最近の嘱目句あれこれ38 2025年 (高澤良一)
最近の嘱目句あれこれ38 2025年 (高澤良一)
◼️春
春ひとしをや旅の空うわの空
売ってゐる手品の種や万愚節
君のつく嘘にほれぼれ四月馬鹿
移り気な恋猫妙な声出して
散り初めて行き処判らぬ落花かな
去年のもの値切り倒して買ふ苗木
するりするり地べたに遊ぶ蜥蜴かな
椿の後椿が追ひかけゆく小川
たんぽぽの絮飛び初めて大堤
何処で咲く丁字か姿見せねども
川沿ひに柳絮飛ぶなり千曲川
さっきから蜂の音して只眠し
こそばゆき老人の耳虻捉え
水の綺羅流るる藻にも勝りけり
春の濱一つ落書きして退散
落花のむ鯉阿字ケ池潜航す
ぺんぺん草ひっそり閑の廃校に
急流に光ながしてあめんぼう
流氷群離岸知床後にして
座り込むああ疲れたとげんげの畦
寄居虫が著のみ著のまゝ宿換えぬ
山古志村山の上まで耕され
日ねもすのうぐひす尼寺の藪陰より
加留多とる姿勢正して加留多とる
双六に負け水飲みに立つ男
風邪引いて気分すぐれず紫荊
棒のごと飛び出して来る野島の馬刀
願ぎ事は一つ同志社合格にて
捨て案山子大いに笑ふ山の辺に
そこを行く恋猫ほっそりした肢体
ふりそそぐ日にたんぽぽのほほけ出す
硬そうな尻を廻りて木瓜の雨
手折りつゝ酸葉と短く云ってみぬ
道々にすかんぽ青春長からず
お隣の猫の恋路は我が家を抜けて
俳句には小品も佳し鳴雪忌(内藤鳴雪)
群生の春咲きサフランてふ植物(クロッカス)
固まってこせこせしないでクロッカス
紅梅に歩み寄る歩もゆったりと
涅槃変靉靆として白きもの
風車空転その色滅茶苦茶に
アユタヤの蝶あわただし涅槃吹
恐縮して物述べ合ふや卒業式
華やぎて一瞬一瞬鳥の恋
唯一筋理系に進む進学路
春炬燵ぽかぽか陽気を待てる日々
色褪せし元禄享保の内裏雛
鼻つんとおすまし顔の享保雛
雛壇に和気藹々の五人官女
春泥や雨水吸はす穴を掘る
春雨じゃ濡れてゆかうの妻三郎(正月映画の坂東妻三郎)
春水の脈打つ如く側溝を
海市まで富山立山晴れ間見せ
燕や大船観音袈裟懸けに
虻つつと走りて八手の葉のうへを
噛み砕き目刺の苦味口中に
連翹の一枝しないて鞭の如
騒人に別格存在花の園(トラピスト)
たんぽぽの黄が好きその上人柄温好
黄のたんぽぽ触発ゴッホの向日葵を
遠足子わいわい云うて池の端
在りし日の如くにさくら散るを見る
街角を曲がれる我に蝶慌て
クロバーの冷静沈着見習ひたし
花詠んで俳句生活何ぼになるか
みちのくより春蘭どっさり送り来ぬ
見るところ花は散れども吉野山
一様に芽吹くは何の木仰ぎゆく
エイプリルフール移住の冗談魔に受けて
いかなごの釘煮が好物だが入れ歯
十薬芽ぐむおのおの背丈異にして
時は今真昼の三椏真っ盛り
咲き競ふものに鎌倉梅椿
真っ平な土突き破り物芽出づ
物弄るやうに俄かな花の雨
ぺんぺん草生ふ何某の院の跡
辛辣な質(さが)ひた隠し花山椒
一塊の流氷寄り付く船腹に
藪陰にほのとあたたかストック畑
晩酌の足しにでもせんと田芹摘み
多羅の芽を折り取り戻る山がへり
この辺は蜂が警戒し居る域
蜂は巣の廻り警戒し居るやうな
◼️夏
蓼食ふ虫もいろいろ虚子は黄色好き
エイヤッと端をめくりて蚊帳の中
じりじりと片寄ってゆく壁の蝉
売りに出る緋鯉をバイヤー取り巻ける
鴨足草たをたをとしてさ揺らぎ立ち
句作数子規に倣へと閑古鳥
もの知りの守一にして蟻の画家
まみゆれば汗退く佛法隆寺
真っ直ぐに炎天の路須弥山まで
禅寺のこんな処に蝸牛
横濱の港にかもめ明易き
ぢぢと鳴き気短な蝉ならむ
仲秋の驚き貌に糞飛蝗
大寺を父親とせり青葉木莵
田植すみて白河辺りの夕景色
大船観音喜びとべる燕かな
清水飲み登り坂などへいっちゃら
巨峰と云ふ葡萄の数多の種ほき出し
誰も来ない真っ昼間とて裸
大木のてっぺん蝉の歩きをり
蛇提げて来て驚かす男の子
小笠原海・空・飛魚青かつし
次々と群れ為す蓼に雨意移る
花瓣欠く野菊も供えられ墓前
黴弾きながら話しは核心に
蘇鉄の花咲いて浦賀の東叶神社
絶対に蚊を入れまじく蚊帳入りの所作
ちまちまと殖ゆる萍ポリバケツ
暑に堪へて妻と二人で家に居る
萍の入り込む柄杓もて散水
日毎水撒ける手仕事大事かな
滝壺を出てゆく水の行方かな
森青蛙物の命は泡の中
逃げるやうに道窺ふは蜥蜴以下
予報通りだんだん荒しゲリラ雨
あっぱっぱー着て銭湯に遊ぶべく
甲虫薄びかりしてものものし
キャンデー等配られ学校踊の場(には)
乱舞して光りつづける蛍かな
大小の入江かこちてダチュラの新島
家涼し蚊遣の煙に包まれて
炎天の横断信号黄色が赤に
物指で背かく老い耄れけふは父の日
震災支援非力ながらもちょっと勢み
つくり雨「男はつらいよ」順調よ
梅花藻は人に優しや靡き詰め
噴水見て上野の山を後にせり
着飾りてラグーンを巡るミノカサゴ
川徐々に暮れ来て蛍の宿は何處
山小屋に何でも書けと記名帳(登山)
喜雨の中パイプオルガン圧倒す
スコールの斜線一気に海面打ち
おーしいつく台風来るぞと法師蝉
赤べらのひらひら泳ぎ絵のごとし
大鯰腹をかへして桶の中
雨乞いに夏木夏草耳攲て
蚊がぶんぶよるひるとなく焚く蚊取り
アラフラ海昼夜を問はず雲の峰
一日蟻観察描くは庭の蟻
漫画にして勧誘豚の豚太の蚊取線香
画伯清の花火絵評価まあまあで(山下清)
椀ほどの子亀のこのこ御前崎
満を持して嫣然と咲く白牡丹
更衣同じ柄にて同じ丈
鯖の旬黙ってしめ鯖なんぞ出せ
わが持病は頭痛持ちにてジギタリス
色褪せて砂に埋もれる花火屑
昂然と蘇鉄を叩く所雨(八丈、ご赦免花)
ユーカリの木の前白亜のコアラ館
ぷくぷくの腹引っ提げ脱兎の蜥蜴
泳ぎ子の耳の潮抜きとんとんと
富士山に雲よくかかり梅雨の到来
孑孑は休まなんだり休んだり
孑孑の浮沈今度はどちらかな
箱庭の月日埃を吹き飛ばし
のどちんこ喜ぶ三ツ矢サイダー飲む
花火音一つ大きく戦く顔
忙しく花火見る顔顔顔顔
海上に花火あがるや右手(めて)左手(ゆんで)
浴衣着てスマホ片手に花火の夜道
どどどんと続けて急かす揚げ花火
我が住まい朝のうちのみ涼しくて
打水を自分に掛けて舌打ちす
難儀して夏風邪躰抜け出たり
うかとして半年過ぎぬ更衣
木曽駒ヶ岳(きそこま)の男振り見よ初夕立
庭木全てに水撒き序でに道路にも
金石の響晩夏の蝉声に
しゃんしゃんと熊蝉断末魔の啼き方
育むメロンへ繽紛として海光
幽谷に抱かれ苔むす寺の屋根
只管打坐上品上生の佛達
金魚掬ひと綿飴に消ゆ祭銭
子供らへ等分に分け祭銭
頭(かしら)もて掻き分くものに麻のれん
畦道や谷戸を経巡る杜若
みるからに涼しく背鰭を使ふ鯉
営々と蠅を捕る他無きリボン
営々と蠅を捕るリボンでありにけり
素っ頓狂な顔を晒して羽抜鶏
鯉を盥に放ちてやれば一揺らぎ
銭葵自尊の徳川三百年
相黙しそのまゝ行きぬ蓼の道
力強く夏雨(なつさめ)落とす空が好き
左手は変化自在水狂言
朧々の昔蟷螂生享けて
枇杷の皮薄く剥く業心得たり
アスファルトに蚯蚓の轢死歴然たり
実向日葵日毎にあはれ夏の果
落ち蝉に人の佇み真炎天
坊主山登る途中に破れ傘
閻王の眉撥ね上げて列火の叱声(閻魔参り)
浪曲佳境那須与一の扇の段
義理チョコを妻より父の日のわたし
落ちつかぬ蝉飛んで来て三声程
百段を一気に登る土用あい
夏潮の今退くカモメの野島沖
籐椅子に背筋伸ばして老紳士
未だ沈み切れぬ西日にグッドバイ
市民講座刺繍クラブの窓の虹
虹の立つ山に向ひてお念仏
並べ吊る鉄風鈴と釣忍
山妻けふ諸肌脱いで髪洗ひ
急階段登るや愛宕の酸漿市
枇杷啜りほき出す種の大きこと
緑陰より脚投げ出して読書かな
朴散華俳句論争起こしけり
油蝉まさぐる家の軒端かな
八畳間蚊帳の吊り手の毛羽立ちて
ワンカップ求肥昆布も供へあり
噴水の無色透明空宙に
燦として修道院の和蘭海芋
慘として卑小を誇るきらら虫
燦として紙面を這へる雲母虫
行き当たりばったり松蝉樹から樹へ
矢車草の一輪挿しや事務多忙
阿字ケ池子亀浮かみて鯉沈む
堰の水返す西日に顔そむけ
釣堀須臾消えさりて電車の窓
立ち枯れの夏木めがけて大夕立
箱釣の弱りし金魚をつけ狙ひ
箱釣の金魚浮かみて呼吸する
鮎釣の人の散らばる大河原
顔セに館山の雨枇杷を挘ぐ
黴の中黴じとなまりを燻製す
取り出してバタバタあおぐやす扇
自転車引きしうねく西日差せる中
中途半端な虹の色とて今日の興
蚊遣火のなびける中に躰置く
向日葵が好きな生徒のクレヨン画
熾烈に優しくとんだ夕立ありにけり(突如 驚いた 強弱つけて)
苔の道辷り即ち俳諧も
この寺の苔に辷りし跡二、三
うすむらさきの馬鈴薯の花人一眺め
薄紺の茄子の漬物こりこりと
呉れたるは新茶牧之原台地産
夏木切り倒すまで見て立ち去りぬ
仏師の振るふ盛夏の鉈や思ふまま
金屏風風神雷神張り合うて
挽かれると覚悟してゐる大夏木
新宿御苑夏木一列渋滞為す
解説も朗々四重芯変化菊
道のべの延命地蔵苔むす足許
四重芯花火余韻を残す一映像
大佛の境内蝉の穴だらけ
大玉の花火轟く東京湾
石階をよぎる蟻見て杉本寺
藤房の垂れて長びく梅雨唯中
法外の値のつく金魚に呆れたる
例年通り新茶送ると便りあり
大夏木の翳を貰ひて寛ろぎぬ
真昼の蚊薄暗がりを飛べりけり
富士山を掻き消す夕立眺めをり
その団扇てっとり早くすずむには
油蝉不意打ち食わすはいつもの事
ホースより水迸り鰻の日
いつの間に少なくなりし遊泳者
どどと出る祭の人出浅草界隈
郭公啼き水徒らに澄むダム湖
その美味きこと純氷てふかき氷
茂みつくる大木の男振り
瓦は灼けつくまま蝉は燃焼するまま
幾くねりしてくちなはは水遁の術
蝉跋扈して喧騒の唯中に
風邪引きに糸引くやうな蝉のこゑ
炎天を未だ眺めゐて立ち去らず
丸太の如ごろ寝の妻を踏むまじく
昨日今日と木槿は花を零し続け
繭景気にうまく乗じて三溪さん
夏暗の色尚存す浅間山
なめくじにあたらしきことさせぬやう
満目の緑を糧に中安吾
快川の一喝聞かば暑からず(快川国師)
残る蝉悪態ついて死ぬ奴も
夏ぐれの叩きに叩くパイナップル畑(沖縄)
老の目に虹たをやかな彩残す
誕生祝ひ雨まみれなる薔薇を剪り
かなぶん落下傍らにある蠅叩
日盛りは今ぞと電柱の影細る
この猛暑におつむは留守勝唯眠し
錦鯉の大きな顔や餌やる時
徒らに波立つばかり晩夏の海
小魚の鯵一枚がわが朝餉
蛍の出去年に比べて悪しからず
紙魚の跡損傷致命的でなし
麦の出来去年に及ばず佐野田沼(栃木県)
白樺の貴公子然と目覚む森
懐中電灯LEDや蛍狩
ご赦免花矢来の雨を遣り過ごし
◼️秋
傾ける案山子を打ちに雨が急
案山子殿腰に巻く縄はや朽ちて
老い耄れて盆踊でも覗き見に
赤とんぼ増えては減るや能登の旅
陸続と垣根づたひや藪枯らし
日本を二つに断てり大野分
恙無く秋の一句の主たれ(俳句道)
仲秋の一騎黒澤映画かな
螽とぶ音のつれづれ田舎道
倒れたる身をそのままに捨て案山子
稲雀今こそ渡れ最上川
秋うらら堰をこぼるゝ水の音
秋日差す簗見廻って五、六人
拾ふ栗毬に朝露輝きて
決戦の月こそかかれ壇之浦
ばかばかと人なじる声秋の夜半
月煌々物捨つるには人目ある
喉越し良し洞然として濁り酒
釣人と思へる人影月見草
うろたへて家の戸締り台風接近
大切に使ふ一日花むくげ
さみどりに寺の石段露けかり
黒部峡ダム湖の水の澄まんとす
台風一過よく濡れてゐる木造教会
雄日芝のはびこる島の飛行場
サイパンを去るにつけても天河(日本人玉砕の島)
美術の秋上野に到来いざ行かむ
いりいろな側面詠んで台風十句
コーランに月細りゆき心細そ
飛んで来る音かまびすし大野分
数珠玉や川は光を返しつゝ
落花生の殻剥き難く止めておく
日に一回その下通る薄紅葉
渋柿を割れば無数の黒きしみ
もの置けば永久にその場所塞ぎ虫(弱虫の虫と同じ)
かぼそくも貪欲血を吸ふこの秋蚊
ぬくとかる肌を感じて秋蚊寄る
首筋を秋蚊に吸はれ取り亂す
華やかや津軽をとめの曳く扇灯籠(おぎどろ)
鈴なりの林檎の間に津軽富士
虫ケラと云はれて決意堅めたる
なかなかに面白偽装する七節虫(ななふし)
やゝ荒く秋風吹けり駒ヶ岳
三日月の地を這ふ影のいと黑し
珊瑚樹に只知る昔落雷火事
高原の秋澄み来れば湧くとんぼ
男気の甲斐の山々月明に
月明り地表を舐めて一晩中
大空を見廻し居る居る赤とんぼ
麦藁蜻蛉つういと飛べば柿田川
高脚の膳に盆菓子ご佛前
水際なる蘆刈り取って秋の声
何處でだう拾って来たのか草虱
おーしいつく変な処で声を止め
日本攻め立て様々の野分かな
稲子飛ぶ道なり意を強うする
霧の中松虫草はひた濡れに
逢はざるも亦よし秋の同窓会
山頂に立ちはだかりて鉄塔の秋
芋の葉のNo thankyuと日本語にて(嫌いや)
唯一念菊尊しと思ひけり
高く高く蜻蛉上昇中の空
飛行音漂ふ秋の空が好き
米ならぬ藷たうべばやとは思はざりき
月を詠む眉目秀でて俳句の徒
リロリロと虫音は永久に荒む庭
タービンの響きヴェルニー公園秋
寄せ書きの放射線状紙魚の秋
子カマキリ何處へ向ふの露の中
よく食らひよく噛みこなし煮干等
墓参り腰が痛むの目が霞むの
五十歩ばかり歩いて休む残暑かな(脊柱管狭窄症)
ハンモック肱にさはりて今朝の秋
新聞に寝かせて活ける芒かな
藤袴吾亦紅など混ぜて活け
苧殻火の始末じうじう水掛けて
栗を剥く包丁ときどき渋を取り
べいごの床に水張り立ち直り
障子洗ふ音ガタピシと湯殿より
あれこれと思案するなら秋灯下
秋の蚊を払ふが手応え無かりけり
けふは別いつもは素通り盆の寺
出し抜けに色なき風の吹く街を
団扇と残暑放り出されてゐる家居
到来の柿は身不知柿(みしらず)郡山より
灯点せば良夜現然安堵得し
奈良の秋空に横たふ暮色かな
台風は外れしと聞くがよくも降る
屋形船二艘シーズン過ぎてをり
秋雨を衝いて出船荒川丸(釣船)
上野界隈右往左往の赤とんぼ
取りもせぬ棗色づき宮川沿ひ(飛騨高山)
過ちは原爆歴史が裏打ちする(米国さんよ)
海上を雲ゆくその下鰹の烏帽子
白萩の汚なと云へば嘘になる
通りがかり懸稲積み上ぐ処なり
くねくねと小川溝蕎麦蛇行して
末枯れの全てを見せず戦場ヶ原
小流れを跨いでずず玉採る寄り道
じゅくじゅくがやがてシーツク法師蝉
りんだうを一目の峠白根山
墓域への道鶏頭の起き直り
扇灯籠(おぎどろ)の美女見えてゐて遠ざかる
新趣向ピカチュウねぶた登場す
霧がガスって混雑しをる東京湾
金魚ねぶた揃ひ浴衣で土地の子等
角ぬっと曲がって出現立侫武多
禅寺の萩見て暫し過ごさばや
望の夜の二階のラジオよく聞こえ
おっとりと秋の蚊らしく声潜め
秋晴れのハガキ咥えて郵便函
見事なる秋雲を見て唯歩く
鍋料理生椎茸を盛り沢山
弥彦山良寛も見し月ぞこれ
戦時下を思ひつ島田の甘藷干し(疎開先)
墓参り先祖の墓の頭を撫しつ
◼️冬
酉の市あてづっぽうで来たる路
あつあつの舌焼く葱汁何とせう
蓑虫も身をちぢめたるこの寒さ
そそり立つ椴松雪を装へり
米問題解決せずに暮るゝ年(備蓄米)
五郎助啼いて山古志村のさびれやう
その昔鯨肉売れり公設市場
小商さらし鯨で流行る店
寒暁の空ゆく羽音あまたたび
称名寺文庫の裏の冬の山
三の酉神社総じて閑散と
一と二は野暮用ありて三の酉
三の酉まばらながらも人往き来
鈴鴨のぎいとまがるや三溪園
鴨の中の鴨の一つに注目す
面を打つ竹刀の音や寒稽古
是が非でも鐘を撞かむとにはあらず
やっとうの冬を徹して稽古事
げてものは退けボロ市の何でも屋
叡山の凍て揺らぎ見ゆ千の燭
焚火消え煙横一文字風の中
紐育のマイケルさんの話日向ぼこ
御霊屋に垂れて垂れて枯ざくら
雛の顔しろしろとして冷めてをり
その赤きは人参ならむ料理屑
避寒宿色とりどりに野菜スウプ
台風が行って埠頭にゴミぷかぷか
煌々と月みそなはすお酉様
組み上げてきんきらきんのお酉様
鼻先を落葉ひらひら増上寺
冬木中飯店の灯の華やかに
月光に屈服するもの破れ蓮
帰らずに樹上に一羽寒烏
せはしなく暮れゆく許り小晦日
寒肥畑の四方人家に取り囲まれ(往時)
小ざっぱり髪刈って来て小晦日
病にもし色採りあらばみかんの黄
日没や伊那の雪山遠ざかり
押し流がさる雑踏の中酉の市
大寒にまけじと経を唱えけり
悴める手を閉じ開き炭火のうへ
お十夜へおもむく人のやう四、五人
舐める焔(ほむら)のうすむらさきに葡萄榾
黒部旱天刻々下がるダム水位
云ふにこと欠き鳰の海とは誰云うた
師走後半掃除掃除の日課かな
柴漬や諸子育む比良八講
麦蒔や田沼の鄙ぶ畑続く(栃木県佐野辺り)
陽気よくうかと咲き出し帰り花
あれも枯れこれも枯れたり百花園
大つごもりてふは音せぬ大扉
布団干しながら見てゐる船出のシーン(キネマ)
パチパチ跳ねる炭火によろこぶ心あり
大手振り日本縦断せし野分
冬の雨見てゐて演歌低唱す
水鳥の覚めもやらざる隠り沼
冬晴れの大気を吸えや胸いっぱい
懐手して山手線一周
懐手して俳諧の評者たり
懐手して難題に取り組めり
神前の落葉片してゆく下男
すれ違ふ顔顔顔の除夜詣
鷹一羽視線より消え風三崎
クレヨン書き火事の焔(ほむら)は蛇の舌
寵愛の龍の玉とぞデヴィ夫人
爺婆等団扇片手にお十夜へ
大掛かり大根洗ふ洗浄機
又落葉頭上見あげて見下ろして
楚々と立つ風柊の花零す
潤目鰯の干物を噛みて食欲旺盛
丹念に掃除し送る年なりけり
氏子達掃除落葉をふりかぶり
空風に吸はるゝ如く地下鉄に
悴める手さすり逢瀬の有楽町
枯れ蓮の水映すもの奈落
羆突如人を見る目の豹変す
うかとして杖忘れたり翁の忌
雪中の棚田の畦道滑らかに
草津泊明日の白根は雪ならん
校長の諸君呼ばはり冴ゆ朝礼
会場は雪かかれある牛鍋屋
虎落笛放つ鉄塔冬日厳
パルプ工場煙吐く街を雪解水(静岡県 富士宮)
一冬の薪家屋に横付けす
二ン月の雲今動き海へ出づ
人家掠め尚も疾走雪解水
糠漬けに貰ひし大根五、六本
小鼠の如く炬燵を抜け出す妻
振り込みはわたしの仕事日短か
◼️新年
新年句会評価めぐりて二三言
いかのぼり手繰るに任せ放つに任せの音のそそくさ
蓮田越し動きそめたる初電車
御不浄に忘れ来しもの初厠
ぱっとどんど火裏側見せて翻る
双六の上がり一番誰やらん
眉目秀麗なこけし飾りて初商
塵取あり即ちとって初仕事
追羽子の引っかかってる枯れ枝の先
春節や獅子に祝って貰ふ店
神前に満つる群衆初詣
追羽子をやりとりする音袋小路
かばかりの頼みなけれど初詣
猫柳ほゝけて左義長まで数日(どんど焼)
初日の出なみあみだぶつ勿體な
初詣岩屋への道入り込んで(江之島)
手毬唄声もはっきりエンドレス
初詣二日も三日も同じこと
初鏡もう一度見て外出す
片付かぬ仕事の山や年越しても
向き向きに羽子つく遊び何時よりぞ
破魔矢射る所は何處やと独りごつ
追羽子の拾ひ忘れや垣隣
鶏が絶叫年の扉開く
初乗や豪徳寺までチンチン電車
福引引いて引当てしものタワシに洗剤
はや寝ねし妻初夢の一ゑまひ
吾も汝も一緒にあの世で遊ぶ夢(初夢)
この人の元気は抜群シネマのひばり(正月映画)
唄ひつゝ笑はすひばり正月映画
銭湯絵は羽ばたく鵲お正月
初笑い上野鈴本演芸場
社務所に破魔矢わんさか来客待つばかり
破魔矢売り忙しさうな社務所の灯
成人式等顧みる写真帳
福引は一回こっきり唯寒し
正月からこだはり探す眼鏡かな
◼️相撲
今一つ足らぬ貫禄横綱牛(闘牛)
◼️雑
政治音痴ばかりお馬鹿の天下なり
方言蔑視皆愚かなる東京もん(懐かしや方言詩人 伊奈かっぺい)
紐育タイムズ記事等どうでもAI(マカテアさん報ず)
伊奈かっぺいローカルタレント宜しじゃないか
神社裏で黄金バットの紙芝居
へべれけが終に腰かけ与太話し(泥酔)
縁切寺真っ直ぐ行って突き当り
日本國一葉しにけり政治の季節(虚子に「桐一葉日当りながら落ちにけり」あれば)
米高騰なじりて不機嫌極まりなし
中古品の植木がありて老舗の花圃
誰が見ても玉(ぎょく)が逃げ出す将棋駄目
名刹の萩傷ましむ雨風や(宝戒寺)
自らの老諾ひて職を辞す
栞してペリー提督日本遠征記
植木屋の板で囲みし函車
自転車押し足の強ばる山の橋(正ちゃん 心旅)
目つむれば手にとるやうに見ゆ月山
黄色き魚赤黒き魚浜大漁
つづけさまにけん玉大きく開脚し
カーブしてほんとに迅いあの川の瀬
印度洋に出て船少しローリング
日本軍の戦車一台左舷に見
箸で食ふ文化絶やさず日本は
子規居士の食物だらけの日記読む
月日疾し糸瓜の水も取り損ね
口衝いて出て来る唱歌椰子の濱
伶俐なる彫像骨格丸出し犬(ジャコメッティ)
ジャコメッティの指さす男そぞろ寒
ジャコメッティのSpoon Woman合理的
忘られないジャコメッティのエスプリ感性
歩く人の彫像どうしてかうなるの(ジャコメッティ)
ブリューゲルいかがはしく不思議な絵
鋏あり使えば鈴鳴る鋏あり
料理屑それを使ってシェフのまかなひ
藤壺は極小富士山聳えたる
勉強す蟻の門渡りなる一語
鎌倉の歴史の中に比企一族
中華街目指しタクシーまっしぐら
世は様々落語に三遍稽古あり
面窶れしてぬるきカレー食ぶ
顔に向け小扇風機馬鹿じゃなかろか(爺さんの見方)
激辛の朝鮮料理辞退せず
男とは制御回路なしの電車(の様なもの)
老いぬれば自他の区別は歴然と
来客やありあふものを引っ掛け応対
道北の猿払熊笹皆傾ぎ
アインシュタイン舌出す何にたとふべき
一日一日おろそかならぬ日を送り
人の死を埃の如きと虚子述べき
人の死を埃の如きと虚子詠みき
負の遺産許り馬鹿者戦(いくさ)して(敗戦日)
ペリーロード確かめ歩くレトロ感(下田)
黄金バットにはかに登場紙芝居
なりふりもかまはずショーツで客あしらひ
釣船の勇み出でゆく東京湾
骨を切られて肉断つ一手を思案中
言葉が糧生きとし生けるもの達に
過ぎてゆく一日一日が黄金(こがね)のやう
水上バス波飛沫上げ隅田川
鳩歩く踏みつけ歩く己が糞
赤人がどうのこうのと和歌遣る人
ぼんやりと質屋の門灯点く頃合ひ(隣家は質屋)
横濱の港一望ベンチあり
生前に会ふて置きたき人やった(辻桃さん)
平九郎ゆかりの愛宕出世の石段(曲垣平九郎)
陸くねる長江芥下りゆく
自転車に跨がり馴染みのコンビニへ
簪の耳掻使ひ上手な妻
時化らしく小坪の魚屋閑散と
来客用スリッパ置いて到着待つ
その詠み方その為人俳句道
日のあるうちふらふらするな唯励め
中指でこけしを撫でて遠刈田
幕末維新しのぶよすがに柳橋新誌(成島柳北)
紐育駆けずり回る黄のタクシー
死ぬることあれこれ云うてみたが嘘
鞄開け取り出したるはジャッキ、金ノコ
文机に仮に積み置く手紙の束
日没の浪たゆたへり砂鉄の浜
最上川次の藁屋が見えて来る
いつの間に世に無き人とは言はれまじ
にわとりの右往左往の俄雨
途中下車したくなる寺早雲寺(湯河原散策)
頭下げる時は目線を深々下げ
しょしょ言葉何を急かせて何を得る(若者言葉 例 美味いっしょ)
「毎日が戦い」自分の裡に腑が落ちる
屈託といふもの探せば渡りに船
彼はと云へば屈託無き人楽天家
一の谷源氏義経一門の
立石寺登り詰めたるばせう翁
行き過ぎし観光立国いやはやお粗末
うかとして賞味期限の切れし内閣
けふの莟みあしたの莟みの上にあり
停車場の一語郷愁帯びてゐて
あらたふと明治活写の戯作本(成島柳北 柳橋新誌)
尚色といふもの北の地平線(北海道)
🔷追記
当句群は高名な虚子さんの御本「五百句・五百五十句・六百句」からお題を頂戴し、小生がまとめました。古本は神田神保町小宮山書店で購入。購入日は1961年2月16日。古本末尾には900円切のメモ。(値段らしい)
以上
(妄言陳謝)
by 575fudemakase
| 2025-09-04 19:52
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俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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