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「詳細」新年の生活の例句 in 角川俳句大歳事記 新年

「詳細」新年の生活の例句 in 角川俳句大歳事記 新年
「詳細」新年の生活の例句 in 角川俳句大歳事記 新年_b0223579_00313995.jpeg
若水や人汲み去れば又湛ふ
若水や星うつるまで溢れしむ
若水に奈良井の宿の杓卸す
若水や湯気旺んなる井のおもて
若水を掬びて浅き掌

歯がために杖のへるこそめでたけれ
歯固や鼠は何を食む今宵
歯固や年歯とも言ひ習はせり

花びら餅姥にもかなひ乙女にも
振袖や花びら餅の出る頃か

雪嶺の襞濃く晴れぬ小松曳
子の日する昔の人のあらまほし
防砂林抜けて子の日の海たひら

門松や佐渡と越後は筋向ひ
呉竹の根岸の里や松飾り
大いなる門のみ残り松飾り
松飾る船首はいつも潮に濡れ
若松の二本のみなる松飾
風音を伊賀に聞きをり松飾
寄席の燈のはやばや点る松飾

幸木魚も小物となりにけり

つんとしてかざりもせぬやでかい家
神風のさやかにわたる飾かな

溶鉱炉注連飾して真赤なり
注連飾留守居の鸚哥よくこたへ
海光のまつすぐに来る注連飾
輪飾や歯朶そりかへる日の表
輪飾りやひとつ構に子の所帯
輪飾の五つ六つほどあれば足る
輪飾をして御不浄といふところ

蓬莱に聞ばや伊勢の初便
蓬莱のうへにやいます親二人
蓬莱や青き畳は伊勢の海
蓬莱や東にひらく伊豆の海
蓬莱や山よりの雪ちらちらと
蓬莱や辞儀ながながと若狭びと
亀の尾のながながしきを懸蓬莱

喰積にときどき動く老の箸
喰積や甘きものとて軽んぜず
喰積や海ひとところまぶしくて
喰積は吉野の坊の豆の飯
喰積に堅田生れの諸子かな

正月を出して見せうぞ鏡餅
おごそかにある伊勢海老や鏡餅
つぎつぎに子等家を去り鏡餅
神占のごと罅はしる鏡餅
暁闇にして坐りたり鏡餅

飾り蝦嶄然として歯朶の中
暫の顔にも似たりかざり海老
鬚はねて太(はなはだ)長し飾海老
やあ・おうと能の囃子や飾海老

撰まれて巌のごとしかざり炭

飾り臼しづかにをれば怒濤音
鶏鳴の刻ふさはしき飾り臼

白妙の雪にまがふや飾り米
飾米一粒噛んでみたりけり

蓬莱の橘匂ふ一間かな

橙のたゞひと色を飾りけり
橙のめでたくあるや餅の上
橙の尻をひと撫でして飾る

ひげの砂こぼし野老を飾りけり

穂俵に豊年しるし海までも

掛鯛の眼に煤たまる日数かな
藁しべの青きを噛みて睨み鯛

福藁や塵さへ今朝のうつくしき
福わらや雀が踊る鳶がまふ
福藁や暖さうに犬眠る

藻の揺れの透く若潮を迎へけり

年男飲めば痛快男子かな
年男胡坐して謡一番す
年男おう応へて祓はるる

せはしなき人やと言はれ屠蘇を受く
次の子も屠蘇を綺麗に干すことよ
気儘にぞ慣れて二人の屠蘇酌むも
一切を省きて屠蘇や病む母と
我が家には過ぎたる朝日屠蘇祝ふ

脇差を横に廻して雑煮かな
三椀の雑煮かゆるや長者ぶり
雑煮から右に成りけり和子の箸
揺らげる歯そのまま大事雑煮食ふ
何の菜のつぼみなるらん雑煮汁
殖えてまた減りゆく家族雑煮食ふ
患者診しあとの雑煮となりにけり
物足りてこころうろつく雑煮かな
吹きさましつつ香りたる雑煮かな
根(こん)のもの厚く切ったる雑煮かな
煮こぼれてひとりに余る雑煮かな
鮞(はららご)のみちのくぶりの雑煮祝ふ
やはらかに生き熱く生き雑煮餅
生き過ぎかいや生き足らぬ雑煮餅
国生みのはじめの島の雑煮餅
空たかき風ききながら雑煮膳

太箸や御祓の木のあまりにて
太箸やころげ出でたる芋の頭(かみ)
太箸や眉にも白を加へたる
太箸の抓みそんじもなかりけり
太箸や親に貰ひしめでたき名
太箸に遠つ淡海の光かな
太箸や知命といふは軽からず
太箸の無垢に遥かな樹齢あり
神路(かみじ)山の焼印あるや雑煮箸
これはこれは腰がある餅雑煮箸
昔より細うなりけり柳箸
祝箸置けば津軽の風のこゑ

御年初の返事をするや二階から
武蔵野の芋さげてゆく年賀かな
廻礼や伊吹颪に吹かれ来し

甃長々と来る御慶かな
丁寧に妻に御慶と申しけり
末の子の折目正しき御慶かな
まっさきに遺影と交はす御慶かな

病牀を囲む礼者や五六人
雪掻けば直ちに見ゆる礼者かな
ややありて女のこゑや門礼者
南縁の日に迎へたる賀客かな
靴大き若き賀客の来て居たり
まず犬を撫でて年賀の客となる

女礼者らしく古風につゝましく
杖をとりまゐらす女礼者かな

とし玉の望みのものを小槌より
とし玉のさいそくに来る孫子かな
年玉をならべておくや枕許
年玉の襟一トかけや袂より
年玉を妻に包まうかと思ふ
風呂敷の色をひろげてお年玉

猫に来る賀状や猫のくすしより
賀状うづたかしかのひとよりは来ず
この谷の行きどまりなる賀状かな
賀状来るまた聞き慣れぬ任地より
嫁ぎ来て母からもらふ年賀状
みちのくの馬どころより年賀状

礼帳の分厚く大和一の宮

役者名を知らず名刺を交換す

宝船目出度さ限りなかりけり
七十路は夢も淡しや宝舟
つくづくと寳はよき字宝舟
枕もとに本積めばこれ宝船
夢路への帆の膨らみし宝船
一匹の獏も乗せたり宝船
遠つ世の浪の音きけ宝舟

初夢の扇ひろげしところまで
初夢の大きな顔が虚子似る
初夢のかごめかもめの国に居り
初夢を追ひてしばらくうす瞼
初夢のなかをどんなに走ったやら
初夢の父来てわれを肩車
初夢の中の子供の目鼻立ち
初夢になにやら力出しきりし
初夢の扉いくつもあらはるる

ひめ始天の塗矛(ぬぼこ)をよそならず
姫はじめ闇美しといひにけり

書初の龍は愈々翔たむとす
書初めの一瞬あぎと引きにけり
書初やまず海と書き夢と書く
腰浮かし試筆くたびれ易きかな
沖荒の見ゆる二階に試筆かな
全紙へ一字老師の吉書竜躍る
百代と書き損じたる吉書かな
頽齢をうべなふ字句を筆始

ましろなる筆の命毛初硯
初硯うなじをのべて磨りにけり
筋書きの無き世よかりし初硯

読初や用ありて読む源氏など
読初の春はあけぼのなるくだり
読初や比翼連理の長恨歌
千代田城大奥のこと読みはじめ
赤帯の岩波文庫読始

電話早吾を待ちゐし医務始
すぐ反古のたまる屑籠初仕事
初仕事神と仏と母に水
ポンと象叩いて仕事始めかな

乗初や帆のはためきに打たれつつ

茜さす海の道あり船起し

振袖が御用始の階のぼる

初市や海鼠一籠隅にあり
飾られて初市に出る牛の瞳よ
初市の大きな海鼠を掴み出す
初糶を待つ翻車魚の二畳程

玩具屋の物みな動き初商
控へ目に初売のもの仕入れけり
初売の奥に灯して古書の店
売初やよゝと盛りたる枡の酒

水谺深き夜明けの初音売
竹の香の青き初音を買ひにけり

痩馬を飾り立てたる初荷かな
竹伐って嵯峨は初荷の牛車
村百戸海老を栄螺を初荷とす
紐赤く伊勢の初荷の届きけり
事務方も駆り出されたる初荷かな
はだかりし府中の町の初荷馬

買初めの小魚すこし猫のため
買初にかふや七色唐辛子
買初の目にあたらしき文房具
買初の蓬々として和紙の耳
買初の赤鉛筆の五六本
買初めは古都の魚店鰤のあら

伊勢海老の髭をさまらず節料理

新年会司る日の一張羅

松とれし町の雨来て初句会
初句会名乗りの声を聞きなほす
はやも師の選に洩れたる初句会

初旅や福の字つらね下関
初旅の搭乗券を胸にさし
初旅に願ってもない遠白帆
初旅の宿は妻籠に定めけり
初旅の富士より伊吹たのもしき
初旅の今赤道を越ゆるなり

ここに又出初くづれのゐたりけり
霜蹴って鶏逃げ歩く出初かな
湖の氷をよごす出初かな
多摩川に虹の橋立つ出初かな
加賀鳶のひらりひらりと出初かな
満潮の川を使ひし出初式
手間取れる一斉放水出初式
早池峰山に雲一つなき梯子乗

七草にもらひ笑ひやあさつ原
七草の口上祖父の口伝にて
七草や朝の火の色水の音
天暗く七種粥の煮ゆるなり
薺粥箸にかからぬ緑かな
薺粥むさし野の雪消えぬまに
薺粥椀のうつり香よかりけり
なづな粥あさぎの空の広ごりぬ
吾が摘みし芹か香に立つ七日粥
七日粥一口かぶら丸のまま
七日粥息やはらかく使ひけり
ななくさの日に一くさの芹を祝ぐ
有るものを摘み来よ乙女若菜の日

町嚀に薺はやして又寝かな
暁を万戸に伝ふ薺かな
裃を着け端然と薺打つ
いましがた止みたる雨や薺打つ
日本のあちこちに富士なづな打つ
俎に薺のあとの匂ひかな
はづかしき朝寝の薺はやしけり

逢ふ処で御慶済ますやわかなつみ
雨がちに雪ふる朝やわかなつみ
草の戸にすむうれしさよわかなつみ
若菜つみ帰りし野より月の出づ
乾坤の光の中の若菜摘
摘み来たる若菜見せあふ姉妹
若菜摘む大津宮の日溜りに
若菜籠すずなすずしろ秀いでけり

一年に一度摘まるる薺かな
わかい衆や庵の薺も唄でつむ
大利根の霜をかきわけ薺つむ
千枚田より摘みきたる薺なる
木の国の名残の薺摘みにけり
隠国のいづこで摘まん初薺

蒟蒻にけふは売勝つ若菜かな
若菜売声や難波の浅みどり
小わらはの物は買ひよきわかなかな
下京やさざめき通る薺うり

あかんぼの七種爪もつみにけり
摘むほどもなき薺爪つみにけり
薺爪あとより紅をさしにけり
薺爪ほろほろ一人にも慣れて

松取れて夕風遊ぶところなし

海女小屋の作り棚より飾取る
細帯に着替へ飾をおろしたり

門もなく大百姓の鳥総松
星ひとつのこる大路や鳥総松
思はざる長寿授かり鳥総松
萬福寺へ近道とあり鳥総松
鳥総松日のあるうちに風呂が沸き

をりからの雪にうけたる破魔矢かな
恋の矢はくれなゐ破魔矢白妙に
幸矢とて袖をあてがふ破魔矢かな
上の字の袋きせ置く破魔矢かな
子に破魔矢持たせて抱きあげにけり
破魔矢もて獅子身中の虫は射よ
破魔矢一矢貧しき書架に挿されたり
空席に破魔矢を寝かせ湖西線
破魔矢受く紅顔なれど検事たり
白破魔矢潮騒空にひろがり来
教へ子の巫女より破魔矢受けにけり
十年の知己の如くに破魔矢受く

福だるま妙義は雲を飛ばしけり
福達磨買ふと二百の磴登る
だるま市だるまの中に飯食へり
手締めしてつぎの客呼ぶ達磨市
富士ぐいと雲より出でし達磨市
転ぶ余地なく並べられ達磨市

宝恵駕をはみ出て厚き緋座蒲団
宝恵駕の髷がっくりと下り立ちぬ
宝恵駕を出てかたまりて詣りけり
宝恵駕のとんでゆくなり戎橋

伊勢海老のかがみ開きや具足櫃
銀行の嘉例の鏡びらきかな
鏡開明日とはなりぬ演舞場
鉈の背で打っては杣の鏡割

帳書きや正直に濃き墨の色
帳書や先生筆を振はれたり

白鼠はしり出でけり蔵開
風に向いて並ぶ雀や蔵開
呉服売る畳続きの蔵開

正月の遊び仕事や店おろし

若餅や杵借りて来て洗臼
若餅に后土の神を祀りけり

餅花の下に寝むも京泊り
餅花に髪ゆひはえぬ山家妻
餅花を今戸の猫にささげばや
賑やかや餅花ありて四畳半
餅花のなだれんとして宙にあり
餅花に畳あをあを匂ひけり

餅花のさきの折鶴ふと廻る
餅花や梁にか黒き手斧跡
釣宿の餅花にして鯛鮃
蔵元の餅花は白ひといろに
餅花や暮れてゆく山ひとつづつ
ささめごとめきて餅花揺れ交す
餅花をはずませながら飾りけり
子を玉と育てしむかし餅の花

まゆ玉や白ちりめんの肌障り
まゆ玉をうつせる昼の鏡かな
繭玉のかげ濃く淡く壁にあり
繭玉の夜に入る翳を見てゐたる
繭玉にはなやぎ降れり窓の雪
まゆ玉のもつれ直して吊しけり
繭玉の下に赤子を寝かせ置く
繭玉のむかしは父母もをられけり
繭玉の上に顔出す鳩時計

削り花一刀ごとに華やげる
粟穂稗穂(あぼへぼ)の反りの豊かに山晴るる

詣路の年木の松の匂ひけり
上木を選び為成せし年木かな

粥杖に信連尻をうたせけり
粥杖や伊賀の局にたぢろぎし

明日死ぬる命めでたし小豆粥
小豆粥すこし寝坊をしたりけり
持山のぬるでの箸や小豆粥

粥柱しづかに老を養はむ
すべからく世に逆らはず粥柱

つな曳きや例のいち松とらの助
綱引の綱の尻尾が退場する

こなたにも女房もたせん水祝
鼻たれの男なりけり水祝

成木責妻に残れる柿一樹
狂言の物腰そろと成木責
成木責はじめ思はぬ声の出て

ふんばっていざ田遊の牛となり
田遊の紅つけて酔ふ男衆

魚干して唄ひ手となるちやつきらこ

なまはげにしやつくり止みし童かな
なまはげの問答嫁に及びけり
なまはげの訪ふさきざきの杉と月
なまはげの藁のざくざく夜が来る

鳥追や柳の軒端梅の門
鳥追や金竜山の夕の鐘

城に灯が入りかまくらもともるなり
身半分かまくらに入れ今晩は
鶏舎の前にもかまくらを一つかな
燭見えねどもかまくらの瞬ける
かまくらは和紙の明るさ雪しんしん

土竜打つさまを越後のむかし唄
唱へごと復習ひおんごろ打ちへいざ

かせ鳥の片足飛びにかつかつか

注連貰風の巷を通りけり
菩提樹の子も混じりをり注連貰

餅焼くをおいとま迄のどんどかな
左義長や四方へ走る竹の音
どんど焼きどんどと雪の降りにけり
左義長や婆が跨ぎて火の終
左義長の火の入る前の星空よ
左義長の黒こげ団子交換す
左義長の炎のちぎれとぶ相模灘
どんど立つ太平洋は紺を張り
雪空へすひあげらるるどんどかな
金箔の剥がれとびたる吉書揚げ

みそなはす天の三ツ星さいと焼

やぶ入りの寝るやひとりの親の側
やぶ入りの枕うれしき姉妹
やぶ入りの二日になりし夕日かな
藪入の田舎の月の明るさよ
藪入のをとめさびたる簪かな
藪入といふなつかしき日なりけり
藪入の暦に朝日当りけり

鏡台を祝ふや花の女形
伝へたる古鏡台も祝ひかな

万歳のゑぼし姿やわたし船
万歳の里見廻して山ばかり
万才や車の隙をひよいひよいと
万歳や合点合点の鼓打つ
一島をあげて万歳もてなせり
萬歳の一所懸命なるあはれ

才蔵の素顔さびしき汽車の中
才蔵の切餅もある頭陀袋

獅子舞のきて昼ちかくなりにけり
あなたぬしあなおもしろと獅子跳ねて
獅子舞や獅子を眠らす子守唄
獅子舞の獅子さげて畑急ぐなり
獅子舞の口かたかたと子を泣かす
獅子頭背にがつくりと重荷なす
足裏を舐めて寝に入る獅子頭

白狐汝は稲荷の事触れか

我が猿に引き舞はされて猿廻し
人に似てかなしき猿を廻しけり
海鳴りの町へ来てゐる猿回し
しくじりも芸のうちなり猿廻し
人波の上の青空猿廻し
曳猿の紐いっぱいに踊りをり
猿曳や猿より深き礼をして

春駒や男顔なる女の子
春駒や染分手綱紫に
面あげて風の春駒磯いそぐ
奥座敷明けて春駒待ちにけり

傀儡師波の淡路の訛かな
傀儡のこときれたるは糸放す
海向いて並ぶ安乗の傀儡衆
一息に魂を入れ木偶廻し

若夷ふところよりや四方の春
愛敬に能い客つるや若恵比寿

誰が筆のその紅や懸想文
元どほり結びて仕舞ふ懸想文

母方の絞めづらしやきそ始
姿見を日向に出せる着衣始

老いてだに嬉し正月小袖かな
唐桟の好みもありし春着かな
広間たゞ衣桁に春着かかるのみ
九十年生きし春着の裾捌き
また来ては鏡をのぞく春着の子
襖絵の鶴に手拡げ春着の子
春著の妓右の袂に左の手
かりそめの襷かけたる春著かな
遥かなる春著こちらへ来ず曲る
春著きて孔雀の如きお辞儀かな
似てゐると云はれ春著の襟正す
春著きてすこしよそよそしく居りぬ
建仁寺通り抜けする春小袖

初衣桁わがあたたかきもの掛かる

温顔のたとへやうなき年酒かな
おとこ気のまだ残りおり年酒汲む

大服や囲炉裡に席を作りつつ
大ぶくやかへり三嶋の古茶碗
膝に日のあたる福茶をいただきぬ
福茶飲むちゃんづけで呼ぶ友居りて
石鼎の直筆掛けて大福茶

鉄瓶のやがて音に出て福沸し

ちよろぎてふをかしきものを寿げり

正月の煎茶のあま味もうすら寒む

数の子にいとけなき歯を鳴らしけり
なほ口にある数の子の音楽し

杉箸ではさみし結び昆布かな

俵子やこがね花咲く国のもの

臆せずも海老に並ぶや小殿原
独酌のごまめばかりを拾ひをり
ごまめ噛む歯のみ健やか幸とせむ
どれもこれも目出度く曲るごまめかな

一病を上手に守り熨斗鮑

つき出しの端にひっそり螺肴(にしざかな)

押鮎や国栖の翁にあやかれと

わかくさのいろを添へたり切山椒
賑やかを持てきし人や切山椒
青空の冷え込んでくる切山椒
切山椒五色置かれしめでたさよ
切山椒鄙ぶりにして香の高し
つまみたる切山椒のへの字かな

勅題の菓子に金箔はりつきし

俎始ひと杓の水走らせて
鶏鳴のおこる俎始かな
葱すいと割いて包丁始めかな

門あけて固く結ひけり初国旗

養老の滝壺くめやはつ手水
杓の水揺れるを鎮め初手水
古稀といふ仄と楽しき初手水
初手水晩節いさぎよくあらむ

掃きぞめの箒や土になれ初む
掃初や熊手にかかる松ふぐり
山の辺のみちを掃初仕る
掃初は千年杉のまはりかな
石段の一段ずつや初箒

敷皮の熊の毛剛(こわ)し初座敷

生(いき)ばやと又思ひけりはつ暦
古壁や炬燵むかふのはつ暦
元日の大安なりし初暦
とじ絲のいろわかくさやはつ暦
初暦知らぬ月日は美しく
初暦ひらく牧神笛を吹く
初暦大きく場所をとってをり

からからと初湯の桶をならしつゝ
これやこの初湯の蓋をまだとらず
ひとの陰玉とぞしづむ初湯かな
一人にも湯気たちのぼる初湯かな
火の山の懐ふかき初湯かな
一掴み雪を入れたる初湯かな

初刷に早も政界波瀾かな
雪沁みの初刷とどく山の出湯
初刷をぽってりと置く机辺かな
初刷の真赤な日の出佳かりけり

真ん中に目つむる母や初写真
初写真一家七人横並び
亡き人の話を少し初写真

罫赤き用箋に書く初便り
ふくらんでゐるが嬉しき初便

初電話ありぬ果して父の声
あんばいも善かよと母の初電話
碁を打ちに伺ひますと初電話

初笑深く蔵してほのかなる
初笑ひ米粒程の歯がふたつ

泣初の子に八幡の鳩よ来よ
泣初の涙がゆれて笑ひけり
泣初といふにぎはひもをさまりぬ
初泣きの子のあやされて又泣ける
初泣の手のつけやうもなくなりぬ
初泣きのあととびきりの笑顔かな

荒神の昏き方にも初灯

じりじりと三里を覚ます初やいと

初鏡娘のあとに妻坐る
長生きも意地の一つか初鏡
口紅をもって点晴初鏡
「こはいづれの媼にてあるぞ」初鏡
向き変へて山を入れたり初鏡
初鏡一畳で足る妻の城
夫の手を借りて帯結ふ初鏡
初鏡いよよ余生へ肝据ゑて

初髪の稲穂の揺れをまぶしめる
初髪のゆくあてもなく門に出て
初髪の妻のなかなか帰り来ず
意に叶ふ初髪まれに浅草寺

志すこし述べたり初日記
記すこと老いて少き初日記

縫初は産着のしろき背守かな
縫始今暖めて来し手かな

初かまど燃え立つ家人起き起くる
松かさの火が廻りたる初竈

活け初めや長き袂のおきどころ

初釜の薄雪を踏みお正客
初茶の湯鏡花にちなむ菓子添へて


好(す)き不好(ぶす)きはきと育ちて掛柳

浪音の由比ヶ浜より初電車
すぐ次の駅までのこと初電車
空席もちらほらあるや初電車
初電車待つといつもの位置に立つ
富士山が窓を離れぬ初電車

織初やよりそふ母の言縷々と
織ぞめや機神様へ窓あけて

織初めの筬音まぎれ深山川
金銀糸競ひ走らせ織始
泥染の糸つややかに機始

天は晴れ地は湿ふや鍬初
鍬始浅間ケ岳に雲かゝる
眼のはしに鶴の歩める鍬始
舞ふ鳶の奇数はたのし鍬始
ほどもなく母くるといひ鍬始
もぐら罠埋めて均して鍬始

杉の幹見上げ打ち撫で山始
味噌むすび燠で炙って山始
水楢が水噴くといふ山始
天領の木曾は木の国山始
山始饑神(だる)にと餅を投げにけり
掘りし土かけて火を消す山始

雪が雨其がまた雪に斧始
斧始杉凜々と響き合ふ
斧始きぶし一枝もち帰る

初漁船全速力の水脈太く
初漁の舳先を上げて戻りけり
初漁の船霊さんに赤い餅
空を読むことも子は継ぎ漁始め

手斧始烏帽子の大工真顔して

初窯や福耳持てる陶人形

ふんだんにふいご始の高火の粉

月山の名にかけてもと鍛治始
金床に鎚に盛り塩鍛治始
十方へ明るき火花鍛治始

かるた読むはじめしばらく仮の声
読み札のいちまいを欠く歌がるた
天平の祝ぎうたいまに歌がるた

双六の骰子一の一歩かな
一振りで越ゆ双六の箱根山
双六の上りに蜜柑置いてあり
双六の赤の広場に来てをりぬ

版元は「いせ辰」道中絵双六

幼きと遊ぶ十六むさしかな

投扇興酔うて真白き腕見す
青畝直筆の扇ぞ投扇興

袖摺りて鼻の行方や福笑ひ

羽子板や母が贔負(ひいき)の歌右衛門
羽子板の重きが嬉し突かで立つ
羽子板の助六見得を切り続け

その中に羽根つく吾子の声澄めり
日見て来よ月見て来よと羽子をつく
羽子をつくその単純をくりかへす
東山静かに羽子の舞ひ落ちぬ
どこやらで遠くの方で羽子の音
羽根二つ飾るがごとくおく机
東京もここらは静か羽子の音
羽子とりに入ってきしは見知らぬ子

追羽根の音の鎌倉西御門
追羽根の高きがうれし突き返す
やり羽子や油のやうな京言葉
追羽子の突き足らざればひとり突く

てんてんとつき出したる手毬かな
胸高に手毬かかへてゐる子かな
焼跡に遺る三和土や手毬つく
手のひらに吸ひつくように手毬突く
手毬突く石の仁王に唄聞かせ
手毬唄かなしきことをうつくしく
手毬唄きこゆ生涯の家と思ふ
正月の月が明るい手まり歌
手毬唄ここのつ十はさびしけれ
手毬唄十を遠野とうたひけり

つまづけば母つなぎくれ手毬唄
手毬唄とをを数へてまた一へ
あるまじき戦を経たり手毬唄
はりまにははりまのくにのてまりうた

たとふれば独楽のはぢける如くなり
かざしつゝ独楽の金輪の摶ちあへる
独楽競ふ子がゐて壬生の袋路地
回りゐることを忘れて独楽澄めり
りんりんと独楽は勝負に行く途中
勝独楽の胴震ひ手に掬ひけり

いかのぼりかみはあがらせ給ひけり
葛飾や江戸をはなれぬ鳳凧(いかのぼり)
正月の凧や子供の手より借り
兄いもと一つの凧をあげにけり
紅顔の義経つよし飾り凧

品替る金玉の声や玉毬打

ぶりぶりや三葉葵の紋所

宝引の終ひ福なる亀香合

福引や御降済んで残る雪
福引やためらひ引きて当り籤
福引や石山の月膳所の城
福引に当りしものを重宝す
福引の紙紐の端ちよと赤く
福引のかんらかんらと回りけり
福引の二等大いに囃されて

ぽっぺんを吹いて佳きことあるらしき
ぽっぺんにポコンと鼓膜鳴りにけり
やみつきのぽっぺんを吹くばかりかな
独り合点しつつぽっぺん吹く男

道場に女下駄あり初稽古
初稽古打たれどほしの打たれ役
手拭の紺を折りたる初稽古
初稽古まづはすっくと立ちにけり

吹初の人揃うたる一間かな

弾初の姉のかげなる妹かな
弾初の吾子の楽譜をめくる役

能初め鐘後見といへる役
息長く呼び掛け出でて能始

舞初の女大名太郎冠者
舞初や年端もゆかず恋の所作
舞初の海を見渡す所作に入る
白扇を日とし月とし舞始め

袖ぐちのあやなる鼓初かな

四海波耳馴れたるを謡初
謡初子方二歳に満たぬとよ
初謡さん候と謡ひけり

初寄席やいろものになる出の囃子

眉描いてほのぼのなりぬ初芝居
日の本のその荒事や初芝居
あの役者この役者なし初芝居
柝の入りてひきしまる灯や初芝居
初芝居おきく播磨に切られけり
せり上る紅隈曾我や初芝居
小止みなく紙の雪降る初芝居

拍子木のちよんの音が好き初芝居
幕の内頼むも手順初芝居
太棹で幕上りたり初芝居
弁慶を見下ろす立見初芝居
二の替世話狂言のなきどころ

初曽我や灯にひるがへる蝶千鳥

初場所やかの伊之助の白き髯
初場所や髪まだ伸びぬ勝角力
初場所や行司にもある初土俵
初場所の贔屓は小浜ばかりなる
初場所の塩一掴み花と撒く

うそまこと七十余年初寝覚

我も折れていはるるままに寝正月
ははそはの母にすすむる寝正月
虚子庵に不参申して寝正月
雨降ってうれしくもあり寝正月
しなやかにとぐろ巻きたく寝正月

寝積や布団の上の紋どころ


以上

作者名を知りたければ原典を参照されたし
因みに
「新版 角川俳句大歳事記 新年」角川書店 2022・12・21 初版

by 575fudemakase | 2023-04-20 07:58 | ブログ | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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