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最近の嘱目句あれこれ21  2025年 (高澤良一)

最近の嘱目句あれこれ21  2025年 (高澤良一)


◼️春
棒切れに目がゆき拾ふ遍路みち
くだを巻く苧環なんてありゃしない
砂肝の焼鳥煙らせ養花天
らふそく作りのあの臘臘梅引っ被り
ぺたぺたと地べたに椿落ちてこそ
びん詰めのアスパラガスが妙に好き
日めくりに旗日の旗やけふ春分
ぶり返す寒さにはかに迫る春
春寒の何でも俳句にする朝(あした)
春寒の入れ歯を洗ふ水の音
巣を落とされ蜂むらむらと八つ当たり
春空の高きを渡るおてんとさま
春ぞらをにこにこ渡り初む日輪
春の昼鉛筆ぞりぞり削る音
春雨の遍く物を濡らす闇
春雨か辺りの物を叩き過ぐ
寒さ去り春の到来告げに
春の風海っペタより吹き付けり
逆さまに蜜吸ううぐひすおかめ桜
番いで来て蜜吸う目白寒桜
手の甲に老い皺妻にも春厨
引っこ抜き水を汚して芹摘むや
ぬかるみに滑りし跡や野蒜摘
野蒜摘五人金澤文庫裏
日輪は空中をゆく犬ふぐり
芹摘んで居るとき道を尋ねられ
亀の鳴くことは扨て置き本音を聴かう
チョコ好きの古妻にしてバレンタイン
コラムに云う平年並みとはさくらのこと
油チャン檀香梅は親戚で
吊るし雛
縁起物犬・猿・兎・鳩吊るし
酒田・稲取・柳川
二処見参日本三大吊るし雛
山裾に花ほのぼのと油チャン
四月馬鹿
えいぷりるふうる大愚と翻訳され
常宿の孫六温泉木の根明く
金縷梅の字を見てゐたら金語楼
山桜尾根尾根つなぐ一本道
雪こんこん黄の万作に山茱萸に
肥後守啓蟄間近きポケットに
材木が物云ふ雪解の下駄工場
庭に来て目白がかぶりつく白梅
とある日のアネモネむにゃと呟けり
目借時「ねずみのこまくら」脱稿す
雛の前可憐なあられ摘みつゝ
啓蟄
天気よく虫が地上に貌出す日
漆黒の土壌が育む春大根
葱坊主叩ける三浦のにわか雨
リマン海流春をもたらすスコトン岬
春大根掴みばしゃばしゃ洗浄機
物故者に知り合い多し二月尽
室咲きのあらせいとうが旬のもの
目で追へりピタゴラスイッチ目借時
掌に重る春のキャベツの楕円体
剥き出しの腕(かいな)すっかり春なので
遠足やミネラルウォーター肩より提げ
差す影に電光石火の柳鮠
桃始笑(ももはじめてさく)番いの目白等に
ぶり返す夜寒さ関東春なのに
云ひ方も舌を一寸出し蕗の薹
ぶすぶすと雪を踏んぶし涅槃寺
縦のもの横に寝かして囀る中
善隣門辺りで降られ通り雨
大雷雨関帝廟に逃げ込めり
とてつもなく広き庭にてつつじ咲く
ばあちゃんの胸元近く春火鉢
菜の花や月はどの辺から上がる
鳥の恋あっと云う間の老後なり
ヒヤシンス清貧合はせて持つ姿
小流れを濁して芹を摘み始む
他所者に変なこゑ懸け猫の妻
恋猫の傍題有りて「猫の妻」
カミソリの切れ味ためす春の産毛


◼️夏
沖合に生まる細波青水無月
さんせううを大きな顔を岩に寄せ
夏風邪の鼻から抜けゆく夢の中
香水
風に乗り来たる臭(かざ)あり名は「キスミー」
蠅虎飛んで無言の雨戸かな
偏屈を絵にしたやうな虫穀象
蝸牛独りぼっちになる夕べ
昼寐すれば躰すっきり遮二無二寝る
やんちゃな子ゆっくり屋さんゐてプール
きゃっきゃっとプールに反響子供のこゑ
市民プール泳ぎもゆっくりゆっくり屋さん
毛虫焼くやんちゃな子だが憎めぬ子
なめくじのやうに勉学ゆっくり屋さん
ぶよ来て耳打ち「長生きも芸のうち」
大間沖夏霧うすし鮪漁
がめつい奴はびこる野外映画見て
梅雨深く庭木のだんまりなほ続く
蒟蒻の化けて出そうな花ぎょぎょぎょ
能登人の一から出直し田植かな
身体によき緑の野菜夏料理
枝から枝へ一直線の目白かな
水彩画
大胆な構図の森から飛瀑音
開襟シャツ畳に膝つきアイロンがけ
句集序文
玉稿を賜る虹の起つ或る日
安政の火山灰(よな)黒々と噴井の底
揚げ花火柳となりて下りけり
遊船の旗胸鰭のごと震ひ
チングルマ見て来たばかり白馬村
サアファーの小波ばかりに切りを付け
サーファーの待ってましたと乗る大波
泳ぎ子のトントン耳の水を抜く
熨斗(のし)と云ひ手を擦るやうな平泳ぎ
先づクロールその後熨斗てふ平泳ぎ
弟も鍋釜提げて臨海学校
端山よりがやがや上りて林間学校
プールの水ぐるぐる廻れば矯声飛び
プールより一寸離れてゴムホース
眺め過ぐ市民プールを車窓より
木の暗(くれ)に蝶が紛れて飛んでゐる
素手で採る山菜ならん無人市
ザーと来る雨にずぶ濡れ毛虫かな
磊落な生き方選ぶ源五郎
汗の打者とんでもはっぷんホームラン

心臓機能障害一級
汗し通勤我が病名は心疾患

席譲られ夏の満員電車かな
走り茶をちょろちょろ飲んで小用足す
グレース・ケリー羅を着て倖せさう
レース等がお似合いマリリン・モンローは
素袷にするりと我が身入れにけり
白靴をひっくり返して砂払ふ
白塗りの華奢な階段海の家
小さき娘(こ)の手に相応の浮輪かな
目にちから込めて浮輪を膨らます
堂内に並べ干すもの遺書・願書
堂内に並べ吊るして土用干
いっぽんの夏木掠めてゆく風よ
夏木立樹下の大地の薄びかり
今年竹勢い余って塀ど突く
花うばら唱歌の文句はうろ覚え
あんかけ料理多彩パプリカ赤青黄
薔薇変な花で扱い兼ねてゐる
金雀枝と云へばてっきり悪王ネロ
桜の実除けて通れる通行人
町騒に育まれゐて葉桜は
雲脂も紙魚も叩いて払へ一息に
ファッションは冒険今夏の流行色
ファッションは冒険モノトーングレーの海水着
伊勢崎町に通じる道や竹牀几
新幹線の駅前にあり作り瀧
足の裏洗ふ老人夏至の湯屋
夏バテのかさかさ老人集ふ湯屋
箱庭を眼下にはべらす函館山
散水車舗道は傾斜して荒れて
散水車呼び止む舗道の荒れっぷり
くちなはのごとく馳す水散水車
目の辺り蛇にそっくりティラノサウルス
中華街喜雨の細道まよひ道
啼き声がひどくなりたる四十雀
蘊蓄を垂れる小鳥の来る頃や
善隣門辺りで降られ通り雨
大雷雨関帝廟に逃げ込めり
とてつもなく広き庭にてつゝじ咲く
日本の最北に来て蟻一匹
玉ねぎ書く素描の極めて細き線
鶺鴒の白キッパリと箒川
何時の間に散り始めゐるさるすべり


◼️秋
一服してゆっくり腰上げ松手入れ
新秋てふ一語するりと起ち上がる
彼方此方にお天道様の露の玉
長雨に打たれ無花果不味くなる
からす瓜門外不出の手品見す
ピーポーのポーが消えゆく霧の町
青びかり赤びかりして唐辛子
毒茸の代名詞なり月夜茸
虫干の堂出て色なき風のなか
お風入れ目当てに訪へる建長寺
鶺鴒の白キッパリと箒川
蘊蓄を垂れる小鳥の来る頃や


◼️冬
テレビ
人生の半分鮪を追いかけて
カーディガン引っ掛け散歩二歩三歩
いつも着てぼろぼろ自慢のカーディガン
猩々のお尻の色のポインセチア
あすなろの樹幹にみるみる張り付く雪
酷寒の鱈汁すする朝餉かな
寒けけふ食ひつくやうに月半ば
聖夜劇
星瞬き「僕の光を見てください」
冬銀河渦巻く無限の因と縁
煤掃のこんなところに袖珍本
沖に冬日ストックの畑暮れんとす
鏡なす海面みかんの山降り来
雨あとの北風に吹き飛ぶ雨垂れ見ゆ
むつつりと私事を秘め雪夜
餅に飽き食べたきものに心太
冬の虹ほれあそこにと指差す方に
常の夜の布団が重し定年以後
冬の夜の重きが寧し上布団
ビーフシチュー舌もてほぐす肉(しし)の筋
雪冠る樹々が夜通し落とす音
雪雨にいつしか変わる硝子窓
穴ぽこに年の火屑の垂れ放題
母艦遊びの番長八百屋の長男で
湖に起てるさざなみ避寒宿
篠竹の尾羽うち枯らし坊主山
見晴らしに凍み柿据えて白川郷
冬晴の合唱造りを鳶俯瞰
冬の蠅何時打たるゝか逃げ出すか
セーター脱ぐトンネル抜け出す心地して
リビングルーム
暖房のなかなか利かぬ十五畳
だぶだぶな夜着が好みで早寝癖
小樽にて
鱈汁を内地の人の我賞味
降る雪はすぐとけ山手線管内
大根台地雨にうるほふ葉のみどり
お酉さまに行く人中に顔みしり
山妻
重ね着の好好婆とはなられけり
手を締めてそれ相応の熊手かな
冬服のパッドこんもり頼もしき
夜間フェリーだだっぴろきに雑魚寝かな
葉でわかる樹木図鑑を買初に
前空きのジャケツが好きで何着も
横濱港
目つぶしの臨海夜景春近し
開戦結果トラ!トラ!トラをお土産に
かりかりと舗道の凍るゆふまぐれ
息白くぼうたん称ふこゑあちこち
寒鴉黒紋付で押し通す
電車やり過ごす駅にて粉雪舞ふ
弥次郎兵衛相手に師走過ごさんか
冬浅き葉物野菜の段々畑
日脚伸ぶ権現参り今途中
花魁道中ちんたらちんたら日脚伸ぶ
大鯰ひどく暴れし冬の珠洲
避難所に作り笑いし寒さ云う
日脚伸ぶ辺りの草を踏んぶして


◼️新年
神妙な味でありけり切山椒
何となく踏み出す方が恵方なり
成人になりても渡すお年玉
骨太の数句有りたし初句会
鶏の雄叫び挙ぐる大旦
火柱を三つ四つ連ねて吉書揚
火柱は必ず倒る大とんど
原稿の枡がたよりよ稿始
五十歳が若手の俳人初句会
前山の桜育む初松籟
元日の鳶の鷹揚御用邸
初鏡整理整頓ならぬ部屋
嫁が君何時死んだのか今朝気づく
死を見せぬ死に方もあり嫁が君
呼び込みの弁立つ春節中華街
簡単に破れ烈震の鏡餅


◼️相撲
諸手突き阿炎(あび)の視界は広かった
このところ翔猿(とびざる)らしさの出ぬ翔猿
突っ張って王鵬らしさが出た相撲
闘牛士のやうに変り身早き宇良(うら)
見る方も冷やつく相撲とっとくれ
勝ってゐても反省の弁王鵬は
快心のすもふでないが猪突の威力
豊昇龍俺が横綱てふ貌す
横綱は中肉中背すばしっこし


◼️雑
奇跡の一本松
震災の一像一像陸前高田
謎かけのずいずいずっころばし遊びかな
極妻の風格備はりかたせ梨乃
岩下志麻
極妻に拍子と握手女の覚悟
滑稽の抜け道うんと考へる
演ずるは男の背景高倉健
青竜のくりからもんもん高倉健
虎屋の羊羹時代に合った味醸し
人間は虚空から来た人其処へ戻る
Kindle普及
電子書籍機読書今更紙の本など
真昼の夢遮二無二生きる浮浪児達
砂糖欠く時代で出合った虎屋の羊羹
珊瑚婚式
赤飯たいてあかの他人と六十年
父方の田沼に骨を納めんか
わが弟
肥壺にはまるどじ踏み渾名は肥壺
地に足がついてる相撲なほ続け
ホ句作りおのが記憶の奥探し
木を継いで梁屈強に合掌建

ロボットダヴィンチを用いた心臓手術
肝心な処は機械で心臓オペ

あられうを おおかみうをの類いにて
汽笛一声陸路伝ひに新橋へ
山手線ぐるぐる缶切キコキコと
納得撮影ピタゴラスイッチ200回
能登大震災
銭湯の薪は人家の廃材もて
壊れ方ひどしと絶句珠洲の衆
能登震災の咄し途中で腰砕け
昭和の子酢昆布噛み噛み紙芝居


以上
(妄言陳謝)


by 575fudemakase | 2025-04-01 18:06 | ブログ | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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