすぐに転ぶもの 荒金竹迷子
若草や子供集まりて毬を打つ 若草 正岡子規
茶の花のまはりを走る子供かな 岸本尚毅 舜
草いきれ子供のころのけもの径 古川幸市
草に染まりやもりは未だ子供の肌 中山純子 沙羅
草摘めるこの子供等を育て来て 池内たけし
草笛や子供はみんな雲が好き 村田近子
草虱つくづくつけし子供かな 細川加賀 生身魂
菖蒲湯に菖蒲かぶりし子供哉 菖蒲湯 正岡子規
萩叢や隣は子供多くして 石田波郷
落葉陽かげりくる子供の足もと 人間を彫る 大橋裸木
葉牡丹に鼻血ぽとりと子供かな 岸本尚毅 舜
蕣に子供の多き在所哉 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
薬ふる日とて仰むく子供かな 薬の日 正岡子規
藁塚が並び家々に子供あり 加倉井秋を 『胡桃』
虎落笛子供遊べる声消えて 高浜虚子
虎落笛眠に落ちる子供かな 高浜虚子
虫つきし子供の頃のネル捨てず 手塚基子
虫売に叱られてゐる子供かな 藺草慶子
虫干家に子供なくて打たれざる太鼓も 安斎櫻[カイ]子
虹の根を探しにゆきし子供かな 仙田洋子 雲は王冠以後
虹を見し森の子供等眠られず 内藤吐天 鳴海抄
虹立つと呼ぶ七人の子供欲し 中嶋秀子
蚤の子の子供らしきを飛ばしめつ 清水基吉 寒蕭々
蛇の髯に実のなつてゐし子供かな 中村草田男
蜂追ふて蜂の巣を取る子供哉 蜂 正岡子規
蜩の敷居に坐る子供かな 山西雅子
蝉取の子供の中の女の子 高濱年尾 年尾句集
蝶を見るばけもの好きの子供かな 永末恵子 留守
螢追ふ子供の中の子守かな 成瀬正とし 星月夜
袖かけて子供の泣くや花茨 五明
谷川のここにも子供こどもの日 森重昭
谷赭く口まげ見下ろす子供一人 金子兜太
豆の花あたらしき風子供に吹き 長谷川双魚 風形
豆叩く夫婦の間に子供置き 中川秋光
豆飯や子供は口をあけて泣き 山西雅子
負はれたる子供が高し星祭 中村草田男
負はれたる子供もせなで踊哉 踊 正岡子規
負へばすぐ眠る子供や蝶の昼 森本久平
貫頭衣着し子供等の土竜打 持永真理子
賽銭を投げて子供がしぐるゝよ 長谷川双魚 風形
走るもの犬鶏子供障子貼る 谷津盞瓶
路地ごとに神田祭の子供かな 野村久雄
路地幅にほど良き子供神輿かな 中西英明
辻堂に子供が二人田植前 原田喬
追儺会の抱かれて逃げる子供鬼 長谷川郁代
追羽子や燈台守の子供達 松藤夏山 夏山句集
退屈をまだせぬ子供浮葉見て 星野立子
送行や見知りになりし寺子供 松瀬青々
通りゐる子供の声の夜の秋 森澄雄 四遠
遊び居る寺の子供や鶏頭花 比叡 野村泊月
運慶が子供遊びや雪佛 雪仏 正岡子規
遠き子供の泣きやむまで梨見つめをりし 冬の土 宮林菫哉
邯鄲や子供の頃のまくらがり 清水基吉
酒樽の子供みこしや八朔祭 出口賀津子
酸きラムネ子供蛇さげ通りけり 佐野良太 樫
野施行にうす著の子供まじるなり 下村槐太 光背
野社に子供のたえぬ榎實哉 榎の実 正岡子規
野馬(かげろふ)に子供あそばす狐哉 凡兆
野馬に子供あそばす狐かな 凡兆
針供養子供が多くゐて場末 町田しげき
銀の黴引く子供達が散ってゆく 松本恭子 二つのレモン 以後
閻王を仰いで子供ばかりのとき 成瀬正とし 星月夜
闇の夜や子供泣き出す蛍舟 凡兆「猿蓑」
雨の日のつゞく子供に栗ゆでん 田中午次郎
雪の上に轉けし子供をふりむく犬 依田明倫
雪の巴蘭真ッ赤な子供の手が咲くぞ 磯貝碧蹄館 握手
雷が加勢の子供相撲かな 片山由美子 風待月
霜柱子供らが蹴り針千本 殿村菟絲子 『菟絲』
霜解に転んで来たる子供かな 花骨
面ンがほの壬生の子供や花枳殻 五十嵐播水 播水句集
頭に星ともり子供草原を出る 人間を彫る 大橋裸木
風に舌出して子供や月見草 山西雅子
風の中の子供引越しは喪の如し 鈴木石夫
風光る子供歌舞伎の声の張り 砂田千代
風花や鏡の奥に子供の手 皆吉司
餅食べて子供遊べり称名寺 瀧澤伊代次
首かしげさよなら夏の子供らは 対馬康子 吾亦紅
鬼やんま子供二人を攫ひけり 長尾初次
魂棚の前に飯喰ふ子供かな 内藤鳴雪
魔女ピエ口化けて子供の秋一夜 対馬康子 吾亦紅
鮒釣の子供の去りし深緑 山本洋子
鯊釣の子供の裸小さくて 岸本尚毅 舜
鳥ばかり見たる子供や涅槃像 涅槃像 正岡子規
鴨渡る塀の辺弟に似た子供 金子兜太
鶏頭や扉叩いて子供泣く 岸本尚毅 鶏頭
麻三反家五軒子供八九人 麻 正岡子規
黄梅や子供みくじを婆がひく 板谷芳浄
いつしかにただの休日子供の日 黒川悦子
いつもの子と犬が子供の日の土手に 永田耕一郎
いつよりか夫婦二人に子供の日 白鳥順子
おとなしき馬駆り出され子供の日 佐藤博美
おねしよ布団大きく干され子供の日 田中幸雪
かごめかごめなんぞなく暮るる子供の日 石寒太 あるき神
たまご割れば小さな満月子供の日 稲石実
ひんやりと机の下や子供の日 宮坂静生
びしよ濡れのタオルが穴に子供の日 大石雄鬼
みちのくの旅信を吾子に子供の日 向野楠葉
ベンチみな老人が占め子供の日 竹内柳影(ひいらぎ)
ロボツトの描く似顔絵子供の日 本橋美和
不機嫌な檻のコアラや子供の日 福川悠子
中国語少し話して子供の日 影島智子
争へぬかたちの耳や子供の日 河田青嵐
二つまで見えて弱星子供の日 奈良文夫
人形劇豚が主役よ子供の日 八牧美喜子
今日と聞くより子供の日なりしかな 粟津松彩子
今日ばかり望みのままに子供の日 羽村野石
光線銃の青きを浴びる子供の日 篠原 元
円かなる月上り子供の日了る 大熊一枝
吊橋にまた一家族子供の日 吉村ひさ志「ホトトギス」
噴水を最も高め子供の日 殿村菟絲子 『樹下』
大凧の天に貼りつき子供の日 大森三保子
大鍋のカレー空っぽ子供の日 西岡一彦
子を連れて聖書売来し子供の日 河府雪於
子供の日すべり台よくすべりけり 成瀬櫻桃子 風色
子供の日の父にて軽く渓を跳ぶ 平井さち子 鷹日和
子供の日の駅にて機関手貌突き出す 吉田正
子供の日二人暮しに椅子あまる 毛利友美
子供の日壷井栄の切手貼る 松田小恵子
子供の日子供の声を聞きに出る 元田千重(火星)
子供の日室内台上に犬一声 中村草田男
子供の日小さくなりし靴幾つ 林翔 和紙
子供の日手脚すらりと反抗期 三間亮司
子供の日朽たる橋が架りけり 萩原麦草 麦嵐
子供の日背を向けてゐる大ゴリラ 藤本朋子
子供の日薄紅色に遠嶺暮る 福田甲子雄
子供の日近し葉っぱのフレディ読む 高澤良一 随笑
孫尾根へすべり込む鳥子供の日 平井さち子 鷹日和
客の子をあやして泣かる子供の日 八牧美喜子
家計簿をみてをり明日は子供の日 谷口まち子
小児科の一日の閑子供の日 小見山希覯子
怖々と海豚をなでて子供の日 野村多賀子
招かれて昼酒ききぬ子供の日 片山鶏頭子
揺れつつ海へ伸びゆく道や子供の日 中村草田男「美田」
明眸を皆に愛され子供の日 秦野淑恵(ひいらぎ)
書斎より出でて子供の日を遊ぶ 宮下翠舟
最上川下り子供の日なりけり 勝又一透
木の下にゐて木の色の子供の日 今瀬剛一「大祖」
東京のきれいなことば子供の日 西本一都
樹のそばにゐて樹になりぬ子供の日 中尾寿美子
海は一日うごいてゐたり子供の日 原田 喬
火縄銃城に轟く子供の日 岩崎悦子
父として働き帰る子供の日 保坂伸秋「若葉年刊句集」
猫若く蜥蜴を捕う子供の日 長谷川かな女 花 季
王国へゆくエレベーター子供の日 山口都茂女
直立で老歌手唄ふ子供の日 今村きよし
空港に子供の多し子供の日 佐久間道子
竹林の何故か明るく子供の日 蓬田紀枝子
綿菓子の遠き日ありぬ子供の日 高橋日出夫
老人の日なり子供の日の如く 後藤比奈夫 花びら柚子
花圃に花あふれて子等に子供の日 横溝敏子
藤棚の花のこぼるゝ子供の日 今井杏太郎
観覧車よりの眺めの子供の日 清崎敏郎
計画の再び変はり子供の日 稲畑汀子
踏み込んで池ゆさぶりぬ子供の日 平井さち子 鷹日和
迫門へだて雉子の鳴き合ふ子供の日 秋光 泉児
遊船の客溢れをり子供の日 長屋せい子
金太郎飴児と頒ちあふ子供の日 河本好恵
銭湯の番臺高き子供の日 佐々木六戈 百韻反故 初學
長男の髯面むさき子供の日 高澤良一 素抱
集ひ来て家ふくらます子供の日 杉本和子「花竪香子」
雨降れば雨にドライブ子供の日 稲畑汀子 春光
飴細工の小鳥とびたつ子供の日 中村貞子
鳩の頭のうなづき歩く子供の日 菊地万里
いつのまに家鴨のこども杜若 田中裕明 櫻姫譚
うれしさもこどものくれしからすうり 森澄雄
こどもこゑごゑお盆のきんかんみかん 中塚一碧樓
こどもたちしやがんでる中の金魚の荷 原田種茅 径
こどもにも釣れてゐるなり花鰔 森 澄雄
こどものときあそびたかつたねと夏来 辻桃子 童子
こどものときの眼で 列車の窓の灯を見おくる 吉岡禅寺洞
こどもの手いつもあたたか紅葉狩 岡田日郎
こどもの眼皆うらゝかに桜草 増田龍雨 龍雨句集
こどもまで田をのぞきつつ田植歌 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
こどもらは上野つきしか蟲すだく 室生犀星 犀星発句集
こども等に涅槃の絵解きはじまりぬ 島田鶴堂
これほどのこどもうせたるかざぐるま 佐々木六戈 百韻反故 初學
さくらさくらこどもは頭から歩く 津田このみ
しやがみてもこどもになれず蝉の穴 大島雄作
とほるときこどものをりて薔薇の門 大野林火「冬雁」
ひと猪口の酒のこどもら虫送り 森田公司
ふくろふを見においでよとこどもかな 佐々木六戈 百韻反故 初學
まんさくやこどもの涙うすみどり 星野麥丘人
一日こどもら青無花果を飛礫とし 下村槐太 天涯
三人でこどもの撞ける迎鐘 長谷川櫂 蓬莱
何に屋根へ上つてゐるこども夏の白雲 中塚一碧樓
何釣るとこどもに問へばわたか釣 森澄雄 游方
冬の日の厨の好きなこどもかな 木津みち子
冬朝日のてりこどものこゝろ一ぱいににはとり 中塚一碧樓
取り込みの昆布揃へるこどもたち 森田公司
吹上げの水に隠れてゐるこども 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
喜雨たちまち路燈こどもの如く濡れ 磯貝碧蹄館 握手
噴水の玉なす光こどものくに ふじむらまり
地蔵会のこどもの色の紅冬瓜 森澄雄
墓石の傍のこどもの陽炎よ 中田剛 珠樹以後
壬生狂言こどもが先に笑ひけり 中谷五秋
夏灯し他人のこどもつやつやす 瀬間 陽子
夕べ遊ぶこどもの声や秋隣 増田龍雨 龍雨句集
妻はこどもの横に眠ってこどもくさいぞ 加藤太郎
小松引棚田をとべるこども見ゆ 飴山実
幕あげて覗くこどもら壬生念仏 岸風三楼 往来
年の火にかざすパパの手こどもの手 高澤良一 寒暑
御会式のこどもの笛にふりむきぬ 星野麥丘人
振れてゐる郁子の蔓にはこどもかな 藤後左右
時計の中の淡いくらがりこども病む 林田紀音夫
桃桜飛騨のこどもに甘々棒 林火
樹頭に蝉片手は今日もこどもに貸す 磯貝碧蹄館 握手
湯上りの匂ひのこども地蔵盆 中戸川朝人 残心
灸は小さいのが好く春の夜こどもの手が好く 荻原井泉水
犬丸の里や夜興引くをのこども 涼菟
生れて来てこども團栗を拾つてゐる日南 中塚一碧樓
盆踊たけなはいつかこども退け 高澤良一 随笑
盆過ぎのこどもがまたぐ鯨尺 長谷川双魚 風形
着ぶくれて俳句に狎れしをとこども 小島千架子
秋空へ打ってこどもの闘鶏樂 高澤良一 素抱
空が遠くてこどものやうに寝冷えせり 栗林千津
竹皮を脱ぐにぎやかにこどもごゑ 下田稔
竹皮を脱ぐやこどもはいつも旬 辻美奈子
腹に臍の眼津軽のこどもに林檎が咲く 磯貝碧蹄館 握手
花桃やこどもがのぞく水たまり 長谷川櫂 天球
苧やこどものころに戦あり 大石悦子 百花
草の香にうもれしこども生身魂 田中裕明 櫻姫譚
葵祭こどもの箸を並べけり 長谷川櫂 天球
藪巻やこどものこゑの裏山に 星野麥丘人
虚子の忌や夢にこどもの頃の家 小林貴子
街道の門火にこどもひとりいる 澁谷道
裏山をこどもの通る雪解かな 水野紀子
豆まきやこどもの蒲団敷き並べ 増田龍雨 龍雨句集
金魚売こどものゐない街通る 幸喜美恵子「未来図合同句集」
金魚飼ふこどもあがりの夫婦かな 森川暁水 黴
障子開いてこゑとこどもととび出づる 小川軽舟
雀来て紅梅はまだこどもの木 成田千空
雨の日のこどもとあそぶ太鼓を打ち太鼓ころばし 中塚一碧樓
霜の一戸こどもを起す声洩るる 北野民夫
霜やけのこどもねむればねむくなる 飴山實 少長集
露けさやこどもの声に目が覚めて 長谷川櫂 蓬莱
音読のこどもに壁炉焔鳴る 中戸川朝人 残心
風毎に葉を吹出すやこども竹 千代尼
飛花を追ふこども追ひ駈くこどもかな 高澤良一 寒暑
鮎汲のこども乾かす巌かな 飴山實
鳥黐の香やこどもらとすれちがふ 赤城さかえ
鴬の聲を眞似をるこどもかな 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
鶏舎よりこども出て来る三日かな 大矢節子
麦の秋光のこども生まれけり 畑 毅
こどもの日あんぱんまんのビデオ撮り 高澤良一 素抱
こどもの日の家族旅行に加はらず 安住敦「柿の木坂雑唱」
こどもの日小さくなりし靴いくつ 林翔
こどもの日母の結びし飯しまる 亀井糸游
こどもの日祝ぎて凧あぐ利根の風 田中あき穂
こどもの日自転車納屋を出て光る 亀井糸游
こどもの日駝鳥韋駄天走りかな 矢代克康
ミドリ虫べん毛使ふこどもの日 高澤良一 燕音
今にして躾け足らざるこどもの日 高澤良一 さざなみやつこ
共用の水色ポロシャツこどもの日 高澤良一 ぱらりとせ
子どもらの水に映りてこどもの日 藤本美和子(泉)
子に意見されてこどもの日なりけり 小川田鶴子
子を起す声けふ聞かずこどもの日 亀井糸游
客を引く舸子の嗄声こどもの日 亀井糸游
小鳥屋に兎も亀もこどもの日 成田千空「白光」
庭に敷く夕餉の筵こどもの日 坂本竜門
庭ゆきて老がつまづくこどもの日 水野 柿葉
戦ひのなき世の来よと子を抱きて鯉のぼり見す今日こどもの日 来嶋靖生
洗濯機朝から始動こどもの日 高澤良一 さざなみやつこ
父の靴磨き忘れずこどもの日 亀井糸游
睫毛濃き駱駝に揺られこどもの日 吉原文音
箱釣の章魚足を投げこどもの日 亀井糸游
谷川のここにも子供こどもの日 森重昭
風紋に鯉幟立ちこどもの日 西本一都 景色
鹿児島の街の跣子こどもの日 亀井糸游
●里子 
この村に里子の多し負真綿 富岡犀川
しがみつく里子や牀のきりぎりす 才牛
ロボットの犬を里子に山眠る 小平 湖
蜜柑買ふて里子見に行く小春哉 小春 正岡子規
●子女 
七夕の子女と遊んで家にあり 鈴木花蓑句集
元忌の客に遠しや子女の室 後藤夜半 翠黛
冬ごもる子女の一間を通りけり 普羅
栗拾ふ子女に乞食の礫かな 島村元句集
永き日やいつ迄裏に子女の声 久米正雄 返り花
華美ひと色に成人式の子女あはれ 相馬遷子 雪嶺
行く春の亭に子女よる嶽一つ 飯田蛇笏 霊芝
青写真わが子女の児なれども 下村槐太 光背
●私生児 
私生児が畳をかつぐ秋まつり 寺山修司 花粉航海
川口市街一本の煙突が私生児 阿部完市 証
●子息 
あふむけの鮫の子息をしてゐたり 大木あまり 雲の塔
この子わが子息絶たず鳴くつづれさせ 千代田葛彦 旅人木
●捨て子 
そらまめの花の捨子となりゆけり 高橋たねを
吹かれつつ鬼の捨子となりたき日 源鬼彦
夕風や捨子のごとく雪嶺攀づ 加藤知世子 花寂び
妻を捨て子を捨て花に死にし人 下村梅子
小夜の月慰め兼ねつ捨子泣く 椎本才麿
山の日はいつも無傷に捨子花 菊地一雄
捨子花血は水よりも濃しといふ 木内怜子
松かげに落葉を着よと捨子かな 素堂
松蔭に落葉を着よと捨子かな 山口素堂
椿より白く捨て子の置かれあり 冬野虹
湖畔馬車鬼の捨子が窓に見え 河野南畦 『硝子の船』
灌仏や捨子すなはち寺の沙弥 キ角 四 月 月別句集「韻塞」
猿を聞く人捨子に秋の風いかに 芭蕉
百合の香の中に捨子のこゑありし 飯田龍太
笑ふよりあはれ捨子の笑ひ顏 正岡子規
霜おきて衣かたしく捨子かな 桃青 選集「板東太郎」
霜を着て風を敷き寝の捨子哉 霜を着て衣片敷く捨子哉 松尾芭蕉
●倅 
ビール先づすゝめてくれる倅あり 中谷今子
婿倅来たりや卒爾の鰯鮓 岩木躑躅
徒花のいづれも白き倅かな 攝津幸彦 未刊句集
あのせがれ父より伸びて卒業す 啓文
●双生児 
お揃ひの白きサンダル双生児 斎藤夏子
初鰹双生児同日歩き初む 中村草田男
寒鮒をまつくろに飼ひ双生児 原田喬
桜桃や笑窪のちがふ双生児 長田等
●惣領 
太箸や惣領といふは粗忽者 清水基吉
袴着や一坐に直る惣領子 袴着 正岡子規
髪置や惣領の甚六にて候 髪置 正岡子規
●稚児 
あばれ稚児土筆握りて帰り来し 文挟夫佐恵 遠い橋
おしろひの剥げたる稚児も花まつり 百合山羽公
かげろふを稚児行列のよぎりけり 辻 桃子
きらきらと稚児隼の渡るなり 黒田杏子 一木一草
くぐりたる楓に染まる稚児の列 白井 爽風
この稚児のあみだ被りよ筑摩鍋 長崎片帆
さるすべり担がれてくる稚児ふたり 中田剛 珠樹
すぐかしぐ稚児の冠練供養 福原実砂
だだ押しの鬼に稚児泣き犬の鳴き 磯野充伯
どんたくや琵琶弾き歩む稚児の列 白髭葉子
ねむたさの稚児の手ぬくし雪こんこん 橋本多佳子
ひかへたる稚児も凜々しや弓始 山口青邨
ひたすらに桃たべてゐる巫女と稚児 飯田龍太
ゆきのした稚児咲きはやも別れかな 河野多希女 納め髪
カンナの黄禁忌の稚児の肩車 吉田紫乃
一歳の稚児が礼して年新た 都筑智子
一船に稚児のあふれて天満祭 ほんだゆき
二十日会祭稚児の準備も整ひて 太田文萌
人形に倣ふといへど鉾の稚児 夜半
余花にして呼ばるるその名稚児桜 林昌華
僧もする稚児の化粧や花祭 石田雨圃子
初富士や石段下りて稚児ケ淵 茅舎
初東風や波を遊ばす稚児柱 黒崎かずこ
初能の稚児神妙に大地踏み 太田権六
初鶏や稚児がいふこと皆新らし 加藤知世子 黄 炎
化粧して稚児がさくらを浴びてをり 佐川広治
化粧して稚児凝然と鉾に立つ 山口超心鬼
十二支の宝冠を揺り渡御の稚児 西本一都 景色
南部ばやし造花紅葉を稚児負ふて 高澤良一 寒暑
吹けど吹けどふくらまぬ毬裸の稚児 古沢太穂 古沢太穂句集
妊りし母を従へ十夜稚児 安部氷出海
姫むかしよもぎや稚児の金産毛 佐藤鬼房
宙跳んで白息揃ふ稚児の舞 橋本榮治 麦生
宵鉾の灯りて稚児を上げにけり 比叡 野村泊月
宵鉾の稚児うつとりと面輪かな 比叡 野村泊月
山茶花や稚児が得度の朝の鈴 青堂
左右より化粧直され祭稚児 森田峠(かつらぎ)
床蹴り泣く稚児にほぐれて月見草 加藤知世子 花寂び
延年の能舞ふ稚児や雪もよに 加藤三七子
御所人形の稚児輪ふくらむ牡丹の芽 長谷川かな女 花寂び
慈恩寺の爺と婆の舞や稚児桜 阿部トヨ子
手を放し稚児を歩ます菊花展 右城暮石 上下
春泥に低まりゆくや稚児の塚 長谷川かな女 雨 月
昨夜の鉾稚児いただきて練りきたる 源義
曼珠沙華稚児の歩みを危うす 加藤知世子 黄 炎
柿若葉くちはた濡れて稚児よろし(あめ五粒ほどを購ひて) 『定本石橋秀野句文集』
母の背に眠る稚児あり花祭 柏谷さち子
母の背の稚児山伏や花供養 内藤十夜
泣く稚児の声がとびつく油照り 加茂松風子
泣虫の稚児山伏や花供養 若月瑞峰
海棠や稚児に出す子に浴さす 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
涅槃稚児行列親と手を継ぎ 上岡末喜
涼しさや瓜にかきたる稚児のかほ 筑紫磐井 野干
燈籠にねびたる稚児やあはれなる 飯田蛇笏 山廬集
産声や唇紅させる葉月稚児 長谷川かな女 牡 丹
田遊びの稚児に寝られてしまひけり 椎名書子
白粉のはげし稚児かな草の餅 大谷句佛 我は我
眦に化粧名残や祭稚児 ふけとしこ 鎌の刃
祇園会の稚児親たちにかしづかれ 玉木里春
神楽稚児泣くよりつよきかむばせを 西本一都
祭稚児抱き下ろさるゝ足そろへ 桜坡子
秋時雨稚児祭文の声ひびく 沖倉三郎
稚児うまれ円座一途に古びけり 小林康治 四季貧窮
稚児が描く恋猫の貌人間に 加藤知世子 黄 炎
稚児が淵濤の曳きゆく落椿 北見さとる
稚児つひに抱かれて雨の練供養 判治遼子
稚児の列かくれ現れ雲珠櫻 石井喜世女
稚児の口真一文字に花神楽(花神楽十二句) 橋本榮治 麦生
稚児の名書く産衣のやうな形代に 榊原惇子(天佰)
稚児の歩に合はすお練や初不動 川澄祐勝
稚児の笠集まる金魚すくひかな 枡野雅憲
稚児みなの帯は絞りの花祭 成田耕作
稚児も馬も白き鼻すじ林檎村 平井さち子 完流
稚児よりも僧うつくしき花會式 角川春樹
稚児を抱く胸のぬくもり仏生会 市川 和美
稚児加持も大開帳の一行事 爲成菖蒲園
稚児抱きて乳母の詣りぬ千団子 亀井芳花
稚児溜みなおとなしく桜持ち 福田蓼汀 秋風挽歌
稚児百合の丈のあはれに揃ひけり 吉田万里子
稚児群るる水清冽に岩菲咲く 伊東宏晃
稚児育つ夏や杉の香ことさらに 原コウ子
稚児舞の大地踏み鳴る六花かな 野沢節子 八朶集
稚児舞の床を鳴らせり十夜寺 吉原田鶴子
稚児舞の畦行く茅花ながしかな 石田阿畏子
稚児舞楽遠巻きにして花灯籠 加藤有水(麓)
稚児蟹の空遠くなる貨物船 菅野茂甚
稚児行列柊の花こぼしゆく 甲斐ゆき子
稚児輪結ふて葵祭を見し記憶 田辺ひで女
稚児達に晝風呂わきぬ花の寺 原石鼎
稚児達の立並びけり杜若 比叡 野村泊月
稚児隼の帰巣や秋雲より一気 奈良文夫
稚児餅の振舞二軒茶屋に来て 四明句集 中川四明
竹伐の初めに稚児の言葉あり 山下花石
竹伐の法師や稚児に従ひて 田中王城
竹伐や稚児も佩いたる飾太刀 五十嵐播水
練供養稚児には長き時間かな 佐伯ツヤ子
練供養稚児も浄土へ渡りゆく 出口巡一路
練稚児のたまりの枝垂ざくらかな 鈴木しげを
練稚児の冠かたむく遅日かな 長谷川かな女 牡 丹
練稚児の真日浴びて着く花御堂 下田稔
色鳥は仁和寺の稚児に来りけり 尾崎迷堂 孤輪
花まつり稚児の器量は家ゆづり 柳澤みはら
花会式稚児は抱かれて帰りをり 黛まどか
花御堂四辺に稚児の寄り着きぬ 高澤良一 鳩信
花御堂天童稚児のめぐりめぐる 福田蓼汀 山火
花祭稚児の口みな一文字 明石志園
花祭稚児の眉墨太かりき 村山敏行
花祭稚児出てくるはでてくるは 阿部杉風
花祭稚児白象の鼻を撫づ 岸 正儀子
花菜畑の広さに呑まれ稚児まるし 長谷川秋子
落葉せる西行櫻稚児櫻 会津八一
虫の音の終りつぶさや稚児抱いて 松村蒼石
行列の稚児が泣き出す練供養 塩崎 緑
追羽子や君稚児髷の黒眼がち 夏目漱石 明治三十二年
遣羽子や君稚児髷の黒目勝 夏目漱石
金冠の珱珞稚児の眼まで垂れ 山口誓子 不動
鉾に乗る稚児の寐ざめや明易き 菅原師竹句集
鉾の稚児帝のごとく抱かれけり 古舘曹人 樹下石上
鉾の稚児目だけが動く厚化粧 清田喜代子(未央)
鉾の稚児貴人のさまに振る舞へり 大槻制子
鉾の稚児雨の袂を重ねけり 高田正子
鉾の稚児馥郁として過ぎにけり 能村登四郎 冬の音楽
鉾町に囚はれもののごとく稚児 内田美紗 浦島草
鉾祭注連縄を断つ稚児の太刀 外園善行
鉾稚児のあくびのあとのうすなみだ 細川加賀 生身魂
鍋雫雨の筑摩の祭稚児 伊藤柏翠
鐘楼より稚児我を嬲る花野哉 西山泊雲 泊雲句集
開帳や大き過ぎたる稚児ひとり 広田恵美子
雲海や稚児の礫の朝焼けて 加藤知世子 黄 炎
震災忌るると縋りて稚児地蔵 松村蒼石
風花に背をかがめたる稚児の舞 佐藤鬼房
鱈祭稚児の化粧の賑はしき 阿部月山子
黒岳の稚児百合の実ぞ深紅なる 西本一都 景色
鼻筋の一刷毛白し祭稚児 森重夫(風)
●嫡子
●長子 
あつさりと家去る長子蝌蚪に足 辻美奈子
いぬふぐり一つの墓に長子次子 蛯名晶子
おぼろ夜や紺を長子の色となし 石川雷児
お彼岸の見られ疲れの幼長子 池田澄子
われに声似て成人の日の長子 大熊輝一 土の香
七月や長子の髭の少し生え 石寒太 炎環
人日や長子に頒つ居を得たり 角川源義
俳諧に霰飛び散り長子得し 齋藤玄 『玄』
冴え返る長子を抱ける兵の遺影 島村久枝
十二月八日や長子のみぞ知る 川崎慶子
君もまた長子の愁ひ蚯蚓鳴く 藤田湘子(1926-)
夏雲の崩れしままに長子逝く 細谷定行
春寒く長子ゐぬ日のはや五日 田中英子
春蝉や長子もつとも先を歩む 成瀬櫻桃子 風色
暖冬や長子歩ませ次子を抱き 近藤一鴻
柏餅やはらかきかな長子欲し 勝亦年男
根深汁長子やさしく頼りなく 大平芳江
槐 の花序みあげる いつの日も長子 伊丹公子 機内楽
槐の花序みあげるいつの日も長子 伊丹公子
次郎柿長子来るまで取って置く 片山依子
母恋の長子長身帰省せり 脇本星浪
永き日や長子自立の荷を括る 目羅忠雄
燕の巣長子その母を酷使せり 安住敦
猫拾ひ来て長子立つ露時雨 原裕 青垣
硬く巻く長子の傘や花八ツ手 大木あまり 山の夢
秋の昼筧へあゆむ長子あり 宇佐美魚目 秋収冬蔵
茄子の花長子必ずしも継がず 高崎武義(狩)
茎漬の石は長子の手を借りて 林 民子
葩餅長子の嫁となる人や 大石悦子 百花
藪入りのごと来て帰る長子なり 中川岩魚
藷穴の大きく長子還り来る 大江かずこ
行秋や長子なれども家嗣がず 雑草 長谷川零餘子
謝罪する役目の長子刈田道 佐藤紀生子
貝割菜家を離れし長子次子 小林恒子
長子かえらず水の暗きに桃うかぶ 寺山修司(1935-83)
長子たる責重き眉汗光る 唐橋秀子
長子とは泳ぐ手をふることもなく 田中裕明 先生から手紙
長子われ母と祀りて歳の神 山口梅太郎
長子修学旅行より戻りて 高澤良一 ねずみのこまくら
長子守る炉火高々と置きにけむ 石川桂郎 含羞
長子得し胸に冬黒潮の紺 大岳水一路
長子我長子ともなひ墓詣 福田蓼汀
長子来てそそくさ帰る既望かな 小松初枝
長子次子稚くて逝けり浮いて来い 能村登四郎「易水」
長子歿し百日を経たり夏たけなは 内藤吐天 鳴海抄
長子生れ耳の中まで光る騒音 市原正直
降る雪に長子羽摶つごと来るよ 角川源義 『神々の宴』
雪の富士妻恋坂に長子待たせ 相原左義長
雪の椿目旅住み長子帰る日ぞ 米田一穂
雲雀野や長子の脛の長き立つ 瀧春一 菜園
魂棚や風の集まる長子の座 戸恒東人
鳥雲に長子家発つ日の近し 桑田青虎
●寵児 
雪嶺に我こそ寵児たらむとす 行方克己 昆虫記
干潟いま寵児のごとく子蟹たち 庄司圭吾
日の掛声朝から半裸の日の寵児へ 磯貝碧蹄館 握手
●連れ子 
蓮根の連れ子つぎつぎ現はるる 高澤良一 随笑
黄水仙ともに連れ子の一人づつ 貞永まこと
傍に連れ子の如く落葉籠 西村和子 かりそめならず
●父無し子
●童子 
CDからこぼれ落ちた夕餉の笛吹童子 松岡月虹舎
ありありと童子山水初暦 斉藤夏風
おめきつゝはやづぶ濡れの梅雨童子 小林康治 四季貧窮
きな粉餅木の葉を皿に童子仏 中山純子 沙羅
きんぽうげ酒買ひ童子つまづくな 林薫
さくらんぼの花簪や童子仏 斎藤てつ子
しぐれつつ陽のさす牛馬童子かな 鈴木享子
すかんぽやはや汗匂ふわが童子 千代田葛彦 旅人木
たゞ一つ童子の墓や鶏頭花 高桑化羊
つばくらめ秩父童子のこぼれ出て 永方裕子
なづな咲く野に出て遊べ童子仏 伊藤よしと
はた~や我孫子童子の丈越ゆる 山田みづえ
はにかみし白山童子かはごろも 田中裕明 櫻姫譚
みんみんや帯の解けたる一童子 石田あき子 見舞籠
ものいはず童子遠くの梅を指す 夏目漱石 明治三十二年
よろけたる酒呑の童子雪のうへ 石寒太 翔
わらわらと影踏む童子桃岬 中村苑子
一粒の露火色なす童子佛 宮坂静生 山開
不意に来て蝋梅毟る二度童子 中澤喜平治
両の手に砂糖黍ばい焼け童子 磯貝碧蹄館
二度童子次々に出る手毬唄 河村純子
二度童子狐のかんざし挿してくる 柿本多映
二度童子跼りたる野分跡 攝津幸彦 未刊句集
二度童子飛び散つたるや吾亦紅 森田緑郎
二童子の長けしを祝う夏葎 和田悟朗 法隆寺伝承
二童子は紅葉まみれや松へ翔ぶ 田中水桜
五月礼讃天へ手を挙ぐ童子像 大橋敦子 匂 玉
傷なめて童子さへ霜を踏んで行く 岩田昌寿 地の塩
光りしは雁の童子か雁帰る 山田みづえ 手甲
凧童子去り青麦の丘残す 石塚友二 光塵
凩に木の股童子泣く夜かな 大須賀乙字(1881-1920)
出て遊べ伊万里焼の童子桜かざし 川崎展宏
北風をゆきつぶら童子を拾ひくる 栗林千津
医師来れば障子の穴に風邪童子 三嶋 隆英
半眼に眠り病余の寒童子 石塚友二 光塵
厚氷割つたる歓喜童子かな 川崎展宏
参歳の童子の騎虎図夜の秋 磯貝碧蹄館
合歓昏れて地べたに遊ぶ麻痺童子 齋藤玄 『玄』
吾子病めりこれやこゝなる独楽童子 石塚友二 光塵
夏明寺矜羯羅童子眠りさう 宮坂静生 樹下
大きな火星へ汚れ童子等焚火上ぐ 川口重美
大塊の紀州梅干二度童子 関口比良男
大綿や善財童子くらがりに 辻桃子
大釜の甘茶をのぞく童子かな 松村蒼石 寒鶯抄
大釜を雪に舁ききぬ湯屋童子 有森 一雄
天壇の丸い片蔭童子出づ 川崎展宏
太陽と風と童子とすかんぽと 太滝時司
子規の句碑が霙童子となりにけり 江里昭彦
孫と寝て朝孫童子と落葉焚く 及川貞 夕焼
安倍童子と病院前にころびしは 阿部完市 純白諸事
寄りそへる石の童子や冬うらら 小田井茂子
寒垢離や二人の童子目に見ゆる 寒垢離 正岡子規
寒施行童子月夜となりしかな 杉山十四男
寡黙の国童子童女に草いちご 西東三鬼
山祇の金剛童子照紅葉 西崎白星
山粧う八瀬童子が謀りごと 仁平勝 東京物語
年の豆掌にのせ給ふ童子仏 阿久津都子
弥陀の前童子独楽打つ富貴の里 松本 進
御会式の夜を赫あかと湯気童子 磯貝碧蹄館
微笑童子円光童子福壽草 平木智恵子
微笑童子現る睡蓮のひらくとき 文挟夫佐恵 雨 月
折檻のあはれ柔毛の寒童子 小林康治 四季貧窮
指ほどの燭炎え露座の童子仏 成田千空 地霊
撥釣瓶修二会気負へる湯屋童子 桂 樟蹊子
攻め上がつたる饅頭の黴童子 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
新涼や木の香ほのぼの童子仏 山岸 治子
新甘藷を一本置けり童子仏 中山純子「瓔珞」
日焼童子洗ふやうらがへしうらがへし 橋本多佳子
日短く運ぶ童子の火が強し 飯田龍太
春の簗藪を鳴らして童子現る 大串章
春来る童子の群れて来る如く 相生垣瓜人(1898-1985)
月明の花の童子と遊ぶべし 角川春樹 夢殿
木の股の童子よ「春」は馬で来る 林原耒井 蜩
木枯のしんがりにつく童子かな 石嶌岳
杉花粉涙童子となりにけり 石嶌岳
松下童子に問へば桑の実を食うて夫る 尾崎紅葉
柘榴裂け吾は晴天童子なり 古館曹人
桃の木や童子童女が鈴生りに 苑子
榾の火や童子に課する三字経 四明句集 中川四明
欷歔(ききょ)童子まろびて出でぬ別れ霜 康治
欷歔童子まろびて出でぬ別れ霜 小林康治 四季貧窮
正月の山の指笛童子かな 皆川白陀
母の亡き故の上手か独楽童子 大橋敦子 手 鞠
毬踏まれ山栗童子産まれけり 塩原栄子
池童子二ン月緑さしにけり 永田耕衣 葱室
泥髪の川狩童子吾子もをり 根岸善雄
淡雪や伏せ眼とも見え童子仏 河野南畦 湖の森
滝冱てて制多迦童子ころびをり 阿波野青畝
滝浴びの童子の言葉谿に澄む 河野南畦(あざみ)
無垢童子穂麦盗人と追はれける 石塚友二 光塵
熊野径饑童子のついてきし 辻桃子 ねむ 以後
父したふ長靴童子蝶生る 堀口星眠 営巣期
父母の杉より花粉童子かな 磯貝碧蹄館
独楽童子ふところに手をあたためつ 黒川 龍吾
玉虫がとんで笛吹き童子仏 和知喜八 同齢
瓜の姫茄子の童子と冷しけり 田中裕明 先生から手紙
甚平童子おやすみ言ひに母を率て 平井さち子 紅き栞
癩童子なりや夏樹に顔隠す 平畑静塔
百合を得て謡れる裸形童子かな 五十崎古郷句集
石楠花に伏苓を掘る童子かな 飯田蛇笏 霊芝
神無月浮雲に童子乗る夢を 茨木和生 野迫川
祭半纏着たる童子をさらひたし 品川鈴子
秋の蝶火焔童子を炎えたたす 磯貝碧蹄館
秋声も曾て童子に説かれけり 相生垣瓜人 微茫集
童子々々からたちの花が咲いたよ 北原白秋
童子あり熱き彼岸の団子あり 成田千空
童子いでて夜来の栗を拾ひ鳧 会津八一
童子にも受験苦三寒四温かな 草間時彦
童子の眼碧むやませが滲み通る 高野ムツオ
童子めく大ひしくひぞ吾に来よ 小島千架子
童子二人担へば重し芭蕉の葉 西山泊雲 泊雲句集
童子仏春雪の帽ややあみだ 川村紫陽
童子呼べば答なし只蚯蚓鳴く 蚯蚓鳴く 正岡子規
童子寝る凩に母うばはれずに 橋本多佳子
童子来よ蚕屋の障子の目貼り剥ぎ 長谷川かな女 雨 月
童子童女みんな花野に寝落ちたる 柿本多映
童子追ふ家鴨の嘴や社若 野村喜舟
竹林を童子と覗く春夕ベ 西東三鬼
笛吹童子時雨の夜は何をなす 鈴木六林男 王国
筍のずんぐり太し童子堂 大熊輝一 土の香
箱根路の童子仏打つ虎ヶ雨 古澤活水
緑の羽根黄口童子に呼ばれ買ふ 百合山羽公 寒雁
老眼に潤める木の芽童子佛 石川桂郎
背高童子こんがら童子初蕨 長谷川櫂 蓬莱
芋腹をたたいて歓喜童子かな 川端茅舎(1897-1941)
芋腹を叩いて歓喜童子かな 川端茅舎
芭蕉林童子出没してありぬ 喜舟
芭蕉樹下に童子を待つて書空し 雑草 長谷川零餘子
花しきみあぐら童子が笛吹く図 古沢太穂
花は/蜂吹く/八人童子の/嵐かな 林桂 銀の蝉
花蕎麦や畑中にある童子堂 落合千鶴
若やぐや息の童子も今朝は春 水哉 選集「板東太郎」
英霊迎ふ童子稲城より駆けり 岸風三楼 往来
草いきれさめず童子は降りてこず 田中裕明 花間一壺
草の庵童子は炭を敲く也 炭 太祇 太祇句選
草矢吹き俳諧童子となる峠 宮田和子
菊咲くや舟漕いで童子酒買ひに 菊 正岡子規
蒲の穂を吹いて小鬼となる童子 川村三千夫
蔓引くや馬鈴薯童子連なりて 坂本香寿子
虹の輪をくぐる白雲童子かな 野澤節子 『駿河蘭』
蜑の子はだんまり童子耳袋 大石悦子 聞香
蝶々の金伽羅童子制多迦も 佐々木六戈 百韻反故 初學
蝶食うべ二度童子となりにけり 柿本多映
螢追ふ月の童子となつてゐし 根岸善雄
袋から童子のごとく赤蕪 原田喬
貝割菜育て老い行く八瀬童子 高木青二郎
釈迦童子万の辛夷の天を指す 佐久間東城
野に遊ぶ七夕童子びしよ濡れに 原裕 『王城句帖』
野を駈くるなむなむ童子露けしや 石寒太 あるき神
鍬入れてじやがいも童子覚ましゆく 西村 梛子
門前の童子を盆の菓子に呼ぶ 赤松[ケイ]子
雨乞や雨宝童子を撫でまはし 石島 岳
雪の土に日の斑の踊り童子墓 鷲谷七菜子 雨 月
雪の日や隣家の童子欠木履 黒柳召波 春泥句集
雪の朝童子茶臼を敲くなり 黒柳召波 春泥句集
雪霏霏とこんこん眠る童子仏 須田巳之吉
霜の昼あまりしづかに行く童子 中川宋淵 詩龕
霜月の眼を燃やしいる山童子 長谷川かな女 牡 丹
霜除す芭蕉大人童子かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
露ながら玉菜かゝへて童子哉 中川宋淵 詩龕
青露や遺影茅舎は善童子 福田蓼汀 秋風挽歌
鞭うちて野火と走れる童子あり 福田蓼汀 山火
頬赤い山無花果を童子仏 和知喜八 同齢
風童子鶴のまはりを翔けめぐる 大串章 百鳥
飯つけて頬花あかり二度童子 平井さち子 鷹日和
餅焼くや洟たれ童子世に絶えて 白岩三郎
饅頭や足の黴たる童子ども 永田耕衣 闌位
馬鈴薯収穫童子童女らころころと 栗生純夫 科野路
鬼やんまに逃げられし顔童子仏 加藤知世子 花 季
鬼打木倒して童子逃れたり 安藤橡面坊
魚船捲く裸アイヌに童子と山羊 石原八束 空の渚
鯖火燃ゆ青面童子寄るところ 宇佐美魚目「草心」
鵙高音西京の童子来りけり 村山古郷
鵯のまど童子太子の像をがむ 及川貞 榧の實
鶏乗り童子山駆けて万作が咲く 金子皆子
鹿刺を酒顛童子の如く食ふ 百合山羽公
麦ほこりかかる童子の眠りかな 芥川龍之介「澄江堂句集」
麦埃かぶる童子の眠りかな(洛陽) 芥川龍之介 蕩々帖〔その一〕
●豚児 
愚豚児の一つ妙ある接木かな 菅原師竹
夏虫や縁に並べる豚児達 島村元句集
●二世 
ゑらゑらに咳するネコ二世になる 加藤郁乎
二世(にせ)かけて結ぶちぎりや雪の笹 夏目漱石 明治三十二年
元朝や二世に仕へ式部官 東洋城千句
別るれば二世も他人や青葉木菟 鈴木真砂女 夕螢
妻二世なれど素直よ茄子漬くる 菊池純二
船の名に二世三世秋高し 片山由美子 風待月
蜩や師弟は二世を契らねど 殿村菟絲子
●箱入り娘
●初子 
ひとり寝もよき宿とらん初子の日 去来
やゝ老て初子育る夜寒かな 炭 太祇 太祇句選
よろこぶを見よや初子の玉はは木 嵐雪
初子抱き入るやすらひの花傘に 鳴戸海峡
口切や初子規音羽焼 調泉 選集「板東太郎」
復活祭隣家初子の幟立つ 及川貞 夕焼
●末子 
わが末子立つ冬麗のギリシヤの市場 飯島晴子
クリスマスギフトに末子鞍欲しと 上野泰
人老いて末子可愛し雛祭 雛祭 正岡子規
僧にやりし末子座に無き関囲爐裏哉 石島雉子郎
命毛ながし末子に与ふ吉書の筆 北野民夫
四等を喜こぶ末子運動会 稲畑汀子
大試験地獄の底に末子かな 上野泰
妻許せ末子入学に落ち泣ける 河野静雲 閻魔
引き据えて末子にのます風邪薬 田島弘子
形代やひとりとなりし末子の名 橋本冬樹
我が歯一つ末子に示し露へ投ぐ 中村草田男
投扇興末子さかしく笑ひ初む 大谷句仏
末子が食べし小鯛の裏を母夜食 中村草田男
末子の一指繃帯緩く昼寝せる 北野民夫
末子嫁き小春の母に白き猫 鍵和田[ゆう]子 未来図
栗焼けば寝そびれあそぶ末子かな 水原秋桜子
栗飯や末子が継ぎし毛虫眉 小島千架子
梓弓末の末子の袴着や 福田井村
梢に巣函幹に末子の牛乳函 中村草田男
水車は慈父小鳥は末子来て遊ぶ 中村明子
蓬餅一つ残りし末子かな 松浦 力
行きづりの初午末子へ加護祈る 中村草田男
賀状そくばく末子に綾取せがまるる 民夫
野遊びの一番先の末子かな 上野 泰
霜の花いつもあなたの末子です 大木あまり 火球
何故の末の子の下痢避暑の宿 上野泰
初泣や末の子の頭をぶつけきぬ 小島健 木の実
取箸やちよろぎを添へて末の子も 大日向洋
夕焼にそまりやすさよ末の子は 今瀬剛一
末の子が匙なめて日を短くす 長谷川双魚 『風形』
末の子が来てうす日さす犬ふぐり 長谷川双魚 風形
末の子が黴と言葉を使ふほど 中村汀女
末の子に一枚だけの賀状来る 永森ケイ子
末の子に大いなるかな掛蒲團 上野泰
末の子に眼のない父やとろろ汁 高岡いつ
末の子のおたまじやくしを科学する 上野泰
末の子のよろこび上手草の花 つじ加代子
末の子の今の悲しみ金魚の死 上野泰(1918-73)
末の子の入学式に参りけり 青峰集 島田青峰
末の子の凧引きずりて得意なり 蘇山人俳句集 羅蘇山人
末の子の又起きて来し夜長かな 泰
末の子の子猫に何か諭しゐる 塗師康廣
末の子の家に住ひて桃の花 長谷川櫂 蓬莱
末の子の宿浴衣著て顔小さし 上野泰
末の子の折目正しき御慶かな 上野泰
末の子の泳げるつもり浮輪つけ 稲畑汀子
末の子の瓶に大蟻飼はれをり 上野泰
末の子の見上ぐる背丈卒業す 稲畑汀子
末の子の訝しむ瞳の寒なまこ つじ加代子
末の子もめとり萩刈る手が淋し 田中英子
末の子も別にねだりて蚕かな 一茶
末の子や汐干の留守の雛遊 汐干狩 正岡子規
末の子をたよりに生きて魂祭 福田蓼汀 山火
老いの子の末の子の雛祭るなり 林原耒井 蜩
負け嫌ひなる末の子の独楽を打つ 上野泰
*たらの芽や放浪の血を末つ子に 大木あまり 火のいろに
乗つ込みや末つ子が田を継ぐといふ 増田斗志
十八の末つ子の避暑見送りに 亀井糸游
末つ子に就職の目處日脚のぶ 下村ひろし 西陲集
末つ子のまま年重ね墓洗ふ 岡田順子
末つ子の受験に励む太郎月 高澤良一 さざなみやつこ
末つ子の声の大きが卒園す 服部智子
末つ子の嫁も末つ子桃の花 平松三平
末つ子の水撒き上手水打てり 高澤良一 ねずみのこまくら
末つ子の色足袋らしく脱がれあり 上野泰 春潮
末つ子の親となる日や桜桃 和田千恵子
末つ子の鳥籠にまで年を祝ぐ 中戸川朝人 尋声
末つ子を踊の輪へと押し出だす 山田弘子 初期作品
蚕ざかりの末つ子だけが家にゐず 藤後左右
還暦の今も末つ子墓洗ふ 白石多重子
●秘蔵っ子 
紅梅や秘蔵の娘猫の恋 紅梅 正岡子規
●一粒種
●独り子 
独り子が寒の鰻を惜しみ食ふ 沢木欣一
独り子のもの淋しがる良夜かな 高橋淡路女 梶の葉
●一人っ子 
そらに龍宮夕焼けこやけの一人つ子 鈴木明(野の会)
なんとなく一人子同志ゆすらうめ 藤原さつき
一人つ子空を相手の羽子をつく 土生依子
一人子と猫と小鳥と春休み 小森はる子
一人子と閑かに住めり松飾 草城
一人子に烈風青葉はりつく窓 金子皆子
一人子に見する苧殻を焚きにけり 轡田 進
一人子のおもちやで遊ぶ冬日向 山根きぬえ
一人子の一人遊びの青写真 林 龍坊
一人子の凧揚りけり麦の秋 麦秋 正岡子規
一人子の卒業めでたかりけるよ 高濱年尾 年尾句集
一人子の征きし家とて門の秋 高橋淡路女 淡路女百句
一人子の独り遊びや青写真 林 龍坊
一人子の鏡に吹けり石鹸玉 牧野暁行
一人子の雪沓いとけなかりけり 後藤夜半 底紅
一人子は榧の木の下施餓鬼寺 田中裕明 櫻姫譚
天瓜粉役者のやうな一人っ子 古柴和子
暖冬の一と間一人子庭にゐる 梅林句屑 喜谷六花
氷柱打ち落す牛飼の一人つ子 太田土男
目ざし場の女の一人子を負へる 高野素十
綿の荷に凭れまじくて一人子や 中村草田男
●双子 
ゆく春や閉しかかる戸の双子星 宮武寒々 朱卓
タクシーのぬくき充満双子の歌 和田悟朗
一対の雛の辺双子睡りをり 文挟夫佐恵 遠い橋
七夕や新家の双子美しき 四明句集 中川四明
双子とはいふも良く似て甚平着て 森高たかし
双子山の裏も表も春の雪 長谷川かな女 雨 月
双子山脊肩のさむい夕日哉 滝井孝作 浮寝鳥
双子山見えず雪降る曾我の墓 中島月笠 月笠句集
双子山頂のはだれ夕日かな 滝井孝作 浮寝鳥
双陸や瀟々として春の雨 春の雨 正岡子規
唐黍の青生毛吹く双子山 原裕 青垣
寒卵割れば双子の目出度さよ 高浜虚子
寒玉子割れば双子の目出度さよ 高浜虚子
寒食や頂まろき双子山 星野麥丘人
形代の一枚に書く双子の名 小林勇二
手にとりし雛のあられの双子かな 上野泰 佐介
旅さびしかの嶺に春の双子星 福田蓼汀
春光や双子を乗せし乳母車 当真嗣栄
枇杷すゝりをはりし双子宙にせる 岸風三楼
柿若葉双子の襁褓ひるがへり 小栗しづゑ
梅雨晴や双子抱きて力士来る 長屋せい子
潮焼けの面ひとしき双子かな 五十嵐播水 播水句集
牡丹を双子見てゐる山の雨 大木あまり 火のいろに
産声を上げて双子やさくらんぼ 水原 春郎
福の豆双子の牛の背に跳ねる 児玉幸枝
萓草の十時にひらく双子の家 宮坂静生 樹下
著莪咲ける双子寺杖の束休み 岩淵英子
蝶狙う悪い双子の弟が 高澤晶子 純愛
蝶飛ぶや双鞭将の鞭の尖 蝶 正岡子規
行水にまた泣いてゐる双子かな 鈴木芳野(圓)
隠沼の鷭の双子や菱紅葉 邊見京子
雛に似ぬ双子をときに疎んずる 文挟夫佐恵 遠い橋
青柿や双子またよく似てきたり 齊藤美規
青葉越しみ名の双子峰二つとも 林原耒井 蜩
鵜縄さばきに双子あゆます水ほとり 文挟夫佐恵 遠い橋
●愛娘 
屠蘇汲むや酌に立ちたる愛娘 梨葉
愛娘子らの乳房かたちづくはるなれや 室生犀星 犀星發句集
愛娘連れ知事さかり場へ梅雨霽れ間 宮武寒々 朱卓
●継子 
千枚に継子のごとき植田かな 橋本榮治 越在
夢のごと咲くや継子の尻拭ひ 島谷征良
日向ぼこまた爪をかむ継子かな 飯田蛇笏 山廬集
炉話に作者不明の継子物 上島清子
継橋知れず野芹を摘んで戻りけり 芹 正岡子規
耳たぶの継子のやうに冬帽子 猪俣千代子 秘 色
芳草の中の継子の尻拭 大橋敦子 匂 玉
菊摘みて香る手のまま子へ便り 菅谷久雄
葛水やまま母まま子老いにけり 草間時彦 櫻山
警察大学跡地継子の尻拭ひ 矢島三榮代
霜きびしなどて名づけし継子岳 福田蓼汀
音といふ継子を連れて雷は 丸山嵐人
●水子 
かなかなや諸仏の中の水子仏 斉藤夏風
加齢なき水子の像や冬ざくら 麻殖生伸子
吹雪く夜の乳房は水子のために張る 朝倉南蝶
埋めたての水子を掘りに雪をんな 木内彰志
春満月水子も夢を見る頃ぞ 保坂敏子(1948-)
春荒に泣くや水子の風ぐるま 千代田葛彦
春風や頭ふれあう水子たち 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
朧夜の猫が水子の声を出す 飯田龍太
水子 水子と 烏が啼いて 地蔵に雨 伊丹公子 ドリアンの棘
水子らがゆすり搖れるよ赤まんま 坪内稔典
水子仏母呼ぶための風車 倉橋羊村
水子坂梅雨に錆びたる風車 矢島渚男 延年
水子寺仏が鷭の声を出す 野田青玲子
滴りや日のとどかざる水子仏 澤村昭代
漂ひて水子詣りの白日傘 荒井正隆
生涯に水子一人や桜桃忌 黒木 胖
盆の川水子蛭子や骨無し子 高橋睦郎
石榴散るひかりよ翳よ水子仏 鈴木鷹夫 大津絵
綿入れを被てゐる水子地蔵かな 谷口和子
草餅とヤクルト供え水子仏 深尾法順
薄氷か紙の水子か紙漉場 百合山羽公 寒雁
虎落笛水子かへせと繰りかへす 保坂敏子
貧農の水子を喰ひに蛭泳ぐ 角川春樹
賑はひを外れて水子に除夜詣 山田節子
雪女郎水子の寺へ立寄れり 高橋克郎
青蛙跳ぶ跳ぶ水子地蔵さま 菊池郁子(屋根)
風車廻るほかなき水子寺 高橋洲美
●息子 
らんぼうに斧振る息子冬の天 細谷源二 砂金帯
クリスマス夫と息子も誕生日 調 清子
フリージア置きたる息子の机上かな 岩田あや子
何用となく息子来る秋の暮 藤堂和子
初夢に息子を乗せて空港へ 中野太浪
初袷ふいと出て行く息子哉 巌谷小波
初電話梨のつぶての息子より 田中丸とし子
土用鰻息子を呼んで食はせけり 草間時彦「夜咄」
墓のごとく老農の背をながす息子 細谷源二 砂金帯
大根煮て息子古風に育てけり 石川昌子
天高し息子よ離れ住まふとも 伊藤俊二
嫁にくし息子にくしや十夜婆 木田千女
年酒酌む我より大き息子の手 山崎ひさを
息子との短き会話敬老日 山崎ひさを
息子らは浜へ涅槃西風われに 如月真菜
放蕩息子遺體の帰宅紅うつぎ 塚本邦雄(1922-)
時ぞ早苗庄屋の息子泥をふむ 露言 選集「板東太郎」
木瓜の実の道楽息子よく肥えて 高澤良一 随笑
梟は山の深息子をあやす 矢島渚男 采薇
檻のやうなる金属ベッドを組み立てて息子は憩ふ受験終りて 花山多佳子
沖の漁場息子に譲り日向ぼこ 猿橋統流子
炎天下息子に自愛を申しつける 池田澄子 たましいの話
父似の娘母似の息子七五三 後藤比奈夫 めんない千鳥
祭すや海士の息子は海士を継ぎ 細谷源二 鐵
突然の息子の帰郷目刺焼く 南冨美子
笑はせて帰る息子や夜の秋 影島智子
素足投げ出して みな良い息子たち 大橋勇三
職工喫煙所人夫の息子戦へり 細谷源二 鐵
落霜紅總領息子食ふや食はず 塚本邦雄 甘露
虫籠に顔貼り付いてゐし息子 稲畑廣太郎
豆飯や息子の恋を励まして 小田切輝雄(杉)
降誕祭息子に猫背を突つかれし 池田澄子
障害の息子へさしだす双肩 須崎美穂子
青年は息子花野ですれ違ふ 鳥居真里子
食積を減らしに息子一家来る 森田峠 逆瀬川以後
鮟鱇鍋息子夫婦とつつき合ふ 長村雄作
鰊群来息子に花嫁参らせて 大江田貢
鶯餅息子が日曜をもってくる 奥田筆子
麦ぼこり母に息子の臍深し 西東三鬼
麦秋や馬に出て行馬鹿息子 炭 太祇 太祇句選
●娘御 
けなげなる娘御ありて菊悲し 京極杞陽
●申し子 
木賊刈大日輪の申し子ぞ 平畑静塔
申し子の如くちらほら冬桜 西村美子
神の申し子濃墨桜天へ満つ 田中水桜
●貰い子 
三日月や貰ひ子育つ草の宿 阿部みどり女 笹鳴
●嬰 
あやす嬰は地蔵の重さ秋の暮 高澤良一 素抱
いわし雲嬰をはじめて草に置く 友岡子郷 風日
うす紙に花種嬰の深ねむり 長谷川双魚 風形
うららかに紙衣の僧が嬰を抱くや 角川春樹 夢殿
お遍路のうすももいろに嬰抱いて 永井由紀子
ごにょごにょと愚図りてゐしが嬰昼寝 高澤良一 素抱
さくらどき裏返しては嬰を洗ふ 平井さち子 鷹日和
さへづりや柔らかくなる背中の嬰 八木尋子
しやぼん玉吹きたくなりて嬰に買ふ 安田晃子
すが漏りや首やはらかき嬰を洗ふ 河村静香
ずつしりと汗ばめる嬰あづけられ 榊 澄子
ねむる嬰に日向がありて福寿草 伊藤京子
ひとさしゆび握られて嬰とさくら観る 上野さち子
ひとの嬰をふはりと抱きぬ新松子 嶋田麻紀
ものの芽や乳吸ふ嬰の息の波 武市あいこ
やんはりと嬰抱き上ぐる新樹光 小島とよ子
ゆりかごの嬰が主賓よクリスマス 中村とみ子
マシユマロのやうな嬰抱き桃の花 渡辺富子
ヴェランダに癒えて嬰の吹くシャボン玉 伊藤文子
一歩二歩あるき初む嬰に小鳥来る つじ加代子
万緑や嬰に会ふたびに言葉増え 馬場美雪
三寒の嬰をまるめて皿秤 長谷川双魚 『ひとつとや』
二歩三歩土踏む嬰や桃の花 坂部新蔵
今生れし嬰の十指の涼しかり 三上さかえ
保育器の嬰の脚うごく木の芽晴 三国眞澄
全身で哭く嬰の産毛汗光る 渡辺和子
冬あたたか嬰が母の手を食べんとす 池田澄子
冬海の青きを嬰に見せにけり 椿和枝
初弥撒や白繭に似て嬰の睡り 中尾杏子
初晴やてのひらほどの嬰の肌着 高橋千恵
初花や拳をかたく湯浴みの嬰 佐々木雅翔
初蚊帳に泣く前の嬰ひとりゐる 長谷川双魚 『ひとつとや』
初雛や嬰は全身でよろこべる 伊東宏晃
初風呂の檜匂へり嬰を抱く 佐藤淑子
初風呂や寶の如く嬰を抱く 菅野岑子
受け取りし初湯の嬰のさくら色 景山 薫
口鳴らす嬰へも一口小豆粥 大島時子
合歓の花揺れさうな嬰は泣きさうな 仙田洋子 雲は王冠
合歓夕べ借りて抱く嬰のやはらかし 神尾久美子 掌
名月や宝の山は鼻の尖 嬰夫
名無き嬰も白をまとひぬ初蝶も 文挟夫佐恵 雨 月
嚏して嬰はこの世に席を占む 小美野いづほ
土間を出て嬰の這ひ込む梅莚 佐藤古城
在祭祓はる嬰のよく眠り 有本信之
地虫出づ嬰の手足の深くびれ 白井爽風
夏嗚呼と嬰の尻ぺた洗いおり 大沢輝一
夕鶴の堤づたひに嬰をねかせ 大岳水一路
夜泣きする嬰と競ふや雨蛙 永易まるみ
夜神楽の神を舞ふまで嬰をあやす 瀬尾ふくの
大好きないも粥嬰に戦あるな 大石 治
大旦はじめの言葉嬰が出す 長谷川双魚 『ひとつとや』
大枯野戻りて嬰を抱きけり 永島理江子
天瓜粉玩具のごとく嬰置かる 佐野鬼人「脇役」
天秤の一籠種芋一籠嬰 後藤綾子
嬰ありて今年まことに世継榾 森澄雄
嬰かたはらにうなづきて紙漉けり 長谷川双魚 風形
嬰が笑ふ笑ふと笑ひ冬日向 今瀬剛一
嬰が覚めて言ひたきことの春の山 松山足羽
嬰となる妻にふふます冬苺 松本進
嬰に似て胸に来たがる今年竹 寺島たみ子
嬰に妻をとられし夜の氷菓かな 野中 亮介
嬰に迸る乳よ花火が街ゆする 奈良比佐子
嬰ねむりゐて霞まだ山下りず 長谷川双魚 『ひとつとや』
嬰のことなど手賀沼の春浅し 入倉朱王
嬰のこゑ家ぬちにあり茄子の馬 関戸靖子
嬰のごとくにころがされ年移る 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
嬰の凛々し菖蒲鉢巻お食ひ初め 猪熊富士恵
嬰の匂ひある家桜咲きにけり 能村登四郎 天上華
嬰の口へ運ぶゼリーの漫画匙 坂本たけ乃
嬰の四肢の弾みて勁し天瓜粉 伊東宏晃
嬰の夜泣き外には冬田あるばかり 門脇無声洞
嬰の寝巻ピエロの水玉模様の夏 高澤良一 素抱
嬰の尻を十指でつつむ初湯かな 小林波留
嬰の手の先へ先へととかげの子 炭谷種子
嬰の指拡げさせたき初御空 北川とし子
嬰の柩一寒雀日あび過ぐ 友岡子郷 遠方
嬰の知恵のあなどりがたし初笑 坂田かほる
嬰の視線より蝶々の逃げ易し 佐藤美恵子
嬰の覚むる度に蜂の巣かたちなす 佐藤秋水
嬰の部屋に遊んでやんま引き返す 木島松穹
嬰は夢に大空_み辛夷の芽 田所節子
嬰は川捨姥は山捨盆太鼓 鳥居美智子
嬰みせにゆくだけの用松の芯 山本洋子
嬰も母も灼けし白濤眸にやどす 大岳水一路
嬰ら殖ゆ四月垂直に空滴りつゝ 磯貝碧蹄館 握手
嬰をつれて子が来て良夜となりにけり 池田博子
嬰を寝かすごとく不作の俵積む 長崎美根
嬰を膝に立たせ弾ませ十二月 伊藤いと子
嬰去りてしばし腑抜けの浮人形 広上あい
嬰嬉々と笑ひ梅雨雲日をこぼす 小松崎爽青
嬰寝かすやうにたたみぬ花衣 野島美津子
嬰抱いて加はる郡上踊かな 山田春生
嬰抱いて釣瓶落しの爆心地 福谷俊子
嬰抱かぬ胸に色なき風あふれ 岡部名保子
嬰泣きて女礼者の帰りけり 浦野芙美
嬰生まるはるか銀河の端蹴つて 小澤克己
嬰留守の揺りかごのぞく初句会 植村通草
安産のママに抱かれ嬰紅葉の手 佐藤ももみ
寒行者抱かれし嬰の火に透けり 吉沢利枝
寝返りのできたる嬰や台風裡 半田かほる
小春日や嬰の手足の休むなく 園池 澄子
岐阜提灯嬰の寝顔を照しをり 乾佐知子
待宵やむずかる嬰にブラームス 大城百合子
或は嬰或は鹿の子として生れし 田仲了司
手うつしの嬰がくさめをすることも 長谷川双魚 『ひとつとや』
手に乗せて嬰の靴選ぶ買初 杉本東舟
抱いてゐる嬰のほてりや萩の花 深見けん二 日月
指をさす嬰の笑窪や桃熟るる 箱守きよ子
指櫛に嬰の髪梳く青葉風 水下寿代
搗きあげし餅を嬰子のごと運ぶ 肥田埜勝美
搗きあげし餅嬰のごと手から手へ 菅野一狼
数の子をむんずと掴みくれたる嬰 嶋田麻紀
数珠で嬰撫でて初護摩終りけり 川澄祐勝
新樹光嬰渾身の一歩かな 中島喜久子(けごん)
新米を量りしあとに嬰のせる 岸野咸子
新調の夏服嬰に逢ひにゆく 森 操
日に干して嬰の蒲団の綴ぢゑくぼ 増田 松枝
日に当てる時間帯嬰とシクラメン 三浦澄子
旺んなる夏に生まれて嬰の名美雨 高澤良一 素抱
春の雪熨斗の形に嬰包む 平岡公子
春の雲嬰に三歩の力足 高橋青矢
春燈やはなのごとくに嬰のなみだ 飯田蛇笏 雪峡
春疾風嬰の墓石を瀬にひろへり 友岡子郷 遠方
春草の嬰をしやぶらせてよ晩年 永田耕衣 人生
曼珠沙華赫いまつげの嬰が生れ 黒木悦子
木枯しや母の紅衣が嬰包み 林 翔
柚の花や薄紙に切る嬰の爪 田中隆子(夏爐)
柚子湯してぬくもる嬰を皿秤 佐藤美恵子
桃の花乳房に埋まる嬰の目鼻 児玉素朋
桔梗は嬰を生まんとて軋みけり 木村美智子
桜貝ひろしまを稟く嬰やどり 赤松[ケイ]子
櫛かるくとおる嬰の髪花ぐもり 中野韶子
母の背に嬰がえぶりの音頭とる 河本修子
母われの掌を握る嬰よ梅探らう 仙田洋子 雲は王冠以後
母われの春眠嬰にしたがひぬ 上田日差子
水無月やまだ歩かざる嬰の靴 田辺典子
水遊び虫のやうなる嬰の腹 田中幸雪
沐浴の嬰の屈伸桃の花 小川木久江
河豚鍋や嬰は廻し抱きされながら 坂下千枝子
流燈のことにも嬰を照らし行く 井上弘美
涼しさや瞳を合はせ嬰眠る 足立和信(杉)
深吉野に秋の祭の嬰を抱く 大峯あきら
清明の湯を出て嬰のまゆげかな 田中幸雪
湯あがりの嬰の無瑕に天瓜粉 相澤乙代
湯上りの嬰を真ン中に冬座敷 本宮哲郎
濤灼けて眠りゐる嬰に母の影 大岳水一路
炎帝や嬰のかんしやく負けはせぬ 仙田洋子
爽籟を母かと思い嬰ねむる 高澤くに子
片乳房に嬰ゐて蛙の目借時 柚木紀子
獺の祭嬰へ並べし玩具かな 浅井節子
珠と抱く嬰の眠りや小鳥来る 青嶋三千代
産湯して嬰は夢見の初笑 杉本和子
田螺鳴く嬰にたしかな蒙古斑 根岸春子
白絹に嬰包み来て春祭 茨木和生 野迫川
眠い嬰を母へ返しぬ*しどみの実 田中美智代
眠りをり大緑陰の嬰の足 幸田豊秀
眠る嬰の指の動きてちちろ鳴く 中村純代
睡い嬰を母へ返しぬ*しどみの実 田中美智代
神迎ふ珠のようなる嬰抱きて 村上和子
秋晴や丸ごと受くる嬰の温み 生田恵美子
穂に出よと田遊びの嬰をさしあぐる 佐野美智
立春や嬰の真白き土踏まず 森 美砂子
立秋や萬里小路に嬰が泣ける 塚本邦雄 甘露
端午くる胡座の底の好きな嬰よ 吉田紫乃
竹植ゑて邑にひとりの嬰のこゑ 赤座閑山
笑ふ嬰に飯粒の一歯五月来る 奈良文夫「溯上」
笑ふ嬰を囲み一家の初笑 塩川祐子
筍やむかしは嬰を間引して 茨木和生 倭
紋付が嬰抱いてゆく水の秋 山尾玉藻
緑蔭の嬰の夢ごと渡さるる 安田晃子
緑陰に盗まれさうな嬰の眠り 古市絵未
縁側にころがす嬰と八ツ頭 津幡龍峰
老桜めざむ嬰子の赤さもて 殿村菟絲子 『樹下』
聖五月指の先まで夢みる嬰 亀岡昭乃
聖夜待つケーキのやうな嬰の靴 石橋茉莉
腹がけに金の一文字昼寝の嬰 山田登美子
芍薬の蕾ふやして這い出す嬰 池田光子
花桃や父似母似と嬰抱く 田中和子
茎立や嬰の一歩は風の一歩 山本正清
草萌や土踏まずなき嬰の足 水原春郎
菖蒲湯の嬰はこぶしの力抜く 大石泰子
薫風や嬰の欠伸のOの口 今瀬剛一
衣更嬰にもありし力瘤 田中芙美
谷中路地初湯出て来し嬰に会ふ 奈良文夫
豆を撒く鬼まだ棲まぬ嬰のほとり 野木徑草
赤とんぼ嬰にありたけの子守唄 山田眞爽子
起ちそめし嬰の足ゆらぐうまごやし 鈴木貞雄
足なめて指なめる嬰梅日和 東 佳代子
這い這いの嬰の領域夏座敷 西谷美恵子
野あそびの嬰の這ひ出でて内裏跡 松裏薙世
銀の匙嬰にふくませる砂糖水 河本修子
銀河澄む神のつくりし嬰の眸 森戸光子
銀漢や函を得しかに嬰の睡り 神尾久美子 桐の木
長月 嬰に逢わねば夏もおわりの水に色 宇多喜代子
陽炎の中より嬰を引つこぬく 黛執
雨乞いに夜泣きの嬰をおいて出る 吉田さかえ
露山家一竿嬰の白づくし 白鳥一子
青山椒三日抱かねば嬰重し 嘴美代子(萬緑)
風の小雪ガラスの城に嬰の微笑 柴田白葉女 花寂び 以後
風光るこはさぬやうに嬰抱きて 都筑智子
餅花やひとり遊びの嬰がゐて 小原英湖
首のまだ坐らぬ嬰へ夜番の柝 長田等
鳥雲に腕の中より嬰のこゑ 辻美奈子
鳳仙花紅さすごとき嬰なりけり 上野さち子
鴬笛嬰の眼こちら向きにけり 田口俊子
●養子 
マンゴーの家に睡る ジャワからの養子ケン 伊丹公子 山珊瑚
出代や養子になりし丁稚あり 正岡子規
出代や養子になりし丁稚なり 出代 正岡子規
濁酒や養子してはや老農夫 百合山羽公 故園
火事見舞団十郎の養子かな 柑子句集 籾山柑子
養子して秋の祭の笛ならふ 百合山羽公 故園
●落胤 
落胤のやうに去にけり秋の蛇 伊藤白潮
落胤や知るはこがらし男坂 加藤郁乎
●令嬢 
令嬢の煙草嗅ぎつつ競馬記者 三谷昭 獣身
令嬢の犬緑蔭に便催す 茨木和生 木の國
●忘れ形見 
暁紅の忘れ形見の糸とんぼ 佐藤鬼房
●童 わらは 
わらはべのまかげせりけりくらべ馬 後藤夜半 翠黛
わらはべの両足に水ぬるみけり 綾部仁喜 樸簡
初雷やはしめて落しわらは病 春雷 正岡子規
寒し熱しわらはやみこそ新枕 正岡子規
小わらはの物は買ひよきわかなかな 召波
小わらはも冠りたがるやつくま鍋 一茶「八番日記」
春立つとわらはも知るや飾り縄 芭蕉
瘧病(わらはやみ)童病(わらはやみ)とぞ滴れり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
童(わらはべ)の声しるべなり神送り 含粘 俳諧撰集「藤の実」
竹馬のわらはに蹤くは女のわらは 青篁
鰯ひく數に加はるわらは哉 鰯引く 正岡子規
*ばい打てる童の帯のゆるみをり 山口誓子
「万歳」を強ひられ巨童桐の笛 香西照雄 対話
あかそ刈る山の童に岨の露まぶし 内藤吐天 鳴海抄
あそびゐし女の童も寒泳ぎ 五十嵐播水 播水句集
いそがしや童を摘めばつくづくし 園女 俳諧撰集玉藻集
いたいけに童の運ぶ火桶哉 火桶 正岡子規
おかざりの橙落す童かな 飾 正岡子規
お涅槃に女童の白指ふれたりし 飯田蛇笏
かいま見し浴衣童の今逝くと 中村汀女
かなんばれ童が水を打擲す 黒鳥一司
かの童まだ遠凧につながれる 林翔 和紙
からたちの花童どもよ憎め 梅林句屑 喜谷六花
ぎんなんを焼く火に酔ひし童かな 永田耕衣 傲霜
さるぐみをとる日曜の童たち 鈴鹿野風呂 浜木綿
ざりがには構え童はまたたかず 板坂壽一
すたすたとあゆみゆるめず牛童 後藤夜半 翠黛
そら豆の怪童に遭ふ夢のなか 高澤良一 ぱらりとせ
とめ桶に菖蒲入れたる童哉 菖蒲 正岡子規
ともに緑あの子欲しいと童唄 加倉井秋を 『隠愛』
なまはげにしやつくり止みし童かな 古川芋蔓
はなうめのくれなゐに童が鉄*かま 飯田蛇笏 春蘭
ほととぎす鬼童が牛をかづく夜に 中勘助
まだ宵の童ばかりや虫送 西本里石
まんさくや笑みて歯欠けの山童 上田五千石 琥珀
み仏は素足の童五香水 山本柊花
ゆすらとる童に山鵲は揺曳す 飯田蛇笏 春蘭
ゐもり釣る童の群にわれもゐて 杉田久女
をけら火の低きは童振りきたる 山下喜子
ハブ壷をさげて従ふ童かな 篠原鳳作
メーデーの鮮童にんにくの親しさや 古沢太穂 古沢太穂句集
一つとりしえびがにを手にいきみゐる小童よ勁く大きく育てよ 五島美代子
一村の童の数の流し雛 茂里正治
七月の童糞せり道の上 石田波郷
万里小路(までのこうぢ)瓜をかかへて女の童 筑紫磐井 野干
三尺の童となりぬかまくらや 宇咲冬男
三尺の童の丈は枯鶏頭 殿村菟絲子 『菟絲』
三日はや小童が足袋破れ初む 石塚友二 光塵
下駄履いて童女子すずめ歩きかな 田中北斗
丸裸怪童丸は鯉抱く 高澤良一 燕音
井に遊ぶ島の童や落椿 大橋櫻坡子 雨月
代馬の鼻竿敏き童かな 菅原師竹句集
佐保姫に山童の白にぎりめし 大串章
光のなかに腕組むは美童くる予感 金子兜太 早春展墓
六十も童に似たり榧柑子 言水
冬刻々絵馬の童の剥げ易し 古舘曹人 能登の蛙
冬木立童かけ入りかけ出でぬ 池内友次郎
冬枯や童のくゞる枳穀垣 冬枯 正岡子規
冬枯や鳥に石打つ童あり 冬枯 正岡子規
冬河の辺にて戦車を童ら囲む 伊東宏晃
凧あげて鳶にさからう伊勢童 八木三日女 赤い地図
凧揚げて天狗をたのむ童かな 正岡子規
凧童児去り青麦の丘残す 石塚友二
刈りかけて去る村童や蓼の雨 杉田久女
初冬や童はつゝそでをぴんと張り 阿部みどり女 笹鳴
初彌撒に仕へをりたる美童かな 藤田湘子 てんてん
初春や赤裝束の牛童 初春 正岡子規
匙なめて童たのしも夏氷 山口誓子「凍港」
十月の日向日陰に童声 柴田白葉女 花寂び 以後
千振を引く杣童犬を連れ 小玉芋露
咳一家に童唄などほろにがし 河野多希女 彫刻の森
唄ひだす童の前へ氷水 日原傳
啓蟄の童ら家守りて山の昼 松村蒼石 寒鶯抄
団栗をもろに*つぐめる山童 飯田蛇笏 霊芝
墨をする童も連れて夏断かな 一 茶
夏月に古潭の窗は童らの燈 飯田蛇笏 雪峡
夕刊を売る童とありぬ慈善鍋 篠原鳳作
夕蛍峡の童は人見知り 伊沢健存
大鐘の下に童遊ぶ秋日かな 宮武寒々 朱卓
天草とるに手つなぐほどの童なる 林翔 和紙
女の童手もて掬へる目高かな 大橋櫻坡子 雨月
女の童海髪よるのみの日を送る 加藤かけい
女人等を見捨てし一童復活祭 中村草田男
女童がおしつこをして林檎熟る 藤岡筑邨
女童に紐のあそべる春祭 菅原鬨也
女童に餅つかせゐる貴船かな 安東次男 昨
女童のにほひのふつと赤のまま 大石悦子 群萌
女童の手がかしこくて仏の座 木村虹雨
女童の未だ戀知らず追ふ螢 筑紫磐井 野干
女童の立ってふらここ漕ぎ出せり 高澤良一 さざなみやつこ
女童らお盆うれしき帯を垂れ 富安風生
女童欲し紅蜆蝶にも裾模様 香西照雄 対話
嫁ぐ子の童形立てり鶏頭に 相馬遷子 雪嶺
子を連れず春夕焼けの童唄 星川木葛子
小童の高野下りや草の花 角田竹冷
小雀と名づけてつかふ女童 筑紫磐井 婆伽梵
尿する野路の童に夏の富士 原コウ子
山の童の木菟とらへたる鬨あげぬ 飯田蛇笏 春蘭
山の童の遊びは何ぞ秋の暮 角川春樹 夢殿
山の童の霧がくれする秋の滝 飯田蛇笏 霊芝
山の童ら木菟とらへたる閧あげぬ 飯田蛇笏
山の童木菟とらへたる鬨あげぬ 飯田蛇笏
山幾重童仙房の秋をかくす 藤後左右
山童にかがやくお櫃秋まつり 下田稔
山車を曳く童児童女に秋の風 伊藤いと子
山門に童の声や書を曝す 大橋櫻坡子 雨月
山頂に童児走れば薄暑光 飯田龍太
島住みのいまも童眸日焼顔 福永耕二
幼帝に浦の童の初神楽 金原英子
幼童の接吻街裏東風が占め 北野民夫
廐出しの馬に水飼ふ童かな 岡和田天河水
弁当を済ませて美童を折りたゝむ 攝津幸彦
弥陀の前くちなはを摶つ童あり 水原秋桜子
後山に柴樵りあそぶ冬の童等 飯田蛇笏 椿花集
怪童の腕(かいな)のやうなさくらの枝 高澤良一 鳩信
息笛で終る草笛遠野童衆 加倉井秋を
手をひかむ童なけれど花のもと 及川貞 榧の實
手を振れば臍出る童葡萄熟れ 林翔 和紙
手花火の童むらがる救急車 三嶋隆英
打首の童唇皓歯新小豆 香西照雄 対話
摘草や善き衣著たる女の童 摘草 正岡子規
摘草や童の言葉数ふえて 平地美紗子
新籾の山になだるる小童 飯田蛇笏 雪峡
日日榾とつて来る童らは海を知らず 安斎櫻[カイ]子
春の夜や狐の誘ふ上童 蕪村遺稿 春
春の月砂絵の童らにさしそめぬ 芝不器男
春水ややすの柄青き童たち 木津柳芽
春駒に童つきゆく浦曲みち 中川文彦
昼寝して童の頃の夢を見て 京極杞陽
晩白柚美童と一夜ゐるごとし 大石悦子 百花
月十四日今宵三十九の童部(わらべ) 松尾芭蕉
木の上にひとり枇杷くふ童かな 枇杷 正岡子規
木の上の童が呉れし椿かな 山口波津女 良人
木槿咲きいたこのくにの童唄 古舘曹人 樹下石上
村の童の大きな腹や麦の秋 篠原鳳作
村童の我に親しや曼珠沙華 阿部みどり女
村童の猿臂山もも折りくるる 百合山羽公 寒雁
村童の異人にたかる桃の花 桃の花 正岡子規
村童の露の菊さす持佛堂 塩谷はつ枝
村童やわが目の前の螢とる 百合山羽公 寒雁
枯いろの始めは低き童唄 成澤たけし
枸杞の芽や童駈け来る磯の糶 羽田岳水
柿を供ふ童形文殊御ン像に 尾崎迷堂 孤輪
桃板の門仰ぎ去る童鬼かな 中村烏堂
桑の実に顔染む女童にくからず 飯田蛇笏
桑の實や山に與へて童の名 百瀬美津
桑籠を童ころがし下り来る 五十嵐播水 播水句集
梟や唾のみくだす童の目 加藤楸邨
楷子して凧取る屋根の童哉 凧 正岡子規
樹氷持ちかへると童折りて待つ 山口波津女
毛虫焼童来たりて逃すなり 内山 亜川
水なぶる童の手あり施餓鬼舟 山口誓子
水郷の童は恒友画行々子 阿部みどり女
水飯の句を拐童にさがしけり 笹原耕春
氷に登る魚氷に登る童かな 鷹羽狩行 十友
氷室山美童の素足垣間見て 大庭紫逢(1947-)
沢の辺に童と居りて蜘蛛合 芝不器男
河鹿笛吹きつつ童瀬に立てる 田村了咲
泉より生きもの獲んと童たち 津田清子 礼 拝
湿原の茱萸あさる童に虹たちぬ 飯田蛇笏 春蘭
滝径や案内の童とつとつと 五十嵐播水 播水句集
漆掻通れば童みな逃げぬ 川口哲郎
澁柿の木蔭に遊ぶ童哉 柿 正岡子規
濃童へ俯向くことも彳ちしまま 野澤節子 黄 瀬
瀧径や案内の童とつとつと 五十嵐播水
灌仏や童集まる朝まだき 仏生会 正岡子規
炉開きの妻にふえたる童弟子 中戸川朝人 星辰
爪立ちて童の喜捨や社会鍋 鈴木壽夫
片向きて傾く舞童の朱唇かな 攝津幸彦 未刊句集
牛洗ふ童が叱なかなかに 大橋櫻坡子 雨月
独楽まはす道の童に梅の影 中村秋晴
獅子頭露地の童に舌出して 石塚友二
玉のせるかに春眠の童の手 上野泰 佐介
玉虫を殺めて美童日の盛り 岩村蓬
王陵に童が載りて凧揚ぐる 横山白虹
瓜もちて川の童の顔をする 宇多喜代子
田螺とる出羽の童のかぞへ唄 岩田昌寿 地の塩
男の童と女の童と遊ぶ巨燵哉 炬燵 正岡子規
病涯に書の弟子童星祭 鹿山隆濤
痩せし父母授受す五月の湯気と童児 香西照雄 対話
瘧病(わらはやみ)童病(わらはやみ)とぞ滴れり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
瘧病童病とぞ滴れり 佐々木六戈
登り来て童仙房の秋ひらけ 藤後左右
白丁に随ふ賀茂の牛童 後藤夜半 翠黛
白妙の破魔矢をかざす童かな 杉山とし子
目を閉ぢて橇に影さす童児たち 飯田龍太
眞菰刈童がねむる舟漕げり 水原秋櫻子
真菰刈る童に鳰は水走り 水原秋櫻子
真菰刈童がねむる舟漕げり 水原秋櫻子
着ぶくれの童に飴の匂ひかな 松崎幸子
睡る童に山影うつる簟 永野好枝「寧楽」
神がくれせる童を拾ふ恵方嶺 飯田蛇笏 椿花集
神葬る秋涼の灯に髫髪童どち 飯田蛇笏 霊芝
福藁や藪の家より童唄 村山古郷
秋尽日童の定命を如何にせん 飯田蛇笏 椿花集
秋風や童眸におく顔隠 古舘曹人 樹下石上
稲妻や童のごとき母の貌 黒田秀子
童(わらはべ)の声しるべなり神送り 含粘 俳諧撰集「藤の実」
童うた聞きつつ昼寝浄土かな 長道 澄江
童が目守る大き頭りの寝釈迦さま 松村蒼石 雁
童が跼みゐて草木瓜に朱がのこり 長谷川双魚 風形
童のごとく春野に放たるる 市野沢弘子
童のよい銭拾ふ木の実かな 素丸
童の居眠る吉野花会式 穂苅富美子
童はや出水の筏漕ぎ慣れぬ 林翔 和紙
童べにて妖しき相や菌狩 秋山卓三
童べに扇とらせん松の陰 嵐雪「渡鳥」
童もたちつけはけり梅の村 五十嵐播水 播水句集
童らちんまりと坐り青かへでの日かげ 北原白秋
童らに空の花なる立葵 石塚友二
童らのいづち菖蒲の根の長き 筑紫磐井 野干
童らの手古舞装束秋うらら 高澤良一 寒暑
童らの鞄がさわぐ曼珠沙華 津田清子
童らの髪ふきたちて落葉風 中村汀女
童らは聲を惜まず萩すすき 岡本眸
童ら登る雪の大楡熊祭 伊藤雪女
童出て犬の子叩く余花の宿 岡本松浜 白菊
童唄ひぐらしも子を慕ひ鳴く 依田由基人
童唄春の闇から手がのびて 西尾真紀
童唄母がうたひて雛飾る 福田蓼汀 秋風挽歌
童声遠くより透く芽木林 柴田白葉女 『朝の木』
童姦だ息み下に下に非直線 加藤郁乎
童曳く牛の素直に加茂祭 西片幸子「大柚子」
童泣きじやくるかに蝉鳴き終り 福田蓼汀
童神先だて鹿島の祭頭祭 角川源義
童等の声を慎む田鶴の頃 田中英子
童等の蝉さしにくる社かな 蝉 正岡子規
童行く道の雫や蜆籠 蜆 正岡子規
童部の独り泣き出て秋の暮 許六
童馬漫語童牛漫語さくらんぼ 加藤三七子
箒木の門に遊ぶや童達 村上鬼城
節の豆宙に童の眼もをどる 林翔
絵馬の絵は葵懸けたる牛童 後藤夜半 底紅
緑蔭に蟻殺す童を見て憩ふ 西島麦南 人音
縄綯ふや童神ゐる太柱 藤木倶子
美童かな蛇振り廻す遊びして 林桂 銅の時代
羽抜鶏童に追はれ芦の中 水原秋桜子
老に添ひ童も倦まず湯華掻 瀧春一 菜園
老斑を夏日晒しの童かな 永田耕衣 闌位
胞衣かぶる童は蓮の葉なりけり 森鴎外
胸高に童のさせし扇かな 篠崎霞山
舐めにくる野火舐め返す童かな 永田耕衣(1900-97)
舟ゆりてあそぶ童の藺笠かな 木津柳芽 白鷺抄
艀より通ふ童や豆の花 白井新一
芋団子汗の童べ膝に肩に 細谷源二 砂金帯
花の堂石童丸の絵解きかな 西本一都 景色
花御堂幼童の釈迦甘露受く 松井利彦
花木槿はだか童のかざし哉 松尾芭蕉
花木槿裸童のかざし哉 松尾芭蕉
草いきれ女童(めろ)会釈してゆきにけり 蛇笏
草いきれ女童会釈してゆきにけり 飯田蛇笏
草にさして小鮎提げたり里童 小鮎 正岡子規
草刈れと昼寝の童起さるる 木村蕪城 一位
草童に向日葵の顔うつろへり 蛇笏
草童のちんぼこ螫せる秋の蜂 飯田蛇笏
菊慈童さめし瞼も菊の中 登四郎
菊慈童そびらもつとも匂ひけり 伊丹さち子
菊慈童の思ひに菊の枕かな 青木月斗
菓子もらふときは童や大ねぷた 如月真菜
菖蒲湯の菖蒲に遊ぶ童哉 菖蒲湯 正岡子規
菖蒲葺童の戀の切なりき 筑紫磐井 野干
萩白く夜歩き諭す童唄 加倉井秋を
葱坊主童の持ちし土光り 金子兜太
蓬摘む生れかはりし童たち 松村蒼石 春霰
蓬莱に南無~といふ童哉 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
蓮の葉に遠ちの童の頭が見ゆる 阿部みどり女
蓮切て牛の背にのる童哉 蓮 正岡子規
蓮華摘む劉生童児童女かも 石塚友二
薄刈る童に逢ひぬ箱根山 薄 正岡子規
薄氷や兎をころす童唄 市川千晶
薬玉やものつたへ来る女の童 河東碧梧桐
蘆の花童に熱き闇ありぬ 飯島晴子
虹のもと童行き遭へりその真顔 加藤楸邨
蚊柱の中に相撲とる童かな 蚊柱 正岡子規
蚊柱を立てて童のゐなくなる 坊城俊樹
蜜蜂籠りて童ごころの音ありし 金子皆子
蜻蛉の瀞を舟やる童あり 森川暁水 黴
蝉の羽化待ちし童眼持ちつづく 相原左義長
蝙蝠に草鞋投げたる童哉 蝙蝠 正岡子規
螢飛び過ぎ去る童を怖る 梅林句屑 喜谷六花
行水の童を慕ひまぐれ犬 瀧春一 菜園
袴著て手の凍えたる童哉 凍る 正岡子規
賀茂まつり覚めし童のひとりごと 田中裕明 櫻姫譚
賀茂祭潰れた顔の牛童 京極杞陽 くくたち上巻
輪飾の橙落す童哉 飾 正岡子規
道づれの甘茶もらひの童かな 松藤夏山 夏山句集
達治忌や太郎次郎は常童 文挾夫佐恵
遠足や出羽の童に出羽の山 石田波郷(1913-69)
郁子提げてゆく童をさへぎりぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
野の道や童蛇打つ麦の秋 麦秋 正岡子規
野火の力童ら呆然と佇めり 阿部みどり女
野焼く日這ひ亀拾ふ童かな 乙字俳句集 大須賀乙字
野童に花が顔出す甘藷畑 内村あやめ
野菊待ちし女の童に逢ひぬ鈴鹿越 野菊 正岡子規
鈴つけて歩む童や仏舞 井上 雪
鉋抱く村の童やさくらちる 田中裕明 花間一壺
長風呂で目眩の童児麦を踏む 猪原丸申
陽炎のありか争ふ童べかな 幸田露伴 江東集
雁行くや砂山が消え童消ゆ 藤田湘子 てんてん
雉の子をつかんて帰る童哉 雉 正岡子規
雪の夜や家をあふるる童声 前田普羅
雪国の童等の遊びのはや暮るる 松村蒼石 寒鶯抄
雪焼の顔の童らに端午の日 石川桂郎 含羞
雪車道や童の雪車も引き出でぬ 橇 正岡子規
霊芝とる童に雲ふかき甌窶かな 飯田蛇笏 霊芝
露天風呂にて童等の平泳ぎ 品川鈴子
青梅の下に集る童かな 青梅 正岡子規
青萱に女童ひとしほ園の梅雨 飯田蛇笏 椿花集
餅搗を囃す琉球童唄 泉 とし
鳥の巣を取らずに置かぬ童かな 鳥の巣 正岡子規
鳩抱いて遊ふ童や春の風 春風 正岡子規
鴨の子を二つ握りし童かな 子鴨 正岡子規
鵙の宮遊ぶ村童皆跣足 橋本鶏二 年輪
鶯に奏楽童児ひかりもせず 藤田湘子
黒穂抜く童や顔に黒穂つけ 岩田麗日
黒葡萄童は母の倍も酸し 楠節子
●幼年期 
幼年期 スープはいつも しあわせいろ 伊丹公子 アーギライト
幼年期の子と立つ 恐竜の黙へ来て 伊丹啓子
柊の花のむかうの幼年期 石田郷子
蚊帳くぐり異界おそれし幼年期 吉本和子
鍛冶工房の魔法の火に寄り 幼年期 伊丹公子 パースの秋
●学童 
傾きて二百十日の学童よ 秋沢猛
学童に雪あらたなる家路あり 石橋辰之助 山暦
学童のゆきゝす床の雪まみれ 石橋辰之助 山暦
学童の一本づつの大根引 中條りつ子
学童の会釈優しく草紅葉 杉田久女
学童の育てし大輪菊薫る 富田たけ
学童の色彩なだれ落つ朝の坂 藤木清子
学童の霜の畦道通りゆく 桜井征支朗
学童の駅に溢れてみどりの日 福川悠子
学童ら箒を肩に尊徳忌 富安風生
学童服四角に着たる朝桜(薫小学校に入学) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
山里の学童八人弓始 奥村梅村
左内忌や学童相撲奉納し 野口 稔
春泥や一学童の松葉杖 河野静雲
泳ぐ川見えて学童列を解く 河野南畦 『焼灼後』
烏瓜咲く学童の肝だめし 太田土男
稲束を抱き学童に声をかけ 西村和子 窓
阿古屋塚梅雨の学童馳せ通る 小坂順子
麦秋の此処は学童疎開の地 中條まさを
●童女 
*さふらんや童女ドイツ語愛らしく 渋谷 道
あはれかの霜焼童女母となるか 津幡龍峰
あらせいとう髪切つて母童女めく 佐藤まさ子
かへりきて冬めくわが家童女あり 飯田蛇笏 雪峡
かまくらの童女こけしの眉をもつ 中島花楠
かまくらへ城と童女と雪明り 河野多希女 月沙漠
かまくらや童女童話のごと座り 衣川 砂生
かもじ草童女に紅き未来あれ 由利ゆきえ
すかんぽの紅よ童女の眸のなか 新谷ひろし
すでに秋童女が愛す片目の犬 菖蒲あや 路 地
たんぽぽや童女の前に稚き 内藤吐天 鳴海抄
ひざまづく童女の髪や菊供養 水原秋櫻子
ふくれゐし童女が笑ふ葱坊主 加藤知世子 花 季
ふらこゝや童男童女館の御子 尾崎迷堂 孤輪
ぶらんこの太陽へわが童女放つ 林田紀音夫
ほととぎす朝は童女も草を負ふ 水原秋櫻子
ほととぎす童女仏の顔なせる 佐野良太 樫
まくなぎの真只中に童女かな 遠藤七狼
みづ山を背に*いもりつる童女かな 飯田蛇笏 霊芝
めまとひは童女の澄める目を好む 品川鈴子
よるべなく童女のこゑの日々寒し 飯田蛇笏 椿花集
わが童女桜見にきて眠りけり 長谷川春草
アマリゝス跣の童女はだしの音 橋本多佳子
サングラス取りて童女の戻りけり 狼 司
ヒマラヤの水で洗うは 童女の髪 岩崎 勇
マフラーを落とし童女に呼ばれけり 亀割 潔
一人遊ぶ童女冬木に傷つけて 猿橋統流子
一月や童女の如く山坐る 白井風人
七夕や童女抱けばすぐねむり 菖蒲あや 路 地
万緑のくらき一隅童女仏 三品知司
二童女を一つの墓に吾亦紅 遠藤梧逸
今朝秋の童女の声が鈴のやう 菖蒲あや 路 地
冬の雁湯上り童女まるはだか 伊藤通明
初湯出てももいろ童女走りくる 白岩 三郎
劉生が描きし童女とこれの桃 内藤吐天 鳴海抄
化粧せぬ童女もうつる初鏡 山口波津女
十三夜転ぶ童女は捨てておけ 東川紀志男
南瓜くれし童女にやらん轡蟲 中勘助
向日葵や朝より我を追ふ童女 堀口星眠 営巣期
味噌を売る会津童女よ雁渡し 佐川広治
土産屋の童女含羞むちやんちやんこ 穂坂日出子
声高き童女の湯浴みどりさす 金子 潮
夏の月侍らすのみの童女かな 久米正雄 返り花
夏氷童女の掌にてとけやまず 橋本多佳子「紅絲」
夏油川野風呂童女に岩つばめ 金子兜太
夏花摘童女はもたれあひて眠る 田中裕明「花間一壷」
夕立や童女に蒼き釉 和田悟朗
夜の秋やたやすく眠る旅童女 岡本まち子
天なるや童女の声の虫の声 耕衣
天上に颶風童女を載せ駱駝 片山桃史 北方兵團
寒夕焼童女が負へる薪少し 阿部ひろし
寡黙の国童子童女に草いちご 西東三鬼
山茶花や童女も淡海言葉にて 草間時彦 櫻山
山高く生まれし蝶と童女かな 藤本安騎生
島たんぽぽ童女ころりと忘らるる 友岡子郷 遠方
川涼し童女ひとりを餉に加へ 斎藤梅子
左義長に杜の奥より童女来て 茨木和生 木の國
師の死顔花に遊べる童女めく 和田耕三郎
年輪を秘めし童女や敬老日 廣田節子
待宵の縁に毬つく童女かな 宮下翠舟
恍惚と童女腹匐ふ籾莚 山口誓子 構橋
戯れてあはれ麗らの喪の童女 清水基吉 寒蕭々
手をついて童女が迎ふ雪解宿 中戸川朝人 残心
手一杯菊芋摘みて童女めく 山根きぬえ
手花火のために童女が夜を待ち待つ 山口波津女
手花火の闇に童女の耳朶浮きし 源鬼彦
摘草の童女の籠に鈴の音 大串 章
撫子や狂へば老も聖童女 福田蓼汀
斑猫や童女にゆるき湯治下駄 川崎 俊子
日曜の蝋の童女も草隠れ 林田紀音夫
日焼童女の弾みや雲中供養仏 加藤知世子 花寂び
日読童女を誓ひて樹つる筑紫鉾 高柳重信
早梅やくちびる朱き童女仏 澤木欣一
春や童女即童貞の喉ちんこ 三橋敏雄 長濤
春昼や劉生描く童女像 永井龍男
春著童女抱くよ天人抱くごとし 楠節子
晒井の水を童女は渡り行く 前田普羅 新訂普羅句集
晩秋へ掴めるほどの童女の尻 中山純子 茜
月の浦厚着童女のうなづくのみ 佐藤鬼房
朝ざくら童女はきゐし父の靴 阿部ひろし
木の実拾ふ眉鮮やかな童女たち 斉藤夏風
枯るる中けぶるがごとく童女来る 草間時彦 櫻山
枯芦に黄昏色の童女ゆく 阿部みどり女
柔肌の童女のみ蚊に食はれゐて 山口波津女
柚湯出て童女ねむれる頬赤し 水原秋桜子
柿潰えはじむ童女の墓の前 藤岡筑邨
栗・あけび指して童女に迎へらる 加藤知世子 花 季
桃の木や童子童女が鈴生りに 苑子
梶の葉の茂りより来し童女かな 岡井省二
次に落つる椿がわかる一童女 和田耕三郎
歯朶青く童女笑顔を夜更けまで 飯田龍太
死に顔が童女に変はる雪明り 笹本千賀子
母の日や童女のごとき母連れて 恩田秀子
水仙は童女の覚めしごとくなり 角川照子
氷柱噛んで童女の頃の歯音たつ 加藤知世子
泊夫藍や童女ドイツ語愛らしく 渋谷道
流灯を積みある中の童女の名 伊東 肇
浅蜊売童女の声が引き戻す 菖蒲あや
海女となるさだめの童女泳ぎをり 大島民郎
溶けながら童女のかたち雪兎 木村えつ
火渡りの童女押し出す夏祓 平賀扶人「風知草」
無心なる童女ひそかに息づくごと一顆の桃の山原明かる 大野とくよ
無花果の樹蔭の童女秋暑の日 飯田蛇笏 椿花集
煮炊して留守守る童女鳳仙花 富安風生
熊棚と童女の墓とかげろへる 唐橋秀子
爪紅や童女の世界夕焼けつつ 岡本まち子
片輪童女と蝶に恵みし日ざしかな 成瀬桜桃子 風色
片輪童女に友なし蝶と語りをり 成瀬櫻桃子 風色
片輪童女の描く絵を蝶がのぞきに来 成瀬櫻桃子 風色
狂ひ泣く童女光れり藪枯し 原裕
狗尾草いたづら好きの童女かな 浦田 宏
白痴童女わらへり露の玉まろぶ 成瀬櫻桃子 風色
睨めあげる童女の頭を撫で雛の日 赤城さかえ句集
砂糖黍かじりし頃の童女髪 杉田久女
破魔矢持つ童女吉祥天なるよ 楠節子
社会鍋童女にかへす礼篤し 内藤 達
神の留守あたたかといふ童女かな 田中裕明 櫻姫譚
秋櫻童女の情こまやかに 相馬遷子
積る雪見て童女とはもう言へず 加倉井秋を 午後の窓
童女いて木の芽濃くなる谿の家 和知喜八 同齢
童女いまも曼珠沙華から逃げている 鎌倉佐弓 天窓から
童女かがみ尿ほとばしる麦の秋 西東三鬼「変身」
童女とて愁ひ顔よき濃山吹 倉橋羊村
童女との間青麦をもてうづむ 千代田葛彦 旅人木
童女と同じ響きさかんに銀杏割る 加藤知世子
童女には森の悪者懸巣鳴く 堀口星眠 営巣期
童女には童女の仕草雛の客 青田節子
童女には花の見えざるやまぼふし 友岡子郷 翌
童女の墓は童女の童丈綿虫飛ぶ 磯貝碧蹄館 握手
童女の手ちさしつめたし枯山河 草間時彦 櫻山
童女の服干されつぱなし霧湧くに 林翔 和紙
童女の死春満月へ魚翔んで 栗林千津
童女らの泳ぎ場あさし葛の花 白澤よし子
童女われに拾ひてくれぬ冬至柚子 石田あき子 見舞籠
童女ゐて東風の潮尖ときには刃 友岡子郷 遠方
童女ゐて青花けふが摘みはじめ 下田稔
童女ゐて頬杖をして涅槃像 後藤夜半(1895-1976)
童女二人お出でお出でして春の嵐 長谷川かな女 花寂び
童女地に描く曲線桃ふふむ 軽部烏頭子
童女摘むげんげに吾が摘み足せり 塩川雄三
童女来て摘めばふるへる桜草 木村はつ枝
童女来て白紙をねだる暮春かな 加倉井秋を
童女来る弥撒のべールを雪除けに 下村ひろし
童女来る獄舎の丘に春の雲 宮武寒々 朱卓
童女桃子はおしゃべり童女あらせいとう 村山古郷
童女泣きやすし夕日の葱坊主 柴田白葉女 雨 月
童女滴むげんげに吾が摘み足せり 塩川雄三
童女素足砂色小波四段ほど 香西照雄 対話
童女見しよりの郷愁花圃燃えつつ 大島民郎
童女走り春星のみな走りゐる 橋本多佳子
童子童女みんな花野に寝落ちたる 柿本多映
簪の揺れほろほろと軛の童女 林田紀音夫
紅失せて童女の寝顔初明り 平畑静塔
紅葉山の忽然生みし童女かな 芝不器男
紅蜀葵上目づかひに山童女 岸田稚魚 筍流し
紅蜀葵上目づかひに峡童女 岸田稚魚
絵すだれを潜り童女の消えゆけり 中村苑子「花隠れ」
縄跳の波がくり出す幾童女 野中亮介
繭となる童女山には冬が来て 柴田白葉女 雨 月
老鶯や臥して童女の心なる 乾燕子(雲母)
耳につく童女の鈴の野辺送り 林田紀音夫
背のびして童女が愛す露の馬 柴田白葉女 牡 丹
胡床居の童女の茣蓙にゆすらうめ 秋元不死男「万座」
花桐の日暮より来し童女はも 岸田稚魚
芹の水童女の声が透ききこゆ 柴田白葉女 『月の笛』
茄子苗や童女も土をひとすくひ 和田祥子
茗荷の子童女の尻を見てゐたる 河野南畦 『元禄の夢』
茜さし童女比ぶるものもなし 高屋窓秋
菖蒲湯や乳房ありけり童女のような 長谷川かな女 花寂び
萩抱いて童女の化粧逝かれけり 川崎展宏
落葉風に追はるる歓喜童女かな 石原八束 空の渚
葉桜のうしろに性の童女ゐる 攝津幸彦 鹿々集
葡萄採るこゑの童女は肩ぐるま 山岸治子
葭切や童女とあらふ皿すこし 堀口星眠 営巣期
蒼かりき童女の日焼けざるところ 岸田稚魚 『萩供養』
蓼紅し泣けばこと足るわが童女 岡田 貞峰
藪柑子目をおさへゐる童女見ゆ 長谷川双魚 風形
蚊帳吊草寺領に童女が尿とばす 磯貝碧蹄館 握手
蜂は縞ゆるめずにとぶ童女の墓 飯島晴子
蝌蚪に足出てやはらかき童女たち 長谷川双魚 風形
蝗飛ぶ野に出て母の童女めく 平田禾雀
蝸牛と童女のあはひ密とせり 岸田稚魚 『萩供養』
蟻地獄童女が二人風の中 皆吉司
西瓜赤き三角童女の胸隠る 野澤節子 牡 丹
見えてゐて童女の首と凧の糸 金田咲子 全身 以後
触れがたしげんげ田に寝る四童女 澁谷道
谷橋に盆花わかつ童女見ゆ 飯田蛇笏 春蘭
赤い童女に雪解の戸々の押し合ひて 友岡子郷 遠方
遠天や童女着せかへられにけり 攝津幸彦
野を急ぎ大団円であったか童女 畑中 憲
鈍行の膝に童女や夕花野 加藤耕子
鈴虫と童女しばらく見つめあひ 大串章
銀杏ちる童男童女ひざまづき 川端茅舎
鏡中童女と隣るすずしさ髪刈るよ 磯貝碧蹄館
鏡餅童女丸めて童女の丸 楠節子
長泣きの童女に未草ひらく 柿本多映
阿蘇杉の湿り童女の七夕竹 桜井博道 海上
雑踏に童女の手套踏まれづめ 品川鈴子
雛供養童女の読める願ひ文 三澤治子
雛祭無口の童女輝けり 秋山好見
雨やまぬ童女の寝墓楡散るも 堀口星眠 営巣期
雪がこひ童女の声の走り過ぐ 大串章
雪掻に童女も混る赤シャベル 稲葉三恵子
雪柳童女のほとのけむるごと 岸田稚魚
雪童女雪にまろびて父母もなし 小林康治 四季貧窮
雪蹴つて水菜畑をゆく童女 飯田龍太
青トマトすくすく伸びし童女の背 相馬 遷子
青衣童女われによりそひ流燈會 山口青邨
顔振つて童女駆けゆく桜ごち 岡本眸
風船が膨れ童女の顔かくす 品川鈴子
馬鈴薯収穫童子童女らころころと 栗生純夫 科野路
驢馬曳いて日焼童女が河渡る 佐川広治
髪切虫母恋童女負ひなだめ 堀口星眠 営巣期
鬼女になり童女にもなり梅雨茫々 野澤節子
鳳仙花童女の機嫌すぐ変り 益本三知子
鶲呼ぶ老女童女に風の日矢 原裕 葦牙
鷲草の舞ふや童女の泪川 堀口星眠 営巣期
鷹鳩と化して童女をとりかこむ 大串 章
麗かや水辺の童女ふつと消ゆ 佐藤鬼房
麦こがし頬張る越後童女かな 佐川広治
麦刈を眺めて山の童女たち 飯田龍太
●児童 
いなご取る過疎の児童の五六人 蕪木啓子
プール児童の叫喚返すビルの壁 鍵和田[ゆう]子 未来図
何となく秋の斜面の児童館 楢崎進弘
八重葎児童疎開の寺朽ちて 塩田藪柑子(蟻乃塔)
分校の児童の数と葱坊主 小西石蕗
厚朴咲くや児童遊園の砂照りつ 原田種茅 径
城跡に児童館ありチユーリツプ 吉屋信子
山車を曳く童児童女に秋の風 伊藤いと子
死人もゐて紙の雪降る児童劇 星野昌彦
蓮華摘む劉生童児童女かも 石塚友二
血色よき児童が通る春日中 高澤良一 宿好
●幼児 
れんげ野の幼児漂うたいらな昼 増田まさみ
九月になった 路上で幼児の すももの耳 伊丹公子 メキシコ貝
乳臭き幼児もまへに西瓜割る 百合山羽公 故園
伴僧は黒衣の幼児法然忌 猪股万起
初写真紅き幼児を膝に載す 佐久間かよ
啓蟄や幼児のごとく足ならし みどり女
幼児いま幼児夕空ハレルヤ 鳴戸奈菜
幼児きて部屋を野となす黒ぶどう 寺田京子
幼児に労はられをり菖蒲葺き 小松崎爽青
幼児に騙されましよう四月馬鹿 宮川秀穂
幼児のごと赤富士のごと冬来たる 橋石 和栲
幼児の丈で奇岩をくゞる秋のくらさ 八木三日女 赤い地図
幼児の持つておもたき桐一葉 川崎展宏
幼児の瞳くりくり梅の花 奥成洋子
幼児の知恵づく日々や鳳仙花 高嶋富子
幼児はいたく笑ひね夜の淵にありて白桃食べをへしとき 佐藤通雅
幼児も富士見おぼえる若菜摘み 岩淵喜代子
幼児席ある大寺の鬼やらひ 中里泰子
幼児脱ぎ緋の濃き下着スィートピイ 香西照雄 素心
底冷えや幼児別れに仰ぐのみ 香西照雄 対話
怪獣を真似て幼児が北風に向く 宮下元恵
春の日や幼児の瞳動きゐる 合浦句集満潮 原田合浦
枝豆をつまむ幼児と晩酌す 矢島渚男 船のやうに
梅雨の花幼児の声草のごとし 飯田龍太
椅子あたたか幼児の足の地にとどかず 皆吉司
海の底でぼくらは眠るつぶつぶと幼児のやうな夢を吐き出し 森本平
涅槃図を見て幼児が象を指す 浜端順子
混血幼児みな昼寝して照紅葉 及川貞 榧の實
白襖幼児笑へば亡母来る 飯田龍太 忘音
秋の日の仁王は高き幼児なり 和田悟朗
耳痛き幼児の記憶朝の蜘蛛 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
花椎の風かげり幼児の欠伸さそふ 原田種茅 径
若き主婦の毛橇に幼児湖の眼で 細谷源二
菊花展幼児花に指ふれし 百合山羽公 寒雁
蒼空の切り傷となる幼児の頸 増田まさみ
薮柑子幼児に母に道けはし 阿部みどり女
蜩や幼児は好きな救急車 長谷川かな女 花 季
裸見せぬ秋暑毛深の幼児ら 林翔 和紙
豊作の甘藷のリヤカー幼児も乗せ 加畑吉男
足許のたそがれ幼児ごと掬う 林田紀音夫
轟々と白昼の砂ひとりの幼児 林田紀音夫
鉢金魚幼児キンギョとなつてしまう 長谷川かな女 花 季
雷雨やむ鼻のつめたき幼児抱く 松村蒼石 春霰
鳥もトト魚もトト白粉の花に座る幼児 長谷川かな女 花 季
●小児 
これよりは小児病棟雪兎 天谷 敦
したたかに嚏を浴びし小児科医 水原 春郎
だらしなさ小児に同じ紫木蓮 高澤良一 燕音
ガーベラや夫婦で開く小児歯科 八幡より子
小児病棟前にほつそり雪だるま 須磨佳雪
小児科の一日の閑子供の日 小見山希覯子
小児科の個室に置かれ金魚病む 前山松花
小鳥来る小児病棟無菌室 須佐薫子
手づくりの聖樹華やぐ小児棟 金城百合子
早々と小児病棟聖夜の灯 松岡巨籟
暗きより小児病棟泣初す 藤田 宏
蛍籠小児病棟消灯す 中沢三省
除夜の鐘小児病棟異常なし 水原春郎
階下よりしやぼん玉揚ぐ小児病棟 長田等
雛の日の小児病棟覗きにゆく 細川加賀 『傷痕』
●わらべ 
かげろひて通る信濃のわらべ唄 長谷川双魚 風形
かまくらや今日は嬶座のわらべたち 堤 京子
きりもなく椿落つるよわらべ唄 櫛原希伊子
くさめくさめ平氏をはやす京わらべ 筑紫磐井 野干
けんぽ梨狸をさそふわらべ唄 加藤知世子 花 季
この路地の柿鈴なりにわらべ歌 古賀まり子 緑の野
たんぽゝや紅腿引の里わらべ 久米正雄 返り花
ふるさとは風に吹かるるわらべ唄 伊藤信吉
ままごとのわらべのしたる懐手 飴山實 『花浴び』
よく聞こゆ芋煮あそびのわらべ唄 下田稔
わらべうた京大阪は花ざかり 大石悦子 聞香
わらべうた路地よりきこえ宵天神 宮下翠舟
わらべらに堂塔高き甘茶かな 五十崎古郷句集
わらべらに天かがやきて花祭 飯田蛇笏 雪峡
わらべらに寝ねどき過ぎぬクリスマス 山口誓子
わらべらの花野にわれも入りゆけり 岸田稚魚
わらべらも添へて門火の麦藁火 木津柳芽 白鷺抄
わらべ七人山椒魚の水あふれ 若森京子
わらべ唄かなで精霊流しかな 佐川広治
わらべ唄地蔵にひびき明けの春 堤 久子
わらべ水蜜桃をすするうなじを伸べ 梅林句屑 喜谷六花
わらべ達皮は味ないぞ真桑瓜 上島鬼貫
七夕や昔むかしのわらべ歌 野村 きく
三日月は星のわらべのすべり台 山崎ふじ子
丸顔の祇園囃子の京わらべ 長谷川浪々子
京わらべ三尺帯に扇子かな 石橋秀野
傾城のわらべがましき手鞠かな 万容
冬の靄口を離れぬわらべ唄 山田一男
北国の正月を待つわらべ唄 今村青魚
十三詣美しきめわらべ我になし 寺井谷子
千燈明をともすわらべの露の秋 銀漢 吉岡禅寺洞
喃わらべ蜆はいくら蛤は 蜆 正岡子規
天高し 継ぐべきものにわらべ歌 中田敏樹
女わらべのことに執念もぐら打 岡入万寿子
女わらべの袖比べけり節小袖 魯白
尿せしわらべを叱る霜夜哉 霜夜 正岡子規
岩室涼し石を重ねてわらべ墓 河野南畦 湖の森
年玉を宿のわらべに老遍路 壺井久子
張子の御影女わらべや御忌に逢ふ 昌夏 選集「板東太郎」
扇取るわらべ可愛し謠初 謡初 正岡子規
新月に牧笛をふくわらべかな 飯田蛇笏 山廬集
日照草爆死わらべの碑のほとり 下村ひろし 西陲集
日輪のわらべとなりて野に遊ぶ 高橋範子
春待つや厨の妻のわらべ唄 今泉貞鳳
月十四日今宵三十九の童部(わらべ) 松尾芭蕉
林檎咲く野しろいしろいわらべ唄 豊田都峰
梅に酌む唄は軍歌や二度わらべ 山口いさを
梅寒の瀬音を奪ふわらべ声 河野南畦 湖の森
気の長きわらべが祭牛を御す 沢村越石
灌仏やはだかわらべの晴れ心 仏生会 正岡子規
炎天につよく生まれて甲斐わらべ 筑紫磐井 未定稿Σ
無花果やわらべ心に剥かぬまま 乗本真澄
牛飼のわらべがかざす紅葉かな 村上鬼城
猫柳傘あゆむかにわらべ来る 山田文男
百両の萬年青引ぬくわらべ哉 万年青の実 正岡子規
石どれもわらべ顔して水温む 工藤義夫
磯わらべ青海苔きざみ遊ぶなり 岡本松浜 白菊
紅梅の散るやわらべの帋つゝみ 炭 太祇 太祇句選
紙砧子守わらべの立つ戸より 及川貞 夕焼
良寛忌わらべとなりし母なりき 青木つね子
良寛忌湯舟で歌ふわらべ唄 宮島糸子
花吹雪駈けゆくわらべ立つわらべ 及川貞
花野ゆき行きて老いにしわらべかな 森澄雄
茸狩りのわらべこだまに憑かれけり 西島麦南
菱採りのわらべ手掻きの盥舟 下村ひろし
著莪咲けばわらべに戻り手まり唄 清水千恵
虎杖さげしわらべ早し木がくれす 梅林句屑 喜谷六花
衣食足りわらべ唄消え雁の秋 藤田湘子 てんてん
霜きびし山のわらべの喇叭鳴る 飯田蛇笏 春蘭
露の玉つまんで見たるわらべ哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
鯰獲てわらべが濡らす春の蕗 大島民郎
●わらし 
おお寒や座敷わらしの去りし家 八島雅子
ざしきわらしが駅をすたすた紅葉して 前田吐実男
二度わらし身ぬちにひそみ花ぐもり 平井さち子
嫁が君座敷わらしの部屋よりす 中村青路
座敷わらし居るかや秋蚕貌上ぐる 浅場芳子
座敷わらし来しか餅花ひとつ失せ 八牧美喜子
座敷わらし消えて屏風の残りけり 中嶋秀子
座敷わらし炬燵蒲団の端を踏む 田中あき穂
座敷わらし留守を守れる苗代どき 八牧美喜子
春満月ざしきわらしも外に出でよ 菖蒲あや
暖炉もえ座敷わらし子居なおれり 新山郁子
梅雨暑く泣きぐせつきし二度わらし 土居伸哉
炉火ことり崩れて座敷わらしかな 森戸 光子
目貼して一人はわらしぼつこかな 神蔵 器
金田一の座敷わらしも夜の秋 山田みづえ 手甲
雪代に座敷わらしが乗つていく 宮慶一郎
風の盆ざしきわらしの里がえり 森田むつみ
●をさな 
あら薦にをさな官女や春冴ゆる 松瀬青々
うき人もをさな寂びたり衣更ヘ 芥川龍之介
すこしづつわれから離れゆくならむ飛ぶやうにして遊ぶをさなご 外塚喬
つなぐ手にをさなの湿り夕ざくら 千代田葛彦
わが家にはをさなをらねば秋の暮 篠田悌二郎 風雪前
をさなごに教える言葉うろこ雲 横山房子
をさなごに生ふる翼や櫻東風 仙田洋子
をさなごに虻放ちやる葱坊主 角川春樹 夢殿
をさなごに言葉教える鱗雲 横山房子
をさなごに闇あたらしき蛍かな 辻 美奈子
をさなごのひとさしゆびにかかる虹 草城
をさなごの中に我見る浮いてこい 上田日差子
をさなごの手のかじかみを握りて解く 伊藤敬子
をさなごの跣の指の十つぶかな 大石暁座
をさならも来よ朝顔の種とらむ 中尾白雨 中尾白雨句集
をさな児とあそびて遅遅と落葉焚 中村汀女
をさな児に湯たんぽ二つ砦なす 石塚友二 光塵
をさな児の口まねでいふ初雀 川崎展宏
をさな児は二日持たずよ避寒宿 白岩 三郎
をさな名を知らぬ翁の丸頭巾 芭蕉
をさな子に教へてつます薺哉 薺 正岡子規
をさな子のつることいそぐ燈籠哉 燈籠 正岡子規
をさな子の仕草見せたる春の芝 綾部仁喜 寒木
をさな子の手に重ねたるもみち哉 紅葉 正岡子規
をさな子の母呼び返す焼野哉 焼野 正岡子規
をさな子の泣く泣く歸る寒哉 寒さ 正岡子規
をさな子の白地を見れば夜の秋 森澄雄 所生
をさな子の鎌倉囃子に乗り「翁」 高澤良一 燕音
をさな子の雪をつかみし若な哉 菊の苗 正岡子規
をさな子の鬼灯盛るや竹の籠 鬼灯 正岡子規
をさな子はさびしさ知らぬ椎拾ふ 瀧 春一
をさな子やはやなめそむる紅の花 紅花 正岡子規
をさな子や文庫に仕廻ふはつ氷 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
をさな子われ中年われ老年われも来て物干しに仰ぐ獅子座流星群 米川千嘉子
をさな文字巣箱に残し転校す 金原登志子
をさな無しもぎしざくろは昨日のまゝ 及川貞 榧の實
クレヨンをもてをさならが筆始め 石塚友二 光塵
七夕柳かこみ点せりをさならは 臼田亞浪 定本亜浪句集
主を頌(ほ)むるをさなが歌や十二月 石塚友二
初午や太鼓にまじるをさな笛 橋本冬樹
卒業のをさなの答辞師に添はれ 皆吉爽雨 泉声
囀に似しをさな子の笑ひごゑ 吉野知子
寒夕焼をさなのごとく母を見る 原裕 葦牙
庭に蝉来しををさなに真似び教ふ 篠原梵 雨
明易やをさなのごとく蚊帳の中 原石鼎 花影以後
書初やをさなおぼえの万葉歌 竹下しづの女 [はやて]
殉教(まるちる)のをさなご露と生まれけり 筑紫磐井 婆伽梵
炭火ふくおちよぼ口してをさな顔 上村占魚 球磨
父の日のをさなうて飛ぶ雨燕 中拓夫
病み耐へてをさなごころや金魚飼ふ 中尾白雨 中尾白雨句集
百日紅をさな木なれば涼しさよ 相馬遷子 山河
神農の虎をさな子に撫でらるる 岡村逸実
穴にいそぐ小き蛇のをさな心 蛇穴に入る 正岡子規
竜胆におぼるる兵のをさな顔 飯田蛇笏 春蘭
蓮如忌やをさな覚えの御文章 富安風生
藁塚に倚る心をさなに十三夜 金尾梅の門 古志の歌
蛇苺をさなとをさな密か事 川崎展宏 冬
蝶蝶やをさな子つまむ馬の沓 蝶 正岡子規
袴着や蒲の冠者のをさな顔 瀾水
野分して室生仏のをさな顔 大峯あきら 鳥道
雨乞やをさな心におそろしき 雨乞 正岡子規
雪を見るをさなの髪にわが手置き 篠原梵 雨
面とればをさな顔なり里神楽 田村了咲
鬼灯の花やをさなにおもひびと 森澄雄
鮑採をさな顔あげ磯なげき 田畑比吉「ホ誌雑詠選集」
 
以上


by 575fudemakase | 2022-06-23 05:26 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

カテゴリ

全体
無季
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
ブログ
自作j
自作y
未分類

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...
魚屋三代目日記
My style

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

外山滋彦著「俳句的」の指摘し..
at 2024-03-28 07:13
山本覚馬
at 2024-03-28 05:53
【桜餅】といえばどっち派?全..
at 2024-03-27 05:17
あまおう」と「とちお...
at 2024-03-24 03:42
一茶 生きもの句帖 小学館文..
at 2024-03-18 13:28
シュリンクフレーションという..
at 2024-03-13 05:15
ザッピングzapping?き..
at 2024-03-11 01:51
書道 書・筆・墨・硯の俳句
at 2024-03-08 10:04
しょどう
at 2024-03-08 09:38
すずり
at 2024-03-08 09:35
筆の俳句
at 2024-03-08 09:26
墨の俳句
at 2024-03-08 09:04
書の俳句
at 2024-03-07 18:12
佐々木敏光句集 富士山麓・秋..
at 2024-03-07 05:49
山口昭男著 波多野爽波の百句..
at 2024-02-26 02:57
ザッピングzapping?
at 2024-02-24 00:32
私の俳句入門 大野林火編 有..
at 2024-02-21 01:39
茨木和生著 右城暮石の百句 ..
at 2024-02-20 03:20
季寄せを兼ねた 俳句手帖「春..
at 2024-02-11 18:17
我が家の梅 2024/02/..
at 2024-02-06 13:51

外部リンク

記事ランキング