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最近の嘱目句あれこれ40  2025年 (高澤良一)

最近の嘱目句あれこれ40  2025年 (高澤良一)

◼️春
雲に鳥磯長の國に遊びけり
天広く地広く相模野青き踏む
梅咲けど鶯なけど無縁の生活
まな板に背中淋しき細魚裂く
昼比に戻りて昼餉干鱈の茶漬
花筏風さへあれば行先有り
だんだんに空が白みてほうほけきょ
金盞花へ上総の空が零す雨
にはたずみ踏まれ歪める春の景
啼き方が下手鶯が来てゐる庭
居酒屋の把手の手垢も春めきて
山焼くや眉にはらはら草の灰(伊豆 大室山)
温む田にぶつくさぬかす田螺かな
さし汐の朝はうれしく遠浅干潟
砂を摺るベカ舟海苔取り最盛期
田の田螺活きて居るとて欠伸する
餅焼き了え手持ち無沙汰の春火鉢
寛寿郎のドラマ終幕春の雨(嵐寛寿郎)
呆けたんぽぽ仏に近き顔をして
干鱈の茶漬ずるずるすする昼餉かな
雪解けを囃しはやして富士颪
唯今正午ことりともせぬ花時計
物売の移動車来たり春の村
三渓園ふはりと梅にうぐひすが
鎌倉の桜を浴びて太鼓橋
大欠伸しながら通る花見客
そよそよと春が行くぞよ長堤
あの渓の白っぽい花梅だんべへ
火が点いたやうに下降の鳴く雲雀
細長い春風ショールを裏返す
短夜をあくせく解ける植木算
あめふらしの歯のない口で磯歩く
新宿御苑へ出かけてみれば花だらけ
その軌道もとへもどるや蜷の道
上九一色村はこの辺雉の鳴く
上げ潮の水が冷たい浅利掘り
いつの間に上げ潮生足しろしろと
チャオプラヤー河畔に金ピカねはん像
陽炎やそぞろ歩きも堂に入り
くちなはに仲間割れして蛙(かわず)逃ぐ
生足に吹きつける風潮干狩
強東風にどうだと上がるいかのぼり
遠干潟入江の奥の油壺
潮干潟この湾にしてこの形ち(東京湾)
おほよその干潟の形見えて来ぬ
うぐひすが鳴かねば焦れておのれが「ほう」
大の字に寝て仰ぎけり揚げ雲雀
孤舟ひっそり霞んで海苔の羽田沖
寺の花飾り途中の花御堂
木の葉蝶余程地べたが好きと見え
三百年寝てござってもお釈迦様
ほれお前其処の田蛙よっく聞け
花散り込む修那羅石佛八百体
蜜閉に近き萍空いて遣り
上げ潮の匂ひひたひた汐干がた
ふらんどやもう直ぐ桜の咲く公園
ふらんどや脚から昇る町の空
上野山酔倒れあり花の宴
養花天犬を毛嫌いする主
湘南のやっと春めき防風林
薄氷は丁度半分阿字ケ池
しじみ蝶まとはり付くも他生の縁
とぼとぼとぺんぺん草の燈台道
羽撃つ如ぱっぱと春は過ぎゆきぬ
扉を閉して扉を又開いて磯の寄居虫
万愚節愚の上に愚を重ねる日
雲に鳥磯長の国に遊びけり
天広く地広く相模野青き踏む
梅さけど鶯なけど無縁の生活
まな板に背中淋しき細魚裂く
昼頃に戻りて昼餉干鱈の茶漬
花筏風さえあれば行先あり
だんだんに空が白みてほうほけきょ
金盞花へ上総の空が零す雨
春のにわたづみ踏まれ歪める春の景
啼き方が下手な鶯が来てゐる庭
居酒屋の把手の手垢も春めきて
山焼くや眉にはらはら草の灰(伊豆 大室山)
温む田にぶつくさぬかす田螺かな
砂を摺るベカ舟海苔採最盛期
田の田螺活きて居るとて欠伸する
餅焼き了え手持ち無沙汰の春火鉢
寛寿郎のドラマ終幕春の雨(嵐寛寿郎)
呆けたんぽぽ仏に近き顔をして
干鱈の茶漬ずるずるすする昼餉かな
雪どけを囃しはやして富士颪
唯今正午ことりともせぬ花時計
物売の移動車来たり春の村
三渓園ふはりと梅にうぐひすが
鎌倉の桜を浴びて太鼓橋
大欠伸しながら通る花見客
そよそよと春が行くぞよ長堤
あの渓の白っぽい花梅だんべへ
火が点いたやうに下降の鳴く雲雀
細長い春風ショールを裏返す
芳水を浴びて仏の御退屈(花祭)
短夜をあくせく解ける植木算
あめふらし 歯のない口で磯歩く
新宿御苑へ出掛けて見れば花だらけ
その軌跡もとへもどるや蜷の道
上九一色村はこの辺雉の鳴く
上げ潮の水が冷たい浅蜊掘り
いつの間に上げ潮汐干狩の果
いつの間に上げ潮生足しろしろと
さし汐の朝はうれしく遠浅干潟
風船売貿易風吹く街角で
雀の子けふも来てゐるさと女の塚


◼️夏
けふ長岡復興地震花火である
華やかに花火はパステルカラー調
終の花火の咲き方見ながら帰宅せり
花火の輪押し合いへし合い町の空
同じ箇所で花火炸裂空が痛さう
長岡花火端から尺玉ふんだんに
思いきり横に広がる花火かな
音楽付き花火打ち上げ緩慢に
日盛りや川音潜めつゝ流れ
前方に臨む東寺の夏木立
建御名方命(たけみなかた)推参したり御柱(御柱祭)
前方に臨む東寺の夏木立
海道のいっぽんずどんと海霧のなか
ときたまの人貌花火皆どよめく
丹精の鯉放ちやる養鯉池
脛痒しこんな処を刺す奴は
しんみりとひとりし聞くは夜の蝉
鷺草の立ち尽くしたり九品寺
萍の花の大鉢渇水す
空き腹に雷茶漬は唯一膳
目に見えて萍目減りしてゐたり
はつ夏の二階仕事や分度器持ち
きゃらきゃらと追従笑いや卯の花時
山古志村田植済ませば牛合せ
貌暗く膏ぎつたる実向日葵
高梢に蝉動きつゝ啼きゐたり
ざぶりざぶり雨振りかぶる八重葎
糊こはき開襟シャツ着て華燭の宴
身じろぎのならぬ暑さに文句たらたら
とんび舞ふ長者ヶ崎を南風一掃
しかめっつらして歩く他なし炎天下
西日のなかますますもゆる凌霄花
奈良漬をあむと齧りて茶漬飯
雷のごろつく山を駆け下り
太陽に照りつけらるゝ黒西瓜
雲の峰遠に見据えて握り飯
さはつても崩れさうなり濃山吹
はつなつの貌をつん出す紺暖簾
俯瞰すれば燕来初めて天の橋立
大船や乙鳥とぶ日の大仏像
祭見てひだるくなりし昼下り
朝焼けがよろこばしとて鳴く千鳥
蝸牛未だ寝ね足りぬか朝ぼらけ
すき腹に冷麦スリラー映画終盤
しろしろと枇杷にかぶせる紙袋
むくと起き寝たい程寝したはけ貌(昼寝)
端居して爺婆両人皺比べ
沢蟹のお腹ほんのり曙色
ぶとと云う小さな虫をぶあしらひ
風向きを選んで豚の蚊遣かな
月下美人一夜かぎりの美を尽くせ
外寝と云うおもしろきことしたりけり
鴨足草微風の通ふ小くらがり
かなぶんの死に稽古等持っての他
花の名をはにかみと付けおじぎ草
瑠璃蜥蜴尻尾落として一大事
夕立に叩かれ給ふ仏かな
青芒並みに貴公はうい奴よ
五、六間間を取りてヨット馳す
かはほりや上野辺りの薄月夜
富士さんのうしろ吹く風梨花散らす
追って来る庭のやぶ蚊の小うるさき
蚊が喚くむさい家とて住み古れば
苺栽培権現様の御膝元
草そよそよ蛇(くちなは)するする風を追ひ
麦秋の上総巡りや鯛の浦
豚蚊遣して煙来ぬやうにあっちに向け
爪弾き紙魚と遊べる袖珍本
金時が鯉と遊べる国芳画
稽古笛ひょろり太鼓はトントコと
大夕焼け見事に映ゆる棚田かな
横須賀か夕飯過ぎの遠花火
キンキンと蚊が鳴き出して顔の傍
後頭部当てがひ冷やつく水枕
落書きのヘマムシヨ入道暑苦し
水中り腹の具合もだいぶ良く
うっすらと夏うぐひすの夜明けごゑ
じゃじゃ馬の尻を揃へて発走前
落雷にふはつくやうな歯の治療
通過待つ踏切しんとして青田
夕立が始まる先づは桂打ち(地植えの若木)
書類取りに片陰できし町役場
青空のやうな水着を試着して
突っ走れ精出して湧く富士清水
文机で物書く我に寄り来る蚊
行け蛍小川せせらぐ方へ行け
コーランのうおんうおん夏暁け広場より(ジャカルタ)
かしましや蝉の大阪知らんがな
熱風に尻を吹かるる油蝉
はいはいしてくねり盛りの南瓜蔓
両国の花火見に来て大涼み
姫路城天にひっつくみんみん蝉
暑ければ夏風邪引いたとずる休み
裸児の橋から飛び込む吉田川(郡上)
蜻蛉の尻でなぶるや蓮田の面
立腹もやもうえぬ程百日紅(連日の酷暑)
この暑気にやけを起こして百日紅
鳴神の誂え通り人走らす
わたつみにはつしとあたる日の光
水を撒く奴となりて庭木の保全(酷暑による立ち枯れ防止)
雲脂払ふ如く払へり不精神
ナイターの完封試合よかったね
蝸牛見するは足(あんよ)かベロか舌か
取り敢えず道路の水撒きしておいたが
ゲリラ雨取り込みすばやくよかったね
花火に飽きた貌して戻り道長し
花火見て家族一同ご満悦
気合いもろとも打たれて蠅の頓死かな
宙に手足突き上げ蠅の頓死かな
蛍居る谷戸へしろしろ月の道
順追って将棋の解説喜雨の中
八十に五ツ踏み込む大暑かな
句作りにトコトン励む夏百日
楽々と処世昼寝も小一時間
吝嗇の咎責め立てゝ閻魔大王
老鶯の其の語尾ケキョと立ち去りぬ
かはほりの出入り頻り米問屋
楊梅の散乱真昼の町中に
我を刺しぷいと逃げゆく蚊の奴め
御用聞きの巡り来る如あぶれ蚊は
お茶の水歩いて降りて紙魚の会
さはったら手も切れやせん青すすき
母の日の蘭の水遣り十日に一ぺん
ピカドンの被爆者10万下るとニュース
富士さんの弾丸登山にはびっくり
散策の犬も嗅ぬぞ灸花
安政の伝来物の大鯰
筍のうんぷてんぷの探索なかなか
どん臭き海牛着飾りきらびやか
舟蟲の野次馬根性見す岩場
茅の輪撮るカメラにポツポツ雨の跡
あめんぼは平らに飽きて飛んでみた
風鈴のチリリリリリと変な風
老いたりないつかうしろへさす扇子
ゴッホ見に上野へ腰にさす扇子
夕立の端の辺りにゐる遠出
夏山を仰いで登る心意気
友送り蜻蛉返りのひでり道
旱道アメリカ芙蓉が咲いてゐる
旱天を一人戻れりはふり後
動く時文様走らせ錦蛇
ぬひぐるみ抱いた形して昼寝の子
氷入り麦茶がぶ飲みして木陰
湯入り衆の頭五(いつ)、六(むー)真夏の日
キンキン音すれば寝しなに焚く蚊遣
古蚊帳から抜け出て尿にゆく夜中
街洗ふゲリラと化せる雨一見
きのふ吊りしばかりの風鈴鳴ってをり
りんりんと律儀なものよ鉄風鈴
にくまれ蚊腕に止まらせ百叩き
庭隅でぶとの寄り合い始まれり
大花火よそ見する隙ありません
黒い穂も勢いづいて麦の秋
浅間から別れ来る道草いちご
兎も角もかう暑くては茶碗酒
暑き夜の鼻歌聞こゆブンガワンソロ
民宿の昼顔けろりと咲きゐたり
もうそれは過ぎた話よ夕端居
話しちょいと佳境に入る前蚊遣哉
隣の婆涼みがてらの草むしり
藤壺やぷんぷん臭ふ梅雨の磯
旱年もみぢも先っぽやられけり
枯れ具合中でも椿大旱
昼過ぎから海へせり出す旱雲
どう見ても三文芝居土用夜更け
軽井沢さらばさらばの夏の果
寝て起きて大欠伸して夏百日
水撒いて一息つけるおれが家
砂日傘に手足のほてり癒さむと
ちさい子がヨーヨー買うて戻り道(夏祭)
云ぶんがたっぷりありさう蟹の面(つら)
夕涼や汁の実を釣る野島沖
うす縁(べり)や夏の日差しは影浅く
砂糖が貴重な時代を思ふ真桑瓜(まくわ)みて
うすのろの蠅の歩けるカウンター
空腹の腹へ響きて花火大玉
雲の峰ずんずと背丈伸ばしけり
仰向けに蚊屋のうちなる別世界
雑巾で足裏ぬぐふ夏の雨
白足袋に女だてらの神輿舁き
大曲り花火の上がる川向う
明日祭の八幡神社の昼の体(てい)
経済てふ大からくりの世を泳ぎ
草笛のひょろりしなのの川ひょろり
磯蟹を採って遊べる親子連れ
こりゃあ困った垣の毛虫も食い盛り
鼻紙に容れ持ち帰る落とし文
じめじめとした日が続き羽蟻とぶ
わか葉して祭を待てる八幡宮
顔暑し扇子持たねば手風もて
躰の大小髪の刈り方暑さに直結
湯屋出でて声の小さき夏の虫
早池峰山仰ぎ涼める河太郎
薫風にとんびの仕方する其の子
小うるさいぶよつきまとふ朝草刈り
引っ叩く我が手逃げきる蚊の奴め
棒ふり虫めいめい勝手に棒ふり虫
階を登る如くに棒ふり虫
棒ふりが脇目もふらず昇天す
くちなはの世をはかなんで墨衣
藪っ蚊のチクリと刺せる耳の際
蚊もちらりほらり貌見す我が寝所
逃げて来てだいぶ下流の蛍の宿
柴沖合一夜に出来し峯雲かな(武州金澤八景)
庭の蚊の追ひかけ来ればドアぴしゃり
閨の蚊の啼き声脳に沁みて来ぬ
茶をすすれば茶運び人形彷彿す(新茶)
一つ蚊の金切り声に耳欹て
カーフェリー寺泊より赤泊りへ
佐渡航路浪がぎらぎら雲がにょきにょき
松の蝉いい加減鳴き其処去りぬ
昼餉とりながら聞きゐる遠の蝉
啼き移る蝉の終点椨大樹
町内の草っ原から蚯蚓の唄
一念仏申す夕立聞きながら
酒尽きて放心の態夏館
素足にて板間のリヴィング涼しかり
苔いろに染まる石像称名寺(金澤文庫 北条実時像)
暑き夜の半分使ひホ句作り
夏痩せて妻にさとさるいか物食い(小人閑居成不善)
ど忘れの漢字が増えて夏見舞
蚊帳吊りが日課の我でありにけり
山車の行く地面がほてってしかも坂
三回も雷に打たれりゃうつけ人
花火見に扇片手に夫婦づれ
電気式蚊いぶし焚いて蚊を抹殺
かなぶんの一人遊びや街灯一周
夕立や大いさかいの真っ只中
垣越しに隣家の人も夕涼み
やれ打つな蠅張の蠅止まる処
へらず口叩く烏に大西日
もう少し暑さが減れば庭木助かる
汁の実の足しに我が家の痩せ茗荷
じょりじょりと切り絵の如く影法師
影法師花火の闇ゆ現れては消え
鉄塔にずらり並ぶや朝燕
とーふいと売り歩く声晩夏の街
風さやか一天に雲一湖に虹鱒
ののさまにあげてとままこのしりぬぐひ
夏旺ん仕様事なしの更衣
奥の院河骨しんと水鏡
はつたいや中途半端なくしゃみして
嗚呼痒しもう蚊が出たかと手をこすり
隙人や空らの蝸牛を手に数個
この地球に置き処なき暑さかな
音もなく飛ぶ蠅大部屋横切りゆく
父親の掴む娘の腕薫風裡
花火大会とどのつまりは立ち消えに
灸花あちこちに見て女坂
死に下手のかなぶん暫くして蘇生
燃えるゴミと共に処分の藪からし
でで虫の捨て家ここにも九つめ
しろしろと地べたに捨てある蚊遣灰
下手上手のはっきり児の書く祭の絵
老鶯の小声揺れゐて息吸ふ間
十分程てぬかりありて遅る花火
水無月の雨見て居ても暗くなる
その後はだまりこくって夏うぐひす
完熟のトマト苦茶々夕日苦茶々
ざわざわす花火の切れ間切れ間かな
夏果の暑さの覚めぬアスファルト
じつとして髭を撫す也老舟蟲
西日して家の半分暑苦し
天牛の喧嘩早いが玉に傷
夕立のすんでにぎはふ御徒町
夕されば手にしっくりと団扇の絵
手庇に寸馬豆人不二登山
大山詣で雲一つなき土用空
次の花火うち上がるまで馬鹿長き
氷同士がくっつき通しのグラスの氷
グリンピースハヤシライスの平原に
軽食のハヤシライスはトマト味
米価高止りしたまま下がらぬ暑さかな
遂に虹消えゆく我等もあの通り
海上の虹立ち直る出雲崎
じつとして地べたに憩う木の葉蝶
アラブ風タコスを街の片陰で
さぼてんと葱と玉葱メキシコ料理
思ひ立って一茶峯雲の上総行
蠅が手をする一茶郷里に安住す
雷浴びてうつかりひよんとした顔へ
門の木も先づつゝがなし建長寺
日盛りや川音潜めつゝ流れ
前方に臨む東寺の夏木立
建御名方命(たけみなかた)推参したり御柱(御柱祭)
海道のいっぽんずどんと海霧のなか
ときたまの人貌花火皆どよめく
丹精の鯉放ちやる養鯉池
脛痒しこんな処を刺す奴は
しんみりとひとりし聞くは夜の蝉
鷺草の立ち尽くしたり九品寺
萍の花の大鉢渇水す
空腹に雷茶漬は唯一膳
目に見えて萍目減りしてゐたり
はつ夏の二階仕事や分度器持ち
きゃらきゃらと追従笑ひ卯の花時
山古志村田植え済ませば牛合せ
貌暗く膏ぎつたる実向日葵
高梢に蝉動きつゝ啼きゐたり
ざぶりざぶり雨振りかぶる八重むぐら
糊こはき開襟シャツ着て華燭の宴
身じろぎのならぬ暑さに文句たらたら
とんび舞う長者ヶ崎を南風一掃
しかめつらして歩く他なし炎天下
西日のなかますますもゆる凌霄花
奈良漬をあむと齧りて茶漬飯
雷のごろつく山を駈け下り
太陽に照りつけらるゝ黒西瓜
雲の峰遠に見据えて握飯
さはっても崩れさうなり濃山吹
はつなつの顔をつん出す紺暖簾
俯瞰すれば天の橋立うつくしき
大船や乙鳥とぶ日の大佛像
祭見てひだるくなりし昼下り
朝焼けがよろこばしとて鳴く千鳥
蝸牛未だ寝足りぬか朝ぼらけ
すき腹に冷麦スリラー映画終盤
しろしろと枇杷にかぶせる紙袋
真夏にもえし精力余るもみぢ
むくと起き寝たい程寝したはけ貌(昼寝)
端居して爺婆両人皺比べ
沢蟹のお腹ほんのり曙色
ぶとと云ふ小さな虫をぶあしらひ
風向きを選んで豚の蚊遣かな
外寝と云う面白きことしたりけり
鴨足草微風の通ふ小くらがり
かなぶんの死に稽古等もっての他
花の名をはにかみと付けおじぎ草
子に尻尾切られて蜥蜴一大事
夕立に叩かれ給ふ仏かな
五、六間間を取りてヨット馳す
かはほりや上野辺りの薄月夜
富士さんのうしろ吹く風梨花散らす
追って来る庭の藪蚊の小うるさき
蚊が喚くむさい家とて住み古れば
苺栽培権現様の御膝元(静岡 石垣苺)
艸そよそよ蛇(くちなは)するする風を追ひ
蚊遣して豚煙来ぬやうにあっちに向け
爪弾き紙魚と遊べる袖珍本
けいこ笛ひょろり太鼓はトントコと
大夕焼け見事に映ゆる棚田かな
横須賀か夕飯過ぎの遠花火
キンキンと蚊が鳴き出して顔の傍
後頭部当てがひ冷やつく水枕
落書きのヘマムシヨ入道暑苦し
水中り腹の具合もだいぶ良く
うっすらと夏うぐひすの夜明けごゑ
じゃじゃ馬の尻を揃えて発走前
落雷にふはつくやうな歯の治療
通過待つ踏切しんとして青田
夕立が始まる先づは桂打ち(地植えの若木)
書類取りに片陰できし町役場
青空のやうな水着を試着して
突っ走れ精出して湧く富士清水(富士宮市街)
文机で物書く我に寄り来る蚊
ゆけ蛍小川せせらぐ方へ行け
夜は風落ち風鈴の音も細る
薄茶色して涼しさうその作務衣
汗しとる鼻や眼鏡のずり落ちて


◼️秋
うすら寒我身を我が不寝番
樹の穴に昼夜ふくろふ林檎守る
佇めば半月動く阿字ケ池
だるげなる昼を迎えて鮭茶漬
稲子等を脛で払って荒野ゆく
稲妻をけばけばしく描く横濱絵
桃むっちり朝日の届く盆地かな
柿田川川いっぱいのとんぼかな
八月が行きそびれたる金気水
中秋の中洲暮れゆく薄闇に
あれ中洲ごっそり持ってゆかれ野分
家一つ蔦取り巻きて廃屋に
校庭に櫓設え盆踊り
寝そべってふんぞりかへって大文字
鶏頭のガクと首垂れ炎天下
足裏に冷つく階段二階へと
荒磯に盆具あれこれ打ち上げらる
雁や家ある人は家に返す
油絵のけばけばしさや黄のカンナ
通り抜け自由な寺の盆踊り
常陸の空暗くなるまで赤とんぼ
閼伽桶下げ痩せ鶏頭の墓地の道
高山寺ぱっと咲きけりお茶の花
はつなつの顔をつん出す紺暖簾
漆黒のさはらば雫垂るぶだう
足許へむかご落ちけり笹っ原
辿り初む細道すすきの仙石原
風癖の付きしすすきを手折り兼ね
朝風に大蕣の吹かれ詰め
糸とんぼ止まる処が判る朝
どぶろくにぶつくさ云うても元の木阿弥
赤とんぼせかせか峠越えゆけり
湖畔の森赤い木の葉の交じる木々
煽られて里芋の葉をまろぶ露
そば時や武州金澤八景の蕎麦屋で
日本の雁とし渡る準備万端(一茶に「けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ」あれば)
雁ごやごや田んぼに降りて立ち話
鶏頭のつくねんとして獺祭忌
月見んと立つる片膝露けしや
初ちちろ聴き初むその日吉日と
露零すことが本分露草は
露草の露まみれこそ本来的
一吹きの風はや知るや相撲草
寝(いね)あまる夜を長しと思はずや
泡立草悪さ働く幾在所
通り雨ひそかに爆ぜる鳳仙花
夕月にくいくい鳰の寄って来た
谷戸をゆく水が澄みきる滑川
稲妻や烏天狗を浮き彫りに
大佛の鼻筋掠め稲光り
稲妻に力み返って仁王像
秋風の一もくさんに浦賀水道
内房線立ち往生をする羽目に(台風一過)
華やかに花屋の朝顔行燈作り
この機のがさば放っちゃれ鮭ののたれ死に
山霧は松虫草を隠す程
女郎花霧に去られてあっけらかん
ひつついて軒の蜩かまびすし
三ケ月は信玄公の兜の上
月ちらり寺前町の瓦屋根
月の下だぶりだぶりと瀬戸の潮
三角に梨の捨て芯包丁もて
山小屋の寝しなに見に出る天の川
角振って踊り巧者の遠野鹿(しし)
草むらにちちろすだきて黙す瞬間(たまゆら)
長月は長雨月(ながめづき)とも菊月とも
ド田舎や青黄とりどり田の色づく
鷹の羽すすき粋で通すやホ句道も
備蓄米秋田小町を手にする日(新米)
昼顔やおやいつの間に昼の月
稲妻にずたずた江之島大橋は
ぽっかりと月出て寺町夕木魚
鶺鴒が叩いて金谷の駅前広場(内房)
どう追われても空がある蜻蛉
老いぬれば芋細切れに朝餉とす
行く雁を見る青天のとっぱずれ
キリギリス一しきり鳴き夜も更けし
死後の事は死後の事とし秋の蝉
ガラス戸に映る夕栄え水晶岳
朝顔の這ひつくばって遊び蔓
里芋のどっとばかりに露零し
ありあはせのすすき供花にしけふの月
郡上踊り三人三色の出で立ちで
朝比奈峠人待ってとびキチキチは
鳴くな虫かまびすしきは嫌はるる
町中を手分けして飛ぶ秋蜻蛉
運動会息を合わせて徒競走
キリギリス馬鹿鳴き明日は心臓オペ
きのふ咲きし朝顔のふぬけ色
味確か小粒なれども鄙の柿
つまみ食いしめつぽくなる陸稲かな
けふ確か十四夜月と寝てていふ
しとしとと雨だれ暫し石榴の尻
赤い羽根売らんと人佇つ銭集め
朝顔に一声掛け来てとる餉
霧こめる花園松虫ちんちろりん
秋立つといふばかりにて気が晴れる
天気予報野分来るとて指し棒持ち
それがしも西馬音内踊り人数の裡
大文字がつくり崩れゆく暗闇
蜩をたっぷり聞きつ湯につかる
青空のきれい過ぎたる根魚釣
煙だらけのサンマ祭の気仙沼
サンマ漁宮城船団吼ゆ南洋
小短き旅し濁酒に骨休め
命がけで向うサンマの大海に
サンマ漁大漁で心に祭唄
電照灯ギラつく海でサンマ漁
映り込む月待宵の角田川
仲秋名月仏のやうに丸くなり
月のヴェニスカンツオーネなんぞうたふべき
ガスかかり模糊とする世を遠眼鏡
大井も奥の目につきまとふうんか哉
曲げわっぱ作りに精だす井川の秋
澄みに澄む谷川の水接
たゆみなく作るに作るホ句の秋(一茶の逞しい野生と生活実感)
大井川増水川止め毎度のこと
百圓と南瓜の値札下手な字で
うすら寒我が身をわれが不寝番
樹の穴に昼夜ふくろふりんご守る
佇めば半月動く阿字ケ池
だるげなる昼を迎えて鮭茶漬
稲子等を臑で払って荒野ゆく
稲妻をけばけばしく書く横濱絵
桃むっちり朝日の届く盆地かな
柿田川川いっぱいのとんぼ哉
八月が行きそびれたる金気水
仲秋の中洲暮れゆく薄闇に
あれ中洲ごっそり持ってゆかれ野分
家一つ蔦取り巻きて廃屋に
校庭に櫓設え盆踊り
寝そべってふんぞりかへる大文字
鶏頭のガクと首垂れ炎天下
足裏のひやつく階段二階へと
荒磯に盆具あれこれ打ち上げらる
雁や家ある人は家に返す
油絵のけばけばしさや黄のカンナ
通り抜け自由な寺の盆踊り
常陸の空暗くなる迄赤蜻蛉
閼伽桶下げ痩鶏頭の墓地の道
高山寺ぱっと咲きけりお茶の花
漆黒のさわらば雫垂るぶだう
足許へむかご落ちけり笹っ原
辿り初む細道すすきの仙石原
朝風に大蕣の吹かれ詰め
糸とんぼ止まる処が判る朝
止まる処はっきりしてゐる糸とんぼ
止まる処考へてゐる糸とんぼ
一押しは鶴田浩二の赤蜻蛉
よく見ればとんぼの飛び方一直線
去りかねてゐる仲秋を蝉の鳴く
とろろ汁すすり込んだるふかふか飯
名月や御覧の通りあからさま
盆波やだぶりだぶりと芥寄す
盆波の立てばうなばらあの通り
立ち姿立派なもんよ女郎花
馬づらはぎ尾鰭胸鰭そよそよと
何をして腹紛らせむ昼の月
湧く霧に一人きげんの男郎花
とんぼうの日焼けは尻尾の辺りより
いつものこと一人歩きのキリギリス
秋天へ首(かしら)突き上げ中華獅子
初風の發々建長興国禅寺
紫蘇の葉に残る暑さも峠越し
朝霧の引っからまりし筑波山
地虫鳴く観音様の御膝元
穂芒も我が銀髪も共そよぎ
生あつき月がちらちら見ゆ雲間
行く秋や遠くへの字にかすむ山
猪ねらふ鉄砲ずどんと遠谺
鯊釣れずいつか出てゐる昼の月
大野分関八州を一跨ぎ
赤蜻蛉せかせか峠越えゆけり
湖畔の森赤い木の葉の交じる木々
煽られて里芋の葉をまろぶ露
そば時や武州金澤八景の蕎麦屋で
日本の雁とし渡る準備万端(一茶に「けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ」あれば)
雁ごやごや田んぼに降りて立ち話し
鶏頭のつくねんとして獺祭忌
月見んと立つる片膝露けしや
初ちちろ聴き初むその日吉日と
名月や二、三歩家出てうち眺め
露零すことが本分露草は
露草の露まみれこそ本来的
一吹きの風はや知るや相撲草
寝ねあまる夜を長しと思はずや
餅つくや芒の中の幾在所
泡立ち草悪さ働く幾在所
蜻蛉の尻でなぶるや蓮田の面
通り雨ひそかにはぜる鳳仙花
ナンプレの難問相手に野分の夜
豊の秋沼一ぱいのぬなは哉
ほんの少し歪なばいにして最強(ベエゴマ)
夕月にほっとするやら見入るやら
家の前通る人ごゑ寝待ち月
品川の空を渡れる雁数多
月の出にほっとする也御一行
谷戸を行く水が澄みきる滑川
稲妻や烏天狗を浮き彫りに
大佛の鼻筋掠め稲光り
稲妻に力み返って仁王尊
御用聞きの巡り来る如あぶれ蚊は
風癖の付きしすすきを手折りかね
澄みに澄む谷川の水接岨峡


◼️冬
塩引に食の進むや白湯の味
松柏テキパキ剪られ手入れ時
白長須笑ふ目つきをして潜る
海の照りひねもす小坪の石蕗の花(逗子)
おびんづる頭てかてか日の縁に
自動車も空飛ぶ時代浮け海鼠(万博)
港の見える公園歩いてとし忘れ
粉っぽき街となりけり融雪剤
青写真犬の寝そべる庭の先
隣る山の一方は雪月の世界
馬刀の干物を肴に喋喋立ち飲み屋
四散して沓脱石の霰かな
要注意と医師(くすし)のおっしゃる塩肴
カレー南蛮は覚めぬ裡也ずるずると
煤掃きや御大佛の台座より
鬼打ちの豆拾はんとして転けぬ
石畳継ぎ目に根を張る冬すみれ
門前の子供の作る雪だるま
炭火跳ね森閑として冬座敷
大雑把子供の作る雪だるま
櫟木落葉のくるくる舞や木曽深谷
木っ葉散らしそこ意地悪き信濃の風
小便を真直ぽこぽこちょろちょろと(新雪)
大寒と唱へるやうに云うて起床
山茶花の一部坊主にチャドクガぞ
保田の水仙もう咲く頃ぞ久里浜まで
熱燗の勢い借りて句を評す
雪交え何て見事な月夜かな
飛び退いて獲物を離る尾白鷲
手拭いはねじれたままに氷りけり
ここ栃木こがらしづうんと空風からから
人が道つける営み六華の國
寝酒などとんでもないよそんな物
煤さわぎすむや御堂の朱蝋燭
鶏のつつ突く地べた霜日和
夜神楽や落葉の降れるうるし闇
今は死語みそか銭てふ言葉在り
真っ新な雪のどぶ板滑りさう
水鳥の羽づくろひして止まぬ池
北島三郎切紙の雪鼻に沿ひ(紅白歌合戦)
深夜劇葱切り刻む女が犯人
年の瀬をことしもまめで賀状書き
上総行行脚度々保田の水仙より(一茶に「空色の山は上総か霜日和」あれば)
カーフェリー着岸囃す冬かもめ
冬帝におっぴしがれしやれ蓮田
諏訪冷えて一日に出来し御見渡し
ひつじ田や夕日田水にうすづけり
諏訪大社社の氷柱ずどんと落つ
外は雪子供のこゑの「福は内」
一家団欒猫の割り込む炬燵かな
人並みに年を納めて聞く梵鐘
不相応の歳暮貰へりさてお返し
大根引き腰を伸ばして地平線
立ち会いのはや灯のともる焼鳥屋
爪先の冷たし湯屋の凍て板間
山蔭に来て木枯らしの吹き溜まり
鷦鷯チと云ったきり日の暮るる
年の市どんなもんかと出掛け来ぬ(浅草)
一寸づゝやがてハッキリ干割れ餅
継ぎ足してキンキン朝のおこり炭
炭砕く音甲高き雪の朝
トタン葺き家屋みぞれの降り処
我君を待つこと久し野水仙
めでたくも生れかはらば峯の鷹
皆で歌うおおさむこさむの歌強く
煤掃きす大佛様の鼻の穴
亀の甲五、六集ひて日向ぼこ
盗っ人崎のどぶろくにぶつくさ云うても元の木阿弥
年の瀬や海見る度に保田の水仙(正月花)
ふくろふの一分別ぞ林檎畑(泥棒監視)
霜降りて菜がうまくなる畑かな
お地蔵と日向ぼこして枯れ鶏頭
内房のづいと枯れ込む東京湾
東慶寺落葉が下の黄泉の国
年の瀬の今宵一夜の「ラストサムライ」(トムクルーズ主演)
うまさうな雪にうづもれ一軒家
雪仏目・鼻・手・足其の下に
羽子板市盛況写楽の大首図
ちょつとほころぶカーディガン着てポスト迄
ちょつとほころぶカーディガン着て床屋迄
夕月にくいくい鳰の寄って来ぬ
塩引に食の進むや白湯の味
松柏てきぱき剪られ手入れ季
白長須笑ふ目つきをして潜る
小松原起こしの絶景雪の不二
わが躰らくだの股引きより抜けり

◼️新年
くわんくわんと炭おこしたり初座敷
硬炭を俵の底より三ヶ日
役者絵の小鬢キリリと初商
初春の一の湯二の湯と梯子して
白朮参り新年の念確かむべく
今しがた鐘を打ち出し初昔
鐘一打一打に逝く年振り返る
元日の貌ひた濡らす朝まだき
元朝の正面に置く茶殻の煙り
福引は皆んな外れてあーあである
正月は雑煮続きで餅っ腹
初日の出をがんで帰る人の数
初詣けんちん汁の建長寺
吉や凶やとちんぷんかんのみくじ文
初夢に草場の陰の相田サク(祖父の妹)
手加減なく水祝はるゝ五十聟
どんど焼き焼く物尽きて煤達磨
餅腹をもて余し居る三ヶ日
かまくらや膝に手を置き女の子
一つだけ本物我が家の鏡餅
造船所の鉄脚に差す初日かな
地雷他が蟇に乗ったる夢見たと(初夢)
重箱等ないない尽くしのお正月
玉の春我が身の我のなつかしく
大雑把な男世帯にして雑煮
年頭の己れに何か申したく
お元日四角四面の挨拶す
枝炭の白鮮烈や大福茶
合掌家屋巡る瞽女歌春駒や
いかのぼりかぶりふりつゝ六浦の空
起重機の赤々工場の日の出空
洗面にからだの締まる大旦
松過ぎの人ちらかって皇居前
交互に引き上々吉の初みくじ
初鏡これが私か七十顔
郵便函に投げ込んでゆく賀状その他
それなりの雑煮設え二人住み

◼️相撲
小兵力士小さき土俵を大きく使ふ(翠富士)
世につれて角力もスピード相撲かな
たのもしや横綱倒して翠富士
くやしくも負けし一番顔語る
その昔諏訪の大社で宮角力
勝角力初日横綱意地かけて(大ノ里)

◼️雑
門の木も先づゝがなし建長寺
名月や二、三歩出でてうち眺め
とうふ屋が来るあの辺りよか風来
下手すりゃあ俳句むさい此の世にリップサービス
エイヤッと俳句遣ったがからきし駄目
かな釘のやうに身を折りリハビリ体操
宙を飛ぶ自動車ことしの万博に
溜め込んで出すを忘るな貧乏性
赤頭巾六体辻の地蔵様
選句の◯丹精にしてお人柄
茶を呑めと◯の字ひとつ描く禅師
いけるかと問はれいけるとガード下
欠伸口ひしゃげて伸びを一つして
おもろいは事業の基(もとひ)最優先
格好付けさらば実(じつ)とれホ句の道
代表句授からぬ裡死ぬは嫌
出序に図書館に寄り予約の本
雪舟の天の橋立パノラマビュウー
かさ守のおせんぶりなる茶屋をんな
投げし石水輪作りて一(ひ)ニ(ふ)三(み)
三渓園裏の絶壁存りし日の
ゴミ出しに話しがてらや老夫婦
鉄柵の裡の寝返り山妻も(ベッド生活夫婦共々)
巾着の底浅黒くアルミ銭
貧乏寺たかが知れたるお賽銭
縄帯してちゃんばらごっこたはひなし
としの暮れ銭がとぶとは大仰な(一茶に「羽はへて銭がとぶ也としの暮」あれば)
東京駅の翳ふんづけて通りけり
古民家も近頃銭に成にけり
嗅いで見てハーヴの類と推察す
放映のリンゴ病とは写真付き
鳶ヒョロロ長者ケ崎を目指しゆく
わんぱくや空くじ引いてあかんべえ
此の上なく貧乏な寺田沼に在り
西林寺てふ鄙寺に骨埋めん
ガード下現金払ひの立ち飲み屋
トランプのブラフに翻弄さる世界
灰白の曇天何をもたらすや
罷り通るトランプ颱風はた迷惑
としとへば五本の指出す女の子
薄茶色して涼しさうその作務衣
塗装業夕日にさらす五十面
自動車を載せる車が追浜から(横須賀追浜日産工場)
トランプ等何處吹く風の老が世ぞ
見参のパワースポット修那羅山
私だけつくづく赤い極うまキムチ
銭なしは船旅テレビで日本一周
石ころの面に採取日飾り棚
先達より欠けゆくその名物故者欄
腹減った減ったと聞こゆ木魚かな
習近平一人占めなるネオジウム
お恥ずかし食べずぎらひで筋右衛門(骨川筋右衛門)
紙つぶてびしっと仁王の胸隆く
子宝の少ない日本二等国
折り鶴の折り方少し手が混んで
先生の赤字の直し推敲句
ふと見付け仁王の胸元紙つぶて
久々にシネマ見るとてとつとき着
喜寿過ぎの躰自然と曲りけり
山妻と知れて安堵の経の一節
こんな日は何故か食べたしシベリアが
国芳のむだ書きめくよな公報板(荷、宝蔵のむだ書)
自信ありげな声が遠より選挙カー
高齢で又一人欠くゴミ当番
糞ガキは寄って集ってめんこにビー玉
ネズミの出る家となりけり何とせう
句評進んで挙句の果てに人誹る
凡夫我等の手垢まみれにおびんづる
檻出たり入たりして雀達
趣味問はれ将棋は少々碁は何とか
換骨奪胎ホ句の新たな一手也
ほぞを噛むやうな一日慈雨ありぬ
淋しさに飯をくふ奴首てぬぐひ
ぽっくり死願うも神の御返事なし
減税に姿勢が直る自民党
やうやくに機嫌が直る天津神
「芸事とは」と上座に直る弁財天
金運の神あはれやとおぼすらん(馬券)
タベラ焼補色をいかして壁・居間・街並み
メキシコの町のお宝天使の鎖
老残の一茶積み上ぐホ句の山(言葉が擦り切れるまで)
山からからす巷へ空の白みけり
西林寺脇を抜け来て聞く木魚
竹垣にしたたか濡れし衣干せり
停電のいつまで続く夜を心配
水道の水行き届く工事後
天気雨どの貌つきもキツネにつままれ
上野山地べたに並べ売るキリスト
蝦夷窺ふ昔おろしゃを名乗りし国
清水寺暮れても見ゆる京市街
結局は銭が物云う世なりけり
山妻のこゑの易さよ南無阿弥陀
穀潰しなんて自虐の言吐くな
越えゆかんしなのゝ山の十重二十重
芭蕉さんずんずと登る立石寺
俳句なら何でもとびつくあんぽんたん(自戒)
一歩づゝ登って何段立石寺
ナンプレすおろかさ同じ者同士
見えそうで見えない「へ」の字筑波山
唯元気芸なし猿の句作かな
紛れなく塵のたぐひの我身かな
いろは坂並みにおのれも下り坂
この命欲のうき世を渡る迄
死に支度致す気なんぞさらさら無く
行末は小野小町の骸骨ぞ(渡世)
生きて居るばかりぞけなせホ句の澱
カラオケで美声を大の男哉
萬人に聞かれ道隆様の寺(開山 蘭渓道隆)
鎌倉禅活発々の建長円覚
行きがけの駄賃にシネマ見てデパ地下
馬ふんの湯気白湯の煙より柔らかく
糞汲は死語の昭和に我生まれ
ついそこのコンビニで買ふボタン電池
念仏に拍子漂ふ線香の香
老いたりな元気の元は寿限無五劫の擦り切れ
お供してかけ金錆しスーツケース
コーランの朝っ原から拡声機(ジャカルタ)
ゆうぜんと川波下る最上川
臨終やおのれが乗るはどの白雲
遠眼鏡あなたの不二はへの字哉
おとなしく番をしていろ林檎の畑


以上

岩波文庫「一茶俳句集」をベースに作成しました



by 575fudemakase | 2025-09-15 00:50 | ブログ | Trackback


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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