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磧 河原 川原 の俳句

磧 河原 川原 の俳句
磧 の俳句
河原 の俳句
川原 の俳句
以上

by 575fudemakase | 2019-02-19 07:28 | 無季 | Trackback | Comments(0)

磧 の俳句

磧 の俳句


「罪なく此処に斬らる」と磧へ虎落笛 平井さち子 完流
あしたより盆の磧の砂利すくふ 石橋秀野
こつつんと全山紅葉磧 松澤昭 宅居
この世からいつかはみ出し夏磧 寺井谷子
ししやも焼く匂ひの誘ふ磧風 茶木ひろし
せきれいや庭にひろごる球磨磧 有働木母寺
そちこちにせせらぎひかる雪磧 長谷川櫂 古志
ただ磧大正池の出水禍 阿波野青畝
ダム涸れて磧のごとし山ぼくち 森澄雄
ためし踏みして三月の磧かな 諸角せつ子
つばめ去る空も磧も展けつつ 友岡子郷
なんとなく投げて五月の磧石 鷹羽狩行
ばつた飛ぶ乾ききつたる磧草 柏木志浪
ふくら鴨 磧の石は固きまま 伊丹三樹彦
ふるさとの磧若草踏みにけり 臼田亜浪
ほかに無き広場磧の出初式 右城暮石 一芸
みせばやや放置とみえて磧畑 上田五千石 天路
みなづきの磧に焚けり艾ぐさ 飴山實 句集外
むらぎものおもひのかげる灼磧 佐藤鬼房
やんま高きまひるの磧照られゆく 金尾梅の門 古志の歌
ゆつくりと春の磧に踏み入りぬ 岸田稚魚 紅葉山
よべの凍ミ月にのこれり白磧 中戸川朝人
芦原に牛沈み居る磧かな 高浜年尾
鮎たべてかなしからねど磧 神尾久美子 桐の木
鮎を焼く火のちら~と磧かな 小山白楢
鮎掛けのうしろの磧灼けまさり 松本たかし
鮎焦げて磧一国なせりけり 吉田紫乃
鮎落ちて伊昔紅忌の白磧 馬場移公子
鮎落ちて干す物殖ゆる磧かな 田守としを
暗い磧をほのかに御祓すと遠見る 梅林句屑 喜谷六花
一筋の水をはさみて冬磧 高浜虚子
一石を一座の磧きりぎりす 上田五千石『森林』補遺
一度磧におりる仮橋日の出遅し 橋閒石 無刻
稲架にある日の磧には無かりけり 久米正雄 返り花
雨降れば濡れ伏流の涸れ磧 佐藤鬼房
鵜翔けるや磧の空を出づるなし 原田種茅
雲漢の初夜すぎにけり磧 蛇笏
泳ぎ着く子に磧合歓低枝なる 大野林火 飛花集 昭和四十五年
駅家去る車塵 磧に美女残し 伊丹三樹彦
炎昼のひかりの果ての磧 廣瀬直人 帰路
炎天の酒徒が見送る磧越ゆ 木村蕪城
炎天や水に磧に橋の影 野村喜舟 小石川
煙無き焚火の焔紀の磧 右城暮石 句集外 昭和四十年
遠方の若葉静かや磧行く 阿部みどり女
鴬や山中青き涸磧 大野林火 雪華 昭和四十年
黄瀬川といふ水涸れの磧かな 小杉余子 余子句選
屋根の上にちよつと出てみる夏磧 長谷川櫂 古志
温泉の町の磧に尽くる夜寒かな 道芝 久保田万太郎
温泉の町の磧に盡くる夜寒かな 久保田万太郎 草の丈
下りゆきて昼は素面の鵜の磧 鷹羽狩行
下り簗白々月の磧かな 松根東洋城
下駄流れ堤焼かるる毛馬磧 加藤秋邨
夏茜何か事ある磧 廣瀬直人 帰路
夏雲のだんだらの斑や磧うごく 川島彷徨子 榛の木
花すみれ光る迅風の山磧 石原八束 空の渚
花火師か真昼の磧歩きをり 矢島渚男
花合歓や昨日より遠く白磧 上田五千石『森林』補遺
花傘を皆打仰ぐ磧かな 比叡 野村泊月
賀茂祭すみし磧に居ちらばり 岡田抜山
改修の土嚢散らばる冬磧 右城暮石 天水
街道や磧つゞきに春深く 道芝 久保田万太郎
覚えあり待宵草の大磧 佐藤鬼房
葛もみぢ磧も水にいたみたる 飴山實
寒残月闘竜灘の石磧 阿波野青畝
寒雀翔ち遅れしは磧(いし)となる 山老成子
寒潮に磧石つみ垣とせり 柴田白葉女 『夕浪』
眼白鳴く磧つづきの家の中 飯田龍太
紀の川の磧にひびき網代打つ 中筋味左夫
起きぬけを出て磧湯に初湯かな 高濱年尾
旧盆の水なき磧わたりけり 橋閒石
鏡びらき昼の磧にひるの闇 宮坂静生 山開
苦桃のごときが叫ぶ灼け磧 佐藤鬼房
熊野犬何に吠えたつ冬磧 右城暮石 句集外 昭和四十七年
鶏頭や温泉煙這へる磧 川端茅舎
迎へ火も送り火も磧かな 岡井省二 鯛の鯛
月出づとかなしき影の磧草 米沢吾亦紅 童顔
月明の電線磧までは見ゆ 大野林火 青水輪 昭和二十四年
懸巣鳴き硫黄の染みし磧石 大橋敦子
元朝のまだ暗きより磧温泉へ 松尾緑富
枯萱に磧のだだっぴろき空 高澤良一 寒暑
枯桑のきれいな影の磧径 藤田あけ烏 赤松
午過ぎの磧に干せる鵜縄かな 飯田蛇笏
紅葉冷磧あそびもすこしして 神尾久美子
耕牛に多摩の磧べ桐さけり 飯田蛇笏 春蘭
耕牛に多摩の磧べ桐咲けり 飯田蛇笏 心像
荒れた磧 シヤツと雑草 栗林一石路
荒れ磧も露寒う檻伐の里 シヤツと雑草 栗林一石路
荒磧ひとり経詠む秋の暮 福田蓼汀 秋風挽歌
鉱毒の磧うぐひす啼きやまず 鷹羽狩行
魂送る足跡を曳く磧かな 松村蒼石 寒鶯抄
左義長のけむり磧にながれけり 岡井省二 夏炉
犀磧旱雀が嘴磨げる 西本一都 景色
錆鮎の焼けるを待ちて磧に居 梶尾黙魚
晒布人磧に這へる南風かな 楠目橙黄子 橙圃
山と山押し迫りたる冬磧 右城暮石 声と声
山蝉に磧はいまだ灼けざれど 大野林火 海門 昭和十二年
山伏(やんぶし)を見ず最上川灼け磧 佐藤鬼房
山崩れせし磧にてキャンプ張る 右城暮石 上下
山磧知りつくしたる夏の風 岡井省二 夏炉
子が泣くや満月過ぎの白磧 宮坂静生 山開
子と昼寝磧に洗濯物を干し 関森勝夫
死後の名を彫るまひるまの磧礫(いしころ)に 佐藤鬼房
雌河鹿居りし磧の溜り水 右城暮石 一芸
灼磧足の重くて輪廻見ゆ 佐藤鬼房
秋すだれ捨てし磧にほどけゆく 吉田汀史
秋暑し脚に縺るゝ磧蠅 石塚友二 光塵
秋晴れの水すこし行く磧 飯田龍太
秋川の雨空辷る磧なり 内田百間
秋昼寝よき磧石拾ひ来て 波多野爽波
秋日傘なにとて磧さすらふや 上田五千石『琥珀』補遺
秋風や遺品とて磧石ひとつ 福田蓼汀
秋風や骨の白さの磧石 片山由美子 水精
舟捨てし広き磧の秋の風 高濱年尾 年尾句集
十月はまつすぐに来ぬ磧草 奥坂まや
十津川の磧かがやく秋日和 川澄祐勝
銃こだま磧鶺鴒みな飛びぬ 高野素十
出水引き馬焼く煙磧より 亀井糸游
春めきし雨に瀬ばしる磧 飯田蛇笏
初夏や水の乗り来る磧にて 尾崎迷堂 孤輪
初空を映す磧や細り水 原石鼎
初夢や漬物石を磧より 中田剛 珠樹以後
宵鵜飼果てし磧に雨そぼつ 内藤吐天
小屋を組む磧八十八夜かな 猪俣千代子 秘 色
小判草磧へ径の消えてなし 上村占魚
障子洗ふ人居りたれば磧まで 銀漢 吉岡禅寺洞
乗鞍の秋磧より林道より 高澤良一 素抱
色鳥のあとかたもなし白磧 鷲谷七菜子 天鼓
色鳥の群れゐしあとの白磧 鷲谷七菜子 游影
色鳥の散りて磧の砂の月 内田百間
森閑とものの芽うごく谷磧 佐藤鬼房
人も我もたのまず暮春の磧(いしがはら) 森澄雄
吹雪く声石咽ぶ声荒れ磧 林翔 和紙
水始めて涸るる磧に鴉ゐて 池田秀水
水涸れし磧のはてに山眠る 田中冬二 麦ほこり
水涸れて汚き磧歩きけり 高屋窓秋
瀬と淵とならびて磧涼しさよ 川端茅舎
青き歎き磧に生ひし麦一本 中村草田男
青淵の磧に一人キャンプせり 右城暮石
石になりきつて磧の青蜥蜴 吉田千代
石は屍木は骨と立ち梅雨磧 福田蓼汀 秋風挽歌
石盗むくるまを入れて秋磧 和知喜八 同齢
石負ひに磧一筋道の枯れ 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
石磧にも飛びゐたり道をしへ 右城暮石 句集外 昭和四十九年
赤潮や旅鞄置く石磧 上野 泰
雪しろの飛沫とび来る磧風呂 上村占魚
雪すぐにやんでおほきく磧かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪痩せて磧石出る杭が出る 右城暮石 虻峠
千曲川磧の先の桑も枯る 森澄雄
千曲川磧もとより秋の暮 草間時彦 櫻山
千曲川磧日焼の杏干 森 澄雄
川蟹のしろきむくろや秋磧 芝不器男
川狩や龕燈の火に磧草 松根東洋城
川風に鼻昂然と冬磧 高澤良一 石鏡
川涸るるとも磧湯はあふれけり 岩崎美葉子
川涸れぬ磧の中の渡り板 高濱年尾 年尾句集
船の荷を卸す家なき冬磧 山口誓子
船宿の厠粗末や夏磧 楠目橙黄子 橙圃
草の葉の氷をはらふ磧かな 中田剛 珠樹
蒼さびて殺生磧雪置かず 上田五千石 森林
足とられ易き磧や螢狩 高浜年尾
足跡は消されぬものか冬磧 津田清子
孫太郎虫の磧や秋深む 佐藤鬼房
太き日矢立ち啓蟄の荒磧 鷲谷七菜子 花寂び
大頭の杜氏つぎつぎに来る磧 赤尾兜子 玄玄
大年のひと帰りくる磧道 飯田龍太
大年や寺真つ向に白磧 石原舟月
大鴉小鴉霧の磧草 飯田龍太
凧引き擦られゆく磧かな 中田剛 珠樹以後
凧遠く浮べるままの磧 廣瀬直人
淡路小国夏川の磧荒れ 山口誓子
短夜や磧に灯る晒布小屋 野村喜舟 小石川
竹山を舁きでし怪我や秋磧 飯田蛇笏 山廬集
竹藪の間に春昼の磧見ゆ 金子兜太
注連を焼く子等に雪ふる磧かな 田士英
朝鵙に竹伐り落とす磧かな 金尾梅の門 古志の歌
蝶去りて磧にのこる石の数 遠藤若狭男
吐く息を存分にせり枯磧 岸田稚魚
冬ざれや磧の中に見ゆる橋 尾崎迷堂 孤輪
冬枯れの天を感ずる峡磧 飯田蛇笏 雪峡
冬麗や磧のなかに道ありて 橋閒石 微光
冬磧越えて物日の町に出づ 木村蕪城 一位
冬磧河合に称辞を宣る 山口誓子
冬磧孤独の石の掘り出され 能村登四郎
冬磧上手の生活物資積む 山口誓子
冬磧闘う軍鶏を馴らしをり 北見さとる
冬磧紐のごとくに碍子垂れ 阿波野青畝
冬磧雉子さげてゆく童児あり 飯田龍太
投げ松明逸れて磧の草燃やす 甲斐遊糸
踏むがまゝ磧蓬の日和かな 楠目橙黄子 橙圃
童女ゆく磧櫟の花ざかり 飯田龍太
鳶の輪の磧明るし青祈祷 岡井省二 明野
肉親はかたまり露の荒磧 福田蓼汀 秋風挽歌
肉声もなく盆過ぎの白磧 子郷 (紀州滝神村)
日いでて煙草火わかつ冬磧 堀風祭子
日の磧日の芒馬止めにけり 中西夕紀
日をとどめをり雪磧青肌 佐藤鬼房
日当りて太初のごとき冬磧 高山あい
日当れば磧さみしき曼珠沙華 鷲谷七菜子 花寂び
如月の磧に舟を作るかな 野村喜舟 小石川
梅雨磧湿らぬ翅の蝶をのせ 鷹羽狩行
白くこまかく立冬の日の磧石 能村登四郎
白鷺が鶴の舞ひして涸磧 右城暮石 句集外 昭和六十二年
白式部見あぐ磧の冷え鏡 赤尾兜子 玄玄
白昼の磧に風の施餓鬼幡 大橋一郎
白磧より草笛か麦笛か 神尾久美子 桐の木以後
八月の磧にて火をつくりをり 岡井省二 鯛の鯛
八月を雄の月となす磧 岡井省二 鹿野
飯煮ると灼けし磧に火を焚けり 山口誓子
氷柱ある磧の青年黒く跳ぶ 和知喜八 同齢
病妻を磧へさそふ星まつり 有働亨 汐路
父の忌の露の磧の広さあり 岸田稚魚 筍流し
負け凧の打ち据ゑられし荒磧 櫛原希伊子
風吹くや磧一望鶏皮(そぞろさむ) 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
泡立草枯れて磧のすべて枯る 池田秀水
暴れ川数多濡身で着けば磧のわが家 赤尾兜子 歳華集
頬白の群れのふつとぶ磧草 飯田龍太
北上の秋暑に乾く磧石 能村研三
北風や磧の中の別れ道 河東碧梧桐
奔流となりゆく音の冬磧 佐久間慧子
末枯れぬ丹生大前の磧草 石田勝彦 秋興
明る過ぎ磧の枯れを夜が流れる 桜井博道 海上
模擬試験花ばかりなる磧芹 宮坂静生 山開
木の葉時雨磧の岩に川中に 高澤良一 石鏡
黙り合ふ磧の石やねこじやらし 和田 祥子
目の下にある冬磧下り行けず 右城暮石 句集外 昭和四十四年
目白鳴く磧つづきの家の中 飯田龍太
夜振網揚ぐる磧へ心急く 右城暮石 句集外 昭和五十八年
夜長なる磧なりけりほの白う 尾崎迷堂 孤輪
夕立の大粒濡らす磧石 右城暮石 上下
羅刈女の昼寝の刻ぞ白磧 佐藤鬼房
来し方は白き磧の凍夜かな 橋石 和栲
雷雨後の磧を赤毛馬とゆく 佐藤鬼房
雷近き石放りだす磧畑 廣瀬直人
落ちし凧熊野磧に頭を打てり 山口誓子
流す雛しばし載せたる磧石 能村登四郎
流燈会磧蓬の冷えびえと 須山おもと
流紋を刻みて旱磧なる 清崎敏郎
涼しさや暮れて時経つ磧の夜 尾崎迷堂 孤輪
緑蔭に衣脱ぎおとす磧の温泉 山崎冨美子
烈風に山萌えてくる磧の火 飯田龍太
露寒くなりきし磧温泉にひとり 鈴木貞二
老いてなほ磧に焚いて草の煙 飴山實 句集外
老医師に磧芒のなびく道 龍太
凩の磧はるかに瀬をわかつ 川島彷徨子 榛の木
凩は賽の磧の石飛ばす 福田蓼汀 秋風挽歌
曼珠沙華獣骨舎利を置く磧 『定本石橋秀野句文集』
嗚呼あれが三途の川か風底に音なく白く磧見え来ぬ 宮柊二
囮鮎生かす磧の石囲 小島尚巾
拗るべき石は探され父祖の磧 三橋敏雄
檜皮剥ぐ呆と坐りて春磧 友岡子郷 遠方
棕梠の実に白南風磧より来り 大野林火 海門 昭和十年
楮晒す磧にすこし残り雪 田中冬二 俳句拾遺
涸磧梟師は長影をひき 宇多喜代子
磊塊と磧の石は冬もしろし 川島彷徨子 榛の木
磧かけめぐる鍛練山桜 右城暮石 句集外 昭和四十八年
磧なす石ころの秋草の秋 藤田湘子 てんてん
磧にて何の喝采ヂギタリス 岡井省二 鯨と犀
磧にて嘆きの髪を縒りあはす 佐藤鬼房
磧にて白桃むけば水過ぎゆく 森 澄雄
磧にて尾根のさくらのこゑきこゆ 岡井省二 有時
磧にも鴨川踊待つ人等 橋本青楊
磧にも人数の見えて祭かな 尾崎迷堂 孤輪
磧にも道一筋や秋の暮 中村汀女
磧に沿ひあゆむ寒さも本格的 高澤良一 ももすずめ
磧の草焼く火を宙に持ち歩く 右城暮石 句集外 昭和三十二年
磧の流木億の民衆産みつづく 橋閒石 無刻
磧はしる水筋多き卯月かな 長谷川かな女
磧ひろびろ夜もやむまじと雪つのる 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
磧へはひとりで下る夏の終り 中谷貞代
磧べを焼く炎のみえて耕馬嘶く 飯田蛇笏 白嶽
磧まで棚田残雪それへ下る 森澄雄
磧ゆくわれに霜夜の神楽かな 飯田蛇笏
磧よこぎる秋の日中かな 松村蒼石 寒鶯抄
磧より一炊煙や上り簗 野中 穂浪
磧より春の雪嶺羽根ひらく 森澄雄
磧温泉に菖蒲投げ入れ湯女去りぬ 大橋鼠洞
磧温泉や秋収めたる顔ばかり 吉田丁冬
磧温泉や夜霧渦巻く三朝川 末滝敏郎
磧砂掘りて居り春を掘るごとく 林原耒井 蜩
磧砂掘れば水湧く東風の中 林原耒井 蜩
磧砂粗きに夏をおぼえけり 大野林火 海門 昭和十四年
磧灼けバッタは石の色に飛ぶ 草村素子
磧石おほかた乾き秋の蝉 上田五千石『琥珀』補遺
磧石ぬめりて鮎の落つるころ 能村登四郎
磧石光るにも散りたやもみぢ 林原耒井 蜩
磧石灼くるを積みて畑境 大野林火 冬雁 昭和二十一年
磧石蒼味さしきぬ夕蝉に 大野林火 海門 昭和十二年
磧石投げては 列に驢馬戻す 伊丹三樹彦
磧石蹠にあらく蛍狩 高浜年尾
磧石蹠にあらく螢狩り 高浜年尾
磧草せきれい翔てば萌え立てる 宮武寒々 朱卓
磧草九月の火傷男ゐて 飯島晴子
磧通つて帰る草矢の子 神尾久美子
磧田の岩の頑なをめぐり植う 原田種茅 径
磧湯にこゑのあつまる夜の秋 白井 爽風
磧湯に馬を入れやる冬至かな 野村喜舟
磧湯の一つは冷めて秋つばめ 友岡子郷 翌
磧湯の思はぬ熱さ秋の蝉 鳥越すみこ
磧湯の女体の遠き葛の雨 遠藤梧逸
磧湯の石の白さや十二月 坂本登美子
磧湯の底までうちて霰来る 山岸治子
磧湯の湯の澄み水と異ならず 上田五千石『琥珀』補遺
磧湯の八十八夜星くらし 水原秋桜子
磧湯へ鎖伝ひや岩煙草 荻原芳堂「大漁旗」
磧湯やそびらにひゞく落し水 幕内千恵
磧日当り稲待つのみの稲架のあり 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
磧畑霜凪ぐ靄の午までも 西島麥南
磧畑麦を育てて水遠し 原田種茅 径
磧風火を囃すなり芋煮会 清崎敏郎
磧焚火煙草に継ぎてあまかつし 角川源義
磧来てやがて畑打つ人となりぬ 野村喜舟 小石川
磧涸れ戦後居坐るドラム罐 鍵和田[ゆう]子 未来図
磧芒の一穂も靡きたがへざる 林原耒井 蜩
簗の炬に夜雨の磧うつくしき 白山
羚羊の足跡出水の荒磧 福田蓼汀 秋風挽歌
茱萸の根にあくたかゝりし磧哉 寺田寅彦
蘆原に牛沈みゐる磧かな 高浜年尾
蜆蝶には荒々し磧石 後藤比奈夫
蜻蛉や市が磧になる処 東洋城千句
螢呼ぶ子の首丈けの磧草 臼田亜郞 定本亜浪句集
谿ひらく青葉しぐれの白磧 川口芳雨
賽の磧あたりに霧の尾が消えて 佐藤鬼房
霙してしばらく磧きらきらと 中田剛 珠樹
鶺鴒の止まれば光る磧石 山田弘子

以上

by 575fudemakase | 2019-02-19 07:25 | 無季 | Trackback | Comments(0)

川原 の俳句

川原 の俳句

川原

*うぐいすに遠く来にけり川原松 卓池
あさ風やかもの川原の洗ひ葱 大江丸
いつとなく暑き川原の飛沫見ゆ 廣瀬直人 帰路
いま鳥になつてゐるのと冬川原 山根真矢
うら若き川原蓬やはるの風 加舎白雄
おわら流しころと川原の石鳴れり 高澤良一 宿好
かな~や川原に一人釣りのこる 孝作
かなかなや川原に一人釣りのこる 瀧井孝作
くるめきて炎帝わたる涸れ川原 柴田白葉女 『夕浪』
このうへなし川原すすきの吹っきり方 高澤良一 随笑
こま~と穂にこそ出れ川原蓼 松窓乙二
しらじらと川原乾けり鶏合 大塚あつし
せきれいや川原おもてへ又ちよつと 芙雀
たわわなる稲田に低き川原寺 松崎鉄之介
トランペット音詰まりながら冬川原 児玉けんじ
ながれ来て川原につきる清水かな 卓池
なでしこよ川原に足のやけるまで 鬼貫
なの花と晒布に染る川原かな 梅室
ひきゝりなく川原雲雀の揚りけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
ふるさとの月の川原に尿りけり 伊丹三樹彦
ふるさとや正月を啼く川原鶸 木下夕爾
ほそ道の川原撫子男の子めく 佐藤鬼房
みちをしへ川原をふめば揚りけり 阿波野青畝
やはらかき色なり川原撫子は 片山みち
るりるりと雲雀あがれる川原寺 森澄雄
ゐのこづち川原の小石踏めば鳴る 荒川優子
ゑのころの川原は風の棲むところ 稲畑汀子
暗き木を探す川原の兜虫 広瀬直人
一行事終り人去り冬川原 山本 幸代
鵜川原に滅罪の石積みありし 松井利彦
瓜の香や夜店しづまる川原町 卓池
河鹿鳴く川原が見えて一軒宿 高澤良一 素抱
火を焚くや川原にはかに冬ざるる 小島 健
花苔の西院の川原や婆渉る 角川源義
蚊の声や西院の川原の業ぐるま 角川源義
岳の下野菊の川原ひろからず 大島民郎
掛稲のつぶれも見えて川原かな 河東碧梧桐
寒鴉富田川原は塒かも 阿波野青畝
顔擦って川原の雪気野天風呂 高澤良一 寒暑
結局は川原に下りて日焼け来し 稲畑汀子
月に雲川原おもてを陰陽 露川
月光は川原伝ひに雛の家 直人
月夜野の月なき川原汽笛ちぎれ 文挟夫佐恵 黄 瀬
枯川原風鳴りのああ誄歌(るいか)とも 佐藤鬼房
豪雨のあとの細い川の川原日ざかり 荻原井泉水
菜の花のすでに咲きたる川原ゆく母にふく風われにふく風 沢口芙美
冴返る川原に鳥の声ひそめ 森高 武
笹叢に日の移りたる川原鶸 黒川純吉
山女焼く賽の川原に火を作り 阿波野青畝
山晴るゝ多摩ひろ川原幟立つ 及川貞 夕焼
山鳩の川原に降りる一遍忌 岡井省二 鹿野
糸引いて石這ふ蜘蛛や冬川原 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
紫雲英蒔く川原に所番地なし 坂本坂水
秋蚕飼ふ前の川原を月が行く 廣瀬直人
処得て 賽の川原の 彼岸花 伊丹三樹彦
常夏に切り割る川原川原かな 一茶「寛政紀行書込」
織りあがる甲斐絹のひかる冬川原 福田甲子雄
色鳥の暮れて川原の砂の月 内田百間
振袖吹かれの少年 出番へ川原弁当 伊丹三樹彦
深秋の川原に白き石拾ふ 大薮寿子
水あみてひら~揚る川原鶸 村上鬼城
水の月川原祓ひのありし夜や 河東碧梧桐
数珠玉にことし川原の肥えにけり 辺見京子
星涼しうたごゑ流れくる川原 穴澤光江
石蕗咲いて夢の川原の淋しきこと 吉本和子
雪代や川原の湯壷越え奔る 和田祥子
川干や石に根を持つ川原草 村上鬼城
川原にて澄みたる八十八夜かな 岡井省二 五劫集
川原にも復活祭の人こぼれ 稲畑汀子
川原の砂ほこり色鳥低し 内田百間
川原の砂ほこり色鳥渡る 内田百間
川原への道野茨の花のみち 青柳志解樹
川原より風きてひるのきりぎりす 燕雀 星野麥丘人
川原寺ほとり手沢の稲架木組む 赤松[けい]子 白毫
川原寺跡元日の凧揃ふ 石田勝彦 雙杵
川原上りて広々と蕎麦の花 松村蒼石 雁
川原神楽へ突込む渡舟 ざざ ざざ と 伊丹三樹彦
川原吹く風にゆれ漕ぐ吊船草 浅見咲香衣
川原吹く風より水の青谺 原裕 青垣
川原石ことごとく濡れ除夜の鐘 山西雅子
川原石の隙を見つけて花の塵 高澤良一 燕音
川原石積みし石室野菊咲き 山口青邨
川原石積みてお城やお雛粥 宮津昭彦
川原石背中に痛きキャンプかな 堀 勇夫
川原草ちくちくかゆし神旅に 辻桃子
川原湯に失せし川音闇深し 大山久恵
川原迄瘧まぎれに御祓哉 荷兮
川原芒伝い 乳棄てにくる母も 伊丹三樹彦
川床に湯花川原にすすき咲く 高澤良一 随笑
素通しに川原の見ゆる盆の家 高澤良一 宿好
草の秋賽の川原といふところ 阿波野青畝
大きなる嘴鳥をるや冬川原 河東碧梧桐
大鍋を川原に据ゑし芋煮会 佐藤四露
昼めしは花をながめて川原哉 句空
冬の川原に下りて友呼ぶ測量士 廣瀬直人 帰路
冬川原広やかに建ちぬ芝居小屋 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
冬川原石に鳥ゐて飛び失せぬ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
冬川原鳥眼に失せて広さかな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
湯本駅川原燕が飛び交へり 高澤良一 暮津
鳶啼いて真葛川原は花すこし 飴山實 句集外
梅散るや川原鼠のちゝと鳴く 祗空
白瑪瑙礎石や川原*ばった飛ぶ 佐藤鬼房
白鶺鴒とんと川原の雪醒まし 高澤良一 寒暑
富士川の川原畑の桑黄葉 山口青邨
風死すや川原の石の貌白し 伊藤白雲(獅子吼)
蕗の薹 賽の川原を十歩逸れ 伊丹三樹彦
仏塔の影川原まで獺祭 松岡道代
母郷皺むばかり人夫の川原焚火 佐藤鬼房
僕の青春がぽつんと座っている川原 西村秀治
盆花摘み川原歩きも朝のうち 高澤良一 ぱらりとせ
末枯の川原蓬や蛇出る 河東碧梧桐
稔る田につづきて靡く川原草 廣瀬直人 帰路
名月や角田川原に吾一人 正岡子規 名月
名取川川原畑に菊残す 山口青邨
木履乙女水汲み萌えの川原ゆく 佐藤鬼房
湧く蛍天の川原と流れくる 赤松子
由良川原欅に鷺の巣のあまた 吉川信子
遊船に遅れし芸者川原ゆく 山口青邨
夕月の滲む川原や蚊喰鳥 飯久保紫朗
落鮎や川原芒はただ靡く 本橋 仁
冷害年川原畑に林檎実り 佐藤鬼房
露おりて四条はもとの川原哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
枸杞の実の川原に残るクリスマス 松崎鉄之介
楮干す川原かぶさる奥の嶺 小沢満佐子
鯲ふむ雨の川原や郭公 諷竹
鶺鴒か雪の川原をすっ飛んで 高澤良一 寒暑

以上

by 575fudemakase | 2019-02-19 07:24 | 無季 | Trackback | Comments(0)

河原 の俳句

河原 の俳句

河原

あまつばめ俄然河原の広がりて 飯島晴子
うぐひすや斎き湯垢離て夕河原 加倉井秋を
うつぶけに涼し河原の左大臣 正岡子規 涼し
かたまつて鈴振り翔けり河原鶸 長谷川草洲
カンテラを提げ河原湯へ夜の秋 福田蓼汀 山火
げんげ茅花河原ひねもす空曇らず 村山古郷
この村や河原の方も初雲雀 中村草田男
ころがつて吾が禿頭春河原 岡井省二 猩々
さくら咲き河原雪敷く湯檜曾川 手島 靖一
さながらに河原蓬は木となりぬ 中村草田男
すぐもどる西の河原やはつしぐれ 石田波郷
とんばうや河原の石をかぞへ行く 柳居
なでしこやさいの河原の地蔵経 露川
ぬれ足に河原をありく熱さ哉 暑 正岡子規
ばつた翔つ河原の石の間より 清崎敏郎
ひめむかしよもぎ旱の河原かな ふけとしこ 鎌の刃
ひる顔やかり橋残る砂河原 横井也有 蘿葉集
フランス語飛びし河原や大文字 山本歩禅
まず風は河原野菊の中を過ぐ 福田甲子雄
まづ風は河原野菊の中を過ぐ 福田甲子雄
やさしい色に河原撫子馬が佇つ 和知喜八
ゆく秋や河原の石に煮炊きあと 飯島正人
よく囃す河原鴉や国栖の奏 阿波野青畝
わたる雁河原を天に横切りたり 山口誓子
葦撓め騒ぎ群がり河原鶸 長谷川草洲
鮎さしの鳴く音も雨の多摩河原 富安風生
鮎刺の鳴く音も雨の多摩河原 富安風生
鮎鷹や昔捨児の富士河原 阿波野青畝
一時間ほど一人旅枯河原 高桑婦美子
一粒づつ砂利確かめて河原の蝶 西東三鬼
羽蟻飛ぶや大師河原の昼下り 楚琴
羽抜鳥河原に死んでゐたりけり 白水郎句集 大場白水郎
雨ほろほろあとのあつさよ砂河原 暑 正岡子規
雨月かな河原に枕近すぎし 鳴戸奈菜
鵜の影や鮎は河原へ飛あがり 如行
鵜の色の照りにてつたる河原かな 浪化
鵜飼見の額燈かゝる河原かな 比叡 野村泊月
鵜篝に頷ちて絶えし河原の火 山口誓子
鵜篝の火種そだてつ夕河原 原 柯城
渦の上翔けてかすめり河原鶸 下村ひろし 西陲集
雲雀鳴く下はかつらの河原かな 野澤凡兆
雲雀鳴下はかつらの河原哉 凡兆
雲雀野やこゝに広がる多摩河原 高浜虚子
雲凍てて河原の松は並びたり 山口青邨
泳ぎ子に西日まだある河原かな 島田青峰「青峰集」
鴎まだ飛べて河原の日脚伸ぶ 岡本眸
黄の花の野に溢れゐて河原鶸 小池よし子
黄羽振り降りてまた翔つ河原鶸 麓 晨平
仮橋低く河原に出来ぬ麦の秋 西山泊雲 泊雲句集
何の木ぞ河原に咲きて花盛り 相馬遷子 山河
夏ズボン河原紋白山より来 飴山實 おりいぶ
夏河原よぎる男が拳上げ 行方克己 無言劇
夏河原生死の時間なかりけり 平井照敏 猫町
夏草や一際ありて河原松 井上士朗
夏蓬河原へ続く兵舎跡 宮坂静生 青胡桃
河原でめしスコップ冬の洲にのこし 古沢太穂 古沢太穂句集
河原なでしこ嗅ぎし記憶の乳母車 汎 馨子
河原にてこけたる秋を惜しみけり 岡井省二 前後
河原に干す釦の取れし春の服 松本美代子
河原の冷え芒の中を跳んで来て 桜井博道 海上
河原は誰の母胎流木ごと渇き 楠本憲吉 孤客
河原びと草摘むとしもなかりけり 軽部烏帽子 [しどみ]の花
河原べの穂草の中に抱き降ろすウサギは他のウサギを知らず 花山多佳子
河原までつゝぬけに見ゆ実むらさき 飴山實
河原まで灯影を投げて河鹿宿 山口青邨
河原より見えて火蛾舞ふよき座敷 後藤比奈夫
河原より山鳩とんで懸想文 岡井省二 山色
河原より上り来れば銃の音 山口誓子
河原をたどればつづく戦後史のわが胃の底を焦がす入日よ 角宮悦子
河原火に夕かげのそふ竹煮草 石原舟月
河原乞食のまなじりあかき涅槃西風 磯貝碧蹄館
河原好めば吹きいでて春の風 岡井省二 五劫集
河原菜の花 砂利盗掘の影 出没 伊丹三樹彦
河原松葉こころ貧しきわが日暮 佐藤鬼房
河原石ひとつ灼けことごとく灼け 行方克己 無言劇
河原石手にとることも一秋思 高澤良一 暮津
河原石皚々天より下り藤 高澤良一 素抱
河原冬日子より眠しや子守歌 古沢太穂 古沢太穂句集
河原麦焦げて宗任橋とかや 富安風生
河原畑すか~と打てば日落つる 中塚一碧樓
河原撫子雨に摶たれて一揺れす 高澤良一 暮津
河原撫子僧に忘却問はるるも 伊丹さち子
河原風春著とみれば殺到す 上田五千石 風景
河原蓬が枯れて逢はぬいくにち 中川一碧樓
河原毛の烏帽子の上や初しぐれ 去来
河原木もまた新緑を怠らず 綾部仁喜 寒木
河原鴉冬枯にゐてつひに鳴く 大野林火 冬雁 昭和二十二年
河原鶸あそぶ朝涼の水流す 柴田白葉女 『夕浪』
河原鶸しぐれの道となりにけり 尾林朝太
河原鶸ひよいと頭沈め餌をあさる 高澤良一 さざなみやつこ
河原鶸機屋のひるのしづもりに 山谷春潮
河原鶸水を群れ立つ水立てり 都倉義孝
河原鶸青唐松の折れし秀に 木津柳芽
河原鶸切りころポプラ高きかな 松沢白楊子
河原鶸飛び交ふ木曽は山がちに 根本寿子
河原鶸風にながされ鳴きまどふ 上村占魚
河原鶸平等院に羽撃ち飛ぶ 皆川盤水
河原鶸平等院を羽摶ち飛ぶ 皆川盤水
河原鶸鳴く越前へつづく谷 大久保圭子
河原鶸来てをりファックス受信中 小林せつ子
河原鶸翔けて柳絮にまぎれけり 堀口星眠 営巣期
河豚あらふ水のにごりや下河原 基角
河豚洗ふ水のにぎりや下河原 基角
花の幕かけはなれたる河原にも 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
花みちて河原の空とおぼえけり 岡井省二 夏炉
花火仕掛けあり常のごと河原暮れ 津田清子
餓鬼河原踰え爽涼の死をおもふ 佐藤鬼房
階段を河原菊まで運び去る 攝津幸彦 鹿々集
咳を捨て西院の河原を去らんとす 上野美智子
鴨撃たれ河原の空に羽散らす 鵜飼登美子
寒ン河原その道づれは童女がよし 飯島晴子
眼を癒す多摩の河原の夏薊 陣内ミヨ子(浮標)
雁並ぶ声に日の出る河原かな 井上士朗
忌日まで河原撫子ばかり咲く 神尾久美子 桐の木
紀の国の湯の湧く河原キャンプ張る 西岡ヨシ子
泣けとこそ北上河原の蕗は長けぬ 岸田稚魚
泣けとこそ北上河原蕗丈けぬ 岸田稚魚
居りよさに河原鶸来る小菜畠 支考
曲がつた宿の下駄はいて秋の河原は石ばかり 尾崎放哉 須磨寺時代
玉川の石の河原の野菊かな 岡本癖三酔
銀色の白雨に河原葦の霧 北原白秋
桑括る人に翔ちつれ河原鶸 塚原夜潮
桑枯れて天龍河原遠白く 松本たかし
君逝きて河原あぢさゐ霧まかせ 岡本眸
兄と鶸ちよっと河原ですれちがう 渋川京子
迎火や鳥の立舞下河原 仙化
犬駈けて凧の河原となりにけり 川畑火川
元気だせ飛べ飛べ河原の糸とんぼ 佐藤富美子
元日が河原すすきの中に消ゆ 福田甲子雄
古戦場たりし河原の喧嘩凧 阿部恭晃
枯河原暗渠に水の音のして 館岡沙緻
枯河原鮭の墓とし棒立てる 菖蒲あや
虎杖の揺れにのつたる河原鶸 安部孝一郎
乞食も蝶も日長し下河原 梅室
鯉幟せめぐ天竜河原かな 阿波野青畝
広河原芒みぢかく日が錆びて 柴田白葉女
肱川の肱張る河原芋煮会 松崎鉄之介
行春もしらぬ往来や下河原 松岡青蘿
行年や河原で積る茎の石 とく
合羽干河原嵐やきり~す 芙雀
佐保川の水光るなり河原鶸 濱田のぶ子
左義長やうしろは寒き河原風 田子六華
左義長や河原の霜に頬冠 村上鬼城
砂利採りの背が吸う冬日荒れた河原 飴山實 おりいぶ
祭前の河原の広さ往き来す夕も 中川一碧樓
菜の花や河原に足のやはらかき 田中裕明
鮭のぼる河原色草踏みゆくに 皆吉爽雨 泉声
殺生河原風に穂を解く痩せ芒 高澤良一 随笑
殺生河原硫黄育ちの蝿勁し 矢島久栄
山の端に火星河原にきりぎりす 滝野美恵子
山吹のちるや布にも河原にも 山吹 正岡子規
山裾の河原となりて草紅葉 高木晴子 晴居
山中に河原が白しほとゝぎす 遷子
山風の荒き暮春や河原鵯 宮坂静生 樹下
残世や河原なでしこ揺れあぐね 秦夕美
子を見せあふ河原に春の朝日出て 廣瀬直人 帰路
施餓鬼棚河原は風の吹きとほり 細川加賀 生身魂
珠洲焼に多摩の河原の芒かな 細見綾子 牡丹
秋なれや四条河原の夜更方 団水
秋の日や河原石敷き死者の床 山口青邨
秋河原 魚を騙れば鍵あいて 増田まさみ
秋風が吹くそれだけの河原かな 平田節子
秋霧や河原なでしこりんとして 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
出でゝ見る河原の虹や夕立晴 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
春の河原に人間黙(もく)と原始なり 金子兜太
春の河原に人間黙と原始なり 金子兜太
春禽の声ききわけて河原石 片山由美子 天弓
殉教とは首斬り河原夕長し 佐藤鬼房
初蝉や河原はあつき湯を湛ふ 石橋辰之助 山暦
宵山の囃子のとどく加茂河原 仁科歌子
宵待草河原の果に落ちこむ日 村上鬼城
照り降りの沼が日射せば河原鶸 鈴木多江子
上下の夜河原ほのと此所踊り 中村草田男
寝て小さき子よ河原のてんとう虫 寺井谷子
浸蝕すすむ捨て畑河原に冬の鳶 飴山實 おりいぶ
真先に河原さゝげのもみぢ哉 十丈
人知れず通ふ河原のげんげかな 上村占魚 鮎
吹かれ散る硫気のすでに冬河原 岡本眸
水荒れしさまに白々冬河原 山口青邨
水無月の河原に出でぬ夕つかた 清原枴童 枴童句集
水涸れしままの河原へ花が舞ふ 廣瀬直人
石たたき河原の石にまぎれけり 佐々木平一
石に戯るる水のこゑとも河原鶸 山口草堂
石庭の河原磊塊ちちろ鳴く 山口青邨
積塔や河原にいでて君が為 津 富
川床に灯の天りて河原に人増ゆる 稲畑汀子
洗ふとそのまま河原の石に干す 種田山頭火 自画像 落穂集
槍見ゆる槍見河原に柳絮とぶ 福田蓼汀
痩せ鴉居りて水禍の河原かな 浜田徳子「かつらぎ選集」
草の実に出て大いなる河原月 大津希水
草の実の袖につきけり河原風 鈴木道彦
草の実や河原の石に雨の糸 岡本綺堂
草摘の手もとに降らず河原雨 阿部みどり女
草摘みの手もとに降らず河原雨 阿部みどり女
草虱羽織脱がせる河原の陽 稲垣きくの 牡 丹
蒼天熱風五所河原炎熱忌 黒田杏子
息白し河原の石を拾ふとき 森賀まり
村へ入る木曽川雨の河原鶸 大島隆三
多摩川の河原の内の夏野かな 松本たかし
大いなる陽を負ひ立てる冬河原 植松紫魚
大き河原磊塊として菖蒲の芽 山口青邨
大石のころがる冬の河原かな 正岡子規 冬の川
誰か有汐干うつさば河原松 加藤曉台
短夜や河原芝居のぬり皃に 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
昼顔の河原引き行く砲車哉 寺田寅彦
虫鳴ける河原の石をふみ歩く 高屋窓秋
猪裂きし手を洗ひをり冬河原 角川春樹
潮汲みの河原の院の青芒 鈴木勘之
蝶の翅焦げいろ河原撫子まで 三橋鷹女
庭の木に河原鶸くる昨日今日 柏戸知子
釘打つたやうに人をり冬河原 小澤克己
冬ざれの天龍河原妹を点ず 大峯あきら
冬の日河原の水が見えて幾らからくな風景 中川一碧樓
冬を待つ河原の石のひとつひとつ 相馬 遷子
冬河原たちまち葬の華輪焔に 飯田龍太
冬河原のつぴきならぬ恋ならめ 行方克己 昆虫記
冬河原貨車の火の粉の吹き散りぬ 橋閒石
冬河原掘ればかならず鉄格子 佃 悦夫
冬河原故人はバスからも降りず 今長谷蘭山
冬河原暮るる犬捕り車いて 三谷昭 獣身
冬耕の鍬跡に降り河原鶸 中川忠治
冬川の河原ばかりとなりにけり 正岡子規 冬の川
冬日逃げるな河原の穴に石取女 沢木欣一
燈籠を流す河原の燈籠売 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
二村の凧集まりし河原かな 正岡子規 凧
日かげりて御祓はじまる河原かな 萩原井泉水
日の中に五月の雪気賽河原 能村登四郎
梅雨の月蕗の河原を照らしけり 長谷川櫂 蓬莱
白鳥になるべし雪の河原石 太田土男
八千代とぞ河原御舘の御千どり 基角
病窓の真下に河原月夜かな 今村青魚
父と子の子は日まみれや冬河原 岡本眸
撫し子に馬けつまづく河原かな 正岡子規 撫子
撫し子の河原も広し大井河 正岡子規 撫子
撫子に白布晒す河原哉 正岡子規 撫子
撫子の花かとばかり冬河原 五明
撫子の根に寄る水や夕河原 泉鏡花
撫子の露をれしたる河原かな 井上士朗
撫子の露折れしたる河原かな 士朗
撫子や河原によどむ真昼の日 墓田まさこ
風立ちて三条河原星涼し 多摩 茜
別れは会ふ日へ餉のあと白き夏河原 磯貝碧蹄館 握手
亡きひとの名を呼び捨てに冬河原 福田甲子雄
頬白の声のちりちり河原来る 旗川青陽
盆帰省弟ととぶ河原石 太田土男
盆供流るる雷鳴の多摩河原 飯田龍太
霧こめて河原ひろがる白虹忌 横山 房子
霧に呼びかく殺生河原の拡声器 高澤良一 随笑
明晰の須臾の秋陽よ賽河原 佐藤鬼房
木歩忌の昼の河原の牛膝 攝津幸彦 未刊句集
紋の黄を晒して歩く河原鶸 櫻井掬泉
夜の河原かまくらの灯の曼陀羅に 櫻井菜緒
野と河原けじめなきまで灼け穂草 下村ひろし 西陲集
野遊びに河原あそびのまさり見ゆ 皆吉爽雨 泉声
矢車の実に犀川の河原鶸 西本一都 景色
柳絮とび河原明るく穂高立つ 緑生
夕焼け河原の撫子に花火筒を据う 尾崎放哉 大正時代
裸子のねまる河原の石の上 山口青邨
落葉松の萌えて河原湯みどりなす 大島民郎
劉備玄徳着きし河原の柳散る 松崎鉄之介
流燈や足もとくらき多摩河原 高橋淡路女 梶の葉
流木を河原に晒し夏柳 清崎敏郎
旅はゆふべの河原つくしを一二本 林原耒井 蜩
涼しさや水は井を汲む下河原 野坡
涼風の秋になりけり下河原 卓池
猟夫居て行くをためらふ河原径 本久義春
老人を河原に移す秋の風 津沢マサ子
凩の殺生河原吹き抜くる 大橋敦子
壺に挿して河原撫子かすかなり 田村木国
枸杞の実を点じ痩せたる河原行く 小出文子
涸河原吹きたまりたる馬骨など 宮坂静生 青胡桃
漱石忌明暗しるく河原石 火村卓造
磊落と河原を行けば草雲雀 萩原朔太郎
簗つくる男に河原をきらきらす 原 裕
簗守のそびらがさみし河原鶸 藤木倶子
簗準備始まる揖斐の河原かな 斉藤繁子
腋パッと開きて河原鶸立てり 高澤良一 さざなみやつこ
茫々と夜の河原草花火果つ 馬場移公子
黴びつける河原を白根山笑ふ 阿波野青畝

以上

by 575fudemakase | 2019-02-19 07:23 | 無季 | Trackback | Comments(0)

当節 行く末 一昨年 の俳句

当節 行く末 一昨年 の俳句

当節 当今 モダン 行く末 一寸先 後々 一昨々年 一昨年 再来年 昨秋 昨春 今春 今秋 来春 明春

行く末

まっすぐに亀石へ行く末黒葦 能村登四郎
鰯雲ほぼ行く末も計られて 水谷晴光
硯洗ふ己が行く末見えてゐて 鈴木真砂女
見つくせり夏潮の行く末なども 大石悦子 群萌
行く末のなきかのごとく秋の蟻 長澤良江
行く末の見えきて朝の螢籠 澤村昭代
行く末は誰が肌ふれむ紅の花 芭蕉「西華集」
行く末は誰が肌触れむ紅の花 芭蕉
行く末は誰とか契る紅の花 紅花 正岡子規
行く末は笛になるかも今年竹 福島裕峰
行く末を考へてゐる秋の蝿 福永直子
秋の川入り行く末の須磨明石 松瀬青々
初風呂に我が行く末を思ひつゝ 酒井澄子
人間の行く末おもふ年の暮 松瀬青々
蝉の穴覗き行く末漠然と 殿村莵絲子 雨 月
薄月や水行く末の小夜砧 闌更
木の実拾ふ己が行く末はかられず 鈴木真砂女 夏帯
来し方はさあれ行く末露けしや 安住敦

今春

この樹齢今春風のおもむろに 佐藤漾人
叡山や今春の鳥どの谷も 尾崎迷堂 孤輪
我癒えて今春草を踏み得たり 松本たかし
去年に似て今春めくや人の顔 斧寛
今春が来たよふす也たばこ盆 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
今春は幾個の牡丹見たりけむ 相生垣瓜人 負暄
今春も焼筍の機を逸しけり 相生垣瓜人 明治草
椙の木に今春たてる神路山 加舎白雄
悲しさも今春風の如きもの 上野 章子
萌えいでよ春は菫の濃むらさき 麦南 (男孫二人の後、今春はじめて女孫誕生、すみれと名づく)
木蓮や泉石の幽今春に 尾崎迷堂 孤輪

来春

わたつみの鳥居くぐり来春の潮 上村佳与
子を思ひゐしとき子が来春の暮 安住敦
丈高き谺返し来春の滝 小林康治 『虚實』
来春の存命信じ種を採る 植村よし子
来春の繩をつたふやえ方棚 程已
旅人吾に鼻すり寄せ来春の鹿 平野千江


今秋

かの日父子今秋嶺にひとり我 福田蓼汀
運命の刻今秋嶺に黙祷す 福田蓼汀 秋風挽歌
海女のその物語今秋の海 稲畑汀子
赫と今秋日に逃れどころなく 星野立子
馬蹄今秋を誘はばたれが家 挙白


当節

当節の瓜と似て非の甜瓜 高澤良一 寒暑
燗熱し当節流行らぬこと云ふな 高澤良一 随笑


モダン

かの藤は丸々としてモダンなる 京極杞陽
ベレー帽かぶる案山子のモダンなる 堀 勇夫
ユリの木植え街もモダンに人もモダンに 高澤良一 石鏡
架け替りモダンな橋や阪神忌 森田峠
先頃の案山子の装(なり)のモダンなる 高澤良一 素抱
町並はモダンにユリの木黄葉して 高澤良一 素抱
長岡のモダン茶店の五月かな 久保田万太郎 流寓抄以後
二階より青芭蕉見ゆモダンな歯科 高澤良一 暮津

一昨年

一昨年のごとき明るさ虹の下 鷹羽狩行
南谷去年一昨年の杉落葉 高澤良一 石鏡

先頃

先頃の案山子の装(なり)のモダンなる 高澤良一 素抱


一寸先

ゆく春や一寸先は木下やみ 横井也有 蘿葉集
艶聞や一寸先は五月闇 鷹羽狩行
探偵の一寸先は闇の梅 仁平勝
白魚の一寸先を影泳ぐ鳥羽三郎

その他

蛤も桶に口明春の雪 野紅
当今(たうぎん)の昔赤子や冬霞 三橋敏雄 畳の上
後々と日和まさりに三ヶ日 松本たかし

以上

by 575fudemakase | 2019-02-17 13:37 | 無季 | Trackback | Comments(0)

来し方 曾て の俳句

来し方 曾て の俳句

来し方 先年 一頃 曾て その節 当時 昨今

来し方

アカシア白花昂揚の日の来し方 金子皆子
お降りや来し方思へとてひねもす 及川貞 夕焼
かへりみて来し方の枯ひろげたり 上田五千石 琥珀
かまつかや来し方透いてみえるとも 高澤良一 石鏡
ゴンドラの 来し方行方の 索断つ霧 伊丹三樹彦
ちちははの来し方語る夜長かな 井関良子
てのひらに載る来し方は葛隠れ 斎藤玄 狩眼
ポツペンに母の来し方思ひをり 石田章子 『雪舞』
ほろ苦き来し方は夢ごまめ噛む 秋山佳奈子
また一人来し方丈の月の客 横山美代子
むらぎもの来し方のいまを息づく胸 栗林一石路
わが景の来し方行方草に木に 中村苑子
わが来し方行方 ぐるぐる腸が鳴る 日下部正治
わだなかや虹よけて来し方しぐれ 河野南畦 『花と流氷』以前
われわれの過ぎ来し方に法師蝉 山口誓子
稲妻す妻の来し方我が行く方 石田波郷
稲妻や妻の来し方我行く方 石田波郷
炎天の来し方遠くけぶりをり 豊長みのる
夏山や来し方曲る青水沫 下村槐太 天涯
花茨来し方をまた行方とす 深谷雄大
花下に立つ過ぎ来し方は無きに似て 安住敦
花柊過ぎ来し方は母がゐて 冨田正吉
外套や来し方の闇行方にも 鈴木六林男 *か賊
雁渡る来し方あまた窓ひかり 加藤秋邨
危ふきを好む来し方桷の花 手塚美佐
蟻駈けゆく駈け来し方と思ひつつ 鷹羽狩行
脚投げて 来し方積る うまごやし 伊丹三樹彦
隙間風来し方見つめ直すとき 久保田静子
厚物咲や一瓣欠けて崩れかけ(来し方は) 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
降り積みて来し方くらむ桜蕊 馬場移公子
山は見の冷ゆわが来し方の霞みそめ 林原耒井 蜩
手廂に来し方を見て涼しかり 黛まどか
樹々はみな来し方晒し冬深む 宮坂敏美
秋の蚊を過ぎ来し方を重ねけり 石田純子
秋の行方来し方行方定めなき 小出秋光
秋の風鈴来し方隙間だらけなり 馬場移公子
春の雪来し方残りゐるやうに 中原道夫
春炬燵あまたの恩を来し方に 及川 貞
初蝶の来し方行方誰も知らず 三村武子
色悪しき蝶の来し方行方かな 三橋敏雄
深雪道来し方行方相似たり 中村草田男
清流の来し方は富士ひな流す 安斎郁子
青田行く汽車来し方も山重なり 右城暮石 句集外 昭和三十一年
雪眼ふたぎして来し方をおもふなり 成瀬桜桃子
雪眼ふたぎて来し方をおもふなり 成瀬桜桃子
雪道の来し方霞む白鳥湖(新潟県、瓢湖六句) 細見綾子
戦後といふ来し方青き蜜柑むく 玉城一香
大根煮て来し方何もなきごとし 山田みづえ まるめろ
誰よりもわが来し方を知る雛よ 湊キミ
炭馬や来し方はただ山重畳 栗生純夫 科野路
茶番劇(ファールス)の来し方であり衣被 佐藤鬼房
天上もわが来し方も秋なりき 中村 苑子
渡り来し方を恋しと鳴く鶴か 鷹羽狩行
冬夜妻と来し方の恩語り尽きず 大野林火 雪華 昭和四十年
道とへば来し方問はれ烏瓜 赤松[けい]子
梅雨の闇鳴りて来し方断つごとし 石原八束 空の渚
白靴の来し方行方揃えけり 徳弘純 麦のほとり 以後
飛び来し方飛び行く方のみな雪嶺 山口誓子
母の日や我が来し方を子に重ね 岩波千代美
埋火の如き来し方朱鳥の忌 吐合寿実枝
万燈の低きに混めりわが来し方 橋本多佳子
無駄骨の来し方なりや雪耕土 佐藤鬼房
目をつむる筒鳥は来し方の鳥 千代田葛彦
夕闇の中の来し方寒雀 廣瀬直人
揺さぶられどうしの来し方蓑虫も 高澤良一 寒暑
来し方に悔なき青を踏みにけり 安住 敦
来し方に人現はれぬ丘の秋 中村汀女
来し方に椎の実ほどの甘えあり 大石悦子 聞香
来し方に徒労はあらず大冬木 阿部ひろし
来し方に未練なかりし道をしヘ 八田文鳥
来し方に戻らんと在り夏蜜柑 永田耕衣
来し方のいつしか消えてすだちの香 杉田りゆう
来し方のくもり拭ひて初鏡 加藤 浩
来し方のただはるかにし思ほえてしみじみと降る三月の雨 清水房雄
来し方のまことに都忘かな 後藤比奈夫
来し方のよく見ゆる日の白絣 綾部仁喜
来し方の一処にはかにいなびかり 天野信敏
来し方の屈折のばし初日初孫 高山紀子
来し方の罪許されて青き踏む 石川冬扇
来し方の修羅忘れたりひひな菓子 北見さとる
来し方の水も蓮も宵闇に 宇佐美魚目 秋収冬蔵
来し方の藤美しきこと告げよ 阿波野青畝
来し方の美しければ日記買ふ 赤松[けい]子
来し方の貧しき思ひ蜜柑むく 木村蕪城 寒泉
来し方の野に雪降れり涅槃寺 野見山朱鳥
来し方の茫々として木の葉髪 津村青岬 『南紀』
来し方はかく捨つべきか総落葉 栗生純夫 科野路
来し方はさあれ行く末露けしや 安住敦
来し方はただごとばかり風車 都甲龍生
来し方はふりかへらざれ菊膾 鈴木真砂女 夕螢
来し方はよきことばかり冬の蝶 東野礼子
来し方は遠しかな~鳴くことよ 玉木豚春
来し方は霞の奥に隠したし 鈴木真砂女
来し方は瓦礫の底や日向ぼこ 白井眞貫
来し方は幻に似て温め酒 伊東宏晃
来し方は挫折の多し花の冷え 木村礼子
来し方は白き磧の凍夜かな 橋石 和栲
来し方もいまもさびしく針供養 戸田銀汀
来し方も行く方も露しとどかな 安住敦
来し方も行手も落葉人へだつ 佐野美智
来し方も行方のごとし蜷の道 鷹羽狩行
来し方も行方も闇の辻踊り 鍵和田[ゆう]子
来し方も行方も花の隅田川 大橋敦子
来し方も行方も知れず雪蛍 清水京子
来し方も行方も模糊と草の絮 山下千代子
来し方も手操られてくる花あけび 中村苑子
来し方も日差たしかに豆の花 中村汀女
来し方やいまは家もつ盆の月 杉山岳陽 晩婚
来し方や寒の没日と無蓋車と 岡本眸
来し方や畦に咲かせて血止草 青木重行
来し方や昏き椿の道おもふ 橋本多佳子
来し方や尺蠖ほどの節度なく 春名耕作
来し方や雪嶺はかくあるばかり 行方克己 昆虫記
来し方や袋の中も枯れ果てて 中村苑子
来し方や椎の若葉の日の光 石塚友二 磯風
来し方や鶴が連れたる鶴の空 三橋敏雄
来し方や冬夕焼のさめ易し 内藤吐天 鳴海抄
来し方や東西南北ただ遠樹 中村苑子
来し方や馬酔木咲く野の日のひかり 水原秋桜子
来し方や母透くごとく夏座敷 中村明子
来し方や立浪草の群れゐたる 青柳志解樹
来し方をいへば卯の花腐しかな 岸田稚魚「鶴俳句選集」
来し方をさらりと鳰の水輪かな 橋本良子
来し方をほりおこしたる麦の秋 平野八重子
来し方を皆佳しと思ふ初明り 遠藤はつ
来し方を見ればむらがる桐の花 山口誓子
来し方を語れば簗もしぐれけり 古賀まり子 緑の野以後
来し方を行く方を草朧かな 高木 晴子
来し方を斯くもてらてら蛞蝓 阿波野青畝
来し方を時空といへり雪舞へり 斉藤美規
来し方を樹々の閉ざして寒の入 鷹羽狩行
来し方を真殺しとせり秋の暮 永田耕衣
来し方を積むが如くに年木積む 後藤比奈夫
来し方共に行く先ひとり短夜や 福田蓼汀
蓮根の輪切の穴よ来し方よ 三橋敏雄
炉にかざす手の来し方よ行末よ 後藤比奈夫
萬緑は過ぎ来し方も押しつつむ 石田波郷
蚯蚓にも来し方行くへあらむずる 相生垣瓜人
蜷逼ふも来し方行く方しらぬまま 東城伸吉

曾て

快き暑さも曾てありしかど 相生垣瓜人 微茫集
吾曾て一鬼だに打たざりき 相生垣瓜人 明治草
山ざくら曾て男は火の眼持ち 櫛原希伊子
子に着せし曾ては夫の白絣 高根照子「ティー・エンジェル」
紙を漉く技も曾ての武蔵紙 高澤良一 ぱらりとせ
漆黒の除夜のみ曾て記憶せり 相生垣瓜人 微茫集
芝青し曾ては膝に哲学書 下山芳子(岩戸)
秋声も曾て童子に説かれけり 相生垣瓜人 微茫集
春蘭の曾ての山の日を恋ひて
初国旗曾て軍装少年期 阿部王峰
藷讃めて曾て人後に落ちざりき 相生垣瓜人 明治草
焼藷や曾て女給も純なりき 百合山羽公 寒雁
雪女曾てヘルンを蠱惑せり 相生垣瓜人 負暄
曾てなき端居語りの夜を得たり 阿波野青畝
曾て下宿の吉田あたりの秋の猫 橋閒石
曾て見ざりし寛げる君や単衣物 楠目橙黄子 橙圃
曾て見し海を忘れず松の木に 下村槐太 光背
曾て住みし町よ夜店が坂なりに 波多野爽波
曾て虹に声あげしこともありしなり 能村登四郎
曾て木場秋の蝙蝠とび交へる 飯島晴子
逃げ水を追ふこと曾てしたりけり 能村登四郎
風呂吹や曾て練馬の雪の不二 水原秋櫻子
夜やいつの長良の鵜舟曾て見し 蕪村
甃音曾て無く夜長かな 尾崎迷堂 孤輪
薑に曾て夫子も飽かざりき 相生垣瓜人 微茫集
蟷螂も曾ては道を教へけり 相生垣瓜人 明治草

昨今

ロンヂンに大根なます詩昨今 飯田蛇笏
昨今のこころのなごむ褞袍かな 飯田蛇笏 山廬集
昨今の心のなごむ褞袍かな 飯田蛇笏
蕣の耳を疑ふ怪事件(昨今の新聞紙上を見れば) 高澤良一 暮津


当時

しぐるゝや余談に当時秘めしこと 河東碧梧桐
はま弓や当時紅裏四天王 其角
駒迎当時の哥仙誰~ぞ 高井几董
当時わびしやわれは一羽に名つけて 阿部完市 軽のやまめ

その他

その節の器量のよしと竹を切る 平畑静塔
一頃は世に鳴滝の菊のぬし 桃隣
初とりや先年禮のいひはじめ 初鶏 正岡子規
先年のにほひぞ赤きあぶら紙 三橋敏雄

以上



by 575fudemakase | 2019-02-17 13:32 | 無季 | Trackback | Comments(0)

三春 三夏 三秋 三冬 の俳句

三春 三夏 三秋 三冬 の俳句

三春

三春に亘りて百の椿咲く 後藤夜半
三春のここに始まる濤の音 高澤良一 素抱
三春のことぶれまだか坊主山 高澤良一 素抱
三春の益あり香あり五霊香 止水 江戸名物鹿子
三春の行楽桜葉となりぬ 高浜虚子
三春の行楽櫻葉となりぬ 高浜虚子
三春の皮切りの風吹く日かな 高澤良一 寒暑
三春の味をば酸となしをれり 相生垣瓜人 負暄
三春へ先づ一歩する心かな 高木晴子
三春も病床の向きかへしのみ 福田蓼汀 山火
三春経ぬ薬の味のかはりつつ 日野草城
借問す三春妻をどこへ連れしや 安住敦

三夏

三夏その首夏告げわたる風なりけり 高澤良一 素抱

三秋

一日見ざれば三秋のごとしかの猟人 金子兜太
三秋の絵巻果てゆくごと星座 荒井正隆
三秋の季題心に留めて旅 高澤良一 暮津
三秋の終らんと風草に鳴る 高木晴子 花 季
三秋や夫に数多の医療器具 小野口正江
三秋を病みて和服に親しみぬ 下村ひろし
飯うまき三秋も早や半ばかな 高澤良一 寒暑
風鈴と又三秋を共にせり 相生垣瓜人 負暄

三冬

わびすけや己が三冬を咲通す 寥松
蝦夷鹿の振り向くしじま三冬尽く 下鉢清子
三冬のホ句もつづりて狩日記 飯田蛇笏 山廬集
三冬の一冬のこり山尖る 米澤吾亦紅
三冬の古りしベレーを形見かな 皆川白陀
三冬の雪折かぶる勅使門 前田普羅 新訂普羅句集
三冬の簗のくらみに夏透る 飯田龍太
三冬や身に古る衣のひとかさね 西島麦南
三冬や鐵鐵となるおのづから 高橋睦郎
三冬月 産卵ののちに賜わる屍に雪 宇多喜代子

以上

by 575fudemakase | 2019-02-17 13:27 | 無季 | Trackback | Comments(0)

予め 往時 昔日 の俳句

予め 往時 昔日 の俳句

爾後 爾来 予てより 予め 前以て 年来 旧来 大昔 一昔 昔年 昔日 その上 往年 往時

昔日

寒港や昔日軍馬嘶きし 榎本冬一郎 眼光
空のうしろに昔日の空麦こがし 磯貝碧蹄館
師よ友よ昔日の雷野をわたる 中島斌雄
酢海鼠や昔日の丈夫いまの惰夫 花岡昭
生栗ひとつ昔日の兵眼をひらき 桜井博道 海上
昔日と同じ端居に向き変へず 村越化石 山國抄
昔日ニ休ス初霜ワガ実存 永田耕衣
昔日のうしろの正面大夕焼 谷口桂子
昔日のゆたかさに在り冬の蝿 永田耕衣 物質
昔日の海向日葵の瞳の中に 高澤良一 寒暑
昔日の春愁の場(には)木々伸びて 中村草田男
昔日の春愁の場木々伸びて 草田男
昔日の淀の風来る日傘かな 山田弘子 懐
昔日の涼しさに立つ二人かな 依光陽子
昔日は黄ときめたりし月見草 伊藤 敬子
昔日は捨反古ならず茗荷汁 上田五千石 天路
昔日は恋し手毬をつき唄ふ 高木晴子
昔日を発す牡丹も矢の鮒も 永田耕衣 人生
昔日を啖い夕顔真白かな 永田耕衣 人生
昔日を啖らい夕顔眞白かな 永田耕衣 人生
鉄眼の昔日の闇鉦叩 辻田克巳
茱萸の実あり昔日のごと黙想のごと 金子皆子


その上

その上(かみ)は華族の避暑地お宮の松 高澤良一 寒暑
その上は木犀の香も川越えき 相生垣瓜人
その上ミの大根畑にも朴落葉 岡井省二 鹿野
その上ミの二の平なる女瀧かな 石塚友二 玉縄以後
その上ミは楢の小川や酢茎村 石塚友二 磊[カイ]集
氷る瀧その上をせく水のあり 有馬朗人 天為


予め

あらかじめ家鴨ゐて鴨渡り来し 岡井省二 山色
あらかじめ花の若さやかきつばた 露川
予め下手とことはり聖夜劇 高澤良一 石鏡
老臭は死臭の稀釈みづからに嗅ぎつつ慣れむ死にあらかじめ 高橋睦郎


往時

ざりがにの万歳往時の突撃も 高澤良一 素抱
往時の逗子サマータイムといふがあり 高澤良一 暮津
国の昨(さく)を往時となすとき穴惑ひ 中村草田男
三年前は往時や盆僧あまり若し 中村草田男
少年の吾来て鯔の引っかけ釣(金沢八景往時) 高澤良一 暮津
松の花往時を偲ぶ*うだつ屋根 邑上キヨノ
冬海の往時へ挙手の礼長し 平井さち子 紅き栞
如月の教師なりける往時かな 相生垣瓜人 負暄
葉を落とし往時のままの瘤欅 高澤良一 宿好
黴の香に坐しをり往時茫々と 清原枴童


爾後 爾来

何時古の古草爾来数百年 永田耕衣
古書肆出て爾後は神輿の後に蹤く 北野民夫
爾来五十餘年無駄死口惜し戦友忌 三橋敏雄


一昔 大昔

一昔そのまた昔秋の山 深見けん二
花林檎一と昔否大昔 星野立子
煮凝の貧忘れめや一昔 喜谷六花


杜氏来る三十年来日を変へず 松崎鉄之介
前以て寒さ強調しておきぬ 高澤良一 さざなみやつこ


以上


by 575fudemakase | 2019-02-17 13:22 | 無季 | Trackback | Comments(0)

昼過ぎ 払暁 夜昼 の俳句

昼過ぎ 払暁 夜昼 の俳句

真っ昼間 昼日中 真昼 昼時 昼過ぎ 昼下がり 朝っぱら 朝ぼらけ 朝未き 彼は誰時 払暁 早暁 黎明 朝晩 朝夕 旦夕 昼夜 夜昼

真昼


<我>よりも影が木体となる真昼あまたの死体を呑みし路上に 光栄堯夫
あかいと云つても藷のうすあかいいろ真昼 中川一碧樓
アカシヤの花咲く真昼胃を切らる 佐川広治
アスファルトに椎の実撥ねて真昼なり 内田光佳
アネモネに不良の匂ひして真昼 櫂未知子
あらあらとカンナの真昼逢ひに行く 野木桃花
アルペンローゼ真昼の氷河音もなし 有働亨 汐路
イルクーツクの暑き真昼を銃声す 松崎鉄之介
うぐひすや巌の眠りの真昼時 西東三鬼
うす紙に優曇華つつむ真昼かな 佐藤博美
オリーブの花の真昼や牧師館 外村百合子(繪硝子)
かなかなのかなのかそけき真昼かな 辻桃子
から咳に真昼の深さ白牡丹 鍵和田[ゆう]子 未来図
きのうより大きな真昼白山茶花 大坪重治
きりぎりす海くろがねの真昼かな 永方裕子
きりぎりす真昼を海のひくくなる 大野林火 冬青集 海門以後
きりきりと天牛虫の真昼かな 中村祐子
こがね虫真昼は緑衣かがやかす 斎藤 道子
ことごとく折れて真昼の葱畑 狩行
こぶし咲く真昼自在の罅深し 飯田龍太
さくら餅婦人句会は真昼頃 吉屋信子 吉屋信子句集
さすらいの真昼泥鰌のうすけむり 篠田悦子
しんかんと真昼みごもる女たち 岸本マチ子
ゼラニウム男二人の真昼どき 和田耕三郎
たにぐくの真昼を鳴ける蚕飼かな 木津柳芽 白鷺抄
たんぽぽに舌ある如き真昼なり 岸本マチ子
つららは花真昼をねむり夜を書く 寺田京子 日の鷹
ツンドラはむなし真昼の霧匂ふ 有働亨 汐路
どくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎
トマト耀り海への道の真昼なる 中島斌雄
なきいなご真昼の草はさびしかろ 島谷征良
なに着ても似合はぬ向日葵の真昼 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
にんげんの見える真昼や冬の沼 柿本多映
のうぜんや真昼はむしろ水暗く 岡本まち子
はこべらや壜罐なども真昼時 原田喬
はっさくを剥くや真昼の雪の原 岡井省二
はらはらと真昼の雨や仏生会 中村汀女
はるの雪産着のやうに田の真昼 小宅容義
はるふかく真昼も杉のあらしかな 青蘿
ひとり子の手鞠弾める真昼どき 飯田龍太
ヒト科だってかっこうと鳴く真昼 岸本マチ子
ひまわりの真昼に深く深くある いそべ恒基
ひめごとの鮎焼く真昼上り簗 柳沢芳子
ひもろぎの真昼を昏く滝落つる 山内遊糸(蘇鉄)
ひる顔や真昼中をさきにけり 正岡子規 昼顔
マッチすれば真昼のにほひ芒原 大野林火 冬青集 雨夜抄
マッチ擦つて真昼があおし魚市場 寺田京子
マッチ擦れば真昼の匂ひ春の芝 緒方句狂
ヨットの帆真昼忽ち木隠るる 山口誓子
ラジオのわが声つまずく真昼の青レモン 寺田京子 日の鷹
わさび村昃り深き真昼かな 渡辺恭子
悪友が母となりたる秋真昼 土肥あき子
鮎簗の真昼乾ける魚一片 山口青邨
闇市や真昼音なき揚羽蝶 加藤秋邨
井戸蓋に木の実の撥ねて真昼なり 桂信子 花影
一管の麦笛光る真昼の野 有馬朗人
一月の川の匂いが重い真昼 山内嵩弘
一舟も見えず真昼の瀞晩夏 岡田佐久子
稲架風に鳴りきらきらと真昼の日 川島彷徨子 榛の木
稲光真昼の如き芭蕉かな 花蓑
茨咲いてこんなさみしい真昼がある 三橋鷹女
引鶴の天のととのふ真昼かな 原裕
鵜は人を見飽き真昼の籠にねる 玉城一香
雲雀啼くや真昼実になる豆の花 碧雲居句集 大谷碧雲居
鋭く苦き野菜を愛す真昼なり 水野真由美
越え居るや真昼時なる木の芽山 尾崎迷堂 孤輪
遠足が真昼の山に来てもどる 鴇田智哉
遠足は真昼の山に来てもどる 鴇田智哉
黄蜀葵真昼の燭に尼の寺 大野林火
沖の陽強き枯草を踏む真昼 廣瀬直人 帰路
牡丹崩れて黒血のごとし土真昼 五十嵐播水 播水句集
音なくて崖の真昼の葛の花 山西雅子
音無川の山神鎮めの水垢離に真昼を過ぎて霽れゆく吹雪 梅津英世
夏安居や鳥ひそみゐる真昼の木 高千夏子「真中」
夏真昼回り舞台の静止せる 柿本多映
夏真昼死は半眼に人をみる 飯田蛇笏
夏真昼死者も縁者も化粧して 柿本多映
夏真昼祷れる眼窩暗うして 中村草田男
夏草や真昼の丈の逞ましき 小島政二郎
河骨の花に真昼のしじまあり 長谷川耕畝
火薬工場の真昼眼帯の白現われ 杉本雷造
花に病む真昼の夢のうすみどり 野見山朱鳥 曼珠沙華
花のなかに目覚めて白き真昼あり 桂信子 樹影
花虻の翅音真昼の静けさに 穂坂日出子
花烏賊に量り目止まる真昼かな 岩城のり子
花嫁も露も消えにし真昼かな 中田剛
花火師か真昼の磧歩きをり 矢島渚男
花散る幹から真昼の幽霊(すだま)・物狂ひ 中村草田男
花桃の蕊をあらはに真昼時 蛇笏
花桃の蕋をあらはに真昼時 飯田蛇笏 春蘭
花片を喰ひつむ鯉の真昼かな 市野沢弘子
荷役なき埠頭の真昼鰡はねる 日比野里江
蛾の眠る真昼睡たげに泉の芯 田川飛旅子 花文字
海酸漿鳴らす真昼の淋しさに 塩野谷仁
海苔飛んで真昼魔法のからすごゑ 佐藤鬼房
蟹の色悪しき真昼の声を出す 飯島晴子
蟹の目が人を見てゐる真昼かな 大竹多可志「0秒」
開くだけひらき真昼の紅蜀葵 河野 照代
蛙田に真昼の雨がつきささる 内藤吐天 鳴海抄
郭公の鳴き変りつつ真昼過ぐ 橋本榮治 逆旅
粥杖や真昼に男の子誕生す 高木ひかる
寒月の真昼より見え書を配る 成田千空 地霊
寒月光真昼に似たる水の照り 大木あまり
干海苔のかわく真昼の雲母波 原柯城
干瓢をほすや真昼の月の下 佐野まもる 海郷
監獄署跡草の花ちる真昼かな 種田山頭火 自画像 層雲集
岸壁に真昼の焚火髯かゆし 佐藤鬼房
眼の玉を抜く闇坂の真昼かな 高柳重信
岐阜を出て美濃を真昼の暑哉 暑 正岡子規
亀石の居眠る荒鋤田の真昼 野沢節子 花季
蟻の死を蟻が喜びゐる真昼 柿本多映
菊冷えて女陰のごとき真昼かな 秦 夕美
吉原や真昼の頃の揚雲雀 正岡子規 揚雲雀
吉備の野の真昼けだるき牛蛙 羽田岳水
虚を吠えつづく蟹もひそめる真昼時 中村草田男
許六忌の真昼の集ひ喫茶店 西坂三穂子
漁火の真昼に照るやちやつきらこ 長谷部千代子
凶作の真昼直立つ煙見ゆ 徳弘純
橋下まで麦の黄熟真昼憂し 佐野まもる
蕎麦の花真昼に暮ぬ不破の雨 加藤曉台
蕎麦を刈るかゝる真昼のかそけさに 篠田悌二郎
郷愁は梅雨の真昼の鶏鳴くとき 中村草田男
金魚撩乱みどり児醒めず真昼時 柴田白葉女
虞美人草寂しさ極む真昼あり 橋本美代子
桑の実や湖のにほひの真昼時 水原秋桜子
桑を解く真昼のいろの星が出て 中拓夫
啓蟄の船は入江を出て真昼 川崎ふゆき
茎立ちの真昼闌けたる知らぬひま 岡井省二 鯛の鯛
鶏頭や夜食に呼ばれたる真昼 杉野一博
犬暴れ頭蓋の暗くなる真昼 高野ムツオ 陽炎の家
玄海の真昼の潮の飛魚吐かず 湯浅桃邑
呼び水に真昼の蛇のいそぎけり 柿木 多映
孤りには真昼も仰ぐ天の川 玄
枯尾花真昼の風に吹かれ居る 蕪村
五分かくる真昼の蝕や白牡丹 几董「晋明集二稿」
御所の芝真昼の露を置きにけり 三村純也
口腔かわき真昼ヨシキリとふたり 高野ムツオ 陽炎の家
向日葵の真昼いささか動く雲 山口草堂
孔雀捜し園丁が来る夏至真昼 原田青児
皇国(みくに)且つ柱時計に真昼来ぬ 攝津幸彦
皇国且つ柱時計に真昼来ぬ 攝津幸彦
講堂は真昼の昏さ卒業式 津田清子
高すなご夏の真昼を陰さまざま 中村草田男
高温の麓真昼の耳冴えて 飯田龍太
黒牡丹咲くや真昼の闇を抱き 羽部洞然
黒穂抜く島の真昼はけだるくて 鈴木真砂女
黒穂抜く島の真昼は気だるくて 鈴木真砂女
魂の弛む真昼の夏蓬 寺井谷子
沙熱し獅子ものあさる真昼中 暑 正岡子規
砂日傘真昼の夢をうち覆ふ 日野草城
砂日傘抜かれ真昼の穴のこる 大屋達治
桜どき真昼ゆつくり馬消され 榎本輝男
笹子鳴く真昼やさしき甲斐の山 飯田龍太
雑茸のそれぞれの香の真昼時 飯田龍太
山葵沢真昼の冷えの白拳 飯島晴子
山住の怖きは冬の真昼時 佐藤鬼房
山小屋の真昼さだかに霧雫 岡田日郎
山真昼かみきり水に浮かびをり 金尾梅の門 古志の歌
山吹の真昼を伎芸天伏目 井沢正江
山畑や真昼のころの郭公 時鳥 正岡子規
山鳩の啼き泉邸は真昼閉す 宮武寒々 朱卓
山百合や真昼の闇に神香る 加藤知世子 花寂び
山百合や真昼の空気日に光る 中島斌雄
姉妹に咲く白木蓮の真昼かな 金子兜太
紙の桜に手触れては過ぎ子の真昼 桂信子 黄 瀬
時計打つ真昼つめたき灰の中 飯田龍太
七月の殺気真昼の水を過ぐ 桂信子
実梅落ち光りしは風真昼時 金子麒麟草
蛇討たるあたりかがやく真昼かな 嶋田麻紀
若竹の冷え伝ふなり真昼の手 櫛原希伊子
寂然と千鳥の陣や洲の真昼 川端茅舎
秋の野の葬ひ果てし真昼かな 中川宋淵
秋雨や真昼の花のほたるぐさ 日野草城
秋真昼ねむたく居れば軍歌きこゆ 石川桂郎 含羞
秋真昼柩三尺宙に浮く 飯田龍太
秋天澄む真昼鍵かけもの書けば 寺田京子
舟に雛段しんと水路の真昼かな 鷲谷七菜子 一盞
十勝野の真昼とつぜんの雌牛見え 金子兜太
十薬の真昼うするる沖の線 岩淵喜代子 朝の椅子
重ねあふ真昼の翳りリラ白し 今橋眞理子
宿からん真昼をおろす諸ひばり 琴風
出胎の時に漲力秋真昼 赤松恵子
春愁の真昼は濃ゆき文字を書く 三橋鷹女
春色の人にうつらふ真昼かな 尾崎紅葉
春真昼おかめとほほを合はせたり 萩山栄一
初時雨真昼の道をぬらしけり 吉分大魯
初蝶とみたるは風の真昼かな 吉岡真希華
小溝澄む真昼老爺の白絣 柴田白葉女 花寂び 以後
少年のうれゆく真昼西瓜畑 おおた 敏
晶晶と玉虫放つ真昼の樹 中沢文次郎
焼原や風真昼なる影法師 飯田蛇笏
菖蒲湯の天井高き真昼かな 金子いづみ(若葉)
植樹祭真昼蓬の枯れを踏み 飯田龍太
色町や真昼しづかに猫の恋 永井荷風
色町や真昼ひそかに猫の恋 永井荷風
蝕了へし真昼や浅蜊潮噴ける 羽田岳水
唇として使ふ真昼のあやめかな 攝津幸彦
寝台車暑き真昼の青森に 佐藤鬼房
新茶の香真昼の眠気転じたり 一茶
榛咲くや真昼さみしき塩屋岬 大島鋸山
榛名山大霞して真昼かな 鬼城
浸り居れば温泉壺影なき秋真昼 林敝三
深閑と虚空に葦の混む真昼 津沢マサ子
真空の真昼の夢や蝉しぐれ 吉原貞子
真昼うらゝかに落葉みな灰となりぬ 種田山頭火 自画像 層雲集
真昼かなしきおもひわく日輪たかし 種田山頭火 自画像 層雲集
真昼さびしき砂いきれ蜥蜴つと横ぎりぬ 種田山頭火 自画像 層雲集
真昼しづかに飯が真白く盛らるゝ 種田山頭火 自画像 層雲集
真昼なほつつむがごとく蓮の花 山口青邨
真昼の漁夫風にみがかれ隔絶され 金子兜太
真昼の寺に大きな箒死んでいる 西川徹郎
真昼の村蝶のあらきを網戸越し 中拓夫 愛鷹
真昼の湯子の陰毛の光るかな 西東三鬼
真昼もねぶたき顔の柳哉 塵生
真昼を更に醒ます鐘声復活祭 中村草田男
真昼見て百日紅の衰へず 後藤夜半「彩色」
真昼時弁当部屋のあつさ哉 暑 正岡子規
真昼日に松風少し土用かな 尾崎迷堂 孤輪
真昼日の影ひき据ゑし葵かな 大橋櫻坡子 雨月
真昼野に焚く火透きけり九月尽 富田直治
真昼野に焚く火透きたり九月尽 富田直治
真昼優しや路面鏡には返り花 佐藤鬼房
人がひと生み真昼の白い満月 鳴戸奈菜
人駈けて真昼の芥子の土ひびく 波多野爽波
人妻の蝌蚪いぢめたき真昼時 鍵和田[ゆう]子
須弥壇の真昼虫鳴く廃寺かな 日野草城
水の上の大きな真昼山葡萄 松本文子
水は過ぎ萩はとどまる真昼かな 鈴木鷹夫 風の祭
水郷の真昼は芥子のちるばかり 岩崎照子
水仙ほのと藪凪げる真昼歩く鳥 種田山頭火 自画像 層雲集
水蜘蛛の水を乱さぬ真昼かな 山田みづえ 草譜
水鳥の夢は真昼の雲の中 川井玉枝
水田に映る山影おれの真昼の生 金子兜太
睡蓮の一花一花の真昼かな 上村占魚
雛の間に真昼も灯しつつひとり 岩田由美 夏安
雛の窓に真昼の海のかたむけり 山野邊としを
雛の日の真昼淋しき衣紋竹 折井紀衣
雛芥子の真昼うたたね夢ノ介 高澤良一 鳩信
晴天の真昼にひとり出る哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
声絶ぇて真昼の凪の埠頭のくらげ 高柳重信
逝きし師の宙に真昼の裸の灯 伊丹三樹彦
青あらしたとえば舟を曳く真昼 水野真由美
青柿の真昼地を打つ敗戦日 岡本まち子
青芝の真昼に近き海の音 原石鼎
青簾真昼爪きり孤独もよし 鈴木真砂女 夏帯
石わたりゆきぬ真昼の蟋蟀よ 山口青邨
折角の夜来香に真昼会ふ 後藤比奈夫
節分や真昼の声の厠まで 横山昌子
雪どけの真昼野の音みな流る 平井照敏 猫町
雪降りて真昼の何もかも淡し 廣瀬直人 帰路
雪焼の伝令笑ひ出す真昼 水野真由美
雪霏々と真昼の電車灯し来る 沢木欣一
舌の根を見せて真昼のランプかな 久保純夫 水渉記
蝉の音も煮ゆるがごとき真昼かな 闌更「三傑集」
川燈台真昼千鳥の啼くをきく 杉本寛
浅かりし真昼の夢に寝汗しぬ 日野草城
浅草寺真昼花椎匂ひけり 杉本 寛
全身に桜のまわる真昼かな あざ蓉子
草の戸の真昼の三味や花柘榴 川端茅舎
草蜉蝣真昼の山湖呟ける 望月紫晃
蒼海の真昼まぶしき羽抜鳥 小野恵美子
待避すや壕の真昼の霜柱 原田種茅 径
大牡丹崩るるはみな真昼時 福田清人 水脈
大原に双蝶の舞ふ真昼かな 高千夏子
大寺を抜けて真昼の交番へ 攝津幸彦 鹿々集
大木の肌も真昼やきりぎりす 飯田龍太
大雷雨あり鴎外の忌の真昼 九鬼あきゑ
濁り鮒近江の真昼楕円なり 鈴木湖愁(岳)
濁流に家並み真昼の八重桜 飯田龍太
誰もゐぬ山の真昼の落花飛花 野沢節子 存身
鍛冶の土間真昼も氷りならぶ鍬 飴山實 おりいぶ
地に落ちて真昼にひゞく柿の花 相馬 遷子
地底の音松籟為して夏真昼 中村草田男
蜘蛛の囲にかかるものなき真昼かな 片山由美子
竹煮草長けて近道真昼なり 窪田玲女
筑紫路の白き真昼をつつじ燃ゆ 原田 逸子
茶の花を渡る真昼の地震かな 内田百間
中元や真昼は丸き椎の陰 岩淵喜代子 硝子の仲間
抽出しはみな少しずつ開いている真昼の部屋に入る蔓の先 花山多佳子
昼顔や真昼の海の鳴るばかり 伊藤晴子
虫籠の虫鳴き出でし真昼かな 神戸鼕々
朝あけも真昼も曇る冬の川 松村蒼石 雁
朝顔の苗に水やる真昼哉 正岡子規 朝顔の苗
町川や真昼真顔の花見船 久保田和子
蝶の死を蝶が喜びゐる真昼 柿木 多映
蝶を見ずしてけんめいに真昼かな 金田咲子 全身 以後
定斎売真昼ゆりゆく影法師 小澤碧童 碧童句集
泥葱を抱へ真昼の日本橋 松原三枝子
鉄板に裸灯置く造船工の真昼 金子兜太
土けむりして鳥交む真昼かな 小島千架子
土筆摘むいま真昼野の白き刻 鈴木鷹夫 大津絵
土筆摘む音のつくづく真昼かな 高澤良一 燕音
土用波真昼のことの渚かな 尾崎迷堂 孤輪
冬の蝶のぼる真昼の日蝕へ 有馬朗人 母国
冬耕の顔に真昼のほとけ空 飯田龍太
冬真昼わが影不意に生れたり 桂信子「草影」以後
冬真昼縮緬を縫ふ部屋に入る 吉田広子
冬陽に睡る青春の日の真昼のごと 金子兜太
冬陽に眠る青春の日の真昼のごと 金子兜太
唐辛子真昼影なき海の音 秋田志峯
桃の花風は真昼のナレーター 沼尻香寿子
桃の実の真昼はぢらふ賑はひあり 中村苑子
桃を煮て幸田文読む真昼かな 谷口桂子
灯台の真昼時なりきりぎりす 清崎敏郎
燈籠のさみしく灯る真昼かな 村上鬼城
二番茶の真昼や蔓の手が驕る 古舘曹人 能登の蛙
日の暮のごとき真昼や枇杷咲いて 野路斉子
猫抜ける外人墓地の秋真昼 中村蓑虫
濃霧の真昼静かな人等に湧く船影 金子兜太
破れたる真昼の夢や鮓馴るゝ 日野草城
破蓮の真昼をよぎる石礫 水野真由美
廃校の真昼の暗さ馬肥ゆる 飯塚久美子
敗荷の真昼をよぎる石礫 水野真由美
梅を干す真昼小さな母の音 飯田龍太
梅雨寒の真昼鴉のかあと鳴く 山口青邨
白はけむるいろ 陸中真昼の 朴の花 伊丹公子 山珊瑚
白牡丹真昼の翳を重ねけり 津村典見
白地着て根三つ葉の香の真昼時 飯田龍太
白南風や沖に真昼の地震おこる 沼尻巳津子(草苑)
麦は穂擦れ鯰はあくび村の真昼 田中冬二 俳句拾遺
麦秋の真昼鼠の音すなり 宇多喜代子
麦笛の真昼きこえて地をする燕 内藤吐天 鳴海抄
麦穂抜く島の真昼はけだるくて 鈴木真砂女
八方のそれぞれ真昼樹氷林 脇本星浪
髪に挿して真昼をあそべ烏麦 磯貝碧蹄館
百合の露揚羽のねむる真昼時 飯田蛇笏
百日紅咲くや真昼の閻魔堂 正岡子規 百日紅
百年とたたぬに言葉とどかざる未来の真昼に来てしまひたる 河路由佳
病める眼に真昼川岸風巻いて 佐藤鬼房
不登校おしろい花の真昼です 牧野桂一
富士見えぬ真昼銀漢も地に埋まり 金子兜太
浮み来て真昼涼しき鯉の髭 小松崎爽青
父の陰茎を抜かんと喘ぐ真昼のくらがり 西川徹郎 瞳孔祭
撫子や河原によどむ真昼の日 墓田まさこ
風の真昼を掻き均らす塩田の広さかな 種田山頭火 自画像 層雲集
風音の真昼かそけき竹落葉 行方克己 知音
風船をはらへり真昼野をすすむ 仙田洋子 橋のあなたに
蕗の葉に真昼の重さありにけり 倉田紘文
蕗の葉も井戸も眠りし真昼かな 野村喜舟 小石川
返り花真昼のかるくなりにけり 鷲谷七菜子 一盞
母こんな筈では真昼の鳳仙花(認知症) 高澤良一 暮津
菩提樹の花の真昼の香なりけり 石田勝彦
放心の真昼で白蟻増殖す 森須 蘭
法師蝉真昼淋しき返書かく 殿村菟絲子
蓬摘む真昼まばゆき川の面 五十嵐播水 播水句集
牧牛の真昼ちらばり山躑躅 石橋辰之助
本堂の隅に蚊のなく真昼かな 蚊 正岡子規
万燈の花のしだるる真昼かな 外川飼虎
民宿の真昼音なく田水沸く 角淳子
無花果の真昼さびしき錦蛇 鳴戸奈菜
霧霧れて赤のまんまに野は真昼 三橋鷹女
盲ひたるごとき牡丹の真昼かな 上田操
木瓜の真昼の爛熟さ家うちの暗さ 梅林句屑 喜谷六花
木瓜燃えて真昼愁ふることもなし 相馬 遷子
木兎の考へ込みし真昼哉 寺田寅彦
目玉よりばつたとびたつ真昼なり 秋山巳之流
野の真昼はたはた翔んで高からず 内藤吐天 鳴海抄
柚子の香や秋の真昼の路に出づ 太田鴻村 穂国
柚子の里いづこも真昼柚子湯わき 古賀まり子 緑の野以後
揚州真昼ポプラ青枝おろす男 金子皆子
陽炎やはり物かわく真昼中 正岡子規 陽炎
陽炎や大船かゝる真昼中 正岡子規 陽炎
落柿舎の土間を真昼の竃馬 山田みづえ まるめろ
落穂拾ふ真昼は水の音かすか 石原八束
乱心のごとき真昼の蝶を見よ 阿波野青畝
裏山は真昼の日ざし草蘇鉄 櫛原希伊子
流木に吹き出でし塩を舐めている真昼浜辺の一匹の驢馬 三井修
流謫かな髪が暴れる真昼の埠頭 中里夏彦
留針を真昼の蝶にしかと刺す 中村苑子
旅の真昼の湖の白鳥鳴くもこの世 金子兜太
旅了へて真昼を戻る桐の花 相馬遷子 山国
凌宵花空の真昼を雷わたる 高橋馬相 秋山越
凌霄の花に蝉鳴く真昼哉 正岡子規 凌霄花
凌霄は妻恋ふ真昼のシヤンデリア 中村草田男
良き土に淑(よ)き女(ひと)寝かす真昼かな 金子兜太 詩經國風
淋しさをもやひ真昼の鵜飼舟 加古宗也
蓮の骨真昼のベンチに誰も来ず 平井さち子 紅き栞
蓮の実が飛ぶ狂院の真昼時 八木三日女
連翹の影なき真昼会者定離 田口美喜江
老兄のごと青峡の真昼酌む 佐藤鬼房
凛として牡丹動かず真昼中 牡丹 正岡子規
夾竹桃かゝる真昼もひとうまる 篠田悌二郎
夾竹桃かかる真昼もひと生まる 篠田悌二郎
棕梠の花真昼の雲が海に湧く 山田佐人
涅槃会の鐘鳴らしけり真昼時 正岡子規 涅槃会
甃窪の氷る真昼を木歩の碑 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
篁の真昼を居らぬ胡蝶かな 尾崎迷堂 孤輪
簑虫の真昼の枝に土地の貌 飯島晴子
籠枕真昼の夢はすぐ忘れ 吉屋信子
簗のうへ杜鵑鳴きすぐ真昼なり 水原秋櫻子 帰心
芒原おもいて真昼老いいたり 津沢マサ子
萍に真昼さみしく松の風 遠藤梧逸
薊咲く真昼の雨のしづけさに 岡部名保子
藺田細く闌けし眠さの真昼なる 前田正治
蚯蚓出るや通りの絶えし真昼中 神田南畝
蜥蜴来て線路しなやかなる真昼 橋口 等
蜩のたまたまならず真昼の温泉 林原耒井 蜩
蜩の真昼も鳴いて栗青し 林原耒井 蜩
蝙蝠のぶら下りたる真昼哉 正岡子規 蝙蝠
螽斯の鳴けり真昼の理髪店 稲光 すみ
跪坐椅子に 彼爆以後の身 真昼のミサ 伊丹三樹彦
鞦韆に石ころ乗せてある真昼 伊藤白潮
饒舌の足りて真昼の水羊羹 渡辺耀子
鴉飛ぶ真昼の夏の裏側を 霜 栄
鶯をうつつにつかむ真昼かな 永末恵子
鵙高音農機具小屋に真昼の日 田野井一夫
鷽鳴くや山頂きに真昼の日 相馬遷子

昼時

うぐひすや巌の眠りの真昼時 西東三鬼
かちかたを蒔昼時や椀の音 昌房
としのくれ見るやのしめの昼時分 許六
はこべらや壜罐なども真昼時 原田喬
はつ雪の降出す此や昼時分 傘 下
はつ雪の降出す比や昼時分 傘下
越え居るや真昼時なる木の芽山 尾崎迷堂 孤輪
花桃の蕊をあらはに真昼時 蛇笏
花桃の蕋をあらはに真昼時 飯田蛇笏 春蘭
柿も昼時村に電報が来し家 シヤツと雑草 栗林一石路
虚を吠えつづく蟹もひそめる真昼時 中村草田男
金魚撩乱みどり児醒めず真昼時 柴田白葉女
桑の実や湖のにほひの真昼時 水原秋桜子
雑茸のそれぞれの香の真昼時 飯田龍太
山住の怖きは冬の真昼時 佐藤鬼房
実梅落ち光りしは風真昼時 金子麒麟草
小昼時霞が中の鶏の声 五周
小昼時野に人たえてきじのこゑ 桜井梅室
寝忘れて小昼時分や小豆粥 篠原温亭
真昼時弁当部屋のあつさ哉 暑 正岡子規
人妻の蝌蚪いぢめたき真昼時 鍵和田[ゆう]子
大牡丹崩るるはみな真昼時 福田清人 水脈
茶摘女の話つやめく小昼時 飯島 愛
昼時に酒しひらるゝあつさ哉 暑 正岡子規
昼時に酒しひらるるあつさ哉 正岡子規
昼時に酒しひらるゝあつさ哉 正岡子規 暑
灯台の真昼時なりきりぎりす 清崎敏郎
白地着て根三つ葉の香の真昼時 飯田龍太
百合の露揚羽のねむる真昼時 飯田蛇笏
蓮の実が飛ぶ狂院の真昼時 八木三日女
杣父子山に火を焚く小昼時 飯田蛇笏
涅槃会の鐘鳴らしけり真昼時 正岡子規 涅槃会
蠅まうて小昼時なる出立ちかな 飯田蛇笏 山廬集

昼過ぎ

みりん干焙りて雪も昼過ぎし 岡本眸
牡丹の昼過ぎて夜にさしかかる 山口誓子
花冷えの昼過ぎて海ひろくなる 松村蒼石 雁
寒雷や人もの言はぬ昼過ぎぬ 有馬朗人 母国拾遺
吸殻の立つ昼過ぎの火鉢かな 櫨木優子
元日の昼過ぎにうらさびしけれ 綾子
祭笛町なかは昼過ぎにけり 桂信子
酒のみの膝昼過ぎぬ更衣 暁台
秋時雨昨日に似たる昼過ぎに 細見綾子
青葡萄玲瓏と昼過ぎにけり 菅原鬨也
霜解けや女懶き昼過ぎつ 岸田稚魚 負け犬
大三十日昼過ぎたうたう降って来ぬ 高澤良一 暮津
凧上げも濤の高さも昼過ぎし 岡本眸
昼過ぎし蕎麦屋の閑や花木槿 森澄雄
昼過ぎつ芙蓉の下に鶏すくむ 河東碧梧桐
昼過ぎてやや頼もしき冬日かな 岩田由美
昼過ぎてより秋霖と諾へり 藤田枕流
昼過ぎて元日の閑水仙に 森澄雄
昼過ぎて雪は本腰入れにけり 高澤良一 随笑
昼過ぎて杣の馬ゆく鳥屋のみち 木村蕪城 一位
昼過ぎにたゝきて見たる薺かな 不玉
昼過ぎのプラグが鮫の声を出す 坪内稔典
昼過ぎのやや頼もしき冬日かな 岩田由美
昼過ぎの印鑑ひとつ甘かりき 坪内稔典
昼過ぎの雨となりたる接木かな 野中亮介
昼過ぎの雲雀のこゑの中弛み 高澤良一 さざなみやつこ
昼過ぎの火燵塞ぎぬ夫の留守 河東碧梧桐
昼過ぎの湖萍をふやしけり 柿本多映
昼過ぎの授業にも似て梅雨晴間 田口茉於
昼過ぎの人の匂いのさくらの木 鳴戸奈菜
昼過ぎの水汲みに出て寝正月 鷹羽狩行
昼過ぎの潮響ける白あぢさゐ 高澤良一 宿好
昼過ぎの風は遠くてさくら咲く 牧石剛明
昼過ぎの枕はたけば草蜉蝣 永末恵子
昼過ぎの老人を見る椿かな あざ蓉子
昼過ぎの泪になりぬモジリアニ 坪内稔典
昼過ぎを立ち読みに出る三日かな 坂本宮尾
猫の目のまだ昼過ぎぬ春日かな 上島鬼貫
餅腹に昼過ぎの空展けたる 高澤良一 さざなみやつこ
孑孑やお歯黒どぶの昼過ぎたり 正岡子規 孑孑
涅槃会の昼過ぎて山瞭らかに 日美清史


昼下がり

いらくさを愛しきれない昼下がり 津沢マサ子
かなかなの後ひと雨の昼下り 佐藤鬼房
つがひ鴨交互に羽打つ昼下り 内野睦子
つまぐれに指染めてみる昼下り 半澤 律
鮎釣りの背が透けてゆく 昼さがり 伊丹公子
一八の花片垂れし昼下り 甲斐 梶朗
羽蟻飛ぶや大師河原の昼下り 楚琴
猿酒に酔うてうかうか昼下り 中村田人
花の雨まこと静かに昼さがり 上村占魚 球磨
花茣蓙に夢はこばるる昼下り 伊藤 文
葛餅の二折りを提げ昼さがり 今泉貞鳳
魚哭きて山頂の木の昼下がり 坪内稔典
軽井沢の昼下り東京パンの匂ひのこる 田中冬二 俳句拾遺
枯草のきな臭きかな昼さがり 花澤智恵子
交番に日傘はみ出す昼下り 岡本眸
紅梅や牛鳴いてゐる昼下り 渕 万寿子
香水や富士屋ホテルの昼下り 星野椿「マーガレット」
菜の花や汲茶しらける昼下り 丈草
尺蠖の大きな伸びの昼さがり 平子 公一
樟の木に闇のあつまる昼さがり 穴井太 土語
植替し百合の弱りや昼下り 正岡子規 百合
川千鳥湯ざめおぼゆる昼さがり 上村占魚
鷹を飼う家に行きつく昼さがり 宇多喜代子 象
炭竈に陽炎立つや昼下り 正岡子規 陽炎
昼さがり滴りのあと葉にみえて 中田剛 竟日
昼下がりのテレビに赫し飢餓の国 岩間民子
昼下り自転車で来てさくら狩 高澤良一 燕音
土用芽の伸びて気だるき昼下り 武田光子
煤掃やよごるゝ皃の昼下り 桃隣
蝿取紙ただ待つてゐる昼下り 椋誠一朗(円虹)
白藤の人待ち顔の昼さがり 中村苑子
菱売りの声の近づく昼下り 伊藤通明
末枯の萩に風出ぬ昼さがり 日野草城
木瓜の実の風に吹かれて昼下り 安藤龍子
柳絮とぶヨガ教室の昼下がり 福田甲子雄
簾掛け影柔らかき昼下り 岩井庸子
連翹の黄のうとましき昼下り 鷹羽狩行
囀は一樹にこもり昼下り 高木晴子 花 季
葭切の熱きのど笛昼下り 櫛原希伊子
鰊かな狼煙上げたき昼下がり 櫂未知子 蒙古斑


朝ぼらけ

すゞしさや旅に出る日の朝ぼらけ 樗良
なのはなやくるればもとの朝ぼらけ 加藤曉台
ひとしきり四十雀聞く朝ぼらけ 小峯雅子
鯵刺の突きし水輪や朝ぼらけ 原田浜人
稲妻や山なき国の朝ぼらけ 許六
卯の花や里の見えすく朝ぼらけ 江戸-露沾 元禄百人一句
卯波寄す大王崎の朝ぼらけ 大橋克巳
花盛り山は日ごろの朝ぼらけ 松尾芭蕉
海苔柴も風がふくぞや朝ぼらけ 松窓乙二
粥すゝりけり水仙の朝ぼらけ 尾崎紅葉
寒声や高誦のまゝの朝ぼらけ 芝不器男
寒声や高誦のまゝ朝ぼらけ 芝不器男
岩橋や薬草刈の朝ぼらけ 尾崎紅葉
顔見せや桟敷の食の朝ぼらけ 尹保 園圃録
牛乳娯し紺朝顔の朝ぼらけ 阿波野青畝
茎立やきのふの雨の朝ぼらけ 阿波野青畝
月雪の外に霞の朝ぼらけ 鈴木道彦
懸巣鳴くいわきの浜の朝ぼらけ 中川冬紫子
見えそむる案山子も嬉し朝ぼらけ 鈴木道彦
山葵田の水のささらや朝ぼらけ 阿波野青畝
取分て卯の花による朝ぼらけ 芙雀
秋は先づこの宿夕べ朝ぼらけ 上島鬼貫
柔かな蛤の舌朝ぼらけ 阿波野青畝
春なれや名もなき山の朝ぼらけ 嵐竹
初ゆきや馬がはなれて朝ぼらけ 〔ブン〕村
初秋や耳かきけづる朝ぼらけ 鬼貫
初雪や黄は橘柚の朝ぼらけ 許六
初霜や茶薗かやはら朝ぼらけ 野坡
初富士のふところ寛く朝ぼらけ 阿波野青畝
諸鳥の止まれる春の朝ぼらけ 三橋敏雄
焼岳けぶる薄雪草の朝ぼらけ 阿波野青畝
水仙や禿はつれぬ朝ぼらけ 扇竹 梨園
青柳の中より見たり朝ぼらけ 松窓乙二
茶の花や老母の読る朝ぼらけ 凉菟
朝ぼらけ水隠る螢飛びにけり 芝不器男
朝ぼらけ双つの塔と牡丹かな 阿波野青畝
朝ぼらけ林檎咲く家へ牛乳買ひに 松本たかし
蝶生まるこの青くさき朝ぼらけ 柿本多映
底冷やいつ大雪の朝ぼらけ 此筋
如月や起はぐれしも朝ぼらけ 松窓乙二
熱海にて錐揉む百舌鳥の朝ぼらけ 石塚友二 光塵
煤けたる鵜匠が顔や朝ぼらけ 桃隣「陸奥鵆」
氷(ひょう)の山(せん)つぎ扇の山朝ぼらけ 阿部完市 軽のやまめ
蓬莱のうへやよろづの朝ぼらけ 土芳
蓬莱の上やよろづの朝ぼらけ 土芳
霧雨は尾花がものよ朝ぼらけ 基角
旅なれば春なればこの朝ぼらけ 春 正岡子規
蓮の香やことに三日の朝ぼらけ 存義 古来庵発句集
寐所へ袷はいかに朝ぼらけ 望月宋屋
芍薬や翡翠の月の朝ぼらけ 正岡子規 芍薬
蜩のおどろき啼くや朝ぼらけ 蕪村
鰤敷にとまる鴎の朝ぼらけ 森田峠 三角屋根
鶯や筑波紫の朝ぼらけ 正岡子規 鶯
鷽鳴くや八角堂の朝ぼらけ 淡々

かはたれ

うすうすとかはたれ色の花通草 文挟夫佐恵
うたひめにネオンかはたれはつしぐれ 飯田蛇笏 雪峡
かはたれに祈る父はや夏憑かれ 角川源義
かはたれに無垢を倦みたる花茨 中原道夫
かはたれのさくらみじろぐことならず 黒田杏子 花下草上
かはたれのトランペットや社会鍋 山本歩禅
かはたれのひかりのさむき単衣かな 佐々木有風
かはたれの阿見の汀の烏の子 岡井省二 夏炉
かはたれの闇の手ざはり寒卵 吉田啓郷
かはたれの稲刈る人や声交し 井村芳子
かはたれの雨に崩るる牡丹見し 青木重行
かはたれの花びらを享く舌の先 柿本多映
かはたれの芝に廻りて生姜市 高澤良一 燕音
かはたれの秋ばら瑠璃の色そへて 角川源義
かはたれの秋雲が固まつてゐる 佐怒賀直美
かはたれの人影に秋立ちにけり 角川源義
かはたれの水の鬨なす種案山子 古山のぼる
かはたれの水木の花のうすなさけ 松本光太郎
かはたれの星一つ載せ水澄めり 中戸川朝人 尋声
かはたれの生身つめたし月見草 文挟夫佐恵
かはたれの蝉のめだまに追つかけられ 平井照敏 猫町
かはたれの蝉ひとこゑのしびれたり 平井照敏 猫町
かはたれの灯のまだ残る摩耶詣 小路智壽子
かはたれの白き闇にて笹子鳴く 長谷川双魚
かはたれの八幡堀や花菖蒲 荒木玲子
かはたれの風の加曽利の懸り凧 萩原季葉
かはたれの要塞地帯蚋が寄る 成田千空 地霊
かはたれの梵字に見えて水馬 鷹羽狩行
かはたれの鴉啼きたつ柿青く 角川源義
かはたれは帚草にて掃かれけり すずきりつこ
かはたれやかはたれやこれはるのあめ 遠藤いし夫
かはたれや飛瀑権現正眼にす 角川源義
たちばなのかはたれ時や古館 蕪村
ひら仮名のかなかな啼かせ幼年のかはたれどきの海彦いづこ 辺見じゅん
まひ~やかはたれどきの水明り 村上鬼城
みちのくのかはたれどきの菊の灯を 山口青邨
牡丹園かはたれどきは風死んで 鈴木真砂女 都鳥
花蘇枋かはたれ人を見送るや 角川源義
喜雨亭を辞すかはたれを法師蝉 松崎鉄之介
採氷の灯にかはたれの雪飛べり 木村蕪城 寒泉
鮭のぼるかはたれどきの十勝川 今城余白
山吹にかはたれの雨しぶきけり 日野草城
手花火やかはたれ星も潮に落ち 木津柳芽 白鷺抄
春眠しかはたれどきの鳥のこゑ 月草
丹柱のかはたれときを秋のひと 伊丹三樹彦
二十日正月かはたれ雪に牛みがく 服部覆盆子
白鳥の頸たそがれのかはたれの 宮坂静生 樹下
飛鳥路のかはたれどきを笹鳴けり 倉田春名
傍らにビールの空き缶かはたれどき 高澤良一 石鏡
露天の桃買へり大阪のかはたれ時 細見綾子
葭五位やかはたれ時の星ひとつ 小川斉東語
蟷螂やかはたれ時の長き貨車 川上まつえ


払暁

かつて自在でありしこころを思うべし寒払暁の皆既月食 久々湊盈子
茅舎忌の払暁さめてゐたりけり 柴田白葉女 『朝の木』
飛魚や払暁のこる幾星座 藤原たかを
舞阪や払暁もどるいさき船 中原 勝
払暁の井戸軋らすや鳥帰る 日野草城
払暁の湖すべりゆく蜆舟 菊池育子
払暁の波みな伏せり鷹渡る 吉岡昌夫
払暁の白魚の潮動きそむ 岡村紀洋
払暁の風のはげしき新樹かな 日野草城
払暁やわが古代史に雪や剣 宇多喜代子
払暁や父まだぬくき冬座敷 鳥居美智子
鬨の声めく払暁のもんぐらほうい 窪田吐秋


早暁

いさぎよし二日早暁の往診は 相馬遷子 山国
師逝きし早暁沙羅の花未だ 嶋田麻紀
早暁の荷を運びこむ植木市 青柳志解樹
早暁の鼓膜つらぬく時鳥 林翔
地は早暁稔らぬ日々を鏡なし 松澤昭 神立
地下轟音をゆく早暁の野を出でて 金子兜太

黎明

いのちひそかに黎明の栗鼠の歯音 飯田龍太
さみだれて黎明ながし額の花 佐野青陽人 天の川
栄螺鳴く黎明といふ淡き刻 江口和子
燕鳴く巣に黎明の影さしぬ 西島麦南 人音
寒鯉は黎明の色つと動く 高澤良一 暮津
京菜にふる塩黎明の雪のやうに 岡崎ゆき子
渓わたりゆく黎明の大蛾あり 飯田龍太
御遠忌の山の黎明うつぎ咲く つじ加代子
作麼生、黎明の梅と薄暮の梅と 橋本夢道 無類の妻
受難図のいつも黎明寒書斎 早崎 明
春水や黎明飛べる蜂の王 碧雲居句集 大谷碧雲居
松葉色かな黎明のギスの音は 飯田龍太
新婦めざとき黎明を水底の稲 橋閒石
水鶏啼く黎明(しののめ)庵の白襖 中川宋淵
水鶏啼く黎明庵の白襖 中川宋淵
蒼白に黎明のぼり凍りつく 成田千空 地霊
大南風国の黎明この塔より 河野静雲
冬至黎明す木の下ずつとある隈笹 安斎櫻[カイ]子
日本黎明海しろがねにアラーの神 隈 治人
野のみぞれ黎明のいろにか通ふ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
流星群見て黎明の石と化す 泉田秋硯
旅行鞄の金具が光る山は黎明 シヤツと雑草 栗林一石路
雉子鳴いてゐる黎明の尼僧院 飯田龍太
黎明のころ鄭州の街は喜雨 阿波野青畝
黎明のさゞ波立ちぬ蓮の花 佐野青陽人 天の川
黎明のにはかに白きさるすべり 鷹羽狩行
黎明のひとりを加ふ鮎解禁 嶋田麻紀
黎明のレールわたるや蓮を見に 佐野青陽人 天の川
黎明の雨はら~と蓮の花 虚子
黎明の水に真夏の薔薇は崩れ 橋閒石 朱明
黎明の星みな強し狐罠 大峯あきら
黎明の白鴉と寒鴉啼き交はす 高澤晶子
黎明の葉山に適ひ露の山 飯田龍太
黎明の雷鳴りしづむ五百重山 飯田蛇笏 霊芝
黎明の露凝る径を踏みゆけり 嶋田麻紀
黎明や若潮汲みの声ふゆる 友井世津子
黎明を思ひ軒端の秋簾見る
黎明を芙蓉の雨の音にみだれ 斎藤空華 空華句集


朝晩

「朝晩はなんぼでも鳴く」ほととぎす 右城暮石 句集外 昭和六十一年
袷では朝晩寒し柿の華 露川
更衣まだ朝晩はかへぬなり 小西来山
新盆の朝晩顔を洗ひけり 折井紀衣
酢に味噌に朝晩つまむ穂蓼かな 素覧
朝晩のくるしい水仙ふところに 飯島晴子
朝晩の殊に夕日に秋の色 大野林火 飛花集 昭和四十八年
朝晩はまだ火燵なり梅の花 如行
朝晩は涼しくなりぬ鳳仙花 富安風生
朝晩みたうすいいろのくにと立山 阿部完市 にもつは絵馬
朝晩を仕切るシャッター文化の日 折原あきの


朝夕

あしかびに朝夕の丈基角の忌 伊丹さち子
かなかなのよきこゑにゐる朝夕べ 森澄雄
そぞろ寒その朝夕の机辺の座 石塚友二 磊[カイ]集
ちる花に病者有情の朝夕 飯田蛇笏 家郷の霧
トマト食ふ朝夕つづけて一年中 上林暁 句集 木の葉髪
ひとゝせやまだ朝夕の生身魂 完来
プチトマト朝夕の膳賑はせり 高澤良一 暮津
稲架の道朝夕きよくなりにけり 大野林火
雲水の朝夕見上ぐ烏の巣 徳永 球石
牡丹のため朝夕を土に佇つ 細見綾子
蚊帳に憂き病も朝夕かな 会津八一
蛙鳴き朝夕といふ言葉親し 大野林火 飛花集 昭和四十七年
五月闇朝夕ベのわきがたく 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
御仏に朝夕供ふ寒の水 星野 椿
此頃の朝夕やすし海苔二枚 蓼太 蓼太句集初編
此比の朝夕やすし海苔二枚 蓼太
山寺は空に近うて朝夕立 細見綾子 桃は八重
山荘の避暑の朝夕ほとゝぎす 高浜年尾
紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ 飯田蛇笏
蛇苺朝夕は日も濡れにけり 福永耕二
秋雨や朝夕だけの人通り 大野林火 月魄集 昭和五十六年
秋深み朝夕山を母として 阿部みどり女
秋風やただ朝夕の手向水 長谷川かな女 牡 丹
春立つや朝夕はまだ海の音 麦水
諸鳥と避暑高原の朝夕べ 高浜年尾
色鳥の朝夕に来る奢りかな 鷹羽狩行
睡蓮に旅の朝夕さだめけり 長谷川かな女 雨 月
杉沢の露の徒しの朝夕ベ 岡井省二 鹿野
青栗の朝夕となくうるほへり 飯田蛇笏
大きな木ばかりのお寺の朝夕である 尾崎放哉 須磨寺時代
大綿や朝夕富士を見るくらし 星野椿
蜘蛛の囲に蜘蛛役げ入れし朝夕か 飯島晴子
朝夕(よひ)の乏(とも)しかる餉を思ふときあはれなるかなや色好みてふ 高橋睦郎 飲食
朝夕がどかとよろしき残暑かな 阿波野青畝
朝夕が冷えてだらだらまつりかな 細川加賀
朝夕といふよき言葉月の曲 高野素十
朝夕な新北風に虹立ち易し 小熊一人 『珊瑚礁』
朝夕におもへば鵙を聞きゐしか 下村槐太 天涯
朝夕にとりまはしよき火桶かな 浪化
朝夕にもろこしを焼きよろこばれ 加藤晴子
朝夕に引くや庵の牛蒡畑 蓑立 俳諧撰集「藤の実」
朝夕に見て過ぎ菊を購めざる 伊丹三樹彦
朝夕に見る子見たがる躍りかな りん女
朝夕に語らふものを袖の露 去来
朝夕に座右の冬光古畳 飯田蛇笏 雪峡
朝夕に雫のふとる木の芽かな 千代女
朝夕に若葉美しき日となりぬ 村山古郷
朝夕に取まはしよき火桶哉 浪化
朝夕に神きこしめす田歌かな 正岡子規 田植唄
朝夕に生かへるかと風便り 魯町
朝夕に川見し暮らし梅若忌 伊藤絹子
朝夕に摘む一本の山椒の芽 上村占魚
朝夕に曼珠沙華のぞみ込みにけり 細見綾子
朝夕のこゝろ平に庭ざくら 菊山享女
朝夕のすゞしくなりてけふ忌日 大橋櫻坡子 雨月
朝夕のめつきり冷えて源義忌 草間時彦
朝夕のわが門べなる萩の花 楠目橙黄子 橙圃
朝夕の伊賀の山あり網代守 橋本鶏二 年輪
朝夕の手にもまれたし夏の蝶 りん女
朝夕の殊に夕べの花の相 高澤良一 随笑
朝夕の秋涼しきは山の常 高浜年尾
朝夕の心経二巻夏書とす 織田澡石
朝夕の真ん中枝垂れ桜かな 蓬田紀枝子
朝夕の水の匂ひも田植時 郷原弘治
朝夕の青林檎すりみとり妻 梶尾黙魚
朝夕の潮の遠音も羽子日和 西島麦南
朝夕の椎の花降る大社 河野ヒロ
朝夕の日影あきらか寒の池 松村蒼石 寒鶯抄
朝夕の白粉花も終りかな 山下 尭
朝夕の不二もけぶらぬ時雨かな 建部巣兆
朝夕の富士のまつたき三が日 金子治子
朝夕の物数寄もなし赤椿 朱廸
朝夕の又冷ゆること花も過ぎ 高浜年尾
朝夕の落ち着き来る鳳仙花 高澤良一 暮津
朝夕の竈にも見るや薄もみぢ 浜田酒堂
朝夕の靄やはらかに冬に入る 遠藤梧逸
朝夕の鵙に鞍上鞍下かな 茂木連葉子
朝夕はほとけに近きさくらかな 森澄雄
朝夕は雲にうつろふ花野かな 素丸
朝夕ベ秋のまはるや原の庵 丈草
朝夕やの餌まきが橋の霜 加舎白雄
朝夕や何れとならば夜のうめ 加舎白雄
朝夕や峯の小雀の門馴るゝ 一茶
朝夕や恋る清水の蜷むすび 加舎白雄
朝夕をわれら和めり繪畫館 渡邊白泉
朝夕を外に出てをりぬ露葎 森澄雄
朝夕を寒露となりし猫じやらし 森澄雄
朝夕を見合す旅の袷かな 風睡
朝夕を飯匙蛇瞋らせて夏去りぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
朝夕を風のコスモス見て機嫌 鈴木真砂女 都鳥
朝夕瓜もみ食ふ旱かな 前田普羅
朝夕凍ひたすらに詫びつづけゐし 赤尾兜子 玄玄
朝夕立してすずしさや鏡川 阿波野青畝
朝夕立観世音寺の鐘は今 阿波野青畝
底冷えのこの朝夕を栖まれしか 長谷川素逝 暦日
冬の蛾が朝夕べと羽休め 高木晴子
萩すゝき菴の朝夕はくらしよし 井上士朗
白萩の花の奥なる朝夕 加藤知世子
苗代へ朝夕老の杖を曳き 宮下翠舟
母泊まり朝夕の涼口ぐせに 関森勝夫
万斛のつゆの朝夕唐からし 飯田蛇笏
乱世朝夕おだまきの木よ葉よ話 阿部完市 春日朝歌
萬斛のつゆの朝夕唐がらし 飯田蛇笏 心像
蛞蝓ほどの明るさ朝夕に 飯島晴子

旦夕

稲架の道旦夕きよくなりにけり 大野林火
姿旦夕て卯花に文ヲよむ女 言水
時鳥旦夕(黄昏)里さび燧うつ比 服部嵐雪
時鳥旦夕。里さび燧うつ比 嵐雪
煮凍を旦夕やひとり住 黒柳召波
煮東を旦夕やひとり住 黒柳召波 春泥句集
旦夕に一窓一机梅の花 阿波野青畝
旦夕に見てあかぬ海よ風薫る 村山古郷
旦夕のはしゐはじむるつゝじかな 其角
旦夕の雨さびて鶏頭真くれなゐ 村山古郷
旦夕を身に添ふ咳となりにけり 近藤一鴻
葡萄青き旦夕を妻の痩せにけり 林原耒井 蜩

昼夜

こだまして昼夜をわかつ寒の渓 飯田蛇笏
ビル棲みの昼夜灯してカラジウム 河野絢子
一葉忌しめて薄身の昼夜帯 稲垣きくの 牡 丹
引鴨の昼夜を風の雑木山 斎藤梅子
雲の浦昼夜を舎(や)めず卯浪寄せ 高澤良一 寒暑
牡丹餅の昼夜を分つ彼岸哉 正岡子規 彼岸
下萌や流れは昼夜なく光り 大熊輝一 土の香
花会式花散る昼夜わかたずに 金子無患子
花了り昼夜能面並べおく 伊藤敬子
軒に干し昼夜を曝らす妻の布団 右城暮石 句集外 昭和三十六年
古桜昼夜わかたぬ雪の中 宇佐美魚目 秋収冬蔵
秋月光昼夜のわかれ濃くなりぬ 斎藤空華 空華句集
水鳥見て昼夜かけもちの句会あり 安住敦
水底に昼夜を分ち冬の鯉 桂信子
雪だるま昼夜の生徒入れかわる 岩崎健一
雪嶺や昼夜の膳に鱈鰊 岸本尚毅
先生の昼夜の夜を月の下 山西雅子
川波を濁し雪解に昼夜なし 上村占魚
足音の昼夜ひがいて男死ぬ 林田紀音夫
足音の昼夜ひびいて男死ぬ 林田紀音夫
昼の昼夜の夜しる冬至哉 乙訓
昼夜なき茄子は感電せし花か 後藤貴子
昼夜なき巨人の歩み年は去る 福田蓼汀 山火
昼夜ひびいて鬼灯赤くなりにけり 栗林千津
昼夜を分かたず枇杷の花浮ぶ 右城暮石 句集外 昭和二十三年
昼夜覚夕焼褪めし木に立たれ 加藤秋邨
昼夜落つ良弁椿堂の脇 高澤良一 寒暑
天と地と昼夜のあはひ牡丹焚く 鷹羽狩行
藤咲いて昼夜わかたぬ川流る 山口誓子
年の市昼夜を舎ず隅田川 荘丹 能静草
風邪熱に昼夜形なきもの通る 野澤節子 牡 丹
木犀やしずかに昼夜入れかはる 岡井省二
木犀やしづかに昼夜入れかはる 岡井省二
揖斐川の葦枯れたりし昼夜帯 伊藤敬子
冷まじや万葉朗唱三昼夜 蔵巨水
鈴虫の壺の闇には昼夜なく 小坂蛍泉
萍を咲かせて軽き昼夜かな 橋石
蝙蝠飛んで白夜は昼夜の外(ほか)の刻 中村草田男


夜昼

ぬれいろに夜昼となく緋薔薇さく 飯田蛇笏 春蘭
格子なき牢の夜昼毛糸編み 鷹羽狩行
鬼追はれ夜昼峠までゆくか 正木ゆう子 静かな水
山は枯色峡ば夜昼なく激ち 村山古郷
田植水夜昼流れ夜は恋す 榎本冬一郎 眼光
飛魚追いは白し夜昼さかな食べ 和知喜八 同齢
抱卵や夜昼となき海潮音 沼尻巳津子
夜昼となき身のつとめ寒到る 岸風三楼 往来
夜昼となく常盤木に落葉舞ひ 飯田龍太
夜昼の菊花大会明治節 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
夜昼もしらずよし原すゞめかな 寥松
夜昼や夜は蚊帳のみ頼まるゝ 石塚友二
凩の夜昼や藁の家一つ 猿雖


真つ昼間

*たらの芽や浮島は現れ真つ昼間 岡井省二 鯛の鯛
たんぽぽや金輪際の真つ昼間 秋山牧車
芙蓉咲きこんなに暗い真つ昼間 金子兜太
孕猫いかにも眠き真っ昼間 菖蒲あや

昼日中

花揺るゝは船酔に似て昼日中 高澤良一 ぱらりとせ
蛾のつばさ胴をつつみぬ昼日中 岩田由美 夏安
寒林や人つ子通る昼日中 桑原三郎 晝夜
訣れあり関門海峡昼日中 岸本マチ子
子規鳴や阿禰陀が峯を昼日中 路通
人前で咳こみ春や昼日中 池田澄子
昼日中あんずつまらなさうに散り 高澤良一 さざなみやつこ
昼日中逢人もなしかんこどり 黒柳召波
昼日中砂蒼ざめし蟻地獄 能村登四郎
昼日中子の産れけりもゝのはな 卓池
昼日中大釜掘ゑて筍茹で 鈴木真砂女
昼日中大釜据ゑて筍茹で 鈴木真砂女 居待月
昼日中鳴くかなかなや祇王祇女 北野民夫
鳥交る東京駅の昼日中 大町あや子


以上

by 575fudemakase | 2019-02-17 13:17 | 無季 | Trackback | Comments(0)

終日 夜半 深夜 の俳句

終日 夜半 深夜 の俳句

終日 日もすがら 夜もすがら *ひねもす* 夜通し 終夜 夜っぴて 闇夜 暗夜 夜分 夜半 深夜 深更 丑三つ時 夜間 夜の帳 宵の口 日没

夜半
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終日

つはぶきの終日陰を出でずして 山口誓子
やごとなき御方の、かざりおろさせ給ひて、かゝるさびしき地に任給ひけるにや 鴬に終日遠し畑の人 蕪村遺稿 春
鮎汲の終日岩に翼かな 蕪村
椅子に猫終日眠る障子貼る 山口青邨
鴬に終日遠し畑の人 與謝蕪村
牡丹散り終日本を読まざりき 山口青邨
花の終日/鯛の/尾鰭の/性感よ 林桂 銀の蝉
画なる如し終日鴫ふたつ 三宅嘯山
懐炉負へば終日うるみさびしき目 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
外套や終日雲にまつはられ 徳永山冬子
笠の影終日たえぬ清水かな 桜井梅室
閑古鳥なくや終日遅ざくら 鈴木道彦
啓蟄や終日風の吹き荒るる 右城暮石 句集外 昭和四十五年
啓蟄を終日雲が圧しけり 相生垣瓜人 負暄
笹鳴や終日開けぬ寺障子 比叡 野村泊月
山葡萄峰は終日雲の中 塩沢とき子
山茱萸を活けて終日雨を聴く 山口青邨
秋の雨終日降りて傘持たず 右城暮石 句集外 昭和三十三年
終日の雨の芽杉に対ひゐる 山口青邨
終日の雨まなうらに鬼形の幼女 林田紀音夫
終日の雨めづらしき弥生かな 信徳
終日はあはれ過たるかれ野哉 一笑(金沢)
終日やかさりこそりと萩落葉 山口青邨
終日や烏聞よりはるのとり 一笑(金沢)
終日や寒泉のひびき身ほとりに 山口青邨
終日や眠れる山に対し無為 山口青邨
終日や鳴子鳴りては雀飛ぶ 柳川春葉
終日を鳴く木となりぬ法師蝉 鷹羽狩行
終日逃げるここらあたりがカチカチ山 阿部完市
春の海終日のたり~かな 蕪村
春の海終日のたり~哉 与謝蕪村
春の海終日のたりのたりかな 蕪 村
春の川終日濁し囚徒去る 飯田龍太
春雨や終日朱熹の額の下 山口青邨
春尽くる海や終日杭打たれ 岸本マチ子
障子終日ひらくことなき牡丹かな 橋閒石
醒めぬ眼を終日持てり梨の花 鍵和田[ゆう]子 未来図
石臼に終日氷浮いている 林 政子
雪なき田見えて終日落着けず 中川博秋 『加賀野』
雪終日妻より母へ言多し 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
蝉の音と赤きインクを終日に 大野林火 早桃 太白集
蝉の官能/終日/海で/ありしかな 林桂 銀の蝉
鱈汁や終日黒き日本海 比田誠子
怒る羅漢を終日囃す油蝉 勝又寿々子 『春障子』
日迎への終日かぶる帽子かな 岡田史乃
梅雨が又終日夏至を虐げし 相生垣瓜人 負暄
薄氷や終日昏き像の額 対馬康子 吾亦紅
麦の芽に終日富士の姿あり 滝沢信子
北庭の終日いてゝ水仙花 坦々
目貼りして終日鳴らす鑿音 水野遼 『鑿』
籾浸し終日昏らき自在鍵 鍋谷ひさの
郵便受終日空に万愚節 古賀まり子
夕餉さへ終日ひとり雁わたる 及川貞 夕焼
裏は終日舟も見えない記憶の部屋 橋閒石
蓮根を終日掘って微々たる跡 右城暮石 上下
露草の終日咲いて曇りけり 阿部みどり女
藁仕事土間は終日日当りて 熊谷 秋月
濤を刃に替へて終日春霞 小澤嘉幸
翅の昏らいすずしさ 終日 鈴虫飼う 伊丹公子 陶器の天使
葭雀の終日啼いて水長し 尾崎紅葉
蝸牛甕をまはりて雨終日 山口青邨
鶯に終日遠し畑の人 蕪村

ひねもす

お降りや来し方思へとてひねもす 及川貞 夕焼
げんげ茅花河原ひねもす空曇らず 村山古郷
そうめん処ひねもす噴井鳴りにけり 伊藤京子
たんぽぽや島はひねもす潮曇り 村山古郷
チャンココのひねもす響く島の盆 大木まつえ
ひぐらしひねもすあふるる泉ぞ 荻原井泉水
ひねもすと百歳の叔母春炬燵 八木政子
ひねもすのわれにかへりし雀瓜 佐々木六戈 百韻反故 初學
ひねもすの雨に籠りぬ水草生ふ 高浜年尾
ひねもすの雨の育てし菖蒲の芽 竹田 節
ひねもすの牡丹の客に疲れけり 大橋櫻坡子 雨月
ひねもすの穀雨の雨となりしかな 西嶋あさ子
ひねもすの山垣曇り稲の花 芝不器男
ひねもすの山垣曇稲の花 芝不器男
ひねもすの時雨をめでて妻とある 上村占魚 鮎
ひねもすの石屑とぶや濃山吹 日野草城
ひねもすの天与のねむり浮寝鳥 鷹羽狩行
ひねもすの田打眺むるやどりかな 山口青邨
ひねもすの梅雨仏壇を背にすごす 大野林火 方円集 昭和五十二年
ひねもすの風をさまりて春の夜 日野草城
ひねもすの風収まりて夏の夜の眠りに入らん椎の闇厚し 尾崎左永子
ひねもすの霧に落葉の音もなし 清崎敏郎
ひねもすや遠山かくす干蒲団 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
ひねもすや御濠に灑ぐ秋の雨 内田百間
ひねもすをぶらりと垂れて鳴子かな 原コウ子
ひねもすを雲雀があがり青畳 細川加賀 生身魂
ひねもすを活字に溺れ薔薇くろし 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
ひねもすを鴨の空声先んずる 齋藤玄 飛雪
ひねもすを御用納の大焚火 今井つる女
ひねもすを御用納めの大焚火 今井つる女
ひねもすを向日葵おのが影とあり 林原耒井 蜩
ひねもすを怠けごころや千日草 北村 保
ひねもすを猫に添寝の小春かな 小川胡蝶
ひねもすを本に嵌りて霾や 五島高資
ひねもす曇り居り浪音の力かな 尾崎放哉 大正時代
ひねもす曇り浪音の力かな 尾崎放哉
ぼたん雪卒業の日のひねもすを 百合山羽公 春園
わたる日はひねもす照れり喉は花 三橋敏雄
芋虫のごろりひねもすごろりかな 正木海彦
雨のひねもすうつむける牡丹散るべけれ 種田山頭火 自画像 層雲集
雨ひねもす 湖面に 鳰の加減算 伊丹三樹彦
駅の噴水ひねもす人間模様かな 渡辺恭子
園遊会めきてひねもす菊を見て 後藤比奈夫
煙草伸すひねもす雨の手くらがり 木村蕪城 寒泉
遠き日のやうにひねもす四十雀 小林 むつ子
遠さくら妻子ひねもす家に遊ぶ 伊丹三樹彦
鴬の高音ひねもすチユーリツプ 川端茅舎
花すすき揺るゝ辺ひねもす釣糸垂れ 高澤良一 暮津
花散りしばらの青垣雨ひねもす 日野草城
花馬酔木ひねもすこぼれ彌山口 古舘曹人 砂の音
花筏ひねもす掬う水車かな 佐藤清子
花腐つ雨ひねもすよ侘びごもり 杉田久女
蛾はひねもす伏せりさびしき神の前 林翔
海の雨ひねもすはげし麦三寸 村山古郷
海の日をひねもす浴びて岬大根 木村速子
絵具谷にはひねもすの涅槃西風 後藤比奈夫
郭公やひねもす冨士に冠雲 篠田悌二郎
寒雲のひねもす坐る峡の空 木下夕爾
寒鮒を突いてひねもす波の上 村上鬼城
雁風呂やひねもすさわぐ波の白 新谷ひろし
群杉のひねもすさはぐ塔の四方 伊丹三樹彦
群雀ひねもす風とたはむるる 角谷昌子
月山のひねもす見ゆる蝗とり 飯塚田鶴子
兼山の忌なりひねもす虎落笛 谷本とさを
枯篠にひねもす東京湾の照り 高澤良一 燕音
光る瀬のひびきひねもす豆を干す 鍵和田[ゆう]子
今日は婢のひねもす裏に桐の花 星野立子
紺青のつららひねもす見れど飽かじ 川端茅舎
祭髪結うてひねもす厨事 転馬嘉子
散る花とひねもす電気鋸と 永井龍男
子とあそぶひねもすふゆる浮葉かな 中村汀女
子とあそぶひねもす殖ゆる蓮浮葉 中村汀女
子烏のひねもす親を待ちてなく 川原 みや女
市中にひねもす動く柳哉 正岡子規 柳
七面鳥ひねもす怒り四月馬鹿 伊丹三樹彦
秋あらき波音のひねもすあるく 種田山頭火 自画像 落穂集
秋はひねもす「鼻峯高慢男」読む 高澤良一 燕音
秋蒔にひねもす薄日奥吉野 大峯あきら 鳥道
春の雲眺めひねもす玻璃戸中 茅舎
春の海ひねもすのたり~かな 蕪村
春荒の船ひねもすや屍めく 角川源義
春霖に宝珠ひねもす濡れそぼてり 伊丹三樹彦
初不動ひねもす山のよく晴れて 田口秀子
照雄の忌ひねもす男梅雨にして 槫沼けい一
壬生の鉦ひねもす鳴りて蝶の昼 光谷一寒子
水引やひねもすそこに眠り猫 石田波郷
水漬く稲干すもひねもす霧の中 加藤秋邨
星空のうらはひねもす凪いでおり 五島高資
清明やひねもす夜具を日にさらし 小澤登代
石蕗咲きて鵜戸はひねもす怒濤音 大橋敦子
節子忌やひねもすさくら訪ねては 田村一翠
雪解や煙雨ひねもす森をひたす 村山古郷
蝉しきり病臥ひねもす松の幹 河野南畦 湖の森
巣立鳥ひねもす雲のいらだてる 加藤秋邨
草の戸やひねもす深き苔の露 正岡子規 露
丹波太郎ひねもす聳ちて蚕の眠り 谿昭哉 『航跡』
淡海なりひねもすこゑの行々子 森澄雄
短日の曲馬ひねもす楽同じ 中杉隆世
竹の風ひねもすさわぐ春日かな 犀星
茶の花にひねもすダムの水煙り 飯田龍太
追羽根にひねもす筑波濃かりけり 原裕
追羽子にひねもす筑波濃かりけり 原裕
田を拓くひねもす雉子に鳴かれけり 松村蒼石 雪
土手にひねもす発句大のバルカンせんさう 加藤郁乎
怒濤ひねもす 枇杷うつうつと袋被る 伊丹三樹彦
冬の雨ひねもす暗き小家かな 星野麦人
唐臼のひねもす響き雪の宿 藤井君江
島は大風ひねもす吹いてひじき採り 村山古郷
難儀して寄居虫(ごうな)ひねもす宿探す 高澤良一 随笑
日雀鳴くひねもす木曽の青の中 矢島渚男
日氷ひねもす狂人を友豚を友 八木三日女 赤い地図
日曜の教師ひねもす木の芽風 木村蕪城 一位
比叡颪ひねもすかぶり酢茎樽 村山古郷
浜大根咲くやひねもすささら波 藤田れい子
不器男忌のひねもすしとど降る雨よ 高市幸子
不盡山をひねもすめくる吹雪哉 吹雪 正岡子規
普門品ひねもす雨の櫻かな 泉鏡花
兵の渡河櫓鳴りひねもす葦がくり 伊丹三樹彦
母の座はひねもす冬着縫ひ温くし 宮坂静生 青胡桃
法師蝉の一樹ひねもす悼みおり 北原志満子
法師蝉ひねもす西郷終焉地 野上 水穂
暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた 斎藤史
本を読むひねもす落花繽紛裡 山口青邨
黙る木に隣りひねもす囀る木 尾開くに子
葉桜や石工ひねもす墓石彫る 大和田亨子
陽炎のひねもす動くあちこちと 正岡子規 陽炎
嶺屏風ひねもす立てて夏蚕飼ふ 細井みち
鈴の緒がひねもす振られ初天神 品川鈴子
恋重荷今日もひねもす爪を研ぐ 山本掌
曼陀羅に落花ひねもすふりやまず 山口青邨
囀りのひねもす南枝北枝かな 内藤鳴雪
囀りの擬音ひねもす峠茶屋 田中政子
棕梠の冬ひねもす窓に顔を置く 三谷昭 獣身
棕櫚の花ひねもす散つて庇打つ 西村梅子
翡翠やひねもす一二三の淵 東洋城千句

日もすがら

ジンジャーに雨の幽さの日もすがら 芝 由紀
てう~や加茂の芝生に日もすがら 馬場存義
ほとゝぎす日もすがら啼きどよもせり 高浜虚子
臼の上の新藁に雨日もすがら 阿部みどり女
粥あつし梅雨の山鳩日もすがら 石橋辰之助
桑くゝる秩父颪の日もすがら 富岡九江
幻想体質の/猫を/抱きて/日もすがら 林桂 銀の蝉
古庭に鶯啼きぬ日もすがら 蕪村
菜の花や渦解けむすび日もすがら 島村はじめ
山川の傍の春耕日もすがら 飯田蛇笏 家郷の霧
秋待や径ゆきもどり日もすがら 室生犀星
障子貼る身をいとひつつ日もすがら 飯田蛇笏
神迎ふ伊勢の荒風日もすがら 山本しげき
大寒の空の白壁日もすがら 阿部みどり女
凍土のおのが日なたの日もすがら 長谷川素逝 暦日
凍返る養魚池の風日もすがら 塚原麦生
藤の実の揺るる海鳴り日もすがら 加藤 斐子
日もすがら雨意あるもよし父の日は 能村登四郎
日もすがら卯の花腐し茶を淹るゝ 星野立子
日もすがら唄を歌へり雨季に入る 高野素十
日もすがら寒雲は山誘へり 飯田龍太
日もすがら歓喜蛙の歌の中 石塚友二
日もすがら機織る音の山椒の芽 長谷川素逝
日もすがら繋がれてあり厩出し 高野素十
日もすがら鍵音蝉は眼を張つて鳴く 岩田昌寿 地の塩
日もすがら山葵の根分け老人の日 沢木欣一
日もすがら春の海見て樹の孔雀 野沢節子 八朶集以後
日もすがら小屋の牛鳴き残暑煮ゆ 中勘助
日もすがら松吹く風や実朝忌 下村梅子
日もすがら椿の花の蜜を吸ひたゆしと思ふ流れざる血を 前登志夫
日もすがら灯りつづけり寒造 清崎敏郎
日もすがら日当りてゐし雪山か 清崎敏郎
日もすがら日輪くらし大南風 高浜虚子
日もすがら風の餌食と梅飛べり 斎藤玄
日もすがら風花とんで客ありて 高浜年尾
日もすがら碧空を恋ひ石蕗の花 飯田龍太
日もすがら北風の林のさわぐ音 長谷川素逝 村
日もすがら木を伐る響梅雨の山 前田普羅
日もすがら落葉を焚きて自愛かな 松本たかし
白南風も鳴く海猫も日もすがら 清崎敏郎
白南嵐も鳴く海猫も日もすがら 清崎敏郎
麦の穂の青穂の嵐日もすがら 石塚友二 光塵
麦湯湧かしくど日もすがら松の根に 杉田久女
麦踏の大島を見て日もすがら 高野素十
百花咲く園や囀り日もすがら 吉良比呂武
百年の銀杏落葉の日もすがら 杉山三知子
風花の聞きしごとくに日もすがら 上村占魚 球磨
放牛もゐず日もすがら阿蘇野分 阿部小壷
末枯るる芋の葉の露日もすがら 高野素十
末枯を誘ふ雨の日もすがら 畑紫星
籾を干するすの日なたの日もすがら 長谷川素逝
藍こなし藍こなしては日もすがら 清崎敏郎
鯊船や入江の凪に日もすがら 水原秋桜子


夜もすがら

いざ宵も猶蟹の目の夜もすがら 園女
いなづまの海を救ふや夜もすがら 三宅嘯山
クリスマス海のたけりの夜もすがら 久保田万太郎 流寓抄以後
こほろぎの夜もすがら鳴き壷中の天 川島久子
せぐくまる蒲団の中や夜もすがら 夏目漱石
つつくりとひとり時雨や夜もすがら 凉菟
わが友よ粉をかぶりて夜もすがら 津沢マサ子
をがみつゝふしつゝ月の夜もすがら 完来
稲妻や妻は芝居の夜もすがら 寺田寅彦
稲妻や宿場の鍛冶が夜もすがら 寺田寅彦
猿酒やむささびの恋夜もすがら 西山千賀子
奥飛騨のどぶろく祭夜もすがら 鈴木朗月
花の雨風さへそひて夜もすがら 西島麦南 人音
蚊帳越しに月のタコの木夜もすがら 金子兜太
我は烏賊釣る鼠子のごと軽率しく悲しき烏賊を夜もすがら釣る 北原白秋
柿うるる夜は夜もすがら水車 三好達治
寒月の胸にとほりて夜もすがら 太田鴻村 穂国
寒紅梅風ははるばる夜もすがら 成田千空 地霊
月しぐれ島の恋唄夜もすがら 山田 弘子
月明き夜は夜もすがら鳥威 岡本 眸
高台へ寒柝の音の夜もすがら 中村草田男
笹に音あり衾にさはる夜もすがら 井上士朗
狩くらや北斗を心に夜もすがら 阿波野青畝
春の闇阿蘇の火柱夜もすがら 吉武月二郎
松蝉の句を詠みすてゝ夜もすがら 萩原麦草 麦嵐
焼米や鹿聞菓子に夜もすがら 半残
新松子小浜の怒濤夜もすがら 石塚友二 磊[カイ]集
神渡かも海鳴りの夜もすがら 河野石嶺
吹き亘る枯野の風の夜もすがら 石塚友二 光塵
水無月の吹かぬ笛聞く夜もすがら 中川宋淵 命篇
声ながきむしのゆきゝや夜もすがら 陽和
製茶場の灯のあかあかと夜もすがら 森田かずを
節米や月の兎の夜もすがら 馬場存義
雪の富士へわたる満月夜もすがら 原石鼎 花影以後
蝉や藍染甕に夜もすがら 阿波野青畝
痩骨を伽する梅や夜もすがら 野坡
足裏重し黴はいきいき夜もすがら 佐藤鬼房
大南風に星はもうごき夜もすがら 原石鼎 花影以後
大風の夜もすがら田水落しけり 村山古郷
丹薬や炭火の音の夜もすがら 三宅嘯山
庭滝の涼しき音を夜もすがら 菊池さつき
南祭り淀の渡舟は夜もすがら 木田一杉
蚤地獄臥すより陥ちて夜もすがら 石塚友二
百合の香に夜は夜もすがら国の夢 中川宋淵 命篇
百合匂ふ机にありて夜もすがら 上村占魚 鮎
富士の空はみぞれてやまず夜もすがら 村山古郷
父の忌の筍ながし夜もすがら 宮岡計次
父の忌の筍流し夜もすがら 宮岡計次
風除に憑きて哭く風夜もすがら 河野石嶺
別れんと酌む夜もすがら蟋蟀 寺田寅彦
名月や池をめぐりて夜もすがら 松尾芭蕉
名月や虫一処夜もすがら 杜若
夜もすがらスタンド明し避暑の村 阿波野青畝
夜もすがら雨を聞しにけさの霜 桜井梅室
夜もすがら雨名月の瀬音かな 佐藤竹門
夜もすがら遠寺のトリスタン対ツァラら 加藤郁乎
夜もすがら屋をゆすりけり蕎麦倒し 石田波郷
夜もすがら屋根打つ音や霧しづく 武原はん女
夜もすがら寡のたゝく団かな 青[王戸] たつのうら
夜もすがら過替る影の月見哉 尚白
夜もすがら我はだまつてきり~す 中川乙由
夜もすがら瓦焼かるゝ土筆かな 野村喜舟 小石川
夜もすがら干大根の雨戸打つ 田中冬二 麦ほこり
夜もすがら汗の十字架背に描き 川端茅舎
夜もすがら句作る炭火育てけり 銀漢 吉岡禅寺洞
夜もすがら月の傳(もり)する菴かな 井上士朗
夜もすがら降る秋雨の灯を消しぬ 内藤吐天 鳴海抄
夜もすがら招いてゐるか花すゝき 吏登 吏登句集脱漏
夜もすがら人歩きをる避暑地かな 矢津 羨魚
夜もすがら水も眠らず花明り 桜井梅室
夜もすがら雪さめては握るペン一本 岩田昌寿 地の塩
夜もすがら雪明りしんしんと冷ゆ 村山古郷
夜もすがら鼠のかつぐ棗かな 加藤曉台
夜もすがら大地に露の生れたる 広瀬志都子
夜もすがら灯れる簗や下り鮎 万永喜見子
夜もすがら博奕打つなり蟲の宿 松本たかし
夜もすがら病馬の伽の砧かな 左次
夜もすがら噴水唄ふ芝生かな 篠原鳳作
夜もすがら満月照るや雪の上 相馬遷子 山国
夜もすがら霧の港の人ゆきゝ 高浜虚子
夜もすがら霧降るまゝの山の宿 高濱年尾 年尾句集
夜もすがら猟犬さわぐ宿の月 高野素十
夜もすがら冱ててありけり父の筆 永田耕衣
儷びぬれば田螺鳴くなり夜もすがら 正岡子規 田螺
凩の雨戸たゝくや夜もすがら 寺田寅彦
寐てすゞむ庵崎の灯や夜もすがら 完来
螢烏賊来るを待ちつつ夜もすがら 指中 恒夫

夜通し

しばるるや夜通し守る煖炉これ 石川桂郎 高蘆
愛隣の果も雪降る夜通し降る 森澄雄
宇佐祭へ夜通し人や蛙鳴く 阿部みどり女 笹鳴
何おもへとや夜通しのとらつぐみ 沢 聰
兜虫夜通し硝子戸にゐたり 右城暮石 句集外 昭和二十五年
結飯(むすび)二個の幣に夜通しやませ吹く 佐藤鬼房
祭太鼓夜通し打ちて雨熄まず 右城暮石 句集外 昭和四十一年
舟宿の夜通し匂ふもちの花 北見さとる
春雨に夜通し母の手毬唄 吉田さかえ
正月来る煉炭に夜通し小豆煮られ 古沢太穂 古沢太穂句集
凍らむと湖は夜通し軋みをり 高橋たか子
米炊ぎ祭屋台も夜通しに 岡本眸
夜通しに壁塗あげる蚊遣哉 几董
夜通しの雨が雪消す西行忌 福田甲子雄
夜通しの本降り雨や十夜寺 村山古郷
矢車草夜通し藍を揺り覚ます 菊地京子
鈴虫の夜通しみがく星の空 宇都宮 靖


終夜

黄落の度を増す終夜灯圏内 鷹羽狩行
夏悲し終夜衰へぬ灯を沖に 村田 脩
海鳥のほのぼのしろく終夜業明く 細谷源二 鐵
蟻入れて終夜にほへり砂糖壷 森澄雄
月と萩萩と萩摶つ終夜 阿波野青畝
月に傍ふてさくらめぐりつ終夜 東皐
故郷なり終夜群れをる誘蛾燈 江里昭彦
梧桐の青さ終夜の街路燈 岡本眸
終夜くもり詰ても月あかり 土芳
終夜ともる聖燭に火蛾あやまてり 津田清子 礼 拝
終夜ほとゝぎすにぞせゝらるゝ 凉菟
終夜狐喰なるいなごかな 三宅嘯山
終夜秋風きくや裏の山 曽良
終夜秋風聞くや裏の山 曾良(加賀の全昌寺に宿す)
終夜食む獣屋の神寒の闇 飯田蛇笏 雪峡
終夜潮騒雛は流されつづけゐむ 松本 明
終夜灯る聖燭に火蛾あやまてり 津田清子
終夜二里泥濘行の赤子かな 佐藤鬼房
終夜鳩のねごとや冬ごもり 会津八一
春分を迎ふ花園の終夜燈 蛇笏
焼山の歯朶ぱち~と終夜 内藤鳴雪
雪棺は終夜を消さず冬灯 山口青邨
露草に奪らる目終夜徹し来て 佐藤鬼房
浪はこぶ海聞け霜の終夜 土芳
團栗の水に落つるや終夜 正岡子規 団栗
寐よとすれば燃ては榾の終夜 杜若


夜つぴて

伊那谷の夜つぴて鳴れる猪おどし 依田安子
鍋や茶碗や夜つぴて雨が洗つてくれた 種田山頭火 自画像 落穂集
木菟の眼の夜つぴて刻を計るかな 鈴木栄子

闇夜

アウトバーン吹雪く闇夜を雪女 ツェルセン・孝子
あぢさゐの闇夜も知らぬ深眠り 三橋鷹女
ありと言へば闇夜もよろし桃の花 森澄雄
いつも騒ぐ男が無口闇夜汁 田中水桜
かき鳴らす如法闇夜の三味涼し 西本一都
かりがねの帰りつくして闇夜かな 村上鬼城
この秋光のいづくに闇夜ひそむなる 斎藤玄
ふかふかと鵺の流るる闇夜かな 中勘助
ふわふわと蛍一つの闇夜かな 蛍 正岡子規
わが町の闇夜をはねて鰯たち 坪内稔典
わが恋は闇夜に似たる月夜かな 夏目漱石 明治二十四年
闇夜きつね下這ふ玉真桑 芭蕉
闇夜のはつ雪らしやボンの凹 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
闇夜汁いやしきまでに顔ほてり 小檜山繁子
闇夜灯さむし砂一片の智恵子の碑 古沢太穂 捲かるる鴎
一人来て闇の薄まる闇夜汁 鷹羽狩行
稲妻のかきまぜて行く闇夜かな 去来
羽黒山蛍一つの闇夜哉 蛍 正岡子規
羽子板や如法闇夜の綱館 水原秋櫻子 殉教
卯の花に尿のかゝる闇夜かな 卯の花 正岡子規
夏川の音に彳む闇夜哉 夏川 正岡子規
夏川の音のすゝしき闇夜哉 夏川 正岡子規
夏川の音をすゝみの闇夜哉 正岡子規 納涼
花の後しばらく無明闇夜かな 能村登四郎
花栗の木のたちまさる闇夜かな 廣瀬直人
海鼠くう松の内なる闇夜かな 萩原麦草 麦嵐
街燈を捲きて闇夜の蔦茂る 上田五千石『田園』補遺
蛙鳴く闇夜秘仏に鍵を垂り 松村蒼石
噛みきつて味考ふる闇夜汁 小林輝子
刈田の香刈田に戻る闇夜かな 廣瀬直人
乾鮭を提げて闇夜を戻りけり 藺草慶子
寒雷は闇夜に敵は吾にあり 五島高資
雁金の帰り尽して闇夜かな 村上鬼城
蛍狩袋の中の闇夜かな 蛍 正岡子規
月の夜をふつてしまうて闇夜哉 正岡子規 無月
吾恋は闇夜に似たる月夜かな 夏目漱石
砂のごと闇夜に売られている帽子 対馬康子 吾亦紅
妻の手に触れし闇夜やほたる狩 石澤邦彦
妻よ闇夜を覚えてまはす古日傘 岸田稚魚 負け犬
歳の市松は闇夜を隅に積み 長谷川かな女 花 季
山容も分かぬ闇夜や蛍飛ぶ 日野草城
産む妻を隠す蛙の闇夜濃き 野見山朱鳥 曼珠沙華
鹿の尾のうしろを見れハ闇夜哉 鹿 正岡子規
終バスの去りし闇夜や遠蛙 中野はつ子
春寒し闇夜に刻む山河経 金子兜太
酔うて闇夜の蟇ふむまいぞ 種田山頭火 草木塔
酔うて闇夜の蟇踏むまいぞ 山頭火
星ばかり出ても闇夜はなかりけり 鳳朗
青田にはあをき闇夜のありぬべし 平井照敏
雪山の闇夜をおもふ白か黒か 正木ゆう子
千本しめぢ闇夜に息をしてをりぬ 村松知香
川水の音に彳む闇夜哉 正岡子規
川水の音のすゝしき闇夜哉 正岡子規 涼し
川水の音をすゝみの闇夜哉 正岡子規 納涼
泉へのかぐはしき闇夜鶯 小池文子
大雨のあとの闇夜や走馬燈 小寺敏子(古志)
大文字のあとの闇夜に親しめり 藤田耕雪
虫の闇夜蝉の闇とうちまじり 鳥居おさむ
虫の声やんで闇夜に腕透く 仙田洋子 橋のあなたに
日も月もわたりて寒の闇夜かな 飯田蛇笏
梅の香むせるほどな うばたまの闇夜戻る 荻原井泉水
白地着て大き闇夜を分け行きし 林翔
白猫の恋のはじめの闇夜かな 藤本始子
白露の犇めく如法闇夜かな 松本たかし
白朮の火闇夜の風に消すまじく 金子 晉
筏さす闇夜の伽や飛ほたる 紫貞女
夫の額熱し闇夜の釣忍 横山房子
富士くらく闇夜の氷踏みにけり 萩原麦草 麦嵐
舞ひ果てゝ大蛾の帰へる闇夜かな 前田普羅 春寒浅間山
忘れられ闇夜に泳ぐ鯉幟 大森玲子
霧の白黒の闇夜をうごかせり 松永千鶴子
網戸もてへだつる如法闇夜かな 富安風生
木の実降る月夜闇夜のわかちなく 山内十止子
夕立のあとの闇夜の小提灯
踊すみ燈籠送りすみ闇夜 長谷川素逝 暦日
踊すみ燈籠納めすみ闇夜 長谷川素逝 村
浴衣着て闇夜月夜と逢ひつづけ 鈴木真砂女 紫木蓮
落し水田廬のねむる闇夜かな 飯田蛇笏
落し水田蘆のねむる闇夜かな 飯田蛇笏 霊芝
玲瓏と闇夜を紡ぐかねたたき 大口公恵
梟の鳴く月夜かな闇夜かな 青木重行
祓はれて闇夜の海へ田面舟 林 徹
稻妻にふと行きあたる闇夜哉 稲妻 正岡子規
稻妻に行きあたりたる闇夜哉 稲妻 正岡子規
莨火ひとつ浮べ闇夜を来し汝か 楠本憲吉 孤客

暗夜


うそ寒き暗夜美人に逢着す うそ寒 正岡子規
かりがねの暗夜南へ次のこゑ 猪俣千代子 堆 朱
ちちろ鳴く暗夜の土に罅隙なし 内藤吐天 鳴海抄
ねむりさへ暗夜ひばりの湧くごとく 佐藤鬼房
やもりはう暗夜は駅が鼓動する 大西健司
暗夜さらに血の熱かれと雁わたる 橋閒石
暗夜にて鳴く樹かはりし青葉木菟 山口誓子
暗夜の水寒き地中を落ちゆけり 永田耕一郎 海絣
暗夜行路の尾道あたり梅雨の航 松崎鉄之介
暗夜国道秋刀魚の積荷疾走す 佐藤鬼房
暗夜桃枝わが脊髄として眠る 高野ムツオ 陽炎の家
羽蟻落つ「暗夜行路」の終章に 和田 祥子
咳やまぬここより暗夜行路の地 対馬康子
汗ばむや電波暗夜をとびみだれ 和田悟朗
飢ゑでもなし暗夜に泳ぐ*ささげ手 佐藤鬼房
魚はみな下唇ののびる暗夜かな 宇多喜代子
光怖れる犬を守りて暗夜の父子 金子兜太
歯車の無数なる歯が噛み合ひしまま静止せる暗夜とおもふ 真鍋美恵子
手袋や暗夜の粉雪肩に鳴る 村山古郷
松原の如法暗夜を野分過ぐ 山口誓子
燭に蹤く暗夜行路の梅雨の闇 能村登四郎
雪ひた降る暗夜に白きこゑあげて 野澤節子 未明音
喪の帰京寒き暗夜を急ぐなり 村山古郷
昼見たる蟻を暗夜に思ひ出づ 山口誓子
潮を吹く荒磯暗夜の奥にみえそこよりとどく海の鳴る音 下村光男
晩秋の日本海暗夜は碧(へき) 金子兜太
疲れては戻る暗夜の菊ばかり 伊丹三樹彦
毛虫落ちて暗夜の土をあるきけり 加藤楸邨
毛蟲落ちて暗夜の土をあるきけり 加藤秋邨
恋の猫暗夜行路を跳び交し 鷹羽狩行
谿すさぶ暗夜のもみぢ赫と散れ 林原耒井

深夜

「誰だって淋しいさ」 深夜電話の彼へ いう 島田一葉子
ああ昨日のその場しのぎの優しさが深夜電話に化けてまた響る 島田修三
いどみ噛る深夜の林檎意思死なず 金子兜太
オリオンを九月の深夜見るかなしさ 相馬 遷子
かたまりて深夜の寺のなめくぢり 中川宋淵
ぎんなん墜つ深夜仁王の吠えおらん 塩野谷 仁
ゲレンデの深夜を乳呑児が歩く 佐藤鬼房
こほろぎに違和の強燭深夜作業 津田清子
こほろぎや風がとぎだす深夜星 太田鴻村
さくらの下を過ぎて深夜に齢足す 林田紀音夫
さくら咲く深夜の飯が噴きこぼれ 坪内稔典
タクシーのハザード瞬ける深夜 藤田敦子
ただ一度雪の稲妻深夜の眼に 野澤節子 未明音
チクタクチクタク深夜の豪雨はたと歇み 日野草城
チューリップ深夜にもう一人の私 橋本美代子
ついに見ず深夜の除雪人夫の顔 細見綾子
つひに見ず深夜の除雪人夫の顔 細見綾子
ネオンばかりいきいきさむし喪の深夜 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
ふと思ふ深夜秋風に逢ひし顔を 加藤秋邨
ふと男月のこと言ふ深夜バス 本庄登志彦
まぐれ蚊を棲ませ深夜の癩夫婦 村越化石「独眼」
まつさきに星が見付けし深夜の火事 田川飛旅子 花文字
マフを着け深夜の街の闇に出づ 稲畑広太郎
るいるいと肉ある深夜の冷蔵庫 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
わがゆまる音のさやかに深夜の月 日野草城
医師起きず深夜の花火音もなし 加藤秋邨
雨の音芽立ちの音とおもう深夜 金子兜太
唄喉につまる深夜の水溜り 橋閒石 無刻
瓜の馬向うむきたる深夜かな 久米正雄 返り花
雲の峰屋根々々の深夜白けけり 中島月笠 月笠句集
夏シャツの白さ深夜の訪問者 野見山朱鳥
嫁が君出番深夜の時計鳴る 神保奈美子
火の番は深夜の窓の声に遇ふ 原田種茅 径
花八ツ手深夜の息吹雨となる 『定本石橋秀野句文集』
蚊帳の鐶深夜の音を立てにけり 久米正雄 返り花
芽柳を感じ深夜に米量る 平畑静塔
悔の果深夜日輪を汗の目に 加藤秋邨
海の宿深夜蝿出て生き生きと 昭彦
海の宿深夜蠅出て生き生きと 宮津昭彦
街かなし深夜は杉の音色もち 北原志満子
寒の雨深夜ふたたび厠踏む 佐藤鬼房
寒水速し深夜を少年少女といて 寺田京子 日の鷹
疑いのやさしさの虹深夜に立つ 寺田京子 日の鷹
金算へ出でて深夜の影印す 伊丹三樹彦
櫛落ちて覚めし深夜のいなびかり 鷲谷七菜子 花寂び
血に飽いて歩む蚊に深夜戻りけり 中島月笠 月笠句集
月に寝て深夜に似たる蜑が軒 山口誓子
吾子寝れば深夜のごとし虫高鳴き 大野林火 早桃 太白集
交替の深夜を帰る流れ星 芦沢一醒 『花枇杷』
向日葵が深夜一燈のために咲く 宮津昭彦
向日葵にあふや深夜の坂の上 予志
港育ちは深夜霧笛の位置計る 松崎鉄之介
甲冑に深夜の冷気底知れず 加藤知世子
骨還り深夜の如し夕桜 殿村莵絲子 雨 月
桜桃忌深夜に日射しある不思議 平井照敏
子を呼べば深夜の冬木よりはなる 加藤秋邨
死臭こくめいに洗いおとす深夜桜白し 橋閒石 風景
自動車の深夜疾走し散るさくら 石田波郷
七夕や深夜の療衣あまた垂れ 中村草田男
手をあげるおなじかたちに深夜の木 久保純夫 熊野集
首夏の家朝に深夜に貨車轟き 石田波郷
受験期や目なし達磨の深夜の眼 加藤知世子
修司忌を伝へてラヂオ深夜便 岡崎るり子
秋刀魚焼く深夜われらが苛烈の火 佐藤鬼房
春泥に影濡れ~て深夜の木 西東三鬼
春泥に影濡れ濡れて深夜の水 西東三鬼
春雷や深夜の薬罐沸騰す 加藤秋邨
春蘭の貴種に消え入りたき深夜 佐藤鬼房
深夜、静かに呼吸している点滴がある 住宅顕信 未完成
深夜かなひとり血を喀く椿かな 河原枇杷男 定本烏宙論
深夜かな蝶の聲にて哭いてみむか 河原枇杷男 蝶座
深夜にて雪上を匐ふさそり星 相馬遷子 雪嶺
深夜にて煉炭息を断たむとす 岸風三樓
深夜にも海は覚めゐて夜光虫 広田よしかね
深夜の駅とんびの袖を振り訣れ 石塚友二
深夜の火蛾残し女は別室へ 右城暮石 句集外 昭和三十五年
深夜の火事星座犇めき人起きず 田川飛旅子 花文字
深夜の航わが船室(キャビン)のみぎらつかせ 金子兜太
深夜の細い針が血管を探している 住宅顕信 未完成
深夜の水に誰か関節を与えよ 夏石番矢 人体オペラ
深夜の灯煌々と人死なんとす 日野草城
深夜の雷ひびき柱のほのとあり 原田種茅 径
深夜の驛とんびの袖を振り訣れ 「方寸虚実」石塚友二
深夜ひらりと信号無視の一軽羅 堀口星眠 営巣期
深夜ミサより戻り来て聖菓切る 山内しげ子
深夜ミサ終へし人らに冬の月 丸山よしたか
深夜往診風邪の外套重く着て 下村ひろし 西陲集
深夜街鯨のからだがリードしている 佐々木 宏
深夜雁過ぐ友も空ゆくいそぐらし 加藤秋邨
深夜帰宅山茶花踏絵の如く踏み 楠本憲吉
深夜胸の上の雷鳴許し給え 鈴木六林男 王国
深夜勤といふ字に惹かれたる夜長 高浜年尾
深夜工事の灯がぼうぼうと柿熟す 桜井博道 海上
深夜工事の半裸傷つきてはならじ 大井雅人 龍岡村
深夜稿また紅梅にはげまされ 鈴木六林男
深夜稿玻璃に守居の腹を見つ 青柳志解樹「楢山」
深夜疾風夢のかけらのさむざむと 栗生純夫 科野路
深夜手のぬくみで飛翔一螢火 佐藤鬼房
深夜百合を活けて去りけり唖の如 栗生純夫 科野路
深夜砲声斥候に行くと飯喰いいる 鈴木六林男 荒天
深夜訪へど終に会へざりはだれ雪 松崎鉄之介
深夜目ざめて雨の音がよき雨なり 荻原井泉水
深夜来て不明の外套富士裏に 攝津幸彦
深夜涼し脚細りゆく戸外の椅子 大井雅人 龍岡村
人のごとく深夜鉄砲百合は立つ 加藤秋邨
人を憎み深夜も蝿を憎み打つ 三谷昭
人を憎み深夜も蠅を憎み打つ 三谷昭 獣身
人生冴えて幼稚園より深夜の曲 金子兜太
酔うて漂う深夜の海市誰彼失せ 楠本憲吉
星たちの深夜のうたげ道凍り 相馬遷子
星と星かち合ふこがらし ああ日本はするどき深夜 葛原妙子
聖樹の土乾き乾きて深夜なり 小川双々子
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の戸をたたく深夜をかそけくて 松崎鉄之介
雪解川ゆたかに深夜作業の灯 柴田白葉女
雪降りをり深夜の停車駅に声 宮津昭彦
舌荒れて 深夜の鏡きらめかす 伊丹三樹彦
戦どこかに深夜水のむ嬰児立つ 赤尾兜子
戦時下映画深夜に及ぶ敗戦日 高澤良一 随笑
草藉けば深夜の汽車の疾走す 横山白虹
足見せし蜆に深夜崩れけり 中島月笠 月笠句集
大石忌来るどこまでが深夜酒 萩原麦草 麦嵐
大年のざはめき乗せる深夜バス 磯崎美枝
地震の国深夜コスモス咲き乱れ 穴井太 原郷樹林
池涸れる深夜 音楽をどうぞ 鈴本六林男
竹林の落葉深夜か病句集 飯田龍太
猪食つて山国はすぐ深夜なり 高星吐
吊皮に深夜はびこる白い雑草 松田 進
冬の雁深夜の鍵を穴に挿す 淵脇護
冬の月柱が深夜感じをり 加藤秋邨
冬の深夜貨車音とおる家の幅 田川飛旅子 花文字
冬の深夜貨車音とほる家の幅 田川飛旅子
冬霧の深夜月あり血のごとし 加藤楸邨
凍てし湖深夜の微光知らるるな 津田清子 二人称
唐辛子深夜嗅ぐ顔知らざらむ 加藤秋邨
桃が咲く深夜使へば水速し 寺田京子
灯取虫ぶつかる深夜テレビかな 加福雷太
灯翳せば深夜の金魚喘ぎをる 久米正雄 返り花
藤垂れて深夜崖なす白襖 栗生純夫
堂塔を深夜に立たすいなびかり 山口誓子
独り居に迫る深夜のはたた神 山口明美
奈良扇子土産軽々の深夜バス 菊池志乃
納棺す深夜の凍てに縄たすき 飯田蛇笏 心像
納棺す深夜の凍てに繩たすき 飯田蛇笏 春蘭
脳神経外料暖房の深夜なり 佐藤鬼房
敗戦忌深夜のバイクの暴走音 早川翠楓
梅雨さむく映画製作の深夜あり 瀧春一 菜園
梅雨の溝に蛙鳴き澄む深夜かな 渡辺水巴 白日
梅雨の深夜バルブ操作の両手影 佐藤鬼房
梅雨の深夜覚めて明るき灯をともす 右城暮石 上下
白く抜け出て涸川海へ深夜の刻 金子兜太
髪の根に木犀一花深夜診 伊丹三樹彦
病棟の十時は深夜梟鳴く 磯村翠風
病棟の深夜冷房音どすん 高澤良一 鳩信
苗代の灯に靄下りし深夜かな 吉武月二郎句集
不意に白鷺深夜の天井つきぬけて 鮫島康子
不眠者に深夜とどろく梅雨の雷 相馬遷子
不眠者に深夜とゞろく梅雨の雷 相馬遷子
父咳けば深夜日本の家かなし 野澤節子 未明音
腹へりぬ深夜の喇叭霧の奥に 西東三鬼
噴水の力むなしき深夜かな 徳弘純 非望
母が死にゆく深夜の玻璃に燃ゆる火事 加藤秋邨
亡父亡母深夜衾に入れば見ゆ 高室呉龍
万の毛虫林にこもる深夜の書 金子兜太
木枯れたり深夜下駄曳く街はづれ 石塚友二 方寸虚実
目を大きく螢をみては深夜の母 桂信子 花寂び 以後
戻り来て深夜の雛に逢ひにけり 萩原麦草 麦嵐
葉桜や深夜犬ども睦しく 不死男
落つる音白し深夜の花木槿 林原耒井 蜩
落鮎に星曼陀羅の深夜かな 加藤秋邨
酪農の深夜一抹の蒼馬 金子兜太
立冬や深夜に運ぶ伝書鳩 小口理市
流木の一つは深夜を飛行せる 河原枇杷男 烏宙論
旅の寝の深夜目覚に菊にほふ 岸風三樓
冷蔵庫深夜に戻りきて開く 辻田克巳
老いぬうち深夜を翔べと望の月 清水径子
老妻と深夜の花に遊びけり 黒田桜の園
蟋蟀や深夜の水に顔映す 澤井我来
蟇鳴く家深夜潮鳴なぐるごと 佐藤鬼房


深更


花氷痩せて深更の客を獲たり 日野草城
花冷の深更ポットぽぽと鳴る 角川源義
深更の一咳萩に月高し 日野草城
深更の五千石忌の雨篤し 上田日差子
深更の灯は桜しべ擲つょ 波多野爽波
深更の弥陀仏のせて六夜月 茂木青峰


丑三つ

ふと妬し丑三つ刻を百合ひらき 鍵和田[ゆう]子 未来図
鵜祭や丑三つ時といふ静寂 勝尾艸央
丑三つといふ闇が来るさくらかな 邊見京子
丑三つの闇のやさしき雷のあと 飯田龍太
丑三つの厨のバナナ曲るなり 坊城 俊樹
丑三つの雪踏みならす蘇民祭 今野基子
丑三つはねむれぬままの花野道 青柳万童
丑三つや物の怪ならず舞ふ落葉 穴吹義教
丑三つを夜々に覚ゆるたんぽ哉 三宅嘯山
丑三つを柚子湯漬りにまかせける 斎藤玄 狩眼
鏡餅丑三つどきに笑み割るる 星野石雀
仔牛瞬く丑三つの雪明り 飯田龍太
息白く丑三つにもの申すなり 宇多喜代子 象
登山小屋丑三つ時を飯炊ける 福田蓼汀 山火
不知火を見る丑三つの露を踏み 野見山朱鳥


夜間

かがんぼ来夜間急患窓口に 高澤良一 鳩信
かりがねに夜間教師の鞄振る 伊藤白潮
稲孕みつつあり夜間飛行の灯 西東三鬼
花くわりん夜間飛行の灯のちらちら 高澤良一 素抱
月の絵もつて夜間飛行をしていたり 阿部完市 にもつは絵馬
春のホテル夜間飛行に唇離る 西東三鬼
春の灯や夜間保育のあるらしく 磯崎美枝
新樹雨降る夜間中学生が持つ望 加藤秋邨
戦車夜間演習に出づとひびく湯に 伊丹三樹彦
鱈さげて夜間工事のなか通る 福田甲子雄
二つ飛ぶ夜間飛行の灯も良夜 高澤良一 暮津
木枯の夜間働く温水器 高澤良一 宿好
木犀を散らして夜間飛行音 高澤良一 石鏡
夜間教師慂められをり夜も野分 能村登四郎
夜間飛行たかだか花火の合間ゆく 高澤良一 暮津
夜間飛行に塔の蛾の落着けず 鷹羽狩行
夜間飛行の白い一条眠らぬ街 鈴木六林男
夜間飛行みどりが熱き芥子坊主 櫛原希伊子
夜間飛行わが帰る遠き目を外れつ 三橋敏雄
夜間飛行を眼にとめてうすくなる寝嵩 林田紀音夫
夜間飛行機子と七月の湯屋を出て 磯貝碧蹄館
夜間飛行金魚死ぬ高層うすれつつ 赤尾兜子 歳華集
夜間飛行砂漠の薔薇は見えますか 鷲田 環
夜間飛行士草に眠る処女膜のように 安井浩司
夜間飛行雪嶺と湖響きあふ 川村紫陽
夜間飛行筍の皮獣めく 田川飛旅子 花文字
葉ざくらの犇めく夜間飛行の灯 冨田みのる
鳰の池夜間飛行の燈をうつす 大野林火 雪華 昭和三十五年


夜の帳

雨が花散らしてしまふ夜の帳 高木 晴子
夜の帳にささめき尽きし星の今を下界の人の鬢のほつれよ 与謝野晶子
夜の帳り包む山脈蛍とぶ 福本天心
凩の庭となりつつ夜の帳 稲畑汀子


宵の口

ほたるとぶ光りいろめく宵の口 飯田蛇笏
花守のちひさくありぬ宵の口 中田剛 竟日
顔見世やことに時雨るゝ宵の口 大谷句佛 我は我
見て戻る羽子板市の宵の口 高浜年尾
高町に宵の口あり一の午 古舘曹人 砂の音
残雪のけぶりて睡し宵の口 堀口星眠 営巣期
秋の夜やまだ街道の宵の口 尾崎迷堂 孤輪
初午や人のとだゆる宵の口 高橋淡路女 梶の葉
宵の口物売りきたる三日かな 平間竹峰
宵の口鳴いて曇るや鷭水鶏 立花北枝
宵の口鳴て曇るや鷭水鶏 北枝
青木の実雨の降りしも宵の口 村井雄花
足跡の氷る山路も宵の口 宇佐美魚目 秋収冬蔵
鮟肝や雨ぱらぱらと宵の口 星野麥丘人


日没

いつも夜明けの日没めくよ高熱裡 楠本憲吉 孤客
いぶかしき日没ぞ桃とどきけり 清水径子
バルトの海に勝鬨のごと夏日没る 上林 裕
プールあがる日没の街膚色に 中拓夫
むささびや日没以後のわが呼吸 遠山陽子
ユリシーズの島の日没媚薬くさし 橋閒石
黄疸のごとき日没ほととぎす 佐藤鬼房
学帽購い戻る日没夜明けめく 楠本憲吉 孤客
寒天を晒すや日没り月のぼる 大橋桜坡子
歓喜仏眼を瞋しぬ冬日没り 山口誓子
黒松の幹あたためて冬日没る 美山一子
糸取女背を見せてばかり日没 中川一碧樓
紫陽花の毬木戸ふさぎ日没偈 大野林火 飛花集 昭和四十八年
秋日没りしほ膝に茶碗を鷲づかみ 加藤秋邨
秋日没る五階にありて立眺め 石田波郷
秋日没る庭の平らに金の砂 桂信子 「草影」以後
女遍路や日没る方位をいぶかしみ 橋本多佳子
昭和十五年終る日没す枯木かな 星野立子
水ぎはに日没の宮荒布干す 佐野美智
雀の巣藁しべ垂れて日没す 山口誓子
雪の暮薄氷やおもて上ぐれば日没ぞ 永田耕衣 冷位
早き日没鳩の絵に唾を吐き 和田悟朗
巣の雀藁しべ垂れて日没す 山口誓子
炭車去り日没つる方に汽笛寒し 三谷昭 獣身
天牛のぎいと音して日没りけり 佐藤鬼房
冬の旅山荒々と日没す 細見綾子
冬日没し守銭奴のごと銭つかむ 有馬朗人 母国拾遺
冬日没す庭愕然と木木立てり 星野立子
冬日没りぬと空城を降り来る 山口誓子
冬日没る金剛力に鵙なけり 加藤秋邨
冬日没る金色の女体かき抱かれ 山口誓子
冬日没る金色の女体姦せられ 山口誓子
冬日没る諸仏歓喜を見て立たす 山口誓子
冬日没る蒙古の天の端を見き 山口誓子
冬日没る曠野の駅の嘲風子 加藤秋邨
日没と共に闇来る青田かな 右城暮石 句集外 昭和五十四年
日没に人交代や小鮎簗 高野素十
日没のあと手足出す野火のあり 鷹羽狩行
日没ののちの八重山上布かな 黒田杏子
日没の稲架をゆさぶる天邪鬼 市原光子
日没の空の深さや初硯 浜たま子
日没の窓枠に乗る青蟷螂 長島たま
日没の灯のすぐ馴染む秋の浜 殿村菟絲子
日没の風の変りし芒原 山田弘子 こぶし坂
日没の偈より始まる虎落笛 三浦紀水 『湖その後』
日没は四時三十二分藪柑子 岡田史乃
日没や煙のなかの白薄 桂信子 花影
日没や白鳥一羽一羽重し 池田澄子 たましいの話
日没りばな茅の輪が匂ふ潜りけり 佐藤鬼房
日没るとき隠れ雪嶺に光当つ 上田五千石『森林』補遺
日没る方祭幟の黒く立つ 山口誓子
日没以後の月は自照や冬の水 中村草田男
日没青し五指の一指で眼を塞ぎ 金子兜太
日没椰子の前方 ジョッキーの背の弾丸 伊丹公子 ドリアンの棘
白映や日没閉門熊本城 内田百間
薄氷やおもて上ぐれば日没ぞ 永田耕衣
風かよふなり日没を蚊がなけば 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
立春の日没の富士肩きびし 細見綾子
寮炊事場に母子ら大声暑き日没る 古沢太穂 古沢太穂句集
陵ありき山さはやけき日没に 中村汀女
恋雀遊べり「日没謝客」の門 村山古郷


以上


by 575fudemakase | 2019-02-17 13:10 | 無季 | Trackback | Comments(0)


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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