最近の嘱目句あれこれ8 2024年 （高澤良一）

最近の嘱目句あれこれ8　 2024年　（高澤良一）

◼️春

鳴き通す月夜の蛙上機嫌　　🐸

旭日の颯と殺到鯛の浦

この庭の何處かに蜂の巣昼の月

獺はイタチの兄貴で働き者

獺の何を祭るや森の池

奈良明けて鹿に嗅がるゝ花馬醉木　🦌

雨しとしとぴっちゃん昼から本降りに　☂️

鳥雲にコンビニ出来て五十年

昭和の日薬は多めに予約する　　💊

先達に「昼飯を食べに下りたる雲雀かな」あれば

上手下手あるのは道理と雲雀降る

◼️夏

中唐・賈島　聞蝉感懐　七言絶句

カルチャーラジオ朝っぱら新蝉聞く（新蝉は今年の蝉の意）

思ひきや家出たとたんゲリラ雨

騒がしい蝉音も細りゆく夕べ

熊・みんみん・おーしいどれも喧しい

あいにくがいっそに変わる避暑地行

さっきから五月蝿い蝿だ手打ちにす

小汚いごきぶり打たむとおおはしゃぎ

テレビ東京　日本人移住の地ブラジル　トメアス

トメアスの今かうもりの守る母屋

世界最大の干物

ピラルクの干物だらりを煮付けとす

むくつけきこんにゃくの花梅雨長びく

別海町名物ジャンボ帆立だよ

鉄柵をなめるナメクジ雨の中

蜘蛛の囲にあたふたやって静まる蝉

蟷螂は新たな切株踏まえ起つ

一茶に「人ならば仏性（ほとけしやう）なるなまこかな」の句あれば

しらしらと仏性（ほとけしやう）なる守宮の手

玻璃踏まえ仏性（ほとけしやう）なる守宮の手

気象庁発表

この夏の暑さは去年の二倍です　6月〜8月の期間（正確には1.86倍）

水底に青い造花の水中花

孑孒の変な字百度（ももたび）書き覚ゆ

孑孒の躰くねくね浮上中

造り物金魚放ちぬ水盤に

活動船放てりブリキの函の中

トマト切るなまくら包丁殖ゆ厨　　　🍅

包丁をしっかり研ぎてトマト切る

梅雨長し

雨垂れの下木は死に木剪り詰めろ

覗き込むスマホの画面オーシャンブルー

何としたこと煙草忘れて来た開襟

火の玉の又人魂の祭り是

寝っ転がり独り花火の句を推敲

花火果てよいしょと腰を上ぐ男

海よりの打ち上げ花火始まれり　　🎇

海よりの打ち上げ花火屋根向う

おほぞらへ変化花火の音筒抜け

花火爆ぜうす煙流れゆく浜辺

花火の句の推敲たっぷり時間かけ

花火果て金魚沈めり鉢の底

花火果て金魚睡りにつくころあひ

音楽に乗りて花火は空宙に

花火の句推敲しをり夜のしじま

花火もう終わったようだと云ふ声す

どかどかのその後パタリと止む花火

晴天をゆらめき昇る花火の尾

花火音谺し合へり浜のそら

飛びっきりでかい花火が続けざま

人魂の昇天めける花火とも

花火爆ず即ち家屋の反響音

火中より孔雀大王現（あ）る花火

空の奥ぶつかり昇る花火あり

数珠繋ぎの人々花火会場へ

ぞろぞろと違ふ道行き花火見に

オーブンでサクッと唐揚げ花火の宵

ローソンの唐揚げ君（クン）は国産チキン

ポンポンとおうちで楽チン遠見の花火

浜でダベリ時間潰して花火見衆

遠花火の音のポンポン川越えて

花火見に阿弥陀籤めく道辿り

花火に倦めば音だけ聞いて居る様子

大花火或る夜の道筋照らす月　🌕

歓声の届かぬ庭先遠花火

内房が丸見え海上花火かな

花火浴びちょいと早いが戻り道

暗闇に家屋沈めて花火果つ

開かぬ花火有るやも深き空覗く

もくもくと煙（けむ）出すばかりの手花火で

目の届く距離に据え置く紫薇てふ樹

あそこの木横に突き出す悪しき枝

ぶらさがり勝ちな花付け真夏の木　　🌲

電柱のトランス重たげなる真昼

対比される花

青空にむくげの直（ちょく）と紫薇の曲（きょく）

炎天に茫然自失紫薇の花

百日紅

炎熱に顱頂灼かれて骨ばる木

零るゝよ百日白のしらしら花

心頭滅却すれば火も自ずから涼し　快川

紫薇見てたら快川和尚が出て来たよ

坊主刈りにせむと思うて眺む紫薇

山下清

原色の花火が揚がる山下画

ピンと来る花火がたまに鄙花火

山下の貼り絵の花火林立す

花火にも強気弱気がありて黙（もだ）

山下の僕の僕のの揚げ花火

ファミリーマートにて

旱の中ざらめのメロンパン買ひに

熱射

木々の葉が枯れてちりちり異変の夏

蚊に刺さることを覚悟の庭草刈り

草刈り

ここは公道ちゃんとしなさい自堕落草

今朝のこと正しにかかったじだらく草

じだらく草の撤収作戦今完了

老いたりなビニール製の団扇は嫌（いや）

上げ潮どき水母浮いたり浮かなんだり

病窓と病窓向き合ふ西日のなか

腕時計重る日向路クリニック行

児雷也が見栄を切ったる暑さとも

仰ぎ見る初物真っ白さるすべり

クイと海猫（ゴメ）カンナ群生港町

八幡橋通過の海月は潜水中

夏果の団地の坂道ジェットコースター

開襟の縫い目ぐいぐいアイロンがけ

三味線プレイヤー　上妻宏光

津軽よされ三味でAGATUMA高調子

何故かふとデルボーの雲クリニック行

つくねんと蟇（ひき）歴然と牛蛙（うしかはづ）

紀伊國屋漫画コーナー春らんまん

夜涼みのいつ果てるともなく縁台に

朽ち初めし下腹抱え布袋葵

お隣りの不幸に触れじ紅蜀葵

一つ葉に二つの空蝉散歩道

一茶に「米国の上々吉の暑さかな」の句あれば

米国もうなぎ上りの暑さにて

ぱらぱらと水面打ち来小夕立

河原の岩洗ひあげたる虎が雨

ぶらり出て涼みがてらの店（たな）覗き

時懸けて髪を洗ひし疲れかな

湧き立つ雲いろいろ育ちは海岸ぺり

ギコガタとわが町自慢の太子やま

デパ地下で水無月てふ菓子買ひ足しぬ

この家にも巳（み）さん・神棚・大黒さん

（註）巳（み）さんは蛇の意

太子やま16才のご太子さん

山車（だし）用意最後にお太子さんを据え

太子の祭りローソクいっちょうけんじられましょ　🕯️

祭り過ぎチャット片付け京町家

この度もあとの祭よピーヒャラピーヒャラ

お祭りマンボ朝から晩までワッショイす

そーれそーれお祭だ私のとなりのおじさんも

棒振は息する為に又浮上

何かにすがるそれが祭だわっしょいわっしょい

祇園橋ほいさっほいさっと囃し過ぐ

続けるのも才覚の裡（うち）祇園祭

天気・交通何とかするのも祭りバカ　🚐🚌

閻魔参

此処えんま堂だからほらあの方

宮本組

広島抗争並みの力闘祭りバカ

聞いたかや祇園祭の交通方　🚐🚌

八坂詣出て独りごち夏来たな

そもそも祭りは疫病退散鎮めの法会

つつかけの感じの靴履き炎天へ　　👞

キンキラとギオン祭りの進行中

厄除けチマキ笹

花背別所町夫婦気張ってチマキ巻く

夏支度板戸と襖とっぱづし

◼️秋

おーしーつく

朝っぱらからじゅくじゅく半熟玉子虫

こほろぎかリリリで朝がもうあけてた。

過ごし易くなりし朝夕法師蝉

追憶は爺様の御留守に盗む柿

槍投げしあとのすってん大歓声

拳骨大じゃがもて肉じゃが作りとよ

聞こえたり聞こえなんだり法師蝉

雄日芝を力一ぱい引っこ抜く

家庭菜園作りの小豆まんじゅうに　　🫘

玄関より戻りて外せし月見の座

虫達の音色とりどりハケの路

川音に一息つくや風の盆　（八尾風の盆）

八尾人三日三晩の祭りかな（八尾風の盆）

八尾人自身の為にあるおわら

風の盆恋歌

石川さゆり熱唱舞台で風の盆

命を賭けて覆すおわら恋歌道ずれに　🎵

遅すぎる恋もあるべし風の盆

蚊帳の中から花を見る咲いて儚い酔芙蓉　　🎶

河鹿聴きしのび逢う恋風の盆

川音聴きしのび逢う恋橋涼み

柴田理恵丁丁発止おわら談

おわら談執念ねく土地っ子柴田理恵

墓原（はかはら）に音色綴れり昼の虫

鎌切の躰の作り図解して

人間界見下ろすやうに猿猴図

鎌切の跳び方かうと動画にして　🎥

猿猴が片手懸けたりお月様

跫が近み飛び出す螽かな　　　🦗

美濃国　斎藤道三

道三の國のバッタを追ひ立てゝ

バタバタ追ひ斎藤道三敗死の地

精一ぱい啼いて毎日蛬（きりぎりす）

蝦夷鹿の喰ひ漁りをり笹・どんぐり　　🦌

年年歳歳

何時みても同じ背丈のゆすらうめ

早や桃色帯びて真昼の酔芙蓉

その視野に子鹿納めて鹿の親　　🦌

防災の日テレビ初動に付きうんぬん　📺

TV クローズアップ現代　その時助けては来るか

能登の教訓重機入らぬ路だらけ

酔芙蓉夕べに窄まりぽとと落つ

恬淡（てんたん）と生きて安んず虫汝（なれ）も　　🐛

おほぞらを覗き込むやうスマホ繰る　📱

DOTORで先づ覗き込むスマホの窓

新涼の指もて開くスマホの海

エンマコオロギ未だ啼く明け方エンペラーブルー

夏休み　南無喝ら怛那とら夜耶（なむからたんのとらやや）

覆水盆に返らずあーあ休暇明

逃した魚は大きい　同様夏休みも

怨めしとお化けの森の手付き見す

朝顔に尿（しと）やりながら暁月　（朝顔は便器）

川霞の大井川ゆく茶畝の向う

押しかけ客路地にて戸惑ふ花火かな

児雷也が見栄を切ったる暑さとも

明け立ての素顔見せけり酔芙蓉

花火の夜屋根の上から懸かる声

日当たりよき町の公園鶏頭等

ポカリスエット

散歩日和いざいざポカリを常備して

三崎まで京急電鉄葛嵐　🌀

秋爽のアイロンがけは前身ごろ

戻り路はおーしーつくがヒーヒーと

芋ケンピ歯で欠きコキンと日本晴れ

夕風はどっちへ行った黄のカンナ

なけなしの貯金崩せばぎすの啼く

芦むらも荒んで虫の音も細る

やぶからしの向う行先垣越に

小さい子背伸びして取るでかい月　　🌕

弁天丸降り立つ我に秋めく空

国定の関八州を雁過ぎる

大野分に六十余州縮こまり

美空ひばり恋歌

神野美伽大化けJAZZでりんごの歌　　🍎

汚せるは西瓜の汁かあらら染み　　🍉

葉鶏頭に両（ふた）様のありその絵柄　

廻り灯籠この世とあの世はひと続き

半年の穢れを取るに千萱の輪

槿花一日あらしの前の安らぎに

水無月てふ白いんげんで作りし菓子

◼️冬

ここどうかとふんどし一丁ずわい蟹　　🦀

（蟹のふんどしとは体の一部を指す）

喰らひつく顔より大きずわい蟹　🦀

軒先へ野生の鶴のタンコちゃん

鶴舞はせ富士さんのやう雄阿寒岳

亀の甲二つ重なり池の端

なるようになるしきゃないの返り花

この俺がラスト寒暮の食堂棟

焼鳥の爛れて在りし彼の新宿

おしどりの艶聞三つ四つ表沙汰

人形（ひとがた）に息を吹きかけ厄落し

節分の夜は白味噌であぶり餅

◼️新年

ほうほうの体（てい）で退散する初夢

スマホ　📱

音声で記録今覚む夢のこと

凧抱えた形（なり）で熟睡映画の子　🎥　　💤

大旦杓子に残る飯舐（ねぶ）る

◼️雑

パッリンピックデビューボチャの遠藤裕美

パランピックボッチャのメダルは日本初

総理再選

記者の言逆手にとって石破節

再会

働いた手だねとほめて鷲掴み

PERFECT DAYS 二時間四分　🎥

来る日も来る日も役所広司の掃除の秋　　🧹🍂

掃除員を好演役所の彼の映画　役所広司

フラッシュダンス　1983年　一時間三十五分

きれきれのダンス踊りし映画の娘（こ）　🎥

Shall we ダンス？　1996年　2時間16分

躍動する手足ダンサー役役所　役所広司

役所容れダンスホールの美女（ひと）の視野

けさ家に忘れて来たと煙草好き　　🚬

茶房にて

スマホ覗く一徹の貌四方（よも）に見き

スマホ覗く少女の瞳ピーコックブルー　

貰ひ煙草家（うち）では吸えぬ喫煙者

算術は呪文三五は十五なり

要約するに認知症とは脳の空き部屋

セブンイレブンにて

商標に7の字あそこでおでん等

気象アプリに洗濯情報あるなんて

忍びの武器　手裏剣・撒菱・鎖鎌　　　🥷

買物ブギ連続ドラマのハイカラさん

ホ句作り言葉づかいもハイカラに

亀遊館　🐢

湯入衆（ゆいりしゆ）の頭に手拭い皆知り合ひ

数独で時間潰しをリハ病院

シャツの柄車だらけのバスの客　🚗🚙

押しかけ客変な道選り迷ひ出す

明け方の戸の隙間よりお早う日本　　🇯🇵

児雷也が見栄を切ったる江戸歌舞伎

往診は天然パーマの山本先生

一人減りまた一人減り食堂棟夕べ

犬の散歩角で尿（しと）してそれ嗅いで　　🐕

嗚呼認知症？

救急車でけふも運ばるうつけ人　🚑

熱中症か

消防員土足で突っ込む角の家

うーうーと云ひつ病者をかっさらひ

ロストフード運動助けにゃならむ世ぞ

麻酔医師さん有難う

大の字に寝て手術台我思う

蓋をするやうに就寝術前夜

ごまふあざらし浮上礼文のとっぱづれ

又落し物われ老いたりなまいったな

消しゴムで消せる生き様なら意味なし

町起こしに今では百鬼夜行絵馬

おのづから声出て片す身の四辺

この御廟崇徳の怨念怨霊鎮め

烏つつくは我が家の生ゴミ無礼なり　　🗑️

あげるなら出来栄えのよき陶の鳩　　🐦

京町屋家の守り神阿亀（おかめ）さん

来年はどうする

ガタの来た二人三脚夏支度

夏支度

風通しよくする工夫随所に町屋

家守るは牛頭天王のやうな輩（やから）

きりきりしゃんと妖怪人を懲らしめに　　😈

だんだんと年いって縮こまる背や

井戸端には蛇（みい）さんが居る京町家　　🐍

京町家大黒さんと犬一匹　　🐕

千里の道も一歩からワンツーワンツーこれがホ句　🎶🎵

今でもなほ口笛吹きつ坂本九　😗

思ひきやその幸せは雲の上　☁️

空の果て名もない星が僕らのやうに　⭐️

上を向いて歩こう夜だぜひとりぼっち　👦

見上げてごらん名も無い星が空の隅　🌠

ホットケーキ溶けるバターに大あはて

ザンバラ椰子片影の下明るくて

懸け違ふボタンの感じ眼鏡の度　　👓

以上

（妄言陳謝）