安住敦編 日野草城句集（角川文庫）の後半部分をほんの少し読みて （高澤良一）

安住敦編　日野草城句集（角川文庫）の後半部分をほんの少し読みて　（高澤良一）

目に止まった句をだらだらと記す。（）は小生のコメント。

コメント付きのものはこれからつくり、後日提出したい。

そして入れ替えて置きたい。

鯨肉を噛みしだくいのち惜しければ

切干やいのちの限り妻の恩

わが鞭をわが句に當てて霜ひびく

われ咳す故に我あり夜半の雪

香にて知る枕頭に蜜柑置かれしを

朝つぱらからシャリアーピン傍若無人たり

春の月けふ生き得たり明日も生きん

われになほ夢あり目刺渋けれど

高熱の鶴青空にただよへり

死と距つこと遠からず春の雪

春の蚊を孤閨の妻が打ちし音

春の晝妻の常着はみな擦れて

これやこの珍（うづ）のバナナをそろそろ剥く

夏蒲団ふわりとかかる骨の上

ながながと骨が臥てゐる油照

生き得たる四十九年や胡瓜咲く

わが前の蒲焼の値を妻言はず

水枕して寝てばかり誕生日

月の出や滅法涙もろくなり

生きるとは死なぬことにて露けしや

あはれなりひとりね妻の寝白粉

衰へしいのちを張れば冴え返る

食ふまでのたのしさ盡きず寒の柿

喉もとにひつかかるもの春寒し

八月やはつはつ鳴ける朝蛙

新涼やさらりと乾く足の裏

常臥せば猫にもみおろされにけり

初咳といへばめでたくきこえけり

冬ごもりあごひげいつか房を成す

冬ごもり茂吉のひげに倣ひけり

ひげ伸びて乃木さんに似る基督にも

うぐいすや次の部屋より茶のかをり

雛の日や聲あどけなき森田たま

木瓜の花紅し物慾斷ちがたし

雲白く照りハイドンの春の曲

よちよちと窓までゆきて春惜む

以上