正木ゆう子 猫のためいき 鵜の寝言十七音の内と外（春秋社）を読んで （高澤良一）

正木ゆう子　猫のためいき　鵜の寝言十七音の内と外（春秋社）を読んで　（高澤良一）

上記の御本を読んで、門外漢で頓珍漢の私がエイヤッと摑み上げたものが以下。

84歳の爺さんの「怪しい選出句」です。

ものさしは新聞の下はるのくれ　正木ゆう子

なんといふ高さを鷹の渡ること　ゆう子

山の根を動（ゆる）がすまでに北颪（おろし）　ゆう子

降る雪の無量のひとつひとつ見ゆ　ゆう子

春愁の果てよりこころ呼びもどす　ゆう子

野良猫がすこし寝てゆく雛祭　ゆう子

よきものに猫のためいき雪催　ゆう子

原つぱも不敗の独楽も疾（と）うに無し　ゆう子

駆くるべき野をまなうらに春の馬　ゆう子

真炎天原子炉に火も苦しむか　ゆう子

春風に相馬の馬として佇立　ゆう子

ともかくも先づ微笑んで今朝の春　ゆう子

虹を呼ぶ念力ぐらゐ身につけし　ゆう子

うすらひのふれあふおととわかるまで　ゆう子

しみじみと見る寄居虫の密閉度　ゆう子

本を読む手首に脈の見えて秋　ゆう子

（小生なら　こう遣りたい。本を読む手首に見据ふ逝ける秋　高澤良一）

濁流を昨日にからすうりのはな　ゆう子

みんなみんな蛍になって見送るよ　ゆう子

明日知らず雌鹿雄鹿として眠る　ゆう子

（小生なら　こう遣りたい。岩壁に雌鹿雄鹿として眠る　高澤良一）

貧乏の意地もゆるびぬ日向ぼこ　田島風亜

秋風が芯まで染みた帰ろうか　田島風亜

水の地球すこしはなれて春の月　ゆう子

十万年のちを思へばただ月光　ゆう子

（相和せば　ダークマター詰まる銀河を渡る船　高澤良一）

違ひ棚とほき霞を引き寄せて　ゆう子

この星のはらわたは鉄冬あたたか　ゆう子

ひかりより明るく春の泉かな　ゆう子

母の日の母にだらだらしてもらふ　ゆう子

髪へ飛ぶうろこひとひら桜鯛　ゆう子

はなびらと吹き寄せられて雀の子　ゆう子

ふたたび言ふ出水の窮鼠（きゅうそ）見たること　ゆう子

子雀のぶらぶら歩き虫咥へ　ゆう子

たらちねのははそはのはは母は羽（は）羽（は）　ゆう子

地に星糞天に星糞去年今年　ゆう子

以上

（妄言陳謝）