長谷川櫂編 大岡信『折々のうた』選 へのコメント(高澤良一)
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◾️長谷川櫂編 大岡信『折々のうた』選 俳句(1)共鳴句◾️
岩波書店 2019年11月20日
◾️芭蕉以前
じゅんれいの棒ばかりゆく夏野かな 松江重頼
富士に傍(そう)て三月七日八日かな 伊藤信徳
稲妻に浴(ゆあみ)してゐる女かな 伊藤信徳
◾️芭蕉の時代
夏の夜や崩れて明(あけ)し冷し物 芭蕉
秋の夜を打崩したる咄かな 芭蕉
五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん 芭蕉
足高に涼しき蟹のあゆみ哉 谷 木因
雑煮ぞと引起されし旅寝かな 路通
ふりかねてこよひになりぬ月の雨 尚白
動くとも見えで畑うつ男かな 去来
荒磯やはしり馴れたる友千鳥 去来
相撲取ならぶや秋のからにしき 嵐雪
照付けてひかりも暑し海の上 嵐雪
我が寝たを首上げて見る寒さかな 小西来山
飯蛸のあはれやあれではてるげな 小西来山
猫の子に嗅(かが)れてゐるや蝸牛 椎本才麿
一竿は死装束や土用ぼし 許六
やまぶきも巴も出(いづ)る田植かな 許六
人に似て猿も手を組む秋の風 浜田洒堂
綿とりてねびまさりけり雛の顔 榎本其角【ねぶ は ふける 年とる】
雨蛙芭蕉に乗りて戦ぎけり 其角
かたつぶり酒の肴に這はせけり 其角
秋風の吹きわたりけり人の顔 上島鬼貫
つくづくと物の始まる火燵哉 上島鬼貫
むかしから穴もあかずよ秋の空 上島鬼貫
春雨や抜け出たままの夜着の穴 内藤丈草
淋しさの底ぬけて降るみぞれかな 内藤丈草
白雨にはしり下るや竹の蟻 丈草
夕すずみあぶなき石にのぼりけり 志太野坡
おうた子に髪なぶらるる暑さ哉 斯波園女
首立て鵜のむれのぼる早瀬哉 釈 浪化
永き日や太鼓のうらの虻の音 釈 浪化
風呂敷に落ちよつつまん鳴雲雀 広瀬惟然
さびしさや一尺消てゆくほたる 立花北枝
渡り懸て藻の花のぞく流哉 野沢凡兆
呼かへす鮒売見えぬあられかな 野沢凡兆
年の夜や吉野見て来た檜笠 坪井杜国
あたままで目でかためたる蜻蛉哉 中村史邦
◾️蕪村の時代
月の夜や石に出て鳴くきりぎりす 加賀千代女
うつす手に光る蛍や指のまた 炭 太祇
脱ぎすてて角力になりぬ草の上 炭 太祇
川澄むや落葉の上の水五寸 炭 太祇
みじか夜や毛むしの上に露の玉 与謝蕪村
涼しさや鐘をはなるるかねの声 与謝蕪村
いな妻や浪もてゆへる秋津しま 与謝蕪村
腰ぬけの妻うつくしき巨燵かな 与謝蕪村
およぐ時よるべなきさまの蛙かな 与謝蕪村
うつつなきつまみごころの胡蝶かな 与謝蕪村
釣上げし鱸の巨口玉や吐 与謝蕪村
地車のとどろとひびく牡丹かな 与謝蕪村
雲の峰に肘する酒呑童子かな 与謝蕪村
よはよはと日の行とどく枯野哉 堀 麦水
更くる夜や炭もて炭を砕く音 大島蓼太
傘のにほうてもどるあつさかな 建部涼袋
涼しさや舳へながるる山の数 建部涼袋
行とどく春の日影や虫の穴 高桑闌更
油断して花に成たる桜かな 三浦樗良
索(ひ)き入れて馬と涼むや川の中 吉川五明
暁や鯨の吼ゆるしもの海 加藤曉台
さうぶ湯やさうぶ寄くる乳のあたり 加舎白雄
薄氷雨ほちほちと透すなり 加舎白雄
角上げて牛人をみる夏野かな 松岡青蘿
こがらしや日に日に鴛鴦のうつくしき 井上士朗
魚食うて口腥(なまぐさ)し昼の雪 夏目成美
のちの月葡萄に核(さね)のくもりかな 夏目成美
解て行物みな青しはるの雪 田上菊舎
山門を出れば日本ぞ茶摘うた 田上菊舎
薦(こも)着ても好な旅なり花の雨 田上菊舎
家ふたつ戸の口見えて秋の山 鈴木道彦
ひと魂でゆく気散じや夏の原 葛飾北斎
いつ暮て水田のうへの春の月 成田蒼虬
筑波根もこえよと投つ火とり虫 田川鳳朗
鳥の巣の影もさしけり膝のうへ 田川鳳朗
◾️歌仙
市中は物のにほひや夏の月 凡兆
あつしあつしと角々の声 芭蕉
(市中の夏の活気を見事に捉えた)
さまざまに品かはりたる恋をして 凡兆
浮世の果は皆小町なり 芭蕉
(浮世の果はみな小町ではないか?)
桐の木高く月さゆる也 野坡
門しめてだまつてねたる面白さ 芭蕉
(月を見上げている人物の閑居の興を配した)
冬木だち月骨髄に入夜哉 几董
此句老杜が寒き腸(はらわた)蕪村
(君のこの句は悲壮さに於いてかの杜甫の令厳極まる詩魂を思わせるほどだ。)
人老ぬ人又我を老(ろう)と呼 蕪村
泥に尾を引亀のやすさよ 樗良
(樗良は泥中に尾を引く長寿の亀に託して、心やすらかな老境をたたえた。泥に尾を引く亀の話は、「荘子」秋水篇にある逸話を踏まえている。)
空豆の花さきにけり麦の縁 孤屋
昼の水鶏のはしる溝川 芭蕉
(水鶏は和歌では夜間の声だけが詠まれて来た鳥。それを昼の生態で描いた処に俳諧がある。)
菜の花や月は東に日は西に 蕪村
山もと遠く鷺かすみ行 樗良
(樗良の句は、有名な「水無瀬三吟」の宗祇の発句、「雪ながら山もと霞む夕かな」を借りたものか)
八九間(けん)空で雨降る柳かな 芭蕉
春のからすの畠ほる声 沾圃
(細い春雨が高い柳の上方に降っているが、柳にさえぎられて下まで落ちてこない。振り仰げば、雨は八、九間上方で振っているのだ。芭蕉の句の垂直性に対し、畠の水平な拡がりに餌を漁る烏を点描、しっかりした構図を作った)
◾️川柳
歯が抜(ぬけ)てから顔の静(しづけ)さ 武玉川
(年を取るにつれて歯が抜ける。一本、二本と抜けてゆくに連れ、人の中のたけだけしさも少しずつ消えてゆく。たくみに老境を捉えた)
道問へば一度にうごく田植笠 誹風柳多留
(一度にうごく田植笠の絵画的な美しさ)
宝舟日本からも一人乗り 誹風柳多留
(さて、七福神とは?大黒天、恵比須、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋。
うち日本の神は何と恵比須だけ)
◾️長谷川櫂編 大岡信『折々のうた』選 俳句(2)共鳴句◾️
岩波書店 2019年12月20日
◾️一茶の時代
相の手の如く掲句に我流感想を入れた。当たるも八卦、当たらぬも八卦。扨て、いざいざ。
オノマトペの名人一茶
大螢ゆらりゆらりと通りけり 一茶
うまさうな雪がふうはりふはりかな 一茶
稲妻やうっかりひょんとした顔へ 一茶
けろりくわんとして烏と柳かな 一茶
昼の蚊やだまりこくつて後ろから 一茶
寝た下を凩づうんづうんかな 一茶
蟻の道雲の峰よりつゞきけん 一茶
(雪舟の天橋立図の如き俯瞰)
悼 長女さと(一歳)
露の世は露の世ながらさりながら 一茶
一茶詠「雪」一連
雪とけてくりくりしたる月夜かな 一茶
雪ちるやおどけも言へぬ信濃空 一茶
雪とけて村一ぱいの子どもかな 一茶
是がまあつひの栖か雪五尺 一茶
(「柏原を死所と定めて」と前書きする)
涼風の曲りくねつて来りけり 一茶
(一瞬、京極杞陽の「蠅とんでくるや箪笥の角よけて」を想った)
【参考】京極杞陽 100句
しづかさや湖水の底の雲のみね 一茶
づぶ濡れの大名を見る炬燵かな 一茶
(こたつにのんびりうずくまり、障子の隙間から行列をのぞいている)
さと女三十五日墓
秋風やむしりたがりし赤い花 一茶
一茶の「穴」俳句一連
うつくしや障子の穴の天の川 一茶
うしろから寒が入る也壁の穴 一茶
初雪や古郷見ゆる壁の穴 一茶
秋の夜や障子の穴の笛をふく 一茶
けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ 一茶
(本州北端の津軽半島の海浜外ヶ浜から見た景とみなして!…)
白魚のどつと生まるゝおぼろ哉 一茶
(芭蕉さんは 明ぼのやしら魚白きこと一寸)
一尺の滝も涼しや心太 一茶
(蕪村さんの「ところてん逆しまに銀河三千尺」に和して)
正月の子供に成て見たき哉 一茶
雪とけて村一ぱいの子どもかな 一茶
一茶が六十一歳の歳旦吟
春立つや愚の上に又愚にかへる 一茶
うかれ猫奇妙に焦げて戻りけり 一茶
(一茶ならではの俳諧句。これは…)
初子千太郎
はつ袷にくまれ盛(ざかり)にはやくなれ 一茶
悠然として山を見る蛙かな 一茶
(陶淵明の「菊を采る東籬の下/悠然として南山を見る」を下敷きにして…)
痩蛙まけるな一茶是に有
(結婚をして三男一女を得たがみな夭折、不遇の辛酸を嘗めた)
ふゆの夜や針うしなふておそろしき 桜井梅室
(月並調を自認して…)
◾️子規・虚子の時代
初冬の竹緑なり詩仙堂 内藤鳴雪
小春日や石を噛み居る赤蜻蛉 村上鬼城
長き夜をたゝる将棋の一ト手哉 幸田露伴
蛇穴を出れば飛行機日和也 幸田露伴
霧黄なる市(まち)に動くや影法師 夏目漱石
筒袖や秋の柩にしたがはず 夏目漱石
星既に秋の眼をひらきけり 尾崎紅葉
泣いて行くウエルテルに逢ふ朧かな 尾崎紅葉
赤い椿白い椿と落ちにけり 河東碧梧桐
去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子
(圧巻の名句である。用語「棒」の使い方に皆、目をパチクリ。その例句をできるだけ集めてみたい)
https://fudemaka57.exblog.jp/30912928/(←ココをクリック)
流れゆく大根の葉の早さかな 高浜虚子
磐石の微動してゐる清水かな 高浜虚子
大空に又わき出でし小鳥かな 高浜虚子
秋灯や夫婦互に無き如く 高浜虚子
春の浜大いなる輪が画いてある 高浜虚子
ワガハイノカイミョウモナキススキカナ 高浜虚子
今日も暮るる吹雪の底の大日輪 臼田亜郎
大いなる春日の翼垂れてあり 鈴木花蓑
へうへうとして水を味ふ 種田山頭火
ねこに来る賀状や猫のくすしより 久保より江
をりとりてはらりとおもきすゝきかな 飯田蛇笏
鈴おとのかすかにひびく日傘かな 飯田蛇笏
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏
流燈や一つにはかにさかのぼる 飯田蛇笏
寒の月白炎曳いて山を出づ 飯田蛇笏
冬渓をこゆる兔に山の月 飯田蛇笏
咳をしても一人 尾崎放哉
街の雨鶯餅がもう出たか 富安風生
(ぶっつけ本番と云う言葉がある。これはそれを地でいっている)
雪に来て美事な鳥のだまり居る 原石鼎
(見事 美事等 類語関連語を調べて置きたい。結果は後日…)
見事 美事等の類語関連語(←ココをクリック)
沖の石のひそか産みし海鼠かな 野村喜舟
(私は海辺育ち。アレはたしか、子供裡ではカンパンと称していたやつ。調べてみると…
スカシカシパンが正式名称。映像ネットで調べてみてください)
竹馬やいろはにほへとちりぢりに 久保田万太郎
(用語いろはを用いた例句を集めてみたい。後日紹介)
用語いろはを用いた例句(↓ココをクリック)
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり 久保田万太郎
谺して山ほととぎすほしいまゝ 杉田久女
(ほしいまゝ 恣等の例句を集めて見たい。後日披露…)
用語ほしいまゝを用いた例句(↓ココをクリック)
瀧落ちて群青世界とどろけり 水原秋櫻子
(視覚聴覚表裏一体)
こほろぎのこの一徹の貌を見よ 山口青邨
(「冷徹」「一徹」対の言葉だ。しかも漢語)
木がらしや目刺にのこる海のいろ 芥川龍之介
(引算の美学)
青蛙おのれもペンキぬりたてか 芥川龍之介
(私の俳句は草城、一茶、山頭火から入ったからこの句に今様一茶風を感じとった)
兔も片耳垂るる大暑かな 芥川龍之介
(むかしの少年は飼った飼った兔、犬、伝書鳩。で金澤文庫称名寺裏山では兎の餌採りが日課だった)
蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな 芥川龍之介
(「蝶の舌」「ゼンマイ」 は幾何学で云うところの相似形といった処か?)
一尽し
くもの糸一すぢよぎる百合の前 高野素十
大榾をかへせば裏は一面火 高野素十
空をゆく一とかたまりの花吹雪 高野素十
生涯にまはり灯籠の句一つ 高野素十
秋の航一大紺円盤の中 中村草田男
霜柱どの一本も目ざめをり 加藤秋邨
一枚の落葉となりて昏睡す 野見山朱鳥
いちまいの皮の包める熟柿かな 野見山朱鳥
一箸に満ちたまひけり生身魂 細川加賀
瀧の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半
(手品で云へば、種も仕掛けもなんにもない といった句風。所謂 無手勝流。 アレアレと云ふ間に勝負がついた)
ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舎
(用語「字」を含む俳句を一網打尽にしてみたい。その結果はこうでした…)
https://fudemaka57.exblog.jp/30907017/用語「字」を含む俳句(←ココをクリック)
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 三橋鷹女
(なんと云っても思いは鬼無里へ飛ぶ。鬼女伝説だ)
夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり 三橋鷹女
籾かゆし大和をとめは帯を解く 阿波野青畝
(娘を描くに、大和をとめと云ひながら この田舎っぺいめと戯ける。これぞ大人の一芸)
両翼の傾斜たのしむ蜻蛉かな 阿波野青畝
かたつむりつるめば肉の食い入るや 永田耕衣
水を釣つて帰る寒鮒釣一人 永田耕衣
おそるべき君等の乳房夏来る 西東三鬼
(モンペ時代の作にして新鮮)
とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな 中村汀女
(キーワードは三溪園)
あはれ子の夜寒の床の引けば寄る 中村汀女
(直接語、もしくは直情語あはれの用法は現代俳句では少々お古い感否めないが当時は全盛期?だったか。あはれの作例を調べて置きたい。後日紹介)
用語あはれを用いた例句(←ココをクリック)
高熱の鶴青空に漂へり 日野草城
(高校生時代駅前の本屋で買った本で読んだなコノ一句。確か文庫本。私の俳句入門書でした)
ところてん煙の如く沈み居り 日野草城
夏布団ふはりとかかる骨の上 日野草城
*はまなすや今も沖には未来あり 中村草田男
(用語未来を使った俳句を集めて置きたい)
【参考】小生のブログで未来を調べていたら以下が引っかかってきた。
・アニマルモーションの未来
https://fudemaka57.exblog.jp/30487662/(←ココをクリック)
・書籍文化の未来
https://fudemaka57.exblog.jp/20870806/(←ココをクリック)
寄り道序でにどーぞ?
蟋蟀が深き地中を覗き込む 山口誓子
蜥蜴照り肺ひこひことひかり吸ふ 山口誓子
かりかりと螳螂蜂の貌を食む 山口誓子
人入って門のこりたる暮春かな 芝 不器男
美しき緑走れり夏料理 星野立子
噴水にはらわたの無き明るさよ 橋 閒石
白き巨船きたれり春も遠からず 大野林火
(当句には同じく横浜港を詠んだ同じく浜っ子俳人、秋元不死男の次句を並べて紹介すべしである。北欧の船腹垂るゝ冬かもめ)
(同じく横浜港を詠んだ龍太には次の一句がある。秋の船風吹く港出てゆけり)
◾️秋邨龍太の時代
満月やたたかふ猫はのびあがり 加藤秋邨
カフカ去れ一茶は来れおでん酒 加藤秋邨
ながきながき春暁の貨車なつかしき 加藤秋邨
(疎開先の静岡は、島田駅の焼けぽっくりの木柵に跨り連結車両の数の当て
っこをした腕白時代)
おぼろにてわれ欺すならかかる夜ぞ 加藤秋邨
金粉をこぼして火蛾やすさまじき 松本たかし
いただきのふつと途切れし冬木かな 松本たかし
煉炭等煮炊きの炭塵、列車の油煙等と彼の時代ならではの煤文化
花深く煤の沈める牡丹かな 松本たかし
鍋物に火のまはり来し時雨かな 鈴木真砂女
いま落ちし氷柱が海に透けてをり 橋本鶏二
冬麗の微塵となりて去らんとす 相馬遷子
貌が棲む芒の中の捨て鏡 中村苑子
(当世風小野小町の落とし物)
戦場へ手ゆき足ゆき胴ゆけり 渡邊白泉
一枚の落葉となりて昏睡す 野見山朱鳥
いちまいの皮の包める熟柿かな 野見山朱鳥
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 森澄雄
ありがたき春暁母の産み力 森澄雄
山峡に沢蟹の華微かなり 金子兜太
(透けて見える美也)
昭和衰へ馬の音する夕かな 三橋敏雄
(ヒヒヒーンに天地森閑)
戦争にたかる無数の蠅しづか 三橋敏雄
(廊下の奥に立って見据える戦争詠)
顔入れて顔ずたずたや青芒 草間時彦
(切れ味よろしきカミソリ俳句)
裏富士の月夜の空を黄金虫 飯田龍太
(この句を支配する思想は浪漫だね)
いきいきと三月生まる雲の奥 飯田龍太
(先行句があってこの句がある。竹林の月の奥より二月来る)
黒猫の子のぞろぞろと月夜かな 飯田龍太
(「ぞろぞろ」(龍太) 「むんず」(龍太) 「にょっぽり」(鬼貫) 「くりくり」(一茶) とオノマトペの揃い踏み)
鶴凍てて花の如きを糞りにけり 波多野爽波
(扨て 「糞」のルビだが、「ま」か「ひ」か?)
一箸に満ちたまひけり生身魂 細川加賀
大雷雨鬱王と会うあさの夢 赤尾兜子
ばさばさと股間につかふ扇かな 丸谷才一
東大寺湯屋の空ゆく落花かな 宇佐美魚目
(何故かジャンケン遊び「あっち向いてホイ」を思い出していた)
湯豆腐のかけらの影のあたゝかし 飴山實
(たゆたふ故に発動される陰影)
鶏頭に鶏頭ごつと触れゐたる 川崎展宏
(オノマトペ風流の始めはコノ一句より)
押し合うて海を桜のこゑわたる 川崎展宏
(そんなバカな俳諧道を突っ走る一句)
熱燗に討入りおりた者同士 川崎展宏
(「大仰(あふぎゃうに)解説したら興醒めしてしまいさうな一句。ここは沈黙沈黙…)
炎天へ打って出るべく茶漬飯 川崎展宏
冷酒のおりる段々咽(のど)にあり 川崎展宏
冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ 川崎展宏
(「視覚を聴覚化すればいいってぇもんじゃあねぇ」と天井から声が降って来たように思えたが?錯覚か)
栃木にいろいろ雨のたましいもいたり 阿部完市
(魂は一色の正反対を遣った一句。けだし魂は一色で充分だ)
正月の雪真清水の中に落つ 廣瀬直人
(俳諧初心の頃、真っ正直詠は尊いだとか、これぞ正月詠の美学とか云って教わった一句)
花の蜜はたりと蝶のかしぎけり 桜井博道
(蜜の粘着力によろめく蝶に、暗示されるものを想う)
春の雪いつしよふけんめい時計鳴る 桜井博道
微笑(ほほえみ)が妻の慟哭 雪しんしん 折笠美秋
(筋萎縮症という難病。最近同じく同病を患った患者の映画を見た。主演は今売れっ子の大泉洋。「こんな夜更けにバナナかよ」がその映画の題名。)
◾️大岡信 精選 折々のうた 中巻◾️
●印を付した句にはコメントを加えた。
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片 斎藤茂吉
ひきだしをなかば開きてばうぜんと机の前に物をおもへり 岩谷莫哀
海中に入りゆく石の階ありて夏の旅つひの行方しらずも 安永蕗子
さういふこともあろう、さうであろう、何しろ自分は自分で忙しい 若山牧水
なにしかも日記つけると人はいふ は は わしや松を植ゑとるのじゃよ 中勘助
(なにしかも=一体なぜ)
クレヨンに「肌色」といふ不可思議な色あり誰の肌とも違う 松平盟子
広場すべて速度と変る一瞬をゆらゆらと錯覚の如く自転車 高安国世
ゆびずもう親ゆびらしくたゝかへり 阿部青蛙
●山々の一度に笑ふ雪解にそこは沓々ここは下駄々々 山東京伝
(俳句にて誹諧を遣りたい御方には一度 狂歌のお勉強をしておきたい処)
花の蜜はたりと蝶のかしぎけり 桜井博道
春の雪いっしょうけんめい時計鳴る 同
鶯の次の声待つ吉祥天 加藤知世子
花は散りその色となくながむればむなしき空にはるさめぞ降る 式子内親王
ももちどりさへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふり行く よみ人しらず(古今集)
津山はや石の三鬼に草萌えて 森玲子
青天に紅梅晩年の仰ぎ癖 西東三鬼
鶏ねむる村の東西南北にぼあーんぼあーんと桃の花見ゆ 小中英之
花冷や履歴書に捺す摩滅印 福永耕二
春の浜大いなる輪が画いてある 高浜虚子
遅き日や土に腹つく犬の伸び 三宅嘯山
鵞鳥ーたくさんいっしょにゐるので、自分を見失はないために啼いてゐます 三好達治
海鳥の風にさからふ一ならび一羽くづれてみなくづれたり 若山牧水
おもひだすさくらとなれば母校かな 神崎忠
山里や男も遊ぶ針供養 村上鬼城
紺青の乗鞍の上に囀れり 前田普羅
筑波根もこえよと投つ火とり虫 田川鳳朗
炎天のとかげのわれを知る呼吸 秋山牧車
金線草(みづひきぐさ)、車前草(おほばこ)、鴨路草(つきくさ)、蓼の花みな一ときに咲きて目だたず 山口茂吉
いつせいにあふりたてられし峡の若葉やがてそれぞれのそよぎとぞなる 大悟法利雄
髪洗ふ女百態その一つ 高浜虚子
子燕のこぼれむばかりこぼれざる 小澤實
海霧のあと山きて坐る大暑かな 永田耕一郎
撥太皷習う子荒ら荒ら阿波夜波 古沢太穂
尾を曲げて瑠璃の濃くなる糸蜻蛉 堀口星眠
家は皆海に向ひて夏の月 柳原極堂
河鹿とはまろべる珠のごときもの 平井照敏
懐しやラムネの味に進歩なし 石井邦雄
打水の流るる先の生きてをり 上野泰
葉先より指に梳きとる蛍かな 長谷川櫂
天寿とは昼寝の覚めぬ御姿 阿波野青畝
帆のはらをつき出して行雲の峰 椎本才麿
夏木立地虫はベース蝉はファゴット 佐治敬三
ふればぬるぬるればかはく袖のうへを雨とていとふ人ぞはかなき 一遍上人
鳥渡る北を忘れし古磁石 鍵和田秞子
虫時雨猫をつかめばあたたかき 岸本尚毅
●月見酒下戸と上戸の顔見れば赤坂もあり靑山もあり 唐衣橘洲
大勢が夜霧の中を此方へ来る 星野立子
行秋やででむし殻の中に死す 森鴎外
指当てて一腑をさぐる夜の秋 丸山哲郎
鰍らは清きまさごを呑みけらし噛みつつをれば歯にさやる音 半田良平
魑魅魍魎月下に遊ぶ曼珠沙華 林原耒井
名は知らず草毎に花哀れなり 杉山杉風
●船にゐて身にしむ陸の燈火かな 本宮鼎三
(小生の第三句集につき身に余る句評を頂戴した。物故)
いま落ちし氷柱が海に透けてをり 橋本鶏二
一いろも動く物なき霜夜かな 岡田野水
起きぬけに妻のたたかふ凍の音 吉武月二郎
冬の蟇川にはなてば泳ぎけり 飯田蛇笏
駅暖炉入れ替る人亦無口 平井呈一
蹴ちらせば霜あらはるる落葉かな 高野素十
●一夜づつ捨て去るごとく寒を生く 上野さち子
(同門の先達。物故。その門下生が目下 インターネット句会に同席しているのも奇しきご縁)
年の夜のポストの口のあたたかし 宮坂静生
元日の句の龍之介なつかしき 久保田万太郎
●降り昏む雪はこそとの音もなししんしんとして鳴れるわが耳 尾山篤二郎
(尾山氏次女が小学校同窓。一昨年同窓会にてお会いした。癌を患うも服薬せず気丈な壮絶な死であった。昨年は有志で尾山宅にて
簡単な追悼会を実施 同窓会を行った。因みにわが町内ー武州 金澤文庫ーにゆかりの文人は河合玉堂 鏑木清方 尾山篤二郎)
冬の蠅二つになりぬあたたかし 臼田亜浪
正月の子供に成て見たき哉 小林一茶
水仙は密に挿しても孤なる花 大橋敦子
おほらかに もろて の ゆび を ひからせて
おほき ほとけ は あまたらしけり 会津八一
たれこめて春のゆくへもしらぬまにまちし桜もうつろひにけり 藤原因香
いたましき病人として八ケ日死にたかりけん生きたかりけん 佐藤志満(佐藤佐太郎夫人)
あかがねの色になりたるはげあたまかくの如くに生きのこりけり 斎藤茂吉
さればよとみるみる人の落ちぞ入るおほくの穴のよにはありける 西行
九十歳に至れりと言へば土屋先生を挙げなほ努めよといふ馬鹿ばかりなり 頴田島一二郎
思ひ見ればわれの命もこの一つの眼鏡を無事に保てるごとし 柴生田稔
おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり 斎藤茂吉
家ひとつ毀つ過程にあらはれて黒き階段が雨に濡れをり 川島喜代詩
雪のやうに木の葉のやうに淡ければさくりさくりと母を掬へり 馬場あき子
若葉よ。 来年になったら海へゆこう。 そして
じいちゃんもいっしょに貝になろう。 金子光晴
白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる 俵万智
白藤の花にむらがる蜂の音あゆみさかりてその音はなし 佐藤佐太郎
あぐらをかいて遠いビルを見ている何となく身の上話になってきた 宮崎信義
街灯のひとつがながくはぢらひのまたたきをしてのち点りいづ 上田三四二
戸をひけばすなはち待ちしもののごと辷り入り来ぬ光といふは 宮柊二
どんぶりを抱へてだれにも見られずに立蕎麦を食ふ時が好きなり 岩田正
朝床にめざめて吾は鳩尾より背にぬけゆきし弾(たま)おもひゐる 荒井孝
うくすつぬ童子唱へてえけせてね今日の終はりの湯の音のなか 今野寿美
母蟹の腹より百の小さき蟹匐ひ出づるごと新しくあれ 与謝野寛
草藉(し)きて臥すわが脈は方十里寝ねたる森の中心に摶つ 森鴎外
わが足はかくこそ立てれ重力のあらむかぎりを私しつつ 同
かへりみて言葉短し大方は命令形にて犬を従ふ 徳山高明
最後に 短いが 上巻の句を挙げておく
花冷の包丁獣脂もて曇る 木下夕爾
菫越して小さき風や渡りけり 篠原温亭
◾️大岡信精選折々のうた 下巻◾️
映画の新作をいっぽん見て 一階下の書店に立ち寄った。
例によって 俳句コーナー。まあめぼしいものはなかったが
大岡信 精選折々のうた が目にとまった。
ぱらぱらとめくったら 既視感のない句やら短歌が目にとまった。
上中下3巻ある ちょっと値が張るので これはネットで検索して
図書館で借りることにした。今は自宅で検索し図書が借りられる時代
である。上中下のうち 上はほとんど見た句群が多い。既視感の少ない
のは中巻下巻。今回は下巻の例句を以下に挙げる。
●印を付した句には小生のコメントを加えた。
食べる時だけ静かなる幼らが冬陽に浄き耳をそろへて 藤井幸子
肋木をのぼりつめたる子の遊びおくれしものを容赦なく蹴る 一ノ関忠人
斬られたるごとく昼寝の道具方 吉岡桂六
●冷酒のおりる段々咽にあり 川崎展宏
●箸割ってわが冷麦の季来る 星野麥丘人
(現在の俳壇で崇拝する俳人のお二方であるが 展宏さんは先に亡くなられた)
ふつつかな魚のまちがひそらを泳ぎ 渡辺白泉
●潮満ちて海鼠最も油断の季 津田清子
●あめんぼも蛙も村を出る気なし 同
(この方のずけずけした物言いも大好きである)
冷奴、めうが、トマトを冷たくしひとりの食は火を使はざる 佐藤慶子
あれこれと研ぎし水打つ研屋かな 土生重次
衣更へて魚のこころで町に出る 能村登四郎
白玉や母は中座のやうに逝き 山田碧
若葉みな心臓のかたち眼のかたち 多田智満子
わが顔を忘れてすする心太 澤木三乗
●ところてん昭和がふっと顔を出す 藤田湘子
(亡くなったが共鳴した俳人 最晩年の句集 神楽など好ましい)
満腹の蚊のゆっくりと打たれけり 近藤酔舟
女子フィギュアの丸きおしりをみてありてしばしほのぼのと灯れり夫は 馬場あき子
赤蜻蛉まだびしょびしょの空の中 小檜山繁子
水羊羹喜劇も淡き筋ぞよき 水原秋櫻子
弱らせて草に帰せしすいっちょん 遠藤千鶴羽
鰯群来畑のやうな海となる 成田千空
●滝行の白衣干さるる紅葉小屋 吉野義子
(同門の先達で 早々に一誌起こして四国から東京支部句会に出席せんとはりきって
上京し俳論を滔滔とホテルで述べあったおばちゃん)
蝉の屍(し)の鳴き尽したる軽さかな 大倉郁子
秋来ぬと合点させたる嚏かな 與謝蕪村
焼かれたる秋刀魚の顔は皿の外 井上緑水
秋草や鉄から壊(く)える土の蔵 北島大果
火に投げし鶏頭根ごと立ちあがる 大木あまり
柿の木であいと答へる小僧かな 小林一茶
父母を乗せきしきしきしむ茄子の馬 岸本マチ子
秋蒔や陽を混ぜて土ふくらます 田山康子
芋の葉のいやいや合点々々かな 高浜虚子
芋の露不器用といふ宝もの 富樫均
産院へさんさ踊の笠のまま 小原啄葉
●めぐまれて小さな星に棲みながら人間最も凶悪である 坪野哲久
(どなたであつたか 文化人類学者で人間が作り出したもので一番悪いものは
原子爆弾であると云ったのは。確か 自然界には無いものでという条件下で。
今般 その原発になやまされている。日本どころか全世界が。)
おもむろに自然に近くなりゆくを老いとはいわじ涅槃とぞいわむ 鶴見和子
●折折に遊ぶいとまはある人のいとまなしとて書(ふみ)よまぬかな 本居宣長
(まったくこのとおりだ 小生も)
存分に老人の顔になったなと語りかけたき鏡中のひと 清水房雄
自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあらず 富小路禎子
腹痛におろおろ下りし駅の階過ぎては演技の如き感あり 大島史洋
面の皮いちまい剥ぎてばあといふ遊びをしたしこの日疲れて 藤井常世
すこし痩せて妻と歩めば平凡な市民にすぎずニキタ・フルシチョフ 四賀光子
「結果として」を上につければわが行動の大方は説明がつく 高瀬一誌
●月のひかりにのどを湿めしてをりしかば人間とはほそながき管のごとかり 森岡貞香
(当時 欧米や日本の現代詩で人間を管に還元して見る比喩が愛用された・・・と大岡は書く。
実は小生の賞賛する川崎展宏に 人間は管よりなれる日短 という句があるがこれもその影響下か
どなたか その源を突き止めてはくださらぬか)
包丁を研ぐのが好きで指に眼が付くまで研いで七本を過ぐ 河野裕子
「鶏も高きに居れば鳳凰とならん」おかしな末吉を抽く 佐伯裕子
●縞馬の尻の穴より全方位に縞湧き出づるうるはしきかな 小池光
(まあよく観察していること。最近の動物園は動物に優しく出来ていて当歌の如くこんな近くでは観察できない。
逆に古くからある動物園は人間に優しく出来ていて歌詠みにはうってつけ その違いを知っている御仁はどれほ
どいるかしら?)
木の枝に雀一列ならびゐてひとつびとつにものいふあはれ 北原白秋
夜の渋谷公園通り 薔薇色の臓器を吊りてピピピして居り 佐々木幸綱
をとめらはエレベータに口噤みアスパラガスの束のごとしも 篠弘
まなざしに仰角30度の陶酔があるあなたはきけば指揮者だといふ 井辻朱美
衣裾より上へ上へとあがりくるばうじゃくぶじん人の視線の 森岡貞香
●世を乱すほどにはあらぬ歌詠みて刷りて送りて人煩はす 来島靖生
(こんな塩梅で俳人もお互いの句集等をやりとりしている。困ったものだ)
女の手冬菜を洗ふとき撓ふ 井上雪
●なまはげの一服つける森の闇 松崎鉄之介
(同門 秋田の古参俳人 縄田屋朗々が企画して行われた男鹿年越吟行。大三十日の
真山神社での作。小生も同席 宮津さんも同行。先達の句の巧さに脱帽。
このとき 確か 師鉄之介の句に 小つごもり大つごもりも月の海 だったか詳細は忘れたが
一句の中に 小つごもり大つごもり を入れてくるテクニックには正直なところまいったという感がした。
尚 同夜 真夜中 朗々がなかなか眠れぬと言って寝床で一服つけた。
小生も一服しながら四方山話。そのとき朗々が言った”この煙草の煙でおかあちゃんを殺してしまった”という
言葉が今でもわすられない。朗々も今は亡き人)
水鳥のあさきゆめみし声こぼす 青柳志解樹
●手毬突く石の仁王に唄聞かせ 宮津昭彦
(ついせんだって 宮津さんは亡くなった。この句は 遠樹にあるという。
ちかじか いつかゆっくり宮津さんの句集を読み返してみたいとおもう)
春雨にぬれてや水も青う行 加賀千代女
しんしんと柱が細る深雪かな 栗生純夫
●冬の蠅少しあたたかいとこれだ 辻田克巳
(誹諧の句ではこの人。強烈なひねりが真骨頂)
●たった一字の誤植切なき霜夜かな 小田島季走
(「だんだんみんなゐなくなる」所収。 句よりもこの句集名はなんだ!
この頃の句集名はおもしろくない。これぐらいやらねば・・・・)
訪ひ来るは古人のみなり冬籠 志城柏
(本名は目崎徳衛)
寒の水ひきずって鮒釣りにけり 大図四星
●さきいずるやさくらさくらとさきつらなり 荻原井泉水
(どなたも 毎年 さくらが咲けば さくらの句を作りたくなるが
この一句があれば すべて代弁出来ようというもの)
●赤い根のところ南無妙菠薐草 川崎展宏
(南無妙菠薐草のところ 南無妙が菠薐草に掛かってゆくところ この化け方が
いろいろ応用出来ることを当句は示している。数学の定理みたいな一句)
啓蟄の世に出たがりの鼻毛かな 山上樹実雄
ものの芽の力に雨の加はりぬ 稲畑汀子
布団たたみ雑巾しぼり別れとす 和之(処刑時三十一歳)
全身を口にして受く春の雪 白洋(処刑時 二十七歳)
●ばんざいの姿で蛇に銜えられ春らんまんの蛙いっぴき 鳥海昭子
(マンガチッックな構図が見事である)
男とは老いておとなし梅を仰ぐ 本井英
生れたる蠅すぐ人を疑へり 百合山羽公
●春キャベツ象の花子の耳破れ 佐藤若菜
(2日前 近くの野毛山動物園に花見がてら行ってきた。
目的は駱駝の”つがる”さんを見に。山妻がご執心。人間なら100歳のおばあちゃん駱駝。
前脚を怪我していてもう立ち上がれない。余命もあと僅か。小学生が激励とばかり何枚ものクレヨン画を
近辺に張り出してある)
蛇穴を出れば飛行機日和かな 幸田露伴
コロッケはその街のかほあたたかし 中嶋秀子
一切をふりむかずくる春の濤 太田保子
黙々と妻がしまひゆく春の雛しまひきれざる歳月があり 水上良介
ブリキ屋の町より消えて春深む 東野礼子
(俳優 東野英治郎の夫人)
釜上げの白魚直ぐなるものをらず 柴田美雪
薦着ても好な旅なり花の雨 田上菊舎
以上
#
by 575fudemakase
| 2011-04-20 09:14
| ブログ
大岡信 精選 折々のうた 中巻
●印を付した句にはコメントを加えた。
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片 斎藤茂吉
ひきだしをなかば開きてばうぜんと机の前に物をおもへり 岩谷莫哀
海中に入りゆく石の階ありて夏の旅つひの行方しらずも 安永蕗子
さういふこともあろう、さうであろう、何しろ自分は自分で忙しい 若山牧水
なにしかも日記つけると人はいふ は は わしや松を植ゑとるのじゃよ 中勘助
(なにしかも=一体なぜ)
クレヨンに「肌色」といふ不可思議な色あり誰の肌とも違う 松平盟子
広場すべて速度と変る一瞬をゆらゆらと錯覚の如く自転車 高安国世
ゆびずもう親ゆびらしくたゝかへり 阿部青蛙
●山々の一度に笑ふ雪解にそこは沓々ここは下駄々々 山東京伝
(俳句にて誹諧を遣りたい御方には一度 狂歌のお勉強をしておきたい処)
花の蜜はたりと蝶のかしぎけり 桜井博道
春の雪いっしょうけんめい時計鳴る 同
鶯の次の声待つ吉祥天 加藤知世子
花は散りその色となくながむればむなしき空にはるさめぞ降る 式子内親王
ももちどりさへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふり行く よみ人しらず(古今集)
津山はや石の三鬼に草萌えて 森玲子
青天に紅梅晩年の仰ぎ癖 西東三鬼
鶏ねむる村の東西南北にぼあーんぼあーんと桃の花見ゆ 小中英之
花冷や履歴書に捺す摩滅印 福永耕二
春の浜大いなる輪が画いてある 高浜虚子
遅き日や土に腹つく犬の伸び 三宅嘯山
鵞鳥ーたくさんいっしょにゐるので、自分を見失はないために啼いてゐます 三好達治
海鳥の風にさからふ一ならび一羽くづれてみなくづれたり 若山牧水
おもひだすさくらとなれば母校かな 神崎忠
山里や男も遊ぶ針供養 村上鬼城
紺青の乗鞍の上に囀れり 前田普羅
筑波根もこえよと投つ火とり虫 田川鳳朗
炎天のとかげのわれを知る呼吸 秋山牧車
金線草(みづひきぐさ)、車前草(おほばこ)、鴨路草(つきくさ)、蓼の花みな一ときに咲きて目だたず 山口茂吉
いつせいにあふりたてられし峡の若葉やがてそれぞれのそよぎとぞなる 大悟法利雄
髪洗ふ女百態その一つ 高浜虚子
子燕のこぼれむばかりこぼれざる 小澤實
海霧のあと山きて坐る大暑かな 永田耕一郎
撥太皷習う子荒ら荒ら阿波夜波 古沢太穂
尾を曲げて瑠璃の濃くなる糸蜻蛉 堀口星眠
家は皆海に向ひて夏の月 柳原極堂
河鹿とはまろべる珠のごときもの 平井照敏
懐しやラムネの味に進歩なし 石井邦雄
打水の流るる先の生きてをり 上野泰
葉先より指に梳きとる蛍かな 長谷川櫂
天寿とは昼寝の覚めぬ御姿 阿波野青畝
帆のはらをつき出して行雲の峰 椎本才麿
夏木立地虫はベース蝉はファゴット 佐治敬三
ふればぬるぬるればかはく袖のうへを雨とていとふ人ぞはかなき 一遍上人
鳥渡る北を忘れし古磁石 鍵和田秞子
虫時雨猫をつかめばあたたかき 岸本尚毅
●月見酒下戸と上戸の顔見れば赤坂もあり靑山もあり 唐衣橘洲
大勢が夜霧の中を此方へ来る 星野立子
行秋やででむし殻の中に死す 森鴎外
指当てて一腑をさぐる夜の秋 丸山哲郎
鰍らは清きまさごを呑みけらし噛みつつをれば歯にさやる音 半田良平
魑魅魍魎月下に遊ぶ曼珠沙華 林原耒井
名は知らず草毎に花哀れなり 杉山杉風
●船にゐて身にしむ陸の燈火かな 本宮鼎三
(小生の第三句集につき身に余る句評を頂戴した。物故)
いま落ちし氷柱が海に透けてをり 橋本鶏二
一いろも動く物なき霜夜かな 岡田野水
起きぬけに妻のたたかふ凍の音 吉武月二郎
冬の蟇川にはなてば泳ぎけり 飯田蛇笏
駅暖炉入れ替る人亦無口 平井呈一
蹴ちらせば霜あらはるる落葉かな 高野素十
●一夜づつ捨て去るごとく寒を生く 上野さち子
(同門の先達。物故。その門下生が目下 インターネット句会に同席しているのも奇しきご縁)
年の夜のポストの口のあたたかし 宮坂静生
元日の句の龍之介なつかしき 久保田万太郎
●降り昏む雪はこそとの音もなししんしんとして鳴れるわが耳 尾山篤二郎
(尾山氏次女が小学校同窓。一昨年同窓会にてお会いした。癌を患うも服薬せず気丈な壮絶な死であった。昨年は有志で尾山宅にて
簡単な追悼会を実施 同窓会を行った。因みにわが町内ー武州 金澤文庫ーにゆかりの文人は河合玉堂 鏑木清方 尾山篤二郎)
冬の蠅二つになりぬあたたかし 臼田亜浪
正月の子供に成て見たき哉 小林一茶
水仙は密に挿しても孤なる花 大橋敦子
おほらかに もろて の ゆび を ひからせて
おほき ほとけ は あまたらしけり 会津八一
たれこめて春のゆくへもしらぬまにまちし桜もうつろひにけり 藤原因香
いたましき病人として八ケ日死にたかりけん生きたかりけん 佐藤志満(佐藤佐太郎夫人)
あかがねの色になりたるはげあたまかくの如くに生きのこりけり 斎藤茂吉
さればよとみるみる人の落ちぞ入るおほくの穴のよにはありける 西行
九十歳に至れりと言へば土屋先生を挙げなほ努めよといふ馬鹿ばかりなり 頴田島一二郎
思ひ見ればわれの命もこの一つの眼鏡を無事に保てるごとし 柴生田稔
おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり 斎藤茂吉
家ひとつ毀つ過程にあらはれて黒き階段が雨に濡れをり 川島喜代詩
雪のやうに木の葉のやうに淡ければさくりさくりと母を掬へり 馬場あき子
若葉よ。 来年になったら海へゆこう。 そして
じいちゃんもいっしょに貝になろう。 金子光晴
白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる 俵万智
白藤の花にむらがる蜂の音あゆみさかりてその音はなし 佐藤佐太郎
あぐらをかいて遠いビルを見ている何となく身の上話になってきた 宮崎信義
街灯のひとつがながくはぢらひのまたたきをしてのち点りいづ 上田三四二
戸をひけばすなはち待ちしもののごと辷り入り来ぬ光といふは 宮柊二
どんぶりを抱へてだれにも見られずに立蕎麦を食ふ時が好きなり 岩田正
朝床にめざめて吾は鳩尾より背にぬけゆきし弾(たま)おもひゐる 荒井孝
うくすつぬ童子唱へてえけせてね今日の終はりの湯の音のなか 今野寿美
母蟹の腹より百の小さき蟹匐ひ出づるごと新しくあれ 与謝野寛
草藉(し)きて臥すわが脈は方十里寝ねたる森の中心に摶つ 森鴎外
わが足はかくこそ立てれ重力のあらむかぎりを私しつつ 同
かへりみて言葉短し大方は命令形にて犬を従ふ 徳山高明
最後に 短いが 上巻の句を挙げておく
花冷の包丁獣脂もて曇る 木下夕爾
菫越して小さき風や渡りけり 篠原温亭
●印を付した句にはコメントを加えた。
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片 斎藤茂吉
ひきだしをなかば開きてばうぜんと机の前に物をおもへり 岩谷莫哀
海中に入りゆく石の階ありて夏の旅つひの行方しらずも 安永蕗子
さういふこともあろう、さうであろう、何しろ自分は自分で忙しい 若山牧水
なにしかも日記つけると人はいふ は は わしや松を植ゑとるのじゃよ 中勘助
(なにしかも=一体なぜ)
クレヨンに「肌色」といふ不可思議な色あり誰の肌とも違う 松平盟子
広場すべて速度と変る一瞬をゆらゆらと錯覚の如く自転車 高安国世
ゆびずもう親ゆびらしくたゝかへり 阿部青蛙
●山々の一度に笑ふ雪解にそこは沓々ここは下駄々々 山東京伝
(俳句にて誹諧を遣りたい御方には一度 狂歌のお勉強をしておきたい処)
花の蜜はたりと蝶のかしぎけり 桜井博道
春の雪いっしょうけんめい時計鳴る 同
鶯の次の声待つ吉祥天 加藤知世子
花は散りその色となくながむればむなしき空にはるさめぞ降る 式子内親王
ももちどりさへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふり行く よみ人しらず(古今集)
津山はや石の三鬼に草萌えて 森玲子
青天に紅梅晩年の仰ぎ癖 西東三鬼
鶏ねむる村の東西南北にぼあーんぼあーんと桃の花見ゆ 小中英之
花冷や履歴書に捺す摩滅印 福永耕二
春の浜大いなる輪が画いてある 高浜虚子
遅き日や土に腹つく犬の伸び 三宅嘯山
鵞鳥ーたくさんいっしょにゐるので、自分を見失はないために啼いてゐます 三好達治
海鳥の風にさからふ一ならび一羽くづれてみなくづれたり 若山牧水
おもひだすさくらとなれば母校かな 神崎忠
山里や男も遊ぶ針供養 村上鬼城
紺青の乗鞍の上に囀れり 前田普羅
筑波根もこえよと投つ火とり虫 田川鳳朗
炎天のとかげのわれを知る呼吸 秋山牧車
金線草(みづひきぐさ)、車前草(おほばこ)、鴨路草(つきくさ)、蓼の花みな一ときに咲きて目だたず 山口茂吉
いつせいにあふりたてられし峡の若葉やがてそれぞれのそよぎとぞなる 大悟法利雄
髪洗ふ女百態その一つ 高浜虚子
子燕のこぼれむばかりこぼれざる 小澤實
海霧のあと山きて坐る大暑かな 永田耕一郎
撥太皷習う子荒ら荒ら阿波夜波 古沢太穂
尾を曲げて瑠璃の濃くなる糸蜻蛉 堀口星眠
家は皆海に向ひて夏の月 柳原極堂
河鹿とはまろべる珠のごときもの 平井照敏
懐しやラムネの味に進歩なし 石井邦雄
打水の流るる先の生きてをり 上野泰
葉先より指に梳きとる蛍かな 長谷川櫂
天寿とは昼寝の覚めぬ御姿 阿波野青畝
帆のはらをつき出して行雲の峰 椎本才麿
夏木立地虫はベース蝉はファゴット 佐治敬三
ふればぬるぬるればかはく袖のうへを雨とていとふ人ぞはかなき 一遍上人
鳥渡る北を忘れし古磁石 鍵和田秞子
虫時雨猫をつかめばあたたかき 岸本尚毅
●月見酒下戸と上戸の顔見れば赤坂もあり靑山もあり 唐衣橘洲
大勢が夜霧の中を此方へ来る 星野立子
行秋やででむし殻の中に死す 森鴎外
指当てて一腑をさぐる夜の秋 丸山哲郎
鰍らは清きまさごを呑みけらし噛みつつをれば歯にさやる音 半田良平
魑魅魍魎月下に遊ぶ曼珠沙華 林原耒井
名は知らず草毎に花哀れなり 杉山杉風
●船にゐて身にしむ陸の燈火かな 本宮鼎三
(小生の第三句集につき身に余る句評を頂戴した。物故)
いま落ちし氷柱が海に透けてをり 橋本鶏二
一いろも動く物なき霜夜かな 岡田野水
起きぬけに妻のたたかふ凍の音 吉武月二郎
冬の蟇川にはなてば泳ぎけり 飯田蛇笏
駅暖炉入れ替る人亦無口 平井呈一
蹴ちらせば霜あらはるる落葉かな 高野素十
●一夜づつ捨て去るごとく寒を生く 上野さち子
(同門の先達。物故。その門下生が目下 インターネット句会に同席しているのも奇しきご縁)
年の夜のポストの口のあたたかし 宮坂静生
元日の句の龍之介なつかしき 久保田万太郎
●降り昏む雪はこそとの音もなししんしんとして鳴れるわが耳 尾山篤二郎
(尾山氏次女が小学校同窓。一昨年同窓会にてお会いした。癌を患うも服薬せず気丈な壮絶な死であった。昨年は有志で尾山宅にて
簡単な追悼会を実施 同窓会を行った。因みにわが町内ー武州 金澤文庫ーにゆかりの文人は河合玉堂 鏑木清方 尾山篤二郎)
冬の蠅二つになりぬあたたかし 臼田亜浪
正月の子供に成て見たき哉 小林一茶
水仙は密に挿しても孤なる花 大橋敦子
おほらかに もろて の ゆび を ひからせて
おほき ほとけ は あまたらしけり 会津八一
たれこめて春のゆくへもしらぬまにまちし桜もうつろひにけり 藤原因香
いたましき病人として八ケ日死にたかりけん生きたかりけん 佐藤志満(佐藤佐太郎夫人)
あかがねの色になりたるはげあたまかくの如くに生きのこりけり 斎藤茂吉
さればよとみるみる人の落ちぞ入るおほくの穴のよにはありける 西行
九十歳に至れりと言へば土屋先生を挙げなほ努めよといふ馬鹿ばかりなり 頴田島一二郎
思ひ見ればわれの命もこの一つの眼鏡を無事に保てるごとし 柴生田稔
おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり 斎藤茂吉
家ひとつ毀つ過程にあらはれて黒き階段が雨に濡れをり 川島喜代詩
雪のやうに木の葉のやうに淡ければさくりさくりと母を掬へり 馬場あき子
若葉よ。 来年になったら海へゆこう。 そして
じいちゃんもいっしょに貝になろう。 金子光晴
白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる 俵万智
白藤の花にむらがる蜂の音あゆみさかりてその音はなし 佐藤佐太郎
あぐらをかいて遠いビルを見ている何となく身の上話になってきた 宮崎信義
街灯のひとつがながくはぢらひのまたたきをしてのち点りいづ 上田三四二
戸をひけばすなはち待ちしもののごと辷り入り来ぬ光といふは 宮柊二
どんぶりを抱へてだれにも見られずに立蕎麦を食ふ時が好きなり 岩田正
朝床にめざめて吾は鳩尾より背にぬけゆきし弾(たま)おもひゐる 荒井孝
うくすつぬ童子唱へてえけせてね今日の終はりの湯の音のなか 今野寿美
母蟹の腹より百の小さき蟹匐ひ出づるごと新しくあれ 与謝野寛
草藉(し)きて臥すわが脈は方十里寝ねたる森の中心に摶つ 森鴎外
わが足はかくこそ立てれ重力のあらむかぎりを私しつつ 同
かへりみて言葉短し大方は命令形にて犬を従ふ 徳山高明
最後に 短いが 上巻の句を挙げておく
花冷の包丁獣脂もて曇る 木下夕爾
菫越して小さき風や渡りけり 篠原温亭
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by 575fudemakase
| 2011-04-18 09:00
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Trackback
[ 句集誰が袖伊藤瓔子 ]
句集上木おめでとうございます。
面識無きながら 早々のご恵送ありがとうございます。
ザッと拝見 大変な果汁ある句集と読了いたしました。
句集 あとがきを詠むに
句集を編む作業は 様々な思い出と向き合うことでもあり
これまで 私を支えてきてくれた方々への感謝と郷愁の想い
に満たされ作業
とあり ここらへんにこの作者のこころばえのよろしさを
感じ入った次第です。
刀自は 阿波野青畝門。 随所に おおらかな滑稽が健在で
あり ここぞと膝を叩く場面が多々ありました。
中でも 次句あたりは これはこれはとおもう御句
午前中三面六臂午後昼寝
目に青葉老眼鏡を誂へむ
前句 確か青畝も漢語使いの名手 三面六臂の一語が躍動している
後句は 「目には青葉 山郭公 初松魚」山口素堂 を換骨奪胎し
途中から「老眼鏡を誂へむ」と脱線するところなどは こころにくいまで
の秀作。
向後の研鑽を期待するところです。
雪解をドレミドレミと聞きにけり
のびあがり名乗るがごとき物芽かな
ちょびひげのごときもの芽や鉢に出づ
塀越えてその先知らずシャボン玉
わが庭に君臨するは牡丹かな
含羞草その従順におどろきぬ
選り好みして掬へざる金魚かな
昼寝子に添へる人形寝返らず
阿とひらき呍と消えぬる花火かな
銀鈴の鳴るが如くに桔梗咲く
われここにありとつつ立つ吾亦紅
木曾材のかぐはしきかな時雨くる
さきほどはピアノひく手が毛糸編む
空想が空想を呼び毛糸編む
子だくさん名を連ねたる賀状かな
白木蓮や宣誓の手を挙げしごと
牡丹見にどの塔頭に入らむか
大和路は田んぼの中の鯉幟
お手柄の鵜を見て縄を寄せにけり
根こそぎにせむと闘志や草を引く
スコップの力借りねば引けぬ草
里帰り母の見立ての春着着て
棒切れが国境をなす蝌蚪の国
私が起きねば家族皆朝寝
「でも」「だつて」「けれど」と春の愁ひかな
春眠の後の発想転換す
首飾りして閻王のいかり肩
午前中三面六臂午後昼寝
六甲の羊腸の道霧流る
虫の闇裂くは暴走族なりし
静謐の炎といはむ曼珠沙華
大宇陀の白装束の案山子かな
字幕にも目を走らせて毛糸編む
ペン画もて俳画となせり十田久忌(十田久は青畝の号)
手炉の灰煙草の灰と交はらず
毛氈の二人に一つづつの手炉
麦の芽のたどたどしくも縞模様
寒牡丹巫女の緋袴より赤し
寒禽の忘れしころに髙音張る
わが道をゆくと残りし鴨ならめ
包丁の銘は堺や桜鯛
春愁や櫛の通りの悪き髪
雨の日は意気消沈の含羞草
灯の海の東京眺めビール酌む
若いのに俳句ですかと夏炉焚く
鰻屋の古色蒼然たる団扇
破芭蕉亀裂が亀裂呼びにけり
お互ひに子を誉めあひて日向ぼこ
明日のパン小脇に抱へ日記買ふ
万太郎句碑に三味線草ばかり
徳利のあやふく立てる花筵
しやぼん玉吹くひとときは母追はず
目に青葉老眼鏡を誂へむ
赤詰草母に白詰草父に
雨粒をはじきて太る実梅かな
渋滞といふことのなし蟻の道
絹糸にまさるかがやき蜘蛛の糸
石垣につきあたりたる木下闇
端居して見入るともなき庭の雨
漱石忌伊予のみかんに舌鼓
句集上木おめでとうございます。
面識無きながら 早々のご恵送ありがとうございます。
ザッと拝見 大変な果汁ある句集と読了いたしました。
句集 あとがきを詠むに
句集を編む作業は 様々な思い出と向き合うことでもあり
これまで 私を支えてきてくれた方々への感謝と郷愁の想い
に満たされ作業
とあり ここらへんにこの作者のこころばえのよろしさを
感じ入った次第です。
刀自は 阿波野青畝門。 随所に おおらかな滑稽が健在で
あり ここぞと膝を叩く場面が多々ありました。
中でも 次句あたりは これはこれはとおもう御句
午前中三面六臂午後昼寝
目に青葉老眼鏡を誂へむ
前句 確か青畝も漢語使いの名手 三面六臂の一語が躍動している
後句は 「目には青葉 山郭公 初松魚」山口素堂 を換骨奪胎し
途中から「老眼鏡を誂へむ」と脱線するところなどは こころにくいまで
の秀作。
向後の研鑽を期待するところです。
雪解をドレミドレミと聞きにけり
のびあがり名乗るがごとき物芽かな
ちょびひげのごときもの芽や鉢に出づ
塀越えてその先知らずシャボン玉
わが庭に君臨するは牡丹かな
含羞草その従順におどろきぬ
選り好みして掬へざる金魚かな
昼寝子に添へる人形寝返らず
阿とひらき呍と消えぬる花火かな
銀鈴の鳴るが如くに桔梗咲く
われここにありとつつ立つ吾亦紅
木曾材のかぐはしきかな時雨くる
さきほどはピアノひく手が毛糸編む
空想が空想を呼び毛糸編む
子だくさん名を連ねたる賀状かな
白木蓮や宣誓の手を挙げしごと
牡丹見にどの塔頭に入らむか
大和路は田んぼの中の鯉幟
お手柄の鵜を見て縄を寄せにけり
根こそぎにせむと闘志や草を引く
スコップの力借りねば引けぬ草
里帰り母の見立ての春着着て
棒切れが国境をなす蝌蚪の国
私が起きねば家族皆朝寝
「でも」「だつて」「けれど」と春の愁ひかな
春眠の後の発想転換す
首飾りして閻王のいかり肩
午前中三面六臂午後昼寝
六甲の羊腸の道霧流る
虫の闇裂くは暴走族なりし
静謐の炎といはむ曼珠沙華
大宇陀の白装束の案山子かな
字幕にも目を走らせて毛糸編む
ペン画もて俳画となせり十田久忌(十田久は青畝の号)
手炉の灰煙草の灰と交はらず
毛氈の二人に一つづつの手炉
麦の芽のたどたどしくも縞模様
寒牡丹巫女の緋袴より赤し
寒禽の忘れしころに髙音張る
わが道をゆくと残りし鴨ならめ
包丁の銘は堺や桜鯛
春愁や櫛の通りの悪き髪
雨の日は意気消沈の含羞草
灯の海の東京眺めビール酌む
若いのに俳句ですかと夏炉焚く
鰻屋の古色蒼然たる団扇
破芭蕉亀裂が亀裂呼びにけり
お互ひに子を誉めあひて日向ぼこ
明日のパン小脇に抱へ日記買ふ
万太郎句碑に三味線草ばかり
徳利のあやふく立てる花筵
しやぼん玉吹くひとときは母追はず
目に青葉老眼鏡を誂へむ
赤詰草母に白詰草父に
雨粒をはじきて太る実梅かな
渋滞といふことのなし蟻の道
絹糸にまさるかがやき蜘蛛の糸
石垣につきあたりたる木下闇
端居して見入るともなき庭の雨
漱石忌伊予のみかんに舌鼓
#
by 575fudemakase
| 2011-04-16 09:49
| 句集評など
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俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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