人気ブログランキング | 話題のタグを見る

色(一般) 類語関連語(例句)

色(一般) 類語関連語(例句)

●暗色●異彩●一色●刺青●色合い●色鉛筆●色瓦●色濃●色づく●彩どり●色目●薄墨●カラー●寒色●間色●顔色●空白●毛色●血色●原色●恋の色●極彩色●五彩●五色●濃やか●才色●小波色●雑色●珊瑚色●地色●色彩●色相●色調●七彩●七色●スペクトル●精彩●染色●多彩●単色●暖色●ツートンカラー●天然色●同色●透明●濡れ色●斑●保護色●無色●迷彩●明色●汚れ●余白●色●彩●カラフル●気色●皚々●若緑●肌色●色褪せ●色紙●錆色●淡彩●鉄色●火の色●灯の色●日の色●風の色●空の色●海の色●水の色●波の色●山の色●血の色●湖の色●焔の色●炎の色●花の色●雲の色●春の色●夏の色●秋の色●秘色●色鳥●色なき風●色変へぬ松●桜色●薔薇色●雨の色●くろがね●からかね●あかがね●暮色

●暗色
●異彩
●一色 
かまつかや報道一ト日テロ一色 高澤良一 随笑
くちなしの花一色に埋れたし 竹田小時
そら豆やただ一色に麦のはら 白雄「題葉集」
なにもかも雪一色に無音かな 小沢きみ子
一色にげんげ咲きけり百千鳥 増田龍雨 龍雨句集
一色にふうせんかづらもの静か 高澤良一 素抱
一色に大樹の銀杏落葉かな 小澤碧童
一色に目白囀る木の芽かな 浪化
一色に黄葉の島夕日せり 大熊輝一 土の香
一色一生無情みがきし木守柿 阿部王峰
七草やけふ一色に仏の座 支考
何色の暗き一色秋時雨 斎藤玄 雁道
修正会や御華の松の一色 比叡禽化
入社式紺一色に犇めけり 相馬沙緻
冬がれや世は一色に風のおと 芭 蕉
冬紅葉墨一色の群猿図 田中水桜
冷害地青田一色他にはなし 黒岩有径
垣間見て枯れの一色寒天干し場 和地清
墨一色彩百色の夏の山 滝青佳
夜の秋バーナード・ショーの墨一色 阿部みどり女
大滝の白一色の淑気かな 平松三平
寒泳に藍一色の嶺(やまね)かな 松村蒼石 寒鶯抄
少女期の紺一色の水着干す 三雲檜里子
山茶花は白一色ぞ銀閣寺 碧童
山負うて萌え一色の磯部落 河野南畦 湖の森
岩のいろ一色となし春日没る 福永耕二
岩のいろ一色となり春日没る 福永耕二
川幅が枯れ一色の顔である 椎橋清翠
建国祭G一色の富士仰ぐ 遠藤壽々子
成田駅より御開帳一色に 高木晴子 花 季
新生児室に白一色の新春来る 斉藤夏風
新生児白一色の夏衣 山田登美子
旧正月墨一色の魔除ヶ札 藤枝大成
映るもの枯れ一色や鴛鴦の水 高澤良一 素抱
晩年の白一色の日向ぼこ 鷹羽狩行
朝顔の此の一色に偲ばるる 今泉貞鳳
朝顔の藍一色のヘアサロン 垂見菊江
歯車の大きく動き冬一色 有働亨 汐路
母訪ふや師走の空の紺一色 星野麦丘人
水急ぐ白一色の菖蒲田ヘ 三橋鷹女
浜菊の白一色のいさぎよし 八牧美喜子
浮世絵の一色とんで花菖蒲 小松原みや子
海といふ秋一色の紺を航く(フェリーまりも客中) 上村占魚 『かのえさる』
無花果の一色は先づのがれけり 野澤凡兆
燈心蜻蛉(とうすみ)は瑠璃一色の針とんぼ 高澤良一 素抱
独楽回りゐて土一色とはいへず 鷹羽狩行
畑中は柿一色の落葉かな 士朗
癌病棟冬一色に暮れ終へぬ 菖蒲あや 路 地
目刺の香灯一色に素木小屋 香西照雄 対話
瞼の裏朱一色に春疾風 杉本寛
紫の一色を持し茄子の花 宇咲冬男
紫陽花のあと一色は雨を待ち 泉本登貴子
紫陽花の末一色となりにけり 一茶
経蔵は白の一色地虫鳴く 佐々木いつき
絵硝子の一色の寒すみれ買ふ 神尾久美子 桐の木
舞ひ澄みて独楽一色になりにけり 上島としえ
色々の菊一色に枯れにけり 柳水
芦と沼ただ一色に枯れにけリ 深見けん二
茸山に対し一色城址かな 京極杞陽
莨火をかばふ埋立冬一色 秋元不死男
見はるかす一色の浜さくらえび 小口たかし
見張り鵜やこの無防備の雪一色 平井さち子 紅き栞
都風流なり一色にさだめけり 阿部完市 軽のやまめ
里山や紅一色の山つつじ 大西福子
障子たて白一色に雪見舟 近藤一鴻
雪晴の襁褓高干す白一色 岸風三樓
雲間もえ笹一色に秋の嶽 飯田蛇笏 春蘭
青山中白一色の襁褓干す 長田等
高原の柞黄葉の一色に 甲斐 謙次郎
麦よ死は黄一色と思いこむ 宇多喜代子
龍胆の一色抱きて忌日なり 都筑智子
青空のただ一ト色に秋立ちぬ 小島政二郎
●刺青 
おぼろ夜や浮名立ちたる刺青師 日野草城
刺青(ほりもの)に通ふ女や花ぐもり 日野草城
刺青のゑのぐ溶きけり二月尽 今岡直孝
刺青の漢ゆ四万六千日 角川春樹
刺青の牡丹のさわぐ夏祭 水原春郎
刺青の男も来たる溝浚へ 小西領南
刺青の裸体茂りを出て来たり 六角耕
夏風や昼寝さめたる刺青師 西島麦南 人音
水兵の腕の刺青小六月 楠本莞爾
氷を供ず草履素足の刺青師 友永佳津朗(雑木)
瀧行の媼が秘めし刺青かな 東條素香
炎天や刺青錆びるをとこたち 丸山嵐人
目刺青し富士麓までよく見える 岩間民子
祭絆纏脱ぎ捨つ刺青は八重垣姫 上井正司
羽子板の悪役刺青匂ひけり 水原春郎
身に入むや刺青見せて泣く女囚 樹生まさゆき
鉄を打つ人桃の刺青上*はくに 田川飛旅子 花文字
鋳掛屋の蠍の刺青も身に入みて 宮坂静生 春の鹿
霍亂やすでにさめたる刺青師 前田普羅
青梅雨の翳は身に濃し刺青老ゆ 文挟夫佐恵 雨 月
黥文(いれずみ)はイデオロギーや片肌脱 中村草田男
星曼陀羅いれずみのごと悲哀負ふ 永田耕一郎 氷紋
●色合い 
実むらさき僧の衣と色合はす 牧野春駒
桜もみぢどっちつかずの色合にて 高澤良一 燕音
色合ひのおとなし過ぎる花大根 高澤良一 ぱらりとせ
色合ひも野暮な櫟の芽吹きかな 高澤良一 ぱらりとせ
色合ひをつべこべ云ふな虹は虹 高澤良一 ぱらりとせ
葛黄葉遠慮がちなる色合ひに 高澤良一 鳩信
●色鉛筆  
十二月の街は色鉛筆の山 山口砂代里
十二色鉛筆削るイースター 長田等
原爆忌色鉛筆をどう使ふ 松澤雅世
夜の霧に色鉛筆を削るなり 木下夕爾
色鉛筆を失くしたる子や秋まつり 寺山修司 花粉航海
色鉛筆一本買ひに鰯雲 松山足羽
色鉛筆削りそろへて夜長父子 林翔 和紙
色鉛筆持つ子が秋夜の紙切れ探してゐる 人間を彫る(裸木第一句集) 大橋裸木
色鉛筆虹を見て来し孫に買ふ 岡田 和子
●色瓦
●色濃 
かゝり藤朝の間は色濃ゆし 星野椿
さくらより少し色濃し桜餅 森澄雄 所生
とりかぶと色濃くここはアイヌの地 山口梅太郎
なにもかも透けて色濃き夏暖簾 宇多喜代子 象
ひと雨に色濃き岳や虚抜き菜 長崎玲子
ものの影色濃くなりし春障子 中森澄治
ゆく水に触れて色濃し油点草 山口いさを
わが影のさして色濃き花菫 右城暮石 上下
シネラリヤ色濃き雨となりにけり 久川有迷
一番に植えし田の色濃かりけり 宮沢しきぶ
七草の屠蘇の色濃く酔ひにけり 桂子
五色饅頭青は色濃き春の風 久米正雄 返り花
何の木ぞ紅葉色濃き草の中 几董
円相の墨の色濃し三が日 高原 桐
冬の灯に花鳥色濃き襖かな 橋本鶏二 年輪
冬薔薇は色濃く影の淡きかも 水原秋桜子
冬鴎翔つたび濠の暮色濃し 酒井里江
前山に残暑色濃くのこりけり 高澤良一 素抱
吾亦紅霧に色濃くありにけり 井上哲王
唐辛子山の入日は色濃くて 福西一刀
夏山や鯖の海より色濃くて 前田普羅 能登蒼し
夏帯の色濃く締めてより細身 佐々木美代子
夏蝶のことに色濃き喜如嘉村 當間シズ
帰省子に浦島草の色濃きも 今井千鶴子
干梅に頽廃の色濃かりけり 相生垣瓜人 明治草抄
故郷の海の色濃き鱸かな 黒瀬輝子
春の日の土間に色濃き暖簾かな 月舟俳句集 原月舟
春の日や木賊色濃き詩仙堂 鈴木貞雄
春雪や色濃き杣の雪眼鏡 前田普羅 飛騨紬
春霖やバター色濃くなつて溶け 如月真菜
昨日より今日の色濃く紅葉山 金子寿々
晩稲田の色濃き雨に故郷あり 宮津昭彦
暮色濃く鰯焼く香の豊かなる 山口誓子
暮色濃し足裏にくずる銀杏の実 上窪則子
末黒野の色濃く棚田長四角 冨山洋子
松虫の鳴き加はりて暮色濃し 築山能波
楊梅や人に色濃く山の骨 奥山甲子男
槇の実の落ちて色濃き青丹かな 高橋淡路女 梶の葉
檀の実爆ぜて色濃くなりにけり 小泉良子
水餅の水替へてより暮色濃し 小川ハナ子
海の色濃き日の中稲刈るばかり 近藤明人
深山薊は黙して居れば色濃くなる 加藤知世子 花寂び
漬石の残る色濃や秋なすび 佐藤多美子
濛雨晴れて色濃き富士へ道者かな 前田普羅 新訂普羅句集
秋潮に濡れて色濃の種の浜 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
秋草の色濃きあたり馬柵閉ざす 山本清子
竜胆の色濃山窩の恋怖ろし 岡本圭岳
肩掛の色濃く東風を曲り来し 河野静雲
色濃くも藍の干上るあつさかな 炭 太祇 太祇句選
色濃ゆし氷河の跡の鳥かぶと 山下智子
芍薬の芽の色濃くて風邪引きぬ 林原耒井 蜩
芭蕉葉の夕べ色濃し白縮 笠原すま子
草餅の色濃きを食み雨ごもり 岡本眸
草餅の色濃くかたく夜はふけぬ 前田普羅 飛騨紬
落花たまれば水に色濃くゆふべかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
葺きあまる色濃き菖蒲一束ね 西島麦南「人音」
野火の色濃くなつてゐる玻璃戸かな 佐野良太 樫
雨の日は色濃き浴衣子に着せる 福島小蕾
風あそぶところ色濃く犬ふぐり 畠中じゆん
鶯の下りて色濃し熔岩の盤 前田普羅 春寒浅間山
●色づく 
あぢさゐや月に色づき日に褪せて 成瀬桜桃子
お隣りへ曲がりて絲瓜色づきぬ 内田百間
がまづみの色づく頃の山の湯に 高澤良一 素抱
ぐみ色づく湖水も空も藍深め 大熊輝一 土の香
たましいの少し色づき蓮の花 久保 純夫
つたかづら色づき垂れて動かざる夕べはひとりわが骨を噛む 槙弥生子
ほゝづきの色づきそめぬほゝえまし 夏山句集(扉松藤夏山遺稿夏山句集) 松藤夏山
もろ~の木の実色づけ秋の雨 四友
ゆるゆると近江の柿の色づきぬ 葉狩淳子
トマト色づく善意のむくいありしごと 大熊輝一 土の香
一段と榎の実色づく曇り空 森野稔
上の山林檎色づく乳首ほど 沢木欣一 赤富士
丘の麦色づく神父その児抱き 友岡子郷 遠方
久方の空の耳朶色づきぬ 攝津幸彦
何處となく色づいて来ぬ瘤欅 高澤良一 宿好
内祝鶏頭の茎色づきて 高澤良一 ももすずめ
冬凪の檸檬色づくほのかなり 水原秋櫻子
冷え込んで一夜色づく蜜柑山 中拓夫
刀豆の銹色づけるおもしろし 平川堯
割れそめし色づきそめしまゆみかな 川原 程子
勤行や郁子棚に郁子色づける 里見 梢
吊り味噌の色づきつばめ軒汚す 宮坂静生 青胡桃
名門校からたちの実を色づかす 中戸川朝人 星辰
和歌浦の風に色づく海桐の実 原 茂美
啄木の墓に色づく桑いちご 神田美穂子
啄木の墓に野ぶだう色づきぬ 井村和子
声かかるほどに*かりんの色づきし 依田明倫
夕映えや柞色づく茂吉館 中川冬紫子
妻の忌や色づきそめし唐辛子 森 澄雄
子を欲しとおもふ色づく鬼灯よ 中村祭生
少しづゝ山は色づく榎の実 高澤良一 素抱
山々は鮎を落して色づきぬ 森澄雄
山よりも野の色づきて大和かな 鷹羽狩行
山椒の実色づき初めて友の逝く 中屋敷 久米吉
山椿その葉隠りに色づく実 石塚友二 光塵
山牛蒡の実の色づける子規の墓 井原ミチ
式部の実色づく五十路はた深み 諸角せつ子
愚に近き日日やバナナは色づきて 金子兜太 少年/生長
数珠玉や月夜つづきて色づける 新田祐久
枝々の茂みに柚子の色づける 鈴木豊子
枸杞の実の色づき野川水やせぬ 宮下翠舟
柑樹色づく貧しき父母の許に帰る 橋本夢道 無禮なる妻抄
柚の実の色づき初めぬ鰯焼く 田中冬二 冬霞
棗の実雨に色づく綾子の忌 栗田せつ子
橙の色づき初めて数へらる 中屋敷 久米吉
永観堂早紅葉(さもみじ)雨に色づけり 高澤良一 宿好
狂者らが囃して茱萸の色づきぬ 中川宋淵 遍界録 古雲抄
病むことも伴侶か野山色づきて 赤尾兜子
皆尻を曲げて色づけ唐辛子 楠目橙黄子 橙圃
石器の出る畑に苺の色づけり 瀧井孝作
秋雨や色づきたけて野路の草 西山泊雲 泊雲句集
稲架解きて太虚の色づく隠れ里 石寒太 あるき神
筑波嶺の風に色づく柚子をもぐ 木村 さだ
色づいて水の明るき珊瑚草 的場松葉
色づきし柿や大人の手をのべて 百合山羽公 故園
色づきて柿現るゝ夕日かな 温亭句集 篠原温亭
色づきて豊年らしくなりて来し 友水 清
色づける枇杷も一休禅寺かな 福山良子
花の芽のひと夜色づく西行忌 引地冬樹
花影の色づくまでのあそびかな 豊田都峰
茶臼岳熔岩に浅茅の色づけり 三好かほる
葉と色を分つほど郁子色づきて 坂口麻呂
葉の裏にぐみ色づきて遠き海 舘岡沙緻
葛の葉の色づくころを熊野にゐ 角川春樹 夢殿
蕃茄やゝ色づき初めしいびつかな 楠目橙黄子 橙圃
薑に梅酢色づく一夜かな 松瀬青々
蛇いちご魂二三箇色づきぬ 河原枇杷男(1930-)
野は風のまほろば稲の色づくも 北原志満子
野葡萄の実のふぞろひに色づけり 倉田静子
雑木色づきて悲傷の山ならず 山口誓子
霊棚の稲も大豆も色づきて 高野素十
風あつてこそのポプラの色づけり 中戸川朝人 星辰
風鈴も錆びたり柿も色づけり 相生垣瓜人 明治草抄
養生してひととせ経つか枇杷色づく 高澤良一 鳩信
鬼灯の泥をかむりて色づけり 斉藤葉子
鬼灯の色づきそめぬほゝゑまし 松藤夏山 夏山句集
鬼灯の色づきゐたる子安神 森 澄雄
鬼灯やいくつ色づく蝉のから 室生犀星 犀星發句集
鬼灯市稀に色づきゐるがあり 松藤夏山 夏山句集
●彩どり 
千体の地蔵彩どるかざぐるま 萩 尚子
彩どりは京劇の赤寒桜 高澤良一 素抱
日の当る斜面彩どる福寿草 石塚利岳
梵天を競ふ彩どり雪に映ゆ 高濱年尾
冬菊の臙脂を畑の色どりに 高澤良一 鳩信
雛の膳京の五色麩色どりに 岩田つねゑ
雪雲の縁を色どる冬日かな 冬の日 正岡子規
●色目 
くさぐさの色目や夏のおもむきに 上川井梨葉
春床し御頸飾の縞色目 松根東洋城
遥かなる襲ねの色目靄の桃 林翔
青簾風に色目を使ひけり 高澤良一 素抱
●薄墨 
さくらのような薄墨の朝いつかくる 宇多喜代子
さやけくて薄墨いろの羽根拾ふ 鍵和田[ゆう]子 浮標
しづるとき薄墨となる春の雪 岩坂満寿枝
その夢も薄墨いろか浮寝鳥 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子
修二会待つ生駒信貴山薄墨に 岸野不三夫
光陰のやがて薄墨桜かな 岸田稚魚
出羽薄墨めざめて人は瓜を噛む 澁谷 道
初雁の空の薄墨流しかな 根岸善雄
夕影を曳く薄墨の花に又 稲畑汀子 汀子第二句集
寒食や薄墨流す西の空 会津八一
後ろ手に点る薄墨桜かな 五島高資
掃きよせし花屑もまた薄墨よ 近藤一鴻
散る花のなほ薄墨になりきれず 坊城俊樹
枯葉つけし桑と薄墨月信濃 古沢太穂
椋鳥過ぎて薄墨いろのながれけり 古舘曹人 樹下石上
此頃は薄墨になりぬ百日白 百日紅 正岡子規
派をなして薄墨すすきと言ふべかり 齋藤玄 『雁道』
満関の花の薄墨暮れにけり 渡邊千枝子
猪鍋や薄墨色に外暮れて 遠藤正年
祗王寺の今昔薄墨椿咲く 山田弘子 こぶし坂以後
秋扇や薄墨滲む母の文字 岡田晏司子
薄墨がひろがり寒の鯉うかぶ 能村登四郎(1911-2002)
薄墨てかいた様なり春の月 春の月 正岡子規
薄墨で描かれし夏の蕨かな 佐竹たか
薄墨にしくるゝ山の姿哉 時雨 正岡子規
薄墨に昏るる寺町空也の忌 石沢シヅ
薄墨に書きゐて春の風邪ごこち 八染藍子
薄墨のさくら養ふ断層土 藤本安騎生
薄墨のどこか朱を引く亥の子餅 有馬朗人
薄墨のにじむを華と三ケ日 鳥居美智子
薄墨の会津ぐもりに木守柿 徳田千鶴子
薄墨の冬よ笑窪の子を連れて 原裕 青垣
薄墨の富士にまみゆる遅日かな 川崎展宏
薄墨の山河をひろげ初衣桁 檜紀代
薄墨の桜まぼろしならず散る 田畑美穂女
薄墨の桜巨樹には巨魂あり 金子青銅
薄墨の生ひて花影おくほどに 山田弘子 こぶし坂
薄墨の祖母と木槿の道に遭ふ 有住洋子
薄墨の花に通ひてゐし心 稲畑汀子 汀子第二句集
薄墨の花の下臥恋ひて来ぬ 下村梅子
薄墨の花の齢にことよせむ 大橋敦子 勾 玉以後
薄墨の花より淡く風花す 稲岡長
薄墨の雨は降れども若葉かな 京極杞陽 くくたち下巻
薄墨の雨雲低し青薄 巌谷小波
薄墨の雲飛ぶ尾瀬の梅雨月夜 岡田日郎
薄墨の鱗の金ンや紅葉鮒 松根東洋城
薄墨は花に霞の夕哉 霞 正岡子規
薄墨桜 きれいな嘘を下さいな 松本恭子 檸檬の街で
薄墨桜ことし谺の棲むことも 諸角せつ子
薄墨桜逢ひ得たりあまごに酒一盞 福田蓼汀
蝙蝠や薄墨にしむふしの山 蝙蝠 正岡子規
西方へ灯る薄墨桜かな 角川春樹(1942-)
見るうちに薄墨になる浸け障子 能村登四郎 菊塵
陰陽師 落花のつみを贖ふと未明のそらの薄墨の母 筑紫磐井 未定稿Σ
雁わたる薄墨使ひはじめの夜 原裕 新治
雪の野に拾ふ薄墨羽毛なり 古賀まり子 緑の野以後
雲の日の薄墨に花うすずみに 大橋敦子 匂 玉
鯊の宿薄墨色に鷺わたる 高橋馬相 秋山越
鰆舟薄墨に陸暮れゆけり 根岸善雄
鴫立て日は薄墨に暮にけり 尚白
うす墨に牡丹供養の招き文 櫛原希伊子
うす墨の夕暮過や雉の声 小林一茶
うす墨の多摩の横山流灯会 下田閑声子
うす墨の硯の沖に雪来つつ 和田悟朗
うす墨を流した空や時鳥 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
さくら咲くうす墨色のゆめの中 津沢マサ子 空の季節
冬に入るうす墨いろの鴎ふえ 下田稔
薪能うしろの樹立うす墨に 八木三日女 落葉期
うすずみに寒の海鼠の深ねむり 治司
うすずみに沈みて雨の辛夷かな 配島たか子
うすずみのごとくに夜の短かさよ 京極杞陽 くくたち下巻
うすずみのゆめの中なるさくら花あるひはうつつよりも匂ふも 斎藤史
うすずみの世の紅梅をまぶしめり 鷲谷七菜子 花寂び 以後
うすずみの名残うすずみざくらかな 黒田杏子 花下草上
うすずみの時空へ舞へり花吹雪 中村明子
うすずみの桜の精の観世音 大橋敦子 匂 玉
うすずみの花の齢のかすむかな 大橋敦子 匂 玉
うすずみは白よりあはし天の川 藤村真理
うすずみをもて大寒の水を描く 辻 桃子
うつろへる日にうすずみの花絵巻 大橋敦子 匂 玉
夏山夏湖うすずみいろとなりて発つ 林原耒井 蜩
息つぎの長きはうすずみ桜かな 秋山素子
松虫やつねにうすずみいろの窓 堀井春一郎
枯山のうすずみ色は唇に 斎藤玄 雁道
淡墨桜空もうすずみ流しけり 衣川 砂生
火の山の島のうすずみ春隣 神野重子
男にはうすずみ色を恵方道 齋藤玄 『雁道』
竹林の奥のうすずみ彼岸過ぐ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
花あけび雨うすずみに降るばかり 高澤良一 ぱらりとせ
茶の花にうすずみいろの奥信濃 小林子
雲の日の薄墨に花うすずみに 大橋敦子 匂 玉
●カラー
●寒色 
男物裁つ寒色の過去ひろがり 寺田京子 日の鷹
●間色 
つやつやの中間色の柿剥けり 高澤良一 さざなみやつこ
●顔色 
菜虫とる顔色悪き男出て 波多野爽波
道化たり花も顔色あらぬまで 尾崎紅葉
●空白 
その日より日記空白熱帯魚 中村明子
それぞれが暗い空白冬木立 対馬康子 吾亦紅
たのもしき空白の日々初暦 本井 英
スワン引き潟に空白始まりし 辻口八重子
ダリアの紋章急行一過の空白に 三谷昭 獣身
冬虫夏草天寿というに空白し 和田悟朗
初夢の唯空白を存したり 高浜虚子
初社の掲示空白素志を持す 香西照雄
制札の裏の空白涼しさよ 香西照雄 素心
原爆忌有無を言はせず空白み 百瀬美津
喪の家の空白を埋め花輪立つ 三谷昭
喪の旅の日記空白十二月 小林草吾
地獄絵に空白はなし安居寺 松田都青
夕支度せぬ空白や梅雨めく旅 鍵和田[ゆう]子 未来図
夜どおしはだかの鏡が映していた空白 三好米子
夫恋の日より空白日記果つ 高見澤郁恵
夾竹桃空白の檻水打てり 宮武寒々 朱卓
奔放を拒ばむ空白内裏雛 河野多希女 両手は湖
宗教の欄空白のままに春 対馬康子 純情
宿鳥起きて初空白し比叡の山 信徳
常ならぬ人に既望の空白し 長谷川かな女 雨 月
年已に八声に白しちやぼの空 白慰
心病む日々の空白日記果つ 土山紫牛
時の日の時の空白梅太る 鷲谷七菜子 黄 炎
椰子汁飲む空白 貿易風のなか 伊丹公子 パースの秋
正月は空白藪のみ騒ぎつづく 香西照雄 対話
歯を抜いた日の空白に家事溜まる 松本森枝
死蛾百万空白いつか埋めなんや 山口聖二
浴槽から海へ流れて空白つづく 林田紀音夫
涅槃図に声満ち裏側の空白よ 成瀬櫻桃子 素心
煙突が塗りつぶす空白シャツ購う 穴井太 穴井太集
熱帯の空白 跣の孔雀くる 伊丹公子 ドリアンの棘
獅子舞の去りし空白にごり酒 北見さとる
白さぎと白うさぎ書くわが空白帖 阿部完市 にもつは絵馬
秋の空白雲しづかに合ひをはる 佐野良太 樫
秋雨に暮れ空白の一と日かな 波多野爽波 鋪道の花
空白が最後の日記旱星 日原輝子(頂点)
空白と同じ父の日雨つづき 日向野花郷
空白のありてすなはち連翹黄 後藤夜半 底紅
空白のなかの一行古日記 永田耕一郎
空白のノートの上の大暑かな 三橋邦子
空白の一つの記録日記果つ 岡野隆女
空白の幼時ありけり金魚草 秦夕美「夢騒」
空白の日記に挟む勿忘草 澤田緑生
空白の記憶落花をもて埋めむ 柴田奈美
空白の頁の記憶日記果つ 野崎静子
空白はさみしかりし日日記閉づ 岡本眸
筬ひけば寒の空白一目減る(結城織見学二句) 殿村菟絲子 『晩緑』
脱糞の猫空白の仕種せり 須藤徹
荒梅雨の後の空白 火を作る 伊丹公子 時間紀行
野菊折り以後空白の哲学書 鳴戸奈菜
霧脱げど公示空白淫祠灯る 香西照雄 対話
鞦韆の宙の空白薄着して 殿村莵絲子 花寂び 以後
頬白や目つむりて空白となる 森澄雄
飯炊けし空白や雪昏れ兼ぬる 殿村莵絲子 牡 丹
鵙鋭声身の空白を貫ける 大橋敦子 手 鞠
●毛色
●血色 
夏曉の散歩の顔の血色よき 高澤良一 素抱
夜へ遺す 血色のトマト 平家村 伊丹公子 時間紀行
散り敷ける落葉は血色鍵屋辻 中津千恵子
新節の硬き血色を削りけり 岡田四庵(童子)
旺んなる頬の血色や死線を越ゆ 赤城さかえ
港の夜市に 杏の血色 移民の裔 伊丹公子 パースの秋
白豚や秋日に透いて耳血色 杉田久女
美しく血色見え来し種痘かな 水原秋桜子
耳たぶの血色ぞすきて瞑想す 篠原鳳作
蚊帳かけてみれば血色あるごとし 川島彷徨子 榛の木
血色よき児童が通る春日中 高澤良一 宿好
青葡萄紅茶のみたる手の血色 片山桃史 北方兵團
●原色 
わが秋嶺基地原色の油槽と澄み 赤城さかえ
クレヨン画原色花火描きなぐり 高澤良一 寒暑
チューリップ原色はみな孤独なる 中村正幸
原色にだんだん近く夏に入る 稲畑汀子
原色のシャツに横文字終戦日 西尾照子
原色のボディスーツに梅雨ダイバー 高澤良一 素抱
原色の水菓子あまた夏の風邪 奥村童舎
原色の琉球ガラス買ふ五月 野上 水穂
原色の絵の具買い足すパリー祭 前田和江
原色の舌を見せ合ひ掻き氷 中島たけ子
原色の花から糶られ十二月 塩崎翠羊
原色の赤の暑さと思ひ行く 石塚友二
原色を着て洞窟を抜け出す冬 渋谷道
次男より借り原色の海水着 高澤良一 寒暑
残像の少女の原色いつ失う 林田紀音夫
画布の上に原色厚し五月の野 福永耕二(馬酔木)
登山着原色ホームの燕翔けどほし 宮坂静生 青胡桃
祭壇に亡き人の眼はほほゑみぬ原色に咲く花にうもれて 松坂広
突堤に原色五人西東忌 鷹羽狩行
翅や種や原色ささえる産湯の中 籾山和子
聖玻璃の原色燻ゆる海夕焼 下村ひろし 西陲集
道頓忌原色ネオン映す堀 檜 紀代
錠剤はどれも原色春かなし 復本鬼ケ城
雪の日のルオーの原色チンドン屋 加藤知世子 花 季
鯉うごくたびの原色さみだるる 高井北杜
●恋の色 
手花火や子恋の色にしたたれる 増田 富子
淡雪や仏にありし恋の色 伊藤通明
●極彩色 
こころゆく極彩色や涅槃像 太祇
そのかみの三社まつりの伊達者の繁さんの背の極彩天女 高田流子
ブランド店極彩に夏動き出す 住谷不未夫
亜浪忌や堂に極彩吉祥天 高井去私
冷え性の母に極彩地獄絵図 長谷川双魚 風形
初刷の極彩版は妻子占む 高澤良一 ねずみのこまくら
古寺の蝶その極彩の重たさに 和田悟朗 法隆寺伝承
声帯の極彩色の沈黙や 山崎十死生
山肌の極彩に叛き木の実降る 沓掛喜久男
早春の和船極彩色に塗る 沢木欣一
東照宮極彩色の大暑かな 川田邦子
極彩のブリキの玩具原爆忌 白石司子
極彩の中に真白き釈迦寝たり 谷野予志
極彩の六波羅蜜寺戻り梅雨 冨田みのる
極彩の写楽を乗せていかのぼり 長谷川双魚 『ひとつとや』
極彩の別院深く秋の山 又野 誠
極彩の故に極悪大毛虫 百合山羽公
極彩の木の実ぶちまけ国離る 対馬康子 純情
極彩の版画みてよりの寒さ 柴田白葉女 花寂び 以後
極彩スカート幾重にも巻き泉汲む 吉野義子
死を想へ極彩色の浜草履 小澤實 砧
油画の極彩色や春の宿 春 正岡子規
熊野比丘尼も/極彩色の/夜の/合歓の木 林桂 黄昏の薔薇 抄
白鳥に極彩色の鴛鴦の沓 西本一都
短夜の夢に極彩色の鳥 片山由美子 天弓
菊枕して極彩の夢を見し 七里みさを
谷紅葉身投げをさそふ極彩色 田中保
鵜戸の宮極彩色の小春かな 大橋敦子 匂 玉
●五彩 
メーデーの風船五彩太陽へ贈る 古沢太穂 古沢太穂句集
五彩独楽喧嘩忘れて飾らるる 河野頼人
初日出づ五彩に波を躍らせて 上村占魚 『自門』
初硯墨に五彩のありにけり 千石比呂志
山頂の色なき風に五湖五彩 杓谷多見夫
干餅の五彩つらなる日の始め 成田千空 地霊
悪神に黴の五彩を奉る 林翔
施餓鬼旛五彩涼しき梨葉の忌 文挟夫佐恵 雨 月
春風の川波にある五彩かな 上村占魚
梅雨の雨着が放つ五彩の布晒し 林翔 和紙
氷中の鯖に五彩の朝日あり 古館曹人
牡丹や五彩のほとけ顔あまた 栗生純夫 科野路
眩りとす蜥蜴の膚の日の五彩 長谷川素逝 暦日
聖玻璃の五彩西日に強めらる 津田清子 礼 拝
肘突きの成りし五彩や冬初 小澤碧童 碧童句集
路伊勢に入りて花菜に雲五彩 久米正雄 返り花
雨乞ひの天へ流して布五彩 曽根けい二
●五色 
いつしかに五色団扇も青ひとつ 福田蓼汀 山火
うぐいすの肺ひと呼吸に五色なす 橋本夢道 無禮なる妻抄
はひまわる五色の火蛾や楽譜書く 池内友次郎 結婚まで
スケーター五色の蜘蛛の散るごとし 石塚友二
五色に塗る餅柔かしお命講 長谷川かな女 花寂び
五色団扇の一本を手にしつつまし 梅林句屑 喜谷六花
五色幕はりめぐらしてお取越 枌さつき
五色旗は垂りても五色秋晴るゝ 久米正雄 返り花
五色椿満開色の定まらず 塩川雄三
五色沼その瑠璃沼の明け易き 山口青邨
五色沼つなぐ小径の落し文 秋本文茶
五色沼鴨来て色を深めけり 鈴木漱玉
五色湖は女波ばかりや鳥曇 角川源義
五色石渚に拾ふ近松忌 石田野武男
五色縷の垂れも垂れたり肘枕 飯田蛇笏 霊芝
五色豆のざらつく甘さ春の雪 鍵和田[ゆう]子 未来図
五色針糸の尾長う縫ひ初め 中村烏堂
五色饅頭青は色濃き春の風 久米正雄 返り花
冬茜五色の糸にみちびかれ 川崎展宏 冬
切山椒五色置かれしめでたさよ 河野多希女
夏の川カヌーの五色揃ひけり 大谷ひろし(屋根)
夕栄の五色が浜をかすみけり 霞 正岡子規
夜まどゐや五色団扇の我は青 皆吉爽雨
宮城や五色にそろふ初霞 初霞 正岡子規
山寺や五色にあまる花見堂 蓼太
幕間や五色の独楽を買初に 千手和子
手折りもす五色の香の今日の菊 石口光子
拾ふ石五色揃ひぬ磯遊 井上杉香
掌に揃ふ石の五色や磯遊び 加倉井秋を
文月のものよ五色の絲素麺 文月 正岡子規
星消えてあとは五色の初霞 初霞 正岡子規
春燈下紙にいただく五色豆 清崎敏郎
松過ぎの肉桂のにほふ五色豆 高澤良一 燕音
柵内に五色椿を散らしめし ふけとしこ 鎌の刃
梶の葉を懸けて五色の絹帷 桂樟蹊子
浜大根網も五色の御座の磯 鈴木公二
絵の島や石も五色の花盛 花盛 正岡子規
羊羹の三色五色秋しぐれ 久保田万太郎 流寓抄
花の雲鳩は五色に舞ひあそぶ 茅舎
花疲れ膝にこぼせる五色豆 斎藤朗笛
花薄色それぞれの五色沼 目代智子
花見団子五色の白きより食ぶる 猿橋統流子
蔵王紅葉五色の山気流れ出づ 渡辺恭子
薬玉や五色の糸の香に匂ふ 嘯山「葎亭句集」
虫送り五色のノロセ持ち寄りて 高澤良一 宿好
蜘の囲の五色に光る春日かな 春日 正岡子規
角巻や浜に拾ひし五色石 石田野武男
買初めの色のほのほの五色豆 高澤良一 燕音
起し絵の山紫水明五色摺り 伊藤瓔子(ひいらぎ)
雛の膳京の五色麩色どりに 岩田つねゑ
雲丹の針五色に動く汐干かな 栗原ゆうゆう
霊峰の風を五色に秋立てり 吉原文音
風車まはり消えたる五色かな 鈴木花蓑句集
鳥わたる豆粒ほどの五色沼 杉 良介
麦わらを口に妖婦や五色水 松瀬青々
●濃やか 
庭の椎一日濃やかに落葉かな 西山泊雲 泊雲句集
暖簾の紺濃やかや柱餅 広江八重桜
菊咲いて濃やかなりし夕陽かな 高橋馬相 秋山越
逢はずなりけりこの下蔭の濃やかに 林原耒井 蜩
●才色 
才色の母に及ばず卒業す 清瀬代山
かたつむり才色風に流さるる 櫛原希伊子
●小波色
●雑色
●珊瑚色 
氷海や日の一粒の珊瑚色 金箱戈止夫
牡丹の奥に鎖国の珊瑚色 岩淵喜代子 硝子の仲間
癒え近き冬しののめの珊瑚いろ 成田千空
●地色 
萱刈の地色広げて刈進む 篠原温亭
空は永久の地色藪を背に紅葉 香西照雄 対話
紅型の地色は秋の干瀬(ひぜ)の水 沢木欣一 沖縄吟遊集
●色彩 
淡路島と色彩学とはるかなり 阿部完市 春日朝歌
春雪いくたび切腹で終る色彩映画 三橋鷹女
学童の色彩なだれ落つ朝の坂 藤木清子
●色相
●色調 
夕桜すっと色調落しけり 高澤良一 宿好
●七彩 
しやぼん玉七彩保つまゝ失せし 岸風三樓
七彩のビーズ細工や露涼し 江森京香
七彩の冷し中華やひとりの夜 加瀬美代子
七彩の山の日に触れ蕨出づ 岡田日郎
七彩の日がふりかかり水芭蕉 岡田日郎
七彩の紐でしばりて春著着る 品川鈴子
七彩の縞を惜しみぬ鮎焼いて 高井北杜
七彩の飴を買ひもし春の風邪 藤井つな子
初晴の干瀬七彩に久高島 伊舎堂根自子
南海に七彩もどし梅雨北上(那覇にて) 上村占魚 『かのえさる』
合格や地も恩沢の七彩に 伊藤敬子
春日濃し七彩に海わかちをり(那覇にて) 上村占魚 『玄妙』
晩夏光真名井の滝は七彩に 坂田苳子
立葵七彩に咲く婚の朝 藤本朋子
野ぶだうの青の七彩村の婚 平井さち子 鷹日和
露七彩網戸に満つや姉祷る 中戸川朝人 残心
風にのる蜘蛛七彩の糸ひきて 江間蕗子
●七色 
にじは七色、七十路の峠に立つ 荻原井泉水
めぐりあひやその虹七色七夜まで 中村草田男
ゆがみたるときの七色しやぼん玉 片山由美子 水精
パンジーが日を七色に振り分つ 本杉桃林
七色に繰り出す投網冬隣 岡田史乃
七色のいのちなりけり毛虫焼く 相川玖美子
七色のしやぼん玉吹く挫折の日 西尾照子
七色の囀りの音に起きいづる 渡辺桂子
七色の待針並べ縫初 岡田弘子
七色の風船くばる開店日 谷 和子
吾子死後の虹の七色胸の上 中村祐子
夜店の灯くらき七色唐辛子 石川星水女
少年に七色の尾の蜥蜴出づ 小岩浩子
岩も七いろ神の石狩秋激ち 林翔 和紙
年越のどつと七色唐辛子 渡辺知美
手毬ころがつて七いろ溶けにけり 山田弘子 こぶし坂以後
早春の日矢七色に日の岬 安部守正
朝日浴び七色放つ氷柱かな 中本明美
木に彫つて寧楽七色の雛かな 飴山實
木枯といへば七色たうがらし 成井 侃
松葉牡丹の七色八色尼が寺 松本 旭
焼きて煮てべらの七色失せにけり 立花豊子
百千鳥蕎麦に七色唐辛子 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
秋桜七色の波立たせをり 新庄圭造
紫陽花や七色の嘘聞いてをり 北村一郎
草の穂によべの雨粒七色に 汐見寿美恵
買初にかふや七色唐辛子 石川桂郎
足音の七色八色春の立つ 牧石剛明
野葡萄の七色ルビー光りおり 山崎浪江
●スペクトル
●精彩
●染色 
朝顔や芹澤染色したたりて 水原秋櫻子
菓子盆やそも染色の雪ならば 服部嵐雪
●多彩 
夕雲の多彩をはらむ春隣 向田貴子
多彩仏春塵仏と拝みける 赤松[けい]子 白毫
戸々紫陽花「多彩な不幸」てふ語なし 香西照雄 素心
星座多彩わが十代の果てんとす 伊藤敬子
暗き絵が若き証しの夏多彩 文挟夫佐恵 黄 瀬
末枯や配線多彩な捨てテレビ 奈良文夫
洋酒瓶多彩終幕よよと哭く 三谷昭 獣身
熱い耳潜る プールの底は 多彩 伊丹公子 メキシコ貝
羞ひのトマト薬飼と多彩なり 皆吉爽雨
行く春の南京町は灯も多彩 福田蓼汀 秋風挽歌
●単色 
単色に暮るる岬の遠吹雪 山田弘子 こぶし坂
単色の北の冥さを凍豆腐 林 可折
単色の沖にいのちの蜃気楼 対馬康子 吾亦紅
単色の絵本思えり糸きり歯 大西健司
夏帯の単色は吾が性となり 細見綾子 花寂び
手袋の単色派手に吊皮に 高濱年尾 年尾句集
辺境の鴉単色 啼かずに翔つ 伊丹公子
●暖色 
新涼や新校ペンキ暖色に 平井さち子 完流
むしろ暖色 冬晴の海と 異人館 伊丹公子 山珊瑚
枯山の暖色に馴れ狎れし愛 松本進
●ツートンカラー 
この丘の麦のツートンカラーかな 高澤良一 燕音
●天然色 
天然色映畫の雲が実に白し 内藤吐天
霧さらにうすれ天然色となる 石井とし夫
●同色 
コロッケもカツも同色冬ぬくし 常盤芙美男
レイク・ルイーズと同色の鸚鵡 喋りだす 伊丹公子 アーギライト
初空や同色を持し常に新た 香西照雄 素心
南無妙法影同色の花と人 平井さち子 鷹日和
掌に享けて掌と同色の桜貝 伊藤夜鴨
晩節や蝉同色の樹を選りて 高澤良一 素抱
枇杷の花同色の蜂を呼び集め 瀧春一
汝もわれも涙同色ホップの丈 寺田京子 日の鷹
点滴と同色秋の日暮空 鈴木鷹夫 渚通り
白昼と同色のシャツ法隆寺 進藤一考
躓きて土と同色秋の母 齋藤愼爾
麦と同色の草抜く父と兄 津田清子
●透明 
あくまでも空透明に野分去る 稲畑汀子
あぶな絵の透明に水引きはじむ 橋間石
うこんの花ガラス器に活けみんな透明 福富健男
かまきり誕生天才なれば透明に 上林裕
ここにふたつの透明な火の相呼ぶ声 関口比良男
さすらえば冬の城透明になりゆくも 金子兜太 猪羊集
せきれいの翔りしあとの透明感 柴崎千鶴子
なんと透明な林シクラメン投げる 前田保子
はんざきの魔性沈めし透明度 泉田秋硯
ひとたびは透明になっていく余寒 猪原丸申
まばらな鷺と壜透明な私の村 阿部完市 絵本の空
シャガールのあをの透明遠泳す 石寒太 炎環
スノードロップ山湖の空気透明にて 有働亨 汐路
フラスコの透明な夏沖に置き 桜井博道 海上
ペンダントの透明な赤秋惜しむ 伊関葉子
ラムネの玉ころんと故郷透明に 成瀬櫻桃子 素心
世紀末の水透明に少女佇つ 寺井谷子
主知的に透明に石鯛の肉め 金子兜太 詩經國風
五月雨や灯して透明エレベーター 長崎小夜子
修二会冷えして透明や女の瞳 加藤知世子 花 季
億年の羽根は透明ぎんやんま 中河朋子
冬菫水透明に発光し 長谷川かな女 花寂び
冷雨の村見え壜透明な立ち泳ぎ 有村王志
凍てきびしあかつきの空透明に 澤村昭代
凍蝶の身を透明に上げし海 佐野まもる 海郷
出目金の泳ぐこの世の透明度 室岡純子
初富士や透明視野のよみがえる 森信子
初氷割る透明な今日がある 荒尾芳春
卯波うつくし透明の電話ボックス 対馬康子 純情
原稿紙蜘蛛の透明な粒這えり 三谷昭 獣身
古事記よみおり露飴の透明度 渋谷道
句集「葛飾」栞りし桔梗透明に 佐野まもる 海郷
同齢者老い透明な茅花流し 能村登四郎(馬酔木)
名月やしばしこの世を透明に 高橋幸子
夏空の冷え透明ぞ岳鴉 有働亨 汐路
夏野行く人透明になるおそれ 出井一雨
夕凍の寒天深む透明度 羽部洞然
夜の虹透明なるを眠りて視し 野澤節子 黄 瀬
天に花地に花透明な相合傘 寺井谷子
婚礼車あとから透明なそれらの箱 崎原風子
寒天干す透明といふきらめきに 柳瀬茂樹
寒潮や透明な言身をはなる 柴田白葉女 花寂び 以後
小女の首透明にする花氷 後藤和郎
戦没学徒ら透明に群なし春塵駆く 磯貝碧蹄館 握手
手術成功汗透明に部署ほどく 平井さち子 完流
手術痕無慚に春の湯透明に 柴田白葉女 遠い橋
新緑にひたりて心透明に 岡部 菊
春うらら透明人間坐る椅子 武田和郎
春の霧帆のいくつかは透明に 小長井和子
春一番透明にしてつよき酒 小澤實
昼の無為娼婦の下着透明に 横田矢凪
末黒野に透明の水湧きゐたり 辻田克巳
柚子煮詰む透明は喜びに似て 綾子
桐咲くや透明すぎてゆがむ水 鍵和田釉子
死の淵といふ秋水の透明度 上田五千石 田園
殺意あり春の焚火の透明に 寺井谷子
母の遺影やがて透明な繭なり 瀬戸 密
気にかかりゐる白魚の透明度 後藤比奈夫 花びら柚子
水を飲み透明体の死を移す 林田紀音夫
水槽の烏賊の透明冬はじめ 有山八洲彦
氷を提ぐ透明なれど重きらし 山口誓子 構橋
氷柱折る手が透明な刻生めり 山本つぼみ
海亀の涙透明であり崩る 大西政司
海光り冬透明な胡椒壺 花谷和子
海月浮く透明といふ餓ゑのいろ 菅原鬨也
涙より透明な湖沈むトルソー 八木三日女 赤い地図
激しければ透明となる野焼の火 向山文子
焚く煙の白透明に秋立ちぬ 大熊輝一 土の香
焼酎の強き透明夜空晴れ 正木ゆう子 静かな水
父の亡き大寒やただ透明に 相馬遷子 山河
爽やかに透明人間演じます 羽石イミ
狐雨去れば透明青葡萄 羽部洞然
珊瑚草透明に風過ぎて行く 水見壽男
病むもみとるも句を詠む真夜の火透明に 加藤知世子 花寂び
白梅や雨後の山気の透明に 徳永山冬子
省略の過ぎて海月は透明に 井上 匡
秋日透明廃兵の衣は誰が洗ふ 磯貝碧蹄館 握手
空をゆく透明獣の秋の風 堀口星眠 青葉木菟
竹藪へ透明な距離梅咲けり 川村紫陽
紅とても透明感に石榴の実 山下美典
船遊一指で測る透明度 的場秀恭
花げしのひとむら硝子透明に 柴田白葉女 花寂び 以後
草こがすところの野火は透明に 飴山實 少長集
葡萄その透明な騎馬軍団 松浦力
蚕豆咲く透明の季の耳鳴り 北原志満子
蜻蛉 空気の闇に生まれくる透明な羽たたせたまま 高橋みずほ
言の葉は透明であり秋の風 池田澄子
身を透明に春の鴉が歩き出す 柴田白葉女
農婦らの声透明に青田の夜 西村公鳳
透明なあなたの馬が濡れてくる 攝津幸彦 鹿々集
透明なかたつむりのようにうずくまり聴くいにしえの種子のひびきを 花山多佳子
透明なビルに入りけり裘 永島靖子
透明な傘さしてゆく木の芽どき 森村文子
透明な傘に来て咲く牡丹雪 細井みち
透明な傘に街の灯桜桃忌 森本節子(青樹)
透明な傘を開いて枯野ゆく 岡田史乃
透明な少女の時間花ミモザ 白澤良子
透明な時間一滴ずつ落ちる 奥野ちあき
透明な沖の残光青バナナ 河合凱夫
透明な泉はぬくし病父に冬 飴山實 『おりいぶ』
透明な温泉壺に沈ませている裸形の恋人も 橋本夢道 無禮なる妻抄
透明な火をなだめては氷下魚釣 北光星
透明な紅茶軽快なるノック 片山桃史 北方兵團
透明な羽とこころと上昇気流 折笠美秋 死出の衣は
透明な言葉を探す目高かな 太秦女良夫
透明な辛味を刻む夏大根 長田千鳥(円虹)
透明な重圧鶴が啼きにけり 小松崎爽青
透明な雨の林だ歩きたい 吉田峯生
透明な雨具を買ひぬ太宰の忌 湯沢くに
透明な風の中なる朝ざくら 大竹多可志
透明な食べ物増えし夏の部屋 櫂未知子 貴族
透明な魚の近づく復活祭 駒 志津子
透明な鳥・数学のごとき鳥 阿部完市 証
透明になりゆく葛湯古稀を越ゆ 禰寝雅子
透明になるまで眠る寒の鯉 谷口桂子
透明に風すぎてゆく若葉かな 川口咲子
透明の傘に雨つぶチューリップ 福永鳴風
透明の傘干してあり鶏頭花 中拓夫
透明の合羽に遍路衣かな 小澤實 砧
透明の寒波が重し夜の盆地 相馬遷子 山河
透明の杖欲しかげろふ中歩まむ 花田春兆
透明を葉月がつつみ三河がつつみ 阿部完市 にもつは絵馬
透明亭にて筆記しているのが章子 阿部完市 軽のやまめ
透明度百パーセントの初湯かな 彦坂寿子
遭難死だが透明な彼は机に 五島高資
金魚死なせし透明の金魚鉢 津田清子 礼 拝
鏡絵のこの透明は何處よりくる 高澤良一 寒暑
雨蛙透明な円ころがれり 加藤楸邨
雪渓いまだ見ず透明な頸飾 野澤節子 牡 丹
馬なればわれ透明の馬ならむ 宗田安正
鮟鱇の切られ切られて骨透明 羽部洞然
●濡れ色 
うち返す田の濡れ色や桜ちる 小杉余子
なまぬるき蛇の濡れいろ追われけり 小宅容義
島は緑の泣き濡れ色に眼鏡橋 加倉井秋を 『真名井』
御降や濡れ色つくす敷松葉 大場白水郎 散木集
木耳や杣の夜の火の濡れ色に 木附沢麦青
濡れ色の月が匂へり椎の花 小松崎爽青
濡れ色の紅唇ちらと寒念仏 田中みどり
濡れ色の走り乾くや冷西瓜 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
石棺の蓋濡れ色に冬浅し 河原芦月
空蝉のまだ濡れ色にありにけり 岩崎艸寿
緑てふ濡れ色にある枝蛙 河野雪嶺
臍の緒の絆濡れ色風光る 林 節子
遠き日はいつも濡れいろ鰯雲 柴田白葉女 『朝の木』
●斑 
*ほうぼうのつばさに瑠璃の斑を隠す 大屋達治
ありありと妻の雀斑菜も咲くよ 福永耕二
いたどりの葉の斑ざしたる蛇籠かな 飯田蛇笏 山廬集
かたまりて日の斑つつけり紅葉鮒 関戸靖子
かまつかや草の中立つ斑色 大須賀乙字
くくり解く糸の斑の散る霜戸前 文挟夫佐恵 雨 月
くぐる斑の見事の猫やをみなめし 原石鼎 花影以後
けふ暑くなること確か斑(まだら)鯉 高澤良一 素抱
この渓のやまめの斑なれ煮ても焼きても 林原耒井 蜩
こめかみの老斑かなし北斎忌 黒田桜の園
さらさらと斑雪消えゆくけものみち 馬場虎子
たどれば啄木鳥肺に斑のある一生(ひとよ)いかに 川口重美
とらの子のとらの斑も見ゆ草いきれ 室生犀星 犀星發句集
ぬばたまの夜目にも峡の斑雪かな 村山古郷
はなびらに血の斑ちらしてほととぎす 澤木欣一
ひとすぢの水の音あり斑雪山 行方克巳
ひとりにしあれば鹿の子斑をふるふ 皆吉爽雨 泉声
ひよどり花斑濃やすでに絮をもち 堀口星眠 営巣期
ふらここの鎖まつすぐ斑雪 角川照子
まだぬくき男声のとどく斑雪栂 宮坂静生 山開
まなぞこに蛇の斑のこる青嵐 石田阿畏子
まのあたり雀斑親し青胡桃 富安風生
みちみちの日の斑風の斑知恵貰ひ 長谷川双魚 『ひとつとや』
みやげ屋の熱き呼びごゑ斑雪山 堀口星眠 樹の雫
やすらぎや芝萌ゆる斑もおのづから 林 翔
ゆっくりと麻酔解けゆく斑雪山 伊藤はる子
わが肌に老斑いまだ菖蒲風呂 亀井糸游
わが胸の斑雪の解けず小雀鳴く 遠山郁好
カーテンに日の斑散らして柿若葉 西間登志子
シャワー浴ぶこんなところに雀斑かな 高澤良一 寒暑
タクシーに射す日のぬくさ斑雪山 茨木和生 木の國
ニセコ富士斑雪かがやき幟立つ 宮下翠舟
バイコフの虎斑の髯も紅葉狩 久米正雄 返り花
ランプの灯によくよく見えし山女魚の斑 長谷川かな女 雨 月
三年鯉口に斑が出る霜の果 宮坂静生 山開
下校児は女の声まさり斑雪村 岸田稚魚 筍流し
中也誹謗せる林間に斑の紐 大西健司
丹の橋も斑雪明かりに竜田川 石垣青☆子
乳牛の斑白うつくし豆の花 大野林火
人の踏む桜落葉の日斑かな 阿部みどり女 笹鳴
人乗つて馬現はるる斑雪かな 廣瀬直人
人語行き 虎老いて 虎の斑もなし 折笠美秋 虎嘯記
人語行き虎老いて虎の斑もなし 折笠美秋
今日の余白に真赤な炭と碁盤の斑 平井さち子 完流
今生の日の斑たいせつ鮎生簀 大石悦子 聞香
仔鹿の身舐めてつぶらな斑を増やす 長田等(狩)
佐保姫の鈴鳴る水の斑雪山 山上樹実雄
傷みたる翼のごとき斑雪あり 関利光
先づは斑(ぶち)やがて庭面を覆ふ雪 高澤良一 随笑
児篠の皮に斑の浮く函館山 鳥居美智子
入日の斑出水たひらのけぶるかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
八ケ嶽聳てり斑雪近膚吾に見せ 橋本多佳子
八月も終りに降れる雨に斑 高澤良一 ぱらりとせ
八重椿紅白の斑のみだりなる 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
冬の海斑の多きものばかり釣れ 永末恵子 発色
冬の海紺青の斑の鯉澄める 水原秋桜子
冬の蝶干潟をくぐりぬけし斑よ 川田由美子
冬ひばり老斑ぬくめてはならず 渋川京子
冬帽の黒脱げば斑らなり黄塵 石塚友二 方寸虚実
冴え返る手の老斑を撫す癖も 殿村莵絲子 花寂び 以後
凍て弛む腕の老斑見るとなく 小出秋光
初かがみ母嘆かせし雀斑も 石田郷子
初鵙の来鳴くや日の斑ひるがへし 成智いづみ
十六夜や仔犬も雲の斑をもてる 堀口星眠 営巣期
反芻の牛に遠見の斑雪山 鷲谷七菜子 花寂び
受けきれぬ日の斑こぼるる葡萄棚 平子 公一
古傷に斑雪風沁むよろひても 稲垣きくの 牡 丹
古葉掻く鶏に四山の斑雪照る 金尾梅の門
吹雪くよう雷鳥の胸の斑ら 田口満代子
啄木鳥の木屑鮮し夕斑雪 堀口星眠 営巣期
嘘の語尾乱れ斑雪となりにけり 谷口桂子
四つ手網斑雪伊雪にしたたれり 福永耕二
四島消えず列島模様斑雪 水出与志緒
地鎮めの竹担ぎ出す斑雪山 三森鉄治
夏草や黒き斑の散る牛の腹 佐藤勇奈男
夏雲のだんだらの斑や磧うごく 川島彷徨子 榛の木
夕づけば明るさ斑の春田かな 阿部みどり女 笹鳴
夜の雲斑らに黒き酉の市 菅裸馬
夜鳴き鳥銀河の斑ら澄ましけり 安斎櫻[カイ]子
大くわりんぐるり廻して斑(むら)なき黄 高澤良一 宿好
大寒の夜に入る鹿の斑を思ふ 飯田龍太 今昔
大山女背の斑光らす雪解水 火村卓造
大男斑雪の村に現れし 菅原鬨也
天の斑駒鞣しに鞣す妣の国 高柳重信
天井に日の斑ゆらめく針供養 桂信子 遠い橋
天牛の髪の先まで斑を持てり 伊藤伊那男
天皇も老斑持たす桜かな 田川飛旅子 『邯鄲』
奥入瀬の日の斑のゆるる瀑布かな 木村保明
妻に雀斑苗床の温度計光り 大熊輝一 土の香
姉が目の敵に菊畑の斑雪 塚本邦雄 甘露
子の家の斑のうつくしき冷し瓜 大石悦子 百花
安達太良は夜雲被きぬ斑雪村 石田波郷
家厳は白に紅斑の椿かな 松瀬青々
寒い哉つるされた鮭の大なるが斑 幸田露伴 拾遺
寒波来る虎河豚は斑を誇りとし 鈴木真砂女 夕螢
寒鯉の斑のとどこほるささめ雪 後藤夜半
小牡鹿の斑を引き緊めて海に立つ 鷹羽狩行 十友
少年の鼻に雀斑風光る 谷中隆子
山吹や老斑の手の大いなる 八木林之介 青霞集
山女の斑明らかに水の底ゆけり 大谷碧雲居
山女の斑見えきて夕日すでになし 下田稔
山百合の斑や滾々と夜来たる 奥坂まや
山茱萸に雀斑眩しく移公子癒ゆ 石田あき子 見舞籠
山茶花の紅斑華やぎ盛かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
山茶花や紅斑の少しさみしくも 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
山蟻や日斑の匂ふ松林 阿部みどり女
岩魚の斑みどりさす夏来むかへり 千代田葛彦 旅人木
峡の日昏はいつも斑でやって来る 斎藤白砂
崖歯朶に斑の夕日柴盗む 徳弘純 非望
川音にふたたび出合ふ斑雪村 古賀まり子
干煙草選る病斑も見のがさず 城萍花
幾代織り山の斑雪に絣似る 宮津昭彦
庭石に斑にさせば冬日かな 久保田万太郎 流寓抄
徒渉する腰の高さを岩魚の斑 伊藤いと子
恋遂げし斑猫の斑の燦燦と 我妻草豊
愛欲に斑雪の山の遠静か 三谷昭 獣身
愛鷹の斑雪は消つつ吾子生れぬ 渡辺白泉
打水の斑ら乾きやながさき忌 中尾杏子
括り桑ざんばら桑も斑雪かな 八木林之助
放哉の若狭の寺の斑雪かな 今福心太
文字盤の中も斑雪の花時計 鷹羽狩行
斑(ぶち)なるは猫のみならず金魚にも 高澤良一 素抱
斑の木瓜もおさらば復の日はなけむ 石塚友二 光塵
斑の鹿に指かませゐて女体恋ふ 川口重美
斑よき鹿かへり来ず花馬酔木 桂樟蹊子
斑牛黒牛牧は朝曇 市川典子
斑犬連れ歩くなり冬帽子 岩淵喜代子 硝子の仲間
斑雪ある靄地を這へり落椿 石原八束 空の渚
斑雪の丘われよりさきに声のぼる 加倉井秋を
斑雪より純白の鳥舞ひあがる 斎藤信義
斑雪ダム湖の色に重なれり 平松周倭
斑雪坂は死角に樹風生み 河野多希女 こころの鷹
斑雪山かたくり咲ける頃とおもふ 鈴木貞雄
斑雪山にぎやかに葬の人帰る 中拓夫
斑雪山はるかに鹿が耳立てる 藤森都史子
斑雪山をりをり射せる日もまばら 堤 高嶺
斑雪山半月の黄を被るなり 大野林火
斑雪山四方よりせまる別れかな 永田耕一郎 雪明
斑雪山月夜は滝のこだま浴び 飯田龍太
斑雪山目の前に来て懸巣鳴く 和公梵字
斑雪山真下に機上のティータイム 塩川祐子
斑雪山見えて空席多きバス 浅井一志
斑雪嶺に会ふまばゆさの顔撫でて 村越化石 山國抄
斑雪嶺のふかきへ鱒を提げゆくか 村上しゆら
斑雪嶺の影のゆらぎの絵蝋燭 吉田紫乃
斑雪嶺の暮るるを待ちて旅の酒 星野麦丘人
斑雪嶺の音霊を聴く達治の忌 伊藤貴子
斑雪嶺や雀尾長も声潤ひ 行木翠葉子
斑雪嶺や風の土手ゆく郵便夫 奥田卓司
斑雪嶺や鴉の声のややに錆び ふけとしこ 鎌の刃
斑雪嶺をささふ穂高の鉄沓屋 宮坂静生 樹下
斑雪嶺を仰ぎ応挙の絵を見たり 越智照美
斑雪嶺を神とも仰ぎ棚田打つ 伊東宏晃
斑雪村いま青天に包まるる 野村喜舟
斑雪村ごしごし鯉を洗ひをり 波多野清
斑雪水痘の子を預りて 秋武久仁
斑雪照り山家一戸に来るはがき 鷲谷七菜子 花寂び
斑雪牛かたまりて糶をまつ 沢野弘
斑雪田に地図のごと残りけり 蓬田佳穂
斑雪空へつながる海の紺 加藤憲曠
斑雪谷樅は全き日暮の木 宮坂静生 春の鹿
斑雪配し鎌倉五山かな 遠藤睦子
斑雪野に古傷かばふ身を斜め 稲垣きくの 牡 丹
斑雪野に月あり青き魔がひそみ 堀口星眠 営巣期
斑雪野に波打ち寄する厚田かな 古川英子
斑雪野に黒牛といふ鬱を置く 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治 四季貧窮
斑雪野やいきなり尽きて陸奥の海 中川禮子
斑雪野や日差し静かにゆき渡り 安田敏子
斑雪野や産着干さるる牧夫寮 丸山美奈子
斑雪野を楽人の群れ通り過ぐ 川崎展宏
斑雪風手に載せて買ふ桐の下駄 石川サト子
日がさしてくるはさびしや斑雪山 清崎敏郎
日の斑いま目先およぐ水の秋 加古 宗也
日の斑より葡萄のにほひ葡萄園 鷹羽狩行
日の斑得て涼々と小魚湧く 河野南畦 湖の森
日の斑避暑地に疲れ出づる頃 小林 貴子
早稲中手晩生の斑ら有磯海 志城柏
昃りし斑雪のごとく静かなり 小林康治 玄霜
星の夜の星の斑の寒鰈こそ 友岡子郷
春しぐれ老斑の手に碁石打つ 村岡嘉樹
春は曙ほのぼのと子の蒙古斑 黒崎かずこ
春伐りのこだま斑雪の瀬山越え 石原八束 雪稜線
春筍に夢のたぐひの黒斑あり 藤田あけ烏 赤松
春雲のかげを斑に浅間山 前田普羅 春寒浅間山
晩涼の黒の勝ちたる斑(ぶち)の猫 高澤良一 燕音
暑くなる陽女の腕の雀斑に 田川飛旅子 花文字
暮れ際のさくらむらさき斑雪山 堀口星眠 営巣期
最明寺殿の毒殺実梅に斑 高澤良一 寒暑
月のいろして鮎に斑のひとところ 占魚
月の斑の黴のごとしや春愁 櫛原希伊子
月の色して鮎の斑のひとところ 上村占魚
月涼しところどころに斑ある樹 中田剛 竟日
木もれ日の斑が流れつゝ行く日傘 高濱年尾 年尾句集
木回りに聡き斑目ばかりなり 瀧澤和治
木洩れ日の斑もつけし鹿の子かな 矢島渚男 延年
木版画めけり斑雪の伊吹山 太田 嗟
末枯の汚斑大いなる襖かな 金尾梅の門 古志の歌
杜氏帰る斑雪山肌海へ垂れ 安達峰雪
東菊群れて天地斑の消ゆる 兵庫池人
東風寒を云ふ雀斑の頬を寄せ 正雄
松過ぎや斑雪の上の雪催ひ 石田波郷
林中の日の斑おびただしき返り花 内藤吐天 鳴海抄
梵字めく斑のあり黄なる盆の月 福田蓼汀
楢青み蔵王に縋る斑雪見ゆ 小林康治 玄霜
榛の木に棒を貯ふ斑雪村 宮坂静生 樹下
樽前山斑雪は牛の背のごとし 角川照子
橋立の日の斑蹴り上げばつた跳ぶ 竹中碧水史
檻さむく豹の斑ひとつ落ちてあり 渋谷道
死なざれば月光の斑を手向草 小檜山繁子
死なば消ゆる雀斑を愛す初鏡 山田みづえ
残照が斑となる春の椨の森 佐川広治
残雪に日の斑と鶏を放し飼ふ 佐藤多恵子
水に映りて斑をふやす杜鵑草 檜 紀代
水ゆたか仏心ゆたか斑雪村 井上閑子
水透きて鯉の斑透きて広島忌 小原希世
河口広く斑雪に日暮さまよへり 松村蒼石 雪
油点草咲ききりし斑のつまびらか 西村和子 かりそめならず
泉川陽の斑に染みぬ恋ヶ窪 石原八束 雪稜線
波止場見にある日斑雪の丘に佇つ 稲垣きくの 牡 丹
浅蜊の斑みな褐色に食ひ了る 川崎展宏
浅蜊の斑人別帳をはづされて 有馬朗人 耳順
涼しき斑染めて秋待つ薊の葉 大島民郎
滝壺の水に遊べる日の斑かな 高濱年尾 年尾句集
火祭りの火の粉降りこむ斑雪 遠山弘子
点滴筒斑雪浅間の宙に吊り 堀口星眠 営巣期
煩悩のほむらもあらむ斑雪 立田茂典
熊笹や湯壷に落つる斑れ雪 桂 信子
燕来て八ケ岳北壁も斑雪なす 相馬遷子 山国
父の顔の老斑逃げゆくクロッカス 寺田京子 日の鷹
牛の斑にひろがる海や桐の花 石寒太 あるき神
牛の背の斑いろいろの枯木かな 池内友次郎 結婚まで
生身魂老斑つねの静けさに 水口郁子
病室の湯呑みの脇にバナナの斑 高澤良一 素抱
白桃や妻の雀斑をかなしめば 小林康治
白樺に斑の満ちて神還りけり 堀口星眠 営巣期
白鳥の帰北うながす斑雪山 野沢節子 八朶集
百合の雀斑少女の頸の腱強し 田川飛旅子「花文字」
目を炎やす鷹に逢ひたし斑雪ゆく 村越化石 山國抄
目玉にも斑ありけり蟇 中田剛 珠樹以後
真白斑の鷹に日本語でものをいう 宇多喜代子 象
石斑魚に朱いすぢがつく雪解かな 室生犀星 魚眠洞發句集
石斑魚鳴いて母と娘の浴かな 言水
硫黄噴く斑雪の谷をよぢ帰る 『定本石橋秀野句文集』
禽のみに目聡く斑雪野に住めり 堀口星眠 営巣期
秋 暑 し 豹 の 斑 の 日 に 粘 り 富澤赤黄男
秋の滝なりし日の斑も風の斑も 後藤比奈夫 紅加茂
秋天の下雀斑のこまやかに 山口誓子
秋蝶として黄斑の派手なるも 殿村莵絲子 花 季
秋近し黄な斑出来て葉鶏頭 龍胆 長谷川かな女
秋雨や漆黒の斑が動く虎 渡邊水巴
秋風や額のつよき斑ら牛 長谷川かな女 雨 月
稚虫背にうすうすと茶色の斑 阿部みどり女 月下美人
種瓢斑らなつらを見はやさん 召波
立枯の木々おぼろなり黒斑山 堀口星眠 営巣期
笹鳴や馬込は垣も斑にて 室生犀星 魚眠洞發句集
筍の天鵞絨の斑の美しき 風生
籠るなり老斑をまたふやす冬 大野林火
紅斑ある虎杖思ふのみに酸し 山口誓子
紅鱒の斑をこぼさずに焼かれけり 渡辺恭子
納得のゆかぬあれこれ斑雪 伊藤 梢
納骨の人ら斑雪の端ゆけり 村越化石 山國抄
紫の斑の佛めく著莪の花 高濱虚子
紫の斑の賑しや杜鵑草 轡田進
終に風けものの性を斑雪山 緒方敬
経師屋の好みに合わぬ蒙古斑 仁平勝 東京物語
緑蔭に拾ふ日の斑と約束と 上田日差子
緑蔭の斑は母子像の母にさす 鷹羽狩行
緑蔭の日の斑を踏めば貝の音 岩淵喜代子 硝子の仲間
縄跳びの少女斑雪をはるかにす 堀口星眠 営巣期
罌粟に黒斑スタンダールに赤と黒 福田蓼汀 秋風挽歌
翔つものの影のすばやき斑雪村 山上樹実雄
老斑とは死の斑とろとろとろろ汁 加藤かけい
老斑のうするる梅雨の明けにけり 石川桂郎 四温
老斑のこめかみに夢明易き 百合山羽公 寒雁
老斑のごとくに憎む餅の黴 稲垣きくの 牡 丹
老斑の両手の温み涅槃の会 福井光仙
老斑の手にいま脱ぎし蛇の衣 山口草堂
老斑の手に享く早桃みずみずし 堤照佳
老斑の手に蟹捉へすぐ放つ 福田蓼汀 秋風挽歌
老斑の手や年の豆もてあそぶ 原田種茅
老斑の手筋披瀝し茶揉唄 百合山羽公 寒雁
老斑の月より落葉一枚着く 西東三鬼
老斑の朴の葉こぞる霜の前 堀口星眠 営巣期
老斑の華にふれ落つ木の葉髪 百合山羽公
老斑の遂にわが手に羽蟻の夜 篠田悌二郎「風雪前」
老斑は夕暮の華吊しのぶ 鈴木鷹夫 大津絵
老斑は雨の日の薔薇剪りてより 阿部千代子
老斑を夏日晒しの童かな 永田耕衣 闌位
胸ひらく母の眼をして斑雪山 堀口星眠 青葉木菟
良いときにお逝きなされて斑雪山 鳥居美智子
芋虫に星の斑のある冥加かな 珍田龍哉
花さいて幹の斑しるき大椿樹 飯田蛇笏 春蘭
花さんしゆゆ日差しに斑のありにけり 高澤良一 さざなみやつこ
花屑に斑(むら)あり次の風吹くも 高澤良一 鳩信
花木槿 蒙古斑濃き赤子泣く 平岡たかし
花蓼に斑陽のさす鳳来寺 谷中隆子
茶の花や海へ急げる石斑魚あり 宇佐美魚目 秋収冬蔵
菊人形直衣の菊に斑ありて 高澤良一 さざなみやつこ
菖蒲湯の雀斑に匂ひなかりけり 高澤良一 寒暑
萩の日や雀斑の笑顔駈けぬけて 河野多希女 こころの鷹
萩枯れて斑愈々濃し鹿の親 西山泊雲 泊雲句集
落し子の龍の冷たき斑かな 碧梧桐
落ちてゆく日をとどめたる斑雪山 清崎敏郎
落鮎の三日月の斑をかなしめり 沢木欣一
葉桜の斑や墓山に墓探ね 上田五千石 田園
葉陰の紅羞背中合せの雀斑桃 香西照雄 対話
葡萄園日の斑みだれて暑の残る 下村ひろし 西陲集
蒙古斑あらはにプールさんざめく 瀬口ゆみ子(ぐろっけ)
蒙古斑とれし少年棗の夜 宮坂静生 樹下
蒙古斑の子を抱き しかと一日雪 星永文夫
蒙古斑もて生れ出でし慈姑かな 大橋敦子
蒙古斑を青き大陸と思え 松本勇二
蒙古斑鮮やかに浮きみどりの日 広瀬杜志
蒼天に鷹の帆翔斑雪村 佐藤国夫
薺の斑つけて大きな粥柱 千原草之
藁屋根に斑ら雪見ゆ梅の花 室生犀星 犀星發句集
藪中や日の斑とゆらぐ山吹草 金尾梅の門
藻の花や日の斑の揺れる諏訪の湖 福田文夫
蘭の葉に小さき斑焦げて蠅ゐたり 楠目橙黄子 橙圃
虎の/斑の/岬の/青き/淡き/祭 高柳重信
虎の斑に濃き黄ありけり五月の陽 長谷川かな女 雨 月
虎の斑の岬の青き淡き祭 高柳重信
虎斑木菟つぐみ握りしまま睡る 吉田道子
虹鱒の斑をこぼさずに焼かれけり 渡辺恭子「花野」
虻をはらふ二枚田持ちの手の老斑(しみ)よ 友岡子郷 遠方
蛤に雀の斑あり哀れかな 村上鬼城(1865-1938)
蜆汁妻の雀斑が病めりけり 小林康治
蝉時雨日斑(まだら)あびて掃き移る 久女
蝮草斑のうごめきて雨来るか 堀口星眠
蝿はらふ尾のすり切れし斑牛 松本 美簾
蟷螂の背に老斑を置きはじむ 村田白峯
蟹糶場声とぶ時化値斑雪して 石川桂郎 高蘆
行水の裏を返せば蒙古斑 森田智子「掌景」
豹の斑の春うつくしき寒さかな 久保田万太郎 流寓抄
赤々と杉の葉交る斑雪かな 加瀬美代子
踊り子草水は陽の斑を生みつゞく 中邑礼子
踊子草日の斑のまろぶ民話村 奥村直女(馬酔木)
身を舐めて鹿に冬の斑あらはるる 野澤節子 『存身』
軒低く干す小鰈や斑雪 鈴木真砂女 夕螢
送水会や日ののこりゐる斑雪山 猿橋統流子
逃れし斑うつくしかりし山女かな 稲岡長
逢へさうな逢へなささうな斑雪山 鳥居美智子
道よぎる鹿の子斑を引き緊めて 南方 惇子
遠く斑ら牛はつきり見えるそれだけの景色冬日の村 安斎櫻[カイ]子
遠嶺斑雪シヨートケーキの角くずす 田村みや子
遠嶺斑雪夕鶴は声やはらかに 神尾季羊
遺影涼し林中を牛の斑が移り 子郷
酔ひて濃き虎の老斑山巓の高祖 高柳重信
金の斑の鹿駆けてゆく御陵道 佐川広治
鈴懸の斑のきはやかに更衣 片山由美子 風待月
鉄を打つ谺短かし斑雪山 阪本 晋
鉄柵に囚はれごころ斑雪 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
門畑に虎鶫ゐて斑雪村 篠崎玉枝
闇深し以心伝心蒙古斑 岸本マチ子
降る雪や鯉の朱の斑は痛からむ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
陽斑の草を離れてもゆる哉 露月句集 石井露月
雀斑の顔六月を眩しむも 山田みづえ 忘
雀斑よし枇杷の包みに陽を除けて 川崎展宏
雀斑を殖やして秋を逝かしめぬ 鈴木真砂女 夕螢
雀来て日の斑ついばむ冬うらら 成島 秩子
雀蛤となりて老斑まぬがれず 黄川田美千穂
雁と逢ふ赤羽を過ぎ田の斑 殿村莵絲子 花 季
雄鶏の木にのぼりたる斑雪 福島壺春
雉子鳴けり斑雪浅間は薄目して 堀口星眠 営巣期
雨ながら斑雪の光野に競ふ 堀口星眠
雪の土に日の斑の踊り童子墓 鷲谷七菜子 雨 月
雪の夜は火斑(ひがた)奪ひに鬼が来る 佐川広治
雪の斑の澄む甲斐駒へ雁帰る 堀口星眠 火山灰の道
雪山の斑や友情にひゞ生ず 上田五千石 田園
雪山の斑や近き者愛す 岸貞男
雪来ると荒草は斑を育てをり 橋本榮治 麦生
雲斑らなる谷間に人家かな 京極杞陽 くくたち上巻
青梅にうかべる雀斑地の夕焼 松村蒼石 寒鶯抄
青梅の尻見ゆ子には蒙古斑 文挟夫佐恵 雨 月
顔に斑のいちじるしきが桜守 中田剛 竟日
風の斑に方位失う花吹雪 永田タヱ子
風の百合その斑も揺れて師の忌なり 中村明子
風邪に伏し竹の日斑を眼うらに 阿部みどり女
飼鷹も生くるしるしの斑のさやか 純夫
馬酔木野の斑雪いくさを想はざる(義弟に) 『定本石橋秀野句文集』
鮎の斑の卵色なるつかれかな 志城柏
鯉の斑の溶けんばかりの四温かな 大石悦子 聞香
鯖の斑の淋漓と祭来たりけり 小川軽舟
鱒の斑のちりげ立つほど澄める水 稲垣きくの 牡 丹
鱒生れて斑雪ぞ汀なせりける 石田波郷
鶴の墓斑雪一枚残しけり 冨田みのる
鹿の子の斑にまぎれなきまなこかな 鷹羽狩行
鹿の子の生れて間なき脊の斑かな 杉田久女「杉田久女句集」
鹿の子の親よりも斑をしるくゐる 森澄雄
鹿の斑に樗の花の零るるよ 岸原清行「海境」
鹿の斑のかそけき梅雨に入りにけり 野中亮介
鹿の斑のさくら色して涼しけれ 和田耕三郎
鹿の斑のまだ見えてをり春霙 柚木紀子
鹿の斑の日暮れて雨となりにけり 吉田鴻司
鹿の斑の産み月なればぼろぼろに 星野明世
鹿の斑や戻りの梅雨を見てゐたり 角川春樹 夢殿
鹿を見てゐて鹿の斑が妻に 星野紗一
鹿消えて鹿の斑色の餅ならぶ 渋谷道
黐の花散つて地上の雀斑殖ゆ 鈴木鷹夫 渚通り
●保護色 
保護色であった鰈が干してある 池田澄子
保護色に迷うてをりし雨蛙 稲畑廣太郎
保護色の蝶々が居たり枯芭蕉 富田潮児
保護色を拒みとほして寒鴉 ふけとしこ 鎌の刃
山女浮く岩を木の葉を保護色に 茨木和生 丹生
岩陰の色の保護色山椒魚 穐山珠子
日ぐれの保護色になり ひそと街角 湖光子
●無色 
冬の草誕生石の無色なれば 長谷川かな女 牡 丹
春ともし重ねし蹉跌もう無色 下山田禮子
殺到する汐の青さに水母無色 内藤吐天 鳴海抄
氷岳の見える病院 コップの無色 伊丹公子 アーギライト
火の酒の無色透明雪催 いはらきようこ
熔接の火花無色となる炎暑 横溝やす子
片栗の群落にゐて妻無色 清水逍径
画展出ていつもの無色梅雨の街 八牧美喜子
眼を病んで無色の扉あやすなり 野路斗志子
瞳の中の砂粒無色特車隊 阿部完市 証
紫陽花となるまではただ無色かな 平井照敏 天上大風
艶に無色や田打ちつづけて解くる帯 草田男
鉱毒は無色透明滴れり 津田清子
霧氷林無色無音の時の中 川崎俊子
飾りして無色無人のランドリー 郡山やゑ子
髪洗うあとは無色になりたくて 平田亜希
●迷彩 
リーフィーシードラゴン遊歩の迷彩服 高澤良一 素抱
五輪旗の裏にもあるてふ迷彩色 飯田晴久
戦時迷彩せし壁攀づる青蜈蚣 宮坂静生 青胡桃
晴れ渡る三日の屋根に迷彩服 攝津幸彦 未刊句集
枯色も攻めの迷彩枯蟷螂 的野 雄
渋谷区の迷彩服の笑顔かな 岡村知昭
炎天のキヤラメル工場迷彩のこす 田川飛旅子 花文字
炎昼や迷彩服の吊し売り 安達三郎
特にテレビ迷彩服に上下なし 相原左義長
蕨狩迷彩服の子と一緒 光成敏子
赤土に夏草戦闘機の迷彩 沢木欣一
迷彩服が突如整列夏木立 堀敬子(水明)
迷彩色のまんなかにいる中年ら 白石司子
●明色 
露草の朝明色を着くづるゝ 齋藤玄 飛雪
●汚れ 
*たらの花汚れ夕日をとほくせり 小松崎爽青
いさゝかの汚れも見せず女郎ぐも 大工園山桐
いたく汚れしわが恋猫とすれちがふ 黒木 夜雨
いちにちの眼の汚れ天の川 恒藤滋生
いつまでも母の太箸汚れなく 鳥越すみこ
うすうすと裾汚れたる盆燈籠 右城暮石 声と声
お夜食に汚れし皿を茫然と 岩田由美 夏安
かざしみる眼鏡に汚れ菊日和 高澤良一 素抱
きゆつきゆつと汚れゆくなり京人形 攝津幸彦
くちづけを宥せし牡丹汚れずや 稲垣きくの 牡 丹
くちなしの花びら汚れ夕間暮 後藤夜半
くちなはを見し目のどこか汚れたる 大橋敦子 匂 玉
けもの臥すごとくに汚れて残る雪 大橋櫻坡子
この街の古き飯屋の汚れし燈 細谷源二 砂金帯
こびりつく汚れのごとく鮭死せり 岡田史乃
さをとめや汚れぬ顔は朝ばかり 其角「句兄弟」
しもつけの花の汚れも見えそめし 新谷根雪
すぐ汚れる白ハンカチは薄幸ぞ 清水径子「清水径子全句集」
その日より汚れぬ灰皿藤の夕 谷口桂子
てふてふの高く汚れて遊びけり 佐々木六戈 百韻反故 初學
どれもみな汚れて奈良の春の鹿 大野雑草子
なほ残る古び汚れし寒さあり 相生垣瓜人 明治草抄
にんじんの花汚れゐて土用浪 細見綾子
ぬきんでて夏の蓬の汚れよう 櫻井ゆか
はし汚れたる新しき独楽の紐 後藤夜半 底紅
はし紙の汚れも少し薺粥 村木記代
ふきのたう根雪汚れて退りけり 高澤良一 素抱
もの食うて汚れし卓や冬籠 大橋櫻坡子
よな汚れせる人に混み登山茶屋 宇川紫鳥
アカシヤの花の汚れの目立つ頃 高濱年尾 年尾句集
エスカルゴ三つにかくも手は汚れ 宇多喜代子
オホツクの鱈あげて街汚れたり 岡村浩村
クレバスの見えて雪渓汚れをり 岸善志
クローバに放つ子豚の汚れなし 久保田晴朗
コスモスの汚れ下葉の縮れ気味 高澤良一 さざなみやつこ
シャワー浴ぶくちびる汚れたる昼は 櫂未知子 貴族
ソース壜汚れて立てる野分かな 波多野爽波
ソース瓶汚れて立てる野分かな 波多野爽波 『一筆』
ドラム罐口あく誰も汚れて過ぎ 林田紀音夫
ハンカチのけふの汚れといふべかり 行方克巳
ハンカチのチョークに汚れ今日終る 森田峠 避暑散歩
パイプの汚れ拭き捨つ風邪の薬包紙 猿橋統流子
レグホンの汚れ月消す死を誰が消す 香西照雄 対話
一座黙し迎う汚れし恋猫なり 赤城さかえ
一日の夏手袋の汚れ易す 浜川穂仙
一日の汚れが爪に冬薔薇 二村典子
一月の汚れやすくてかなしき手 黒田杏子 木の椅子
一滴も血の汚れなき狩の幸 平田冬か
下町にスピッツ汚れ薄暑なる 加藤知世子 花寂び
世の花に汚れしとてや御身拭 御身拭 正岡子規
中華街矮鶏は汚れて二月果つ 古賀まり子
乾く墓地汚れハンカチ髪に載せ 殿村莵絲子 牡 丹
二番藍汚れて牛の飼はれをり 中條千枝(草苑)
二等兵の肩章汚れ湖荒れる 金子兜太 少年/生長
人に会ふたびに汚れて我がハンカチ 右城暮石 声と声
人に老扇に汚れおのづから 伊藤柏翠
人の世の嘘に汚れし白ハンカチ 下山宏子
今朝秋のうす汚れたるギブスかな 佛原やす子
何するとなく手の汚れ麦の秋 星野弘子
何もせぬてのひら汚れ蘇枋咲く 永作火童
作り滝空の汚れに細りをり 河野南畦 湖の森
修二会僧紙衣の衿のやや汚れ 山田重井
冬かもめ汚れる印刷工の眼に 中山純子 沙羅
冬の石垣「革命防衛」の文字汚れ 瀧春一
冬仙人掌汚れわが肺よりも高き 河合凱夫 藤の実
冬服も汚れぬ家の匂ひもつ 殿村莵絲子
冬没日玻璃の汚れにとどまりぬ 堤高嶺
冬渚仔牛馳せゆき汚れなし 木村蕪城 寒泉
冬空の汚れか玻璃の汚れかと 波多野爽波 鋪道の花
冬草や耳たぶ汚れなき青春 爽波
冬萌に群れて白鶏汚れをり 根岸善雄
出勤の日々の朝顔汚れなく 清水徹亮
出稼ぎの汗に汚れし便り来る 網干みのる
刑務所も枕む冬日も汚れをり 成瀬正とし 星月夜
前掛けの汚れて白き昼寝かな 月舟俳句集 原月舟
労働祭朝の汚れぬ顔急ぐ 殿村菟絲子 『牡丹』
千生の面したたか泣きて汚れけり 関戸靖子
南瓜汚れの顔のまま吾子人前に 大熊輝一 土の香
口の中汚れきつたり鰯喰ふ 草間時彦 櫻山
口中で汚れる淡き日のかもめ 攝津幸彦
吊ってゐる紐の汚れし種茄子 中畠 ふじ子
君來まさんと思ひがけねば汚れ足袋 足袋 正岡子規
和上とて紙衣の煤の汚れあり 前川菁道
咲き充ちてアカシヤの花汚れたり 高濱年尾 年尾句集
啓蟄の土の汚れやすきを掃く 橋本多佳子
啓蟄の芝生は汚れたる感じ 後藤夜半 底紅
啓蟄の雨が明るく梅汚れ 遠藤梧逸
喰み移る羊ら汚れ春浅し 荒井正隆
土筆の子末黒汚れの袴穿き 後藤比奈夫 祇園守
地に還る花びらとして汚れけり 久保純夫
塩くれ場汚れて夏日霧捲ける 宮坂静生 青胡桃
塩辛蜻蛉の汚れし翅を笑むごとく 高澤良一 ももすずめ
墓掘りとおなじ汚れの軍手はめる 林田紀音夫
壬生の面したたか泣きて汚れけり 関戸靖子
夏きざすペンキ塗見つわれ汚れず 宮津昭彦
夏服の汚れしままに勤めけり 大橋越央子
夏椿総身汚れなかりけり 箕村菜実子
夏老ゆと白鳥の羽汚れたり 成瀬桜桃子 風色
夕東風や白き神馬の汚れなき 磯野充伯
夕焼消え除夜大空の汚れなし 池内友次郎
夜桜を見て来し裾の汚れかな 茨木和生 倭
夜濯ぎになほ汚れたる蚕飼妻 萩原麦草 麦嵐
大きな火星へ汚れ童子等焚火上ぐ 川口重美
大寒の没日わが肺汚れたらむ 藤田湘子 雲の流域
大津絵の鬼も汚れつ榾あかり 闌更
大漁旗揚げ鮪船潮汚れ 長谷川浪々子
天竜の出水汚れの乱れ萩 小田実希次
太刀魚を買ふ汚れなき夕銀貨 黒田杏子
太陽に見捨てられて汚れた机の上の仕事 橋本夢道 無禮なる妻抄
太陽の汚れを少し白日傘 檜 紀代
夫の絣汚れしままに産みに行く 金子皆子
女の手汚れやすくて柚きざむ 稲垣きくの 牡 丹
妻の足袋すでに汚れぬ死までの距離 小林康治 玄霜
学園の木々みな汚れ芽ぶきたる 宮坂静生 青胡桃
宝引の紐の汚れてゐたりけり 茨木和生 倭
家も人も汚れて秋の繭白し 真鍋やすし
寒の雷寺の汚れも継ぎにけり 石原廣紹
寒空や鶴しづ~と汚れつゝ 佐野青陽人 天の川
少し汚れて戻る封筒梅雨間近 花尻 万博
尾の先まで若蛇礫に汚れなき 野澤節子 黄 瀬
山の日に汚れなき白水芭蕉 吉村ひさ志
工場バンド汚れて重き手風琴 細谷源二 鐵
己れ責むる日や春手套かく汚れ 鈴木栄子
平和祭の地に伏し汚れ塗装工 鈴木六林男
床に入る足裏の汚れ夏安居 市堀 玉宗
強き独楽もつとも汚れゐたるなり 小西瑞穂
御田植の牛の腹帯汚れなし 香月房子
忘れ羽子少し汚れて美しや 上野泰 佐介
思惟の船腹突堤汚れだぶつく午後 鈴木六林男
恋猫となりしにはかの汚れかな 遠藤若狭男
恋猫の汚れきつたる寧けさよ 行方克巳
戦事隊入り雲の峰汚れけり 殿村莵絲子 遠い橋
手術の日冬空少し汚れけり 森田峠 避暑散歩
抱へたる笠に田植の汚れもの 平井備南子
招き猫すこし汚れて日永かな 細川加賀 『玉虫』
掃除機が汚れて居りぬ今朝の秋 都筑智子
擬宝珠のむらさき汚れ悲別鉱 堺 信子
支出なき一日風邪寝の窓汚れ 菖蒲あや あ や
文弱の身ほどに汚れ汗拭 深谷雄大
旅かなし汚れし鹿をはるかにす 加倉井秋を 午後の窓
旅の髪汚れなかりし氷る国 八牧美喜子
旅人の如くに汚れ梅雨の蝶 上野泰 春潮
旗汚れ垣は頽れて小菊かな 菊 正岡子規
日常の素足の汚れもて詣る 和田悟朗 法隆寺伝承
日本のいづこ汚れしうらゝかに 相馬遷子 山国
日盛の潮の汚れに白秋碑 木村蕪城
早乙女や汚れぬものは歌ばかり 来山
春の昼家鴨汚れて歩きをり 吉田ひろし
春寒や墨を練る四肢汚れづめ 伊東宏晃
春愁の夕べを帰る手の汚れ 桂信子
春暖炉椅子が汚れてにぎやかに 古舘曹人 樹下石上
春泥の孔雀汚れしこと知らず 小島千架子
春禽のすこし汚れて橋の上 藺草慶子
春隣ファックスの文字うす汚れ 原 裕
昼の虫人棲みて壁汚れけり 辻田克巳
晒時ひかりの汚れ言ひにけり 茨木和生 往馬
月汚れ東京の灯にまぎれ棲む 仙田洋子 雲は王冠
朝降つてもう汚れだすシカゴの雪 田川飛旅子 花文字
木馬館木馬汚れて芽立ちけり 永井龍男
杉の実も男鹿も汚れそめにけり 加倉井秋を 午後の窓
枇杷は実に旅のハンケチ汚れけり 成瀬桜桃子 風色
枇杷啜るおのれ汚れてゐはせぬか 小島千架子
枝豆に牛の汚れの色を見る 松瀬青々
柄短かに出水汚れの稲刈れる 小田実希次
桃の実の誰かに見られたる汚れ 荒井良子
桑の実に唇の汚れし遍路かな 水内鬼灯
桔梗や男も汚れてはならず 石田波郷(1913-69)
桜咲き椿汚れてゐたりけり 辻桃子 しほからとんぼ
桜烏賊おのれの墨に汚れたる 沖崎一考
梅を見て空の汚れのなきをほむ 細見綾子 黄 瀬
梅汚れ番の目白来ずなりぬ 高澤良一 宿好
棲みつきて白鳥汚れゐたりけり 北見さとる
椿落ち恋の如くに汚れたる 成瀬正俊
残雪の汚れなきより融けはじむ 浅井周策
母の日も母の素足の汚れ居り 原コウ子
母の足袋汚れきつたり父死なす 小林康治 四季貧窮
母子寮に足汚れたる嬰児の死 三谷昭 獣身
水汚れ少年の景滅びゆく 森田智子
水芭蕉こゑ発すれば汚れけむ 岸田稚魚
水鳥は泥をせせりて汚れなし 岩田由美 夏安
汚れざるものはかなしき冬蛤 細見綾子 花寂び
汚れざる白といふ色花菖蒲 細江大寒
汚れたるベレー帽行く文化の日 佐藤晴生
汚れたる夏帽街の似顔画師 成瀬正とし 星月夜
汚れたる手を洗ひけり寒清水 小野菖菊
汚れたる指の繃帯牡蛎をむく 浜川穂仙
汚れたる掌の 合掌の 月にぬれ 富澤赤黄男
汚れたる木にむらがりてあんず咲く 百合山羽公 故園
汚れたる湯気上げにけり櫻鍋 綾部仁喜 寒木
汚れたる火元夫婦の眼かな 石原舟月
汚れたる灯の一つ垂れ紙漉場 大橋敦子 母子草
汚れたる畳なつかし西瓜切る 阿部みどり女 笹鳴
汚れたる雑嚢肩に秋高し 富安風生
汚れたる雪の山家に日脚のぶ 高浜虚子
汚れたる顔みな上げぬ虹の輪へ 久保田慶子
汚れたる風雨のあとの桜草 深川正一郎
汚れつつ木蔭へ雪のちさくなり 臼田亞浪 定本亜浪句集
汚れてはをらざる梅雨の蝶来る 相生垣瓜人 明治草抄
汚れて小柄な円空仏に風の衆 金子兜太 暗緑地誌
汚れなき冬蝶の黄を愛しめり 新井 英子
汚れなき残雪を踏み泉源に 吉波泡生
汚れなき白はまぎれず蝶の昼 稲畑汀子 春光
汚れなき立春までの掛暦 手塚美佐 昔の香
汚れなき緑の山気摩耶詣 桑田永子
汚れなき蝶なり凍てゝをりにけり 松下鉄人
汚れなく果つる水仙とぞおもふ 高澤良一 素抱
汚れれば父の匂ひの皮手袋 長沼紫紅
汚れ牛も追い出して袋のように暑い夜だ 橋本夢道 無礼なる妻
汚れ犬白尾がゆたか枯芒 香西照雄 素心
汚れ雪世間並にはとけぬ也 一茶
汚れ鶏の羽脱鶏どもほのあかし 石田波郷「春嵐」
沙羅落花して白汚れなかりけり 稲畑汀子
泡盛や汚れて老ゆる人の中 石塚友二「光塵」
泥水に梅雨の鵞鳥の汚れをり 高濱年尾 年尾句集
泥鰌掘る受難イエスのごと汚れ 景山筍吉
流氷の汚れて岸によりかかる 津根元潮
浅間真白冬の教室汚れ易し 宮坂静生 青胡桃
海辺の松黄に汚れ寒日和 瀧春一 菜園
消えざるよ枯菊抜きし掌の汚れ 成瀬櫻桃子 風色
深雪晴野を来て町は汚れたる 相馬遷子 雪嶺
渋搗いて汚れし母をねぎらはん 斎藤双風
溝そばに出水汚れの残りをり 五十嵐播水
濃紺の白く汚れし薄暑かな 二村典子
火の山に侍して雪渓汚れざる 毛塚静枝
火山灰汚れげんのしようこの花にさへ 西村数
火山灰汚れして草泊重ねけり 佐藤 淡竹
炭の粉に汚れ文化の日の父よ 菖浦あや
炭挽きし汚れ夫には近づけず 山口波津女 良人
烈風に入日汚れぬ枯柳 川越苔雨
無花果のきまゝに裂けて汚れなし 殿村莵絲子 牡 丹
焼野より翔ちし白鷺汚れもせず 野澤節子 『八朶集』
牡丹見る旅の汚れのうら悲し 稲垣きくの 牡 丹
牧を閉づ火山灰に汚れし鞍を干し 千々和恵美子
牧開汚れ鏡に笑顔ある 四ツ谷龍
犬も鶏も汚れ雪にもならぬ雨 八木三日女 赤い地図
猪汚れ瓜ん坊汚れてはをらず 森田峠 逆瀬川以後
猫の上の日向の汚れ空母近し 杉本雷造
猫の手の汚れていたる啓蟄かな 坂口英子
猫汚れをり漱石の忌日なり 清水忠彦
玉乗の玉の汚れに雪舞へり 細谷源二 鐵
玉繭やにんげんの口汚れける 小檜山繁子
瓶灼けて裕次郎忌の浜汚れ 原 川雀
生きて来し汚れ白鳥にもありし 今瀬剛一
生ビール天蓋汚れ切つたれど 行方克己 昆虫記
男らの汚れるまへの祭足袋 飯島晴子「寒晴」
町の雪汚れ湖畔の雪綺麗 上野泰 佐介
町汚れ日輪汚れ師走かな 藤松遊子
画室春宵パレツトのごと床汚れ 皆吉爽雨 泉声
白手套手綱を取つて汚れなし 森田峠 逆瀬川以後
白服の旅の汚れも二日目に 稲畑汀子
白服の皺は汚れのごときもの 福永耕二
白椿日に透きながら汚れゆく 高橋千鶴子
白椿汚れ易きをけふ厭ふ 石田あき子 見舞籠
白猫は汚れ泰山木の花 依光陽子
白足袋の汚れざりしがさびしき日 鷲谷七菜子 黄 炎
白足袋の汚れのほどの人疲れ 向田貴子
白足袋の汚れもあはれ鹿踊 田村了咲
白靴の汚れが見ゆる疲れかな 青木月斗
白靴の汚れ通ひの看取妻 鈴木 子
白鳥のみんな汚れて渡りきし 木田千女
白鳥の野行き山行きせし汚れ 行方克巳
目のまはり汚れてゐたる春の鵯 茨木和生 倭
目立たしき玻璃の汚れや秋の雨 高濱年尾 年尾句集
真菰の芽あひる汚れて遊びをり 平林孝子
知床の沼汚れなし月見草 山崎靖子
短夜の新宿の灯の汚れをり 成瀬正とし 星月夜
石蕗咲くや汚れず古りし廻り縁 西山泊雲 泊雲句集
福藁や福来るまでに汚れけり 中条角次郎
秋日傘汚れしほどに持ち馴れし 稲畑汀子
秋深む何をなしても手の汚れ 鈴木六林男 後座
秋風や汚れて白きかもめ丸 遠藤梧逸
稲光百合のまはりの汚れけり 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
空汚れ街の澄む日や柳の芽 京極杞陽 くくたち上巻
空港出て田植ゑ汚れの電柱立つ 波多野爽波 『骰子』
穿き寝せし足袋の裏いつか汚れけり 月舟俳句集 原月舟
窯番の手垢汚れの日記果つ 岸川鼓虫子
竹落葉あひる汚れて飼はれけり 成瀬櫻桃子 風色
節分の夜のそこここの汚れ雪 行方克己 知音
紋白蝶ほどの汚れの白靴に 耕二
紙漉くや汚れし雪をまだ置きて 百合山羽公 寒雁
緬羊の汚れやすさよ受難節 柴田茫洋
脊の汚れ猫が搖りゆく基地の枯れ 中島斌男
脚もとに汚れ雪置き喪の花輪 菖蒲あや あ や
腰布もサリーも汚れ棉車 佐々木とみ子
航終へて西日の船の汚れ果て 大岳水一路
船腹の汚れかすかに夏きざす 片山由美子 風待月
芋の葉の汚れてゐたる露の痕 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
芋の露いささか汚れまじりけり 八木林之介 青霞集
芥子は緋に羊汚れて草食める 上野さち子
花屑のすこし汚れて権太坂 高澤良一 素抱
花過ぎの鶴は猿より汚れたり 久米正雄 返り花
芽柳や加太の入江は汚れたり 五十嵐播水 埠頭
芽柳や成田にむかふ汽車汚れ 石橋秀野
草枕袷の領の汚れかな 楠目橙黄子 橙圃
菊人形見て来し靴の汚れかな 藺草慶子
菱浮葉いまだ汚れぬみどりかな 高濱年尾 年尾句集
萩すがれ陶土汚れのしてゐたる 森 重昭
葉鶏頭汚れることを諒とせり 鎌田 俊
葱畑に汚れの見ゆる寒旱 宮津昭彦
藁といふ汚れなきもの注連作る 明石春潮子
藁塚を田にぢかに築く汚れむを 篠田悌二郎 風雪前
蘆枯るゝ出水汚れをせしまゝに 石井とし夫
虹に乗りたし作業衣汚れざるうちに 細谷源二 砂金帯
蜂が来る風の沈丁汚れそめ 阿部みどり女
行く春や法衣の裾のうす汚れ 篠原鳳作
街なかに棕梠咲き遠き旅に汚れ 加倉井秋を 午後の窓
親指のことに汚れて秋日和 坪内稔典
豊年の貢の雪も汚れけり 青木重行
豚駈けて牧の陽炎汚れける 桂樟蹊子
負力士髻土に汚れけり 河東碧梧桐
貫禄のかくも汚れて鹿の秋 八染藍子
赤松は鳴りて汚れず胡沙ふる中 及川貞 夕焼
足袋の裏汚れずにゐることは死か 安東次男 裏山
足袋底のうすき汚れや松の内 三橋鷹女
足裏の汚れ灯火に親しむよ 深見かおる
足裏の清楚な汚れ臘八会 牧 冬流
踝の汚れ切つたる昼寝かな 行方克巳
蹠汚れおろ~病めり黴の妻 小林康治 四季貧窮
身に入むや数珠の汚れも母のもの 橋本照子
近づきて大白鳥にある汚れ 荒井英子
道少し汚れて雨の花御堂 高澤良一 素抱
道瑞の汚れし麦も刈られけり 村田 脩
郁子さげてどの子の髪も火山灰汚れ 鶴川田郷
都鳥水汚れたる世となりし 岡安仁義
都鳥汚れし電車橋渡る 長谷川浪々子
都鳥都は汚れゆくばかり 湯浅桃邑
鉛筆工のうからや雪につたなく汚れ 細谷源二
銭かぞふ炭に汚れし父の指 菖蒲あや 路 地
陰雪の汚れなかりし異人墓地 西村和子 窓
陽さむく焦燥の熊は汚れたり 富澤赤黄男
雁渡し雪渓汚れ見えにけり 及川貞 夕焼
集団就職やがて汚れる柳の芽 鈴木石夫
雨月にて馬も羊も汚れおり 山崎政江
雪だるま心のあたりより汚れ 鳥居真里子
雪国の人住むところ雪汚れ 品川鈴子
雪山に白樺の白やや汚れ 福田蓼汀 山火
雪残る汚れ汚れて石のごと 松本たかし
雪渓のまだ汚れざる深さかな 福田甲子雄
雪渓の汚れきつたる厚さかな 手塚美佐 昔の香
雪渓の汚れて堅き象皮なす 茨木和生「木の國」
雪降りし朝や孔雀の声汚れ 加古宗也
霾風やちぎれ汚れし鞭の布 田村了咲
青春の辞書の汚れや雪催 寺井谷子
風邪がぬけるくだものを噛む顔汚れたる 瀧井孝作
飲食に汚れし炉辺や草の宿 たかし
飲食に汚れし爐邊や草の宿 松本たかし
首飾りわが暦日は汚れたり 津沢マサ子 楕円の昼
鬼灯の根に汚れ出る蝸牛 右城暮石 声と声
魚呑んで大鷺の首汚れなし 福田柾子
鮟鱇の涎汚れの土間辷り 日向正雅
鮭を打つ槌なりといふ汚れたり 蟹平
鳥帰る汚れし醤油差ひとつ 友岡子郷 春隣
鳥雲に掃きても掃きても道汚れ 小檜山繁子
鳰ちかく湖駅除雪車汚れたり 宮武寒々 朱卓
鳶の笛冬天汚れなかりけり 稲荷島人
麦よりも雨に汚れて車押す 百合山羽公 故園
黐咲いて空の汚れを見し思ひ 河野南畦 湖の森
●余白 
うきくさの余白の水の暮色かな 桑原立生
ががんぼの余白だらけのからだかな 小西昭夫
さざなみの余白は暗し冬運河 北見さとる
さへづりや筆の走りて余白の美 郡山マサ子
しろしろと色紙の雛の余白あり 後藤夜半 底紅
わが余白雄島の蝉の鳴き埋む 細見綾子(1907-97)
わが生の余白の方へ鷹の旅 伊志嶺亮
セザンヌの筆の余白に秋の声 岡田貞峰
バス待つは旅路の余白花サビタ 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
ポインセチア生華やぎて余白なし 草間時彦 櫻山
一葉忌余白残して日記閉づ 吉田みゆき
七夕竹孤児ら願ぎ事余白多し 平井さち子 完流
人の世の余白残してさくら散る 金井暎子
今日の余白に真赤な炭と碁盤の斑 平井さち子 完流
余白すぐ消ゆる師走の予定表 八木久江
余白とはうつくしきもの水草生ふ 三浦久子
余白なるは悲しびの日々日記果つ 冨田みのる
余白には雲を浮かべて蓮浮葉 片山由美子
余白多き古日記とはなり了す 石塚友二
余白多き日記なりけり年暮るる 阿部みどり女
冬深む一語の余白はかりかね 村田悠紀
冬近し厚きプラトン書の余白 有馬朗人
冴え冴えと余白めく闇寝惜しみぬ 野澤節子 遠い橋
初景色余白に猫の入り来し 宮田黄李夫
初暦輝く余白ありにけり 糸満純一郎
初霜や余白なき日を繰り返し 大島民郎
十二月余白なくなる蜜柑の酸 阿部みどり女
十月や日程表に余白なし 今橋浩一
半生を綴る余白に蝉しぐれ 加藤晶子
卵置く皿の余白を風薫る 松本三千夫
原稿の余白数行朝の蝉 藤田あけ烏
古暦余白なきまで遊びたる 橋本榮治 逆旅
句を書いて多き余白や初日記 高橋淡路女 梶の葉
在りし日の余白埋めんと春の雲 津沢マサ子 風のトルソー
夏至の夜やジンとバッハとあと余白 藤田弥生
夏葱は遺書の余白に似てゐたり 栗林千津
大いなる涅槃図にして余白なし 吉原一暁
天が下灼けゐる墓誌に余白あり 高澤良一 素抱
天命の余白に大根蒔かんかな 清水能舟
屏風絵の鷹が余白を窺へり 中原道夫(1951-)
年賀状余白に喜寿とありしかな 佐藤路草
忙しさにまだ余白あり賀状書く 穐好樹菟男
恋文の余白をすべて憎むべし 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
戦後史の余白の蛇になる沖縄 小橋啓生
春晝の砂の余白に貝乾く 斉藤夏風
暑く 眠く 時空の余白の ベンチ老人 伊丹三樹彦 写俳集
曲り屋は花に余白の啄木忌 平野無石
朝寝して夢の余白に遊びをり 櫛原希伊子
未知という豊かな余白年あらた 松本夜詩夫
朴の花遭難碑余白あるはかなし 福田蓼汀
松七日余白のごとく過ぎにけり 徳永キヨ
松蝉や余白大事に筆運ぶ 坂田美代子(阿蘇)
桃咲く余白陽をまとひたる赤児欲し 磯貝碧蹄館 握手
桔梗や余白は美とも想ひとも 大口公恵
水中花水の余白をのこしけり 那須淳男
水害の記事の余白の白きこと 杉本寛
泥んこの子に余白なし蝸牛 中田ゑみこ
津軽じよんがら空の余白に柿灯す 広治
活字よく組めて余白の夏めきぬ 渡邊水巴 富士
涅槃図の余白の我を思ふべし 橋本榮治 麦生
涅槃図の余白は風の哭くところ 土生重次
涅槃図の余白を金に埋めつくす 石嶌岳
白々と余白めでたし年賀状 七三郎
白梅の余白の余命我に在り 永田耕衣 人生
白菊や看護記録に余白なき 小松和子
白萩の余白に読みし戸籠かな 斎藤慎爾
破芭蕉余白の多き時刻表 平川じろう
稍寒く余白の出来し手紙哉 寺田寅彦
空が余白に見える一日蚯蚓掘る 原子公平
筋書きに余白残して黄落す 玉城幸子
糊代の余白がありしよ冬の川 齋藤愼爾
胸中に余白ひろがり紅睡蓮 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
自分史の余白に泛きし熱帯魚 田中賢治
芭蕉忌の旅の余白を牛鳴いて 中村明子
花種をけふの余白に蒔かむとす 和田祥子
花野なる日記の余白のごときもの 橋本薫
苗代の余白にあそぶ岬の雲 小野恵美子
茄子植ゑし今日の余白の恵み雨 萩生田四頭火
薄画く余白は風の吹いてをり 北見さとる
薺粥命の余白噛みしめて 高島 静
虫の声余白に埋めて書く手紙 安田美樟
襖絵の余白へ翔てり初鴉 南本和子
見えぬ明日余白を重ね日記果つ 茂木義夫
詩集余白多し南風たかぶれる 田中英子
読初や詩集の余白海に似て 和田西方
鉦叩今日の余白を埋めをり 吉田節子
鎌倉の余白で遊び疲れたり 遠藤 煌
長夕焼旅で書く文余白なし 田中 裕明
陽の沈む前の余白に何を描こう 原直子
雁帰る沼に余白の水残し 羽鳥つねを
雁来紅余白なき葉を重ねけり 白岩 三郎
雑巾をしぼる弥生の余白に居て 穴井太 天籟雑唱
雪嶺の天の余白は生きんため 宮坂静生 春の鹿
青葉木菟農事暦に余白なし 高倉恵美子
風に任す昼寝の詩集余白嬉々 宮津昭彦
飛び梅に野をひろげたる余白かな 河野南畦
●色 
*えり沿ひに舟路色さす蘆の角 米澤吾亦紅
*はまなすの実の血の色に五稜郭 石川宏子
*はやて又沖色かへぬ八重桜 島村元句集
*ひつじ踏めば姨捨の海喪の色す 角川源義 『秋燕』
*もぎたてのトマトの色を丸かじり 山田や寿
「甕のぞき」ほどの藍色野川澄む 文挟夫佐恵 遠い橋
ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟われも雛罌粟 与謝野晶子
あいつも一生砂利採暮色に火を點し 細谷源二
あかつきの死色浮かびぬ花の窓(昭和三十九年四月五日三好達治先生逝く) 石原八束 『操守』
あかつきの秘色凝らせり池の蓮 加藤耕子
あがり佳き色鍋島や遅櫻 下村ひろし 西陲集
あきかぜの鷺消ゆ真夜の火の色に 桜井博道 海上
あけぼのの色とも見えて花びら餅 能村登四郎
あした濡れ一と日火色に花ざくろ 和知喜八 同齢
あじさゐの毬に見事に乗りし色 高澤良一 鳩信
あすひらく定めの色に蓮ゆるる 渡辺わたる
あたたかき色に霜夜の月出づる 宗像夕野火
あぢさゐにうづまりて死も瑠璃色か 稲垣きくの 牡 丹
あぢさゐにはやりすたりの色ありし 高澤良一 鳩信
あぢさゐに三つ目の色四つ目も 矢島渚男 延年
あぢさゐに倖の色つひになし 殿村菟絲子 『樹下』
あぢさゐに水の色失せ炎暑来ぬ 野澤節子 黄 炎
あぢさゐに遅速の色のありにけり 山本満義
あぢさゐに降りて募れる色風情 高澤良一 鳩信
あぢさゐのどの色も好き婚近し 氏家さち子
あぢさゐの暮色股間を重くせり 原裕 葦牙
あぢさゐの極まる色も見ず逝くか 高澤良一 さざなみやつこ
あぢさゐの秘色(ひそく)天より貰ひけり 高澤良一 素抱
あぢさゐの色ならぬ色みえくる日 高澤良一 ぱらりとせ
あぢさゐの色にはじまる子の日誌 稲畑汀子 汀子句集
あぢさゐの色には遠し傘雨の忌 鈴木真砂女
あぢさゐの色は外科医の知のごとし 友岡子郷 春隣
あぢさゐの色をあつめて虚空とす 岡井省二
あぢさゐの色汲む神の噴井かな 白井香甫
あぢさゐの色脱けて雨締り無し 高澤良一 素抱
あぢさゐや月に色づき日に褪せて 成瀬桜桃子
あぢさゐや真水の如き色つらね 高木晴子
あぢさゐをびいどろ色の雨つつむ 高澤良一 ねずみのこまくら
あなたより雨の色添ふ春田かな 櫛原希伊子
あひみての後のさくらの色なりし 伊藤通明
あめつちと同じ色得てちるぬかご 栗生純夫 科野路
あらたまや神代の色に伊勢の海 佐藤美恵子
ありきたりな色でありけり垣の薔薇 高澤良一 ももすずめ
ありつたけ色を出したる鶏頭花 阿部寿雄
あると見た色は空なり不二の雪 正岡子規
ある街の木瓜の肉色頭を去らず 三谷昭 獣身
いい色に日暮るる礼者草履かな 本庄登志彦
いかるがの暮色連翹のみ昏れず 和田悟朗 法隆寺伝承
いか程も寝うぞ若葉の色の浜 広瀬惟然
いしぶみの色より翔ちて鶲かな 榎本好宏
いにしへの色とぞ思ふ土雛 石川星水女
いにしへの色にほひたつ蓮かな 鈴木貞雄
いのちかな菊は乱れて色増しぬ 林原耒井 蜩
いのちの白い色丸い雫になりました 宮坂秀子
いのちまた燃ゆる色なり初明り 神蔵器
いはねども色に吉書の花桜 常春 元禄百人一句
いまは昔卯木花咲く海の色 松村蒼石 雪
いま点けし炎色たちまち大文字 角川照子
いも蔓を食べて国防色になつてゐた 岡野スミ子
いろいろな色に雨ふる金魚草 高田風人子
いろいろの色乗せスキーリフトかな 本間登世
いんげんの色さま~の一筵 柴田冬野
うきくさの余白の水の暮色かな 桑原立生
うぐひすやまん丸に出る声の色 木導 正 月 月別句集「韻塞」
うすうすとかはたれ色の花通草 文挟夫佐恵
うすうすと玉紫陽花の色をなし 行方克己 知音
うすうすと終ひの色して公魚は 渡辺乃梨子
うすき日に白根葵の色満たす 深見けん二
うすみどり色に日かげり花李 松本武千代
うすみどり色に染りて菖蒲の湯 金丸希骨
うす色の温室バラぞ春の雪 久米正雄 返り花
うす~とはじまる色の薄紅葉 稲畑汀子
うち返す田の濡れ色や桜ちる 小杉余子
うっすらとあぢさゐの色半ばかな 高澤良一 鳩信
うつくしき色見えそめぬ葉鷄頭 葉鶏頭 正岡子規
うつせ貝色無き風の籠りけり 青木重行
うつぼ草夕べの色に蝶眠る 河野静雲
うつろへる程似た色や藤ばかま 立花北枝
うらの戸に色かへぬ松の枯れにけり 色かえぬ松 正岡子規
うらゝ今それが硝子の色にして 松瀬青々
うりずんやものみな己が色に出て 平 中矢
うるほへる色仄かにて花すすき 飯田蛇笏 椿花集
おそがけに乳色重き桜咲く 細見綾子 花寂び
おでん喰ふこんにやく色の佐渡ヶ島 島田只夫
おでん鍋新旧色の違ひあり 原谷みやと
おでん鍋色に染まらぬ奴がいる 川崎益太郎
おとろふる色より草の絮とべり 鎌田洋子
おとろへてあぢさゐ色の齢かな 草間時彦
おのが朱の色にたぢろぎ唐辛子 鷹羽狩行
おほぞらは桔梗色の厄日かな 糟谷青梢
おぼろ夜や紺を長子の色となし 石川雷児
お仏事の餅に色塗る老夫婦 河野静雲 閻魔
お供へのおもちやが目牽く冷え色に 林原耒井 蜩
お台場のあぢさゐ色の観覧車 高澤良一 素抱
お隣りへ曲がりて絲瓜色づきぬ 内田百間
かがやきて空の色ある霜柱 大澤山世木
かき氷舌出して色比べ合ふ 伊藤範子(自然)
かくし田も冬田の色を示すなる 有働亨 汐路
かぐや姫遠き色などしのびけり 中山美樹
かざす手に血の色透けて鵙日和 片山由美子 雨の歌
かざす手の血の色ぞよき啼く雲雀 臼田亞浪 定本亜浪句集
かたちして孤屋までぞ水の色 炭 太祇 太祇句選後篇
かたまりてやうやく色の藤袴 肥田埜恵子
かたまりて暮色となりし涼み舟 桂 信子
かたまりて色のみだれの海鼠かな 野村喜舟 小石川
かちかち山雑木紅葉の色となりぬ 山口青邨
かつて放埓の竜胆色は哀しけれ 橋石 和栲
かつて王国紅型色のこおろぎか 岸本マチ子
かなかなしぐれ安堵の色を互みかな 林原耒井 蜩
かなかなの森の色して波寄する 古館曹人
かなしきは唇の色冬の暮 神蔵 器
かの子忌やたんぽぽ色に卵焼 渡辺峰山
かはせみのこち向きとまり色が消え 西山泰弘
かはせみの色吸ひ込みし木立かな 安部紫流
かはたれの秋ばら瑠璃の色そへて 角川源義
かまきりのはや枯色を避けがたし 山口誓子
かまつかに残る炎色や休み窯 清水 節子
かまつかの壮んの色を見過ぎたる 関戸靖子
かまつかの色さえわたる秋思かな 西島麦南 人音
かまつかの色ぬすまんと立つは誰 朝倉和江
かまつかの色の萌しの雷震ふ 林原耒井 蜩
かまつかの色を愛して富まざりぬ 林原耒井 蜩
かまつかや夕づけば日に色ゆづり 藤原たかを
かよひ路の枯色照らす入日かな 金尾梅の門 古志の歌
からすみ色の雲見てのまう 北原白秋
からたちの刺枯色に嫩芽かな 大橋櫻坡子 雨月
から絵もやうつすがんぴの花の色 季吟「山の井」
かりそめの色にはあらず冬薔薇 片山由美子 水精
かわらけを色なき風にまかせけり 渕 万寿子
かんばせの色香を今に享保雛 神谷三蔵
がまずみの実の火の色に渦なす霧 小松崎爽青
がまずみは血潮の色や雪かぶる 加藤知世子 花 季
がまづみの色づく頃の山の湯に 高澤良一 素抱
きさらぎの家出て色にさとくなり 長谷川双魚 『ひとつとや』
きさらぎの音に色あり猫柳 神蔵器
きつつきのひとこゑ森の暮色呼ぶ 大島民郎
きのふよりけふの色美し濃紫陽花 小池照江
きらりとし錆色となり猟夫の眼 斎藤玄
きりぎりす碑裏に残りし潮の色 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
きるものの色を覚えて朧月 広瀬惟然
ぎぼうしの花色の雨つづきけり 平塚司郎
ぎん色の橋となりけり花火ちる 正雄
くさひばり色なくなりし空に鳴く 西垣脩
くさ色の思想を抱きて冬の猫 寺井谷子
くちなしの花色なして梅雨のランプ 内藤吐天 鳴海抄
くもりて明けぬあさがほ色をうしなはじ 久保田万太郎 流寓抄以後
くもり日は曇り日の色しじみ蝶 小川允子
くれなゐの色を見てゐる寒さかな 綾子
くれなゐを苦悶の色に武者侫武多 鈴木鷹夫 風の祭
ぐい呑は火の色なりし鱧名残 鈴木鷹夫 風の祭
ぐい飲みに走る火の色初鰹 道川津与
ぐみ色づく湖水も空も藍深め 大熊輝一 土の香
ぐんぐんと暮色にまぎれ根釣人 後藤洋子
けふの日も終りの色や冷し桃 角川春樹
けふや切らんあすや紫陽花何の色 紫陽花 正岡子規
けふ見たる色のひとつに冬至梅 森澄雄
げんげ田のくつがへりあり色のこし 高浜年尾
げんげ田のほむらをのぼる月の色 松村蒼石 春霰
こがらしや硯いて逃る淵の色 蕪村遺稿 冬
こすもすや暮るゝに早き色まじり 林原耒井 蜩
こつてりと鶏頭は色厚うせり 藤田湘子 てんてん
こときれし玉虫になほ夢の色 重住ひで子(航標)
このもよりかのも色こき紅葉哉 蕪村遺稿 秋
この世には無き色として龍の玉 手塚美佐 昔の香 以後
この冬をひらりと暮らす色の鯉 福原稜声
この冬木独身寮の灯色塗る 友岡子郷 遠方
この旅は酒色うとめる嫁菜飯 上田五千石 風景
この母の骨色の乳ほとばしれ 鎌倉佐弓 天窓から
この涼を色にたとへてみれば紺 星野立子
この火の色は祖母のだ 大根煮えている 伊丹公子 陶器の天使
この郷の色壁や旅しぐれつゝ 内田百間
この頃の好きな色赤焚火守る 星野立子
この頃の空コスモスの色似合ふ 後藤比奈夫 初心
こはき葉の弁慶草の色やさし 辻蒼壷
こぼれ萩色をまじへて掃かれけり 藤田つとむ
これよりの色染め分けて青木の実 遠藤はつ
さくさめの何に色こき梅の注連 園女 俳諧撰集玉藻集
さくらの芽まだ色もたず城の雨 高井北杜
さくら咲くうす墨色のゆめの中 津沢マサ子 空の季節
さくら色尽くして恋のうぐひかな 片桐久恵
さくら貝拾ひあつめて色湧けり 上村占魚
さく花のあはひあはひの波の色 花 正岡子規
さざなみの色を四隣に目白鳴く 永島転石
さつきぞら烏賊はいけすに色変ふる 林原耒井 蜩
さびしきが故にまた色草といふ 富安風生
さび土のぬれ色深し冬日和 志用 俳諧撰集「藤の実」
さやけしや水の速さの色に出て 片山由美子 風待月
さよならは三月の水の色で風に透く 鶴田育久
さをとめや泥から生えし足の色 早乙女 正岡子規
さんしゆゆの鶸色に母屋没しけり 高澤良一 ももすずめ
さゞえ殻海の底ひの紅き色 細見綾子 天然の風以後
しくるゝや何を湯出鱆色に出る 時雨 正岡子規
しづかに/しづかに/耳朶色の/怒りの花よ 高柳重信
しののめの色に鹿垣のびにけり 加藤三七子
しやぼん玉兄弟髪の色違ふ 西村和子 窓
しやぼん玉極楽の色きはまれり 芹山 桂
じゅず玉は今も星色農馬絶ゆ 北原志満子
すがすがと秘色の風の端午かな 石塚友二
すがれても残菊の色確かなり 高澤良一 燕音
すがれゆく色を色とし藤袴 稲畑汀子 汀子第二句集
すすき原羽二重色のうねりかな 関根洋子
すみれ色の催眠薬の朧なり 内田美紗 誕生日
すゝき野の銀一色に刷かれけり 久保田万太郎 流寓抄以後
せきれいの霜の色して岩畳 高澤良一 燕音
ぜんまいを浸け野の色にもどしけり 高野寒甫
ぜんまい摘みその錆色に指ぬらす 高井北杜
その性の音性の色落葉ふむ 日置草崖
その色に似たる服あり柿落葉 岩田由美 夏安
その色の力のかぎり寒牡丹 東 芳子
その色の天作さしめよ雨の瑠璃鳥 栗生純夫 科野路
その色の水に飛んだる鶲かな 石田勝彦 秋興
その色をまさずして青林檎 相生垣瓜人 微茫集
その色を湖に頒ちし時雨虹 山田弘子 こぶし坂
その赤を心の色に藪柑子 川崎展宏 冬
その頃の空の色なる花衣 岩田由美 夏安
それぞれや色草といひ秋の草 森澄雄
それ~の花に晩夏の色ありぬ 高木晴子 花 季
たうたうと冬草色して川ながれ 高澤良一 さざなみやつこ
たそがれといふ色のなきチューリップ 山田弘子 こぶし坂
たたえたる緑茶の色や青すだれ 池内友次郎
ただ眠し砂色泥鰌砂涼み 香西照雄 対話
たちばな色の鈴縫ひ込まむ夏布団 鳥居美智子
たちまちに青蜜柑色凝りにけり 八木林之介 青霞集
たましいの少し色づき蓮の花 久保 純夫
たましひの色見せにけり月の能 原和子
ため息が色を変えゆく 夕紫陽花 湯山珠子
たらたらと手花火色をこぼしけり 皿井旭川
たんぽぽの座を火の色の蟹よぎる 内藤吐天 鳴海抄
たんぽゝもここに賑はひをりし色 稲畑汀子 春光
ちぎり絵や粧ふ山の色貼りて 近藤伸子
ちら~と色鳥のくる伊豆の風呂 飴山實 辛酉小雪
ちりばめて一日柿の色なりし 山田弘子 懐
つぎの世の扉の色か萍は 攝津よしこ
つたかづら色づき垂れて動かざる夕べはひとりわが骨を噛む 槙弥生子
つまらなき色して梅のもみぢ葉は 高澤良一 随笑
でで虫の涙にありし暮色かな 岩崎宏介
とかげの美しい色がある廃庭 尾崎放哉
とかげ瑠璃色長巻く日本の帯銀無地 三橋鷹女
ときのまの黄瀬戸の色の冬日見し 相生垣瓜人 微茫集
ときめきの色に出でたる実むらさき 高澤良一 宿好
とき色に空が明けゆく楸邨忌 矢島寿子(寒雷)
とびつつも枯色きざす草ひばり 加藤知世子
とび出して土師器色なる墳の虫 高澤良一 さざなみやつこ
とぶ時の翅の色見えみちをしへ 高浜年尾
とまる木の色となりたる雨蛙 鈴木豊子
ともしびの色定まりて春蚊出づ 波多野爽波 鋪道の花
ともしび色に川魚煮つめ霧の宿 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
とりまぜた一木の色や葉鷄頭 葉鶏頭 正岡子規
とり入るる夕の色や唐辛子 高浜虚子
とれたてのあけぼの色のさくらえび 本宮鼎三
とんぼ飛ぶ遠山色に翅すかし 山口青邨
どこを開いても夕焼色の本 今瀬剛一
どの色となくいま我に薔薇の風 山本歩禅
どの色をわけて折らなんけふの菊 そめ 俳諧撰集玉藻集
なお燃ゆる色を尽して冬紅葉 稲畑汀子
なづな打つて俎に色のこりけり 伊藤純
ななかまど色盗人として処刑 今城知子
なほ燃ゆる色を尽して冬紅葉 稲畑汀子 汀子第二句集
なんとなく今日から春の色の空 小林しげと
にくにくと赤き色なり蕃椒 唐辛子 正岡子規
にび色の浦より低く末枯るる 文子
にんじん色の橋の円熟した茸 久保純夫 瑠璃薔薇館
ぬきん出る色一つなき花野かな 西川美津子
ぬり直す仁王の色のあつさ哉 正岡子規
ぬれつけて色はかはらじ杜若 祇園下河原-かぢ 俳諧撰集玉藻集
ぬれて枯色の美しき一と鉢をもつ シヤツと雑草 栗林一石路
ぬれ筒も藤しづみたる暮の色 園女 俳諧撰集玉藻集
ぬれ色に春のにんじん同志の店 古沢太穂 古沢太穂句集
ぬれ色に起き行く鹿や草の雨 黒柳召波 春泥句集
ぬれ色やほのぼの明けのとそ袋 一茶
ぬれ色や大かはらけの初日影 任行
ねこの眼に海の色ある小春かな 久保より江
ねむき灯色すみれ早咲く崖も闇 友岡子郷 遠方
ねんねこの色の中なる母子かな 長田群青
のこりゐる海の暮色と草いきれ 木下夕爾
のこる虫火色に憑かれ窯を守る 中村 房子
のぼる鮭入日の色を加へけり 伊藤京子
はがね色して冬ざれの手取川 新保ふじ子
はくれむの負ふ錆び色は鉄の性 栗生純夫 科野路
はこべらはひと色の紐わが歩幅 清水喜美子
はこべらや焦土の色の雀ども 石田波郷
はつきりと翡翆色にとびにけり 草田男
はつきりと翡翠色にとびにけり 中村草田男
はつはなの色淡けれど諂らはず 山田みづえ
はまなすや落暉の色に濁る河 澤田 緑生
はや色に出づるひよどり上戸かな 秀暁
はららごの色に出にける霙かな 岸田稚魚 『萩供養』
はんなりといふはこの色染卵 森田峠 逆瀬川以後
はんなりといふ色もてり返り花 友冨和子
はんめうのふつと消えたる岩の色 高澤良一 ももすずめ
ばら色に三日は暮れて不漁なり 柴田白葉女
ばら色に富士の覚めくる冬菜畑 木村たか
ばら色のままに富士凍て草城忌 西東三鬼
ばら色の人生知らず薔薇に彳つ 伊東宏晃
ばら色の夜明け寒弾声透る 岡本圭岳
ひえびえと海に色ある小菊かな 藺草慶子
ひかへ目な色に惹かれて葛の花 稲畑汀子
ひたむき疲れ暖炉燠色やや暗み 香西照雄 対話
ひとすぢの枯色通る草氷柱 西山睦
ひとの死へいそぐ四月の水の色 桂信子 黄 瀬
ひとひらははかなき色よ桜山 小笠原多恵子
ひとめぐりして秋色をいふばかり 石田郷子
ひとゆれに消ゆる色とも冬ざくら 平子公一
ひとりゐてひとりの暮色草取女 宮田正和
ひとり独楽まはす暮色の芯にゐて 上田五千石
ひと雨の色を重ねし枯野かな 木内怜子
ひややかさ鯉の色にも来てゐたる 茨木和生 三輪崎
ひらふらとかみそり色の帯締めて 松本恭子 二つのレモン 以後
ひんがしに月色を得つ川床料理 西村和子
びいどろや葡萄酒の色の殉教史 文挟夫佐恵 雨 月
ふぐさしや笹の色増す夜の雨 村沢夏風
ふけし夜に水の色して走馬灯 大村美和子
ふるさとの城趾色なき風の中 後藤邦代
ふるさとの火色はじまる落椿 宇多喜代子
ふるさとの色町とほる墓参かな 皆吉爽雨(1902-1983)
ふるさとは植ゑしばかりの田の色に 山田弘子「蛍川」
ぷりぷりとコーヒー色の裸かな 今井千鶴子
べら釣るや平家滅びし海の色 福島壷春(梛)
ほう~と紅き色あり春の山 星野立子
ほととぎすはがねの色に水奔り 岩本多賀史
ほとゝぎす緑のほかの色を見ず 相馬遷子 山国
ほのかにも色ある花見蝨かな 森川暁水
ほのかにも色蒼ざめて月ひとり空をあゆめり野にわれ来れば 岩谷莫哀
ほの~と曙色ながらや春の雪 原石鼎
ほほづきの色地に触れしところより 沢木欣一 地聲
ほろほろと酔うて色なき風のなか 田中湖葉
ほゝづきの色づきそめぬほゝえまし 夏山句集(扉松藤夏山遺稿夏山句集) 松藤夏山
ぼんぼりはたましひの色風祭 木田千女
まいにち雨なすびの色のインク欲し 正木ゆう子 静かな水
ましろくて冬菊は喪の色なりし(姉の死四句) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
また今日の暮色に染まる風邪の床 能村登四郎
まだ濡れぬ海女ゐて葡萄色の湾(若狭湾) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
まだ色のある鶏頭も焚かれける 竹内悦子
まだ葉色より抜け出せぬ楝の実 稲畑汀子
まだ蛇に会はない色の蛇苺 今瀬剛一
まだ風の色にまぎれて蕗の薹 今瀬剛一
まなうらを草色にして水鶏笛 大木孝子
まのあたり赤潮色を得つつあり 西村和子 かりそめならず
まはりやむ色ほどけつゝ風車 高橋淡路女 梶の葉
まひる野や土色草色のバツタ跳ね 中拓夫 愛鷹
まるめろと言へばこの色この形 高橋将夫
みず色の上司の触手冷房音 川崎ふゆき
みせばやのありえぬ色を日にもらう 花谷和子
みちのくに春色おそし牧の草 炎天
みづいろの忌よ涼風に色あれば 渡辺恭子
みづうみの色に聡くて柳鮠 田中智応
みづうみの色の移ろひ花さびた 大豆生田伴子
みどり児に暁の色はや蚊帳を透き 永田耕一郎 氷紋
みどり児のゆめ色鳥が来て醒ます 古市絵未
みどり女逝き色無き風の渡りけり 松本澄江
みどり色脱げば芋虫走れさう 木村淳一郎
みな古き世の色まとふしぐれ土偶 吉野義子
みよし野の明日ある色に花の山 山田弘子 懐
むかし色の底に見えつつ花紅葉 上島鬼貫
むず痒き色に夕日の袋角 児玉輝代(家)
むめが香に濃き花色の小袖かな 許六 正 月 月別句集「韻塞」
むらぎもの色に燃えけり古暦 高橋睦郎 荒童鈔
むらさきの散れば色無き花樗 松本たかし
むらさきの色を惜まず花蘇枋 飯島正人
むらさきの色衿重ね初鏡 影島智子
むらさきは恨ふかき色花菖蒲 丸山哲郎
むらさきは須臾に暮色へ桔梗の芽 篠田悌二郎 風雪前
むらさき茸夜は土色となつてをり 石脇みはる
もう霜の別れを告げし野の色に 月足美智子
もがり笛塔の暮色に仕る 藤田湘子 てんてん
もてなしの色をこめたる菊膾 松本益子
ものの色なべてやはらか花茨 横田昌子
ものの芽の萌ゆもろもろの色に濡れ 重富錦城子
ものの芽を包む鋼の色をもて 行方克巳
もみち葉の色もかわるや秋の空 秋の空 正岡子規
もむ紫蘇の色香に揉まれ男われ 三橋敏雄「巡礼」
もも色の薬まろばせ春の風邪 森本節子
もも色の袋に入りて切山椒 下田実花
もりあをがへるまだ乳色の夢の中 山崎千枝子
もろこしやお日様色に茄であがる 中村恵美
もろ~の木の実色づけ秋の雨 四友
もゝ色の袋に入りて切山椒 下田実花
やさしい色に河原撫子馬が佇つ 和知喜八
やどかりに色塗りて売る祭来ぬ 佐々木麦童
やはらかき色なり川原撫子は 片山みち
やまなみに夕色はしる浮寝鳥 三田きえ子
やや寒の空の色とはなりにけり 鈴木貫一
やや寒の色を濃くしぬ絵鍋島 基吉
ゆつくりと色引き鯉の水温む 水見寿男
ゆふいんに妻と遊べば色鳥来 高澤良一 鳩信
ゆるゆると水恋ふ色に藍の花 長谷川久々子
ゆるゆると近江の柿の色づきぬ 葉狩淳子
よき色にあがりて稲のかなしけれ 阿部みどり女
よき色の毛糸買はねど手にとりて 文挟夫佐恵 黄 瀬
よき色の紅葉をかざし山法師 後藤比奈夫 めんない千鳥
よれよれに枯色さしぬ風の櫨 臼田亞浪 定本亜浪句集
らふそくの花絵花色春待てり 神戸サト
りんどうに新しき色避暑期果つ 及川貞 夕焼
れんぎよう、月が月の色になるまでの夕日で 荻原井泉水
れんぎようのひとかたまりの黄の色はさだまりてゆく月の光に 河野愛子
わかさぎを薄味に煮て暮色くる 桂信子 黄 瀬
わが声のセピア色かも暑気中り 西村梛子
わが日を返せ夾竹桃のその色の 津沢マサ子 空の季節
わが書斎末枯色のあかるさに 瀧春一 菜園
わが魔羅の日暮の色も菜種梅雨 加藤楸邨
わるい色の雲の河内のあかのまんま 阿部完市 にもつは絵馬
われもその中のひと色枯野道 岩井タカ
われ五十色わけて咲く更紗ぼけ 角川源義
アイスクリーム色なめらかに玻璃に透く 小菅みどり
アイヌかなし秋の暮色を茣蓙に織り 林翔 和紙
アトリエの色の中なる煖炉の火 粟津松彩子
アルプスの秋川常に碧き色 高木晴子 花 季
アルプスの空の色して水澄めり 福田花仙
アロハシャツ色地味にして柄派手や 高澤良一 素抱
インバネス凋落色の裏地あり 中原道夫
エプロンの色選び買う蝶の昼 森 和子
エメラルド色に銀杏焼けにけり 田宮 良子
エルク佇つかなしき秋の色の中 ハドソン靖子
オアシスの色を酒泉の澄む水に 稲畑汀子
オカリナに湖秋色を深めける 木下ふみ子
オカリナの音は紬色鳥渡る 小泉静子
オホーツクの色となるまで和布煮る 佐藤賢一
オムレツはひよこ色して春の昼 竹村幸子
カステラの皮の色して木菟眠る 大石雄鬼
カリヨンの色なき風に鳴る夕べ 水原 春郎
カルストの死色にかげる山火かな 石原八束 空の渚
カルストの萩色淡し寄れば濃し 上野さち子
カーネエシヨン色を揃えて逢いにゆく 瀬戸余音子
ガラスの空からもらった色の 青罌粟咲く 伊丹公子 機内楽
キャラメル色の町あり今日も浚渫船 小林一枝
キャンプの色を青過ぎると思ふ齢 加倉井秋を 午後の窓
キヤベツとる娘が帯の手の臙脂色 飯田蛇笏 春蘭
キューイフルーツけものの色や神の留守 山口万千穂
クリスマス近し少年はミルク色 対馬康子 愛国
クリーム色の哀愁ひそと柿の花 瀧春一(暖流)
クレヨンの色も思ひ出血止草 山口いさを
クロッカス地の言伝ての色をあげ 井上芙美子
クロッカス地中より色押し出せり 白石順子
グラジオラス地の豊かさが色に出て 渡辺紀子(夏日)
グラタンの焦げ色四温子の家かな 伊藤京子
ケーキ屋にたんぽぽ色の灯が点きぬ 西村和子 夏帽子
コアラ見るコアラ色なる厚着の子 高澤良一 さざなみやつこ
コスモスとしか言ひやうのなき色も 後藤比奈夫 花匂ひ
コスモスの凡そ百輪色同じ 水原秋櫻子
コスモスの揺れ返すとき色乱れ 稲畑汀子
コスモスの浮遊が守る宙の色 河野多希女 こころの鷹
コスモスの色に散らばる陶の里 山田弘子 こぶし坂
コスモスの色の分れ目通れさう 稲畑汀子 汀子句集
コスモスの色もつれあひほどけあひ 本郷昭雄
コスモスの色をこぼして風過ぎぬ 大多和永子
コスモスの風なきときも色こぼす 三村純也
コスモスも切符の色も淡き旅 中嶋秀子
コスモスや色とりどりに夕昏れり 古川郁夫
コニヤツクの火の色レノン忌なりけり 吉川白仙女
コロッセオまた血の色の西日さす 林翔 和紙
サイネリア女声十色にこぼれけり 関 清子
サラサヤンマに目の色変えてフォトグラファー 高澤良一 寒暑
サリーの藻 両替店は銅色に 伊丹公子 ドリアンの棘
サングラス色の空なり仰ぎけり 今井千鶴子
サングラス鬱たる森の色を買ふ 今瀬剛一
サーカスをとりまく色の悪しき魚 宇多喜代子
サーファーは陽の色パリ祭近し 一ノ瀬タカ子
ストローを色駆けのぼるソーダ水 本井英
ストーブの錆色囲み夜学生 齋藤愼爾
セザンヌの使はぬ色の初筑波 石平周蛙
セザンヌの描きし色味春北風 新山郁子
セーターの樅の木の色会ひたしよ 澤木正子
セーターの色とりどりに八岳仰ぐ 村山古郷
ソーダ水ストローに色吸はれをり 渡辺よしこ
チューリップこみあげてくる色新鮮 三宅未夏
チューリップの色溶け入りてねむき眼よ 草間時彦
チヨコレート色蟋蟀が跳ぶ子の明日へ 磯貝碧蹄館 握手
テレビ料理の色なまなまと時雨れつつ 鍵和田[ゆう]子 浮標
デスクで顔消える 火色のネクタイ吊り 室生幸太郎
トマト一鉢に露台の色を集めけり 青峰集 島田青峰
トマト色づく善意のむくいありしごと 大熊輝一 土の香
トロ箱を舟虫走る色ヶ浜 本田英子
ドレスは血の色歌手に残暑来る 山本はじむ
ナトリューム色の花火に顔染めて 高澤良一 ももすずめ
ナンヨウハギそんじょそこらにない色で 高澤良一 ぱらりとせ
ネクタイの弥生の色を撰みけり 野村喜舟
ネハン会や沙羅蒲団の花の色 涅槃会 正岡子規
ハイビスカス一と日の色を咲き尽す 穂坂日出子
バラ色に子の指眠る聖母祭 増成栗人
バード・パークの門番 珈琲色で 午前 伊丹公子 ドリアンの棘
パリー祭ぬれ色つばめ羽づくろふ 土居伸哉
パレットの平ら枯野の色を溶く 橋本美代子
パンが 黄ばら色に焦げて ミュージツクサイレン鳴り 吉岡禅寺洞
パンジーのあなたの好きな色はどれ 山田弘子 螢川
パール色の*さんざしの花母古稀に 川崎慶子
ヒヤシンス日向の色の滲むなる 行方克己 知音
ヒヤシンス日溜の色頒ち合ひ 小坂かしを
ビスケット色の三つ四つ春の雲 高澤良一 ぱらりとせ
フレームに色を零してゐる苺 山田弘子 螢川
プールあがる日没の街膚色に 中拓夫 愛鷹
ペチカの煙砥の粉色に吐き住みつく気 平井さち子 完流
ペンキ屋の靴って重たい色を被り 関戸美智子
ホーレン草色よく茹でて二人膳 蕪木啓子
ボタ山の枯色を得て甦える 穴井太 土語
ポインセチアの色溢れゐる夜の花舗 宮南幸恵
ポインセチア色淡ければ胸に抱く 田中幸雪
マスクとる溶接工の眼が枯色 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
マッチややにあたたかき色となるを待つ 篠原梵 雨
マニキュアをぬる妻でも母でもない色に 平岡久美子
マフラーの色のいろいろ下校の子 瀬谷博子
メロン切り夕月ほどの色を得し 福島笠寺(水葱)
メーデー不参の火色に憑かれ火がいのち 吉田未灰
メーデー明日色重ねゆくプラカード 石橋辰之助
モスリンのやうな緋鯉の色茫と 京極杞陽 くくたち上巻
モチーフをつなぐ 未来の色をさぐり 首藤節子
モネ色の夕空籠に寒卵 石田いづみ
ヨット操る男サルビア色のシャツ 高澤良一 素抱
ヨット馳せグレープフルーツ色の海 高澤良一 ぱらりとせ
ラガー等の土の色はや暮色帯ぶ 宮坂静生 青胡桃
ラベンダー畑や夕日を瑠璃色に 青柳志解樹
ラムネ海色カラリと夫の風樹の嘆 平井さち子 完流
ランチ終へ出る霽色に薔薇さけり 飯田蛇笏 春蘭
リラの花朝も夕べの色に咲く 阿部みどり女
リラ入れて水もリラ色チェコグラス 中村汀女
レース編む白を飽きざる色として 池田秀水
ロゼといふ色に出でたる酔芙蓉 後藤比奈夫 紅加茂
ワイングラスに残る色あり都鳥 田原重子
ヴィーナスの唇よりも濃き罌粟の色 仙田洋子 雲は王冠
一*ちゅうの香の春色草の庵 後藤夜半 底紅
一つ咲く薄色椿庭の雪 泉鏡花
一つ火をあつかふ袖に火色溜め 西村和子 窓
一と所瑠璃色たもち滝秋冷 鍵和田[ゆう]子 未来図
一と箇所を茜色にし女栄螺か 長谷川かな女 花 季
一ひらの色よき紅葉包みけり 藤沢樹村
一むれや水の色なる上り鮎 若鮎 正岡子規
一切の色を拒みて滝白し 檜 紀代
一口に海鼠の色の言ひ難し 山崎房子
一塊の色は見えねど氷挽く 佐々木六戈 百韻反故 初學
一山や秋色々の竹の色 夏目漱石 明治四十三年
一日へ朝顔色を流すなる 池内友次郎
一月の茜色沁む芝畠 岸田稚魚 筍流し
一椀に海の色あり鰤雑煮 務中昌己
一段と榎の実色づく曇り空 森野稔
一湾に暮色ただよふ懸煙草 渡会昌広
一灯に虚色ふかまる水中花 成田昭男
一盞のはや色に出し夕霧忌 鷲谷七菜子
一筋のうすき花色花うぐひ 浜岡延子
一管を出でて色なき風となる 小野恵美子
一粒の露のむすびし萩の色 野澤節子 『八朶集』
一粒の露火色なす童子佛 宮坂静生 山開
一群の鮎眼を過ぎぬ水の色 鮎 正岡子規
一軒家より色が出て春着の児 青畝
七変化まことの色をまだ見せず 梅沢春子
七夕や願ひも色もさまざまに 九野民也
七月の孔雀の色を窺へり 飯島晴子「八頭」
七種の富士はすずしろ色をして 高澤良一 鳩信
七種の色を尽くせし粥の湯気 梶山千鶴子
七種や松数幹の色ケ浜 染谷秀雄
七芽八芽色のぼりゐて福寿草 荒井正隆
万延元年の血の色に咲き曼珠沙華 伊藤いと子
万灯は心のときめき色にして 高澤良一 燕音
万燈の火色の空の露けしや 江口竹亭
万緑や人はその日の色を著て 嶋田一歩
万緑や血の色奔る家兎の耳 河合凱夫
万華鏡のぞく色なき風の中 橋本榮治 逆旅
丈高く群れて紫苑の色あはき 八木下巌
三十三才夕べの色に失せにけり 谷口君子
三囲の杜色鳥の飛び交へり 山口耕堂
三日月の色の全き別れ霜 飯田龍太
三日目の色となりたる干大根 桑原立生
三月のまだ枯色の美しく 冨永津耶
三月果つる鎧戸雀焦げ色に 成田千空 地霊
三鬼が立つ芽ぶく金銀色の中 石川桂郎 含羞
上の山林檎色づく乳首ほど 沢木欣一 赤富士
上絵師の看板色なき風に長し 長谷川かな女 花寂び
下手より上手へ色のなき風や 佐々木六戈
下着売るお十夜の灯のらくだ色 高澤良一 ねずみのこまくら
下萌や大地の鼓動色となる 脇収子
下萠や土の裂目の物の色 炭 太祇 太祇句選
下野の夕日の色の柿を剥く 老川敏彦
不惑涼し夜色を得つつ空青む 香西照雄 対話
不眠の眸据ゑて色香も菊膾 稲垣きくの 牡 丹
世に古りし色の俎板薺打つ 南秋草子
世の色に遁れぬ太山樒かな 坡雲
世の花の色に染めたるりんごかな 太祇
丘の麦色づく神父その児抱き 友岡子郷 遠方
中坪の早き暮色や散紅葉 野村多賀子
中空のふと色うせて狂ひ凧 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
丸窓に色なき風の通り抜け 田中康委子
丹の塔をそびらに松は色変へず 大隈三虎
丹波栗大粒の色つややかに 和泉直行
丹生大師水銀色の布袋葵 逵原耕雲
丹頂に日本の色極まれり 高澤良一 鳩信
丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子
主婦機嫌庭に色鳥よく来去る 星野立子
主留守色鳥遊びやがて去る 高浜虚子
久方の空の耳朶色づきぬ 攝津幸彦
乏しきを言はず若菜の色愛でよ 文挾夫佐恵
乗鞍のことし色悪しななかまど 高澤良一 素抱
乙女らの頸が蚕の色盆の路 飯田龍太
九年目の壁はあけぼの色となる 渡辺まさる
九月ゆく銀紙色の日をつれて 津沢マサ子
九月尽瓦漸く鋭き色に 宇佐美魚目
乳の香は風信子(ヒヤシンス)色汝の辺より 文挟夫佐恵
乳母車帰る峰雲ばら色に 橋本多佳子
乳色に明けて盛岡肌寒し 山口万千穂
乳色のビー玉包む冬帽子 二村典子
乳色の凪にふたりが住む祝日 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
乳色の四方へしだれて花芒 奥田 瞳
乳色の川の流るる晩夏かな 井上康明
乳色の空ヘエントツの息がとどかない 奥田雀草
乳色の空気の中の月見草 高浜虚子「句日記」
乳色の苔の中から無垢なもの すずきりつこ
二タ岬色を重ねて夏霞 佐川雨人
二度の霜浴びたる色の蜂屋柿 斎藤美規
二日はや雀色時人恋し 志摩芳次郎
二株の葉牡丹瑠璃の色違ひ 西山泊雲 泊雲句集
五つ色もあろうか垣の乱れ菊 高澤良一 ぱらりとせ
五位六位色こきまぜよ青簾 服部嵐雪
五位鷺の田水の暗き色とかな 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
五倍子干して失はれ行く色かなし 三好茱萸子
五月かな合抱の杉の群列色新た 橋本夢道 無類の妻
五月には五月の色の紬織る 吉本渚男
五月富士屡々湖の色かはる 加藤楸邨
五月来る夜空の色のインク壺 成田千空「白光」
五月逝く江戸手拭の縹色 綾部仁喜 寒木
五月闇組紐の色まかせけり 飯島晴子
五月雨は藜の色を時雨けり 五月雨 正岡子規
五柳先生色無き風に吹かるる圖 高澤良一 ももすずめ
五臓六腑檜解きの色や秋の風 内田百間
五色椿満開色の定まらず 塩川雄三
五色沼鴨来て色を深めけり 鈴木漱玉
井戸端の秋色桜雫せよ 桜 正岡子規
亜高山帯のもみぢの色はと見て 高澤良一 素抱
亡き夫人智恵子の色絵冬爛漫 中村草田男
交喙鳥きて色めくバードサンクチユアリ 山本千代子
京子忌の色うらわかき西瓜かな 永田耕一郎
京舞妓色涼し気なお辞儀かな 筑紫磐井 花鳥諷詠
京鹿子富士の下草色もなし 言水 選集「板東太郎」
人に七情あぢさゐの色七変化 成瀬櫻桃子 素心
人を恋ふ色見つけたり桜貝 関 雄峯
人去りて臘梅の色ひそかなり 藤松遊子
人参は丈をあきらめ色に出づ 藤田湘子 てんてん
人参も色こぎまぜて大根曳 黒柳召波 春泥句集
人参を人参色に洗ひあげ 小島花枝
人形に初東雲の色の髪 鈴木伸一
人影を夜色の追へる冬旱 松澤昭 神立
人憎むかに薔薇は色深めたる 阪本謙二(櫟)
人拒む色をとほせり水芭蕉 高澤良一 ぱらりとせ
人日の客をもてなす炭の色 山田弘子 こぶし坂
人来ればこの世の色に曼珠沙華 小杉優子
人植ゑて蘇枋の色やうとましく 小杉余子 余子句選
人死や雪の融けたる土の色 桑原三郎 龍集
人等持ち去りぬ花野の色少し 大島早苗
人老いて頭巾に色の好みあり 頭巾 正岡子規
人肌の色に日暮れて冬至かな 廣瀬町子
今宵しも山川酒の色いくさ 加藤郁乎
今年よき煮梅の色を得たりけり 大石悦子 百花
今度の長老は色が白い菜の花 梅林句屑 喜谷六花
今度会ふ時はこの色春セーター 小原澄江
今日も干す昨日の色の唐辛子 林翔(1914-)
今生の色いつはらず寒椿 飯田龍太
仏壇の鉦の色もて石蕗が咲く 高澤良一 宿好
仕上りし色に連なり懸煙草 入村玲子
代々や松に色かす大かざり 貞 伸
仮りの世の仮りの色して青胡桃 能村登四郎
伊勢物語の色さながらのかきつばた 細見綾子 天然の風
伊那谷は木霊の色も紅葉して 木方三恵
佃秋色烏賊干すに似て布乾き 山口彩子
佇むや吾も色なき風の中 小川 恵
低山の色を惜しみて眠るなり 八木林之介 青霞集
住みかはる窓の灯色やちちろ虫 皆吉爽雨
体内の地図を菜の花色にする 岡村行雄
何々の松と言はれて色変へず 森田公司
何が世捨人苔色の春服著て 塚本邦雄 甘露
何の木ぞ紅葉色こき草の中 高井几董
何處となく色づいて来ぬ瘤欅 高澤良一 宿好
佗助に色を奪らるる女かな 齋藤玄 『狩眼』
佗助を骨色にまで寒の暮 斎藤玄 雁道
余の色を許さず畦の曼珠沙華 平田冬か
余り苗田尻に色を深めおり 市川正一郎
作りたる色のかなしき水中花 大橋敦子
作り滝夕月色を得つゝあり 山内傾一路
俄か雲隣る青田の色まさり 及川貞
俎に色を弾きて鱚果つる 稲畑廣太郎
俎の泥庵色や山桜 小川軽舟
俗な名を色を形を福壽草 福寿草 正岡子規
保安色の黄が勝てる街春時雨 香西照雄 素心
保護色であった鰈が干してある 池田澄子
保護色に迷うてをりし雨蛙 稲畑廣太郎
保護色の蝶々が居たり枯芭蕉 富田潮児
保護色を拒みとほして寒鴉 ふけとしこ 鎌の刃
信濃より出でず鶏頭色重ね 小原寿々美
信綱忌伊勢の海鼠の夕星色 塚本邦雄 甘露
倒れし稲茎の枯色重ね曇る 古沢太穂 古沢太穂句集
健康色得しは靴下万愚節 香西照雄 素心
偽りの色などあらず七変化 若井新一
傘にかがやく色やかきつばた 木導 四 月 月別句集「韻塞」
傘寿わがいと愛づ色に岩菲の花 富安風生
傷ありの蜜柑の色を持て余す 佐藤渓子
僧の死や草木色添へ鳴く帰雁 月舟俳句集 原月舟
元旦や古色めでたき庵の妻 日野草城
元気出てかぼちゃいろなる尿の色 高澤良一 鳩信
兄亡くてはや枯色の雀たち 橋本榮治 麦生
先生に春の色問ふ別れかな 秋篠光広
入りがたの月のひかりに壁の色ほのかに赤くこほろぎ鳴くも 古泉千樫
全山のほむらを曳きて色鳥は 橋本榮治 麦生
全山のみかんに色の来つゝあり 深川正一郎
全身の色揚げ了り蛇の衣 アーサー・ビナード
全集の濃き藍色や草城忌 桂信子 樹影
八朔や火色ある星黍に見ゆ 桃孫
八窓に若葉の色を異にして 長谷川かな女 雨 月
六斎の子たちは色の襷かな 西村和子 かりそめならず
六道参り色街を通りすぎ 横山小恵美
兵の遺言簡潔に松色変へず 工藤義夫
其色のとしの身に添ひ龍の玉 安東次男
内灘の砂に吸はるる海の水嘆き掬へばすでに色なし 芦田高子
内祝鶏頭の茎色づきて 高澤良一 ももすずめ
円き川音切る人参の色やすらか 飯田龍太
写生する画布に秋色ぬり込めり 鈴木裕子
冬かもめ波の牙のみ暮色溜め 河野南畦 湖の森
冬すでに暮色の中の杉丸太 関戸靖子
冬に来る鳥は色なき落葉かな 岡本松浜 白菊
冬ぬくし菜畑の色の豊かなる 植木千鶴子
冬の土手カナリヤ色の電車来る 久保田富子
冬の木のみな骨色の恐山 畑中とほる
冬の海一艘を入れ色変える 柴田悦子
冬の菊暮色に流れあるごとし 上田五千石 森林
冬の鳶色の夕暮 かけぬけたのは 霊柩車だつた 吉岡禅寺洞
冬凪の檸檬色づくほのかなり 水原秋櫻子
冬山のさび藍色のこひしさに 綾子
冬川が削る赭埴の色新らし 内藤吐天 鳴海抄
冬日さし色のかげんの草の山 岡井省二
冬日の縁弾み通せり今金色 香西照雄 対話
冬木さヘネオンの色に立ち並び 篠原鳳作 海の旅
冬木立色ある者はなかりけり 冬木立 正岡子規
冬浪の引きゆくときの色見たり 大石悦子 群萌
冬深むとも春近しとも木々の色 橋本榮治 逆旅
冬瓜や霜ふりかけし皮の色 霜 正岡子規
冬瓜や霜ふりかけし秋の色 秋の霜 正岡子規
冬空の鋼色なす切通し 大野林火
冬籠る今戸の家や色ガラス 冬籠 正岡子規
冬籠る燈色の天井旅人に 香西照雄 素心
冬紅葉かけす移りて色動く 田中英子
冬終る封筒の中空色に 有馬朗人 天為
冬菊のいちめんそれも麹(こうじ)色 高澤良一 鳩信
冬菊の乱るる色を濃くしたる 鹿野佳子
冬菊の臙脂を畑の色どりに 高澤良一 鳩信
冬萌や色深くして能登瓦 岸田稚魚 筍流し
冬薔薇暮色に染みて眠りそむ 田村登喜子
冬近き薪は肉色霧巻く小屋 大井雅人 龍岡村
冴返る丹色剥げたる太柱 西村和子 かりそめならず
冷え込んで一夜色づく蜜柑山 中拓夫
冷されし馬のふぐりの夕焼色 岸田稚魚 筍流し
冷し馬暮色のなかに眼をひらく 松澤鍬江
冷す牛暮色に耐へず啼くなめり 篠田悌二郎 風雪前
冷やかに火の色秘むる白磁なる 田中黎子
冷麦に一筋の色ただよへる 富田直治
凍きびしおはぐろ色に夜の雲 中村好位
凍る夜の灯火の色星の色 成瀬正とし 星月夜
凍菊を折り焚くわづかなる生色 桂信子 花寂び 以後
凍鶴の夢のはじめに火色雲 鷹羽狩行 七草
凡夫婦色なき砂糖水のむも 清水基吉 寒蕭々
凡庸な芽吹きの色でありにけり 高澤良一 燕音
処暑の花空もも色にして溢れ 長谷川かな女 花寂び
凧市の地より色顕つ雪催ひ 文挟夫佐恵 遠い橋
凧張つて蘇へるもの耳朶の色 成田千空 地霊
凩のかまどの火色匂ふかな 高木静花
凩の一夜に山の色奪ふ 宇川紫鳥
凩の吹きはらしたる鐘の色 未灰句集(未灰句集第一集) 渡邊未灰
凩や枯色見する塔一つ 凩 正岡子規
凩や目刺に残る海の色(六年) 芥川龍之介 我鬼句抄
出代りの年端もゆかず色面皰 阿部みどり女 笹鳴
出来秋の棚田一枚づつの色 片山由美子 天弓
出水後の蘆色もどる泳ぎかな 中村汀女「汀女句集」
刀豆の銹色づけるおもしろし 平川堯
刀鍛冶炭火の色を育てをり 岡田朔風
分水嶺に髪の枯色梳る 八木三日女 落葉期
切りためて子が持つ桔梗むらさきの色を流して野の風の中 河合恒治
切れ雲に色鳥や川砂光る 内田百間
切腹は白き色なり春の夢 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
刈株の色まださめず蕎麦畑 松藤夏山 夏山句集
刈田には刈田の色の雨が降り 成海 静
刈草の色を離るる青蛙 高澤良一 燕音
初がすみ大和山城色頒つ 能村登四郎 有為の山
初しぐれ峡の暮色を急かせけり 高橋利雄
初伊勢や五つの色の生姜糖 倉本幹子
初冬のこゝろにたもつ色や何 原コウ子
初刷の色に勝りしかをりかな 平手ふじえ
初刷の色鮮かに薩摩鶏 山元秀女
初夏の風色ある如く吹き渡る 高木晴子 花 季
初嵐なつめの色にいまだしや 鈴鹿野風呂 浜木綿
初恋は色水を飲む役どころ 仁平勝 東京物語
初日いつもの鳶色の日輪となる 菅裸馬
初日まつ玄海色を得つゝあり 小原菁々子
初日待つ雪嶺の色かはりつつ 五十嵐播水
初日記老のこととて色もなし 小杉余子
初東風に歌舞伎座は色尽くしけり 蟇目良雨
初秋の色なになにぞ山の川 飴山實 『花浴び』以後
初秋よしオークル色のわが肢体 藤木清子
初空の色もさめけり人の皃 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
初空やその薄色の三枚着 尾崎紅葉
初空や其薄色の三枚着 尾崎紅葉
初空や日の本明くる櫻色 初空 正岡子規
初紅葉甘えたくなる色にかな 高田自然
初紅葉色が叫んで居りにけり 蔦三郎
初茜夜のしづみゐる海の色 永田耕一郎 雪明
初蛙みどりの色にさまざまある 加倉井秋を 『胡桃』
初蝉や暮坂峠暮色いま 水原秋桜子
初蝶のレモンの色でなかりけり 古賀紀子
初蝶のレモンの色に舞い上がる 福田花仙
初蝶や暮坂峠暮色いま 水原秋櫻子
初鏡思ひがけなき色も似合ひ 松尾美子
初雪の二十六萬色を知る 田中裕明 櫻姫譚
初雪の白を禁色とも思ふ 竹中弘明
初雪やひじり小僧の笈の色 ばせを 芭蕉庵小文庫
初雪や鴉の色の狂ふほど 千代尼
初鴉黒をおのれの色として 加藤有水
初鵙や水は色なき石の上 加藤楸邨
別れとは夕焼色の褪せる時 滝川 艶
別れ来しまなうらにマフラーの色 片山由美子 水精
利根の洲も雀がくれの色広げ 星野魯仁光
刺しすすみ刺繍の色も春深し 朝倉和江
刻々と色変りいま時雨柚子 後藤比奈夫
剣鳶色花の皮膚もつアンドロメダ 河野多希女 納め髪
剪定枝束ねて色の濃かりけり 宮坂静生
割れそめし色づきそめしまゆみかな 川原 程子
励まなんいま色一新遠焚火 香西照雄 素心
勤行や郁子棚に郁子色づける 里見 梢
匂ひなき色なき風邪に染まりけり 相生垣瓜人 微茫集
包まれしストックの香と色ほどく 稲畑汀子
北寄貝ひとなつかしき色を出す 矢島渚男 延年
北窓開けサフラン色のスープ煮る 平吹史子
北風や釣つてすぐ売る鯉の色 野村喜舟 小石川
十一月街路樹の色ゆたかなる 作山 和子
十三夜狐の色のケーキかな 石橋まさこ
十二湖の風に色ある秋意かな 河野南畦 湖の森
十二色全部重ねて虹いびつ 山崎 篤
十五年目の夏の色ロゼワイン 山田弘子 懐
十人の過去は十色に針供養 町田しげき
十六夜の色城壁にうまれけり 楸邨 (南京城壁に登る)
十月の草色したる馬の糞 大木あまり 雲の塔
十月や深川めしの貝の色 藤田あけ烏 赤松
千の壺攻める火の色柿若葉 石井紅楓
千両のまだ色持たぬ雨の句碑 三宅芙美女
千枚田鋤かるるまへの色揃ふ 耕二 (能登)
千鳥飛んで枯色見ゆる端山かな 清原枴童 枴童句集
午過ぎて枯木の色となりにけり 加藤楸邨
半分は夕日の色の桜かな 小島健 木の実
半衿の色変へてけふ花衣 古賀まり子
南にあけぼの色や明けやすき 原石鼎 花影以後
南洲洞窟樟の萌色にはかなる 野村多賀子
卯辰山赤松の色梅雨かな 滝井孝作 浮寝鳥
厄塚に火の色変へしものは何 二塚元子
原つぱは原つぱ色に春みぞれ 藤田湘子
原作に日傘の色はなかりけり 森谷彰
原木のあかとき色の花りんご 高澤良一 ぱらりとせ
厨窓開ければ色なき風に会ふ 阿部喜恵子
友さきに風邪声に海の暮色言ふ 宮津昭彦
友の忌の鬼灯色をとりもどす 萩原麦草 麦嵐
反射炉に残る炎色や松の芯 鎌須賀礼子
取灰に火の色うかぶ余寒かな 上田五千石 風景
取縋る蝶もニッコウキスゲ色 高澤良一 さざなみやつこ
受胎告知色なき風に顔そむく 小池文子 巴里蕭条
受験日の鳶色の眼を発たせけり 都筑智子
叛意の色キリシタン墓地濃き夕焼 子郷(島原)
口染めてきんとと色の氷水 高澤良一 寒暑
口紅の色深くして秋の昼 奥田 瞳
口開けの味噌に色なき風入れて 武居國子
古き世の火の色動く野焼かな 飯田蛇笏
古代よりこの色かかげ式部の実 朝倉和江
古川の鯉の色差す秋の水 高澤良一 素抱
古町の春色の濃きところかな 日野草城
古色をも併せ湛ふる冬田あり 相生垣瓜人 微茫集
古障子色の日差しが花石蕗に 高澤良一 ぱらりとせ
句碑の文字色なき風に瞬ける 佐藤晴生
吊しおく岐阜提灯の昼の色 片山由美子 天弓
吊り味噌の色づきつばめ軒汚す 宮坂静生 青胡桃
同じ色あらず狭庭の柿落葉 柴崎絢子
同じ色の蝶来て石蕗の花に高く 高濱年尾 年尾句集
同じ香に菊や匂ひて色かはり 卯七妻 俳諧撰集玉藻集
名の寺の春の色なる花菜漬 角川春樹
名所絵図そのままの松色変へず 岡本あざみ
名月のすでに色ある西行忌 鷲谷七菜子
名月の色におどろく旅寝かな 前田普羅 春寒浅間山
名月へ色うつりゆく芒かな 久保田万太郎 流寓抄
名門校からたちの実を色づかす 中戸川朝人 星辰
向日葵のにはかに色を失ひし 川崎展宏 冬
向日葵の翳りは海の色となる 渡辺富栄
向日葵は傾き初めぬ海の色 雉子郎句集 石島雉子郎
向日葵や黄といふ色は脳に染む 京極杞陽 くくたち上巻
向日葵をつよく彩る色は黒 京極杞陽 くくたち上巻
君の家さくらの色のさくら咲く 矢島渚男 延年
吸ひ込まるふくろふの目のレモン色 高澤良一 ぱらりとせ
吹かれづめなるコスモスに色見ゆる 行方克己 知音
吹かれては色の脱けゆく猫じゃらし 八木マキ子
吹く風に花の色ある梅雨入りかな 井上康明「四方」
吹ためて水に色添ふ落葉かな 松岡青蘿
吹雪く夜の紅絹の色かと振り返る 正木ゆう子 静かな水
吹雪来れば早薄き物の色かたち 高濱年尾 年尾句集
吾にかかはりなき色足袋の干されあり 加倉井秋を 午後の窓
吾に垂るる雪渓は地の塩の色 大石悦子 百花
吾に足す色こそ都忘れかな 鈴木節子
吾亦紅露ふくむほど色顕ちし 石原八束 『仮幻』以後
吾亦紅風の音にも色沈む 渡辺桂子
吾子死にし青嶺ゆ光雲ひよこ色 香西照雄「素志」
味噌色に摺鉢山の紅葉哉 紅葉 正岡子規
味噌色の月のあがりし山の講 八牧美喜子
味噌色の満月あがる山の講 八牧美喜子
味知らぬ都人へ錆色棗の実 香西照雄 素心
呼気やんであじさいの色道連れに 和田悟朗
命終の色朝ざくら夕ざくら 小出秋光
和歌浦の風に色づく海桐の実 原 茂美
和紙一枚色なき風に裏返す 嶺治雄
和風忌や野の枯色に親しみぬ 本間緑虹
咲きつぎてなほ色とどむ冬ぼたん 小川濤美子
咲く前の色貯へし桜かな 阿部ひろし
咲く日よりさめゆく色や雨の桃 会津八一
咲く野梅きつね色どき過ぎつをり 篠田悌二郎
哀しき色ぞ酒席の彼の冬帽子 鈴木鷹夫 渚通り
唇のはや色失せぬ冬菫 龍岡晋
唇やその蜜色の収穫期 山本掌
唐人の泪ぞ時雨色じゅくし 丸露 選集「板東太郎」
唐突に届きて薔薇の象牙色 ふけとしこ 鎌の刃
唐草の色なくなりし蒲団かな 桜坡子
唐辛子おろかな色はなかりけり 唐辛子 正岡子規
唐辛子の色冬空が盗みたり 小泉八重子
唐辛子暗き色もて爭へり 松村蒼石 春霰
唐辛子色に出でたり花圃荒るゝ 五十嵐播水 播水句集
啄木の墓に色づく桑いちご 神田美穂子
啄木の墓に野ぶだう色づきぬ 井村和子
啓蟄の家裏攻めて沼の色 古舘曹人 能登の蛙
啓蟄や妻の帽子の色変り 大賀龍雲
啼く猿に峰の秋色にはかなり 松本幹雄
喪の昼に坐る色なき風の中 角川春樹
喪の色のおたまじやくしをつまみ出す 櫂未知子 蒙古斑
喪服着て色なき風にふれてをり 大森理恵
喪鴉や高野豆腐の色ふかめ 岡澤康司
嘲笑うための瑠璃色臭木の実 鈴木光彦
囀に色あらば今瑠璃色に 西村和子 夏帽子
囀のとぶとき色を失ひぬ 吉岡禅寺洞
囀りに愁嘆の色混じりをる 越野蒼穹
四五日を同じ色して花八ツ手 甲斐重子
四山色枯れてはやなき燕かな 雑草 長谷川零餘子
四日果て金海鼠(きんこ)色なる鳥羽の空 高澤良一 鳩信
回想や色なき風に身を浸し 大橋敦子 勾 玉以後
囲む火の色に蜜柑の皆にわたる 中戸川朝人 残心
国栖人はさくらの色の紙を漉く 加藤三七子
国華てふダリア混血の色もてる 梶山千鶴子
園丁にさつきは嬉々と色尽くす 有馬籌子
土用波すくえば海の色消えぬ 青木千秋
土筆摘むや柔肌色の一掴み 本宮銑太郎
土筆枯色日輪水に炎なす 瀧 春一
土色に光る横顔別れ霜 早乙女未知
土色の 黄昏色の 頭ののこれる 富澤赤黄男
土色の冬ひしひしと野にきびし 長谷川素逝 砲車
土色の蜥蜴流人の墓ひとつ 宮坂静生 雹
土雛は干菓子の色でありにけり 京極杞陽
地に沿ひて石ころ色のしじみ蝶 高澤良一 寒暑
地に触れて色深めけり種茄子 遠藤末女
地に還るときは地の色落椿 長田群青
地の冷えの色に出でてや実紫 林 翔
地の色となるまで枯葉掃いてゐる 野木桃花
地上から 麦がとりさられた 星 オレンジ色に燃え 吉岡禅寺洞
地下街の没日の色の金魚かな 秋元倫
地中海色に猫の眼春暖炉 神田衿子
地蔵会のこどもの色の紅冬瓜 森澄雄
地軸より咲きし色なり石蕗の花 原石鼎 花影以後
坂登り詰めたる色に冬紅葉 江川由紀子
型抜きし土鈴濡色余花明り 伊藤京子
埋火の牡丹色なる近江かな 瀧澤和治
城の花散り重なりて血の色に 小松崎爽青
城亡び松美しく色変へず 富安風生
埴輪の目色無き風を通しけり 工藤弘子
場舟に月は居待の色ケ浜 有家栄子
塗りかへて暑き色也仁王門 暑 正岡子規
塗り上る堆朱火の色冬に入る 伊藤京子
塗椀の内の肉色秋の暮 金子青銅
塩打ちて秋鯖の色封じけり 松本美簾
塩振つて冬菜の色を呼び覚ます うまきいつこ
墓囲ふ藁にしぐるる暮色かな 門前弓弦子
墓地抜ける生色少女のふくらはぎ 楠本憲吉
墓色の空へ筋肉自由自在 大嶋隆三郎
墨すつて鶏頭あますなき色や 石川桂郎 含羞
墨で描く桜いつしか色を持つ 横田静子
墨一色彩百色の夏の山 滝青佳
墨染を恋ひしき色にうすごろも 手塚美佐
墨色の夜のむかうの猫の恋 木栓恵美
墨色の富士へ短かき男郎花 三枝正子
壁の色して死ににけり守宮の子 ふけとしこ 鎌の刃
壁の色すこしさびしく福寿草 京極杞陽 くくたち下巻
壁の色よければ水仙買ハゞ咲くよきを 河東碧梧桐
声かかるほどに*かりんの色づきし 依田明倫
壺の色堂の秋日はくらけれど 五十嵐播水 埠頭
壺の色茫乎と遅き日なりけり 太郎
壺焼を待てる間海の色変り 森田峠 避暑散歩
夏たつや衣桁にかわる風の色 横井也有 蘿葉集
夏の日の色としもなし青山椒 青山椒 正岡子規
夏の色なり宝塚大劇場 山尾玉藻(俳壇)
夏ゆふべ失せゆくものに水の色 大石悦子 群萌
夏先の色薄けれど赤のまゝ 高澤良一 素抱
夏山と熔岩の色とはわかれけり 藤後左右「熊襲ソング」
夏帽子黒を自信の色として 小田三千代
夏暮色耳より大き耳飾り 宮坂静生 青胡桃
夏服に変へ口紅の色も変へ 吉田慶子
夏枯の色みられたる水辺草 綾部仁喜 寒木
夏終る児等の帽子の色あせて 伍賀稚子
夏茱萸の色も形も世馴れたる 後藤比奈夫
夏草の息吹きに色に負け籠る 占魚
夏萩の色を置きたる乏しさよ 深川正一郎
夏萩や濯ぎの水に色のこる 中島アグリ
夏襟の色も好みに師にまみゆ 島田みつ子
夏野来て鳰に色なきことわびし 原コウ子
夏雲にかもめの色の溶けにけり 阿部みどり女
夏風邪をひき色町を通りけり 橋間石「橋間石俳句選集」
夕かげの待たるる色や桐の花 松浦羽洲
夕ぞらの色の中から秋の星 三橋敏雄 まぼろしの鱶
夕の日に色を育てて実むらさき 加藤武夫
夕べまだ海に色あり枇杷の花 村田脩
夕影や色落す紫蘇の露重み 杉風「常盤屋の句合」
夕映えや柞色づく茂吉館 中川冬紫子
夕映の色巻き畳むヨットの帆 山田弘子 こぶし坂
夕景は野うさぎ色の涅槃かな 渡辺延子
夕暮の氷柱は空の色をして 高木晴子 晴居
夕暮の菜の花色となつてゆく 唐笠何蝶
夕暮れの氷柱は空の色をして 高木晴子
夕暮農家けむりの色になじみすぎる 穴井太 穴井太集
夕月のすでに色ある西行忌 鷲谷七菜子
夕月の田毎の色の異なれり 米沢吾亦紅 童顔
夕月の色見て去らず畑焚火 楠目橙黄子 橙圃
夕東風に臼の濡色吹れけり 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
夕桜夕とは空の色のこと 後藤立夫
夕桜焚き継ぐ三日の火色美し 文挟夫佐恵 雨 月
夕焼けの木やかなしみの色絶えたり 宇多喜代子
夕焼けの色を残して海静か 稲畑汀子
夕焼波漂ふほどに色を増す 加倉井秋を 午後の窓
夕空にひとときの色蜻蛉湧く 青木重行
夕空に新樹の色のそよぎあり 深見けん二
夕空のひとときの色蜻蛉湧く 青木重行
夕空は空瓶の色桐の花 和田耕三郎
夕空や紅梅の色隠しつつ 日原傳
夕紅葉色を失ふ時来たる 岩田由美 夏安
夕紅葉色失ふを見つつあり 高浜虚子
夕菅に夕菅色の月ありぬ 由山滋子「かつらぎ選集」
夕菅の霧を素早く技けし色 高澤良一 さざなみやつこ
夕蝉や水底色に神の道 春樹
夕野火の色にも雨の近きかな 藤崎久を
夕雲のワイン色なり秋燕忌 野本ナヲ子
夕雲も花の色帯ぶ川堤 高澤良一 宿好
夕鶯子雪一と色の野路となり 林原耒井 蜩
外套やすみれ色なる比叡見ゆ 草間時彦
外套や人百態の色一つ 林翔 和紙
多度山の裾の色曳き秋つばめ 鈴木圭子
夜のみ知足煤色淡め灯の障子 香西照雄 対話
夜の明ける色に従ひ菜種梅雨 廣瀬直人
夜の色となりゆく海鼠すすりけり 草間時彦
夜の色に暮れゆく海や木の芽時 石鼎
夜の色に沈みゆくなり大牡丹 高野素十「初鴉」
夜の部屋に日向の色の桜草 片山由美子
夜は夜の色となりけり濃山吹 星野高士
夜を少し盗める色の夜盗虫 土屋巴浪
夜を長み帷の色をにくみけり 林原耒井 蜩
夜光るものの色なり青林檎 相生垣瓜人 微茫集
夜半の灯に日の色現じ石鹸玉 中村草田男
夜桜のむらさき色に責めらるる 宇多喜代子
夜気のせてすでに枯色まんじゆさげ 伊藤京子
夜色楼台雪万家圖を見て端居 高澤良一 ねずみのこまくら
夢に色あらば淡墨桜かな 西川五郎
夢のごとき色過ぎ林檎濃くなれり 宮津昭彦
夢の色ひめて鶉の卵がら 原石鼎 花影以後
夢みて老いて色塗れば野菊である 永田耕衣 悪霊
大いなる月色の月枯るる中 相馬遷子 雪嶺
大仏の顔に色無き風通ふ 関口鉄人
大凧の降りたり草の色となる 山田六甲
大原や色なき風の女院みち 大東晶子
大夕焼わが家焼きたる火の色に 鈴木真砂女
大寒の海ふた色や潮暦 大木あまり 火球
大寒やオレンジ色に日が沈む 原田青児
大寒や子持ち鰈のさくら色 角川源義 『神々の宴』
大屋根を暮色下りくる紫木蓮 西村 旅翠
大山や枯は怠惰の色ならず 藤田湘子 てんてん
大年の暮色も拭ひ難くなる 相生垣瓜人 明治草抄
大年の色ゆたかなる火を使ふ 林由美子
大方はポスト色あせ柳散る 波多野爽波 鋪道の花
大注連に色鳥の来て諏訪大社 有森一雄
大津絵の墨色にじむ梅雨入りかな 宇多喜代子
大瑠璃やまだ濡色の牧の空 平賀扶人
大白く刈田の暮色抜けきたり 宮津昭彦
大空や去年(こぞ)骨折れた色もなし 立花北枝
大綿虫を上げおだやかに暮色あり 山口青邨
大蛾去りし林檎は寂し青磁色 前田普羅 春寒浅間山
大釜の色かぐはしき七日粥 浅見咲香衣
大雨去り天の色なるお花畑 小野宏文
大風車色なき風を連れ廻る 小西貴子
大鯰何か企む色をして 栗林千津
天つばめ昏れ色ひそむ山の襞 稲垣きくの 牡 丹
天丼の海老のいい色年詰る 高澤良一 宿好
天地のはじめの色や花あけび 村田昭治
天地の色なほありて寒牡丹 高浜虚子
天地梅雨ともしび色の枇杷抱ヘ 野澤節子 黄 瀬
天平の火色となりぬお山焼 原 好郎
天日より得たる色艶小殿原 茨木和生 往馬
天涯に火色の雲や草の花 仙田洋子 雲は王冠
天然色映画の雪が実に白し 内藤吐天 鳴海抄
天瓜粉の子に雨の色きかれたる 神崎徒怒
天生峠越え*ばったにいまだ色つかず 国見敏子
天窓の暮色しづかに冬籠 望月百代
天草の色香失ひつつ乾く 平松草太(若葉)
天草を干して色沸く真野岬 斉藤夏風
太幹をくねらせて色変へぬ松 片山由美子 水精
太陽に似合ふ色着て旅は夏 稲畑汀子 汀子第三句集
太陽に遠き花色花茗荷 大橋敦子
太陽の三時の色の麦畑 高澤良一 燕音
太陽の色を閉ぢこめたる西瓜 藤井啓子
夫婦二十五年渝らず紅梅の色をひらく 橋本夢道 無禮なる妻抄
夫逝きて色なき風の中にあり 高野路子
夭折に色ありとせば著莪の白 鈴木紀子
夾竹桃ほのほの色の見えぬ昼 福永耕二
奢るなき色にすかんぽ花ざかり 桔梗きちかう
奥宮は朝より暮色眼細鳴く 豊長みのる
奥能登の枯色誰も身につけて 細見綾子 黄 瀬
女囚衣波色干されさわぎて四月くる 寺田京子 日の鷹
女神湖の神秘の色や若葉風 こうのしづこ
女郎蜘蛛暮色へ銀の糸を吐く 岐志津子「駆けてきて花野」
女郎蜘蛛見てより深む日色とも 高澤良一 素抱
好ましき色とり~や貸小袖 井月の句集 井上井月
好もしき色に菊の芽簇りぬ 加賀谷凡秋
如月のうすぎぬ展べし海の色 西村和子 窓
如月や海に色負け磯馴松 東洋城千句
妄想の火色育ちぬ落葉焚 石塚友二 光塵
妥協せぬ辛さを色に唐辛 市村不先
妻と雪嶺暮色に奪われまいと白し 細谷源二
妻の忌や色づきそめし唐辛子 森 澄雄
姉いもと色を違へて浮いて来い 杉山加代
姉妹の願いの糸の色ちがふ 沢田岳楼
姑とゆく色なき風の夫の墓 町田敏子
姥ひとり色なき風の中に栖む 川崎展宏
姿ほど声の色鳥らしからず 橋本くに彦
婚姻色かなしき岩魚釣られけり 堀口星眠(橡)
嬰抱かぬ胸に色なき風あふれ 岡部名保子
子と谷地へ一と日七節虫草色に 宮坂静生 山開
子の耳の色さしてをり冬芒 綾部仁喜 寒木
子はみどり母はむらさき色の眠り 鎌倉佐弓 天窓から
子を欲しとおもふ色づく鬼灯よ 中村祭生
子等去りてプールは空の色となる 和気祐孝
子蜥蜴に泉がわかつ瑠璃の色 三谷昭 獣身
孕みたる雀がゐたる土の色 榎本冬一郎 眼光
孕鹿暮色をまとふごと座る 木村淳一郎
存念の色定まれり山の柿 飯田龍太(1920-)
宇宙ステーシヨン組む繭色の花八手 三嶋 隆英
宇津の谷のうつつの色の実紫 能村登四郎 有為の山
宇陀いまも昔の色に祭の灯 茂里正治
宍道湖や色なき風はさざ波に 渡辺恭子
実ざくろの色失ひて母逝きし 湊キミ
実むらさき水音に急ぐ色なるか 河野多希女
実むらさき色を深めし寒露かな 池田秀水
実盛の甲色あせ立葵 竹中恭子
室花の色はみ出して花舖はあり 山本歩禅
宮址いま八千草に色得つつあり 河野石嶺
家々や菜の花色の燈をともし 本下夕爾
家のもの一切古色障子貼る 香西照雄 素心
家畜等の膚色しかと春来たり 石橋辰之助 山暦
宿墨の沈む藍色冬に入る ふけとしこ 鎌の刃
寂として色なき風の淀城址 中江はるみ
富士に雪が来て夕べはぶどう色に山も里も 荻原井泉水
富士は孤高にゴッホの色のみかん採る 加藤知世子 花寂び
寒き故くれなゐ色がうち沈む 細見綾子 花寂び
寒さ中枕木割れば木色生く 榎本冬一郎 眼光
寒地農頬鳶色の秋日和 久米正雄 返り花
寒天乾きおのづから捨つ海の色 大石悦子 群萌
寒天場日の色濁り初めにけり 窪田英治
寒巌の竹生の色とありにけり 齋藤玄 飛雪
寒星や暮色が海を押しせばめ 林翔 和紙
寒月の色を吸ひこむ志野茶碗 大橋孝子
寒木瓜の吹きさらされつ色深む 久保みどり
寒木瓜の蕾に色や明通寺 森田公司
寒林に人参色の陽が沈む 村岡正明
寒林の色といふもの日当りて 桑田詠子
寒林やしろがね色に日の面テ 高橋淡路女 梶の葉
寒林を透して見ゆる火色あり 稲畑汀子 春光
寒椿ひらくか十指枯色す 小檜山繁子
寒椿蕾は色を握りしめ 川島雨龍
寒潮の一つの色に湛へたる 高野素十
寒牡丹おのれの色をしぼり出す 三嶋隆英
寒牡丹展や初日は色固し 毛利不一
寒牡丹目蓋のうらの色なりし 辻直美
寒紅は末摘む花の色なりし 下村梅子
寒紅もその年頃の杏子色 後藤夜半 底紅
寒菊やひとつの色に暮れはじむ 谷口桂子
寒菊や箔色しづむ鷹の鞭 野坡
寒雀わが手袋の色に似る 田中冬二 麦ほこり
寒雀暮色ふりきる翅音せり 村越化石
寒雁の翅に暮色は重からずや 大野林火
寒雷の色を知りたい人形師 加藤ミチル
寒餅や母のうしろに夜の色 草間時彦 櫻山
寒鮒の尾が地を叩く暮色かな 斎藤梅子
寒鮒や小さなる眼の濡色に 松根東洋城
寒鯉のひとつの色にまはりけり 古舘曹人 樹下石上
寒鯉の色あつまつてなほ淡し 曹人
寒鯉の色うつり来て消えにけり 静雲
寒鯉を割けばあけぼの色の肉 岸原清行
寒鯛の色美しく売られをり 布川武男
寒鰤のとどく潮の色のまま 柴田佐知子
寛政の色をのこしぬ花菖蒲 長谷川かな女 雨 月
寝ても思ふ砂丘にとめし泉の色 有働亨 汐路
寶物に加え色鳥蔵す寺 高澤良一 宿好
寺要日記に滲む墨色彼岸入 殿村莵絲子 牡 丹
対岸の桃に色来る栄山寺 山本洋子
対岸は昼も暮れ色結氷湖 野澤節子 遠い橋
射干にその花色の蝶の来る 橋爪靖人
小式部の才気走れる色にして 高澤良一 さざなみやつこ
小日向の色なき風に隠る声 藤村瑞子
小流れのありて色添ふ野の錦 桜木俊晃
小満や根づきし色の大棚田 古市枯声(春耕)
小葉細葉色をつくし名の木散る 野老 野田別天樓
小豆色に空暮れてゆく冬至かな 西村榮一
少しづゝ山は色づく榎の実 高澤良一 素抱
少しづゝ暾の色貰ひ榎の実 高澤良一 素抱
少し長け勿忘草の色減りし 稲畑汀子
少女はも珊瑚の色に日焼して 行方克巳「昆虫記」
少女ら去りハレルヤ教会枯色に 穴井太 穴井太集
少年の背の焦げ色に畑返す 高垣美恵子
尖り立ち色めく蕾紫木蓮 石川風女
尼過ぎて紫陽花はいま真珠色 鈴木鷹夫 渚通り
屈みてもかそけき色の花山葵 佐藤美恵子
屋上のさくらは空に色まぎれ 瀧春一 菜園
屋根替えや色変りゆく土佐の海 岩井久美恵
屋根替へし橙色に峡の雨 滝春一
屠蘇袋花色絹の匂ひ哉 屠蘇 正岡子規
山々のゆかりの色に梅咲きぬ 佐藤美恵子
山々は鮎を落して色づきぬ 森澄雄
山おろし蓼の火色を熾しけり 朝倉和江
山すみれ土の湿りの色に出て 野沢節子
山なみは濃りんだう色夢寐の色 文挟夫佐恵 黄 瀬
山の井に色よきままの朽葉かな 素外
山の夜は榾火の色に更けにけり 清崎敏郎
山の彼方の山が水のような色 きさらぎ 荻原井泉水
山の日の円座乾きし色並び 石川星水女(玉藻)
山の色けふむらさきや日向ぼこ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
山の色澄みきつてまつすぐな煙 山頭火
山の色空の色澄む暮石の忌 茨木和生 往馬
山の色釣り上げし鮎に動くかな 原石鼎「花影」
山の蚊は石蕗に止まりて色もなし 阿部みどり女
山の辺に色変へて逢ふかたつむり 鳥居美智子
山ぶきのいはぬ色あり衣配 炭 太祇 太祇句選後篇
山よりも野の色づきて大和かな 鷹羽狩行
山を見てちらつく暮色あたたかし 松澤昭 神立
山一つ買うて色鳥放ち度し 岩永三女
山中や絵団扇の色薄きまま 波多野爽波 『一筆』
山吹の色にはあらぬなじみかな いく 俳諧撰集玉藻集
山吹の色を尽くせる返り花 椎橋清翠
山吹の葉の色したり雨蛙 右城暮石 声と声
山国に火色の赤さ富有柿 森澄雄
山国のけぢめの色の青葡萄 藤田湘子「前夜」
山城と川城色なき風の中 竹中碧水史
山女浮く岩を木の葉を保護色に 茨木和生 丹生
山女焼く古き火色を囲みけり 山田弘子 こぶし坂
山姥の眸に冬山の色なせる 長谷川かな女 牡 丹
山幾重色をたがへて雪催ふ 桐山久枝
山影は暮色のはじめ雪婆 山田弥寿子
山手十番館色硝子醒む夜の秋 文挟夫佐恵 雨 月
山暮れんか蜜柑の色の遠くにて 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
山梔子の実の色にある日の詰り 永井龍男
山梨や草の色して沼たひら 佐藤ちさと
山椒の実色づき初めて友の逝く 中屋敷 久米吉
山椿その葉隠りに色づく実 石塚友二 光塵
山椿砥に掘る石の色青き 安斎桜[カイ]子
山気降り通草に色を紡ぎ足す 加藤耕子
山水の色染みやすく雉子の聲 古舘曹人 砂の音
山河古り竹夫人また色香なき 山口青邨
山法師夕暮色の七曲り 中丸まちえ「新山暦俳句歳時記」
山深く草花咲いて色怪し 草の花 正岡子規
山澄みて巨峰に色の来るころか 日原傳
山火今追慕の火色燃え立たす 稲畑汀子 春光
山牛蒡の実の色づける子規の墓 井原ミチ
山畑の冬菜の色も雨のなか 田沼文雄
山眠り出土の壺の花菜色 中戸川朝人 残心
山紅葉仕上げの色にほど遠く 檜紀代
山繭の風に耐へ来し色ならむ 河野友人
山色を尽しきるとき冬ざるる 稲畑汀子
山茱萸の黄を春色の出入口 後藤比奈夫
山茶花や小昼の雨に色さやか 内藤吐天 鳴海抄
山螢風に掬はれ色消しぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
山車競ふ色なき風が彩を生み 雨宮抱星
山門は朽葉の色とあせにけり 大川黄草
山門不幸色失ひし庭の石蕗 長谷川きくの
山雀の日の色曳きてもうをらず 吉村玲子(円虹)
山頂の色なき風に五湖五彩 杓谷多見夫
山鳥の枯色をかし水温む 野村喜舟 小石川
山麓に日色を湧かせ花りんご 高澤良一 ぱらりとせ
岐阜提灯昨日と同じ色の空 阿部みどり女
岩つばめ富士を暁色走りをり 伊藤霜楓
岩崎邸木斛の実のあかがね色 高澤良一 素抱
岩陰の色の保護色山椒魚 穐山珠子
岳の幟発つに色めく夏の露 宮津昭彦
岳麓や正月菓子の色ぞ濃き 北野民夫
峯雲の翳の陸地の菫色 八木林之介 青霞集
島がくる帆に色強し小春灘 原石鼎
島は緑の泣き濡れ色に眼鏡橋 加倉井秋を 『真名井』
島二つ色異にして霞みけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
島住みの色を派手なる武者幟 有馬籌子
島唄の手ぶり色なき風運ぶ 北川かをり
島影の芙蓉の色に夜が明けし 稲垣みのる
島若葉出でし鴉はいま濡色 香西照雄 対話
崖に生れ崖の色負ひ初蝶よ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
崖枯れて干潟の色に子ら遊ぶ 神尾久美子 掌
崩れつつ毒茸色をつくしけり 三嶋隆英
嵯峨竹の色をとどめて春の闇 江国 滋
嵯峨路や風に色ある竹の秋 古川光栄
川せみや夕日にぬれし羽の色 翡翠 正岡子規
川の色俄に変り秋日落つ 小林耕生
川の藻に春立つ色となりにけり 木村里風子
川原の砂ほこり色鳥渡る 内田百間
川床に出て色まだ見ゆる東山 西村和子 かりそめならず
川底に日暮の色や花さびた 上林孝子(朝)
川開きいま夜の色となりしかな 永井龍男 永井龍男句集
己が色失せしものより末枯るゝ 藤崎久を
巴里祭雨の泊船乳色に 下村ひろし 西陲集
帖面に祝いの色の池を書く 阿部完市 にもつは絵馬
帯をさらに暮色が巻けり刈田なか(秋父にて) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
帷子の洗ひ洗ひし紺の色 松本たかし「鷹」
常に高みを行く秋風の色の旒 文挟夫佐恵 黄 瀬
常滑の土管色して冬の菊 高澤良一 鳩信
干し上げて*さよりに色の生まれたる 後藤比奈夫
干し板の紙乾ききて紙の色 右城暮石 上下
干す網に暮色もつるる霾ぐもり 高橋 好温
干梅に日乾れの色ののりにけり 綾部仁喜 寒木
干梅の色さだまりぬ青田風 米沢吾亦紅 童顔
干胡麻のはじける色となつて来し 田代杉雨堂
干草を抱くは色感たるごとく 松山足羽
平凡な妻の倖はせ色足袋はき 柴田白葉女 牡 丹
年変わる鋼色めく水を汲み 中村耕人
年玉袋男の子女の子と色違へ 角川照子
年終る運河の夕日肉色に 三谷昭 獣身
年行司色なき風を巻き過ぎて 高澤良一 素抱
年配の色に七夕笹の出来 後藤比奈夫 めんない千鳥
幸うすきにんじん色の木の葉髪 池内友次郎
幸せの色を廻して春日傘 腰崎麗子
幻想遺跡 枯草色の家族住む 伊丹公子 パースの秋
幾山河越えてうす墨色の鶴 木田千女
幾色の紅葉の丘に照る日あり 及川貞 夕焼
床下を色鯉の水京の宿 桂信子 草樹
座禅草暮れゆく水に色かさね 江口良子
庭に色あるは山茱萸実朝忌 及川貞 榧の實
庭に見し岩菲の色も活けらるる 稲畑汀子
庭園の茶席一服色葉散る 山岡和夫
庭木各々色定まりぬ冬構 西山泊雲 泊雲句集
庭草にほはしき夕べの色となり病人箸とる 人間を彫る 大橋裸木
廃校の松の一徹色変へず 後藤春翠
廻り灯籠めぐりのはての色世界 小林康治 『華髪』
廻礼を一つ余せし暮色かな 武内夕彦
式部の実色づく五十路はた深み 諸角せつ子
引く草の色より抜けて雨蛙 大滝時司
引鶴や海は祈りの色ふかめ 橋本榮治 越在
弟を久しく忘れ色鳥来 宇佐美ちゑ子
弱りたる鮎水の色はなれきし 中野 弘
強気なり山の枯色深む日は 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
弾け散る寸前の色いぬふぐり 柴田美佐
彩消えて風の色なるかざぐるま 藤村瑞子
彩窓の色さましつつ西日去る 山口青邨「冬青空」
影といふものの色めき雛飾る 村田脩
影といふ色ありとせば川蜻蛉 清水忠彦
影ふかくすみれ色なるおへそかな 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
彼岸花彼岸の色を薄めけり 高澤良一 ぱらりとせ
彼方なる火事のもも色近松忌 鈴木鷹夫 春の門
待ち合わすマフラー昔の色であり 荒尾芳春
待春の翡色の玉を身につけむ 泉 早苗
待針の色をそろへて針祭る 桜田品絵
律の風砂に色あり波のあり 石関洋子
後の月愧色如きを帯びをれり 相生垣瓜人
御仏にむかしの色の畦焼く火 佐野美智
御供にも色あるけふの菜種かな 松江維舟
御嶽の雪バラ色に鳥屋夜明 山口青邨
御忌桜色浅浅と咲きにけり 石井桐陰
御降や濡れ色つくす敷松葉 大場白水郎 散木集
御陵や秘色かがよふ今年竹 高瀬 史
微かにも燃え紅梅の色となる 坂井建
心臓へ還る色なりさくらんぼ 岩見ちづる
心貧し冬田は昼も暮色満つ 有働亨 汐路
心願の色あらばこの照紅葉 渡辺昭
忍冬のこの色欲しや唇に 三橋鷹女
忘らるる色の夕月胡桃萌ゆ 堀口星眠 営巣期
忘られて鬱の色なる菠薐草 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
応神陵色変へぬ松涸れぬ水 三嶋隆英
忽然と/紫影色(セピア)/羽つけし/一家族 折笠美秋 火傅書
思ひ出の色つなぎつつ毛糸編む 井上房子
思ひ草思ひの色の濃かりけり 田島竹四
怠け市民鉄橋色に鴨と染まり 加倉井秋を 『真名井』
恋さめて金魚の色もうつろへり 高浜虚子
恋人のスミレは只に菫色 攝津幸彦 未刊句集
恋猫の脱糞の瞳の古色かな 永田耕衣 悪霊
恋知らぬ子よ思ひ羽の色深む 長谷川久々子
恋螢YESもNOも色変へず 吉原文音
恐ろしき岩の色なり玉霰 夏目漱石 明治三十二年
悪なれば色悪よけれ老の春 高浜虚子
悪女でもなし椿病む色急ぎをり 河野多希女 彫刻の森
悪役のどーらんの色寒卵 田川飛旅子
悲しみの色とはこれか山火見る 深川正一郎
悲の色を集め沖あり冬苺 寺田京子
悴める心にともす*えり暮色 鈴木鷹夫 大津絵
悼むとき西日の色を分ち合ふ 古館曹人
情なう色のさめたり秋の蝶 秋の蝶 正岡子規
愁ひなき色とはいへずチューリップ 片山由美子 水精
意志に色あらばくれなゐ水引草 都筑智子
愚に近き日日やバナナは色づきて 金子兜太 少年/生長
愚直なる色香の蘇枋咲きにけり 草間時彦
愛の詩色なき風にのせてやり 宮崎貴子
憩ふ人秋色すすむ中にあり 鶏二
懐手解いて窯主火色読む 岸川鼓蟲子
懐旧の野山の色を眉間にし 長谷川かな女 花 季
懐紙白鶯餅の色残る 稲畑汀子
懸崖に色鳥こぼれかかりたる 松本たかし
懸崖菊夕日の色を重ねけり 福島孝子
懸巣鳴く落葉松林昏れ色に 江尻真沙子
成人の日や口紅の色変へて 吉田洋一
我が誕生日祝ぐ色揃へ寒椿 五十嵐播水
我庭のげんげん肥えて色薄し れんげ 正岡子規
我顔死に色したことを誰れも首はなんだ夜の虫の音 河東碧梧桐
戸隠の春暮たちまち色を変ふ 原裕 青垣
戸隠山は鋼の色に掛大根 春樹
手と目のわざ色足袋えんじに糸を繰る 古沢太穂 古沢太穂句集
手のひらに色を遊ばせ雛あられ 上野章子
手向けたる七個の池の水の色 飯田蛇笏 霊芝
手提より香の出て色の出し*かりん 山田弘子 こぶし坂
手燭して色失へる黄菊かな 蕪村
手秤に色を加へて冬林檎 加藤佳鶴子
手花火といへど激しき色ばかり 殿村莵絲子
手花火のこぼす火の色水の色 後藤夜半 底紅
手花火や子恋の色にしたたれる 増田 富子
手術の灯春めく色と思ひ浴ぶ 牧野春駒
手術場の玻璃のちゝ色くもりぬれ 横山白虹
手袋のやさしき色の五指ひらく 宮地ゆうこ
手袋の裏のわが色折返し 後藤夜半 底紅
打つ鉄の火色褪めゆく葛嵐 岸原清行
打つ音に暁色動く薺かな 石原草人
托鉢僧冬の暮色に消えにけり 魚田勇夫
折れまがり葡萄色のシーツあり 九月隆世
折紙の色を畳めば雪降れり 島田碩子
抱けば色消ぬべく雨の曼珠沙華 村田 脩
抽斗に樹林の暮色冬の雷 中島斌雄
拭きて掃きてのこる一日の菊暮色 古賀まり子 緑の野
拭けば色どこにもなくて冬鏡 倉橋羊村
拾ひたる石に色あり吾亦紅 長谷川かな女 雨 月
指を透く血の色さくら蕊降れり 千代田葛彦
振向きし蟷螂の目は燈の色に 加藤知世子 黄 炎
捨網の深海の色海桐の実 石井敏夫
掃き寄せて色の重なる柿落葉 穂坂日出子
掃苔や露も燃ゆれば火色なす 栗生純夫 科野路
掌に乗せてまぎるゝ色の桜貝 堀川錦星
掌に掬へば色なき水や夏の海 原石鼎
掌に重く有明色の春の鮒 加藤楸邨
掘り出せし地虫刻々色変る 右城暮石 上下
採らで置く色桃二つすこやかに 三橋敏雄 長濤
探梅の夕雲色を加へそむ 綾部仁喜 樸簡
掬ひ売る海鼠日ぐれの色にかな 有働 亨
掻立てゝ埋火の色動くかな 松浦為王
揉むごとに色顕つ紅や冬隣 手島靖一
揉むほどに色顕ち香立つ龍井茶 宮津昭彦
揚げられて色なき朝を章魚は見つ 金箱戈止夫
揚げ船の色寄すめつたやたらかな 石川桂郎 高蘆
揚羽とまる錆色しるき鉄一片 有働亨 汐路
揺るるたび色を失ふ夕桜 長谷川久々子
揺れやんで夕日の色の猫じやらし 鈴木 清
搗くうちに草餅色となつて来し 宇川紫鳥
摘まぜて雪と八色の若菜かな 蓼太
撰り出して淋しき色や青蜜柑 鼓舌 五車反古
撰出して淋しき色や青蜜柑 鼓舌
改築の要に色を変へぬ松 村上沙央
政争を遠くに聞きて色なき風 赤尾恵以
散り浮いて合歓の花色まぎれざる 高浜年尾
散れば彩とどまれば色蔦紅葉 稲畑汀子
散紅葉果なき如く色重ね 稲畑汀子
数の子やさくら色なる花がつを 石井花紅
数珠玉や月夜つづきて色づける 新田祐久
数珠玉をあつめて色のちがふこと 小川軽舟
敷藁に色失はず散牡丹 野沢ひろ
斑雪ダム湖の色に重なれり 平松周倭
斑鳩の蟷螂勾玉色の瞳よ 大橋敦子 匂 玉
斜里町はサーモン色の夕焼けに 高澤良一 燕音
断食やけむり色した木を咥え 前田弘
新しき色を選びて毛糸編む 乙武佳子
新しき色氷塊と真夏空 飯田龍太
新宿や氷河の色のラムネ瓶 後藤眞吉
新樹道夕月いまだ色解かず 平松措大
新海苔の色つやを賞づ朝餉かな 飯山白咲
新涼やこがねの色が田にのぼり 矢島渚男 延年
新涼や山湖の色の靄離れ 乙字俳句集 大須賀乙字
新田は枯色多しさつま芋 薩摩芋 正岡子規
新盆の桔梗色を尽しけり 館岡沙緻
新緑や暁色到る雨の中 日野草城
新茶のかをり夜を前栽の蒸れ色 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
新藁焼く紅葉の色を磨かんと 鳥居おさむ
新藷の金時色の好もしく 大林杣平
方舟に乗せむ夕映え色の鮭 櫂未知子 貴族
旅ぞ憂きなみだ色あるたをの萩 広瀬惟然
旅に逢ふ新小豆こそあづき色 平井さち子 鷹日和
旅果の眼閉づれば色なき風 青柳志解樹
旅立ちの母も日傘も水の色 鈴木鷹夫 渚通り
旅立ちの色整えよ冬の草 宇多喜代子
旗竿の色まだ青し竹の秋 星野紗一
既になき色を秋ふる尾花かな 松岡青蘿
日かげれば色無し鴛鴦の沈みけり 大橋櫻坡子 雨月
日かげれば麦蒔消えぬ土色に 鈴木花蓑句集
日ぐれの保護色になり ひそと街角 湖光子
日に栄へてべんがら色のさくらの枝 高澤良一 燕音
日に透ける鶏冠血の色原爆忌 大橋敦子
日のあたる色となりゆく山桜 鷹羽狩行
日の下や芦に勝ちたる雁の色 月舟俳句集 原月舟
日の丸は昇る日の色春の海 今瀬剛一
日の光り分かち色足す七変化 佐脇葭紅
日の厚み鉄と異なる蝌蚪の色 磯貝碧蹄館 握手
日の新樹雨の新樹と色重ね 稲畑汀子 汀子第二句集
日の空に色の淡さよ帰り花 温亭句集 篠原温亭
日の色に胸の染まりし初雀 松田美子
日の色のふくらみてきし春の鴨 千浜歌子
日の色の鰍を誘う道つくる 武田伸一
日の色は黄色に青や茎立てる 高浜虚子
日の色や岩噛む浪も夏となり 月舟俳句集 原月舟、長谷川零餘子編
日の色を出色の雉子製餡所 磯貝碧蹄館
日の色を溜めて蒲公英返り咲く 小泉紀代子
日は乳色啓蟄を待つ卵たち 林翔 和紙
日は未形(みぎょう)色さめざめと冬桜 山田みづえ 草譜以後
日を吸ふも弾くも薔薇の色なりし 稲岡長
日を経たる色に庭木の鵙の贄 松尾緑富
日傘たゝむや空の広さに逃げし色 高濱年尾 年尾句集
日当りてきし枯山の色ゆるぶ 清崎敏郎
日暮には日暮の色に白芙蓉 落合きくお
日暮れ時思わぬ夏の色のぞく 石川キイ
日本海色に秋来て浮鴎 中戸川朝人 残心
日毎来る色鳥の名を問はれしも 荒巻 大愚
日照雨して花野の色の新らしく 高木晴子 花 季
日短かや土の色して藁の屋根 成田千空 地霊
日脚伸ぶ枯色限りなく空へ 飯田龍太
日脚伸ぶ雪の色かな遥か来ぬ 高木晴子 花 季
日色すぐ落日めくや冬の果樹 中島斌男
日雀鳴きつるうめもどき色増せり 高澤良一 燕音
日面テの色となりたる葛の花 行方克巳
旧植民地の色壁 人影 沈黙の 伊丹公子 ドリアンの棘
旧正や杣は渋紙色に老ゆ 赤座閑山
早乙女の憩ひの色に杉木立 四條五郎
早乙女の黒き色こそ尊けれ 早乙女 正岡子規
早咲きの木瓜の薄色蔵開き 鈴木真砂女 夕螢
早春の地階の蔬菜鴇色まじゆ 宮武寒々 朱卓
早梅の白光色の戦火あり 対馬康子 吾亦紅
昃りたるとき色を得て薄紅梅 片山由美子 天弓
昃りてもあたゝかき色真弓の実 斎藤紫暁
昃りて秋風の色見ゆるなり 高木晴子 花 季
昆布干し連ねて焦茶色の村 成田智世子「積丹」
明易やいつも色なき父母の夢 小島照子
明星や馬食(まじき)の上の霜の色 里東 俳諧撰集「藤の実」
星祭おのが色香を惜みけり 日野草城
星色に流れて過ぎて寒夜の汽車 対馬康子 吾亦紅
星鴉崖崩は地獄の色に灼け 小松崎爽青
春の夜や三十路に入りし爪の色 河野南畦 『花と流氷』
春の日や久しき色の掛蓬莱 碧雲居句集 大谷碧雲居
春の砂利濡れ初め個色詩の会へ 香西照雄 対話
春の空日の輪いくつも色となり 阿部みどり女 笹鳴
春の雪桜色して降りにけん 高橋睦郎
春の雪色にも力あるごとく 田中裕明 櫻姫譚
春の雪触れたるものの色に消ゆ 小田島ひろ詩
春の雲うち重なりて色得たる 高木晴子 花 季
春ふかき秘色といへる襲(かさね)の名 筑紫磐井 野干
春めきてものの果てなる空の色 飯田蛇笏(1885-1962)
春めきて藻の色流す柿田川 北村悦子
春めくといへば暮色も春めきて 相生垣瓜人 微茫集
春めくや色街にある狸塚 鍵和田[ゆう]子 未来図
春もはや十色にあまる小草哉 松岡青蘿
春らしき色といふより好きな色 稲畑汀子 汀子句集
春先の和菓子の色がこそばゆい 榎原和正
春分の蝶に色なし睡るべし 金子文夫
春宵の玉露は美酒の色に出づ 富安風生
春寒き襖の色も見えわかず 松籟集(蕉子句集) 小野蕉子
春山の色に消えたる箒売り 中村苑子
春待つや色麩ふたつのおかめそば 小川軽舟
春惜む卓上の酒や色とり~ 青峰集 島田青峰
春昼のさびしき色に硝子玉 伊藤乃里子
春昼や踏絵に残る銀の色 中川宋淵 詩龕
春月に瑪瑙色あり大伽藍 森澄雄
春月のまだ色なしや潦 楠目橙黄子 橙圃
春服にきはどき色をあしらひし 星野立子
春泥の子の血より哀しき色あるや 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春浅き田の夕暮の火色こそ 大井雅人
春浅き色を織り込む錦かな 月舟俳句集 原月舟
春浅し風に七くせ色なくて 藤本純子
春満月上りつつ色おさまりぬ 飛高隆夫
春潮の入水に叶ふ色といふ 吉田汀史
春潮の汐先の色ふくみたる 行方克巳
春燈の色違ひたる二間かな 正木ゆう子
春田一隅水漬きて海の色宿す 米谷静二
春禽に色をたがえて沼いくつ 大津希水
春禽や供華の色消す鏡石 古舘曹人 砂の音
春色と云ふ幽かなるもの動く 伊藤柏翠
春色に染まりきれずにゐて独り 岩崎清子
春色に置かるゝものゝ行燈かな 白水郎句集 大場白水郎
春色のうごきそめたる棚田かな 行方克巳
春色の人にうつらふ真昼かな 尾崎紅葉
春色の沖ゆく舟と歩をあはす 原裕 青垣
春色やさずかる古稀の齢抱き 長谷川かな女 花 季
春色や海高くして丘低し 徳永山冬子
春色や甕さゝへる朱の柱 野村喜舟 小石川
春草に土器はしづかな色持てる 吐合すみえ
春著とも遠橇の上に色を置き 青葉三角草
春著の子走り交して色交し 上野泰 佐介
春雪の地にとゞくまでの色形 青峰集 島田青峰
春雷やしめりふふめる火色にて 岸田稚魚 筍流し
春雷や雀色時妻待てば 清水基吉 寒蕭々
春風やいつか褪めゆく楼の色 楠目橙黄子 橙圃
春風やまだ赤さびの杉の色 春風 正岡子規
春鮒のあめ色に煮え潟昏るる 本間羊山
昨日今日同じ色着て秋暑し 毛塚静枝
昭和の色大正の色錦鯉 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
昼の月水引草に色もなし 龍胆 長谷川かな女
昼の灯に闇の色あり酸漿市 丸山しげる
昼寝覚はじめの色はうす赤し 大牧 広
昼月へ月の色なす隼人瓜 西田富士子
昼顔のあれは途方に暮るる色 飯島晴子「儚々」
昼顔の中途半端な色切に 瀧澤宏司
時代祭 燻べる色の武者揃え小札擦れ合ふ音残し発つ 澤辺元一
時化あとの萩あらたなる花の色 河野静雲 閻魔
時雨尚ほ栖めば色を保つ花 安斎櫻[カイ]子
時鳥草夜明の色の壷に挿す 後藤比奈夫
晒裁つ妻に色なす酔芙蓉 青木重行
晝花火続くや松の色さまざま 田中裕明 山信
晩年の風に色なき韮畑 森洋彦
晩年や瑠璃色の飴口中に 塚本邦雄 甘露
晩年を火の色とせん飾焚く 坂井三輪
晩秋の水に色あり深さあり 小寺正三
晴れし日も海は鉄色草ひばり 赤城さかえ
晴れやかに酒色をおびし初雀 高木みつ子
晴れ渡る天に紫苑の色を置く 稲畑汀子
晴れ舞台てふ菊苗の色を聞く 高澤良一 燕音
暁け色となりてぞ冷ゆるリラの月 奥田智久
暁の色に葉活きしさし木かな 原月舟
暁の色映りけり春の霜 鳥飼宵衣
暖かき枯蓮の色日暮れても 欣一
暗闇を祭の色として使ふ 後藤立夫
暮れそめし鴛鴦の羽色や返り花 鷹女
暮れてゆく畦火の色をもどり見む 及川貞 夕焼
暮色いま海より蒼し探梅行 中村祐子
暮色てふ色たをやかに琴始 杉村 惇
暮色もて人とつながる坂二月 野澤節子
暮色より暮色が攫ふ採氷馬 齋藤玄 『玄』
暮色より足を引きぬく田草取 中村翠湖
暮色をともす工事現場のひもじい灯 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
暮色来て咲くとは見えず藺田青し 大島民郎
曇り日や地熱の色の紅葉山 林翔
曇る田も春へ急げる土の色 阿部みどり女
曝書して色鯉の水明りのみ 大峯あきら 宇宙塵
曝涼の色鮮やかに瑠璃の杯 龍頭美紀子
更衣しても好みの色変へず 吉年虹二
書の面の灯色に代はり初明り 中村草田男
書初のあけぼの色の浄紙延ぶ 宍戸津和子
曼珠沙華咲ける限りの暮色澄む 内藤吐天 鳴海抄
曼珠沙華寺領の暮色拒みけり 大場榮朗
曼珠沙華雨の一ト日を経たる色 西村和子 窓
月あかり鴛鴦は色襲ねしや 大石悦子 聞香
月に飛び月の色なり草かげろふ 中村草田男「長子」
月の出は真鍮の色飢えきざす 中村和弘
月の出は金木犀の色にかな 永井東門居
月の夜を経し山梔子は月色に 永井東門居
月の色さす魂棚の箒草 沢木欣一 沖縄吟遊集
月の色して鮎の斑のひとところ 上村占魚
月の色となる野を肯ひて戻る 千代田葛彦 旅人木
月や火の色怒濤の如く雪降り来 小林康治 四季貧窮
月光に色を奪られてまんじゅさげ 高澤良一 素抱
月光の色して梅の傾けり 大木あまり 火球
月光を這ひ色なさぬ守宮の子 鈴木貞雄
月光裡さくらの更にさくら色 きくちつねこ
月出でて月の色なる妻の髪 加藤秋邨 雪後の天
月夜には月夜の色や亀生るる 岩城湍
月山の色なき風に吹かれをり 渡辺二三雄
月未だ色に出でざる花野かな 五十嵐播水 播水句集
月白に色生るるもの消ゆるもの 後藤比奈夫 花匂ひ
月色の夜にみれんある夏山路 飯田蛇笏 椿花集
月草の色見えそめて雨寒し 暁台
月見草雨にひるまぬ色を見き 阿部みどり女
有り無しの色をかざして花茗荷 才記翔子(泉)
有明の色をとどめて花菜汁 秋篠光広
服の色忘れてあそぶ枯芦原 岡本眸
望の夜の色足袋召して尼ぜかな 桑田青虎
朝ごとの色確かめつ春の海 小川濤美子
朝ごとの雪に色ひく鶲かな 飴山實 『花浴び』
朝に似たる日色いつまで小春庭 温亭句集 篠原温亭
朝に見る色鯉のさま婚の家 森澄雄
朝の父さくら色して深き麻痺 渋谷道
朝より暮色の障子蟇鳴ける 山口草堂
朝夕(よひ)の乏(とも)しかる餉を思ふときあはれなるかなや色好みてふ 高橋睦郎 飲食
朝寝して色変りけり茄子漬 青木月斗
朝市の秋茄子の色云々す 能村研三
朝市やまだ海色の鯖を糶る 角川春樹
朝日うけ色のうまれし樹氷林 樹生まさゆき
朝日がビルにあたりだし 枯木も色めいた 吉岡禅寺洞
朝日さすや紅梅のゆたかに色がもどつている 橋本夢道 無禮なる妻抄
朝日子の座あかね色鷹渡る 平井さち子 鷹日和
朝貌の今や咲くらん空の色 夏目漱石 明治四十年
朝露よばら色の豚小走りに 上田五千石 田園
朝顏のさまさま色を盡す哉 朝顔 正岡子規
朝顏の澁色茶色なども咲きぬ 朝顔 正岡子規
朝顏や寐ぼけた色を咲かせけり 朝顔 正岡子規
朝顔に暁天の色映りけり 解夏草 柴浅茅
朝顔に空の色まだ定まらず 前田育子
朝顔のひと色倦まず咲けるかな 篠塚しげる
朝顔の唯一色に淋しさよ 寺田寅彦
朝顔の昔の色の濃むらさき 寺谷なみ女
朝顔の色はと見れば在り来たり 高澤良一 ぱらりとせ
朝顔の色を忘れし白さかな 渡邊水巴 富士
朝顔の葉色明るく降りつづく 永井龍男
朝顔の薄色に咲く忌中かな 富田木歩
朝顔や絡まり合ひて幾色ぞ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
朝顔市色香押へし団十郎 岡本和子(秀)
期しゐたる刈田の色の現れぬ 相生垣瓜人 微茫集
木がらしや目刺にのこる海の色 芥川龍之介(1892-1927)
木がらしや色にも見えず散もせず 智月 俳諧撰集玉藻集
木の下にゐて木の色の子供の日 今瀬剛一「大祖」
木の色の仏に紅葉明りかな 林 翔
木の芽漬嫩芽の色香たちもどり 南川青洋
木の葉浮けて底見せまじき水の色 臼田亞浪 定本亜浪句集
木の葉髪幸うすきにんじん色の髪 池内友次郎 結婚まで
木天蓼や昔色町うら通り 段原スミヱ
木曾三川色をたがへて春隣 藤原駿二
木枯の痩せゆく闇に死色見る 石原八束 空の渚
木枯や吹き霽らしたる海の色 中川宋淵 詩龕
木枯や火の色残る壺の肩 佐藤知澁
木枯を秘色としたり白襖 齋藤愼爾
木槿の花の色の血潮の馬のゆき 阿部完市 軽のやまめ
木歩の碑血の色に咲く寒椿 毛塚静枝
木洩れ日に色移しゆく花菖蒲 田村草子
木洩日の翳りの色の晩夏かな 坂井建
木瓜の紅は祖母の形見のどこかの色 加倉井秋を 午後の窓
木瓜の紅を何かの色と思ひ出せぬ 加倉井秋を 午後の窓
木耳に色くる蔵王堂の晴 岡井省二
木耳や杣の夜の火の濡れ色に 木附沢麦青
未明貝殻色なす雲へ眠れ灯台 幡谷東吾
末つ子の色足袋らしく脱がれあり 上野泰 春潮
末枯といふ色ひとつのみならず 松岡ひでたか
本紅の色に羽子つき了へし空 高澤良一 さざなみやつこ
札納め色羽根買うてもどりけり 星野立子
朱の色に好き嫌ひあり君子蘭 稲畑汀子
朱の色の燐寸の頭一の酉 亀丸公俊
朱欒割くや歓喜のごとき色と香と 石田波郷
朱雀門のみを色とし大枯野 松下信子
朱雀門色なき風を通しけり 山下佳子
朱鷺色の衿裏なりき雪の宿 橋石 和栲
机椅子鉄色をしてかじかめり(学制改革の声を聞きつつ四高卒業) 飴山實 『おりいぶ』
朽色蝶羽を開けば炯眼紋 香西照雄 対話
杉の実やつちくれ色に墓乾き 杉山恵子
杉暗く中に色つく銀杏かな 銀杏黄葉 正岡子規
杏咲き乳色に島浮かびたり 木村里風子
杜氏健在新酒の色の皮膚をせり 栗生純夫 科野路
杜鵑草人恋ふ色に咲きいでし 轡田幸子
東京の暮色を好むかいつぶり 橋本修
東山いく重の暮色水を打つ 村田 脩
松の榾牡丹の榾の火色かな 古賀昭子
松もまた色新しや山紅葉 相馬遷子 雪嶺
松毬のかたち火色に磯焚火 中戸川朝人 星辰
松笠も色は変るに柾の実 呂生
松色を変へず玉虫厨子の彩 金子あきゑ
松苗の根付きたる色鯊日和 茨木和生 遠つ川
松葉牡丹の七色八色尼が寺 松本 旭
松葉牡丹の色とびとびに母家まで 松本 美簾
松葉牡丹犬の鼻先に色きそふ 原田 早苗
松葉蟹海恋ふ色に届きけり 田中美彦
松蕈や菊の膾の色に出つ 松茸 正岡子規
松藻虫水面は昼の色失せて 石田由美枝(岳)
松蝉や林に透ける海の色 酒井左岸(ぬかるみ)
松過ぎてサラダ色めく夕餉膳 初川トミ子
松過ぎの天より垂るる暮色かな 櫛原希伊子
枇杷にのる色の散漫また降れり 高澤良一 さざなみやつこ
枇杷に点る色のはるばる着きしごとし 宮津昭彦
枕木に噴く錆色や朝ぐもり 平子公一(馬酔木)
林中の暮色にまぎれ花楝 樋笠文
林檎の花色の黒きはまじめ妻 川崎展宏
果実酒の色深みゆく土用かな 西山春濤(狩)
枝々の茂みに柚子の色づける 鈴木豊子
枝うつりする色鳥に空深し 片岡奈王
枝こぼれしつつ色鳥木々渡る 長谷川草洲
枝の色奪ひ尽くして梅競ふ 梅崎相武
枝垂れつゝ色ふりそゝぐ花暮れず 渡邊水巴 富士
枝垂桜近づくまゝに色薄き 佐野青陽人 天の川
枝移り来て色鳥の貌を見せ 深見けん二 日月
枝豆に牛の汚れの色を見る 松瀬青々
枝豆に藍色の猪口好みけり 長谷川かな女 雨 月
枯といふこのあたたかき色に坐す 木内彰志
枯の中熔岩色なせる山の池 大橋敦子 手 鞠
枯れいそぐ色の殆ど似て来たる 稲畑汀子
枯れ果てし色の磯鵯翔ちにけり 山口草堂
枯れ果てて色無き草に立つ焔 林翔 和紙
枯れ澄みて色鳥移るひかりあり 岡田貞峰
枯れ色に或ひは坐る草の上 岡井省二
枯れ色の連なるを火の国といふ 乾 歌子
枯れ色を動かし僧の枯野行く 齋藤愼爾
枯山のうすずみ色は唇に 斎藤玄 雁道
枯木中落つる月のみ色持てり 大橋敦子 母子草
枯木宿に色を動かす蒲団かな 月舟俳句集 原月舟
枯柳雀止まりて色も無し 水巴句集 渡邊水巴
枯桑のほの~として色ありぬ 高濱年尾 年尾句集
枯桑の曙色に囀れり 瀧春一 菜園
枯淡などまつぴら色を変へぬ松 鷹羽狩行
枯色が眼よりはじまるいぼむしり 後藤夜半 底紅
枯色として華やげるものもあり 稲畑汀子 春光
枯色とせぬを艶とや柿落葉 稲畑汀子
枯色となりしきちきちばった飛ぶ 近石 ひろ子
枯色にカナリア少年熱の中 金子皆子
枯色に山茱萸の黄の新しや 高木晴子
枯色に月かたむけてきりぎりす 斎藤玄 雁道
枯色に澄む眼をあげて雌蟷螂 原裕 葦牙
枯色に秘めて蔦の芽なりしかな 稲畑汀子
枯色に肘置けば照る沼の面 原裕 葦牙
枯色の*はたはたとなり何いそぐ 能村登四郎
枯色のまゝの春田を打ちはじむ 清崎敏郎
枯色のものは親しき雀らも 片山由美子 風待月
枯色の明り障子となりにけり 山口草堂
枯色の由布の盆地の春時雨 冨永津耶
枯色の聖晩餐図笹鳴けり 堀口星眠 営巣期
枯色の色の果あり波郷の忌 齋藤玄 『狩眼』
枯色の蟷螂灯に来憎からず 稲垣きくの 牡 丹
枯色は会話を心易くする 山田弘子 螢川
枯色も攻めの迷彩枯蟷螂 的野 雄
枯色も華やぐメタセコイヤかな 稲畑汀子 汀子句集
枯色をなほ枯色に岬の雨 細見綾子 黄 炎
枯芦に黄昏色の童女ゆく 阿部みどり女
枯芦暮色音すべて消ゆ刻のあり 川村紫陽
枯茨に指刺されたる暮色かな 田中冬子
枯草と一つ色なる小家かな 一茶
枯草にこぼれて涙枯れ色に 鈴木真砂女 夕螢
枯草山夏柑は色ととのへて 松村蒼石 雪
枯菊に刈り頃の色渡りけり 青木重行
枯菊に尚ほ色といふもの存す 高濱虚子
枯菊に尚色といふもの存す 高浜虚子
枯菊の打ち重なりて色失せず 森山治子
枯菊の臙脂の色を焚きにけり 皆川白陀
枯菊の色に出にけり鷦鷯 鷦鷯 正岡子規
枯菊の色失ひてなほ高し 櫻内玲子
枯菊の色無き上に日のひかり 岩田由美 夏安
枯萱に塩の色あり浜街道 高橋圭爾
枯萱の色に出でたるつくしかな 土筆 正岡子規
枯葉かく人も枯葉の色に似て 中川宋淵
枯葎の色も父なき日数かな 岸田稚魚 筍流し
枯葦の肥後に海なし湖の色 古舘曹人 能登の蛙
枯葦の色なく立てる日矢の中 鷲谷七菜子 黄 炎
枯蓮の池に横たふ暮色かな 高浜虚子
枯蓮の色に遠近なかりけり 小林草吾
枯蓮やかげろふほどに水の色 小澤碧童 碧童句集
枯蔦や藍ことに濃き色硝子 久米正雄 返り花
枯野ゆく我も枯色かもしれぬ 小野沢千鶴
枯野ゆく色なき雨のやすらぎに 相葉有流
枯野晴布団の色をはばからず 鳥居おさむ
枸杞の実の色づき野川水やせぬ 宮下翠舟
柑樹色づく貧しき父母の許に帰る 橋本夢道 無禮なる妻抄
染められて紐に色ある月夜かな 大屋達治 絢鸞
染料の虎色にじむ冬の河 秋元不死男
染髪の色むらさきに女正月 観山繁子
柚の実の色づき初めぬ鰯焼く 田中冬二 冬霞
柚の色や起あがりたる菊の露 榎本其角
柚子置いて夜のはじめの色とせる 宮津昭彦
柩かこむ春の百花に喪の色なし 内藤吐天 鳴海抄
柳ちる色を地上になつかしむ 松瀬青々
柳祭枝垂るゝ色に翳もなし 大矢東篁
柳鮠土橋の下の暮色かな 上村占魚 鮎
柴舟に山枯色や小六月 東洋城千句
柿の実の四方に色たつ子規のくに 加藤耕子
柿の色悪し位牌に見下され 林田紀音夫
柿の色日に日に湖の輝きに 徳澤南風子
柿の色脳裏に荒れし海を見る 桂信子 黄 瀬
柿の花夜のたしなみの色映えて 中島月笠 月笠句集
柿剥くやいつはりもなき柿の色 野澤節子 『駿河蘭』
柿粒々と一粒も色をたがへざる 栗生純夫 科野路
柿色の歌舞伎色なる落葉かな 小杉余子 余子句選
栞りたる竜胆色を失はず 加藤三七子
栴檀の実色つきぬ胡蝶隊 横光利一
根深煮る色こそ見へね冬籠 横井也有 蘿葉集
桃に色来そめし美濃の奥にあり 大峯あきら 宇宙塵
桃咲いてあけぼの色の少年期 大澤茂樹
桃咲くや素焼色なる窯場の日 黒田櫻の園
桐の木にかかり山藤同じ色 矢島渚男 延年
桐の花ほとほと遠き色なりし 飯島晴子
桐咲いて遠き世の色ありにけり 町田しげき
桐榾の炎色やさしき月下かな 加古宗也
桑原の枯れ乳色の日もありぬ 細見綾子 花寂び
桑原の枯色いでて来し百姓 細見綾子
桔梗にあいまいな色なかりけり 中嶋秀子
桔梗のしのび逢ふたび色まさり 筑紫磐井 野干
桔梗の花終るとき色うすし 中井 文子
桜えび富士は夜の色深めつつ 伊藤通明
桜ほのと微醺の色に返り咲く 松尾柊
桜東風水面の色のよくかはる 朱宮史郎
桜満ちる十日 障子の桜色 伊丹公子 ドリアンの棘
桜狩中州はいつも喪の色に 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
桜色に闇ほぐれ来る御万燈 渋谷亮子
桜色失せずに焼けしうぐひかな 竹本袴山
桜草かへりみすれば色さみし 高橋淡路女 梶の葉
桟橋の色なき風や帽を脱ぐ 猪俣壽水
梅も色なし水に影ゆく夕茜 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
梅天や色さめ~と杜若 原石鼎
梅干しの二百の色を裏返す 坂上青児
梅干せば鬼百合色を失へり 相生垣瓜人 明治草抄
梅擬色なき庭を飾り立て 渋沢美代子
梅林へ日の色移し古墳暮るる 鳥居おさむ
梅漬けて母の色には及ばざり 関戸靖子
梅漬の紅は日本の色なりし 粟津松彩子
梅雨ごもる鳥は色音の揃ひけり 前田普羅 飛騨紬
梅雨に入るなか~色の出ぬテレビ 沢木欣一 往還
梅雨に入る鞴いみじき火色かな 久米正雄 返り花
梅雨に訪ふ明るき色に装うて 広瀬美子
梅雨の月くらりと色を濃くしたる 黒田杏子 水の扉
梅雨の苔色を尽くして波うてる 岸田稚魚 筍流し
梅雨桔梗晴間の色を尽しけり 後藤夜半 底紅
梅雨空や水も昔の色ならず 林原耒井 蜩
梅雨茸に見たことのなき色があり 上野泰 春潮
梅雨荒川酒の色して秩父より 久保田慶子
梅雨風邪のことに火の色なつかしけれ 冬の土宮林菫哉
梓川白し色なき風の過ぐ 志摩芳次郎
棗の実雀色時地より湧く 小池文子 巴里蕭条
棗の実雨に色づく綾子の忌 栗田せつ子
棲む水の色もて鮎の売られけり 佐藤棗女
植田はや色さす美々津通りけり 村田 脩
椎さやぎことに栗咲く暮色かな 小林康治 玄霜
椎若葉火色の朝は来たるかな 齋藤玄 飛雪
椰子とヨツト空が碧増す色に炎え 河野南畦 湖の森
椿の前過ぎてからおもう その火色 伊丹公子 陶器の天使
椿咲く僧坊を焼きし火の色に 有働亨 汐路
椿落ちて色うしなひぬたちどころ 芝不器男
楪に橙色を流しけり 龍雨
極めたる色の白なり冬の星 高石幸平
極月の火の色あつめ火を焚きぬ 岩淵喜代子 朝の椅子
極楽鳥花(ストレッチャ)まだ色ささぬ写生帖 高澤良一 素抱
楽焼の碗の秋色持ち帰る 上田日差子
榛の実のおはぐろ色や名主の家 川崎慶子
榛の木に色出でて年新たなり 森田公司
槍穂高色を違へて炎天下 粟津松彩子
標色して白夜に似るか島の暁 文挟夫佐恵 遠い橋
横笛をおもひ染めたる色もみぢ 高澤良一 宿好
樫の木の色もさむるや秋の空 去来
樹々の目がとび色の春手紙書けよ 寺田京子 日の鷹
樹々の雪蹴つて山鳥色つよし 前田普羅 飛騨紬
橇の子に暮色三人は淋しき数 千代田葛彦 旅人木
橇山河カチューシャ色の装曲げて 古館曹人
橙のただひと色を飾りけり 原石鼎
橙のたゞひと色を飾りけり 原石鼎
橙の色づき初めて数へらる 中屋敷 久米吉
橙の色ののりたる寒さかな 曽我 鈴子
橙の色を木の間の冬の月 松岡青蘿
機の音春山色を変へつつあり 瀧春一 菜園
機糸の色の束より春立てり 清水節子
橡の実の熊好む色してゐたり 右城暮石
橡の実の鉄色に熟れ夕日濃し 岡村武子
檜隈に色どめしたるしぐれかな 安東次男 昨
檸檬切るトパーズ色のしぶきの香 松本由美子
櫂の音冴えまさり湖の色ふかし 荻原井泉水
櫛もまたしろがね色の雪女郎 本郷桂子
櫟原錆び色見えて冬に入る 伊東月草
櫨紅葉にも燃ゆる色沈む色 稲畑汀子 汀子第二句集
櫨紅葉熔岩原わづかなれど暮色 加倉井秋を 午後の窓
欄干に寄れば色なき風のこゑ 深沢暁子
歌枕色なき風と訪ふことに 山崎房子
歓迎の色惜みなき紅葉あり 吉年虹二
此の鳩はコハク色なり枯芝生 高木晴子 晴居
此頃の泣日和八ッ手色冴えぬ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
武蔵野は若草の色空の色 若草 正岡子規
歯朶刈るや天鵞絨色のわたつうみ 各務耐子
歯朶枯るる初めの色を胸におく 細見綾子
死の畏怖へか 極影色の仏陀と屋根 伊丹公子 パースの秋
死は何色まさか琅かん色まして晩夏光 楠本憲吉
残りゐる海の暮色と草いきれ 木下夕爾
残る色明日にたゝみて花蓮 佐藤冨士男
残桜の雫の色といふべけれ 岩城久治
残菊として色競ふこゝろなほ 明石春潮子
残菊のとどめし色や素十亡し 上村占魚 『天上の宴』
残菊の色を惜しまず焚かれけり 乙黒幸江
母に蹤くや色鳥こぼれやまぬなり 高橋伸張子
母のみが朱鷺色といふ蓮咲きぬ 金久美智子
母の地や旭の色を超す木守柿 成田千空 地霊
母の日の山が暮れゆく納戸色 中村明子(萬緑)
母の背へ庭木春色漂はす 原裕 葦牙
母の色してきぬさやのまぶしかり 鈴木智子
母の首すじ焼畑色に遠かっこう 一ノ瀬タカ子
母は仮泊に似て逝きし春の海の色 友岡子郷 遠方
母憶ふ炭の火色のやはらかし 千代田葛彦 旅人木
母通る枯草色の春日中 飯田龍太
毒籠を靜めて淵の色寒し 寒し 正岡子規
毒茸の饒舌の色尽しけり 橋本榮治 麦生
毒茸神慮の色に崩れけり 滝井菱青
毛糸屋にわが好む色ひとも買ひぬ 及川貞
毛糸編む一つの色にあいてきし 堤澄女
毛糸編む母の好みの色を混ぜ 鎌田 栄
毛虫焼く炎にはかに色めきぬ 片山由美子 水精
毛虫焼く色なき煙地にながし 長沼紫紅
毛蟲焼く炎の色は蝶のいろ 栗島 弘
水あがる白菜夜雲真珠色 石田あき子 見舞籠
水かけし草木の色や生身魂 山本洋子
水と空祭の色となる浪花 村井 二郎
水な上みへ夏山色をかさねけり 長谷川素逝「素逝句集」
水にては水の色なる白魚かな 松瀬青々
水に冷やすラムネもっとも色冷えて 右城暮石 上下
水に色無きがごとくに花八つ手 吉屋信子
水ぬるむ日を恋うて浮く色の鯉 豊長秋郊
水のやうな母の炎色のお元日 岡本高明
水の色涼しくかげり初めにけり 高橋淡路女 梶の葉
水の色火のいろ二月近づきぬ 長谷川双魚 風形
水の色赤うなりてや鹿の声 千代尼
水の面の暮色いつより燕子花 根岸善雄
水よりもわずかにすずし瓜の色 樗良「雪の声」
水よりも淡き色して金魚生る 上村京華
水よりも火酒に色無き秋の暮 正雄
水中花富良野焦がるる色にかな 後藤比奈夫 めんない千鳥
水中花菊も牡丹も同じ色 長谷川かな女 花 季
水仙に色ありしかもきほひ有り 来山
水仙や暮色漂ふて鯉動く 飯田蛇笏
水底も秋ふる色や初なまこ 野坡
水底も秋経し色や初なまこ 野坡
水引の紅の色ほど信じをり 白土青波
水洟やわれも暮色の一つとなる 宮坂静生 青胡桃
水浅黄は汀女の色の矢車草 青木重行
水澄みて色といふものありにけり 羽根尾一孝
水甕に雪降りつのる暮色かな 近藤一鴻
水盤に色ビー玉の沈みけり 比佐待子(篠)
水色は清貧の色夏燕 小野久仁子
水色は遠方の色花柘榴 桂信子 黄 瀬
水辺に実の色とどめ枯茨 福神規子
水郷の色連翹に出でにけり 小杉余子 余子句選
水鏡してあぢさゐのけふの色 上田五千石(1933-97)
水際にきて色鳥の色こぼす 津根元潮
水霜のとけゆく色の草紅葉 五十崎古郷句集
水靄の奥に色あり山粧ふ 手島靖一
水音に色あれば銀花山葵 原田青児
水音もあんずの花の色をして 草間時彦 櫻山
水飯の色すさましき白さ哉 冷まじ 正岡子規
水鳥の色の密なる一葉忌 川村哲夫
水鳥や夕焼色に芝に在り 温亭句集 篠原温亭
氷上に鳶とまりをる暮色かな 木村蕪城 寒泉
氷上の暮色ひしめく風の中 廣瀬直人
氷上の雲の暮色の崩れざま 古館曹人
氷上渡る一人と見れば暮色かな 楠目橙黄子 橙圃
氷下魚釣る人等動かぬ色として 嶋田一歩
永き日の写楽は顎に暮色溜め 宇佐見蘇骸
永観堂早紅葉(さもみじ)雨に色づけり 高澤良一 宿好
汁に煮立つる色保つ薊山風に 河東碧梧桐
汗かきて馬は馬色を失へり 山口誓子 不動
汚れざる白といふ色花菖蒲 細江大寒
江戸絵図の堀の藍色夏はじめ 木内彰志
江田島の松は鋼の色変へず 荒巻洋子
池二つ涸れてその色異なれる 田中裕明 櫻姫譚
汪茫やかすめる佐渡の色に酔ふ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
汽車過ぎていよいよ暮色一冬木 森澄雄
沈む色浮く色秋果盛られをり 岡田 貞峰
沈丁の冬たへて来し色ならむ 森永 奈美
沈丁の咲く日を待てる色なりし 磯江千津
沈黙の色あざやかに冬紅葉 安井常人
沖なます上総をんなの色ざんげ 稲垣きくの 牡 丹
沖に濃き暖流の色夏薊 川村紫陽
沙羅一花落ちてこの世の色となる 吉田島江
没日さす校舎びは色春休暇 細見綾子
没日の後雪原海の色をなす 有働亨 汐路
沢桔梗沼もその色欲しさうに 高澤良一 鳩信
沢蟹の背の八色の一つが毒 宇多喜代子
河とおなじ暮色まとへる汝を愛す 林田紀音夫
河につけし指桜色行々子 阿部みどり女
河童忌の山川己が色を濃く 山本洋子
河童忌や暮色の田端三丁目 石原素子
河馬がゐて地球河馬色秋時雨 岩淵喜代子 硝子の仲間
沼は青き色のみを吸ひ紅葉中 加藤瑠璃子
沼楓色さす水の古りにけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
沼海老の水の色なる震災忌 雨宮きぬよ
泉殿映せる水の古色なる 石川星水女
法善寺色足袋の紅かなしけれ 大石悦子 群萌
法然院一期の色の冬紅葉 青木重行
泡盛は鏡色なり夜の秋 沢木欣一 沖縄吟遊集
波の来て色かはる藻や磯遊 福本鯨洋
波の色変りてなびく海雲かな 山科晨雨
波昏れて畦焼く火色九十九里 町田しげき
波音の暮色まとへり袋掛 西村博子
泥鰌掘りの暮色の顔に見送らる 大野林火
泪しぐるゝや色にいでにけり我戀は 時雨 正岡子規
泰山木の葉裏金色冬暖し 中戸川朝人 残心
洗ひたる障子ばかりの暮色かな 五所平之助
洗車雨の短冊の色滲みけり 村地八千穂
洛北の暮色をたたへ苔の花 長谷川双魚
洛陽の春色動く埃かな 春 正岡子規
津軽より色のあがりし羽の青田 三浦文朗
洪水のあとに色なき茄子かな 夏目漱石(1867-1916)
洲の色に舟紛れ夜は雪ならむ 大熊輝一 土の香
活けてより咲く燕子花色淡し 朝倉和江
活けてより咲く色あはし桔梗は 朝倉和江
流されし畑や色なき風の中 本間静江
流し雛何の色とも溶け合はず 光宗静男
流れくるわくら葉の色みなちがふ 加倉井秋を 午後の窓
流れつつ色を変へけり石鹸玉 松本たかし
流氷にアクアマリンの色を置く 稲畑汀子 汀子第二句集
流氷の千島につづく色なき天 古館曹人
流洟や山茶花色にかぎらるる 斎藤玄 狩眼
流行の色あり蝌蚪に脚が出て 加藤晃
浄白は黄泉の色かも月見草 小松崎爽青
浅春の旅装はなべて色淡し 冬木瑞江
浅草のカツ丼色の神輿かな 高澤良一 燕音
浅草の色にほほづき鳴らしけり 竹山美江子
浅蜊の黙岩色砂色もたらせしに 香西照雄 対話
浚渫船ゆうぐれ色の錆となる 桜井邦彦
浜に火を焚けば濃き色初桜 茨木和生
浜木綿や潮に夜明けの色走り 木内彰志
浜松に東風立ちそめし浪の色 青峰集 島田青峰
浜防風摘めばひすゐの色零す 生野晶子
浜風に色の黒さよたん生仏 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
浦島草霧をそだてて海の色 河野南畦 『広場』
浪音の冬に入りたる色ヶ浜 森田公司
浮世絵の色に仕上がり寒茜 斎田鳳子
浮寝鳥十羽十色に夢を見て 小松和子
浮鮎をつかみ分けばや水の色 才麿「後しゐの葉」
浴泉のエメラルド色花曇 桂信子 樹影
海すでに夜明けの色や草ひばり 加藤岳雄
海に出て鶺鴒の色たしかなり 多武保和子
海に色なくて卯の花腐しかな 大内迪子
海の日や風にも海の色ありぬ 小松初枝(春嶺)
海の色かすれかすれて枯芭蕉 かわにし雄策
海の色なほひきよせて髪洗ふ 坂巻純子
海の色に*いかなごの干し上りたる 宮城きよなみ
海の色に朝顔咲かせ路地ぐらし 菖蒲あや
海の色はたと濃き日よ小鳥来る 山田弘子 懐
海の色ぽんと弾けて花桔梗 内山靖子
海の色まだ定まらぬ立夏かな 中村苑子
海の色一日同じ牡蛎筏 坂本登美子
海の色今日より変る磯開き 佐藤信子
海の色変りて鯨回遊す 加地芳女
海の色変る鯛網しぼるとき 塩川雄三
海の色失はれ行く日短 稲畑汀子
海の色寒むざむ塗つてしまつた絵を抱へる 人間を彫る 大橋裸木
海の色捨て切つて紅ずわい蟹 森川敬三
海の色眼に溜めてをり氷庫守り 中村石秋
海の色秘めたる潤目鰯焼く 副島いみ子
海の色透かし透かしてさより来ぬ 太田貞雄
海は日々色を変へつつ今日朧 山田弘子 こぶし坂
海もまた青葉若葉の色に似て 成瀬正とし 星月夜
海よりの藍の色来て朝顔咲く 寺岡捷子
海よりも野菊さみしき色見せて 樋笠文
海中になかりし色を桜貝 片山由美子 風待月
海光にまさる水着の色はなし 宇咲冬男
海原の紺の椿の色消すまで 杉本寛
海原や思ひきつたる月の色 月 正岡子規
海士の戸に色を盡すや葉鶏頭 江戸庵句集 籾山庭後
海峡に色をこぼして揚花火 岩崎慶子(狩)
海底に藻の色顕ちて初日の出 桂信子
海暮れて色失ひぬ青簾 鈴木真砂女 夕螢
海月朱し曲馬の天幕のどこかの色 加倉井秋を 午後の窓
海棠の日ましに色を好みけり 平井照敏 天上大風
海棠や漢皇重色不思傾国 尾崎紅葉
海水浴*ろうかん色の深きとこ 井出寒子
海老を煮る火色映れり新暦 脇本星浪
海色の皮少し付け氷頭膾 蒲生光義
海霧深きゆゑ日の色の金鳳華 水見壽男
海鬼灯浪ふく色ぞ見えにける 丸石 選集「板東太郎」
海鼠売己れも暗き色着たる 中村やす子
海鼠腸や月まだ色を得ずにあり 日原 傅
涅槃像歎きの色を帯びにけり 牧野春駒
涅槃図に翡翠の色さがしをり 大島清子
消え消えの色に咲き出ぬ処女袴 石塚友二
消ゆるときむらさき色の走馬燈 山口波津女 良人
涸滝を色めきとびし鶲かな 五十嵐播水 播水句集
涼しさは錫の色なり水茶碗 信徳
涼しさや夕わだつみの色かはる 五十嵐播水 播水句集
涼しさや風の色さす梅もみぢ 野坡
涼しさを火の色に見し鮎の宿 鈴木鷹夫 大津絵
涼やかに湖の色ともガレの皿 白澤よし子
淀みゐる水の色して山椒魚 鈴木みよ
淋しきがゆゑにまた色草といふ 富安風生
淋しきときは淋しき色に蕎麦の花 加藤瑠璃子
淡き色には心濃し夏衣 稲畑汀子
淡き色ばかり七夕飾りけり 東藤涼子
深みどり汲めば色なし冬の朝 朝木奏鳳
深大寺暮色俄かや齋のあと 下村ひろし 西陲集
深海の如く色持つ山毛欅新樹 牧野鈴鹿
深窗に孔雀色なる金魚玉 飯田蛇笏
清けさや色さま~に露の玉 寺田寅彦
渇水季卵色なる電気點く 石塚友二
渋柿のつれなき色にみのりけり 高橋淡路女 梶の葉
渋柿の色艶栄えてあはれなり 日野草城
渋色に沁みし染桶枯れ重ね 影島智子
渡り鳥空の色めきまだ覚めず 中村汀女
渦潮にもまれし色の桜鯛 浅野白山
温室の花色失ひて来る痛み 朝倉和江
温泉の色硝子ごし雪の山 京極杞陽 くくたち下巻
湖の色かはり~て時雨雲 高濱年尾 年尾句集
湖の色すでに寂びたり曼珠沙華 水原秋櫻子
湖瑠璃色揚羽は己が影脱けず 河野南畦 湖の森
湯けむりをあけぼの色に楓の芽 青柳志解樹
湯葉ひさぐ雪解の店の黄な灯色 長谷川かな女 花寂び
湯豆腐に深谷の葱の色加ふ 宇都木水晶花
湿原に暮色を誘ひ吾亦紅 小池龍渓子
満月といふ臘梅の昼の色 後藤比奈夫 めんない千鳥
源流に色なき風の生れけり 笹本カホル
溜江やむらさき色の水の苔 巴流 俳諧撰集「藤の実」
滅びたる狼の色山眠る 矢島渚男
滝茶屋のはやき昃りの火色見ゆ 木村蕪城 寒泉
滴りて木賊嫩芽の色甘き 颯(しづの女小句) 竹下しづの女
滴りの水を抜けゆく巌の色 正木ゆう子 悠
漆色に似せてぬるでの紅葉哉 大村由己
漣の化石色なき風が撫づ 下村ひろし 西陲集
漣の夕べの色に花菖蒲 山田弘子 初期作品
漬け茄子のまぶしき色や妻の恩 大矢章朔
漬茄子の色あざやかに嫁かずあり 菖蒲あや
漬茄子の色にかかはり詩に遠き 岩城のり子
潟の柳旱り気味なる葉色なれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
潟色のむつ群れ潟のけだるさよ 下村ひろし 西陲集
潦みな色違ふ避暑地かな 森田峠 避暑散歩
潮の色はたと変りし野水仙 山田弘子 こぶし坂
潮の色又変り来し石花菜採る 山下豊水
潮を聴く耳春色の疾風なか 原裕 葦牙
潮色も秋ぞ祭の島へ漕ぐ 金尾梅の門 古志の歌
潮退いて石蓴の岩の色ちがふ 井戸雅子
潮騒や戦火の色の花デイゴ 十時千恵子(青嶺)
澁色の袈裟きた僧の十夜哉 十夜 正岡子規
澄む天の白鷺こつと火の色に 大嶋隆之郎
濃き色は似合はぬ歳よセーター著る 黒田充女
濃き色は明日へと預け寒牡丹 能村登四郎 幻山水
濃き色を愛して梅雨に抗すなり 林翔 和紙
濃く薄く奥ある色や谷若葉 太祇「太祇句選」
濛雨晴れて色膿き富士へ道者かな 前田普羅
濠の水松をうつして春の色 青峰集 島田青峰
濡れ色の月が匂へり椎の花 小松崎爽青
濡れ色の紅唇ちらと寒念仏 田中みどり
濡れ色の走り乾くや冷西瓜 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
瀬の色に粉れ紛れず柳鮠 大橋敦子 匂 玉
瀬を早み色鳥の声はるかにす 臼田亜浪 旅人
瀬戸内の夕日の色の枇杷届く 成井 侃
灌仏や洗ひあげたる箔の色 仏生会 正岡子規
灘の色明るき雨に枇杷熟るゝ 秋元草日居
火の山を火の色で描き青嵐 渡辺立男
火の色となりて吉書の揚りけり 柿村新樹
火の色に今昔はなし炉をひらく 神尾季羊
火の色に恥甦る霧の中 中嶋秀子
火の色に酔ひて修二会の闇にあり 田中靖子
火の色のひとすじ青きどんどかな 林 宏
火の色のほのと透きてや蒸鰈 岡田飛鳥子
火の色の夕間暮来る囲炉裏かな 小杉余子
火の色の夜の街来てネブタ行く 竹内てる子
火の色の岩菲一輪をんな関 加藤知世子
火の色の房をかけたる花団扇 藤田あけ烏 赤松
火の色の水着を見せる約束も 櫂未知子 貴族
火の色の百合に触れつつ逝きにけり 石寒太 炎環
火の色の石あれば来て男坐す 中村苑子
火の色の端にあふるる落し文 菅原多つを
火の色の見えて蘆火を継ぐらしき 大石悦子 群萌
火の色の透いてかき餅匂ひ初む 桜井嘯風
火の色の透りそめたる鰯かな 日野草城
火の色の風がうがうと木の芽だつ 加藤楸邨
火の色も露けくなりぬ秋燕忌 いさ桜子
火の色やけふにはじまる十二月 日野草城
火の色をとどめ崩れし寒牡丹 柴田奈美
火の色を見せずに走る野火のあり 加藤三七子
火の色を重ねてをりし牡丹焚 塩川雄三
火の見番見惚るよ朝日の火色には 香西照雄 素心
火を焚きて火の色見えず半夏生 佐々木 咲
火口湖の色吹き替はる秋の風 高澤良一 随笑
火夫春愁火色に染みし胸ボタン 吉田未灰
火宅にも色なき風の立ち初めし 和田祥子
火山道熔岩炎え色に鳥も居ず 河野南畦 湖の森
火色の紐売って 無口なインディアン 伊丹公子 アーギライト
灯あかりを恃む枯色はげしきに 柴田白葉女 花寂び 以後
灯ともすをためらふかなかな暮色かな 小田まさる
灯に淋し都忘れの色失せて 稲畑汀子
灯のうつる牡丹色薄く見えにけり 牡丹 正岡子規
灯の下に色の浅しや多摩よもぎ 林原耒井 蜩
灯の窓のひと色ならず春の雪 片山由美子 天弓
灯の色にさらす素顔の夜長かな ふけとしこ 鎌の刃
灯の色の楓を前や初風炉 小川正策
灯の色の赤き一戸や笛の秋 加藤三七子
灯の色の赤さがゆゑに十夜かな 小杉余子 余子句選
灯の色も人恋ふ色や地蔵盆 藤原文子
灯の色や指遊ばせて卓のばら 阿部みどり女 笹鳴
灯まみれにごきぶりの子のピーナツ色 高澤良一 ももすずめ
灯りて獅子舞の色はじきあふ 朝倉和江
灯を染めぬ障子の色や秋の暮 小杉余子 余子句選
灯を消せば炉に火色あり後の月 小杉余子
灯点さぬ部屋に暮色の白障子 澤井洋子
灰染めて色に出けり櫻炭 石塚友二
灼けつくす沙漠の月は色なさず 石原舟月
災もなき火の色と冬鶫 友岡子郷 翌
炉の火色見てもふるさとなつかしや 重田暮笛
炊き上がる色も香りも今年米 高橋悦男
炎天の色は冷めたし凌霄花 瀧 春一
炎天の色やあく迄深緑 炎天 正岡子規
炎天へ蜥蜴みづから色失ふ 藤田湘子 途上
炎天も色を失へり 相生垣瓜人 明治草抄
炎天を蠍色にて立ちにけり 平井照敏 天上大風
炎日に色うしなへり師の訃報 能村登四郎 天上華
炭住になめくじ色の雨が滲む 穴井太 穴井太集
炭俵一つ暮色の中に立つ 鈴木鷹夫 春の門
炭盗むたんぽぽ色の冷害野 古館曹人
炭色の夜空の下の雪の山 高木晴子
炮烙を透かす火色や年惜しむ 永井龍男
烈風や茹でて色よき鴬菜 藤原たかを
烏孵りて禁色の深空あり 長谷川双魚 風形
烏瓜失せたる色を思ひつゝ 高澤良一 鳩信
烏瓜空気減り来し色となる 滝川ふみ子
烏羽玉の闇の色なるあら鵜哉 鵜 正岡子規
烏賊の甲や我が色こぼす雪の鷺 井原西鶴
烏賊干して色なき風の鯵ヶ沢 大網信行
烏賊干すやすみれ色なる伊豆の海 佐野鬼人「脇役」
焔の色の鬼の衣や里神楽 山本勇武
無垢といふ色にかがやき水芭蕉 白旗喜知子
無患子の早や隠れなき色に熟れ 橋本一水
無花果の少し色ある二つ哉 星野麦人
無電とぶ都会むらさき色の餡をねる 赤尾兜子
無頼なる色に牡丹咲きにけり 加藤三七子
無駄花の色美しき南瓜かな 小田嶋野笛「華甲」
焦点を持たぬ花野の色であり 山下美典
焼けてふくれて世離れ色の餅の白 柳田湘江
焼藷の焦げ色粗辞で包む厚意 香西照雄 素心
照鷽や杉の暮色のとどこほり 鈴木太郎
煮え立ちてはるけき色の薺粥 廣瀬直人
煮凝や色あらはなる芹一片 碧雲居句集 大谷碧雲居
熊笹に一雨ありし山の色 高澤良一 素抱
熔岩にまだ火の色残る花菫 松崎鉄之介
熔岩の色すみわたりたる左右句碑 穴井太 原郷樹林
熔岩色を重ねて古りて冬ざれて 高濱年尾 年尾句集
熔鉱炉火の色動く秋の風 深見けん二
熟れし色同じ枳殻の実と棘と 大畑峰子
熟れ柿に色休まする深曇 林 翔
熱帯魚ゆずらぬ色を帯びにけり 宇咲冬男
熱帯魚未来へ好きな色まとひ 玉城一香
熱帯魚色をとばして闘へり 細見しゆこう
熱風や黒をアラブの色として 日美清史
燈の障子月見草色妻和むか 香西照雄 素心
燈明に草木の色や涅槃像 碧雲居句集 大谷碧雲居
燈火の色変りけり霰打つ 百間
燈臺の下のあぢさゐ色を増し 高澤良一 随笑
燕もかはく色なし五月雨 榎本其角
燕去る水を泪の色と見て 東 都
燕子花雨をはじきて禁色に 鈴木恭子(沖)
爐を開く空も障子も優色に 及川貞 夕焼
爪紅の濡色動く清水かな 長サキ-卯七 六 月 月別句集「韻塞」
父か世にかはらぬ色や枯尾花 維駒 (父か病中の吟を見て往事を思ふ)
父の死のたちまち草色雪の中 寺田京子 日の鷹
父へ買ふ色やはらかき花燈籠 矢口由起枝
父を思ふ日暮の色のところてん 櫂未知子 蒙古斑以後
父呼びて鎌色の冷え廂空 友岡子郷 遠方
父恋ひの色の噴き出すかきつばた 鍵和田釉子
爽涼の大樹夕暮時の色 高木晴子 花 季
爽涼の鉄色や立つ夜明富士 森澄雄
片兀(はげ)に日の色淡し春の山 太祇
片男波色とりどりの浜日傘 木下恵三
片肺が春まつ鍋色の鳥がとび 寺田京子 日の鷹
片蔭に毬ころがり来色沈み 上野章子「六女」
牛の尾も残らぬ色や春の草 松岡青蘿
牡丹にもこの色なくて冬の空 松瀬青々
牡丹に色を失ふ疾さあり 正木ゆう子 悠
牡丹の奥に鎖国の珊瑚色 岩淵喜代子 硝子の仲間
牡丹の百の色見て疲れけり 武政照子
牡丹の色を交へて活けられし 高浜年尾
牡丹の色違へども蘂の金 川崎慶子
牡丹焚火父の火の色見えて来ぬ 森川光郎
牡丹緋の色のらんらんと燃えし燃え盡きたり 荻原井泉水
牡丹色の消化栓ありきれいな町 阿部完市 春日朝歌
物も色も唯白雪の白さかな 東洋城千句
犬ふぐり海辺で見れば海の色 細見綾子 黄 瀬
犬ふぐり色なき畦とおもひしに 及川貞 夕焼
犬ふぐり色似しと目を空へやる 高濱年尾 年尾句集
犬蓼の秀は色に出て水に垂る 雪弥
狂ひ花狂ひし色と思はれず 森礼意三
狂者らが囃して茱萸の色づきぬ 中川宋淵 遍界録 古雲抄
狐狸の色被たる野犬も寒明けし 百合山羽公 寒雁
独楽強しまた新しき色を生み 橋本榮治 逆旅
独楽競ふ子に境内の暮色かな 坂口麻呂
独活の色万葉女人の恋のごと 田中冬二 冬霞
狼の色の秩父となりにけり 松尾隆信
猟銃音渓をさまよふ暮色かな 石田阿畏子
猟鳥の死に切りし眼の葡萄色 右城暮石 上下
猪鍋や薄墨色に外暮れて 遠藤正年
猫の目の秋風色とおもひけり 夏井いつき
猫の眼に海の色ある小春かな 久保より江
猫の眼のあぢさゐ色に蝗嗜く 宮武寒々 朱卓
猫柳お洒落な色のバスが来る 大島登美子
猫柳遠州瓦色寂びつ 八木林之介 青霞集
獅子舞に山の手暮色雪ふり出す 風生
玄として色ををさめし初鴉 菊地一雄
玉の汗鋼の色をしてゐたり 小栗しづゑ
玉堂の画室色なき風とほる 清水衣子
玉虫の瑠璃色きよき寒さかな 細見綾子 天然の風
玉虫の色の如くに過ぎたる世 後藤夜半 底紅
玉虫の色変へぬまま身じろがず 酒井筍生
玉階の夜色さみしき芭蕉かな 村上鬼城
玻璃みがく色無き風の見ゆるまで 村山志げ子
珊瑚の海の青磁色より生るる秋 細見綾子 黄 瀬
珠洲焼きのまこと砂色新茶汲む 細見綾子 天然の風
瑠璃てふは眼を洗ふ色犬ふぐり 村上杏史
瑠璃沼の色より生まる糸蜻蛉 草野悦
瑠璃色にして冴返る御所の空 阿波野青畝
瑠璃色のニイスも何の破芭蕉 小池文子 巴里蕭条
瑠璃色の朝顏さくや松の枝 朝顔 正岡子規
瑠璃色の朝顏咲きぬ下厠 朝顔 正岡子規
瑠璃色の水を零せり柿若葉 真鍋つとむ
瑠璃色の海を秋待つ心とし 細見綾子
瑠璃色の空どこまでも冴返る 山田閏子
瑠璃色の空を控へて岡の梅 夏目漱石 明治三十二年
瑠璃色の虫の交めり梅雨晴間 ふけとしこ 鎌の刃
瑠璃鳥の色のこしとぶ水の上 長谷川かな女 雨 月
瑠璃鳥の色残し飛ぶ水の上 龍胆 長谷川かな女
瓢の実のかろ~と枯色をなし 高木晴子
瓦色黄昏岩蓮華所々 芥川龍之介 我鬼窟句抄
甕のぞきてふ涼しき色に染まりけり 原田愛子
甕棺の火の色地虫穴を出づ 中田禎子
甘柿の方へ暮色の濃き葬り 神尾久美子 桐の木
甘藷を掘ることを暮色の中に止む 山口誓子
甘酒の釜の火色の嵯峨しぐれ 鈴木鷹夫 渚通り
生きものの皆色淡き涅槃絵図 福嶋延子
生まれたる蟷螂の眼や色の湧く 岩田由美 夏安
生まれ出てゆふぐれ色の雪に逢ふ 関口比良男
田に生れて二十日の金魚色もなし 澤田 緑生
田の色となりて田に入る寒雀 鈴木白雲
田の色に溶けてしまひぬ落雲雀 密田真理子
田の色の揺れうごきをる日暮かな 今井杏太郎
田植鯖海の色奪るはやて雲 角川源義「秋燕」
田鶴舞へば暮色にはかに八代村 高橋重子
由良の門に水銀(みづがね)色の四葩かな 小林 貴子
甲斐ヶ嶺の庭はこぞりて花の色母が花桃遅れて咲く 今野寿美
甲斐路ふかく夕蝶は灯の色にとぶ(甲斐路) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
男にはうすずみ色を恵方道 齋藤玄 『雁道』
男木と女木色をたがへて良夜かな 山本砂風楼
男物裁つ寒色の過去ひろがり 寺田京子 日の鷹
男郎花色のきれいな蝶が来し 上野章子
町はづれ秋遠山の色なつかし 山田みづえ
画布に置く色定まれり鳥兜 後藤軒太郎
畑打つて土ひと色となりにけり 閑野芙慈子
畑打やや僅に乾く土の色 法師句集 佐久間法師
畑色の寒雀もう日暮るるぞ 藤原たかを
畦を焼き深き曇りに火色見す 田川飛旅子
畦塗られ水田は色を深くせり 相馬遷子 山河
畦焼の火色天女の裳に残る 細見綾子 黄 炎
畳の色まで搬んだか渚辺の馬 安井浩司 青年経
疾き月の銅色に吹雪かな 西山泊雲 泊雲句集
病にも色あらば黄や春の風邪 高濱虚子
病むことも伴侶か野山色づきて 赤尾兜子
病む窓の落葉色して石鼎忌 石田波郷
病む色ぞ霧が看とりの濃りんどう 秋元不死男
病室へ来し紫陽花の色変はる 朝倉和江
病床と同じ色した雪が降る 櫂未知子 貴族
病葉の火の色をして石の上 石嶌岳
病葉の降りその色に河流る 瀧春一「常念」
登り来て色なき風や鞍馬寺 石山民谷
登山者のタテヤマリンドウ色の帽 高澤良一 寒暑
白あぢさゐいちばん重き色のまま 渡辺恭子
白といふしづかな色の紙を漉く 大崎ナツミ
白といふはじめの色や酔芙蓉 鷹羽狩行
白といふ激しき色に瀧躍る 森本之子
白といふ色あをみけり冬牡丹 橋本白木
白といふ色とも違ふ春障子 本庄登志彦
白といふ色に疲れて棉を摘む 宮木砂丘
白といふ色の段階葛さらす 西村旅翠
白といふ色をたためる扇かな 深川正一郎
白と云ふ艶なる色や寒椿 浩山人
白は強すぎる色 体操服の少女 伊丹公子 陶器の天使
白もまた一と色をなすチューリップ 塗師康廣
白もまた仕上りし色式部の実 中野孤城
白もまた欠かせぬ色や雛あられ 小林草吾
白地図に色塗る今日を渡り鳥 耕二
白息の働く色となりにけり 冨田正吉
白服に腕輪の色を利かせをり 佐藤うた子
白梅のはじめは草の色なりし 小島健
白梅の仄か色めく夕日ざし 林 翔
白梅の名残りの色の昼の月 浅井浚一
白梅の暮色になじむ経机 山本かずえ
白梅の薄紅梅の暮色かな 片山由美子
白樺の生(き)の色しかと雪中に 高澤良一 随笑
白牡丹辺りの色をへだてけり 釘宮のぶ
白玉に小豆の色のにじみたる 井上茂子
白百合や色を極めて夜の底 東洋城
白磁皿みかんに色をもらひけり 渡部 勝雄
白箸に色かぐはしき薺かな 秋皎
白菊といへど暮色をまとひたる 新井ひろし
白菊のあしたゆふべに古色あり 飯田蛇笏 春蘭
白菊のほとりの暮色かりもがり 豊長みのる
白薔薇のいよゝ色増す日暮かな 飯塚博子
白露や研ぎすましたる鎌の色 夏目漱石 明治三十二年
白魚の上品の色恭な 藤田湘子 てんてん
白魚の水に戻せば水の色 久木原みよこ
白魚の水に放てば色も無し 吉田静子
白魚の水の色して汲まれけり 伊藤通明
白魚の水の色より生まれくる 久野康子
白魚や小判の色のあさましき 白魚 正岡子規
白魚や小判の色のむねわるさ 白魚 正岡子規
白魚を汲む瓏銀の潮の色 茨木和生 往馬
白鳥に到る暮色を見とどけし 細見綾子 黄 瀬
白鳥やシベリア色の羽休め 山村竹の子
白鳥や空が映せる湖の色 石川桂郎 高蘆
百千鳥月まだ色をうしなはず 川崎展宏
百日紅壁に色浮く雷あがり 林原耒井 蜩
百日紅色なき風となりゆくや 林原耒井 蜩
百日紅遠目の色となりにけり 綾部仁喜 樸簡
百日草あらひざらしの色となり 本井英
百本の色を違へて照紅葉 榎本栄子
百歳の真ン中色のシクラメン 田中千恵子
百菊の同じ色にぞ枯れにける 枯菊 正岡子規
皆尻を曲げて色づけ唐辛子 楠目橙黄子 橙圃
皆濡色冬草尽きても散松葉 香西照雄 素心
皿の藍に夜色沈める海雲かな 長谷川春草
盆果ての色に名残の辻地蔵 佐藤奉子
盆花に色淡き花なかりけり 北澤瑞史
盆花の色よき花の取り合はせ 高澤良一 寒暑
目つむりて何の色なる烏骨鶏 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
目で叱る父あり松は色変へず 林昌華
目で語る日々金柑に色満ち来 土田晶子
目に遠くおぼゆる藤の色香哉 蕪村遺稿 春
目の色も変ふべし梅雨の明けにけり 相生垣瓜人 明治草抄
目をくばる雪のあしたや海の色 雪 正岡子規
目借時雀に雀色の草 岩淵喜代子 硝子の仲間
目疲れのはこべらの色やわらかに 増田萌子
目覚めたるばかりの色に月見草 西村和子 かりそめならず
直土の色改り蟻の変 下村槐太 天涯
直系やはなびら色の硝子器生む 穴井太 土語
真夏日の茄子紺 亡母の好きな色 中田敏樹「デ・キリコの箱」
真夜に覚め夢に色ある鏡花の忌 長嶺千晶
真白とは激しき色か滝真白 山口超心鬼
真菰野の暮色が隔つ字二つ 山口草堂
真青な木賊の色や冴返る 漱石
眦につつじの色のかたまれる 泰
眼に溜めて風の色見ゆこぼれ萩 福永耕二
眼底は巌の色に年逝けり 飯島晴子
着やせする黒といふ色単物 山下寿美子
着水をして鴛鴦の色となる 日下松花
矢車草風出て潮色三変す 高澤良一 寒暑
知らぬ町過ぐ空腹の花菜色 鈴木鷹夫 渚通り
短夜のたましひ色の火星かな 足立祐子
短夜の色なき夢をみて覚めし 麦南
短夜や未だ濡色の洗ひ髪 嘯山
短夜や空とわかるる海の色 几董「井華集」
短日や土壁色に日本海 矢島渚男 延年
短日や岬のあざみ色うすく 鈴木真砂女 生簀籠
石もまた晩秋の色持ちゐたり 大畑淑子
石器の出る畑に苺の色づけり 瀧井孝作
石棺に色なき風の出入りかな 都筑智子
石棺の蓋濡れ色に冬浅し 河原芦月
石楠花は富士の夕の色に咲けり 阿部完市 無帽
石榴是煉獄の色逢引す 竹岡一郎
石炭色の浅蜊洗つても洗つても 瀧春一
石蕗の黄のほつと枯色起美女亡し 松村蒼石 雁
石蕗の黄は必死なる色東尋坊 松山足羽
石蕗咲くや疲れが爪の色に出て 中村秋晴
石鹸玉吹けば此の世の色尽す 三好潤子
石鹸玉色かたよりて割れにけり 柴田佐知子
砂丘にも末枯色といふがあり 谷口 君子
砂丘秋色あれは乳房ここは臍 鈴木鷹夫 春の門
砂日傘幸せさうな色ばかり 鈴木昌江
砂色が砂になるまでトカゲの死 田中久美子
砂色の戦死の墓に参りけり 成田千空
砂色の鳥啼く礁しぐれ来る 文挟夫佐恵 雨 月
砂防林二十重の松の色変へず 茂恵一郎
砥部の呉須ことに色さゆ石蕗の花 松崎道子
硝子吹く暮色の火玉蜜柑色 三谷昭 獣身
碧落へ色うしなへる返り花 太田鴻村 穂国
磐石の色に出にけり寒雀 齋藤玄 飛雪
磧灼けバッタは石の色に飛ぶ 草村素子
磨かれし廊の色なき風と猫 松本ああこ
磨崖仏色鳥の声経と聞く 内田美津代
社中とも見ゆ色町を流し三味 高濱年尾 年尾句集
神の旅寒流の魚色深む 小澤 實
神代より色替へぬかな松と浪 一茶
神楽殿のごとき餌台色鳥来 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
神灯の色に染りて鏡餅 浅野京子
祭屑色を集めて掃かれあり 上野泰 春潮
祭川篝の火色映りそむ 鈴鹿野風呂 浜木綿
祭幡産屋に結び色ヶ浜 石田野武男
祭提灯ばりばりひらく油色 百合山羽公 寒雁
禁色の月の出てゐるさくらかな 行方克巳
禅林のありやう色を松かへず(備前網干龍門寺) 上村占魚 『天上の宴』
禅門に色を加へし黄せきれい 丸山佳子
禅門に色を加へに黄せきれい 丸山佳子
秋あざみこの色に日の暮れなむと 石田郷子
秋つばめ餓鬼岳寂と色を変ふ 藤田湘子 てんてん
秋なれや木の間木の間の空の色 横井也有 蘿葉集
秋の夜の燐寸の火色さす畳 加藤楸邨
秋の川桑畑の色を遠ざくる 瀧春一 菜園
秋の日やくろがね色に椎の幹 大熊輝一 土の香
秋の水に色なく栖める小海老かな 尾崎迷堂 孤輪
秋の水母の眼色に似てふかし 細谷源二 砂金帯
秋の灯の*ろうかんは色深めたり 藤木倶子
秋の炉や芯までさくら色の榾 坂田静子
秋の色糠味噌壺も無かりけり 芭蕉 (庵に掛けむとて句空が書かせける兼好の絵に)
秋の薔薇茜色買ふさむき手に 小池文子 巴里蕭条
秋の蛾や襖にとまりふすま色 大橋櫻坡子 雨月
秋の蝶さみしき色に崖のぼる 柴田白葉女 花寂び 以後
秋は謐かに文色もわかずいきどほる 石原八束 空の渚
秋冴えたり我れ鯉切らん水の色 秋の水 正岡子規
秋冷や瑠璃色尽す山上湖 宮田俊子
秋口の薔薇の小さき火色かな 嶋田麻紀
秋天にクルスは白を色とせる 有働 亨
秋悲し白菊の色に染む事 高井几董
秋惜しむ葡萄の色の紐組みて 下田雪子
秋暑し血の色淡き爪を切る 杉本加津子
秋来ても色には出でず芋の蔓 西鶴
秋来ぬとサファイア色の小鰺買ふ 杉田久女
秋水に木の葉の色のさかなかな 境野大波
秋水に色散らし鯉遊びをり 高浜年尾
秋津洲は色にすけとか鉾の露 休甫
秋海棠西瓜の色に咲きにけり 芭蕉
秋深し墓石も街も同じ色 有馬朗人 知命
秋潮へ九頭竜にごり色重ね 舘野翔鶴
秋祭昔めく色並べ売る 山田弘子 螢川
秋立つや村正に照る水の色 幸田露伴 谷中集
秋耕のわれも一人の暮色負ふ 中村菊一郎
秋色か木の間にあるは夕影か 高木晴子 花 季
秋色のど真中なる石舞台 辰己セイ
秋色の南部片富士樹海より 西本一都
秋色の深浅は乳のにほひにも 飯田龍太
秋色や二つの眼鏡使ひわけ 堀井和子
秋色や母のみならず前を解く 三橋敏雄 眞神
秋茄子の暮色にまかす黒びかり 藤岡筑邨
秋茄子の漬け色不倫めけるかな 岸田稚魚 筍流し
秋茄子の色手のひらに染みにけり 滝井孝作 浮寝鳥
秋蝶の止れば色の消え易く 小林草吾
秋蝶やサフラン色の便り書く 仙田洋子 雲は王冠
秋行くや枯色の牛磨かれて 青柳志解樹
秋近う鬼灯の恋色に出づる 会津八一
秋近し木彫の鳥に色重ね 大曽根育代
秋雨や色づきたけて野路の草 西山泊雲 泊雲句集
秋雨や色のさめたる緋の袴 秋雨 正岡子規
秋霖の色に染まりてうなぎ掻き 文挟夫佐恵 遠い橋
秋霖の蘇州に朱き色はなし 天川悦子
秋風のほかに色なし勝常寺 小林喜久雄
秋風の色はなけれど赤字かな 荒井恒父
秋鯖の波引き抜きし背色かな 仙波桃二
科よくて暮色に吸はる風の盆 下山芳子
秘めてよき女の色の桜貝 後藤夜半 底紅
秘色とは秋蝶の黄と思ひけり 宗田安正
秘色見る外は畠の白椿 松瀬青々
秣切りの刃色匂ふや今朝の冬 久米正雉
種あつめゐて朝顔の色忘る 飴山實 辛酉小雪
稲の花海の色また変じつつ 上野可空
稲妻に色失へる灯かな 上野泰 佐介
稲掛けて隠れたりけり色ケ浜 森田峠 避暑散歩
稲架解きて太虚の色づく隠れ里 石寒太 あるき神
究極の色は平明柿若葉 倉橋羊村(波)
空つゆの木蔭色こし丹生の里 前田普羅 飛騨紬
空と海の色二本どり毛糸編む 山田みづえ 木語
空にまづ春の色来ぬ鰍獲り 矢島渚男 延年
空に出て色消ゆ焼跡のしやぼん玉 金子兜太
空に得し死色の中を夏の去る 松澤昭 神立
空に春立つ色見ゆる仰ぎけり 高木晴子 花 季
空に空の色よみがへり黄水仙 寺井治
空に色なくなつて来し夕端居 深見けん二
空の色うつして雪の青きこと 高木晴子
空の色うつりて霧の染まるかと 深見けん二
空の色おもくて雀隠れかな 如月真菜
空の色くわしく書いて初日記 野復美智子
空の色そのまま貰ひいぬふぐり 近藤美好
空の色やさしくなりぬ良寛忌 鈴木良戈
空の色大地にうつり冬館 園山香澄
空の色映し矢車草ひらく 小神野藤花
空の色映りて晴るゝ氷柱かな 深見けん二
空の色松虫草の花にあり 新村寒花
空の色濡るると仰ぎ木の芽吹く 吉年虹二
空の色迫りて*はたはた飛ぶ構へ 村越化石
空の色透かしレースの傘開く 大塚とめ子
空はまだをさなき色や土佐水木 椎名智恵子
空もまた婚姻色に暮れて夏 櫂未知子 蒙古斑以後
空もまた暮れつつリラの色となる 水原秋櫻子
空即色大きな椿さきにけり 中尾寿美子
空気まで色つきさうな緑の日 大谷 栄子
空海の夢に色ある冬至かな 橋石 和栲
空深む苔桃の実に色とめて 林 翔
空箱に色で分け置く薬の日 小森谷和子
空腹感戻らば奇蹟色鳥よ 相馬遷子 山河
空色は男の色よ新学期 田島秀子
空蝉のまだ濡れ色にありにけり 岩崎艸寿
空蝉の今抜けし色濡れてをり 臺 きくえ
空高く白梅の咲く風景色 飯田蛇笏 椿花集
窓際に海の色溶く水中花 石崎径子「耳順」
窯変は牡丹色なり夏に入る 水田晴子
窯太郎焔色うかがふ夜長かな 鈴木真砂女 夕螢
窯焚の火色みつめて去年今年 木暮陶句郎
立冬やさざなみたちて藪の色 岸田稚魚 筍流し
立春や明るき色の服を着て 小林紀代
竜の玉色を深めて能登金剛 柚口 満
竜胆の色ただならぬ地獄谷 鷹羽狩行
章魚沈むそのとき海の色をして 上村占魚「鮎」
童女素足砂色小波四段ほど 香西照雄 対話
競漕や母校の色の櫂の先 藤原駿二
竹の皮散るよと見れば雀色 清水基吉 寒蕭々
竹椽や青き色なる雨蛙 雨蛙 正岡子規
竹篭に竹の色ある小春かな 星 多希子
竹落葉民話のやうな色で降る 上石久美子
笋はすずめの色に生ひ立ちぬ 素丸「素丸発句集」
筆文字の艶に色増す花蘇芳 河野多希女
等距離に色鳥を置き君と僕 増田春恵
筍がいたづらに伸び色ケ浜 細見綾子 黄 瀬
筍はけだもの色の皮重ね 富田直治
筍はすゞめの色に生ひ立ちぬ 素丸
筑波を見む夢のつくばは餅草色 折笠美秋 君なら蝶に
筑波嶺の風に色づく柚子をもぐ 木村 さだ
箔のない釈迦に深しや秋の色 鬼貫 (元政旧庵)
箕に今日も干す色おなじ新小豆 新井盛治
箕はおなじ色して春のはじめかな 神尾久美子 桐の木
箸紙の名の墨色が濃かりけり 榎本冬一郎
箸置いて菜飯の色を賞でにけり 江国滋酔郎
箸置きは海の色かな伊豆五月 神谷登志
節分の元色町を通りけり 仁平 勝
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人
籠り居の色なき風になぐさまず 杉山岳陽
籾殻火千曲の暮色にはかなり 皆川白陀
籾漬けて夕映色の母屋の灯 大熊輝一 土の香
籾筵色に出そめし柚子のあり 鈴木花蓑
粽蒸す火色鮮し雷のあと 山岸治子
糸屑も華やぐ色の十二月 吉田みち子
糸山の色なき風のほそきこと 夏井いつき
糸巻きに母の色あり秋の雲 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
糸桜色をあつめて吹きしぼり 上林白草居
紀の国の雨に色冴え花蘇枋 木内徴子
紀の川の石の色とも冬雲雀 ふけとしこ 真鍮
紅梅に薄紅梅の色重ね 高浜虚子
紅梅の色のはじめを観音寺 下門信子
紅梅の色の変るを愛でにけり 上野泰
紅梅の花のかたまりづつの色 長谷川素逝 暦日
紅梅の蕾ばかりの色にあり 青葉三角草
紅梅を喪明けの色として見たり 鈴木真砂女 夕螢
紅紫蘇の色に漬かれる草石蚕かな 菅原師竹
紅芙蓉暮色裏山より落ち来 石原八束
紅芙蓉色淡く咲き濃ゆく散り 星野立子
紅菊の色なき露をこぼしけり 日野草城
紅葉の色きはまりて風を絶つ 宋淵
紅葉山いろんな色に落着かず 岸田稚魚 『紅葉山』
紅葉山抜け来し色に竜田川 菅原くに子
紅葉山秘中の色をまだ見せず 木内彰志
紅葉濃し燃ゆる悲しみ色と見て 稲畑汀子 汀子第二句集
紅葉鮒色とりどりに重の物 高浜虚子
紅葉黄葉油ッ紙のやうな色 京極杞陽 くくたち上巻
納戸色秋風母の羽織より 川崎展宏
純色の緑の山に虹かかる 相馬遷子 雪嶺
紙干すや白を拒絶の色として 文挟夫佐恵
紙漉女水の暮色をしたたらす ほんだゆき
紙風船けふは曇りてさむき色 高澤良一 素抱
素手素足ずいぶんすっきりした色に 高澤良一 鳩信
紫は古き世の色式部の実 山本鬼園
紫は山高き色龍胆摘む 竹下陶子
紫は師を偲ぶ色花菖蒲 福田富き代(春郊)
紫木蓮夕べの水の色吸へり 原田青児
紫禁城残暑は紅き色をもつ 磯 直道
紫苑より小さき紫苑色の女 長谷川かな女 花寂び
紫荊おのれを通す色見たり 高澤良一 燕音
紫陽花のさびしき色を繰りだしぬ 片山由美子 天弓
紫陽花のパリーに咲けば巴里の色 星野椿「星野椿句集」
紫陽花の人影といふ色加ふ 三井量光
紫陽花の何に変るぞ色の順 紫陽花 正岡子規
紫陽花の整はざるに色満ちぬ 林原耒井 蜩
紫陽花の最初の色の頃のこと 加倉井秋を 午後の窓
紫陽花の毬ほどに死の色を刷く 林田紀音夫
紫陽花の終の色こそ無慙なれ 相生垣瓜人 明治草抄
紫陽花の色かふるべき日取哉 紫陽花 正岡子規
紫陽花の色それぞれに路地住まひ 小林照男
紫陽花の色に咲きける花火かな 高橋淡路女 梶の葉
紫陽花の色に省略なかりけり 津村典見
紫陽花の過ぎし陽の色盗み咲く 金箱戈止夫
紫陽花はいま潮の色平家塚 茨木和生 倭
紫陽花やあしたは何の色を咲く 紫陽花 正岡子規
紫陽花やけふはをかしな色に咲く 紫陽花 正岡子規
紫陽花や色のあせたる雨男 仁平勝 花盗人
紫陽花や雨の重さの色を生む 谷口栄子
紫陽花忌色なき夢に目覚めけり 徳田千鶴子
紫雲英田に漲りをれる愉色かな 相生垣瓜人 明治草抄
紫雲英田の起されてゆく色変り 植地芳煌
紫雲英田を湖の色より低く見ぬ 米沢吾亦紅 童顔
紫雲英畑日々に隆まる揺色ぞ 香西照雄 対話
累々と色の重なる牡丹かな 野村喜舟
累卵に馬色のあとのみどりさす 中戸川朝人 星辰
紺と白わが好む色夏来たる 稲畑汀子
紺色を身の色として妻の秋 米沢吾亦紅 童顔
紺菊も色呼出す九日かな 桃隣
紺青の背色つらねし目刺かな 楠目橙黄子 橙圃
結実中カカオ色なるカカオの実 高澤良一 さざなみやつこ
絞り布も盛り寒卵二タ色に 香西照雄 対話
絵のある茶碗を子に買ふ春日も卵色 磯貝碧蹄館 握手
絵ガラスのひと色が好き赤とんぼ 北川みよ子
絵具皿に溶く色いくつ星祭 石田あき子 見舞籠
絵硝子の秘色をぬすむ揚羽蝶 朝倉和江
絶壁にまた色鳥がひるがへり 八木林之助
絹本の墨色浅し一蝶忌 黒田桜の園
継ぎ足して色にぎやかや鳴子綱 古市枯声
網の蜘蛛の暮色まかせのうしろすがた 池田澄子 たましいの話
網走の色うすくとも桜貝 川崎展宏
綿虫といへど堪へゐる暮色かな 小島千架子
綿虫の山深き色むらさきに 吉年虹二
綿虫や納戸色なる妹背山 矢部白茅
緋の色のセーターを着る夕まぐれ 米須盛祐
緋の色の他は薄れて涅槃絵図 田所節子
緋の色の尾びれをひろげ金魚草 岬雪夫(狩)
総身に夜の色保ちて恋の猫 野沢節子
緑てふ濡れ色にある枝蛙 河野雪嶺
編笠の緒の血の色に風の盆 星野紗一
練絹の色もうるむや月の蝕 ぶん村 閏 月 月別句集「韻塞」
縁の日に色なき風のわたるかな 上川井梨葉
縦糸の色のさざ波機始 中村房子
縫ひ上げて房にも色の菊枕 藤本 翠
縫ひ疲れ冬菜の色に慰む目 杉田久女
織初や明るき色を縦糸に 篠原としを
織部忌や鶏のひやくひろ白珠色 塚本邦雄 甘露
繕ひの色糸探す秋の夜 林 冷子
繭の中うすもゝ色の骨一つ 森 敏子
繭玉やめでたき色の餅の白 小杉余子 余子句選
繭玉や晴れまた曇るままの色 阿部みどり女
罌粟の色にうたれし四方のけしきかな 飯田蛇笏 山廬集
罌粟の蝶たちかはりても色貧し 篠田悌二郎 風雪前
置いて行く笹色笹音秋の中 林原耒井 蜩
置けばすぐ夜の色となる冬帽子 濱田のぶ子
羅の袖やダリヤの色透けて 竹冷句鈔 角田竹冷
羊刈る銅色の瞳の青年と 四ッ谷 龍
美しき火を古色とも釜始 上田五千石
美しき色に手のゆく更衣 巽 澄子
美男蔓いま青春といふ色に 山田弘子 懐
群れ鴨の沼の暮色を曳きて飛ぶ 阿川みゆき
群雀飛んで枯野の色を出ず 橋本榮治 越在
羽の色盗まれし鳥秋の雷 対馬康子 吾亦紅
羽子の白いまだ暮色にまぎれず突く 野澤節子
羽子板の判官静色もやう 松本たかし
羽色も鼠に染つかんこ鳥 蕪村遺稿 夏
翁草野の枯色はしりぞかず 橋本多佳子
翅ひらくたび凍蝶の色こぼす 井手千二
翔つものに色なき風の訣れかな 飯田綾子
翡翆の飛びたる色や水の上 高橋淡路女 梶の葉
翡翠が狙ふかはせみ色の渕 吉本 昴
翡翠の翡翠色なる不思議かな 増山山肌
翡翠の色あざやかに霧を出し 川端庸子
翡翠の色に流るる冬の川 工藤はるみ
翡翠の色打ちつけし枝濡るる 高尾方子
翡翠も翡翠色も水はじく 後藤比奈夫
老残やはがねの色に秋風立つ 小松崎爽青
老鴬やさみどり色の声を張り 太田辰子
老鴬や国防色と言ひし頃 岡田昌子
耳朶やわきダムの新樹ら青幾色 寺田京子 日の鷹
耳餅を透す火色や年歩む 永井龍男
聖像はマオリの色に夏の蝶 秋尾 敏
聖堂に色なき風とともに入る 澤田緑生
聖堂の秋陽に契り吾子繭色 平井さち子 完流
聖夜映え棚の洋酒の色さまざま 河野南畦 『空の貌』
聖夜来ぬ「聖ヴエロ二力」の目色にも 石原八束 秋風琴
聞く人の目の色狂ふ鶉かな 千代尼
聴診器色それぞれや小鳥来る 石渡穂子
職に慣る草色の露ややいびつ 香西照雄 対話
肉体の枯れ色のヤッケ吊るさるる 松田ひろむ
肩くだく花の嵐は血の色に 小松崎爽青
背に闇を面に火の色薪能 小野寺亨
胡麻屋 油屋 雪降る奥の橙色 伊丹公子 陶器の天使
胼薬うぐひす色をしてをりぬ 長棟光山子
脱ぎ捨てて春著の色を崩しけり 上野泰 佐介
脱獄監視の電球霧色天心澄む 香西照雄 素心
腹までも茄子の色して茄子の馬 今瀬剛一
膵病めば梔子色に春の月 土岐錬太郎
臍の緒の絆濡れ色風光る 林 節子
臘梅やいつか色ます昼の月 有馬朗人 天為
自ねんじよをすり枯れ色をおしひろぐ 細見綾子 存問
自分史即漁色史編めば桜満つ 星野石雀
自転車の神父色なき風に乗る 佐川光
舌のみは肉の色して雪女郎 松尾隆信
舟を待つ夕日の色に小判草 浜 福恵
航跡の錆色にして冬近し 佐藤美恵子
良寛の草書さながら色葉(いろは)散る 高澤良一 寒暑
色あいもわづかに春の夜明かな 園女 俳諧撰集玉藻集
色あせしロシヤ毛布の旅寝かな 三溝沙美
色あせし針山まつるねもごろに 清原枴童 枴童句集
色あひもわづかに春の夜明けかな 斯波園女
色あふれゐて金魚田の水暗し 橋本榮治 麦生
色あふれ成人の日の昇降機 斎藤道子
色あらばコスモスに吹く風は白 石川文子
色ありて三和土の鞠や秋のくれ 小澤實 砧
色うすきことがさだめや返り花 井桁蒼水
色うすき龍胆摘みてみれば濃し 川島彷徨子 榛の木
色おそき梅雨入の苺籠に足らず 及川貞 榧の實
色かへで空をさしけり松の針 嘯山
色かへぬ末をあはれむ枯葉哉 枯葉 正岡子規
色かへぬ松ごもりつゝ癩やしなふ 佐野まもる
色かへぬ松に里わの空の藍 松瀬青々
色かへぬ松のはれ着や蔦紅葉 高井几董
色かへぬ松の木立や金峰山 藤 里兆
色かへぬ松はめでたし竹ゆかし 色かえぬ松 正岡子規
色かへぬ松ひとむらとキヤデイーたてり 軽部烏帽子 [しどみ]の花
色かへぬ松や主は知らぬ人 色かえぬ松 正岡子規
色かへぬ松をあはれむ枯葉哉 正岡子規
色かへぬ松少年を置き去りに 原裕 『出雲』
色が浜月出て殖ゆる浮鴎 茂里正治
色さほど変へず白子の干上り 成川雅夫
色さめし古女房や帰り花 蝶夢
色さめし秋海棠や秋の雨 秋雨 正岡子規
色さめし造り花賣る小春かな 小春 正岡子規
色さめし針山竝ぶ供養かな 高濱虚子
色すでに草に紛れず実梅落つ 馬場移公子
色たがへては重なりし浮葉かな 小島健 木の実
色つきの夢の疲れや真白き蛾 有馬英子
色つぎや秋海棠の茎の節 阿波野青畝
色つけて花つけて草枯れてゆく 上野章子
色つやも花やうばひて朧月 立圃
色づいて水の明るき珊瑚草 的場松葉
色づきし柿や大人の手をのべて 百合山羽公 故園
色づきて柿現るゝ夕日かな 温亭句集 篠原温亭
色づきて豊年らしくなりて来し 友水 清
色づける枇杷も一休禅寺かな 福山良子
色といふものことごとく春隣 粟津松彩子
色といふ村あり秋の虹たてり 小西与志
色として白梅の白なかりけり 齋藤玄 『雁道』
色としもなかりけるかな青嵐 服部嵐雪
色となり声となる鳥秋うらら 村上喜代子
色とみに淡し九月の稽古花 白岩てい子
色と云ひ隣家の薔薇に遜色なし 高澤良一 随笑
色と香を惜しみつつ松納めけり 多門柳太
色ながら散る玄界に鳥群れて 秦夕美
色なきも砂糖湯一杯松過ぎぬ 中村草田男
色なき風に貧民の買ふ赤き花 長谷川かな女 雨 月
色なき風包ひとつづつカザフ族 岩淵喜代子 硝子の仲間
色なき風命名まへのみどりごに 辻美奈子
色なき風強歩の唾を酸くしたり 長谷川かな女 花寂び
色なき風恵林寺の廊わたるとき 高澤良一 寒暑
色なき風昼の月あぐ白魚塚 大橋敦子 勾 玉以後
色なき風箸に崩るる骨拾ふ 鈴木芳子
色なき風織りて色なき葛布かな 手塚美佐
色なき風背に釈尊の出山圖 高澤良一 ねずみのこまくら
色なき風飛ぶ鳥よりも高くゐて 平井さち子 紅き栞
色ならば次男は黄色星祭 黒沢孝子
色に出て竹も狂ふや蔦紅葉蔦 千代尼
色に出ぬ火を放ちけり枯葎 間石
色に出る前の唐辛子の気持 清水径子
色に散る納めまち針堂のもと 高濱年尾 年尾句集
色のある夢みつくして瓜の馬 鳥飼美穂
色のない絵の具で熊手塗りにけり 猪原丸申
色の山や哀と憂さを弥時雨(いやしぐれ) 翁言子 選集「板東太郎」
色の欲はつかに残り春の雲 森澄雄 所生
色の浜家々秋日わかち住む 高木晴子 花 季
色の濃き茎を選びて茄子の苗 田中こず恵
色はげし土人形の肌寒し 肌寒 正岡子規
色はべに露はかのこか芥子の花 立圃「空礫」
色は来世におくれさきだつわせのたんぽぽ 加藤郁乎
色ふかき菫氷雪の峯天に 有働亨 汐路
色ほどけゆくや一面チユーリツプ 稲畑汀子 春光
色まづしき百日草の賞与月 能村登四郎
色めでて草餅を買ふ雨水かな 藤岡筑邨
色もなく土用蓬の干されけり 八木林之介 青霞集
色ものの女冬帽集合す 高澤良一 燕音
色もまた育ち来しもの草の花 嶋田一歩
色も味も匂いも奈良の草の餅 上藤おさむ
色も香もなき糸瓜水もらひけり 久保田麻子
色も香もなき風に佇ち修行とす 佐野鬼人
色わけにしてあさがほの種つつむ 中野青芽
色わけは辨の内侍か衣配 井上井月
色わろき月がでて居り枯れ葎 永田耕一郎
色をうつしてこま~霜の落葉かな 西山泊雲 泊雲句集
色をふと消しゝは濁り鮒らしや 小路島橙生
色を切る終の一滴まで新茶 松木一恵(阿蘇)
色を言ひ菊の匂を言はざりし 後藤比奈夫 花びら柚子
色ガラス嵌めて飴湯を煮る屋台 菅裸馬
色ケ浜ゆふべの緑雨蛸壺に 沢木欣一 地聲
色ケ浜訪はむこころに翁の忌 大橋敦子 匂 玉
色ケ浜霰とぶ冬迫りけり 青畝
色入れて和紙の仕上がる雁のころ 両角玲子
色即やぎゃあていぎゃあてい青蛙 穴井太 原郷樹林
色変えぬ松や朝出て夜帰る 森田智子
色変えぬ松や高山旧役場 高澤良一 素抱
色変えぬ松をあふぎて尼の旅 高澤良一 鳩信
色変えぬ松を連ねて御用邸 高澤良一 素抱
色変へて二人の卓のソーダ水 堀之内和子
色変へて夕となりぬ冬の山 前田普羅 飛騨紬
色変へぬ安宅の松のたたずまひ 川崎展宏 冬
色変へぬ山廬の松の月日かな 福田甲子雄
色変へぬ松したがへて天守閣 鷹羽狩行
色変へぬ松と相識りともに老ゆ 富安風生
色変へぬ松なみ法隆寺へますぐ 上村占魚
色変へぬ松に囲まれ弁天沼 檜 紀代
色変へぬ松に高幡不動尊 川端豊子
色変へぬ松のみどりや夫婦鶴 小俣由とり
色変へぬ松の下にて待つてをり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
色変へぬ松の八十島日照雨過ぐ 田中あき穂
色変へぬ松の大瘤浮御堂 鈴木瑠花
色変へぬ松の影置く濠ゆたか 樋口 芳枝
色変へぬ松の鉾立つ椎葉村 葛西節子
色変へぬ松へ子方の帝かな 都筑智子
色変へぬ松や主は知らぬ人 正岡子規
色変へぬ松や出雲の空の丈 原裕 正午
色変へぬ松や刑場鈴ヶ森 島田高行
色変へぬ松や困民党の墓 古堀 豊
色変へぬ松や明治を生みし塾 谷口自然
色変へぬ松や昭和の傷深く 片山由美子 風待月
色変へぬ松や横山大観展 嶋田麻紀
色変へぬ松や海向く常夜灯 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
色変へぬ松や煉瓦の旧五高 池田悦子
色変へぬ松や神鶏放たれて 坂元幸子
色変へぬ松や赤穂の大手道 杉山倭文
色変へぬ松をかまへて御師の家 川崎展宏
色変へぬ松を寿ぐ加賀のくに 加藤耕子
色変へぬ松を松喰虫が変ふ 百合山羽公
色変へぬ松を窃かに侮れり 相生垣瓜人 明治草抄
色変へぬ松今より喜寿となる想ひ 長谷川かな女 花寂び
色変へぬ松樅檜四十雀 福永耕二
色変へぬ松残さるる駐車場 松沢満里子
色変へぬ松祖母谿を遮れる 水原秋櫻子
色変へぬ松美しき法降寺 美尾一江
色変へぬ蔦は寒かり時雨れては 林原耒井 蜩
色好みしてゐてついりめきしかな 清水基吉 寒蕭々
色好む上方人や萩に酒 大釜菰堂
色好む我も男よ秋の暮 松瀬青々
色好む鬼のあはれも里神楽 上田五千石 琥珀
色姿我身も風の桜かな 吉野太夫
色少し違ふ羽蟻の来る夜かな 岸本尚毅 舜
色差してまこと秋日の観世水 岡井省二
色強く石の下より石蕗の花 中村マツエ
色悪しき蝶の来し方行方かな 三橋敏雄 巡禮
色惜しみつつ夜明けつつ黒葡萄 廣瀬直人
色慾もいまは大切柚子の花 草間時彦
色抜けし茶屋ののれんや道をしヘ 波多野爽波 鋪道の花
色抜けていはほをつかむからすうり 沢木欣一 地聲
色持たぬ家糸図さみし彼岸花 対馬康子 愛国
色持たぬ陽炎ひとり燃えいそぐ 神山姫余
色日傘万葉園の杜歩く 塩川雄三
色替へぬ松に纜色の浜 松山足羽
色欲の僅かを恃む狸汁 鈴木鷹夫 風の祭
色欲もいまは大切柚子の花 草間時彦「夜咄」
色欲や鯉にうつすら寒さあり 鈴木鷹夫 春の門
色欲を猿飼ふごとく枯の中 矢島渚男 天衣
色水着干す女子寮の昼深し 清水基吉
色水着裏手に干して元教師 本間深代
色浅き土用芽風になぶらるる 品川てい
色淡き夏木描ける吾子いとし 中村汀女
色淡き椿ばかりのあさがすみ 水原秋櫻子
色淡し立待岬の冬の虹 森田志げを
色深きふるさと人の日傘かな 中村汀女「汀女句集」
色深し今年よりさく桃の花 松岡青蘿
色深し朽葉のもとの冬すみれ 遠藤 はつ
色町にかくれ住みつつ菖蒲葺く 松本たかし「石魂」
色町にしばらくやすむ神輿かな 小路智壽子
色町に住みて利ざとく西鶴忌 鈴木春泉
色町に隣る寺町鬼やらひ 松根久雄
色町のなくなりてけふ荷風の忌 森澄雄
色町のむかしを今にさくらかな 嶋田麻紀
色町の名残の小露地地蔵盆 毛塚静枝
色町の路地で習ひし阿波踊 京極高忠
色町や真昼しづかに猫の恋 永井荷風(1879-1959)
色町や真昼ひそかに猫の恋 荷風
色界に立てかけてあり雪箒 磯貝碧蹄館
色糸のひと日に減りぬ桑の花 神尾久美子 桐の木以後
色糸の赤増えてゐる冬籠 井上雪
色紙や色好みの家に筆はじめ 遊女-利生 俳諧撰集玉藻集
色罌粟の巧みに見ゆる莟かな 松岡青蘿
色羅紗の袖ふる山よ花の雨 曲言 選集「板東太郎」
色美しき母の埋火かき出だす 大串 章
色艶のうごいて熟れし石榴かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
色花はもう倦きにけり初時雨 照敏
色草に人の心の細やかに 村田明子
色草に夕日の荒ぶ信濃口 黛 執
色草に隠るるけものみちのあり 尾崎真理子
色草の中の色草吾亦紅 児玉輝代
色葉散る絵島生島物語り 谷中隆子
色蔦や陽は篁を荘厳す 北原白秋 竹林清興
色薄き初蝶とのみ思ひつゝ 高木晴子 晴居
色薄し夕山陰の花菫 菫 正岡子規
色街にいちにち遊ぶ夏燕 橋本榮治 越在
色街に住んで堅気や西鶴忌 安村章三
色街に天神在し厄詣 下村ひろし 西陲集
色街に老を忘れて白上布 伊豫田道子
色街のしきたりを守り春支度 大久保橙青
色街の灯り初めたるビヤホール 芝田教子
色街の端に寺あり針供養 三宅久美子
色街の裏が見え居り蓮根掘る 山下陽弘
色街の雨静かなる金魚玉 大橋越央子
色街めぐるその川底の黒葡萄 八木三日女 落葉期
色衿を重ねて外出いわし雲 影島智子
色見えてをり極月の風車 鳥居美智子
色見せてよりの存在烏瓜 稲畑汀子
色見せて見せて鴛鴦羽繕ひ 酒井土子
色見草より妻恋草の一日かな 林桂
色足袋で写経するなり老芸妓 品田弘子
色足袋で来て拝みけり竹生島 山本洋子
色足袋に替へて自分に戻りけり 江頭けい子
色足袋に迎へてくれし雪の宿 茂里正治
色足袋に馴れて女房らしくあり 上野泰 佐介
色足袋のまゝの遠出となりしかな 島崎きよみ
色足袋のまゝよ遠くへ行き居らじ 宮城きよなみ
色足袋のみつ子みなし子湯女づとめ 高野素十
色足袋や尼ともならず寺暮し 中山純子 沙羅
色足袋や律儀に老いて路地ぐらし 菖蒲あや
色足袋や湯女に老婆のかかりうど 西本一都
色足袋を叩いて竿の両端に 石川登志子
色足袋を買初めに町ぬかるみて 綾子
色酒の苦き覚えて年行きぬ 尾崎紅葉
色里に人行く上の春の月 岡本松浜 白菊
色里に神鎮まりし楠若葉 富安風生
色里の名残の小窓野分立つ 中村初枝
色里や十歩はなれて秋の風 秋風 正岡子規
色里や時雨きかぬも三年ごし 時雨 正岡子規
色里や朝寝の門の注連貰ひ 岡本松濱
色里や白頭の翁花を売る 花 正岡子規
色里を抜け磴登る遊行の忌 大塚禎子
色重くなりたる日ざし蛇苺 中岡昌太
色集め色を散らして毛糸編む 藤崎初枝
色餅にむかしなつかし御命講 小澤碧童 碧童句集
色鯉に濁れる水の久しかり 石川桂郎 高蘆
色鯉の一つが離れゆく寒さ 鈴木鷹夫 春の門
色鯉の寝しづもりたる年の市 吉田鴻司
色鯉の色の見えゐる十三夜 澄雄
色鯉も曝書もしづか午後一時 大峯あきら 宇宙塵
色鳥がそこに炒飯こきまぜよ 佐々木六戈 百韻反故 初學
色鳥がひとりぼつちの妻に来る 細川加賀
色鳥が一日あそぶ父の谷 原裕 青垣
色鳥が寄り古希々々と喜寿々々と 阿波野青畝
色鳥が小首に枝を見上げたる 中村草田男
色鳥が来てゐる大和言葉かな 細川加賀 『玉虫』
色鳥とよびて愛しむこころかな 富安風生
色鳥と呼びて愛(かな)しむ心かな 富安風生
色鳥に乾きてかろし松ふぐり 原石鼎
色鳥に女かなしびの眉を描く 三橋鷹女
色鳥に心遊べる主かな 高浜虚子
色鳥に杜の校舎の時の鐘 島村元句集
色鳥に狭庭の古色深まりし 井原潤子
色鳥に袖を引かれぬ翁道 櫛原希伊子
色鳥に鳥の道あり奥吉野 塩川雄三
色鳥のかくれて見えぬ廂かな 高浜虚子
色鳥のこゑの高まる留守居かな 井上雪
色鳥のこゑを引出す梅擬 高澤良一 宿好
色鳥のこゑ落すべし香時計 岸田稚魚 筍流し
色鳥のなりは何れもこがら哉 貞徳
色鳥のねし木なるべし夕月夜 玉川湃山
色鳥のまつ先に来し一丁目 名和せいじ
色鳥のみな枝に居る静けさよ 岩田由美 夏安
色鳥のやうな吾娘連れ山遊び 渡辺恭子
色鳥のよりどころとし一碑建つ 紀藤道女
色鳥のわたりあうたり旅やどり 園女
色鳥の一羽がこぼれ去来墓 大石悦子 群萌
色鳥の一羽につゞく七八羽 上野 小百合
色鳥の中のひとつをわが愛す 高橋睦郎 舊句帖
色鳥の五六七八まだまだ来 馬場龍吉
色鳥の入りこぼれつぐ一樹かな 朝妻力
色鳥の出入りゆかし御室御所 高澤良一 宿好
色鳥の去年と異なる何を見し 松田峯白
色鳥の又今日も来て又掃除 上野章子
色鳥の吹かれしやうにゐずなりぬ 杉浦典子
色鳥の啄みをるは隠れなき 水原秋櫻子
色鳥の声こぼれゐる筆供養 宮川杵名男
色鳥の声ひき合へる滝谷寺 大平栄子
色鳥の尾羽のきらめき来ぬ電話 恩田侑布子
色鳥の山荘人の稀に来る 高浜年尾
色鳥の庭に幸せ振りまいて 林克己
色鳥の影のはじける寺障子 伊藤伊那男
色鳥の抜羽ひろひぬ瑠璃濃ければ 稲垣きくの 牡 丹
色鳥の散りて磧の砂の月 内田百間
色鳥の映ることあり山葵沢 瀧澤伊代次
色鳥の暮れて川原の砂の月 内田百間
色鳥の曳き来し色を枝に置く 高石幸平
色鳥の来しよと主婦や襷がけ 星野立子
色鳥の来てかなしみの碑ぞ立てる 有働亨
色鳥の来てわが庭の雨にぬれ 山口青邨
色鳥の来てわが書屋のぞき去る 深川正一郎
色鳥の来てゐる絵島屋敷かな 伊藤伊那男
色鳥の来てをり晴のつづきをり 森澄雄
色鳥の来て佛敵の名の悲し 水原秋櫻子
色鳥の来て禅堂の黙ゆるむ つじ加代子
色鳥の来て遠き川遠き橋 岸田稚魚
色鳥の来る日の庭の風甘し 伊藤敬子
色鳥の来る日来ない日山日和 高峰悦子
色鳥の枝うつるいろこぼれけり 高橋潤
色鳥の枝うつるとき色こぼし 吉田圭井子
色鳥の枝から枝へ色うつし 白川あつ子
色鳥の枝移りては日を散らす 長沼紫紅
色鳥の棲みつく庭にある動き 中井句鳰
色鳥の残してゆきし羽根一つ 今井つる女
色鳥の目も覚めやらぬ御神域 高澤良一 素抱
色鳥の真顔横顔つくし去る 皆吉爽雨
色鳥の粲然として林を出つ 尾崎紅葉
色鳥の群れ散つてより風の谷 鷲谷七菜子 花寂び
色鳥の羽裏を見せて枝移る 竹股かず子
色鳥の羽音しぐれのいくうつり 高橋馬相 秋山越
色鳥の羽音のなかの父の墓 大木あまり 火球
色鳥の舌は真黒かも知れぬ 関口眞佐子
色鳥の色のよぎりし水の上 依田秋葭
色鳥の色を点ずる邑の口 上田日差子
色鳥の色借景へ紛れたる 山下美典
色鳥の視線の先へ先へ飛び 小林草吾
色鳥の諸音熱くす山の襞 原裕 青垣
色鳥の連呼遠のく大廂 高澤良一 素抱
色鳥はわが読む本にひるがへり 山口青邨
色鳥は仁和寺の稚児に来りけり 尾崎迷堂 孤輪
色鳥は山から来たり宗猷寺 高澤良一 素抱
色鳥も乳歯の二本のぞき来よ 鈴木節子
色鳥も来ぬ絶壁の山鴉 大島民郎
色鳥も来よ積み石の神婢墓 下村ひろし 西陲集
色鳥も讃仏の声加へたり 野村慧二
色鳥やLESSON7詩の章 辻田克巳
色鳥やきらきらと降る山の雨 草間時彦
色鳥やことことことと落し蓋 八染藍子
色鳥やことばの泡かも潮満ち来る 安井昌子
色鳥やだるき柱を授かりて 飯島晴子
色鳥やひとつ箪笥に妻のもの 石田勝彦
色鳥やみんなが選ぶAランチ 内田美紗 誕生日
色鳥やむかし*かがいの御幸原 沢木欣一
色鳥やむしろすがしき朝の飢 金子 潮
色鳥やわが靴のいつ磨かれし 福永耕二
色鳥やガス灯残る明石町 堀井より子
色鳥やケーキのやうなベビー靴 轡田進
色鳥やステンドグラスに露西亜文字 和気久良子
色鳥やナプキン尖る朝の卓 橋本榮治 麦生
色鳥やピアノ塾ある浜通り 千田一路
色鳥やベランダに置く子供椅子 鈴木貞雄
色鳥やラッパぴかぴか行進す 吉原文音
色鳥や一夜に晴れし神の山 深見けん二
色鳥や上げ汐に淀む橋の影 内田百間
色鳥や何れも暗き木の眉間 河原枇杷男 流灌頂
色鳥や八千穂の土牛美術館 安永圭子
色鳥や公園横の帽子店 福島壺春
色鳥や切手買ふにも選りごのみ 松倉ゆずる
色鳥や切株はもう年とらぬ 中村明子
色鳥や勝てないものにある齢 雨宮抱星
色鳥や古沼二つ睦み合ひ 手塚美佐 昔の香
色鳥や塩の店ある峠口 皆川盤水
色鳥や大工荷を解く手児奈堂 中橋文子
色鳥や女ばかりの露天風呂 小俣由とり
色鳥や女体へ続く*ぶな林 小川斉東語
色鳥や妻来るはずの曲り角 牧野桂一
色鳥や子に新しき楽譜買ひ 市ヶ谷洋子
色鳥や小学生は学校へ 今井千鶴子
色鳥や山に恋々生丸太 百合山羽公 寒雁
色鳥や山の電線のびやかに 茨木和生 遠つ川
色鳥や山家につかふ水の音 鈴木康久
色鳥や庭に滝あり紅葉あり 島村元句集
色鳥や心ひそかに待つ手紙 片山由美子 水精
色鳥や応へなき空広すぎる 大山芳子
色鳥や折目通りに地図畳む 中川 忠治
色鳥や新隣人の新夫妻 百合山羽公 寒雁
色鳥や旅信一枚母の名に 田中菅子
色鳥や日のぬくもりの裁鋏 斎藤道子
色鳥や明治のままの疎水橋 桂樟蹊子
色鳥や書斎は書物散らかして 山口青邨
色鳥や木の齢にも老と妙 上田五千石 琥珀
色鳥や末社の並ぶ松の中 前田普羅
色鳥や朽木足裏に崩れたる ふけとしこ 鎌の刃
色鳥や村起しなる句碑千基 堤信彦
色鳥や枕はづして父病めり 小川千賀
色鳥や森は神話の泉抱く 宮下翠舟
色鳥や橋を翼の島の景 中本柑風
色鳥や橋長く山々近し 内田百間
色鳥や浅間をかくす松の枝 深見けん二 日月
色鳥や海すみずみのうごきゐし 柚木紀子
色鳥や淋しからねど昼の酒 上田五千石 琥珀
色鳥や潮を入れたる浜離宮 宇田零雨
色鳥や煉瓦学部の明治ぶり 桂樟蹊子
色鳥や琴糸紡ぐ余呉の里 杉阪大和
色鳥や病臥といふはもの見えて 橋本榮治 越在
色鳥や砂踊りゐる柿田川 鈴木朗月
色鳥や碧天にあげて煙細し 島村元句集
色鳥や空ほからかに散り栄ゆる 尾崎紅葉
色鳥や窓開け放つ罅の倉 遠藤英子
色鳥や窯惜しみゆく五条坂 桂樟蹊子
色鳥や笹の干さるる花背村 山下喜子
色鳥や筵一枚夕日の座 村越化石 山國抄
色鳥や籠ごと量る赤ん坊 美濃部英子
色鳥や肩触れて晩年の母と思ふ 山田みづえ
色鳥や舐めて今年の味噌の出来 藤田湘子
色鳥や袂にかろきもの入れて 横地妙子
色鳥や読書も縫ふも縁先に 福永みち子
色鳥や誰も気付かぬおしゃれして 新家保子
色鳥や谺をつくる山のこゑ 雨宮抱星
色鳥や買物籠を手に持てば 鈴木真砂女
色鳥や道の消えたる古峠 野村喜舟 小石川
色鳥や長寿の葬は婚に似て 高橋悦男
色鳥や離宮に遠き栄華の世 大橋敦子 手 鞠
色鳥や霧の晴れゆく相模ダム 中川冬紫子
色鳥や霧の晴間の日の匂ひ 大場白水郎 散木集
色鳥や饑(ひだる)くなりし草の丈 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
色鳥や鴫立庵の白障子 中川冬紫子
色鳥や黒姫よりの雲の帯 久米正雄 返り花
色鳥をききわけて山深みけり 大本美沙
色鳥をよそ目に煤寒雀 竹下しづの女句文集 昭和十五年
色鳥を含みたる木に手を触るる 川口重美
色鳥を彩るは樹々かも知れず 黒川花鳩
色鳥を待つや端居の絵具皿 松瀬青々
色鳥を秘湯巡りの道すがら 高澤良一 寒暑
色鳥を見かけしよりの旅帰り 稲畑汀子
色鳥を見し眼を恋の書に戻す 藤田 夢
色鳥を見て屑籠をからつぽに 正木ゆう子 静かな水
色鳥を遊ばせおはす慈母観音 原田衣子
色鳥来これだけ森のもみづれば 高澤良一 随笑
色鳥来吉野太夫の墓とこそ 小路智寿子
色鳥来爺さん婆さんぱりつとす 武田伸一
色黄にして穴の多きは毒茸ぞ 茸 正岡子規
色黄にして裏に穴あるは毒茸ぞ 茸 正岡子規
色~に谷のこたへる雪解かな 太祇
芋虫に神はこよなき色賜ふ 山田弘子
芒原暮色を軽きものとして 山田弘子 螢川
芒闌け湖が憑かるる古代色 河野南畦 湖の森
芝生にもある秋色といへるもの 比奈夫
芥子も人も疲れ夕月色となる 阿部みどり女
芦の穂に火の色雁は海に死す 金箱戈止夫
芦刈つて水に触れたる空の色 西村和子 かりそめならず
芦火澄み暮色は山根より湧けり 小松崎爽青
芭蕉像色無き風の中に立つ 早川いま
芭蕉葉になほ残る色や脈を走る 高濱年尾 年尾句集
花うぐひしののめ色に釣られけり 倉田春名
花と鳥色深めつゝ秋去りぬ 高木晴子 花 季
花の山へ色を連ねて人出かな 長谷川零余子
花の暮色ぼさりとかぶる温るみかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
花の色はからび果てたる冬木かな 上島鬼貫
花の色は水上にあり夜市川 宇多喜代子
花の色残りて薫る菊膾 高木 一水
花の色草の色なる雛あられ 飛高隆夫
花の芽のひと夜色づく西行忌 引地冬樹
花の雨色なき海に降りいだす 阿部みどり女
花ゆすら白し暮色をうべなはず 竹下しづの女句文集 昭和二十四年
花ミモザライオン色に太陽は 高澤良一 ぱらりとせ
花冷えの灯の色ともる胸の上 千代田葛彦 旅人木
花冷や目の色冥き午後となる 仙田洋子 橋のあなたに
花冷や窯変を生む炎色とも 文挟夫佐恵 雨 月
花合歓の遠き色より晴るる旅 山田弘子 こぶし坂
花岩菲色に濃淡なかりけり 高浜年尾
花影の色ある影やゆるるなり 奥田杏牛
花影の色づくまでのあそびかな 豊田都峰
花擬宝珠暮色とゞまりをりにけり 星野立子
花枇杷に色勝つ鳥の遊びけり 前田普羅
花林檎空は澱みて色もなき 児玉 小秋
花柘榴すでに障子の暮色かな 加藤楸邨
花桃は欲望の色寡黙の山 飯田龍太
花桔梗名のみの色を咲きにけり 樗良
花氷女の嘘はもえぎ色 西谷剛周(幻)
花氷頂の色何の影 原石鼎
花泡へ聖尼色なき風の中 秋月すが子
花満ちし色に和菓子を仕上げたる 石嶌岳
花烏賊の背色かはりし生きてゐし 大塚文春
花疲れおなんど色に昏れてゆき 斉藤冨美子
花石榴すでに障子の暮色かな 加藤楸邨
花石路や黄を静かなる色と知る 山田弘子 こぶし坂
花筏蕾みぬ隈なき葉色の面に 中村草田男
花篝火の色今や得つゝあり 鈴鹿野風呂
花色のはなし一ケをかざる支店 阿部完市
花色の御納戸いろに雁の空 長谷川久々子
花苺草色の虫をりにけり 高田風人子
花茣蓙の色香の色に溺れけり 大石悦子 群萌
花茣蓙の花に影なき暮色かな 嶋田麻紀
花茣蓙の花の暮色を座して待つ 福永耕二
花菖蒲さびしき色を集めたる 深見けん二
花菖蒲一群づつに色変る 横田和子
花菖蒲日中の色となりにけり 清崎敏郎
花菫たばね色増す伊豆近し 大野林火
花葛の色のどこかに明暗を 中島よし絵
花蓼や縹色もめん晒す川 野村喜舟
花薔薇はみだしたがる色を巻き 嶋田一歩
花蘇枋ねむり忘れし色があり 河野友人
花衣紺を己の色として 鈴木真砂女
花過ぎの泪色する日暮れあり 北原志満子
花過ぎの驟雨に濡るる色ケ浜 堀口星眠 樹の雫
花野来て色香にどつぷり浸りけり 脇坂啓子
花降れる地べたに雀色動く 高澤良一 燕音
花魁草老が咲かせて色やさし 古賀まり子 緑の野以後
花鳥風月何処の道も縹色 攝津幸彦 鹿々集
芹の芽や小溝も朝の色に出て 小林康治 四季貧窮
芽の柳色に出ようといでにけり 細見綾子 花寂び
芽ぶき雨雀色時過ぎにけり 宮坂静生 春の鹿
芽吹く前の谷は肉色友の家 大井雅人 龍岡村
芽柳の色より銀座灯りけり 佐藤朴水
苗の色美濃も尾張も一ツかな 早苗 正岡子規
苗木売り夕餉の灯色遠く見て 桂信子 遠い橋
若くさや四角に切し芝の色 炭 太祇 太祇句選後篇
若みづや迷ふ色なき鷺の影 千代尼
若狭秋色まぶた裏までふるさとよ 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
若竹の色より青きすだれかな 若竹 正岡子規
若竹やふしみの里の雨の色 闌更「半化坊発句集」
若竹や色もちあふて青簾 若竹 正岡子規
若草の紛るる色となりにけり 稲畑汀子
若葉今色まさり来し日の表 高濱年尾 年尾句集
若葉風色エンピツは折れ易し 浦ひろし
苦潮や浜木綿の花色を変ふ 長尾正樹
苧殻買ふ象牙の色の五六本 木田千女
英語で鳴くハイドパークの色鳥よ 成瀬櫻桃子 素心
茄子にまた海の色あり明易き 大串章
茄子漬けの色鮮かに母とほし 古賀まり子
茄子漬のあしたの色に執着す 米澤吾亦紅
茄子漬のこの色留守の母に告げん 原子公平
茄子漬の朝の色に執着す 米沢吾亦紅
茄子漬の色鮮やかに母とほし 古賀まり子
茄子潰の色鮮かに母とほし 古賀まり子
茎稈は血潮の色や竹の花 大橋淳一(雨月)
茜色さす寒天を晒しけり 西村和子 かりそめならず
茜色の薔薇に目覚めのメス並び 八木三日女 落葉期
茫々と浅蜊の浜の暮色かな 村田 脩
茶の色の濃きに湯をつぐ木の芽かな 小杉余子 余子句選
茶を淹れて色よく出でし今朝の秋 今泉貞鳳
茶揉み衆渋手拭の色も競う 山中蛍火
茶臼岳熔岩に浅茅の色づけり 三好かほる
草うらの影絵の世界 匂ふべき夜叉のおごりもあさつきの色 筑紫磐井 未定稿Σ
草しげりあかざの古色暾に濡れぬ 飯田蛇笏 春蘭
草たけて紫華鬘色うすし 川島彷徨子
草の上おきし団扇の色浮かみ 木村蕪城 一位
草の実の瑠璃色燦と枯れはじむ 稲垣きくの 牡 丹
草の実の色をつくして懸りけり 前田普羅
草の色して絲とんぼ草となる 西村数
草は野に低し人色草といふ 保坂リエ
草ひばり色なくなりし空に鳴く 西垣 脩
草よりも影に春めく色を見し 高木晴子
草噛みて色なき風と思ひけり 影島智子
草屋根や鋼色して蛇の顔 加藤知世子 花寂び
草山の枯色撃ちて雉仕止む 津田清子 礼 拝
草市のたましひ色を一抱へ 坂巻純子
草枯れて色失へる雀かな 太田鴻村 穂国
草紅葉蝗も色に染まりけり 西山泊雲 泊雲句集
草色に染まる石臼餅を搗く 伊藤孟峰
草色の土器のかけらや春の雲 伊藤 翠
草色の翅に息する蝉の羽化 黒川良子
草色の蚊をつぶしたるてのひらに顔埋めて君も透きゆくばかり 平井弘
草色の蜘蛛軽々と草渡る 千原叡子
草蛍色よみがへる雨の夕 安部とみ子
草餅の故山の色にふくれけり 平賀芙人
草餅の色の濃ゆきは鄙めきて 高濱年尾
草餅の草色深き忌明けかな 宇多喜代子 象
草餅の黄ナ粉入日の色に触る 菅 裸馬
草餅を焼く天平の色に焼く 有馬朗人 母国
荒鋤とおなじ色して牛方宿 宮津昭彦
荻の角水辺の色にまぎれけり 岡安仁義
菊なます色をまじへて美しく 高濱年尾 年尾句集
菊の殼色も残さず時雨けり 温亭句集 篠原温亭
菊の色のこがね粧ほふ日の出かな 上島鬼貫
菊も菜の色に咲きたる小春哉 小春 正岡子規
菊枯るゝ地表の色となり果てゝ 大橋敦子 手 鞠
菊白しわが酌む酒も色無かり 瀧春一 菜園
菓子食べし口春愁の海の色 阿部みどり女
菖蒲田の流れも色を持つあはれ 水原春郎
菖蒲田の色をひつくり返す風 行方克巳
菜が咲いて菜の花色の海の月 数馬あさじ
菜の色の日々に濃まさり朧かな 原石鼎 花影以後
菜の色も菜虫の色も濃く淡く 岩田由美 夏安
菜の花のゆふべの色となりしかな 片山由美子 風待月
菜の花の色こそ濃けれ花御堂 松藤夏山 夏山句集
菜の花の色となりゆく乳母車 小泉八重子
菜の花や川にみちきし潮の色 上村占魚 鮎
菜の花や昭和の色に暮れている 仁田脇一石
菜の花や暮色蹴散らす岬の波 成田千空 地霊
菜殻火の焔の色天の梅雨を招ぶ 栗生純夫 科野路
菜種咲けばしばらく菜種色の川 桂信子 黄 瀬
菠薐草の花は葉の色さびしき日 中尾寿美子
菠薐草父情の色と思ひけり 井上弘美
華の色や頭の雪もたとえもの 炭 太祇 太祇句選
華美ひと色に成人式の子女あはれ 相馬遷子 雪嶺
菱餅のその色さへも鄙びたり 池内たけし
菱餅のその色も織り絹の村 守屋明俊
菱餅の淡々と色重ねけり 河野邦子
萌ゆるより炎の色をななかまど 菊地滴翠
萌ゆる色を耕してゆく土色に 及川貞 榧の實
萍にもみづる色ののりそめし 行方克巳
萩か根や露にぬれたる土の色 露 正岡子規
萩と露色のつり合ひとれてをり 高澤良一 素抱
萩の角水辺の色にまぎれけり 岡安仁義
萩もはや色なる波ぞ夕祓ひ 一茶「七番日記」
萱を負ひ雀色時おし黙る 山口誓子
萱草の夕日の色に咲き惜しむ 駒井えつ子
落ちつぎて柿の葉はきつね色なり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
落つばき夜の間に色を重ねけり 及川貞
落城の碑文色なき風の中 高橋佳子
落柚子の色に出にけり かと言って 池田澄子 たましいの話
落款の色極まりし梅雨入かな 大岩光代
落穂さながら辞書に拾ふ語暮色まみれ 宮津昭彦
落花ただ冷え色生き魚跳ねしにほひ 香西照雄 対話
落葉掃く京の暮色をまとひつゝ 清水忠彦
落葉松の色の溢るる牧開き 桜岡おおし
落葉焚く煙は空の色となり 吉野みな子
落鮎にはじらひの色走りをり 新橋知子
落鮎の遠き熊野の灯色かな 宮武寒々 朱卓
落鯊や風の出できし空の色 八木林之介 青霞集
葉かげして暗き色よき葡萄かな 楠目橙黄子 橙圃
葉がくれに色つき初めし杏見ゆ 山本綾
葉がくれの色なつかしみ唐辛子 唐辛子 正岡子規
葉と色を分つほど郁子色づきて 坂口麻呂
葉の色と同じ色して青ぶだう 渡辺しづ
葉の色にありて青梅丸きかな 温亭句集 篠原温亭
葉の色に白は淋しき夏椿 高木晴子
葉の色に紛れ春蘭咲き初むる 下間ノリ
葉の裏にぐみ色づきて遠き海 舘岡沙緻
葉柳や肉売る軒の色ガラス 寺田寅彦
葉桜の色を重ねる川面かな 長尾敏子
葉牡丹にまつはりし日が色もてる 米澤吾亦紅
葉牡丹に三彩の色のあはれなる 相生垣瓜人 微茫集
葉牡丹の色かさなりて開きそむ 龍胆 長谷川かな女
葉牡丹の色ちがひなる二列かな 姫野丘陽
著けたまふ淡き冬日の色のもの 相生垣瓜人 微茫集
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり 釈迢空
葛の葉の色づくころを熊野にゐ 角川春樹 夢殿
葛切の水に虹の色走る 岩田由美 夏安
葡萄曇色一斉の感涙世に絶えて 香西照雄 対話
葡萄甘し海色の空に手が届く 阿部みどり女
葡萄酒の色にさきけりさくら草 永井荷風
葭簀茶屋海いくたびも色を変へ 山口誓子「晩刻」
葱引くや颪の中にある暮色 野村喜舟 小石川
葱洗ふすでに暮色の手もとかな 清水 美恵
蒜の暮色に干され空海忌 澤田治美
蒟蒻すだれ土の色して道せばむ 宮津昭彦
蒟蒻玉土の色もて乾くなり 福原十王
蒲色のこれ一張羅夏衣 菅原師竹句集
蒼海の色尚存す目刺かな 高濱虚子
蓬餅炙りて色の褪せにけり 桃家
蓮の花いまあけぼのの色を解く 竹田昭子
蓮根掘地より暮色を引きいだす 有働亨 汐路
蓮華刈る真珠色の空牛うごく 中拓夫 愛鷹
蓴採る池の深さの色なりし 山澄陽子
蔓のばし葎若葉の色のぼる 嶋田一歩
蔦むくら紅葉色過ていやしけれ 秋来 選集古今句集
蔦枯れて塀枯色になりにけり 上野小百合
蔵朽ちて椿は色を極めけり 高木智恵子
蕃茄やゝ色づき初めしいびつかな 楠目橙黄子 橙圃
蕗の根のうすもも色や土の春 青圃
蕗伏して海の鯖色國の果 古舘曹人 砂の音
蕣や夜は明きりし空の色 史邦 俳諧撰集「藤の実」
蕨見つけ初む山の色眼に馴れて 津田清子
薄ら日の沈丁花寒さ帰る色 林原耒井 蜩
薄暮かな火色足したくて香水 竹内草華
薄暮より血を引く藤の色もなし 古舘曹人 能登の蛙
薄氷に透けてゐる色生きてをり 稲畑汀子 汀子第三句集
薄氷に風筋のあり陽色あり 中村棹舟
薄氷の水底の藻の色をせり 中戸川朝人 尋声
薄紅梅の色をたたみて桜餅 中村汀女
薄色の牡丹久しく保ちけり 牡丹 正岡子規
薄色の鰈煮つけて風の食堂 阿部完市 軽のやまめ
薄雲へ色透き昇る秋の薔薇 水谷郁夫
薑に梅酢色づく一夜かな 松瀬青々
薔薇のアーチアルカリ色の雲よ夫よ 平井さち子 完流
薔薇の芽のどんな色にもなれる赤 広瀬ひろし
薔薇よりも淋しき色にマッチの焔 金子兜太「少年」
薔薇園の色失なえる白夜かな 寺澤慶信
薔薇白し暮色といふに染りつつ 後藤夜半 底紅
薔薇色銀色ゴリラの色のあまたなり 水野真由美
薩摩路や涼しき色の潮だまり 後藤是山
藁庇色なき風のとどまらず 安西静
藁灰の底の火の色雪嶺星 福田甲子雄
藁色の月出て鶴はねぐらかな 三嶋隆英
藁苞に暮れぬ色あり寒牡丹 三浦正弘
藍と言ふ静かな色を干しにけり 後藤立夫
藍汁の底色に流れ小春川 内田百間
藍色になりゆく屋上岐阜提灯 阿部みどり女
藍色に溺れ秋意の山の湖 河野南畦 湖の森
藍色の水盤なれば母の家 宮崎夕美(魚座)
藍色の海の上なり須磨の月 正岡子規
藤の根に伏して色なし冬の鹿 西山泊雲 泊雲句集
藤房の末より含む曙の色 久米正雄 返り花
藤棚の下のふぢ色妻と佇つ 鈴木鷹夫 大津絵
藤沢山(とうだくさん)野ぶだうに色のり初めぬ 高澤良一 燕音
藤灯りぬ暮色月下を歩み去る 零餘子句集第二 長谷川零餘子、長谷川かな編
藤袴ゆれれば色を見失ふ 山下美典
藤袴色と見つつも淡かりし 稲畑汀子
藪椿おちてより色あたらしき 酒井弘司
藪色は金といふべし竹の子生る 香西照雄 対話
藻畳に色来る頃か暖め酒 仲野絢子
蘆の中雁色もなく日かげりぬ 原石鼎
蘆枯れてただ一と色にうちけむり 深見けん二
蘭の花暮色の冷えにゐて匂ふ 虎雄
蘭の香ににび色の下着脱きすてし 蘭 正岡子規
蘭の香ににび色の衣脱捨てし 蘭 正岡子規
虎落笛色とりどりの風をつれ 吉田茂子
虚と実と桔梗終ひの花の色 河野多希女 月沙漠
虫の宿色ある声をきゝとめて 荻江寿友
虫篝火色とゞかず湖暮るゝ 稲畑汀子
虹になき色を持ちたる独楽まわす 対馬康子 純情
虹の松原色なき風のめぐりをり 島野美穂子
虹の色持ちたる鱚を釣り上ぐる 田中佳嵩枝
虹消えて檜山に色のもどりけり 鈴木貞雄
虹立てる色のはじめを忘れけり 石寒太 翔
蚊帳の色山よりも濃く暁けている 金子兜太
蚊帳は海色母をもつつむ子守歌 中村草田男
蚊帳裾を色はみ出たる夏布団 西山泊雲 泊雲句集
蚊火焚いて色地図散らす二タ夜三夜 文挟夫佐恵 黄 瀬
蛇いちご魂二三箇色づきぬ 河原枇杷男(1930-)
蛇の衣山河の色を帯びてをり 脇本星浪
蛇消えて石ころもとの色となる 岬雪夫
蛇穴にこの世の色をひとつ消し 後閑元子
蛾の色に似て蝶なれや葉月過ぐ 軽部烏頭子
蜂の巣の土の色して生まれたり 宮田正和
蜆蝶色ともならずもつれあふ 八木林之介 青霞集
蜆貝の内側の色梨の空 細見綾子 黄 炎
蜉蝣の飛翔は暮色より淡し 富田潮児
蜘蛛の囲の揺れては虹の色を生む 山田弘子 螢川
蜘蛛の糸しろがね色に明け初むる 五木田政子
蜘蛛生れていまだ色なし夕山河 小澤實
蜜柑*もぐ海の半ばの色しづか 飯田龍太
蝉の羽化いまだこの世の色なさず 飯塚雅芳
蝉当りて色動きたる燈籠かな 月舟俳句集 原月舟
蝉生れこの世の色に変身す 山口博(桑海)
蝉稚し山色翅にみなぎらせ 金子 潮
蝋色の顔のゆき交ふ椿山 桂信子 遠い橋
蝌蚪の紐うごめく色をほどきゐし 稲畑汀子
蝙蝠がへらへら暮色つくりだす 石丸寿美子
蝦夷黄菅とや海霧に色走りしは 稲畑汀子 春光
蝦夷黄菅とや海霧の色走りしは 稲畑汀子 汀子第二句集
蝶とぶや泳ぎたくなる水の色 岡本松浜 白菊
蝶とんでゆきぬしあはせ色の空 仙田洋子 雲は王冠
蝶とんで黄土の色にまぎれざる 依田明倫
蝶生まるあけぼの色の日を透きて 菊池ふじ子
蝶翔つて文字摺草は色に出づ 出牛青朗
蝿のんで色変りけり蟇 高浜虚子
蝿取草緑は油断させる色 菅原くに子(諷詠)
螻蛄鳴いて木曾路の暮色地より湧く 原与志樹
蟇いでゝ蛸壺色をうしなへり 萩原麦草 麦嵐
蟇のごとき色に焼けたり廉き海苔 田川飛旅子 花文字
蟷螂の枯れ色をして妊れり 久保敦子
蟷螂の枯色の服われにもあり 白岩 三郎
蟷螂の枯色猫が咥へ来し 横山房子
蟷螂の色枯れ深し枯葉へ飛ぶ 林原耒井 蜩
蟹の色悪しき真昼の声を出す 飯島晴子
蟹食うぶはげしきは色身(しきしん)なりけり 阿部完市 軽のやまめ
蟻を吸ふとき草色となる蜘蛛よ 依光陽子
血の色のすももをたべて獣めく 荏原やえ子(狩)
血の色の夕焼に歓喜蚊食鳥 羽部洞然
血の色の蟹と後悔浮く谷間 阿部完市 証
血の色を何処にしまひし大白鳥 小泉八重子
血の通ひ始めたる色楓の芽 斎藤利枝子
行く年の夕焼彼の世の色ならずや 水野柿葉
行春のわが家の色の卵焼 小川軽舟
行春の苔に色ある山雨かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
行春や芦間の水の油色 木歩句集 富田木歩
街路樹の燃ゆる色としななかまど 石田幸子
街頭にはじまる暮色雪もよひ 中原 歌子
衣かへて青空の色めづらしや 更衣 正岡子規
衣ずれは我が身の色や草の花 梓沢あづさ
衣手の松の色はえ木彫雛 水原秋桜子
袖の色よごれて寒し濃鼠 松尾芭蕉
袖口に日の色うれし今朝の春 樗良
裏吉備や雨に色振る鳥威 岸田稚魚
裏門に秋の色あり山畠 支考 (吏明亭)
裸身の色艶もなし紅の花 村上鬼城
褪せ色のものなど縫うて夏籠りぬ 龍胆 長谷川かな女
襖のむこう「色の運命学」占う 松尾しのぶ
西日に積む煉瓦直ちに獄の色 榎本冬一郎 眼光
西瓜切るや家に水気と色あふれ 西東三鬼
西行庵址紅葉を焚けば火色憑く 香西照雄 素心
覇王樹花咲き銅板色の海女等過ぐ 道部臥牛「自像」
見えて来しカナリヤ色の初電車 小川千賀
見えぬ目に風は青田の色伝へ 大谷展生
見せかけの色ではびこる泡立草 大野ひろし
見とれるやむかしの空の色を着て 高橋 龍
見るかぎり砂の色なり土用波 岩田由美 夏安
見る限り戻り鰹の潮色に 茨木和生 三輪崎
見ればただ水の色なる小鮎哉 正岡子規
見ればたゞ水の色なる小鮎哉 小鮎 正岡子規
覚めて追ふ夢に色なし冬の旅 川村紫陽
親鸞によもぎの色の匂い立つ 岩尾美義
観世音色なき風を紡ぎをり 田沢公登
解脱門色なき風とくぐりけり 川崎慶子
試走車の色鮮やかに夏来る 河野南畦 『空の貌』
誘蛾燈の色に染まりて飛ぶ蛾かな 川崎展宏
誰そや影茄子漬け色の深みつつ 古屋磯子
諏訪口は泉の色の暮春かな 直人
諦めの色になりたる葛湯かな 内田美紗 魚眼石 以降
谷戸百樹色極まりてしぐれけり 文挟夫佐恵 黄 瀬
谿の温泉の紅葉の色に浸りけり 渡部抱朴子
谿紅葉煽いでおこす火色見え 花谷和子
豆の筋たまりてそれもみどり色 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
豆の色底へ濃くなる牛乳うまし 林原耒井 蜩
豆の芽のうす色さして行く我ぞ 永田耕衣 與奪鈔
豌豆咲く海老茶の色の名を守りて 中村草田男
象なき色の饒舌五月の陽 林翔 和紙
象のはな子色なき風の中にをり 佐田昭子
貝の華夕日に色を深めけり 久保方子
貝塚に蟹は火色に生きてをり 飯山 修
貝寄の風に色あり光あり 松本たかし
貝寄風のむらさき色に装釘し 田中裕明
貝寄風の風に色あり光あり 松本たかし
負け嫌い石楠花の色捨てていく 大西恵
負け嫌ひにて火の色のコート着る 辻美奈子
負色の花こそ見えね菊合 星衣
貨車の背の遠ざかるまで冬暮色 三谷昭 獣身
買初めの色のほのほの五色豆 高澤良一 燕音
赤き色段々きらひ秋袷 藤沢紀子
赤といふあたゝかき色著重ねて 宮崎房子
赤とんぼとは未だ呼べぬ色なりし 山田泰
赤のまま潰へるまでのさくら色 高澤良一 燕音
赤もまた冷たき色よ冬椿 久屋三秋
赤も黄も太陽の色薔薇盛り 和田西方
赤ん坊のたましひの色オレンジ実る 中山純子 茜
赤紫蘇の色の秘密を秘す如し 高澤良一 鳩信
赤草や夕日に重き水の色 重厚「類題発句集」
起し絵や昼は桜の色淋し 野村喜舟
足もとは瑠璃色淡きいぬふぐり 黒谷光子
足寺の跡わずかに高し色鳥来 高井北杜
足袋にあり男の白といふ色も 山崎みのる
足袋履いてみて朱鷺色の朝かな 鈴木允子
足音の七色八色春の立つ 牧石剛明
路に買ふ秋果や山の色異にし 長谷川かな女 花寂び
路地裏が鉄の色して夏了る あべまさる
踊見る色傘しづむおかぼ畑 前田普羅 春寒浅間山
踏まれじと今の色なる落穂かな 小杉余子 余子句選
身かはせば色変る鯉や秋の水 中村汀女
身にひそむものの色めく時雨かな 大石悦子 聞香
身ほとりやしろがね色の春の暮 草間時彦 櫻山
身をよぢり鶯色の出でにけり 清水径子
車窓走すこの世の色の桃花村 八木林之介 青霞集
軒に干す束はたばこの色得つつ 西垣 脩
辛夷散り暮色流るる胸の中 小松崎爽青
辣韮が親戚の色してゐたり 大石雄鬼
迂回兵の出没柿の暮色かな 久米正雄 返り花
近づけば色うしなへる桜かな 片山由美子 風待月
近づけば色の消えゆく春の海 加藤瑠璃子
近む程はくれむの生の色 高澤良一 寒暑
近よりて紫苑色なき良夜かな 五十嵐播水 播水句集
近松忌色紐くはへうごきけり 秦 夕美
返り花乙女らの写真色うつらず 中島斌男
追羽子の流るゝ色を打ちかへし 黒見井蛙
追羽子の色引き合へる御空かな 服部翠生
送火の焔色を消して透きとほる 古舘曹人
逃水の涯に氷の色水晶島 平井さち子 鷹日和
逆光に色鳥彩を失へり 千原叡子
逆光を色鳥戻り来たりけり 湯川雅
透くといふ色を重ねて返り花 石嶌岳
透く色の白を整へ夏衣 白鳥ゆき子
透し百合今朝咲く色と教はりぬ 高澤良一 燕音
通草の実割れ乳色の受験生 対馬康子 吾亦紅
逝く春の浅蜊煮つめる火色かな 石川桂郎 四温
逝く秋や海はおのれの色に還る 喜久子
造船所土錆色の晩夏かな 福島貞雄(湾)
逢ひて来し路傍はみ出で柿の色 小池文子 巴里蕭条
連翹をチヨゴリの色に婚衣装 矢島渚男 梟
逸れ羽子の色失ひて落ちにけり 上野泰 佐介
遁れ来し眼に枯色の溜り水 草間時彦 櫻山
遅桜色よき返事待ちにけり 吉田政江
遊行寺へ色なき風をまとひ行く 長部紅女
運動会今金色の刻に入る 堀内 薫
達磨忌や今は色なき女郎花 籾山梓月
違ふ世の色を思へり枯木山 柿本多映
遠き*えり挿し終りたる色と見し 中森皎月
遠き日の鶏頭色にまじらざる 石川桂郎 含羞
遠き灯の百足色なす晩夏かな 飯田龍太
遠つ世の火色ひろげしお山焼 山田弘子 こぶし坂
遠つ世の禁色の蝶凍てにけり 石田小坡
遠会釈日傘の色におぼえあり 室町まさを
遠富士へ流るる色や羽子日和 坂野たみ
遠山の色を濃うして春田かな 月舟俳句集 原月舟
遠山は利休色して鳥曇 岩田洋子
遠日にはもゆる色なり椎の花 松藤夏山 夏山句集
遠火事や焦がしあまれる空の色 畑耕一 露座
遠目にはひと色なりし涅槃絵図 澤井悠紀子
遠目にはもゆる色なり椎の花 松藤夏山
遠花火色あやまたず水流る 岸田稚魚 筍流し
遠雷や土間に這ひ出し蟹の色 久米正雄 返り花
遷子忌とおもふ暮色の雪もよひ 大島民郎
邯鄲や掘られて甑(こしき)けむり色 宮坂静生 春の鹿
郁子熟れて太初の色に冬立てり 青木重行
郷愁を色なき風に深めけり 古市絵未
都びし色や楓のつまはづれ 素外
都心に咲き 生者の色のまんじゅしゃげ 伊丹公子 時間紀行
酒の燗する火色なきつつじかな 西山泊雲 泊雲
酒壜に暑気の纏はる煙色 石川桂郎 含羞
酔えぬ夜は菜の花色の夢が欲し 橋石
酔芙蓉昨夜を持ち越す色のあり 西山雅子
酢に色のありて八十八夜寒 大澤保子
里といふ美しき色蝌蚪の群 塩川雄三
里芋の茎の色よき十六夜 高澤良一 燕音
重なりて色の満ちたる冬木立 久保美智子
重陽の日の春慶の色に似し 岡井省二
野うさぎの耳に色なき英彦の風 矢野緑詩
野ざらしの驢馬に色なき風の音 加藤知世子
野に摘めば野の色なりし濃りんだう 稲畑汀子
野に色を想へば鎌倉右大臣忌 攝津幸彦 鹿々集
野ねずみに月光色のものがある 山田真貴
野の色として身じろがず枯蟷螂 飯野敏子
野の色と同じ色着て凩に 上崎暮潮
野の色に紫加へ濃りんどう 稲畑汀子 汀子句集
野の色の飛騨の蜉蝣野に沈む 加藤水万
野の色を活けて月待つ宴かな 今村征一
野の草の色にまもられ青蛙 工藤いはほ
野の葡萄ほろびの櫛の色をもつ 北原志満子
野の蜂や夢に夢継ぐ羽の色 永田耕衣 驢鳴集
野は枯色ところどころに赤ん坊 栗林千津
野は風のまほろば稲の色づくも 北原志満子
野ぶだうの粒それぞれの色をして 小野 克之
野や枯色母枯色に死にゆけり 小寺正三
野を焼ける火色にはるか仏の灯 井上雪
野山の色に眠れぬ旅となりにけり 長谷川かな女 雨 月
野火消えてたゞの暮色となりにけり 石井とし夫
野焼の火夕日の色に燃えさかる 阿部みどり女
野牡丹の色まぎれつつ暮れてをり 高濱年尾
野紺菊眦色を崩しけり 河野多希女
野良着の背褪せぬ日を得て野菊色 香西照雄 対話
野茨の色の口紅選ぶ朝 対馬康子 吾亦紅
野葡萄の実のふぞろひに色づけり 倉田静子
野趣溢る出湯はしおからとんぼ色 高澤良一 寒暑
野馬行く千種の花や色だすけ 昌夏 選集「板東太郎」
量り売る桝に白魚桝の色 大橋敦子 匂 玉
金と銀加へねぶたの色となる 後藤比奈夫 めんない千鳥
金木犀散るとき風の色となる 大塚とめ子
金柑の色欺かぬ甘さかな 正田子温
金糸魚の色を愛でつゝ鱗剥ぐ 森英子
金銀の色よ稻妻西東 稲妻 正岡子規
金雀枝の咲きあふれ色あふれけり 藤松遊子
金魚玉枯野の色のこれを攻む 栗生純夫 科野路
金魚田に色浮きたちて雨兆す 村田 脩
金魚藻の金魚色して照る最中 国本みね
針箱に色糸満たし縫始 大橋鼠洞
釣瓶落しは蝕まれたる神の色 仙田洋子 雲は王冠
釣糸に鮠たちのぼる日色かな 鳥居おさむ
釣舟に晩秋の湖色深む 金沢葭舟
鈍痛を訴える河口暮色も尽き 林田紀音夫
鈴虫にいくらも降らず暮色なる 目迫秩父
鉄のごとき水の色なり蘆の角 楠目橙黄子
鉄塔の暮色にしづむ寒さかな 小峰松江
鉄工忌火の色の濃く夜に入る 細谷源二 鐵
鉄色の曠野をわたる年の暮 石田波郷
鉄色の蕗の枯葉と蕗の薹 永井龍男
鉄鉢の色に焦げたる柚釜かな 菅原師竹句集
銀婚や枯草色の毛糸買ふ 石川文子
銀扇や灯を吸ひ飽かぬ色尊と 村上鬼城
銀杏を割って取り出す天の色 対馬康子 純情
銹び墓に海の色なすいぬふぐり 財津立枝
錆色のうつりて竹の落葉かな 田中裕明 櫻姫譚
錆色の雀吹かるる神渡 塚本武史
錦木のつめたき色となりにけり 高田正子
錦木の炎えつくしたる色と見し 藤井扇女
錦木の紅葉日増に色まさり 藤田大五郎
鍋鶴の羽の色より暮なずむ 黒川よしゑ
鍛冶の火の色めく頃やいぬふぐり 齋藤玄 飛雪
鐘を鋳く春オーロラの色にかな 吉田紫乃
長かりし一日ビールの黄昏色 高澤良一 さざなみやつこ
長雨によごれし色のあぢさゐも 稲畑汀子
長雨や鶏頭色を失ひて 小島健 木の実
門を出て日傘ひろげて色生れ 上村占魚 球磨
開山堂色なき風を彫り上げて 工藤妙子
開拓地の切株墓色青葉木菟 香西照雄 素心
開港祭色整列のチューリップ 市川 玲子
闇に色なく下闇に色のあり 粟津松彩子
闇の色にも湖と山ある夜長 山田弘子 螢川
阿育王塔色なき風のただ中に 桶口峰人
陋巷に色ゆたかなる石鹸玉 林火
降られけり遠目に藁の色の稲架 大熊輝一 土の香
降りしきる雨に色ましゆく花野 高木晴子 花 季
降るほどに極まる色に七かまど 高木晴子
降る雪に遠流のごとし鶴の色 齋藤玄 『無畔』
陰口もきさらぎ色と思いけり 橋石 和栲
陶榻の五つの色に萩若葉 遠藤梧逸
陶片に炎の色ありし雁渡し 椿文恵
陶窯の火の色驕る立夏かな 木下夕爾
陶窯の火色より濃き彼岸花 下阪淑峰
陽へそろふ鴨の嘴はがね色 岩淵喜代子 朝の椅子
隙間風地震に火色の無き生活 水田むつみ
障子貼りひと日の暮色ふやす母 中村菊一郎
隠り沼の鴨待つ色となりにけり 白井新一
隠れ家も色に出にけり桃の花 千代尼
隠れ逢ふ枯葉の色のコート着て 来栖春菜
雀らに雀色時炉火ほしや 石野兌
雀色時雨は光輪持ちて降る 大野林火
雁や泣きし眼隈とも暮色とも 中戸川朝人 残心
雁引くや荒布色なる島の子ら 高澤良一 ねずみのこまくら
雁来紅抜きて失ふ庭の色 古賀まり子 緑の野以後
雁瘡やむらさき色の塗り薬 柴原保佳
雁降りて地の枯色を身とわかつ 文挟夫佐恵 遠い橋
雑木色づきて悲傷の山ならず 山口誓子
雑炊の色も雪間の薺かな 几董
雑踏やラムネの泡と空の色 永方裕子「麗日」
雛あられ紙に包めば色透きて 竹原梢梧
雛かざる干潟色なる夕日中 高澤良一 さざなみやつこ
雛の膳京の五色麩色どりに 岩田つねゑ
雨に剪る薔薇の色のこぼれつゝ 稲畑汀子
雨に色交へて桜蘂降れり 宮津昭彦
雨に色置きそめしより式部の実 稲畑汀子
雨の庭色鳥しばし映りゐし 中村汀女
雨の日々梅酒色よくなりにけり 鳥越すみ子
雨の日は雨の色得つてまり花 山田佐人
雨の芝生の枯れ色が見えてきた シヤツと雑草 栗林一石路
雨ふれば雨に色盛る椎若葉 森山直佳子(花藻)
雨上り春色俄なる山河 安原良子
雨毎の蘇枋の色も見えそめし 高濱年尾
雪ちらつく暮色のふかきところより 三谷昭 獣身
雪とけてみどりの色や圃土 松岡青蘿
雪とんで元日の空海の色 阿部みどり女 『雪嶺』
雪どけの色に紛れて鳥の朝 渋谷道
雪に色あるとき空の青さあり 稲畑汀子
雪の上桃花の色の霞かな 松瀬青々
雪の下名のらで寒し花の色 越人「鵠尾冠」
雪の夜の紅茶の色を愛しけり 日野草城
雪の子の一重瞼や陽の色に 石寒太 あるき神
雪の嶺地底の色の煙噴く 相馬遷子 山河
雪の畑鶯色に暮れてゆく 阿部みどり女 笹鳴
雪の立山祈りの色は常に白 福永鳴風
雪の色淋しき庭でありにけり 京極杞陽 くくたち下巻
雪の視野色あるものは白樺 高木晴子
雪ふつて屍に沁みつ土の色 日夏耿之介 婆羅門俳諧
雪もち草雪を春濃き色として 後藤比奈夫 めんない千鳥
雪を削ぐ流れひしめく雀色 成田千空 地霊
雪を行く長靴たまごの色もゆく 和知喜八 同齢
雪中に獲し苔色の魚生かす 右城暮石 声と声
雪女炎の色は見せぬなり 櫛原希伊子
雪嶺と暮色のあひを風吹けり 長谷川双魚 風形
雪嶺と色同じくて霞立つ 相馬遷子 山河
雪嶺の氷の色を夜空かな 正木ゆう子 静かな水
雪敷いて西より晴るる天の色 成田千空 地霊
雪明り夜明けの色の加はりし 奥田智久
雪晴の古色親しき奈良の町 武田白楊
雪晴や青と白とは勇み色 香西照雄 素心
雪洞は黄に花篝とき色に 岸風三楼 往来
雪直に凍河の色に殺到す 齋藤玄 『玄』
雪眼鏡それで鳩ども焦茶色 細谷源二 砂金帯
雪蛍夕日の色に溶けゆけり 木村喜代子
雪解けて野は枯色を極めたる 相馬遷子 山国
雪解水注ぎ山湖の色となる 山田弘子 こぶし坂
雪除を泌み出るけむり色ヶ浜 大峯あきら
雪雲に色を変へつつ日本海 稲畑汀子 汀子第三句集
雪雲の縁を色どる冬日かな 冬の日 正岡子規
雲にまで色を移せりななかまど 木内彰志
雲の色の象育て父空にいる 阿部完市 絵本の空
雲の色厄日しづかに動き出す 阿部みどり女
雲の色地の色毛糸編みからめ 依光陽子
雲の色野分めく日や母訪はな 小林康治 四季貧窮
雲よりも花に従ふ空の色 長谷川双魚 風形
雲わたる間も枯色の火口原(榛名湖行) 石川桂郎
雲を滾れ来し色鳥に露台あり 久米正雄 返り花
雲バラ色浅蜊一皿買ふ頭上 牧野白嶺
雲催ひ黛色に鶲の背 大熊輝一 土の香
雲暮色影絵のごとく子等遊び 内久根眞也
雲海や色を変へつゝ動きつゝ 小薬流水
雹降るや冽々として花の色 野村喜舟 小石川
電柱に木の色もどり初しぐれ 片山由美子 天弓
電線の雨滴暮色に沈む妻 大井雅人 龍岡村
霊棚の稲も大豆も色づきて 高野素十
霜つよし阿蘇の噴烟色かはる 石原八束 空の渚
霜の地にものぐるほしき暁けの色 友岡子郷 遠方
霜の夜のことに灯の色鬼房忌 佐藤きみこ
霜の色伐られし松に日はしづか 右城暮石
霜晨の孔雀色なるこずゑかな 鈴木白祇
霜晴や無精十日の髭の色 橋本榮治 麦生
霧が来て松虫草の色決まる 町田しげき
霧こめて火口湖の色のぼり来る 中戸川朝人 尋声
霧さらにうすれ天然色となる 石井とし夫
霧の流域鉄色に父の忌を浸し 諸角せつ子
霧の色とも蕎麦咲く色とも拓地の果 宮坂静生 青胡桃
霧の色まとひし夜のマフラ解く 文挟夫佐恵 黄 瀬
霧来れば暮色のごとし雪の層 栗生純夫 科野路
霧氷界翔ちたる鳥の色を追う 大山安太郎
霰来て喪の元日の暮色急 下村ひろし 西陲集
霰降る*かりんの色の光にて 対馬康子 吾亦紅
露とんで赤富士の色また変はる 綾部仁喜 樸簡
露なくて色のさめたる芙蓉哉 芙蓉 正岡子規
露店や茄子に水打つ夜の色 温亭句集(篠原温亭遺稿) 篠原温亭、島田青峰編
露涼し幾重離りて山の色 松村蒼石 露
露草に或る日の沼の色ありし 石井とし夫
露草のこゝらはうすき藍の色 河野静雲 閻魔
露草のまはりの暮色后陵 長谷川双魚
露草の朝明色を着くづるゝ 齋藤玄 飛雪
露葎白膠木は火色つくしけり 鈴木しげを
霾や渋紙色に月出でて 島 汀子
霾ると蘆原色を失ひぬ 向笠和子
靄のなか雑木黄葉の色はあり 長谷川素逝 暦日
青かつし色としもなき煮梅哉 几董
青き色の残りて寒き干菜かな 高浜虚子
青といふ色の靭さの冬の草 後藤比奈夫 金泥
青嵐心音いつか色なして 牧石剛明
青春前期マフラーの色ブルー 上田日差子
青木の実色増し目立ち初めにけり 中川和喜子
青柿に子盗ろの暮色下りてくる 佐野まもる
青梅や夕日の色をすこしとめ 小杉余子 余子句選
青梅雨の底湿原の色のこる 澤田緑生
青武鯛忿怒の色の美しき 岸本マチ子
青田出て色失へり余り水 篠田悌二郎
青空と一つ色なり汗拭ひ 小林一茶
青空に絵具の色の石榴の実 大峯あきら
青空に色鳥しみる眠りかな 高野ムツオ
青空のこの色が好き冬支度 大峯あきら
青空のただ一ト色に秋立ちぬ 小島政二郎
青空へとんで落花の色うする 辻恵美子
青芦や風が渡れば色をなし 小杉余子 余子句選
青葉木菟暮色に沈む最上川 竹村隆雄
青葉木菟鳴いて山ノ手暮色かな 深川正一郎
青蔦や轎夫の帽に色飾 楠目橙黄子 橙圃
青蘆暁色一細胞員とし深く息すう 古沢太穂 古沢太穂句集
青虫のいみじき色の忌まれけり 林原耒井 蜩
青饅や暮色重なりゆく故山 加藤燕雨
青鬼灯夕べの色に塗られたり 阿部みどり女
青麦色につつまれ久し石の上 石田波郷
青黴の春色ふかし鏡餅 有風
面売も面も焔の色火まつりや 町田しげき
鞍馬深し色なき風に蹤くかぎり 渡辺恭子
鞦韆の切羽つまりし空の色 大豆生田伴子
音たてて色流れをり虹の幅 宮津昭彦
頃少し過ぎし火色に曼珠沙華 行方克己 知音
須勢理毘売恋せし色か冬紅葉 加藤三七子
頬撫づる風に色あり椎若葉 黒田登志子
頭折れの樅の樹雨のち晴の色の芽吹き 磯貝碧蹄館 握手
風あつてこそのポプラの色づけり 中戸川朝人 星辰
風が咲かす羅馬色なるマフラ好もし 長谷川かな女 花寂び
風に色わきたたしゐる牡丹かな(海老原ふみ江居) 上村占魚 『石の犬』
風の日は風の色して犬ふぐり 神原栄二
風の色たがひを知らぬ日本人 加藤郁乎
風の色日の色とらへ紅うつぎ 汀子
風の色芒に萩に杖止まり 松山足羽
風もろし色を御袖に白牡丹 調和 選集「板東太郎」
風わたる合歓よあやふしその色も 加藤知世子 黄 炎
風三日干菜に色の出でにけり 大石悦子 聞香
風切り羽空の色持ち*しめ歩く 星野沙一
風吹いてこの夜暑さの色狂ひ 中塚一碧樓
風呂敷の色をひろげてお年玉 上野章子
風景を出でし錆色みちおしえ 山崎 聰
風死して鉛の色に湖たたへ 富安風生
風立ちて阿蘇の花野の色みだす 古荘公子
風立てる其色月の橋わたり 高澤良一 ぱらりとせ
風紋の砂の色してばつた跳ぶ 瀧春一
風色やしどろに植ゑし庭の秋 松尾芭蕉
風色やてら~として百日紅 鈴木花蓑句集
風色や枸杞垣煽つ宵涼し 富田木歩
風花の彩なき色を惜みけり 河田瑠璃子
風落ちて色の褪せたる氷旗 高澤良一 素抱
風起りあるかなきかの色残る 佐々木六戈
風車色の煙となりにけり 上野泰 春潮
風車色を飛ばして廻り初め 泰
風車色戻りつゝ止まりけり 内山素岫
風過ぎてあるかなきかの色残る 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
風鈴も錆びたり柿も色づけり 相生垣瓜人 明治草抄
颱風の夜の爪色の薔薇の棘 富澤赤黄男
颱風禍鉢木色澄み飾窓 宮武寒々 朱卓
飛びつつも枯色きざす草ひばり 加藤知世子 花 季
飛ぶときにまた別の色てんとむし 中西多津子
飛天舞ふ色なき風の行方かな 奥澤朋子
飛泉から光風磔死の神色よ 香西照雄 対話
飛魚は潮の色をして売らる 村山古郷
飛鳥大仏機械よりいい色拝む 八木原祐計
食べし葉の色そのままの菜虫かな 小畑柚流
食べ残る頃に色よき掻き氷 土生重次
食パンにはさむ夕焼色のもの 対馬康子 純情
飯の豆青葉と色を異にせず 林原耒井 蜩
飲み干して天の色なる夏茶碗 川崎展宏
飴色に色の変れば牡蛎焼くる 高島みどり
餅花にまじる草色にぎにぎし 古舘曹人 樹下石上
養生してひととせ経つか枇杷色づく 高澤良一 鳩信
養生の酒色に出づ宵の春 河東碧梧桐
首塚に色なき風や昼の月 朝妻 力
首相放送野山の色をゆるがしぬ 長谷川かな女 雨 月
香も色も淡きがよしや切山椒 小川濤美子
香港の朝は色なき夏の雨 高木晴子 花 季
馬の目のもの聞く色に秋の水 二村典子
馬洗ひ去るさび色のさざれ石 成田千空 地霊
馬老いて色なき風を食みにけり 小島健 木の実
馬追や山の暮色を日がはこぶ 雨宮抱星
馬酔木咲く葛湯のやうな空の色 ふけとしこ 鎌の刃
馬鈴薯の花ひと色に地平まで 橋本榮治
駄菓子ぎゆう詰め色なき風の吹き抜けて 佐怒賀直美
駅までに秋の暮色に追ひ抜かる 誓子
駆け抜ける春時色の子の踵 成田千空 地霊
駒込へうぐひす色の初電車 朱夏 希
駒鳥や霧藻の色の夜明雲 岡田貞峰
驟雨来て色乱れだす錦鯉 藤井寿江子
骨壺に入る春色の喉仏 篠遠良子
高原の色のはじめの櫨紅葉 滝佳杖
高原の薊はまぎれ易き色 稲畑汀子 汀子句集
高原の風に色増す秋あざみ 太田常子
高浪のなまじ色ある寒さかな 鈴木真砂女
高野山色なき風を聴きゐたり 行方キヌヨ
髪ほどき色なき風の中に立つ 筧 宣子
髪塚に色なき風の吹くばかり 杉山青風
鬱金空木海霧を抜け出てひよこ色 高澤良一 燕音
鬼やんまその眼の色の都落ち 西野理郎
鬼婆の団扇火の色鬼来迎 脇本千鶴子
鬼灯に色さしている温泉のほとり 辻本穆村
鬼灯の揉まるる色に熟れてをり 後藤夜半 底紅
鬼灯の旱の色を立てにけり 綾部仁喜 寒木
鬼灯の泥をかむりて色づけり 斉藤葉子
鬼灯の祭の色になつてゐし 後藤比奈夫 初心
鬼灯の色つくす母消えぬべし 小林康治 玄霜
鬼灯の色づきそめぬほゝゑまし 松藤夏山 夏山句集
鬼灯の色づきゐたる子安神 森 澄雄
鬼灯の色にゆるむや畑の縄 井上井月
鬼灯やいくつ色づく蝉のから 室生犀星 犀星發句集
鬼灯市稀に色づきゐるがあり 松藤夏山 夏山句集
魂のセピア色なる終戦日 菱川イツ子
魚屋に雪の色して猫飼われ 宇多喜代子
魚島の活気は波の色にさえ 平川悦子
魚裂いて海の春色鮮烈に 河野南畦 湖の森
鮎すでに落ちたる川の色を云ふ 飯島晴子
鮎の子の花屑の色に染みにけり 伊藤観魚
鮎の斑の卵色なるつかれかな 志城柏
鮎の背に苔や生ふらん淵の色 鮎 正岡子規
鮎上り初めたる水の色となる 北川一深
鮠釣るや秋色ふかき湯檜曽川 伊東宏晃
鮫の腹雪色一文字に剖(さ)くや 城佑三
鮭のぼる川の色とぞおもひをり 岸田稚魚 筍流し
鮭のぼる河原色草踏みゆくに 皆吉爽雨 泉声
鯉の色水輪ににじむ花の雨 長谷川櫂 古志
鯉の色雲の色似て臘八会 神尾季羊
鯊の宿薄墨色に鷺わたる 高橋馬相 秋山越
鯖ピクリ板濡色に木目も生く 香西照雄 対話
鯖鮓に日ざかりの色寄せ返す 佐野青陽人 天の川
鯛の朱の色増すころや冬の海 今泉貞鳳
鯛ノ浦色なき風に鯛肥ゆる 高澤良一 ねずみのこまくら
鯵一片蒸し焼き色の家出の母 小泉八重子
鰤の眼の海色暁の鮮魚貨車 宮坂静生 青胡桃
鰤起し沖は鋼の色深む 北見さとる
鰯雲ゐざりつゝ色定りし 大沢繁女
鰰の寄る波色となって来し 国安一帆
鰻田へ色ある春の雨斜め 河野南畦 湖の森
鱈裂くやただひと色に海と空 角川春樹
鳥の目の色おもいだすわが仮睡 宇多喜代子
鳥もまた石の色なる寒さかな 岸本尚毅 舜
鳥居見え冬至南瓜の古色売る 鍵和田[ゆう]子 未来図
鳥渡る納戸色なる湖の町 小田 亨
鳥総松色町は昼さびしけれ 角川春樹
鳥過ぎしのちの色なる白木蓮 鎌倉佐弓 潤
鳶色を富士見西行に着せむ 渋谷道
鴇色の半襟に変へ初句会 三井美恵子
鴇色の夕雲放つ植田かな 小島健 木の実
鴇色の暮光を曳きて鶴帰る 金森教子
鴉翔く砂丘濡色枯れに似る 吉野義子
鴛鴦の色して一掬の水さへも 古館曹人
鴨渡る暮色はずいと沼の上 小檜山繁子
鴫の嘴岩一と色に寄る辺なや 成田千空 地霊
鵜を抱いて色の道をば考へぬ 攝津幸彦 鹿々集
鵜飼火の遠ざかりゆく火色かな 宮坂静生 春の鹿
鵯こもる樟の若葉の夜色かな 長谷川かな女 牡 丹
鶏頭のうちなる色を問われけり 久保純夫 熊野集
鶏頭の傾きあひて色深し 八木耕石
鶏頭の緋はもの思ふ色ならむ 辻美奈子
鶏頭の色かたまつて闇となる 田口紅子
鶏頭の色ひいて蚯蚓かくれたり 奥寺秋芳
鶏頭は五欲の色のいづれなる 片山由美子 風待月
鶏頭は根まで血の色血族なし 大井雅人 龍岡村
鶏頭や倒るゝ日迄色ふかし 松岡青蘿
鶏頭をまはれば色のかはりけり 加藤楸邨
鶏頭を遠き色とし歩き出す 田井洋子
鶲とぶ色となりたる如くかな 星野立子
鶲とんで色ひゞき逃げし枯木かな 原石鼎
鶲去りにはかに暮色動きけり 冨山敏夫
鶲来て枯木に色をそへにけり 高濱年尾
鶲来て色つくりたる枯木かな 原石鼎
鶲見しあとの暮色に人帰す 横山房子
鶴ケ岡や元朝の女色らみな舞はむ 日夏耿之介 溝五位句稾
鶴来ると色深めけり実生柿 冨田みのる
鷄頭や油ぎつたる花の色 鶏頭 正岡子規
鷦鷯の佳き焦色のくぐり来し 成瀬りつ子
鷹の目の檸檬色して岬見る目 石田波郷
鷹渡る色なき風に消ゆるかに 澤田 緑生
鷺飛んで暮色をひらく代田掻 馬場移公子(馬酔木)
鷽替へて昔の色の寒夕焼 塚原巨矢
鹿の斑のさくら色して涼しけれ 和田耕三郎
鹿去りて暮色暮風の寺の秋 椎橋清翠
鹿消えて鹿の斑色の餅ならぶ 渋谷道
鹿鳴いて奈良の暮色の塔いくつ 磯田とし子
麓枯れ色処々に村落寺をまじへ 宮津昭彦
麓野や月一色に轡虫 東洋城千句
麥蒔や色の黒キは娘なり 麦蒔 正岡子規
麦の色して麦鶉眼がやさし 鴨居ひろ子
麦の芽の優しき色や両毛線 田澤勝美
麦の芽の鶸色となり泊つるかな 中西舗土
麦秋の大地共生の灯色かな 柴崎左田男
麦秋の焦色つよき車軸かな 伊藤京子
麦秋の色そのまゝにたそがるゝ 橋田憲明
麦秋の色となりゆく風わたる 佐藤路草
麦秋や淡海色なる伊賀の空 大屋達治 龍宮
麦藁の色の麦藁帽幼な 後藤夜半 底紅
麦藁を染めバラ色に空色に 後藤夜半 底紅
麦踏にさつと移りし暮色かな 吉武月二郎句集
黄けまんや色失ひて巌の肌 岸田稚魚
黄の色の汗修道尼日本人 右城暮石 上下
黄は光る色一面の金鳳華 稲畑汀子
黄は日射し集むる色や福寿草 藤松遊子
黄は貴色い行くに稲田継ぎ目なし 薄 多久雄
黄も黒も強烈な色大毛虫 佐柳芦郎
黄八丈色に石蕗咲き妻が着て 草間時彦
黄昏といふ色のなく白夜暮る 梅田実三郎
黄昏に山茱萸の色まだ見ゆる 宮津昭彦
黄昏れて色重ねゆく樹氷林 谷島展子
黄泉よりの熊野の暮色走馬燈 町田しげき
黄菅色フォッグランプに海霧抜けて 高澤良一 燕音
黄菖蒲に暮れなむとする水の色 高澤良一 鳩信
黄落の水際の寸土色つくす 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
黍を焼く母に火色の定まりて 種沢富美緒
黒といふ派手な色あり黒揚羽 木村淳一郎
黒といふ色の明るき雪間土 高嶋遊々子
黒といふ色の重さの種を採る 片山由美子 風待月
黒はまた慶びの色桜炭 佐々木紅春
黒は待つ色で ナザレの女に朝 伊丹公子 山珊瑚
黒もまた涼しき色よ夏帽子 野坂 安意
黒土色の下闇悔に立脚せよ 香西照雄 対話
黒松の暮色の中の端午かな 中山純子
黒椀に白魚淡き色を添へ 山下孝子
黒潮のその色なせる鰤を揚ぐ 前田鶴子
黒潮の色香染み込みたる鰹 岩城鹿水
黒潮の風に色もつ金盞花 長野美恵子
黒潮を背負ひし色の鰹かな 坊城中子
黴処々にひとつの色にとどまらず 宮津昭彦
鼈甲の色滴らしまむし酒 石塚友二(鶴)
鼈甲色のこほろぎ登場松奏で 香西照雄 対話
齢に色あれば白とよ母の冬 鈴木鷹夫 渚通り
龍胆は空の色より憂ひ濃き 青木重行
龍胆は若き日のわが挫折の色 田川飛旅子 『植樹祭』
龍膽の/色のうちなる/吾は/音楽 林桂 黄昏の薔薇 抄
龍舞の龍が色なき風に乗り 高澤良一 燕音
●彩 
あじさいに降り 有彩の 雨の糸 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
あじさゐの彩目に宿し谷戸の径 高澤良一 寒暑
あぢさゐに彩づけの雨日がな降る 上村占魚 『自門』
あぢさゐのあしたの彩の見ゆるかな 森田里華
あぢさゐの彩の違ひを見てゆかん 高澤良一 随笑
あぢさゐの待たれゐるかに彩させり 高澤良一 随笑
あでやかな彩を着ている毒きのこ 嶋田一歩
あらたまの彩はこびきし緋連雀 きくちつねこ
あらたまの袱紗明治の彩にかな 角川照子
いちにちの彩固まつて寒落暉 藤田湘子 てんてん
いと長き卯杖の彩を寿がん 水田むつみ
いにしへを誘ふ彩に実紫 山田弘子 螢川
うるうると繍線菊草は朝の彩 高澤良一 宿好
うれしさや小草彩もつ五月晴 正岡子規
かまつかの彩なかなかに鄙ぶ寺 高澤良一 宿好
けふ立夏とて雲の彩いまだしや 高澤良一 寒暑
こでまりに上衣の彩をうつし行く 長谷川かな女 雨 月
この山の彩見えますか墓洗ふ 前岡茂子
この彩に安んじ梅の紅葉せり 高澤良一 随笑
この涯に彩なく唾る顔うごかず 片山桃史 北方兵團
こほろぎの彩なき聲も夜明けにて 津田清子
さくら咲き常磐木ふかき彩そふる 臼田亞浪 定本亜浪句集
しやぼん玉七彩保つまゝ失せし 岸風三樓
その家の幸せの彩蒲団干す 野崎みさ子
てのひらに飛花を掬へば浮き立つ彩 高澤良一 素抱
はだか灯に荒磯の時雨彩舞へり 石原八束 空の渚
ばら五月女に彩を著る楽しさ 大橋敦子
ふるさとの彩はむらさき桐の花 水落蘭女(ぬかるみ)
まだ彩を入れざる画布の牡丹なる 武内ひさし
まなかひに滑滝の彩死も近し 小林康治 玄霜
みづうみに生れて彩なす処暑の雲 原裕 葦牙
もう一彩むらさき欲しき雛あられ 高澤良一 素抱
もてなしの秋の野菜の彩の冴え 柴田白葉女 花寂び 以後
もろがへる彩のゐもりの南谷 石原八束「空の渚」
ゆつたりと彩行き交へり錦鯉 木村道子
わたる日に畝の葉牡丹彩なせり 木村蕪城 寒泉
ガラス器の彩になじみてくずざくら 住田歌子
ガレの燭霧中に彩を授かりし 後藤軒太郎
キャンプの火生業の火とちがう彩 堀之内長一
ゲルニカ彩なき声の走る青野 松本照子
ゴッホの画秋草くらき彩多し 柴田白葉女 『夕浪』
シャワーキャツプ透く 有彩の窓ガラス 上藤京子
スイートピー見舞籠より彩こぼす 大平芳江
スクールバス雪の辻にて彩ばらまく 中戸川朝人 残心
チャイナタウン丹の彩深め冬に入る 北見さとる
パンジーの好みの彩の固め植え 高澤良一 随笑
ビアガーデングラスに透けし空の彩 平井千代子
マリアさまと悲しい彩について話す 成島魚狗
メーデーの風船五彩太陽へ贈る 古沢太穂 古沢太穂句集
ランプの彩こぼれて串の山女かな 近藤一鴻
一は彩二は取り合わせ宮紅葉 高澤良一 鳩信
一山は石楠花彩に室生道 福原実砂「新山暦俳句歳時記」
一月の瞳にとほぞらの雲の彩 鷲谷七菜子
一隅はむかしの彩の土用干 岡本まち子
七夕の彩充すもの妻よりなし 北光星
七彩のビーズ細工や露涼し 江森京香
七彩の冷し中華やひとりの夜 加瀬美代子
七彩の山の日に触れ蕨出づ 岡田日郎
七彩の日がふりかかり水芭蕉 岡田日郎
七彩の紐でしばりて春著着る 品川鈴子
七彩の縞を惜しみぬ鮎焼いて 高井北杜
七彩の飴を買ひもし春の風邪 藤井つな子
万華鏡この世のものの芽彩なせり 長山遊
万蕾の丸みも彩も林檎ぶり 中戸川朝人 星辰
三月の海の彩濃き干物選る 山田晴彦
三茱萸の花やあたりは彩なき木 宮津昭彦
中襖はずすや紫陽花濃き彩に 奥田純子
二十歩に左舷夏潮彩ちがふ 中戸川朝人 残心
五彩独楽喧嘩忘れて飾らるる 河野頼人
今朝もまた桜もみぢの彩を掃く 梅本幸子
似通った彩して芽吹くみな雑木 高澤良一 随笑
佐渡航路寄する卯浪の彩親疎 高澤良一 寒暑
体育の日の山頂に彩筵 筏奈雅史
入植村彩屋根見上げ案山子立つ 河野南畦 湖の森
八一居の雨に彩増す蔦もみぢ 佐久間洋子
冬ばらの崩るるまでの彩保つ 山王堂正峰
冬苔の生きて彩もつ賞花亭 小山繁長
冬菜摘み一人の膳の彩となす 熊谷加舟
刀匠の火の彩美しき三日かな 石原子
初日出づ五彩に波を躍らせて 上村占魚 『自門』
初日影万象己が彩放つ 高山洋子
初晴の干瀬七彩に久高島 伊舎堂根自子
初比叡五雲の彩をたなびかせ 宇咲冬男
初硯墨に五彩のありにけり 千石比呂志
初鶏や彩羽躍つて臼の上 野村喜舟 小石川
刷け雲の波なす彩のチユーリツプ 石原八束 空の渚
勝独楽の廻り尽きたる彩を見す 池田秀水
勝独楽の澄みたる彩となりにけり 道川虹洋
勝独楽は愛しも徐々に彩もどる 小賀野恵
匂ひ立つ彩に染まりし麦の秋 小野宮子
千代紙をちらかして子らは雛つくる焦土の春の寒き彩ひよ 筏井嘉一
千体の地蔵彩どるかざぐるま 萩 尚子
千屈菜の水影ささら彩たちぬ 石原八束
南海に七彩もどし梅雨北上(那覇にて) 上村占魚 『かのえさる』
単彩の帯八月の灯をゆらし 古市絵未
口唇の彩抜け落ちし閻魔かな 茨木和生 往馬
古き国古き彩してげんげ咲く 右城暮石 上下
古利根はまだ彩浅く都鳥 西野昌男
台風一過小鳥屋の檻彩飛び交ふ 大串 章
合格や地も恩沢の七彩に 伊藤敬子
向日葵の捨て身の彩となりて立つ 塚元青兆
噴水は黄彩を得て夜となる 山口青邨
埋火やいのちの彩の淡きこと 中村まゆみ
埋立地彩なく犬の声を生む 三谷昭 獣身
墨一色彩百色の夏の山 滝青佳
壕の中柿の彩葉の舞ひ入るを 臼田亞浪 定本亜浪句集
夕焼の茜彩めむと布の丈 文挟夫佐恵 雨 月
夕茜ほほづきに彩置いてゆく 倉堀たま子
夕雲の彩の移りし大刈田 阿部みどり女
夢に彩ありぬ花種蒔きし夜の 中村明子
夢に見る母彩なさず枯るる中 伊藤京子
大味な彩のつつじに飽き飽きす 高澤良一 素抱
大地割れ彩の出でしはクロッカス 小路智壽子
天蚕織りの彩の沈める雪催ひ 柴田白葉女 『月の笛』
奈良三彩みどりがちなる初しぐれ 野見山ひふみ
女郎蜘蛛染屋は彩もなく古りぬ 古田紀一
姫辛夷佇つ花影に彩動く 伊藤芙美子
子の掌より玉虫の彩とび翔ちぬ 鈴木貞雄
密教の山の彩とし柿熟るる 横山節子
寒ざくら蓄へし彩地にこぼし 雨宮抱星
寺の灯の彩を殖やして花祭り 深谷 保
寺巡りあじさゐ彩のレエンコート 高澤良一 寒暑
小雪や街路樹彩を競いける 中野稔子
山の日に玉虫彩をなしてとぶ 西野白水
山影の彩があるかに冬の水 古舘曹人 砂の音
山翡翠の彩のとび散る水ナ面かな 関根喜美
山茱萸の花やあたりは彩なき木 宮津昭彦
山車競ふ色なき風が彩を生み 雨宮抱星
山間の水に彩曳き鴛鴦泳ぐ 沢田美代子
山頂の色なき風に五湖五彩 杓谷多見夫
峡紅葉彩濃く淡く染まりけり 大薮寿子
干餅の五彩つらなる日の始め 成田千空 地霊
彩あふる富士の花野や雲に触れ 瀧 麻里
彩ちらし乙女さびたる雛まつり 原裕 『王城句帖』
彩つて献立ちぐはぐ雛の宵 平井さち子 完流
彩づきし紫式部ほのかにも幼きものに知恵やどりゐむ 古谷智子
彩といふものみなかなし流し雛 宇田秋思
彩として松籟を聴く春隣 村越化石
彩となり五六羽ならず鴛鴦飛来 田畑美穂女
彩と云ひけふの朝顔奥床し 高澤良一 素抱
彩どりは京劇の赤寒桜 高澤良一 素抱
彩なせる花野となりし大宴 渡辺恭子
彩ぬ切籠の総にあきの風 几董
彩のある夢にさまよひ大朝寝 上村占魚 『かのえさる』
彩のかけら命のかけら熱帯魚 福田蓼汀 秋風挽歌
彩の奥行見せて紅葉山 竹腰朋子
彩の焔を噴きては菊の焚かれけり 中戸川朝人 尋声
彩の無き工事現場や秋暑し 乙黒理和
彩ひいて田鳧隠るる夕葎 木村風師
彩や寒時寒徹雪の富士 松根東洋城
彩廊の左右に秋立つ蓮かな 桂樟蹊子
彩廟の南庭にして菊日和 千代田葛彦 旅人木
彩榻につよき葉洩れ日時計草 千代田葛彦 旅人木
彩沓につく淡雪と見おくりぬ 西村公鳳
彩消えて風の色なるかざぐるま 藤村瑞子
彩燈を木に鏤めて庭おぼろ 西村公鳳
彩玻璃に復活の主はいづこなる 山本歩禅
彩窓の色さましつつ西日去る 山口青邨「冬青空」
彩霑れて春の蜥蜴のはしりけり 篠田悌二郎 風雪前
彩餅吊る藁しべの艶雪祭 文挟夫佐恵 雨 月
彼方なる藪を彩としかぎろへり 下村槐太 天涯
徐々に山粧ひ古陶彩変らず 福田蓼汀 秋風挽歌
悪神に黴の五彩を奉る 林翔
想ひ来し彩よりさらに龍胆濃し 猪俣千代子 堆 朱
愛古りて時雨の彩もなかりけり 小林康治 玄霜
愛染の忿怒の彩に紅葉映ゆ 嶋崎専城
扉に垂れし忘れロザリオ彩涼し 下村ひろし 西陲集
手套欲し千草も彩を失へる 大岳水一路
折ればすぐ彩失はむ蓼紅し 渡邊千枝子
括られてなほ白萩の彩ひろげ 野間田芳叢
掌にみちて拾ひし彩葉母に持たす 原田種茅 径
掬はれて白魚彩を放ちけり 後藤博子
散れば彩とどまれば色蔦紅葉 稲畑汀子
斑猫は肉食の彩泛べけり 高澤良一 随笑
新涼や撒水すれば彩の増す 浜野貴美子
新緑の彩のちがひも信濃かな 加藤哲也
施餓鬼旛五彩涼しき梨葉の忌 文挟夫佐恵 雨 月
日ざしきて鴛鴦のさざ波彩繪なす 上村占魚 『天上の宴』
日の当る斜面彩どる福寿草 石塚利岳
昃りてさくらに彩の戻るとき 高澤良一 鳩信
明易しねむりめがねの彩の夢 文挟夫佐恵 遠い橋
星よりの伝言の彩ひつじぐさ 友永佳津朗(雑木)
春の蛾に彩出で初めし雑木山 柳沢君子
春はまた魚にも紅き彩多き 上村占魚 『自門』
春日濃し七彩に海わかちをり(那覇にて) 上村占魚 『玄妙』
春暁や降るものありて彩の妙ヘ 東洋城千句
春眠やあざやかすぎし夢の彩 稲垣きくの
春立ちぬおはじきの彩ちりぢりに 安達逸子
春風の川波にある五彩かな 上村占魚
晩夏光真名井の滝は七彩に 坂田苳子
曇日の彩に安んじ百日紅 高澤良一 随笑
曳き雲の彩移りゆく水木の実 後藤箕己
書に還り秋山肌の彩(いろ)萬化 川口重美
書見器に寒夜気流る彩なして 石川桂郎 含羞
月の面に風の彩ある風の盆 岡本眸
月上げて白を彩とす冬の滝 町田しげき
月日の彩を享けたる月日貝 辻田克巳
月明に彩よみがへるお花畑 福田蓼汀 秋風挽歌
朝の靄彩だたせ鴛鴦たむろせり(上州妙義湖二句) 上村占魚 『天上の宴』
朝虹の彩整はぬまま消えし 山田弘子 初期作品
朝霧の窓まだ彩のなき世界 中杉隆世
朝顔のきのふの彩もあやふやに 高澤良一 素抱
朧月セピヤの彩の夢紡ぐ 岸 あい子
木の芽立つ池には池の彩うまれ(東都六義園) 上村占魚 『玄妙』
木地独楽のまだ彩もたぬ雁渡し 野見山ひふみ
木枯や彩の闃寂の深海魚 松根東洋城
木洩れ日の彩に葡萄の房垂るる 山本満義
本来の彩は斯くなる山ざくら 高澤良一 ぱらりとせ
松色を変へず玉虫厨子の彩 金子あきゑ
枕のあたりの軽い空気の彩を塗る 村田治男
枯芝こまやか女は裾を彩重ね 加藤かけい
枯草に鴨の彩羽をむしりすつ 臼田亞浪 定本亜浪句集
桐の実や古墳の壁画彩淡し 野田 武
桜蝦干されし浜の彩変る 大谷 茂
梅雨の雨着が放つ五彩の布晒し 林翔 和紙
梵天を競ふ彩どり雪に映ゆ 高濱年尾
検査日の諸葛菜彩薄れをり 高澤良一 鳩信
樹氷林白を豪華な彩と知る 福田小夜
櫟若葉に絵巻の彩の茶会びと 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
櫨紅葉足るを知りたる彩ならむ 林 享子
歳月を語る露けき窟の彩 稲畑汀子 汀子第三句集
母老ゆや野分潮騒彩なすは 原裕 葦牙
比古土鈴単彩に売り神の留守 野見山ひふみ
水もまた燃ゆる彩とし櫨紅葉 桑田青虎
水中花母へ余命の彩放つ 中山華泉
水墨に加ふる彩や獺祭忌 岩崎照子
水干の彩の雅びや梶の鞠 高橋芳子
水替へて今日の彩とす水中花 田村やゑ
水没の四葩に彩のすすみをり 中戸川朝人 尋声
水澄むや鯉彩なして祝ぎの舞 渡辺恭子
水鳥の糞を彩とし錨朽つ 岸田稚魚 『負け犬』
氷下魚釣氷上に彩ともしけり 古賀まり子 緑の野以後
氷中の鯖に五彩の朝日あり 古館曹人
氷菓さみしいつしか舌に彩のこし 新谷ひろし「砥取山」
池隈の鴛鴦の彩濃に時雨かな 松根東洋城
沈む庭園の とびたつ彩追う 世紀末 伊丹公子 アーギライト
河はモネの彩得つつあり朝ぐもり 林翔 和紙
沼の彩葦の角より始まれり 岩崎すゑ子
泉屋の跡に落葉が彩重ね 田中英子
海の彩吾が手にあつむ桜貝 邑上ぢへゑ
涅槃図やこの世をゆたかなる彩に 手塚美佐 昔の香
渓川の音も彩添へ夏座敷 森下やすえ
溝氷朝は彩得ぬ金欲しや 小林康治 玄霜
潮の彩かはるとみるは鵜の群るゝ 佐野まもる 海郷
火の彩の落葉よ夫は兵のまま 静間まさ恵
火山湖の彩変る午後ほととぎす 前山松花
炎天の海、底岩の彩たゞよふ 右城暮石 上下
点滴の元気湧く彩朧夜へ 高澤良一 鳩信
無知が可愛彩とりどりの鳳仙花 福田蓼汀 秋風挽歌
焼けてゆく虹鱒の彩うつろひぬ 本郷桂子
熱帯魚神の賜ひし彩に狎れ 西本一都 景色
牡丹や五彩のほとけ顔あまた 栗生純夫 科野路
牡丹散るときの含羞彩深し 古市絵未
猟人に彩羽見せとぶ雉子かな 野村喜舟 小石川
玉虫のむくろの彩をうしなはず 五十嵐八重子
玉虫や彩ある夢のさみしくて 村越化石 山國抄
玻璃の中手鞠は彩をしづめたる 大橋敦子 手 鞠
白芙蓉金の鞍置き三彩馬 野村喜舟
白蛾の目玻璃に紅彩原爆忌 原田孵子
百の彩のくびかざりして明石の門 阿部完市 春日朝歌
百彩の顕ちくる刻を朝寝して 林翔 和紙
真白きも彩のひとつに百合開く 松山和子
眩りとす蜥蜴の膚の日の五彩 長谷川素逝 暦日
眼の馴れてつまらぬ彩の紅梅よ 高澤良一 さざなみやつこ
睡蓮のしづかやいのち彩に出し 雨宮抱星
祝宴へ 彩卵あふれ 沖に機雷 伊丹公子 機内楽
神棚に彩なき独楽や木地師宿 塩原佐和子
秋冷の彩違へたる湖二つ 竹屋睦子
秋立つと守護する渓の水の彩 飯田蛇笏 椿花集
秋茄子の彩を深めて雨上る 住田歌子
秋薔薇や彩を尽して艶ならず 松根東洋城
空に彩生みひと時のしやぼん玉 雨宮抱星
窯変に似たる彩あり柿紅葉 右城暮石
立春の日の雨彩のある如く 千原草之
立葵七彩に咲く婚の朝 藤本朋子
竜の玉空あこがれて空の彩 八牧美喜子
竜の玉西湖の彩を分ち持ち 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
粉雪あがる夕日の彩がただよいて 古沢太穂 古沢太穂句集
糸とんぼ骨身けづりし彩なせり 新谷ひろし
紅もまた雨の彩なり額の花 川合みさを
紅彩のすうつと月見草の蘂 正木ゆう子 静かな水
紫陽花の彩のはじめの曲り角 猪俣千代子 堆 朱
紫陽花の雨をうながす彩となり 坂口和子
細やかな潮目の彩や土用あい 荒井千佐代「沖歳時記」
終焉の彩を尽して紅葉山 加藤富美子
絡みあうアイスダンスの衣の彩 種村聖巴子
絵硝子の彩染む木椅子露けしや 内藤吐天 鳴海抄
緋の彩は発心さそふ緋衣草 小川文子
緋梅かつと棄て身の彩の夕日刻 殿村莵絲子 花寂び 以後
緑蔭や彩を極めて深山蝶 東洋城千句
繭玉の彩淡くして僧の居間 佐野美智
翡翠の彩のとび散る水面かな 関根喜美
聖樹ともして彩やわらかき毛糸編む 浜 芳女
聖玻璃の五彩西日に強めらる 津田清子 礼 拝
肘突きの成りし五彩や冬初 小澤碧童 碧童句集
花の房旭の彩を加へけり 高澤良一 鳩信
花林檎遠嶺恋する彩にかな 高山まどか
花林檎雨後はシグナル彩鮮し 八牧美喜子
花蘇枋遠き妻恋いの彩に咲く 和知喜八
花野ゆく彩なき時間なおつづき 三谷昭 獣身
芽柳のほか彩もなき遊行かな 今村博子
茄子漬の彩にひとりの夜を濃くす 福川悠子
菊膾湧井に沈みゐし彩ぞ 中戸川朝人 残心
菖蒲湯にけふ染めし彩の掌をひろぐ 中戸川朝人 残心
菖蒲田の彩を散らして風渡る 若林和枝
菖蒲田の彩を曳きゆく松葉杖 鍵和田[ゆう]子 浮標
葉牡丹に三彩の色のあはれなる 相生垣瓜人 微茫集
葉鶏頭落暉に彩を重ねけり 越沼節子
葡萄剪る真水の彩の空あれば 田中とし子
藤の花揺れて心の彩を織る 井口寿々子
藪入りや彩あでやかにアロハシャツ 吉田北舟子
蝶生れて草のぼりつめ彩づきぬ 立石宮僊
行春や輿の小窓の花鳥彩 楠目橙黄子 橙圃
衒ひなき彩をひろげて迎春花 大山好春
裁ち屑の彩に手をつき冬はじめ 長谷川双魚 風形
裏庭の夕日の彩も菜漬どき 鈴木鷹夫 渚通り
豆ごはんほっと安堵すその彩に 高澤良一 鳩信
貨車に遭えり彩なく寒きわが幾日 三谷昭 獣身
赤富士と云へる彩とは今の今 柳澤仙渡子(玉藻)
路伊勢に入りて花菜に雲五彩 久米正雄 返り花
踏まれゆく草の彩にも春隣 永井梨花
身じたくに彩を惜しまずスキー行 黒田櫻の園
辣韮の露彩なして夏近き 飯田蛇笏 霊芝
逆光に色鳥彩を失へり 千原叡子
造形の彩とりどりに流氷湖 武内きゑ
道成寺の千草に深む秋の彩 柴田白葉女 『冬泉』
遠き日の彩をかがりて加賀手毬 文挟夫佐恵 雨 月
遠目には彩揺れてゐずチューリップ 大橋鼠洞
酔芙蓉正午の彩となつてゐし 高村美智子
野ぶだうに雑多な彩を与ふ雨 高澤良一 寒暑
野ぶだうの青の七彩村の婚 平井さち子 鷹日和
野ぼたんの妖しき彩も冬に入る 三田順一
野老掘る老人を置く彩なき景 広野巻葉
野葡萄の彩増すころの吉野川 棗美紗子
金彩のチェンバロの音に年迎ふ 佐藤美恵子
閉店茶房に 彩おとろえぬ ゼラニューム 伊丹公子 山珊瑚
闘魚の彩に剥脱の夜を重ね 八木三日女 赤い地図
雛の餅三彩三臼に搗きをはり 村野蓼水
雨乞ひの天へ流して布五彩 曽根けい二
雨雲の切れ間の彩の小望月 尾崎よしゑ
雨霽れて風吹いて彩いでし藤 上村占魚 『石の犬』
雲かゝりきては花野の彩うばふ 坊城としあつ
雲夏めく果実酒と彩ふかめつつ 中戸川朝人 残心
霜の刃に散りて彩たつ寒牡丹 石原八束 風信帖
露の彩動き赤富士現じけり 石原八束 雁の目隠し
露七彩網戸に満つや姉祷る 中戸川朝人 残心
露霜の馳せては貯炭彩なすも 小林康治 玄霜
音なき画彩なき楽に暮るる秋 福田蓼汀 秋風挽歌
風にのる蜘蛛七彩の糸ひきて 江間蕗子
風のかげ彩ふやしゆく紅葉狩 裕
風花の彩なき色を惜みけり 河田瑠璃子
飛魚や日の射し通す鰭タの彩 東洋城千句
飲食やしずかに腸の彩かわる 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
香水の香の彩かはる中を行く 石川桂郎 含羞
鬼灯の日々に彩づくアイヌ村 伊東礼子
鮎に添ふ蓼酢は玉の彩に出て 大野雑草子
鯛の彩うつる庖丁始かな 秋元不死男
鯛泳ぐとも炎天の彩褪せず 原裕 葦牙
鶏頭花空気違へば彩違ふ 高澤良一 寒暑
鷺とんで白を彩とす冬の海 山口誓子
黄昏てコスモスは彩失へり 柴田奈美
黒潮のうねりの彩の握り鮨 富田昌宏
●カラフル 
カラフルな服装となり街薄暑 安立咲子
カラフルにのけぞつてをり捨案山子 河本遊子
春雨や傘カラフルに女学生 中川ふみ子
●気色 
たわみては雪待つ竹の気色かな 松尾芭蕉
一湾の気色だちをり鰤起し 宮下翠舟
下崩の気色を消すや春の雪 李由 正 月 月別句集「韻塞」
十六夜の気色わけたり比良伊吹 ぶん村 八 月 月別句集「韻塞」
塔は花はな(花)は塔より気色かな 立花北枝
子蟷螂蟷螂襲ふ気色あり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
散る気色すこしも見えず遅ざくら 下村梅子
春もやや気色ととのふ月と梅 芭蕉
曲水に秀句の遅参気色あり 暁台
梅雨明の気色なるべし海の色 笹谷羊多楼
椿咲きまさにかへりし葉の気色 木津柳芽 白鷺抄
気色ばむ二月の空となりにけり 篠原俊博
畑の紫蘇ちかづくわれに気色だつ 篠田悌二郎 風雪前
百年の気色を庭の落葉かな 芭蕉翁 十 月 月別句集「韻塞」
百歳の気色を庭の落葉哉 松尾芭蕉
秋蛇に遭ひし女の気色ばむ 高澤良一 随笑
稗の穂の馬逃したる気色かな 越人
隼人瓜午から気色とりなおす 高澤良一 燕音
鰤起し越中の浜気色だつ 泉 貞子
鰹釣撒餌に海の気色立つ 斎藤朗笛(白桃)
鴨渡る気色に夜を徹しけり 原石鼎 花影以後
黴の世や気色ばんだりして私 山中蛍火
●皚々 
下曽我の梅皚々の方十里 高澤良一 鳩信
全貌を見せぬ雪嶺白皚々 右城暮石
河原石皚々天より下り藤 高澤良一 素抱
海猫の糞皚々宗谷暮れんとす 高澤良一 素抱
炎天の白皚々の塩湖かな 森田峠 逆瀬川
石山の石皚々と冬紅葉 高澤良一 燕音
雪皚々王城の松美なる哉 雪 正岡子規
●若緑 
たのもしや二尺の松の若緑 松の緑 正岡子規
南風に粉を散す松の若緑 松の緑 正岡子規
海鳴りにはなやぐ岩の若緑 津根元潮
若緑天上天下皆独尊 阿部宗一郎
若緑鎌倉の子の異人めき 宮坂静生 青胡桃
若緑雨の茶会の風情あり 岩下美奈子
誰が為か東京に佇つ若緑 齋藤玄 飛雪
逝きし子の植ゑし茶の木の若緑 秋山露子
風交といふよき名あれ若緑 佐藤鬼房
飛鳥に軽々座る若緑 大森知子
飲めやうたへ神の連理の若緑 上島鬼貫
鴉また物くはへ飛ぶ若緑 大峯あきら 鳥道
黒ぼこの松のそだちや若緑 土芳 芭蕉庵小文庫
●肌色 
くつしたの穴の肌色涅槃西風 如月真菜
夕方の空の肌いろ鼓草 山西雅子
山ざくら素焼の肌色人誘ふ 鍵和田[ゆう]子 未来図
盲導犬のどこも肌色どこも雪 平井さち子 紅き栞
肌色のクレヨン探す亡父との夏 河野 薫
肌色の土筆まとうは袴のみ 二村典子
肌色の雲つぎつぎに松納 廣瀬直人
肌色の鮭なまめいて裁ち切らる 荒井恵美子
胎動の肌いろ秋をあえかに黄 三谷昭 獣身
馬の仔の肌色淡く風青し 瀧春一
●色褪せ 
つはぶきの花も色褪せ十二月 長谷川久子
わが好む色褪せやすき土用干 渡邊千枝子
ビニール製団扇の朝顔色褪せず 高澤良一 素抱
初富士のばら色褪せてお元日 角川照子
夜を凍てゝ薄色褪せず櫻餅 渡邊水巴
意に満たずして紫陽花も色褪せき 千代田葛彦 旅人木
春雨やジヨツトの壁画色褪せたり 高村光太郎
木瓜の色褪せよ褪せよと雨の降る 高浜虚子
柿の花落ちぬたちまち色褪せて 松村 恒
百日紅百日咲きて色褪せず 國持せつ子
目じるしの糸の色褪せ種を採る 西池ちえ子
色褪せし一人住まひの秋簾 伊藤 和子
色褪せし我が青春の白絣 田中義孝(ランブル)
色褪せし旗を掲げて氷菓売 目黒智郎(雨月)
色褪せし朱の橋に雪残りけり 島崎章子
色褪せし衣ばかりやリラの花 石田あき子 見舞籠
色褪せてむしろ魅かるる野紺菊 米尾 芳子
色褪せて来し紫陽花も句作りも 小出秋光
茎立つや紅殻格子の色褪せて 杉村正子
逢魔時色褪せし薔薇に雨灑ぐ 内藤吐天 鳴海抄
金褪せず色褪せにけり古雛 大橋敦子 手 鞠
雛納め雛のあられも色褪せて 高浜虚子
雫して勿忘草の色褪せず 佐藤きみこ
魂の色褪せゆくを若葉光 勝村茂美
鰤起し杉山檜山色褪せぬ 阿波野青畝
●色紙 
うち立てて七夕色紙散るもあり 高橋淡路女 梶の葉
くれなゐの色紙を選ぶ筆始 野見山ひふみ
しろしろと色紙の雛の余白あり 後藤夜半 底紅
たなばたの結ふ間も舞へる色紙かな 大橋櫻坡子 雨月
たなばたの色紙の中に結ふ手かな 大橋櫻坡子 雨月
はつ雁に几張のかげの色紙かな 飯田蛇笏 山廬集
まだ書かぬ七夕色紙重ねあり 高浜虚子
七夕の色紙いちまい妻にくれよ 後藤比奈夫 めんない千鳥
七夕の色紙と吾子とちらばれる 軽部烏帽子 [しどみ]の花
七夕の色紙分つ妹かな 七夕 正岡子規
七夕の色紙結ふ手のあひにけり 皆吉爽雨
七夕や京の色紙を買ひにやる 五十嵐播水 播水句集
七夕竹立つるや色紙地にのこる 五十嵐播水 播水句集
七夕竹色紙疎らの枝長く 松藤夏山 夏山句集
五月雨や色紙はげたる古屏風 斯波園女
五月雨や色紙へぎたる壁の跡 芭蕉「嵯峨日記」
仲秋や師の色紙見ゆ山の家 佐野青陽人 天の川
凧の尾の色紙川に吹かれけり 室生犀星 魚眠洞發句集
初売や金地の色紙店頭に 寺井 治
初旅に買ひし藺草の色紙掛 山田弘子 初期作品
墨すつてをり七夕の色紙あり 星野立子
大仰に色紙裂いたる牡丹かな 川崎展宏
天地なき金の色紙に筆始め 澤田緑生
寒木瓜の色紙を掛けぬ夫見ませ 阿部みどり女 笹鳴
年酒享く色紙にじむを片寄せて 小池文子 巴里蕭条
恋ゆゑや花見の場の色紙売り 涼菟
恋歌を色紙に貰ふ西行忌 飯泉葉子
戴きし色紙に礼し敏雄の忌 田中満
手術受く七夕色紙書きのこし 牧野春駒
撓ふ竹七夕色紙つけすぎる 阿波野青畝
文字細の晶子色紙や夜の秋 藤田櫻豆司
春立つと色紙を買へり決戦下 渡邊水巴 富士
機下鮮明色紙並べゆく植田 増川☆
流れ寄る笹の色紙を読まんとす 林原耒井 蜩
淑気満つ替ふる色紙の金砂子 鷲見 梅
秋もはや小倉色紙の隣まで 上島鬼貫
秋蝉に墨痕著るき掛色紙 飯田蛇笏 椿花集
箔燒けて萩の模樣や古色紙 萩 正岡子規
色紙のいろのはなるる川施餓鬼 猪俣千代子
色紙は折られて花に雪の夜 長谷川櫂 天球
色紙ほどの大きさの町巻という 阿部完市 春日朝歌
色紙や色好みの家に筆はじめ 遊女-利生 俳諧撰集玉藻集
色紙結ふ笹枯れ早き日和かな 林原耒井 蜩
苗代の色紙に遊ぶかハづかな 蕪村 春之部 ■ 几董が蛙合催しけるに
苗代や短冊形と色紙形 苗代 正岡子規
茶の間にも桃の色紙や雛の宿 高橋淡路女 梶の葉
虎落笛色紙一枚約果す 石川桂郎 高蘆
錦帳に春暮れて行色紙哉 春の暮 正岡子規
露地もみぢ映えて行成色紙読む 及川貞 夕焼
鮎宿の色紙吉川英治かな 岩崎照子
●錆色 
きらりとし錆色となり猟夫の眼 斎藤玄
ぜんまい摘みその錆色に指ぬらす 高井北杜
ストーブの錆色囲み夜学生 齋藤愼爾
味知らぬ都人へ錆色棗の実 香西照雄 素心
揚羽とまる錆色しるき鉄一片 有働亨 汐路
枕木に噴く錆色や朝ぐもり 平子公一(馬酔木)
水口に水の錆いろ稲穂波 松本 久
航跡の錆色にして冬近し 佐藤美恵子
菩提子の飛ぶ日の近し錆色に 松岡君枝
造船所土錆色の晩夏かな 福島貞雄(湾)
錆色のうつりて竹の落葉かな 田中裕明 櫻姫譚
錆色の雀吹かるる神渡 塚本武史
風景を出でし錆色みちおしえ 山崎 聰
●淡彩 
淡彩の団扇の風を貰ひけり 猪原榮子
●鉄色 
晴れし日も海は鉄色草ひばり 赤城さかえ
机椅子鉄色をしてかじかめり(学制改革の声を聞きつつ四高卒業) 飴山實 『おりいぶ』
橡の実の鉄色に熟れ夕日濃し 岡村武子
湾流暮れてゆく 截り口の鉄いろ 沙羅冬笛
爽涼の鉄色や立つ夜明富士 森澄雄
鉄色の曠野をわたる年の暮 石田波郷
鉄色の蕗の枯葉と蕗の薹 永井龍男
霧の流域鉄色に父の忌を浸し 諸角せつ子
●火の色 
ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟われも雛罌粟 与謝野晶子
あきかぜの鷺消ゆ真夜の火の色に 桜井博道 海上
がまずみの実の火の色に渦なす霧 小松崎爽青
ぐい呑は火の色なりし鱧名残 鈴木鷹夫 風の祭
ぐい飲みに走る火の色初鰹 道川津与
この火の色は祖母のだ 大根煮えている 伊丹公子 陶器の天使
たんぽぽの座を火の色の蟹よぎる 内藤吐天 鳴海抄
コニヤツクの火の色レノン忌なりけり 吉川白仙女
冷やかに火の色秘むる白磁なる 田中黎子
凍る夜の灯火の色星の色 成瀬正とし 星月夜
刀鍛冶炭火の色を育てをり 岡田朔風
千の壺攻める火の色柿若葉 石井紅楓
厄塚に火の色変へしものは何 二塚元子
取灰に火の色うかぶ余寒かな 上田五千石 風景
古き世の火の色動く野焼かな 飯田蛇笏
囲む火の色に蜜柑の皆にわたる 中戸川朝人 残心
塗り上る堆朱火の色冬に入る 伊藤京子
夕野火の色にも雨の近きかな 藤崎久を
大夕焼わが家焼きたる火の色に 鈴木真砂女
山の夜は榾火の色に更けにけり 清崎敏郎
手花火のこぼす火の色水の色 後藤夜半 底紅
掻立てゝ埋火の色動くかな 松浦為王
晩年を火の色とせん飾焚く 坂井三輪
暮れてゆく畦火の色をもどり見む 及川貞 夕焼
月や火の色怒濤の如く雪降り来 小林康治 四季貧窮
木枯や火の色残る壺の肩 佐藤知澁
梅雨風邪のことに火の色なつかしけれ 冬の土宮林菫哉
椿咲く僧坊を焼きし火の色に 有働亨 汐路
極月の火の色あつめ火を焚きぬ 岩淵喜代子 朝の椅子
涼しさを火の色に見し鮎の宿 鈴木鷹夫 大津絵
潮騒や戦火の色の花デイゴ 十時千恵子(青嶺)
澄む天の白鷺こつと火の色に 大嶋隆之郎
火の山を火の色で描き青嵐 渡辺立男
火の色となりて吉書の揚りけり 柿村新樹
火の色に今昔はなし炉をひらく 神尾季羊
火の色に恥甦る霧の中 中嶋秀子
火の色に酔ひて修二会の闇にあり 田中靖子
火の色のひとすじ青きどんどかな 林 宏
火の色のほのと透きてや蒸鰈 岡田飛鳥子
火の色の夕間暮来る囲炉裏かな 小杉余子
火の色の夜の街来てネブタ行く 竹内てる子
火の色の岩菲一輪をんな関 加藤知世子
火の色の房をかけたる花団扇 藤田あけ烏 赤松
火の色の水着を見せる約束も 櫂未知子 貴族
火の色の百合に触れつつ逝きにけり 石寒太 炎環
火の色の石あれば来て男坐す 中村苑子
火の色の端にあふるる落し文 菅原多つを
火の色の見えて蘆火を継ぐらしき 大石悦子 群萌
火の色の透いてかき餅匂ひ初む 桜井嘯風
火の色の透りそめたる鰯かな 日野草城
火の色の風がうがうと木の芽だつ 加藤楸邨
火の色も露けくなりぬ秋燕忌 いさ桜子
火の色やけふにはじまる十二月 日野草城
火の色をとどめ崩れし寒牡丹 柴田奈美
火の色を見せずに走る野火のあり 加藤三七子
火の色を重ねてをりし牡丹焚 塩川雄三
火を焚きて火の色見えず半夏生 佐々木 咲
災もなき火の色と冬鶫 友岡子郷 翌
熔岩にまだ火の色残る花菫 松崎鉄之介
熔鉱炉火の色動く秋の風 深見けん二
燈火の色変りけり霰打つ 百間
牡丹焚火父の火の色見えて来ぬ 森川光郎
甕棺の火の色地虫穴を出づ 中田禎子
病葉の火の色をして石の上 石嶌岳
背に闇を面に火の色薪能 小野寺亨
芦の穂に火の色雁は海に死す 金箱戈止夫
花篝火の色今や得つゝあり 鈴鹿野風呂
藁灰の底の火の色雪嶺星 福田甲子雄
負け嫌ひにて火の色のコート着る 辻美奈子
鉄工忌火の色の濃く夜に入る 細谷源二 鐵
鍛冶の火の色めく頃やいぬふぐり 齋藤玄 飛雪
陶窯の火の色驕る立夏かな 木下夕爾
鬼婆の団扇火の色鬼来迎 脇本千鶴子
あした濡れ一と日火色に花ざくろ 和知喜八 同齢
たらたらと手花火色をこぼしけり 皿井旭川
のこる虫火色に憑かれ窯を守る 中村 房子
ふるさとの火色はじまる落椿 宇多喜代子
デスクで顔消える 火色のネクタイ吊り 室生幸太郎
メーデー不参の火色に憑かれ火がいのち 吉田未灰
一つ火をあつかふ袖に火色溜め 西村和子 窓
一粒の露火色なす童子佛 宮坂静生 山開
万燈の火色の空の露けしや 江口竹亭
八朔や火色ある星黍に見ゆ 桃孫
凍鶴の夢のはじめに火色雲 鷹羽狩行 七草
凩のかまどの火色匂ふかな 高木静花
夕桜焚き継ぐ三日の火色美し 文挟夫佐恵 雨 月
天平の火色となりぬお山焼 原 好郎
天涯に火色の雲や草の花 仙田洋子 雲は王冠
妄想の火色育ちぬ落葉焚 石塚友二 光塵
寒林を透して見ゆる火色あり 稲畑汀子 春光
山おろし蓼の火色を熾しけり 朝倉和江
山国に火色の赤さ富有柿 森澄雄
山女焼く古き火色を囲みけり 山田弘子 こぶし坂
山火今追慕の火色燃え立たす 稲畑汀子 春光
懐手解いて窯主火色読む 岸川鼓蟲子
打つ鉄の火色褪めゆく葛嵐 岸原清行
掃苔や露も燃ゆれば火色なす 栗生純夫 科野路
春浅き田の夕暮の火色こそ 大井雅人
春雷やしめりふふめる火色にて 岸田稚魚 筍流し
松の榾牡丹の榾の火色かな 古賀昭子
松毬のかたち火色に磯焚火 中戸川朝人 星辰
梅雨に入る鞴いみじき火色かな 久米正雄 返り花
椎若葉火色の朝は来たるかな 齋藤玄 飛雪
椿の前過ぎてからおもう その火色 伊丹公子 陶器の天使
母憶ふ炭の火色のやはらかし 千代田葛彦 旅人木
波昏れて畦焼く火色九十九里 町田しげき
海老を煮る火色映れり新暦 脇本星浪
滝茶屋のはやき昃りの火色見ゆ 木村蕪城 寒泉
火の見番見惚るよ朝日の火色には 香西照雄 素心
火夫春愁火色に染みし胸ボタン 吉田未灰
火色の紐売って 無口なインディアン 伊丹公子 アーギライト
灯を消せば炉に火色あり後の月 小杉余子
炉の火色見てもふるさとなつかしや 重田暮笛
炮烙を透かす火色や年惜しむ 永井龍男
甘酒の釜の火色の嵯峨しぐれ 鈴木鷹夫 渚通り
畦を焼き深き曇りに火色見す 田川飛旅子
畦焼の火色天女の裳に残る 細見綾子 黄 炎
祭川篝の火色映りそむ 鈴鹿野風呂 浜木綿
秋の夜の燐寸の火色さす畳 加藤楸邨
秋口の薔薇の小さき火色かな 嶋田麻紀
窯焚の火色みつめて去年今年 木暮陶句郎
粽蒸す火色鮮し雷のあと 山岸治子
耳餅を透す火色や年歩む 永井龍男
薄暮かな火色足したくて香水 竹内草華
虫篝火色とゞかず湖暮るゝ 稲畑汀子
西行庵址紅葉を焚けば火色憑く 香西照雄 素心
谿紅葉煽いでおこす火色見え 花谷和子
貝塚に蟹は火色に生きてをり 飯山 修
逝く春の浅蜊煮つめる火色かな 石川桂郎 四温
遠つ世の火色ひろげしお山焼 山田弘子 こぶし坂
遠花火色あやまたず水流る 岸田稚魚 筍流し
酒の燗する火色なきつつじかな 西山泊雲 泊雲
野を焼ける火色にはるか仏の灯 井上雪
陶窯の火色より濃き彼岸花 下阪淑峰
隙間風地震に火色の無き生活 水田むつみ
露葎白膠木は火色つくしけり 鈴木しげを
頃少し過ぎし火色に曼珠沙華 行方克己 知音
鵜飼火の遠ざかりゆく火色かな 宮坂静生 春の鹿
黍を焼く母に火色の定まりて 種沢富美緒
●灯の色 
灯の色にさらす素顔の夜長かな ふけとしこ 鎌の刃
灯の色の楓を前や初風炉 小川正策
灯の色の赤き一戸や笛の秋 加藤三七子
灯の色の赤さがゆゑに十夜かな 小杉余子 余子句選
灯の色も人恋ふ色や地蔵盆 藤原文子
灯の色や指遊ばせて卓のばら 阿部みどり女 笹鳴
甲斐路ふかく夕蝶は灯の色にとぶ(甲斐路) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
神灯の色に染りて鏡餅 浅野京子
花冷えの灯の色ともる胸の上 千代田葛彦 旅人木
霜の夜のことに灯の色鬼房忌 佐藤きみこ
鬼灯の色つくす母消えぬべし 小林康治 玄霜
鬼灯の色づきそめぬほゝゑまし 松藤夏山 夏山句集
鬼灯の色づきゐたる子安神 森 澄雄
鬼灯の色にゆるむや畑の縄 井上井月
この冬木独身寮の灯色塗る 友岡子郷 遠方
ねむき灯色すみれ早咲く崖も闇 友岡子郷 遠方
住みかはる窓の灯色やちちろ虫 皆吉爽雨
友の忌の鬼灯色をとりもどす 萩原麦草 麦嵐
書の面の灯色に代はり初明り 中村草田男
湯葉ひさぐ雪解の店の黄な灯色 長谷川かな女 花寂び
苗木売り夕餉の灯色遠く見て 桂信子 遠い橋
落鮎の遠き熊野の灯色かな 宮武寒々 朱卓
麦秋の大地共生の灯色かな 柴崎左田男
●日の色 
くもり日は曇り日の色しじみ蝶 小川允子
のぼる鮭入日の色を加へけり 伊藤京子
ハイビスカス一と日の色を咲き尽す 穂坂日出子
万緑や人はその日の色を著て 嶋田一歩
下野の夕日の色の柿を剥く 老川敏彦
今日も干す昨日の色の唐辛子 林翔(1914-)
半分は夕日の色の桜かな 小島健 木の実
地下街の没日の色の金魚かな 秋元倫
夏の日の色としもなし青山椒 青山椒 正岡子規
夜半の灯に日の色現じ石鹸玉 中村草田男
寒天場日の色濁り初めにけり 窪田英治
山雀の日の色曳きてもうをらず 吉村玲子(円虹)
悼むとき西日の色を分ち合ふ 古館曹人
懸崖菊夕日の色を重ねけり 福島孝子
揺れやんで夕日の色の猫じやらし 鈴木 清
日の丸は昇る日の色春の海 今瀬剛一
日の色に胸の染まりし初雀 松田美子
日の色のふくらみてきし春の鴨 千浜歌子
日の色の鰍を誘う道つくる 武田伸一
日の色は黄色に青や茎立てる 高浜虚子
日の色や岩噛む浪も夏となり 月舟俳句集 原月舟、長谷川零餘子編
日の色を出色の雉子製餡所 磯貝碧蹄館
日の色を溜めて蒲公英返り咲く 小泉紀代子
梅林へ日の色移し古墳暮るる 鳥居おさむ
海霧深きゆゑ日の色の金鳳華 水見壽男
瀬戸内の夕日の色の枇杷届く 成井 侃
片兀(はげ)に日の色淡し春の山 太祇
舟を待つ夕日の色に小判草 浜 福恵
草餅の黄ナ粉入日の色に触る 菅 裸馬
萱草の夕日の色に咲き惜しむ 駒井えつ子
著けたまふ淡き冬日の色のもの 相生垣瓜人 微茫集
袖口に日の色うれし今朝の春 樗良
野焼の火夕日の色に燃えさかる 阿部みどり女
雪蛍夕日の色に溶けゆけり 木村喜代子
青梅や夕日の色をすこしとめ 小杉余子 余子句選
風の色日の色とらへ紅うつぎ 汀子
サーファーは陽の色パリ祭近し 一ノ瀬タカ子
太陽の色を閉ぢこめたる西瓜 藤井啓子
紫陽花の過ぎし陽の色盗み咲く 金箱戈止夫
赤も黄も太陽の色薔薇盛り 和田西方
雪の子の一重瞼や陽の色に 石寒太 あるき神
女郎蜘蛛見てより深む日色とも 高澤良一 素抱
山麓に日色を湧かせ花りんご 高澤良一 ぱらりとせ
日色すぐ落日めくや冬の果樹 中島斌男
朝に似たる日色いつまで小春庭 温亭句集 篠原温亭
薄氷に風筋のあり陽色あり 中村棹舟
釣糸に鮠たちのぼる日色かな 鳥居おさむ
●風の色 
まだ風の色にまぎれて蕗の薹 今瀬剛一
夏たつや衣桁にかわる風の色 横井也有 蘿葉集
常に高みを行く秋風の色の旒 文挟夫佐恵 黄 瀬
彩消えて風の色なるかざぐるま 藤村瑞子
昃りて秋風の色見ゆるなり 高木晴子 花 季
涼しさや風の色さす梅もみぢ 野坡
眼に溜めて風の色見ゆこぼれ萩 福永耕二
秋風の色はなけれど赤字かな 荒井恒父
金木犀散るとき風の色となる 大塚とめ子
風の日は風の色して犬ふぐり 神原栄二
風の色たがひを知らぬ日本人 加藤郁乎
風の色日の色とらへ紅うつぎ 汀子
風の色芒に萩に杖止まり 松山足羽
初夏の風色ある如く吹き渡る 高木晴子 花 季
猫の目の秋風色とおもひけり 夏井いつき
若葉風色エンピツは折れ易し 浦ひろし
風色やしどろに植ゑし庭の秋 松尾芭蕉
風色やてら~として百日紅 鈴木花蓑句集
風色や枸杞垣煽つ宵涼し 富田木歩
●空の色 
かがやきて空の色ある霜柱 大澤山世木
その頃の空の色なる花衣 岩田由美 夏安
やや寒の空の色とはなりにけり 鈴木貫一
アルプスの空の色して水澄めり 福田花仙
五月来る夜空の色のインク壺 成田千空「白光」
初空の色もさめけり人の皃 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
夕暮の氷柱は空の色をして 高木晴子 晴居
夕暮れの氷柱は空の色をして 高木晴子
夕桜夕とは空の色のこと 後藤立夫
子等去りてプールは空の色となる 和気祐孝
山の色空の色澄む暮石の忌 茨木和生 往馬
春めきてものの果てなる空の色 飯田蛇笏(1885-1962)
朝貌の今や咲くらん空の色 夏目漱石 明治四十年
朝顔に空の色まだ定まらず 前田育子
武蔵野は若草の色空の色 若草 正岡子規
渡り鳥空の色めきまだ覚めず 中村汀女
秋なれや木の間木の間の空の色 横井也有 蘿葉集
空に空の色よみがへり黄水仙 寺井治
空の色うつして雪の青きこと 高木晴子
空の色うつりて霧の染まるかと 深見けん二
空の色おもくて雀隠れかな 如月真菜
空の色くわしく書いて初日記 野復美智子
空の色そのまま貰ひいぬふぐり 近藤美好
空の色やさしくなりぬ良寛忌 鈴木良戈
空の色大地にうつり冬館 園山香澄
空の色映し矢車草ひらく 小神野藤花
空の色映りて晴るゝ氷柱かな 深見けん二
空の色松虫草の花にあり 新村寒花
空の色濡るると仰ぎ木の芽吹く 吉年虹二
空の色迫りて*はたはた飛ぶ構へ 村越化石
空の色透かしレースの傘開く 大塚とめ子
芦刈つて水に触れたる空の色 西村和子 かりそめならず
落葉焚く煙は空の色となり 吉野みな子
落鯊や風の出できし空の色 八木林之介 青霞集
蕣や夜は明きりし空の色 史邦 俳諧撰集「藤の実」
衣かへて青空の色めづらしや 更衣 正岡子規
見とれるやむかしの空の色を着て 高橋 龍
遠火事や焦がしあまれる空の色 畑耕一 露座
雑踏やラムネの泡と空の色 永方裕子「麗日」
雲よりも花に従ふ空の色 長谷川双魚 風形
鞦韆の切羽つまりし空の色 大豆生田伴子
風切り羽空の色持ち*しめ歩く 星野沙一
馬酔木咲く葛湯のやうな空の色 ふけとしこ 鎌の刃
龍胆は空の色より憂ひ濃き 青木重行
冬終る封筒の中空色に 有馬朗人 天為
空色は男の色よ新学期 田島秀子
麦藁を染めバラ色に空色に 後藤夜半 底紅
●海の色 
いまは昔卯木花咲く海の色 松村蒼石 雪
ねこの眼に海の色ある小春かな 久保より江
べら釣るや平家滅びし海の色 福島壷春(梛)
一椀に海の色あり鰤雑煮 務中昌己
凩や目刺に残る海の色(六年) 芥川龍之介 我鬼句抄
初茜夜のしづみゐる海の色 永田耕一郎 雪明
向日葵の翳りは海の色となる 渡辺富栄
向日葵は傾き初めぬ海の色 雉子郎句集 石島雉子郎
土用波すくえば海の色消えぬ 青木千秋
壺焼を待てる間海の色変り 森田峠 避暑散歩
如月のうすぎぬ展べし海の色 西村和子 窓
寒天乾きおのづから捨つ海の色 大石悦子 群萌
捨網の深海の色海桐の実 石井敏夫
春田一隅水漬きて海の色宿す 米谷静二
木がらしや目刺にのこる海の色 芥川龍之介(1892-1927)
木枯や吹き霽らしたる海の色 中川宋淵 詩龕
松蝉や林に透ける海の色 酒井左岸(ぬかるみ)
母は仮泊に似て逝きし春の海の色 友岡子郷 遠方
没日の後雪原海の色をなす 有働亨 汐路
浦島草霧をそだてて海の色 河野南畦 『広場』
海の日や風にも海の色ありぬ 小松初枝(春嶺)
海の色かすれかすれて枯芭蕉 かわにし雄策
海の色なほひきよせて髪洗ふ 坂巻純子
海の色に*いかなごの干し上りたる 宮城きよなみ
海の色に朝顔咲かせ路地ぐらし 菖蒲あや
海の色はたと濃き日よ小鳥来る 山田弘子 懐
海の色ぽんと弾けて花桔梗 内山靖子
海の色まだ定まらぬ立夏かな 中村苑子
海の色一日同じ牡蛎筏 坂本登美子
海の色今日より変る磯開き 佐藤信子
海の色変りて鯨回遊す 加地芳女
海の色変る鯛網しぼるとき 塩川雄三
海の色失はれ行く日短 稲畑汀子
海の色寒むざむ塗つてしまつた絵を抱へる 人間を彫る 大橋裸木
海の色捨て切つて紅ずわい蟹 森川敬三
海の色眼に溜めてをり氷庫守り 中村石秋
海の色秘めたる潤目鰯焼く 副島いみ子
海の色透かし透かしてさより来ぬ 太田貞雄
犬ふぐり海辺で見れば海の色 細見綾子 黄 瀬
猫の眼に海の色ある小春かな 久保より江
田植鯖海の色奪るはやて雲 角川源義「秋燕」
目をくばる雪のあしたや海の色 雪 正岡子規
短夜や空とわかるる海の色 几董「井華集」
稲の花海の色また変じつつ 上野可空
空と海の色二本どり毛糸編む 山田みづえ 木語
窓際に海の色溶く水中花 石崎径子「耳順」
章魚沈むそのとき海の色をして 上村占魚「鮎」
箸置きは海の色かな伊豆五月 神谷登志
茄子にまた海の色あり明易き 大串章
菓子食べし口春愁の海の色 阿部みどり女
蒼海の色尚存す目刺かな 高濱虚子
銹び墓に海の色なすいぬふぐり 財津立枝
雪とんで元日の空海の色 阿部みどり女 『雪嶺』
ラムネ海色カラリと夫の風樹の嘆 平井さち子 完流
初日まつ玄海色を得つゝあり 小原菁々子
地中海色に猫の眼春暖炉 神田衿子
日本海色に秋来て浮鴎 中戸川朝人 残心
朝市やまだ海色の鯖を糶る 角川春樹
海色の皮少し付け氷頭膾 蒲生光義
葡萄甘し海色の空に手が届く 阿部みどり女
蚊帳は海色母をもつつむ子守歌 中村草田男
鰤の眼の海色暁の鮮魚貨車 宮坂静生 青胡桃
麦秋や淡海色なる伊賀の空 大屋達治 龍宮
●水の色 
あぢさゐに水の色失せ炎暑来ぬ 野澤節子 黄 炎
かたちして孤屋までぞ水の色 炭 太祇 太祇句選後篇
さよならは三月の水の色で風に透く 鶴田育久
ひとの死へいそぐ四月の水の色 桂信子 黄 瀬
ふけし夜に水の色して走馬灯 大村美和子
一むれや水の色なる上り鮎 若鮎 正岡子規
一群の鮎眼を過ぎぬ水の色 鮎 正岡子規
夏ゆふべ失せゆくものに水の色 大石悦子 群萌
山水の色染みやすく雉子の聲 古舘曹人 砂の音
弱りたる鮎水の色はなれきし 中野 弘
手向けたる七個の池の水の色 飯田蛇笏 霊芝
手花火のこぼす火の色水の色 後藤夜半 底紅
旅立ちの母も日傘も水の色 鈴木鷹夫 渚通り
木の葉浮けて底見せまじき水の色 臼田亞浪 定本亜浪句集
枯蓮やかげろふほどに水の色 小澤碧童 碧童句集
棲む水の色もて鮎の売られけり 佐藤棗女
水にては水の色なる白魚かな 松瀬青々
水の色涼しくかげり初めにけり 高橋淡路女 梶の葉
水の色火のいろ二月近づきぬ 長谷川双魚 風形
水の色赤うなりてや鹿の声 千代尼
沼海老の水の色なる震災忌 雨宮きぬよ
浮鮎をつかみ分けばや水の色 才麿「後しゐの葉」
淀みゐる水の色して山椒魚 鈴木みよ
白魚の水に戻せば水の色 久木原みよこ
白魚の水の色して汲まれけり 伊藤通明
白魚の水の色より生まれくる 久野康子
秋冴えたり我れ鯉切らん水の色 秋の水 正岡子規
秋立つや村正に照る水の色 幸田露伴 谷中集
紫木蓮夕べの水の色吸へり 原田青児
蝶とぶや泳ぎたくなる水の色 岡本松浜 白菊
見ればただ水の色なる小鮎哉 正岡子規
見ればたゞ水の色なる小鮎哉 小鮎 正岡子規
赤草や夕日に重き水の色 重厚「類題発句集」
鉄のごとき水の色なり蘆の角 楠目橙黄子
鮎上り初めたる水の色となる 北川一深
黄菖蒲に暮れなむとする水の色 高澤良一 鳩信
水色は清貧の色夏燕 小野久仁子
水色は遠方の色花柘榴 桂信子 黄 瀬
●波の色 
さく花のあはひあはひの波の色 花 正岡子規
波の色変りてなびく海雲かな 山科晨雨
浜松に東風立ちそめし浪の色 青峰集 島田青峰
魚島の活気は波の色にさえ 平川悦子
女囚衣波色干されさわぎて四月くる 寺田京子 日の鷹
鰰の寄る波色となって来し 国安一帆
●山の色 
ちぎり絵や粧ふ山の色貼りて 近藤伸子
低山の色を惜しみて眠るなり 八木林之介 青霞集
凩の一夜に山の色奪ふ 宇川紫鳥
山の色けふむらさきや日向ぼこ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
山の色澄みきつてまつすぐな煙 山頭火
山の色空の色澄む暮石の忌 茨木和生 往馬
山の色釣り上げし鮎に動くかな 原石鼎「花影」
山姥の眸に冬山の色なせる 長谷川かな女 牡 丹
懐旧の野山の色を眉間にし 長谷川かな女 花 季
日当りてきし枯山の色ゆるぶ 清崎敏郎
春山の色に消えたる箒売り 中村苑子
月山の色なき風に吹かれをり 渡辺二三雄
熊笹に一雨ありし山の色 高澤良一 素抱
町はづれ秋遠山の色なつかし 山田みづえ
糸山の色なき風のほそきこと 夏井いつき
草餅の故山の色にふくれけり 平賀芙人
蕨見つけ初む山の色眼に馴れて 津田清子
路に買ふ秋果や山の色異にし 長谷川かな女 花寂び
遠山の色を濃うして春田かな 月舟俳句集 原月舟
野山の色に眠れぬ旅となりにけり 長谷川かな女 雨 月
露涼し幾重離りて山の色 松村蒼石 露
首相放送野山の色をゆるがしぬ 長谷川かな女 雨 月
とんぼ飛ぶ遠山色に翅すかし 山口青邨
四山色枯れてはやなき燕かな 雑草 長谷川零餘子
山色を尽しきるとき冬ざるる 稲畑汀子
機の音春山色を変へつつあり 瀧春一 菜園
水な上みへ夏山色をかさねけり 長谷川素逝「素逝句集」
病むことも伴侶か野山色づきて 赤尾兜子
蝉稚し山色翅にみなぎらせ 金子 潮
高野山色なき風を聴きゐたり 行方キヌヨ
●血の色 
*はまなすの実の血の色に五稜郭 石川宏子
かざす手に血の色透けて鵙日和 片山由美子 雨の歌
かざす手の血の色ぞよき啼く雲雀 臼田亞浪 定本亜浪句集
コロッセオまた血の色の西日さす 林翔 和紙
ドレスは血の色歌手に残暑来る 山本はじむ
万延元年の血の色に咲き曼珠沙華 伊藤いと子
万緑や血の色奔る家兎の耳 河合凱夫
国華てふダリア混血の色もてる 梶山千鶴子
城の花散り重なりて血の色に 小松崎爽青
指を透く血の色さくら蕊降れり 千代田葛彦
日に透ける鶏冠血の色原爆忌 大橋敦子
木歩の碑血の色に咲く寒椿 毛塚静枝
秋暑し血の色淡き爪を切る 杉本加津子
編笠の緒の血の色に風の盆 星野紗一
肩くだく花の嵐は血の色に 小松崎爽青
血の色のすももをたべて獣めく 荏原やえ子(狩)
血の色の夕焼に歓喜蚊食鳥 羽部洞然
血の色の蟹と後悔浮く谷間 阿部完市 証
血の色を何処にしまひし大白鳥 小泉八重子
鶏頭は根まで血の色血族なし 大井雅人 龍岡村
●湖の色 
五月富士屡々湖の色かはる 加藤楸邨
斑雪ダム湖の色に重なれり 平松周倭
新涼や山湖の色の靄離れ 乙字俳句集 大須賀乙字
枯葦の肥後に海なし湖の色 古舘曹人 能登の蛙
櫂の音冴えまさり湖の色ふかし 荻原井泉水
涼やかに湖の色ともガレの皿 白澤よし子
湖の色かはり~て時雨雲 高濱年尾 年尾句集
湖の色すでに寂びたり曼珠沙華 水原秋櫻子
火口湖の色吹き替はる秋の風 高澤良一 随笑
白鳥や空が映せる湖の色 石川桂郎 高蘆
紫雲英田を湖の色より低く見ぬ 米沢吾亦紅 童顔
釣舟に晩秋の湖色深む 金沢葭舟
雪解水注ぎ山湖の色となる 山田弘子 こぶし坂
霧こめて火口湖の色のぼり来る 中戸川朝人 尋声
●焔の色 
焔の色の鬼の衣や里神楽 山本勇武
窯太郎焔色うかがふ夜長かな 鈴木真砂女 夕螢
菜殻火の焔の色天の梅雨を招ぶ 栗生純夫 科野路
送火の焔色を消して透きとほる 古舘曹人
面売も面も焔の色火まつりや 町田しげき
●炎の色 
いま点けし炎色たちまち大文字 角川照子
かまつかに残る炎色や休み窯 清水 節子
反射炉に残る炎色や松の芯 鎌須賀礼子
桐榾の炎色やさしき月下かな 加古宗也
毛蟲焼く炎の色は蝶のいろ 栗島 弘
水のやうな母の炎色のお元日 岡本高明
花冷や窯変を生む炎色とも 文挟夫佐恵 雨 月
萌ゆるより炎の色をななかまど 菊地滴翠
陶片に炎の色ありし雁渡し 椿文恵
雪女炎の色は見せぬなり 櫛原希伊子
●花の色 
うすうすと玉紫陽花の色をなし 行方克己 知音
から絵もやうつすがんぴの花の色 季吟「山の井」
ぎぼうしの花色の雨つづきけり 平塚司郎
くちなしの花色なして梅雨のランプ 内藤吐天 鳴海抄
むめが香に濃き花色の小袖かな 許六 正 月 月別句集「韻塞」
らふそくの花絵花色春待てり 神戸サト
ネハン会や沙羅蒲団の花の色 涅槃会 正岡子規
一筋のうすき花色花うぐひ 浜岡延子
世の花の色に染めたるりんごかな 太祇
体内の地図を菜の花色にする 岡村行雄
吹く風に花の色ある梅雨入りかな 井上康明「四方」
夕暮の菜の花色となつてゆく 唐笠何蝶
夕雲も花の色帯ぶ川堤 高澤良一 宿好
太陽に遠き花色花茗荷 大橋敦子
室花の色はみ出して花舖はあり 山本歩禅
家々や菜の花色の燈をともし 本下夕爾
寒紅は末摘む花の色なりし 下村梅子
射干にその花色の蝶の来る 橋爪靖人
屠蘇袋花色絹の匂ひ哉 屠蘇 正岡子規
散り浮いて合歓の花色まぎれざる 高浜年尾
時化あとの萩あらたなる花の色 河野静雲 閻魔
木槿の花の色の血潮の馬のゆき 阿部完市 軽のやまめ
林檎の花色の黒きはまじめ妻 川崎展宏
水音もあんずの花の色をして 草間時彦 櫻山
活けてより咲く燕子花色淡し 朝倉和江
流洟や山茶花色にかぎらるる 斎藤玄 狩眼
温室の花色失ひて来る痛み 朝倉和江
無駄花の色美しき南瓜かな 小田嶋野笛「華甲」
甲斐ヶ嶺の庭はこぞりて花の色母が花桃遅れて咲く 今野寿美
男郎花色のきれいな蝶が来し 上野章子
病室へ来し紫陽花の色変はる 朝倉和江
盆花の色よき花の取り合はせ 高澤良一 寒暑
紫陽花の色かふるべき日取哉 紫陽花 正岡子規
紫陽花の色それぞれに路地住まひ 小林照男
紫陽花の色に咲きける花火かな 高橋淡路女 梶の葉
紫陽花の色に省略なかりけり 津村典見
花の色はからび果てたる冬木かな 上島鬼貫
花の色は水上にあり夜市川 宇多喜代子
花の色残りて薫る菊膾 高木 一水
花の色草の色なる雛あられ 飛高隆夫
花色のはなし一ケをかざる支店 阿部完市
花色の御納戸いろに雁の空 長谷川久々子
苦潮や浜木綿の花色を変ふ 長尾正樹
菜が咲いて菜の花色の海の月 数馬あさじ
菜の花の色こそ濃けれ花御堂 松藤夏山 夏山句集
菜の花の色となりゆく乳母車 小泉八重子
虚と実と桔梗終ひの花の色 河野多希女 月沙漠
負け嫌い石楠花の色捨てていく 大西恵
酔えぬ夜は菜の花色の夢が欲し 橋石
雪の上桃花の色の霞かな 松瀬青々
雪の下名のらで寒し花の色 越人「鵠尾冠」
雹降るや冽々として花の色 野村喜舟 小石川
青空へとんで落花の色うする 辻恵美子
鷄頭や油ぎつたる花の色 鶏頭 正岡子規
●雲の色 
人形に初東雲の色の髪 鈴木伸一
探梅の夕雲色を加へそむ 綾部仁喜 樸簡
雲の色の象育て父空にいる 阿部完市 絵本の空
雲の色厄日しづかに動き出す 阿部みどり女
雲の色地の色毛糸編みからめ 依光陽子
雲の色野分めく日や母訪はな 小林康治 四季貧窮
鯉の色雲の色似て臘八会 神尾季羊
●暮色 
あいつも一生砂利採暮色に火を點し 細谷源二
あぢさゐの暮色股間を重くせり 原裕 葦牙
いかるがの暮色連翹のみ昏れず 和田悟朗 法隆寺伝承
うきくさの余白の水の暮色かな 桑原立生
かたまりて暮色となりし涼み舟 桂 信子
きつつきのひとこゑ森の暮色呼ぶ 大島民郎
ぐんぐんと暮色にまぎれ根釣人 後藤洋子
でで虫の涙にありし暮色かな 岩崎宏介
のこりゐる海の暮色と草いきれ 木下夕爾
ひとりゐてひとりの暮色草取女 宮田正和
ひとり独楽まはす暮色の芯にゐて 上田五千石
また今日の暮色に染まる風邪の床 能村登四郎
むらさきは須臾に暮色へ桔梗の芽 篠田悌二郎 風雪前
もがり笛塔の暮色に仕る 藤田湘子 てんてん
わかさぎを薄味に煮て暮色くる 桂信子 黄 瀬
アイヌかなし秋の暮色を茣蓙に織り 林翔 和紙
ラガー等の土の色はや暮色帯ぶ 宮坂静生 青胡桃
一湾に暮色ただよふ懸煙草 渡会昌広
中坪の早き暮色や散紅葉 野村多賀子
冬かもめ波の牙のみ暮色溜め 河野南畦 湖の森
冬すでに暮色の中の杉丸太 関戸靖子
冬の菊暮色に流れあるごとし 上田五千石 森林
冬薔薇暮色に染みて眠りそむ 田村登喜子
冷し馬暮色のなかに眼をひらく 松澤鍬江
冷す牛暮色に耐へず啼くなめり 篠田悌二郎 風雪前
初しぐれ峡の暮色を急かせけり 高橋利雄
友さきに風邪声に海の暮色言ふ 宮津昭彦
墓囲ふ藁にしぐるる暮色かな 門前弓弦子
夏暮色耳より大き耳飾り 宮坂静生 青胡桃
大屋根を暮色下りくる紫木蓮 西村 旅翠
大年の暮色も拭ひ難くなる 相生垣瓜人 明治草抄
大白く刈田の暮色抜けきたり 宮津昭彦
大綿虫を上げおだやかに暮色あり 山口青邨
天窓の暮色しづかに冬籠 望月百代
奥宮は朝より暮色眼細鳴く 豊長みのる
女郎蜘蛛暮色へ銀の糸を吐く 岐志津子「駆けてきて花野」
妻と雪嶺暮色に奪われまいと白し 細谷源二
孕鹿暮色をまとふごと座る 木村淳一郎
寒星や暮色が海を押しせばめ 林翔 和紙
寒雀暮色ふりきる翅音せり 村越化石
寒雁の翅に暮色は重からずや 大野林火
寒鮒の尾が地を叩く暮色かな 斎藤梅子
山を見てちらつく暮色あたたかし 松澤昭 神立
山影は暮色のはじめ雪婆 山田弥寿子
山法師夕暮色の七曲り 中丸まちえ「新山暦俳句歳時記」
帯をさらに暮色が巻けり刈田なか(秋父にて) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
干す網に暮色もつるる霾ぐもり 高橋 好温
廻礼を一つ余せし暮色かな 武内夕彦
心貧し冬田は昼も暮色満つ 有働亨 汐路
悴める心にともす*えり暮色 鈴木鷹夫 大津絵
托鉢僧冬の暮色に消えにけり 魚田勇夫
抽斗に樹林の暮色冬の雷 中島斌雄
拭きて掃きてのこる一日の菊暮色 古賀まり子 緑の野
春めくといへば暮色も春めきて 相生垣瓜人 微茫集
暮色いま海より蒼し探梅行 中村祐子
暮色てふ色たをやかに琴始 杉村 惇
暮色もて人とつながる坂二月 野澤節子
暮色より暮色が攫ふ採氷馬 齋藤玄 『玄』
暮色より足を引きぬく田草取 中村翠湖
暮色をともす工事現場のひもじい灯 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
暮色来て咲くとは見えず藺田青し 大島民郎
曼珠沙華咲ける限りの暮色澄む 内藤吐天 鳴海抄
曼珠沙華寺領の暮色拒みけり 大場榮朗
朝より暮色の障子蟇鳴ける 山口草堂
東京の暮色を好むかいつぶり 橋本修
東山いく重の暮色水を打つ 村田 脩
松過ぎの天より垂るる暮色かな 櫛原希伊子
林中の暮色にまぎれ花楝 樋笠文
枯芦暮色音すべて消ゆ刻のあり 川村紫陽
枯茨に指刺されたる暮色かな 田中冬子
枯蓮の池に横たふ暮色かな 高浜虚子
柳鮠土橋の下の暮色かな 上村占魚 鮎
椎さやぎことに栗咲く暮色かな 小林康治 玄霜
橇の子に暮色三人は淋しき数 千代田葛彦 旅人木
櫨紅葉熔岩原わづかなれど暮色 加倉井秋を 午後の窓
残りゐる海の暮色と草いきれ 木下夕爾
水の面の暮色いつより燕子花 根岸善雄
水仙や暮色漂ふて鯉動く 飯田蛇笏
水洟やわれも暮色の一つとなる 宮坂静生 青胡桃
水甕に雪降りつのる暮色かな 近藤一鴻
氷上に鳶とまりをる暮色かな 木村蕪城 寒泉
氷上の暮色ひしめく風の中 廣瀬直人
氷上の雲の暮色の崩れざま 古館曹人
氷上渡る一人と見れば暮色かな 楠目橙黄子 橙圃
永き日の写楽は顎に暮色溜め 宇佐見蘇骸
汽車過ぎていよいよ暮色一冬木 森澄雄
河とおなじ暮色まとへる汝を愛す 林田紀音夫
河童忌や暮色の田端三丁目 石原素子
波音の暮色まとへり袋掛 西村博子
泥鰌掘りの暮色の顔に見送らる 大野林火
洗ひたる障子ばかりの暮色かな 五所平之助
洛北の暮色をたたへ苔の花 長谷川双魚
深大寺暮色俄かや齋のあと 下村ひろし 西陲集
湿原に暮色を誘ひ吾亦紅 小池龍渓子
灯ともすをためらふかなかな暮色かな 小田まさる
灯点さぬ部屋に暮色の白障子 澤井洋子
炭俵一つ暮色の中に立つ 鈴木鷹夫 春の門
照鷽や杉の暮色のとどこほり 鈴木太郎
独楽競ふ子に境内の暮色かな 坂口麻呂
猟銃音渓をさまよふ暮色かな 石田阿畏子
獅子舞に山の手暮色雪ふり出す 風生
甘柿の方へ暮色の濃き葬り 神尾久美子 桐の木
甘藷を掘ることを暮色の中に止む 山口誓子
田鶴舞へば暮色にはかに八代村 高橋重子
白梅の暮色になじむ経机 山本かずえ
白梅の薄紅梅の暮色かな 片山由美子
白菊といへど暮色をまとひたる 新井ひろし
白菊のほとりの暮色かりもがり 豊長みのる
白鳥に到る暮色を見とどけし 細見綾子 黄 瀬
真菰野の暮色が隔つ字二つ 山口草堂
硝子吹く暮色の火玉蜜柑色 三谷昭 獣身
秋耕のわれも一人の暮色負ふ 中村菊一郎
秋茄子の暮色にまかす黒びかり 藤岡筑邨
科よくて暮色に吸はる風の盆 下山芳子
籾殻火千曲の暮色にはかなり 皆川白陀
紅芙蓉暮色裏山より落ち来 石原八束
紙漉女水の暮色をしたたらす ほんだゆき
網の蜘蛛の暮色まかせのうしろすがた 池田澄子 たましいの話
綿虫といへど堪へゐる暮色かな 小島千架子
群れ鴨の沼の暮色を曳きて飛ぶ 阿川みゆき
羽子の白いまだ暮色にまぎれず突く 野澤節子
芒原暮色を軽きものとして 山田弘子 螢川
芦火澄み暮色は山根より湧けり 小松崎爽青
花の暮色ぼさりとかぶる温るみかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
花ゆすら白し暮色をうべなはず 竹下しづの女句文集 昭和二十四年
花擬宝珠暮色とゞまりをりにけり 星野立子
花柘榴すでに障子の暮色かな 加藤楸邨
花茣蓙の花に影なき暮色かな 嶋田麻紀
花茣蓙の花の暮色を座して待つ 福永耕二
茫々と浅蜊の浜の暮色かな 村田 脩
菜の花や暮色蹴散らす岬の波 成田千空 地霊
落穂さながら辞書に拾ふ語暮色まみれ 宮津昭彦
落葉掃く京の暮色をまとひつゝ 清水忠彦
葱引くや颪の中にある暮色 野村喜舟 小石川
葱洗ふすでに暮色の手もとかな 清水 美恵
蒜の暮色に干され空海忌 澤田治美
蓮根掘地より暮色を引きいだす 有働亨 汐路
薔薇白し暮色といふに染りつつ 後藤夜半 底紅
藤灯りぬ暮色月下を歩み去る 零餘子句集第二 長谷川零餘子、長谷川かな編
蘭の花暮色の冷えにゐて匂ふ 虎雄
蜉蝣の飛翔は暮色より淡し 富田潮児
蝙蝠がへらへら暮色つくりだす 石丸寿美子
螻蛄鳴いて木曾路の暮色地より湧く 原与志樹
街頭にはじまる暮色雪もよひ 中原 歌子
貨車の背の遠ざかるまで冬暮色 三谷昭 獣身
辛夷散り暮色流るる胸の中 小松崎爽青
迂回兵の出没柿の暮色かな 久米正雄 返り花
遷子忌とおもふ暮色の雪もよひ 大島民郎
野火消えてたゞの暮色となりにけり 石井とし夫
鈍痛を訴える河口暮色も尽き 林田紀音夫
鈴虫にいくらも降らず暮色なる 目迫秩父
鉄塔の暮色にしづむ寒さかな 小峰松江
障子貼りひと日の暮色ふやす母 中村菊一郎
雁や泣きし眼隈とも暮色とも 中戸川朝人 残心
雪ちらつく暮色のふかきところより 三谷昭 獣身
雪嶺と暮色のあひを風吹けり 長谷川双魚 風形
雲暮色影絵のごとく子等遊び 内久根眞也
電線の雨滴暮色に沈む妻 大井雅人 龍岡村
霧来れば暮色のごとし雪の層 栗生純夫 科野路
霰来て喪の元日の暮色急 下村ひろし 西陲集
露草のまはりの暮色后陵 長谷川双魚
青柿に子盗ろの暮色下りてくる 佐野まもる
青葉木菟暮色に沈む最上川 竹村隆雄
青葉木菟鳴いて山ノ手暮色かな 深川正一郎
青饅や暮色重なりゆく故山 加藤燕雨
馬追や山の暮色を日がはこぶ 雨宮抱星
駅までに秋の暮色に追ひ抜かる 誓子
鴨渡る暮色はずいと沼の上 小檜山繁子
鶲去りにはかに暮色動きけり 冨山敏夫
鶲見しあとの暮色に人帰す 横山房子
鷺飛んで暮色をひらく代田掻 馬場移公子(馬酔木)
鹿去りて暮色暮風の寺の秋 椎橋清翠
鹿鳴いて奈良の暮色の塔いくつ 磯田とし子
麦踏にさつと移りし暮色かな 吉武月二郎句集
黄泉よりの熊野の暮色走馬燈 町田しげき
黒松の暮色の中の端午かな 中山純子
●春の色 
なんとなく今日から春の色の空 小林しげと
みちのくに春色おそし牧の草 炎天
一*ちゅうの香の春色草の庵 後藤夜半 底紅
先生に春の色問ふ別れかな 秋篠光広
古町の春色の濃きところかな 日野草城
名の寺の春の色なる花菜漬 角川春樹
山茱萸の黄を春色の出入口 後藤比奈夫
春色と云ふ幽かなるもの動く 伊藤柏翠
春色に染まりきれずにゐて独り 岩崎清子
春色に置かるゝものゝ行燈かな 白水郎句集 大場白水郎
春色のうごきそめたる棚田かな 行方克巳
春色の人にうつらふ真昼かな 尾崎紅葉
春色の沖ゆく舟と歩をあはす 原裕 青垣
春色やさずかる古稀の齢抱き 長谷川かな女 花 季
春色や海高くして丘低し 徳永山冬子
春色や甕さゝへる朱の柱 野村喜舟 小石川
母の背へ庭木春色漂はす 原裕 葦牙
洛陽の春色動く埃かな 春 正岡子規
潮を聴く耳春色の疾風なか 原裕 葦牙
濠の水松をうつして春の色 青峰集 島田青峰
空にまづ春の色来ぬ鰍獲り 矢島渚男 延年
雨上り春色俄なる山河 安原良子
青黴の春色ふかし鏡餅 有風
骨壺に入る春色の喉仏 篠遠良子
魚裂いて海の春色鮮烈に 河野南畦 湖の森
●夏の色 
それ~の花に晩夏の色ありぬ 高木晴子 花 季
十五年目の夏の色ロゼワイン 山田弘子 懐
夏の色なり宝塚大劇場 山尾玉藻(俳壇)
日暮れ時思わぬ夏の色のぞく 石川キイ
●秋の色 
ひとめぐりして秋色をいふばかり 石田郷子
エルク佇つかなしき秋の色の中 ハドソン靖子
オカリナに湖秋色を深めける 木下ふみ子
一山や秋色々の竹の色 夏目漱石 明治四十三年
井戸端の秋色桜雫せよ 桜 正岡子規
佃秋色烏賊干すに似て布乾き 山口彩子
写生する画布に秋色ぬり込めり 鈴木裕子
冬瓜や霜ふりかけし秋の色 秋の霜 正岡子規
初秋の色なになにぞ山の川 飴山實 『花浴び』以後
啼く猿に峰の秋色にはかなり 松本幹雄
憩ふ人秋色すすむ中にあり 鶏二
楽焼の碗の秋色持ち帰る 上田日差子
石もまた晩秋の色持ちゐたり 大畑淑子
砂丘秋色あれは乳房ここは臍 鈴木鷹夫 春の門
秋の色糠味噌壺も無かりけり 芭蕉 (庵に掛けむとて句空が書かせける兼好の絵に)
秋色か木の間にあるは夕影か 高木晴子 花 季
秋色のど真中なる石舞台 辰己セイ
秋色の南部片富士樹海より 西本一都
秋色の深浅は乳のにほひにも 飯田龍太
秋色や二つの眼鏡使ひわけ 堀井和子
秋色や母のみならず前を解く 三橋敏雄 眞神
箔のない釈迦に深しや秋の色 鬼貫 (元政旧庵)
芝生にもある秋色といへるもの 比奈夫
若狭秋色まぶた裏までふるさとよ 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
裏門に秋の色あり山畠 支考 (吏明亭)
鮠釣るや秋色ふかき湯檜曽川 伊東宏晃
●秘色 
あかつきの秘色凝らせり池の蓮 加藤耕子
あぢさゐの秘色(ひそく)天より貰ひけり 高澤良一 素抱
すがすがと秘色の風の端午かな 石塚友二
御陵や秘色かがよふ今年竹 高瀬 史
春ふかき秘色といへる襲(かさね)の名 筑紫磐井 野干
木枯を秘色としたり白襖 齋藤愼爾
秘色とは秋蝶の黄と思ひけり 宗田安正
秘色見る外は畠の白椿 松瀬青々
絵硝子の秘色をぬすむ揚羽蝶 朝倉和江
●色鳥 
ちら~と色鳥のくる伊豆の風呂 飴山實 辛酉小雪
みどり児のゆめ色鳥が来て醒ます 古市絵未
ゆふいんに妻と遊べば色鳥来 高澤良一 鳩信
オカリナの音は紬色鳥渡る 小泉静子
三囲の杜色鳥の飛び交へり 山口耕堂
主婦機嫌庭に色鳥よく来去る 星野立子
主留守色鳥遊びやがて去る 高浜虚子
全山のほむらを曳きて色鳥は 橋本榮治 麦生
切れ雲に色鳥や川砂光る 内田百間
大注連に色鳥の来て諏訪大社 有森一雄
姿ほど声の色鳥らしからず 橋本くに彦
寶物に加え色鳥蔵す寺 高澤良一 宿好
山一つ買うて色鳥放ち度し 岩永三女
川原の砂ほこり色鳥渡る 内田百間
弟を久しく忘れ色鳥来 宇佐美ちゑ子
懸崖に色鳥こぼれかかりたる 松本たかし
日毎来る色鳥の名を問はれしも 荒巻 大愚
枝うつりする色鳥に空深し 片岡奈王
枝こぼれしつつ色鳥木々渡る 長谷川草洲
枝移り来て色鳥の貌を見せ 深見けん二 日月
枯れ澄みて色鳥移るひかりあり 岡田貞峰
母に蹤くや色鳥こぼれやまぬなり 高橋伸張子
水際にきて色鳥の色こぼす 津根元潮
瀬を早み色鳥の声はるかにす 臼田亜浪 旅人
磨崖仏色鳥の声経と聞く 内田美津代
神楽殿のごとき餌台色鳥来 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
空腹感戻らば奇蹟色鳥よ 相馬遷子 山河
等距離に色鳥を置き君と僕 増田春恵
絶壁にまた色鳥がひるがへり 八木林之助
色鳥がそこに炒飯こきまぜよ 佐々木六戈 百韻反故 初學
色鳥がひとりぼつちの妻に来る 細川加賀
色鳥が一日あそぶ父の谷 原裕 青垣
色鳥が寄り古希々々と喜寿々々と 阿波野青畝
色鳥が小首に枝を見上げたる 中村草田男
色鳥が来てゐる大和言葉かな 細川加賀 『玉虫』
色鳥とよびて愛しむこころかな 富安風生
色鳥と呼びて愛(かな)しむ心かな 富安風生
色鳥に乾きてかろし松ふぐり 原石鼎
色鳥に女かなしびの眉を描く 三橋鷹女
色鳥に心遊べる主かな 高浜虚子
色鳥に杜の校舎の時の鐘 島村元句集
色鳥に狭庭の古色深まりし 井原潤子
色鳥に袖を引かれぬ翁道 櫛原希伊子
色鳥に鳥の道あり奥吉野 塩川雄三
色鳥のかくれて見えぬ廂かな 高浜虚子
色鳥のこゑの高まる留守居かな 井上雪
色鳥のこゑを引出す梅擬 高澤良一 宿好
色鳥のこゑ落すべし香時計 岸田稚魚 筍流し
色鳥のなりは何れもこがら哉 貞徳
色鳥のねし木なるべし夕月夜 玉川湃山
色鳥のまつ先に来し一丁目 名和せいじ
色鳥のみな枝に居る静けさよ 岩田由美 夏安
色鳥のやうな吾娘連れ山遊び 渡辺恭子
色鳥のよりどころとし一碑建つ 紀藤道女
色鳥のわたりあうたり旅やどり 園女
色鳥の一羽がこぼれ去来墓 大石悦子 群萌
色鳥の一羽につゞく七八羽 上野 小百合
色鳥の中のひとつをわが愛す 高橋睦郎 舊句帖
色鳥の五六七八まだまだ来 馬場龍吉
色鳥の入りこぼれつぐ一樹かな 朝妻力
色鳥の出入りゆかし御室御所 高澤良一 宿好
色鳥の去年と異なる何を見し 松田峯白
色鳥の又今日も来て又掃除 上野章子
色鳥の吹かれしやうにゐずなりぬ 杉浦典子
色鳥の啄みをるは隠れなき 水原秋櫻子
色鳥の声こぼれゐる筆供養 宮川杵名男
色鳥の声ひき合へる滝谷寺 大平栄子
色鳥の尾羽のきらめき来ぬ電話 恩田侑布子
色鳥の山荘人の稀に来る 高浜年尾
色鳥の庭に幸せ振りまいて 林克己
色鳥の影のはじける寺障子 伊藤伊那男
色鳥の抜羽ひろひぬ瑠璃濃ければ 稲垣きくの 牡 丹
色鳥の散りて磧の砂の月 内田百間
色鳥の映ることあり山葵沢 瀧澤伊代次
色鳥の暮れて川原の砂の月 内田百間
色鳥の曳き来し色を枝に置く 高石幸平
色鳥の来しよと主婦や襷がけ 星野立子
色鳥の来てかなしみの碑ぞ立てる 有働亨
色鳥の来てわが庭の雨にぬれ 山口青邨
色鳥の来てわが書屋のぞき去る 深川正一郎
色鳥の来てゐる絵島屋敷かな 伊藤伊那男
色鳥の来てをり晴のつづきをり 森澄雄
色鳥の来て佛敵の名の悲し 水原秋櫻子
色鳥の来て禅堂の黙ゆるむ つじ加代子
色鳥の来て遠き川遠き橋 岸田稚魚
色鳥の来る日の庭の風甘し 伊藤敬子
色鳥の来る日来ない日山日和 高峰悦子
色鳥の枝うつるいろこぼれけり 高橋潤
色鳥の枝うつるとき色こぼし 吉田圭井子
色鳥の枝から枝へ色うつし 白川あつ子
色鳥の枝移りては日を散らす 長沼紫紅
色鳥の棲みつく庭にある動き 中井句鳰
色鳥の残してゆきし羽根一つ 今井つる女
色鳥の目も覚めやらぬ御神域 高澤良一 素抱
色鳥の真顔横顔つくし去る 皆吉爽雨
色鳥の粲然として林を出つ 尾崎紅葉
色鳥の群れ散つてより風の谷 鷲谷七菜子 花寂び
色鳥の羽裏を見せて枝移る 竹股かず子
色鳥の羽音しぐれのいくうつり 高橋馬相 秋山越
色鳥の羽音のなかの父の墓 大木あまり 火球
色鳥の舌は真黒かも知れぬ 関口眞佐子
色鳥の色のよぎりし水の上 依田秋葭
色鳥の色を点ずる邑の口 上田日差子
色鳥の色借景へ紛れたる 山下美典
色鳥の視線の先へ先へ飛び 小林草吾
色鳥の諸音熱くす山の襞 原裕 青垣
色鳥の連呼遠のく大廂 高澤良一 素抱
色鳥はわが読む本にひるがへり 山口青邨
色鳥は仁和寺の稚児に来りけり 尾崎迷堂 孤輪
色鳥は山から来たり宗猷寺 高澤良一 素抱
色鳥も乳歯の二本のぞき来よ 鈴木節子
色鳥も来ぬ絶壁の山鴉 大島民郎
色鳥も来よ積み石の神婢墓 下村ひろし 西陲集
色鳥も讃仏の声加へたり 野村慧二
色鳥やLESSON7詩の章 辻田克巳
色鳥やきらきらと降る山の雨 草間時彦
色鳥やことことことと落し蓋 八染藍子
色鳥やことばの泡かも潮満ち来る 安井昌子
色鳥やだるき柱を授かりて 飯島晴子
色鳥やひとつ箪笥に妻のもの 石田勝彦
色鳥やみんなが選ぶAランチ 内田美紗 誕生日
色鳥やむかし*かがいの御幸原 沢木欣一
色鳥やむしろすがしき朝の飢 金子 潮
色鳥やわが靴のいつ磨かれし 福永耕二
色鳥やガス灯残る明石町 堀井より子
色鳥やケーキのやうなベビー靴 轡田進
色鳥やステンドグラスに露西亜文字 和気久良子
色鳥やナプキン尖る朝の卓 橋本榮治 麦生
色鳥やピアノ塾ある浜通り 千田一路
色鳥やベランダに置く子供椅子 鈴木貞雄
色鳥やラッパぴかぴか行進す 吉原文音
色鳥や一夜に晴れし神の山 深見けん二
色鳥や上げ汐に淀む橋の影 内田百間
色鳥や何れも暗き木の眉間 河原枇杷男 流灌頂
色鳥や八千穂の土牛美術館 安永圭子
色鳥や公園横の帽子店 福島壺春
色鳥や切手買ふにも選りごのみ 松倉ゆずる
色鳥や切株はもう年とらぬ 中村明子
色鳥や勝てないものにある齢 雨宮抱星
色鳥や古沼二つ睦み合ひ 手塚美佐 昔の香
色鳥や塩の店ある峠口 皆川盤水
色鳥や大工荷を解く手児奈堂 中橋文子
色鳥や女ばかりの露天風呂 小俣由とり
色鳥や女体へ続く*ぶな林 小川斉東語
色鳥や妻来るはずの曲り角 牧野桂一
色鳥や子に新しき楽譜買ひ 市ヶ谷洋子
色鳥や小学生は学校へ 今井千鶴子
色鳥や山に恋々生丸太 百合山羽公 寒雁
色鳥や山の電線のびやかに 茨木和生 遠つ川
色鳥や山家につかふ水の音 鈴木康久
色鳥や庭に滝あり紅葉あり 島村元句集
色鳥や心ひそかに待つ手紙 片山由美子 水精
色鳥や応へなき空広すぎる 大山芳子
色鳥や折目通りに地図畳む 中川 忠治
色鳥や新隣人の新夫妻 百合山羽公 寒雁
色鳥や旅信一枚母の名に 田中菅子
色鳥や日のぬくもりの裁鋏 斎藤道子
色鳥や明治のままの疎水橋 桂樟蹊子
色鳥や書斎は書物散らかして 山口青邨
色鳥や木の齢にも老と妙 上田五千石 琥珀
色鳥や末社の並ぶ松の中 前田普羅
色鳥や朽木足裏に崩れたる ふけとしこ 鎌の刃
色鳥や村起しなる句碑千基 堤信彦
色鳥や枕はづして父病めり 小川千賀
色鳥や森は神話の泉抱く 宮下翠舟
色鳥や橋を翼の島の景 中本柑風
色鳥や橋長く山々近し 内田百間
色鳥や浅間をかくす松の枝 深見けん二 日月
色鳥や海すみずみのうごきゐし 柚木紀子
色鳥や淋しからねど昼の酒 上田五千石 琥珀
色鳥や潮を入れたる浜離宮 宇田零雨
色鳥や煉瓦学部の明治ぶり 桂樟蹊子
色鳥や琴糸紡ぐ余呉の里 杉阪大和
色鳥や病臥といふはもの見えて 橋本榮治 越在
色鳥や砂踊りゐる柿田川 鈴木朗月
色鳥や碧天にあげて煙細し 島村元句集
色鳥や空ほからかに散り栄ゆる 尾崎紅葉
色鳥や窓開け放つ罅の倉 遠藤英子
色鳥や窯惜しみゆく五条坂 桂樟蹊子
色鳥や笹の干さるる花背村 山下喜子
色鳥や筵一枚夕日の座 村越化石 山國抄
色鳥や籠ごと量る赤ん坊 美濃部英子
色鳥や肩触れて晩年の母と思ふ 山田みづえ
色鳥や舐めて今年の味噌の出来 藤田湘子
色鳥や袂にかろきもの入れて 横地妙子
色鳥や読書も縫ふも縁先に 福永みち子
色鳥や誰も気付かぬおしゃれして 新家保子
色鳥や谺をつくる山のこゑ 雨宮抱星
色鳥や買物籠を手に持てば 鈴木真砂女
色鳥や道の消えたる古峠 野村喜舟 小石川
色鳥や長寿の葬は婚に似て 高橋悦男
色鳥や離宮に遠き栄華の世 大橋敦子 手 鞠
色鳥や霧の晴れゆく相模ダム 中川冬紫子
色鳥や霧の晴間の日の匂ひ 大場白水郎 散木集
色鳥や饑(ひだる)くなりし草の丈 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
色鳥や鴫立庵の白障子 中川冬紫子
色鳥や黒姫よりの雲の帯 久米正雄 返り花
色鳥をききわけて山深みけり 大本美沙
色鳥をよそ目に煤寒雀 竹下しづの女句文集 昭和十五年
色鳥を含みたる木に手を触るる 川口重美
色鳥を彩るは樹々かも知れず 黒川花鳩
色鳥を待つや端居の絵具皿 松瀬青々
色鳥を秘湯巡りの道すがら 高澤良一 寒暑
色鳥を見かけしよりの旅帰り 稲畑汀子
色鳥を見し眼を恋の書に戻す 藤田 夢
色鳥を見て屑籠をからつぽに 正木ゆう子 静かな水
色鳥を遊ばせおはす慈母観音 原田衣子
色鳥来これだけ森のもみづれば 高澤良一 随笑
色鳥来吉野太夫の墓とこそ 小路智寿子
色鳥来爺さん婆さんぱりつとす 武田伸一
英語で鳴くハイドパークの色鳥よ 成瀬櫻桃子 素心
足寺の跡わずかに高し色鳥来 高井北杜
逆光に色鳥彩を失へり 千原叡子
逆光を色鳥戻り来たりけり 湯川雅
雨の庭色鳥しばし映りゐし 中村汀女
雲を滾れ来し色鳥に露台あり 久米正雄 返り花
青空に色鳥しみる眠りかな 高野ムツオ
●色なき風 
うつせ貝色無き風の籠りけり 青木重行
かわらけを色なき風にまかせけり 渕 万寿子
ふるさとの城趾色なき風の中 後藤邦代
ほろほろと酔うて色なき風のなか 田中湖葉
みどり女逝き色無き風の渡りけり 松本澄江
カリヨンの色なき風に鳴る夕べ 水原 春郎
一管を出でて色なき風となる 小野恵美子
万華鏡のぞく色なき風の中 橋本榮治 逆旅
上絵師の看板色なき風に長し 長谷川かな女 花寂び
丸窓に色なき風の通り抜け 田中康委子
五柳先生色無き風に吹かるる圖 高澤良一 ももすずめ
佇むや吾も色なき風の中 小川 恵
匂ひなき色なき風邪に染まりけり 相生垣瓜人 微茫集
厨窓開ければ色なき風に会ふ 阿部喜恵子
受胎告知色なき風に顔そむく 小池文子 巴里蕭条
口開けの味噌に色なき風入れて 武居國子
句碑の文字色なき風に瞬ける 佐藤晴生
和紙一枚色なき風に裏返す 嶺治雄
喪の昼に坐る色なき風の中 角川春樹
喪服着て色なき風にふれてをり 大森理恵
回想や色なき風に身を浸し 大橋敦子 勾 玉以後
埴輪の目色無き風を通しけり 工藤弘子
大仏の顔に色無き風通ふ 関口鉄人
大原や色なき風の女院みち 大東晶子
大風車色なき風を連れ廻る 小西貴子
夫逝きて色なき風の中にあり 高野路子
姑とゆく色なき風の夫の墓 町田敏子
姥ひとり色なき風の中に栖む 川崎展宏
嬰抱かぬ胸に色なき風あふれ 岡部名保子
宍道湖や色なき風はさざ波に 渡辺恭子
寂として色なき風の淀城址 中江はるみ
小日向の色なき風に隠る声 藤村瑞子
山城と川城色なき風の中 竹中碧水史
山車競ふ色なき風が彩を生み 雨宮抱星
山頂の色なき風に五湖五彩 杓谷多見夫
島唄の手ぶり色なき風運ぶ 北川かをり
年行司色なき風を巻き過ぎて 高澤良一 素抱
愛の詩色なき風にのせてやり 宮崎貴子
政争を遠くに聞きて色なき風 赤尾恵以
旅果の眼閉づれば色なき風 青柳志解樹
月山の色なき風に吹かれをり 渡辺二三雄
朱雀門色なき風を通しけり 山下佳子
桟橋の色なき風や帽を脱ぐ 猪俣壽水
梓川白し色なき風の過ぐ 志摩芳次郎
欄干に寄れば色なき風のこゑ 深沢暁子
歌枕色なき風と訪ふことに 山崎房子
流されし畑や色なき風の中 本間静江
源流に色なき風の生れけり 笹本カホル
漣の化石色なき風が撫づ 下村ひろし 西陲集
火宅にも色なき風の立ち初めし 和田祥子
烏賊干して色なき風の鯵ヶ沢 大網信行
玉堂の画室色なき風とほる 清水衣子
玻璃みがく色無き風の見ゆるまで 村山志げ子
登り来て色なき風や鞍馬寺 石山民谷
百日紅色なき風となりゆくや 林原耒井 蜩
石棺に色なき風の出入りかな 都筑智子
磨かれし廊の色なき風と猫 松本ああこ
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人
籠り居の色なき風になぐさまず 杉山岳陽
糸山の色なき風のほそきこと 夏井いつき
縁の日に色なき風のわたるかな 上川井梨葉
翔つものに色なき風の訣れかな 飯田綾子
聖堂に色なき風とともに入る 澤田緑生
自転車の神父色なき風に乗る 佐川光
色なき風に貧民の買ふ赤き花 長谷川かな女 雨 月
色なき風包ひとつづつカザフ族 岩淵喜代子 硝子の仲間
色なき風命名まへのみどりごに 辻美奈子
色なき風強歩の唾を酸くしたり 長谷川かな女 花寂び
色なき風恵林寺の廊わたるとき 高澤良一 寒暑
色なき風昼の月あぐ白魚塚 大橋敦子 勾 玉以後
色なき風箸に崩るる骨拾ふ 鈴木芳子
色なき風織りて色なき葛布かな 手塚美佐
色なき風背に釈尊の出山圖 高澤良一 ねずみのこまくら
色なき風飛ぶ鳥よりも高くゐて 平井さち子 紅き栞
芭蕉像色無き風の中に立つ 早川いま
花泡へ聖尼色なき風の中 秋月すが子
草噛みて色なき風と思ひけり 影島智子
落城の碑文色なき風の中 高橋佳子
藁庇色なき風のとどまらず 安西静
虹の松原色なき風のめぐりをり 島野美穂子
観世音色なき風を紡ぎをり 田沢公登
解脱門色なき風とくぐりけり 川崎慶子
象のはな子色なき風の中にをり 佐田昭子
遊行寺へ色なき風をまとひ行く 長部紅女
郷愁を色なき風に深めけり 古市絵未
野ざらしの驢馬に色なき風の音 加藤知世子
開山堂色なき風を彫り上げて 工藤妙子
阿育王塔色なき風のただ中に 桶口峰人
鞍馬深し色なき風に蹤くかぎり 渡辺恭子
飛天舞ふ色なき風の行方かな 奥澤朋子
首塚に色なき風や昼の月 朝妻 力
馬老いて色なき風を食みにけり 小島健 木の実
駄菓子ぎゆう詰め色なき風の吹き抜けて 佐怒賀直美
高野山色なき風を聴きゐたり 行方キヌヨ
髪ほどき色なき風の中に立つ 筧 宣子
髪塚に色なき風の吹くばかり 杉山青風
鯛ノ浦色なき風に鯛肥ゆる 高澤良一 ねずみのこまくら
鷹渡る色なき風に消ゆるかに 澤田 緑生
龍舞の龍が色なき風に乗り 高澤良一 燕音
●色変へぬ松 
うらの戸に色かへぬ松の枯れにけり 色かえぬ松 正岡子規
太幹をくねらせて色変へぬ松 片山由美子 水精
応神陵色変へぬ松涸れぬ水 三嶋隆英
色かへぬ松ごもりつゝ癩やしなふ 佐野まもる
色かへぬ松に里わの空の藍 松瀬青々
色かへぬ松のはれ着や蔦紅葉 高井几董
色かへぬ松の木立や金峰山 藤 里兆
色かへぬ松はめでたし竹ゆかし 色かえぬ松 正岡子規
色かへぬ松ひとむらとキヤデイーたてり 軽部烏帽子 [しどみ]の花
色かへぬ松や主は知らぬ人 色かえぬ松 正岡子規
色かへぬ松をあはれむ枯葉哉 正岡子規
色かへぬ松少年を置き去りに 原裕 『出雲』
色変えぬ松や朝出て夜帰る 森田智子
色変えぬ松や高山旧役場 高澤良一 素抱
色変えぬ松をあふぎて尼の旅 高澤良一 鳩信
色変えぬ松を連ねて御用邸 高澤良一 素抱
色変へぬ松したがへて天守閣 鷹羽狩行
色変へぬ松と相識りともに老ゆ 富安風生
色変へぬ松なみ法隆寺へますぐ 上村占魚
色変へぬ松に囲まれ弁天沼 檜 紀代
色変へぬ松に高幡不動尊 川端豊子
色変へぬ松のみどりや夫婦鶴 小俣由とり
色変へぬ松の下にて待つてをり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
色変へぬ松の八十島日照雨過ぐ 田中あき穂
色変へぬ松の大瘤浮御堂 鈴木瑠花
色変へぬ松の影置く濠ゆたか 樋口 芳枝
色変へぬ松の鉾立つ椎葉村 葛西節子
色変へぬ松へ子方の帝かな 都筑智子
色変へぬ松や主は知らぬ人 正岡子規
色変へぬ松や出雲の空の丈 原裕 正午
色変へぬ松や刑場鈴ヶ森 島田高行
色変へぬ松や困民党の墓 古堀 豊
色変へぬ松や明治を生みし塾 谷口自然
色変へぬ松や昭和の傷深く 片山由美子 風待月
色変へぬ松や横山大観展 嶋田麻紀
色変へぬ松や海向く常夜灯 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
色変へぬ松や煉瓦の旧五高 池田悦子
色変へぬ松や神鶏放たれて 坂元幸子
色変へぬ松や赤穂の大手道 杉山倭文
色変へぬ松をかまへて御師の家 川崎展宏
色変へぬ松を寿ぐ加賀のくに 加藤耕子
色変へぬ松を松喰虫が変ふ 百合山羽公
色変へぬ松を窃かに侮れり 相生垣瓜人 明治草抄
色変へぬ松今より喜寿となる想ひ 長谷川かな女 花寂び
色変へぬ松樅檜四十雀 福永耕二
色変へぬ松残さるる駐車場 松沢満里子
色変へぬ松祖母谿を遮れる 水原秋櫻子
色変へぬ松美しき法降寺 美尾一江
●桜色 
あひみての後のさくらの色なりし 伊藤通明
さくら色尽くして恋のうぐひかな 片桐久恵
初空や日の本明くる櫻色 初空 正岡子規
君の家さくらの色のさくら咲く 矢島渚男 延年
国栖人はさくらの色の紙を漉く 加藤三七子
大寒や子持ち鰈のさくら色 角川源義 『神々の宴』
御忌桜色浅浅と咲きにけり 石井桐陰
数の子やさくら色なる花がつを 石井花紅
春の雪桜色して降りにけん 高橋睦郎
月光裡さくらの更にさくら色 きくちつねこ
朝の父さくら色して深き麻痺 渋谷道
桜満ちる十日 障子の桜色 伊丹公子 ドリアンの棘
桜色に闇ほぐれ来る御万燈 渋谷亮子
桜色失せずに焼けしうぐひかな 竹本袴山
河につけし指桜色行々子 阿部みどり女
秋の炉や芯までさくら色の榾 坂田静子
糸桜色をあつめて吹きしぼり 上林白草居
葉桜の色を重ねる川面かな 長尾敏子
赤のまま潰へるまでのさくら色 高澤良一 燕音
起し絵や昼は桜の色淋し 野村喜舟
鹿の斑のさくら色して涼しけれ 和田耕三郎
●薔薇色 
ばら色に三日は暮れて不漁なり 柴田白葉女
ばら色に富士の覚めくる冬菜畑 木村たか
ばら色のままに富士凍て草城忌 西東三鬼
ばら色の人生知らず薔薇に彳つ 伊東宏晃
ばら色の夜明け寒弾声透る 岡本圭岳
バラ色に子の指眠る聖母祭 増成栗人
パンが 黄ばら色に焦げて ミュージツクサイレン鳴り 吉岡禅寺洞
乳母車帰る峰雲ばら色に 橋本多佳子
御嶽の雪バラ色に鳥屋夜明 山口青邨
朝露よばら色の豚小走りに 上田五千石 田園
薔薇色銀色ゴリラの色のあまたなり 水野真由美
雲バラ色浅蜊一皿買ふ頭上 牧野白嶺
麦藁を染めバラ色に空色に 後藤夜半 底紅
●雨の色 
あなたより雨の色添ふ春田かな 櫛原希伊子
ひと雨の色を重ねし枯野かな 木内怜子
唐人の泪ぞ時雨色じゅくし 丸露 選集「板東太郎」
天瓜粉の子に雨の色きかれたる 神崎徒怒
若竹やふしみの里の雨の色 闌更「半化坊発句集」
雨の日は雨の色得つてまり花 山田佐人
●くろがね 
かなしき夕べくろがねの大荷運ばるる 山頭火
きりぎりす海くろがねの真昼かな 永方裕子
くすり使わぬ日々くろがねの嶺枯れる 寺田京子 日の鷹
くろがねかくがねか老に来る年は 河合未光
くろがねのわたしの二十歳潮満つや 安井昌子
くろがねの丹田ひかる甘茶仏 野澤節子 黄 炎
くろがねの仏の憂しや十二月 角川春樹
くろがねの富士をそびらに踊の輪 渡邊千枝子
くろがねの影ひたひたとお身拭 古舘曹人
くろがねの戦艦ドック星月夜 脇本星浪
くろがねの擬宝珠に露や旧城下 西本一都 景色
くろがねの朝礼台を落花馳せ 高澤良一 素抱
くろがねの橋も幾重や都鳥 石塚友二
くろがねの機関車座せり夏の月 天田牽牛子
くろがねの海へ流燈父のこゑ 佐川広治
くろがねの熊蝉鎧ふ源氏山 小野宏文
くろがねの燭台洗ふ盆の入り 邊見京子
くろがねの秋の砲丸ちぎれとぶ 萩原麦草 麦嵐
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏(1885-1962)
くろがねの胴割れんばかりに鳴く熊蝉 橋本夢道 無類の妻
くろがねの艦うごくとき絶壁うごく。 富澤赤黄男
くろがねの艦天ぞらにはしりけり 室生犀星 犀星発句集
くろがねの蔓わたりをり露の中 橋本鶏二 年輪
くろがねの護国の秋夜布かれたり 渡邊水巴 富士
くろがねの銃より固き猟夫の眼 小川原嘘帥
くろがねの鍋の分厚き山鯨 山崎幻児
くろがねの面の風の土用波 石原八束 空の渚
くろがねの風鈴納む訃報急 青木重行
くろがねを打ち来て夜食するうから 久米正雄 返り花
さいかちの実のくろがねに最上の庄 野澤節子
しぐれ呼ぶ幹のくろがね父の郷 伊藤京子
しろがねの水くろがねの水馬 西本一都 景色
ぶんぶんに玻璃くろがねの関なすや 石塚友二 光塵
りんりんとくろがねのごと滴れり 山下知津子(麟)
ハーリーやくろがねの胸水はじく 沢木欣一
一塊のくろがねとなり鮭のぼる 菅原鬨也
人の飛ぶ夏くろがねは鳴りわたる 宇多喜代子
八月の富士のくろがね敗戦日 水原 春郎
冬の雁くろがねの空残しけり 伊藤通明
冷やされし牛くろがねになりにけり 中村正幸
凩に吾をくろがねの像とし行く 竹下しづの女句文集 昭和二十四年
北風す扉にくろがねの巨き鋲 石原舟月 山鵲
寒潮のそのくろがねを峠より 大峯あきら
建国日なりくろがねの蟹に会ふ 迫田白庭子
成人の日をくろがねのラッセル車 成田千空
手の中に覚めしくろがね橡の実よ 加藤知世子 花 季
放下して巌くろがね波の華 下田稔
文鎮のくろがねを据ゑ夜長稿 山口速
日の直下立つくろがねの雪の嶺 相馬遷子 雪嶺
春の水に洗う何年飯炊けるくろがねの釜を 安斎櫻[カイ]子
春昼のくろがね煮ゆる平らかな 萩原麦草 麦嵐
時は春くろがねかづら枝となし 原裕 『新治』
此処に来て蝶見失ふくろがね門 石川文子
牡丹の種くろがねや秋のこゑ 原裕 正午
秋の日やくろがね色に椎の幹 大熊輝一 土の香
秋暁を牽くくろがねの冷凍魚 奈良文夫
草田男忌嘴くろがねの大虚鳥 平井さち子
落日の水くろがねに冬の雁 上岡正子
落雁にくろがねの沼明りかな ほんだゆき
街路樹のくろがね黐に雨の鵙 高澤良一 素抱
踊る夜もくろがねの輪の水練児 百合山羽公 寒雁
銀行のくろがねの扉に虫売れり 宮武寒々 朱卓
雨の葡萄くろがねなすやシヨパンの忌 岩田昌寿 地の塩
雪来るか野をくろがねの川奔り 相馬遷子 雪嶺
雪解けの水くろがねの音こぼす 山上樹実雄
雪解川くろがねの音たてにけり 脇 祥一
雪解水くろがねの底なせりけり 大野林火
風鈴のくろがねの音陶の音 大橋敦子 手 鞠
鳴いて涙流さぬ貧乏蝉の胴くろがね 橋本夢道 良妻愚母
●からかね 
からかねの鑄ぬきの門や薄紅葉 紅葉 正岡子規
身延山花冷からかね灯籠に 高澤良一 燕音
からかねの踏絵の端の光りをり 山本歩禅
●あかがね 
あかがねにならむと亀の甲羅干し 高澤良一 燕音
あかがねの亀とおもへば首動く 高澤良一 随笑
あかがねの大仏こそ花の冷 長谷川櫂 虚空
あかがねの屋根葺き替ふる麦の秋 鈴木圭子
あかがねの村人過ぎるざんざ降り 奥山甲子男
あかがねの満月蝉のそら音散る 松村蒼石 雪
あかがねの茶筒に雉子の遠音あり 友岡子郷 未草
あかがねの蝉ひた鳴けり広島忌 中 拓夫
あかがねの身をしなやかに甘茶仏 檜 紀代
あかがねの雨樋秋の蓬春邸 高澤良一 素抱
くろちりめんひんやりすあかがねひばち 中塚一碧樓
六阿弥陀あかがねの秋至りけり 岡井省二
岩崎邸木斛の実のあかがね色 高澤良一 素抱
新米や櫃の箍にはあかがねを 鳥居おさむ
枯蓮の銅(あかがね)の如立てりけり 虚子
楠の芽のこがねあかがね復活祭 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
死ぬ朝は野にあかがねの鐘鳴らむ 藤田湘子 てんてん
漁夫老いてあかがねのこゑ花蘇鉄 中拓夫
痩すすきあかがねやまの奥に来ぬ 木津柳芽 白鷺抄
花冷やあかがね葺くにひびかせて 宮津昭彦
雪の香のふとあかがねの沸し釜 長谷川櫂 古志
麦笛やあかがねいろに甲斐の空 青木重行
 
以上


by 575fudemakase | 2022-06-25 06:31 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
無季
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
ブログ
自作j
自作y
未分類

以前の記事

2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...
My style

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

ねえ、どれが いい? ジョン..
at 2022-08-20 08:14
コートニー ジョン・バーニン..
at 2022-08-20 07:08
ピクニック ジョン・バーニン..
at 2022-08-20 06:36
ガンピーさんのふなあそび ジ..
at 2022-08-19 17:25
まるのおうさま 谷川俊太郎 ..
at 2022-08-19 16:36
うそ 詩 谷川俊太郎 絵 中..
at 2022-08-19 16:09
もこ もこ たにかわしゅんた..
at 2022-08-19 11:44
おじいちゃん ジョン・バーニ..
at 2022-08-19 11:04
ラチとらいおん マレーク・ベ..
at 2022-08-19 09:35
版画 のはらうた I ..
at 2022-08-19 08:41
んぐまーま 大竹伸朗・絵 谷..
at 2022-08-19 06:42
こんな本出てました。
at 2022-08-18 03:09
棚田を歩けば 文・絵 青柳健..
at 2022-08-16 17:42
版画 のはらうた II ..
at 2022-08-15 16:02
版画 のはらうた V 詩..
at 2022-08-15 15:07
版画 のはらうた III ..
at 2022-08-15 14:22
土竜を含む俳句例
at 2022-08-15 13:14
もぐらはすごい アヤ井アキコ..
at 2022-08-15 12:02
ぼく、だんごむし 得田之久 ..
at 2022-08-15 11:52
電柱 電信柱 の俳句
at 2022-08-15 10:36

外部リンク

記事ランキング