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ことば 類語関連語(例句)

ことば 類語関連語(例句)

●ことば 言葉●言語●多弁●雄弁●能弁●やまとことば●母国語●外国語●バイリンガル●おくにことば●方言●漢語●造語●外来語●一語●文字●記号

●ことば 言葉
*はまなすに言葉寄せ合ふ砂の道 古館曹人
*はまなすの古江細江に加賀言葉 前田普羅 能登蒼し
「太陽の言葉」芽吹きの北半球 吉原文音
あたたかき言葉を荒く稚魚守る 石川文子
あたたかや魚の言葉水に浮き 小島健 木の実
あたためし言葉を鵯に攫はれつ 石田あき子
あのときに言ふべき言葉こぼれ萩 笠原 径
あれこれと言葉尽くされ風邪心地 ふけとしこ 鎌の刃
いくつかの藍の言葉を女より 高野素十
いたどりの花と語るに草言葉 新井みちを(岳)
いつわりの言葉みずみずしき寒夜 寺島敦子
いぬふぐりかゞやく言葉吾子はもつ 望月たかし
いふまじき言葉を胸に端居かな 星野立子
うかれ女や言葉のはしに後の月 炭 太祇 太祇句選後篇
うすらひへ言葉を与ふ老神父 村越化石
うつくしき言葉のひとつ木の葉髪 野澤節子 『駿河蘭』
うつしみといへる言葉や梅咲いて 菊地一雄
うらはらの言葉が痛い枯葉鳴る 古市絵未
うらはらの言葉とび出し冬苺 鍵和田[ゆう]子 未来図
うららかや言葉封ずる指を立て 内田美紗 魚眼石 以降
えり巻を外せばしるき能登言葉 前田普羅 能登蒼し
おおぞらや言葉は赤き蘂となり 永井江美子
おしめりといふ佳き言葉こぼれ萩 藤原輝子
お姫さんが廓言葉にて残菊紅し 長谷川かな女 花 季
お涅槃や讃むる言葉の悲しくて 尾崎迷堂 孤輪
お降りといへる言葉も美しく 高野素十
かき氷言葉は匙に触れて消ゆ 室谷恭代
かけつけて言葉とならず火事見舞 越智絵美子
かしゃくなき市場言葉に鮫長し 桂樟蹊子
かじかみて語れば言葉とぎれつつ 大木さつき
かの言葉冷ゆるひと日の身を占むる 谷口桂子
かまくらに詰まりてをりぬ里言葉 山内誠子
かまくらや星の言葉の雪が降る 佐藤 木鶏
かりそめの口説き言葉の鳥兜 大西恵
きさらぎの言葉つぎ足す町はずれ 増田連
きのふけふ蝶とんで児に言葉ふえ 山田弘子 こぶし坂
きり出しの言葉捜せり花の坂 谷中隆子
くちびるに指あて言わぬ言葉かも闇に口紅水仙ひらく 王紅花
くづるるが波の言葉よ夏来る 鈴木真砂女 夕螢
くぬぎが天にもつている吹くという言葉 阿部完市 春日朝歌
ぐいのみといふ言葉好き新走り 中田品女
ことごとく言葉失ひ雪卸す 橋本榮治 麦生
こまやかに夕日の萩の言葉かな 宮津昭彦
さくら咲き語尾のやさしき伊予言葉 加倉井秋を
さくら湯や言葉選びて疲れけり 肥田埜恵子
さはりよき酒や言葉や川床涼み 西村和子 かりそめならず
さよならは又会ふ言葉花すみれ 広川康子
さりげなき言葉としもや春の雪 久保田万太郎 流寓抄以後
しはぶきの次の言葉を待ちにけり 木下夕爾 遠雷
しばらくは言葉とならず咳つゞく 山口白甫
しやぼん玉書かねば消えてゆく言葉 尾熊靖子
しらじらしい言葉をあつめ焚火せむ 村田治男
すこし血に染つた言葉で人が人に検束されて行く 橋本夢道 無禮なる妻抄
すずしさや海人が言葉も藻汐草 正岡子規
ずゐき食ふのみ薩摩言葉に取巻かれ 本宮銑太郎
せせらぎの言葉あつめて猫柳 黛 執
その言葉さびしくききて日短か 朱鳥
そよそよと言葉と言葉関係す 鳴戸 奈菜
たのしさや草の錦といふ言葉 星野立子
ためてゐし言葉のごとく百合ひらく 稲垣きくの 黄 瀬
だだちや豆食べて馴染みし出羽言葉 佐藤ゆき子
だんまりも言葉の代り夕焚火 佐藤 彰
とぎれたる言葉鶏頭に汽車すぐる 阿部みどり女
なきがらや言葉のやうに冬紅葉 中山純子
なぐさめの言葉におぼれ芥子の花 小村双樹
のみこんだ言葉つばで吐きだす 伊藤完吾
はつあきの言葉を紡ぎ一歌仙 山田みづえ 草譜以後
ひとすぢの流るる汗も言葉なり 鷹羽狩行「五行」
ひとつづつ言葉覚えて水遊び 古野洋子
ひとびとの言葉しづかや初蕨 八木林之助
ひなびたる言葉の残る生姜市 細見綾子
ふさはしき大年といふ言葉あり 高浜虚子
ふたりゆゑ言葉生れて小豆粥 槫沼清子
ふるさとの言葉のなかにすわる 山頭火
ほうたるを双手に封じ京言葉 大木あまり 火のいろに
ほころぶと告ぐる言葉の花より浮く 高澤良一 ぱらりとせ
またといふ言葉頼みて夏果てぬ 谷口桂子
まだ声に出さざる言葉あたたかし 片山由美子 天弓
まだ我の言葉にならず土筆生ふ 藤田湘子 てんてん
まっすぐに言葉が落ちる水溜り 大西泰世
まやかしの言葉にひかれ蟻地獄 林千鶴子
まゆ玉や敬語に満ちて加賀言葉 細川加賀 『傷痕』
まるめろはあたまにかねて江戸言葉 蕪村
まんさくや蝶舞ふやうに言葉出て 田中水桜
めでたさやよその言葉も旅の春 初春 正岡子規
もてなしの言葉は要らず秋の晴 谷口 君子
ものいひて言葉ありけり露の榧 岡井省二
やはらかき言葉ゆきかひえりの村 関戸靖子
やり羽子や油のやうな京言葉 高浜虚子(1874-1959)
よき言葉聴きし如くに冬薔薇 後藤夜半 底紅
よろこべば言葉きらきら秋晴るゝ 大橋敦子 匂 玉
わが心言ひ得し言葉爽やかに 星野立子
わが美林あり檜葉杉葉言葉千葉 折笠美秋 虎嘯記
わが骨朽ちたり野末の石といふ言葉も 高柳重信
われを打つ言葉ぴしりと冴返る 小室善弘
をさなごに教へる言葉うろこ雲 横山房子
をさなごに言葉教える鱗雲 横山房子
キリストに告げざる言葉すさまじや 岩田昌寿 地の塩
クリスマス賢者の言葉子に贈る 近藤一鴻
コスモスの揺れを言葉にして遊ぶ 日原大彦
コート脱ぐ間も言葉を交しをり 風間啓二
サリー干す 牛にも 山羊にも 言葉授け 伊丹三樹彦 写俳集
サルビヤの花には倦むといふ言葉 稲畑汀子
シクラメン優しき言葉そへてあり 加藤喜久
ジュエル・フィッシュの鰭がまとう秋 言葉とぎれ 伊丹公子 メキシコ貝
セルを著ていつまで抜けぬ京言葉 松尾いはほ
タソガレドリは言葉の鳥か我も言葉 高柳重信
ダイヤモンドダスト言葉のはじめなり 松澤雅世
ハンモック雲の言葉を考ふる 畑耕一
バーは夜の言葉が腐るアマリリス 有働亨 汐路
ビール溢れ心あふるる言葉あり 林翔 和紙
ビール発泡言葉無縁の日なりけり 林翔 和紙
ポインセチア司会の言葉歯切れよく 枇榔蓉子
ポインセチア言葉のごとく贈らるる 手塚基子
マネキンの言葉知らねば涼しけれ 大木あまり 山の夢
メジ口にも言葉仇のある葎 澁谷道
ヨットの帆海へ言葉を撒くやうに 山崎正子
ラルースの言葉愛しみ冬野かな 石寒太 翔
リラの風人の言葉を待ちてをり 渡邊千枝子
ルナールの言葉を探す桜貝 岩崎照子
レモンてふ言葉聞くさえ歯が浮いて 高澤良一 寒暑
ワインゼリー二人に言葉など要らず 横原律子
一司書へ言葉をかけて卒業す 森田峠 逆瀬川
一喝する父の言葉や山椒の実 上田雅子
一巡は別れの言葉鴨帰る 吉村ひさ志
一族の言葉 起伏し 華僑の死 伊丹公子 パースの秋
一瀑の言葉つくせしごと涸るる 遠藤雪花
一輪も二輪も梅の言葉かな 粟津松彩子
七日粥母の言葉の今も生き 河野南畦 『硝子の船』
七月十四日海の彼方といふ言葉 三橋敏雄「しだらでん」
七草の土間の奥より加賀言葉 井上雪
万両やみづからの実に言葉溜め 青柳志解樹
万燈や言葉の端の姦しく 古舘曹人 能登の蛙
万緑にあげて祝詞は言葉の祖 赤松[ケイ]子
万緑や太初の言葉しづかに炎え 野見山朱鳥
万緑や嬰に会ふたびに言葉増え 馬場美雪
万葉の言葉降らせて夜の雪 佐々木文子
三寒のお小言四温の誉め言葉 勝田享子
世紀末という言葉帰化植物素直に咲き 小林仁子
両肩で海の言葉を聞いている 河原不二子
久闊の梅にはじまる言葉より 古舘曹人 能登の蛙
久闊の言葉は置いて水見舞 板場武郎
予報官言葉を濁しついりかな 稲畑廣太郎
二歳児のなぜなぜ言葉凍解ける 姉崎蕗子
二番茶の袖や言葉を胸すくまで 古舘曹人 能登の蛙
五線紙に言葉をつづる春野かな 二村典子
京人の言葉はしらぬところ哉 正岡子規
京人の言葉やさしき日傘かな 高橋淡路女 梶の葉
京言葉にてかしましやにごり鮒 矢野蓬矢
京言葉もて寄鍋の世話をする 奥田可児
京言葉ゆつくり値切る羽子の市 菅野雅生
京言葉涼し木の名を梶といふ 宇佐美魚目 天地存問
京言葉耳におもねる夜半の春 大橋越央子
京鹿子ひらがな言葉かけてゆく 井上菜摘子
人われは言葉恥ぢらふ沙羅の花 林翔
人去りて賀状それぞれ言葉発す 角川源義
人形に言葉をかけて夜長かな 竹山美江子
人悼む言葉が春の日傘より 鈴木鷹夫 春の門
人散って言葉残れり萍に 清水冬視
人日の言葉を水に流しやる 佐藤鬼房
人生よりも言葉永けれ玉霰 池田澄子 たましいの話
今年もや句作言葉の砂金堀 高澤良一 随笑
今牡蠣の旬てふ言葉広島に 稲畑汀子
企救の女はあらき言葉に馬刀ひさぐ 古野一雨
伝道女涼しき言葉残し去る 小西藤満
低声に親しき言葉猫柳 柴田白葉女
体じゅう言葉がめぐる花火の夜 大高翔
佳き言葉受けて家出づ新社員 大森三保子
佳き言葉授かる葡萄棚の下 向田貴子
佳き言葉添へし賀状の届きけり 阪田昭風
使はねば言葉も黴びてしまひさう 藤崎久を
俳諧や言葉がくれの蛸と月 中村ヨシオ
六月の言葉のやうに霧の水脈 桜井博道 海上
六月の言葉残りて秋の旅 浜田酒堂
再会の言葉探して駅うらら 湯川雅
冬うらら師の言葉また聞きもらす 福田甲子雄
冬すみれ嬉しき言葉秘めきれず 野田ゆたか
冬の夜の村の言葉はお晩です 大井雅人
冬の夜を言葉なけれど夫婦なり 大竹多可志
冬の旅君へ言葉の手榴弾 夜基津吐虫
冬の日の言葉は水のわくように 鈴木六林男
冬の滝人に言葉を求めはせず 大井雅人 龍岡村
冬の雁告ぐべき言葉見つからず 西堀真爾
冬の霧言葉の枝葉さやぎくる 原裕 青垣
冬を病む聖書の言葉壁に貼り 菅原独去
冬晴や荒くかなしき海女言葉 神尾久美子 掌
冬木みな言葉を溜めて間引絵馬 町田しげき
冬桜はらりと重き言葉かな 若泉真樹
冬泉ひとの言葉を聴いてゐる 石田郷子
冬灯ともせば言葉灯りけり 佐土井智津子
冬瓜汁腹八分とは佳き言葉 高澤良一 寒暑
冬空に探す逃がした詩の言葉 有働亨 汐路
冬蟹を言葉少なに食べてをり 佐藤綾子
冬近き朝市に聴く国言葉 清嶋静恵
冬近し死ぬときの言葉胸にしまふ 阿部完市 無帽
冬野来て風の継ぎ目の言葉欲し 奥原雉城
冬銀河言葉で殺し合ふことを 櫂未知子 貴族
冷し瓜船場言葉のなつかしき 小松虹路
凍るまで人の言葉を話す鳥 櫂未知子 貴族
出羽言葉に馬が従きゆく晴れ稲田(月山) 河野南畦 『風の岬』
分別の言葉しづかに冬羽織 小谷春子
切り返す言葉失くして繰る網戸 西村 雅苑
切株に胡桃言葉を置くごとし 宮下翠舟
初ざくら誰へともなき夜の言葉 岡本眸
初ひばり胸の奥處(おくど)といふ言葉 細見綾子(1907-97)
初みくじ神の言葉を樹に咲かせ 野見山朱鳥
初めに言葉ありと雪嶺光りだす 田川飛旅子
初冬てふ言葉重たくありにけり 小川竜雄
初夢の母に言葉の戻りをり 緑川 啓子
初日の出喩ふ言葉も立ち往生 高澤良一 鳩信
初松魚べらぼうと申す言葉あり 初鰹 正岡子規
初絵馬のため奉懸といふ言葉 後藤比奈夫 めんない千鳥
初芝居母もわすれし江戸言葉 小沢満佐子
初蝶にかがやく言葉子が投ぐる 馬場移公子
初蝶や馬上ゆたかといふ言葉 高柳重信
初電話言葉短かくあたゝかく 高木晴子 花 季
別れの言葉とてなく田を行くに蝗飛びつく 人間を彫る 大橋裸木
別宅という言葉あり蝉しぐれ 穴井太 穴井太句集
刺のある言葉交しつつ冬支度 波多野爽波
前生といふ言葉ふと虻の顔 川崎展宏
労りの言葉やさしく春寒し 川口咲子
北窓を開けて言葉を殖しけり 宮澤きぬ子
北風に言葉うばはれ麦踏めり 楸邨
北風に言葉奪はる立ち話 中村 功
北風の身を切るといふ言葉かな 中村苑子
北風やイエスの言葉つきまとふ 野見山朱鳥
十年も言葉一つよ暮の秋 禅桃 九 月 月別句集「韻塞」
卒業の子が拾ひ集めし言葉 太郎良昌子
卒業期言葉無頼に子の別れ 市川愁子
卯の花腐し怒れば生きた言葉生る 能村登四郎
即興の言葉うしなふ白睡蓮 北見さとる
受験子の言葉少なに戻りけり 梅田實三郎
受験子へ言葉もかけず見送れる 岡安紀元
叡山といふ言葉さへ秋高し 小原弘幹
口あけて言葉出て来ず青山椒 細川加賀 生身魂
口冱てて言葉をのんでしまひけり 高木晴子 花 季
古九谷のむらさきは冬の言葉かな 山田みづえ
古墳出て言葉やさしや楠若葉 角川源義
古暦ひとに或る日といふ言葉 長谷川照子
古暦好きな言葉の捨てがたし 橋本允子
叱るほか言葉を知らず蜜柑むく 木村蕪城
合歓を見て残す言葉は何時言はむ 岩田昌寿 地の塩
名月や筆の言葉の引廻はし 園女 俳諧撰集玉藻集
名月を捨てぬ言葉や花曇 江戸-駒角 元禄百人一句
咲くといふ言葉のありし霧氷かな 橋本博
咳き込んで言葉の継ぎ穂失へり 柏井季子
唇に秋漂へる言葉かな 阿部みどり女
唇の言葉の下の冬の山 山西雅子
唖者が飼う鳩白に黒乗り言葉見える 堀葦男
商人の言葉遮るサイネリア 山口振り子
啓蟄や耳にしたがふ京言葉 柴田白葉女 花寂び 以後
善き言葉うまるらし茶の咲きそむる 檜學
喪ごころに言葉こもらふ藤の下 文挟夫佐恵 黄 瀬
喪に触れぬ言葉をえらび初電話 柴田慧美子
喪ひしもの甦る思ひして君の言葉に胸あつく居り 山田はま子
囀りや瞳のかがやきも言葉にて 香西照雄 素心
四月馬鹿達者と云へる褒め言葉 高澤良一 鳩信
団栗と子がもたらせし土地言葉 金子 潮
囮の身明す言葉は鳥に無く 清水忠彦
園守るや言葉をまたで冬近し 尾崎迷堂 孤輪
土地言葉やゝ耳馴れし年賀かな 矢津典子
地蔵盆子らの言葉を灯と吊りて 大石悦子 群萌
地言葉のほろほろ新酒香りけり 東谷満也
塩きつく茄子漬け雲の言葉待つ 源鬼彦「白鳥」
境涯に使はぬ言葉茂りあふ 攝津幸彦 未刊句集
声にせぬ言葉のごとく花残る 大久保真理子
声に出し秋口といふよき言葉 片山由美子 風待月
声のなき言葉湧きつぎ枇杷の花 加藤知世子 花 季
売言葉買はずに帰る鵙の下 林十九楼
壺焼やどこか雅びし隠岐言葉 木村蕪城 一位
夏の山言葉のごとく灯り初む 宮武寒々 朱卓
夏めくや言葉にならぬ里の空 吉村叔子
夏期大学慣れざる言葉多かりし 中西利一
夏燕羅馬の丘に言葉ふらす 小池文子 巴里蕭条
夏痩せて言葉えらびのつづきおり 鈴木六林男 後座
夕星の輝きそめし外にたちて別れの言葉短くいひぬ 吉本政枝
夕焼に祈る言葉も染りつゝ 山内山彦
夕紅葉言葉渇いてしまひけり 清水浩
夕顔に言葉のはしをききもらし きくの
夕顔の花に書きたき言葉あり 藺草慶子
夕顔や今日は言葉の多かりき 福田蓼汀 山火
外套に沁む月光や言葉なし 中島斌男
夜の鉄に言葉鋭き男達 小倉清二郎
夜の雪耶蘇の言葉のごとく降る 藤岡筑邨
夜光虫波の言葉を語りけり 徳永山冬子
夜桜を見上げて言葉胸に秘め 松村久美子
大き炉に応への言葉煮つめをり 吉野義子
大旦はじめの言葉嬰が出す 長谷川双魚 『ひとつとや』
大暑来て鋸の目立てが言葉なす 河野南畦 湖の森
大火鉢ゆつくりと言葉出でゆきぬ 猪俣千代子 堆 朱
大賀蓮言葉待たれてゐたりけり 石寒太 翔
天上の言葉ついばみ小鳥来る 高橋謙次郎
天体は言葉降らさず夜学生 藤田湘子 てんてん
天啓の言葉だいじに壬生念仏 吉岡満寿美
天秤の片方に言葉をのせる 鹿又英一
太初より言葉はかなし初日記 野見山朱鳥
太箸の白きに言葉あらたまる 永方裕子
太箸や言葉あらたに夫の前 小泉良子
夫とゐて言葉の入らぬ夜長かな 高木初枝
夫と居て言葉なき夜の轡虫 浜 芳女
夫の留守言葉すくなし芥子坊主 野本小雪
夫婦とて言葉を選ぶ衣被 古川塔子
夾竹桃はげしき言葉われを去る 原裕 葦牙
好きといふ言葉さびしもささめ雪 仙田洋子 雲は王冠
妻あらば今言葉欲し氷水 北島大果(萬緑)
妻を慰む言葉おどけて秋かなし 椎橋清翠
嫁ぐとは不埓な言葉梅は實に 筑紫磐井 花鳥諷詠
嫁ぐ娘に言葉は要らず明易し 千原草之
嫁ぐ娘へ言葉さがして雪を見る 田川飛旅子
嬉しくて躓く言葉爽やかに 山田弘子 懐
子に言葉教へし頃の雛や古り 殿村莵絲子 雨 月
子のつくる言葉あたらし牡丹雪 上田日差子
子の言葉こころにおきて春の月 松村蒼石 露
子を愛づる言葉ひたすら水温む 中村汀女
子を褒むる言葉匂はす冬日の卓 林翔 和紙
子等遠し菊の言葉の届かざる 稲畑汀子 春光
孤り聴く「北」てふ言葉としつきの繁みの中に母のごとしも 浜田到
孤高とふ言葉愛せし冬畢る 林 翔
定まらぬ言葉からめて林檎むく 可愛 忍
実むらさき亡き師の言葉序にかへて 八牧美喜子
実むらさき流れのごとき京言葉 鈴木としゑ
実南天華やぐ友の京言葉 田中千加
実梅落つと言葉にならぬほどの音 加倉井秋を 午後の窓
客僧の言葉少き夜寒かな 寺田寅彦(1878-1935)
寒の鮒ことことと煮て田舎言葉 中山純子 沙羅
寒三日月言葉ひとつに身を削り 嶋田麻紀
寒卵割ってすんなり出ぬ言葉 増野秀子
寒影の兄や言葉をかけざりき 小池文子 巴里蕭条
寒木瓜に言葉を一つづつ蔵ふ 小檜山繁子
寒林やとつくに言葉消えやすく 石橋秀野
寒竹鳴つて父は言葉を捜しをり 田川飛旅子 『花文字』
寒紅といふ言葉には濃きこころ 後藤夜半 底紅
寒紅の口うつくしき京言葉 蒲生院鳥
寒紅をひきつつ言葉探しけり 鳥山米子
寒緋鯉医師への言葉整ふる 鍵和田[ゆう]子 未来図
寒肥に芽吹く言葉を踏んでくる 原子公平
寒風に少女はつよき言葉持つ 右城暮石 声と声
寒鴉田畑といふ言葉かな 綾部仁喜 寒木
小町墳言葉少なに時雨傘 浅野アツ子
小粒柿陽にきらきらと鄙言葉 鍵和田[ゆう]子 浮標
小豆引く言葉少き一日かん 細見綾子
小雪ふる夕べは言葉こまやかに 柴田白葉女 花寂び 以後
小鳥来る伝言板に言葉満ち 堀川草芳
少女らのラ抜き言葉よアマリリス 内田美紗 魚眼石 以降
尻上り言葉を浴びつ夾竹桃 八木林之介 青霞集
尼僧語る花サザンカはしきりなりイタリアの言葉に散る夕まぐれ 本田一楊
尾花蛸揚げてとび交ふ海人言葉 つじ加代子
屋上に満たして春来る伊予言葉 加倉井秋を 『真名井』
屯の人月に言葉を交しゆく 田村了咲
山上に言葉四・五人は揚羽なり 稲山佳子
山人のみやび言葉や秋の雷 原和子
山國や花種を掌に御所言葉 田中英子
山枯れて言葉のごとく水動く 龍太
山茱萸に明るき言葉こぼし合ふ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
山茶花に別れつまづく言葉の壁 宮武寒々 朱卓
山茶花の散るをいたみし言葉かな 裕
山茶花や童女も淡海言葉にて 草間時彦 櫻山
山言葉ときに早めて蕨売 斉藤夏風
峇峇(ばば)言葉 失せゆく宙に ホテルの燦 伊丹公子 パースの秋
峡住みの言葉置くごと冬灯 有馬籌子
峰わたる春雷一つ水戸言葉 原裕 新治
川に橋われらに言葉鳥渡る 石倉夏生
巣立後の常の言葉の雀ども 石塚友二
師の句集言葉の飛沫新緑に 肥後悦子
帰る道は言葉すくなし薄原 川崎展宏
帰省子の言葉少なし柏餅 岡和子
常節や骨身にしみるてふ言葉 北川鬼火
平生も言葉寡く秋扇 後藤夜半 底紅
年々や御慶の言葉かはりけり 御慶 正岡子規
年の瀬の言葉かぶりて抽選機 河野南畦 『硝子の船』
年を経て相逢ふことのもしあらば語る言葉もうつくしからん 尾崎左永子
幼子に言葉の殖えて小鳥来る 高野 教子
底の明るさ言葉とならず春炬燵 河野南畦 湖の森
底冷えの片耳ピアス恋に言葉 高安久美子
弱まりて言葉の中の稲びかり 猪俣千代子 堆 朱
影足せば*さふらんの言葉流れる 新間絢子
彼岸配り子して配らする言葉教ふる 梅林句屑 喜谷六花
彼方の男女虫の言葉を交わしおり 原子公平
御降りといへる言葉も美しく 高野素十
心太さらりと言葉躱はされし 岡部名保子
忍冬の花のこぼせる言葉かな 後藤比奈夫「花匂ひ」
忘れられし言葉のごとく鮎落ちゆく 田中裕明 花間一壺
忘れ得ぬバレンタインの日の言葉 堂前悦子
恋すれば言葉少しソーダ水 吉屋信子 吉屋信子句集
恋人たち言葉ヨットのように過ぎ 前川弘明
恩愛の言葉短く薔薇くれなゐ 古舘曹人 能登の蛙
息白く声にならざる喪の言葉 赤井淳子
息白く教ふる言葉くりかへし 藤岡筑邨
息白く犬も言葉を持つごとし 三河まさる
悪い言葉を愉しむ少年むらがる棕櫚 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
悲しみに言葉はいらぬ牛蛙 上原勝子
情ありて言葉寡なや月の友 渡辺水巴
愛の言葉に聡くて爆ぜる鳳仙花 寺井谷子
感動は言葉ではない汗の色 野崎耕司
慰めの言葉もなくて炭をつぐ 山本嘉代子
懸け煙草黄ばみてやさし飛弾言葉 加倉井秋を 『真名井』
懸想文みやび言葉の秘めやかに 山田弘子 こぶし坂
懺悔了へ流るる汗も言葉なす 西川 織子
戦あるかと幼な言葉の息白し 佐藤鬼房 夜の崖
手の蜘蛛の軽さに愛の言葉出づ 森 久
手をかざす蜻蛉といふはよき言葉 川崎展宏
手を振るが別れの言葉大夕焼 植木千鶴子
手塩てふ言葉なつかし茄子の花 松島千代
手袋なし手話の青年言葉光る 坂間恒子
投げ合へる漁師言葉も秋の暮 高澤良一 素抱
折端に霞はんなり京言葉 加藤耕子
抱くたびに子の言葉増え実万両 野田禎男
指さして雲雀の言葉身に浴びる 古舘曹人 砂の音
攝待の柔らかかりし伊予言葉 河野 伸子
放屁虫神の言葉を人が述べ 太田寛郎
斑猫や言葉がシヨートするようだ 大島雅美
断崖へ学んだ言葉きらきらと 滝口千恵
新春の御慶はふるき言葉かな 宗因
新樹光挙手が言葉となる校舎 雨宮抱星
新涼の人の言葉にうなづきし 倉田 紘文
新涼の文吾を打つ言葉あり 大橋敦子 手 鞠
新涼の犬に言葉をかけにけり 川崎展宏
新雪は言葉なきまま指を過ぐ 能美澄江
新雪踏む言葉成熟するまで踏む 加倉井秋を
方言は仕事の言葉くつわ虫 香西照雄 素心
旅に獲し言葉一つや枇杷の花 石田波郷
日が/落ちて/山脈といふ/言葉かな 高柳重信
日の窪に言葉の欲しき冬すみれ 古市絵未
日向なる飛ぶ向日葵と日の言葉 高柳重信
早苗投ぐ言葉のはしに刻を言ふ 米沢吾亦紅 童顔
明日といふ言葉は楽し髪洗ふ 鷲巣ふじ子
明日も会ふ別れの言葉白木槿 倉橋羊村
明易の言葉は韻きやすきかな 高澤良一 寒暑
星仰ぎ星の言葉と遊ぶ蝦蟇 源鬼彦
春の夜や金魚に言葉かけて寝る 甘田正翠
春の椅子きしませ言葉すくなくなる 柴田白葉女 遠い橋
春の野に出でて摘むてふ言葉あり 比奈夫
春の雪駅に別れの京言葉 中坪達哉
春は春の言葉を刻み竹人形 殿村菟絲子 『菟絲』
春場所や浪花言葉の嬌声が 山田土偶
春夕好きな言葉を呼びあつめ 藤田湘子 てんてん
春寒くわが言ふ医師の言葉かな 新明紫明
春寒し醫師の言葉のうらおもて 石田あき子 見舞籠
春寒の言葉うろうろ訃の電話 米谷孝
春待つといふ大いなる言葉あり 後藤夜半
春愁になげの言葉を使徒ぶりぬ 下村槐太 天涯
春掛や郷にもどりて郷言葉 中村若沙
春来つつあり万感といふ言葉 清水径子
春来とも友達言葉の友失ふ 及川貞
春水のやうに言葉が胸に満つ 小澤克己
春灯という言葉あり寝ねがたし 池田澄子 たましいの話
春疾風 土の言葉かも知れぬ 穴井太 土語
春立つと古き言葉の韻よし 後藤夜半 底紅
春著着て人の言葉にさとき子よ 後藤比奈夫
春霞言葉の海にひたりをり 礒野輝夫
昼は人に言葉尽して夜の秋 野澤節子 黄 炎
昼凪のわが言葉のみ揺るるなり 松澤昭 神立
昼寝覚出づる言葉のあぶくめく 高澤良一 寒暑
時雨忌といふ言葉好き斯く記す 立子
晩夏光もの言ふごとに言葉褪せ 西村和子 夏帽子
晩秋の葉洩れ日兄弟だけの言葉 佐藤真次
暑さめと己に言葉ぶつけけり 高澤良一 随笑
暑にまけて言葉忘れしごとく居り 五十嵐八重子
暑の兆し言葉の刺のきらきらす 殿村莵絲子 牡 丹
暖かき言葉のごとき吸入器 岡田史乃
暖かくなりて言葉もあたたかし 阿部みどり女
暖かにかへしくれたる言葉かな 星野立子
暖かに心にたゝみ聞く言葉 星野立子
暖かや背の子の言葉聞きながし 汀女
暗い製粉言葉のように鼠湧かせ 金子兜太 金子兜太句集
曖昧な土筆の言葉食卓に 田川飛旅子 『山法師』
曙の星を言葉にさしかえて唱うも今日をかぎりとやせむ 岡井隆
書き上げて言葉失せしごとく梅雨 野澤節子 黄 炎
曼珠沙華揺れては言葉こぼしをり 窪信路
月のひかり冷たき地上夜の底いまだ己れの言葉に会わず 今井恵子
月の道子の言葉掌に置くごとし 龍太
月齢といへりし言葉今日の月 後藤夜半 底紅
朝寒の言葉つまづく杣同士 下村ひろし
朝涼の身より生まるる礼言葉 村越化石
朝顔の双葉や言葉にも初め 片山由美子「風待月」
朧濃く他界の言葉吐きしかな 齋藤愼爾
木の実落つわかれの言葉短くも 橋本多佳子
木の実跳ぶ甲州言葉荒ければ 小林波留
木の言葉聞きに新入生移動 杉野一博
木呪ひ言葉を荒く始めけり 朝妻力
木槿垣島原言葉艶あらぬ 下村ひろし 西陲集
木洩日の言葉は尽きず蟻地獄 鷹羽狩行
末の子が黴と言葉を使ふほど 中村汀女
杉山は杉の言葉のしづり雪 文挟夫佐恵 遠い橋
来て逢ふは言葉の美しき沼の秋 石田三枝子
東京言葉きたなし好きはかき氷 及川 貞
東歌に上毛言葉榛は実に 田中英子
松の内籠りて言葉失くせしや 佐野美智
松の内言葉も飾らねばならぬ 山内山彦
松手入空にいちにち加賀言葉 井上雪
枇杷すする言葉乾くはいと易し 河野多希女 月沙漠
枇杷のある店頭親子言葉交す 川崎展宏
果実の言葉炎天をゆく少女らより 熊谷愛子
枝の鳥春の言葉を選りてをり 櫛原希伊子
枯れに向き重き辞書繰る言葉は花 細見綾子 黄 炎
枯木に通ふ言葉あらざりひたに焚く 細谷源二 砂金帯
枯柳古りし言葉にモボとモガ 菖蒲あや
枯野ゆく幼な子絶えず言葉欲り 馬場移公子
柊や人を評すに言葉搖れ 高澤良一 随笑
柿食えば朱き言葉を独り言 葉月ひさ子
桜桃や言葉尖りて病むかなし 新田久子
桜炭明治の言葉うつくしき 古賀まり子 緑の野
桜鯛言葉少なに糶られたり 品川鈴子
梔子の花ふくらみし下に来て今日言ふ言葉いひためし居り 伊藤保
梨咲きぬ言葉の届く高さにて 岡本 眸
梶の葉にシエークスピアの言葉書く 吉田愛子
棚経や草木も言葉交すなる 宮津昭彦
棺桶に封ずこの世の菊・言葉 辻田克巳
椿見て一日雨の加賀言葉 澄雄
楪のこぼれて朝の言葉透く 佐野鬼人
業平忌水辺の言葉水に消え 上田五千石
榾かへす次の言葉を待ちながら 本郷けさみ
橙の青く小さき実伊予言葉 篠崎圭介
檻の蛇言葉無きまま雪暮るる 仙田洋子 橋のあなたに
櫛買ひて得たる涼しき京言葉 鈴木鷹夫 渚通り
歓ぶことの言葉つまりし子のひとみ 河村花不言
此の土地の言葉にも馴れ柿うまし 椎橋清翠
歳旦吟言葉飾らぬ生地の佳さ 高澤良一 燕音
死に近き鸚鵡の諳んじた言葉 三橋たまき
残る焚火に言葉すくなの師と踞む 松村蒼石
母がりに言葉溢るる茸飯 ふけとしこ 鎌の刃
母といふ言葉やはらか桜草 小林和恵
母へ濁す言葉の端よ別れ霜 桂信子 黄 瀬
母癒えて言葉少なや冬桜 岡田日郎
母郷言葉覚え戻りし娘と涼む 高橋せをち
比翼とはかなしき言葉身に入みて 桑田青虎
毛を刈る間羊に言葉かけとほす 橋本多佳子
水くぐる青き扇をわが言葉創りたまへるかの夜へ献る 山中智恵子
水の言葉聞け水馬今日の序ぞ 磯貝碧蹄館 握手
水澄むと人は言葉を慎めり 青木重行
水澄むや言葉すくなく馬を飼ふ 水野爽径
水無月の遍路のひとり言葉かな 加藤三七子「水無月遍路」
水祝呉服所衆は京言葉 四明句集 中川四明
水芭蕉夢の言葉を白く吐く 久保田慶子
水草紅葉言葉はそこへ置きざりに 山田みづえ
氷柱伸ぶ言葉ほきほき噛んでをり 仙田洋子 橋のあなたに
汗にじむ言葉を使ひ果しけり 中村正幸
汗の香がやや青年訛る言葉を無口に 赤城さかえ句集
沈丁に雨は音なし加賀言葉 細見綾子 黄 瀬
沈黙もこころの言葉露涼し 金田きみ子(朝)
沈黙も言葉のひとつ龍の玉 太田寛郎
泉での言葉しづかにおびただし 古舘曹人 能登の蛙
泡の世は泡の言葉や去来の忌 長谷川櫂 天球
泡の言葉のみどりご鉄の夜気びつしり 林田紀音夫
泡盛にちゆらさんといふ言葉よき 後藤比奈夫 めんない千鳥
泣くといふ言葉聴き分け桜草 上田日差子
泰山木散る滅却といふ言葉 高澤良一 ねずみのこまくら
泳ぎ来て果実のやうな言葉投ぐ 黛まどか
洗ひあげし冬菜言葉を待つごとし 栗林千津
洗ひ鯉母とひと夜の加賀言葉 細川加賀 生身魂
流れ去る言葉すくえば花藻なり 大島雅美
流氷の継ぎ目を落ちてゆく言葉 櫂未知子 蒙古斑
浜っ子のべえべえ言葉海贏廻し 高澤良一 ぱらりとせ
浜言葉なる気安さの蜆買ふ 山崎喜八郎
浮人形沈めて近江言葉かな 関戸靖子
浮名とは明治の言葉都鳥 矢津羨魚
海苔掻女小笊手に手に浜言葉 加藤あき江
涼しさに言葉始まる赤ん坊 廣瀬直人
清冽に日の言葉あり霧氷咲く 岸秋渓子
湯豆腐に素直な言葉かくしけり 米沢恵子
湯豆腐の浮けば召せよの京言葉 谷野黄沙
溢れくる言葉のやうに若葉噴く 吉原文音
滝の音にのまれし言葉眸がただす 稲垣きくの 黄 瀬
滝浴びの童子の言葉谿に澄む 河野南畦(あざみ)
滝風に言葉は宙へとびにけり 青葉三角草
漬梅と女の言葉壷に封ず 橋本多佳子
潮鳴つてうんだ言葉の祭人 中戸川朝人 星辰
濃紫陽花吾子への言葉溜めてをり 関戸靖子
火の言葉つつみおほせしコート着る 島田夏子
火蛾眉をかすめし不貞なる言葉 柴田白葉女 遠い橋
灯を消せばさざめく雛や京言葉 倉澤以世子
灯火の言葉を咲かすさむさかな 鬼貫
灯蛾更けて言葉少なくなりにけり 阿部みどり女
炉を囲む木地師にのこる公家言葉 曽和信雄
炉火楽し手かざし言葉なきときも 福田蓼汀 山火
炭ついでしまへど言葉みつからず 牧野美津穂
点滅は聖樹の言葉クリスマス 山崎みのる
煖炉もゆ少女と交す言葉得て 原田青児
煙のような言葉タバスコ強くふる 野木桃花
煮こごりや護身の言葉重ねては 岡本まち子
煮凝や言葉の暗さ思ひをり 小林康治
熨斗香合見て言葉待つさくら季 河野多希女 こころの鷹
熱燗やひたすらといふ言葉あり 射場秀太郎
爆心地の火を継ぎみどり匂う言葉 隈治人
父の眼訴え言葉にならぬ白息よ 田川飛旅子 花文字
父は言葉失い冬の鵙を聞く 田川飛旅子 花文字
父子で住んで言葉少なく朝顔が咲いて 尾崎放哉
父母の言葉のまろみ牡丹雪 今井山朗
父祖の地の親しき言葉稲の花 浅尾愿子
爽かな言葉はいまだ身を発せず 野澤節子 黄 瀬
爽やかな言葉はいまだ身を発せず 野沢節子 未明音
牛蒡抜と言ふ言葉ほどよく抜けず 今瀬剛一
牡丹や言葉少き客あるじ 西山泊雲 泊雲句集
独り居は言葉に飢ゑし夜長かな 蔭山涼花
独活たべて熱き言葉をおもふべし 加藤三七子
猫の子にかがみて諭す京言葉 中戸川朝人 星辰
甕の水雪夜は言葉蔵しをり 能村登四郎(1911-2002)
甘えるによき甲斐言葉露かぶり 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
生き死にの言葉同じのふぐと汁 河野南畦 湖の森
生き死には言葉とならず忍釣る 河野南畦 『広場』
生国に探す言葉や新豆腐 柿本多映
甲板にて言葉待つごと月を待つ 加倉井秋を 午後の窓
畏友てふ言葉思ひし獺祭忌 日原傳
病むといふ言葉忘れむ秋深し 阿部みどり女 月下美人
病む父の言葉気丈に大暑かな 大内 恵
病めば霜夜の言葉あたたか犬・猫に 沖田佐久子
癒えよとの言葉ひとつに麦青む 橋本榮治 麦生
癒ゆといふくすしの言葉菊は芽に 持田旋花
発心の言葉雪夜の方寸に 田川飛旅子
登高や光れる言葉はじけ合ひ 徳永山冬子
白き息ゆたかに朝の言葉あり 西島麦南
白き息見えゐて言葉届かざる 岡田順子
白ぼたん覚醒という言葉ある 星野一郎
白地着てやさしき言葉惜しまぬ日 金久美智子
白木槿言葉短く別れけり 露月句集 石井露月
白湯という日本の言葉寒椿 尾田秀三郎
白玉やつれあひといふよき言葉 千手 和子
白玉や京の子供の京言葉 河野美保子
白鳥の逢ふも別るも首言葉 星野紗一
百合子忌の病後日雇の言葉やさし 岩田昌寿 地の塩
百合白くいちにち言葉失せにけり 金田咲子 全身 以後
百年とたたぬに言葉とどかざる未来の真昼に来てしまひたる 河路由佳
百本の薔薇に匹敵する言葉 生野 雅
皓歯にて訣れの言葉すずしかり 櫛原希伊子
皹(あかぎれ)といふいたさうな言葉かな 富安風生(1885-1979)
目白捕言葉も卑しからざりし 茨木和生 往馬
直情といふ言葉あり今年竹 大橋敦子 匂 玉
相会ふも桜の下よ言葉なし 細見綾子(1907-97)
看護婦の言葉短き愛の羽根 岡部名保子
真似て言葉ふやす子紋白蝶とべり 太田土男
真向へば虹に言葉のあるごとし 藤木倶子
眼に降り込む雪胸中に言葉溜る 津田清子 礼 拝
短夜を語り明せし里言葉 稲畑廣太郎
短日の言葉端折りて物申す 矢崎妙子
石筍に春の言葉の溜るべし 桂樟蹊子
示寂すといふ言葉あり朴散華 高浜虚子「虚子全集」
祖母と子の言葉を紡ぐ青葉蔭 橋本榮治 麦生
神の言葉隠り寒林青くなる 石原八束 白夜の旅人
神田祭江戸つ子言葉懐かしき 倉田 健一
秋の人言葉すくなに笑み交はす 高橋淡路女 梶の葉
秋の蚊の言葉乏しき地の祈 古舘曹人 能登の蛙
秋扇といふ恋の果てめく言葉あり 能村登四郎
秋時雨言葉を拒む背中かな 谷口桂子
秋晴るるなもし言葉はややすたれ 成瀬正とし 星月夜
秋海棠ほろほろ言葉染まるなり 河野多希女 こころの鷹
秋海棠日暮れは言葉やさしき父 岩瀬張治夫
秋深き言葉を探し礼(いや)を作す 轡田進
秋潮ひたひた貝に通じる言葉欲し 八木三日女 落葉期
秋雨を言葉のごとく聞く夜かな 山田弘子 懐
秋風やをとこ言葉で児を叱り 樋笠文
秋風や切字とひびく師の言葉 岩崎照子
秋風や書かねば言葉消えやすし 野見山朱鳥(1917-70)
称名の十言葉せば十白息 加倉井秋を
稲扱のわめきが言葉なすらしや 米沢吾亦紅 童顔
穴釣や言葉少なく人群れて 新井英子
究極という言葉あり寒月光 渡辺明子
空蝉を恋の言葉のごとく置く 関戸靖子
立つ虹に見合った言葉ぽんと出で 高澤良一 寒暑
立冬と言葉も響き明けゆく空 高柳重信
立秋の心が知つてゐる言葉 汀子
端居してつくり言葉のこゝになし 米沢吾亦紅 童顔
竹伐の初めに稚児の言葉あり 山下花石
笑むことが父の言葉や三葉芹 新井娃子
笹子鳴く妻の言葉のあと満たし 加倉井秋を 『真名井』
箔つける羽子板売の言葉かな 信徳
米売と交す言葉や昼の雪 藤田湘子 途上
米粒を研ぎつゝ武器といふ言葉 攝津幸彦 鹿々集
約束も言葉もいらぬ春の野にくちなはは無韻によぢれ合ひつつ 青井史
紅梅や身の芯に享く師の言葉 松村多美
納豆一本づつ売る正月の言葉のせ 萩原洋灯
紙漉きの言葉の端も地の處女 津田清子
紙魚死して聖書の言葉亡ぶなし 井沢正江
紫陽花や既に他界の言葉吐く 斎藤玄 クルーケンベルヒ氏腫瘍と妻
紫陽花や苑子晴子の初言葉 殿村菟絲子 『菟絲』
細雪妻に言葉を待たれをり 石田波郷(1913-69)
結納の言葉を選ぶ実南天 神 緑郎
緊張の言葉貧しきとき寒し 永野由美子
緑蔭の言葉の円さ風来る 飯田龍太
緑蔭の言葉や熱せずあたたかく 中村草田男「銀河依然」
繰り返す言葉の呪術呼子鳥 沼尻巳津子
美き言葉産めよ葡萄の珠食みて 柴田奈美
美しくわからぬ言葉水澄めり 森賀まり
美蓉咲き誰にも言葉優しくす 塩谷はつ枝
義弟とは言葉少なくビール酌む 森田峠 避暑散歩
羽化つゞくふたりの言葉夏野にて 平井さち子 完流
老いたれば言葉少なに零余子飯 藤芳延枝
老友てふをかしき言葉若菜摘 田中裕明 花間一壺
老爺とつとつこぼれるように言葉吐く 山岡敬典
耕してひと日言葉を忘じをり 佐藤 国夫
聞かれざる言葉影なす流氷期 仙田洋子 橋のあなたに
聞き置くと云ふ言葉あり菊膾 中村汀女
肌寒と言葉交せばこと足りぬ 星野立子
肩かけにくるまり言葉あたためる 伊藤仙女
胡桃割つて母郷の言葉われに無き 林翔 和紙
胡瓜もみ世話女房といふ言葉 高濱虚子
胸の言葉木枯を来て奪はるる 高木美紗子
胸中の言葉に月の照り始む 脇本星浪
能登人や言葉少なに水を打つ 前田普羅 能登蒼し
能面に言葉就きゆく秋の暮 原 和子
臨終の感謝の言葉露の世に 稲畑汀子 汀子第二句集
自嘲して五万米の歯ぎしりといふ言葉 富安風生
自炊五月朝のコジユ鶏を真似言葉に 秋庭俊彦 果樹
舞ふ鶴の光芒を師の言葉とす 沼尻巳津子
舳先に降る雪一条の言葉のごと 桜井博道 海上
舶来てふ言葉のありき漱石忌 池濱フサ
船人の近江言葉よ鮒膾 高濱虚子
芙蓉咲き誰にも言葉優しくす 塩谷はつ枝
芭蕉忌や己が命をほめ言葉 中村草田男
花の夜の言葉ひとひら信じたき 町野けい子
花ももや言葉にならずつと寄りぬ 小泉一代
花ダチユラ妻の言葉に毒すこし 橋本榮治 麦生
花大根隠岐に伝ふる御所言葉 吉村ゑみこ
花拒み言葉を拒み祖母の咳く(七日粥) 橋本榮治 麦生
花木瓜に刺され常なき荒ら言葉 河野南畦 湖の森
花林檎不意に言葉が歩きだす 高田詩季男
花芒言葉が人を切ることも 沼尻香寿子
花言葉好きな言葉の種を蒔く 関 千恵子
芹の水言葉となれば濁るなり 橋間石
苗木市熊本言葉荒々し 高野素十
若布つかみ農漁の言葉叩き合ふ 古舘曹人 能登の蛙
苧殻焚く姉弟言葉なきまゝに 菖蒲あや 路 地
茶の花が咲く馥郁といふ言葉 中川志帆
茶壺の中で言葉が遠ざかる 野平椎霞
茹栗を食べて世帯の言葉かな 草間時彦 櫻山
草いきれ言葉溜めゐて息苦し 稲垣きくの 黄 瀬
草闌けて犀の言葉で青年くる 八木三日女
菊に添へはつかに言葉遺し去りぬ 軽部烏頭子
萩しづか人に言葉のありにけり 阿部みどり女
落ちていたひかりは言葉秋立ちぬ 藤田藍子
落第の子もゐて言葉選びをり 森岡正作
落葉からの言葉を待てる日向かな 矢島渚男 延年
落葉中静かな言葉出でにけり 加藤楸邨
葉裏まで言葉輝け初鴉 たまき未知子
著痩とはかなしき言葉うすごろも 篠塚しげる
葛城の時雨に濡れし言葉かな 細川加賀 生身魂
葡萄垂れ献身といふ言葉かな 永島靖子
蓮掘の凍てに言葉を失へる 大橋敦子
蕗茄でて甘ゆる言葉忘れゆく 殿村莵絲子 花寂び 以後
薔薇青し夜は子の言葉実るなり 松澤昭 神立
薔薇館言葉気取りし鸚鵡ゐて 原田青児
薫風の大樹の言葉渚まで 松沢鍬江
藍の里ありて漢の朝言葉 阿部完市 春日朝歌
藍華に言葉をかけて秋の女 椎橋清翠
蘭の花支那の言葉を話しけり 蘭 正岡子規
蘭の香の言葉のはしにただよへり 米澤吾亦紅
虎落笛聞きつゝ言葉探しをり 赤木範子
虫とまる木の原のみち言葉の国 高屋窓秋
虫売と夜の言葉を交しけり 高木丁二
虫鳴けば虫の言葉と思ひ聞く 上野章子
蚊遣たき言葉少なに父娘あり 柴田白葉女 遠い橋
蛇山の蛇も言葉と思ひ初む 沼尻巳津子
蛍火や告ぐべき言葉見失ふ 仙波志げ子
蜂飛来して眼圧といふ言葉 高澤良一 随笑
蜘蛛の糸たぶん言葉を編んでいる 山口 剛
蜩の水にをさめし言葉かな 原裕 青垣
蝌蚪の紐カタカナ言葉殖えゆくよ 新井章有
蝶飛んで赤子に言葉ふえてゆく 大峯あきら 宇宙塵
螢火はしづかに闇に置く言葉 長塚京子
蟹の肉はらはら言葉ばらばらに 石寒太 翔
行き逢ひて猟夫とかはす言葉なし 橋本美代子
行水や奥能登にして京言葉 松井恭子
街にこぼす山の言葉やえびね売り 辺見京子
衰年の愁ひは人に告げざれどいつよりか言葉少くなれり 尾崎左永子
袋かけ若き言葉を木が皆吸ふ 栗生純夫 科野路
裏白やうらに本音の京言葉 岡本一路
裸木の果ては言葉のありどころ 二宮美智子
解し合ふ言葉少なにゐて涼し 高木晴子 花 季
言葉ありまた末枯をさずかりし 鈴木六林男 *か賊
言葉かけ合ひ楷樹もみぢの愛好家 高澤良一 ぱらりとせ
言葉かぢり牧童かたまる月の附近 阿部完市 絵本の空
言葉かはるたび銭換へて蒸暑き 稲垣きくの 黄 瀬
言葉ころす猟銃に弾罩めし後は 津田清子 礼 拝
言葉たくみに炎天を遁れ来し 原裕 葦牙
言葉つつしめと秋風ありにけり 岩岡中正
言葉つまる心の隙に汗ありて 林翔 和紙
言葉とは奥深きもの道をしへ 渡辺真映
言葉とは心の少し蝶の中 橋本鶏二
言葉とぶ身のうち暗し汗に寝て 桜井博道 海上
言葉とられし如く冬空何もなし 阿部完市 無帽
言葉なくせし母がすすんで蠅追へり 平井さち子 完流
言葉なく更く朧夜の湯葉づくし 北川孝子
言葉など要らぬ握手を秋風に 井上哲王
言葉にて受けし傷膿む薔薇の苑 寺井谷子
言葉にもリボンかけたくて聖夜 上田日差子
言葉にも春寒まとふ一と日かな 山内山彦
言葉にも矯め方があり姫始め 高澤良一 宿好
言葉のあと花椎の香の満ちてくる 橋本多佳子
言葉のごと少女は雨を降らせており 阿部完市 絵本の空
言葉の矢刺さりしままに神無月 関野八千代
言葉はや息の白さとなりて消ゆ 山下しげ人
言葉ひとつ封じて椿落ちにけり 金久美智子
言葉ふと刃となりし花石榴 きよみ
言葉ふと肉のごとくに蘆青し 岡井省二
言葉ほぐるるごと金縷梅の花ひらく 鈴木貞雄
言葉みな溺れてしまふ紫蘇畑 星水彦
言葉よりややあきらかに花芒 斎藤玄 雁道
言葉より確かなるもの冬薔薇 斉藤洋子
言葉より赤き蕪を洗ひ上げ 匹田荘平
言葉より香水の香の残りけり 恒藤滋生
言葉一滴遺さず逝ったきれいな夏 八木三日女 赤い地図
言葉二三散る 新年の崖へ来て 伊丹公子 時間紀行
言葉少く別れし夫婦秋の宵 杉田久女
言葉少なに去る山葵田の花ざかり 渡辺水巴 白日
言葉待ちつつ涼しさの中にゐる 廣瀬直人「朝の川」
言葉掻き集めるニンゲンノイルトコロ 斧田千晴
言葉涸れる雲美しき帆走後 平井久美子
言葉要らぬ麦扱母子影重ね 西東三鬼
語尾かたき水戸の言葉や竹の秋 源鬼彦
誰もマスク屍見し日は言葉やさし 岩田昌寿 地の塩
豚どもは言葉あるごと冬日押す 桜井博道 海上
買出しといふ言葉あり冬欅 斉藤夏風
買言葉放つ月下の葱の花 寺井谷子
賀詞交はす隠れ隠れの言葉もて 下村ひろし 西陲集
賜りし言葉温石となりけり 朱間繭生
走馬燈言葉すくなに商へり 福田蓼汀 山火
足らざりし言葉を悔いぬ菊の前 八木絵馬
足触れて言葉つまづく春炬燵 佐藤せいじ
路地にきく船場言葉や月おぼろ 若林節子
踏み込んでならぬ言葉や着ぶくれて 畑 昌子
躑躅赫し愛より強き言葉欲し 清水芳堂
身を抜けし言葉の冷ゆる居待月 大泉信夫
身空てふ言葉も死語に団扇風 高澤良一 鳩信
軍隊の短き言葉東風に飛ぶ 竹下しづの女句文集 昭和十四年
辛夷の芽言葉は空へ溢れをり 星野歌子
辞書にない明るい言葉芋植える 山口 伸
返したき言葉呑み込む秋扇 伊東白楊
送行に別れの言葉なかりけり 稲吉楠甫
透明な言葉を探す目高かな 太秦女良夫
通ひ婢の露けき言葉こぼしゆく 稲畑汀子 汀子第三句集
逝く年のくらがりにあるわが言葉 山田みづえ
逢瀬という言葉 雛の紙ほどく 増田治子
道楽は誉め言葉ぞよ桜狩 小川恭生
遠き声音近き言葉や夏近づく 成田千空 地霊
遣る瀬なき言葉紡ぎぬ鉦叩 篠田東巳以
遥かといふ言葉が好きよ春の星 高木晴子
遺したき言葉思へり走り梅雨 八牧美喜子
邂逅の言葉ふわりと夕朧 真田美江子
野分中短き言葉投げらるる 殿村莵絲子 花 季
釘をさすつもりの言葉悴めり 江頭 信子
針供養言葉のはしのささくれて 江遠 壌
釣の子と言葉交して沼小春 岩川味重
銀の城わが国に生れる言葉 阿部完市 証
銀ブラの言葉古りゆく年の市 岩崎照子
銀河濃し別れの言葉さがしをり 友岡子郷 遠方
銀漢や吾に老ゆといふ言葉きく 星野立子
長き夜を飛び交う電子言葉かな 後藤清美
長幼の言葉正しく御慶かな 高浜虚子
降り込むといふよき言葉春雨も 稲畑汀子 汀子第二句集
陽炎に坐し砂山の言葉聞く 町田しげき
隙間風恩誼が言葉封じをり 中戸川朝人 残心
隙間風臍につぶやく言葉とて 加藤知世子 黄 炎
雀には雀の言葉冬うらら 岩井タカ
雁を呼ぶ言葉を忘れゐたりけり 今瀬剛一
雛納むやさしき言葉かけながら 八木広子
雨長し月を讃ふる言葉なく 吉村ひさ志
雪に棲み言葉少なくなりしかな 高浦銘子
雪はげし生まるる言葉宙に消え 仙田洋子 橋のあなたに
雪国の子にクラークの言葉あり 山本歩禅
雪国の言葉の母に夫奪はる 中嶋秀子
雪崩恐し言葉にすればなほ恐し 加倉井秋を
雪柳水車の吐きつぐ水言葉 川崎慶子
雪無音たれも使はぬ言葉欲し 沖田佐久子
雪融けや言葉くづさず妻の家に 石田波郷
零余子摘む風の言葉を聞くごとく 高橋謙次郎
霜夜てふ言葉のありて恋しけれ 細見綾子 花寂び
霜晴や言葉かがやくまでみがけ 今瀬剛一
霧に吐く言葉が腋にまつはりぬ 古舘曹人 能登の蛙
霧ゆえの愛の言葉としたまふな 小寺正三
霧を来て言葉規しき牛乳くばり 下村槐太 天涯
露けしと言へる言葉のチラとあり 加倉井秋を 午後の窓
露の世に削ぎ残したる言葉かな 馬場駿吉
露の世の人に告ぐべき言葉あり 徳本象久
露の夜の一つの言葉待たれけり 柴田白葉女 遠い橋
露の夜の言葉尖りをおそれけり 林原耒井 蜩
露の身とすずしき言葉身にはしむ 高岡智照尼
露白し充ちて授かる言葉待つ 早崎明
露草のつゆの言葉を思うかな 橋石 和栲
青夜はるかな一つの言葉苔うたれ 佐藤鬼房
青年の言葉は匂う樫若葉 松田ひろむ
青春と云ふ言葉好き春野馳く 本田祐子
青桜ひと花ごころ焼言葉 加藤郁乎
青萩や深き言葉をみちすがら 草間時彦 櫻山
面授てふ言葉かしこみ初稽古 深見けん二 日月
響爽かいたゞきますといふ言葉 草田男
頑張れはつらき言葉や桜にも 後藤比奈夫 めんない千鳥
顔見世の隣の席の京言葉 小田尚輝
風の秋津軽言葉の僧現るる 河野南畦 湖の森
風呂吹や妻とはいつも国言葉 三浦誠子
風花やのれんくぐれば京言葉 山田弘子 こぶし坂
風花や亡き師の言葉片々と 桂信子 花寂び 以後
風花や伏せ字に当ててみる言葉 内田美紗 誕生日
風花や古き言葉は手をつきて 宇佐美魚目
風花や言葉交さぬ別れあり 松田淳子
風花を言葉やさしく告げらるる 村越化石
風邪声の言葉の上に青き天 榎本冬一郎 眼光
風雅とは大きな言葉老の春 高濱虚子
風青く津軽言葉が湖へ張り 河野南畦 湖の森
飲食の入り来る道の反りをば出で行くなれば腥し言葉 高橋睦郎 飲食
首にある言葉を空へ春立つ日 二村典子
香水の中よりとどめさす言葉 檜紀代
魚島と宿の女の言葉にも 川崎展宏
鮃食うべえべえ言葉の一座かな 原沢利夫
鮎掛に話しかくれば京言葉 鈴鹿野風呂 浜木綿
鮟鱇鍋はらからといふよき言葉 鈴本真砂女
鯖の言葉わかりて椿落つ 阿波野青畝
鰭酒や停年てふは忌み言葉 草間時彦 櫻山
鰯雲言はざる言葉美しく 倉知真木子
鰯雲言葉途切れし父と娘に 山田みづえ
鰯雲誰か言葉にするを待つ 中戸川朝人 尋声
鳥とも違う言葉かわして紫蘇畑 諸角せつ子
鳥銜へ去りぬ花野のわが言葉 静塔
鳰くぐる間をなめらかに京言葉 鈴木鷹夫 渚通り
鳴き逸る頬白言葉つめつめて 大橋敦子
鴬餅神田言葉をもてつまむ 松本澄江
鵜呑みせし言葉か鮎を吐かさるる 蔵持 柚
鵯と暮らし鵯の言葉も少しずつ 阪口涯子
鵯の言葉わかりて椿落つ 阿波野青畝(1899-1992)
鶲呼ぶ媼に言葉憂かりけり 原裕 青垣
麦刈が短き言葉洩らしたり 有働亨 汐路
麻刈の吾にわからぬ言葉かな 麻 正岡子規
黄水仙冷たき言葉繰り出しぬ 小林貴子
黄落に言葉惜しまず車椅子 増田治子
黴の世や言葉もつとも黴びやすく 片山由美子「風待月」
黴の中言葉となればもう古りし 加藤楸邨
*ばい打つてかくしことばのやりとりも 軽部烏頭子
「めし」とのみ男ことばの夏暖簾 北野民夫
あでやかに葉も出して柏のことば 阿部完市 春日朝歌
あり余ることばの果ての冬芒 政野すず子
かたかごの花の辺ことば惜しみけり 鍵和田釉子
かはせみに川の早口ことばかな 笹本千賀子
かりん落つあたため合はむ夜のことば 千代田葛彦
きみにふれたことばの端が黄ばんでゆく 伊藤利恵
くちびるに水のことばはあふれつつ吟遊なべて喝食の秋 山中智恵子
ことばかけては人通る稲田いちにち シヤツと雑草 栗林一石路
ことばさへなくて月見る寒さ哉 子曳
ことばともものともつかず吾亦紅 平井照敏
ことばなき指話美しや春灯 鈴木貞雄
ことばのやうに草に置かれし秋日傘 加納立子
ことばみな木霊となれり桷の花 新井世紫
ことばもたぬ守衛の孤独夏草に 栗林一石路
ことばもて子に距てらる春の虹 柴田白葉女
ことば失せいまも花びら塔炎ゆる 和田悟朗 法隆寺伝承
ことば尻とらへられたる春炬燵 神崎 忠
ことば待ちをれば病葉降る城址 御堂御名子
ことば忘れて昼はおこぜかあんこうか 津沢マサ子 楕円の昼
ことば時に刃より鋭し芒解く 稲垣きくの
ことば書略 鬼王が妻におくれしふすま哉 蕪村遺稿 冬
ことば立つこの青芝の心地よき 和田悟朗
ことば迅き少女の沼に冬はじめ 柚木紀子
こま鳥やことばはこころより遅れ 夏井いつき
さよならは嫌ひなことば桜餅 山田弘子 こぶし坂以後
しろがねの蜩の翅 京ことば 鈴木石夫
じやが薯を植ゑることばを置くごとく 矢島渚男(1935-)
そよそよと言葉とことば関係す 鳴戸奈菜
つゆけしやひとはゆたかにことばもつ 関根耀子
とび和む外つ国ことば園さくら 岡山精吾
どぶろくや語尾かん高き杣ことば 高橋悦男
はじめにことばあり冬林檎まふたつに 石寒太 炎環
ははこぐさはじめのことば忘れけり 矢島渚男 梟
はやくちことば余りこぼれる花の虻 山中葛子
ひぐらしやことばをふやす南谷 原裕 新治
ひよんの笛ことばにしては愛逃ぐる 池冨芳子
ふとアイスクリームといふことばいで 京極杞陽 くくたち下巻
ふる落葉父のことばを踏むごとし 高橋沐石
ぶちまけてことばのごとき櫟の実 大石悦子 聞香
へうたん棚午後のことばが集まりぬ 熊谷愛子
ほうたるのふぶけることばふぶきけり 黒田杏子
まだ会えぬことば恋しく春の海 鳴戸奈菜
みぞるるや加賀の女の加賀ことば 山本健吉
やはらかきことばつかへり花狩女 小澤克己
やまとことばの夫人らと立つて満天星 阿部完市 春日朝歌
ゆつたりと姉の申せる伊予ことば 大石悦子 聞香
ゆめに散る花ことごとく蒼くしてこの世かの世にことば伝えよ 井辻朱美
よきことはことばすくなし帰花 乙二
わくらば美し大いなる樹のことばとも 堀内幸子
われからといふことばあり冬籠 京極杞陽 くくたち下巻
シクラメン虚飾のことば風に乗る 鷲谷七菜子
スイートピー抱へてことばなくてよし 山上寿衣
マフラーの中よりことば出でにけり 都甲龍生
一つづつことば蔵ふや樫は實に 河原枇杷男 蝶座 以後
不知火よことば惜しめば横走る 神田斐文
丞相のことば卑しく年暮るゝ 飴山實 『次の花』
京ことばゆつくり値切る羽子の市 菅野雅生
京ことば水菜畑にただよひし 紅家いと子
人の世のことばに倦みぬ春の浪 三橋鷹女
人造湖ことば乱してボート漕ぐ 鍵和田[ゆう]子 浮標
伐られたる梢に滲むわが家郷ひとつのことば枝に置かれゐし 前川佐重郎
佳きことばもて訪いくる寒暮遠い汽笛 寺田京子 日の鷹
俳諧はほとんどことばすこし虚子 筑紫磐井 花鳥諷詠
傷つけしことばと葱を噛んでいる 水島純一郎
元日や関東衆の国ことば 許六
先師てふことば始めの夜涼かな 能村登四郎 天上華
児のことば日毎たしかに早稲の花 池田秀水
八方にことばが重し夏野原 照敏
冬木の芽ことば育ててゐるごとし 片山由美子 風待月
冬桜ことば足らざるおもひかな 保住敬子
冬牡丹くぐもることばこそ愛し 熊谷愛子
冷汁や脱帽という褒めことば 峰 良子
凍みるとはみちのくことば吊豆腐 井桁蒼水
初不動浪花ことばで水を掛け 中村芳子
初暦イエスパウ口の道(ことば)あり 中島斌雄
初暦マザーテレサの善きことば 内海はつ子
初暦富嶽無言のことばあり 松本 光
初蝶や神のことばの降るやうに 朝倉和江
初釜や着物に似合ふ京ことば 沢村越石
初雪の足らぬことばのやうに止み 向田貴子
加賀ことばはたして雁の渡るなり 黒田杏子 一木一草
十一月ことばより水迅きかな 坂戸淳夫
卒業の暁といふことばかな 京極杞陽 くくたち上巻
南部ことばいきいき杜氏らの夕餉 荒井正隆
占師のことばのような蓬摘む 木村和彦
卯月来ぬましろき紙に書くことば 三橋鷹女
口まで来て紅蓮となりしことばかな 河原枇杷男 蝶座 以後
吉兆の母音は三つ花ことば 伊藤敬子
囀も在所ことばか渡岸寺 飴山實 辛酉小雪
国ことばするすると出て海鼠食う 酒井光代
国褒めのことばきらきら黄落す 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
土佐人のことば飾らず生姜掘る 岩城鹿水
土用波ことば光りて父の遺言 北光星
地のことば風のことばや賢治の忌 山口耕太郎
塔消えて蝶のことばは曲線のみ 加藤楸邨
夏の木を仰いでことば病みし日よ 津沢マサ子
夏の雲ゆく戦争花嫁といふことば 鈴木しづ子
夏休み犬のことばがわかりきぬ 平井照敏
夏山に母はことばを置き忘る 林 よしこ
夏深し別れのことば湾に乗る 源鬼彦
夏落葉しんしんと子にことば満つ 川田由美子
天領のことば廃れし夏わらび 道山昭爾
失いしことば失いしまま師走 楠本憲吉
娘に教ふ花散り敷くといふことば 上野さち子
婉転とみやこことばを生御魂 茨木和生 倭
子の喋る聖書のことば霜の朝 石寒太 炎環
宛転と都ことばを生御魂 茨木和生 倭
実石榴の割るるやことば吐きさうな 塚原いま乃
寒といふことばのごとくしづかなり 長谷川素逝 暦日
寒の餅割ればことばを吐くごとし 原裕 正午
寒紅のことば慎みゐたるなり 石嶌岳
山に雪鶴岡ことば美しや 秋沢 猛
岐阜ことばやさしや鮎を食むときも 山崎祐子
岩清水ことばあふるるごとくなり 裕
常磐木の落葉ことばを尽しけり 原裕
幼子のかたことばなし十三夜 今井千鶴子
座禅草狂いはじめはことばなり 森田緑郎
忌の炬燵ことば選びつ読笑す 北野民夫
愛用のことば束ねて暑の見舞 上田日差子
慇懃なことばもらひぬ実千両 綾部仁喜 寒木
懐に未開のことば蛍の夜 和田悟朗「人間律」
懸け煙草くぐりて優し能登ことば 加倉井秋を
手毬唄西のことばに溺れけり 伊沢恵
放ちたることば微塵に霧の村 加藤耕子
斜陽とは栄華のことば太宰の忌 藤田湘子「神楽」
断絃といふことばあり滝涸るる 西本一都 景色
新年の菓子の由来は御所ことば 山下青希
新松子ことばにありぬ結び玉 匹田荘平
旅立ちのことばこまやか黐の花 加藤耕子
旅立へことばこまやか黐の花 加藤耕子
日がさんさん昼桜てふことば欲し 藤岡筑邨
日焼してことば少女期までもどる 上田日差子
早蕨に韓(から)のさへづりことばかな 筑紫磐井 婆伽梵
早蕨の一と束届くことばかな 成田千空 地霊
昃りて土筆のことば聞き洩らせし 千代田葛彦 旅人木
春の夢鳥のことばのよく解り 太田寛郎
春の雁ことばはるけくなりにけり 菊地一雄
春惜しむことばしづかに灯しけり 西島麥南
春水にことば光りてゐたりけり 仙田洋子 雲は王冠
春永といふやことばのかざり繩 立圃
春蘭やことばやさしき山男 飯田弘子
春雷の一撃に遇ひことばなし 藤岡筑邨
春霰ことば忘れて来し父に 茨木和生 野迫川
時雨くる亡き人のことばとも思ふ 石田郷子
月の宴男の船場ことばかな 茨木和生 往馬
木のことば冬の泉に優しかり 脇本星浪
未知といふことば尊し初暦 村山砂田男
村中のことば集める春彼岸 橋本鉄也
杖とすることばの一つ石鼎忌 岩淵喜代子
来世とはまぶしきことば花こぶし 柴田白葉女 『月の笛』
東京のきれいなことば子供の日 西本一都
柿秋葉東京ことば愛でられて 鈴木しづ子
栗青し朝はうまるる善きことば 千代田葛彦 旅人木
桑の実やふるさとことばもたらせり 小島千架子
梅郷や子褒めことばの「瞳千両」 平井さち子 鷹日和
梨の花まくらことばがたちのぼる 宇多喜代子
樹のことば聴く少年のものがたりヒトも化石となる日あるべし 島津忠夫
橋で流したことばひらひら魚になる 西本古鏡
母に応へて草笛の草ことば 長田等
母のことば娘のことば花茗荷 柴田白葉女 花寂び 以後
水仙に寄すそれぞれのことばあり 石田郷子
水鳥を見て元日のことば殖ゆ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
永別のことば有耶無耶桐一葉 秋本高江
沖ことばのつきだしの阿吽の浜せせり 加藤郁乎
河童忌や方形に組むことば切 加藤耕子
洩れてゐるみちのくことば林檎園 山田弘子 螢川
浜ことば汗に飛び散る競渡かな 中尾杏子
浜ことば親しみ易く鯊日和 島谷知華
浜人のことばは荒し珊瑚草 嶋田摩耶子
浮かれヴアイオリンそこら花ござ花ことば 阿部完市 にもつは絵馬
浮寝鳥ことばを待つはさびしかり 伊藤通明
海へ向く人のことばの涼しさよ 旭
海棠を翅透く蝶は翔たんとす告うな訣れてゆくことばなぞ 田村広志
海爛れて貝のことばを聴くばかり 北島輝郎
涅槃し給いなお説くことばあるごとし 宇咲冬男
湯婆の恩やまとことばもて酬ゆ 廣江八重櫻
湯豆腐や和み始めし郷ことば 西村美枝
満開の花のことばは風が言ふ 林翔 和紙
滴りは木の根のことば峠みち 岩間民子
潮くさきべえべえことば海贏まはし 林翔
炉開きのことばみずみずしく使ふ 江隈順子
爽やかや風のことばを波が継ぎ 鷹羽狩行 八景
牡丹にことば肉より出て瞑し 竹中宏
犀星忌肌よりぬくき加賀ことば 中山純子 沙 羅以後
猫柳(べんべろ)や花巻ことば温かし 佐藤映二
猫柳ことば得そめし日に似たり 岡井省二
生姜市下町ことば歯切れよく 半田陽生
甥姪もことば少なや雪柳 八木林之介 青霞集
男のことば魔力もちそむ水澄みて 寺田京子
病む妻に障子貼りつつことばかな 森川暁水 黴
病む母のひらがなことば露の音 成田千空 地霊
白のみの夜濯ぎことば家に置く 寺田京子 日の鷹
白式部ことば失ひたるごとく 片山由美子 風待月
白木蓮やひらとことばをなげかけて 大石悦子 群萌
白露の夜ことば少なく妻といる 影山恒太
盆踊り甚句詞(ことば)に野趣あふれ 高澤良一 素抱
相逢うてことばいらざり万の露 原 ふじ広
瞽女唄の無明長夜といふことば 西本一都
知らぬことば静かに流れクリスマス 森賀まり
祝福のことば御慶に先んじし 山田弘子 こぶし坂
禅僧の名古屋ことばや甜瓜 岩永佐保
福笑ひ嘘うつくしき京ことば 角川春樹
秋めくや南部ことばの美しき 片海幹子
秋深しやまとことばのくれなゐも 加藤耕子
穀象や駄菓子屋いまも郷ことば 城 恵己子
窓ひらくことばの中の花杏 平井照敏
立春のことばうれしき日のひかり 森松 清
立身てふ答辞のことば春の雲 橋本榮治
竜胆や今も芹生の武家ことば 安村佳津男
精霊舟送るも航くも隠岐ことば 岩宮武二
紫陽花にことばのあやの如きもの 岬雪夫
終電車ことばの泥をゆやゆよん 夏石番矢 楽浪
繰り返す早口ことば諸葛菜 泉本浩子
老いよよことばただしき藤の花 田中裕明 櫻姫譚
背なを斬ることばの刃二月尽 熊谷愛子
自問せしことばを消して春の月 関口茅花
自愛てふことばあたため樫茂る 鈴木太郎
致死量のことば頂く良夜かな 櫂未知子 蒙古斑
舟屋口水母にことばあるごとし 上田日差子
色鳥やことばの泡かも潮満ち来る 安井昌子
芋煮会鄙ことばにてもてなされ 市川 玲子
花ことばかがやくばかり種を蒔く 藺草慶子
花のことば水のことばと冴返る 裕
花の雲立ち暗む間のことばあり 対馬康子 愛国
花伝書のことばの奥もしぐれたる 中村明子
花冷や父娘にことば少なくて 成瀬櫻桃子 素心
草笛をことばのごとく吹き合へる 山田弘子 螢川
菩提樹の花のもとにてことば失せ 八幡城太郎
菱は実にすこしいかつき佐賀ことば 成瀬桜桃子 風色
落掌といふことばあり落し文 行方克己 昆虫記
葉桜や羊羹売りの佐賀ことば 皆川盤水
著莪の花ことば少なくいて親し 廣畑昌子
葱坊主愛のことばは道化めく 平井照敏 天上大風
虻とんで老子のことば繰返す 黒田杏子
蝉遠し石のことばを聴くごとく 林翔 和紙
蝮酒ひさぎて丹波ことばかな 山田弘子 こぶし坂以後
蟇やまとことばで啼くらしい 菊地京子
親鸞忌日の枯草のことば聴く 鷲谷七菜子 黄炎
訣るるはことばぼろぼろ紫羅欄花 山崎聡
諸鳥のことば明晰涅槃西風 藤田湘子 てんてん
谺めく津軽ことばや薄暑光 新谷ひろし
豊年や南部に多き京ことば 木附沢麦青
負真綿老ゆれば出づる郷ことば 梅田幸子
賞めことば素直に受けて石蕗の花 石川文子
走り去る子の投げことば秋桜 永田耕一郎 方途
輪飾やことばのふえし鸚鵡にも 大石悦子 百花
返すべきことばを捨てる雪の道 福本弘明
追悼のことばふわふわ稲の花 松本照子
鄙ことば互みにこぼし貝割菜 鍵和田[ゆう]子 未来図
野分雲悼みてことばうつくしく 田中裕明 花間一壺
銃後てふはかなきことば八月来 熊谷愛子
錆鮎やことばをつくす出雲びと 原裕 正午
降るごとき蝉死ぬるまで加賀ことば 中山純子 沙 羅以後
降る木の葉ひらり返りて島ことば 安田阿佐子
降る雪のことば遊びのかぎりなし 長田等
陽はいつも褒めことばめき枇杷熟るる 鎌倉佐弓 潤
陽炎にことばの端が消えてゆく 持永ひろし
雁来紅告げねばことば燃ゆるなり 笹本千賀子
雪の日のことばすくなき人等かな 中尾白雨 中尾白雨句集
雪夜にてことばより肌やはらかし 森澄雄(1919-)
雲表といふことばあり空涼し 西本一都 景色
雷すぎしことばしづかに薔薇を撰る 石田波郷
電柱へことば下さい立葵 小島千架子
霜刷く石ことばかがやきくるを待つ 千代田葛彦 旅人木
霧の中ことばはぐくむ翁草 青柳志解樹
霧ふかければ夏爐にことばかわしあう 栗林一石路
霧走ることばを熱う熱うせよ 夏井いつき
露の夜の一つのことば待たれけり 柴田白葉女
青芒風のことばを伝へゆく 石川文子
頼り合ふことば少なにふぐと汁 吉原一暁
額の花ひらくことばはみなかなしく 平井照敏 天上大風
顔見せや京に降りれば京ことば 橋本多佳子
風荒きことばの葦を百束刈る 鈴木勁草
食前の祈りのことば芝青し 対馬康子 愛国
鳳仙花死者にもことば告げられき 平井照敏 天上大風
鵯のことばここでは分り法隆寺 森澄雄
麻衣きびしきことば零れけり 柚木紀子
黄水仙ことばはがねのごとひびく 鈴木詮子
黒葡萄祈ることばを口にせず 井上弘美
●言語
はんざきがはんざきでゐる言語島かな 加藤郁乎
友あり白蟻の棲む言語在り 河原枇杷男 流灌頂
東海に言語は澄めり春の雪 橋本輝久
真夜のそら無電の言語白くとべり 片山桃史
秋暑しひと日いく言語りしか 平井照敏 天上大風
美しくわからぬ言語水澄めり 森賀 まり
言語中枢ノ興廃繋ツテ瀑布ニ在リ 夏石番矢 真空律
言語野に射して言の葉花明り 高澤良一 ぱらりとせ
●多弁
おでん酒夫の多弁を目で封じ 斎藤佳織
かくばかり多弁なりしか受験終へ 高橋獺祭
たんぽぽに触れて忽ち多弁の子 的場秀恭
ふきのたういつか多弁になりてをり 戸石よしえ
三島忌や多弁の鸚鵡少しよごれ 上西兵八
冬暁に父来て生前より多弁 野澤節子 花 季
君多弁われ多弁夏来りけり 滝澤宏司
春日の背が去るやにわかに多弁の悔 赤城さかえ
春雲に頭突きの電柱石ら多弁 野ざらし延男
枝豆やみんな多弁で大食で 桜田とく子
海へ向く閂ボンタン多弁な闇 豊口陽子
涼しさや山は沈黙海多弁 阿部みどり女 『微風』
練供養待つ間の老婆多弁なり 小林実美
誰から死ぬ三河万歳多弁にて 星野昌彦
関東の男も多弁鱧ましろ 宇多喜代子
隠し事ある日多弁に毛糸編む 小林沙丘子
●雄弁
●能弁
山滴る父の能弁唯物史観 下山田禮子
能弁な九月はじめの鸚鵡かな 平山路遊
●やまとことば
あけぼのの大和言葉の鴉かな 戸田露生
初景色大和言葉のごとくあり 後藤比奈夫 花匂ひ
白き降り/淡き降り/ひと歩ゆむ/大和言葉へ 折笠美秋 火傅書
色鳥が来てゐる大和言葉かな 細川加賀 『玉虫』
●母国語
メイドの休日 母国語同志の ティータイム 伊丹公子 アーギライト
母国語かぽつりと老婆雪に残す 小池文子 巴里蕭条
母国語のたどたどしかり雁帰る 大木明子
母国語の賀状なつかしかりしとや 阿波野青畝
母国語を泳ぎ歩いて 帰国の春 伊丹公子 山珊瑚
母国語を炊き込んでいる花嫁菜 中村浩美
霾や母国語少しづつ忘れ 鈴木きぬ絵
●外国語
つららといふ外国語めく響きかな 矢島渚男 延年
●バイリンガル
●おくにことば
●方言
*もぐに方言くれる杏は東京弁 加藤知世子
すかんぽや声の昂ぶる方言詩 五代儀幹雄
子にうすれゆく方言よ蕎麦の花 神原教江
方言かなし菫に語り及ぶとき 寺山修司 花粉航海
方言と雷鳴をもち海渡る 対馬康子 愛国
方言にもつたいをつけ生身魂 木場田秀俊
方言にらんごくといふ冬の菊 西本一都 景色
方言に緊張ほぐる夏座敷 相沢かをり
方言に耳慣れて来しぬくめ酒 井上芙美子
方言の亡ぶさびしさ牛冷す 谷口雲崖
方言の身振り大きく生身魂 小玉真佐子
方言の飛ぶ中に凧切られけり 朝倉和江
方言は仕事の言葉くつわ虫 香西照雄 素心
方言は知らぬ下校児鰯雲 福井菊恵
方言を並べて越前万歳師 藤田フジ子
方言を違へて次の遍路衆 湯川河南
時々は方言の出て初笑ひ 八巻絹子
若布干す海女の方言筒抜けに 武内婦美子
達磨目なくて力む初市方言浴び 相葉有流
黍の風妻の方言年過ぎつ 飯田龍太
●漢語
処暑の僧漢語まじりにいらへけり 星野麥丘人
●造語
浴衣の娘造語明るく大人びて 近藤喜久美
火砕流新語造語が呑み込まれ 水野あきら
●外来語
●一語
あらたまの一語一語を丁寧に 黒崎かずこ
うそ寒や一語に出鼻くじかれて 川村紫陽
おばさん族のっぺらぼうの一語です 白石司子
かの詩人一語のために冬ごもり 皆吉司
きらめきて過ぎし一語や花林檎 加藤三七子
ころ柿ををゆびにねぶりまた一語 栗生純夫 科野路
さくらんぼ赤子に一語生まれけり 曽根澄子
その一語胸中にあり冴ゆるかな 青柳志解樹
ただ一語鳴きつぐ虫やとりけもの 秋山朔太郎
たまづさの一語一語や風生忌 吉田速水
なぐさめも男は一語青あらし 山岸治子
ひきがへる師の一語また師の一語 黒田杏子 水の扉
アイスティ飲んで一語のひらめけり 寺岡捷子
ポインセチア愛の一語の虚実かな 角川源義
一歩にも一語にも揺れ秋桜 恒藤滋生
一禽の一語をこぼす雪もよひ 岡田貞峰
一語しかもたぬ鴉ら夏に入る 森田智子
一語づつ区切り物言ふ溽暑かな 川村紫陽
一語づつ呟いて咲く枇杷の花 西美知子
一語づつ問ひかけゆくや冬木立 石田あき子 見舞籠
一語まだ洗ひ足らざり若菜光 樅山 尋
一語らひ三和土濡らして鵜よ眠たげ 石川桂郎 高蘆
一語らひ声もらしつつ夜の鵜籠 野澤節子 黄 炎
一語一語師の語逃がさじ樅の霧 鍵和田[ゆう]子 浮標
一語一語風に浮かせて薔薇の門 鍵和田[ゆう]子 浮標
一語吐きてより噴水のほぐれけり 太平雅芳
一語待ちゐたりゆつくり揚羽過ぐ 佐野美智
一輪は一語さながら犬ふぐり 片山由美子 風待月
万緑や一語づつ読むマタイ伝 田島佑子
佳き一語さづかる葡萄棚の下 向田貴子
倒産の一語尾をひく冬の雁 小松崎爽青
借なくて貸なす一語走馬燈 石川桂郎 高蘆
元日や一句一語に力満つ 河野南畦 湖の森
全うの一語に尽きぬ枯芭蕉 高澤良一 燕音
再会は一語もて足る鉄線花 中村春芳
冬日燦々さよならを終の一語とす 赤城さかえ句集
冬泉ひそかに磨く一語あり 川崎慶子
冬深む一語の余白はかりかね 村田悠紀
冬銀河患者の一語残りをり 岩永のぶえ
初夢を言ひあふに死の一語あり 皆吉爽雨
別るるは一語で足りし葛の花 中村苑子
吾一語汝一語や夜の深雪 徳永山冬子
告げられし一語の重さ林檎むく 小山えりか
喉元に止どめし一語葛湯吹く 石井紅楓
団欒の中の一語も松の内 後藤比奈夫 めんない千鳥
埋火の一語大事に育てけり 西嶋あさ子
夜釣師の一語狭霧を吐くごとし 大串章
夢寐に来しひとの一語や明易し 嶋倉睦子
大寒の日輪一語放たるる 柴田白葉女 遠い橋
妻一語又妻一語して夜長 上野泰
子への声一語をなさず咳きに咳く 角川源義 『冬の虹』
実むらさき一語もて足る友欲しき 松村多美
室咲や祝辞の一語一語澄み 下山芳子
容赦なき一語を享けぬさくら餅 石川桂郎 高蘆
寒の明け告知の一語「高見順」 江国滋
寒林に一語の冴えをのこし去る 三谷昭 獣身
寒鴉一語を発し一期終ふ 高澤晶子
山吹や薪割る妻の一語勢 秋元不死男
師のまへの一語々々よ萩こぼれ 野澤節子 黄 炎
師の一語一語もらさじ寒燈下 山崎千枝子
師の一語一語よ葡萄はひかりの粒 鍵和田釉子
帰るかの一語を背にす鰯雲 小島千架子
干瓢を剥いて一語を聞き流す 遠藤久子
度忘れの一語に執しそぞろ寒 鴨志田智恵子
彼一語我一語新茶淹れながら 高浜虚子
彼一語我一語秋深みかも 高濱虚子
忍耐や二語が一語になってゆく 宮崎斗士
悲します一語秋風の傍観者 福田蓼汀 秋風挽歌
悴みて短き一語ともならず 山本紅園
懐炉抱きおのが一語にこだはりし 河野南畦 湖の森
我一語彼一語虫きいてをり 星野立子
揺さぶられ男の一語落花つづく 香西照雄 素心
放ちたる一語が雁と鳴きながら 栗林千津
明らかに一語の力きりぎりす 辻田克巳
春の波言へぬ一語が揺らぎだす 平井美智子
春寒の卓や一語に二語かへす 加藤楸邨
春愁の一語被て座しゐたりけり 昭彦
春霰われに遺せし一語もなし 野澤節子 花 季
曼珠沙華一語に出逢ふまで歩く 平井さち子 鷹日和
月光に漂ひ消えし一語かな 草間時彦 櫻山
月見つつ身を養ひの一語かな 草間時彦 櫻山
木の影の一語を置ける雪の上 大串章 山童記
木の葉髪子の一語より夢を生む 塩谷はつ枝
木を揺らししずかに狂う一語かな 大井恒行
桃喰みて旨しと夫の夜の一語 築城 京
欲りて得ぬ一語はいづこ散る桜 林翔 和紙
毛見一語老のおもてのくもりたる 阿波野青畝
水浅く一語一音深緑 原裕 青垣
水温む一語一語に励まされ 毛塚静枝
汗のシヤツ脱ぎつ一語にこだはりをり 榎本冬一郎 眼光
汝の一語欲しラ・サールに桜満ち 橋本榮治 越在
汝一語我一語螢の火 齋藤愼爾
沈丁の香のくらがりに呪詛一語 細川加賀
無花果も夜目に瞭らか諾一語 千代田葛彦 旅人木
熱燗や吐きし一語は神涜す 成瀬櫻桃子 風色
爽やかな一語青年医師信ず 都筑智子
爽やかに一語一語を聞きとめぬ 深見けん二 日月
牡蠣すすり己欺く一語かな 石田あき子 見舞籠
生という一語に寄せて夏蛙 田沼文雄
畳替江戸エスプリの一語あり 筑紫磐井 花鳥諷詠
病師吾に一語呉れけり朴の花 鈴木しげを
白息を弾ませ一語まだあらず 鎌田洋子
皿洗ひ終るに一語桜桃忌 斉藤夏風
目刺の背青し立春という一語 雅人
看護婦の一語納得サイネリア 高澤良一 ぱらりとせ
神を説く一語一語も陽炎へる 石田濁水
秋暁の紅唇一語洩らせしや(吾亦紅さんを悼む) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
秋澄むや水車は一語一語して 浜田蛙城
稿始め楔のごとき一語欲り 鷹羽狩行(1930-)
立春の一語を以て押し切られ 高澤良一 素抱
筏の一語北暗ければ北望み 寺山修司 『 わが金枝篇』
箪笥から汽罐車一語発したり 大沢輝一
節ちの夜や一語をぎいと幟竿 栗生純夫 科野路
老のいふ身寄りの一語針納め 石川桂郎 四温
胸中に布石の一語寒昴 保坂知加子
茶の花のほとりにいつも師の一語 石田波郷
葡萄食ふ一語一語の如くにて 草田男
薄氷や一語ひかりて一語暗し 田辺百子
虚子一語懇ろなりし子規忌かな 深見けん二 日月
襟巻や一語言へねば数百語 加藤楸邨
見舞妻喰べよと一語マスクしつ 岸風三樓
質すべき一語霜夜の書庫に入る 篠塚しげる
遺しおくならん夜涼の一語一語 赤城さかえ句集
隊列を離れし一語青みどろ 久保純夫
雨音の寒ゆるみたり一語待つ 石田あき子 見舞籠
雪無言書かざる一語一語積む 成瀬櫻桃子 素心
霜の鐘にこもれる一語又一語 菅裸馬
青年の一語一語の息白し 島津 亮
青林檎家継ぐ一語日矢の如 安田啓子
青葉木菟次の一語を待たれをり 丸山哲郎(白露)
鮒は一語のごとし手にふれゆきにけり 阿部完市 軽のやまめ
鶏頭や鴉一語をああとのみ 栗生純夫 科野路
●文字
*うばといふ冷じき字のありしこと 後藤比奈夫 めんない千鳥
*かますごのしの字に焼けつくの字にも 内田暮情
8の字に茅の輪をくぐり縺れし児 平井さち子 紅き栞
V字谷空より紅葉なだれ込む 宮田俊子
「愛」の字を見せ消ちにして枯木宿 徳弘純 麦のほとり 以後
「新興」は嫌ひな字なり ま、いいか 筑紫磐井 花鳥諷詠
「母」の字の点をきつちり露けしや 片山由美子 水精 以後
「気絶の小鳥」の「のの字の眼」あけよ麦青む 磯貝碧蹄館 握手
「遮莫(さもあらばあれ)」二字書きて春は暮れたり 折笠美秋 虎嘯記
「青春」の碑文字に露のあたらしく 原田青児
あたたかや万年筆の太き字も 片山由美子 風待月
あたたかや布巾にふの字ふつくらと 片山由美子 水精 以後
あとがきに謝の字の多き夜涼かな 草間時彦 櫻山
あら壁や水で字を吹く夕涼み 内藤丈草
いたこの名みな仮名の二字地蔵盆 大坪景章
いの字よりはの字むつかし梅の花 夏目漱石 明治三十年
いろは楓燃えて心字の池染むる 倉澤いよ子
うす~と裏に字の透く助炭かな 由井艶子
うそ寒や親といふ字を知てから 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
うつむかねば字はかけぬもの秋灯下 和田耕三郎
うなぎ屋のうの字のながき小春かな 倉田春名
うなぎ屋のうの字延びきる暑さかな 川合 正男
かいた字も影の様なり朧月 朧月 正岡子規
かげろふと字にかくやうにかげろへる 風生
がん二字の墨痕星をまつりけり 中本柑風
きようろろ鳴く碑文字風化の南谷 長谷川草洲
さくらばな残という字の駈けるかな 塩野谷仁
さふらんに凝った字を当つ俳諧師 高澤良一 寒暑
さぶるこの呂の字はいのち竹酔日 加藤郁乎
さむや田の風と散りにし十七字 手塚美佐 昔の香
さをしかのしの字に寝たる小春哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
しづかな金魚字なき位牌へ風が行く 川口重美
しののめのしの字に引きし牛蒡かな 一茶
しの字曲りのの字曲りの胡瓜かな 辻桃子
せがまれて字のなき絵本読始 嶋田一歩
ぜんまいののの字の綿の並び立つ 北條力
ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舎(1897-1941)
ただ二字で呼ぶ妻のあり菊膾 亭畑静塔
たまきはるいのちのいの字筆始 上田五千石 琥珀
ちらと見し手帳のよき字毛見の老 皆吉爽雨
ちる花はいごかあらぬかのゝ字の風 立花北枝
つくづくと寶はよき字宝舟 後藤比奈夫 金泥
つまみたる切山椒のへの字かな 行方克己 昆虫記
とうすみの交みてゐたるくの字かな 行方克己 無言劇
はらわたがへの字に曲がる秋の暮 安藤涼二
ひあふぎや掲諦(ぎやてい)で終ふる阿字の印 筑紫磐井 婆伽梵
ひとふでのゆの字たっぷり藍の花 白石みずき
ひと字に二つの姓や粟刈れる 沼澤石次
ふりしぼる字の痛々し草紅葉 長谷川櫂 虚空
ふろふき味噌へ指で字をかく馬喰宿 奥山甲子男
への字への字かさなる山の薄哉 薄 正岡子規
への字よりくの字にもどる裸かな 加藤郁乎 江戸桜
ほとばしる久女の碑文字夏うぐひす 川崎慶子
ぼうふりの棒の字に寝て世に遠し 秋山卓三
まじなひの字を茄子に書く水すこし 下村槐太 天涯
むかしより薄荷ドロップ嫌ひなり字あまりみたいな虹が溶けゆく 落合けい子
むつかしき辭表の辭の字冬夕焼 富安風生(1885-1979)
もがり笛愛といふ字を書くときに 松尾隆信
もやひ湯に篆字の湯名笹子鳴く 中戸川朝人 星辰
わが書きし字へ白息をかけておく 加藤楸邨
われの名に奈落の奈の字曼珠沙華 辻美奈子
んの字に膝抱く秋の女かな 小沢信男
クーラーを入れずへの字に口曲げて 高澤良一 寒暑
ストローをくの字に曲げてソーダ水 穂坂日出子
セロリ買ふ茎ののの字を確かめて 青本 梢
トロ箱につの字に並び祭鱧 村松 堅
ドアノブの朱字使用中秋の暮 狐野 武
ペンキ屋が書いても秋てふ字は淋し 加倉井秋を 午後の窓
ローマ字の表札掲げ薔薇に住む 川口依子
一といふ字三といふ字の筆始め 高野素十
一の字にあるは潮目や金盞花 森田 峠
一の字に一の字に引き甘藷植う 山本きぬ
一の字に力入れたる吉書かな 池上浩山人
一の字に己の見えて筆始 田淵宏子
一の字に投げて葺かるるあやめぐさ 加藤三七子「無言詣」
一の字に浮びし鯉も春の通夜 宇佐美魚目 天地存問
一の字に遠目に涅槃したまへる 阿波野青畝
一の字の清く正しきさよりかな 今富節子
一人ひとり字を書きてをる爐端かな 田中裕明 先生から手紙
一望の雪野に畦の井の字かな 二瓶洋子
上の字の袋きせ置く破魔矢かな 阿波野青畝
上元の朱蝋の金字焔をふくむ 朝永律朗
下手な字は個性の主張かりんの実 石山幸月
下町は字紙鳶ばかりや南かぜ 蘇山人俳句集 羅蘇山人
乱るゝは風の当字や蘭の花 横井也有 蘿葉集
二学期や筆圧強き板書の字 奥土居淑子
二度までは初の字つける松魚哉 鰹 正岡子規
五大力餅挙ぐ顔を困の字に 岩本清子
亡きひとの字でありけり種袋 南 美智子
仕事初め雑巾を十の字に刺し 細見綾子 黄 炎
伊勢といふ字のさながらに飾海老 鷹羽狩行
傲霜や黒き字を書く老の影 永田耕衣 人生
働けり立秋の二字胸に彫り 相馬遷子 雪嶺
元帥の大きな碑文字冬の海 青柳かつみ
兄が字を教へてくれしころの蝉 大石悦子 聞香
先帝祭踏む八の字の遅遅として 弘瀬ちか子
八の字に茅の輪抜けゆく車椅子 小田弘子
八葉の上に念の字朴の花 村越化石
写経の字彼方に飛んで痩せる夏 河野多希女 納め髪
冬ごもり孝といふ字の抜け難く 松山足羽
冬深し老と死の字は六字画 宮本はるお
冬深む刻字うするる支那小凾 加藤三恵子
冬麗の壺壽の一萬字 伊藤いと子
冷酒に澄む二三字や猪口の底 日野草城
凍鶴の凡字の如くたてるかな 龍岡晋
切字響くは雁の渡るなり 齋藤愼爾
初便り兄の字劃の固さかな 小野満里子
初富士の命てふ字のごとく立つ 満田春日
初時雨初の字を我が時雨哉 松尾芭蕉
初東風や帆に選ぶ字の大いなる 冬葉第一句集 吉田冬葉
剣先のどれものの字に蘆枯るる 山崎千枝子
十の字にとぶ二羽の鳩草城忌 石田波郷
十七字みな伏字なれ暮の春 三橋敏雄 畳の上
十七字即ち春の愁かな 岩崎照子
十三夜掛軸の字の読めぬまゝ 川崎展宏
十団子も許六の碑文字もいや白く 高澤良一 燕音
半夏生苺といふ字毒と読め 行方克己 昆虫記
卯の花腐し鬱の字まことうつたうし 古賀まり子
厳という字寒という字を身にひたと 高浜虚子
厳といふ字寒といふ字を身にひたと 高浜虚子
口切や筆字優しき招待状 山川よしみ
口福といふ字ありせば新走り 大野崇文
句碑の字の旅寝崩るる餘寒かな 古舘曹人 砂の音
只ならぬめの字絵馬なり田水沸く 辻桃子
同じ字を砂に書きつゝ春の昼 山口誓子
名札の字やうやく読めて入園す 西村和子 夏帽子
君が代や猶も永字の筆始 乙由
吹くからに秋といふ字や萱の原 清水径子
吾子が書く学生の字の帳祝ひ 池上浩山人
品書の鱈といふ字のうつくしや 片山由美子 水精
啄木のローマ字日記秋深し 行方克己 昆虫記
啓蟄に引く虫偏の字のゐるはゐるは 上田五千石 風景
噴水の白穂もて何の字を書かむ 柴田奈美
嚴といふ字寒といふ字を身にひたと 高浜虚子
国道を雁字搦めの初荷ゆく 井出和幸
土用鰻うの字大きく紺暖簾 蕪木啓子
土筆野中の石碑字消えたり 正岡子規
塵芥車も春闘参加車体に字 田川飛旅子 『山法師』
墓の字につかふ長鋒夏わらび 宇佐美魚目
墓の字の刃てふを夜目義士祭 八木林之助
墓の字を読む*さいかちの風の中 今田拓
壽の字は紅梅の蕊のさま 野澤節子 黄 炎
夏はじまる愚息の愚の字とれぬまま 小野元夫
夏休み丸字で埋まる伝言板 田中こずゑ
夏帽の白きをかぶり八字髯 夏帽子 正岡子規
夏期俳句講座切れ字の「や」「かな」「けり」 吉田ひろし
夏落葉嫉妬と言ふ字女偏 植田みつ女
夏野の狐のの字に眠り寝ずの耳 平井さち子 紅き栞
夕張といふ字を雪の諸所に見る 京極杞陽
夕涼を井の字飛白の大臣かな 尾崎紅葉
夕焼けの兵舎へのへのもへ字残る 宮坂静生 青胡桃
夕空や五字抹消の蝉の稿 斉藤夏風
夜櫻のぼんぼりの字の粟おこし 後藤夜半
大の字にジーパン乾く女正月 西谷剛周
大の字に寝しあと残るうまごやし 勝亦年男
大の字に寝て一畳の九月尽 土生重次
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ 小林一茶 (1763-1827)
大の字に寝て独り占め夏座敷 正木海彦
大の字に寝て生家なり風涼し 山本伊佐夫
大の字に寝て見たりけり雲の峰 小林一茶
大の字に寝て高楼の青嵐 山岸莎舞浪
大の字に打ち上げられし荒布かな 渡辺恭子
大の字の我が寝姿や春の雁 高柳重信
大名の字(あざな)を桃のはたけかな 水田正秀
大和仮名いの字を児の筆始め 蕪村
大文字草と写経の百千字 百合山羽公
大文字草の大の字ほつそりと 京極杞陽
大文字草大の字を習得す 後藤夜半 底紅
大比叡やしの字を引いて一霞 松尾芭蕉
大言海割つて字を出す稿始め 鷹羽狩行(1930-)
太き字はびつくりぜんざい針納 村上麓人
夫の字の一つおどろく雪起し 加藤知世子 花 季
女へんの字ばかりの見え日の盛り 谷口桂子
妻の字は夫に似るとよ花菖蒲 石田あき子 見舞籠
姫辛夷莟で春の字を書きたし 奥山繁男
子に教ふカ行のカの字藪昼顔 細見綾子 黄 炎
子の残すメモに癌の字大西日 中村祐子
子供らによめぬ字のあり青写真 石井双刀
子守宮の駆け止りたるキの字かな 野見山朱鳥「曼珠沙華」
子規かの字を付ける声のあと 中村史邦
子雀のへの字の口や飛去れり 川崎展宏
孑孑といふ字きくきく立泳ぐ 牧百合子
字々の豆幹いろの賢治の書 吉田紫乃
字にかいて蒲公英の名ぞなつかしき 蒲公英 正岡子規
字にかいて鼓草の名そなつかしき 蒲公英 正岡子規
字のそばに鉛筆ころげ夏休 橋本鶏二
字の何と陽炎立つや道標 松根東洋城
字の間を紙魚の急いでをりにけり 鈴木貞雄
字を崩し夏の眩暈はじまれり 宇多喜代子
字を思ひ出すため遠き青嶺見る 角光雄
字を書いて消して卯の花腐しかな 細川加賀 生身魂
字拙きをあはれみたまへ梅の神 梅 正岡子規
字足らずのごと黄昏を秋の蝉 石寒太 翔
字違へ小字をたがへ秋祭 藤井貞子
定形の中の鬱の字瓢の字 鈴木鷹夫 千年
宝刀の切字を頼む歳旦吟 高澤良一 ぱらりとせ
寒といふ字のー劃々々の寒さ 富安風生
寒月が切れ字になつて音なき街 加賀谷 洋
寒燈下嫁かずいもうと字をならふ 長谷川素逝
寺石に忍耐の二字達磨の忌 宮田祥子
寺通り字を美しく葛ざくら 有馬朗人
寿の字は紅梅の蕊のさま 野沢節子 鳳蝶
屋根の名を里の字とし翁草 鳶口 小島文英
山のへや霞一の字水くの字 霞 正岡子規
山墓の見えぬ字ばかり虎つぐみ 原 天明
山小屋の七夕の字も鎮魂歌 福田蓼汀 秋風挽歌
山茱萸といふ字を教ふたなごころ 西村和子 かりそめならず
川の字に寝て中長き海月の夜 如月真菜
左手は字も書けぬ奴百日紅 杉浦典子
巴字の池を一葉流るゝ舞ひながら 寺田寅彦
布団干す女くの字に雲の峰 鈴木鷹夫 春の門
帆船の雁字搦めや天炎ゆる 松本道宏(陸)
師の句碑ののの字のまるののどけしや 川原紫苑
干梅の怨の字に似る一つ見ゆ 中村 和弘
年玉に上の字を書く試筆哉 年玉 正岡子規
年賀状ああこの人のこの癖字 高澤良一 宿好
庭石を子の字はみだし春の昼 杉本寛
廓路地コの字にめぐり日が詰る 平井さち子 鷹日和
心の字を写すに難き夏書哉 夏書 正岡子規
心太箸より逃ぐる字の形 河野薫
心字池に所を得たり源五郎 大谷美智子(萌)
心字池心字を習ふ水すまし 百合山羽公(馬酔木)
心経に不の字無の字や読みはじむ 秋元不死男
心経に無の字の多き夏書かな 松田トシ子
心経に無の字の多し暑に耐へる 松井ヒナ子
心経に無の字の多し若葉雨 三角節
忍の字の読み方知らず夏休み 加藤静江
忘れし字妻に教はり冬籠 富安風生
快晴の二字に始まる初日記 長崎小夜子
意味が字となり石となる枯芝に 鷹羽狩行
扇もつ手に悪事かぞへし切字かな 加藤郁乎
投げられて口をへの字の武蔵丸 高澤良一 宿好
指先をくの字に曲げて水の秋 対馬康子 吾亦紅
掃苔や一世の墓の日本文字 左右木韋城
掌に書く字や処暑の湯に沈み 長谷川かな女 花寂び
掛軸に禅の字坐る風炉茶かな 田島勝彦
接岸の船のロシア字冬かもめ 大竹欣哉
教室に天という字の夏休み 対馬康子 純情
文禄元年春以下百字読めずに候 攝津幸彦 未刊句集
日頃字の読めぬ女や歌加留多 蘇山人俳句集 羅蘇山人
春夜とや書架の金字の寒きのみ 林原耒井 蜩
春宵や字を習ひゐる店のもの 五十嵐播水 播水句集
春愁や吸殻くの字くの字にて 服部喜久子
春晝を遅々と字を生む原稿紙 吉屋信子
春泥や泥という字の笑い死に 増田まさみ
春泥を鍵屋への字の眉で来る 浅野津耶子
春闘に"狎"といふ字は"*けものへん" 富安風生
春風の辻堂めの字めの字哉 春風 正岡子規
春風や石に字を書く旅硯 春風 正岡子規
春鮒のへの字の口へ余呉の風 藤田あけ烏
時雨るるや象の字多き普賢経 有馬朗人 耳順
時雨るる碑異形字何を訴ふる 下村ひろし 西陲集
暑に負けてみな字忘れて仮名書きに 星野立子
暑中見舞と太字四字の子の葉書 志摩知子
暮るるまで書きて千文字春隣 古賀まり子
書きいそぐ魚偏の字や水温む 仙田洋子 雲は王冠
書きし字を離れし筆や秋燈火 嶋田摩耶子
書初の書き出せし字の大滲み 岩崎起陽子
曼珠沙華恋の字並ぶごとくあり 成瀬正とし 星月夜
月の葱畑涙という字も折れて 北原志満子
月待てる提灯の字の招提寺 下村梅子
月斗はんの字は佳かりしと春火桶 角光雄
朝顔や何処に死すとも八字髭 仁平勝 東京物語
木の実独楽倒れる前ののゝ字書く 工藤いはほ
木簡に残る税の字雁帰る 佐藤サチ
本の字極印光周し御蔵の春 調鶴 選集「板東太郎」
朱夏書棚より見付けたり母の字「愛」 堀江喜々
朱欒照るみち来れば詩碑の字の青さ 下村槐太 天涯
朴咲く空寂といふ字を書きて見る 山口青邨
杢兵衛の燐寸箱の字春灯 角光雄
松の内臍という字の胡乱なり 寺井禾青
松の字 松のごとく竹の字 竹のごとく書初する 荻原井泉水
枡に入らぬわが字よ憲法記念の日 渡邊千枝子
枸杞の実や道標の字の読みにくし 古川芋蔓
柏餅挙挙服膺の四字をふと 川崎展宏 冬
柿の蔕みたいな字やろ俺の字や 永田耕衣 狂機
校正ののの字ばかりの寒さかな(『川端茅舎論』校了) 石原八束 『高野谿』
桜の幹に恋といふ字を一列に(姉再婚) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
梅にほひ彫の字細き尼の墓 松田 多朗
梅雨のある夜ローマ字小人画き殖やす 川口重美
梨の胎「風」の字やどり風に満ち 竹中宏 句集未収録
梵論字の前かがみなる落し水 宮坂静生 樹下
植木市当て字ばかりの名札付く 右城暮石
検眼のコの字ロの字や鳥雲に 林 朋子
検眼の二の字コの字や木の芽雨 兵頭幸久
榾の火や童子に課する三字経 四明句集 中川四明
樫といふ字づらの何といふ寒さ 富安風生
橘屋栄蔵字は曲生れし寒 矢島渚男 船のやうに
死といふ字いくたび書けば水温む 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
死を電報にして字のかず 岡栄一
残菊や壁の字誰も読めずをり 桜井博道 海上
母の字に泪の二滴鳥渡る 小澤克己
母の字の一字残らず母の忌に 右城暮石 声と声
母の日や海といふ字に母のあり 沙羅夕子
氷の字二つに割れて氷室開く 松浦沙風郎
氷頭なます霰といふ字胸中に 八牧美喜子
法華経人万九千余字の夜伽かな 九堂夜想
波郷忌や切字のごとく木守柿 松倉ゆずる
注連かけて鴨の字隠る翁塚 林翔 和紙
浮世絵に*ゆきといふ字の霏々とあり 後藤比奈夫 めんない千鳥
海と山十七字にハ餘りけり 正岡子規
海峡は大きな切れ字鳥渡る 的野雅一
涅槃絵やくの字に百足嘆きをり 窪田光代
渚むときは勿れる切字で煮えたれよ 加藤郁乎
湖に脚をハの字に白鳥降る 高澤良一 素抱
湖頭の碑欠けて無き字に時雨かな 比叡 野村泊月
湯の釜に南無の六字や涅槃西風 新家節美
滝涼し那智の巫女字を習ふ 橋本鶏二 年輪
炭俵どこより雁字搦め解く 加倉井秋を 『風祝』
燈火親し流石てふ字に目を止めて 高澤良一 ぱらりとせ
爪を切るをんなひの字や近松忌 林 香稟
父の字と子の字ふれあふ星祭 田中由喜子
父の字の南無阿弥陀仏墓洗ふ 大橋敦子
父の字の日付け入りなる種袋 菊地利子
父の字はつるはし二本鰯雲 今岡直孝
父の筆勢減ぜし刻字燕来ぬ 香西照雄 対話
犬陰嚢(いぬふぐり)あらぬ文ン字をあてがはれ 高澤良一 素抱
玉虫の飛ぶ一の字の光かな 広瀬美津穂
画をかき字をかきて長松が扇終に黒し 尾崎紅葉
畳替丸を書くのも字の一つ 小林敏朗
疲労困ぱいのぱいの字を引く秋の暮 小沢昭一
病名に炎という字寒すばる 隈元拓夫
病少年病少女の字星祭る 右城暮石 上下
白はえや写字する窓の時明り 白南風 正岡子規
白川静新訂字統読始 黒田杏子 花下草上
白桔梗一の字に置きただ泣ける 清水径子
白玉や虚子に似る字も偽手紙 筑紫磐井「筑紫磐井集」
白魚を切字のごとく掌にひろふ 伊藤敬子
百ばかり年といふ字を初硯 斯波園女
目薬師の目の字ばかりの大暑かな 細川加賀 『玉虫』
盲春庭筆太の字の秋の聲 八木林之介 青霞集
眼鏡かけ點が字となる秋灯下 嶋田摩耶子
眼鏡ふとく口が一の字接木翁 河野静雲 閻魔
知らぬ字の大きになりし夏書かな 大 魯
短夜やスリッパの字の鹿野山 波多野爽波
砂に大きな字を描いて字がくれてしまう 橋本健三
碑文字は水の切れ味柚子は黄に 田中水桜
碑文字且つ拾ひ彫る菊も匂ひて 内田百間
神官の立つて字を書く在祭 井上弘美
神無月テロと言う字に今日も逢う 堀越鈴子
福達磨口をへの字に売れ残る 伍賀稚子
秋の字にひとつの鬼火燃ゆるなり 平井照敏 天上大風
秋の宿はつと良寛の二字「無藝」 川崎展宏 冬
秋の日に心の字浮けり写経石 三宅句生
秋の蝶風といふ字を散りばめて 中嶋秀子
秋の風書き憂かりけむ字の歪み 加藤秋邨 野哭
秋夕焼「大」の字残る山肌に 小川晴子
秋風や切字とひびく師の言葉 岩崎照子
稲妻はかかはりもなし字を習ふ 及川貞 夕焼
穀象が米といふ字のやうに散る 丸山しげる
穂すすきのほの字程度に解けそめて 高澤良一 ももすずめ
突堤に朱の字われらの夏終る 友岡子郷 遠方
立眠る衛字士やなだるる花馬酔木 六本和子
竜の字の金粉に跳ね賀状書く 水田むつみ
竜の字は龍でなくては凧 大橋敦子
竹の実や読めぬ字のある一揆の碑 大竹多可志
竹筆のうすき夢の字谷崎忌 三宅芳枝
笠にせよ千といふ字を旅の秋 上島鬼貫
笠の字に京の遍路のなつかしや 鈴鹿野風呂 浜木綿
筆始ほろ酔ひの字もめでたけれ 柏木志浪
筑波路のS字坂上夾竹桃 柴太香子
筒鳥や字を習ふ日の吉野の子 大峯あきら 宇宙塵
紙魚のあとひさしのひの字しの字かな 高濱虚子
紙魚はをらず踊つて読ます字のくばり 廣江八重櫻
紺のれん(質)といふ字もおぼろかな 吉屋信子
終の字を映してゐたり蟲の闇 佐々木六戈 百韻反故 初學
経文に多き無の字よ春の雪 中尾杏子
緘の字を以つて秋思を封じけり 水越菖石
缺徳利字山田の案山子哉 案山子 正岡子規
羅や相思てふ字を金で剌す 松瀬青々
老いし身に喜の字づくめや飾り海老 友常玲泉子
老の字の虫のやうなる初日記 富安風生
老耄という字をひけばうそ寒し 田中法子
聖書ひらけば栞くの字に枯野光 嶋田麻紀
肉も血も/暗喩も/翳る/字神梅 林桂 銀の蝉
胡桃割る聖書の万の字をとざし 平畑静塔
腹の上に字を書ならふ夜永哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
膝に字を書かれて春の夕ベかな 松山足羽
良寛のことに風の字囀れる 角川照子
良寛の天といふ字や蕨出づ 魚目
良寛の読めない字ゆゑ春惜む 阿波野青畝
花おぼろ遺句の切字の重きかな 渓槐三
花冷えの口をへの字に反抗期 相沢真智子
花明り蛙もなかぬ心字池 川端茅舎
花松や彫り字の浅く小宰相 高井北杜
苔をさぐりて指で読む字も秋の日の暮 荻原井泉水
苗札の字も消え父も逝きにけり 川口咲子
若楓昔の人はよき字書き 後藤比奈夫 初心
茄で揚るいかなごくの字つの字かな 山本淑子
草石蚕といふ字何度も引いてみる 角川照子
菖蒲園くの字曲りの渡り板 石井並々子
萌の字に日も月もある刷初 平沢陽子
萍や水ふんだんに心字池 橋本青園
落字して老いの吉書のめでたけれ 池上浩山人
落鮎の口をへの字に曲げてあり 野村喜舟
葉桜の駅に字を書く洋傘の尖 誓子
葱刻む妻に字を聞き著者校正 河野頼人
蒲公英や矢の字となりて鶏走り 宮坂泰子
薄倖の字の美しき賀状かな 五十嵐播水
薄氷や切字一句を引き締める 丸山嵐人
薔薇の字を確かむるたび歳をとる 関口 勉
薔薇の接穂の白いきれのにじむ字 梅林句屑 喜谷六花
薫風といふ字立派に一書簡 宇多喜代子「夏月集」
藁しべをくの字への字に薄氷 榎田きよ子
藤村の文の字細し鉄線花 秋山美知子
藤豆の垂れたるノの字ノの字かな 高浜虚子
藺ざぶとん難しき字は拡大し 波多野爽波 『一筆』
虫偏の字なども厭ふ梅雨の夜は 相生垣瓜人
虻が飛ぶ虻飛ぶ虻の字の不思議 上杉順子
蚰蜒といふ字は覚えおく気なし 北野平八
蛞蝓といふ字どこやら動き出す 後藤比奈夫「祇園守」
蜩や指で字をかく膝の上 近藤一鴻
蜩や永久にと書きし金字かも 林翔 和紙
蝿といふ字に蝿の脚ありさうな 寺杣啓子
螢とぶとちいさきお字のなつかしや 京極杞陽
行くとしや樽の南(な)の字になむあみだ 服部嵐雪
行秋やどれもへの字の夜の山 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
裸の子蘭亭帖の字を習ふ 阿波野青畝「春の鳶」
複雑な薔薇の字 今夜の動乱報 伊丹公子 山珊瑚
褒美の字放屁に隣るあたたかし 中原道夫
誠の字太く大きく筆始 鈴木照雄
諸子船湖国に切れ字爆ぜにけり 攝津幸彦 未刊句集
豆腐一丁あれば御の字冷やし酒 高澤良一 素抱
貧農にかへりて昼寝大の字に 石川桂郎 含羞
貫綿や尻のあたりのへの字穴 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
賀状の字いと正しきを畏れけり 風生
賀状の字走りはやりて到りける 赤松[けい]子 白毫
足跡を字にもよまれず閑居鳥 蕪村 夏之部 ■ 柴庭の主人、杜鵑、布穀、の二題を出していづれ一題に発句せよと有、されば雲井に走て王侯に交らむよりは、鶉衣被髪にして山中に名利をいとわんには
跳ね橋の跳ねて八の字夏つばめ 安部さだめ
辞書の字をルーペに拡げ福沢忌 大熊坩火
近すぎて妙法の火の字とならず 清水忠彦
逞く子の字はみ出す祝箸 羽田岳水
遍路道嗚呼といふ字を思ひけり 中井満子
道のべのべの字は紙魚に食はれをり 土井田晩聖
道鏡と虚子と字を書く蓮の闇 宇佐美魚目 天地存問
遠く来て大の字に寝る夏座敷 笹本カホル
遠足の列に切字となる教師 能村研三 騎士
遠鹿や声という字を聲とする 宇多喜代子 象
重ね着て思ひ浮かばぬ字の一つ 廣江八重櫻
野葡萄も/花嫁も/雨/字小夜戸 林桂 銀の蝉
鍵の字に湯治棟あり初すすき 高澤良一 素抱
閂の「一」の字開き恵方みち 平井さち子 鷹日和
陽炎や母といふ字に水平線 鳥居真里子
陽炎や火の這ひわたる卒都婆の字 雑草 長谷川零餘子
雉子啼くや写経無の字に墨つげば 吉野義子
難字多き荷風日記や春の蝿 安西 篤
雨の字は雨粒四つ草青む 木田千女
雪の日は黄(こう)の字想う黄濁愛す 金子兜太 黄
雪の朝二の字二の字の下駄の跡 捨女
雪折やてのひらにのる風字硯 宇佐美魚目 天地存問
雪汁のしの字に曲るかきねかな 一茶
雲海に母といふ字を解き放つ 高橋比呂子
雲雀仰ぐ/孤独や/山姿は/字國定 林桂 銀の蝉
零といふ字を書初めにして父は 皆吉司
電柱の/キの字の/平野/灯ともし頃 高柳重信
霊棚の栗にさきだついの字かな 服部嵐雪
霜柱俳句は切字響きけり 石田波郷(1913-69)
霜柱癌といふ字を踏み砕く 永井龍男
霧破れ頂上の標の字ぞ見ゆる 相馬遷子 山國
露と彫る字の結界があるばかり 安東次男 昨
露の世に足尾の遺す足字銭 西本一都
露散るや提灯の字のこんばんは 川端茅舎
露涼し敷きたる如き吉字草 朝野白山
霾るや何も映さぬ心字池 穂坂日出子
青空に指で字をかく秋の蟇 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
青邨忌よの字橋より粉雪かな 小原啄葉
靴下がくの字に吊られクリスマス 阿波野青畝
頭は錨沈め沈めと字の鎖 八木三日女 赤い地図
風吹てくの字にまがる雁の棹 雁 正岡子規
香で呼ぶ梅日蓮の字は剌出して 香西照雄 素心
鬱の字に毛ほどの隙間むし暑し 安済久美子
鬱の字を崩して遊ぶ石蕗の花 鈴木鷹夫 春の門
鬼百合に/桃の/名残や/國文字 林桂 黄昏の薔薇 抄
鯉二つ二の字にゐたる朧にて 森澄雄 四遠
鯛焼のへの字の口を結ぶかな 大橋敦子
鯵売の阿字と聞ゆる耳もがな 蓼太
鰥夫の字小暑なにやらなまぐさし 能村登四郎「寒九」
鰻屋の字のくろぐろと花吹雪 仙田洋子 雲は王冠
鳥雲に鉛筆舐めて字を濃くす 関成美
鳴く亀もをるべし雨の心字池 幼方和雄
鶯や切字てにをは句読点 星野椿
鶴の字を崩して雪に鶴舞へる 金箱戈止夫
黍刈つて戻れば父の字の懸かり 吉本伊智朗
黒南風を航く丸の字は浪の下 中村鈍石
黒板に拭き残りの字そぞろ寒 加藤憲曠
黒板の字のうすれゆく目借時 田谷芳江
黴といふ字の鬱々と字劃かな 富安風生
龍の字を部屋いっぱいに賀状刷る 吉田ひろし
●記号
みてやれば水素記号のようなり舟の子 阿部完市 軽のやまめ
亀鳴くや元素記号を不意に書き 嶋田麻紀
元素記号子の諳んずる夜の秋 高澤良一 ねずみのこまくら
啓蟄や育児日記に記号ふえ 上田日差子
地形の記号見ていて水虫痒くなる 古川克巳
母老いぬ地図に泉の記号欲し 江里昭彦 ラディカル・マザー・コンプレックス
燕舞ふ無限大なる記号かな 伊藤健之
過労死や原子記号になっちゃった 金城けい
雪野来て半鐘記号の赤連珠 平井さち子 紅き栞
鳥たちが記号となつて春酣は 筑紫磐井 花鳥諷詠

以上

by 575fudemakase | 2022-06-23 21:20 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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