「詳細」秋の天文の例句 in 角川俳句大歳事記 秋
「詳細」秋の天文の例句 in 角川俳句大歳事記 秋
谿ふかく秋日のあたる家ひとつ
秋晴の口に咥へて釘甘し
秋晴の何処かに杖を忘れけり
秋晴や瀬田の唐橋一文字
秋晴や宙にゑがきて字を教ふ
仏像は金の冷たさ秋日和
畳屋の肘が働く秋日和
歩くこと蝶にもありて秋日和
息吹いて金箔のばす菊日和
秋旱軍鶏の砂浴びきりもなし
ひとめぐりして秋色をいふばかり
頷きて厚き書閉づる秋の声
大伽藍草と化したる秋のこゑ
秋声を聴けり古曲に似たりけり
にょっぽりと秋の空なる不尽の山
上行くと下くる雲や秋の天
空箱のきれいに燃えて秋の空
天高し雲行くままに我も行く
長城は臥竜のすがた天高し
痩馬のあはれ機嫌や秋高し
鳶の輪に斬り込む烏秋高し
秋の雲立志伝みな家を捨つ
噴煙はゆるく秋雲すみやかに
鰯雲立塞ぎけんふねの道
いわし雲大いなる瀬をさかのぼる
鰯雲個々一切事地上にあり
鰯雲人に告ぐべきことならず
鰯雲鰯いよいよ旬に入る
いわし雲人は働き人は病む
あれこれと死後も難儀や鰯雲
鰯雲日かげは水の音迅く
いわし雲空港百の硝子照り
鰯雲夜もひろがる出雲崎
われをつれて我影帰る月夜かな
月さびよ明智が妻の咄しせん
声かれて猿の歯白し峰の月
月天心貧しき町を通りけり
傘も化けて目のある月夜かな
月に栖む嫦娥にものを言はんかな
ふるさとの月の港を過るのみ
月の山大国主命かな
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ
灯を消すやこころ崖なす月の前
蔓草の伸び放題の月夜かな
風立ちて月光の坂ひらひらす
やはらかき身を月光の中に容れ
月光の象番にならぬかといふ
千万年のちを思へばただ月光
徐々に徐々に月下の俘虜として進む
盆の月ねたかと門をたゝきけり
盆の月山に近くて山てらす
三日月がめそめそといる米の飯
待宵や女主に女客
名月や池をめぐりて夜もすがら
三井寺の門たたかばやけふの月
名月をとってくれろと泣く子かな
名月や草木に劣る人のかげ
名月や門の欅も武蔵ぶり
一燈を消し名月に対しけり
名月やはばたくものを籠の中
筆硯に多少のちりも良夜かな
ひとそれぞれ書を読んでゐる良夜かな
織るまへの糸のしめりも良夜かな
生涯にかゝる良夜の幾度か
我庭の良夜の薄湧く如し
鰹木のふとぶととある良夜かな
いくたびも無月の庭に出でにけり
いつしかに無月の庭に妻も居る
草踏んで獣通りし無月かな
而して酌みはじめたる無月かな
雨の月どこともなしの薄明り
五六本雨月の傘の用意あり
うなぎ笊ころがしてある雨月
十六夜やちひさくなりし琴の爪
十六夜や品川に海ありしころ
わが影の築地にひたと居待月
脇息のありて即ち居待月
寝待月墓をであるくもの在らむ
更待の月や最終便待てば
更待や繰りて手擦れし七部集
宵闇に神の灯ほのとあるばかり
宵闇や女人高野の草の丈
有明の月に身の修羅語りけり
馬子唄や二十三夜の湯治客
夜ル窃(ひそか)ニ虫は月下の栗を穿ツ
補陀落の海まっくらや後の月
思はざる山より出でし後の月
麻薬うてば十三夜月遁走す
どこまでも豆名月ののぼるなり
秋の星ひとつひとつの遠きかな
星月夜白き市門のあらびあ海
カジノ裏とびきりの星月夜かな
荒海や佐渡によこたふ天河
天の川の下に天智天皇と臣虚子と
妻二タ夜あらず二タ夜の天の川
天の川わたるお多福豆一列
うすうすとしかもさだかに天の川
天の河わらひわかれてふとさびし
戸隠や顔にはりつく天の川
寝袋に顔ひとつづつ天の川
あまのがは くま なく もえて かゝり けり
銀河より聞かむエホバのひとりごと
銀河濃し父となりたるばかりにて
銀漢や史記にて絶えし刺客伝
流星の使ひきれざる空の丈
夜這星座りなほしてまた一つ
碇星そこを通れる雁の声
秋風の吹きわたりけり人の顔
秋風や藪も畠も不破の関
あかあかと日は難面(つれなく)もあきの風
石山の石より白し秋の風
秋風やしらきの弓に弦はらん
十団子も小粒になりぬ秋の風
秋風や息災過ぎて野人なり
秋風にちるや卒塔婆の鉋屑
秋風や黄ばみそめたる鮎の腹
秋風やむしりたがりし赤い花
淋しさに飯をくふなり秋の風
秋風や眼中のもの皆俳句
亡骸や秋風かよふ鼻の穴
秋風や模様のちがふ皿二つ
あきかぜのふきぬけゆくや人の中
秋風や甲羅をあます膳の蟹
秋風や殺すにたらぬ人ひとり
秋風や親疎別ある両隣
秋風や水より淡き魚のひれ
秋風に曲げて髪結ふ肘二つ
ひとり膝を抱けば秋風また秋風
秋風やかかと大きく戦後の主婦
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ
秋風の持ち上げてゐる蟻の足
旅客機閉ざす秋風のアラブ服が最後
秋風や芯まで乾く簑と笠
秋風や柱拭くとき柱見て
秋風や水のおもてに鯉の口
遠くまで行く秋風とすこし行く
あきかぜにいちいちうごくこころかな
秋風や射的屋で撃つキューピッド
秋風の馬上つかまるところなし
蚊帳出づる地獄の顔に秋の風
でで虫が桑で吹かるる秋の風
阿蘇山頂がらんどうなり秋の風
病めばすぐ人の寄りくる秋の風
もういちど吹いてたしかに秋の風
肘あげて能面つけぬ秋の風
秋風が芯まで染みぬ帰ろうか
鳥籠にぶらんこ一つ秋の風
籠らばや色なき風の音聞きて
解脱門色なき風とくぐりけり
金印の島の素風をはだへにす
空を飛ぶ鴉いびつや初嵐
ひるがへり雀白しや初あらし
なんの湯か沸かして忘れ初嵐
みどりまだ残る箒や初嵐
芭蕉野分して盥に雨を聞夜かな
吹飛ばす石はあさまの野分かな
一番に案山子をこかす野分かな
鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな
大いなるものが過ぎ行く野分かな
白墨の手を洗ひをる野分かな
死ねば野分生きてゐしかば争へり
長靴に腰埋め野分の老教師
撫で殺す何をはじめの野分かな
ソース壜汚れて立てる野分かな
足指をひらきて洗ふ野分かな
漆黒の天に星散る野分かな
濁流を一本とほす野分晴
台風が毛虫を家に投げ込みぬ
台風のなか夫も子もよく眠る
台風の潮位の無線刻々と
颱風の白浪近く箸をとる
台風圏叩いて枕ととのふる
巣箱もろともの倒木台風過
台風裡騒ぐ男に寝る女
高西風や飯屋の裏の綱干道
蜑小屋の屋根に石置く鮭颪
草木より人翻る雁渡し
こんな小さな位牌になって雁渡し
へつつひの火のたらたらと雁渡し
青北風が吹いて艶増す五島牛
青空のままの一日芋嵐
童顔の教師なりけり黍嵐
蘆も鳴らぬ潟一面の秋ぐもり
天井に届く本棚秋曇
ひとりごと言うては答ふ秋湿り
秋雨や旅に行きあふ芝居もの
秋の雨しづかに午前をはりけり
石庭の石がまづ濡れ秋の雨
振り消してマッチの匂ふ秋の雨
秋雨の瓦斯が飛びつく燐寸かな
秋雨は無声映画のやうに降る
泥連れの水おそろしや秋ついり
秋霖ににじんできたる薄日かな
五合目の燈の消え御山洗かな
御山洗あがり靄立つ樹海かな
降り止まぬ御山洗となりにけり
秋しぐれ塀をぬらしてやみにけり
川音は粗に秋しぐれ密に過ぐ
秋雷や旧会津領山ばかり
いなづまやきのふは東けふは西
稲づまや浪もてゆへる秋つしま
稲妻に近くて眠り安からず
懐かしき遠稲妻や膝の上
稲妻のぬばたまの闇独り棲む
稲妻のゆたかなる夜も寝べきころ
稲妻のほしいまゝなり明日あるなり
いなびかり北よりすれば北を見る
海道を好みて走るいなびかり
みちのくにさらに奥ありいなびかり
いなびかり玄海灘を横ざまに
みなくぐるうゐのおくやま秋の虹
秋の虹手を振ればはや消えており
渤海の秋夕焼やすぐをはる
秋がすみこたびは越ゆる芋峠
霧しぐれ富士をみぬ日ぞ面白き
有明や浅間の霧が膳をはふ
白樺を幽かに霧のゆく音か
霧はれて湖におどろく寒さかな
さやうなら霧の彼方も深き霧
ランプ売るひとつランプを霧にともし
噴火口近くて霧が霧雨が
ここは信濃唇(くち)もて霧の灯を数ふ
霧吹けり朝のミルクを飲みむせぶ
霧の村石を投(ほう)らば父母散らん
一切があるなり霧に距てられ
霧の道わづかにくだりつづけたり
「英霊」なぜ十五歳いまも霧
街燈は夜霧にぬれるためにある
霧襖ふり返りても霧襖
人ごゑのいきなり近し霧ぶすま
還らざるものを霧笛の呼ぶ如し
しら露や無分別なるおき所
露の世は露の世ながらさりながら
蔓踏んで一山の露動きけり
金剛の露ひとつぶや石の上
露の虫大いなるものをまりけり
落ちかゝる葉先の露の大いさよ
暁紅に露の藁屋根合掌す
露の夜は山が隣家のごとくあり
白露や死んでゆく日も帯締めて
芋の露連山影を正うす
露けさの弥撒のをはりはひざまづく
くわんおんのながきおんてのつゆけさや
露けさやこどもの声に目が覚めて
東雲や八十坊の露しぐれ
露寒や乳房ぽちりと犬の胸
露霜や竹伐りたふす竹の中
釣瓶落しといへど光芒しづかなり
淡路文楽一幕釣瓶落しかな
鹿ヶ谷まで来しつるべ落しかな
以上
作者名を知りたければ原典を参照されたし
因みに
「新版 角川俳句大歳事記 秋」角川書店 2022・8・31 初版
by 575fudemakase
| 2023-04-06 05:09
| ブログ
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俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase

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以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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