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元素 類語関連語(例句)

元素 類語関連語(例句)

●元素●水素●酸素●窒素●炭素●砒素●塩素●硫黄●燐●沃素●沃度●原子●原子核●電子●陽子●中性子●素粒子●ニュートリノ●ラジウム

●元素 
日脚伸ぶ重い元素と軽い元素 田中裕明
元素記号子の諳んずる夜の秋 高澤良一 ねずみのこまくら
亀鳴くや元素記号を不意に書き 嶋田麻紀
●水素 
みてやれば水素記号のようなり舟の子 阿部完市 軽のやまめ
●酸素 
『月に吠える』が書かれた部屋だ 薄い酸素 伊丹公子
ここに酸素湧く泉ありクリスマス 石田波郷
しんかんと酸素を売れり星祭 杉本雷造
トラックの酸素の瓶に梅雨はげし 横山 房子
五六粒照り合ふ栗や酸素吸ふ 羽田貞雄
仏法僧生きるに一途酸素吸ふ 徳武和美 『梅の香をり』
厳寒の何に化さんと酸素吸ふ 野澤節子
向日葵に囲まれ酸素不足なり 山崎せつ子
咽喉口に酸素つめたし秋海棠 石田波郷
履歴書に遺す帝国酸素かな 攝津幸彦 鹿々集
巌寒の何に化さんと酸素吸ふ(かかることもせよとや) 野澤節子 『駿河蘭』
教科書は酸素不足や冬深し 内山思考
新涼や酸素の薄い街に居て 田原ますみ
林中を酸素ゆたかに春着の子 原子公平
栗飯や酸素を吸はぬ夫うれし 石田あき子 見舞籠
梅雨の朝酸素分子も緑なり 榎本泰子
水見えぬ酸素袋に金魚の荷 中田勘一 『雪礫』
海べの男酸素工場の夜業で銹びる 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
湯上がりの酸素の旨し桂郎忌 浜 明史
痒い鉄錆肺で酸素をもやせども 佐藤鬼房
秋の暮食後の酸素夫が吸ふ 石田あき子 見舞籠
秋ははて酸素ぶくぶく水族館 櫂未知子 蒙古斑
綿虫のまはりの酸素世界とは 須藤 徹
造船所寒燈も酸素の火も裸 西東三鬼
酢のものを抓む酸素のこと思ひ 攝津幸彦 未刊句集
酸素うましといふ師がかなし法師蝉 岸田稚魚 筍流し
酸素さはに吸はせて除夜の患者守る 佐藤斗星 『七草の籠』
酸素テントに護られゐるや雪の界 白松達夫 『初松籟』
酸素ボンベころがり松もとれし町 岩崎健一
酸素ボンベころがり路地の冬終る 菖蒲あや 路 地
酸素マスク掛けチチカカの船遊び 品川鈴子
酸素吸ひ泣けば冬月歪むかな 徳武和美 『梅の香をり』
酸素吸ふ夫の荒息三ケ日 大川幸子 『小春日和』
酸素吸ふ夫まざまざと稲光 石田あき子 見舞籠
酸素吸ふ師を見てをりぬ楢若葉 岸田稚魚 筍流し
酸素吸ふ鉄の肺めき冴返る 徳武和美 『梅の香をり』
酸素吸入額を去らぬ春の蝿 成川仙火
酸素足ればわが掌も赤し梅擬 石田波郷
金魚売魔法の酸素吹き入るる 小林春水
雪あかり酸素外れてゐたりけり 石田あき子 見舞籠
青梅の香りどこより酸素吸ふ 徳武和美 『梅の香をり』
●窒素
●炭素
●砒素 
散乱のスミレタンポポ砒素が欲し 鳴戸奈菜
新妻の砒素の楽しみ雪月花 筑紫磐井 花鳥諷詠
朝日あびる中学校の砒素の瓶 穴井太 天籟雑唱
●塩素 
発光せよなきがらの残留塩素 江里昭彦
●硫黄 
おぼろ夜の傷もおぼろに硫黄の湯 鍵和田[ゆう]子 浮標
冬沼に硫黄を掬ひ唄ふなし 佐藤鬼房
初秋とおもふ四五歩に硫黄の香 神尾久美子
卯木咲き硫黄こぼるゝ谷の道 秋元不死男
地の果ての硫黄地獄の猫じやらし 仙田洋子 橋のあなたに
夏霧の明るきところ硫黄噴く 新谷氷照
夕凪の硫黄漂ふ雲仙岳 岡部幸子
大瑠璃や渓に鉄泉硫黄泉 鈴木麻璃子
懸巣鳴き硫黄の染みし磧石 大橋敦子 匂 玉
断崖の硫黄剥落して燕 古舘曹人 能登の蛙
有馬路に硫黄の匂ひ濃紫陽花 竪 ヤエ子
末黒野の一つの山は硫黄噴く 友成ゆりこ
歳月や地獄も霞む硫黄島 川崎展宏 冬
死屍の蛆食ひ硫黄島「玉砕」す 矢島渚男 百済野
残雪に隅々見せて硫黄小屋 河野南畦 湖の森
殺生河原硫黄育ちの蝿勁し 矢島久栄
硫黄の湯噴くやむせびて田掻牛 水原秋櫻子
硫黄の香噴き出す岩より夏スキー 有賀玲子
硫黄の香虎杖黄葉したりけり 高澤良一 随笑
硫黄の香霧ごめに村の屋根ひとつ 田中水桜
硫黄咲く湖秋に没し居り 横光利一
硫黄噴く山正面に夏館 米沢和子
硫黄噴く斑雪の谷をよぢ帰る 『定本石橋秀野句文集』
硫黄噴く湯屋へ飛び立つ岩燕 飯田久子
硫黄噴く谷をはれゆく霧黄なり 片岡 青苑
硫黄回路に 蝶とぶ 細い風の呼吸 伊丹公子 時間紀行
硫黄山にして中腹に滝を懸け 北野民夫
硫黄山流砂の果ての附子の花 太田登茂子
硫黄島おどろに夏のかなぐもり 辺見京子
硫黄泉高窓の秋にはかなり 手塚美佐 昔の香
硫黄煙高西風に伏し萩咲けり 宮武寒々 朱卓
秋遍路硫黄島から来たと言ふ 吉田汀史
秋風やレールまぶしき硫黄山 佐野青陽人 天の川
穂芒も硫黄噴く嶺も海霧浸す 文挟夫佐恵 黄 瀬
笹原に硫黄匂へり夏鴬 横山白虹
蝦夷春蝉鳴き湖に硫黄の香 大橋敦子 匂 玉
谷ゆけば硫黄こぼるる花卯木 秋元不死男
雪女郎の夏やすらぎの硫黄小屋 河野南畦 湖の森
雪渓の傷見ゆ呪文の硫黄噴き 河野南畦 湖の森
霜ぐもるベルツ像まで硫黄の香 中戸川朝人 尋声
霧に擦るマッチのばうと硫黄の香 高澤良一 随笑
露天湯の湯口の硫黄霧呼べり 高澤良一 素抱
風向きに硫黄の匂ふ花野かな 野村喜舟
飯蛸や硫黄の薫る山の宿 斎藤志津子
馬車の荷の硫黄かゞやき蝶生る 堀口星眠 火山灰の道
鴬や硫黄まみれの送湯管 池田秀水
麦の粉や附木の硫黄美しき 野村喜舟 小石川
黄葉どき髪膚完爾と硫黄泉 高澤良一 素抱
黒潮か血しほ岸を打つ硫黄島 中勘助
●燐 
凍蝶の内に彼の世の火の燐(かけら) 久富風子
夏衣や裏の畑に燐が燃え 桑原三郎 晝夜 以後
肋辺に燐もゆるごとこがらしす 齋藤玄 『狩眼』
草萌や燐火ももてるみどりの火 福永耕二
●沃素
●沃度 
スケート場沃度丁幾の壜がある 山口誓子 凍港
●原子 
原子めく*かりんでいたい いたいんです 松本恭子
原子爆弾一発いくら大根干す 工藤克巳
原子雲灼け地軸なき被爆絵図 玉城一香
夕凪ぎて原子禍の町音絶えし 石原八束「秋風琴」
子よクレパスよ原子雲などぬりつぶせ 永井幽太郎
蕗の雨原子爆弾(リトルボーイ)が来る予感 高野ムツオ 雲雀の血
過労死や原子記号になっちゃった 金城けい
●原子核
●電子 
建国日食卓にある電子辞書 本島むつみ
徘と引き買初とせり電子辞書 小檜山繁子
探梅のナップザックに電子辞書 川崎展宏
早春の便りに開く電子地図 大曽根育代
春眠の枕にならぬ電子辞書 藤井 豊
木の実落つ電子オルガン協和音 白地恭子
水洟や目にちかちかと電子辞書 服部はるを
氷柱から雫ぽたりと電子辞書 加藤憲曠
絨毯に眠つてをりし電子辞書 細井みち
読初の卓銀色の電子辞書 高原 節
諭吉忌や電子辞書より鳥の声 高橋のり子
長き夜を飛び交う電子言葉かな 後藤清美
雪雲や電子の光り島を刺す 相原左義長
電子辞書に鳥のこゑ聞くみどりの日 岩橋玲子
青田風電子ブックの朱鷺鳴いて 佐々木栄子
●陽子
●中性子
●素粒子 
素粒子の互いにさびし鮭の氷頭 池田澄子
●ニュートリノ 
霜柱突き抜け宇宙のニュートリノ 井上淑子
ニュートリノ天網を抜け新樹山 高澤良一 素抱
ニュートリノ達してをらむ新樹山 高澤良一 素抱
●ラジウム


 以上


# by 575fudemakase | 2022-06-26 00:39 | ブログ

コンクリート 類語関連語(例句)

コンクリート 類語関連語(例句)

●コンクリート●生コン●コンクリ●鉄筋コンクリート●セメント

●コンクリート 
さくら咲くコンクリートを煉つてゐる 加倉井秋を 午後の窓
コンクリートにインク乾ける五月憂し 上野さち子
コンクリートに尿撥ね返る聖夜祭 右城暮石 声と声
コンクリートに水打つて死を敬へり 中尾寿美子
コンクリートの亀裂泡立つ冬の海 右城暮石 声と声
コンクリート灼くるに坐り行き処なし 石田郷子
初仕事コンクリートを叩き割り 辻田克巳
啓蟄の地底に流すコンクリート 佐伯昭市
小学校の夜のコンクリート見ゆ酔いたり 金子兜太
怖い生殖仮枠がコンクリート抱く 林田紀音夫
春水となるコンクリートの岸浸けて 静塔
春田尽きコンクリートの坂一枚 鍵和田[ゆう]子 未来図
晩春のコンクリートよりボールト立つ 加倉井秋を 午後の窓
杉菜噴き出すコンクリートの不覚 稲垣暁星子
松飾るコンクリートに膝をつき 岩崎健一
残る虫コンクリートを滲み出る 高野ムツオ 鳥柱
現し世は耐ゆることのみコンクリート 大川末広
草の実や工場の塀のコンクリート 滝井孝作 浮寝鳥
草田男逝くコンクリートに雀灼け 館岡沙緻
防波堤のコンクリートに下駄なづまず 藤後左右
飢ふかしコンクリートの崖干潟へ垂る 古沢太穂 古沢太穂句集
●生コン 
次々にめり込む大地生コン車 津田ノブ子
生コン車膨れ上がりし湾岸へ 相原左義長
●コンクリ
●鉄筋コンクリート 
がんがんと鉄筋のびる師走かな 高柳重信
ごきぶり逃がす鉄筋の十重二十重かな 内田啓
挺子冷やか鉄筋易々と曲るなり 北野民夫
斑尾へ蕨の鉄筋工もゆく 攝津幸彦
日を友に鉄筋を組む空の凍 大井雅人 龍岡村
東風に組む鉄筋の端たをやかに 赤松[ケイ]子
鉄筋に疲れのたまる茗荷汁 桑原三郎 晝夜 以後
鉄筋の堂に白木の花御堂 秋山暮谷
鉄筋の家にも馴れて嫁が君 吉川梅子
鉄筋を曲げるいてふが遠くで散る 斉藤夏風
●セメント 
ぼくたちは勝手に育ったさ 制服にセメントの粉すりつけながら 加藤治郎
セメントのもう固まりし桐一葉 内田美紗 誕生日
セメントの膏薬根尾の桜病む 石河義介
セメント割る作業抵抗を汗となし 田川飛旅子 花文字
南蛮の花やセメント貨車通る 永方裕子
寒雷やセメント袋石と化し 西東三鬼
梅林の小工事セメント固まる待つ 右城暮石 声と声
牧開セメントのつく手を柵に 四ッ谷 龍
秩父セメント秩父夜祭の夜も操業 鈴木栄子
 
以上


# by 575fudemakase | 2022-06-25 22:49 | ブログ

こだま 類語関連語(例句)

こだま 類語関連語(例句)

●こだま●木霊●山彦●谺●エコー●反響(音)●残響●とよもす●響動む

●こだま 
あんこだま夜の茂りを見てくふも 八木林之介 青霞集
いづこにも雲なき春の滝こだま 飯田龍太 忘音
いづこよりこだま小さし星鴉 藤森かずを(童子)
うぐひすのこだまを返す息長し 平山路遊
うつろ巌こだましあへる卯浪かな 橋本鶏二 年輪
きさらぎの門標をうつこだまかな 飯田蛇笏 山廬集
こだまして昼夜をわかつ寒の渓 飯田蛇笏 椿花集
こだまして森をはみだす瑠璃のこゑ 唐澤南海子
こだまして赤翡翠の炎ゆる恋 堀口星眠(橡)
こだまする後山の雪に豆を蒔く 飯田蛇笏
こだまする樹海わが掌に夏蜜柑 村越化石 山國抄
こだまする蛙の中の坊泊り 阿部みどり女
こだま欲し干潟に貝の放射脈 成田千空 地霊
この秋の大いなる声こだませり 萩原麦草 麦嵐
そばの花こだまころがる峡の昼 佐藤みさご
とりおどしこだましてゆく御空かな 北村 光阿弥
とろみ鳴く鴉のこだま芽ぐむ山 成田千空 地霊
どの島の返すこだまか鐘の秋 八染藍子
ばつたんこ法鼓のごとくこだませり 山本洋子
ふくろうの瀧のこだまに出て怒る 松村蒼石 雪
ふくろふの滝のこだまに出て怒る 松村蒼石 雪
よしきりのこだまをりをり城下町 長谷川双魚
わがこゑのこだまさびしき夏の山 石原舟月
わらび山母が笑ふをこだまする 中山純子 沙羅
エスカルゴ噛み満月へこだまする 白澤良子
ゴスペルの樹にこだましてみどりの日 辻村拓夫
スタジアムラガーの気合こだまする 森下昌彦
一切流転冬山こだまかへしくる 柴田白葉女 花寂び 以後
一山に滝の音声冬こだま 野澤節子 遠い橋
三日はや峡のこだまは炭曳くこゑ 加藤楸邨
中辺路の山にこだまし冬の音 桂信子 花影
二月ころふりさけみれば伊勢こだま 阿部完市 純白諸事
仏法僧こだまかへして杉聳てり 大野林火
仏法僧こだま返して奥身延 上田正久日
伊那谷に音こだまして猟名残 岩下千代美
信濃なる滝のこだまの馬蹄音 吉田紫乃
公害魚擲られ磯の枯れこだま 河野南畦 湖の森
冬あたたか竹のこだまの竹踊り 成田千空 地霊
冬の峰谿渡り行く法螺こだま 粕谷容子
冬山の汽笛のこだまの船に帰す 下村槐太 天涯
冬日の合歓母にこだまの減りゆくや 宮坂静生 山開
冬旱こだまはのぼる木をえらび 長谷川双魚 『ひとつとや』
冬晴や恋のこだまに耳すます 仙田洋子 雲は王冠
冬木きるや人らこだまに意を注がず 細谷源二 砂金帯
冬瀧のきけば相つぐこだまかな 飯田蛇笏
凍てゆるむ落石音や七こだま 加藤知世子
凍ゆるむ落石音や七こだま 加藤知世子 花 季
凍解けて瀧にもどりし水こだま(常陸袋田瀧) 上村占魚 『方眼』
初猟の第一発のこだまかな 大橋櫻坡子 雨月
初蝶の行方は水のこだまかな 勝又木風雨
初鵙のこゑこだまして山は晴 小谷紫乃
勝名乗寒ンのこだまを返しけり 久保田万太郎 流寓抄
十五夜にこだましてゐる町の鍛冶 阿部みどり女 『微風』
友とその新妻春の汽車こだま 友岡子郷 遠方
双魚忌の山に籠りし水こだま 梶田悦堂
句碑洗ふ青嶺にこだま返しては 長山遠志
吹雪中呼べどこだまもこたへせず 長谷川素逝
呼ばず返さず冬のこだまは受けるのみ 村越化石 山國抄
呼びあへるこだまのはても峡青田 杉本寛 『杉の実』
咳こだまリョウメンシダの林にて 高澤良一 さざなみやつこ
啄木鳥(けら)こだま山齢樹齢あらたまる 千代田葛彦
啄木鳥が森にこだます森にゐて 山本宏子
啄木鳥の音のこだまや鞍馬山 国枝洋子
啄木鳥やおのがこだまの中に棲み 太田黄波
啓蟄の蛇に丁々斧こだま 中村汀女
地の底の神が滝呼ぶ闇こだま 河野南畦 湖の森
夏みなぎるグワーングワーンと鉄こだま 古沢太穂 古沢太穂句集
夏潮の谺がこだま生む岬 上村占魚
夕汽車のこだまの中の家愛す 金子皆子
夕霞して剥落の嶽こだま 新井海豹子
夜気ふかみ仏法僧のこだまかな 藤田雅子
大原や鳴子こだますよき日和 高橋淡路女 梶の葉
大霞したる海より濤こだま 橋本鶏二
天を打つ凍み割れの樹のこだまかな 笠井操 『雪の紋』
夫婦滝紅葉の山にこだまして 佐藤信子
夫恋へば朝蜩のこだまして 山田芳枝
奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 水原秋櫻子
奥壁は雪崩のこだま返し来ず 高田貴霜
奥蝦夷にこだます馬耕日和かな 千葉仁
威銃こだまを返し来て威す 山岸木風
威銃のこだまの響く三毳山 森田とみ
実椿の数へきれざる滝こだま 岩崎多佳男
家壊す音こだまして秋暑し 中村しげ子
寒念仏眠りし山にこだませる 小野淑
寒暁の鶴啼くこだまかけめぐる 貞吉 直子
対岸の石切るこだま夏蓬 大中祥生
少年鑑別所郭公のこだま浴び 飯田龍太
山々にこだまを返す冬将軍 望月基子
山々に鐘こだまして花祭 阿部タミ子
山の井の釣瓶のこだま墓掃除 丸島弓人
山ぼうし谺がこだま生みにけり 和田冬生
山城の雲にこだます採蓮歌 宮武寒々 朱卓
山廬忌の秋は竹伐るこだまより 西島麦南
山火事のあと漆黒の瀧こだま 飯田龍太
山蘆忌の秋は竹伐るこだまより 西島麦南
山門の日に老鴬のこだまかな 原石鼎
岡寺にこだまやすらふ除夜の鐘 山田孝子
巣雀の声さへこだましてきこゆ 原石鼎 花影以後
巫女の鈴こだまとなりて杜小春 石川規矩子
幾棹も山にこだまし雁渡る 阿部みどり女
御厨人窟や冬蚊喰鳥こだまなす 黒田杏子 花下草上
慈悲心鳥こだまの奥は濡れており 国武十六夜
斑雪山月夜は滝のこだま浴び 飯田龍太
斧を振る青いこだまを孵らせて 穴井太 原郷樹林
斧音のこだまかへれば割るゝ榾 蔵本高子
旧山河こだまをかへし初鼓 飯田蛇笏
春の燭ミサのこだまと共に揺れ 山本歩禅
春伐りのこだま斑雪の瀬山越え 石原八束 雪稜線
春寒のミサのこだまの天より来 山本歩禅
春雷のこだまぞきそふ甲斐の国 多田裕計
春雷や埋めし愛のこだまとも 仙田洋子 橋のあなたに
晴れ予報備後藺を刈る鬨こだま 高橋六一
月光にこだます鐘をつきにけり 杉田久女
月光にしづめる部落滝こだま 柴田白葉女 花寂び 以後
月明りこだまこだまの紅葉山 川崎展宏
木歩忌の橋にくぐもる船こだま 角川 照子
朴の咲く淵にこだます機屋かな 水原秋桜子(1892-1981)
杉山に父かと思ふ瀧こだま 原 裕
林中のやがて涼しきこだまかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
枯れてゆく山にこだまして砧うつなり 山本木天蓼
枯山をこだまのごとし道が這ふ 平井照敏 天上大風
枯桑にとびつく筬のこだまかな 石原舟月 山鵲
梅天に抛つ怒りこだませよ 稲垣きくの 牡 丹
樹々邃く鳶啼くこだまはるかすむ 飯田蛇笏 雪峡
残雪に少年が打つ斧こだま 中村里子
段々の水田こだまにほととぎす 森澄雄
水こだま走りて釣瓶落しかな 長谷川双魚
氷壁が返すこだまはわれのもの 本田青棗
氷壁のおのがこだまの中に鴎 古館曹人
氷海やこだまさびしきわれの咳 伊藤彩雪
汐浴びの声ただ瑠璃の水こだま 中村草田男「来し方行方」
流氷のうちあふこだま宙に消え 高田高
流氷の寄せくるこだま天に飛ぶ 柳瀬重子
流氷や遠いこだまは耳内の垢 野川幸江
海堡のこだま捨て来しものと蘇える 堀葦男
温泉の宿に何建つ昼の斧こだま 石塚友二 光塵
湖艇去る笛こだまして山眠る 宮武寒々 朱卓
滝こだまして山葵田の水匂ふ 伊東宏晃
滝こだまして総身をくもらせぬ 原裕 葦牙
滝涸れて返すこだまもなくなりぬ 西島麥南 金剛纂
濤こだま実朝忌まだ先の日ぞ 友岡子郷 風日
熊まつりはじまる法螺のこだまかな 栗原愛子
猟犬を呼ぶ指笛のこだまかな 渥美三江
猟銃のこだまは別の銃のごと 皆吉爽雨
猪撃ちの第一発のこだませる 金井綺羅
献詠の披講こだます獺祭忌 坂泰子
疎の村の青嶺こだまに機を織る 河野南畦 湖の森
真夜覚めて波郷と呼べり霜こだま 林 翔
神滝のこだまや濁る世へ絶えず 北さとり
秋天にこだまも青く枝おろし きくちつねこ
秋深し身をつらぬきて滝こだま 鷲谷七菜子
秋風やこだま返して深山川 飯田蛇笏 山廬集
稲扱くや水の佐原の夕こだま 橋本榮治 麦生
空蝉のこだま綴りし少年期 齋藤愼爾
窯打ちのこだま韋駄天枯木山 池元 道雄
立春のこだま隧道抜けてくる 田山諷子
竜胆に触るる空なり嶺々こだま 勝又寿々子 『春障子』
竹伐って村のこだまを運び去る 神蔵 器
竹伐つて今昔もなきこだまかな 河野友人
竹伐つて竹のこだまを浴びにけり 石嶌岳
竹伐りのこだま海側山側に 手塚美佐 昔の香
筒鳥のこだまに由布の山夜明 雨宮美智子
簗なほす青水無月の夕こだま 橋本榮治 逆旅
籾摺の音こだまして夜に入る 相良 九馬
紅糸が足らぬ日暮の滝こだま 神尾久美子 桐の木
群鶴の声こだまする天暗く 小原菁々子
羯鼓うつ音にこだます鳴子かな 岡本松浜 白菊
老杉の空えんぶりのこだまかな 原よしろ
老鴬に谷ひえびえとこだましぬ 飯田蛇笏 春蘭
老鴬のこだまを返し地獄谷 伊東宏晃
老鴬のこだま秘境へ幾峠 今村征一
老鴬のこだま返しに隠り沼 加藤耕子
老鶯に谷ひえびえとこだましぬ 飯田蛇笏
聖歌果てし街は汽笛の雪こだま 加藤知世子 花寂び
胎内に母音のこだま花祭 橋口 等
舊山河こだまをかへしはつ鼓 飯田蛇笏
芒闌けこだまが遠嶺より返る 河野南畦 湖の森
花さんざし斧のこだまの消えてなし 神尾久美子 桐の木
花といへば鳥と答へる標語(こだま)かな 筑紫磐井 花鳥諷詠
花の駅噴水塔がこだまして 中島双風
花火こだまする深い山肌 シヤツと雑草 栗林一石路
芽吹き山二重にこだま返しけり 二村典子
若葉してこだまを返すホルンの音 佐長 芳子
苧殻折る刻こだまする寺の鐘 山城やえ
茸狩りのわらべこだまに憑かれけり 西島麦南
草原に湧きたつこだま野馬追へり 秋山素子
草笛や白鳥陵の水こだま 石田勝彦
荒尾根の雲へこだまの雷一過 河野南畦
落石のこだま還らず去年今年 ほんだゆき
落葉松に焚火こだます春の夕 前田普羅 春寒浅間山
蕨狩りの声の こだまの 青天井 伊丹三樹彦 一存在
薄暗き厨房秋の水こだま 奈良鹿郎
薪棚を崩すこだまや昼霞 楠目橙黄子 橙圃
藪伐れば峰のこだます寒さかな 飯田蛇笏 山廬集
蝉やむと夜は天づたふ滝こだま 神尾久美子 桐の木
蝕け向日葵こだまは言を裏返す 中戸川朝人 残心
蝶凍てゝ青空石切るこだまのみ 友岡子郷 遠方
蝶蜂の高さの上を谷こだま 藤田湘子 てんてん
試めし打つ銃のこだまや夏木立 楠目橙黄子 橙圃
谷こだましてまんさくの日和かな 小島健 木の実
谷ふかく滝こだまして厚朴の花 柴田白葉女 花寂び 以後
谿ひろくこだまもなくて嶽の秋 飯田蛇笏 雪峡
谿枯れてこだまとどめず蔓もどき 有働亨 汐路
轟々と建国の日の滝こだま 吉田銀葉
通草咲き風のこだまをこもらせる 小松崎爽青
遠郭公深井のこだま聞くごとし 大熊輝一 土の香
郭公こだま一車より白衣降り 友岡子郷 未草
郭公こだま妙法此処に定まりし 林原耒井 蜩
郭公にこだま白樺に水鏡 宮津昭彦
郭公のそれのこだまと遠き音と 皆吉爽雨「寒柝」
郭公の遠音こだまは末消ゆる 豊長みのる
郭公は近しこだまははるかより 大矢一風
重陽やこだまし吠ゆる杣の犬 大峯あきら 鳥道
鉄砲射堋(あづち)霧間の樹神(こだま)かよひけり 調古 選集「板東太郎」
銃こだま雪こんこんと葉につもる 川島彷徨子 榛の木
降臨の峰にもこだま胡麻を刈る 脇本星浪
除雪夫乗せ索道の空唄こだま 沢藤紫星 『活字架』
雅楽の音木々にこだます来迎会 中橋文子
雨ながら老鴬嶺にこだまして 山内遊糸(蘇鉄)
雪山に春のはじめの滝こだま 大野林火
雪山をはひまはりゐるこだまかな 飯田蛇笏
雪崩音止みて落石音こだま 岡田日郎
雪解富士戸々の賤機こだませり 飯田蛇笏 春蘭
霜枯に柩打つ音こだませず 草間時彦
霧濃ゆし馬蹄のこだま喝破とのみ 竹下しづの女 [はやて]
青啄木のこゑこだまして雑木山 加藤功
青天より落花ひとひら滝こだま 野澤節子 黄 炎
風韻のこだまかへしに寒ざくら 吉田未灰
馬をよんでみた大聲に こだまがなかつた 吉岡禅寺洞
高千穂の双肩高き冬こだま 殿村莵絲子 牡 丹
高西風に斃馬を落すこだまかな 飯田蛇笏 霊芝
鳥追ふや山から谷から兄のこだま 加藤知世子 花 季
鳶啼けり渓こだまして余花の昼 飯田蛇笏 霊芝
鴬のこだま二の沢三の沢 松田ひろむ
鵯こだま嵯峨の旨水日々に透き 高野途上
鶴唳のこだま返しの残照に 山田弘子 こぶし坂
黄昏れて山に稲刈る音こだま 佐瀬しづ江
●木霊 
えぞにうの木霊オホーツク海へ抜け 永田耕一郎
かしづくや木霊をさなき欅苗 正木ゆう子 静かな水
きつつきの樹を打つ音も木霊かな 大高芭瑠子
ことばみな木霊となれり桷の花 新井世紫
しめっぽい木霊とびかう置き薬 穴井太 原郷樹林
ちやぐちやぐ馬こ森に木霊を引きにけり 昆ふさ子 『冬桜』
どの子にも木霊返して山開き 白根君子
どの径も木霊目覚めよ午まつり 石原次郎
どの木にも木霊生まるる寒昴 美野節子
ひさしぶりの雨だ灯を消せ匂う木霊 柴崎草虹子
みよし野の木霊となりしほととぎす 長山あや
一つ声ひとつ木霊す紅葉山 牧野洋子
一斉に木霊の醒むる春の森 柴田白葉女 花寂び 以後
伊那谷は木霊の色も紅葉して 木方三恵
冷まじく暮れて木霊も居らざりき 槐太
初明り一つ咲きたる木霊かな 穴井太 原郷樹林
初猟の木霊が遠く重なれり 米澤吾亦紅
匂い立つ樹々の朧に笛木霊 長谷川かな女 牡 丹
十月の木霊が通る鉈の上 折井紀衣
啄木鳥の纔に木霊の耳を澄ます 尾崎紅葉
国栖奏の鼓は木霊呼ぶごとし 山田弘子 螢川
地の震ひ岳の木霊す御神渡 増澤正冬
声ちがふ木霊竹霊利休の忌 岡井省二
大暑にて杉の木霊は背の高き 正木ゆう子
寒林の切株四五は木霊の座 能村登四郎
少年へ涼しき声の木霊が居り 平井さち子 紅き栞
嶺と嶺結ぶ木霊や斧始 藤木倶子
常夜鍋木霊は山に帰りけり 佐々木六戈 百韻反故 初學
幹打つて覚ます木霊や西行忌 大石悦子 群萌
廃校の子供らの木霊している天井 青木久生
恋猫や椎の木にある夕木霊 古舘曹人 樹下石上
春立ちし国栖の大きな木霊かな 大石悦子 百花
月山の木霊と遊ぶ春氷柱 有馬朗人(1930-)
月明の木を離れたる木霊かな 河原枇杷男 流灌頂
木枯の木霊修那羅の神の声 加藤知世子 花寂び
木霊ありいつか身につく走るフォーム 上田 玄
木霊より軽き子を抱く冬隣 橋間石
木霊ゐず霧か露かの山の鯉 岡井省二
木霊を呼ぶか掌中の落椿 大高 翔
木霊棲む山めぐらすや神楽笛 伊藤純
木霊棲む神の大楠夜鷹鳴く 豊長みのる
松蝉の木霊あそびの前山寺 鈴木蚊都夫
梅雨の夜の園の木霊と犬を呼ぶ 木津柳芽 白鷺抄
樹氷林声なき木霊空に充ち 伊東宏晃
母声の木霊が帰る月下かな 杉本雷造
氷る湖の木霊呼びつつ機始 原 柯城
汗の身を木霊が透り過ぎにけり 徳永山冬子
海棠や教会の鐘木霊なし 宮坂静生 青胡桃
涸谿の木霊言霊冬ざるる 佐原トシ
父にしてむかし不良の木霊かな 攝津幸彦(1947-96)
狼は亡び木霊は存ふる 三村純也
甲斐駒の返す木霊や吾亦紅 山下喜子
種に入る木霊の一部青くるみ 正木ゆう子 悠
結界の木霊となりける青葉木菟 栗桶恵通子
老杉の木霊をゆすり初神楽 加藤多美子
老桜の木霊や現れて返り花 大石悦子 群萌
胸に木霊こむらさきの不整脈 浅沼参三
落石の木霊とどろく雪解川 広井瑞枝
郭公の木霊の中の火山かな 杉本寛
開拓や斧よ木霊よ遠郭公 北光星
雨細し木霊枯れ棲む磯林 河野南畦 湖の森
雪の日のちよつと遊びに出る木霊 ふけとしこ 伝言
零の空間へ木霊のように二人立つ 坂間恒子
露日和木霊は元の木にもどり 友岡子郷
青梅雨や木霊棲みつく鞍馬杉 河野多希女 納め髪
青葉木菟鳴いて木霊はうまいどき 西村 博子
鵯鳴いて木霊たのしむ雑木林 後藤秋邑
●山彦 
いくたびも山彦かへす夕焼かな 吉武月二郎句集
おーいおーいと永久にあなたを呼ぶ山彦 池田澄子
おーいおーい命惜しめといふ山彦 高柳重信
からうじて山彦もどる吾亦紅 下田稔
ざんばら髪の山彦あるく油照り 長谷川双魚
しぐるるや山彦は樹を親と思ひ 長谷川久々子
しぐれきて山彦絶ちし下りかな 原田種茅 径
ためしたき山彦青嶺ま近なり 朝倉和江
ひよどりの山彦の澄む初詣 田村木国
ぼんでんの法螺山彦のごと吹きあふ 上村占魚
亀鳴くや山彦淡く消えかかる 赤尾兜子
二人行けど秋の山彦淋しけれ 佐藤紅緑 紅緑句集
全山の芽や山彦がもの言へり 米沢吾亦紅 童顔
凧高うなりて山彦もう答へず 内藤吐天 鳴海抄
前山に山彦棲む日松飾る 渡辺柳風
吠え牛に山彦高し霧の中 西山泊雲 泊雲句集
夕凍みの山彦山に残りけり 秋山ユキ子
夕焼る山彦山に帰るとき 三田きえ子
天彦呼びに山彦駈くる斧始 大野せいあ
子遍路に山彦のゐる札所かな 山崎一角
寒卵割り山彦の国を出る 市原光子
山彦が聞えてあやめ祭来ぬ 萩原麦草 麦嵐
山彦とならぬわがこゑ落胡桃 白岩 三郎
山彦とゐるわらんべや秋の山 百合山羽公
山彦と啼く郭公夢を切る斧 山口素堂
山彦と晴れて学校始めかな 松下鶴生
山彦にいつか鳴き勝て羽抜鶏 秋山朔太郎
山彦にさからひやまず霧の鵙 西島麦南 人音
山彦にも毀れるひかり二月の樹 速水直子
山彦に妻の遊べる山毛欅若葉 菅原多つを
山彦に山葵の花や散りかゝり 萩原麦草 麦嵐
山彦に散果たしたるさくらかな 米密 三 月 月別句集「韻塞」
山彦のあと一斉に杉花粉 岡本まち子
山彦のうしろ姿を漉き上げる 小澤杏林
山彦のしばしとだへし紅葉かな 杉本寛
山彦のしばらくありて草刈男 西山泊雲 泊雲
山彦のはきはきとして青吉野 大石悦子 聞香
山彦のはじめつばらにねこじやらし 藤田湘子
山彦のはなれはなれよ妓王の忌 神尾久美子 桐の木
山彦のまだ覚めぬ山つばくらめ 矢島渚男 百済野
山彦のゆつくりとほる弥生かな 中村契子
山彦のよくかへる日よえびかづら 遠藤露節
山彦のわれを呼ぶなり夕紅葉 臼田亞浪 定本亜浪句集
山彦のゐてさびしさやハンモツク 水原秋桜子(1892-1981)
山彦の一歩も退かず閑古鳥 檜紀代
山彦の南はいづち春のくれ 蕪村遺稿 春
山彦の口まね寒きからすかな 千代尼
山彦の尻尾だすまで黄落す 西野理郎
山彦の山みな遠し花うつぎ いのうえかつこ
山彦の己の声に呼ばれ夏 白岩三郎
山彦の待ちかまへゐし山開き 木内怜子「繭」
山彦の打つ小鼓や山葵咲く 田方建子「土鈴」
山彦の打てもどしに砧かな 紫貞女
山彦の棲む山めざし旱道 徳永山冬子
山彦の棲む谷々の薄紅葉 三村純也
山彦の気配を棟に冬仕度 岡本まち子
山彦の触れず落ちたる一位の実 浅井一志
山彦の語尾のすとんと山眠る 山本秋穂
山彦の駆けて椎の実こぼしけり 井本芦水
山彦はみな男ごゑ冬の山 大谷てるみ
山彦は他所(よそ)の事なりわかな摘 千代尼
山彦は呼べぬ齢や栗の花 赤塚五行
山彦は宵に戻るやのちの月 千代女
山彦は山に捨て置く夜の桃 鈴木湖愁
山彦は山へかへりて枯一途 鹿野佳子
山彦は杜甫か李白か登高す 白澤良子
山彦は湖に出てゆく朴の花 長田等
山彦は男なりけり青芒 山田みづえ 木語
山彦は青年のこゑ山笑ふ 二藤 覚
山彦も山を出ることなき二日 鷹羽狩行
山彦も島出づるなし青芒 朝倉和江
山彦も魂ぎる多摩や血止め草 高柳重信
山彦やむらさきふかき春の嶺 池田秀水
山彦や湯殿を拝む人の声 桃隣「陸奥鵆」
山彦や知らなくてよいけもの道 池田澄子
山彦や花の梢にひびき行く 水田正秀
山彦をかへし雪渓夜もしるく 福田蓼汀 山火
山彦をすぐに戻せぬ樹氷林 北見弟花
山彦をつけてありくや鉢たたき 千代女
山彦をぬすむすすきのすだま見つ 栗生純夫 科野路
山彦を伴ふ窓に夏経かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
山彦を呼び出してゐる山開き 小野伶(南風)
山彦を呼び戻せしが雪となる 相原左義長
山彦を山に帰して修二の忌 関野八千代
山彦を山へかへして卒業す 遠藤若狭男
山彦を引き寄せてゐる春田打 小泉八重子
山彦を探す夕暮れ頬濡らし 久野千絵
山彦を連れて半鐘防火の夜 野澤節子 遠い橋
山眠るや山彦凍てし巌一つ 松根東洋城
岬現れ海彦山彦すでに春 河野南畦 湖の森
引鶴のこゑ海彦へ山彦へ 福島笠寺
拍手が山彦となる四方拝 石津不及
旅人の中を山彦ときに野火 三枝桂子
早春の山彦かへる垣根かな 萩原麦草 麦嵐
明けまたぬ小野の山彦土竜うち 吉武月二郎句集
春愁やひとの山彦われに来る 米沢吾亦紅 童顔
月明や山彦湖をかへし来る 秋櫻子
木耳を踏み山彦の老いゆくよ 長谷川双魚 風形
朴の青枝下されて飛騨の山彦 金子皆子
松の花炎ゆ山彦に海彦に 渡辺桂子
梅雨雲がすぐ山彦を追ひかへす 米沢吾亦紅 童顔
極月の山彦とゐる子供かな 細川加賀 『傷痕』
海彦と山彦あそぶ初茜 樫村安津女
海彦と山彦そろふ入学期 原裕 新治
海彦と山彦とゐる霧笛かな 鈴木洋々子
海彦も山彦も来て綱を引く 荒井籠聲
海彦も山彦も来よ太刀飾る 野木桃花
澱みなく山彦とんで神無月 斎藤佳代子
火祭の山彦ゆゆし秩父人 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
牛飼の山彦わかし冬隣 岩田昌寿 地の塩
町の子の山彦遊び秋の山 安藤登美子
白根葵咲けりといふよ山彦も 水原秋櫻子(馬酔木)
窓の外にゐる山彦や夜学校 芝不器男
老鴬に山彦もなき浮葉かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
腸の水の山彦昼寝覚 高澤良一 随笑
花菜いちめん孤児に山彦野彦する 磯貝碧蹄館 握手
蔓梅擬山彦つれて山の子ら 古賀まり子 緑の野以後
近づいてくる山彦の暑さかな 松澤昭 山處
近頃は山彦となる不如帰 橋本鉄也
返盃や会うこともなき山彦に 仁平勝 東京物語
雪嶺のいづかたよりの山彦ぞ 猪俣千代子 秘 色
鞦韆や春の山彦ほしいまゝ 秋櫻子
鶏のこゑ山彦すなり日南ぼこ 吉武月二郎句集
やまびこのゐて立ちさりし猿茸 飯田蛇笏 霊芝
やまびこの消えてさびしき鳴子かな 阿波野青畝
やまびこをつれてゆく尾根いわし雲 飯田蛇笏 春蘭
やまびこを交してをりぬ植樹祭 小田切輝雄
初機のやまびこしるき奥嶺かな 飯田蛇笏
夏の炉にやまびこきこえ師弟古る 石原舟月
木菟の森やまびこ昼をねむりけり 西島麦南 人音
盆花を摘む子等の声やまびこも 川崎展宏
破魔弓ややまびこつくる子のたむろ 飯田蛇笏
門前のやまびこかへす碪かな 飯田蛇笏 霊芝
●谺 
あさましや谺も同じ雉の声 半捨
あまぎ嶺に谺し冬の鳥射たる 五所平之助
いと高きに登るも谺聴かぬなり 矢崎硯水
いわし雲斧の谺は父祖の声 高橋素水
うぐひすの谺も神の瀧のもの 田村木国
えごの花ひと日谺の中にをり 磯部実
おらが世は臼の谺ぞ夜の雪 一茶
かぐらせり唄谺して雪もよふ 黒木千佳子
かげろひゆく身に谺して怒濤音 鷲谷七菜子 雨 月
かたくりの花すぐゆれて谷谺 飯塚田鶴子
かの瀧のかの瀧谺手を合はす 黒田杏子 花下草上
さきがけて蕗咲く渓の谺かな 飯田蛇笏 霊芝
さくら陰誰に谺か山の神 菊十
さしのぼる月の谺のきんひばり 神戸光
さみしくて雪に潜りし水谺 栗林千津
さみしさや谺返しの威銃 小林康治 『叢林』
しづり雪しまらく谺してありし 五十畑英一
しんしんと谺殺しの雪の谷 藤田湘子 てんてん
じやんがらの鉦の谺す閼伽井嶽 平山節子
すぐ応ふ谺も秋や旅日和 村越化石
そのこゑに谺ちかづく囮籠 福永耕二
たはやすく谺する山たうがらし 飴山實 『次の花』
ひぐらしの崖に谺す外海府 継田ひでこ
ひぐらしや山頂は陽の谺生み 雨宮抱星
まんさくや谺返しに水の音 岸野千鶴子
みちのくの山谺して松の芯 吉田鴻司
むかごにもありし大小山谺 西谷 孝
わが咳の谺 始発の地下ホーム 中道量子
わが声の二月の谺まぎれなく 木下夕爾
わが声の谺と知らず女郎花 小泉八重子
わが谺かへらぬ祖谷の初御空 伊沢 健存
ボート・レース雲と谺と繋がりて 大島邦子
マッキンレーからの谺か秋つばめ 平井さち子 鷹日和
ユーラシア五分遅れの谺かな あざ蓉子
万緑や舟唄水に谺して 土屋うさ子
丈高き谺返し来春の滝 小林康治 『虚實』
下萌のいづこともなく水谺 日向野貞子
二ン月の天に谺し城普請 花野有情
二期田植う村に射爆の遠谺 玉城一香
人去りて木の芽の谺包む館 長山あや
人声の谺もなくて飛騨雪解 前田普羅 飛騨紬
伐採の谺の雪となりにけり 西村博子
修羅落す谺を追ふて雪崩れたり 山口草堂
冬あけぼの谺の還る魚の口 石母田星人
冬に入る瀧の谺の一屯 宮坂静生 樹下
冬の宿谺を返し夕暮るる 横光利一
冬山や鉈音よりも谺澄み 羽部洞然
冬杣の谺杉枝の雪散らす 町田しげき
冬河に誰呼びおるや谺なし(片山桃史戦死) 石橋辰之助
冬滝の谺蕩々と湯の小滝 松村蒼石 雁
冬牡丹てうつに蔵の谺かな 言水
冬耕のひとりとなりて生む谺 橋本榮治 麦生
冬菫ときにさみしき潮谺 友岡子郷 風日
冬麗を己が谺とゐる鴉 村越化石
冴ゆる夜の谺にひゞく汽笛哉 寺田寅彦
冷蔵庫に潮騒のあり谺あり 工藤克巳
凍蝶に落石の音谺しぬ 羽部洞然
凍蝶の息ひきとりし谺かな 宗田安正
刀打つ鎚の谺す青吉野 品川鈴子
初富士や崖の鵯どり谺して 川端茅舎
初山や木の倒されて谺生む 本多一藻
初猟の第一弾の谺かな 森 竜南
初神楽巌に太鼓の谺して 阿部ふみを
初雷のいま前山に谺せる 高瀬竟二
初鶏の銘酒の里に谺して 木内彰志
前山に谺あづけて牛蒡引く 端山日出子
十和田湖に暮春の谺崩しけり 雨宮抱星
号令が谺す夕日の小学校 斎藤康子
呼び出しの声谺してスキー場 中沢菊絵
咳よりも咳の谺のさびしさよ 林翔 和紙
啄木鳥のついばむ音も谺して 西岡仁雅
啄木鳥の己が谺を叩きけり 佐之瀬木実
啄木鳥の谺は天に滝凍る 三谷和子
噴射機に鳴り億兆の露谺 石塚友二 光塵
地球発SOSが谺せり 小倉満智子
堰落つる水の谺や茱萸の花 伊藤紫都子
夏山に谺して過ぐ広報車 向井晴江
夏山の大木倒す谺かな 内藤鳴雪(1847-1926)
夏山より谺のごとき子の便り 柳 欣子
夏潮の谺がこだま生む岬 上村占魚
夕暮の谷戸に谺し黒つぐみ 長谷川草洲
夕焼けて谺戻らぬ活火山 駿河白灯
外したる谺の間合威銃 吉田鐵城
夜のポストつぎつぎ谺が投函される 佐孝石画
夜をこめて会式谺す向つ峰 竹冷句鈔 角田竹冷
大山山麓すかんぽ噛めば谺 金子兜太
大当りの声の谺や初恵比須 松原幸子
大滝の谺相うつ杉襖 石原八束 白夜の旅人
大瀧や月の谺のただ中に 黒田杏子 花下草上
大瑠璃の谺をかへす虚空かな 加藤耕子
大花火峡の谺の逃げ場なし 川村紫陽
天地の谺もなくて雪降れり 鈴鹿野風呂
夫の忌や風の谺のえごの花 小島裕子
姥百合にかへる谺となりにけり 蘭草 慶子
威し銃裸の山が谺返す 津田清子 礼 拝
威銃谺して大磨崖仏 牧野春駒
子を叱る声筒抜けに寒谺 小林康治 四季貧窮
子花火と爆ぜて谺の返りけり 石塚友二 光塵
家毀つ音秋天に谺して 高澤良一 寒暑
富士の火を鎮めの宮の鵯谺 西本一都 景色
富士夏嶺谺雄々しく育ちをり 橋本榮治 麦生
寒垢離の一喝山に谺して 藤田達子
寒山に谺のゆきゝ止みにけり 前田普羅 飛騨紬
寒月や野の大門の谺呼ぶ 乙字俳句集 大須賀乙字
寒詣過去は谺の割れる先 首藤基澄
寒谺高校生の弔銃に 中村草田男
寒鯔の川いきいきと群れ谺 尾崎鈴子
射初また谺はじめの松の幹 中戸川朝人 星辰
小蒸気のもどる谺や月の潭 千代田葛彦 旅人木
屏風岩河鹿が鳴けば谺する 塚田正子
山々にお会式太鼓谺して 中里之妍
山がひの杉冴え返る谺かな 芥川龍之介 澄江堂句集
山に向きくさめ一つの冬谺 村越化石
山ぼうし谺がこだま生みにけり 和田冬生
山伏問答峰に谺し山開 高橋耕子
山墓の巨石がまとふ夏谺 原裕 葦牙
山始一人が谺起しけり 増井冬木
山峡の杉冴え返る谺かな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
山焼の音谺せり大阿蘇に 高木あけみ
山眠りいづこへ帰る谺なる 影島智子
山谺かえる花火の尾は新涼 長谷川かな女 花 季
山谺して錫杖の響き冴ゆ 山崎慈昭
山里に餅つく音の谺かな 浜田波静
山雲にかへす谺やけらつゝき 飯田蛇笏
岩尾根に夏暁の鳥が谺啼き 河野南畦 湖の森
峡空に谺かへすや大花火 鈴鹿野風呂 浜木綿
川原吹く風より水の青谺 原裕 青垣
年酒また独りがたのし鵯谺 宮田要
幼な名を呼べど秋嶺谺なし 福田蓼汀 秋風挽歌
弔砲の谺は冬の山地駆せ 安田北湖
当り矢の谺がへしに霜の天 伊藤いと子
御神楽の谺をかへす新樹かな 杉原ヒロ子
念仏踊左右の山よりよき谺 羽部洞然
息ひそめ棺うつかぎり寒谺 小林康治 四季貧窮
悪玉の声谺して野外劇 魚田裕之
惜春の雄波もみあひ谺せり(喜屋武岬) 上村占魚 『玄妙』
我が笛の谺聞きゐる月の森 雑草 長谷川零餘子
拍手の谺となりて山始 廷々元子
採氷池子等への怒声日へ谺 木村蕪城 寒泉
探梅の谺に応ふ声のあり 米沢吾亦紅 童顔
斧強く打てば谺も寒の冴 橋本榮治 麦生
新涼の谺予期せぬところより 遠藤孝明
日おもてに谺のあそぶ斧始め 木内彰志
日面に谺のあそぶ斧始 木内彰志
春光に人語鳥語の谺かな 梅谷紀子
春嶺となれり万雷の瀧谺 川村紫陽
時無しに竹伐る春の谺かな 青木重行
晩秋の木曾谷汽車の遠谺 福田蓼汀
月一痕仏法僧の遠谺 渡邊千枝子
月落ちて仏法僧の遠谺 高橋克郎「月と雲」
有線のこきりこ青嶺谺せり 三浦妃代 『花野に佇つ』
木の実ふるわが名谺に呼ばすとき 寺山修司 未刊行初期作品
木樵ゐて冬山谺さけびどほし 橋本多佳子
木耳に谺邃くも来つるかな 山口草堂
朴の花谺のごとく咲きふえし 山城英夫
朴一花ひらけり山の谺も稀 太田土男 『西那須野』
朴咲くや谺のごとく雲殖えて 福永耕二
杉菜の雨土足の谺渡殿に 下村槐太 天涯
杭打つて 一存在の谺呼ぶ 伊丹三樹彦
松籟も寒の谺も返し来よ 小林康治 四季貧窮
松風の谺返しや夕桜 小林康治 四季貧窮
枝打ちの谺小さく日の澄めり 松村蒼石 露
枝打ちの谺返しに始まりぬ 石田郷子
枝打ちの音谺して底冷えす 柴田白葉女 花寂び 以後
枯山の短き谺かへしけり 星野麦丘人
枯山の谺となれば寧からむ 藤田湘子 てんてん
梟の谺のこもる月の杜 つじ加代子
棟上げの相打つ谺山笑ふ 菅沼義忠 『早苗饗』
棺を打つ谺はえごの花降らす 結城昌治(1927-1996)
椿寿忌や山に谺す大木魚 河野静雲
樹々ら/いま/切株となる/谺かな 高柳重信
歩みゐて谺に呼ばる西行忌 伊藤京子
死して/無二の/谺が/のぼる/寝釈迦山脈 高原耕治
残雪や谺鳴きして山の禽 小林康治 玄霜
水取や五體投地の堂谺 松瀬青々
水涸れて谺は渓を出づるなし 安立公彦
水谺深き夜明けの初音売 臼田亜浪
氷伐る谺もきこゆ朝かな 安藤橡面坊
氷瀑の砕けて谺裏妙義 永田しげ
汽車たつや四方の雪解に谺して 前田普羅 飛騨紬
流氷の谺をかへすモヨロ塚 橋本和男
浄智寺の屋根替衆に鵯谺 肥田埜勝美
浦島草過ぎるは人の谺かな 保坂リエ(くるみ)
海へ出て寒の谺となりにけり 小林康治 玄霜
深田鋤く谺しぶきに身をゆだね 松村蒼石 春霰
湖二つ郭公谺し合ふ距離に 川村紫陽
湯もみ唄谺す山の芒かな 中島月笠 月笠句集
湾内に花火の谺あまた度 西村和子 夏帽子
滝落ちて谺を天へ返しけり 小山曲江 『余韻』
滝谺水の匂ひを失くしたり 阿部俳声
漕ぎ揃ふ声の谺の船起 出口孤城
濤摶ち合ふ谺はけふも青岬 豊長みのる
濤谺のぼるを追へり秋燕 橋本鶏二
濤谺天をもどらず銀河澄む 橋本鶏二
瀧壺へ根こそぎの水枯谺 宮坂静生 山開
炎天に谺す深井汲みにけり 松井葵紅
炎天や鳶交る声谺して 佐野青陽人 天の川
炎天下嶺々の谺もなかりけり 行方克己 知音
照紅葉谷に谺の美辞麗句 高橋綾子
熊撃たる谺一つで終りけり 伊藤しげじ
熊野なる瀧谺なす月今宵 黒田杏子 花下草上
熊野路へ谺波打つ威銃 大澤柿村
父の日の谺となりて槌の音 前原蟻子
牧びらき牛の谺のために嶺 太田土男
獺が又森谺さす夜振月 乙字俳句集 大須賀乙字
玄関へ奥の鶯の谺かな 西山泊雲 泊雲句集
瑠璃沼の暁け谺して黒鶫 伊藤いと子
生凍豆腐叩く谺や寒未明 小佐田哲男
甦る滝の谺や梅散れり 小林康治 『潺湲集』
田鶴群の啼けば谺は天のもの 野見山ひふみ
畦叩き塗りて母校に谺さす 太田土男
白山は谺かへさず蕗のたう 奥坂まや
白木蓮鉈の一打がうむ谺 福永耕二
白鳥の立上りたる水谺 綾部仁喜 寒木
眠る山呼べば谺を返し来る 片山喜世
石一つ抛げし谺や山桜 西山泊雲 泊雲句集
石伐りのたがね谺す夏の海 前田普羅 能登蒼し
石叩き谷間に小さき谺なす 米久保進子
石抛れば汐に谺や夜光虫 富田潮児
石段に下駄の谺や山椿 池内たけし
神さびの町谺なし春の雪 波多江たみ江
神杉に谺し雪のびんざさら 伊藤いと子
祭の子谺遊びの町内湯 高澤良一 鳩信
禅林やその裏山の鵯谺 石塚友二
秋の谷とうんと銃(つつ)の谺かな 阿波野青畝(1899-1992)
秋晴や薬草講義谺呼び 和田ゑい子
稲架を解く音の谺の山日和 山田弘子 初期作品
空いろのふとん叩けば谷谺 小西ありそ
空蝉の谺とならず谿昏れる 山田晴彦
空谿の何の谺ぞ鴨かへる 藤田湘子
立山の卯月の谺返しくる 萩原麦草 麦嵐
竜泉洞夏玲瓏と谺寒む 沢田草光
竹を伐る音谺せり翁みち 中島小美
竹伐りの一徹山に谺せり 谷口いつ子
竹取の冬の谺に入りゆけり 宮坂静生 山開
絶壁にて怒濤と春雷谺わかつ 加藤知世子 花寂び
綿虫消え峡を満たせる水谺 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
老鴬に九十九谷の青谺 伊丹さち子
老鴬の谺にふふむ雨の色 古市絵未
老鴬の鍛へしこゑの谺せり 武井与始子
老鴬や律儀に谺返す谷 吉田青湖
聖鐘の谺と来たり初つばめ 西村博子
船の銅羅かの雪嶺に谺せる 福田蓼汀 山火
船笛に遅るる谺氷河より 品川鈴子
色鳥や谺をつくる山のこゑ 雨宮抱星
花に打てばまた斧にかへる谺かな 飯田蛇笏 霊芝
花の峡シグナル谺して下りぬ 宮武寒々 朱卓
花火あがる母ゐる天に谺して 大西一冬
花火音立て込む家に谺して 高澤良一 宿好
若葉滝まだ谺ともなりきれず 大高松竹
草の絮父の谺のなき山河 森田鵜柳
草焼いて谺とあそぶ山童 伊藤凍魚
荒滝の段なし谺打ち込めり 山口草堂
落栗やなにかと言へばすぐ谺 芝不器男(1903-30)
落石のとどまらざりし霧谺 青畝
落石の月に響きし谺かも 小林碧郎
落石の谺とかへる鵯の声 成智いづみ
落石の谺は渓の早春譜 平田青雲
落粟やなにかと言へばすぐ谺 芝不器男
落葉して人にかかはりなき谺 原裕 青垣
落葉松に春逝く谺ひびきけり 小林吐秋
蒲団叩けば団地に谺開戦日 奈良文夫
薄墨桜ことし谺の棲むことも 諸角せつ子
蚊柱や斧の谺のいつ止みし 雉子郎句集 石島雉子郎
蜩や古鏡に谺あるごとし 加藤知世子 花寂び
行く春の谺をひとつ離れ礁 豊長みのる
裏山に返す谺や山始 堤俳一佳
谷底に簗つくろへる谺かな 黒田櫻の園(馬酔木)
谺 谺 す る ほ が ら か 山頭火
谺こめて五月の一樹雨降れり 松村蒼石
谺して伊那谷深き威し銃 原田さがみ
谺して夜明けの峡の黒鶫 白鳥武子
谺して宙真空の秋の井戸 河野多希女 こころの鷹
谺して山ほとゝぎすほしいまゝ 杉田久女
谺して山川草木神楽の季 大久保たけし
谺して春霜木々へ還りゆく 藤田湘子
谺して男一人の斧始 川村紫陽
谺して谷の底まで梅日和 森藤千鶴
谺して雉子のふた声後啼かず 福田蓼汀
谺して雪崩のけむりあがりをり 石原八束 『雁の目隠し』
谺して雪嶺牧の子の相手 太田土男 『西那須野』
谺して鶴帰る日の山河澄む 林十九楼
谺する渡良瀬の言霊正造忌 佐江衆一
谺せずビル高階のつくり滝 船坂ちか子
谺たつる鈴鴨の音や水明り 高田蝶衣
谺とは思へぬひびき威し銃 片山由美子 天弓
谺めく津軽ことばや薄暑光 新谷ひろし
谺も不在雪渓垂らし針の木小屋 宮津昭彦
谺も豆か膝に落ちつく山の国 奥山甲子男
谺呼ぶにつれなくて昼蛙鳴く 松村蒼石
谺生み谺をつれてスケーター 町田しげき
豆たたく鬼歯の谺たのしめり 影島智子
豊年や谺呼びあふ出羽の山 細川加賀 生身魂
赤げらの音の谺に穂高晴れ 宇佐川礼子
赤腹鶫の谺をかへす月山湖 鈴木幹恵
蹴り落す石の谺や谷紅葉 水原秋桜子
身近きは響き野分の遠谺 斎藤空華 空華句集
透きとほる雨後の谺や岩煙草 平子公一
逝く人を呼び谺せり冬木立 赤尾恵以
遅き日や谺聞ゆる京の隅 蕪村
遠谺して木曾谷の修羅落し 加古宗也
還らざる谺もありぬ朴の花 佐藤国夫
郭公の己が谺を呼びにけり 山口草堂
郭公の谺し合へりイエスの前 大野林火
郭公の谺に晴るる阿蘇五岳 甘田正翠「紫木蓮」
郭公や母と谺をへだて住む 今瀬剛一
郭公や谺あそびはわれもせし 中戸川朝人 尋声
野平らに何の谺や花芒 廣江八重櫻
野葡萄の房にとどけり滝谺 五十島典子
鈴虫や甕の谺に鳴き溺れ 林原耒井 蜩
鈴音の谺しみ入る秋遍路 黒木幸子
鉄を打つ谺短かし斑雪山 阪本 晋
鉄砲の谺や山の笑ひ声 山笑う 正岡子規
鉦太鼓谺し三日の山部落 福田蓼汀 秋風挽歌
銃声の谺雪山無一物 長嶺千晶
銃谺寒禽翔つて山緊る 福田蓼汀
錦秋の谺の中に禽死す 榎本虎山
鐘谺宿坊の冷えきたるかな 清水基吉 寒蕭々
長き夜の空に谺し孔雀経 横山白虹
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
陶土打つ杵の谺や谷紅葉 渡部勝雄
隠り滝溢れて谺なかりけり 小林康治 『存念』
雉子笛に霊峰谺かへしけり 小森都之雨
雪山を匍ひまはりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪山を匐ひまはりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪嶺のどれか谺をかえす発破音 田邊香代子
雪折のとゞまりがたき谺かな 阿波野青畝
雪折竹焚きゐる谷の谺かな 稲荷島人
雪解川滾ちて天に谺なし 前山松花
雷鳥を追ふ谺日の真上より 河東碧梧桐
青啄木鳥の笛の谺や朝雲 木村コウ
青嶺より青き谺の帰り来る 多胡たけ子(山茶花)
青葉木菟遠し二羽とも谺とも 肥田埜勝美
静けさが谺している今朝の植田 明智その
音すべて谺となれり山始 黛執
風谺するカルストの牧閉ざす 三好寿子
首根っこ打てる花火の大谺 高澤良一 素抱
高きより谺をとばす冬の鳥 原裕 青垣
高原の鈴虫星へ谺せる 橋本美代子
鳥威し谺となりし翁みち 遠藤孝作
鳥渡る少年Aは谺なり 青野三重子
鳶の笛谺とならず冬の山 佐藤灯光
鴛鴦こぞり起つ氷上の谺かな 臼田亜浪 旅人
鴬の谺のやうに呼び合へる 加藤ひろみ
鵜つかひの舷叩く谺かな 大谷句佛 我は我
鵯谺初日は千木にのみさしぬ 加倉井秋を
鵯谺稀に馬車行き谷戸の秋 福田蓼汀 山火
鶯の谺す淵を覗きけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鶯の谺聴きゐぬ障子内 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
麦秋の石切りをるや沖谺 小林康治 四季貧窮
●エコー 
エコーに写る胎児の欠伸桜咲く 土本美亀
●反響(音) 
金盥落ちし反響花の夜に 野沢節子
壁寒く議長と呼ぶ語反響す 中島斌男
●残響 
五個空洞雷後の大気残響す 斎藤空華 空華句集
残響のごと雲白き桜山 渡邊千枝子
残響の尋ね人欄冬景色 坂間恒子
鍵盤に触れし残響五月闇 徳田千鶴子(馬酔木)
離郷残響霙の尋ね人われは 汎 馨子
●とよもす 
いかづちの戸隠山樹魂とよもせり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
かの茂る山截ち裂きてとよむ滝 相馬遷子 山國
このあをき夜がはや今年ぞととよむ 上井正司
とよもして海蝕の洞海髪を吐く 山崎冨美子
やまばと の とよもす やど の しづもり に なれは も ゆく か ねむるごとくに 会津八一
一軒に一橋とよむ雪解川 小川原嘘帥
乃木坂をとよもす軍歌憂国忌 池上いさむ
唐辛子乾びてとよむ能登の海 冨樫藤予
夕つかた町とよもして地震過ぎつわれはしろがねの粥食みゐしを 高橋睦郎 飲食
夜は夜の波のとよもす新松子 三田きえ子
家にしも非る家もたまさかを訪ふきみに厨とよもす 高橋睦郎 飲食
寒林をとよもして雉おどろけり 相馬遷子 雪嶺
峯とよむ祭や湖の水なれ棹 嘯山
春嵐鳴りとよもすも病家族 石田波郷
桜*うぐいとよもすものを雲の中 伊藤敬子
樹液鳴りとよむ満開のさくら揺れ 仙田洋子 橋のあなたに
汝を帰す胸に木枯鳴りとよむ 藤沢周平
津和野藩主亀井家の墓所尋め来れば木立とよもす蝉しぐれなる 森伊佐夫
海境のとよもる八雲の忌なりけり 邊見京子
狗ひん翔ぶや雲嶮しく山山とよもしけり 日夏耿之介 婆羅門誹諧
生まれ家の柱のとよむ卯月かな 柿本多映
白山の雪しろ濁りとよむかな 飴山實
私市はきさいちとよむ雨の私市 阿部完市 鶏論
縹渺の頸城・魚沼・蒲原と切なき地名に吹雪とよもす 大滝貞一
蜩のとよもしあへる泊瀬かな 西村和子 かりそめならず
銀漢に鳴りとよもせる那智の滝 鈴木貞雄
銭ほしとよむ人ゆかしとしのくれ 服部嵐雪
雨樋の鳴りとよもせる夏書かな 飴山實「次の花」
雲海のとよむは渦の移るらし 水原秋櫻子
雲海をとよもし航けるエンジン音 高澤良一 素抱
須佐之男の山河とよもす星の恋 永井由紀子
駒鳥の日晴れてとよむ林かな 高桑闌更
鯖食いたしあをあをと夜のとよもせば 上井正司
鳴きとよむ水の暗さの恋河鹿 原裕 青垣
鳴りとよむ火口に霧の巻くしづけさ 山口草堂
●響動む 
左義長の響動めきに酔ふ在の衆 吉井秀風
山川の響動み流るる良夜かな 茨木和生 往馬
しづかなるどよめき中や鶴来る 米田双葉子
その足の絵を踏みたればどよめきぬ 夏井いつき
どよむ瀬の上ヮ響きして河鹿かな 楠目橙黄子 橙圃
どよめきから部隊をもつて行くレールの鐵錆も五月 橋本夢道
どよめきて花火の闇を傾がせる 加藤 耕子
どよめきに馬のたじろぐ多度祭 林 圭子
どよめきのいづくともなく鉾祭 桂信子 「草影」以後
どよめきの繰込む会陽仁王門 細川子生
ほとゝぎす日もすがら啼きどよもせり 高浜虚子
万歳の間に玄界のどよもしぬ 野中亮介
信玄忌太鼓どよもす花の寺 岡村 實
初富士を得しどよめきの食堂車 浅野右橘
初日のつと萬歳の聲どよみけり 初日 正岡子規
前山の吹きどよみゐる霞かな 芝不器男
吹きどよむ風もをさまり彼岸過ぐ 加藤三七子
夕月にどよむ汐干の帰帆かな 尾崎紅葉
夢の淵どよもしゐたる梅雨出水 藤本安騎生「夢の淵」
大庭をどよもす風や駒迎 露月句集 石井露月
大熊手売れしどよめきおこりけり 成瀬正とし 星月夜
太陽の銀盤が 窓にかゝつて 蚤の市のどよめき 吉岡禅寺洞
尾根雪崩れ鳴りどよみひんひんと餘韻消ゆ 京極杞陽
山出しにどよもす木遣おんばしら 石鍋みさ代
山川のどよみまさりて雪解かな 楠目橙黄子 橙圃
岩煙草どよもす滝に揺れやまず 河本好恵
岩窟にどよもす浪に初明り 福田蓼汀
拝観の御苑雉子啼きどよもせり 高浜虚子
摘草に夕どよもすや町の空 青峰集 島田青峰
樹々の風谷どよもすやぬくめ鳥 松根東洋城
物言ひに杜どよめきて草相撲 平尾圭太
白牡丹ちまたのどよみ遠巻きに 鍵和田[ゆう]子 未来図
磯焚火潮音どよむ松林 皆川盤水
福引の笑ひどよめく隣哉 福引 正岡子規
福杖を打つて金堂どよもせり 中戸川朝人 星辰
竹の精どよめき匂ふ雨五月(飯能・竹寺) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
竿灯のどよめきを抜け母見舞う 加藤安子
草木の光どよもすイースター 水田むつみ
虹消えし空のどよめき破船群 今瀬剛一
軽きどよめき麦藁帽の花火なり 高澤良一 随笑
遠泳の先頭見ゆとどよめきぬ 柳俳維摩
雲にどよむ正午のサイレン朴咲けり 大野林火
音に凝る花火もありてどよもせる 高澤良一 さざなみやつこ
餅投げのどよめく声や山笑う 足立克子
鰆網しぼりどよめく船に蝶 水野淡生
鰯がしけの町のどよもす濤音 梅林句屑 喜谷六花
鵜飼どよみ掌中軽き一句帖 北野民夫
黒潮のどよもしてゐる蕗の薹 高木良多
 
以上


# by 575fudemakase | 2022-06-25 22:47 | ブログ

音2 類語関連語(例句)

音2 類語関連語(例句)

●瀬音●騒音●空音●空耳●高鳴る●滝音●叩く●太刀音●丁々発止●地籟●槌音●爪音●弦声●低音●天籟●遠谺●遠鳴り●遠音●怒号●怒涛音●轟き●響動き(どよめき)●とんとん●波音●波の音●鳴り響く●鳴り渡る●鈍き音●寝息●羽音●葉音●爆音●撥音●反響●万籟●微音●鼻音●弾く●ぴしり●人音●響き●ひゅうひゅう●風韻●風籟●不協和音●蚊雷●霹靂●ぺたぺた●鞭声●母音●砲声●骨の音●ポポ●松風●水音●水声●水谺●水の音●水響く●霧笛●鳴動●物音●物の音●矢音●家鳴り●山彦●弓音●余韻●呼子●雷鳴●列車音●櫓声●和音

●瀬音 
あるときは高き瀬の音夕紅葉 岸風三楼 往来
うるはしき瀬音鷹化し鳩となる 高島信一
がちや~や瀬音も聞え真暗闇 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
くわりんの実あららぎ川の瀬音来て 細見綾子
この村の瀬音に春の遅れをり 亀井糸游
ごり汁や雨かと思ふ夜の瀬音 内藤吐天
さくら鱒遡る瀬音や花サビタ 東 天紅
さびた咲き瀬音まじりに鳴く柄長 篠田 幸子
ざわめきの瀬音をなせり初不動 吉村秋川
しぐるゝや瀬音ま近く温泉にひたる 金尾梅の門 古志の歌
どこまでも従き来る瀬音夕河鹿 山田閏子
どんどの火衰へ瀬音の高まり来 阿部みどり女 『光陰』
ひとところ瀬音のありて川涸るる 卯野澄子
ほうたるの落ちゆく先の瀬音かな 小川孝子
ほととぎす瀬音も朝へ引緊る 馬場移公子
やまのはの樅に瀬音やはるかすみ 飯田蛇笏 雪峡
ゆく年や故園の瀬音ひるも夜も 飯田蛇笏 雪峡
一と時雨いや高まさる瀬音かな 楠目橙黄子 橙圃
一夜躯を河鹿徹りぬ瀬音すら 徳永山冬子
万緑や瀬音のふかき峠道 林 宏
三椏の花に瀬音の遠からず 行方克己 知音
乱鴬と瀬音に峡の温泉の夜明け 高濱年尾
井田川の瀬音更けゆく風の盆 堀井より子
六月の風にのりくる瀬音あり 久保田万太郎 草の丈
冬ざれや瀬音ま近く湯にひたる 角川源義
冬菜漬け瀬音澄みゆく室生村 吉澤卯一
初河鹿とほきはまじる瀬の音と 藤田湘子
初河鹿遠きはまぎる瀬の音と 湘子
初雀すでにまぎるゝ瀬音かな 石橋秀野
卯の花の白に触れゆく瀬音あり 山田弘子 こぶし坂
咳込んで瀬音微塵にガラス展 茂里美絵
囀りの瀬音にまじり夜明けつつ 福田蓼汀
四十雀瀬音にまぎれまぎれざる 相馬遷子 山河
土佐みづき瀬音の径をへだてけり 小俣由とり
夏の瀬音して九番のミシン針 藤本鯖人
夏山や夜は活くる瀬音に犬眠る 平井さち子 完流
夏帽子瀬音へ忘れ来て遠し 都筑智子
夜な~の瀬音やさしき蚕飼かな 馬場駿吉
夜の瀬音さへぎり鳴くは葭切か 水原秋桜子
夜の瀬音棒となりをり紅葉宿 上野泰 佐介
夜もすがら雨名月の瀬音かな 佐藤竹門
夜や秋の瀬音透きゐる空あかり 河野南畦 湖の森
夜半の月出水の瀬音遠からず 水原秋櫻子
夜明けの蚤瀬音のなかに汲む音す 友岡子郷 遠方
夜桜の灯うらの瀬音なりしかな 山田弘子 こぶし坂
大利根の瀬音早まる荻の風 滝登喜子
大峰の桜を洗ふ瀬音かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
奥伊予や瀬音に太る花梨の実 稲瀬奈加枝
存浅き藪に瀬音や大悲閣 五十嵐播水 播水句集
宇陀川の瀬音涼しき磨崖仏 山本光江
安曇野の瀬音はアルト早春譜 梅野三四子
山国の瀬音は高し初月夜 江口竹亭
山独活に舌荒されし夜の瀬音 稲垣きくの 牡 丹
帳場まで瀬音つゝぬけ鮎の茶屋 今城余白
忘るなき春立つ峡の瀬音かな 飯田蛇笏 山廬集
恋螢ふたつの瀬音合ふところ 椎橋清翠
慈悲心鳥瀬音に添へば風の出て 伊藤敬子
憎まれて坐すのみ夏の逝く瀬音 友岡子郷 遠方
成熟が死か麦秋の瀬音して 佐藤鬼房 地楡
手拭を月光に干し瀬音かな 大木あまり 火のいろに
新年の瀬音清しき輪島川 中前和枝
日が落ちて湯瀬の瀬の音洗ひ鯉 工藤勲治
春暁のあまたの瀬音村を出づ 龍太
春暁や瀬音かすかに朝寝宿 関口 里
春浅き藪に瀬音や大悲閣 五十嵐播水
春火鉢宇治の瀬音を座にたゝへ 菅裸馬
春睡や瀬音のごとく園児過ぐ 黒坂紫陽子
晩稲の黄と瀬音見おろす朝日とわれ 古沢太穂 古沢太穂句集
月挙げて瀬音立ち来る空知川 金箱戈止夫
朧夜の瀬の音つつむ比翼塚 大石千代
朴の花瀬の音かはり滝ありぬ 殿村莵絲子 花 季
杉の花瀬音は径をはなれざり 中村秋晴
梅咲いて瀬音たかぶる真室川 小野末吉
梅寒の瀬音を奪ふわらべ声 河野南畦 湖の森
梅林にさしかゝりたる瀬音かな 五十嵐播水 播水句集
梓川瀬音たかまるキャンプかな 加藤楸邨
橡の実にひたすら瀬音澄みにけり 鈴木貞雄
檜山よりかなかな瀬音ともなへり 荒井正隆
河口近きに井手ある瀬音千鳥更け 内田百間
河鹿鳴く中に瀬音はゆくばかり 皆吉爽雨「雁列」
洗ひたる障子に瀬音憑くごとく 田中裕明 櫻姫譚
清滝の瀬音まじりに初河鹿 杉 良介
滝っ瀬の刹那刹那の音繋ぎ 高澤良一 鳩信
滝の音瀬の音いつか山の音 北村 寛
滝の音瀬の音月の差しゆきぬ 桂樟蹊子
澄む方に小さき瀬音水芭蕉 山根都子
激つ瀬の音おそろしや葛の道 山口波津女 良人
激つ瀬音に冬の急磴登り切る 岩上奎子
瀬の音と全く離れ河鹿更け 高濱年尾
瀬の音にあしたの花の夢もなし 西山泊雲 泊雲句集
瀬の音に尾羽を叩く黄鶺鴒 堀川草芳
瀬の音に紅葉且つ散る休め窯 西村秋子
瀬の音のいつか時雨るゝ音なりし 稲畑汀子 汀子句集
瀬の音のうすくきこゆる螢かな 久保田万太郎 草の丈
瀬の音のくだくる葡萄の房々に 山口青邨
瀬の音のして葉桜の山泊り 神原栄二
瀬の音のまさりゆきつゝ河鹿かな 星野立子
瀬の音の二三度かはる夜寒かな 浪化
瀬の音の時雨に似たる蕪蒸 角川春樹
瀬の音の秋おのづからたかきかな 久保田万太郎 流寓抄
瀬の音の高きに応へ風薫る 執木 龍
瀬の音へみな傾きてやぶれ傘 嶋田麻紀
瀬の音や月夜に落つる鮎もあらん 落鮎 正岡子規
瀬の音や霧に明け行く最上川 霧 正岡子規
瀬の音をきゝつゝ貼りし障子かな 久保田万太郎 草の丈
瀬より出て瀬音より出て石叩 笠間文子
瀬音 火の音 満ちて 落鮎料理店 伊丹公子 沿海
瀬音ありものの芽競ふ寂けさに 林翔 和紙
瀬音せり旧正やすむ楮釜 有働亨 汐路
瀬音にも揺れて水引草の花 森田かずを
瀬音へと花房垂るる木五倍子かな 笹川悦子
瀬音やややはらぎ岩に萩も咲き 福田蓼汀 山火
瀬音よりも雨ひそやかに葛の花 木下夕爾
瀬音より離り影なき稲実る 阿部みどり女
瀬音入れ川風入れて鮭番屋 嶋崎専城
瀬音消え螢阿吽の闇さばく 丸山嵐人
瀬音澄み奥入瀬の滝ひびき合ふ 鳥谷部武子
瀬音澄むところ若鮎育つらむ 岩崎洋子
瀬音聞く初瀬の宿のつくねいも 木村雅子
灯籠にはや火を入れよ瀬音満つ 多田裕計
無鄰庵瀬音涼しく曲りけり 川合梅子
球磨昏れて見えねど出水瀬音かな 上村占魚 球磨
瓢棚真下に瀬音ありにけり 樋口桂紅
皇后の歌集は瀬音風薫る 青木重行
真日の下瀬音かすかに茅花噛む 金尾梅の門 古志の歌
短日の耳に瀬の音のこりけり 久保田万太郎 草の丈
石たゝき瀬音はいつも高くして 高木晴子 晴居
秋もやゝ瀬音にゆづる何の聲 安東次男 昨
秋冷の瀬音いよいよ響きけり 日野草城
秋夜二夜三夜寝ず瀬音狂ひ出す 岩田昌寿 地の塩
秋耕の一人に瀬音いつもあり 深見けん二
秋風も瀬音に暮れてしまひけり 福田蓼汀 秋風挽歌
竹秋の瀬音にいつか心沿ひ 行方克巳
笹鮨を解きつつ秋の瀬音かな 友岡子郷
簗打つてその夜昂る瀬音かな 平松三平
簗掛けて絞り込みたる瀬音かな 菊池風立子(諷詠)
紅葉貼リこめし障子に夜の瀬音 深見けん二
紙の素一途に晒す瀬音かな 阿波野青畝
老犬に瀬音折れくる梅明り 宇佐美魚目 秋収冬蔵
耳鳴りのきのふは吹雪けふ瀬音 正木ゆう子 悠
脚下より湧きくる瀬音犬ふぐり 佐藤脩一
芋の葉の夜露瀬音もゆるびたり 瀧春一 菜園
花くぬぎほほじろ遠き瀬音呼ぶ 中川輝子
花の瀬の音より音のけぶりつつ 平井照敏 天上大風
芽吹くなり瀬音いたらぬところなく 行方克己 知音
若鮎や瀬音つのれる南朝址 高橋好温
荒梅雨の筋金入りし瀬音かな 秋山幹生
落鮎の瀬音ばかりが暮れ残る 加古宗也
落鰻瀬音に追はれ安からず 鈴木左右
薫風の瀬音染みたる土鈴買ふ 小澤克己
虫篝消えて瀬音の闇となる 大隈草生
蜩に瀬音にこころ急かれけり 根岸善雄
蜩の底の瀬音に沿うてゆく 河野美奇
蜩や瀬音や胸はただ濡るる 林翔 和紙
谷川の瀬音のこりて雷雨去る 緒方氷果
谿削げて瀬音立ち来ぬ落霜紅 石 昌子
身はいつか瀬音の中に芹洗ふ 金箱戈止夫
迎へ火や瀬音の中の一家族 草間時彦
逗留の瀬音さびしむ秋簾 西村和子 かりそめならず
遠き世のことを暮春の瀬の音に 河野静雲
遠き瀬の音はなれては秋出水 飯田蛇笏 春蘭
部屋ごとに変はる瀬音や夏の山 藤森成吉
郵便車停り春逝く瀬音絶ゆ 宮武寒々 朱卓
野をわたる瀬の音軽し益母草 山口典子
鈴のごと瀬音いくつも橡枯れぬ 和知喜八 同齢
銀漢の瀬音聞ゆる夜もあらむ 芥川龍之介
障子しめてことさらさむき瀬音かな 高橋潤
隼の瀬音浴びをり葛の花 野沢節子 八朶集以後
雁帰る瀬音になれし一部落 渡辺志ま子
雛舟に瀬音たかまる吉野川 河合佳代子
雨戸たつれば外は朧の瀬音かな 青峰集 島田青峰
雪まつり更けて瀬音を還らしむ 宮武寒々 朱卓
雪渓の傷より瀬音噴き出だす 小林黒石礁
雪解して黒部の瀬音ただならず 八尾とおる
霧の視野瀬音浸りにバス遡る 平井さち子 完流
鞍馬山天に囀り地に瀬音 植田 弘子
風に揺れ瀬音に揺れて柳の芽 松添博子
風の音やがて瀬の音琴始 木内怜子
風むきでかはる瀬音や大根干す 高橋潤
風花や瀬音秘めたる天塩川 天田牽牛子
鮎の瀬の音に夜更くる峡の町 上村占魚 球磨
鮎の瀬の音の暮れゆく天狗岩 犬飼孝昌
鮎落ちて風のまつはる瀬音かな 館 容子
鳥啼かず瀬音ひびかず山は初夏 福田蓼汀
鶺鴒の鳴き翔ち瀬音残りけり 新井悠二
黒羽の闇の瀬の音蛍飛ぶ 松川洋酔
●騒音 
ごみ車ひく 白馬のたてがみを 騒音が追いかける 吉岡禅寺洞
七五三公耳へ騒音私耳へ鈴 香西照雄 素心
公園の緑陰街騒音縦横 高澤良一 鳩信
咳きこむあと他人の騒音にやはらげられ 竹中宏 饕餮
朝からの騒音へ長い橋かかる 種田山頭火 草木塔
白桃のうす紙の外の街騒音 野澤節子 牡 丹
街の騒音から太陽が沈もうとする大きいしじまだ 橋本夢道
長子生れ耳の中まで光る騒音 市原正直
騒音のひたと止みたる桐の花 村上澄子
騒音は稲を刈る音峡部落 関 秀子
麦を打つ騒音の中の農婦の死 萩原麦草 麦嵐
●空音 
とんぼうの空音もなく深かりし 藤松遊子
冴かへる空音は星かさよ千どり 松岡青蘿
商人の空音ゆたかやいせの春 向井去来
春の夜の三味の空音や三味線屋 春の夜 正岡子規
空音して雁塔晨鐘辛夷咲く 石原八束 仮幻の花
●空耳 
かけい忌の空耳で聴くうぐひすや 佐藤武子
かすかなる空耳なれどあたたかし 森賀まり
三月菜にがし軍靴は空耳か 鈴木ふさえ
凩やまた空耳の母を前 石川桂郎 含羞
呼鈴は空耳なりし春一番 田中湖葉
夏雲雀雲の空耳ばかりなり 廣瀬直人
夕顔垣きしむ牛車を空耳に 田中英子
夜なべの手とめ空耳と確かめる 近江小枝子
新盆や空耳なれど靴の音 秦夕美
明易し水流るるを空耳に 宮津昭彦
柩打つ音は空耳手毬唄 樫本つた女
殉教地空耳に亀鳴きにけり 高橋克郎
狐火か/鬼燈に入る/初夜の/空耳 林桂 黄昏の薔薇 抄
盲人に空耳はなく螻蛄鳴けり 三島牟礼矢
硝子戸の夜の空耳や月の山 中拓夫 愛鷹
空耳か夢かかそかな除夜の鐘 岡本昼虹
空耳か砧の音と聞きたるは 徳永山冬子
空耳とおもひつ待てり金魚売 根岸善雄
空耳とおもふ矢先の青葉木菟 安田 晃子
空耳とおもふ鈴の音十三夜 千田徳子
空耳にD5l過ぎぬ枯木宿 北見さとる
空耳に亀鳴くときく夜もありて 坊城としあつ
空耳に母の声あり吾亦紅 和田 登
空耳に濤の音聞く春の暮 伊藤京子
空耳や将棋倒しの影法師 仁平勝 東京物語
空耳歟うつくし湖と蝉の鳴く 幸田露伴 谷中集
笹鳴は空耳なりし雪が降る 原田青児
芳一の空耳に似てつくつくし 清水基吉
鶏頭に空耳あまたありぬべし 五島高資
●高鳴る 
だんだんと水の高鳴る岩魚釣 高澤良一 ぱらりとせ
アメリカンクラッカー高鳴る街や初燕 鳥居おさむ
カルストの晴れを高鳴き時鳥 岡部六弥太
トテ馬車の蹄高鳴る照紅葉 寺岡捷子
何事もなくて高鳴く夏うぐいす 玉水幸代
初詣傘寿の鈴を高鳴らす 宮下秀昌
初鶏の己が影踏み高鳴けり 畑佐白城子
喇嘛寺の楽の高鳴る臘八会 武田禅次
夏痩せて淋しき指を高鳴らす 内藤吐天 鳴海抄
大漁旗高鳴る磴や初詣 藤木倶子
大白鳥闇深ければ高鳴けり 棚山波朗
寒垢離に高鳴る団扇太鼓かな 東 妙子
寒晴や神楽の鈴を高鳴らし 石嶌岳
山晴るることに高鳴き四十雀 岡田日郎
恋の血の高鳴つていま月凍る 仙田洋子 橋のあなたに
愚者われを見据ゑ高鳴く冬の鵙 吉田未灰
日に向いて高鳴く鶏や霜解くる 青峰集 島田青峰
春場所を明日に高鳴るふれ太鼓 佐藤信子
柿に来て高鳴く鵯に夜明けたる 水原秋櫻子
水飛沫くぐり高鳴き三十三才 長谷川草洲
海神の没後高鳴る祭笛 宇多喜代子
湯檜曾川辛夷月夜を高鳴りて 久田 澄子
稲扱器高鳴る音は空にあり 五十嵐播水 埠頭
稲扱機高鳴る方へ犬跳びゆく 西東三鬼
稲扱機高鳴る音は空にあり 五十嵐播水
竹林に高鳴る風や残り花 内田百間
竹皮を脱ぐ黒潮の高鳴りに 渡辺恭子
第九高鳴り行く年をゆかしむる 文挟夫佐恵 雨 月
籾すり機高鳴る家の重なれる 鈴鹿野風呂 浜木綿
誰もゐない路地や高鳴く初鴉 今村征一
谷川の高鳴る岩に雪残る 上村占魚 球磨
野外演奏まづ行進曲高鳴らし 加藤水万「恩寵」
障子張るや高鳴る渓を眼な下に 林原耒井 蜩
雪山をぬけきし川の高鳴れる 安原 葉
雪嶺夕焼鈴高鳴らす供米車 加藤知世子 花寂び
青どんぐり湯川高鳴り流れけり 高澤良一 随笑
高鳴きの鵙の胸毛に朝日さし 高尾富美子
高鳴きの鶫の空の夕ごころ 宮川貴子
高鳴くは駒鳥囮秋風に 及川貞 夕焼
高鳴りの奔流めがけ囮鮎 吉井竹志
鬼志野を生む焔高鳴る五月闇 本庄千代子(秋)
鶯や裏川の瀬の高鳴れる 内田百間
齢とは秋風鈴の高鳴れり 吉田紫乃
●滝音 
あららぎにかかる滝音耳に来ず 長谷川かな女 牡 丹
うぐひすに滝音笑ひつゝ暮るる 飯田龍太
たそがれの瀧音となる花さびた 青木重行
一切を断つ滝音となりにけり 上田操
一山のどこか滝音山ざくら 鈴木貞雄
下りゆく山路滝音遠ざかる 麻生英二
冬の滝音かへしくる石鼎忌 原裕 青垣
冬の滝音を殺して落ちにけり 鈴木真砂女
凍てきれずあり滝音の乱れざる 鷲谷七菜子 雨 月
呼び合ひて瀧音二つ重ならず 永田耕一郎 方途
夜となりて滝音たかくなりけらし 田中冬二 俳句拾遺
太古よりつづく瀧音新しき 嶋田摩耶子
寒垢離のあの滝音はひとりなり 小澤克己
山ぶだう手繰れば滝音とどろけり 菅原文子
日つむりて遍路瀧音の中にをり 鷹野 清子
月の滝音きらきらと立ちのぼり 宇咲冬男
枯れしもの等伏し滝音を自在にす 桂信子 花寂び 以後
極寒の滝音ひびく土不踏 鷲谷七菜子 雨 月
滝音となる水と水水と石 後藤比奈夫 花びら柚子
滝音にすがる他なき山ぶだう 坂巻純子
滝音になれて住みをる飼屋かな 橋本鶏二 年輪
滝音にまぎれつつ家建ちすすむ 深見けん二
滝音に人語逆らふすべもなし 小路紫峡(ひいらぎ)
滝音に佇つ一途なるものに佇つ 篠崎圭介
滝音に沿ひて高みに登りけり 西村和子 夏帽子
滝音に消されしものの中にをり 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
滝音に節のばしゐる今年竹 野澤節子 遠い橋
滝音に近づいて行く初詣 保坂嘉子
滝音に開け放ちたる春障子 阿部喜代子
滝音に驚き黄葉したりけり 高澤良一 寒暑
滝音のただなかや帯ゆるみくる 鷲谷七菜子 花寂び
滝音のはつかに聞ゆ蔓あぢさゐ 高澤良一 燕音
滝音のほかは聞えず蛇の衣 中川秀司
滝音のやや力得し追儺の灯 福田甲子雄
滝音の中小説を読む女 山田弘子 螢川
滝音の中松蝉のまぎれなし 深見けん二 日月
滝音の呪縛振り切り来たりけり 高澤良一 燕音
滝音の唄とも聞こゆ読経とも 西山小鼓子
滝音の息づきのひまや蝉時雨 定本芝不器男句集
滝音の柱となりてくづれざる 脇 祥一
滝音の消ゆるところに来て安堵 磯辺まさる(藍生)
滝音の無限の白磁茶を点てる 加藤知世子 花寂び
滝音の耳を離れし昼の酒 小島健 木の実
滝音の耳慣れしより蝶真白 小泉洋一
滝音の近づく歩みゆるめつゝ 比叡 野村泊月
滝音の風にさからひ蝶生きし 河野南畦 湖の森
滝音の高まるばかり解夏の寺 新田千鶴子
滝音も昔のままや寒雷忌 鎌田 茂
滝音や群歯朶の下暗ければ 佐野鬼人
滝音をとほく衣干す薄暑かな 松村蒼石 寒鶯抄
滝音を己が声とし若き行者 加藤知世子
滝音を滝にもどして平常心 吉田貞子
滝音を聴き疲れたり滝を去る 太田昌子
滝音を蔵し凍てゆく月の巌 鷲谷七菜子 雨 月
滝音を離れてよりの冬日和 竹中碧水史
滝音を離れて水の匂ひけり 小島健 木の実
滝音を離れ風音秋の暮 野澤節子 遠い橋
瀧音にしばられてゐてこの世かな 椎名書子
瀧音に包まるるまで近寄りぬ 牧野春駒
瀧音に消されしものの中にをり 稲畑汀子
瀧音に肩をそがれてゐるごとし 大木あまり 雲の塔
瀧音のこもりてをりし天袋 鳥羽三郎
瀧音の中より痩せてもどりけり 石田勝彦 秋興
瀧音の夕べを散りぬえごの花 池松 昌子
瀧音の息づきのひまや蝉時雨 芝不器男
瀧音の秀衡櫻とぞ申す 黒田杏子 花下草上
瀧音の高まるばかり解夏の寺 新田千鶴子
瀧音を持ち帰りたる懐炉かな 鈴木鷹夫 千年
短か夜の客に滝音ありにけり 林原耒井 蜩
総身に滝音つめて戻りけり 黛 執
虫干の蔵にかすかに滝音あり 平井久美子
街空に滝音を聴く流民か 徳弘純 非望
道ちがふらし滝音に遠ざかる 下村梅子
遠のけば滝音さむき竹林 平井照敏 天上大風
きこゆるは瀧の音とや曼珠沙華 久保田万太郎 草の丈
しばらくは身を離れざる滝の音 瀬山一英
たのしさとさびしさ隣る瀧の音 飯田龍太
とめどなく八月尽の滝の音 百合山羽公
ほろほろと山吹ちるか瀧の音 松尾芭蕉
をちこちに滝の音聞く若葉かな 蕪村
パチンコ店瀧の音なす終戦日 大木あまり 山の夢
一切の音絶ち滝の凍つるかな 坂本菊江
下校時の闇の階段滝の音 東江万沙
中宮祠に滝の音聞く夏の月 夏の月 正岡子規
二の滝の音の交響神帰る 橋本榮治 麦生
二荒や紅葉にこもる瀧の音 紅葉 正岡子規
人氣なき山の紅葉や瀧の音 紅葉 正岡子規
全山のもみぢ促す滝の音 山内遊糸
公園の櫻月夜や瀧の音 泉鏡花
凍滝の怒濤の音を嵌め殺し 石嶌岳
凍滝の玉簾なす水の音 川辺房子
凍滝の音を封じて濁りけり 行方克己 昆虫記
凍瀧の内や垂水の音やさし 佐藤希世
刻つなぎきて永劫に瀧の音 青木重行
剣が峰に夏霧吹て滝の音 夏霧 正岡子規
千年の杉や欅や滝の音 草間時彦「瀧の音」
句碑動くかに城山の滝の音 杉山青風
夜はときに長寿かなしき滝の音 飯田龍太
大杉の蓄へてゐる滝の音 和田耕三郎
寒行の見えねど瀧の音変る 中戸川朝人
待春の空に襞ある瀧の音 古舘曹人 砂の音
懐手して上段に瀧の音 古舘曹人 砂の音
手を置きし巌のこむる瀧の音 中戸川朝人 尋声
昼みたる滝の夜の音聞きにけり 久保田万太郎 流寓抄
木枯の竹山越えて滝の音 吉武月二郎句集
涸瀧の落ちゆく末は風の音 山口草堂
涼しさや闇のかたなる滝の音 涼し 正岡子規
満月やせり上りくる瀧の音 黒田杏子 花下草上
満月や地下千丈の瀧の音 鳴戸奈菜
源流の雫の旅や滝の音 湯浅昌子
滝の音あるときつよく椿落つ 夕爾
滝の音あるひはこもる書の力 加藤知世子 花寂び
滝の音かたまりのぼる年の暮 福田甲子雄
滝の音してゐて未だ滝見えず 田中冬二 俳句拾遺
滝の音とどく木の椅子木の机 猪俣千代子 堆 朱
滝の音にのまれし言葉眸がただす 稲垣きくの 黄 瀬
滝の音によろけて掴む男の手 稲垣きくの 黄 瀬
滝の音に消ぬべき声やお山蝉 雑草 長谷川零餘子
滝の音も細るや峰に蝉の声 千代女「真蹟」
滝の音万朶の花の奥深く 峰山清
滝の音呪文となりて我を縛す 山本歩禅
滝の音四方にこたへて木下闇 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
滝の音均されてゆく春堤 原裕 青垣
滝の音山に揺さ振りかけてをり 阿部方城
滝の音岩魚焼く火の暮れ残り 古賀まり子
滝の音瀬の音いつか山の音 北村 寛
滝の音瀬の音月の差しゆきぬ 桂樟蹊子
滝の音真近に聞いて冬ごもり 中川宋淵 詩龕
瀧の音いろいろになる夜長哉 夜長 正岡子規
瀧の音ひびきて忘れ扇かな 細川加賀 『玉虫』以後
瀧の音殘る暑さもなかりけり 残暑 正岡子規
父の声滝の音にも消されざる 山崎みのる(諷詠)
生徒らの賑はひ去りし滝の音 萩原正章
真夜中や蚊帳を圧しくる滝の音 増田龍雨 龍雨句集
真言の秘密々々の滝の音 京極杞陽
石穿つ力を秘めし滝の音 きよみ
秋燕忌六腑にひびく滝の音 角川春樹 夢殿
秋風や墓の下なる滝の音 渡辺水巴 白日
糸滝の音より抜けて日雀かな 隈崎了仙
緒を締めし鼓ケ滝の音と思ふ 鷹羽狩行
虹鱒を釣る腹背に滝の音 宮下翠舟
蛇穴を出て洞然と滝の音 辻桃子
蛇笏忌の岩うつ滝の音聞ゆ 飯田龍太
蝉鳴くや団扇に画く滝の音 蝉 正岡子規
衣更へてきけばきこゆる滝の音 村越化石 山國抄
補陀落の雲の峰より滝の音 春樹 (日光の二荒山(男体山)は補陀洛山なり)
遠滝の音なき白さ畏れけり 渡辺 昭
金輪際滝落つ滝の音として 小林康治 玄霜
長き夜や闇に落ちかゝる瀧の音 夜長 正岡子規
青山中錫杖滝の音なせり 松山足羽
音止の瀧の音澄む蕗の薹 青木重行
養老や残る花より滝の音 吉田冬葉
魂離るこの世に瀧の音残り 加藤耕子
●叩く 
*えい糶られなほも勢ひの地を叩く 奈良文夫(萬緑)
いたづらに叩く水鶏や墓の門 水鶏 正岡子規
うちつけに夜の戸叩く帰省かな 高橋淡路女 梶の葉
うちつけに氷上叩く雨となりぬ 木村蕪城 一位
おほばこの花をはげしく雨叩く 若土白羊
かなぶんの叩くホテルの非常口 露口美穂子
ががんぼの一肢かんがへ壁叩く 矢島渚男「采薇」
けらつつきふかき眠りの木を叩く 永井一穂
こもり音に啄木鳥叩く又叩く 原石鼎
さびを聞け氷を叩く竹柄杓 氷 正岡子規
すがもりの小屋の戸叩く五十雀 田中豊季子
せきれいの叩く自炊の土鍋は空ら 長谷川かな女 花 季
つるはしで叩く枕木梅雨はじまる 細見綾子 花寂び
とうすみやまた雨叩く水の面 岸田稚魚
とひよりて竹を叩くや元政忌 松瀬青々
なな草や次手に叩く鳥の骨 桃隣 正 月 月別句集「韻塞」
なまくら出刃もって寒海苔叩くかな 高澤良一 素抱
ぬれ髪を振りては肉を叩く春 宇多喜代子
はじめより殺意ありけり蚊を叩く 星留水子
ふれよ雪ふれよと叩く鉢叩き 鉢叩 正岡子規
まだ土の匂ひを持たぬ畦叩く 川上弥生
まつさきに花舗の戸叩く春一番 満田玲子
まみどりの秘境に叩く天瓜粉 櫂未知子 蒙古斑
まろび寝を水鶏叩くや胸の上 森澄雄
みづうみのしづかなる日の胡麻叩く 甲斐のぞみ
ゆきずりの洋傘もて叩く南風の狸舎 宮武寒々 朱卓
アトリエの高き天窓雹叩く 中島隆
アネモネを呉れと人来て戸を叩く 前田普羅
ジャスミンや酔ふ人影の水叩く 小池文子 巴里蕭条
パイプの灰叩く他郷の一夏木 秋元不死男
ブリキ屋叩く切なきまでに門川澄み 加倉井秋を 『真名井』
一つ家を叩く水鶏の薄暮より 松本たかし「石魂」
一戒を破り即ち蝿叩く 堀前小木菟
一芸と言ふべし鴨の骨叩く 右城暮石(1899-1995)
一茶忌の川底叩く木の実かな 石田勝彦
七種の叩けば叩くあをさかな 岸原邦代
万緑の一幹馬首のごと叩く 狩行
不器用に警察官が蝿叩く 加藤良彦
人叩く音にて覚めし昼寝かな 中村哮夫
人探すことも忘れて蝿叩く 田沼文雄
人違ひして肩叩く目借時 徳丸峻二
何鳥か梅雨の厚みをまた叩く 椎橋清翠
充分に引きつけ置いて蚊を叩く 高澤良一 素抱
先づ叩く己の影や土竜打 新井盛治
児が叩く気侭な鉦や地蔵盆 小山徑石
冬山を叩くが如く魚板打つ 杉浦冷石
冬帽子脱ぎて無念の椅子叩く 浅井惇介
冷房に疲れし肩を叩くなり 星野立子
出刃の背を叩く拳や鰹切る 松本たかし「火明」
出初を祝うて叩く瓢かな 一茶
出峡の日和あまさず胡麻叩く 若林英子
初東風や双手で叩く馬の胴 松村多美
初雷の嫩芽を叩く風雨かな 長谷川かな女 雨 月
北向やこんこん叩く厚氷 尾崎紅葉
十日夜おもしろがりて地を叩く 猪俣千代子 秘 色
半漁の一戸を水鶏叩くなり 森田峠 逆瀬川以後
厠の扉叩く子がゐて冬の月 松村蒼石 雁
古暦丸めて犬の頭を叩く 岸本尚毅 舜
叩くにも君を忘れぬ薺哉 紅爾
叩くのは季節の音かわたし咲く 和田美代
叩くもの自在に選び石叩き 神谷壽松
叩くより仕末がこはし大百足虫 奥出豊子
叩く尾のすりきれもせす石敲き 鶺鴒 正岡子規
叩く時は叩かぬ時は秋の聲 秋の声 正岡子規
叩く時ひさご飛び出せ時鳥 時鳥 正岡子規
名月の裏戸を叩く水鶏かな 皿井旭川
啄木鳥が鉄砲虫の木を叩く 今川篤子
啄木鳥の叩く木の音空の音 今村七栄
啄木鳥の昇りきらざる日を叩く 平子 公一
啄木鳥叩く音のかなたはうつろなる 原 柯城
啓蟄の田をせきれいの尾が叩く 南 うみを
土間叩く藁ぼて重き亥の子かな 藤木栄二
地を叩く夫の縄飛び春隣 蕪木啓子
垣こえて雨戸を叩く水鶏かな 水鶏 正岡子規
夏痩の腋皿叩く団扇哉 夏痩 正岡子規
夏過ぎのプールを叩く通り雨 永方裕子
夕暮はラジオを叩く父となる 仁平勝 東京物語
夜の雪やしきりに叩く医者が門 雪 正岡子規
夜の雪やせわしく叩く醫者の門 雪 正岡子規
夜寒の戸叩くけはひや起ちて見る 青峰集 島田青峰
夜神楽の死にゆく鬼に手を叩く 野見山ひふみ
大年や啄木鳥叩く常の音 東洋城千句
大豆叩く音の深みへ溜まる鯉 澤 悦子
天界へ向き大氷柱叩くなり 金箱戈止夫
妹背鳥煙管の筒を叩くごと 高澤良一 随笑
寒釣の煙管を叩く石置けり 米沢吾亦紅 童顔
寒鮒の尾が地を叩く暮色かな 斎藤梅子
寝よとすれば門叩く也春の宵 春の宵 正岡子規
小夜更けて氷を叩く隣かな 氷 正岡子規
小夜更て氷を叩く月夜哉 氷 正岡子規
山吹や月の戸叩く武者一騎 山吹 正岡子規
山吹や藁屋を叩く武者一騎 山吹 正岡子規
山影の移りゆくなか胡麻叩く 棚田良子
山笑ひ初むや帽子で膝叩く 岩月星火
山鳩や数へて母の肩叩く 冨山としを
年玉の鴨提げて書生戸を叩く 年玉 正岡子規
幹どこを叩くも鉄の音や冬 橋本榮治 麦生
底叩く音や余寒の炭俵 召波 五車反古
庭履の四五歩に秋の蚊を叩く 徳澤南風子
影さしてなほ繭の中叩くあり 赤松[けい]子 白毫
忘れゐしときに水鶏の叩くかな 小玉竜也
思ひ切り地球叩く西瓜割 阿部一彦
恋猫が屋根に居るピアノを叩く 加倉井秋を 『胡桃』
愛妻家小西昭夫氏蝿叩く 小西昭夫
憂き事を忘れんとして胡麻叩く 三浦音和
戸を叩く女の聲や冬籠 冬籠 正岡子規
戸を叩く狸と秋を惜しみけり 蕪村
戸を叩く音の出したき水鶏笛 後藤比奈夫 めんない千鳥
戸を叩く音は狸か薬喰 子規句集 虚子・碧梧桐選
戸隠の磐戸を叩くけらつつき 伊藤伊那男
手に足にこほろぎのぼる胡麻叩く 白川朝帆
手を叩くが如く万象句となる冬 橋本夢道 良妻愚母
打ち上げて尾鰭怒れる鮭叩く 西村和子 かりそめならず
拳で叩く枯木悪夢の昨夜無し 小宮山遠
掛乞の留守を叩くや竹の門 掛乞 正岡子規
掛乞の竹椽叩く烟管哉 掛乞 正岡子規
掛矢あがる時叩く音桃咲けり 川村紫陽
揉み叩くゐさらひ鏡餅に似て 矢島渚男 延年
揚羽蝶遠忌の柱叩くかな 柿本多映
文人とかかはり鴨の骨叩く 水谷芳子
新平忌の経塔叩く夜の雨 北村広洋
新緑や仰ぎて叩く楡の幹 望月皓二
新蕎麦や月下に叩く俳諧寺 小川牛里
旅人の破鐘叩く扇かな 扇 正岡子規
日に叩く鶏頭の種無尽蔵 大石悦子 聞香
日の当る幹の高さにけら叩く 深見けん二 日月
春の雪ふり子が叩くかがり緒の赤い太鼓 橋本夢道 無禮なる妻抄
春宵の叩きに叩く肉一片 大倉郁子
春沼の天のどこかで手を叩く 横山白虹
春驟雨船端叩く川蝦漁 高澤良一 寒暑
暑し都両手で叩く甕の胴 宇多喜代子
更けて来て宿を叩くや夏の月 井月の句集 井上井月
朝来ると山小屋叩く星鵜 伊藤いと子
朝桜吾子の駆足地を叩く 奈良文夫
朧夜や用ありげに狸戸を叩く 朧夜 正岡子規
木の家や涼風に肩叩く音 中山純子 沙 羅以後
木の葉降る降れよと子らが樹を叩く 寺井谷子
木を叩く音のしぐるる誕生寺 立間悠久男
未明すでに溲罎は見ゆれ水鶏叩く 石田波郷
朴咲くや「朴(すなほ)」とも読み幹叩く 平井さち子 紅き栞
村中を法華の叩く彼岸哉 小澤碧童 碧童句集
枕木を叩くつるはし梅雨に入る 細見綾子
柚子坊やくびれ無きわが腰叩く 佐藤洋子
柿若葉あれあれ鯉の尾が叩く 林原耒井 蜩
栗叩く音に首あげ薩摩鶏 倉橋羊村
桐落葉乾ける土を叩くなり 上村占魚 球磨
梅の実を叩くを見つつはらはらす 相生垣瓜人 微茫集
梅深く月下の門を人叩く 夜の梅 正岡子規
棒をもて少年春の水叩く 吉田木底
森の朝告げて啄木鳥叩く音 梅田実三郎
樵り休めば啄木鳥の叩くしづかさよ 冬葉第一句集 吉田冬葉
樹を叩くとき満満と思慕つのる 大西泰世 世紀末の小町
樹木医の叩く樹の音春浅し 辻本孝子
此村の門並叩く水鶏哉 星野麦人
死はときに木をこつこつと叩く鳥 尾利出静一
母の肩たたくおもひに胡麻叩く 粟田素江
水切りし狙白し鰺叩く 上村占魚 『天上の宴』
水叩く草花あり蜻蛉吹かれ行く 四明句集 中川四明、粟津水棹・名和三幹竹共編
水叩く蜻蛉の秋となりにけり 長谷川櫂 虚空
水無月の竹を叩くや俄雨 妻木 松瀬青々
水草生ふ水面を雨の叩くなり 高浜年尾
水鶏きて戸を叩く夜は我とおもヘ 上村占魚 球磨
沖晴れてとべらの花を叩く雨 藤田あけ烏
波羅蜜多写経の半ば蚊を叩く 北見さとる
洗面器叩くや明けをつづれさせ 佐々木六戈 百韻反故 初學
深川や風が戸叩く雛の家 加藤耕子
深海のホテルの壁を蛾が叩く 横山白虹
滝泡の岩めぐる鳥を叩くさま 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
濁り鮒釣りをる泛子を雨叩く 平尾祁村
瀬の音に尾羽を叩く黄鶺鴒 堀川草芳
焚き添ふる鵜篝薪を以て叩く 高濱年尾 年尾句集
燈籠の門を叩くや女馬士 燈籠 正岡子規
父酔うてしきりに叩く火桶かな 松本たかし
片膝をたて直しては胡麻叩く 山崎寥村
犬猫にしたはる妻よ胡麻叩く 大熊輝一 土の香
狸来ずなりぬ水鶏や戸を叩く 水鶏 正岡子規
玉ぜりの裸を叩く霰かな 富安風生
球根の土を女の掌で叩く 古舘曹人 能登の蛙
生凍豆腐叩く谺や寒未明 小佐田哲男
畝叩く喜雨の力を見てゐたり 佐々木蔦芳
病床に心いらちて蚊を叩く 蚊 正岡子規
百日紅叩く雨可し朝の酒こころを洗ふものなれど注す 伊藤一彦
真夜中を叩く私的な国境 穴井太 ゆうひ領
短夜や頻りに叩く医者の門 短夜 正岡子規
短日やエホバの使徒が戸を叩く 穴井太 原郷樹林
石叩き叩く擬宝珠をきめてをり 中村天詩
石鯛きて舟底叩く嬉しさよ 森下草城子
砂叩く雨に昼顔花やぶれ 岡本無漏子
秋の蚊を叩く一人の音を立て 深見けん二 日月
秋高し駅員手旗で肩叩く 田川飛旅子 『植樹祭』
種選るや通りがかりに樹を叩く 藤田湘子
稲妻に怯ゆる牛の背叩く 倉重其粧亭
空つ風たつた一人の戸を叩く 高橋イネ
竜胆枯れ叩く狐の尾がむらさき 長谷川かな女
童出て犬の子叩く余花の宿 岡本松浜 白菊
竹藪の外から叩く水鶏哉 水鶏 正岡子規
笠叩く松の雫や五月雨 比叡 野村泊月
籾伏せが叩く苗田の泥日輪 羽部洞然
粟の穗のこゝを叩くな父の墓 粟 正岡子規
絵馬叩く風より雪の降り出して 角光雄
縁先のいとも良き音蚊を叩く 斎藤夏風(屋根)
縄とびの縄啓蟄の地を叩く 辻田克巳
縋り合ひて雪を叩くや下駄と下駄 左衛門句集 吉野左衛門、渡邊水巴選
老にまだのこる力や粟叩く 上野泰 春潮
背を叩くから夕焼を吐かねばならぬ 豊口陽子
胡麻叩くすとんと夕日落ちにけり 大出百合子
胡麻叩くダムとなるまで胡麻叩く 大野西湘子
胡麻叩く千手千眼観世音 井上みつこ
胡麻叩く女の一日暮れにけり 石川克子
胡麻叩く平和の音の響きけり 吉田利子
胡麻叩く手首の力やさしくし 猪俣千代子 堆 朱
胡麻叩く母のうしろへ帰省かな 市野波人
胡麻叩く税書かたへに置きしまま 乙草之介
胡麻叩く著物の膝のぬけしまま 橋本鶏二 年輪
胡麻叩く面白そうに手を上下 長谷川かな女 牡 丹
脚長のいらくさの香に太鼓叩く 長谷川かな女 花 季
腰叩く刈田の農夫誰かの父 西東三鬼
腹擦りて鮭のぼる瀬を叩く雨 有働亨
舟ばたを叩く上げ汐春近し 田山諷子
舷を叩くが習ひバナナ売り 吉田鴻司
花くれない魚板を叩く風吹く日 和田悟朗
花冷えの城の石崖手で叩く 西東三鬼
茅舎忌や魚板を叩く雨しきり 磯崎美枝
菱刈りの面を叩く夕立かな 前田普羅
萩の戸に埃叩くやむし鰈 松瀬青々
落花水に動きて雨の叩くなり 高濱年尾 年尾句集
葛の葉の日は衰へず豆叩く 石田あき子 見舞籠
葭切や布団を叩く音のして 後藤 章
蓑虫や化けて戸叩く秋の雨 立花北枝
虫の夜の弾くと叩くとありにけり 佐々木六戈
蚊の声やうつゝに叩く写し物 蚊 正岡子規
蚊を叩くをんなの手のひら華やげり 谷口桂子
蚊を叩く姿勢のままに逃げられし 米澤江都子
蚊を叩く音も更けたる夜学哉 蚊 正岡子規
蚊を叩く骨も折れよとおもひ切 高澤良一 寒暑
蛙闇よりあやかしの扉を叩く 文挟夫佐恵 雨 月
蛭の水面叩くがごとく手を洗ふ 石川桂郎
蜻蛉や叩くも墓の船大工 不句襍成 細谷不句
蝿叩くことのおろかさ見てをりぬ 亀井糸游
蝿叩くには手ごろなる俳誌あり 能村登四郎(1911-2002)
蝿叩くふりして叩く夫の膝 岩川春江
蟲の夜の弾くと叩くとありにけり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
蠅叩くことのおろかさ見てをりぬ 亀井糸游
蠅叩く術練達にまだ遠し 高澤良一 寒暑
行過ぎて隣を叩く水鶏かな 会津八一
裏木戸を叩くは風の雪柳 横田清香
誘惑の雨でで虫の殻叩く 前川 実
誰が家の戸叩く音ぞ夜半の秋 秋 正岡子規
誰もゐぬ世や草叩く盆の雨 清水径子
豆叩くうちでのこづち振るやうに 岩崎すゑ子
豆叩く夫婦の間に子供置き 中川秋光
豊年の地下足袋叩く夕重み 久米正雄 返り花
赤牛の尻を目がけて虻叩く 深沢義夫
逆らへる山火は二人して叩く 岩岡中正
連翹や田水を叩く海の雨 斉藤美規
遠野郷踊り太鼓を地に叩く 斉藤敬子
酔ひし竹雨の叩くに任せけり 相生垣瓜人 明治草抄
野猿浴み蜻蛉叩く露天温泉 西本一都 景色
野遊びや飛行機とべば手を叩く 龍胆 長谷川かな女
金物で叩く音する切子かな 岡田史乃
鉢棚を叩く硬さや寒の雨 颯(しづの女小句) 竹下しづの女
鉦叩く子のわき見して春祭 小間さち子
鉦叩叩くほかなき夜の不安 設楽千恵子
鉦叩山鳴熄めばまた叩く 米谷静二
鉦叩思ひだしてはまた叩く 杉山青風
鉦叩朝より叩く含み墨 村上麓人
鍋もとはしんがり急ぎ雹叩く 福田蓼汀
鎧戸を叩く落葉の夜の童話 文挟夫佐恵 黄 瀬
長き影曳きねんごろに胡麻叩く 原田卯つ木
長生きをしきりに詫びて胡麻叩く 小原啄葉
雨叩く最上川べり破れ竹瓮 高澤良一 随笑
雪の戸を叩く子のこゑ注連貰ひ 角川春樹
雪女をとこひとりの家叩く 保坂伸秋
雪女子盗ろことろと戸を叩く 中村敞
雪崩跡叩く雷雨のマチガ沢 小野宏文
雪解山叩くとでるわでるわ鯉 鈴木光彦
雪風の人声に似て戸を叩く 太田土男
電線に鶺鴒空の端叩く 舟山月歩
霧積の霧の戸叩く夜のすだま 文挟夫佐恵 雨 月
青げらの木を叩く音陶の郷 木村桃山
頭痛しと頭を叩く音や春 池田澄子
颱風に傾ぐデッキを濤叩く 山本暁鐘
高層の玻璃叩く喜雨傘寿の師 奈良文夫
鴨の骨叩く音なり二階まで 後藤綾子(1913-94)
鵜つかひの舷叩く谺かな 大谷句佛 我は我
鶏頭に太鼓叩くや本門寺 夏目漱石
鶯の鳴く中叩く魚板かな 野村喜舟 小石川
鶺鴒のとまりて叩く鬼瓦 坪井 さちお
鶺鴒の叩く泉石序ありけり 篠塚しげる
鶺鴒よこの笠叩くことなかれ 鶺鴒 正岡子規
鶺鴒叩く霽れ間の猩々木 林原耒井 蜩
鹿火屋にも山廬の風や戸を叩く 古舘曹人 砂の音
黒潮の香のいまだある鰺叩く 間地みよ子
黒瀬川岐てる島に豆叩く 中戸川朝人 星辰
黙々と西日の中に胡麻叩く 田中冬二 俳句拾遺
鼈甲屋の叩く調子は日永かな 野村喜舟 小石川
龍胆枯れ叩く狐の尾がむらさき 長谷川かな女 花 季
●太刀音
●丁々発止
●地籟 
初明り胸中天籟地籟あり 渡部抱朴子
●槌音 
冬の夜や槌音返す壁聳ゆ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
学ぶ紅顔冬あたたかな木槌の音 成田千空 地霊
未生以前の槌の音する朝の杉 鶴岡梨江子
棟上げの槌音一気に秋ぞ立つ 高澤良一 素抱
沖がかる船に槌音小春凪 五十嵐播水 埠頭
父の日の谺となりて槌の音 前原蟻子
牧開く槌音雲に響かせて 橋本榮治
玉綱打つ槌音の冬に入る 渡辺成典
秋は絡まぬ石切槌の二挺の音 川口重美
秋風や浜茶屋たたむ槌の音 後藤亀泉
箔打の槌音止めば暮春かな 本多静江
薬師寺の初東風に乗る槌の音 中村富子
金箔を打つ槌の音冬に入る 三代川次郎
●爪音 
日向ぼこ雀ちか寄る爪音す 大城 周
●弦声
●低音 
ただ妻の支持のみ確か蟇低音(ひくね) 秋元不死男
ぼくが低音のロシヤ民謡太る春月 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
サックスの低音が好き冬銀河 下条冬二
低音です東京湾の枯芒 福島靖子
低音のときどき強く虎落笛 平本微笑子
低音は枯木高音は雲ワイン澄む 河野多希女 両手は湖
低音を好みてリラを愛しけり 後藤夜半 底紅
晩涼やはじめ低音に習ひ笛 伊藤京子
草笛の低音は業の深さかな 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
踏みゆるめばすぐに低音稲扱機 橋本多佳子
●天籟 
初明り胸中天籟地籟あり 渡部抱朴子
天籟や山のなぞへを鴨の群 文挟夫佐恵
天籟や雁の羽ばたきまぎれこみ 大石悦子 百花
天籟を猫と聞き居る夜半の冬 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
●遠谺 
二期田植う村に射爆の遠谺 玉城一香
人見えぬまま寒林の遠こだま 桂信子 黄 瀬
今発ちしすすきの風の遠こだま 豊田都峰
冬の猟銃忘却かけし遠こだま 寺山修司 未刊行初期作品
晩秋の木曾谷汽車の遠谺 福田蓼汀
月一痕仏法僧の遠谺 渡邊千枝子
月更けて鶴が機織る遠こだま 渡辺恭子
月落ちて仏法僧の遠谺 高橋克郎「月と雲」
身近きは響き野分の遠谺 斎藤空華 空華句集
遠谺して木曾谷の修羅落し 加古宗也
●遠鳴り 
九十九里の波の遠鳴り日の光青葉の村を一人来にけり 伊藤左千夫
出埃及記に母の颱風の遠鳴り 江里昭彦 ラディカル・マザー・コンプレックス
大沢小屋目細遠鳴き日暮れつつ 岡田日郎
弔問の月あきらかに遠鳴子 西島麦南 人音
春潮の遠鳴る能登を母郷とす 能村登四郎
梟の遠鳴きお山更けにけり 雨宮美智子
湖に岸離る舟や遠鳴子 尾崎迷堂 孤輪
白日の酒座しめやかに遠鳴子 西島麦南 人音
筒鳥の遠鳴き女岳雲の中 水野博子
筒鳥の遠鳴く手稲山といふ 山口青邨
筒鳥の遠鳴く朝の樹海かな 松田多朗
誰が引くやしきりに鳴つて遠鳴子 高橋淡路女 梶の葉
踏切の遠鳴り蝶の凍てにけり 菅原鬨也
遠鳴きが良し病む床に法師蝉 森定南樂
遠鳴神面裡顎緊む手力男 平井さち子 完流
郭公の遠鳴き霧の大菩薩 小川寿々子
隣り町に一の鳥居や遠鳴神 平井さち子 紅き栞
鶴来つつあり遠鳴きのさざめきに 吉野義子
●遠音 
あかがねの茶筒に雉子の遠音あり 友岡子郷 未草
うき時は蟇の遠音も雨夜哉 曽良
うぐひすの西日になつて遠音かな 比良
うぐひすの遠音置きたる鏡かな 中村祐子
うちまぜて遠音かちたる砧かな 飯田蛇笏 山廬集
かりがねの遠音もあらむ川の音 小松原みや子
こゑおもく牛遠音して梅の奥 石原舟月
ひぐらしの遠音の糸の切れしまま 飯田龍太
みん~やつく~法師遠音なる 野村喜舟 小石川
めづらしや水鶏の遠音竹をうつ 樗良「雪の声」
三光鳥森のしづくとなる遠音 北川孝子(京鹿子)
冴ゆる灯の見えて石切る遠音かな 広江八重桜
啄木鳥の柝を遠音に師匠亡し 上田五千石 森林
塩田に遍路の鈴の遠音あり 舟月
夏鶯の悲願の遠音あるばかり 飯田龍太「童眸」
夢かれて初秋犬の遠音かな 西吟
奔流の遠音となりし山椒の実 斎藤梅子
宿題の子に邯鄲の遠音澄む 西村和子 窓
寒蝉の遠音ばかりの余生かな 山口草堂
小春日の障子をはたく遠音かな 句佛上人百詠 大谷句佛、岡本米蔵編
山塊の月の仏法僧遠音 中村將晴
山茶花に筬の遠音をなつかしむ 小松崎爽青
恋猫の鈴の遠音や姥子宿 井上久枝
恵那晴れて遠音はりゐる囮かな 本田一杉
憂き時は蟇の遠音も雨夜かな 曾良「蛙合」
打返す枕に虫の遠音かな 井上井月
日盛に知らぬ小鳥の遠音かな 泉鏡花
春の月雉の遠音に傾きぬ 士朗
月夜の星大きくて蛙の遠音 北原白秋
朝夕の潮の遠音も羽子日和 西島麦南
朧夜に何やらものゝ遠音哉 朧夜 正岡子規
海鳴りの遠音を聞くや冬籠 癖三酔句集 岡本癖三酔
煮ゆる壺焼に海の遠音を聞きにけり 青峰集 島田青峰
秋来れば博多小女郎もなげきけむ波の遠音に人の待たるる 柳原白蓮
笛の音のあはれ遠音や盆の夜々 馬場移公子
筒鳥の遠音か夕雲岳とざす 福田 蓼汀
筒鳥の遠音ばかりに峡暮るる 江口良子
筒鳥の遠音近づくことのなし 森田峠(かつらぎ)
筒鳥の風の遠音となりにけり 三村純也「常行」
老鴬の遠音どこまでも遠音 及川貞
草笛の遠音はすでに暮れてをり 寺井満穂
薺うつ遠音にひくや山かつら 青蘿
虫遠音刻々月下美人解け 及川貞
蜩の遠音に人の恋しかり 鹿野周治
蟲遠音近音月下の留標群 下村ひろし 西陲集
身を鍛へよと頬白の遠音冴え 飯田龍太
近づくと思ひし鹿の遠音かな 柳原極堂
邯鄲の鳴ける遠音に風の出て 行方克巳
郭公の遠音こだまは末消ゆる 豊長みのる
陵の青葉に潮の遠音かな 会津八一
雉子鳩の遠音や風のさくらんぼ 渡邊水巴 富士
雉鳩の遠音うつつに明易し 佐々木俊介
雪ちらちら鵯の遠音をなつかしむ 臼田亞浪 定本亜浪句集
風鈴の遠音に似たり甲斐地酒 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
高からぬ山突兀と百舌遠音 三好達治 路上百句
鬼ケ城夏鶯の遠音して 前田普羅 新訂普羅句集
鮎の瀬は遠音あぐるや蚕仕度 前田普羅 飛騨紬
鳴くてふに鹿の遠音や老が耳 松根東洋城
鴬の遠音こたびは夫が聴きし 上野さち子
鶏遠音きこゆる北風に病臥かな 富田木歩
鶯のいつか去にけん遠音かな 会津八一
鶯の遠音と父の記憶力 栗林千津
鶯の遠音のありて雨読の日 浅井青陽子
鶸遠音笹かぶる井の底知らず 臼田亞浪 定本亜浪句集
鹿笛に答へて鹿の遠音哉 鹿笛 正岡子規
麦笛やおのが吹きつゝ遠音とも 皆吉爽雨「雪解」
●怒号 
蟷螂に怒号のなきを惜しむなり 中原道夫
暗闇祭闇に怒号し闇を殴り 深谷鬼一(梟)
●怒涛音 
かげろひゆく身に谺して怒濤音 鷲谷七菜子 雨 月
なまはげの一歩一歩に怒濤音 荻原都美子
冬蝶の身をひらきたる怒濤音 斎藤梅子
壺焼を食ふこめかみに怒濤音 鈴木鷹夫 渚通り
寒椿落ちて崖うつ怒濤音 河本好恵
年詰る軒にいちにち怒濤音 石原舟月
怒濤音の身ぬちにとどく寒牡丹 石寒太 翔
怒濤音わが初夢を囲みけり 奥坂まや
怒濤音島にひびきて五月果つ 村上辰良
怒濤音懸大根に日が移り 安田照
怒濤音背に角巻の女かな 徳永山冬子
旅に年送るはさむし怒濤音 中戸川朝人 残心
水仙は怯まざる白怒涛音 西谷 孝
浜菊の枯れて突立つ怒濤音 加藤憲曠
煮凝に箸かけて聴く怒濤音 小川原嘘帥
腸にずしりと冬の怒涛音 伊藤霜楓
蟷螂の青の一歩よ怒濤音 佐川広治
飾り臼しづかにをれば怒濤音 加藤楸邨
●轟き 
あかつきの海傾けて来る浪の磯に砕けて天に轟く 都筑省吾
おでん食ふよ轟くガード頭の上 篠原鳳作 海の旅
ついに鳴り轟きにけり寒の雷 川島彷徨子
どどーんと轟く連山猟期入る 藤田真寛
やまうらの夕轟きやきじの声 空芽 俳諧撰集「有磯海」
トラックの轟き秋蚕まろびけり 殿村菟絲子
モルダウの轟くなかのしづり雪 中村与謝男
元日の晴れて轟く午砲かな 青峰集 島田青峰
冬涛の轟き攻むる沖の岩 浜田徳子
南桶の轟きやまぬ花ゆすら 綾部仁喜 寒木
外に多事雷も壮年の轟きに 平井さち子 完流
天城嶺の芯に轟く日かみなり 白井新一
寒凪の夜の濤一つ轟きぬ 川端茅舎
山雨なほ轟き落ちて夏爐もゆ 松本たかし
枇杷実る大海の轟くところにて 長谷川かな女 雨 月
枯れてもう考えぬ葦 日轟く 楠本憲吉
湯地獄の底轟きて真炎天 西村公鳳
濤ひとつびとつ轟く野蒜摘 児玉 小秋
火縄銃城に轟く子供の日 岩崎悦子
玄海の濤の轟く月の浜 伊藤いと子
穴釣や氷湖轟く寧からず 新井石毛
蝶と来たり脚下のダムの轟きに 赤尾恵以
螢滅し国道一号線轟く 木村蕪城 寒泉
轟きて名も荒川の秋の雷 鈴木鷹夫 千年
轟きて湯柱立てり空に鵙 下村ひろし 西陲集
轟きに虹を架けたり那智の瀧 五島高資
轟くといふには遠き日雷 伊藤政美「天の森」
長谷寺に法鼓轟く彼岸かな 高浜虚子
雪解川轟きゐたり流刑小屋 岡田加代
雪起し轟き渡り雪となる 金山有紘
雲轟きして鳥のつく枯蘆や 廣江八重櫻
飛騨山を雷轟きに指させる 鈴鹿野風呂 浜木綿
首夏の家朝に深夜に貨車轟き 石田波郷
高濤の轟きやすし盆の前 大井戸辿
●響動き(どよめき) 
左義長の響動めきに酔ふ在の衆 吉井秀風
山川の響動み流るる良夜かな 茨木和生 往馬
どよめきから部隊をもつて行くレールの鉄錆も五月 橋本夢道 無禮なる妻抄
どよめきに馬のたじろぐ多度祭 林 圭子
どよめきの繰込む会陽仁王門 細川子生
初富士を得しどよめきの食堂車 浅野右橘
物言ひに杜どよめきて草相撲 平尾圭太
福引の笑ひどよめく隣哉 福引 正岡子規
竹の精どよめき匂ふ雨五月(飯能・竹寺) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
軽きどよめき麦藁帽の花火なり 高澤良一 随笑
●とんとん 
きゝきゝと鵙とんとんと渋を搗く 阿波野青畝
すすき野を神主よぎるとかとんとん 穴井太 原郷樹林
たべ飽きてとんとん歩く鴉の子 高野素十
とんとんと上る階段年忘れ 星野立子
とんとんと二階へ上る冬支度 辻田克巳
とんとんと二階を降りて合格子 豊田八重子
とんとんと叩けハ崩る門の雪 雪 正岡子規
とんとんと年行くなないろとんがらし 草間時彦
とんとんと杭ゼわたれる寒鴉 小原菁々子
とんとんと砂糖スティックアイスティー 高澤良一 随笑
とんとんと縁踏み畳替終る 森本順代
とんとんと薪割り紅葉ちる日向 高澤良一 寒暑
とんとんと運ぶ話や白障子 大谷史子
二歩とんとん三歩目跳んで風花や 工藤克巳
初電車とんとんと坂下りけり 岸田稚魚
初電車坂とんとんと下りにけり(東京に一系統都電残れり) 岸田稚魚 『萩供養』
初鴉安土の田んぼをとんとんと 高澤良一 燕音
千年の古都とんとんと春の風 鹿又英一
味噌玉のとんとんとんと杏咲く 小岩井隴人
夜なべしにとんとんあがる二階かな 森川暁水 黴
建て急ぐとんとん葺きや暮の秋 石塚友二
早苗饗の娘の板橋をとんとんと 射場秀太郎
桃・満作咲きてとんとん拍子の春 高澤良一 寒暑
梯子段とんとん降りる菊日和 藤岡筑邨
着ぶくれてすつとんとんと市場行 中尾杏子
紙角力とんとん年の詰るかな 高澤良一 ねずみのこまくら
緑談のとんとんすすみ夏料理 鈴木伊都子
緑陰の雀とんとん走り根越ゆ 高澤良一 素抱
葉が出たさくらとんとんとろりこ甘茶のうた 中塚一碧樓
葱だけを見てとんとんと葱刻む 岩田由美
薺打つすととんとんと母癒えよ 渡辺恭子
藁砧とんとんと鳴りこつこつと 高野素十
袴着のとんとんのぼる五十段 高澤良一 さざなみやつこ
雨だれの音のとんとん祭月 高澤良一 ぱらりとせ
餅板の上に包丁の柄をとんとん 高野素十
●波音 
いちにち物いはず波音 種田山頭火(1882-1940)
かたばみの花に波音休暇村 木村蕪城
ここから浪音きこえぬほどの海の青さの 尾崎放哉
ちぎり絵に濤音ありぬ夏つばめ 河野多希女
とべらの実浪音に殻割れんとす 大熊輝一 土の香
どーんと波音日向に覚めて石蕗の花 有働亨 汐路
はしり蕎麦濤音つのりきたりけり 齋藤玄 飛雪
はまなすや濤音慣れの昼寝漁夫 河野南畦 湖の森
はららご飯濤音いつか納りし 岸田稚魚
ひねもす曇り浪音の力かな 尾崎放哉
ひよんの笛吹けば波音風の音 稲畑汀子
ひる顔の夢は波音ばかりなり 西沢和子
ふるさとの波音高き祭かな 鈴木真砂女(1906-)
みくまのゝ波音聞きて初湯かな 桑田青虎
みちのくの濤音荒し望の夜も 成瀬正俊
オリーブの花へ波音高き午後 平井伊都子「新山暦俳句歳時記」
ホテルの浪音もなくうすら眠うものかく 梅林句屑 喜谷六花
ポケットに生るる波音さくら貝 清水久子
ワイキキの波音ごもり昼寝覚 古賀まり子
一ツづゝ波音ふくる夜長哉 夜長 正岡子規
一度だけの波音冬日昏れにけり 桂信子 黄 炎
一湾の凍て浪音を封じけり 大島早苗
伊豆はあたたかく死ぬるによろしい波音 山頭火
冬すみれ石垣は波音に慣れ 山崎正枝
凍蝶に濤音いつも遥かなり 鷲谷七菜子 雨 月
切株に波音のあり抱卵期 増成栗人
刳舟に座れば 波音 魚の声 伊丹公子 アーギライト
十夜寺濤音ひとつとどろきぬ 小澤謙三
午後よりは眠し雲雀も浪音も 阿部みどり女
古道は濤音ごもり新松子 六本和子
囀りやよべの波音引絶えて 石塚友二 光塵
土佐の濤音サングラス外し聴く 田中英子
夏蚕飼夜は浪音に籠りけり 大野林火
夕靄のなかに波音小六月 角川春樹
夜くだちて浪音ばかり松の内 高浜虚子
夢にまで浪音重ね年詰る 伊藤京子
大いなるけふの浪音荒布干す 平尾楽山人
太古より湖の波音浜ひるがほ 鈴木隆子
実朝の忌の浪音を聴きに来し 大野崇文
実朝忌由井の浪音今も高し 高浜虚子
寶舟須磨の波音聞えけり 宝船 正岡子規
山越しに濤音聞ゆ十三夜 西山泊雲 泊雲句集
巌風呂に濤音こもる神無月 坂本山秀朗
帚目に載る波音や西行忌 池田弥生
庭番と濤音を聞く夕霞 鈴木鷹夫 大津絵
後の雛濤音ひびく床柱 田中英子
房総の高き波音秋刀魚買う 長田美智子
敦盛塚浪音聞かず花散らず 岡部六弥太
春の波音きくべし眼閉づるべし 鈴木真砂女
春やこの波音やさしくりかへし 齊藤美規
春寒き舟の波音さびしみつ すみだ川 新井聾風
春愁や湖に波音あることも 徳田千鶴子
昨日今日波音のなし白子干 清崎敏郎
昼寝覚め波音高くなりゐたり 川村紫陽
暮しの中の波音烏賊の白乾され 鈴木六林男 第三突堤
最はての濤音重ね手鞠唄 古賀まり子 緑の野以後
望の夜の波音に舞ふ安乗木偶 山下千代子
村ぢゆうに濤音ひびく冬柏 永田耕一郎 方途
松の奥浪音涼し御用邸 五十嵐播水 播水句集
柚子の花波音空にのぼりけり 市川恵子
梅干して夜は波音の近きかな 礒江沙知子
横走る渚波音日短し 染谷彩雲
歳明くる濤音国の四方つゝむ 長谷川素逝
毛糸編む遠く波音くりかへし 永田清子
水無月の波音返す師宣忌 伊丹さち子
沖に波音なくためて冬の靄 上窪則子
波 音 強 く し て 葱 坊 主 山頭火
波音かしぐれか旅寝うつゝなる 内田准思
波音がすぐそこにある大根引 加藤岳雄
波音が月光の音一人旅 坪内稔典
波音にくもる裸灯蜜柑選る 石本秋翠
波音になごむ松籟春ここに 及川貞 夕焼
波音にまぎれぬ虫や門草に 雉子郎句集 石島雉子郎
波音にまさりて蝉の岬あり 八木林之介 青霞集
波音にむせび酢蛸に咽びける 安達実生子
波音にポスター吹かれ海の家 田村恵子
波音に亡き声のあり送南風 川合憲子
波音に寒夜枕を深く当つ 井上雪
波音に榎の実こぼるる港阯 木村蕪城
波音に歩を合はせゆく小春かな 松田美子
波音に耽りこころまで海月 吉持愁果
波音に背ナ向けてゐる座禅草 小池槇女
波音に鉄道草の月日あり 高野ムツオ
波音のいちにち高し金盞花 水田光雄
波音のいつか遠のく篭枕 上 慶子
波音のうつつに寄せて初明り 稲畑汀子
波音のおほひかぶさり来る暑さ 今井千鶴子
波音のけだるきキャンプたたみけり 行方克巳
波音のけふのびやかに袋掛 赤尾冨美子
波音のこもりし髪を洗ひけり 片山由美子 風待月
波音のすぐそこにあり十夜寺 福川悠子
波音のせぬは不思議や松露掻 森田峠 三角屋根
波音のたえずしてふる郷遠し 山頭火
波音のときをりひびく新障子 片山由美子 水精
波音のなくて寄す波朝ぐもり 水野宗子(麓)
波音のねむたくなりし浴衣かな 細川加賀 『玉虫』
波音のほかを忘れてゐてのどか 保坂伸秋
波音のまくれ上れる春の雪 行方克巳
波音のをりをり漏るる朧かな 林 千恵子
波音の中の人声明易し 中村雅樹
波音の丸くかへりぬ月日貝 百瀬美津
波音の四方に聞ゆる冬瓜かな 八木林之介 青霞集
波音の大王岬の蚊と生れ 波多野爽波 『骰子』
波音の如き風音十三夜 石川喜美女
波音の引く音ばかり落椿 行方克巳
波音の改りたり初明り 高浜年尾
波音の早稲田を囃し出雲崎 小島健 木の実
波音の昏れし水仙畑かな 行方克巳
波音の暮色まとへり袋掛 西村博子
波音の月にからまるごと朧 郷 のぶこ
波音の朝の芒に高まりし 奥田智久
波音の消えて山みち出開帳 大峯あきら 鳥道
波音の湖にもありぬ流し雛 神崎 恵
波音の灯をくらくする山蛾かな 太田鴻村 穂国
波音の由比ケ浜より初電車 高浜虚子(1874-1959)
波音の筵成したり桜えび 佐野鬼人
波音の耳をはなれぬ無月かな 片山由美子 天弓
波音の落ちて盂蘭盆沖暗し 鈴木真砂女
波音の蘇鉄にひびく甘茶寺 荻原芳堂
波音の遠くにありしおぼろかな 田井野ケイ
波音の須磨をはなるゝ汐干哉 汐干狩 正岡子規
波音の高き日続く種浸し 茨木和生 三輪崎
波音の高き湖畔を鍋の渡御 廣瀬凡石
波音の高まる雪を割りにけり 陽美保子
波音は光りと消えて花アロエ 原 天明
波音は妻恋ふしらべ防風摘む 山田弘子 こぶし坂
波音もいつしか忘れ防風摘む 御堂御名子
波音も星も真近きバルコニー 永野由美子(阿蘇)
波音も木の国の音栄螺焼く 藤井冨美子
波音やひるの薊のかげもなし 田中裕明 花間一壺
波音や不漁鰊場の犬が吠ゆ 清崎敏郎
波音や夜目に仰ぎて寒ざくら 及川貞 夕焼
波音や弁天様の孑孑に 岸本尚毅 舜
波音や応挙の銀の屏風より 三浦久子
波音や抱けばつめたき秋日傘 井上弘美
波音を同行として秋遍路 芳西兌子
波音を懐に入れ白絣 古賀まり子
波音を掬ひてゐたり*いさざ舟 関戸靖子
波音を聞きしばかりの野梅かな 青木重行
波音を聞きちやつきらこ歌まねる 寺田木公
波音を聞きに来てゐる卒業子 山田弘子 螢川
波音を豊かに容れて夏座敷 柴田奈美
波音を近づけてゐる端居かな 稲畑汀子
波音を離れて春の月となる 星野椿
波音を離れコートの襟を立て 高澤良一 随笑
波音を風除少し遠ざけし 稲畑汀子
泳ぎゐてとほき波音に恍惚す 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
浪子碑に波音絶えず冬かもめ 岩村森子
浪音あかるく砂浜のまろみ青めり シヤツと雑草 栗林一石路
浪音にあらがふいのち鬚髯白く 篠原鳳作 海の旅
浪音にまろねの魂の洗はるゝ 篠原鳳作 海の旅
浪音に暮るゝ日おそし豆の花 吉川春藪
浪音に気づきて跼む苺園 横山白虹
浪音のしば~変る夜半の秋 雉子郎句集 石島雉子郎
浪音のどどとくずれて国ありや 栗林一石路
浪音のゆるい冬陽の蜜柑ちぎつている 橋本夢道 無禮なる妻抄
浪音のをりをりとどく屏風かな 矢島久栄
浪音の今宵は遠し草朧 本井英
浪音の冬に入りたる色ヶ浜 森田公司
浪音の夜は遠流めく柳葉魚焼く 菊地滴翠
浪音の由比ヶ浜より初電車 高浜虚子
浪音の空にしてゐる棗の実 茨木和生 木の國
浪音の部屋にとどけり松納 洞 久子
浪音は春のこころをかきたつる 阿部みどり女
浪音も夏に入りけり健吉忌 茨木和生 往馬
浪音も静かに暑し棉の花 高浜虚子
浪音をかけしさくらの莟かな 永田耕衣 真風
浪音をひき寄せて野火秀を立つる 原裕 葦牙
浪音を終始奏上先帝祭 竹腰八柏
浸蝕の波音背戸に雁供養 岡田波流夫
深海の波音聞こゆ立浪草 小玉真佐子
湖岸打つ波音その夜炉を開く 中嶋秀子
濤音にしぐれのまじる行幸宿 宮武寒々 朱卓
濤音に太鼓ぽと~一の午 河野静雲 閻魔
濤音に犬の追はるる海開き 高澤良一 素抱
濤音に耳をあづけて雪の旅 古賀まり子 緑の野
濤音に芋のころがる雨月かな 齋藤玄 飛雪
濤音に近づくわれも冬景色 黒田杏子 水の扉
濤音に飽きたる椿落ちにけり 谷口忠男
濤音のある夜なき夜も冬籠 蓼汀
濤音のかかるあかるさ初筑波 矢島房利
濤音のどすんとありし雛かな 千葉皓史
濤音のなき日かさぬる百日紅 杉山 岳陽
濤音のはずみ立待月のぼる 池田 菟沙
濤音の七草粥を吹きにけり 飯島晴子
濤音の中に千鳥の声すなり 岡田耿陽
濤音の天より硯洗ひけり 菅原多つを
濤音の山の奥より多摩二日 宮坂静生 春の鹿
濤音の月日のしだれざくらかな 篠崎圭介
濤音の萱にはずみて明治節 齋藤玄 飛雪
濤音の賀状深雪の賀状かな 大嶽青児
濤音へあけて炭つぐ置炬燵 石田波郷
濤音やうぐひす餅の暗くあり 鈴木鷹夫 大津絵
濤音やしづかに絮となる薊 鷲谷七菜子 雨 月
濤音や都をいづる梅雨二タ夜 『定本石橋秀野句文集』
濤音や陸稲の中のきりぎりす 増田龍雨 龍雨句集
濤音をあひまあひまの冬至風呂 飯島晴子
灯を消して雛も波音聞き給ふ 松内かつみ
瓢(ひょん)の笛吹けば波音風の音 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
瓢の実につく波音のしらべかな 原裕 正午
畑の青菜抜きつくし浪音の冬 人間を彫る 大橋裸木
白がねの濤音ばかり年惜しむ 大村フサエ
白南風や波音とどく萩城址 塚本 清
白蚊帳と波音と吾子をいねしめず 林原耒井 蜩
秋夜ふと浪音にゐて流人めく 柴田白葉女
立秋の退く濤音を心拍と 安東次男
精霊舟いづる波音間遠なる 銀漢 吉岡禅寺洞
胸中に波音湧けり藍浴衣 小島健 木の実
舟屋口洗ふ波音初月夜 久保峰子
舷窓に白らむ濤音秋遍路 伊藤敬子
船過ぎしあとの波音花八つ手 杉立悦子
花火果て湖に波音よみがへる 中西以佐夫
菜の花や沖の濤音逃げてなし 河野南畦 湖の森
萩は花へ波音しるきにさんにち 林原耒井 蜩
萱草に立つ浪音や桂浜 高木晴子
葉月かな濤音遠くあらたまり 藤原たかを
蓬長け波音人を安からしむ 右城暮石
藁屋根に沁む濤音や冬仕度 久米正雄 返り花
虫の間磯の波音なかりけり 友水 清
蛸壺に波音詰まる昼の虫 白井新一
街尽きて波音ありぬ諏訪の秋 深見けん二
補聴器にはづむ波音春きざす 島村野青
襖絵に起る浪音鑑真忌 小畑晴子
角切られ波音に鹿寝べきころ 菅原鬨也
遠き日の父と波音籐寝椅子 清水節子
醒むるたび浪音白し籐寝椅子 中島斌男
野火はるか胸の濤音聴き澄ます 鷲谷七菜子 雨 月
門司小学校波音の運動会 野中亮介
闇深し晩涼の浪音を聞く 高木晴子 花 季
雨音の中の波音ところてん 岩淵喜代子 硝子の仲間
音波電波霊波音響N氏UFO論 五島エミ
風音を波音と聞き浦島草 鷹羽狩行
鯉のぼり庭先すぐに九十九里 川口浪音
鰯がしけの町のどよもす濤音 梅林句屑 喜谷六花
黒南風や浪音からむ榕樹林 下村ひろし 西陲集
●波の音 
*えり解いて畳の上に濤の音 古館曹人
*はまなすや波の音聞く水枕 雪島東風
あいの風防波堤うつ濤の音 藤井紫水
あたたかに忘れがちなる浪の音 中條 明
いつ散りし白薔薇そらを濤の音 桜井博道 海上
きさらぎのあけくれ波の音ばかり 鈴木真砂女 生簀籠
さへづりのすとんとやめば波の音 夏井いつき
しばらくは濤の音して春の月 北崎武
たまさかに浪の音して夜の雪なり 北原白秋 竹林清興
つはぶきの花へうしろの浪の音 鈴木蚊都夫
ながき夜や佛の耳に浪の音 会津八一
はまゆふの白へ紛れる波の音 福川悠子
ぱつたりとやんだ浪の音の夜のダリヤだ 北原白秋
ひともとの櫻に佇てば濤の音 環 順子
ふるさとに春を風邪寝の波の音 鈴木真砂女 夕螢
ふるさとの亥の子といへば波の音 木村蕪城
まひるまの波の音聴く合歓の花 西村和子
もつれあふて涼し松風浪の音 涼し 正岡子規
ゆく春の放送劇に波の音 内田美紗 魚眼石
七浦や安房を動かす波の音 正岡子規
世に遠く浪の音する深雪かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
伊予は梅散りをり濤の音の中 鈴木鷹夫 大津絵
元朝の泳者ぞ潜く浪の音 石川桂郎 四温
冬浪の音の聴きたく障子開け 後藤夜半 底紅
冬浪の音断つ玻璃に旅寝かな 佐土井智津子
冬隣る夜をこまやかや濤の音 小杉余子 余子句選
初夢の土鈴に波の音すなり 水野恒彦
初潮や人は畠に波の音 会津八一
初鶏やひそかにたかき波の音 久保田万太郎 流寓抄
台風の近づいてゐる濤の音 岡安仁義
向日葵の迷路どこまで波の音 小野恵美子
夜に入りて波の音あり避寒宿 中 火臣
夜の秋のすこし間をおく濤の音 小川鴻翔
夜や更けぬ蚊帳に近き波の音 蚊帳 正岡子規
寒念仏聞きわけてまた波の音 斉藤夏風
山吹の根行く輪波の音たてて 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
崎の蝉鳴き出で濤の音をつらぬく 篠原梵 雨
引く浪の音はかへらず秋の暮 渡邊水巴
放哉の卯波の音と聞きゐたり 飯島晴子
料峭のこの道行けば波の音 行方克巳
新藁にかがみて濤の音拾ふ 裕
日脚伸ぶ机の下に波の音 今井聖
早梅の花ほつほつと濤の音 細田寿郎
明け易き夢に通ひて濤の音 村沢夏風
明月に波の音見るゑくぼ哉 名月 正岡子規
星合の波の音する新羅の壷 飯島晴子
星流れ土偶の眼より波の音 菅野茂甚
春の夜の大きな~濤の音 京極杞陽 くくたち上巻
春の夜の玻璃戸の外の波の音 星野立子
春の夜や重たう打てる波の音 小杉余子 余子句選
春眠のわが身をくゞる浪の音 山口誓子
春風やちよろりちよろりと波の音 春風 正岡子規
昼顔にからむ藻屑や波の音 昼顔 正岡子規
昼顔にひと日けだるき波の音 鈴木真砂女 夕螢
昼顔や砂丘の果ての波の音 鈴木文野
昼顔や老いることなき波の音 青木重行
智恵子碑の残暑とろとろ濤の音 鍵和田[ゆう]子 浮標
月光とまぐはふ波の音ばかり 森壽賀子
村じゅうにある一月の浪の音 岡田 耕治
松落葉元寇の波の音きこゆ 高橋沐石
松過ぎの良寛堂や濤の音 森田公司
枇杷*もぎし山のやせける波の音 木下 慈子
枕かへし冬濤の音ひきよせる 橋本多佳子
林檎をかぢつて、夜、浪の音がしてゐる 北原白秋
柚子剥けばいちにち風と波の音 春樹
桑の実は食べごろ波の音ばかり 高瀬恵子
椅子に寝て波のプールは海の音 松浦敬親
母に抱かれて初秋の波の音 藤原満喜
水貝や安房の一夜の波の音 深見けん二
永き日の波の音せる紙芝居 中村与謝男
永き日やくたびれもせぬ波の音 日永 正岡子規
河豚汁や風をさまりし波の音 山田春生
波の音いと高く蝿生れけり 久保田万太郎 流寓抄
波の音さっと切り裂く寒の鰤 福原幸江
波の音たかく元日了りけり 久保田万太郎 流寓抄
波の音ときどき高き敷松葉 川崎展宏
波の音とどく寺領の思ひ草 青柳はじめ
波の音はこぶ風あり秋まつり 久保田万太郎 流寓抄
波の音やゝたかく蝶うまれけり 久保田万太郎 流寓抄
波の音をりをりひびき震災忌 久保田万太郎
波の音低し雪国雪止んで 深見けん二
波の音教室を占め夏休 鈴木貞雄
波の音残して月の去りにけり 松田美子
波の音聞ゆる浜に花火待つ 長田一男
波の音話を奪ふ月にあり 大場白水郎 散木集
波の音遠し水仙揺れどほし 久万とみ子
流星やかくれ岩より波の音 加藤楸邨
浜木綿の薄暮にひらく濤の音 古館曹人
浪の音にも馴れ過ぎた衣更へてる 北原白秋
浪の音は遠し あんまにからだ右を左にする 荻原井泉水
海に来て浪の音聞く真砂女の忌 後藤綾子
海へ降る霰や雲に波の音 基角
海苔粗朶に潮引ききりし波の音 森田かずを
涼しさや平家亡びし浪の音 子規句集 虚子・碧梧桐選
満月も菜の花いろや波の音 朝倉和江
灯かすかに沖は時雨の波の音 時雨 正岡子規
煤逃げの伊豆に二泊の波の音 鈴木鷹夫 風の祭
牡蠣船や静かに居れば波の音 日野草城
甘蔗刈の歌となりけり波の音 米須盛祐
由良の門の冬天浪の音満てり 山口草堂
番神堂に入りて春めく濤の音 笠原古畦
病めばきこゆ春の襖の波の音 鷲谷七菜子 花寂び 以後
白菊の在所に入れば波の音 山本洋子
白蚊帳のなかは真白き波の音 明隅礼子
真夜中や涼みも過ぎて波の音 納涼 正岡子規
短夜や波の鼓の音早し 短夜 正岡子規
短日やにはかに落ちし波の音 久保田万太郎 流寓抄
短日や俄かに落ちし波の音 万太郎
砂日傘睡気催す波の音 笠原古畦
磯に来て卯浪の音となるところ 浅賀魚木
空耳に濤の音聞く春の暮 伊藤京子
立待の月得てよりの波の音 吉本和子
竹島に灯のつき波の音涼し 栗田せつ子
紅葉寺いつ訪ねても濤の音 蒲澤康利
老杉の間涼しかり波の音 石寒太 翔
聖夜劇牧師が波の音つくり 真下耕月
肌寒やふじをまきこむ波の音 肌寒 正岡子規
臨終なる父の口から波の音 仁平勝 東京物語
花ぎぼし句碑と吹かるる波の音 伊藤あかね
花芭蕉むかしの波の音きこゆ 澤木欣一
若鮎や波のすれあふ波の音 古館曹人
茶の花や越後村上浪の音 三浦仙水
荒東風にのる波の音父の墓 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
落椿よろめくほどの濤の音 鍵和田[ゆう]子 浮標
落鮎や一夜高瀬の波の音 立花北枝
蓬生ふ月指す城の波の音 横光利一
蘆ちるや淺妻舟の波の音 芦の花 正岡子規
蘆刈りて日を横たへぬ波の音 石田 厚子
螢袋ふくろにためて濤の音 原田青児
行く年の波の音ともきこゆなり 柏崎要次
要咲く山垣尽きて波の音 藤田れい子「新山暦俳句歳時記」
豆実る天心居なり浪の音 及川貞 榧の實
踊唄息つぐときの波の音 鹿喰悦子
遠つ世の浪の音きけ宝舟 星野石木
釣舟草耳をすませば波の音 山崎ルリ子
鎌倉は波の音より明易し 星野椿
門火消えもとのくらさに濤の音 原田青児
闇冴えて虚空に聴きし濤の音 鷲谷七菜子 雨 月
雑炊となりし宴に浪の音 中戸川朝人 尋声
雛芥子や机の上に濤の音 磯貝碧蹄館
青饅や島に泊れば波の音 草間時彦 櫻山
風涼し生地(せいち)へかへる浪の音 立花北枝
鯔納屋の春陰濤の音ばかり 北見さとる
鴬を聞きとめしより波の音 行方克己 知音
●鳴り響く 
はらわたに響く海鳴り冬確か 有働亨 汐路
わが名は忘れられ旅人木鳴響(とよ)め 小川双々子
シクラメン死は早朝に鳴り響く 夏石番矢
ナイサントクール教会の鐘鳴り響き 毛塚静枝
俎始火炎太鼓の鳴り響く 松本澄江
打てば鳴る叩けば響く涼しさよ 黒田杏子 花下草上
松に鳴り樫に響けり春一番 川村紫陽
機織虫(はたおり)の鳴り響きつつ飛びにけり 高浜虚子
潮鳴りや貝の風鈴響き合ふ 吉原文音
蚶満寺海鳴り響く新松子 佐藤トミ
鳰鳴けり奈良の日輪響かせて 茨木和生 野迫川
鶏頭花正午の号鼓鳴り響く 永井龍男
●鳴り渡る 
ごうごうと皐月の海の鳴り渡る 皐月 正岡子規
ラベンダー婚のオルガン鳴り渡る 山口超心鬼
中空を風鳴り渡り千鳥なく 竹中すゝき女
入相の鐘鳴り渡る新樹かな あふひ
天高し角力の大鼓鳴り渡る 相撲 正岡子規
晩鐘や稻の葉末を鳴り渡る 稲 正岡子規
枯蘆の鳴り渡るなり雪日和 長谷川櫂 天球
消燈の鐘鳴り渡る暖炉かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
護摩焚くや北風鳴り渡る那智部落 小川原嘘帥
踏切りの鐘鳴り渡る大青田 久米谷和子
青葉若葉昼中の鐘鳴り渡る 子規句集 虚子・碧梧桐選
●鈍き音 
あらぬこと考えて蝉、音の鈍る 高澤良一 寒暑
榧の実の落ちて鈍き音又挙ぐる 高澤良一 燕音
着ぶくれて受く警策の鈍き音 尼崎たか
花冷や魚切る出刃の鈍き音 中元英雄
蓮開く一鈍音を放送す 相生垣瓜人
鈍き日の木立音なし畑打つ 南浪句集 南南浪句集、渡辺水巴編
鈍器もて物を割る音花曇り 高澤良一 燕音
鮭打たる音鈍痛と思ひけり 岡崎桂子
●寝息 
くらがりに寝息きこゆる蚕飼かな 大橋櫻坡子 雨月
すやすや寝息たてている子のことで争つている 松尾あつゆき
ねんねこの中の寝息を覗かるる 稲畑汀子
みちみちて水の寝息の植田村 熊谷愛子
みどり児の寝息冬日の中にあり 清本幸子
亡き母の寝息聞こゆる籠枕 大西一冬
人丸の寝息や残る朝の霧 椎本才麿
八月暁紅若き寝息の同志四囲 古沢太穂 古沢太穂句集
冬ぬくし寝息もらさず猫眠る 三坂雅二郎
冬の雨癒えし寝息にさそわれ寝る 古沢太穂 古沢太穂句集
冬満月囲ひし芋の寝息きく 高野喜八郎
冬畳父が善意の寝息つたふ 友岡子郷 遠方
冬眠の寝息こぞるか山の音 石川恵美子
冬眠の蝮のほかは寝息なし 金子兜太(1919-)
凍つる夜のふところにあり子の寝息 皆川白陀
勾玉の寝息がまじる冬霞 平松彌榮子
友の寝息晴夜の山は親しき黒 大井雅人 龍岡村
夜なべ村猪の寝息の間近かな 久保厚夫
大綿のたとえば母の寝息かな 青木栄子
大部屋の患者寝息の朧なる 高澤良一 鳩信
嬰児の寝息のように大根煮る 吉尾広子
嬰児籠に寝息うかがふ蚕飼季 池元道雄
子の寝息やすらに年のしらみけり 金尾梅の門 古志の歌
子の寝息妻が寝息や木の実降る 福本啓介
子の寝息妻に東京遠かりき 石橋辰之助
子の寝息妻を誘ひてしぐれけり 杉山岳陽 晩婚
子の寝息知らぬまま過ぐ春夜かな 谷口桂子
子の寝息確かめ消しぬ春灯 西村和子 夏帽子
子の寝息高しひと日の潮浴びに 藤原たかを
子より幼く雪夜寝息に加はりぬ 猪俣千代子 堆 朱
家中の寝息たひらに冬の雨 長部多香子
寒の暁ツィーンツィーンと子の寝息 中村草田男
寝息あるはうへ寝返り冬の暁 谷口桂子
寝息より軽しと思ふ夏蒲団 山田東海子
山河して寝息となれり籠螢 松山足羽
岳人の寝息さだまる炉火太し 岡田 貞峰
建国日蛇は寝息を立ててをり 関口眞佐子
擁きて夜寒の寝息分つなり 小林康治 玄霜
旅にかなしき女の寝息添水の音 加藤知世子 花寂び
日当たつてをり鴛鴦の寝息かな 小島健 木の実
明日へ繋がる寝息雪嶺足先に 太田土男
晩秋や鳥籠に吊る父の寝息 増田まさみ
暗中に聴きえし寝息あたたかし 楸邨
月の大戸しめて牛の寝息をきいてHる 栗林一石路
月夜茸山の寝息の思はるる 飯田龍太 山の影
月明り山の寝息のきこえけり 大井戸 辿
木枯も使徒の寝息もうらやまし 西東三鬼
梟や森の寝息の漏るるごと 無田真理子
極寒のをさなき寝息ふけてゆく 保坂敏子
死の灰や黴いつせいに寝息の中 桜井博道 海上
水鳥の寝息にそそぐ雨の糸 飯田龍太
深酒の寝息も花祭(はな)の笛に通ふ 友岡子郷 遠方
満開の花の香に入る児の寝息 林翔 和紙
牛蛙明日退院の太寝息 上月大輔
牡丹雪ほたほた母の寝息へ降る 岡本庚子
猪鍋や山の寝息の定まらず 角川春樹
瓜蝿に寝息を立ててゐたりけり 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
病む母の軽き寝息や春遅々と 石川栄枝
眠りたる山の寝息とおもふ風 朝倉和江
短夜のしばらく更くる母寝息 斎藤空華 空華句集
短夜の連添ふ寝息きこえけり 井上静川
秋山と一つ寝息に睡りたる 森澄雄 四遠
老母と寝る二夜の寝息初明り 安井昌子
肩越しの寝息は羽音たる銀河 対馬康子 吾亦紅
胃を照らす月光囲りには寝息 片山桃史 北方兵團
良夜かな赤子の寝息麩のごとく 飯田龍太(1920-)
良夜の寝息たましいほどけてゆく 吉原陽子
花茣蓙を外れし寝息をつづけをり 森澄雄
赤ん坊が寝息を立つる養花天 富安風生
赤ん坊の寝息が軽い灸花 小木ひろ子
身ほとりに子等の寝息や除夜の鐘 佐藤美恵子
軍神碑うらの冬草寝息のごとし 相原左義長
遠山火寝息生絹のごとくゆれ 龍太
部屋々々の寝息しづかや花の雨 清原枴童 枴童句集
銃口の此の世のごとき寝息かな 大屋達治
除雪夫の寝息冴えきて寝むらえぬ 石橋辰之助 山暦
陽だまりの屏風に虎の寝息かな 岩尾可見
雪女馬の寝息の中を来る 今井 聖
露の中萬相うごく子の寝息 加藤楸邨
青山椒父の寝息のすこやかに 新保フジ子
風神の寝息聞こゆる寒の月 森本 満
●羽音 
いぐし奪ふ人の羽音や御祓川 高井几董
かすかなる羽音や蛍袋より 伊佐山春愁
かなぶんよ羽音しずめよ今旅立ち 平田よしこ
きち~といふ羽音立て鳩の冬 高濱年尾 年尾句集
さわさわと寄する羽音や浮氷 金箱戈止夫
その羽音てっきり蝉と思ひけり 高澤良一 素抱
つがひ蜻蛉翔ちし羽音も峡の音 石田波郷
つく羽の音のつゞきに居る如し 汀女
とぶ鳥の羽音間近に寒露かな 高木良多
どの父も真昼間深く羽音せり 水野真由美
ばつたの羽音が 埋立地の 歴史を掠める 吉岡禅寺洞
ぶつかれる蝉の羽音の残暑かな 柏木喜美恵
ましぐらに小鳥の羽音霜柱 松村蒼石 雪
わが中に鷹の羽音や怒濤見る 朱鳥
わが先へ雀の羽音雪浄土 村越化石 山國抄
クローバや蜂が羽音を縮め来て 深見けん二
一せいに椋鳥の羽音の失せにけり 徳永山冬子
一ッ葉の芽吹くや奥に鵜の羽音 石川桂郎 高蘆
一羽にて羽音も生まる初雀 齋藤玄 『狩眼』
一陣の鴨のとび立つ羽音かな 下村梅子
一雁の列をそれたる羽音かな 能村登四郎(1911-2002)
三伏の藪の中なる羽音かな 櫛原希伊子
人の死をおもうておれば羽の音 山下 淳
人刺しに来る時虻の羽音なく 富氷和代
人面にはるか鶴来る羽音かな 齋藤玄 『無畔』
元旦の羽音より濃きものはなし 藤田湘子
冬の蚊の耳朶をくすぐる羽音かな 土岐公子
冬の蝿かなしき羽音のこしけり 岸田稚魚
冬青空わたしの羽音ありにけり 吉田悦花
冬鳥の羽音にしばし和みをり 石川風女
冷やかや空にあまたの羽音して 柿本多映
凌霄花のさかり雀に羽音なし 宮坂静生 樹下
初声や闇を離るる羽音して 梓沢あづさ
初東風に乗りたる鷹の羽音あり 瀬戸悠
初雀羽音を残し消えてをり 高澤良一 随笑
初髪の空を鴎の羽音かな 波多野爽波
北の岬で とびたつ髪の 羽音きく 伊丹公子 山珊瑚
卒然と羽音脊を切る冬の雁 相馬遷子 雪嶺
唖蝉の羽音ばかりが大きかり 高澤良一 寒暑
啄木鳥の羽音きびしく霰止む 堀口星眠 火山灰の道
喪服着て蜻蛉の羽音聞こえけり 岸本尚毅 鶏頭
囀の小き羽音や障子外 西山泊雲 泊雲句集
土蜂の羽音うららか数しれず 阿部みどり女
地ひびきめく羽音で翔てり万の雁 櫻井菜緒
大雉子の羽音をさらふ雪解風 三宅 句生
密蜂の斥候がゆく羽音落とし 相原左義長
寒天干場湖ゆ羽音のいくたびも 宮坂静生 樹下
寒禽の羽音袖口いつ濡れし 大岳水一路
寒雀ゆふべの羽音おほきかり 白雨
少女らは羽の音もち盆帰省 野島恵禾
尾根を越す羽音鳴かねば冬の鳥 中戸川朝人
居り替る羽音涼しや蝉の声 立花北枝
屋根を越す羽音鳴かねば冬の鳥 中戸川朝人 残心
山鳥の羽音つつぬけ桑畑 皆川盤水
山鳥の羽音急なる草紅葉 石昌子
岩つばめ霧深ければその羽音 有馬正二
幹に着きあやまつ蝉の羽音しつ 篠原梵 雨
引鴨の羽音しわしわしわしわと 鶏二
引鴨の羽音ののこる日暮空 福田甲子雄
引鴨の芦間に羽音残りけり 白根百合子
引鶴の羽音国来よ国来よと 榎本好宏
待春の羽音が溜る鬼房忌 渡辺規翠
御庭田の羽音ぞ眉に稲すずめ 石川桂郎 含羞
怠らで日増す鷹の羽音かな 雪松「類題発句集」
戸袋にしずかに溜る羽音かな 荻野雅彦
折り鶴の羽音確かに星祭る 岡田久慧
掛蓑にとまる羽音や冬の鳥 銀漢 吉岡禅寺洞
探梅の空に聞きたる羽音かな 上村占魚 鮎
放ちたる鷹の羽音の澄めりけり 勝又一透
新刊書ときどき蝿の羽音して 夫馬瑳衣子
春の月羽音ばかりの鴨たてり 米沢吾亦紅 童顔
春の雁声と羽音と凄まじく 嵯峨寿美子
春禽の羽音の端の竹箒 大岳水一路
更衣雀の羽音あざやかに 橋本多佳子
月の夜や何とはなしに眺むればわがたましひの羽の音する 片山広子
朝堤ふみたつる鴫の羽音かな 中勘助
木へ移る鴨の羽音の起りつぐ 八木絵馬
木斛の花に群がる羽音かな 堀恭子
桟道を羽音よぎりしは雉子かな 尾崎迷堂 孤輪
梅雨明けて雀の羽音やはらかし 今井杏太郎
椋鳥わたる羽音額にふるるほど 皆吉爽雨
椋鳥渡る羽音朝霧街を閉ず 金尾梅の門 古志の歌
椋鳥百羽命拾ひし羽音かな 太祇
榎の実ちる椋鳥の羽音や朝嵐 芭 蕉
残る蜂羽音もなくとびてゐし 前岡京子
母が巻く目醒時計蛾の羽音 草田男
水の匂いの冷蔵庫より羽音 中田 美子
水音と羽音の夜明け鴨来たる 松永千鶴子
水鳥の争ひ摶ちし羽音かな 松本たかし
水鳥の夜半の羽音も静まりぬ 高浜虚子
水鳥の夜半の羽音やあまたたび 高浜虚子
水鳥や夜半の羽音をあまたたび 高浜虚子
浪の花礁に育つ羽音かな 吉田功次郎
源流に雷鴫の羽音かな 福田甲子雄
瀬の蛍水を羽音にみだれけり 松岡青蘿
火取虫羽音重きは落ちやすし 楸邨
炎天の羽音や銀のごとかなし 川口重美
炎天下おのが影より羽音して 鎌倉佐弓 潤
熊ン蜂羽音腹立ちまぎれなる 行方克巳
片岡に雉子の蹴合ふ羽音かな 杉風
独活枯るるところ最後の蜂羽音 村越化石 山國抄
瑞鳥の羽音は春の渚より 白澤良子
疾風めく羽音一陣芽吹き山 鷲谷七菜子 花寂び 以後
石蕗咲くや羽音のまろき虫とべる 中拓夫
磨る墨に雁の羽音のまぎれしや 齋藤愼爾
秋の蚊と云へぬ羽音を払ひけり 辻弘雄
秋虹や鳥の羽音の行きどころ 村井美意子
稲刈るや羽音に似たる音連れて 猪俣千代子 堆 朱
稲雀一時に帰る羽音かな 野村喜舟
稲雀翔くる羽音か屋を越ゆる 五十崎古郷句集
立秋の鷹の羽音と思ひをり 吉田鴻司
篁や蜂の羽音をかくさざる 石川桂郎 四温
簷高し蝉の羽音の来ては返す 右城暮石
米炊けば寒し雀の羽の音 せん 俳諧撰集玉藻集
紅椿鳥の大きな羽音せる 長谷川櫂 天球
紙漉くを雁の羽音のごとく聴く 冨田みのる
羅にあまたの羽音日暮径 鈴木鷹夫 渚通り
群集いま野鳥の羽音雪きたる 寺田京子 日の鷹
羽音さへ聞えて寒し月の雁 青蘿
羽音してかみ切り虫の胸に来し 佐藤芙陽
羽音して北風吹き分る野末の樹 成田千空 地霊
羽音して樹木も歩き出す月夜 荻原都美子
羽音して髪かすめしは鬼やんま 結城恵子
羽音せる霞の国に住ひをり 村越化石
羽音たてゝ都の空の渡り鳥 小沢碧童
羽音たてゝ鳩おり来なり春惜む 久保田万太郎 流寓抄以後
羽音なき鳥春月をよぎり飛ぶ 福田蓼汀 秋風挽歌
羽音なく本菟樹ごもりの月かすめ 福田蓼汀
羽音なほ夜空に残し蚊喰鳥 稲畑汀子「障子明り」
羽音にも零余子こぼるる日和なり 熊丸 淑子
羽音みな空へ還りし山笑ふ 堀米秋良
羽音もたぬ蝶の音階 満つ 温室 伊丹公子 アーギライト
羽音冴え飛騨へましぐらぼろ鴉 加藤知世子 花 季
翁忌の羽音のつよき鴎かな 橋本榮治 越在
翔つ鳥の羽音の寒し弥谷寺 山本八重美
職捜しの移民を 鴎の羽音掠め 伊丹公子 アーギライト
肩越しの寝息は羽音たる銀河 対馬康子 吾亦紅
色鳥の羽音しぐれのいくうつり 高橋馬相 秋山越
色鳥の羽音のなかの父の墓 大木あまり 火球
花山葵羽音を消して鳥が発つ 宮坂静生 山開
苔芝を出づる蛍の羽音かな 内藤丈草
葛城山を越へし羽音に初鴉 佐野美智
蓑を編む鳩の羽音の中二階 阿部菁女
蓮の花小さき羽音をみごもれる 大串章 山童記
虻宙にとどまるときの羽音かな 稲畑汀子
蛾の羽音してゐるアガサ・クリステイ 仲原山帰来
蛾の羽音しべに残れる烏瓜 橋田憲明
蜂死して軽きのあまり羽音あり 対馬康子 吾亦紅
蜜蜂の重さうに翔ぶ羽音かな 米澤富栄
蜻蛉つるむ羽音を神に献じつつ 磯貝碧蹄館
蜻蛉生れ白鷺の羽音空に満つ 久米正雄 返り花
衣更えて軽い羽音の女かな 武田和郎
裁ち落す絹に羽音や春立てり 本塩義子
見張り鴨鳴けば百羽の羽音立つ 中島京子
言の葉の犬の暫く羽音せり 攝津幸彦 鹿々集
赤旗の鷹の羽音の十二月 大木あまり 山の夢
軒雀羽音からりと秋の昼 赤嶋千秋
野鳩の高い羽音林の私を驚いたのでもあつた 梅林句屑 喜谷六花
間引菜を摘まむ番号制の羽音 宮崎二健
隼と指され羽音の過ぎるのみ 吉年虹二
雪ごめの鶏舎したたかなる羽音 鷲谷七菜子 花寂び
雪の精羽音ひびかせ燈を取りに 佐藤鬼房 「何處へ」以降
雪の羽音われへ近づく長まつげ 栗林千津
雪解なか羽音のごときを空に追ふ 桜井博道 海上
雷打ちて灯絶えてありぬ蛾の羽音 及川貞 夕焼
青空へぬける羽音や春隣 永野佐和
青鷺は水に羽音をふりすてて 澁谷道
頭上より羽音拡がる稲雀 山口誓子
風なくば禽の羽音に柳絮舞う 川岸冨貴
風花は海へ沈んでゆく羽音 対馬康子 吾亦紅
風説の泥流に羽化わが羽音 佐藤鬼房 地楡
飛ぶ鴨の羽音爽やか打たるるな 羽部洞然
香煙に蝿あそぶのみその羽音 細川加賀 『傷痕』
鬼やんま款款として羽音なし 大石和堂
鰯雲折鶴千羽の羽音かも 桜井博道 海上
鳥たちの大きな羽音苗代寒 木島みのる
鳥の羽音と 落葉ふる音 のみにあらず 富澤赤黄男
鳩の羽音を冬の桜の木がつつむ 大井雅人 龍岡村
鴨のたつ重き羽音やまくらがり 小澤満佐子
鴬のたつ羽音して高音かな 高井几董
鵜仕舞の荒鵜の重き羽音かな 中尾杏子
鵯の勁き羽音や簷打つて 石田あき子 見舞籠
鵯群れて海金剛を来し羽音 桂樟蹊子
鶴威鶴の羽音の蔽ひたり(出水荒崎にて五句註鳥威と同じような仕掛) 岸田稚魚 『花盗人』
鷹渡り百の羽音をうち仰ぐ 立石 京
黒き花蜂羽音もろともわれに鮮烈 金子皆子
黒揚羽黒き羽音を残しけり 田口啓子
黙祷に加はる梅雨の羽音あり 下田稔
●葉音 
おかめ笹梅雨の葉音を沈めつつ 石川桂郎 高蘆
ちらぬ木葉音を分けけり皮草履 調川子 選集「板東太郎」
古き葉の音の中なる木の芽かな 藤本美和子
吹き飛びし葉の音立つる月夜かな 藺草慶子
唐黍喰む葉音の澄みの木曽仔馬 鷲谷七菜子
寝てをれば静けさ葉音小春かな 乙字俳句集 大須賀乙字
月焼に散る葉音なし蚊帳に入る 渡辺水巴 白日
短夜の葉音と過ぎし走り雨 橋本榮治 逆旅
秋の蝉葉音のごとく鳴きにけり 米須盛祐
草の葉の川波の音をききたまえ 栗林一石路
葉の音に犬吼えかかるあらしかな 斯波園女
雨兆す風の葉音や目細鳴く 長谷川草洲
雪降るや葉音収めて竹立てる 臼田亜浪 旅人
風に葉の音と思はぬ芭蕉哉 太無
●爆音 
いのち柔き簑虫の裡飛爆音 中島斌男
井戸浚爆音の今鮮しき 宮坂静生 樹下
元朝の火神香炉に爆音住み 牧野信子
合歓と爆音乙女らは祈る天ありや 赤城さかえ句集
君よそうや元日から北鮮爆撃に行く爆音の話 橋本夢道 無礼なる妻
咲いて散る桜しんとしずまり爆音に散らずよ 橋本夢道 無礼なる妻
夜々の爆音寒ん星の智慧は瞬くより知らず 橋本夢道 無礼なる妻
夜の爆音昼から地平白けたまま 飴山實 『おりいぶ』
夜の爆音最もひゞく蛾の翅に 中島斌男
子らに祭爆音ささえて蝉しぐれ 古沢太穂 古沢太穂句集
日々爆音しぶとき生の大根干す 榎本冬一郎
星と向日葵中を平に爆音行く 田川飛旅子 花文字
桐の花爆音山の湯にも飛び 石田波郷
海は午なりモオタアの爆音の点 北原白秋
炎天下また爆音下クレーン動く 岩田昌寿 地の塩
爆音くらし一岬成し眼る灯よ 古沢太穂 古沢太穂句集
爆音で倒されるキリンの首林 大島地平
爆音に寸断の夢薔薇につなぐ 加藤知世子
爆音に石の面や小六月 齋藤玄 飛雪
爆音に鳩はひろげる火傷の軍手 八木三日女 赤い地図
爆音のあと死の谷(デスバレー)の熱砂のみ 仙田洋子 雲は王冠
爆音の真下に居たり梅雨鯰 船越淑子
爆音の空たちもどり扇持ちぬ 渡邊水巴 富士
爆音の跡絶えぞつくり貝割菜 野澤節子
爆音の遠のく障子貼りにけり 小泉淑子
爆音の雲よりとどき栗太る 伊藤京子
爆音は編隊蟹が続々と 八木三日女 赤い地図
爆音びびと布團おしくる冬の闇 栗林一石路
爆音またもペンがりがりと夜の雪 栗林一石路
爆音やおもひつめたる目に枯葉 加藤秋邨 火の記憶
爆音やすなはち響き障子貼る 石田波郷
爆音や乾きて剛(つよ)き麦の禾(のぎ) 中島斌雄(たけお)(1908-88)
爆音や夜はプールに水補ふ 津田清子 礼 拝
爆音や秋の鴉をつんぼにす 菖蒲あや
爆音や種芋は地にころがされ 金子晃典
爆音や雪を噛みゐて金髪児 小池文子 巴里蕭条
爆音や霜の崖より猫ひらめく 加藤楸邨
爆音や青き葡萄に影うまれ 加藤秋邨 沙漠の鶴
爆音下水かがやきて蟻溺る 佐藤鬼房
爆音下鶏馳せ晩夏極まれり 大野林火
爆音去れ霧の向日葵輝くとき 赤城さかえ句集
爆音経で蝶素のままの朝日浴ぶ 古沢太穂 古沢太穂句集
爆音領す海ゆれ寒きぶらんこ揺れ 古沢太穂 古沢太穂句集
牡蠣打たれ積まる爆音みなぎれり 中島斌男
盲同然炎暑爆音身に浴びつ 成田千空 地霊
積乱雲以来爆音けはしく聴く 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
空の爆音まひ~水にやすまざる 瀧春一 菜園
空港の爆音ざらし鵙の贄 西川雅文
羽衣や雲の中ゆく爆音あり 八木三日女 落葉期
胎内を抜ける爆音基地展く 三谷昭 獣身
蟇あるく大きくゆるく爆音下 加藤楸邨(1905-93)
視力図に蛾は卵産む爆音下 田川飛旅子 花文字
降りて曇り風邪の鼻孔と遠爆音 古沢太穂 古沢太穂句集
雪重きまゝ爆音に軒震ふ 中島斌男
青む岸辺空にはいまも爆音満つ 岩田昌寿 地の塩
●撥音 
撥音や上野をめぐる秋の聲 秋の声 正岡子規
●反響 
金盥落ちし反響花の夜に 野沢節子
壁寒く議長と呼ぶ語反響す 中島斌男
●万籟 
万籟寂たり清水静に砂を吹く 清水 正岡子規
万籟寂然清水静に砂を吹く 清水 正岡子規
氷湖昏れ万籟を絶つ四辺かな 伊東宏晃
赤富士に万籟を絶つ露の天 富安風生
●微音 
あめつちにかく微なる音蓮ひらく 篠塚しげる
いのち微かに振れば音して落花生 正木志司子
冷蔵庫音の微かに妻の留守 中山允晴
咳込んで瀬音微塵にガラス展 茂里美絵
喪の家の音微かなり粥柱 吉川千丘
天涯の藤ひらきおり微妙音 石牟礼道子
寒菊の微音微光を切りとらむ 望月英男
山葡萄地に枯れ微音伝へ来る 大林清子
明け易し街の微音に水感ず 田川飛旅子 花文字
柔肌に微光微音の春の星 原裕 葦牙
滝凍てて微塵の音のなかりけり 西岡フサ子
滴りの微かな音が集まれり 本居桃花
眠たさや寒禽和紙の微音して 大木あまり 山の夢
秋晴の境内の音は微塵かな 野村喜舟 小石川
葱が微塵になりゆく音や鰯雲 鈴木鷹夫 渚通り
薄繭の出来ゆく音の微かにも 木暮つとむ
蛇の衣微音を発しゐるごとし 藤田湘子
蜘蛛が弾く囲の琴の音の微かなる 上野泰 春潮
雪ふりだす微かな音を女身仏 中山純子 沙羅
霧の中微風ながるるさ音かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
鳴き止みし馬追の身に微音満つ 岩村蓬
●鼻音
●弾く 
「戦友」弾く身の一部が鋼鉄車室冷ゆ 磯貝碧蹄館 握手
あかぎれの指そろばんの珠弾く 土屋保夫
あたたかや興じて弾くはじき猿 茂里正治
えのこ草小雨を弾く青穂かな 高澤良一 寒暑
お岩木の日照雨を弾く青りんご 高澤良一 寒暑
からだごとぐぐとチエ口弾く青葉かな 満田光生
ぶんぶんを弾く指なん持てりける 林原耒井 蜩
またきたと我を弾くな角大師 中勘助
わがたのむピアノ弾く手や手袋す 田中敬子
わが弾くに耕す土のひびきかな 池内友次郎 結婚まで
ガムランの月光 一生を座して弾く 伊丹公子 ガルーダ
ギター弾くも聴くも店員終戦日 高島茂
ギター弾く南大門の春の暮 高橋幸子
ギター弾く男二つに折れし男 菅野丹吾
ショパン弾く窓に植ゑたり糸瓜苗 三枝正子
セ口弾く隣人きざはしに氷ちびる 和田悟朗
チェロ弾くと竹林を出る盆の月 脇本星浪
チエロ弾くに似合ふは三十路枇杷の花 和田耕三郎
トリル弾くふりしてつまむさくらんぼ 仙田洋子 雲は王冠
バイエル弾く汗の父への別れとし 有働亨 汐路
バレンタインの日なり山妻ピアノ弾く 景山筍吉
ピアノ弾くからだの中の白夜かな 浦川 聡子
ピアノ弾く白い渚の蟹のやうに 大屋達治 繍鸞
ボタ鼻に朧の胡弓弾くは誰 清原枴童 枴童句集
リラの花弾く提琴の弓白し 村田白峯
ヴィオラ弾く家のどうだん散り初む 若月瑞峰
三味弾くや秋夜の壁によりかゝり 阿部みどり女 笹鳴
三味線を弾く二階ある泳ぎかな 増田龍雨 龍雨句集
丸茄子朝露弾く梵天丸 高澤良一 素抱
今年竹指しなやかにピアノ弾く 上田五千石 田園
光の玉樹氷に隕ちつ地に弾く 石橋辰之助 山暦
冬の暮辻楽士わがために弾く 八牧美喜子
冬の月チェロを弾く人をまなかひに 蒲生 幸
冷し牛胴震ひして水弾く 大塚華陽
卒業歌弾くこの家のをとめまだ吾見ず 橋本多佳子
天の川祖国の曲を弾く人よ たかおさむ
姉妹の弾く三味線も月見かな 増田龍雨 龍雨句集
寒夕焼高層ビルの玻璃弾く 井澗道子
寒夜まだピアノ弾く娘と妻起きて 伊東宏晃
少年が弾くエチュードや秋の窓 文挟夫佐恵 黄 瀬
川鴨の胴振ひては日を弾く 加藤耕子
新月の宝前に弾くギターかな 田中由子
新緑やたへにも白き琴弾く像 山口青邨
日に弾く小豆の莢のうす煙 野見山朱鳥
日を吸ふも弾くも薔薇の色なりし 稲岡長
日本海へ巌の仙人掌花弾く 奥村直女(馬酔木)
日除綱さはりたる手を弾くかに 松藤夏山 夏山句集
早起きの鷽が琴弾く父の山 黒田杏子
昃りなき日が黄梅の黄を弾く 八木沢高原
星月夜ゴーシユの如くギター弾く 松清まゆこ
春愁のセロ抱き弾くは父の影 松山足羽
春愁の身を寄せて弾くハープかな 野矢久美子
春暁の木に倚りて弾く胡弓かな 月舟俳句集 原月舟
杣が路頬弾く草のいきれかな 楠目橙黄子 橙圃
松とれて日ぐれ夜ふけとピアノ弾く 及川貞 夕焼
毛虫焼くや人窓掛をあげて弾く 飯田蛇笏 山廬集
水弾く白さに葱を洗ひ了ふ 宮津昭彦
水弾く身のうすあぶら海の果 三橋敏雄 *シャコ
氷上へひびくばかりのピアノ弾く 篠原鳳作 海の旅
満開の櫻のために琴を弾く 品川鈴子
激ちつつ日の虹弾く雪解川 仁科文男
火の性の石榴ひやびや雨弾く 高澤良一 随笑
灯を消して弾き弾く影よ子の良夜 林翔 和紙
熱し弾くピアノ受験生霰やむ 及川貞 夕焼
片蔭に入るや琴弾く母の声 永田耕衣 奪鈔
猫じゃらし雨を嫌ひて雨弾く 高澤良一 素抱
琴に身を倒して弾くも春の昼 野見山朱鳥
琴を弾くはにわ人にもある遅日 野澤節子
琴を弾く初伏の畳冷たしと 長谷川かな女 雨 月
琴を弾く春満月を二日すぎ 阿部みどり女 『雪嶺』
男肥えて何春愁ぞ楽器弾く 清一郎
白南風や古きジャズ弾くピアノ・バー 角川春樹
白木槿少年の弾くポロネーズ 鶴岡 容子
盆唄や夜は三味を弾く刀鍛冶 朝妻 力
盆舟や爆竹弾く海女の路地 安原敬裕
眠りいる琴に連れ弾く霧の指 高澤晶子
種弾く大事起りぬ鳳仙花 野村喜舟 小石川
竜田姫手すさびに弾くヴァイオリン 多々良敬子
競泳の勝者や影も水弾く 中村翠湖
節分の夕日を弾く鬼瓦 八木岡宏子
篝火の弾く音より年明くる 高橋妙子
紅梅や舞の地を弾く金之助 夏目漱石 大正四年
納涼にあらず君が夫の弾く小唄 及川貞 夕焼
紫陽花やなりはひにあるを侘びて弾く 富田木歩
綿摘みて夜は一絃琴を弾く 市川つね子
縫初の母のききゐる琴を弾く 斎藤耕子
胡弓弾くごとし柳絮の流れゆく 高嶋 茂
胡弓弾く男に惚るる風の盆 結城美津女
胡弓弾く男腰やおわら浮き沈み 松田ひろむ
胸張つて琵琶弾く路地の簾越し 北野民夫
自動ピアノ弾くはあの夜の雪女 玉木春夫
舸子酔ひて弾くバラライカ壁炉燃ゆ 橋本榮治 麦生
船室に琵琶弾く盲神送り 宮武寒々 朱卓
花辛夷散らばつて弾く弦楽器 高木良多
蒸気時計塔 噴く 街頭音楽士 弾く 伊丹公子 アーギライト
薄氷のかけらとなりて日を弾く 山田閏子
薺爪ギター弾く爪のこしけり 平林孝子
虫の夜の弾くと叩くとありにけり 佐々木六戈
蜘蛛が弾く囲の琴の音の微かなる 上野泰 春潮
蟲の夜の弾くと叩くとありにけり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
誰が弾く三味線かかる夜なべ小屋 木村蕪城 一位
豆稲架の弾く丹波の夕日かな 須永トシ
鉞の柄はぼろ市の雨弾く 阪本宮尾
阿波踊ぼろ三味線を弾く女 高濱年尾 年尾句集
雪吊の繩の竪琴弾くは風 本岡歌子
露まみれ喜ぶ野性蓮は弾く 香西照雄 素心
風の盆腰で胡弓を弾く男 三浦薫子
高原の秋運転手ギター弾く 木村蕪城 一位
鬱屈の火花を弾くいぶり炭 倉田信司
鷹舞ふや朝日を弾く千曲川 野口光江
●ぴしり 
そろばんのぴしりと合ひし帳始 曽我部ゆかり
わが悔にぴしりと対ひ影凍つる 小池文子 巴里蕭条
われを打つ言葉ぴしりと冴返る 小室善弘
初針の糸をぴしりとしごきけり 閑野芙慈子
大寒のぴしりとくるひなき障子 恒川絢子
寒鯉にぴしりと脛を打たれたり 太田鴻村 穂国
庵主の蠅打ち遊ぶぴしり~ 河野静雲 閻魔
梅の実に雲水ぴしりぴしり消ゆ 松澤昭 山處
稲妻にぴしり~と打たれしと 高浜虚子
藤の実をぴしりと踏みし廢れ宮 丸山佳子
野薊にぴしりぴしりと夕立来ぬ 内藤吐天 鳴海抄
●人音 
白鷺の人音聞くや麦の中 豊後-慎女 俳諧撰集玉藻集
人音を鶴もしたふて若菜かな 千代尼
竹藪に人音しけりからす瓜 広瀬惟然
人音の耳に立つ日や冴え返る 金久美智子
●響き 
あたたかくこゑの響きて冬泉 小島健 木の実
あつき夜や汽車の響きの遠曇り 暑 正岡子規
かなかなのコーラス森に響きけり 小倉晴美
きつき足袋過去より響きくるものあり 川口重美
こめかみに柝の響きけり初芝居 片山由美子
すゞしさや松の響きを夢ごゝろ 松岡青蘿
つららといふ外国語めく響きかな 矢島渚男 延年
どよむ瀬の上ヮ響きして河鹿かな 楠目橙黄子 橙圃
ならべ置膳に薺の響きかな 我峯 俳諧撰集「有磯海」
ふるさとにエイサー太鼓響きけり 平 千花子
わが内耳水壺のやうな響きあり月明踏みて何者か来る 河野裕子
わが弾くに耕す土の響きかな 池内友次郎(1906-91)
カンツォーネ運河に響き秋麗 森田文
ナイサントクール教会の鐘鳴り響き 毛塚静枝
ピストルかプールの硬き面に響き 山口誓子
マラルメて誰梨は木に灼け響き 竹中宏 饕餮
一ノ倉沢雪来し響き新たなる 斎藤 節子
一村の紅葉散り去る響きかな 草間時彦 櫻山
一瀑の凍らんとして響きけり 岡田日郎
万葉の歌の響きや寒詣 加藤知世子 黄 炎
三井の鐘花菜に響き消えにけり 碧雲居句集 大谷碧雲居
三百年の杉の響きを雨の中 前田秀子
上棟のかけやの響き冴え返へる 鈴木綾子
下駄の音脳に響きつ夜寒けれ 石塚友二 方寸虚実
丘の辺に小学校の鐘響き日々の旅人としてわれは聞きたり 三枝昂之
二三尺秋の響きや落とし水 月渓
元日のおと響きあふ舟着場 角川春樹 夢殿
入棺の釘の響きや夜ぞ寒き 寒し 正岡子規
八朔の天上大風響き止む 原裕 『王城句帖』
冬の波退くや鉄鎖の響きして 長谷川櫂 古志
冬の海空の冥さと響き合う 瀧 ミサ
冬の瀧おのれの壁に響きけり 古舘曹人 砂の音
冬川に丸太落しの響きかな 牧野蚊文
冬空の弾けば響きさうな青 木内怜子
冴え返る鐘の響きに驚けり 青峰集 島田青峰
冷奴父には地下水響きます 駒走鷹志
凍てもどり木曽路は夜へ渓響き 福田蓼汀
凩によく聞けば千々の響き哉 凩 正岡子規
凩のまがりくねつて響きけり 夏目漱石 明治三十二年
初ミサの鐘響き合ふ海の上 下村ひろし
初春に知覧のピアノ響きだす 嘉陽 伸
初蜩あしたの夢に響きけり 西村和子
初鍾を撞けば山河に響きたる 秋山青潮
初鼓あめつち響きあふごとし 下田青子
十月は鵙も俳句も響きけり 中嶋秀子
午の鐘響き渡るや花供養 高浜虚子
去る人も枯野も響きやすきかな 小泉八重子
去年今年水の響きをわがものに 新谷ひろし
古都五山朧の鐘の響き合ふ 沖鴎潮
名曲よ雪に響きて娘にかへれ 加藤知世子 黄 炎
呂と律の響き累なる紅葉滝 延平いくと
唐臼のひねもす響き雪の宿 藤井君江
喪歌響きダリヤのうしろガラス感 和田悟朗
地に響き屍ほどの雪落ちぬ 古館曹人
地の底に響きて淋し寒念佛 大谷句佛
地続きに材落とす響き冬の暮 右城暮石 上下
坑の滴り石の響きで鉄帽打つ 加藤知世子 花寂び
埋火に松風落る響き哉 松岡青蘿
基礎打つ響き恋ひず祈らず永き日を 高山れおな
夏の海鉄打つ響き得て展く 椎橋清翠
夕立あと町空響き易きかな 高澤良一 素抱
夜間飛行雪嶺と湖響きあふ 川村紫陽
夢深く海の響きに散るさくら 黒田杏子 花下草上
大木に響きて淋し藁碪 吉武月二郎句集
天上を鴨わたりゆく響きかな 宇多喜代子
天冥く山響きあふ雪崩かな(七沢) 河野南畦 『花と流氷』以前
天心に鶴折る時の響きあり 攝津幸彦
太竿の響きや月の農舞台 杉原美代子
威銃姨捨山に響きけり 今瀬剛一
孫は留守遠ひぐらしも響きやすし 香西照雄 対話
実海桐をくゞる時雨の響きけり 前田普羅 能登蒼し
寂滅の鐘の響きや雲の峯 水田正秀
寒星となるらし土橋は肉の響き 遠藤 煌
寒晴の叩けば響きさうな空 木村享史
寒暁をはるかな貨車の長響き 野村秋介
寒林や疲れ忘るる斧響き 河野南畦 湖の森
寒柝の水辺へ出でし響きかな 黛執
寒灯下筆置く音も響きけり 松田美子
審きもまた光と響き大牡丹 竹中宏 句集未収録
山桜天を伝ひて風響き 高澤良一 寒暑
山桜風の響きは幹伝ひ 高澤良一 寒暑
山津波響き岩流れランプ揺れ 福田蓼汀 秋風挽歌
山焼や火焔太鼓の響きせり 武井与始子
山谺して錫杖の響き冴ゆ 山崎慈昭
岩をかむ佐渡荒浪に寒響き 牧志朝介
岩乾き谷間は冬の響き去る 石橋辰之助 山暦
崖氷柱薙ぎ金石の響きあり 福田蓼汀
広島や神函の蝉響きけり 白石作州人
廃校舎月下の海と響きあう 大西健司
弓弦の響きかすかや青木の実 星野恒彦
息の緒よ未明は物の響きせり 高柳重信
息触れて初夢ふたつ響きあふ 正木ゆう子
成木責白神山に響きけり 斎藤耕心
手毬つくてんてん響きくる書斎 山口青邨
斧始杉凜々と響き合ふ 早川翠楓
旅荷解く框に響き春の雷 村上光子
春の日がおよぶギターの響き孔 青柳志解樹
春の砂浪さま~に響きけり 高濱年尾 年尾句集
春立つや水響きゐる甲斐の国 石嶌岳
昼寝覚軍馬の響き頭をよぎる 沢木欣一
木の実降る音にも響きさうな塔 山田弘子 こぶし坂
木の椅子に寒柝響き書き嘆く 田川飛旅子 花文字
木天蓼の花に響きて渓の音 高島和江(かびれ)
木枯に槇割の木玉響きけり 椎本才麿
松蝉に双塔響き立てりけり 野見山朱鳥
枝を伐る夏至の日深く響きたり 阿部みどり女
枯柳壁に鞭うつ響きかな 会津八一
枸杞の実の響き合ふとき父佇てり 水野真田美
柿もみぢ遠く竹割る響き哉 佳舟
梅雨寒や石棺のごと校舎響き 宮坂静生 雹
梟に人事不省の響きあり 櫂未知子 蒙古斑
榾崩れせし音朝に響きけり 河東碧梧桐
榾明り夜の臼搗く響きかな 大山秋子
橋裏に響きどんどこ舟くゞる 板東福舎
機織虫(はたおり)の鳴り響きつつ飛びにけり 高浜虚子
正月の海原太鼓の響きもつ 上村占魚 『玄妙』
水澄みてビオラの低き響きかな 高崎公久
水芭蕉林中に水響きけり 高澤良一 燕音
水響き小雀囀り紛れなし 石原栄子
氷る湖へだて二街響きあふ 木村蕪城 寒泉
氷塊となりつゝ滝の響きつゝ 夏井いつき
池水に響き鶯遠のきぬ 久米正雄 返り花
沖膾叩けば雲に響きけり 大櫛静波
洗はれてコップに秋気響き合ふ 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
渡りかけて鳥さわぐ海の響き哉 渡り鳥 正岡子規
湖に響きて消ゆる砧かな 松根東洋城
滝凍つる底に息づくもの響き 住谷幸子
滝落ちて空に響きを残しけり 楠田哲郎
潮が響きて歳晩の烏瓜 山西雅子
潮鳴りや貝の風鈴響き合ふ 吉原文音
炉塞ぎて筧の響き暮れのこる 山崎久美江
爆音やすなはち響き障子貼る 石田波郷
独りという響き青梅のごとく 森田高司
猟銃音歩む腓に響きたり 山口誓子
猪威し烽(とぶひ)の山に響きけり 栗原稜歩
瓢の笛夜汽車のやうに響きけり 山田東海子
百千鳥姉味のソプラノよく響き 関森勝夫
百年の柳伐られし響きあり 阿部みどり女 『石蕗』
盆の波ゆるやかにして響きけり 岸本尚毅
石積んで石の響きの冬の暮 宮田正和
砂洲の露響きはじめを喚く鐘 竹中宏 饕餮
碧さもどる水に響きてわが国歌 臼田亞浪 定本亜浪句集
磐走る一水響き夕ざくら 川村紫陽
磴雲に入り響き交ふ四方の蝉 石塚友二 光塵
秋の日をとどめて松の響きなし 臼田亞浪 定本亜浪句集
秋の江に打ち込む杭の響きかな 夏目漱石
秋冷の瀬音いよいよ響きけり 日野草城
秋雷の豆を煎るごと空ら響き 高澤良一 寒暑
稗枯れて月にも折るゝ響きせり 前田普羅 飛騨紬
空さむく惜命の句の響きけり 下村ひろし 西陲集
空壕に響きて椎の降りにけり 長谷川かな女
立冬と言葉も響き明けゆく空 高柳重信
立春や木の幹に聞く地の響き 大櫛静波
童女と同じ響きさかんに銀杏割る 加藤知世子
筍掘る一撃の地に響きけり 伊藤敬子
箱庭に子のささやきの響きけり 田中裕明 先生から手紙
篁の揺れ響き合ふ竹の秋 重松國雄
簗番の貫禄のこゑ響きけり 石嶌岳
粟鳴子ま青き空に響きけり 岸風三楼 往来
紅葉舞ひ呂川律川響きけり 雨宮美智子
紙を截る音よく響き雪の朝 山本洋
線路のみ雪融けやがて響きいづ 佐野良太 樫
羚羊を間引く銃声響きけり 工藤貢
聖母月青嶺青潮あひ響き 伊丹さち子
胡麻叩く平和の音の響きけり 吉田利子
船の音山中深く響きけり 高橋 龍
船腹に五月の波の響きかな 島田五空「裘」
花びらに響きのあがる寒牡丹 石原八束 断腸花
花びらに風の響きの寒牡丹 石原八束 『断腸花』
茱萸の花木馬の響き風の中 原 天明
草木打つ雨の響きや挿木つく 原石鼎
草木瓜にどうと響きて若葉風 中村汀女
荒海へ竹伐る響き落ちゆけり 渡辺恭子
落石の月に響きし谺かも 小林碧郎
落葉松の響き合ひたる帰燕かな 木倉フミヱ
葉桜に扉ビーンと響きけり 久米正雄 返り花
蓮を掘る水底に城の響きあり 長谷川かな女 雨 月
蝉殻を割れば星空響き合う 田村勝実
行く秋の石打てばかんと響きける 行く秋 正岡子規
護摩焚きの太鼓の響き紅葉晴れ 木島節子
貝搗く音夜長の汐に響きけり 久米正雄 返り花
貨車つなぐ響き枯野へ抜けにけり 寺島ただし
賽銭の響きゆゆしき初詣 伊藤セキ
足音の響きやすさよ新松子 小野恵美子
身近きは響き野分の遠谺 斎藤空華 空華句集
辻桃子となけれどケキヨと響きけり 筑紫磐井 未定稿Σ
逆潮の響き鳴門の春暮れつ 臼田亜浪 旅人
連弾のひかりの響き春の海 佐藤美恵子
遣り水の玉と響きて澄みにけり 深見けん二 日月
還らざる一歩の響き冬の山 渡辺恭子
鉄板打つ響きの圏に雪降りて 榎本冬一郎 眼光
錦鯉跳ねて赤赤響きけり 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
鎌の刃のもつとも麦に響きけり 長谷川櫂 天球
鎌倉の山に響きて花火かな 高浜虚子
闘球の球の響きやほととぎす 会津八一
除夜の鐘ぬる湯の壁に響きけり 会津八一
除雪車の響きにゆるるピエロかな 室谷安早子
雛の眼に夜はしほざゐの響きけむ 篠原鳳作 海の旅
雪にむかし軍靴の響き寒雀 齋藤愼爾
雪崩るるや雲垂れて岳響きあふ 小林 碧郎
雪解川おのが響きに逸りけり 若井新一
雲の中春雷響き躑躅燃え 相生垣瓜人 微茫集
雷は太古の響き青若葉 柴田奈美
霜柱俳句は切字響きけり 石田波郷(1913-69)
露の身に吾が撞く鐘の響きくる 松野自得
靴底に暗渠響き冴返る 長崎洋子
音なべて響き易くて山の秋 山田弘子 こぶし坂
響きあふものあり吾と曼珠沙華 三好潤子
響きこもる六月の雲水の上 野澤節子
響きつつ一夜を駆けて御神渡 小松麗
響きわたる「花鳥」のフーガ春の昼 川崎展宏 冬
響き合ふ光となりて星凍つる 今橋眞理子
響き合ふ和讃の鉦や彼岸寺 長島 操
響き来て遊子が胸を打つ砧 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
響き落つ水濁りなし雪椿 岡田日郎
風花や肩にも触れて響きけり 高橋馬相 秋山越
餅搗の響き山河を喜ばす 小島 健
養花天選挙合戦空ラ響き 高澤良一 素抱
館内にマーラー響き蔦紅葉 水田むつみ
高虻は自ら響きやまざるも 安井浩司
魚の暗い響きあつまる髪脱ける 八木原祐計
鳥声のかしこに響き冬安居 泉 直樹
鴨を撃つ沼の響きに町は寝し 石井とし夫
鶏鳴の沼に響きて暮の春 山田閏子
黄金週間てふ語嘗ての響きなし 高澤良一 随笑
●ひゅうひゅう 
ひゅうと手が伸びて編み込む通草蔓 高澤良一 宿好
ひゆうひつと吹き切り終る祭笛 福田蓼汀
ひゆうひゆうと父の息して木の実降る 國分水府郎
ひゆう~と風鳴る日なり初閻魔 井上猴々
一飛雪ひゅうと川面をよぎりけり 高澤良一 鳩信
口笛ひゆうとゴツホ死にたるは夏か 藤田湘子「白面」
喜多方ラーメンずずと啜れば北風ひゅう 高澤良一 随笑
寒月や鹿ひゆうと鳴く岡の上 五十川茶村
木の葉ひゅうと飛ばして山の風走(わし)る 高澤良一 宿好
楮剥ぐ長寿の息のひゆうと鳴り 吉本伊智朗
猿払の貝殻置場春荒れひゅう 高澤良一 素抱
諦めのひゅう葡萄の木の匂う 三井絹枝
●風韻 
みなし栗山の風韻秘めゐたり 大橋敦子
新涼の風韻きゐる風の中 藤田湘子
植えし田の風韻ちちとはは透ける 沢田充子
白絣てふ風韻に託すも 坂巻純子
風韻のこだまかへしに寒ざくら 吉田未灰
風韻の人おもふべし冬蕨 飴山實 『花浴び』以後
風韻の水玉太る雪庇 古舘曹人 砂の音
風韻をもて寒木をつなぎ合ふ 佐野まもる
風韻を巻き込みてゐし落し文 稲畑汀子
●風籟 
鷹翔ぶや風籟おこる山の肩 大岳水一路
●不協和音 
花野にも不協和音が生まれます 早乙女文子
大英帝国不協和音のリーゼント 早瀬恵子
掃除機が木の実吸ひたる不協和音 山田弘子 初期作品
不協和音あかく濁れる夏の月 吉原文音
●蚊雷 
蚊雷やなかば時計の刻む音 森鴎外
●霹靂 
年の瀬や霹靂のごと餅届く 小林康治 玄霜
霹靂として神去りましぬ夏の雲 露月句集 石井露月
霹靂とならばやアッツ落つる夜に 中勘助
霹靂と墨書して四肢おとろふる 塚本邦雄
霹靂と聞きし一葉の真闇かな 林翔 和紙
霹靂に歯向かへるや庭の大薊 内田百間
霹靂や凛と灯りて清洲橋 長屋せい子
霹靂や知らねどうたふ葬送歌 加藤知世子 花寂び
霹靂や鶏頭もえてゆくばかり 加藤知世子 黄 炎
霹靂神急いで御通りなさいませ 竹田きよし
青天の霹靂とはこれ蝉の尿(しと) 高澤良一 寒暑
青天の霹靂癌来て吾れを犯すかな 橋本夢道 無類の妻
●ぺたぺた 
あたたかや指紋ぺたぺた卓につく 川島彷徨子 榛の木
ひぐれのようにゴム印ばかりぺたぺた捺す 穴井太 天籟雑唱
ぺたぺたと干潟を行けば伽羅百済 藤田湘子 てんてん
ぺたぺたと階打つ素足少女かな 嶋田麻紀
ぺたぺた寒い鰈をならべる シヤツと雑草 栗林一石路
夏至の日の仲見世ぺたぺた歩きけり 吉田鴻司
海蘿掻潮垂草履ぺたぺたと 岡安迷子
●鞭声
●母音 
入学式母音のやうに母附き添ふ 田川飛旅子
八月十五日朝母音のゆたかなり 石寒太 炎環
冬木立母音と子音ひびきあい 大竹広樹
吉兆の母音は三つ花ことば 伊藤敬子
啓蟄や母音ばかりで暮れる村 斎藤白砂
囀りの子音母音の中を行く 角川春樹
塾始め母音と読めば子等笑ふ 田川飛旅子 『薄荷』
更衣米借りに母音もなし 沢木欣一
桜の実鳥語の母音ずぶ濡れに 高岡すみ子
母音のごと雪の火の見に灯が点り ながさく清江
率爾ながら母音はかはらけだらけだよう 加藤郁乎
胎内に母音のこだま花祭 橋口 等
蜆蝶母音いきづく子の片言 成田千空 地霊
鶯の啼くや母音を先立てゝ 高澤良一 素抱
●砲声 
くちすゝぎ砲声を遠に端午なり 相馬遷子 山国
深夜砲声斥候に行くと飯喰いいる 鈴木六林男 荒天
●骨の音 
きちきちに骨の音する山河晴れ 野澤節子 遠い橋
はじまりの骨の音する秋の空 山口かな
わらび摘む婆か蕨か骨の音 小檜山繁子
今年初のわが骨の音拍手に 加倉井秋を
凍豆腐からから骨の音をたて 宮坂静生 雹
吹く風に骨ころがれば骨の音 佐藤弘明
昭和いつまで骨の音する蘆を刈る 上中章逸
昼ちちろ握れば骨の音する反古 石坂亜以子
晩年や骨の音して籐の椅子 山下良三
朴の花散るや清らに骨の音 正木ゆう子 静かな水
枝炭の骨の音して山あかり 大木あまり 雲の塔
案山子焼く時に弾ける骨の音 石山幸月
歩くたび骨の音する秋ゆふぐれ 中村苑子
炎天に犬身振ひの骨の音 沢木欣一 地聲
秋霖に骨の音する鉋屑 山田みのる
缶蹴れば骨の音して野分川 増成栗人
裸木を叩けば骨の音がする 源鬼彦
身の裡に骨の音聞く冷まじき 都筑智子
野分はや骨の音するけむりだし 柿本多映
骨の音からんと春のなかにゐる あざ蓉子
骨の音させて溽暑の立居かな 大野林火
骨の音したり落穂を拾ふとき 吉本伊智郎
骨の音ためしてをりぬ雨水の日 鳥居おさむ
骨の音加えメロンの匙をとる 林田紀音夫
●ポポ 
小鼓のポポとうながす梅早し 松本たかし
おぼろ夜のぷぽぷぽちぽぽ魚啼けり 深谷鬼一
児があらばぽぽと飲まさんうしのちち 江里昭彦(1950-)
嬰児湯を濁さずぽぽと花杏 長谷川双魚 風形
山刀伐や筒鳥ぽぽとぽぽぽぽと 黒田杏子
山椒喰滝神の燭ぽぽと揺れ 水野爽径
斑鳩きてぽぽうと鳴けば幾時代過ぎたるならむ頬づゑをとく 川野里子
枇杷の子のぽぽぽとともるほの曇り 平井照敏 天上大風
沸騰した空気ぽぽぽぽ折れたまま 猪原丸申
涅槃図にぽぽつぽぽつと和らうそく 西村和子
灯明のぽぽと次郎柿の山河かな 折井紀衣
筒鳥やぽぽぽぽぽんと一日果つ 嶋田麻紀
紙衣着てにんげん火山ぽぽと燃ゆ 小檜山繁子
胸のうちぽぽぽぽと年守る火か 川崎展宏 冬
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ 坪内稔典
たんぽぽのぽぽぽぽぽぽとある日和 須佐薫子
たんぽぽのぽぽ戴きぬ犬の名に 中島英子
●松風 
あかるくなりたや鐘つかれ松風にふかれたや 阿部完市 春日朝歌
いり蠣に軒の松風奪ふなり 曉台
うちまぎれ行くや松風小夜しくれ 時雨 正岡子規
おもしろう松風吹けよ除夜の闇 松岡青蘿
お遍路となるや松風身にひびき 沢木欣一 遍歴
かう~と松風を背に猫交る 久米正雄 返り花
さはさはと松風わたる芙蓉かな 富安風生
しぐれきてはては松風海の音 時雨 正岡子規
しぐれねば又松風の只おかず 立花北枝
なく雲雀松風立ちて落ちにけむ 秋櫻子 (唐招提寺)
ぼのくぼに松風あそぶ夏炉かな 飴山實 『次の花』
みづうみの松風ばかり苗障子 石田勝彦
みほは松風雪はたれふる甲斐の山 中勘助
もつれあふて涼し松風浪の音 涼し 正岡子規
ものごしの松風聴ける木の葉髪 松村蒼石 雁
サングラス師なき松風のみ捉ふ 文挟夫佐恵 黄 瀬
マネキンの着る松風のようなもの 永末恵子 留守
二丁櫓や初松風の綴るなか 池上樵人
冬山や松風海へ吹落す 村上鬼城
初午や松風寒き東福寺 蝶夢
初夏の松風に棲む灯かな 吉武月二郎句集
初松風心の襞にかそかなり 富安風生
利久梅松風に白かげりけり 大熊輝一 土の香
十五夜の松風に雨まじりつつ 岸本尚毅 鶏頭
千鳥群るる初松風の鳴る辺べに 向田貴子
友二忌の松風とみに激しかり 大牧 広
友葬る冬松風の真ッ下に 羽部洞然
吹き落ちて松風さはる牡丹の芽 日野草城
囀も松風もやむ時のあり 大橋櫻坡子 雨月
埋火に松風落る響き哉 松岡青蘿
墓原や松風たかき旱り空(末の松山) 角川源義 『神々の宴』
夏座敷松風を召され候ぞ 夏座敷 正岡子規
夕涼松風とめされ候そ 納涼 正岡子規
大貯水ふるゝもの鴨と松風ぞ 渡辺水巴 白日
奥津城は冬松風のひびくのみ 吉武月二郎句集
寒紅に松風つのりきたりけり 綾部仁喜 樸簡
山椒喰松風絶えて鳴き澄める 水原秋櫻子
山鳥も初松風に耳ひらく 松村多美
川かぜも松風も来て夏神楽 井月
川風も松風も来て夏神楽 井月の句集 井上井月
帰るさに松風ききぬ花の山 巣兆
帷子や須磨は松風松の雨 帷子 正岡子規
庵出る子に松風のほたるかな 飯田蛇笏 山廬集
引鴨の松風ばかり残りけり 井上唖々
後の月松風さそふ光りかな 井月の句集 井上井月
心太に松風落ちぬ桶の中 松瀬青々
忘れ庵檜風松風しだのかぜ 中勘助
手にとれば松風わたるわかなかな 蒼[きう]
数へ日の松風をきく齢かな 勝又一透
新涼の松風水をわたりけり 今井杏太郎
日南ぼこ直ぐ松風のでゝ陰る 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
春の昼遠松風のきこえけり 日野草城(1901-56)
春蝉も鳴くころほひの松風ぞ 石塚友二 光塵
月の夜の松風の夜の近松忌 大橋櫻坡子 雨月
有明山初松風をおろしけり 上田五千石
木曽山中松風をきく夏爐かな 加藤耕子
松手入して松風も村雨も 後藤夜半 底紅
松風すずしく人も食べ馬も食べ 種田山頭火 草木塔
松風す大輪の菊運ばるる 松村蒼石 雁
松風にいよいよの雪酒欲しや 清水基吉 寒蕭々
松風にうはずるこゑの鳥の恋 原裕 青垣
松風におどろき仰ぐ鹿の子かな 大橋櫻坡子 雨月
松風にかなしき声や高燈籠 高井几董
松風にきき耳たつる火桶かな 飯田蛇笏 山廬集
松風にこそつかせたる紙子かな 涼菟
松風にさめて行くなり薫衣香 佐藤紅緑
松風にしぐるゝ能の舞台かな 高浜虚子
松風にのりたるこゑのつくつくし 今井杏太郎
松風にはらはらととぶ水馬 高浜虚子
松風にふやけて疾し走馬燈 原石鼎
松風にゆるぐ紙帳や窓の下 内藤丈草
松風に乾きて涼し由か耳 尾崎紅葉
松風に千の波引く涼み台 原裕 青垣
松風に吹かれて来たる雀の子 今井杏太郎
松風に吹かれて蟻が水に落つ 右城暮石
松風に咲きつくしけり神の蓮 西山泊雲 泊雲句集
松風に城くつきりと秋意濃し 大熊輝一 土の香
松風に干し重ねたる鵜籠かな 山西雅子
松風に揺れゐる舟や沖膾 長谷川櫂 蓬莱
松風に新酒を澄ます山路かな 支考
松風に明け暮れの鐘撞いて 種田山頭火 草木塔
松風に松葉ばかりの雪間かな 小川軽舟
松風に気性はげしき蟻出でし 宇佐見魚目
松風に流れ二日の石たたき 大峯あきら 宇宙塵
松風に犬が振りむく秋声忌 田村愛子
松風に玉取終へし神の楽 斎藤滴萃
松風に甘酒さます出茶屋かな 甘酒 正岡子規
松風に甘酒わかす出茶屋かな 甘酒 正岡子規
松風に碧みてきたる氷かな 岡本 高明
松風に祓はれて来ぬ留守詣 今久保あき
松風に神馬のいななき冬至梅 飯田蛇笏 春蘭
松風に筍飯をさましけり 長谷川かな女
松風に筧の音もしくれけり 時雨 正岡子規
松風に紅裏かへせ御忌詣 松瀬青々
松風に耳欹つる春の鹿 清原枴童 枴童句集
松風に蛸の卵といへるもの 綾部仁喜 寒木
松風に蝌蚪生れたる山田かな 芝不器男
松風に誘はれて鳴く蝉一つ 日野草城
松風に醤油つくる山家かな 高濱虚子
松風に顔を上げたる夜業かな 岸本尚毅 舜
松風に風鐸かなで常楽会 亀井糸游
松風に驚く松も雨水かな 池田澄子 たましいの話
松風に鶯老いぬ天竜寺 碧雲居句集 大谷碧雲居
松風のある日無き日や地虫出づ 大峯あきら 宇宙塵
松風のうすれうすれぬ鐘供養 大峯あきら
松風のうるさき秋の昼寝かな 長谷川櫂 虚空
松風のおちてゆだちや筆硯 小林康治 四季貧窮
松風のがう~と吹くや蕨取り 村上鬼城
松風のこよなき日なり書を曝す 大峯あきら 宇宙塵
松風のこゑ地におちて荒しぐれ 石原八束 空の渚
松風のさくらもみぢを急かすなり 野沢節子
松風のつのる五浦の秋の月 中村政子
松風のときをり高き茅の輪かな 草間時彦「瀧の音」
松風のぬけて行きたるしぐれかな 千代尼
松風のふはと添ひけり御帷子 松香
松風のもうつまらなく炬燵かな 永末恵子 留守
松風のやゝのしづもりの枯葎 清水基吉 寒蕭々
松風のわたるを秋の声と聴く 植野枯葦池
松風の中なる人の懐炉かな 岸本尚毅 舜
松風の中を行きけり墓参人 芥川龍之介 我鬼句抄
松風の中を青田のそよぎかな 丈草「四哲集」
松風の價をねぎる殘暑哉 残暑 正岡子規
松風の匂はゞ須磨の朝の内 薫風 正岡子規
松風の吹いてをれども灼けてをり 槐太
松風の吹くや鵜川の朝ぼらけ 井月の句集 井上井月
松風の声となりゆく瑠璃鶲 渡辺夏舟
松風の夏めく庵を追はれけり 久保田万太郎 流寓抄
松風の夜々をかたむく炭俵 斎藤玄
松風の奥にわらびを摘みにゆく 山本洋子
松風の奥に寺ある寒さかな 犀星
松風の寐覚ばかりか軒の月 松岡青蘿
松風の小径となりぬ破魔矢持ち 吉屋信子
松風の怒濤の如き吹雪かな 阿部みどり女
松風の晒す障子となりにけり 中島月笠
松風の村雨を呼ぶ団扇かな 団扇 正岡子規
松風の松しぐるるや象頭山 広瀬惟然
松風の櫻吹くなり荒御魂 会津八一
松風の涼しき浜の館かな 高橋淡路女 梶の葉
松風の甘酒を吹く出茶屋哉 甘酒 正岡子規
松風の畠に落ちて今朝の秋 会津八一
松風の秋ひきたつる葛の花 斎藤玄 雁道
松風の空や雲雀の舞ひわかれ 丈草
松風の窟にしたたる観世音 角川源義
松風の納豆仕込む精舎かな 尾崎紅葉
松風の落かさなりて厚氷 松岡青蘿
松風の落つ浜木綿にゐてあかず 鈴鹿野風呂 浜木綿
松風の落葉か水の音涼し 松尾芭蕉
松風の行きつくところ山桜 大石悦子 聞香
松風の説法長し施米受く 松瀬青々
松風の謠半ばや春の雨 春の雨 正岡子規
松風の谺返しや夕桜 小林康治 四季貧窮
松風の賦をさざなみや早稲遅田 言水
松風の遠くにありし雛あられ 野上けいじ
松風の里は籾するしぐれ哉 服部嵐雪
松風の降らせる塵や弓始 上杉緑鋒
松風の雨こぼしたる切籠かな 飴山實
松風の音の身に入む安乗崎 森田志げを
松風の音を汲みあげ釜始 吉川ちしゑ
松風の頭巾吹きけり山法師 闌更
松風は潮騒に似て未明の忌 大沢紀恵
松風もおのがのにして蝉の声 千代尼
松風もつのればわびし寝正月 高田蝶衣
松風も家督にしたり葛根掘 三津人
松風も春のものとて暖かに 福丸
松風も村雨もあり須磨の雛 古白遺稿 藤野古白
松風も村雨も秋深き須磨 竹腰八柏
松風やいくとせ冬の田打せる 横光利一
松風やさばしる水に水馬 長谷川櫂 蓬莱
松風やしぐるるいろに種の浜(敦賀) 岸田稚魚 『花盗人』
松風や七輪に茄子くべてをり 森澄雄
松風や人は月下に松露を掘る 芥川龍之介
松風や仏法僧が修羅の声 清水基吉
松風や俎に置く落霜紅 森澄雄 雪櫟
松風や初荷車の楽過ぎて 波郷
松風や吾を涼ませて琴に落つ 納涼 正岡子規
松風や四十過ぎてもさわがしい 上島鬼貫
松風や山繭のねむりなほ浅き 関根黄鶴亭
松風や巣篭る鳩の目の澄みて 田中幹也
松風や年の山人の帰る後 内藤丈草
松風や時うつりして海苔の寄る 乙二
松風や月の障子に法の影 月 正岡子規
松風や朝寒顔の小鰺売り 村山古郷
松風や末黒野にある水溜り 沢木欣一 雪白
松風や池の月見るたかむしろ 篠崎霞山
松風や海東に暮るゝ春 尾崎紅葉
松風や甘酒釜を吹きさまさず 野村喜舟 小石川
松風や白犬細うすぎにけり 芥川龍之介
松風や紅提灯も秋隣(鵠沼谷崎潤一郎幽棲、七年) 芥川龍之介 我鬼句抄
松風や羽田の子供海苔を乾す 細谷源二 鐵
松風や膝に波よるあじろ守り 闌更
松風や芙蓉溺れむばかりにて 岸田稚魚 『萩供養』
松風や軒をめぐって秋暮れぬ 松尾芭蕉
松風や道の溜りにあめんぼう 森澄雄
松風や関はむかしに羽抜鳥 白雄「白雄句集」
松風や阿修羅涼しく腋をあげ 前田普羅
松風や霜に浮いたる石の貌 小林康治 四季貧窮
松風や鱸を荷ふ人のきほひ 徳田秋声
松風をいたゞく汗の額かな 尾崎紅葉
松風をうつつに聞くよ夏帽子 芥川龍之介 澄江堂雑詠
松風をおさへてふるや秋の雨 秋雨 正岡子規
松風をききゐる蝌蚪の薄日かな 松村蒼石 雁
松風をくゞりぬけたり春の山 春の山 正岡子規
松風をはなれて高し秋の月 月 正岡子規
松風を中に青田のそよぎかな 内藤丈草
松風を得意で売るや納涼茶屋 納涼 正岡子規
松風を打越して聞く蛙かな 内藤丈草
松風を植えて聞きたしくもの嶺 千代尼
松風を聞き足らはせる寝釈迦かな 徳永山冬子
松風竹雨芭蕉玉巻く書楼かな 飯田蛇笏 山廬集
梅干してよき松風の通り道 大峯あきら 宇宙塵
梅白く松風匂ふ城ほとり 大熊輝一 土の香
極月の松風もなし万福寺 石田波郷
武蔵野の松風聞かな青邨忌 深見けん二
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 汗 正岡子規
汲み水に落ちし松風昼寝ざめ 西山泊雲 泊雲句集
汲水に落ちし松風昼寝ざめ 西山泊雲 泊雲
河豚食ふや松風ひびく講和の間 陣場孝子
涼しさや松風蔦の葉を返し 尾崎迷堂 孤輪
滴りや天の松風吹きかはり 康治
潮騒に勝る松風新松子 伊丹三樹彦
潮騒の松風となり松露掘り 阿部みどり女 笹鳴
炎昼の松風棕梠と吹き通う 三谷昭 獣身
炭つぎて釜の松風もどりけり 手塚基子
炭の火に峯の松風通ひけり 一茶
獅子舞の太鼓松風ぐもりかな 久保田万太郎 流寓抄
琴の音の松風さそふ二日かな 川上梨屋
盆過ぎの松風を聴く沼津垣 黒田杏子 花下草上
真昼日に松風少し土用かな 尾崎迷堂 孤輪
祖母の世の松風今も墓洗ふ 福田蓼汀 山火
秋の夜やよその松風海馬の床 昌夏 選集「板東太郎」
穴の明く松風もなし朧月 千代尼
立春の松風星を呼びゐたり 伊藤京子
若潮を汲む羽衣の松風に 芋川幸子
苺咲く松風ばかり日を追へり 角川源義
葛水に松風塵を落すなり 高浜虚子「虚子全集」
藪入や墓の松風うしろ吹 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
蛇穴に入る松風の音の中 井上哲王
蛍烏賊松風陸を離れざる 金尾梅の門
蝉を聞く蝉よ松風勝れつつ 三橋敏雄 畳の上
蟻地獄松風を聞くばかりなり 高野素十「雪片」
護国寺の松風ききぬ年の暮 龍岡晋
赤しょうびん松風にわが袖うすき 美土路圭子
足音を聴きわけ松風と蜥蜴 宮坂静生 山開
遠ざかり行く松風や神送り 神送 正岡子規
都にも松風ありて寒さかな 立花北枝
鎌倉の松風さむき雛かな 久保田万太郎 流寓抄
鑑真の冬松風は怒濤にて 加藤秋邨 吹越
長いぞや曽根の松風寒いぞや 広瀬惟然
青田風山門を入り松風に 川村紫陽
頬杖の頬や痩けたり松風忌 星野麦丘人
風呂吹を褪ます松風入れにけり 久米正雄 返り花
風景は松風ばかり日傘かな 鳴戸奈菜
食堂(じきどう)に松風通る春の昼 桂信子 樹影
鱸焼く松風の音聞きながら 長谷川櫂 蓬莱
鳴く雲雀松風立ちて落ちにけむ 水原秋桜子
鶴舞へり松風奏で涼しさに 山口青邨
をちこちに松かぜ落つる二月かな 久保田万太郎 流寓抄
松かぜ松かげ寝ころんで 種田山頭火 草木塔
●水音 
いざよいの水音を聞き魚ごころ 木村えつ
いざよひの空より水音起つごとし 関森勝夫
いづくにも水音のあり湯殿行 下鉢清子「みちのく」
うなぎひしめく水音朝のラジオより 豊田晃
おぼろ夜の水音に添ひ坂下る 柴田白葉女
きぶし咲き山に水音還り来る 西山 睦
ぎしぎしの伸びざかりなる揚水音 森田公司
くらがりへ覚める水音冬紅葉 板橋美智代
この水あの水の天龍となる水音 山頭火
たしかなる春の鼓動を水音に 吉富萩女
たたみの上にテレビ水音夜の秋 草田男
どことなく水音のして盆の町 岡本眸
ふ と 思 ひ 出 の 水 音 か げ り 山頭火
もてなしは秋の水音櫟の火 霜田千代麿
ゆうがたは水音恋ふる雪ばんば 池田琴線女
わがたてゝゐる水音や田草取 依田秋葭
コスモスも水音ごもり忍野村 古賀まり子 緑の野以後
シナノザサ秋水音もなく流る 高澤良一 素抱
トイレの水音もあったりして通夜の中 植田次男
トーキーに入りし水音木の芽時 長谷川かな女 雨 月
マンホールの水音寒夜は火の音す 寺田京子 日の鷹
了以忌や水音通ず京丹波 松瀬青々
二階屋を水音縦に切る寒夜 大井雅人 龍岡村
五月の鯉空に水音たたせけり 中田モト子
体内はいつも水音浮寝鳥 大村玉兎
何するも水音ごもり丁字咲き 高橋謙次郎
作り滝夜は水音を飼ふごとし 鈴木きぬ江
側溝にかすかな水音草茂る 青砥真貴子(朝)
八十八夜水音を聞き惚れもして 中山純子 沙 羅以後
六月の水音に添ひ検査すむ 萩原麦草 麦嵐
冬うらら水音のふと欹ちぬ 小川軽舟
冬の日の水音想ふ泛子を買ふ 鈴木鷹夫 渚通り
冬晴れの水音鋭がり来る日暮 岸田稚魚 筍流し
凍滝の中の水音墨を摺る 一條友子
分け入れば水音 種田山頭火(1882-1940)
分け入れば水音ばかり春の草 千代女
列柱に水音おぼろ地下宮址 澤田緑生
刻きざむ水音してをり初御空 加納久子
卒業のこの雪の田も水音す 桜井博道 海上
吹く風も澄む水音も木曽に入る 高橋悦男
夕紅葉とみに水音澄みわたり 鈴木花蓑句集
夜振火を消せば水音立ちにけり 冨田みのる
夜長の灯水音に明き花屋にや 安斎櫻[カイ]子
大原の水音烏瓜の花 大川真智子
大寺にこもる水音あたたかし 澤村昭代
大山蓮華渓のくらさを鳴る水音 土屋紫信
天の川は黒部川の水音を聞く(宇奈月温泉) 荻原井泉水
奉書漉く水音つづみ拍つ如し 荒井正隆
奥飛騨は水音太し破れ傘 佐藤斗星
妻はいま闇の水音螢籠 友岡子郷 日の径
子を連れては草も摘むそこら水音 種田山頭火
実むらさき水音に急ぐ色なるか 河野多希女
寒に入る一位樫には水音して 小川双々子
寒潮の濤の水音まろびけり 飯田蛇笏
寒諸子釣れし水音耳うてり 鈴木鷹夫 大津絵
寝ぬる時水音の月となりゐたり シヤツと雑草 栗林一石路
小暗がりの庫裡に水音木蓮忌 菊地智子
山中の水音いそぐ紅葉かな 山崎千枝子
山毛欅の樹を水音のぼる原爆忌 竹林仁
山葵田の水音しげき四月かな 渡邊水巴
山葵田の水音といふ音のあり 後藤比奈夫 祇園守
岩すべる水音へ垂る沢胡桃 伊藤敬子
川とんぼやさしき水音つれてきし 加古宗也
川宿の青柚にさぶと水音あり 長谷川かな女 雨 月
川狩や堰の水音遠く来し 雄子郎句集 石島雉子郎
師の墓を洗ふ水音の涼やかに 松田碧霞
帯とけば涼しくなりぬ水音も 星野立子
年の瀬の水音切れぬ洗車場 西村美枝
幾重にも水音ときに遠郭公 野中亮介
底冷えに水音のしてゐたるかな 猿山木魂
引あげて水音くらき柳かな 斯波園女
弛みなき木曾の水音蒼朮焚く 折井眞琴(岳)
愛のごとし深雪の底の水音は 小林康治 玄霜
我家の水音に年新たなり 露月
施餓鬼會や水音更る後夜の鐘 施餓鬼 正岡子規
明け方の水音ひびく朴の花 皆川白陀
昏れて行く水音山葵田にのこる 島村茂雄
春の水音ばかりかな枯林 横光利一
春や妻の使ふ水音知り尽くし 野中亮介
春暁の町ゆく水音離れずに 下村ひろし 西陲集
春浅き水音めぐる都府楼址 能村登四郎
春蘭や水音はまだ谿にのみ 児玉輝代
春風や土手は水音馬の鈴 春風 正岡子規
昼を夜につぐ水音や秋となる 阿部みどり女 『雪嶺』
昼昏き渓に水音座禅草 吉田百合子
暁暗の水音百合の奥はたらく 松澤昭 父ら
月の出やよその厨の水音す 菖蒲あや あ や
朝明よし投げ苗の水音さばしりて 高田蝶衣
木の中をのぼる水音原爆忌 益田 清
木ぶし咲くと見れば水音ゆたかなり 椎橋清翠
木道をくぐる水音沢桔梗 宮田俊子
枯園としてのやすらぎ水音にも 後藤比奈夫
柴漬の水音にたがふなかるべし 岡井省二
桑枯るる水音に沿ひ陣馬道 児玉真知子
桑畑に水音かよふ暮春かな 成瀬櫻桃子 風色
桶の水音立てて飲む祭馬 斉藤重子
椎若葉水音のして水の神 神原栄二
樵小屋水音細く冬に入る 栗原澄子
武蔵野の水音聴くや西行忌 志城 柏
毛虫焼く炎の水音に応へあり 原裕 青垣
水 音 の、 新 年 が 来 た 山頭火
水 音 を さ ぐ る 山頭火
水に棲み水音たてずあめんぼう 水田昊子
水ひろがる奥に水音苺食ぶ 友岡子郷 遠方
水よりも水音いそぐ下り簗 若井新一
水神へ走る水音みどりの日 平井さち子 鷹日和
水竜の中の水音夏はじめ 甫喜本のぶ女
水音(みおと)またおろそかにせず春の水 高澤良一 寒暑
水音、冬が来ている 住宅顕信(すみたく・けんしん)(1961-87)
水音があれば母ゐて菊膾 古市絵未
水音が河鹿の聲である水を聞く 荻原井泉水
水音が胸を出てゆく花わさび 青柳志解樹
水音が身から離れず春に入る 船水ゆき
水音けふもひとり旅ゆく 種田山頭火
水音しんじつおちつきました 種田山頭火 草木塔
水音で充たす一日さくら散る 桂信子 黄 瀬
水音で川幅わかり螢狩 木村紀美子
水音といつしよに里へ下りて来た 種田山頭火 草木塔
水音と即かず離れず紅葉狩 後藤比奈夫 祇園守
水音と機織る音や沖縄忌 山崎祐子
水音と羽音の夜明け鴨来たる 松永千鶴子
水音と花に憑かれし師が一入 野澤節子 遠い橋
水音と虫の音と我が心音と 西村和子
水音と蚤の記憶の薄あかり 飯田龍太
水音にいちにち芽吹く楢くぬぎ 由利雪二
水音にきよとんきよとんと鳰 高澤良一 さざなみやつこ
水音にそそぐ水音冬深し 行方克巳
水音にひかるる昼や桔梗の芽 宮坂静生 樹下
水音にまづくつろぎて川床料理 南 ふじゑ
水音にも山国の張り*たら芽あヘ 鍵和田[ゆう]子 浮標
水音にをののく蓼や櫻桃忌 石田あき子 見舞籠
水音に別れて虫の原となりぬ 及川貞
水音に千鳥ケ淵の夜寒かな 桜木俊晃
水音に山現れて梅の花 長谷部愛子
水音に恋の夢醒む天の川 石田ふじ乃
水音に暮るる信濃の干菜竿 前田時余
水音に朝のひらかず夏落葉 松澤昭 神立
水音に添ひ行き若菜野に出でぬ 菖蒲あや
水音に濡れては帰る夕すずみ 千代女「古人筆句録」
水音に紫陽花白く返り咲く 山田節子
水音に色あれば銀花山葵 原田青児
水音に記憶もどりぬ滝ありし 星野立子
水音に足裏より酔ふ簗の上 きくちつねこ
水音に跼めば蝶の翔ちにけり 飯野弥生
水音に蹤きてはかへす秋の蝶 北見さとる
水音に近づき離れ螢狩 茨木和生 往馬
水音に追はるる漆紅葉かな 小島千架子
水音に醒めし安曇野百千鳥 松本敏子
水音に闇ととのへば蛍とぶ 町田しげき
水音に離れ杭立つ十三夜 宮田正和
水音のあるばかりなる霧地獄 石塚友二 光塵
水音のいつもどこかで花山葵 寺岡捷子
水音のかすかにありて涼しさよ 稲畑汀子 汀子句集
水音のかたさ失せゆく犬ふぐり 平子 公一
水音のこもりてのぞく實梅かな 八木林之介 青霞集
水音のころがりくるや蕗の薹 小林紀代子
水音のして蘆間より鷭現るる 古賀ひさ
水音のする雪中の福寿草 菊地弘子
水音のそこだけ消えて冬桜 清水衣子
水音のそこに夕づくうつぼ草 村田脩
水音のたえずしていばらの実 種田山頭火
水音のたえずして御仏とあり 山頭火
水音のたそがれ誘ふ夕ざくら 成瀬櫻桃子 風色
水音のたてよこななめ雪解村 神沢英雄
水音のつれづれに春うごきけり 東條陽之助
水音のどこから夢の業平忌 寺井谷子
水音のながれながれて霜の橋 松村蒼石 雪
水音ののぼりくる山朴おそし 小島千架子
水音のひろがつて野は秋半ば 中村田人
水音のふくらんでくる曼珠沙華 野木桃花
水音のほしくなる絵よクリスマス 土谷倫
水音のやさしき日なり芹の花 浜福恵
水音の一つは炊ぎ雨の枇杷 友岡子郷 遠方
水音の中に句を書く新樹かな 渡辺水巴 白日
水音の中に小春のありにけり 星野椿
水音の中まで日暮朴の花 雨宮抱星
水音の中を歩いて月見草 末光令子
水音の五線音譜に乗る河鹿 稲畑汀子
水音の八尾はよかり風炉名残 坂田はま子
水音の八朔柑へ来て降るごとし 鳥居おさむ
水音の包める宿や新豆腐 山田弘子
水音の四辺よごさず卒業す 松澤昭 神立
水音の夜を咲きのぼるからすうり 白澤良子
水音の夢のごとくに返り花 順子
水音の家々つなぐ八重桜 ながさく清江
水音の家を半周すもも咲く 太田土男
水音の寝覚冷すや夏ごろも 鳳朗「鳳朗発句集」
水音の引き立ててゐる冬紅葉 後藤比奈夫 金泥
水音の方へわかれし端午かな 田中裕明 櫻姫譚
水音の方へ傾ぎて野紺菊 ふけとしこ 鎌の刃
水音の方へ薄暑の径たどる 隈柿三
水音の日向さびしく蕗刈れり 小田 司
水音の早春かなでゐて倦まず 稲垣きくの 黄 瀬
水音の明くる早さよ水芭蕉 三ケ森青雲
水音の晴ればれとして大賀蓮 猿山木魂
水音の暮れてひとりの大焚火 春樹 (吉野)
水音の枕に落つる寒さ哉 寒さ 正岡子規
水音の檜山夜に入る網戸かな 木村蕪城
水音の消えては生れあざみ咲く 稲畑汀子
水音の涸るる音もつ破芭蕉 吉村美波
水音の澄めば冷えくる茨の実 小松崎爽青
水音の爽やかに抜け棚田の空 中村行一郎
水音の空へ抜けゆく冬桜 勝又民樹
水音の糺を秋のはじめかな 大魯
水音の紺屋に遠く山眠る 渡辺みどり
水音の絶えずしてをり勇の忌 井上綾子
水音の耳うち荻の角組まれ 和久田隆子
水音の芋名月の陰(ほと)洗ふ 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
水音の荻にかくるゝ夕哉 荻 正岡子規
水音の萍ひとつ離れをり 山上樹実雄
水音の落ち込んでゆく木下闇 今井つる女
水音の葎はしる夏木立 夏木立 正岡子規
水音の近づいてくる葭障子 野澤節子
水音の野中さびしき柳かな 浜田酒堂
水音の野中にくれて冬の雨 支朗
水音の離れ蹤きくる梅寒し 岸風三樓
水音の風とはなるる春涼し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
水音の高くなりけり草螢 浦川聡子
水音の高まる木曾の草蚊遣 長田等(狩)
水音の髪膚に響く川床涼み 西村和子 かりそめならず
水音の鳥音にも似て田植すすむ 大熊輝一 土の香
水音は二階に高き河鹿かな 英治
水音は山女魚跳ぶらし淵おぼろ 内山 亜川
水音は暮しのリズムつばめ来る 兼山き志枝
水音は水にもどりて水鶏かな 千代尼
水音は耳に障らず春眠す 茨木和生 丹生
水音は遥かを急ぎ白絣 綾部仁喜 寒木
水音は銀の重さに山ざくら 児玉南草
水音もあんずの花の色をして 草間時彦 櫻山
水音もまた梅の香をくぐり来る 山田弘子 螢川
水音もまた風に乗る茂り中 市東 晶
水音も一品として夏料理 渡辺ユキ子
水音も記憶の中にありて夏 星野立子
水音も身に組み込んで薬喰 鳥居おさむ
水音も風の音にも九月かな 副島いみ子
水音も鮎さびけりな山里は 服部嵐雪
水音や匂ひ緊りて生姜畑 大熊輝一 土の香
水音や川添垣の青瓢 古白遺稿 藤野古白
水音や樽を並べて酢茎売り 穂坂日出子
水音や船にゐて秋風の唄をきく 太田鴻村 穂国
水音や谷ほの暗く紅葉散る 古白遺稿 藤野古白、正岡子規編
水音や野菊のあかるさをおもへ 夏井いつき
水音より明くる街道燕来る 加藤安希子
水音をあつめて木曾の青胡桃 長田等(狩)
水音をはさむ蛍の屏風哉 蛍 正岡子規
水音をひかりを切りて囀れり 茨木和生 三輪崎
水音を一品にして夏料理 榎本栄子
水音を両側にして桐の花 飯島晴子
水音を先だててくる雁渡し 今瀬剛一
水音を受けとめている寒椿 山内年日子
水音を寒からず聞く心あり 汀子
水音を抜けて小瑠璃の声聞こゆ 茨木和生
水音を止めて始まる夕祓 中村泰子
水音を深めし宇治の祭あと 石田厚子
水音を秋の声とし奥信濃 鈴木真砂女
水音を素手でつかみて春隣り 高梨まゆみ
水音を聞いてゐるだけ夕端居 沢田れい
水音を聞きのがさじと枯葎 瀧澤宏司
水音を聞く曲がり家の白障子 曽我部多美子
水音を聴く木の橋の凍りけり 仙田洋子 雲は王冠
水音を越えて仙翁朱ヶひとつ 文挟夫佐恵 遠い橋
水音を踏んで歩くや秋の暮 草間時彦 櫻山
水音を離れ螢火ピアニシモ 吉原文音
水音淙々芽吹きうながす山の雨 福田蓼汀 秋風挽歌
水音遠くなり近くなつて離れない 山頭火
水鳥の水音のようにわがまま 阿部完市 その後の・集
江名子川水音棗に響かせて 高澤良一 素抱
油蝉この世水音なかりせば 今村俊三
洞窟の中より寒の水音す 舛田としこ
流星や水音こもる真葛原 飯野てい子
涼新たよき水音の水に寄り 村越化石
淙々と水音珊々と深山蝉 福田蓼汀 山火
溝蕎麦にだんだん水音暗くなり 諸角せつ子
滝の水音柔かく木の間なる 高濱年尾 年尾句集
火祭の果てし水音逸るなり 菖蒲あや あ や
炎天を来て水音の如意輪寺 加古宗也
炬火(まつ)照らしゆく霧原の水音かな 臼田亜浪 旅人
猩々袴水音に蕊のばしけり 伊藤敬子
田に引ける水音すずめのてっぽうに 高澤良一 燕音
白樺の芽吹く空あり水音す 星多希子
白河に近き水音沙羅の花 鳥居おさむ
白菖蒲剪つて水音をまとひけり 雨宮きぬよ
盆礼や水音たかき飛鳥川 城孝子
盆過ぎの寧き水音道志村 河野南畦
盲ひたりせめては秋の水音を 高浜虚子
石のみの川に水音谷あけび 寝瓶史
石鼎忌修す水音山の音 原和子
秋風の水音糸のごと乱れ 内藤吐天 鳴海抄
空讃え水音讃え犬ふぐり 高澤良一 随笑
竜沼へ水音はげしく桷は実に 阿部藍子
筒鳥や水音や霧のにじり口 安西篤
筧水音の春めき宗淵忌 依田由基人
精霊路のどこも水音ばかりかな 関戸靖子
紙を漉く水音こそは秋の音 鈴木真砂女 夕螢
紙漉きの水音さむく暮れにけり 田中冬二 麦ほこり
紙漉女と語る水音絶間なし 橋本多佳子
紫苑咲く水音風音蓮華寺 小川笹舟
紫陽花や朝の水音二階より 桜井博道 海上
胎内の水音聴いてゐる立夏 中村苑子(1913-2001)
胎動の水音夏の大樹まで 高原与祢
脳下垂体涼し水音聞きをれば 正木ゆう子 静かな水
膨らます背戸の水音猫柳 西村久子
花林檎吾を水音の中に置く 藤田湘子
花誘ふまゝ水音の誘ふまま 田畑美穂女
芹摘みの水音に山動き出す 水品トミ子
菩提寺の常の水音霜日和 今井峰月
菱ちぎるひそけき音と水音と 真木洛東
落差埋めんと水音優し年の暮 香西照雄 素心
葛の花ふかき水音がする 栗林一石路
薄暑なり水を離るる水音も 茨木和生 往馬
藺を植うる水音のみの夕べかな 加藤しげる
虫野来てうしろになりし水音かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
蛇穴に入り水音の空にあり 宮岡計次
蛇穴を出て水音をききにけり 三橋鷹女
蛍火へいつも水音さしはさむ 横山白虹
蛍狩せし水音に旅名残り 稲畑汀子
蝉の声絶えて水音山深し 蝉 正岡子規
蝌蚪揺れて私語の水音聴きとれず 河野南畦 湖の森
蟲野来てうしろになりし水音かな 臼田亜浪
覚めてすぐ近き水音をとこへし 田中裕明 花間一壺
観音へ走る水音去年今年 斎藤典子
谷里は水音つねなる夜寒かな 尾崎迷堂 孤輪
谿ふかく水音の冬木の霜 シヤツと雑草 栗林一石路
豊年の水音抱いて山の闇 奥名春江
返り咲く花を水音逸れてゆく 裕
途切れざる水音にとぎれ河鹿鳴く 脇収子
金魚守昼寝も池の水音なか 原 好郎
鎧戸のそとの水音あけ易き 稲垣きくの 黄 瀬
雨音の中の水音花山椒 今井園子
雪くぐり来し水音の青きかな 山田桃晃
雪の来し地は水音を霊歌とし 松澤昭 神立
雪加鳴くや朝の谷水音をひそめ 桜木俊晃
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子 雨 月
雪残す微笑水音遠く垂れ 松澤昭 父ら
雪渓の水音の白根葵かな 伊藤いと子
霧月夜水音を和語のやすらぎに 吉野義子
青すだれ吊れば水音近づきぬ 片山由美子 天弓
青麦に水音はしる比叡の前 青々
風立ちて水音変る花馬酔木 玉木春夫
饒舌も夜の水音も涼しかり 稲垣きくの 黄 瀬
騒がしき水音ばかり数の子は 渡辺誠一郎
鮎の瀬の水音ばかり暮れてをり 津村典見
鮎落ちてより水音の昂まれり 荻原芳堂
鯉買つて水音運ぶ枯るる中 鈴木鷹夫 渚通り
鱒池の春めくものに水音も 茨木和生 野迫川
鱒飼へる四方の水音に春日満つ 内藤吐天
鳥啼きて水音くるゝあじろかな 与謝蕪村
鳥鳴て水音くるゝ網代かな 蕪村
鴨下りる水音を聞く火桶かな 山口青邨
●水声 
いづこなる水の声々初不動 玉置仙蒋
てふてふや木曾の水車の水のこゑ 吉原文音
とくとくと岩根くり抜き冬水の声新し 橋本夢道 良妻愚母
ななかまど谷を離れし水のこゑ 黛執
ななくさや落ちて暗渠の水のこゑ 高橋睦郎 稽古飲食
ゆめはじめ氷の下の水のこゑ 大木孝子
万両の向うを通る水のこゑ 高澤良一 宿好
下闇のさきへさきへと水のこゑ 中村祐子
今年竹湧水のこゑ放ちけり 鍵和田釉子
修二会の柱に寄れば水のこゑ 角川春樹 夢殿
冬ぬくし古井にのこる水の声 今井サト
冬の水声なきものを沈めたる 高瀬竟二
冬晴れ天水声も有縁のやさしさで 友岡子郷 遠方
冬鱒の好む水温水の声 百合山羽公 寒雁
友鮎に懈き午後の水のこゑ 角川春樹 夢殿
地下駅の奈落に秋の水のこゑ 前山松花
時雨れむず橋下の水の秋の声 臼田亞浪 定本亜浪句集
木の葉雨添水の声も寂にけり 菅原師竹句集
杉山の日昏れよく澄む水のこゑ 石井一舟
枯山の岫をめぐれる水のこゑ 石原八束 空の渚
水のこゑ木のこゑ石のこゑ冴ゆる 黒田杏子 花下草上
水のこゑ水にとどまる冬ざくら 馬場移公子
水の声地のこゑ睦ぶ枯れはてて 古賀まり子 降誕歌
水の面に入日残りて鴛の声 春香
水の音マリアの声となる月夜 朝倉和江
水声のうひうひしきも蛍の夜 三田きえ子
波郷忌の夕べ木の声水の声 白澤良子
涼しさは河童が淵の水のこゑ 鈴木鷹夫 千年
炎天の葛くぐりゆく水のこゑ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
燕子花活けてぞきかむ水の声 朝倉和江
疲れ鵜に闇を落ちゆく水のこゑ 岬木綿子
皹の指にあつまる水の声 萩原玉子
石の声水の声して山ざくら 久保田月鈴子
秋風に吹かれてゐたる水のこゑ 長谷川綾子
篁や秋深まりし水の声 臼田亜浪
荻の声きらめく水の行方かな 柴崎絢子
走り梅雨水声町をつらぬける 水原秋櫻子
迎火のうすうすと地のこゑ水のこゑ 吉田鴻司
逝く秋の急流に入る水のこゑ 鷲谷七菜子 花寂び
●水谺 
下萌のいづこともなく水谺 日向野貞子
凍解けて瀧にもどりし水こだま(常陸袋田瀧) 上村占魚 『方眼』
双魚忌の山に籠りし水こだま 梶田悦堂
水こだま走りて釣瓶落しかな 長谷川双魚
水谺深き夜明けの初音売 臼田亜浪
汐浴びの声ただ瑠璃の水こだま 中村草田男「来し方行方」
白鳥の立上りたる水谺 綾部仁喜 寒木
綿虫消え峡を満たせる水谺 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
草笛や白鳥陵の水こだま 石田勝彦
薄暗き厨房秋の水こだま 奈良鹿郎
●水の音 
あけぼのの春あけぼのの水の音(蘇生) 野澤節子 『駿河蘭』
あぢさゐの瑠璃流しこむ水の音 稲垣きくの 牡 丹
あぢさゐ寺土鈴ころころ水の音 野田勇泉
あつき日や病夢さまよふ水の音 幸田露伴 谷中集
ある寺の添水の音を今思ふ 富安風生
いつの世も朧の中に水の音 桂信子
うしろから水の音して訃が来たり 大西泰世
うたた寝の母の唇より水の音 中村孝史
うつしみの終のあぶらを捨てにゆく越の深山は水の音する 山田あき
おぼろ夜やわが身ゆすれば水の音 石嶌岳
おもかげや早稲の刈田に水の音 角川源義
おもしろや水の春とは引板の音 園女 俳諧撰集玉藻集
お簀の子に流觴の水の音をきく 長谷川かな女 雨 月
かけ橋や霧の底より水の音 霧 正岡子規
かけ橋や霧の底行く水の音 霧 正岡子規
かしらだか飛ぶ古藪に水の音 目黒十一
かじか鳴かず闇に落ちゆく水の音 石原フサ
かたかごの斜面を満たす山の音 黒田杏子 水の扉
かな女忌の柱の中の水の音 三浦文子
こ こ ろ お ち つ け ば 水 の 音 山頭火
この山の脈音か雪水の音 宇多喜代子 象
さびしさ水の音水の競うなり 荻原井泉水
すがもりのぽとり昔の水の音 伊藤千恵
すゞしさや惣身わするゝ水の音 松岡青蘿 (せいら)(1740-1791)
そこらより摘みて夏花や水の音 草間時彦 櫻山
たづねきて添水の音も情あり 波多野爽波 鋪道の花
たでの花阿蘇山系は水の音 穴井太 原郷樹林
てふてふのひろげてゆきし水の音 奥名春江
としのうちの春やたしかに水の音 千代尼
ひつそりと春の蚊を打つ水の音 森田正実
ひとすぢの水の音あり斑雪山 行方克巳
ほうたるになくてはならぬ水の音 稲岡長
まづ水の音もどりきし庭雪解 安原葉
まんさくの咲いてころころ水の音 赤松子
まんさくや谺返しに水の音 岸野千鶴子
みず摘みし夜はことさら水の音 竹川せつ子
むさしのや霞の中に水の音 霞 正岡子規
ゆく年の一夜明らむ水の音 川崎展宏
ゆく年や草の底ゆく水の音 久保田万太郎 流寓抄
ヒーターの中にくるしい水の音 神野紗希
一山の笑ひはじめの水の音 兒玉南草
一田づつ行きめぐりてや水の音 立花北枝
七種のひびきからある水の音 千代尼
万緑の奥のつめたき水の音 蕗村
三椏の花の放さぬ水の音 浅沼艸月
下冷や心にかゝる水の音 蘿状
人里に水の音する寒ンの入り 細見綾子 花寂び
今日の空水の音して糸瓜垂れ 原裕 青垣
休耕田春来る水の音ひびく 町田敏子
佐保姫の眠や谷の水の音 松根東洋城
元日やされば野川の水の音 来山
元旦に寝てみぞおちを水の音 中拓夫 愛鷹
八月の妻をとりまく水の音 黒坂紫陽子
冬ごもり漉し水の音夜に入りぬ 白雄
冬ごもり漉水の音夜に入ぬ 加舎白雄
冬ぬくし墓地にきこゆる水の音 藤岡筑邨
冬山行くリックの中の水の音 笹本達夫
冬野出て見知らぬ街の水の音 橋本洋子
冬銀河地下を流るる水の音 志村宗明
冬麗の山を墜ちきし水の音 神尾久美子 桐の木以後
冷かや人寐静まり水の音 漱石 (快晴、心地はし、昨夜眠穏(修善寺病中))
凍滝の玉簾なす水の音 川辺房子
凍滝を衣通りにけり水の音 行方克己 昆虫記
初秋やまだうつくしい水の音 千代尼
十二月八日米研ぐ水の音 白川宗道
去年今年一縷の水の音ありて 清崎敏郎
古池やこいつ投げこめ水の音 古白遺稿 藤野古白
古池や蛙とび込む水の音 松尾芭蕉
古池や蛙飛こむ水の音 芭蕉
古草に座す水の音風の音 中島木曽子
右に左に田へ行く水の音立てて行く(信州御牧村) 荻原井泉水
合歓咲いて失語の街の水の音 牧野桂一
名月や舳に捨てし水の音 比叡 野村泊月
向日葵の轟然と佇つ水の音 穴井太 原郷樹林
啄木鳥や森くらがりに水の音 道場信子
喪正月水の音のみ耳につき 宇咲冬男
噴水の小さくなりて水の音 小島健 木の実
土舟や蜆こぼるる水の音 白雄
埋もれて若葉の中や水の音 夏目漱石 明治三十年
夏燕峡の田毎の水の音 藤木倶子
夕霧忌川二つ合ふ水の音 外川玲子
夜鴨居る気配でありし水の音 新田充穂
大和より金魚をはこぶ水の音 岡井省二
妻恋へば七月の野に水の音 角川源義
室生寺やすすき分け行く水の音 角川春樹(1942-)
寺を出て萩に片よる水の音 桂信子 遠い橋
小男のナンバに寒し水の音 幸田露伴
山寺の涼しさ水の音所々に 安原葉
山梨や走りはじめし水の音 白井爽風
山葵田のこのもかのもの水の音 鈴木貞雄
山藤も借景寺苑に水の音 望月紫晃
山里や雪積む下の水の音 雪 正岡子規
川水の音に彳む闇夜哉 正岡子規
川水の音のすゝしき闇夜哉 涼し 正岡子規
川水の音をすゝみの闇夜哉 納涼 正岡子規
川霧や馬打入るゝ水の音 太祇
年のうちに春やたしかに水の音 千代女
年のうちの春やたしかに水の音 千代女
年の瀬や水の上ゆく風の音 覚範
年の豆掃き落したる水の音 岡本松浜 白菊
幹打てば水の音して芭蕉かな 長谷川櫂 蓬莱
座をかへて春水の音かはりけり 大橋櫻坡子 雨月
座禅草去年見し辺り水の音 伊藤京子
彳むや月見て居れば水の音 月見 正岡子規
悴むや岩に魑魅の水の音 古舘曹人 樹下石上
打水の音さらさらと庭の竹 打ち水 正岡子規
摘草の水の音する方へ行く 半澤律
放蕩や水の上ゆく風の音 中村苑子
新緑や石をこえゆく水の音 曽我玉枝
方丈に寒の明けたる水の音 星野椿
旅にかなしき女の寝息添水の音 加藤知世子 花寂び
日ぐらしや山田を落る水の音 諷竹
日盛りの石の中より水の音 佐藤星雲子
明月や白きにも似ず水の音 千代尼
明月や雲間につもる水の音 千代尼
星鴉風のあとまた水の音 鈴木六林男
春の月水の音して上りけり 正木ゆう子 静かな水
春の野や霞の中に水の音 春野 正岡子規
春兆す億年という水の音 澤野 弘
春宵の障子にひゞく水の音 上村占魚 鮎
春水の水琴窟の音となる 山下美典
春水の音あるところ人佇てり 高濱年尾 年尾句集
春蘭や奈落をいそぐ水の音 松本美簾
春風や麦の中行く水の音 木導
暖かや野崎詣の水の音 久松さだ子
暗きより暗きへ冬の水の音 石塚友二
暗室より水の音する母の情事 寺山修司(1935-83)
月光の野のどこまでも水の音 貞
月影や田をおちこちの水の音 黒柳召波 春泥句集
月高く樹にあり下は水の音 月 正岡子規
朧夜や水の音する壁の中 中田剛 珠樹以後
朧月淀のわたりの水の音 徳野
木立暗く何の實落つる水の音 木の実 正岡子規
村中に桃咲くころの水の音 松林 慧
松風の落葉か水の音涼し 松尾芭蕉
枯園のいつもどこかに水の音 相川紫芥子
枯河原暗渠に水の音のして 館岡沙緻
柳散る片側町や水の音 漱石
栃の花日ぐれは逸る水の音 菅井静子
梅林のまんなかにゐて水の音 関戸靖子
梅雨晴や近江いづこも水の音 山口英子
楽しさや青田に涼む水の音 芭蕉「真蹟懐紙写」
残菊や身の内流る水の音 美馬順子
水の音くらきにきこえ十三夜 久保田万太郎 草の丈
水の音さぶしかりけり後の月 日野草城
水の音して雪渓の髄滅ぶ 津田清子 二人称
水の音せきれいの声またちかし 木津柳芽 白鷺抄
水の音たかめて青根冬枯るる 石原八束 空の渚
水の音つねに新し端午来る 大岳水一路
水の音マリアの声となる月夜 朝倉和江
水の音山に放てり雛の家 酒井和子
水の音施餓鬼涼しき灯影哉 施餓鬼 正岡子規
水の音木苺の花咲きにけり 笹岡晴湖
水の音毬藻は浮動はじめけり 長谷川かな女 花 季
水の音絶へて夜江の梅白し 野梅句集 加納野梅
水の音聞きに筍崖に出し 茨木和生 木の國
水の音聞てたのもし崖九間 正岡子規
水の音聴きつけ大賀蓮ひらく 中村菊一郎
水の音近く芭蕉の紙子展ぶ 松井慶太郎
池に引きし水の音のみ良夜かな 及川貞 榧の實
沓の音水の音しぬ二月堂 大魯
河鹿鳴く闇にもつるる水の音 稲荷島人「続夏雲」
洞穴や涼風暗く水の音 涼風 正岡子規
涼しさや真桑投こむ水の音 涼し 正岡子規
涼しさや花火ちりこむ水の音 涼し 正岡子規
涼しさや行燈消えて水の音 涼し 正岡子規
涼しさや闇の夜中の水の音 涼し 正岡子規
淀舟やこたつの下の水の音 炭 太祇 太祇句選
清明や壺に満ちゆく水の音 片山由美子 天弓
湧き水の音遠近に散紅葉 下間ノリ
湧く水の音に片栗咲き初めぬ 茂木房子
湧水の音もかすかに座禅草 小野竹葉
溝蕎麦やたたらの村の水の音 宮本よしえ
牡丹三千めぐり疲れて水の音 古賀まり子 緑の野以後
猫抱けば水の音して去年今年 坪内稔典
玉川や分れてぬるむ水の音 水温む 正岡子規
生きいきと渓が月呼ぶ水の音 河野南畦 湖の森
生きるから水の中より泉の音 藤田湘子 てんてん
田から田へうれしさうなる水の音 青田 正岡子規
田水の音ねむし妻子の聲近し 石橋辰之助
田草取り向きを変へたる水の音 榎本栄子
町中を水の音して犬ふぐり 濱田のぶ子
畦塗つて田と田をつなぐ水の音 谷脇政江
畦豆や丹波はぐくむ水の音 ふけとしこ 鎌の刃
白ぎくや籬をめぐる水の音 二柳
白地着て逢魔が刻の水の音 斎藤梅子
盆月夜かの世も水の音あらむ 豊長みのる
目張剥ぐどこかに水の音がして 島田妙子
矜羯羅に水の音して水の秋 神尾久美子 桐の木
短日の嵯峨竹林の水の音 柴田白葉女 花寂び 以後
短日やどこにきこゆる水の音 久保田万太郎 草の丈
石投げて水の音聴く秋思かな 甘田正翠
神の旅どこまで地下に水の音 杉野一博
祭太鼓とろとろ水の音を出す 正木ゆう子 悠
秋彼岸湧いて玉なす水の音 川崎展宏
秋澄むや紙漉く里の水の音 稲垣一雄
秋簾木屋町筋の水の音 守永規子
稲の中水の音して日和かな 野田別天楼
稲の香や屈めば水の音聞こゆ 矢島房利
稲の香や束ねて落つる水の音 蓼太
空蝉や家をめぐりて水の音 岸田稚魚 筍流し
竜吐水の音のたかまり初明り 田中みち代
筒鳥の空にも水の音がせり 茨木和生 木の國
簗にゐてあめつち水の音となる 良太
糸遊や曲(くせ)を操る水の音 浜田酒堂
紫陽花や渡岸寺めぐる水の音 愛甲良江
絶壁も暮れかねてをり水の音 仙田洋子 雲は王冠
綿虫やひとり暮しの水の音 藤本鷹山
緑蔭やこころにまとふ水の音 木下夕爾
羽化しつつあるとんばうや水の音 松尾隆信
老尼病む庭の添水の音止めて 浅井素栄
老鴬やふんだんに使う水の音 鈴木六林男「谷間の旗」
臘八接心朝方の水の音 城 松喜
色鳥や山家につかふ水の音 鈴木康久
芭蕉忌や古池や蛙飛びこむ水の音 芭蕉忌 正岡子規
花菖蒲活けて真夜きく水の音 福永みち子
芹摘むや溝へ落ちゆく水の音 小林久夢
若竹や暗がり走る水の音 鳳嘴
若鮎や生家は水の音ばかり 高野ムツオ
苧環や木曽路は水の音の中 蟇目良雨
茶の花や刈田の塚に水の音 角川源義
草の葉のほたるゆれるや水の音 蛍 正岡子規
草も木も蛍くささや水の音 水田正秀
草擦ってゆく水無月の水の音 福永耕二
落穂拾ふ真昼は水の音かすか 石原八束
藤垂れて傘下一切水の音 古舘曹人 能登の蛙
虎尾草翳れば迅き水の音 井田満津子(円)
虎杖の花やわびしき水の音 佳兆「よさむ」
蛍待つ闇深まりて水の音 小笠原将圭
行く秋や太山を出づる水の音 古白遺稿 藤野古白
行春の艪音に遅れ水の音 加古宗也
裏富士の水の音聞き酔芙蓉 有馬朗人 耳順
見えてゐて添水の音の聞えけり 松尾いはほ
見えてゐる水の音を聴く実梅かな 田中裕明 花間一壺
谷深きより水の音秋澄めり 成松秋吉
赤松に添水の音や朗たり朗 辻桃子
越後いま刈田に水の音ばかり 角川春樹
足元に水の音きくおぼろかな 高木昌風
蹲踞の一水の音炉を開く 大森保延
身のうちを水の音して夜の秋 林 享子
過・現・未の音 洞窟の水の音 伊丹三樹彦 覊旅句集三部作 島嶼派
達磨句あり蛙飛びこむ水の音 蛙 正岡子規
闇涼し草の根を行く水の音 露月
障子外に田水の音や春の月 冬葉第一句集 吉田冬葉
雁仰ぐ身体の中に水の音(その息いでゆけば、かれ土にかへる。その日かれがもろもろの企ては亡びん。(詩篇一四六)) 田川飛旅子 『薄荷』
雪女郎雪間の水の音となり 長谷川櫂 古志
雪間より一筋奔る水の音 小松世史子
露の家や目覚めにいつも水の音 金箱戈止夫
青柳やどちらの世話で水の音 千代尼
青葉木菟塔より天に水の音 角川春樹
青鬼灯どこまでのぼる水の音 今井誠人
音させて添水すぎても水の音 乙二
風の盆唄にからまる水の音 藤島咲子
風の盆昼どこまでも水の音 三谷みちる
風吹て秋行く水の音寒し 秋の水 正岡子規
飲食の水の音して青糸瓜 細川加賀 生身魂
鯉喰って霜夜からから水の音 鶴岡梨江子
鰯雲日かげは水の音迅く 飯田龍太(1920-)
鴨川や涼みも更けて水の音 納涼 正岡子規
鵜篝消す一気火の音水の音 中村明子
鹿苑に春月われに水の音 下村槐太 天涯
麦秋の見えざる水の音くもる 鷲谷七菜子 雨 月
麻刈って谿さっぱりと水の音 及川貞 夕焼
龍吐水の音だけ 書野山 正月 伊丹公子
●水響く 
ばつたんこ水の重さを響かせる 山下美典
わが内耳水壺のやうな響きあり月明踏みて何者か来る 河野裕子
二三尺秋の響きや落とし水 月渓
去年今年水の響きをわがものに 新谷ひろし
敗荷の水に響ける風の音 田邊英夫
春立つや水響きゐる甲斐の国 石嶌岳
水澄みてビオラの低き響きかな 高崎公久
水芭蕉林中に水響きけり 高澤良一 燕音
水音の髪膚に響く川床涼み 西村和子 かりそめならず
水響き小雀囀り紛れなし 石原栄子
江名子川水音棗に響かせて 高澤良一 素抱
添水かけて木々からび行く響かな 大須賀乙字
片頬に水の響けりわさび沢 高澤良一 燕音
碧さもどる水に響きてわが国歌 臼田亞浪 定本亜浪句集
磐走る一水響き夕ざくら 川村紫陽
秋水の響くあたりの夕明り 成瀬正とし 星月夜
遣り水の玉と響きて澄みにけり 深見けん二 日月
響き落つ水濁りなし雪椿 岡田日郎
風花や読経の響く手水鉢 中村照子
●霧笛 
こくりこの辛うじて見え霧笛かな 中戸川朝人 尋声
ふたり子にて二つの頭霧笛来る 友岡子郷 日の径
ぼうぼうと霧笛はこもる恋やまい 穴井太 土語
ヴエネチアの細道小道霧笛鳴る 奥山俊子
一つ一つ過去となりゆく霧笛かな 鈴木鷹夫 風の祭
一吹のあとさきもなき霧笛かな 加倉井秋を 『隠愛』
人に霧笛きこえて冬の夜の灰皿 古沢太穂 古沢太穂句集
卯月曇ペンキを厚く霧笛室 堀野信子
地の底へ引き込むやうに夜の霧笛 伊藤彩雪
天女いま梅雨の霧笛を身にまとふ 堀口星眠 営巣期
寒燈をまた暗めては霧笛鳴る 古賀まり子 緑の野以後
岩燕沖へ反り身の霧笛塔 毛塚静枝
岬去り難し霧笛の鳴り次ぐに 茂里正治
新涼や港見下ろす霧笛橋 星 輝子
水底に棲む街ありて霧笛きく 仙田洋子 橋のあなたに
汽笛吹けば霧笛答ふる別れかな 大久保橙青
流木は鳥のかたちや霧笛鳴る 仙田洋子 雲は王冠
海彦と山彦とゐる霧笛かな 鈴木洋々子
海彦のゐて答へゐる霧笛かな 橋本多佳子
海彦の答へず霧笛かけめぐる 橋本多佳子
灯台の霧笛いぶかり北狐 稲松錦江
灯台の霧笛頭上に投錨す 広瀬河太郎
灯台は低く霧笛は峙てり 高浜虚子
燈台に低く霧笛は峙てり 高浜虚子
牡蠣飯や霧笛を熄めぬラジオ劇 秋元不死男
碇泊船遠き霧笛に重ね吹く 米沢吾亦紅 童顔
秋思とは霧笛か水尾か梳る 長野澄恵
箸すべる海髪や霧笛の遠吠ゆる 三村太虚洞
聖夜霧笛去りゆくはユダかヨハネか 平井照敏 天上大風
若き日の蘆花住みし町霧笛鳴る 冨田みのる
遥かなる除夜の霧笛に眠りをり 仙田洋子 雲は王冠
還らざるものを霧笛の呼ぶ如し 伊藤柏翠
霧の航おのが霧笛をふりかぶる 阪上史琅
霧笛こみあげこみあげ句座には働く顔 赤城さかえ
霧笛と日のあかるさが霧に満つ 篠原梵 雨
霧笛の夜膀胱痛し狂ひたし 小林康治 玄霜
霧笛の尾遠くはるけきものを呼び 高崎武義
霧笛の応ふるがありわが船停る 篠原梵 雨
霧笛の船あらはれずへだたりぬ 篠原梵 雨
霧笛の音モーンモーンと北の果 加藤知世子 花 季
霧笛吼ゆうからを呑みし海とこそ 依田明倫
霧笛寒くうから寝落つや哭くごとし 小林康治 玄霜
霧笛泣くほどに海霧濃き啄木碑 石原八束 空の渚
霧笛聞く大間岬に桂月碑 勝田蒼人
霧笛鳴りやまず仮泊の秋めきて 石原舟月
霧笛鳴り咫尺の浪穂あるばかり 福田蓼汀 山火
霧笛鳴るたびに面上げ夜の稿 冨田みのる
霧笛鳴る上海蟹をせせる時 岩崎照子
霧笛鳴る修学旅行第一夜 奥田智久
霧笛鳴る岬や寄り合ふ親仔馬 渡会 昌広
霧笛鳴る岬や寄り立つ親仔馬 渡会昌広
霧笛鳴る花黒百合を剪るみぎり 石原八束 空の渚
頭上にて霧笛ふとき柱のごとし 篠原梵 雨
●鳴動 
五体投地春暁の堂鳴動す 岩崎眉乃
寒夜更く鳴動つづく登窯 谷本淳子
火山性鳴動続く草泊 茨木和生 往馬
火山鳴動して蛤となる雀 梅木蛇火
焼岳の鳴動秘めて雪待つか 澤田 緑生
竹秋の竹林鳴動して止まず 高澤良一 鳩信
阿蘇鳴動啓蟄の土こぼれけり 寺島勝子
鳴動す近き浅間や葡萄狩 阿部みどり女 笹鳴
鳴動の山を力に枇杷熟るる 西屋敷峰水(湾)
鳴動の浅間をとざす梅雨の雲 相馬遷子 山国
鳴動はやまず火口の霧ふかし 井上波二
鳴動もなく秋麗の恐山 原 好郎
●物音 
しんしんと物音断ちし雪安居 桑田青虎
コホロギヤ物音絶エシ臺所 蟋蟀 正岡子規
一人の淋しい物音立てている 住宅顕信 未完成
万緑の底に物音なく牧場 畠中じゆん
亀鳴くや物音絶えし坊泊り 藤田つとむ
冬かすかなる物音を立てにけり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
初午や物音ひびく部屋の壁 桂信子 遠い橋
十二月八日の昼の物音す 高澤良一 随笑
夕暮の物音親し秋刀魚焼く 西村和子 夏帽子
夜の長く物音遠くなりにけり 高浜年尾
家々の立つる物音ものの芽に 高澤良一 ぱらりとせ
家ぬちの物音ばかり夜の秋 星野立子
家中に物音のなき雛納め 西村和子 夏帽子
既に妻の朝の物音空に凧 中村草田男
棺の中物音もなし菊日和 原裕 『出雲』
物音におどろきやすく虫の夜 阿部みどり女
物音に敏く図太く寒鴉 池田啓三
物音のかたりことりと秋の風 山田みづえ
物音のしてゐる家や目借どき 岸田稚魚
物音のしない家です蕨煮る 沓名普子
物音のなき安らぎや梅雨世界 古賀まり子 緑の野
物音のよく聞え来る秋の晴 山下美典
物音のよく通る空烏瓜 高澤良一 宿好
物音の死して往還油照り 青谷小枝(春月)
物音の絶えて雨来る花真菰 白石みや
物音の階上へつつぬけ鴨の宿 大石悦子 聞香
物音の隣まぢかき夜寒哉 中川宋淵 詩龕
物音は一個にひとつ秋はじめ 藤田湘子(1926-)
物音は人にありけりおぼろ月 炭 太祇 太祇句選後篇
物音は人にはあらず柿落葉 岩田由美
物音も雨月の裏戸出でずして 田中裕明 花間一壺
物音やさゆる柏の掌 才麿
物音をはばかり起きれば梅雨雀 高澤良一 素抱
物音を立てぬ向ひ家みそさざい 高澤良一 ぱらりとせ
物音低く住みて片陰に光る蛇 平井さち子 完流
百姓の咳まじる遠き物音に 中山純子 茜
秋の稿いずこにいても物音す 鈴木六林男 後座
紛るべき物音絶えて鉢叩 樗良
耳傾むく北風より遠き物音に 林火
耳袋とりて物音近きかも 高浜虚子
花通草物音一つたてぬ村 高澤良一 素抱
茄子苗につひに物音なき村か 大峯あきら
落葉のあと夜の物音のひそみをり 鷲谷七菜子 黄 炎
蜉蝣と物音絶えし夜を共に 吉年虹二
長き夜の物音きくや白拍子 夜長 正岡子規
除夜の家ひとりの物音およがせて 渋谷道
雛まつる壁裏昼の物音す 桂信子 黄 瀬
雨を吸ひ物音を吸ひ山新樹 高木晴子 花 季
雪中の物音にして紙の音 本庄登志彦
露けさに物音ありぬ寺修理 松本たかし
香の物音たてず噛む安居かな 森樵仙子
魂棚にとどく物音何々ぞ 大峯あきら
●物の音 
古井戸に物の音聞く夕すゞみ 高浜虚子
日向ぼこして聞き分くる物の音 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
昼寝覚め港に近き物の音 今井つる女
晝中や野分はじまる物の音 野分 正岡子規
源氏屏風に追儺の物の音しける 長谷川かな女 雨 月
物の音の冴える夜だ子も目をあいて 北原白秋
物の音ひとりたふるる案山子哉 野沢凡兆
物の音ひとり倒るる案山子かな 凡兆
物の音散りあつまりて十月へ 黒川路子
膝枕哉物の音の喜春楽 言水
●矢音 
弥生空上棟式の掛矢音 岡野寛人
●家鳴り 
鷹わたる蔵王颪に家鳴りして 阿波野青畝
家鳴して酒庫の夜の大雪崩 西山泊雲 泊雲句集
●山彦 
やまびこのゐて立ちさりし猿茸 飯田蛇笏 霊芝
やまびこの消えてさびしき鳴子かな 阿波野青畝
やまびこをつれてゆく尾根いわし雲 飯田蛇笏 春蘭
やまびこを交してをりぬ植樹祭 小田切輝雄
初機のやまびこしるき奥嶺かな 飯田蛇笏
夏の炉にやまびこきこえ師弟古る 石原舟月
木菟の森やまびこ昼をねむりけり 西島麦南 人音
盆花を摘む子等の声やまびこも 川崎展宏
破魔弓ややまびこつくる子のたむろ 飯田蛇笏
門前のやまびこかへす碪かな 飯田蛇笏 霊芝
いくたびも山彦かへす夕焼かな 吉武月二郎句集
おーいおーいと永久にあなたを呼ぶ山彦 池田澄子
おーいおーい命惜しめといふ山彦 高柳重信
からうじて山彦もどる吾亦紅 下田稔
ざんばら髪の山彦あるく油照り 長谷川双魚
しぐるるや山彦は樹を親と思ひ 長谷川久々子
しぐれきて山彦絶ちし下りかな 原田種茅 径
ためしたき山彦青嶺ま近なり 朝倉和江
ひよどりの山彦の澄む初詣 田村木国
ぼんでんの法螺山彦のごと吹きあふ 上村占魚
亀鳴くや山彦淡く消えかかる 赤尾兜子
二人行けど秋の山彦淋しけれ 佐藤紅緑 紅緑句集
全山の芽や山彦がもの言へり 米沢吾亦紅 童顔
凧高うなりて山彦もう答へず 内藤吐天 鳴海抄
前山に山彦棲む日松飾る 渡辺柳風
吠え牛に山彦高し霧の中 西山泊雲 泊雲句集
夕凍みの山彦山に残りけり 秋山ユキ子
夕焼る山彦山に帰るとき 三田きえ子
天彦呼びに山彦駈くる斧始 大野せいあ
子遍路に山彦のゐる札所かな 山崎一角
寒卵割り山彦の国を出る 市原光子
山彦が聞えてあやめ祭来ぬ 萩原麦草 麦嵐
山彦とならぬわがこゑ落胡桃 白岩 三郎
山彦とゐるわらんべや秋の山 百合山羽公
山彦と啼く郭公夢を切る斧 山口素堂
山彦と晴れて学校始めかな 松下鶴生
山彦にいつか鳴き勝て羽抜鶏 秋山朔太郎
山彦にさからひやまず霧の鵙 西島麦南 人音
山彦にも毀れるひかり二月の樹 速水直子
山彦に妻の遊べる山毛欅若葉 菅原多つを
山彦に山葵の花や散りかゝり 萩原麦草 麦嵐
山彦に散果たしたるさくらかな 米密 三 月 月別句集「韻塞」
山彦のあと一斉に杉花粉 岡本まち子
山彦のうしろ姿を漉き上げる 小澤杏林
山彦のしばしとだへし紅葉かな 杉本寛
山彦のしばらくありて草刈男 西山泊雲 泊雲
山彦のはきはきとして青吉野 大石悦子 聞香
山彦のはじめつばらにねこじやらし 藤田湘子
山彦のはなればなれよ妓王の忌 神尾久美子
山彦のゆつくりとほる弥生かな 中村契子
山彦のよくかへる日よえびかづら 遠藤露節
山彦のわれを呼ぶなり夕紅葉 臼田亞浪 定本亜浪句集
山彦のゐてさびしさやハンモツク 水原秋桜子(1892-1981)
山彦の一歩も退かず閑古鳥 檜紀代
山彦の南はいづち春のくれ 蕪村遺稿 春
山彦の口まね寒きからすかな 千代尼
山彦の尻尾だすまで黄落す 西野理郎
山彦の山みな遠し花うつぎ いのうえかつこ
山彦の己の声に呼ばれ夏 白岩三郎
山彦の待ちかまへゐし山開き 木内怜子「繭」
山彦の打つ小鼓や山葵咲く 田方建子「土鈴」
山彦の打てもどしに砧かな 紫貞女
山彦の棲む山めざし旱道 徳永山冬子
山彦の棲む谷々の薄紅葉 三村純也
山彦の気配を棟に冬仕度 岡本まち子
山彦の触れず落ちたる一位の実 浅井一志
山彦の語尾のすとんと山眠る 山本秋穂
山彦の通り抜けたる涼気かな 神尾久美子
山彦の駆けて椎の実こぼしけり 井本芦水
山彦はみな男ごゑ冬の山 大谷てるみ
山彦は他所(よそ)の事なりわかな摘 千代尼
山彦は呼べぬ齢や栗の花 赤塚五行
山彦は宵に一戻るやのちの月 千代尼
山彦は山に捨て置く夜の桃 鈴木湖愁
山彦は山へかへりて枯一途 鹿野佳子
山彦は杜甫か李白か登高す 白澤良子
山彦は湖に出てゆく朴の花 長田等
山彦は男なりけり青芒 山田みづえ 木語
山彦は青年のこゑ山笑ふ 二藤 覚
山彦も山を出ることなき二日 鷹羽狩行
山彦も島出づるなし青芒 朝倉和江
山彦も魂ぎる多摩や血止め草 高柳重信
山彦やむらさきふかき春の嶺 池田秀水
山彦や湯殿を拝む人の声 桃隣「陸奥鵆」
山彦や知らなくてよいけもの道 池田澄子
山彦や花の梢にひびき行く 水田正秀
山彦をかへし雪渓夜もしるく 福田蓼汀 山火
山彦をすぐに戻せぬ樹氷林 北見弟花
山彦をつけてありくや鉢たたき 千代女
山彦をぬすむすすきのすだま見つ 栗生純夫 科野路
山彦を伴ふ窓に夏経かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
山彦を呼び出してゐる山開き 小野伶(南風)
山彦を呼び戻せしが雪となる 相原左義長
山彦を山に帰して修二の忌 関野八千代
山彦を山へかへして卒業す 遠藤若狭男
山彦を引き寄せてゐる春田打 小泉八重子
山彦を探す夕暮れ頬濡らし 久野千絵
山彦を連れて半鐘防火の夜 野澤節子 遠い橋
山眠るや山彦凍てし巌一つ 松根東洋城
岬現れ海彦山彦すでに春 河野南畦 湖の森
引鶴のこゑ海彦へ山彦へ 福島笠寺
拍手が山彦となる四方拝 石津不及
旅人の中を山彦ときに野火 三枝桂子
早春の山彦かへる垣根かな 萩原麦草 麦嵐
明けまたぬ小野の山彦土竜うち 吉武月二郎句集
春愁やひとの山彦われに来る 米沢吾亦紅 童顔
月明や山彦湖をかへし来る 秋櫻子
木耳を踏み山彦の老いゆくよ 長谷川双魚 風形
朴の青枝下されて飛騨の山彦 金子皆子
梅雨雲がすぐ山彦を追ひかへす 米沢吾亦紅 童顔
極月の山彦とゐる子供かな 細川加賀 『傷痕』
海彦と山彦あそぶ初茜 樫村安津女
海彦と山彦そろふ入学期 原裕 新治
海彦と山彦とゐる霧笛かな 鈴木洋々子
海彦も山彦も来て綱を引く 荒井籠聲
海彦も山彦も来よ太刀飾る 野木桃花
澱みなく山彦とんで神無月 斎藤佳代子
火祭の山彦ゆゆし秩父人 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
牛飼の山彦わかし冬隣 岩田昌寿 地の塩
町の子の山彦遊び秋の山 安藤登美子
白根葵咲けりといふよ山彦も 水原秋櫻子(馬酔木)
窓の外にゐる山彦や夜学校 芝不器男
老鴬に山彦もなき浮葉かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
腸の水の山彦昼寝覚 高澤良一 随笑
花菜いちめん孤児に山彦野彦する 磯貝碧蹄館 握手
蔓梅擬山彦つれて山の子ら 古賀まり子 緑の野以後
近づいてくる山彦の暑さかな 松澤昭 山處
近頃は山彦となる不如帰 橋本鉄也
返盃や会うこともなき山彦に 仁平勝 東京物語
雪嶺のいづかたよりの山彦ぞ 猪俣千代子 秘 色
鞦韆や春の山彦ほしいまゝ 秋櫻子
鶏のこゑ山彦すなり日南ぼこ 吉武月二郎句集
●弓音 
くたら野の果てや梓の弓の音 蝶夢
ひきしぼる弓の音のみ的始 志水優子
桜舞う大庇より弓の音 木幡しずほ
梅が香や通り過ぎれば弓の音 毛がん 正 月 月別句集「韻塞」
雪解風弓の素引きの音ひびく 友岡子郷 翌
風薫る森の木蔭や弓の音 文波
●余韻 
いま切れし電話の余韻蒲団干す 北上正枝
かなかなかな金剛力の余韻かな 渡辺恭子
こめかみに音叉の余韻花の冷え 熊坂てつを
ねつとりと鐘の余韻や夕霞 中村苑子
ひぐらしのこゑの余韻に山の霊 前山松花
パンジーの吹かるる余韻なかりけり 行方克巳
ブランコ余韻父子にハゼ釣れてる みなとたいじ
マフラーに旅の余韻を巻き帰る 捧 喜香
佞武多笛かなしき音色余韻とし 増田手古奈
凡鐘の遠き余韻の冬の朝 枌御許
友逝きて余韻の長し春の雷 田中英子
名曲も美酒も余韻を朝曇 上井正司
名鐘の余韻のかなた比良暮雪 朝日子
墓洗ふ恋の余韻のなくはなし 藤原照子
如月や鐘の余韻のうらおもて 石關洋子
寒柝の一つ一つに余韻なし 京極杞陽 くくたち上巻
寒椿一輪剪りし余韻かな 青木重行
尾根雪崩れ鳴りどよみひんひんと余韻消ゆ 京極杞陽 くくたち上巻
押へ込む太鼓の余韻霜夜かな ふけとしこ 鎌の刃
捨鐘の余韻秋風おこりけり 福田蓼汀 秋風挽歌
日盛りや時打つ余韻時計の中 中村草田男
春昼や水琴窟の余韻聞く 加藤元子
東にも釣瓶落しの余韻かな 松尾清隆
案内僧の黙の余韻や蚊火の寝間 平井さち子 完流
梵鐘の余韻余寒の中に散る 吉井秀風
梵鐘の余韻透き行く冬木立 小田久恵
爪打ちの鐘の余韻は紫雲英野に 風生 (観世音寺)
発車ベルにもある余韻花ぐもり 片山由美子 雨の歌
百八の鐘鳴る余韻消さぬため 佐藤南山寺
磬子の余韻仏が稲田へ出で立つよ 磯貝碧蹄館 握手
菊根分旅の余韻の中にゐて 山田弘子 螢川
落石の余韻を長く山眠る 片山由美子 雨の歌
虚子の世の余韻今生き鐘供養 林 克己
襟巻に包むコンサートの余韻 畑湘甫
讃美歌の余韻咳なほ堪へてをり 津田清子 礼 拝
遠雷の余韻愉しむ烏龍茶 高澤良一 寒暑
鐘ついて去る鐘の余韻の中 尾崎放哉
鐘供養余韻わたりて渓つつむ 近藤 實
鐘纏ふ一打の余韻夕桜 木野恭子
長老の一打の余韻去年今年 河野汎明
除夜の鐘余韻は高き星となり 小島とよ子
雷の余韻の下の京都かな 五十嵐播水 播水句集
馬車馬の蹄の余韻 復活祭 中 ヤスヱ
鵜祭の余韻に空の白み来し 中村珠栄
●呼子 
しぐるるや寺の柱に呼子笛 松山足羽
ゆふがほに阿児と呼子は女なり 加舎白雄
冬晴や玉一つ入る呼子笛 小川軽舟
呼子とは風呼ぶ港厄日過ぐ 片山由美子 風待月
呼子町唐様手摺にうるめ干す 大村和子
幸木ほの紫のかけ蕪 呼子無花果
湊名の呼子とよんで磯鵯 能村登四郎 天上華
烏賊干して呼子の沖は霾ぐもり 小林碧郎
烏賊干して寒のもどりし呼子港 龍頭美紀子
空谷に猿の呼子の鋭かりけり 西本一都 景色
義士祭の遺品に並ぶ呼子笛 和田幸八
臨海生徒の寝耳に呼子吹かれけり 沢本知水
逝く春や呼子の宿のおどり喰ひ 川村さく
骨蒸や呼子の舟に年の塵 古舘曹人 樹下石上
うしろから前から我を呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
けものとも鳥ともいふや呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
しら糸や稲負勢鳥呼子鳥 上島鬼貫
ははの名は墓碑に新らし呼子鳥 藤原貞子
みやま路や何とらまへて呼子鳥 大阪-万海 元禄百人一句
み吉野や花啣へたる呼子鳥 角川春樹 夢殿
むつかしや猿にしておけ呼子鳥 榎本其角
三井寺の鐘さびついて呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
世のゆがみ見えて花眼よ呼子鳥 友永佳津朗
佐保姫の誰を召すとや呼子鳥 巌谷小波
何もかも知らぬ顔せよ呼子鳥 上島鬼貫
何やらの鳴く声すなり呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
呼子鳥なくか碓氷の盤根石 中村史邦
呼子鳥ひたすら鳴けり霧の崖 田中里佳
呼子鳥啼くか碓水の盤根石 史邦 芭蕉庵小文庫
呼子鳥妹ふりかへりつつ遠し 黒岩有径
呼子鳥専心花鳥諷詠経 高澤良一 ぱらりとせ
呼子鳥鳴き交ふゆふべははそ山 林ヨシ子
呼子鳥鳴く夕影のでんでら野 吉田道子
奥山や鈴がら振つて呼子鳥 古白遺稿 藤野古白
宵宵やたゞ鳴きくれて呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
山荒れの石原ゆけば呼子鳥 中勘助
山陰や誰呼子鳥引板の音 蕪村 秋之部 ■ 武者繪賛
巫峽に猿あり化して鳥となる呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
役なしの我を何とて呼子鳥 一茶
復元の森のしじまに呼子鳥 高岡すみ子
思はざれば外海は無し呼子鳥 三橋敏雄 長濤
木母寺や柳は枯れて呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
松の木と名は知りながら呼子鳥 上島鬼貫
毛が三すぢたらいでそれが呼子鳥 井原西鶴
猿は見えでうしろに人を呼子鳥 子規句集 虚子・碧梧桐選
猿引が声をいふ也呼子鳥 存義
猿引の村へ来たるよ呼子鳥 召波
病み臥すやひとこゑきりの呼子鳥 池田まつ子
細道のひたと消けり呼子鳥 呼子鳥 正岡子規
繰り返す言葉の呪術呼子鳥 沼尻巳津子
草の根をたたいて捨つる呼子鳥 柳澤和子
西行いかに吉野の奥の呼子鳥 椎本才麿
護摩の炎の天へ昇れり呼子鳥 水戸啓子
隠し女房山路ぞ隔つ呼子鳥 調鶴 選集「板東太郎」
鳥追や背中で母を呼子鳥 元夢
●雷鳴 
*ほうぼうの鳴きしや冬の雷鳴りしや 矢部白茅
かきくもり雷鳴雹をたたきつけぬ 長谷川素逝 砲車
丘の向かうで雷鳴つてゐるナバホの子 齊藤美規
乾きたる雷鳴夕立去りしあと 大橋敦子
冬の雷鳴るも樗牛の忌日かな 工藤金一
出し抜に初雷鳴りぬ三ッばかり 飯島風香
初の雷鳴るや一と雨一としきり 渋谷まさゑ
初旅の熊野雷鳴もて明くる 山口超心鬼
地軸折るほどの雷鳴ありにけり 滝青佳
地階春夜の雷鳴をきゝとめぬ 西島麦南 人音
天主堂の炎をさまりし外壁を浮きあがらせて夜の雷鳴る 竹山広
念を押すごとくに春の雷鳴れり 高澤良一 燕音
方言と雷鳴をもち海渡る 対馬康子 愛国
春の雷鳴り居し雲の消えにけり 高橋淡路女 梶の葉
時よ光れシベリウス像雷鳴す 石原八束 白夜の旅人
月山の霧の中より雷鳴す 矢島渚男 延年
楸邨を思へば雷鳴はるかに来 久保美智子
樫が身を揉む雷鳴の魚籃坂 渡辺 昭
深夜胸の上の雷鳴許し給え 鈴木六林男 王国
漁夫の婚一と日雷鳴る裏日本 齋藤愼爾
生れてすぐ雷鳴にあう女児にして 鈴木六林男 谷間の旗
立膝をすればはるかに春の雷 鳴戸奈菜
糊皿に一雷鳴や冬深し 外川飼虎
花大根雷鳴の雨に打たれけり 中村泰山
雪暗の裏山に雷鳴りこもる 佐藤鬼房 潮海
雷鳴が渡りさびしき肋せり 林田紀音夫
雷鳴つて三日の松を晴らしたり 長谷川かな女 牡 丹
雷鳴つて大峰山の戸開式 山田春生
雷鳴つて御蚕の眠りは始まれり 普羅
雷鳴つて碧きモーゼの五月の瞳 平井照敏 天上大風
雷鳴つて蚕の眠りは始まれり 前田普羅 飛騨紬
雷鳴にふと俤の重なりし 星野椿
雷鳴に尻照らされ隼人瓜 豊口陽子
雷鳴に怯えそれより茸は出ず 西山泊雲 泊雲
雷鳴に湯引きし魚の背きけり 今関幸代
雷鳴に火焔いよいよ青不動 狹川青史
雷鳴に耐ゆ城壁に手をあてて 古舘曹人 砂の音
雷鳴のあとを春雨らしく降る 鈴木鷹夫 風の祭
雷鳴のたび青佐渡を濃くしたり 本宮哲郎
雷鳴のプールに誰か抜手きる 寺田京子
雷鳴の一夜のあとの紅蜀葵 井上雪
雷鳴の中の再会なりしかな 山田弘子 こぶし坂
雷鳴の吹き割りし木も花ざかり 宇佐美魚目 天地存問
雷鳴の擬音江戸村忍者劇 倉橋羊村
雷鳴の真只中で愛しあふ 仙田洋子(1962-)
雷鳴の間遠になればまたにくむ 仙田洋子 橋のあなたに
雷鳴やはらりと活けし縞芒 野澤節子 黄 炎
雷鳴やサティゐるうちに眠るべし 仙田洋子 橋のあなたに
雷鳴やダンテの家は路地の奥 有馬朗人 知命
雷鳴や同ずる一鴉あらずして 相生垣瓜人 明治草抄
雷鳴や少年の背の垂直に 原コウ子
雷鳴や山川草木宙より来 和田悟朗 法隆寺伝承
雷鳴や授業いつきに目覚めたる 宮口 征子
雷鳴や病んで白蛾のかげを忌む 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雷鳴や脳病院に容赦なく 森田智子
雷鳴や駿河を攻むる甲斐の雲 いのうえかつこ
雷鳴りてただの夕雲栗の花 皆吉爽雨
雷鳴りて大岳の神を送りけり 藤原たかを
雷鳴り来しづかに今年惜しむなり 及川貞 夕焼
雷鳴を二度とは聞かず祈り終ふ 長田等
雷鳴を柩の上にしてすすむ 丘本風彦
黎明の雷鳴りしづむ五百重山 飯田蛇笏 霊芝
●列車音 
短夜の野に迫り来し列車音 依田明倫
国中の初霞より列車音 茂里正治
夕東風や川尻わたる列車音 進村五月
●櫓声 
櫓の声波ヲ打つて腸氷ル夜や涙 芭蕉
櫓声身にひしと涼しむ闇の濃し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
秋声と聞くや櫓べその鳴くことも 吉川禮子
●和音 
ウクレレに和音三つの端居かな 田中幸雪
大道は秋/生娘はみな和音 仁平勝 東京物語
座禅草せせらぎに聞く和音かな 下農由希子
椋鳥さわぐ天界不況和音なし 影島智子
男声和音聴く涼しさに暁の経 平井さち子 完流
花かへで水琴窟の和音かな 山本秋穂
鬼灯の雨垂れ和音笑おうか 増田萌子

 
以上

# by 575fudemakase | 2022-06-25 22:35 | ブログ

音1 類語関連語(例句)

音1 類語関連語(例句)

●足音●雨音●唸り●沖鳴り●音聞き●音なし●音韻●音響●音叉●音声●音程●快音●楽音●風音●楫音●金声●蚊鳴り●鐘韻●川音●川の音●かんかん●甲走る●擬音●聞え来●きこきこ●聞ゆ●軋み●軋む●衣擦れ●跫音●共鳴●口笛●靴音●鯨音●弦音●好音●高音●号音●轟音●交響●轟然●木霊●谺●こだま●鼓動●声音●ざくりざくり●雑音●騒めき●残響●山籟●潮騒●閑けさ●地鳴り●地響き●弱音●秋声●銃声●消音●鐘音●鐘声●松濤●松籟●心音●しんしん●人籟●吹鳴●鈴音●鈴の音●清音●筒音●ノイズ


●足音 
*かんじきの足音朝を生みにけり 依田明倫
おたまじやくし子らの足音知つてをり 長沼紫紅
すいっちょと云ひて足音しのばせゆく 高澤良一 鳩信
すぐ母と解る足音竹落葉 菅野清童
たよりもな露の足音いくにんも 田中裕明 櫻姫譚
ひたひたと吾が足音や著莪の花 鈴木鷹夫 渚通り
ほたほたと亡母の足音花茶垣 杉田栄子
めしたべにおりるわが足音 尾崎放哉
やはらかき足音ばかり蛍狩 小林益枝(ひこばえ)
テレビの中のあまたの足音去年今年 平井さち子 完流
ベル押せば冬空に足音おこり 波多野爽波 鋪道の花
丹の橋に足音変る淑気かな 橋本逍月
二階踏む昼の足音冬金魚 桂信子 遠い橋
亡き父と母の足音露ふめば 井上雪
人日や老婆の足音糸のごとし 神山冬崖
仏陀一生の堂ゆく 足音誰も低く 伊丹公子 ドリアンの棘
何しても秋の足音野に山に 高橋謙次郎
何もかも死に尽したる野面にて我が足音 尾崎放哉
信心の足音が好き蟻地獄 後藤比奈夫「花びら柚子」
傾城の足音更ける火鉢哉 火鉢 正岡子規
冬すみれ家の足音やわらかい 舛田☆子
冬日向足音いづこにもあらず 飯田龍太
冬立つや子規の足音虚子の声 山口耕太郎
凍豆腐おとなばかりの足音にて 小林秀子
十三夜足音しのばせ遊ばむか 宮崎あや
回廊をめぐる足音も十三夜 黛 まどか
団扇太鼓止めば足音続き居る 温亭句集 篠原温亭
坂くだる足音までも悴みて 渡辺 和子
夕立の足音聞くや橋の下 夕立 正岡子規
大いなる古き足音春田径 松村蒼石 雪
大いなる足音きいて山眠る 前田普羅 飛騨紬
大綿や足音吸はる島の道 松崎鉄之介
夫は無言の足音に充ち雪谿越ゆ 加藤知世子 花寂び
寒の月別の足音うしろより 若柳吉作芳
寒夜やがて使にやりし婢の足音 香西照雄 対話
寒行の足音戦前戦後なし 西東三鬼
察燈にすぎゆく"時"の足音とや 久保田万太郎 草の丈
山に入る橋の足音灌佛會 飯田龍太
干し草に虫とぶ足音をたてる シヤツと雑草 栗林一石路
年歩むその足音のひまにわれ 井沢正江 火襷
弁慶の足音高し朧月 朧月 正岡子規
待ち人の足音遠き落葉かな 蕪村
待人の足音遠き落葉かな 蕪村
懸想文売の足音なかりけり 茨木和生 倭
戻り来て足音もなし畑打 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
捨てきれない足音つれてゆく 林玉子
新聞と足音配る冬の朝 園田信夫
既に来る足音よそへさよ時雨 宋阿
星空を足音あゆむ十一月 平井照敏 天上大風
春昼の足音ありてあろじかな 萩原麦草 麦嵐
春昼や絨毯に足音消える 高木晴子 花 季
春茸を干し足音の澄める村 神尾季羊
昼から夜へ光余れば悲の足音 金子兜太
月落ちて足音空をあゆみけり 永田耕一郎 方途
朝寒の大き足音牛乳来る 沢木欣一
朝顔の苗足音とうす曇る 伊藤淳子
木耳に足音吸はれ樹海ゆく 和田孝子(梛)
木道の足音蝌蚪をはじき出す 柴田 芳子
本道に出でし足音春の暁 中戸川朝人
村の子の足音たてて梅林 高木晴子 花 季
松籟に足音のなき十二月 萩原麦草 麦嵐
枯芝に来て足音のなくなりし 山下しげ人
桃の花最初の人の足音ぞ 鳴戸奈菜
桑畑に人の足音夜明星 龍太
森林浴足音つぎつぎ風にあり 福原一子
樹の方へ足音消ゆる冬泉 神尾久美子 桐の木
母を訪ふ足音ながらに秋の風 耕衣
池暑し我が幽体の足音達 永田耕衣 泥ん
泉干る女足音多きゆえ 萩原麦草 麦嵐
海へ突き出た工場足音を封印する 八木三日女 赤い地図
海月ひとつ波止は足音ばかり過ぎ 豊長秋郊
犬吠えて足音近し朧月 朧月 正岡子規
甲冑の足音が夜は耳に棲む 林田紀音夫
疲れ鵜のひたひた歩く足音かな 中村明子
目貼され足音一つ来る個室 村越化石 山國抄
砂利を踏む僧の足音鑑真忌 田中はな
秋彼岸足音ばかり空ばかり あざ蓉子
秋深し足音に似たる夜半の雨 東滝康子
笑ふ山から郵便夫来る足音す 今瀬剛一
箱階段下りる足音新豆腐 桂信子 遠い橋
綿虫や足音を待つ小屋ぐらし 石川桂郎 四温
美術展に足音を消しゴッホの炎 赤尾恵以
船底を足音のゆく鳥曇り 桂信子 草樹
若き日の足音(あおと)帰らず夜の落葉 堀口星眠(1923-)
落葉踏む足音いづこにもあらず 飯田龍太 忘音
落葉踏む鹿の足音風に消ゆ 狹川青史
薺咲いて足音ひそめざるを得ず 岸田稚魚
薺咲き足音ひそめざるを得ず 岸田稚魚
虫時雨足音もなく夫帰る 小玉真佐子
蛇きつとゐる足音立てて行く 佐藤洋子
蛭落ちて足音ひとりのみならず 中岡穀雄
螢谿足音の無き人が来る 山口誓子
誰かがやつてくる足音が落葉 山頭火
誰彼の足音のなか盆が来る 木附沢麦青
谿浅く露のみちゆく足音あり 久保田万太郎 草の丈
足音がきてすれちがふえびね掘 飴山 実
足音が足音を追ふ大暑かな 郡山とし子
足音が踏む秋風の第一歩 萩原麦草 麦嵐
足音といふものもたず蝮取り 矢島久栄
足音にはつと散りけり柳鮠 柳鮠 正岡子規
足音にはや繭玉の揺れそめし 片山由美子
足音にもう動かざる穴まどひ 原敏子
足音に乗込鮒の背鰭ゆれ 田中英子
足音に姿かくしぬ嫁が君 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
足音に応へ且ちる紅葉あり 今井つる女
足音に抜かれてからの野はうらら 星川木葛子
足音に来る鯉の口捩菖蒲 東條照
足音に田べりの蛙算を乱し 高澤良一 寒暑
足音に追ひつかれさう冬の星 高木晴子 花 季
足音に魚は浮きけり椶櫚の花 巴洞「新蛙合」
足音のいつかひとつに雪の道 中村汀女
足音のすずしき朝や胡麻の花 松村蒼石「寒鶯抄」
足音のたしかに二人落葉の夜 片山由美子 天弓
足音のちらばりて来る土筆原 木附沢麦青
足音のとりどり親し春の闇 福田蓼汀 山火
足音のなき蟷螂についてゆく 大石雄鬼
足音のひとつは竜田姫ならむ 吉田寿子
足音のひと現れず夏座敷 桂信子(1914-)
足音のぴたりと止まる古典菊 高澤良一 さざなみやつこ
足音のべつたら市にそろひたる 有冨光英
足音のまだ耳退かず木の葉ふる 久保田万太郎 流寓抄以後
足音のみの四方の冬田となりゆけり 米沢吾亦紅 童顔
足音のやうに波くる芒種かな 対中いずみ
足音のわれを離れず寒の月 片山由美子
足音の七色八色春の立つ 牧石剛明
足音の往き来にふとる竜の玉 高澤良一 さざなみやつこ
足音の昼夜ひびいて男死ぬ 林田紀音夫
足音の濡れて戻りし花田植 高村蔦青
足音の置きどころなし虫の闇 来栖早殳子
足音の老いしと思ふ夜番かな 西島麦南
足音の背中にたまる落葉道 早川志津子
足音の若きブーツに追ひ越され 松根ひろ子
足音の裏に廻りつ春隣 源義
足音の迫るをきけり接木人 前田普羅 春寒浅間山
足音の追ひかけてくる雁木かな 及川仙石
足音の隣へはいる夜長かな 夜長 正岡子規
足音の響きやすさよ新松子 小野恵美子
足音は芭蕉と杜国冬の虹 原田喬
足音は遠ざかるもの桜の実 片山由美子 風待月
足音も土に消え去り豆の花 汀女
足音も鯖街道の夜長かな 榎本好宏
足音や待つ夜も更けて鉢叩 鉢叩 正岡子規
足音や胸のとゞろく朧月 朧月 正岡子規
足音をきゝ振り向かず椅子涼し 高木晴子 花 季
足音をたのしむ橋やえびかづら 山田みづえ
足音をつつみて落葉あつく敷く 長谷川素逝 暦日
足音をもたず朧の砂丘ゆく 羽部洞然
足音をよろこぶ水や水草生ふ 行方克巳
足音を変へて狐のついて来る 藤野 力
足音を聞き分けてゐる春炬燵 林享子
足音を聴きわけ松風と蜥蜴 宮坂静生 山開
足音を迎へさわだつ落葉かな 汀女
足音一つ来る小供の足音 尾崎放哉
蹤いてくるその足音も落葉踏む 清崎敏郎
近づける足音に揺れえびね蘭 石川久利代
通過する足音ばかり桜の芽 森田智子
遊山子の足音尻に蕎麦刈れる 百合山羽公 寒雁
遠く強き足音信ず稔る稲 田川飛旅子 花文字
遠ざかる足音ばかり春の闇 中島はる子
鎌倉に夜の足音冬泉 原裕 葦牙
雀の子足音にまだ気付かずに 北村貞子
雁木行く足音に夜の更けにけり 金島たゞし
雨の夜の壁に足音聴くことあり 鈴木六林男
霜柱踏む足音に小鳥散り 武藤由美子
黒仏までの足音除夜詣 斎藤夏風
夕空に足の音する秋の山 桑原三郎 春亂
寒行の跣足の音の聞えねど 中村汀女
春蘭や杣とは違ふ足の音 和田祥子
殉教の森音すべて跣足の音 加倉井秋を 『真名井』
水の上を来る春愁の足の音 野見山朱鳥
●雨音 
あひ逢ふや雨音となり梅雨となる 小林康治 玄霜
いましがたまでの雨音桜餅 福井隆子
お降りに雨音といふもののなし 加倉井秋を 午後の窓
しづかなる雨音虚子を祀りけり 中村朋子
たかんなの雨音に倦み法師の湯 角川源義
ぱらぱらと日雨音する山椿 飯田蛇笏 山廬集
カタカナの雨音雪はひらがなに 七沢実雄
コスモスの枯るゝ雨音夜の炉に 長谷川かな女 雨 月
トタン濡らす雨音こまか巣燕に 古沢太穂 古沢太穂句集
一と声が雨音となる時鳥 玉木春夫
丹田に雨音たまる花菖蒲 鳥居おさむ
人去りしあとの雨音夏座敷 窪田玲女
傘にばりばり雨音させて逢ひに来た 尾崎放哉
冬の夜の雨音わが部屋難破船 和田耕三郎
冬の雨音なくたより来てゐたり 藤木清子
分銅秤ふるう雨音花あけび 阿保恭子
墓参せし夜の雨音の故里に寝る 人間を彫る 大橋裸木
墨擦るや夜の雨音の芭蕉より 丹羽 啓子
夏山や雨音はわが魂鎮め 藤田湘子「神楽」
夏山を流す雨音前後より 長谷川かな女 牡 丹
夕焚火雨音川をわたりくる 金尾梅の門 古志の歌
夕立熄む雨音の輪を狭めくる 高澤良一 素抱
夜が長し雨音続きゐて長し 鈴木鷹夫 春の門
夜は秋や雨音深き楢柏 臼田亜浪 旅人
奥祖谷の闇の雨音牡丹鍋 今井すえ子
実山椒雨音によく睡りたる 渡辺純枝
寒の雨音を高めて降りにけり 新保旦子
寒暮の灯点けて雨音身を離る 鷲谷七菜子 雨 月
幹たちが聴く虫絶えし雨音は 千代田葛彦 旅人木
床に菊夜雨音たてて家包み 成瀬正とし 星月夜
抽斗に秋の雨音しまひけり 小嶋治子
早い雨音の秋が来た病室 住宅顕信 未完成
早苗饗の夜の雨音に寝落つかな 西村牽牛
栃黄葉打つ雨音に包まれし 高澤良一 素抱
灯ともせば雨音わたる茂りかな 角川源義「ロダンの首」
灯蛾の夜の雨音どつと直ぐやみぬ 高橋馬相 秋山越
白樺に雨音のして来て涼し 龍胆 長谷川かな女
短日の雨音たてぬ枯葎 内藤吐天
笙の音に雨音まじる去来の忌 浜崎晃子
絵の中に雨音が消え額の花 北村美都子
繭玉に宵の雨音籠りけり 永井東門居
老鴬のほかは雨音鞍馬山 岩田公子
芝焼きし夜は雨音に睡り落つ 石垣希余子
芭蕉葉の雨音の又かはりけり 松本たかし
花の雨やがて雨音たてにけり 成瀬櫻桃子 素心
菊挿して雨音つよき夜となりぬ 篠崎玉枝「雉俳句集」
葛の花天の限りを雨音す 大野林火
蓮の葉の雨音能の橋がかり 宇佐美魚目 天地存問
藁屋根は雨音がせず牡丹の芽 鈴木しげを
行く春の雨音ばかり山ばかり 山田弘子 懐
豆はざに雨音粗くなつてきし 水谷敦子
賛美歌に雨音親し茶の花忌 久保田順子
鉄板に雨音それだけでも寒し 菖蒲あや 路 地
雁かへる夜半の雨音いたるとき 貞
雨よりも雨音淋し冬に入る 山内山彦
雨音、夜の池深く落ちる 住宅顕信 未完成
雨音が弾音となり破蓮 堀 敬子
雨音にかくるる月の兔かな 上田日差子
雨音につゝまれ歩く若葉かな 松本たかし
雨音にまぎれず鳴いて寒雀 飯田 龍太
雨音にまさる風音男梅雨 成瀬正とし
雨音に取り巻かれたる土俵かな 綾部仁喜 寒木
雨音に囀り混じる留守の家 佐藤伸子
雨音に心ゆるべば桜草 中村汀女
雨音に掻き立てられつ猫恋す 羽部洞然
雨音に春の夜風は押しあたり 高橋馬相 秋山越
雨音に臥しをり二百十日かな 皆川白陀
雨音に蕪溺れてひとりぐらし 秋元不死男
雨音に追いかけらるる蜥蜴かな 高澤良一 素抱
雨音に風まじへきつ炭をつぐ 原田種茅 径
雨音に馴れしこのごろ九月かな 阿部みどり女 月下美人
雨音のいつしか消えしちちろ鳴く 行方克巳
雨音のかむさりにけり蟲の宿 松本たかし
雨音のかむさり祖母は裸で寝る 星野石雀「延年」
雨音のなく葉のゆれて秋立てり 小島千架子
雨音のにぎはひしばし枯木山 片山由美子 天弓
雨音のまた近くなる菜飯かな 菅原多つを
雨音のまづ走り来る今年竹 古賀まり子 緑の野以後
雨音の中の水音花山椒 今井園子
雨音の中の波音ところてん 岩淵喜代子 硝子の仲間
雨音の中一鳥の囀れり 林八州生
雨音の優しく聞ゆ鑑真忌 上出曙美
雨音の北へとほのく夏炉かな 菅原多つを
雨音の又あらたまり竹の春 大峯あきら 宇宙塵
雨音の右手の雲に夏の月 長谷川かな女 雨 月
雨音の夜にしづもれる明日の花 深谷雄大
雨音の奥に雨音明易し 高澤良一 ぱらりとせ
雨音の如くに増えて子の汗疹 横山千夏(岳)
雨音の寒ゆるみたり一語待つ 石田あき子 見舞籠
雨音の庭木に澄みて夜の長き 内田百間
雨音の後れてとどく真菰刈 丸山分水
雨音の抑揚に夏立ちにけり 阿戸敏明
雨音の更に濃くなる蔦若葉 五十嵐郁子
雨音の次第に細き木槿かな 加倉井秋を 午後の窓
雨音の母を想はす菜飯かな 小島千架子
雨音の沈丁の邊に落ちつきぬ 田中裕明 櫻姫譚
雨音の紙飛行機の病気かな 小川双々子
雨音の落ち着いて来し安居かな 片山由美子「風待月」
雨音の近づいてゐる網戸かな 斉藤 京子
雨音の遠ざかりたる寝釈迦かな 津高里永子
雨音の高くテントの明るさよ 後藤 章
雨音の高まりて来し花擬宝珠 田中芙美
雨音はすでに夢路か宝船 水原秋桜子
雨音は彼への挽歌かきつばた 松本千鶴子
雨音も仏の声や山ぼうし 深井 鈴
雨音も修二会も鹿の寝の中に 志摩知子
雨音も夜深くなりぬ修二会堂 西村和子 かりそめならず
雨音も律にととのふ夏行かな 野島無量子
雨音も激つ音せり巣立鳥 大木あまり 火のいろに
雨音も身近なものに春立つ日 福井圭児
雨音やあさきゆめみし春の風邪 奥村京子
雨音やいとゞ朧と思ひしに 原石鼎 花影以後
雨音やひとりの柚子湯愉しめば 安田 晃子
雨音や畳の上のきりぎりす 深見けん二 日月
雨音や茶店簡単に秋冷 峠 素子
雨音や黒き葉重ね冬椿 山田みづえ 木語
雨音をきく佗しさの百合蕾 高木晴子 花 季
雨音をしのぐ青松虫の声 片山由美子 水精
雨音をひとりの蚊帳にあつめたる 松村蒼石 露
雨音を消して雨音黍わたる 川島彷徨子 榛の木
雨音を消す若竹の茂りあひ 野澤節子 『存身』
雨音を確かめて出る花の下駄 稲畑廣太郎
雨音を野の音として夏座敷 廣瀬直人「朝の川」
雨音烈し郭公の声はその裏に 栗生純夫 科野路
霧いつか雨音となる新松子 古賀まり子
頂上の雨音のまた芽吹く音 増田萌子
頬杖に雨音ばかり春隣 森澄雄
鮎食ふや雨音を身にふりかぶり 耕二
おでん鍋火を弱めれば雨の音 原 圭玉
お水取見て来し夜半の雨の音 山田弘子 こぶし坂
からまつに十一月の雨の音 野中亮介
ぎんなんの木にぎやうさんの雨の音 後藤兼志
すゝしさや月になり行く雨の音 涼し 正岡子規
すゝしさや雨の音聞く小笹原 涼し 正岡子規
まぎるゝや笠も紅葉も雨の音 成美
また雨の枯野の音となりしかな 敦
むかしほど雨の音せず新豆腐 永作火童
むら雨の音しづまればかんこどり 高井几董
ものを食ふ蚕の音と雨の音 岩田由美 夏安
七月も十日過ぎたる雨の音 宇多喜代子「象」
二次会のうるめ鰯に雨の音 鈴木鷹夫 千年
人恋へば花野の雨の音たてて 橘 京子
佛法僧二夜は鳴かず雨の音 杉山岳陽
傘さして雨の音呼ぶ白魚売 古舘曹人 樹下石上
優曇華や壁のうしろに雨の音 井沢正江 湖の伝説
厨にも水鳴る喜雨の音の中 谷野予志
味噌あへのわけぎに雨の音こもる 清水六狼
啄木の墓に冬来る雨の音 小松崎爽青
在ることのしばらく喜雨の音の中 長谷川素逝 暦日
夏の椎幻住庵に雨の音 児玉輝代
夏雨の音して屋根の古松葉 内藤吐天 鳴海抄
夕寒しどこの部屋にも雨の音 野澤節子 黄 瀬
夕顔や野末を走る雨の音 中島月笠 月笠句集
夜に入りて太祗忌と知る雨の音 星野麦丘人
夜は雨の音とも遊び避寒宿 和田暖泡
夜桜や人静まりて雨の音 夜桜 正岡子規
夜桜を思ひ寝にせむ雨の音 小沢碧童
夜神楽にいつ加はりし雨の音 野澤節子 『存身』
太宰忌の身を越す草に雨の音 飯田龍太
家をめぐり暮春の雨の音となる 波多野爽波 鋪道の花
寝てさめて七夕の夜の雨の音 上村占魚 球磨
山法師美濃はやさしき雨の音 後藤博司
山笑ふ聴けばきこゆる雨の音 千代田葛彦
山荘や冬を妊る雨の音 下村志津子
山葵田に雪まじりなる雨の音 福永耕二
山陰や葉広き蕗に雨の音 闌更
扇風機止めれば雨の音のまた 久保田万太郎
春の夜のこころに雨の音はあり 長谷川素逝 暦日
春宵をみんな読みゐて雨の音 及川貞 夕焼
春意ほのと夕べに近き雨の音 原石鼎 花影以後
春眠の覚めつつありて雨の音 星野立子
昭和逝く七日の夜の雨の音 関森勝夫
木耳や森の奥まで雨の音 小島健 木の実
末枯や障子にかゝる雨の音 金尾梅の門 古志の歌
松虫やかぞふるほどの雨の音 伊丹丈蘭
松過ぎて身のほぐれゆく雨の音 豊田幸子
林中に雨の音満つ油点草 清崎敏郎
枯草に立てばほとりに雨の音 五十嵐播水 播水句集
気胸入れし安堵四葩に雨の音 河野南畦 『焼灼後』
浅草に祭が来たる雨の音 両角玲子「白樺の風」
漏刻の或る夜はじまる雨の音 林田紀音夫
焼栗やまた近くなる雨の音 幹彦
煽風機とめれば雨の音のまた 久保田万太郎 草の丈
熊笹に盛夏の雨の音確か 高澤良一 鳩信
父の日の記憶はいつも雨の音 才記翔子(泉)
猫の恋やんだ其夜や雨の音 猫の恋 正岡子規
百八松明絶えし真闇の雨の音 佐野妙子
盆過の月明かに雨の音 盆過ぎ 正岡子規
直哉旧居春深みゆく雨の音 朝妻 力
真夜中の冬田を越ゆる雨の音 松村蒼石 雪
短夜の明けんとしては雨の音 短夜 正岡子規
短夜の明方近し雨の音 短夜 正岡子規
破芭蕉うつ夜の雨の音にゐる 容太
秋の夜や雨の音なぞ聞きつけて 尾崎迷堂 孤輪
秋扇やしづかにつのる雨の音 岡本まち子
種まきや一つかみづゝ雨の音 ト水
種蒔を終へし安堵や雨の音 岡本信枝
竹林に社日の雨の音もなし 古谷実喜夫
紅粉花を剪る夕暮はやき雨の中 古舘曹人 砂の音
紫のぶだうを置いて雨の音 細見綾子 黄 瀬
芙蓉枯れて部屋の中まで雨の音 渡辺鶴来
芽起しの雨の音なく犀星忌 庄田春子
茄子苗を植ゑて夜雨の音うれし 若杉和子
草餅や茶を替へて聞く雨の音 遠藤 はつ
菊にほひ波郷も寝ねし雨の音 及川貞 榧の實
菊の苗植ゑたる夜の雨の音 菅沢泰子
葉を洗ふ雨の音して文月かな 鷲谷七菜子
蓮如忌や雨の音する雨の中 阿部完市
虎鶫鳴くや出庇雨の音 行実みよ子
蚊の声は打も消さぬよ雨の音 炭 太祇 太祇句選後篇
衰に夜寒逼るや雨の音 夏目漱石 明治四十三年
衰へに夜寒逼るや雨の音 漱石 (修善寺病中)
賑やかにお会式をはる雨の音 中山純子
送り火を焚きためらふは雨の音 篠田悌二郎
連如忌や雨の音する雨の中 阿部完市 無帽
連翹の里に雨の音満ちおわる 阿部完市 無帽
遺著半ばより萍の雨の音 友岡子郷 風日
錫の音火の音雨の水送り 川上季石
長き夜や眼鏡に曇る雨の音 成美
降り出でて泉にはなき雨の音 栗生純夫 科野路
雛店の灯を引く頃や雨の音 蕪村
雨の日の庇は長し杜若 古舘曹人 砂の音
雨の音どこかに残りちちろ虫 深見けん二
雨の音に春行く山の火桶かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
雨の音に覚めてしづかな草城忌 横山白虹
雨の音やまぬ夜なべの手をとめて 橋本鶏二 年輪
雨の音巻葉とけたる芭蕉哉 芭蕉の巻葉 正岡子規
雨の音春夜のこころひとりにす 長谷川素逝 暦日
雨の音時折り強く夜なべかな 是木 ゑみ
雨の音牡丹根分をせし夜かな 草間時彦 櫻山
雨の音眼で聞きてゐる蝸牛 吉田銀葉(群青)
雨の音確かになりぬ山椒の芽 吉田秋女
雨の音雨垂の音春隣 朝妻 力
雨の音静けし秋の昼も夜も 原石鼎 花影以後
雨の音風の音にも慣れて冬 高橋謙次郎
黄梅や夜空あかるき雨の音 石飛如翠
黎明を芙蓉の雨の音にみだれ 斎藤空華 空華句集
●唸り 
くらがりの唸り独楽なる金亀子 石塚友二 光塵
どうじやこの独楽の唸りの心地よき 小川恭生
カラ~の野糞日向や虻唸る 内田百間
ダイナモの唸り澄むとき猫の耳 楠本憲吉
チエンソー唸り冬木の匂ひ来る 高橋笛美
ドライヤー唸らせ吾娘の初鏡 奈良文夫
下したる雪の唸りが腹にひびく 堀越胡流
亀鳴けり甍の獅子は唸りもし 坊城 俊樹
先へ行く猟犬唸り地に伏せる 越智条山
凧くるわの空に唸り居り 篠原鳳作
凧唸り孟宗竹の青さゆるみなし 渡邊水巴 富士
凧唸るや険しき風の雲の中 鈴木花蓑句集
凧尾を跳ね上げて唸りけり 鈴木花蓑句集
凶作の刈田電柱唸り立つ 西東三鬼
初凧の舞天帝を唸らしむ 宮田硯水
台風に唸り返してポプラの樹 斉藤和夫
吊鐘や唸りて通る秋の蜂 藤田湘子 てんてん
吠えず唸る猛犬をりて雪の庫裡 右城暮石 上下
唸つて世の中が素通りする風に農民の顔 栗林一石路
唸りしぐれきやくしやかたがわ 加藤耕子
唸り凧あそぶ筑波を見下ろしに 荒井正隆
唸り独楽唸る東西南北に 後藤比奈夫 めんない千鳥
唸り独楽少年の目のひたすらに 水原 春郎
唸る電線ガソリン臭き政党員 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
土佐犬の低く唸りて帰り花 藤平寂信
土蜂の恋の唸りの青鞍馬 殿村菟絲子 『樹下』
垂り稲の地平に唸り哨戒機 高井北杜
夕日沖へ海女の乳房に虻唸り 沢木欣一
大空に唸れる虻を探しけり 松本たかし(1906-56)
学校の上に絵凧が唸りけり 内田百間 百鬼園俳句帖
工事場のシートの唸り野分中 佐倉あさ子
年ゆくや出エジプト記に虻唸り 小檜山繁子
掛稲の下を這ひつつ唸る蜂 岸本尚毅 舜
桃として倉庫出て行く唸りつつ 西川徹郎 町は白緑
海嘯の唸り水鳥総翔ちす 山下美典
砂山に蜂唸りサンテグジュペリ忌 大串章 百鳥
節分の風唸りゐる海の上 大木あまり 火球
紫外線凧の唸りに満ち来たり 佐野青陽人 天の川
花虻に抱へられたる蕊唸る 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
藁塚や四五疋虻の大唸り 村上鬼城
虻一匹一唸りして消えにけり 稲畑廣太郎
蜜を吸ひ呪文のやうに虻唸る 須藤節子
進物の唸り添えたる絵風箏かな 蘇山人俳句集 羅蘇山人
長城に唸りぶつかる熊ん蜂 川崎展宏
電線の唸り鵙見てよりきこゆ 川島彷徨子 榛の木
頂上の天の逆鉾蜂唸る 鈴木厚子
食べごろの桃に冷蔵庫が唸る 鈴木鷹夫 千年
黙し合うときに唸りて冷蔵庫 山崎喜八郎
●沖鳴り 
沖鳴るや岬泊りの蚊やり香 高井北杜
沖鳴れば芒も鳴るよ枯岬 鈴木真砂女 夕螢
●音聞き 
*はまなすや波の音聞く水枕 雪島東風
「川音が聞こえる」と母朧かな 肥田埜勝美
あはれまむ砧の音と聞き做して 相生垣瓜人 明治草抄
いざよいの水音を聞き魚ごころ 木村えつ
うぐひすや初音に聞くは幾所 千代尼
おのづから聞ゆるものに初音かな 長谷川櫂 虚空
かなぶんの打身の音をひたと聞く 高澤良一 素抱
ががんぼの影なき音を聞きにけり 山口草堂
がちや~や瀬音も聞え真暗闇 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
しぐれする音聞き初むる山路かな 黒柳召波 春泥句集
しばらくは初音と聞けり筆止めて 畑 道子
すゝしさや雨の音聞く小笹原 涼し 正岡子規
たまさかに聞く鳥の音も日の盛り 高澤良一 寒暑
とねりこの散る極小の音聞かな 正木ゆう子 静かな水
とほき田の一脱穀音聞き病めり 河野緋佐子
ともに聞くなら蘆渡る風の音 対中いずみ
なかなかに猿聞きなれて雁の聲 雁が音 正岡子規
はらわたの動く音聞く夜長かな 田中裕敏
ひととき心の音の聞こえる体寄せ合う 河内登美子
ひとり聞く落葉の音は山の声 狹川 青史
ぶんぶんの燈へゆく音を闇に聞く 篠原梵 雨
ほぞ落ちの柿の音聞く深山かな 山口素堂
ほとゝぎす三日聞ねば初音哉 横井也有 蘿葉集
また一つ羽子つく音を聞きもらす 金田咲子 全身 以後
ものの音聞き分けてをる朝寝かな 野中 亮介
やませ来る砂浜に聞く砂の音 松本 久
わが聞いてわが噛む音の梨の秋 皆吉爽雨
をちこちに滝の音聞く若葉かな 蕪村
ヴィオロンの音はもう聞けず寒明くる 稲畑廣太郎
一ト夏を越す風鈴の音と聞けり 高澤良一 素抱
中宮祠に滝の音聞く夏の月 夏の月 正岡子規
丸盆の椎にむかしの音聞む 蕪村 秋之部 ■ 幻住菴に曉臺が旅寢せしを訪ひて
乱入の鵙の雄叫びとも聞え 高澤良一 燕音
二人居て柳絮とぶ音聞き逃す 伊達甲女
五月雨の音を聞きわくひとりかな 白雄「白雄句集」
今し方聞えてをりし羽子の音 池内たけし
元朝の天声地音まだ聞かず 細木芒角星
八十八夜水音を聞き惚れもして 中山純子 沙 羅以後
八月の社務所掃く音聞えをり 大峯あきら 鳥道
公卿小路藻に住む虫の音を聞けり 大野今朝子
冬ごもり世間の音を聞いて居る 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬山に枯木を折りて音を聞く 飯田蛇笏 椿花集
刈稲を置く音聞きに来よといふ 飯島晴子
初霜の降る音聞いてゐる玻璃戸 梶尾黙魚
初霜を踏みて一人の音聞けり 南保仁恵
初音せり厨の妻は聞かざらむ 林翔 和紙
初音とはひとり聞きとめひとり聞く 後藤夜半 底紅
初音もう聞くころ誕生日の微醺 益田 清
初音聞くこれより虚子のメツカかな 稲畑廣太郎
初音聞くこんな小さな植込みに 稲畑汀子
初音聞く世界遺産の原始林 田中康委子
初音聞く塗り変えられし大鳥居 三好子
初音聞く庭のなぞへに身を支ヘ 皆吉爽雨 泉声
初音聞く灯油のポンプ押しながら 山田節子
初音聞く空の青さや切り通し 和田松子
初音聞け春の根岸の枕売 春 正岡子規
卯辰山碑に聞け秋の聲 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
古井戸に物の音聞く夕すゞみ 高浜虚子
古時計のぼやけた音聞いて病みつづける 人間を彫る 大橋裸木
吊鐘人参聞きをり霧の私語(ささめごと) 高澤良一 燕音
吹雪く扉の銅鑼の音聞きたがへざれ 林原耒井 蜩
喪服着て蜻蛉の羽音聞こえけり 岸本尚毅 鶏頭
四十の手習/音に聞く太棹 仁平勝 東京物語
土鈴の音聞き比べゐる小春かな ふけとしこ 鎌の刃
夏衣雲の流るる音聞かる 村越化石
夕蝉のやかましからぬ音と聞けり 高澤良一 素抱
夜の秋のどの木の音の聞ゆるや 谷野予志
夜をこめて露くだる音聞いて居る 宇多喜代子 象
夜をこめて鳥渡りくる音聞かな 片山暁子
夜半さめて落葉の音と聞きとめし 岸風三楼 往来
夜網打つ音聞えくる星の宿 木村蕪城 寒泉
大年の街の音聞く橋のうへ 大屋達治 絢鸞
大枯に毬つく音の聞えずに 岡井省二
大根引く音聞きに出ん夕月夜 大根引 正岡子規
天の川は黒部川の水音を聞く(宇奈月温泉) 荻原井泉水
天の音聞きつくしたる朴落葉 三嶋隆英
天籟を猫と聞き居る夜半の冬 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
奈落道来し甲斐ありて初音聞く 稲葉米子
寒の水溢れる音を聞いてをり 星野椿
寒念仏聞きわけてまた波の音 斉藤夏風
寒曉を聞きしに勝る利尿剤 高澤良一 燕音
寒行の跣足の音の聞えねど 中村汀女
寝て聞けば外は冴返る風の音 冴返る 正岡子規
寝積むや馬の藁喰む音聞きて 町田しげき
寺大破炭割る音も聞えけり 河東碧梧桐
尿する音の聞こえて良夜かな 佐々木六戈 百韻反故 初學
山の音うしろに聞きし寒さかな 百瀬美津
山の音聞きたくて来し山毛欅若葉 多田薙石
山越しに濤音聞ゆ十三夜 西山泊雲 泊雲句集
川開き音だけ聞いて寺守る 中嶋秀子
川音の聞こえる焚火美しく 北原志満子
干飯かく音さゝやかに聞えけり 銀漢 吉岡禅寺洞
平日の鵙聞きながら稿急ぐ 高澤良一 燕音
年行くか音のみの波闇に聞く 及川貞 夕焼
年輪の音と聞きつゝ瓜刻む 荒木水無子
庭番と濤音を聞く夕霞 鈴木鷹夫 大津絵
引き絞る音の聞こえて弓始 吉田早苗
当麻寺に別るゝ朝初音聞く 菊池道江
恥しきこと聞きたりし雛かな 行方克己 知音
我が引きし鳴子の音を我は聞く 高田蝶衣
指先のペンペン草の音聞けり 小山篤子
掃く音も聞えて淋し夕もみぢ 蓼太 五車反古
掃音も聞えてさびし夕紅葉 蓼太
掌を打つて肉の音聞く薄紅葉 西野理郎
探梅の空に聞きたる羽音かな 上村占魚 鮎
放哉の卯波の音と聞きゐたり 飯島晴子
敦盛塚浪音聞かず花散らず 岡部六弥太
日向ぼこして聞き分くる物の音 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
早春の音聞き分けて調律師 青井喜美子
星踏んで蓮開く音聞きにゆく 矢島渚男 船のやうに
春の夢音を聞かずに終りたる 牧石剛明
春宵の宿のもの音聞かれけり 行方克巳
春愁は巷の音も聞いてゐて 細見綾子 花寂び
春苑に人の訃音を聞きゐたり 内藤吐天 鳴海抄
春雨や聞きおぼえたる明石聲 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
昼みたる滝の夜の音聞きにけり 久保田万太郎 流寓抄
晴れ舞台てふ菊苗の色を聞く 高澤良一 燕音
暮れがての風の音聞く座禅草 伊藤京子
更けし燈に風音を聞く飾凧 鈴木鷹夫 渚通り
月見草咲く音を聞きに屈みたる 村住月耕
有難く聞く沓音も修二会なる 覚正たけし
木々に降る霧の音聞き球を追ふ 高濱年尾 年尾句集
木々芽吹く音に聞き耳たててゐる 魚住須美子
木の実降る一つ~の音聞ゆ 高浜年尾
木の実降る音を聞きつゝ訪ひにけり 高浜虚子
木の葉木菟の音を聞き合ひて夜を更かす 板垣信一郎
木耳を我が噛む音を聞きにけり 楠目橙黄子 橙圃
杉山の底に野分の音を聞く 大古殿風亭
杏落ちし音より梅雨を聞き澄ます 田川飛旅子 花文字
村の誰にも聞こえて初発猟銃音 加倉井秋を
枕均して雪積む音を聞いてをり 林菊枝
枯芦の音聞いて来し耳飾 佐藤和夫
枯野来て障子の中の時計聞く 櫻井土音
栗が落ちる音を児と聞いて居る夜 尾崎放哉
桑食める音聞ゆかの空間に杳き日の蚕顕ちくるあはれ 風間八重子
梟は聞いてる星の爆ぜる音 齋藤愼爾
梨を割る音剥く音と分かち聞く 田川飛旅子 花文字
梯子乗りあはれ吹かるる音聞こゆ 花田春兆
榛の木に雪降る音を聞きわくる 細見綾子 黄 瀬
標(しめ)の内に杵の音こそ聞こゆなれ 成助
横笛の音(ね)取りをぬすみ聞きし木莵 筑紫磐井 野干
橘に碁の音聞かんけさの春 蓼太
檻たたく音の聞えて雪の夜 如月真菜
死児のそば団扇を置きし音聞ゆ 萩原麦草 麦嵐
残る音のこほろぎを聞く浮浪心 斎藤玄 雁道
残照や魚氷に上る音を聞く 菊地伊津子
母にのみ風音聞こえ菊月夜 古賀まり子 緑の野以後
水の音聞きに筍崖に出し 茨木和生 木の國
水の音聞てたのもし崖九間 正岡子規
水音が河鹿の聲である水を聞く 荻原井泉水
水音を寒からず聞く心あり 汀子
水音を抜けて小瑠璃の声聞こゆ 茨木和生
水音を聞いてゐるだけ夕端居 沢田れい
水音を聞きのがさじと枯葎 瀧澤宏司
水音を聞く曲がり家の白障子 曽我部多美子
汽車の音の近く聞ゆる夜寒哉 夜寒 正岡子規
波の音聞ゆる浜に花火待つ 長田一男
海に来て浪の音聞く真砂女の忌 後藤綾子
海の音聞くために祖母禾となる 高野ムツオ
海鳴りの遠音を聞くや冬籠 癖三酔句集 岡本癖三酔
淡島の守雛とは音に聞く 後藤夜半 底紅
清夜ふと藻に住む虫の音を聞けり 細木芒角星
湧水を鈴の音と聞く麓神 伊藤京子
滝の音真近に聞いて冬ごもり 中川宋淵 詩龕
滝音のはつかに聞ゆ蔓あぢさゐ 高澤良一 燕音
滝音のほかは聞えず蛇の衣 中川秀司
滝音の唄とも聞こゆ読経とも 西山小鼓子
滴りの音のみ聞こゆ竹の寺 村上有秋
潮のふかさしずかさ艪の音を聞く 荻原井泉水
潮音寺春潮の音聞く寺か 山口誓子
瀬音聞く初瀬の宿のつくねいも 木村雅子
火恋しわが靴音をわが聞けば 佐々木六戈
炭売の炭相打つや音聞けと 星野麦人
無患子の地を打つ音を聞きに来し 高澤良一 ももすずめ
煮ゆる壺焼に海の遠音を聞きにけり 青峰集 島田青峰
牡丹園に打たるる杭の音聞ゆ 萩原麦草 麦嵐
猟犬の音聞きつける夏野哉 夏野 正岡子規
獏枕なみのりふねの音聞かな 窪田佳津子
琴の音の聞えてゆかし冬籠 冬籠 正岡子規
瓜刻む気兼ねの音の聞えくる 波多野爽波 鋪道の花
用意なく聞きしと思ふ初音かな 後藤夜半 底紅
田を植うる己の音のほか聞えず 大熊輝一 土の香
病牀に聞くや夜明の餅の音 餅搗 正岡子規
白鷺の人音聞くや麦の中 豊後-慎女 俳諧撰集玉藻集
百足虫落ち数珠置く音と聞きまがふ 赤松子
眼つむりて琴の音を聞く花供養 中島秀子
石をゆく蜥蜴の音を聞かざりき 山口波津女 良人
石庭に涛音聞きて冬ざるる 藤森興子
石鹸玉割れる音聞く白寿なり 澤井我来
砲射音空しく聞くに露ふるふ 殿村莵絲子 遠い橋
秋の夜や雨の音なぞ聞きつけて 尾崎迷堂 孤輪
秋来ぬと聞や豆腐の磨(うす)の音 横井也有 蘿葉集
秋立つか雲の音聞け山の上 露月句集 石井露月
秋風の海に落ちたる音を聞けり 内田百間
稍寒の投函の音聞いて去る 高澤良一 随笑
稲の香や屈めば水の音聞こゆ 矢島房利
稲黄ばむ頃よ聞きしむ音ありて 右城暮石 声と声
空耳か砧の音と聞きたるは 徳永山冬子
空耳に濤の音聞く春の暮 伊藤京子
笛のごと風音聞こゆ梅林 大長林
筍皮脱ぐ時は音を聞かせよ 野田 誠
筬の音を聞きつつ鈴ふる秋遍路 佐藤希世
筬音の間近に聞きし秋しぐれ 脇本良太郎
簗かかる前の川音聞きに来し 飯島晴子
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人
粽解いて蘆吹く風の音聞かん 蕪村「蕪村句集」
粽解て芦ふく風の音聞ん 蕪村
紀の国の風の音聞く桃畑 大久保滋子
紅毛も聞けや港の不如帰 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
紫蘇双葉深井戸の音一つ聞く 河野多希女 月沙漠
結伽こゝに蓮の實の飛ぶ音聞ん 蓮の実を結ぶ 正岡子規
結伽して蓮の實の飛ぶ音聞ん 蓮の実を結ぶ 正岡子規
綿虫の聞きたきものに翅の音 中谷まもる
羽音さへ聞えて寒し月の雁 青蘿
老の耳露ちる音を聞き澄ます 高浜虚子
耳押さへ血の音を聞く涼新た 能村研三
聞えしは虹のこはれし音ならむ 正木ゆう子 静かな水
聞え来る人語も音や秋の山 嶋田一歩
聞かぬ日もありて鐘の音霞みけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
聞きとるや餅搗き上がる杵の音 小杉余子 余子句選
聞きとれぬは生死の音か新樹林 殿村菟絲子 『樹下』
聞きやるや闇におし行く雁の聲 雁が音 正岡子規
聞き過ぐる鑢の音や暮の秋 内田百間
聴診器外して初音聞きにけり 富澤 隆
脳下垂体涼し水音聞きをれば 正木ゆう子 静かな水
芭蕉葉や音も聞かさず破尽す 梅室
花の夜の急流の音聞きながら 長谷川櫂 天球
花の鳥あれこれいふを聞き遣りぬ 高澤良一 燕音
花虻の音聞く限りきかん坊 高澤良一 素抱
苧殻折る音を遠祖聞きをらむ 高澤良一 寒暑
茸の名いちいち聞いて宿夕餉 高澤良一 燕音
草に寝れば空流る雲の音聞こゆ 芹田鳳車
草餅や茶を替へて聞く雨の音 遠藤 はつ
落葉ふむ音うつむいて聞ゆなり 皆吉爽雨
蓑虫の音を聞きに来よ草の庵 芭蕉
蓮開く音聞く人か朝まだき 蓮の花 正岡子規
蔕落ちの柿の音聞く深山かな 素堂
藪雨を悲しみの音と聞くことも 三谷尚子
虎落笛美しすぎる音を聞かす 橋本美代子
虫の音を聞き虫の句を校正す 池田秀水
蛇の音いつまでも聞く女なり 対馬康子 吾亦紅
蛇笏忌の岩うつ滝の音聞ゆ 飯田龍太
蝉音聞き我も端くれアバ世代 高澤良一 素抱
蝸牛たがひの音を聞き分けて 鎌倉佐弓 潤
蟹のいふ事情とやらを聞きやらむ 高澤良一 燕音
行かずして見る五湖煎蛎の音を聞く 山口素堂
裏富士の水の音聞き酔芙蓉 有馬朗人 耳順
見えてゐて添水の音の聞えけり 松尾いはほ
観音の胎内にゐて初音聞く 柏原眠雨
訃報聞く梨の皮剥く音のなか 高澤良一 素抱
豆音も聞かぬ藁屋に是や此 嵐雪
走る落葉相摺る音を聞く夜かな 瓊音句集 沼波瓊音
路地一つ違へて初音聞きにけり 三浦すゑ
身にしむや補聴器で聞く風の音 佐々木平一
身の裡に骨の音聞く冷まじき 都筑智子
転がつて春の音聞く飼葉桶 須山おもと
遠き音聞かむと砧打ちにけり 高橋かず
遠く夕立つて来る森音を聞きゐたり 大須賀乙字
遠野火の音は聞こえず阿蘇しづか 中村田人
郭公聞くネイビーブルーのペンションに 高澤良一 燕音
里神楽父の笛の音聞きわけし 安井やすお
銀漢の瀬音聞ゆる夜もあらむ 芥川龍之介
鍬使ふ音の聞えて日短 深見けん二 日月
闇を裂く花火の音の聞えけり 高橋淡路女 梶の葉
闇汁や貨車の連結音聞こゆ 館岡沙緻
闇深し晩涼の浪音を聞く 高木晴子 花 季
雨の音眼で聞きてゐる蝸牛 吉田銀葉(群青)
雪どけの音聞いてゐる朝寝かな 几董
雪を踏む祈りの音と聞きながら 千原叡子
雲の峰崩るるときの音聞かず 田中太朗
震災忌云い聞かす婆無(の)うなりて 高澤良一 燕音
霜柱生れる音を風に聞き 中村恭子
青簾一つ大きな音を聞く 高澤良一 素抱
音たかく夜空に花火うち聞きわれは隈なく奪はれてゐる 中城ふみ子
風の音ばかりを聞きて囮守 木田千女
風の音聞えくるなり鵙の贄 青柳志解樹
風の音身近かに聞きて春惜む 大場白水郎 散木集
風起る音を聞きつゝ枯木道 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
風音の屏風の内に聞えけり 高浜虚子
風音を伊賀に聞きをり松飾 鈴木鷹夫 大津絵
風音を千年聞きて滴れる 正木ゆう子 静かな水
風音を波音と聞き浦島草 鷹羽狩行
風音を過客と聞けり山法師 鈴木鷹夫
鬼面つければ暗い湖底の音が聞こえる 飯島翆壺洞
鱸焼く松風の音聞きながら 長谷川櫂 蓬莱
鴨下りる水音を聞く火桶かな 山口青邨
鴨鍋や雪が玻璃打つ音を聞き 高濱年尾 年尾句集
鴬を聞きとめしより波の音 行方克己 知音
鵙は聞き入れぬ入れぬの一点張り 高澤良一 燕音
●音なし 
たんぽぽの絮の球界無音楽 尾堤輝義
とどろきのなかに無音の神の滝 桂信子 黄 瀬
どんぐりの落ちて転がる無音界 高林佳都子
なにもかも雪一色に無音かな 小沢きみ子
レール無音にして炎昼悲痛に似る 榎本冬一郎 眼光
万華鏡雪雪雪の無音界 小枝秀穂女
三百六十五日の無音モナリザに 森田智子
冬濤の渾身立てるとき無音 ながさく清江
冬眠の無明無音の息思ふ 藤田湘子 てんてん
原発の無臭無音や敷松葉 中村和弘
唖蝉や されば無音の地の乾き 富澤赤黄男
四角な家無音に詰まる四角な冬 熊谷愛子
夏たんぽぽさらに無音をつゞけをり 原裕 葦牙
大氷湖落暉散乱しても無音 甲斐虎童
安曇野は原初の無音胡沙来る 藤田湘子 てんてん
屈折して牡丹とともに無音界 河野多希女 こころの鷹
年惜む無音を濡らすほどの雨 長谷川かな女 花 季
抱えきれない紅葉無音の村がふえ 鈴木豊明
早稲刈りて無音の牛舎あらわにす 豊田晃
星飛んで無音の白き渚あり 菅原鬨也
柚子匂ふ無音の闇に圧されをり 秩父
椿の気配 彼方に 無音の村あるく 伊丹公子 ドリアンの棘
水槽の無音を*えいの横断す 奥坂まや「縄文」
法師蝉日蓮太鼓いま無音 鈴木鷹夫 風の祭
涯しなかりし獄と流氷無音に寝る 古沢太穂
深吉野は深き万緑無音界 梅本幸子
深海の生死は無音去年今年 藤田湘子 てんてん
炎天の無音の巌育つなり 奥坂まや「縄 文」
炎帝の風まで殺しけり無音 川崎展宏 冬
無音といふ音が重なり山は秋 田川飛旅子 『使徒の眼』
無音といふ音溜めてゐる花の陰 小泉八重子
無音家に遠ざかる如し枯れし芒の山 安斎櫻[カイ]子
燈台無音椿炎えたるまま暮るる 河野多希女 両手は湖
白神の無音の朝千の蝉 新谷ひろし
白鳥の無音のさむき羽根もらう 寺田京子 日の鷹
着水も離水も無音小鰺刺 宇多喜代子 象
禁猟区杉落葉して無音かな 杉本寛
空の蝶大息吐息 無音階 中田敏樹
細耕のほとんど無音師業いかに 香西照雄 対話
綿虫のたゆたひて飛ぶ無音界 竹中碧水史
綿虫の無音と無音ぶつかりぬ 矢口 晃
緋牡丹の妖しきほむら無音の天 西尾華子
胸に飼ふこの日の無音枇杷の花 栗林千津
芒群れて揺れても無音雲の下 中村里子
花枇杷の無音を言へり病んでをり 栗林千津
荘巌な無音の調べ雪降り積む 河野薫
落ち際はそもそも無音法の滝 高澤良一 素抱
要求の刻すぎて無音のおくの鉦叩 日下部正治
豆撒きし闇やしばらく無音にて 村上しゆら
軍艦曇る無音の沖や秋砂防 古沢太穂 古沢太穂句集
近隣のいまだ無音に初手水 有賀辰見
逆光のかもめもつれる無音界 八木三日女 石柱の賦
銀杏黄葉いつせいに散る無音界 久保 乙秋
銀漢や原子力発電所無音 奥坂まや
開くまで秋思の無音オルゴール 鈴木まゆ
雪国の雪降る音の無音なる 新谷ひろし
雪渓を雲行き大き無音過ぐ 藤田湘子 てんてん
雪無音たれも使はぬ言葉欲し 沖田佐久子
霧氷林無色無音の時の中 川崎俊子
魚扁平に干され 踏み絵の村 無音 伊丹公子 時間紀行
鳰潜きあとの無音に山眠る 野見山ひふみ
黄金虫の無数無音の咀嚼かな 原田喬
*ちちゅうする沓に音なし苔の花 蕪村「夜半叟句集」
これほどにふつて音なし春の雨 春の雨 正岡子規
ささ波の淡海音なし鰯雲 草堂
めぐり来る雨に音なし冬の山 蕪村
ペンキ屋の仕事音なし日の盛り 山口波津女
三つまたにわれて音なし春の水 春の水 正岡子規
凌霄花のさかり雀に羽音なし 宮坂静生 樹下
地に還るものに音なし一葉落つ 吉岡鳴石
天地音なし春昼に点滴す 野見山朱鳥
宵宵の雨に音なし杜若 蕪村 夏之部 ■ 探題實盛
年立つや音なし川は闇の中 久保田万太郎
怒濤よりほかに音なし秋時雨 中村汀女
明けがたよりさすがに音なし手樽の月 立花北枝
春疾風怒濤音なし訃報とし 文挟夫佐恵 雨 月
月焼に散る葉音なし蚊帳に入る 渡辺水巴 白日
枯萩は伐りて音なし君いかに 加藤楸邨
栗の飛ぶ外に音なし庵の夜 幸田露伴 谷中集
梅花藻の流れ音なし日の盛り 辻恵美子(栴檀)
椎の実の落ちて音なし苔の上 福田蓼汀 山火
死者入れて音なし月夜の昇降機 古賀まり子
沈丁に雨は音なし加賀言葉 細見綾子 黄 瀬
海に音なし雑草いきれ愛吉碑 諸角せつ子
海見えて波に音なし実朝忌 村川きぬえ
海見えて音なし昼の蚊遣香 目黒十一
湖の波寄せて音なし草紅葉 深見けん二
湖村音なし雪片かぎりなき夜空 鷲谷七菜子 雨 月
生きてゆく刻に音なし時計草 青木重行
秋潮音なし物を支へし力瘤も 中村草田男
紙屑をたきて音なし寒の土 桂信子 黄 炎
苗代に音なし旅の吾等過ぐ 沢木欣一 塩田
蒲公英や音なし川のへり塘 松岡青蘿
身を沈む河に音なし初あらし 岩田昌寿 地の塩
鈍き日の木立音なし畑打つ 南浪句集 南南浪句集、渡辺水巴編
長濤を以て音なし夏の海 三橋敏雄「長濤」
障子して夜川音なし菊膾 石田波郷
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山國
館音なし青蔦一つ欠いて通る 中村草田男
鬼やんま款款として羽音なし 大石和堂
鯉飛んで後に音なし秋の水 蝶 夢
●音韻
●音響 
人寰や虹架かる音響きいる 寺井 谷子
人寰や虹架かる音響きいる 寺井谷子
冬空へ内輪太鼓の音響く 清原眞治
夢にまで秋の蚊羽音響かせし 稲畑広太郎
春の海光のたまる音響く 西村我尼吾
汐風に鈴の音響き島四国 岡本メ一
発破の音響すすり舌焼くなめこ汁 加藤知世子
老杉へ音響かせて伊勢参り 松原弥生
鞭音響ク蘇聯邦ヘハ矛ノ滴リ 夏石番矢 真空律
音響となる大くさめ甲冑展 河合凱夫
●音叉 
こめかみに音叉の余韻花の冷え 熊坂てつを
ふるへあふ音叉のごとく曼珠沙華 夏井いつき
召びいだす《ラ音》音叉に鶴の空 柚木紀子
君寄らば音叉めく身よ冬銀河 藺草慶子
塔の底にて/音叉が/ひびく/母の景 高柳重信
夏柑一つかなしみ音叉の確かさにて 友岡子郷 遠方
恋猫に音叉を一つ打ちやりぬ 大石悦子
抽斗につかはぬ音叉春の虹 菅原鬨也
教会の音叉となるや梅の枝 鳥居おさむ
河骨の水に音叉のひびきかな 正木ゆう子 悠
満月のひとつ音叉を伴いし 豊口陽子
秋のひと音叉一と打ちしてゆきぬ 澁谷道
竹林に風の音叉や夏つばめ 水野すみ子
●音声 
一山に滝の音声冬こだま 野澤節子 遠い橋
寒行の音声谿の深きより 大橋宵火
川霧に音声鮭の遡上音 今野修三
昆布茶して音声やすみ十夜僧 河野静雲 閻魔
朝の戸に死者の音声半夏生 山口都茂女(藍生)
海施餓鬼音声舟の形なす 三好潤子
白猫と音声菩薩と向うべし 阿部完市 軽のやまめ
神寄せの音声 昇る 槇大樹 伊丹公子 山珊瑚
秋潮の音声(おんじょう)こもる窟かな 鷲谷七菜子 游影
紫陽花や師の音声のラヂオより 石田波郷「風切」
虫音のごと木乃伊の音声ガイド洩れ 高澤良一 燕音
●音程 
風鈴の音程狂はす風吹けり 小磯政江
●快音 
唐黍を*もぐ快音や空青き 川村ひろし
快音といふべし木の実吾を打つ 高木勝代
快音と言ふべし朝の威銃 西川織子
快音は解放の音落し水 塩川雄三
快音を谷に響かせ草刈機 高澤良一 寒暑
●楽音
●風音 
ここに吹く風音乾き麦の秋 弓木和子
さや~と風音すなり花吹雪 高橋淡路女 梶の葉
すこしづつ風音違へ葱畑 大嶽青児
たまたまの風音にかすむ冬日かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
はつかなる風音聴きて鶏頭花 久保美智子
ひぐらしの名残の声か風音か 岡 汀子
ほとほとと春来る鬼か風音か 山田みづえ 木語
クーラーの風音脳波とられをり 阿由葉正代
バード・デー風音のみの雑木山 永井敦子
一村は風音ばかり紙を干す 大西優九里
三味の音と聴きし風音蕪城の忌 竹沢大童
冬となる風音夜の子にきかす 古沢太穂 古沢太穂句集
冬めくといふ風音の離れぬ日 山田弘子 懐
分け入りて風音も又枯尾花 稲畑汀子 汀子第三句集
初茸食ふ森の風音聴くごとく 鈴木鷹夫 渚通り
初観音午後の風音つのりけり 林 明子
前山の風音荒し象山忌 近藤喜代子
吾子病めり風音家の隈に消ゆ 太田鴻村 穂国
夜の塔を風音越ゆる散紅葉 水原秋櫻子
夜の雪のやみし風音立ちにけり 赤城さかえ
大き蘇鉄に当る風音春暖炉 皆川盤水
寝袋に聴く風音や去年今年 望月たかし
山母子草いち早く枯れ風音もつ 中戸川朝人 尋声
山深く入りきたりて目をつむる神杉の秀を渡る風音 新井章
峠より風音かはる落し文 立木節子
川に来て風音ばかり花芒 廣瀬弘子
帚木に風音あって母が翔つ たむらちせい
帰り花空は風音もて応ふ 廣瀬直人
幕あがるごとき風音天狗茸 中戸川朝人 星辰
戸をたたく風音つよし破れ芭蕉 矢吹文子
扉を押して消えし風音復活祭 友岡子郷 未草
敦盛草風音笛の音色めく 小島鈴世
更けし燈に風音を聞く飾凧 鈴木鷹夫 渚通り
松に鳴る風音堅し雪の果 石塚友二 光塵
松取つて風音変る夜となりぬ 岡野スミ子
枯芦の風音通ふ旅寝かな 草間時彦 櫻山
枯蓮田暮れて風音のみ残る 滝 佳杖
枯野星よな降る音か風音か 富永小谷
梅散らす風音父のしはぶきか 伊藤京子
棉の花風音ねむくなるまひる 土屋紫信
母にのみ風音聞こえ菊月夜 古賀まり子 緑の野以後
水郷の風音となり蘆枯るる 石川多歌司
波の花飛ぶ風音と変りけり 下谷行人
波音の如き風音十三夜 石川喜美女
海へ吹く風音ばかり芽水仙 山田弘子 螢川
淀の洲や年の初風音となる 岡本高明
深井戸に風音こもる孟蘭盆会 宮坂静生 山開
湖辺ゆく跫音風音凍りけり 古賀まり子 緑の野以後
滝音を離れ風音秋の暮 野澤節子 遠い橋
烏渡る風音二つ三つ過ぎぬ 原裕 葦牙
父逝きし日の風音か柚子の天 古賀まり子 緑の野
牡丹の芽の風音となりしかな 原裕 『王城句帖』
狩猟期の風音さとき芒原 鷲谷七菜子 花寂び
玄界灘渡る風音九州場所 杉山花粉子
磯宮は風音ばかり水仙花 古賀まり子 緑の野以後
秋めける風音にして梅を干す 古沢太穂 古沢太穂句集
空高く風音はしる建国祭 太田鴻村
笛のごと風音聞こゆ梅林 大長林
紫苑咲く水音風音蓮華寺 小川笹舟
群落の水仙砂に風音して 古舘曹人 能登の蛙
耳鳴りを春の近みの風音とも 冨田みのる
耶蘇島は風音ばかり受難節 辻三枝子
胎の子に母は風音母に秋 池田澄子
芙蓉咲く風音は人人が聴いて 金子兜太
芦刈つて風音かはる湖国かな 伊藤伊那男
芭蕉より起る風音つなぎゆく 稲畑汀子
芭蕉裂く風音近し眠られず 龍胆 長谷川かな女
花独活や風音に昏る風蓮湖 石鍋みさ代
花辛夷谿は風音生むところ 山田弘子 こぶし坂
芹噛んで風音に聴く化粧川 藤城茂生
茶を汲めば風音遠し古暦 鷲谷七菜子
萩括り夜の風音一つ消ゆ 古賀まり子
蒲団してきく風音のおとなしき 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蘆火立ち上り風音巻き込みし 稲畑汀子
蜩のあとの風音他郷なり 菅裸馬
裏阿蘇の乾く風音猟期来る 野見山ひふみ
西行の聴きし風音清水汲む 坪野邦子(ホトトギス)
遠き樹のとほき風音秋の蝉 豊長みのる
遠き風音ちかみてあらぬ竹の秋 岸田稚魚 筍流し
銀河濃き木に風音のこもるかな 太田鴻村 穂国
銀漢や胸の風音鳴りやまず 仙田洋子 雲は王冠
鎌研げば秋野のどこか風音す 中村菊一郎
雨音にまさる風音男梅雨 成瀬正とし
風音か辛夷が冬芽裂く音か 高橋和志
風音がひかりとなりし枯木立つ 那須乙郎
風音にとぎれとぎれの寒念仏 足立登美子
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山國
風音に夜渡る鳥を思ふなり 山本竹兜
風音に如くはなかりき葛の花 斎藤玄 雁道
風音に山裾遠く秋早む 飯田蛇笏 椿花集
風音に急かされてゐる冬支度 石丸泰子
風音に潜みの燗を熱くせり 嶋野國夫
風音に眉つよく描き梅を見に 鍵和田[ゆう]子 浮標
風音に老の相なる*かりんの実 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
風音に追はるるこころ薬喰 鍵和田[ゆう]子 浮標
風音に頭もたげし春蚕かな 木村里風子
風音のいつもどこかに冬桜 高橋千鶴子
風音のしては止みけり観月会 奥田智久
風音のすき間を鳴きて葭雀 村田明子
風音のたかく玉巻く芭蕉かな 吉田冬葉
風音のふとこそばゆし耳袋 松本徒人
風音のまた追つかけて麦は芽に 中村汀女
風音のむなしき浮巣暮れにけり ほんだゆき
風音のやうに届きぬ瓢の笛 山田弘子 懐
風音の中に短日ありにけり 粟津松彩子
風音の夕空となり鴨帰る 古賀まり子 緑の野以後
風音の屏風の内に聞えけり 高浜虚子
風音の枯山吹の音となる 稲畑汀子
風音の栖みついてゐる古巣かな 窪田佳津子
風音の校舎はなれぬ大試験 植松安子
風音の真昼かそけき竹落葉 行方克己 知音
風音の空に溜る日籾選ぶ 宮津昭彦
風音の耳すり抜けて霞網 加古宗也
風音の耳にこもりて炉の名残 片山由美子 風待月
風音の虚空を渡る冬田かな 鈴木花蓑句集
風音の陸は椿の夜となりぬ 桜井博道 海上
風音はいつも谷間に桜狩 高木晴子
風音はとほくへ誘ふ木の実独楽 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
風音は数幹の竹夜の秋 阿部みどり女
風音は沼の底より一輪草 加藤憲曠
風音は深山の愁ひ浦島草 鈴木鷹夫 風の祭
風音は義仲のこゑ谷紅葉 高橋悦男
風音は高きを渡り竹の秋 森田喜美子
風音も亦冬帝の祝意かな 橋本 博
風音も夜ごろとなりぬ古簾 綾部仁喜 樸簡
風音や大つごもりへあと一夜 鈴木鷹夫 春の門
風音や寝酒の量を超ゆるとき 鈴木鷹夫 風の祭
風音や春逝くときは忍び足 桂信子
風音や鮟肝が出て酒荒ぶ 鈴木鷹夫 春の門
風音をかすかにつつみ彼岸花 松村蒼石 露
風音をつらぬく笛ぞかいつぶり 佐藤瑠璃
風音を伊賀に聞きをり松飾 鈴木鷹夫 大津絵
風音を千年聞きて滴れる 正木ゆう子 静かな水
風音を山ぬけと思ふ霧の中 高田蝶衣
風音を波音と聞き浦島草 鷹羽狩行
風音を耳に淋しむひよんの笛 山田弘子 螢川
風音を聴きに小諸へ弥生尽 宮坂静生 山開
風音を過客と聴けり山法師 鈴木鷹夫 春の門
颯々の風音なして秋の滝 羽部洞然
魔の山にのぼる風音しぐれかな 日野繁子
鳥渡る風音のして妻匂ふ 原裕 葦牙
鳥貝や風音遠き日暮来る 角川春樹
*かりんの実噛みしが遠き風の音 加藤楸邨
かいつぶりいつ浮かみても風の音 豊長みのる
かうかうと風の音ある寝釈迦かな 山口草堂
かけまはる夢や焼野の風の音 上島鬼貫
かるたの子去にけり風の音となる 徳永夏川女
さいかちや吹きからびたる風の音 呉江
さる程に秋とはなりぬ風の音 秋風 正岡子規
すり減らす秋や木賊に風の音 横井也有 蘿葉集
とっぷりと柚子湯につかる風の音 林 民子
ともに聞くなら蘆渡る風の音 対中いずみ
とろろ汁ささくれてきし風の音 佐藤喜代子
ひよんの笛吹けば波音風の音 稲畑汀子
ふらここをこがねば風の音ばかり 仙田洋子 橋のあなたに
やゝ寒く垣ふきぬける風の音 『定本石橋秀野句文集』
ゆく年やしめきりてきく風の音 久保田万太郎 流寓抄
一切無野焼きの跡の風の音 市野沢弘子
一夜にて落葉となりし風の音 小池弥栄
一枚の枯葉に触るる風の音 稲畑汀子
三月や夜半ふきおこる風の音 久保田万太郎 流寓抄以後
九月尽くポプラに風の音満ちて 林桂 ことのはひらひら 抄
人参を掘り横抱きに風の音 小笠原和男
人日や耳のうしろの風の音 川上弘子
人穴に折ふし寒し風の音 上島鬼貫
伊勢荻や鵜の進む夜の風の音 馬仏 五 月 月別句集「韻塞」
元日やゆくへもしれぬ風の音 渡邊水巴
元朝のふかく目覚めし風の音 山口草堂
冬隣り力籠りし風の音 岡村 里人
凍豆腐軒に諏訪湖の風の音 安藤衛門
厄日過ぎし山国にゐて風の音 岸田稚魚
古草に座す水の音風の音 中島木曽子
右足袋を右に履かせて風の音 仲村青彦
吾亦紅風の音にも色沈む 渡辺桂子
埋火や客去ぬるほどに風の音 富田木歩
埋火や戸ざせし後の風の音 小澤碧童 碧童句集
墓囲ふいつもどこかに風の音 佐藤明日香
大杉に風の音きく寝正月 時広智里
大樟に凭れば年ゆく風の音 岸原清行
大股に波郷忌の来る風の音 殿村菟絲子 『晩緑』
太葱に関八州の風の音 千田稲人
子の名呼べば返るは寒の風の音 阿部みどり女 月下美人
寂鮎の川底までも風の音 三橋迪子
寒月や何やら通る風の音 寒月 正岡子規
寒聲やかへりてあとは風の音 寒声 正岡子規
寝て聞けば外は冴返る風の音 冴返る 正岡子規
屋根替へて余りし茅に風の音 西山 睦
山梨の熟れて変りし風の音 丹羽啓子
山茶花に月さし遠く風の音 加藤楸邨
山風の音を溜め込む桜かな 高澤良一 燕音
島あれば松あり風の音すゝし 涼し 正岡子規
干足袋に日の古びゆく風の音 三橋迪子
年の夜やもの枯れやまぬ風の音 渡邊水巴
年の瀬や水の上ゆく風の音 覚範
庵寂びぬ落葉掃く音風の音 落葉 正岡子規
心ほぼ起きて秋たつ風の音 上島鬼貫
忌日なり又冴え返る風の音 冴返る 正岡子規
放蕩や水の上ゆく風の音 中村苑子
救急車飛ぶ椎の実の風の中 古舘曹人 砂の音
数珠玉に風の音する河童淵 阿久津渓音子
星月夜さびしきものに風の音 楓橋
春めくと言ひたるのちの風の音 那須 乙郎
春や憂きことのひとつに風の音 佐藤まさ子
春蘭や山の音とは風の音 八染藍子
晩秋や蔵の中吹く風の音 中川宋淵 遍界録 古雲抄
暮れがての風の音聞く座禅草 伊藤京子
月もなし時鳥もなし風の音 時鳥 正岡子規
月原やわが影を吹く風の音 臼田亜浪 旅人
月影の湖に舟なし風の音 月 正岡子規
木箱より雛が出て聴く風の音 佐川広治
松蝉の鳴かずなりたる風の音 吉武月二郎句集
枯つたと細りゆく身や風の音 島田五空
枯木折るなほ蓄へし生まの音 河野南畦 『風の岬』
枯蘆や振りかへりゐて風の音 仙田洋子 橋のあなたに
栗拾ふ声か朝戸に風の音 及川貞
栴檀は実ばかりとなり風の音 坂本宮尾
根雪かと見ればおそろし風の音 立花北枝
桃の日や高空にある風の音 鈴木鷹夫 千年
桐の実の孤独へ風の音乾く 古市絵未
梟の啼いてしまへば風の音 小出秋光
極月のひと日濤立つ風の音 矢野芳湖
檀の実持てば嶺越しの風の音 加藤楸邨
水巴忌や山笹わたる風の音 星野麥丘人
水澄んで松ばかりなる風の音 荒井正隆
水音も風の音にも九月かな 副島いみ子
浮巣いま蛇の視野なり風の音 鈴木鷹夫 千年
涸瀧の落ちゆく末は風の音 山口草堂
涼しさや芭蕉に起る風の音 涼し 正岡子規
湖よりの風の音きく宿浴衣 豊島ミヤ子
湖冥し避暑期果てたる風の音 下村ひろし 西陲集
灌仏や雲なき空を風の音 岩田由美 夏安
炉開きの炭寄り添ふに風の音 櫛原希伊子
烏瓜みがかれている風の音 穴井太 原郷樹林
煤逃げの伊豆に二泊の波の音 鈴木鷹夫 風の祭
煮凝やいつも胸には風の音 石原八束(1919-98)
煮凝や時折風の音とぎれ 仙田洋子 橋のあなたに
熊穴に入るや孤独の風の音 中谷真風
爽やかやケルンにつどふ風の音 飯村弘海
猪の荒肝を抜く風の音 宇多喜代子 象
瓢(ひょん)の笛吹けば波音風の音 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
田一枚刈りたるあとの風の音 橋本榮治 麦生
白鳥は美のみにあらで風の音 渋谷道
真弓の実持てば嶺越しの風の音 加藤楸邨
短夜や葎にのこる風の音 烏不關句集 織田烏不關、吉田冬葉選
秋たつや川瀬にまじる風の音 飯田蛇笏(1885-1962)
秋の蝉だらうか風の音だらうか 蔦三郎
秋の野や草の中ゆく風の音 芭蕉
秋夕焼海に転がる風の音 杢屋敏代
秋立つや川瀬にまじる風の音 飯田蛇笏
種選るや野を吹き覚ます風の音 西村信男
穂すすきになりきって聴く風の音 中村菊一郎
窓秋忌となる元朝の風の音 寺井谷子
竹秋の夜は夜をわたる風の音 宋淵
笹床を月てらしをり風の音 乙字俳句集 大須賀乙字
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人
粽解いて蘆吹く風の音聞かん 蕪村「蕪村句集」
粽解て芦ふく風の音聞ん 蕪村
紀の国の風の音聞く桃畑 大久保滋子
縞織つて十一月の風の音 鷲谷七菜子 花寂び
胸にしまふ黄葉の山の風の音 仙田洋子 雲は王冠
臘梅に聴く風の音涛の音 青柳志解樹
臘梅や樅をはなるる風の音 古館曹人
芙蓉咲けり試験期近き風の音 落合伊津夫
花の夜の残り御飯と風の音 池田澄子
花合歓や遥かな風の音うつろふ 山口草堂
花豆の花てつぺんに風の音 幸田昌子
草かげろふさびしさは遠き風の音 柴田白葉女 『冬泉』
草木瓜のひとひらとばす風の音 加藤楸邨
菊月夜風の音にも母老いゆく 古賀まり子 緑の野
菜の花やせせらぎの音風の音 平野句雀
菩提子や山のぼり来る風の音 岸田稚魚 筍流し
落花せん耳もおどろく風の音 すて 俳諧撰集玉藻集
葛湯とく雨かもしれぬ風の音 正木ゆう子 悠
葦枯れて髄となりゆく風の音 岡本まち子
蓮如忌や藪をはなれぬ風の音 粟津水棹
薄氷にいま曇り来し風の音 小林康治
蚊帳に寝て母在る思ひ風の音 杉本寛
蛇の尾の消え空谷は風の音 鷲谷七菜子 花寂び
蛇穴に入る天領の風の音 小原寿々美
蜘蛛恐ろし風の音にもさがりくる 今井杏太郎
蜻蛉の風の音連れ行き来する 日野正人
行く秋や水の中にも風の音 行く秋 正岡子規
西か東かまづ早苗にも風の音 芭蕉
見えぬ眼に風の音して秋彼岸 加藤鏡子
解く帯は風の音する冬去るか 寺田京子 日の鷹
身にしむや補聴器で聞く風の音 佐々木平一
輪飾をくぐるや遠き風の音 鈴木鷹夫 春の門
近江路は秋蚕あがりし風の音 杉浦範昌
遠山の霧よりとどく風の音 椎橋清翠
野ざらしの驢馬に色なき風の音 加藤知世子
銀杏が落ちたる後の風の音 中村汀女
銀杏のみどりを皿に風の音 三村絢子
鐘の音を彼岸へ運ぶ風の船 内田正美
障子打つ風の音のみ臘八会 肱岡恵子
雨の音風の音にも慣れて冬 高橋謙次郎
零余子づる引けばほろほろ風の音 中野万里
霧すぎて笹原わたる風の音 石橋辰之助 山暦
青胡桃木曽にむかしの風の音 千手和子
風の音かそけき秋を惜しみけり 高橋淡路女 梶の葉
風の音しだいに近し今蓮に 岩田由美
風の音する天井や嫁が君 濱田木耶ラ
風の音なき日は淋し紙を漉く 原田青児
風の音にくさる菌や秋の霜 渡辺水巴 白日
風の音の遠きかがひの青筑波 文挟夫佐恵 遠い橋
風の音はげし時雨の音はげし 高木晴子 晴居
風の音は山のまぼろしちんちろりん 渡邊水巴
風の音ばかりを聞きて囮守 木田千女
風の音ばかり峡田の晩稲刈 柴崎久太郎
風の音も土用のうちとなりにけり 木津 柳芽
風の音やがて瀬の音琴始 木内怜子
風の音や汐に流るゝ萩の聲 幸田露伴 江東集
風の音ゆうべを待ちて灯るべし 和田悟朗 法隆寺伝承
風の音上空にありむし暑し 稲畑汀子
風の音日の入る森の落葉哉 落葉 正岡子規
風の音日の音枯葉ささやける 藤原たかを
風の音晩秋老人たち黙つて 清水径子
風の音朴の若葉に来て消ゆる 稲畑汀子「障子明り」
風の音枯葉の音にふりむきし 田中起美恵
風の音梢に止め冬欅 百瀬美津
風の音空にかたまり枇杷咲けり 滝川 壺風
風の音聞えくるなり鵙の贄 青柳志解樹
風の音身近かに聞きて春惜む 大場白水郎 散木集
風の音通りゆくとき枯芒 稲畑汀子 汀子第二句集
風の音遠のきし後に落葉かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
風の音遠汽車の音おでん煮ゆ 大橋敦子
風鈴の音を消す風の夜空覗ふ 原田種茅 径
駒草の岩間を走る風の音 五味連(ホトトギス)
高稲架の乾ききつたる風の音 鷹松 月女
高空を風の音過ぐ百日紅 冨田みのる
鹿の目の奥ごうごうと風の音 寺島敦子
鹿鳴くと言ふ風の音ばかりかな 千代田葛彦
●楫音 
川面や花火のあとの楫の音 白雄
●金声
●蚊鳴り
●鐘韻 
鐘韻をこころに聴くや千代尼の忌 永瀬幸子
除夜鐘韻即時過現未如是我聞 林昌華
●川音 
「川音が聞こえる」と母朧かな 肥田埜勝美
あけがたの川音ゆるみ草雲雀 杉本 寛
めつむりて夜橇にあれば川音も 山口青邨
オリオンや川音近き露天の湯 二村美伽
円き川音切る人参の色やすらか 飯田龍太
冬うらら川音となる山の音 中里武子
古町の川音に沿ひ初詣 田村了咲
古郷に老いて川音しぐれけり 鈴木花蓑句集
夏草を刈りて川音近くせり 内田八重子
夕べには川音変はる合歓の花 大貫トミ
大瑠璃や草川音もなく流れ 小川斉東語
寝正月川音そして山の音 戸塚時不知
峡暮れて川音ばかり十三夜 稲畑汀子 汀子第二句集
川原湯に失せし川音闇深し 大山久恵
川音がふくらんでくる夏の夕 川崎享子
川音が曲るからたちの花の下 古賀まり子 緑の野以後
川音す雪代岩魚皿にのせ 森澄雄
川音とある蔵景色年立てり 下田稔
川音と同じ夜空の虎落笛 廣瀬直人
川音と土堤を隔てゝ花西瓜 橋本花風
川音にある十六夜の粟畑 岡井省二
川音にふたたび出合ふ斑雪村 古賀まり子
川音に二日過しぬたかしの忌 榎本好宏「三遠」
川音に昏れゆくロッジ夜鷹鳴く 廣田恵美子
川音に貴船の蝶の透くばかり 奥坂まや
川音に首浮くごとし風邪心地 中西夕紀
川音のあるかなしさや果樹植うる 村沢夏風
川音のつつがなき日や青き踏む 澤村昭代
川音のやがて草屋に桐火鉢 古舘曹人 樹下石上
川音の冬めきて子持鮠うまし 山口青邨
川音の切なくなりぬ朝寝覚め 雨宮きぬよ
川音の勝りて遠き蝉しぐれ 加藤直子
川音の方へ片寄り生簀鮎 黛執「野面積」
川音の春の座敷のさかな シヤツと雑草 栗林一石路
川音の昼はもどりて花野かな 千代尼
川音の時雨や旅の窓の下 竹冷句鈔 角田竹冷
川音の時雨れて今もランプなり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
川音の林年逝く日に満ちて 澤村昭代
川音の淋しもねぷた見し夜は 福島壺春
川音の町へ出づるや後の月 千代女
川音の空へ抜けゆく青胡桃 小島健
川音の空よりひびく秋日和 村山たか女
川音の聞こえる焚火美しく 北原志満子
川音の領しをれども威銃 八木林之介 青霞集
川音の高みのなかの接木かな 鷲谷七菜子 天鼓
川音は粗に秋しぐれ密に過ぐ 安住敦
川音は里の心音鳥交る 松本つね
川音は鈴のやうなる小六月 澤村昭代
川音へ顔をさらしぬ冬隣 山上樹実雄
川音やあらしをながす冬の松 野坡
川音やからりと揚り柿若葉 高井武子
川音やむくげ咲く戸はまだ起ず 立花北枝
川音や声遠くなる鉢叩 雉子郎句集 石島雉子郎
川音や夜の枝豆つかみいづ 岩田昌寿
川音や寝覚に変る梅の雨 宋屋「瓢箪集」
川音や木槿咲く戸はまだ起きず 北枝
川音や草萌近き崖を去る 加藤知世子 黄 炎
川音や萬馬肅として霧の中 霧 正岡子規
川音や蕗叢を行く膝の丈 藤田あけ烏 赤松
川音や起伏つゝめる葡萄棚 手島靖一
川音をたのしむ夜の火桶かな 増田龍雨 龍雨句集
川音を抜け出て蝶の身の軽し 山崎千枝子
川音を消したる暮雪つのりけり 行方克己 昆虫記
川音近し襖のしみは櫓滴ならん 栗生純夫 科野路
旅人に野菊の下の川音かな 佐野良太 樫
春の川音も流れてをりにけり 下田実花
村を去る人に川音しぐれけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
松露掘りすすむ川音腕の中に 栗林千津
桐油の実や川音足下より来る 大平芳江
梅雨の夜の川音妻の膝くづれ 石橋辰之助 山暦
森に入り雪解北上川音失くす 太田土男
母の忌も黄瀬の川音(かはと)もかすみたり 文挟夫佐恵
沙羅苗を売るあたりにて川音消ゆ 中戸川朝人 星辰
淙々と川音近し夏蚕棚 荒井正隆
渡良瀬の川音もなき大暑かな 辻桃子
火まつりの果て鞍馬川音もどす 能村登四郎
炬燵寝も酔のあげくや川音す 皆川白陀
猪鍋や川音へだつ白障子 金久美智子
真つすぐに届く川音注連飾る 光吉高子
秋めきて川音夜の山のぼる 石原舟月
種茄子川音つくるまでかがやく 栗生純夫 科野路
笠箱や跡の川音夕しぐれ 調泉 選集「板東太郎」
簗かかる前の川音聞きに来し 飯島晴子
肩を越す芒川音の四方より 桜井博道 海上
舟つこ流し涯てて川音もどる町 山元志津香
花火果て闇に川音よみがへる 作田文子
蕎麦の花川音近き檜枝岐 高萩弘道
踊り見に来て川音のよろしもよ 細見綾子 黄 瀬
身の芯に川音たまる湯ざめかな 黛執
障子して夜川音なし菊膾 石田波郷
雨やみて裏の川音きり~す 滝井孝作 浮寝鳥
雪もよひ川音ふかくこもるなり 柴田白葉女 花寂び 以後
雪散るや干曲の川音立ち来り 臼田亞浪 定本亜浪句集
露時雨川音しぐれ副へりけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
馬車止る度川音の夜寒かな 雉子郎句集 石島雉子郎
鮎のぼる川音しぐれと暮れにけり 石橋秀野
●川の音 
うそ寒の起居の中の川の音 草間時彦
かりがねの遠音もあらむ川の音 小松原みや子
冬の崖すでに鵜川の音いそぐ 松井利彦
冬川の音なく氷る孤りの夜 小島健 木の実
古草に昨日より近き川の音 箕村菜実子
四眠いま*さめし夏蚕に川の音 村岡 悠
夕顔の実に汽車の音川の音 知久芳子
大文字点火を待てる川の音 阪田昭風
岩の上に冬川の音通ひをり 飯田夷桃
川の音おわら流しの遠ざかる 高澤良一 宿好
川の音の十灯生きる手術室 寺田京子 日の鷹
川の音ほたるさっぱり出なくなり 高澤良一 さざなみやつこ
川の音彼岸の空に届きをり 高澤良一 随笑
川の音金水引草に触れてをり 藤田美代子
星飛びしあと山の音川の音 松村多美
木曽川の音の中なり籐の椅子 長谷川 櫂
渓川の音も彩添へ夏座敷 森下やすえ
白鳥の川の底より琵琶の音 西脇はま子
百日の旱に耐ふる川の音 廣瀬町子「夕紅葉」
草川の音なく急ぐ西行忌 山田みづえ
菱の花北上川の音もなし 加藤知世子
葛の空笛吹川の音と知る 森田峠 避暑散歩
踊着のままのねむりに川の音 渋谷道
門川の音なく暮れて萩芒 星野椿
雪暗や祈りのこゑの川の音 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
頼政忌きのふでありし川の音 関戸靖子
黄鶺鴒くまなく晴れし川の音 平野千江
●かんかん 
あきらめた夜を団栗かんかん鳴る 櫂未知子 蒙古斑
かんかんと日のあたりをり祭幕 成瀬正とし 星月夜
かんかんと炭割る顔の緊りをり 石田波郷
かんかんと炭熾りをり魚簗の晴 辻桃子
かんかんと白樺聳ちて荒ごころ 臼倉真沙尾
かんかんと磴転げ落つ遍路杖 鈴木鷹夫 春の門
かんかんと秋日音顕つ蝶双つ 武政 郁
かんかんと鐘なるときの花の澪 富澤赤黄男
かんかんと鳴り合ふ竹や神無月 山田みづえ
かんかんに一つ置きたる大栄螺 綾部仁喜 樸簡
かんかん照り蟻も眩暈をおぼえけむ 高澤良一 素抱
かんかん照り雀翔つさへ億劫な 高澤良一 宿好
ざくろ咲き通院かんかん照りの道 高澤良一 素抱
やや眠き顔にかんかん壬生の鉦 細川加賀 生身魂
大寒の鉦かんかんと野は平ら 成田千空 地霊
寒日の剥錆工(かんかんむし)の揺られ業 友岡子郷 遠方
寒椿日はかんかんと鳴つてをり 小檜山繁子
島畑のかんかん照りや厄日前 岸田稚魚
巡礼の秩父はかんかん照りの道 高澤良一 宿好
幾百の沼かんかんと凍りけり 宮坂静生 雹
流木の夏かんかんと別れけり 大串章
涙なし蝶かんかんと触れ合いて 金子兜太 暗緑地誌
深川のかんかん照りの祭かな 大木あまり 火球
渓流を越ゆかんかんと冬木伐 中拓夫 愛鷹
滝径のかんかん照りも百歩ほど 嶋田麻紀
白い医師に遭えばかんかん草の空 加川憲一
祖父の代からかんかん照りの帚草 原田喬
鉄工場かんかん桜遠ざかり 廣瀬直人
阿蘇に向く笑ひかんかん凍りけり 殿村莵絲子 牡 丹
鶴ころろ鷲かんかんと啼いたりき 山口誓子
かん~と竹たふしをる薄暑かな 飴山 實
●甲走る 
悴んで言はずもがなを甲走る 小出秋光
●擬音 
囀りの擬音ひねもす峠茶屋 田中政子
川涸れて不死男の擬音うつくしき 平井照敏 天上大風
春の夜のスタヂオに吹く擬音の笛 横山白虹
雷鳴の擬音江戸村忍者劇 倉橋羊村
●聞え来 
夫初湯何やら唄も聞え来る 松本喜美
波聞え来る摘草の夕ぐもり 大谷句佛 我は我
物音のよく聞え来る秋の晴 山下美典
聞え来る人語も音や秋の山 嶋田一歩
踏青のやがて校歌の聞え来る 鈴木鷹夫 風の祭
鱚釣や聞え来りし島の鐘 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鵤鳴く樹海を越えて聞え来し 長谷川草州
●きこきこ 
きこきこと乳母車野を行けば蝶 福田蓼汀 山火
すきものの歯のきこきこと海鼠たぶ 飯田蛇笏
鳥わたるこきこきこきと罐切れば 秋元不死男
麦の芽出づ吾子三輪車きこきこと 大熊輝一 土の香
●聞ゆ 
こゝに来て聞ゆ呪文や枯葎 河野静雲 閻魔
まづ聞ゆ遠きところの火事の鐘 後藤夜半
わが心ひそかに聞ゆ鉦叩 中村汀女
万歳の舞声聞ゆ梅が門 几董
亡き人語さまざま聞ゆ春豪雨 田川飛旅子
初湯より呼ぶ父の声今も聞ゆ 田川飛旅子 『山法師』
吊柿一連讃美歌も聞ゆ 村越化石 山國抄
向日葵に香煙蘇婆詞とのみ聞ゆ 下村槐太 天涯
唱歌聞ゆ天長節の朝日哉 天長節 正岡子規
墓原や月に詩うたふ聲聞ゆ 月 正岡子規
大熊手売れし手打ちの又聞ゆ 高橋淡路女 梶の葉
威し銃城の天守にゐて聞ゆ 宮下翠舟
子を呼ぶ声しきりに聞ゆ釣瓶落し 大谷恵教
寒鴉海より聞ゆ海に出て 木村蕪城 寒泉
山越しに濤音聞ゆ十三夜 西山泊雲 泊雲句集
川向ふよりも夜番の柝の聞ゆ 中谷木城
春菊や豆腐屋の声聞ゆ也 春菊 正岡子規
時鳥しはぶき聞ゆ堂の隅 時鳥 正岡子規
木の実降る一つ~の音聞ゆ 高浜年尾
枯るる藻の根伝はり聞ゆ魚の息 原 月舟
枯萩の風聞えしよ又聞ゆ 小川千賀
柚子湯ほのぼのと牛啼く声聞ゆ 松村多美
桑の芽や生命の聞ゆ聴診器 森 啓子
死児のそば団扇を置きし音聞ゆ 萩原麦草 麦嵐
滝音のはつかに聞ゆ蔓あぢさゐ 高澤良一 燕音
牡丹園に打たるる杭の音聞ゆ 萩原麦草 麦嵐
玄界の潮騒聞ゆ芒原 江頭 景香
硬き声聞ゆ蜈蚣を殺すなり 相生垣瓜人 微茫集
立よれば入相聞ゆ嵯峨の柿 成美
端山路や曇りて聞ゆ機初 飯田蛇笏 霊芝
背戸させは表に聞ゆ落し水 柚味噌(木母遺稿) 安田木母、秋田握月編
舟渡御のかたみに聞ゆ囃し鉦 高濱年尾 年尾句集
蛇笏忌の岩うつ滝の音聞ゆ 飯田龍太
衣更へて遠くの汽笛まで聞ゆ 加倉井秋を 午後の窓
運動会どこかにあつて風に聞ゆ 稲葉緑風
防風を探して海のいくさ聞ゆ 萩原麦草 麦嵐
除夜の鐘吾身の奈落より聞ゆ 山口誓子
雨音の優しく聞ゆ鑑真忌 上出曙美
雪を掻く一人のシャベル夜は聞ゆ 有働亨 汐路
●軋み 
うしろ手のふすまの軋みこつごもり 北川孝子
きつつきや軋み開けたる荘の木戸 松本澄江
さるすべり軋みをもらす夢殿か 中田剛 珠樹以後
ちちははを容れ冬霧の軋みだす 山口 剛
ひとところ軋みて車内扇風機 辻田克巳
みちのくの星の軋みもそぞろ寒 山崎千枝子
乳母車むかし軋みぬ秋かぜに 島 将五
人待つやベッドの軋み錐のごと 那須辰造 茄弓堂一夜句集
仮橋の軋みに癖や芦の角 中戸川朝人 尋声
兜虫いたるところが軋みだす 中田剛 珠樹以後
凍らむと湖は夜通し軋みをり 高橋たか子
初開扉きりりきりりと軋みつつ 東條素香
卒業の椅子いつせいに軋みけり 斎藤朝比古
厚氷びしりと軋みたちあがる 楸邨
和箪笥の軽き軋みや更衣 横田澄江
外科病棟何かが軋み末枯るる 中村明子
子の部屋の夜長の椅子の軋みかな 山田弘子 初期作品
巴里祭扉軋みて雨にひらく 小池文子 巴里蕭条
広場に裂けた木 塩のまわりに塩軋み 赤尾兜子
星々の軋み大原雑魚寝かな 小林貴子
暖房車軋みつ渡る夜の川 秋武久仁
望の夜に軋みて鳴るや五重の塔 中久保白露
桔梗は嬰を生まんとて軋みけり 木村美智子
梅の実をもぐたび梯子軋みたり 中田剛 珠樹以後
櫓の音のかすかな軋み行行子 横井洋子
水郷にのこる無月の櫓の軋み 志々見久美子
流星のあと軋みあふ幾星座 福永耕二
流氷の軋み鏡は闇に立つ 小檜山繁子
湯煙や軋みて止る日覆馬車 栗原政子
潜戸のわづかな軋み卯月尽 徳田千鶴子
炎昼の街に電車の軋みけり 森下美津子
炭馬のくびきの軋み紛る街 成田千空 地霊
爽やかや漕ぐにおくれて櫓の軋み 片山由美子 天弓
白地着て星の軋みを真近にす 火村卓造
白鳥(くぐひ)の歩スノータイヤに似し軋み 平井さち子 鷹日和
空稲架の風に軋みて日暮けり 羽部佐代子
竹林の奥軋みゐる雪催 岡部名保子
筒鳥や腕の軋みを撫でねむる 廣島美恵子(野の会)
籐椅子の軋みは己が身のきしみ 八染藍子
綿虫とぶ古塔の木組み軋みさう 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
自転車の軋みを笑ふ寒鴉 脇本幸代
花冷えや聖堂固き椅子軋み 冨田みのる
落葉松を切り出す軋み草紅葉 殿村莵絲子
蔵の戸の明治の軋み藪椿 羽部佐代子
蔵梯子残る寒さに軋みけり 大橋一久子
軋みたる艪の如きこゑ燕より 中田剛 珠樹
軋みつつ軋みつつ梅青むとき 中田剛 珠樹
軋みゆく仙山緑や西日中 竹内牧火
軋み合う骨誰も手提げと傘ぶらさげ 八木三日女 落葉期
軋み着く浜の電車や磯開き 守谷順子
遠颱風炎天の奥軋み鳴り 相馬遷子 雪嶺
開山像軋み開かれ初法座 渡辺あき子
雪の夜のうつばり軋み父いま亡し(父葬送) 細川加賀 『傷痕』
雪握りたしかな軋み癒ゆるべし 平井さち子 鷹日和
雪渓の一歩に小気味よき軋み 白井剛夫
霧ふかむ木々の軋みを血の潮に 岩間愛子
露の夜に黍殻枕軋み寝る 百合山羽公 寒雁
麦扱機折り折り軋みつゝ無事に 古賀三春女
●軋む 
あたゝかや明治の腕車軋むとき 『定本石橋秀野句文集』
うまや出て軋む太肉田掻馬 百合山羽公 寒雁
さすらいに似て固き椅子ひくく軋む 穴井太 土語
らっきようを泣き軋むほど洗いけり 石川登志子
ブランコ軋むため傷つく寒き駅裏も 赤尾兜子
万緑に大吊橋の軋む音 山下美典
二階まで軋む階段遍路宿 塩野邦江
冬の虫何かが軋むごとく鳴く 保坂伸秋
冬銀河軋む扉を開け放つ 前田秀子
初詣丹の橋軋む阿弥陀堂 遠藤アサ子
喜多院の回廊軋む花の冷え 島田ヤス
回廊の軋む音してつつじ燃ゆ 関 ただお
夏至ゆうべ地軸の軋む音少し 和田悟朗
夜の底の流氷軋む音にこそ 米田双葉子
夢に障子醒むれば軋む船の壁 田川飛旅子 花文字
大佐渡の軋む凩はじまれり 渡邊千枝子
姫歩きそれでも軋む川床座敷 石河義介「恐山」
子の椅子の二階に軋む夜長かな 内藤信子
宿坊の廊下軋むや春の宵 内田八重子
寄居虫売漁港に軋む音ばかり 窪田英治
庭先に江の電軋む花八つ手 水原春郎
廃船のわづか軋むは凍らぬため 鈴木鷹夫 渚通り
廊どこか歪みて軋む流氷期 金箱戈止夫
星月夜水車は夢を巻き軋む 佐々木幸子
春の雪降る下宿屋の階軋む 対馬康子 吾亦紅
暑い夜のブランコ軋む基地の網 仲村阿莉
梁の軋む音して夜のしばれ 田村了咲
流氷のモザイク軋む夕疾風 池森昭子
流氷の峨々たる下に海軋む 大立しづ
流氷の白き時間が軋むなり 倉田素香
流氷の軋む港に灯もやらず 中戸川朝人 星辰
流氷哭き月下の港軋むなり 豊長みのる
浮桟橋軋む底より秋の声 野木民子
炎昼に軋む二本の樹のごとし 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
熊手華麗軋む人ごゑ夜の天に 石原八束 空の渚
町裏に都電の軋む飾売 藤木竹志
砂に寝て砂の軋むや秋日和 山口誓子
絹糸の軋む着物をとく夜なべ 田坂かつみ
羊歯軋む井戸まで森のかわいた径 久保純夫
舫舟軋む潮来の花菖蒲 深山佳宏
艫網のぎぎぎと軋む冬の朝 福田忍冬
萱草や柱状節理軋むごと 神尾季羊「日向」
薄氷のあの家この家軋む音 文挟夫佐恵
藤椅子に二十世紀の音軋む 吉年虹二
蚊喰鳥艀溜りの軋む音 皆川盤水
行き交ひて浮橋軋む夕ざくら 犬塚幸子
覚めをれば寒さのはてに軋む家 石塚友二
貝拾い石拾いわが骨軋む 吉川真実
身のどこか軋む音して麦の秋 廣瀬町子
身の軋むかすかな痛み単帯 つつみ真乃
軋む莢豆ステンレス流し台 品川鈴子
遠方より朋ありかみきり虫軋む 星野昌彦
鉾の灯にとほく手機の音軋む つじ加代子
階少し軋むも月の奈良ホテル 水田むつみ
風葬や木の芽が軋む島の蔭 古館曹人
颱風の竹の軋むを耳に坐す 石川桂郎 高蘆
鳥帰る浮き桟橋の軋む音 能田多佳子
●衣擦れ 
いずれ土中の/耳 崩れつつ/葉ずれ/衣ずれ 折笠美秋 火傅書
そら泣きの木偶の衣擦れ雁来紅 上窪則子
ひと蹴りに衣ずれ一つ初蹴鞠 鈴木鷹夫 春の門
プラタナスは母の衣ずれ秋立ちぬ 北原志満子
在りし日の妻の衣ずれ萩の風 吉田三船
声明の僧の衣擦れ施餓鬼寺 船橋とし
神々の衣ずれ天に霧氷ちる 太田 昌子
花下にして鬱金桜の衣ずれを 西村和子 かりそめならず
衣ずれをたのしむ歩巾初茶会 小板橋初子
衣擦れといふあえかなる秋の声 山崎冨美子
衣擦れといふかそけさの春の闇 源 鬼彦
衣擦れのあと寂として春の雪 中村苑子
衣擦れの淋しさとあり盆の家 杉本雷造
衣擦れの淑気やまして辻が花 鈴木鷹夫 千年
衣擦れの行き交ふ都踊かな 佐土井智津子
衣擦れやルイ王朝の壁炉の間 品川鈴子
軽く病み衣ずれ添へり温室の花 鍵和田[ゆう]子 未来図
●跫音 
からまつの下の跫音十二月 小山森生
とどまりて跫音消ゆる冬薊 栗生純夫 科野路
とどまれば跫音もやむ雪山路 福田蓼汀 秋風挽歌
べつたら市歳が跫音たてはじむ 宮本由太加
わが跫音聴きし母亡く木瓜咲きぬ 堀口星眠 営巣期
ザトペック冬天を馳す跫音す 高澤良一 宿好
人の世は跫音ばかり韮の花 中村苑子
会ひ別れ霙の闇の跫音追ふ 佐藤鬼房
冬の山跫音熄めば吾もなし 福田蓼汀 秋風挽歌
劫火よりひく跫音を露にひく 石原八束 人とその影
古草や跫音もなく人過ぐる 勝又一透
垣添ひに跫音のこる昼さくら 太田鴻村 穂国
夏菊の墓跫音を吸ふごとし 高草矢江
寒に入るわが跫音は聴くべかり 加藤楸邨
新雪が消すわが跫音わが思ひ 古賀まり子 緑の野以後
春の跫音犬に嗅がれて蝌蚪沈む 田川飛旅子 花文字
春暁の勤め一途にゆく跫音 山口誓子
晩年の跫音さらさら更衣 古賀まり子 緑の野
月蝕をべたべたと子の跫音昇る 林田紀音夫
朝寝せり幼き跫音階鳴らし 堀口星眠 営巣期
木兎の杜ゆくや跫音吸ひとらる 川口重美
楢落葉跫音寄せ合ひ葬りけり 鳥居美智子
海を来し跫音ばかり秋となる 松澤昭 安曇
湖辺ゆく跫音風音凍りけり 古賀まり子 緑の野以後
炎天に 跫音きえて 哄笑はのこる 富澤赤黄男
無の跫音の 沼氷る ひびきよ 富澤赤黄男
畳擦る跫音も淑気満ちにけり 堀口星眠
畳擦る跫音迎へ火焚きをれば 後藤綾子
白豪寺坂なる露の跫音かな 鷲谷七菜子 花寂び
秋の風跫音うしろより来る 楸邨
稲田へぬけてゆく跫音を更けてきく 川島彷徨子 榛の木
立去りし跫音なくて寒念仏 後藤夜半
花うらゝ庭踏むわれら跫音す 渡邊水巴 富士
芽ぶく道わが跫音にわれいそぐ 川島彷徨子 榛の木
若き日の跫音帰らず夜の落葉 堀口星眠 営巣期
草市や老婆跫音なき者連れて 内藤吐天
萩をくる跫音妻と知りゐたり 大野林火
蛙遠く跫音もせず暮る二階 芹田鳳車
街人の跫音ちかく牡蠣を割る 松村蒼石 寒鶯抄
跫音なく暁闇に現れ密猟夫 福田蓼汀 秋風挽歌
跫音なく青衣の女人うすものにて 後藤綾子
跫音におどろく蝌蚪や水浅し 高橋淡路女 梶の葉
跫音に夜の剥がれぬ草紅葉 松澤昭 神立
跫音のあつまつてくる花御堂 つじ加代子
跫音のいづくへ去りし雛納め 秋元不死男
跫音のそこより起る寒雀 波多野爽波 鋪道の花
跫音のとまるを椋鳥のおそれけり 中村草田男
跫音のなき白靴を選びけり 内田美紗 浦島草
跫音のぬけがらや雪の狐みち 平井さち子 紅き栞
跫音の低きは男十二月 石居康幸
跫音の冬に入るとは言ひもせし 後藤夜半 底紅
跫音の凍てつく闇を曳き帰る 石原八束 秋風琴
跫音の日暮を誘ふ枯野かな 桜木俊晃
跫音の老いしとおもふ夜番かな 西島麦南 人音
跫音の親しき盆の月夜かな 後藤夜半
跫音の過ぎてしづかや蝌蚪の水 西島麦南 人音
跫音は座敷童子か狸汁 武市明子
跫音もたてず悪友霜を来し 飯田蛇笏 雪峡
跫音もなく来ぬ牡丹芽を伸ぶる 渡邊水巴 富士
跫音や 沼氷らんとして ひびく 富澤赤黄男
跫音や水底は鐘鳴りひびき 中村苑子
跫音高し青きジャケツの看護婦は 石田波郷
路地をゆく跫音つぶさに夜の秋 高澤良一 素抱
蹤いてくる跫音それぬ秋の雨 片山桃史 北方兵團
轟々と走る跫音蟻の道 柴崎左田男
遠くにも野火跫音の楽しき夜 内藤吐天 鳴海抄
野みちゆく秋の跫音したがへり 飯田蛇笏 春蘭
雪女郎近づく跫音聞きとめん 小林康治 『虚實』
雪解けぬ跫音どこへ出向くにも 飯田蛇笏
雲水の跫音もなく土凍てぬ 飯田蛇笏
霜柱女の跫音たのしむも 石田あき子 見舞籠
麦を刈る跫音せずにいつ死ぬる 永田耕衣 驢鳴集
●共鳴 
田蛙のカララ躰に共鳴す 高澤良一 燕音
●口笛 
いとしみて生きし日凍つる夜の口笛 千代田葛彦 旅人木
たはれ男の口笛過ぎぬ春の月 芝不器男
はるかなる秋の海より海女の口笛 前田普羅 能登蒼し
むかし程鳴らぬ口笛磯遊び 萩原季葉
ボタ山の鋭角 日ぐれの口笛がない 三井菁一
一人づつ消ゆる口笛秋深し 木村敏男
一人の口笛唄を興せりスキーバス 中戸川朝人 残心
伊那人の口笛萱を刈りて去る 伊藤京子
兎罠かけて口笛もう吹かず 宮坂静生 雹
冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ 川崎展宏(1927-)
冬の田へ聞かせるように口笛吹く 田中灯京
冴ゆる夜の口笛われに蹤ききたる 木下夕爾
初秋の口笛吹いて女の子 石田郷子
口笛がきこえ枯蔓動きをり 鈴木鷹夫 渚通り
口笛が絶えず薔薇垣雨ふれり 片山桃史 北方兵團
口笛で呼び出されしよ祭の夜 三浦美穂
口笛に初鳩もどり声きざむ 寺田木公
口笛に千鳥を呼んで若布干す 町田しげき
口笛に口笛応へ囮守 辺田東苑
口笛に夜学の果てしことを告ぐ 森田峠 避暑散歩
口笛に寄せては鷽を愛しめり 飯田五十雀
口笛に犬返し来る冬木立 長谷川櫂 天球
口笛に独そゞろぐ涼みかな 阿波野青畝
口笛に空鮮しや桐の花 高澤良一 ねずみのこまくら
口笛に答へ目白の高音来る 満田玲子
口笛のかすかな光桐は実に 田中和子
口笛のごとき声出す蓮根掘 太田土男
口笛のごと鳴く秋の鳥のゐて 村松紅花
口笛のとほき夜花栗にほひけり 仙田洋子 橋のあなたに
口笛のぼうとかすれし春の雪 川崎展宏
口笛のまだ冷たくて春の杉 鈴木鷹夫 渚通り
口笛のまつすぐの音よ青田前 上野さち子
口笛のスキップしている五月かな 高橋久勝
口笛の人遠ざかる無月かな 竹野房子
口笛の初鶯を翔たせよう 松田ひろむ
口笛の口とがらせて接木かな 太田土男
口笛の咳そそる木の芽夕べかな 富田木歩
口笛の少年消えてゆく夏野 三苫時子
口笛は少年のもの桑熟るる 松倉ゆずる「安住」
口笛は幼くかなし仏桑花 塚原麦生
口笛は童歌なり落葉道 片倉茂男
口笛ひそと冬川に籾浮きひろがり 友岡子郷 遠方
口笛ひゆうとゴツホ死にたるは夏か 藤田湘子「白面」
口笛もて小鳥に応へ*たら芽摘 太田土男
口笛も楽器のひとつ春の風 望月郁代
口笛やすずらん祭暁けゐるらし 小池文子 巴里蕭条
口笛や一山のへび棒立ちに 豊口陽子「花象」
口笛や沈む木に蝌蚪のりてゐし 田中裕明 山信
口笛や火宅の人の夏帽子 中村わさび
口笛をあやつる舌や蜃気楼 小川軽舟
口笛を吹いて四月の馬の骨 丸山嵐人
口笛を吹いて生きようからすうり 榎原和正
口笛を吹きしは老女鳥曇り 池田澄子
口笛を吹きつゝダリアを軟禁す 攝津幸彦 鹿々集
口笛を吹くもしかりてピヱロ我 篠原鳳作 海の旅
口笛を吹くや脣そゞろ寒 寺田寅彦
口笛を吹く顔来り秋天下 奥田智久
口笛を吹けども鴎集らざりき 篠原鳳作 海の旅
口笛を妻吹き僕に飽いたかもしれぬ 田中陽
口笛を本気で吹いて冴返る 小出秋光
口笛吹いて沈みたる海女に海青し 内島北朗
口笛吹かるる朝の森の青さは 尾崎放哉
口笛吹けば蜂居ずなりぬ塀長閑 西山泊雲 泊雲句集
台風裡口笛吹いて無頼めく 日笠靖子
夜ふかく口笛ながして陸にあがる 束松八州雄
女もす口笛夜涼映画待つ 岸風三楼 往来
子の部屋の夜学はかどる口笛か 亀井糸游
小春日やわが口笛を聴く鸚哥 竹之内和子
小鳥呼ぶ師の口笛よ紅葉散る 小松崎爽青
少年の口笛去りぬ荻の声 愛澤豊嗣
少年の口笛未来のどこで切れる 日野晏子
少年の口笛澄みぬ枯木星 石川文子
少年の口笛諸子釣る度に 光辻壽子
山動く伯父が口笛吹くたびに 仁平勝 東京物語
感化院秋の風口笛吹く人影 成瀬正とし 星月夜
春の夜を口笛吹て通りけり 蘇山人俳句集 羅蘇山人
春暁の雨よ口笛とほくより 片山桃史 北方兵團
春林を樵りゐしひとの口笛か 篠田悌二郎 風雪前
春禽を呼ぶ口笛を習ひをり 中戸川朝人 尋声
朝の紅茶鷽の口笛聞きながら 尾田秀三郎
朝顔に口笛ひよろと夏休 中村汀女
朧夜の口笛 あしなえの犬にやる 熊谷愛子
枯沼やたのしきときは口笛も 川島彷徨子 榛の木
枯芝のひろさ犬に口笛を吹く 川島彷徨子 榛の木
枸杞に尿る犬に口笛樹の間より 河野静雲 閻魔
水源で生木を燃やす低い口笛 稲岡巳一郎
沖待ちの船の口笛禁止令 岡田秀則
波のりは鋭き口笛をならしけり 横山白虹
浪のりは鋭き口笛をならしけり 横山白虹
海胆とりの口笛沖に日神鳴 本多静江
湖口の朝の若者の口笛と河鹿の声と 梅林句屑 喜谷六花
濡れて出る朝の口笛嫁菜飯 蛭名節昌
爽やかや口笛吹きて牛乳搾る 山口牧村
犬呼ぶに口笛かすれ小春山 原石鼎
犬捕りの口笛巧し葱坊主 河村昇
独楽の子の口笛うまくなりにけり 関口謙太
百合開きかけ口笛を吹くつもり 柴田奈美
禁じられし少女の口笛ななかまど 阿保恭子
秋の夜の宿題終へし口笛か 青葉三角草
秋の野の妻へ口笛遠くより 中矢荻風
簗見廻りて口笛吹くや高嶺晴 高浜虚子「虚子全集」
籾を沈めし夕べの水田口笛冴え 大井雅人 龍岡村
自転車快調口笛快調風光り 片山桃弓
船員とふく口笛や秋の晴 高野素十
若き漁夫の口笛千鳥従へて 三鬼
草笛に口笛合はせをりにけり 小林律子
草笛も口笛も吹く旅の夫 橋本美代子
野遊びの口笛何ぞ高音なる 林 翔
鯊釣りの口笛のよくひびきけり 飯田蛇笏
鳥寄せの口笛かすか枯峠 佐藤鬼房
鶫罠みて来し兄の口笛か 中尾白雨 中尾白雨句集
鶯や口笛吹くは女の子 宮本公彦
●靴音 
おのがうちに靴音を積み雪の館 宮坂静生 山開
ひゞくものたゞ凍てきりし靴音のみ 河合凱夫 藤の実
ゆふざくら堂の靴音出で来る 山口波津女 良人
わが靴音おもし梵鐘に烏鳴き 河合凱夫 藤の実
アパートの靴音おもき梅雨に入り 藤後左右
ガスの夜の街 知性の 靴音であるく 吉岡禅寺洞
セーヌ流れわが靴音に落葉降る 深見けん二
マラルメの靴音を恋ふ枕木よ 荻原久美子
冬野来る靴音か父母に逢う音か 長谷川かな女 牡 丹
十二月八日靴音消ゆる壁 寺井 治
噴水の辺り靴音たてゝ歩す 高木晴子
地の底に靴音とどく氷かな 長谷川櫂 天球
天にオリオン地には我等の靴音のみ 楠本憲吉
寒月へのぼる靴音螺旋階 近藤甚之助
山滴る靴音軽き朝かな 中村輝峰
新涼の靴音を待つ石畳 西村和子 夏帽子
春の靴音人の流れに溶けずわれ 小松崎爽青
春泥や靴音重く子の帰る 高橋淡路女 梶の葉
枯れ急ぐ男ばかりの靴音に 影島智子
枯園や靴音家の中行ける 相生垣瓜人 微茫集
桟橋にひびく靴音三鬼の忌 片山由美子 風待月
梅雨の階真夜の靴音のぼりくる 木下夕爾
汗馬降り音信絶えし我が靴音 片山桃史 北方兵團
火恋しわが靴音をわが聞けば 佐々木六戈
火戀しわが靴音をわが聞けば 佐々木六戈 百韻反故 初學
画布さむし大き靴音きて去れる 木下夕爾
立冬や靴音一人急ぎくる 高橋幸代
自宅附近にきて不器用な靴音さす 仲上隆夫
舗道凍つわが靴音の夜々ほてり 河合凱夫 藤の実
菜明りやわが靴音の靄ひゆく 林原耒井 蜩
葬も了へてなほ靴音をまつ秋夜 飯田蛇笏 雪峡
螺旋階段凍てて靴音をこぼしける 有働 亨
血の担架秋風は靴音に昏れ 片山桃史 北方兵團
街角の靴音白とわかるまで 菅原さだを
車内爽やか山歩きせし靴音ぞ 大熊輝一 土の香
霜の夜の塀に靴音跳ね返る 臼井培子
霜の夜の靴音止りベル鳴らず 林原耒井 蜩
霧の夜の靴音果して夫なりし 西村和子 夏帽子
青写真父の靴音近づきぬ 石倉啓補
靴音がコツリコツリとあるランプ 富澤赤黄男
靴音が淋しいこの道がきらいです 黒田政子
靴音と栗落つる音の均しさ 四ッ谷 龍
靴音に咳で応へて灯しけり 板橋美智代
靴音のみな跳ねかへる寒さかな 仲村美代子
靴音の凍ててオランダ坂に沿ふ 山田弘子 螢川
靴音の暑さ呆けの穹の花 松澤昭 神立
靴音の消ゆる黒土初大師 鍵和田[ゆう]子 浮標
靴音の記者は乙女か夏めける 室生犀星 遠野集
靴音の響かぬ雪の深さかな 佐々木京子
靴音はをんならしくも霜夜なる 室生犀星 犀星発句集
靴音は女が高しものの芽に 古舘曹人 能登の蛙
靴音をビルより落とし後の月 富川三枝子
靴音一つ戒壇院の秋の昼 鷲谷七菜子
おん靴の音まぢかくて花散りぬ 及川貞 夕焼
ひぐらしの駅に駅夫の靴の音 昭彦
宵浅し露台へのぼる靴の音 日野草城
寒月や氷ふみわる靴の音 寒月 正岡子規
憂国忌どこかで靴の音しきり 石崎素秋
我講議軍靴の音にたたかれたり 井上白文地
新盆や空耳なれど靴の音 秦夕美
桐咲けり天守に靴の音あゆむ 山口誓子 炎晝
白靴の音なき午後をペルシヤまで 和田悟朗「山壊史」
街凍ててこころおごらず靴の音 飯田蛇笏 雪峡
霜柱踏めば軍靴の音うまれ 田中矢須彦
霜柱踏めば軍靴の音すなり 篠原 飄
鼬罠あり戦争の靴の音 白石多重子
●鯨音
●弦音 
三弦の音のたらひし青簾 橋本ふみ子
弦音(つるおと)にほたりと落る椿かな 夏目漱石 明治二十七年
弦音に松の響くや弓はじめ 羊几
弦音や皺にもならぬ徒士袴 尾崎紅葉
月下弦音をたよりに水汲みに 福田蓼汀 秋風挽歌
●好音
●高音 
うぐひすの卯時雨に高音哉 高井几董
うすきうすき有明月に鵙高音 川端茅舎
うるし掻く山越す鵯の高音かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
かぎろひの丘にこぼして鵙高音 稲畑汀子 汀子第三句集
かりがねの高音をこぼす点となり 沢木欣一 往還
きれい好きな村鶯の馬鹿高音 岸田稚魚 筍流し
このときのわが家しんと蝉高音 中村汀女
こほろぎの二つ高音や鳴き交す 青峰集 島田青峰
またしても日は昃りきぬ賜高音 上村占魚 鮎
よき河鹿いよ~痩せて高音かな 原石鼎
よき河鹿痩せていよいよ高音かな 原石鼎
わが里を制すがごとし鵙高音 淵脇逸郎
一家出て山を拓くや鵙高音 瀧澤伊代次
一管の不意の高音や比良八講 後藤綾子
乳房わたすも命渡さず鵙高音 中嶋秀子
乳房渡すも命渡さず鵙高音 中嶋秀子(1936-)
五月鬱琴高音で走り出す 河野多希女 こころの鷹
人日のはつしはつしと琴高音 河野多希女 月沙漠
低音は枯木高音は雲ワイン澄む 河野多希女 両手は湖
充ち足りし買物籠や鵙高音 石川文子
口笛に答へ目白の高音来る 満田玲子
唐突に高音を張りて瓢の笛 細川子生
囀の高音となりてしゝま来る 上村占魚 鮎
囀りの高音高音にうながされ 中村汀女
国戦ふ発止々々と鳴高音 河野静雲
夕立晴れし籠に鶸啼く高音かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
大巌のぬくもりに居て虫高音 前田普羅
奥の湯へすぐる岩の門瑠璃鳥高音 皆吉爽雨
寿福寺の見えて来にけり鵙高音 高野素十
山雀の高音に成るも別れかな 去来「裸麦」
巣づくりの鵲の高音となりにけり 武田飴香
我が心今決しけり鵙高音 高浜虚子
拳固く握る遣影や鵙高音 館岡沙緻
新亭に夜の鶯の高音かな 久米正雄 返り花
明けそめし常陸野に向き鵙高音 笹原紀子
春禽の洲の松に来て高音なり 田中水桜
春雨や高音のあとの籠の鳥 増田龍雨 龍雨句集
朝日まづ火の見櫓に鵙高音 福田 蓼汀
杉の下枝払ふ音より鵙高音 大熊輝一 土の香
桶の中坐れる亡者鵙高音 河野静雲 閻魔
横笛の高音凍る夜なりけり 菅原鬨也
汐風の中より百舌の高音かな 惟然
沸けば鳴る薬缶の高音中也の忌 渡辺 暁
海酸漿高音は波の寄るときに 高野夜穂
消炭や瀬どころわたる鳥高音 宇佐美魚目 秋収冬蔵
滝上に来し身ひきしむ鵙高音(等々力渓谷) 河野南畦 『風の岬』
潮風の中より百舌の高音かな 惟然
熔岩原もやや木々おほひ鵙高音 皆吉爽雨 泉声
瓢の実の突拍子なき高音かな 三村純也
瓦斯焜炉懐えつ火を噴く高音夏 石塚友二 方寸虚実
生家訪ふや叱咤のごとき鵙高音 鍵和田[ゆう]子 未来図
白梅やさりげなくとも琴高音 河野多希女 彫刻の森
眉白の高音に天城晴れわたり 豊長哲也
眉白の高音ひびけり天城越え 橋本記縫恵
祭笛小指立ちたるとき高音 鈴木鷹夫 風の祭
祭笛高音の時は小指あげ 蓼汀
稲舟のごとんと音す鵙高音 高野素十
窯開けや鵙の高音に囃されて 鈴木真砂女 夕螢
笛合す囮なか~高音かな 中島月笠 月笠句集
篠笛の高音の秋を惜しみけり 田部谷紫
織りかけし帯の綺羅あり鵙高音 木村蕪城
羽抜鶏吃々として高音かな 高浜虚子
老鶯の高音加わる音楽葬 土田桂子
背山より前山に鵙高音かな 高木晴子 花 季
舌禍の卦出でて危ふし鵙高音 柴田奈美
草笛を静かに吹いて高音かな 高浜年尾
草茎を失ふ百舌鳥の高音かな 蕪村
落葉松に高音鶯うしろ向き 前田普羅 春寒浅間山
薬效いてきてゐる鵙の高音かな 久保田万太郎 草の丈
虫の音や高音の一つ且つ遠き 東洋城千句
蝉高音飲食に手はよごれそむ 野澤節子 黄 瀬
裏切るか裏切らるゝか鵙高音 鈴木真砂女
訃を聞いて暫くありて鵙高音 松本たかし
送水会法螺の高音に雪降り来 岡 淑子
野遊びの口笛何ぞ高音なる 林 翔
鈴虫の高音に心蹤きゆけず 中嶋秀子
闇を裂く笛の高音や薪能 遠藤芳郎
阿吽なる仁王に突如鵙高音 嶋田一歩
雲雀湧くはじめ高音のひえびえと 飯田龍太
頬白高音鳥となり吾子還りしか 福田蓼汀 秋風挽歌
風が氷柱とらへし高音分教場 八牧美喜子
風のなか葭切高音のみきこゆ 大熊輝一 土の香
飯のかほり口辺にあり鵙高音 原コウ子
骨拾ふ歯にこだはれば鵙高音 ふけとしこ 鎌の刃
高音が出ない菜の花背伸びする 鈴木松子
高音吹いて麦笛青し美少年 日野草城
高音鵙焼酎飲み来し顔乾く 岩田昌寿 地の塩
鳶老いて高音張りけり山桜 小川軽舟
鴬のたつ羽音して高音かな 高井几董
鴬の日枝をうしろに高音哉 蕪村 春之部 ■ 畫賛
鴬の目には籠なき高音かな 炭 太祇 太祇句選
鵙高音いそぎの文を書けるとき 山口波津女 良人
鵙高音いま振向けば何見ゆる 鈴木鷹夫 春の門
鵙高音そのほかの音拒みけり 町田しげき
鵙高音とは前静かあと静か 木村淳一郎
鵙高音ふたゝび三たび鵙高音 星野立子
鵙高音わが生涯を狂はせし 三好潤子
鵙高音シーツの皺を叩き干す 大村千鶴子
鵙高音信徒部落の貧清し 下村ひろし 西陲集
鵙高音妻とは仮りの名にはせじ 河野多希女 琴 恋
鵙高音学校つとに始りぬ 芝不器男
鵙高音息リフレッシユ錠一つ 内田美紗 魚眼石
鵙高音死ぬまでをみな足袋を継ぐ 渡辺桂子
鵙高音母の仕事は何々ぞ 中村汀女
鵙高音水張つて締む桶の箍 大岳水一路
鵙高音田舎教師になりきれず 山内遊糸
鵙高音第六感を信ずべし 柴田奈美
鵙高音自然薯を掘る音低く 高濱虚子
鵙高音西京の童子来りけり 村山古郷
鵙高音貫き通す意志一つ 山岡敬典
鵙高音農機具小屋に真昼の日 田野井一夫
鵙高音鏡と死者の縁切るる 神尾久美子 桐の木
鵙高音陽は暖流をのぼりたる 大岳水一路
鵙高音隙間の如き時を得て 岩田由美 夏安
鵙高音雁来紅は黄をのこす 鷹女
鵙高音鴨居閾のひきしまり 上野泰 春潮
鵡高音をんなのつくすまことかな 鈴木真砂女
鵯高音乱れし髪を直す窓 山添二雄
鵯高音梓の花の雨あがり 皆川盤水
鶯の卯の時雨に高音かな 几董
●号音
●轟音 
啓蟄や轟音あげしブルドーザー 浅井伸一朗
庭桜轟音近代を誇示し去る 林原耒井 蜩
物の芽や轟音空にとどこほり 中田剛 珠樹以後
縹渺と落ち轟音の初華厳 岡田日郎
●交響 
一間得し雪解交響しつつあり 藤田湘子 途上
二の滝の音の交響神帰る 橋本榮治 麦生
冬木緻密に枝と枝との交響で 楠本憲吉
寒怒濤底ひく闇に交響す 小林千草
弓張りの湾春潮の交響す 沢木欣一
星座満天交響す霧氷林 黒田杏子 花下草上
朱雀門雲雀は空に交響す 河合佳代子
玉蘭の香や定型詩交響す 宇咲冬男
●轟然 
向日葵の轟然と佇つ水の音 穴井太 原郷樹林
大入日野分の藪へ轟然と 松本たかし
林間を師走満月轟然たり 平井さち子 紅き栞
結界の轟然と鳴りて大山崩 横山白虹
轟然と山枯れ宙に日は漂ふ 岡田日郎
轟然と滝落つ春の星の中 岡田日郎
●木霊 
えぞにうの木霊オホーツク海へ抜け 永田耕一郎
かしづくや木霊をさなき欅苗 正木ゆう子 静かな水
きつつきの樹を打つ音も木霊かな 大高芭瑠子
ことばみな木霊となれり桷の花 新井世紫
しめっぽい木霊とびかう置き薬 穴井太 原郷樹林
どの子にも木霊返して山開き 白根君子
どの径も木霊目覚めよ午まつり 石原次郎
どの木にも木霊生まるる寒昴 美野節子
ひさしぶりの雨だ灯を消せ匂う木霊 柴崎草虹子
みよし野の木霊となりしほととぎす 長山あや
一つ声ひとつ木霊す紅葉山 牧野洋子
一斉に木霊の醒むる春の森 柴田白葉女 花寂び 以後
伊那谷は木霊の色も紅葉して 木方三恵
冷まじく暮れて木霊も居らざりき 槐太
初明り一つ咲きたる木霊かな 穴井太 原郷樹林
初猟の木霊が遠く重なれり 米澤吾亦紅
匂い立つ樹々の朧に笛木霊 長谷川かな女 牡 丹
十月の木霊が通る鉈の上 折井紀衣
啄木鳥の纔に木霊の耳を澄ます 尾崎紅葉
国栖奏の鼓は木霊呼ぶごとし 山田弘子 螢川
地の震ひ岳の木霊す御神渡 増澤正冬
声ちがふ木霊竹霊利休の忌 岡井省二
大暑にて杉の木霊は背の高き 正木ゆう子
寒林の切株四五は木霊の座 能村登四郎
少年へ涼しき声の木霊が居り 平井さち子 紅き栞
嶺と嶺結ぶ木霊や斧始 藤木倶子
常夜鍋木霊は山に帰りけり 佐々木六戈 百韻反故 初學
幹打つて覚ます木霊や西行忌 大石悦子 群萌
廃校の子供らの木霊している天井 青木久生
恋猫や椎の木にある夕木霊 古舘曹人 樹下石上
春立ちし国栖の大きな木霊かな 大石悦子 百花
月山の木霊と遊ぶ春氷柱 有馬朗人(1930-)
月明の木を離れたる木霊かな 河原枇杷男 流灌頂
木枯の木霊修那羅の神の声 加藤知世子 花寂び
木霊ありいつか身につく走るフォーム 上田 玄
木霊より軽き子を抱く冬隣 橋間石
木霊ゐず霧か露かの山の鯉 岡井省二
木霊を呼ぶか掌中の落椿 大高 翔
木霊棲む山めぐらすや神楽笛 伊藤純
木霊棲む神の大楠夜鷹鳴く 豊長みのる
松蝉の木霊あそびの前山寺 鈴木蚊都夫
梅雨の夜の園の木霊と犬を呼ぶ 木津柳芽 白鷺抄
樹氷林声なき木霊空に充ち 伊東宏晃
母声の木霊が帰る月下かな 杉本雷造
氷る湖の木霊よびつつ機始 原 柯城
汗の身を木霊が透り過ぎにけり 徳永山冬子
海棠や教会の鐘木霊なし 宮坂静生 青胡桃
涸谿の木霊言霊冬ざるる 佐原トシ
父にしてむかし不良の木霊かな 攝津幸彦(1947-96)
狼は亡び木霊は存ふる 三村純也
甲斐駒の返す木霊や吾亦紅 山下喜子
種に入る木霊の一部青くるみ 正木ゆう子 悠
結界の木霊となりける青葉木菟 栗桶恵通子
老杉の木霊をゆすり初神楽 加藤多美子
老桜の木霊や現れて返り花 大石悦子 群萌
胸に木霊こむらさきの不整脈 浅沼参三
落石の木霊とどろく雪解川 広井瑞枝
郭公の木霊の中の火山かな 杉本寛
開拓や斧よ木霊よ遠郭公 北光星
雨細し木霊枯れ棲む磯林 河野南畦 湖の森
雪の日のちよつと遊びに出る木霊 ふけとしこ 伝言
零の空間へ木霊のように二人立つ 坂間恒子
露日和木霊は元の木にもどり 友岡子郷
青梅雨や木霊棲みつく鞍馬杉 河野多希女 納め髪
青葉木菟鳴いて木霊はうまいどき 西村 博子
鵯鳴いて木霊たのしむ雑木林 後藤秋邑
●谺 
あさましや谺も同じ雉の声 半捨
あまぎ嶺に谺し冬の鳥射たる 五所平之助
いと高きに登るも谺聴かぬなり 矢崎硯水
いわし雲斧の谺は父祖の声 高橋素水
うぐひすの谺も神の瀧のもの 田村木国
えごの花ひと日谺の中にをり 磯部実
おらが世は臼の谺ぞ夜の雪 一茶
かぐらせり唄谺して雪もよふ 黒木千佳子
かげろひゆく身に谺して怒濤音 鷲谷七菜子 雨 月
かたくりの花すぐゆれて谷谺 飯塚田鶴子
かの瀧のかの瀧谺手を合はす 黒田杏子 花下草上
さきがけて蕗咲く渓の谺かな 飯田蛇笏 霊芝
さくら陰誰に谺か山の神 菊十
さしのぼる月の谺のきんひばり 神戸光
さみしさや谺返しの威銃 小林康治 『叢林』
しづり雪しまらく谺してありし 五十畑英一
しんしんと谺殺しの雪の谷 藤田湘子 てんてん
じやんがらの鉦の谺す閼伽井嶽 平山節子
すぐ応ふ谺も秋や旅日和 村越化石
たはやすく谺する山たうがらし 飴山實 『次の花』
ひぐらしの崖に谺す外海府 継田ひでこ
ひぐらしや山頂は陽の谺生み 雨宮抱星
まんさくや谺返しに水の音 岸野千鶴子
みちのくの山谺して松の芯 吉田鴻司
むかごにもありし大小山谺 西谷 孝
わが咳の谺 始発の地下ホーム 中道量子
わが声の二月の谺まぎれなく 木下夕爾
わが声の谺と知らず女郎花 小泉八重子
わが谺かへらぬ祖谷の初御空 伊沢 健存
ボート・レース雲と谺と繋がりて 大島邦子
マッキンレーからの谺か秋つばめ 平井さち子 鷹日和
ユーラシア五分遅れの谺かな あざ蓉子
万緑や舟唄水に谺して 土屋うさ子
丈高き谺返し来春の滝 小林康治 『虚實』
下萌のいづこともなく水谺 日向野貞子
二ン月の天に谺し城普請 花野有情
二期田植う村に射爆の遠谺 玉城一香
人去りて木の芽の谺包む館 長山あや
人声の谺もなくて飛騨雪解 前田普羅 飛騨紬
伐採の谺の雪となりにけり 西村博子
修羅落す谺を追ふて雪崩れたり 山口草堂
冬あけぼの谺の還る魚の口 石母田星人
冬に入る瀧の谺の一屯 宮坂静生 樹下
冬の宿谺を返し夕暮るる 横光利一
冬山や鉈音よりも谺澄み 羽部洞然
冬杣の谺杉枝の雪散らす 町田しげき
冬河に誰呼びおるや谺なし(片山桃史戦死) 石橋辰之助
冬滝の谺蕩々と湯の小滝 松村蒼石 雁
冬牡丹てうつに蔵の谺かな 言水
冬耕のひとりとなりて生む谺 橋本榮治 麦生
冬菫ときにさみしき潮谺 友岡子郷 風日
冬麗を己が谺とゐる鴉 村越化石
冴ゆる夜の谺にひゞく汽笛哉 寺田寅彦
冷蔵庫に潮騒のあり谺あり 工藤克巳
凍蝶に落石の音谺しぬ 羽部洞然
凍蝶の息ひきとりし谺かな 宗田安正
刀打つ鎚の谺す青吉野 品川鈴子
初富士や崖の鵯どり谺して 川端茅舎
初山や木の倒されて谺生む 本多一藻
初猟の第一弾の谺かな 森 竜南
初神楽巌に太鼓の谺して 阿部ふみを
初雷のいま前山に谺せる 高瀬竟二
初鶏の銘酒の里に谺して 木内彰志
前山に谺あづけて牛蒡引く 端山日出子
十和田湖に暮春の谺崩しけり 雨宮抱星
号令が谺す夕日の小学校 斎藤康子
呼び出しの声谺してスキー場 中沢菊絵
咳よりも咳の谺のさびしさよ 林翔 和紙
啄木鳥のついばむ音も谺して 西岡仁雅
啄木鳥の己が谺を叩きけり 佐之瀬木実
啄木鳥の谺は天に滝凍る 三谷和子
噴射機に鳴り億兆の露谺 石塚友二 光塵
地球発SOSが谺せり 小倉満智子
堰落つる水の谺や茱萸の花 伊藤紫都子
夏山に谺して過ぐ広報車 向井晴江
夏山の大木倒す谺かな 内藤鳴雪(1847-1926)
夏山より谺のごとき子の便り 柳 欣子
夏潮の谺がこだま生む岬 上村占魚
夕暮の谷戸に谺し黒つぐみ 長谷川草洲
夕焼けて谺戻らぬ活火山 駿河白灯
外したる谺の間合威銃 吉田鐵城
夜のポストつぎつぎ谺が投函される 佐孝石画
夜をこめて会式谺す向つ峰 竹冷句鈔 角田竹冷
大山山麓すかんぽ噛めば谺 金子兜太
大当りの声の谺や初恵比須 松原幸子
大瀧の谺相うつ杉襖 石原八束 『白夜の旅人』
大瀧や月の谺のただ中に 黒田杏子 花下草上
大瑠璃の谺をかへす虚空かな 加藤耕子
大花火峡の谺の逃げ場なし 川村紫陽
天地の谺もなくて雪降れり 鈴鹿野風呂
夫の忌や風の谺のえごの花 小島裕子
姥百合にかへる谺となりにけり 蘭草 慶子
威し銃裸の山が谺返す 津田清子 礼 拝
威銃谺して大磨崖仏 牧野春駒
子を叱る声筒抜けに寒谺 小林康治 四季貧窮
子花火と爆ぜて谺の返りけり 石塚友二 光塵
家毀つ音秋天に谺して 高澤良一 寒暑
富士の火を鎮めの宮の鵯谺 西本一都 景色
富士夏嶺谺雄々しく育ちをり 橋本榮治 麦生
寒垢離の一喝山に谺して 藤田達子
寒山に谺のゆきゝ止みにけり 前田普羅 飛騨紬
寒月や野の大門の谺呼ぶ 乙字俳句集 大須賀乙字
寒詣過去は谺の割れる先 首藤基澄
寒谺高校生の弔銃に 中村草田男
寒鯔の川いきいきと群れ谺 尾崎鈴子
射初また谺はじめの松の幹 中戸川朝人 星辰
小蒸気のもどる谺や月の潭 千代田葛彦 旅人木
屏風岩河鹿が鳴けば谺する 塚田正子
山々にお会式太鼓谺して 中里之妍
山がひの杉冴え返る谺かな 芥川龍之介 澄江堂句集
山に向きくさめ一つの冬谺 村越化石
山ぼうし谺がこだま生みにけり 和田冬生
山伏問答峰に谺し山開 高橋耕子
山墓の巨石がまとふ夏谺 原裕 葦牙
山始一人が谺起しけり 増井冬木
山峡の杉冴え返る谺かな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
山焼の音谺せり大阿蘇に 高木あけみ
山眠りいづこへ帰る谺なる 影島智子
山谺かえる花火の尾は新涼 長谷川かな女 花 季
山谺して錫杖の響き冴ゆ 山崎慈昭
山里に餅つく音の谺かな 浜田波静
山雲にかへす谺やけらつゝき 飯田蛇笏
岩尾根に夏暁の鳥が谺啼き 河野南畦 湖の森
峡空に谺かへすや大花火 鈴鹿野風呂 浜木綿
川原吹く風より水の青谺 原裕 青垣
年酒また独りがたのし鵯谺 宮田要
幼な名を呼べど秋嶺谺なし 福田蓼汀 秋風挽歌
弔砲の谺は冬の山地駆せ 安田北湖
当り矢の谺がへしに霜の天 伊藤いと子
御神楽の谺をかへす新樹かな 杉原ヒロ子
念仏踊左右の山よりよき谺 羽部洞然
息ひそめ棺うつかぎり寒谺 小林康治 四季貧窮
悪玉の声谺して野外劇 魚田裕之
惜春の雄波もみあひ谺せり(喜屋武岬) 上村占魚 『玄妙』
我が笛の谺聞きゐる月の森 雑草 長谷川零餘子
拍手の谺となりて山始 廷々元子
採氷池子等への怒声日へ谺 木村蕪城 寒泉
探梅の谺に応ふ声のあり 米沢吾亦紅 童顔
斧強く打てば谺も寒の冴 橋本榮治 麦生
新涼の谺予期せぬところより 遠藤孝明
日おもてに谺のあそぶ斧始め 木内彰志
日面に谺のあそぶ斧始 木内彰志
春光に人語鳥語の谺かな 梅谷紀子
春嶺となれり万雷の瀧谺 川村紫陽
時無しに竹伐る春の谺かな 青木重行
晩秋の木曾谷汽車の遠谺 福田蓼汀
月一痕仏法僧の遠谺 渡邊千枝子
月落ちて仏法僧の遠谺 高橋克郎「月と雲」
木の実ふるわが名谺に呼ばすとき 寺山修司 未刊行初期作品
木樵ゐて冬山谺さけびどほし 橋本多佳子
木耳に谺邃くも来つるかな 山口草堂
朴の花谺のごとく咲きふえし 山城英夫
朴咲くや谺のごとく雲殖えて 福永耕二
杉菜の雨土足の谺渡殿に 下村槐太 天涯
杭打つて 一存在の谺呼ぶ 伊丹三樹彦
松籟も寒の谺も返し来よ 小林康治 四季貧窮
松風の谺返しや夕桜 小林康治 四季貧窮
枝打ちの谺小さく日の澄めり 松村蒼石 露
枝打ちの谺返しに始まりぬ 石田郷子
枝打ちの音谺して底冷えす 柴田白葉女 花寂び 以後
枯山の短き谺かへしけり 星野麦丘人
枯山の谺となれば寧からむ 藤田湘子 てんてん
梟の谺のこもる月の杜 つじ加代子
棺を打つ谺はえごの花降らす 結城昌治(1927-1996)
椿寿忌や山に谺す大木魚 河野静雲
樹々ら/いま/切株となる/谺かな 高柳重信
歩みゐて谺に呼ばる西行忌 伊藤京子
死して/無二の/谺が/のぼる/寝釈迦山脈 高原耕治
残雪や谺鳴きして山の禽 小林康治 玄霜
水取や五體投地の堂谺 松瀬青々
水涸れて谺は渓を出づるなし 安立公彦
水谺深き夜明けの初音売 臼田亜浪
氷伐る谺もきこゆ朝かな 安藤橡面坊
氷瀑の砕けて谺裏妙義 永田しげ
汽車たつや四方の雪解に谺して 前田普羅 飛騨紬
流氷の谺をかへすモヨロ塚 橋本和男
浄智寺の屋根替衆に鵯谺 肥田埜勝美
浦島草過ぎるは人の谺かな 保坂リエ(くるみ)
海へ出て寒の谺となりにけり 小林康治 玄霜
深田鋤く谺しぶきに身をゆだね 松村蒼石 春霰
湖二つ郭公谺し合ふ距離に 川村紫陽
湯もみ唄谺す山の芒かな 中島月笠 月笠句集
湾内に花火の谺あまた度 西村和子 夏帽子
滝谺水の匂ひを失くしたり 阿部俳声
漕ぎ揃ふ声の谺の船起 出口孤城
濤摶ち合ふ谺はけふも青岬 豊長みのる
濤谺のぼるを追へり秋燕 橋本鶏二
濤谺天をもどらず銀河澄む 橋本鶏二
瀧壺へ根こそぎの水枯谺 宮坂静生 山開
炎天に谺す深井汲みにけり 松井葵紅
炎天や鳶交る声谺して 佐野青陽人 天の川
炎天下嶺々の谺もなかりけり 行方克己 知音
照紅葉谷に谺の美辞麗句 高橋綾子
熊撃たる谺一つで終りけり 伊藤しげじ
熊野なる瀧谺なす月今宵 黒田杏子 花下草上
熊野路へ谺波打つ威銃 大澤柿村
父の日の谺となりて槌の音 前原蟻子
牧びらき牛の谺のために嶺 太田土男
獺が又森谺さす夜振月 乙字俳句集 大須賀乙字
玄関へ奥の鶯の谺かな 西山泊雲 泊雲句集
瑠璃沼の暁け谺して黒鶫 伊藤いと子
生凍豆腐叩く谺や寒未明 小佐田哲男
甦る滝の谺や梅散れり 小林康治 『潺湲集』
畦叩き塗りて母校に谺さす 太田土男
白山は谺かへさず蕗のたう 奥坂まや
白木蓮鉈の一打がうむ谺 福永耕二
白鳥の立上りたる水谺 綾部仁喜 寒木
眠る山呼べば谺を返し来る 片山喜世
石一つ抛げし谺や山桜 西山泊雲 泊雲句集
石伐りのたがね谺す夏の海 前田普羅 能登蒼し
石叩き谷間に小さき谺なす 米久保進子
石抛れば汐に谺や夜光虫 富田潮児
石段に下駄の谺や山椿 池内たけし
神さびの町谺なし春の雪 波多江たみ江
神杉に谺し雪のびんざさら 伊藤いと子
祭の子谺遊びの町内湯 高澤良一 鳩信
禅林やその裏山の鵯谺 石塚友二
秋の谷とうんと銃(つつ)の谺かな 阿波野青畝(1899-1992)
秋晴や薬草講義谺呼び 和田ゑい子
稲架を解く音の谺の山日和 山田弘子 初期作品
空いろのふとん叩けば谷谺 小西ありそ
空蝉の谺とならず谿昏れる 山田晴彦
空谿の何の谺ぞ鴨かへる 藤田湘子
立山の卯月の谺返しくる 萩原麦草 麦嵐
竜泉洞夏玲瓏と谺寒む 沢田草光
竹を伐る音谺せり翁みち 中島小美
竹伐りの一徹山に谺せり 谷口いつ子
竹取の冬の谺に入りゆけり 宮坂静生 山開
絶壁にて怒濤と春雷谺わかつ 加藤知世子 花寂び
綿虫消え峡を満たせる水谺 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
老鴬に九十九谷の青谺 伊丹さち子
老鴬の谺にふふむ雨の色 古市絵未
老鴬の鍛へしこゑの谺せり 武井与始子
老鴬や律儀に谺返す谷 吉田青湖
聖鐘の谺と来たり初つばめ 西村博子
船の銅羅かの雪嶺に谺せる 福田蓼汀 山火
船笛に遅るる谺氷河より 品川鈴子
色鳥や谺をつくる山のこゑ 雨宮抱星
花に打てばまた斧にかへる谺かな 飯田蛇笏 霊芝
花の峡シグナル谺して下りぬ 宮武寒々 朱卓
花火あがる母ゐる天に谺して 大西一冬
花火音立て込む家に谺して 高澤良一 宿好
若葉滝まだ谺ともなりきれず 大高松竹
草の絮父の谺のなき山河 森田鵜柳
草焼いて谺とあそぶ山童 伊藤凍魚
荒滝の段なし谺打ち込めり 山口草堂
落栗やなにかと言へばすぐ谺 芝不器男(1903-30)
落石のとどまらざりし霧谺 青畝
落石の月に響きし谺かも 小林碧郎
落石の谺とかへる鵯の声 成智いづみ
落石の谺は渓の早春譜 平田青雲
落粟やなにかと言へばすぐ谺 芝不器男
落葉して人にかかはりなき谺 原裕 青垣
落葉松に春逝く谺ひびきけり 小林吐秋
蒲団叩けば団地に谺開戦日 奈良文夫
薄墨桜ことし谺の棲むことも 諸角せつ子
蚊柱や斧の谺のいつ止みし 雉子郎句集 石島雉子郎
蜩や古鏡に谺あるごとし 加藤知世子 花寂び
行く春の谺をひとつ離れ礁 豊長みのる
裏山に返す谺や山始 堤俳一佳
谷底に簗つくろへる谺かな 黒田櫻の園(馬酔木)
谺 谺 す る ほ が ら か 山頭火
谺こめて五月の一樹雨降れり 松村蒼石
谺して伊那谷深き威し銃 原田さがみ
谺して夜明けの峡の黒鶫 白鳥武子
谺して宙真空の秋の井戸 河野多希女 こころの鷹
谺して山ほととぎすほしいまゝ 杉田久女「杉田久女句集」
谺して山川草木神楽の季 大久保たけし
谺して春霜木々へ還りゆく 藤田湘子
谺して男一人の斧始 川村紫陽
谺して谷の底まで梅日和 森藤千鶴
谺して雉子のふた声後啼かず 福田蓼汀
谺して雪崩のけむりあがりをり 石原八束 『雁の目隠し』
谺して鶴帰る日の山河澄む 林十九楼
谺する渡良瀬の言霊正造忌 佐江衆一
谺せずビル高階のつくり滝 船坂ちか子
谺たつる鈴鴨の音や水明り 高田蝶衣
谺とは思へぬひびき威し銃 片山由美子 天弓
谺めく津軽ことばや薄暑光 新谷ひろし
谺も不在雪渓垂らし針の木小屋 宮津昭彦
谺も豆か膝に落ちつく山の国 奥山甲子男
谺呼ぶにつれなくて昼蛙鳴く 松村蒼石
谺生み谺をつれてスケーター 町田しげき
豆たたく鬼歯の谺たのしめり 影島智子
豊年や谺呼びあふ出羽の山 細川加賀 生身魂
赤げらの音の谺に穂高晴れ 宇佐川礼子
赤腹鶫の谺をかへす月山湖 鈴木幹恵
蹴り落す石の谺や谷紅葉 水原秋桜子
身近きは響き野分の遠谺 斎藤空華 空華句集
透きとほる雨後の谺や岩煙草 平子公一
逝く人を呼び谺せり冬木立 赤尾恵以
遅き日や谺聞ゆる京の隅 蕪村
遠谺して木曾谷の修羅落し 加古宗也
還らざる谺もありぬ朴の花 佐藤国夫
郭公の己が谺を呼びにけり 山口草堂
郭公の谺し合へりイエスの前 大野林火
郭公の谺に晴るる阿蘇五岳 甘田正翠「紫木蓮」
郭公や母と谺をへだて住む 今瀬剛一
郭公や谺あそびはわれもせし 中戸川朝人 尋声
野平らに何の谺や花芒 廣江八重櫻
野葡萄の房にとどけり滝谺 五十島典子
鈴虫や甕の谺に鳴き溺れ 林原耒井 蜩
鈴音の谺しみ入る秋遍路 黒木幸子
鉄を打つ谺短かし斑雪山 阪本 晋
鉄砲の谺や山の笑ひ声 山笑う 正岡子規
鉦太鼓谺し三日の山部落 福田蓼汀 秋風挽歌
銃声の谺雪山無一物 長嶺千晶
銃谺寒禽翔つて山緊る 福田蓼汀
錦秋の谺の中に禽死す 榎本虎山
鐘谺宿坊の冷えきたるかな 清水基吉 寒蕭々
長き夜の空に谺し孔雀経 横山白虹
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
陶土打つ杵の谺や谷紅葉 渡部勝雄
隠り滝溢れて谺なかりけり 小林康治 『存念』
雉子笛に霊峰谺かへしけり 小森都之雨
雪山を匍ひまはりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪折のとゞまりがたき谺かな 阿波野青畝
雪折竹焚きゐる谷の谺かな 稲荷島人
雪解川滾ちて天に谺なし 前山松花
雷鳥を追ふ谺日の真上より 河東碧梧桐
青啄木鳥の笛の谺や朝雲 木村コウ
青嶺より青き谺の帰り来る 多胡たけ子(山茶花)
青葉木菟遠し二羽とも谺とも 肥田埜勝美
静けさが谺している今朝の植田 明智その
音すべて谺となれり山始 黛執
風谺するカルストの牧閉ざす 三好寿子
首根っこ打てる花火の大谺 高澤良一 素抱
高きより谺をとばす冬の鳥 原裕 青垣
高原の鈴虫星へ谺せる 橋本美代子
鳥威し谺となりし翁みち 遠藤孝作
鳥渡る少年Aは谺なり 青野三重子
鳶の笛谺とならず冬の山 佐藤灯光
鴛鴦こぞり起つ氷上の谺かな 臼田亜浪 旅人
鴬の谺のやうに呼び合へる 加藤ひろみ
鵜つかひの舷叩く谺かな 大谷句佛 我は我
鵯谺初日は千木にのみさしぬ 加倉井秋を
鵯谺稀に馬車行き谷戸の秋 福田蓼汀 山火
鶯の谺す淵を覗きけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鶯の谺聴きゐぬ障子内 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
麦秋の石切りをるや沖谺 小林康治 四季貧窮
●こだま 
いづこにも雲なき春の滝こだま 飯田龍太 忘音
いづこよりこだま小さし星鴉 藤森かずを(童子)
うぐひすのこだまを返す息長し 平山路遊
うつろ巌こだましあへる卯浪かな 橋本鶏二 年輪
きさらぎの門標をうつこだまかな 飯田蛇笏 山廬集
こだまして昼夜をわかつ寒の渓 飯田蛇笏 椿花集
こだまして森をはみだす瑠璃のこゑ 唐澤南海子
こだまして赤翡翠の炎ゆる恋 堀口星眠(橡)
こだまする後山の雪に豆を蒔く 飯田蛇笏
こだまする樹海わが掌に夏蜜柑 村越化石 山國抄
こだまする蛙の中の坊泊り 阿部みどり女
こだま欲し干潟に貝の放射脈 成田千空 地霊
この秋の大いなる声こだませり 萩原麦草 麦嵐
そばの花こだまころがる峡の昼 佐藤みさご
とりおどしこだましてゆく御空かな 北村 光阿弥
とろみ鳴く鴉のこだま芽ぐむ山 成田千空 地霊
どの島の返すこだまか鐘の秋 八染藍子
ばつたんこ法鼓のごとくこだませり 山本洋子
ふくろうの瀧のこだまに出て怒る 松村蒼石 雪
ふくろふの滝のこだまに出て怒る 松村蒼石 雪
よしきりのこだまをりをり城下町 長谷川双魚
わがこゑのこだまさびしき夏の山 石原舟月
わらび山母が笑ふをこだまする 中山純子 沙羅
エスカルゴ噛み満月へこだまする 白澤良子
ゴスペルの樹にこだましてみどりの日 辻村拓夫
スタジアムラガーの気合こだまする 森下昌彦
一切流転冬山こだまかへしくる 柴田白葉女 花寂び 以後
一山に滝の音声冬こだま 野澤節子 遠い橋
三日はや峡のこだまは炭曳くこゑ 加藤楸邨
二月ころふりさけみれば伊勢こだま 阿部完市 純白諸事
仏法僧こだまかへして杉聳てり 大野林火
仏法僧こだま返して奥身延 上田正久日
伊那谷に音こだまして猟名残 岩下千代美
信濃なる滝のこだまの馬蹄音 吉田紫乃
公害魚擲られ磯の枯れこだま 河野南畦 湖の森
冬あたたか竹のこだまの竹踊り 成田千空 地霊
冬の峰谿渡り行く法螺こだま 粕谷容子
冬山の汽笛のこだまの船に帰す 下村槐太 天涯
冬日の合歓母にこだまの減りゆくや 宮坂静生 山開
冬旱こだまはのぼる木をえらび 長谷川双魚 『ひとつとや』
冬晴や恋のこだまに耳すます 仙田洋子 雲は王冠
冬木きるや人らこだまに意を注がず 細谷源二 砂金帯
冬瀧のきけば相つぐこだまかな 飯田蛇笏
凍てゆるむ落石音や七こだま 加藤知世子
凍ゆるむ落石音や七こだま 加藤知世子 花 季
凍解けて瀧にもどりし水こだま(常陸袋田瀧) 上村占魚 『方眼』
初猟の第一発のこだまかな 大橋櫻坡子 雨月
初蝶の行方は水のこだまかな 勝又木風雨
初鵙のこゑこだまして山は晴 小谷紫乃
勝名乗寒ンのこだまを返しけり 久保田万太郎 流寓抄
十五夜にこだましてゐる町の鍛冶 阿部みどり女 『微風』
友とその新妻春の汽車こだま 友岡子郷 遠方
双魚忌の山に籠りし水こだま 梶田悦堂
句碑洗ふ青嶺にこだま返しては 長山遠志
吹雪中呼べどこだまもこたへせず 長谷川素逝
呼ばず返さず冬のこだまは受けるのみ 村越化石 山國抄
呼びあへるこだまのはても峡青田 杉本寛
咳こだまリョウメンシダの林にて 高澤良一 さざなみやつこ
啄木鳥(けら)こだま山齢樹齢あらたまる 千代田葛彦
啄木鳥が森にこだます森にゐて 山本宏子
啄木鳥の音のこだまや鞍馬山 国枝洋子
啄木鳥やおのがこだまの中に棲み 太田黄波
啓蟄の蛇に丁々斧こだま 中村汀女
地の底の神が滝呼ぶ闇こだま 河野南畦 湖の森
夏みなぎるグワーングワーンと鉄こだま 古沢太穂 古沢太穂句集
夏潮の谺がこだま生む岬 上村占魚
夕霞して剥落の嶽こだま 新井海豹子
夜気ふかみ仏法僧のこだまかな 藤田雅子
大原や鳴子こだますよき日和 高橋淡路女 梶の葉
大霞したる海より濤こだま 橋本鶏二
夫婦滝紅葉の山にこだまして 佐藤信子
夫恋へば朝蜩のこだまして 山田芳枝
奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 水原秋櫻子
奥壁は雪崩のこだま返し来ず 高田貴霜
奥蝦夷にこだます馬耕日和かな 千葉仁
威銃こだまを返し来て威す 山岸木風
威銃のこだまの響く三毳山 森田とみ
実椿の数へきれざる滝こだま 岩崎多佳男
家壊す音こだまして秋暑し 中村しげ子
寒念仏眠りし山にこだませる 小野淑
寒暁の鶴啼くこだまかけめぐる 貞吉 直子
対岸の石切るこだま夏蓬 大中祥生
少年鑑別所郭公のこだま浴び 飯田龍太
山々にこだまを返す冬将軍 望月基子
山々に鐘こだまして花祭 阿部タミ子
山の井の釣瓶のこだま墓掃除 丸島弓人
山ぼうし谺がこだま生みにけり 和田冬生
山城の雲にこだます採蓮歌 宮武寒々 朱卓
山廬忌の秋は竹伐るこだまより 西島麦南
山火事のあと漆黒の瀧こだま 飯田龍太
山蘆忌の秋は竹伐るこだまより 西島麦南
山門の日に老鴬のこだまかな 原石鼎
岡寺にこだまやすらふ除夜の鐘 山田孝子
巣雀の声さへこだましてきこゆ 原石鼎 花影以後
巫女の鈴こだまとなりて杜小春 石川規矩子
幾棹も山にこだまし雁渡る 阿部みどり女
御厨人窟や冬蚊喰鳥こだまなす 黒田杏子 花下草上
慈悲心鳥こだまの奥は濡れており 国武十六夜
斑雪山月夜は滝のこだま浴び 飯田龍太
斧を振る青いこだまを孵らせて 穴井太 原郷樹林
斧音のこだまかへれば割るゝ榾 蔵本高子
旧山河こだまをかへし初鼓 飯田蛇笏
春の燭ミサのこだまと共に揺れ 山本歩禅
春伐りのこだま斑雪の瀬山越え 石原八束 雪稜線
春寒のミサのこだまの天より来 山本歩禅
春雷のこだまぞきそふ甲斐の国 多田裕計
春雷や埋めし愛のこだまとも 仙田洋子 橋のあなたに
月光にこだます鐘をつきにけり 杉田久女
月光にしづめる部落滝こだま 柴田白葉女 花寂び 以後
月明りこだまこだまの紅葉山 川崎展宏
朴の咲く淵にこだます機屋かな 水原秋桜子(1892-1981)
杉山に父かと思ふ瀧こだま 原 裕
林中のやがて涼しきこだまかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
枯れてゆく山にこだまして砧うつなり 山本木天蓼
枯山をこだまのごとし道が這ふ 平井照敏 天上大風
枯桑にとびつく筬のこだまかな 石原舟月 山鵲
梅天に抛つ怒りこだませよ 稲垣きくの 牡 丹
樹々邃く鳶啼くこだまはるかすむ 飯田蛇笏 雪峡
残雪に少年が打つ斧こだま 中村里子
段々の水田こだまにほととぎす 森澄雄
水こだま走りて釣瓶落しかな 長谷川双魚
氷壁が返すこだまはわれのもの 本田青棗
氷壁のおのがこだまの中に鴎 古館曹人
氷海やこだまさびしきわれの咳 伊藤彩雪
汐浴びの声ただ瑠璃の水こだま 中村草田男「来し方行方」
流氷のうちあふこだま宙に消え 高田高
流氷の寄せくるこだま天に飛ぶ 柳瀬重子
流氷や遠いこだまは耳内の垢 野川幸江
海堡のこだま捨て来しものと蘇える 堀葦男
温泉の宿に何建つ昼の斧こだま 石塚友二 光塵
湖艇去る笛こだまして山眠る 宮武寒々 朱卓
滝こだまして山葵田の水匂ふ 伊東宏晃
滝こだまして総身をくもらせぬ 原裕 葦牙
滝涸れて返すこだまもなくなりぬ 西島麥南 金剛纂
濤こだま実朝忌まだ先の日ぞ 友岡子郷 風日
熊まつりはじまる法螺のこだまかな 栗原愛子
猟犬を呼ぶ指笛のこだまかな 渥美三江
猟銃のこだまは別の銃のごと 皆吉爽雨
猪撃ちの第一発のこだませる 金井綺羅
献詠の披講こだます獺祭忌 坂泰子
疎の村の青嶺こだまに機を織る 河野南畦 湖の森
真夜覚めて波郷と呼べり霜こだま 林 翔
神滝のこだまや濁る世へ絶えず 北さとり
秋天にこだまも青く枝おろし きくちつねこ
秋深し身をつらぬきて滝こだま 鷲谷七菜子
秋風やこだま返して深山川 飯田蛇笏 山廬集
稲扱くや水の佐原の夕こだま 橋本榮治 麦生
空蝉のこだま綴りし少年期 齋藤愼爾
窯打ちのこだま韋駄天枯木山 池元 道雄
立春のこだま隧道抜けてくる 田山諷子
竹伐って村のこだまを運び去る 神蔵 器
竹伐つて今昔もなきこだまかな 河野友人
竹伐つて竹のこだまを浴びにけり 石嶌岳
竹伐りのこだま海側山側に 手塚美佐 昔の香
竹切つて村のこだまを運び去る 神蔵器
筒鳥のこだまに由布の山夜明 雨宮美智子
簗なほす青水無月の夕こだま 橋本榮治 逆旅
籾摺の音こだまして夜に入る 相良 九馬
紅糸が足らぬ日暮の滝こだま 神尾久美子 桐の木
群鶴の声こだまする天暗く 小原菁々子
羯鼓うつ音にこだます鳴子かな 岡本松浜 白菊
老杉の空えんぶりのこだまかな 原よしろ
老鴬に谷ひえびえとこだましぬ 飯田蛇笏 春蘭
老鴬のこだまを返し地獄谷 伊東宏晃
老鴬のこだま秘境へ幾峠 今村征一
老鴬のこだま返しに隠り沼 加藤耕子
老鶯に谷ひえびえとこだましぬ 飯田蛇笏
聖歌果てし街は汽笛の雪こだま 加藤知世子 花寂び
胎内に母音のこだま花祭 橋口 等
舊山河こだまをかへしはつ鼓 飯田蛇笏
芒闌けこだまが遠嶺より返る 河野南畦 湖の森
花さんざし斧のこだまの消えてなし 神尾久美子 桐の木
花の駅噴水塔がこだまして 中島双風
花火こだまする深い山肌 シヤツと雑草 栗林一石路
芽吹き山二重にこだま返しけり 二村典子
若葉してこだまを返すホルンの音 佐長 芳子
苧殻折る刻こだまする寺の鐘 山城やえ
茸狩りのわらべこだまに憑かれけり 西島麦南
草原に湧きたつこだま野馬追へり 秋山素子
草笛や白鳥陵の水こだま 石田勝彦
荒尾根の雲へこだまの雷一過 河野南畦
落石のこだま還らず去年今年 ほんだゆき
落葉松に焚火こだます春の夕 前田普羅 春寒浅間山
蕨狩りの声の こだまの 青天井 伊丹三樹彦 一存在
薄暗き厨房秋の水こだま 奈良鹿郎
薪棚を崩すこだまや昼霞 楠目橙黄子 橙圃
藪伐れば峰のこだます寒さかな 飯田蛇笏 山廬集
蝉やむと夜は天づたふ滝こだま 神尾久美子 桐の木
蝕け向日葵こだまは言を裏返す 中戸川朝人 残心
蝶凍てゝ青空石切るこだまのみ 友岡子郷 遠方
蝶蜂の高さの上を谷こだま 藤田湘子 てんてん
試めし打つ銃のこだまや夏木立 楠目橙黄子 橙圃
谷こだましてまんさくの日和かな 小島健 木の実
谷ふかく滝こだまして厚朴の花 柴田白葉女 花寂び 以後
谿ひろくこだまもなくて嶽の秋 飯田蛇笏 雪峡
谿枯れてこだまとどめず蔓もどき 有働亨 汐路
轟々と建国の日の滝こだま 吉田銀葉
通草咲き風のこだまをこもらせる 小松崎爽青
遠郭公深井のこだま聞くごとし 大熊輝一 土の香
郭公こだま一車より白衣降り 友岡子郷 未草
郭公こだま妙法此処に定まりし 林原耒井 蜩
郭公にこだま白樺に水鏡 宮津昭彦
郭公のそれのこだまと遠き音と 皆吉爽雨「寒柝」
郭公の遠音こだまは末消ゆる 豊長みのる
郭公は近しこだまははるかより 大矢一風
重陽やこだまし吠ゆる杣の犬 大峯あきら 鳥道
銃こだま雪こんこんと葉につもる 川島彷徨子 榛の木
降臨の峰にもこだま胡麻を刈る 脇本星浪
雅楽の音木々にこだます来迎会 中橋文子
雨ながら老鴬嶺にこだまして 山内遊糸(蘇鉄)
雪山に春のはじめの滝こだま 大野林火
雪山をはひまはりゐるこだまかな 飯田蛇笏
雪崩音止みて落石音こだま 岡田日郎
雪解富士戸々の賤機こだませり 飯田蛇笏 春蘭
霜枯に柩打つ音こだませず 草間時彦
霧濃ゆし馬蹄のこだま喝破とのみ 竹下しづの女 [はやて]
青啄木のこゑこだまして雑木山 加藤功
青天より落花ひとひら滝こだま 野澤節子 黄 炎
風韻のこだまかへしに寒ざくら 吉田未灰
馬をよんでみた大聲に こだまがなかつた 吉岡禅寺洞
高千穂の双肩高き冬こだま 殿村莵絲子 牡 丹
高西風に斃馬を落すこだまかな 飯田蛇笏 霊芝
鳥追ふや山から谷から兄のこだま 加藤知世子 花 季
鳶啼けり渓こだまして余花の昼 飯田蛇笏 霊芝
鴬のこだま二の沢三の沢 松田ひろむ
鵯こだま嵯峨の旨水日々に透き 高野途上
鶴唳のこだま返しの残照に 山田弘子 こぶし坂
黄昏れて山に稲刈る音こだま 佐瀬しづ江
●鼓動 
あかときの鼓動はじまる岩燕 里見美季
かゑらじの花の鼓動を聴きにけり 渡辺恭子
たしかなる春の鼓動を水音に 吉富萩女
てのひらで花野の天の鼓動聞く 伊藤敬子
やもりはう暗夜は駅が鼓動する 大西健司
ジキタリス掌にし鼓動の昂ぶりぬ 奈良恭子
一山の雪解の音はわが鼓動 早乙女翠
下萌や大地の鼓動色となる 脇収子
乳飲み子の鼓動を背ナに茄子漬ける 佐藤みさご
傷口にあつまる鼓動梨の花 藤井淑子
全山の花の鼓動を秘む真闇 安原葉
冬の雁空に鼓動をのこしつつ 三嶋隆英
凧揚げて天の鼓動を掌に享くる 小田欣一
初富士の鼓動聞こゆるところまで 安斉君子
初日待つ大地の鼓動聞きながら 松本つね
判決たとえば罠の中の鼓動 湊楊一郎
大地より温泉(ゆ)の湧く鼓動はこべ草 高澤良一 寒暑
大海の蕊はプランクトンの鼓動 高橋比呂子
大都市の鼓動はじまる霜柱 山田弘子 螢川
心臓の鼓動をかえす銀河かな 五島高資
心臓の鼓動移りぬ鳥兜 高澤良一 燕音
思ひ草見つけてよりの死の鼓動 成田照子
息止めて蝮と鼓動同じくす 北郁子雄(草苑)
放ちたる蝉の鼓動の掌に残る 林 民子
春隣こけしの鼓動を手のひらに 松田考人
朝の日の鼓動あさざの花こぞり 高橋謙次郎(冬草)
港何処か鼓動し止まず春近き 手島靖一
火の山の老いし鼓動に浮巣光る 佐怒賀正美
灯を消して深まる秋の鼓動きく 嶋崎久子
点滅は胸の鼓動よ恋蛍 大野利江
牡丹に鼓動伝はる昼の風 平野券月
発つ前の電車の鼓動青ぶだう 望月紫晃(萬緑)
白木蓮空の鼓動のあるごとし 朝倉和江
目白来ているしずかな鼓動たいせつに 中島伊都
秋闌けて大樹の鼓動感じけり 高橋鋼乙
笑ふ山に入りて親しき鼓動音 奈良文夫
脈さぐる遠くに春の鼓動あり 坪井耿青
芋虫のつめたき鼓動つまみをり 石井光枝
花の夜海大鼓動大鼓動 塩川雄三
荒々し単衣の鼓動もてあます 山崎浪江
虚子館の鼓動聞きつつ春を待つ 藤浦昭代
蜉蝣に触れたる指の鼓動かな 稲畑汀子
血圧計春の鼓動を捉へけり 鈴木栄子
野火果ててふたつの鼓動だけの夜 櫂未知子 蒙古斑
錫眠る 地中の鼓動 真闇より 伊丹公子 パースの秋
雪中や己が鼓動を音とせむ 斎藤梅子
雪催ひ発動船の鼓動聴く 殿村莵絲子 花 季
露天湯に赤子の鼓動雲の峰 飯田龍太 遅速
鰹船帰る砂丘も鼓動して 百合山羽公 寒雁
鼓動が走る一団走るしまる刈田 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
鼓動ごとみどりごを抱き明易し 仙田洋子
鼓動して太古のこころ深山瀧 高澤良一 燕音
鼓動見つ四五歩さかれる仔蜥蜴の 川口重美
●声音 
いたつきの声音のとほる秋ざくら 石原舟月
うき猫をくどく声音や屋根の上 猫の恋 正岡子規
けさ秋や母の声音の風切つて 清水基吉 寒蕭々
この雪に昨日はありし声音かな 前田普羅
わが声音母より承けし沙羅の花 鈴木貞雄
ジプシーの嘆きの声音朧裂く 文挟夫佐恵 雨 月
亀鳴いてそは哲学的な声音かな 小林しづ子
喧*嘩する声音笑はん百千鳥 浮生
喪の旅雨今甦る氏の声音 楠本憲吉
囮鳴くひとの声音の優しさに 久保千恵子
土壇場の蝉の声音と思ひけり 高澤良一 随笑
木蓮や母の声音の若さ憂し 草間時彦
業平忌老いの声音のさわやかに 久保田万太郎
水に墜つ藤の声音のむらさきに 高澤晶子
水仙剪る君の声音を受けて起つ 岩田昌寿 地の塩
熱かんをすすむるときの汝が声音 高澤良一 ぱらりとせ
癌の兄声音しずかに受話器を来る 西東三鬼
秋淋し人の声音のサキソホン 杉本零
能面のとほき声音も露けしや 西村和子 かりそめならず
臘八の旦峨々たる声音かな 河東碧梧桐
通草の花訛れる声音ききとれず 原田種茅
遠き声音近き言葉や夏近づく 成田千空 地霊
雁の濡るる声音や日記閉づ 阿部みどり女 『陽炎』
飴舐ぶる声音日雇梅雨こもる 岩田昌寿 地の塩
●ざくりざくり 
父死すやざくりざくりと霜柱 松林尚志
鎌鼬ざくりと一生始まりぬ 恩田侑布子
うぐいすの夕べざくりと山の創 西東三鬼
何かまた起きさうざくりと林檎へ刃 奈良文夫
●雑音 
そこはかとなき雑音や秋の暮 銀漢 吉岡禅寺洞
町中を雑音を沈めて秋の川 阿部みどり女 笹鳴
聞き流すつもりの雑音藤袴 落合よう子
舟を上れば陸の雑音蜩に 安斎櫻[カイ]子
蜂飛べりラジオ雑音となりし昼 長谷川かな女
補聴器に拾ふ雑音日向ぼこ 原村明子
都会の雑音に朝となり花が散りゐたり シヤツと雑草 栗林一石路
雑音に耳あそばせて日向ぼこ 竹下しづの女
雑音のリズムを ききわけようとして 宿の菊に 吉岡禅寺洞
雑音の多きラジオに黄砂降る 山内崇弘
鶏頭も 雑音をきいている 一人である 吉岡禅寺洞
●騒めき 
騒めくは筐底に秘す薄原 冨田拓也
大杉の枝騒めいてしづり雪 稲畑廣太郎
●残響 
五個空洞雷後の大気残響す 斎藤空華 空華句集
残響のごと雲白き桜山 渡邊千枝子
残響の尋ね人欄冬景色 坂間恒子
鍵盤に触れし残響五月闇 徳田千鶴子(馬酔木)
離郷残響霙の尋ね人われは 汎 馨子
●山籟 
冬籠山籟聞いて起きしぶる 高田蝶衣
冬葉忌真間の山籟底冷えす 吉田巨蕪
引く鈴に山籟つのる初不動 北 光丘
綱曳の声山籟となりにけり 吉本伊智朗
●潮騒 
*はまなすに紅あり潮騒沖に鳴る 橋本多佳子
いねがての潮騒のなか鉦叩 佐野まもる 海郷
いわし雲天の潮騒ひびきをり 中村明子
おぼろ夜の潮騒つくるものぞこれ 秋櫻子 (竜燈鬼)
おぼろ月あげ潮騒のマリア像 朝倉和江
この辻も汐騒かよふ厄落し 大川つとむ
ふるさとの潮騒を聞く誘蛾灯 遠藤きん子
ゆく春や汐騒はわが鎮魂歌 鈴木真砂女 夕螢
よき館の夏潮騒をきく窓辺 高木晴子 花 季
アトリエを包む潮騒花ダチュラ 高澤良一 宿好
ソース瓶潮騒に立つ夏の果 桂信子 緑夜
ネクタイに潮騒まとふ葱坊主 古舘曹人
ペーロンを明日の潮騒高まりぬ 朝倉和江
ラムネ玉抜くや汐騒耳元に 西尾みゐ
冷蔵庫に潮騒のあり谺あり 工藤克巳
合いの手に潮騒浜の三味線草 高澤良一 宿好
壺焼に岬の潮騒いつもあり 小原潤児
夏の夜の街の潮騒ふちどる奴 穴井太 天籟雑唱
夕されば汐騒きこえ梅も散る 田中冬二 麦ほこり
大根蒔く潮騒荒き地の湿り 加藤一夫
天井に潮騒映る晝寝かな 横光利一
奥能登の潮騒とみに十三夜 桑田青虎
家中に潮騒ありて桃開く 柿本多映
小春日を潮騒とゐる妻とゐる 川口 襄
師のこゑは潮騒に似て春障子 小島千架子
明易き潮騒としも聴きし音 稲垣きくの 黄 瀬
春の岬潮騒聞かぬ高さにあり 瀧春一 菜園
暗香浮動して月たそがるる潮騒や 日夏耿之介 婆羅門俳諧
暮れてより潮騒高し言水忌 中西登志子
曇り日の潮騒こもる青芒 吉野トシ子
朝鮮通信使か 潮騒にまぎれるは 伊丹公子 山珊瑚
朧夜の潮騒神の燈をゆりて 原 柯城
東風鳴りとこの潮騒をいひならし 余子
松籟に潮騒に引く小松かな 高橋カズ子
松虫や潮騒宵をしづかにす 柳芽
松虫鈴虫汐騒の涼しくなれる 臼田亜浪
松風は潮騒に似て未明の忌 大沢紀恵
梅雨上る潮騒陸にたかぶりて 松村蒼石 雪
母老ゆや野分潮騒彩なすは 原裕 葦牙
水仙に潮騒こもるかと思ふ 矢島渚男 延年
水貝の夜の汐騒に降り出でぬ 石井几輿子
永良部百合芽立つ潮騒遠くあり 山之内赫子
汐騒にせかるるごとく若菜摘む 宮井保八郎
汐騒に耳慣れて待つ後の月 脇山夜詩夫
汐騒のひとりひとりに佛生会 向山隆峰
汐騒の社頭の薄暑賽し去る 高濱年尾 年尾句集
汐騒を聞きつ外寝や浜の宿 木村いつを
沖かすみ潮騒もなき宿の朝 高濱年尾
浜に来て潮騒もまた淑気満つ 塩川雄三
浜木綿やこの潮騒の太古より 平間真木子
海峡の雨の潮騒きりぎりす 西村公鳳
海胆割くや潮騒いつも身のほとり 吉村圭子
海鞘を食ひ潮騒を聞く気仙沼 西原金二郎
漂ふは古典か春の潮騒か 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
潮騒が呼ぶはかの世の鸚鵡貝 関口比良男
潮騒ぐ岬の夕ベの沖膾 川島千枝
潮騒ぐ海女の小さな冬菜畑 田中蛙村
潮騒と宵宮と遠きこといづれ 龍男
潮騒にかかはりもなく百千鳥 岡田和佐子
潮騒にこころ遊ばす秋日傘 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
潮騒にたんぽぽの黄のりんりんと 阿波野青畝
潮騒にまぎれて僧の秋耕す 心山義明
潮騒にまじる安乗の初音かな 清水弓月
潮騒に乗りてとんどの触れ太鼓 関口祥子
潮騒に今日を占ふ思草 北さとり
潮騒に勝る松風新松子 伊丹三樹彦
潮騒に垂水の滝の昏れのこる 山口耕堂
潮騒に墓囲ふ音消されけり 荻原都美子
潮騒に夢溜めてをり子安貝 瀬底月城
潮騒に混じる島唄みどりの夜 田中正子
潮騒に耳をあづけて磯遊 吉村絹子
潮騒に臥して山ある千鳥の夜 有泉七種
潮騒に花なげ入れる沖縄忌 井上土筆
潮騒に花種を蒔きゐたりけり 出原博明
潮騒に近き旅路やくぢら汁 鈴木興治
潮騒に重ね初音と松籟と 山城悦子
潮騒に陶の椅子あり春深し 鈴木鷹夫 千年
潮騒に雲雀のあがる九十九里 久留島楽
潮騒のうつつなに麦縞なせり 臼田亞浪 定本亜浪句集
潮騒のおそろしき反復いまもなお水族はわれらを底より呼ばう 井辻朱美
潮騒のかけ登る丘末枯れて 矢野三汀
潮騒のくらしに馴染み赤とんぼ 安斎郁子
潮騒のここまで痛く貝割菜 角川照子
潮騒のしみ入る森の秋の暮 松村蒼石 雪
潮騒のだん~遠し草いきれ 修藤清潯
潮騒のどこかが余熱ピアス揺れ 田中亜美
潮騒のよろこび通る桃林 長谷川双魚 風形
潮騒の中にて踊笠かぶる 松本旭
潮騒の二見泊りに伊勢道者 高橋淡路女 梶の葉
潮騒の寝をなさしめず年徂く夜 臼田亞浪 定本亜浪句集
潮騒の届かぬ大和鑑真忌 湊 キミ
潮騒の御陵の裾のかたつむり 伊藤いと子
潮騒の松風となり松露掘り 阿部みどり女 笹鳴
潮騒の果はけぶれり抱卵期 中尾杏子
潮騒の構造として縊死体 高岡修
潮騒の止まぬ甕棺天の川 八島岳洋
潮騒の添ふ田を植ゑて島も端 茂里正治
潮騒の町に住み馴れ松帆忌 池田孤星
潮騒の空の深さに馬肥ゆる 長倉いさを
潮騒の絶え間なき野の土筆かな 大屋達治
潮騒の聖堂低し花大根 水原春郎
潮騒の追つて来る道新松子 島村茂雄
潮騒の遠のき浜のあたゝけき 上村占魚 鮎
潮騒の闇ををろがみ和布刈禰宜 笠松崎帆子
潮騒の雄心鶴の来る日なり 長野澄恵
潮騒の香のたかまれば鳥渡る 対馬康子 吾亦紅
潮騒の馬がまたくる松露掻 柿並その子
潮騒は南洋よりす八重霞 渡邊水巴 富士
潮騒へ真直に来る白日傘 鈴木鷹夫 渚通り
潮騒へ祈るかたちの黄水仙 紙谷礼子
潮騒やいま生誕の落椿 田中水桜
潮騒やさみだれ晴るゝ天心居 及川貞 榧の實
潮騒やつるべ落しの出雲崎 横田 和
潮騒やぬるきこたつの長谷の家 及川貞 榧の實
潮騒やひとりに広き夏座敷 藤原照子
潮騒やぶちまけし藍に冬日照る 渡辺水巴 白日
潮騒やリオのホテルの竹夫人 坂倉けん六
潮騒や七夕柳散るもあり 臼田亞浪 定本亜浪句集
潮騒や千両畑に日の籠り 観世真希子
潮騒や夜霧に透かす千鳥の碑 小黒葭浪子
潮騒や女人ばかりの秋遍路 河本好恵
潮騒や巣籠り燕ひとりゐて 石田波郷
潮騒や戦火の色の花デイゴ 十時千恵子(青嶺)
潮騒や木の葉時雨るる夜の路 臼田亞浪 定本亜浪句集
潮騒や松過ぎの咳落すのみ 渡辺七三郎
潮騒や父母なき家の燕の巣 桜井周子
潮騒や片栗の花うすれゆき 村上しゆら
潮騒や獅子舞去りしそのあとも 佐野鬼人
潮騒や白百合かをる名護の浦 棚原節子
潮騒や砂丘に触るゝ二日月 那須乙郎
潮騒や簾越しなる顔は誰 加藤楸邨
潮騒や能登路はじめの花海桐 高橋佳子
潮騒や花を小ぶりに種茄子 玉城仁子
潮騒や裸灯暗く柘榴売る 小池文子 巴里蕭条
潮騒や風の形に若布干し 寄高光津子
潮騒をくろきひかりと曼珠沙華 鳥居おさむ
潮騒をつのらす*むつの活料理 市村究一郎
潮騒をへだつる障子美しく 原田青児
潮騒を伴ふ隙間風に叔母 大岳水一路
潮騒を持ち帰りたる水着かな 佐藤美恵子
潮騒を聞くやちゝろを聴き居るや 松本巨草
潮騒を背に観音の秋日和 山本茂紀
潮騒を背山に蔵し甘茶寺 辻桃子
火の島に潮騒返す浜豌豆 小室ひろし
火祭の終りし闇の汐騒よ 成瀬正俊
灯台に潮騒涼しく届きけり 川竹千代子
熔岩蔭に潮騒届き郁子熟るる 中原槐
爪先にとどく潮騒籐寝椅子 片山由美子 雨の歌
牛蒡掘りゐて潮騒のとどかざる 高橋将夫
牡丹の花の渦より汐騒す 鴻司 (雨情の旧居)
玄界の潮騒聞ゆ芒原 江頭 景香
白破魔矢潮騒空にひろがり来 友岡子郷
目白籠遠汐騒に揺れやまず 大熊輝一 土の香
着ぶくれてわが潮騒を葬りぬ 櫂未知子 蒙古斑以後
短夜の潮騒を呼ぶこきりこか 文挟夫佐恵 遠い橋
短夜の馬渡潮騒聞きながら 小原菁々子
石狩の潮騒遠き花野かな 松原智津子
秋の夜も小箱の貝の潮騒す 都筑智子
空を飛ぶ潮騒のあり初蛙 矢島渚男 延年
紅葉せる草を潮騒揺らしゐる 加藤美子
終夜潮騒雛は流されつづけゐむ 松本明
義貞の海の潮騒椿落つ 安部しずほ
舷に汐騒更けぬ舟遊 青峰集 島田青峰
花烏賊や春の潮騒ひもすがら 石田波郷
若菜摘む潮騒近くとほしとも 南出朝子
茄子の紺ふかく潮騒遠ざかる 木下夕爾
萬葉の こゝろにふれて 汐騒をきこう 吉岡禅寺洞
葱埋めて夜の潮騒の遠ざかる 中拓夫
薯畑にただ秋風と潮騒と 山本健吉
虫時雨浜近ければ潮騒も 滝川如人
蜑ケ家の潮騒近き門火かな 関千恵子
街騒を潮騒として眠りけり 林原耒井 蜩
街騒を潮騒と聴き蕪村の忌 鍵和田釉子
貝殻に潮騒を聴く秋思かな 川村はるか
身ぬちにも潮騒ひびき鷹渡る 中村明子
鎮魂の潮騒届く余花の寺 横島正子
雨乞ひの耶蘇のオラシヨか潮騒か 荒井千佐代
霜柱小石以外は潮騒です 伊藤淳子
鬩ぎあふもの潮騒と秋の蝉 池田昭雄
鰯網陸近づけば潮騒ぐ 高浜虚子
鴨が引く遠汐騒に月消ゆる 石原舟月
鶯の初声潮騒とききにけり 遠藤千鶴
鹿の子の耳汐騒を捉へけり 佐伯子翠
●閑けさ 
にほどりや野山の枯るゝ閑けさに 日野草城
千年のこの閑けさに残る虫 つじ加代子
天の川仰ぐ閑けさや生流転 石塚友二 方寸虚実
寒濤の鵜をひそめたる閑けさよ 永井龍男
山湖ただ月天心の閑けさに 村田脩
枯るるとは閑けきものの滝のみかは 稲垣きくの 牡 丹
棄石を打つ閑けさや茄子の花 今関幸代
欅散るその閑けさに涵りをり 石塚友二
沁み入るるに閑けさに蝉の声あらず 村田脩
炎昼の閑けさ破り岩魚跳ぶ 影山葭郎
白日の閑けさ覗く余寒かな 渡辺水巴 白日
蚊のいづる閑けさ下手な字が書ける 永田耕衣 真風
遠火事の閑けさにゐて莨吸ふ 久米正雄 返り花
閑けさにふれてをるなり実千両 山田真砂年
雉鳴くや閑けさすぎて浦かなし 佐野まもる 海郷
鬼女跳べり全山枯るる閑けさに 河合凱夫
●地鳴り 
一国は地鳴りせしあと寒鮃 斎藤梅子
冬の海荒ぶ熊野が地鳴りして 茨木和生 木の國
地鳴きして岳去り難き日雀をり 澤田緑生
地鳴りしてお会式太鼓近づけり 伊藤伊那男
地鳴りして湯柱の立つ雪間かな 井桁蒼水
地鳴りして火を噴く山の野分かな 上村占魚 鮎
地鳴りめく読経や四万六千日 三谷敏子
地鳴りめく音よとろろを擦りくるる 藤岡筑邨
春の鮒不意に地鳴りのみなもと何処 金子兜太
末枯や地鳴りしづかに電解炉 有働亨 汐路
死が残す地鳴りに浮きぬ夜菊の白 加藤知世子 黄 炎
海波折れ地鳴り穹鳴り雪月夜 石原八束 『操守』
海鳴りの地鳴りとなりし海桐の実 関口祥子
火の島の地鳴りつづきの墓洗ふ 吉田亜司
火口地鳴りの背をのして嘶く凍え馬 石原八束 空の渚
蛇走りいくさの地鳴りふつと消ゆ 熊谷愛子
軽い田に膝刺し遠い湖から地鳴り 隈治人
迅風凍つ火口地鳴りの人小さし 石原八束 空の渚
闇ひさし闇ひさし地は地鳴せり 片山桃史 北方兵團
阿蘇寒し地鳴り地獄のこゑ天に 石原八束 空の渚
頬白の地鳴かそけし草城忌 石田あき子 見舞籠
●地響き 
井戸堀の地響き浴びし冬すみれ 鈴土郁子
人灼けて行けど兵舎の趾地響かず 宮坂静生 青胡桃
六年生走る地響き運動会 上森勉
地響きのごとき海鳴り橇を曳く 中岡毅雄
地響きは貨車焦れ泣きは裸子ぞ 中島斌男
地響きをたてきし駿馬冷やすなり 澁谷道
寒牡丹貨車が地響きしてまぶし 加藤知世子 黄 炎
油締める地響きに秋の行方哉 内田百間
波折れて地響き立てるぎすの浜 右城暮石 上下
穂草とぶ十四頭の地響きに 正木ゆう子 悠
競べ馬地響き立てて三騎来る 藤井艸眉子
●弱音 
あたたかし三日の森の弱音鵙 星野麦丘人
ますらをの弱音よろしき蕪蒸 前田攝子
やすやすと弱音を吐くなかぶと虫 桜井 清一
わかめって弱音を吐いたあなたみたい 滝浪貴史
わが弱音子に摶たるるよ胡桃割り 石田あき子 見舞籠
リルケをもて斬りあふ女鵙弱音 加藤知世子 花寂び
初めてきく男の弱音かがみ餅 林 節子
唐辛子母の弱音は聞かざりし 北見さとる
寒椿弱音吹き消す吾子の声 牧 ひろ子
弱音など吐かぬつもりの木守柿 保坂加津夫
弱音吐かなくて何吐く雲の峰 飯島晴子(1921-2000)
春の雷弱音を吐いて失せにけり 中原道夫
汗止まぬ上り弱音はあきらめに 高澤良一 素抱
焚火して男の弱音ふと洩らす 平子 公一
白桃や弱音を吐かば寧からむ 山田みづえ 忘
磴厳し十薬の辺に弱音吐く 高澤良一 素抱
稲食ふて弱音を吐くな稲雀 津田清子
自桃や弱音を吐かば寧からむ 山田みづえ
鉄のふうりん弱音吐きにけり 安斎郁子
闇に跼み蟇の弱音を聴いてやる 上田五千石 田園
●秋声 
いとけなき五輪塔より秋の声 青柳志解樹
かづら橋渡る悲鳴も秋の声 松倉ゆずる
きゝ耳を立て秋の声聞かむとす 徳永山冬子
くかたちの神ましまして秋の声 角光雄
ことごとく文にしてなほ秋の声 赤松[ケイ]子
さゞ浪やあやしき迄に秋の声 嘯山
すでにもや身につきそめし秋の声 岸田稚魚
とりかごの曙はやし秋の声 平水
ふと止まる蟻に風吹く秋の声 阿部みどり女
みそぎして寄せくる秋の声きかん 勘助
みづうみがあげた流木秋の声 川崎展宏
めつむりて聴く葦原の秋の声 和泉千花
われ鐘や敲けども秋の聲ならず 秋の声 正岡子規
セザンヌの筆の余白に秋の声 岡田貞峰
ダム底の村より上る秋の声 末永あつし
パルミラの劇場に座し秋の声 太田土男
ピン抜くや抜けて絡む毛秋の声 竹下しづの女 [はやて]
一人居の窓に貼り付く秋の声 横川セツ子
万灯の一灯吾が灯秋の声 関口ふさの
三人の声に答へよ秋の声 其角 (コ斎三回忌智海師と共に墓参)
三猿見つつも見よ聞け言えとの秋の声 原子公平
三角兵舎出でしそびらに秋の声 古賀まり子
三重上げて扇の隙や秋の声 立詠 選集「板東太郎」
上京の意を怯ますや秋の声 杉山岳陽 晩婚
中空は川曲明りに秋の声 宮武寒々 朱卓
主一人坐れば秋の声坐る 上甲平谷
亀の首伸びきつて聴く秋の声 大西一冬
人びとのこゑごゑそこに秋の声 森澄雄
人去れば林泉(しま)のいづこも秋の声 独峰
佃島そぞろ歩くや秋の声 荒川優子
六甲に入日抱きて秋の声 稲畑廣太郎
内陣に不滅の燈や秋の声 寺島初巳
円柱(エンタシス)秋の声とは遠きこゑ 大島雄作
初夜すぎし根岸の町や秋の聲 秋の声 正岡子規
初夜過る根岸の町や秋の聲 秋の声 正岡子規
化野の石より湧きし秋の声 松本圭二
北上の渡頭に立てば秋の声 青邨
千切れ置く古佛の手より秋の声 橋本鶏二
叩く時は叩かぬ時は秋の聲 秋の声 正岡子規
吶喊も鬼哭も秋の声なのか 川崎展宏 冬
国曳きの岬つたひくる秋の声 藤井圀彦
土掘れば鳴かぬ虫にも秋の声 永田 市平
大楡の葉末にありし秋の声 佐藤洸世
大瀑布ひとすぢ秋の声を添ふ 篠田悌二郎
大銀杏見上げてをれば秋の声 本田 洋子
天嶮の城址に佇ちぬ秋の声 貞末たね子
奥知れぬ山居の樹々に秋の声 加藤知世子 花寂び
妻擁きつゝ母の忌の秋の声 杉山岳陽 晩婚
家に人なく人に家なし秋の声 成美 (海嘯)
寐て遠く聞や踊も秋の声 素外
寐沈んで聞けばどこやら秋の声 文士
寺掃けば日に日にふかし秋の声 中川宋淵
山国の枕木きしむ秋の声 伊藤 翠
山荘や飼鹿ながら秋の声 大谷句佛 我は我
岩走る水しろじろと秋の声 小倉虹男
川風や草にもよらず秋の声 士朗
帛を裂く琵琶の流れや秋の声 蕪村
師を偲ぶ座に加はれば秋の声 山口富美子
幹に声かけ幹からも秋の声 鷹羽狩行
幹照らしあふ赤松の秋の声 脇本星浪
弟の姉呼ぶ秋の声であり 黒田杏子 花下草上
弟子曾良の仕込み杖より秋の声 八島雅子
手に愛づる土器のかけらに秋の声 濱 裕子
打ち寄する渚に秋の声すなり 田原 砂子
担庵の韮山竹も秋の声 宮坂静生 春の鹿
掌を開けば充つる秋の声 原裕 『王城句帖』
撥音や上野をめぐる秋の聲 秋の声 正岡子規
斑猫もまぎるる白砂秋の声 田中水桜
明けてけさ鍋の尻かく秋の声 几董 (立秋の翌庚申なりければ)
時雨れむず橋下の水の秋の声 臼田亞浪 定本亜浪句集
暮れてきし柴山潟の秋の声 中島知恵子
暮行くや鼓ケ浦も秋の声 闌更
更くる夜や油皿にも秋の声 馬光 (読秋声賦)
月山の梢に響く秋の声 黒柳召波 春泥句集
月明の山のかたちの秋の声 重信
木の瘤の三猿に似て秋の声 深谷栄子
木偶の瞳と向き合ひ居れば秋の声 大和田享子
木深くも入りてホ句得ず秋の声 長谷川かな女 雨 月
杜甫草堂煙草ばら売り秋の声 杉本寛
松籟の止みたるよりの秋の声 上野 泰
松風のわたるを秋の声と聴く 植野枯葦池
林この問はず語りの秋の声 鷹羽狩行
梅ちるやまつのゆふ辺も秋の声梅散る 千代尼
正しう聞きぬ呱々の声又秋の声 草田男 (芭蕉の生家を訪れて)
死魚なぶる波打際の秋の声 白井房夫
水車場の杵土下せり秋の声 阿波野青畝
水音を秋の声とし奥信濃 鈴木真砂女
洞窟に入りて冷され秋の声 田中蝶々子
流人島去らんとすれば秋の声 山田弘子 螢川
浮桟橋軋む底より秋の声 野木民子
浮浪者語ればただ癇高し秋の声 中村草田男
淋代の砂踏んで聴く秋の声 藤木倶子
湖底に数多の壺や秋の声 川崎展宏
湧き水の影のゆらめく秋の声 市村究一郎
火の山を負へれば詩碑に秋の声 皆吉爽雨 泉声
灯を消して夜を深うしぬ秋の声 村上鬼城
熔岩原の何処に佇つも秋の声 小川原嘘帥
爪打ちに応ふる鐘の秋の声 富安風生
爪深く切りぬ胸中秋の声 沢 聰
癒えたりし胸の奥より秋の声 長谷川櫂 蓬莱
白壁の向う側から秋の声 渡辺鮎太
白樫は直情の樹ぞ秋の声 池田弥寿
白磁壺そこはかとなき秋の声 関口ふさの
百千の石の小法師の秋の声 野澤節子 遠い橋
石庭にしきり人恋ふ秋の声 石川桂郎 含羞
破れ鐘や敲けども秋の聲ならず 秋の声 正岡子規
秋の声あかつき風雨強ければ 山田みづえ 草譜
秋の声かすれ海鳴り呼び込めり 二村典子
秋の声くるしき息をひそむれば 石田波郷
秋の声そつと煎餅割る音も 川崎展宏 冬
秋の声みかえり弥陀は耳ひらき 高岡昭子
秋の声カーブミラーの中に露地 神山 宏
秋の声何かを待てる胸に胸に 篠田悌二郎 風雪前
秋の声千年杉の梢より 田村恵子
秋の声即身仏の辺に聞けり 仁尾正文
秋の声大門に来て聞かむかな 大橋敦子 匂 玉
秋の声女人堂より起りけり 中杉隆世
秋の声寺の屋根にも影長き 白井よし子
秋の声憤る男へしつけたし 香西照雄 素心
秋の声振り向けば道暮れてをり 豊長みのる
秋の声末社の鈴の紐ひけば 川崎展宏 冬
秋の声正倉院の封解けば 越智協子
秋の声母船のごとく帰る家 中山玲子
秋の声流人の島に佇めば 福澤さき子
秋の声熊野の山に神宿る 大島喜代子
秋の声生は深息もて畢る 岸田稚魚 『花盗人』
秋の声石窟にとどこほるかな 大橋敦子 勾 玉以後
秋の声胸に未完の詩そだて 柴田白葉女 『夕浪』
秋の声茶店しまへばただの土間 香西照雄 素心
秋の声踏み来る神馬真白なる 林昌華
秋の声間の襖をすこし開け 長谷川かな女
秋の声雑木林に踏み入れば 宮川秀穂
竹林の深きに住めり秋の声 柴田白葉女 『月の笛』
篠田桃紅美術空間秋の声 黒田杏子 花下草上
老い父母に間遠に昏れる秋の声 落合よう子
耳触れて聞く水楢の秋の声 松村多美
聞き耳を立てしが秋の声ならず 相生垣瓜人 微茫集
聴診器はづして聴けり秋の声 井桁汀風子
良寛のいろは文字より秋の声 鷲見 梅
芦の温泉の石に精あり秋の声 巴人 (白)
芦昏む輪中いちめん秋の声 近藤一鴻
苔をうつ雨や深山の秋の声 宗祇
茶畑のうねりも秋の声とかな 石川桂郎 四温
落ちのびし平家の塚や秋の声 雨宮美智子
虚子に俗なし隣の三味に秋の聲 秋の声 正岡子規
虚子塔に木洩日ひそと秋の声 深見けん二
蜩や蝉を洩来る秋の声 蓼太
行く秋の声も出づるや瓢から 千代尼
行く雲に師父の面影秋の声 山内遊糸
衣擦れといふあえかなる秋の声 山崎冨美子
表紙絵の明治の女秋の声 杉本寛
見返れば山暮れてをり秋の声 八幡城太郎
観念の耳の底なり秋の聲 秋の声 正岡子規
貝がらやむかしむかしの秋の声 中川宋淵 遍界録 古雲抄
足向くは唐招提寺秋の声 北さとり
遠風か夜空に満つる秋の声 阿部次郎
鍬一打土より起こす秋の声 市川紫苑
開け放つ方丈百畳秋の声 大西フサ子
雲の一糸も無く白日や秋の声 中村草田男
雲起て寺門を出づる秋の声 暁台
骨きえて兜に残る秋の声 樗良 (実盛の兜を見て)
鳥籠の曙はやし秋の声 越中-平水 俳諧撰集「有磯海」
鶏が土俵にあがる秋の声 佐々木六戈
かたげこぼす壺の水より秋のこゑ 鷹女
たしかめにきてまぎれなき秋のこゑ 石田郷子
とらはれし熊に奥嶺の秋のこゑ 大島民郎
可盃のおかめひよつとこ秋のこゑ 田口風子
吹きはらふ風からまつに秋のこゑ 鷲谷七菜子 花寂び
壺の口蓮華びらきに秋のこゑ 原 裕
夜も胸に瀧落ちてをり秋のこゑ 鈴木鷹夫 風の祭
大覚寺畳廊下の秋のこゑ 高澤良一 宿好
宇治十帖行間に聴く秋のこゑ ほんだゆき
座を替ふる二神に深き秋のこゑ 嶋田麻紀
手つかずの父の用箋秋のこゑ 能村研三
擲てば瓦もかなし秋のこゑ 蓼太
毳立ちて纜の張り秋のこゑ 中戸川朝人 星辰
流木をあげし砂浜秋のこゑ 雨宮きぬよ
海がくれなほ沈む日や秋のこゑ 三橋敏雄
牡丹の種くろがねや秋のこゑ 原裕 正午
物を干す石のひまより秋のこゑ 達治
獄中の出さざる手紙秋のこゑ 角川春樹
百貫の鰐口に聞く秋のこゑ 北見さとる
眼疾の目をとぢ総身に秋のこゑ 山本つぼみ
紫蘇漬の粒噛み当てて秋のこゑ 高澤良一 素抱
義朝塚千の木太刀の秋のこゑ 村上 光子
耳鳴りの他だれもゐぬ秋のこゑ 鈴木翠峯
花捨てしこれの壺なる秋のこゑ 野中 亮介
貝殻のうちがは白し秋のこゑ 小島健 木の実
酔筆を投ず何ゆゑ秋のこゑ 石原八束 空の渚
長廊下微かに傾斜秋のこゑ 鈴木鷹夫 風の祭
骨壺をいづこに置くも秋のこゑ 原裕 『出雲』
さきがけて秋声聴くや沖の耳 耕二(谷川岳)
めつむりて聴く秋声や楢林 長倉閑山
めつむれば秋声のみな蝶となる 中新井みつ子
レッドウッドは秋声の巨人木 齊藤美規
一屋の樹下に傾く秋声図 相生垣瓜人 微茫集
一翁の窓を埋むる秋声図 相生垣瓜人 微茫集
三輪山に秋声しのび入るごとし 佐藤鬼房
以心伝心秋声は海より来 田中水桜
俳磚に軸に秋声聴かむとす 山口甲村
冬萌や木立囲ひに秋声碑 加藤耕子
千曲川秋声しろきいくさ跡 角田双柿
噴水に立てば秋声よそに去る 百合山羽公 故園
旅人の耳に秋声光悦寺 高木晴子 花 季
旅衣かろし秋声身をつつむ 高木晴子
松籟を秋声と聞きとめて住む 稲畑汀子
松花粉秋声文学碑を染めし 大野林火
水平線より秋声の届きたる 稲畑廣太郎
法隆寺道秋声の中にあり 百瀬美津
波を追ふ波秋声をかきたつる 加古宗也
泰山の秋声聞きし泪かな 藤田湘子 てんてん
秋声と聞くや櫓べその鳴くことも 吉川禮子
秋声にそばたつ耳のおのづから 軽部烏頭子
秋声に百姓まなこみひらかず 辰之助
秋声に聞き入るさまの伎芸天 石原八束
秋声のこゝまで我家木漏れ日に 石橋辰之助 山暦
秋声の切々たりと書は教ふ 相生垣瓜人 微茫集
秋声の壺ころがつて山に満つ 黒田杏子 花下草上
秋声の碑ひそと冬萌ゆる 加藤耕子
秋声の近くて遠し山日和 福井圭児
秋声は何れの窓に多からむ 相生垣瓜人 微茫集
秋声は寧ろ字間にあらむとす 相生垣瓜人 明治草抄
秋声も奮ひ発するものなるか 相生垣瓜人 微茫集
秋声も曾て童子に説かれけり 相生垣瓜人 微茫集
秋声や捨てられしごとある社 亀割 潔
秋声や石ころ二つよるところ 鬼城
秋声や船中八策語録の碑 澤村芳翠
秋声や足下の濤をやや恐る 植松紫魚
秋声や野火止用水翳なせる 加藤安希子
秋声や金魚鳴くとも鳴かぬとも 原 好郎
秋声を聞くを怖れし小詩あり 相生垣瓜人 微茫集
秋声を聞けと放つて置かれけり 金田志津枝
秋声を聞けり古曲に似たりけり 相生垣瓜人 明治草抄
秋声を聴くや京間の竹台子 岡田つばな
秋声を聴く夜の虹沖の虹 黒田杏子 花下草上
秋声を聴けり人語にあらざりし 長倉閑山
秋声を聴けり古曲に似たりけり 相生垣瓜人
秋声碑しぐれつたひしままの痕 細見綾子 和語
竹林に鳴る秋声は峡に満つ 石原八束 空の渚
苑の奥みち秋声みちに樹々のかげ 柴田白葉女 花寂び 以後
補聴器を外せば秋声庭闇に 富田潮児
身を曲げて聞く秋声も陣痛も 赤松[ケイ]子
遥かに秋声父母として泣く父母の前 中村草田男
風落ちて秋声山にこもりけり 伊沢 健存
●銃声 
刈田とう個室に銃声が届く 安西 篤
初猟の銃声さほど遠からず 佐野克男
大根干す銃声に散る朝の禽 中拓夫
密猟か試射か夏野の銃声は 加藤親雄(雲母)
寒夜銃声ちかしと目覚め服を著る 長谷川素逝 砲車
春の銃声川のはじまり尋めゆきて 寺山修司 花粉航海
硝子戸にひゞく銃声何撃ちし 右城暮石 上下
緩急の銃声虫の音を間に 石塚友二 方寸虚実
羚羊を間引く銃声響きけり 工藤貢
連発の銃声がまた雪虫に 白瀬露石
銃声がポツンポツンとあるランプ 富澤赤黄男
銃声す枯野の中の誕生日 対馬康子 愛国
銃声に山は雪崩れて轟けり なかたに蘭
銃声に振向けば山眠りをり 鈴木鷹夫 春の門
銃声に真つ先翔ちし見張鴨 南木土子
銃声のする朝刊を拡げていた 中林一洋
銃声の一つ頭中にまんじゆしやげ 赤尾恵以
銃声の谺雪山無一物 長嶺千晶
銃声や空の奥処に雪降れり 柿本多映
銃声を呑みて熊野の山眠る 坂口 麗峰
銃声を待つてゐるらし冬の蝿 林 誠司
●消音
●鐘音 
さびしさや撞けばのどかな鐘の音 矢島渚男 梟
はん鐘の音する夜の寒さかな 夜寒 正岡子規
ニコライの鐘の音とどく年忘 金原とし子
信貴山の鐘の音花の谷間より 藤野チズ子
冬枯の鞄をおろす鐘の下 古舘曹人 砂の音
当麻寺の鐘の音ひびく春田打 藤武由美子
悪恩寺の鐘の音沁みるさくらんぼ 吉田飛龍子
撞くごとに違ふ鐘の音山眠る 鍵和田[ゆう]子 浮標
時の日のいつも通りに鐘の音 太田ぎかん
替る世や薺にあらて鐘の音 乙由 (薺の句を残して死し人のもとヘ)
枯蔓の先の先まで鐘の音 石田勝彦 秋興
炎天に響く鐘音寒山寺 川名澄子
耶蘇村の春めくものに鐘の音 荒木英雄
聞かぬ日もありて鐘の音霞みけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
英彦谷に沈む鐘の音岩清水 野見山智子
菩提樹の花蕊にこもる鐘の音 志賀暁村
鐘の音に狐の尻尾膨らみぬ 宮 沢子
鐘の音に目覚めし春の障子かな 鈴木鷹夫 春の門
鐘の音に蟻地獄いま夕地獄 赤松[けい]子 白毫
鐘の音に高野の霧の動きけり 赤井よしを
鐘の音のとどのつまりの寒さかな 山田真砂年
鐘の音の島にもどりぬ春霞 古舘曹人 砂の音
鐘の音の漂ひゐたる枯野かな 澤村昭代
鐘の音の耳敏くなる放哉忌 老川敏彦
鐘の音の輪をなして来る夜長哉 子規
鐘の音の過去へ過去へと雪に消ゆ 本岡歌子
鐘の音もうらゝかに市の地割かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
鐘の音をとどめて信濃年を閉づ 静塔
鐘の音を彼岸へ運ぶ風の船 内田正美
鐘の音を追ふ鐘の音よ春の昼 木下夕爾
鐘の音偲びて柿を食ひにけり 相生垣瓜人 明治草抄
鐘の音物にまぎれぬ秋の暮 杉風
鐘楼にもどる鐘の音豊の秋 柳澤和子
開かぬ日もありて鐘の音霞みけり 鈴木花蓑
●鐘声 
あれ聞けと時雨来る夜の鐘の声 榎本其角
おさがりや四つと覚しき鐘の声 午心
夏籠や種々に聞なす鐘の声 嘯山「葎亭句集」
山寺に笑ふやうなり鐘の声 山笑う 正岡子規
山寺や雪の底なる鐘の声 小林一茶 (1763-1827)
治聾酒や遠里に野の鐘の声 自来
海に出てふくらむ除夜の鐘の声 吉原一暁
煮凍や精進落る鐘の声 几菫
煮凍りや精進落つる鐘の声 几董
若水や冬木が丘に鐘の声 青々
萱堂に雨声鐘声秋の蝉 百合山羽公 寒雁
鐘の声犬の声それも霜の声 竹冷句鈔 角田竹冷
鐘の声霜を知る夜の眉重き 加舎白雄
霜月や沖の鯨も鐘の声 重頼
青菜たべてそれからの夜半鐘声 阿部完市 純白諸事
元日の梢をわたる鐘のこゑ 角川春樹 夢殿
おぼろ夜や幼き頃の鐘のこゑ 佐野良太 樫
いろに出て柿の大和に鐘のこゑ 松本雨生
●松濤
●松籟 
うぶ声の初松籟の中にかな 白澤良子
おほかたは男松の声の初松籟 鷹羽狩行
なほ遠雷松籟圏に義民の碑 香西照雄 対話
今日よりは冬の松籟妻待つ家 田川飛旅子 花文字
住めばこの地の松籟も春祭 杉山岳陽 晩婚
初伊勢や松籟に和す笛太鼓 伊藤いと子
初朧かや松籟ののびちぢみ 川端茅舎
初松籟と初潮騒と確かなり 池上樵人
初松籟はるか雲ゆく法隆寺 山内遊糸
初松籟五山に雲のなかりけり 木村傘休
初松籟山の高みに威を正す 小板橋初子
初松籟岩陰を波躍り出づ 田村幸江
初松籟武蔵野の友数ふべし 石田波郷
初松籟父なき空となりにけり 大串章
初松籟父に呼ばれしかと思ふ 高崎武義
初松籟碑を読む遺髪塚 尾崎よしゑ
初松籟神域に古る慰霊の碑 下山芳子
古草に雨きらきらと松籟す 阿部みどり女
唐崎の初松籟を聞くべかり 森脇貞子
喪の旅の松籟著莪を曇らしぬ 阿部みどり女
夏痩や身を吹き通す松籟 東洋城千句
夕されば松籟さむき御祓かな 岸風三楼 往来
大風のなかの松籟義仲忌 皆川盤水
宵月に松籟冴ゆる浮御堂 伊東宏晃
寒明の松籟を聴く鹿の耳 齋藤朗笛
寒松籟恕すべからず清むべしと 香西照雄 素心
山の家や雛の囃子の松籟シ 尾崎迷堂 孤輪
山寺や切干筵松籟シ 尾崎迷堂 孤輪
岩殿山の初松籟に詣でけり 荒井正隆
巌門の白き波頭や初松籟 塩井志津
彩として松籟を聴く春隣 村越化石
戦時育ちに和楽器も無し春松籟 鍵和田[ゆう]子 未来図
手花火へ松籟襲ふごときかな 宮津昭彦
春の松籟憩ふ心を強めたし 香西照雄 対話
春愁やそを松籟と気づくまで 大石悦子 聞香
春松籟その底墓に貴賤なく 平井さち子 完流
春松籟胸襟ひらく龍馬像 貞弘 衛
春疾風孤松といへど松籟す 藤田 宏
春蝉や松籟神のわたるごと 古舘曹人 砂の音
春近し松籟門の内にあり 大峯あきら 鳥道
村々に松籟濃くて端午かな 大峯あきら 宇宙塵
松の花に満つる松籟吾娘遠し 中村草田男
松は松の自祝のひびき寒松籟 嶋田麻紀
松よりも高きところを初松籟 片山由美子 風待月
松籟が頭のあたり寝正月 小原恵子
松籟と波の鼓の後の雛 竹腰千恵子
松籟にかんざし揺れる初詣 堀江暁子
松籟にひかりあがりし千鳥かな 岸風三楼 往来
松籟にまどろむもある遍路かな 定本芝不器男句集
松籟に単衣の衿をかき合はす 阿部みどり女(駒草)
松籟に和す初釜の湯のたぎり 滝峻石
松籟に夢や通へる僧昼寝 松藤夏山 夏山句集
松籟に心休ませ寒稽古 上野 泰
松籟に揉まれまんさく咲きにけり 阿部みどり女 『陽炎』
松籟に日の影しばし初茶の湯 宮武寒々 朱卓
松籟に春禽和すや相国寺 北尾国代
松籟に朝月そよぐ展墓かな 木下夕爾
松籟に潮騒に引く小松かな 高橋カズ子
松籟に眠け誘はる釜初め 狩野従子
松籟に秋蝉とわが心気のみ 石塚友二 方寸虚実
松籟に視線移りしとき添水 木下千鶴子
松籟に足音のなき十二月 萩原麦草 麦嵐
松籟に野鍛冶が祭る鞴かな 有泉七種
松籟のしきりに歯朶を青くせり 岸田稚魚 『萩供養』
松籟のほとりただよふ春夕焼 猿山木魂
松籟のやまとうるはし篭枕 山元志津香
松籟のわたれる春を惜しみけり 藤本美和子
松籟の上に松籟冬そこに 羽部洞然
松籟の不断といへど五日かな 篠田悌二郎
松籟の中や一点金魚玉 岩田昌寿 地の塩
松籟の化現たちまち谷戸の虹 小林康治 四季貧窮
松籟の御油赤坂や広重忌 服部真知子
松籟の息の長さの夏に入る 村越化石 山國抄
松籟の止みたるよりの秋の声 上野 泰
松籟の武蔵ぶりかな実朝忌 石田波郷(1913-69)
松籟の泉の底に起りけり 牧野春駒
松籟の深息の天暮春かな 村越化石 山國抄
松籟の真只中のさくらかな(弘前城) 岸田稚魚 『雪涅槃』
松籟の真只中を松露掻く 米岡畔几
松籟の稗また稗を引きゐたり 斎藤玄
松籟の綴り綴りてきりぎりす 池上樵人
松籟の蝉の澄む丘無きか行かむ 及川貞 夕焼
松籟の行方は知らず蟇交る 中川宋淵 命篇
松籟の裏側に座し葛饅頭 田中君恵
松籟の門に筍置いてあり 大峯あきら 宇宙塵
松籟の闇にたかまる憂国忌 鷲谷七菜子
松籟の高き札所へ初詣 上崎暮潮
松籟は峠ならむと汗ばみ登る 篠原梵 雨
松籟もしづまり迎ふ開山忌 南 椏琅
松籟も寒の谺も返し来よ 小林康治 四季貧窮
松籟も怒濤も知らず蟻一途 毛塚静枝
松籟も比良八講の荒びかな 向田貴子
松籟やあふぐ花には花の音 茂木楚秋
松籟やしぐれぐもりの甃 石田波郷
松籟やたかんなの頭の五六寸 清水基吉 寒蕭々
松籟やふたり寝る夜も寒の内 清水基吉 寒蕭々
松籟や三角兵舎に我が暗し 久保純夫 熊野集
松籟や冬苔荒らし山羊の糞 右城暮石 声と声
松籟や寸鉄寒を光り出よ 齋藤玄 飛雪
松籟や撞木の揺れと秋遍路 飴山 實
松籟や昼の鈴虫音たえだえ 石塚友二 方寸虚実
松籟や正月つひに雨を見ず 佐野青陽人 天の川
松籟や潮路に閃と初つばめ 中拓夫
松籟や生害石に苔の花 荒川優子
松籟や百日の夏来リけり 中村草田男
松籟や端切れのやうに小鳥来る 高岡すみ子
松籟や遠きまひるの道の蝉 太田鴻村 穂国
松籟や隋より韻き夏怒濤 和田悟朗 法隆寺伝承
松籟や離宮小径の夏薊 角谷幸子
松籟や馬上の人の白襲 竹内尚子(草苑)
松籟をききもやひゐる浅蜊舟 大野林火
松籟をさそふ笛の音薪能 吉田節子
松籟を引入れかねて百千どり 安東次男
松籟を残し五月を君逝けり 穴井太 原郷樹林
松籟を秋声と聞きとめて住む 稲畑汀子
松籟を背山に雪の月影堂 洲浜ゆき
松籟亭一番上の夏座敷 中戸川朝人 尋声
松露掘る松籟の語を聞き分けつゝ 中島かずみ
梅かたく松籟かたきより起る 岸風三楼 往来
橋立の松籟に褪せ曼珠沙華 西本一都 景色
橋立の松籟を聴く九月かな 斎藤朗笛
武具飾り松籟乱れなき山家 大峯あきら 鳥道
母が家は初松籟のあるところ 山本洋子
水仙は松籟落つるところかな 東洋城千句
法堂へ松籟とどく青畝の忌 阿波谷和子
波郷死後の力賜へよ冬松籟 齋藤玄 『玄』
波音になごむ松籟春ここに 及川貞 夕焼
海にでて松籟あをし四月尽 石原舟月
海光や初松籟のひもすがら 戸川稲村
海底の松籟を聴く鑑真忌 石寒太 あるき神
清瀬病床松籟となれこの黄沙 及川貞 夕焼
潮騒に重ね初音と松籟と 山城悦子
無住寺の松籟たかき二月かな 細川加賀
独楽の精尽きて松籟ごうごうと 内藤吐天 鳴海抄
独歩忌や松籟海に出でにけり 滝本史代
甍驕つて松籟高し若楓 楠目橙黄子 橙圃
産土の松籟を聞く七日かな 角田しづ女
百合の香や松籟向つ山に移る 瀧春一 菜園
百幹の松籟揃ふ白露かな 大岳水一路
盆栽の菊の松籟聞かむとす 高澤良一 ももすずめ
眠る山よリ松籟と友の声 楠本憲吉
秋風を松籟としてめぐらしむ 八木絵馬
茜さす初松籟の塩屋崎 天野英子
葉桜の風松籟に紛れゐる 手塚美佐 昔の香
葛粉水に浮いて松籟に廻る~ 雑草 長谷川零餘子
葛餅や松籟いまも真間に鳴り 富岡掬池路
蓮如忌の松籟濃ゆき漁村あり 大峯あきら 鳥道
蝋燭の片なだれして初松籟 玉川リヨ
螢火の舞ふ松籟となりにけり 山田弘子 こぶし坂以後
蟻地獄深し松籟絶ゆるなく 内藤吐天 鳴海抄
行く秋の松籟の鳴る舞子浜 木村てる代
襟立てて松籟聴けり大魯の忌 福島せいぎ
訪へる寺の松籟寒ンをうべなひぬ 尾崎迷堂 孤輪
讃美歌に似し松籟や青畝の忌 小路智壽子
赤き幹冬の松籟捧げ立つ 中村草田男
逝く春の松籟ばかり黒木御所 荏原京子
野火止に赤松多し初松籟 沢木欣一
門三つくぐり浄身初松籟 田中水桜
門松や松籟落つる大覚寺 大谷句仏
雛の日の松籟濃ゆき加賀にあり 大峯あきら 宇宙塵
雛流し松籟これを悼みけり 安住敦
風落ちしとき松籟す浜豌豆 阿部みどり女「光陰」
鳥居をば朱の琴柱とし初松籟 林昌華
鴟尾はねて松籟高し鑑真忌 西岡三城
麦の芽に松籟落ちてかぎりなし 富安風生
●心音 
いちはつや母の心音全山に 三森鉄治
うづくまる身の心音や雪の堂 鷲谷七菜子 花寂び
ざうざうと暖房音も心音も 高澤良一 さざなみやつこ
ただ白く降る雪心音もて通る 野澤節子 黄 炎
たひらかに心音ありぬ白菖蒲 須賀一恵
とくとくの心音賜へ冬苺(父結滞脈あれば) 野澤節子 『花季』
みどり児の心音聴けり外は雪 水原春郎
わが生くる心音トトと夜半の冬 富安風生
ベタ金の心臓の心音清し 阿部完市 証
夏桔梗別の心音妻の身に 友岡子郷 日の径
太宰忌や無明心音聴くばかり 火村卓造「奔り火」
夫婦の心音鯉の心音生き作り 加藤知世子 花寂び
妊りて心音ふたつ花杏 山本みか
宿る子の心音確か雲の峰 安達逸子
寒星や心音還るべき刹那 小出治重
寒鯉のうねる心音ひそみをり 新谷ひろし
山中は心音と梅にぎやかに 宇多喜代子 象
川音は里の心音鳥交る 松本つね
徂春の己が心音ききてみし 佐渡谷ふみ子
心音がことりと狂ふ花の下 橋本美代子
心音がプラスチックになりはてる 小沼やす子
心音てふ身内の音に冬ごもる 野澤節子
心音に似たる噴井のありにけり 細川洋子
心音に聞き耳をたて花粉症 鈴木石夫
心音に近くて赤き牡丹の芽 森田智子
心音に黄河の流れ去年今年 小枝秀穂女
心音のきようも乱れて リラ冷えで 角谷貞子
心音のことに響く夜シクラメン 石山惠子
心音のときに急きたり寒茜 吉田つよし
心音のトトト・トトトとうさぎ抱く 松永典子
心音の乱るる日なり鳥帰る 福田蓼汀 秋風挽歌
心音の早くなりたる花の冷え 赤尾恵以
心音も至極尋常明日は秋 高澤良一 鳩信
心音を拾ふ四日の聴診器 細川洋子
心音を通奏低音年歩む 矢島渚男
指くめば心音の波立夏かな 野澤節子 『駿河蘭』
掌に包む心音五月闇 島田妙子
昔怯えし心音をきく生き作り 北原志満子
時の日の時をこぼれてゆく心音 西園寺明治
水音と虫の音と我が心音と 西村和子
炎天の心音たしかむ被爆の地 小林道夫
緑の羽根心音奏づ上に挿す 本多静江
蝌蚪群れてふと心音をたしかむる 尾崎朝子
蝶とまる心音老いしわが胸に 新明紫明
身一つの心音古し寒に入る 三橋敏雄
降りはじめた雨が夜の心音 住宅顕信 未完成
雪しづか聴きたしかむる児心音 下村ひろし 西陲集
雪山想う心音は軽い音楽 一ノ瀬タカ子
露の夜を眠り老いゆく心音も 新明紫明
青嵐心音いつか色なして 牧石剛明
飛びくるは彼の心音雪礫 広川康子
ひととき心の音の聞こえる体寄せ合う 河内登美子
乾く日の心の音に繭鳴らす いのうえかつこ
●しんしん 
お茶の実がしんしん冷ゆる高山寺 高澤良一 宿好
お話にならぬ蚕がしんしん桑を食う部屋じゆう 栗林一石路
しんしんというはこのこと山に雪 宇多喜代子 象
しんしんとさくらが湧きぬ墓の闇 鷲谷七菜子 花寂び 以後
しんしんとして夏木立中禅寺 夏木立 正岡子規
しんしんとしんそこ寒し小行灯 一茶
しんしんと乙女椿の褪する夜ぞ 林原耒井 蜩
しんしんと冷ゆる日のあり冬籠 久保田万太郎 流寓抄
しんしんと十一月の瓶の底 大林 勉
しんしんと去年や今年や月一つ 豆人
しんしんと夜の光の草茂る 川端茅舎
しんしんと夜更けの厩舎虫時雨 平田恵
しんしんと夜空ゆ降り来る宇宙線みえねど石に飛沫きてをらむ 三井修
しんしんと大蔵経に霜夜満つ 有馬朗人
しんしんと太陽大き蟻地獄 柴田白葉女 『月の笛』
しんしんと子の血享けをりリラ匂ひて 石田波郷
しんしんと寒さがたのし歩みゆく 立子
しんしんと寒波来し夜の鴨の声 山谷 春潮
しんしんと峡星満ちぬ泉の上 羽部洞然
しんしんと日を押し上げてゐる泉 仲村青彦
しんしんと星座歩める虫浄土 山田弘子
しんしんと昼は客なし田植どき 八牧美喜子
しんしんと月の夜空へ柿若葉 中村汀女
しんしんと柱が細る深雪かな 栗生純夫
しんしんと桜が湧きぬ墓の闇 鷲谷七菜子 游影
しんしんと梅散りかかる庭火かな 荷兮
しんしんと死種の浮上してゐたり 柴田典子
しんしんと母に年立つ鰹節 原田喬
しんしんと泉わきけり閑子鳥 閑古鳥 正岡子規
しんしんと津和野の闇の栗の花 西田もとつぐ
しんしんと潮路ありけり夏薊 神尾久美子 桐の木
しんしんと澄む秋空やゆき場なし 野澤節子 黄 瀬
しんしんと濡るる赤松秋彼岸 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
しんしんと物音断ちし雪安居 桑田青虎
しんしんと白く厚きは越後の餅 福田甲子雄
しんしんと砂漠に冷ゆるピラミッド 田中清子
しんしんと秋蚕眠るに取巻かる 萩原麦草
しんしんと空あをく左右の稲匂ふ 川島彷徨子 榛の木
しんしんと肉の老いゆく稲光 玄
しんしんと肺碧きまで海の旅 篠原鳳作(1905-36)
しんしんと芯までひとり目刺かな 松浦敬親
しんしんと花日輪に焼かれけり 阿部みどり女 『陽炎』
しんしんと萌えしんしんと杉菜冷ゆ 千代田葛彦 旅人木
しんしんと落葉溜めたる保護樹かな ふけとしこ 鎌の刃
しんしんと谺殺しの雪の谷 藤田湘子 てんてん
しんしんと赤子ねむらせ雪見舟 田中裕明 先生から手紙
しんしんと遠き蝉妻妊ると 細川加賀 『傷痕』
しんしんと鈴を振り込む初神楽 山口草堂
しんしんと鈴振るごとし清水湧く 村越化石 山國抄
しんしんと鉄灼き雪はみどりなり 杉崎ちから
しんしんと降る雪槇をよそほひぬ 村沢 夏風
しんしんと離島の蝉は草に鳴く 山田弘子「草蝉」
しんしんと雪つむ夜の梁の音 長谷川素逝 村
しんしんと雪の香に帰す姉に会ふ 加藤知世子 花 季
しんしんと雪割草を恋ふるかな 青柳志解樹
しんしんと雪渓の底火を焚けり 本山卓日子
しんしんと雪詩の中へ迷ひこむ 石松フミ子
しんしんと雪降り遠き母屋かな 深川正一郎
しんしんと雪降る木曾に安らげり 中村苑子
しんしんと雪降る空に鳶の笛 川端茅舎(1897-1941)
しんしんと青い鎌ふるなまけ者 穴井太 土語
しんしんと飢うるこころや蛇ころし 川口重美
しんしんと飾昆布が粉を噴く 松浦敬親
しんしんと髪白みゆく青葉山 鷲谷七菜子 花寂び
しんしんと麦湯が煮えぬ母の家 島野光生
しんしんと黒きを見れば寒念仏 鳥酔
じんじんと岬しんしんと首初鏡 野ざらし延男
とことはに夢見る眼なり雪しんしん 林原耒井 蜩
なべづるまなづる風しんしんと刻流す 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
みささぎの後鳥羽順徳雪しんしん 伊藤いと子
みづうみの晴れてしんしん冬ざくら 関戸靖子
やわはだの匂いも汗して夜はしんしんと平和な肉體への嗅覚 橋本夢道
らあめんのひとひら肉の冬しんしん 石塚友二(1906-86)
ビー玉の赤き流紋雪しんしん 加川則雄
一匹の蝉しんしんと蚶満寺 深見けん二 日月
久女忌の雪しんしんと円通寺 平松睦子
兵送り月しんしんと草に冷ゆ 河合凱夫 藤の実
冬星やしんしんと研ぐ風と雲 高橋たかえ
冬竹の青しんしんと手術痕 鍵和田[ゆう]子 浮標
初泣きやしんしんとして真暗がり 小坂順子
古本の本郷若葉しんしんと 青邨
土不踏ふたつ眠りて雪しんしん 松山足羽
壁の絵の裏しんしんと雪の路地 橋本鶏二
夏服をしんしん霧が通るなる 福田蓼汀 山火
夏桑のしんしんたるは摘みがたし 栗生純夫
夏潮の瑠璃しんしんと菊が浜 鈴木しげを
夏落葉しんしんと子にことば満つ 川田由美子
夕日落つれば山はしんしんと尖り立ち シヤツと雑草 栗林一石路
夕紅葉水脈しんしんと尽くるなし 純夫
夜の稲架しんしん匂ひ地震ふれる 西本一都 景色
大欅白樹しんしん去年今年 斎藤夏風
大雪や闇にしんしん音しずめ 山本としみ
寒造り夜はしんしんと蔵沈む 宇咲冬男
少年はしんしんと羽蟻でありぬ 大西健司
微笑が妻の慟哭 雪しんしん 折笠美秋 君なら蝶に
思考像しんしん青し雪降る下 加藤知世子 花寂び
手紙書く午後しんしんと蝉の山 中拓夫
新藁を積んでしんしん水の国 長谷川双魚 風形
日を歪め山火の灰がしんしんと 軽部烏帽子 [しどみ]の花
明け行くや卯の花月夜しんしんと 卯の花 正岡子規
春雪のあとしんしんと海の紺 佐野まもる 海郷
最上川雨気しんしんと花ゆすら 中原露子
月山のふもとしんしん霜夜にて動かぬ闇を村とよぶなり 馬場あき子
梁は尺二寸しんしん霜柱 阪本謙二
棗の実食めばしんしん日のひかり 斎藤英石
死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはず天に聞こゆる 斎藤茂吉
母離りて障子の桟のしんしんと 角谷昌子
水餅のしんしんと夜を眠るなり 松山大耳
浜うつぼ耳しんしんと沖はあり 友岡子郷
浜靱(はまうつぼ)耳しんしんと沖はあり 友岡子郷
海恋ひのしんしんたり花ひらく前 鍵和田[ゆう]子 浮標
炎天の墓しんしんと酒を吸ふ 谷川季誌子
狐鳴く夜はしんしんと沖匂ふ 丸岡正男
猪鍋や背にしんしんと夜の岳 川村紫陽
生きる意味しんしん説けり葱の花 鈴木節子
生れし日も逝くときもまた雪しんしん 木村敏男
病母の辺柚子しんしんと青尽す 目迫秩父
真白羽を空につらねてしんしんと雪ふらしこよ天の鶴群 岡野弘彦
真葛原しんしんとある海の景 志摩知子
石蓴採眼のしんしんと老ゆるなり 宮坂静生 樹下
竹藪ごしの川しんしんと鴎外忌 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
笑ひたる後しんしんと夏やつれ 能村登四郎 寒九
繭白ししんしんと山遠くまで 飯田龍太
罠をかけ冬しんしんと眠るなり 高橋弘
老鴬やしんしん暗き高野杉 石塚友二
聖堂の冷えしんしんと初祈祷 大場美夜子
胎盤へしんしんと咲く曼珠沙華 穴井太 土語
花煙草しんしんと遠き山ありぬ 橋本政徳
若草に耳しんしんと鳴りにけり 佐野良太 樫
茎漬のあとしんしんと妻の息 南雲愁子
草餅や水しんしんと溢れ出て 中谷貞代
菊の香にありしんしんと夜の深さ 岸風三楼 往来
葛水やしんしんと昼の遠ざかる 中島月笠
葱掘るやしんしん吹雪く遠嶺どち 吉田未灰
蓼科の夜はしんしんと星涼し 鳥羽とほる
袋掛あの木この木もしんしんで 宮田和子
足袋先の冷えしんしんと父の通夜 鈴木愛子
逆修の板碑しんしん雪割草 望月精光
遺影持つ妻に粉雪しんしんと 堀口美鈴
障子貼つて眠りしんしん晩々蚕 下田稔
雪しんしんとにんげんさまの頭蓋骨 松本恭子 世紀末の竟宴 テーマによる競詠集
雪しんしん凛々と朝の般若経 西田孤影
雪しんしん出湯こんこんと尽くるなし 松本たかし
雪しんしん女の旅の酒少し 鈴木真砂女 夕螢
雪しんしん慟哭もなきひとり寝に 鷲谷七菜子 黄 炎
雪しんしん聴きたきものに橇の鈴 小川田鶴子
雪の壁はしんしんという音のかたち 澁谷道
雪冷えの手先しんしん鰤を截つ 鈴木真砂女 夕螢
雪囲ふ昏みしんしん湯の滾り 野澤節子
雪嶺の襞しんしん蒼し金縷梅咲く 加藤知世子
雪澄みの湖しんしんと琴かなづ 加藤知世子 花寂び
霞む街しんしんとして枇杷芽立つ 右城暮石 声と声
風花の天しんしんの百叩き 仁平勝 花盗人
颱風の雲しんしんと月をつつむ 大野林火
飛鳥に座す春しんしんと男石 山田みづえ
鬼百合がしんしんとゆく朝の空 坪内稔典(1944-)
鴉に巣藉したる杉もしんしんと 栗生純夫 科野路
鷹翔(う)てば畦しんしんとしたがへり 加藤秋邨 寒雷
鷹翔てば畦しんしんとしたがへり 楸邨
麦の穂のしんしんと家つつむなり 川本臥風
黄葉やしんしんと師に墨するも 小池文子 巴里蕭条
しん~としんらん松の春の雨 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
しん~とすまし雑煮や二人住 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
しん~とゆりの咲けり鳴雲雀 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
しん~と夜の光の草茂る 茅舎
しん~と寒さがたのし歩みゆく 星野立子
しん~と寺ふけて舞ふ蛍かな 宋淵
しん~と降る雪に見入りわがさだめ 原石鼎 花影以後
しん~と雪匂ふ日の盛りかな 金尾梅の門 古志の歌
しん~と雪降る空に鳶の笛 茅舎
元日の夜気しん~と樹海より 佐野青陽人 天の川
月ひとつ水しん~と流れけり 墨水句集 梅澤墨水
颱風の雲しん~と月をつゝむ 大野林火
●人籟
●吹鳴 
肩の雪払い合うて空襲解除の吹鳴の中 橋本夢道
●鈴音 
堅田泊りや鴨の鈴音を夜更けまで 摂津よしこ
寺にゐて千の鈴音涼しけれ 間中恵美子
格子戸に鈴音ひゞき花柘榴 飯田蛇笏 霊芝
牛の鈴音耳をはなれぬ橡拾ひ 林原耒井 蜩
的玉の落ちる鈴音投扇興 岡本幸枝
鈴音のして春着の子帰り来る 遠藤喜久女
鈴音の谺しみ入る秋遍路 黒木幸子
●鈴の音 
おもちや箱寄せれば鈴の音涼し 高濱年尾 年尾句集
どんど火の火掻捧より鈴の音 小畑柚流
よき鈴の音りん~と飾馬 立子
わびて誰鳴子に鈴の音すなり 鳴子 正岡子規
冬麗や身ぬちに鈴の音かすか 片山由美子 天弓
凍ての限りへ橇の鈴の音この夜を泊つ 古沢太穂
初御空どこより何の鈴の音 村沢夏風
土鈴の音聞き比べゐる小春かな ふけとしこ 鎌の刃
夕映ゆる遍路に鈴の音の高し 稲垣みのる
夕汽笛馬橇の鈴の音の奥に 池上樵人
子遍路に夜のちかづく鈴の音 森田正実
寒垢離や両國渡る鈴の音 寒垢離 正岡子規
寒行の鈴の音の糸引くごとく 木内怜子
峰入りの鈴の音絶えし日向水 宇佐美魚目 天地存問
巫女の舞ふ鈴の音とほる青茅の輪 池田博子
戻り来し猫の鈴の音クリスマス 片山由美子 天弓
拝殿に花吹き込むや鈴の音 夏目漱石 明治三十年
放鷹の鈴の音天を翔りけり 鞠絵由布子
春着の児所作に小鈴の音が添ひ 田所節子
春雨や投扇興の鈴の音 蘇山人俳句集 羅蘇山人
春駒の鈴の音澄めり湖に来て 皆川盤水
更るほど鈴虫の音や鈴の音 之道
月代や巫女のこぼせる鈴の音 小島健 木の実
朝顏や新聞くばる鈴の音 朝顔 正岡子規
札幌の春や馬橇の鈴の音 渡辺白泉
梅咲くや瑞光殿の鈴の音 梅 正岡子規
涼しさやみどりごの振る鈴の音 上田圭子
玉砂利の音に五十鈴の水温む 入江 量子
神鈴の緒の春雪になほ足らず 古舘曹人 砂の音
空耳とおもふ鈴の音十三夜 千田徳子
立居して鈴の音を張る夏の霧 栗林千津
花ひらくべし暁闇の鈴の音に 黒田杏子 花下草上
行く秋のとある夜更けの鈴の音 中村苑子
鈴の緒に沼の日を縒る花の山 古舘曹人 砂の音
鈴の音がしきりに降りぬ恵方道 鈴木鷹夫 大津絵
鈴の音して人見えず秋遍路 龍神悠紀子
鈴の音して玄関に礼者かな 豊長みのる
鈴の音のかすかにひゞく日傘かな 飯田蛇笏「山廬集」
鈴の音のしてゐる雛の髪かざり 山佐良幸
鈴の音の南部蒼前祭あをし 黒田杏子 花下草上
鈴の音の綺羅を恐れて山楝蛇 保坂敏子
鈴の音の胸深きより春着かな 片山由美子 風待月
鈴の音は驢馬の曳く馬車サルビヤ緋 竹尾夜畔
鈴の音ひびき合ひゐる茸狩 山本紅童
鈴の音も休ませてゐる秋遍路 吉金絹枝
鈴の音や真近に湧いて雲の峯 中川宋淵 詩龕
鈴の音を指先に聴く秋遍路 瀬戸内敬舟
霧襖より富士講の鈴の音 山田弘子 螢川
駅馬路や夕立はるゝ鈴の音 西島麦南 人音
鶯や新聞売りの鈴の音 鶯 正岡子規
●清音 
濁音にあらず清音昼蛙 田中水桜
●筒音 
筒の音雄鹿は鳴かずなりにけり 鹿 正岡子規
筒音をきく曇り日の春の藁 宮坂静生 山開
●ノイズ

 
以上

# by 575fudemakase | 2022-06-25 22:06 | ブログ


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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