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小川軽舟著『名句水先案内』を読んで    (高澤良一)

小川軽舟著『名句水先案内』を読んで    (高澤良一)
     2版発行 2024年12月5日 (株)KADOKAWA

作者名は原著を参照下さい。()内は筆者の書込みです。
書込みはちょっと遅れます。

花ふかく鳥の溺るる虚子忌かな
年々や桜にかなふ髪の白
花過の海老の素揚にさつとしほ
うららかや崖をこぼるる崖自身
花ちるや近江に水のよこたはり
根津銀座蝶がはたきをかけに来る
石鹸玉の割れし一瞬破片見ゆ
やすらへ花海嘯(つなみ)・兇火(まがつひ)・諸霊(もろみたま)
春惜しむモーリタニアの蛸の脚
菖蒲湯の沸くほどに澄みわたりけり
いつまでも日は西にある牡丹かな
中原の日の暮れにけり桐の花
さらさらと新茶を罐に移す音
五月雨や掃けば飛び立つ畳の蛾
みすずかる信濃は大き蛍籠
あぢさゐはすべて残像ではないか
アマリリスあしたあたしは雨でも行く
黒揚羽ゆき過ぎしかば鏡騒
いくたびも揺るる大地に田植かな
晩年は下駄履きでくる鯰かな
いま汲みし水にさざなみ黒揚羽
払ひたる手の甲に蠅当りけり
南風吹くカレーライスに海と陸
一瞬にしてみな遺品雲の峰
老の肘さむくてならぬ夏の雨
カバのデカ死んで日本の油照り
日盛や動物園は死を見せず
かなぶんに好かれて女盛り越す
ハンモックより過ちのごとく足
学会の夜のホテルに泳ぎけり
死水は三ツ矢サイダー三口半
サラダさっと空気を混ぜて朝曇
水着なんだか下着なんだか平和なんだか
ちと云うて炎となれる毛虫かな
昼寝の子簡単な顔してゐたる
象の背を箒で掃いて終戦日
どの家も道につながり盆の村
新涼の下駄に乗ったる足の裏
盆のもの河原に燃ゆること速し
暑き日の続く或る日の秋まつり
萩に雨こんな日もなければ困る
月光が釘ざらざらと吐き出しぬ
秋風や蝋石で書く詩のごとし
日和得て海坂藩の松手入
松手入仕上げに松の頭掃く
横顔は子規に如くなしラ・フランス
手触りも長十郎と言ふが如
眼のまはり鱗大きく穴惑
でんとう の かさ の とりかへ むれう で します
小鳥来るかさと音してもう一羽
「風ですか」「光ですね」とえのころ草
峠見ゆ十一月のむなしさに
小春日や耳元で聴く梳鋏
軍歌みな霜柱踏むやうにかな
鹿が口つけたる水輪冬の谷
冬薔薇満場一致とはしづか
異議ありの挙手冬帽を摑みしまま
図書館の冬の匂ひを今も愛す
火の匂ふ鯛焼に銭使ひけり
うす青きうがひ薬や冬に入る
材木は立てて商ふしぐれかな
海流のぶつかる匂ひ帰り花
ふたり四人そしてひとりの葱刻む
冬の蠅打たるる間合はかりゐる
古書店に主とふたりクリスマス
数へ日のどこに床屋を入れようか
寒き電線絡み入るスナック純
ショール掛けてくださるように死は多分
喪服まだ脱がず暖房まだ効かず
暖房のごつんがつんと効いてきし
開戦日人よりはやく銭湯へ
富士山も一吹出物冬日和
初春や島田おもたきタイピスト
初電車子供のやうに空を見て
降る雪の無量のひとつひとつ見ゆ
寒紅やくやし涙のまつすぐに
寒林の樗櫟(ちょれき)となりて鳥呼ばむ
初鏡この顔で押し通すかな
用箋の枡のさみどり稿始
菠薐草男の子ふたりに血を分かち
春雪やサイフォンの音ぽこあぽこ
ふくらんで押しあふ梅の莟かな
邦題がとつてもいいの日脚伸ぶ
心臓はひかりを知らず雪解川
日のさして流るる地靄蕗のたう
避難所に回る爪切夕雲雀
生きてゐる指を伸べあふ春火桶
春寒の灯を消す思ってます思ってます
法然の大きな寺や田螺和
初富士や大空に雪払ひつゝ
帽子屋に汽笛の届く春の暮
日の端を踏んで秋めく思ひあり
コート置けるよこっちの空いてゐる席に

「あとがき」より以下の一文を抜粋し提示して置きたい…

より現実的に即して俳句を作るために向かった無季俳句や口語俳句に彼らの切実さを受け止めたい。俳句の表現は開拓され尽くしたという無力感に立ちすくむこともある。それでも新しい時代の価値観や感情を背負うことで、俳句表現はまた新しい表情を見せるのではないか。伝統に培われた俳句という詩型のしたたかさが新しい時代と火花を散らす光景を著者の俳句に見守りたいと思う。

以上


by 575fudemakase | 2025-05-23 07:00 | ブログ | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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