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旗 の俳句

旗 の俳句


日章旗 旭日旗 星条旗 ユニオンジャック 校旗 軍旗 万国旗 白旗 赤旗 半旗 平日 祝日 祭日 旗日 半ドン


国旗

日の丸 

休日



日章旗

すめらぎの日章旗なり初東風す 長谷川かな女 雨 月
また夏の捨てず広げぬ日章旗 池田澄子
塩の手で触る納戸の日章旗 攝津幸彦
何度も濡れ赤にじみだす日章旗 江里昭彦
菊花晴れ群岳に起つ日章旗 長谷川かな女 雨 月
元旦やはためくほかなき日章旗 高橋正子
傘立ての上で乾けり日章旗 石黒甲子
秋分の木造駅舎の日章旗 高澤良一 鳩信
宵闇に取り残されし日章旗 高野ムツオ 蟲の王
新年の夕クシー日章旗を交叉 山口誓子
人はいさ吾は元旦の日章旗 林翔
青富士に戦後遠見の日章旗 飯田龍太
折目つくまま露の戸の日章旗 阿波野青畝
雪割草咲き出て峡の日章旗 唐橋秀子
仲秋や拝してたたむ日章旗 渡辺水巴
天皇誕生日飛騨は戸毎の日章旗 原田登志子
冬の塀不意に顔出す日章旗 飯田龍太
日章旗あり兵が居り麦の海に 日野草城
日章旗しづかに垂れて弔旗なり 日野草城
日章旗や鳳梨熟す小学校 雨城
日章旗掲げ祝祭日にあらず 日野草城
日章旗田の秋空の色緊る 飯田龍太
日章旗白地の光冬なりし 渡邊水巴 富士
麦秋や箪笥に眠る日章旗 片岡啓子
父の日の天袋から日章旗 遠山 陽子

旭日旗

春北風や海峡抜ける旭日旗 山本慶一郎

星条旗

暗き沖星条旗はみな寒の星 片岡秀樹
華やかな吹雪くる国星条旗 対馬康子 吾亦紅
基地に立つ七夕竹と星条旗 品川鈴子
三寒や夜干しパンツの星条旗 水田雅吉子
星条旗より膨れ赤旗枯れ芝生 飴山 實
星条旗夏はあらあらしく海に 廣瀬直人 帰路
星条旗春風に見るニユーヨーク 高木晴子
星条旗立てて誓文払とは 後藤比奈夫
星条旗連綿とあり黄落期 対馬康子 愛国
舞ふブロンドの髪のサラダよ星条旗 攝津幸彦

ユニオンジヤツク

ユニオンジヤツクはためく邸の菫濃し 大山利雄

軍旗

この軍旗かの枯山を幾度越えし 深見けん二
ひたに守る平家軍旗や粟干して 渡 たみ
一条の総を軍旗の竿に垂る 渡邊白泉
雨さむし軍旗は覆とらず立つ 長谷川素逝 砲車
菊水の軍旗古りたる楠公忌 吉良ゆき子
軍旗に手向うなの気球に北風の吹きつけている風景 栗林一石路
軍旗去り盲馬地平に吹かれ佇つ 西東三鬼
軍旗祭春の砂塵を高く揚げ 渡邊白泉
酷寒の野をゆく軍旗縦隊つづき 長谷川素逝 砲車
深春の土でこぼこと軍旗祭 渡邊白泉

校旗

出迎への校旗が波止に新教師 星野秀則

万国旗

運動会園児手書きの万国旗 高澤良一 暮津
運動会果つ万国旗地に落とし 右城暮石 句集外 昭和三十四年
海の家閑散として万国旗 宮下邦夫
海霧迫る小学校の万国旗 蓬田紀枝子
黍畑をまたぎ今日だけの万国旗吊る 長谷川かな女 花寂び
月おぼろ舟に掲げる万国旗 佐川広治
秋風の地を摺る紙の万国旗 横山房子
春一番 万国旗靡くわ もつれるわ 伊丹三樹彦
青空を或るとき汚し万国旗 林田紀音夫
冬空や腹案童話と万国旗 中村草田男
白き息吐く円周は万国旗 対馬康子 愛国
噴水の高きにゆれぬ万国旗 龍胆 長谷川かな女
帽子の中からぞくぞくと万国旗の一つの日の丸も出る 荻原井泉水
万国旗きりんの旗は春の雲 川崎展宏 冬
万国旗果つるところや冬の象 仁平勝 東京物語
万国旗海が引張る海開 景山光江(城)
万国旗張りて客船冬の凪 小川濤美子
夕鶴にちぎれ吹かるる万国旗 横山 房子

白旗

あっさりと白旗掲ぐ甚平着 高澤良一 寒暑
わがゆくは白旗塚や揚雲雀 山口青邨
眼の奥に白旗ばかり涸れた泉 吉浜稲子
去来先生神忌の白旗柿実る 大野林火 月魄集 昭和五十四年
咲く朴の白旗めきし源氏の地 加藤洋子
春蝉の白旗の森駆け下る 山口青邨
青竹に何の白旗夕野分 飯田龍太
踏切りが振るつよき白旗真冬の豚 寺田京子 日の鷹
白旗に似て夜すすぎの一人分 岡本眸
白旗のやうに身を振る秋の暮 仙田洋子 雲は王冠
白旗や枯野の末の幾流れ 枯野 正岡子規
夕立や白旗ぬれて哀れなり 寺田寅彦

赤旗

ゲレンデの赤旗表裏雪付けて 橋本美代子
この苗代ソ連に似たる赤旗差す 阿波野青畝
ホリドールの赤旗 稲は 日蝕のようにひつそりと 吉岡禅寺洞
ホリドールの赤旗少年の闘志よし 阿部完市 無帽
まくなぎにあまたの赤旗肩おとす 横山白虹
メーデーの古き赤旗を愛すかな 高野素十
メーデーの赤旗巻かれ棒赤し 三橋敏雄
鯵三匹包む「赤旗」第一面 今井聖
海苔粗朶に立てる赤旗漁夫の旗 山口誓子
寒風に赤旗立てて厄除寺 船津俶子
枯葭洲なびく赤旗も生けるもの 山口誓子
採氷の赤旗立てて昏れてをり 原田青児
星条旗より膨れ赤旗枯れ芝生 飴山 實
赤旗で覆う死もある 彼岸花 伊丹三樹彦
赤旗と寒土におろす足幾千 加藤秋邨
赤旗にまばゆき鰹つつみけり 石寒太 炎環
赤旗の鷹の羽音の十二月 大木あまり
赤旗は遊泳禁止浜閑散 高澤良一 暮津
赤旗へ雲よりふりし燕 加藤秋邨
赤旗立て雪渓発破直前なる 山口誓子
雪渓のここあやふしと赤旗立つ 茨木和生 木の國
雪渓の赤旗ちぎれて旗なさず 茨木和生 木の國
千余の赤旗北風をゆくらんひと日家に 赤城さかえ
農民の無表情 ホリドールの 赤旗をたてる 吉岡禅寺洞
発破知らす赤旗の下蜥蜴の子 白井春星子 『喜雨』
閉山の赤旗を焼く五月雨 宮下邦夫
目高の針 錯綜 島に赤旗揺れ 伊丹三樹彦
門松は立つか象牙の塔に赤旗 山口青邨
遊泳は禁止赤旗なぶる風 高澤良一 暮津
恋のなやみもちメーデーの赤旗を見まもる 橋本夢道
労働祭赤旗巻かれ棒赤し 三橋敏雄
檣頭の儀禮赤旗に飛雪馴れ 三橋敏雄
闖入デモだ 赤旗で巻く美神の腰 伊丹三樹彦

半旗

幻を食ひ尽したるわが半旗 佐藤鬼房
人日の雨の濡らしてゆく半旗 山田弘子 こぶし坂
睡い半旗まるひの菊水旅館 仁平勝 花盗人
霜除に触れむとすなる半旗かな 阿波野青畝
大西日 敗戦半旗駐在所 伊丹三樹彦
冬虹は栄光半旗なかりせば 有働亨 汐路
半旗揚げ落葉少し早まりぬ 対馬康子 純情
美術館崩御の半旗垂れて冬 大岳水一路
風花の温泉郷の校舎半旗垂る 宮武寒々 朱卓
風死して旧街道の半旗かな 中田朗子
木の実降る 半旗たなびくカレッジに 橋本昭一

平日

けむりあげ平日つづくかたつむり 田畑耕作
札幌の平日の朝鰯雲 川崎展宏 冬
大曲平日の日の昼花火 高澤良一 素抱
談笑平日の如し子規忌の日 塚谷無為
平日のごとく元日巴奈馬越す 河合いづみ
平日の顔をしてをり蟇 鳥居真里子「鼬の姉妹」
平日の気息確かな年とせん 高澤良一 燕音
平日の教会蝉へ窓開き 津田清子 礼 拝
平日の桜の中を通りけり 高澤良一 石鏡
平日の山のさくらを一人占め 高澤良一 石鏡
平日の山の鳥来て花見の座 高澤良一 石鏡
平日の上野の山に降る落葉 高澤良一 燕音
平日の動物園にくる小鳥(横浜市立金沢動物園) 高澤良一 石鏡
平日の梅林に人こんなにも 高澤良一 素抱
平日の鵙聞きながら稿急ぐ 高澤良一 燕音
平日や百姓半裸で鯛洗う 山口 伸
連休の中の平日藤の花 星野恒彦

祝日

靴下干し列ね祝日国旗有たず 伊丹三樹彦
刑務所の祝日の扉に風花す 宮武寒々 朱卓
祝日は山椒魚の真似をせり 保科その子
体育の日も祝日よ国旗立て 木代ほろし
童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日と歳時記に 正木ゆう子
乳色の凪にふたりが住む祝日 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
薔薇の果はみのりてをれど聖ヨハネの祝日ちかく草臥れてをり 斎藤正二

祭日

おん祭日和となりて街動く 塙 告冬
義士祭日照雨きし坂息はずみ 村沢夏風
祭日の君との朝はミルク飲む 奥野ちあき
祭日や花ともなりて鱧ちぢむ 能村登四郎
七宝充満のかたつむりのくにの祭日 阿部完市 純白諸事
秋祭日輪ゆらぐ大太鼓 柴田白葉女
赤穂には義士祭日和てふ寒さ 瀬川春暁
日章旗掲げ祝祭日にあらず 日野草城
日曜につづく祭日しやぼんだま 夕爾
日曜の祭日の花の真盛り 大谷句佛 我は我

旗日

まぶしみて父とほざかる旗日かな 八田木枯
王(ワン)氏の窓旗日の街がどんよりと 西東三鬼
旗まれに旗日旗日の松の花 林翔 和紙
旗日とやわが家に旗も父も無し 池田澄子
旗日なる白飯炊いて桃の宿 村山古郷
旗日の旗や秋のみずうみ一枚 大橋裸木
旗日の鯛焼く 裏川に鴎騒ぐ 伊丹三樹彦
旗日の父ペンキを剃いでペンキを塗る 池田澄子
旗日は雨隣の柿が色づきて 高澤良一 暮津
競って純白 城 梅 結飯 旗日の旗 伊丹三樹彦
金雀枝の金をふるまふ旗日かな 中原道夫
雪ぐせ基地だと 錨甲板の 旗日の兵 伊丹三樹彦
屠場旗日紙もろともに岸氷り 宇佐美魚目 秋収冬蔵
日曜につゞく旗日や鯊の秋 五十嵐播水 播水句集
蕗むいて指染めしのみ雨の旗日 草間時彦 中年
兵の碑へ 白足袋進め 旗日の母 伊丹三樹彦
有難味薄るゝ旗日枇杷の咲く 高澤良一 石鏡
揚雲雀旗日の渡り廊下かな 柿本多映

半ドン

走り梅雨半ドン釣師水漬きつつ 平井さち子 鷹日和
半ドンの広告塔の天使かな 仁平勝 東京物語

以上

# by 575fudemakase | 2019-05-12 11:52 | 無季

老い 2

老い 2

足音の老いしと思ふ夜番かな 西島麦南
足裏に畳の老いを舞始 辻桃子
足老いて仏よろめく練供養 井上玉枝
俗吏とし老いメーデイの列にあり 岸風三楼 往来
俗吏とし老いメーデーの列にあり 岸風三樓
卒業にわれ父の如くにも老いし 山口青邨
卒業生老いし教師に唄強ふる 能村登四郎
袖無を着て湖畔にて老いし人 高浜虚子
袖無を著て湖畔にて老いし人 高浜虚子(芭蕉忌)
存分に老いて蓬に変身す 中尾寿美子
村人の老いて通れば花暑し 廣瀬直人
多美子忌のその紫陽花も老いにけり 阿波野青畝
体臭の老いの薄れに 月明り 伊丹三樹彦
帯に汗滲ませ路地に老いゆくか 鈴木真砂女 夕螢
待宵や梟老いて飼はれたる 山岸治子
替老いて越ゆあきかぜの老の坂 能村登四郎
胎児のごと老いてまるまり冬至風呂 清水基吉
貸馬の老いては肥ゆることもなし 保坂伸秋
代を掻く元の下士官老い遠し 滝本魚顔女 『絵踏』
代田とは腰から老いてゆく聖地 櫂未知子 蒙古斑
大あめの洗ひし地肌にちぎれつつ草の老い 梅林句屑 喜谷六花
大き手もて鰤つかみ佇つ老いし漁婦 柴田白葉女
大き素手もて鰤つかみ佇つ老いし漁婦 柴田白葉女 牡 丹
大寒の芦屋に処女老いゆくと 下村槐太 天涯
大空の鏡に老いて牡丹散る 猪狩セイジ
大月夜老いては壁となりにけり 杉本雷造
大航海時代の眼だ リスボンの露台で老い 伊丹公子 山珊瑚
大根下ろし辛しと老いの舌曲る 高澤良一 暮津
大山や鶯老いて女阪 老鶯 正岡子規
大石忌京の女の皆老いし 高野素十
大足を老いても頼む 彼岸花 伊丹三樹彦
大白桃をとこをんなの老いにけり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
大又の柳に夏も老いにけり 久保田万太郎 草の丈
鷹のつらきびしく老いて哀れなり 鬼城
鷹匠の老いて威のある鷹づかひ 川津ひな子
鷹老いてあはれ烏と飼はれけり 村上鬼城
鷹老いぬ眼をつむること多くして かなめ
鷹老いぬ夜明は常に頭上より 三橋鷹女
滝の径苔のぬめりも老いとこそ 林原耒井 蜩
瀧落ちてゆく人老いてゆく時間 黒田杏子
啄木鳥に口つぐむ巫女老いたりや 橋閒石 卯
拓本の老いし李白に破れ蓮 松崎鉄之介
濁りなき老いもあるべし栗の花 角野良生
濁り酒不意に険しく老いの眉 中村苑子
蛸壷の網手操りつつ老いゆけり 奥田恵以子
誰彼の老いし小顔や四明の忌 粟津水棹
丹念に炭つぐ妻の老いにけり 臼田亜郞 定本亜浪句集
単衣着て老いじと歩む背は曲げず 鈴木真砂女 夕螢
旦暮忌の 遺影の師より老いるとは 伊丹三樹彦
炭なくて鴨になりたき老いの冷え 中勘助
炭取とならび老いゆく岩魚取 加藤楸邨
炭焼いて都知らずに老いにけり 佐々木あきら
端居して老いの語りの哭いてをり 櫛原希伊子
団栗を踏み行く蹠まだ老いず 鳥越すみこ
団扇さへ軽きを欲りて母老いぬ 大橋敦子
団扇はさみて父の歩みの老いたりし 阿部みどり女 笹鳴
暖かき人を尋ねつつ老い行く 永田耕衣
暖き山畑にゐて老いにけり 大峯あきら 宇宙塵
男名の山は老いつつ鹿の声 鈴木六林男
男老いて春草の根を嗅ぎ見哉 永田耕衣 葱室
男老いて男を愛す葛の花 永田耕衣
男老い五人目の妻看取る夏 滝本魚顔女 『絵踏』
知る人はみな老い花のすずらんに 高井北杜
地獄谷くらく鴬老いにけり 吉澤卯一
地獄谷くらく鶯老いにけり 吉沢卯一
地獄痣なく老いにけり四月馬鹿 阿部みどり女
池心の蓮唯一の女妻老いそ 中村草田男
竹秋の髪より炎えて老いにけり 岡本眸
竹落葉したゝか物も老いてけり 加藤郁乎「初昔」
竹林の春遅々と老いたまひけり 松村蒼石 露
茶摘女の老いたる髪を梳り 高野素十
着ぶくれて我が身の老いを飼いならす 石川清子
着ぶくれて泉岳寺より老いひとり 大串章
着ぶくれて老いしと思ふ若しとも 西島麦南
着太りてはらからや老いわれも老ゆ 石塚友二 光塵
着脹れし朱欒や老いし我よりも 相生垣瓜人 負暄
着膨れてただおろおろと老いてゆく 田中湖葉
中乗りは木曽に老いけり花筏 小林一雨
仲秋や月明かに人老いし
仲秋や月明らかに人老いし 高浜虚子
抽出しの白足袋の波母老いぬ 小檜山繁子
昼顔や老いて漁網の修理役 鷹羽狩行
昼顔や老いることなき波の音 青木重行
昼顔や老い美しき家郷の人(水橋町) 角川源義 『西行の日』
昼寝する清潔な足母老いし 藤野 武
昼寝せし間少なくも老いたるべし 安住敦
昼寝せし間尠くも老いたるべし 安住敦
虫を聞く老いに翼の生きるかな 原裕 正午
虫売の老いたる顔をうつむけて 成瀬正とし
虫鳴いて故人は老いることのなし 高木石子
朝の日や老いたる鹿が枯芝に 関戸靖子
朝顔の花うつくしく妻老いし 京極杞陽
朝顔やひとはひとつの顔に老い 加藤楸邨
潮吹いて鯨老いゆく春の暮 木内彰志
町医者も患者も老いて花なづな 加藤沙知
町衆の老いて祇園の祭来ぬ 古谷弥太郎
町中にのこるトロイカ馭者老いたり 田村了咲
眺望に老いて高らみやがてわれらはうたとなる 加藤郁乎
腸も老いしや茅花倒し行く 永田耕衣
腸も老いてぶつぶつ秋に入る 川崎展宏
蝶とまる心音老いしわが胸に 新明紫明
蝶々の翳来て田螺老いそめぬ 三橋鷹女
蝶老いて遠景の帆を羨しとも 細谷源二
長き夜やかたみに覚めて父母老いぬ 伊丹三樹彦
長き夜や目覚むるたびに我老いぬ 樗良
長池や梅に茶翁のたゞ老いぬ 河東碧梧桐
長鬚の老いの山羊追ふ棉畠 松崎鉄之介
鳥の巣をほほうとあふぐ人も老い 山口青邨
鳥は雲に老い父の腰やや曲り 相馬遷子 雪嶺
鳥雲に会はざれば老い会ひて老い 鷹羽狩行
鳥雲に老いてははやる情あり 松村蒼石 雁
鳥帰る他郷に老いて甲斐訛 大須賀善和
鳥渡り月渡る谷人老いたり 金子兜太
鳥肌となつて鶏頭老いにけり 阿波野青畝
直立の月下の菊を見て老いぬ 寺井谷子
椎咲いて猫のごとくに尼老いぬ 河野静雲
追憶を肴に老いの麦酒乾す 高澤良一 暮津
漬梅が匂ひ老いゆく家霊かな 中嶋秀子
椿落ち椿落ちこころ老いゆくか 三橋鷹女
吊し柿老い相つどふごとくなり 田中灯京
釣の気も老いてすみけり秋の水 幸田露伴 江東集
釣堀のまばらとなりしなかの老い 大串章
鶴老いたり学徒出陣から外れ 相原左義長
鶴老いて水の深さをおもひをり 遠山陽子
庭冷えや老いの死のすぐ納得す 能村登四郎
弟も老いて無事なり秋祭 古橋呼狂
笛冴ゆる老いの重眉いよよ重 橋本多佳子
天山の夕空も見ず鷹老いぬ 藤田湘子 神楽
天草選る天草海女として老いて 清崎敏郎
天命は詩に老いてけり秋の暮 加藤郁乎 秋の暮
天網に老いまぬがれず去年今年 藤田真木子
伝中の茂吉老いゆく霜の夜を 相馬遷子 山河
田と老いて涙痕にがきごまめかな 隈 治人
田に老いて声の大きな水喧嘩 山田房子(獅子吼)
田に老いて苗代寒を逝きにけり 遠藤保資
田に老いて鶉顔なる鼠かな 佐々木北涯
田を植ゑて垂乳根のまた老いにけり 首藤勝二
田螺鳴くや老いてうなづく父の癖 有働亨 汐路
電柱の傍に老いぬ浅蜊売 中沢妙子
塗師老いぬ木の芽明りに目を細め 橋閒石 卯
都電老いぬ新緑に窓開け放ち 岡本眸
都忘妻の手まざと老いにけり 八木林之介
土に水打つて一茶のやうに老い 廣瀬直人
土中より筍老いたる夫婦の財 橋本多佳子
冬がすみ草加次郎も老いにけむ 筑紫磐井 花鳥諷詠
冬に入る耳朶のみ老いずやはらかし 能村登四郎
冬の航跡老いのひろがりゆくごとし 長谷川双魚
冬の夜の学ぶ歓びありて老いず 松田雄姿 『矢筈』
冬の鷲爪みじかくて老いにけり 桂信子 黄 瀬
冬の鷲爪みぢかくて老いにけり 桂信子 月光抄
冬の鵙男に老いのはやきかな 大野悠子
冬ばらの渦のたしかさ老い俄か 楠本憲吉 方壺集
冬瓜と老いて友誼を深めけり 相生垣瓜人 負暄
冬菊を活け老いざまを慈しむ 殿村菟絲子
冬空に老いの乾きに似し手伸ばす 中戸川朝人 残心
冬御空老いて召されしもの多し 水原秋櫻子 蓬壺
冬耕の鍬を洗へる老いたる手 飯田龍太
冬椿母を老いしめしは誰ぞ 上田五千石 森林
冬凪や老いても太き祖父の腕 安部亜紀
冬蝿につきまとはれて老いゆくか 伊藤白潮
冬夜うたう信濃馬子うた君老いざれ 古沢太穂 古沢太穂句集
凍港の波と耳鳴る母よ老いたり 辻升人
凍鶴のごとくに老いよこひつまは 三橋鷹女
唐芥子酒飲む妾老いんとす 森鴎外
塔聳ゆ老いたる鹿の目の奥に 池田琴線女
島に賭けた 老いた 魚影に顎髯垂れ 伊丹三樹彦
島に暮す人老い易し盆の月 阿波野青畝
島に老い月見の唄の声透る 藤田湘子
島人の老いて鍬打つ俊寛忌 松園真沙子
島津邸に鶯老いて蘆庵の忌 沢井金桜子
桃すすり掌を柔らかく老いにけり 井出寒子
湯豆腐に日本恋ひつゝ老いにけり 吉川耕花
藤の花軒ばの苔の老いにけり 芥川龍之介
藤の花軒端の苔の老いにけり 芥川龍之介 澄江堂句抄
藤の木の老いたるもまた淑気かな 神尾久美子
藤白し古書に埋れて老いる身か 橋閒石 雪
藤老いてむらさきなるは苦しからむ 遠山陽子
豆炒やしづかに妹の老いづきて 上田五千石『天路』補遺
陶工の背の老いやすき桐一葉 岡本眸
頭をのべて鯛をよびては老いにけり 宇多喜代子
頭巾着て飯くふ迄に老いにけり 頭巾 正岡子規
頭巾着て老いぬ夜学の影法師 太祇
闘牛の母として老いひそと椅子にあり 栗林一石路
働かぬ指より老いぬ雁渡し 手塚 美佐
動物園に老いたる姉を置き忘れ 橋本輝久
同齢者老い透明な茅花流し 能村登四郎
堂に来て年老い鹿の物乞へる 石橋秀野
道はたの籾すり臼や蓼老いぬ 籾すり 正岡子規
毒の花ぶし咲きアイヌ老いゆくも 大島民郎
独りごちて萩おこし居る母老いし 長谷川かな女 雨 月
独楽売りの独楽を廻して老いしかな 樺島八重子
読めばすぐ春眠に負け易く老い 北村風居
読札のむすめふさほせ老い忘る 辻 幽子
読書するまに少年老いて草雲雀 寺山修司
栃老いてあるほどの実をこぼしけり 前田普羅
鳶は老い鴉は若し仏生会 大峯あきら 宇宙塵
鳶老いて高音張りけり山桜 小川軽舟
呑み吐きの首さすらるる鵜の老いず 阿波野青畝
奈良七重老いて万灯詣かな 平畑静塔
奈良墨の練りをいのちに老いにけり 阿波野青畝
南瓜食うて駑馬の如くに老いにけり 村上鬼城
二つ掛けて老い子育つる破魔矢かな 村上鬼城
二畝の冬菜そだてて母老いぬ 船越 幸子
二度とかけぬ椅子を老いゆく沼の前 橋閒石 荒栲
尼老いて ひまどる 坂の濃あじさい 伊丹三樹彦
尼老いぬ日の澄みに苔花ひらき 長谷川双魚 『風形』
日向ぼこせる老い父の長睫毛 大石悦子 群萌
日向ぼこ老いたるユダと隣り合ふ 吉田寿子
日焼して痩身老いをしるくせり 相馬遷子 雪嶺
日盛りや脚老い立てる一羽鶴 橋本多佳子
日輪に青栗の虫老いにけり 飯田蛇笏 春蘭
日輪に青栗の蟲老いにけり 飯田蛇笏 心像
入学のかなはぬおとと父老いぬ 森川暁水 黴
如月の父の墓に老い加へける 荒井正隆 『父嶽』
忍冬の籬の家に老いにけむ 田中冬二 俳句拾遺
寧んぜば老いむよ雨の凌霄花 岡本眸
葱作りつづけて老いし道化者 生出しげ子
葱提げて老いたる町の発明家 神田敏子
葱坊主いとこはとこも老いにけり 小林木の実
猫とても老いたる恋のわづらはし 山本歩禅
猫老いて鼠も捕らず炬燵かな 村上鬼城
年ごとに十六日祭の親族老い 岸本マチ子
年の瀬や友なき老いの独り言 三好博之
年ひとつ老いゆく宵の化粧かな 几董
年一ツ老いゆく宵の化粧かな 几菫
年賀の字みだれて父も老いにけり 梅里全子 『祝矢』
年新た美しく老い度く希ふ 星野立子
年々に花減り楝老いけらし 岩川みえ女
年々の夏帽子購ひ老いにけり 上野さち子
年忘れ花火野郎も老いにけり 大野林火 方円集 昭和五十一年
年毎に打たるる鬼も老いたらむ 相生垣瓜人 負暄
年木樵老いぬ高嶺をいたゞきて 小川枸杞子
年用意老いての知恵もすこしあり 千手 和子
年老いし蟻を見掛けしことのなし 高田風人子「明易し」
年老いし歯を甘露煮のおどろかす 水原秋櫻子 蘆雁以後
年老いし椿大樹の花の数
年老いし父母をもつ身の木の葉髪 百合山羽公 故園
年老いた銀河の真下白雨かな 三浦北曲
年老いて海山もなき経木帽 百合山羽公 樂土
年老いて賢くならず鳥雲に 相馬遷子 雪嶺
年老いて高?(はご)狂ひとなりゐたる 瀧澤伊代次
年老いて妻をうしなへる人立てり 日野草城
年老いて小さく白く牡丹守 長谷川櫂 天球
年老いぬ懐炉を買つてくれしより 長沢石猿
農夫皆老いゆくばかり鵙の贄 寺岡捷子
農老いて莨くさしやきりぎりす 山口誓子
巴里祭モデルと画家の夫婦老い 中村伸郎
波止場の光に 老い深くなる 俥夫と幌 伊丹公子 メキシコ貝
波切生まれ波切に老いて冷酒かな 飯島晴子
破れ傘老いて遠くが見えてをり 阿部方城
芭蕉忌や眼中の人みな老いて 上田五千石 天路
馬に雪降るローカル線に老いし駅夫 古沢太穂 火雲
馬は老いてお降りに魔羅濡らすなり 原田喬
馬老いし夫待つ者ら薺摘み 金子兜太
馬老いて色なき風を食みにけり 小島 健
俳諧に老いて好もし蕪汁 高浜虚子
敗荷に遠くが見えて老いにけり 辻田克巳
敗戦日重ね重ねて老いにけり 町田しげき
敗戦日生きて老いゆく私たち 池田澄子 たましいの話
盃を大いに老いて花に受く 高野素十
背に老いのはやくも二重廻しかな 久保田万太郎
梅ヶ香や水子になじむ老いてしも 平畑静塔
梅に机を置き君が母老いぬ 室生犀星 魚眠洞發句集
梅の実の熟せり母の老い深き 古藤 春世
梅の主老い朽ちたりと人や見ん
梅の葉の老いて雀のたご見らる 下村槐太 天涯
梅は実となり頻りに老いし日を想ふ 瀧春一 菜園
梅雨に堪ふ心幼く身は老いて 相馬遷子 山河
梅雨の夜の長き沈黙親老いしむ 野澤節子 未明音
梅雨を病むすなはちもつて老いを恥づ 久保田万太郎 流寓抄
梅花村人慇懃に皆老いし 高野素十
梅紅白女のみぞなどて老いゆくや 野澤節子 未明音
梅咲きぬ老いてがに股珍(うず)乙女 金子兜太
梅漬くる老いし夫の手をかりて 百合山羽公 故園
梅漬けていくさなき世も老いがたし 中台春嶺
梅弁当に梅散る 老いの怖れに似て 伊丹公子 パースの秋
梅老いて海棠の日となりけらし 石塚友二
梅老いて羅漢に似たり水の浜 尾崎紅葉
梅嗅いで老いたりと云う若きなり 橋閒石 和栲
蝿を退け遣るに止どめぬ老いの箸 高澤良一 暮津
萩の庵宗匠老いてあはれなり 会津八一
萩繚乱わが老いに妻追ひすがる 横山白虹
伯母老いたり夏山越えれば母老いいし 金子兜太
柏餅食うべて老いもよかりけり 岸田稚魚 紅葉山
白がねの息立つ共に寝共に老い 平畑静塔
白きのみか髪細くさへなり果てし深まる老いに眼をばそむけまじ 中河幹子
白き蛾の老いて生れて天の川 永田耕衣
白樺派老いぬ路傍に夏木なく 秋元不死男
白菊の老いて赤らむわりなさよ 正岡子規 菊
白菊や影法師のみ老いゆける 小泉八重子
白玉の通りて老いし喉仏 大山重幸
白足袋の 小町で老いて 葛の花 伊丹三樹彦
白地着ていましばらくを老いまじく 中尾寿美子
白地着て手足小さく老いゆくか 鈴木真砂女
白地着て白地にはやや老い過ぎし 森澄雄
白鳥の年老いし白雪溢る 和知喜八 同齢
白鳥を表わす手足より老いぬ 対馬康子 純情
白鳥を恋ひ来し友の瑞(みづ)に老い 佐藤鬼房
白馬が首出す老いの紙きぬた 細見綾子 和語
白粉花 犬も一緒に老いる町 右近絢子
白木蓮を意中の花として老いぬ 大森輝男
白露老い手風琴その膝に憩ふ 伊丹三樹彦
粕汁や老いていよいよ顎長く 草間時彦 櫻山
麦こがし老いと片づけきれぬこと 高澤良一 暮津
麦の風五月の雲雀老いにけり 麦 正岡子規
麦打つや老いの唐竿低けれど 緒方句狂
麦打てる農婦の老いのあからさま 鈴木真砂女 卯浪
肌脱ぎの肋も老いて命を張る 清原枴童
八月の思ひうすれて老いゆくか 川崎展宏 冬
八月や老いの愛せし白襲 筑紫磐井 婆伽梵
髪そぎて臈たく老いし雛かな 杉田久女
髪切つて母老いにけり栗の飯 松島千代
鳩吹のたくみも老いてしまひけり 鳩吹く 正岡子規
鳩逃げて老いし笛売冬ひとり 細谷源二
半生を司書とし老いて文化の日 佐久間潺々
飯匙倩捕の名人として島に老い 野瀬章子
晩秋の日本に駱駝老いにけり 小泉八重子
蕃椒人は奢りて老いにけり 倉田萩郎
彼岸花中の莟を囲み老い 高木晴子 花 季
彼老いぬ水洟とめどなかりけり 高浜年尾
皮を剥がれて立つ桜木も老いてけり 桑原三郎 花表
秘め事もなかりし夫婦炉辺に老い 高林三代女
肥えて 老いての 天井楽団 アパッシュ小屋 伊丹三樹彦
被布を著て全く老いし母なりし 木村子瓢
避寒宿女主も老いにけり 鈴木真砂女 居待月
避難下山負はれて老いの顔高く 橋本多佳子
飛ぶ如く生れ来つ春を老い尽す 永田耕衣 自人
尾を振りて老いたる馬と小判草 藤田あけ烏
眉老いて霜はしんしんたる家郷 山口誓子
美しき人美しく老い桜餅 山口青邨
美しき老いとはあるや忘れ霜 能村登四郎
美しくひと老いてゆく障子かな 福島壺春
美しくみなほど~に老い涼し 星野立子
美しく姑老いたまふ寒蜆 大石悦子
美しく姑老い給ふ寒蜆 大石悦子 群萌
美しく優しく老いて負真綿 大山朝子
美しく老いたし峡の鰯雲 柴田白陽
美しく老いたし櫨の紅葉濃し 成瀬桜桃子 風色
美しく老いて女座す小米花 中野 喜久枝
美しく老いて浴衣のよく似合ふ 森下きぬゑ
美しく老いよと牡丹崩れけり 小川かん紅
美しく老いんと思ふ初化粧 大橋 もと女
鼻ひりて老いの無惨に藤咲けり 佐藤鬼房
柊挿す老いても継母たるかなしさ 草間時彦 中年
膝なでゝ余寒しづかに老いしとよ 久保田万太郎 流寓抄
膝頭老いゆく盆の月明り 戸川稲村
百円の鶯早く老いにけり 老鶯 正岡子規
百忌門下みな老い酌み合へり 村山古郷
百姓の生きのすがた終身囚の如く老いこけて笑わぬ故郷 橋本夢道
百姓の老い曲りたる裸かな 高野素十
百足虫出て父荒縄のごと老いし 大隈チサ子
百日紅咲きつぐなかに父老いぬ 大串 章
百日紅母老いしかば父も老ゆ 鷹羽狩行
氷柱延びして老い行くや橋の上 永田耕衣
氷片を蹴りて少年老いゆけり 澤井洋子
病む人が老いての恋や秋茄子
病む人が老いての戀や秋茄子 正岡子規 秋茄子
苗代の一寸二寸人老いぬ 山田みづえ 草譜
苗代の翁と老いてけふも立つ 山口青邨
浜で物色 乳房覆わぬまで老いて 伊丹三樹彦
不勝簪杜甫より老いて柿啜る 大野林火 月魄集 距和五十七年
不知火の語り部として禰宜老いぬ 柴田田鶴江
夫と老いむ去年のゆかたの肌ざはり 殿村莵絲子 遠い橋
夫妻老い子等尋常に梅の花 遠藤梧逸
夫婦老いどちらが先かなづな粥 草間時彦
夫婦老い涙見せ合ふ終戦日 殿村菟絲子
夫婦老い泪見せ合ふ終戦日 殿村菟絲子
富みて老いたる観光團發つ空中へ 三橋敏雄
布団綴るや老いし腕をさし伸べて 原石鼎 花影
父の忌の鶏頭老いてみにくさよ 草間時彦
父ははのめでたく老いぬ八重桜 柴田佐知子
父母の老いゐたまひし炬燵かな 吉田冬葉
父母老いて雛の部屋に寝給へる 高田風人子
父母老いて朝餉静かや庭桜 高浜年尾
父母老いて木犀の香にこもり住む 渡会 昌広
父母老いぬ殻うす光りかたつむり 鍵和田[ゆう]子 未来図
父母老いゆく島の早蕨みな斜め 白石司子
父老いしめ母老いしめて田水沸く 高橋悦男
父老いし街の彼岸にかへりくる 三橋敏雄
父老いず前にうしろに梅落とし 鷹羽狩行
父老いぬ厨の隅の蝮酒 下山田禮子
父老いぬ二重廻しの裾のはね 汀女せん 吉屋信子
父老いぬ日傘の影を地に落し 伊丹三樹彦
武蔵老いお通は老いず菊人形 小畑晴子
葡萄棚の地面の紫紺 家族老いて 伊丹公子 時間紀行
部屋ごとの時計が老いを早めるのだ 菊池柾
風に鴎の白きバランス老いゆく秋 藤野 武
風の秋別れ重ねて老いゆくも 井上哲王
風下の森の奥の老いの激しきかたつむり 高柳重信
風狂の髭の老いたる梅雨鯰 羽田岳水(燕巣)
風鈴を聞きゐる鵜匠老いにけり 清崎敏郎
風呂吹を食ふ猟犬も老いにけり 萩原麦草 麦嵐
蕗の葉も老い交りたり草茂る 高浜虚子
蕗を煮る後ろ姿の母老いし 石井とし夫
蕗老いて砦に似たる馬がこひ 角川源義
腹出でしことなく老いて夏終る 能村登四郎
仏教や理髪の椅子も老いゆけり 攝津幸彦
物腰の柔らかに老い遅ざくら 有働亨 汐路
焚火して日向ぼこして漁師老い 鈴木真砂女 生簀籠
文学少女が老いし吾が妻茨の実 草間時彦
文月や吹かれて老いし馬の貌 船越淑子
文字少女が老いし吾が妻茨の実 草間時彦
文目濃く母の老いゆく春の暮 原裕 青垣
兵なりし脚は老いずと富士詣 柏木久枝
平凡に老いて座にあり初句会 宮内保寿庵
別れ霜庭はく男老いにけり 正岡子規
保養所の猟犬にして老いにけり 深見けん二 日月
歩きつつ人の老いゆく鳥曇り 高橋寛子
墓原に汗して老いし獣めく 西東三鬼
母とともに伯母も老いまし麦青む 中村汀女
母なき子老いては子なし草雲雀 鈴木 明
母の顔知らぬまま老い生身魂 矢野たけし
母の顔老いしと思ふ朝の霜 桂信子 月光抄
母の忌に集う子も老い柿花火 横山美代子
母の辺の羅の香も老いしかな 清水基吉 寒蕭々
母の老いやまざる春の暮つ方 永田耕衣 驢鳴集
母はもとより我も老いけり御命講 小澤碧童 碧童句集
母も吾も老いぬ万朶の花の影 木崎節子
母や碧揚羽を避くるまでに老い 永田耕衣 驢鳴集
母老いしや冬日に浮ぶ峠あり 村越化石
母老いし夏の見舞にありありと 菊池 輝行
母老いず身辺に菊を咲きかをらせ 三橋鷹女
母老いてうすばかげろふさへ怖る 平間真木子
母老いてなほ確かなる手毬唄 岡安仁義
母老いてパン喰みこぼす秋の灯に 桂信子 月光抄
母老いて霞の通ふ体なり 柴田佐知子
母老いて五月の皇居拝し得ず 萩原麦草 麦嵐
母老いて妻をさそへり酉の市 白岩 三郎
母老いて在り紅白のいなびかり 永田耕衣
母老いて三日月遊ぶ家の中 竹本健司
母老いて深きまなざし冬うらら 山口慶子
母老いて鳥のぬくみを持ち寝るか 北原志満子
母老いて灯の涼しさを言ひ給ふ 大串 章
母老いて木の実降るにも怯えをり 山田みづえ 木語
母老いて瀟洒とゐます白牡丹 細見綾子 黄 炎
母老いぬ袷の肩のほそく落ち 田中冬二 俳句拾遺
母老いぬ枯木のごとく美しく 三橋鷹女
母老いぬ水餅の甕のぞくとき 鈴木栄子
母老いぬ地図に泉の記号欲し 江里昭彦
母老いぬ裸の胸に顔の影 中村草田男
峰入の老いてものこる美男眉 及川貞
峯入の老いてもこもる美男眉 及川 貞
峯入の老いてものこる美男眉 及川 貞
法官や僻地に老いて髭の霜 霜 正岡子規
法師蝉何か急かるる老いの身に 加倉井信子
蓬まで蓬まで来て老いざらむ 永田耕衣 冷位
蓬莱や老いしわざをぎ湯治して 水原秋櫻子 蘆雁
蜂老いて水におどろき水を刺す 小暮洗葦
蜂老いて草の実かたく抱きけり 白岩 三郎
忘じゐし山河老いたり秋の風 小松崎爽青
忘年会生き残れるは老いてけり 石塚友二 玉縄以後
頬白の老いてまで怖るるを叱す 永田耕衣 吹毛集
北きつね老いさらばえて昼遊ぶ 津田清子
北きつね老いさらばへて昼遊ぶ 津田清子
北国に老いて楽しく毛皮着る 長谷あき女
北国に老いて棚田の水落す 山藤青甫
北風晴の径も無くて老い行くも 永田耕衣
墨東へ老いの見舞ひの初鰹 秋山巳之流
朴咲けり遠くにありて老いし父母 落合よう子
朴散華老いねば見えぬもののあり 野村久子
朴落葉いつより老いし金髪ぞ 堀口星眠 営巣期
本棚の波郷は老いず去年今年 八橋隆文
凡才のままで老いしよ梅三分 加藤きみえ
盆道をゆくときわれら老いにけり 勝又一透
盆路をゆくときわれら老いにけり 勝又一透
埋み火のごとき想ひも老いにけり 草間時彦
埋火の側に老い行く獵男哉 埋火 正岡子規
妹老いぬ目刺焼く火の浄らかに 渡邊水巴 富士
鮪またぎ老いのがにまた競りおとす 橋本多佳子
鮪またぎ老いのがに股競りおとす 橋本多佳子
鮪競る興奮をもて老いのたたら 橋本多佳子
又少し老いゆくための春支度 竹内桂子
末枯を恋ふ心あり我老いし 高野素十
末弟の我もやや老い金風忌 村松紅花
沫を消す内儀老いたり玉子酒 召波
繭白し繭に埋れて父老いぬ 青柳志解樹
万歳やもどりは老いのはづかしく 千代女
万緑の底に目覚めて老いゆくか 岡本差知子
満月の重力を着て老いてゆく 荒木洋子
満月やしづかに老いて火を待つ芝 中村苑子
夢に話せば老い父も梅あかり 鷲谷七菜子 花寂び
夢みて老いて色ぬれば野菊である 永田耕衣 悪霊
夢みて老いて色塗れば野菊である 永田耕衣
無花果や目の端に母老いたまふ 加藤楸邨
無住寺の番僧老いて麥蒔す 会津八一
無防備に吾は老いたり木瓜の花 竹内椙子
霧だの 風だの 峡田で老いた頬被り 伊丹三樹彦
霧深く楢栗も老い深むらむ 村越化石
名月やひとり老いゆく峰の松 大峯あきら 宇宙塵
明易の旅に馴れつつ老いにけり 京極杞陽
鳴き歩く老い猫といて日数過ぐ 金子兜太
綿入れの肩に重しと姑老いし 佐藤 佳津
綿帽子共に老いたる五十年 筏井竹の門
茂吉忌や蝦夷に老いゆく吾思ふ 阿部慧月
毛糸編む老いの刻々打ちこみて 橋本多佳子
毛布の裏老いてさくらの花咲けり 津沢マサ子 楕円の昼
猛る鵙この身このまま老いゆくか 桂信子 黄 炎
盲導鈴に老いし蟷螂しがみつき 菖蒲あや 路 地
木に登る少年は老い夏木立 三宅やよい
木の芽たち黒猫もの言って老いる 金子皆子
木の実落してくわんくわんと森老いぬ 水沢葉子
木の実落つ音の間遠に老いゆくか 小嶋萬棒
木の葉髪父肖いよいよ姉老いて 石塚友二 磊[カイ]集
木の葉髪片手握りに老いがたく 加藤楸邨
木瓜の緋に手を出し刺され老いたるよ 守田梛子夫
木瓜白し老い母老いし父を守り 有働 亨
木枯に老い父足を曳き歩む 相馬遷子 山河
木犀の一旬に風老いにけり 正木ゆう子 静かな水
木耳を踏み山彦の老いゆくよ 長谷川双魚 風形
木場堀に老いて祭着まだ似合ふ 能村登四郎
木登りの少年は老い切株に 中村苑子
木綿よりつよく御岳行者老い 平畑静塔
木綿着て山に老いゆくえごの花 福谷俊子「高嶺村」
木老いて歸り花さへ咲かざりき 正岡子規 帰り花
木老いて歸り花だに咲かざりき 正岡子規 帰り花
木苺も桑の実も食べまだ老いず 市野沢弘子
黙祷の背ナみな老いし原爆忌 宮坂秋湖
目もあやに老いたる木々の若葉せり 相生垣瓜人 負暄
目借時 老いては妻の御意のまま 守田椰子夫
目出度さや老いて互に寝正月 高浜虚子
目瞑るは老いし白鳥風花す 古賀まり子 降誕歌
目瞑れば炎天の声あり老いたり 北島輝郎
餅好きの巫女に老いたる山傾く 橋閒石 荒栲
餅搗のやとはれ衆の老いにけり 中村汀女
籾莚 よぎる 農夫で老いた腰 伊丹三樹彦
門火焚く顎つき出して父老いぬ 菖蒲あや
門松に馴染の鳶職も老いにけり 吉屋信子
夜ざくらや老いて妖しき夢をみる 清水基吉
夜学生老いたる髪をかきあげぬ 近藤 実
夜桜や祭見んとて老いにゆく 森澄雄 浮鴎
夜桜や老いて妖しき夢をみる 清水基吉
夜櫻や祭見んとて老いにゆく森澄雄
野に老いし父母よ勤労感謝の日 石井飛大男
野に老いて冬満月を食ひ減らす 佐藤鬼房
野の菊と老いにけらしなよめがはぎ 野澤羽紅女
野育ちの老い母好むさくら烏賊 金子兜太
野馬追の功労者なり馬も老い 清崎敏郎
矢のように少女は老いて飛騨の夏 津沢マサ子
油蝉はげしく老いぬ閏秒 池田澄子
諭吉忌や三田派文人すでに老い 佐藤英堂
友も老いぬ祭ばやしを背にあゆみ 木下夕爾
友ら老いてうぐいす谷の橋の上 佐藤佐保子
友ら老いゆきほおずきは赤らむよ 脇りつ子
友老いぬ吾また然り閑古鳥 上村占魚
友老いぬ都忘れの咲く母校 佐藤正治 『山川草木』
誘はれず誘はず老いの冬籠 藤田素候
誘蛾燈の暗さに立ちて父老いし 萩原麦草 麦嵐
遊女老いて茅花まじりの垣根哉 正岡子規 芽花
遊船の脇櫓を漕ぎて老いゆくも 後藤比奈夫 花びら柚子
夕ざくら珊瑚磨きて老いゆくも 鍵和田[ゆう]子 未来図
夕顔や老い深みゆく花明り(母) 野澤節子 『八朶集』
夕桜老いていよいよ童顔に 小山かつみ
夕爾忌やその後のわれら老いる許り 安住敦
夕波や牡蠣に老いたる船の腹 芥川龍之介
揺椅子に小さく老いむ秋ざくら 石田あき子 見舞籠
踊唄いきの尾長の老いのこゑ 野見山朱鳥 運命
羅のよりどり持ちて老いにけり 鈴木真砂女 紫木蓮
来るを怠りしかば老いけり蟇の前 三橋敏雄
雷雨乾く今日のベンチを老いて待つ 三橋敏雄
雷激し旅急ぐは老い急ぐなり(ジュネーヴ) 殿村菟絲子 『牡丹』
落字して老いの吉書のめでたけれ 池上浩山人
蘭の香に老いも若きも寝覚かな 白雄 白雄句集
吏の妻として老い早し花南瓜 猿橋統流子
梨の花妻を老いしめてはならず 綾部仁喜 樸簡
梨老いて花まばらなり韮畠 梨の花 正岡子規
裏山のうぐひす老いぬ妻を賜へ 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
裏方として老い都踊かな 有働 亨
立春大吉と書きし太筆太しと見るも老いらく 荻原井泉水
立冬の蒟蒻を食べまた老いぬ 岸風三樓
流等老いたり虹に頭上げぬ山羊なるか 中村草田男
竜宮を覗きし海女の老い知らず 大野利江
涼風やわが黒子らも老いづくか 渡邊白泉
猟師(またぎ)消ゆ老いも死もなく雪空に 佐藤鬼房
猟師消ゆ老いも死もなく雪空に 佐藤鬼房 朝の日
猟夫老い岩頭に風聴きてをり 菅原鬨也
陵灼けて日本人のみな老いて 石田勝彦 秋興
力要る老いの脱糞麦の秋 高澤良一 暮津
緑蔭をなすにいたらず榧は老い 清崎敏郎
緑鋭の虚無老い声の疳高に 金子兜太
緑濃く愛鷹山老いず人は老い 文挾夫佐恵
淋しさよ/秩父も/鬼も/老いぬれば 高柳重信
淋しさよ秩父も鬼も老いぬれば 高柳重信
淋しさを老いての後の月見かな 蝶夢
輪廻とく老いしは草に横たはり 横山白虹
輪唱シャンソン 巴里に生まれて 巴里に老い 伊丹公子 機内楽
冷し蜂蜜(ホニー)老いづきつつも吾に吾妻 中村草田男
冷まじや声まで老いし山羊を飼い 源鬼彦
冷酒や老いて達者に嘘もつき 赤尾恵以
冷奴湯豆腐となる老いぬれば 山口青邨
礼拝(サラート)の一人の老いに鶺鴒すぐ 松崎鉄之介
鈴振つて搖髪より老い露の馬 文挟夫佐恵 雨 月
鈴虫や老いて框に坐る母 辻田克巳
麗とは老いに眩しきものならし 能村登四郎
恋ひ老いて貧苦に梳けり棕櫚の花 飯田蛇笏 山廬集
恋星や老いてはならじと老いゆくも 平井さち子 紅き栞
連翹の見えるところで老いてゐし 飯島晴子
櫓さばきに老いのきざしや冬の雲 鈴木真砂女 卯浪
炉が鳴けど心老いにし筆枯れぬ 林原耒井 蜩
炉は燃えて秋思さだかに老いきざす 鳥谷網生
炉を焚きて静かに老いませ寒の日々 殿村莵絲子 花 季
炉火たちて顎老いぬ一人一人 加藤秋邨
炉火熾んかくして母も老いゆく夜 飯田龍太
炉開きや左官老い行く鬢の霜 松尾芭蕉
炉開や左官老い行く鬢の霜 翁 十 月 月別句集「韻塞」
炉辺に老い幸薄かりしこと言はず 千本木溟子
路地に老いて焦げる鯛焼うらがえす 柴田清風居
露しぐれわれ老いわが句古びゆく 日野草城
露の世や目覚むるたびに老いてゆく 高橋健文
露の夜を眠り老いゆく心音も 新明紫明
露天湯に霊芝(れいし)のごとき老いの尻 高澤良一 随笑
浪漫派とうそぶき老いて着ぶくるる 吉田未灰
浪々の身に老い兆すアイスティ 勝又一透
老いがたくこころにしみるはつみそら 飯田蛇笏 雪峡
老いがたしよき手袋に五指つめて 北原志満子
老いけらし昔恋しき飾羽子 富安風生
老いけるを敬ひとどく稲荷寿司 水原秋櫻子 餘生
老いごころ薄紙のごと雛の前 内山起美女
老いごころ揺れゐて三寒四温かな 吉野義子
老いざまのかなしき日なり実千両 草間時彦
老いざまの似てきし夫婦温め酒 小川茂子
老いざまはとまれ生きざま年初め 安住敦
老いざまや万朶の露に囁かれ 三橋鷹女
老いさらばへ支柱に枝垂れ桜かな 川崎展宏 冬
老いしかや鴬餅に喉つまり 後藤夜半 底紅
老いしかや鶯餅に喉つまり 後藤夜半
老いしことありありと着る白絣 大野林火 月魄集 昭和五十四年
老いしこと互に言はず新茶汲む 山根仙花
老いしとおもふ老いじと思ふ陽のカンナ 三橋鷹女
老いしと思ふ老いじと思ふ陽のカンナ 三橋鷹女
老いしひとよかんにやすらふまゝにあれや 山口誓子
老いしひとよかんより起つは礼すとか 山口誓子
老いしひと残る暑さの中に処す 山口誓子
老いし為敬老の日に敬されし 相生垣瓜人 明治草
老いし巌夏渓草の梳くごとし 飯田蛇笏 雪峡
老いし犬眠るミモザの花の下 市川佳代
老いし故且つ暑き故病むならむ 相生垣瓜人 負暄
老いし鯉に餌を指を与えてなど老いたるあるじ 荻原井泉水
老いし今くちなはいちご怖れむや 相生垣瓜人 微茫集
老いし今好きな花なり石蕗の咲く 沢木てい
老いし指蜂に螫されてふくらめり 右城暮石 句集外 昭和五十年
老いし者ら老いざる雛を祭りけり 澤井我来
老いし小町に花冷の燭虹なせり 能村登四郎
老いし身に喜の字づくめや飾り海老 友常玲泉子
老いし水夫吹雪の面を手に拭ふ 加藤楸邨
老いし椎漸く花気を吐き了る 相生垣瓜人 明治草
老いし二人だけが眺むる雛買ふ 能村登四郎
老いし二人だけが眺める雛買ふ 能村登四郎
老いし父昼も睡れり葛の花 皆川盤水
老いし父母菜漬くる聲をたかぶらせ 相馬遷子 雪嶺
老いし父炬燵にて書く農日記 芦沢一醒 『花枇杷』
老いし母九段のさくら浴びてをり 植木緑愁
老いし母昔の夏服今も着て 内藤瑤子
老いし母怒濤を前に籾平す 西東三鬼
老いし木のその夏蔭や濃やかに 相生垣瓜人 負暄
老いし木の枝かたくなに柿紅葉 水原秋桜子
老いし木も止み難くして若葉せり 相生垣瓜人 負暄
老いし友を葬りて早春根岸恋ふ 中村草田男
老いし友一客うれし宗易忌 及川貞 榧の實
老いし婢を母の如くに初竃 川上明女
老いし舸子艫の日向に孫匐はす 川島彷徨子 榛の木
老いすぐに寒に応うる嚏や 今井竜蝦
老いず老いたり老ゆ鳴く蟲のことなれど 上田五千石『天路』補遺
老いそめし己れをしりて花壇ふむ 飯田蛇笏 心像
老いそめし身の紅かねや今朝の寒 太宰治
老いそめて花見るこころひろやかに 飯田蛇笏
老いそめて花見るこゝろひろやかに 飯田蛇笏
老いそめて花見るこころひろやかに 飯田蛇笏 山廬集
老いそめて花見る心ひろやかに 飯田蛇笏 霊芝
老いそめて霞のいろの父の声 能村登四郎
老いそめて修し得し忌や花蘇枋 八木林之介 青霞集
老いそめて恋も切なれ秋夕べ 几董
老いたくはなし黒薔薇を黒と見ず 加倉井秋を
老いたりし鷹と対峙す屠蘇の酔い 高見道代
老いたりと電気毛布に絡む紐 酒井雪子
老いたりな飴湯つくれと夫の云ふ 新川智恵子
老いたりな西瓜の種子をこぼすとは 高澤良一 素抱
老いたりな冬至湯に脚透いて見え 高澤良一 暮津
老いたりや舐めてすぐ足る今年酒 森澄雄
老いたるが寫し寫され菊の晴 板垣鋭太郎
老いたるも不死身の藤の芽吹くなり 阿波野青畝
老いたるラッパ天対き吹けり社会鍋 山田みづえ 忘
老いたるラツパ天対き吹けり社会鍋 山田みづえ 忘
老いたる鮫急ぎぬ大水槽の内 池田澄子
老いたれど妻のちぶさは桜草 岡悦郎
老いたれど数の子を噛む音が好き 杉浦嘉太郎
老いたればまた字を忘れ散紅葉 安住敦
老いたれば遠稲妻を恋ひにけり 島 紅子
老いたれば言葉少なに零余子飯 藤芳延枝
老いたれば後ろをも見ぬ田螺哉 永田耕衣
老いたれば作つてみたる雪兎 飯島晴子
老いたれば非常を常に春の北風 長谷川双魚
老いたれば菫に跼むこともなし 安住敦
老いづきて乳子と語らふ虫月夜 上田五千石 天路
老いづくと思へぬ衣更へにけり 上田五千石『天路』補遺
老いづまの泳ぐに水着かなしめり 三橋鷹女
老いてうからの微酔の汗や豆の飯 赤城さかえ
老いてこゝに斯く在る不思議唯涼し
老いてこそなほなつかしや雛飾る 及川貞 榧の實
老いてこそ見ゆるものあり真菰の芽 松井ふみ
老いてこそ祭り衣裳も小粋なる 川田君枝
老いてこそ姉妹美し谷崎忌 三木敬子(航標)
老いてこそ全重量の青山河 倉橋羊村
老いてこそ明治は好き時代の春らんまん唱う 荻原井泉水
老いてだに嬉し正月小袖かな 信徳
老いてなお 老いゆかんとし 花吹雪 伊丹三樹彦
老いてなお強き決断蛍となる 永井信子
老いてなお稽古大事や謡初 高浜虚子
老いてなお思い寝のあり薄桜 永田耕衣 葱室
老いてなお紙漉くやがて雪ならん 橋閒石 俳句選集 『和栲』以後(Ⅱ)
老いてなどゐられぬ水を打ちひろげ 菖蒲あや
老いてなどをれぬ椋鳥(むく)来る雨が漏る 後藤綾子(1913-94)
老いてなほゴッホが親し麦の秋 相生垣瓜人 負暄
老いてなほみめよきひとの秋扇 町田しげき
老いてなほ唄声若し十夜鉦 臼井輝雄
老いてなほ忌む予備校の冬の匂ひ 田川飛旅子 『邯鄲』
老いてなほ漁師たくまし根深汁 鈴木真砂女 生簀籠
老いてなほ稽古の鬼や寒稽古 竹原梢梧
老いてなほ稽古大事や謡初
老いてなほ鋼の如く耕せり 佐々木草生
老いてなほ子に従はず菖蒲酒 橋本 對楠
老いてなほ小さき立志梅白し 深見けん二 日月
老いてなほ沼生き甲斐に*えりを挿す 石井とし夫
老いてなほ深入り癖やしぶり梅雨 能村登四郎
老いてなほ草にひそめる囮守 近藤一鴻
老いてなほ挑戦多き去年今年 千葉紅園
老いてなほ妬心あらはに蟇 桑原まさ子
老いてなほ働かねばと父の日あり 小林康治
老いてなほ濃ゆきを好み花蘇枋 後藤夜半 底紅
老いてなほ農の血さわぐ初郭公 阪本静恵
老いてなほ母に意地あり福寿草 加藤静子
老いてなほ夢多くして雛祭 吉屋信子
老いてなほ夜網に暗き燈をかゝげ 明石和子
老いてなほ立つ教壇やすき間風 伊津野 朝民
老いてなほ磧に焚いて草の煙 飴山實 句集外
老いてなほ襤褸を濡らす鰯漁 榎本冬一郎 眼光
老いてならぬ老いてならぬと梅咲けり 後藤比奈夫
老いてはならず綿虫にどこか日射しゐて 能村登四郎
老いてまた筒袖似合ふ麦の秋 能村登四郎 天上華
老いてまた母となる犬に餌をやる妻ぞ 荻原井泉水
老いてみな親しげ桜咲けば酌み 鷹羽狩行
老いても子に従わぬ母の頑固の故郷の秋茄子 橋本夢道
老いても流すタクシー ジャスミン匂わせて 伊丹三樹彦
老いてゆくためにある火か秋刀魚焼く 小池万里子
老いてゆく体操にして息白し 五味 靖
老いてゆく恋人よ葡萄棚の下 今井杏太郎
老いてゆく刹那刹那を水打つて 小島千架子
老いてゆく炬燵にありし或日のこと
老いてより夫婦気の合ふ味噌仕込み 古賀まり子
老いて鵜は滴るもののなかりけり 加藤秋邨
老いて遠ざかるたれかれ雲の秋 鷹羽狩行
老いて会ふ寮友三五今年酒 下村ひろし 西陲集
老いて樫花を羞らう脚尖あり 永田耕衣
老いて樫花恥かしき真水哉 永田耕衣
老いて割る巌や金柑鈴生りに 西東三鬼
老いて癌の三度の手術冴え返る 仲安俊雄 『冬耕』
老いて見る夢の浅しや去年今年 神 緑郎
老いて子に従ふもよし鳥総松 後藤春翠
老いて子に従わぬ母牡丹咲く 倉本 岬
老いて斯くはやされながら明の春 岩木躑躅
老いて慈悲ふかき妹寒玉子 成田千空
老いて識る男女の機微や虎が雨 佐竹魯人(渋柿)
老いて手を子に預けたる秋遍路 林昌華
老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子
老いて尚妓として侍る虚子忌かな 下田実花
老いて尚君を宗とす子規忌かな 高浜虚子
老いて尚芸人気質秋袷
老いて尚若さ欲しけり返り花 仁神ハルヱ
老いて尚雛の夫婦と申すべく
老いて尚笛を一途に里神楽 橋本一水
老いて心たのしき時の昼寝かな 京極杞陽
老いて人澄みゆくばかり竜の玉 永方裕子
老いて知る菓子の楽しみ石蕗の花 遠藤梧逸
老いて庭に鶏頭の朱をみたしけり 仲田志げ子 『埋火』
老いて動かす秋晴の花電車 平畑静塔
老いて得し知己大切にゐのこぐさ 能村登四郎
老いて読むつもりの本や春の塵 北見さとる
老いて燃ゆる思や伊吹雪消えて 橋閒石 卯
老いて飛ぶ甲虫の翅柔かし 右城暮石 句集外 昭和三十一年
老いて病み病みて老う父竹の秋 持田石映 『まぼろし』
老いて病む人に着せたり新浴衣 相馬遷子 山河
老いて病む猫をいたはる花ぐもり 日野草城
老いて母蕃茄の丈に及ばざり 三田地白畝
老いて北見の炉辺に泣きけむ父在らず 林原耒井 蜩
老いて目のするどくゐたる帷子ぞ 森澄雄
老いて野の赤き蜂にも別るるよ 永田耕衣
老いて猶浮世のさがや夏袴 籾山梓月
老いて恋ふ木蔭黒人も白人も 中村汀女
老いて老梅を愛し ことし大いにひらく 荻原井泉水
老いて蟇女人に還りつつあらん 永田耕衣 人生
老いという思いまだなき春立ちぬ 松本夜詩夫
老いといふ冬麗かの時永かれ 林翔
老いといふ未知の世界や茄子の花 石田榮子(かびれ)
老いといへば確かに老いし鳥曇 能村登四郎
老いどちの遍路づれなり黙しゆく 高濱年尾 年尾句集
老いとはかく鬚しなやかな飾海老 能村登四郎
老いと観る浮世絵展この夏山中 上田五千石『田園』補遺
老いながらああをみなへしをとこへし 清水径子
老いながらつばきとなつて踊りけり 三橋鷹女
老いながら椿となつて踊りけり 三橋鷹女
老いにきとルーペの重き夜学かな 阿波野青畝
老いにきと妻定めけりすまひ取 召波
老いにきと涙ぐみ聴くメーデー歌 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
老いにけり機械で稲刈る寂しらに 武田伸一
老いにも狂気あれよと黒き薔薇とどく 能村登四郎
老いぬうち深夜を翔べと望の月 清水径子
老いぬと思ひ否とも思ふ年迎ふ 富安風生
老いぬるやいろは混りのはだれ雪 橋閒石 和栲
老いぬれど手馴仕事と紙を漉く 岡崎多佳女
老いぬればあたゝめ酒も猪口一つ 高浜虚子
老いぬればくわりんの実にもつまづきて 山口青邨
老いぬれば蚊帳の別れも惜まれて 富安風生
老いぬれば我が丈低しカンナより 三橋鷹女
老いぬれば会葬一つ夏日終ゆ 山口青邨
老いぬれば鬼も内なる追儺かな 野見山ひふみ
老いぬれば胸に子猫と童心と 浜崎敬治
老いぬれば銀河を仰ぐことも稀 田中延幸
老いぬれば股間も宙や秋の暮 永田耕衣
老いぬれば吾が身丈低しカンナより 三橋鷹女
老いぬれば四方平面の霜摘まむ 永田耕衣
老いぬれば脳みそ減るとお白酒 波多野爽波 『一筆』
老いぬれば脳みそ滅るとお白酒 波多野爽波
老いぬれば夫婦別なきスエタかな 松尾いはほ
老いぬれば蕗の薹にもつまづきて 山口青邨
老いぬれば枕は低し宝舟 水原秋櫻子 蘆雁
老いぬれば味噌餡がよし柏餅 森澄雄
老いぬれば冷き手かなたづさふる 軽部烏頭子
老いぬれば恬淡がよし古茶新茶 大橋桜坡子「鶴唳」
老いぬれば悴まざるを得ざるなり 相生垣瓜人 負暄
老いぬれば泪にしたふきくまくら 飯田蛇笏 家郷の霧
老いぬれば餡蜜などもいただきて 山口青邨
老いの顎うなづきうなづき紙を漉く 橋本多佳子
老いの眼の僅かにたのし青蜜柑 百合山羽公
老いの坂下りは早し年暮るる 畔津 とみ
老いの子の末の子の雛祭るなり 林原耒井 蜩
老いの耳初釜の湯気聞きすます 平畑静塔
老いの耳囀遠くなりにけり 岩崎正子
老いの手にまねき消されぬ雛の燭 山本梅史
老いの手の線香花火山犬吠え 西東三鬼
老いの手をのべて探りて龍の玉 富安風生
老いの手を見せ合うてゐる冬至空 飯田龍太
老いの春死ぬ気はなくて死にたがる 小出秋光
老いの身の地獄耳かも亀鳴けり 村山慶子
老いの足小刻み麦と光踏み 西東三鬼
老いの存在太鼓打ち打つて春蝉湧く 加藤知世子 花寂び
老いの大き眼月に従ふ星みつむ 佐藤鬼房
老いの母やとうとうたらり屠蘇の酔 草間時彦
老いの名のありとも知らで四十雀 芭蕉
老いの目に朝日はつよし雑木の芽 橋本榮治 越在
老いの立志はむつくりと地に蕗の薹 原子公平
老いの恋すゞめかくれに通ひけり 加藤郁乎
老いはかく音もなく来る花八つ手 林翔 和紙
老いばかり残る過疎村盆用意 北岡美恵子
老いは色恋の湯ざめや近松忌 森澄雄
老いほのぼの紅葉一樹の明け暮れに 吉野義子
老いぼれしくひつき犬をしぐれけり 正岡子規 時雨
老いぼれし唄はりあげぬ御万歳 阿部みどり女 笹鳴
老いぼれし鶯なくやきよときよとと 老鶯 正岡子規
老いぼれし鶯なくや野の小寺 老鶯 正岡子規
老いぼれてしまひぬ菖蒲酒ふくみ 久保幹児
老いぼれて菊より萱の枕よし 後藤綾子
老いぼれて人の後へに施米かな 高浜虚子
老いぼれて目も鼻もなし榾の主 村上鬼城
老いまじき手元鯉切る夕青田(丹波にて) 細見綾子
老いまじく歩けばへくそかずらかな 湯浅康右
老いましゝ父のみまへの裸かな 上村占魚 鮎
老いまじや夏足袋指に食ひ込ませ 鈴木真砂女 夕螢
老いまだしぬすみし枸杞の実を胸に 山本古瓢
老いもふけ麦の風やらそばの風 中勘助
老いもまた未知との出合ひ桐一葉 富田昌宏
老いも緑袋のものを出して喰べ 橋本多佳子
老いやすき母を叱りつ石鼎忌 原裕 出雲
老いゆくか小崖たんぽゝ咲く一と日も 細見綾子
老いゆくはわがゆくところ露滲む 今枝蝶人
老いゆくはわびをせめゆく簾かな 上田五千石 天路
老いゆくは吾のみならず飛花落花 菖蒲あや
老いゆくは淋しきものよ雛祭 高濱年尾 年尾句集
老いゆくもたのし葛咲き楮さらす(京都府黒谷) 細見綾子
老いゆくや吐く息白きときのまも 西島麥南
老いゆくや八手の花に嫉妬して 真鍋つとむ
老いゆくをさぶしむ歌の賀状かな 下村梅子
老いゆくを罪と思はず百日紅 横山白虹
老いゆくを知れとて長き夜はあるか 大野林火 雪華 昭和三十九年
老いよとや赤き林檎を掌に享くる 橋本多佳子
老いよよことばただしき藤の花 田中裕明 櫻姫譚
老いらくのかしづくごとく菊に住む 上林白草居
老いらくのなにやら疼く蝌蚪に足 吉田未灰
老いらくのはるばる流し雛に逢ふ 大野林火 飛花集 昭和四十六年
老いらくのゆめのあとさき朱鷺孵る 瀬戸青天城
老いらくの気負ひは今も初不動 黒川喜八郎
老いらくの血を耀かす薔薇真紅 小出秋光
老いらくの口もとさむし御仏名 去 来
老いらくの口もと寒し御仏名 去来
老いらくの高き匂ひを椎の花 秋元不死男
老いらくの端午の兜飾りけり 山口青邨
老いらくの稚気いつまでか金亀虫 上田五千石『天路』補遺
老いらくの鳥屋師は霧に頬かむり 小原菁々子
老いらくの摘草に日の恵み日のめぐみ 中勘助
老いらくの髪うつくしき日傘かな 上田五千石『天路』補遺
老いらくの美醜是非なしバナナ食ふ 藤田湘子 神楽
老いらくの涙をみたり松の花 田中冬二 俳句拾遺
老いらくの恋と愛撫す桐火桶 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
老いらくの恋の哀しき野分かな 中村昭子
老いらくの洒落の着流しちゃんちゃんこ 橘 肖吉
老いらくは濁り浸りに冬の鯉 能村登四郎
老いらくを極楽坊の垣手入れ 上田五千石 天路
老いられぬ夏潮のかく溢れては 清水径子
老いるまでの儀式いくつも春の暮 桂信子 花影
老いるより寒土戀ほしく住ひけり 飯田蛇笏 山響集
老い易くして少年の茅花笛 森澄雄
老い易くたそがれ早く白木槿 池尾望念
老い易くはた老い難き柳哉 正岡子規 柳
老い鵜「彦丸」内輪歩きに暮れざる川 橋本多佳子
老い下手や綾の手毬をたなごころ 野澤節子 『駿河蘭』
老い果てし故の暑さとあきらめし 相生垣瓜人 負暄
老い果てて爽やぐ事も忘れしか 相生垣瓜人 負暄
老い骸に良しとふものぞ古団扇 相生垣瓜人 負暄
老い覚ゆ金柑*もぎし腕より 岡野小甫
老い急ぐ秋光を身にびつしりと 三橋鷹女
老い朽ちてゆく母羨し玉霰 永田耕衣 奪鈔
老い朽ちて子供の友や大根馬
老い給ひ子規忌が来れば憶はるゝ 高木晴子
老い給ひ落花に昔語らるゝ 高木晴子
老い給ひ落花に昔物語 高木晴子 花 季
老い給ふ山茶花に杖ひき給ふ 高木晴子
老い給ふ母許の道恵方とす 岩内萩女
老い拒みつづける母の豆の飯 田島サチ
老い古りて不死身の真藤芽を吹けり 阿波野青畝
老い五人に減りし句会や獺祭忌 宮武章之
老い巧者難儀と晴子告る霜夜 後藤綾子
老い惚けて蜜柑も今や好々果 相生垣瓜人 負暄
老い桜甘からぬ実を育める 相生垣瓜人 負暄
老い桜骨身を削り咲きたらむ 相生垣瓜人 負暄
老い桜今年の夢も見終れり 相生垣瓜人 負暄
老い桜咲き倦じてもをるべきか 相生垣瓜人 負暄
老い桜止むに止まれず咲きにけむ 相生垣瓜人 負暄
老い桜身じろぎならず花著けし 相生垣瓜人 負暄
老い桜夕日に朱をば注がれし 相生垣瓜人 負暄
老い桜落花は己が身に降りて(岐阜県根尾川の淡墨桜) 細見綾子
老い鮭のしろがねいろに流れゆく 成田智世子
老い始む沢蟹さりりと炒る人も 上林裕
老い止めのくすりのなけれ沢庵噛む 亀田虎童子
老い守りて大樹となれり寒椿 山口素人閑
老い住める庭の鶏頭上に向く 篠原桜子
老い初めし光陰たふとしや炭掴む 栗生純夫 科野路
老い初めてベレーが似合ひ雁渡し 奈良文夫
老い深き南の国の朱欒売り 木塚真人
老い深む樹より鳴りだす秋の風 鷲谷七菜子 一盞
老い進む三町内の運動会 高澤良一 宿好
老い進む湯攻めの鱧の縮む間も 後藤綾子
老い人や夏木見上げてやすらかに
老い雛の白髪もありぬ雛くづに 原石鼎 花影
老い生きるとは梅雨湖の水尾のごとし 能村登四郎
老い先の幾齣よぎる夜の秋 藤原たかを
老い先の短に冬の茸焼く 佐藤鬼房
老い先は風船葛揺るるごと 吉岡桂六
老い先を思ひゐて蚊に食はれけり 相生垣瓜人 負暄
老い知らぬピカソも逝きぬ紫木蓮 林翔
老い兆す頭ごなしに十二月 小嶋萬棒
老い椎の最も乱れ夏立ちぬ 相生垣瓜人 負暄
老い得ざる君と老い得しわが顔と並べ得ず四十年ずれし戦帽 榛名貢
老い二人双六におどけ冬籠 山田みづえ 忘
老い伯母に蚊が鳴く生家すでに廃家 金子兜太
老い比べ吹くや穴穴夏の風 永田耕衣 殺祖
老い病みて寝てをり山の眠るごと 森澄雄
老い父が送り火焚きし迹精し 伊藤白潮
老い父に一壺のうるかありにけり 岩崎魚将
老い父に日は長からむ日短か 相馬遷子 山河
老い父のたふさぎを縫ふ夜涼かな 大石悦子
老い父の濡れそぼち来ぬ初時雨 相馬遷子 山河
老い父母に間遠に昏れる秋の声 落合よう子
老い払ひ死を払ひして踊りの子 文挾夫佐恵
老い払ふごとあふれさす冬至の湯 重松沙代 『糸桜』
老い僻む漁夫つつましや目貼剥ぐ 佐藤鬼房
老い母が井戸に腰折る日焼濃く 伊藤白潮
老い母と二人三脚年用意 大澄利江
老い母と老いゆく吾と花の下 佐藤まさ子
老い母に道見えてゐる蝉時雨 野澤節子 八朶集
老い母に落丁のごと沖縄忌 玉城一香
老い母のまなざしに慣れ百日紅 原裕 青垣
老い母の違和はすべなし朝ぐもり 相馬遷子 山河
老い母の愚痴壮健に夕ひぐらし 金子兜太
老い母の嘗むる梅子を恐れけり 相生垣瓜人 明治草
老い母の短かの裾や蕨狩 草間時彦 櫻山
老い母の背なのまろさの山眠る 伊藤白潮
老い母の来てもたらせし冬の蠅 相馬遷子 山河
老い母は噂の泉柿の秋 草間時彦 中年
老い母も愛嬌元旦から転び 河野南畦 『空の貌』
老い母やとうとうたらり屠蘇の酔 草間時彦
老い母よひひなの餅もやや古りぬ 金久美智子
老い母よ祈り惚けし夏蕨 小檜山繁子
老い母よ二色使ひの膝毛布 中村明子
老い母を叱り侘しむ梅雨晴間 宮崎とき女 『雪椿』
老い母を笑ひ泣かせて盆の果つ 竹中龍青 『蚕影』
老い崩る身の楯もなし秋扇 石原八束
老い未だ知らず逝く年踏みしめて 雨宮抱星
老い無惨ともいとしとも花くちなし 柴田白葉女 『月の笛』
老い毛虫うす日を這うて憤り 原石鼎 花影
老い老いて足袋潔白に冴えにけり 小寺正三
老い櫻夕日に朱をば注がれし 相生垣瓜人
老い泯びゆく白髪の光芒や 飯田孤石
老い皺を撫づれば浪かわれは海 三橋敏雄 *シャコ
老い耄れになり切つてゐる炬燵かな 小出秋光
老ゆるもの老いしめさくら満ちてをり 原裕 『出雲』
肋骨に毬かかげ八ツ手老い候 三橋鷹女
脇役で老いし女優の春手套 有馬朗人 耳順
鷲老いて胸毛ふかるる十二月 桂信子 月光抄
鷲老いて胸毛吹かるる十二月 桂信子
鷲老いて止り木の糞石と化す 藤井亘
藁塚の低さ村中老いてをり 石阪千鶴子
藁塚老いて春の鴉と睦み合ふ 岡本眸
蕨は老いて鮎は幼しと見る幼きあわれ 荻原井泉水
蕨老いて天日雲に冷えにけり 渡邊水巴 白日
侘助の老い木の蔭に立ち寄れり 相生垣瓜人 負暄
偕に老い俄に後の月祀る 佐藤鬼房
曼珠沙華相聞歌人老いし後 角川源義
呟いているは老いなり雪囲い 田中徹男
啼かぬまも尾振り胸張り鵙老いず 野澤節子 未明音
喇嘛僧の冬うらゝかに老いにけり 大場白水郎 散木集
囀りの旺んや髪に老いきざす 雨宮抱星
夾竹桃機関車老いて捨てらるる 山本朱鷺男
夾竹桃二階の窓に人老いて 藺草慶子
寐起から団扇とりけり老いにけり 鈴木道彦
巫の老いもめでたし花しづめ 荷兮
巫女老いて 横目つかいの 秋桜 伊丹三樹彦
慇懃に老いゆく教師草じらみ 宮坂静生 雹
扁平な巨獣老いたり芝枯るる 林 翔
杳々と人は老い魚氷に上る 結城静子
朧夜の母ひらかなのやうに老い 小檜山繁子
梟の性持ちはじむ老い芒 平井照敏
棘ばかり鋭くなりて薔薇老いぬ老いざるうちに死にたかりしを 築地正子
棕櫚剥ぐや凡には老いし眉ならぬ 石塚友二 曠日
楮搗きの声まろやかに老いゐたリ 加藤知世子 花 季
楡ひかり木かげに牧夫老いにける 岸風三楼 往来
楡新樹諸君は学徒我は老い
楪の日向老いたる村ばかり 櫛原希伊子
橇馬の臀毛少なに老いにけり 飯田蛇笏 家郷の霧
橙に貝殻蟲母は老いしかな 石田波郷
檻の狸とまんじゆう頒つ老いたれば 清水径子
檻の内に麒麟も老いて君か春 正岡子規 君の春
渾身の力も老いし大豆引く 永富巨秋
灌火屋守老いていよいよ鹿火を恋ふ 近藤一鴻
烟るごと老い給ふ母菊膾 山田みづえ 木語
爐開きやつどへる先づは老いし友 及川貞 夕焼
爐開や細君老いて針仕事 炉開 正岡子規
琅かんのすはえは梅を老いしめず 阿波野青畝
矍鑠と老い狐火を語りぐさ 猪股千代子
碌山の「女」は老いず蔦若葉 玉木春夫
筍の脂ぎつたる老い様や 相生垣瓜人 明治草
筍の藪や俄に老いて入る 石川桂郎 高蘆
籠耳の老い痴らむなり秋の風 文挟夫佐恵
絣着ていつまで老いん破芭蕉 原石鼎 花影
罌粟散るを見しより男老い初めぬ 三橋鷹女
聟取りて夫婦老いけり薬ぐひ 蓼太
臘梅のどこより老いてゐたるかな 秋山巳之流
芒原おもいて真昼老いいたり 津沢マサ子
茗荷の子親しむ頃は老いゐたり 関戸一正
菫濃く人老いゆくや草の宿 山口青邨
菫野に来て老い恥をさらしける 三橋鷹女
菫老いて同族の紺見当たらぬ 永田耕衣
萍はそぞろに青み母の老い 中村汀女
葭切が言ふ湖は老いたり疲れたり 山田みづえ 草譜
葭切の葭を掴みて老いゆくや 大嶽青児
蒟蒻の花活けられて父老いず 足立原斗南郎
蓼・あかざ老いぬれば血も濁るかと 能村登四郎
薔薇の園老いける人のたふとしく 山口青邨
薔薇や梔子や 先立って嗅ぎ 男老いる 伊丹三樹彦
薔薇老いぬ茎に添ふ陽のあたゝかに 日野草城
藪寺や鶯老いて音にうとき 老鶯 正岡子規
藪道を通ひて老いぬ午まつり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
藥喰す人の心の老いにけり 藥喰 正岡子規
蘆刈るやひとりはやすし老い易し 長谷川双魚 『ひとつとや』
蜆汁死よりも老いを恐れけり 鈴木真砂女 紫木蓮
蜑老いて坪にも足らぬ大根蒔く 武田きの枝
蜑老いぬ根つき海鼠を突きながら 元
蜑老いぬ話相手の耕馬また 橋本榮治 麦生
蜻蛉の眼みづいろ沼の神老いたり 大峯あきら
蝙蝠に老いて深目の菩薩蛮 加藤秋邨
螢とび夫婦おろかに老いしかな 久保田万太郎 流寓抄以後
螢の夜老い放題に老いんとす 飯島晴子
螢火に亡きは老いずよ戦火杳し 文挟夫佐恵 雨 月
螢火や故旧も老いし草の村 伊藤白潮
蟇老いてみどりにしたがへり 長谷川双魚
蟇老いて死欲の空揃いけり 永田耕衣
蟇老いぬ落葉松落葉被て睡り 堀口星眠 営巣期
蟾蜍老いぬ肩肘張つて草臥れて 田仲了司
蟷螂の老いたる翅のたたみきれず 加倉井秋を 午後の窓
蟷螂の老いて片手を失へる 山崎ひさを
蟷螂も老いておどおどして居れり 相生垣瓜人 負暄
蟷螂も老いぬ快斧も錆びにけり 相生垣瓜人 明治草
賤が家に飼はれて老いし金魚かな 原石鼎 花影
跪坐の黙いつまで サルタンモスクに老い 伊丹公子 ドリアンの棘
跫音の老いしとおもふ夜番かな 西島麦南 人音
蹠より老いのくびれ身蓮根掘り 古沢太穂 捲かるる鴎
躓くや老いも裾濃の夕霞 橋閒石 和栲
鐵斎の老い黒き瀧赤き瀧 竹中宏 句集未収録
閻王につかへ老いゆくお蝋番 財川石水
頸すでに老いて金魚をのぞきこむ 桂信子 花寂び 以後
颯爽と老いむと願ひ青き踏む 富岡夜詩彦
颱風の夜も夫熟睡夫老いず 及川貞 夕焼
鮑海女若し天草海女老いて 石田勝彦 秋興以後
鯰得て身軽に老いし沼漁師 中村翠湖
鰊群来松前やん衆老いにけり 駒木秋影子
鰊凪よと今は職なき老いし蜑 河府雪於
鶯の会は過ぎけり老いにけり 老鶯 正岡子規
鶯の藤咲く山に老いにける 老鶯 正岡子規
鶯の老いたるが多き山路哉 正岡子規 老鶯
鶯の老いたるを尋ね三河島 老鶯 正岡子規
鶯の老いの艶音を如何に聴く 中村苑子
鶯は家のまはりに老いにけり 廣江八重櫻
鶯まだ老いず蛙と鳴き競ひ 林翔
鶯や欝金の陰に老い初る 老鶯 正岡子規
鶯や竹の子藪に老いを鳴く 芭蕉「炭俵」
鶯や尼と老いゆく寺男 勝又一透
鶯や老いては声もつくろはず 蝶夢「草根発句集」
鶯や老いて深山の石に鳴く 老鶯 正岡子規
鶯や鴉は老いぬものなりけり 正岡子規 老鶯

# by 575fudemakase | 2019-05-12 11:00 | 無季

老い 1

老い 1

「日暮し」とやつと解ければわが老いの元年とせむ蜩のこゑ 西村尚
アイヌ老い写真のモデル夏の山 山口青邨
あかゞりや傾城老いて上根岸 皸 正岡子規
あなたは勝つものとおもつてゐましたかと老いたる妻のさびしげにいふ 土岐善麿
アナベラが好きなまま老い 桜草 伊丹三樹彦
アメリカに老いて悔なき雑煮餅 小田華泉
あらたまの火を呑んで鮟鱇老いせぬや 中勘助
あら壁やこほろぎ老いて懸烟草 正岡子規 懸煙草こほろぎ<虫+車>
ある日彼どつと老い増す冬帽子 黒田杏子
ある夜ひとりともして夏も老いし灯よ 安住敦
あをねとは青き嶺の夏老いにけり 久保田万太郎 流寓抄
いたずらに老いてしまひし獺祭忌 富田直治
いたづらに梅老いけりな藪の中 梅 正岡子規
いちにちを老いし灯を消す夜のちちろ 新明紫明
いち早く筍その友も老いたりな 楠本憲吉 方壺集
いつか老い祭提灯吊らんとす 田中朗々
いつしかに白虎となりて老いにけり 高屋窓秋
いつしかに老いづきし妻よ草紅葉 日野草城
いつまでも老いぬあはれや切山椒 石田波郷
いつも忌に横顔の子規老いし子規 山口誓子
いつよりかわれを娘と思いいる老いの爪きる梅雨の日暮れは 水谷きく子
いつ使ふ消火器と斧船老いたり 三橋敏雄
いまは老い蟇は祠をあとにせり 三橋鷹女
いよよ老いいよよ眩しき花となる 相生垣瓜人 負暄
うからやから老いては泣けり夜の秋 岸田稚魚
うぐひすの老いの高音に谷昏れず 上田五千石『風景』補遺
うぐひすや苔滑かに舌老いたり 会津八一
うぐひすや老いしが多き開拓者 水原秋櫻子 殉教
うすものになまめきて僧老いたまふ 上野さち子
うたよみて老いざる悲願霜の天 飯田蛇笏 雪峡
うち傾ぎ磯馴椿は老いにけり 阿波野青畝
うつくしく老い寒竹の子を愛づる 山口青邨
うつし世の老いし柳に心とめ
オーバーや老いては子とも肩並めて 安住敦
おきまつり紫衣の楽士の頬の老い 荒牧澄子
おない年めをと相老い福沸 牛尾泥中
おのづから老いて足らへり福寿草 日野草城
オラシヨ誦し律儀に老いて夏羽織 小原菁々子
お互ひに医師として老い旅紅葉 嶋田一歩
お蚕守りて秋を老いゆく父と母 太田鴻村 穂国
お針子として年老いて水中花 藤田湘子 神楽
かかる間も人は老いゆく鳥曇 武藤和子
ががんぼのゐるしたしさよ老いたれば 森澄雄
ががんぼの壁打つ時も老いゆくか 辻美奈子
ががんぼや老いて臥所も書屋裡に 皆吉爽雨
かきつばた老いて惚るるは晴るるなり 橋閒石
かきつばた老いて晴るるは晴るるなり 橋閒石 卯
かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭 寺山修司
かく老いて北へ朝だち合歓の花 佐藤鬼房
かさぶたの戦後老いたる櫓のきしり 佐藤鬼房
かたつむり老いて睡りを大切に 長谷川双魚 風形
かへりみて妻の老い言ふ夜の秋 上田五千石『天路』補遺
かまつかや老いの遊びの太極拳 今村博子
かりがねの里親として老いゆかな 黒田杏子 花下草上
きらめく鬣 だがもう 襤で獅子老いた 伊丹三樹彦
くすし老い潔癖にして狭量なり 藤木清子
グラジオラス老い継ぐことの繊細に 阿保恭子
クローバーにしづしづ癒えて老いてゆく 阿部みどり女
クロ老いて人に似て来ぬ秋の暮 藤岡筑邨
けぶるごと老いていつまで落葉焚 鷲谷七菜子 花寂び
けむり茸けむり出さねば老いきれず 斎藤梅子
けむるごと老いて草屋の雛守る 本多令佳
こいさんのまま老いたまふ浴衣かな 三村純也
こうして老いたと指呼 鵜来島 檳榔島 伊丹三樹彦
こころざし半ばに老いて夕端居 元木椎圭(航標)
こざけ汲む杓子も友も老いせぬや 中勘助
こち吹くな老いは冷たし野蒜つみ 中勘助
ことごとくきららとなりて紙虫老いず 上田五千石『琥珀』補遺
ことごとく老いて鯨の煮ゆる昼 攝津幸彦
ことしも元日ここにいる老いた風船売から買う 荻原井泉水
この椅子にぬくみ与へて老いにける 篠原鳳作
この椅子にぬくみ與へて老いにける 篠原鳳作
この家を離れず老いぬ茗荷の子 光信春草
この雛とわれといづれが老いたるか 下村 梅子
この島に素直に老いて二日灸 米倉沙羅女
この里に老いて悔なき生姜酒 加藤あき江
こほろぎの老いし一つは神の琴 石塚友二 光塵
こほろぎの老いては姿見せず鳴く 池田秀水
こほろぎや雨ばかりなる秋に老い 林原耒井 蜩
こほろぎや厨に老いてゆくばかり 有馬籌子
ゴマを摩る手配り手捌きまだ老いず 百崎左人
これしきの風邪に倒るゝ老いしかな 八島半仙
こんなふうにひと老いゆくか蘭の花 西山逢美
さうぶ湯に老いたる獅子に似て沈む 伊藤白潮
さなぶりや須佐之男ここに老い給ふ 角川春樹 夢殿
さぼてんの名の老いらくの恋といふ 富安風生
ジキル博士もハイド氏も老い日向ぼこ 吉田汀史
しづけさに土老いてゆく花茗荷 能村登四郎
しんしんと肉の老いゆく稲光 斎藤玄 狩眼
すこしづつ老いざま見せて白絣 能村登四郎
すこやかに姉妹は老いて針供養 飴山實 句集外
すさまじきことの限りに身の老いも 能村登四郎
すずかけの花咲く母校師も老いて 河野南畦
すず虫や老いゆくなげきつばらなる 中村草田男
すでに未来を老いて近江に立つ杉よ 横山康夫
すべてを呑みこんでのどぼとけめでたく老いた 最首光三
セーターの赤が似合ひて老いにけり 大久保橙青
せきれいやここまで流れ水老いぬ 佐藤海史
セメントを詰められ桜老いにけり 阿波野青畝
セルを着て不肖なる子も老いむとす 百合山羽公 故園
セル軽く俳諧われを老いしめし 三橋鷹女
セル着るや老いたる母の前にたち 百合山羽公 故園
ゼロの無の机上に老いたどぶ鼠 佐藤鬼房
ソーダ水巴里に老いたる女かな 有馬朗人 非稀
その後の老い 共に梅雨傘傾げて 遇い 伊丹三樹彦
その中白き老いたる鯉ひとり巌に倚る 荻原井泉水
それぞれに老いて集へり寒の葬 山口超心鬼
それなりに蚊屋もはづさで老いにけり 川原一瓢
それほどに老いざる蘆の刈られけり 能村登四郎
ぞろぞろと来て皆老いぬ石蕗の花 金箱戈止夫
だいがさをかたげて老いし雛かな 久保田万太郎 草の丈
たしかなる老いを振切り露万朶 林翔
たすからぬ病と知りしひと夜経てわれよりも妻十年老いたり 上田三四二
たそがれに咲ける蜜柑の花一つ老いの眼にも見ゆ星の如くに 谷崎潤一郎
たはやすく老い母冬に入りゆけり 岸田稚魚 『雪涅槃』
たぷりたぷり潮容れて突堤老いゆくか 赤城さかえ
たやすく肩抱かす 着ぶくれて 老いて 伊丹三樹彦
たわいなく老いてつるりと衣被 北見さとる
たわむれに老い行く如し冬の海 永田耕衣 葱室
タンポポを踏み病院へ老いに行く 遠山陽子
チューリップ或る日或る刻老い易く 三橋鷹女
つくづくと偕に老いたり掘り炬燵 藤崎 実
つくづく見て老いの手と知る夕端居 高澤良一 暮津
つのる梅雨父母の老いざることのみを 野澤節子 未明音
つひに老い野蒜の門をあけておく 飯島晴子
てのひらに繭美しく老いたしや 古舘曹人 砂の音
てのひらのぶ厚く老いて走り蕎麦 蛯名晶子
とまり木に老いける鷲や青嵐 水原秋桜子
とまれ戦友 老いさぐる眼つきは するな 伊丹三樹彦
とめどなき涼風に松老いにけり 大峯あきら 宇宙塵
ともどもに老いて歩める秋の浜 飯田龍太
ともに老いかの薔薇乙女寝息たつ 佐藤鬼房
ともに老いともに健やか棕梠の花 森澄雄
ともに老い一師一生石蕗の花 近藤一鴻
ともに老い小車の花あれば足る 佐藤鬼房
とりどりの菜飯を散らし母老いぬ 石 寒太
どんたくの仮面はづせし人の老い 橋本多佳子
なかなかに女は老いず更衣 池上不二子
にはとりも妻も老いたり麦こがし 中島畦雨「山の子」
にんげんに老いる贅沢冷奴 丘はるか
ぬく~と老いてねむれる田螺かな 原石鼎
ねもごろに叩き牛蒡や老いの為 東亭
のうぜんの花も老いたる帰省かな 青柳志解樹
ノブエちう老いたる春の麒麟かな 辻桃子 ねむ 以後
はったいに忍び寄らるる老い心 相生垣瓜人 負暄
はつたい粉老いに置き去り喰らひけり 後藤綾子
はな水や看護婦老いて耳うとき 河東碧梧桐
はまゆふにかくるるほどに妻老いぬ 山口青邨
はらからの老いはわが老い柏餅 渡辺 立男
はららごを鯤とや言へり陽は老いず 佐藤鬼房
はるしやぎく母は沖澄む日も老いて 神尾久美子 掌
はんかちや母におくれて老いつつあり 池田澄子 たましいの話
ひからびて煤けてな老いそ骨正月 見市六冬
ひたに老い薄氷の芦摘んで居る 佐藤鬼房
ひッきやうは老いの気弱の小春かな 久保田万太郎 流寓抄
ひとり身は老いも恋めく白絣 能村登四郎
ひとり冷や酒野獣老いたかヤイ 隈 治人
ひと浦の梅ことごとく老いにけり 石田勝彦 秋興以後
ひなげしの中にて老いしこゑの出づ 岸田稚魚
ふぐ老いてわらつてゐしが釣られけり 筑網臥年
ふたもとの松も老いけり初日影 遠藤 はつ
ふっ切らむ老いのしょぼくれ森林浴 高澤良一 石鏡
ふところ手かく深くして老いゆくか 能村登四郎
ふと甘き汗の香が立ち老い難し 赤城さかえ句集
ふりかぶる花の千筋に栗老いぬ 金久美智子
ふるさとの人は老いがち胡瓜もみ 鈴木真砂女 夏帯
ふるさとは山鳩が啼く夢も老いて 三橋鷹女
ふる里に残りて老いて冬菜漬く 河野 伊早
ペット飼ふべく老いたるは蟇でも飼へ 安住敦
ペリカンのいたく老いにし羽づくろひ 星野立子
ぼうたんやわれの老いたるあからさま 森澄雄
ぼうぼうと秋鯖燃やし老いてをり 矢野さとし
ほうほうと風呂吹召され老いたまふ 林紫楊桐
ぼうぼうと老いの童謡しゃぼん玉 八木三日女 赤い地図
ポケットに胡桃少年老いやすき 石田阿畏子
ポケツトに胡桃少年老いやすき 石田阿畏子
ポスターの彼を老いしむ街薄暑 殿村 莵絲子
ほたる火や出奔の計老いたれば 黒田杏子 花下草上
ほどほどに老いて紅葉の山歩き 能村登四郎
ぼんやり老い青葉とお腹帯の寺 諸角せつ子
まだ老いず冬の光りを貪りおり 金子兜太
まばたきをする間も老いて未草 木村敏男
ままははも老いて行水したまへり 草間時彦 櫻山
マリア老いて近頃人からは見えぬ 池田澄子
まろやかに炭斗古りて母老いぬ 井口ひふみ
みづいろの蚊帳に別れて老いやすし 長谷川双魚
みづき実にいたくも老いぬこひづまは 三橋鷹女
みづはさす八十路の老いに梅しろき 久保田万太郎 流寓抄
みどりの日昭和一桁老いにけり 稲畑広太郎
みな老いて水の近江の花巡り 橋本榮治 逆旅
むさし野の欅と老いて年を守る 渡辺恭子
むつまじき老いの夫婦や桜餅 田中冬二 麦ほこり
めッきりと園主老いたる梅見かな 久保田万太郎 流寓抄
めつらしや蕣老いて花一つ 朝顔 正岡子規
ものの芽や老いてをんなの句会好き 黒田杏子 花下草上
もろ聲に老い鶯よ君を泣け 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
やすやすと木流しさばく老いの顔 市川昌子
やぶ入もせぬ迄老いぬ秋の風 正岡子規 秋風
やまべ宿馴染の媼も老いにけり 永田青嵐「永田青嵐句集」
やや老いての 胃の飢え清ら 敗戦日 伊丹三樹彦 樹冠
やらふべき心の鬼も老いにけり 清水基吉(1918-)
ゆふぐれはひとみな老いてあゝいそぐ 片山桃史
ゆふべ地にわれを迎ふる犬老いし 藤田初巳
ゆらゆらと老いてまぶしき芦の青 鷲谷七菜子 花寂び
リラの花人を愛して老いまじく 藤田厚子
りんどうの花圃あり牧夫老い住めり 及川貞 夕焼
レース編み呉れし少女も老いにけり 堀口星眠 営巣期
わがために武具を飾りぬ老いまじく 深見けん二 日月
わが眼もう老いず近くを蜂通る 藤田湘子 てんてん
わが身また一つの暦 二十世紀の末期の水を飲みて老いゆく 新井貞子
わが庭の春を見つけた老いの足 山下十多楼
わが鼻梁痩せたり蝉も声老いし 木村 風師
わが目には若若しかる老い桜 相生垣瓜人 負暄
わが老いの業はねむれずあけやすき 久保田万太郎 流寓抄
わが老いを瞑りて見る冷やかに 相馬遷子 山河
われも老い妻も老いけり桜餅 田中冬二 麦ほこり
われ老いぬ人も老いぬと明易き
ゐさらひも老いたるかなや初手水 小林草夫
をかしげに夫婦老いをり初日中 加藤知世子
亜麻色のわが髪老いぬ秋日差 上野さち子
哀楽のこゝろも老いぬ冬籠 河野静雲
悪しく老いたり早乙女の線偸む 田川飛旅子
鮎むしりをりほどほどの老いごころ 能村登四郎
鮎老いて水にさからふこともなし 菖蒲あや
或る日老いたり遠見の鱶に陽は遊び 折笠美秋
闇老いて葱浮々と洗われけり 永田耕衣
威銃老い細る身に火薬の香 大井雅人 龍岡村
尉鶲ほのかな老いを置いてゆく 山田みづえ まるめろ
異人館通りに老いて菊作り 山田弘子 懐
衣更へて去年より老いぬ筈はなし 鈴木真砂女 夕螢
衣更へて命涼しく老いにけり 前田 白露
衣更老いまでの日の永きかな 橋本多佳子
衣被母がよく食べよく老いぬ 白川京子
一せいに反る海苔の音老いの耳 古沢太穂 捲かるる鴎
一つ松老いし讃岐の青田かな 大峯あきら 宇宙塵
一羽のさびしい鶏よりも旗振りは老いて 細谷源二
一塊の雪を抱きて老いゆく樹 原コウ子
一竿の老いの物干す彼岸明け つや女
一管の笛取つて老いず盆踊 山口青邨
一間のみ掃きて老い住みおけら鳴く 河野頼人
一芸に老い詩酒に生き更衣 高木青巾
一月は鐘を鳴らせよ老いたれば 後藤綾子
一山に 嫁いで 老いて 紫陽花守 伊丹三樹彦
一生を島に老いたる日向ぼこ 上野泰 春潮
一生吾に離れじと必死の妻の目は老いず 橋本夢道 無類の妻
一度負けてそれから老いし角力かな 野村喜舟 小石川
一日に遊女の老いる若葉哉 正岡子規 若葉
一日を花に遊びて老いゆくや 深見けん二
一番茶含み老いゆく微動あり 殿村菟絲子 『菟絲』
一本で足る瓜揉みや老いふたり 小坂部佳代
稲の花おののきごころ老いてもや 能村登四郎
稲の花ちちははの老いち時に 長谷川櫂 古志
稲刈るや老いし夫と繩帯びて 百合山羽公 寒雁
稲妻に老いの手足の向くところ 廣瀬直人
茨老いすすき痩せ萩おぼつかな 蕪村
茨老いすゝき痩せ萩おぼつかな 与謝蕪村
芋汁のみちのくぶりや友も老い 山口青邨
鰯雲老いを知らざる天の艶 林翔 和紙
右の耳無くて老いたり猟の犬 小泉静石
烏渡り月渡る谷人老いたり 金子兜太
烏柄杓ばかり殖やして老いゆくか 平田冨貴「青き馬」
烏柄杓千本束にして老いむ 飯島晴子
雨に声して鶯の老いみせず 上田五千石『風景』補遺
雨蕭々建蘭の花老いて黒し 蘭 正岡子規
雨蕭々蘭の花老いて黒し 蘭 正岡子規
卯の花の老いて久しき空のいろ 飯島晴子
卯月波父の老いざま見ておくぞ 藤田湘子(1926-)
卯月浪父の老いざま見ておくぞ 藤田湘子
鵜とともに老いて鵜匠の立ちどほし 鷹羽狩行
鵜は老いて人間の目のごとく見る 加藤秋邨
鵜飼舟はなやぎ杳と人老いぬ 玉川 杏
鵜匠とし物思ひもなく老い枯れし 松本たかし
唄ふ唇が/夜空に/老いて/老いゆく世紀 林 桂
浦上忌若き語り部老いにけり 林翔
瓜食めば老いしこの身ぞ思ほゆる 相生垣瓜人
瓜食めば老いし此の身ぞ思ほゆる 相生垣瓜人 明治草
雲渉り老いの匂いの菊畑 寺井谷子
影と光の女性(にょしやう)老いざれ昼顔よ 佐藤鬼房
影と来て老いし揚羽に異ならず 三橋鷹女
英霊らにちゝはゝよみな老いませる 日野草城
駅前緑地老いて孤独の朝から坐す 伊丹三樹彦
園丁は老いゆくばかり種を採る 松林 慧
炎天に妻言へり女老い易きを 中村草田男
炎天も老いもがらんとしてをりぬ 滝青佳
炎天を行く昨日よりやや老いて 木村敏男
炎天を来てぐらぐらと老いにけり 澤村昭代
炎天下けむりのように老いたる漁夫 穴井太 穴井太集
猿とたわむる猿年われの老いて楽しく 荻原井泉水
猿茸育て荒樫老いにけり 土屋秀穂
猿老いて枯芙蓉ともならんかな 依光陽子
遠くより老い母見ゆる苗障子 徳井節子
遠く見て春日の中に母老いし 相馬遷子 山国
遠蛙息うすれて老いゆく母 上田五千石『田園』補遺
遠雪崩正座が老いのかたちなり 鈴木渓子
遠足の子にどつしりと馬老いて 曽根原幾子
遠野火や老いて子を恋ふ妻あはれ 伊澤秋家
鴛鴦を見てゐて老いのゆるやかに 北崎珍漢
横顔の母老い給ふ彼岸かな 相馬遷子 山国
襖絵の孔雀は老いて秋陽欲る 横山白虹
鴬の老いの艶音を如何に聴く 中村苑子
鴬の老いゆく里の新茶かな 大谷句佛 我は我
黄を噴きて老い重ぬるや石蕗の花 中村苑子
黄経一八〇度向日葵老いたるかな 荻原井泉水
黄落や女の老いは病むに似て 岡本眸
黄落や馬老いぬれば遊ぶなり 福島壷春
億劫となり老いらくの草むしり 國吉ヤス
桶に鼻入れ泪目に馬老いゆく冬 能村登四郎
牡丹に老いの手曳きの憩ひがて 伊丹三樹彦
牡丹見てゐる間も人は老いゆくか 安住敦
牡丹老いては木洩日をさへ眩しめる 安住敦
俺が老いるとは嘘のようだが老いている 田中陽
温め酒肩を落せば老いにけり 草間時彦 櫻山
温石がころがり出でし父の老い 今瀬剛一
温容の老いていよ~花芙蓉 河野静雲
音は老いずよ老鐘のへこみざま 橋本夢道 無類の妻
音もなくいのちの老いて日傘かな 藤田あけ烏
音無しに老いし鬼怒川寒造 平畑静塔
下駄箱に下駄は老いつつ桐咲けり 桑原三郎「不断」
何の木か忘れて老い木花咲ける 大串章 百鳥 以後
何業をして老いしかと 塔婆の眼 伊丹三樹彦 写俳集
佳き相に母老いにけり小豆粥 西嶋あさ子
加留多歌老いて肯ふ悪あまた 殿村菟絲子 『晩緑』
加留多歌老いて肯ふ恋あまた 殿村 莵絲子
夏ぐみや息やはらかに牛老いし 黒杉多佳史
夏の寺老いたる孔雀飼ひてあり 飯島晴子
夏は老いた かさりかさりと黍の村 伊丹公子
夏雲生む末の松山松老いて 成瀬桜桃子
夏果ての男は乳首のみ老いず 能村登四郎 寒九
夏山の地図古り母も老いたまふ 石橋辰之助 山暦
夏山の地圖古り母も老いたまふ 石橋辰之助
夏至の湯にただよふ赤眼老いた漁夫 伊丹三樹彦
夏手套指より老いて勤め長し 岡本眸
夏川のほとりの土となるも近し(われ老いぬ) 廣江八重櫻
夏足袋や働く者に老いはなし 鈴木真砂女 夏帯
夏足袋を汚さず戻り来て老いる 寺井谷子
夏葱きざむなんという妻の老いた音 斎藤白砂
夏服や老います母に兄不幸 杉田久女
夏木仰げば花をこぼして老いにけり 渡邊水巴 白日
夏炉守り嫁の座守りて老い給ふ 高木晴子 花 季
夏老いし雲の夜めにもしろきかな 久保田万太郎 流寓抄
夏老いし草のそよぎとなりにけり 安住敦
夏老いし蝶の木の間をわたりけり 久保田万太郎 流寓抄以後
夏老いし夕映うつる鏡かな 久保田万太郎 流寓抄
夏老いぬバスのあげゆく砂ほこり 久保田万太郎 流寓抄
夏老いぬ三菱倉庫月を背に 久保田万太郎 流寓抄
夏老いぬ線香つくりは香に染みて 太田鴻村 穂国
嫁ぐ娘に老いたる母の夜なべかな 中田隆子
嫁した 老いた 涙は島の西風で涸れた 伊丹三樹彦
嫁姑どちらも老いて夏大根 松浦都也
家々やさつき照りつつ人老いぬ 永島靖子
寡婦として老い芥焼く十二月 佐藤鬼房
歌かるた老いても母は読上手 白澤よし子
歌留多の絵小町は老いずありにけり 後藤夜半 底紅
歌留多の灯一途に老いし母のため みづえ
歌留多歌老いて肯ふ恋あまた 殿村菟絲子
河岸に佇ち忽ち老いし薄暑かな 稲本池雪
河豚鍋や嘘美しく老いし膝 小林康治 『叢林』
火の山の地貌老いつつ馬酔木咲く 岡田日郎
火の山の老いし鼓動に浮巣光る 佐怒賀正美
火口原に老いて駄菓子を食ひこぼす 橋閒石 無刻
火祭の火を守り路地に老いにけり 柏木去孔
火山老いにけり無尽の露の玉 中村雅樹
火燵ふとんの華やかさありて母老い給ふ 中塚一碧樓
花しどみ老いしにあらず曇るなり 橋本多佳子
花の下ペリカンに老いつのりたる 宇多喜代子 象
花はさかりに、はなれて老いし柳なり 荻原井泉水
花はさくら木身は老いらくの恋男 上田五千石 天路
花を見ぬ母よ花ふところに老い 小檜山繁子
花を見る少し老いたる心もて 深見けん二 日月
花一朶~人皆老いし 高野素十
花火見の彼の幇間も老いしかな 松本たかし「松本たかし句集」
花火見る母も老いたり我も老い 清崎敏郎
花魁草剪れば即老いにけり 原月舟
花稀れに老いて木高きつつじかな 太祇
花合歓と眠りあはすや老いそめて 能村登四郎
花咲くと老いたる椎が総毛立つ 相生垣瓜人 微茫集
花守として高遠に老いにけり 花岡明美
花守は桜とともに老いにけり 長谷川櫂 蓬莱
花吹雪く窓をそがひに司書老いたり 竹下しづの女 [はやて]
花生姜透けゆく如し母老いぬ 吉田正
花桃の満ちし真中に老いゆくや 小島千架子
花八つ手ペリカン老いて仄赫き 渡邊水巴 富士
花八つ手生き残りしはみな老いて 草間時彦
花満ちて岩神木神老いにけり 大峯あきら 宇宙塵
花野ゆき行きて老いにしわらべかな 森澄雄
花浴びて母茫々と老いにけり 石嶌岳
花梨樹(かりんじゅ)老いたり背ぐくまるもの母のみならず 金子兜太
花冷えや老いても着たき紺絣 能村登四郎
花冷えや老いても着なき紺絣 能村登四郎
花老いてやるせなければ枝垂れけり 山田みづえ 手甲
花老いの紅あはあはと片枝垂れ 吉野義子
花篝他郷に老いて踊りけり 南一雄
花茣蓙に痩身老いて恙なし 吉澤卯一
茄子を焼く老いること今許されず 柏岡恵子
茄子汁やいつとはなしに夫婦老い 勝又一透
茄子畑老いし従兄とうづくまり 西東三鬼
霞老い川の下つてゆけるかな 松澤昭 面白
蚊さされに草汁つけて老いんとす(奈良、右城暮石氏居) 細見綾子
蚊遣して婆云ふ「うまく老いなされ」 秋元不死男
蚊遣火や熊野に老いてうつくしく 平井 梢
我とともに老いたる牛や麦の秋 久品太
我に日浅く師は老いたまふ年もゆく 京極杞陽 くくたち上巻
我ら又老いし夫婦や滝見台 深見けん二 日月
我君と共に老いたり梅も亦
我知らじ老いたるをこそ姥桜 正岡子規 姥桜
我老いて柿の葉鮓の物語 阿波野青畝
我老いて老柳汝にしかめやも
我老いぬ春の湯たんぽ維摩経 正岡子規 春
芽からまつ年老いてみな白樺派 宮坂静生 雹
会ふことも老いたることも菊の前 遠藤梧逸
懐手して身の老いに抗しけり 石原八束
海に埋れ老い止まんとす春の蝶 永田耕衣
海よりも老いたる露よ猪よ 永田耕衣
海峡の老い寒潮に迅さ与ヘ 鷹羽狩行
海山の神々老いぬ蒲の絮 田中裕明
海士老いて仏頂面も陽炎へり 加藤秋邨
海士老いぬ酒焼の胸日焼の背 福永耕二
海女として老いゆく人の乳房かな 成瀬正とし 星月夜
海女の果てか岬に老いて蜜柑売るは 稲垣きくの 黄 瀬
海女老いし流れ天草ひろうては 山本呆斎(童子)
海女老いて今日胡麻刈らん日和かな 飴山實 句集外
海女老いて乳房かくさず雁供養 井沢正江
海照りて老いを敬ふ日なりけり 高山れおな
海人老いてゆふべを秋と思ひけり 山口誓子
海人老いて盆灯籠に灯を点す 芦田一枝
海鼠噛む終始寡黙の父老いて 立石勢津子
海老に寝る癖なほ老いて蒲団かな 小澤碧童 碧童句集
灰均して老いたと指櫛 炉明りの 伊丹三樹彦
皆老いて雛の客とも思はれず 高木晴子
皆老いぬアロハシャツなど着てをれど 亭午 星野麥丘人
蟹を喰ふことも賢く老いにけり 松山足羽
貝の洋書読む外套に品よく老い 田川飛旅子
貝割菜ひしめき吾等老いんとす 山口青邨
貝割菜育て老い行く八瀬童子 高木青二郎
貝剥女母より老いぬ地に咳きて 伊東宏晃
外套の前下るなり老い給ふ 殿村菟絲子
外套の老いたる父にふと遅れ 三谷昭
咳神の老いの跼みや*たら芽吹く 能村登四郎
崖畑に老いてすがりて蒟蒻掘る 加藤知世子 花寂び
崖老いず冬滴りの数かかげ 上田五千石『天路』補遺
蓋人のままで老いたり螢売 水町文雄
垣を成す桑の木老いて実の多き 正岡子規 桑の実
柿若葉老い給ふとはいふまじく 中村汀女
角力老いてやどもつ京の月夜かな 大伴大江丸
顎老いてひとひらの杜若かな 永田耕衣 冷位
掛嫌ひ通して老いし師走妻 平野一鬼
梶の葉に老いては何を書くべきか 高橋霜陣
葛の花や子持湯というて老いた夫婦で 荻原井泉水
葛の花老いさらばふもそれなりに 飯島晴子
葛城の神々老いぬ啄木鳥 大峯あきら 鳥道
葛水やまま母まま子老いにけり 草間時彦 櫻山
葛切や齢涼しく父は老い 橋本榮治 麦生
葛餅や老いたる母の機嫌よく 小杉余子
樺いろの木の芽オンリー老いそむ家 古沢太穂 捲かるる鴎
噛みタバコの唾吐いて波止場で老いゆく 下山英太郎
鴨足草父ことごとく老いにけり 八木林之介 青霞集
刈る麦のすこしつめたし老いしかば 永田耕衣
刈株に螽老い行く日數かな 蝗 正岡子規
寒牡丹声掛け合ひて老いにけり 須田光香
寒牡丹齢老いたるは地を這へる 安住敦
寒寒と鐘を撞くなり国老いぬ 和田悟朗 法隆寺伝承
寒菊や耳をゆたかに老い給へ 越高飛騨男
寒菊や昔女は老いにける 正岡子規 寒菊
寒灸の肩を互に老いゆくか 舞原余史
寒禽の山を歩いて老いゆくも 市場基巳
寒紅や老いさまざまに三姉妹 三好昭美
寒取や手取と言はれ言はれ老い 大場白水郎
寒取や手取りといはれ~老い 白水郎句集 大場白水郎
寒露かな伯寂も又老いけらし 能村登四郎
干栗のかたはらに人老いゆける 山口青邨
幹老いて満開の花支へをり 伊東宏晃
艦砲や飛燕に老いし燕なし 鷹羽狩行
観音の眼前椿落ちて老い 佐野美智
巌まろく老い春潮を乗せあそぶ 岸風三樓
巌老いて滝の鋭き紅葉かな 東洋城千句
眼鏡かけて老いたる姉に行く年や 寺田寅彦
眼中の人老いにけり桃青忌 松瀬青々
岩牡蠣を打つ手力のまだ老いず 稲生 正子
雁なきてひとりの母を老いしむや 桂信子 黄 炎
雁やわがはらからもみな老いし 森澄雄
雁帰る野鍛冶老いても大男 百合山羽公 寒雁
雁渡老いて筆絶つ人のこと 藤田湘子 てんてん
顔見せや老い椀久が花衣 松瀬青々
顔老いし鞍馬の鳶や竹の秋 大峯あきら
基地に老い日焼酒焼胸くぼむ 能村登四郎
寄居虫鳴くゆふべ少年老いにけり 大石悦子 百花
寄植の春の七草老いにけり 大場白水郎 散木集
寄鍋に熱き唇付け老いず 津澤薫楠
旗振り老いて一生黙り通す気か 細谷源二
機械街鍛冶工軒をならべ老い 細谷源二 鐵
機織るのみに老いし右の手左の手夕べは爐火にかざす 安斎櫻[カイ]子
帰る漁夫おろかに酔ひて老いにけり 石原舟月
汽罐夫の老いて子なきに汽罐祭 細谷源二 鐵
祈祷師の爪の老いざま夏終る 三谷昭 獣身
記すこと老いて少き初日記 中 火臣
記念樹も老いて緑蔭つくりけり 大島民郎
起し絵や老いし妾の子煩悩 日野草城
鬼やんまガキ大将のまま老いぬ 有永せつこ
鬼女の手は老いし男手壬生狂言 右城暮石 句集外 昭和四十六年
鬼灯の花や赤子に老いきざし 宮坂静生
鬼灯や溶接工をして老いぬ 藤田あけ美
鬼老いて人へよろける里神楽 橋本一峰
亀鳴くといふ貌をして母老いぬ 小檜山繁子
亀鳴くと言ひふらしつつ老いにけり 亀田虎童子
亀鳴くや人老いて去り富みて去り 鷹羽狩行
亀鳴くを待つまでの顔老いにけり 能村登四郎
亀鳴くを老いて愈疑はず 相生垣瓜人 負暄
亀鳴けり恋に恋して老いぬれば 山司英子
義士の日や本所に老いて吉良贔屓 大島民郎
蟻老いて露ぬるるまで残りけり 能村登四郎
菊のへの蜘蛛に月おく夏老いぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
菊の花八百屋の店に老いにける 正岡子規 菊
菊愛すこころ貧しきままに老い 新明紫明
菊月夜風の音にも母老いゆく 古賀まり子
菊咲けりふるさと人は老いてやさし 福田蓼汀 山火
菊作り仕へ老いたる僕かな 小原菁々子
菊枕かくて老いゆく人の幸 高浜年尾
桔梗を咲かしむるまで溶岩老いぬ 富安風生
桔梗群れ風の女を老いさすよ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
橘に鶯老いぬ初瀬の里 正岡子規 老鶯
客女将ともに老いけり釣忍 今村 薫
久の友梅雨の洋傘つく手の老いぬ 中島斌男
宮大工老いては蘭を愛しけり 野村喜舟
泣きたいような清流 父母が年老いていく 川村朗生
去年よりも老いて祭の中通る 能村登四郎
去年今年ニーチエを読んで老い知らず 野崎ゆり香
去年今年ニ-チェを読んで老い知らず 野崎ゆり香
巨大タンクの蔭からあらわれ一日老い 鈴木六林男
虚子忌来る母老い給ふこと悲し 高木晴子
漁夫老いてあかがねのこゑ花蘇鉄 中拓夫
漁婦老いて昆布曳くにも脛を見す 細谷源二
魚下げて老いの跣足のいさぎよし 松崎鉄之介
魚追ふ足の細さよ老いの網 中勘助
共に老いる蝋梅も水位より低く 橋閒石 風景
共に老いる臘梅も水位より低く 橋閒石
共に老い恩愛深き夏炉焚く 城取信平(みすゞ)
峡で老いた と 漬梅色の重石ら干す 伊丹三樹彦
峡の田や老いのしづけさ植ゑすすむ 上田五千石『森林』補遺
峡ふかし代掻く馬も人も老い 松田 多朗
胸厚いまま 海女老いて 魚反る町 伊丹公子
胸冷えてほとほと老いき昼寝覚 大野林火 月魄集 昭和五十六年
蕎麦刈つて三戸の邑に老いにけり 白井新一
鏡開く日の姿見に老いにけり 阿部みどり女
仰ぐたび人は老いゆく寒桜 木村日出夫
業平の老いらくの地の桜の実 田中英子
業平忌老いの声音のさはやかに 久保田万太郎
玉子酒つくる老い母だけの智慧 滝 春一
玉虫をこぼす欅や母老いぬ 堀口星眠 営巣期
桐の花うす化粧して老いんかな 原コウ子
桐の花下を走るに老いつつあり永田耕衣
桐の花老いなば浄くあり得なむ 篠田悌二郎
桐老いて琴にもならず花咲きぬ 正岡子規 桐の花
錦木の老いてすくなき紅葉かな 後藤夜半 底紅
筋肉の無駄なく 三輪車と老いる 伊丹三樹彦
筋肉の無駄なく三輪車と老いる 伊丹三樹彦
芹の花ひとり咳きひとり老い 諸角せつ子
衿巻や老いては派手の好もしき 石塚友二 磊[カイ]集
襟巻に老いて澄む目やかなしきまで 加藤楸邨
近つ淡海の秋よ老い易く老い難く 沼尻巳津子
近江びと老いてうららに山車自慢 大島民郎
金色の緑蔭の老いまさる在り 永田耕衣
金唯々と賜ふは老いしか春暖炉 風間ゆき
吟行のわれら老いたり枇杷の花 高澤良一 さざなみやつこ
銀座ママ老いも若きも更衣 鈴木真砂女 紫木蓮
銀屏の銀の老い行くめでたさよ 池上浩山人
駈け足で老いへころがるどんぐりこ 山本白雲
空蝉をあつめじつくり老いゆくと 飯島晴子
空瓶と老いし盲の冬日向 中村草田男
隅田に老い昼の酒場のパセリ皿 古田海
串柿や老いてやまざる独語癖 上野可空
栗を焼き兵に老いちちははが睦ぶ 伊丹三樹彦
栗拾ふ天地に母の老い深し 原裕 青垣
栗飯や七男われも老い初めし 有働 亨
栗飯や老いてしみじみ母の愛 伊東宏晃
繰る数珠の老いには重き地蔵盆 縄本真里
桑は樹に老いばらばらと山の雨 森澄雄
薫風に一とまどろみをして老いし 高野素十
薫風や老いてもうたふ応援歌 下村ひろし 西陲集
軍艦が沈んだ海の 老いたる鴎 富澤赤黄男
軍艦が沈んだ海の老いたる鴎 富澤赤黄男
兄弟は病み父さんはいよよ老い二上山は晴れていますぞ 池田はるみ
啓蟄やふさぎの虫は老いもせで 原 柯城
敬老日男ばかりが老いにけり 山口和生
蛍の夜老い放題に老いんとす 飯島晴子
鶏に石投ぐる姿の母よ老いけり 村野四郎
鶏老い茄子黄ばみぬきく畠 黒柳召波 春泥句集
芸に老い芸に生きてしけふの菊 武原はん
迎へ火も送り火も焚かず老い 猿山木魂
穴出でし蛇と共濡れ老いけらし 武田伸一
月となり汝となる我な老いそ 永田耕衣
月も老い黒きばかりに曼珠沙華 百合山羽公 故園
月光に肩上げてゆく老いたくなし 小笠原和男
健かに母老い玉ふ初日かな 会津八一
健やかな老いのごとくに冬晴るる 小見山希覯子
健やかに老いて欠かさぬ二日灸 荻田小風
剣を鍬に替へ父老いぬ乃木祭 福田蓼汀
剣を鋤に替えへ父老いぬ乃木祭 福田蓼汀
剣を鋤に替へ父老いぬ乃木祭 福田蓼汀
懸巣飛び老いし伊昔紅踊るなり 水原秋櫻子 残鐘
犬老いて一日眠る栗の花 栗田やすし「遠方」
犬老いて散歩をきらふ冬の朝 萩原まさえ
犬老いて出づる五月の神の森 右城暮石 句集外 昭和二十四年
犬老いて涙を垂らし年惜む 阿波野青畝
犬老いて嚏落しぬ月の霜 日野草城
硯洗ふ意地に徹して老いにけり 鈴木真砂女 都鳥
肩口に老いの見えきし檻の鷲 藤崎久を
肩張つて軍鶏老いしかな鳥曇 小松崎爽青
見るほどに枝垂桜の老いて艶 深見けん二
軒下にどくだみ干して母老いぬ 田岡貞枝
遣羽子や官女老いたる緋の袴 正岡子規 遣羽根
鍵屋老い九月真紅の鍵作り 三橋鷹女
鍵鳴らし一途に老いぬ枯木中 古舘曹人 能登の蛙
元日の鎌倉の山老いにけり 長谷川浄泉
元日の老い心又夕心 相生垣瓜人 負暄
元日やいつから老いて老の座に 余子
原爆忌その語り部も老いにけり 松本雅子
古郷に老いて川音しぐれけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
古書店や老いつどうかに敗戦日 諸角せつ子
古雛の老いざるあはれ飾らるる 大熊輝一 土の香
古銭売って幾許の益 てのひら老い 伊丹三樹彦
古里の人々老いし燈籠かな 岡本松浜 白菊
古里や嫂老いて萵苣の台 高濱虚子
己れ山と思い老い行く猪のみぞ 永田耕衣
故郷すでに海市の中や母老いし 柴田佐知子
故郷に生涯老いて粥試し 植村よし子
故里の粟餅を焼き老いんとす 細見綾子 黄 炎
枯萱や刃傷沙汰の老いてなほ 奥田恵以子
枯山に老いたるものの唇苦し 佐藤鬼房
枯草や宿根少し老いながら 永田耕衣
枯畑に一念老いし目なりけり 加藤秋邨
枯蓮に立ち老いし者疲れし者 安住敦
湖老いて帰燕とどむるすべもなし 岡本眸
狐火の遅れしは子かはた老いか 木内彰志
狐火や老いて声よき子守唄 山本洋子
狐火を信じ少年老いにけり 平賀扶人
胡麻振る指 節高 いわし干して老いる 伊丹三樹彦
五欲まだ枯れず老いしよ遠砧 望月明
吾が死後も人等老いゆき冬山河 居邑雀羅草
吾につく十年患者老い涼しき 相馬遷子 雪嶺
吾も老いぬ汝も老いけり大根馬
吾も老いぬ娘のかしぎたる菌飯 星野立子
吾よりは老いざるならむ老桜 相生垣瓜人 負暄
吾を負ひし兄の背老いぬ落葉焚 岡本眸
吾子娶り良夜かすかに老い重り 能村登四郎 有為の山
吾亦紅老いて焦茶を着こなせる 後藤比奈夫
吾老いず蝶の角にて軽打され 山口誓子
後ろ手に冬日ちらりと友老いぬ 林翔
御慶のぶ互ひに老いしこと不言 小原うめ女
御殿場や並杉老いて蝉稀也 蝉 正岡子規
梧桐を彫つて少年老い易し 小島健 木の実
語り継ぐ白狼のことわれら老いて 金子兜太
乞ふ臘梅この家夫妻も老いてをり 及川貞
鯉も老いこの寺も古り幾秋ぞ 高浜年尾
鯉老いて雲中にあり雨安居 福島 勲
鯉老いて黒剥落す山ざくら 森澄雄 空艪
鯉老いて真中を行く秋の暮 藤田湘子
鯉幟立ててどの家も老いが住み 山海眞琴
公魚も諸子も不漁漁夫老いし 森田かずを
厚目貼母ひたすらに老いゆくか 橋本榮治 麦生
口あけて大工老いたり三尺寝 細谷源二 鐵
向日葵の老いきれざるを抜きにけり 肥田埜勝美
向日葵の老いたる花や倦みし花 相生垣瓜人 負暄
向日葵は実となり実となり陽は老いぬ 篠原鳳作
幸の鮎まことしやかに老いたるよ 阿波野青畝
更衣父の忌に会ひ皆老いき 田中英子
更衣老いまでの日の永きかな 橋本多佳子
校僕として老いし身に文化の日 永野清風
江戸つ子と言はれて老いぬ釣忍 河合由二「三つ茶の實」
江戸川のおえふも老いぬ土筆摘 藤田湘子 神楽
江戸前のつひに老いまで身すゞしく 及川貞 榧の實
港に/鱶は老い/遠き/海の大祭 高柳重信
港に鱶は老い遠き海の大祭 高柳重信
紅燈にもゆかず老いたり勇の忌 森澄雄
紅梅の老いたる故の花の艶 清崎敏郎
紅梅や二人連れとは老いること 荒井民子
紅梅を過ぐ華やぎは老いて後 大串章
紅葉せる老い桜をも別きて見し 相生垣瓜人 負暄
紅林や老いては幹の凭れあひ 鷹羽狩行
紅蜀葵老いぬのこりし青つぼみ 木津柳芽 白鷺抄
荒城は鶯老いぬ暮れがてに 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
荒星や老いたる象のやうな島 夏井いつき
行く春や女神は老いず二千年 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
行く年の我いまだ老いず書を讀ん 正岡子規 行く年
行水や盥も古りて身も老いて 小澤碧童 碧童句集
行年の我が老いにける髪かたち 武原 はん
高波に刺され町裏の老いし冬 松澤昭 神立
合歓の花観ているかぎりわれ老いず 杉山蘇翠
合歓の花母を知らずに老いにけり 山水まさ(浮野)
合歓の花夢をもたねば老い易し 福田蓼汀 秋風挽歌
合歓咲いてD5l老いぬ羽越線 加藤秋邨
合歓老いぬ父この海に吾を抱きし 大野林火 青水輪 昭和二十五年
合掌建古りぬ老いたる桑茂り 水原秋櫻子 蓬壺
黒猫老いぬ村はひとつに栗の花 金子皆子
黒穂ぬく老いをな吹きそ山の風 中勘助
骨還り深夜の如し夕桜(門前老いし八重桜盛りなり) 殿村菟絲子 『旅雁』
骨折りて鳴く鶯ぞ老いたりし 老鶯 正岡子規
此の雪、老いては雪に道作る力なし 荻原井泉水
今老いき龍の玉辺というべきとき 永田耕衣
昆布打ち老いても艶を失はず 石寒太 あるき神
根を露はさずして柳老いにけり 永田耕衣 驢鳴集
魂祭我は親より老いにけり 内藤鳴雪
魂祭吾れは親より老いにけり 内藤鳴雪
沙羅の花 鏡拭く手も老いました 近藤三知子
砂塵浴び老いの外寝の死者めけり 櫻井菜緒 『帰雁』
再会のはらから老いぬ心太 平田 千鶴
妻いたく老いて三神峯桜かな 佐藤鬼房
妻も老い柊咲くと囁ける 加倉井秋を
妻問も叶はぬ猫と老いけらし 石塚友二 玉縄以後
妻老いて母の如しやとろろ汁 成田千空
妻老いて冷索麺の葱きざむ 遠藤梧逸
妻老いて蛞蝓を溶かしてしまふ 加倉井秋を
妻老いぬ春の炬燵に額伏せ 富安風生
才女ひとり老いてふうせんかづらかな 藤田湘子 神楽
歳老いて何の奢りの緋桃咲く 森澄雄
祭着の襟新しく老いにけり 清崎敏郎
菜の花や老いてはならぬ膝頭 永田耕衣
菜虫採りそれが上手で老いにけり 山田みづえ
載せ石の灼けて籠の鵜老いゆくか 伊藤いと子
冴返るとも健康に老いにけり 阿波野青畝
冴返る海やりんりん老いの謡 加藤知世子 花寂び
昨年よりも老いて祭の中通る 能村登四郎
桜咲きさくら散りつつ我老いぬ 闌更
笹百合の行く方へ行く老いにけり 永田耕衣
雑炊や老いては淡き目鼻立 岡本眸
皿うどん配り 日本語使って 老い 伊丹三樹彦
三十にして我老いし懐爐哉 正岡子規 懐炉
山に老い芒のごとく息しをり 森澄雄
山の温泉の妓として老いぬほととぎす 岡安迷子
山の蝶樹液吸ひつつ老いてゆく 上野さち子
山ノ辺に老い茫々とラムネ売る 加藤知世子 花 季
山河老い あはれに蝕(か)けし月あげしか 富澤赤黄男
山桑に老いし母たち月中天 金子兜太
山住みが好きで老いしと大豆引く 伊東肇
山振(ぶ)つて猪横道を老い行くも 永田耕衣
山棲のこのまま老いなば霞いろ 神林信一
山男老いては集ふ泉あり 有働 亨
山茶花やほろ酔ひほどの父の老い 久保山敦子
山中や鶯老いて小六ぶし 支考「けふの昔」
山背吹く老いたる蛸の寄るやうに 橘川まもる
山梔子の褪せどき老いの労りどき 加倉井秋を 『武蔵野抄』
散黄葉天龍も老い流れゆく 百合山羽公 故園
燦々とトウネズミモチ妻老いぬ 岸田稚魚 紅葉山
残る虫老いてさめざめとは泣かず 鈴木真砂女 居待月
残菊や老いての夢は珠のごと 能村登四郎
四囲盲いけり椎老いて目覚めて 永田耕衣
四十にて町医老いけり七五三 相馬遷子 山国
姉若く妹老いぬ夏蜜柑 小澤實
姉老いて夏帯も濃きみどりとす 山口青邨
子に頼る老いの住み替え年の暮 鈴木いね子
子を売りてやがて老い脛ほそく立つ 佐藤鬼房
子を抱いて我老いにけり月今宵 尾崎紅葉
子を抱いて老いたる蜑や猫柳
子規の忌を忘るる程に老い耄けし 相生垣瓜人 負暄
子規庵の秋は淋しや我も老いぬ 高浜虚子
子等に直ぐ昼寝起され父老いし 山口誓子
師も友も老いて母校の余花のもと 相島たけ雄
師若く弟子ら老いたり菊日和 相馬遷子 雪嶺
師風守り丹波に老いぬ風生忌 細見しゆこう
師友老いぬ童顔老いざる茅舎の忌 松本たかし
志願します 老いたら 笑顔の風船売 伊丹三樹彦
志高きは老いず栗熟るる 関森勝夫
思ひ出す殊に老いての小春好 正岡子規 小春
斯く老いてここにも翁忌のひとり 阿波野青畝
枝豆や老いて自在な真砂女の句 角川春樹
死の塔を灼きて太陽老いざりき 加藤秋邨
死者のこと語り一日は老いたり 清水冬視
死者は老いずあはれ雛も老いざるよ 林翔
死装束冬日に干して老いゆく母 野見山朱鳥 運命
獅子の匂いも 冬 園丁に老い刻々 伊丹公子 メキシコ貝
紙魚老いて白毫の如し秋の暮 永田耕衣 闌位
紙漉女老いて蕎麦打つ手元かな(埼玉県小川町三句) 細見綾子
詩で老いた指 犀川の紅葉つまみ 伊丹三樹彦
歯ぎしりの小さく老いて 山河あり 西畑公喜
歯のゆるぎ易く老いたり桐一葉 阿波野青畝
寺清水西瓜も見えず秋老いぬ 西瓜 正岡子規
寺男老いてひたすらさくら守る 鈴木真砂女 居待月
寺老いぬ春のしぐれのきらりとす 日野草城
時老いてふぐりおとしもせざりけり 矢島渚男
耳の日や耳のみ老いをのがれゐて 能村登四郎
耳老いて/死は/束の間の/煤降る闇 高柳重信
耳老いて死は束の間の煤降る闇 高柳重信
耳老いて閻魔こほろぎを友とせり 水原秋櫻子 蘆雁以後
自我てふもの老いて生まれて天の川 齋藤愼爾
自得ただ山なる思い猪老いつ 永田耕衣
自分だけ老いると思う 花八つ手 河野淑子
鹿火屋根守天の深さに老いんとす 上甲平谷
鹿火屋守天の深きに老いんとす 上甲平谷
鹿火屋守老いていよいよ鹿火を恋ふ 近藤一鴻
鹿老いてひかるぬた場を立ちあがる 澁谷道
鹿老いてゆく飛火野の冬日かな 小島健 木の実
鹿老いて鹿苑出でず雪催 山田孝子
鹿老いて地上の端に墓求む 対馬康子 吾亦紅
七五三御用写真師老いにけり後藤比奈夫
七人の敵も老いたり山紅葉 川元達治
叱られて老いてゆく身も屠蘇すする 阿波野青畝
漆頭老いゆく盆の月明り 戸川稲村
車中の風呂敷弛み老いの唱歌 和田悟朗
若かりし昭和も老いぬ七五三 相馬遷子 雪嶺
若きは立ち老いは身沈め茅花墓地 平井さち子 完流
若き粟鼠棲ましめ森の老いたる冬木 内藤吐天 鳴海抄
若竹の老い行く果てや団扇売り 千代女「はしの松」
主は復活聖母は老いず笹鳴ける 中村草田男
手から歩きだして老いゆく大根負 永田耕一郎 海絣
手の甲に老いやや兆す更衣 山田みづえ
手垢まみれの倉庫の四壁老いた海 林田紀音夫
手足先に老いて農寡婦裸たくまし 加藤知世子
手袋の手の老いを愧づ人しれず 稲垣きくの 黄 瀬
手焙にかざす双手の老いにけり 日野草城
酒よりも鍋焼を欲り老い兆す 滝 春一
受難節老いし欅に日はうつる 赤尾兜子 歳華集
樹氷笛吹きおんなの老いは背後から 寺田京子
秋の街沖から見れば老いてあり 新間絢子
秋の霜老いは胎児に似て眠る 長谷川朝風
秋の灯に母老いしかば吾も老ゆ 相馬 遷子
秋の燈に母老いしかば吾も老ゆ 相馬遷子 山河
秋の虹老いねば見えぬもの見ゆる 上野さち子
秋の猫死なねば老いるばかりなり 安住敦
秋の猫欲なく老いて寺に棲む 椎橋清翠
秋の暮おれもそもじも老いたぞよ 幸田露伴 拾遺
秋燕や老いてはビルも蹲まる 岡本眸
秋茄子や母の仕草のまた老いて 皿井節子
秋海棠殖ゆ人老いてゆく庭に 山口青邨
秋光や闘鶏老いし頸を立て 松本幹雄
秋好きといひしは昔花下に老い 星野立子
秋祭馬撫でられて老いにけり 花尻 万博
秋山に呼ぶは童子か老い鴉 飯田蛇笏 家郷の霧
秋山に老いさらぼひて一好句 飯田蛇笏 家郷の霧
秋思いつか老いの思ひにつながれり 能村登四郎
秋晴を歩き来りし顔老いて 山口誓子
秋団扇背筋正しく老いにけり 小林愛子
秋蝶に猶美しく老いにけり 橋本多佳子
秋風に老いいつまでも遠目利く 能村登四郎
秋風や花鳥諷詠人老いず 久保田万太郎 流寓抄以後
秋風裡死者の語りの巫女老い 河野南畦 湖の森
秋冷のにはかに到り老いしごと 山口波津女 良人
舟大工老いて霞に傾倒す 木村蕪城
舟虫の老いては遅鈍嘆じけり 安住敦
住み馴れしとは老いしこと犬ふぐり 長谷川久美子
住み老いて飲む茶碗のお湯焚火ちら~映り 安斎櫻[カイ]子
充分に老いて蓬に変身す 中尾寿美子
十一月三日は必ず空が青くてわたしたち老いらく 荻原井泉水
十薬を摘みに来る姉巷に老い 山口青邨
十六日祭老いたる母に涙ぐむ 真 囁生
十六夜や老いを重荷と思はずに 鮎沢紀子
重陽の日や琴出して妻老いぬ 岸風三樓
重陽や老いのはらから餅を食ふ 水原秋櫻子 重陽
銃口は何処ライオンが老いていく 滝口千恵
宿の梅あるじと共に老いにけり
縮まりて縮まりて寒夜老いゆけり 油布五線
春の雁手足大きく老いにけり 和田 尚
春の雪老いたる泥につもりけり 橋閒石 微光
春の草こそばゆ素足老い初め 杉本弥生
春の草親子のままに老いにけり 古舘曹人 樹下石上
春の灯を 探り点しに 老い込む母 伊丹三樹彦
春の猫目やにを出して老いにけり 阿波野青畝
春の風邪重きに非ずやゝ老いし・・・碧梧桐十三回忌不参
春の雷鏡中まざと老いにけり 岡本眸
春の雷鯉は苔被て老いにけり 芝不器男
春まつり老いては沖を見るばかり 大串 章
春を待つ生半(なまなか)に老いそして病み 佐藤鬼房
春を待つ迄に我はや老いにけり 正岡子規 春を待つ
春陰の青磁は老いず二千年 加藤知世子
春羽織老いて金糸をちらしたる 林原耒井 蜩
春雨の波浮のみなとに老いて来し 原コウ子
春耕の子をいたはりて妻老いぬ 飯田蛇笏 心像
春愁の一句無くして老いにけり 相生垣瓜人 明治草抄
春愁や齢を外に夢老いず 吉屋信子
春障子一日逢はねば母老いて 古賀まり子
春惜しむ瑞牆の岩老いたれば 石田勝彦 百千
春惜む心秘すれば老いにけり 阿波野青畝
春雪みたび解けゆくごとに老いゆくか 角川源義
春浅くして老い人の相次ぐ死 相馬遷子 山国
春霜に美しう老いておはすらむ 中川宋淵
春著着るそれも面倒老いにけり 高木 晴子
春日向つづきの日向老いつ行く 三橋敏雄
春日傘老いかげらせて橋わたる 柴田白葉女 花寂び 以後
春風の心となりて老いゆかん 中井余花朗
春風や我馬老いて草喰めり 比叡 野村泊月
春眠く老いを養ふごとくをり 神山孝子
春眠に人は老い行く落花かな 岡本松浜 白菊
春老いぬ一身の岐路崖の上 石塚友二 方寸虚実
瞬けば老いの眼なりし飾り馬 花田春兆
殉教の島に老いゆく麦を踏む 酒井泡一
初あかりして稚き松老いし松 軽部烏頭子
初火桶みな親しくて替老いて 長谷川かな女 花寂び
初詣一度もせずに老いにけり 山田みづえ
初写真老いと幼なを芯に据ゑ 平塚まさ子
初蝶の樺色も佳し老いたるや 飯島晴子
初日拝み聖のごとく野夫老いぬ 一戸耕雨
初富士や古き軒端に妻と老い 遠藤梧逸
初斧に応ふ山彦老い知らず 上田五千石『天路』補遺
初風呂の十六貫はまだ老いず 原 赤松子
初夢もなくて老いゆくばかりなり 永田耕一郎
初明りして稚き松老いし松 軽部烏頭子
暑中ただもろ乳垂りて母老いし 飯田蛇笏 椿花集
藷粥を恋ひて移民の老いにけり 岡本無漏子
助木に吊るされていて老いて夏 宇多喜代子
女老いこはいものなしアッパッパー 菖蒲あや
女老い七夕竹に結ぶうた 三橋鷹女
女老い仏顔して牡丹見る 鈴木真砂女 紫木蓮
徐一族ここに老いゆく花菜雨 名和未知男
将門庵小春猫老い雪のごと 山口青邨
小ぎれいに老いて祭の笛の役 能村登四郎
小屋掛けてゆるゆると老い西瓜売 鍵和田釉子
小町忌の老いても母の富士額 西浦昭美
小満や老いたるインコ羽ばたきぬ 蘭東子
少壮老い易く二日灸かな 高田蝶衣
少年のままに老いたり柿若葉 早崎洋子
少年の老いたるわれか桃の花 山上樹実雄
少年は老い草笛は鳴らざりき 玖保律子
少年老いたりはうれん草のごまよごし 藤田湘子 神楽
少年老いたり返り点めく猫柳 原子公平
少年老いぬ芒の土手の制札よ 中村草田男
少年老い易し突き出す心太 百合山羽公 樂土
少年老い空蝉と目を合はせけり 山口正心
少年老い諸手ざはりに夜の父 三橋敏雄
昇降機に老いし兄弟顔近し 西東三鬼
昭和の子供と生れて老いぬ更衣 鈴木鷹夫 風の祭
昭和また一つ老いたり寒燈 藤田湘子
松の花この松原も老いにけり 河野静雲
松風に鶯老いぬ天竜寺 碧雲居句集 大谷碧雲居
松老いて城より高く夕焼ける 吉屋信子
松囃子今年馬役老いてゐし 中野賢二
沼守りの老いのうつつに秋深む 佐藤鬼房
沼神の老いやさらばひ菱の花 原 石鼎
沼神の老いやさらぼひ菱の花 原石鼎 花影
笑ふ時老いたる顔や白扇 原月舟
象の肌とおく日当たりつつ老いぬ 津沢マサ子
象老いて小さくなりぬ春の風 田中裕明
鉦叩老いたる師こそ幽かなれ 藤田湘子
障子はる影もろともに老いにけり 西島麦南
障子張る戦争未亡人老いて 山本芳江
障子貼り老い待つとなく待つ夜かな 後藤一朗 『雪間』
常盤木の老いて枯れぬは淋しやな 後藤綾子
情淡く熱淡く老い業平忌 林翔 和紙
浄く老いむ無風の愛の枯芒 林翔 和紙
譲る子を持たずに老いて雛飾る 斉藤美代
色足袋や律儀に老いて路地ぐらし 菖蒲あや
寝てさめて老いゆく花菜明りかな 長谷川双魚
心老いて梅待つ心老いざるを 相馬遷子 山河
新しき障子の内に老いにけり 今井つる女
新宿の女も老いぬ桜桃忌 木下ひでを
新雪にわが影法師まだ老いず 古賀まり子
新茶汲み小夜中山に老いにけり 浅場美智子
新茶汲み上手に老いしことを褒め 赤尾恵以
新米食む神の如くに父老いて 高橋悦男
新涼や人老い湖に齢なし 富安風生
新涼や母の顔拭く嫁も老い 小野里照代
新藁を噛みつゝ老いし神の馬 高野素十
深川に老いゆく人の黄帷子かな 深川正一郎
真打チとならで老いけり夏羽織 名見崎新
真蓬の恋の一神ぞ老いたれ 永田耕衣
神官老い集落錆びて時経るや 金子兜太
神官老い白木蓮の大樹かな 金子兜太
神詣るとて竹の赤杖手にして老いらく 荻原井泉水
神々しく老いて秋日を連れ給ふ 殿村莵絲子 雨 月
神父老い信者われ老いクリスマス 景山筍吉
神輿が通る車で通る椎の木老い 穴井太 ゆうひ領
臣老いぬ白髪を染めて君が春 夏目漱石
薪能もつとも老いし脇師かな 高浜虚子
身に入みて聞くこともなく老いにけり 後藤夜半 底紅
身の秋や車師老いて阿彌陀こく 幸田露伴 谷中集
身の老いにかなふさむさや切山椒 久保田万太郎 流寓抄
身の老いに心遅るる寒さかな 文挾夫佐恵
身の老いを引き寄せたりし蔓たぐり 文挟夫佐恵
身を鎧ふすべなき老いの懐手 原田和子
身体髪膚老いて卯の花腐しかな 岸田稚魚 紅葉山
人なりに人は老いけり花めうが 八田木枯
人は老いてまた手をつなぐ榎の実 中西夕紀
人よしの日焼まさりて老いにけり 石原舟月 山鵲
人ら老い冬の薺に膝をつく 金子皆子
人ら老い薺ほとけの座はみどり 櫛原希伊子
人形の手足の途中老いはじむ 豊口陽子
人形をつかひきびしき老いの素顔 伊丹三樹彦
人語行き 虎老いて 虎の斑もなし 折笠美秋
人語行き虎老いて虎の斑もなし 折笠美秋
人妻の老いけり御忌の朝詣 大 魯
人参を噛めざるほどに馬老いて 横山三葉
人日やしづかにどもりわれ老いし 片桐千東
人老いず梅雨のくらきをさへ忘れ 久保田万太郎 流寓抄
人老いてえんどうに藁下げてやる 細見綾子
人老いてすずなすずしろほとけのざ 岸本マチ子
人老いて胡桃の花の下通る 前澤宏光
人老いて仕掛花火の船を漕ぐ 加倉井秋を 午後の窓
人老いて祷りの長し秋の野に 依田明倫
人老いて頭巾に色の好みあり 頭巾 正岡子規
人老いて頭巾に物の好みあり 頭巾 正岡子規
人老いて末子可愛し雛祭 正岡子規 雛祭
人老いて幼なに還る寒牡丹 福田蓼汀 山火
人老いぬ巨燵を本の置處 炬燵 正岡子規
人老いぬ焚火埃を眉につけ 淡路女
壬生念仏の鉦を叩いて老いけらし 安住敦
尋常に鶯老いる小藪哉 老鶯 正岡子規
甚平とはだへのひまの老いけらし 皆吉爽雨
甚平に老いの片意地張りにけり 沖崎一考
甚平やをとこは老いをあからさま 鈴木真砂女 都鳥
甚平着て老いを虐げゐるごとし 能村登四郎
須佐之男命も老いし里神楽 長山芳子
厨芥牽く老いた猟犬 ネオンの斑 伊丹三樹彦
吹かるるは老いゆく人や秋の風 岸田稚魚 紅葉山
水のごと老いし夫婦や遍路笠 足立靖子 『梨花』
水の粉や今はた老いが物むせび 太祇「太祇句稿」
水ばなを拭き美しく老いたまう 北山河
水引草身は老いて眼は老ゆまじや 林翔
水飲みて人老いやすきさくら時 原田青児
水温む多忙を課して老いまじく 岡本眸
水鏡拭いさりたき老いがあり 宇川啓子
水仙に黄檗の僧老いにけり 正岡子規 水仙
水仙は只竹藪に老いぬべし 正岡子規 水仙
水仙やたまらず老いし膝がしら 小林康治 四季貧窮
水仙や老いては鶴のごと痩せたし 猿橋統流子
水替へて金魚に語る老いし父 吉永紅一
水中花女無慚に老いにけり 文挟夫佐恵 黄 瀬
水注ぐごとき音を立て虫老いず 上田五千石『風景』補遺
水虫の掌足蝕ばみ我老いじ 右城暮石 句集外 昭和二十八年
水虫の老いざるしるしならばよし 右城暮石 句集外 昭和四十三年
水底の老いたる草に稲妻す 中里麦外
水盗む咎を重ねて老いにけり 佐野克男(ひいらぎ)
水老いて呼び寄せ居るや揚羽蝶 永田耕衣
水老いて鯔の乱舞に甘んずる 岡本眸
水棹突く白丁老いけり三船祭 阿波野青畝
水洟や母の如くに老いにけり 松本 ます枝
酔腰の老いの飛び入る花神楽 三浦晴子 『晴』
酔芙蓉ドミノ倒しに老い痴らふ 文挾夫佐恵
雛の句の母のひらがな老いにけり 蓬田紀枝子
雛の夜は雛に仕へて老いざりき 三橋鷹女
杉老いて雨の中なる若葉哉 正岡子規 若葉
杉老いて小さく動く冬の人 鈴木汀子
雀こぼす松うらうらと老いにけり 蓬田紀枝子
裾ゆるく老いて白藤明りの谷 飯島晴子
世に在るも老いぬ古木の梅白し 石塚友二 光塵
世に老いし機械磨けり鉄工忌 細谷源二 鐵
星の恋空に任して老いにけり 阿部次郎
正視され しかも赤シャツで老いてやる 伊丹三樹彦
正夫忌の水谷八重子老いにけり 中矢桂石
生ありき悲しき老いや春草忌 長谷川湖代
生きて人老い冬の日飛ぶ鳥を見し 中塚一碧樓
生き生きて妻と二人の老いたらば帰らむ英彦山(えいげん)よ雪の降る見ゆ 伊藤保
生涯の友等も老いぬ花吹雪 殿村莵絲子 雨 月
聖燭のごとき冬芽やこぶし老い 高島筍雄
聖燭祭娶らぬ教師老いにける 西東三鬼
声のよき僧も老いたる十夜かな 河野静雲 閻魔
声臈と山のうぐひす老いに入る 上田五千石『琥珀』補遺
西安に老いし槐樹の花の塵 清崎敏郎
西瓜喰ぶ背まるめ老いし姉弟 菖蒲あや
西虚子忌不肖ながらに吾老いし 阿波野青畝
西陣や織子老いたる初地蔵 草間時彦
西日にも断固と歩く 老いている 伊丹三樹彦
逝く年の眠り貪り父母老いぬ 藤田美代子
青葦の葉ずれけふ生きけふ老いき 千代田葛彦
青山楊 気登り拙なきまま老いて 伊丹三樹彦
青畝老いたりハンモックよそ目して 阿波野青畝
青梅や傾城老いて洗ひもの 青梅 正岡子規
青萩や日々あたらしき母の老い 正木ゆう子
青嵐電信柱老いたるよ 辻桃子
青蘆の葉ずれけふ生きけふ老いき 千代田葛彦
惜春や斯く老いて吾異国に 間崎黎
昔、男、しぐれ聞き聞き老いにけり 久保田万太郎 流寓抄
昔も此の人、老いては老のうつくしさ藤を見る(尾州萱津) 荻原井泉水
石あまた落着き梅も老いにける 水原秋櫻子 霜林
石彫りの わが句は老いず 沙羅の花 伊丹三樹彦
赤きもの着ては老いゆく濁り鮒 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
赤頭巾人甘んじて老いけらし 頭巾 正岡子規
節分の句の関守りて老いにけり 鈴鹿野風呂
節分やいまはた老いし妓たち 久保田万太郎 流寓抄以後
雪の麓に面をかさね老いるとか 飯島晴子
雪刻々父の寝顔を誰が老いしむ 野澤節子 未明音
雪山に位あり老いても兵に位 松崎鉄之介
雪山に頬ずりもして老いんかな 橋閒石 微光
雪掻きの老いのひとりの後生楽 星野麥丘人
雪洞のさくら散らねば雛老いず 後藤比奈夫
雪便り君みちのくに老いゆくか 山田みづえ まるめろ
雪明り紅差し指の老いゆけり 文挟夫佐恵 遠い橋
蝉すでに老いて出でたる蝉の穴 正木ゆう子
蝉の松礎石擡げて老いにけり 林翔 和紙
先急ぎしてをり老いの絵双六 鈴木清
千鳥も老いも夜明けの素足九十九里 古沢太穂 捲かるる鴎
川漁のひま老いたるは葭簀編む 佐藤鬼房
船旅の涼しく老いし二人かな 小山徳夫
素盞嗚尊老いたり里神楽 長谷川守可
鼠老いて蘭の根を噛む夜もあらむ 会津八一
鼠老いて蝙蝠となる空屋哉 蝙蝠 正岡子規
僧形の老いし遍路のひとりゆく 高濱年尾 年尾句集
僧老いて耳の長さや湯豆腐に 大橋櫻坡子 雨月
壮語癖老いてつのれり別れ霜 奥田恵美 『再度山』
早乙女と呼ばれつつみな老いにけり 長岡達江(航標)
早梅や老いざるはなき幼な友 三橋鷹女
早苗饗の賑はひ好む父老いたり 大熊輝一 『土の香』
早苗餐の辛口いたく老いこめり 佐藤鬼房
巣づくりをゆるして樅の木も老いぬ 村越化石
痩霜や老い入りつ佇つ小松原 永田耕衣
痩鶴のごとくに老いし袴能 能村登四郎
相見つつ桜も我も老いにけり 相生垣瓜人 負暄
相撲取おとがひ長く老いにけり 村上鬼城
相撲取のおとがひ長く老いにけり 村上鬼城
相撲取小鳥を飼うて老いにけり 野村喜舟
草の戸や老い子育つる天瓜粉 村上鬼城
草の実やいつか老いたる山の鳥 桂信子 草影
草芽吹く老いには老いの身の置処 能村登四郎
草青む村に老いたる馬蹄鍛冶 寺井甘雨
草笛や老いても未だ息ゆたか 森田青霞
草餅の一つも翔たず老いませり 清水径子
草餅や老いぬるほどに母恋し 米田双葉子
草餅を届けて老いに泣かれけり 石川文子
藻のなかにはげしく老いてゆく舟影 飯島晴子
霜くすべ出来ぬまで老い農夫婦 百合山羽公 樂土
霜におごる八つ手の花や友等老い 山口青邨
霜の菊安堵にも母老いゆくや 馬場移公子
霜晨の鶴女房として老いぬ 千代田葛彦
蔵開き老いたる母に重き鍵 伊藤由起子

# by 575fudemakase | 2019-05-12 10:58 | 無季

年寄

年寄

お年寄駄菓子ほおばる敬老日 高澤良一 石鏡
たふやかに年寄耳や宝舟 阿波野青畝
家々によき年寄や瓜の花 森澄雄
霞む日の年寄をあるき越しけり 佐野良太 樫
咳の出る年寄ひとり藁仕事 後藤比奈夫
菊を見て年寄たまへ竜田姫 松窓乙二
此里も年寄多しかん子どり 成田蒼虬
今少し年寄見たし鉢叩 服部嵐雪
初雪や年寄だてらおどけもの 路通
新渋を買ひに年寄連れて来し 森 ゆきお
霜踏んでだんだん年寄じみてくる 小出秋光
町内の年寄はかりや御命講 正岡子規 御命講
年寄がとしとるごとき蓮の骨 松村蒼石
年寄がゐて冬構してありぬ 星野麥丘人
年寄が人のぞきをり返り花 臼田亜浪 旅人 抄
年寄が通るたび蓮掘りださる 秋元不死男
年寄たちに犬ころ草の枯れてけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
年寄ったなりの咲き方桜もす 高澤良一 燕音
年寄と見るや鳴蚊も耳の際 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
年寄におしやれの勧め十夜僧 安浦典子
年寄に開けすぎたる避暑の町 吉良比呂武
年寄に木の葉拾はせ狐呵呵 星野石雀
年寄に夜長の長くなりしかな 勝又一透
年寄のうつけ涙や梅見酒 青木重行
年寄のうなじの胼のいたはしや 河野静雲 閻魔
年寄のひとり跼みの名草の芽 石田勝彦 秋興以後
年寄のひや酒のどをまろびけり 斎藤四郎
年寄のみな働いて梅の路地 岡本眸
年寄の一つ年とる花見して 平畑静塔
年寄の羽打ちつれたり常楽会 森澄雄
年寄の腰や花見の迷子札 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
年寄の手をもみはじむポポー枯葉 和知喜八 同齢
年寄の畳きはまるこたつかな 来川 たつのうら
年寄の親より離し遠くへ遺る 日野草城
年寄の声の一粒初景色 綾部仁喜 樸簡
年寄の足で一里の青嵐 加藤宵村
年寄の知恵さりげなし鴨足草 黛 執
年寄の知恵出しつくし端居せり 能村登四郎 菊塵
年寄の日と関はらずわが昼寝 石塚友二
年寄の日の秋風のつめたかり 後藤比奈夫
年寄の部類に入り夜の長し 高澤良一 寒暑
年寄の夢の淡さよ宝船 後藤比奈夫 めんない千鳥
年寄はみんな曲者唐辛子 田中兼豊
年寄ば鼠もひかずさむさかな 園女
年寄を置いて深入り螢沢 石田勝彦 雙杵
白馬は年寄やすし*ほととぎす 長翠
晩夏光とは年寄の脳味噌なり 佐藤鬼房
彼岸の道の年寄の声におくれつつ行くや 梅林句屑 喜谷六花
氷売年寄日ではなかりけり 松窓乙二
武隈とはや年寄名若葉風 久保田万太郎 流寓抄以後
名月や年寄こいと鳩の声 斜嶺
冷水に年寄見せぬいさみかな 馬場存義

以上

# by 575fudemakase | 2019-05-12 10:42 | 無季

老け

老け

いほはらの有度の端山もみどり老け 上田五千石『琥珀』補遺
うたはれし名妓老けたり二の替 阿部みどり女
おいかけに顔老け賀茂の祭かな 阿波野青畝
これ以上老けられぬ顔 赤まんま 伊丹三樹彦
コンコルド女神老けにし春の雨 横光利一
さそり星老けしまはりの露の星 百合山羽公 寒雁
ジャワ更紗 生み ほどほどに老けました 伊丹三樹彦
つけさして老けは~し寒の紅 河東碧梧桐
とけしなき業に老けり蜆とり 嘯山
ひつじ田の照る中往けば老け込みさう 高澤良一 石鏡
ぼうたんの老くるがごとく老けたまヘ 日野草城
また老けて参着 荒鵜よ 灯台よ 伊丹三樹彦
まわれ まわる かごめの芯で老けてゆく 森洋彦
やや老けての再会の袖 萩こぼす 伊丹三樹彦
リラ咲くや昨日より老け今日の僕 楠本憲吉 孤客
伊予の品位の友やや老けてやま青し 中村草田男
稲妻の一夜に老けしかと思ふ 鷹羽狩行
寡婦となり俄かに老けぬ黍の秋 阿部みどり女 笹鳴
河豚を食ふ君も口髭老けにけり 榎本冬一郎 眼光
花芒齢ほど顔の老けをるか 平井照敏 天上大風
柿をむく妻の双手も老けしかな 楠本憲吉 方壺集
蒲公英や姉より老けてよき妹 久米正雄 返り花
寒風を来りしをとめ十も老け 山口誓子
忌ごもりのしのび普請に秋老ける 竹下しづの女 [はやて]
客亭主ともに老けり炉の名残 諷竹
魚に聞け魚も泣くらむ春老けて 瀧井孝作
虎吼えてかの山頂を老けさせる 安井浩司
御秘蔵の若衆老けり真桑瓜 早野巴人
向日葵の熱気夜も充ち人老けさす 西村公鳳
香水やまぬがれがたく老けたまひ 後藤夜半 底紅
再会の老けはともども 梅林 伊丹三樹彦
歳月や友また老けて梅雨に酌む 楠本憲吉 方壺集
山中の昼老け役のけらつつき 岡井省二 明野
仔雀の死しておもかげやや老けぬ 中村草田男
指折りて老けたる月夜衣被 後藤夜半 底紅
十三夜過ぎし尾花の老けにけり 後藤夜半 底紅
小紋着てたやすく老けし妻の冬 草間時彦
松島やみどり立ち立つ老けやすし 八木三日女 落葉期
城址の井戸 覗く 帰郷のたび老けて 伊丹三樹彦
新涼の水に老けたり水馬 阿波野青畝
人妻の老けり御忌の朝詣 露印
水餅や一途に老けし母の鬢 小林康治 四季貧窮
雛壇の鏡もつとも老けゐたり 鷹羽狩行
青梅拾うモーゼの十戒知らず老け 斎藤愼爾 夏への扉
青梅拾ふモーゼの十戒知らず老け 齋藤愼爾
雪解けの一夜に老けて道路鏡 鷹羽狩行
草むらや虎杖の葉の老けそめて 飯田蛇笏 山廬集
草餅のよもぎが言へり老けるなと 中山純子
大寒やぼんのくぼまで老けにけり 小林康治 四季貧窮
朝あり夕ありて砂漠は老けこむよ 津田清子
冬鳩の老けごゑ宝石筥からつぽ 堀井春一郎
同年の老けし村びと鵙の贄 百合山羽公 故園
道ばたは白い木苺老けた 北原白秋
肉親あつまる杉の先端病み老ける 徳才子青良
韮の花まひる老けゆく刻の見ゆ きくちつねこ
梅雨豪雨一夜に老けて鉄骨林 鷹羽狩行
白樺の一夜に老けて雪の上 鷹羽狩行
白団扇妻には貸さじ老けて見ゆ 渡邊水巴 富士
麦の穂も老けよ暮れよと地虫なく 百合山羽公 寒雁
百円のかぼちゃ食らへば老けにけり 星野麥丘人 2002年
布団縫ひあげて俄かに顔老ける 横山房子
紡績に妻老けるよ敷ぶとん 黒柳召波 春泥句集
霧の山めぐり来てまた老けにけり 後藤比奈夫
面影の去らねば老けて藤袴 六本和子
餅の黴剥がす前髪より老ける 殿村菟絲子 『路傍』
幼虫の蝉の老けがほ苔じみぬ 土屋兼教
落穂*ひる身重の妻女齢老けぬ 飯田蛇笏 山響集
鈴虫の老けしと思ふ冷まじき 後藤夜半 底紅
鈴蟲の老けしと思ふ冷まじき 後藤夜半
炉火老けて串の田楽忘れ挿し 上田五千石『琥珀』補遺
老けごえの冬の椿に呼ばれをり 斎藤愼爾 冬の智慧
老けごゑの冬の椿に呼ばれをり 齋藤愼爾
老けしとは落着きしこと額の花 後藤夜半 底紅
老けし手に梅雨の霽れ間の日が当る 日野草城
老けりな扇づかひの小ぜはしき 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
老けること薔薇見ることにはじまりぬ 亭午 星野麥丘人
老け急ぐ勿れ地虫も穴を出づ 小林康治 四季貧窮
老け方を気にする山妻心太 高澤良一 暮津
老け役の描き皺かなし白うちは 柴田白葉女 遠い橋
凩やぎくりと面老けて来し 岸田稚魚 負け犬
抓む気のなくも老けり蛍狩 三宅嘯山
芒老け後の月見の残りもの 小澤碧童 碧童句集
鵙啼くや日はよそ乍ら老けむとす 三橋敏雄

以上

# by 575fudemakase | 2019-05-12 10:39 | 無季


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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