2018年 02月 07日 ( 1 )

後藤比奈夫句集「白寿」を読んで

後藤比奈夫句集「白寿」を読んで

2016.1・8 ふらんす堂


九十九のお方の無手勝流は、ぐぐっと押して来る処をええいと呑み込むしか方法は無い。

共鳴する句数の多寡なんて言ってられない。


葉牡丹の白蛇浄らか花時計

大方が長生せよといふ賀状

寒禽にして囀るといふことも

御簾の内見えぬ源氏絵屏風かな

満作の咲いた咲いたと咲くことよ

恵方巻齎し豆も巻き呉れし

クリスマスローズそんなに俯くな

どう退治せむこの大き蓬餅

春聯の如意吉祥は昔より

白梅の蘂がこんなに紅いとは

ファッションといふ春寒きものを見る

祭来るとてヒマラヤの着道楽

文旦を剥くに千人力を出す

写真にて見参桜島大根

胞飛んでしまひてやるせなき土筆

菜の花を籬仕立にしてみたる

まだ踊り馴れぬ踊子草の群

踊らずに喉を越したる白魚も

下車もせず花のトンネル通り抜け

能代には女ベラボウ舌出す凧

金輪際鳴かぬと亀の擡げし首

残りゐて早く散りたき花ばかり

花もはや花見団子の色淡く

花を鎮めともなく雨の降り出でし

久安寺にて踊りゐし踊子草

残花てふことの郁李にもありし

赤すぎる鯛釣草の釣りし鯛

母子草御形といへば位あり

花びらは掃かず掃きゐる桜しべ

見付けたる洗鱸といへる季語

ほんたうに笑ってをりし壬生の面

しっかりと都忘は都色

夜が来れば朝が来るなり青葉木莵

六甲山にもそれなりの登山地図

浪立つるためには群れて咲いてこそ

梅雨に入る箱根卯木の咲く日より

遍羅(べら)といふ漢字のありしこと気付く

釈迦の鼻くそとえんまの目こぼしと

樽酒の樽の涼しき吉野杉

炎天へ火の気立ちゐる煙の木

泡盛のせゐか熱中症なるか

素戔嗚尊ねぶたになり給ふ

落蝉になく空蝉に命見ゆ

集団でしてゐる主張吾亦紅

紅白の鼻緒で亡者踊とは

踊まだ端縫着らるる年ならず

下草として藪蘭の悪びれず

平凡がよしと紫苑の咲きにけり

秋田美人彦三頭巾を垂れ踊る

三方の由々しき月見団子かな

夕月のかかるに間ある芒かな

にごり酒にも盃の柿右衛門

案外にさらりと酔ひてにごり酒

水澄みて鯉純金になりたがる

管物といひて神経質な菊

老爺柿ながらにいまが青年期

背山よりいつもの声の初鴉

乗初は子の押しくるる車椅子

誰にでも道をゆづりて老の春

破れても裂けても聢と朴落葉

野葡萄にあらざりへくそかづらの実

何の落葉か染みだらけ傷だらけ

聖夜にも打つ寒柝のありしこと

聖夜の子たちに回転木馬の楽

花むしろ父の座よりも倅の座

初絵馬として宮島の福杓文字

破魔矢まで清盛好み厳島

くわつと目を開き湯沢のまなぐ凧

小町の絵らし寒紅の貝の蓋

寒中も歩くプールに来て歩く

アネモネの好きな彼女を思い出す

春は春色手作りの毛鉤まで

梵天のための藁沓それを土産

丸顔の雛を見過ぎてしまひたる

水落ちてゐても鳴る気のなき僧都

のれそれはのれそれなりによき黒目

神戸港眺めの丘の碇草

三味線もなくてこの草撥ばかり

春落葉厩まはりが好きで積る

栴檀の双葉如何と尋ね来し

生えてゐるやうに竹の子立ててあり

黄心樹(おがたま)の花には神のいますかに

九(ここの)巻または十(と)巻に粽の緒

老舗の名六萬石のかしは餅

芯蒸しといひ深蒸しといひ新茶

ざくざくといふほど生けし小判草

伽羅蕗の甘口仕立よかりけり

これがその神田の生れよてふ祭

たこどない穴子どないと魚の棚(うおんたな)

なめくぢを取るになめくじいらっしゃい

黴びることなかり東郷青児の裸婦

いかがでしたかと問はれし心太

生涯に読み切れざりし書も曝す

親鹿とちがふ子鹿の見てゐるもの

象涼し鼻で物言ひ尾で返事

耳馴れし金比羅船々うちはにも

柚子坊といはれ芋虫仕合せな

如何な衣脱ぐや八岐大蛇なら

竹節虫はナナフシなりに涼しげに

文字摺の花が次第に渇筆に

やけくそにならねば跳人にはなれず

向日葵の黄のこれでもかこれでもか

盆石に鮎の遡上といふ景色

涼しいといふことをはき違へたる

土用灸近しとばかり灸花

風鈴の四万六千日と鳴る

たまに立つ土用と思ふ波頭

あゆ菓子の求肥さすがに祇園流

型録の鰻重大き鰻の日

美しや亡者履きゐる踊足袋

のぞかるるおわら踊の笠の内

白絹を着せてやりたき衣被

猪垣にある人間の出入口

かと言ひて抱負もなくて老の春

抱へられ跨ぐ湯槽や初湯殿

初暦めくれば兎弓を引く

鰤大根並びデパート惣菜部

寄鍋といはずにブイヤベースとて

大吹雪してはお降りとも言へず

寶船敷くを忘れて見たる夢

大寒に入りしと胸に言うて聞かす

外に出て歩けと励まされて寒

寒となり度胸据りし烏とも

雛菊の中の私の好きな色

堅香子の花も俯き人を恋ふ

梅花祭

梅盛り上七軒の舞妓らに

何となくペンの動きも春めいて

新じゃがや新たまねぎや主婦たのし

桜湯に花は一つでよきものを

こどもの日ですよと娘から電話

象の背を何と思って蠅止る

痛さうに千切れてをりし蛇の衣

腰振ってゐる孑孒といふ字かな

見舞客篤とジャカランダの話

退院

ナースたち涼し口々おめでとう

ピストル型水鉄砲の殺戮度

起し絵のフラダンスとはよくもまあ

昨日から鰻を食べて土用丑

するすると伸びてまだ伸び揚花火

城自慢水を自慢の踊唄

天守閣にて聞いて来し秋の聲

白寿まで来て未だ鳴く亀に会はず


以上




by 575fudemakase | 2018-02-07 17:04 | 句集評など | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
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例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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