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辻桃子句集 水蜜抄を読んで (高澤良一)

辻桃子句集 水蜜抄を読んで (高澤良一)

共鳴句 選出させて頂きました。
()内は小生のコメント風感想。



かんざしの額にふるるも淑気かな

よく狙へ外すなかれと初射的
(淋漓と詠み切って好感)

一扇は柱かすめて投扇興
七草や氷の上に氷張り

社まで行って凍れて帰りけり
(成り行き俳句も好感齎す)

バスっこが雪にはまるも湯治行
(方言も句作の重要な助っ人)

彼岸会の雑魚の集へる水の中

うすらひの上やうすうす水走り
「うす」「うす」「うす」の3語でリズムをとる

田んぼには水入ったと行々子
(「遠回し」も時に効果的)

江ノ島
ひるがほのひらきかけたる畳じわ
(一瞥して逃さじ「畳じわ」)

波乗りを終へ自転車で帰りけり
(淡淡も一俳句作法)

大蕗の葉下に入りて蕗刈りぬ
堂といふ堂にあふれてお遍路は

磨ってをる夏書硯に松のちり
(繊細な目配りも作句には必要)

薔薇置いてグランドピアノくもりけり
くらがりに水音ありて螢まだ

朝烏賊の目玉がうごき盆の市
(磨くべきは観察の鋭さ)

馬の歯のがしがしむしる海霧の草
立待のがつくんと船着きにけり
(「がしがし」「がつくん」の擬似擬態も句作の大いなる助っ人)

秋潮の泡のしばらく砂にかな
(観察の妙)

秋風に掃いみせるや箒売
秋風に吹かるるものに石の面

ひらたけのたんとこぼせる山の土
(「たんと」援用の効果)

秋草や修学旅行で来し宿屋
(回想も俳句になる)

柿の実のたわわな下に犬が閑(ひま)
(犬が閑には驚いた)

「童子」芋煮会
芋煮ゆる湯気に日のさす磧かな

人と犬冬田の果てを返しくる
(最後まで見届けて一句)

行く年の畑の大根はあと五本
(俳句とはよく見ろの御教訓か)

ひしめきて堰落つる順待つ落葉
(「順待つ」に発想の柔らかさ)

椅子の座の天鵞絨(ビロード)はげてクリスマス
(マイナス思考も俳句になります)

寒禽の啼くや不殺生不邪淫と
(ふと北条実時の不殺生を思ひ起こした)

水の面にただ寒木と日輪と

春荒れのぶちまけたるがごとき雪
(雪の名詞止めが心地よい)

鍋焼の中にかくれてゐる玉子
(この判じ物面白し)

月今宵みんなあなたを忘れない
(???だが含むところ何かありそう)

手つかずの絽も紗も襤褸も土用干し
十五夜や「童子」三十周年の

門入れば石石あれば石蕗の花
(石石の繋ぎの妙)
上句見てゐて小生一句賜った
法堂は今工事中石蕗の花(建長寺 お風入れ2025/11/03)

寒けれど時雨たれどもあひにきし

骨折、吾は
撃たれたる毛物めきしよ冬籠
(撃たれたる毛物に唖然、感服)

春の夜や出湯にあればみな裸
(楽しいハダカ)

うつくしき赤と緑を西瓜かな
(お手制の水彩懐かし汝を偲ぶ)

突風やいつせいに花たちさわぎ
(「花」一文字の働き)
わが背子の声でかくして鬼は外
(「でかく」は夫君元気さんか「お茶目」な表現このもし)

ひるがほに脱げば水着のしたたりぬ
やうやくに捨てし手紙や火恋し

半分は真つ黒なりし夕立空
(嘗て船旅の太平洋上で見たスコールを思い出した。驟雨がシャワー状あっちにもこっちにも)

枯野抜け次の枯野に入りにけり
(芭蕉さんを彷彿)

一枚の水に戻りぬ薄氷

花見上げ花咲爺のやうに老い
(老いの表現面白し)

行く春や耳の中にも道ありて
(意表を衝かれ唖然)

葉をむいてへそのあるなり柏餅
(臍の変化球を投げられた)

菖蒲湯に我は海の子とぞ歌ひ
(横濱市民は誰もが「我は海の子」を歌える。小学校で歌唱指導している故。私めも歌える)

昼寝覚め我が家に帰りゐたりけり
(齢とるとこんな感慨も)

月の湯に金粉ショーのダンサーと
(横浜野毛の大道芸祭でのそれを彷彿)

三人で芸者歌留多といふをまた

清方の女佳かりし夏座敷
(鎌倉は小町通りの鏑木清方美術館で詠まれたか)

初昔生きてあはんといひしこと

春窮のけんちん汁も建長寺
(私めも数日前お風入れを見に建長寺へ)

なんだいと近寄ってくる羽抜鳥
(「なんだい」の磊落振りが抜群)

初富士やただ真っ白にかたまれる
(「かたまれる」と言いきった英断)

せつせつと独活むく夫や家事に慣れ

美容師が床のわが髪掃く暮春
(髪結いさんも俳句道場)

てつせんや集めし蔵書もういらず
てつせんの鉄なす蔓に今年も芽



参考の為 「あとがき」の一部を抜粋する。

辻桃子がなくなって、その残したものの、多さに茫然としている。東京の書斎、津軽の書斎には、たくさんの句、著書、蔵書、たくさんの帽子。いざ纏めようとしても、どこから手をつけたものか途方に暮れる。この句集は、生前、桃子が纏めた第十五句集『白桃抄』に入り切らなかった句を、桃子自身がもう一冊出すつもりで赤を入れておいた句稿だ。最期までよく働いた。もっともっと句は残されているが、残された句稿になるべく手を入れず、桃子が出したかったのはこんな句集ではなかったかと思いながらの刊行となった。(後略)

二〇二五年七月 
津軽、白鳥書屋の窓から、林檎畑と岩木山を眺めて
如月真菜

以上
妄選 妄語陳謝


by 575fudemakase | 2025-11-06 07:28 | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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