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正木ゆう子句集「玉響」を読んで (高澤良一)

正木ゆう子句集「玉響」を読んで (高澤良一)
        春秋社 2023・9・18 初版第一刷発行
正木ゆう子句集「玉響」を読んで (高澤良一)_b0223579_17322333.jpg
おほかたは蕾よ梅のうれしさは
ゆづりあふことのあるらむ蜷の道
竹の葉の散るやもとよりめまひ癖
以来そこに在るヘルメット走り梅雨
(首が削がれた様な一句 其処は面白し)
翠玉のたましひならむ蜥蜴の子
黒百合の花束黒といへば黒
地蜘蛛の巣のさはり心地をいつまでも
どの神も夏帽似合ひ八百万
ぬかるみに板置く蓮見準備かな
鬼蓮の葉にしてみたき昼寝かな
末黒野にこれは何かの何処かの骨
子雲雀のぶらぶら歩き虫咥へ
乳房めく蜂の子乳首めくは口か
二層目のための柱が蜂の巣に
六角形に蓋して蜂の繭籠り
秋燕の結集のひたすらを見き
雪晴のママさんダンプ臍で押す
梟を見たと頭を回し見す
灯のおよぶ限りの雪へおやすみなさい
ひとひらの炎(ほ)をふたひらに秋彼岸
蛸壺工場たこつぼ二万積む秋天
夫婦長し酢に赤蕪の色の出て
着ぶくれて灰かぶりたるグレイヘア
真の闇見しは臘八会のインド
梅咲いて猫に小さな鼻の穴
笑ひ転げしままに仕舞はれ仕丁雛

拙句に「藤の花よりもはるかに桐の花」あれば
桐の花よりもはるかに懸かり藤

盆栽町
春よ齮齮(ぎぎ)と骨締まるなり作松

散って地のあからめるまで桜蘂
濡れて重たき昭和の傘よ昭和の日
スキップもするよ恋する烏ゆゑ
春の空さびしくもなき虚しさに
木の方へ転がし返す夏みかん 🍊
よい考へブルーフィッシュの如く散る
あえかなる稚(をさな)山女魚の斑なりけり

栴檀二十周年
無辺てふ色ありとせば花樗(あふち)

黒羽浄法寺桃雪邸
芭蕉ふと男臭さよ葉鶏頭

安積野(あさかの)に露を湛へて鹿の目は 👀
あらたまの阿蘇宇佐伊勢諏訪ひとつらね
兄の死を嘆きし父母も亡くて春
暗室の父モノクロの虹を濯ぎ
蚊帳の環(かん)たんすの環(かん)の音はるか
地震(なゐ)微か藻畳に散る花卯木
濡れそぼつ綿菅をさてどうするか

町名即俳句
若宮通万寿寺上ル月見町

鍵束のどの部屋もいま月の部屋
この奥の星糞峠いまは雪

氷かと見れば黒曜石剥片
凍る夜空のいろに鏃(やじり)の美しく
はるかなれば白濁として鷹柱
鷹湧いて湧いて一天深かりき
鷹渡る気流にひたと位置を占め
全速の滑空に入る鷹の数
三千羽ひと声もなく鷹渡る

入院
癌ぐらゐなるわよと思ふ萩すすき

絶食のときも歯磨き十三夜
寝返りをうつはずもなき手術台
看取りなら枯蟷螂に願ひたく
歩み来る年へ机を空けにけり
はらわたとたましひを以て年迎ふ
冬日燦今日もいちにち私の日
がんばるなと言われ三冬がんばらず
🌈🌈わけもなく大丈夫なり冬青空🌈🌈 (私の一番押しの句です。先づ自分を納得させているのですね。それから他へゆく。これ詩人の必須条件みたい。)
春分の道いつぱいに日が昇り
わが町に清からねども春の川
けふ土手は紋白蝶の祭らし
鳥の恋尾を縦に振り横に振り
戸袋の巣を一羽づつ出る騒ぎ
へらおほばこの花の始終もおもしろく
青蘆に棒のやうなる雨の脚
沼はもう蚋の領域近づかず
甘酒を醸すにかまけらいてう忌
どこまでもゆく葛の花あれば嗅ぎ
うしろにも音して胡桃落ちにけり
鬼胡桃拾ふや栗鼠に配るほど
また今日も拾っちまつた鬼胡桃 (この句詩人中原中也の彼の「汚れちまった悲しみに」から来たかも)
鬼胡桃まだ落ちるぞと鈴なりに
ざうざうと五百枝(いほえ)万葉けやき散る
割って石榴の粒ぶちまける夜なりけり
胡桃材に冬日銃床になどなるな
欠け落葉穴開き落葉みんな霜
マグマ揺り上げて山山冬に入る
千枚漬真円少しづつずらし
ちらちらと木伝(こづた)ふひかり初雀
例の梅と言へばわかりて寒の梅
風花や古き手紙のおそろしく
左手の手袋も取り冬泉
花菜風死に照らされて一生あり
ももいろの喪ごころもあれ桃の花
竜天に登るうろこかはなびらか
玉響(たまゆら)のはるのつゆなり凜凜と
露の原股覗きして老いんかな (ちょっと飯島晴子流か。女性皆年取るとこの線やりたがるのではなかろうか。でもこれいつか来た道?)
ゆらめいてこの星もひとつぶの露

以上
(妄言陳謝)

以下の句には共通点ありますね。
同字、同音。
このテクニック常識的ではありますがこの作者は徹底しています。
読み手にとっては安心して読める感じです。で一言申し上げた次第です。

末黒野にこれは何かの何処かの骨
黒百合の花束黒といへば黒
ひとひらの炎(ほ)をふたひらに秋彼岸
蛸壺工場たこつぼ二万積む秋天
濡れて重たき昭和の傘よ昭和の日
蚊帳の環(かん)たんすの環(かん)の音はるか
鍵束のどの部屋もいま月の部屋
鷹湧いて湧いて一天深かりき
欠け落葉穴開き落葉みんな霜
マグマ揺り上げて山山冬に入る
鳥の恋尾を縦に振り横に振り



by 575fudemakase | 2024-08-19 17:13 | ブログ | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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