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夢 類語関連語(例句)

夢 類語関連語(例句)

●夢●夢見(る)●夢叶う●夢を描く●夢はたす●夢破る●ドリーム●夢現 ゆめうつつ●まさ夢●逆夢●悪夢●夢占い●夢物語●夢心地●白昼夢●白日夢●夢魔●夢幻●夢枕●夢路●幻 まぼろし●邯鄲の夢●有為転変●初夢●希望●宿望●野望●野心●望み●夢の中●春の夢●夢の世●夢はじめ●夢む

●夢 
あかあかと夢に綿打つ晩夏かな 小檜山繁子
あかときの夢に食みしや石榴の実 堀本 吟
あかときの夢スコールにつつまるる 山本歩禅
あけがたとろりとした時の夢であつたよ 尾崎放哉
あけくれに富貴を夢む風邪哉 前田普羅
あけぼのの夢もの語れ青すみれ 多田裕計
あけ方の夢ありありと水中花 田中みち代
あさがほ(朝顔)や夢の浮橋かけ渡し 立花北枝
あさがほやはやくも夢で逢ひし縁 久保田万太郎 流寓抄以後
あしたへの夢の出口の日脚伸ぶ 梅本 文
あぢさゐやあざやかなりし昨夜の夢 片山由美子 天弓
あぢさゐや夢にはいつも医師の父 水原 春郎
あつき日や病夢さまよふ水の音 幸田露伴 谷中集
あはれ夢暑さほそりを母に見し 林原耒井 蜩
あぶらげとはうれん草と夢すこし 藤田湘子
ある夢で梅雨の行方をさがしおり 津根元 潮
ある日より消え花霞夢となる 宮津昭彦
あをあをと木賊の夢が墓囲ふ 石寒太 炎環
あをからん鴉の夢を見かけけり 攝津幸彦
いくつもの夢をたたんで大枯野 嶋本光代
いつの日か少年の夢さくら咲く 今泉貞鳳
いとど跳ぶ夜の寝の夢に祖母がくる 森川暁水 淀
いなびかり夢の男を抹殺す 中村和代
いはれなし絵踏の夢を見たること 星野麥丘人
いまも見る夢はふるさと金鳳華 岸風三楼 往来
いもうとの夢に幼し木の実独楽 佐野美智
いろの葉の雨も夢なり結願寺 菊地一雄
うきね鳥昼も夢みてゐる盲 玉木愛子
うき雲の袖ふる夢の別れかな 中勘助
うぐひすや午前七時は夢明り 清水径子
うごけば、寒い 橋本夢道(1903-74)
うたたねに見し夢思へり紙魚はしる 森川暁水 黴
うたたねの夢美しやおきごたつ 久保より江
うたた寝の夢のうち外末枯れて 狩野芙佐
うたゝねの夢に攀ぢけり額の不二 富士詣 正岡子規
うたゝねの夢美しやおきごたつ 久保より江
うつうつと夢にも棲みて蛞蝓 能村登四郎
うつすらと夢にあそびて冬の塵 青柳志解樹
うつぶせに寝て父の夢ヒヤシンス 大木あまり 雲の塔
うとうとと春の寝心夢もなし 春眠 正岡子規
うなされて春の一夢の終りけり 畑耕一 露座
おそはれし夢よりつのる夜寒哉 松岡青蘿
おぼろ夜の夢や亡き妻若きまま 杉山綾子
おぼろ夜の金平糖に夢もらふ 東出沙羅夫
おろかなるたたかひの夢海紅豆 石原八束
かがまりてこんろに青き火をおこす母とふたりの夢つくるため 岸上大作
かき氷夢のいろして世が見ゆる 鈴木鷹夫 渚通り
かけまはる夢や焼野の風の音 上島鬼貫
かけめぐる夢の枯原かぜ落ちてしづかに人は眠りましたり 太田水穂
かけめぐる夢吾になし外の残暑 高浜年尾
かたくりの花を夜明けの夢つづき 井沢正江 湖の伝説
かなかなしぐれ今宵の夢に雲湧かむ 太田鴻村 穂国
かなかなやかなしい夢をみてをるか 木村恭子
かなめ萌え夢の反芻またはじまる 横山白虹
からす猫よ汝は真黒の夢を見るか 橋本夢道 無礼なる妻
かろき身の夢を委ねむ月冴ゆる 仁科文男
きのこ食べ覗いてをりし夢の淵 加藤三七子
きのふのまま丸寝や夢を更衣 調泉 選集「板東太郎」
きのふわが夢のかけらの小向日葵 楸邨
きみを見送り夢の丈まで葛のはな 野間口千佳
きられたる夢はまことか蚤の跡 其角
くれなゐの夢より蝉かひとつ落つ 枇杷男
こときれし玉虫になほ夢の色 重住ひで子(航標)
この世また夢の水洟すすりけり(夢違観音) 細川加賀 『生身魂』
この夢はどこに目覚めん走馬灯 阪西敦子
この夢如何に青き唖蝉と日本海 高柳重信
この年で飛ぶ夢を見るフロイト忌 小川修司
この年のひとつの夢と日向ぼこ 村越化石
この年の夢を残して古暦 吉屋信子
この齢この夢そだつ露まみれ 篠田悌二郎 風雪前
これやこの大夢の如き黒牡丹 橋本夢道 『無類の妻』以後
さくらさくら 残りの夢は風呂敷に 中ヤスヱ
さくら餅仮眠に夢の落しもの 新間絢子
さしかける夢もあるなり時雨傘 橋石 和栲
さぼてんのかがやきはじめる猫の夢 松本恭子 二つのレモン 以後
さまざまの夢の続きに冬の雨 嶋田麻紀
さめて思い出せない不安な夢である 住宅顕信 未完成
さるすべりしろばなちらす夢違ひ 飯島晴子「朱田」
さわさわと夢を耕す入道雲 木村まち子
しくるゝや昔の夢を花の下 時雨 正岡子規
しぐるるや夢のごとくに観世音 草間時彦 櫻山
しだれつつ夢のくれなゐ檀の実 堀口星眠 営巣期
しやぼん玉夢潰えるに音のなき 金子孝子
しやぼん玉小出しに夢をつなぎけり 赤沼淑子
しろがねの草木に触るる夢の手や 宇多喜代子
しゝむらは水火の夢の蒲団かな 野村喜舟 小石川
すが漏りや暁の夢の間父生きて 村上しゆら
すぐ来いといふ子規の夢明易き 高浜虚子(1874-1959)
すぐ睡くなる父の夢柚子ふたつ 石寒太
すぐ覚めし昼寝の夢に鯉の髭 森澄雄 鯉素
すゞしさや松の響きを夢ごゝろ 松岡青蘿
ずぶ濡れの夢より覚めて春の闇 廣瀬直人
その人の夢路も花の明りかな 辰下 俳諧撰集玉藻集
その夜夢に寒月の下の師の御言 相馬遷子 山国
その夢も薄墨いろか浮寝鳥 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
ただあゆみゐし夢まぶた百日紅 長谷川松子
たてかけてあるだけ夢の冬箒 河野多希女 こころの鷹
たらたらと蛍火夢の継目かな 坂巻純子
たわいなき春夢なれども汗すこし 能村登四郎(1911-2002)
たんぽぽに不意をつかれる夢の果て 大西泰世 椿事
ちちははの夢ばかり見て寒明けぬ 野澤節子 『駿河蘭』
ちよろちよろと榾火の夢の何もなし 河東碧梧桐
ちると見し夢もひとゝせ初桜 几菫
つはものの夢は流水いなびかり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
てのひらにのるほどの夢花はこべ 村瀬つとむ
でで虫の夢さましたる櫂しづく 栗田ひろし
とある日の夢の消えたるしやぼん玉 加倉井秋を 『風祝』
ときどきは夢捨てにゆく枯野原 小泉八重子
とびとびの夢の礎石や若菜摘む 加藤三七子
ながき夢さめてつめたき畳踏む 松村蒼石 雁
なでしこや夏草滋る夢の跡 幸田露伴 谷中集
なまぐさき夢枯莢が鳴つてをり 宮坂静生 山開
ぬかご落つ土塊は夢破られて 河野多希女 月沙漠
ねんねこの夢ごとふわり抱きおこす 吉田安子
はつ夢の緋色の覚えありしのみ 石嶌岳
はつ夢や正しく去年の放し亀 言水
はつ夢や鷹ふところにぬくめ鳥 蓼太
はなびらの白さ夢透く冬牡丹 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
ばらの芽に夢の脈絡つなぎけり 松田 淑
ひえびえと二日の夢に銀の檣 友岡子郷 日の径
ひぐらしはゆるさず若き日の夢を 堀口星眠 営巣期
ひしめきて墓群呟く春昼夢 稲垣きくの 黄 瀬
ひたひたと夢のつづきの木の芽山 矢島渚男 釆薇
ひととせは夢のまにまに月夜茸 佐々木 咲
ひる顔の夢は波音ばかりなり 西沢和子
ふくらみし夢に雪ふる牡丹の芽 菅井冨佐子
ふるさとも塩引鮭も夢のもの 石塚友二
ふる里は晝寝に夢も無かるべし 会津八一
ふる里や夢をたどりて夏柳 会津八一
へんな夢のつながり 午後に客くる 積田美代子
ほうたるを夢のかけらのごと拾ふ 大口公恵
ほたほたと落つ榧の実も夢のもの 石塚友二
ほととぎす展げて夢の百橋図 橋本薫
ほとゝぎす江戸のむかしを夢の内 炭 太祇 太祇句選後篇
ほの~と鶴を夢みて明の春 尾崎紅葉
ほろ苦き来し方は夢ごまめ噛む 秋山佳奈子
ぼうぼうと夢の紅さの箒草 高橋謙次郎
ぼたん散れ真晝の夢のしろたへに 中勘助
まくなぎや夢の墜死は途中まで 澁谷道
まざまざと夢の逃げゆく若葉かな 寺田寅彦
まざ~と夢をつゞけぬ月の蚊帳 前田普羅 新訂普羅句集
また同じ夢よりさめて夜の寒き ながさく清江
また夢を見るために覚め夏落葉 鳥居美智子
また次の夢さがしして 秋の蝶 玉野井八枝子
また飯匙倩に追はるゝ夢をみてゐたり 田中憲治
まだ夢に戻れるくらさ虫時雨 浅井多紀
まだ夢に父に蹤く母萩の門 杉本寛
まだ夢の乾かぬ朝の桔梗かな 桑原三郎
まだ夢はあるか きつつき木を覗く 鎌倉佐弓
まだ花に心のこすか蝶の夢 蝶 正岡子規
まるく寝て夢に母くる虫月夜 三田きえ子
まれによき夢みし朝や雪降りつつ 清水基吉
みじか夜を長いは夢の思ひかな 膳所-万里 俳諧撰集玉藻集
みたくなき夢ばかりみる湯婆かな 久保田万太郎 草の丈
みづいろやつひに立たざる夢の肉 攝津幸彦
みづうみに鰲(がう)を釣る夢秋昼寝 森澄雄
みんな夢雪割草が咲いたのね 三橋鷹女(1899-1972)
むささびの夢のつづきを飛びにけり 河野多希女
もう夢に出てこぬ女春の雪 岡本輝久
ものの芽や夢の一字はくらがりに 岡井省二
やすらかに椿ふた葉や夢を載す 小池文子 巴里蕭条
やぶ入の夢や小豆の煮るうち 蕪村 春之部 ■ 早春
やぶ入りの夢や小豆の煮ゆるうち 蕪村
ゆさぶりて覚め夏草の夢違い 和田悟朗 法隆寺伝承
ゆふすげに熱き飯盛る夢の妻 攝津幸彦 鹿々集
ゆふべ見し夢のつづきの野に遊ぶ 野路斉子
ゆるゆると空へ浮く夢青胡桃 井上 康明
よい夢のさめても嬉しもちの音 五 筑
よき夢と覚えゐるのみ籠枕 片山由美子 水精
よく眠る夢の枯野が青むまで 金子兜太
わが夢にきらめく雁の泪かな 真鍋呉夫
わが夢のうちを流れぬ青葉潮 仙田洋子 雲は王冠以後
わが夢も殻のうちなる蝸牛 新明紫明
わが夢や子が夢や秋深みつゝ 石塚友二 光塵
わが夢を娘に遊学の蒲団縫ふ 丸橋静子
わが朝の夢におくれて来し鳥か 中村苑子
わが葬列夢に雪降る仮借なし 小林康治 玄霜
わすれては夢かとぞ思ふ真桑瓜 川崎展宏
われとわが夢のあいだの薄氷 津沢マサ子 風のトルソー
われに来る夢美しき冬籠 森 澄雄
われ小さく母死ぬ夢や螽斯 小倉一郎
アネモネや旅の夢なる地中海 沢木欣一
カルシウム不足の春を夢に走る 桑原三郎 晝夜
クローバや制服に夢ありし頃 藤崎美枝子
コーランを夢うつゝ聞く外寝かな 森田峠 逆瀬川
サングラスはづす女の夢信じ 仙田洋子 橋のあなたに
シャガールの白馬夢追ふ初御空 太田登茂子
ジンジャーの香夢覚めて妻在らざりき 石田波郷
ジンジヤの香夢覚めて妻在らざりき 石田波郷
ストーブに石炭をくべ夢多し 細見綾子 黄 炎
ストールや原宿ともる夢のいろ 柴田白葉女 『月の笛』
チューリップ夢の扉の鍵隠す 内山思考
ドーム仰げば夢には非ず原爆忌 日笠靖子
バナゝ揺るゝ夢も朧よ復覚むる 林原耒井 蜩
ビール一本夢に飲み干し楽しみな 高浜年尾
ブラウン管の残夢テーブル少し濡れ 田中信克
ベルリンに死ぬほどの夢ありしとふはるかなるかな明治のをとこ 坂井修一
ペルシュロン まだ走つてる まだ走る 夢の彼方の雲掴むため 時田則雄
ホテル・ビィレッジ白根葵は夢いろに つじ加代子
マルメロや黄色の夢のポルトガル 小田島清勝
ルフランに倦みては人を殺す夢 徳弘純 レギオン
一こへは夢よりもろし時鳥 時鳥 正岡子規
一と夜さの夢にぺしやんこ菊枕 小畑晴子
一の枝のことに夢咲き沙羅の花 赤松子
一声は夢よりはかな時鳥 時鳥 正岡子規
一対の夢の千鳥に覚めて雪 鳥居美智子
一期は夢一会はうつつ旅はじめ 石寒太 あるき神
一村の枯れ遁れんと夢に痩す 河野南畦 湖の森
一炊の夢たづさえて雪虫来 豊口陽子
一炊の夢のくさぐさ雪霞 深谷雄大
一炊の夢のわれかも桃の花 原コウ子
一睡にもの食ふ夢や年の暮 小川軽舟
一睡の夢に疲るる四温かな 植村久子
一睡の夢のあとなる秋簾 外川飼虎
一睡の夢のあやめよ白くねじれて 矢野千代子
一糸整然雪夜夢まで香をきく 加藤知世子 花寂び
七七忌修し師の夢まんじゆさげ 杉本寛
七十路の夢は童心宝船 笹本翠月
七十路は夢も淡しや宝船 水原秋櫻子
七夕の夢のうきはし烏鵲かな 宗鑑
七夕や夢に驚く斧の音 七夕 正岡子規
七夕流す夢これよりの少女子と 馬場移公子
万人の夢の上なり時鳥 時鳥 正岡子規
三好忌の夢の二タ瘤駱駝かな 七田谷まりうす
三成の夢の佐和山桜かな 三浦正弘
三日月にのせる夢欲し苺盛る 鍵和田[ゆう]子 未来図
三日月を夢みて鹿の孕むらん 孕鹿 正岡子規
三景の夢に飽かうぞ竹むしろ 幸田露伴 谷中集
上官を殴打する夢四月馬鹿 沢木欣一(1919-2002)
不二垢離にゆふべの夢を洗ひけり 富士垢離 正岡子規
不忍や水鳥の夢夜の三味 河東碧梧桐(1873-1937)
不忍や水鳥の夢夜半の三味 正岡子規
与謝に来て余生の夢の落葉かな 石原八束 『仮幻』以後
世にあるも大夢のごとし去年今年 小見山希覯子
世の中の夢は夢見る胡蝶哉 胡蝶 正岡子規
世は夢の冬木の桜しだれけり 向田貴子
世之介の夢の続きのさるすべり 辻 男行
中流の夢を届けよ宝船 かとうゆうすけ
久々に我を放ちて鯉魚となり琵琶湖を巡る夢は見ざれど 光栄堯夫
久女の忌濃すぎる夢を見ていたり 山口 剛
乳中に白き餅いる夢を狩らむ 赤尾兜子
乳房をつつむ薄絹夢の軍楽隊 林田紀音夫
亀鳴くや夢は淋しき池の縁 内田百間
予言者の哄笑耳の夢ほぐす 春海教子
五感醒めぬ 夢の続きのももさくら 松本恭子 檸檬の街で
五百年の夢をさまして小夜しくれ 時雨 正岡子規
亡きひとの夢に来しより春の風邪 野澤節子 黄 炎
亡き人の夢の短し春一番 細川良子
亡き人の夢よりさめて七変化 成瀬正とし 星月夜
亡き夫の声又夢に明易し 石川靖子
亡き妹をいたはりし夢昼寝覚 佐野美智
亡き妻を夢に見る夜や雪五尺 雪 正岡子規
亡き母が座せしは夢かげんげん田も 小川公子
亡き母の夢に出てくる水中り 八牧美喜子
亡き母は夢にも来ずよ盆仕度(古津氏母堂の御逝去を悲しむ) 『定本石橋秀野句文集』
亡父の夢覚めて懐かし鉦叩 河津紅子
京の夢大阪の夢目刺焼く 長谷川かな女 花 季
人さまの夢に出て春全うす 佐々木六戈
人体や夢のほかには滝の壷 増田まさみ
人様の夢に出て春全うす 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
人間の夢を聚めて空に照る遠き世に生れいまを澄む月 来嶋靖生
今ここに在るは夢なり蝸牛 澤井我来(貝の会)
今朝の夢を忘れて草むしりをして居た 尾崎放哉
今朝の秋つじつま合はぬ夢に覚む 山田重子
今生のこれも夢なる百合の風 石塚友二
体内の白魚の目が夢に来る 和知喜八 同齢
何もかも夢も抜けたり籠枕 森澄雄「虚心」
佗助やわが身過ぎたる夢のかず 濱田俊輔
佗助や夢の切れ目を雪降れり 小檜山繁子
余生にも夢の掛橋夏の旅 木寅美津子
余生にも託す夢あり初暦 小島シズ子
佳き夢の如くに夕焼冷めてゆく 稲岡 長
俗界を離れし夢を白芙蓉 古市絵未
信・和・愛・夢・虹・HAWAI・初笑ふ 磯 かな
俤や夢の如くに西瓜舟 石塚友二
修羅くぐる夢いくたびも朝曇り 長谷川双魚(青樹)
俳句とはのつぺらぼうか僕の夢 筑紫磐井 花鳥諷詠
傾城の夢に殿御の照射哉 照射 正岡子規
僧兵の夢を育てた谷に雪 牧田正太郎
兄自殺母水死吾夢遍路 星野石雀
光秀の夢のひといろ桔梗咲く 小園葉舟
八十路まだ夢みる日々や百日草 千原満恵
八千草も夢猫も夢妻も夢 後藤比奈夫 めんない千鳥
六月の夢の怖しや白づくし 岸風三樓
六月の御茶を濃くいれ昔夢會 筑紫磐井 婆伽梵
兵疲れ夢を灯しつゝ歩む 片山桃史 北方兵團
再会の夢一途なり額紫陽花 三輪みよ子
冬 蝶 の 夢 崑 崙 の 雪 雫 富澤赤黄男
冬こもり日記に夢をかきつくる 冬籠 正岡子規
冬の夜の夢相遇ふて父子若し 松村蒼石 春霰
冬の水明け方は夢あまたみて 徳弘純 非望
冬の灯のゆらぐ藍染夢は夏ヘ 加藤知世子 花寂び
冬の虹うつつを夢と思いけり 渡辺幸子
冬の野に壜を捨てては夢みけり 正木ゆう子
冬の雨なほ母たのむ夢に覚め 中村汀女
冬休み少年鳩と夢育て 土田祈久男
冬木暮るゝそがひの空の夢に似し 木歩句集 富田木歩
冬海や念の夢の伊良古崎 松根東洋城
冬深し手に乗る禽の夢を見て 飯田龍太 山の木
冬瓜や改造農家夢肥やし 百合山羽公 寒雁
冬眠のものの夢凝る虚空かな 竹岡一郎
冬籠日記に夢を書きつける 正岡子規
冬蕨夢にふたたび母の死す 鈴木鷹夫 風の祭
冬藪さわぐわたしは夢にさらわれて 伊藤 和
凍りあふて何を夢みる海鼠哉 松瀬青々
凍る夜の凍らぬ夢のまくら哉 中川宋淵 遍界録 古雲抄
凍蝶のおしろいの顔夢に入り 宇佐美魚目
凍蝶のはつと翔ちたる夢うつつ 山本歩禅
凍蝶の夢をうかがふ二日月 攝津よしこ
凍鶴の夢のはじめに火色雲 鷹羽狩行 七草
凧遠し逢はねばの夢もちつづけ 山本つぼみ
出歩けば即刻夢や秋の暮 永田耕衣(1900-97)
切られたる夢はまことか蚤の跡 宝井(榎本)其角 (1661-1707)
切られたる夢は誠か蚤の跡 榎本其角
初夢に夢でよかりしものを見し 有賀芳江
初夢のうつつの夢と重なれり 寿々子
初夢の夢にはあらじ記念館 稲畑廣太郎
初夢の夢の叶はぬ足袋をはく 径子
初夢や夢一ぱいの帆かけ舟 龍岡 晋
初日呑むと夢みて發句榮ゆべく 初日 正岡子規
初空に心の筆で夢と描き 西村 恵
初蜩あしたの夢に響きけり 西村和子
初蝶とかけつこグリコの夢買いに 木庭眞智子
初蝶や妊りし夢なまなまし 河野多希女 琴 恋
初蝶を夢の如くに見失ふ 高浜虚子(1874-1959)
初買いの飾りボタンは夢の色 中村喜美子
初鏡夢もろともに映しけり 稲畑廣太郎
初鶏のめでたき声を夢うつゝ 高橋淡路女 梶の葉
初鶏の一声夢の向こうから 柳田芽衣
別るるや夢一筋の天の川 漱石
剃髪は昼寝の夢でありしかな 鈴木真砂女
剥落を夢に癒さむ春菩薩 林 翔
創造の天地あかつきかへる雁 暮六つ時のぼろんじの夢 筑紫磐井 未定稿Σ
力竭(つく)して山越えし夢露か霜か 石田波郷(1913-69)
力竭して山越えし夢露か霜か 石田波郷
匂ひしは夢にや見たる除夜の梅 松岡青蘿
医師来て夢揺すらるる蝉の中 石川桂郎 含羞
十一月二十三日中京区夢蔵と言うなり 阿部完市 純白諸事
十月の葱見て死者の夢ばかり 宮坂静生 山開
十萬の髑髏の夢や草の霜 霜 正岡子規
千金の夢の覚めたる春の闇 西田孤影
半身は夢半身は雪の中 宇多喜代子(1935-)
卒寿にもいささかの夢更衣 保津操(南風)
卒寿の手雛を飾る夢ならず 阿部みどり女
卒業の子の持つている夢袋 石井紀美子
南の大魚の夢に入りて叫びたし 夏石番矢 神々のフーガ
南瓜より朱鷺の生まるる夢を見き 正木ゆう子 悠
南蛮へ幾夜か夢を泳ぐなり 高柳重信
原稿も夢も累々たる九月 折井紀衣
去年の夢さめてことしのうつゝ哉 去年今年 正岡子規
去年今年亡き人夢にまた夢に 橋本榮治 越在
又夢を来るは暮春の箒売 河原枇杷男 蝶座 以後
口中に枯野ある夢断続す 栗生純夫 科野路
古沢や月に涼しき鷺の夢 涼し 正岡子規
古衾古人の夢もなかりけり 原 抱琴
句を得たる夢は尊し翁の日 島田五空
句を洗ふ酒はむかしや夢の蝶 斯波園女
叩きたる夢は冬木の赤き芯 高橋睦郎 稽古
只の夜の夢の枕や月の昼 上島鬼貫
只の時も吉野は夢の桜哉 井原西鶴
叫びても声の出ぬ夢明易し 川村紫陽
号外や昼寝の夢を驚かす 昼寝 正岡子規
合歓の花夢をもたねば老い易し 福田蓼汀 秋風挽歌
君が家に春の寝心夢もなし 春眠 正岡子規
君に逢ふうつゝを夢のはじめかな 梓月
君ひとりいる夢を見た冬の朝 脇村善一
吾妹子を夢みる春の夜となりね 夏目漱石 明治三十四年
唖蝉の夢に隊長来たりけり 林桂 銅の時代
唱へをり遍路の夢のいろは歌 小川恭生
啓蟄や天馬の夢に乳首炎え 河野多希女 両手は湖
啓蟄や残りの夢は森の中 谷村登志子
囀の夢に入りけり紅かりし 榎本好宏
国境へ夢の速さに水流れ 対馬康子 愛国
土や寒きもぐらに夢や騒がしき 寺田寅彦
土よりも藁になる夢明易き 行方克巳
土筆生ふ夢果たさざる男等に 矢島渚男 木蘭
土筆生ふ麻酔の夢の滑稽な 斎藤玄 雁道
土蜘蛛の往き来も夢や花の家 永田耕衣 吹毛集
地下茶房夢の眼に追われる怒り 鳴戸奈菜
埋火の夢やはかなき事許り 埋火 正岡子規
埋火や掻きさがしたる後の夢 埋火 正岡子規
城紅葉夢に逢ふひと聲失せて 渋谷道
埓もなし電気毛布に夢追ひて 水谷 晴光
墓に木を植ゑたる夢も初秋かな 飯田蛇笏 霊芝
墓地にでる兎のワギナ夢の火事 安井浩司 赤内楽
声あげて夢の師とあふ春霰 加藤楸邨
声成らぬ夢より目覚めはせをの忌 なかのまさこ
夏の兎飢えたり夢もみていたり 宇多喜代子
夏の夜の短き夢に火の粉かな 小檜山繁子
夏の燭海棠を見る夢うつゝ 尾崎紅葉
夏みかん若もの夢をいだきそめ 篠田悌二郎 風雪前
夏掛や夢さめやすい肌さはり 瀧井孝作
夏水仙寝覚の夢をまたさそふ 堀口星眠 営巣期
夏深み真白き飯を夢みけり 林原耒井 蜩
夏草の夢の跡など見て来玉ヘ 寺田寅彦
夏草や兵どもが夢のあと 芭蕉 (奥州高館にて)
夏葱の香に夢蔵というものあり 大西健司
夏蝶の黒さを夢にもてあます 高橋謙次郎
夏近し夢の切れ目が生き活きと 河野南畦
夏雲や夢なき女よこたはる 桂信子(1914-)
夏雲や草千里とは夢千里 岸原清行
夏風邪や繋ぎ合はせの夢ばかり 坂本淳子(群青)
夕霧に鵜舟を洗ふ夢のごと 鈴木鷹夫 大津絵
夜々の夢秋蚊帳畳むころほひぞ 石塚友二 光塵
夜々むすぶ夢の哀艶きくまくら 飯田蛇笏
夜ざくらや老いて妖しき夢をみる 清水基吉
夜となりて吉夢むさぼる寝正月 金子兜太 皆之
夜の夢の蟇と化してぞさまよへる 村越化石 山國抄
夜の雪辻堂に寐て美女を夢む 雪 正岡子規
夜はいつも水の方角へ夢を織る 伊藤利恵
夜は矢の夢をとほさぬ都かな 大屋達治 繍鸞
夜半の春するりするりと夢をぬぐ 川田由美子
夜桜や老いて妖しき夢をみる 清水基吉
夢々とふる沃土の雨に球菜肥ゆ 飯田蛇笏 春蘭
夢々と否茫々と冷し飴 攝津幸彦 鹿々集
夢あさき五月の小草ぬかれけり 松村蒼石 雪
夢ありき炉の白樺の美き炎あげし 内藤吐天 鳴海抄
夢ありし雪夜の離被架庇護の中 赤松[けい]子 白毫
夢ありや生きとし生けるものに雪 折笠美秋 君なら蝶に
夢いくつ一夜に重ね覚めて秋 林 翔
夢いくつ並べて消えて獺祭 斎藤 翠
夢いくつ孕む序章やリラの花 大島民郎
夢いくつ見て男死ぬゐのこぐさ 能村登四郎
夢いくつ見むおしろいの花の夜 高林アヤ子
夢いまだ子には託さじいわしぐも 木下夕爾
夢うつゝ三度は袖のしぐれ哉 向井去来
夢おぼろ寝あけば坐る昼の蚊帳 上村占魚 鮎
夢おもき蝶の翅や明けやすき 会津八一
夢かれて初秋犬の遠音かな 西吟
夢があるいている行きどころ失つて起された 橋本夢道 無礼なる妻
夢がちに明けて湖霧さわぐなり 臼田亞浪 定本亜浪句集
夢がまだ尾を引いている挿木かな 能村登四郎
夢がまだ火であるころの草の絮 林 桂
夢こそ短し虹色の蟻失せて 齋藤愼爾
夢ころころ少年やまべ飼い慣らす 下山田禮子
夢さめしかにかたかごの咲きにけり 鷲谷七菜子 花寂び 以後
夢さめてあハやとひらく一夜ずし 蕪村遺稿 夏
夢さめておどろく闇や秋の暮 秋櫻子
夢さめてさめたる夢は恋はねども春荒寥とわがいのちあり 筏井嘉一
夢さめてただ青ぬたの古草廬 飯田蛇笏 山廬集
夢さめてやはり見えぬ目春の雷 平尾みさお
夢さめてゆく東京に鳥渡る 川崎完治
夢さめて家族と丹頂鶴をよび 阿部完市 春日朝歌
夢さめて木曾の宿屋よ薄蒲團 蒲団 正岡子規
夢さめて熊手をつかふ未亡人 中烏健二
夢さめて血気萎えたる霜夜かな 石塚友二 光塵
夢さめて鮎汲みに出づ庵主かな 尾崎迷堂 孤輪
夢すくふごとく苺を洗ひけり 進藤明子
夢すこし現とちがふ接木かな 神尾季羊
夢たがへ男の夢は氷りけり 加藤楸邨
夢つづく桃は落花の大なるかな 松崎豊
夢で乗る馬の筋肉強く跳ね 釈迦郡ひろみ
夢で叱る先生のをり秋桜 橋本榮治 逆旅
夢で師の子は師と瓜二つ虎落笛 磯貝碧蹄館 握手
夢で良い母と乗りたい蓴舟 会田三和子
夢で見たような花野をいまあるく 向山文子
夢で見る若菜野男女若かりき 河野多希女 こころの鷹
夢で逢ひし人に逢ひたる桜かな 野村喜舟 小石川
夢で首相を叱り桔梗に覚めており 原子公平
夢といふ減りやすきもの日記了ふ 橋本榮治 麦生
夢といへば必ず悪夢花八ツ手 細川加賀 生身魂
夢となりし骸骨踊る荻の声 其角
夢とんで魂うつる夜の雪 道立
夢と御座す臥待月は西の方 佐野左右也
夢ながら蝶も手折や花戻り 千代尼
夢なりし城も薊の野となりぬ 阿波野青畝
夢なりし貝風鈴の貝の音 神尾久美子 桐の木以後
夢にあればわれも幼な子冬三日月 山田諒子
夢にかよひて外の面の雪の暮れ白らむ 富田木歩
夢にかよひて戸の面の雪の暮れ白らむ 木歩句集 富田木歩
夢にきし母はこち向かず炭をつげり 秋元不死男
夢にさえ付添の妹のエプロン 住宅顕信 未完成
夢にさへ母見ゆ月日紫*苑咲く 塩谷はつ枝
夢にして父は枯木の中歩む 塩谷小鵜
夢にして蜂蜜どうとながれけり 阿部青鞋
夢にてはなほ力泳に堪ふるなり 相生垣瓜人
夢にて詠める句よ畏怖だけを持ち帰る 木村聡雄
夢になき出口夢みる桜かな 原裕 『王城句帖』
夢になくわが衰へや軒の雁 成美 (述懐)
夢になほ馬陸の千手われに向く 大野美幸
夢にのみひと隠れくる葛の花 野澤節子 花 季
夢にまた寒暮の土のひと握り 河原枇杷男 定本烏宙論
夢にまた綿虫群るる中にゐき 相生垣瓜人 微茫集
夢にまで入る隙間風夫婦たり 大沢初代
夢にまで尋ねし苗木植うるなり 山口笙堂
夢にまで浪音重ね年詰る 伊藤京子
夢にまで秋の蚊羽音響かせし 稲畑広太郎
夢にまで藍さす霜の貯炭山 小林康治 『華髪』
夢にまで雪降る昏さ手を洗う 対馬康子 吾亦紅
夢にみしわが墓に雪降りにけり 北村 保
夢にも人に会はぬ道べに竹伐れり 宮津昭彦
夢にも人に逢はぬ峠の夕桜 島田柊
夢にも欲りし家のまはりに雪が降る 杉山岳陽 晩婚
夢にも雪の加賀に父つれ母つれ来 阿部完市 無帽
夢によく似たる夢かな墓参り 服部嵐雪
夢に似てうつゝも白し帰り花 蓼太
夢に出し秋刀魚の口のおびただし 山口青邨
夢に出て我が全景の紅葉狩 小泉八重子
夢に出て水乞ふ子らや原爆忌 大橋淳一
夢に又投扇興の師に見え 深川正一郎
夢に夢見て蒲団の外に出す腕よ 桑原三郎 花表
夢に師や黄葉の巴里みじろがず 小池文子 巴里蕭条
夢に彩ありぬ花種蒔きし夜の 中村明子
夢に散るさくら覚めてもつづくごとし 大野林火
夢に朱欒を抱き重りしが創痛す 藤田湘子
夢に来し妻こまごま甘ゆ霜咲けり 矢島薫
夢に来し明眸の牛露おくか 北原志満子
夢に来し母を追ひゆく花菜径 河本好恵
夢に来し父に抱かれ寒夜なり 堀口星眠 営巣期
夢に来し男は誰ぞ業平忌 関口ふさの「晩晴」
夢に来し祖母恋ふ八十八夜かな 馬場移公子
夢に来し笑顔は何ぞ春の闇 野沢節子 八朶集以後
夢に来て夢に去る父夜半の春 梶原健伯
夢に来て怨む春日の彼某よ 高柳重信
夢に来て無言の夫よ雪ぼたる 緒方みどり
夢に来て豆撒のこと父が言ふ 大石悦子 群萌
夢に来て酒欲るは父か山頭火 本田ひとみ
夢に来る母をかへすか郭公 榎本其角
夢に母現れて不機嫌むし鰈 鈴木鷹夫 大津絵
夢に泣きて朝餉すすまず茗荷竹 皆川白陀
夢に泣くーあなたの家が火事ですよ 櫂未知子 貴族
夢に浮く身風呂にしずむ身四月尽 江里昭彦(1950-)
夢に溢れし萩を流しの窓近く 川崎展宏
夢に父と枯木を見しが枯木立つ 加藤楸邨
夢に病んでアルンハイムの花つくり 仁平勝 花盗人
夢に美人来れり曰く梅の精と 梅 正岡子規
夢に聞くはうつら鶉のねみみかな 季吟
夢に舞ふ能美しや冬籠 松本たかし(1906-56)
夢に色あらば淡墨桜かな 西川五郎
夢に芹摘み溜めており寒に入る 古澤太穂
夢に見えたまへるままを御影供かな 横山蜃楼
夢に見しことのある日や春暮れぬ 安斎櫻[カイ]子
夢に見し人遂に来ず六月尽く 阿部みどり女
夢に見し子等より声の賀状来る 平上昌子
夢に見し日向と思ひ種を採る 山本洋子
夢に見し長さをもちて穴惑 大石悦子 聞香
夢に見よ身長十億光年の影姫 夏石番矢(1955-)
夢に見るふるさといつも雪催ふ 冨田みのる
夢に見る亡父未だ炭をかつぎをり 菖蒲あや 路 地
夢に見る母彩なさず枯るる中 伊藤京子
夢に見れば口中枯野よこたひぬ 栗生純夫 科野路
夢に見れば死もなつかしや冬木風 木歩句集 富田木歩
夢に見ん遊女もしらず春の雨 春の雨 正岡子規
夢に観音彼岸の雨となりにしよ 照子
夢に触れしは母かをんなか明易し 上田五千石 琥珀
夢に触れし父の荒髭露晨 福永耕二
夢に鎌ひし人つれなくて秋の蚊帳 高橋淡路女 淡路女百句
夢に障子醒むれば軋む船の壁 田川飛旅子 花文字
夢に黒山羊音たてる美しき楽山 金子皆子
夢ぬちの海の青さの三郎忌 藤井冨美子
夢ぬちの私憤に覚めて罌粟の花 鍵和田[ゆう]子 浮標
夢のあたりへ響くちりめんじゃこの咳 坪内稔典
夢のあと囀りひとつ加はりぬ 大石悦子 聞香
夢のあと日の遍しや春障子 成田千空
夢のあと追うて晴なり爽やかに 阿部みどり女 『陽炎』
夢のいろのうす紅や花林檎 及川貞
夢のごとき山葵の花を食ふ泊り 土方秋湖
夢のごとき色過ぎ林檎濃くなれり 宮津昭彦
夢のごとき誓ひなりけり落椿 上村占魚 鮎
夢のごと咲くや継子の尻拭ひ 島谷征良
夢のごと咳の果にて紙燃ゆる 桜井博道 海上
夢のごと死は青蚊帳をくぐり来し 斎藤玄 玄
夢のごと溢るるエリカ舂ける 小松崎爽青
夢のごと舞ふ蜻蛉や雨戸くる 原石鼎 花影以後
夢のたね文集に蒔き卒業す 吉原文音
夢のつづきの夫こそありぬ春あけぼの 大石悦子 群萌
夢のつづきの花ある夢や草城忌 花谷和子
夢のはじめも夢のをはりも花吹雪 渡辺恭子
夢のひと冴えざえ霧の吉野杉 中島斌雄
夢のまた夢に覚めけり櫻鯛 石寒太 あるき神
夢のまた夢みてからすうりの花 高澤良一 素抱
夢のまま顔洗うなり二月の手 和田悟朗
夢のみが平凡ならず昼寝覚 嶋田一歩
夢のやうな帽子が冷えぬ海のため 桜井博道 海上
夢のよな思ひかすめぬ挿木しつ 大熊輝一 土の香
夢の名残と笑ふ別れや今朝の秋 青峰集 島田青峰
夢の夜や裸で生れて衣がヘ 井原西鶴
夢の夜を花咲ききつてしまひけり 平井照敏 天上大風
夢の如きおぼろの富士に見えけり 星野立子
夢の如くがゞんぼ来たり膝がしら 岡本松浜 白菊
夢の妻春の夜明けに去り行けり 杉浦範昌
夢の子に慰めらるる母の秋 福田蓼汀 秋風挽歌
夢の子の幾人目かの竹の春 小泉八重子
夢の尾を曳きずつてゐる春霞 大石悦子 群萌
夢の後のごとくに冷えて瀧の前 大木あまり 火球
夢の手の爆発したりさるすべり 大石雄鬼
夢の数挫折の数のしやぼん玉 二神玲子
夢の景とすこし違へる焼野かな 能村登四郎 有為の山
夢の暗部で折れた骨が踊る 馬場貞子
夢の朝柳は黒くなりにけり 鳴戸奈菜
夢の木に髪からませて昼寝覚 鳴戸奈菜
夢の母いつも笑顔や明易し 清 公子
夢の母ときどき泣けり諸葛菜 細川加賀 『玉虫』
夢の母微笑みてゐし春彼岸 森竹良子
夢の毛物の歯から血がでる風くるぞ 金子兜太
夢の涼しさみちのく独立王国は 矢島渚男 船のやうに
夢の淵蓬を摘みて摘みきれぬ 草深昌子
夢の父母いつも働く水草生ふ 鈴木貞雄
夢の端に女が座り初雪す 板垣鋭太郎
夢の端に拘つてゐる白絣 根岸善雄
夢の端に拘りをれば螻蛄鳴けり 根岸善雄
夢の端を踏むごとく踏み薄氷 鷹羽狩行
夢の色ひめて鶉の卵がら 原石鼎 花影以後
夢の茂みに煙草をおとさないで下さい 松本恭子 世紀末の竟宴 テーマによる競詠集
夢の蝉ならずこの楠かの榎 耕二
夢の辻曲り違へて蜷の昼 柿本多映
夢の遠さに凧糸をのばしきる少年 山本つぼみ
夢の長さを争つてゐるなめくぢら 大石雄鬼
夢の間や茄子大きくなりにけり 旨原
夢の闇うつつの闇を野分過ぐ 舘野豊
夢の雁まことの雁を帰しけり 成澤たけし
夢は葉の隙より遁ぐる破れ傘 笠原和子
夢は蝶命あるものを見るに鰒もなし 丸石 選集「板東太郎」
夢は西ふくろふの木は北にあり 藤田湘子 てんてん
夢ばかり見て夏の日の水平線 大高翔
夢ひとつかけし恵方の湖明り 高橋 淑子
夢ひとつ入るるにはよき巣箱かな 石山ヨシエ
夢ひとつ叶ひし今朝のラベンダー 田代登志
夢ひとつ子の手に渡す風船売 河原 貞子
夢みて老いて色塗れば野菊である 永田耕衣 悪霊
夢みるや肛門に密着するすべり台 安井浩司
夢もなき我ゆめ甜る蝴蝶哉 幸田露伴
夢もなき顔をして売るシヤボン玉 堀口星眠 樹の雫
夢もなし吉凶もなし去年今年 森澄雄
夢も見でさめて豪雨のかたつむり 藤岡筑邨
夢も見る汽車のうたたね秋の雨 皆吉爽雨
夢やすき方へ寝返る月高し 綾部仁喜 樸簡
夢やよし夕べかささぎ今朝は畑 鳴戸奈菜
夢ゆるくうつゝせはしき砧かな 大魯
夢よりは先へさめたる湯婆哉 横井也有 蘿葉集
夢よりもまなかひ冥く昼寝ざめ 赤松[けい]子 白毫
夢よりも現の鷹ぞ頼もしき 芭蕉
夢ゑがき臥す夜を匂ふ冬薔薇 古賀まり子 洗 禮
夢をたのしむ夜々の眠りの秋深く 臼田亜浪 旅人
夢をみるための手枕春隣 信濃小雪
夢を乗すごとくに烏瓜の花 佐藤鬼房
夢を出て雉子はげしく鳴きにけり ほんだゆき
夢を守る朝風のもう五月かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夢を摘むごとく柔らに棉を摘む 久保武
夢を見しこと風邪熱の出たるらし 下村梅子
夢を見しまゝうとうと草ひばり 川村 千英
夢を見し菰きてまでも臂枕 素丸
夢を見るまでモモンガ飛ばす雪明り 石川青狼
夢を追ふ心に希望日向ぼこ 小原菁々子
夢を食む女よ揺るる紅蓮田 鍵和田[ゆう]子 未来図
夢一字書いて十三詣かな 松井子
夢一片朝蜩に攫はれし 津幡龍峰
夢一羽二羽撃たれゆき冬の山 増田まさみ
夢充つる帰省列車にかゞみ寝る 能村登四郎
夢十夜ことごとく花吹雪せり 沼尻巳津子
夢占のいとぐちのなきおぼろかな 大石悦子 群萌
夢占や石槨の草刈り残し 宮坂静生 樹下
夢占や虫の髭ふる夏布団 丸山海道
夢声忌や石見にのこる句碑二つ 山崎寥村
夢多き日の遠くなる夏の雲 菅原哲男
夢多くして 痙攣する芒 松本恭子 檸檬の街で
夢多くまた花種を買ひ過ぎし 清水忠彦
夢夢(ぼうぼう)と湯舟も北へ行く舟か 折笠美秋 虎嘯記
夢夢と湯舟も北へ行く舟か 折笠美秋
夢孕むボーナス袋開きにけり 島田青峰
夢宿らぬ婢の瞼かな明易き 龍胆 長谷川かな女
夢寐に来しひとの一語や明易し 嶋倉睦子
夢寐の間も光陰のうちきりぎりす 上田五千石
夢寐の間体内を鶴よぎりけり 石母田星人
夢心地して小夜の中山桜かな 鈴木鷹夫 大津絵
夢成らず蚊張近く聞く雨の昔 森鴎外
夢托す陶土粘る手に汗にじむ 飯村周子
夢拙忌の供華しろ~と籠の中 飯田蛇笏 霊芝
夢捨てに来し溜池の薄氷 矢沢和夫
夢捨てに行きたし月の花野かな 青柳志解樹
夢捨てぬ限り青春初鏡 安河内登志
夢残る瞼をかしやほとゝぎす 雑草 長谷川零餘子
夢殿の夢のさくらのしだれけり 角川春樹
夢殿の夢のつづきの松朧 鍵和田[ゆう]子 浮標
夢殿の夢の扉を初日敲つ 中村草田男
夢殿の花のさかりの夢しだれ 森田公司
夢浸す葉月汐吾子生れけり 堀口星眠 営巣期
夢淋し夢さめて尚淋し秋 雉子郎句集 石島雉子郎
夢淡き齢となれり菊枕 鷹野清子
夢深く山火の音を曳き寄せて 黒田杏子 花下草上
夢深く海の響きに散るさくら 黒田杏子 花下草上
夢猶さむし隣家に蛤を炊ぐ音 榎本其角
夢生まぬ電気毛布をたたみけり 豊島満子
夢疲れして紅梅を見にゆかず 鳥居美智子
夢盛りし育児日訪の黴払ふ 長谷川 翠
夢竟る馬が義足を踏み鳴らし 西川 徹郎
夢籬母は素馨とともに在りぬ 渋谷道
夢紡ぐまで金雀枝の花あかり 藤田湘子
夢苦しわれ夏痩の骨を痛み 夏痩 正岡子規
夢覚めて今日の予定や花菜摘 田中起美恵
夢覚めて夢のつづきの花吹雪 橋本榮治 越在
夢解きに水のかかはる蝉の殻 正木ゆう子 悠
夢解や贋あかしやは寒暮の木 宮坂静生 山開
夢語る子の清浄の白き息 つじ加代子
夢踏んでさらに遠のく青嶺かな 小山大泉
夢違てふ春愁の観世音 下村ひろし 西陲集
夢違観音までの油照り 坪内稔典「百年の家」
夢違観音仰ぎ年惜しむ 市野沢弘子
夢醒めて母亡しくるし氷雨熄む 堀口星眠 営巣期
夢醒めよ天上大風凧あがる 和田悟朗 法隆寺伝承
夢青かれキヤビンに風の満つる時 太田鴻村 穂国
夢青し蝶肋間にひそみゐき 喜田青子
夢鳥ヘニンフのタクト吾亦紅 井上鷹洋
大仏の夢に低し花御堂 花御堂 正岡子規
大佛の夢のお告げに粧ふ山 高澤良一 鳩信
大地震直前誰もが夢を見た 杉浦圭祐
大寝坊夢は時雨にほとびけり 可躍 選集「板東太郎」
大師忌の夢のはじめに火色雲 周藤白鳳
大根に抱きつかれ夢深まらず 宮坂静生
大根畑田舎暮しの夢ここに 宮本幸子
大蕪しろじろ洗ふ夢の母 松村多美
大雷雨鬱王と会ふあさの夢 赤尾兜子「歳華集」
天の川児の描く夢の宇宙船 本多菊枝
天の川禽獣の夢ちらかりて 飯島晴子
天の河ひとらが夢に夏寂びつ 下村槐太 天涯
天の河消ゆるか夢の覚束な 夏目漱石 明治四十三年
天は海水仙の夢花火となる 阿部誠文
天牛が夢みる星の生まれけり 千代田葛彦
天翔る夢をみており合歓の花 中村まゆみ
天落つる夢虹渡る夢涼し 藤井彰二
天蚕の夢も現もうすみどり 緑川啓子
天馬駆く春暁の夢朱鳥の訃 阿部みどり女
天高くモヨロの民の夢を掘る 能登裕峰
天高し夢に梢を踏み歩く 岩田由美 夏安
失ひし夢のかずかずしゃぼん玉 田口 圭
妊れる事の怡しき秋の夢 久米正雄 返り花
妖怪日や夢に泣く児の背さする 前田貴美子
妹が掌の空蝉燃やす夢のあと 齋藤愼爾
妻が夢子が夢雁や渡しつゝ 石塚友二 光塵
妻に夢少し残りし白牡丹 石寒太 翔
妻の夢みな叶はざり冬至の夜 瀧春一 菜園
妻の死ぬ夢みてゐたり冬の昼 石川桂郎 含羞
妻や子や野營夢さめて雁の聲 雁が音 正岡子規
妻よ子よ露世夢生に歯ごたえあり 折笠美秋
嫁が君富士の夢など見たことなし 木戸渥子
嫁ぐ子や夢かうつつかアロエ咲く 実成邦子
嫩草や石工の夢の橋残り 三浦健也
嬰は夢に大空_み辛夷の芽 田所節子
子の嘘は子の夢岩を縫ふ蛍 成田千空(萬緑)
子の夢のいまは野のどこ春炉焚く 上田日差子
子の夢のころころ変はり罌粟坊主 落合由季女
子の夢のふた葉となりぬチューリップ 稲畑汀子
子の夢の数ほど飾り聖誕樹 山田弘子 こぶし坂
子の髪を撫でてゐる夢雪降りゐし 有働亨 汐路
子を探す夢に千草のみな歩く 山西雅子
子供には子供の夢のハンモック 吉田一兆
子恋ひ旅豊後菜の花夢のごと 小林康治 玄霜
子等の夢育てディズニー天高し 保田白帆子
孑孑や夢もて生くる時短か 神澤久美子(岳)
孤児ねむる良夜の夢を握りしめ 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
孤児の枕並べて夢凍る 寺田寅彦
学問の夢すてきれず年守る 山下しげ人
学帽が役者の夢になりすます 攝津幸彦
宇宙人の夢を見てをり風邪兆す 石田幸子
宇宙遊泳夢より遠し経木帽 百合山羽公 寒雁
定遠(ていえん)の見果てぬ夢を夜光蟲 筑紫磐井 婆伽梵
宝舟夢の名残りもなかりけり 安住敦
宝船まさかの夢の叶ひけり 加藤洋子
宝船夢の名残もなかりけり 安住敦
宝船敷寝の旅に夢もなし 福田蓼汀
実はまなす鰊大尽夢に来む(歌棄鰊御殿) 角川源義 『神々の宴』
宵の鹿夜明の鹿や夢みじか 夏目漱石 明治四十年
宵節句夢うす月のほのめけり 久保田万太郎 流寓抄以後
家在りて網戸に夢は患いぬ 杉本恒子
寄るや冷えすさるやほのと夢たがヘ 加藤知世子
寄生木に夢あづけあり春夕 藤田湘子 てんてん
富士の雪慮生が夢を築かせたり 松尾芭蕉
寒い足が出てシベリアの地図をかぶつて寝ていた夢というもの 橋本夢道 無禮なる妻抄
寒むや妻首吊る夢を見て泣けり 猿山木魂
寒夜にて夢に泪し覚めゐたり 内藤吐天 鳴海抄
寒徹骨梅を娶ると夢みけり 夏目漱石 明治三十二年
寒柝がもぐらの夢を叩きける 野中 亮介
寒烈風見はてぬ夢の母の愛 堀口星眠 営巣期
寒鯔をつる夢もちて人の中 橋石 和栲
寝て夢に遠きに遊ぶ十三夜 相馬遷子 雪嶺
寝て夢みて真空パック期限つき 鎌倉佐弓
寝て夢路起きて枯野路行くもひとり 福田蓼汀 秋風挽歌
寝よぞねよ夢の行方のとしを又 上島鬼貫
寝返れば夢逃げてゆく青葉木莵 田中恵理
小いびきにはや乗る夢路宝船 井沢正江
小さな夢託して吊るす初暦 森田幸子
小夜の雪酒屋が夢を破りけり 笑石 選集「板東太郎」
小家に寐て夢は焼けたる前の家 菅原師竹句集
小春日や夢喰ふ獏の舌に色 黒米満男
少年に夢ジキタリス咲きのぼる 河野南畦
少年に空とぶ夢や春の山 大串 章
少年のゆめ老年の夢竜の玉 森澄雄 空艪
少年の夜々の夢なる兎罠 石塚友二 光塵
少年の夢のシグナル蛍籠 中村智子
少年の夢多し陽炎うて道遠し 星野立子
少年の夢揺りおこす春の雷 中村棹舟
尾のとれし夢みて狐啼きにけり 鈴木栄子
居酒屋に棲む夢千代といふ金魚 山下かず子
山なみは濃りんだう色夢寐の色 文挟夫佐恵 黄 瀬
山に寝て夢にも白し花さびた 金箱戈止夫
山に来て山の夢みてゐし初秋(上州草津高原自門洞) 上村占魚 『かのえさる』
山中の師の夢のこと雪が降る 大串章
山吹に夢の又夢求めゆく 和田悟朗 法隆寺伝承
山吹に夢をもらへり獏にはやらぬ 長谷川かな女 花寂び
山彦と啼く郭公夢を切る斧 山口素堂
山桜切にひと日の夢の色 田沼文雄
山桜夢を埋めて散りにけり 山桜 正岡子規
山気夢を醒せば蟆の座を這へる 乙字俳句集 大須賀乙字
山眠るけだしや夢も山の夢 高橋睦郎 荒童鈔
山荘の夢さへづりとなりて覚む 藤原たかを
山越えの夢すてがたし早桃食ふ 和泉瑞枝
山雨雪となりたる夢は音のなし 山口草堂
岳峨々と夢にそびえて明易き 村上光子
峠この夢のいづこも蝉しぐれ 河原枇杷男 訶梨陀夜
島蝶よべの凶夢とかすめ去る 福田蓼汀 山火
崑崙の山のはるかを行く鵬の一声鳴けり夢にわが聴く 来嶋靖生
崩え果てし夢また育つ枇杷の花 久保田晴朗
川の夢蘭を投じてをはりけり 飯島晴子
川蜻蛉飛ぶ石の夢石のうた 樋口昌夫
巴旦杏がぶりと夢を失ひぬ 大江かずこ
巻貝死すあまたの夢を巻きのこし 三橋鷹女
市振の畑打ちひとり夢にまた 津森延世
帚木のあたりに夢の終りあり 田中真理
帚木や夢に出てきし男はも 寺井谷子(自鳴鐘)
師の坊の腰もむ夢や置火健 中村史邦
師弟共に若かりし夢春暁に 野中英照
年の夜の夢に入りたる山の雨 澄雄
年の夜や夢にも酒の限らるる 石川桂郎 四温
年寄の夢の淡さよ宝船 後藤比奈夫 めんない千鳥
年男アロエの夢を見ておりぬ 四ツ谷 龍
年越の夢路にさへや老の坂 風虎
幼な雪自分を夢とまだ知らず 折笠美秋
幼時父はなにを夢みしとろろ飯 河原枇杷男 定本烏宙論
床かへり夢に恨を郭公 調鶴 選集「板東太郎」
座すことも夢のひとつに雪うさぎ 大井恒行
弄ぶ夢と一字の秋扇 町田しげき
引導や廿五を夢まぼろ子規 井原西鶴
引鴨に夢を言うてはをれぬなり 大石悦子 聞香
形代に桃色人に夢多き 後藤比奈夫 めんない千鳥
彩のある夢にさまよひ大朝寝 上村占魚 『かのえさる』
待恋の夢に逢うたる炬燵かな 尾崎紅葉
徳川の夢や見るらん浮寐鳥 浮寝鳥 正岡子規
忘れたき夢きしきしと髪洗ふ 池田あや美
怒にかつとして夢であつたか 荻原井泉水
怖ろしき夢みてをらむ萱の穂も 河原枇杷男 定本烏宙論
思ひごと必ず夢み冬籠 岩崎照子
恋よ夢よ橋のたもとの真赤な実 林原耒井 蜩
愉快なくらしが夢のよであつた火鉢抱いてる 人間を彫る 大橋裸木
愛憎の夢も現も行秋ぞ 小畑一天
我が夢の珊瑚礁碧海いま厳し 文挟夫佐恵 黄 瀬
我が夢を盧生笑ふか雲の峯 水田正秀
我が夢を蝶の出ぬける山家哉 幸田露伴
我も夢か巨勢の春野に腹這へば 河原枇杷男
我を夢に見るらん膝にぬるこてふ 闌更
我夢の化してや床のきり/\す 松岡青蘿
或る夢の隅の暗きに蝉の穴 河原枇杷男 定本烏宙論
或時の操帆術を夏の夢 三橋敏雄 畳の上
手まくらの夢ハかざしの櫻哉 蕪村 春之部 ■ 風入馬蹄輕
手枕の夢にふりこむ霰かな 二葉亭四迷
手機織る母春暁の夢に出で 浅見画渓
手毬三つ並べて夢のはじめかな 永島靖子
手術三日受胎の夢を見る薄暑 星野明世
手鏡や夢のつづきは波に雪 河原枇杷男 訶梨陀夜
打首となるため夢を脱ぐわたし 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
技師の夢遠し寒鴉日矢に入る 米沢吾亦紅 童顔
投げ入れて咲くまでの夢水中花 仙田洋子 橋のあなたに
指先に夢の抜け行く昼寝覚 木島斗川
捕り物の続きは夢に春炬燵 本多八重女
捨て切れぬ夢もありけり冬薔薇 原田和子
捨靴にいとどを飼ふも夢の夢 高橋睦郎 稽古飲食
探幽があけぼのゝ夢や子規 高井几董
撃たれたる夢に愕く浮寝鳥 高橋悦男
撫肩の母夢に来よ宝船 松本美簾
播磨枕夢路の尾上桜もかな 調鶴 選集「板東太郎」
故人との夢ばかり見て 梅便り 伊丹三樹彦
故里の夢麦秋の汽車に覚む 橋本喜夫
敗荷の破れし夢はつくろへず 稲垣きくの 牡 丹
教職にかけし夢あり木守柿 濱田正杷
散と見し夢もひとゝせ初桜 高井几董
散り終えて夢に入りたる桃林 山上康子
散る紅葉夢寝の中より児の笑顔 古市絵未
散る花や夢かとぞおもふ袖袂 松岡青蘿
敷る櫻西行の夢をたゝきけり 幸田露伴 拾遺
料峭の夢釈尊の掌を出でず 岩崎憲二
断崖を飛ぶ夢ばかり春惜しむ 岸本マチ子
新世紀夢の一字の賀状書く 築谷暁邨
新社員すぐ海原の夢を見し 櫂未知子 蒙古斑
新社員夢あらばこそ「王将」を 高澤良一 寒暑
新秋や女体かがやき夢了る 金子兜太
方寸に仇潜みゐし春夢とも 石塚友二
旅に病で夢は枯野をかけ廻る 芭蕉
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 芭蕉
旅の夢のなほ厨ごと冷まじや 大石悦子 群萌
旅まくら雨夜の夢はつばくらへ 林原耒井 蜩
旅立ちや夢のごとくに桐が咲き 近藤一鴻
族の夢に貌のあまたや業平忌 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
日の夢に結ぶ夜の夢雪の華 深谷雄大
日光湯葉に蛇の一寸くるむ夢 安井浩司 風餐
日永鰐夢む手足の置きどころ 高澤良一 さざなみやつこ
日溜りの犬は夢みる枯芙蓉 鍵和田[ゆう]子
日盛りのひかるの夢に揚子江 山岸竜治
日覆してカーテン引くや夢老人 永田耕衣 物質
日記はじめ秘むべき夢もなかりけり 林原耒井 蜩
日記買ふ夢のつづきがまだありて 小西明彦
早寝して夢いろいろや冬籠 日野草城
昇天の夢や見るらん春の風 春風 正岡子規
明け方の夢が気がかり菜を間引く 稗田 富貴子
明け易き夜の夢に見しものを羞づ 日野草城
明け易き夢に通ひて濤の音 村沢夏風
明け易き夢や十九の従弟同士 明け易し 正岡子規
明方の夢が尾をひき青嶺聳つ 本村蠻
明方の夢撫子や露しぐれ 廣江八重櫻
明日は粽難波の枯葉夢なれや 芭蕉「六百番発句合」
明易き夜の夢にみしものを羞づ 草城
明易しねむりめがねの彩の夢 文挟夫佐恵 遠い橋
明易し何をいそぎて夢の母 中川美亀
明易し夢に入りくる鳥の声 西澤厚子
明易し夢継ぎたして母に逢ふ 渡辺昭
明易のきわどき夢を逃れけり 西明更風
明易の夢にまた母背負ひけり 中村文子
明易の夢の出口が見つからぬ 伊藤 格
明易の夢は語らず秘めしまま 柴野ゆき
明治は存し大正は夢水中花 百合山羽公 寒雁
星孕む夢に覚めゐる朝霞 河野南畦
星月夜水車は夢を巻き軋む 佐々木幸子
星涼し夢を語れる人と逢ふ 畑 毅
星空のはてより木の葉ふりしきり夢にも人の立ちつくすかな 山中智恵子
星空ゆく屋台提灯夢うつつ 高澤良一 素抱
春あさし葦原に焚くは夢の襤褸 寺井谷子
春おぼろあの世この世の夢の人 嵐山美子
春ごたつ夢に手足を忘れきて 向野由貴子
春なれや夢の景色もそのやうに 上村占魚 『玄妙』
春の夜の夢かとばかり眺めける 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
春の夜の夢ではらはらしてゐたる 猪俣千代子
春の夜の夢に疲れてしまひけり 若林かをる
春の夜の夢の浮橋耕二佇つ 能村登四郎 天上華
春の夜の夢の浮橋踏み絶えぬ 春の夜 正岡子規
春の夜の夢の涙や枕紙 蘇山人俳句集 羅蘇山人
春の夜の夢をさますや白拍子 春の夜 正岡子規
春の夜は生還を夢みむために 川口比呂之
春の山見果てぬ夢を追ふごとく 三宅一鳴
春や佐保路普賢の象に乗る夢も 河原枇杷男
春を待つ待つとは夢の多きこと 福永鳴風
春一夢かのもの言はぬ人と会ふ 畑耕一
春愁や齢を外に夢老いず 吉屋信子
春昼の夢をきよらにたもちけり 林原耒井 蜩
春昼の夢違ひ観世音の前 成瀬正とし 星月夜
春晝のはるか夢みしいるかかな 三好達治 俳句拾遺
春暁のかなしき夢を地震が断つ 宮津澪子
春暁の夢に力の入りけり 宮坂静生 春の鹿
春暁の夢に未知の子産み落す 上野山明子
春暁の夢のあと追ふ長まつげ 久女
春暁の夢の土橋の故里よ 高柳重信
春暁の夢の子夢に消えにけり 八木林之介 青霞集
春暁の夢の終りに母をりし 原田豊子
春暁の夢は枕に封じ込む ふけとしこ 鎌の刃
春暁の夢匂はせつ花活くる 金尾梅の門 古志の歌
春暁や夢のつづきに子をあやし 上田日差子
春暁や夢のつづきに母の帯 田中久子
春曉の夢の女は鬼女なりし 岩崎照子
春曉や夢の尾消ゆる屏風の絵 松根東洋城
春深し口より糸を吐く夢も 河原枇杷男
春満月水子も夢を見る頃ぞ 保坂敏子(1948-)
春潮や過去がほどける夢つれて 宮崎敦子
春燈にきれいな夢をひとりぼち 高田風人子
春燈に美しき夢もつは自由 高田風人子
春眠のきれぎれの夢つなぎけり 舘岡沙緻
春眠の夢のつづきの雨なりし 関俊子
春眠の夢の巻物くりひろげ 成瀬正とし 星月夜
春眠の夢をついばむ鵜かな 金尾梅の門 古志の歌
春眠の覚めぎはの夢荒々し 白石明男
春眠やあざやかすぎし夢の彩 稲垣きくの
春眠や夢とうつつの間に声 荒木幸子
春秋と移る夢路や雁の声 松岡青蘿
春立つや夢ひろげたるコンサート 内藤晴夫
春立つや醪に櫂の夢うつつ 宮坂静生
春筍に夢のたぐひの黒斑あり 藤田あけ烏 赤松
春近し一人歩いて夢探す 岩瀬鴻水
春雨の夢を掠めて蚊の去りし 石井露月
春雪に黒き足跡夢疲れ 小檜山繁子
春雷に一瞬目覚夢うつつ 太田富美子
春雷のひとつが夢の境にて 川崎奈美
春霰夢引き戻す思ひあり 森 敏子
春風や大樹の下の夢がたり 廣江八重櫻
春風や大樹の下の夢語り 広江八重桜
昨夜の夢かなし寒紅そと淡く 高橋笛美
昨日の夢夏の和服のごとく捨つ 小倉緑村
昼の夢ひとりたのしむ柳かな 千代尼
昼の夢をはりてもなほ秋日和 日野草城
昼の夢花大根のふゆるふゆる 高木智恵子
昼ふかき囀りやがて夢となる 古賀まり子
昼寝して夢路に夏はなかりけり 昼寝 正岡子規
昼寝して恐竜の角よぎる夢 高澤良一 寒暑
昼寝して童の頃の夢を見て 京極杞陽
昼寝児へ夢の二三歩つき合ひぬ 能村研三
昼寝覚その奥にまた夢のドア 柴田奈美
昼寝覚夢のつづきの山があり 横瀬弘山
昼顔の午睡の夢に窓がある 鳴戸奈菜
昼顔の夢の渚へ歩み入る 岸原清行
晝ふかき囀りやがて夢となる 古賀まり子 洗 禮
晩年や夢を手込めの梨花一枝 永田耕衣 冷位
晩年や花に触れては夢拓く 長見千恵子
暁の夢かとぞ思ふ朧かな 夏目漱石 明治二十九年
暁の夢のきれぎれ蜩も 林火
暁の夢のつづきや雁渡る 市堀玉宗
暁や土筆摘みたる夢を追ふ 阿部みどり女
暁夢の淵を出入りの桃の花 宇多喜代子
暁方の夢のいろなる桐咲けり 福永耕二
暁暗にはや地一つの夢紛れ 松澤昭 神立
暁暗に夢の木があり揺さぶれり 平田よし子
暑き夜や夢見つゝ夢作りつゝ 相馬遷子 山河
暖房車隣りの夢の寄りかかる 田中ひろし
暗き波ばかりの夢の桜鯛 鈴木鷹夫 渚通り
暗き湖より獲し公魚の夢無数 藤田湘子(1926-)
書を積んで汗して眠る夢は何 川崎展宏
書初やまず海と書き夢と書く 高橋悦男
曼珠沙華に鞭うたれたり夢さむる 松本たかし(1906-56)
曼珠沙華のするどき象夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべし 坪野哲久
月に人立つ短夜の夢ならず 下村ひろし 西陲集
月も日も夢の下なり不二詣 富士詣 正岡子規
月代に鱗立ちたる夢が淵 原 知子
月光に子の夢はらふ咒をしらず 下村槐太 天涯
月射してふと夢覚めし破芭蕉 草間時彦 櫻山
月白く柿赤き夜や猿の夢 柿 正岡子規
服地裁つ妻に夢あり春来つつ 伊東宏晃
朝の夢梳き櫛のひとところ欠け 宇多喜代子
朝の道夢かと見はる冬ざくら 矢澤春子
朝寝して夢のごときをもてあそぶ 山田みづえ
朝寝して夢の余白に遊びをり 櫛原希伊子
朝寝して白波の夢ひとり旅 金子兜太 詩經國風
朝涼の夢に跣の亡父と逢ふ つじ加代子
朝焼や夢かろがろと忘じゐて 今野好江
朝霧や繪にかく夢の人通り 蕪村遺稿 秋
朝顏に吉原の夢はさめにけり 朝顔 正岡子規
朝顔のむらさきの夢の谷間 桑原三郎 龍集
朝顔の藍をしぼりて夢あそび 文挟夫佐恵
朝顔や夢のやうなる風が吹く 会津八一
朝顔や夢の浮橋かけ渡し 北枝
朝顔や夢裡の美人は消えて行く 朝顔 正岡子規
朧月セピヤの彩の夢紡ぐ 岸 あい子
朧梅や夢の山みな古墳型 澁谷道
木の実落つ夢に太郎の打ちゐたる 大石悦子 群萌
木の芽立つ夢持つものはみな眩し 関森勝夫
木の葉髪夢にも母を歎かすや 大網信行
木の葉髪子の一語より夢を生む 塩谷はつ枝
木曾の雪その夜の夢に降りつのる 鈴木貞雄
木枯やさめんとしては牛の夢 凩 正岡子規
木枯や眠れば暗き夢ばかり 松尾金鈴
木苺の夢のつづきを召し上れ 栗林千津
木葉木菟しきり浄土の夢ひらく 野沢岩雄
木蓮に夢のやうなる小雨哉 夏目漱石 大正三年
木賊刈る手が濡れ残夢ありありと 宇佐美魚目 秋収冬蔵
朱欒剥く夢の朱欒もひとつ剥く 市川千晶
朱鳥翔ぶ夢を雪ふる萱の原 赤松惠子
朱鷺飛翔夢ふくらみし初暦 山田みさを
杜宇古郷をめぐる夢ぞきく 松岡青蘿
来る年の夢書き入れて日記果つ 高橋悦男
来寄る蚊や夢の青山高樹町 石塚友二
松島の花に宿りて夢多き 鈴鹿野風呂 浜木綿
松籟に夢や通へる僧昼寝 松藤夏山 夏山句集
枕辺に花こんこんと降るは夢 高澤良一 寒暑
果てしなき涼しさといふ夢も見き 高山れおな
枝豆のはじけ緑の夢ひとつ 松田 淑
枯れきるやムンクの夢にゐるごとく 仙田洋子 雲は王冠
枯山に鳥突きあたる夢の後 藤田湘子(1926-)
枯野にて見せ合ふ夢もなくなりぬ 高橋龍
柚の香や夢と思いて働く人 永田耕衣 葱室
柚子一顆父に艶夢を贈りたし 中西夕紀
柿若葉ほどの夢みてゐたりけり 照敏
柿食ひし夢まだすこし早かりき 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
栗落とす時にこの世を夢とみなし 大串章
桃咲く藁家から七十年夢の秋 橋本夢道 『無類の妻』以後
桐の実がてのひらにあり夢違へ 金子野生
桔梗や日雇の夢うたがはず 岩田昌寿 地の塩
桜散る父責めてゐる夢に覚め 久保田耕平
桜桃忌二度寝の夢も急かれゐて 五味真琴
桜花夢の浮世のさかり哉 花盛 正岡子規
桜菓子夢のごとくにこの世すぐ 長谷川櫂 虚空
梅が香に一炊の夢渡りけり 青木重行
梅の闇あをあをと夢さめてをり 朝倉和江
梅ひらく夢はつはつに湯婆抱く 金尾梅の門 古志の歌
梅をしたふ其夜の夢や嵯峨のあたり 松岡青蘿
梅若の夢をしづむる柳哉 柳 正岡子規
梅若忌夢にも人の会ひがたき 岩田由美 夏安
梅雨明けし今もわびしき夢を見る 相生垣瓜人 微茫集
梅雨晴間長い短い夢を見ぬ 岸田稚魚 『紅葉山』
梟に夢をあづけし旅寝かな 摂津よしこ
梟に夢を託して眠る森 村越化石
梟の夢にも船の大鏡 夏石番矢 神々のフーガ
梟の昼寝の夢や夏木立 夏木立 正岡子規
梟や出てはもどれぬ夢の村 上田五千石 琥珀
梟や夢の奈落に落ちしこと 齋藤愼爾
梨の花かすみにねむるおぼろ夜に夢よりあはき月を見るかな 金子薫園
梨花の雪どびの雪翠簾の夢寒し 梨の花 正岡子規
棉ひとつ夢ひとつ摘み昼の月 文挟夫佐恵 遠い橋
棒は棒夢は夢にてひきがへる 鎌倉佐弓 水の十字架
棕梠の花小判の封印切りし夢 香西照雄 素心
棚橋や夢路をたどる蕎麦の花 山口素堂
椎匂ふ一夜の夢の宮迎ふ 長谷川かな女 花寂び
椿燃え昨日の夢に火をつける 河野多希女 両手は湖
楕円の夢 くろびかりつつ歪むかな 富澤赤黄男
楽遠くなり邯鄲の昼寝夢さめぬ 昼寝 正岡子規
樗咲き天平の夢けぶるなり 小松崎爽青
橋渡る紅葉散り敷く夢窓忌よ 若松 明
橙の夢に入り来よ転りぬ 榎本好宏
機織りの夢と相成る嫁が君 鈴木孝信
櫻貝母と拾ひし夢に見し 羽野蕗村
歌垣のむかし夢みる合歓の花 町田しげき
此うへの夢は覚えず去年ことし 鳳朗
此の一事母明け易き夢に来よ 杉山岳陽 晩婚
歯のぬけた夢の夜半や秋の風 幸田露伴 谷中集
歳の豆夢ひろいをり無心の児 西井幸径
歳晩の夢のかけらの桃色鍵 横山白虹
歳晩や何を知らせに夢の母 馬場移公子
死の夢に蛍なだれてゐたりけり 多田裕計「多田裕計句集」
死は未だ夢にさへ見ず七日粥 鈴木鷹夫 春の門
死んだ夢は生きた夢也花芒 薄 正岡子規
死顔を逸れて夢なす木瓜の花 和田悟朗
残夢して欅もみぢの散るひかり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
残夢追ふ眼の底に紫陽花溢れけり 高田蝶衣
残月や魚と化したる夢さめて 中勘助
残菊や老いての夢は珠のごと 能村登四郎
段々に夢叶ふらし朝寝など 殿村菟絲子 『菟絲』
殺さるゝ夢でも見むや石蒲團 村上鬼城
母がまた病む夢冷えてだるき足 奈良文夫
母と寝て母を夢むる藪入かな 松瀬青々
母の肩たたいている夢沈丁花 飯島昭子
母哭かす夢の子日焼けいつも笑顔 福田蓼汀 秋風挽歌
母在りしことも夢なり青葉木菟 酒井弘司「地霊」
母見んと夢たのしみぬ風邪の昼 長谷川かな女 雨 月
毛布足すさるとり茨の夢を見て 永末恵子
毛糸編む男の夢の端にゐて 工藤弘子
毬をつく地の夕やみも夢の埓 林田紀音夫
水の夢みてするすると障子あく 長谷川双魚 『ひとつとや』
水の夢みてつらつらと蜘蛛の糸 鳥居真里子(俳壇)
水中花開くは古き夢に似て 橋本炭水
水仙に目ざめて夢の濃かりけり 松村武雄
水仙の香や一睡の夢の後 高橋謙次郎
水底へゆらゆら夢のかけらかな 中山美樹
水晶の散らばる夢も首夏の光(かげ) 小檜山繁子
水芭蕉夢の言葉を白く吐く 久保田慶子
水草生ふちちははに夢ありしころ 大石悦子 聞香
水草生ふ夢のいとぐちさだかには 小池文子
水陽炎田にしふたつの夢の園 加藤楸邨
水音に恋の夢醒む天の川 石田ふじ乃
水音のどこから夢の業平忌 寺井谷子
水音の夢のごとくに返り花 順子
水餅の夢心地なる水を替ふ 宮崎安子
水鳥の夢は真昼の雲の中 川井玉枝
水鳥の夢宙にある月明り 飯田龍太(1920-)
水鳥の夢驚かす驟雨哉 寺田寅彦
水鳥や夕べの夢を浪の上 水田正秀
水鳥や夢より怖きものに風 夏井いつき
水鳥や榮華の夢の五十年 水鳥 正岡子規
水鶏聞て今見し夢を淋しがる 紅緑
汗しとゞ苦しき夢はさめてけり 汗 正岡子規
汗の旅夢で橋白鳥となり 友岡子郷 遠方
沈酔に夢も夏野のしかいふな 多少
沙羅咲けり夜ひる白き夢こぼれ 酒井章鬼
河津桜見し夜の夢の韓紅 林 節子
河豚くふて其夜死んだる夢苦し 河豚 正岡子規
河鹿笛夢の貴公子舟でゆく 新部烈人
沼枯るる茫漠夢と境無し 宮津昭彦
法師蝉南柯の夢の声に出て 和田悟朗 法隆寺伝承
泣いて居る夢の亡母や春かすみ 倉田弘子
泳ぎつつ夢を見むとてうらがへる 大屋達治 絵詞
泳ぎゐし夢はその先までゆかず 鎌倉佐弓 潤
流寓の家を夢みる風邪にねて 百合山羽公 故園
流鶯や夢の扉は半開き 河原枇杷男 蝶座 以後
浅き夢さめては森のけらつつき 清水径子
浅春の日は夢のいろ虹のいろ 柴田白葉女 『夕浪』
浅漬やあさき夢なるうつせごと 能村登四郎
浜木綿や志摩は詩の国夢の国 鈴鹿野風呂 浜木綿
浮寝鳥十羽十色に夢を見て 小松和子
浮寝鳥夢は渡りの幾山河 吉田文伍
浮寝鳥夢みるときは流さるる 石井 香
海の底でぼくらは眠るつぶつぶと幼児のやうな夢を吐き出し 森本平
海へ雪嶺へ舞ひは銀朱や朱鷺の夢 加藤知世子 花寂び
海わたる子の夢さくら咲いてゆく 和知喜八 同齢
海を行く百里蓬莱に倒り春夢醒む 春眠 正岡子規
海底歩く夢落花など散りしきり 中島斌雄
海月にも空飛ぶ夢のあるならむ 高橋よし
海月寄る夢の岸辺を埋めんと 対馬康子 純情
海流は夢の白桃のせて去る 桂信子 緑夜
海神の見はてぬ夢の月見草 鈴鹿野風呂
涅槃像胡蝶の夢もなかりけり 涅槃像 正岡子規
涼しさやわれは禅師を夢に見ん 涼し 正岡子規
涼しさや夢もぬけ行く篭枕 乙 由
深夜疾風夢のかけらのさむざむと 栗生純夫 科野路
深山この夢のいづこも紅茸 齋藤愼爾
深睡りして夢もなく花石榴 数馬あさじ
混沌の夢を断ち切るレモンの香 畑野達子
清衡が夢みし花の仏国土 高澤良一 宿好
湯の村や夢ばかりなる春のゆき 幸田露伴 江東集
湯女肥り海芋は夢のごとく咲けり 岸風三楼 往来
湯婆の都の夢のほの~と 高浜虚子
湯婆抱て大きな夢もなかりけり 大須賀乙字
源流を夢みてねむる蛍の夜 飯田龍太
滝壺にゐて真白き夢を作(な)す 松澤昭 神立
漂泊の夢抱きつづけ雁帰る 渡辺草丘
漆黒の夢の切れ目に鴨のこえ 澁谷道
潮騒に夢溜めてをり子安貝 瀬底月城
濃あじさい行方不明の夢ひとつ 穴井太 原郷樹林
濃く淡く夢に入りゆく合歓の花 小檜山繁子
瀧枕/夢に/舵(たぎし)や/抱き茗荷 林桂 銀の蝉
瀬の音にあしたの花の夢もなし 西山泊雲 泊雲句集
火の燃ゆる石を抱きぬ秋の夢 長谷川かな女 雨 月
火事の夢さめて越後の雪の中 福田甲子雄
火事の夢に赤き楸邨居られけり 田川飛旅子 『使徒の眼』
火取虫男の夢は瞑るまで 能村登四郎「易水」
火柱の夢のあとなり曼珠沙華 鈴木蚊都夫
灼熱の砂を過ぎゆく夢の翳 仙田洋子 雲は王冠
炉辺に聞くこの家の子の夢泣きを 大野林火
炎天に夢呆けの貌ありにけり 仙田洋子 雲は王冠
炬燵寝やあまり幼き妻の夢 雉子郎句集 石島雉子郎
炭窯や竹林は夢そよがせて 鍵和田[ゆう]子 浮標
焼酎や夢のうちなる逃亡者 仙田洋子 橋のあなたに
熄まざりき夢の終りを春の雪 河原枇杷男 訶梨陀夜
熊笹に/悶絶せしが/夢ならず 大岡頌司
熱のたび赫き障子の夢を見る 平松弥栄子
熱気球夢を競ひて初飛行 佐々木早月
熱燗の夫にも捨てし夢あらむ 西村和子(1948-)
熱高き夢にむかしの初音売 石川桂郎 高蘆
燈をめぐる蠅覚めぎはの夢に入る 篠原梵 雨
爆音に寸断の夢薔薇につなぐ 加藤知世子
爪先より夢に入りゆく湯婆かな 永方裕子
父が夢の煉金薔薇霧暗し 内藤吐天 鳴海抄
父と子の夢食ひ違ふ心太 高橋悦男
父につよく呼ばれし夢の卯月浪 竹中宏 饕餮
父に夢多かりし日のインバネス 棚橋青臥
父に遭はしてくれし春夜の夢に泣く 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
父の夢紫蘇咲く庭に出ても消えず 草村素子
父の夢醒めては春の闇寒し 石塚友二
父を待つわたしのイコン夢彩色 下山田禮子
父母未生以前青葱の夢のいろ 中村苑子
片栗よ夢の母描くペンとなれ 林昌華
牛の貌チブス患者の夢にくる 藤後左右
牡丹の夢殻懸けし牡丹かな 永田耕衣 狂機
牧童は麦笛よくし夢もてり 河野南畦 『花と流氷』
物ぬひや夢たたみこむ師走の夜 千代女
狂王の束の間の夢夏の宮 稲畑廣太郎
狐火にしたがい夢の途中まで 高澤晶子
独り居の夢に尾のあり初枕 百間
狸なく夜を夢に笑ふか恵心堂 中勘助
猩々と格闘う夢を霜の日に 四ッ谷龍
猫の夢上に胡蝶の狂ひ哉 胡蝶 正岡子規
獏枕子のよき夢をつゆ知らず 赤尾兜子
獨り居の夢に尾もあり初枕 内田百間
獲物多き照射の夢はさめにけり 照射 正岡子規
玉虫や彩ある夢のさみしくて 村越化石 山國抄
王の夢むかしの夢のスフィンクス 横光利一
現とも夢とも古代蓮の色 河本遊子
現実はかなし花火は夢ひらく 阿部みどり女
甕買ひし闇市も夢梅を干す 百合山羽公 寒雁
甚平にヒヨイと夢附く摘み捨つ 永田耕衣 物質
生ありし日の夢みてか空蝉は 大橋麻沙子
田を植ゑて浄土夢みる風吹けり 福田甲子雄
田植ばらばら核のない世など夢だ 相原左義長
町長の夢のロゼいろ草田男忌 加藤耕子
疲れては夢に夫来ず葛ざくら 関戸靖子
病みがちの高きに登る夢もなし 石川桂郎 四温
病みしとき夢かよひしはこの冬田 水原秋櫻子
病む人の夢に見られて鶏頭花 橋本薫
病めば夢のふるさと雪がちらちらと 林原耒井 蜩
病めば幼くて夢を叱つてゐる 河本緑石
病んで夢む天の川より出水かな 夏目漱石(1867-1916)
白くなり夢窓国師に追随する 遠藤 煌
白地着てあらばその夢かへりこむ 加藤楸邨
白地着てまつさらな夢みたりけり 綾部仁喜 樸簡
白日に夢さらしけり花人参 上関ふみ子
白日の夢の内外藪蚊棲む 原裕 青垣
白日夢とは星草の揺るるさま 長谷川久々子
白日夢吐息蜥蜴は眉持たず 河野多希女 両手は湖
白晝の夢のぬけがら籠枕 大野せいあ
白木槿夢より起きて来し子かな 高橋馬相 秋山越
白無垢の夢捨てきれず雪女郎 蔵 巨水
白磁には夢盛り易し笹粽 鍵和田[ゆう]子 浮標
白秋も啄木も夢明易し 倉田紘文
白萩に夢のほつれを繕へり 水下寿代
白蓮の夢より少し遠くかな 山田六甲
白蓼の雨ふる夢のつづきかな 吉田紫乃
白髪に蜜光りけり夢の秋 攝津幸彦
白髪の夢寐に加わる雨幾日 林田紀音夫
白魚の夢に大船うごきけり 長谷川かな女 雨 月
白魚汁夢のやうなるもの浮いて 平川 尭
白鳥の一声夢にまぎれけり 中村姫路
白鳥を見て来し旅は夢ならむ 宮澤雅子
百円で子の夢とばすしやぼん玉 佐々木トモ
百千の雛見しよりの夢のいろ 文挟夫佐恵 遠い橋
百合の香に一とまどろみの淡き夢 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
盆の夢大きな川をかたはらに 黛 執
盆の月黒く崩れて来たる夢 茨木和生 三輪崎
目の赫ききんぽうげ売り夢にきて 山西雅子
目を張りて寒木瓜と逢ふ夢破れ 加藤楸邨
真夏の夢にクラリネツトがひろひろひろ 岡本政雄
真夜に覚め夢に色ある鏡花の忌 長嶺千晶
真昼間の夢の花かもライラック 石塚友二
真空の真昼の夢や蝉しぐれ 吉原貞子
眠られぬ朝に見る夢薺打つ 二村典子
眠剤の夢にも春の奈落あり 藤木倶子
眼にもせぬ蠍を夢に島泊り 上村占魚
睡蓮に話しかけたき夢のこと 島村早梅
睡蓮の紅白妻も夢保て 中村草田男
睡蓮やあの世この世の夢つなぐ 村中清子
瞠いて子の夢ゆたか蛙の夜 林翔 和紙
短夜にみじかき夢の果を見し 中村昭子
短夜の夢なら覚めな樽碪 尾崎紅葉
短夜の夢にはあらぬ穂高見ゆ 民郎
短夜の夢に極彩色の鳥 片山由美子 天弓
短夜の夢に覚む母なだめをり 館岡沙緻
短夜の夢のいづこも水籬 鳥居美智子
短夜の夢のごと継ぐ寄木箱 八牧美喜子
短夜の夢の満身創痍かな 森田公司
短夜の夢の白さや水枕 鈴木しづ子
短夜の夢はこの世にとどまれる 百合山羽公 寒雁
短夜の夢は海馬に跨つて 安藤つねお(小熊座)
短夜の夢も見果てず逝かれけり 高橋淡路女 梶の葉
短夜の子規に叱られゐしが夢 筑紫磐井 花鳥諷詠
短夜の短き夢に火の粉かな 小檜山繁子
短夜の色なき夢をみて覚めし 麦南
短夜の鶏鳴いて夢悪し 短夜 正岡子規
短夜やおもひがけなき夢の告 蕪村遺稿 夏
短夜やたまたま寝れば夢苦し 短夜 正岡子規
短夜や匍ひ出て潜る夢の淵 石塚友二 方寸虚実
短夜や夢さき川の朝わたり 松岡青蘿
短夜や夢のつづきに母もゐて 伊藤京子
短夜や夢ほどはやき旅はなく 京極杞陽
短夜や夢も現も同じこと 高浜虚子
短日を睡りつづけて夢も見ぬは 相馬遷子
石に寝る蝶薄命の我を夢むらん 蝶 正岡子規
石蕗咲いて夢の川原の淋しきこと 吉本和子
石鹸玉お伽のくにの夢のいろ 上村占魚 鮎
破蓮に触れたる夜の夢深し 深津健司
磯の香に夢のかよい路みちおしえ 八木三日女 落葉期
神無月浮雲に童子乗る夢を 茨木和生 野迫川
福寿草年かさねても夢多き 尾村馬人
福引や百態の夢おどり出づ 川岸冨貴
秀吉のひるねの夢や雲の峰 会津八一
秋*かやに見るべき夢もなき如く 中村汀女
秋の夜の夢に詩を得し寐覺哉 秋の夜 正岡子規
秋の夜は夢を見て又泣くばかり 中川宋淵 詩龕
秋の夢浮漂(ブイ)よりロープ外れおり 鳴戸奈菜
秋の夢老女も遊屋(ゆや)も我もまた 上島鬼貫
秋の夢驢馬が持てくる日向かな 中川宋淵 遍界録 古雲抄
秋の蛇午前の夢はウロボロス 竹中 宏
秋の鯰と夢の継ぎ目に疲れけり 栗林千津
秋天や白根の湯釜夢のいろ 石原舟月
秋尽きぬ寝ぬ夜の夢の躍舟 調和 選集「板東太郎」
秋晴れに置き忘れたる夢の嵩 五十嵐米子
秋空や飽食の子の夢持てず 棚橋澄子
秋草や振りかへらねば夢消えず 矢島渚男 船のやうに
秋蚊鳴く夢を引用する吾れに 齋藤愼爾
秋風やいくさの夢も二十年 秋風 正岡子規
秋風や夢の如くに棗の実 石田波郷(1913-69)
秋風や牡丹の夢もなかりけり 秋風 正岡子規
秋風や白き卒塔婆の夢に入る 星布尼
稲妻に夢みて飛ぶか蝉の声 水田正秀
稻妻や一聲鳥の夢に鳴く 稲妻 正岡子規
穂絮一つ夢にまぎれて飛びゐるも 河原枇杷男
穂絮一つ夢窓國師を追ひゆけり 河原枇杷男 流灌頂
穂絮吹き少年の夢つばさ持つ 岩城のり子
空に夢航空館のひな飾り 安西秀子
空を飛ぶ夢持ち絨毯の縁反れる 岸 典子
空泳ぐ鯨の夢をハンモック 芹沢保
空海の夢に色ある冬至かな 橋石 和栲
空耳か夢かかそかな除夜の鐘 岡本昼虹
空飛びし夢の疲れや菊根分 山口睦子
窓ひとつ夢の途中の凍るかな 氷室 樹
立春の雪掃きに行く夢に覚む 津田 渡
竜宮の夢より覚めて菊枕 すずき春雪
竜宮の夢をみてゐる合歓の花 岩崎信子
竜胆のこの径夢に見たる径 橋間石
童等の夢ともなりて菜殻燃ゆ 米沢吾亦紅 童顔
端午の日子供の夢を魚の喰む 松下千代
端居して夢のごときを子と約す 青木泰夫
竹の穂はむかしの馬の夢路かな 上島鬼貫
竹奴夢に七賢と遊ひけり 筍 正岡子規
竹筆のうすき夢の字谷崎忌 三宅芳枝
笛吹くや泉は夢の国のもの 龍胆 長谷川かな女
笹鳴のしばなくこゑに夢やぶれ 中尾白雨 中尾白雨句集
笹鳴のしばなくこゑを夢かとも 中尾白雨 中尾白雨句集
筆太に夢一文字を智恵詣 鈴木千恵子
筑波を見む夢のつくばは餅草色 折笠美秋 君なら蝶に
簗に魚夢よりこぼれ落ちてきし 大石雄鬼
籐椅子に睡り破船の夢を見ぬ 鈴木鷹夫 渚通り
籠枕くぢらの夢を見るとせむ 正木ゆう子 悠
籠枕して邯鄲の夢もなし 後藤比奈夫 祇園守
籠枕まひるの夢をむさぼりぬ 高橋淡路女 梶の葉
籠枕並べて夢のすれ違ふ 土生依子
籠枕眞晝の夢はすぐ忘れ 吉屋信子
籠枕眼の見えてゐる夢ばかり 村越化石「山国抄」
米搗虫夢の毀れし掌に搗かし 大木石子
粉雪しきりや子等各々の夢がたり 加藤知世子 黄 炎
粕汁や朝からのこと夢のごと 細川加賀 生身魂
糸を吐く夢を見ており春の風邪 佐藤きみこ
紅梅の夢白梅のこころざし 大串章 百鳥
紅梅を撒きたる夢の出入口 たむらちせい
紅楼夢ときをり開く梅雨の宿 岩田由美
紅楼夢慈悲心鳥を聞きにこい 八木三日女
紅葉山夢のとおりに道迷い 渋谷道
紙魚喰ひのカフカの夢と落ちゆけり 小檜山繁子
素手素足松が起点の昼の夢 河野多希女 納め髪
紡錘糸ひきあふ空に夏昏れてゆらゆらと露の夢たがふ 山中智恵子
紫蘇の葉や仮睡の夢に師が佇てる 宮坂静生 樹下
紫陽花や夢の男の嗄れ声 夏井いつき
紫陽花や大きな夢はばらばらに 加藤楸邨
紫陽花忌色なき夢に目覚めけり 徳田千鶴子
終の夢さめて応ふる鐘もなし 宗坤
結婚は夢の続きやひな祭り 夏目雅子
綿虫や晩年むしろ夢多き 宮下翠舟
緑蔭の嬰の夢ごと渡さるる 安田晃子
縁談にはたと夢あり蠅叩 池内友次郎 結婚まで
縄文の夢の賀毘禮嶺初明り 小松崎爽青
繭をほどくうす明りして夢ここち 和田悟朗
罌粟ひらく夢のつづきの小人たち 犬伏峰子
罌粟坊主夢やしなひの刻呉れよ 倉垣和子
罌麦の露を夢る日方かな 尾崎紅葉
羅を着て茶を點つる暁の夢 及川貞 夕焼
羊飼夢を抱きて霞みけり 野村喜舟 小石川
美髭の男夢で終りし初弁天 小枝秀穂女
翁見む夢のしぐれは誠にて 松岡青蘿
翔ぶことを夢みて鳰の子の潜る つじ加代子
老いてなほ夢多くして雛祭 吉屋信子
老いて見る夢の浅しや去年今年 神 緑郎
老年や夢のはじめのすみれ道 桂信子 遠い橋
老斑のこめかみに夢明易き 百合山羽公 寒雁
老醜の夢はまことか朝ざくら 相馬遷子 山河
聖五月指の先まで夢みる嬰 亀岡昭乃
聖人に夢なしと聞く厚蒲団 有馬朗人 耳順
肩幅の夢みてをりし衣紋竹 辻美奈子
背後より蝶に刺されし夢又も 河原枇杷男
胡桃ひとつ今宵の夢に入り来よ 大串章
膝にふる木のはを夢や馬の上 梅室
膳所泊り夢に行き交ふ初飛脚 高澤良一 燕音
臘梅や夢に冷たく泣かされし 対馬康子
臘梅や夢の山みな古墳型 澁谷道
舌を出す夢の三鬼や四月馬鹿 桂信子
舟に乗る夢などを見て明易き 今井杏太郎
舟遊の一日も去る夢の如 百合山羽公 寒雁
船に乗る夢いつか消え冬耕す 大串章
船火事の夢覚め朝の馬冷す 皆吉司
船長になる夢果たし年惜しむ 山近由美子
色つきの夢の疲れや真白き蛾 有馬英子
色のある夢みつくして瓜の馬 鳥飼美穂
艶夢より覚めて身に入むわが齢 鷹羽狩行
芝草や陽炎ふひまを犬の夢 夏目漱石 大正三年
芦の穂やかほ(顔)撫で揚ぐる夢ごころ 内藤丈草
花*さんざし古妻ながら夢はあり 石田あき子 見舞籠
花あしび 小学校の夢を見て 味元昭次
花あれば花咲爺も夢に出て 角川春樹
花ぞなら散らばや夢も抱くらん 上島鬼貫
花の下虫吐きし夢よみがへる 宮武寒々 朱卓
花の世を夢に見るまで衰へぬ 三橋敏雄 *シャコ
花の夢このみを留守に置ける歟 嵐雪 (彼此)
花の夢の薄雲さらでほとゝぎす 松岡青蘿
花の夢此の身をるすに置きけるか 服部嵐雪
花ふぶく夕山風に立ちつくしいく春かけし夢をつづれり 五島美代子
花をやる桜や夢のうき世もの すて 俳諧撰集玉藻集
花を見し其の夜の夢は胡蝶哉 胡蝶 正岡子規
花マロニエ岡本かの子かく夢みし 小池文子 巴里蕭条
花万朶夢を食べては淋しい獏 川井玉枝
花冷えや夢に琵琶湖の底見えて 塚本邦雄 甘露
花合歓の夢みるによき高さかな 大串章「山童記」
花散るや夢の吉野に遊びをり 吉田鴻司
花散るや瑠璃の凝りたる夢の淵 阿波野青畝
花栗や夢のなごりの盗汗拭く 福永耕二
花栗や爪先立ちて夢の道 磯貝碧蹄館
花満ちて枝々撓ふ朝ざくら目覚めの夢に見し露けさよ 筏井嘉一
花種の袋をえらび夢えらぶ 円谷よし子
花胡瓜次々咲いて夢ふふむ 熊倉陽子
花茣蓙に夢の短くきれにけり 鷲谷七菜子
花茣蓙に夢はこばるる昼下り 伊藤 文
花茣蓙に異郷の夢は見ずなりぬ 樋笠文
花茣蓙に見し夢にして継ぎ難し 齋藤愼爾
花茣蓙の夢の短くきれにけり 鷲谷七菜子 黄 炎
花茣蓙や奈落へ落ちし夢に覚め 檜紀代
花葵雨中に夢の像(かたち)見て 藤田湘子(1926-)
花蓮咲くもとづるも夢寐のうち 文挟夫佐恵 雨 月
花鋏鳴る春暁の夢ふかし 金尾梅の門 古志の歌
花騒はあさき夢騒よせかへし 平井照敏 天上大風
花鳥もおもへば夢の一字かな 成美
花鳥風月虫を加へて夢うつつ 手塚美佐
若き日の夢たたみたる古浴衣 細井喜美江
若竹や故人しきりに夢に入る 会津八一
苫船や夢に時雨るゝ八幡山 松岡青蘿
英語教師辞めて夢なき味噌をはかる 藤後左右
苺摘み篭にいっぱい夢も摘む 矢野文子
茂る夢咲く夢も見る砂漠の木 津田清子
茅花流し三叉に組みし銃の夢 横田あつゆき
茶の花や夢の亡き夫うしろ向き 関戸靖子
茸山にひるからの雨残夢冷ゆ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
草いきれ物みな夢の途中なり 山田真砂年
草かげろふいつよりぞわが夢あはき 根岸善雄
草の上に夢はらむらし唐鵐(カラシトド) 日夏耿之介 婆羅門俳諧
草原のごと海の展けし秋の夢 阿部みどり女 月下美人
草枕小春は替へむ夢もなし 水原秋櫻子
草枯や一夢と消えし都の灯 石井露月
草涼し夢は輓馬の音に覚め 河野多希女 こころの鷹
草矢ヒューヒュー刺す夢のモトクロス 菊川貞夫
草笛は夢売るひとが吹くならむ 鈴木榮子(春燈)
草餅を夢みてや笑む覚めであれ 比叡 野村泊月
菊人形一睡の夢持ち給へ 河野多希女
菊冷えや夢のごとくに遺影あり 森下 都
菊枕かるくたたいて夢違へ 櫛原希伊子
菊枕してなにほどの夢や見し 吉田汀史
菊枕して極彩の夢を見し 七里みさを
菊枕二つ重ねて夢もなし 手塚美佐 昔の香
菊枕夢に続きといふことなし 藤谷令子
菊枕夢も通へるものとして 高田美恵女
菊畑や夢に彳(たたず)むむ八日の夜 千代尼
菜の花の黄の旅の夜の夢にまで 成瀬正俊
菩提樹に花咲き同じ夢を見る 飯島晴子「朱田」
萍蓬(こうほね)の水踏んでいる夢のつづき 渋谷道
萍蓬の水踏んでいる夢のつづき 澁谷道
萩揺れて夢にもかすり傷すこし 糸屋和恵
落し文開きて捨てる夢一つ 安斉君子
落ちのこる木の葉は満員電車の夢 しらいししずみ
落栗や藁屋の夢も醒る程 太無
落葉掃く音に覚めゐて夢を出ず 三橋 迪子
葉月 蛇ごろしまず蛇の夢みつくして 宇多喜代子
葉生姜に夢の続きの怒りあり 鈴木鷹夫 渚通り
葛湯飲みある夜は花鳥夢に見る 村越化石
葡萄醗酵夢のつづきにゐるごとし 村越化石 山國抄
葱きざむ還りて夢は継ぎがたし 澄雄
葱の世に夢を作りてさびしさよ 齋藤愼爾
葱抜くや春の不思議な夢の後 飯田龍太(1920-)
葱煮るや還りて夢は継ぎ難し 森澄雄 雪櫟
蒼天の夢を淋漓と筆始め すずき波浪
蓋をしてさざえの夢は水の夢 ジャック・スタム
蓮さいて親子は夢のわかれ哉 中勘助
蓮の実が飛ぶ女から夢が飛ぶ 布施伊夜子
蕗の薹ほどの夢もち甲陽忌 村越化石 山國抄
薄き蒲団に誠の母を夢みけり 竹村秋竹
薄明の夢のすさびや雁渡る 鈴木慶子
薄氷と水の間の夢ごこち 折井博子
薄氷も夢やそよそよ秘晩年 永田耕衣 殺佛
薄氷や夢にも夫の来ずなりし 村上光子
薫風に膝たゞすさへ夢なれや 石橋秀野
藁塚や闇に寝返る夢ひとつ 河原枇杷男 流灌頂
藁塚裏の陽中夢みる次男たち 福田甲子雄
藪入りの夢や小豆の煮える中 蕪村
藻のごとく眠り夢にもさみだるる 鍵和田[ゆう]子「光陰」
藻を落つる金魚の夢や時鳥 雑草 長谷川零餘子
蘭五千鉢の匂ひて夢心地 後藤弘子
虎河豚のはだらの黄色夢に来し 軽部烏頭子
虚子の忌や夢にこどもの頃の家 小林貴子
虚空へと夢ひとつ置く凌霄花 稲辺美津
虫の声金魚の夢にこぞりけり 道芝 久保田万太郎
虫の夜の二段ベツドに夢ふたつ 満田春日
虫の闇はげしき夢を見しあとも 仙田洋子 雲は王冠
虫吐きし夢と香炉に明易き 宮武寒々 朱卓
虹の空鮮かにして冬の夢 阿部みどり女
蚊ばしらに夢の浮橋かかるなり 宝井其角
蚊帳吊つてみるふるさとの夢ばかり 金尾梅の門 古志の歌
蚊柱に夢の浮はしかゝる也 榎本其角
蚊遣香匂ふは夢のさめしなり 白岩 三郎
蚤と寝て襤褸追放の夢ばかり 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
蚤逃げし灯の下に夢追ひ坐る女かな 島村元句集
蚯蚓のこゑで泣きてこの夜の夢終る 小檜山繁子
蛇になる夢の廣野の若葉哉 会津八一
蛇に逢ふ夢やさましてなく蛙 立花北枝
蛍火を夢の続きに持ち帰る 大橋麻沙子(俳句研究)
蛤の夢に雀のころの磯 上田五千石 琥珀
蛸壷やはかなき夢を夏の月 芭蕉「笈の小文」
蜆汁母在りし世を夢かとも 三森鉄治
蜆汁煮ゆるや夢に藤の花 松瀬青々
蜘蛛の囲に夢の白玉明け易き 寺田寅彦
蜩や御夢さめし北の窓 山崎斌 竹青集
蜻蛉の夢や幾度杭の先 漱石
蝉穴に残夢整理の水注ぐ 流ひさし
蝌蚪の尾の黝きを夢のつづきとす 小浜杜子男
蝶しばし舞ふや翁の夢の上 蝶 正岡子規
蝶のむれ胸でわけゆく我も夢か 河原枇杷男
蝶鳥の夢や見つらん菜種蒔 樗良
螢の香ありて夢よりさめしかな 松瀬青々
蟇の貌チブス患者の夢にくる 藤後左右
血を吐けば現も夢も冴え返る 宮部寸七翁
行き果ての夢山脈よ行き果てず 折笠美秋 君なら蝶に
行く雁の聲の一つが夢ならず(長男の死四句) 内藤吐天
街劫暑夢をもち得ぬ人歩めり 片山桃史 北方兵團
衝羽根のひとつ落ちたる夢の淵 森田智子
裏白や野山歩きし今朝の夢 滝井孝作 浮寝鳥
襲はるる夢のかしらの野駒鳥かな 卯七 俳諧撰集「有磯海」
西日中大戦の夢焔なす 石原八束 『秋風琴』
西瓜より真桑に夢はありにけり 石塚友二
見し夢の数ほど落ちてのうぜん花 石田勝彦 秋興
見し夢を忘れかねつつ髢草 中尾寿美子
見をさめの貌はわすれず夢の秋 立花北枝
見残した胡蝶の夢や遅桜 胡蝶 正岡子規
見舞はねば夢に来る夫星祭 石田あき子 見舞籠
覚めぎはの夢のあはさの冬牡丹 田中英子
覚めてまた見る夢ひとつ眠り草 西川良子
覚めて夢眠りて宇陀の大桜 橋本榮治 逆旅
覚めて春夢泪ぞ沁める枕あり 石塚友二 光塵
覚めて見る夢もありけり花の山 川崎柊花
覚めて追ふ夢に色なし冬の旅 川村紫陽
覚醒につながる夢の花野かな 矢羽勝幸
親と子の夢ふくらます一の富 小砂見曙美
観ずれば涼しき夢のうき世哉 涼し 正岡子規
角切られ夢から醒めし如くをり 江川虹村
角巻の雪をおとして夢の母 村谷龍四郎
読み了へしその夜の夢の落花かな 岩田由美 夏安
誰が夢の骸骨こゝに枯芒 枯薄 正岡子規
誰が魂の夢をさくらん合歓の花 合歓の花 正岡子規
誰も知らぬ夢へ漕ぎ出す釣舟草 柳澤杏子
諸歯落つ夢あはれ湯婆蹴りたるか 石塚友二 方寸虚実
谷冷えの紅葉せかるる夢が淵 原裕 『出雲』
豆を撒く父の猫背を夢に見て 太田鴻村 穂国
貘枕子のよき夢をつゆ知らず 赤尾兜子
負ひし子も夢のお籠りお水取 赤松[ケイ]子
貧乏な夢がガツガツ露満国境の塹壕を掘つてしまつた 橋本夢道 無禮なる妻抄
赤子生みバンビの夢を見て汗す 八木三日女 紅 茸
走馬燈夢まぼろしに廻りけり 野村喜舟 小石川
走馬燈母の夢にも早瀬あり 齋藤愼爾
起抜にこがらし父の夢なりし 川崎展宏
足が出て夢も短き蒲団かな 太祗
足しびれて邯鄲の昼寐夢さめぬ 子規句集 虚子・碧梧桐選
身に沁みる風亡き人の夢も見ず 佐野美智
身に覚えなき夢に似て蝉の殻 鎌倉佐弓 水の十字架
身を責める夢木枯に吊さるる 石原八束 人とその影
軒つらら夢より長くならざりき 堤保徳
辣韮の夢は琥珀に瓶の中 青木梢「新山暦俳句歳時記」
逆巻ける怒濤立浪草の夢 後藤比奈夫 めんない千鳥
過ぎた夢まだ見ぬ夢の年の暮 山本均三
違ふ夢もつ人とゐて良夜かな 茅根和子
遠太鼓菖蒲は夢をこぼしたり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
遠河鹿 夢の切れ目をつなぎつつ 伊丹三樹彦 一存在
邯鄲の夢とも空をゆく火とも(盟友鈴木詮子逝く) 石原八束 『仮幻』以後
邯鄲の夢はじまりし水中花 橋田憲明
邯鄲の夢消え消えと明けを鳴く 文挾夫佐恵
邯鄲の夢路追ひ来て鳴きつづく 水原秋櫻子
郭公夢か現か耳穿鑿 濯耳 選集「板東太郎」
郭公夢路ぞふさぐ番大郎 味鶴 選集「板東太郎」
酒さめて楓橋の夢霜の鐘 霜 正岡子規
酔ふて寝て夢に泣きけり山桜 山桜 正岡子規
酔生と夢死の境の四月馬鹿 石原八束 『風信帖』
酔生も夢死もよかりし老の春 後藤比奈夫 めんない千鳥
醫師来て夢搖すらるる蝉の中 石川桂郎
重ね着て夢にやすやす現れぬ 大石悦子 百花
野の蜂や夢に夢継ぐ羽の色 永田耕衣 驢鳴集
野分より眠りに入りて夢多し 細見綾子 雉子
野外能夢つくしたり山ざくら 中山純子 沙 羅以後
野火迅し迅し老女の夢の奥 黒田杏子 花下草上
野茨の昼の夢なん花真白 原石鼎 花影以後
野遊びや夢のごときを手に手に持ち 河原枇杷男 蝶座 以後
金剛の杖受けし夢花野なか 原裕 『王城句帖』
金婚の夢となりたる初暦 武田道子
金屏の裡の泊りに父の夢 木村蕪城 寒泉
金木犀散り敷くなかの夢仏 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
金魚逆さまにちぐはぐな夢が続く 松本恭子
銀竜草夢の如くに立つ夜明 長谷川久代
鏡なすとは小春日の夢の淵 茨木和生 往馬
長き夜のまたもさびしき夢を見る 仙田洋子 雲は王冠
長き夜の夢の浮橋絶えてけり 夜長 正岡子規
長き夜や夢にひろひし二貫文 夜長 正岡子規
長き夜を夢恐ろしく悩みけり 会津八一
長き夢みたる朝のまくわうり 清水径子
長安の夢のつづきの赤蕪 原田喬
開帳の夢殿夢もかい間見ぬ 井沢正江 湖の伝説
間引菜のほとりに夢を見たるのみ 徳弘純
間引菜は夢の重みといふべかり 宮坂静生
関ケ原げんげ田夢のごとくあり 山口超心鬼
陶枕に夢の出てゆく穴ふみつ 中原道夫
陶枕や呉須の七賢夢に出よ 秋田卯子
陽炎の夢をつなぐか須磨の花 松岡青蘿
隙間風ちゝはゝの夢吾子の夢 相馬遷子 山國
障子貼り替へたる夢の明るさは 岡部名保子
雀子のもの喰夢か夜のこゑ 松岡青蘿
雁鳴くと聞えしは夢妻病めり(十年越し入院を繰り返す家人を看取る) 石原八束 『黒凍みの道』
雌滝雄滝夢窓国師の創りたる 瀧 春一
雑に置き米塩の類夢の類 大木石子
雑魚寝布団夢の豺狼越え歩く 高田蝶衣
雙六や盧生の夢のふりあがり 双六 正岡子規
雛の灯にあかるき夢の一間かな 中川宋淵 詩龕
雛の間に寝て夢の国あをからむ 中拓夫
雛芥子の真昼うたたね夢ノ介 高澤良一 鳩信
離れ住む子の夢をみて茄子の紺 廣瀬町子
雨に寐て夢にはれけり今日の月 今日の月 正岡子規
雨の日に身伸べて眠る獅子を見ぬ獅子の見る夢わが夢に来よ 来嶋靖生
雨ぽつりお玉杓子に夢なけむ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雨音はすでに夢路か宝船 水原秋桜子
雨魚(あまご)は夢にあり一ト月を病む 金子皆子
雪の山も見えて花野や夢ごころ 渡辺水巴
雪の木に抱かれていま夢うつつ 成澤たけし
雪の鴨ひとりの夢は醒め易し 荒川幸恵
雪ふらんとす夢のごとき葉はあり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪ふる夢ただ山中とおもふのみ 大野林火(1904-84)
雪中の死を夢に見ていさぎよし 能村登四郎 寒九
雪折やよし野ゝ夢のさめる時 蕪村 冬之部 ■ 題七歩詩
雪村の鯉にまたがりゐし夢か 高澤良一 ぱらりとせ
雪柳疎まねど母夢にも来ず 杉山岳陽 晩婚
雪積みぬ夢のかよひ路無きまでに 京極杞陽
雪蛍放つは夢を放つこと 鈴木多江子
雪起し夢千代像にひびきけり 岩崎照子
雪降りをり夢に故人の向うむき 松村武雄
雲の峰夢にもわきてかぎりなし 加藤楸邨
霧に寝て夢に漂ふ後の月 堀口星眠 火山灰の道
霧氷咲くカムイ夢みるときありて 成瀬桜桃子 風色
霧積の木綿とぶ夢水が見ゆ 和知喜八 同齢
露の秋茫茫と白き夢を見る 浅香甲陽
露の音して父の夢母のゆめ 石原舟月
露暗し夢さめぎはに父のゐて 鈴木鷹夫 渚通り
露月夜厠へ吾子の夢歩き 荒井正隆
露深しとぎれとぎれにみたる夢 久保田万太郎 流寓抄
露草や母は夢にも現われず 渡部郁子
露霜やもの言はざりし夢の母 本宮銑太郎
青あらし出家を夢む人あらむ 塚原麦生
青き踏む夢の誰彼若きかな 吉田鴻司
青写真少年の夢育ちをり 山田聴雨
青年波郷電気毛布の夢に出て 相馬遷子 山河
青柿や夢の数々捨ててきし 太田土男
青梅雨を眠りて夢に母の乳 鈴木鷹夫 風の祭
青空を飛ぶ夢うれし木の葉髪 原子公平
青芝や描きて以て白日夢 久保田万太郎
青葉して夢とうつつの切れ目なく 山本洋子
青蜥蜴巾着切りも夢を持つ 丸山嵐人
青螢夢のはなしをゆつくりと 岩崎宏介
青鬼灯ふくみ幼き夢戻る 川元安子
青鬼灯まことしやかに夢で死ぬ 寺井谷子
面白さ皆夢にせん宵の春 春の宵 正岡子規
順禮の夢をひやすや松の露 露 正岡子規
頬赤や夢まだのこる未明行 堀口星眠 営巣期
顔みせの難波のよるは夢なれや 炭 太祇 太祇句選後篇
風船の弾けさう夢こはれさう 押谷 隆
風花や夢のをはりに日が当り 山口和夫
風花や赤子の指の夢に舞ふ かたぎり夏実
風邪に寝て夢の明恵をさづかりし 酒井和子
風邪の夢さめて外套壁に垂る 岸風三楼 往来
風邪の夢髣髴として冥土あり 吉武月二郎句集
風邪熱のあやつる夢の蝶真赤 上村占魚 『自門』
風邪熱の夢にむらがる赤き蝶 上村占魚 『自門』
風鈴の音より始まる夢路かな たまき弘子
飛び下りた夢も見る也不二詣 富士詣 正岡子規
飛ぶ夢に羽ひらく蝶標本室 向井弘子
飛ぶ夢をみたし飛魚食べにけり 杉浦範昌(岳)
飛ぶ夢を見るのはいつも月曜日 山戸則江
飛燕あれは夢に落下の花鋏 市野記余子
飯蛸をつかめば夢のごと逃ぐる 澤本三乗
餅ふくれ苦しき夢を見たりけり 佐々木六戈 百韻反故 初學
餅を夢に折り結ぶ歯朶の草枕 松尾芭蕉
餅焼くや行方不明の夢ひとつ 折笠美秋 虎嘯記
馬に寝て残夢月遠し茶の煙 芭蕉
馬上眠からんとして残夢残月茶の煙 松尾芭蕉
馬上落ちんとして残夢残月茶の煙 松尾芭蕉
馬追のひとつはげしく夢の縁 坂巻純子
馬酔木咲く向うで欠伸夢の僧 金子兜太 詩經國風
駈け巡る夢のほとりに枯尾花 高澤良一 燕音
驚き易き征旅の夢や雁の聲 寺田寅彦
骨の犬薄に夢の月が出て 和知喜八 同齢
高熱の夢にうなされ蛾の紅眼 加藤かけい
髪抜けし夢ありつたけの布団干す 吉田紫乃
鬣ふる夢に紅花一駄負い 澁谷道
魚になる夢に目覚めてなほ寒し 辻美奈子
魚の夢に青く染まりし初明り 大島雅美
魚影や夢にも澄める滑川 石川桂郎 四温
鮟鱇の夢みる眼はづされし 綾部仁喜 寒木
鮮やかに寝茣蓙の夢の残りけり 砂田貴美子
鯉の見る夢の知りたき朧かな 大串章
鯊釣の夢おもしろく揺られけり 中尾白雨 中尾白雨句集
鰊群来叫びし父の夢に覚む 加藤未英
鰯雲幾山川の夢の跡 新谷ひろし
鱈の夢遠国に日をすごし過ぎ 飴山實 辛酉小雪
鳥の巣か軒端ことこと夢うつつ 中保 郁子
鳥も犬もよき夢をみよ銀河美し 工藤克巳
鳥交る夢のつづきの雑木山 瀬戸美代子
鳥帰る夢のあとさき田が濡れて 藤田三郎
鳩の背を撫でゐし夢よ熱帯夜 横山白虹
鳴く千鳥幾夜明石の夢おどろく 其角
鳴く山羊に寝床を起きて行く妻や夢のつづきの如きこがらし 近藤芳美
鴬の一度きりなる夢に入る 阿部みどり女 月下美人
鴬の啼く音悲しと夢に見し 尾崎紅葉
鶏林のまひるの夢に棉吹けり 文挟夫佐恵 遠い橋
鶏頭の木になる夢を捨てきれず 大串章 百鳥 以後
鶯にとぎれし夢をつがんとす 福田蓼汀 山火
鶯の一度きりなる夢に入る 阿部みどり女 『月下美人』
鶯や夢のつづきの中に聞く 阿部みどり女
鶴かうかうと夢を横ぎれりけさの秋 中勘助
鶴の舞ひ見し夜の夢も舞ひにけり 林佑子
鷺草の寝ね難ければ夢に飛ぶ 佐藤恭治
鹿を逐ふ夏野の夢路草茂る 鹿 正岡子規
鹿垣も夢前川をさかのぼる 加藤三七子
麦笛のしらべむかしの夢かへり 石塚友二 方寸虚実
麦藁帽馬に食はれし夢を見る 古畑京子
黄土ゆく夢よりさめし日射病 井上子
黄沙降る少年の夢語れ語れ 今井豊
黄砂降る華北のいくさ夢にみる 筒木真一
黒板と靴下同じ夢を見き 攝津幸彦
●夢見(る) 
あけがたのあさき夢見しほととぎす 松本可南
あしかびや雁が夢見の奥淡海 岸田稚魚
いやな夢見た朝の爪をきる 山頭火
いろいろの夢見て夏の一夜哉 夏の夜 正岡子規
おのが子の夢見てさめぬ泊り山 泊り山 正岡子規
くちなはの夢見て伸ぶる黒髪か 黛執
さかさまに何の夢見る草の蝶 蝶 正岡子規
さまざまの夢見て夏の一夜哉 夏の夜 正岡子規
すかんぽや夢見る頃の空の色 櫛原希伊子
たらちねの母を夢見の柚子の花 望月精光
つきまとふ眞晝の夢見松の芯 渋谷道
とことはに夢見る眼なり雪しんしん 林原耒井 蜩
なめくぢの夢見て脱ぐや蛇の皮 蛇の衣 正岡子規
なめくぢり夢見心地に溶けゆけり 宮坂静生 春の鹿
なんの夢見て咲き出でし花芙蓉 平手むつ子
また道に迷ふ夢見て夜の長し 中嶋秀子
エジプトの夢見ていつも山茶花散る 攝津幸彦
ヒヤシンスひとりつきりは夢見がち 鎌倉佐弓
一睡の夢見や伊勢のいかのぼり 高柳重信
世の中の夢は夢見る胡蝶哉 胡蝶 正岡子規
仏頭の墜ちる夢見し冬隣 鈴木鷹夫 春の門
仏頭の夢見て朝の寒さかな 和田悟朗
仰向き寝るは夢見るすがた雲の峰 宮津昭彦
余生いま夢見にも似る菊膾 谷内茂
冬蝶の夢見むとゐる伽藍かな 藤田湘子
千号を夢見て逝かれ黄泉の春 深川正一郎
卯月の夜夢見むための身の眠り 村越化石
即仏を夢見る如し涅槃像 塩谷華園
合歓咲いて蓮咲いて余呉夢見ごろ 林 翔
同じ夢見しかに鵜飼終はりけり 藤田さち子
同じ夢見ててゆるるや二輪草 久留和子
囀りやけさの夢見の井戸はこれ 鳴戸奈菜
夏蝶の夢見る状に翅うごく 今井竜蝦
夢に夢見て蒲団の外に出す腕よ 桑原三郎 花表
夢見がち覚めがち蟲の音が囲む 及川貞 夕焼
夢見ざる枕まつ白ほととぎす 岩永佐保
夢見ざる眠りまつくら神の旅 小川軽舟
夢見よく覚め陶枕の彼方なる 千田百里
夢見るか夢見しあとか冬蕨 青柳志解樹
夢見るはほたる袋の腕の中 安藤登免代
夢見茣蓙巻きかかえねば失せやすき 澁谷道
大き夢見てゐる山のよく眠る 三宅 桂
大晦日馬に追はるゝ夢見たり 大晦日 正岡子規
小豆干し峡を出る夢見ずなりし 清水径子
少年の如し夢見て日記買ふ 高石高平
幼子の金魚に化けたる夢見たり 谷活東
引入て夢見顔也かたつぶり 炭 太祇 太祇句選
御姿は夢見たまへる衾かな 衾 正岡子規
恐ろしき夢見て夏の夜は明ぬ 夏の夜 正岡子規
悪しき夢見ること多しフロイト忌 興津知明
春の夜の夢見て咲や帰花 千代尼
春の夜や何の夢見て蝶一つ 春の夜 正岡子規
春の虹旅を夢見る子と仰ぐ 堀口星眠
春富士に夢見心地の道祖神 小野宏文
春暁やあさき夢見し夢の中 草間時彦
春燈下正座して夢見ておりぬ 原子公平
春風や何の夢見る朽柳 春風 正岡子規
昭和夢見し少年倶楽都鳥渡る 高橋康菴
暑き夜や夢見つゝ夢作りつゝ 相馬遷子 山河
月明かく夢見る如き除夜なりき 相生垣瓜人 微茫集
朧夜の鶏が夢見る白世界 能村研三 騎士
桜よりあはし会津の夢見蕎麦 橋本榮治 越在
極楽の夢見て覚むる夜長かな 折井愚哉
極楽寺百日紅の夢見時 高澤良一 さざなみやつこ
母の夢見し朝風鈴吊しけり 前橋春菜
母の夢見て霜焼の耳がかゆい 木下十三
毛ふとんやこわい夢見る後夜鐘 涼莵
毛蒲団やこわい夢見る後夜の鐘 涼菟
水風呂に夢見る朧月夜かな 支考
氷下海(かんかい)は夢見るごとく釣られける 齋藤玄 『狩眼』
泊り山夢見る雉の声すなり 雉 正岡子規
浮寝鳥宇治十帖を夢見るや 鈴木鷹夫 千年
父の夢見て母を訪ふ木守柿 中村甚一
猟人の夢見て鹿の角落す 鹿の角落 正岡子規
王朝の夢見る月の牡丹かな 小川原嘘帥
産湯して嬰は夢見の初笑 杉本和子
百年千年夢見て青き冬景色 寺井谷子
目の見えぬ夢見て泣けり霜の中 照敏
秋の雷汝の夢見し悔しさよ 鳴戸奈菜
笑み涼し何を夢見て赤ん坊 高澤良一 素抱
簾のゆるる明暗昼を夢見をり 宮津昭彦
籠枕浅き夢見ず酔ひもせず 南 英四郎
花ほつほつ夢見のさくらしだれけり 大野林火
花合歓の夢見るによき高さかな 大串章 山童記
花辛夷夢見れば亡き子に逢へる 根岸 善雄
芽柳の夢見るための眠りかな 野澤節子
薔薇咲かせ園芸家をわが夢見し日 伊東宏晃
藁塚裏の陽中夢見る次男たち 福田甲子雄
蝶々や何を夢見て羽づかひ 千代尼
蟇のしづかさ次の一歩を夢見るやう 加藤楸邨
蟷螂の夢見て逃げる胡蝶かな 如行 二 月 月別句集「韻塞」
衰へし夢見に鹿を死なしむる 高柳重信
西方を少し夢見の白日傘 鈴木鷹夫 大津絵
足袋はいて寝る夜ものうき夢見哉 蕪村 冬之部 ■ 御火焚といふ題にて
身動きも夢見ごころや寒の鯉 森澄雄 四遠
遼東の夢見てさめる湯婆哉 たんぽ 正岡子規
郭公何の夢見る陰陽師 時鳥 正岡子規
野牡丹を夢見顔して捧げきし 澁谷道「鴇草紙」
金屏に夢見て遊ぶ師走かな 支考
阿蘇銀河など病床に夢見ては 藤崎久を
雪のせて古巣は去年の夢見をり 堀口星眠 営巣期
雪の夜の夢見るものに海鼠かな 高橋睦郎 稽古飲食
雪明り死者は夢見ることありや 折笠美秋 死出の衣は
霊園に詣る夢見て秋の昼 阿部みどり女 月下美人
面白い夢見る顔やねはん像 鳥酔
鷺草の風出て夢見心地なる 柿谷房子(曲水)
麗しき夢見てをらむ残る鴛鴦 堀口星眠 営巣期
麦鶉猫の夢見て鳴きにけり 麦鶉 正岡子規
麻布団あをあしはらの夢見たり 山田みづえ
龍の夢見て日高見国の冬蝗 高野ムツオ
●夢叶う 
段々に夢叶ふらし朝寝など 殿村菟絲子 『菟絲』
●夢を描く 
初空に心の筆で夢と描き 西村 恵
天の川児の描く夢の宇宙船 本多菊枝
青芝や描きて以て白日夢 久保田万太郎
夢ゑがき臥す夜を匂ふ冬薔薇 古賀まり子 洗 禮
●夢はたす
●夢破る 
目を張りて寒木瓜と逢ふ夢破れ 加藤楸邨
笹鳴のしばなくこゑに夢やぶれ 中尾白雨 中尾白雨句集
ぬかご落つ土塊は夢破られて 河野多希女 月沙漠
●ドリーム
●夢現 ゆめうつつ 
冬晴れや次ぐ訪客にゆめうつつ 飯田蛇笏 山廬集
百本の桔梗束ねしゆめうつつ 藤田湘子
花鳥風月虫を加へてゆめうつつ 手塚美佐 昔の香
雪積むを見てゐる甕のゆめうつつ 斎藤玄 雁道
風花に松一本のゆめうつつ 鈴木鷹夫 春の門
凍蝶のはつと翔ちたる夢うつつ 山本歩禅
星空ゆく屋台提灯夢うつつ 高澤良一 素抱
春立つや醪に櫂の夢うつつ 宮坂静生
春雷に一瞬目覚夢うつつ 太田富美子
花鳥風月虫を加へて夢うつつ 手塚美佐
雪の木に抱かれていま夢うつつ 成澤たけし
鳥の巣か軒端ことこと夢うつつ 中保 郁子
●正(まさ)夢 
正夢のローマの町よ新樹光 今泉貞鳳
蝶飛んで正夢となる日向婆 原裕 青垣
正夢の加之(しかのみならず)初氷 池田澄子 たましいの話
●逆夢
●悪夢 
ひるがおの中の一つは悪夢なり 津沢マサ子 空の季節
七夕や生くる限りは悪夢憑く 石塚友二 光塵
八重くちなし濡るる重さや悪夢あと 鍵和田[ゆう]子 未来図
冬麗悪夢醒めずに笑ひをり 仙田洋子 橋のあなたに
凌霄花よべの悪夢のひそむかに 鍵和田[ゆう]子 浮標
初夢のあまり美事に悪夢なる 山田みづえ
夢といへば必ず悪夢花八ツ手 細川加賀 生身魂
寒雷や悪夢見てゐる人を見る 仙田洋子 橋のあなたに
悪夢から醒めて柳のわたがとぶ 駿河妙子
悪夢醒めて干柿一つ食んでをり 仙田洋子 橋のあなたに
拳で叩く枯木悪夢の昨夜無し 小宮山遠
春泥の道を悪夢のつづきかと 上田五千石 田園
木槿白し悪夢にからめられし夜も 仙田洋子 雲は王冠
籐寝椅子悪夢に髪を挟まれる 蔦 悦子
長き夜の悪夢驚きて鼠落つ 夜長 正岡子規
青春は悪夢に似たり*たらの花 角田双柿
●夢占い 
夢占や虫の髭ふる夏布団 丸山海道
夢占や石槨の草刈り残し 宮坂静生 樹下
夢占のいとぐちのなきおぼろかな 大石悦子 群萌
●夢物語
●夢心地 
蘭五千鉢の匂ひて夢心地 後藤弘子
何の目標もない露満国境へぼこぼこ倒れる夢心地の日も 橋本夢道
夢心地して小夜の中山桜かな 鈴木鷹夫 大津絵
水餅の夢心地なる水を替ふ 宮崎安子
薄氷と水の間の夢ごこち 折井博子
●白昼夢 
あやとりの指先崩れ白昼夢 玖保律子
光陰の束をとらへし白昼夢 谷 芙蓉
凍蝶のふと翅つかふ白昼夢 野澤節子 遠い橋
枇杷熟す十七歳の白昼夢 玉乃井明
白昼夢見てをる雛もありぬべし 土屋秀穂
緑愁にからまれている白昼夢 高橋三樹雄
老人の白昼夢見る夾竹桃 斉藤 節
若かりし日の白昼夢桐の花 木下夕爾「遠雷」
落椿ほどの深淵白昼夢 高澤晶子
藤波のしづむ明りの白昼夢 石原八束 空の渚
連翹の黄に溺れゐる白昼夢 岡 澄子
頬杖の頬冷えてやむ白昼夢 仙田洋子 橋のあなたに
●白日夢 
青芝や描きて以て白日夢 久保田万太郎
蝶に蝶巌に波飛ぶ白日夢 林翔 和紙
白日夢吐息蜥蜴は眉持たず 河野多希女 両手は湖
白日夢とは星草の揺るるさま 長谷川久々子
●夢魔 
毛糸編む編めば夢魔来てすわりをり 仙田洋子 橋のあなたに
綿虫をはらふは夢魔をはらふごと 仙田洋子 橋のあなたに
虎落笛夢魔にどんぐりまなこあり 仙田洋子 橋のあなたに
●夢幻 
はや吊りて夢幻のおもひ高燈籠 飯田蛇笏
井戸の辺の夢幻(ゆめ)にうつくしからぬもの 宇多喜代子
八千草に睡れば夢幻限りなし 鈴木鷹夫 大津絵
夢幻さてはう筒の花火かな 惟中
春雪を灯す祭りの夢幻なる 鳥居おさむ
●夢枕 
ヒマラヤの星の 真下の 夢枕 伊丹三樹彦
三椏が咲いてきのふの夢枕 手塚美佐 昔の香
髪なびき/霜夜/夜ごとの/夢枕 折笠美秋 火傅書
●夢路 
その人の夢路も花の明りかな 辰下 俳諧撰集玉藻集
寝て夢路起きて枯野路行くもひとり 福田蓼汀 秋風挽歌
小いびきにはや乗る夢路宝船 井沢正江
年越の夢路にさへや老の坂 風虎
播磨枕夢路の尾上桜もかな 調鶴 選集「板東太郎」
春秋と移る夢路や雁の声 松岡青蘿
昼寝して夢路に夏はなかりけり 昼寝 正岡子規
棚橋や夢路をたどる蕎麦の花 山口素堂
竹の穂はむかしの馬の夢路かな 上島鬼貫
邯鄲の夢路追ひ来て鳴きつづく 水原秋櫻子
郭公夢路ぞふさぐ番大郎 味鶴 選集「板東太郎」
雨音はすでに夢路か宝船 水原秋桜子
風鈴の音より始まる夢路かな たまき弘子
鹿を逐ふ夏野の夢路草茂る 鹿 正岡子規
●幻 まぼろし 
ありありと秋幻が城に棲めり 阿部完市 無帽
いづこまで追ひゆく残花また幻花 小泉八重子
かき氷哀し 風紋の変幻に 伊丹公子 時間紀行
かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 大西民子
この一路幻住庵へ末枯るゝ 菅裸馬
ひとふさの葡萄食べ合いし幻を愛せり醜く種を吐きつつ 小久保泉
めらめらと幻が過ぐ鵜舟すぐ 鈴木鷹夫 大津絵
わが詩(うた)の仮幻に消ゆる胡沙の秋 石原八束(1919-98)
イタリア移民へ 帆の幻の 晩餐会 伊丹公子 パースの秋
ビール馬車幻と過ぎ石畳 楠本憲吉
一炉けぶる幻住庵や夏の雨 露月句集 石井露月
仮幻忌の海市を追ふや駱駝の背 白井眞貫
仮幻忌や蓮あらしの青こだま 佐怒賀正美
共に泳ぐ幻の鱶僕のやうに 三橋敏雄「まぼろしの鱶」
冬ざくら世を幻と思ふ日も 吉村ひさ志
冬の草幻住庵をおとなへば 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
冬日向ひたひたみたす幻肢痛 わたなべじゅんこ
千屈菜に雲の変幻かぎりなし 福田蓼汀
卯の花を幻と見し月夜かな 皆川白陀
命終にくる幻の瀧あらむ 松崎 豊
地を蔽ふこの幻を霧と呼べ 多田智満子
夏の椎幻住庵に雨の音 児玉輝代
夏木立幻住庵はなかりけり 正岡子規
夏花買ふ幻住庵址に紅點ぜん 中村草田男
夕焼の吾も変幻の影曳きぬ 古舘曹人 砂の音
大幹は梅雨の幻月断ちにけり 阿部みどり女
天心に幻日かゝげ寒桜 上野和子
天界やさらに幻(く)らきが雪乳房 折笠美秋 虎嘯記
天馬棲む幻岳月に浮びけり 福田蓼汀 秋風挽歌
寒月に幻の影懸り失せにけり 池内友次郎 結婚まで
小春日を去るは幻になりてゆく 斎藤玄 雁道
小鳥来る幻住庵の深庇 田島和生
幻が傘の雫を切つてをり 真鍋呉夫
幻とならぬ記憶が大枯野 本城佐和
幻に建つ都府楼や菜種梅雨 野村喜舟
幻に白帆の満てるさくらかな 加倉井秋を 『隠愛』
幻に綿取ベッドタウン晴 千田稲人
幻のかたちとこそ見ゆ霞草 齋藤愼爾
幻のごとし白菜漬け終り 北原志満子
幻のごと落ち梅雨の俄滝 岩崎緑雨
幻のごと雪照らふ天塩岳 古賀まり子 緑の野以後
幻のさざえにおはす佛かな 中勘助
幻のひとつ休らふ大銀杏 攝津幸彦
幻のまぶたにかへる春の闇(二月十二日夫逝く) 阿部みどり女 『笹鳴』
幻のオスマン軍鼓寒波呼ぶ 山下佳子
幻のサイゴンに水賣女がゐし 筑紫磐井 花鳥諷詠
幻の土に巻尺きりぎりす 百合山羽公 寒雁
幻の女(ひと)とゆく夜の花八ツ手 横山白虹
幻の如き速さの鷹を愛す 倉田素香
幻の如く夜を咲き烏瓜 秋月澄女
幻の師は外套のうしろ姿 八木三日女
幻の平等院やきりぎりす 川崎展宏
幻の書に執しゐて雪二日 原裕 青垣
幻の松に凭たれし日永かな 高木智恵子
幻の母来て 屈む 鴨の岸 伊丹三樹彦
幻の添水見えける茂りかな 泉鏡花
幻の狐の耳のはつきりと 橋本鶏二
幻の砲車を曳いて馬はれ 富澤赤黄男
幻の縁に蜉蝣とまりをり 斎藤玄
幻の花降りつつむ去年今年 原裕 青垣
幻の西施や雨の蓮浄土 山下佳子
幻の過ぐるは速き波の花 前田正治
幻の邪馬台国の春日落つ 松尾立石
幻の黒き人馬に霾降れり 小松崎爽青
幻はまつぶさに見よ揚雲雀 仙田洋子
幻もあるべし梅雨の蝶殖えぬ 相生垣瓜人 明治草抄
幻やつかめば螢ひたい帋(がみ) 言水
幻や吉丁虫は母と逝き 渡辺やす子
幻を啣へ砂丘の夏がらす 百合山羽公 寒雁
幻世の空の道ゆく観世音 富岡和秀
幻光孩子昭泡孩子野菊村 伊藤いと子
幻化の呼吸 整う 月下の人形師 伊丹公子 ガルーダ
幻日を見し夜の銀河島に濃し 野見山朱鳥
幻月や逃げる狐がふり向きぬ 市場基巳
幻氷に駈くればオホーツク海消ゆる 秋本敦子
幻氷のせまりくる日の座礁船 石原八束
幻氷は沖に知床晴れ渡る 安田竜生
幻氷やこぼして白き粉ぐすり 坂井とみ子
幻氷や我が身も沖にあらば見ゆ 深谷雄大
幻氷や空のさざめきいつ消えし 深谷雄大
幻氷や貝の鈴鳴る紙鋏 坂井とみ子
幻生の長塚節の凌霄花(茨城県石下町国生(こくしよう)) 石原八束 『断腸花』
幻談に燭して修す露伴の忌 橋本鶏二
引金自在に 幻二十日のぽるかを踊る 星永文夫
心竹の幻ならず露けき日 桑田青虎
春の鹿幻を見て立ちにけり 藤田湘子(1926-)
月の幻月の幻吾を捉ふ 京極杞陽
来し方は幻に似て温め酒 伊東宏晃
歓声の幻コロツセオの夏 水田むつみ
武運長久といふ幻や敗戦日 田中聖夫
氷面の幻となり吹かれゐし 松澤昭 神立
満潮の変幻真夜の瞳にも巻く 稲垣きくの 牡 丹
滅びたる朱鷺の幻ある刈田 星野紗一
火の阿蘇に幻日かかる花野かな 野見山朱鳥
炭火を見つめ亡児の幻に言触りつ 瀧春一 菜園
白き蛇幻住庵の土に入る 黒田杏子 花下草上
眼ひらけば幻消ゆるおぼろかな 阿部みどり女
短夜を幻の子と渓に寝し 福田蓼汀 秋風挽歌
秋の蚊を幻住庵の主とす 後藤比奈夫
空に鳥だけが残り幻のセールスマン 川崎三郎
紫陽花の変幻不在少年期 仁平勝 花盗人
紫雲英田に馬の幻尾を振りし 百合山羽公 寒雁
縞奇しき蛾や幻の舞踏会 下村ひろし 西陲集
肩に降るは椎の花とも幻住址 多田裕計
舞踏室に棲む幻の フリルと曲 伊丹公子 アーギライト
花桐の加賀は幻濃きところ 宮坂静生 春の鹿
苔咲きて幻住庵趾椎の雨 飯田蛇笏 雪峡
荒川鉄橋 幻のような富士をみた 泉喜代子
薺咲く幻住庵の茅の門 志賀松声
虚子御像幻ならず雛の灯に 桑田青虎
虫干や幻住庵の蓑と笠 土用干 正岡子規
蝶はうつつ幻の子を追うて飛ぶ 福田蓼汀 秋風挽歌
蟇ねむれ変幻の胃の粘膜も 成田千空 地霊
蟻を幻に土焚く匂ひ煤夕べ 安斎櫻[カイ]子
赤腹や幻のごと街はあり 徳弘純 麦のほとり
銀河茫々幻の子に逢ひに来し 福田蓼汀 秋風挽歌
雛市や幻の子を連れて見る 尾形不二子
雪霏々と全山白き幻に 鈴木りう三
青葉闇父の幻そこに冷ゆ 森澄雄
鮭が来たのは川の幻 猫柳 伊丹公子 沿海
いつよりの村のまぼろし氷雨の馬 北原志満子
いよ~に世のまぼろしや風邪の熱 尾崎迷堂 孤輪
うつそみをまぼろしといふ蜃気楼 岡本爽子
こしかたのゆめまぼろしの花野かな 久保田万太郎 流寓抄以後
さくら散る昼をまぼろし消えぬなり 林原耒井 蜩
しどみ咲く頃のまぼろし少年記 佐藤鬼房 潮海
そのひまの空はまぼろし辛夷咲く 井沢正江 晩蝉
ちちははが居るまぼろしの夕落葉 柴田白葉女
はくれんやまぼろしの子が支へをり 石原君代
はるかなるは有翼長女やまぼろし 阿部完市 軽のやまめ
ほととぎす非武装平和まぼろしか 鈴木 弘
まぼろしか翡翆見たる身のほてり 小向知枝
まぼろしか非ず夜天の雪の富士 山本歩禅
まぼろしがぺたんぱたんと古着市 攝津幸彦 鹿々集
まぼろしでありたき城を末枯に 篠田悌二郎
まぼろしとうつつを破りタチウオの銀鱗瞬時空をつらぬく おおのいさお
まぼろしと知り果つる世の炬燵かな 尾崎迷堂 孤輪
まぼろしと繋ぐ手濡れて除夜詣 岡本 眸
まぼろしと言うはやさしい白椿 大西泰世 世紀末の小町
まぼろしにはなれぬ花の旅寝かな 几董
まぼろしにわが墓みゆれ花の中 龍雨 (衰へは)
まぼろしに巴里こそみゆれ春しぐれ 久保田万太郎 流寓抄以後
まぼろしのあをあをと鯊死にゆけり 秋元不死男
まぼろしのいづこに住んで草の露 露 正岡子規
まぼろしのごとゐずなりぬ寒の蝶 久本澄子
まぼろしのご赦免の師よ霜のこゑ 広治 (角川源義先生逝去)
まぼろしのように 白馬がいく ごみ車がいく 吉岡禅寺洞
まぼろしの世に定型と月雪花 折笠美秋 君なら蝶に
まぼろしの兵馬か山の霞飛ぶ 高井北杜
まぼろしの国映ろへり石鹸玉 芝不器男
まぼろしの土竃夏冷えきはまれり 柴田白葉女
まぼろしの天つそらより降り来り我を責めつぐ雪かぎりなし 青田嘉一
まぼろしの夫の背めがけ雪礫 中嶋秀子
まぼろしの子をもとめゐし春の闇 柴田白葉女 遠い橋
まぼろしの宮跡大垣雲雀場ぐ 丘本風彦
まぼろしの少年を踏む花まつり 攝津幸彦 鹿々集
まぼろしの山に縋るか冬の蠅 橋石 和栲
まぼろしの川涸れるころ紐となる 津沢マサ子 空の季節
まぼろしの戦艦ゆけりさくら貝 白岩 三郎
まぼろしの旅人に蹤く草いきれ 上田五千石 琥珀
まぼろしの曽良の古道草茂る 手塚美佐 昔の香
まぼろしの母いつまでも菊を摘む 巻 良夫
まぼろしの水より生れしくれなゐの蜻蛉はけふ山をくだりぬ 武下奈々子
まぼろしの汽車通らしめ麦の秋 遠藤若狭男
まぼろしの清々軒と竹牀几 石川桂郎 四温
まぼろしの白き船ゆく牡丹雪 高柳重信
まぼろしの稲を育てゝ初神楽 矢島渚男
まぼろしの空母に種を蒔きゐたり 攝津幸彦 鹿々集
まぼろしの群裸は白き焔と燃ゆる 日野草城
まぼろしの芭蕉を追へる枯野かな 豊長みのる
まぼろしの花忘れめや蜀鳥 高井几董
まぼろしの花湧く花のさかりかな 上田五千石(1933-97)
まぼろしの藍ただよへり白菖蒲 草間時彦 櫻山
まぼろしの蝶生む夜の輪転機 寺井谷子(1944-)
まぼろしの角巻ゆけりかくのだて 橋本榮治 逆旅
まぼろしの軍馬過ぎるや稲の花 谷山花猿
まぼろしの酒をぬくめて良寛忌 菅沼義忠
まぼろしの鐵魚のはなし花の旅 石寒太 炎環
まぼろしの鱶が書斎を出てゆかぬ 池田澄子
まぼろしの鱶を放ちて私の湾 三橋孝子
まぼろしの鳥の訛の花畑 対馬康子 吾亦紅
まぼろしの鷹をゑがくや青伊吹 森澄雄
まぼろしの鷹を行かしめ杖に寄る 村越化石
まぼろしの鹿はしぐるるばかりなり 加藤楸邨(1905-93)
まぼろしの鹿も来哭くか年守る(加藤楸邨氏より句集『まぼろしの鹿』贈らる) 角川源義 『神々の宴』
まぼろしは白し虫声降るごとく 林原耒井 蜩
まぼろしもうつつも攫ひ花吹雪 岡田順子
まぼろしや土用芽現に胸突く径 赤城さかえ
まぼろしや秋風紬ぐ糸車 椎橋清翠
まぼろしを生みにまぎれし花野かな 仙田洋子 雲は王冠
みずいろのまぼろしが鳴る送水管 穴井太 土語
みづに浮く月のまぼろし蕭蕭と胡笛は母の界を透かせり 大滝貞一
カッパのまぼろしながる小狸藻 小川芋銭 芋銭子俳句と画跡
一瞬の青はまぼろし夜光虫 志摩知子「風の精」
亡き兄のまぼろし悲し秋のくれ 秋の暮 正岡子規
亡き吾子のまぼろしのこゑ耳をうつ蜻蛉を追ひて幼ならゆけば 木俣修
傍に母のまぼろし夕端居 清水沙久
僧兵駆け下るまぼろし葛の花 廣瀬直人
冬の陽に箒を立ててみなまぼろし 松岡貞子
冬木暮るゝやふとまぼろしに己が影 中島月笠 月笠句集
凍瀧を前まぼろしの龍くるか 百瀬美津
凩や君がまぼろし吹きちらす 凩 正岡子規
初夢に見しまぼろしや八達嶺 石寒太 炎環
千枚の紙裏返る沖はまぼろし 深谷守男
君ら征きしはまぼろし炎天のまぼろし 小枝秀穂女
大鳳蝶まぼろしとなる小督塚 柴田白葉女 雨 月
天空も崖もまぼろし氷り瀧 齋藤愼爾
天空も水もまぼろし残り鴨 鷲谷七菜子 花寂び
夾竹桃まぼろしの湖よぎり来て(万葉の布勢水海今はほろぶ) 角川源義 『西行の日』
姫の貌まぼろしを追ふ神楽かな 飯田蛇笏 霊芝
寒靄の中まぼろしの蔵王顕つ 堀井春一郎
少年や紫雪を浴びてまぼろしに 和田悟朗 法隆寺伝承
山大きいまぼろし拾ふほど悴かむ 松澤昭 父ら
山峡に稲の音あり秋まぼろし 金子兜太
山揺らす野火はまぼろし乳張れり 若林波留美
巡礼はまぼろしか棲み青秩父 河野多希女 両手は湖
師をまぼろしみな一癖の友さわやか 松村蒼石 雪
平成や大黒柱つとにまぼろし 柴田美代子
幽き壁夜々のまぼろし刻むべく 篠原鳳作
彼岸くる山まぼろしの極楽鳥 中山純子 沙羅
怖ろしき母子相姦のまぼろしはきりすとを抱く悲傷の手より 原妙子
戦禍まぼろし野を透く夜の閑古鳥 飯田龍太「童眸」
拝みしをまぼろしかとも秋の暮 水原秋櫻子
掛香にまぼろしの世も見んと坐す 井沢正江 晩蝉
揺椅子に母のまぼろし秋桜 山田弘子 螢川
敗戦のまぼろしかとも冬柳 下村ひろし 西陲集
春愁のまぼろしにたつ仏かな 飯田蛇笏 山廬集
春雨のわれまぼろしに近き身ぞ 正岡子規(1867-1903)
春風や義経芭蕉まぼろしに 鈴鹿野風呂 浜木綿
時の日やなほまぼろしの大津京 三嶋 隆英
時の舟のまぼろし瀬田の水ひかる 加藤太郎
月光の幽さ落葉はまぼろしか 柴田白葉女
朝がほや猶まぼろしの*かやひとへ 蓼太
朝顔やきのふの花をまぼろしに 渡邊水巴 富士
朧夜やまぼろし通ふ衣紋坂 朧夜 正岡子規
朴芽吹くまぼろしの相すでにもち 相葉有流
松柏目つぶりまぼろし目つぶり居り 阿部完市 春日朝歌
枯草に沈みむせびて師のまぼろし 柴田白葉女 『夕浪』
桑は実にまぼろしの馬通りたり 大井青草
梅千本古図の遊船まぼろしに 大東晶子
森くらくからまる綱を逃れのがれひとつまぼろしの吾の黒豹 近藤芳美
椎の香に漕ぐまぼろしのぶらんこよ 橋本美代子
流れ着く人はまぼろし鮎の川 村松彩石
淡墨の桜まぼろしならず散る 田畑美穂女
湖に沈む村のまぼろし薄紅葉 中拓夫
滝口に武士のまぼろし春鴉 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
火に穀象ほうれば出かせぎのまぼろし 駒走鷹志
煙突多きは船のまぼろしかもめどり 高柳重信
父母晩年雪まぼろしの刻と降る 深谷雄大
牡丹焚く百花千花をまぼろしに 鈴木真砂女
独活さげてまぼろしの父すれ違う 穴井太 天籟雑唱
生国やいまのまぼろし花水木 齋藤玄 『無畔』
甲冑の中のまぼろし黴深し 野見山朱鳥
白南風にかざしてまぼろし少女の掌 楠本憲吉
白毫の塔まぼろしに山時雨 小島千架子
白牡丹十歩退ればまぼろしに 渡辺恭子
白馬はまぼろし芝生なだれつつ 佐野良太 樫
白魚のまぼろしならず煮られけり 宇咲冬男
相逢ひて過去はまぼろし黒シヨール 柴田白葉女
秋の日の柩の小窓まぼろしに 松村蒼石
秋蝶のわがまぼろしの塔を過ぐ 石崎素秋
空へ出て山のまぼろし枯木見ゆ 和知喜八 同齢
糸車まはるまぼろし糸とんぼ 柴田白葉女 花寂び 以後
羽子板や子はまぼろしの隅田川 秋櫻子
聞うちにすゑまぼろしの水鶏哉 松岡青蘿
聞くうちにすゑまぼろしの水鶏かな 青蘿
胸の前黒蝶まぼろしのごとく過ぐ 柴田白葉女 『月の笛』
船絵馬のまぼろしとをり日蓮忌 宮坂静生 山開
花ならむまぼろしならむ闇に泛く 篠崎圭介
花夕焼過去まぼろしの如くかな 高田自然
芹焼の夜やまぼろしの鶴の声 月居
草上の烏賊釣船はまぼろしへ 攝津幸彦 未刊句集
萩桔梗またまぼろしの行方かな 赤尾兜子
葛掘るやまたまぼろしの兜子佇つ 秦夕美
葛掘れば荒宅まぼろしの中にあり 赤尾兜子
葦の葉にうかぶまぼろし韃靼忌 横山白虹
蓮根を掘りたる他はみなまぼろし 糸 大八
薄ガラス二重鍵かけ寒気とまぼろしくる 寺田京子 日の鷹
薄墨の桜まぼろしならず散る 田畑美穂女
蛇打つてなほまぼろしの蛇を打つ 宮崎信太郎
行く水に花のまぼろし西行忌 角川春樹
行人とありまぼろしの緋連雀 鈴木修一
補陀落といふまぼろしに酔芙蓉 角川春樹
見尽して花野は花のまぼろしか 柿本多映
谷を出る線のまぼろし雪の山 和知喜八 同齢
走馬燈夢まぼろしに廻りけり 野村喜舟 小石川
逃げ水の先へさきへと妣まぼろし 白井房夫
遅き日のまぼろしなりし水ぐるま 高橋睦郎 舊句帖
降り出して雪もまぼろし能舞台 菊地一雄
雪嶺の中まぼろしの一雲嶺 岡田日郎
青き上に榛名をとはのまぼろしに出でて帰らぬ我のみにあらじ 土屋文明
青年を踏むまぼろしや虫の闇 天野素子
風の音は山のまぼろしちんちろりん 渡邊水巴
風花が降りて濡らしし街上をまぼろしなして日が流れたり 半田良平
鳥追ひの子をまぼろしに夜の雪 角川春樹 夢殿
鴫一声ゆめまぼろしに乗りうつる 山中葛子
鵜篝は昨夜のまぼろし水澄める 鍵和田[ゆう]子 浮標
黄菅野の日はまぼろしに高曇 古舘曹人 樹下石上
●邯鄲の夢 
楽遠くなり邯鄲の昼寝夢さめぬ 昼寝 正岡子規
籠枕して邯鄲の夢もなし 後藤比奈夫 祇園守
足しびれて邯鄲の昼寐夢さめぬ 子規句集 虚子・碧梧桐選
邯鄲の夢とも空をゆく火とも(盟友鈴木詮子逝く) 石原八束 『仮幻』以後
邯鄲の夢はじまりし水中花 橋田憲明
邯鄲の夢消え消えと明けを鳴く 文挾夫佐恵
邯鄲の夢路追ひ来て鳴きつづく 水原秋櫻子
風が消す邯鄲のこゑ人の夢 渡邊千枝子
●有為転変 
落葉踏む有為転変の世を生きて 武井三枝子
有為転変母の浴衣が雑巾に 生出鬼子(天為)
●初夢 
うれしさにはつ夢いふてしまひけり 初夢 正岡子規
ただようてゐし初夢の青の中 恩賀とみ子
ぬるかりし温泉に初夢期しがたし 亀井糸游
はつ夢や吉野龍田の花盛 初夢 正岡子規
またとなき初夢なりし忘れけり 奈良 葉
みちづれのゐし初夢を惜しみけり 河内静魚
三人の子に初夢の三ツ降り来 上野泰
亡き母の背なの温みを初夢に 福永鳴風
初ゆめや女郎と論語の卷の一 初夢 正岡子規
初乗りののち初夢のビアズリイ 仁平勝 東京物語
初夢うつつほほゑみの国にあり 平畑静塔
初夢が覚め病人に戻りけり 小林一泉
初夢で逢ひしを告げず会ひにけり 稲畑汀子
初夢と話しゐる間に忘れけり 星野立子
初夢にお他力様の初仕事 高澤良一 鳩信
初夢にさだかな君のかなしけれ 大峯あきら 宇宙塵
初夢にさつぱりわやと青畝大人 後藤綾子(1913-94)
初夢になくてはならぬ翼かな 能村研三
初夢になにやら力出しきりし 眸
初夢にめざめてみればなにやかや 久野哲子
初夢にドームがありしあとは忘れ 加倉井秋を 午後の窓
初夢に一寸法師流れけり 秋元不死男
初夢に出できしことを告げらるる 栗林明弘
初夢に古郷を見て涙かな 一茶
初夢に吉の疑無かりけり 松瀬青々
初夢に塞翁が馬のその毛並 桂樟蹊子
初夢に夢でよかりしものを見し 有賀芳江
初夢に大いなる毬を貰ひけり 阿部みどり女
初夢に大き背中を見たりけり 安東次男
初夢に安倍晴明召されけり 獨吟 岡本綺堂
初夢に尾のある者を見たりけり 初夢 正岡子規
初夢に尾鰭をつけし物語 大久保白村
初夢に座布団ほどの鰈釣れ 岡田立男
初夢に復員父の髭の顔 岩井あき
初夢に息子を乗せて空港へ 中野太浪
初夢に扉あく音山の音 永島靖子
初夢に故郷を見て涙かな 一茶
初夢に昔のヨイトマケの唄 高澤良一 随笑
初夢に枕のひくきホテルかな 山口波津女 良人
初夢に河が光つてをりしのみ 秋を
初夢に深紅を見たり妣ならん 高橋睦郎
初夢に父に遭ひしが叱られし 良太
初夢に硝子の靴をはいてみし 朝倉和江
初夢に羅のつく十二神といる 澁谷道
初夢に花の落ちたるけはひなし 原和子
初夢に落ちし奈落の深かりき 鷹羽狩行 五行
初夢に蟹は甲羅をゆるめたり 宇多喜代子
初夢に見しふるさとは明治の世 瀧 春一
初夢に見しまぼろしや八達嶺 石寒太 炎環
初夢に見し踊子をつつしめり 森澄雄(1919-)
初夢に見たり返らぬ日のことを 日野草城
初夢に見つめられたり見つめたり 久安五劫
初夢に馬駈る蒙古大草原 樹生まさゆき
初夢に髪膚の湯の香つづかしむ 正江
初夢に鬼見しことは告げざりき ふけとしこ 鎌の刃
初夢に魔女が出て来る午前二時 伊藤白雲
初夢に鳥叫をききゐたりけり 中田剛 珠樹以後
初夢のあさきゆめみし憂ひかな 山田みづえ
初夢のあつけらかんと覚めにけり 近藤良郷
初夢のあひふれし手の覚めて冷ゆ 野澤節子 黄 炎
初夢のあまたの歌の神に逢ふ 中村若沙
初夢のあまり美事に悪夢なる 山田みづえ
初夢のいきなり太き蝶の腹 宇佐見魚目
初夢のいくらか銀化してをりぬ 中原道夫
初夢のいつまで若き我ならん 福井圭児
初夢のうきはしとかや渡りゆく 虚子
初夢のうつつの夢と重なれり 寿々子
初夢のおどろ衾に寝がへりて 石橋秀野
初夢のかたちのままの寝床かな 日原傳
初夢のさだかならざるぬくみあり 永方裕子
初夢のさめて盲にもどりけり 長田美智子
初夢のすべて忘れし掌をひらく 広谷春彦
初夢のただしらじらと覚めてなし 大野林火
初夢のつづく曠野に父のこゑ 石寒太 炎環
初夢のなかに亡父母会しけり 百合山羽公 寒雁
初夢のなかのむかしや竹のいろ 鷲谷七菜子 天鼓
初夢のなかの高嶺の雪煙り 龍太
初夢のなかをどんなに走つたやら 飯島晴子(1921-2000)
初夢のなかをわが身の遍路行 飯田龍太(1920-)
初夢のなくて紅とくおよびかな 鷹女
初夢のなほしんがりに蹤きゐたり 鴻司
初夢のぬきさしならぬ絵踏かな 長田等
初夢のはかなくたのし古衾 高橋淡路女 梶の葉
初夢のはじめに谷の日差あり 藤田あけ烏 赤松
初夢のひとごゑのなか父さがす 鈴木蚊都夫
初夢のひとりでたどる熊野道 黒田杏子
初夢のゆめの深さに溺れをり 村沢夏風
初夢のわが顔こちら向きにけり 細川加賀 『玉虫』
初夢のマンボウ何と畳大 高澤良一 随笑
初夢の一句を得たるところまで 稲荷島人
初夢の一断片のほのと赤し 九鬼あきゑ
初夢の中でも炭をかつぐ父 菖蒲あや
初夢の中に一句を忘れきし 岡田みす子
初夢の中に俳句が散乱す 山口 剛
初夢の中の密会には触れず 村田緑星子
初夢の中まで風邪をひいてをり 半谷洋子
初夢の中や一人で歩きをり 長部紅女
初夢の中より外へ出てしまふ 蔦三郎
初夢の二階より師に呼ばれけり 岡本眸
初夢の亡き母なぜに化粧ひせる 藤田湘子 てんてん
初夢の京に遊びて奈良に寝て 清水青風
初夢の何かわびしきことなりし 富安風生
初夢の何に泣きしか忘れたる 今瀬剛一
初夢の何も見ずして明けにけり 初夢 正岡子規
初夢の何やら美しく寝過しぬ 武石佐海
初夢の其角が妾をいたぶりぬ 鈴木鷹夫 春の門
初夢の出口に妻とすれ違ふ 神蔵器
初夢の出口のあたり行き戻り 山田弘子 懐
初夢の初めの顔をしていたり 永末恵子 留守
初夢の初蝶なりし白かりし 県多須良
初夢の勃起しばらくつづきをり 本宮哲郎
初夢の右手右足良く動く 窪田桃花
初夢の吉に疑無かりけり 松瀬青々
初夢の唯空白を存したり 高浜虚子
初夢の土鈴に波の音すなり 水野恒彦
初夢の壷中ぬけ出てさみしめる 上田日差子
初夢の夢にはあらじ記念館 稲畑廣太郎
初夢の夢に入りたる夢のなか 板垣鋭太郎
初夢の夢の叶はぬ足袋をはく 径子
初夢の大きうねりの中にあり 池田秀水
初夢の大きな顔が虚子に似る 阿波野青畝
初夢の大きな顔が高浜虚子に似る 阿波野青畝
初夢の大樹そのままうつつの木 廣瀬直人
初夢の大河となりて音の無し 神蔵器
初夢の大波に音なかりけり 鈴木真砂女
初夢の夫は軟体動物ぞ 栗原利代子
初夢の奉公の身に戻りけり 山崎和賀流
初夢の子等の枕の窪みかな 上野泰 春潮
初夢の富士を逆さにしてしまう 蝦名石蔵
初夢の山河わづかに濡れゐたり 大木孝子
初夢の崖縁をただ歩くかな 橋爪鶴麿
初夢の師にお辞儀するところまで 黒田杏子 花下草上
初夢の後姿を追ひかけて 星野椿
初夢の忘れやすさの目出度けれ 高木晴子 花 季
初夢の思ひしことを見ざりける 正岡子規
初夢の思ひ出せずにゐる科白 高澤良一 燕音
初夢の思ひ出せねどよきめざめ 三浦恒礼子
初夢の恵比寿の鯛の紅きこと 市川芽子
初夢の扇ひろげしところまで 後藤夜半 底紅
初夢の抱ききれぬほど毬拾ふ 山本馬句
初夢の暗さ重さを覚めてなほ 中嶋秀子
初夢の更に娶りて同じひと 高田風人子
初夢の李白に酒をすすめられ 岬雪夫
初夢の杜甫と歩いてゐたりけり 吉田鴻司
初夢の枕の上にひろがりぬ 章子
初夢の死者なかなかに語りけり 綾部仁喜 樸簡
初夢の母にはぐれし橋の上 関口謙太
初夢の母に言葉の戻りをり 緑川 啓子
初夢の母の黒髪見たりけり 稲荷島人
初夢の母死なさじと手を握る 山口波津女
初夢の母若かりしことあはれ 高橋睦郎
初夢の水を渡ってをりにけり 池邨田鶴子
初夢の沢なる田鶴の声に覚む 大橋桜坡子
初夢の泪ひとつぶ母のため 高野寒甫
初夢の滞空時間永きかな 能村研三 鷹の木
初夢の漠々たるを吉とせむ 下村ひろし
初夢の父にもらひし平手打 前田白露
初夢の父は牛追ういでたちで 相原左義長
初夢の父来てわれを肩車 木田千女
初夢の白牡丹なる失明感 豊山千蔭
初夢の盲となりて泣きにけり 不死男
初夢の短かけれども浅けれども 山田弘子 螢川
初夢の終り明るくありにけり 脇田隆一
初夢の続きの鴨を翔ばしけり 増田陽一
初夢の続きは獏に食はれけり 青柳薫也
初夢の縄一本がポールに沿ひ 中田剛 珠樹以後
初夢の腰かけごろに柏の木 増山美島
初夢の花は洛中洛外図 篠崎代士子
初夢の花白色にその名失せ 大塚季代
初夢の茄子も雀も同じ色 多田睦子
初夢の茄子やまこと小さかり 小林輝子
初夢の覚えのなきを吉とせり 川井城子
初夢の覚むれば娘等のみな遠し 三戸良子
初夢の覚めて電気の紐親し 西村和子
初夢の覚めぬ姿に東山 鷹羽狩行 八景
初夢の話もし度くとりまぎれ 星野立子
初夢の走りつづけて重たかり 宮坂静生 春の鹿
初夢の辻褄こはぜ掛けながら ふけとしこ 鎌の刃
初夢の辻褄合つてしまひけり 片山由美子 天弓
初夢の途中駄目だと思ひけり 高澤良一 随笑
初夢の途切れし枕裏返す 吉井秀風
初夢の途方もなくて呆とゐる 大橋敦子
初夢の野をあはあはと歩きけり 高田 明
初夢の金粉を塗りまぶしたる 高浜虚子
初夢の釘うつところ探しゐて 熊谷愛子
初夢の陳腐に腹を立てゝをる 川崎展宏 冬
初夢の音なき山河きらめけり 松本美簾
初夢の駅の時計の進まざる 藤田湘子 春祭
初夢の駱駝ぬけゆく針の穴 小室善弘
初夢の鯤の目玉にこだはりぬ 大石悦子 百花
初夢の鱗まみれとなりにけり 櫂未知子 蒙古斑
初夢はあたたかさのみ覚えゐし 平井照敏
初夢はとまれ味寝の希はしや 瓜人
初夢は亡き妻とゐてエーゲ海 内山泉子
初夢は蘭陵王のその素顔 加藤房子
初夢もなき少年にマニラ陥つ 萩原麦草 麦嵐
初夢もなき軒雀こぼれけり 石田波郷
初夢もなくて老いゆくばかりなり 永田耕一郎
初夢もなく寝揃ひの吾子ふたり 岳陽
初夢もなく患者食運ばるゝ 萩原麦草 麦嵐
初夢もなく穿く足袋の裏白し 渡邊水巴
初夢もまた平凡でありにけり 岩岡中正
初夢も見果てぬゆめの他になし 小林鱒一
初夢や「緘」の彼方の二十代 櫂未知子 蒙古斑以後
初夢やおのれの首に頭陀袋 藤田あけ烏 赤松
初夢やさめても花ははなごころ 千代女
初夢やひよいと出来たる逆上り 国江栄子
初夢やみんなかかれる草の罠 宮坂静生 春の鹿
初夢やもの云へばみな字余りに 玉城一香
初夢や兵たりし日は遠く近し 古市狗之
初夢や半(なかば)きれたる唐にしき 立花北枝
初夢や夜逃げ支度の姉と逢ふ 角川春樹
初夢や夢一ぱいの帆かけ舟 龍岡 晋
初夢や大不可といふ落第点 水原春郎
初夢や夫の一喝もらひける 小西久子
初夢や富士飛び越えて花に月 藤野古白
初夢や幼く逝きし子と遊ぶ 菱田トクエ
初夢や故国を恋ひし兵のころ 三浦誠子
初夢や枕の横の幼な顔 永田耕一郎 方途
初夢や林の中の桜の木 小澤實 砧
初夢や母と渡りし長き橋 小野鶴子
初夢や波郷は若く吾老ゆる 杉山岳陽
初夢や浜名の橋の今のさま 越人
初夢や源義のうすきうしろ髪 角川照子
初夢や漬物石を磧より 中田剛 珠樹以後
初夢や牧牛を追ふ若きわれ 佐藤念腹
初夢や独占ふて曰く吉 小沼松軒
初夢や申の年には山の幸 初夢 正岡子規
初夢や砲火の中に菊澄みし 林翔 和紙
初夢や秘して語らず一人笑む 松宇
初夢や膝に三枚石を抱く 磯貝碧蹄館
初夢や船長として舵を取り 池田秀水
初夢や見るものならば親の顔 重厚
初夢や赫々として馬の尻 大木あまり 火球
初夢や連歌鎖のごとつなぐ 佐々木久代
初夢や野のただ中にただよひ覚む 太田鴻村
初夢や金も拾はず死にもせず 漱石
初夢や鎧兜を身にまとひ 池田秀水
初夢や雲踏み渡る海の上 松根東洋城
初夢や額にあつる扇子より 其角
初夢や馬がやさしく寄つてくる 高田律子
初夢や鬼逃げ切つてVサイン 木村順子
初夢をうかと見過ごししまひけり 古谷原升
初夢をさしさはりなきところまで 鷹羽狩行
初夢をたまはるほどのまどろみぞ 朝倉和江
初夢をわすれ戦火をわすれざる 仙田洋子 雲は王冠
初夢を占はしむる王者かな 春菫
初夢を思い出せない鳥が飛ぶ 横洲由紀子
初夢を戻れぬ闇に置き忘る 藤田倶子
初夢を浅ましがりて見てゐたり 相生垣瓜人 明治草抄
初夢を獏に食はせるまでもなし 湯沢千代子
初夢を美しとせし嘘少し 嶋田一歩
初夢を聞かせてくれし電話かな 山田弘子 螢川
初夢を見てゐていはぬかなしかり 秋山巳之流
初夢を見てゐるらしや号令す 瀧澤伊代次
初夢を見ぬは枕の高きゆゑ 木内彰志
初夢を見よといひつゝ子守唄 星野立子
初夢を見をれるごとし覚ますまじ 岡本圭岳
初夢を言ひあふに死の一語あり 皆吉爽雨
初夢を話しゐる間に忘れけり 立子
初夢を追ひてしばらくうす瞼 馬場移公子
初梦の思ひしことを見ざりける 初夢 正岡子規
初梦や松の柱に芽がふいて 初夢 正岡子規
初梦や貘にくはした後家の顏 初夢 正岡子規
力在るものと格闘初夢に 高澤良一 燕音
告ぐべくもなく初夢のみじかさよ 汀女
土佐つぽの卒寿初夢すらなくて 及川貞
地震はたとわが初夢を断てりけり 西本一都 景色
女來よ初梦語りなぐさまん 初夢 正岡子規
忘れたる初夢何か今朝たぬし 新田 郊春
怒濤音わが初夢を囲みけり 奥坂まや
思い出せぬ初夢窓ガラスに指紋 池田澄子
息触れて初夢ふたつ響きあふ 正木ゆう子
手応へのなき初夢でありにけり 能村登四郎
暁近く見し初夢も別事なし 安住敦
朱鷺といふかなしき鳥を初夢に 小林宏
杣の子の初夢に樅太りけり 黛 執
槍もちて走る初夢さめて雪 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
水鳥のその思ひ羽を初夢に 佐藤鬼房
潮満ちて貝の初夢まだ醒めず 渡辺恭子
濤乗りの加賀の「猩猩」初夢に 中澤文次郎
紅さして初夢のみめかたちかな 長谷川久々子
肩に手を置かれてふりむく初夢ぞ 熊谷愛子
良き初夢見よと瞼を撫でやりぬ 須田冨美子
覚めがちの初夢さびしかりけるよ 梅子
解かれたる初夢の顔誰々ぞ 石寒太 夢の浮橋
谷室大のローストチキンが初夢に 攝津幸彦 鹿々集
輦台(れんだい)に乗れる初夢大井川 高澤良一 燕音
雜煮くふてよき初夢を忘れけり 初夢 正岡子規
雨ざんざ降る初夢に遇うは妻 隅 治人
髪も稍々白初夢などは嘗て見ず 加藤楸邨
鮮明な初夢にして怖きかな 能村研三
鯉に呑まれて初夢の醒めにけり 志解樹
初ゆめのあとにて暗き壺の口 三田きえ子
初ゆめのさめかかりたる糸紅し 八田木枯
初ゆめのゆめの深さに溺れをり 村沢夏風
初ゆめの枕ならべて灯を消しぬ 上村占魚 鮎
初ゆめや女郎と論語の卷の一 初夢 正岡子規
初ゆめや富士で獏狩したりけり 幸田露伴 谷中集
土佐つぽの卒寿初ゆめすらなくて 及川 貞
はつ夢の緋色の覚えありしのみ 石嶌岳
はつ夢や吉野龍田の花盛 初夢 正岡子規
はつ夢や正しく去年の放し亀 言水
はつ夢や鷹ふところにぬくめ鳥 蓼太
●希望 
かげろふのなかの希望にさはるかな 仁藤さくら
ねぶたゆく街に希望のあるごとく 和田博雄
ふと手錠を見ている僕の思想のかたわらぼんやり希望のない職務にいる 橋本夢道
ハイビスカス鬼も希望も沖より来 石井五堂(夏爐)
初鳩に希望を言へり翔んでをり 松浦敬親
妻と希望に近ずいたように鶴を見ている 橋本夢道 無礼なる妻
希望なき眼なり安値の鰯をさがし 細谷源二
希望の帆なれ餅搗きの湯気天井まで 大熊輝一 土の香
希望ふと熱き一個の今川焼 神田ひろみ
廃校に「希望」てふ碑や露光る 高山香代子
早春の坂は希望のごとくあり 山田弘子 懐
朴散華とは希望無し誇りあり 高浜虚子
淡き希望燕に糞を落されぬ 加藤楸邨
湧く希望霜の枕木かぞへつ踏む 川口重美
秋晴の釘打つ希望あるごとし 細川加賀
秋風のかゝる香かって希望ありき 川口重美
雪さらり掃いて希望の子の門出 小松扇栄
雪雲の晴れ間の希望すぐに消ゆ 相馬遷子 山河
餅膨らむされど希望は湧いて来ず 隈元拓夫
黒南風日々怒りは希望つちかわん 赤城さかえ句集
●宿望
●野望 
*ひつじ田に日と月のある野望かな 平井照敏 天上大風
野望 畠打の目にはなれずよ魔爺が嶽 蕪村遺稿 春
春きざす若さと野望我にあり 打田カノ
数の子を前に男の野望湧く 脇本星浪
●野心 
はうれん草女の野心萎え易き 西村和子 窓
中毒屍を焼けば野心の音 阿部完市 証
垣間見し野心芭蕉の玉解けり ふけとしこ 鎌の刃
我が野心刻みし柱海市にあり 小川軽舟
秋の蛇蘇我入鹿の野心もて 小林貴子
繰り返す九官鳥の野心かな 杉浦圭祐
返り花野心なしとは言ひきれず 三枝青雲
野心あり野に大鹿の湧出あり 阿部完市 春日朝歌
野心に死ぬや野心なきに死ぬやはにかみて未来言はざる少年もまた 米川千嘉子
野心も秋ヘマッチの焔指に迫り 金子兜太 少年/生長
霜日和野心金輪際すてず 飯田蛇笏 雪峡
●望み 
一画家の望みに叶ふ紙を漉く 森田峠 逆瀬川以後
今日ばかり望みのままに子供の日 羽村野石
大和路の望みの春も暮れにけり 智月 俳諧撰集玉藻集
奈良女高師望みし日はも冬外套 鈴木栄子
子に託す一縷の望み紙を漉く 小川翠畝
或る朝の背伸び望みの寒ごもり 河野南畦 湖の森
晩年の子に望みかけ芋茎むく 三宮 美津子
望みごと言ふはたやすく暖かし 林翔 和紙
望みゐし扇子役へ年玉に 片岡我当
梅雨の音高望みして寝ねられず 奈良文夫
正月や望みの高き絵馬あふれ 林 民子
煉炭熾す望みなき掌と思はねど 小林康治
米寿なほ生くる望みや初山河 大塚伊勢
蝶とぶや此世に望みないやうに 一茶 ■文化六年己巳(四十七歳)
軽ろき句を望みてならず団扇かな 尾崎迷堂 孤輪
霜つよし一縷の望みまだ捨てず 相馬遷子 山河
●夢の中 
うつらうつら夢の中までつづれさせ 玉木克子
きれぎれの夢の中へも蛾の翅音 藤田湘子
そら豆の怪童に遭ふ夢のなか 高澤良一 ぱらりとせ
とどろきて冬濤夢の中にまで 松田郷人
ぱらぱらと夢の中まで落霜紅(うめもどき) 宮坂静生 春の鹿
ほうたるや入り難きは夢の中 秋山巳之流
まどろめば夢の中にもあとり鳴く 松尾静枝
もりあをがへるまだ乳色の夢の中 山崎千枝子
ゆらぎつつ夢の中まで釣船草 石 寒太
わが夢の中にて死にし山鳩よ 林桂 銅の時代
ゐのこづち夢の中までとりつかれ 村上喜久子
亡父かなし夢の中まで頬被 成田智世子
人はみな時代祭の夢の中 我孫子明朗
八月の口開けてゐる夢の中 高澤良一 素抱
冬闌けて六波羅蜜寺夢の中 鈴木太郎
初夢の夢に入りたる夢のなか 板垣鋭太郎
啓蟄のこゑ夢の世は夢のなか 阿部誠文
夢のなかの生きもの集う 赤葡萄酒 松本恭子 二つのレモン 以後
夢のなか赤のまんまと仏頭と 金子皆子
夢のなか風吹き抜けて籠枕 檜紀代
夢の中で燃えてゐるチェロ西行忌 皆吉司
夢の中にても寒雀暮るるまで 齋藤愼爾
夢の中に茅花の白を摘み来る 河野南畦 『黒い夏』
夢の中へ曉けひぐらしや太宰の地 奈良文夫
夢の中より鳴きいでて朝の雉子 馬場移公子
夢の中わたしは緋鯉誰か呟く 一ノ瀬タカ子
夢の中人も菫も乱れがたし 宇多喜代子
夢の中浮人形となりにけり 星野立子
夢の中湯気の中より蒸かし藷 中村草田男
夢の中貌鳥が鳴く山の宿 西谷貴志雄
夢の中鱈汁せつに湯気あぐる 飴山實 辛酉小雪
大昼寝夢のなかまで鯨かな 諸角和彦
大根抜くときのちからを夢の中 飯田龍太
大田螺夢の中まで闖入す 櫛原希伊子
妙に素直に蜂のあくせく夢の中 阿部完市 証
寒鯉となりてゐたりし夢の中 片山由美子 水精
年の瀬や夢の中まで仕事して 武田忠男
弟に白梅わたす夢の中 清水径子
星近く寝て鳥渡る夢の中 宮原双馨
春の夢の中ではらはらしてゐたる 猪俣千代子
春の風邪夢の中より貰ひけり 本橋美和
春暁やあさき夢見し夢の中 草間時彦
春浅し白兎地をとぶ夢の中 飯田龍太
朝顔やいくさの夢のなかの父 桜井博道 海上
木がらしの身は猶かろし夢の中 内藤丈草
柿の花夢の中にて骨を抱く 柿本多映
柿落葉いちまいいちまい夢の中 藤岡筑邨
毛虫焼き夢の中まで毛虫焼く 大木美代子
水仙や夢の中まで活けつづけ 朝倉和江
沈丁の香と思ひけり夢の中 池田松蓮
沢蟹の夢の中でもわれを過ぐ 足利屋篤
流燈や夢の中にも追ひつづけ 中村やす子
清貧や夢の中まで葱抜いて 久保千鶴子
満天星の花がみな鳴る夢の中 平井照敏
白晝の夢のなかばに鮎とんで 田中裕明 花間一壺
石蕗の花夢の中でも夢をみて 長谷川草々
秋さびし夢の中まで児を叱り 樋笠文
秋の蝶一葉と散るや夢の中 大サカ-一桐 七 月 月別句集「韻塞」
穀象を夢の中まで歩ませて 杉山岳陽 晩婚
空一杯鰯雲なり夢の中 阿部みどり女 月下美人
花かたかごまだ夢の中朝の月 茂里正治
花一片夢の中より海へ出づ 渡辺恭子
花疲れ夢の中にもありにけり 平尾みさを
莟む花散る花夢の中やどり 水田正秀
落し水夢の中までひびきけり 堀川草芳
葡萄青し人の生る木を夢の中 柿本多映
藪柑子夢の中にも陽が差して 櫻井博道
蝶々や轅の牛の夢の中 野村喜舟 小石川
蝸牛いつか深山の夢のなか 金子青銅
迎え火や亡夫に出逢いし夢の中 鈴木喜久女
雛の宿夢の中にも川流れ 今瀬剛一
震災といふこのさまざまな夢の中 妹尾 健
青みどろ夢の中まで陽が射して 鳴戸奈菜
風邪ながし夢の中までシヤベル持つ 岩田昌寿 地の塩
飢はるか白ふくろふの夢の中 柚木紀子
魚眠り夢の中から黄落す 柿本多映
鹿眠る夢の中まで枯野かな 高橋睦郎
●春の夢 
あるときはふるさと燃ゆる春の夢 藤田湘子(1926-)
中空に修羅を舞ひたる春の夢 佐藤鬼房 潮海
切腹は白き色なり春の夢 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
北前船泊つる九谷を春の夢 高橋睦郎 金澤百句
夢違観音春の夢消さな 鈴木昭子
御昼まで忘れずにゐる春の夢 桑原三郎 晝夜 以後
持論などいかゞなものか春の夢 加藤郁乎 江戸桜
春の夢あまたの橋をわたるかな 桂信子
春の夢さめて病ひののこりけり 細川加賀 『玉虫』
春の夢つかのまなりしおもかげよ 吉屋信子
春の夢つづき煌たり疲れたり 中村草田男
春の夢のごとく娘が嫁くと言ふ 鈴木鷹夫 春の門
春の夢の中ではらはらしてゐたる 猪俣千代子
春の夢みてゐて瞼ぬれにけり 三橋鷹女(1899-1972)
春の夢みて熱さましどつと効く 内田美紗 浦島草
春の夢三鬼の髭に会ひにけり 島野光生
春の夢他人が始終側にゐて 赤尾恵以
春の夢墓のほとりを水流れ 森重昭
春の夢夜つづき煌たり疲れたり 中村草田男
春の夢天空駆けてゐる「わたし」 樋口津ぐ
春の夢少しぼかして妻に言ふ 後藤静一
春の夢尾鰭をつけて話しけり 大向 稔
春の夢山脈を曳きずるは雉子 金子皆子
春の夢心驚けば覚めやすし 富安風生
春の夢気の違はぬが恨めしい 来山
春の夢水のかたちにたとふべき 松澤雅世
春の夢水平線の近くまで 足立礼子
春の夢濃紫を残しけり 高橋睦郎 金澤百句
春の夢眼鏡をかけずもう一度 二村典子
春の夢縄の梯子をのぼらせて はらだかおる
春の夢聊斎志異に似て妖し 鈴木青園
春の夢草むらにまだ狙撃兵 皆吉司
春の夢閻魔の前をすたすたと 杵淵三津
春の夢音を聞かずに終りたる 牧石剛明
春の夢鳥のことばのよく解り 太田寛郎
業平と旅せむ春の夢ならば 向田貴子
江ノ島も褪せゐし春の夢いづこ 石塚友二 光塵
立春の夢に刃物の林立す 柿本多映
籠の鵬春の夢なら飼はんかな 中西夕紀
覚めて身のしなやかならず春の夢 片山由美子 天弓
逝く春の夢の子細に及びけり 橋本榮治 越在
逝く春の夢の渚にひとと逢ふ 野澤節子
鉄鉢を掌に乗せし春の夢 長谷川かな女 花寂び
●夢の世 
啓蟄のこゑ夢の世は夢のなか 阿部誠文
夢の世と思ひてゐしが辛夷咲く 能村登四郎 有為の山
夢の世にかかる執着空蝉は 斎藤慎爾(1939-)
夢の世に土筆煮てゐる我は誰 芳田照代
夢の世に孔雀散らかす春暮かな 攝津幸彦
夢の世に緋鯉とならばほつそりと 鍵和田[のり]子
夢の世に葱をつくりて寂しさよ 永田耕衣
夢の世のあな夢いろの切山椒 田部谷紫
夢の世のえにしで藍がふかくなる 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
夢の世のわが墓見ゆる雪明り 清水基吉
夢の世の一隅を占め飾り舟 原田喬
夢の世の夢の落花に手をのべて 山口いさを
夢の世の夢を見る間や年忘 松岡青蘿
夢の世の春は寒かり鳴け閑古 臼田亞浪 定本亜浪句集
夢の世の浮葉つぎつぎ生るるよ 加藤三七子
夢の世の渚に拾ふ落椿 林 亮
夢の世の触れて冷たき藤の房 大木あまり 火球
夢の世やとりあへず桃一個置く 中尾寿美子
夢の世やぺんぺん草の遊びせむ 甲斐由起子
夢の世や水をめぐりて通し鴨 大木あまり
夢の世や珈琲館はいまも雪 攝津よしこ
夢の世や郭公よりもはやく起き 富樫均
夢の世を霊柩車すぎ菊膾 穴井太 原郷樹林
寐てくらす人もありけり夢の世に 夏目漱石 明治二十三年
洗ひ立てたる夢の世の葱二本 新島里子
若水や夢の世の眉引いてをり 辺見じゅん
●夢はじめ 
モネの絵の池畔を散歩夢はじめ 大野雑草子
三葉虫裏返しみる夢始め 高澤良一 随笑
夢はじめははのほとりに水流れ 白澤良子
夢はじめ松葉を匂ふほど積みて 田中裕明 櫻姫譚
夢はじめ現(うつつ)はじめの鷹一つ 森澄雄(1919-)
手毬つく今も少女や夢はじめ 橋本榮治 逆旅
期して待つ父の一声夢はじめ 水原 春郎
橋ひとつわたりきつたる夢はじめ 石寒太 翔
火と水とあとは判らず夢はじめ 能村研三
終の身を火に置くことを夢はじめ 橋本榮治 逆旅
胸に棲む人に逢ひけり夢はじめ 木村速子
観音の掌の中にゐる夢はじめ 橋本榮治 麦生
野を縦に戦車が行けり夢始め 田川飛旅子
●夢む 
あけくれに富貴を夢む風邪哉 前田普羅
ゴム青く兵は庭の柿を夢む 藤後左右
夜の雪辻堂に寐て美女を夢む 雪 正岡子規
日永鰐夢む手足の置きどころ 高澤良一 さざなみやつこ
母と寝て母を夢むる藪入かな 松瀬青々
病んで夢む天の川より出水かな 夏目漱石(1867-1916)
石に寝る蝶薄命の我を夢むらん 蝶 正岡子規
青あらし出家を夢む人あらむ 塚原麦生

 以上


by 575fudemakase | 2022-06-23 21:37 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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