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宝石 類語関連語(例句)

宝石 類語関連語(例句)

●宝石●ダイヤモンド●ルビー●エメラルド●オパール●真珠●サファイヤ●トパーズ●瑠璃●水晶●玉●珠●アメジスト●翡翠●クリスタル●瑪瑙●琥珀●碧玉●金剛石

●宝石 
くさぐさの宝石を見しミモザ見し 成瀬正とし 星月夜
ゆるやかな流域宝石を母に貸し 八木三日女 赤い地図
冬鳩の老けごゑ宝石筥からつぽ 堀井春一郎
唄でくもらすと立ち上る宝石のたそがれ 加藤郁乎
夜行バス 空の宝石選っている 三好靖子
宝石とポインセチアと並べ売る 佐々木平一
宝石にまぎれ何時より花の種 有馬朗人 知命
宝石のごと金柑を掌の上に 宇多零雨
宝石の大塊のごと春の雲 高浜虚子
宝石の如きおヘそや春灯 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
宝石の如く蛍火手につつむ 小山 瞳
宝石の指を浸して鵜舟待つ 長田等
宝石の歌に二月の扉をひらく 長谷川かな女 牡 丹
宝石の瞳をもちにけり猫の恋 廣田松枝
宝石は一粒の海秋澄めり 和田耕三郎
宝石より光る矢車農家の空 横山佳世子
宝石を欲しがらぬ指毛糸編む 帰来ふじ子
宝石函ぶちまけしごと夜涼の灯 高澤良一 燕音
宝石輸出のやうに金魚を荷造れる 鈴木栄子
宝石鋪出づ駐兵に雪雫 宮武寒々 朱卓
小鳥来る宝石いろの海地獄 朝倉和江
御局に囲まれてゐるおでんかな 宝石由紀子
指先も宝石も冷え摩天楼 仙田洋子 雲は王冠
時化は時の宝石をそつくり見せる 加藤郁乎
汗し倦む法皇庁の宝石庫 小池文子 巴里蕭条
熱帯魚この宝石は生きてゐる 瀧春一
犬の眼に宝石入れる子の漫画 金城けい
玉虫と宝石さほど異らず 後藤比奈夫 めんない千鳥
禽獣園の宝石は 牙 北風が磨く 伊丹公子 メキシコ貝
秋風場裡宝石(いし)なきは手を垂れがちに 川口重美
翡翠は川の宝石光り飛ぶ 竹葉英一
蛍火を頒つ宝石を頒つごと 福田蓼汀
螢照らす手にも胸にも宝石無し 橋本美代子
詩人の手にありて綿虫宝石めく 山口波津女
銭亀と宝石が昔ばなしをする 八木三日女 赤い地図
●ダイヤモンド 
ダイヤモンド・ダストの中に麗女めく 笠井操 『雪の紋』
ダイヤモンド婚振舞ののつぺ汁 津幡龍峰
ダムのそこびえダイヤモンドより固く誓う 八木三日女 落葉期
一本釣鮪や灘のダイヤモンド 萩原とし子
春暁のダイヤモンドでも落ちてをらぬか 波多野爽波 鋪道の花
死の指のダイヤモンドに夕日かな 伊川菜津
魚は氷にダイヤモンドは耳たぶに はしもと風里
●ルビー 
あゝ雨が君のルビーの疵に降る 乙夫 遠
ルビーてふ葡萄の房や露涼し 千本木早苗
ルビーひそむ 地上歩いて さびしい象 伊丹公子 パースの秋
塀ごしにルビーを散らす柘榴かな 西中美代志
巴里祭煮つめてジャムのルビー色 斎藤みちえ
掌に沙に柘榴のルビーこぼるるよ 小檜山繁子
柘榴裂けぬルビーの小箱たがために 沼田通江
波引きし磯巾着のルビー色 広瀬一郎
熱燗を異国に酌みてルビー婚 河本好恵
野葡萄の七色ルビー光りおり 山崎浪江
●エメラルド 
どの木もどの木も自信に芽ぶきエメラルド 橋本夢道 無禮なる妻抄
エメラルドの 寡黙の昂り 寺院の闇 伊丹公子 山珊瑚
エメラルド色に銀杏焼けにけり 田宮 良子
恙がなくエメラルド婚紅葉宿 奥田木石
氷河湖を見つむこころもエメラルド 高澤良一 ぱらりとせ
浴泉のエメラルド色花曇 桂信子 樹影
絶巓の夜明け氷壁エメラルド 福田蓼汀 秋風挽歌
●オパール 
オパールの青き変身夏霧に 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
パールよりオパール合ひぬ更衣 及川 貞
●真珠 
かかげたる真珠尚び沙羅の花 桑田青虎(田鶴)
かりがねの真珠筏へこぼすこゑ 田中春生
けぶるかに真珠婚過ぐ燈心草 和田祥子
この潮の真珠はぐゝむ春の闇 楠目橙黄子 橙圃
さくら散る真珠筏に男乗る 野澤節子 遠い橋
てのひらに真珠一粒雲の峯 上田 操
ぬばたまの夜が育てている真珠 山戸則江
はくれんの雫あびゐる真珠婚 白澤良子
はるばる来て吐き出す軍歌真珠の海 八木三日女 赤い地図
タイピンは真珠と決めて入社式 加古宗也
バナナづたひ真珠のネックレスちらり 伊東達夫
一湾の真珠筏に風光る 佐久間俊子 『むさし野』
一粒の真珠ころがる夏座敷 原裕 『新治』
一粒の真珠のごとき寒さかな 田中芙美子
乳のみ児に真珠の前歯桃咲けり 瀬戸清子
今日もきて冬日百くる真珠筏 和知喜八 同齢
元旦や真珠の伊勢の海平ら 中井杜舟
六月の真珠筏に光る雨 田中千恵
六月の風になじんでゆく真珠 後藤保子(軸)
冬波を集めて真珠筏鳴る 井上 雪
冬薔薇に名づけて真珠日和かな 久保田万太郎 流寓抄
初伊勢や真珠のいろに神饌の海 伊藤敬子
初凪や真珠筏に波たたみ 御村善子
初旅や海女も真珠も紅ほのか 中田豊助
初日出て真珠筏の海照らす 飯塚やす子
初春の真珠選別御木本嬢 高澤良一 燕音
初景色真珠育くむ海の色 谷口しとみ
刻々と真珠は育つ夏の海 松尾いはほ
南風吹く真珠値踏みの市立てり 見学 玄
反対 反対 デモ過ぎ 森に真珠いろの陽が 伊丹公子 メキシコ貝
君が涙の潜き上げたる真珠かな 金子 晉
四月尽く抽斗深く真珠秘め 菖蒲あや あ や
夜桜や真珠のピアスつけしまま 徳田千鶴子
夜長人小匣に真珠秘めにけり 野村喜舟 小石川
大粒の真珠を仕入れ初荷とす 鈴木多江子
夫の忌の真珠はづせば春の風邪 藤沢紗智子
妻の指に真珠うるほふ隙間風 千代田葛彦 旅人木
尼過ぎて紫陽花はいま真珠色 鈴木鷹夫 渚通り
年立つや胸の真珠のひとつぶと 折井紀衣
怒濤見る真珠一粒身に冷えて 神尾久美子 桐の木
日の真珠光雪雲をあふれ出づ 岡田日郎
日当りて鳥羽の水鳥真珠粒 高澤良一 燕音
春の日やたまをはぐくむ真珠貝 高橋淡路女 梶の葉
春夕焼真珠筏を染めにけり 小山南史
春昼や真珠育てるあこや貝 稲垣きくの 黄 瀬
春服の涙ともいふ真珠かな 岩崎照子
春潮に真珠筏のある目覚め 稲畑汀子 春光
晩春これ肉に含める黒真珠 鳴戸奈菜
朧夜の筏に真珠育ちをり 二宮美智子
東洋城忌の鼠鳴も過ぎ真珠筏 文挟夫佐恵
枯野ゆく身に一粒の真珠つけ 勝又春江
梅雨波や買ひし真珠はすぐ指に 中村明子
梅雨深き真珠の潮に潮仏 木村蕪城
水あがる白菜夜雲真珠色 石田あき子 見舞籠
水草とゆれ少女らは真珠をかくす 天野素子
永き日や核に疼ける真珠貝 矢島渚男 百済野
浜木綿や筏と朽ちし真珠屋形 佐怒賀正美「椨の木」
海よりの日が春めける真珠店 柴田白葉女 花寂び 以後
海中の真珠におちて夏夕映え 和知喜八 同齢
涼しさや真珠一粒汝に与ふ 石嶌岳
灯の真珠冬海遠く闇に鳴り 桂信子 黄 瀬
烏貝殻をひらきて真珠色 米田花壺
白絹と真珠六月の婚 柴田白葉女
真処女と来て真珠棲む海泳ぐ 八木原祐計
真珠(マルガリータ)は雛菊(マルグリート)の子、ちちが爻る 加藤郁乎
真珠なす虹なす島過ぎ日本過ぐ 林翔 和紙
真珠は貝の生身の傷やクリスマス 中村明子
真珠より大切な日を桜貝 能美澄江
真珠光こぞる屑貝一たんぽぽ 香西照雄 素心
真珠太る夜の段丘に紫電改 相原左義長
真珠抱く五月の海の光凪 長谷川翠
真珠揚げの日を朱々と初暦 日高ひろし
真珠撰る少女春光まろばする 西本一都 景色
真珠棚打つ潮鳴りや蕪汁 稲瀬奈加枝
真珠母貝後につづけば犬死にだ 相原左義長
真珠母貝沈め星合の千歳川 堀口星眠
真珠筏ぬひてぞ英虞の舟遊び 平井富子
真珠筏日なたつくりて冬はじまる 河野南畦 湖の森
真珠育つ花の入江の静かかな 森田峠 三角屋根
真珠貝天主讃歌の裔いまも 原裕 葦牙
真珠選る赤き毛布を膝にかけ 篠原としを
真珠養殖筏浮き夕日の後の青葉月 和知喜八 同齢
瞽女講や真珠のごとき越後米 西本一都
短夜の湖に育ちぬ真珠棚 金子百子
磯かまど素顔美し真珠海女 石川星水女
磯なげき聞きつつ育つ真珠とも 泉 とし
秋晴や志摩には若き真珠みがき 鈴鹿野風呂 浜木綿
竹の春病まずに今日の真珠婚 高橋辰郎
箒目に綿虫うかぶ真珠庵 深草不二雄
羅や帯に真珠の粒光り 館岡沙緻
舟遊真珠筏に櫂休め 山田弘子 こぶし坂
花売に寒し真珠の耳飾 夏目漱石 明治三十五年
苦潮や真珠筏の浮き沈み 西村英子
英虞湾に避寒の真珠筏混む 山口波津女
茨咲きぬ朝は真珠のいろに覚め 石原八束
菊月の真珠はづして果つ一日 今橋眞理子
葉月潮満ちて真珠の筏揺る 宮田正和
蓮の花咲きゆく真珠いろの空 柴田白葉女 花寂び 以後
蓮華刈る真珠色の空牛うごく 中拓夫 愛鷹
蜘蛛の囲に陥ちて真珠母のみごもるもの 高柳重信
豌豆の実よ真珠にはなれぬまま 松木波紋
赤潮の迫れる真珠筏かな 山田不染
通夜の雪指に影置く黒真珠 吉野義子
野分吹く真珠いろなる夢の中 龍太
長月の潮とどこほる真珠棚 松本幹雄
頸に真珠額に不信の翳きざむ 三谷昭 獣身
鮑食ふ短夜真珠こぼるるか 萩原麦草 麦嵐
鰡飛ぶよ真珠筏に海取られ 百合山羽公
鰹船真珠筏を揺らし発つ 和田暖泡
鴨帰りひろらの波に真珠棚 秋光泉児
鷹渡る真珠筏は揺れもせず 伊達甲女
黒真珠頸にするりと今朝の冬 佐藤まり子
●サファイヤ 
サファイヤ婚庭に紅白実万両 須賀遊子 『保津川』
星でつながりサファイヤ磨く唖と唖と唖 八木三日女 赤い地図
サファイアを食べながら泣く汝かな 五島高資
サファイア売りの一角 すずし バザールにて 伊丹公子 パースの秋
トパーズいろサファイアいろの蛍とぶ 高澤良一 ぱらりとせ
印度より届くサファイア水澄める 都筑智子
秋来ぬとサファイア色の小鰺買ふ 杉田久女
●トパーズ 
トパーズいろサファイアいろの蛍とぶ 高澤良一 ぱらりとせ
檸檬切るトパーズ色のしぶきの香 松本由美子
●瑠璃 
*ほうぼうのつばさに瑠璃の斑を隠す 大屋達治
あぢさゐにうづまりて死も瑠璃色か 稲垣きくの 牡 丹
あぢさゐの瑠璃極まらで褪せゆくや 林原耒井 蜩
あぢさゐの瑠璃流しこむ水の音 稲垣きくの 牡 丹
いちご熟れ瑠璃空日々にふかき冬 飯田蛇笏 春蘭
いぬふぐり瑠璃をぶちまけ咲き足らふ 西本一都 景色
いのちなり露草の瑠璃蓼の紅 石田波郷
いもやけて畑火の午天瑠璃ふかし 飯田蛇笏 春蘭
うたた寝すつつじの上の瑠璃蜥蜴 高澤良一 寒暑
うぶうぶと瑠璃光如来ほととぎす 鷲谷七菜子 花寂び
うら枯や咲くつゆ草の瑠璃の雨 渡辺水巴
おほみそら瑠璃南無南無と年新た 飯田蛇笏 春蘭
かはせみの瑠璃の一閃水温む 佐長芳子
かはたれの秋ばら瑠璃の色そへて 角川源義
きつつきや瑠璃沼霧の底に醒む 千代田葛彦
こだまして森をはみだす瑠璃のこゑ 唐澤南海子
ころり往生弥陀堂走る瑠璃蜥蜴 詫摩まつ子 『卒寿』
しらびその霧の霽れつつ瑠璃鶲 窪田佳津子
その色の天作さしめよ雨の瑠璃鳥 栗生純夫 科野路
ちちろ虫「月光菩薩さまは瑠璃浄土」 辻桃子
つゆくさの瑠璃はみこぼす耕馬かな 西島麦南
とかげ瑠璃色長巻く日本の帯銀無地 三橋鷹女
なだれたる祗の径にも瑠璃一華 前田普羅 飛騨紬
のぶどうの孕む瑠璃いろ波羅蜜多 瀬川公馨
ひぐらしや塔暮れのこる瑠璃光寺 浜 敦子
ひとつぶの瑠璃ころげいづ龍の玉 飴山 實
まち針の頭の瑠璃も供養かな 野村喜舟
みつめあふ秋天の瑠璃沼の瑠璃 鈴木貞雄
もの云ふと詩が消えさう瑠璃沼澄む 加藤知世子 花寂び
やどかりの瑠璃の全身出して羞づ 加倉井秋を
ゆきぞらの下にて瑠璃のいらか華奢 久保田万太郎 草の丈
より速く高きの覇者は瑠璃揚羽 筑紫磐井 花鳥諷詠
わだつみは雲放ちつぐ瑠璃揚羽 鍵和田[ゆう]子 浮標
ガラス戸を全身で打つ瑠璃*たては 木村久美子
ピッケルで指して目に追ふ瑠璃鶲 研 斎史
ラベンダー畑や夕日を瑠璃色に 青柳志解樹
ルリ貝の瑠璃ひびき合ふ夏館 石崎多寿子
一と所瑠璃色たもち滝秋冷 鍵和田[ゆう]子 未来図
一天の瑠璃を張りたり鵙の声 伊東 肇
一茎に龍髯の実の瑠璃七ツ 五十嵐播水 播水句集
一蝶に雪嶺の瑠璃ながれけり 川端茅舎
三ツ峠湖へと下る瑠璃鶲 峠素子
三角点瑠璃鶲ゐて声澄めり 山谷春潮
下京の仁王の肩の瑠璃蜥蜴 坪内稔典
中の橋過ぎて瑠璃鳴く高野かな 岩木あやこ(萌)
二株の葉牡丹瑠璃の色違ひ 西山泊雲 泊雲句集
五月冷ゆ薬師瑠璃光王の前 神尾久美子 桐の木
五色沼その瑠璃沼の明け易き 山口青邨
交るとき瑠璃鳥大き瑠璃と凝る 栗生純夫 科野路
仏唇のいと濃き方へ瑠璃揚羽 小枝香穂女
伸び縮む鳩の瑠璃首春隣 高澤良一 素抱
佐保川やペルシャ瑠璃透くいぬふぐり 小檜山繁子
写経机の単衣のをんな瑠璃の夏 河野多希女
冬の瑠璃蝶密着の翅開き初む 中村草田男
冬草の一つに瑠璃の玉を秘む 上村占魚 『石の犬』
出土せる坏の瑠璃いろ露けしや 青木道子
初秋を告げて湖水の瑠璃深し 今橋眞理子
北上の瑠璃に流れて雪晴るる 及川あまき
千姫の墓のあぢさゐ瑠璃深む 井上千恵子
去就いまだ地図より翔ちし瑠璃揚羽 河野多希女 月沙漠
嘲笑うための瑠璃色臭木の実 鈴木光彦
嘴上げて唄ふ瑠璃鳥軽井沢 伊藤敬子
噴煙の或る時瑠璃に大つつじ 長谷川かな女 牡 丹
囀に色あらば今瑠璃色に 西村和子 夏帽子
囀の機嫌の瑠璃に筆とむる 大橋敦子
囀りに色あらば今瑠璃色に 西村和子
囀りや雨止み瑠璃の夜明空 岡田日郎
四つ目垣見えかくれして瑠璃鶲 本木とし子
土砂降りに明けて朝顔の瑠璃ひとつ 水原秋櫻子
壷焼や瑠璃を湛へし忘れ潮 水原秋櫻子
夏潮の瑠璃しんしんと菊が浜 鈴木しげを
夏蝶の息づく瑠璃や楓の葉 水原秋櫻子
夢殿を立ち出でて逢ふ瑠璃柳 大橋敦子 匂 玉
大華厳瑠璃光つらら打のべし 川端茅舎
天壇の瑠璃の歳月秋の天 伊藤敬子
天壇の遅日の空の瑠璃瓦 福井圭児
天蚕虫瑠璃光りしてあるきけり 飯田蛇笏 霊芝
天高し飛ばねば見えぬ蝶の瑠璃 香西照雄 素心
天高し龍の踊れる瑠璃瓦 古賀まり子
奥の湯へすぐる岩の門瑠璃鳥高音 皆吉爽雨
子蜥蜴に泉がわかつ瑠璃の色 三谷昭 獣身
守門攀づまづ瑠璃一華咲くところ 岡田日郎
安達太良の瑠璃襖なす焚火かな 加藤楸邨
寒梅や瑠璃きはめたる塔の天 川澄祐勝
寸刀のごと苔にあり瑠璃蜥蜴 桂樟蹊子
就中縁まで瑠璃の朝顔や 久米正雄 返り花
尾の先の遅れがちなり瑠璃蜥蜴 片山由美子 風待月
尾を曲げて瑠璃の濃くなる糸蜻蛉 堀口星眠 樹の雫
屋根の上の瑠璃濃く木の芽ふきこぞる 川島彷徨子 榛の木
山の日の凛々として木の実瑠璃 内藤吐天 鳴海抄
山垣へ葡萄瑠璃光蕩揺す 木村蕪城 寒泉
山巓の雲離れゆく瑠璃の声 唐橋正伊
山影を抜けしとき瑠璃黒揚羽 高橋笛美
山葵咲く懸崖づたひ瑠璃鳥一羽 橋本鶏二
山門を入る瑠璃揚羽つるみつつ 松尾隆信
山陰の暗き杣路や瑠璃鶲 長谷川草洲
山風や瑠璃深めゆく式部の実 太田 蓁樹
岨の空瑠璃極まりて梅に翳 久米正雄 返り花
峡の水打つかはせみの瑠璃つぶて 平井さち子 鷹日和
崖すみれ神の遊びし淵瑠璃に 鍵和田[ゆう]子 未来図
嶺雲の影濃き朝を瑠璃鶲 小澤克己
川に野の空の瑠璃行く野分かな 小池文子 巴里蕭条
干葡萄瑠璃天蓋に星透き来 小檜山繁子
年守るとさても瑠璃香えんま香 藤田湘子 てんてん
底なし沼忽と瑠璃なす深山霧 鷲谷七菜子
引鶴として天涯の瑠璃に帰す 有馬草々子
引鶴の瑠璃美しく飛び去りぬ 川西加古
微風湧くなり朝顔の瑠璃の淵 高澤良一 寒暑
手にふれば瑠璃やくもりて初茄子 大江丸
散る照葉火口湖深く瑠璃なせり 角川源義
新雪の蔵王瑠璃光浴びて聳つ 小倉英男
日光月光瑠璃光如来花会式 窪田あさ子
日矢きはだつ楢幾樹過ぎ瑠璃鳥また鳴く 中戸川朝人 残心
春禽の瑠璃の羽立てて嘴曲ぐる 水原秋桜子
晩年や瑠璃色の飴口中に 塚本邦雄 甘露
晴雪に瑠璃なすわれの影法師 篠田悌二郎
曝涼の色鮮やかに瑠璃の杯 龍頭美紀子
月読の山は瑠璃晴れ花芒 粕谷容子
朝顔の瑠璃に愕く燕かな 原石鼎
木曽川の瑠璃なす渕の番鴨 小倉眞子
松風の声となりゆく瑠璃鶲 渡辺夏舟
枯原や溝よりたちし瑠璃鶲 銀漢 吉岡禅寺洞
枯芝にまじりし瑠璃の翅こぼつ 石井祥三
柿紅葉貼りつく天の瑠璃深し 瀧春一
梅雨の月光をましぬ瑠璃光院 山口青邨
檣に瑠璃燈懸けよ海の秋 芥川龍之介 我鬼窟句抄
止まらんと瑠璃糸とんぼ間合詰め 高澤良一 燕音
正月の雲のももいろ瑠璃光寺 上野さち子
殻を脱ぐ蝉生誕の翅の瑠璃 小原菁々子
母います瑠璃がしたたる茄子漬 田中束穂
毒蔓の実の瑠璃しるく爽気かな 飯田蛇笏 春蘭
氷片の瑠璃を流して最上川 松本進
汐浴びの声ただ瑠璃の水こだま 中村草田男「来し方行方」
沖膾天の遠きに瑠璃の山 松瀬青々
沢を吹く歯朶の嵐に瑠璃鶲 山谷春潮
深山蝶瑠璃虎の尾を選びたる 内山茂
深耶馬の空は瑠璃なり紅葉狩 杉田久女
清明の雨に光れる瑠璃瓦 古賀まり子
渡りきし鴛鴦に瑠璃なす雪の淵 小田 司
湖の瑠璃は掬べず水澄めり 今橋眞理子
湖瑠璃色揚羽は己が影脱けず 河野南畦 湖の森
源泉守る瑠璃鳥の艶みどりさす 田中水桜
漁やめて瑠璃の海底秋祭 百合山羽公 寒雁
瀞小春碧より瑠璃へ舟下り 落合水尾
灌頂や瑠璃瓶中の春の水 松瀬青々
燈心蜻蛉(とうすみ)は瑠璃一色の針とんぼ 高澤良一 素抱
爆心といふも瑠璃なす冬の空 堀内薫
牡丹の芽瑠璃の影生む雪の上 馬場移公子
犬ふぐり瑠璃濃き日なり素陶干す 中村 彌
玉虫のむくろのとはに瑠璃光り 浅井青陽子
玉虫の瑠璃色きよき寒さかな 細見綾子 天然の風
玉虫は夜の瑠璃より生まれしか 神尾久美子
理髪師の瑠璃の鏡にたつ卯浪 佐野まもる 海郷
瑠璃いろの蝶見失ふ滝の空 森藤千鶴
瑠璃かけす美し老後など欲しくなし 稲垣きくの
瑠璃てふは眼を洗ふ色犬ふぐり 村上杏史
瑠璃ながす空に一鳥石鼎忌 原コウ子
瑠璃のこゑ厚朴の葉脈ありありと 瀧春一
瑠璃の巣や二人静の咲くほとり 山谷 春潮
瑠璃の穂を吐きつぐ牡丹焚火かな 原 コウ子
瑠璃の空柿の枯枝の曲折に 瀧春一 菜園
瑠璃やなぎ名も美しき月照寺(松江) 角川源義 『冬の虹』
瑠璃光仏閻浮の闇は虫しぐれ 加藤楸邨
瑠璃光寺塔見上げてはやぶ椿 小平披露
瑠璃光院百日紅の花いまだ 田村了咲
瑠璃光院鳳仙花咲き人が住む 山口青邨
瑠璃啼いて天杉の闇渡りゆく 渡部利久子
瑠璃啼いて青嶺閃く雨の中 秋元不死男
瑠璃啼くや暁紅湖にさしわたり 小倉英男「磐座」
瑠璃啼くや浅間の天の底知れず 和泉千花
瑠璃堂に秋風を聴くばかりなり 小坂 順子
瑠璃天は固より照らふ紅梅も 草城
瑠璃揚羽わたしのにおい嗅ぎにこよ 鎌倉佐弓 天窓から
瑠璃揚羽蒼空の蒼持ち去れり 木内徹
瑠璃揚羽逢魔が刻を待ちゐたり 石寒太 炎環
瑠璃沼に滝落ちきたり瑠璃となる 秋櫻子
瑠璃沼に瀧落ちきたり瑠璃となる 水原秋櫻子
瑠璃沼の塵にひとしき水馬 長田等
瑠璃沼の暁け谺して黒鶫 伊藤いと子
瑠璃沼の水に瑕瑾の水すまし 伊藤孝一
瑠璃沼の瑠璃のさざなみ通し鴨 阿部子峡
瑠璃沼の瑠璃乱さずに通し鴨 岡部六弥太
瑠璃沼の瑠璃深めたる照紅葉 鎌田 茂
瑠璃沼の色より生まる糸蜻蛉 草野悦
瑠璃沼を高きより見る蔓手毬 小野宏文(橡)
瑠璃王の東西南北みずけむり 夏石番矢(1955-)
瑠璃盤となりて五月の海遠し 日野草城
瑠璃紺の身をさかしまに鯉の空 久保純夫 聖樹
瑠璃色にして冴返る御所の空 阿波野青畝
瑠璃色のニイスも何の破芭蕉 小池文子 巴里蕭条
瑠璃色の朝顏さくや松の枝 朝顔 正岡子規
瑠璃色の朝顏咲きぬ下厠 朝顔 正岡子規
瑠璃色の水を零せり柿若葉 真鍋つとむ
瑠璃色の海を秋待つ心とし 細見綾子
瑠璃色の空どこまでも冴返る 山田閏子
瑠璃色の空を控へて岡の梅 夏目漱石 明治三十二年
瑠璃色の虫の交めり梅雨晴間 ふけとしこ 鎌の刃
瑠璃草の花瞬かず巣立鳥 堀口星眠 営巣期
瑠璃草の見えずなるまで涼みけり 阿部みどり女
瑠璃草やしとしと曇る浅間山 前田普羅「春寒浅間山」
瑠璃菊や児と一字の塔かなし 西本一都
瑠璃蜆蝶紅蜆蝶ここより美き村か 香西照雄 対話
瑠璃蝶やながるゝごとく維摩経 筑紫磐井 婆伽梵
瑠璃蟻の蛹おそろし空海忌 塚本邦雄 甘露
瑠璃金銀玉虫にさへとほく生き 永高爽
瑠璃鳥に山荘の森貸してをり 伊藤敬子
瑠璃鳥のあそべり散るは紅空木 山谷 春潮
瑠璃鳥の居らずなりたるさるをがせ 不泥
瑠璃鳥の瑠璃隠れたる紅葉かな 原石鼎
瑠璃鳥の色のこしとぶ水の上 長谷川かな女 雨 月
瑠璃鳥の色を残し飛ぶ水の上 長谷川かな女
瑠璃鳥の色残し飛ぶ水の上 龍胆 長谷川かな女
瑠璃鳥の谿渡るらし古今集 角川春樹 夢殿
瑠璃鳥の鳴くほの暗き籠の中 藤井 俊一
瑠璃鳥ひびき戸口をふさぐ濡れ朝日 安江緑翠 『枯野の家』
瑠璃鳥や覗くカメラの中に鳴く 阿部竹子
瑠璃鳥澄める連山の夜をはがしつつ 宇咲冬男
瑠璃鳴いて湖おほらかにあけにけり 近藤貴美子
瑠璃鳴いて青嶺閃く雨の中 秋元不死男
瑠璃鳴きて靄の晴れゆく美女平 朝妻力「晩稲田」
瑠璃鳴くやなほ林中の夕明り 戸川稲村
瑠璃鳴くや一磐石に水くだけ 斎藤優二郎
瑠璃鳴くや日当りながら山の雨 鵜飼登美子
瑠璃鳴くや木洩れ日の散る石畳 大石昌代 『清見潟』
瑠璃鳴くや樹海をはしる霧迅き 吉澤 卯一
瑠璃鳴くや渓に横たふ杉丸太 加納圭子
瑠璃鳴くや熔岩の湿りに掌をおけば 星野麦丘人
瑠璃鳴くや矢野の神山松荒れて 高井北杜
瑠璃鳴くや雨降つて朝みづいろに 大野林火
瑠璃鳴くや頂きけむる越後駒ヶ岳 佐藤草豊
瑠璃鳴けば樹海の霧の澄みゐたり 田中由貴子
瑠璃鳴けば蓼科に雲厚くなる 秋山花笠
瑠璃鳴ける雪崩跡日の洽しや 岡田貞峰
瑠璃鶲てのひらに来て指つつく 阿部ひろし
瑠璃鶲ふと筆を置く山日記 安田和義
瑠璃鶲一姿一声われを招く ひらきたはじむ
瑠璃鶲姫川白き波猛る 上埜是清
瑠璃鶲藩士の愛でし扇谷 詫摩まつ子 『卒寿』
田楽の青串こげて瑠璃のこゑ 角川照子
異境かな瑠璃遍照の桔梗咲く 小林康治 四季貧窮
疲れ鵜の瑠璃の泪目なせりけり 石川桂郎 高蘆
白山に月傾くと瑠璃鳴くや 角川源義 『口ダンの首』
白檜曾の樹海岩荒れ瑠璃鶲 岡田 日郎
白瑠璃碗緑瑠璃坏美し葡萄かな 尾崎迷堂 孤輪
白露や瑠璃光薬師目を守れ 龍岡晋
白露や瑠璃空に生きて逆流る 石原八束
白馬鑓雪まださはに瑠璃巣立つ 澤田緑生
盛り上る藍の瑠璃光染始 由木みのる
真つすぐに朝餉の煙瑠璃来鳴く 右城暮石 声と声
眼の前にひるがへる瑠璃夏燕 川崎展宏
短夜の烏に瑠璃のありしこと 正木ゆう子 静かな水
磯鵯の襟首瑠璃に礁空 高澤良一 随笑
神の山瑠璃鳥に風引きしまる 目貫るり子
秋さむや瑠璃あせがたき高嶺草 飯田蛇笏 春蘭
秋しじま瑠璃に沈める竹生島 伊藤敬子
秋光が秋光を呼び瑠璃の碗 狹川青史
秋冷やか湖円錐に瑠璃深め 岡田貞峰
秋冷や瑠璃色尽す山上湖 宮田俊子
秋霞みしてゐる瑠璃鳥や朴の先 飯田蛇笏 霊芝
空が日を浴びて二月の瑠璃日和 中村草田男
空の瑠璃ここにしたたる竜胆花 太田鴻村 穂国
空は瑠璃 沙羅咲かすべく 散らすべく 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 夢見沙羅
糸遊にフラスコが瑠璃と見ゆるかな 松瀬青々
納骨の膝つけば瑠璃いぬふぐり さぶり靖子
純粋に木の葉ふる音空は瑠璃 茅舎
素潜りや瑠璃の魚見てすぐやめし 小池文子 巴里蕭条
紫陽花の瑠璃に面伏せ匂ひなし 川崎展宏
紫陽花の瑠璃の遠心又求心 林原耒井 蜩
紫陽花の瑠璃凝れば地に牽かれけり 林原耒井 蜩
網引くや闇に瑠璃なす蛍烏賊 池田笑子
綿虫の一点の瑠璃他郷なる 山本くに子
綿虫の瑠璃光曳きてとぶことよ 大橋敦子
翡翆の一閃に瑠璃残しけり 冨田みのる
耕耘にくもるつゆくさ瑠璃あせず 飯田蛇笏 春蘭
臘梅に天冥きまで瑠璃きはむ 原柯城
臭木の実群青といひ瑠璃といひ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
色鳥の抜羽ひろひぬ瑠璃濃ければ 稲垣きくの 牡 丹
芝枯れて瑠璃照壁のごと海は 山口誓子
花合歓や凪とは横に走る瑠璃 中村草田男
花散るや瑠璃の凝りたる夢の淵 阿波野青畝
芽吹きたる枝から枝へ瑠璃鶲 青木政江
草の実の瑠璃色燦と枯れはじむ 稲垣きくの 牡 丹
荒鵜の目瑠璃深めつつ春逝かす 北見さとる
萩咲きて瑠璃光如来在します 大橋敦子 匂 玉
萩紫苑瑠璃空遠く離れけり 飯田蛇笏 霊芝
薪割つてをれば濃ゆしや空の瑠璃 川島彷徨子 榛の木
薬喰座右に瑠璃の砂糖壺 妻木 松瀬青々
藪漕の間近に瑠璃鳥の騒ぎけり 西尾美穂子(山茶花)
藻の花やこれも金銀瑠璃の水 重頼「佐夜中山」
虫籠を覗けば何と瑠璃蜥蜴 高澤良一 素抱
虹立ちて十和田湖の瑠璃濃かりけり 堤剣城
蛇の髯の實の瑠璃なるへ旅の尿 中村草田男
蜩や金色仏に瑠璃が見ゆ 加藤知世子 花 季
蝉の瑠璃ちらっと脳裏掠めけり 高澤良一 随笑
蝋燭の焔の瑠璃や夏の暮 山西雅子
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ 古賀まり子 洗 禮
行きし瑠璃鳥またかへしきぬ山葵澤 橋本鶏二
衣かけて岩に銭おく瑠璃鶲 古舘曹人 樹下石上
見えて鳴く瑠璃鳥か樹海の立枯に 皆吉爽雨
誰がための深き瑠璃いろ竜の玉 鈴木二郎
谷の出す雲の徒労や瑠璃鶲 中戸川朝人 尋声
谷川岳雪解滂沱と瑠璃ながる 千代田葛彦 旅人木
豊年の瑠璃空つゞる雀かな 久米正雄 返り花
赤松を吹き過ぐる風瑠璃鳴けり 西 苓子
赤蜻蛉天の瑠璃には縫目なし 伊丹丈蘭
走り来て波打つ腹や瑠璃蜥蜴 早川暢雪
足もとは瑠璃色淡きいぬふぐり 黒谷光子
跼まればここ瑠璃世界いぬふぐり 鈴木貞雄
遊船の瑠璃まぶしがる二人づつ 文挟夫佐恵 雨 月
郭公や瑠璃沼蕗の中に見ゆ 水原秋櫻子
野の病舎春りんだうの瑠璃そよぐ 古賀まり子
野葡萄の瑠璃さんざめく風日和 文挾夫佐恵
金銀瑠璃*しゃこ瑪瑙琥珀葡萄かな 松根東洋城
金魚田や瑠璃を惜しまず螢草 石田あき子 見舞籠
鉛毒の女形瑠璃湯にもがり笛 宮武寒々 朱卓
陽を砕く貝殻のみち瑠璃あそぶ 堀 葦男
雁の声生れゆるぎなき空の瑠璃 木下夕爾
雨のなか瑠璃やなぎ咲き夕ごころ 角川源義 『西行の日』
雨打つや必死の瑠璃のほたる草 堀口星眠 営巣期
雨晴れて末黒芒に瑠璃もどる 立野丘秋
雪中に瑠璃冴えにけり竜の玉 荻野泰成
雪嶺に重なりて瑠璃きつき峰 内藤吐天 鳴海抄
雪降るや瑠璃光寺池鏡なす 合田岩雨
霜いたるつゆぐさは瑠璃固めゐて 松村蒼石 雪
霜鏡全天瑠璃をなせりけり 野見山朱鳥
霧氷林日を得て沼の瑠璃極む 角川源義
露をのむ瑠璃鳥や涅槃の楢林 永田耕衣
露噴いて夜明け瑠璃なす観世音 加藤知世子 花寂び
露草のひとつぶの瑠璃天の幸 柴田白葉女
露草の瑠璃いちめんの昼寝覚 木村蕪城 一位
露草の瑠璃や勲記は筒の中 飯田龍太
露草の瑠璃より明くる紀の山河 松本 幹雄
露草の瑠璃をとばしぬ鎌試し 銀漢 吉岡禅寺洞
露草の瑠璃を寝覚の床の道 山口青邨
露草の瑠璃一といろの草の原 武原はん女
青葉蔭薬師瑠璃光の出湯とぞ 高橋睦郎 金澤百句
青鷺の影の揺れゐる瑠璃の湖 畠 友子
風にうまみ梢よりこぼる瑠璃の声 河野多希女 月沙漠
風入るる藤村旧居瑠璃鳥のこゑ 堀口星眠
飛花たかく瑠璃空風は濁りけり 西島麦南 人音
驟雨来て瑠璃岩盤に萩散りぬ 沢木欣一 雪白
鬼やんま瑠璃の目玉を廻しけり 都筑智子
鱒跳ねる瑠璃やその値は妻ささやき 加藤知世子 花寂び
鳥渡る瑠璃陶片のさまざまを 小檜山繁子
鳩の首瑠璃光放つ朱夏の宮 加藤耕子
鳴き合ふ時鴨の青頸瑠璃含む 知世子
鴛鴦や瑠璃を沈めし明けの瀞 小川斉東語
鵙の翔つ雲間瑠璃なり炎天寺 羽田貞雄
黄落にまぎれはせずて雉子の瑠璃 細見綾子 黄 炎
黒髪山は神在す山瑠璃鳴けり 小山陽子(杉)
龍の玉生と死の間瑠璃かさね 河野多希女
●水晶 
きさらぎや水晶磨く山の町 福田蓼汀 秋風挽歌
はづし置く水晶の数珠みどりさす 上野さち子
むらさきに水晶山の冴え返る 友岡子郷 遠方
むらさきも水晶さむし買始 渡辺水巴
わが天のいづこに隠れ水晶のこゑよ初秋の茅蜩(かなかな)見えず 佐竹弥生
人の手に水晶の数珠かいつぶり 磯貝碧蹄館
千本水晶千本しめぢしめぢ買ふ 百合山羽公
夜の秋や水晶買ひに宿を出る 高橋淡路女 梶の葉
太液に水晶瓶を洗ふ秋 寺田寅彦
小春山羊に水晶の鬢無臭の糞 香西照雄 対話
工房に目覚むる水晶桃の花 磯貝碧蹄館
年立てる闇水晶に入るごとく 鳥居おさむ
心太水晶簾と賛すべく 寺田寅彦
文鎮の紅水晶や十七夜 籏こと
日雷水晶岳を通りをり 山田春生
春の夜の水晶包む錦かな 春の夜 正岡子規
毛のものに乳児水晶の涎する 山口波津女
水晶に朝日かゝやぐ氷柱哉 氷柱 正岡子規
水晶に稻妻うつる夕かな 稲妻 正岡子規
水晶のいはほに蔦の錦かな 蔦 正岡子規
水晶のはんこにうつる柿若葉 北口秀子
水晶の一面光り渡り鳥 小川軽舟
水晶の中のけむりや暮の秋 波多野清
水晶の商談壺に梅一枝 木村蕪城 一位
水晶の国へ母置き二月果つ 鳥居美智子
水晶の国やみなぎる鯉のぼり 大木あまり 雲の塔
水晶の大塊に春きざすなり 小澤實(1956-)
水晶の如くに湧きて泉かな 内田じすけ
水晶の山路分け行く清水かな 蕪村「落日庵句集」
水晶の念珠つめたき大暑かな 日野草城「青芝」
水晶の念珠に映る若葉かな 茅舎
水晶の念珠ふれたる昼寝覚め 中嶋秀子
水晶の散らばる夢も首夏の光(かげ) 小檜山繁子
水晶の数珠雪山にかげなき日 柴田白葉女 花寂び 以後
水晶の珠數の玉なり蓮の露 露 正岡子規
水晶をもはや産まざる山粧ふ 藤田湘子 てんてん
水晶を包む天鵞絨山眠る 朝吹英和
水晶を夜切る谷や時鳥 泉鏡花
水晶を頸にをみなの肌は夏 文挟夫佐恵 黄 瀬
水晶宮(クリスタル・パレス)をとかすおぼろかな 筑紫磐井 婆伽梵
水晶岳更けて月下に雲払ふ 岡田日郎
水晶岳望の夜雲を脱ぎ聳ゆ 岡田日郎
水晶岳秋風湧けば雲まとふ 岡田日郎
水晶岳越えて飛び去る月の雲 岡田日郎
水晶岳雲脱ぎ望の夜を聳ゆ 岡田日郎
水晶島樺の樹氷の間に見ゆ 佐藤 哲
渾々と水晶の水唐がらし 川崎展宏
漆黒の水晶岳へ星飛べり 山下智子
潜る鵜の水晶島は結氷す 古館曹人
瀧を見に水晶を売る店通る 中戸川朝人 星辰
白雨や水晶のずずのきるゝ音 几董
目水晶入学の子のあはれかな 川端茅舎
紫水晶輝りに春暁嶺の霧氷 文挟夫佐恵 雨 月
蓮葉に水晶の玉ぶちまけて 高澤良一 随笑
虹の中雨飛び水晶岳聳ゆ 岡田日郎「赤日」
行く年の水晶球の中の虎 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
赤牛岳に火星水晶岳に月 岡田日郎
逃水の涯に氷の色水晶島 平井さち子 鷹日和
閻王の水晶の目を煤払 長谷川櫂 蓬莱
雪原に沼あり水晶水湛ふ 岡田日郎
霧に透く水晶蘭を山より得 栗生純夫 科野路
霧の夜の泊り水晶の谷とほし 石橋辰之助 山暦
霧ひくゝ夜々水晶の谷とざす 石橋辰之助 山暦
黄葉かげろふ水晶谷もぐひんかな 日夏耿之介 婆羅門俳諧
●玉 
もろこしの天の勾玉かみくだき 上野泰 佐介
出土せる勾玉秋思深めけり 中川博秋 『加賀野』
勾玉と同じ曲りの青山田 茨木和生 木の國
勾玉に春のくらさの孔ひとつ 猪俣千代子
勾玉に秋風かよふ穴一つ 野見山ひふみ
勾玉のはだらの青に春立ちぬ 龍男
勾玉のひでり胡瓜を折りて食ふ 赤松[けい]子 白毫
勾玉のみどり恋しきなづな粥 野見山朱鳥
勾玉の中に醒めたる秋の雨 高野ムツオ 雲雀の血
勾玉の寝息がまじる冬霞 平松彌榮子
勾玉の慈姑泥より掘り出せり 林徹
勾玉の春月出でよ石舞台 高橋克郎
勾玉の欠けし断面霜のこゑ 野見山朱鳥
勾玉の深みどりなる梅雨入かな 秋篠光広(朝鳥)
勾玉の牙に懸蔓猪を舁く 橋本鶏二
勾玉の秋意人らは海より来 斎藤梅子
勾玉の穴の不揃ひ櫻冷え 都筑智子
勾玉の紐を結べる秋のくれ 原裕 『出雲』
勾玉の転がるたびに山眠る 高野ムツオ 雲雀の血
勾玉は初めのかたち雪降れり 野見山ひふみ
勾玉は胎児のかたち建国日 合屋多久美
勾玉は誕生の形日脚伸ぶ 川崎ふゆき
勾玉や摩訶曼陀羅華曼珠沙華 鈴木六林男 悪霊
勾玉をさがすころとはなりにけり 阿部完市 その後の・集
勾玉を首にしめつけ亀鳴くや 本間まん
勾玉出土森にふしぎなカンナ咲き 神尾久美子 桐の木
勾玉管玉四散ののちの青嵐 高野ムツオ 鳥柱
南風や勾玉蔵す美術館 坂間晴子
吹雷く夜の勾玉の穴あやしけれ 鎌倉佐弓
唐辛子勾玉吊りに飛鳥みち 長谷川翠
啓蟄や勾玉は尾に力こめ 八染藍子
夏富士の裾に勾玉ほどの湖 杉 良介
居待月勾玉光りしてをりぬ 佐久間慧子
恋猫の恋の果てなる勾玉寝 大石悦子 群萌
焼跡に勾玉ほどの物芽出づ 石橋萬里
短日の勾玉ほどの日差かな 新谷ひろし
神の旅この勾玉を落し物 野村喜舟 小石川
緑もて勾玉すずし墳より覚め 荒井正隆 『父嶽』
芭蕉布の胸に勾玉連なれり 呉屋菜々
誰を主の勾玉すずし遠蜩 荒井正隆 『父嶽』
青き勾玉ならむ水輪のなかの冬 櫛原希伊子
青蛙青し勾玉の出土跡 大熊輝一 土の香
鞆の浦勾玉ほどの月拾ふ 柴田奈美
饅頭の勾玉晴れぞ秋景色 中尾寿美子
鬱々と眠る勾玉鳥帰る 高野ムツオ 雲雀の血
匂玉に春のくらさの孔ひとつ 猪俣千代子
匂玉に雲の住みつく半夏生 原 朝子
匂玉の慈姑泥より掘り出せり 林徹
匂玉をかけし頸なお春日に 長谷川かな女 牡 丹
夏富士の裾に匂玉ほどの湖 杉良介
斑鳩の蟷螂匂玉色の瞳よ 大橋敦子
たんぽゝや一天玉の如くなり 松本たかし
ひもろぎに玉のごとき日初蹴鞠 大橋敦子 手 鞠
めをと鳰玉のごとくに身を流す 加藤知世子 花 季
咳き込めば我火の玉のごとくなり 川端茅舎(1897-1941)
夜の鴨玉の如くに浮かびをり 岸本尚毅 鶏頭
日は玉のごと中天に合歓の花 岩岡 中正
早苗とるその根まろめて玉の如 皆吉爽雨
木の葉髪青天玉のごとくにて 谷野予志
火の玉の如くに咳きて隠れ栖む 川端茅舎
炎天下歯塚は玉のごとくなり 成瀬正とし 星月夜
玉のごとき淋しさに在り桜狩 長山あや
玉のごとき稚を浮かせて初湯殿 茨木和生
玉のごと受けてざらつく寒卵 水野宗子
玉のごと囀る一羽峡の空 深見けん二
玉のごと玉津島ある朧かな 稲垣美知子
玉の如き人室にあり寒紅梅 寺田寅彦
玉の如き小春日和を授かりし 松本たかし(1906-56)
玉の如き日を賜れり秋彼岸 日美井雪
玉の如く夜光る子は螢かな 会津八一
玉の如く睡らんと鶴頸たたむ 小川原嘘帥
病なく玉の如しや羽子日和 上野泰 春潮
白牡丹玉の如くに蕾抱き 川口咲子
白玉をまことの玉のごとく盛り 木内怜子「繭」
白菊に咫尺し玉の如き夜を 阿部みどり女
神の如花のごと玉の如くこそ 会津八一
秋天や鴉の声は玉のごと 高橋淡路女 梶の葉
稲妻や湯船に人は玉の如 寺田寅彦
空ふかく栗生れいづ玉のごと 角川源義
算盤の玉のごとくに吊し柿 高島征夫
花満ちて玉の如くにふるへをり 岸本尚毅 舜
落椿玉の如くに弾けたり 岸本尚毅 選集「氷」
落葉拾ふ玉のごとくに落葉拾ふ 九鬼あきゑ
葉牡丹を火玉のごとく幹に寄す 古館曹人
蛤や玉の如くに洗はるゝ 高田一餅
裘湯呑を玉のごとく掌に 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏(1885-1962)
陽を受けて滝の飛沫の玉のごと 関森勝夫
風吹いて毛玉のごとき雛がゐる 友岡子郷 風日
食客津波須を晒うて曰く冠の玉の如し 尾崎紅葉
あぢさゐ忌玉なす雨は心にも 岡本まち子(馬酔木)
六月の玉なす雨の木は出雲 永末恵子 発色
古町や玉なす柳絮地を走り 鈴木千恵子
名水の玉なす雫初日さし 岡本まち子
噴水の玉なす光こどものくに ふじむらまり
妹山の玉なす楠の若葉かな 前田普羅
御降りの玉なすフロントガラスかな 山内遊糸
指先の血の玉なすも水の秋 池田澄子 たましいの話
桑の芽に郷里玉なす夕日射 飯田龍太
泥田の夫婦寄れば玉なす汗見合う 細谷源二
牡丹見る双手がこひに玉なすを 井沢正江
玉ナス涙ノナカノ完全静止ノ精子 夏石番矢 人体オペラ
秋彼岸湧いて玉なす水の音 川崎展宏
節穴の冬日玉なす酒母に射す 桂樟蹊子
路地路地のひかり玉なす返り花 原裕 新治
玉のやうな子をたび給へ梅の神 梅 正岡子規 
●珠 
*まるめろを斯く掌中の珠とせり 山田みづえ
あかあかと寶珠のごとき月のぼる 角川春樹(1942-)
あかぎれの指そろばんの珠弾く 土屋保夫
あぢさゐの嫩き珠うつ青嵐 五十崎古郷句集
かがやきて珠の如くに浮寝鳥 井早雪子
かげろふや破風の瓦の如意宝珠 許六 二 月 月別句集「韻塞」
ころげゐる芙蓉の珠や月明り 高橋淡路女 梶の葉
さかづきを珠なしあふる雪見酒 福田甲子雄
さしこぼす水珠なせり寒薔薇 西島麦南
さし溢す水珠なせり寒薔薇 西島麦南 人音
その一会珠と抱き来ぬしづの女忌 舛田登美子
たぎる湯の中に珠みゆ山桜 長谷川櫂 天球
たそがれの湖の白鳥珠となる 栗原 政子
だまされて珠買ふ人や市のどか 石島雉子郎
てんたう虫とまらせて夫珠の如 小池文子 巴里蕭条
てんと花父祖の山河を珠として 脇本千鶴子 『てんと花』
なかぞらに珠割り急ぐ辛夷かな 脇田裕司
ひしひしと立つや墓場のまん珠さげ 正岡子規
ぼうたんの花芽宝珠といふべかり 高木良多
まだ珠の泰山木の白蕾 八木林之介 青霞集
みせばやの珠なす花を机上にす 和知 清
みほとけの忘れし宝珠ふきのたう 嶋田麻紀
もし降らば千珠投げませ祭の日 嘯山
やまみづの珠なす蕗の葉裏かげ 飯田蛇笏「霊芝」
バザールの宝珠のごとき石榴かな 下村梅子
一杯の水珠なせり夏風邪 飯田蛇笏 霊芝
下萌ゆる小家を珠と妻みがく 篠田悌二郎 風雪前
今年まだ珠のごとしや掌に乗りて 宮津昭彦
今日といふをはりの梨を夜の珠 古舘曹人 能登の蛙
今日見たる毒消売や珠の如 石田波郷「雨覆」
元旦 雲もなき珠の如き空の うちに居り 荻原井泉水
冬空や宝珠露盤は寺の屋根 野村喜舟 小石川
切り結ぶ投松明の珠の火よ 後藤秋邑
刈田跡白鳥の日の珠となり 橋本榮治 麦生
初富士や母を珠ともたとふれば 中村汀女
初雪や橋の擬玉珠に鳴く鴉 初雪 正岡子規
初髪や珊瑚の珠を沈め挿す 小泉良子
初鮎や酒は珠なす舌の上 三宅句生
午の蛍ゆびわの珠にすきとほる 泉鏡花
参籠所凝宝珠の花に行衣干す 稲富義明
口中の珠は白玉回復期 椎野美代子
古代蓮宝珠のごとき蕾あぐ 伊東とみ子「古代蓮」
吾亦紅霧の日輪珠となる 植山露子
喪の合唱白く珠なす薔薇の雨 三谷昭 獣身
喰積やぎんなんならぶ珠のごと 八木林之介 青霞集
噴煙の珠をつくれる小春かな 西本一都 景色
噴煙も珠冬麗の中天に 中村汀女
囀や春菊一花珠光る 河東碧梧桐
埋火の珠となるまで神楽宿 神尾久美子 桐の木
埋火を珠と抱ける余生かな 北光星
夕づつの珠と懸りて菊枯るる 山本歩禅
夕みぞれ干満珠寺のむかしかな 久保田万太郎 流寓抄
大根を売る算盤の五つ珠 丁野 弘
天道虫バイブルに来て珠となりぬ 酒井鱒吉
妻籠路や宝珠ひねりの栗きんとん 高島筍雄
宝珠なす牡丹散華をなす牡丹 伊藤柏翠
宝珠追うくんちの竜やドラ響く 太刀川虚無
富貴寺の宝珠に弾む巣立鳥 武田綾子
寒四郎火星を珠とかがやかす 宮津昭彦
寒梅の珠抱くごときふふみかな 山内遊糸
寒雀氷の珠を啄みぬ 松瀬青々
山の端に宝珠のまるき彼岸かな 青畝
山撓宝珠銀の蕊吐き秋風に 木村蕪城 一位
山枯れて三日月珠を抱きけり 岡田日郎
山芍薬霧より白き珠を解く 木下ふみ子
山蚕は山日の珠のひとつかな 中澤康人「山居」
帯留の珠一つ年暮るるかな 岸本尚毅 選集「氷」
待ち針の珠春蝉のいつよりぞ 友岡子郷 未草
待春や弥勒の指の珠光り 森田朋子
御講凪満珠干珠の島浮かぶ 龍頭美紀子
忙中の閑を珠とす寒椿 平田すみ子
悴みてあやふみ擁く新珠吾子 能村登四郎 咀嚼音
愛をもて割れば珠なす寒卵 山口波津女 良人
折りとつて珠のゆれあふ吾亦紅 高橋淡路女 淡路女百句
抱く珠の貝のあはれを聞く冬夜 中村汀女
掌にのせて宝珠のごとき富有柿 角川春樹
掌上の珠のごとくに春の城 富安風生
掌中に一珠の螢旅稼ぎ 上田五千石 田園
掌中に珠のひかりや木の実独楽 近藤一鴻
掌中の珠とまろめて蓬餅 長谷川かな女
掌中の珠を見せむと解く牡丹 檜 紀代
数へ日の火種を珠のごとく埋め 佐野美智
数へ日や一日づつの珠の晴 桂信子 花影
日に月に牡丹宝珠を掲げ立つ 加藤耕子
早梅はまことに珠を弄しけり 松瀬青々
明け来る白鳥の珠ひとつひとつ ほんだゆき
明月は南に得たり仏頂珠(ぶっちょうしゅ) 服部嵐雪
明月や満珠千珠の島二つ 比叡 野村泊月
春の夜や歯に咬みあてし貝の珠 幸田露伴 江東集
春の風ガラスを珠にふくらます 坂本ひろし
春野ふむや珠履にもつるる日遅々たり 飯田蛇笏 山廬集
暖房やされど珠江の水の荒レ 久保田万太郎 流寓抄
月の中わが魂いまは珠なして 桂信子 草影
月は珠雲の白竜これをとる 荻原井泉水
月光の珠のごとしや漬菜石 能村登四郎
月夜なる千珠の辛夷吹かれたつ 石原八束 『藍微塵』
木洩れ日の珠と輝やく秋日傘 山内遊糸
朴の花会式に宝珠解かむとす 大橋敦子 匂 玉
朴咲けり不壊の宝珠の朴咲けり 能村登四郎「芒種」
杣の子の掌中の珠兜虫 末氷てる
枯葎落日の珠しづめたる 鷲谷七菜子 花寂び 以後
橇の子に日射せば珠の声放つ 板持玲子
橘の黄を珠として弓矢神 桂樟蹊子
残菊や老いての夢は珠のごと 能村登四郎
毬よ珠よとあぢさゐの咲ける間は 鷹羽狩行 平遠
水芭蕉に黒き珠置くアイヌの眸 長谷川かな女 雨 月
河鹿とはまろべる珠のごときもの 平井照敏
沼面出し蓮の宝珠の天指せる 石井とし夫
洗ひ上げ蕪は宝珠提げゆけり 藤田 宏
深山鴬今掌に宝珠のにぎりめし 加藤知世子 花寂び
温泉を珠と育てて弥生鶴の里 古舘曹人 砂の音
滝千筋天心の日は珠をなす 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
滴りを珠と抱きてひかりごけ 山田みづえ
澄むと言ひて宝珠露盤を仰ぎけり 下村槐太 天涯
焼きそめし山ふところの火の宝珠 皆吉爽雨
熟柿すすり珠のごとくに夜の刻 金子篤子
牡丹の珠ふくみ汝が誕生日 藤岡筑邨
玉の緒を珠とあたためゐる初湯 大橋敦子
玉取祭櫓に宝珠高く吊り 石谷秀子
珠あげる噴水廻り罌粟の花 龍胆 長谷川かな女
珠と受く医師のひと言菊日和 島村久枝 『矢作古川』
珠と思ふ初妊りの娘の汗は 勝又寿々子 『春障子』
珠と抱く嬰の眠りや小鳥来る 青嶋三千代
珠なす乙女人待つ寒の撞球場 塚本邦雄 甘露
珠のごとき日の寵を受く七五三 伊東宏晃
珠のごとき牡丹の冬芽御僧に 大熊輝一 土の香
珠のごと生まれ冬日の寵を受く 伊東宏晃
珠の白蛇は置物にして橙固し 長谷川かな女 花寂び
珠は鬼灯砂糖は土のごとくなり 山口素堂
珠ゆらぐ神杉や若葉雨霽るる 長谷川かな女 牡 丹
珠をなすこゑの雲雀や海に出て 中拓夫
珠大き算盤使ひ夜の長き 栗城節子
珠欲しき日なり雪解のはじまりぬ 細谷源二 砂金帯
甘藍の珠くもるなり霧のあと 藤原たかを
病友と珠なす海の春陽享く 飯田龍太
白波の珠ところがる大暑かな 浅井一志
白牡丹さやけき珠のつぼみかな 高橋淡路女 梶の葉
白粥に宝珠とおとす寒卵 谷野予志
白鳥を珠と浮かべて山の湖 山崎秀月
盛り上がり珠となる血や十二月 渡辺鮎太
真上なる珠の三つ星寒ざくら 及川貞 夕焼
石仏にあぢさゐの芽の幾宝珠 福永耕二
砂珠につけて大きな松露かな 原田浜人
碓氷の灯花野の珠とつゞり見ゆ 長谷川かな女 雨 月
神迎ふ珠のようなる嬰抱きて 村上和子
秋の蛇ネクタイピンは珠を嵌め 波多野爽波 『湯呑』
秋山に得し滝一つ珠のごと 川畑火川
秋燈下掌をひらき珠なかりけり 上野泰 春潮
算盤の夜光の珠や恵比寿講 尾崎紅葉
紅梅や筥を出て行く空気の珠 永田耕衣 闌位
紅芙蓉珠のごとくにうち萎み 岩田由美 夏安
縁はなし冬日珠なす晩年など 安住敦
美き言葉産めよ葡萄の珠食みて 柴田奈美
老鴬のさうともさうとも珠のこゑ 高澤良一 随笑
老鴬や珠のごとくに一湖あり 富安風生(1885-1979)
老鴬を聴く暇珠とあたたむる 西村和子
老鶯や珠のごとくに一湖あり 風生
老鶯を聴く閑(ひま)珠とあたたむる 西村和子 かりそめならず
聖五月掌に水溜めて珠となす 鈴木河郎
聯珠の灯氷湖をかこみ遠ちに切れ 福田蓼汀 秋風挽歌
肩越しに海珠なせる春焚火 原裕 青垣
胸中に抱く珠あり空ッ風 富安風生
胼ぐすり素顔にもどる珠の刻 白澤よし子
芍薬の珠のひとつが珠のまま 吉田みち子
芍薬の珠や仔馬もつやゝかに 加藤かけい
芍薬の珠持ち上ぐる確かさよ 堀古蝶
芍薬の珠日に熱す根本寺 高澤良一 寒暑
芙蓉一花まづ咲き珠の小家建つ 能村登四郎 枯野の沖
花篝宝珠のごとく燃ゆるかな 徳永山冬子
茎の石珠と洗ひて眺めけり 細川加賀 生身魂
草清水太陽珠と冷されて 斎藤正
荒梅雨や珠抱く貝のごと睡り 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
菊冷ゆる夜更は珠のわが時間 福永みち子
落葉松の珠がほぐれし去年の径 普羅
蓮根掘る泥百姓に珠なす日 有働亨 汐路
蔓ひけばこぼるゝ珠や冬苺 杉田久女
薔薇の日々晩婚珠と妊もりて 黒坂綾子 『黙契の虹』
蛇いちご珠とうづもれ畦を塗る 皆吉爽雨
蜘蛛の囲に勿来の霧の珠なせり 岡田壮三
行春や珠をふくみて月纖し 橋本鶏二
貝寄風やじゆごんのおならは銀の珠 大住日呂姿
貧に誇る我に月の如き寶珠あり 月 正岡子規
賜はりし珠の命や月今宵 伊東宏晃
身を飾る珠一つ欲し紅葉の夜 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
迎春句珠の如くて遺詠かな 下村ひろし 西陲集
遠き白鳥珠とつつみて雪降れり 古賀まり子 降誕歌
郭公の日は夕星を珠となす 古館曹人
重陽の栗を琥珀の珠と煮たり 秋櫻子
野分すや秘めて嘆きも珠に似る 佐野美智
雁瘡の頭なれど無垢の珠の子よ 柴田白葉女
雪の中珠や埋め去る狐かな 久米正雄 返り花
雲珠桜満開にして花供養 森澄雄
霜除けて拾ひし珠や掌に赤く 長谷川かな女
霰敷く干満珠寺をたもとほる 川崎展宏
露微塵忽ち珠となりにけり 川端茅舎
露霜や老は珠とも鋼とも 根岸善雄
額の芽の珠の如きがほぐれそむ 秋櫻子
風止みて巨珠(おおたま)となる家桜 高澤良一 寒暑
飼屋今なしをだまきの花珠こぞり 加藤知世子 花寂び
馬具の名の雲珠清らなる桜これ 後藤比奈夫
鬼灯の枯れし網目の中に珠 横山房子
鳥渡る山湖の張りは珠をなし 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
鳴る潮に干満珠寺の椿ふるふ 能村登四郎
龍の珠、信じると騙される 孤 舟
龍の髯ふかきに珠を育てゐし 岸風三樓
●アメジスト 
三月の光例へばアメジスト 保坂リエ
アメジスト染まれば恋も終わりかな 筑紫磐井
●翡翠 
よべの漁つとめたる鵜の翡翠の目 森田昇
三月やうちがは霽れてゆく翡翠 正木ゆう子 静かな水
冬ざれや翡翠を洗ふ越の海 松永千鶴子
冬浪の立ち上るとき翡翠色 高木晴子
冬瓜の翡翠に透けて母の味 長谷川祥子
屋摩す雪妻は翡翠も売るべかり 齋藤玄 『玄』
晩涼や翡翠に替へし耳かざり 原田青児
月餅の箱さげ翡翠の指環はめ 保田白帆子
涅槃図に翡翠の色さがしをり 大島清子
空蝉の琥珀を抜けし翡翠かな 五島高資
翡翠研ぐ石冷やかに割れにけり 阿波野青畝
衣更えて母の形見の翡翠さす 立田順子
●クリスタル 
クリスタルの鳥の向き替へ夜の秋 中戸川朝人 尋声
クリスタル砕けたるごと夕立雹 関森勝夫
恣意棄てに来し春潮のクリスタル 松本千鶴子
水晶宮(クリスタル・パレス)をとかすおぼろかな 筑紫磐井 婆伽梵
●瑪瑙 
めでたさの瑪瑙のいろの氷頭膾 大石悦子 群萌
何処も秋で 光を量る 瑪瑙細工師 伊丹公子 メキシコ貝
冬没日瑪瑙の中に富士は凍て 永井龍男
塀の蔦瑪瑙いろなる一、二葉 高澤良一 素抱
日本海生まれの生涯 瑪瑙彫る 伊丹公子
春の闇瑪瑙をひとつ孕みけり 鳴戸奈菜
春光や瑪瑙いろなる桃のやに 久保より江
春光や瑪瑙を刻む刀のさき 会津八一
春光や瑪瑙色なる桃のやに 久保より江
春月に瑪瑙色あり大伽藍 森澄雄
柘榴ちつて珊瑚瑪瑙をしく庭よ 村上鬼城
梅折るや瑪瑙のごとき指の股 室生犀星 犀星發句集
瑪瑙みがく遠敷の里の蓼の花 白井真貴
神代より瑪瑙も梅雨も青き国 河野頼人「木の実」
秋灯やゆるみ繕ふ瑪瑙数珠 染矢久仁
胸元の瑪瑙のにじみ霧を来る 中戸川朝人 尋声
花冷や塔の礎石の白瑪瑙 神田美穂子
金銀瑠璃*しゃこ瑪瑙琥珀葡萄かな 松根東洋城
雲凍てゝ瑪瑙の如し書斎裡に 山口青邨
風鎮の瑪瑙のくもる梅雨月夜 伊藤敬子
●琥珀 
いのちあり果汁琥珀に透きとほり 藤木清子
からたちの琥珀ふふめり受難楽 能村登四郎
さら~と琥珀の念珠彼岸僧 河野静雲 閻魔
とろとろと梅酒の琥珀澄み来る 石塚友二(鶴)
はつ夏を病みて琥珀の骨の鳴り 小檜山繁子
ほととぎす我れに琥珀の酒一壷 栗生純夫 科野路
乞食の手琥珀となりて黄沙かな マブソン青眼
交し飲むビールの琥珀胃の琥珀 高澤良一 燕音
冬うらら琥珀に透ける古代の蚊 植田紫紅
冬の音あふれ琥珀の耳輪かな 九鬼あきゑ
古ぎやまん琥珀の酒を満たしけり 戸川稲村
如月の虫とぢ込めし琥珀かな 佐久間鳳汀
妻連れて白夜の街に琥珀買ふ 高橋克郎「塞翁が馬」
寒入りし琥珀の空に未来あり 阿波野青畝
封をして梅酒琥珀の月日かな 福田蓼汀 秋風挽歌
山は琥珀枯れゆくものを誘へり 安村佳津男
春の夜の明ける愉しみ珈琲の琥珀を飲みて胃をなだめたり 西村尚
松の瘤琥珀流れて蝉の声 菅原師竹句集
果実酒の赤経し琥珀冬深む 山田諒子
栗飯や栗の琥珀の赫奕と 松根東洋城
梅酒二壺成りつつ琥珀うす琥珀 亀井糸游
水仙や琥珀にすみて棚の酒 吉田冬葉
無花果を煮つめ琥珀の夕ごころ 菅野明子
煮冷しの湛へ琥珀や寒の糊 関谷嘶風
燈火親し琥珀の酒を注げばなほ 青柳志解樹
琥珀には蟻氷には紅葉かな 黒柳召波 春泥句集
琥珀の糞して馬小屋の牛の冬 藤岡筑邨
琥珀の蜜満ちゐむ巣箱音もなく 内藤吐天 鳴海抄
琥珀よりよみがへりたる黒揚羽 菅原鬨也
白夜更く琥珀の濁りの白ビール 関森勝夫「親近」
真晝野の光り琥珀に麦熟れぬ 内藤吐天
秋冷の琥珀に入りし翅きはやか 矢島渚男 船のやうに
空蝉の琥珀を抜けし翡翠かな 五島高資
耳飾り琥珀うすめて小春かな マブソン青眼
自家製のかりん酒琥珀に巴里祭 池田博子
茨の実琥珀十一月終る 山口青邨
落葉掃く日暮れの母も琥珀かな 小檜山繁子
落葉松の琥珀に釣瓶落しの日 岡田貞峰
行く秋や琥珀に虫の深眠り 小田切順子
辣韮の夢は琥珀に瓶の中 青木梢「新山暦俳句歳時記」
達磨忌や浮世の塵を琥珀珠数 才麿
遺されし香水の濃き琥珀いろ 山本智恵子
重陽の栗を琥珀の珠と煮たり 秋櫻子
金銀瑠璃*しゃこ瑪瑙琥珀葡萄かな 松根東洋城
錦秋の山に琥珀を掘りし坑 坊城としあつ
雪烈し一滴の琥珀胸の間 川崎展宏
青きより出でて琥珀の梅酒かな 福井まさ子(天弩)
風入や香炉の亀に琥珀の目 石黒幸子
鰭酒の琥珀をかさね門司泊り 山崎千枝子
●碧玉 
太子廟あり碧玉の青葡萄 山岡直子
枝豆の碧玉喉に飛び入りぬ 久米正雄 返り花
碧玉のそらうつつばさかく白き 篠原鳳作 海の旅
碧玉の昃ればただの竜の玉 三村純也
葉洩日に碧玉透けし葡萄かな 杉田久女
雪止んでより碧玉の声しきり 高野ムツオ 蟲の王
霧匂ふ夜や碧玉を見立て合ふ 中村明子
●金剛石

 
以上

by 575fudemakase | 2022-06-25 04:48 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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