一匹ふくろふ❗

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東京新聞 TOKYOU web
俳句 人間 自由であれ 芭蕉追って60年「一匹フクロウ」矢島渚男さん(俳人)
2018年3月3日

 「私は一匹オオカミならぬ一匹フクロウ」。俳句の世界で最高とされる蛇笏(だこつ)賞を矢島渚男(なぎさお)さん(83)が一昨年、句集『冬青集』で受けた折にこう述べた。大きな協会に属さない姿勢と、主宰する俳誌『梟(ふくろう)』にちなむ自己紹介だ。一九五七年、石田波郷に師事して本格的に始めた句作は六十年を超す。同じく青年期からライフワークとする古典俳諧の研究でも昨年、松尾芭蕉が『おくのほそ道』を推敲(すいこう)した過程に迫る『新解釈「おくのほそ道」』を刊行。大きな実りを迎える「一匹フクロウ」の俳句人生を今こそじっくり聞こうと、長野県上田市の自宅を訪ねた。
 「よく考えたら、オオカミと違ってフクロウはだいたい一匹でいますけどね」。書斎で穏やかに笑うその姿が、「知恵の神」であるフクロウとどこか重なる。
 「六十年やってて、何でこんなにへたなんだろうと思う。芭蕉は亡くなるまでずっと昇り続けた人。そうありたいもんだけどね」。「へた」とは、単に謙遜ではない。今なお他人の目にかなった句しか発表せず、『梟』に載せるのも句会で選ばれた数句だけ。「俳句は短いから、いい気になりやすいんです。独り善がりが一番怖い」。笑みは消えて、真剣な顔で語る。
 芭蕉との出合いは高校時代。国語の教科書で『おくのほそ道』を読んだ。正直言って分からなかったが、宿題でもないのに内容について論文を書いた。「分かんないのがしゃくで。何を書いたか忘れたけど、よっぽど引きつけられたのは確かですね」
 もっとも、俳句と芭蕉にすぐのめり込んだのではない。学生時代は海外文学に傾倒したが、ひょんなことで縁が再び結ばれた。「今の女房と出会って家に行ったら何と、おやじさんが俳句をやってたんだ」。加藤楸邨(しゅうそん)の『芭蕉秀句』を借りて読み、やがて波郷に、その没後は楸邨に師事した。「そのうち師匠のまねだけではだめだと思って、俳句の歴史をさかのぼった。高校の時の思いがどこかで続いてたんでしょうね」
 しかし芭蕉はやはり難解で「いきなり取り付くには歯が立たない」と感じた。地元の高校に教諭として勤めつつ、上田ゆかりの加舎白雄(かやしらお)や与謝蕪村ら江戸期の俳人を研究。『おくのほそ道』について『梟』でついに連載を始めたのは六十代に入ってからだ。
 「芭蕉は自句の解説はほぼしていない。謎を残し、何かを心の中に隠していたような生き方に引かれます」。連載では、『おくのほそ道』の初稿と最終稿を詳しく比較。たった一文字を繰り返し書き換えている生身の姿を浮き上がらせた。「ぼくは芭蕉を俳聖、神様と祭り上げはしません。同じ人間として見るからこそ彼の文学は素晴らしい」
 書斎の棚には、多くの本はもとより愛好するクラシック音楽のCDや古美術品、「好きで集めている」という貝殻が並ぶ。「年を取ると、貝って偉いなあと思えてね。人間は骨が残るかどうかだけど、貝は立派な貝殻を残す」。『冬青集』にもこんな句がある。<蝶(ちょう)は翅(はね)貝は貝殻のこし秋>
 これにとどまらず自然を詠んだ作品は多い。「人間も自然の一部。それを忘れるから間違いが起こるんですよ」。最近では、植物にも意識や感覚があるという話を聞いてこう詠んだ。<枯草は根で考へるハルハクル>。寒い信州の冬。「早く春が来ればいいなって気持ちが草にもあるとしたら、考えてるのは根っこじゃないかと思って」
 そうした思いから冬季五輪まで、話題は尽きない。「興味を持ったことは何でも詠む。俳句も人間も自由でなきゃ。何かをつくるってことは自由でなきゃ」。八十歳を過ぎて少年のような闊達(かったつ)さ。その根本にあるのは、幼いころの体験だ。
 十歳で終戦を迎え「それまでの価値観がひっくり返った」と振り返る。夏休みが終わると先生の言うことががらっと変わり、教科書に墨を塗った。「だから、信念とかナントカ主義っていうものは、どうも信じられない。既存のものはまた簡単に崩れるんじゃないかって。へそ曲がりなんだ」。ひょうひょうとした語り口の裏、時代と俳句に注いできた視線が静かにひそんでいる。 (川原田喜子)

冬青集 を読んで(高澤良一)
矢島渚男 第九句集 ふらんす堂 2015・5・3

あとがきにもあるように、果敢な試行の記録である。

共鳴句を挙げる

三伏や火の入りまじる中華鍋
稲子取る幼子籠に草詰めて
つめた夜の静かな水を飲みにけり
嬉々として地衣類に冬めぐりけり
ゴンドワナ大陸も須臾年移る
ほれほれと円空仏も日向ぼこ
きさらぎや鰊の小骨絹光り
春浅し佐渡の鮑に海の草
雉鳩が塀をよちよち春の雨
蜥蜴らにジュラ紀の眼麦の秋
痩せぎすの美形一団野のあやめ
はればれと山打ち揃ひ秋の草
指を入れ掌をあて秋の水
暗き世を諾はむとす秋茗荷
水引に朝の光のあらはるる
炎上の伽藍をかさね曼珠沙華
蝶は翅貝は貝殻のこし秋
温め酒ことし茸の山踏まず
眠る山鯨の骨が崖に出て
ほの前といふあたたかな言葉かな(松山弁にて屁を言ふ)
實朝の船を虚空に春の浜
花びらの彩る田水満ちにけり
赤貝に生えてゐる毛や春惜しむ
牡丹の蕊にふかふか金亀子
鰯雲旅のをはりの心地して
秋の寺水中ミミズ長く赤し
死は誰も無念波郷忌近づくも
注連縄に撚られし藁の誇らしく
歪みたり焚火の向う側の人
犬は犬を呼びとめてをり春の暮
擽つたさうに膜つけ葱坊主
では剥いてやろ空豆の宇宙服
目に青葉三葉虫の化石に目
煮凝の固作りなる老舗かな
細切れに野菜を干して妻の冬
高足蟹深海にかく脚のびし(戸田)
あをぞらに波の音する春の富士
クッ・ホッと応答白鳥家族春
花ちるや近江に水のよこたはり
道端の好きな雀の茶挽かな(路傍の草三題)
穂を出して狸蘭とぞ狸の尾(路傍の草三題)
たつぷりと大蒜おろせ梅雨鰹
うすべりの波打つてゐる極暑かな
追ひついて並んで歩く冬の草
メエーと啼けばめえといふひと冬うらら
ずんぐりの山むつつりと雪がきし
冠雪の胸飾りして初浅間
空洞を育てる冬の欅かな
われもまた雪が包んでくれるもの
ひろびろと来る春を待つ田螺かな
春惜しむモーリタニアの蛸の足
雨あとの道跳んでをりあめんぼう
萍をつけて浮びぬ青蛙
ひとりづつ持ってみんなが猫じゃらし
太刀魚に擦傷さだか秋澄めり
綾紅葉多武峰からの明日香村
鈴舎に佐々木幸綱暮の秋(偶会)
じとじと雪助惣鱈の目が赤し
鳥追の子供の上に雪が降る
雪降って降りぬく成人の日なり
われわれも何かであるさ寒の星
残雪や焼き枯らしたる岩魚の目
さくら咲き水晶体のにごりゆく
汗拭いて目薬さして仕事せず
かの少女運動会のいつも隅
マスクして直立歩行哺乳類
カーリングストーンへ赤子あやす声
巌陰の堅香子に寄せ舟下り(天龍川)
系統樹魚までたどり春の宵
つくづくと芽のものうまき五月来ぬ
黙り込む諸仏諸菩薩著莪の花
編む音のすでに涼しき葭簀かな
読みさしに緑の蜘蛛が走りけり
愛くるし山薄荷属ヒキオコシ
秋たのしポポーも食用ほほづきも
山々の木の実を撒いて小鳥たち
いつも冬にあり木星の子だくさん
過ぎし日のやうに雪降る積りそむ
豪雪につかまれ里の見えずなる
手袋となりし獣の一部かな
南海の墓にトートーメーギの実(石垣島、トートーメーギは先祖の木、柾)
ユーナ咲け俵万智さん暮らす島
よき仕事する蚯蚓らに土尽きず(四億年土を耕す)

以上

# by 575fudemakase | 2018-12-13 07:45 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

瑠璃鶲 の俳句

瑠璃鶲 の俳句


銀山のかの世のこゑの瑠璃鶲 飯田龍太

衣かけて岩に銭おく瑠璃鶲 古舘曹人 樹下石上


以上


# by 575fudemakase | 2018-12-12 07:17 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

瑠璃鶲 の俳句

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銀山のかの世のこゑの瑠璃鶲 飯田龍太

衣かけて岩に銭おく瑠璃鶲 古舘曹人 樹下石上


以上


# by 575fudemakase | 2018-12-12 07:16 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

瑠璃鶲 の俳句

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銀山のかの世のこゑの瑠璃鶲 飯田龍太

衣かけて岩に銭おく瑠璃鶲 古舘曹人 樹下石上


以上


# by 575fudemakase | 2018-12-12 07:16 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

背黒鶺鴒 の俳句

背黒鶺鴒 の俳句


背黒鶺鴒新樹を過る時しろし 小松崎爽青

背黒鶺鴒波に驚きとと走り 高澤良一 ぱらりとせ

時折は背黒せきれい鳴きすぎる 細見綾子

沙羅双樹の若葉飛ぶ背黒鶺鴒や 荻原井泉水


以上


小生のオノマトペ「とと走り」は同じく擬態語「トットットッ」に近い造語である。


# by 575fudemakase | 2018-12-12 06:49 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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