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クリスマスローズ の俳句

クリスマスローズ の俳句

クリスマスローズ

クリスマスローズかかへて友を訪ふ 坂本知子
クリスマスローズに柔らかき毒舌 須賀悦子
クリスマスローズ我家の庭の花と咲く 阿部ひろし
クリスマスローズ気難しくて優しくて 後藤比奈夫
クリスマスローズ仰向くことのなく 椋本一子
クリスマスローズ咲かせる窪の家 松崎鉄之介
クリスマスローズ咲く聖人へ凡人へ 布川直幸
クリスマスローズ春愁とにあらず 後藤夜半 底紅
クリスマスローズ春宵に沈みけり 柳田皓一
クリスマスローズ春日につぶやけり 柳田皓一
クリスマスローズ女は髪染めて 燕雀 星野麥丘人
クリスマスローズ心に街に出し 中村汀女
クリスマスローズ聖なる星に似て 山田夏子
クリスマスローズ日本語使ひたく 後藤比奈夫
クリスマスローズ蘭医の血筋にて 飴山實 句集外
クリスマスローズ俯きて春の風情なり 牧原佳代子
クリスマスローズ莟あり落葉の中 山口青邨
また一つクリスマスローズの鉢殖やす 渡邉紅華
ロンドンはクリスマスローズ炉辺に咲く 山口青邨
わが庭はクリスマスローズ二月咲く 山口青邨
待ち望みしクリスマスローズ咲きほこり 東秋茄子
遅咲きのクリスマスローズ夕淡し 菊地恵子
木蔭にてクリスマスローズひそやかに 中田芳子
門までの径に揺るるクリスマスローズ 村上二三
優しさが弱さのクリスマスローズ 高橋将夫

by 575fudemakase | 2018-01-29 13:42 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

柿の蔕 の俳句

柿の蔕 の俳句

柿の蔕(拙句 高澤良一)

こんにゃく村空を飾りて柿の蔕
さういへば家紋に似たる柿の蔕 ももすずめ
どうしてもそこへ眼のゆく柿の蔕 随笑
柿の蔕いつしか年も押詰り
柿の蔕カアの一ト声凍みにけり
柿の蔕つくづく年も詰まりけり
柿の蔕つくねんと年明けにけり
柿の蔕つまらなさうに日を浴みて
柿の蔕ほどの悔ある年なりき
柿の蔕みたいなやうな梢(うれ)の鳥
柿の蔕柿の古木にくろぐろと
柿の蔕町内の空つながれり
柿の蔕通用門を出でにけり
柿の蔕無造作も斯く極まれば
柿の蔕夕日外れてしまひけり
干柿の蔕の寒山種の拾得
去年は去年今年は今年柿の蔕
黒帝のつまみ食ひせし柿の蔕
初空にそっぽを向ける柿の蔕
青空のまま昏れ柿の蔕月夜
濡れ柿の蔕から蛇の目傘の蔕
莫迦成りの数はともかく柿の蔕
美濃柿の蔕ばかりなる村の空
変哲なき空の続きに柿の蔕
暮れかかる柿の蔕みち落柿舎へ
落柿舎の柿の蔕ほど吾も凍みて
里坊の柿の蔕見て夕暮れは

柿の蔕 補遺

さういへば家紋に似たる柿の蔕 高澤良一 ももすずめ
その花の俤はあり柿の蔕 長谷川櫂 虚空
どうしてもそこへ眼のゆく柿の蔕 高澤良一 随笑
外屋敷や野分に残る柿の蔕 野童 俳諧撰集「藤の実」
柿の木の蔕落す鳥や霜日和 渡辺水巴 白日
柿の蔕カアの一ト声凍みるなり 高澤良一 宿好
柿の蔕つくづく年も詰まりけり 高澤良一 石鏡
柿の蔕つまらなさうに日を浴みて 高澤良一 随笑
柿の蔕ばかりに 仰ぐ 青天井 伊丹三樹彦
柿の蔕みたいな字やろ俺(わい)の字や 永田耕衣
柿の蔕猿の白歯をこぼれけり 原石鼎 花影
柿の蔕見上ぐる雪のきりもなし 太田土男
柿の蔕町内の空つながれり 高澤良一 随笑
柿の蔕無造作も斯く極まれば 高澤良一 素抱
柿の蔕夕日外れてしまひけり 高澤良一 随笑
熟み落ちて梢に寒し柿の蔕 会津八一
青柿の蔕より青き月夜かな 真鍋呉夫
青空のまま昏れ柿の蔕月夜 高澤良一 宿好
短日の柿の蔕黒い 北原白秋
知らぬ間に散りたる数や柿の蔕 飴山實 句集外
美濃柿の蔕ばかりなる旅の空 高澤良一 随笑
暮れかかる柿の蔕みち落柿舎へ 高澤良一 燕音
蜂と蟻しばしうごかず柿の蔕 中田剛 珠樹以後
落柿舎の柿の蔕ほど吾も凍みて 高澤良一 燕音
里坊の柿の蔕見て夕暮れは 高澤良一 燕音

by 575fudemakase | 2018-01-29 13:16 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

電車 汽車 列車 以外 の俳句

電車 汽車 列車 以外 の俳句

電車 汽車 列車 以外

あかつきの群線に貨車こごえけむ 鈴木孤声
アネモネを貨車がゆるがす友の下宿 酒井弘司
ありそめしこぼれ新米貨車ホーム 亀井糸游
いつからか都電なき町鬼灯市 山越渚
いづくより雪かぶり来し貨車すれちがふ 篠原梵
うりずんや快速船の大飛沫 伊良皆恵利子
おかしな所から機関車水出して弁当箱洗わせてくれる 市川一男
オリエント急行よぎる枯野かな 竹葉英一
かげろう土手の機関車 水で書く飢え 星永文夫
かりがねや軍港かくす貨車の胴 秋元不死男
かをりやんの上ゆく貨車の屋根にも兵 長谷川素逝 砲車
キャラメル工場を出る一輛の灼けた貨車 穴井太 穴井太集
くろがねの機関車座せり夏の月 天田牽牛子
このあたり都電快速一の午 奈良文夫
こめかみを機関車くろく突きぬける 藤木清子
さいはての貨車を塩もて充たしをり 飴山實 少長集
さざなみの春めく田川貨車長し 伊藤敬子
サボ市電物価騰りし街へ放つ 細谷源二 鐵
しだれ柳ふれて都電は雑司ヶ谷 敷地あきら
シヨール深く都電の残る町通る 伊藤いと子
スピード感全く欠除し都電うらら 北野民夫
すれ違ひゆける客車の九月かな 山西雅子
ダリアの紋章急行一過の空白に 三谷昭 獣身
つきはなす貨車コスモスのあたりまで 深川正一郎
つき放す貨車コスモスのあたりまで 深川正一郎
トラックにのり貨車にのり日の盛 久保田万太郎 草の丈
ながきながき春暁の貨車なつかしき 加藤楸邨
ひえびえと手摺見おろせば犇く貨車 古沢太穂 古沢太穂句集
ビルの日曜黄落はげしく市電過ぐ 河野多希女 琴 恋
ベッドサイドに機関車とまる月の原 須藤 徹
みずいろの舌もつ夏川市電スト 寺田京子 日の鷹
みるかげもなき向日葵と貨車一つ 京極杞陽
むし暑く馬のにほひの貨車でゆく 長谷川素逝 砲車
ゆらゆらと市電に蝶がぶつかりそう 川口重美
ゆるやかに都電を通す簾かな 松山足羽
ラッセル車まだ置かれある桜かな 橋本榮治 越在
ラッセル車先立てて着く子宝湯 佐藤俊子 『雪の本丸』
ラッセル車置かれしままに余花の雨 原田青児
ラッセル車翼たたみて鴉に似る 宮津昭彦
レール若し貨車を雪国より発たす 磯貝碧蹄館 握手
わが女冬機関車へ声あげて 鈴木六林男
われ咳きて市電夜の濠端を過ぐ 榎本冬一郎 眼光
闇汁や貨車の連結音聞こゆ 館岡沙緻
闇動きゐるは枯野を通る貨車 大橋敦子
伊勢詣各駅通過の特急で 安藤律子
鰯雲描きかけの貨車動き出す 原 孜志
引込線花菜の上に貨車憩う 田川飛旅子 花文字
雨の貨車過ぎをり雨の猫じやらし 石田波郷
唄ふごとし寒の都電の老車掌 細川加賀
厩当番貨車にとどける日にねむし 細谷源二 鐵
厩当番貨車に曠野の日を見たり 細谷源二 鐵
雲の峰音立てて貨車つながりぬ 秋山牧車
駅舎より大き機関車山笑ふ 廣田みさ江
駅遅日牛積む貨車のつづきけり 市脇千香
駅売りの冬の餡パン貨車に烏 田川飛旅子 花文字
炎天に大軋りして埠頭貨車 五十嵐播水 埠頭
炎天の貨車過ぐるまで身を反らす 菅田静歩 『大花野』
煙突の街抜け得ざる冬の貨車 河野南畦 湖の森
遠くまで見ゆる青田を午後の貨車 折井紀衣
遠くゆく貨車に師走の日のさせる 成瀬桜桃子 風色
遠花火闇よりくらく貨車ねむる 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
遠天に音なき飛行機貨車操る 鈴木六林男
遠野火や貨車に積まるる常陸牛 北見さとる
遠野火を眩しみ錆の貨車つなぐ 久行保徳
横浜の青き市電にものわすれ 渡辺白泉
黄塵に燃える夕日と機関車と 白根順子
黄落の街泊船の前に貨車 大岳水一路
屋根に雪野武士のごとき貨車一輛 椎橋清翠
加賀しぐれ馬積む貨車とならびつつ 渋谷道
夏痩の友に特急たくましく 藤木清子
夏潮のコバルト裂きて快速艇 牛田修嗣(狩)
夏涸れの河へ機関車湯をたらす 西東三鬼
火の粉とぶ火事に市電の珠数つなぎ 右城暮石 上下
火蛾と醒めおりぬ快速車の孤客 楠本憲吉
花の日の午後無蓋貨車来て溜まる 穴井太 ゆうひ領
花冷の貨車の中より牛の声 木村里風子
貨車あまたちらばり凍てて歳去りぬ 片山桃史 北方兵團
貨車いくたび過ぎし枯野の雨やまず 柴田白葉女 遠い橋
貨車が 影絵のようにとまつていて ぬくい冬の夜霧 吉岡禅寺洞
貨車がこぼした麦を夕陽があたためる 穴井太 穴井太集
貨車さかる死の合唱が遠ざかる 三谷昭 獣身
貨車すぎて鉄匂ひたる炎暑かな 松本 繁
貨車つなぐ響き枯野へ抜けにけり 寺島ただし
貨車とまる駅にあらざる霜の崖 橋本多佳子
貨車に沿い歩む浴後の裸にて 田川飛旅子 花文字
貨車に客車つなぐ霧濃き開拓駅 桜井博道 海上
貨車に寝て野分馬臭をかきたつる 金丸鐵蕉 『動輪』
貨車に遭えり彩なく寒きわが幾日 三谷昭 獣身
貨車ぬいて海が見え出す冷房車 鈴木鷹夫 渚通り
貨車のかげ夏浪白くあがるなり 大野林火
貨車のさび草にうつりて薄暑かな 太田鴻村 穂国
貨車の屋根の煤雪の上に初雪す 原田種茅
貨車の音重し釣鐘草の昼 二宮 美代
貨車の下乾いてゐたり走り梅雨 木村里風子
貨車の間にかたまりコレラ注射受く 亀井糸游
貨車の間の冬草青し江東区 岩田昌寿 地の塩
貨車の牛ゆつくりと過ぐ遠桜 上田京子
貨車の上に黒き雪降る受難節 井沢正江
貨車の数かぞふるが癖土筆生ふ 角光雄
貨車の豚おんおんと寒きまつ只中 細谷源二
貨車の豚ひしめき過ぐる吹雪かな 高須茂
貨車の背の遠ざかるまで冬暮色 三谷昭 獣身
貨車の扉に銀の封印クリスマス 松下晴耕
貨車の扉に藁はみ出して雪国へ 林 徹
貨車の扉の隙に飯喰う梅雨の顔 飴山 實
貨車の扉を開くる手力飛び飛ぶ雪 田川飛旅子 花文字
貨車の扉を細目に海を見て涼む 田川飛旅子 花文字
貨車一つ忘られてある寒の雨 神山杏雨
貨車一輛それが陽炎となつてをる 京極杞陽 くくたち上巻
貨車遠くひびく藤の実たれきそひ 土岐錬太郎
貨車遠く尾を曳き行けり冬木立 鮫島交魚子
貨車過ぎし枕木露の石にしづむ 桜井博道 海上
貨車過ぎて毒消売の歩きだす 石田波郷
貨車過ぎて白粉花の散る兎舎の雨 宮武寒々 朱卓
貨車過ぐるひびきのつたふ雪の宿 鈴木しづ子
貨車繋ぎ全車輛鳴る大枯野 吉田輝二
貨車黒しひまはりの影とどきても 木下夕爾
貨車疾走 寒いすすきが引火する 増田まさみ
貨車灼けて満載されている怒り 森 武司
貨車秋雨ひとの振る灯を尾燈とす 中島斌男
貨車数十ゆつくり消ゆる良夜かな 平野無石
貨車通る風のつめたき茅花かな 木下夕爾
貨車渡る大鉄橋の無月かな 渡井一峰
貨車連結さる雪嶺の大盤石 齋藤愼爾
貨車黝くつながれて蝌蚪泳ぎけり 萩原麦草 麦嵐
快速はあわれなりけり蕎麦の花 阿部完市 軽のやまめ
海沿ひを走る鈍行波の花 斉藤葉子
海霧の縞日漁港路線に貨車あらはる 石原八束 空の渚
寒き夜の貨車駐らむとしつつあり 山口誓子
寒牡丹貨車が地響きしてまぶし 加藤知世子 黄 炎
寒暁をはるかな貨車の長響き 野村秋介
寒月光背後見ずとも貨車通る 桂信子
寒雀遊び空貨車溜りをり 石塚友二
寒澄むや艀の細身貨車の胴 小林康治
寒卵啜り機関車乗務かな 永田蘇水
寒鴉のりをる貨車の動き出す 木村凍邨
汗の粒貨車を外光に押しいだす 片山桃史 北方兵團
甘藷の貨車出勤の踏切断ちぬ 原田種茅 径
閑な市電尻ふり早春の運河沿いに 赤城さかえ
雁や市電待つにも人跼み 大野林火
顔過ぐる機関車の灼け旅はじまる 橋本多佳子
旗に風ある都電を見しや羽抜鶏 磯貝碧蹄館 握手
機関車が止まり秩父の百目柿 辻 男行
機関車が止まる蟋蟀の声の上 的野 雄
機関車にかこまれ濡るる東風の靴 宮武寒々 朱卓
機関車に雲や鴉や秋の山 飯田蛇笏 霊芝
機関車に試乗し燈下春惜しむ 宮武寒々 朱卓
機関車に助手穂芒を弄ぶ 山口誓子
機関車に潜る白息交しつつ 吉田未灰
機関車のしろき蒸気や草紅葉 田中冬二 俳句拾遺
機関車のひびきの残り月見草 木内怜子
機関車のやうな白鳥離水せり 脇本星浪
機関車の火夫に仰がれ朴咲けり 佐野青陽人 天の川
機関車の寒暮炎えつつ湖わたる 山口誓子
機関車の骨格太し蝉の暁 近藤一鴻
機関車の蒸気すて居り夕ざくら 田中冬二
機関車の蒸気ゆたかに霜の駅 飴山實 『おりいぶ』
機関車の息あびて咲く菫かな 太田鴻村 穂国
機関車の底まで月明か 赤尾兜子(1925-81)
機関車の湯を湯たんぽに宿直す 野崎夢放
機関車の湯を抜く音の夜寒哉 寺田寅彦
機関車の日の丸日の丸勝ちうさぎ 攝津幸彦 未刊句集
機関車の煤降る葡萄枯れし軒 木村蕪城 寒泉
機関車の率ゐて行きし晩夏かな 朝吹英和
機関車の瘤灼け孤り野を走る 西東三鬼
機関車は裾も湯げむり初詣 山口誓子
機関車は蓬の国へ消えてゆく 穴井太 天籟雑唱
機関車やなんでも食べる息白し 二村典子
機関車をねむらせている青田風 穴井太 原郷樹林
機関車を磨きあげたる師走かな 大久保重信
機関車庫出て夕月に逢ふ暮春 宮武寒々 朱卓
機関車動輪雪噛みほめく漆黒に 金丸鐵蕉 『動輪』
機関車焚きに坂勝ちの村蝶浮かす 太田土男
機翼の屑貨車に溢れて灼けつつ過ぐ 原田種茅 径
稀に蝶貨車の連結音午報音 石川桂郎
議決す馬を貨車より降さんと 鈴木六林男 谷間の旗
客車区に留る鳥のごと一貨車 竹中宏 句集未収録
急行「あじあ」静かに着きぬ秋の暮 大場白水郎 散木集
急行で著きし京都の春夕ベ 大場白水郎 散木集
急行の速度に入れば枯れふかし 西垣脩
急行の停らぬ駅や秋祭 赤星水竹居
胸の上に青嶺来てをり急行車 猪俣千代子 堆 朱
極月やさらば機関車ゴルバチヨフ 山岸竜治
桐の花貨車に秩父の土載せて 南 恵子
桐の花少年と乗る鈍行車 海老名衣子
筋肉は清明なもの陸蒸気 高橋たねを
近づいて来る除雪車の大き灯よ 長島衣伊子
銀座ここも都電なくなるマフラー購ふ 鈴木栄子
軍港へ貨車の影ゆく犬ふぐり 秋元不死男
軍用貨車染めて曠野の日が終る 細谷源二 鐵
啓蟄や全長伸べ伸べ快速車 百合山羽公 寒雁
鶏卵を市電で割りぬ啄木忌 攝津幸彦
月見草めざめて黒き貨車長し 殿村莵絲子 花 季
月見草客車一輛夜の駅に 桜井博道
憲法記念日をひた走る快速車 楠本憲吉
肩かけて押す空の貨車初仕事 久野よしお
見るかげもなき向日葵と貨車一つ 杞陽
見上ぐれば春満月をよぎる貨車 岡田治子
原爆忌市電無数の手を吊りて 今井 勲
枯野来ていつもの貨車とすれ違う 佐々木はるを
狐火を見しとふ貨車の車掌かな 有働 亨
五月火夫歯のみ涼しく機関車に 吉田未灰「半弧」
後の月機関車一両だけ走る 田中啓介
口赫っと開けて森ありラッセル車 依田明倫
向日葵に古き雨降る無蓋貨車 穴井太 原郷樹林
工場の疲れ市電に充ちてシャボン臭 林田紀音夫
工賃をまもり市電の隅にたつ 細谷源二 鐵
広島や市電に牡蛎の桶持ちて 星野立子
広島や市電に牡蠣の桶持ちて 星野立子
更けて又除雪車街をゆつくりと 深見けん二
港のはづれ貨車とかならず荒地野菊 宮津昭彦
港区の梅雨茫々と無蓋貨車 右城暮石 声と声
行きつ戻りつ貨車組む小駅雪の信濃 桜井博道 海上
黒き貨車夏野を分かちはるけしや 福田和子
黒き貨車来て重砲を積み走る 細谷源二 鐵
昆布の貨車と客車二両の根室線 大野林火
昆布の貨車と客車二輛の根室線 大野林火
砂漠灼け虫の如くに長き貨車 菅野イチ子 『花漆』
妻とエレベーターの急行に乗る春の宵 橋本夢道 『無類の妻』以後
妻みごもる秋森の間貨車過ぎゆく 金子兜太 少年/生長
三の酉都電残りて乾らぶ街 杉本寛
三鬼忌の大魚担がれ貨車の中 火村卓造
三十代静止の貨車の爽涼と 大井雅人
山からの風蒼涼と夜の貨車 大井雅人 龍岡村
山は覚めて寝てゐる貨車を静かに看る 藤後左右
山越ゆる長き無蓋車夜寒星 松崎鉄之介
山懐に溜る貨車音寒桜 鍵和田[ゆう]子 未来図
山手線に国電跳ねて三十三 阿部完市 証
残雪を崖裾に圧し貨車曲る 原田種茅
子規の忌の漆黒の貨車大きかり 秋山重子
市電くる開花予想の遅れつつ 杉野一博
市電すでに日盛りの音人形店 川端青踏
市電の中を風ぬけ葵まつり過ぐ 鈴木鷹夫
市電争議などあり団扇置く日かな 長谷川かな女 雨 月
獅子舞ひとり朝の都電に拾はれつ 岡田 貞峰
紫陽花や都電おほむね無人駅 岡村和舟
視外の顔暑くねむたき市電の座 石塚友二 方寸虚実
汐留や貨車の彼方の遠桜 館岡沙緻
七夕や岡崎止りの貨車に昼 北野平八
車掌のうしろ見えては雨の市電過ぐ 野澤節子
灼くるだけ灼けて空貨車動き出す 堀 青研子
若き軍馬貨車に積まれて怒る反る 細谷源二 鐵
首夏の家朝に深夜に貨車轟き 石田波郷
樹をもたぬ蝉鈍行の川一本 飯島草炎
秋つばめ旅終る貨車濡れて着く 木田千女
秋の夜の馬を看護りぬ貨車の中 稲葉光堂
秋雨や貨車ばかりなる王寺駅 大橋櫻坡子 雨月
秋暑しホームにあまる無蓋貨車 木下夕爾
秋日濃し汐留駅の貨車溜り 加藤佳子
秋風に客車一輛牽くけむり 石橋辰之助
秋風に客車一輛索くけむり 石橋辰之助 山暦
秋風やある日都電に乗ることも 鈴木真砂女 夕螢
秋夜遭ふ機関車につづく車輛なし 山口誓子
秋夕焼牛一頭の貨車行けり 杏中清園
終戦日戦友と奉納機関車触る 河秀風
終電といふ秋の灯のなかにをり 仁平勝
終電とは締切に似る冬の靄 鈴木栄子
終電に間ある雑閙三の酉 石塚友二 方寸虚実
終電の寒さ新聞拡げ合ふ 右城暮石 上下
終電の次ぎが始発や去年今年 馬場菊子
終電はとうに過ぎにし花筏 松本康司
終電や踏みて匂はす忘れ葱 加藤秋邨 まぼろしの鹿
終電初夏なり言葉澱んで発光し 高野ムツオ 陽炎の家
十勝野の奥へと冬の貨車の音 源 鬼彦
十六夜や一輛灯す貨車よぎり 堀口星眠 営巣期
重砲を貨車に積み赤き日へ向ふ 細谷源二 鐵
重連の機関車そして蕗の薹 小野希北
春の雲貨車に積まれし牛の瞳に 成瀬桜桃子
春暁や貨車の車輪の動かぬ鉄 榎本冬一郎 眼光
春月の貨車にゆつくり抜かれけり 田川飛旅子 花文字
春塵の近江に貨車を放ちけり 斉藤夏風
準急のしばらくとまる霞かな 原田 暹
初時雨客車片側かがやけり 加藤 耕子
初嵐白鳥のせた貨車のごとく 平北ハジム
除雪車にあかつきの天昏かりき 水原秋桜子
除雪車にさらわれし人形のこと 対馬康子 愛国
除雪車に沖の鴎がたち騒ぐ 加藤楸邨
除雪車に雪降る海がうごきくる 加藤楸邨
除雪車に目覚て雪を掻きにけり 遠藤 孝作
除雪車のあとさんさんと子が溢れ 岸田稚魚
除雪車のそこのけそこのけお通りだい 高澤良一 随笑
除雪車のたむろしている駅に着く 福永鳴風
除雪車のたむろしてゐる駅に着く 福永鳴風
除雪車のプロペラ雪を噛みてやすむ 橋本多佳子
除雪車の響きにゆるるピエロかな 室谷安早子
除雪車の駆けづり湖の町眠る 伊東宏晃
除雪車の光芒闇を開き来る 金箱戈止夫
除雪車の轟々と夜を抉じ開ける 佐藤靖美
除雪車の鎖は太し巻かれたる 長谷川櫂 古志
除雪車の傷だらけなりすれちがふ 八木林之介 青霞集
除雪車の折返し点峡せばむ 中戸川朝人 尋声
除雪車の先導なせり恵方道 小林雪雄 『海明け』
除雪車の地ひびき真夜の胸の上 黒田桜の園
除雪車の通りし後の雪を掻く 關 茂子
除雪車の通りし道に初明り 関 秀子
除雪車の働く音の昏れて来し 山田弘子 螢川
除雪車の力も及び難しとや 中田みづほ
除雪車の力尽きてはいこふ駅 水原秋桜子
除雪車を降り埋めむと雪舞へり 水原秋櫻子
除雪車を雪の中より掘り出しぬ 小沢比呂子
除雪車を優先させて救急車 津田清子
小廻りの利く除雪車も出動す 山田弘子
焼鳥や都電の軋り蹠より 木村川至
障えぎるは広島の忌の貨車の胴 徳弘純 非望
乗りてすぐ市電灯ともす秋の暮 鷹羽狩行 誕生
乗りてすぐ市電燈ともす秋の暮 鷹羽狩行
信濃森上春雪のなかの貨車 金田咲子 全身
新巻と青竹と貨車続きけり 斉藤夏風
人の家辞し市電の隅にこの冬日 香西照雄 対話
人下りし市電朧の中に揺れ 橋本鶏二
人間機関車全力疾走終ゆ霜旦 高澤良一 宿好
甚平の紐に都電の定期券 館岡沙緻
吹雪く夜は機関車の火のごと林檎磨く 竹鼻瑠璃男
水仙や貨車通過音揺曳す 湘子
水仙花引き込み線の貨車錆びる 橋本都代子
成人の日をくろがねのラッセル車 成田千空
西日中肩で押す貨車動き出す 西東三鬼
西明るし市電ひたすら雷雨衝く 右城暮石 声と声
青葉風都電跡なる切通し 長 カツコ
石炭貨車つやつや過ぎて冬日や大火焔 金丸鐵蕉 『動輪』
積乱雲野に湧き野に湧き貨車灼くる 相馬遷子 山国
赤い旗振る炎天の貨車押せり 萩原麦草 麦嵐
切山椒買うて早稲田に都電待つ 奈良英子
切迫正しくわが胸残す雪の貨車 赤尾兜子
雪に火をこぼし機関車は夜をあとすさる 栗林一石路
雪の峡客車一輛貨車に蹤き 相馬遷子 山国
雪の宿貨車の連結みてゐたり 鈴木しづ子
雪の中急行「あじあ」すれちがふ 大場白水郎 散木集
雪空のものうくて貨車うごき出す 桂信子 黄 炎
雪国へ苛性ソーダを運ぶ貨車 五島高資
雪国へ貨車は青菜を積み込める 館岡沙緻
雪積む貨車酔い痴れた手は妻の肩 金子兜太 少年/生長
雪嶺と激浪のあひ貨車長し 吉野義子
雪嶺へひびき丸太を貨車積みす 榎本冬一郎 眼光
蝉鳴ける貨車やそのまま動き出す 加藤秋邨 野哭
戦にゆく馬と人貨車に眠る 細谷源二 鐵
草いきれ貨車の落書き走り出す 原子公平
草いきれ貨車の落書走り出す 原子公平
草いろの市電のむかし雲の峯 友岡子郷
霜の貨車弾薬庫より引き出さる 木村里風子
霜の機関車の重圧にたえている車輪 栗林一石路
息にくもる特急白き椅子カバー 右城暮石 声と声
束縛を蹴散らし除雪車の夜明け 櫂未知子 貴族
卒業の歌詞を市電の中にうたふ 岩崎照子
卒業歌貨車からは豚がおろされる 加倉井秋を
多喜二忌の市電に走り追ひつくも 本多静江
打水を車体に受けて市電走る 右城暮石 声と声
待避線に急行待てり彼岸花 田中冬二 俳句拾遺
台風の駅を出てゆく豚の貨車 林 民子
台風去る市電市バスが動き出し 茨木和生 木の國
大いなる機関車濡るる花の雨 中村汀女
大雪の都電とゞまる旧居前 水原秋櫻子
大年の闇があと追ふ貨車の尻 成瀬桜桃子
大年の貨車が家を揺る世の歪み 岩田昌寿 地の塩
大兵を送り来し貨車灼けてならぶ 長谷川素逝 砲車
単線の客車に一人冬の海 今田利子
淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく 加藤秋邨 まぼろしの鹿
炭切る母貨車にひかりを奪はれつゝ 磯貝碧蹄館 握手
短日の貨車押しあひつつ停る 木下夕爾
短日や汽笛するどき埠頭貨車 五十嵐播水 埠頭
短夜や庇の下に埠頭貨車 五十嵐播水 埠頭
端居更く機関車の抜く蒸気音 安江緑翠 『枯野の家』
地の雪と貨車のかづきて来し雪と 木下夕爾
地下を出て野を立春の快速車 足立靖子 『梨花』
地響きは貨車焦れ泣きは裸子ぞ 中島斌男
致命祭市電ゆつくり坂くだる 成田淑美
中年の男は不意に年をとる貨車ゆっくりと昼の遠景 岡部桂一郎
昼寝覚む足裏に貨車のひびきと日 原田種茅 径
虫の闇放たれて来し貨車停る 内藤吐天
朝寒の市電兵馬と別れたり 石田波郷
朝焼へ朝焼へ兵の貨車退る 中島斌男
町裏に都電の軋む飾売 藤木竹志
長き貨車警笛と来る山背風 仲丸くら
長き長き春暁の貨車なつかしき 加藤秋邨 穂高
鳥雲に通り過ぐまで貨車を見て 内田美紗 魚眼石
鳥渡る鳥よりほそき貨車の笛 高杉杜詩花
津軽海峡越ゆる貨車より蜂こぼる 加藤隆二
鶴川は急行とまらず桂郎忌 草間時彦
泥寒し市電終点より先は 宮津昭彦
鉄橋に貨車さしかかる大花火 山崎 朋子
天高し鉄橋よりも長い貨車 宮城白路
転車台に腑抜け機関車冬うらら 桂樟蹊子
田*ひばりの地をゆるがせて長き貨車 伊藤いと子
都さす貨車が連なり鰯雲 桂 信子
都電まだのこる王子や酉の市 長屋せい子
都電一塊煌々たるは露けしや 岡本眸
冬ざれやうらぶれ都電ひた走り 瀧春一
冬の深夜貨車音とおる家の幅 田川飛旅子 花文字
冬の深夜貨車音とほる家の幅 田川飛旅子
冬の水暮れては流す都電の灯 石塚友二 光塵
冬雲に向けてえいえいと貨車を押す 加藤楸邨
冬凪や鉄塊として貨車憩ふ 木下夕爾
冬夕焼電気匂つて市電来る 戸板幽詩
東風の山に覆はれ貨車の覚めたけはひ 藤後左右
東風の山の羽がひに貨車は身を振はす 藤後左右
東風の山の山ふところに泣き寄る貨車 藤後左右
東風の山はねむく貨車は走り廻る 藤後左右
東風の山は冷めたい夜の貨車を包む 藤後左右
東風の山よ夜具から貨車が這出したよ 藤後左右
東風の樹を貨車に積み込み眠れぬ山 藤後左右
東風の樹を都に送り貨車は冷めたい 藤後左右
灯蛾と醒めをりぬ快速車の孤客 楠本憲吉「孤客」
豆ランプ貨車に守り軍馬と揺られ 細谷源二 鐵
働く詩人の会合の家貨車にゆらる 古沢太穂 古沢太穂句集
特急といふも単線山桜 大久保白村
特急に乗つてきたるに立泳ぎ 金子雄山
特急の冷房効きて帽子脱ぐ 鍵岡勉
豚の貨車霜に停れり湯気洩れて 田川飛旅子 花文字
鈍行のなかなか発たぬ花の駅 鈴木鷹夫 大津絵
鈍行の隅にひとりの旅の神 丸山海道
鈍行の中まで稲田の照り返し 高澤良一 随笑
鈍行の膝に童女や夕花野 加藤耕子
鈍行もよし駅毎の刈田見て 若月一敬
鈍行も時に疾駆す葡萄郷 北野民夫
鈍行や海と平らに瑞穂の田 成田千空
鈍行を愛し冬野へ身をゆだぬ 金箱戈止夫
南蛮の花やセメント貨車通る 永方裕子
二番摘みの棉こぼしゆく無蓋貨車 毛塚静枝
日だまりに貨車溜め秋も硬質に(鶴見操車場) 河野南畦 『風の岬』
日記買ふ貨車連結の音の書肆 大岳水一路
日雷とおもえば二輌だけの貨車 渋谷道
日輪に除雪車雪をあげてすすむ 橋本多佳子
梅雨の駅貨車の全長動き出づ 西村和子
白日傘貨車を数ふることもなし 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
白露や個性は暁の一つの貨車 大井雅人 龍岡村
麦わら帽貨車のあとから風一団 友岡子郷 遠方
麦秋や貨車に飛びつく連結手 松本俊介(春燈)
晩秋の貨車にこくりと馬の首 原コウ子
晩春の雨に光るは黒き貨車 南 椏琅
非命多喜二北風の機関車煙伏す 成田千空 地霊
百年橋除雪車の来て村つなぐ 田中英子
氷雨伝う玻璃ごしに貨車よれよれに 田川飛旅子 花文字
氷雨来る財閥の名が機関車に 武田伸一
病む母に霜夜の市電閃光す 丸山哲郎
不幸なる生ひ立ちに似て冬の貨車 大牧 広
埠頭貨車一つ離れて冱ててをり 五十嵐播水 埠頭
腐草蛍に不揃ひの貨車連ね 山田静枝(青樹)
風の中唾ためて貨車見すごせる 林田紀音夫
風の中鈍行で行きさがす柩 阿部完市 絵本の空
覆われて貨車に角ばるもの北風へ 田川飛旅子 花文字
文化の日市電で回る子規の町 松本隆吉
墓地は秋頷き走りの小都電 石川桂郎
暮早し機関車刻々黒さ増す 永田耕一郎 氷紋
奉公の頃の市電に初地蔵 水野遼 『鑿』
豊年や窓枠太き鈍行車 岡本眸
北へ向く貨車は野分に拉致される 丸山嵐人
北を指し黒みだれなき除夜の貨車 大井雅人 龍岡村
北限に墨引くごとし去年の貨車 大郷石秋
北国へ発つ機関車の胴黒く 島田青蛾
睦月尽終電に鳴る打点鐘 佐々木ゆずる
満開の桜機関車独走す 津田清子 二人称
密閉されておのれの復る貨車西日 原田喬
無蓋貨車砂利満載や年暮るる 杉山満保
無蓋貨車驀進喜雨にしぶき上ぐ 依田明倫
無蓋車の製氷卸す眩暈かな 萩原麦草 麦嵐
無語の声一塊となり貨車となる 三谷昭 獣身
霧さむき函館港に貨車動く 田川飛旅子 花文字
霧の操車場機関車の灯に箸使へり 中島斌男
名月の丸太を積んで貨車つきぬ 飴山實
明治草三日うごかぬ貨車ひとつ 丸山哲郎
木の枠であつて市電の冬の蝿 杉野一博
木枯や熱き機関車の辺を過ぐる 福田蓼汀 山火
野に出でて白き翼のラッセル車 竹鼻瑠璃男
野焼の焔むら嶺に澄みて快速車 石原八束 空の渚
柳散り雨の中より都電来る 大木格次郎
揚花火貨車くろぐろと迫るかな 中戸川朝人 残心
揺れに揺れ都電荒神輿のごとし 小川背泳子
陽炎へどかつと貨車の割つて入る 丸山了
来るを信じるくらがりの硫酸貨車 上月章
雷去りて丸太積む貨車現れし 茨木和生 木の國
落葉降り華燭の車都電越す 石塚友二 光塵
梨売りの頬照らし過ぐ市電の灯 沢木欣一
離れ貨車いつも一輛梅雨埠頭 亀井糸游
陸蒸気かのナキウサギ泣かしめむ 攝津幸彦
葎茂る港埠の貨車は扉を閉さず 秋元不死男
流氷や三人で行くあかごの葬 蒲生貨車夫
例えば自転車 機関車よりも速く 木村聡雄
冷しラムネ千住の貨車の通りけり 龍岡晋
冷ゆる夕日遠き貨車より人顔出す 古沢太穂 古沢太穂句集
露の貨車病める軍馬を下ろし発つ 皆吉爽雨
労働祭市電あふるゝにまかせたり 米沢吾亦紅 童顔
佛蘭西の夏時間の野を快速車 八木林之介 青霞集
凩や夜襲のごとく貨車過ぎる 鈴木 映
曼珠沙華の群へはぐれる月の貨車 仁平勝 花盗人
夾竹桃機関車老いて捨てらるる 山本朱鷺男
涸れし川わたる市電の音をたて 小路智壽子
絽羽織の幇間の居る都電かな 都筑智子
蟷螂やかはたれ時の長き貨車 川上まつえ
蟷螂よ野の国を行く昼の貨車 加川憲一
蠢蠢と市電近づくのどけしよ 八條凛子
颱風外れ月夜の貨車として進む 桂信子 黄 炎
驟雨に洗はる都電屋根からすつぽり青 磯貝碧蹄館 握手
鰤の眼の海色暁の鮮魚貨車 宮坂静生 青胡桃
鳰ちかく湖駅除雪車汚れたり 宮武寒々 朱卓

電車 汽車 列車 以外 補遺

いづくより雪かぶり来し貨車すれちがふ 篠原梵 年々去来の花 雨
いわし雲音ひびき発つ貨車二十 藤田湘子 途上
かりがねや軍港かくす貨車の胴 秋元不死男
かをりやんの上ゆく貨車の屋根にも兵 長谷川素逝 砲車
ここだ照る迷彩貨車はゆき戻らず 三橋敏雄
コスモスに白い煙の機関車が 右城暮石 句集外 昭和十一年
コスモスをはなれぬ蝶と貨車群と 中村汀女
さいはての貨車を塩もて充たしをり 飴山實
サボ市電物価騰りし街へ放つ 細谷源二 鐵
すれ違ふ梅雨の貨車実に長し 右城暮石 句集外 昭和三十八年
ソプラノ聞けり貨車揺る家に年越えて 藤田湘子 途上
ヂープ快速霜の下より埃立つ 中村草田男
つくし生ふ貨車の車輪ゆ夕日洩れ 松崎鉄之介
ともしびもなく貨車とほる梅雨の月 山口青邨
ひえびえと手摺見おろせば犇く貨車 古沢太穂 三十代
まっ青な市電の底でひと恋しき 伊丹三樹彦
まろかなる青き丘越ゆ快速に 日野草城
むし暑く馬のにほひの貨車でゆく 長谷川素逝 砲車
ゆきちがふ枯野の貨車をいつまで見る 加藤秋邨
わが左右にろしあをとめごら市電待つ 伊丹三樹彦
わが庭に貨車置きたらば虫棲まむ 安住敦
われを堰く貨車ながながと風邪心地 伊丹三樹彦
芦ちかく機関車のをり霧が吹く 大野林火 冬青集 雨夜抄
安房は山の砂無蓋車に彼岸花 古沢太穂 捲かるる鴎
一両の貨車がもとなるちちろ虫 山口誓子
芋旱り機関車こぼす太き息 角川源義
雨の貨車過ぎをり雨の猫じやらし 石田波郷
姥祀る幟を見過ぐ暑き市電 佐藤鬼房
厩当番貨車にとどける日にねむし 細谷源二 鐵
厩当番貨車に曠野の日を見たり 細谷源二 鐵
燕をまぶしみ貨車の脇通る 大野林火 海門 昭和十三年
遠目には貨車美しき枯野かな 高田風人子
横浜の青き市電にものわすれ 渡邊白泉
夏の闇火夫は火の色貨車通る 西東三鬼
夏涸れの河へ機関車湯を垂らす 西東三鬼
火の粉とぶ火事に市電の珠数つなぎ 右城暮石 上下
火蛾と醒めおりぬ快速車の孤客 楠本憲吉 楠本憲吉集
貨車からも藁を垂らして雀の巣 鷹羽狩行
貨車これの窓のみ兵に寒月光 伊丹三樹彦
貨車とまる駅にあらざる霜の崖 橋本多佳子
貨車にあけぼの丘上のたらの芽も 飯田龍太
貨車に灼けしレール踰えきてなほ病む身 野澤節子 未明音
貨車のかげ夏浪白くあがるなり 大野林火 海門 昭和十三年
貨車のかず見せて徐行の桃の村 鷹羽狩行
貨車の闇小さき鏡に霜明くる 橋本多佳子
貨車の屋根いくつ越え来し蝶の翅 鷹羽狩行
貨車の音ともなひ来る夜番かな 中村汀女
貨車の間の夜空広しや南吹く 藤田湘子 途上
貨車の扉の隙に飯喰う雨期の顔 飴山實 おりいぶ
貨車ひとつ九月の魚を運びゆけり 佐藤鬼房
貨車ゆきぬ地上寒燈青きゆゑ 山口誓子
貨車駅に貨車なく秋の蝉曇る 橋閒石
貨車押して片目は枯野見つつあり 加藤秋邨
貨車過ぎる音の朧や妻の唇 草間時彦 中年
貨車寒し百千の墓うちふるひ 石田波郷
貨車五十曳きて青野を左右に断つ 草間時彦 中年
貨車降りて兵ら糞まる土凍てたり 伊丹三樹彦
貨車黒くぬられて天に寒冷塊 松崎鉄之介
貨車長しわれのみにある夜の遮断機 金子兜太
外濠は蒼し市電に沿ひなれぬ 渡邊白泉
葛の花都電本郷の坂上る 松崎鉄之介
寒き夜の貨車に車掌の燈はあれど 山口誓子
寒き夜の貨車の犢は寝もいねず 山口誓子
寒き夜の貨車駐らんとしつゝあり 山口誓子
寒き夜を機関車走り出でむと動く 三橋敏雄
寒の闇体がくんと貨車止る 橋本多佳子
寒月光背後見ずとも貨車通る 桂信子 晩春
寒雀遊び空貨車溜りをり 石塚友二 光塵
寒星のひかりにめざめ貨車の闇 橋本多佳子
寒星を満載無蓋貨車停る 鷹羽狩行
寒夜子の玩具の機関車汽笛あぐ 松崎鉄之介
干布団都電の音にふくらめり 飯島晴子
缶ビール快速車窓やや傾ぎ 百合山羽公 樂土以後
雁や市電待つにも人跼み 大野林火 冬雁 昭和二十二年
雁ゆくやたちまち暮るる貨車の胴 草間時彦 中年
機関車がすぐ下に来て鯉幟 鷹羽狩行
機関車が身もだへ過ぐる寒き天 西東三鬼
機関車とそれはすつかり別ものの草にゐるかまきり 中川一碧樓
機関車にゐる三人の冬の夜 山口誓子
機関車に雲や鴉や秋の山 飯田蛇笏 霊芝
機関車に越の野は虹立ちやすし 草間時彦 中年
機関車に助手穂芒を弄ぶ 山口誓子
機関車のいかにも黒き五月かな 山口誓子
機関車の火屑散る闇曼珠沙華 伊丹三樹彦
機関車の寒暮炎えつつ湖わたる 山口誓子
機関車の車輪竝びたる雪催 三橋敏雄
機関車の蒸気ゆたかに霜の駅 飴山實 おりいぶ
機関車の誓子も寝しや天の川 渡邊白泉
機関車の大快き夜寒かな 山口誓子
機関車の単車行くのみ野のみどり 山口誓子
機関車の底まで月明か 馬盥 赤尾兜子 歳華集
機関車の煤降る葡萄枯れし軒 木村蕪城 寒泉
機関車の皮はがれゆき秋の暮 加藤秋邨
機関車の瘤灼け孤り野を走る 西東三鬼
機関車はむかうに黒し稲雀 山口青邨
機関車は裾も湯げむり初詣 山口誓子
機関車をゆかしめ闇を見てゐたり 三橋敏雄
機関車を前後に話すことなき父子 橋閒石 荒栲
機関車を離せし後尾夜寒へ抜け 山口誓子
機関車疾駆三方青き地平線 草間時彦 中年
稀に蝶貨車の連結音午報音 石川桂郎 含羞
逆行の機関車霧に荒き息 右城暮石 句集外 昭和三十七年
急行の一駅の間の冬夕焼 松崎鉄之介
急行の停らぬ金魚田の駅よ 阿波野青畝
求職の眼にたそがれの貨車停る 伊丹三樹彦
狂ひ声して炎昼の貨車長し 鷲谷七菜子 銃身
狭間星すずし急行一過駅 上田五千石 森林
極月の旅併走の貨車長し 岡本眸
軍用貨車染めて曠野の日が終る 細谷源二 鐵
啓蟄や全長伸べ伸べ快速車 百合山羽公 寒雁
茎立ちや無蓋車二十余輌過ぎ 鷹羽狩行
月代のひろごり行けり貨車過ぎて 草間時彦 中年
月明や首出して嘶く貨車の牛 加藤秋邨
肩で押す貨車に冬暁朱の一円 佐藤鬼房
元朝の市電市バスの動けるよ 右城暮石 句集外 昭和三十七年
枯るる木々母を市電に凭らしむる 安住敦
枯野ゆく貨車に日当る鉄路あり 桂信子 草影
向日葵陽に汽罐車貨車を牽き来る 三橋鷹女
工賃をまもり市電の隅にたつ 細谷源二 鐵
広島や市電に牡蠣の桶持ちて 星野立子
更けて又除雪車街をゆつくりと 深見けん二
港区の梅雨茫々と無蓋貨車 右城暮石 声と声
行年の障子昃りぬ貨車煙 石田波郷
香水の香あり一貨車過ぐを待つ 藤田湘子 途上
黒き貨車走る渋民村稲穂波 山口青邨
黒き貨車来て重砲を積み走る 細谷源二 鐵
黒シート被し留置貨車冬ぬくし 右城暮石 句集外 昭和五十八年
黒塀のごとく貨車ゆく秋の風 山口青邨
昆布の貨車と客車二輛の根室線 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
妻みごもる秋森の間貨車過ぎゆく 金子兜太
歳晩や市電廃れて軌を除けず 鷹羽狩行
桜餅買ふや市電が又通る 高田風人子
山越ゆる長き無蓋車夜寒星 松崎鉄之介
燦めく白い貨車の刹那刹那を渇く夜 赤尾兜子 蛇
市電より降ろさる火事が間近くて 右城暮石 句集外 昭和三十九年
視外の顔暑くねむたき市電の座 石塚友二 方寸虚実
車掌のうしろ見えては梅雨の市電過ぐ 野澤節子 未明音
灼けし貨車老兵の帽あたらしき 西東三鬼
若き軍馬貨車に積まれて怒る反る 細谷源二 鐵
首夏の家朝に深夜に貨車轟き 石田波郷
首細き子がみる旱の貨車の群 金子兜太
受験季の貨車古びたるままの色 廣瀬直人
秋の暮密閉の貨車まだ発たぬ 秋元不死男
秋晴や御勅諭誦す貨車の中 石田波郷
秋日燃え落つる市電に立疲れ 石田波郷
秋風やある日都電に乗ることも 鈴木真砂女 夕螢
秋夜遭ふ機関車につづく車両なし 山口誓子
終電に間ある雑閙三の酉 石塚友二 方寸虚実
終電のスパーク青き送り梅雨 鷹羽狩行
終電の寒さ新聞拡げ合ふ 右城暮石 上下
終電の灯の遠のきて雪女郎 鷹羽狩行
終電や踏みて匂はす忘れ葱 加藤秋邨
重砲を貨車に積み赤き日へ向ふ 細谷源二 鐵
春の都電光りて中の夫見えず 岡本眸
春陰や特急富士の尾が消ゆる 日野草城
春寒の客車煤けてゐたりけり 橋閒石 朱明
春暁曳く一貨車一本の大き欅 加藤秋邨
除雪車に雪降る海がうごきくる 加藤秋邨
除雪車のあとさんさんと子が溢れ 岸田稚魚 筍流し
除雪車のきらめく燈にもつもる雪 水原秋櫻子 秋苑
除雪車のプロペラ雪を噛みてやすむ 橋本多佳子
除雪車の日暮れて着きし月寒(ツキサップ) 渡邊白泉
除雪車の力尽きてはいこふ駅 水原秋櫻子 秋苑
除雪車を据ゑて通行禁止せり 右城暮石 天水
除雪車を優先させて救急車 津田清子
乗りてすぐ市電灯ともす秋の暮 鷹羽狩行
城の濠市電近くてラムネ売る 右城暮石 句集外 昭和二十九年
信号手青旗に除雪車をゆかす 橋本多佳子
新樹明けて長き貨車駅に停りをり 村山故郷
新緑や市電の床に魚籠の濡れ 鷹羽狩行
真夜中の枯野つらぬく貨車一本 西東三鬼
身も胸も野分の貨車に打ち揺られ 加藤秋邨
人の家辞し市電の隅にこの冬日 香西照雄 対話
人波の市電をえらみ秋の風 中村汀女
垂れし手に灼け石掴み貨車を神す 西東三鬼
水仙や貨車通過音揺曳す 藤田湘子 途上
西日中肩で押す貨車動き出す 西東三鬼
西明るし市電ひたすら雷雨衝く 右城暮石 声と声
石狩川露の原木貨車が沿ふ 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
石勝に市電をとどむ秋朝々 石田波郷
積乱雲野に湧き野に湧き貨車灼くる 相馬遷子 山国
切迫正しくわが胸残す雪の貨車 赤尾兜子 蛇
雪の峡客車一輛貨車に蹤き 相馬遷子 山国
雪の野を多彩のコンテナ貨車走る 山口誓子
雪を噛み火夫機関車の火を守る 加藤秋邨
雪解風母の墓参は都電に乗り 安住敦
雪空のものうくて貨車うごき出す 桂信子 女身
雪国の旅や先ゆく機関車見え 森澄雄
雪国をがくんがくんと鈍行車 右城暮石 天水
雪積む貨車酔い痴れた手は妻の肩 金子兜太
蝉鳴ける貨車やそのまま動き出す 加藤秋邨
戦にゆく馬と人貨車に眠る 細谷源二 鐵
煽られし旱の紙片特急追ふ 伊丹三樹彦
双つ眼の貨車が引きゆく初夏の闇 佐藤鬼房
蒼い火花撒いて特急喪の僕乗せ 伊丹三樹彦
息にくもる特急白き椅子カバー 右城暮石 声と声
打水を車体に受けて市電走る 右城暮石 声と声
大いなる機関車濡るる花の雨 中村汀女
大阪城市電の窓に照るから梅雨 村山故郷
大雪の都電とどまる旧居前 水原秋櫻子 帰心
大兵を送り来し貨車灼けてならぶ 長谷川素逝 砲車
大木の下にとどまる夏の貨車 飯田龍太
但馬仔牛撫でて惜しみて貨車送り 山口誓子
単線待避の 雪片あそぶ 貨車の胴 伊丹三樹彦
淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく 加藤秋邨
炭窯の口機関車の口なるよ 山口誓子
団扇貼る目をあげ急行いよ一号 清崎敏郎
築港に向ふ市電の大夕焼 右城暮石 句集外 昭和二十八年
竹煮草まだ動かねば貨車の露 飯田龍太
朝寒の市電兵馬と別れたり 石田波郷
朝焼や貨車突放す墓の上 石田波郷
町中に麦熟れて貨車錆びはてて 加藤秋邨
長き貨車その炭車両薪車両 山口誓子
長き貨車ゆきて寒雲を厚くせり 藤田湘子 途上
長き長き春暁の貨車なつかしき 加藤秋邨
鳥雲に前うしろなき無蓋貨車 鷹羽狩行
槌打音貨車の片蔭つたひゆく 草間時彦 中年
吊橋の真上にかかる春の貨車 飯田龍太
天蓋に霜貨車の豚駅泊り 津田清子 礼拝
都電に乗る梅雨の巷のしたしさに 中村草田男
都電来る又都電来る夕立中 星野立子
都電路に剛き夏草くびくくれず 秋元不死男
都電老いぬ新緑に窓開け放ち 岡本眸
冬の水暮れては流す都電の灯 石塚友二 光塵
冬の露地裏大きな機関車きてとまる 加藤秋邨
冬河原貨車の火の粉の吹き散りぬ 橋閒石
冬夜停車貨車に越されてゐたりけり 大野林火 青水輪 昭和二十四年
冬靄濃し都電終点より橋せり上ぐ 松崎鉄之介
凍る夜へ没しゆく貨車引張られ 三橋敏雄
豆ランプ貨車に守り軍馬と揺られ 細谷源二 鐵
特急に求職の腰浮き通し 伊丹三樹彦
特急の明色瞬時田植の尻 伊丹三樹彦
鈍行に一等車あり唐黍を食ふ 山口青邨
鈍行の板の背もたれ柿日和 岡本眸
入の家辞し市電の隅にこの冬日 香西照雄
煤け雀よ貨車切る速さに馴れて鳴く 古沢太穂 火雲
麦の秋貨車牽き来しを立ち目守る 山口誓子
麦秋や或る日都電に人語絶え 秋元不死男
晩涼の貨車消えゆくは紐に似る 岡本眸
病む友へ往く、特急の疾きに乗り 日野草城
病院機枯野に貨車を見失ふ 伊丹三樹彦
埠頭貨車動きし後の秋の蝶 橋閒石 雪
埠頭地区市電西日を折り返す 右城暮石 句集外 昭和三十七年
分岐点たる駅貨車の裾氷柱 古沢太穂 捲かるる鴎以後
片陰ゆくつひに追ひくる市電なし 中村草田男
返り花鉄橋をいま貨車の列 飯田龍太
墓地は秋頷き走りの小都電 石川桂郎 含羞
豊年や窓枠太き鈍行車 岡本眸
房暗し迷彩を貨車の外にせり 三橋敏雄
満開の桜を留置貨車かくす 右城暮石 句集外 昭和五十二年
満開の桜機関車独走す 津田清子
満人のいきれ市電に暮愁あつき 伊丹三樹彦
霧の夜の貨車来て花の荷を降す 能村登四郎
椋鳥や北国へ発つ貨車そろう 飴山實 おりいぶ
名月の丸太を積んで貨車つきぬ 飴山實 おりいぶ
迷彩貨車に日を見ずてゆく兵寝たり 三橋敏雄
迷彩貨車車輪をも妖にいろどれる 三橋敏雄
迷彩貨車赤き日の出をよぎり過ぎる 三橋敏雄
綿虫や貨車が通ればその色に 岡本眸
綿虫をつけて京都の市電走る 右城暮石 句集外 昭和三十六年
盲童子しばらく貨車に横断られ 三橋敏雄
木枯や熱き機関車の辺を過ぐる 福田蓼汀 山火
野分せり貨車に揺らるる夜の闇 藤田湘子 途上
柳散り掘端の都電なくなりぬ 村山故郷
友と見る木蓮貨車にさへぎらる 細見綾子
来し方や寒の没日と無蓋車と 岡本眸
落葉降り華燭の車都電越す 石塚友二 光塵
立春の貨車よりおろす砂利一荷 亭午 星野麥丘人
冷ゆる夕日遠き貨車より人顔出す 古沢太穂 古沢太穂句集
俘虜貨車の日覆はためき迅走す 平畑静塔
俘虜貨車の馬月光の地に降りぬ 平畑静塔
曼珠沙華長き貨車ゆき眠くなる 森澄雄
杳き日の獅子舞胸を開けに来る 佐藤鬼房
颱風外れ月夜の貨車として進む 桂信子 女身
驛寒し機関車の汽罐見ゆれど噴かず 三橋敏雄

by 575fudemakase | 2018-01-29 13:02 | 無季 | Trackback | Comments(0)

汽車 列車 の俳句

汽車 列車 の俳句

汽車 列車

槇林横顔でゆく盆の汽車 大峯あきら
鷄頭のうしろを通る荷汽車哉 鶏頭 正岡子規
鶯や又この山も汽車の音 正岡子規
鶯やこの山もまた汽車の音 鶯 正岡子規
鶯の遠のいてなく汽車の音 鶯 正岡子規
鮟鱇鍋夜汽車を灯す海の音 伊藤淳子
鞦韆や舞子の駅の汽車発ちぬ 山口誓子
霙るるや暁の列車を切りはなす 斎藤佳代子
雉子猟の人おろしては汽車動く 大場白水郎 散木集
蜩のこゑ振る山に汽車停る 百合山羽公 故園
茱萸翳す人も揉まるゝ帰路の汽車 石塚友二 方寸虚実
茉莉花の散り込む闇や夜汽車出づ 朝吹英和
穗薄の顏かく汽車の小窓哉 薄 正岡子規
稻の香や野末は暮れて汽車の音 稲 正岡子規
稻の香や汽車から見ゆる法隆寺 稲 正岡子規
瞻のかぎり遺骨寒夜の汽車を待つ 中島斌男
煖房に汗ばむ夜汽車神詣 杉田久女
煌々と夜汽車動かず雪崩来て 岡本まち子
櫻見にひるから走る夜汽車かな 八田木枯
椽側へ出て汽車見るや冬籠 冬籠 正岡子規
悴みて汽車に眠りぬあすも旅 成瀬桜桃子 風色
喘ぐ汽車満月の梨花寐しづめり 宮武寒々 朱卓
曼珠沙華逃るるごとく野の列車 角川源義
曼珠沙華師を見舞はむに汽車おそし 堀口星眠 営巣期
曼珠沙華汽車ゆくとき勢ひたつ 川口重美
凩や列車降りなば妓買はむ 原石鼎
凩や夜汽車の箱をよせあつめ 杉野一博
凩に汽車かけり行く別れ哉 凩 正岡子規
藁の村へ灯を消しに行く終列車 穴井太
話声に充ち汽車昏し雪が来て 飴山實 『おりいぶ』
六畳ガス水道完備哀愁列車のあいつ 仲上隆夫
露夜汽車わが鉛筆の目ざめをり 池田蝶子 『草絵』
露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな 摂津幸彦
露草や朝一番の汽車も露 百合山羽公
露草や高原の汽車唯二輌 瀧春一
露草の高原の汽車唯二輛 瀧 春一
露すずし真黒の汽車牧をきる 石原舟月
路地裏を夜汽車と思ふ金魚かな 摂津幸彦
蓮咲くや幻想列車通りすぎ 高田律子
列車来るまでコスモスと吹かれおり 松橋与志彦
列車待つ人みな無口雪時雨 長久保恵美
列車待つ我に蝗よそよ風よ 小島國夫
列車待つあきつの骸踏まぬやう 加藤 耕子
列車徐行麦の一本一本鋭し 渋谷道
列車出しあとの雪掻き駅員等 高浜年尾
列車今四月の櫟林行く 江藤 都月
列車行くりんごに触れんばかりかな 浅水明子
列車快走す新緑の防雪林 内藤吐天 鳴海抄
列車音稲田をキタカタキタカタと 高澤良一 石鏡
列車すっ飛ぶ暗き尾灯の年終わる 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
列車いま全速妻へ初電話 有働 亨
列車いま金色となり稲の国 斎藤康子
鈴蘭や汽車は登りをつゞけゐる 芳野金太郎
冷凍みかん齧り旅路の汽車ぽっぽ 高澤良一 寒暑
輪飾りの今年は汽車に揺るゝ家 久米正雄 返り花
涼しさに居眠り行かん汽車の中 会津八一
旅商人ばかりの汽車や麦の秋 成瀬桜桃子
旅終る列車都心へ暮の春 山田閏子
旅がまだ長い夜汽車で丸薬をたべてゐる シヤツと雑草 栗林一石路
流星のつづけさまなる終列車 清水昇子
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本 眸
立冬の汽車踏切に湯をこぼす 亀井糸游
陸橋に汽車にくゞられ桃投げたし 川口重美
陸奥暮春婆が杖ひく汽車の中 岸田稚魚
里神楽森のうしろを汽車通る 高浜虚子
梨食むや汽車の全長見晴らして きくちつねこ
落穂拾ひ見しより汽車は暮れにけり 皆吉爽雨
落第をまぬがれかくは汽車にあり 下村梅子
陽炎や列車の中を速歩き 永末恵子
踊の灯幾つも見つつ北へ汽車 岡田飛鳥子
葉桜が手に触れさうに列車くる 池田賀代子
揺れやまぬ夜行列車に紺碧の老師 金子兜太
余部の鉄橋渡る雪見汽車 関口 勉
夕立の去りし紀北を煙汽車 右城暮石 上下
夕東風や川尻わたる列車音 進村五月
夕東風にしたがふごとし発つ汽車も 宮津昭彦
夕焼を睫に溜めて汽車にゐる 三好潤子
夕焼け汽車貯へし蒸気一度に吐く 宮坂静生 青胡桃
夕桜田端の汽車の聞えける 大場白水郎 散木集
夕桜やがて夜汽車となる窓に 鈴木鷹夫 千年
夕汽車のこだまの中の家愛す 金子皆子
夕顔の実に汽車の音川の音 知久芳子
遊牧のごとし十二輛編成列車 金子兜太 遊牧集
誘蛾燈汽車を眺めて未だつかず 松藤夏山 夏山句集
友とその新妻春の汽車こだま 友岡子郷 遠方
野分中夜汽車の如き療舎の灯 清水基吉 寒蕭々
野分あと夜の汽車海辺過ぎつつあり 岸風三樓
野菊やらん汽車の窓より見ゆる也 野菊 正岡子規
野の果てに小さき汽車や秋晴るゝ 内田百間
野の闇に真蒼の車輪除夜の汽車 宮武寒々 朱卓
夜半に目覚め遠い夜汽車の駅のこと 古家信子
夜田刈に闇が流るる灯の列車 橋本榮治 麦生
夜長を来し列車たやすく切離す 津田清子 礼 拝
夜桜や汽車の白煙ふんだんに 山口誓子
夜塞さや煙草盡きたる汽車の中 寺田寅彦
夜行列車涼しき露の大地かな 長谷川櫂 天球
夜汽車明け稲の穂近し吾子近し 大串章
夜汽車待つ雑魚寝児は覚め青林檎 小檜山繁子
夜汽車待ちおり一鉢のシクラメン 対馬康子 純情
夜汽車暑く発ちゆくジャズが追ひかける 中島斌男
夜汽車より白きを梅と推しけり 夏目漱石 明治三十二年
夜汽車ゆく光圈来る氷柱去る氷柱 加藤楸邨
夜汽車の片隅で夏蜜柑むいてもう泣かない シヤツと雑草 栗林一石路
夜汽車の人に裏の筍掘つている 杉浦臥竜子
夜汽車にも春は曙顔洗ふ 鈴木鷹夫
夜汽車にてすぎし小駅の秋祭 田中冬二 俳句拾遺
夜汽車きて音なく止まる女体かな 高橋比呂子
夜汽車から金木犀へ乗りかえる 三船熙子
夜の列車銀河の曲(わだ)を航くごとし 片山由美子 風待月
夜の汽車に歯をあつるなり青林檎 加藤三七子
夜の夏木仕立てる汽車の中を掃く 橋本鶏二
夜のマスク汽車過ぎし香の鐵路踰ゆ 中島斌男
目貼り鳴る夢の中まで汽車の音 田沢凡夢
目をとぢて秋の夜汽車はすれちがふ 中村汀女
木曽に入る夜汽車の揺れや蜜柑剥く 小西保男
木崎より青木湖晩夏汽車喘ぐ 石橋辰之助 山暦
木枯や寝て聴く汽車は宙をゆき 千代田葛彦 旅人木
木の実木にぎつしり汽車がぬけとほる 津田清子
木の汽車にのりて林檎の花ざかり 矢島渚男 木蘭
毛皮著て昼を寝しづみ雪の汽車 大橋櫻坡子 雨月
毛皮着て猟夫なんめり汽車待つは 石塚友二
鳴きもする諏訪の蜆や汽車の中 野村喜舟 小石川
鳴きすむ虫を叢を汽車で走つてゐる シヤツと雑草 栗林一石路
明けやすき列車かぐろく野をかぎる 角川源義
名月や汽車に過ぎゆく諏訪湖畔 相馬遷子 雪嶺
霧深き足柄山の荷汽車哉 霧 正岡子規
霧さむく列車一途に北へ北へ 岸風三楼 往来
牟婁の児ら汽車見送りつ麦を踏む 宮武寒々 朱卓
夢充つる帰省列車にかゞみ寝る 能村登四郎
夢も見る汽車のうたたね秋の雨 皆吉爽雨
蜜柑山その下稀に汽車通る 山口波津女 良人
蜜柑荷を出すや汽車積汽船積 鈴鹿野風呂 浜木綿
満洲里行きの列車や氷上を 原田青児
万緑を抜けし列車は蒼白に 小林 武
万緑のトロッコ列車児を寝かす 日永田義治
末黒野や汽車に飛び起つ時鳥 佐野青陽人 天の川
枕木の霜正刻に汽車きたる 百合山羽公
盆の汽車ホームに余り蟲幾重 宮武寒々
北国のしぐるゝ汽車の混み合ひて
北行きの列車短し稲の花 山本 洋子
北へゆく列車短かし冬銀河 中村洋子
棒稲架も走りて汽車とすれ違ふ 豊田淳応
棒のよな燈の夜汽車呑み山凍る 宮津昭彦
忘れたる頃に汽車来る芋の秋 大峯あきら 宇宙塵
豊年や汽車の火の粉の美しき 沢木欣一
砲積める列車の兵の夫なりき 文挟夫佐恵 黄 瀬
砲音ののち汽車の音葦青し 成田千空 地霊
母恋の列車のりつぎ秋の雲 古川喜代子
母恋し冬あかつきの汽車ひゞき 渡辺白泉
暮れてつく荷物列車に時雨れけり 内田百間
穂麦原徐州へ汽車の向きまる 桂樟蹊子
別れ霜なり通勤の汽車に映え 百合山羽公 故園
別るるや汽車秋風のなかに去る 成瀬桜桃子
閉山地帯黙殺の汽車灯を擦りゆく 穴井太 穴井太集
兵の列車西日の方に既に消ゆ 文挟夫佐恵 黄 瀬
焚火の跡ブリキの汽車を蹴出しぬ 原田種茅 径
分水嶺汽車を雪野へ放ちけり 羽部洞然
仏壇にひゞき秋夜の汽車通る 梶井枯骨
風船を持つ子にながい汽車がゆく 岡本差知子
風花の訣れに汽車は開かずの窓 品川鈴子
風の声火の声ストーブ列車発つ 成田千空
風の音遠汽車の音おでん煮ゆ 大橋敦子
撫子をゆりて因幡へゆく列車 山崎一枝
浜木綿の岬けむりの汽車でつく 矢島渚男
瓢の笛夜汽車のやうに響きけり 山田東海子
美しき駅を建てむと胸板の傾斜にふれつ 汽車知らぬイエス 水原紫苑
尾花常山崖の茶店や汽車を見る 薄 正岡子規
卑弥呼径尽く枯山の列車音 高井北杜
晩春を吾が白き足袋汽車に乗る 細見綾子
晩秋の木曾谷汽車の遠谺 福田蓼汀
晩秋の汽車や老婆の荷に日さす 細見綾子
蛤を膝に鳴かせて夜の汽車 石塚友二
蛤を時に鳴かせて夜の汽車 石塚友二
八十八夜の帯を流して夜汽車の灯 すずき波浪
櫨紅葉汽車に煙のありしこと 関口恭代
麦藁帽へ汽車が降りくる段畑 猪俣千代子 堆 朱
麦踏みの眼のかがやくは汽車来るため 鈴木六林男
麦秋列車ときおり胡弓音流れ 諸角せつ子
麦秋の汽車に鎧戸ありし日よ 狩行
麦刈の若きは汽車にそむき立てり 原田種茅 径
麦の芽に汽車の煙のさはり消ゆ 中村汀女
麦に伸び花菜に縮み汽車すすむ 京極杞陽
薄暮れぬ野末に汽車の走る音 正岡子規
薄氷をとかす太陽わが汽車行く 中山純子
薄給や汽車のスチームに足掛けて 猿橋統流子
白墨の汽車昏れ遠いわが啄木 森武司
白南風や汽車尾を振つて海に沿ふ 若林芳樹
白桃の紅らむ頃を夜汽車かな 鳴戸奈菜
白魚火を見たるその夜の汽車に乗る 大峯あきら
萩の丘下に汽車つき電車去る 銀漢 吉岡禅寺洞
梅咲いて喉を淫らに通う汽車 西川徹郎 家族の肖像
梅雨の汽車太宰治のトカトントン 遠藤梧逸
梅雨に濡れ黒き列車より身を離す 石橋辰之助 山暦
廃さるる汽車に給水花吹雪 百合山羽公 寒雁
能登ちかく雪いただきて除夜の汽車 宮武寒々 朱卓
念ひ寒し逆行の汽車車窓過ぎ 中島斌男
年賀のべ駅長汽車を発たしたる 原 育子
濡れ髪へ寒夜の汽車を通しやる 蓬田紀枝子
日盛りをゆく木造りの列車かな 仁平勝 東京物語
日盛りや汽車みち風の絶ゆるなく 岩田由美
日盛や汽車路走る小さき蟹 泉鏡花
日盛や汽車道はしる小さき蟹 泉鏡花
日は斜枯野を北へ走る汽車 寺田寅彦
二度よりは通らぬ汽車や花芒 薄 正岡子規
南洋の朝礼 こは国境行の汽車 伊丹公子 ドリアンの棘
縄汽車のぶつかり歩く赤のまま 奥田可児
鈍行の列車しんかん行々子 平井さち子 紅き栞
動物園の汽車ではじまる流雛の秋 境田静代
頭上を汽車発つ冬夜の駅にて逢ふ 内藤吐天 鳴海抄
頭のれんげ汽車のれんげと合さりゆく 藤後左右
陶板絵に嵌まって 汽車待つ 永い老後 伊丹公子
透明の昆虫箱なり冬夜汽車 高野ムツオ 鳥柱
灯をかざし着く北国の初列車 柏原木塵
灯の函の列車台風圈に入る 山口速
灯とともに信濃へむかふ秋の汽車 保坂敏子
湯ざめしてよりちかぢかと汽車の音 細川加賀
桃買ひて丹波篠山行きの汽車 細見綾子 黄 瀬
桃花村夜汽車が通過してゆけり 北澤瑞史
東西に汽車のわかるる冬野かな 金尾梅の門
東京へ東京へ汽車虫鳴かせ 今瀬剛一
東京へ行く汽車音よ避暑地の夜 松本たかし「火明」
島人に陸の汽車ゆく初景色 秋元不死男
冬籠る尻の下ゆく夜汽車かな 会津八一
冬濤とわかれ大きく汽車曲る 木下夕爾
冬田ゆく汽車や紺いろのわが座席 桂樟蹊子
冬山やごぼごぼと汽車の麓行く 冬山 正岡子規
冬座敷ときどき阿蘇へ向かふ汽車 中村汀女
冬座敷とき~阿蘇へ向ふ汽車 中村汀女
冬枯や単線の汽車ひた走る 宮田 保
冬銀河夜行列車に乗るところ ともたけりつ子
冬の旅汽車の煙の海辺の町 細見綾子 花 季
冬の夜の汽車発つ音に心とむ 山口波津女 良人
冬の蝶汽車の下腹部湯をこぼす 磯貝碧蹄館
冬の鷺汽車におくれてただよへり 宮津昭彦
冬ざれや復員列車駅に入る 福田清人 麦笛
都に友あり夕焼鵜追ひ越す汽車 香西照雄 対話
渡り漁夫汽車乗り換の駅に遊ぶ 松原地蔵尊
田打蟹の干潟をふるわせて 都會行きの汽車だ 吉岡禅寺洞
田植牛影さかしまに汽車走る 百合山羽公
田植一家飯くふ汽車の方に向き 百合山羽公 故園
田舎人の衣更へたる汽車場哉 更衣 正岡子規
田の果てに汽車走りゆく蝗かな 渋沢渋亭
天凪げり我が汽車穂田をひびかする 太田鴻村 穂国
天草の匂へる闇の終列車 加藤楸邨
天空を行く汽車描かれ染卵 村田白峯
天金こぼす神父の聖書秋夜汽車 齋藤愼爾
天の川賢治の汽車が轟々と 荒木忠男
鉄橋を夜汽車の過ぐる流灯会 竹本白飛
鉄橋を夜汽車が通り鮭の番 草間時彦
鉄くさし雪への列車ホーム離れ 大井雅人 龍岡村
笛鳴らす玩具の汽車に枯木の情 長谷川かな女 牡 丹
摘草や汽車の煙をふりかむり 芝不器男
泥鰌屋の汽車式便所砂壁冷え 北野民夫
庭先を汽車行く家や釣り干菜 内田百間
定刻に列車を通し代田かな 森田智子
通勤の汽車にさきだち朝の雁 百合山羽公 故園
通学時だけ列車くる燕の巣 井上宗雄
長江も黄河も渡り汽車涼し 市場敏司
長き汽車ひと呑みにして山笑ふ 小野 喬樹
蝶舞ひ込み児の画く汽車がまだつゞく 川口重美
町裏に汽車が着きゐて秋の海 中村汀女
町裏に汽車がつきゐて秋の海 中村汀女
朝霧をつんざく一番列車哉 寺田寅彦
朝鮮人の席も見つかつて夜汽車となつた シヤツと雑草 栗林一石路
朝の汽車すこやかに露女郎花 細見綾子
朝が凍る汽車に乗つている 橋本夢道 無禮なる妻抄
虫時雨夜汽車煌々野をわたり 堀口星眠 営巣期
昼汽車のひと日の空費菜種梅雨 桂 信子
昼も夜も似寄の汽車弁冬の旅 北野民夫
着ぶくれて列車に辞儀をいたしけり 岩田由美
着ぶくれて汽車の切符が後生大事 遠藤梧逸
着く汽車に犬は涼しき貌を立て 辻田克巳
遅々として阿蘇へ行く汽車春の雨 近藤浩一路 柿腸
遅れつつ汽車が着くなり麦の秋 上村占魚 球磨
池に沈んだ汽車青蓮となりつつあり 西川 徹郎
地吹雪を木曽の尻振列車かな 後藤綾子
地吹雪を越後路列車突き進む 杉谷悦子
暖炉列車 津軽まるごと暖める 野宮素外
団扇持つて汽車に乗りたる道者哉 団扇 正岡子規
短夜や恋泣きに似てきしむ汽車 稲垣きくの 黄 瀬
短夜や一番汽車に乗りおくれ 短夜 正岡子規
短夜の野に迫り来し列車音 依田明倫
短日や汽車に持ち込む稽古弓 今井誠人
短き汽車のめりて停るたんぽゝに 殿村莵絲子 遠い橋
炭積んで白河下る荷汽車哉 炭 正岡子規
炭坑の汽車に乗り来て入学す 山口誓子
探梅や遠き昔の汽車にのり 山口誓子
担ぎ屋も帰途は身緩め枯野汽車 北野民夫
単線の汽車くるまでの頬被り 阿部子峡
但馬路は卯の花くだし夕列車 深川正一郎
茸山に見えてとまれる汽車のあり 吉岡禅寺洞
大年の故郷への汽車に疲れゐる 楠目橙黄子 橙圃
大雪の黙を持ち込む終列車 橋本榮治 逆旅
大雪のスキー列車の夜をいねず 水原秋桜子
大時計 重厚 大陸横断列車 発つ 伊丹公子 アーギライト
大君も母上も亡し夏列車 攝津幸彦
大仰に夜汽車のけむり月の冷え 飯田蛇笏 椿花集
大巻貝に秋です 汽車の来ない町 伊丹公子 陶器の天使
大井川梅雨の出水を汽車で越す 品川鈴子
袋とるリンゴの中の汽車の中 古館曹人
村の子の汽車を見てゐる旱りかな 長谷川双魚 風形
其の下を汽車が通るぞ羽抜鳥 羽抜鳥 正岡子規
霜夜寝て四方走り居る汽車のこと 石塚友二 方寸虚実
霜の駅夜汽車とまりて燠おとす 飴山實
送る身に露霜ひしと汽車発つ間 石塚友二 方寸虚実
草藉けば深夜の汽車の疾走す 横山白虹
窓に野火見し後夜汽車となりにけり 館岡沙緻
相聞のフランスの汽車停つている 阿部完市 にもつは絵馬
痩身の石ぼとけあり汽車の音 落合冬至
早稻の香や小山にそふて汽車走る 早稲 正岡子規
早桃食ふ人をまともに汽車に倦む 宮坂静生 青胡桃
早乙女を汽車より見そめ給ひけり 早乙女 正岡子規
早乙女の一人は汽車に隔てらる 浅井啼魚
素通りの汽車に汚され雪の谿 津田清子 礼 拝
全長を夜火事の窓に列車過ぐ 中田勘一 『雪礫』
全車輛全スキー揺れスキー列車 山口誓子
全車両全スキー揺れスキー列車 山口誓子
前山の紅葉みて居り汽車を待つ 和田俊夫
川崎を汽車て通るや梨の花 梨の花 正岡子規
川崎を汽車で通るや帰り花 正岡子規
川根茶を車内販売ポンコツ汽車 高澤良一 石鏡
蝉の声しばらく汽車に押されけり 蝉 正岡子規
雪嶺に汽車分け登る力出し(津軽路) 河野南畦 『黒い夏』
雪嶺に汽車現れてやゝ久し 汀女
雪嶺に汽車現れてやや久し 中村汀女
雪野行く汽車にとびつく一戸の灯 笠井操 『雪の紋』
雪国の汽車を歩きて座席探がす 右城暮石
雪国の駅や目鼻が汽車を待つ 三谷昭 獣身
雪合羽汽車に乗る時ひきずれり 細見綾子
雪合羽汽車にのる時ひきずれり 細見綾子
雪厚き幹見ればわが汽車北に對ふ 篠原梵
雪光る山引つぱつて汽車迅し(磐越西線車中) 上村占魚 『方眼』
雪下しはるかに汽車の声しぼる 金尾梅の門 古志の歌
雪まとひ窓灯つらねて汽車ゆきぬ 柴田白葉女 遠い橋
雪の日の耳目稚なし汽車通る 林翔
雪の汽車北と西とへ別れ哉 寺田寅彦
雪しまき列車は一人のみ吐きぬ 櫂未知子
赤子に汽車見せて涼しむ麻畑 野澤節子 黄 炎
石蕗多き大隅の山汽車尾振り 藤後左右
青芒汽車を見上げし子のみめよし 林原耒井 蜩
青林檎夜汽車の椅子のかたさかな 小宮山 勇
青蜜柑汽車走りだせば見えなくなる 川島彷徨子 榛の木
青麦や吉備の日南を汽車が行く 内田百間
青麦や汽車追ひ越して電車走る 右城暮石
青唐辛子シルクロードの汽車揺れて 兼近久子
青竹をつみし列車や今朝の冬 西山泊雲
青山中音一切のぬけし汽車 松原地蔵尊
青芦原列車から手を出している 永末恵子
青む野に迅さを見せて汽車煙 津田清子 礼 拝
逝く夏や犬に戯れ居れば夜汽車過ぐ 宮武寒々 朱卓
西日が截る防雪林と汽車と濤 文挟夫佐恵 黄 瀬
西行きの列車がら空きクリスマス 右城暮石 声と声
西瓜割る汽車の厨房に海せまり 望月たかし
正月晴汽車が見たくて岡に登る 村越化石
星色に流れて過ぎて寒夜の汽車 対馬康子 吾亦紅
星へ発つごとし枯野の終列車 佐野美智
澄む植田人総立ちの灯の汽車過ぐ 永田耕一郎 氷紋
裾野ゆく汽車もむらさき暁すゞし 佐野青陽人 天の川
数珠玉や汽車の煙が汽車を追ふ 磯貝碧蹄館 握手
水虫を掻きて教祖の汽車旅行 古屋秀雄(天狼)
水を飲み汽車の食卓黄水仙 中西舗土
吹雪く中北の呼ぶ声汽車走る 西東三鬼
諏訪をさす夜汽車の隅や赤彦忌 古沢太穂 古沢太穂句集
身をゆする蛙の夜汽車父母を残し 大井雅人 龍岡村
身にいつか列車のリズム川涸れて 喜舎場森日出
神戸の海が街へくいこんでいる汽車が着く 橋本夢道 無禮なる妻抄
森てらしすぐる汽車の灯五月闇 西山泊雲 泊雲句集
新緑や芥のごとき汽車の中 百合山羽公 故園
新緑の町へ来る汽車の音です 北原白秋
新涼の眉澄ましゆくや汽車の窓 太田鴻村 穂国
新茶積む馬も来て居る汽車場哉 新茶 正岡子規
心安し若葉の風に汽車が行く 若葉 正岡子規
心いま阿蘇野に馳せて汽車夜寒 山地曙子
唇に雪嶺感ず眠き夜汽車 三好潤子
信濃路や夜汽車の中のきりぎりす 八十島稔 柘榴
尻向けて汽車を憎めり田草取 石塚友二
植木市母校が見えて汽車が過ぎ 千田一路
植ゑ終へし峡田を見つゝ汽車ゆるく 高濱年尾 年尾句集
常しえに天心をゆく夜汽車かな 須藤 徹
乗り継ぎの汽車を待つ間の月明し 草矢岳子
乗りこめばスキー列車でありにけり 羽鳥喜三江
上野へと汽車すべりたる良夜かな 日原傳
松嶋一児せんとて上野の汽車にのりて
松過ぎて夜汽車欲しがる体あり 櫂未知子 蒙古斑以後
松の芯とほのく汽車の煤ふりくる 横山白虹
小淵沢草刈る音の列車まで 山本 源
小春日の汽車に短くねむりたる 野見山ひふみ
小さい駅については汽車が平野を走っては夏の日 大越吾亦紅
女の咳を乗せて一〇三列車発つ 田川飛旅子 花文字
初旅や母を看とりの汽車に乗る 藤間 蘭汀
初旅の列車といふも一輛車 松倉ゆずる
初雷の汽車の響に紛れけり 春雷 正岡子規
初富士秀づ列車ボーイの過ぎしかな 長谷川かな女 雨 月
初瀬の駅獅子舞汽車を待てるかも 山口誓子
初秋や子に描く汽車に煙も描く 加倉井秋を
初手水踊りこぼるる汽車に在り 皿井旭川
春服着てからだの中を汽車過ぎゆく 寺田京子 日の鷹
春著の子汽車に乗るとき袂抱く 河村静香
春着の娘汽車に乗るとき袂抱く 河村静香
春愁や列車の窓に写す顔 小山さち子
春山へかかりし夜汽車燈をふやす 河野南畦 『焼灼後』
春暁の一番列車紙のよう 小暮洗葦
春暁の一番列車いつも貨車 松本えいじ
春寒し手舁よりする汽車の旅 幸田露伴
春の夜の暗黒列車子がまたたく 西東三鬼
春の鹿列車を止めてしまひけり 今井妙子
春の絵の枠とも野行く汽車の窓 池内友次郎 結婚まで
祝ぎ歌のごと赤子泣く初列車 所 山花
十二月あのひと刺しに汽車で行く 穴井 太
終列車過ぎゐる雨の簗瀬かな 宮武寒々 朱卓
終戦忌海をさへぎり列車過ぐ 杉江茂義
終戦の夜汽車「愛と死」立ちて読む 能美澄江
秋風やあれは都へ帰る汽車 寺田寅彦
秋晴の汽車がらあきや宗谷線 白幡千草
秋暑き汽車に必死の子守唄 中村汀女
秋雨や二人汽車待つ停車場 秋雨 正岡子規
秋雨や汽車藪を出て嵯峨の駅 西山泊雲 泊雲句集
秋もはや蒸気の汽車の軽井沢 石塚友二
秋の風レールに汽車の音残り 山本歩禅
秋の田の自転車汽車におくれゆく 六子
秋の川渡るとき汽車軽くなる 高橋次郎
秋の海の夕日に向ひ汽車の窓 比叡 野村泊月
秋の黄のながるる汽車の窓に富士 京極杞陽 くくたち上巻
種痘つく柱の中を汽車が過ぎ 宮坂静生
手袋を咥へ夜汽車の切符買ふ 後藤 渡
手の中の空しさ梅雨野を帰る汽車 及川貞 榧の實
手の中の空しさ梅雨を帰る汽車 及川貞 夕焼
弱肉強食真ッ赤な月へ汽車が馳す 川口重美
借り家や冴ゆる夜近き汽車の音 冴 正岡子規
煮凝や夜は身近なる汽車の音 岩淵喜代子 朝の椅子
漆黒の列車は北へ直哉の忌 櫂未知子 貴族
七月の家ゆるがせて汽車黒し 桂信子 黄 炎
時鳥上野をもとる汽車の音 時鳥 正岡子規
飼ひなれしをしや汽車にも驚かず 鴛鴦 正岡子規
枝柿を提げて汽車待つ田夫哉 柿 正岡子規
子のために暮春の汽車の旅少し 中村汀女
子に見する汽車は灯の満ち秋の暮 皆吉爽雨
子が鳴かす蝉のかなしく夜汽車待つ 金尾梅の門 古志の歌
子が泣いて母の声して冬夜汽車 岡本眸
残雪や次の汽車まで駅ねむる 角光雄
残暑の汽車のすいてをる海岸になる 梅林句屑 喜谷六花
山北や鮎の鮓買ふ汽車の中 鮓 正岡子規
山腹へ列車を入れる牡丹雪 五島高資
山腹へ汽車入れ傾山笑ふ 川原つう
山深く汽車は入り来ぬ春の雪 山口波津女 良人
山女鮓汽車狩勝にかかりけり 田村木国
山の汽車噎びて発てり苗木市 宮坂静生 春の鹿
山の影駅にのびつくし汽車がつきけり シヤツと雑草 栗林一石路
山に沿ひて汽車走り行く若葉哉 若葉 正岡子規
桜どき汽車谷底に折れまがる 林徹
菜の花や汽車のゆくてにある夜明け 小野恵美子
菜の花や奥州通ふ汽車の笛 菜の花 正岡子規
歳晩や火の粉豊かの汽車煙 草田男
歳晩や火の粉豊かに汽車煙 中村草田男
才蔵の素顔さびしき汽車の中 冠人
今日も汽車に遅れし人や麦の秋 比叡 野村泊月
此邊を通ふ汽車あり女郎花 女郎花 正岡子規
黒い汽車降り見つめゆく蝉の山 対馬康子 愛国
国中の初霞より列車音 茂里正治
刻かけて汽車枯山に頭出す 黒木野雨
轟々と霧の中行く列車哉 徳田秋声
轟々さみだれの河汽車は一汽笛にて渡る 安斎櫻[カイ]子
高原の列車花野の風運ぶ 近藤詩寿代
香水やすさまじき汽車風の中 石田波郷
降る雪や汽車の別れは窓叩き 岡部六弥太
降る雪やさらに北指す夜汽車なり 桂樟蹊子
降りてくるはずなき父の日の列車 紅林照代
降りし汽車また寒月に発ちゆけり 羽公
行く春やとある女が汽車に泣く 伊藤柏翠
荒海と汽車の間に松露掻き 藤後左右
紅花摘みのうしろ一番列車過ぐ 佐藤俊子 『雪の本丸』
紅を引く夜汽車の窓を時雨かな 佐藤文子
甲斐清里月の高さに汽車とまる 宮坂静生 春の鹿
港内に復元汽車道クロッカス 中戸川朝人 尋声
港まで行く汽車小さし蛍飛ぶ 森田 愛子
江深く雪深し峡をあへぐ汽車 松根東洋城
喉元を過ぎるは悲なり夜汽車なり 岸本マチ子
光る蜂青野の汽車に伴走す 伊丹三樹彦 人中
光る雨見つつ颱風の汽車にあり 相馬遷子 雪嶺
鯉簗木曽の夜汽車の照らし過ぐ 大野林火
御殿場に鹿の驚く夜汽車哉 鹿 正岡子規
御召列車過ぐ夏桑に巡査立ち 館岡沙緻
御詠歌に一汽車遅れてしまいけり 吉田さかえ
五月闇煙吐き休む木曽の汽車 野沢節子
虎落笛天に夜汽車が発つて行く 宮田喜代女
虎杖や狩勝峠汽車徐行 星野立子
股火鉢とほく列車の過ぎゆけり 黛 執
狐火やしんと越野の遠列車 斎藤由美
湖辺に垂穂汽車尋常にめぐり遅々 石橋辰之助 山暦
湖べりへかくれし列車花の土手 なかのまさこ
枯野行く汽車にかかれる道の地圖 京極杞陽
枯野原汽車に化けたる狸あり 夏目漱石
枯野駅のこし汽車来て汽車去れり 奈須ゆう子
枯盆地全長現れて汽車急ぐ 宮津昭彦
枯桑に汽車の短き笛一つ 松本たかし
枯葦に火をつけしとき列車過ぐ 松村蒼石
故里を発つ汽車に在り盆の月 竹下しづの女
故里を発つ汽車にあり盆の月 竹下しづの女
故里の夢麦秋の汽車に覚む 橋本喜夫
故国へかへる真つ黒の汽車にゆられかへる 酒井桐男
古りし自我と坐る梅雨冷汽車の隅 柚木 紀子
元日の汽車闇に着き闇に発つ 角川春樹
月明や地に描きし汽車動き出す 宮坂静生 青胡桃
月見草煤の日輪に汽車停る 殿村莵絲子 花 季
月の野をゆく汽車あきらかに砧うつ 金尾梅の門 古志の歌
月の出や死んだ者らと汽車を待つ 鈴木六林男 桜島
穴へ忘れし汽車などとほい樹上や 攝津幸彦
軽井沢で汽車を捨てけり夏の朝 伊藤松宇
蛍烏賊夜汽車蠍のごとく発つ 宮武寒々
携へし避暑案内や汽車の中 避暑 正岡子規
傾ぐ冬富士人轢きし汽車動きそむ 川口重美
軍用列車 わが盛装の帯かたく 藤木清子
軍用列車 わか盛装の帯かたく 藤木清子
桑黄葉暮れつつありぬ汽車灯る 松本たかし
銀河トレィン始発の列車秋乗せて 伊藤スミ
金鳳華汽車行きてまた時経たる 森 澄雄
金属積む夜汽車の酩酊海を濡らし 安西 篤
金策にゆく汽車せめて腰かけたし 石橋辰之助
芹薺汽車道越えて三河島 芹 正岡子規
暁の苗代に北目指す汽車 大井雅人 龍岡村
蕎麦の花北指す汽車に肱汚し 朔多 恭
胸元の毛皮の爪に汽車の揺れ 品川鈴子
京へ発つ一番列車春シヨール 秋山雅子
魚雫汗雫男らどつと汽車へ 原田喬
漁港過ぐ寒月列車と同じ速さ 川村紫陽
休暇明泣き坂に汽車かかりたる 宮坂静生 樹下
黍の雨汽車は電車と竝び走す 田川飛旅子 花文字
鬼火赫と列車を焦す芒かな 会津八一
鬼めける汽車の罐焚き秋の暮 石塚友二
鬼めける汽車の釜焚き秋の暮 石塚友二 光塵
汽罎(かま)焚きて蜜柑列車を先導す 佐野まもる
汽笛涼し川も列車も急カーブ 松室美千代
汽笛高く野分の汽車の通りけり 寺田寅彦
汽車喘ぎ雪嶺遠く威ありけり 岸風三楼 往来
汽車来る雪山に音刻みつつ 相馬遷子 雪嶺
汽車来る遠きひびきや夏の山 会津八一
汽車来るまでギス鳴かせる子の傍に. 溝口青於
汽車夜寒旅の生徒の降りてより 五十嵐播水 埠頭
汽車北上さくら白帆となり走る 佐川広治
汽車疲れ食後の梨を措きて臥す 石塚友二 方寸虚実
汽車入りて停車場くらし花の雨 木村蕪城
汽車道を辿れは近し稲の花 稲の花 正岡子規
汽車道を横ぎつて行く夏野哉 夏野 正岡子規
汽車道をありけば近し稲の花 稲の花 正岡子規
汽車道の芒乱れて秋ゆきぬ 内田百間
汽車道の丹後へ鳴くや時鳥 時鳥 正岡子規
汽車道の左右に畑打つ夫婦哉 畑打 正岡子規
汽車道の此頃出來し枯野かな 枯野 正岡子規
汽車道の此頃出来ぬ芥子の花 芥子の花 正岡子規
汽車道の此頃出来し枯野かな 正岡子規
汽車道の広告札や蕎麦の花 寺田寅彦
汽車道の一段高き冬田哉 冬田 正岡子規
汽車道の一すぢ長し冬木立 子規
汽車道のあらはに蕎麥の莖赤し 蕎麥 正岡子規
汽車道に陽炎たちてゐたりけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
汽車道に堀り殘されて花野哉 花野 正岡子規
汽車道に鳩の下り居る枯野哉 枯野 正岡子規
汽車道に冬木の影の竝びけり 冬木 正岡子規
汽車道に低く雁飛ぶ月夜哉 雁 正岡子規
汽車道に雁低く飛ぶ月夜哉 雁 正岡子規
汽車道にならんでありく日永哉 日永 正岡子規
汽車道にそふて咲けりけしの花 芥子の花 正岡子規
汽車道と國道と竝ぶ寒さ哉 内田百間
汽車動き晩夏の空の動き出す 上島 顕司
汽車通る倉庫の前の三尺寝 木村里風子
汽車通るたび雛段にひびきけり 木村里風子
汽車長し海水浴の人降りて 波多野爽波
汽車長くきしみて止る夏山峡 細見綾子 花寂び
汽車著いて蝙蝠とべる暗き町 富田巨鹿
汽車著いてひとり遅れて夕遍路 林田探花
汽車着くや焼山晴れてまのあたり 芝不器男
汽車着きし音の近さや蓮の骨 飴山實 辛酉小雪
汽車待てば汽車来る故郷麦畑 橋本美代子
汽車待つや梨喰ふ人の淋し顔 梨 正岡子規
汽車走らす石炭一屯水七屯(大井鐵道) 高澤良一 石鏡
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
汽車止めて春闘といふ誰が為ぞ 石塚友二
汽車撮ると吹雪に構へゐたりけり 岩城未知
汽車今は地図のこゝゆく春の旅 石井とし夫
汽車此夜不二足柄としぐれけり 時雨 正岡子規
汽車黒く通りて赤し火事の村 斎藤愼爾 夏への扉
汽車降りて雪嶺の高さには馴れず 橋本美代子
汽車降りてすぐに枯野を行く人等 池内たけし
汽車行くやひんと立たる田草取 田草取 正岡子規
汽車行きて氷る山田を煙らしむ 山口波津女 良人
汽車行きて峡の青田を見下しぬ 山口波津女 良人
汽車工場寒林を伐りて汽車を置けり 細谷源二 鐵
汽車工場の軌条霜崖へ行き止る 細谷源二 鐵
汽車工場の汽罐車枯山へ光向く 細谷源二 鐵
汽車見る見る山を上るや青嵐 青嵐 正岡子規
汽車見えて鳥帰る野の警報機 町田しげき
汽車見えてやがて失せたる田打かな 芝不器男
汽車汽笛湯気噴き上ぐる氷柱かな 永井龍男
汽車汽車待って吹雪の底の駅 堤 湖舟
汽車海に沿ひゆくかぎり干鰯 大橋櫻坡子
汽車過ぐるあとを根岸の夜ぞ長き
汽車過ぎる音して零余子こぼれをり 菅沼照子
汽車過ぎて木枯闇に残さるる 内藤吐天
汽車過ぎて山静かなり夏木立 夏木立 正岡子規
汽車過ぎて煙の中の茶摘かな 千原叡子
汽車過ぎて煙のかゝる木の芽かな 木の芽 正岡子規
汽車過ぎて煙うづまく若葉哉 若葉 正岡子規
汽車過ぎてもとの山河や天の川 五十嵐播水 播水句集
汽車過ぎていよいよ暮色一冬木 森澄雄
汽車下りて夜寒の星を浴びにけり 野村喜舟 小石川
汽車下りて鼻梁をただす春の霜 松澤昭 神立
汽車下りて吹雪に紛れ行きにけり 矢野蓬矢
汽車下りて遠き宿場や稲の花 稲の花 正岡子規
汽車音の風の夜めかす*かやの秋 富田木歩
汽車音の中妙なりき葭切は 北原志満子
汽車煙熱きがかかる月見草 鷹羽狩行
汽車一刻青野より乗り青野に降る 川島彷徨子
汽車を待つ焚火の中に我も在り 寿々木米若
汽車を出て直に日傘の野路哉 巌谷小波
汽車を見る崖の茶店や花芒 薄 正岡子規
汽車を見て立つや出水の稲を刈る
汽車を見て昼寝せむ子に又汽車くる 加藤知世子 花寂び
汽車を下りる茸狩衆や稲荷山 茸狩 正岡子規
汽車を下りて淋しき驛や花芒 薄 正岡子規
汽車を下りて遠き宿場や稲の花 稲の花 正岡子規
汽車よりも汽船長生き春の沖 三橋敏雄
汽車ゆれて春眠ゆれてをりにけり 上野章子
汽車ゆけば美濃路木曽路と踊の夜 大島民郎
汽車も船も煙吐く世の大夏野 伊藤いと子
汽車へ来る頬しもやけの佐久少女 岡田日郎
汽車へ乗る頬しもやけの佐久乙女 岡田日郎
汽車は裾を大廻り行く冬の山 西山泊雲
汽車はやし静かにながれおつる滝 京極杞陽 くくたち下巻
汽車はひく余生のけむり紅葉狩 百合山羽公
汽車はすぐ海とわかれて野の青さ 山口波津女 良人
汽車はしる二月一日絶景などへ 阿部完市 春日朝歌
汽車はしる疎林はばらばらとなりて 富澤赤黄男
汽車はいま鉄橋渡る桐の花 渡辺初雄
汽車の尾をなほ見送れり春ショール 日野草城
汽車の扉を手で開け降りる麦の秋 堀之内和子
汽車の胴霧抜けくれば滴りぬ 飴山 實
汽車の灯の昼とのあはひ踊子草 小池文子
汽車の灯の大曲りして植田なか 庄中健吉(狩)
汽車の灯に群れゐる灯蛾も上野に着く 加倉井秋を
汽車の灯が平に遠く月下を過ぐ 田川飛旅子 花文字
汽車の窓凍てゝひらかぬ別れかな 副島いみ子
汽車の窓冬田歪みて線と消ゆ 原田種茅 径
汽車の窓折々うつる紅葉哉 紅葉 正岡子規
汽車の窓ひとつひとつに春暁あり 福田蓼汀 山火
汽車の窓の冬枯にとつついてゐる子 シヤツと雑草 栗林一石路
汽車の窓に首出す人や瀬田の秋
汽車の窓に見上る岡の桜哉 桜 正岡子規
汽車の窓にさしこむ須磨の月夜哉 月夜 正岡子規
汽車の窓から渡された新聞も霧に濡れて シヤツと雑草 栗林一石路
汽車の前谷のれんげ田現れんと待つ 藤後左右
汽車の切符買はんとして手袋脱げざる 手袋 正岡子規
汽車の厚き硝子雪浪かがやかす 西村公鳳
汽車の月後にて聞けば十三夜 十三夜 正岡子規
汽車の隅安居に上る僧ならん 河野静雲
汽車の汽缶闇に枯野をひきさりぬ 川島彷徨子 榛の木
汽車の音鶯逃げてしまひけり 鶯 正岡子規
汽車の音の近く聞ゆる夜寒哉 夜寒 正岡子規
汽車の音こころしづかな霞かな 太田鴻村 穂国
汽車の影も一緒に枯草をゆく旅 シヤツと雑草 栗林一石路
汽車のひびきも夜明けらしい楢の葉が鳴る 種田山頭火
汽車のつく頃幌橇が一つ来し 高野素十
汽車に目をあげ草刈鎌で腰を打つ 加藤楸邨
汽車に馴れて濱名の月を眠りけり 月 正岡子規
汽車に寝る眉ふく風や雲の峯 会津八一
汽車に寝ね雪降る船に寝て旅す 山口波津女 良人
汽車に乗るまで秋燕を見てをりぬ 青柳志解樹
汽車に乗り白い羽毛になりに行く 佐鹿万知子
汽車に乗て汐干の浜を通りけり 汐干狩 正岡子規
汽車に見し人椿寿忌の庭にあり 吉見南畝
汽車に蛙鳴きます月も出ました シヤツと雑草 栗林一石路
汽車にのり女の許へ行くごとし 林田紀音夫
汽車にねむる襟巻をまきかへにけり 川上梨屋
汽車にねて須磨の風ひく夜寒哉 夜寒 正岡子規
汽車におどろく鴨におどろく旅人われ 臼田亞浪 定本亜浪句集
汽車と女ゆきて月蝕はじまりぬ 西東三鬼
汽車と云ものが出来るぞ閑子鳥 閑古鳥 正岡子規
汽車とまり大いなる虫の闇とまる 加藤楸邨
汽車とまり遠き雪嶺とまりたり 山口誓子
汽車どちら向くも雪嶺なくなれり 右城暮石 声と声
汽車たてばそこに極暑の浪の群れ 吉岡禅寺洞
汽車たつや四方の雪解に谺して 前田普羅 飛騨紬
汽車すぎて消えし駅の灯夜桑つむ 亀井糸游
汽車ごつこの汽罐車もつとも息白し 北山河
汽車くれば家がゆるゝよ猫柳 高野冨士子
汽車が虹が雲が税吏が見下ろす谷間 高柳重信
汽車が走る山火事 尾崎放哉
汽車が過ぎ秋の魔が過ぐ空家かな 寺山修司 花粉航海
帰路はしる汽車旅情すでに茫々 柴田白葉女 花寂び 以後
帰還兵忘れられ夜汽車の煙におう 古沢太穂 古沢太穂句集
岐線夜汽車天領の町や浮巣川 内田百間
顔昏れてたがひにさむし能登の汽車 飴山實 『少長集』
岩代は汽車も留らず稲の色 松瀬青々
漢数字の汽車時刻表秋ともし 山尾郁代
干草の湿りを夜汽車加速せり 越野孝子
寒夕焼一塵となり列車去る 仙田洋子 雲は王冠
寒夜日本軍用列車にながく堰かれ 古沢太穂 古沢太穂句集
寒凪やなかなか消えぬ汽車の尻 飴山實
寒凪やなか~消えぬ汽車の尻 飴山實
寒の汽車すばやくとほる雑木山 飯田龍太
寒き汽車パンを輪型に噛み切つて 田川飛旅子 花文字
茅花さわいでさわいでさわいで汽車が来る 夏井いつき
鴨打ののつと加はる夜汽車かな 中村汀女
鴨わたる見て汽車降りぬ湯村かや 森川暁水 淀
葛飾の月の田圃を終列車 川端茅舎
葛の花夜汽車の床に落ちてゐし 長谷川櫂 古志
郭公や夜は夜汽車と遠く去り 中島斌男
柿を呼ぶうしろの方の列車哉 柿 正岡子規
蛙鳴く汽車でふるさとへ呼び戻される シヤツと雑草 栗林一石路
咳すれば夜汽車が通る帯の中 岸本マチ子
芥子の花フランスの汽車乗り継ぎて 木場瑞子
海底を行く列車あり枇杷の花 高野ムツオ
海へ行く列車はるかに洗ひ髪 山下知津子「髪膚」
海の唄山の唄乗せ避暑列車 山田弘子 螢川
芽柳や成田にむかふ汽車汚れ 石橋秀野
芽柳に汽車の笑つてよりうごく 松澤 昭
我庵は汽車の夜嵐時鳥 時鳥 正岡子規
我が汽車の白煙凍てし野に凝るかな 太田鴻村 穂国
蚊のうばに蒸気一吐き汽車動く 赤松子
荷を下す橇馬つつむ汽車煙 大野林火
花冷えの坊ちゃん列車待機せる 高澤良一 寒暑
花蜜柑煙吐かざる汽車通る 嶋杏林子
花束や夜汽車見送る出雲神 滝井孝作 浮寝鳥
花人の酔に与せず汽車に在り 松本たかし
花衣そのまま睡る夜汽車ゆゑ 稲垣きくの 黄 瀬
花杏汽車を山から吐きにけり 飴山實
花の戸に汽車より抛る菓子包
花ちるや真理をのせむと汽車ぽつぽ 角川源義 『冬の虹』
火の粉吐き雪の但馬へ向ふ汽車 西山小鼓子
家土産の松蕈匂ふ夜汽車哉 松茸 正岡子規
家まづしおゝ煌々と夜の列車 細谷源二 砂金帯
家の皿夜汽車映つているだろう 在 気呂
夏蜜柑鈴成りの山汽車くゞる 右城暮石 上下
夏蜜柑女子クラス乗せ帰る汽車 秋元不死男
夏蜜柑かかへて夜汽車にのるんだ シヤツと雑草 栗林一石路
夏草に雲下りふして汽車疾し 会津八一
夏至の雨田を駆る汽車に征馬満つ 宮武寒々 朱卓
夏期休暇はじまる黒き汽車に触れ 工藤梓行
夏の露箱根にかゝる夜汽車哉 篠崎霞山
牡丹見てもみくちやとなる帰り汽車 細見綾子 黄 瀬
奥蝦夷や樹海の端の女郎花(北海道汽車中) 石井露月
遠足やばつたを笑ひ汽車を笑ひ 榎本冬一郎 眼光
遠山火汽車に寝てゆく旅に馴れ 成瀬桜桃子 風色
遠つ汽車の音中天に冬はゆく 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
遠く行く列車がをりぬ初駅 綾部仁喜 樸簡
煙り吐く汽車はもう来ぬ花馬酔木 小澤美奈子
沿線の桜見ながら汽車ぽっぽ 高澤良一 燕音
延着列車どつと白息吐き出せり 石田章子 『雪舞』
駅遅日遠ちの方にも汽車が居り 中村汀女
駅前に犬橇一屯ろ汽車着到 高浜年尾
駅に魚拓雪に遅るる汽車を待つ 福田蓼汀 秋風挽歌
泳ぎ子の汽車に手を振る伊那の谷 荒田千恵子
永き日の地面に汽車を描く子かな 児山順子
雲国への汽車の茶あつし母につぐ 阿部完市 無帽
鰻簗木曽の夜汽車の照らし過ぐ 大野林火
鰻簗木曾の夜汽車の照らし過ぐ 大野林火
雨晴れて汽車道濡るゝ若葉かな 若葉 正岡子規
雨斜め夏海へゆく汽車の胴 柴田白葉女 牡 丹
陰晴や薊の穂絮汽車に入る 加藤楸邨
芋秋や汽車ゆるやかに境線 鈴鹿野風呂 浜木綿
稲雀増えつゝ汽車はなほ北ヘ 森田峠
稲雀汽車に追はれてああ抜かる 山口誓子
稲架滲みまた雨に入る旅の汽車 宮津昭彦
稲の中駆け来て汽車に間に合ふか 上野泰 春潮
稲の香や闇濡らしゆく夜汽車の尾 橋本榮治 麦生
一番汽車鳥渡る空に音あげし 碧雲居句集 大谷碧雲居
一泊ですか秋潮よ夜汽車のよう 伊藤淳子
一事果たす新樹にからむ汽車煙 鈴木六林男
一握の灯が汽車となる豊の秋 鷹羽狩行
遺骨乗る夜汽車海から春の雪 中嶋いづる
椅子固き汽車に遠出の蜆売 下田稔
伊奈北をひた走る汽車濃山吹 坂本坂水
阿蘇噴いて汽車と葬列雁行す 石原八束 空の渚
阿蘇谷や霧の夜汽車の笛いちど 児玉南草
阿蘇を出て栗畑広く走る汽車 高浜年尾
阿蘇を出て粟畑広く走る汽車 高濱年尾 年尾句集
われ咳けばわが背にても咳く夜汽車 茂里正治
わけもなや若葉の風に汽車が行く 若葉 正岡子規
わが乗れる汽車の尾が見え冬の浜 菊川千代子
わが汽車の汽罐車見えて枯野行く 山口波津女
わが汽車に雪嶺のやや遅れつつ 榎本冬一郎 眼光
ろんろんと滝の慟哭汽車に過ぐ 寺田京子 日の鷹
レールゆがみ玩具の汽車に傾く冬 斉藤夏風
ルンペンの焚火貰うて汽車を待つ 小原菁々子
よしきりや汽車走らねば線路消ゆ 平松良子
よくひゞく汽車で谷越す花杏 飴山實 『少長集』
よくひびく汽車で谷越す花杏 飴山實
やりすごす夜汽車の春の燈をつらね 木下夕爾
やや寒の夜汽車に立ちしままの旅 横原律子
めかくしして春夕焼の鈍行列車 長谷 岳
みんな寝こけてゐる夜汽車の蠅がおどけてゐる シヤツと雑草 栗林一石路
みのり田の雲追ひかけて列車行く 森田みゆき
みちのくの夜長の汽車や長停り 阿波野青畝
みちのくの夜汽車冷えゆく初蛙 皆川盤水
みちのくの春田みじかき汽車とほる 飴山實
みちのくの汽車どくだみへ停りけり 下田 稔
まるで落書き真冬日の野の列車は 塩野谷仁
まぼろしの汽車通らしめ麦の秋 遠藤若狭男
ましぐらに汽車が来た下の田げんげ 北原白秋
ほのと白し枯野の汽車を遠く見て 相馬遷子 雪嶺
ポケットのどんぐりつかむ夜汽車かな 津田 栞
ふるさとは汽車でゆくものかき氷 鈴木栄子
ひと駅の列車通学稲の秋 橋本風車
ひつじ田のほとりで列車列車待つ 高澤良一 寒暑
ひた走る夜汽車歯に酸き青林檎 杉本寛
ひた走る夜汽車たばこの火が寒い 小森清次
ハンケチや夜汽車降り来し煤埃 石塚友二 光塵
パリに入る夜汽車に噛る青林檎 高橋真佐子
はらはらと汽車に驚く螽かな 蝗 正岡子規
はこべらや列車独りも降ろさざり 坂本山秀朗
ぬかご落つ夜汽車が山に響くころ 平松良子
なれそめは帰省列車の手弁当 細谷定行
なほ北へ行く汽車とまり夏の月 中村汀女
なほ北に行く汽車とまり夏の月 中村汀女
トンネルを出し汽車雉子を飛び立たす 右城暮石 上下
トンネルヘ汽車が縮んでゆく時雨 秋尾敏
ドン・キホーテたらん枯野の汽車に乗り 水口楠子 『泉汲む』
とこしえに天心をゆく夜汽車かな 須藤徹
とぎれたる言葉鶏頭に汽車すぐる 阿部みどり女
だばこちさ寄れと夜汽車の麦酒かな 平井さち子
たそがれの海に壓されて汽車を待つ 藤木清子
その辺にうぐひす居らず汽車の音 鶯 正岡子規
すわ夜汽車凩山へ吹き返し 凩 正岡子規
すれ違ふ汽車の小窓の燕哉 燕 正岡子規
すれちがふ汽車の窓透き雪山あり 篠原梵
すれざまに汽車はやす子や金鳳華 芝不器男
するめ焼きストーブ列車ひた走る 澤野須美子
スチームのほどよく通り夜の汽車 高木 桐舎
すぐ停まる汽車を乗り継ぎ誕生日 太田紫苑
スキー列車月蝕の野を曲るなく 石田波郷
スキー列車ぬくき寒暖計読まれ 岸風三楼 往来
スキー列車くらくてパンの水こぼれ 岸風三楼 往来
スキー列車あさき睡を歪み寝る 石田波郷
しまひ汽車に乗りおくれたか時鳥 時鳥 正岡子規
シベリアの月の射し入る汽車に寝む 村松紅花
ざくろ熟れ汽車熊本に近づきぬ 今井千鶴子
さくらんぼ熟せり晝の汽車が行き 中尾寿美子
この街のみぞれの汽車の遠はしり 細谷源二 砂金帯
こどものときの眼で 列車の窓の灯を見おくる 吉岡禅寺洞
ゴツホ忌や麦生の彼方汽車通る 高橋のり子
こがらしをゆく白日の汽車恠し 下村槐太 天涯
ゲルマンの大緑蔭に汽車入りぬ 栗坪和子
けふもおなじところを曲る夕焼汽車 榎本冬一郎 眼光
きよお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中 金子兜太
お召列車へひらきぬ今朝の白菖蒲 松岡里江 『桜坂』
おでん屋に又一汽車を遅らす気 間嶋秋虹
うららかや川が曲がれば汽車曲がる 沼等外(1919-)
うとうとと知らぬ町まで冬列車 高田あきら
うつうつと夜汽車にありぬ啄木忌 藤田湘子
ヴィクトリア駅より秋の終列車 友田喜美子
いつまでも手を振り汽車を涼しくす 長谷川双魚 風形
いちめんの旋る花菜の汽車の窓 京極杞陽 くくたち上巻
アロハ着て楽団終列車を占めし 長谷川かな女 花 季
あてどなき汽車乗りすてし冬の海 高橋良子
あつき夜や汽車の響きの遠曇り 暑 正岡子規
あたふた乗つた夜汽車でその事を考へよう シヤツと雑草 栗林一石路
「燕」てふ列車走れり燕の世 高澤良一 宿好
*はまなすや煙の汽車を知らない子 古賀祥予
*はまなすの駅に列車を切り離す 岩崎照子
*かんじきの客乗れば発つ終列車 佐々木いつき

汽車 列車 補遺

あつき夜や汽車の響きの遠曇り 正岡子規 暑
あの汽車が通れば夜や田植人 村山故郷
いわきまでゆで蒸汽車の窓におき 細見綾子
うち倚るや秋色暮るゝ汽車の窓 日野草城
うつうつと夜汽車にありぬ啄木忌 藤田湘子
お前のことに汽車にのる湯豆腐うまし 中川一碧樓
かの汽車が過ぎ行く伊賀の多蛾地帯 山口誓子
きよお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中 金子兜太
げんげ たんぽぽ まだ煙吐く汽車通る 伊丹三樹彦
こがらしをゆく白日の汽車恠し 下村槐太 天涯
ここ市振冬濤に汽車声あげ過ぐ 大野林火 雪華 昭和三十六年
ごつつりと汽車停る発つ氷点下 鷹羽狩行
この街のみぞれの汽車の遠はしり 細谷源二 砂金帯
こぼれたる汽車の火屑の露けさよ 山口誓子
さみだれや手賀も印旛も見えぬ汽車 阿波野青畝
しまひ汽車に乗りおくれたか時鳥 正岡子規 時鳥
ジャズ寒し汽車の団煙之に和し 中村草田男
スキーバス待つ上り汽車下り汽車 右城暮石 虻峠
スキー列車月食の野を曲るなく 石田波郷
すれちがふ汽車の窓透き雪山あり 篠原梵 年々去来の花 皿
すれ違ふ汽車の小窓の燕哉 正岡子規 燕
すわ夜汽車凩山へ吹き返し 正岡子規 凩
その昔万歳列車煙囃し 百合山羽公 樂土以後
その辺にうぐひす居らず汽車の音 正岡子規 鶯
とまつた汽車の雨の窓なり 尾崎放哉 須磨寺時代
トンネルを出し汽車雉子を飛び立たす 右城暮石 上下
なほ稲田ゆく汽車妻が下りし汽車 山口誓子
なほ北に行く汽車とまり夏の月 中村汀女
ねむりては覚めては麦の秋の汽車(中国旅行吟五句) 細見綾子
はだれ野の涯や大きく汽車曲る 中村苑子
はらはらと汽車に驚く螽かな 正岡子規 蝗
ハンケチや夜汽車降り来し煤埃 石塚友二 光塵
ひまはり黄に毛蟲のごとく汽車停る 三橋鷹女
ほのと白し枯野の汽車を遠く見て 相馬遷子 雪嶺
まくなぎのゆふぐれに来て汽車を見る 山口誓子
ましぐらに汽車過ぎもとの雪の景 山口誓子
みちのくへ行く汽車通り冬の川 村山故郷
みどり児も北ゆく冬の夜汽車にて 西東三鬼
もろこしの赤毛恥らひ汽車去らす 角川源義
やがて汽車つくに冬日の落ちかかる 上野泰
よくひゞく汽車で谷越す花杏 飴山實 少長集
わが汽車にあふられあふらる合歓見送る 大野林火 青水輪 昭和二十四年
わけもなや若葉の風に汽車が行く 正岡子規若葉
われの汽車踊の阿波へ走るのみ 阿波野青畝
阿蘇を出て粟畑広く走る汽車 高浜年尾
鮎酢や旅も終りの汽車の中 山口青邨
安達太郎の裾の夜陰を露の汽車 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
暗けれど汽車はよろしも秋の夜 山口誓子
暗部を出て華やかな汽車に会うときあり 金子兜太
闇師等の汽車は銚子へ雲雀たつ 加藤秋邨
易断に出す掌夜汽車の轟音下 伊丹三樹彦
一握の灯が汽車となる豊の秋 鷹羽狩行
一駅を汽車に乗りたる早苗とり 山口青邨
一箱の汽車で見に来る花林檎 飴山實 次の花
稲の中駆け来て汽車に間に合ふか 上野泰 春潮
稲雀汽車に追はれてああ抜かる 山口誓子
稲雀追うてますます汽車進む 山口誓子
宇治の春水にゐて汽車の煙見る 細見綾子
雨期の国薪木を焚きて汽車走る 高野素十
雨晴れて汽車道濡るゝ若葉かな 正岡子規 若葉
鰻簗木曾の夜汽車の照らし過ぐ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
雲の峯船足陸の汽車に負け 平畑静塔
雲雀舞ひ列車は兵をあふれしむ 三橋鷹女
駅に魚拓雪に遅るる汽車を待つ 福田蓼汀 秋風挽歌
駅を出て汽車迅からず夜の霧 山口誓子
駅遅日遠の方にも汽車が居り 中村汀女
駅毎に花火揚がりて汽車のろし 上田五千石『田園』補遺
越中ノ国雪解われらが列車やゝ煤けてゐる着いた 中川一碧樓
園児らの絵の春山は汽車登る 後藤比奈夫
炎天に手を腰汽車の来るを待つ 山口誓子
煙にも汽車固有の香いわし雲 鷹羽狩行
煙のみ見えて汽車ゆく麦青む 山口青邨
遠き汽車俯向き下る春の昼 山口誓子
遠足の黒き塊夜汽車を出づ 右城暮石 句集外 昭和二十七年
横一文字の燈は枯野行く列車 山口誓子
牡丹見てもみくちやとなる帰り汽車 細見綾子
夏の川汽車の車輪の下に鳴る 山口誓子
夏の暮汽車見る前に川流る 山口誓子
夏の夜の汽車のけむりの粒膝に 篠原梵 年々去来の花 雨
夏蜜柑鈴成りの山汽車くゞる 右城暮石 上下
家まづしおゝ煌々と夜の列車 細谷源二 砂金帯
家土産の松蕈匂ふ夜汽車哉 正岡子規 松茸
果樹園の秋ときをりに汽車のひびき 大野林火 冬青集 海門以後
火を焚いて野分の中を汽車過ぎつ 山口誓子
花ちるや真理をのせむと汽車ぽつぽ 角川源義
花杏汽車を山から吐きにけり 飴山實 辛酉小雪
花菜より汽車の貌くる陽炎と 森澄雄
荷を下す橇馬つつむ汽車煙 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
貨物汽車只一燈の秋の暮 山口誓子
霞む海汽車に眠りて母やすし 松崎鉄之介
我庵は汽車の夜嵐時鳥 正岡子規 時鳥
我汽車にあふられたりし雪の傘 中村草田男
芽柳や成田にむかふ汽車汚れ 石橋秀野
海にせり山す夕焼火山汽車早む 松崎鉄之介
柿を呼ぶうしろの方の列車哉 正岡子規 柿
柿赤し汽車待つ農夫一家族 草間時彦 中年
葛の花丹後へ汽車の下りそむ 松崎鉄之介
葛は覆うもの 咲くもの 野末を軍需列車 伊丹三樹彦
葛山を占むる晩夏の汽車の笛 大野林火 水輪 昭和二十三年
葛飾の月の田圃を終列車 川端茅舎
鴨打ののつと加はる夜汽車かな 中村汀女
寒き貌列車乗り来る林檎はむ 角川源義
寒き夜や汽車の頭燈罅走る 山口誓子
寒の汽車すばやくとほる雑木山 飯田龍太
寒暁に笛亀山は汽車どころ 山口誓子
寒月下煙を低く汽車来る 山口誓子
寒凪やなかなか消えぬ汽車の尻 飴山實 少長集
寒夜日本軍用列車にながく堰かれ 古沢太穂 古沢太穂句集
寒鴉の髭見えて其のまゝ汽車進む 右城暮石 句集外 昭和二十三年
玩具部の売子は汽車を駆りて愉し 安住敦
雁わたる丘のかげより汽車蒸気 加藤秋邨
顔昏れてたがひにさむし能登の汽車 飴山實 少長集
帰還兵忘れられ夜汽車の煙におう 古沢太穂 三十代
汽車が走る山火事 尾崎放哉 小豆島時代
汽車すぎしあと薔薇がまぶしく咲いてゐたり 種田山頭火 自画像 層雲集
汽車そこへ露けき軌道照らし来る 山口誓子
汽車たつや四方の雪解に谺して 前田普羅 飛騨紬
汽車で越す倶利伽羅こゝと青芒 右城暮石 句集外 昭和十四年
汽車で計る鮎掛けの仕舞ひ時間 右城暮石 句集外 昭和三十四年
汽車どちら向くも雪嶺なくなれり 右城暮石 声と声
汽車とゞろけば鴉散る銀杏真裸なり 種田山頭火 自画像 層雲集
汽車とまり遠き雪嶺とまりたり 山口誓子
汽車とまり大いなる虫の闇とまる 加藤秋邨
汽車とまり檜の皮を剥ぐ匂ひ 加藤秋邨
汽車と云ものが出来るぞ閑子鳥 正岡子規 閑古鳥
汽車と女ゆきて月蝕はじまりぬ 西東三鬼
汽車ながく過ることあり春の庭 伊丹三樹彦
汽車におどろく鴨におどろく旅人われ 臼田亜郎 定本亜浪句集
汽車にねて須磨の風ひく夜寒哉 正岡子規 夜寒
汽車に手を振る 高梁畑駆け出た脛 伊丹三樹彦
汽車に乗て汐干の浜を通りけり 正岡子規 汐干狩
汽車に寝て雪岳行の膝慄ふ 山口誓子
汽車に積み瑞の桜ん坊ロンドンヘ 山口青邨
汽車に灯が入りてにはかに植田寒 鷹羽狩行
汽車に馴れざる人達や蝿つきくる 右城暮石 句集外 昭和三十年
汽車に馴れて濱名の月を眠りけり 正岡子規 月
汽車のつく頃幌橇が一つ来し 高野素十
汽車のひびきも夜明けらしい楢の葉の鳴る 種田山頭火 草木塔
汽車のわが箱青木曽を過ぎ終る 山口誓子
汽車の煙炎天流るるとき青し 草間時彦 中年
汽車の煙白し鮮らし春の旅へ 伊丹三樹彦
汽車の音の近く聞ゆる夜寒哉 正岡子規 夜寒
汽車の音鶯逃げてしまひけり 正岡子規 鶯
汽車の月虚空を飛べる枯野かな 野見山朱鳥 曼珠沙華
汽車の月後にて聞けば十三夜 正岡子規 十三夜
汽車の捨蒸気よろこぶ稲雀 鷹羽狩行
汽車の切符買はんとして手袋脱げざる 正岡子規 手袋
汽車の窓にさしこむ須磨の月夜哉 正岡子規 月夜
汽車の窓に見上る岡の桜哉 正岡子規 桜
汽車の窓に首出す人や瀬田の秋 正岡子規 秋
汽車の窓ひとつひとつに春暁あり 福田蓼汀 山火
汽車の窓折々うつる紅葉哉 正岡子規 紅葉
汽車の胴霧抜けくれば滴りぬ 飴山實 おりいぶ
汽車の箱大き燈にして蛾の入り来る 山口誓子
汽車の罐あたりの雪に燃えて過ぐ 山口誓子
汽車はひく餘生のけむり紅葉狩 百合山羽公 樂土
汽車はやくしりぞく枯野その河川 山口誓子
汽車はやく枯れし野を日をしりへにす 山口誓子
汽車は過ぐ稲田が浜となるところ 山口誓子
汽車は陸地の声花杏野に満てり 飯田龍太
汽車よりも汽船長生き春の沖 三橋敏雄
汽車を下りて遠き宿場や稲の花 正岡子規 稲の花
汽車を下りて淋しき驛や花芒 正岡子規 薄
汽車を下りる茸狩衆や稲荷山 正岡子規 茸狩
汽車を見る崖の茶店や花芒 正岡子規 薄
汽車を見る蓮根掘りの身を捩ぢり 鷹羽狩行
汽車を乗り継ぐ月光の地に降りて 橋本多佳子
汽車を吐く笹子トンネル葡萄園 山口青邨
汽車永くひびき睡りし黒子なり 伊丹三樹彦
汽車煙雪嶺にちかくかざし寄る 山口誓子
汽車煙泥鰌居て立つ泥煙 中村草田男
汽車煙熱きがかかる月見草 鷹羽狩行
汽車下りて遠き宿場や稲の花 正岡子規 稲の花
汽車下りて船に乗る寝どこありにけり 尾崎放哉 大正時代
汽車過ぎて煙うづまく若葉哉 正岡子規 若葉
汽車過ぎて煙のかゝる木の芽かな 正岡子規 木の芽
汽車過ぎて山静かなり夏木立 正岡子規夏木立
汽車過ぐるあとを根岸の夜ぞ長き 正岡子規 夜長
汽車寒くゆく林中に別の老婆 飯田龍太
汽車寒し前なる人は聖書読む 山口青邨
汽車去りてのちの踏切雪敷けり 山口誓子
汽車去れば孤駅に復る暖炉かな 日野草城
汽車見えて 近付くまでの 休み燕 伊丹三樹彦
汽車見る見る山を上るや青嵐 正岡子規 青嵐
汽車見る子せちにいとほし雪の原 富安風生
汽車工場の汽罐車枯山へ光向く 細谷源二 鐵
汽車工場の軌条霜崖へ行き止る 細谷源二 鐵
汽車工場寒林を伐りて汽車を置けり 細谷源二 鐵
汽車慌しく過ぎし踏切を渡りゆく乞食 尾崎放哉 大正時代
汽車行くやひんと立たる田草取 正岡子規 田草取
汽車降りて落穂拾ひに並ばんかと 西東三鬼
汽車此夜不二足柄としぐれけり 正岡子規 時雨
汽車止まるゆたかにも葉桜の下 細見綾子
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
汽車走る雪嶺の向き変りつつ 右城暮石 天水
汽車待つや梨喰ふ人の淋し顔 正岡子規 梨
汽車遅く山の蝶など飛びつれて 山口青邨
汽車着きし音の近さや蓮の骨 飴山實 辛酉小雪
汽車長くきしみて止る夏山峡(北陸線) 細見綾子
汽車長し海水浴の人降りて 波多野爽波 鋪道の花
汽車道にそふて咲けりけしの花 正岡子規芥子の花
汽車道にならんでありく日永哉 正岡子規 日永
汽車道に雁低く飛ぶ月夜哉 正岡子規 雁
汽車道に低く雁飛ぶ月夜哉 正岡子規 雁
汽車道に冬木の影の竝びけり 正岡子規 冬木
汽車道に鳩の下り居る枯野哉 正岡子規 枯野
汽車道に堀り殘されて花野哉 正岡子規 花野
汽車道のあらはに蕎麥の莖赤し 正岡子規 蕎麥
汽車道の一すぢ長し冬木立 正岡子規 冬木立
汽車道の一段高き冬田哉 正岡子規 冬田
汽車道の此頃出来ぬ芥子の花 正岡子規 芥子の花
汽車道の此頃出來し枯野かな 正岡子規 枯野
汽車道の左右に畑打つ夫婦哉 正岡子規 畑打
汽車道の丹後へ鳴くや時鳥 正岡子規 時鳥
汽車道をありけば近し稲の花 正岡子規 稲の花
汽車道を横ぎつて行く夏野哉 正岡子規 夏野
汽車道を辿れは近し稲の花 正岡子規 稲の花
汽車南下はじむ大き汐干潟めぐり 大野林火 雪華 昭和三十六年
汽車入りて停車場くらし花の雨 木村蕪城 一位
汽車発着空樽の胴梅雨が鳴らす 中村草田男
汽車疲れ食後の梨を措きて臥す 石塚友二 方寸虚実
汽車鳴りの失せし後も膝崖に抱き 伊丹三樹彦
汽車夜寒ねむらで読みし「夜明前」 加藤秋邨
汽車来るよ寒夜の峡の上手より 山口誓子
汽車来る雪山に音刻みつつ 相馬遷子 雪嶺
鬼めける汽車の釜焚き秋の暮 石塚友二 光塵
偽梅雨に枕ただすと列車過ぐ 角川源義
擬装装甲列車に逢へり粟の中 加藤秋邨
吉林にゆく汽車にあり豆の秋 山口青邨
脚下の冬汽車がもつとも白ら煙 中村草田男
逆立ちて汽車の下りくる霧の中 野見山朱鳥 曼珠沙華
久に見し汽車や野分の中にして 山口誓子
京都遠し夜行列車に雪降りつつ 村山故郷
峡の夜汽車に苞の寒鯉口をあく 加藤秋邨
曲る汽車煙曳きゆく秋の暮 山口誓子
桐の花窓狭き汽車汽車を待つ 山口誓子
芹薺汽車道越えて三河島 正岡子規 芹
近づきて遠ざかる時冬夜の汽車 細見綾子 雉子
金鳳華汽車行きてまた時経たる 森澄雄
駆けぬける汽車の嵐や夏木立 内藤鳴雪
沓掛へ汽車は疾駆すほととぎす 加藤秋邨
桑の芽や暖房止めし汽車に乗り 右城暮石 句集外 昭和十四年
軍用列車わが國の鉄橋を越え長し 三橋敏雄
啓螢の堤を列車走りけり 阿波野青畝
携へし避暑案内や汽車の中 正岡子規 避暑
月光の壁に汽車来る光かな 中村草田男
月明に火屑こぼしつ長き汽車 中村汀女
月明の電車に沿ひて汽車走る 右城暮石 句集外 昭和四十二年
言葉なき夜汽車夏みかん昼の色 西東三鬼
古代杉もみづる水郷行の汽車 山田みづえ 草譜
孤児の園枯れたり汽車と顔過ぐる 西東三鬼
故里へ冬山を汽車煙吐く 細見綾子 桃は八重
枯芦や汽車騒ぎつゝ遠くより 渡邊白泉
枯土堤のすこし高きは汽車の格 山口誓子
枯野焦げ車輪を上に列車倒れ 山口誓子
虎杖や狩勝峠汽車徐行 星野立子
吾が汽車に逆行しつつマラソン来る 山口誓子
吾が汽車を見送る寒鴉身を回し 山口誓子
吾亦紅山越す汽車のあふちかな 右城暮石 句集外 昭和二年
御殿場に鹿の驚く夜汽車哉 正岡子規 鹿
光る雨見つつ颱風の汽車にあり 相馬遷子 雪嶺
光る蜂青野の汽車に伴走す 伊丹三樹彦
紅と紺速力の出しスキー列車 山口誓子
紅葉さげて汽車にのる人集いけり 尾崎放哉 大学時代
紅葉山右に左に汽車徐行 星野立子
耕すや時を知らする汽車通る 森澄雄
行かぬ吾れスキー列車に座席なし 山口誓子
降りし汽車また寒月に発ちゆけり 百合山羽公 故園
高原に隠る雪見え来る汽車来ず 山口誓子
豪雨馴れせし汽車紀伊の青嶺越す 右城暮石 天水
国捷てり寒煙高く汽車出で発つ 山口誓子
此邊を通ふ汽車あり女郎花 正岡子規 女郎花
妻の汽車はや茂福の稲田浜 山口誓子
妻偲べば寒夜の端を汽車の音 松崎鉄之介
歳晩や火の粉豊かの汽車煙 中村草田男
菜の花や奥州通ふ汽車の笛 正岡子規 菜の花
雑多なる貨車歳晩の汽車となり 山口誓子
三月十日軍用列車わつと消ゆ 西東三鬼
山に沿ひて汽車走り行く若葉哉 正岡子規 若葉
山の蝶とびつれ網走行の汽車 山口青邨
山峡を汽車あへぎ出て合歓の花 細見綾子
山吹の野生えの里を汽車が越す 右城暮石 句集外 昭和十二年
山北や鮎の鮓買ふ汽車の中 正岡子規 鮓
残雪や峠の上に汽車停まる 村山故郷
始発駅入り来る空のスキー列車 山口誓子
子が泣いて母の声して冬夜汽車 岡本眸
枝柿を提げて汽車待つ田夫哉 正岡子規 柿
死が近し端より端へ枯野汽車 西東三鬼
飼ひなれしをしや汽車にも驚かず 正岡子規 鴛鴦
歯を出して笑ふ芸人枯野の汽車 伊丹三樹彦
時雨汽車光りてすぐるビルの間 松崎鉄之介
時鳥上野をもとる汽車の音 正岡子規 時鳥
次の汽車までひえびえと茜空 廣瀬直人
耳熱く冬の夜汽車にペン使ふ 岡本眸
自衛隊列車北指す歓呼なし 伊丹三樹彦
湿原に汽車の団煙さむく残る 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
借り家や冴ゆる夜近き汽車の音 正岡子規 冴
灼けてゐる「こどもの汽車」に子と桶られ 日野草城
手の中の空しさ梅雨を帰る汽車 及川貞 夕焼
手の中の空しさ梅雨野を帰る汽車 及川貞 榧の實
秋の暮長き煙を汽車かざし 山口誓子
秋の夜の「どん底」汽車と思ふべし 平畑静塔
秋雨や二人汽車待つ停車場 正岡子規 秋雨
秋耕に音ころがして列車消ゆ 上田五千石『琥珀』補遺
秋暑き汽車に必死の子守唄 中村汀女
秋晴やのどかに通る貨物汽車 日野草城
秋風や都の汽車はみちのくヘ 山口青邨
終駅の干潟を前に汽車停まる 右城暮石 句集外 昭和二十八年
終列車送りし駅の灯取虫 日野草城
熟柿吸ふ音の夜汽車は響きやすし 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
春の夜の暗黒列車子がまたたく 西東三鬼
春めきし雪の小樽の列車音 飯田龍太
春寒の毛布敷きやる夜汽車かな 杉田久女
春暁の駅に洗面汽車乗り継ぐ 右城暮石 句集外 昭和三十八年
春近し子供と汽車の線路あり 細見綾子
春月の下ゆく汽車の煙の束 山口誓子
春月や東京近き汽車の窓 高野素十
春山の胎内へ汽車もぐり込む 西東三鬼
春昼の鳥羽駅に汽車黒煙上ぐ 右城暮石 句集外 昭和三十八年
春潮の霞みつゝあり汽車の音 日野草城
春暮の火汽車の罐より貰ひし火 山口誓子
初詣終へ来し汽車も燈るころ 山口誓子
初瀬の駅獅子舞汽車を待てるかも 山口誓子
初雷の汽車の響に紛れけり 正岡子規 春雷
傷兵の視野なべて枯れ汽車消える 伊丹三樹彦
消えまどう汽車の寒煙 棄て峡田 伊丹三樹彦
上下とも汽車は躄や秋出水 阿波野青畝
乗り出し見る月夜吸いとる汽車尾燈 金子兜太
城壁に秋冷にはか汽車ひびく 中村汀女
常ならぬ列車のひびき川施餓鬼 鷹羽狩行
常夏や軋りて止る貨物汽車 日野草城
尻向けて汽車を憎めり田草取 石塚友二 光塵
寝し汽車に寒燈点けてわが一郭 山口誓子
寝し汽車に入営送る声は後尾 山口誓子
心安し若葉の風に汽車が行く 正岡子規 若葉
新茶積む馬も来て居る汽車場哉 正岡子規 新茶
新緑や芥のごとき汽車の中 百合山羽公 故園
新緑や旅する肘を汽車に見る 山口誓子
真青な柿蔭山房汽車下過ぐ 山口誓子
身弱にて買う児への汽車妻への菊 楠本憲吉 孤客
諏訪をさす夜汽車の隅や赤彦忌 古沢太穂 古沢太穂句集
吹雪く中北の呼ぶ声汽車走る 西東三鬼
水取の奈良駅汽車の黒煙 右城暮石 句集外 昭和三十六年
数へ日の青い列車に魘(うな)される 佐藤鬼房
星凍りひと寝し汽車の灯に堰かれ 秋元不死男
西行きの列車がら空きクリスマス 右城暮石 声と声
西国へ夜汽車にて行く年の暮 松崎鉄之介
青む野に迅さを見せて汽車煙 津田清子 礼拝
青胡桃高原に置き汽車下る 松崎鉄之 介
青田行く汽車来し方も山重なり 右城暮石 句集外 昭和三十一年
青麦や汽車追ひ越して電車走る 右城暮石 声と声
静養期子と来て見れば汽車走る 西東三鬼
石狩の国原焼くる夜汽車かな 富安風生
積雪や汽車の燈の相別れゆく 山口誓子
赤児泣く汽車や秋山深く行く 中村汀女
雪の汽車授乳の乳房つかみ出す 草間時彦
雪の日の耳目稚なし汽車通る 林翔 和紙
雪の野に出てうるほへる昼の汽車 廣瀬直人
雪解や駅舎ぐるみの汽車煙 上田五千石『森林』補遺
雪厚き幹見ればわが汽車北に対ふ 篠原梵 年々去来の花 皿
雪降れり月食の汽車山に入り 石田波郷
雪合羽汽車に乗る時ひきずれり(七尾線二句) 細見綾子
雪国の汽車を歩きて座席探がす 右城暮石 上下
雪山のふところ深く行く列車 高浜年尾
雪嶺に汽車現はれてやや久し 中村汀女
絶壁に遠く暮靄に汽車鳴り入る 伊丹三樹彦
蝉の声しばらく汽車に押されけり 正岡子規 蝉
千葉県の汽車ガタガタや鰯雲 高田風人子
川崎を汽車て通るや梨の花 正岡子規 梨の花
線路あさる鴉ありうらゝ汽車待てば 種田山頭火 自画像 層雲集
全車両全スキー揺れスキー列車 山口誓子
全灯を点けての後も枯野汽車 鷹羽狩行
素通りの汽車に汚され雪の谿 津田清子 礼拝
壮漢や汽車に乗り来てはたく雪 渡邊白泉
早稲の香や列車みちのくへまつしぐら 山口青邨
早乙女を汽車より見そめ給ひけり 正岡子規 早乙女
早発ちの汽車で花野を見に行きし 細見綾子
早稻の香や小山にそふて汽車走る 正岡子規 早稲
草枯や列車いつまで野を駛る 日野草城
送る身に露霜ひしと汽車発つ間 石塚友二 方寸虚実
霜の駅夜汽車とまりて燠おとす 飴山實 おりいぶ
霜の夜の眠りが捕ふ遠き汽車 野澤節子 未明音
霜夜寝て四方走り居る汽車のこと 石塚友二 方寸虚実
其の下を汽車が通るぞ羽抜鳥 正岡子規 羽抜鳥
太き窓枠に肘出し汽車の秋 鷹羽狩行
大仰に夜汽車のけむり月の冷え 飯田蛇笏 椿花集
大雪を曳きあへずして汽車うごく 平畑静塔
濁流よりはたはたきたり汽車に入る 加藤秋邨
単線の汽車下りてより飛燕に会ふ(伊豆) 細見綾子
探梅や遠き昔の汽車にのり 山口誓子
炭坑の汽車に乗り来て入学す 山口誓子
炭積んで白河下る荷汽車哉 正岡子規 炭
短夜の入らねむれる汽車に乗る 篠原梵 年々去来の花 雨
短夜や一番汽車に乗りおくれ 正岡子規 短夜
団扇持つて汽車に乗りたる道者哉 正岡子規 団扇
遅れつつ汽車が着くなり麦の秋 上村占魚 球磨
竹煮草雨荒ければ汽車喘ぐ 角川源義
竹酔日人にあふべく汽車に乗り 佐藤鬼房
昼の汽車音のころがる枯故郷 飯田龍太
朝の汽車すこやかに露女郎花(丹後由良) 細見綾子
朝寒や夜行汽車着く海の駅 日野草城
町裏に汽車が着きゐて秋の海 中村汀女
通勤の汽車にさきだち朝の雁 百合山羽公 故園
停(とま)り合ふ汽車なつかしき雪の駅 松本たかし
笛さむく汽車ゆく汽車の上をゆく 山口誓子
鉄橋を夜汽車が通り鮭の番 草間時彦
天草の匂へる闇の終列車 加藤秋邨
天兵が鐵橋を接ぎ汽車を起し 渡邊白泉
田舎人の衣更へたる汽車場哉 正岡子規 更衣
田植一家飯くふ汽車の方に向き 百合山羽公 故園
田掻牛汽車見てなまけ丹波口 山口青邨
田草取汽車を見送る女なれば 山口青邨
電車過ぐ汽車過ぐ旱川の上 山口誓子
都に友ありタ焼鴉迫ひ越す汽車 香西照雄
都に友あり夕焼鵜追ひ越す汽車 香西照雄 対話
都はなるる汽車に面して冬木多し 松崎鉄之介
土埋めて汽車道作る冬田かな 河東碧梧桐
土匍へばあたたかく過ぎ夜汽車の灯 伊丹三樹彦
冬の暮これから土佐へ行く汽車よ 山口誓子
冬の旅汽車の煙の海辺の町 細見綾子
冬の鐵橋列車のほかは渡らざる 三橋敏雄
冬越さな汽車もいたみて笛吹くに 飴山實 おりいぶ
冬座敷ときどき阿蘇へ向ふ汽車 中村汀女
冬山やごぼごぼと汽車の麓行く 正岡子規 冬山
冬晴や出づべくとして汽車長し 日野草城
冬暖や崖より海へ汽車煙 大野林火 青水輪 昭和二十四年
冬夜汽車並びて知らぬ男膝 岡本眸
冬煖し汽車白煙を頭上にす 山口誓子
東京の汽車来て嬉し稲の露 前田普羅 普羅句集
桃買ひて丹後篠山行きの汽車 細見綾子
踏切に汽車の香残る露の夜 山口誓子
同じ音の虫鳴き夜汽車走るなり 右城暮石 句集外 昭和二十九年
鈍行の汽車に煽られ土手焼く火 鷹羽狩行
鈍行列車ときどき加賀の蓮田かな 山田みづえ まるめろ
二度よりは通らぬ汽車や花芒 正岡子規 薄
日ざかりの列車武蔵野深くあり 角川源義
日盛りの駅一時間汽車を待つ 右城暮石 句集外 昭和三十四年
濃青葉の北京へ深く火車入りゆく<北京火車は汽車> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
納涼映画のはづれ明るき汽車馳せすぐ 岸田稚魚 負け犬
馬鈴薯の花むらさき混合列車客車二つ 山口青邨
廃さるる汽車に給水花吹雪 百合山羽公 寒雁
背を汽車通る草ひく顔をあげず 尾崎放哉 小浜時代
梅雨の汽車赤き鉄橋ひびき終ゆ 細見綾子
梅林にしばらくからむ汽車煙 鷹羽狩行
白梅の淡々汽車に一と夜寝し 石橋秀野
白露や駅長ひとり汽車を待つ 渡邊白泉
薄暮れぬ野末に汽車の走る音 正岡子規
麦の芽に汽車の煙のさはり消ゆ 中村汀女
麦の秋いまも明治の汽車ゆかす 伊丹三樹彦
麦秋の汽車に鎧戸ありし日よ 鷹羽狩行
麦秋の汽車大薬罐の茶をくばる(中国旅行吟五句) 細見綾子
麦秋の明るさを汽車つつ走り(蘇州回顧二句) 細見綾子
麦青し貨物のみなる汽車の音 阿波野青畝
蛤を膝に鳴かせて夜の汽車 石塚友二 光塵
晩秋の汽車や老婆の荷に日ざす 細見綾子
晩春を吾が白き足袋汽車に乗る 細見綾子
磐梯枯る越後へ列車まつしぐら 角川源義
避暑期過ぐ木立の上に汽車見えて 岡本眸
尾花常山崖の茶店や汽車を見る 正岡子規 薄
夫と食ぶ茹で栗夜汽車過ぎ行けり 細見綾子
芙美子忌や漁網をくぐる汽車煙 秋元不死男
葡萄園の夏や見えざる汽車きこえ 西東三鬼
仏国寺駅寒夜の汽車に松明かざす 山口誓子
兵隊がゆくまつ黒い汽車に乗り 西東三鬼
別れ霜なり通勤の汽車に映え 百合山羽公 故園
母恋し冬あかつきの汽車ひゞき 渡邊白泉
方向を知りて走れり雪の汽車 細見綾子 雉子
泡立草列車の席の座高まで 山口誓子
北を指す列車西日の日本海 松崎鉄之介
北国の短か葡萄よ汽車走る 山口誓子
北上す夜汽車の露の連結器 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
没義道な汽車連結の音霧に 山口誓子
枕木の霜正刻に汽車きたる 百合山羽公 故園
蜜柑山ゆく目遺しの汽車煙 鷹羽狩行
蜜柑山出でて古色の汽車煙 鷹羽狩行
霧の列車に 椰子増え 終着河口都市 伊丹三樹彦
霧深き足柄山の荷汽車哉 正岡子規 霧
名月や汽車に過ぎゆく諏訪湖畔 相馬遷子 雪嶺
明けやすき列車かぐろく野をかぎる 角川源義
棉摘みの物言ひたげに汽車を見る 山田みづえ 草譜
木の実木にぎつしり汽車がぬけとほる 津田清子 礼拝
黙ふかく冬の夜汽車を誰も聴く 加藤秋邨
目をとぢて秋の夜汽車はすれちがふ 中村汀女
籾乾したり宮廷列車の足許まで 山口誓子
夜は汽車の灯に熟れいそぐ蜜柑山 鷹羽狩行
夜汽車いま音をころして花野過ぐ 細見綾子 存問
夜汽車過ぎゆく一畦一畦冬田青し 加藤秋邨
夜汽車見て居り雪国にゆかむかと 伊丹三樹彦
夜汽車走る網棚に雉子うつくしく 大野林火 早桃 太白集
夜汽車憂し男女の私語の執拗に 伊丹三樹彦
夜汽車揺りぬ稲妻に寝し六家族 藤田湘子 途上
夜汽車揺れ雪国の火事近く過ぐ 大野林火 飛花集 昭和四十七年
夜桜や汽車の白煙ふんだんに 山口誓子
夜長を来し列車たやすく切離す 津田清子 礼拝
耶馬の汽車大片蔭に煙あげ 高野素十
野菊やらん汽車の窓より見ゆる也 正岡子規 野菊
野分あと海ぎわばかり行きし汽車 細見綾子
遊牧のごとし十二輛編成列車 金子兜太
夕づきて迎へ汽車着く花の山 日野草城
夕汽車はいづこに向ふ蝉は樹に 山口誓子
夕立の去りし紀北を煙汽車 右城暮石 上下
揺れやまぬ夜行列車に紺碧の老師 金子兜太
葉桜や柵に守られ明治の汽車 伊丹三樹彦
裸の子が並び居り汽車に声はなつ 尾崎放哉 大正時代
落葉ほろ~汽笛鳴らしつゝ汽車が来し 種田山頭火 自画像 層雲集
陸奥暮春婆が杖ひく汽車の中 岸田稚魚
立葵列車が黒く掠めゐる 渡邊白泉
立冬の夜汽車信濃をまはりたる 細見綾子 曼陀羅
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本眸
列車には間に合ふ時間枯野昏れ 津田清子
列車の燈播磨のみどりうんか飼ふ 山口誓子
列車過ぐたびにぐらぐら梅雨の家 伊丹三樹彦
列車後尾に火を噴く高炉ここが別れ 金子兜太
列車掃くひとの靴音夜の秋 飯田龍太
列車待つ我も帰燕の群の中 有馬朗人 耳順
列車置場西日へ抜けて名古屋去る 山口誓子
列車追ふ霧あり山は迫りたる 右城暮石 句集外 昭和十五年
列車無言あの山この山雪が来て 山口青邨
露草や朝一番の汽車も露 百合山羽公 故園
話声に充ち汽車昏し雪が来て 飴山實 おりいぶ
藁塚の日も夜も立ちて汽車通す 伊丹三樹彦
凩に汽車かけり行く別れ哉 正岡子規 凩
凩や列車降りなば妓買はむ 原石鼎 花影
曼珠沙華逃るるごとく野の列車 角川源義
旱田を走る汽車にて手を洗ふ 伊丹三樹彦
梟鳴き汽車待つしじまの女の背 伊丹三樹彦
椽側へ出て汽車見るや冬籠 正岡子規 冬籠
煖房に汗ばむ夜汽車神詣 杉田久女
稻の香や汽車から見ゆる法隆寺 正岡子規 稲
稻の香や野末は暮れて汽車の音 正岡子規 稲
穗薄の顏かく汽車の小窓哉 正岡子規 薄
茱萸翳す人も揉まるゝ帰路の汽車 石塚友二 方寸虚実
蜩のこゑ振る山に汽車停る 百合山羽公 故園
蜩や汽車まはりゆく駒ケ嶽 加藤秋邨
蝙蝠の汽車の煙にまぎれぬる 山口青邨
螢籠提げ全灯の汽車と会ふ 鷹羽狩行
鞦韆や舞子の駅の汽車発ちぬ 山口誓子
鶯の遠のいてなく汽車の音 正岡子規 鶯
鶯やこの山もまた汽車の音 正岡子規 鶯
鶯や又この山も汽車の音 正岡子規 鶯
鵙鳴いて汽車には藪の切通し 山口誓子
鷄頭のうしろを通る荷汽車哉 正岡子規 鶏頭いい

by 575fudemakase | 2018-01-29 12:51 | 無季 | Trackback | Comments(0)

電車 の俳句

電車 の俳句
電車

軋み着く浜の電車や磯開き 守谷順子
萍や古き電車の走りぬけ 穴井太 原郷樹林
浪音の由比ヶ浜より初電車 高浜虚子
路面電車ひょいと除けゆくつばくらめ 高澤良一 寒暑
蓮池の向うを通る電車かな 比叡 野村泊月
礼拝を終へし電車に初山河 田川飛旅子
旅の師の許へはづめり初電車 菅沼義忠 『早苗饗』
流星や誰も乗らざる電車過ぐ 小泉八重子
落葉して幾条ひびく終電車 龍太
雷雨過ぎし校庭電車の灯がひろがる 桜井博道 海上
来るに疎き電車*はやてを堪へて待つ 細谷源二 鐵
陽炎ひていよよ短き電車行く 佐伯哲草
陽炎のとばりを分けて電車来る 澤入満里子
踊り子と終の電車の十二月 清水基吉
葉桜の頃の電車は突つ走る 波多野爽波 『湯呑』
夕電車鹿の貌してとび乗りぬ 白澤良子
野の電車空席に昼顔が咲いて 金子皆子
夜鷹蕎麦食べて間に合ひ終電車 飯田京畔
夜更けの電車のまだ乗つてゐる顔だ シヤツと雑草 栗林一石路
夜蛙に囃され揺るる終電車 加藤亮 『山幾重』
夜の女乗りし電車をのゝしれる 石橋辰之助
木下闇くぐる黒人が乗る電車 対馬康子 愛国
木の実植う高き所に電車着き 加倉井秋を 午後の窓
木の実植う高きところに電車着き 加倉井秋を
明け易き初発電車が通り初む 石塚友二 方寸虚実
霧の鳩電車の来るを感じ発つ 田川飛旅子 花文字
霧の奥ひかり帯びつつ電車こず 川島彷徨子 榛の木
岬行き電車の中のサングラス 高澤良一 寒暑
万葉の恋の蓬野電車ゆく 三嶋隆英
埋み火や家ゆすりゆく終電車 『定本石橋秀野句文集』
盆の夜の電車に駅が流れ着く 仲村青彦
本郷の落葉のいろの電車来る 伝田愛子
母と子と電車待つ雛市の灯 河東碧梧桐
墓地の涯北風吹き電車低く見ゆ 三谷昭 獣身
編む毛絲稚子の電車に曳かれたり 山口波津女 良人
風船が乗つて電車のドア閉まる 今井千鶴子
風の電車は花野発花野行き 今瀬剛一
風が棲む電車草城忌へ揺れる 菅野慎次
風が出て灯の電車ゆく夾竹桃 桜井博道 海上
舞子より東へ向ひ初電車 千原 叡子
浜に来て返す電車や蘆の花 大峯あきら 宇宙塵
品川過ぎいとど舞ひ込む終電車 松崎鉄之介
氷る日の灯ともす電車かよひをり 飴山實 少長集
百年後のいま真白な電車がくる 小川双々子
畔火進む帰省の電車遅ければ 香西照雄 対話
反対の電車に乗れば夏の海 岡田史乃
発つ前の電車の鼓動青ぶだう 望月紫晃(萬緑)
白鳥を見にゆく始発電車かな 河合 順
白秋や少年独り終電車 阿部美代子
白雨閉じ電車の中の同胞よ 香西照雄 対話
萩の丘下に汽車つき電車去る 銀漢 吉岡禅寺洞
煤逃げの選句電車にしてゐたり 茨木和生
煤逃げの小田急電車混み合へり 佐川広治
梅雨の電車睡れる人に肩を借す 田川飛旅子 花文字
梅雨の火花して電車がくる シヤツと雑草 栗林一石路
拝めば電車曲りぬ額の花 林原耒井 蜩
馬鈴薯の花も電車も夕日中 愛澤豊嗣
波音の由比ケ浜より初電車 高浜虚子(1874-1959)
年の瀬や無口を運ぶ終電車 野田まこと
熱海行で大船までの初電車 岸田稚魚
日曜終わる背後に電車あらわれて 高野ムツオ 陽炎の家
日暮れては石となる鴨電車過ぐ 澤村昭代
日当れる比叡に真向き初電車 菖蒲あや
日脚伸ぶ電車の中を人歩き 神蔵 器
日脚のぶ電車にくらしの裏見られ 成瀬桜桃子
日永の土佐路面電車はリスボン製 高澤良一 寒暑
日に幾度電車の過ぐる古巣かな 依光陽子
日が射して片頬ぬくき初電車 池田秀水
虹の方電車ずぶ濡れ来りけり 岡田 貞峰
匂袋老女涼しく電車降り 館岡沙緻
二条より醍醐まで初電車かな 小張昭一
二重廻し夕映電車来て消えぬ 石田波郷
二駅の電車に眠し放哉忌 石川桂郎 四温
二の酉を夜空にそれと乗る電車 長谷川かな女 牡 丹
二の酉に寄らずに乗りし電車かな 松尾隆信
凪時の山河したがへ初電車 能村研三
働きに行く人ばかりの電車 尾崎放哉
頭をあげて電車が来るよ花芒 阿部ひろし
冬服の一人残して電車発つ 伍賀稚子
冬山に道つきあたり電車をり 波多野爽波 鋪道の花
冬の土手カナリヤ色の電車来る 久保田富子
土曜の電車別の電車の鼻もゆき 金子兜太
都鳥汚れし電車橋渡る 長谷川浪々子
電車通ふ度びの地ひびき冬籠 亜浪
電車待つ必ず盆の僧まじり 森田峠
電車待つ大人にまじる入学子 金子佳子
電車待つ人の手に手に破魔矢かな 吉屋信子
電車待つ胸より上に冬の朝日 田川飛旅子 花文字
電車待つ鬼城の町に悴みて 猪俣千代子 秘 色
電車徐行大津祭の山車の脇 大野鵠士
電車擦過後の綿虫の如何にあらむ 加倉井秋を
電車降り盆僧衣紋正しけり 夏目英子
電車降り月明らかに破魔矢持ち 深見けん二
電車降りて年行く迅さ見たりけり 中島月笠 月笠句集
電車降りて一人となれり秋の宵 佐久間法師
電車行くそばに祭の町すこし 虚子
電車見に跳ねてゆくゆく草紅葉 井原愛子
電車見て居るは王子の狐かな 岸本尚毅
電車過ぐれば枯芝すらも立ちをののく 中村草田男
電車過ぎて久しき門に月のかげ 瀧春一 菜園
電車音ひびく子規庵霜柱 岡村葉子
電車より腕取り戻すわたくしか 荻野雅彦
電車より茶の間が見える薄暑かな 石川文子
電車より首出しゆくや星祭 相馬遷子 山国
電車ゆき春暁の街またねむる 五十崎古郷句集
電車の燈稲架隠ること繰り返す 山口誓子 晩刻
電車の音の山の上に柿食うべけり 太田鴻村 穂国
電車の影出てコスモスに頭の影 鈴木清志
電車のみ音して通ふ草いきれ 右城暮石 声と声
電車すぎ大き冬日が河に没る 柴田白葉女
電車ゴツンとアフリカ象が滅ぶ日か 高野ムツオ 陽炎の家
電車ごうごう白鳥行方不明なり 高野ムツオ 陽炎の家
電車から麒麟が見えて春の雲 茨木和生 野迫川
電車から退屈な二月おりてくる 古澤佐多子
電車がのぼつてくる音の大霜 シヤツと雑草 栗林一石路
電車いままつしぐらなり桐の花 星野立子
田も畑もまだ目覚めざる初電車 高橋冬峰
田に何ものこさず通る初電車 安達峯雪
天道蟲宵の電車の明るくて 田中裕明 花間一壺
鉄骨のおぼろを一番電車来る 茂木さ近
摘草の母子手を止め電車見る 根岸浩一
釣銭の賑やかに出て初電車 松崎あき子
吊皮の行儀よく垂れ初電車 牧野多江子
通る電車白シャツぎつしり充ちて過ぐ 山口誓子
通りをる電車不思議や酉の市 久米正雄 返り花
鳥雲に止まる円周上の電車 斎藤夏風
長崎はちんちん電車花曇 細川加賀 『玉虫』
長い電車の灯に遠巻かれ怒れぬ僕 堀葦男
町の端に地下出づ電車寒夕焼 大橋敦子 手 鞠
朝涼の一番電車花の荷と 茂里正治
朝寒の膝に日当る電車かな 柴田宵曲
朝の電車に少年の羽漂着す 大西健司
昼の虫電車はなんぼ待てば来る 高澤良一 随笑
着ぶくれて電車の席の半端なり 渡辺弘子
秩父嶺に雪来しといふ初電車 皆川盤水
竹煮草電車大きく曲り来る 細川加賀 『生身魂』
地下電車地へ出て赤し妻へ初日 香西照雄
地下出でし電車滂沱の梅雨の中 大橋敦子 手 鞠
地の底の暑さ光らせ来る電車 吉沢太志
暖房の電車に暑く一人びとり 池田澄子
淡雪の中に来て居し電車かな 前田普羅
探梅や降りし電車の戻りゆく 佐藤至朗
大和国原花菜に電車なだれ来る 宮坂静生 雹
大蔵省電車によぎり勘定日 細谷源二 鐵
大青田風が電車に追ひつけぬ 川村紫陽
大寒の電車無数の耳が乗る 高橋央尚
台風や電車が電車待つ夕べ 中鉢益生
退けの電車鰡掛の鰡と並び乗る 米沢吾亦紅 童顔
待つ位置に扉のあく電車今朝の秋 辻田克巳
多摩川を渡る電車の灯の涼し 本田 洋子
足尾線二輛電車に茸売る 山本敦子
草萌になほ廃墟なる電車待つ 原田種茅 径
窓ばかり見てゐるをんな夜長電車 石川文子
窓の景子になく暑き地下電車 大橋敦子
窓に生徒ら顔ならべ野へ電車がくる シヤツと雑草 栗林一石路
川渡る電車に春の光満つ 後澤啼鳥
千鳥よりちりぢりに春電車くる 阿部完市 春日朝歌
雪霏々と真昼の電車灯し来る 沢木欣一
雪嶺に電車久しく通らざる 山口波津女 良人
雪やむと市内電車がはやくとほる 京極杞陽 くくたち上巻
節分や八ケ岳の裾回を燈の電車 宮坂静生 春の鹿
赤ん坊だけが今夜も電車にゐる 中烏健二
石山寺詣ちんちん初電車 高澤良一 燕音
青嵐電車の音と家に来る 山口誓子
青嵐電車の音と家にくる 山口誓子
青麦や汽車追ひ越して電車走る 右城暮石
青あらし電車の音と家に来る 山口誓子
生国を電車で通る月光裡 池田澄子
正月の魔法 電車がかるく来る 伊丹公子 ドリアンの棘
雛の日や秩父電車にマントの子 鈴木正治
酔語悔いをり終電車涼しくて 細川加賀 『傷痕』
酔ひて乗る電車突つ込め火事跡へ 皆吉司
身に入むや電車の揺れも吾が一部 矢島まさる
真直ぐに電車来て去る二月の田 加藤有水
真つ直ぐに降つてゐし雪電車停る 右城暮石 声と声
森のごときをんながねむる夏電車 平井照敏
新涼の電車抛られしごと来る 石塚友二 方寸虚実
新涼の沼へかたむく電車かな 古沢太穂 古沢太穂句集
尻ばかり熱くて枯野発の電車 久保砂潮
常念を誉めあつてゐる初電車 小原俊一
乗初の電車今年も芦屋行 粟津松彩子
乗ればすぐ降りる近さの初電車 磯貝きみ子
乗り合はす電車にぼつぼつ皮ジャンパー 高澤良一 石鏡
焼跡を一番電車通りそむ 清崎敏郎
松原にとまる電車や冬の月 銀漢 吉岡禅寺洞
少女馳けて初電車獲しを祝福す 石田波郷
小春日の電車仮眠の母子のせ 大橋敦子
小春くれしうつろを電車ひびき来ぬ 金尾梅の門 古志の歌
宵鉾の下にとまりし電車かな 比叡 野村泊月
傷悼の電車待つこゝろ夏天の松 石田波郷
初日の出電車の響み早もあり 徳永夏川女
初電車娘の逞しき膝頭 吉江十志
初電車平城宮址つらぬけり 山口峰玉
初電車灯の煌々と野路走る 奥田敦子
初電車通りて心明けにけり 安藤草々
初電車沈みし夕日また現れて 柳澤和子
初電車潮風匂ふあたりまで 小原澄江
初電車待つといつもの位置に立つ 岡本眸
初電車多摩の朝焼け渡りけり 野村親二
初電車子の恋人と乗りあはす 安住 敦
初電車坂とんとんと下りにけり(東京に一系統都電残れり) 岸田稚魚 『萩供養』
初電車嬰児誰れにも手を伸べて 河野南畦
初電車まだくらがりの川越えて 有働 亨
初電車とんとんと坂下りけり 岸田稚魚
初電車となりは単語カード繰り 神田秀子
初電車スパーク青く発ちにけり 鈴間斗史
春夕日伊勢を離るる電車かな 山田みづえ 草譜
春眠に大和魂なき電車 安田直子
春昼の廊下のごとき電車かな 仁平勝
春暁の鉄軋ませて電車発つ 畑佐白城子
春暁に首を抱かれていく電車 増田まさみ
春キャベツ一輌電車転びさう 川井吉二
春がすみ玩具のごとく電車くる 橘 澪子
獣めき終電車馳せ月一つ 川口重美
十六夜の電車がしばし並びはしる 西垣脩
十月の電車忘れし帽子のる 相沢静思
終電車発ちて夜寒の駅残る 石沢陽子
終電車掴みしものにある秋風 米沢吾亦紅 童顔
終電車待つや佗しき灯取虫 五十嵐播水 播水句集
終電車寒し編棒りゝと落ち 中島斌男
終電車過ぐアカシアの花の夜 尾崎じゅん木
終電車過ぎておでんの店残り 綿谷吉男
終電車までの一服暦売 白井爽風
終電車まだある夜業しまひけり 岩崎健一
終電車べつたら市のもの香ふ 山下陽弘
終電車ことばの泥をゆやゆよん 夏石番矢 楽浪
秋灯一輌電車の筑前路 早川典子
秋晴や電車に吼えて牧の牛 土屋秀穂
秋晴の湖ぞひ道と電車みち 鈴鹿野風呂 浜木綿
秋の灯の一つが流れ来て電車 江川虹村
手のアネモネ闇ばかりゆく灯の電車 中村草田男
手にあまる茅花よ電車はやともり 木下夕爾
手でドアを開ける電車や花木槿 須川洋子
主よ人等あさの電車にまどろめリ 西東三鬼
蛇行する女のままで春電車 ひらの浪子
蛇行して揺るる電車や十二月 山下典子
車掌何か思ひださうとしみんな窓あけてある電車 シヤツと雑草 栗林一石路
車庫を出てわが前に来し初電車 大場美夜子
時刻は同じ黄色い電車草紅葉 白沢日出緒
子規庵にひびく電車や暮の秋 岩切貞子
子と見てゐる櫻の下を行く電車 細見綾子
子と見てゐる桜の下を行く電車 細見綾子 花寂び
子つばめや重きひびきの電車着く 久保草洋
始発電車の窓明け朝顔市に行く 菖蒲あや
始発電車の窓開け朝顔市に行く 菖蒲あや
使はるる人寄りあうて夜の電車 細谷源二 鐵
残雪やからつぽの電車江の島へ 大谷碧雲居
三崎より戻る電車の秋灯 高澤良一 素抱
搾取されに折り重なつた暗い顔びつしり詰めて東京が呻く朝の電車 橋本夢道 無禮なる妻抄
菜の花にまぎれ一輌電車過ぐ 林 千代
砂のつまった電車が父の方へ行く 高橋信雄
骨固き肩肘頑と花見電車 右城暮石 声と声
号泣の子と同方向の電車に乗る 上月章
高速電車降りて開港の雲を得ぬ 藤木清子
行く春の電車は音を忘れけり 間瀬一象
行く雁に電車の音も冴ゆる夜や 富田木歩
荒桑や闇の音より初電車 中澤康人
江東区さみだれ電車鯨のようにゆく 橋本夢道
向日葵に路面電車の月日かな 藤城一江
口乾き地獄電車に頭突き入る 石橋辰之助
狐面少女にフランス遠し電車寒し 鈴木六林男 谷間の旗
湖に沿ひ夜明けとなりし初電車 井上摂子
枯野明るし電車の中で目を覚まし 池田澄子 たましいの話
枯野電車の終着駅より歩き出す 細見綾子
枯野電車に茹で卵むく中学生 飴山實 『おりいぶ』
枯山や消ゆく電車のうしろ窓 太田鴻村 穂国
枯原の風が電車になつてくる 富澤赤黄男
故郷の電車今も西日に頭振る 平畑静塔
古墳より指呼の電車や青田風 河瀬千草
減速の電車影ひく雪解川 岩下幸子
原爆忌腕鈴なりの電車過ぐ 隈 治人
見るものは山 ときに赤い電車が通る 瓜生敏一
見えて来しカナリヤ色の初電車 小川千賀
月涼し浜の電車に送られし 阿部みどり女 笹鳴
月見草始発電車は風はらみ 大井雅人 龍岡村
駒込へうぐひす色の初電車 朱夏 希
金色の鈴ころげ出す初電車 富士原拓
極月の電車出づれば死後の町 平井照敏 天上大風
橋わたる電車光りて寒明けぬ 梅田男
強霜の飛騨の一番電車かな 木川夕鳥
牛すねて電車止めをる牛祭 太田穂酔
急停止西日の電車軋みけり 高澤良一 暮津
弓形に電車出て来る花林檎 佐々木蔦芳
弓なりに電車を出て来る花林檎 佐々木蔦芳
黍の雨汽車は電車と竝び走す 田川飛旅子 花文字
菊車電車を止めて匂ひ行く 長谷川かな女
記憶まで消灯せしまま電車行く 森田高司
紀の国の海青青と初電車 川村祥子
眼玉動かす春暮の電車という箱で 高野ムツオ 陽炎の家
干海苔の日を奪ひゆく電車かな 久米正雄 返り花
寒柝やしばし扉の開く終電車 守屋明俊
寒夜電車を待つ間も子の指の形に編む 古沢太穂 古沢太穂句集
寒行三人更けし電車の窓を過ぐ 石田波郷
寒月下灯の濁りたる電車行く 草田男
寒を灯し誰も乗つてゐない電車 高須ちゑ
鎌倉早春電車過ぐ音崖下より 平井さち子 完流
鎌倉ゆき電車でひげ剃る実朝忌 竹中宏
葛飾の月の田圃を終電車 川端茅舎
外套やいつもの位置に待つ電車 小田 司
海見ゆる方に座しけり初電車 桜 三奈子
海の辺を電車一輛涼しけれ 澤村昭代
芽柳や坊つちやん電車傾ぎゆく 脇坂啓子
霞む海電車一駅づつ停る 小野恵美子
茄子植ゑて電車の風をかぶりたり 太田鴻村 穂国
花冷の百貨店より電車出づ 館岡沙緻
花冷のわが運ばるゝ電車かな 星野立子
花舞うて焦土の電車途絶えたり 臼田亞浪 定本亜浪句集
花疲泣く子の電車また動く 中村汀女
花八つ手もうすぐ電車着くころです 蓮田双川
花吹雪灯を擾し着く電車かな 久米正雄 返り花
花びらの吹き入る電車多摩郡 及川貞 夕焼
火蛾乗せて電車は町へ折り返す 堀恭子
河豚食べて他人ばかりの終電車 牧 辰夫
河童忌の路面電車の火花かな 藤井基史(魚座)
河渡るたび弾みけり初電車 藤田宏
家裏をはしる電車や蚊喰鳥 大橋櫻坡子 雨月
夏蝶の乗り来て電車軽くなる 都筑智子
夏惜しむやはき電車の切符かな 久保草洋
夏山の麓電車の来てかへす 倉田青
夏河を電車はためき越ゆるなり 石田波郷
夏の風邪禁煙席の電車待つ 梅沢信作
音のみの遠電車いま銀河ゆく 上田日差子
温泉の国へ電車一輛さくら咲く 矢崎ちはる
温泉に通ふ小さき電車や草いきれ 句仏
乙女駈けて初電車得しを祝福す 石田波郷
横揺れの電車と帰る春の雁 西村公鳳
遠雷や父の電車は絵の中に 柴崎昭雄
遠空をゆく電車音野は凍てて 大井雅人 龍岡村
遠き日の路面電車や初ざくら 舘岡沙緻
遠き空の電車音沸く墓平ら 和田悟朗
遠い記憶に迫る 玩具の電車に乗ろうか 田中はるよ
炎天の墓を電車が迅く過ぐ 細見綾子 黄 炎
炎昼の電車重たく橋渡る 杉山青風
炎昼の街に電車の軋みけり 森下美津子
駅蕎麦の湯気流れきし初電車 渡辺徳子
雨の電車破魔矢の鈴の鳴りにけり 星野すま子
羽蟻這ふおそき電車に塾教師 田川飛旅子
芋の露まろび一番電車かな 遠田澄子
稲架の香が新聞を読む電車まで 小原牧水
一輌の電車浮き来る花菜中 松本旭
一輛の電車浮き来る花菜中 松本 旭
一輛の電車過ぎたる土筆かな 根岸善雄
一輛の田舎電車の初電車 山口波津女
一両の電車見送る花吹雪 今中京都
一番の電車がら空き冬休み 小川 真砂二
一年生電車の中を歩きをり 秋山未踏
一電車早きばかりに余花暮れず 中村汀女
異國語はささやく如し初電車 石田あき子 見舞籠
暗きかげ寄りつつ寒し電車待つ 原田種茅 径
芦刈られ川幅広く初電車 桃井雲洋
哀しく可笑し汗の電車に揉まれゐて 石塚友二
よく喋る幼子がゐて初電車 藤岡筑邨
ゆつくりと駅の名動く初電車 畑中廣恵
やはらかく揉まれて降りぬ初電車 宮武章之
もの芽出る籬の外には電車行く
もつ本の寒さはおなじ電車かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
むさし野の枯るる響きの終電車 中山フジ江 『富士南』
ミニュアチュアの電車住宅初景色 高澤良一 暮津
また電車とおり過ぎたりおでん酒 小西明彦
まうしろへ白い電車が夏野来る 阿部完市 絵本の空
ぽつくりを脱いで眠る子初電車 山田節子
ふところの狆が貌出す初電車 北見さとる
ばら夕べ野をゆく電車はつと灯を 大橋敦子
バスケットから犬が貌出し初電車 中野青芽
はこべらや始発電車が橋渡る 大森理恵
なつかしや雪の電車の近衛兵 飯田蛇笏 山廬集
なぜ滲む涙 電車という密室 岡崎淳子
ナイター映ゆ夜学子充つる一電車 能村登四郎
ナイターの声飛び込んで電車過ぐ 河野南畦
とろとろと一両電車麦の秋 萩 尚子
でこぼこに電車行く影春の草 上野 章子
たまさか電車がくる刈田のちぐはぐな電柱 シヤツと雑草 栗林一石路
たまさかの電車が時計蜜柑山 世古諏訪
すすき野を走る電車の大搖れす 細見綾子 黄 瀬
すぐ裏を電車の通る初薬師 山下竹揺
すぐ次の駅までのこと初電車 下村梅子
スキイヤー膝に電車の振動を 藤後左右
しぐるるや湯田中行の終電車 田中冬二 行人
さみだるる心電車をやり過す 中村汀女
この電車の右側が好き花芒 安田なほ
この町の電車をかしや山開 山口誓子
この橋を電車は迅し原爆忌 赤松[ケイ]子
こおろぎやいつも脳裏に暗い電車 河合凱夫 飛礫
がら空きの電車をひやす扇風機 高澤良一 寒暑
かなしき日古き電車に席を得ぬ 藤田初巳
かげろふの中より路面電車来る 寺岡捷子
がくがくと止まりて月の電車かな 夏井いつき
お花畑おとぎ電車に男乗る 遠藤匡子
おとなしく人混みあへる初電車 武原はん
いわし雲電車はづみて橋を越す 杉本寛
いねし子に電車ひゞくや魂祭 渡辺水巴 白日
いつもより電車が揺れる花疲れ 中山洋子
いい視線もらったようで電車を降りる 田中はるよ
あまつさへ梅雨に入る日の電車事故 森田峠
アフリカ飢餓ここに電車に藻のように 高野ムツオ 陽炎の家
あふらるる菅笠押さへ電車を見ず 波多野爽波 鋪道の花
あたたかに江の島電車めぐりくる 永井龍男
「無意味」が寒し電車の連結幌ゆらゆら 磯貝碧蹄館 握手

電車 補遺

あの子この子の リボン翔つかに 初電車 伊丹三樹彦
あふらるる菅笠押さへ電車を見ず 波多野爽波 鋪道の花
いねし子に電車ひゞくや魂祭 渡邊水巴 白日
お伽電車遠廻りして谷紅葉 山口青邨
がくがくと山の電車や花かんば 藤田湘子
かげろふに房総行の長電車 山田みづえ まるめろ
しやべる老婆青野を電車疾走す 西東三鬼
すかんぽや音も昔の箱電車 鷹羽狩行
すすき野を走る電車の大揺れす 細見綾子
すれ違ふ夜寒電車の中まる見え 右城暮石 句集外 昭和三十三年
つばめとぶ町に入りきしわが電車 大野林火 海門 昭和七年以前
つゆ電車亡くなりしひとのつてゐて 平井照敏
どの人も耳朶貧しうて電車夜寒 松崎鉄之介
ナイター映ゆ夜学子充つる一電車 能村登四郎
なつかしや雪の電車の近衛兵 飯田蛇笏 山廬集
バスも電車も窓あけて走るやうになりぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
ビール館電車交叉を踏み鳴らす 山口誓子
まぎれなき農の顔にて花見電車 右城暮石 句集外 昭和三十一年
まだ動く燈のなき時に初電車 山口誓子
みずみずしい電車を出れば月の山 金子兜太
メーデーに行くと電車に縋るものを 山口誓子
暗い電車にいくたびか会う酔後 金子兜太
一人も客なき電車炎天過ぐ 山口誓子
一電車早きばかりに余花暮れず 中村汀女
稲雀嵯峨のちんちん電車走る 村山故郷
英霊らの乗らす電車に侍り乗る 日野草城
炎天の墓を電車が迅く過ぐ 細見綾子
乙女駈けて初電車得しを祝福す 石田波郷
温室の花のごとくに春電車 平井照敏
何か不安の電車棄てたる西日中 伊丹三樹彦
何となく近鉄電車明け易し 右城暮石 句集外 平成三年
夏の雲ちぎれんばかり電車過ぐ 廣瀬直人 帰路
夏の日やちんちん電車嵯峨走る 村山故郷
夏河を電車はためき越ゆるなり 石田波郷
家蔭に黄色い電車荒れ狂う 金子兜太
花の駅にして電車の動き出す 山口誓子
花びらの吹き入る電車多摩郡 及川貞 夕焼
花曇待つほどもなく電車来る 燕雀 星野麥丘人
花疲泣く子の電車また動く 中村汀女
花舞うて焦土の電車途絶えたり 臼田亜郎 定本亜浪句集
花満ちし蓮田を照らし電車過ぐ 鷹羽狩行
崖歯朶の枯るるを雨の電車より 細見綾子
刈田行く電車の裡も刈田なり 山口誓子
寒き電車吾子の受持教師ゐき 石田波郷
寒月下灯の濁りたる電車行く 中村草田男
寒行三人更けし電車の窓を過ぐ 石田波郷
眼をつむり疾駆して疾駆する電車 日野草城
眼鏡ばかりの電車降りれば火まみれに 金子兜太
期待も冬へ帰る頭上を灯の電車 藤田湘子
帰路の飢きざす煙霧で鈍い電車 伊丹三樹彦
鬼子母神までを日和の初電車 岸田稚魚
休日の電車に春を聴きゐたる 中村苑子
虚子の忌の遠くを流れ青電車 平井照敏
侠客乗せ銀の電車がわが胸出ず 金子兜太
強く生きたし電車朝日に埋れ去る 金子兜太
極月の電車出づれば死後の町 平井照敏 天上大風
金魚田を鉄の車輪の電車過ぐ 山口誓子
空電車娼婦の目にも麦秋広し 細見綾子
桑青し二時間隔きの電車通る 大野林火 早桃 太白集
渓紅葉トロッコ電車軋みゆく 村山故郷
月明の電車に沿ひて汽車走る 右城暮石 句集外 昭和四十二年
月明の電車全員着席して 右城暮石 句集外 昭和四十一年
故郷の電車今も西日に頭振る 平畑静塔
枯原の風が電車になつてくる 富澤赤黄男
枯野電車に茹で卵むく中学生 飴山實 おりいぶ
枯野電車の終着駅より歩き出す 細見綾子
跨線橋こえゆきし秋の夜の電車 山口誓子
吾子もゐる子供電車や秋日和 高田風人子
骨固き肩肘頑と花見電車 右城暮石 声と声
嵯峨の駅納涼電車来てはかへす 山口誓子
座席熱くなりつゝ、電車快速に 日野草城
歳晩の降りし電車の前を急ぐ 石田波郷
歳晩や揺れる電車で街離る 細見綾子
雑草の露のひかりに電車くる 高屋窓秋
使はるる人寄りあうて夜の電車 細谷源二 鐵
子と見てゐる桜の下を行く電車 細見綾子
紫雲英見て車輪音無き二階電車 山口誓子
自動車に抜かれし夜長電車かな 日野草城
室生寺へ電車夏菊菰包み 細見綾子
疾駆して電車の角がとれてくる 日野草城
灼けたらむ電車来つゝあり遠に見ゆ 日野草城
灼け灼けし日の果電車の灯もかがやか 中村草田男
若者を轢きし師走の電車かな 日野草城
主よ人等あさの電車にまどろめり 西東三鬼
手のアネモネ闇ばかりゆく灯の電車 中村草田男
首夏の家英霊還り電車より見られ 石田波郷
秋海を見に行く電車白蝶追ふ 細見綾子
秋深き路面電車の城下町 飯田龍太
終電車手に青栗の君を帰し 平畑静塔
終電車野菊震はし過ぎしかど 杉田久女
熟れ麦の入日串刺す島電車 飯田龍太
春の雨遠い電車を待つてゐる 日野草城
春の夜や四谷見付の終電車 渡邊白泉
春暁や潮騒のごと電車すぐ 鈴木真砂女 卯浪
春暁や電車おりたる人歩く 日野草城
春夕日伊勢を離るる電車かな 山田みづえ 草譜
初電車子の恋人と乗りあはす 安住敦
初電車待つといつもの位置に立つ 岡本眸
初穂見たり電車も伊勢に入りゆけり 大野林火 方円集 昭和四十九年
暑き電車つづく車両も人に満ち 山口誓子
女将の寒き世辞轟然と電車過ぐ 岸田稚魚 負け犬
小春日や遠く電車の見えて来し 高田風人子
松過ぎのしばらく翳る電車の中 廣瀬直人
焼けし電車舗道のほとりに片影なし 大野林火 早桃 太白集
焼跡を一番電車通りそむ 清崎敏郎
寝不足を電車にみたす小春かな 松崎鉄之介
新涼の沼へかたむく電車かな 古沢太穂 古沢太穂句集
新涼の電車抛られしごと来る 「方寸虚実」石塚友二
新緑の単線電車日光市 高野素十
森のごときをんながねむる夏電車 平井照敏
真つ直ぐに降つてゐし雪電車停る 右城暮石 声と声
人肌白壁電車かさかさ過ぎゆけり 金子兜太
吹雪きつつあはれ東京に電車絶ゆ 水原秋櫻子 岩礁
水死人あり鉄橋を朝の電車 右城暮石 句集外 昭和二十五年
星月夜とべば間に合ふ電車捨つ 上村占魚
逝涼の書をよみ電車街に入る 石田波郷
青あらし電車の音と家に来る 山口誓子
青麦や汽車追ひ越して電車走る 右城暮石 声と声
席の固さ職場へつづく路面電車 伊丹三樹彦
早朝の電車より見し花御堂 飯島晴子
待ち合わせ向こうの電車俳人ばかり 金子兜太
退勤電車混む鉄橋の熱気浴び 伊丹三樹彦
大蔵省電車によぎり勘定日 細谷源二 鐵
大旱の松の香電車棄てにけり 伊丹三樹彦
淡雪の中に来て居し電車かな 前田普羅 普羅句集
暖かに電車よく来る傾しぎつつ 中村汀女
地下電車地へ出て赤し妻へ初日 香西照雄 素心
長弓を持ち込む電車夏に入る 伊藤白潮
通る電車白シャツぎつしり充ちて過ぐ 山口誓子
鉄橋の歓声に遭ふ初電車 上田五千石『風景』補遺
電車いままつしぐらなり桐の花 星野立子
電車のみ音して通ふ草いきれ 右城暮石 声と声
電車の燈稲架隠ること繰返す 山口誓子
電車の燈霧の行手をひらき得ず 山口誓子
電車はやし紅葉する果樹園も過ぎ 山口誓子
電車ゆき冬木がくれの夕日追ふ 大野林火 冬青集 海門以後
電車より首出しゆくや星祭 相馬遷子 山国
電車過ぐるひびき肉屋の土間の昼 大野林火 青水輪 昭和二十五年
電車過ぐれば枯芝すらも立ちおののく 中村草田男
電車過ぐ汽車過ぐ旱川の上 山口誓子
電車快速日焼少女の腿震ふ 伊丹三樹彦
電車降りしはわれひとりなり冬曇 原石鼎 花影
電車降りゆふべは月の面をあゆむ 三橋敏雄
電車降り月明らかに破魔矢持ち 深見けん二
電車降り郊盧つらなる風の原 日野草城
電車終点ほつかりとした月ありし 種田山頭火 自画像 層雲集
電車迅く涼しや顔のはためきて 山口誓子
電車待ち居る傘に柳がさはる 尾崎放哉 大正時代
電車待つ垣根の薔薇今朝は雨 高野素十
電車追ひバス追ひ人等著ぶくれて 星野立子
電車通ふ度びの地ひびき冬籠 臼田亜郎 定本亜浪句集
電車来つ灼け耀りの軌条とゞろめき 日野草城
電車来る方に当つて桐の花 山口誓子
電車路の草もやうやく枯れんとし 種田山頭火 自画像 層雲集
電車驀進また静かなる茄子畑 山口青邨
土曜の電車別の電車の鼻もゆき 金子兜太
冬の日や電車を出れば顔ゆるむ 中村草田男
冬山に道つきあたり電車をり 波多野爽波 鋪道の花
冬晴や電車高架の路を疾く 日野草城
東京行の電車は長し三十三才 山田みづえ 忘
灯ともりし電車のゆきゝ納涼めく 右城暮石 句集外 昭和十年
灯虫の輪ゆるみて急に電車停まる 右城暮石 句集外 昭和二十八年
働きに丹く人ばかりの電車 尾崎放哉 小豆島時代
曇日をななめに電車つらぬきたれ 渡邊白泉
二駅の電車に眠し放哉忌 石川桂郎 四温
二重廻し夕映電車来て消えぬ 石田波郷
日盛や駛る電車を摶つ樹影 日野草城
年齢なし初発電車にわがひとり 西東三鬼
梅雨の電車乗り違へしも喪の一事 安住敦
梅雨夕焼電車の席かすいてゐて 阿波野青畝
白雨閉じ電車の中の同胞よ 香西照雄 対話
白雨閉ぢ電車の中の同胞(はらから)よ 香西照雄
麦秋へ浅草発の朝電車 細見綾子
畔火進む帰省の電車遅ければ 香西照雄
疲れしるく梅雨の電車の蒸れに立つ 大野林火 早桃 太白集
膝小僧瞳のごとし夏電車 平井照敏 猫町
氷る日の灯ともす電車かよひをり 飴山實
氷菓のあと電車高架を来るホテル 山口誓子
品川過ぎいとど舞ひ込む終電車 松崎鉄之介
風船を手にしかと電車トンネルヘ 右城暮石 句集外 昭和二十八年
塀の外出勤電車しげく通ふ 日野草城
望の夜の隠れるやうに電車着く 廣瀬直人
埋み火や家ゆすりゆく終電車 石橋秀野
末枯れや水にしばらく電車音 廣瀬直人 帰路
満員の電車が通る花縫うて 星野立子
夢聰し汝が黄落電車のむれ(原聰一新句集『黄落』(岐阜市電詠百八十一句)を祝す) 永田耕衣
無人駅へも人こぼす初電車 阿波野青畝
明け易き初発電車が通り初む 石塚友二 方寸虚実
木の車輪にて鉾通る電車通 山口誓子
夜の枯野きらゝに通る電車かな 日野草城
野焼跡と思ひしむ間も電車早し(名越大阪療養所慰問) 細見綾子
友等に青黒い長崎灯を縫う灯の電車 金子兜太
誘蛾灯つゞく電車を乗り替へても 右城暮石 句集外 昭和二十五年
葉桜の頃の電車は突つ走る 波多野爽波
陽炎を立たすちんちん電車ゆき 鷹羽狩行
来るに疎き電車*はやてを堪へて待つ 細谷源二 鐵
雷音を今か今かと電車待つ 右城暮石 句集外 昭和二十四年
落葉して幾条ひびく終電車 飯田龍太
緑の細い電車に乗つてくる乳母よ 飯島晴子
煖房の支線電車は鳴りて待てり 山口誓子
螢光燈の電車路地とぶ子のはしか 金子兜太
螢籠電車郊外を走りをり 大野林火 早桃 太白集

by 575fudemakase | 2018-01-29 12:47 | 無季 | Trackback | Comments(0)

コーヒー の俳句

コーヒー の俳句

コーヒー

あたたかしのむコーヒーも濃く甘し 京極杞陽 くくたち上巻
アマリリス炎のいろ珈琲香だちゐて 柴田白葉女 『月の笛』
イーハトーブの雨つぶでコーヒーをどうぞ 前田保子
カウベルに迎ふ夜霧のコーヒー店 川村紫陽
きこく垣に春の砂塵やコーヒー欲し 細見綾子
きこく垣に存の砂塵やコーヒー欲し 細見綾子 花寂び
コーヒーとでこぽん一つゆめひとつ 臼井文法
コーヒーに春の焚火の灰まじる 夏井いつき
コーヒーのミルクの渦や今朝の冬 山田節子
コーヒーの一杯分を時雨けり 岩垣子鹿
コーヒーの強き香りや秋時雨 藤山波紋
コーヒーの香を枯山に洩らし住む 津田清子 二人称
コーヒーの粉の浮きたる義士祭 大石雄鬼
コーヒーはブラックがよし巴里祭 森 礼意三
コーヒーはブラックにする寅彦忌 森 武司
コーヒーを挽き薫らすも事始 辻田克巳
コーヒーを揺らす朝の春の海 岩淵喜代子 朝の椅子
コーヒー代もなくなつた霧の夜である 下山英太郎
コーヒー店永遠に在り秋の雨 永田耕衣
コーヒー碗ぬくめて淹れる雁の頃 石川文子
セピアの写真泛く 鮭上る日の珈琲店 伊丹公子 アーギライト
セロ弾きゴーシュ居そうな 木洩れ日珈琲館 中田敏樹
つゞく動乱コーヒーくろく沸騰する 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
デザートに一口珈琲日短か 辻田克巳
バード・パークの門番 珈琲色で 午前 伊丹公子 ドリアンの棘
ぷりぷりとコーヒー色の裸かな 今井千鶴子
まだ冷しコーヒー所望したきかな 稲畑汀子
みぞるゝや弔旗コーヒー店をかくし 岸風三楼 往来
わがための珈琲濃くす夜の落葉 福永耕二
安房二月コーヒー店も花あふれ 新井 英子
一杯のコーヒーの銭さくら草 細見綾子
一盃のコーヒーの銭さくら草 細見綾子 黄 炎
一椀の珈琲のぬくみ春くるゝ 『定本石橋秀野句文集』
宇宙さみし一月のコーヒー店 酒井 弘司
嘘も一緒に飲み込んだ短日の苦いコーヒー 熊谷従子
黄砂ふる朝より二杯目のコーヒー 足柄史子
黄落や港に多き珈琲館 古賀まり子 緑の野以後
黄落をブレンド けさの珈琲に 中田敏樹
夏炉なき冷や珈琲匂ひ来る 殿村莵絲子 花 季
花は珈琲にのみ散る 筑紫磐井 花鳥諷詠
花杏珈琲を挽く朝の刻 岩城久治
荷風忌や焼き立てパンと珈琲と 芦川まり
蝦蛄仙人掌咲く珈琲の香の中に 池田秀水
皆出でよ食後コーヒー秋芝に 嶋田摩耶子
角砂糖中にコーヒー亀鳴いて 石川桂郎 高蘆
緩やかな珈琲の渦春の海 倉田健一
缶コーヒー膝にはさんで山眠る 津田このみ
缶珈琲ごとりと夏の闇に出る 辻美奈子
缶珈琲温石として懐に 小谷ひろゆき
丸善に秋思の木椅子 濃い珈琲 大西やすし
顔見世やコーヒーに八ツ橋そえらるる 土田桂子
錦木紅葉コーヒー店内みんな愉悦 中北綾子
銀杏散る我が珈琲にも一つ落ちよ 仙田洋子 橋のあなたに
空々と男抱き込む珈琲浄土 攝津幸彦 鹿々集
敬老の日のコーヒーのアメリカン 村本畔秀
敬老の日や珈琲は濃くひとり 寺沢はる子
黒きコーヒー夏の夜何もはじまらぬ 野澤節子
今朝秋の出勤途上の珈琲店 高澤良一 暮津
三伏の珈琲好きも病むうちや 石川桂郎 高蘆
篠懸の花咲く下に珈琲店(カツフエ)かな 芥川龍之介
蛇穴を出てコーヒーを買いに行く 村上哲史
若水に珈琲の香の膨れくる 高岡すみ子
手渡しにくる缶コーヒー大花野 東原順子
出没の珈琲を猪と思いけり 永田耕衣 人生
春の風邪街にコーヒー黒く沸く 猿橋統流子
春の夜の明ける愉しみ珈琲の琥珀を飲みて胃をなだめたり 西村尚
春はあけぼの珈琲は炭火焼 田沢公登
春深く挽く珈琲はキリマンジャ口 長谷川かな女 花寂び
初秋の珈琲にがく少女期終る 内藤吐天 鳴海抄
初富士に珈琲さゝぐボーイあり 長谷川かな女 雨 月
女給笑ひ皿鳴りコーヒー湯気立てゝ 高浜虚子
寝ござ干す峠の茶屋の罐コーヒー 村本畔秀
新涼の壁に珈琲分布地図 岩崎照子
新涼や英語の中の朝の珈琲 鈴木鷹夫 千年
真白きテーブルクロス冷し珈琲 岡松 あいこ
晴れし香のコーヒー遠山ほど霞み 野澤節子 黄 炎
清明やざわつく立飲み珈琲店 能城檀
青春の苦き珈琲ゼリー食む 成田郁子
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪嶺に目を離し得ず珈琲のむ 岩崎照子
雪嶺は 遠い切り絵で 珈琲沸いた 伊丹公子 アーギライト
雪嶺やコーヒー餓鬼のわが乾き 秋元不死男
窓高き珈琲倉庫蚊喰鳥 木村 都由子
送別の珈琲秋の星うつし 長谷川かな女 牡 丹
霜害や起伏かなしき珈琲園 佐藤念腹
待つためのコーヒー秋はきまぐれに 山本つぼみ
大学に来て踏む落葉コーヒー欲る 中村草田男
鷹鳩と化すコーヒーにミルクの渦 吉田ひろし
暖炉の火燃ゆる音するコーヒー店 林真砂江
地圖をさし珈琲実る木ををしへけり 室生犀星 犀星発句集
朝の珈琲濃くて父の日はじまりぬ 中村明子
朝刊とパンとコーヒー風五月 浅野右橘
鳥雲にぺこんとへこむコーヒー缶 穴井太 原郷樹林
通りすがりに珈琲にほふ雪の町 つじ加代子
天高くなる珈琲がうまくなる 蔦三郎
冬のコーヒー一匙分の忘却や 寺山修司 『 わが高校時代の犯罪』
冬匂ふ珈琲幸もこの程度に 山口誓子 和服
冬立ちにけり町角の珈琲の香 伊丹三樹彦 人中
燈火親しコーヒーの香にひたりつつ 間地みよ子
二杯目の珈琲苦し夜の落葉 橋本榮治 逆旅
熱きコーヒー書斎派の暑気払ひ 辻田克巳
馬来珈琲の30セント 混血同志 伊丹公子 ドリアンの棘
敗色濃し珈琲を飲む椅子探す 林田紀音夫
梅の村にて珈琲をちびちびと 如月真菜
煤逃やコーヒー店に僧の居て 大橋正子
買物の女も駄馬や花珈琲 目黒はるえ
白ら息はそのまま夜霧コーヒー欲る 町山直由
白鳥見る悪魔の濃さの珈琲喫み 鈴木栄子
犯人の飲み掛けアイス缶コーヒー 守屋明俊
飛雪の町 さまよう 朝から珈琲飢餓 伊丹三樹彦 覊旅句集三部作 磁針彷徨
百合の壺匂ふ真下に濃き珈琲 吉屋信子
氷原に珈琲こぼす なにの標 伊丹公子 アーギライト
封を切るコーヒーの香や夏館 磯崎美枝
片手もてコーヒーを挽く原敬忌 伊藤紫水
母と来て噴水見ゆる珈琲館 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
菩提樹下誘はれて涼し珈琲どき 桂樟蹊子
棒砂糖珈琲に噛む四迷の忌 下村ひろし 西陲集
本能寺変冷し珈琲に余燼 長谷川かな女
夢の世や珈琲館はいまも雪 摂津よしこ
木がらしは外にはげしも夜ふけて寒くもの食ふ珈琲店のなかに 中村憲吉
遊船に移りゆく景コーヒー甘し 吉良比呂武
郵便秤に載せ朝涼の珈琲豆 鈴木栄子
冷し珈琲飲みて一と日の句読点 三輪温子(雨月)
鈴懸の花咲く下に珈琲店かな 芥川龍之介
炬燵今日なき珈琲の熱さかな 久米三汀 返り花
珈琲がすこしすつぱく花曇 小島千架子
珈琲と 鴎と 同性愛のふたり 伊丹公子 アーギライト
珈琲とポインセチアに待たさるる 今井千鶴子
珈琲と桜のムース四月寒 島山允子
珈琲にきんつばが合ふ漱石忌 本山卓日子
珈琲に蚊のこゑの来る斜陽館 鈴木鷹夫 風の祭
珈琲に酸ほのかなるみどりの日 辻美奈子
珈琲に浮かべし氷音涼し 長谷川櫂 蓬莱
珈琲のお代り自由春時雨 桐村日奈子
珈琲のかをり直進花わさび 石寒太 翔
珈琲のむ粘つく鳥のはばたき飲む 高野ムツオ 陽炎の家
珈琲のモカ挽く香り今朝の秋 奥村 八一
珈琲の渦を見てゐる寅彦忌 有馬朗人
珈琲の苦味かぐはし寅彦忌 牧野寥々
珈琲の香にあふ舗道秋の雨 片山桃史 北方兵團
珈琲の香にいまは飢ゆ浜日傘 横山白虹
珈琲の匙ひんやりと初紅葉 務中昌己
珈琲の酸味卯の花腐しかな 永方裕子
珈琲の水汲みにゆくお花畑 山田春生
珈琲の朝の湯気みな春待てる 原子公平
珈琲の豆を碾く音夜の秋 長谷川櫂 蓬莱
珈琲の豆挽く音の冴返る 伊東ゆみ子
珈琲の味も香もなく春の風邪 植木千鶴子
珈琲の爐紙に泡立つ余寒かな 葛西省子
珈琲はブラツククリスマスローズ 星野麥丘人
珈琲はブラック生き過ぎたかも知れぬ 立岩利夫
珈琲は手の中の沼秋ぐもり 皆吉司
珈琲や夏のゆふぐれながかりき 日野草城
珈琲や其角が露を探し居る 永田耕衣 葱室
珈琲や葱を思いて熱かりき 永田耕衣 物質
珈琲や葱を想いて熱かりき 永田耕衣 物質
珈琲や夜に入るまでの蝮草 桂信子
珈琲よき家居を恋へりスキー行 森田峠
珈琲を飲むとき冬の日は斜め 今井杏太郎
珈琲を喫せりロッヂ「五千尺」 高澤良一 宿好
珈琲を書斎に沸かし寅彦忌 岩崎健一
珈琲を入れてあら兎も茶色 あざ蓉子
珈琲を挽く香の厨弥生尽 大野雑草子
珈琲屋劇画の多喜二起ち上がれ 阿部娘子
珈琲屋出て珈琲屋梅雨深し 辻桃子
珈琲館船の汽笛が梅雨誘ふ 河野南畦 湖の森
珈琲館鶺鴒の巣のあるらしき 岡崎筍林
珈琲秋思の 銀匙 重くも軽くもなく 伊丹三樹彦 一存在
珈琲店河鹿鳴く瀬の風入れて 手島 靖一
珈琲熱し白山茶花の散りはじめ 増沢和子
珈琲濃しあさがほの紺けふ多く 橋本多佳子
珈琲濃しけふ落第の少女子に 石田波郷
珈琲濃し木枯めぐる六本木 柴田白葉女
珈琲啜るウィーンは遠しライラック 今泉貞鳳
珈琲碾くかたへにくろし烏猫 田中冬二 俳句拾遺
鄙びつゝわが娘育つや花珈琲 佐藤念腹
鱶を飼うコーヒーいつも胃に溜まり 八木三日女 落葉期
鵙聞けばコーヒーの香の昔かな 斎藤空華 空華句集

コーヒー 補遺

かまくらへ運ぶコーヒー熱きかな 阿波野青畝
かんばしき黒珈琲や初時雨 日野草城
かんばしく珈琲たぎる余寒かな 日野草城
きこく垣に春の砂塵やコーヒー欲し 細見綾子
クロイツェル・ソナタ氷片珈琲に 日野草城
コーヒーのむ冬日の窓に木椅子寄せ(八ヶ岳山麓二句) 細見綾子
コーヒーの氷のかけら音すなり 篠原梵 年々去来の花 皿
コーヒーをひく女あり廃港に 佐藤鬼房
コーヒーを飲みに出るのが避暑散歩 阿波野青畝
コーヒーを飲み雪壁の中走る 細見綾子
コーヒー飲み残して下る斑雪山 廣瀬直人
コーヒー喫む美術の秋の森の中 山口青邨
コーヒー店前古草の成長す 永田耕衣
コーヒー奢って 刑事立ち去る 夏至の巷 伊丹三樹彦
コスモスを活けてコーヒー豆ひける(呉服元子さん茶房) 細見綾子
ぺたんこの珈琲茶碗冷房に 渡邊白泉
ミモーザの花下の珈琲まだ冷めず 阿波野青畝
一匙一匙コーヒー飲む吾子町燕 中村草田男
一椀の珈琲のぬくみ春くるゝ 石橋秀野
一碗の佳き珈琲に惜む春 日野草城
花見舐めして珈琲碗鬱勃たり 永田耕衣
蝦夷の奥珈琲もとめ額の汗 角川源義
海峡を越えきし朝の珈琲喫む 伊丹三樹彦
海底探険談 コーヒーに粗目(ざらめ)沈め 伊丹三樹彦
角砂糖中にコーヒー亀鳴いて 石川桂郎 高蘆
鴨平悼む コーヒーに匙ながく沈め 伊丹三樹彦
寒灯やコーヒー熱き欠茶碗 日野草城
雁わたる街でコーヒー豆を買ひ 細見綾子
玄き珈琲飲みて別れて旅路青し 中村草田男
吾に濃き珈琲ありぬ避暑期過ぐ 星野麥丘人
三伏の珈琲好きも病むうちや 石川桂郎 高蘆
秋はものの 珈琲封じるミルクの膜 伊丹三樹彦
秋日和惜しみ一杯のコーヒー飲む 細見綾子
秋風や珈琲の木のいとけなき 高野素十
出没の珈琲を猪と思いけり 永田耕衣 人生
春昼の珈琲濃かれただ濃かれ 相生垣瓜人 負暄
春昼を来て大阪の濃き珈琲 右城暮石 句集外 昭和三十八年
小さきコーヒー店あり冬日満つ(八ヶ岳山麓二句) 細見綾子
聖菓ありコーヒーに糖入れずとも 阿波野青畝
青芝に弧を描く珈琲紙コップ 鷹羽狩行
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪の夜の黒珈琲は沈痛に 日野草城
雪の夜や珈琲重き舌の上 日野草城
千九百年生れの珈琲冬の草 永田耕衣
大学に来て踏む落葉コーヒー欲る 中村草田男
誰もみなコーヒーが好き花曇 星野立子
潮を聴き黒き珈琲に牛乳を流す 日野草城
長き夜や珈琲の湯気なくなりぬ 日野草城
提灯花珈琲の香のしてきたり 燕雀 星野麥丘人
屠蘇にかへ大久保康雄と初珈琲 角川源義
冬の日や珈琲沸し進みすすむ 山口誓子
冬高原コーヒーのめば椅子きしむ(八ヶ岳山麓) 細見綾子
冬匂ふ珈琲幸もこの程度に 山口誓子
冬立ちにけり町角の珈琲の香 伊丹三樹彦
熱き珈琲歌劇少女とゐて啜る 伊丹三樹彦
梅を見てより一杯のコーヒーかな 細見綾子
挽きたてを提げて珈琲木菟遠し 秋元不死男
挽き立ての珈琲狐臭に勝ちて匂ふ 日野草城
飛雪の町 さまよう 朝から珈琲飢餓 伊丹三樹彦
風花や木椅子数個の珈琲店 有馬朗人 天為
母の日ひとり珈琲にミルク咲き 岡本眸
芳烈の珈琲に重きクリイムを 日野草城
冷まじや珈琲を断ち酒を断ち 相生垣瓜人 明治草
烈日の珈琲や放屁連発翁 永田耕衣
珈琲(ブラック)や湖へ大きな春の虹 燕雀 星野麥丘人
珈琲にさくら四分や恋に似る 森澄雄
珈琲に春飲の事亦あらむ 相生垣瓜人 負暄
珈琲に普化らしき蛾の投身す 永田耕衣
珈琲の渦を見てゐる寅彦忌 有馬朗人 立志
珈琲の香が木犀の香を消せり 相生垣瓜人 負暄
珈琲の霜見刻なる鋼(まがね)かな 永田耕衣
珈琲の梅雨を越すべき濃度かな 相生垣瓜人 負暄
珈琲の目にぞ古草尤もだ 永田耕衣
珈琲はアメリカン 尼僧も加わるパイプ椅子 伊丹三樹彦
珈琲はブラツククリスマスローズ 雨滴集 星野麥丘人
珈琲はブラッククリスマスローズ 星野麥丘人
珈琲や夏のゆふぐれながゝりき 日野草城
珈琲や葱を想いて熱かりき 永田耕衣 物質
珈琲や夜に入るまでの蝮草 桂信子 草樹
珈琲をあまくあまくして事務疲れ 日野草城
珈琲を吾が飲めり兵は泥水を 日野草城
珈琲を淹れよげんじつかくきびし 安住敦
珈琲を淹れよちちははふとこほし 安住敦
珈琲を淹れよひとみなしんじつなし 安住敦
珈琲を碾く度秋の深みけり 相生垣瓜人 負暄
珈琲煙草不養生の身や木の葉髪 村山故郷
珈琲館に好きな絵ありて夏深し 桂信子 草影
珈琲館昆虫色の西東忌 鷹羽狩行
珈琲館辻の灯くらく窓涼し 水原秋櫻子 餘生
珈琲秋思の 銀匙 重くも軽くもなく 伊丹三樹彦
珈琲豆挽く山番 床に栗鼠走らせ 伊丹三樹彦
珈琲濃しあさがほの紺けふ多く 橋本多佳子
珈琲変へ器日々替へ梅雨長し 林翔
轢かれたる猪の匂いの珈琲哉 永田耕衣 人生
霙ふるまたよからずや珈琲喫む 山口青邨


by 575fudemakase | 2018-01-22 02:17 | 無季 | Trackback | Comments(0)

紅茶 の俳句

紅茶 の俳句

紅茶

おもい涙のような紅茶を 印度洋 伊丹公子 パースの秋
きゅっと鳴る紅茶の砂糖秋の昼 高澤良一 宿好
グラヂオラス濃き紅茶にひかれけり 毒島 忠孝
しあはせの一杯冷し紅茶かな 麻生 直美
トマト好き故にピザ好き紅茶好き 高澤良一 素抱
ピエロ一人日覆ふかく紅茶のむ 岩永佐保「丹青」
やちまたの吹雪を言ふ子夜の紅茶 及川貞 夕焼
レモンいれて紅茶薄るる朝から雪 内藤吐天 鳴海抄
ローマピザ薔薇の芳香の紅茶淹れ 高澤良一 石鏡
一睡もせざりし紅茶にレモンの輪 友岡子郷 遠方
下り立ちて紅茶冷めたりシネラリヤ 会津八一
夏旺ん紅茶はベルガモット入り 高澤良一 暮津
花つくり紅茶の卓を若芝に 及川貞 夕焼
血のような紅茶を飲みてサラリーマン 仲上隆夫
呼吸せぬ窓を見つめてアイス・ティー 吉原文音
紅茶あつし凍てつつ薔薇のひとさかり 春草
紅茶あまし蔦の若葉の朝の艶 碧雲居句集 大谷碧雲居
紅茶さへ吾は水のむ夏の月 会津八一
紅茶のむ少女ら夜もスキー服 中島斌雄
紅茶の波紋 女王の名授かる州都にて 伊丹公子 アーギライト
紅茶待つ梅雨の曇りの砂時計 安達 淑子
紅茶土瓶の湯気の夜の春の蚊 北原白秋
紅茶熱しバレンタインの日と思う 金堂淑子
紅茶熱し霧にむせたる咳のあと 稲垣きくの 牡 丹
紅茶濃き樹海うもれに蔦温泉 斎藤富雄
紅茶濃し日覆朱きカフェテラス 佐々木幸(朝)
紅茶欲し枯野の果てに海あれば 原田青児
紅茶淹れ軽騎兵聴く六日の夜 大島民郎
今朝の秋紅茶のレモン透きとほる 河村凌子
糸瓜忌の紅茶に消ゆる角砂糖 秋元不死男
自愛日々冷し紅茶も控えつつ 大島民郎
秋の夜や紅茶をくぐる銀の匙 日野草城
秋の夜や紅茶をくゞる銀の匙 日野草城
秋の夜や紅茶をくぐる銀の匙 日野草城(1901-56)
秋涼し紅茶に入るるローズ・ヒツブ 志村秀子
春一番紅茶に沈む角砂糖 夏目暁子
春浅く火酒したたらす紅茶かな 杉田久女
春昼にひとりでえらぶ紅茶碗 谷口桂子
初旅や午後の紅茶は東京で 佐土井智津子
小鳥来て午後の紅茶のほしきころ 富安風生
小夜ながら紅茶の時間冬籠 楠目橙黄子 橙圃
人妻は紅茶に毒を。我に戀を。 筑紫磐井 花鳥諷詠
青葡萄紅茶のみたる手の血色 片山桃史 北方兵團
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪の夜の紅茶の色を愛しけり 日野草城
雪崩るるか午後の紅茶を濃く入れて 川崎展宏
蝉声や染料として紅茶煮る ふけとしこ 鎌の刃
窓に他人の屋根また迫る朝の紅茶 林田紀音夫
霜白し独りの紅茶すぐ冷ゆる 中村汀女
脱ぎ手袋の指に見られて紅茶飲む 河野南畦 『焼灼後』
朝ぐもり紅茶におとすひとりごと 野口光江
朝の紅茶鷽の口笛聞きながら 尾田秀三郎
鳥交る紅茶に澱の溜まる間も 櫂未知子
汀女忌の紅茶に落とす洋酒の香 大津希水
冬の小鳥紅茶が喉を過ぐように 高野ムツオ 陽炎の家
冬天のどこまで異邦紅茶澄む 対馬康子 吾亦紅
透明な紅茶軽快なるノック 片山桃史 北方兵團
梅雨寒の紅茶に落とすブランデー 入江陽「絆」
飛行機を下りて暖炉と紅茶かな 楠目橙黄子 橙圃
氷柱して受信所朝の紅茶沸く 宮武寒々 朱卓
父も来て二度の紅茶や暖炉燃ゆ 水原秋桜子
幕開いてひとり紅茶の雪夜かな 渡邊水巴 富士
木の実拾ふことに飽きたる紅茶かな 八坂 洵
木槿咲く窓辺に紅茶飲んでをり 菅井たみよ
目白来る時間紅茶を二人ぶん 長谷川晴子
朧夜のひとりの紅茶冷めやすし 谷口桂子
蟷螂に午後の紅茶の香る窓 宮武寒々 朱卓

紅茶 補遺

しみじみと熱き紅茶をわかさうよ 安住敦
ジム紅茶すゝり冷えたる夜長かな 杉田久女
パンと紅茶大寒に入る朝日和 村山故郷
やちまたの吹雪を言ふ子夜の紅茶 及川貞 夕焼
花つくり紅茶の卓を若芝に 及川貞 夕焼
客消えぬ紅茶の余瀝白*碗に 日野草城
紅茶が出る赤犬の屍を赤毛翔つ海辺 永田耕衣
紅茶は湖塔もたれくる雨の会議 金子兜太
紅茶欲る渇きを春の愁ひとす 上田五千石『田園』補遺
紅茶淹れて呉れる妻あり初蛙 楠本憲吉 孤客
子供等に楽しき紅茶雪だるま 星野立子
寂びしけど寂びしけど紅茶わかしてゐる 安住敦
秋の夜や紅茶をくゞる銀の匙 日野草城
秋惜しむ湯気の婆娑たる紅茶かな 飯田蛇笏 旅ゆく諷詠
十六夜の紅茶に牛乳を入れしめず 日野草城
春愁の妻に紅茶をつくらしむ 日野草城
春浅く火酒したたらす紅茶かな 杉田久女
小鳥来て午後の紅茶のほしきころ 富安風生
常磐木を落つ雪のあり紅茶のあと 大野林火 早桃 太白集
寝そびれて冷し紅茶のこころかな 山田みづえ 草譜
新緑の雨に紅茶のかんばしく 日野草城
青東風に紅茶のけむりさらはるゝ 日野草城
雪の午後長き戦の世の紅茶 石田波郷
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪の夜の紅茶の色を愛しけり 日野草城
雪の夜紅茶をいれて甘からぬ 山口青邨
霜白し独りの紅茶すぐ冷ゆる 中村汀女
朝の紅茶(チャイ) 沐浴河岸を大俯瞰 伊丹三樹彦
幕開いてひとり紅茶の雪夜かな 渡邊水巴 富士
毛刈りどき微風が運ぶ紅茶の香 金子兜太

by 575fudemakase | 2018-01-22 02:16 | 無季 | Trackback | Comments(0)

コーラ の俳句

コーラ の俳句

コーラ

コカコーラにおくび連発独立祭 高澤良一 素抱
コカコーラ持つて幽霊見物に 宇多喜代子(1935-)
コカコーラ瓶中の燈や冬の首都 高野ムツオ 蟲の王
モノクロの街にコーラの赤い缶 金山桜子
子規知らぬコカコーラ飲む鳴雪忌 秋元不死男
雛の夜や戦争にほふコカコーラ 工藤克巳
壁のような女生徒がいてコーラ飲む 穴井 太
壁のような女生徒が居てコーラ飲む 穴井太 天籟雑唱

コーラ 補遺

子規知らぬコカコーラ飲む鳴雪忌 秋元不死男
セスナ機を眼下 六十階のコーラ 伊丹三樹彦

by 575fudemakase | 2018-01-22 02:14 | 無季 | Trackback | Comments(0)

ココア の俳句

ココア の俳句

ココア

ココア啜る夕顔の前の博士かな 清原枴童 枴童句集
遠霞ココアは舌に浸み渡る 横光利一
結実中カカオ色なるカカオの実 高澤良一 さざなみやつこ
口紅にカカオの匂ひ夏逝かす 金久美智子
秋夜ココア一椀に君を去なす 梅林句屑 喜谷六花
春暖炉ココアの美しき昼に 金田咲子
小春の海とろりとココア飲みにけり 笹尾操

ココア 補遺

朝寒のココアの湯気に触れにけり 日野草城

by 575fudemakase | 2018-01-22 02:13 | 無季 | Trackback | Comments(0)

ジュース の俳句

ジュース の俳句

ジュース

いのちあり果汁琥珀に透きとほり 藤木清子
ジュース飲むすぐ足もとの虫に鳴かれ 横山白虹
ワタナベのジュースの素です雲の峰 三宅やよい
下戸二人柘榴ジユースにしてしまえ 石口光子
果汁にて保ついのちや松の内 朝倉和江
缶ジュース飲めば逆立つ文字の露 島田静子
喉で吸う果汁日本列島若し 金子兜太
紫陽花とジユースを供ふ何埋めし 右城暮石
自販機のジュースどすんと原爆忌 中村棹舟
初登山神と飲み干す缶ジユース 吉原文音
沢蕗や冷して曇る果汁缶 金子 潮
梅雨日照り畠に分け合ふ缶ジユース 八木幸男(蘇鉄)
母に作る果汁春雪しきりなり 古賀まり子 緑の野以後
椰子ジュースひたひた 赤道近くの音 伊丹公子 ドリアンの棘
罐ジユース飲むとき秋の雲みたり 皆吉司

ジュース 補遺

さくらんぼ黒き果汁を弥踏まれ 山口誓子
ジュース試飲かげを与へて時計草 阿波野青畝
ドリアンの果汁すすり無心なる兵か 伊丹三樹彦
雲海 薔薇色 機内配りのジュースで覚め 伊丹三樹彦
果汁飲む 顔隠すまで椰子かたむけ 伊丹三樹彦
果汁耀りあひむかふわれに恋ごころ 伊丹三樹彦
薫風や二つ穴あけ缶ジュース 安住敦
紫陽花とジュースを供ふ何埋めし 右城暮石 虻峠
夜の果汁喉で吸う日本列島若し 金子兜太
葉桜の分教場にジュースの瓶 細見綾子

by 575fudemakase | 2018-01-22 02:11 | 無季 | Trackback | Comments(0)


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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